くにさくロゴ
1947/07/04 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第11号
姉妹サイト
 
1947/07/04 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第11号

#1
第001回国会 本会議 第11号
昭和二十二年七月四日(金曜日)
   午前十時九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第十号
  昭和二十二年七月四日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
  (第四日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
    ―――――――――――――
一 昨二日議長は、予備審査のため左の内閣送付案を財政及び金融委員会に付託した。
 國民貯蓄組合法の一部を改正する法律案
 財産税收入金特別会計法の一部を改正する法律案
 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案
昨三日議長は、左の内閣提出案を財政及び金融委員会に付託した。
 酒類配給公團法案
同日左の質問主意書を内閣に轉送した。
 木村内務大臣に対する質問主意書(尾崎行輝君提出)
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。お諮りいたします。議員上野喜左衞門君より辞表が提出されております。これより参事をして朗読いたさせます。
  〔内田参事朗読〕
    辞職願
             本員儀
 昭和二十二年勅令第一号に基き同令第四條の覚書該当者と指定せられたるに依り議員を辞職致し度に付御許可相成るやう御願致します
  昭和二十二年七月三日
    参議院議員 上野喜左衞門
   参議院議長松平恒雄殿
    ―――――――――――――
#4
○議長(松平恒雄君) 上野喜左衞門君の辞職を許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(松平恒雄君) 御異議ないものと認めます。よつて許可することにいたしました。
     ―――――・―――――
#6
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件、第四日、昨日の一松君の質疑に対し、商工大臣より発言を求められております。この際許可いたします。
  〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#7
○國務大臣(水谷長三郎君) 昨日一松さんの御質問は、この度政府が発表いたしました緊急経済対策の中に中小企業の問題が入つておらないのはどういう理由であるかというような御趣旨であつたように聞きましたので、それに対しましては和田長官からお答えになりましたので、私の答弁はそれでいいんじやないかと思つておりましたが、重ねて商工大臣から中小企業の問題に対する考え方を述べろということでございますので、重ねて御答弁することにいたします。中小企業の問題に関しましては、政府としては緊急経済対策の中の一項目として取り上げておりませんけれども、日本経済の再建並びに我が國経済の民主化の上におきまして極めて重大なるものであるということは、これは政府としても十分に認めておる次第でございます。それがために政府といたしましては、資材資金等、現下國情の許す範囲でこれに支援いたしますと共に、同時に技術の向上、経営の合理化を強く望んでおるような次第でございます。更に中小商業の問題でございますが、中小商業の振興の点につきましては、率直に申上げますれば、現在の物資の生産状況から見まして極めて困雜なる問題であることは言ふまでもございません。併しながら政府といたしましては、緊急経済施策の中にありまする物資流通秩序の確立の重要性に鑑みまして、或いは公團方式を採用し、或いは割当切符制を実施して参ります上におきまして、これが運用を円滑にするために必要な範囲においては、できるだけ中小商業者の地位を認めて参りたいと存じます。尚この中小企業の問題に関しましては今商工省といたしてその振興方法に関して考えておりますので、若し幸いに成案が間に合いますならばこの議会に提出したいというように考えておりまするから、さよう御了承をお願いしたいと思います。
#8
○議長(松平恒雄君) 一昨日の吉川君の質疑に対し文部大臣より発言を求められました。この際許可いたします。
  〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#9
○國務大臣(森戸辰男君) 一昨日吉川君から新らしい教育制度、特に六三制の当面しておる困難と、それに伴う解決の具体策について御質問がございました。もう一つは今日の國家は教育文化費というものは大変必要と思うが、生産的の面でも必要であると思うが、これを非生産的なものとして軽く扱う傾向はないか。これに対してどう考えるかというお話でありました。
 第一の点につきましては、今日日本は民主的な、平和的な文化國家となることを國是といたしておりまするので、これについて我々は最大の努力を拂うておるのであります。併しこの大きな目標は、今日の敗戰窮乏の日本で直ちには実現できませんので、私共はその準備過程にあるのであります。その準備過程に一番大切なものは、次代國民を本当に國民的な、平和的な國民として育てることであり、これがために学校教育、一般教育の新らしい方途を立てなければならん。かような意図から、実は教育審議会の建議もあり、それに先立つてはアメリカ教育使節の色々な御注意もあり、更に九十二議会におきまして、御協賛を得まして、教育基本法と学校教育法とができ上がつたのでありまして、これによつて日本の教育が新らしい方向に立ち直ることになつたのであります。その学校に関するもので中心の問題は六三制の問題でありまして、この春から行われました新制中学の問題がこの実行に関しましては非常に多くの困難に当面しておることは、私の申すまでもなく夙に皆さんの御承知の通りと存ずるのであります。六三制の実行というものは窮乏日本にとりましては、是非ともやらなければならん、殊に平和國家として中外にその態度を声明した日本にとりましては是非ともやらなければならんことでありまするけれども、日本の財政状態からしますと誠に困難な問題であつたのであります。これは今日の諸地方から参つておりまする陳情からも私共は明らかに存じておりまするし、実は八万余の学級の中の三分の一乃至四分の一は二部教授又は仮の教室で行われまして、これも皆さん御存じの通りでございますが、私も見ましたが、或る者は暗い寺院の中で教授をしておりまするし、或る者は破れた雨の漏る窓の無い工場で教授をいたしておりまするし、近縣におきまする戰災地におきましては、机もなく、包裝の紙を使い、配給の罐詰の箱を机として勉強しておるという所も多多あるのであります。而もこれらのものを見まするとき、私当面の責任者といたしましては誠にお氣の毒に思うのであるが、先生方も生徒もこの間に立つて一生懸命に勉強しておられるのを見まして、本当に心強く思つておるのでありますが、併しこれではならんと私共も存じておりまして、あらゆる努力をいたしたいと思つておるのでありますが、何分にも日本の財政状態というものがこれらの不完全を補う完全な状況を持つて來ることに非常な支障が存しておることも、皆さんの特に御承知の通りであるのであります。
 政府といたしましては、この新制の中學について多くの建設、整地或いは設備に対する費用が要ることを考えまして、これに対してできるだけ多くを國庫補助でいたしたいと存じておりまするし、又古い軍施設或いは遊休施設の轉用ということについても考えておりまするし、又資材、起債というような面につきましても、できるだけの努力をいたすように関係方面と話をいたしておるのございます。かような事情でありまして、私共は窮乏日本の許す限りのことはいたしたいと存じておるのでありまするが、火急の場合まだまだ手の及ばないところもありまして、所によりましては父兄方に御寄附を願つておるというような所もあります。本筋から申せば、これは政府が國の費用、或いは地方團体の費用でこの義務教育はいたすべきことであります。私共はこういう方針に向つておりまするが、今日の事情から父兄の教育愛のためにそういう御寄附等があるということも、これを禁ずるということは私はできないと思います。併し本筋は本筋として、又父兄の皆さんのそういう御意思も尊重いたさなければならん。唯それがいろいろな関係で教育の趣旨と悖るものとなつたり、或いはこれを惡用するような、いわゆるボス的な者の活動の地盤となつたりするようなことは、嚴に戒しめなければならんと存じております。これが第一点に対するお答えでございます。
 第二点につきましては、文化教育の費用は、新らしい日本殊に民主的な平和的な文化國家を目指す日本としては、この費用は重視されなければならんという御意見については誠に御尤もであると思います。單に吉川さんの言われた生産という見地のみならず、実は文化教育の費用は、新らしい日本の建國の費用であると思うのであります。立國の費用であると思うのであります。更に生産という面からも実はこれは非常に大切な費用ではないか。といいまするのは、既に総理或は和田長官の本議場における演説からもお分りのように、日本はあらゆる資源を挙げて、今日の窮乏に打ち克つて行かなければならん。私は多くの人間と乏しい資源を以てこの窮乏日本を開拓して行くのには、科学の力というものが非常に重要である。科学技術というものがなければ、日本のこの経済危機は窮極においては切り拔けられないと存ずるのであります。もう一点は、單に自然科学のみならず、今日の日本の新らしい秩序を建設するにつきましては、正しい社会科学の認識が國民の間になければならん。こういう意味で、私は新らしい日本は、生産という上からも実は文化教育の費用というものは重視されなければならんと存じておるのであります。文部省といたしましては、科學教育につきましては科學教育局を設けまして、各地方に科學教育のことに当つておられる人のいろいろな教養に資し、又科學教育講座を地方に設けましてあらゆる努力をいたしておるのであります。尚社会教育の方面におきましても、科學的の教育というものを徹底いたそうと存じておるのであります。この点はまだ不十分なところもあると存じまするので、実は皆樣の御協力を得まして、新しい日本には本当に立派な科学的の認識が國民の隅々まで滲透するようなふうにいたしたいと存じておるのであります。簡單ながら御答えといたします。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) これより昨日に引続き、通告順によりまして質疑を許します。帆足計君。
  〔帆足計君登壇、拍手〕
#11
○帆足計君 終戰以來すでに二ケ年になりまするが、この期間に欧洲におきましては、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、チエツコスロバキア、いずれも九割乃至十割の生産の回復をすでに見ております。又敗戰のイタリーにおいてすら六割、米英進駐下のドイツにおいてすら四割の生産の復興を見ているとさえ傳えられておりまするのに、我々我が祖國の産業はストツクを含めて僅かに三割にも満たないという惨憺たる状況でございます。終戰以來二ケ年、國内は虚脱と混迷の状況を続け、政府の施策は概ね時機を失し、又産業界はインフレーシヨンの惡化により貴重なるストツクを消盡し、更に國民大衆は日々の生活に追われまして、祖國再建の期待を胸に抱きつつも、日々の生活に追われる余り、今や自信と希望すらなくしつつあるかのごとき現状でありました。この時に、勤労大衆の支持を得ましたところの新内閣が成立しましたことにつきましては、党派的感情を離れまして、全國民がこれを以て祖國復興の手掛りを作りたいということにつきまして切実なる期待を抱いております。(拍手)私も首都十万の進歩的市民の代表といたしまして、同じ思いを以ちまして本日は産業の復興と当面の危機打開につきまして二、三の重要事項を質問いたしたいと思います。
 一昨日來、大臣各位の御答弁を承つておりますると、我々には聊か抽象的であり過ぎはしないかという不満がございます。私は極く簡單で結構でありまするけれども、御答弁はなるべく具体的にお願いしたいと存じます。更に私共の希望は單にここで質疑を繰返すことではございません。我々國民の期待を今後の政策の上に力強く実行に移して戴きたいと思うのであります。経済復興のために最も重要な事項は、申上げるまでもなく、國民生活の安定であります。この中で主食の確保は最も必要でありまするけれども、我々都会の居住者に取りましては、蔬菜の問題が又極めて重要であります。私共の家庭におきましては今殆んど粉食によつて露命を繋いでおります。從いまして蔬菜はなくてはならない必需品の一つであります。この問題につきまして特に東京都の都民は、今非常な困難を嘗めておりまするが、これに対しまして昨日平野農林大臣は、蔬菜の統制を再び強化すると言われました。併しながら率直に申しまして、私は蔬菜類の統制は極めて困難であり、或いは不可能に近いことであると思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)國民の皆樣の御意見も殆ど輿論はここに傾いているように私は承知しております。併しながら現在極度に食糧が逼迫し、又國際的関係を顧慮いたしまして、どうしても統制が止むを得ないといたしまするならば、政府は須らくその理由と、統制の限界と、統制の方法を國民の前に明示いたしまして、國民の納得の上でこれを行なつて戴きたいのであります。(拍手)更に私は蔬菜の統制は極めて困難であると思いまするが故に、その統制につきましては、大口の供出割当以外のものはなるべくならば自由に放任して戴きたいのであります。(拍手)蓮根から里芋に至るまで統制する必要があるでありましようか。又露店商の皆さんやおでん屋、その他の小料理店の方々の仕事などは、多くの勤労大衆の人達にいろいろの便宜を図つております。これらの点も考慮いたしまして、仮に統制の強化が止むを得ないとしまするならば、そこに一定の彈力性を持たして戴きたいのであります。蔬菜の統制の問題のごとき、我々の生活に最も切実なる関係のあります問題が、現状を以てしますならば官廳の下級職員の專断に委ねられておるかのごとき観のありますことは、極めて遺憾であります。これらの重要問題につきましては、すべからく綜合國策の一環といたしまして、政府におきましては最も愼重にして合理的な施策が必要であると存じます。現在公定價格の設定に厘毛の値段を審議しております政府が、國民の生活に最も身近なところのこれらの野菜の問題につきまして、比較的等閑視しておられると申しますか、その趣旨が支離滅裂で、我々に納得の行かない現状でありますることを、私は都民に代りまして遺憾の意を表する次第であります。(拍手)
 第二には物價の問題でありまするが、物價は御承知のごとく企業経営の基礎をなすものでございます。現在数十万の公定價格が行われておりまするが、その大部分は全くでたらめの値段でございます。そうしてこの現在の公定價格の制度は、まさに官僚的、形式的僞善と、官僚主義との象徴ともいうべきでありまして、このような誤まつた公定價格の制度が道義頽廃の基礎ともなり、又闇を助長する原因ともなつておるものであります。政府当局におきましては速かに公定價格を是正するということを昨日言明いたされましたが、從來の経験に徴しますと、公定價格の決定には凡そ半年又は一年の年月を要し、これが決まりました頃には、すつかり情勢が変つておるという状況が常でありました。(「泥繩式だ」と呼ぶ者あり)数十万の公定價格を僅かばかりの官廳機構によつて決め押えるということは、殆んど不可能に近いことであります。然るが故に私はこの際政府におきまして公定價格制度を改善するということでありましたならば、その手続、方法、具体的方策をもう少し明瞭に示して戴きたいのであります。私共が考えまするのに、主要食糧、基礎資材、又は輸入原料等、四、五十のものにつきましては確かに公定價格が必要であります。併しそれ以外の凡百の商品につきまして公定價格の設定は殆んど不可能に近いことであろうと思います。(拍手)然るが故にこの際私は政府に対しまして、これらの凡百の商品に対しましては協定價格の制度を取り、又その他國民生活に至大の関係のないものにつきましては、むしろ放任することが必要であろうと存じます。(拍手)
 併しながら公定價格と申しましても、これを業界の公定のみに委ねることはできません。然るが故に統制の民主化乃至は社会化が必要であると存じます。そうしてこれらの協定價格の設定には消費者代表、労働組合代表等に参加して戴きまして、これを市民の監視の下に決め、政府はその決定権と改訂権と監督権を行使すべきであろうと存じます。(拍手)本來資本主義経済下におきまして統制経済ということは殆んど不可能に近い位の困難な問題であります。統制は決して万能ではありません。これはむしろ資本主義社会におきまして一つの欠陷ともいうべきものであります。統制は人心の機微と自然の攝理を十分に弁まえ、そうして合理的な無理のない統制でなくてはなりません。然るが故に私は統制を以て万事が解決するかのごとく考えまするのは、それは官僚主義であろうと存じます。(拍手)統制とは必然の認識の上に立たねばなりません。資本主義の下における統制経済は、いわば都市計画のようなものでありまして、主要なる公園、公共建築物、上下水道、メインストリート、これらのものをがつちりと抑えることが必要であります。そうしてこれらの綜合計画が確立いたしまするならば、末梢はむしろ自由にするという方針を取るべきであろうと存じます。更に統制経済を進めます以上は、基礎資材その他統制をいたしまする物資につきまして、綜合的観点からもつと強い、もつと徹底した措置が必要であります。このためには配給ルートの確保が必要でありまするが、政府はこれにつきまして公團方式を採用いたしております。併しながらそれ以外の商品につきましては、現在自由切符制が採用されておりまするが、私は日本の現状におけるがごとき過少物資の現状におきましては、曾て十年ばかり前に衣料の切符制度の行われたような時代と遠いまして、到底このままの切符制度では困難であると存じます。今や切符制度布かれて僅か一ケ月ばかりでありまするけれども、既に混乱の前兆顯著なるものがあります。これに対しまして政府当局におきましては具体的に現在の切符制度を改善して戴きたいと思います。
 第三には今後の経済運営の方式についてでございます。独占禁止法が布かれるようになりますと、旧來の同業組合の統制は全く禁遏されるようになる次第であります。從來我が國の経済施策は軍官僚がこれを決定し、これを財界に諮問しておりました。かくのごときが過去における日本資本主義の運営の方式でありました。併しながらそれらの体制は今後改められなくてはなりません。経済施策は民主化されねばなりません。このために経済施策の根幹は先ず議会において考慮し、議会の信任したる政府がこれを決定する。これに諮問し、これを批評し、その政策の支柱になるべき民間の機構をどうするか、この問題について考えねばならんと思います。同業組合の独占的機能は停止されるに至りました。併しながら振り返つて考えて見ますると、経済界とはそもそも何であるか。從來は財界の名を以て呼ばれておりました。併しながらこれを民主的に観察いたしますると、経済界とは経営者並びに労働者、科学技術者、配給業者、又消費者をも含めて一役を演ずるところの、これら生産諸要素の綜合体であります。然りとするならば今後の経済施策は、これらの諸要素の積極的意見を採り上げ、これらの意見を綜合的に採り上げることが必要であろうと存じます。経済復興会議は経営者並びに自覚ある労働者の民主的強力な機関として生れました。併しながら復興会議には更にそれ以外に科学者、技術者、消費者の代表等々を網羅することになつております。然るが故に新らしい経済統制又は経済施策等の民主化の方策といたしまして、私はかくのごとき機構を政府は十分に活用する必要があろうと存じます。既に硫安の工業におきましては硫安復興会議が生れました。これは只今申上げましたような生産の諸要素を網羅いたしております。今般石炭鉱業におきましても統制の強化が必至であるとしまするならば、それは官僚独善、官僚機構の強化によらずして、かくのごとき民主的機構の強化によつてこれを突破せねばならんと存じます。(拍手)又從來我が國の官僚機構は非常な強い力を持つておりました。それらのものは統計資料を一手に把握しておりました。これらの統計資料を私は人民に解放する必要があると思います。議会は申すまでもなく、民間の経済團体、労働組合、市民團体、これにこれらの資料を解放せねばなりません。然らずして政策の民主化を唱えましたところで、到底官僚に太刀打はできません。現在経営者の実力は非常に弱く、労働組合又未成熟であります。この間隙に乘じて現在殆んど官僚政治が行われております。(拍手)これを打倒する途は統計資料その他のこういうものによる以外に途がないと思います。然るが故に各省にこれらの統計資料のサービスの部課を設け、その資材と人的要素を準備し、そのように進めることが必要だろうと存じます。
 次に電力の問題でありまするが、この冬の渇水は実に憂慮すべき状況であります。これに対しまして良質炭の配給又は補修資材の手当等を即刻只今から準備いたしませんと、我々の台所はこの冬は生米を噛らなければならん状況になつております。これにつきまして和田長官の御考慮をお願いいたします。我々工業の見地から見ますると、現在の農業は非常に遅れております。これは皆樣御承知の通りであります。これに関しまして農林大臣から農業の機械化、有蓄化、協同組合化等の方策を示されましたが、私はこれらの施策を一段と前進いたしまして、そうして工業と農業を結合し、都市と農村を結合する必要があろうと存じます。我々はこのために農業機械化協會を只今準備中であります。この機会に農村に機械を入れ、科学技術を入れる一方途といたしまして、國内数ケ所に機械化サービス・ステーシヨンを設けては如何かと存じまするが、これらにつきましての農林大臣の御意向を承りたいと存じます。
 最後に現在我が國の生産は僅かに二割七八分前後で、從業員は十割を抱えております。嵐は近付いております。企業整備と恐慌とは最早必至であります。これは個々の労働組合、又は個々の経営者の力を以て打開し得る事態ではありません。敗戰の痛手は実に実に深刻であります。敗戰はまだ続いております。そうして恐らく今年の秋から冬にかけましては、惨澹たる状況が展開されると思います。これに対しまして政府は今から準備せねばなりません。私は勤労の権利、並びに欠乏の恐怖から免れる権利は労働者階級に與えられておると思います。又自由経済のことが論ぜられましたけれども、勤労階級は飢えることの自由、失業するところの自由は敢て肯えんじないと思います。然るが故に先ずこれに対しましては、憲法の見地から勤労大衆の生活確保について大きなスケールの社会保險について、更に又全國的な雇傭の増大について政府は準備せねばならんと思います。このような準備の下において初めて経営者並びに労働者階級と、民主的に協議する余地が與えられるのであろうと思います。現状のごとき手ぬるい再建計画では、到底八千万國民を養うことはできないと思います。経済復興会議は雄大なる再建プランを持つて立ち上らねばならんことを指摘し、そうして電源開発二千万キロの案を安定本部に提示いたしました。これらと並んで石炭の増産、農地の開墾等につきまして雄大なる祖國再建の計画を提示し、國民に希望と夢とを與え、この難局を突破して戴きたいと存じます。(拍手)
 敗戰の日本は既に数十年の立ち遅れをいたしました。アジアは数百年の立ち遅れをしております。今や光榮ある保守主義のごとき贅沢は許されません。我々は最も進歩的な、ラジカルな政策を採らねばならんと思います。私は社会党内閣にこれらの点を期待し、社会党内閣がもつとバーバリズムを発揮して戴きたいと思います。(拍手)國民は道理と筋道の通つたことであるならば、如何なる苦難にも耐え得ると思います。社会党の閣僚諸公はどうか自信を持つて國民のために闘つて戴きたいと思います。
 最後に一言申上げまするが、この失業問題に関連しまして、インテリの失業、知識階級の失業は今や最も深刻なる問題になろうとしております。私は一俸給生活者といたしまして、全國の知識階級並びに俸給生活者に代りまして、どうか知識階級に対する失業対策について、今から十分な準備をお願いいたしたいと思います。これを救うものは科学技術の振興、並びに中小工業の復興と結び付かなければなりません。最近貿易使節團が日本に参りまするが、貿易は單に貿易業者だけの復活ではなくして、貿易業者の復活も大事でありまするけれども、貿易工業の復活でなくてはならないと思います。商工省における貿易行政は單に貿易業の行政だけではなくして、貿易工業の行政であつて戴きたいと思います。私の質問はこれを以て終ります。(拍手)
  〔國務大臣片山哲君登壇〕
#12
○國務大臣(片山哲君) 只今帆足君から私に対する御質問といたしまして、法案提出の形式を民主化しなければならないという御意見であつたと思うのであります。帆足君のお説には御尤もなる点が沢山ありまして、我々も左樣に考えておるのであります。今までの法案提出の形式は、一部の人々が考えましたことを形式化いたしまして、これを議会に出す、こういうような形であつたと思うのであります。このやり方が憲法実施に伴いまして、又國会法或いは内閣法その他新らしき形態によりまして変えられる筈であります。又私共もこれを根本的に変えなければならないと思つておるのであります。即ち諸君がおやりになつておりますところの両院の、この議会の各種の委員会が十分活用されなければならないと思うのであります。國民の意見を、國民の考えておりまする政策に對する立案のいろいろなる問題を、各種委員会が十分に取上げて戴きたいのであります。議員はこの意味において労働組合なり或いは企業者團体なり、その他各方面、國民全般に流れておりまする意見を十分に採つて、これを立案し、これを提出する権利は既に得られておるのでありまするから、これを十分に活用して戴きたいと思うのであります。私はこの意味において民主主義の政治は議会中心の政治でなければならないと思います。議会がこれを取上げるということによつて、只今帆足君のいわれましたような民主的なやり方が実行できるのである。從つてこれによつて官僚的獨善立案が打破されるのであるということを考えるのでありますから、どうか諸君はこれらの意味において、その民主的なやり方を御実行願いたいと思うのであります。(拍手)
 それから官僚機構打破の問題について御意見がありましたが、これにつきましては、既にたびたび御答弁をいたしておりまするし、政府におきましては齋藤國務相を総裁といたしまして、行政機構の根本改革、各方面に亘りまするところの行政機構に手を入れまして、根本的に改革しようといたしておるのであります。近くこれに関しまして具体案が出ます。未だ発表する時期にはなつていないのでありまするが、必ずこれは諸君のお手許に十分明らかにいたしたいと思つております。内務省の廃止でありまするとか、或いはこれに伴いまする官吏制度、或いは文官任用に関する問題でありまするとか、警察制度等につきましても深き考慮を拂つておるのであります。どうかこれは具体案が近く出ます際に十分諸君の御意見を聽きまして、より良き行政機構を作り上げたいと考えておるのでありまするから、十分御意見を御発表願いたいし、御協力あらんことを希望しておる次第であります。(拍手)
  〔國務大臣平野力三君登壇〕
#13
○國務大臣(平野力三君) 帆足君の御質問のうち私に関する部分に関しましてお答をいたしたいと思います。
 第一にお尋ねになりました点は蔬菜の問題でありまして、最も現下の食糧問題に関連をいたしまして、重要なる諸点であると思いますので、この点に関しまして、でき得るだけ具体的にお答をいたしたいと思います。野菜の統制を撤廃するかどうかということに関しましては、種々あらゆる方面から議論があるのでありまして、私といたしましても就任以來十分檢討を加えて見たのでありますが、実際問題といたしまして、野菜を自由放任するというわけには参らんのであります。從いまして統制をするということに関しましては、從來の方針を堅持しなければならんのであります。唯統制の方法に関しまして今後私共が行いたいと思うことは、権力的なる立場からただ統制ということによつて、その業者なり或いは配給機関に携わつておる人達を無暗に脅やかしたり、或いは恐怖せしむるような統制は断じて取るべきでないと思うのであります。(拍手)言いかえますならば、殊に微妙なる関係にありまするところの蔬菜に関しましては、最も実情に即したる統制を行うことによつて、結論として消費地に対するところの需要を満たすということ、これが根本の目的でなければならないと思うのであります。從いまして帆足君御指摘のように、統制すべき品物と統制すべからざる品物とを区分するというような諸点に関しましても、もとより十分これは檢討の余地があると考えておるのであります。而してこの際申上げたいと思いますることは、かようなる実情に即したる統制を行うのでありまするが、なんと申しましても政府がここに考えなければならないことは、野菜そのものも現在の状況におきましては、その生産は十分でないのであります。一般の人は青々としておりますところの蔬菜園を見て、統制さえ撤廃すればなんでも自由に流れて來るであろうというような概念を持たれることは、一應御尤ものようでありますけれども、実際の大消費地におけるところの人口と、現在の蔬菜の数量を割つて見ますると足らんのであります。そこで政府といたしましては、この七月から十月までの間における大消費地におけるところの一人の必要といたしまする蔬菜を三十匁と計算をいたして参りますのであります。その上に立ちまして、どうしてもここに増産計画というものを立てなければならんのでありまして、これがために貴重なる硫酸アンモニアでありますけれども、これを約一千トン、反別にいたしますると三千百町歩に対して一千トンの硫酸アンモニアを放出するということを決定したのであります。同時に蔬菜に関しましては農藥品というものが非常に必要でありますので、農藥品といたしましては百トン、これを政府が決定いたしまするところの蔬菜の特産地に対しまして、先づ前渡しをすることに決定したのであります。政府が大消費地として考えておりまするところは、もとより京浜地方、名古屋地方及び京阪神地方であるということは当然でありまするが、この今申上げました大消費地を補ないまするところの特産地として考えまする地域は、先づキヤベツに関しましては岩手縣、長野縣、群馬縣を指定し、白菜に関しましては岩手縣、群馬縣、宮城縣、長野縣を指定し、大根に関しましては長野、埼玉、千葉、神奈川、東京及び兵庫、奈良、大阪、福岡、これだけの府縣を特産地として指定いたしまして、前段申しましたところのいわゆる硫酸アンモニアと農藥品というものを、先ず前渡しをすることによつて増産計画を立てるのであります。而して出荷の問題に関しましては、單に從來の出荷方針だけではなく、その出荷に当つては、硫安五百トンというものを、この蔬菜とリンク制にすることによつて、その出廻りをよくしたいと考えるのであります。同時に輸送関係につきましては、トラツク約百五十台というものを大消費地における特別の蔬菜を運搬いたしますところの特別輸送機関と設定し、これに対するところの燃料その他の設備もこれを十分にいたしまして、かようなる方法によつて、この蔬菜の危機を切り拔けたいと考えておるのであります。かようにいたすことによりまして、結局東京におきましては一ケ月平均約四百万貫、大阪におきましては二百万貫を目標とし、一人一日当り七月におきましては大体二十二匁平均となりまするが、八月以後は三十匁平均の蔬菜が家庭に渡るような方法を立案して実行せんとするものであります。繰り返して申上げますると、現在各地に行われておりますところの蔬菜の統制を撤廃すべしという御議論には、政府といたしては應じ兼ねるのであります。今申上げましたような種種なる具体的対策を立てることと相俟つて、最も実情に即したるところの統制を行うことにより、この應急的なる食糧危機に際しまして野菜の問題を処理して行きたいと考えておりますので、なにとぞ、帆足君の御質問にありまするが、政府の所信はかようなところであると御了承願つておきたいと思います。
 第二に御質問に相成りました農業機械化問題は、全く帆足君の御説の通りであります。將來日本の農業の再建を図りまして、日本農業が磐石の基盤の上に立ちますには、從來やり來たつておりまするところの、ただ惰性的なる農業の経営方法、機械化方法ではだめであります。ここにおいて我々といたしましては、新たに現在日本再建の方途に立つた農業機械化というものを、この際根本的に考えて行きたいと思つております。このためには動力機械と畜力機械の二本建てによるところの農業機械化というものが、日本の実情に即すると考えるのであります。單にヨーロツパ諸國において行われておるような機械そのものを日本に導入しても、日本の農村に合うとは考えないのであります。我々といたしましては、あくまで日本の氣候、日本の風土、日本の耕地の面積、日本農民の特質等を勘案いたしまして、動力機械と畜力機械とをいかように噛み合せて行くかということについて、十分帆足君の御意見のように檢討して行きたいと考えております。ここにおいて、政府におきましては、農業機械化委員会なるものを設置すべく現在農林省において準備中であります。その委員の構成は大体四十名内外といたしまして、この七月下旬において発足する予定になつておりますので、帆足君の民間において計画されておりますところの農業機械化委員会等とは、十分タイアツプを願いまして、この政府の機関も万全を期したいと考えておるのであります。次には農林省におきましては、特に鴻巣の農事試驗場におきましては、農業機械化に関しまするところの実際上の試驗に著手をいたしおるのでありまして、この農林省の現在のいわゆる農業機械化の具体的研究は、鴻巣試驗場において御覽を願いたいと思うのであります。尚、青森縣の三本木におきましては、農業機械化農場なるものを設けまして、実際上の機械の運営に当りまして、この農場におきまして現実の試驗もいたしておりますので、この点も御了承願いたいと思います。尚、農林省は各地の農事試驗場に命令をいたしまして、現在使つておりまするところの機械のうち、最もその成績を挙げておりますところの具体的な機械についての調査を命じ、その調査を基本といたしまして、これらの農事試驗場等とタイアツプをいたしまして、その発展を期したいと思つております。尚、模範電化指導農村を設置いたしたいという考えのもとに、全國に大体六ケ所のモデルの地帶を設置いたしまして、この六ケ所の地帶におきましては、特に農村電化ということについて檢討を加えておるのであります。最後に農村に対するところの科学の導入に関しましては、特に農林省本省を中心といたしまして、地方の研究所におきまするところの機関を動員し、如何にすれば將來におけるところの農村に科学を導入することが適当であるかという点について、これ又十分に檢討を加えておるのでありますから、何卒帆足君の御主張になりまするところの日本農村機械化に関しましては、あなたの方のいわゆる農村機械化協会と農林省の方針とをなるべく調合いたしまして、日本農業再建のため貢献願うことを御願いし、併せて私の答弁といたします。(拍手)
  〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#14
○國務大臣(和田博雄君) 帆足君の御質問に御答いたします。第一番は公定價格の決定は今まで非常に遅れておつた。又あらゆる品物について公定價格を決定するということは事実上不可能であり、これは統制の行き過ぎであるという御意見でありますが、公定價格の決定につきましては、今回は昨日私が御答えいたしましたように、その原則を決めててきぱきと早くやる予定になつております。いずれ第一次の改訂を五日に発表いたしまして、第二次を九日位に、少くとも七月一杯には公定價格の決定、公定價格を決めるのを適当とする主なる商品についてはすべて終えるつもりでおります。緊急対策でも断つて置きましたように物價統制の実のない物までも私達は統制しようとは考えておりません。これは今回は整理いたしまして、本当に必要な物についてのみ公定價格を決定し、その代り公定價格制度を取りました物につきましては、嚴密にこれが行われるように施策を施したい、かように考えております。(拍手)その点は今後政府の施策が次々に出ますことによりまして是非御了承をお願いいたしたいと、かように考える次第であります。
 それからその次は経済の運営の民主化の問題でありますが、この点については私も帆足君と意見を或る程度同じくいたしております。経済復興会議が労働者諸君、経営者の諸君或はその他の人達によつて、下から盛り上つて日本の経済の復興について大きな貢献をしようとされておりまする熱意につきましては、敬意を表しておるのでありますが、ただ私は願くは今の経済復興会議がもつと強化されまして、現実に末端まで中央で決められましたことが滲透しまして、事実上民主的な組織として動いて行くようになることを欲するのでありまするし、政府は又そういうような経済復興会議と十分連絡をいたしまして、いろいろの施設が地に着いたようにやつて行きたい、かように私としては考えておる次第であります。それから公團方式によりまするものについての運営の民主化につきましては、委員会等を設けまして十分に公團が官僚化されないように、これは措置して行くように考えております。
 それから切符制度のお話でありますが、切符制度につきましては、その切符が実際上必要な所に渡つておるかというようなことについてチエツクする制度を設けておりまするが、尚、改善の余地があると思いまするので、いずれこれらの点につきましては委員会等において御説明いたしたいと、かように考えております。
 最後にこの冬の電力危機から來るところの対策でありますが、これは第一四半期及び第二四半期におきまして、この冬に対しましてできるだけ貯炭の準備をいたしておりますし、又お話のように設備の改善等に対して或る程度の資材の割当を行いまして、これをやることにいたしておるのでありまして、今から準備をいたしておる次第であります。簡單でありますが、これで終ります。(拍手)。
  〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#15
○國務大臣(水谷長三郎君) 大体帆足さんの御質問に対しましては只今和田長官からお答えになりました通りでありますが、もう少しくその点に関して若干附加えて置きたいと思います。
 物資需給計画は只今和田さんも申されましたる通りに、物資が計画通り流れて実効を奏するのでございまして、物資の流通秩序の確立をこの度の経済緊急対策の第二に特に掲げまして、経済安定施策の要であるとなした所以もここにあるのでございます。政府といたしましては、從つてこの問題に最大の努力を注ぎまして、從來のような徒らな権力統制に堕することなく、民間の旺盛なる創意と公正なる競爭心を積極的に活用いたしまして、而も國家計画上必要なる需要者に確実且円滑に物資が流れるよう現行制度に対して檢討を加えつつあるのでございます。更に又現在重要生産資材に対しまして実施しておりまする割当切符制度は、生産業者及び配給業者の総意と競爭を原動力といたしまして、必需物資の配給ルートを整備しようとするものでありますが、この制度がその理想通り運用されますためには、割当事務の適正化、各種物資の特殊性の認識、輸送力の確保、横流れの防止等につき細心なる考究をいたすことが割当切符制の運営上最も必要なことでありまするから、この制度は発足以來まだ日も浅いことでありまするが、その実績に應じ、所要の補足改正を加えるように目下考慮しておる次第であります。
 更に又この冬の電力危機が憂慮されておるが、この点に対する対策はどうかというような御質問がありましたが、この冬におきます電力需給の見通しといたしましては、全需要に対し電力制限を行うことなくその供給を確保するためには、大量の火力発電用炭を年間凡そ四百万程度、而もその大部分が帆足君御案内のように第四四半期に集中的に需要されておるのでありますが、これをば必要とするのでございまして、極力発電用炭の確保を図る方針でございまするが、現下の石炭事情におきましては到底これを完全に充足することはできません。他方、需要の中には石炭関係その他制限することができないものもありますので、一般産業用電力、業務用及び家庭用電力の制限は相当強化せざるを得ない見込でございます。そのため冬期におきましては一般の電熱使用は殆んど認める余地がないと思われるのでございまして、政府といたしましては薪炭その他の燃料事情と睨み合せて、この冬期対策を綜合的に考究したいと思つております。そうしてこの綜合対策の基本的な考え方といたしましては、電力は專ら生産のためにこれを確保し、熱源の主体はできるだけ薪炭に置くということでありまするが、かくして國民生活を維持する上の最低必要量を充足し得ないときには、電力がこれを担当せねばならんと思つております。この冬の電力需給の改善に資するために、現在工事中の発電施設を冬季渇水期までに完成せしめるよう努力いたしております以外に、相当数の火力発電所の補修及び復旧工事を強力に只今推進しておるような次第でございます。
#16
○議長(松平恒雄君) 千田正君。
  〔千田正君登壇〕
#17
○千田正君 先般來、片山首相以下政府の各大臣が民主主義の高邁なる理想を掲げて健闘されておる点につきましては敬意を表する次第であります。私は極めて少い限られた時間に質問しなければならないので、要点だけ特に拾い上げまして質問したいと思うのであります。
 先般片山首相は施政演説で、非常に重要な國土の建設と戰災都市復興の対策を忘れておられるような感がしたのであります。ただ僅かに水力電氣の発電に関する点におきまして触れておられますけれども、我々はこの敗戰後におけるところの経済復興の重点をなすのは、國土の復興と、戰災都市の復興と、こうした大きな面におけるところの底辺の復興をしなければならんということを痛感するのであります。現下の経済危機突破の面から具体的に指摘して申上げまするというと、我が國が戰爭以來荒廃のままに放置されておりますところの河川の面においては、特にこの増産問題に関係しまして著るしい状態であります。毎年度洪水によつて荒廃されておりまするものは、從來は十万町歩以上、又そのために復旧工事費用として計上されたところの金は三十億円以上に達しておりまするが、最近に至つて約五箇年の間は殆んどこの復旧工事はなされておりまぜん。而も増産、食糧増産と叫び続けられておる今日におきまして、三十万町歩以上の豊沃なる土地が荒れ果ててそのまま放置されておるということは誠に遺憾な次第であります。先般の新潟縣下の僅か一四三ミリくらいの雨量のために、三万町歩の豊沃なる土地が水浸しになつて、本年の秋の收穫は予想も付かない状態にある。こういうことを考えましたときに、すべての点において、只今申上げましたのは一例でありまするけれども、こういう放漫な方法を取られておるがために、山林の濫伐であるとか、或は港湾とか、産業道路の復興ということができ得なくして、そのまま放置されておるということは、今後のこの経済危機突破の大きな障碍であると私は思うのでありまするが、その当面の責任官廳の機構が余りに今までは繩張り主義的な態度を取つておつた。例えて申上げますると、只今の戰爭災害におけるところの復興におきましては、戰災復興院、又内務省の土木局、文部省、厚生省、又一面河川においては内務省であるとか、又運輸省とか、商工省とか、農林省とか、おのおのその分野が分属されてありまして、何ら統一的な、纏つた科學的な施策は施されていなかつた。このために実際における荒廃した土地の復興というものが成り立たないということを深く感ずるのであります。先般以來社会党は総選挙の度に、この官僚のセクシヨナリズムを拂拭して、新しい面におけるところの綜合計画を立てなければならぬということを絶叫しておられましたが、殊に今般におけるところの内務省の解体に際しましては、僅かに國土局を戰災復興院と合体させて新らしい建設院というものを作つた。而も内閣直属の建設院である。これでは綜合計画におけるところの科学陣の総動員、技術陣の総動員をして、眞の國土復興、戰災都市復興の面に当ることはでき得ないと私は考えるのでありますが、どうかこの面におきまして、もつと積極的に、総ての人材を網羅したところの建設省のような大きな面の官廳の設置をして、新らしい復興の面に全國民が本当に全力をかけてこの日本建設の面に当られんことを希望するのでありますが、これに対しまして、片山首相の具体的な所信を承りたいと思うのであります。(拍手)
 次に農林大臣にお伺いいたしたいと思います。大体二日間の御回答におきましていろいろの対策を伺いましたが、先程も蔬菜の増産の対策について御説明を承りましたが、主食、殊に米と麦の増産の対策に対する根本方針はまだ承つておりませんので、この点を承りたいと思います。次には未墾地開拓問題、これは國有林の開放と、この度の耕地開放によつて新らしく未墾地の分野が開けて参りました。それに失業対策と合せ並んで、外地から引揚げて來たところの開拓團の諸君であるとか、或いは國内における二人三人の生産意欲に燃えている人達を入植させて、新らしい増産計画を農林省及び安本において計画されておつたようでありますけれども、現在実際のところ、この未墾地開拓に入つているところのこの人達の補助金というものは、素裸かのままで飛び込んで行つたときに與えられるものは、ただの二万五百円、二万五百円といいまするというと、只今の農村においては牛か馬一頭にしか値いいたしません。こういうことで本当の意味におけるところの増産計画が成立つかどうか。この開拓民の人たちが永遠に日本國土の農民として安定生活を求められるかどうか。こういう問題を考えましたときに、営農資金の追加をできるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 その次は農村と同時に漁村、漁村という面においては、我々は常に四面海を環らすところのこの日本にとりましては、國内の農村と同じように沿岸におけるところの漁民は、次の時代の経済復興に重大なる役割をするところの人たちであります。これに対しまして農民におきましては、農地開放という新らしい画期的な局面が開かれたのでありまするけれども、漁民におきましてはまだ漁業権の解決がそのまま放置されている。これでは新らしい民主主義國家の再建において、この漁民の面が忘れられているのではないかと私は思うのであります。一面においてこの問題について、同じ所管でありまするところの農林大臣の御所信を承りたいと思うのであります。既に燃料問題につきましては、先程商工大臣の御答弁がありましたけれども、私は更に一層伺いたい点があるのであります。それは家庭燃料の問題につきましては、昨年は当初の計画であるところの家庭燃料の配給は僅か三割しか國内に配給されておらない。その他の殆んど六割乃至七割というものは闇の横流しである。特に現地において山績されて、只今のところは俵が腐つておる。こういう状態で家庭燃料の正しい價格の査定もなく、闇のまま流され、消費地においては自分の家庭の板を剥がしながら焚いて行かなければならん。止むを得ずして、節約しなければならないところの電力にまで伸ばして、電力の消費にまで影響を及ぼしておつた。こういう面があるのであります。電氣、ガス、こうした面において、この家庭燃料の正式ルートの不活溌な配給によつて及ぼされるところの生産面における損耗は実に大なるものがあるのでありますが、これに対して先程の御説明によりますと、電力の問題は大丈夫というような面を伺いまするが、現地におけるところの薪炭生産業者に対するところの正確なる價格の査定と、それによつて正式なるルートによつて流通されるべきところの燃料の面において、正しいルートが開かれなかつたならば、幾ら電力において節約していても、又再び同じような方法を繰返されて行くと私は思うのであります。この点におきまして、電力と、それからガス、薪炭、こうした綜合的な燃料対策を講じて戴きたいと思いますが、具体的な方策がおありでありますれば尚お伺いしたいと思うのであります。(拍手)これに引続きまして動力の問題、只今電氣炉若しくはいろいろなボイラー、こういうものは石炭を使うべきものが電力が使われておる。これも非常なるエネルギーの損失であります。こうした動力面におけるところの綜合対策ありや否や。この点もお伺いいたして置きます。
 次には外務大臣にお伺いいたしまするが、先般芦田外相が御就任間もなく、関西の御旅行の最中において記者團に向つて、本年は外地から引揚げて來る人たちが大体月七萬位入つて來るだらう。或いは年内にでき得れば外地引揚が完了するような方策を立てて行きたいという希望的條件を述べられておりまするけれども、現在シベリア、樺太におけるところの残留されたる人たちは九十数万になんなんとしております。而も祖國に一日も早く辿り著かんとして焦つておるところの者に何ら施す手はない。只今の七万という数字で行きますると、辛うじて本年中には四十二万しか帰つて來ない。あとの残留の人たちはどうするか。私は少なくとも月に十五万、この人たちを帰すにあらずんば、今年中には北方における人たちの九十二万、南方における五万、こうした人たちの復帰は見られないということを考えまするときに、もう少し具体的に外務大臣として各國に向つて、又只今抑留しておるところの諸外國に對して、外交の手を打つて戴けるかどうか。この点をお伺いしたい思うのであります。(拍手)
 縷ゝ述べましたが、先般來片山首相は非常なる高邁なる理想を以て民主主義國家の高度の徹底化をする。社会面に、政治面に、あらゆる面に高度民主化を徹底すると仰せられたが、誠に結構なことで、我々も賛成します。しかしながら現在國内においては一千二百万の戰爭の犠牲者がおります。一千二百万以上の戰爭の犠牲者、しかも戰うべからざる戰いをして、誤まりたる戰爭の指導者のために命を捨て得ずして空しく帰つて來た。又すべての財産を捨てて帰つて來た引揚者、家を燒かれた戰災者、弧兒、未亡人、こうした人達が千二百万以上國内におります。而も潜在失業者としては六百万以上、この潜在失業者、この千二百万の戰爭の犠牲者を本当に救うことなくして、民主主義的な理想國家を建設するということができるかどうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)(拍手)首相はクリスチヤンであります。聖書の中に、「空には鳥の巣あり、狐には穴あり、されど人の子の住む所なし」と謳つてありますが、こうした哀れな人たちは、明日の米さえもない。飢餓の断崖に立つて、本当に枕する所もない。零点以下の生活をしておる人たちを救う何物もないということは、敢えて厚生大臣及び片山総理大臣にお伺いしたいと思うのであります。何とかこの零コンマ以下の人たちをプラスの線に向け得られるところの窓は開くことができないかどうか。闇の生活である。闇業者として犯罪者は毎日々々殖えて行く。犯罪の統計の大部分というものは、戰爭の犠牲者がやむにやまれずして、その食生活のために陷るところの哀れなる犯罪者であります。この哀れなる犯罪者を一日も早くなくするということが、憲法に規定されたところの最低の生活を保障するという、日本民族に対するところの民主主義國家の理想でなければならんと私は感ずるものでありますが、(拍手)片山首相の御所信はいかがでありますか。この点において、私は要するに潜在失業者であるところの六百万、不幸なる千二百万の犠牲者、この人たちに対して新らしい施策を以て、本当の意味の民主主義國家の理想を徹底して戴きたい。この具体的な御所信があれば承りたいと思うのであります。簡單でありますが、これで質問を終ります。(拍手)
  〔國務大臣片山哲君登壇〕
#18
○國務大臣(片山哲君) 只今の千田君の御質問の中、初めの戰災復興に対する行政的措置、政府の方針はどういう方針であるか。この点からお答えいたしたいと思います。御指摘になりました点、誠に御尤もでありまして、政府は國土建設問題につきまして、建設省設置の問題を考えたのであります。前内閣時代におきましても建設省を一應設置するというような意見があつたようでありまするが、現内閣といたしましては、内務省の解体に伴いまして、先程御意見もありました通り、一應建設院という案で進んで行こうと考えておるのであります。それは先程お話がありました通り、厚生省関係から農林省関係、商工省関係、運輸省関係、その他文部省、司法省等にも一々建設事務が繋がつておりまして、現にその事務がそれぞれ進行いたしておるのであります。これをそれぞれの当該省から引離しまして、一つの建設省に固めまして行なうということになりますると、その事務、問題につきまして非常な繁雜な問題が起るのであります。肝腎な、この戰災によつて困つておるところの方々を助け、又戰災復興の都市計画を一日も早くやつて行かなければならないという目的を達する事柄の方が遅れるというようなことになつて参りますると、事務に囚われるよりも目的を遂行する方が必要だ。そういう観点からいたしまして、取り敢えず内務省の廃止に伴いまする建設院設置、内閣でこれを統一いたしましてやつて行こう。こういう案の方が手取り早く具体的であろうということを考えておるものでありまするから、その意味において建設院の案で進んでおるのであります。御説の通り焦土となつておりまする都市を毎日我々が見まして誠に心打たれるのであります。なんとか一早も早くこの燒けた瓦を早く取除いて、本当に住みよい都市を、住みよい各農村を作つて行かなければならない。こういう心持においては御質問の趣旨に全然同感であります。十分努力いたしまして、具体的な方策を十分立てようと思つておる次第であります。
 尚海外同胞引揚げ問題或いは復員問題につきましても御説の通りでありまして、この問題をゆるがせにはいたしておりません。なかなか困難な問題でありまするし、いろいろ複雜なる関係もあります。政府は十分努力いたしましてこの問題を処理いたしたいと考えております。具体的な処理問題につきましては当該大臣より具体的に御説明いたす筈になつております。御了承願いたいと思います。(拍手)
  〔國務大臣平野力三君登壇〕
#19
○國務大臣(平野力三君) 只今の御質問は、蔬菜についての増産計画を説明したが、米麦の増産計画は説明しておらんではないかという御質問であります。もとより主食でありまする米麦に関する増産計画に対して政府がいかに眞劍であるかといふことは、多言を申すまでもなく極めて具体的に考えておるのであります。この際これが詳細なることを申上げますることは、時間の関係上委員会に讓つて戴きたいと思いまするが、一例を申しまするならば、米に関しましては、昨年配給いたしました肥料が硫安にいたしまして四貫目でありましたものが、今年におきましては大体五貫五百匁程度の配給ができるのであります。もとより報奬物資その他によりまするところの肥料の配給はこれとは別であります。麦に関しましては、昨年においては二貫五百匁でありましたものが、今年においては三貫目位は確実に配給できる状況にあるのであります。かように肥料の面におきましては、單にこればかりでなく、例えば硝安にいたしましても約十万トンの輸入を得ておるのでありまして、燐礦石に関しましては殆んど現在我々の想像以上に多くの輸入が得られておりまして、過燐酸石灰におきましては、八月から十月までの間におきましては、三十八万トン位の増産計画が立てられると考えておるのであります。加里の方面におきましては、殆んど絶望状態にありました加里が段々輸入されまして、約十一万トンの輸入を得ておるのでありまして、この議会以來、今期米穀年度におけるところの誠に暗いことばかりの説明を申上げておるのでありますが、この肥料面の方から申しますると、硫酸アンモニアの生産もこの六月におきましては月産七万トンを突破するというような状況でありまして、順次その増産方面に関しましてはいわゆる上昇の面に向つておるという点については、來米穀年度におきましては必ずこれらの問題が具体的に現われて來るということを御承知願つて置きたいと思うのであります。
 次に開拓者の入植に関しましては、誠に悲慘なるお話がありましたが、この実情は私もよく承知いたしておるのであります。農林省にも屡ゝ陳情がありまして、その苦難の状況はよく分つておるのでありまして、私といたしましては今期議会は開拓法というものを上程をいたしまして、同時にこの開拓者の資金の融通に関しても特別の考慮を拂つておるのであります。從つて從來は個人の入植者に対しましては單に個人目当の資金の融通であつたのでありまするが、これからは開拓者が集團として團体的なる融資を得られる場合におきましても、その融資の方途を考えたということを今立案をいたしておりまするので、この点も御了承を願いたいと思います。
 第三は、水産関係に関して軽視しておるではないかというような御議論であつたのではないかと考へまするが、決して私共はこの問題を軽視しておるのではありません。現に將來におきましては水産廳を設置すべしというような議論があるのでありまして、殊に現下の我が國の食糧問題、殊に日本の所謂海という問題を考えまして、將來水産問題の重大性に関しましては私共は非常に深く考へておるということを、この際申上げて置きたいと思うのであります。
 最後に薪炭問題についての御議論があつたのでありまするが、この点は誠に昨年におきまする所の家庭の薪炭配給は、調べてみますると、木炭におきましては、政府が計画いたしましたる僅かに六〇%程度に止まつておるのでありまして、薪におきましては計画の三〇%以内であるというような状況であつたということは、これは僞らざる所の数字であります。從つて昨年におきまする所の炭及び薪の家庭における所の配給の困難から、家庭の燃料の不足ということは十分に私共は考えざるを得ないと思います。さてこれに関しましては、現在いろいろ立案をいたしておるのでありまするが、言うまでもなく、日本の山は戰爭中濫伐に濫伐を続けまして、今や殆んど百六十余万町歩という山がいわゆる裸山になつておるのでありまして、この緑化をいかにするかということが当面の重大問題であり、一方におきましては薪と炭を間に合せなければならんという非常に困難な状況となるのでありまして、農林省といたしましてはこの家庭用の燃料に対しましては、でき得る限り豆炭、或いは煉炭、或いはガス、電氣、これらの方法によつて補う所の計画を他の省と共に計画をいたしまして、而して木炭と薪も、その生産というものが少くありましても、なるべく家庭燃料を困らせないようにいたしたいと考えておるのであります。具体的数字に関しましては目下種々檢討中でありまするので、いずれ委員会において詳細御報告いたしたいと思います。以上御答弁いたします。
  〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#20
○國務大臣(水谷長三郎君) 綜合燃料対策の内容につきましては、只今農林大臣の平野君が申された通りであるし、又この問題に関しましては先の答弁において述べた通りでございまするので、左樣御了承を願いたいと思います。(「水谷さん、分つた」と呼ぶ者あり)外には私の部分はなかろうと思います。(笑声)
  〔國務大臣芦田均君登壇、(拍手)〕
#21
○國務大臣(芦田均君) 只今千田君より縷ゝお申述べになりました海外在留同胞の境涯につきましては、本國に待ち詑びておられる御家族の御心情は申すに及ばず、我々同胞といたしましても、朝に在ると野に在るとを問はず、一日も速かにこの人々の同情すべき境涯を本國に引取つて改善いたしたいという念願は、國民の等しく持つておる感じであると思います。この引揚事業も大半終了いたしまして、今日残留いたしております南方アジアの残留同胞五万名、この本國帰還については大体本年の秋期、遅くとも年内に引揚を完了し得る見込は確実と申上げて差支えはないと思います。残るのは先程御指摘になりました通り、樺太方面の約二十万人、シベリア方面に残留しておると推定せらるべき五十八万名余り、この引揚をいかにして促進し得るかということが差当りの問題になつておることは御承知の如くであります。今日我が國はまだ正規の外交関係は復帰しておりませんけれども、海外残留同胞引揚につきましては連合軍総司令部と間断なく連絡をとつております。過去一年有余に亘つて連合軍総司令部が海外同胞引揚に対してとられたる好意的な措置、その成果については、我々國民として十分にこれを感謝する必要があると考えておるのでありますが、シベリア、樺太方面の引揚につきましても、御承知の通り本年の春からその引揚の数、速度においても著しく改善されまして、多い月には一箇月七万九千、約八万近い同胞を引揚げ得たときもあります。併しながらその数が必ずしも間断なく上昇いたしておるのではありません。成績の惡いときは一箇月に五万四五千名に下つたときもあります。
 さような次第で、なんとか我々内地に在住いたしておる者としては冬を越させたくない。冬季襲來以前に残留同胞の完全な引揚を見たいというので、今日まで切々努力をいたして参りました。併しながら果して年内に引揚を完了し得るや否やということについては、確たる見込は立ち兼ねておるのであります。が何とかして今日の情勢を一層促進し得るように万全の力をいたしたいというのが、今日政府当局の固き所信であります。御了承願います。(拍手)
  〔國務大臣一松定吉君登壇〕
#22
○國務大臣(一松定吉君) 千田君の御質問の中の厚生省に関係ある部分だけのお答を申上げます。海外から引揚げて参りました軍人軍属、居留民、これらの人々が内地に向つて、先ず上陸いたしまするその当時におけるこれらの人々の悲慘な状況は、誠に同情に値いするのであります。上陸いたしました後に自分の生家を訪ずれれば焦土と化してあるとか、或いは親族の行方が分らない。職業を見付けても自分に適当な職業がない。そうして政府の補助の手が十分に届かないということでありまするならば、國家のために身命を賭して第一線に活躍したる人々が、祖國のそのような態度に対しまして或いは憤慨し、或いはこれに向つて非常なる不満の態度を現わしますることは、これは止むを得ないことでありまして、我々としては実にお氣の毒に考えております。こういう人々に対しまして、政府は十分に救助の手を差伸べて、これらの方の功績に対しても、祖國のために海外で働いたその仕事に対しても、これに敬意を表し、これを救助し、その生活の安定を図かつてやらなければならんことは当然であります。こういう点に対しまして、只今政府の施策といたしましては、先ず生活保護法によつてこれらの人の窮乏を救おうといたしておることは御承知の通りであります。その生活保護法の中でも、丁度職業安定所即ち以前職業紹介所と申しましたこれらの施設が我が國に五百四十四箇所、それから職業の補導をいたしまする施設が四百三十二箇所でございまして、こういう方面において先ず職業の紹介をして、就職難を緩和し、又職業の十分にない人に対してはこれを補導いたしまして、生活の道を講ずるということに十分に手を盡しておるのでありまして、その以外の公共事業等に、我が國の予算においては只今九十五億円だけを用意しておるのでありまするが、この金とても物價の非常に昂騰いたしておりまする時においては、十分これらの人々に対して救助の手を伸ばすことができない状態にありまするから、こういう点に対しましては、政府としてはいわゆる予算若しくは予備金というようなものを増額をして、そういう人のなるたけ困らないように救助の手を差伸べたい。かような考を持つておるのであります。今までのやり方に対しまして、どうも金の足りなかつたという点に対しましては、本年二月十九日に社会局長のいわゆる指令によりまして、そうして東京都その他五大都市における世帶構成員の数に対しまする救助の費用等も十分に増額いたしておるのであります。併しながらこれとても日々に物價が昂騰いたしまする現状では、到底それらの人に満足を與えることはできますまいから、こういう人に対しましてはできるだけの手を差伸べたい。いろいろ事務当局の方面におきましてこれらのことを檢討して、只今千田君の御心配にありましたようなことをなるたけ解消して、一人でもそういうような難儀をしておる人のないようにしたいということを考えておりまするが、何分國家の財政も御承知の通りでありまするから、できるだけの手を差伸ばして、不満の解消いたしまするように努力いたすということをお誓い申上げるのであります。(拍手)
#23
○議長(松平恒雄君) 木村禧八郎君。
  〔木村禧八郎君登壇、(拍手)〕
#24
○木村禧八郎君 私は日本社会党参議院議員團を代表いたしまして、片山総理大臣の施政方針演説並びに和田國務大臣の経済緊急対策基本理念に関する演説に対しまして、財政、金融、経済の側面から大別三つの質問をいたしたいと思うのであります。
 質問の第一点は当面の経済危機の突破、並びに日本経済再建に関しまする基本問題についてでございます。この点についてはもつぱら片山総理大臣の御答弁を煩わしたいのでございますが、この問題につきましては四つの角度から御質問申上げたいと思うのであります。
 先ず片山総理大臣が一日の演説におきまして、今日の経済の実態から判断いたしまして、今日こそ我が國が経済再建をなしとげ得る最後の機会であるということを申述べられまして、日本経済の危機の悩みということを指摘され、これに対して國民の奮起と協力を促されたことにつきましては、全く我々同感の至りでございまするが、唯この深刻なる経済危機を克服するためには、その原因について正しい認識を持たなければ正しい対策も立ち得ない。そこで私は、その原因について政府がどういうふうにお考えになつているか。その点を先ずお尋ねしたいのでございます。片山総理大臣は七月一日の施政演説におきまして、我が國の経済が惡化しつつある根本原因として、第一に過少生産、第二に終戰後の消費の増大、第三に賃金と物價の悪循環、この三つを指摘せられたのでございました。そうしてこの三つの原因は殆んど不可避的な事情から起つて來たかの如き説明をされておるのであります。併しながら私の見る所によりますれば、経済危機の原因として挙げられました過少生産と消費の増大、及び賃金、物價の惡循環は、危機の原因ではなくして、危機の現実の姿であると思うのであります。從つて危機の眞の原因を突止めるためには、そもそも過少生産と、消費増大と、賃金、物價の惡循環をもたらしている所の事情を正しく掴む必要があると思うのであります。この原因のうちには不可避なもののあることは申すまでもございません。例えば過少生産の原因として、戰爭及び敗戰に基ずく物資の消耗、破壊、燒失や、資源の喪失、或は占領下の再生産外の消費、海外貿易の杜絶などは不可避的なものであります。或いは又インフレーシヨンの原因として、戰時中累積されました過大購買力の存在、或いは終戰処理費、賠償撤去費などは不可避的のものとみることができると思います。で、若し今日の経済危機がこのような不可避的な原因のみによつて、形成されているのでありますれば、海外の援助を仰ぐより外には、どんな政治を行なつても、誰が政局を担当しても、危機を乘つ切ることはできないということが実際でありましよう。これこそ將に吉田前内閣の危機に対する観方でありました。そうしてその政策の根柢をなしていたとみられるのであります。このために吉田前内閣は積極的に自力を以て過少生産とインフレを克服しようとせず、ひたすら外國援助を焦り、一部階級の利益を擁護するために、(拍手)敗戰後の日本経済再建に当り、採用すべからざる所の自由経済政策とインフレ政策とを行なつて、今日見るがごとく、危機を必要以上に深刻ならしめたのであると私は信ずるのであります。(拍手)そして昨年十一月のいわゆる労働攻勢を抑えると同時に、外國援助を早めるために、三月危機説を特に強調したと私はみておるのであります。(拍手)併し危機は以上の如き絶対不可避の原因のみによつて深刻化したのではないと私は思います。避けることのできる原因によつても著しく拍車づけられた。そう信じております。例えば過少生産については、先程申上げました再生産外の消費に便乘する所の浪費が行われておる。第二には、戰時、戰後を通じての物資の莫大な隱退藏、或る会社にはまだ七箇年の資材があるとか、或る会社は三箇年の資材をまだ持つていると言われる。そういう隱退藏物資、第三にはインフレのために物資が流通面に轉轉として流れていて、必要な生産面に定着して來ない。又生産統計に明らかなるごとく、戰後の不急不要の消費財生産が跛行的に増大しまして、資材、労力、資金が無駄に使われたこと、こういうようなことは政策のいかんによつて避けることのできるものであると思います。又インフレーシヨンにつきましても、第一に終戰処理費に便乘する所の莫大な濫費、第二には赤字公債政策、第三戰時利得、インフレ利得の温存、いわゆる不良の擬制資本の温存擁護政策、或いは放漫な日銀貸出政策などは、これ又政策いかん、政治のあり方いかんによつて避けることのできた原因であつたと私は信じております。このように政策、政治のいかんによつて除去し得る所の危機の原因が存していたということは、取りも直さず政治、政策のいかんによつて危機を克服し得る所の彈力性がまだ残されているということを物語るものであると私は思います。このことは危機の原因が單に物や金の側面にのみあつたのではない。政治の側面、政策の側面にもあつたことを示すものであると思いますが、片山総理大臣、和田國務大臣の演説におきましては、経済危機の原因としてこの政治の側面、政策の側面について余り触れることがなかつたことについて、私は御質問申上げたいと思うものであります。和田國務大臣は財政も、企業も、個人もみな赤字であると言われましたが、私はそう思つておりません。他面において金の形で、或いは物の形で、実際は黒字の企業や個人も存在しておるのではないでしようか。(拍手)この方面の金と、この方面の物を動員して調整すれば、危機を克服する彈力性があると私は思います。食糧についても同樣であると思います。つまり物も資金も絶対的に不足し行詰つているというよりも、政治の貧困、政策の拙劣さから、正規の配給ルート、必要な方面に金と物と労力とが流れて來ないための相対的な不足の面がかなり多いと思うのであります。(拍手)この彈力性は官廳のお役所的の統計の数字だけでは私は掴み得ないと思います。この彈力性は更に政治のいかんによつては、例へば國民が喜んで耐乏生活に耐えるというような側面から更に擴大され得ると思うのであります。この彈力性を活用するものが政治であり、自由経済政策とインフレ政策によつてはこの彈力性を活用することができないのであります。この活用に失敗し危機を深化せしめたのが、前内閣の政治であると私は思つておるものであります。(「そうだ」と呼び、拍手する者あり)この彈力性を活用する政治は強力なる民主的統制と健全財政政策より外にないと信じます。ここにこそ自由党と違つた、社会党を中心とする片山内閣の存在意義があるのであります。彈力性のない絶対的危機ならば、何も片山内閣を必要としないのであります。誰が政治をやつても同じだということになると思います。このような危機の根本原因に対して、片山総理大臣の明確率直なる御意見を伺いたいと思うのであります。
 第二に片山総理大臣にお伺いいたしたいことは、政府の財政金融経済政策に対する基本的構想乃至態度についてであります。片山首相は現内閣の施政の根本理念は、高度民主主義体制を確立してこれを各方面に滲透させるにありということを言われました。言いかえれば民主化の徹底であると思います。然らばこの民主化を財政金融経済の側面にいかに具体的に滲透されんとしておられますか。思うに経済の民主化の具体的條件は二つあると思います。その一つは官僚の独善的、権力的計画統制を絶対に排除すること、第二は危機突破、経済再建のための物質的、精神的負担を公正ならしめることであると思います。第一の統制の民主化は極めて重大であると思います。と申しますのは、これから何々営團、何々公團というものが沢山できまして、官僚統制が全面的に拡大されんとしておりますが、この官僚統制の民主化に失敗いたしますると、口に民主主義を唱えて実際は官僚政治が強化されるというような恐れがあると思うのであります。この官僚制度の民主化につきましては、片山総理大臣は施政演説の中におきまして、行政機構の改革と官吏制度の刷新に著手したい。そういうことをお述べになつておりますが、この対策は官僚が作つたのでは駄目であつて、廣く民間、國会の意見を徴しまして、そうして立案実行に当られんことを切望するものでございますが、この点に対する御意見をお伺いいたしたいと思うのであります。
 第三に片山総理大臣にお伺いいたしたいのは、経済危機突破並びに経済再建の主体についての問題でございます。私はこの主体は言うまでもなく、まじめに働く勤労階級にあると信じておりますし、政府もまた同樣の見解であると思うのでありますが、それにしては只今の政府が勤労階級に対する呼びかけ方、又勤労大衆との結びつき方というものが、甚だ稀薄ではないかと思われるのであります。(「そうじやない」と呼ぶ者あり)過日首相官邸に組織労働者の代表を招かれて、そうして経済緊急対策八項目について、御説明になつたようでありますが、ただああいう項目を棒讀みにいたしただけでは、何らそこに感激も衝動も生じて來ない。心の底から協力しようという氣持は出て來ない。(拍手)そういう感想は組織労働者代表の方々の僞わらざる御意見であつたのであります。こういう点につきまして今後政府におかれましては、或いは経済復興会議というものとの結びつき方、その他いろいろな具体的なそういう結びつき方、或いは勤労大衆との協力態勢につきまして、具体的に何かお考えになつておられますかどうか。この点についてお尋ねしたいと思うのであります。
 更に総理大臣にお伺いいたしたい点は経済緊急対策の性格についてでございますが、これについては現在の経済緊急対策は非常時緊急的な措置であつて、丁度戰時中の臨時措置の如きものであるような感じを與えているのでありますが、そうしますと、この臨時的な措置でないところの社會党の主張して來ました社会主義的政策との関係はどういうふうになるのでありましようか。この点についてお伺いしたいと思うのでありますが、(「そうでない」と呼ぶ者あり)この非常事態が、緊急事態がなくなればこういう措置はおのずからなくなつて、社会主義的政策も消えてなくなるのかどうか。そういう点について明らかにして戴きたいと思うのであります。以上が片山総理大臣に対する質問でございますが、質問の第二は現下の経済危機の二つの有力な要因を構成しております過少生産とインフレーシヨンのうち、先ず過少生産の対策に関連して行ないたいと思うのでございます。
 第一に過少生産恐慌を解きほごすところの絲口となるところのものは、二十二年度石炭三千万トン生産にあるということは申すまでもないことと思うのでありますが、この三千万トン生産につきましてはこの前の内閣におきましても計画を立てておられたのでありまして、何時でも計画ばかりが立てられて本当に三千万トン掘れるのかどうか。(「今度は出來る」「默れ」と呼ぶ者あり)具体的に一つ國民の納得の行くように御説明を願ひたいのでございます。石炭三千万トン掘るためには、一月から三月まで六百六十万トンの石炭を掘らなければ二十二年度三千万トン石炭生産は困難であるというように言われておつたのでありますが、その後実際の実績を見まするのに、一月――三月は無論のこと四月――五月においても計画に達していない。そういうような状態でどうして三千万トン掘れますか。この対策としては傾斜生産と國家管理、そういう対策を考えておられるようでありますが、これを以て三千万トン掘れるか。これは経済危機突破の根幹をなすものだけに、國民の最も知らんとする所であると思います。從つてこれについては國民の分るように一つ御説明願えれば仕合せと存ずるのであります。
 第二に傾斜の角度が大きくなりますと失業問題が非常に重要になると思います。失業者の数につきましては昨日衆議院におきまして米窪國務相から、顯在、潜在を合せて八百万人と推定されておられますが、今後傾斜生産或いは企業整備、そういう問題が具体化するにつれてどの程度の失業者が出ますか。又その失業者を救済する財政的負担はどの程度に達するものであるか。この点について御意見が伺えれば結構と存ずるのであります。以上は一松厚生大臣或いは米窪國務大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。
 第三に貿易再開はどの程度に経済危機克服に役に立つかという点について、和田國務大臣或いは水谷商工大臣にお尋ねしたいと思うのであります。八月十五日から許される貿易再開、これは言うまでもなく現在の貿易以外にプラスされる民間貿易でありますが、その点期待をもたれると思うのでありますが、これまでの貿易の実績を見まするのに、昨年度において二億八千万ドルの輸入に対して輸出は一億ドルで、一億八千万ドルの輸入超過である。而もこの輸出に対しては、國の輸出し得るものは総ざらいをして輸出して漸くにして一億に達しておるのでありまして、從つて今後貿易が再開し得る場合どの程度の輸出ができますか。そうしてこの輸出によつてどの程度の生産再開に役立つ資材を輸入し得るか。又昨年の実績については、輸入三十五億円の中食糧輸入は二十億円と言われております。そうしますと、輸出したものの多くが食糧輸入に向けられてしまいますと、生産資材の輸入の方は極めて局限されるのではないかと思うのであります。こういう点について現貿易との調整、現貿易と民間貿易との食糧及び生産資材との輸入関係のバランス、そういうような点についてどうお考えになつておりますか、御意見を伺いたいと思うのであります。
 最後に経済危機のもう一つの要因を形成しておる所のインフレーシヨンの対策について、主として來栖大藏大臣にお尋ねしたいのであります。インフレの原因は、通貨面から見ますれば財政と金融と擬制資本、この三つの面にあると思います。
 そこで先ず第一に財政面におきまして簡單に六つの御質問を申上げたいのであります。その一つは二十二年度の追加予算の見込額がどの程度でございますか。傳えられる所によりますと、かなり大きな額に上るようでございます。そうしてこのかなり大きな額に上る追加予算に直面して本当に健全財政を堅持される御意向であるか。この点をはつきりお伺いいたしたいのであります。それから第二にこの追加予算を健全財政でやつて行こうとしまするならば、これを租税に求めるか、或いは公債に求めるにしても民間消化によらなければならんと思いますが、公債の民間消化が実際上困難であるとすればこれを租税に求めなければならないと思います。そこでその場合、租税政策ということが非常に重大な問題になつて参りまして、一体唯からどの程度の税を取るかということが大きな今後の問題になると思います。そこで租税政策について、二十二年度の既に組まれた予算においては間接税が非常に大きくなつて來ております。二十年度においては間接税が予算の約二八%、二十一年度は三七%でありましたのが、二十二年度は四五・五%になつて來ておるであります。こういうような直接税と間接税との振合いを一体どういうふうにして参りますか。間接税は言うまでもなく大衆課税でありますので、こういう間接税が段々殖えて來ますと、これは経済の民主化と相容れないかと思うのでありまして、(拍手)こういう点につきまして大藏大臣の御意見をお伺いしたいのであります。それから間接税を避けて所得税を中心といたしますれば、今度は所得の適正な査定というものが必要になつて來ると思いまするが、現在の実情からして、私は二つの点から所得の公正な査定は困難ではないかと思うのであります。その一つは現在の税務機構であります。現在のような税務機構で一体所得の公正な査定ができるか。もう一つはこの度採用されました予算申告税制度であります。これにつきましては既にアメリカにおいて一九四三年から実施されて、成績を挙げているといわれておりまするが、日本のような実情の下で果して予算申告税制度が適切であるかどうか。これによつて所得の適正な査定ができるか。そうして公正な税をかけられるかどうか。これは既に決定された政策でございますから反対を申上げるわけではありませんが、こういう欠陷を持つた税務機構及び租税制度の下で、どうして所得を適正に御査定になりますか。この所得が適正に査定されなければ税のかけ方というものは非常に不公平になつて來まして、そうしてまじめに働く勤労者或いは企業家、そういう方面にのみ税が重くかかつて來るのでありまして、この所得の査定というものは今後の租税政策と関連しまして重大な問題であると考えられますので、この点について御意見をお伺いしたいと思うのであります。それから第五に可なり大きな追加予算が出ると思われますので、これを税で取るとして果して所得税だけで賄えるか。賄い得ないとしましたならば、第二財産税その他の新税を御設定になる御意思はないかどうか。この点をお伺いしたいと思います。それから第六には、才出の節約について行政機構の整理を行われるようでありますが、これだけでどの程度の節約ができるか。この他にいわゆる終戰処理費に便乘して濫費されている方面に更に更に徹底的に節減し得る余地があるのであるかどうか。この点についてもお伺いしたいと思うのであります。(拍手)
 第二に金融面におけるインフレ対策に関連してお伺いしたいのでありますが、その第一は復興金融金庫の資金の調達方法とその使途についてお伺いしたいのであります。現在復興金融金庫は五月頃までに約百億円の貸附をしていると言われております。この財源は政府の出資及び復興金融金庫債券以て賄つておるようでありますが、この復興金融金庫債券は本來ならば民間消化を以て賄う筈でありますが、これまでは日銀引受によつてこれを賄つておる。而もこの復興金融金庫の貸出しは実際には財政負担となるものであります。財政負担がこの日銀引受の金融金庫債券を以て賄えるということは、実際は赤字公債を出していると同じであると思います。從つて表面上財政の辻褄を合やて健全財政といたしましても、この復興金融金庫の方面からいわゆる信用インフレが起つて來て、これではインフレは防げないと思うのであります。特にこの復興金融金庫の貸出しは、この五月頃までは二十億位でありましたが、段々殖えまして最近では全金融機関の貸出しにも匹敵して行く。今後は可なり増加いたしまして、大体倍位、毎月四、五十億位にもなる。そうなるとこれを日銀引受を以て賄つておつたならば、いかに表面上財政の均衡を得ましても実際的には赤字公債を出していると同じなんであります。(拍手)それではインフレは防止できないと思います。その点について大藏大臣はどういうふうに御処置されますか。お伺いしたいと思うのであります。時間がありませんので、あとは簡單に御質問申上げたいと思いますが、(「過ぎたじやないか」「最後は何回だ」と呼ぶ者あり)金融面からのインフレ対策は二つに分けることができると思います。その一つは資金の蓄積対策と資金の合理的配分の対策であると思いますが、この資金の蓄積対策に対しては、現在富籤、或いは三角籤、新種の無記名預金というものでやつておりますが、これだけで十分であるかどうか。その他にもつと根本的な対策を考えておられるかどうか。この点をお伺いしたいのであります。それから資金の合理的配分につきましては、日本銀行の資金統制を今強化しておるようでありますが、これをやる場合については、金融機関の民主化及び金融機構の再編成が必要であると思いますが、この点について大藏大臣の所見をお伺いしたいと思うのであります。最後に::(笑聲)擬制資本の処理、(「何遍最後だ」と呼ぶ者あり)インフレ処理に関連しまして擬制資本の処理をどうするか。この擬制資本のあり方として、第一は公債、第二は金融機関の数百億に上る軍需会社に対する貸附、(「時間時間」「靜かにせんか」と呼ぶ者あり)これでありますが、公債については私はこれを適当に処理するのが当り前と思いますが、これは政策協定においてできません。併しながらその軍需会社の整理につきましては、これについては既に企業再建整備法::
#25
○議長(松平恒雄君) 木村君の発言制限時間は三十分であります。既にその制限時間を超えております。御注意をいたします。(拍手)。
#26
○木村禧八郎君(續) それでは最後に一言だけ、(「簡單」と呼ぶ者あり)この擬制資本の処理の状況について大藏大臣にお伺いしたいと思います。これを以て私の質問を終ることにいたします。(拍手)
  〔國務大臣片山哲君登壇)
#27
○國務大臣(片山哲君) 木村君よりいろいろ傾聽すべき御意見を伺いました。木村君は経済專門の学者でありまするから、現下の深刻なる経済情勢を非常に深く掘り下げて御檢討になり、御意見をお出しになつたと思うのであります。政府は当面せる実際問題を取り上げまして、実際問題を中心といたしまして現下の深刻なる情勢を檢討いたしまして、それを中心といたしまする三つの原因を挙げたような次第であります。方向は木村君と異なつてはいないのでありまするが、その進み方及び現わし方において程度の差があることであろうと思うのであります。私の施政方針の演説におきましても、今にして建設政策を立て、今にして祖國再建の経済政策を取るにあらずんば時を逸するのであるということを申した点においても、十分に御了承願い得ると思うのであります。木村君のような学者的な御意見は十分に拜聽いたしまするから、今後においても研究的な御意見或いは政府を鞭撻する御意見は、十分に御発表願いたいと思うのであります。(拍手)。
 尚政府の法案立案、政策を立てる方法について、官僚的にやることは宜しくない。こういう御意見に対しても同感でありまして、現に政府は官僚的な方法をやらないように、民主的な方法によつて進んで行きたいと考えておるのでありまして、そういう方法を取りつつあるのであります。即ち勤労大衆の意見、特に建設的な意見は十分にこれを取り入れまして、これを政策立案に或いは法案を立てることにつきまして、十分に参照いたしておるような次第であります。併し各方面の意見をも十分に傾聽いたしまして、これを綜合対策として祖國再建の緊急経済突破政策にして行かなければならない情勢であるということを考えまして、各方面より民主的な方法によりまして意見を取つて、政策立案の根拠といたしておるような次第であります。
 尚過般発表いたしましたる経済緊急対策は、社会党の主張しておるところの政策と反対ではないかと、こういうような御意見があつたと思うのでありまするが、決してこれは反対ではないのであります。これも程度の差でありまして、社会党が掲げておりまするところの方向に反する緊急対策ではないのであります。御承知のように政党の政策は、大きな問題から当面の各般に亘る問題を掲げておりまして、その時の情勢に應じ、又秩序ある方法によつて、順序を追うてその政策の実現に当るということは当然のことであろうと思うのであります。のみならず、この内閣が成立いたしまする時に四党連立内閣を構想いたしまして、四党連立内閣によりまする挙國体制を建てて行かなければならないということを考へまして、四党の政策協定案というものを発表いたしたのであります。この四党政策は大まかでありまして、大筋であります。大体の方向を定めておるのであります。社会党の考えておりまする方向とも反しない意味における四党政策協定であります。又過般発表いたしましたる経済緊急対策も、この四党政策協定の線に沿うて、具体的な緊急を要する政策を発表いたした次第であります。
 そういうふうで、段を追うて、時の情勢に從いまして、順序を踏んで政策を実現したいというふうに考えておる次第であります。こういうわけ合いでありまするから、決して社会党は公約を反古にしたり、或いは掲げておりまする政策を放棄して、方向を轉換してその場だけやつて、緊急突破政策をやつた後は全然違う方向に進んで行く。そういうような信義を無視したやり方はいたさないのであります。お約束いたしました事柄は、天下に公表いたしましたる政策は、必ず守る。但しこれには順序ありということを十分に御了承願いまして、諸君の御協力を仰ぐ次第であります。(拍手)
  〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#28
○國務大臣(水谷長三郎君) 只今木村氏の御質問の中、商工大臣からお答えすべき問題は石炭の問題と貿易の問題であると、このように心得ておりまする。この石炭の問題、現在の惡性インフレ打開の糸口を見出すために、二十二年度において石炭を三千万トン掘り出さなくてはならない。それは分つておるが、それは果して可能か不可能かという御趣旨であろうと思いまする。これに対しましては、衆議院におきましても加藤勘十君或いは星島二郎君等に対して述べて参つたのでございますが、今日は又別の角度から木村氏のお尋ねに対して答えて行きたいと思う次第でございます。
 本年度石炭生産計画三千万トンを樹立するに当りましては、言うまでもなく、政治的経済的諸條件、技術的條件等を十分檢討した上樹立されたものであるのでございまする。即ち昨年度の石炭の生産は年間の計画が二千三百万トン、これは木村さんは昨年も三千万トンと言われましたが、何かの誤解でございまして、二千三百万トンでございますが、これに対しまして約五十万トン程度の不足を生じたのでございますけれども、この不足は決して切羽の長さ等いわゆる炭鉱の出炭する力がそれ程に達しておらなかつたというわけではないのでございまして、力は十分あつたのでございまするが、食糧の不安定なこと、坑木その他資材が十分注ぎ込まれなかつたこと、石炭の價格が十分でなく、炭鉱は常に資金に悩まされ通しであつたこと等に原因しておることは、これは御案内の通りであろうと思います。三千万トンの計画をば樹立するに当りましては、これらの点を適正に解決すれば必ず達成することができるものとして、その計画を樹立したのでございます。そのためには先ず資材については少くとも第四四半期以降は炭鉱の要求量の殆んど全部を継続的且つ優先的に注ぎ込む決意を以て、先ず第四四半期鋼材二万五千五百トンの強行供出を行なつたような次第でございます。資金につきましても、二十二年度下期十五億円の優先的放出計画を立てたのであります。その他食糧問題、價格問題、賃金問題等につきましても、それぞれ前から計画はされておりましたが、その完遂をはかるべく努力したようでございますが、遺憾ながら資材の中、鋼材、坑木等を除いては尚必ずしも十分な実績を示すことができなかつたのでございます。且つ二十一年中の資材の投入の不足等によりまして、二十二年度に入つても三千万トン計画に基く第一四半期の生産計画六百七十三万トンに対し、約四十万トンの減産の結果となつたことはこれは言うまでもありません。勿論この第一四半期の成績の芳ばしくなかつた理由の中には四月の選挙も挙げられますし、又五月の特に北海道における災害等が挙げられておるのでございます。又炭鉱は一般に資金の不足に悩みまして、これがため資材の入手の困難を來したこともその理由でございます。即ち例えば或る炭鉱では坑木を目の前に見ながら、從來の代金を拂つておらなかつたために手に入れることができなかつたというようなこともあるのでございまして、これは炭鉱の実情をば当局が的確に握ることが出來なかつた結果、資金融通の査定が資金の不足の折柄内輪に決せられた結果によるのである、このように考えておるのでございます。幸いに木村君も御承知の如く、現在までのところ各種の隘路も逐次打開されつつある状態でございまして、即ち資材問題にいたしましても、鋼材以外の物資の投入もだんだん良くなつて來ておりますし、又坑木の如きも一應息をつく程度に炭鉱に保有があるようになりつつあります。特に最も大きな問題でありました炭價の先決制度も急速に解決いたしまして、直ちに九月までの價格も発表される運びとなつておるのでございまして、他方運轉資金、企業資金の放出も次第に円滑になりつつあるような状態でございます。こういう状態に氣を良くいたしましてか、石炭復興会議は決議をいたしまして、七月一日から労資協調して一大増産運動を展開し、第二四半期六百五十四万トンを完遂し、更に第一四半期の不足分を当期間中に取戻す決意を以て増産に邁進しつつあるのでございまして、我々といたしましてもその増産に非常な期待を持つておる次第でございます。併しながら三千万トン達成のためには、下期において上期の減産分も含め約千七百万トン、即ち上期計画に比し三〇%の増産をしなければならないのでございますが、これは今後資材、資金、食糧等の需給の見通しは誠に樂観を許さない状態であるのみならず、インフレの進行が加速度に昂進しつつあるのでございまして、所要の資材、資金、食糧等を確保することは現状のままでは非常に困難になつて來るものと予想されるのでございます。現内閣といたしましては、インフレ克服のための三千万トンの確保は絶対に必要であるのでございまして、これを乘切るためには、どうしても炭鉱の國家管理を断行いたしまして、常に炭鉱の実情を詳しく知つて、國の責任において必要な資材や資金や食糧等を迅速且つ的確に炭鉱に投入すると共に、從業者等の生産意欲を最大限に昂揚いたしまして、能率の増進を期し、三千万トン達成に立ち向うような態勢を確立したいと思います。政府はこの方法によりまして初めて三千万トンの達成が可能であると固く信じておるような次第でございます。(拍手)
 更に第二の問題は、貿易再開によつてどの程度まで現在の経済危機が克服されると考えておるかという御趣旨であつたと思う次第でございます。既に御承知の通り外國貿易代表團を迎えまして、近くいわゆる対日民間貿易が開始されるのでございますが、これは管理貿易の中で、商談が彼我民間業者相互の間に一定の制限の下に行われるということでございまして、眞の意味の貿易再開は講和会議の後に初めて期待し得ると思うのでございます。併し今回のことは眞の意味の貿易再開への重要な第一歩でございまして、政府といたしましてはこの機会を利用して將來の世界貿易参加への準備をいたしますと共に、次に述べまする危機克服のためにも十分に役立たせたいと願つておる次第でございます。即ち我が國が当面しておりまする経済危機を克服いたしますためには、何と申しましても食糧問題の解決と生産の増強が最も緊要なことでありまして、而もそのいずれもが輸入に待つところが頗る大きいことは木村君御案内の通りでございます。言いかえますと、我が國に残されました物資と力とだけでは遺憾ながら危機の克服は極めて困難なのでございまして、食糧並びに重要物資の輸入の数量と時期とが、日本の危機を救うか否かの重要な決定要素となつておるというような状態でございます。併しながらこれらの資金を賄いまするための輸出は、諸般の事情から今日までのところ思うように伸びてはおりません。このことが輸入を阻害しておることは申すまでもないことでございまして、現に数ケ月前から待望しておりました製鋼用重油が、主に日本側の資金不足のため遅延いたしておりまして、漸く五月に初めて輸入されたというような状態であります。又輸出不振の原因の相当大きなものといたしまして、海外の需給関係が、向うの流行の変遷がわからないという点も挙げ得ると存じます。何をどのように作つて、どこえ向けたら最もよく賣れるかというようなことが分つておりましたならば、もつと輸出が伸長し得たと考える次第でございます。この面におきまして今般の外國貿易代表團の來朝は非常によい影響を與えると想像しております。この結果輸出が相当に進展いたしまして、從つて輸入する力が増進することになると考えております。この増大した輸入力を食糧、生産用資材、輸出用原材料に重点的に充用いたしまして、危機克服への強力なる手段たらしめたいと願つておる次第でございます。ただ貿易の再開によりまして危機の克服がいかなる程度できるかどうかは、一にかかつて國内の経済体制を急速に整えまして輸出力の増大を図ることがどの程度できるかという点にあると思うのでございます。海外からの購買者を迎えて円滑妥当なる商談を行いまして、せいぜひ速かに且つ優秀なる製品の輸出を行ないまして、これによつて得ました外貨を危機克服のための輸入に直ちに利用できるよう、関係各方面の努力を政府は切望する次第でございます。(拍手)
  〔國務大臣米窪滿亮君登壇〕
#29
○國務大臣(米窪滿亮君) 木村さんの御質問で私からお答えする点は、第一の御質問は、傾斜生産及び企業整備の結果どの位の失業者が出るかというお尋ねであつたと思うのでございます。これは極めて重要な点ではございまするが、率直に言いまして、日本に未だはつきりした労働統計が確立されておらない点、並びにどの程度にこの基礎産業の傾斜が行なわれるか。即ち一例を挙げて見まするならば、石炭の國管がどういうカテゴリーにおいて、どういう方法で実施されるかということが、まだ確定なるところまで話が進んでおらない。そういつた点、更に新物價が策定されまして、それが生産面においても、或いは國民の消費面においても、どの程度にそれが影響するかということによつて必然的に起つて來る企業整備の範囲、量というようなものが、まだはつきり見通しがつかない現状におきまして、的確なる数字をここで申上げる段階に達しておらないのは誠に残念でございます。目下これについては経済安定本部及び厚生省、商工省等と協議いたしまして、至急にこの数字を出したいと思つております。これについてもわが國において一日も早く労働統計に関する基礎的な方策が樹立されることの必要であることを感じまして、近く発足される労働省には労働統計に関する独立した局を設けて、專心その方面に向つて精進したいと思つておるのであります。
 第二の御質問の点は、失業救済のためにどの程度の財政を負担する積りであるか。大体そういう御質問だつたと思うのでございます。この点に対する私の御返事は大体三つに分れてお答えしたいと思うのであります。それは第一に失業者の相當数を吸收し得ると思うところの公共事業に関する費用の点でございます。これは昭和二十二年度において九十五億円というものを計上いたしました。大体その内訳を極く大きなものを申上げますというと、河川関係、河川の修理関係が十二億七千万円、それから農業に関する即ち農地の開発、開拓、そういうものに対する予算が四十億円、それから道路の改築、新築等が五億六千万円、港湾の修理が三億五千万円、都市計画が七億三千万円、住宅計画が七億八千万円、官廳、学校、裁判所、刑務所、こういつた営繕関係におきまして合計七億四千万円、他に厚生省管轄の失業應急事業、職業補導施設において三億八千万円、大体こういつたのが九十五億円の内訳でございまするが、この点について私特に申上げたいことは、これが全部失業救済として、そういう角度から計上されたのではなくして、いわゆる生産増強、産業復興という意味からして、公共事業を興すという目的を以て計上されのでございまするが、同時にこれが失業救済のために役立つ予算であるという見方も立ち得るのでございます。この点を御参考までに申上げたいと思うのでございます。それから第二の点は、御承知の通り生活保護法によるところの救済でございます。これは三十七億円を計上しまして、最近の統計によりますというと、これによつて救済された人が百八十万人、その百八十万人の中、明らかに失業者であるということの分つておる方が四十万人で、五億円の金を支出しております。これは今後この企業整備が行なわれ、そうして職業の能力がありながらどうしても職業の得られないという人に対しては、もつと多くのこの保護法による救済ができ得る余地が、この数字によつても示されておると考えておるのでございます。
 次にお尋ねのカテゴリーへ入つて行くところの國の費用としましては、失業保險と失業救済ということが考えられるのでございます。これは今後においてこれを立案することになつておりまして、近く参議院にも法案を上程して御審議を願いたいと思いまするが、大体において失業保險法はいろいろな関係がございまして、これは本年度の予算に計上されないことになるんじやないかと考えております。來年の四月から実施というようなことになるんではないか。從つてその間隙を埋める意味において、失業手当法は是非この九月頃から実施したいと思うのでございますが、どの位の予算をこれに充当するかということは、どの位のものを失業手当によつて救う……救うというのは語弊がありますが、それに該当する人にするかということであります。失業保險の被保險者と同じ資格にするか。或いは一般使用者全部をこの失業手当法によつてカバーされる資格授與者にするかということにおいて、まだ今日これを報告することができないのでございまして、從つてこれに要する予算もここで的確に申上げることができないのでございまするが、これは近く、先程申上げた通り本院にも上程いたしまするから、そのときに詳しく御説明申上げたいと思うのでございます。(拍手)。
  〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#30
○國務大臣(栗栖赳夫君) 木村さんの御質問に対して簡單にお答えいたしたいと思うのであります。二十二年度の追加予算の見込額はどうか。果して健全財政を堅持するかどうか。これが最初のお尋ねであつたと思うのであります。目下これにつきましては追加予算を編成中でありまして、私はなるべく速かに皆樣に提出いたしまして御審議をお願いしたいと思うのであります。併しこの中におきましても健全財政は十分堅持いたす積りであります。左樣御承知を願いたいと思うのであります。
 次には税の税源、或いは財源の問題であります。なるべく間接税を避けて、それは大衆課税に陷いるから、それで直接税の方へ持つて行くが妥当だというお考えは全く同感であります。(拍手)私はこの追加予算の財源としましては、税の自然増收、それからしばしば申上げましたように、税務機構を拡充することによつてインフレ利得者に対する課税の徹底化、こういうことによつて税源を求め、更に價格の改定その他による價格差益の徴收、更に必要に應しまして増税、新税等をも考慮いたしたいと考えておる次第であります。
 それから三番目には、高額所得者に対してその他の税を如何にして課するのか。そのためには所得をどうして調査し得るかと、こういう問題であつたように考えるのであります。これは先程も申上げましたように税務機構の擴充強化であります。差し当り政府は税務官吏といたしまして、二級官を四千人ばかり、更に三級官を一萬人、税務署も八十余を増したいと考えておるのであります。それから更に職員を再訓練し、(「間に合わんね」と呼ぶ者あり)又この教育その他をもやりたいと思うのであります。高等税務講習所を増設する。それから税務講習所の期限を延ぼす。或いは大學に聽講するところの制度をも始めたいと、こういうように考えておる次第であります。それから更に第三者の通報制の活用、そうして調査方法も科学的な方法を採用いたしたいと、こういうように考えておりますと同時に、一方におきましては國民に納税の思想を普及し、これを向上しまして、そうして徹底的な徴收をいたし、調査もいたしたいと、こう考える次第であります。それからその次には第二次の財産税、或は新税を設ける意思があるかどうか。こういうお尋ねであつたと思うのであります。いわゆる第二次所得税については目下のところ考えておりません。併し新税については目下考究中であります。それから歳出面の節約についてのお尋ねであつたと思うのであります。これは健全財政の建前を取つております点から申しまして、鋭意努力いたしたいと思うのであります。それから復興金融金庫の資金の調達方法についてのお尋ねがあつたのであります。私は全く同感であります。この復興金融金庫において借り入れをし、そうしてそれが多くは日銀資金で賄われまして、市中資金において賄われない。それがために資金の放出が大幅になるという点は全くお説の通りであります。私はこれはどうしてもこの金融の中で、普通の金融でできるものは市中銀行の方へ廻すとか、或いは別途に申しますように貯蓄の増強という面を強化いたしまして、債券の民間消化ということに非常に努めたいと、こういう考えであります。それから資金、貯蓄の対策についてのお尋ねがあつたと記憶いたします。これについては、根本の問題は矢張り財政の健全化と、そうして賃金と物價の安定を急速にいたしまして、この自由円と申しますか、新円えの信用を高める。これを維持するということが、先ず第一であると思うのであります。それと同時に昨年來も行われております救國貯蓄運動の展開であります。私は今年度におきましても是非これを切望し、実行に訴えたいと思うのであります。本院におきましても是非この運動に御参加を願い、御協力を願いたいと深く期待いたす次第であります。
 それから資金の合理的配分その他についてであつたと思うのでありますが、この資金の合理的配分については三月一日以來この融資準則を定めまして実行いたしておりますが、尚不備の所は合理化したいと思つて今考究中であります。尚金融機関の整理、民主化についても私は全く同感であります。併しこれは重大なる問題であり、そうして日本の経済再建のあり方に應じて作る必要がありますので、これ等の事情と睨み合わせ、更に目下進行中でありますところの金融制度調査委員会の答申を待つて善処いたしたいと考える次第であります。尚擬制資本の整理についてのお話がありましたのであります。これは企業の整理、金融機関の整理と相俟ち相携えて急速にいたさなければならんのでありまして、これは企業再建整備法、金融機関再建整備法の線に沿いまして極力速やかに実行をし、擬制資本の整理を完了いたしたいと思う次第であります。
#31
○議長(松平恒雄君) 柏木庫治君。
  〔柏木庫治君登壇、拍手〕
#32
○柏木庫治君 私は片山内閣の成立を心から喜びました。発足の第一歩に当つて精神運動を始められたことを更に喜んだのであります。精神運動のあり方は、偉大なる理想を掲げて現在の國情に即したものでなくてはならんと思うのであります。今の日本は戰爭を放棄したということが一つ、戰い敗れて外にも償いをしなければならず、内の綻びも直さなければならない大きなマイナスを持つておるということを、はつきり知つての上でなくてはならんと思うのであります。この観点に立ちまして、精神運動のあり方について一二お尋ねし、愚見も申述べたいと思うのであります。
 新生活運動に、正直者が馬鹿を見た。だから見せないようにする。こういうことを伺うことができるのでありますが、誠に結構であります。だがもつと大きなものがあの中に忘れられておると思うのであります。どういう点によつて正直者が馬鹿を見ると言われたか。私は北海道の炭鉱に奉仕いたしております時に、各農村のあちこちを視察いたしました。隣り合せた二軒の農家がありまして、こちらの農家は朝早くから晩まで、言う通りに生産をし、言われる通りに供出をし、更に感謝の供出をいたして営営と努めておりました。こちらの農家は供出は割当よりずつと少くて、御夫婦が小さな荷物を担いで札幌に往復いたしておつたのであります。もとより横流しであります。年末になりますと、働かない方が懐ろ工合がよくて、こちらが苦しかつた。こうした事実の中から正直者が馬鹿をみるという言葉が巷聞に傳わりまして、生産意欲を減退さしたのであります。こうした正直者に馬鹿をみせないように政府がやろうと、文部大臣一生懸命になつておるようでありますが、実に結構である。だが併しこの正直者のみた馬鹿が、これが國の宝であり、これがあればこそよい。若しこちらだけであつたならば、非常に悲慘な日本であつたことは明らかな事実であります。(拍手)馬鹿をみたというだけではなくて、これが國の宝である。これが日本を作り上げる基本の力だということをはつきり強調されなければならんと思うのであります。更にこの馬鹿をみせない運動であると同時に、國民全体を喜んで馬鹿をみ、樂しんで阿呆になる正直者に全部作り上げて行く運動こそ、本当なる現状に即した運動であると信ずるのであります。(拍手)私は片山首相を初め本当の片隅の人にまで全部この心に徹した時に、実際こういう人になつた時に日本が興る。安本長官も、農林大臣も、何にも苦心することは要らない。諸外國の信用も増す。戰債も拂えることは明から事実であります。運動面をこの方に進めて戴きたいと申上げると同時に、成案を持つておられるか否かを片山首相精神家に承りたいのであります。(笑声)このことがはつきりしないというところに私は物足らなさを感じておるのであります。
 今一つは日本の食糧問題に御援助下さる意味において、南氷洋に鯨を獲ることを許されました。司令官に向つて國民は心からなる感謝を捧げております。然るに新聞紙の傳えるところによりますと、英國と濠洲が日本の南氷出漁を反対したと報じております。だが司令部の好意によりましてできることになつた。できるようになつたからよいじやないかと内閣諸公はお考えになつておるか存じませんが、私は精神家の立場から、日本は戰爭を放棄したのだ。文化國家を作るのだ。これがはつきりいたしておりましたならば、外國がこれを認識いたしましたならば――反対した理由が、日本は鯨を粗末に扱つたということが一つ、あれを海運力にするのじやないかということが一つでありますが、海運力にするという危惧のために反対をした。戰爭を放棄し、文化國家を作る。これだけ営々といたしておりますのに、当らざるも甚だしいと思うのであります。私は精神家として愕然と驚き、魂のうずきを感じましたが、それから日々の新聞で、尊敬する片山首相がどういうことをこの事実についておつしやるか。芦田外務大臣が何とおつしやるか。何にも言わないのであります。(笑声)私に聞えないのであります。これこそ精神運動をやる人としては、びつくりして已むにやまれず、日本の首相としては、外に向つて言いにくかつたならば、國民に向つて何事かを言わなければならないのであります。それを何事もないということは、感じないのではないか。感じ方が薄いのではないか。その心持で、精神運動は私が願つておる有終の美を得ないのではないかと危惧いたしておるのであります。日本人はやると言えばやる。やらんと言えばやらん。はつきりいたした実例があります。それは戰い敗れて米軍が日本を占領いたしました数箇月の後、マツカーサー元帥は、あの煙硝くさい中に一滴も血を流さずして見事な占領のできたのは曾て歴史にない米國の成功だと、全世界に放送されたように記憶いたしております。誠にさようでありまして、歴史上すばらしき出來事だと思うのであります。これは又一面、戰うとすれば命を肉彈にして戰つた日本人、止めると言えば、当時の人心として死よりも、辛い無條件降伏をぐつと堪えて、一滴も血を流さずに完全に負けた。この負け振りも亦曾て世界になかつたことと思うのであります。この事実をひつさげて、やると言えば身を彈丸にする日本人、やらんと言えば世界の歴史にない負け振りをする日本人、戰爭を止めたと言えば止めたのであり、文化國家を作ると言えば作るのである。この事実をひつさげて天下に呼号すべきであると信ずるのであります。(拍手)(「質問に入り給え」と呼ぶ者あり)そう向うは考えておりますので、その考を中に置いて講和條約をいたさなければならないのであります。相手が立派と思つてする講和條約と、野心があるぞと思つてする講和條約のでき振りがどうあるかと考えて戴きたい。昨日東浦君より人口問題から移民の話がありましたが、首相は講和談判その他の時に是非とも善処すると仰せになつた。こちらが行こうといたしましても、行くことが双方に幸福でありましても、厭らしい野心を持つて來ると考えたならば、拒絶に近い結果に終ることは明らかな事実と思うのであります。この点は外交的措置というよりも、精神的にはつきりと我みずからと全世界に戰爭放棄した國の在り方、文化國家を建設する日本の在り方を知らせたいと思うのであります。その運動をやつて戴きたい。
 それから今一つは、御答弁振りでありますが、只今木村君が隨分議長から注意されましても、時間は参りましても平氣でやられた。(「あなたは眞似するのか、それが精神運動家か」と呼ぶ者あり)あれに対して片山総理は恥かしくお考えになつたか。平氣であつたか。これを承わりたいと思うのであります。(拍手)
  〔國務大臣片山哲君登壇〕
#33
○國務大臣(片山哲君) 私の考えておりまする精神運動は、精神運動だけをやりまして、後の経済運動、産業運動等に対する危機突破対策をその次に置くというのでは決してないのであります。危機突破対策、経済政策を十分にやらなくてはならない。やるについての心構えは精神運動が必要である。その意味において二つは不可分であり、二つは並行して行かなければならない。斯樣に考えておるのであります。從つて精神運動は最も科学的でなければならないのであります。(拍手)又その國情に應じて、國民の考えておりまする心持を十分に忖度して、常識的でなければならないと思うのであります。飛び離れた運動で、國民から遊離するというようなことでは、眞に國民の心を掴むことができないと考えておるのであります。そういう意味でこの前も申しましたように、ただ政府が精神運動だという標語を掲げて宣傳をするという運動ではなしに、國民全体の中から自然に湧き上つて來る運動でなければならないと考えておるのであります。そういう意味においてどうか諸君の御協力をお願いいたしたいと思うのであります。
 最後の木村君の時間の問題は、御答弁する必要もないと思いまするが、こういう問題は諸君の自主的な問題でありまするから、諸君によつて御解決を願いたいと思います。(拍手)
  〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#34
○國務大臣(森戸辰男君) 柏木君の御質問に御答弁いたします。柏木君は精神運動の在り方が、高い理想を持つて、而も現実に即するものでなければならんとおつしやつたのは誠に同感であります。更に今日の日本の國民は、みんなが喜んで馬鹿をみるように、進んで國のためには阿呆にもなるようなことが望ましいと言われた。これも私は全く同感でありまして、それには併しながら日本の國が、國民がそういうふうになれるような國としての構えも必要であると私は存じておる。(拍手)そうでありませんと、幾ら私共が國民にそういうことを要望いたしましても、これは基礎のない精神運動になりがちで、いわゆる空念佛に終りがちなのであります。而も從來のいわゆる精神運動の歴史がそういうことを我々に教えておりはせんか。色々のことから考えまして、殊に戰時中の精神運動、強調された精神運動というものは、道義昂揚という誠に人間至高の目標を、実は野蛮な軍國主義という目的のために、或いは極めて卑俗な利潤追求という目的のために、この最も高いものを一つの手段としたというところに、多くの國民の反感を買つたのではないか。(拍手)もう一つは、このいわゆる精神運動が民衆の、大衆の生活欲望を何か非常に間違つたもののように見て、而も一方に存在する社会的な不正を放置するような有樣の下に推進されたということ、この二つのことが、実はしばしば非常な勢で強調されたに拘わらず、國民を進んで馬鹿を見る國民としなかつたゆえんではないかと存じております。私共がいわゆる國民運動を考えましたのは、こういうことを國民に要求する半面では、社会正義が我が國に達成されなければならん。その手段といたしましては、先程も総理の言われたように、又和田長官の繰り返し言われたように、或いは計画生産を遂行し、供出を完遂し、或いは闇撲滅を断行し、更に先程も藏相の言われたような新円所得階級に対する重課を行なうというような方法におきまして、社会の仕組みにおいて社会的の正義が行なわれるような環境と並行しつつ、私共は國民運動を展開いたさなければならんと存じております。その意味におきまして、私共はこの運動を精神昂揚の運動と呼ばずして新日本建設の運動と呼んだのであります。新生活を樹立する運動と呼んだのでありまして、これを私共が單なる精神運動でなく、私共の國民生活、社会生活の一つとして、その重要なる部面としての文化、精神面における運動を強調したというところにあるのであります。
 尚この側面につきましては、柏木氏の御強調になつた平和的國家、文化的國家の建設ということは特に重要であることは、誠にその通りでありまして、私共はこの危機に当つてなしまする國民運動におきましては、特にこの高い理想を::ややともすれば危機においては胃の腑のことのためにすべての高いことが忘れがちな時に当つては、私共は將來のある國民として、將來新らしく世界に立つ國民として、この平和的、文化的な側面にも十分な注意を拂いつつ、十分なる(「簡單」と呼ぶ者あり)関心を持ちつつ、我々の運動が國民の間に展開されまして、新日本建設が遂げられるようにと考えておるのであります。
  〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#35
○國務大臣(栗栖赳夫君) 私は先程木村さんの御質疑に対しまして、第二次財産税は目下のところは考えておりませんと、こういう趣意のことをお答えしたつもりであります。その際第二次所得税というような用語を使いましたように記憶いたしますので、ここに訂正をいたして置きたいと思います。
#36
○北條秀一君 本日の日程にあります質疑はこれを明白に延期し、本日はこれにて延会することの動議を提出いたします。
#37
○村尾重雄君 只今の北條君の動議に賛成をいたします。
#38
○議長(松平恒雄君) 北條君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は公報を以て御通知に及びます。本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト