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1947/07/05 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第12号
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1947/07/05 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第12号

#1
第001回国会 本会議 第12号
昭和二十二年七月五日(土曜日)
   午前十時十二分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第十一号
  昭和二十二年七月五日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第五日)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件、第五日、これより通告順により質疑を許します。羽仁五郎君。
   〔羽仁五郎君登壇、(拍手)〕
#4
○羽仁五郎君 現在の日本があらゆる物の欠乏に悩んでおる非常に悲惨の状態にあることは、我々の実に悲しむことでありますが、実際米がない。そのための肥料がない。石炭がない。鉄がない。併し私はその中でも又特にないものは政治上の理論ではないかというふうに考えます。昨日も、現在の経済危機の原因が決して回避することのできないいろいろな原因から來ておるものではないので、回避することのできる問題から経済危機が來ておるという問題について、木村禧八郎君が述べられた点は、私は全く同感であります。而も現在戰災による生産設備の破壊ということはどうすることもできないように言われておるけれども、実は必ずしも木村禧八郎君が言われるように、そうではない。戰後の政治の理論がそういうものを導いておるということはある。のみならずその戰爭そのものも決して回避することができなかつたものではないということを、我々ははつきり考えなければならないと思います。戰爭を導いたような政治理論が今日も尚続いておるとすれば、経済危機突破ということは絶対にできないと言わなければならない。(拍手)現在この片山内閣が成立した場合に、國民がこれに非常に期待するものは、日本に初めて政治上の理論を公然同々主張することのできる内閣ができたということであります。(拍手)從來日本には言論の自由がなかつたために、あらゆる政党がその政治理論を公言することができない。いずれも何処からも文句の出ないようなことしか言つていない。で、はつきりした政治理論を主張しようとすれば、例えば或いは社会主義である、或いは共産主義であるというような点については直ちに感情的にこれを排撃して、理論的に、冷靜に、その理論及びその実際を知ろうとしないということが、今日の日本の悲惨の根本的な原因であつたということを我々は反省しなければならない。(拍手)そういう意味において、片山内閣がどうかその政治の理論を貫徹して戴きたいというふうに我々は切望するのであります。理論がなければ、その政治がどういうふうに行なわれて、どういうふうに失敗したのか成功したのか。その間違いを明らかにすることもできない。曖昧なことを言つて政治が失敗したのでは、何処が惡くて失敗したのか明らかにすることができない。理論があつて初めて誤まりを明らかにすることができるのです。憲政の常道と言われるのは、單に野党が次に政府を取るのではない。或る一定の理論を持つて政治をやつて、それが失敗した場合に、反対の理論を持つ政党が政局を担当するということが政党政治の理想でなければならない。戰爭中においては御承知のように、自由主義、民主主義に対してすら直ちに感情的にこれを打倒する、排撃するという風潮があつた。この際我々は新國会の下に、参議院が特にその権威を重く見て行く上に、我々はあくまでも冷靜に、理論を正しく理解し、且つその結果を理論的に檢討して行くという態度を示して行きたいというふうに切望する次第であります。
 私の質問の第一は、國際信頼の回復について片山総理及び鈴木法相及び芦田外相に対してお尋ねをいたしたい。本日片山総理が病氣のためにお見えになつていないことは非常に残念であります。片山総理が一刻も早く健康を回復されることを希望すると同時に、私の質問に対して後日片山総理がお答え下さることをお願いして置きまして、差支ない範囲において或いは副総理としての芦田外相からお答えを戴きたいと思います。
 先日片山総理が國民外交を確立する。そうして從來の日本の祕密外交を一掃するということを言われたことに対して、私は深く敬意を表するものであります。併しこれについて國民外交の確立、祕密外交の一掃ということについてどういう具体策をお考えになつておるか。或いは御研究であるか。それを伺いたいと私は思うのです。で、從來の内閣は別として、片山首相も言われるように、國民の選挙によつて、そうして國会の指名によつて成立した新國会第一の片山内閣に対して、私特に期待したいことは、我が國民及び國際に向かつて日本の戰爭責任を明らかにして戴きたいということであります。これは御承知のようにイタリー及びドイツ或いはフランスにおいてすら、決して單に占領軍から命令されたことだけではなく、その國家みずからがその戰爭責任を國民及び國際に向つて明らかにしておる。現にこの片山首相が座つておつた椅子にはこの間まで東條首相が座つておつたのであります。そうして我々の愛する日本同胞の青年たち及び國際世界の青年たちの流した血潮というものは、我々は何とかして洗い清めなければならない。この点についてまだ日本政府が、特に今度國民の選挙によつて、指名によつて成立した片山内閣が、この点についてはつきり國民及び國際に向つて声明していないことは非常に遺憾に考えるので、この点首相の特に深甚なる反省を期待したいというふうに思うのであります。片山首相の信條とされるクリスト教においても、「汝の眼、汝をつまずかせば、その眼をくりいだすべし」ということが書かれておるのであります。我々は我々の國民に対して、又國際世界に対して、日本の戰爭責任というものを自発的に明らかにすることなくして講和会議に臨むというふうなことは、絶対にできないと考えるものであります。(拍手)公職適格審査委員会についても、國民は必ずしも納得していない。いわんや國際世界がこれについて納得しておるかどうか非常に疑問であると考えます。片山内閣は國民の道義の昂揚ということを言つておられますが、免れて恥なしというような人たちが当局にあつて、國民の道義を昂揚し、國際信義を回復するということは絶対に不可能である。言論パージの場合も同様であつて、これらの問題は決して形式的に行なうべきものではなくして、國民及び國際が、眞に日本がこの点について反省の誠意を披瀝しておるというようなことを認められるような方法で行わなければならないというふうに確信いたします。片出首相に向つて希望したいことは、日本はみずから戰爭を放棄して、そして國際平和を願い、その点において現在日本の國内においても、或いは第三次世界大戰、或いはこの日本を現在占領しておる聯合諸國間、或いは國際聯合の大國間に、アメリカとソ聯との間に戰爭の可能性があるかのごとき言辞をなす者があることは、我々の深く遺憾とすることろであります。日本はみずから戰爭を放棄するのみならず、世界が永久に平和を続けること、仮令大國間に意見の相違があつても、これは決して平和的手段を以て解決できないものではない。いわんや日本がその第三次の世界大戰の原因となるがごときことは絶対に我々の望まないところであるということを……そういう意味において、そういうふうな不謹愼な言動がある。それが平和会議を如何に阻害するであろうかということを深く考えられて、そういうふうな風潮を一掃せられるような方法をとつて戴きたいというふうに考えます。それから先日佐藤議員からの質問に対して片山首相の答弁は、我々を納得させない。佐藤議員は、右翼が日本に戰爭を導いた以上、そうして今日まだそういう右翼が胎動しておる以上、これに対する首相の所見を問うたのですが、それに対して首相が左右両翼排撃というようなことを以て答えられたのは、全く意味をなさない。左翼が日本を戰爭に導いたことはないのであります。國際世界に対して、再び日本が右翼の手中に陷つて戰爭を導くということは絶対にないことを保証しなければならない。最後に特に芦田外相に向つて、お尋ねしたいことは、御承知のように第一次歐洲大戰後にロシア、ドイツその他の諸國においては一切の祕密外交文書を公表して、この世界永久平和のために貢献したのでありまするが、日本はこの点についても、実に悲しいかな、近代國家成立以來いまだ曽て一回も祕密外交文書を公表したことがないのであります。この点についてやはり現在芦田外相は日本外交の祕密文書、特に今度の悲惨な犯罪戰爭を惹起するに至つた、又その間の一切の祕密文書を、國民及び國際の前に潔ぎよくすべてこれを公開して、そうして平和会議に臨まれるのでなければ、依然として國民及び國際は日本の平和的眞意を信頼することはできないのではないかというふうに考えます。而も我々の知り得たところによれば、多くの重要な祕密外交文書が破棄乃至燒却せられておる。これは実際國民及び國際に対する重大な犯罪である。これらの責任をどうお考えになるか。
 次に第二に私が殊に片山首相及び関係閣僚にお尋ねしたいことは、労働問題についてでありますが、現在労働問題こそ道徳問題であります。道徳を昂揚せられる現内閣は、特にこの労働者、農民というような我が社会の重要な生産を担当しておる人達の関係の是正に努めなければならない。食糧問題も根本的には増産の問題でありますが、この増産の問題のためには、どうしても今までに既に行われておるところの農地制度の改革というものを本当にまじめに行わなければならない。第三次農地改革制度というようなものは空景氣をあげることではない。現に今までの農地制度が忠実に行われているかといえば、これが忠実に行われていないことは世間周知の事実である。土地の取上げ、闇小作料というものが横行していることは、平野農相も御承知の通りであろうと思う。こういう点についてどうお考えになるか。次に労働者の意欲ということを言われますが、労働者が完全にその意欲を発揮するためには、労働者の基本的な人権であるところの團結権、團体交渉権、罷業権、こういうようなことについて、労働者の間に現在かなり深刻な不安がある。この不安を一掃して、そうしてこれを確保して、労働者階級に生産に邁進して貰うという決意が片山首相に望ましいというふうに私は考えます。
 第三に官僚主義の打破の問題でありますが、現在日本が國家統制に進まなければならないということは、吉田前内閣総理に対するマツカーサー元帥の書翰においても明らかに述べられていたところである。國家統制は現在の日本としては必至であります。これが併し官僚統制になるならば、國民の犠牲のみ多くして何らの効果が挙がらないということは言うまでもない。然らば片山内閣はこの國家統制が官僚統制にならないような具体的などういう方針を持つているか。この点について伺いたい。(拍手)私はこの点は二つの点に盡きると思うのであります。一つは、この國会をあくまで最高の立法機関としてこれを尊重して行くという建前である。例えば昨日発表せられた白書のごときものも、若しあれが國会から発表せられているならば、國民のこれに対する態度は全く違うであろうと思うのであります。又安本その他物價廳などにおいて厖大なる調査部を作つておられる。併しこの調査部はむしろ國会の委員会等を中心に持たるべきものではないかというふうに考えます。(拍手)これが第一である。それから第三は、この國家統制を官僚統制に陷らせないために、殊に社会党首班内閣である現内閣は、社会主義統制の線をもつと大胆に明らかにすべきであると考えます。(拍手)
 次に第四に文教の問題でありますが、文教の問題は、現在既に社会問題化しつつあるのであります。少年審判所における調査を見ても、現在不良少年の続出の第一の原因は、戰災により学校の設備が全く不完全である。第二は食糧がないことである。第三は教員が生活不安であるということである。そのために普通の家庭から八歳、九歳ぐらいの少年がどんどん不良化している。こういう重大な問題に対して、現在文部省が考えているよう追加予算四十八億、そういうくらいで果して文相は責任を負えるというふうにお考えになつているつもりであるかどうか。(拍手)文部省はこの点について、日本における既に教育自身の民主的な組織である教員組合があの通り成長しておるのでありますから、教員組合についてこの実情を詳しく調べるがよろしい。御自分がわざわざ御旅行になる必要はない。教員組合が立派な資料を持つておるのでありますから、これについて十分お聽きになつて戴きたい。それからその外、六三制をもつて体系的に年次的に考える必要がある。教育委員会は再び教員を奴隷化するものであつてはならない。教員組合の團体協約を空文化しているということは道徳問題である。教育刷新委員会の改組というような問題があります。次に文化の問題として用紙の問題でありますが、用紙は、大体日本が健全なる経済的なバランスを取つていたと考えられる昭和十年前後に比較して、現在僅かに〇・三の用紙しかないのであります。これは和田安本長官において十分考慮せられて、この用紙の問題を解決するということが、新日本建設國民運動のためにも実に重要なことである。國民の中の自発的な、民主的な文化建設運動を阻害していることは、用紙というものが非常に大きい。(拍手)現在‥‥
#5
○議長(松平恒雄君) 羽仁君、申合せの制限時間が既に超過いたしました。御注意をいたします。
#6
○羽仁五郎君(続) それから最後に金融財政の問題でありますが、あらゆる新税を徴収する場合にも、第一線の税務官吏が非常な誘惑と、非常な危險に暴されていることは、皆さんの御承知の通りであります。神奈川間税課長の殉職は今日只今局葬が行われている。この第一線税務官のこの誘惑とこの危險に対して、政府は彼らが本当に税務の仕事を担当し、これを遂行し得るような待遇と保障とを與えなければならない。(拍手)そうして財政の根本においては、既に現在日本の財政が、片山首相が勇氣を以て断言したように、金融資本を中心に財政施策を立てるならば、日本には絶対にこの危機から救われないであろうということであります。英國の保守党すらその産業憲章において、保守党がたとえ政府を取つても、産業國有、イングランド銀行の国有ということに反対しないということをいつておるのであります。況や與党たる‥‥
#7
○議長(松平恒雄君) 制限時間が超過いたしております。重ねて御注意をいたします。
#8
○羽仁五郎君(続) この点に関して十分現在の片山内閣を助けて國難を突破せられんことを期待するものであります。私のためではなく、戰爭の犠牲となり、現在絶望の淵にさまよつている國民のために、誠意ある答弁を期待するものであります。
   〔國務大臣芦田均君登壇〕
#9
○國務大臣(芦田均君) 只今羽仁君により極めて有益なる御意見の開陳がありました。なかんずく我々民族の持つ共通の欠陷に対し深刻なる批判を加えられましたことは、我々共としましても、深く省みる必要のある点だと感じた次第であります。私に対する御質問の箇條はニケ條であつたと心得ております。
 第一に國民外交の樹立並びに祕密外交の打破、いずれも世界平和建設のために最も緊切なる問題であるが、これを如何様に考えておるかというご質問であります。皆さん御承知の通り第一次世界大戰の末期において、アメリカの大統領ウイルソンが十四ケ條の項目を発表いたしましたときに、その一項目として祕密外交の打破という点を強調いたしておつたのであります。祕密外交の打破、これを更に裏面から見れば、國民外交の樹立によつてのみ祕密外交を打破することができるというふうにも考え得ると思います。若しあのときにウイルソンの主張したる祕密外交主義の打破が全世界の民族によつて受け入れられたならば、不幸なる第二次世界大戰は起こらないで済んだかとさえ私は考えております。從つて我が國においても一日も早く國民外交を樹立し、祕密外交の打破を実現しなければならない必要を痛感いたしておるのでありまして、不肖私が満州事変の当時、昭和八年に衆議院の議場において正しく國民外交の樹立を要求いたしたことは、当時の速記録を御披見下されば、羽仁君はこれを今日においても御覽下さることができると信じております。その具体的な方法はどうかということであります。具体的な基盤はできておると思います。それは我が國が民主主義の機構によつて、國会を政治の中心にし、國民すべてが政治に参與する。そのことは外交の方針においても國民の意向が最も強く反映せられることを意味するのであります。或いは又國会においては、委員会制度を重視して、外務委員会が既に設立されております。外務委員会は外交機関と相並んで、將來の國民外交を指導すべき重大なる職務を持つておる機関である。又言論の自由を認め、國民すべての意向が言論機関によつて発表せられることになつておるのでありますから、我我國民が如何なる外交を望んでおるかということは、言論自由の保障によつて日々世間に現われる準備が既に出來ている。これを如何に巧みに運用するかということは、國民のそれぞれの心構えと、我が民族の文化の水準によつて定まることでありまして、政府といたしましては、羽仁君の御主張のごとく、今後あらゆる機会に國民外交を樹立する覚悟を持つております。そうして又その國民外交の樹立によつて、祕密外交は必ず打破し得るものと信じております。
 第二の御質問は、日本政府が祕密外交文書を発表する計画があるかどうかという点であります。外務省におきましては、既に十数年來外交文書を刊行する計画を立てておりまして、明治初年より明治二十年代に至る外交文書は、既にこれを公刊いたしまして必要の箇所に配付してあります。然るところ最近の外交文書の刊行は、終戰以後の諸般の情勢によつて、まだ公刊される運びに至つておりません。羽仁君御指摘のごとく、その中の重要な部文が多くは終戰当時に破棄せられたと承知しております。その破棄せられた文書と雖も、東京裁判その他の文書によつてこれを補うことは必ずしも困難ではないと考えておりますので、相当の人員と経費を準備いたしまして、なるべく早い機会に過去の外交文書の一切を公表いたしたいと考えておる次第でございます。御答いたします。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) 総理大臣は微恙のため本日出席ございません。他の機会に答弁せられるとのことであります。
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#11
○國務大臣(和田博雄君) 羽仁さんの私に対する御質問にお答えいたします。
 第一点は安本が非常に調査部を持つているということについての御意見でありましたが、私達は行政官廳としまして、その行政を誤まりなくやつて行きますためには、やはりその行政が地に著いた行政であることを必要といたしますので、どうしてもそこに調査部の事務は必要になると思うのでありまして、その意味におきまして官廳には或る程度の調査の機能を持つということは必要欠くべからざることだと考えております。勿論國会におきまする図書館が完備し、又政府の統計が廣く民間の手に入るようになりまして、國会自身として立派な政策的な調査が出來ますように一日も早くなりますることについては、私も心からそれを希望しておる次第であります。
 それから用紙対策の点でございますが、用紙対策の点はお考えのように全く文化の面から見ては必要であります。從いまして我々の方といたしましても物資需給計画を組みますときに、配炭その他の点について十分これらの点を考慮しながら、需給計画の策定をいたしておる次第でありまして、左様に御承知を願いたいと思います。
   〔國務大臣米窪滿亮君登壇〕
#12
○國務大臣(米窪滿亮君) 羽仁さんの私に対する御質問は、労働者の社会人としての地位及び権利に対する確保とでも解釈すべき点だと思うのでございます。仰せの通り現下の経済危機を突破するためには、労働者の生産性を昂揚すべきことは、これは非常な重要な條件でございまするが、同時にその裏附けとして労働者の團結権及び團体交渉権、罷業権等の、いわゆる基本的な権利を擁護することは、これ又必要なることであることは申すまでもないのでございまして、八十九議会におきまして既に労働組合法が制定されまして、羽仁さんの仰せられた権利は確保されており、更にこれに基づきまして、中央、地方の労働委員会において、これらの権利が侵害されたときに対するところの方策が採られて、これによつて労働者の社会人としての地位は確保されておるのでございます。もう一つこの機会に申上げたいことは、昨年の議会において制定されました労働基準法は、更にこの労働組合法に定義されておる労働者の権利をもつと詳細に決めた法律でございまするが、これは実施期を非常に急いでおりますのでございまするが、地方における労働基準局、及びその下にあるところの監督署の整備等に大分暇を取りまして、九月一日か頃から実施することになると思うのでございます。こういうことになれば、労働者の社会人としての地位及び権利は非常に強く確保されることと思うのでございます。簡單ではございまするが御説明申上げます。(拍手)
   〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#13
○國務大臣(森戸辰男君) 羽仁君の御質問に対してお答えいたします。羽仁君は特に文教に強い関心を持たれておりまする立場から、私に対して一々有益な御質問を承りまして、誠に感謝しておる次第であります。
 第一の御質問は、今日六三制の実行が非常な困難に当面しておるというお話でございました。これは全く私も同感でございます。我が國が敗戰窮乏の事態にこの非常な高い國家理想を掲げ、それを実現する最も重要な方途としての新らしい教育の革新の道を採りましたことは、我が國といたしましては非常な決意を持つてなしたことでありまして、教育も又危機の教育として断行されなければならんものと私共は存じております。こういう意味におきまして六三制の実行というものは、國家におきましても國民におきましても、いろいろな苦難と闘いながらなされなければならない文化國家としての重大な任務であると存じております。この意味におきまして、國家はこの教育制度の國家的意義、他面では地方の財政的窮乏という事情も鑑がみまして、今日の窮乏した國家財政の許す限りにおいて國家的な援助も十分にいたさなければならんと思いまして、かような形において各関係当局との交渉もいたしておる次第であります。同時に地方團体におきましても、又御父兄におきましても、教員諸君におきましても、又不幸なる敗戰の事態にある学童におきましても、この日本の窮乏を担いつつ新らしい文化國家を建てるという氣魂の下に、この困難な教育が完徹されるような協同の努力を私共は切に望んでおるのであります。
 第二に、團体協約のお話がございまして、私共は教員諸君が生活が確保されて、教職の任務ができるだけ完全に遂行さるることを期待いたしておりまして、かような方途におきましても、教員組合と團体協約が結ばれ、この上に教員組合が健全な発達をなすことが、我が國教育のために望ましいことと存じておるのであります。ただ不幸にして地方におきましては、まだこの教員組合が地方当局との協約の締結が十分に行つていない所もあるのでありまして、当局といたしましては、この締結を勧告いたしておりまするが、これは地方の当局と又教員團体とが、相互に理解し信頼する協力の成立つ上において協約は結ばれるのでありまして、私共はこの双方から協約が一日も早く結ばれるようにと心から願つておるのであります。(拍手)
 第三には教育刷新委員会についての御質問があつたように思うのでありますが、これは米國教育使節が來朝されたことに関聨しまして、日本の教育委員ができ、その報告書を基礎としながら、この教育委員を基礎として発展させて教育刷新委員というものができまして、我が國の教育刷新に関する根本的な方途を研究することになつて、これは内閣に属する委員会でありまして、文部省に属する委員会ではないのであります。これは教育の專門的な立場から教育の根本的な革新に対する審議をなすものでありまして、議会における文教、文化委員とはおのずから職能を異にしておるものと存じておりまするので、從つて國会に両常任委員ができましても、独立の立場からこの委員の存続する意義も存在しておるものと私共は存じております。ただこの委員の構成につきましては多少遺憾の点もあり、又國会議員でこの委員になつたお方がお辞めになるという事態もありますれば、それに関聨しまして、構成についての変更を適当にいたすというようなことも考えられておるのであります。
 第四に用紙の問題のお話もございまして、これは全く同感であります。一般の用紙の問題につきましては、実はこれは文部省というよりは内閣の用紙割当委員会、或いは商工省、安本の関係の問題でありまするが、私共痛切に感じておりまするのは、学童に関する用紙の配給、殊に教科書、ノートに関するものでありまして、これはいわば学童に取りましては精神生活における主食でありまして、我々一般の國民生活における主食が痛切な問題になつておりまするように、学童の精神生活の將來の日本に対する主食としての教科書は、できるだけよく良い物を早く配給いたさなければならん。然るにこれがいろいろな遅配があつたり、その他附随のいろいろな事態が起りましたことを、私共非常に遺憾に存じておるのであります。これは併し新しい教科書の編纂が、曽てないほどな大きな編纂を短期間に全部やらなければならんということ、出版所が戰災し、いろいろな障害を被つておつたこと、又用紙の事情等もありまして、十分に行われなかつたのでありますけれども、併し幸いにして殊に小学校用のものにつきましては、前期分につきましては新聞協会の非常な御協力によりまして、全部が完了することができたことを皆様に御報告いたしたいと存じます。中学校用のものにつきましては、用紙の事情によつて小学校教科書の発行に重点をおいたこと、学校の開設が遅れて、その兒童数などの決定が四月初めに報告を得られなかつた等の関係で遅れたものもあるのでありますが、併し國語一の外十一種は発送済になつております。数学二の外は七種は目下発送中でありまするし、製造中のものが四種あるという状況でありまして、前期分は殆んど中学についても完了に近い状態にあるのであります。配給の問題につきましては、これも新しい所に配給するので、いろいろ困難もありましたけれども、不日克服いたしまして、一日も早く学童に必要な主食の教科書が配付できるように、期待いたしておるのであります。簡單ながらお答えといたします。(拍手)
   〔國務大臣鈴木義男君登壇〕
#14
○國務大臣(鈴木義男君) 羽仁君の御質問の戰爭責任の問題は、総理大臣からお答えをいたすべき事項でありまするが、欠席いたしておりまするから、便宜私からお答えをいたします。戰爭責任を糺弾いたしまして、戰爭責任者を追放いたしますることは、我が國の精神的武装解除でありまして、平和会議に臨む絶対的前提條件であるのであります。このことは現内閣成立の当初におきまして、関係方面からも嚴粛な申入れがあつたのであります。幣原内閣並びに吉田内閣以來、数次の声明、諸種の法令によつて明らかにされておりまする線に沿いまして、その仕事を進めておるのであります。但し追放のことは非常な犠牲を強いることでありまするから、眞に、戰爭責任ある者を逸してはならないのでありますると共に、誤まつて責任なきものを糺弾することがあつても相成らんのでありまして、極めて公正に且つ公平に嚴正にやらなければならんために、愼重にそのことに当つておる次第であります。
 尚右翼團体並びにその指導者について、追放が徹底しないではないかという御趣旨の御質問であつたのでありまするが、決して政府はこれを怠たつておるのでないのでありまするが、或る事情のためにその資料が我々の手許にありませんので、近くその資料を我我の手許に戴きました上で、必ずこれは戰爭責任につきましては第一に取るべきものでありまするから、必ず徹底的にその責任を明らかにいたす予定であります。そのことをお答え申上げておきます。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#15
○國務大臣(栗栖赳夫君) 羽仁君の御質問に対し、大藏大臣の関係するところを御答弁いたします。税務官吏の待遇改善につきましては全く同感であります。大藏省といたしましても、地位の確立に努力中であり、尚努力をいたしたいと思う次第でございます。
 この際ちよつと御報告をいたさして戴きたいと思うのでございます。既に今朝の新聞で御存じのことと存じておりますけれども、神奈川税務署の間税課長端山豊藏君が、去る二十三日川崎における密造酒の檢挙に参加いたしまして、任務を果しての帰途暴徒に襲われ、遂に殉職いたしたのであります。只今私は東京財務局の局葬に参つたのでありますが、これは同君の死は徒らにすべきでなしに、廣く全國の税務官吏の亀鑑として称揚し、且つ又同君の遺志をすべての税務官吏に傳えたいと思う次第であります。尚同君については、当局は能う限りの慰藉をいたしたいと思つておる次第でございます。併せて御報告いたします。
 尚先日吉川さんからの御質問に対し補足をいたしたいと考えます。六三制の問題であります。この六三制は、本年四十数億円にわたる金額を初年度で必要とするということでありましたけれども、二十二年度の本予算には僅かに八億円を計上するに止めたのであります。この計画は原案のまま実施するといたしますというと、非常な混乱などが起りますので、地方にも、この予算の範囲において実行に移して戴きたいと、こういうことを申した譯であります。併しこの六三制の実施につきましては、重要なことは十分に考えておりますので、諸般の事情とも睨み合せまして、そうして考慮中であります。
 尚教育税の創設につきましては、その方法、程度等に関し、色々檢討を要する点がありますのでありますが、この種の新税を考慮する余地は、現状におきましては或いはないのじやないか、こういうようにも考える次第であります。
 尚地方財政の枯渇についての御質問があつたと思うのであります。これは諸般の事情とも睨み合せて、目下考慮中でございます。簡單でございますが、これを以て答弁といたします。(拍手)
#16
○議長(松平恒雄君) 河野正夫君。
   〔河野正夫君登壇〕
#17
○河野正夫君 総理大臣が御病氣とのことでございますので、時間の関係もありまするが故に、総理大臣に対する質問は、項目だけをあげて、後ほど御回答を仰ぎたいと思うのであります。
 最初にあたりまして、片山内閣がその成立当初、みずから標榜するところの政治原理、而して又生活原理を掲げたというこの態度に対しては、深く敬意を表するものであります。又更に諸般の声明、文書、先般の演説等におかせられまして、文教、教育の重要性、今日における國家危機の時に当りまして、尚且つ文教、教育の重要性を御認識なさつておられることが明瞭になりましたことについては深く喜びとするところであります。私は全國で四十万教員を代表いたしまして、主として新学制に関する質問を行いたいのであります。総理大臣に対する質問は、最後に項目として掲げたいと思います。新学制は御承知のごとく、いわゆる六三制と称せられるところのものでありまするが、おほかたの皆様はその眞相を御承知でないのであります。六三制、その新制中学の非常に困難な有様は、既に文部大臣におかせられましても屡々お述べになつたところがありまするけれども、尚我々をして言わしむれば、実情を深く御識識なさつておらないというのほかはないのであります。況んやその六三制の新制中学の実施が初等教育、即ち小学校に如何なる惡影響を與えておるかという点に至つては、衆議院の御発言も伺いまして、又本院における六三制の問題をも伺いましたし、文部大臣の御答弁も伺つたのでありまするが、触るるところがないのであります。甚だ遺憾に堪えないのであります。御承知のごとく六三制は美しい理想の下に出発をいたしましたにも拘わらず、なんらの用意もなくして実施せられました結果として、その実施の行く手に当つて幾多の障碍が現われたのであります。そして今日は今や教育の崩壊寸前というがごとき状態になつておると思うのであります。(拍手)質問をいたしたいのでありまするけれども、諸般の事情をいささか説明を加えませんと、質問の要領を得ないかと存じますので、稍々委員会をめくことになりましようけれども、暫らく御清聽を煩わしたいと思うのであります。(拍手)
 六三制が急遽施行せられた結果といたしまして教員が不足し、教室設備が足りない、教科書が不備である、学用品が不足であるというようなことになつて、今日の教育が困難を加えたのでありまするけれども、小学校におきましては、いわゆる新制中学一万四千教室の不足というものがここに轉嫁せられまして、実数を申上げますと、小学校において、新制中学実施のため犠牲になつたところの教室は約一万五千有余であります。教室をそれだけ小学校が提供いたしたわけであります。戰災地におきましては戰災校舎三千、その六割が本年度中に復旧すると傳えられておる状態のところに、而も東京都のごときは疎開地から続々と兒童が帰つて來る、収容能力が足りない、人口の自然増加があり、小学校だけでも既に困難な状態のところへ、この新制中学のために校舎乃至は教室を提供いたしたのであります。そのために今日二部授業、又は假教室を使用しておるのが、只今申上げたように全國において、小学校の学級数一万五千三百有余の多くになつておる状況であります。そのために二部どころか三部教授を行つておる所さえあるのであります。午後二時半に出校するというような状態の所もあるのであります。午前中は暇である、或いは午前早く終つて午後は遊んでおる。ここに羽仁君が申されたように青少年の不良化の一つの原因が潜んでおるのであります。一方において一学級当りの人員の増加と教員の過重負担を結果いたしまして、而も教員数の不足がこれに加わつておるのであります。東京都の或る区におきまして計算しました結果によりますると、二部教授、午前中の授業をそのまま六ケ年間続けて行つたと假定いたしますと、授業時間の数において申しまするならば、普通授業の五年と三学期半くらいの程度に相当するのであります。昨日配付を受けましたところの経済実相報告書ですが、あれを読んで見ますると、あの中に学徒の体位、兒童の体位の低下の恐るべきことが示されておるのであります。昭和十二年度と昭和二十一年度の比較が載つておりまするが、身長においても体重においても、この戰時中に與えた兒童の影響は一年のずれを來たしておるのであります。曽て十二才に該当するところのものが、今日は十三才に該当しておるのであります。然るにこれは肉体的のことでありまして、計量することができますれば、戰時中に荒廃に帰したところの教育は、彼等の精神に與えたところのものを、若しこれを数において計量することができるといたしますならば、いかばかり結果しておるかということは計るべからざるものがあろうと存ずるのであります。かてて加えてここに新制中学の災難が舞込んだのであります。私はあえて災難と言う。避け得べき災難であつたのであります。更に新制中学に與えたところの影響は森戸文部大臣のお話にもありましたが故に省略いたしまするけれども、ただここに一言私の感想を申上げまするならば、(「眞面目にやれ眞面目に……」と呼ぶ者あり)雨漏りがする教室があつたという御報告であります。缶詰の空箱を腰掛とする教室があつたという御視察の御報告がありましたが、あのままで済まして置くつもりでありましようか。これをどうかしなければならん。このことを絶対に、ああいう授業状態を改善しなければならんという固い責任をお感じになつたのでありましようかどうですか。この点がお伺いしたいのであります。実数を申上げますと、新制中学において二部乃至は仮教室、人員その他で仮教室を使用しておる所の数は二万五千何がしという数になつておるのであります。机、腰掛の不足数は大体において九十八万何がし、約百万人分の不足になつておるのであります。教科書の配給状況は只今御報告になりましたけれども、新制中学に関する限り、私の調査は六月の中頃でありまするけれども、或いは正確を欠くかも知れないが、必要部数の三分の一に漸く達しておる位の程度であつたのであります。最近において同僚諸君、私の手許にも舞込んで來るところの全國の新制中学の兒童諸君の可隣なる葉書を一覧を戴きたいのであります。本席でも読み上げようと思つておりましたが、時間の関係上止めました。その場合でも私共のクラスには教科書が四十人の所に十五冊しか來ておりません。先生なんとかして下さい、私達は廊下で勉強しております、先生なんとかして下さい、というようなことが述べられるのであります。東京都の先生の或る人は教科書が足りないためにわざわざ文部省へ出掛けて行つて写して、それを学校へ帰つて板書をする。そうして生徒にそれを写させるというようなことを繰り返しておる所があるのであります。熱心な先生であると私は感心いたしましたけれども、これは東京都で便宜を得ることができるが故に可能なのであります。農山漁村に至りましてはこういうことはできないので、若し眞実に教育愛というものがなかつたならば、疾うに今の生徒達は更に更に惡化しておつたに違いないと思うのであります。一体かくのごとく生徒も教師も努力に努力を重ねておるにも拘わらず、日に日に困憊の極に達した結果、兒童は学習に対して興味を失なつて、教員は教育再建の熱意を鈍くする結果となつて來るのであります。かくのごとき悲惨な状態をどうして招來したのでございましよう。私はそこに問題があると思うのであります。もとより新制中学が新憲法の下、極めて理想的な制度でありましよう。それを否定するものではありません。又この急速な実施が或る至上命令であつたかも存じません。けれども國庫負担としてたつた八億、六十何億を要求したのにたつた八億の國庫負担の下にこの新制中学を始めて、今日のごとき状態が來るということは予見し得たのであります。(拍手)私はその政治的責任を問題とするのであります。尤もここにおいでなされるところの大臣諸公の責任ではないかも知れませんけれども、先程大藏大臣はその点について八億を以て賄なうように、こういうふうに地方に言つております。恐らく大藏省下僚の御報告そのままに信ぜられたのでありましよう。大藏省の一事務官の云うところによりますると、文部省もその同罪であるかも知れませんが、本年二十一年度末小学校を卒業する生徒が、新制中学にいくばく行くかということを考えて、九九%行くであろうと考えた。ところが在來は小学校卒業生が上級進学、高等小学校、青年学校、中学校、中等学校、各種学校、こういうものに入る者は九七%という統計である。從つて九七%が九九%、たつた二%増加するに過ぎないのだ、言つて見れば五十人の学級ならば、五十一人が五十二人になれば沢山であろう、教室は要らないではないか、かくのごとき理論によつて四十何億かの建築費が削られ去つたのであります。然るに皆さん、青年学校は独立校舎を有していないのであります。夜間中学も亦独立校舎を有するものは少ないのであります。現実における教室数は遥かに少ない。そこへ持つて來て、人口の自然増加もございましよう。それ故に今日二万四千の教室の不足になるのは理の当然であります。こういうことを知つて八億でごまかしたのでありましようが、然らばこれは不誠意も甚だしいといわざるを得ない。若し又知らないといたしましようか、これは極めて官僚にふさわしくないところの存在であります。(拍手)日本の官廳統計がいつでもかくのごとき蹉跌を來たさしめる。この点にも私は深く反省を持たなければならんものと思うのであります。(拍手)私は今回の処置を称して人工早産であると呼びます。新制中学は早生兒、月足らず兒でございます。早産も結構でありましよう。親も、産婆も、ミルクも、砂糖も用意し、たとえ間に合せ物にもせよ産衣も作れば湯たんぽも用意して置いて、七月、八月兒なれば育つこともありましよう、併し産ませつばなしのままで放つたらかしておくというのは、人道上の大問題であります。(拍手)かかる事態が招來することは明瞭であるに拘わらずやつたという点を私は咎め立てをしなければならんと思うのであります。こういうような状況下にあつて、この子供達が戰時中から荒廃を來たしておつた、教育を捨てられておつた子供達が再び新制中学のこの災厄に罹つて、教育が荒廃し不良化さんとするところのものは、どうしても捨てておけないものであります。この責任は地方当局が背負うものでありましようか、文部当局が背負うものでありましようか、現政府が背負うものでありましようか、(「突つ込め」と呼ぶ者あり)私は文部大臣がこの点について痛切なる責任感を振起せられんことを希望するものであります。(拍手)成る程今日は経済の危機でありましようけれども、精神運動と緊急対策とは表裏一体をなす、かくのごとく片山総理大臣は仰せられた筈であります。我々は昨日森戸文部大臣が、教育の生産性と國家再建性とを強調せられたことを知つておるのであります。我々は子供を生産しておるのであります。この生産なくしては経済再建は不可能でありましよう。かるが故に我々はこれを國家の責任において全額國庫負担を主張するものであります。(拍手)然るに國家財政の許す限り……先程の大藏大臣及び文部大臣の答弁は甚だ我が意を得ないのであります。今生れて誰も面倒を見ないとこの赤子は死んでしまうのであります。この死んでしもうかどうかというときに、財政の許す限りミルクをやろう、こういうことをいつておられましようか、問題はここにあるのであります。(拍手)是が非でも全額國庫負担を要求するものでありまするが、文部大臣は是非ともそれだけの御決意ありや否や、その責任を感ぜらるるか否や、その点についてお尋ねいたしたいのであります。これが質問の第一点であります。
 急ぎまするから項目だけにいたしまするが、第二点は、新学制は六三ばかりではありません。六三三四とありまするが、新制高等学校、私立大学、先程も羽仁君も質問せられたのでありまするが、お答えがなかつたと思いまするが、かくのごとき新学制全体に関する年次計画というものを、概要を明かにして戴きたいということであります。
 第三に、新制中学に限つて申しますると、本年度における國庫負担だけでは足りません。來年度も再來年度もあります。この意味の新制中学の國庫負担予算の年次計画を、今日とは申しませんけれども、お示しを願える時期を要求するのであります。
 更に第四に学校教育法では既に義務制を規定せられておるところの盲聾唖兒の義務教育であります。三万六千のこの氣の毒な人達の義務教育は、未だに実施されておらないのであります。明二十三年度からというような風評もありまするが、この費用は我々の計算によるとたつた五千万円に過ぎないのであります。是非とも來年度より実施のお運びを願いたいのでありまするが、その点についてお答えを願いたいと思います。
 第五に、新制中学に関連して申しますると、教員養成施設、師範教育制度等がいかがなことになるかということについては、未だ明瞭になつておらない。これに対する見通しを承りたい。これに関連いたしまして、教育界に優秀なる人材を吸収するところの特段の考慮が必要であると存知まするが、その点についての御所見を承りたいものであります。(拍手)
 第六に、今日の新制度に忘れられておるのは旧制青年学校の生徒、現在の青年学校に残つておる生徒及び青年学校に來ないかも知れないが、それと同じ位の青年の教育であります。この青年の教育をいかがいたしまするか、これについてお伺いいしたい。先程羽仁君が申されましたが、今日の不良化というものは甚だしいものがございまする。この不良化防止についていかなる手を打つべきか、この点についてのお答えを願いたいと思うのであります。
 更に今日國家をかくのごとく亡國の危機に瀕せしめたものは、実をいえば曽てから行われた注入主義教育と、あの記憶一点張りの試驗方法にあつたかと思うのであります。(拍手)この方法は今日新学制と共に、教授方法の改善と相成つておりまするが、尚この採点方式というものは改善せられておりません。來年度における旧制高等学校の入学試驗がいかがなるか、大学試驗がいかがなるか、現在の学生生徒は非常に心配しておるのでありまするが、校内においても亦進学の際における場合におきましても、この試驗方法の改善、考査方法の改善についてはお考えなさつていられないかどうか、この点について伺いたいのであります。
 以上屡々新制度について申し述べましたが、最早時間がなくなりましたので、総理大臣に対する質問は文書を以てすることにいたしまして、今回は省略いたしますが、願はくは以上のことにつきましては、これは文部当局にいわせますと、経済安定本部が承知しない、大藏大臣が文句をいう、こう屡々聞かされるのでありまするが、本席に御列席を幸い、この点について明確なる回答を安定本部及び大藏大臣に要求する者であります。(拍手)
   〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#18
○國務大臣(森戸辰男君) 河野君の御質問に対して御答弁いたします。河野君は教育者の立場から、教育制度、殊に新らしい教育制度につきまして誠に適切な御質問があつたことを、私どもは喜んでお聞きしたわけであります。殊に二百万という学童、ものをいわん学童があります。又現在はものをいいますけれども、日本の將來はものを言わないのでありますが、この学童と日本の將來とのために発言をいたして戴いたことを感謝いたすものであります。六三制の実行につきましては多くの難関が存しておることは、私が度々申したところでありまするし、むし六三制の採択は、日本に取つては運命的のものであつたと申してもいい。而もその運命的なるものは日本に取つては將來を約束するものでありまして、なんとしても私共はこの危機を切り抜けつつ危機の教育を完成いたさなければならん。これは單に國家のみの任務ではなく、國民挙げてがなさなければならんと私共は考えておるのであります。(「経費をもつと必要とする」と呼ぶ者あり)更にこの六三制が中学においていろいろ困難を持つて來ておることは私が度々述べたところでありまして、教室につきましても、又教師の皆さんにおきましても、教科書の状況におきましても、誠に御同情に堪えないのであります。私がこの間いろいろな事情を申上げましたのは、これを報告するに止めず、文部当局といたしましては責任を以て、許す限りにおいてこれらの窮境を打開しなければならんという固い決意を持つておるからでございます。尚中学のみならず、小学の方にこの新らしき制度が及ぼしたところの影響についても、私は十分存じておりまして、河野君の御指摘になつた通りの事情があるのであります。これは單に教育制度の関係のみではありませんけれども、新らしい時代の者が肉体上におきましても、精神上におきましても、多くの打撃を蒙つており、発達が遅れておる事情を考えまするときに、特にこの時代の教育が新らしい日本の建設に取つて極めて重要であることを痛感いたしておる次第であります。私共はこういう見地から最善を盡したいと思いまするし、殊に先程も御説明申上げましたように、新らしい六三義務教育が國家的の意義を持つておるという点から、國家負担ということを十分考えておりますけれども、他面におきましては今日の國家の財政の状況をも我々は十分に勘考しなければならんので、この点におきましては財政当局との愼重なる協議の下に、最善を盡したいと存じておるのであります。六三三制及び新中学の年次計画についてのの御質問がありまして、これも非常に御尤もな御質問と思うのであります。ただこの中、六三三の中の三四については、これは義務教育と申す範囲を脱しておりますので、非常に細かい國家的の計算のまだできておらない部面もあるのでありまするが、大体の見当はついておるのであります。六三の三につきましては、これは義務教育であり、差迫つた新らしい教育制度でありまするので、年次的の計画も立てておるのでありまするが、これ又関係当局との了解も必要でありまするので、恐らくは近い中に皆さんにお目にかけるような段取りになると信じております。
 尚師範学校のことにつきましては、これは教育刷新委員会で師範学校を学藝大学という形でやろうという建議案もありまして、それを中心にして研究をいたしておるのであります。新らしい学制ができましても、これに働いて貰うところの優秀な教師がなければ新らしき学制もその効果を挙げることはできません。殊に小学中学におきましてこの点が今日痛感されておるのでありまして、私共は一日も早くかような事態を克服しなければならんと思つておるのであります。そうしてそこにはできるだけ優秀な青年を引入れまして、新らしい日本建設の積極的な力になつて戴きたいと存じております。
 最後に勤労青年の問題でありますが、この問題は実は日本の教育制度としては極めて重要な問題でありまして、青年学校が廃止されますると、この青年学校をいかに活用いたしまして、勤労青年を新らしき日本の一員として教育をいたすかという問題にかかつておるのであります。新らしき教育制度といたしましては大学に夜間大学を設け、高等学校にパートタイムの学校を作り、これによつて勤労青年ができるだけ普通の青年と同じような教育が受けられるようにいたしたいというふうに考えておりまするし、又育英制度を充実し、通信教授を完備いたしまして、これらの人に教育の普及いたすようにいたしたいと存じております。尚産業講座或いは労働大学、労働教育委員会等の設けをいたしまして、これらの人々に適切なる教育をいたしたいということにあらゆる努力を拂つておるのであります。簡單ながらお答えといたします。
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#19
○國務大臣(和田博雄君) 河野さんの御質問にお答えいたします。我々としましては、六三制の制度を布く時期が適当であつたかどうかという問題は、既に過去のことでありまするので、一旦布かれました以上は、今の日本の國力、財政というものを見合いしまして、ただ徒ずらに現実のために將來を犠牲にするという立場は私はとつておりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)併し御承知のように、日本の財政が非常な赤字をこの際出すということになりまするならば、これはその面から折角のいい理想が崩れて來ることになるのであります。從いまして我々の方といたしましては、只今大藏当局、文部当局と打合せをいたしまして、日本の財政なり國力というものを見合いしまして、一つ適当に考えて行きたいということで参與いたしておる次第でございますから、左様御了承を願います。
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#20
○國務大臣(栗栖赳夫君) 政府は只今追加予算につきまして編成をいたしつつある次第であります。既に諸君から屡々御指摘もありましたように、財政の面においては健全財政を堅持するという建前も非常に必要でございますので、そういうような点ともよく睨み合せ、且つその許す範囲において関係当局とも十分連絡の上六三制の実施については考慮いたしたいと存ずる次第であります。(「曖昧だ」「ごまかすな」と呼ぶ者あり)
   〔河野正夫君の発言の許可を求む〕
#21
○議長(松平恒雄君) 河野君なんですか。
#22
○河野正夫君 ちよつと簡單に今の件で‥‥
#23
○議長(松平恒雄君) 時間も過ぎておりますから、次の‥‥
   〔文部大臣が返事をしないじやないか、文部大臣重大な問題を二つ落した、教育内容の問題、試驗の問題を落した」「最も大事じやないか」「議事進行」「答弁」「大問題だ」「抽象論廃止」「作文はよくない」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(松平恒雄君) 文部大臣。
   〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#25
○國務大臣(森戸辰男君) 先程御質問になりました教育内容につきましては、できるだけ民主的な方向に進まなければならんということは、新らしい制度として当然の方向であると存知ます。(「そんなことはわかつておる」と呼ぶ者あり)試驗制度については、できるだけ從來のような試驗制度は廃止しなければならんということは当然でありまして、そういう立場からいかなる方法によつて妥当的に民主的な選択の方法が行われるかということは、只今考究中であります。(「盲聾唖教育」「特殊教育如何」と呼ぶ者あり)特殊教育の問題につきましては、教育の機会均等という上から、盲聾唖者に対する教育というものは一日も早く行われなければならんということは当然でありまして、私共はこの点に特に重点を置いて考えておるのであります。(「いつから」と呼ぶ者あり)ただ教師と学校設備の問題において幾多の困難がございますので、その点におきまして私共は各方面と折衝いたしまして一日も早くこの問題は実現いたしたいと存じております。(「後はないか」と呼ぶものあり)
#26
○議長(松平恒雄君) 細川嘉六君。(拍手)
   〔細川嘉六君登壇〕
#27
○細川嘉六君 今日我が國史上未曽有の國難に当りまして、不肖私は共産党を代表して社会党を首班とする現内閣に肝要な質問をいたさなければなりません。社会党は今日の時期こそ大改革をやらなければならんと考えられておることは、我々は全く同感であります。
 先ず、國際関係について御質問をいたします。平和條約の締結、賠償物資の取立て、こういうことを問題にして、今日の國民一般の心構えはどうであるか、又これを指導する政府の心構えはどうであるかについてであります。先程羽仁君がこの点について戰爭責任の追及は足りないと申しました。全くその通りであります。現在の内閣、これについても、例えば敗戰による憂慮すべき結果であるとか、或いは負けたんだから、勝つた方も苦労しておるのだから今日の苦労はしなければならん。こういうようなわけで施政演説やその他においても、現内閣の責任者は負けたんだからということをいうのであります。その裏は勝てばこんなことはなかつたということでもあります。この思想は非常な間違いを起こしておる。これは、今日尚我が國において侵略主義、軍國主義、こういう思想が根強くあつて、潜在しておつて、これが取れておらん。そういうことを端的に示しておるのであります。國民は從來支配階級の愚蒙政策によつて政治的には盲にされておつた。だから今日尚この夢から醒めていない。これはそう責めるわけに行かないところもあります。併しながら政治の指導に当る者がこうであつてはどうなりますか。現内閣以前の幣原内閣、吉田内閣にしても同じくこの考は一貫しております。我々はポツダム宣言によつて國内の民主化を図るという建前からしまして、民主、文化、平和の國家を作るといいましても、この思想が取れない限りは、これは空言に終ります。(拍手)我々國民はここで反省しなければならん。國民を指導する内閣は最も反省すべきものであります。ドイツにおいては非ナチス委員会を開いて國民自からの手によつて戰爭の責任を追及しておる。我が國においても、こういうことは十分に我が國の特殊な今日の封建的な思想、軍國主義的思想、こういうものがある。こういう特殊な状態から來ております。我々はこの点において戰爭責任の追及、そういう問題について片山首相並びに芦田外相の御答弁を要求します。
 第二には芦田外相は沖繩、千島、そういう領土の回復をして欲しいというようなことを述べられたと報道されておる。これがために御存じの通り、英米その他において我が國に対する輿論は非常に惡くなつて來ておる。のみならずこれをきつかけにして捕鯨問題についても、イギリス、オーストラリヤから強硬な反対が起きて來ておる。片山首相は芦田外相のこの主張に対して驚いたということであるが、これはA・P東京支局ブラインズ氏の報道であります。それで片山首相は講和会議において過剰人口を考慮して貰えばいいということを述べられておるということを報道しておる。この際過剰人口云々ということは一体どういうことであるか、從來我が國の軍國主義者、侵略主義者は過剰人口を口にしてその立場を弁護して來た、そういうような疑いのある言葉、これを首相が述べておる。戰爭責任を痛感していないことは先程申しました通りであります。そういうようなことからして、こういう不謹愼なことも出て來るのであります。我が國民の將來にとつて政治の責任者たる首相、外相がこういう不謹愼なことをいつておられる。これはただではない。今申すような我が國内において軍國、侵略主義の思想がわだかまつておるからであります。この場合芦田外相の責任を、又これに対する首相の責任を我々は問わねばなりません。
 第三に今日御存じの通りに、米ソ開戰ということが盛んに流布されておる。総選挙中においても、某政党の候補者連中は組織的にこの宣傳をやりました。なぜ、こういうことをやるか、これはいわゆる反共戰線の方に利用しておる。同時に列強間の戰爭を利用してなにか漁夫の利を得よう、そうして從來の戰爭によつて失なわれた地位を回復しよう、そういう連中、反動的、軍國主義連中のこれは利用しておるところであります。戰爭については第三次世界戰爭ということをよくいうが、これは米ソを起点として起きるものと主張されておるのであります。それはこの大戰後において國際間になにかの意見の相違があるということは、これは当然でありますが、それだからといつて戰爭が起きるとはいわれない。それを戰爭がある戰争があるというようにいう。今申すような意味で我が國において特別にいわれておる第三次世界戰爭については、今日の國際情勢から見まして、民主主義的諸勢力が世界的に大発展しておる現状からして起るものではありません。にも拘わらずそれをいうのであります。我が國の対外政策は一國に偏つてはいけない。いかなる強い國、富める國であつても、それに頼つてはいけない。偏つてはいけない。そうして他を排撃するようなことであつてはならん。又列強間の対立を利用して、そうしてなにかの利益を得よう、そういうような対立関係を利用するような政策であつてはいけない。我が國の独立のためには、この自主独立の不偏不党のためには自主独立の立場を取つた政策でなければなりません。こういうことについては、我が共産党は既に昨年の総選擧にも述べております。にも拘わらずこういう政策を取らずして、現に今日の内閣になにかの関係を持つておる自由党の吉田前総理大臣はこういつておる。マツカーサー元帥が平和條約締結後は占領軍は撤退する。そのあとは國際連合の管理に仕す。これはそうすべきだといつておる。そのあとを継いで、占領軍の去つたあとは、アメリカにできるだけ長くおつて欲しい、こういうようなことをいつておる。これはここに関係はないようでありますが、四党連立とか、三党連立、そういうようなものを作つて、それから現内閣を作つたと自由党がいつておる。更に片山首相は最近、日本はイギリス、殊に労働党に指導されなければならない。日本は弟でイギリスは兄貴である。こういうようなことを政治の責任ある地位に立つていうということはどういうことでありますか。野党としての方針ならばそれでよろしい。政治の責任に現在立つてそういうことをいうのはどういうことであるか。労働党に代つて保守党が出たならばどうなるか。外國関係についてはどうなるか。日本は日本人のための日本である。日本民族の立場を忘れて、そうして軽々にこういうことをいうのはどうであるか。我々はこのような日本民族の立場を忘れ、自主独立を損なう卑屈無力な思想、或いは軍國主義、侵略主義思想、こういうものに対して断乎として闘かわなければなりません。民主主義を徹底するということはこういうことであります。これは誠に我が國に深く浸潤しておる思想でありまするから、首相及び外相に、これらの点についていかなるお考えを持つておられるか、それをお伺いしたいのであります。第四に、世界労連の問題でありますが、この六月にプラーグにおいて大会が開かれた。これは日本にも或いはドイツにもそうでありまするが、オブザーバーとして代表者を出せという招待状が來ておるのであります。それに対して我が今日の片山内閣はいかなる援助をなしたか。全く積極的なことをなにもなしておらん。一体世界労連の意義というものはなんであるか。それは民主主義の発展を主張するところの世界労働者の團体であります。即ち世界平和の根幹をなすところのものの集まつておる團体であります。苟くも世界平和を主張する以上、こういう團体に対して我が國の勤労大衆、一般民衆がこれに非常な関心を持つておるにも拘わらず、政府はこれを見送つておる、我々はそれでありまするから、世界労連に対する片山内閣の根本的態度、更に今日非協力的態度と思われるこの(「ノーノー」と呼ぶ者あり)態度について、首相及び米窪國務相の御答弁をお願いいたします。
 第五に出版及び通信の自由についてでありまするが、先ごろ來朝したアメリカのボールドウイン氏は、驗閲の問題は早晩緩和されるだろうと述べておる。文化の発展のためにはこの出版及び通信の自由というものは重大であります。占領下にある我が國の問題としましては、或る程度の制限を受けなければならんと思いまするが。併しながらできるだけの自由を獲得するようにしなければなりません。よく連合國との連絡を取つて貰わなければならない。それについて外相及び文相の御答弁をお願いいたします。(拍手)
 次に國内問題についてであります。片山首相は施政の演説において、特に新憲法の下において、民主主義の大精神と平和主義の大理想を政府は一切の政治行動の大目標として高く掲げ、これを大胆明確に実現いたすと述べております。言葉はいずれの場合でも調法なものであります。八紘一宇という言葉で今日我が國民はひどい目にあつております。高度民主主義を片山首相は主張なさつたが、高度民主主義とは一体どういうことか、言葉をそのまま取つてはいけません。なにがその中に盛られておるか。これは痛い経驗を八紘一宇で嘗めた今日吟味しなければなりません。首相及び安本長官の説明では、今日の危機は國民互いに乏しきを分けて、そして我慢してかからなければならんというのであります。犠牲は全体で負う、併し沢山の説明はありましたが、要するに乏しき者にはそういうように犠牲を拂えといいながら、乏しくない資産階級にとつては一言半句もない。附けたりの多少のお世辞はあつたけれど、結局は國民の血と汗によつて再建するよりほかにない、こういうことであります。(「曲解するな」と呼ぶ者あり)大負担はすべて働く者の犠牲において、これの一言に盡きます。併しこれで今日の我が國は立ち上ることができるか、今支配階級の利益を守る現内閣は今我慢しろといつている。(「馬鹿なことをいうな」と呼ぶ者あり)資本家が立てばあとはなんとかできる。こういうのだ。(「簡單明瞭に願います」と呼ぶ者あり)戰爭をやるために資本家が儲けようとしておつた。(「それは公式論だ」と呼ぶ者あり)戰後においてどうであるか、インフレ政策を以て彼らの利益を守ろうとしておる。今日の苦難はそこから來ておる。そういうものが腰が立つても働く者の生活はどうするか。そういうことについて働く者はちやんと知つておる。(「分らん」と呼びその他発言する者多し)馬鹿ではない。そこを考えなければならん。我が國の現状は、この危機というものは、國民大衆が肚の底から確信を持つて立ち上る、それなくしてこれはできると思いますか、それについて確信のある(「文句は要らんよ」と呼ぶ者あり)その確信を起させる政策が必要である。今日の危機、國民的危機というが、何を指すのであるか、僅かばかりの、人口の五%程度の資産階級のための、即ち資本、殊に独占資本のためにすべてよくなつて行くか行かないかという、これが危機であるか、九十五%の働く者が伸びられるか、発展するか、これができないということが危機であるか、(「それを國民と称しておるのだ」と呼ぶ者あり)どつちであるか、我々は九五%の働く者の民主政治を主張しておるのだ。これなくしては國民は総立ちになりません。(「そんなことは分つておるよ」と呼ぶ者あり)憲法二十五條においてすべて國民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があると規定されておる。(「今更それを聽かなくてもよい」と呼ぶ者あり)こういうことは單なる飾りであるか、或いは又そうなるのか、國民はそれを問うておる。ところがそれが本当に行われることが保障せられれば総立ちになる。日に夜を次いでも働き抜く。これを忘れてなんの再建があるか、(「分つておるじやないか」と呼ぶ者あり)人格の尊嚴だとか独立だとかいう。併しながらこれは資産家階級それだけを指すのであるか、九五%の人間、働いておる人間の人格の独立と尊嚴を指すのであるか、今その必要なしというならば人格の尊嚴も独立もあつたものではない。物的基礎を與えるのか與えないのか、この働く者の民主主義というものは、現代世界の認めておるところである。又澎湃としてこれが世界に行われておるところである。又行われんとしておる力がます厖大きくなつて來ておる。これを認めるのか認めないのか、(「余り亢奮しないでやれ」と呼ぶ者あり)片山首相は高度の民主主義という。私はここにその内容について今申したところである。二十世紀の初頭から今日の発展を見て御覧なさい。第一次世界戰爭が起きた、その前に世界的な大恐慌があつた、第二次世界戰爭の後はどうであるか、今日の状態であります。その先は世界恐慌がある。こういうように循環して來ておる。もうどうともならないところへ來ておるのであります。それでありまするから、片山首相はこの間もえらいギリシヤ、ローマから説いておられたが、今日の世界の発展の現段階というものは働らく者の民主政治を行わなくしては、戰爭と世界恐慌の連続であるということである。それでありまするから、第二次世界戰爭中からこの状態に対して、働らく者の民主主義の腰を砕いて來ておる。ヨーロツパを見て御覧なさい。その通り。アジヤもその通りだ。我が國の改革というものは、世界の大勢、それから我が國の現状、この二つの点から見て行わなければならん。明治維新を見て御覧なさい。あなた方は政治家として、この沢山の働らく人たちによつて選挙されて來ておる。(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)お互いにそうだ。併しながら明治維新はどうであつたか。あれは身命を賭して世界の大勢を把握して、そうして断乎として改革を行なつたものであります。我々はいい加減の考えで、その日暮しをしてはいけません。お互いに痛い肚をさぐるといつても(「興奮せずにやれ」と呼ぶ者あり)弱い者の肚をさぐつて、強いものをそつち退けにしておる。これが今日の政治家の陷つておる無氣力である。これを我々は指摘しなければならん。明治維新の革命をした政治家に対しては、我々は恥かしくないか。單に口の上の爭いといい加減の思想の羅列、これで以て我々は國難が救えると思うか。これをお互いに考えなければならん。今日九五%の働らく者の政治を行なう、これが今日の世界の大勢であり、同時に我々は今日國内の問題を処理する途であります。これを除いてどこに我々の改革があるか。我々はよくみずから顧みる必要があります。
 又更に片山首相にお尋ねしたいことは、この組閣に際して、左右に偏せず、飽くまで中庸の道をとり、畢竟竟共産主義とは、明確に一線を画すと声明した。これはどういうことか、昨年我が党の大会において、暴力革命及び独裁政治はこの日本の現状及び國際の情勢において必要はないと公言した。これは当然のことであります。科学を根拠として共産党がこれを主張するのは権謀でも術数でもありません。必要な條件があつて初めて暴力革命は或いはプロレタリヤ独裁政治を主張しなければならん。その條件がなければ、その必要がないから主張しない、こういう立場に來ておる。であるから今日片山内閣が組閣において共産党との、或いは共産主義との間に一線を画すということは、結局どういうことか、今申すような九五%の働らく人たちの政治を行なうか行なわんかについて、それに対して明確なる返答をなすものである。少数者の資本、或いは独占資本のための政治を行なう、併しながら、これには働らく者の民主政治を行なわんということの証明であります。これは反共戰線というが、実は労働者に反対し、農民に反対し、勤労市民に反対し、中小商工業者に反対し、即ち人民に対する政策になつてしまう。(「馬鹿なことを言うな」と呼ぶ者あり)過去の政治を見て御覧なさい。共産党の主張は共産党であるから、なんでもかんでも惡いというので、政策について論議せずして、ただ感情に訴える、ただ支配階級の持つているその感情に訴えて、そうして問題を片づけていつた。結局どうであるか。この終戰の前を考えて御覧なさい。しまいには民主主義自由主義が仇である。倒さなければならないというところまできた。今日はどうか。今日はこのことについては、ドイツの例を見ても同じことであります。ドイツも同じ道をふんできておる。これはお互いによく考えなくちやならん。共産党の主張は今いうような、働く者の民主政治を今日の政治において最高最大の任務としております。目標としてするものであります。なにを以て暴力革命だとか、或いはプロレタリヤ独裁を我が共産党は我が肚に持つているのだというか。はつきりしたことでありますが、総選挙におきましても、現に共産党は、暴力革命、プロレタリヤ独裁を肚に持つているのだというて、選挙戰からも選挙中もやつてきたのは片山首相である。ここにおられる文部大臣森戸辰男君もその通りだ。我々はこの反共政策に対して首相及び(「質問にはいれ」と呼ぶ者あり)文相の責任を問い、その答弁を求めます。
 我が國の現状は誠に憂慮すべき状態である。社会党が言われる通り、誠に今日改革するかせんかという、改革をやるか、やらんか、働く者の本当に生甲斐があるようにするのか、働き甲斐のあるようにするのかせんのか、こういうところへ今來ておる。ここに本当になすべき手を打つ、即ち政府の民主主義的の体制に則つて、國内の守りに総力を挙げて起たなければならんという実情に即して働く者の民主政治を実現する。我々は断乎として明治維新の改革をやつた連中に負けない意氣を以てやつて行く、こういう次第であります。この誠に痛烈な深刻な時機であります。我々はこの状態に立つて、今申したような諸点について、各大臣の責任ある御答弁を望むものであります。(拍手)(「答弁の要なし」と呼ぶ者あり)。
   〔國務大臣芦田均君登壇〕
#28
○國務大臣(芦田均君) 細川君の御質問にお答えいたします。先刻止むを得ない公務のために中座をしておりまして、その間に質問があつたのでありますから、或いは正確な御質問の趣意を理解しない点があるかと恐れますが、御質問の趣意は先般六月五日でありましたか、外國新聞記者との共同会見において、私の話したことが、一部の者に、他の部分は正確でありましたが、一部の者に、誤り傳えられた。それが面白からない印衆を與えるのではないかという御質問であつたと承知いたしております。その当時直ちにそれぞれの機関を通じて、私の意見の間違つている点を指摘いたしまして、國内の新聞にも亦外國にも報ぜられておりますから、或いは細川君もこれを御覧になつたことかと思いますが、私共は更に当時の私の氣持を説明いたしておきたいと思います。
 既に御承知の通りに、我が國の領土問題は、一に來るべき講和会議において、連合國の決定によつて定まることは、ポツダム宣言に明記してあります。ポツダム宣言の第八項は、日本國の主権は本州、北海道、九州及び四國並びに連合國の決定する諸々の小島に限局せらるべしと書いてあるのであります。從がつて今日のところ、いかに我が國の領土が決定せらるべきやは、一に講和会議の決定に待つほかはないのであります。御承知の通りに、我々日本國民は今日まで鋭意ポツダム宣言の履行に努めて参りまして、軍國主義を拂拭し、國内の民主化に鋭意努力して來たのであります。併しながら尚且つ北海道及び九州の周辺においては、本國政府との連絡を断たれておる諸島があることは、これも御承知の通りであります。從がつて我が本國と文化的にも歴史的にも経済的にも殆ど一体をなすこれらの諸島の帰属に対しては、連合國も過去の宣言等に鑑みて、必ず我々に好意的な決定をされるのであろうということは、期待いたして間違いないと思うのであります。(拍手)(「その通り」と呼ぶ者あり)我々再生日本の國民が今日において他國の領土を侵略するが如きことは、夢想だもしてないということは、これはなん人も明言し得るところであると思うのであります。(拍手)それと同時に我々が祖先より受け継いだ國土を愛するという精神は、日本國民は捨てた覚えはありません。(拍手)(「その通り」と呼ぶ者あり)簡單にお答えいたします。(拍手)
   〔國務大臣米窪滿亮君登壇〕
#29
○國務大臣(米窪滿亮君) 世界労連のことについて細川さんからの御質問にお答えします。細川さん仰せの如く、日本の問題は日本人が決すべきである。又日本の労働問題についてはやはり労働者の自主性に待つのが当然だと私は考えるのでございまして、日本の労働者が世界労連に加盟する、或いはこれと連絡を取りたいという將來のことについては、政府は‥‥これから先は私の私見でございまするが、恐らく政府といえどもこれに対してなんらの條件を附けるということもないだろうと思うのでございます。世界労連がフアシズム反対、戰爭反対、世界の労働者の團結及び労働者の社会的経済的の向上ということを目標としておる。そのプラツトホオームに実際において誤りがなかつたならば、私の過去の経験から言いまして、いささか世界の労働運動に関係しておつた私の体驗から言いまして、これは日本の労働者がその教養を昂める上においても、その識見を高く持ち、その限界を廣くする意味において、私はこれは決して惡いことじやない、望ましいことだと考えておるのでございます。更に然らば世界労連が本年チエツコスロバキヤのプラーグにおいて大会を開いたときに、日本の全労連にオブザーバーを送つてくれということがあつたときに、なぜ政府が骨を折らなかつたかという趣旨のお尋ねであつたと思いますが、これは片山内閣がまだできない前のことでありまして、聞くところによるというと、日本の今日の現状において、世界ともまだ正式に通信連絡交通ができない今日において、パスポートが與えられなかつたことが主なる理由でありまして、その他の点において政府がなんらこれに対して積極的な意思を表示したことはないと私考えております。簡單ながら御返答いたします。(拍手)
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#30
○國務大臣(和田博雄君) 簡單にお答えいたします。今度の経済緊急対策は、私が屡々御説明いたしましたように、決して一部の独占資本家のためにあの政策をやるのではございませんで、今の日本をあなたのおつしやいますように、自力を以て立ち止りまするためには、皆國民が一つになつてこの危機を突破するために、あの政策をやろうというのでございまして、私共はやはりそれだけの氣魄を以てこの政策を実行に移したいと、かように考えております。(拍手)
   〔國務大臣森戸辰男君登壇〕
#31
○國務大臣(森戸辰男君) 細川君にお答えいたします。(「簡單々々」と呼ぶ者あり)長い間大原社会問題研究所の同僚であり、社会問題の権威でありまする細川君の御質問に対して敬意を以て承りました。細川君が今日の時代を憂慮すべき時代であるけれども、又正しい政策が必要であるけれども、九五%の働く者の民主主義が実現されなければならんと言われたことは誠に御同感であります。ただこれに到る政策については、私共いろいろと見解を異にいたすのであります。私に当てられた質問の一つは、日本の民主主義文化促進のための出版及び通信の自由に関してであります。これらにつきましては、民主主義文化の発展のためには、これらの自由が十分に達成されなければならんということはもとよりでございます。ただ今日の日本の置かれている事情から考えまして、完全な自由が得られていないという事態がありまして、これも亦いろいろな通信その他の事情を考えまして、私共は忍ばなければならんところがあるのではないかと存じます。
 第二の点は、片山内閣は共産主義とは一線を画すというようなことが言われているが、どういうことであるかということでありまして、これは共産主義の理論的のいろいろなことを私云々いたすのではなくて、現実の日本の現状の認識、又これに対する具体的の対策について、共産党の方々と我々と違うところが存在するのではないか。これは昨日私衆議院で徳田君のお話を承わり、今日細川君のお話を承わりましたが、このお話を聽きまして、その感をいよいよ深くいたしたのであります。(拍手)その点では現内閣が共産主義と一線を画するといたしたことは、これは当然であると考えているのであります。(拍手)、(「自由主義と一緒だよ」と呼ぶ者あり)尚共産主義に反対ということは、これは労働者に反対であり、農民に反対であり、商工業者に反対であり、人民に反対であるというお言葉でございましたけれども、私は必ずしもそう存じておりません。過般の選挙等の結果を見まするというと、むしろ逆のことが言われるとさえも私は考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)こういう意味におきまして、私共は現実の事態に即して、いわゆる細川君の言われた九五%の働く大衆の意思を表現するような民主主義の政治を、出來るだけ早く日本に実現したいという熱意を持つていることを申上げて、お答えに代えたいと存ずるのであります。(拍手)
#32
○北條秀一君 本日の残余の質疑は、これを七月七日に延期し、本日はこれにて延会されんことの動議を提出いたします。
#33
○天田勝正君 只今の北條君の動議に賛成いたします。
   〔「賛成々々」と呼ぶ者あり〕
#34
○議長(松平恒雄君) 北條君の動議に御異議はございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明後七日午前十時より開会いたします。議事日程は公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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