くにさくロゴ
1947/07/07 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第13号
姉妹サイト
 
1947/07/07 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第13号

#1
第001回国会 本会議 第13号
昭和二十二年七月七日(月曜日)
   午前十時八分
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第十二号
  昭和二十二年七月七日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第六日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件、第六日、これより通告順により質疑を許します。伊東隆治君。
   〔伊東隆治君登壇、(拍手)〕
#4
○伊東隆治君 先ず最初に片山首相に対しまして質問いたしたいのでありますが、首相が不幸にいたしまして出席できない事情にありますことは、誠に遺憾に存ずる次第であります。併しこの点に関しましては、西尾官房長官、國務大臣より御説明を願いたいと思うのであります。と申しますのは、高度民主主義体制の意義について特に伺いたいからであります。先般片山首相の施政方針演説の中におきまして最も首相が力を盡しました点は、高度民主主義体制の確立についてであります。而してこの高度民主主義体制の説明をするに当りまして、片山首相はかく述べておられます。西洋文明はキリスト教文明、ギリシア文明、及び近代科学の集積である。而して自分がここに高調するところの高度民主主義なるものは、この集積に基ずくものであると切言せられてあるのであります。これを言いかえますならば、片山首相が政治、経済、社会各方面に滲透せんとするところのこのイデオロギーは、西洋文明のみを基礎として、ここに宣傳、強化しようとするやに承わるのであります。これがために自由党の一松君、又共産党の細川君が先般來この点にも一言触れられたのには私も同感であるのであります。近衞、東條内閣が東洋思想のみを根柢といたしまして、新体制なるものを打ち立てましてやりました結果が今日の過誤を來たしておる。行過ぎたる思想、主義、行動というものが常に國を誤まつたり、又は過誤に陥ることは我々既に経験しておるわけであるのであります。恐らくはこの片山内閣は、そういう行過ぎたる主義の下に政策を立て、実行するのだとは思わないのでありますが、と申しますのは四派の協定政策があり、又少くとも我が民主党はこれに強力に参加し、芦田総裁以下これに参画いたしておるのでありまして、片山内閣そのものが今後の政策について行過ぎたる政策を行うものだとは、私信ずるものではありませんけれども、施政方針等の基調を流れる思想といたしまして、高度民主主義体制をここに打ち立てられまする片山首相の政治理念、哲学、フイロソフイーに対しましては、一言これを明確にして戴かないことには、私共民主党におきましても、強力に心から協力することができないような氣がいたす次第であります。この点に関しまして首相がおられないのは誠に遺憾でありますが、西尾國務大臣より詳細明確に御答弁を願いたいと思うのであります。又施政方針を述べられる前提といたしまして述べられておりまするもう一つの点は、暴力政治を廃止する。暴力による政治行動を廃止するということを強調しておる点であります。私はこの演説を拜聽いたしまして、何が故に片山首相は殊更に今日暴力政治を廃止することを強調せられるのであるか。暴力政治なるものがここに芽生えておるのか。或いは又或る程度進んでおるのであるか。この点を非常に我々は不可思議に思つたのであります。成るほど二年前我々が敗戰の経験をいたしましたときに、國民は虚脱的状態にありました。各方面におきまして、或いは暴力政治がここに横行するのではないかという懸念を抱いたことは事実であります。併しその後の経過を知つておる我々は、何もここに暴力による政治行動が行われんとしておるということは感じないのであります。この施政方針の冒頭におきまして、この点を又強調せられるゆえんはいかなる次第でありますか。この点についてお伺いいたしたいと思うのであります。
 次に片山首相の施政方針に関する演説、並びに和田長官の経済緊急対策に関しまする御演説を聽きまして、私共のひとしく感じますことは、これらの政策の中になんらの焦点がないということであります。政策の羅列であり、列挙であり、なんらの焦点がない。毒が全身に廻つておる。この全身に廻つた毒にいかなる妙薬を盛ればこの毒が消えるのであるか。いかなる所を切断すればこの命を救えるのであるかという焦点も示していないのは、誠に遺憾に思うのであります。手も切らなければならない。足も切らなければならない。耳も切り落さなければこの人は助からないというような説明の仕方でありまして、我々國民は、いかにしてこの難局を政府は打開せんとする自信を以て進まれるのであるかにつきまして、甚だ危惧の念に襲われておるのであります。過去四日の間、私共は熱心にここに集まりまして、熱心に國務大臣諸公の御答弁を拜聽いたしたのでありますが、誠に一二の大臣の例外的説明を除きまして、大体において私共失望せざるを得なかつた。これは私一人の感じではなくて、議員我々一同の感じであつたように感ずるのであります。
 然らばこの私の意見を簡單に申述べさして戴きますならば、今日の情勢を救うのには、私はただ國際問題との関連において解決するのでなければ、到底その目的は達成しないと信ずるのであります。國内には打つべき手は既に打ち盡しております。又打たんとしておるのでありまして、國内的には全く行詰つておるのであります。どうしてもこの難局を打開するのには、外部から差伸べられたる手により、注射により、手術によつてこれを切開するのでなければ、普通一般のいわゆる行政作文、作文行政を以てしては到底この難局は打開できないと思うのであります。外國貿易が近附いたということを政府も申しております。又片山首相の演説におきましても、講和條約の締結の一日も早くあらんことを望んで、経済界の回復を望んでおらるるのでありますが、この國際問題と、最も今日我我の緊急な問題としておる所のこの食糧輸入の問題とに関して、なんら具体的計画を示されなかつたということは、誠に遺憾に思うのであります。私たち先般平野農林大臣より、審さに現在の食糧事情の逼迫しておる事情を拜聽いたしました。その熱心なる御説明に対しましては、我々一同誠に感銘いたした次第でありますが、先般の二合五勺の配給が三つもの大きな假定の上にできておつたということを、寡聞なる私は今更のごとく承知するに至りまして、全く唖然たらざるを得なかつたのであります。かくのごとき三つの大きな前提を、而も輸入食糧によるか、供出量が一〇四%昨年度に比してあるとか、色々そういうその実現に極めて困難を来たすべき事項を大前提といたしまして、あの二合五勺の配給を打ち立てられ、一時我々を糠喜びさせたということは、誠に私共唖然たらざるを得ない。これは恐らく……本日和田國務大臣が出席しておられんのは、誠に又……いや失礼いたしました。(笑声)和田國務大臣が農林大臣時代にこの二合五勺の配給問題は御決定になつたように記憶いたしておるのであります。その和田農林大臣が今日あの重大なる安本長官として、今日の経済難局を打開せんとせらるる最も重要なる職責に就いておらるるに至りましては、私はここに何も國務大臣に対して異議があるのではありませんが、深甚なる反省をして戴きたいと思うのである。(拍手)この二合五勺の配給はかくのごとき実に砂上の楼閣のごとき基礎に立つた制度でありましたが、恐らく今度の経済緊急対策なるものもかくのごときものではありはしないかというような、私共非常なる懸念を抱くのであります。この点について明確に和田長官がお示し下さるならば、私共誠に欣幸に存ずる次第でございます。ついでに食糧問題に関しましても平野農相は、外國貿易との関係においてこれこれの輸出をやり、これこれの計画の下にこれこれの輸入は、米國からの救援食糧としてではなくて、我々の賣つたお金で、我我の汗水を流したお金で買い得るのだという計画を何故我々に立てて戴けなかつたか。中野農相の結論は、要するに二十八日の欠配が七月以降十月に亘つて行われる。二十八日も飯も食糧も攝らずに人間が生きていけるわけはない。この困難な食糧情勢打開のためには、芋を以てこれを救援するのであるというのが要するに農林当局の唯一の解決案のように伺つたのでありまして、誠に心細い次第であります。少し横道にそれましたが、要するに施政方針なるものは焦点がなく、実に羅列的であるということは誠に遺憾とするところでありまして、私は只今申しましたような理由によりまして、どうしても今日の難局を打開するのには國際問題との関連において問題を解決するのでなければ、到底困難であるということをここに再び強調いたしたいのであります。そこで最近石炭及び鉄を中心とする傾斜生産、傾斜生産の言葉が熟して参つたようでありますからして、私はここに政府に対しまして國際問題と関連する政策を重点とする傾斜政策を行なつて戴きたい。この傾斜政策以外に今日の情勢を救済する途はここにないということを切言するゆえんであります。
 とにかく我々の日本人は、日本國は海に阻まれまして、國際的訓練において欠けるところがあるのは無理のないことではありますが、いかにも國際問題ということはよその問題のごとく、我々の生活とは別に離れた一つの問題のごとくに思われて來ておりますことは、今後の新日本建設に最も大きな障碍を來たすことと思うのであります。殊に連合軍に対しまして或る種のお願い、陳情をすることは誠に怖いもののごとく感じている。かくのごときことは、我々が将來連合軍の各員と兄弟分になつて対等の立場に立つてこの國際文化の進展に協力することを阻むことになりまして、私共は戦争をしたときには敵意を以て当つたのでありますが、ここに降伏をいたしました以上、我々は連合軍にいかなる処置をとられるに当りましても、決して文句を言うのではないのでありますが、我々日本が最小限度に生きんとする要求に対しましては、これを連合國側にお願いするのに決して躊躇してはならないと思うのであります。曾て私共が皇室に関することを申しますというと、事苟くも皇室に関することだということで我々の口は封じられた。今日我々が連合軍に対して色々な注文を申したいとなりますと、事苟くも連合軍に関することであるし、又無条件降伏をしたのであるから、ここに黙つて、いかなることをされようとも黙つているべきだということを申すのであります。黙つて義務に服し、営々とその義務の履行に盡すことは勿論でありますが、今後我々が世界の一員として協力するに当りましては、連合軍と密接なる連絡をとり、積極的にこれに協力して、日本が今後いかにして生くべきかについて話を十分遂げるべきであると私は信ずるのであります。この意味におきまして政府当局におきましては、なにとぞこの國際問題につきましてはこれを別個の問題のごとくに取扱わずに、これを國内問題の重要なる一部分として、この点に問題の重点を置いて連合國の指導協力を要請して、今日の難局打開にお努めあらんことを切に希望する次第であります。
 次に貿易再開を前にいたしまして、二三の具体的問題につきまして質問をいたしたいと存ずるのであります。貿易を開始いたしまするに当りましては色々の準備が必要だと思います。國内的の準備と國際的の準備が必要だと思うのであります。國内的の準備といたしましては先ず輸出産業を整備しなければなりますまい。曾ては繊維品が我が國輸出の大宗でありましたけれども、今日においては繊維品は輸出の大宗とはなり得ないことは御承知の通りでありますし、又雑貨が将來輸出の大宗をなすものとしますれば、その雑貨のそれぞれについてその準備段階を政府は研究し、又産業の整理をすべきだと思うのでありますし、又輸出の品物の柄につきましても、いずれの方面を対象としたる商品の柄を選ぶべきかにつきましても十分の研究を必要とすべきものだと思うのであります。この商品の柄について一言意見を申しますならば、八月十五日よりいよいよ民間貿易が始まりますならば、先ず我々は東洋諸國に物を売つて、そのお金で値の高いアメリカのいろいろの食糧品を主とする品物を買うことにならうかと思いますが、これら東洋の諸國は米國に対しては輸入超過の國であります。支拂勘定になつておる國であります。従つてドル爲替の手形が少ない。ドル爲替の少ない國に対して我々が品物を輸出しますれば、高いドル爲替を買うて輸入に充てなければならない不便があるのでありますが、アメリカに対して受取勘定になつております。たとへば南米のごとき方面に我々が品物を輸出しますならば、ドル爲替の多分の持ち合せがあり、ドル爲替を手に入れるのに決して支障は來たさないようなわけでありまして、輸出をするに当りましても、いかなる方面に輸出をした方が今後の輸入を容易ならしめるかについて重点をおいて考慮すべきだと思います。曾ての我が國の貿易は輸出一方でありまして、輸入のごときものは全く放任されておつたのでありますが、今度の外國貿易は、いかなるものを輸入すべきかについて第一義に考えて輸出をするという、主客顛倒した貿易だと思いますので、輸入をするのに対しまして便宜なる方面に輸出して、これが支拂を円滑にしなければならんと思うような次第でありまして、かくのごときいろいろの國内的整備をすべき点に関しまして、商工大臣はいかなる施策をしておらるるかにつきましてお尋ねいたしたいのであります。
 次に國際的に準備をすべき点に関しましても一、二に止まらないのでありまして、例えば爲替の水準を決定すべき問題、又通貨及び金融に関する有名なるブレトン・ウッドの協定機構に入らなければ、貿易の輸出入勘定の円滑な運営はできないということやら、又國際商業会議所のメンバーになることにより受けるべき諸種の利益やら、又進んでは外交の輸入問題につきましても、これらの問題をとり上げましても、国際的にいろいろ準備を進め、これらの機構に入るべき國内体制を整えて行かなければならんと思うような次第でありますが、これらに対しまして政府当局はいかなる準備をいたしておりますか。この点に関しましてお伺いいたしたいのであります。
 次に平和條約に関連します一、二の問題につきまして御質問いたしたいのであります。平和條約の前提條件といたしましては、日本が非軍事化することと民主化せらるることが前提條件であることは、ここに申すまでもありません。日本が実際に非軍事化せられ、又民主化されたという信用が連合國側になき限り、平和條約はいくら我々が要求しても必ずこれを達成し得ないのであります。その意味におきまして非軍事化、民主化につきましては、終戰以來我が政府が鋭意これに努めておらるることは、私共國民誠に感謝しておる次第でありまして、今度の内閣におきましては、特に平和條約が間近に迫つておりまする関係からして、特にこの二点に関しましては力を注いでおることは、私共承知して誠に意を強うしておる次第でありまするが、この基礎的準備の外に、政府はなんらか外に準備を進めておられるのでありましようか、この点に関しましてお伺いいたしたいのであります。私といたしましては別段これに対する意見はないのでありまするが、お伺いいたしたいのであります。
 いずれの平和條約におきましても取扱はれる二つの大きな問題は、賠償に関する問題と、領土に関する問題であります。賠償に関するに問題しましては、終戦以來新聞紙上においていろいろの責任ある地位にある人々の談話、談片を新聞紙上において散見するのでありますが、これを生産賠償にした方がいいとか、施設賠償にした方がむしろ永続的に監視せられなくていいとか、いろいろの議論が新聞において散見しますが、私はここに生産賠償を主張するとか、施設賠償をお願いするようにいたしたいとか、そういうようなことを申すのではありません。唯賠償の実施に当りまして、いろいろの問題と衝突が來ないかという点についてお伺いいたしたいのであります。御承知の通り、三割取立てがここに近く実施せられることは御承知の通りであります。この三割賠償の実施に当りましても、これが解体、梱包、輸送等に関しましては、実は莫大な費用と労力が残るのでありまして、特に輸送の点において私共は非常な懸念を持つ。石炭、鉄を中心としてのいわゆる傾斜生産なるものが、この賠償の実施に当つて或いは齟齬を來たしはしないか、先程和田國務大臣に対しまして一言申上げました通り、今度の緊急経済対策もこの賠償物件の解体、梱包、輸送ということと十分結び付けて、これとの調整を図つてお立てになつたのであるか、これが又二合五勺の配給のごときものであるといたしましならば、誠に私共は、國民一同は非常なる又迷惑を來たすと思うのであります。この点に関しましてお伺いいたしたいのであります。
 次に領土に関する問題でありますが、領土に関する問題に関しましては、この議場におきましても一、二回質問があつたのでありますが、これに対しまして芦田外務大臣より明確なる御答弁がありましたので、私はここに繰り返して述べる気持はないのでありますけれども、特にこの問題に関しまして、また国民の一部に十分納得の行かない点がありはしないかという懸念を持ちますが故に、ここに一言質問と申しますか、左程強い質問ではありませんが、芦田外相のもう一度この点に関しまするお言葉を我々は要求するのであります。芦田外務大臣と外人新聞記者團との会見におきまして、千島及び南西諸島問題が取上げられましたときに、私共國民は非常なる感謝を持つてあの記事を読んだのであります。然るにいかがいたしたことか、國民の一部には、その反響につきまして、諸外國の一部におきまして或るニユースがキヤーリーせられて参つたことに対しまして、あれは時期を得なかつたことであるとか、ああいうことをいつては却つてよろしくなかつたとか、或いは進んで領土的野心を表明したものだとかいうに至りましては、私共誠に驚かざるを得ない。領土的野心とは、他人の領土を侵略することを考えることは野心でありましようが、何千年と我が國に平穏無事に不可分的関係において属しておりましたこれら大事な諸島を、できますことならば平和会議において我々日本に有利に決定して戴きたいものだという表明を、外務大臣がなさることについて、なんの異議を差挾むべき筋があるのでありましようか、私は國民的意思の表現といたしまして、この議場におきまして芦田外務大臣のあの表明に関しましては、國民の殆んどすべては感謝しておるのである。(拍手)ということを強くここに申し述べたいと思うのであります。もとよりこの領土の決定に関しましては、ポツダム宣言の十一條に明確に規定してあるのでありまして、これが決定は一に連合國側の意思によるものでありまして、連合國側がいかなる目的にこれらの島嶼を使用せらるるとも、私共はこれに対してなんらの異議を申すのではありませんけれども、これらの島嶼の人々と、住民と、日本本土の住民との間の文化的関係、経済的関係なるものは、從前同様に又は從前以上に、密接にこれを継続せしめるような政策を取つて戴きましたならば、幸甚の至りだと存じておるような次第であります。この点に関しまして芦田外相が今一度この問題に言及して戴くことを希望するものであります。
 時間がだんだん差迫りますので、十分述べることはできませんが、次に外交の民主化について一言いたしたいことは、今日は外交の民主化を高調すべき時期は既に去つておるのでありまして、即ち秘密外交打倒、民主外交確立というがごときことは既に時期を過ぎておるのでありまして、いかにすれば外交の民主化ができるか、いかにすれば外交事務を担当しておる外務省と國民との間に血のつながりを持ち得る組織を作り得るか、又いかにすれば國民全体が國際知識を十分取り、又國際問題の研究に便宜を得て國際情勢に明るくなるかという点について問題があるのみだと思うのであります。これらの諸点に関しまして、民主主義に徹底したる我が芦田外務大臣の方針を聽きたいのであります。
 尚一言ここに、國内問題ではありますが、実に我が日本の國運に関する重要なる問題について、簡單に一言お伺いいたしたい点は、海運に関する点であります。先般船主協会の会長である自由党の板谷順助氏からの陳情書も私共受取りましたのでありますが、この海運の復興ということにつきましては、私共日本國民の最も関心を持つておるところでありまして、我が國は海で囲まれておるだけに、この海運の復興の如何が日本経済の成否に関する重大なる問題であるのであります。又今後日本が民主化せらるるにつきましても、この海運の復興が第一義だと思うのであります。と申しますのは、鉄道が國内の陸路の動脈であるがごとくに、船が我々世界の動脈であつて、この船が十分に使えなければ、彼我の文化の交流、彼我の物資の交流というものは円滑を欠くこと朗瞭であるのであります。近い例が、いかにタクシーがあろうと、又有力なる友がいつでも車を貸してくれるにしましても、自家用にはかなわない。我々が隣邦友邦からいかに船をチャーターいたしましても、我々自身が或る程度の船を持つていなければ、決して我が日本の経済は復興しないと思うのであります。曾て鉄道省に観光局が設けられまして、外人の誘致を志しまして著手したことは御承知の通りでありますが、その後の成績を見ますると、特に財政経済方面を見ますると、外人の落す金はホテルでなく、土産物シヨツプでなく、実に船であつたのであります。今後私共は輸出において、いろいろの点において故障がある。外國からの食糧の輸入、原料の輸入に当りましては、いろいろの方面にその財源を求めなければならんのでありますが、特にこの海運、船舶業からのいわゆる貿易外收入を十分考慮するのでなければ、我々の食糧問題も確保せられないと信ずる次第でもあります。先程申しました日本の民主化につきましても、國際化につきましても、海運が第一だと思うのでありますからして、この海運の復興につきましては、來るべき平和会議又現在におきましても連合國側と積極的に協力いたしまして、日本の民主化のために深甚なる考慮を拂われんことを希望する次第であります。私の質問はこれを以て終ります。(拍手)
   〔國務大臣西尾末廣君登壇〕
#5
○國務大臣(西尾末廣君) 片山総理が微恙のために欠席いたしておりますので、御指名によりまして私から代つてお答えいたします。
 高度民主主義と総理がいわれましたことは、民主主義とは單に政治上の民主主義のみならず、経済上の民主主義、即ち産業民主主義、又文化の上においても國民生活の上においても民主主義を徹底しなければならん、更に又國際間においても民主主義を徹底せしめねばならん、こういうふうに各方面に亙つた民主主義を徹底的に徹底させる、こういう意味であると思うのであります。即ち別言いたしますれば、社会民主主義と人道主義と合理主義を包括するもつと高いところの民主主義、こういうふうに総理は理解しておると考えられるのであります。
 次に暴力政治云々といわれたのは、今日尚そういう危險があつていわれたのであるかどうかという御質問でありますが、今日直ちに暴力によつて政変を起そうとする勢力があるとは考えられないのでありますけれども、民主主義をこの際に徹底さすことなくしては、将來そういう暴力によつて政府を顛覆しよう、政権を獲得しようとする考え方が起るかもしれないということについて今の中に十分たる注意をして置かねばならんという心構であろうと思うのであります。即ち暴力によつて政治を行うということは、必ずしも武力を以て政権を奪取するということのみに限らないのでありまして、時にゼネラル・ストライキをやつて、その大衆的圧力によつて政権を奪取するというやり方も、いわゆる暴力政治の中に入ると思うのであります。(拍手)即ち國民にその政党の持つ主義政策を約束し、その約束によつて政党に投票が集まり、そうしてその政党の議員が國会に多数議席を持つということによつて政治を行うということの議会主義的の政治方法を否定し、若しくわこれに反対した、或いは直接行動によつて政変を起そうとする者は、すべて暴力政治の範疇に入ると考えるのであります。(「共産党然り」と呼ぶ者あり)そういう意味におきまして、今日においては或いは極右といい極左と称し、尚その危險なしとしないのであります。それ故に片山総理は暴力政治は排すると、かようにいわれたと私は解釈しておるのであります。以上お答え申上げます。(拍手)
   〔國務大臣和田博雄君登壇〕
#6
○國務大臣(和田博雄君) お答えいたします。第一点は今度の経済緊急対策は、項目の羅列であつて焦点がない。今少しく世界の経済との関連性を考えて、貿易或いはクレジツトの問題をいうべきではないか、こういうお話でありますが、我々としましては経済緊急対策は今の日本の置かれております地位を十分に考え、世界の経済との繋がりも十分に考えた案であります。只伊東さんと意見の違うところは、伊東さんはもう國内においては盡すべき手はすべて打つちやつた。だから要するに外國の方の援助を仰ぐのが筋道ではないかとおつしやるのでありますが、我々の考では、まだ日本の國内において打つべき手を打ち盡しておるのではなくして、外國の援助を仰ぐべく國内の態勢を先ず整える必要がある、從つて國内態勢が整わないうちに仮りにクレジツトを得たとしましても、それが最も必要な方面において使われるという保障はないのであります。國内の態勢を整えるということが延いては外國の援助を仰ぐ捷径であると、かように考えておることだけを御了承を御願いいたしたいと思います。
 第二点は二合五勺の配給量の引上げについての御注意でありましたが、あの当時日本の米作が豊作であり、國民が五月の食種メーデーを頂点といたしまして、二合一勺の基準においてはとても喰つて行けない。食糧の増配を澎湃として冀求する声が揚がつて来たのであります。併し食糧の事情は、日本の食糧需給を考えて見ます時に、米麦その他将來日本における生産にかかつておる部分と、輸入にかかつておる部分と、いわば計画を立てる上におきましては、未知の部分があることは止むを得ないのであります。従いましてあの当時の声は恐らく皆さん方の中にも叫んだ人もあると思うのでありますが、三合にしろという声が一般であつたと思ひます。誰一人として二合五勺にしろという人はなかつたと私は記憶しております。従いましてあの時の事情を勘案いたしまして、殊に日本に対するアメリカ側の輿論もそうよくはなかつた時期において、連合軍側の非常な好意によりまして我々と十分に打合せをいたしたわけであります。併し政策は要するに目標を立てる場合には、努力の部分が入つて來ることをお認めを願わなければならんと思うのであります。従いまして二合五勺の基準量の引上げは、一面においては未知の部分もありまするが、一面においてはやはり相当の努力を必要とするのでありまして、私は少くとも在任中はその努力をいたしたいと思うのであります。私の在任中にはこれは一日の欠配も遅配もなかつたことは御了承をお願いいたしたいと思うのであります。
   〔國務大臣芦田均君登壇〕
#7
○國務大臣(芦田均君) 只今伊東君より、多年にわたる御体験と、該博なる知識を基礎として種々御質疑があり、御意見の開陳がございました。私に対する質疑の條項は相当項目が多いのでありまして、詳細にお答をすることは他日委員会その他の機会に讓ることにいたしまして、簡單にその主なる項目についてお答をいたして置きたいと思います。
 その問題のうちの最も重要な点は平和條約の問題であります。講和会議を一日も速かに開催せられたいという点は、我々國民等しく待望するところでありまして、幸いに連合國最高司令官の最近の声明によりますれば、連合國側においても速やかに対日講和条約を論議する時期に到達したという意味の発表が行われており、又海外情報によれば、イギリス政府筋においてもほぼこれと同様の見解であるとも承つております。我々はこの日を待望して終戰以來熱心にポツダム宣言の履行に努力し、國内の民主化に力めて来たのでありまして、我が國が現在の経済危機を突破して、日本を再建するためにはなんとしても現在のごとき精神的、経済的封鎖状態が一日も早く解消せられることが先決問題であると信じております。恐らく連合國側においてもこれらの事情は漸次了解せられつつあるものと考えられますけれども、帰するところこの時期がいつ頃になるかということは、連合國側における諸般の事情ともあることでありましよう。又これに対應する我々日本國民としても、その平和的、文化的再建に対する心構、その心構を裏附けすべき事実、行動、これらの問題がどの程度まで早く世界の平和愛好國に了解せられるかという問題がかなり重要な鍵になつておると思います。それらの点に鑑がみまして、政府は講和会議が速やかに開催せられるように、各般の準備を進めつつあるということは、今日ここにお話申上げることができますが、その具体的の項目については暫らく発表することを差控えたいと存じております。
 次に領土問題に関する御意見の発表がありました。この点は先般本議場において、細川君よりの質疑に対してお答えを申上げて置いたのでありますが、今日更にこの点を繰返してお答えする煩を省きたいと思います。
 尚外交の民主化についてどういう方策を持つておるかという御質問でありました。この点については、先般羽仁君よりの外交の民主化、祕密外交の打破、國民外交の対立等についての御質疑がありました際に、一應私の見解をお答えして置いたのでありますが、具体的に申せば、外交の民主化については独り政府のみならず、國民全般の努力に俟つべき点が頗ぶる多いと考えるのでありまして、過去数十年の我々國民の足取りを靜かに反省して見る時に、いかに我々國民が外交に関する詳細なる事実を承知する機会を妨げられておつたか、又極端なる宣傳によつてこれらの事実がいかに歪められて國民の耳目に映つておつたかという点は、皆さんも疾に御承知の通りであります。幸いに今日は言論の自由が保障され、日本の政治が民主化せられたのでありますから、これを如害する要素は除かれたと思いますけれども、それと同時に我々國民も靜かに反省して、國民自体が自主性を取り返すこと、我々が靜かに自分の判断によつて、みずからの進むべき道ははつきりと見つめて、而もその意見を勇氣を以て堂々とこれを國民に訴える(拍手)という、國民の市民的勇氣と申しますか、日常生活における良心的な勇氣を持つにあらずんば、政治の論議は公正に行うことができない。従つて外交の民主化についても、我々国民全体の教養を高めると同時に、この市民的勇氣を一層養なうことが根本の問題であると我々共は感じております。そういう点において政府が努力すべき点は十分に今後力めて行きたい。かように感じておる次第であります。
 最後に国際問題を十分に重要視して、國内問題の解決にこれを敢行しなければならないという御意見でありました。この点も全く同感であります。我が國の國内問題は、すべて國際問題と密接不可分の連関を持つておることは、食糧問題にいたしましても、産業再建の問題にいたしましても、國際関係を離れてこれを解決することは不可能の状態にあります。又精神的にも我我の國家が民主的、文化的な國家となるためには、日本が世界の國家の一人のメンバーとして國際間に信用を回復するにあらずんば、今後の日本再建は極めて困難であることも既に御承知の通りであります。既に新憲法においては、その前文において御承知の通り、「人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」と憲法に書いてあります。そうして「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」認めてあるのでありまして、伊東君が今日御質疑になりました諸点並びにその御意見は、帰するところこれらの点に準拠してお述べになつたものと了承いたしております。我々も亦この方針に基ずいて、極力その全力を盡したいと考えておる次第であります。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#8
○國務大臣(栗栖赳夫君) 伊東君の御質問中大藏省に関係する貿易金融の疏通という点につきまして、簡單に御答弁いたしたいと思います。大体貿易につきまして短期の運轉資金の金融につきましては、從來貿易手形制度、紡績加工賃手形制度等のものがあつたのでございますけれども、今回貿易公團が発足いたしましたので、これが不適当になりました。そこで政府は日本銀行と密接な連絡の下に、先日発表いたしました貿易スタンプ手形制度を定め、これを即日実行いたしておる次第であります。この手形は御案内の通り、公團から業者に対して加工その他の注文がありました場合に、その写しを添えまして金融機関に資金の融通を受けることになります。金融機関は必要があれば日本銀行にスタンプ貿易手形というスタンプの押捺を求めるのでありまして、そういたして置きますれば、金融機関が資金の必要があつた場合には、日本銀行にそれを持ち込みまして、国債等を担保とする手形の最低日歩を以て資金の融通を受けることができるような仕組になつたものであります。この制度を関係官廳その他とも連絡の上極力應用いたして行きたいと、こう考えておる次第であります。荷貿易向けの設備、貿易向けの品物を作る設備につきましては、資金の必要があつた場合には、市中銀行でできる場合は、市中銀行を以て、又市中銀行でできない場合には復興金融金庫を以てこの資金の融通をいたしたいと考えるのでありまして、それがために資金の融資をする順序等をも繰り上げる等を考えておる次第であります。尚外資輸入の点がございましたが、これは和田國務大臣より答弁のありました通りであります。尚大藏省の所管といたしましては関税問題があるのでありますが、これは内外諸般の事情をも見極めた上でなければ決りませんので、目下研究中でございます。(拍手)
   〔國務大臣水谷長三郎君登壇〕
#9
○國務大臣(水谷長三郎君) 只今伊東さんから貿易問題に関して種々有益なる御意見を承りましたが、この貿易問題に関しましては、その一部の考えは先に木村議員の御質問に対して御答えした通りでございます。即ち伊東さんも御承知の通りに、外國貿易代表團を迎えまして、近くいわゆる対日民間貿易が開始されることになつておりまするが、これは管理貿易の中で、商談が互いに民間業者相互の間に一定の制限の下に行われるということでございまして、眞の意味の貿易再開は講和会談後に初めて期待し得ると思う次第でございます。從つて今御質問の中にありましたドル資金を得る見地からも、南米向の輸出品を作るよう力を入れるべきであるかどうかという御質問、御趣旨極めて御尤もでございまして、将來南米向編輸出ができる状態に立ち至つたならば、大いにその方面に力を入れたいと、このように考えておる次第でございます。更に又今後の貿易は雑貨に重点を置くべきと考えるがどうかということでございますが、これもお説の通りでございまして、輸出産業の振興というものは、飽くまで中小企業の振興と結び付くべき問題でございまして、從つてその取扱い物品が雑貨に重点を置かれることになることはお説の通りであろうと思います。併しながら政府といたしましては、飽くまでもその輸出雑品は適品の生産に努力を加うべきでございまして、昔のように安かろう悪かろうというような雑品輸出は嚴に慎みたいと、このように考えておる次第でございます。更に又もう一点のクレジツトの問題に関しましては、これは和田長官のお答になつた通りでございますから、さよう御了承を願いたいと思います。(拍手)
   〔國務大臣苫米地義三君登壇〕
#10
○國務大臣(苫米地義三君) 伊東君の御質問の中私に関する点におきましてお答えをいたします。海運のことにつきましては、過日板谷議員の御質問に対しましてお答えいたしました通りでございますが、御承知のように現在の海運力は戰争の災害によりまして非常に輸送力を減退いたしておりまして、これを陸運の力に比較いたしますれば僅かに十分の一位になつておるのでございます。即ち鉄道輸送は年額一億万トン位の輸送力がありますのに対しまして、一ケ年一千万トン足らずの輸送力しかないという現状に落ち込んであるのでございます。從いまして御説のようにこの海運復興に対しましては、我が國といたしまして全力を傾注しなければならんと思うのでございます。現在資材不足の折柄ではございまするが、これに対しましてはあらん限りの施策を講じまして、努力を拂つておることを御了承願いたいと存じます。而してこの輸送力の減退に伴う費用が高く付きまするので、今回の物價施策におきましても、特に船に対しましては石炭を特別な價格を以て供給するというような助成策さえ講じておる次第でございまして、往時の三大海運國になるということは或いは遠いような時期になるかも知れませんが、我々はその当時の力をできるだけ早い機会に回復いたしまして、平和的な國際交通運輸の上に貢献したいと思うのでございます。
 それから、それに附随いたしまして日本の観光事業を考えなければならんという御説もございました。この観光事業につきましては、御話の通り我が國の秀麗なる自然美を生かしましてこれを内外の國に紹介し、併せて外客を誘致するということは、國際貸借の上から申しましても非常に重要な問題でございまして、從來運輸省内に観光局を置いてこの仕事に当つておつたのでございまするが戰争中にこれが縮小されまして、現在では観光課というものを設けまして、來るべきこの観光事業に対する色々な準備工作を進めておる次第でございます。無論観光の仕事は運輸省ばかりでなく、厚生省、内務省、文部省の関係がございまして、この頃屡々四相会談を開きまして、この観光事業に対する民間のそれぞれの関係團体と共に研究いたしておる次第でございまして、或いは観光局を作るか、或いは観光院というようなものを作りまして、将來我が國のこの観光の仕事を世界に紹介するということは、非常に必要だと存ずるのであります。併せてお答えを申上げて置きます。(拍手)
#11
○議長(松平恒雄君) 羽仁君、河野君、細川君の質疑に対し、片山総理大臣が病気のため当分出席ありませんから、この際西尾國務大臣より代つて答弁がございます。西尾國務大臣。
   〔國務大臣西尾末廣君登壇〕
#12
○國務大臣(西尾末廣君) 先週の土曜日の細川君からの御質問に対しまして、片山総理に代りましてお答えいたします。細川君の御質問の第一は、戰争責任を追究して軍國主義思想の徹底的拂拭をなす意図はないか。こういうことでありまするが、言うまでもなく政府は戰争責任の追究を徹底的にやろうと考えておるのであります。ただ併しながら徹底的というのもおのずから限度があるのでありまして、その限度をどこに置くかという所が問題なのであります。從來の政府においては、ややもすればその限度を誤まつて、連合國最高司令部の方からいろいろ不満の意思表示を受けるような嫌いがあつたのでありますが、現内閣といたしましては、戰争の責任は飽くまでも追究する。併しながらその限度は、再び日本に軍國主義の芽生えないように、戰争を計画する者ができて來ないように、同時に民主主義日本を再建するためにこの程度の人は残して貰いたいということの、それらの問題を勘案いたしまして、最も適当と思う所にその一線を引きたいと考えておるのであります。(拍手)又軍國主義の拂拭を徹底的にやれということは、お言葉の通りやろうと思つております。
 第二に片山総理がイギリスの労働党を兄貴のように言つたということは、一國の総理として不見識ではないかという御質問でありましたが、これは片山総理が曾て外人記者とお会いしたときに、社会党の中央執行委員長の資格においてプライベートの懇談をいたしたのであります。從つて党首としてではなく、執行委員の資格においてこれは申上げたのであります。御承知の如く、我が國の労働組合運動並びに無産政党運動というものは、我が國に最も早くより最も廣くイギリスの言葉が入つて來たという関係上、これらの文献は多く英語で書かれておりました関係上、イギリスの労働組合運動、イギリスの労働党の運動というものが最も廣く深く我が國に文献が入つて参りましたので、我が國の過去における一部の者を除くいわゆる堅実なる、穏健なる社会運動、労働滝運動は、概ねイギリスの文献、イギリスの経験を採り入れてやるということになつて來たのでありまして、唯その実感を片山総理が述べたのに過ぎないのでありますから、この点御了解を願いたいと思うのであります。
 第三に高度民主主義とは何かという御質問でありますが、これは先程伊東君にお答えいたしましたことによりまして御了承願いたいと思うのであります。
 その次には、この現政府のやり方は、安本長官の説明等を聞きますと、結局勤労者階級の犠牲の上に大資本家本位の産業再建を行わんとすることに外ならないではないか。社会党はその公約せる社会主義政策を放擲して自由党の陣営に顛落せんとするのではないか。こういう御質問でありますが、今日ポツダム宣言を受諾した関係上から言いましても、又既に財閥解体の指令が出て、現にそれが行われておる実情から考えましても、もはや日本においては、我々が余程無智でない限り、大資本家本位の産業が再建されるとは我我は考えていないのであります。併しこの点は重要な点でありまするから、現在までの財閥解体という程度に満足せず、更にこの財閥解体ということを徹底せしめるために、政府は今考慮を拂いつつあるのであります。この点を御了解願いたいと思うのであります。
 尚社会党のやり方がとかく自由党の線に顛落するのではないか、生ぬるいのではないかという御意見がありましたが、概ね細川君の論拠とされる点は、労働者階級の利害を忠実に実行しろ。むしろ労働者階級の利害のみを代表する立場に立つてものを言つておられるように我々は聞いたのでありますが、(「そんなことを言つておるのではない」と呼ぶ者あり)我が社会党においては、勿論勤労階級を重要なる党の基盤としておりまする関係上、勤労階級の利害をとり上げてこれを実際の上に現わして行くという上におきましては十分の力を盡すのでありまするけれども、併し今日の我が國の民族的な危機、この問題を我々は見逃していないのであります。我々は階級の利害を代表すると共に、民族全体のために我々が盡す。むしろ民族全体のためには勤労階級の犠牲も時には敢えて忍ぶという考え方を以てやらなければならんと考えておるのであります。(拍手)そういう我々の考え方に対する御理解が足らないために、以上のような誤解が行われておるのではないかと考えるのであります。又我が社会党のやり方というものは、決して実際に行われておる経済の実態を抽象的に判断したりしないで、これを事実として把握し、又この危機に処しまして、一時的にも余りにひどい生産の低下がないようにしたい。即ち漸進的に問題を解決して行きたいという立前を採つておりまするが故に、社会党が尚現在の状態の如く絶対多数党にならないという現状におきまして、今日の態度亦已むを得ないと我々は考えておるのであります。左様御承知を願います。(拍手)
#13
○議長(松平恒雄君) 穗積眞六郎君。
   〔穗積眞六郎君登壇〕
#14
○穗積眞六郎君 引揚に対しまする質問をいたしまするに際し、第一に伺いたいことは、何といたしても未帰還同胞の引揚促進の問題でございまするが、これに対しましては、先日來総理大臣並びに外務大臣より度重ねて必らず促進に努力するという御決意を承わつておりますので、これに関する質問を繰り返すことをいたしません。併しながら若し本年度中に全部の同胞が帰還することができないといたしましたならば、冬を越して来年になりますると、多くの人々が再びこの祖國の土を踏むことができなくなるのではないかということ考えますときに、総理大臣並びに外務大臣の深甚なる御努力を願う次第でございます。
  只今まで引揚げて参つておりまする人員は、五百五十万になつております。これが幸いにして全部これを引揚げることができました場合には、その数七百万を超えまして、國民の一割に達するのでございます。これらの人々の帰還の状況を見ますると、原則としては、ただ身に附けられるだけの荷物、現金一千円のみを持参することを許されまして、その他の財産は全部現地に放棄せしめられておるのでございます。甚だしきに至りましては、親を失ない、子を失ない、嚴寒二十余度のときに襦袢一枚、シャツ一枚で脱出して参る人が多いのでございます。こういう人々は、上陸地におきまして、政府並びに國民の温かき手によりまして、やつと着のみ着のままという状態まで戻れたのでございます。國民の一割に当る人々がこの有様で帰つて参つたのでありまするが、一昨年、昨年は、何と申しても國情かくのごとくでございましたので、引揚に対する関心は極めて薄く、政府のこれに対する施策も極めて不統一でございました。各省の連絡もとれず、その実行に至つても甚だ不徹底であつたのでございます。その結果といたしまして、引揚民としては、我々はこれ程苦しんでおるのに政府は何もして呉れないではないかという怨みを抱きます。政府といたしましては、この苦しい中にこれ程してやつておるのに、引揚者は我がままばかりを言うという感じを抱かれたのであろうと思います。これはお互いの立場に対する認識の不足から生じまする同情の欠如でございまして、政府も引揚者もお互いに大いに反省して行かなければならんと存じます。(拍手)この矛盾を拂拭いたしまして、引揚、復員というような過渡的情態を名実ともに解消いたしまするがためには、引揚者、戰災者の生活更生を目標といたしまして、各省の仕事を通じて一貫せる対策を作り、その実行の敏速確実を期して、戰争によりまする犠牲、負担の公平を図つて、且つ政府が今言つておられまする最低限度の生活に甘んじという、その最低限度の水準線までこれらの人の生活を引上ぐべきであると存じます。(拍手)この方策が確立いたしまして初めて八千万國民が一致協力して日本再建への堂々たる巨歩が踏み出せるものであると信ずるのでございます。(拍手)一体引揚者、復員者は、政府のこういう一貫した施策を受取りまして、これを基盤として更生への道をお互いに工夫して行くことにおいてのみ團結して行くことが、誠に結構なことだと存ずるのでございます。然るに若しこの團結がただ政府に要求することのみ多き状態に長く止つたというような結果でありまするならば、これは引揚者と國民一般との融和を欠いて参りまして、國家の将來に対しても禍根を残すのではないかということを憂えるのでございます。総理大臣は、引揚等、著しき戰争犠牲者の生活更正化のために特に一貫した計画を立て、引揚、復員の状態を速かに解消して下さる御意図があるのでございましようか。総理大臣御欠席でございますので、芦田外務大臣から御答弁戴きたいと存じます。(「もつと突つ込め」と呼ぶ者あり)
 次に只今懸案となつておりまする諸問題について質問をいたします。第一は在外財産の補償の問題でございます。先程申しました通り、在外者はすべての財産を現地に残して参つております。これの処置如何ということは、ただその財産に対する執着のみならず、みな今日の生活に困つております点から非常なる関心を持つております。これに対しまして、これが賠償の補償になる、ならないというようなことを超越いたしましても、この財産に対しては或る程度政府が補償する責任があると存ずるのでございます。(拍手)(「そうだ」と呼ぶ者あり)今日のところこれに対しましては、いかに伺いましても政策は決らず、政府においてもいろいろに考えておられるようでございますが、お示しを得ませんのでございます。この機会において大藏大臣よりこの点についての明快なる御答弁が戴きたいと存じます。(拍手)
 次に同胞救援借入金の問題について伺います。終戰と何時に政府機関の機能が停止いたしましたので、在留民は止むなくみな團結して、自治を以て生命の保全、財産の確保並びに送還等の問題をこの二年に亙つてやつて参つたのでございます。併しかかる援護團体に財産のあるべき筈はございませんので、これに要した費用はすべて在留民の間から借り上げて使つたのでございます。借り上げ名義といたしましては、政府の官憲の名義であつたところがございます。又帰つて参りましたならば必ず政府が支拂うという約束の下に借りた所もございます。併しこのことなくしても、政府がやるべき仕事を代行したこれらの機関の借り上げた金については、その責任は政府が負うべきは当然のことでございます。(拍手)これに対して今日までなんらの処置を承つておらないのでございますが、これについて外務大臣から伺いたいと存じます。
 次に就業、就労の問題について伺います。外地の只今までの状態は、御存じの如く日本の縮図でございまして、その職業も、官吏から農工商、すべて順序よく揃つておつたのでございます。例を挙げますれば、鉄道だけでも二十三万という人を擁しておりましたが、こういう人たち数百万が一度に職を失つて日本に帰つて参つたのでございます。これに対する方策として、先日こういう人々は政府が特殊な産業を興してこれの方に振り向けるというのも一方法だというふうに伺つたのでございますけれども、これも結構でございます。併しながらこの幾百万の中には非常に各階級に対するエキスパートも含んでおります。こういう人たちは、帰つて参つてもやはり現地でやつて参つた職業に就かしむることが、その人のためのみならず、日本再建の上に非常に必要であるという人々が各方面にございます。併し今の日本の状態は、すべての所が職員の過剰に苦しんでおります。從つて労働組合、職員組合との折り合いというものはこれは非常にむつかしい問題でございます。これは政府が何とかここに施策を施して下さいまして、そうしてこの祈り合いをよくし、多くの人はやはりそういう本当の職業に従事することができるようにして戴く必要があると存ずるのでございます。むつかしいだけにこれは政府において深甚に考えて戴く必要があると存じます。どうぞこの点についての御意見を承りたいと存じます。
 次に就農、農地の問題でございます。未墾地の開拓については先般千田君からの御意見がございましたが、外地で一物もなくなつて帰つて参りました地主が、農地調整法の結果といたしまして、本土においては不在地主としてすべての土地を取上げられこの法の適用の理論はいかがとして、実際はこれはぐんぐんと起つておるのでございます。遂に何一つないという所まで落ち込まされなければ済まないようなことになつております。これは外地に出ましたことが、若し悪いことでないといたしまするならば政府はこれで晏如としてはいるべきではないと存じます。この点について農林大臣に承りたいのでございますが、御出席ございませんから、これは或る機会に伺いたいと存ずるのでございます。
 次に生業資金の問題でございます。こういうふうに帰つて参りました幾百万の人達は、新たに長き生活に從事するために仕事を始めなければなりません。これに対する資金はどうしても、決してこれは消極的な資金でないだけに、多く出してやつて戴く必要があるのでございます。然るに只今生業資金として考えられておるのは十億円でございます。而もこの十億が非常に順序よくは出ません。いろいろ引つかかり引つかかりして、やつとこの間になつて十億すつかり出たという程度でございます。これでは決して幾百万の人の生業を復活さすことはできないのでございます。そうして今日に至つてもその余において一億五千万の計画きりできていないという話でございます。丁度昨年この十億円を二十五億に増額して戴きたいという要求をいたしたときに、時を同じくして官吏の増俸二十五億はすらすらと通つたのでございます。(拍手)然るに引揚者に対する十億円の生業資金はその後今年の三月に至りまして八億で停滯してしまいました。やつと皆さんのお力で十億を復活したという状況になつております。これに対して引揚者は、非常に引揚者のために考えること薄しとして或る忿懣を感じてまでおるのでございます。この点についても極力生業資金を殖やして戴きたいと共に、この点に関する厚生大臣の御意見を承りたいと存じます。
 最後に住宅の問題を伺いますが、これはただ引揚者だけの問題でなく、戰災者としてもすべてが苦しんでおることでございますし、そうしてこの住居の安定というものを最小限度にでも得ませんときには、決して國民としての氣力も活動もできないということは御説明申す必要のないところでございます。早く住宅についての問題を解決して戴きたい。この点につきまして厚生大臣に御答弁を願いたいと存ずるのでございます。只今までの施策はこういうふうに並べましただけでも沢山ございますが、これがよく五指の交々彈くは一手の搏つに如かずということを申しますが、只今までの施策はこの五つの指も或いは動いていないのもあり、働いた指でもただ軽くさわつたくらいのところきり行つていないのであります。從つて私は最初に申上げましたように、引揚者の生活更生を目途といたしまして、一貫せる政策を立てて、一見の下に引揚、復員というような過渡的の状態を拂いのけて戴きたいということを切にお願いいたす次第でございます。これを以つて私の質問を終ります。(拍手)
   〔細川嘉六君発言の許可を求む〕
   〔國務大臣芦田均君登壇〕
#15
○國務大臣(芦田均君) お答えいたします。穂積君は長く朝鮮に御在住でありまして、我が不幸なる同胞引揚のために最後まで踏み止まつて援護の手を伸べられた貴重たる体験を持つておられます。私は引揚問題が始まつた当時、厚生省に責任者として残つておつた人でありまして、この問題につきましては引揚開始当時より多大の関心を抱いて今日に至つた一人であります。從つて穂積君のお話になつた諸点、その背景となつておる御感情は私には実によく分ります。併しながらこの際特に御了承を願いたいと思う点が二三ありますことは、先ず第一の点は、この席において詳細に説明を申上げることを差控えなければならん点でありますが、海外引揚民に対する政府の援護は、國内における生活困窮者以上の水準には出ることができないという一つの枠が嵌まつている。(拍手)これが第一点であります。第二は、戰災者並びに軍需補償打切りによつて犠牲を拂つた人人、或いは將來賠償物資の撤去によつて蒙むるべき犠牲者、これらとの権衡を考えて、著しく権衡を失するような方策を取ることに政府が多大の困難を持つているという点であります。更に第三の点は、誠に平凡な話ではありますけれども、この七百万人に上る不幸なる同胞を救うのには誰がその犠牲を拂うか、即ち國家財政、國民経済の現在の状況に照し合はして、誰がこの犠牲を多く拂うように方策を取るべきであるかという実際上の財政経済の問題、こういう幾多の枠が現存しているという事実だけは御了承を仰いで置きたいと思うのであります。個々の御質問につきまして、在外資産の問題が取上げられたのでありまするが、これも穗積君恐らく御研究済みのことと思います。在外資産に対して將来連合國との間にいかなる処置を講ずべきであるか、前回の第一回世界大戦の例に照らして考えましたならば、若し同じような原則が來たるべき講和條約においても採用せられると仮定するならば、恐らく我々同胞の引揚げた人々の持つておつた在外資産は、賠償物資として連合國側の勘定に繰り入れられる、その賠償に充当された個人の資産については、日本政府の責任において補償を與えるか與えないかを決定すべきであるということになると一應想像されるのであります。若しそうであるとするならば、今後起るべき賠償撤去の際に、その受けたる個人の損害をいかにして補償すべきか否かという問題と密接不可分な問題になつて來るのであります。そういう意味において、今日直ちに海外在留同胞の在外資産の問題を解決することに困難が横たわつているという点を御了承願いたいと思います。第三に援護資金の借入の問題、この問題は幣原内閣当時から起つておつた問題であります。吉田内閣においても同じ問題に逢著をいたしました。そうしてこの内閣に引継いでいる問題であります。当時関係筋の了解を得て、できるならば日本國内より引揚に必要とする資金をも送りたいと考えた時代もあります。又海外において救援のために支出されたる資金は他日國内においてこれを返還しようという案を考えた時代もあります。ところが第一の問題は種種な制約によつて実行することができなかつたのであります。第二の案は爲替管理法の問題等とからみ合いまして、これも政府が立案したる案を直ちに実行に移すことができない状態に立ち至つたのでありまして、荏苒今日に至つておることは、当時の事情を承知している私共といたしましても、誠に不本意千万に感じているのでありますが、この点は公平の見地からいたしましても、いずれの日にか満足な解決をしなければならない問題と信じておりますが、(「早くやつて下さい、早く」と呼ぶ者あり)恐らく平和條約の締結以後に至らなければ解決ができないのではないかと惧れている次第であります。それから第四と申しますか、引揚者に対する職業補導の点はほそぼそながら職業補導に対する施設を拡充いたしまして、今日それぞれ努力をいたしておりますが、恐らく詳細のことは厚生大臣より答弁されることと考えます。又生業資金の問題もこれと一括して厚生大臣より答弁されることと思います。
 で、斯様な答弁をいたしまして、決して引揚者諸君が満足を感ぜられるとは私は考え得ません。誠に不満足な答弁であります。併しながら政府に立つている者が引揚者諸君の申し分がいかにも正しい、正当であるということを重々承知しながらそれに報ゆる方法を立てることができないという苦しみは、御了承を願いたいと思います。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#16
○國務大臣(栗栖赳夫君) 穂積さんの在外引揚者、在外財産の補償問題について御答えいたしたいと思うのであります。私も多数の友人の中に多数の引揚者を持つておりますし、しかも兄弟その他にもそういう者があるのでございまして、そのお心の中は深く御同情申し上げたいと思うのであります。その在外財産の補償の問題につきましても、心から御同情申し上げたいと思うのでありますが、只今芦田外務大臣から御答えがありましたように、この問題はなかなかむずかしい問題であり、殊に内外諸般の複雑な事情にもからみつかれているものであります。戰災或いは軍需補償の打切り、或いは將來來たるべき賠償物資の撤去に対する補償というものと均衡をも得させ、且つ又財政負担能力の範囲においても、これを考えなければならないのでありますから、極力善処はいたしたいと思いますけれども、只今引揚者の御満足になるようなお答えがここでできないのをお許しを願いたいと思うのでございます。(拍手)
   〔國務大臣一松定吉君登壇〕
#17
○國務大臣(一松定吉君) 穂積議員の私に対する御質問にお答え申上げます。先ずこの海外引揚者に対するところの生業貸金は潤沢にこれを支給してやらなければ、これらの更正の途を講ずることはできないのではないかという御質問は御尤もであります。これらの諸君が祖國を離れて多年海外の第一線において活躍し、相当の財産を拵えた人々が、敗戰の結果それらの土地を引揚げて祖國に帰つて、そのときに僅か一千円の金を持たせられて、内地に著いたときにはもうその金は殆んどない。そうして生業資金を得ようと思つても十分の賛否が手に入らない。住まおうと思つても十分の邸宅は支給せられない。こういうことでありますれば、眞にこれらの人々に対しては同情に堪えません。穗積さんの言われるように、國家が救いの手を伸ばさないことによつて、これらの人々は國家の施策に対して呪いの声を発するのであろうというようなことは御尤もなのです。これらの点に鑑がみまして、引揚者の諸君に対しては、最初三千円という生業資金を差上げることにしておつたのでありますが、それではどうもなににするだけの値打もないということで、その後これを五千円に引上げましたことは御承知の通りである。ところが五千円ぐらいの金ではこれ亦なんの役にも立たないということが、今日我が経済の情勢から見まして当然のことでありますので、いろいろこれには相談を持ち掛けまして、これらの方が連帶して、そうしてこれらの政府からの給與を受けました金を集結して、これに依つて生業資金を得るというような方法をいま講ずるように極力努力をいたしておるのであります。生業資金の実際の貸付は連帶貸付というような方法によりまして、七八万から五六十万円ぐらいの貸出をいたしておるのでありますから、こういうような金を適当に運営いたしますれば、必ずしも窮屈にはなつていないように考えるのでありまするが、併しこれでも尚足りないということでありましようから、丁度お示しのごとく昨年十億という予算を取り、これに又本年十六億の予算を取りまして、今尚六億円ばかりの未放資の金が残つておりますから、こういうような金を適当に正しい生業に向つて放資するという考を持つておるのであります。こういうようにいたしまして、尚且つ生活資金が足りないとかいうようなことでありますれば、法律上定められた資格において、生活保護法の規定をこれに準用することも必ずしも不当ではないのであります。そういうような金はお示しのごとく三十六億円という予算があるのでありますから、こういう方面からもこれを活用いたしまして、でき得べき限りの手を差し伸べまして、これらの憐れな引揚者の皆さんに対して國家の救いの手を伸ばしたいと考えておるのであります。
 それから引揚者のその次に困ります問題は住宅の問題であります。自分が故國に帰りまして、親族故旧の家に寄寓をしておりましても、僅か十日や二十日間ぐらいの間は温かい待遇を受けることでありましようが、日にちの延びるに從つていろいろな事情のために白眼視されて、到底こういうような家に同居はできないというような人々が、家を求めるけれども求める家がない。非常に住宅に困つておられるというのが今日の実情であります。丁度戰災復興院の二万七千戸の建設や、富裕邸宅の開放において一万四千戸ばかりの人をこれに收容することができ、且つ一万六千戸ばかりのものを合せまして厚生省の集團收容の施設五万三千戸を加えまして、百十万戸ぐらいの人はいま收容いたしておるのでありますけれども、尚三百何十万人というような人々の收客が不足しておるというような実情であります。これらに対しましては、急速にこれを救助しなければならんというような考で、戰災復興院の一般住宅対策と相俟ちまして我が厚生省におきましても、北海道において樺太から引揚げまする二万五千人を收容するための集團施設の住宅を拵えるべく着手いたしております。この以外の各地におきましてもこれと同様の施設をいたしまして、これらの同情すべき人々の住宅難を緩和いたしたいと、かように考えておる次第でございます。左様御承知を願いたいのであります。その以外の失業問題に対しまするいろいろな諸施設は、米窪國務大臣からお答えすることになつております。左様御了承を賜はります。(拍手)
   〔國務大臣米窪滿亮君登壇〕
#18
○國務大臣(米窪滿亮君) 穗積さんの御質問であるところの引揚者の職業を求める問題についてお答えいたします。大体失業対策については、この前一般問題としてその対策については御説明申上げた通りでございまするが、昨年の十月、公共事業がいよいよ実施されるときに、これの原則として失業者の優先雇傭という原則が採用されまして、その方針は直ちに各関係者に示達をされまして、公共職業安定所が中心となつて、極力その方針に副うために努力して参つたことは御承知のことだと思うのでございます。苟くも労働の意思と能力のある者は、この間なんらの差別や区別をすることなく、公平にこの公共職業安定所において求職の途を講じて参つたのでございまして、地方廳においては、失業者に関しては各公共事業関係者から組織されましたところの委員会に、引揚者の失業者を代表する方が入つておるのでございまして、從つてこの委員会においてなるべく多くの引揚者であつて、且つ失業者の方を吸收するように努力しておるのでございます。これだけでは穂積さんの御希望の引揚者あつて失業しておる人に対する特殊の失業対策というものは、御満足を得る程度に私答弁ができないのでございまするが、これについてはこれから先、私の私見でございまするが、講和会議が成立つ、講和会議に臨む政府の方針としては、引揚げて來た土地に再び還元し得るようなことを連合國に懇請することが一つの方法だろう。例えば外地において輸送、船舶のような場合において、外地に会社があつたところの船舶関係の人達が引揚げて來た者に対しては、その当該國と交渉して、そういう所へこの船舶の乗員なり或いは海運経営者を使用して貰う交渉をするということが、失職者に職を與える一つの方法になるだろう、これは一例を船舶に取りましたのでございますが、その他の技術方面等は、この賠償の物件の撤去ということと睨み合せて見まして、相当に技術者がそれらの國々において必要であると私は考えておるのであります。その意味において、そういうことに適当せる引揚の方については、そういう方法を以て失業救済をすることも一つの方法ではないかと考えております。以上を以て私の答弁に代える次第であります。(拍手)
   〔國務大臣西尾末廣君登壇〕
#19
○國務大臣(西尾末廣君) 先週の土曜日に羽仁君から片山総理に対して御質問があつたのに対しまして、私が代つてお答えいたします。残されておる総理に対する質問は、官僚主義、官僚統制の打破について御質問せられたのであります。尚これについて御意見といたしまして、これをするためには例えば先般経済の実相報告というものを安本長官から発表せられたのでありますが、かかるものをも國会から発表するようにするならば、もつと國民に與える印象は違つたものになりはしないか、從つてそういうことができるように、國会に大調査機関を持つようにしたらどうかという御意見と、もう一つは社会党が社会主義統制を大胆に強行したらどうか、そういうことによつてこれが打破できるのではないか。こういうような御意見であつたようであります。前段の、國会に完備せる調査機関を持つようにし、將來例えば経済実相報告というようなものが、國会から発表できるようにしたらどうかということにつきましては、全く同感でありまして、常任委員会の運用の一層これが理想的に行くようになり、又單に調査機関のみならず、政府が現在持つておりまする法制局のごときものも、國会が持つようにするようにしたいということも考えておるのでありまして、この点については全く御同感であります。(拍手)
 次に社会主義統制を大胆に強化したらどうかという御意見でありますが、この点についてはおのずから物事につきましては順序と程度があるのでありまして、これは我が片山内閣といたしましては、今後その順序及び程度につきましては適当に考えてやつて行きたいと思うのであります。
 尚その外に、現内閣におきましては、官界の刷新を図ることにつきまして、従来いろいろ研究を続けて來たのでありますが、その大綱は、今日午前の閣議にも諮つたのでありまして、近くこれは発表することになりますが、官界の刷新についても考えておるのであります。更にそれを強化するために監察制度を設けるということも考えております。その外にもつと根本的には、官僚機構を根本的に改めるということにつきましても研究いたしておるのでありますが、この最後のものは相当深く掘り下げたものでありまするがために、これがこの議会に提案されるような運びにはならないかと思いまするが、願上のような諸方策によりまして、お示しのような官僚主義及び官僚統制の打破につきましては、現内閣は熱心に努力いたしておるということを御了承願いたいと思うのであります。(拍手)
#20
○議長(松平恒雄君) 平野農林大臣に他日答弁がある筈でございます。
   〔細川嘉六君発言の許可を求む〕
#21
○議長(松平恒雄君) 細川君どういうことですか。
#22
○細川嘉六君 先週の土曜日に時間を留保しておきましたが……。(「議事進行」と呼ぶ者あり)私の演説に対する大臣方の御答弁については、十分なつておりませんから、私一言さして戴きます。
#23
○議長(松平恒雄君) 四分間まだ時間がございますから、その範囲内において簡單に、よろしうございます。
#24
○細川嘉六君 ではここから簡單に私は芦田外相に対して領土問題についてお尋ねしたのは、國民が領土についての愛著を特つておる。それを問題にしておるのであります。現在民主主義が徹底しておらない。侵略主義思想が多分にある。この現状においてこれをはつきりいうことは、これは誤解を招く、外國の誤解を招く。それより民主主義の徹底が先だということについての、私の芦田外相についての問題であります。それはお答えになつておりません。(「よく聞えません」と呼ぶ者あり)それから西尾國務相が首相に代つてお答えになりましたが、独裁も暴力も、何もそういう心配はない。それは誠に事実をよく現わされたことにおいて満足します。併し高度民主主義、それについて私は疑問を持つのであります。それは西尾君が單に言葉を繰返えされただけであります。働く者という言葉、それを西尾君は労働者ばかり……(「登壇」と呼ぶ者あり)これが既に間違つておる。働く者、國民の九五%の者が民主政治を行なうことが第一である。これを行わなければ民族的危機が本当に起る。それについての実際の政府の腹はどうだ。それを問うております。それで、このことは同時に西尾君が言われるような、ゼネストなんというものは、ただ起るものではない。誰もすき好んでやるものではない。政治において間違いがあるときにそれが起る。それは事実上及び論理の法であります。それであるから、私はそういう場合を恐れて、本当の働く者の民主政治についての質問をしておるのであります。それにお答がありません。(「簡單に願います」と呼ぶ者あり)それから和田安本長官も同様にこの点について何も答えておりません。それから西尾君が、社会党は社会主義を放棄していない、併しながらものには段階があると言つておられるが、段階はそれは無論ある。あるが、その段階において、社会主義は放棄されておらないということを示さなければならない。それについては非常な疑問がある。一体社会党を第一党とまでさせた多くの働いておる人間は、社会党のこの政策の変更について、そうして、段階とは言うが、その段階に或る程度の社会主義的方向があるかということについて、非常な疑いを持つておる。それについては何も語つておらない。それから(「簡單」「打ち切り」と呼ぶ者あり)森戸文相は、プロレタリア独裁だとか暴力革命だとか……
#25
○議長(松平恒雄君) 制限の時間が参りました。御注意いたします。
#26
○細川嘉六君(続) それでは……それについては選挙の結果を見ろと言われた。併しこれは詭弁である。選挙の結果をよくするためにこそ……共産党が暴力政治、独裁政治をやるんだという主張をなしたものである。実際の共産党の主張は、働く者の民主政治を平和的手段によつて行なうということしか主張しておらないし、又実際にそれ以上は……(「社会党の主張だよ」と呼ぶ者あり)。
#27
○議長(松平恒雄君) 細川君、時間が参りましたから、再度御注意いたします。――北條君より、成規の賛成を得て、質疑終局の動議が提出されております。北條君の質疑終局の動議に賛成の諸君の起立を願います。
   〔起立者多数〕
#28
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて質疑を終局することに決定いたしました。
#29
○議長(松平恒雄君) この際御報告をいたすことがございます。明後九日午前十時より自由討議の会議を開きます。この自由討議は、本院規則第百四十七條の規定による自由討議といたします。即ち討論ではございません。併しながら当日の発言は、先程内閣から発表せられました経済緊急対策の範囲に限るものといたします。尚会議時間は四時間とし、各発言者の発言時間は十分間といたします。――これにて議事日程は終了いたしましたが、会期の延期に関し議決をするため、この際午後一時まで休憩いたします。
   〔午後零時六分休憩〕
     ―――――・―――――
   〔午後一時十七分開議〕
#30
○議長(松平恒雄君) 休憩前に引続き会議を開きます。
 この際異議がなければ、議事日程に追加し、会期の延長の件についてお諮りをいたします。議長は、衆議院議長と協議の結果、國会の会期を八月三十一日まで五十四日間延長することに協定いたしました。議長が協定いたしました通りに決定することに御異議がございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつて会期は五十四日間延長することに決しました。明後九日の議事日程は公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト