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1949/08/08 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 考査特別委員会 第33号
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1949/08/08 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 考査特別委員会 第33号

#1
第005回国会 考査特別委員会 第33号
昭和二十四年八月八日(月曜日)
    午前十一時三分開議
 出席委員
   委員長  鍛冶 良作君
   理事 大橋 武夫君 理事 小玉 治行君
   理事 高木 松吉君 理事 神山 茂夫君
      井手 光治君    石原 圓吉君
      石原  登君    宇田  恒君
      岡延右エ門君    菅家 喜六君
      中野 武雄君    中村  清君
      西村 直己君    畠山 鶴吉君
      福井  勇君    吉武 惠市君
      亘  四郎君    聽濤 克巳君
      寺本  齋君    石野 久男君
 委員外の出席者
        証     人
        (廣島縣知事) 楠瀬 常猪君
        証     人
        (國家地方警察
        廣島縣本部警察
        部長)     西村 伸一君
        証     人
        (廣島市警察局
        長)      上田 頼一君
        証     人
        (廣島市船越町
        警察署長)   三好 方時君
        証     人
        (日本共産党廣
        島縣委員会委員
        長)      徳毛 宜策君
八月八日
 委員小玉治行君、佐々木秀世君、塚原俊郎君、
 内藤隆君、永田節君、橋本登美三郎君及び玉井
 祐吉君辞任につき、その補欠として中野武雄君、
 畠山鶴吉君、石原登君、亘四郎君、中村清君、
 石原圓吉君及び石野久男君が議長の指名で委員
 に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 日本製鋼株式会社廣島製作所爭議事件に関する
 件
    ―――――――――――――
#2
○鍛冶委員長 これより会議を開きます。
 日本製鋼廣島製作所争議事件について調査を進めます。ではさつそく本件について証人より証言を求めることといたします。ただいまお見えになつておる証人は楠瀬常猪さん、西村伸一さん。
 証言を求める前に、各証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。
 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。
 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。楠瀬さん代表して読んでください。
    〔証人楠瀬常猪君各証人を代表して宣誓〕
#3
○鍛冶委員長 署名御捺印を願います。
    〔各証人宣誓書に署名捺印〕
#4
○鍛冶委員長 証言を求めます順序は楠瀬さん、それから西村さんといたしますから、西村さんはもう少しもとの控室でお待ちを願います。
    ―――――――――――――
#5
○鍛冶委員長 楠瀬常猪さんですか。
#6
○楠瀬證人 そうでございます。
#7
○鍛冶委員長 あなたは廣島縣知事をやつておいでのようですが、いつから縣知事になられましたか。
#8
○楠瀬證人 官選時代といたしまして昭和二十年の十月二十七日から、二十二年の三月十四日までであります。現在の民選知事といたしましては、昭和二十二年四月十六日から現存に至つております。
#9
○鍛冶委員長 あなたの管内における日本製鋼廣島製作所は賠償指定工場となつたようでありますが、どういう性質の賠償指定工場であつて、ことにこの責任はだれで、どういう範囲のものであるかをまず聞かしてもらいたい。
#10
○楠瀬證人 賠償指定工場の問題といたしまして、この日鋼廣島製作所は昭和二十一年の八月二十四日に指定になつておりますが、日鋼に限らず賠償指定工場につきましては、縣知事はその責任といたしまして、賠償関係の業務については、國の機関としての地位を持つておりまして、主務大臣の補助機関として保全、管理の責任を負つておるのであります。指定施設の管理要綱というのがありますが、これによりますと、地方長官は現地米軍指揮官より指示を受け、これと緊密なる連絡をとり、管下工場の管理を良好ならしめる責任を負うということになつております。
#11
○鍛冶委員長 それは工場全体に対してですね。
#12
○楠瀬證人 そうであります。
#13
○鍛冶委員長 本年の五月から廣島製作所で整理の問題に関して、相当紛争が起きたようでありますが、その紛争に対して、証人が直接陳情を受け、またはこれに折衝せられたことがあればその点を承りたいと思います。
#14
○楠瀬證人 証人はこの日鋼の廣島製作所の爭議の問題につきましては、直接に使用者または従業員方面から陳情または要求を聞いたことはありませんでした。
#15
○鍛冶委員長 何かそれでは自発的にやられたことはありませんか。
#16
○楠瀬證人 争議の問題として人員整理あるいは退職金の問題等について爭議があるということは聞いておつたのでありますが、自発的にみずからこれに介入をし、せわをするということはいたしておりません。
#17
○鍛冶委員長 ところが六月に入つてからいよいよ爭議が起こつたのですが、その爭議の起つたことに対して、証人として賠償物件の保全についてどんな措置をとられたでしよう。
#18
○楠瀬證人 爭議の発生、これは私の記憶によりますと、六月の初めからでありますが、その時分いろいろ調べさしたわけでありますが、使用者側の方から縣廳の担当方面に向いまして、事態は比較的平穏に進んでおつて、賠償施設の保全、管理については、大体遺憾のないような処置をとつておるというような次第であつたのであります。そして縣といたしましても注意を怠らなかつたわけでありますが、六月の七日ごろ会社幹部の方からこれまた係官の方へ状況の報告がありまして、係官の方からは賠償施設の保全、管理に万全を期するようにということを私の方から注意を與えたわけです。さらに係官が工場内に参りまして、指導監督という方面にもでき得る限り当つておつたというような状態であります。
#19
○鍛冶委員長 あなたは責任者ではあるが、その責任者の一つの仕事として、会社のだれかにもこれに対する保全について何か責任があつたのではないですか。
#20
○楠瀬證人 こういう問題が起きまして、從業員のみならず、もちろん工場担当管理者に対して、賠償施設の保全ということが重大な問題でありますので、注意を怠らなかつたわけでありますが、会社の方から賠償施設の保全、管理について遺憾のないようにするというお話がありましたので、なおつけ加えて係官を会社の方へ派しまして、縣知事においてそれぞれ指導監督に当つておつたのであります。
#21
○鍛冶委員長 そうじやないのです。私の聞くのは、あなたは直接の責任者ですが、あなたの責任をはたされるために、あなたの方の係官もおるのであろうし、それと同じに工場内においても何かの責任を持つた者が指定されておつたのではないか、こういうことを聞くのです。
#22
○楠瀬證人 賠償管理に当る責任を持つております係官が縣におります。それが随時工場に参りまして指導監督に当るということをやつておつたのです。
#23
○鍛冶委員長 工場内にはその責任者というものはおるのですか。
#24
○楠瀬證人 縣の係官としては常駐しておるということはいたしておりませんでした。
#25
○大橋委員 担当者は。
#26
○楠瀬證人 工場として管理担当者は工場経営者であります。
#27
○鍛冶委員長 あなたの方の係官が行かれると、その担当官と折衝せられるわけですね。
#28
○楠瀬證人 そうです。
#29
○鍛冶委員長 ところが六月十三日に至つて非常に爭議が激しくなつて來たので、この賠慣工場の保全管理のために工場閉鎖をしなければならぬというので閉鎖したようでありますが、それに対してあなたの方でどういう通知を受け、またそれに対してどういう見解をお持ちになつたかをお聞きしたい。
#30
○楠瀬證人 六月十四日の朝、工場閉鎖を工場経営者がいたしました事実については、私はあとになつて聞いたわけであります。その前から係官がすでに工場の方へ参つておるわけであります。従いまして、この賠償工場がいよいよ工場閉鎖をしたということになりますと、一層その賠慣施設の保全、管理については係官が注意をいたしまして、現場において指揮監督しておつたのでありますが、しかしながら廣島軍政部の方の係官がすでに現地におりまして、これは縣の方では静観しておれ、自分の方で十分指揮してやるからという趣旨のことを係官が言つておつたのであります。
#31
○鍛冶委員長 占領軍の方で指揮をすると言うのですか。
#32
○楠瀬證人 これは当時工場閉鎖に伴いまして、その事態を係官からも一部始終聞いて、また軍政部関係の方からも聞きました上から申しますと、工場の中が非常に秩序が混乱しているという状態で、工場施設の保全、管理上、工場閉鎖はやむを得ないといつたような行き方であるということを聞き、また私もそういう認識をしたのです。
#33
○鍛冶委員長 ところが閉鎖したる後、十四日に工場は爭議團によつて占拠せられたようでありまするが、それに対してあなたの方でどういう措置をとられたか、その点を詳細に承りたいと思います。
#34
○楠瀬證人 六月十四日の朝工場閉鎖をいたしたのでありますが、皆が入つて参りまして、そこに混乱が起きたわけでありまして、私といたしましては工場閉鎖をしたというような話を耳にいたして、ただちに縣の賠償課長等を現地に派遣したのでありますが、現場では廣島軍政部の指揮によつて、賠償施設の管理上の措置がとられておりまして、なお先ほど申しましたように、軍政部係官からは縣は静観しておれという指示を受けたという報告を受けたわけであります。さらに事態が混乱いたしましたので、軍政部係官が組合側に退去の命令を発しまして、組合側は一應半数ぐらいは出たそうでありますが、また入つて参つたという報告を受けたわけであります。そういつたのがこの工場閉鎖後の不法占拠の状況であります。
#35
○鍛冶委員長 よく問題になるのですが、今あなたのおつしやつた退去命令が出たというその形式はいわゆる命令というものですか、それともさしずとか好意の忠告とか、そのいずれに当つておつたものですか。
#36
○楠瀬證人 この軍の命令は一般命令といたしましてすでに昭和二十一年に日本政府に対しまして、賠償指定工場の覚書が連合軍から出ておりますが、それと並んで第八軍の作戰命令が軍政部に対して出ておるわけであります。その作戰命令が賠償施設の保全管理ということを内容としておるわけでありますが、それに基きまして廣島軍政部長が、今回廣島縣賠償指定工場の管理責任者でありますところの縣知事に対しで命令を発して参つたのであります。その命令は昭和二十四年六月十四日付でありますが、廣島軍政部長名をもつて廣島縣知事に対するものでありますが、今ここで申し上げますると、「廣島製鋼所について。第一、今日の日本製鋼所の状況について六月十四日の二度のわれわれの電話連絡を本信をもつて確かめる。
 第二、貴官に対する指示は貴官の管理下にある賠償工場から全員を退去させるに十分な警察力を動員して、全員を退去させた後許可なき人々を立ち入らせないように警備員を配置すること。警察の行動がないため過去四十八時間において混乱と騒乱が起きた。
 第三、工場は昨夜中経営者幹部によつて、無期限正式に閉鎖されたのであるから、工場内に立ち入りを許される者は管理者と賠償施設維持管理人のみである。
 第四、現在ほどんど外部の人から成り立つている約千六百名の人がいる。
 第五、貴官は自分に対し本状態を収拾し混乱と騒動を防ぐことを保証した。現在工場には名義上の管理人である経営者側の役員は一人もいない。
 第六、自分は本工場の施設に損傷が起らないよう監視するのは貴官の責任であることを繰返して言う。ジエームス・アール・トルーデン中佐」これは廣島軍政部において、先ほど申し上げました廣島作戰命令等に基きますところの根拠を持つており、これ自体が從つて命令であるという見解を持つておるわけであります。
#37
○鍛冶委員長 それは軍政部長からのあなたに対する命令ですか。先ほど工場内で出張しておつた軍政部員が命令を出されて、それによつて半数ほど出たが、また入つて来たと言われる。そのときの命令なるものは、やはり命令ですか。
#38
○楠瀬證人 これは現地における行動命令であろうと思います。
#39
○鍛冶委員長 行動ではあるが、いわゆる命令と見てよろしいものですか。
#40
○楠瀬證人 と私は解釈しております。
#41
○鍛冶委員長 そこであなたの方へそういう命令が出てから、どういうことをおやりになりましたか。
#42
○楠瀬證人 十四日の午後七時ごろであります。ただいまの命令書を軍政部から私は受取つたのであります。
#43
○鍛冶委員長 ちよつとその前に、その行動命令はだれとだれに発したかを御承知ではありませんか。
#44
○楠瀬證人 私は現場におりませんので、はつきりしたことは覚えておりませんが、想像するのに賠償施設の保全管理に当る者以外の退去を要求したものだと私は思つております。
#45
○鍛冶委員長 具体的に人間はわかりませんか。
#46
○楠瀬證人 わかりません。
#47
○鍛冶委員長 それじやあとを続けて下さい。
#48
○楠瀬證人 同日午後七時ごろです。廣島軍政部長からただいま申しましたような命令を受取つたわけでありまするが、この命令を何とかして工場に傳達をいたさなければならぬ。これは筋合といたしましては私が受けまして、それを工場の管理担当者でありまするところの工場経営者にそれを通達いたしまして、工場経営者からこれを工場内の全員に対しまして通達すべきでありまするが、そのときの状況といたしまして工場が非常に混乱をいたしておりまして、工場管理担当者に対しまして命令いたしましても、それを工場内に通達するだけのいわゆる履行能力がないといつたような事態になつておりましたので非常に苦心をいたしまして、その爭議團幹部にまず会見を申し込んだのでありまするが、これは拒絶せられたわけであります。次にこの賠償関係の所管部長に所管課長を伴わせまして、所管部長を私の代理といたしまして、二回にわたりまして現場に派遣いたしまして、退去命令を傳えまして文書を渡そうといたしたのでありまするが、これもいずれも拒否されたのであります。ただしその際二、三名の幹部の諸君には口頭をもつて傳えて参つたわけであります。そこで文書をもつて交付しようといたしたのでありまするが拒否されましたので、次には工場内におりました縣の係官に電話をもつて連絡をいたしまして、その退去要求を傳達しようといたしたわけでありますが、これまた拒否されたわけであります。そこで次には最後に工場近傍の高地から拡声機をもつて放送いたしまして、今の退去要求を傳達いたしたわけであります。この傳達の内容は十分に工場内の人々には聞き得たものと私は思つております。
#49
○鍛冶委員長 そこでその命令を通達しただけで出そうもなかつたので、あなたの力で相当準備をして強制立ちのきをやられたようですが、その点を順序立てて聞かしていただきたい。
#50
○楠瀬證人 縣の方におきましては私が賠償工場の管理責任者でありますので、ただいまの退去要求というものを軍の命令によりましてやむを得ず出すに至つたわけでありますが、今の命令の中にあります通り、これは私に対して下された命令ではありませんが、軍政部長の方から警察の方に向つてこの解散の要求に伴いまするところの、もしこれをきかない場合においては犯罪になるといつたような関係もありますので、警察側におきまして退去措置に伴うて種々の措置を講ぜられたようなわけであります。私の方は退去要求を工場管理担当者、保全要員以外の者についてなしたにとどまつたわけであります。
#51
○鍛冶委員長 それでは次に警察がどういうことでどうしたということを御承知でありましようか。御承知のことだけ聞かせていただけませんか。
#52
○楠瀬證人 私は内容的に承知しておりません。警察がいろいろ活動してやるということは想像できますけれども、どういう内容においてどうやるということは警察権の問題でありますので、私としては承知しておりません。
#53
○鍛冶委員長 爭議團ではそのやり方に対して不当彈圧があつたと称しておるのですが、これに対して何か御承知のことはありませんか。
#54
○楠瀬證人 この工場の退散要求の問題でありますが、大体元来御承知のように賠償工場というものが連合軍最高司令官によりまして、軍政部長の管理下にあつて、ここに入場しようとする者はすべて軍政部長の許可を要する。しかもその施設設備の保全警備については嚴重な命令が発せられておるようなわけでありまして、組合側におきましては今回の爭議ではなくて、過去の交渉におきましてすでに工場の管理担当者に対しまして誠意をもつて協力をして、保全業務に支障のないようにしよう、保全業務の阻害となるような言動は一切しないというようなことを確約しておることからいたしまして、賠償工場の重要性につきましては十分認識しておるものだと私は思つておるわけであります。しかもそういうような状態であるところへ持つて参りまして、今度軍政部長の命令によりまして退去要求が出たわけでありまするが、これにつきましては先ほども述べましたごとく、私といたしましては手をかえ品をかえでき得る限りの措置をとつた、そうしてこの退散要求を工場内の全員に対しまして通達をするという指置をとつたつもりであります。ことに再度の放送の場合におきましても、この退散要求は軍政部の命令によつて出ておるものであつて、もしもこれに從わなければ犯罪になるから十分そこを考えてやつてもらいたい。しかもこの退散要求というものが、決して正当なる労働爭議を彈圧するという趣旨ではないということも十分に書きまして、その趣旨を傳えておるようなわけでありまして、私といたしましてはあらゆる手段を盡してやつたと思います。この賠償施設の当時の状況といたしましては、ああいうふうにやらざるを得ない状態でありますので、決してその間不当なる彈圧を労働爭議に加えたものだという考えは持つておりません。
#55
○鍛冶委員長 ところが爭議團では六月十八日及び二十一日に日鋼事件眞相発表人民大会というものを開いて、その決議に基いて証人その他いろいろ要求して来たようでありまするが、どういう事実がございましたか。
#56
○楠瀬證人 この日鋼の組合を含んだいわゆる爭議團でありますが、これは日鋼防衞共同闘爭委員会であります。この委員会主催のいわゆる人民大会が六月十八日にまず行われまして、この十八日におきましては午前十一時ごろ廣島市において催されたわけでありますが、そのうち注目すべきものといたしまして十数項目決議をいたしております。その項目はたしか十二項目でありますが、警察予算の削減でありますとか、市会解散の要求でありますとか、民主人民政府の樹立といつたようなことを主といたしまして十二項目ばかりの決議をいたしております。
 それから第二には日鋼爭議というものが單なる爭議ではなくて、やはり政治的な意味を持つた戦いの前哨戰であるといつたようなことを強調されるような演説ないし提案が行われたことも聞いておりまするが、それから午後大会参加の大部分が廣島市役所に参りましていろいろ市の方に今申しました項につきしまして市と折衝したわけであります。縣の方には比較的に少数の人が参りまして警察力の問題、工場閉鎖命令の問題ということについてただしたわけであります。二十一日になりますと、今度は縣関係の力でありまして、ただいま申しました日鋼の共同闘爭委員会の主催のもとに人民大会を開きまして、知事、警察隊長に対しまする要求十六項目の決議を持つて参つたようなわけであります。十六項目の決議の内容は省略いたしますが、その項目の中でも不当彈圧反対、それから知事の責任の追究という上に重点が置かれまして、労資関係を以前の状態、つまり工場閉鎖の措置が出る前の状態に置いてくれということを迫りました。私といたしましては、この工場が混乱状態になりましたので、工場経営者の意思によりまして、爭議手段としての工場閉鎖が行われたのでありまするが、従いましてそのあと工場が混乱いたしましたので、全従業員が退散要求をせられるという事態になつたわけでありますが、でき得るならばこの爭議をすみやかに解決する、また賠償施設の管理保全ということに支障がなければ、すみやかに労資双方平等の立場において話合いの上で、この爭議を解決することが一番いいのじやないか、こう思いまして、私は工場内の施設の管理保全が保証されるならば、全從業員を工場閉鎖中といえども中に入れまして、労資双方の間で十分話合いをして、爭議を解決して行く方がいいというふうに考えておりました。そういうふうに最大の努力をしてやろうということを話したわけであります。そういう状況で、二十一日の大会は終りを告げたのであります。
#57
○鍛冶委員長 先ほど単なる爭議ではなくて、政治的意図をもつた闘爭だと言われましたが、その政治的意図とはいかなるものでありましたか。
#58
○楠瀬證人 私はその大会会場におりませんので、的確なことは具体的に聞いておりませんが、私どもの受けた報告によりますと、日鋼爭議は人民による革命の前哨線だということを強調して、政治労働戰線の統一を強調した演説等が行われたというような報告を受けております。
#59
○鍛冶委員長 それからこの申出によつて今あなたの工場内で交渉するようにとおつしやつたが、何かあなたに対して、工場再開を確約せいと言つて追つたので、あなたがそれに應ぜられたという説もあるのですが、この点はいかがですか。
#60
○楠瀬證人 これはあとになつておそらく爭議團が氣がついたことかと思うのですが、この工場閉鎖というものを軍政部ないしは縣知それ自体がやらせたというふうに――これは賠償指定工場でありますから、非常に関係が複雜であります。多少むりもない点があるのじやないかと思いますが、そういうふうに思つておつたという節が相当見えております。それからまた結局工場閉鎖はしたわけであります。そのあとの入場関係が軍政部関係でチエツクせられておりましたので、どうしても工場の中へ從業員を入れますためには、縣知の力をかりてでなければ入ることができないのだといつたような点を考えまして、どうしても工場閉鎖の解除を縣知の力によつて促進しようといつたような政治的な意図、そういう点もあつたように思うわけであります。両面があつたように私は思つております。
#61
○鍛冶委員長 そこで多数の威力をもつてあなたに再開するように迫つたというのはいかがですか。
#62
○楠瀬證人 工場再開ということは、非常に多数がけんけんごうごうとして要望しておつたわけであります。私は非常に心理的に根本から威圧を受けたといつたような感じは持つておりません。ただやかましく私に対して迫つて来たという事実は、当時認めております。心理的に非常に圧迫されたというとしろは、私はこの程度の問題では考えておりません。
#63
○鍛冶委員長 そこでその要求によつて工場再開を確約されたのですか。それとも先ほどおつしやつたように工場の中で平穏に交渉すればいいということを確約されたか、それはいずれでしたか。
#64
○楠瀬證人 当時の態度を表明した文句はたしかこうであります。縣知事は工場を再開してすみやかに千九百八十二名、すなわち当時の全從業員を工場内に入らしめるように、全生命を賭して努力しようという態度を持つておりました。
#65
○鍛冶委員長 それでは交渉でなくもどることの確約ですね。
#66
○楠瀬證人 もどるように最大の骨を折る……。
#67
○鍛冶委員長 それと、あなたと同様に警察隊長にもずいぶん迫つたということですが、その事実はいかがですか。
#68
○楠瀬證人 私と爭議團側との話が終りまして私は当時シヤウプ博士に会う約束がありまして、中座いたしましたので代表團と警察隊長に対する関係は存じません。
#69
○鍛冶委員長 それから数日にわたつて先ほどのお話のあつたような十八日、二十一日その他数日にわたつて縣会、縣廳、市役所それから附近町村等へずいぶんデモを行つておつたようでありますが、その点はいかがでありましたか。
#70
○楠瀬證人 六月十五日でありましたかちようど縣会を開いておりましたが、その廣島縣会に対しまして日鋼の組合側の方と連絡のありました議院から郷土産業防衞に関しまする決議案を発議したいといつたいろいろの運動があつたわけでありますが、これがその際に日鋼爭議の状況につきまして私から説明いたしましたあとで、今の決議案を動議として提案されたわけであります。そういつたものを成立させる時期にあらず、この点は日鋼と結びつけて考えることもどうかと思われるというので、縣会としてはその当時否決されたわけであります。廣島市会の方におきましては労働者の生活の擁護、郷土産業の再建のために知事並びに関係方面に市長から迅速円満な解決がなされるよう申入れをしてもらいたいという発議が採決決定されまして、市から私に連絡がありました。呉市におきましても六月二十二日、これは人民大会が開かれまして市役所、警察署、税務署等にデモ行進が行われたあとで、市会に対しましては早急に手をうつことを要求いたしまして、市会の方では協議会を開くことを確約いたしました、二十四日の市会において決議をいたしまして、その際相当数の傍聽が押しかけたのでありますが、その決議といたしましては、爭議の早期円満な解決を知事においてあつせんしてもらいたいということと、この日鋼の工場存置と作業開始についても善処してもらいたいというような内容を持つているわけであります。それから日鋼の附近の町村に対しましても示威の行われた点もあるわけでありまして、その附近の大体八箇町村だと思いますが、おおむね次に申し上げるような要求があつたと思います。それは主食の配給について賣掛りを認めてくれ、あるいは知事の言明の線に沿つて経営者側との会合をあつせんするように知事に申入れをしてもらいたい。それから休業中の手当を会社側から出すようにしてもらいたい。組合員の生活の扶助を考えてもらいたいというような諸点について要求をいたしまして、これらの要求は縣の方へも附近町村から持つて來たというような状況であります。
#71
○鍛冶委員長 そこであなたはこの問題を地方労働委員長へ調停、あつせんの要求をされたようでありまするが、これはどうしてそういうことになつたのでありますか。
#72
○楠瀬證人 この問題についてはおわかりになりますように、賠償所定工場の中に混乱状態が起きましたので、やむを得ず第三要求をいたしまして、しかもそれが入れられなかつたために警察権の発動をみたといつた状況でありますが、しかしこれとは区別いたしまして、これはあくまで労働爭議でありますので、私といたしましては当初から公の機関である地方労働委員会といつたような機関によつてこの問題、爭議を解決するのが本筋であるという考えを持つておつたわけであります。從いましてこの爭議それ自体につきましては早期に解決をはかるために、地労委のあつせんに移すようにすでに六月十七日に経営者、従業員双方に対しまして、そのことを公式に勧奨しております。その後も私といたしましては繰返しそのことを説得いたして参りました態度にきましては、一貫してかわらぬわけであります。ところで六月の二十八日になりまして組合側の方は、一方におきまして縣の方にあつせん方を労資双方でひとつ話をいたしたい、こういう考えをあつせんしてもらいたいということを依頼しておりますにかかわらず、直接に経営者側の方に話を持つて行つております。しかしながらそれまでの経過といたしましても、その後の経過といたしましても、双方の間で基本的の事項に話が最初から入つてしまう。從つて両方の間でもつて折衝するという糸口を見つけることすらも非常に困難な状態にあつたわけでありまするが、地方労働委員会におきましては、六月二十一日にすでにこの事柄については自分の方でひとつ世話をしたい、規定があればしてやればいいという万全の態勢を整えておるという声明を出しておりますので、私といたしましては早くに地労委へひとつ移したい。非常に骨を折つたわけでありまするが、ただいま申しましたように依然として基本事項が当初から双方の間に出て参りまして、解雇白紙還元の問題でありますとか、あるいは代表者の問題でありますとか、協約復活問題、あるいはこの交渉を両方でやつて参ります場合の一つのやり方といつた見通しもありましようが、そういつたいろいろな関係からいいましてなかなか地労委に移さないといつた状況で、いかに移すかということについて私ども苦心したわけでありまするが、七月に入りまして労資双方の間に地労委へ移す意思があるということがはつきりして参りましたので、その間移す前にさらに糸口をひとつ見つけて話をさせようといたしましたけれども、どうしてもそれがうまく参らないといつた状態が続きますので、これ以上事態を遷延いたしますと、事の処理を誤り、また諸般の情勢から見ましても早くひとつ公の機関の方へ移して問題の解決に当つた方がいいと考えましたので、七月九日に至りまして地労委へこれを移して、その世話を願うことにいたしたわけであります。
#73
○鍛冶委員長 今あなたのおつしやつた、そういつた経緯からであろうと思いますが、あなたは日本共産党廣島縣委員長の、徳毛宜策君に対してそのことを何か連絡されたことがあるそうですが、それはどういう目的でどんなことを連絡なさいましたか。
#74
○楠瀬證人 この爭議が今のような状態をたどつておつたということでありますが、共産党の徳毛君としては、この爭議をどういうふうに一体持つて行くつもりであるかということで、七月九日午前に私のところに來たのであります。私としては、本問題は政治的な問題として扱わないで、あくまで本筋の労働爭議の問題であるから、初めからこの問題は自分の見解通りに、本件を地方労働委員会に移すという考えをきめたからという話を徳毛君にしたわけであります。徳毛君はそのときに地労委は何しているんでしようか、こうなれば早く地労委の方に移さざるを得んのじやありませんかということを私に言いまして、そのときはそれで別れたのであります。地労委へ私の方から問題を移すということは、徳毛君もこうなつた以上は地労委に移さざるを得んじやないかと言つて、徳毛君は帰りました。
#75
○鍛冶委員長 徳毛氏に対しては、地労委へ移すということの意図を傳達せられたのですか。それとも地労委へ移すについて、同君の意見を探つてみるつもりであつたのですか。その点はどちらなのですか。
#76
○楠瀬證人 これは当時の私といたしまして、地労委に移すことにつきまして同君の意思を探ぐる意向は毛頭ありません。私は地労委に移すいよいよ具体的の決心を、徳毛君に表明したにとどまります。
#77
○鍛冶委員長 この爭議に当つて、産別、全労連、それから国警本部へ抗議文が提出されたということですが、その点は御承知でしようか。
#78
○楠瀬證人 抗議文提出の件は私は知りません。
#79
○鍛冶委員長 この爭議に対して産別、全労連というものは相当関係しておつたかいなか、この点は御承知になりませんか。
#80
○楠瀬證人 この日鋼労組が全金属廣島支部の日鋼分会ということになつておりまして、全労連の傘下にありますので、産別とも密接な連絡があつて、しかも菅産別議長も六月二十日でありますか廣島まで來ているといつたような状況でありますので、全労連、及び産別とは連絡があつたことと私は思います。
#81
○鍛冶委員長 ところが組合側からあなた外四名の人を告訴しておるそうですね。これはどういうことからでありましようか。組合側の松江、林、原田というような人々から……。
#82
○楠瀬證人 私はこれは新聞の記事で見たわけでありまするからはつきりはわかりませんが、何か職権濫用でありますとか、暴行といつたようなかどによつて私外三名が告訴を受けておるということを新聞で承知しております。
#83
○鍛冶委員長 どういう人々がどういうことからやつたかは御承知ないのですか。
#84
○楠瀬證人 新聞の記事によりますと共鬪委員長の松江澄君、それから日鋼分会の委員長であります林春一君、これが告訴人で、高橋弁護士外二名が何か代理人のようであります。被告訴人は知事、國警隊長、市の警察隊長、市の公安委員長、こうなつております。その範囲しか知りません。
#85
○鍛冶委員長 この爭議がこれほど大きくなつて廣島縣全円にわたつたと言つても過言でないようになつたのでありますが、それに対して現在の警察制度としてこれを未然に防ぐことは実際において行われなかつたのですか。いかがですか。
#86
○楠瀬證人 こういつた爭議を警察制度で未然に防ぐということは、現在の警察制度、あるいは警察の状態では私はできないと思うのであります。
#87
○鍛冶委員長 何かそれに対して御意見でもありますか。しいては何ですが。
#88
○楠瀬證人 これはその道の方で現在の時代に適しておるような制度の研究調査をしておられるというようなことを聞いておりますが、その方で十分時代に合つたようなことをひとつやつていただきたいと思います。
#89
○鍛冶委員長 なおこれに関しましてたいへん市民はもちろん近郷の人々は不安を感じたことであろうと思いまするが、その点はどのようなものであつて、今日はどういう状態になつておりましようか。
#90
○楠瀬證人 その問題は特にこの問題が起きました日鋼の所在地を中心として多少の影響と申しますかはあつたように私は観察いたしております。特に工場閉鎖命令がありまして、それが聞かれぬでやむなく警察権の実力行使というようなこともありまして、大したけが人もなく退散の事実ができたことは、不幸中の幸いであると私は思つております。しかし六月の十五日から十七日の夜、たしか午後七時であります、警察官が一齊に撤退したわけでありますが、その間十五、十六、十七日の三日間にわたつて組合あるいは爭議團の方と警察側とが何らかの形において対峙をしておつたといつたような情勢は現場を中心といたしまして、やはり民心に不安を與えておつたように私は思います。それから、特に十八日の人民大会の主催のもとにおける廣島市役所におきまする市の理事者、警察当局側との会見の際においても、市の警察局長がなぐられたといつたような事実、あるいは二十一日に縣に参りまする途中、廣島の東警察署のガラス窓に石等を投げて窓を破壊したといつたようなことにつきまして、これらはやはり警察力の威力と申しますか、あるいはこういう法秩序、社会秩序が守られないといつたような空氣、その氣持というものが、やはり市民に多少の不安の影響を與えておる、かように考えておるわけであります。
#91
○鍛冶委員長 なお廣島市は今平和都市として建設中でありまして、世界的に重大関心のある都市となつたと思いまするが、これに関しましても、いわゆる国際的にこの爭議がいかなる影響があつたか、お考えになつたことはありませんですか。
#92
○楠瀬證人 不幸にして日鋼の爭議に伴いまする工場閉鎖、從つてそのあとの秩序に基きまする退散要求といつたようなことで、ここに紛擾が起きたわけでありますが、これは事の内容は別といたしまして、こういうような紛擾が起きることにつきましては、特に縣の施設を預かる私といたしましても、また廣島平和記念都市の建設法が國会によつて通りまして、しかも七月七日の人民投票というような段取りになつておりまする場合に、この騒擾といつたようなことにつきましては、私初め一同が非常に心痛をし、考えたわけであります。その際私どもはいろいろ話もし、考えたのでありまするが、一体騒擾とかあるいは爭いというものは絶対になくなるといつたような状態において平和というものは考えられないのじやないか、それで平和というものについて私どもは一つ考えをはつきりまとめて、ここで出発しなければ、平和記念都市をせつかくつくつても意義をなさんじやないか、私どもがいろいろ政治をし、行政をし、あるいは経済をして行く場合に、その利害の衝突爭いといつたようなものは必ずある。この爭いをどういう方法で解決して行くかということに平和の基調があるんだ。その爭いを腕力や暴力によつて解決するというわけでなくて、これを法の秩序によつて、あくまで合理的な機関、合理的な方法によつて解決して行くという氣持を廣島の市民、あるいはもつと廣い意味で人民、住民が考えて行くというところに平和の基調がある。また国際的にもそういうところに基調を置かなければならぬということで、そこでこの廣島日鋼の製作所の問題につきましても、賠償施設の保全ということにつきましての保全の義務、また軍政部の命令、占領軍の命令ということについて、これを聞かない、これを守らぬ、そこに腕力や暴力というものが出て來るといつたようなおそれ、またそういう事実が出たからには、これはほんとうの平和という意味からいつて、やむを得ず退散要求を出す、また警察はその権限に從つて、この聞かれない場合に警察力を発効せざるを得なくなつたというのは、ほんとうに平和を維持し、これを守つて行くためのやむにやまれない手段であつて、この眞相を廣島市民、廣島縣民あるいは日本の全体にわたつて、あるいは国際的にわたつて知らされるならば、これは平和という見地から言つてもやむを得ざる方法である。むしろいい方法であるといつたことが肯定せられるものだというふうに私どもは考えまして、やむを得ずこういうような方法をとらざるを得なかつた。このことは眞相がわかるにつれまして各方面においてよく了解してくれております。事件が起りました当初におきましては、一部一方的な現場の考え方等もありましたろうし、いろいろの考え方からいたして誇大な報告、ないしは曲げられたる報告等もなきにしもあらずと思つたわけでありまするが、日を追うてこの眞相がわかるにつれまして、廣島の平和都市の上から言つてもやむにやまれずこういつた措置をとることは首肯できるのだ、よろしいといつたような輿論もいろいろ起きて支配しておるような関係でありますので、私どもといたしましてはこの平和都市の上から行きましても、今回の措置は適当なものだというふうに信じております。
#93
○鍛冶委員長 それではどうぞ。
#94
○高木委員 廣島縣には公安條例が公布されていますか。
#95
○楠瀬證人 公安條例は縣の條例ではありません。市の條例もありません。町村といたしましては、幸崎町に公安條例が出ております。それから竹原町が公安條例を町会において通過させたわけであります。そういつたような事情であります。
#96
○高木委員 そこではデモが行われておりましたか。
#97
○楠瀬證人 從來竹原町においては納税等の問題、あるいは脱法等の問題、あるいは町村長の選挙といつたような問題について、多少のデモはあつたように聞いております。
#98
○高木委員 これらのデモは届出をしてやつたと聞いておりますか。それとも無届けで違法のデモをやつたと聞いておりますか。
#99
○楠瀬證人 その事実は私は今存じません。
#100
○高木委員 よろしゆうございます。それから先ほど主食掛賣り鬪爭というものが行われていると言うが、それはどこか共産党の本部あたりからの指令でも出て、主食の掛賣り鬪爭をやつておつたような形勢がありましたか。
#101
○楠瀬證人 共産党の本部とか中心から出ておつたということは、私は確かめておりません。
#102
○高木委員 今回の爭議やデモが主として共産党員に指導されてやつておつたという事実は認められますか。
#103
○楠瀬證人 今回の爭議、鬪爭について、共産党が指導しておつたというような事実については、確かなことは知りませんが、事実その指導的方面に当つておつた人の中には、共産党員の諸君が多かつたことは認められます。
#104
○高木委員 そこで爭議及びデモの前後に共産党の首脳部が廣島を中心にして相当行つておられるようだが、その具体的の事実を承認しておりますか。
#105
○楠瀬證人 爭議のいわゆる十四日、あれは十一、十二、十三、こういつた工場閉鎖前後の状態でありますが、私といたしましては十四日の工場閉鎖前に共産党の幹部諸君が東京等から廣島へ來て、いろいろやつたということは私自身は知りません。
#106
○高木委員 報告を受けたことはありますか。
#107
○楠瀬證人 報告も私は知りません。そのあとにおきまして、工場閉鎖後共産党の代議士諸君が廣島へ來られて、私に面会せられたという事実はあります。
#108
○高木委員 廣島縣一般縣民、主として廣島市民を中心にして共産党が暴力革命を近いうちに指導してやるのだというようなことによつて不安状態を起しておるような事実はありませんか。
#109
○楠瀬證人 この爭議中に工場閉鎖が実現をしなければ実力行使に出るもやむを得ぬ。またこの日鋼爭議が不当彈圧であつて、こういうような状況であれば縣下の全産業をストに陥れる、あるいは麻痺させるといつたような発言をなすような人たちも一部にいたようですね。
#110
○高木委員 とにかく私の聞かんとすることは、縣民及び廣島市民が、そういう暴力革命が近いうちにあるのだというようなことを承知して、不安状態に陥つておる事実があるかどうかということを開くのです。
#111
○楠瀬證人 それは巷間のうわさでは、一部にそういうことがあるのではないかというようなことをうわさ話にしておる方面もありました。
#112
○高木委員 そこで先ほど証人は、今回の問題は労働爭議だけでなく、権力鬪爭を行つておるというように断じておられるが、これは間違いありませんか。
#113
○楠瀬證人 これは私はその爭議の裏には何があるかということを深く当初は考えず、虚心坦懐にこの爭議を取上げたのでありますが、この爭議を取上げておる経過において、これは労資間の爭議という單純な事柄ではなく、地域的なつまり権力鬪爭といつたような方向に移行しつつあるのではないか。つまり私が労資間の爭議をあつせんしよう、糸口を見出そうと思つて非常に本件について特に力を入れてやつておつたその過程において、むしろ私を敵とし、私と鬪爭するというような気持ち、あるいはそういう態度すら一部に出て來たので、これはあるいは地域的権力鬪爭はこんなものであろうというふうに、私は事件の経過において考えるようになつたわけであります。
#114
○高木委員 そこで最後にあなたは廣島縣知事として、終戰後宿命的になつて來た日本の現状で、行政整理及び産業の合理化というものは、これはなさねばならぬことであるとお思いになりますか。
#115
○楠瀬證人 この行政整理とかあるいは企業整備というようなものは、今日の國家の経済、財政また地方の経済財政、また経済界の状況等から見まして避くことのできない情勢下に置かれてのやはり企業なりあるいは事業なり官聽におきまするやむを得ざる、とらなければならぬ、受けなければならぬ方法、手段である、かように考えます。
#116
○高木委員 そこでかようにすればもとより失業者が出て來るが、この失業者を再編成して國力を増強するにあらずんば日本の再建というものはその実を結ぶことができないということをお認めになりますか。
#117
○楠瀬證人 それはそういう失業状態は出て來ております。また今後出ることにつきましては、國の総力をあげてこの問題を解決いたさなければならぬというふうに考えております。
#118
○高木委員 こういう場合にこの種の共産党員が指導する爭議をやつたら、日本の産業というものは崩壊するというような結果をもたらすことになりませんか。
#119
○楠瀬證人 この問題につきましては、私は六月二十一日に種々の決議事項を爭議團の連中が持つて來られたものの中に、たしか産業防衛といつた項目があつたわけであります。私は産業防衛というのは消極的じやないか、むしろ産業復興だ、それはいろいろ犠牲があるけれども、これを何とかしてみなで解決をして、産業をほんとうに復興させるといつた方向へ持つて行かなければならぬ。産業防衛というのはむしろ消極的でおかしいじやないかといつたような話をしたようなことでありまして、この考え方というものははたせるかな廣島縣におきましては、産業防衞会議といつたようなものから割れまして、目下産業復興会議、産業防衞会議といつた二つに労働戰線が割れて進んでおるといつたような状態でありまして、私どもはやはり労資相ともにひとつ協力して、國難を乗り切るといつた方向に進んで行かなければならぬ、こういうふうに思つております。
#120
○高木(松)委員 そこで最後に一点、この種の爭議がたびたび行われて、産業が崩壊してしまつたとするならば、一般労働者は餓死する以外にないと思いますが、その点は、どうですか。
#121
○楠瀬證人 こういう労働爭議というものは、労働者が自分の生活條件を改善するために主張することは、当然の権利でありまして、そこに不合理な点がありますれば堂々と主張していいわけでありますが、しかしあくまでこれは経済的な観点においてよくものを見てやつて行きませんと、これがあまりに政治のみに走りますと、結局問題がそれまして、労資双方が仕事をして行く場がなくなつて行くようなことになりますので、正当なる理性の上においての労働爭議というものを労働組合の指導者、労働組合員はよく考えて、極端な政治的意図というような方面に煩わされ、まぎらわされることなく、自分たちの生活條件を改善して行くといつたような氣持、態度が必要ではないかと私は思つております。
#122
○大橋委員 最初にお伺いしたいのですが、証人は地方行政の衝に当つておられる責任者とされまして、このたびのような不祥事件をまた引起さないということについての自信はお持ちになつておられますか。
#123
○楠瀬證人 引起さないということの自信はありませんが、起きました場合には、私の権限において、分においてできるだけこれを解決するようにひとつせわをして行きたい、かように考えております。
#124
○大橋委員 そうすると、共産党が労働問題について現在のようなことさらに不法と知りつつこれをあえてする。またこの労働問題をもつて一つの政治的な意図を実現する手段として惡用しようとする。こういうふうな手段をもつて來られる限りにおいては、いかに証人が全力を盡されましても、これによつて地方の行政が混乱され、また地方民が不安を抱くということは防ぎ得ないというふうにお感じになつておられますか。
#125
○楠瀬證人 私はいかなる政党がいかなる政治的の意図を持ち、いかなるイデオロギーを持つて行動しようとも、やはり議会主義、合理主義というものが立憲國におきまする根本的な制度である以上は、議会主義というものが、この國政を、また地方政治、地方行政というものを守るのだという信念は捨てないつもりでおるわけであります。
#126
○大橋委員 なお証人は今日の政党の中で、共産党以外にかくのごときことをあえてする政党があると思われますが。
#127
○楠瀬證人 どの政党も議会主義によつている以上は大してかわりはないと思いますが、議会主義を信奉しない状態になりますと、そこにいろいろな色合いのイデオロギーなり、実力的な行動が出ると思います。
#128
○大橋委員 なおもう一点だけ伺いたい。証人はその後いろいろ上京され、あるいは地方へ出られた機会があると思いますが、証人が現地においてごらんになりました、この事件の経過と、当時の新聞紙によつて他の地方において傳えられた事件の様相というものは大分違つたふうに傳えられておるような事実を発見されませんか。
#129
○楠瀬證人 今度の爭議を通じて非常に潰憾に感じました一つの点が、ただいま御指摘になつた点でありまして、これはことに爭議團側のあるいは政策なり、あるいは興奮的な現場の状態等から來たものだと思うわけでありますけれども、しかしほんとうに労働爭議を解決して行く、眞相の上に持つて行つて合理的な解決をして行くという上から申しますと、現場における行動があまりに歪曲されて、廣島縣下のみならず日本全國、あるいは国際的にまで向つて博えられたのではないかというふうに非常に私は遺憾に思つておりまするし、また軍政部におきましても、そういつたような報道が傳えられたことについて非常に遺憾に思いまして、新聞関係を招致いたしまして、ことに実際の数字等を載せる場合におきましては、これは主催者側で発表しているのたといつたような数字まではつきり入れて、そうしての眞相をなるべくはつきりしたい。あるいは眞相でない場合においても、その発表した側を明記するといつたような方法において、できるだけ眞相を傳えるように努めたようなわけであります。私も軍政部におもむきまして、こういつた労働爭議についての、ことにラジオ等の発表については眞相を発表してもらわなければ困るのだ、ことにラジオについては占領軍もやはりこれに対していろいろコントロールする権限を持つておられるわけであります。こういうのは野放図に放送なんかやらぬで、十分取締つてもらつて全國民を誤らさぬようにしてもらいたいという点は、私としても依頼をしておつたようなわけであります。ただいまの点は爭議の経過にかんがみまして遺憾に考えました一つの点であります。
#130
○大橋委員 なおかような誤つたる報道が眞相なりとして天下に傳えられるについて、一部の政党の関係者、またそれを支持すると称する人々が、ことさらに事実を歪曲するに努めたという節がどこかにあるのではないかというような御感想は持つておいでになりませんか。
#131
○楠瀬證人 その感想は、むしろ私が感想と言うよりは、地元におきまする新聞と事実をお比べくださいますと、記事と事実との間にどのくらいの相違があつたかということがおわかりになるのではないかと思います。
#132
○吉武委員 大体証人のお話を聞いてみますと、今回の廣島の日鋼事件は單なる労働爭議ではなくて、だんだん関係してみると、そこに政治的な意図があつたように思われるという点、また労働委員会にかけて、何とかしてこれを未然に解決しようと知事が骨折られたにもかかわらず、これを労働委員会に持ち出そうとせず、直接交渉と称して、そうして爭議を解決するにあらずして、むしろこれを職場の爭議から街頭に進出して、いわゆる地域権力鬪爭に発展さして行つているという点、それから警察の出動についても、賠償工場でありますので、その保全のため軍政部からの指示もあり、これを何とかして平和的に解除させようとしてあらゆる手段を講ぜられておる。また特に付近の山からマイクで大衆にそれを訴えられようとしておるのを、先日の証人の話によりますとインターを歌い、あるいはがたがたして、これを一般に聞かせないような故意の妨害をしておる点等からかんがみまして、私は去る七月の十三日、極東委員会において米代表マツコイ氏が、この日鋼事件について言われた言葉を見てみますと、まつたく今知事が言われたような状況でありますので、私が今そのマツコイ氏の言を引きまして、知事がいかにお考えでありますか証人としての証書を承りたいのであります。すなわちマツコイ氏は、東京及び廣島における事件を労働法規改正に結びつけようとしておる。しかしこれまで起つた事件で労働法規に関係するようなものは一つもない。東京の事件のごときも組合関係の法規には全然関係がない。以上の諸事件、及び最近の同性質の出來事は、いずれもある程度の混乱的意味合を持つていることが特徴として認められる。すなわち一部不法分子がありとあらゆる口実をとらえ、衆をたのんで政府当局その他の者をおどし、意に從わせることを目的にデモ隊を組織しておる。これらの諸事件の参加者もまた当局が実力行使せざるを得ないように誘発行動に出ておる。そうして当局を失効を用いれば、ただちに彈圧だとか、警察の暴行であるというようなことを言つておる。デモ隊員が不法監禁や脅迫、あるいは会社当局者の身体に対する暴行といつた諸暴力行為に出たのに対して、日本の官憲はよく注意と自制心とを持つて事に当つておる。警察力が使用されたのは政府の機能を継続するために必要な公共の建物からデモ隊員を退去させる必要のあつた場合とか、あるいは財産の保護、秩序維持上の必要が生じた場合のみに限られておる。また逮捕の手段に出たのは、デモ隊員が抵抗した場合、さらには警官を攻撃した場合に限られておる。また廣島の場合は、工場がデモ隊員によつて不法占拠されること四十八時間に及んで、初めて警察が行動を起しておる。これら集團的暴力諸事件の実際の目的が労働者の権利の擁護や、民主的傾向の増進にあるとは決して思われない。反対にこれは彼らの政治権力拡張に都合のよい情勢をつくり出すねらいのもので、政府の権威を破壊するため、恐怖、社会不安、混乱などを巻き起そうとしておるある中央からの指令による運動であることは明白である。こう言つておりまするが、われわれもまたまつたく同様の感を抱くものでありますけれども、知事はこの日鋼事件に対し、今のマツコイ氏の言に、どういうようなお感じを持つておられますか。
#133
○楠瀬證人 ただいまの御質問でありますが、この爭議を顧みまして、また経驗いたしまして、労働爭議を本來の労働組合法ないし労働関係調整法の建前の上から、でき得る限り労資双方の間で誠意をもつて解決して行こうといつたようなことで参りますれば、私はもつと早く、もつと違つた様相を呈して、この件の進行というものが出て行つたのではないかと考えます。從いましてその点から申しますと、七月の終りにこの事件は結末をつけておるわけでありまするが、この間におきまして、ただいま申されたような政治的意図と申しますか、あるいは行動ないしはコントロールというものが多少あつたやに私としては感想を持つておるのであります。從いまして今の極東委員会におけるマツコイ氏の感想あるいは意向というものは、大体の趣旨におきまして私は今度の日鋼爭議の問題につきましての眞をうがつておるというふうに考えておるわけであります。
#134
○宇田委員 証人に二、三御質問申し上げます。第一の質問は第二の質問と、やや関連いたしておりまするので、要点を詳しく聞きたいと思います。六月の十四日に知事は賠償工場の責任者として、その保全の責を感じて、爭議團幹部へ面会を申し入れた。この申入れは、第一に幹部へ面会を申し出たら拒否された。第二に文書でもつて二、三の幹部に面会を要請したらこれも拒否された。第三に電話連絡も拒否された、かような証言でありますが、まず第一に面会を要求した幹部の名前がわかつておるかどうかということをお伺いいたします。
#135
○楠瀬證人 それは当時の組合幹部でありました有川君に電話に出てもらつたのです。それで会見を申し込んだのであります。
#136
○宇田委員 第二の書類はだれに渡そうとしたのですか。
#137
○楠瀬證人 この書類は從業員組合長でありまする林春一君を初めとして幹部に渡そうとしたのです。
#138
○宇田委員 第三が重点なんですが、電話連絡をしたのにこれを拒否したというのは、どういうやり方で拒否したか、妨害したかということをお聞きしたい。
#139
○楠瀬證人 私は当時縣廳におつたわけですが、私の代理といたしまして賠償課長が、日鋼工場の附近にある東洋工業から日鋼工場の中の係官に対しまして、文書を電話をもつて話をして写さして、それを從業員組合長ないし爭議團側に渡そうとして拒否されたのです。
#140
○宇田委員 それは電話でやつたことにはならぬですね。出張した係官に直接やらしたのだから、あなたの係官とあなたの方とは電話であつたのだけれども、向うでは直接交渉したわけですね。
#141
○楠瀬證人 これは私の代理といたしまして賠償課長が工場内におきまするところの縣廳の担当官にそれを話し、それから從業員組合及び爭議團側にそれを傳達したわけです。
#142
○宇田委員 電話連絡を妨害したのではないですね。
#143
○楠瀬證人 電話連絡の妨害ではない。
#144
○宇田委員 そこで質問申し上げるのですが、工場閉鎖後に、工場閉鎖以前の状態に戻すように、職工を工場内へ入れるようにということを共鬪委員その他爭議團側からあなたはあなたの今日のお言葉で言うと迫られたということになつておるわけであります。私ふしぎに思うことは、まず第一に、三回にわたる合法手段によつて労働爭議團に知事として賠慣工場の責任者として面会を要望された。しかもそれは三回とも拒否された――一應拒否されることは拒否された。今度はあなたに、工場を再開しろ、元の通りに閉鎖以前の状態に戻せということをあなたの言葉で言うと迫られた。迫られたということは文字通り強要されたというふうに解釈するのでありますが、なお具体的に申し上げますと、あなたと爭議團との交渉の経過を私が仄聞すると、あなたは身分を賭して閉鎖前の状態に復することに努力するということをさいぜんも述べられた。そういうことを約束した。あなたと爭議團側とは、身命を賭してではない、職を賭してやれということを、あなたは、いや職を賭してはやれぬ、身命を賭してやる。――私は職を賭してやるのと身命を賭してやるのがどちらが本人として重大であるかはわかりませんけれども、とにもかくにも命をかけるということと知事の職をかけるということとはきわめて重大なるところの意思表示であると思う。迫られたという言葉と同時にさような重大な言葉で言い表わされるところの責任を――あなたが生命をかけてこれをやるということを請合われたことは非常な爭議團側からの圧力があつたものと私は考える。その点は最前も大した圧力を加えられなかつたということに証言されました。ところが三回ともあなたは相手にされなかつた。片一方は相手にされなかつたが、今度は命をかけてやる、しかもあなたは賠償工場の保全の責任者であつて、閉鎖後における問題は何ら関係ないと言われるかもしれませんか、これは純然たる労働爭議によつて起つた問題である。先日も共鬪委員長の松江君が申しておつたのでありますが、われわれは賠償工場云々ということは考えていない。そんな問題は第二の問題である。この問題は純然たる爭議なんだということを再三繰返して証言されている。これは共鬪委員長の証言であります。しかるにあなたは純然たる労働爭議は、地労委というものがあるのであつて、そういう問題は地労委へ持つて行けということで、むしろ軽く一蹴されるのがあたりまえじやないかと私は考えるのでありますが、あなたは追られて、しかも職を賭してか、生命を賭してかどつちかということを私とすれば強要されたものなのだ。非常な圧力をかけられて、あなたが片一方に身命を賭されたじやないかと考えるのでありますが、その点はいかがですか。
#145
○楠瀬證人 この退散要求の問題につきまして、爭議團、ことに從業員組合側が、私の方の退散の申入れにかかわらず、これに対して拒否して逃げている。これにつきましては、これはあくまでその退散要求という問題についての彼らの態度であります。しかしながら私どもとしましては、こういう問題とは離れて、この労働爭議といつたようなものをまことに考えました場合におきましては、なるべく工場の中からの退散要求というようなことからわずらわされぬで、労資双方が虚心坦懐に話合うといつたような場をつくり上げることが必要ではないかというふうに考えておりました。從いまして、この二十一日の際に、ことに組合側から、知事はひとつ職を賭してもやつてもらいたいという話がありましたときに、職を賭してもということは非常に具体的じやないか。これがうまく行かないときは私は職をやめるのか。知事をやめさせたいというならば、やめろと言つてもらいたいという話をしました。そういう意思じやないのだ、何とかして工場閉鎖解除についてやつてもらわなければいけないのだということで、それでは職を賭してもということは、あまり具体的過ぎていけないから、ひとつ最大の努力をそういう方面でやろうという話をしたところが、最大の努力じや困るのだ、もつと突込んだものをやつてもらわなければいけない。それなら全生命を打ち込んでやつてやろうと私は答えたのでありまして、その場合に工場再開ということにつきましては、從業員諸君及び爭議團は非常に熱望しておつたのであります。元來この労働爭議については、やはり労資双方が同じようなフイテングですみやかに話合つて行かせることが必要であつて、この問題については、退散要求という問題と労働爭議というものは非常にこんがらがつて、ごつちやになつている。從つて両方画然とわけることによつてこの問題が早く解決して行くのではないかという信念を持つておつたのでありますが、この信念については私はかわりません。後に地労委にこの問題を移されたあとにおきましても、不幸にして第二組合と第一組合とにわかれたわけでありますが、しかし第二組合と経営者側との方の話が早くついたわけであります。しかし工場を再開しようという場合には、第二組合と工場再開を議せしめるならば、必ずその工場再開について会社に不祥事が起る、そうすれば賠償施設の保全というようなことはまつたくむりになるというような観点からいたしまして、私は地労委に問題が移りました後においても、地労委の委嘱を受けて軍政部に行つて、第二組合と第一組合と、解雇者も含めて、一應工場に関して労資の間でよく話合うことが賠償施設保全について必要なことだ。しかも労働爭議のほんとうの解決点から言つても必要な行為であり考えであるということを話をいたしました結果、第二組合と同じように第一組合も入りまして、双方が話をして、そうして解決を見たのでありまして、私は退散要求という問題と、労働爭議の解決という問題とわけて、そうして本質において、そのことを考えて行きたいという考え方は、事件の終局に至るまで失わなかつたようなわけであります。
#146
○宇田委員 証人と爭う必要はないのでありますが、要するにあなたがいわゆる強要されて、生命を賭してこの問題を扱うと言われたのは、すでにもう工場内は退去したあとでありまして、そういう問題は心配ない場合であつたわけであります。しかもあなたは虚心坦懐にこの労働爭議を解決したいというのに、職を賭してというのは重大だから命をかけてやる、その方が軽いというふうに考えられたのは少しぴんとがはずれていやしないか。しかしそれはあなたの主観でしようがない。あなたが強要されたと思つてこの質問をしたわけでありますが、爭議斡旋を強要されたわけではないのですね。
#147
○楠瀬證人 私の心境としては強要されたという点まで考えておりません。
#148
○宇田委員 それでは最後に一言お伺いしたい。七月の九日に徳毛共産党の廣島縣の縣委員長とお会いになつた。これはどつちが面会を要請されて会つたのですか。
#149
○楠瀬證人 これは向うから尋ねて來ました、私の方は何も……。
#150
○宇田委員 向うから自発的に來てどういう問題について、あなたの方に頼んで來たわけですか。
#151
○楠瀬證人 それは事件の経過として九日の午前中においては事件が大体大詰になつて來ているといつたような情勢になつておるので、それを調査する意味を持つて來たんだろうと思うのであります。
#152
○宇田委員 徳毛氏がどういう経過かということを特に聞きに來た。徳毛氏はこの爭議に対して、どういう役割をされたか御承知ですか。
#153
○楠瀬證人 私は深く知りません。
#154
○宇田委員 深く知らないが、ただ廣島の共産党の委員長だということをお知りになつておるわけでありますか。
#155
○楠瀬證人 そうです。
#156
○宇田委員 それでただ簡単に経過をお話になつたわけですね。
#157
○楠瀬證人 そうです。
#158
○宇田委員 それから公安條例の問題ですが、縣は公安條例を出す御意思があるかどうか。
#159
○楠瀬證人 縣が公安條例を出すかどうかは、私どもの考えでは各縣が公安條例を出すことになれば、これは日本全國、國会が法律で出すべきが当然であろう。各孫が公安條例を出しておるならば、これはおかしいじやないか。御承知の通り公安條例は交通取締法の一部門でありまするので、必要ならば、特殊の立法として國会が法律をもつてお出しになるのが正当ではないかと思つております。しかるに政府としては、地方の実情に感じてこの公安條例をやることが相当であるという見解を今持つておる。将來全体的に地方ごとにやる必要があればそのときはやるけれども、ただいまのところは地方的に考えてやれということでありますので、縣としては公安條例を出すことは考えておりません。廣島縣としては、これは市町村において公安條例を必要とすれば出すべきが相当ではないか。また軍政部の方の慫慂もそういうふうになつております。実例も中國地方におきましては、すでに下関は、公安條例を出しております。それから廣島縣におきましては、先ほど申し上げました通り幸崎町それから竹原町というところにその実例を見ておるわけであります。
#160
○宇田委員 懸として現在公安條例を出す必要の段階に立ち至つていない。こういう御見解ですか。
#161
○楠瀬證人 公安條例は市町村で必要とするものであればいいという見解を持つております。
#162
○宇田委員 わかりました。
#163
○聽濤委員 一番最初に十四日附の軍政部命令というのをあなたが当日の午後七時ごろ、文書の命令を受領された話は先ほど証言になつたのですが、筋道から行きますと、あなたが命令を受けたので、それを執行するについて警察の方に協力を求めたというか、あなたの方から警察側の方に連絡をとつたように筋道としては考えられるのですが、その件につきまして、いつ警察とは御連絡をおとりになりましたか。
#164
○楠瀬證人 先ほど軍政部の命令の中でお読みいたしました通り、午後七時にあの命令文書が受取ります前に、すでに二度にわたつて軍政部長の方からは警察の方に電話でもつて命令が出ておるわけであります。それでそれらをまとめまして、午後七時になつて軍政部労働課長が軍政部長の代理として、私のところへ命令を持つて参つたわけであります。あの中に警察の事柄が書いてありますのは、進駐軍の方では一切のことを知事のところへ持つて行けば話がわかるのだ、そういうしふうにガバナーが一切の権限を持つておるということからいたしまして、よくああいう書き方をしておるのでありますが、警察に対しまする指揮命令も、あるいは市長の要請権限も御承知のように知事においては現在ないわけであります。從いまして、あの手紙が参りました内容につきましては、同時に各警察の方としては直接に知つておるわけです。私の方からこういうふうにしてくれ、ああしてくれといつたような要請ないし指揮命令のようなことは一切いたしておりません。
#165
○聽濤委員 そうしますと、軍政部の方から警察の方に直接命令があつたということですね。そうして先ほど電話連絡が二度もあつたというのですが、それは何時ごろでございますか。最初は……。
#166
○楠瀬證人 ちようど縣会中でありましたので、その時間ははつきりわかりません。そちらへ出席なんかしておりましたので……。
#167
○聽濤委員 いずれにしても同日ですね。
#168
○楠瀬證人 同日でございます。
#169
○聽濤委員 それにいたしましても次の日の十五日の午前の五時ごろですか、ラウド・スピーカーで工場へ発表された。そのころには警察官も大体來ていたわけですが、こういう行動についてはやはり御連絡なすつたのではありますまいか。
#170
○楠瀬證人 こういう行動については全然連絡はないのです。
#171
○聽濤委員 警察の方ではあなたの方がいつそれをやるかということは偶然知つたというわけですか。
#172
○楠瀬證人 これは退散要請の命令を文書にいたしまして、いよいよその晩の十一時ごろから明け方にかけていろいろな方法でもつて通達を試みたわけであります。最後にラジオによつて放送いたしたのでありますが、それが通達されぬということになつて、これは警察の方の見解として、退散要求の命令に從わないといつたような事実がはつきり看取された事態を警察は認識されて行動に入られたものと思うのですが、その際ああしてくれとか、どうしてくれということは私としては一切知らぬわけであります。
#173
○聽濤委員 その点は知事の行動と警察側の行動とが軌を一にしておるので、私は疑問を残しますけれども、まあそれはそのままにいたします。しかし、それにしても警察官の動員はあなたにお聞きしても正確なことはわかりますまいが、相当多数動員されておりましたね。こういうことから申しますと、十四日に命令が出て、十五日の朝、これを執行するときに、相当多数、おそらくあの近辺だけで集まる氣づかいはないと思うのですが、これは縣下その他から相当多数動員されたと思うのですが、そういう短期間に動員ができるでしようか。
#174
○楠瀬證人 それは警察方面にお聞きを願いたいと思います。私はわかりません。
#175
○聽濤委員 この点は手順に來つていなければとうていできない動員だろうという印象を受けておりますので申し上げているわけです。その次に、先ほどあなたの証言の中で、工場閉鎖そのものについてはもちろん命令というものではなくて、これは会社側が一つの爭議手段として行つたものであるということをはつきり言われている。
#176
○鍛冶委員長 そんなことは言いませんよ。
#177
○聽濤委員 そういう意味のことをはつきり言つております。それはそういう意味であなたはおつしやつたのじやありませんか。まずその点をお聞きします。
#178
○楠瀬證人 工場閉鎖については、これは会社が爭議手段としてやつたわけであります。
#179
○聽濤委員 だから私の言つている意味です。さらに、それでありますからあなたは爾後の措置として全從業員をやはり工場に復帰させていろいろ解決の糸口をつけたい、このようにお考えになつたので、その点は終始一貫した考えであるということは念を入れて証言されているところなのですが、その点は私もそうであろうと十分想像できるのですが、そういたしますと、あの十五日の朝ラウド・スピーカーで工場からの從業員の退去を要求された。しかもそれは軍政部の命令によつてこれを言うのだということを言われたのは非常に矛盾しているように思うが、いかがですか。
#180
○楠瀬證人 退散要求をいたしましたのは、先ほども御説明申し上げておわかりになつたと思いますが、退散要求をせざるを得なかつた。工場内の実情として、きわめて無秩序、混乱あるいはそこに見方によれば暴行、脅迫といつたようなことすら、あるいは人民裁判的なことすら行われているというような状態で、これではとうてい賠償工場の施設保全、工場内の秩序が保てないという状況が現出いたしましたので、これを排除するために工場の賠償施設の保全要員以外の人の退散を要求したわけです。それと、誤解がないように願いたいのは、労資双方が話をしますために、とにかく労働者も工場内に入れろということを私は考えたのでありまして、労働者の中で解雇になつた者がはたしてもと通り復帰するかどうかということは、これは労資双方の協議の問題ですが、一應入れて、爭議の解決の交渉をさせるということで、両者の間には私は確然と区別があると思つております。
#181
○聽濤委員 大体あなたが退去の要求をなさつたいきさつは御説明でわかつておりますが、ただ問題にしているのは、工場閉鎖そのものが軍政部の命令でないにもかかわらず、軍政部の命令によつて退去を要求したという点が非常に矛盾しているように思います。
#182
○楠瀬證人 工場閉鎖が軍政部の命令であるということは私は申し上げてないつもりであります。
#183
○聽濤委員 工場閉鎖そのものは爭議手段として行われたものである。それならば、なぜ軍政部の命令であるといつて全員の退去を要求するか。これでは工場閉鎖そのものを軍政部の命令であるがごとく印象づける行動であるということになるだろうと思いますね。
#184
○楠瀬證人 軍政部は工場閉鎖の命令は出しておらぬはずです。工場閉鎖がとられましたその後の工場内の状態が、特に退散要請を軍政部がせざるを得ないような状態が現われたから、軍政部においては退散要請の命令を出したわけであります。工場閉鎖そのものと直接の関係はないわけであります。関連はありましようが……。
#185
○聽濤委員 その点、いろいろ問題をはらんでいると思いますが、これはあとに残しておきます。それからもう一つお聞きしますが、いよいよあの事件があつた後にあなたはいち早くこの爭議の解決のために調停を申し出られた。これは、調停については労働委員会に移した方がいいだろうという御意見だつたであろうと思いますが、この調停の申入れに対しまして、組合側がこれを拒否したような事実はありましようか
#186
○楠瀬證人 十七日にやつとこさで労資双方を集めまして、そうして顔を合わしたときに、特に軍政部の方からも労働関係調整法というりつぱな法律があるので、これによつてひとつ地労委にまかした方がいいということを懇々軍政部の方からも説得があつたわけであります。その際に組合の代表側はこれは組合員大衆にはからねばならぬからということで、回答を保留して帰つたわけでありますが、私はいろいろ報告を受けたり、空氣を察知したわけでありますが、組合にはこれを地労委に移したいという意向を持つていた者も相当多数あつたように思いましたけれども、そこにやはり一つの爭議の持つて行き方、あるいはかけひきと申しましようが、あるいは政治的に持つて行くというようないろいろな含みがありましようが、それがさえぎられてなかなか地労委に持つて行けなかつたという状況もあつたように観察しております。
#187
○聽濤委員 結局拒否したような事実がありますか。
#188
○楠瀬證人 それは地労委に持つて行くについてはなかなか承諾しなかつた。
#189
○鍛冶委員長 組合側がですか。
#190
○楠瀬證人 組合側が……。
#191
○聽濤委員 会社の方はいかがでしたか。
#192
○楠瀬證人 会社の方は地労委に持つて行つてもいいが、基本的事項のそういう問題に触れていろいろ話をされて、もともとの問題に返していろいろ地労委にあつせんしてもらうようなことは困るのだという意向を表明しておつたわけであります。
#193
○聽濤委員 第一地労委に移すことについては、まず第一に知事の先ほどの御証言によりましても、とにかくこの爭議の解決のためには、労資双方ともに復帰の上において必要がある。そのためにはとにかく全從業員を一度工場に復帰させる。その條件ができないと、地労委に持つて行くという事実上の條件も出て來ないと思うのですが、その点について組合側がそういう條件が出て來ないので、地労委の問題について頭をひねつたのではありますまいか。
#194
○楠瀬證人 そこまで組合が考えておつたとは私は想像しません。私が考えるのはむしろ地労委に問題を持つて行けば、自分たちの考えておるような方向で、組合ないしは爭議團の考えておるような方向で、あるいは解決できるんじやないかといつたようなことをむしろ考えて、作戰上と申しますか、あるいはいろいろかけひきもありましたろうが、地労委に持つて行くことを延ばしておつたのじやないかと想像しております。
#195
○聽濤委員 しかしそれでは知事が調停を声明されて、その條件として全從業員をとにかく一度工場にもどすというこの案について、組合はおそらく双手をあげて賛成したと思いますが、いかがですか。
#196
○楠瀬證人 これは組合としては賛成していたのであります。
#197
○聽濤委員 その申入れについて、会社はそれに対して……。
#198
○楠瀬證人 私は会社側に対してはこういうふうに言つた。その解雇の事実であるとかいうような、そういう事柄の法律の有効、無効ということは裁判所で爭うことであつて、今のところはりつぱに成立しておると思うが、一應両方で折衝する場合には、その解雇者をも一應入れて話をすることにしてはどうかという話を幾度もいたしました。会社の方としては、それは解雇された者で組合員でないからこれを入場さして話をさせるのは困るのだ、絶対に困るのだということを言つている。
#199
○聽濤委員 事実はあなたの申入れに対しては、根本のその問題に対して会社側は事実拒否されたような状態に來ているわけですね。
#200
○楠瀬證人 そのことについては後ほど地労委に問題を移しまして、これは地労委のあつせんによつて会社が從業員側と折衝する場合においては、会社も一應全從業員を工場の中に入れて折衝するという立場にあつたわけであります。私の時代においてはそれが実現できなかつたが、地労委の時代において実現ができたということになります。
#201
○聽濤委員 あなたの調停が行き詰つたのは、ここに問題があると思う。最後に今度の日鋼爭議の根本の原因であるが、この間社長代理の何とかという方もここへ來て、最初の証言のときにはつきり言つておりましたが、会社の経営が困難になつたのはやはり國鉄の予算の削減なんかによりまして、車輌関係が行き詰つてしまつたと言つておるのですが、こういう事実をあなたは御存じないですか。
#202
○楠瀬證人 それは会社の社長代理が、私があとになつて聞いたときにも、そういうことを言つております。
#203
○聽濤委員 これは單なる一例にすぎないのですけれども、今日吉田内閣でいろいろの産業に対しまして集中生産という方式をとつていることは知事も御存じだと思うのですが、どうなんですか。
#204
○楠瀬證人 集中生産の方式は現在とられております。
#205
○聽濤委員 その結果がやはり廣島縣内におきましても、まず第一には中小企業がどんどんつぶれて行く、あるいは非常に深刻な金詰りが出て來ているとか、あるいは日鋼のような相当大きなところでも、企業整備、首切りをやらねばならぬ。こういうふうになつて來ているとあなたはお考えになりませんか。
#206
○楠瀬證人 これは現在の占領下の政策として、ドツジ・ライン、ドツジ予算、経済九原則のもとにおいて、経済政策あるいは財政政策ということになれば、私はどの党が内閣をとつても大体かわりのない政策の結末を持つて行くのではないか、こう思います。
#207
○聽濤委員 それは議論になりますが、共産党の場合には、そんなばかなことは絶対にあり得ない、ただこういうふうな政策の結果、やはり廣島縣下にいろいろな中小企業の破壊であるとか、あるいはとにかくドツジ・ラインとか何とかということでなしに、実際そういう政策の結果起つているという事実をあなたは御存じありませんか。
#208
○楠瀬證人 これは経済九原則下の今日起らざるを得ないでしよう。起りつぱなしじやいけない、今後どうするかという問題になるわけです。今政策の過渡期にあるわけです。
#209
○聽濤委員 経済九原則については、これは民自党のように巨大資本の利益のためにのみこれを実行する。そういうことを主張するのとこれを履行するのとではまるで裏腹になつて來ます。
#210
○鍛冶委員長 そんな政治論はやらんでよろしゆうございます。
#211
○聽濤委員 とにかくここでこういうふうな状態の中から、第一にあなたにお聞きしたいのは、廣島の市会におきましても、産業防衞云々のいろいろな形が、はつきりは知りませんが決議が行われ、あるいは先ほど申しました呉においてても、何か決議が行われている。あるいは附近の八箇町村で趣旨は少し違うかもしれませんが、やはり同様にそれに似たような決定が行われている。こういうふうな廣島市会の決議とか、呉市会の決議というものを、こういう現状の中から見て、妥当とお思いになりますか、いかがお思いになりますか。
#212
○楠瀬證人 私はああいつた決議がなくとも済む問題だと思つております。
#213
○聽濤委員 済む済まぬの問題じやなく、こういう決議が行われたことを現実の事態からいつて妥当であるか、どうかということを……。
#214
○楠瀬證人 一番問題の眞相を知つているのは廣島縣会であつたろうと思う。大体廣島縣会の動向というものが、今の相当の扱いを示したものだと思う。それで廣島及び呉市会の行き方は、これはあたりまえのことを早く解決してやつてくれということを言つているわけであります。発議書まで出さなくとも、市町村会の議長が知事の方へ持つて來られて済む問題じやないかと思つております。
#215
○聽濤委員 それで大体趣旨はわかると思うのですが、そうするとあなたは、これは妥当ではないというお考えをあなたは毛頭持つていないわけですね。
#216
○楠瀬證人 妥当でないという考えは持つておりません。
#217
○聽濤委員 そうしますとこれが妥当であるということは、今廣島縣会に起つておる先ほど申し上げたような状態があればこそこういう決定が行われ、またそれで妥当であるということになつた。そこに日鋼爭議の大きな根本的な問題があるということをあなたはお考えになつていらつしやいますか。もしならないとすればはなはだおかしな話ですが。
#218
○楠瀬證人 それは先ほど申しました占領下経済九原則という経済状態においては、こういう問題は当然起るし、これは國力全部を上げて解決して行かなければならぬのであります。それから廣島市会や呉市会の問題は一党一派だけの発議ではなくして各党派が一致したる決議、要請であります。問題は早く解決して欲しいというだけの話であります。
#219
○聽濤委員 この点が非常に重要だと思います。だからここに日鋼の爭議があなたは別の意味で單純な爭議でなかつたと言つておるけれども、これは全然逆な意味であなたは言つておるけれども、ほんとうは日鋼の爭議が單純な爭議でなかつたということは、こういうふうな大きな背景のある爭議である、ここに根本の問題があるというところが爭議の重要な点であると思います。この点をあなたにお聞きしたいわけです。あなたの御意見はとにかくとして、事実は大体確認されると思いますから私はこれでやめておきます。
#220
○神山委員 この問題については大体聽濤君の質問ではつきりしておるのでありますが、わざわざこういう質疑が出て來る根拠は、知事が先ほど証言の中で地方権力鬪爭だというふうに解釈すると言われたのが一つひつかかつていると思います。しかし今の尋問の中ではつきり明らかになつたことは、縣会がよく知つているとおつしやるが、よく知つているかもしれない。しかし縣会が開かれたのは十五日だ。先ほどおつしやつたように、廣島市会及び呉市会が開かれたのは二十一日ないし二十二日のことである。ここに時間的なへだたりがある。從つて廣島縣の縣会だけがほんとうに正しいということは今になれば言い切れないのではないか。さらに地方権力鬪爭というように言われるとすれば、民自党の人々までも含めての地方権力鬪爭であつて、これこそが民自党の政策の結果だということを聽濤君が言われたのも根拠があるのではないか、この点あなたはどうお思いになりますか。答えられなければ答えないでいいです。
#221
○鍛冶委員長 なるべく議論にわたらないようにしてほしい。
#222
○神山委員 いや議論ではなく先ほど地方権力鬪爭だ、すなわち共産党の指導だと思わせるような、こういう事実そのものが反証しておるのではないか。しかしそれについて知事としてはお答えがないならばこの点は見解に関する問題だと解釈して、あえてこの点で証言拒否とかなんとか民自党みたいなけちなことは言いません。
 それから警察の彈圧についてあなたは全然関知しないというふうにお述べになつておりますが、あなたは六月二日に船越町の公安委員会があつたことは御承知ないでしようか。
#223
○楠瀬證人 知りません。
#224
○神山委員 それではまたお尋ねいたしますが、工場閉鎖によつて退去命令を出すことについてあなたは何らか相談にあずかられたことはありませんか。
#225
○楠瀬證人 相談というと軍政部長からですか。
#226
○神山委員 いや警察当局と……。
#227
○楠瀬證人 そういうことはありません。
#228
○神山委員 全然警察と相談になつたことはありませんか。
#229
○楠瀬證人 そうです。
#230
○神山委員 これは警察側から出ておる報告なんですが、二十五日の廣島警察局の日鋼事件概要、これは地方行政委員会その他に提出された資料ですが、その中にこういうことがある。工場閉鎖による退去命令に関しては廣島縣知事に重要関係ありと認め、廣島警察は公安委員全員、局長、市長等と國警隊長、警備、警務両部長、檢察廳は次席ほか一名の檢事らとともに知事室において退去命令及び退去措置について協議した。これは間違つておりますか。
#231
○楠瀬證人 それは午後七時に軍政部長の命令が私の方に傳達されたときに、私と両課長と話をしておりますときに、縣廳構内――と言つても官廳街でありますから廣いのでありますが、各所で必要に應じて連絡会議等もやつていたこともありましようし、その関係でこの命令が來ましたときに私の部屋にそういう人たちが入つて來たわけであります。これは決して私どもから來いといつたような連絡はとつておりません。
#232
○神山委員 これはどちらがとつたかと言えばあなたのおつしやる通りでしようが、問題になるのはこの会議にあなたがやはり関連しておられるということが職権濫用の告訴を提起される場合に、あなたも名前を連ねられるような結果になつた原因じやないかと思います。從つて労働者側の方では知事も、あなたがここに言明されたように、警察については関與しないという原則であるにもかかわらず、これはあなたが関係していらつしやるのじやないですか。
#233
○鍛冶委員長 あなたがさつき言つたのは工場閉鎖をする協議だと言われる。知事が答えられたのは十四日の午後七時だと言われるから、その後のことです。
#234
○神山委員 私が聞いているのは、あなたの先ほどの証言の中で、警察の行つた彈圧については全然関與しないというお答えがあつたが、そうじやなくして、こういうふうに関與しておるのだということを話しておるわけだ。從つてこの事実が立証されれば、客観的に見てあなたの主観的な意図や手続はどうであつたかは別として、あなたもこれに関係しておると言われても仕方がないのじやないか。
#235
○楠瀬證人 これはあなたの御主観でありまして、われわれは軍政部から來た命令をそこでもらつて、そうしてそれを聞いておつたわけです。そこへ今の警察関係の者が入つて來たというだけの話で、私は命令したこともなければ指揮したこともなければ要請したことも何にもない、ただそれだけのことであります。
#236
○神山委員 ここで大事なことは結論として警察力をもつて工場外へ一應全員を退去せしめたこと、及び退去後は入場せしめないところの措置をとつたことの二点を明らかにし得た、こういうように――私が言うのじやない。警察がそう言つておる。從つてこういうふうな見方がある限り全然あなたは主観的には指揮も命令も要請もせられないけれども、客観的には関與したということになつておる。
#237
○楠瀬證人 それは軍政部長の命令でありますから、それに從つて警察官がやつたことにすぎないのでありまして、私は何ら関與しておりません。
#238
○神山委員 それじや命令の話を聞きます。命令が先ほどの聽濤君の質問である程度明らかになつたと思います。問題の本質を明らかにするために一つ関連して聞きたいのは、先ほどあなたは徳毛君と七月七日に会つたというお話がありました。その内容もお話になりましたが、それ以前にお会いになつたことはありませんか。
#239
○楠瀬證人 その以前には、いわゆる共鬪の諸君あたりはやはり縣廳へ來られる方がありますから、その前に來られたこともあるが一々具体的には覚えておりません。
#240
○神山委員 六月二十八日にお会いになつたことはありませんか。
#241
○楠瀬證人 もう少し何か具体的な事実を言つてください。
#242
○神山委員 それでは、具体的に申し上げましよう。二十八日に党代表に対して非公式の会談の申し出があつた。こらは地労委の事務局長を通じて、内藤君と徳毛君があなたとお会いしておるそのときに、会談の内容は、あなたの言葉として「工場閉鎖は進駐軍の命令ではない。会社の行つたものである。工場閉鎖を解くか解かないかは会社の意見であるが、会社側が労働者を恐れて解かない。会社側に会いたいと思つても所長の所在がわからず困つておる。」これに対して内藤君が答えて「工場閉鎖が進駐軍の命令であると知事は田中、加藤両代議士に言明したではないか。」知事「あのときは進駐軍は命令だと言つた。その後会社がやつたのだと言つておる。」内藤「知事がうそを言つたのか。進駐軍がうそを言つたのか。人民はだれも信用できなくなる。」知事「工場閉鎖が私と関係ないことだということを、労働者に知らしてもらいたい。」内藤「ということは進駐軍がうそを言つたということを大衆に知らせることである。占領政策違反としてわれわれはやられるだろう。知事は責任は持つか。」知事「それは困る。しかし事実軍政部に私が行つた際、先方はこの点われわれはあやまらなければならないと通訳に話しておるのを私は聞いた。」内藤「責任追究はあとからにしよう。工場閉鎖が会社側においてなされたものならば、労働者が会社の中に入つても会社対労働者の問題で、進駐軍や縣知事の干渉すべき問題ではないと思うがどうか。」知事「それはだめだ、その点交渉したところ、閉鎖は会社側の責任だが、会社が操業しないのに、労働者を中へ入れても意味がない。賠償施設の保全ができないから、入れることはできない。会社の要求によりこの点進駐軍からオーダーを出しているというのだ。」内藤「それはおかしい。会社側の一方的の操業停止に対して、労働者は労働する権利を持つておる。賠償保全に名をかりて、この労働者の基本権を蹂躙することは許されない。日本の憲法が蹂躙されるのをあなたは黙つて見ておるのか。」知事「私もおかしいと思つて交渉したが、相手は三人がかりでやられた。」内藤「生産管理をやろう。」知事「それは困る。また退去命令が出される。」内藤「あなたが受付けなければよいではないか。日本側の憲法を守つて鬪えばあなたは民事知事として後世に不朽の名を残すのだ云々。」こういうことがつながつておる。そうしてその際内藤君は「労働者の憤激ははなはだしい。ともすれば無政府的になろうとするのを、党が押えて來ておる。しかし、だんだん押えがきかなくなる。会社が卑劣な分裂策動などを始めたら、ますます労働者はやつきになる。」知事「会社がばかなんだ、労働者を恐れて会おうとしない。これからこんな状態ばかり出て來てはたまらない。」まだこまかな点はたくさんありますけれども、これは当然あなたとの会談の一部をまとめたものだと思つておりますが、ここにあるようにこの命令の問題について、お互いの間に誤解が残つておるというのは、この後GHQにもこの問題が持ち出されまして、レーバー・セクシヨンの見解として、工場閉鎖は賠償保金責任者の楠瀬知事の責任であるというふうなことが言われておる。從つて今もここで述べられましたように、あなたとしては言いにくい事情があつたかも知れませんが、命令であつたか命令でないかという点についてはいつも論議の起る点でありますので、この点につきましても一應あなたは國会において首相をはつきりさせておくべきが必要だと思うのであります。それでこの点についてもう少し御説明を願いたいと思うのであります。
#243
○楠瀬證人 工場閉鎖は当初、これは私は率直に田中堯平君、加藤充君あたりが調査に來ましたときに申し上げましたのですが、当初会社側でもつて工場閉鎖をやつて、それは軍政部の方が受入れて命令をしたのだというふうに誤解される節があつたので、それで工場閉鎖も軍政部の命令によつてやつたんだというふうにわれわれ思つておつたけれども、その後確かめたところによると、工場閉鎖は軍政部の命令でないということがはつきりしたので、これは当時のわれわれの誤解であるからその点ははつきり申し上げました。しかしその工場閉鎖と違つてそのずつとあとに起つた退散要求は命令であつて、これは昭和二十一年に出ました日本政府に対する覚書に伴いまして、文部、商工両省令が出ておる。それに基いて知事として、賠償工場責任者としてその退散に関する命令を出し得ますが、それに並んで占領軍の作戰命令が第八軍から軍政部に出ております。その作戰命令によつて今度の軍政部の命令が出ておるというわけで、これは軍政部の命令であることははつきりしておるということは幾度も口をすつぱくして私は申し上げておるようなわけで、これは否定ができないことだろうと思うのです。それでこのことはあとに至るまで軍政部の命令でないのだというようなことで、よくこしらえて來ますけれども、これは命令であることは間違いないわけであります。
 それから何か東京の方で調査されたところでは、工場閉鎖を命令したのは知事がやらしたのだ。知事が賠償工場管理者としてそういう命令をやらしたのだということで、その筋のところまで引合いに出されて言われておりますけれども、知事がそういう命令を出した覚えはありませんし、そういう事実は決してありません。それから現地の軍政部においてもそういう事実は認めておらないはずであります。それは東京において、何かの誤解ではないかと思つておりますから、お直しをいただきたいと思います。
#244
○神山委員 けつこうです。それである程度一部抱かれていた誤解が解けた。今の点ではつきりしましたが、この問題についてはまだこういう点で命令であるか。だれがどう言つた。マレー労働課長がどう言つた。トルーデン中佐がどう言つたという点はありますけれども、こまかい点ははつきりしておりますし、あとは直接の関係者にお尋ねしますから、今の命令であつたかどうかという点についてはこの程度にしておきますが、その次は先ほど工場内の人と連絡をとるのにあなたはずいぶん努力をされたということを述べられたことが、宇田委員が質問されたところではつきりしておるのでありますが、ただ遺憾な点は組合側の言つておることと食い違いがあるのであります。それはあなたとして全力を盡されたでしようが、組合側としてはこの問題について違つた態度をとつておるので、二、三お尋ねしたいのでありますが、縣廳から十四日の晩十時半、十五日の午前七時に話したいことがあるというので、三回ばかり電話がかかつた。これが私は先ほどあなたがおつしやつた有川君におかけになつた電話でないかと、これは想像でありますが考えるわけであります。ただこの場合組合側としてはこれは個人的な意見ではないというふうに考えていたらしい。その次は知事の代理として賠償課長から組合代表へ、自動車を向けるから、個人的な話をしたいから來てくれという話があつたことも組合から報告がありました。ただこの場合組合としてはやはり個人的に知事に会う必要はない。大衆は知事こそ來て事態を収拾してもらいたいという意向であつたので、拒否した。こういうことを言つておるわけであります。それから二回目にやはり同じ課長から松江君でありますが、話したいということがあつたのでありますが、これもやはり同じような理由で行かなかつた。また知事の方は自分で行けないから代理の者を行かすとおつしやつた。こういうふうに話が進んで來ておる。三回目は一方的に知事は行けないから代理として商工部長、賠償課長を向わせるという申し出があつた。組合としては忙がしいということは、こういう重大な問題の場合問題でないじやないか。知事が自分で出て來て事態を収拾すべきだ。それ以外のものは困るというふうなことを言つたために二人が來られなかつた。しかもこの場合文書をもつて言つておるということは、一度も電話で言われていなかつた。こういう手違いがあるわけなのですが、こういうふうな事情をあなたは御承知でしようか。
#245
○楠瀬證人 電話で会見を申し込んだ場合でも、知事が個人的に会見を申し込んだという考えそれ自体私はどうかと思うのです。それは有川君と私が何か個人の親しい関係できわめて友情こまやかな間なら、個人的ということも想像できるのですけれども、爭議をやつておつて、しかも組合委員長であつて、この重大な問題のときに、面識もない、しかも工場管理責任者たる知事が会見を申し込んだときに、個人としてどうこうということは私は問題にならないと思います。それから実は私はこういうことを考えたのです。一体会う意思がないのですから、何とかしてこつちは会いたいと思つて、手をかえ品をかえやつておりますが、その場合、こまかいことを電話なんかで話しても、先生方は途中で切つてしまうのです。從つて、何とかして先生方にとつついてひとつよく話をしたいということで、手をかえ品をかえ、非常に骨を折つたというのが、私のいつわらざるところである。そこで先生たちは、あとで言うのです。あの場合知事が來てくれればこういうことは起きなかつたのだ、なぜ代理の人をよこしておるのだ、こういうことをあとからしきりに言うておるのです。しかしこれは、ああいうふうな大爭議で、しかも自分たちが有利に展開してやろうというときに、ピケツト・ラインを組んでやり、それから中でいろいろの作戰をやつておるときに、こららは從業員と敵対しておるわけではないけれども、この事件全体をまとめて行こうという総指揮官が、戰場へ飛び込んで行つてとりこになつた場合は、爭議の解決はできないのです。事実組合の指導者の中から、知事にああいうことを言つたけれども、実はあのとき來てもらつたら困るのだ、來てくれなかつたので事実はよかつたのだという声も出るくらいです。それは了解願います。
#246
○神山委員 今あなたが総指揮官とおつしやつたが、これは自分でつい考え違いしておつしやつていると思う。総指揮官は、所長がロボツトで、実は板垣君が総指揮官であつた。民政を担当するあなたは、この問題の調停者としてこそ大きな役割があつたと思うけれども、総指揮官とおつしやつたのは失言だと思うのです。事実は公安委員の前で、知事さんあなたが行くべきだということも言われ、あなたもまた私も行くとおつしやつたということを、これはうわさ話ですから、あてになりませんが、こういうこともあつたくらいで、今あなたのおつしやつた、組合側の見解が非常に一方的だというふうにきめてしまうこともどうかと思う。あなたの意思としてはそうであつたかもしれないが、組合としても、自分たちとしてはあなたが自分で出て來て治めてくれるようにといつて待つていたということが、当時のいつわらざる心境ではないかと思うのです。
#247
○鍛冶委員長 もう二時間半になつた。簡單に願います。
#248
○神山委員 聞きたいことはたくさんあるのですが、放送の問題なんですが、放送はあなたでなくて、副知事がなさつたのですか。
#249
○楠瀬證人 そうであります。
#250
○神山委員 その場合、放送の時間のことが、警察の報告と少し違つているわけですが、あなたは何時にこの放送をお聞きになつておりますか。
#251
○楠瀬證人 私は現場に行つておりませんから、正確な時刻はわかりません。また別の方にお聞き願います。
#252
○神山委員 それではその問題は一應あなたには直接聞きませんが、もしも四時三十分というふうに報告されておりますと、これは実に反しておる。というのは、先ほど述べられました、國会に提出している資料の中にでも、四時三十分とありますが、労働者側はそういうふうな放送のあつたことを知つたのは大体四時五十分くらいだつたということがあるわけです。なぜ時間を問題にするかというと、警官が工場に入つて來るときに、この二十分間の開きは実に大事なわけです。しかも労働者は、副知事の声が聞えるか聞えない間に、もう警察官がどんどん入つて來たと言つておるので、これはあなたもお帰りになりましたら、一應副知事からも正確な時間を思い出すように、あらためてこの点聞いていただきたい。この二十分は非常に大事だと思います。
#253
○鍛冶委員長 簡單に頼みます。
#254
○神山委員 先ほど平和都市の問題に触れられたのは、まことにけつこうなことであります。といいますのは、この廣島平和都市の問題が國会にかけられました場合、私は議院運営委員会におきまして、この問題の論議に直接参画し、また本会議においても一應意見を表明するように、共産党として努めた者の一人として、あなもこれに非常な関心を持つていらつしやるので、知つておろうと思いますが、廣島を平和都市にするということは、ただちに廣島で特殊の公安條例その他をつくるようなことになつちや困る、廣島を眞に平和都市にするということは、労働者や農民や市民の生活が眞に平和なものになることを同時に含んでいるという意見が出ておるのでありますが、この点御承知でしようか。
#255
○楠瀬證人 平和記念都市が通りましたときに、皆さんの方で、共産党の御意見として、平和都市は何かというと、人民解放を阻害しないようにしてもらいたいということになつておる、そういう意味ですか。
#256
○神山委員 そうです。それから党の縣委員会でも、この点は申入れをしておると思いますけれども、その点お聞きになつておりませんか。市長には直接申込んだと思いますけれども、お聞きになつておりませんか。
#257
○楠瀬證人 私の方には別に――縣の関係でしようか、ありませんです。
#258
○神山委員 この廣島の平和都市の問題については、いろいろ複雜な問題がある。先日も新聞その他で問題になつておるように、どういうふうな方法でやつて行くか、また財政的な根拠をどこに求めるかというので、特に市長は大いに苦労しておられるのでありますが、この問題に関連して、あなたが先ほどおつしやつた、平和を破る者がある限り、これに対して、暴力に対抗して一定の対抗処置をとることはやむを得ない、むしろよろしい、適当である、こういうふうに強調されているのでありますけれども、廣島日鋼の爭議の根拠を一ぺん考えますと、あの七百名近くの首切りが非常に一方的に行われておる。しかも首切りを発表したその晩には――私が先ほど六月二日の船越町の公安委員会のことを御承知かと言つたのはそこなんでありますが、すでに公安委員会と連絡をとつて、一方的な対策を立てておる。また組合側との平和的折衝については、会社側が終始一貫逃げておる。いわんや会社そのものの企業が危機に陥つたのは、あなたは賛成なんだが、現在の民自党内閣の政略の結果である、こういうことになつて來れば、平和を乱したのは一体だれなのか。日鋼の会社側の諸君、公安委員の諸君、警察官こそ乱したものであると考えられませんか。
#259
○楠瀬證人 平和を乱した者はだれであるかという御質問、これはなかなか関係者が多いのであります。よくひとつ研究しなければいかぬと思います。
#260
○神山委員 そういうふうにおつしやるのだつたらけつこうだが、先ほどのお答えが少し一方的だつたと思う。今のように補充していただけば、非常に複雜怪奇であつて、よろしいです。
 そこで主として民事党の政策にあるということになるのでありますが、さて私は、この問題についての國際的影響その他については一言もする必要がない。本委員会で最初から命令かどうかということが問題になつておる。いつもこれが問題になるのでありますが、こういうことは下見識な問題であつて、考査委員会が二言目には命令だつたかどうかということを言うのは醜態であります。
#261
○鍛冶委員長 実は君がいつも言われるから、念を入れて聞いたのです。
#262
○神山委員 そこで問題は、極東委員会のマツコイ氏の演説を吉武氏がひつぱり出した。吉武氏はマツコイ氏に全面的に賛成されておりますが、私たちは極東委員会が日本管理の最高機関であつて、これに対して批判する意思は毛頭ない。ただ吉武君が述べられたので、対抗的に一つの意見を述べなければならぬ。それはソヴイエト同盟パニユーシキン氏の意見でありますが、これから私が述べることは、私がパニユシキン氏の意見を全面的に支持しておるということではない。具体的事実について違つていることもあるし、見解も立場も違います。いわんやわが共産党はソヴイエト同盟の手先でもないし、われわれは現在日本の中立についてあくまでもこれを擁護するということを六月十八日、十九日の中央委員会でも声明しておるので、特に誤解のないように願つておきますが、以後私が読みますのは、マツコイ氏に対抗するパニユーシキン氏の見解である。われわれが公正な判断をしようとするならば、どうしても双方の意見を聞いておく必要があるという意味で申し上げるのでありますから、この点は縣知事はすでにお読みになつておれば幸いでありますが、お読みになつていないとすれば、きようはよく聞いていただきたいと思うのであります。「一九四八年九月十六日にソヴイエト同盟代表部はすでにマツカーサー元帥に係わるポツダム宣言と極東委員会の諸決定――「降伏後の対日基本政策」及び「日本労働組合組織の原則」――の侵犯についての議題を提出してある、この議題がすでに十箇月以上にわたつて極東委員会の議事録に留められているという事実があるのに、この議題はなおそれにふさわしい考慮と実際的解決を與えられていない、マツカーサ一元帥がこれらの諸決定を直接侵犯していることが、一九四八七月二十二日づけで彼が日本政府に與えた書簡に示されていることは知られている通りである、この書簡で彼は政府諸機関の官公吏と労働者の罷業権と彈体交渉権を禁止するよう要求した、この反民主的な措置は、一九四八年十一月三十日と同年十二月十一日に日本の國会がそれぞれ公布した「改正公務員法」と「公共企業体労働関係法」に反映されている。
 ソヴエト代表部は、この問題についての声明やとりわけ一九四九年三月三日の声明及びその後の諸声明の中で、上にあげた法律は日本の官公吏と労働者の大部分から彼らの生活上の利益を守る基本的権利を奪うものであつて、上にあげたポツダムの決定と極東委員会の政策の決定の直接の侵犯を示すものであることを証拠立てる諸事実を提出した。
 極東委員会がこの議題についてこのように長い間決定に到達できないでいた事実は、アメリカ代表部がとつてきた建前によるものである、アメリカ代表部を除けば、すべての代表部が極東委員会の決定である「日本労働組合組織の原則」は私企業の労働者にも政府諸機関の労働者にもひとしく適用されなければならないという見解であつたのにもかかわらず、アメリカ代表部は、マツカーサー元帥の不法な措置を擁護しながら極東委員会が決定を行うことをあらゆる方法で妨害したのである。」
#263
○鍛冶委員長 神山君ちよつと、それは廣島日鋼事件に対する質問になるのか、全然関係はないようだが……。
#264
○神山委員 これから日鋼事件が出てくる。
#265
○鍛冶委員長 それでは日鋼事件のところだけ言つてください。
#266
○神山委員 ここで先ほど吉武君が言つた点なのでありますが、東京における件なども、やはりこの場合には吉武君のお考えになるようではなくて、「五月三十日、東京都廳に集つた穏やかなデモは、二千の警官にけちらされた、警官はデモ参加者の多くのものに傷害を加え、参加者の一人は警官に殺された」こう書いてある。それから「六月十四日、廣島の一製鋼会社の労働者が六百二十二名の首切りに対して抗議しているのに向つて警察が行動をとつた」こういうことがやはり書いてある。さらに「六月十七日には新潟縣加茂にある「東京芝流」電氣会社の六十七名の婦人を含む百三名の労働者が逮捕された、しこういうふうに廣島の事件は、日本の現在の大きな反動的な政治の一環だというふうに指摘されている、從つて私はこの問題もあえて出す氣はないが、吉武委員が出したので、こういう関係も含んで知事ともあるお方は当然熟考さるべきではないかということを私は言つて、結論として、「これは日本労働者や日本の進歩的分子に対する彈圧の完全なリストとはほど遠いものなのである、こうした正当な憤怒と抗議を呼び起したことは当然である。」こういうふうな意見もあるわけであります。先ほどあなたはマツコイ氏の見解には吉武君と違つた表現をされている。吉武君は吉武君らしくまつたく同感であるというふうに言つておりますが、縣知事は大体の筋において眞をうがつているというように非常にたくみな表現をされている、しかしこういうふうな一方の見解もありますことを同時にお考えになつて、この問題についてのあなたの意思表示をここでお聞きしたい。
#267
○楠瀬證人 お答えします。日鋼事件の眞相は、先ほど來私がお答え申し上げている通りなのでありますが、ただいまのパニユーシキン代表から極東委員会あてに出されている手紙でありますが、いろいろお聞きしておりますというと、マツカーサー元帥に関する御批判とか批評とかいろいろあるように思う。占領下の私どもとしてはそういう行き方についてこの際批評がましいことを避けるべきだろうと思いますものですから、そこのところは御了承願います。
#268
○神山委員 わかりました。いい答弁で、私にしてもマツカーサー元帥を批判したりなんかする意思があつて、ここで読み上げたのでは断じてないのであります。ただ吉武君がマツコイ氏の見解を聞いて完全に同感というふうにおつしやつたので、私はこれに対抗して、こういうものもあるのだということを、本委員会で証人である知事に、これを事実として提示して見解を求めただけであります。
 そこで最後に公安條例の問題でありますが、公安條例の問題について先ほど知事がお答えになつたのは非常に賢明な答えたと思う。公安條例を各地方各縣ごとに出すのだつたらよろしく國会で取上げるべきである。これを取上げないで、各都市、各市町村個々に公安條例をつくつているところに、現在の反動的な政策の一環があるわけであります。それで廣島の場合平和都市にわれわれが賛成した場合、人民解放運動を抑圧しないということが了解事項のようになつておるのでありますから、縣知事としても公安條例問題については特定の政党がこれを強硬につくれというふうなことを申入れしてきても、これは國会その他の公正な見解によつてつくるべきであるというふうに言つて、当然公正な行動をされるように希望しておきます事。
#269
○鍛冶委員長 質問ではないから答える必要はありません。
 それでは済みました。この際三十分休憩いたします。
    午後一時四十七分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十三分開議
#270
○鍛冶委員長 休憩前に引続き会議を開きます。西村伸一証人より証言を求めることといたします。西村伸一さんですね。
#271
○西村證人 はい。
#272
○鍛冶委員長 あなたは國家警察廣島縣本部警備部長をやつておいでになるようでありますが、いつからおやりですか。
#273
○西村證人 私は本年三月一日付で廣島縣警備部長を拜命いたしました。
#274
○鍛冶委員長 三十四年三月一日その前は……。
#275
○西村證人 その前は國家警察の福岡管区本部警備課長をしておりました。
#276
○鍛冶委員長 本年六月初めごろからあなたの方の日本製鋼廣島製作所で爭議が発生したようでありますが、その爭議にあたつてはあなたはこの爭議に関していかなることをなされたか。大体の荒筋をまず承りたいと思います。
#277
○西村證人 お答えいたします。船越町にあります日本製鋼所廣島製作所の爭議について初めて私がそのことを聞きましたのは五月二十四、五日ごろであつたと記憶いたします。しかしながらその工場の所在地は安藝郡船越町並びに廣島市の両方にまたがつておりまして、国家警察の管轄区域ではありませんので、もちろん一應の関心を持つておりましたが、國家警察としては事態を静観するという態度でおつたわけであります。次いで六月二日に船越町公安委員会から國家警察の警察隊長あてに文書をもつて船越町所在の日本製鋼所廣島製作所において馘首問題に端を発して爭議が起つておる、将來事態は相当拡大するかもしれぬから、そのときは、時間と人員を電話でもつて通知するから應援の派遣方をお願いする。こういう意味の正式の文書による應援要請があつたのであります。これによりまして相当事態は進んでおることを観測いたした次第であります。次いで六月十三日の日曜の晩に相当の不法行為が工場内にあつたということを、実はその当時連絡不十分のために、私ども十三日午後に至つて承知いたしたのでありますが、先ほど申しましたように、管轄が違いますので、所轄の警察署の処置にまかしておつた。十四日の午前十一時ちよつと過ぎであつたと思いますが、呉にあります廣島軍政部、その軍政部長から通訳を通じまして電話で私のところへ、工場内の状況を述べた後に、日本警察はその不法入場を阻止して場外に退去せしめ、しかる後に再び入場することを阻止する義務があると思う、早速警察官を派遣願いたいという話であります。しかしながらこれは先ほど申しましたように、船越町と廣島市にわたることでありますので、地元の公案委員会からの應援要諦がなければ國家警察としては動くことができない、その要請を待つていた。なおそのとき電話で尋ねてみましたところが、廣島市警察局長に対しても、これは公安委員長あてでありますが、警察当局に対しても同様の軍政部側の話があつたということをあとで聞きました。次いで午後の零時半から一時の間だつたと思いますが、船越町の公安委員会から電話をもつて事態非常に悪化しておるので、警察官をすぐに派遣願いたいという要請があつたわけであります。それでさきに文書で概括的な應援の要請がありまして、時刻と人数は後に知らせるということは、これをもつてかえられたものと私どもは考えております。一方廣島市の方からは午後の一時過ぎでありましたか、警察局の次長から、その後さらに軍政部から命令があつて早く事態を収拾するようにということで、現在廣島の方は警察官を出しておる。廣島市としては目下公安委員会を召集手続中で、公安委員会が成立したならばさつそく國家警察に対して應援要請をするものと思われるから、そのつもりでおつていただきたい、こういう内部的な連絡をいただいたわけであります。それで國家警察としましては、船越町からすでに正式に應援の要請がありましたし、廣島市の方からも正式の文書の應援要請こそまだ來ておりませんでしたが、そういう状況の連絡がありましたので 一應待機の姿勢をとることにいたしたわけであります。同日の午後五時十五分に、廣島市公安委員会からの正式文書による応援要請がございました。警察官の出動については、もちろん地元の警察局の認定するところでありますが、私ども事態の実相については相当関心を持つておりましたので、軍政部命令というのがまだ文書で來ておらないということを念頭におきまして、文書による確認を待つて出したいというのが國家警察の方の意向でありました。なお軍政部の方から、再三にわたつてきようの日没までに事態を収拾してもらいたい。工場爭議團に対する應援がますますふえつつあるから――工場内の不法入場者がふえつつあるので、時刻が下れば、下るほど困難になるので、早くしてもらいたいという話があつたのでありますが、これは廣島市の警察に対しても私の方にも同様に参つております。その前に午後七時に軍政部の命令を文書をもつて確認したものを労働課長のマレーという人が知事さんのところに持つて來られた。それで文書によつて確認され、かつ知事さんは賠償工場保全管理者としての責任上、工場内に不法に入場しておる者の退去を勧告しようという決意をされたということを知りましたので、その軍命令に基く知事の大局に立つた勧告が実施されることを所期しておつたのでありますが、現地からの状況の報告はなかなかそういうぐあいに進んでおらない。それで事態をどうしても円満に収拾できなければ、警察官が出なければならないというふうな判断が廣島市の方でなされたので、私どももこれに同調いたしまして、さきに要請に基づく應援者を派遣することにいたしました。翌日の午前五時十分か十五分ごろであつたと思いますが、警察官を同工場に派遣して、工場内にある人を工場外に出てもらつたわけであります。なおこの間の指揮は、先ほど申しましたように地元の廣島市警察局長がとられたので、私どもはそのことを承知しておるわけであります。
#278
○鍛冶委員長 わかりました。十三日に工場閉鎖を決定して、十四日早朝から工場閉鎖をしたようですが、その工場閉鎖をしなければならなかつた事情についてはお知りでありませんか。
#279
○西村證人 その間の事情は私よく伺つておりません。
#280
○鍛冶委員長 十四日、先ほどの命令が出たのは午後一時とおつしやつたですね。最初に來たのは。
#281
○西村證人 最初ののは午前十一時すぎであります。
#282
○鍛冶委員長 あなたの方で命令するまでに、工場に進駐軍が出ていろいろ命令したりしたということがあるようですが、その点は御承知ありませんか。
#283
○西村證人 それは後に聞いております。
#284
○鍛冶委員長 どういうように聞いておいでになりますか。
#285
○西村證人 賠償担当官のダガーという大尉の人が行つておつて、現地の警察部長を呼んで、進駐軍の憲兵に協力をしてくれということを言つたと聞いておりまする
#286
○鍛冶委員長 ところがどうなつたのです。
#287
○西村證人 爭議團側はこれを全然無視して要求に應じなかつたと言つております。
#288
○鍛冶委員長 警察署長に言うただけですか。なおそこの関係者へも直接何か言われたんではありませんか。
#289
○西村證人 経営者並びに労働組合側の人を呼んで、同席の上でダガー大尉から言われたと聞いております。
#290
○鍛冶委員長 そうしたら組合なり経営者はその命令に應じて何かやりましたか。
#291
○西村證人 その間のことは私十分承知しておりません。
#292
○鍛冶委員長 呼んだ人の名前はわかりませんか。
#293
○西村證人 会社側は板垣所長代理、組合側は林君が行つたと聞いております。
#294
○鍛冶委員長 そのほか共同鬪爭委員の人々にも言うたということはお聞きにおりませんか。
#295
○西村證人 明瞭な記憶がありません。
#296
○鍛冶委員長 そこで強制退去をやられたわけですね。それについて非常に警察側に彈圧があつたというような批評もあるのですが、この点はどうですか。
#297
○西村證人 ただいま彈圧という言葉があつたのでありますが、彈圧ということはどういうことを意味しますか私は正確には存じませんが、私どもの了解する限りでは、爭議の彈圧とは全然別ものであると考えております。爭議の彈圧は全然なかつたと考えます。
#298
○鍛冶委員長 爭議には関係しないが、何をしずめるのにやつたのですか。爭議に全然関係がないというと。
#299
○西村證人 当工場は賠償工場でありまして、第八軍司令官の命令による許可を得た者、軍政部長の許可を得た者以外は工場内に入つてはいけないという一般的な規則があつたと思います。しかるに工場の管理担当者は、経営者の一部がなつておると聞いております。この管理担当者が工場閉鎖をやつたわけであります。それについて軍政部も承認しておると聞いたのであります。そこで工場内に入ることを禁ぜられた者が内部に入つておるという不法侵入の状況がそこにある、これを排除するためにやつたのであります。
#300
○鍛冶委員長 それから今言う工場閉鎖も、会社側は労働爭議の一手段としてやつたという主張をする人もおられるのですが、あなた方の言われたところでは、閉鎖をしなければ賠償物件の保管ができない実情であつたがゆえにやつたと見ますか、それとも爭議の一手段としてやつたものと見ておりますか。
#301
○西村證人 私の考えますところでは、当時会社の工場の機械保全に当る管理担当者が行動の自由を奪われておつたということは、工場管理について非常な阻害を來すものであると考えるのであります。爭議行為の一つの手段としてやつたものとは私考えておりません。、
#302
○鍛冶委員長 爭議の発生した原因についてはどう認めておいでになりますか。
#303
○西村證人 今回の件で國家警察のごときは、所轄警察から應援を求められて、これに應援者を出したということをやつただけでありますので、馘首のことに対する意見を求められましても、私の聞きかじりや、私の個人的な感想にすぎないものばかりでありますが、今度の日鋼が整理に迫まられたということについては、昨年の年末以來相当赤字を累積して、争議当時には八百数十万円の赤字であると伺つておるのであります。経営困難の原因は人件費の膨脹とか、資材の暴騰あるいは資金難、こういつた各種の條件が累積してこういうことになつたと思うのでありますが、もちろん國鉄の受注量の減少ということがこれに輪をかけて人員整理のやむなきに至つたものと認めます。
#304
○鍛冶委員長 要するに国鉄の了算が減つたからですね。
#305
○西村證人 國鉄の車両の注文が減つたわけです。これは私会社の経理面については詳しいことを申し上げられません。
#306
○鍛冶委員長 そこでこの爭議團では、一日鋼事件の爭議よりも、さらにこれを拡大しまして、鉄道予算の拡大鬪爭というような目標に向つてやつておつたということ、そして国鉄と共同鬪爭をやろうというような事実も御承知でしようね。
#307
○西村證人 これは国鉄の闘爭方針の一部に、関連産業と共同鬪争ということをうたつてあることを私聞いておりますので、この点で、関連産業から逆に国鉄への共鬪というように持つて來たのではないかと考えます。
#308
○鍛冶委員長 それからさらにこの爭議が國鉄だけでなく、全逓、廣船、電鉄、電産等、たいへんな友誼團体と申しますか、各組合と共同鬪爭の形をとつたということですが、この点も御承知ですか。
#309
○西村證人 そういう状況に進んで行きました。
#310
○鍛冶委員長 それから廣島地方産業防衞共同鬪爭という委員会ができておつたことは御承知ですか。
#311
○西村證人 聞いております。
#312
○鍛冶委員長 それでしまいには日鋼だけでなく、この地方産業防衞鬪爭委員が主体になつて、この爭議を指導しておつたということはどうですか。
#313
○西村證人 日本製鋼については、日本製鋼共同鬪爭委員会というのがありましたが、これが後には廣島地方共同産業防衞会議と合体して――合体しているのか、あるいは防衞会議の下にあるのか、私はその内部の組織についてはよく存じませんが、大体表裏一体のものと考えております。
#314
○鍛冶委員長 さらにそれが進んで、廣島地方産業防衞会議人民協議会、それから反フアツシヨ人民大会などというふうになつて、ますますこれを大きくしたものだという事実は御承知ですか。
#315
○西村證人 そういう名称をもつて六月十八日及び二十一日に廣島市で大会が催され、その大会の後に、十八日は市役所、二十一日には縣廳に、陳情、抗議の大衆が行つております。
#316
○鍛冶委員長 こういう戦術をとつて指導した人たは、政党的または團体的に言うと、どういう人々であつたか御承知になりますか。
#317
○西村證人 日本製鋼の共同鬪爭本部の委員長は松江澄という人で、この人は当時党員ではなかつたと思いますが、その後共産党の入党宣言をしているわけです。それからただいま出ました共同産業防衞会議ないし共同鬪爭委員会の委員長を今言いました松江氏がやつておられ、副委員長を廣島造船の中下勝氏がやつております。この人も共産党員であると聞いております。それから今の防衞会議の書記長をしておられた吉田治平氏も同じく共産党員であると思つております。その他にも共産党員の方がたくさん入つておられることを私は聞いておりますが、一々名前を覚えておりません。その他の政党の方は私聞いておりません。
#318
○鍛冶委員長 それから共産党の本部その他こういう友誼團体の中央のおも立つた人々が廣島に來てこの爭議を指導し、または煽動したという事実があるかに聞いていますが、この点はいかがですか。
#319
○西村證人 警察隊が十五日に出まして、十七日に撤収するころまでは私中央の方からの労働組合あるいは政党の指導者が來ていることは伺つていなかつたのでありますが、その後に、日にちは忘れましたが、共産党の田中堯平代議士、加藤充代議士が廣島市にお見えになつて、私どももお会いしたのでありますが、この二人の方は人民大会において激励演説をされた。それから現場の方へ行かれたということはどうも記憶がはつきりしておりません。労働團体の中央機関からと言えば、その後二十日、二十一日の間であつたかと思いますが、全逓の中央委員長の山口寛治、産別会議の議長をされておる菅道、名前は忘れましたが日本教員組合の方、民主主義擁護同盟の方が現地に見えて演説をされて帰つたようであります。
#320
○鍛冶委員長 それからこれが済んでから続いて廣島市内及びその近郷において、たいへん大会であるとか、デモであるとかということが起つたようですが、その概略はどんなものですか。
#321
○西村證人 大きなものとしましては先ほど申しました十八日の人民大会、二十一日の人民大会が数においては大きいものであつたと考えます。その他地元の船越町警察署、船越町役場、あるいは近傍の海田市、それから廣島地方検察廳等に再々にわたつてデモがあつたと聞いております。その日にち人数等は記憶しておりません。
#322
○鍛冶委員長 このように盛んにデモその他がありますと、市民及びその近くの民心は非常に不安を感じてないかと思いますが、あなた方としてはその点をどうお感じになりました。
#323
○西村證人 地方民心の不安ということについては、これは程度の問題であり、その人その人の見解によつて違うと思います。私の感じましたところでは、地元の船越町あるいはその近傍の町村では、幾らかそういつた社会不安、人心の不安というものがあつたものと考えまするが、縣内のその他の区域では人心の不安を來したとまでは考えておりません。
#324
○鍛冶委員長 市内はどうですか。
#325
○西村證人 廣島市内に廣島電鉄というのがありますが、これが日本製鋼に対する同情ストライキをするとかしないとかいう話が飛びまして、これが相当市民に対して影響があつたかと思います。
#326
○鍛冶委員長 この十八日及び二十一日の大会が済んですぐデモをやつたのでしよう。そして市役所であるとか縣廳へ押しかけて行つて、市役所の市長であるとか自治警察局長をひつぱり出して、そこで尋問をやつたり、また縣廳でもそういうことがあつたというが、それらに対しては別に何でもないことと市民は見ておりましたか。
#327
○西村證人 その点は先ほど私がお断りしておりましたように、これはその人その人の感じ方によるわけでありますが、廣島でも相当の混乱があのときあつたわけであります。私どもはそのとき現場におりませんので感じ方が弱かつたかと思いますが、廣島市においてもやはり程度の差こそあれ、相当の不安の空氣があつたと考えております。、
#328
○鍛冶委員長 これは自治警察でもあなたの方でもいいのですが、こういうことを木然に防ぎ、また起つてもそういう大きなことでなくて防ぐような手段はなかつたものですか。それとももう方法のないものですか、どうですか。
#329
○西村證人 御質問の点は結局ただいま國家警察と自治体警察がわかれておるところにかかつて來るかと思うのでありますが、私ども警備警察に任じておる者としましては、事態が拡大しないうちに円満に治めることをもつて本領としておるわけであります。警察権が非常に多数分立しております関係で情勢の判断ができない。そのために事態が、不必要に拡大するということは、今の制度からどうも免れないようであります。
#330
○鍛冶委員長 何かありますか。
#331
○神山委員 今の証言で大体明らかになりましたが、六月三日と言いますと会社が整理計画を一應発表したその日ですね。
#332
○西村證人 そうです。整理計画、人員のわくを発表したものと考えます。
#333
○神山委員 その時にすでに公安委員会が開かれて、これに対して何らかの事態の起ることを予測して、あなたの方に万一の場合の應援申入れをしたというわけですか。
#334
○西村證人 先ほど申しましたように爭議はすでに五月の末から燃え上つておつたのでありまして、地元の船越町としましては人数が少いので、大人数の不法行為が予想せられるとなると心もとなかつたかと考えるのであります。それで六月の二日に……。
#335
○神山委員 ではお尋ねしますが、船越町の佐古田さん、この人は会社と非常に緊密な関係にあるのじやないですか。
#336
○西村證人 私船越の公安委員の方は一々知りませんが、佐古田さんという方は存じません。
#337
○神山委員 それから日吉組というのがあるのですが、その日吉組というのも会社の人入れ作業をやつておる。これはお聞きになつておりませんか。
#338
○西村證人 日吉組は聞いております。
#339
○神山委員 その日吉組の関係の方で公安委員になつている日吉さんという方を御承知ありませんか。
#340
○西村證人 私日吉組というのも初耳でありまして聞いておりません。
#341
○神山委員 戸田組はどうですか。
#342
○西村證人 戸田組という組があるかどうか存じません。戸田という人は知つております。
#343
○神山委員 戸田さんが公安委員をやつておるのはもちろん御承知でしようが、戸田さんが会社に三十年以上出入りしておつて、会社の仕事を独占しておつたということは……。
#344
○西村證人 会社の仕事を独占しておられたということは聞いております。
#345
○神山委員 こういうように見て行きますと、公安委員会が二日にすでに何らかの手配をしたということは、労働者側に言わせれば非常に片手落ちな、後に警察の彈圧反対ということを言わせるようになつた一つの根拠をつくつているというようにあなたは考えませんか。
#346
○西村證人 私は公安委員会がいかなる意図のもとに應援の手配をされたかということについては、その原因については存じません。
#347
○神山委員 その次にお尋ねしたいのですが、十四日にあなたは市警の関係者やその他と集まつて警備の方針をお立てになつておるのですね。
#348
○西村證人 十四日には――大体前後を通じて、警備の方針についてどうのこうのということはないのです。應援をくれという要請がありましたので、それについての打合せはございました。
#349
○神山委員 それでは十四日に縣知事の部屋にお集まりなつて、大体の打合せをされたようなことはありませんか。
#350
○西村證人 十四日の縣知事の部屋でやりましたのは、先ほど申しましたように、晝の間に電話でもつて軍政部からの要請がありましたのを、文書でもつて――午前の電話指令といいますか、要請といいますか、これを文書をもつて確認されたものを持つて來られたというので、私どもはその文書を見せてもらいに行つたのであります。
#351
○神山委員 それは七時過ぎですね。
#352
○西村證人 そうです。
#353
○神山委員 その前にそういう会議をお持ちになつたことはありませんか。
#354
○西村證人 ありません。
#355
○神山委員 それでは今の文書に基いて、あなたの今の表現では文書を見に行つたとおつしやいますが、そこで市警の関係者とお会いになつて、警備計画その他について打合せをされたことはありませんか。
#356
○西村證人 そのときはいたしておりません。
#357
○神山委員 この点、これは市警側の間違いかもしれませんが、市の警察局で出している報告の中に、大体こういうことを書いております。工場閉鎖による退去命令に関しては、廣島縣知事に重要関係ありと認め、廣島市警、公安委員全員、局長、次長、國警は隊長、警備、警務両部長、検察廳は次席外一名の檢事などとともに、知事室において退去命令及び退去措置について協議した、こういうようなことが書いてあります。
#358
○西村證人 それは私の方から出した資料ではないと思いますので、何とも言えません。
#359
○神山委員 もちろんこれは市警から出たということは承知の上ですが、あなたはこういうふうに市警が言つている事実が間違つているとおつしやるのですか、それともあなたは知らないとおつしやるのですか、あるいは知つていて知らないという顔をしているのですか。
#360
○西村證人 そのときにそういう話を私は伺つておりません。
#361
○神山委員 あなたがそういうふうにおつしやれば、それでは全然計画なしに、十五日の朝は出動されたというわけですか。
#362
○西村證人 十五日の午前二時かそこらに、警察としてのやり方については話合いをしました。しかしそれは國家警察の内部の話であつて、應援要請を中心にして、それではどこからだれを出そうかという話合いをしたわけであります。
#363
○神山委員 國家警察だけでですか。
#364
○西村證人 後には廣島市の方にも同席していただきました。
#365
○神山委員 そうしますと、十五日の朝に千四百八十四名が動員されているわけですが、この人たちの動員及びこの動員計画というものが立てられていると思うのですが、こういうことに対してはあなたは全然周知しないとおつしやるのですか。
#366
○西村證人 動員計画と申されますが、國家警察の方から八百五十名ばかり出そうというわけでありますから、それは私どもの内部の問題でありまして、どこの署からだれに出てもらうということはもちろん私がいたしたわけであります。
#367
○神山委員 その内部のことはわかりますが、私が終始お尋ねしているのは、あなたが市警当局その他との間に何らの連関なしに八百名を動員なすつたか、その点をお尋ねしているわけです。
#368
○西村證人 先ほど申しましたように、後に市の警察当局の方に來ていただきまして、人数のことは話をしたわけであります。
#369
○神山委員 そうしますと、この千四百八十四名の指揮系統はどうなつているのですか。
#370
○西村證人 これはもちろん私の方から應援に差出したのでありますから、指揮権は所轄警察署であります。
#371
○神山委員 從つてあなたとしてはこの細部の計画その他については御存じないわけですね。今私は市警の報告を読んでいるわけですが、六月十五日午前五時日鋼工場に直行した市警、国警官吏合計千四百八十四名は、計画に基き工場各門に入場した云々と言つているのですが、これについては直接あなたはこの計画その他については関係していない、こういうわけですか。
#372
○西村證人 一部の御相談にはもちろんあずかつております。
#373
○神山委員 從つて直接責任は管轄警察署にあるにしても、こういう間のこまかな事情を知らない労働者の方にすれば、あなたの自分のお考えがどうであるかは別として、今度の労働争議に干渉されたというふうな感じを受取つているのではないでしようか。
#374
○西村證人 それは労働組合の組合員も指導者からよく聞いていると思います。現在の警察制度の地方分権ということは、組合員自体よく知つていることと思います。
#375
○神山委員 それではもう一つお尋ねしますが、あなたは国家警察官約八百人を動員なさつたとおつしやいますが、それはどういう方法で動員なさいましたか。
#376
○西村證人 動員の方法でございますか――どうも御質問の趣旨がよくわからないのでありますが……。
#377
○神山委員 午前五時に千五百名近くの警察官がもう市警の管轄の中に入つている。午前二時にはある程度まで――あなたは直接の相談はないにせよ――計画について関知していると今証言されたわけです。そうすると七時過ぎに縣知事が軍政部から命令を受けたということを聞いて、その命令をごらんになつて、そのわずかの時間の間にどういう方法で動員なさつたか、汽車その他どういう方法で八百名近くの國警官吏を動かしたか、そこを聞いている。
#378
○西村證人 このことについてはちよつと職務上の機密になつて参りますので、上司の承認を受けてから申し上げたいと思います。決して証言を拒否するわけではございませんが、私一個の考えで申し上げられません。
#379
○神山委員 それは本委員会で初めに委員長が申し上げた通り、職務上の秘密については私どもお尋ねするつもりはないのでありますが、はつきりおつしやつてくだされば、事態がはつきりすると思います。そこを証言なさらないことによつて、拒否されたことにはならないが、それにもかかわらず、相当早くから動員計画がされたという事実を立証される結果になりますが、それは御承知になりますか。
 そこであなたは國警の隊長として、大体ある程度まで廣島縣下全体についての情勢を御承知だと思いますが、今度の争議に関連して、共産党の中央部から五名の代議士ないし中央委員がこの争議の指導に参画しているというふうなうわさを、この委員会において言う人がありましたが、名前をあげますと、ここにおります代議士の聽濤君、前の全逓委員長として有名な土橋君、労働委員の春日君、それから田中堯平君、それから伊藤律君、この五人が行つたという話があります。確かに田中堯平君が行つたことはあなたも証言なさいました。春日君も後に他の用務を兼ねて行つたということも承知しておりますが、この五人の指導者が行つて、これが日鋼争議を指導したという情報をお聞きになつたことがありますか。これも職務上言えませんか。
#380
○西村證人 それは先ほど申し上げた通りでありまして、私別に中央から來られた人の尻を追つているわけでもありませんし、証拠をあげろと言われても困りますが、ただ鬪争の経過を見ると、共産党の鬪爭方針そのままをやつていることは、あとから判断できる。中央委員のだれがどういうふうな指導をしたということはわかりません。
#381
○神山委員 そうするとあなたの話でますます奇々怪々なことが現われたのですが、共産党の指導方針に從つてこれがやられているというふうにあなたが判断なさることは自由ですが、それならばあなたは共産党の縣委員長である徳毛君その他が、この問題の円満な急速なる妥結のために、縣廳やあるいは市警察当局と折衝している、こういう事実を御承知ありませんか。
#382
○西村證人 私のところに來られたことは事実であります。それからとにかく言われるところがお互いに円満に解決しようと口の上では言われたことは事実であります。但し眞意はどういうところにあつたのか判断できません。
#383
○神山委員 けつこうです。あなたの立場もありますから、私たちは口の上でそういうことを言つたと認めていただくだけでけつこうです。
#384
○大橋委員 ただいま神山委員の質問に対して証人から國警の方では十五日の警察官の行動について直接指揮はしておられない、こういうことを言つておられますが、この点について地元の共産党の諸君にもよくそういう点は説明してお聞かせになつておられるのじやございませんか。
#385
○西村證人 十四日の日に党の委員長の徳毛君、それから稲村代議士、自由法曹團の弁護士原田香留夫、その他五、六名の人が私のところに参りましてデモ、争議のことについて話をされたのであります。そのときに國警は管轄権を持つておらぬから應援を要請の必要があれば出すけれども、國警では指揮権は全然ないのだということを聞いた。
#386
○大橋委員 それから應援要請があつたときには普通は市警の責任で應援を要請されるのですからして、國警としては事情の許す限り應援をされるのが当然なんでございましようね。それを断るというのはむしろ例外なんでしようね。
#387
○西村證人 その点は警察法に國家警察は自治体警察の應援の要請を受けた場合に、これに協力して應援を出す義務があるということになつております。
#388
○大橋委員 そうすると警察法上全然あなたの方はこの問題については積極的に彈圧をするという余地はないわけですね。
#389
○西村證人 警察官を動かすことについては國家警察は方針、その他について何らタツチできないわけであります。
#390
○大橋委員 そのことを知つておるにかかわらず、國警が不当彈圧をしておるといつておるように宣傳しておると聞いておるのですが、それは一体どういう理由なんですか、彼らの宣傳している意図は……。
#391
○西村證人 これにつきましては抗議なり、デモの都度言つておるのでありまするが、國警は警察の運営については管轄権を持つておらぬ。それがわれわれの方に抗議をされても筋違いであるということを申しておるのであります。
#392
○大橋委員 そうするといくら言つてもわかつているくせに、わからぬような風をして不当彈圧、不当彈圧だと言つて歩いておるというのが彼らの態度だ――こう認めてさしつかえありませんでしようか。
#393
○西村證人 私もさように感じます。
#394
○鍛冶委員長 では済みました。御苦労さん。
    ―――――――――――――
#395
○鍛冶委員長 これより日本製鋼廣島製作所争議事件について証言を求めることになりますが……。
#396
○神山委員 ちよつと宣誓に入る前に一言申し上げたいのでありますが、それは本委員会の傍聽席には、事件の関係者である板垣君がまだ中におられるのであります。今までの慣例から言えば、証人としての証言が済んだあとはこういうことはさしつかえないと思つておりますし、私も了解しておりますが、本日はまだ事件全体の尋問に重大な関連があります。たとえば三好君は船越町の警察署長をしておられます。私が先ほども申し述べましたように、また種々の証人によつて証言されておりますように、日鋼廣島製鋼所は、公安委員会に対して直接の結びつきを持つている。これは戸田氏がすでに三十年間この製鋼所と関係があるということを本委員会で証言しております。また公安委員のうちの二名が直接日鋼と関係があることも明らかになつております。こういうふうな公安委員の下にある警察署長に対しては、関接的な行動であれ、日鋼製作所の與える影響が相当のものであるということを考慮しなければならぬと思いますることに日鋼製作所の実際の支配は皆川所長が行うのではなく、板垣君が行うのであるということは、世間の定評となつておるわけであります。從つて本日の証人の証言を眞に良心に誓つて、公正なものであらせるためには、先の板垣証人が、本委員会の傍聽席におられることはあまり適当でないと思うのであります。従つて委員会はこの板垣君に退席を命ずるようにお諮りを願いたいと思います。
#397
○大橋委員 ただいまの神山君の御意見も一應ごもつともな点がありますが、この委員会には從來の慣例等もございますから、委員長におかれましてもそれらの慣例等を御考慮の上、適宜御処置あらんことを希望いたします。
#398
○鍛冶委員長 まず宜誓を求めてから……。
 証言を求める前に、各証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宜誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。
 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。
 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。上田さんひとつ代表して読んでいただきます。
    〔証人上田頼一君各証人を代表して宣誓〕
#399
○鍛冶委員長 どうぞ署名、捺印を願います。
    〔各証人署名、捺印〕
#400
○鍛冶委員長 証言を求める順序は上田さん、それから三好さん、徳毛さんといたしますから、上田さん以外の方はもう一度元の控室でお休み願いとうございます。
 上田頼一さんですね。
#401
○上田證人 そうです。
#402
○鍛冶委員長 あなたは廣島市警察署警察局長ですね。
#403
○上田證人 廣島市警察局長であります。
#404
○鍛冶委員長 いつからおやりですか。
#405
○上田證人 昭和二十三年三月七日であります。
#406
○鍛冶委員長 あなたの管内における日本製鋼所廣島製作所で五月末ごろから爭議が起つたようでありまするが、これに対しまして、市警察局としてはこの爭議に対していかなる方針で臨むつもりであつたか。またどういう警備措置及び連絡等をとつておいでになつたか。まずその点から伺いたいと思います。
#407
○上田證人 ただいまの爭議に対します方針でありますが、これは不介入の方針でございます。それから措置等でありますが、これはなるほど日鋼工場は廣島市にも管轄がございますが、主として事務所が船越町の警察の管轄になるわけであります。従いまして私どもはそういつた船越の方から連絡をいただくといつたようなことでありまして、大体爭議が勃発したことは聞きましたけれども、そういつた方面の連絡は船越の方からもらい、あるいは私の方からも多少行つたかもしれませんが、主として私の方は從的にやつておつたようなわけであります。
#408
○鍛冶委員長 警備措置については……。
#409
○上田證人 警備措置についてはもとより不介入の方針でありますから、そういつた不法行為などのことがございますれば、これは当然取締らなければならぬという関係ですが、静観すると言いますかそういつた警備態勢であつたのであります。
#410
○鍛冶委員長 ところが十四日に工場を閉鎖しまして、その閉鎖したる工場に対して爭議團が占拠して來たということですが、これについてまず占領軍から何らかの命令がありましたですか。また命令をするについてどういう人が出て來て、どんなことになつたかを承りたいと思います。
#411
○上田證人 ただいまの十四日の不法占拠と申しますか、これに対しましては当日軍政部のダガー大尉が見えておつたそうでありまして、これから実は命令があつたわけであります。その経緯を申し上げますと、当日の午前十時五分に、あそこに入つております労組員等に対しまして、今から十五分、すなわち十時二十分までに退去しろと、こういつたことを命令したようであります。しかるに大部分は出たそうでありまするが、どなたかの指導によりましてまた入つて來たというので、今度は英濠軍の作戰部隊をよこすから、從つて廣島市の警察から二十五名即時應援しろ、こういう命令が当時行つておりましたる廣島市警察の幹部に対しましてあつたのであります。そこでそういつたことの報告がございましたので二十五名を現地に派遣をいたしたと思つております。これは時間ははつきりしませんが十一時ごろだと考えております。それからさらに二十五名を待機せしめて置け、すなわち二十五名現地、二十五名廣島市に待機せしめて置け、こういう命令を受けております。それから越えまして十一時五分であつたそうでありますが、このときに軍政部から何名くらい廣島市から出動できるのか、こういつた電話の問合せがあつたわけでありまして、当時おりました下野次長から大体最大限三百人は出られるだろう、こういつた答えをしたのであります。それから十一時十八分に、それでは三百名早く出せ、こういつた命令があつたのであります。それからさらに越えまして当日の午後三時ごろであつたと思いますが、これは國警の方を通じまして私の方にありまして、從つて呉の軍政部に参りましたのは午後五時であつたかと思つておりますが、私の方の下野次長と、それから國警の方の武末隊長とが参りまして、そうして詳細なる命令を受けております。これをちよつと簡単に申し上げますると、日鋼は賠償工場であるため、軍事裁判とする。二はリーダー格二名ないし三名を逮捕せよ。三は十四日二時に閉鎖命令が出た。四は工場経営者及びその助手二百三十名の者のみが出入可能の状態であつた。それから五には工場の閉鎖申込みを軍政部が正式に認めた。六には閉鎖地域は全地域である。除外されるものは裏の小工場及び引揚寮の二つである。七は適用法令は勅令三百十一号である。八は違反者は逮捕後一定箇所に集結せしめおく、九には特に逮捕を必要とするのは、外部より應援に來た首脳部を二名ないし三名ずつである。工場從業員中煽動者も二名ないし三名の逮捕の要あり、こういつたことを呉の軍政部で今申しました武末隊長と私の方の下野次長が受けて帰つております。
#412
○鍛冶委員長 それは口頭の命令ですか。
#413
○上田證人 すべて口頭でございます。
#414
○鍛冶委員長 口頭で言われたことをだれか書いて帰つて來たのですか。
#415
○上田證人 そうです。筆記したのです。このことにつきましては、すでに知事に対して書面を出しておる、こういうことであつたそうであります。
#416
○鍛冶委員長 それに基いてあなたの方でどういう処置をおとりになりましたか。
#417
○上田證人 そういう命令を受けましたので、私どもは公安委員会から國警本部の方に應援の要請を出したのであります。それから廣島市内におきましてのいわゆる非常召集をやつたわけであります。それからなおだんだん状況が惡化しておるというような関係もございましたので、從つて私どもの方といたしましては、呉市に対しましても應援の要請を公安委員会からいたされたのであります。十四日はそつちこつちへ各地に應援の要請をいたしまして、そうして命令通り中の人を出す、こういうことを計画したわけであります。
#418
○鍛冶委員長 それでどういう計画になつて、どういうふうで出しましたか。
#419
○上田證人 これは計画は、翌十五日の午前五時を期して各門から入りまして、そうして外へ退去せしめるこういう計画でございます。またそういつた手順をいたしたわけでございます。
#420
○鍛冶委員長 それからどれだけほどの人数を要請した。
#421
○上田證人 人数は大体千五十名ほどでございます。
#422
○鍛冶委員長 それでうまく出ましたか。
#423
○上田證人 それで十五日の午前五時と申しましたが、実際活動を開始したのは、一部は五時五分ごろだつたと思いますし、あとは五時十五分ごろだと思います。これは延命門の方から入りましたのが早かつたが、あと西門から入りましたのはピケツト・ラインがございました関係で少し遅くなつております。それで十五日はそういうことで、大体五時十五分ないし二十分ごろから開始いたしました。初めは東部門におきましてもあるいは西門におきましても、相当ピケツト・ラインがありまして、用意はなかなかなんでございましたが、大分行きまして自然に事務所の方へ闘爭員の方が集結したようなかつこうになつております。そこで実は二、三十分勢ぞろいいたしますので待つておつた。そうして勢ぞろいして徐徐に歩いて行きまして、だんだん圧縮して出した、こういうことになつております。
#424
○鍛冶委員長 あなたはその指揮をなさつたのですか。
#425
○上田證人 はあ、私が総指揮になつたわけであります。
#426
○鍛冶委員長 そうして現場へもおいでになりましたか。
#427
○上田證人 現場にも参りました。もとより総指揮でありますので、あとから状況を見ておりました。それから出ましてから事務所の二階に総指揮官の本部を置きまして、そこに私おりました。
#428
○鍛冶委員長 それを出すにあたつては相当負傷者なりまた相当手荒いこと等をやりましたかどうですか。
#429
○上田證人 手荒いことはございません。私どもの方針は、とにかく一應出すのだ、こういつた命令でもあるし、一應出せば任務が終るのだという考えもありましたので、從つて手荒いことはいたしておりません。ここで了解をしてもらいたいのでありますが、聞いてもらいたいことは、行きましたときは向うはいろいろな歌を歌つて赤旗を振つて殺氣立つておりました。私どもの方は冷静でございまして、できる限り、要するに、工場外に出せばよいのだ、こういう考えであつたのでございます。從つて拳銃なんかも持つておりません。拳銃を持つておりますと刺激になるというのでございまして、拳銃を持たず警棒だけ持つて参りました。要するにずつと押して出したというわけで、私が見ておりますと、向うは殺気立つておる、私の方はもう少し早く行つたらよいがと思つたのですが、そろそろ行つたわけです。それで精神状態が違います。從つて手荒いことはいたしません。そういつた状況でございまして……。
#430
○鍛冶委員長 相当抵抗した者がおりましたか。
#431
○上田證人 多少おりまして、抵抗いたした者は、いわゆる工場内から出ないので、逮捕したのが二十八人と記憶しております。
#432
○鍛冶委員長 そのほかは。
#433
○上田證人 そのほかは出ました。
#434
○鍛冶委員長 押して出してやつたのは。
#435
○上田證人 中には一應百人くらい残つておるということで出なさいといつても出ない関係におきまして、三人でもつて二人くらいでやればよいと思つたが一應押して出した。それが六時二十分ころでありましたが、完了したわけでありまする
#436
○鍛冶委員長 何か三人か四人でつつて出した。
#437
○上田證人 そうです。
#438
○鍛冶委員長 そのつつて出すのに落したと言うが。
#439
○上田證人 そんなことはございません。絶対ありません。
#440
○鍛冶委員長 そういうことを言うておる人がおるが。
#441
○上田證人 そういうことはございません。私ども実は入りまして相当三百何十人かのけが人があるのだ、こういう……。
#442
○鍛冶委員長 死者は何名。
#443
○上田證人 死者は聞きませんでしたが、重傷者が九名その他の傷者が三百四、五十名、これだけあるのだという話でございましたが、そんなことはないのだと言つたわけです。念のために病院に行つて調べたのですが、そのとき金属性のものでちよつと切りまして、警棒でなぐつたのではいけないと思いまして調べたのですが、傷は金属性のもので二針縫つた、それが重傷の方でありまして、治療を二日か三日受けました。警棒でなぐりますと裂傷になりますからそれをよく調べましたが、金属性のドアーか何かでこすつたのだと思います。それが重い方でありました。ところが労組におきましては連日の過労で脳貧血を起して倒れた者があるようであります。そういうことを聞いております。
#444
○鍛冶委員長 黒神某という人は何かえらく泣いたりわめいたりして騒ぎを起して、かつがれて行つたということですが……。
#445
○上田證人 私は現場を見ておりませんが、あとで事情聞きまして、その人は百人ほど残つておる者の先頭に出まして、スクラムを組んでおつて、それが一番先まで出なかつたというので、それを先に出したということを聞いております。
#446
○鍛冶委員長 何か飛び下りて自分でけがしたということですが……。
#447
○上田證人 そういうこともちよつと聞きましたが、私目撃しておりません。
#448
○鍛冶委員長 やはり宣傳は先ほど言つたように三百何十人の死傷……。
#449
○上田證人 はあ。
#450
○鍛冶委員長 それから、死者もあつた……。
#451
○上田證人 死者はラジオ放送であつたそうでありますが、私に対する放送は重傷者は九名であるということでありました。
#452
○鍛冶委員長 そこで出したあとは、ずいぶん騒ぎましたか。それともどんなふうでありましたか。
#453
○上田證人 騒ぎがございました。それで出しましてから今度はそとの方、いわゆる工場外におきまして、相当に應援團体も参られますししまして、大会と申しますか、西門の前、正門の前では相当ございました。そうして波状デモ行進があつたのであります。それで十五日の午後になりますと、各地から應援團体が参りまして、西門の前で拡声機をもたれまして激励演説なり、いろいろな警察官に対する惡口ですね。何か相当ございましたが、しかし一應中に入るという氣配はございませんで、その十五日の夕方までは私どもは各地の配置状況をかえましたりして、実は場内に入れないような警備をいたしたのであります。
#454
○鍛冶委員長 石を投げた……。
#455
○上田證人 それは夜でございます。十五日の夜になりまして、日が暮れましたものですから、日鉱工場の東側に松石寮というのがございますが、これに引揚げて行きまして、そして大分暗くなりましたので、東部門を警備しておりました廣島市の東署に対しまして投石した事実はございますが、その晩は負傷者はございませんでした。それから十五日大分おそくなりまして、雨が降り出しましたが、二百ないし三百、四百といつたような波状デモが西門の前に参りまして、相当にそこでまた蛇行行進といいますかやりまして、そうして引揚げた、こういう状況であります。そのときは西門に対しては投石はなかつたと記憶しております。
#456
○鍛冶委員長 東門があつたのですね。
#457
○上田證人 東門の方は一部ございましたが、負傷者はございませんでした。
#458
○鍛冶委員長 どこで負傷者が出たのですか。
#459
○上田證人 それは翌十六日であります。
#460
○鍛冶委員長 それはどういうことですか。
#461
○上田證人 翌十六日のことを申し上げますと、午前中は平静であつたと思いますが、午後からはまた町の方から應援團体が参られまして、そうしてほとんど当日は一万くらいの数ではなかつたかと推定いたしておりますが、やはり東門なりあるいはまた西門におきまして、相当な激励の演説会もあり、大会もございまして、警察官に対する相当悪罵怒号もございました。そのとき相当投石がございまして、警察官が七名負傷いたしております。このときは、私どものおりますいわゆる本部といいますか、私のおる部屋に進駐軍の方もたくさんいらつしやいましたが、そこあたりも石が飛んで参りました。そこで電話をしましたが、電話をしても石が飛んで来て、ガラスが抜けます。ちようどこのみけんへ石が当るといつたような状況も私ども見ております。その他近傍のさくなりガラスなりが相当抜けております。
#462
○鍛冶委員長 それは主としてどういう者が投げましたか。
#463
○上田證人 これは夜暗いものですから、私どもの方の光がございますと目標になるからというので、光を消しまして、そうして写眞をとろうと考えましたが、写眞もとれない。それで暗いものでありますから、だれが投げたかもわかりませんし……。
#464
○鍛冶委員長 爭議團であることは間違いないですね。
#465
○上田證人 それは間違いありません。
#466
○鍛冶委員長 ところがある人は大したことはないので平穏だつたが、子供がいたずらに投げた石がいくらかあつた、こういうことを言つておりますが、どうですか。
#467
○上田證人 いや、それは子供もあつたかもしれませんが、子供なら私どもの所へ飛んで参りません。私どものおります所、あるいは隣りの電話室は相当の距離がございます。それは子供なら塀は越すかもしれませんが……。
#468
○鍛冶委員長 大体夜だつたら子供なんかおらぬでしよう。
#469
○上田證人 ええ、夜はおらぬでしよう。多少あるいはおつたかもしれませんが……。
#470
○鍛冶委員長 六月十八日にさらに日鋼事件眞相発表人民大会というものが開かれて、その大会の決議に基いて市役所へ押しかけて来て、あなた方にいろいろ交渉をしたということですが、その実際をひとつ聞かしてもらいたい。
#471
○上田證人 日鋼工場を引揚げましたのは十七日の午後正九時でございました。私をしんがりといたしましてあそこを撤退いたしたのでありますが、その翌日午前十一時ごろでありますが、廣島市の平和廣場においてそういつた大会があつたそうであります。そこでの決議が十三箇條あつたそうでありますが、それを持つて、今度は午後の零時半から一時何ぼぐらいまで待つておれ、こういつた通達が、私ちようど疲れておつたのでありますけれども定刻に出勤いたしておりましたところ、あれは共産党の地区書記長でありますか吉田治平さんが午後來るのだからおつてくれ、公安委員にもおつてもらつてくれ、こういう話がございました。さらにまた廣島市の職員組合の執行委員長でありました村田さんからも、警務課長に対して通知があつたそうであります。お二人から通知がありましたので、私午前中縣廳の方に連絡に行つて参りまして、そして晝食をいたしておつたのでありますが、一時二十分ごろでありますかおいでになりまして、市役所の前で十分間ほどいわゆる蛇行デモ行進をおやりになりまして、そうして整列されまして、私の方へ案内に見えました。今から出てくれ、これに対してどんなことですかと言つたのですが、大体抗議文をとつてくれればいいのだ、それからそれに対しては多少の質問があつたら答えればいいのだ、こういうお話でありましたので、出るか出ぬかということも考えたのですが、ちようど市役所の方でそういつた話であつたものでありますから、それでは出ましようというので実は出たのであります。公安委員の方が二人と私と三人出まして、そのあと市長さんも出ました。そうして出てみますと、なるほど大会でありまして、松江澄という、先だつて入党されました共産党の方が当時の大会委員長でありました。それで決議になりました十二項を読み上げまして、これに対して答弁してくれ、こういう話でありました。出てみますと一問一答の答弁になつておるのであります。これは玄関に出たのでありますが、玄関に行く道が塞がつていて、私が出ましたら道があかりまして、そうしてここからあそこまでぐらいの間に人数にして二百二十人か二百五十人はおられました。逃がしはせぬぞというようなことはありました。これはかわつておるぞと、こう考えたのでありますが、まあ冷静に、質問がございましたものですからその答弁を私はしたわけであります。これはその一問一答を申し上げますと長くなりますが……。
#472
○鍛冶委員長 詰問的でしたか。
#473
○上田證人 これは私が出ますと、つらを上げいとか、つらを見せろとか、私は避けたのでありますが、そういうことを言つておつたのであります。それから、一番初めに彈圧反対と言つたことがあつたと記憶しております。私は彈圧ではない、こう言つて再々答えたのでありますが、そんなことはありはせぬ、暴行しておるのだ、彈圧だ、とかいつたような喧々囂々たるものであります。そうしておりますと、ちようど私の三間ほど前でありますが、大きなプラカードを立てて、楠瀬知事、上田局長人民裁判、こういつた赤いのが出ました。そうして今度は私に対してまん中へ出してなぐつてやれ、こういつた罵詈雜言が相当ございました。そう言つて騒いでおりますところへ、また市長が出られまして、市長に対するいろいろな質疑應答が一時間余り繰返されました。その次に今度はまた私に対する責任追究があつた。その際私はあくまで彈圧ではないと言つたのでありますが、私のそばから三人目ぐらいにおりました人が私の頭を一つげんこつでなぐつたのであります。そういつたようなことでありまして、さらにこれは少し前でありましたけれども、軍政部命令かどうか、こういつたようなお話がございました。それで私は軍政部命令でありますと答弁したのでありますが、それでは軍政部命令であるというならば確認書を書いてくれ、こういうお話がありました。それでは書きましよう、こういうことで実は確認書を書く約束をそこでしたのであります。しかしそうしておりましたら、そこへ市長が來られたのでありまして、原稿を書いておつたのでありますが、早く書け、こういつた話がありました。これはそこへ立つて書くのでありますから、局長室に行こうじやないかということも話しまして、大分してから局長室で確認書を書いたのであります。それからその次に市長が帰られましてからのちに、さらに公安委員と私に対する責任追究がございましたが、もし軍の命令でなかつたらどう責任をとるか、こういう話がございまして、公安委員もそれでは辞職する、こういう話でありました。局長はどうする、私も辞職しよう、こういうこともそこで答弁いたしております。それからだんだん進んで参りまして、彈圧しておらぬというけれども、こういう証人がおるんだと言わぬばかりに、あとで聞いたのですが、黒神という方が松葉杖をつかれまして、私と公安委員さんの前に出られまして、そうしてこれをどう見るか、こういう話がございましたけれども、私もどうも松葉杖をついておりまするし、まつたく負傷しておられるようなかつこうに見えたから、負傷者であるということを認めると、こういつた答弁をしたのであります。それから今度はその答弁をしましたら、それじや見舞くらい言つたつていいじやないかという話でございますので、お気の毒です、こういう見舞を申し上げたわけであります。これが実は新聞に報道されまして、局長が陳謝し、わびたといつたようなことがあつたのであります。暴行を認め局長がわびた。こういうことがあつたのであります。私はそこでなるほど見舞は申し上げましたけれども、暴行したから、われわれが悪かつたのだというわびはいたしておりません。
#474
○鍛冶委員長 わびの要求はしたのでしよう。向うからは謝罪せよという要求はあつたのでしよう。
#475
○上田證人 これに対して見舞くらい言つてもいいじやないかという話はあつたのです。
#476
○鍛冶委員長 見舞だけですか。謝罪せよという要求はあつたのじやないのですか。
#477
○上田證人 そこでは謝罪とも私は聞いておりません。記憶しておりませんが、見舞一つ言つたらということで、抽象的に廣く考えますと謝罪といつた意味に聞えるかもしれませんが……。
#478
○鍛冶委員長 それはもし言うことを聞かなかつたらやるぞというような態勢で……。
#479
○上田證人 いや、それはなかつたのでありますが、その時には相当大会の空氣はわんさわんさとなつておりまして、われわれとしましては実は大会の空氣に支配されたというのが事実だと考えております。
#480
○鍛冶委員長 市役所から玄関に出られたのですか。
#481
○上田證人 出たのです。
#482
○鍛冶委員長 うしろにまわつた者はなかつたのですね。
#483
○上田證人 うしろに二、三百人まわつた。
#484
○鍛冶委員長 その円陣の中に入れたのですか。
#485
○上田證人 そうです。だからもう逃がしはせんぞと……。
#486
○鍛冶委員長 それで先ほどから聞いたところで大体わかりましたが、あなた方としては爭議に対する彈圧ということはやらぬが、この退去に対しても、あなた方としては不当なやり方をしたという事実はございませんか。
#487
○上田證人 それはございません。
#488
○鍛冶委員長 爭議とこの退去ということとは全然別なんですか。
#489
○上田證人 爭議に対しましては先ほど申しました通りに全然関與いたしておりません。それから軍政部から退去せしめよという命令が出まして、初めて廣島市警察としては大挙出動したようなわけであります。從つて先ほど申し上げましたようなことで、私の方ではとにかく出てもらおう、こういつたような考え方で行つたのであります。從つて私どもにはそういうことはございません。
#490
○鍛冶委員長 先ほど言われた松江澄君ですね、議長としてやつたと言われた……。
#491
○上田證人 大会委員長です。もつともその間二、三かわつて質問は四、五あつたと考えますが、終始大会委員長として行動されておりました。
#492
○鍛冶委員長 松江が主として代表して質問したのですか。
#493
○上田證人 そうです。
#494
○鍛冶委員長 ずいぶん穏やかに紳士的の交渉であつたというのですか、どうですか。
#495
○上田證人 あの人は脅迫的な言辞はございませんが、大会の周囲の空氣が、私を引きずり出してやつてやるとか、なぐつてやるとか、何を言つているのかといつたような空氣で、確かにこれは殺氣立つておると言いますか、殺氣立つておるに近いような空氣でございました。
#496
○鍛冶委員長 それから先ほど退去せしめるときに妨害した者は不退去罪で檢挙したと言われるが、そのほかに何かこれに伴う犯罪事実として檢挙せられたことはありますか。
#497
○上田證人 廣島市警察としましては、十五日の――廣島市警察ではございませんが、出動しました千五百の者が不退去罪として二十八名を逮捕したのであります。
#498
○鍛冶委員長 それは現行犯でしよう。
#499
○上田證人 そうです。それ以外には、檢察廳の方で十二日の不法監禁等を檢挙されておりますが、私の方は逮捕には手傳いましたが、市警察直接には檢挙いたしておりません。
#500
○鍛冶委員長 あなたの今言われた市役所前の人民裁判のときにあたつては何か犯罪としてはやらなかつたのですか。
#501
○上田證人 これはやつておりません。これは検察廳で私をなぐりました者を檢挙されております。
#502
○鍛冶委員長 それだけですか。
#503
○上田證人 それだけです。
#504
○鍛冶委員長 別にあなたは警察として、そういう実情にあつても、その現状に対しては暴行脅迫としてやろうという考えもなかつたのですか。それともやろうと思つてもやれない事情でもありましたか。
#505
○上田證人 これは先ほど申し上げましたように、抗議文を受けてくれ、それからあと質問があつたら若干答弁してもらいたいというような軽い話があつたのでありますから、そういう檢挙ということになろうとは予期しておらなかつたのです。從つて私の次長なども気づかいまして、行こうとすると阻止されて來れなかつたという状況だつたそうであります。從つて警察官は私一人でありましたが、公安委員さんと市長とおつたわけであります。あと警察官は周囲の方では來ておつたかもしれませんが、まあ人数も二千何ぼおりましたから、從つて脅迫と言えば脅迫かもしれませんが、別に写眞もとつておりませんし、逮捕できるといつた警察官の手も足りなかつたのであります。
#506
○鍛冶委員長 暴行脅迫は認めるけれども、現実にはやれなかつたからやらなかつたというのですね。
#507
○上田證人 暴行は私に対するげんこつが一つあつただけであります。脅迫と言いますか、大会が殺氣立つような空気はあつたのであります。
#508
○鍛冶委員長 その不法監禁の檢挙を檢察廳でやつたそうですが、その檢挙は非常に妨害されたということも聞いておりますが、その事実はどうですか。
#509
○上田證人 それは私関與しておりませんが、検察廳の方で晩の八時ごろ大十人を應援に出したことがございます。主として検察廳が指揮しておやりになりましたので、どういうことをやつたか、私直接は関知しておりません。
#510
○鍛冶委員長 なお二十一日はまた大会をやつて縣廳に押しかけたそうですね。
#511
○上田證人 その通りです。
#512
○鍛冶委員長 その事実はどのように御承知ですか。
#513
○上田證人 それは報告を聞いておりますが、二十一日今度は市民廣場に集まつたと聞いております。そうして東警察の前を蛇行行進いたしまして、縣廳に行つたと聞いております。東署の前の蛇行行進の際におきまして、東署の表玄関に投石したものがあつたのでありますが、これはどうもだれがやつたか、ちようどそのときも十八日にいわゆる人民大会と申しますか、市役所の前へ來ましたときには、西警察署の前で十分間蛇行行進をしたのであります。それでそういつたことだろうと思つておりまして、二十一日にも投石があろうなどとは考えず、從つて写眞機の準備もしておりませんので、何人が投げたかわかりませんですが、しかし現実にガラス八枚投石のためにこわされております。現場写眞等はとつておりますが、何しろ蛇行行進でありますので、そういつた犯人の現場はとつてありませんから、今だれがやつたということはわかりませんが、継続捜査をいたしております。
#514
○鍛冶委員長 それから縣廳へは。
#515
○上田證人 縣廳へは行つたのでありますが、これも報告を聞いた程度でありまして、知事室でありますが、知事と隊長に対する抗議文を突きつけられたようであります。そのときも委員と会うという話でしたが、委員と会うことにしないで、そとへ出てもらつたということを聞いております。
#516
○鍛冶委員長 そとへ出て決議文を突きつけたり、質問攻めをやつたりしたのでしよう。
#517
○上田證人 ただあいさつをする程度でやつたという話を聞いておりますが、詳細は聞いておりません。
#518
○鍛冶委員長 さらにこれに関連しまして、他の警察官、はなはだしきは警察官の家族に対してまでもいろいろな圧迫が行われたというのですが、この点はいかがですか。
#519
○上田證人 これは廣島市に関しましては圧迫は別に感じておりません。ただ多少八丁堀附近で、警察官の家庭に対しては物を賣るなというような張り札があつたかに聞いておりますし、そういつたことが市内で二、三箇所あつたかもしれませんが……。
#520
○鍛冶委員長 ビラを張つたのですか。
#521
○上田證人 そうです。そういつたことでありまして、別に圧迫は受けておりません。そういつた張り札の圧迫は別でありますが、そのために行動があつたとは考えておりません。
#522
○鍛冶委員長 石を投げられたものはありませんか。
#523
○上田證人 それは聞いておりません。
#524
○鍛冶委員長 それから市役所では警察費の削減、これはあなたの方へ持つて行つた決議にもありましたね。
#525
○上田證人 それはあつたのであります。
#526
○鍛冶委員長 それは結局市会でそういうことをきめたんですか。
#527
○上田證人 いや、市長の答弁も私はつきり覚えておりませんが、私ちようど確認書を書いておりましたので……。市長は警察費を削減するとは言つておらなかつたと思つております。但し彈圧に使うような費用は組まないということは言つております。
#528
○鍛冶委員長 それからこの爭議中に警察電話を傍受されたり、その他連絡に非常に困つたという事実がありましたか。
#529
○上田證人 それは確かにあることはあつただろうと私は思つておりますが、私総指揮の関係におきまして、直接電話はしておりませんが、どうも傍受されますので、これはいかぬというので、計画を立てるときから特使を立てまして、大竹なんかには自動車を派しまして、何時にこちらへ出て來い、こういつたようなことはやつておられたようであります。それはたれを立てたという証拠もむずかしいのでありますが、一應電話で日鋼の現場から警察に対して報告をいたすといつたこととか、あるいは連絡したようなことが、三十分くらいしますと、爭議團の方のスピーカを通じてそれが流れておつたような話を聞いておりますが、私はそれをどこでやつたがはわからぬわけであります。
#530
○鍛冶委員長 そうすると、先ほども問題になつたのですが、情報とかニユース等についても、非常に歪曲せられて地方へ流れて出ているようですが、これらに対しても、爭議團に不利益の情報を途中で押えたとか、出さぬようにしたというような事実もあつたとかいうのですが……。
#531
○上田證人 それは新聞その他ですか。
#532
○鍛冶委員長 新聞その他の報道で……。
#533
○上田證人 それは私よくわかりません。
#534
○鍛冶委員長 しかしてこの爭議はどういう人々が指導の中心になつているとお認めになりますか。
#535
○上田證人 これは委員長、私の見解でよろしゆうございますか。
#536
○鍛冶委員長 見解でも、そのときの感覚でもよろしゆうございます。
#537
○上田證人 これは私ども警察に関係しておりますので、いろいろ各種の情報等も入手しておりますし、從つて今日の日鋼の爭議と申しますか、紛爭と申しますか、そういつたことに関しまして、実は私総指揮で内容は知りませんが、そとから見ましての話でありますが、――爭議のあと聞いた話でありますが、爭議が始まりましてから、相当各地から、あの人は共産党員であろうという人がお越しになつておられたということも聞いております。從つて私どものいろいろの方面からの情報なり、そういつた点から考えますと、共産党及び共産党と目される人が今回の指導的役割をされたんじやなかろうかと思つております。
#538
○鍛冶委員長 このように幾日も続いて爭議があつたとすれば、廣島市民並びに近郷の人心が非常に不安を感じたかと思いますが、これはどのように感じたとお認めになりますか。
#539
○上田證人 この点につきましては、私が廣島市の局長でありまして、人民裁判にかかつてなぐられたといつたようなことで、どうも警察は頼りないように見たというような、何か多少町の声が新聞記事にあつたのを読んだように思われますが、そういうことによりまして、多少の不安はあつたかもしれませんが、しかし廣島市といたしましては、別に日鋼爭議なり、紛爭事件を通じては、不安は感じておらなかつたように思います。ただ私なり西署のものがなぐられて、それが檢挙できないようなことに対しまして、多少一般の不安があつたのではないかと思つております。
#540
○鍛冶委員長 巷間人民政府ができる前哨戰だというようなことを言つて歩いたような者があつたというじやないですか。
#541
○上田證人 それは聞いておりませんが、十六日日鋼を私どもが警備しておりましたときに、西門におきましてそういつたことを警察官に対して演説と申しますか、されたような話は聞いております。九月ごろにはそういうことになつて、お前たちは追放するとか、あるいは絞首台に上すか、といつたようなこと、その他罵詈雜言を警察官に対しまして……。
#542
○鍛冶委員長 演説をやつたのですか。
#543
○上田證人 そういうことがあつたようであります。廣島市中におきましては産業防衞人民大会、あるときは人民政府の樹立という決議の一項目があつたようでありますが、ことさらそういうことが言いふらされたようなことは聞いておりません。
#544
○鍛冶委員長 これはここまで大きくならぬで、途中でこれを押えるというような方法はなかつたのですか。それともまた不可能でありましたか。これは大きな問題だと思いますが……。
#545
○上田證人 これは私ども大きな問題だと思うのでありまして、これは軍政部の命令でもございましたし、私どもとしましては実は十四日に私のところへ共産党の岩村大次さんがおいでになりました。きようの証人の徳毛さんもおいでになりましたし、また原田香留夫弁護士もおいでになりましたし、その他四、五人、合計七、八人の方がおいでになりました。岩村さんは私と昔から面識があるのですから、本來日鋼のことは、あすこを出られたら、どうかということを話もしたのでありまして、できればあなたと二人で解決しようかということまで言つたのですが、よく共産党本部へ帰つて連絡しようというような話もあつたのです。今回の分は賠償施設の工場でもございますし、軍政部からそういうことで命令もあつたのでありまして、これ以上避ける道がなかつたのだろうと思つております。どういう手を下せば、これは避けられたかということはちよつとないと思います。
#546
○鍛冶委員長 こういうことが起るとすれば、はなはだ憂慮すべきことですね。
 それではほかに何か……。
#547
○大橋委員 一点だけ伺いたいのですが、今証人はこれは避ける道がなかつたと言う。それは日鋼事件が労働爭議として起るのを避けることができなかつたという意味ではなく、おそらくこれは初めから一部の人々がかような権力闘爭として仕組んでやつたことであつて、爭議はただそのきつかけにすぎない、そうして初めから爭議がどうなろうとも、この日鋼を舞台にして一万に近い共産党の多数のごろつきどもを集めて、そうしてここで暴動的な氣勢をあふりつける、これが目的であつた。そうして、それをやれば必ず法治國の警察というものは、かかる社会不安を鎮圧するために動かざるを得ない。これは何も不当彈圧でも何でもない。法治國における当然の警察の使命として、警察は動かざるを得ない。かくのごとく警察が動いて來れば、これをきつかけにして警察の不当彈圧である、こういつてさらに大きな騒ぎを警察なり、縣廳なりに向つてしかけて行こう、これはにくむべきごろつきどもの当初からの計画であつたから、避けることができない。こう言われたのだろうと思いますが、その点いかがですか。
    〔「ごろつきとは何だ」と呼び、その他発言する者多し〕
#548
○鍛冶委員長 それでは大橋君の釈明を求めますが、共産党そのものをごろつきと言つたのですか、どうですか。
#549
○大橋委員 私のただいま申し上げたつもりは、この不法なる爭議をリードした一部の共産党の人々、これは党派のいかんにかかわらず、その行為たるや法治國においてはごろつきと称すべきものと思いまして申しました。
#550
○鍛冶委員長 共産党員全体をさして言つたのではありませんね。
#551
○大橋委員 むろん神山君や聽濤君などのごとき紳士は含まないつもりであります。そういう趣旨でありますので、速記録を拜見いたしまして、私の眞意と違つた発言がありましたならば適当に処理いたしたいと存じます。
#552
○鍛冶委員長 それでは続けてください。
#553
○上田證人 ただいまの御質問でございますが、軍政部の命令もございました関係上、避けられなかつたと申しましたが、軍政部で現地におきまして、十四日でございますか、十五日でございますか、ダガー大尉がその労組の組合長あるいは松江さんもおられたと思いますが、そういう方に、とにかく出るようにという命令をされたにかかわらず出なかつた、こういうことから今回の端を発したのであります。出ておられればむろんこれは避けられたと考えますが、出られないということになれば、これは避けられなかつたと思つております。今御質問になりましたことも世上では言つているようでありますが、そういつたことによりまして、私どもはあそこが賠償工場でありますので、出られれば避けられた、出られなかつたから避けられなかつた、こう思つております。
#554
○鍛冶委員長 暫時休憩して臨時理事会を開きます。
    午後四時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時四十八分開議
#555
○鍛冶委員長 休憩前に引続き会議を開きます。神山君。
#556
○神山委員 先ほど私の発言中、これは委員長と私との間の誤解があつたのでありますが、発言が中途で打切りになつたままになつておりますので、一應私たちの見解を申し述べたいと思います。先ほどの問題の中心点は、大橋委員が発言したことに関連して起つたのであります。またそれに関連して私が議事進行について発言したつもりであつたのが打切られたことが、よけい問題をこじらしたのでありますが、問題の根本にあつたものは、五日の委員会においても、すでに私が指摘しましたように、本委員会が定足数を欠いておるにもかかわらず運行されておるという事実を指摘したのであります。先ほど委員長に私の名をもつて申入れた点を、今ここに問題の所在を明らかにするために読み上げてみますと、第一に本委員会における大橋委員の発言、これは御承知のように共産党の多数のごろつきども云々に関する委員長の態度が公正を欠くという点を申し入れているのであります。これに対して委員長は、こういう回答をしている。釈明を求め、その内容を明確にし、なお不穏当なものがあれば適当に処置すると答えてある通りで、不公正だとは認めぬ。これは一應もつとものように聞えますが、必ずしもそうでない。と言いますのは、大橋委員の発言はこうなつておる。そして初めから爭議がどうなろうとも、日鋼を舞台にして一万近い共産党の多数のごろつきどもを集めて、そうしてここで暴力的な氣勢をあふりつける、これが目的であつた。また若干の言葉がありまして、さらに大きな攻撃を警察なり檢察廳なりに向つてしかけて行こう、これは憎むべきごろつきどもの当初からの計画であつた。避けることはできない。こういうふうなことを言つています。この点は当然何らかの処置が必要であります。大橋委員がこういうふうな発言をここでしたということは、重大な問題であると思うのであります。現に今、不規則な発言でありますからあえて問題にする氣はありませんが、高木委員はころつきどもということをいまだに言つておる。これは不規則発言した場合に、私たちはあえてこれを一々問題にする氣はありませんけれども、正規の発言で、人もあろうに大橋君のごときが共産党のごろつきどもというふうに言いますことは、特定の個人を指している場合でも問題になりますが、天下の公党であり、國会の中で――民主自由党に言わせれば少いかもしれないが、三十五名の代議士を持つておるわが共産党に対して、この共産党の多数のごろつきどもというようなことを一度ならず放言するというがごときは、実に許すべからざる民主主義破壊者の言動であると私は思うのであります。最近一部には、引揚者のごろつきどもというようなことを言う人がありますけれども、これはおのおのの主観に関する問題であつて、國会に直接関係がないから、あえて言いませんが、國会に三十五名の代議士を持ち、本委員会に二名の同僚委員がおる私たちを目の前にして、共産党の多数のごろつきども云々と発言をしたことは、許すことはできない。これに対して私及び聽濤委員が抗議したにもかかわらず、委員長のとつた態度は不満足であるということを、私たちは一方的と表現しておるのであります。これは今までの慣例から見ますと、もし共産党員が民自党のごろつきどもと言おうものなら、本会議であればこれは完全に懲罰ものであります。委員会におきましても、不規則発言ではなくて、速記録に残つた場合には、当然大橋君のごときはまつ先に立つて嚴重な抗議をされ、陳謝させられないまでも、つつしんで訂正させられるのが慣例であります。その点で委員長が平然として、いやいやそうでないというようなことを言つておる。大橋君も平然としておる。全体の空氣が非常に險惡になつて來て、あらためて先ほど委員長が回答しておりますように、釈明を求めてその内容を云々というようなことを言つておるのでありますが、この全体の事情から考えて、必ずしも私たちはこの回答をもつて満足することはできない。
 第二に、本日の委員会におけるところのこの点に関する私の発言を、委員長は証人に対する質問だというふうに考えて、発言をとめたと言われておりますが、私は、この大橋君の発言そのものが、わが党に対する侮辱であるということを中心にして発言をしておるのであつて、議事進行についてということが、よし話の上で明確でなかつたにしても、議事進行に関する発言であることは、他の委員諸君も実際上了解したと思うのであります。それを話の途中で委員長が、まあまあと言つてまず速記を押え、そしてその次に理事会理事会というふうに運ばれた態度が、私たちには納得ができないので、これが委員長の回答がいかんであろうとも、一方的であるというゆえんなのであります。さらに五日の委員会において、私は本委員会における定足数が足りないことを指摘したのであります。これは今までの慣例上、必ずしもこういうふうな問題を出す必要がないではないかというふうな見解もありますけれども、最近の考査委員会の運営を見ておりますと、これは委員長初め、民自党の委員諸君の見解がどうであろうと、それにかかわりなく、非常に一方的な運営がされておる。これは取上げている問題そのものもそうでありますけれども、会議の運営の仕方において非常に遺憾の点がある。その点を私たちは終始指摘しておるのでありますが、この点が問題にされない。いわんや前から私たちが言つておりますように、事件の進行の新聞記者諸君に対する発表の仕方、その他を見ましても、非常に今まで公正を欠いていて、共産党だけが紳士協約を守つているというようなことがあつたのでありますが、これは今までは私たちはあえて問題にして來なかつた。しかし最近の一連のこういうふうな事実を見ておりますと、私たちとしては委員会の運営をあくまで國会法及び衆議院規則に基いて運営してもらわなければ困るということを痛感するわけであります。ことに五日の日に私が強調しました点は、これはすでに委員長に文書をもつて申入れてありますところの議院運営委員会の申合せ事項であり、委員会を五時には打切るというこの申合せを何回私たちが警告しても取上げない。これは單に國会の運営をつかさどる運営委員会の申合せであるというにとどまら、ず、これは國会職員の保健上の問題を含んだ重要な連合軍側のサゼツスシヨンに基いているものであるからこそ、ますます尊重されなければならぬと私たちは思うにかかわらず、逆に、口さへ開けば連合軍のさしずがどうであつたかということを問題にしておるこの委員会において、連合軍のさしずを無視して國会職員の健康及び保健上の問題を無視して、六時、八時、九時、ひどいときは十一時二十分までやつたということが少くない。從つて私は、委員会をあくまで國会運営の原則及び申合せの真精神に基いてやるべきだという点から指摘したのであります。ただこの場合に、すでに私の定足数に関する発言があり、速記録にのつておりますし、もしも私たちが嚴重にこの問題を出そうとするならば、五日の委員会が実際に成立つかどうか、ことに証人の証言が実際上の権威を持つかどうかについては、大きな問題があるのであります。それと同時に、私たちが考えておることは、こういう重大な問題を発言しておるのであるから、当然委員長側から何らかの意思表示があつて、円満にその後の運営がはかられるに違いないと、実は期待しておつた。ところが大橋君から二、三この点に対する話があつた以外には、全然この点について委員長から申入れがない。(簡單にやれ」と呼び、その他発言する者あり)うるさいなあ。言うだけのことは言わしたらよいじやないか。それで、定足数を欠くという点は、私が注意しておるにもかかわらず、本日の場合にも、初めの証人の宣誓をする場合にも、第二回目の午後の証人の宣誓をする場合にも、定足数がなかつたということをちやんと知つておるのであります。また私の質問に対して、委員長は、定足数があつた、ことに当日はいずれも定足数があつた、一時的の不在を一々問題にするわけには行かぬという意味の回答をしておるのでありますが、これはまことに奇怪至極である。私たちが議院の運営を正式な規則に基いてやらなければならぬことを正式に申入れた、場合には、こういうふうな回答をするのでなくて、まず第一にあなた方としては、この問題について打合せをするばかりでなくて、当然この委員会そのものを実際上の定足数によつて成立たせるようにすべきであると思う。ところが、こういうふうな点を何ら考慮することなしに、きようの委員会が運営されて、しかもなお今になつてもまだ、そんなことは問題にならぬというふうなことを委員長は私に答えておるのであります。これはまつたく、一方的な見解であるのであつて、まことにけしからぬ。そこでまあとにかく、こういうふうな文書のやりとりがありましたが、こういうふうな事実は、委員会の運営が一方的に行われて來たことの單なる一例である。決してこれだけが問題なのではなくて、これは最近における民自党を中心にした、あたかも民自党の私物化したようなこの委員会の一つの現われだという点が大事なのであります。從つてこういう不公正な委員会の運営については賛成することができないということを、私たちは委員長に嚴重に申入れた次第であります。ところが、ここで私が奇怪にたえないのは、われわれ共産党側と円満に話合つて議事の運営をしようという努力をされる以前において、今やつておられる。民自党の諸君は十五人おそろいになりました。われわれを入れて十七名であります。從つて定足数は二名超えておるのでありますが、とにかくわれわれとの間の話合いをしようということではなくて、一方的に自党の人員を動員してきて、そうしてただちに――手続上の問題は別としまして、自分たちだけで委員の差しかえをして、十五人の頭数をそろえて、そうして押し切ろうという意図がはつきりしている。しかもわれわれ共産党に対してこの回答が出される以前において、新聞記者諸君の間に、六時三十分から委員会を開く、少数派にかまつてはおられない、多数派の威力を見せてやれというようなことを言われておる。これは新聞記者諸君の單なるうわさではなくて、この考査委員会は今十五人頭数をそろえて……(発言する者多く聽取不能)從つてわれわれは考査委員会を真に円満に運営するならば……、(「理事会でやれ」と呼びその他発言する者あり)今菅家君が理事会のことを盛んに言つておるので、一言理事会のことを申し上げますが、理事会に行つてこの文書申入れをして、そうして正式の回答を求めて、その上で理事会を開くことこそがほんとうの理事会のやり方である。一方的にこういうことをやるというそのやり方の中に、民主自由党の一方的な考査委員会の……(「何を言うか默つておれ」「うるさい」と呼びその他発言する者多し)まさに今の委員の発言のごとく、われわれがこういう民自党の痛いところを指摘すればすぐ彈圧する、脅迫する。こういうふうなやり方、先には石田君の胸を突き飛ばした篠田君がいる。また先日は僕に対して三人もかかつて突き飛ばしている。こういうふうなやり方こそ、最近の本考査委員会が民自党一党の私物になつてしまつた。日本の民主的な運動を彈圧する機関になつていることの証拠である。從つて私たちはこの委員会のこういう一方的な運営に対しては満腔の怒りをもつて攻撃せざるを得ない。
#557
○鍛冶委員長 では承つておきまして、せいぜい神山君の御趣旨に沿うようにいたします。
#558
○菅家委員 補充尋問はすべて盡きていると思いますので、これで打切りをしたいという動議を提出いたします。
#559
○鍛冶委員長 では菅家君の動議に御賛成の方の御起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#560
○鍛冶委員長 起立多数。よつて上田君の証言はこれで済みました。
#561
○神山委員 私たちは今述べた点について委員長の回答は非常に不明確でありましたが、それにもかかわらずなお諸君と協力して本委員会を円満に進行させようと思つて、わざわざここまで來たばかりでなく待つておるのであります。ところがわれわれのこういうふうな誠意にもかかわらず、菅家君の動議に基いてわれわれの見解を述べさせることもせずに、一方的に諸君が絶対多数の名前によつて補充尋問を打切らせるという横暴が行われたことは、これこそこの委員会が民自党の私物になつたことの最もいい証拠である。われわれは本日のこの委員会にこれ以上列席することはできない。從つて日本共産党の意見が將來どうなるかは別として、私たち二人の委員は本日ここから退場する。從つて將來の行動の自由は保留します。
    ―――――――――――――
#562
○鍛冶委員長 たいへんお待たせいたしました。三好方時さんですか。
#563
○三好證人 そうです。
#564
○鍛冶委員長 あなたは廣島市船越町の警察署長をおやりのようですが、いつからおやりですか。
#565
○三好證人 昭和二十三年三月七日からであります。
#566
○鍛冶委員長 日本製鋼廣島製作所において五月の末から爭議が発生したようでありますが、あなたの方でこの爭議に対してどういう警備措置をおとりになりましたか。爭議が始まりましてから……。
#567
○三好證人 これは日本製鋼所が整理を発表いたしましたので、その日のたしか午後二時ごろであつたと思います。ただちに公安委員長にその模様を報告いたしまして、公安委員長は他の公安委員を招集して公安委員会を開催いたしまして、警察としてはどうだろうか、こういうような協議が始まりました。大体船越町警察署は、署長以下全員わずかに十二名でありまして、爭議行為が労資双方の権利である以上、われわれは絶対にこれに干渉するものではないのでありまして、このことは公安委員会もよくそれを主張いたしました。ただ私たち警察署として、また公安委員会として恐るべきものは、これは派生したところのいろいろな犯罪が発生したときに、その治安維持を十二名で確保できるかどうか、こういうことの檢討が続けられたのであります。その結果といたしまして、緊急事態が発生いたしました場合に、本部その他に應援をお願いするのではとうてい間に合わないので、あらかじめ各関係者にあてて、縣本部にも連絡をとつて、しこうして後にもし緊急事態が発生したならばお願いすることにしようじやないか、こういう決定を見まして、ただちに電話で日本製鋼所が整理を発表したという情報を関係署並びに縣本部に報告いたしました。と同時に廣島警察局は同一管轄権を持つておる関係上、これにいち早く連絡をとり、協同警備に当ろうということになり、その連絡をとり縣本部に出頭して一應お話をいたしましたら、縣本部においては、これは元來書面にとらなければならないのだ、こういうわけであつた関係上、書面を出しまして、帰つて爾來その警備、情報の收集に努めたのであります。
#568
○鍛冶委員長 何かその警備の連絡にあたつて妨害とかいう事実がございましたか。
#569
○三好證人 積極的にこれに対する妨害を受けたということはありません。ただ私らが感じましたのは、製鋼所から警備員が行きまして、本署へ連絡をするのにその電話がときどき故障をするというような関係がありまして、これはそういうような妨害ではなかつたかと考えておるのであります。
#570
○鍛冶委員長 十二日に至つて工場の騒擾が非常にひどくなつて、あなたの方の公安委員の戸田初一さんから、爭議團によつて会社の幹部が監禁せられておるから何とか救助せなければならぬという申出があつたそうですが、そういう事実がございましたか。またあつたとしたらどういうことをなさいましたか。
#571
○三好證人 これは確かに戸田さんがお見えになりまして一應署長室に見えて、今会社の幹部は監禁されておる、それで暴行を受けた、これに対して警察はなぜ出動しないか、こういう問いがあつたのであります。これに対しまして私はすぐ出動するわけには行かぬと答えたのであります。内容は話しませんでした。その内容をここで申し上げますれば、かねてこの爭議関係は、われわれは介入はいたしませんが、犯罪が発生したときの処置といたしまして檢察当局へその時分にどういうふうにしたらよかろうかという指示を仰いでおつたのであります。檢察当局におきましては、われわれは爭議行為には絶対に干渉してはいけない、從つて現行犯以外の犯罪は檢事みずから指揮をとるから、警察はかりそめにもこれに手出しをしてはならない、從つて刻々と情報はおれの手元に報告しろ、それによつて檢事は指揮をするから、こういうことでありましたから、その旨は檢事に報告しております。
#572
○鍛冶委員長 ところが十四日にとうとう工場閉鎖をいたしましたね。それは御承知ですね。
#573
○三好證人 はい。
#574
○鍛冶委員長 ところがその日、まずあなたの警察署を爭議團が包囲したというか、デモをもつて迫つたというか、何かやつたようですが、その事実は。
#575
○三好證人 これはあのときは、すでに大分みな殺氣立つておつたという関係がありましたので、廣島警察局と緊密な連絡をとる必要上、私は廣島警察局へ行つておりました。ところが今デモ隊が入つて來ておる、こういう報告を廣島警察局において受けましたから、それでさつそく帰つてみましたら、すでにデモ隊は帰つておりました。
#576
○鍛冶委員長 大したことはなかつたのですか。
#577
○三好證人 帰つて話を聞きますれば、そのときに連絡に私の警察へ参つておりました安藝地区警察署長と海田市警察署長の二人がちようどおつたそうであります。それに対して約百人くらい入つて來て、そうしていろいろ要求があつたということでありますが、詳細なことは私は見ておりません。
#578
○鍛冶委員長 内容も御承知ないですか。その要求した内容です。主要点だけでいいですが。
#579
○三好證人 これは警察は彈圧を加えてはいけない。日本製鋼所の警備にというて行く必要はないのだ、それよりもこの船越町においては盗難が相当あるじやないか、その方へどうしてまわらぬか。こういう話であつたのであります。そのほかのことは、いろいろ警察に対するところの多少抽象的な話はあつたようでありますが、詳細は存じません。
#580
○鍛冶委員長 さらにその十四日に爭議團によつて工場が占拠されたので、進駐軍からだれかが出張されて、あなたも呼んでやられたそうですが、その点を御説明願います。
#581
○三好證人 これは前にさかのぼりますが、檢察廳へ連絡をとつて、刻々情報を入れましたが、六月の十三日の午後の六時半ごろから警備の警察官も締出しを食わされてもどつて来た、爾来入ることができないような状態になつている。從いまして工場内の治安状態はどうなつておるかということを見ることができないので、さつそく檢事にその指揮を仰いだのであります。檢事はこれはMPに應援を求めて、そうしてジープで中へ入つて実情をしさいに見て、すぐこちらへ向けて報告せよ、こういう命令があつたのです。それで私の方から憲兵に應援を要請いたしましたが、軍政部並びにCIEの方へ報告してくれ、こういうことでありました。それでちようどその日は日曜でありましたので、情報部へその旨を報告いたしましたら、情報部は、それは自分が行つてみてよく視察した上で、應援の必要があると思料したならば憲兵を出すから、それまで待つておれ、こういうことを受けました。そうして晩の十時三十分ごろ情報部からさつそく將校以下三名現地に見えました。その時分には警察官は入ることができないので、その結果をお待ちしておつたのですが、ついに警察に対しては何らの連絡なくして、情報部員の方が徹宵視察しておられたのであります。それで私の方は安心をしておつたのであります。そうして翌朝午前七時半ごろさつそく軍政部へその旨を電話で報告いたしましたら、軍政部からはダガー大尉以下三名出張して來られたのであります。そうしまして、労資双方の取調べをされたのであります。
#582
○鍛冶委員長 そのときにあなたはお立会いにならなかつたですか。
#583
○三好證人 それは午前十時三十分ごろに出て來いという命令によつて、立ち会いました。
#584
○鍛冶委員長 そうしたらどうでした。
#585
○三好證人 その時分にはすでに労資双方の調べは進んで、大半済んでおつた様子でありました。それで警察署長に対して、この現状をどう見たか、なぜ処置をとらなかつたか、こういうことでありました。それで前申しましたことを報告いたしましたら、ああそうか、それならわかつたということで、それでその場において、今から警察署長に対して命令を発する、こういうことがあり、そうして総員起立のもとにその命令を受けました。
#586
○鍛冶委員長 どういう命令です。
#587
○三好證人 ちよつとメモを見てよろしゆうございますか。
#588
○鍛冶委員長 よろしい。簡單に要点だけでいいですよ。
#589
○三好證人 この場合には会社並びに從業員の代表者も立会せられまして、署長に対する命令、こういう初めの言葉でございまして、一、会社從業員、会社の使用者以外の者は入場することはできない。二、ダガー大尉または軍政部長よりの許可がある者は入場ができる。三、この会社の人は、賠償工場の管理人であるから、工場及びその周辺には自由に出入ができるようにしなければならない。四、警察官はパスなくして自由に出入することができる。五、警察はこの訓令を執行するために十分なる措置をしなければならない。國家警察並びに関係警察署にその旨を傳達せよ、こういう訓令を受けたのであります。さらにそれにつけ加えまして、ただいまより警備員四、五名をこの現場へ派遣して、そうしてすべて情報並びに賠償物件の警備に当らなければならぬ、即刻出せ、こういう命令が出たのであります。
#590
○鍛冶委員長 それからほかの会社とか爭議團に対しては……。
#591
○三好證人 これは私よりは前に、前と申しましても、やはり私が立会する目の前であつたのでありますが、その時分は私の関係でなかつたので、ただおぼろげながら記憶を申し上げます。この会社は賠償工場である……。
#592
○鍛冶委員長 それはだれに対してです。
#593
○三好證人 会社、從業員両方に対してです。賠償工場である。会社從業員、会社の使用者以外の者は出入することはできない。その他は大体において同じことだつたと思います。それで最後に警察署長に対して訓令をするから、もしこの間においていろいろの問題があれば、ただちに警察署長はこれを処置するからということまでつけ加えて言われております。
#594
○鍛冶委員長 何か労働組合長に対して、私の命令を傳達させて、早く退去させいということを言われたということでしたが、そういうことはありませんか。
#595
○三好證人 それは私は記憶がありません。
#596
○鍛冶委員長 あなたがいるときにはなかつたのですか。それで組合長はいやいやながら拡声機を使つて、それを命令した、そういうことですか。
#597
○三好證人 それは東の警察署長であります。
#598
○鍛冶委員長 あなたじやありませんか。そのときあなたは立会つておりませんか。
#599
○三好證人 そのときはおりません。
#600
○鍛冶委員長 東署長ですか。
#601
○三好證人 そうです。
#602
○鍛冶委員長 それより前ですか。
#603
○三好證人 はい。これを受けましたのは六月十三日午後零時三十分です。
#604
○鍛冶委員長 東署長が命令を受けましたのは何時ごろでしようか。
#605
○三好證人 東署長が受けましたのは六月十四日の午前十時ごろと思います。
#606
○鍛冶委員長 そうするとあなたの方がおそいですね。
#607
○三好證人 私の方が早いのです。一日違うのです。
#608
○鍛冶委員長 あなたのおつしやるのは十三日ですか。
#609
○三好證人 十三日です。軍政部命令を私が受けたのは十三日に受けただけで、十三日の午後零時三十分です。
#610
○鍛冶委員長 それから十四日にあなたでなくて、東署長を呼んでやつたのはどういうわけですか。
#611
○三好證人 これは私の推察ですが、軍政部の方はわずか十二名の署員ではとうていこれはできないのだ、こういう氣持があつたと見えまして、それから後にはすべて警察局あるいは東警察署長、こういうふうに命令が來ておるのです。
#612
○鍛冶委員長 そのときあなたは立会いはせられなかつたのですね。
#613
○三好證人 立会つておりません。
#614
○鍛冶委員長 労働組合長及び共同防衛鬪爭委員長等へもあわせて命令があつたということですが、それは聞いておりませんか。
#615
○三好證人 聞いておりません。
#616
○鍛冶委員長 そこでその命令によつて、十五日の早暁に警察力で爭議團を出したようですね。その点はわかつておりますか。
#617
○三好證人 それはわかつております。
#618
○鍛冶委員長 よろしゆうございます。こつちでもわかつております。ところが爭議団が船越町並びに近隣の町村に至るまでデモを行つていろいろ圧力を加え、また決議等をやつたということですが、そういう事実はいかがですか。
#619
○三好證人 申し上げます。船越町に対するところのデモは地元であります関係上、よく知つておりますが、他町村の分は私が直接報告を聞かず、あとからいろいろな話を聞いて知つたのです。船越町は、町役場に対しては四、五回ぐらい來たようであります。
#620
○鍛冶委員長 それからそのほかは……。
#621
○三好證人 そのほかは海田市、奥海田にも三、四回行つております。海田市は町長が病氣であつたために、あまり再々行つておらぬということも聞いております。さらに坂村にも行つたように聞いております。
#622
○鍛冶委員長 かようなことで地方の民心は非常に不安動搖にかられておつたという事実はございませんでしたか。
#623
○三好證人 これは大体日鋼の從業員は、地元の船越を中心といたしまして、その附近の人が大半を占めている関係上、從業員の諸君に対しては、あまり恐怖の念は抱いていなかつた。ただこの爭議に関係いたしまして、いろいろの友誼團体が入つて來ました関係上、勢い尖鋭化してあるいは大衆の目の前へ出されていろいろ尋問を受けた。こういうような例を見聞いたしました関係上、何も知らない人たちまでが今度は自分の方へ來るのではないか、こういうようなまことにつまらない考えでありますが、そういうふうに感じ、さらに公務員である人が、町長あるいは公安委員というような人は、これに対してやや恐怖を感じて、あるいは族行する者もできておつたようであります。
#624
○鍛冶委員長 わかりました。それからさらに警察官及びその家族に対して、何か圧力を加えたようなことはありますか。
#625
○三好證人 警察官に対して、圧力と申しますのは、まずこれはデモ隊でありまして、これは日鋼警備中のでき事でありますが、家族に対しては直接こうというような事実はありません。ただこの労働爭議に関係した警察官に対しては、あるいは物を賣るな、あるいは子供と一緒に遊んではいけない、遊ぶなというようなことは、あるいは口々には多少大会とかあるいはデモ中でもそういう話はちよいちよい出るのですが、それはごくとるに足らないほんのわずかの問題でありまして、これに対して圧力というものはその方はありません。
#626
○鍛冶委員長 この爭議中に共産党廣島縣委員会が工場の前に移動して來て、そうしてこの爭議を指導しておつたということですが、その点はそういう事実がありますか。
#627
○三好證人 工場の前に……。
#628
○鍛冶委員長 前か近所か知らぬが……。
#629
○三好證人 それはおそらく堀越のことだろうと思いますが、これは私の管内でありませんが、まず近所であります関係上知つた範囲を申し上げます。大体あれは朝鮮連盟の廣島縣本部に当てられた建物内に、共産党員の方だという人が寢泊りをしておられたのであります。そこへあるいは同志が集まつて、いろいろの協議をせられたという話は耳にいたしました。私が直接見たのではないですが……。
#630
○鍛冶委員長 かような事件に対して、たいへん人心が不安になつたろうと思いますが、現在は相当落着いて参りましたか、またあなた方として落着けるように万全の手配でもなさいましたか。
#631
○三好證人 現在の状況はややあの爭議もおさまりまして平穏に帰しているような状態です。ただこれがこのまま再びかようなことがあるのではないかというような危惧の念は多少抱いておりますが、これというような具体的の問題はありません。
#632
○鍛冶委員長 ほかにありませんか。宇田君簡單にお願いします。
#633
○宇田委員 証人は六月十二日に公安委員の戸田氏が今日鋼で暴行監禁を受けているから、ただちに援助に出動したらどうかという申入れというか、発言に対して、ただちには発動しなかつた。その理由は、檢察廳の方から犯罪行為があればわれわれは摘発しなければならぬが、純然たる労働爭議であるから、そういうものには介入しない方がよい。だから指示を待つたということで出動しなかつたという答えであつたと思う。そうですね。
#634
○三好證人 ちよつと違います。
#635
○宇田委員 どういうふうに違いますか。
#636
○三好證人 現行犯以外の非現行犯には檢事の指揮をもつて檢挙せよ……。
#637
○宇田委員 現行犯は……。
#638
○三好證人 現行犯はただちにこれをせよ……。
#639
○宇田委員 ところが今まさしく暴行、監禁を受けておるのだから、現行犯がそこに起りつつあつたのではないかと思います。現行犯がすでにそこに起つておるから戸田公安委員がただちに出勤したらどうかということを注意した。それに対して檢察廳の指示は、現行犯ならやつてもよいがということで食い違つておつたのですか。
#640
○三好證人 これは前に申しましたように、元來檢事の指揮を原則としてとつたのでありますが、戸田氏がこの要求をせられたときには、十でに應援隊その他で約二千名くらいおつたのではないかというような状態でありまして、船越町警察が、ただちにこれが應援を求めましても、なかなか容易に集まらぬのと、わずか十人、三十人、百人や二百の配下ではどうすることもできない。警察といたしましてはここに権衡の原則をも考え、あるいは群集心理も考え、あらゆる角度から、これは今檢挙するがいいか。あるいはこれを後日に讓るがいいか。こういうところの見定めもいたしたような関係がありまする
#641
○宇田委員 大体わかりましたが、私があなたのお言葉を聞かんとするのは、そこに錯誤があるということを指摘したいのではないのです。檢察廳の言う現行犯を押えんと欲する。ところが今釈明されたように、二千名からおるところに行つても、なかなか実力が及ばない。つまり共産党というか、爭議團の非合法的な暴力行為を予想されて、そこに行つたところでむしろ警察官に危險を感ずるだけで、行つてもだめだということは、檢察廳の言う現行犯を押えよということと相反するわけです。そこであなたにお聞きしたいのは、そういう共産党というか、共鬪の指導方針というか、そういう暴力的行為、非合法的行為に対して、十名や二十各行つたところで役に立たぬ。すなわち恐怖の念を感じてお行きにならなかつたということは確認されなければならぬということになるのです。
#642
○三好證人 申し上げます。現在の警察制度並びにその行き方から考えましてとうていその場合に五十人、百人の少数警察官を送つたらかえつてそれがために被害が大きくなるということを考えますから……。
#643
○宇田委員 そういうことで行かれなかつた。あるいは檢察廳の言い分と少しかわつておるが、そうですね。その次にお伺いしたいのは、いつか神山君が――今退場しましたが、その発言に今できておる日鋼の労組の第二組合ができる一つの過程において、東京における本社の指導方針というか、いろいろな事実がどこからわかつたのか、漏れたという言動が神山君の発言の中にあつたわけです。事前に言つて來たことを察知した、つまり報道機関、電信電話というようなものが漏洩したということを神山君自体が説明したように覚えておるのでありますが、あなたはちようどその船越町の爭議のあつたところの警察署長でありますので、警察電話その他でいろいろ連絡されたと思いますが、具体的にそういうことが漏れたということがありましたか。
#644
○三好證人 これは漏れたか、漏れぬかということについては確証を得ないのでわかりませんが、私の方から縣本部に対して大体もし事態が発生した場合にはひとつよろしく頼むというお願いをいたしまして、それによつて管区本部に対して大体人間がどのくらい余裕があるのかということで、本部でなく、学校に対してそういうことを打合せをなしたところが、爭議本部のスピーカーによつてすでに流れたという点をもつて見ましても、あるいは傍受か何かわかりませんが、結果からはそうなつて來ております。
#645
○宇田委員 これはいわゆる警察電話というものでなくして、今の郵便局、電信局というようなものの関係ですね。警察電話その他が入つておるのですか。
#646
○三好證人 その点は確かめておりません。
#647
○宇田委員 あなたの関係したことのみならず、その他にもそういううわさを聞きませんか。全逓等が動いて、特に左翼分子が……。
#648
○三好證人 これは実は私が日鋼の事務所におりまして、事務所から本署へさらに連絡をとりますのに、電話をかけて、いよいよ機密な点になりますと電話がぽつつと切れる、あるいはいろいろ雜音が入るという例はしばしばありましたが、これがあるいは妨害かあるいは盗聽か、傍受かというようなことは、私は確かめておりませんからわかりませんが、実際はそういうことはしばしばありました。
#649
○宇田委員 これは大体あなたの方は海田市の電信――今は二つにわかれておるそうですから、海田市の電信局ということになるのですね。
#650
○三好證人 さようであります。
#651
○鍛冶委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。
    ―――――――――――――
#652
○鍛冶委員長 徳毛宜策さんですね。あなたは日本共産党廣島縣委員長をしておいでになりますか。
#653
○徳毛證人 はい。
#654
○鍛冶委員長 いつからですか。
#655
○徳毛證人 昭和二十三年五月からです。
#656
○鍛冶委員長 あなたは六月十日の日鋼の爭議にあたつて、日鋼の労組から発せられた日鋼を守る鬪爭宣言というものを御承知になつておりますか。
#657
○徳毛證人 知つておりません。
#658
○鍛冶委員長 これは、いわゆる郷土防衞鬪爭というところへこの爭議を持つて行けという宣言のようですが、あなたの方から発せられたのではないのですか。
#659
○徳毛證人 労働組合に、日本共産党廣島縣委員会からそういうものを発したことはありません。
#660
○鍛冶委員長 そうじやない。あなた方が入つてこういうものを出されたのではないかというのです。
#661
○徳毛證人 全然関與しておりません。
#662
○鍛冶委員長 從つてそういうことは知らぬのですね。郷土防衞という旗印で活動しておつたことは御承知ですか。
#663
○徳毛證人 日本共産党の方針に基く郷土産業を守るという運動をわが党がしたことはあります。
#664
○鍛冶委員長 さらに進んで農民も市民も全人民が一丸となつて地域鬪爭へ持つて行け、こういう方針もあつたのではないか。
#665
○徳毛證人 そういうことは中央委員会の方針に從つてやつたことであります。
#666
○鍛冶委員長 そういう方針はあつたわけですね。中央委員会というものは党本部ですか。
#667
○徳毛證人 そうです。
#668
○鍛冶委員長 そういうことは党本部からあなた方の廣島支部へ指令があつたわけですか。
#669
○徳毛證人 指令はありません。共産党の方針は日々のアカハタに出ておりますが、やはり郷土産業防衞ということが今日非常に大事であるということは、共産党としてはかねがね主張しておるところであります。われわれとしても、今日産業が破壊されておる現状を守るということは、大事なことだとして主張しております。
#670
○鍛冶委員長 わかりました。そこで日本共産党廣島縣委員会は、どこに事務所があるのですか。
#671
○徳毛證人 廣島市元町一番地。
#672
○鍛冶委員長 あなたの方の傘下には幾つの地区委員会がございますか。
#673
○徳毛證人 八つあります。
#674
○鍛冶委員長 日鋼の廣島製作所はどこの地区委員会に属しておりますか。
#675
○徳毛證人 廣島地区委員会です。
#676
○鍛冶委員長 地区委員会の事務所はどこにありますか。
#677
○徳毛證人 地区委員会の事務所は元町一番地。
#678
○鍛冶委員長 そうすると、縣委員会と同じところにあるわけですね。
#679
○徳毛證人 同じ番地のところにあります。
#680
○鍛冶委員長 建物は違うのですか。
#681
○徳毛證人 一緒です。
#682
○鍛冶委員長 ところが爭議が始まるにあたつて、その地区委員会の事務所が日鋼廣島製作所の近所に移轉したそうですね。
#683
○徳毛證人 移轉したことはありません。
#684
○鍛冶委員長 日鋼廣島製作所から約五十メートルの地点の朝鮮人連盟の事務所か何かへ移つたということは……。
#685
○徳毛證人 廣島地区委員会は移つたことはありません。
#686
○鍛冶委員長 それでは地区委員会の人が朝鮮人連盟の事務所を利用したことがありますか。
#687
○徳毛證人 そこには中國地方委員会がありました。そこに地区委員会の人たちが出入りしたことはあるでしよう。
#688
○鍛冶委員長 何というところですか。
#689
○徳毛證人 東堀越と覚えております。
#690
○鍛冶委員長 あなたはこの日鋼爭議開始前に、日鋼労組委員会あるいは大会等に出られたり、またいろいろ連絡せられたことはありませんか。
#691
○徳毛證人 日鋼爭議と言いますと……。
#692
○鍛冶委員長 五月の末から……。
#693
○徳毛證人 その前に日鋼の廣島製作所執行委員会に出たことはありません。但し昨年の秋、共産党と労働組合等との懇談会を催したことがありまして、そのとき日鋼廣島製作所へ行つたことがあります。
#694
○鍛冶委員長 そういうことは始終どこででも行うことなんですか。
#695
○徳毛證人 必要とあらば行うことがあります。
#696
○鍛冶委員長 六月五日から爭議らしいものになつて、十二日から非常に尖鋭化したようでありますが、その間にあなたは日鋼の事務所へおいでになりましたか。
#697
○徳毛證人 行つたことはありません。十四日夕刻参りました。
#698
○鍛冶委員長 それが初めてですか。
#699
○徳毛證人 初めてであります。
#700
○鍛冶委員長 どういう目的でおいでになりましたか。
#701
○徳毛證人 十四日正午前日鋼に対して警官が動員されたという報告がありました。労働爭議に対する彈圧かと理解して、われわれは廣島市警察並びに國警廣島縣本部へ参りました。そこで爭議を彈圧する意図でこの警官が派遣されたかをただし、あわせて首切りに対して勇敢に鬪つている労働者諸君を彈圧する意思のないことを確め、この爭議があくまでも公平な爭議として発展することを要望するために関係当局を訪れてこの点を十分強調して帰りました。三時ごろ縣の國警隊へ参りまして、西村警備部長と会いました。これにつきまして、三時までに國警は一人も現地に派遣しておらないという証言を得まして、このたびの爭議に関してみだりに警察を動員しこれを彈圧する意思のないこと、同時にこれが命令として言われているけれども、占領軍の命令は日本政府を通じて行うことであつて、正式の文書なしに貴官が動員をするかどうかただしたところ、この点は愼重を期してやりたいと思う。われわれはこれに対していまだに一人も送つておらないという証言を得て、以後もし警察を動員する場合にはできることなら当縣委員会にも通知してほしい、われわれもできるだけこの問題を平和的に解決することを望んでおるのであつて、警察も協力してほしいということを申し上げました。以後市警局にも参りまして、この点を強調したのであります。この点については、市警局長も私ども共産党の縣の幹部と会いまして、この問題を十分話した上で帰つて参りまして、日本製作所に私はこの経過を報告に参りました。そして日本共産党は、労働階級を指導する政党として、特に今日産業が破壞され首切りが強行されておるこの実情がいかに日本の國を破壞するか、吉田反動内閣の行う今日の破壞政策がこの首切りを行つておるのであつて、この産業を守るために、どうしても労働者諸君はあくまでも首切りに反対して勇敢に鬪つてもらいたい、今日國警並びに市警は一ぺんも出さないと約束した。特に市の下野次長のごときはいかなる権力、いかなる圧力も労働階級大衆の團結した前には勝ち得ないということをはつきり言つておる。從つてどこまでもわれわれはこの爭議を勇敢に鬪つて、民族の産業を破壞する今日の政策と鬪う決意を私は披瀝し激励して帰つたことがあります。
#702
○鍛冶委員長 ところがこの十四日から――その前に軍政部のダガー大尉が現場に見えられて、ここは賠償工場であるがゆえに爭議とは別個に賠償物件保管のために全部退場してもらいたいという命令が出たということをお聞きになりませんでしたか。
#703
○徳毛證人 そういうことについて正式の話を承つたことはありません。
#704
○鍛冶委員長 非公式のことは聞きましたか。
#705
○徳毛證人 ダガー大尉という軍人の方が來ておられたことは市警察局に行つたときに聞きました。
#706
○鍛冶委員長 そして退去を命じたということは聞きましたか。それが非公式であるというあなたの見解ですか。
#707
○徳毛證人 それがほんとうにそうだつたかどうかを確かめてはおりません。
#708
○鍛冶委員長 だれに命令したかはお聞きにならなかつたですか。
#709
○徳毛證人 市警当局にも國警にもやられておる。どこに対して正式の命令が出たのかということをただしたところ、その点明確でなかつたからもう一度調べて正式な文書をもらつてからでないとわれわれも警官を動員することをしないということを当時言つておりました。
#710
○鍛冶委員長 私の言うのは現場ですが。
#711
○徳毛證人 私が参りました当時は、すでに警察官が動員されておつて、双方が対峙の状態にあつたのであります。
#712
○鍛冶委員長 ダガー大尉からそういう命令のあつたことは現場において聞きませんでしたか。
#713
○徳毛證人 現場においては聞いておりません。
#714
○鍛冶委員長 あなたの先ほどの話は……。
#715
○徳毛證人 市警局に行つたときに次長から聞きました。
#716
○鍛冶委員長 ところがそれでも出なかつたので、文書によつて正式に知事や警察に対して命令のあつたということはお聞きになりませんでしたか。それは午後七時ごろだそうですが。
#717
○徳毛證人 それが命令かどうかということは、われわれは確かめる必要があると考えておるので、後ほど党の代議士が行つたときに聞きますと、これは一般命令以外に出した覚えはないということをトルーデン中佐が言われたことは知つております。
#718
○鍛冶委員長 それはどういう意味ですか、われわれにはわからぬが、とにかく知事に対しては文書で來たのでしよう。
#719
○徳毛證人 そういうことを聞いております。
#720
○鍛冶委員長 それが一般命令だと言うのですか。
#721
○徳毛證人 そうではないのです。軍としては全國の管理工場に出してある一般命令以外に特に命令を出したことはないということを聞いております。
#722
○鍛冶委員長 だれから。
#723
○徳毛證人 米原代議士からです。
#724
○鍛冶委員長 午後七時ごろ縣知事に対して書面で命令があつたということはあなたは聞いたでしよう。
#725
○徳毛證人 それは命令かどうか知りません。
#726
○鍛冶委員長 けれどもそういうことがあつたということは聞いたでしよう。
#727
○徳毛證人 そういうことのあつたことは聞いております。
#728
○鍛冶委員長 しかるにそれが全國の管理工場に出した一般の命令である、こういうのですか。
#729
○徳毛證人 知事からも一般命令以外に命令は出しておらないということは聞いております。
#730
○鍛冶委員長 あなたがそう言われるなら、そう聞いておくが、しかしその日の午後七時に文書をもつてしかも文書の中には、電話をもつて再度命令したがさらにこれを確認するといつてわざわざ出ているのだが、それが特に日鋼の賠償工場のために出たのではなくて、全國の一般の命令だというのですか。
#731
○徳毛證人 命令を特に強調しただけだということであります。
#732
○鍛冶委員長 それは米原代議士から聞いたのですか。
#733
○徳毛證人 知事からも聞きました。
#734
○鍛冶委員長 あなたは知事から直接聞きましたか。
#735
○徳毛證人 聞きました。
#736
○大橋委員 開きそこないじやないですか。
#737
○徳毛證人 私の記憶を述べているのであります。
#738
○鍛冶委員長 そこで十五日の午前に知事から拡声機をもつて爭議團に対してその軍政部の命令を傳達したそうですね。これはあなたはそこにおられたのでしよう。
#739
○徳毛證人 私は現地におりません。
#740
○鍛冶委員長 その晩はどこに行つておりましたか。
#741
○徳毛證人 私は事務所におりました。
#742
○鍛冶委員長 何時ごろまで……。
#743
○徳毛證人 その晩はずつとおりました。
#744
○鍛冶委員長 あなたはさつき工場に……。
#745
○徳毛證人 工場にはすぐそれを話して帰りました。
#746
○鍛冶委員長 何時ごろ帰りましたか。
#747
○徳毛證人 多分六時ごろと思います。
#748
○鍛冶委員長 そういう命令があつたということは聞きませんでしたか。
#749
○徳毛證人 聞いておりません。爭議團に正式に面会を求めて、私は國警に行つて、共産党として労働階級の利益を守るために努力して來たので、これに対する國警並びに市警の態度を爭議團の諸君に報告しただけであります。
#750
○鍛冶委員長 それは十四日の午後でしよう。私の言うのは十五日の朝の話です。
#751
○徳毛證人 朝はおりません。
#752
○鍛冶委員長 おらぬでも、そういう命令が出たということを聞きませんでしたか。
#753
○徳毛證人 出てから後に、十五日に聞きました。
#754
○鍛冶委員長 放送であつたということを……。
#755
○徳毛證人 放送されたことを聞いております。
#756
○鍛冶委員長 ところが、なかなか出なかつたそうですね。それでとうとう警察では実力を行使して退散を執行したそうですが、それは間違いありませんか。
#757
○徳毛證人 私が聞いておりますのは、知事が直接知事の責任においてこの爭議團に対して命令を傳達したというはつきりした事実は聞いておりません。知事が副知事を代理として現地に行かした。しかしそれははつきりした知事の命令を爭議團本部に傳達されなかつた。從つてこれが連合軍の正式の命令として爭議團側は受けておらないように聞いております。
#758
○鍛冶委員長 けれどもその放送のあつたことは聞かれたのでしよう。
#759
○徳毛證人 放送があつたことは聞いております。
#760
○鍛冶委員長 そこで出なかつたので、警察の方で実力を行使して退去を執行したというのですが、これはお聞きになりましたか。
#761
○徳毛證人 そこでトラブルが起つたことは聞いております。
#762
○鍛冶委員長 それで出したわけですね。
#763
○徳毛證人 はい。
#764
○鍛冶委員長 ところでこれを出したことに対して、官憲の不当彈圧であるといつて、爭議團並びに友誼團体の人々は非常にこれを責めたようですが、それはどうですか。
#765
○徳毛證人 私も不法彈圧だと思つています。
#766
○鍛冶委員長 そういうことを責めたことは間違いありませんね。
#767
○徳毛證人 私がですか。
#768
○鍛冶委員長 あなた並びに爭議團及び友誼團体、みんなが……。
#769
○徳毛證人 人民大会において、これが不当彈圧であるということを発表しております。
#770
○鍛冶委員長 どこが不法だというのですか。
#771
○徳毛證人 極東十六原則にも、やはり労働組合は正当の認められた一つの機関であります。これの事務所を襲撃しております。同時にこれに対して暴行を加えております。
#772
○鍛冶委員長 暴行を加えたことが不法彈圧になるのですか。
#773
○徳毛證人 同時に爭議をしておりました労働者は、あそこで團結して自分たちの権利を守る以外に道がない状態にありながら、これを退散さして、これを退散させるにあたつて、暴力を加えてしかも爭議団の事務所を襲撃しておるのであります。そうして以後武裝警官の圧力をもつて、この爭議を彈圧しておるのであります。
#774
○鍛冶委員長 彈圧という意味は――賠償工場であることは御承知ですね。
#775
○徳毛證人 はい。
#776
○鍛冶委員長 賠償工場へは管理者以外は入つてはいかぬことはこれも御承知でしような。
#777
○徳毛證人 管理者以外の人は入つてはいけないが、管理者の許可を得れば入れます。
#778
○鍛冶委員長 管理者の許可を得れば別ですが、十四日に工場を閉鎖しましたね。御承知でしよう。
#779
○徳毛證人 はい。
#780
○鍛冶委員長 そうすれば許可を得る者もないのだし、そこに無理に入つて來れば賠償工場を守るということに違反するのは当然じやないでしようか。
#781
○徳毛證人 労働者は賠償工場だからこれに危害を加えるという意思はむろんなく、むしろこれを保全する意思があつた。むしろ逆にここに警官が入つてから、それは工場の保全のために入つた、警官が機械を保全し、さびたものを磨く、そういう努力は全然なさなくて、むしろ工場保全については労働者の方が熱心であつた。
#782
○鍛冶委員長 そんなことと今の場合は違う。あなたの言われるようなことを言うと、これは疑問があるけれども、百歩を譲つて日鋼の労組の人々が入るならまだよろしいのです。あなたの言われる議論が立つが、その大部分が部外者であつたという事実を知つておりますか。
#783
○徳毛證人 私知りません。
#784
○鍛冶委員長 あなたは労組員じやないのですか、そうすると十四日の夕刻入つた者は許可を得て入つたのですか。
#785
○徳毛證人 そのときはもはや警官と労働者が対峙状態になつておつたのでありまして、もはや断る人もいないし、しかしこの問題を平和裡に解決しようとして努力して來た……。
#786
○鍛冶委員長 それでは許可を得る者がなかつたからだまつて入つた、こういうことですか。
#787
○徳毛證人 そうです。
#788
○鍛冶委員長 ほかの者もみんなそうですか。
#789
○徳毛證人 ほかの人は知りません。
#790
○鍛冶委員長 あなたは行つて日鋼の労組以外の者が入つていたか入つておらぬか知らなかつたのですか。
#791
○徳毛證人 そういうことについて、これが日鋼の労働者、これが他の労働者というように区別はつけられません。
#792
○鍛冶委員長 あなたの仲間の者が相当入つておつたろう。それはどうだね。あなた実際知らぬのですか。
#793
○徳毛證人 確かめたことはありません。
#794
○鍛冶委員長 とにかく労組以外の者は相当あつたろう。
#795
○徳毛證人 相当かどうか知りません。
#796
○鍛冶委員長 実際知つておるのか知らぬのか。
#797
○徳毛證人 私はそういうことを目的に入らなかつたものですから……。
#798
○鍛冶委員長 一体あなたが行かれた午後六時ごろはどれだけ入つておつたか、何千人ぐらい入つておりましたか。
#799
○徳毛證人 私の目算では二千人ぐらいか、千五、六百だろうと思つております。
#800
○鍛冶委員長 そうすればそれがみな日鋼の労組員でないことは間違いありませんね。
#801
○徳毛證人 そういうことについて確たることを私は確認しておらないのです。先ほども言つたように……。
#802
○鍛冶委員長 じやもつと聞きましよう。友誼團体が相当入つておりましたか。
#803
○徳毛證人 入つておつたと思います。
#804
○鍛冶委員長 どんな友誼團体が入つておりましたか。
#805
○徳毛證人 私は調べておりません。
#806
○鍛冶委員長 大体見たらどんな者が入つているか、あなたは廣島縣の委員長でしよう、友誼團体の指導者の顔ぐらいわからぬことはなかろう。それもわからぬのでしようか。
#807
○徳毛證人 調べておりません。
#808
○鍛冶委員長 調べる調べぬじやない、事実見たかどうかを聞いております。調べる調べぬを聞いているのではありません。そういう者を目撃せられなかつたかということを聞いております。
#809
○徳毛證人 私の記憶で私の知つた人を目撃したということは、今明確に思い出せません。
#810
○鍛冶委員長 それじやそれ以上言つてもしようがありません。あなたは目のない人じやないし、それ以上言つてもしようがなかろう。さつき聞いた通り産業防衞鬪爭から、地域人民鬪爭に移つて指導された。共産党の指導方針に基いてやられたという、この爭議の方式は、産別会議の拡大執行委員会でもこういうことを決定しておつたのではありませんか。
#811
○徳毛證人 産別会議はどういう方針を決定したか、私は読んでおりません。
#812
○鍛冶委員長 全逓の鬪爭方針とも合致しておつたということですが、これも知りませんか。
#813
○徳毛證人 知りません。
#814
○鍛冶委員長 じや共産党の指導方針だけをあなたは御存じなんですね。あなたはこれに対して知事とたびたび折衝されたようですね。大体どういうときと、どういうときですか。
#815
○徳毛證人 私の折衝しましたのは、十六日の夕刻から労働組合側が門前に待期しておつて、しかもそのときは相当数の労働者が外部からもかけつけておつたのであります。
#816
○鍛冶委員長 門前というのは日鋼の門前ですね。
#817
○徳毛證人 そうです。そうして警察官と対峙して非常に險惡な空氣になつているということを聞きました。私は縣知事のところへ参りまして、この問題をすみやかに解決する。同時にそのとき雨が降つておりましたから、労働者は自分たちの労働組合運動を遂行する事務所がなくなつた。しかも團体交渉する相手も今日見つけることができない、しかもこの執行は知事がやつたのであるから、知事の責任において政治的にこれを解決する方法について、知事は考えはないかということもただして、知事に現地にぼくたちと一緒に行くか、あるいは知事が何とかあつせんして雨宿りでもできるような條件のところを借りてやるとか、相当の考慮をしてはどうかということを私は進言しております。しかし知事は言を左右にし遂にそのときには労働者は家があるんだから帰つたらよいじやないかというような態度でつつぱねてしまつたのであります。しかし労働者は家へ帰つてしまつたのではもはや首切りを保障してもらえる何らの目当もないのであつて、労働者が保障してもらえる條件を獲得するために、労働組合の大会を開き、これらが團結する條件をつくり出すことは彼らにとつて一番大事なことであります。で後ほど檢察廳へも参りまして、このことを訴えた。そうしましたところ、國警へも行つてそういう点を話して見てはどうか、こういうことでありましたから、私は國警に参りまして、西村刑事部長に会つた。刑事部長はこれを解決する誠意があるか、われわれもこういう状態であるから、できることなら一緒に行つてでも解決したいがどうかということを話しまして、警察の自動車で現地に参つたことがあります。当時われわれが現地に着きましたときは、もはや爭議團は寮に入つておりまして、そういう險惡な状態は一應なくなつておりましたけれども、われわれはそういう意味において、この問題を知事の責任においてすみやかに解決するような努力をせよという進言をし、われわれも努力を惜まないという態度をとつております。
#818
○鍛冶委員長 それからその後においても、地労委へ移すについても、あなたは話をしていますね。
#819
○徳毛證人 知事から使いをよこされて、私は何度も呼ばれております。
#820
○鍛冶委員長 その地労委の話はしましたか。
#821
○徳毛證人 地労委はすみやかに強力なあつせん委員をつくられて、この問題を解決することを私は望むと地労委の人にも話しております。知事にもこの点は私からも話したことがあります。これは知事が二十一日に労働者に約束した千九百八十三名を工場の中へ入れて、そうしてこの問題を解決するために全生命をとすという決意を知事が実行する熱意があるならば、現地に行つて解決したらどうかということを何度も進言しております。
#822
○鍛冶委員長 それをやらなかつたのですか。
#823
○徳毛證人 やらなかつたのです。
#824
○鍛冶委員長 そこであなたが今言われた十六日の夕刻、日鋼の門前で險惡な状態になつたというのだが、事実はどういうことですか。
#825
○徳毛證人 事実は労働者が自分たちの人権を保障してもらいたい。千九百八十三名が工場内に入り、工場が再開され、生産が行える條件をつくつてくれという要求だつたと思つております。
#826
○鍛冶委員長 それは何か大会でもして決議したのですか。
#827
○徳毛證人 そうです。大会がどういうふうに決議したかどうかこまかなことは知りませんが……。
#828
○鍛冶委員長 それだけなら大した險惡な状態ではないではないか。そういう決議をしておるのならそれに從つて善処すればいい。險惡という現実はどういうことか。
#829
○徳毛證人 現実は附近の住民が、私が聞いたところでは石を投げ、周囲の人が大勢寄つて來て非常に險惡であつた。
    〔「共産党が投げたんだ」と呼ぶ者あり〕
#830
○鍛冶委員長 その石を投げたのは附近の住民ですか。
#831
○徳毛證人 そうです。共産党は投げたことはありません。むしろわれわれはこの問題を解決するために努力しております。
#832
○鍛冶委員長 附近の良民が投げたのですか。
#833
○徳毛證人 そうです。
#834
○鍛冶委員長 この間松井執行委員長は子供が投げたと言つておりますが、爭議團は投げなかつたのですか。
#835
○徳毛證人 そういうことは私は知らないです。現地に行つて投げているところを見ていないのですから。そういう險惡な状態ということを聞いてわれわれが行つたのです。
#836
○鍛冶委員長 それでは附近の良民が投げたのか、子供が投げたのか、爭議團が投げたのか、友誼團体が投げたのか、その点を聞きたい。
#837
○徳毛證人 その点については明確には私はわからない。
#838
○鍛冶委員長 明確にはわからないけれども住民が投げたということは知つているのだね。
#839
○徳毛證人 はい。
#840
○鍛冶委員長 そうしてそういう石を投げることによつて險惡だとあなたは言つておるのだね。
#841
○徳毛證人 それだけではないのです。この人たちはあくまでも自分たちの團結権を守るごと以外に首切りと鬪う條件はないわけです。從つてこういう人たちが追い出されて、行く所がなくて、雨の中をいつまでも対峙しておる。こういう條件を解決する方法はないかということを知事に進言したのです。
#842
○鍛冶委員長 それならば労働爭議だが、險惡な状態は……。
#843
○徳毛證人 自分たちを追い出した人が目の前にいて、そして自分たちが追い出されたのである。労働者諸君がそれに対して憤激を受けるのは当然だと思います。
#844
○吉武委員 私は証人に二、三お尋ねしたい。あなたはこのたびの日鋼の事件について、十二日の件でございますが、工場に多数の人がおしかけて行つて、終日会社の幹部の者を池の前にむりやりに引きずり出して、徹宵して團体交渉と称して罵言雜言を浴びせかけ、とうとうそのうちの五、六人だつたかと思いますが、卒倒したというのだが、この事件をあなたはどういうふうにお考えになりますか。
#845
○徳毛證人 私はその卒倒したという事件を聞いておりません。
#846
○吉武委員 全然お聞きにならないのですか。
#847
○徳毛證人 その晩徹夜して團体交渉が持たれたということは聞いておりまする
#848
○吉武委員 それからのちになつても、今日までお聞きになりませんか。
#849
○徳毛證人 私が知事室に参つた時、経営者側がそういうふうな圧力を感じたということを言つているかどうかと聞かれたことがあります。私は労働組合員ではあり住せんから、現地にいなかつたし、そういうことを知らないと答えております。
#850
○吉武委員 現地にいなかつたからその現場を御存じないだろうが、そういう團体交渉が行われたということは、これは有名な事件ですからその後お聞きになつたでしよう。あなたは地方の党の委員長をやつておられて、全然その場合の團体交渉の有様をお耳になさらないことはないでしよう。
#851
○徳毛證人 團体交渉があつて、それで卒倒したということは知りません。
#852
○吉武委員 全然知りませんか。
#853
○徳毛證人 知りません。
#854
○吉武委員 あとからもその場の状況は全然お聞きになりませんか。
#855
○徳毛證人 状況は非常に会社側が強硬だつたということは聞いております。
#856
○鍛冶委員長 その後不法監禁で相当檢挙されて、起訴された者もいるが、その事実は知つておりますか。
#857
○徳毛證人 知つております。
#858
○鍛冶委員長 それはどういうことだつたのですか。
#859
○徳毛證人 委員長が言われる不法監禁か、あるいは暴行を加えたということで檢挙されたのでありましようが、私はそういう事実も知らないし、これはこういう名目でもつて労働階級を彈圧する手段に使つているように信じております。
#860
○鍛冶委員長 ほほう、そうですか。そうするとあなたは不法監禁がなかつたのに、檢察当局は彈圧の手段としてこれを現に檢挙しつつある、こういうように感じているのですか。
#861
○徳毛證人 そういうふうに想像されるわけであります。たとえば上田局長に暴行を加えた――当時われわれはおりましたが、暴行を加えたという名をもつて檢察当局は拘留している事実があります。
#862
○鍛冶委員長 これもなかつたことをやつている、彈圧か……。
#863
○徳毛證人 そうです。
#864
○鍛冶委員長 現地におつたけれどもなかつたというのだね。
#865
○吉武委員 大体これほどの有名な、世間が周知の事実を御存じないというお言葉でありますれば……。
#866
○鍛冶委員長 そういうことはないのだ、彈圧でやつているのだというのだよ。
#867
○吉武委員 故意に事実を曲げられようとしているとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。しかしこれ以上申し上げても同じことでありますから、次にお尋ねいたします。十四日の問題でありますが、知事は七時に命令を受けて、そしてあらゆる手段を講じて組合側、あるいは友誼團体に退場をするようにという折衝をされたけれども、相手方がこれに應じようとしない。そこでしかたがないから翌朝副知事をやつて放送でこれを皆に知らした。これはあなたは放送でお聞きになつたということですね。
#868
○徳毛證人 私がですか。
#869
○吉武委員 いや、放送をされたということをのちにお聞きになつたのですね。
#870
○徳毛證人 そうです。
#871
○吉武委員 それはいつお聞きになりましたか。
#872
○徳毛證人 十五日だつたと思います。
#873
○吉武委員 何時ごろですか。
#874
○徳毛證人 日中だつたと思います。
#875
○吉武委員 どこでお聞きになりましたか。
#876
○徳毛證人 私の事務所で聞きました。
#877
○吉武委員 だれからですか。
#878
○徳毛證人 多分廣島民報の記者から聞いたように覚えております。
#879
○吉武委員 これがもし事実とすれば先ほど來委員長から話されましたように、賠償工場である以上は軍政部から退去をするようにと命ぜられれば、当然今日の日本の状態ではこれに服しなければならないと思いますが、それに服しないでもいいとあなたはお考えになつているのですか、どうですか。
#880
○徳毛證人 これが正式な命令であるということが明確であるならば退くべきだと思います。しかし私が聞いた範囲においては知事は直接この傳達を爭議團に対してやつておらないと聞いております。
#881
○吉武委員 放送でやつたのはどうです。
#882
○徳毛證人 放送でやつたのは、爭議團は聞いておらない。そういう放送があつたということを翌日私は囲いております。しかしそれが正式な命令かどうかまだはつきりしておらない。だから正式に日本政府の出された命令であるということが、爭議團に対して知事から明確に示されて、了解が行くならば、これは当然引くと思います。
#883
○吉武委員 副知事から知事の命令だと言つて放送していれば、これほど明らかなことはない。それまで疑われるのですか。
#884
○徳毛證人 これは正式な文書を見せて――私があとから聞いたのだと、知事から爭議團本部に、知事室に來てくれという電話があつた。それから非常にここが忙しくて行かれない、知事にこつちに來てくれ、それ以外の人だとわれわれは責任あるものと思わないから、知事に來てくれ、と言つておるということを聞いております。しかし知事が爭議團に対して命令だということを正式に傳達することはなかつたと思います。
#885
○吉武委員 実は十三日に東署長と同じように、組合の幹部の者を集められて、ダガーさんから退去するようにという指示があつたのですが、それもお開きになりませんか。
#886
○徳毛證人 十三日にあつたことは私は聞いておらないのですが……。
#887
○鍛冶委員長 十四日の午前です。
#888
○吉武委員 それもお聞きにならない……。
#889
○徳毛證人 十四日の午前に命令かどうかということを――東署長とダガー大尉と、それから労組の責任者が集まつて、これが正式な命令であるということを明確にしてくれということを言つたそのときに、口頭命令だと言われました。
#890
○吉武委員 口頭命令も正式な命令です。あなた方は文書でなければ從わないということですか。
#891
○徳毛證人 これは労働組合の幹部がやつたことで、私は知らないことであります。それは聞いたことであります。それでありますから、こういう事実が命令かどうかということをはつきりさすまで、われわれはこれを聞かないというわけです。
#892
○吉武委員 そうすると普通の常識では、副知事から知事の命令だという放送の努力も拂われるし、また知事から再三にわたつて組合の幹部に電話で話したいことがあるからと言つて折衝したにもかかわらず、故意にこれに会おうとしない。これは明らかに命令を受けることを故意に避けて、そうして正式な命令があつたかないかわからぬという口実のもとに、そのいろんな騒擾あるいはデモを行うという御意思ですね。われわれはそういうふうにしか受取ることができません。しかしこれもこれ以上私は申し上げましても同じことでありまするから、この程度にいたしまして、次に外郭團体をあなたは御承知ないというお話でしたが、先ほど來の委員長の質問に対して、あなたは共同防衞鬪爭として、共産党の方針に基いてやつておるというお話でしたが、廣島縣には廣島縣の産業防衞鬪爭委員会というものができておるが、それにはあなたは御関係はありませんか。
#893
○徳毛證人 私がさつき申し上げましたのは、日鋼の鬪爭宣言の中にそういう文句があつたかなかつたかは知らないが、共産党は産業防衞ということに対して当面鬪つておるということを言つたわけであります。もう一つあなたのお言葉の中にあります廣島縣の産業防衞共同鬪爭委員会は、私が聞いた範囲では日鋼鬪爭委員会だと聞いております。これは私は関係しておりません。
#894
○吉武委員 しかし大体御承知でしよ。
#895
○徳毛證人 聞いております。
#896
○吉武委員 そうすると、それに関係しておるのはどういう外郭團体ですか。
#897
○徳毛證人 廣島縣地区労会議、並びに生活擁護同盟、あるいは南鮮人連盟、こういうものが入つております。
#898
○吉武委員 まだたくさん入つているでしよう。
#899
○徳毛證人 鬪爭に入りまして多分十五、六日だつたと思いますが、共産党廣島地区委員会も、日鋼共同鬪爭委員会にはできるだけ應援するという意味で参加しておるはずであります。
#900
○吉武委員 そのほかに外郭團体がたくさんあるでしよう。全逓もあれば國鉄も……。
#901
○徳毛證人 そういうものはみな廣島地区労会議に入つておるはずです。
#902
○吉武委員 地区労会議にも入つておるが、日鋼共同防衞鬪爭委員会にも入つておると思いますが……。
#903
○徳毛證人 それは地区労会議に入つ、ておる連中は大体参加していると思います。
#904
○吉武委員 だからこういう人々が十四日の二千名以上に上る鬪爭爭議のデモ隊の中にたくさん入つておつたということは、あなたは御存じでしよう。
#905
○徳毛證人 その当時、共同鬪爭委員会が至急つくられ、全員動員されているかどうか、そういうことは私は調べておらない。私が聞いたのは、警察が動員された。從つてこれは非常に重大な問題になるという見通しのもとに、警察に行き、すぐその足で現地に行つたのでありまして、私はそういうふうな具体的な共同鬪爭機関の当時の状況については知らなかつたのであります。
#906
○吉武委員 具体的にと言つたつて、その事件の起る前から防衞委員会ができて、それに参画している。外郭團体もわかつておつて、そして現実に日鋼という爭議が起つて、それにそれらの人々が参画をしていることは、あなたは御存じないということはない。
#907
○徳毛證人 それは共同鬪爭委員会がこの鬪爭をともに鬪うということは、当然だと思います。しかし私が行つた当時、そういう人々が全員そこにおつて……。
#908
○吉武委員 全員とは言わないけれども、そういう組合の者が行つておつたことは事実でしよう。あなたは警察署長なんかに折衝した結果を報告に行かれたということですが、報告はだれに報告したのか。
#909
○徳毛證人 組合員全般にやりました。マイクを使つて……。
#910
○吉武委員 二千名というからには、組合員ばかりではない。そうするとほかの人にも全部あなたはお話になつたのでしよう。
#911
○徳毛證人 私は日鋼の組合員がほとんどだと思つております。
#912
○吉武委員 それでは今度の事件に関連をして、附近の農村の人々やら町の人々の間に、何でも八月には革命が起りそうだということを盛んに言つていたということですが、あなたはそれに対してどういう感じを持つておられますか。
#913
○徳毛證人 附近の町村に革命が起る――そういうことは、私はきよう初めて聞きます。
#914
○吉武委員 九月には革命があるそうだ、あるいは共産党の天下になるのだ、共産党の民主人民政権ができるのだと言つておつたが、そういうことはどういうところから出たと思うか、こういうことです。
#915
○徳毛證人 私はそういうことは聞いておらない。
#916
○吉武委員 町の人が多数そういうことを言つているのに……。
#917
○徳毛證人 私は民主人民政府が共産党の行動綱領であり、これを遂行する党として活動していることは知つておりますが、八月に革命を起して、人民政権ができるなどというとぼけたことは、一度も言つたことはない。そういうことは聞いたことがない。
#918
○吉武委員 革命が起る起らぬは別にして、九月ごろに民主人民政権ができるということを言つているのは、どうですか。
#919
○徳毛證人 そういうことは客観情勢がきめることであつて、私がここでとやかく言う問題ではないと思います。
#920
○吉武委員 そういうことが世間で言われているから、あなた方党の直接責任者はどういうおつもりか。九月に政権をとるつもりなのか、それとも……。
#921
○徳毛證人 そういうことは私は聞いておりません。私は吉田反動内閣を九月ごろまでには倒して、こういう首切り、企業整備を行い、國が崩壊に赴くような政策をする政府はなくさなければならない。そして産業を復興し、日本民族の独立と自由を守るりつぱな政府をつくるために、人民とともに努力しようということは、かねがね約束していることでもあるし、われわれの希望しているところであります。
#922
○吉武委員 そうすると九月に内閣を倒して、あと共産党が内閣をとるというわけですか。
#923
○徳毛證人 そういうふうな具体的などういう方法で倒すというようなことは、これは共産党が革命をやるのでなくして、革命は大衆がやることである。
#924
○吉武委員 それは共産党が指導するのでしよう。
#925
○徳毛證人 共産党は当然労働階級の指導政党としてやらなければならぬと思います。
#926
○吉武委員 そこで共産党は、これは日鋼ばかりではない、東京の國電ストにおいても、福島の平事件においてもそうだが、いわゆる工場の爭議という問題を起して、それがだんだんと地域鬪爭と称して、その附近の農民から何からみんな動員をして、そのあげくは権力鬪爭といつて警察当局や縣当局にデモをかけて押しかける。それが共産党のいわゆる民主人民政権獲得の一つの鬪爭方針である。あなたは先ほど中央の共産党の方針に基いてやつているということですが、それは共産党のいわゆる鬪爭方針であるとわれわれは思うのですが、あなたはそれはどうですか。職場鬪爭からいわゆる地域人民鬪爭に持つて行つて、そうして最後に権力鬪爭をやる。これはアカハタやその他前衞等にもしばしば書かれておつて、われわれは共産党の指導方針だと思つておるが、あなたは共産党の責任者だが、それは間違つているかどうか。
#927
○徳毛證人 私は今日もはや労働組合が会社とだけの間で鬪いを行つても勝つことができない。それは今日のような予算を組み、産業が破壞される、こういつた意味で、もはや國家の権力を握つておる政府が人民の側に立つてくれる政府でなければ、労働階級は解放されない。こういう意味において今日の政策は破壞政策だと思つております。そういうふうな政府は廣汎な大多数の人民がこれは間違いであることを自覚して、そうしてこういう政府がなくなるために人民が努力する。また自分たちはこの食えない現状をときの権力に訴え、これをどうしてくれるんだという要求を持つて行くこと、これは当然のことだと思います。
#928
○吉武委員 そうすると廣島の日鋼事件は、その中の労資間の爭議では解決できないから、爭議とは言つておるけれども、これが解決してもだめだから廣島の日鋼の問題は労働爭議というのではなくて、それは一つのきつかけである。要するに権力を握らなければだめなんだから、それでもつていわゆる地域人民鬪爭を展開して、最後に縣知事に押しかけて、そうして権力を握ろう。これがいわゆる共産党の方針だ。こういうことですね。
#929
○徳毛證人 私は押しかけてそれで握るというようには言いません。今日首切りと鬪つたのは日鋼の労働組合でありますが、この組合はただこの首切りを日鋼だけで解決しようとしてもできない。現実を示し、この鬪爭が廣汎な人民の共同鬪爭によつて廣くこれが鬪われなければもはや勝てない條件ははつきりしております。しかしそれがあなたの言われるようにデモをもつて爭擾を起すということでなくて、組織的な、認められた労働組合の法律内において、労働者の與えられた團結権を行使して合法的にやることは当然であります。
#930
○吉武委員 次にお尋ねいたしまするが、労資間の問題でやつておるけれど、も、あなたの言葉で言うと結論は権力鬪爭に行く。法律に許されたる方法で権力鬪爭に持つて行く。そうすると一廣島の権力鬪爭をやつておつただけでは政権はとれぬから、これを全國各地に繰りひろげて、全國的な権力鬪爭として政権をとろう。これが共産党の方針、そういうことなんですね。
#931
○徳毛證人 私はそういうふうなことについてこの廣島の日鋼事件を扱つておりません。廣島日鋼事件はあくまでも首切りの――これを鬪うか鬪わないかは日鋼の労働者のきめるべきものであります。われわれはは吉田反動内閣の政策が國を破壞していることを示して、労働者諸君がこの民自党内閣ではだめだということを深く自覚すること、そうして自分たちの政権をつくる、そういう決意を固めて今後鬪わなければならない。單なる首切り問題ではないということは言つております。
#932
○吉武委員 だからこれは一廣島の日鋼の労働者だけに言つたのではしようがないから、附近の農民や、その他市民にもそれを徹底させ、そうしてそれがやがて廣島市に行つて廣島市のデモとなり、そうして廣島縣下全体に鬪爭を廣げて行く。このことを発展させるならば一廣島でやつてもしようがないから全國でやる、こういうことになりますね。
#933
○徳毛證人 それは明らかに彈圧をし、労働階級を苦しめて來るから、それが起るのです。それがなければ当然起ることじやない。
#934
○鍛冶委員長 りくつは別としてとにかく吉田内閣を倒して、人民政府を立てるということはあなた方の目的なんでしよう。
#935
○大橋委員 廣島地方委員会の委員長はどなたがやつておられますか。
#936
○徳毛證人 そういうものはありません。
#937
○大橋委員 それでは地区委員会はありますか。
#938
○徳毛證人 あります。それは岡部博という委員長がおります。
#939
○大橋委員 爭議の当時日鋼におけるあなたの方の党員は幾名になつておりますか。
#940
○徳毛證人 爭議の当時おつた党員を私は具体的に数字は覚えておりません。多分四名以上おつたと思います。
#941
○大橋委員 その最高の責任者は……。
#942
○徳毛證人 多分黒神君だと思います。
#943
○大橋委員 黒神君に対して党の與えておられた使命はどういう使命ですか。日鋼の細胞内における、オルグとして與えられていたのは……。
#944
○徳毛證人 日鋼細胞のキヤツプでありますから、日鋼の鬪爭が有利に成立するために、共産党員としてなすべきことは彼がやつておつたと思います。
#945
○大橋委員 それに対する上部機関の指示は……。
#946
○徳毛證人 それは地区委員会がやつております。
#947
○大橋委員 どなたが係でありますか。地区委員会に指導部というようなものはないのですか、労働組合指導部というようなもの……。
#948
○徳毛證人 日鋼の鬪爭は特別に指導部を設けてやつたことはありません。
#949
○大橋委員 そうするとその地区委員会において日鋼事件を取上げたのはいつごろかわかりませんか。
#950
○徳毛證人 私は十三日まで旅行しておりました。
#951
○大橋委員 縣委員会においてお取上げになつたのはいつですか。
#952
○徳毛證人 縣委員会がこれを具体的に取上げたのは十四日からです。
#953
○大橋委員 十四日以後取上げたのですね。そうすると十四日の暴徒の侵入事件を支持しておられるわけですね。
#954
○徳毛證人 暴徒の侵入事件。
#955
○大橋委員 不法侵入をしておりますね。一旦退去したのが十四日になつて全部侵入しましたでしよう。
#956
○徳毛證人 私は十四日に警官が動員されたその後においで縣委員会が取上げたと思います。
#957
○大橋委員 そうするとその後の人民大会は、縣委員会が指導しておられるわけですか。
#958
○徳毛證人 人民大会はこれは地区労会議、あるいは日鋼共同鬪爭委員会が、やつたことで、これは党はもちろん支持しておりますけれども、この大会には私も出席しております。
#959
○大橋委員 地区労会議に属する各團体が動員されまして、日鋼の工場内に集つた事実があります。これはあなたはだれだれが集つたか自分ははつきり覚えていない、こう証言をなさつた、それはそれでけつこうでありますが、これを手配されたのはだれと想像しておられますか。かりにそういう事実があつたとすれば、そういう職責をどこがやつたか。
#960
○徳毛證人 それは地区労委員会がやつたはずだと思います。それは日鋼鬪爭委員会、並びに共同鬪爭委員会において協議してやつたはずと思います。
#961
○大橋委員 その最高責任者はどなたですか。松江君ですね。
#962
○徳毛證人 松江君が共同鬪爭委員長だつたと思います。
#963
○大橋委員 松江君に聞かなければわかりませんね。その手配の状況は……。
#964
○徳毛證人 松江君はここに証人として呼ばれたはすであります。
#965
○大橋委員 それから本部からあなたの方にこの日鋼事件について具体的に指令を受けられたことはございませんか。
#966
○徳毛證人 ございません。
#967
○大橋委員 あなたから報告をされたこともありませんか。
#968
○徳毛證人 そういうようなことについて連絡したことはあると思います。
#969
○大橋委員 だれに報告されましたか。
#970
○徳毛證人 それは代議士などが來まして、そういう人々にもその状況は傳えております。
#971
○大橋委員 そうすると代議士に傳えられただけですか。日鋼問題に関しては縣委員会が正式に中央委員会に対して書面で報告したかどうか。
#972
○徳毛證人 そういうことは書面でまだしておりません。
#973
○大橋委員 最後に一点お聞きいたしておきたいのは、第二組合というものができておるのは御承知ですか。
#974
○徳毛證人 知つております。
#975
○大橋委員 それに対してはあなたはどういうお考えを持つておられますか。
#976
○徳毛證人 これは会社が最初資金を出して、そうして分裂策謀を行つて、これが発展したように私は聞いておりまする
#977
○大橋委員 会社のだれがだれに資金を出しましたか。
#978
○徳毛證人 そういうことはこまかく知りませんが、私が聞いたのでは多分宇品の双葉旅館とか何とかいう旅館に会社の幹部以下集まつて密議をこらした。
#979
○大橋委員 密議をこらしたのと資金を與えたのは違いますね。だれに資金を與えたのですか。――さきほどから聞いておりますと、証人は自己の不利益なる事実につきましてはきわめて嚴重に言われるし、他人に不利益なることはすこぶるあいまいになるにもかかわらず、ただいま言われたように資金をこれは会社が出してやつたのだとはつきり言つておられる。ここにおいて彼の証言がいかなる價値を持つておるか。私はこれ以上追究する必要はないと思つておりますからやめます。
#980
○宇田委員 まず第一に一言質問します。吉田内閣を証人は倒してすみやかに人民政府をつくらなければならぬと言われますが、その方法はどうやるのですか。
#981
○徳毛證人 そういう具体的なことは吉田内閣がすみやかに辞職して、解散にでも行けば党はさらに発展する見通しは私持つております。
#982
○宇田委員 証人は労働組合員ではないのですね。
#983
○徳毛證人 私は日本共産党員で廣島縣委員長であります。
#984
○宇田委員 委員長でありますれば、今の日鋼の党員の名前はわかつておるわけなんだが、五日に松井檢事正を証人に呼んで承つたところによると、十四名中約十名が――例の六月十二日の不法監禁、暴行というものを加えた者は共産党員であるという証言をされておるのですが、その名前は御承知ですね。
#985
○徳毛證人 不法監禁罪でとらわれた共産党員ですか。
#986
○宇田委員 ええ、收容されておる……。
#987
○徳毛證人 私の知つておるのは、不法監禁かあるいは不退去罪かどちらか知りませんが、相当共産党員の人が逮捕されていることを知つております。
#988
○宇田委員 その名前がわかりますか。
#989
○徳毛證人 今日逮捕せられておるのですか。
#990
○宇田委員 いやすでに釈放されておりますが、二十名近く逮捕されたと思いますが、その中の共産党員の名前です。
#991
○徳毛證人 黒神、北平、こういうのは私はつきり覚えております。
#992
○宇田委員 名簿がありますか。
#993
○徳毛證人 あります。それはこちらから調べられればわかることだと思います。
#994
○宇田委員 要するに私の質問をいたしたいことは、あなたは日鋼爭議の一番初めの十二日の不法監禁という問題を今日まで全然知らないということを前に証言されたのを再確認されますね。
#995
○徳毛證人 私はさつき言われたように、これが暴行を加え、不法監禁したということは知りません。
#996
○宇田委員 その結果はまだ檢察廳においてもわからない。裁判の結果でなければわからないが、あなたはさいぜんの証言で、いわゆる不法監禁とか暴力行為とかいうものが日鋼会社の中であつたということは全然知らないというふうに証言されました。
#997
○徳毛證人 暴行があつたということは私は聞いておりません。
#998
○宇田委員 暴行とか、あるいはそういうような不法監禁、人民裁判的なことがあつたかどうかという一つの問題ですよ。その問題があつたということをあなたは知らないとおつしやるのですね。
#999
○鍛冶委員長 そういうことがなかつたのですか。
#1000
○徳毛證人 私はさつきも申しましたようにその晩團体交渉がやられたが、これは非常に強硬だつたということは聞いておるということをさつき言つております。
#1001
○宇田委員 そういうことだけは聞いておる。その問題について檢察廳にあなたは交渉に行つて、不法――これはどう言いますか、強制收容したということに対して何か釈放の手続や交渉されたことがありますか。
#1002
○徳毛證人 私が直接したことはありませんが、多分自由法曹團その他がやつておると思います。
#1003
○宇田委員 あなたは直接おやりになつたことはない。要するに不法行為はなかつたものを檢察廳あるいは警察があえてこれを拘引したこういうように考えられたのですね。
#1004
○徳毛證人 私は不法行為があつたとは思つておりません。
#1005
○宇田委員 それからもう一つ、あなたは楠瀬知事、米原代議士から、いわゆる賠償工場から不法侵入したものは引揚げろという命令が下つた。その命令は全國一般的な賠償工場保全の命令であつて、廣島日鋼事件に関しての特別な命令じやないということを聞いたと言われましたね。
#1006
○徳毛證人 はあ。
#1007
○宇田委員 その他特別な命令が出たということはその他からだれにも聞かれないということですね。
#1008
○徳毛證人 私はインストラクシヨンが知事室において松江委員長に示されたことは知つております。
#1009
○宇田委員 だれから。
#1010
○徳毛證人 知事からです。それは命令かどうかということは以後何度も多分聞きに行つたはずです。私はその後知事に会いまして、あの命令は特殊な命令かどうかということを質したら、一般命令だ、それならあそこの立札は事新しくこのたびの事件中に立てられたものではないですね、それを鮮明にしろと言われて、そういうのであればとつてもよろしいと言つてとられた。
#1011
○鍛冶委員長 間違いありませんか。
#1012
○徳毛證人 ええ。
#1013
○鍛冶委員長 故意にうそを言えば偽証罪になることは御承知ですね――じややむを得ません。それでは済みました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後八時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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