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1949/09/12 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 考査特別委員会 第35号
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1949/09/12 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 考査特別委員会 第35号

#1
第005回国会 考査特別委員会 第35号
昭和二十四年九月十二日(月曜日)
    午前十一時二十八分開議
 出席委員
   委員長 鍛冶 良作君
   理事 高木 松吉君 理事 内藤  隆君
   理事 猪俣 浩三君 理事 神山 茂夫君
   理事 小松 勇次君
      井手 光治君    大石 武一君
      岡延右エ門君    角田 幸吉君
      菅家 喜六君    田嶋 好文君
      塚原 俊郎君    丹羽 彪吉君
     橋本登美三郎君    幡谷仙次郎君
      福井  勇君    若林 義孝君
      大森 玉木君    聽濤 克巳君
      小林  進君    石野 久男君
 委員外の出席者
        証     人
        (議員)    田中 堯平君
        証     人
        (郵政兼電氣通
        信大臣)    小澤左重喜君
        証     人
        (労働大臣)  鈴木 正文君
        証     人
        (議員)    春日 正一君
        証     人
        (國務大臣)  樋貝 詮三君
        考査特別委員会
        顧問      明禮輝三郎君
八月十一日
 委員多田勇君及び神山茂夫君辞任につき、その
 補欠として安部俊吾君及び梨木作次郎君が議長
 の指名で委員に選任された。
同月二十二日
 委員梨木作次郎君及び赤松勇君辞任につき、そ
 の補欠として木村榮君及び田万廣文君が議長の
 指名で委員に選任された。
九月五日
 委員木村榮君辞任につき、その補欠として神山
 茂夫君が議長の指名で委員に選任された。
同月六日
 委員多武良哲三君、亘四郎君、柳澤義男君及び
 宇田恒君辞任につき、その補欠として福井勇君、
 西村直己君、井手光治君及び橋本登美三郎君が
 議長の指名で委員に選任された。
同月七日
 委員守山欽司君辞任につき、その補欠として椎
 熊三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
 委員安部俊吾君、大橋武夫君、佐々木秀世君、
 吉武惠市君、西村直己君及び小玉治行君辞任に
 つき、その補欠として幡谷仙次郎君、大石武一
 君、角田幸吉君、田嶋好文君、若林義孝君及び
 丹羽彪吉君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 内藤隆君及び神山茂夫君が理事に補欠当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 派遣委員の調査報告に関する件
 証人出頭要求に関する件
 調査要求に関する件
 國電スト問題
 平市をめぐる騒じよう事件
 日本製鋼廣島製作所爭議事件
    ―――――――――――――
#2
○鍛冶委員長 それでは会議を開きます。
 先日理事池田正之輔君、内藤隆君、小玉治行君、及び神山茂夫君が委員を辞任されましたので、理事の補欠をいたさねばなりませんが、前例に從い、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○鍛冶委員長 御異議なきものと認めます。それでは内藤隆君、神山茂夫君を理事に指名いたします。残りの二名はおつて指名することといたしますから、御了承願います。
 次に平市をめぐる騒擾事件、日本製鋼廣島製作所爭議事件、及び石川縣下耕地面積不正申告事件につきまして、それぞれ派遣委員より報告を求めることといたします。内藤隆君。
#4
○内藤(隆)委員 石川縣下耕地面積不正申出事件現地調査報告をいたします。
 昭和二十四年六月二十五日、二十九日、三十日の三日間にわたり、委員会において調査審議された石川縣下における耕作面積不正申告事件は、事件関係者として喚問した証人等が、ことごとく直接担当者としての責任ある証言をなさず、第三者的言辞を弄し、事件の実態が的確でなかつたことと、特に農業関係諸法規を基準とする事件の処理がすこぶる困難であつたこと、從つて現地において、農地委員会、農業調整委員会会議及び関係書類の提出を求め嚴密に調査する必要がありまして、下甘田村においては、いわゆる普通田を採草地として決定した、地目の実地檢証をする必要があつた等の理由によりまして、七月一日当委員会において現地調査員五名を派遣することに決定したのであります。八月十七日に委員五名は石川縣に向け出発いたしました。委員長鍛冶良作君、委員内藤隆君、委員大森玉木君、委員小林進君、委員梨木作次郎君の五名でありました。八月十八日には越路町では同村の寺院において参考人につき尋問いたしました。越路町農地委員長田中平治、調査要求提出者敞田貞造及び佐味鉄尾、それから学校小使、これは回覽書類傳送の責任者でありまして藤井せつ、八月十九日は下甘田村に参つたのであります。農地を採草地として買收計画を実施した個所、ケの六六、六七エの一七、六六その他を大雨泥濘の中にかかわらず実地檢証いたしまして、同村小学校においては農地委員会書記、坊城智嶽、村長作田直行、上棚区長大石義保の三名の参考人について尋問いたしました。さらに八月二十日は金沢市に参りまして、石川縣廳において参考人として縣知事柴野和喜夫、農地部長古郡節夫君を尋問し日程を終つたのであります。
 農地関係法規の違反の有無並びに耕地その他を現地につき調査した結果は、ただいまから御報告を申し上げます。第一に越路町においての尋問でありますが、考査委員会へ提訴までの経過から申しますと、本町における隱田及び供米不正申告事件は、まず檢察廳へ訴えたのでありまするが、檢事の意見としては、本件は犯罪調査の域を越えるものであつて容易に処理できず、また軍政部へも同じく訴えたが、これも相当難関があつて進行しなかつたのであります。そこで共産党の指導下にあると称する表一派はこれに力を得まして、ますます專断的不正行爲を行いましたので、これに反対するものが考査委員会へ提訴することになつたものであります。
 第一の隱田に関する点から申しますると、在江部落における隱田は全部で二町二反歩あることが明確にされました。これは一部落の分としては大きに過ぎるものでありますが、しかし隱田なるものは全國的なものであつてここだけの問題ではありません。ただ共産党は隱田の摘発を党是としているにかかわらず、当地の共産党と称するものはこの党是に從わずして、みずから隱田を藏し、これを自己一派のみの利益に惡用していることは注目すべき点であつたと思います。
 第二の地主の土地取上げに関する問題であります。地主の土地取上げに法規を無視して実力行使が行われたのは事実であるが、小作側はこの不当行使に対して法律をもつて爭わず、実力をもつて対抗したために事件を紛糾させましたが、表一派は地区農地委員会に接近し、これを利用し村の農地委員会を牛耳り、法規に基いて対抗したと称します。しかし表一派の法律解釈も実は自己本位のものであるということを認めざるを得ないのであります。
 第四番目の農地調整委員会に関する点を申しますると、同委員会の選挙人名簿作成に関し、反共派六名が脱漏していたことは事実であり、これが故意の脱漏であるかいなかは明確にすることを得なかつたが、おそらく表一派の策であつたと認められます。かかる脱漏により反共派は農地調整委員会への発言権を失つたのであります。これは反共派がこの委員会の重要性を知らない結果であつたとも認められるのであります。
 さらに表宗雄の演説に関する点を調査しましたが、五月下旬、越路小学校在江分校における演説中、共産主義者の背後にはソ連あり、またもし米ソ開戰のあかつきにはソ連に絶対勝算ありとの旨を述べまして、また横山義雄は、現下の日本は占領軍によつて干渉される必要がない旨を述べた事実は、泉淺吉、敞田長利、敞田貞三らについて尋問した結果明瞭となつたのであります。かかる言動は占領政策違反となることがあるということで、私たちは嚴重注意を與えました。
 次に異議申立に関する点について申しますと、表一派の專横行爲に対して異議申立てをしなかつたのは、同派が村の関係機関を掌握しているため、申立てをしても取上げられない実情にありますので、やむを得ず檢察廳に提訴したが、前記のごとく受付けられなかつたというのが眞相であるようであります。
 ここで私が一言申し上げたいことは、まず村に参りました際、これは同行された小林委員もここにおいでになりますからよく御承知だろうと思うが、私たちが晝食をとらんといたしまして、その晝食も寺の細君に頼んで、漬け物か豆腐のお汁程度でいいだろうということでやりましたところが、共産党員と称する九十名以上の人々が集りまして、東京から來た考査委員会の連中は、旧地主の連中から卵や鶏の肉をもらつてぜいたくな晝飯を食うというから、この晝飯の弁当を調査する必要があるという決議をいたしまして、われわれの弁当を調べに來るという情報が入つたので、私は大いに憤慨して、その九十何名並んでいる席に出かけて行つて、一体きさまたちはわれわれ委員の晝食を調べるというが、何の権限をもつて一体調べるのだ、われわれが一円の弁当を食おうが百円の弁当を食おうが自由だ、お前たちは何の権利があつてこれを調べるのだ、こういうふうに一喝いたしましたところが、皆頭を垂れて参つてしまつたような次第でございます。実はなぜかようなことを言うかというと、一体共産党の村に行つて、唯物論から出発した共産主義というものの村がまことに陰惨で、人情もない、血もなく涙もないという一つの事実を申し上げたいために、かようなことを申し上げているのであります。ほんとうの純朴な農民ならば、東京から國会議貴様がおいでになつたというので、敬意を表するため、卵の一つや二つ、あるいは鶏の肉の百匁くらいは持つて來て、どうか召上つてくださいというのが美しい人情である。しかるに共産党の村では、われわれの弁当さえ調査するという。かような人の欠点をあばいて、いわゆる戰術に用いるというような陰惨な状態であつたということを詳細にぼくは記録にとどめておきたいのであります。
 さて第二日目の下甘田村における尋問でありますが、普通田を採草地として決定した点から申します。本件については、農地委員会議録その他の重要関係書類が一切ないので、これらに基く調査は全然不可能であつたのであります。また農地委員長初め同書記その他の委員につき尋問を行いましたが、法規に対してまつたく無知であつたため事実を証明し得るがごとき言をつかまえることができませんでした。しかし事件の経過を見るに、農地調整法を無視して集團的圧力により普通田を採草地としたことだけは明瞭であります。山田喜一は昭和二十二年二月農地開放事務を開始するに際し、農地委員長柳川正一は荒廃田地の取扱方につきまして非常に心痛し、縣農地課に出頭して照会の結果、採草地として取扱うよう指示を得て帰村し、部落総会を開催して地主、小作双方の了解の上、正式なる農地委員会の議決を得て決定したものであると言つておりますが、この証言に疑問があります。あらかじめ縣農地部に文書をもつて照会しましたが、指示を與えた事実はない。また今回の現地調査においてもかような手続をした事実を認めることができませんでした。
 それから実地調査については雨天のために全部の現地を詳細に見ることができませんでしたが、調査したものにつきまして概況を述べれば、まずケの六十六、ケの六十七、これは田であつたことは事実でありますが、灌漑用水の設備不備のため、收穫不定の田であることを理由として、水田として不適格だからとて採草地と見なしたものであります。但し隣地は普通田として買收されております。
 それからエの六十六は当初より水田であつたが、台帳に記載がないためこれを採草地としたものであります。
 それからエの十七、砂かぶりを受けたことは事実もあるが、少しの労力を加えて、これを良田とすることができるものでありますが、これも採草地としてありました。
 なお山間には採草地として買收せざるを得なかつたと推定される普通田が多数あるのでありますが、降雨のため実地を見ることができなかつたのはまことに遺憾であります。
 なお本件はすでに縣農地委員会がこれを取上げ、縣農地部がこれに協力して、部落関係者立合いのもとに現況並びに買收当時の事情を調査中であるということであります。
 それから供出米の不当割当に関する点でありますが、食糧管理法の原則に從つて供出割当をしておることは確かでありますが、部落総会において山田派の勢力が強大なため他のものが異議の申立てをしなかつたので、山田派、ことに山田自身に有利に決定されております。この決定を農業調整委員会に認定させ、村長がそのまま査定決定したのが実情であります。
 次に山田一派の言動に関する点でありますが、山田喜一は終戰後村に帰り、たまたま農地改革の講習を受け、小作人の立場より主としてこの改革を解釈し、部落民の無知なるに乘じ、自己及びその一統の有利なように農地改革に伴う一切の法規を運用して、土地開放を行わせ私利をはかつたことは明白であります。しかるにこれに対して土地を取上げられた側の考えは正式にその筋へ異議を申立てず、なすがままにまかせておつたが、たまたま考査委員会へ本件が提訴されたので、初めて過去においてかつてなことをされていたことを知つた実情にあるのであります。一方山田はこの提訴によつて過去における自分らの違反行爲を正当づけるため、またその背後の力を利用するため、共産党に接近するとともに、証拠書類を自己に都合のよいように整理した事実が発見されました。
 これを要するに以上両件を通じて事件の中心人物の一方はまつたく黒の仮面をかぶつておる赤いボスにすぎず、当事者双方とも、法律知識または農地改革の何たるかを知らない結果の事件であつて、事件の内容そのものとしては重大なものでないとするも思想的、社会的問題としては種々の重大なものを包藏しているものと認められます。以上簡單に御報告申し上げます。
#5
○神山委員 今の報告についてですが、現地調査の結果を私たちが受けた報告と今の内藤委員の報告とは若干違う点がありますが、しかしこれは成文化されたあとのものを見てあとで意見を申し上げたいと思います。内藤君の報告は非常に主観的であつて、赤いボスが何だとか言われておりますが、これは事実そのものが立証するものでありますから、現地調査した小林君が今の報告を聞いておりませんから、これは別の機会に討論したいと思います。
#6
○鍛冶委員長 これに対してなお御意見があれば適当の機会に発言を求めていただくことにいたします。
 それでは平事件につきまして高木松吉君に報告を願います。
#7
○高木(松)委員 平騒擾事件に関する調査報告をいたします。私どもは委員の安部俊吾君、菅家喜六君、石井繁丸君、聽濤克巳君と私とが調査の責任を負つて八月十八日に上野を出発して八月十九日に平に着きました。その日に石城の地方事務所で証人の訊問をするとともに平市の警察署、湯本町警察署、内郷の警察署を実地調査いたしております。八月の一十日には平を発ちまして高萩に参りました。高萩町警察署、高萩炭鉱事務所、高萩炭鉱組合連合会及び高萩炭鉱北方坑事務所を実地調査いたしました。それから八月二十一日朝に平駅前の掲示板の実地の調査をいたし、平を発つて郡山地区警察署と郡山市警察署に参り及び郡山市役所を実地に調査いたしました。そうして郡山を出発し、若松に着き三菱廣田工場に参りましてその日のうちにこれまた実地調査をいたしました。八月二十二日若松市を出発して福島に参り、福島の刑務所に参つて証人の訊問をし、福島の地方檢察廳に参り、福島縣の議事堂の実地調査をいたしたのであります。その大体をこれから述べてみたいと思うのであります。平における八月十九日のわれわれの行動は、平市にあります石城地方事務所において鈴木辰一郎、これは平市長であります。それから柴田徳三、これは平市会議員であります。これらの尋問を敢行いたしたのでありますが、その内容その他については速記録に詳細ありますゆえに、これを参照いたしてもらいたいと思うのであります。しこうして平市自治警察署の実地調査を八月の十九日にいたしております。署の建築物破損実情はさきに署長が参つて報告したと大体同じでありますが、留置場の現場は原状に復しておりまして、その大体の想像以外に関知することはできませんでした。署長室のデモ侵入状況も、玄関前の赤旗の交叉場所も現在にありてはその説明を聞いて納得する以外に方法はなかつたのであります。平市駅前の掲示板の調査について旧掲示板場所が縣道であつた痕跡を認めるとともに、現在の掲示板場所はいわゆる私有地であつて、これまた大体において交通妨害になるのではないかという疑いをもつて見て参つたのであります。
 それから福島刑務所におけるところの証人尋問は八月二十三日に行つたのでありますが、金明福君は石城共産党員であると同時に、朝鮮人連盟地区執行委員であつて、これらの証言は速記録に明瞭でありますから参照していただきたいと思います。
 湯本警察署前の廣場を八月十九日に実地調査いたしましたが、これまた署長の説明を聞いて納得する程度であつて、現場にはその痕跡を認める実情にはなつておりません。
 内郷警察署の実地調査は八月十九日にありましたが、これまた市長が説明する状態であり、その痕跡を認むるというわけには参りません。
 矢郷炭鉱の労組の代表の方々の陳情を八月十九日に内郷警察署内で受けておりまするが、本年の四月終戰後最高の出炭をした当時鉱山主は人員を整理しないからしつかりやつてもらいたいという激励をした。それから山元の福利施設が非常に惡いからこれをよくしてもらいたいということを申した。四月の十六日以降の賃金が未整理になつているから、この整理を求めたいというようなことを主張しておりました。一日も早く人員整理なら人員整理をやつてしまつて、山を開いて、いわゆる業務を開始してほしいというような強い要望を聞いたのであります。
 それから高萩炭鉱の事件の実地調査は八月二十日でございます。高萩自治警察署長と、それから地区警察署長より、事件後の治安状態を聽取いたしたのでありまするが、第一組合と第二組合との対立が多少激化して傷害事件及び山元に窃盗事件等起つておるという説明であるが、大体において小康を得ておるという報告を受けました。それから防共團体町民同志会の委員近藤憲二ほか四名より同会の趣旨を聽取いたしたのでありますが、その構成員が右翼分子であるとか、それからまた正業についておる者でないというような世間のうわさはまつたくうそで、右翼のものでもなければ、われわれは正業についていない者でもない。前科もなければ犯罪を犯したことが過去にあるという者でもないと言つてうわさを否定しておりました。それから高萩鉱業事務所に参りまして重信常務、庄田総務部長より詳細の説明を受けたのであります。庄田部長の説明によりますれば、組合連合事務所(第一組合)は地区共産党事務所と合同で、全逓組合員、朝連委員、地区共産党員等が事務をその事務所でとつておるというような説明を承つたのであります。また八月二十四日、千代田坑で配給用砂糖が二十六貫六百匁、タバコ六十六個、その他キヤラメル、作業服等の盗難があり、北方坑では大月ごろ主食配給費七万八千円及び自動車タイヤ一本が盗まれたという説明を受けております。
 次に第一組合の高山組合連合会鬪爭委員長(北方出身)より事情を聽取し、事件当日の会社側との交渉した模様を実地調査いたしました。会社側の組合整理の理由(第二項及び第三項)はまつたく一方的にして、労働協約を無視して一方的に就業規則を改変し、整理基準を設けたものであるからよくない、盗難事件は昔からあつて特に事件後の組合側の報復手段とは思えない。從つて徹底的にこれを調査してもらいたいというようなことを申しておりました。また組合連合会及び首切られた者を労働組合員として会社側で認めぬため、團体交渉を持てず、地労委も会社側の主張に同調しておつて困つている。第一組合と第二組合との紛爭事件は、盆おどりの寄付を山元の坑長宅へ吉成第一組合長が申入れに行つた帰路、酒氣を帶びた武田第二組合員とけんかとなり、吉成は傷害を受けたということを申しておりました。
 北方坑事務所におけるデモ状況調査及び第二組合員の佐々尾委員等からの報告によれば、現在第二組合員百五十名、第一組合員二百八十名であり、第三組合参加希望者は第一組合より脅迫、恐喝等を受けているが、漸次増加する傾向にあると申しております。なお掲示板を第一組合と共有で使用しようとしておつたのであるが、これは抜き捨てられて宣傳もできない状態であつてまつたく困るというようなことを申しておりました。共産党以外の者が発言したり、反対したりすれば、夜中に至りなぐられたり脅迫されたりするというような実情で困つているが、これを救う道はなかろうかというような申出もありました。生産最目標達成のため同情スト及び國鉄のスト参加に反対した場合は、会社より二、三十万円の金で買收されたのだというような宣傳をされてまつたく困つている。事件当時は党員は約七割であつたが、坑内に入るのみにて仕事をしない党員がおり、出炭量は千五百トン減産している。六月十六日吉成第一組合長と第二組合員との傷害事件は、吉成も飲酒しており、高山執行委員長がやぐらの土から第三組合を白色テロだというような宣傳をして、まつたくわれわれは迷惑しているというようなことを申しております。八月十七日引揚者歓迎懇談会と称して第一組合員が二派にわかれて第二組合員の家族住居を襲い、ガラス窓等を破壞した。その現状をわれわれはつぶさに踏査いたして参りましたが、その通りでございました。公安委員と自治警察署長とは必ずしもぴつたり行かないで対立の感があり、署長は決断力なく、事態が紛爭した場合処理の能力がやや疑わしい点があるというようなことを公安委員が申しておりました。
 郡山事件調査の概要は八月二十一日郡山地区警察署及び市警察署の実地調査、デモ状況、事件後の治安状況について地区警察署長及び市警察署長より聽取いたしました。それによると無届デモ隊五百名中代表五名は、地区共産党、國鉄、全逓、地区労連、保土ケ谷組合員等であるが、右代表者は人民政府樹立間近しと地区署長を脅かしておつたというような報告を受けております。事件の当日郵便局においても赤旗を持つてインターを高唱し、國鉄、全逓が背後の中心組合であるかの感を呈しておつた。事件後活動班五名ないし十名を編成して各町村に署員を増加派遣してその後の治安に当つている。今次事件の経驗よりして國警と自治警察との一元化及び機動力強化を希望すると申しておりました。事件後警察力の手薄を利用して、辻強盗等の横行があり、朝鮮人の犯罪が特に目に映るようになつた。郡山市役所及び市会議所実地踏査の結果は、市長より詳細に説明があつたけれども、それは市長が考査委員会において証言したる通りであり、ただここに植村鶴吉市会議員――共産党――より市長が六月二十八日定時市会開会後主食掛費に関する確約につき食糧公團保土ケ谷等の民主團体に対し了承したにかかわらず、八月七日付福島民報紙上において、市長みずからが確約を破つた事実があるので、その事実の調査方を陳情してこれを受け、また保土ケ谷工場爭議の賃金遅配及び分割拂いの窮状につき同人から説明があつたのであります。
 若松市三菱廣田工場の調査の概要は、廣田工場長及び上在総務部長より当時の不法監禁及び脅迫状況につき実地の調査による報告を受けたのでありますが、組合員は國鉄の予算削減による企業整備に対する鬪爭は、政治鬪爭以外に解決の策がないと言い、後二箇月もすれば、共産党内閣ができ中小企業は立ち直ることを主張し、六月二十五日全金属、電産、昭和電工、縣労協及び地区共産党委員が加藤共産党委員を中心に、所長に説明して攻め寄つたと言つておるのであります。六月二十七日、二十八日の不法監禁事件の後、二十九日は若松警察署においてクラーク司令官及び労働課長は、会社側と組合側とを招致し、会社側に対しては組合側を不法侵入及び不法監禁をもつて告訴せよ、もしこれにより暴行が行われた際は、軍隊をも出動する旨の勧告があつたと承知しております。
 七月二十七日、工場仮処分の申請を行い、八月八日仮処分命が発せられ、現在に至つておりますが、組合側すなわち第一組合は地位保全の仮処分請求を提出したが、八月十三日これは却下になつております。
 商工省の発注があつたので、七月十二日より工場を再開し、現在第二組合員、が三百九十一名、第一組合員――大半は解雇者――百四十五名にて業務は平生通り運行しておる状態であります。第一組合員――解雇者――は同工場が仮処分中のため、執達吏の承認を得なければ、出入できないが、集團的に侵入することを警戒するため、福島縣経営者團体側よりのあつせんにより、会津青年同志会の應援を得て門の警備に当つておる状態であります。事務所において事件直後会計係の保管しておる三万円の紛失事件があつたと報告しております。同工場付近にあつた郡司製函工場の爭議は、廣田工場の組合員が指導したものであるが、遂に閉鎖となり、その後再開したが、直後原因不明の失火により全燒した事実があつたので、当工場としても再開後の現在なお警戒をしておると申しております。
 第一組合長山口茂樹等より解雇を受けた後の事情を聽取いたしました。再三会社側に團体交渉を申し入れたが、門を警備しておつて紅陵大学学生のために阻止され、ときにはなぐられたこともあるというような報告に接しております。地元農民及び友誼團体に対して宣傳を活発に行い会社側を反省さすべき努力しておりますが、その実績が上らないと言つております。
 それから福島市におけるわれわれの調査は、先ほど申したように、刑務所に参りまして例の金明福を調べました。金明福君の証言は、速記録に詳細載つておりすから、これを参照していただきたい。それから檢察廳に参りまして、檢事正に面会して、その後の治安状態やその他を聽取して、大体において小康を出でずという報告を受けました。その次には縣会議事堂に参りまして、デモ状態を調べたのでありますが、これはわれわれ調べるときには、すでにその痕跡がございませんので、ただ大竹議長が本考査委員会で証言したことを考えて、なるほどあの辺に赤旗があつたのかなという程度の事実より、われわれとしては看取することができませんでした。なお以上のわれれれの調査によつて、各種團体及び会社その他われわれに接触した方々に対して、その場で述べ得ないものは書類をもつてわれわれの力へ陳情もしくは上申して來るより、特に念を押しておきましたので、それが当委員会に参つておるようでありますから、結論を得る場合においては、これをも参考にあわせて観察をしていただきたいと思います。以上をもつて私の報告を終ります。

#8
○鍛冶委員長 次に廣島日鋼製作所の爭議出作につきましては、ほかの委員がおいでになりませんから、私から御報告することにいたします。
 去る七月三十日本委員会の決定に基きまして、日本製鋼廣島製作所労働爭議事件の現地調査のため本委員会より鍛冶委員長並びに吉武、猪俣(代理田万)木付、小松(代理宇田)大橋の各委員及び明禮事務局長以下事務局員若干名同行いたしました。本調査團の一行はまず該爭議の形態や範囲、方法等を知る必要がございましたので、八月二十三日の初日は、爭議が波及いたしました範囲の重要な現地状況調査を行いました。次に八月二十四日より証人の喚問に移りましたが、その内容の詳細につきましては速記録に讓ることといたしまして、私が御報告申し上げますことは、その調査の内容を便宜上状況調査と証人の喚問にわけまして、その概要を申し上げたいと存じます。
 まず状況調査でありますが、その順序は廣島縣船越町にあります日本製鋼廣島製作所を振出しに船越警察署、同町役場、海田市町警察署、呉市役所、進駐軍呉民事部、廣島市役所、廣島市警察局東警察署、農高縣廳の順に調査を行いました。
 日鋼廣島製作所の現場は宏大な敷地と工場の施設、宿舎等を有して、同地方におきましては最も完備した工場であり、戰時中は一万余の從業員を擁して軍需品の生産に励んでいたのでありますが、終戰後は平和産業に切り換えまして、從業員も三千名内外になり、主として鉄道車両、ミシン、機械工具類を生産していたのでありますが、経済界の変動によつて、次第に会社の経営面がおもしろくなくなり整理の余儀なきに至つたようであります。そこで労資間にいろいろの紛爭が起つたことは、板垣所長代理の当委員会において述べたところと大体相違がないようであります。それから労働協約が五月二十五日になつてその有効期間が満了して協約がなくなつたことも事実でありますが、しかしその後におきましても就業規則並びに労働協約に関する覚書をとりかわして爾後の問題に備えておつたのであります。そこで六月十一日双方の交渉は決裂いたし、会社側は最初の人員整理案であつた七百三十名を六百六十二名に変更、同日の午後三時ごろその解雇者名簿を労組側に手交したのであります。これに対し労組側は騒然となりまして、いろいろ不法監禁その他の事実のあつたことも板垣所長代理の説明とほぼ一致しておるのであります。なおこの爭議にあたつて爭議團を工場から退去せしめた警察官側に三十三名くらい、爭議團に五十九名くらいの負傷者を出したのでありますが、傷の重い者で二人くらいが裂傷で全治二週間くらいであり、その他は些細な軽傷であつたということであります。中には日射病にかかつた者もあり、疲労のために倒れた者も出ましたが、この事実が曲庇されまして、死者二名重軽傷者三百二十四名なお続々負傷者増加しつつありなどと、地方新聞あるいは爭議團の宣傳文書等で誇大に報告され、中央放送局におきましても死者一名重軽傷者三百二十四名と放送するに至つたのはまことに遺憾だと見て参りました。次に船越警察署、船越町役場について述べますが、船越町警察署へ佐古田船越町長を迎えまして同時に両所の事情を聽取いたしました。爭議團の一行は六月十一日、十四日、二十二日、七月十一日の四回ほど二百名ないし五百名くらいがデモを行つて包囲圧力を加え、両所に対しまして種種な要求をなしております。六月十四日は約百五十名のデモ隊が赤旗を押し立てまして船越警察署に入場いたし、日鋼爭議に警察が介入しないように申入れをいたしました。また六月二十二日には船越町の小学校に約六百名くらい集合いたしまして、人民大会を開き、同町の木下次郎助役に対し約四時間ほどにわたつて人民裁判的行爲が行われ、日鋼首切反対、主食掛賣要求等について町議会の決議を迫つた事実がありますが、同助役は、心配のあまり当時町長が出張いたしておりました山口縣の出先に対して、町長あて至急帰町方打電したことさえ生じたのであります。また六月十六日にも、約六百名が同町役場を包囲いたしまして、うち約二百名により占拠された事実があります。かような爭議團の行爲に対しまして、町民は不安と恐怖のあまり、夜は電燈を消して外出を禁じ、不測の災厄を避けたというまことに慨嘆にたえない事実さえあつたのであります。
 なお海田市町役場、海田市町警察署、同地にあります國警安藝地区警察署につきましても現場調査をいたしましたが、船越町と大体同樣なことが行われておりますので、この点につきましては省略したいと存じます。
 次に呉市役所に参りましたが、同市役所は六月二十二日に同市にあります二河公園で呉地区共産党主催で日鋼労組等を交えた約六百名くらいの人民大会が開かれまして、その決議文を呉市長並びに呉市会議長、同議員に対してデモ交渉が行われたのであります。その内容は後ほど鈴木証人の証言のときに詳細御報告いたします。
 なお同日には呉警察署及び呉税務署に対しましても、人民大会の一行が圧力を加えた事実があります。
 次に呉市にあります中國軍政部に参り、例のダガー大尉を一行が訪問いたしましたところ、ダガー大尉は、日鋼事件が議会において正しく調査されていることを聞いて喜ばしく感謝にたえない、日鋼事件は日本の法律を忠実に守つたならば起きなかつた。しかし労働者の一部の者は法律を守ろうとしない、また守らない者があつたために起きたと、きわめて含みのある言葉で表現されましたが、これは最も注意すべき言葉であつたと思います。爭議の内容については言明をされないようでありました。
 次に廣島市役所に参りまして六月十八日に濱井市長、上田廣島市警察局長、野口、波多野両公安委員等四名が同市役所玄関で人民裁判的な難詰を爭議團により受けた事実につき、濱井市長の案内で現場調査を行いまして、さらに廣島市東警察署が六月二十一日に爭議團のデモ隊により投石され、ガラスを破壞された現状につき調査をいたしましたが、この両名に対しましては証人として証言を求めましたので、その模樣は後ほど申し上げたいと存じます。
 次に廣島縣廳に参りまして、楠瀬知事より爭議團の縣廳に対する交渉あるいは抗議内容について説明を求めたのであります。この縣廳へ押しかけていろいろな要求や抗議をなしたのは、判明いたしている分でも六月十五日、同二十一日、二十九日、七月五日、六日等でありまして、デモで圧力を加えたというのは六月二十一日と七月六日であります。六月十五日には知事に対してなぜに退去要求を出したか、明らかに労働爭議の彈圧だと難詰いたしております。六月二十一日には例の市民廣場で松江澄君が主催しました日鋼事件眞相発表人民大会で決議された十二項目にわたる決議事項につきまして、楠瀬知事、國末隊長の弁明を求めるために約二千の大衆が縣廳廣場に押しかけたのであります。そのときにちようど産別議長の管道氏が出て参りまして代表者で知事、隊長に会うことにしてはとのあつせんがあり、そのために代表者と両者が知事室で会見が行われ、その席で代表者より知事に対しまして、日鋼廣島の解雇者を含めた從業員全員が工場に入ることについて知事は生命を賭して努力するという確約をさせられたのであります。また國末隊長に対しては負傷者に対して謝罪せよと強く食い下つたのでありますが、同隊長はこれを退けたのであります。その日は雨が降つておりまして夜八時過ぎとなり、大衆は帰宅に汲々としていたようでありますが、指導者たちは帰宅をとめていたようであります。しかしいつの間にか人数は減少しまして、解散の時は約七百名くらいが残つていたようであり、大衆も一部指導者によつてはなはだ困つておつたという樣子も聞かれました。
 次に証人の証言につきまして御報告申し上げたいと存じます。証人は廣島縣議会副議長の檜山袖四郎氏ほか九名につきまして八月二十四日より廣島高等檢察廳の講堂において尋問たしました。
 まず檜山証人の証言でありますが、証人は昭和二十三年十二月二十四日に、廣島縣議会副議長に就任しておりまして、船越町に住んでおる人であります。証人は日鋼爭議事件が縣会に提案された状況を次のように証言いたしました。事件発生当時ちようど縣議会が開かれていましたので、縣会議員の山崎實氏が日鋼爭議問題を取り上げまして、郷土産業防衛のために本問題は縣議会の決議として取り上げるように動議として提出されたのであります。しかし賛成者わずか五、六名で否決された。否決の事由としては楠瀬知事の日鋼爭議に関しての縣議会に対してなされた報告要旨によつて十分であり、その上賠償工場でもある関係上、縣議会が爭議問題に介入することは妥当でないというわけであります。
 また証人は証人個人が日鋼爭議團の一行によりまして迫害をこうむつたことや、爭議の模樣を次のように述べております。六月十七日午後九時年ごろより同十時ごろの間に船越町にあります証人の私宅に、証人不在中日鋼爭議團の一行百名ないし百五十名くらいが赤旗五本くらいを押し立て、インターを歌いながら押し寄せ、そのうち二名が証人の妻に対して、主人を出せと迫つた。しかし妻は主人が外出中でまだ帰宅しない旨を告げますと、その二人は一旦外へ出たが、一行のある者が、裏門から逃げるぞと言いましたので、前の二名は再び玄関に現われ、その後方にはさらに五名くらい続いて來て証人の在否を確かめ、妻に対して警察官に爭議中炊出をしてやつたのは何故か、明顯寺を警察官の休憩所に貸したと聞くが何ゆえに貸したか、インターの歌を聞いて何と思うかと諮問いたしたので、妻は歌の意味がわからないため尋ねたところ、一行は、首を切られて氣の毒とは思わぬかなどと言つたことがあり、証人の一家は爭議團の行爲に憤慨をした。
 また証人は日鋼爭議團の行爲によつて地方の不安を起した、九月あるいは十一月には人民政府ができる、赤旗やインターの歌は近い將來に全國の津々浦々まで響き渡ると爭議團のある者は言つていた。町ではとりどりのうわさがたてられている。爭議中に虐殺三名を出したと宣傳したが、その状況はけが人を死人に裝つてむしろを覆つて担架に乘せて運んでいたのが事実で、目撃者のある新聞記者が話していた。爭議の初めは爭議團に同情もあつたが爭議の惡辣さに世人から次第に反感を受けるようになり、同情はまつたくなくなつた。日鋼爭議の爭議團は郷土産業防衛等と言つているが、その実は産業の破壞であつた。警察が弱体で社会不安を一層増大した。証人の私宅は廣島縣民自党支部の標札を出してあるためか、爭議團によつて大ガラス、小ガラス各一枚ずつ破壞された。証人は爭議の終るまで身の危險を感じて帰宅できなかつた。船越町長の私宅も爭議團によつて二度ほどデモをかけられたと言つております。
 次に鈴木証人についてでありますが、鈴木証人は昨年九月一日日鋼廣島製作所の総務部長に就任しており、本件爭議につきましては重要な地位にある人であります。その証言は根垣所長代理が本委員会で述べました証言とほとんど同樣でありますので省略いたします。ただこのうち呉軍政部のダガー大尉の命令について述べたことだけを報告いたします。六月十二日午後十時ころ当時板垣所長代理以下が監禁され、いわゆる人民裁判的に尋問されていたころ、進駐軍が二名ほどジープで参りまして、爭議團によつて張られていたピケを解けと林組合長に言われたが、爭議團はこれを解かなかつた。このピケは工場幹部の禁足と爭議議員中の逃げを阻止するためと、警察官の來所等に備えて張られたことを述べました。また六月十三日午前零時ころには日本共産党何々と名乘りをあげて十名くらいが無許可入場して來たこと、その前後であつたが、林組合長がただいま学生一名が警察官に逮捕されたとうその報告をしたことも語りました。また六月初めころから部外者が日鋼爭議の指導にしきりに出入して、そのころから爭議は漸次惡化して來た。ことに東京より全金労組の坂木某が來廣して爭議の指導にあたつていた。六月十三日、十四日には部外者が多数無許可で工場内に入場した。十四日には共産党の田中堯平代議士が入場して激励演説をしたと述べております。特に爭議の惡質を思わせるものに次のような証言がありました。日鋼廣島の鍛冶工場長をしている影山正三君の家庭になされた爭議團の行爲がそれであります。影山君の家庭は船越町西七百七十七番地の社宅で、家族は妻郁子三十八歳、長女央子五歳、二男正矩二歳の四人家庭でありますが、同人は爭議のため会社に籠城いたしまして帰えることがなく、自宅では妻子が心配と不安の中で生活していたのでありますが、六月十五日前後の夜、晝爭議團の一行がその影山君の私宅を訪れ、罵詈雜言を浴せた上、生へびや死んだへびを投げ込んで妻子を極度の不安に陷し入れ、夜はのぞき込みをやる。子供らはこわくて外で遊べない。また附近の店に対しては影山君の家庭に物を賣るなと強要する。もし賣つた場合には、その店に圧力をかける、かようなことが毎日のように繰返されましたので、五歳になる央子さんは人を見ると爭議團と思いまして恐れる。午後の五時、六時となるとこの子供は母に対して早く戸を締めてとせがむ。妻はこのために強度の狹心症に罹りまして、遂に廣島の日赤病院に入院いたし、目下入院加療中とのことであります。まことにかかる非人道的な行爲が平氣でなされたことをわれわれ一同は眉をひそめて証言を受けたのであります。
 次に林証人について述べますが、林証人は昨年十一月ごろ全日本金属労働組合廣島支部日鋼分会の組合長をいたしておりますが、爭議については労働協約が本年五月四日期間満了となつたので、新協約について会社側と折衝した。しかし新協約は解雇について会社の一方的にきめる條項があつたのでまとまらなかつた。六月二日七百三十名の首切り案が会社より出されたので、労組側としてはこれに反対してミシン五百台の増産案を出して、首切り案の撤回を申し入れた。六月十一日に会社は六百六十二名の人員整理を発表して、その解雇者名簿を労組側に手交して來たので、組合大会の決議によつてこれを同日松岡人事、大久保秘書の両課長に返し、その預書をとつた。その日の松岡、大久保に対する労組側の行爲については目下証人は刑事被告人であるので証言を拒んだのであります。六月十三日午前十時過ぎごろムレー課長、林証人、板垣、三好、船越警察署長立会の上、ダガー大尉より林証人に対して「部外者が入つている、出さなければならない、出すように」という口頭命令があつたので、爭議團に対して電話でその旨とりついだが出ないものもあつたと思う。六月十四日は会社が工場閉鎖をやつたので、生産管理の目的で入つた、適法な行爲と思う。同日午前に十五分の時間を限つてダガー大尉より爭議團全員に対し、工場より退去の口頭命令があつたので、マイクを通して傳達した。爭議團は一月退去したが、再び入場した。ダガー大尉の口頭命令に対して文章での命令を求めたが拒否され、本爭議に限らず爭議は経済鬪爭と政治鬪爭はつきものである。かような全國的鬪爭は望ましい。本爭議は吉田内閣打倒のために行つた。産別から直接指導は受けぬが、産別の鬪爭方針にのつとつて鬪爭した。参加した團体は廣船、三原、國鉄、全逓等で、地区労働協議会傘下の團体であつた。爭議費用は各團体の應援が二百万円くらいあり、組合の持分五十万円くらいで、その合計が二百五十万程度で、残金が五十万円くらいあると証言いたしました。
 次に黒神証人について述べます。証人は昨年八月ごろ日鋼廣島製作所の工員として入社したのでありますが、元共産党廣島地区委員長の前歴があるにもかかわらず、入社の際は復員者で農業に從事していたと履歴書をしたため入社しています。証人は日鋼細胞の責任者であることを認めており、六月十一日の不法監禁については忘れたと言う。八月人民政府樹立の件は否認しました。六月十四日ダガー大尉の退去命令について命令の内容に疑義ありと言つたことは認めましたが、退去後工場内にもどつて來たことは否認いたしました。また同月証人は板垣所長代理が池の島より事務所へもどる際これを妨害した事実についても否認いたしました。そこで現場をとつた写眞を示しましたが、なお否認いたしました。しかし後ほど証拠として出したそのものとその写眞そのものと同一であつたことが確かめられたのであります。
 次に植田証人について述べます。証人は日鋼廣島製作所に十年以上勤続してゐる工員であります。昨年四月より今年九月まで日鋼労組の執行委員をやつた経歴があり、今回新たに結成された労組の書記長をやつていたのであります。証人の証言によりますと、六月十一日、十二日に行われた爭議團の暴行、暴言あるいは毆打、不法監禁の事実が確認されました。また爭議團員は鬪爭委員の許可がなければ、いかなる事由がありましても帰宅は許されなかつた、証人の実兄が重病だつたので帰宅を申し出たが、青年行動隊のために阻止された、爭議は組合員の忠実な意見を無視し、ある一部の指導者によつて行われたため、今回の爭議は労資双方のためにまことに不幸であつた、爭議中惡質な行爲が爭議團によつてなされたので、組合員の心ある者はこの爭議より離反するようになり、六月十三日夜ごろから労働者間に日鋼を再建するための会が生れ、労資協調的で事業を再開するように運ばれて來た、そのため新労組が結成されて、ただいまでは一千百令名に達している、労働者は今回の爭議について相当な反省がなされている、結局爭議をやつてばかを見たのはわれわれである。と述懐しております。
 次に原田証人について述べます。証人は昭和三十一年六月ごろより、東京の有馬忠三郎事務所で弁護士試補をおえ、その後呉市に事務所を置き、自由法曹團中國支部に加盟いたし、弁護士を営んでおりまして、共産党廣島委員会の委員をやつておる者であります。証人は本年五月末ごろから、日鋼廣島の爭議について同労組の相談を受け、その法律顧問的役割をしていた事実を認めており、日鋼廣島製作所が賠償工場である事実も認めております。六月十一日より爭議團側がストライキに入つた事実については、証人は否認いたしました。六月十四日には証人は工場内に入つておりますが、許可なく入つたので、証人は入場の際人をかきわけるようにして入つた、但し労組の許可があれば入場はさしつかえないと言つております。六月十四日午後五時から六時の間に、共産党廣島縣委員長徳毛宜策の依頼によつて、証人は爭議團幹部若干名とともに國警縣本部、市警察局、東警察署に参り、爭議の円満解決のために警察の不介入を申し入れた、その際警察では爭議團が工場から退去することの進駐軍の命令あるいは勧告は出ていないと言うたように感じた、六月十五日になされた廣島縣知事の爭議團に対する退去要求は、明らかに労働爭議に対する不当彈圧である、いかなる場合でも、労働爭議に関する限り警察の実力行使は爭議彈圧である。たとい労働爭議によつて違法行爲がなされていたとしても、殺人等重大犯罪でない限り、現行犯として取締るべきでない、違法行爲があつた場合は、後日非現行犯として取調べるべきだと述べております。また昭和二十一年三月ごろ、大阪の大和工業という賠償工場が労組により生産管理をなされた事実を取上げて、今回の爭議も生産管理をやればよかつた、生産管理は適法行爲で、違法性を認めない、また爭議團に対して出された進駐軍の命令に対しても、日本政府を通じてなさるべきもので、命令ではない、と否認いたしました。また証人は、日鋼爭議は労働爭議としては取扱わない、地域労働戰線として取扱う、政治鬪爭として取扱う、産業防衛鬪爭としてこの鬪爭を強化する、権力打倒のために取扱う、大衆掌握と党政策浸透のために取扱うということは、共産党が本年二月よりなされている鬪爭方針であることを認めました。
 結局原田証人の証言を要約いたしますと、爭議行爲は法律を無視してなされても、違法性を阻却するとの証言に盡きたのであります。
 次に濱井証人についてでありますが、証人は昭和二十三年四月五日、公選市長として廣島市長に就任しています。六月十八日に行われた日鋼爭議眞相発表の人民大会において、決議されました決議文に基きまして、デモの大衆が証人になされた模樣を次のように述べております。証人が市長室におりますと、人民大会を指導した幹部若干名が入つて参りまして、「大勢入ると混雜するから、市長は玄関まで出て、大衆に話してもらいたい」と申出があり、その幹部に案内されて市役所玄関に出ますと、大衆的二十名が玄関に詰めかけ、そこにはすでに上田市警局、長野口、波多野両公安委員が大衆に包囲されていた、証人は上田市警局長らの所に出されたが、その脇には共鬪委員長の松江澄君らの幹部がおつて、大衆を指導していた、その幹部のある者が「市長は忙しいから先にする」と言つて決議文を読んで、最初に訊問を受けた、その内容は十二項目で、先日ここで証言を得た通りであります事。
 なおこの大会は市議会に働きかけて、六月二十一日に市会議員松本清(無所属)佐々原計(革新派)の両議員より、爭議の円満解決についてと題して発議があり、市会議、長はこの発議に基き市長に申入があつたので、証人は知事に対して発議書の趣旨を申し入れた。デモに対しては相当の威圧を感じたと証言いたしました。
 次に鈴木術証人について述べます。証人は昭和二十三年四月五日、公選市長として呉市の市長に就任しております。六月二十二日に呉市の二河公園で、共産党指導のもとに行われた人民大会が、その終了後呉市役所、呉市警察署、呉税務署に対してデモ交渉が行われたのでありますが、呉市役所になされた模樣を次の通り述べました。当日はちようどデラ台風によりまして廣町に犠牲者があり、その死者に対して呉市葬を当日の午後一時より廣町で営むことになつておりまして、市長、助役、市議会議長、副議長、各市会議員らが市役所よりバスで葬儀場へ出発するところであつた、デモ大衆の約三百名は赤旗を押し立て市役所に参り、市役所の廊下を一巡デモ行進をした後、指導者の自由法曹團の原田、椢原、高橋の弁護士及びその他の幹部数人が指導して、市長らを包囲して、約一時間くらいにわたつて、市に対して主食掛費、日鋼從業員解雇反対、公安條令反対等を申し入れ、市議会を開いてこれに対する決議を要求された、証人らは市葬もあることであり、やむなく六月二十四日午後一時に市議会協議会を関催することを確約した。六月二十四日には、右の確約に基いて協議会を開いたが、開会前にすでに市役所前廣場で、原田香留夫弁護士指導のもとに、大衆的五、六百名が人民大会を開いて氣勢をあげていた、協議会を開会するや、この大衆は赤旗を押立て、傍聽席になだれ込み、赤旗を議場につるして、傍聽席はこの大衆で超満員となつたが、CICの係官が來ていたためか平穩であつた、赤旗については議長より注意を受けたので、穩やかに巻いて傍聽していた、二十二、二十四日ともに大衆の威力によつて相当な圧迫を感じた、ことに二十二日は閉口したと述べ、協議会決議に基き、証人は縣知事及び日鋼廣島工場に対して、市長名で要望書を提出したと証言いたしました。
 次に瑞木証人について述べます。証人は國警廣島本部刑事部長兼捜査課長より、本年三月七日廣島市警察局東警察署長に就任したのであります。証人は日鋼爭議について次の樣に述べております。六月十四日早朝、午前六時より七時の間と思いますが、船越警察署長より電話連絡がありまして、「本月十一日以後、日鋼爭議は労資双方に複雜な状況が継続している、また工場は閉鎖されておるから、警備上いかなることが起るかもしれぬ。警備と情報收集を兼ねて職員二、三名を派遣してもらいたい。」と申し出があつた、日鋼工場は一部東警察署の管轄区域にあるので、私服をまじえて三名派遣した、すると午前十時三十分ごろ再び船越警察署長より「呉軍政部将校から、不法に爭議に干與はせぬが、工場は爭議團によつて占拠されている、英濠軍作戰部隊を出動せしむるから、同部隊の應援のために警察官二十五名ずつ三隊、うち一隊は待機せしめ、一隊はただちに出動するようとの電話があつた。証人は署僚石光警部を伴い、警察官二十五名を引率して現場に出動したが、現場では爭議團の警戒線に阻止されて入場ができなかつた。そこで証人と石光警部は、共鬪委員長松江澄君に名刺を渡して入場できたが、隊員は外に置いた。入場すると、ダガー大尉に会い、警察官の一隊は爭議團の阻止にあい入場のできなかつたことを説明して、了解を得た。
 すると、ダガー大尉より、爭議團に対して退却事命令を出したが阻止された、軍政部査長の許可ある者以外は警察官の事実力行使により工場より退去せしめよ、その際犯罪があつた場合は檢挙せよ等の命令が、証人及び三好船越警察署長になされた。そこで証人は、組合幹部に対して、退去について説得したが、受入れられなかつた。午後二時過ぎごろ、工場事務所二階の階段のつき当りの場所で、つまり踊り場で、ダガー大尉、ムレー労働課長、オグニレン憲兵隊長、通訳及び田中市警備課長、石光警部及び証人、それに松江澄、組合の西村執行委員等組合幹部十七名ぐらいがいた。その中に中下、林組合長もいたように思つた。右の人々の面前で、ダガー大尉は、松江等爭議團幹部に向き直つて、命令を傳達すると言いまして、爭議團の退去命令を出した。タガー大尉はさらにあらためて証人等に対して、警察署長はすみやかに爭議團を退去せしむるようとの命令を出した。そのとき松江君は、われわれに賠償工場を阻害しているのではない、増産に盡力しているのだ、自分からはまた退去について命令書を受取つていないと言つた。タガー大尉は、口頭命令でけつこうだ、署長の意見いかんと問われたので、証人は、軍の命令なればいたし方ない、命令通り執行するほかはないと答えた。命令があつた後、証人は、爭議團が自主的に退去するように再三慫慂したが、爭議團は承諾の意思表示がなかつた。ダガー大尉一行は、一部を残して午後六時ごろ工場を引上げた。証人は午後九時ごろ、單身では危險を感じたので、ジープに乘せられて帰つた。爭議團の退去については、警察の実力行使によるほか道はなかつた。松江君に対して、ダガー大尉の命令は、はつきりなされたことを証人は確認いたしました。警察の実力行使は、あくまで爭議自体に対しては不介入の方針をとり、ただ軍の命令執行と爭議團の不法行爲に対してのみ実力を行使したに過ぎぬ。また爭議團に対して故意に傷害を加えた事実はない。警棒の使用は警察官武器使用規定に基き携行使用したと証言いたしました。また六月二十一日の人民大会は、基町市民廣場で、約二千余の大衆で、午前十一時ごろから開かれ、この集会については西警察署へ届がなされてあるように聞いている。この大衆は午後零時ごろから、赤旗等大旗を押し立て、プラカードを携えて、労働歌、インター等を高唱しながらデモ行進により東進して縣廳に向う途中、東警察署の手前よりジクザク行進に移り、警察署の裏手から表にまわつて、東署に対し何回となく波状デモで圧力をかけ、警察の不当彈圧等、罵詈雜言を浴せて行進を続けていたが、デモ隊の中央部が過ぎ去つたころ、その中の朝鮮連盟の一團が、附近の燒跡等にあつた煉瓦の破片等を拾い、警察署の表玄関の石段にかわるかわるかけ上り、投石して、ガラス八枚を破壞された。そのとき大衆の指導者松江澄等幹部若干名は、警察署の玄関石段の上にいて、あたかも暴行をとめるようなかつこうをしていたが、とめる樣子もなかつた。証人は裏門にまわつて調べようとしたが、裏門は大衆によつて外に出ることはできなかつた。大衆は殺氣立つていたので、暴行者を逮捕するために警察官を飛び込ませることは、かえつて事態を惡化させる懸念が濃厚であつたので、そのまま成行きにまかせていた。煉瓦等四個は、証拠のために領置してあるが、いまだ犯人は檢挙に至つていない。捜査ははなはだ困難であると証言いたしました。
 次に、伊藤証人の証言についてでありますが、伊藤不二夫証人は、昭和十二年より工員として日鋼廣島工場に入社いたしまして、今回の爭議については青年行動隊員となつております。証人は、青年行動隊の任務は知らぬが、ピケツトは張つた。八月革命や人民政府樹立については言つた覚えはないと否認しております。八月革命については、前に本委員会におきまして、金子証人より、伊藤不二夫君がはつきり宣傳していたと証言していたのであります。人民政府樹立については言つたことはないが、吉田内閣を倒して、人民政府ができなければならぬと思う、共産党機関紙アカハタ等にもはつきり書かれてあり、人民政府ができることは好ましいことであると証言したのであります。
 以上が現地調査報告の概要でありますが、われわれ委員が本調査によつて感じたことは、本爭議が、前に証人が述べてあります通り、一部の指導者によつて無責任な指導のもとに爭議が行われ、労働者も企業家も、はたまた附近住民までが、まことに迷惑をこうむつた労働爭議であつたことの感を深くし、同時にまた、爭議の手段として、まれに見る人道に反した行爲がなされ、法律を無視して、秩序の破壊と社会不安を引起したことを痛感いたしたのであります。大体現地報告にかえます。
#9
○神山委員 ただいまの報告を聞いておりますと、私たちのこの現地調査に参加した委員の報告と、部分的に違つておりますし、またこの報告そのものが各現地に派遣された委員の討議を経ていないということがはつきりしておりますので、この点については、後に十分討議して、そしてまとまつた報告をしていただきたいと思いますが、ことにこの調査と言いますか、執筆者と言いますか、その人の主観が非常に入つております。先ほどの高木委員のように、非常に冷静に、だれが見ても事実そのものとして言つておるものと、若干性質が違つております。この点について、私たちは後に意見を交換する機会を持ち、さらに場合によつては少数派報告の権利を保留いたします。
#10
○鍛冶委員長 いずれの機会にまた承りたいと思います。
 それでは報告はこの程度にいたしまして、次にお諮りいたします。前回の理事会において、理事諸君の御了承を得て、委員会の調査に支障のないよう、本十二日に共産党衆議院議員田中堯平君、同じく春日正一君、郵政衆電氣通信大臣小澤佐重喜君、労働大臣鈴木正文君、國務大臣樋貝詮三君、十三日に國警本部長官齋藤昇君、鉄道弘済会元理事小倉俊夫君、同じく元販賣課長松田節生君、國鉄労組齋藤喜作君、以上の証人を本委員会に出領を求める手続をとつておきましたが、以上九名を証人として喚問することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○鍛冶委員長 御異議ないものと認めます。それではさよう決しました。
 ここでしばらく休憩して、証人の尋問は午後からいたすことにいたします。午後は一時半より開きます。
    午後零特四十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十八分開議
#12
○鍛冶委員長 休憩前に引続き会議を開きます。永井隆君表彰方調査要求の件を議題といたします。
 本件につきましては四月二十七日理事会において基礎調査に着手することを決定いたしましてから、調査部において鋭意調査を進めました結果、お手元に差上げてある通りの報告書が提出されました。
 それでは永井隆君表彰方調査要求の件を議題といたします。調査部より報告書を簡單に説明いたさせます。明禮事務局長。
#13
○明禮事務局長 永井博士表彰に関する件基礎調査調査要求の趣旨、永井博士は原子病の研究に鬪いつつ、同病の犠牲となつた科学者としての同氏の崇高なる人格は当然表彰すべきものと思う。なお同氏の「この子を残して」その他の著述は社会教育上大きな貢献を與えたと思うので、以上の点調査の上表彰されたい。小川半次委員提案。
 二、本人。本籍は島根縣飯石郡飯石村大字多久和一千五百八十一番地。出生地、同縣松江市苧町六十一番地。住所、長崎縣長崎市六上野町三百七十三番地、永井隆。明治四十一年二月三日生。昭和七年三月長崎医科大学卒業、同大学物理的療法科に副手、助手、講師として勤務中、陸軍医官として同八年二月から翌年五月まで満州事変に、同十二年七月から同十五年二月まで日華事変に各從軍、同月召集解除、同年四月同大学助教授に任命、同十九年三月医学博士の学位授與、同二十一年一月同大学教授に任命、同年九月教職に適格と判定、同二十三年八月休職、正六位軸四等に叙せられている。
 あとここに刷りものを配付してありますから、大略を申し上げます。略傳を述べてあります。略傳を述べてその次に博士の諸著、田川房太郎氏ほか数氏、著書著作が述べてあります。その次に業績が述べてあります。その次に症状――現在の病氣の症状が述べてあります。貢献の点がその次に述べてあります。
 結論をちよつと申し上げます。一、永井博士はその業績によつて、偉大なる科学者ということは別として、一科学者として誠実に眞理を探求する。そして学界に対し身をもつて貴重な研究資料を残そうとしている。永井博士は放射線医学の研究と、その実際に鬪いつつ、白血病で倒れた。それは職業上の放射線障害と診断された。永井博士は生死の限界を越えて、科学者の任務を果した。そしてまた新たにその任務を果している。その科学精神は崇高である。
 二、永井博士の存在は長崎の原爆で新たなる意義を持つた。永井博士は原子力時代を顧みて、われとわが体をささげ人類の幸福を希求して、一般大衆のうちへ世界平和への意思を浸透させる。永井博士終戰後の言動と著述は、社会教育上大いに寄與しているものである。永井博士は日本復興のために、生活苦を起克して働く者の友であり、悩む者には慰めを與え、弱い者には力を與えて再建意欲を作興する。その驚くべき生命の力は、立ち上る一般大衆に対する一大指針と言わざるを得ない。
 要するに永井博士は文化と科学に寄與して、日本再建のために貢献すること大なるものがある。
 以上であります。
#14
○鍛冶委員長 それでは本委員会において調査に着手するかいなかについて、討論の申出がありますから、討論に入ります。神山茂夫君。
#15
○神山委員 約二箇月にわたつて、考査委員会が、廣川幹事長の指揮する反共攻勢の一つの会議のようになつたというような印象を與えた。これがいかなる圧力のもとにか、あるいはどういう考えのもとにか、本來の任務に帰られつつあることはまことに欣快にたえない。今問題になつております永井博士の件は、すでに古くから論議されておる問題であり、私たちとしては遺憾ながらこれに賛成しないという立場を終始とつて來たものでありますが、この問題について意見を述べる前に、考査委員会のできましたときに、日本の再建に貢献する行爲というものが実際あるのかないのか、そんなものはないのではないかというふうな國際的な批判があつたことを、私たちは残念ながら思い起さざるを得ない。しかしとにかく約一〇%の仕事をこれに注いだのでありまするから、考査委員会が日本の再建に貢献したことを取上げるのは当然の任務であり、また適当な表彰すべき事項があれば、大いにこれは表彰しなければならないのであります。ところが今調査報告の出ております永井博士の件につきましては、これにはたくさんの問題があるわけであります。今明禮事務局長が読まれた点にも、すでに種々の問題が含まれておるのでありますが、時間があまりないので、ごく簡單に要点だけを申し上げたいのであります。
 まず第一に、この略傳そのものの中に問題が含まれておる。この調査報告そのものが、全体として非常に最近のジヤーナリズムの影響を受けている。またそのジヤーナリズムの上に乘つているということが一つの特徴なのでありますが、それにもかかわらず、どの程度まで本格的に掘り下げて研究してあるかということについては疑問を持たざるを得ない。たとえばこの略傳中に、「ロザリオの鎖」の中でその奧さんに対する非常に深い愛情が表明せられておると言われておりますが、こういうような点については、すでに週刊朝日の六月十二日号に、浦松佐美太郎氏が痛烈な批判をしている。その批判の一部を私がここに簡單に指摘します。この場合共産党の意見というふうに話すのもどうかと思いますので、浦松氏の言われることについて述べて見ますと、奧さんに対して、自分は大人物となる。この人物の妻としての資格のなさ、特に無教養な農家の娘としての卑屈を感じ、他にりつぱな妻を予想して、そのときは女中として使用してもらつてでもせわしてもらいたいということを、一人で述懐しているということになつている。妻の安否は被爆後三日目に知るが、燒跡に黒こげの死体を拾つたとき、その妻の死体が著者に向つてごめんなさいと言つて謝つておるのだと聞く。このような著者に対する不思議な態度も、結婚の第一の使命は子供を産むことにあるという、こういう考えに帰因するものであると浦松氏が批判している。これはほんの一例でありまして、この博士の見解の中にはいろいろの問題があるのであります。ここに博士が眞に人間を愛する、眞のヒユーマニストとしてわれわれが受入れることのできない一つの証明があるわけであります。妻に対してもこうであり、子供に対する考え方もいろいろ問題が起つておりますが、特に戰時中のこの人の行動についても一考を煩わさざるを得ない。私たちは終戰後四箇年も立つた今日、彼の戰時中の行爲を一々ここにあげつろう必要はありませんが、永井博士の病氣の直接の原因は、当時軍医として彼が活動しておつたことと不可分に関係しておる。しかもレントゲン学者としては許されないような状態のもとで活動した。これは一方では、当時の軍部の圧力があつたことは事実でありますが、その間科学者として眞に科学に忠実であれば、とり得ないような超過労働をしている。こういうふうなことも一つの原因として半分えざるを得ないのであります。ことに私たちが問題とせざるを得ないのは、この基礎調査報告の中にも、科学者としてこの人の業績がどこまで高いかということについては疑いがある。言葉には書いていないが、そういう内容が盛られている。現に永井博士をほんとうの意味の科学者としてわれわれが見る場合には、たくさんの問題があるのであります。彼は昭和八年以來約十五篇の論文その他を発表しておりますが、これが日本の学界に與えた影響は必ずしも大きいものではない。一部はすでに忘れられており、また一部はその到達した水準から言つても、また今日の段階から言つても低いのであります。この事実を私たちは冷静に見ておかなければならぬ。しかも戰後の日本の再建に役立つような医学あるいは科学ということを私たちが言います場合に、まず医学としてどういうものが必要であるかということを私たちは考えますと、人民の生活に直接影響し、これを守るようなものが必要なのでありますが、その場合第一に私たちの強調しなければならないのは、日本の母子を保護するための医学的な活動である。また日本の社会病と言われる結核に対する鬪爭である。また日本が特殊の大きな比重を持つ癩病との鬪爭、これが必要なのであります。さらに労働者保護のための、医学的な活動、さらに社会的な疾患の上に立つておりますが、種々の傳染病等の研究や鬪爭、こういうふうなものこそ眞に日本の民主的再建に役立つものと言わなければならぬ。さらにもう一つ大事なことは、日本に欠けている基礎医学の面における活動でありまして、たとえば細胞原形質の研究、その他についてはわれわれの未熟なまた低い水準をどうして補うか、こういう方向に医学者が努力した場合においてのみ、その医学を私たちは眞に日本の民事化及び再建に貢献したと言い得るのでありますが、遺憾ながら永井博士の業績はそういうものではなくて、むしろ原子爆彈という特殊な兵器によつて起つた病氣に対する研究が中心になつておるという点も一つの問題を出すのでありますが、しかもそれの水準が低いということを私は指摘せざるを得ない。さらにもしも私たちがこういうほんとうに日本の再建に貢献するような行爲をした医学者諸君という人々をあげたいというのであれば、たとえば傳染病研究所の教授である中村敬三君の癩に対する研究は、日本の水準を抜くばかりではなくで、世界の水準を抜いておる非常に重要な意義を持つている研究であり業績であります。また東大教授の岡治道君の結核に対する研究は、これもまた單に結核の研究において世界的水準に抜きん出ているというだけではなくて、これを実際の應用、すなわち臨床家としても偉大な仕事をしている。さらにこの予防のためのBCGの普及その他において大きな貢献をしているのであります。しかもレントゲン学者としての彼の業績は、水井君にまさること数等なのであります。また末梢神経の研究についての田崎一二、この人は徳川研究所の所員でありますが、この人の業績もまた世界的水準を抜いている。こういう医学者こそ、われわれは表彰の対象とすべき者ではないか。また原子学者として私たちが問題を取上げるならば、われわれは湯川秀樹博士を思い出さざるを得ない。湯川秀樹博士は、すでに一九一三年において物質の基礎的構成の要素である素粒子に関する研究を発表して、全世界の物理学界を驚歎せしめたのであります。と言いますのは、当時の日本の支配態勢が、完全に軍國主義的な指導のもとに置かれて、学問、研究への圧迫が非常に強かつた。その中で新しい物質構成の要素としての中間子の存在を、彼が理論的に指摘した。しかもこれが完全に正しいことは、三七年に至りまして宇宙線の中に中間子として存在していることが明らかになりました。一九四八年には、これが完全に人工的につくり出されている。從いまして原子学者としての地位において、湯川秀樹氏の場合においては、單にわれわれ日本人が日本民族の誇りとして誇るべきではなく、全世界の物理学者が彼の事業に対しては驚異と大きな尊敬を拂つているということは、現に彼がアメリカにおいてその研究を継続している事実の中にも現われております。しかも湯川博士の場合大事なことは、彼があの戰爭情勢下に、眞に眞理と科学のために鬪い抜いた点にあるのでありまして、この点において永井博士とはまつたく違つている点があるのであります。從つて永井博士が科学者として大したものでないということは、基礎調査の中にも現われておりますが、むしろ彼の科学者としての業績は、今言つた人たに比べればはるかに低い。從つてもし國会がこれを表彰するならば、今私があげました三名の医学者諸君、特に湯川秀樹博士のごときは、当然これを國会がその権威と責任において、眞に全世界の前に誇るべき学者であるということを強調せざるを得ない。こういう人を無視して、学問的な業績の点においては劣ることが明らかな永井博士を取上げたということに、私は大きな問題があるということを指摘せざるを得ないのであります。しかもこの永井博士の表彰の大きな原因として、永井博士は日本の読書界に大きな影響を與え、これが世道人心にさらに非常に大きな影響を與えているという点が基礎調査によつて指摘されておりますが、そもそもここで読書界あるいはその読書界におけるベスト・セラーというものは何かということをわれわれは考慮しなければならない。現在全世界にわたつてベスト・セラーということが言われ、アメリカにおいてもいろいろなことが言われておりますが、ベスト・セラーというものの大部分が一、二の出版社や新聞社あるいはラジオ放送局、こういうふうなものと結びついて、実際に價値があるかないかは第二の問題として、つくり上げられているということは、すでに少し常識のある人はこれをはつきり指摘しておる。ことにアメリカあたりでは、便宜上一つ名前をあげてみますが、ロバート・W・フエースというセントールイスの大きな本屋の親父さんでありますが、この人はベスト・セラーというふうなものはどんな時代でもきまつてお客樣の興味を引くテーマは二つ、すなわちセツクスと神樣ですな、とこう言つておる。性と神樣。しかも日本の現実をまたわれわれが見ます場合に、神樣とセツクスが幅をきかしているということはすでに明らかであります。本考査委員会が材料に使われた読賣新聞のこのベスト・セラーの選択は、私自身もこれを見、ある場合関與したものでありますが、何ら科学的基礎に基かない、街頭で商用にあの箱の中に放り込む、ある場合にはちようどラジオにおけるあの人氣歌手や流行歌謡が、一部の新聞社や一部のレコード会社によつてつくられたようにつくり上げられた。読賣新聞の場合にこういうふうな事実があつたかなかつたかは第二として、この投票の仕方そのものの中に非常な非科学性があつたということは指摘せざるを得ない。しかしこういうふうなものの上に立つて、これがベスト・セラーになつたということは私たちも認めてよろしい。五月一日の朝日新聞に発表されたベスト・テンの書名をあげますと、大体こうなつておる。今問題になつておる永井博士の「この子を残して」、それから花山信勝の「平和の発見」、永井博士の「長崎の鐘」、谷川潤一郎の「細雪」、吉川英治の「親鸞」、さらにグルーの「滯日十年」、永井隆の「ロザリオの鎖」、吉川英治の「宮本武藏」、小島政二郎の「三百六十五夜」、田辺元の「哲学入門」、これが大体ベスト、テンになつておる。從つてこの調査報告と同じ論法をもつてすれば、これだからこそますますこの永井氏の業績は表彰すべきではないかというのでありますが、これは逆だ。まさにこういつた今あげた十冊の本の名前が、ことごとくエロとそれから神樣にかかつておる。しかも日本の場合には、吉川英治君の「親鸞」その他が大きく幅をきかしておるように、非常に封建的な古いものを含んでおるということが特徴なのであります。從つてこういうベスト・セラーズの中に含まれておるとか、あるいはラジオで宣傳された、あるいは新聞でこういうふうに宣傳されたということによつて、その人の著書が実際の社会人心に與える影響を見るということは、まつたく軽卒なジヤーナリストはすることが許されるかもしれませんが、國会のとるべき態度でないということを強調せざるを得ない。しかもそつジャーナリストの中にも、すでにこの永井氏のものに対する痛烈な批判が出ておる。これは考査委員会事務当局にもある。私が先ほどから言うように、六月十二日の週刊朝日もたまには委員長も他の委員諸君も読まれたらよろしい。私はもう時間がないからくどくどしくは言いませんが、そこには浦松佐美太郎君のごときは、この本について深刻かつ痛烈なる批判をしておる。さらにこの永井氏の業績に対する批判は、單にこの週刊朝日だけではなくて、他の進歩的な文筆家あるいは進歩的な雜誌の上にすでに現われているという事実を私たちは強調せざるを得ない。なぜこういうふうな批判が起るかということを私たちがあげる場合にどうしても指摘せざるを得ない点は、今言いましたように科学的な水準が低いということ、これももちろんでありますけれども、この永井博士の思想そのものの中に大きな問題が含まれているということであります。それは第一に、永井氏はあの太平洋戰爭のほんとうの性質をいまだに理解していない。永井君はただ戰爭に対して今では悲鳴をあげておるが、彼はあの太平洋戰爭の遂行中、最後の一瞬まであの戰爭を支持し、あの戰爭の遂行のために鬪つている。この点がまず第一に問題です。
 第二には、敗戰の事実そのものをほんとうに正しくとらえていない。また敗戰の結果がわれわれ日本人に與えるところの影響についても正しく見ておらない。從つて彼の見解からすれば、かつての日清戰爭や日露戰爭、また第一次世界大戰における日本の戰爭は、勝つた限りにおいては神の攝理において正しかつた。こんどの戰爭は負けた限りにおいて神の攝理から見て間違つている、こういう論法になる。從つて彼はカソリツク信者であるということで、ある場合には戰爭遂行に、ある場合には絶対平和思想に、どちらにでも向くことができる。ここに彼が戰爭とは何か、また平和とは何か、正義の戰爭とは何か、また不正義の戰爭はどうなるか、敗戰の結果日本はどういう状態になつたかということすらまつたく考えていない。この点非常な偏見的な立場に立つておることを遺憾ながら指摘せざるを得ない。從つて彼の書いているものが非常に感傷的であり非常にセンチメンタルであるということは、この基礎調査の中にも、日本タイムスの社説の中にも出ている。すなわち全体的に見て大衆の感傷的な標準において云々と言われている。こういうふうな大衆の感傷的な氣持、日本人の遅れた氣持の上に乘つて賣れている本であるということを私たちが冷静に考えるならば、いたずらに社会がこれを読んでいるとか、放送でどうだこうだということの問題でなくて、私たちが強調しておきたいのはその根本が問題なのであります。ことにここで私たちが強調しておきたいのは、原子力及び原子爆彈に対するこの人の考えが非常に一方的であり、第一に原子爆彈の影響を非常に一方的に誇大宣傳していること、この点は世界の一部の反動的な勢力と日本の一部の人が支持しているというので、原子爆彈は恐ろしい恐ろしい、しかしそれにもかかわらず原子爆彈に対する正しい一定の大衆的な体形に基く社会的な仕組みをつくれば、原子爆彈必ずしも恐るべきものでないということは、諸君も御承知のリーダース・ダイジエストにはつきり書いてある。こういうふうに社会的に與える影響、戰爭の武器としての原子爆彈というものを見ると同時に私たちは原子力が今や世界の文化と科学を新しい水準に持ち來しておるということを考えなければならぬ。現に原子力が平和工業に使われるならば、世界全体の文化は恐るべき速度で発展するということはもう常識となつている。こういう問題について、科学者であるところの永井君は一言の説明もしておらないし、また説明する能力がないというのが現実なのであります。從つて私たちは原子戰爭が行われるということ、この原子戰爭と戰うということ、これをどうしても起さしてはならないという氣持は大事であります。この氣持は尊重しなければならない。その点永井君が演じている一定の役割を私たちは頭から否定するものではありませんけれども、それにもかかわらずただ絶対平和平和というだけでは平和は來ないということ、平和はまさに全世界の人民が力を合せて鬪いとるべきものであるということを弧調したいのであります。しかもここでもう一つ言つておきたいことは、日本におけるキリスト教の役割であります。日本のカソリツク信者の中には残念ながら今まで日本のとつて來た間違つたあの戰爭政策と戰つた人は少い。現に永井君のごとく、かちかちになつて日本のあの軍閥の戰爭政策を支持している。ただ日本のプロテスタントの中に、戰爭反対の傳統が残つている。明治三十八年の戰爭において、内村鑑三君があの政府の暴圧の中に、戰爭反対の鬪爭をした。また太平洋戰爭中においても、プロテスタントの各流派の人が多くあの東條の彈圧下に鬪い抜いたということは、私たち獄中にいた者はよく見て知つているところがカソリツクの中にはそういう傳統がない。しかもこの永井君はカソリツクとして戰爭に対して眞に今まで鬪かわなかつたばかりでなく、今でも直に鬪い得ない。しかも彼はカソリツク信者の科学だけが正しいという見解を至るところで漏している。また彼は自分の関係している原子物理学に関する科学者はある場合認めるが、他の科学者の地位や役割あるいは他の医学の役割、たとえば婦人科、小児科の科学者の偉大なる業などというものは見ておらない。こういう点でまつたく一方的な偏見に満ちているということは事実なのであります。從つて私たちとしても、先ほどから申しておりますように、これをある新聞社、ある雜誌社が表彰するのは、大いにやつてよい。それは金もうけである。また現にもうけている。こういうジヤーナリズムなどを基礎にした、ラジオその他の宣傳また天皇陛下が直接お会いになつたというような感傷的な事実に基かないで、眞の科学と眞の民主主義、眞の世界平和のためにはいかになすべきかの観点から私は表彰すべきかいなかをきめるべきであると思う。從つて私は初めから言うように、永井博士を表彰することに対しては反対とは言つていない。賛成できないと言つている。なぜならば、医学者としては三名の科学者をあげ、原子物理学者としては湯川秀樹博士をあげているように永井博士をほめるには、あまりに彼の業績はみじめである。また彼を表彰することによつて日本人の置かれる地位はあまりに科学的にみじめである。われわれは眞に現実の生活を守りながら日本を眞に民主化し、日本を独立させ日本をほんとうに復興する道によつてこそ全世界の恒久平和の一環として、日本に平和を持ち來すだけでなく、全世界に平和を持ち來すことができるのであります。こういう観点に立つて、永井君を表彰することは日本の國家のために、さらに日本國民のために、まことに遺憾である。從つて余儀なく反対せざるを得ない。こういう事情になるのであります。時間の制限がありますために十分意を盡せないことはまことに残念でありますが、討論は別の機会に徹底的にいたすことにして、今日はこのくらいにしておきます。
#16
○鍛冶委員長 神山君に申し上げます。三名の科学者を当委員会が無視しているということを言つておられるが、無視しておりません。これは議題になつておらぬのですから、この点、もしあなたが出されるならばですが、議題になつておらぬものを取上げられぬからというて無視しているというのは委員会として困りますから、訂正願います。
#17
○神山委員 私が無視しているという表現をしたとすれば、私の失言でありまして、私は、永井君よりこれらの学者の方が医学者としても、殊に日本國民全体の体位と健康を保持するためにもつと偉大な業績を残しているという点を強調したかつたのでありまして、私も今までこの表彰方について調査要求も出しておりませんし、あえてこの点について私は申し上げません。
#18
○岡委員 私は民主自由党を代表いたしまして、永井博士を表彰すべく当委員会において審査することに賛成の討論をいたさんとするものであります。
 さて私は冒頭において、一つの誤解がジヤーナリズムその他においてあることをまず訂正しておきたいのであります。それは、永井博士が原子爆彈の投下によつてああいう病氣にかかつた、こういうように誤解されていることであります。これはまつたくの誤解であつて、永井博士は実はあのレントゲンの研究によつて、先ほど神山君が申されましたが、長時間あの暗室に入つて研究を続け、学長に注意され、先輩に注意され、同僚に注意されたにかかわらず、その研究を過度にやりましたために、白血球と赤血球のバランスを失つて、お前の余命はもう三年であるという宣言を下されたのであります。そうしておるところに偶然にも原子爆彈の投下ということがあつたのでありまして、むしろこれは原子爆彈の微妙な作用によつて、あるいは永井博士の壽命を少し延ばしだのではないかとさえ言われておるのでありまして、この点非常に大きな誤解があるのでありまして、その点を私は冒頭にまず世の誤解を拂拭しておきたいと思うのであります。
 さて永井博士は、先ほど神山君が指摘された通り、あるいは戰爭中は戰爭に協力いたしました。しかしながらその間において彼はあの地方の貧民を夜に日をついで無料で療養して歩いたのでありまして、これまた彼の健康を破壞する大きな原因をなしておるのであります。要するに彼はその時代からあの浦上地方における聖者とまで言われるに至つておつたのであります。
 さてその後における貢献でありますが、凡人なら、お前の生命はもう三年であるというふうに言われると、それでがつくり行くのが普通でございましようけれども、その三年間において、何とか世のために貢献したい、世界平和のために貢献したいといつて、一管の筆に託して、一念発起、世界平和に貢献しようとしたのが、こういうベスト・セラーズの第一位から、第三位、第七位、第十二位までの各種の業績となつて現われたのであつて、これはジヤーナリズム等によつていろいろ批判されておりますけれども、それは決して永井博士の罪にあらずして、その間におけるところの出版業者その他に多少誤られたところもあつたかもしれませんけれども、それは決して永井博士の罪ではないのであります。実は今日の社会におきまして、特にあの終戰後の混乱期におきましては、エロ、グロ文学、暴露文学、あるいはカストリ文学、うそばかり書くところの雜誌など、こういうものが横行いたしました。ところが永井博士の書くところのものは随筆調であります。随筆調のものがそう賣れるわけはないのです。よほど人心にアツピールしない限り――実は私はきのう高崎から神山君の輝やける委員長と同車して上野まで帰つたのであります。談たまたま出版問題に及びまして、いかに本が賣れる賣れるといつても、そう共産党関係の本なんかも賣れるものではない。岩波書店のものが、いかに賣れるといつても、たかが知れておる、こういう話があつたのでありますけれども、今申しました通り永井博士のものはあの淡々たる随筆調でありまするが、これが世道人心に食い入りまするために、第一位、第三位、第七位、第十二位という、文豪と称せられる人でさえも、一生に一度ベストーセラーズの第一位になることをもつて光栄としておる、こういうのにわずか四年の間に、こういう業績を残したことは、いかに永井博士の貢献が偉大なるものであるか、また彼の信仰に根ざすところの――神山君はカトリツクはまつこうからきらいでありますが、カトリツクの信仰に根ざすところのこの人道主義的平和主義が、いかに人心にアツピールするかを如実に物語るものであるということが言えるのであります。この五月にもサビエル大祭が長崎において行われました。遠くはスペイン、フランスあるいはアメリカ、方々の欧米の國々からたくさんの巡礼團が集まつて來たのでありますが、あの永井博士、私は実は個人的にも多少知つているのでありますが、あの永井君のまつたくの小屋、あそこを訪れて、まるでそこに聖者を訪うがごとくかれらは敬意を表して行つたのであります。要するに平和の光があの永井君の小屋から輝きそめんとしつつあるような状況であります。なるほど永井博士は戰爭に貢献したでしよう。しかしながら今や永井博士は完全なる平和主義となり、科学のためには自分の家の病床を直理探求の実駿台として人道のためには死線をこえて人類の幸福と世界平和を希求し、戰爭をやめようと叫んでおります。そうして科学を戰爭のためにあらずして、人類の眞の幸福と世界平和のために役立たせようとしております。そのために解剖台上にその体を乘せる日まで眞の尊い戰いを戰いつつあるのであります。これが科学者たる人間として眞の殉教精神を体現したものでなくて何と言えるでありましようか。この崇高なる精神は日本文化と科学の美しい強い推進力をなすであろうことを私は疑わないのであります。先ほど神山君は頻りにカトリツクのことを申しましたが、カトリツクは共産党とはソ連に政権ができる前すなわち百年ほど前共産主義という言葉ができたときからあのローマ法王廳は戰つておるのであります。だからとうてい相一致するものはないのでありますから、その意味からして神山君がこれに反対することは当然でありまして、共産党は何ものにも反対するのである。たとえばあの古橋君一行のあの業績、あれは全國民が――共産党を除く全國民がおそらくすなおな氣持で受取つております。ところがアカハタはあれにさんざん食つてかかつております。こういう事実から見ましても、とうてい共産党が一致してこれを支持することは私は信じ得ないのでありまして、これはいたし方がないと思つております。むしろ共産党に反対されることによつてかえつて輝きを増すのではないか、こうさえ思われるのであります。何とぞ共産党を除く委員諸君が満場一致御賛成あらんことをお願いする次第であります。
#19
○鍛冶委員長 これにて討論は終結いたしました。それでは永井隆君表彰方調査要求の件を議題として採決に入ります。本案を委員会において調査するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#20
○鍛冶委員長 起立多数。よつて本件は本委員会において調査に着手することに決しました。
    ―――――――――――――
#21
○鍛冶委員長 ただいまお見えになつておる方は、田中堯平さん、小澤佐重喜さん、鈴木正文さんですね。あらかじめ文書をもつて御了承を得ておきました通り、証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。
 それではただいまから田中さんについては日鋼廣島製作所事件について、小澤さん、鈴木さんについては、國電スト問題、平市をめぐる騒擾事件及び日鋼廣島製作所事件等に関しまして証言を求めることといたします。
 証言を求める前に各証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相成つております。
 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科、医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が政党の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または二万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚僞の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。
 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。鈴木さんひとつ代表で読んでください。
    〔証人鈴木正文君各証人を代表して宣誓〕
#22
○鍛冶委員長 どうぞ署名捺印を願います。
    〔各証人宣誓書に署名捺印〕
#23
○神山委員 議事進行に関して一言。簡單に申し上げます。この尋問事項の中に小澤佐重喜君の場合と鈴木正文君の場合に、本件と直接関係のないと思われる点があるのです。これは小澤君の場合の第三、すなわち全逓組合の活動に不法または逸脱行爲が認められるか、ありとすればその対策いかん。こいうい尋問が出ておりますが、これは本委員会が当面調査の対象としておる事件から少し行き過ぎておると思うのであります。從爭のこういうような問題について扱うところは他の委員会かほかの場所であるべきで、本委員会としては少し行き過ぎではないか。第二には鈴木労働大臣に対する質問の第一項、すなわち連合軍総司令部との協議の結果、労働省が定めた労働組合の組織と運営に関する協力と勧告、これはここの考査委員会で問題にしております四つの事件があつた後に出たものであつて、從つてこれをここで第一に取上げることは不当ではないかと私は考えるのであります。しかも第二にこの事態を前提に置いて、過去の事件にさかのぼつてこれを問題にするというごときは、明らかに行き過ぎであると考えざるを得ない。かような尋問の仕方は從つて行過ぎだと思うのであります。この点は委員長が適当に取捨されることが必要だと思います。その上で本件を中心にして尋問される必要があると思うのであります。もしもそうでなく、こういうように拡大して、当面の事件と関係のないことまで委員会で取上げるとしますと、私たちとしても現在の政府の一つ一つまで文句を言わなければならないことになりまして、それでは小澤君にとつても鈴木君にとつてもまことにお氣の毒な結果になるのではないかと思います。この点あくまで事件の中心に限つて尋問されることを望みます。
#24
○鍛冶委員長 もちろん事件に関係あることを中心に聞きますから――それでは証言を承ります順序は田中さん、小澤さん、鈴木さんとしますから、田中さん以外の方は今しばらくもとの所で御休憩を願います。――田中堯平さんですな。
#25
○田中証人 はあ。
#26
○鍛冶委員長 こちらで聞くときはお坐りになつてよろしゆうございますが、発言されるときは立つてお願いいたします。
 あなたは共産党の衆議院議員ですね。
#27
○田中証人 はい。
#28
○鍛冶委員長 あなたは日鋼廣島製作所の労働爭議にあたつて、爭議中應援に行かれたという話ですが、さような事実はございましたか。
#29
○田中証人 行つた事実はありますが、應援ということは当らぬと思います。六月の十四日午後二時ごろに、日鋼の労働組合のところに参りました。應援というのが当らぬというのは、ちようど私はその前日、すなわち十三日の夜廣島の縣委員会の計画で、國会報告演説会をやつてくれということで、荒神町の荒神小学校で演説会を持つたわけであります。私は山口でありますが、山口からここの演説会に來たわけであります。それで日鋼が爭議を起しておる、聞けば相当警察の彈圧があるかもしれないということを聞いておりましたので、これは普通の爭議と違つて、いろいろそこがうるさい問題になるかもしれない。國会議員としてちようどここへ來合せた関係上、後にまた問題になるようなこともあるかもしれないので、國会で問題にでもなるようなことに備えるための調査という意味で、この労働組合を訪問したのであります。
#30
○鍛冶委員長 十四日の午後労組へ行つたとおつしやいますが、工場内の労働組合の事務所へおいでになつたのですか。
#31
○田中証人 ちようど私が行つてみますと、はや門のところで労働組合の諸君がスクラムを組んで、その外の道には警官隊が大体三百名が、四百名、まあ三百名程度でしようか、待機しておるというような状態で……。
#32
○鍛冶委員長 午後二時ですか。
#33
○田中証人 午後二時ごろです。それで私は日本共産党の代議士田中堯平であるがということを言つたところが――実は守衞所が入る右のところにあつたので、そこに入る手続をとつてもらおうと。守衞所をのぞいてみたのですが、守衞らしい人もおらぬし、労働者の人やらあるいは新聞記者ではあるまいかというような人たちが、何でも四、五人ばかりおつたのです。そこで私はこの中へ入りたいのだが、入つてもよかろうかと言うと、労働組合に行くには、すぐその中の左の方に中庭がある、そこに今爭議本部があるから中へ入りなさいということだつたわけです。そこでスクラムを組んでおるところで、もう一ぺん私は共産党から來た者だが中へ入つてもいいかと言つたところが、どうぞこちらへいらつしやいといつて案内をしてくれたわけです。そこで中之島みたいな、池の中に小さい島があるのですが、そこでマイクをすえて盛んに労働組合の連中が演説やつたり、報告したりしていた最中です。そこへ私が行つた。ところがぜひあいさつしてくれということで、そこで約三分ばかりのあいさつをしてすぐ引揚げたわけです。そのときは今の島及びその周辺の中庭に陣どつておつたのが労働組合であつた。
#34
○鍛冶委員長 この日鋼製作所は賠償指定になつていることは御承知でしようか、御承知でなかつたのですか。
#35
○田中証人 あとになつてそういうことを聞いたのであります。中へ入るときは知らなかつた。私は山口縣でありますので、廣島の事情をよく知らなかつたわけです。何しろ爭議ということを聞いて飛んで行つたわけですから、その事情は知らなかつた。
#36
○鍛冶委員長 そのとき御承知なくても、その時分はもうすでに進駐軍から、前の日に、賠償工場保管のために工場閉鎖をし、さらに進駐軍から賠償工場保管のために保管者以外のものは入つてはいかぬという命令が出ておつたはずですが、そのことも御承知なかつたのですか。
#37
○田中証人 そういうことは全然知りません。工場閉鎖のこともあとで聞いたことでありまして、そのときは知らないのです。たしかあれは十三日か十四日の朝かに出たはずですが、あとで聞いたことなので知りません。
#38
○鍛冶委員長 当日も労働組合に対して部外者及びその他一般の者は出るようにという命令が出たのですが、その点もお聞きにならなかつたのですか。
#39
○田中証人 全然聞いておりません。
#40
○鍛冶委員長 あとでも、先でも……。
#41
○田中証人 今の労働組合の者以外は出ろという命令が出たのは今初めて聞きます。
#42
○鍛冶委員長 十四日なら保管者以外の者はすベて出ろという命令が出ておるはずですが……。
#43
○田中証人 退去命令が出たということはあとで聞いております。
#44
○鍛冶委員長 それはそこから出られてからですか。その中におるときは聞かなかつた……。
#45
○田中証人 聞いておりません。
#46
○鍛冶委員長 それから演説の内容はどのようなことをなすつたのですか。相当爭議團に対して激烈な、俗に言えばアジ演説をやられたように聞いておりますが……。
#47
○田中証人 事実そんなものじやない。内容は三分くらいで一々覚えておりませんけれども、大体こういうことを言つたと記憶します。諸君が七百名以上も一挙に首を切られて非常に氣の毒だ、今首を切られたら一家路頭に迷う以外に再就職の道もなかなか見つからぬし、たいへんなことになる、これはぜひともひとつ首にならぬように鬪つてもらいたい、ところで鬪うについては分裂をするといつも負ける、私はここの爭議の模樣をよく知らぬが、多くの爭議に当つてみると、分裂が一番敵だから、分裂をしないように、最後まで一致團結をしてやつてもらいたいと言つたことを覚えております。もう一つは、私が門を入ろうとするときに、道のところに警官隊が相当数見えている。これはひよつとすると警察側の方で彈圧するという意向があるかもしれぬ、しかしその挑発にのつては行かぬ、警察の挑発にのると、これまた越権行爲その他によつてえらいことになるから、これはどこまでも正々堂々爭議を展開していかぬと負けますよという、この二つを注意したことを覚えております。それ以外に今記憶にないのですが。
#48
○鍛冶委員長 こういうことを言われたと聞いております、どうですか。中共対國府軍の内戰におけるがごとく、勝利の素因は第一に侵略のない正義の戰いであり、第二は目的のためには喜んで死地につく献身的團結が力全身にみなぎつていることである。
#49
○田中証人 そういうことを言つた覚えは全然ありません。ただ前の晩の演説のときには中共問題を取上げた記憶がありますが、今の中の島でわずか三分くらいの演説でありますから、そういうような國際問題などには全然触れた記憶はないのです。
#50
○鍛冶委員長 賠償物を突破するに際して、みずから進んで死地につけ、中共軍のために進路を開く、また種族繁栄のため喜んで犠牲になることが第一である、こう言われたと聞いておりますが。
#51
○田中証人 そういうことは全然言うておりませんし、私はよその演説会においてもそのような無謀なことは申しておりません。
#52
○鍛冶委員長 それからまた、組合員はがつちりスクラムを組んで、賣國吉田内閣を打倒し、われわれ人民のための人民の手によつて眞の民主人民政権を樹立して、安心立命の基礎にせよ、こういうことを言われたということでが。
#53
○田中証人 大体安心立命というような言葉は私は平生用いたこともありません。ただ、吉田政府の政治の間違いがこういうところにも響いているからということはつけ加えたと思つております。今のような激烈なる口調をもつて、安心立命がどうのこうのとか、スクラムという言葉は記憶ありません。
#54
○鍛冶委員長 これはあなたの演説を聞いて、そこで要旨を筆記したというものの報告ですが、間違いありませんね。
#55
○田中証人 ありません。そういうことは全然言つておりません。
#56
○鍛冶委員長 なおそのときじやなくて、共産党員のおもだつた人がこの議に対する指導者になつて、その指導者の一人として、あなたも中央地域等の爭議の非常な重い役割を演じておられたということを言つている者もありますが、その点はいかがですか。
#57
○田中証人 それは全然虚僞であります。先ほど申しましたように日鋼の労働組合を訪問したのは、私の発意で行つたのです。何も、たとえば縣委員会とか地区委員会とかいうような組織もありますけれども、そこからの命令とか、あるいは指令とか、嘱望によつて行つたのではないわけです。十四日の午後四時ごろの汽車がありますが、それに乘る予定だつたものですから、その間を利用してちよつと顔を出したという、全然私の発意であります。何か地方部から、今おつしやるように、主役を演ずるように命令を受けたかのような御質問でありますけれども、そういうことは全然ありません。
#58
○鍛冶委員長 それではあなた以外の人で、共産党員として議の指導に当つた人はおりませんか。
#59
○田中証人 爭議の指導とおつしやいますが、この日鋼の中にも共産党員はおるし、それから地区労協というて、他の友誼團体の結合体があるのですが、そういうところにも共産党員はおるわけです。そういう人たちが、指導ということは当らぬと思いますが、この爭議に協力をしたことはあると思いますけれども、その事情については、私の縣でないので、知らないわけです。
#60
○鍛冶委員長 私としては、共産党本部としてという意味です。
#61
○田中証人 それはありません。共産党本部から、だれそれ行つて指導せよというようなことは、私の知つている範囲では、全然ありません。
#62
○鍛冶委員長 あなたほか四、五名の人が主になつてこれを指導しておるのだ、こういうことを言つて、何か向うへ指令のようなものを出したことがあるというのですが……。
#63
○田中証人 それはまつ赤なうそです。というのは、私が第一そこに行つておるときに、党の中央部から、そういうおえら方はだれも來ておらないのです。
#64
○鍛冶委員長 ただそういう報告がありますから、その点を聞いておるだけですから、なかつたらないとおつしやれば、それ以上はよろしい。
#65
○高木委員 証人が日鋼へお出かけになつたのは、先ほど何日と言いましたか。
#66
○田中証人 十四日の午後二時ごろです。
#67
○高木委員 その前に日鋼の爭議問題を新聞か何かであなたは知つたことはありませんか。
#68
○田中証人 それですから、十三日に演説会に廣島市に行つたわけです。十三日のお晝過ぎごろ廣島駅へ着く上り列車がある。それに乘つて來たわけです。そうしてその晩荒神小学校で演説会を持つたわけです。その日、確かに日鋼で爭議を起していることを聞いたと思います。それから自分で、夕刊廣島か何かの新聞で日鋼が爭議をしている事実を見たわけです。
#69
○高木委員 それで、このいわゆる労組爭議團の中に、あなた方の共産党員がどれくらいおりましたか。おもだつた者で、あなたの記憶に残つている者をひとつお話を願います。
#70
○田中証人 爭議團と言つても、山口懸のことなら私知つておりますけれども、廣島縣のこと、しかも日鋼は初めて、しかも二、三分そこへ顔を出したというだけですから……。
#71
○高木委員 それはほんとうですか。知らないのですか。
#72
○田中証人 ほんとうです。後になつで、黒神なる党員がおつたと聞いておりますが、黒神なる者の顔も知りません。
#73
○高木委員 では、いま少しつつ込んでお聞きしますが、そこへ行かれる前に、いわゆる爭議團の共産党の人たちから、あなたはこの爭議の内容の報告を受けたことはありませんか。
#74
○田中証人 内容について報告を受けておりません。
#75
○高木委員 だれの案内でそこへ行かれましたか。
#76
○田中証人 それは廣島縣委員会に私が行つて、日鋼に行こうと思うが地図はどうかと言つたところが、地図を最初教えておつたけれども、ついて行つてあげましようということで、確かにあそこの共産党の新聞で、廣島民報というのが出ておりますが、その記者だつたと記憶しております。これも私顔は覚えておりますけれども、名は知りません。
#77
○高木委員 私どもの調査によると、あなたを案内した共産党の党員がおるように私の方では感じておるのですが、それはありませんか。
#78
○田中証人 それは今の廣島民報という共産党の新聞を書いておる新聞記者、それが案内をしてくれたのです。
#79
○高木委員 それは名前はわかりませんか。
#80
○田中証人 名前はわかりませんが、顔を見れば覚えております。
#81
○高木委員 そこで、あなたがその人に案内されて現場まで行く間の時間はどれくらいかかりましたか。
#82
○田中証人 廣島駅の前からバスに乘つて行つたのですから、まあ三、四十分――小一時間かかると思いますが、三、四十分だと記憶しております。
#83
○高木委員 そこで、その時間はわかりましたが、その間その新聞記者が爭議の材料を集めて、あなたに報告したような事実はありませんか。
#84
○田中証人 ありません。
#85
○高木委員 全然ありませんか。
#86
○田中証人 ありません。
#87
○高木委員 そうすると、その爭議について、その間に何らの話もなかつたのですか。
#88
○田中証人 先ほど申しましたように、警官が動員されておるかもしれぬという程度の話でした。
#89
○高木委員 しかし、少くとも政治家である以上、その爭議を批判しようとして行かれるのであるから、爭議の内容や何かに対して、予備の知識を得んがために、相当つつ込んで研究すべきだつたろうと思うが、その点はどうです。
#90
○田中証人 ですから、さつき申しましたように、二千有余人しかおらぬ労働組合で、一挙に七百三十人ですか、七百人以上も首を切るという。しかもそれが賃金遅配等によつて、昨年末ごろから非常に困つておる労働組合であつた。それに一挙に七百人の首切りということで、これがもとになつて爭議が始まつておるんだというようなことは聞いております。
#91
○高木委員 しかし、それは一つの結論ではあるが、七百人を首切らなければならぬ事情とか、何とかいうものを、その新聞記者である共産党員から報告は受けておりませんか。
#92
○田中証人 受けておりません。
#93
○高木委員 それからもう一つ、その爭議の起つた原因から経過、そのとき現在で、今日までの事情というようなものを、あなたは報告を受けておりませんか。
#94
○田中証人 そのときは聞いておりません。交渉に入るまでは……。
#95
○高木委員 ずいぶん迂闊のように、私どもは常識上判断するが、それで爭議の中へ入つて、ただいまのような激励と言いましようか、訓示と言いましようか、そういうあいさつをなさつたということになるのですか。
#96
○田中証人 しかし、労働爭議というものは、みんな似たようなものなのです。どういう要求でやつておるか、その要求ということが非常に不法な要求である場合には、われわれはこれに対して協力をしたりすることはできないわけです。けれども、今の場合は、なぜそこへ行つたかというと、要求をまず聞いて、その要求は正しいということを知つておるわけです。もう一つは、警察隊がそこに來ているということを聞いて、これは彈圧されたんじやいかぬ、そういうことが事実であるならば、ひとつ調査もしなければならぬ。そういう二つの意味で行つたのです。
#97
○高木委員 その話を聞いて、正しいという結論をあなたは得ておるんだが、もう少し内容に入つて檢討もし、報告も受けて、初めて正しいという結論になると思う。労働爭議が一律に正しいというわけではなかろうと思う。そこで、あなたのような賢明な方は、その問題について、おそらく予備知識として徹底的に調査してかかるべきものであるのだから、いま少し経過や内容やその他について、あなたは調査されだろうし、またあなたの意見も同時に述べられるのが、その場面として、ものの常識的判断として当然のことであると私は考えのであるが、その点はどうです。
#98
○田中証人 労働組合を訪問したときの話ですか。
#99
○高木委員 訪問までの四十分なり三十分の時間、その時間を費して行つて、いわゆるあなたは中の島で挨拶をされておるんだから、その四十分の間の行動と、あなたの考え方を述べてもらいたいというのが、今私のあなたに証言を求めておる点です。
#100
○田中証人 ですから、その点については、繰返して申しますように、昨年から賃金遅配で非常に困つておつた。そうして事業縮小によつて首を切られるのではあるまいかというので、労働者が非常に不安がつておつた。ところが一時は、首切りなんぞやらぬという声明か何かを、工場長ですか、工場長か何か知らぬが、会社幹部から話があつたので、労働組合の方はちよつと安心したところに、がさつと寝耳に水のように七百何ぼが來た……。
#101
○高木委員 その話の中に、賠償工場であるということの話はなかつたのですか。
#102
○田中証人 全然聞いておりません。
#103
○高木委員 記憶がないだけで、あつたのかもしれぬということじやありませんか。
#104
○田中証人 私は弁護士ですから、賠償工場というようなことを聞いたら、一應私は警戒すると思います。そういうことは全然私の頭にないのです。
#105
○内藤委員 あなたの選挙区はどこでありますか。
#106
○田中証人 私は山口縣の第二区です。
#107
○高木委員 山口の第二区から廣島縣へ議会報告においでになつたのですか。
#108
○田中証人 それはこういうわけです。共産党では出身縣に対して議会報告をやるが、山口縣の隣りは廣島縣であるし、その隣の九州は大分縣ですが、そういうところからは共産党の代議士は出ておらぬ。ですから共産党の國会報告はだれかが行つてやらなければならぬ。そこで廣島縣の党委員会より來てくれということで行つたわけです。
#109
○内藤(隆)委員 そうすると廣島縣には共産党の代議士がおらぬ。そこであなたは隣縣選出の議員として党の方針に從つておいでになつたわけですね。
#110
○田中証人 廣島縣の党委員会から、ひとつ演説をやつてくれというので十三日の晩に行つたのです。
#111
○内藤(隆)委員 そうするとあなたがさきの委員長の尋問にお答えになつたように本部の指令は全然受けていなかつた、しかし地方の廣島縣の共産党地区の方から紹介を受けた。そういう意味ですね。
#112
○田中証人 それは演説会についてです。
#113
○内藤(隆)委員 ところがその十三日の晩の演説会は、たまたま日鋼が、爭議に入つた最中であつたのですね。
#114
○田中証人 さようであります。
#115
○内藤(隆)委員 そうするとそれは偶然の一致で、決して自分はその爭論を應援するために行つたのではない。こういうことですね。
#116
○田中証人 そうです。
#117
○内藤(隆)委員 われわれの目から見れば、偶然の一致と言えばまことに偶然ですが、あまりにもつくられたような偶然ですね。
#118
○田中証人 それでは誤解が解けるように詳しく申し上げます。実は十三日のお晝過ぎの汽車で廣島に着きましたが、私はどういう計画になつておるか演説のプランは知らなかつた。ところが着くなり私は運輸委員をやつております関係上、交通労働者の方にひとつ話をしてもらいたいということであつたので、すぐその足で駅から廣島鉄道局の前ですが、職員が大ぜい集つておりましたから、そこで演説会を持つたのです。それから今度引返して、廣島電鉄の本部に、これは懇談会ということでやつてもらいたいというのでそこにも参つております。それから翌朝十四日の午前には廣島管理部、それから廣島管理部のすぐ近所に、あれは檢車区というのですが、そこにも行つて懇談会的な演説会を持つております。そういうわけで、これらは交通機関の問題でありますので、運輸委員という関係でそういうことになりました。十三日の演説会は市民一般相手の演説会で、日鋼事件とは関係ありません。
#119
○内藤(隆)委員 その交通関係の労働組合が、外郭團体としてこの日鋼事件に應援していなかつたのですか。
#120
○田中証人 これもあとになつてみな知つたことですが、おそらく廣島電鉄の力は協力しておつたのではないかと思います。そういう話をあとでたしか聞いたと思います。ところが國鉄の方は協力しておらなかつたと記憶しております。
 それからもう一つつけ加えますが、その演説の中で日鋼事件は一つも取上げておりません。日鋼事件があるから諸君協力してくれというような煽動をしたかという誤解があるかもしれませんが、全然やつておりません。
#121
○内藤(隆)委員 もう一つ速記録を調べなければわからぬが、最前あなたがおつしやつたときに、日鋼に行こうと自分で思つて案内を請うた。かようにおつしやいましたね。それは要するに日鋼の爭議の内容をよく聞くために日鋼に行こうと思つたのですね。
#122
○田中証人 爭議内容といつても今申し上げた程度の知識しか持つておりません。新聞を読んだり、バスの中で聞いたりした程度の知識しか持つておりません。私どもは労働爭議が起きておれば、しかも目の前にあることであれば、労農関係の代議士としてそれを素通りすることはちよつと常識に反する。そこで一應寄ろうということは考えるわけです。
#123
○菅家委員 廣島へ証人の來られたのは十四日の午後二時ごろ……。
#124
○田中証人 それはお聞き違いです。十三日のお晝過ぎ廣島着の上り列車がありますね、それで來ました。それはさつき申し上げた通りです。十四日の二時というのは日鋼の労働組合を訪問したときであります。
#125
○菅家委員 廣島で演説されておりますね。
#126
○田中証人 おります。
#127
○菅家委員 それは同時にどこでやりましたか。
#128
○田中証人 それは十三日の夜ですから、多分七時ごろだと記憶いたします。荒神町の荒神小学校でやりました。
#129
○菅家委員 証人は十三日から十四日の労働組合に行かれる間に相当人に会つておられますね。会つておられてこの事件の應援ではない、調査に來たのだとおつしやつておつたのでありますが、いろいろな人から事情を聞かれて、相当研究した結果工場に行かれたようにわれわれは承知しておりますが……。
#130
○田中証人 先ほども申し上げましたように十三日に廣島駅に着くなり寸暇なしにすぐ演説会を持つた状況です。廣島鉄道局、廣島電鉄、廣島管理部、檢車区と四つも持つておつたわけです。それですからいろいろな事情を聞いたといつたつてそんな時間はないわけです。
#131
○菅家委員 それではお尋ねするが、先ほど証人は新聞等で事情を知つたと証言されたが、新聞はどこで何新聞をお読みになりましたか。
#132
○田中証人 それははつきり記憶はありません。
#133
○菅家委員 読んだ新聞ははつきり覚えておらないというのですか。
#134
○田中証人 さつき申しましたように夕刊廣島だつたと記憶します。はつきりしたことは言えない。私は事情を申し上げなければわかりませんが、非常に老眼なんです。それで老眼鏡をかけなければ見えないという関係で、大見出しは読んでおりますが、小見出しは読んでおらない。
#135
○菅家委員 老眼なくても読める記事が、ちようどあなたがそこに來られた前日から続いて二日間夕刊廣島に共産党の人が書いているのです。それから労働組合の日鋼を守る鬪爭という大きな見出しで廣告が出ておりますが、これをごらんになりましたか。
#136
○田中証人 見ておりません。
#137
○菅家委員 都合の惡いのは見えない、都合のよいのは老眼鏡をかけなくても見える。弁護士をされておつてこれは應援に來たのではない、國会議員として調査に來たのだという人が、その日の夕刊で最も大切な爭議に関係する鬪爭委員会と会社が発表するところの日鋼爭議の事件報告というような記事を読まれないというようなことは、われわれとしてはのみ込めないことですが……。
#138
○田中証人 それは事実上見ておりません。見ておりませんが御不審ならば申し上げますが、私どもは会社の報告などや一般に新聞に出ておることは忙しいときには読まない。うそばちばかり言つておりますから……。
#139
○菅家委員 うそばち言うのはどちらですか。共産党の連中が書いている方がうそだとおつしやるのですか。
#140
○田中証人 それは質問ではなさそうですから……。
#141
○菅家委員 それではもう一つお尋ねしますが、夕刊廣島に老眼をかけなくても四段抜きの大きな活字で、工場管理の從業員以外の者に退去命令ということが書いてある。これは老眼をかけなくても見えるような大きな見出しで出ているが……。
#142
○田中証人 それはいつの新聞ですか。
#143
○菅家委員 十三日です。それを見ておらぬのですか。
#144
○田中証人 遺憾ながら見ておりません。
#145
○菅家委員 先ほど証人は工場に行つて自分は三分間だということを口をきわめて時間を正確に言われた。時計を見て三分間と言われたのですか。
#146
○田中証人 そうではありません。それも三分間とはつきり言つておりません。三分間くらいと言つておるはずです。
#147
○菅家委員 共産党の諸君の三分くらいではあてにならない。神山君なんか三十分もやる。大分長くやられて速記をとつておられた人が証人の演説を書いているが、先ほど述べられたことに間違いはないかどうか。もう一度念をおいておきますが、間違いありませんか。
#148
○田中証人 委員長から質問があつたような激烈な言葉は用いておりません。そのことははつきり言える。平生もそういう文句は使つておらぬですから……。
#149
○菅家委員 これ以上この証人に聞いても、老眼鏡をかけないと見えないとか、見てないとか言いますから、結局むだだと思いますので、これでやめます。
#150
○鍛冶委員長 ほかにございませんか。それでは済みました。
    ―――――――――――――
#151
○鍛冶委員長 承りますが、あなたは今電氣通信大臣とそれから郵政大臣ですか。
#152
○小澤証人 そうです。
#153
○鍛冶委員長 六月以後平市を中心とする騒擾事件及び廣島日鋼事件などのあつたことは御承知のことと存じますが、その際に警察電話が傍受されて爭議團などに始終連絡されておつたと傳えられているのですが、そういう事実があつたかどうか、またはお調べになつたことはありませんか。
#154
○小澤証人 この問題については閣議内でも、あるいはその他の人からもいろいろそういう風説が傳えられてあつたので、さつそく調査員を派遣して、その調査に当つておりまするが、まだ現在では具体的に何人がそういう電話を傍受したかという事実は一件も明瞭になつておりません。
#155
○鍛冶委員長 廣島においても、福島においても、警察で連絡しますと、すぐ爭議團の方で先手を打つていろいろのことをやつておつた事実があるのです。そのためにほとんど重要な連絡は電話を使わないで、平、福島間をオート三輪車で連絡し、もしくは内郷の間は自轉車でやるというような、まことにあわれな実情にあつたのですが、これは相当重要なことと思いますので、あなたの方で嚴重にお調べになつたものと思いますが、調べてわからぬのですか、またそこまで行きついておらぬのでしようか。
#156
○小澤証人 それはその当初からあらゆる方面で調査をいたしておりますし、またこの調査が進行中であります。しかし現在の段階におきましては、具体的に何人がいつ傍受したというような事実は少しも上つていないのであります。
#157
○鍛冶委員長 事実が上つておらぬとすると、仮定論になるのですが、われわれとしてはそういう事実があるとすれば、大へんなことであるし、またあなたの所管事項としてゆゆしき問題と考えますので、事実ありとするならば、必ず何らかの対策を立てておいでにならぬかと思つて承つたのですが、それらについては何かお考えがありませんか。
#158
○小澤証人 もしかりに調査の結果今御指摘のような事実があつたということになりますならば、もちろん電信法にもそれに対する刑事訴追の規程が明確になつておりますし、從つてそうしたものに対して嚴重に処置を講ずるつもりであります。なお技術的の対策を考えますれば、いわゆる祕話の裝置というものをしますれば全然傍受できないような措置もできるのでありますけれども、これは相当経費がいるので、予算上の措置があるから、ただちにいつから実施するということは困難な状態になつております。
#159
○鍛冶委員長 前は警察電話は警察電話だけ、特別に交換その他をやつておつたが、今日は一般のものとみな一緒になつたのですか、その実情はどういうことになつておりますか。
#160
○小澤証人 警察電話につきましては、本年から警察電話の保守及び建設は電氣通信省でやつておりまするが、從來の交換、すなわち運用は從前通り警察でやつておるのであります。從つてそういう措置でありまするが、しかし逓信部内で一つの試驗という方法がありますから、その試驗管を通じて傍受すれば、できないことはない。それならばできまするが、しかし具体的事実は今申した通りであります。
#161
○鍛冶委員長 前の独立した警察電話ならば全然関係がないから、傍受はできなかつたのですね。今日あなたの方で管理せられるようになつたために、やればやれるのですか、それはどういうわけですか。
#162
○小澤証人 いや從前の場合も同じでありまして、今言う通り、保守と建設を受特つておるのであつて、運用そのものは從來通り警察でやつております。また從來でも試驗という組織はあつたので、こちらで保守と建設を受持つたから傍受ができるというのじやなくて、從來でもやる氣ならばできるのであります。
#163
○鍛冶委員長 それから当委員会でこれらの事件を調査いたしました結果、若松の三菱廣田工場の事件、廣島日鋼事件簿大体において全逓組合がこれに関係しておる。しこうして全逓組合がその指導のもとに家族会議とか、または、家族大会を持て、そうして地域産業防衛鬪爭に入れというようなことを指令しておるのであります。この点についても、あなたの管轄下の組合のことでありまするから、かような鬪爭方針を指令しておるということは御承知になつておりましたか。
#164
○小澤証人 もちろん情報とかあるいは聞込み程度のことは当時でも聞いておりまするが、事実こういうことがあつたかどうかということは確信を持つて申し上げることはできません。
#165
○鍛冶委員長 これは全逓の指令として刷りもので出ているものなんかあるが、そういうものはごらんになつておりませんか。
#166
○小澤証人 それは私は見ておりません。見ておりませんがそれを出したらしいというような情報が入つたことは、ありますけれども、現実に刷ものとして出したような事実は覚えておりません。
#167
○鍛冶委員長 政府として管下労働組合に対して、政党の政策によつて左右され、または不当な影響を受けないようとか、また健全な経済的根拠を持ち得るストライキの中にも、純粹に政治目的のために挑発される可能性ある政治的動機があることを認識するよう組合員を教育するという、そういう何か覚書のようなものを出されたことがあるそうですが、これはいかがですか。これは何か進駐軍との協議の結果のようですが……。
#168
○小澤証人 そういう具体的な記憶はありませんけれども、およそ公務員を構成要素としておる全逓その他の組合というものは、その組合行動は当然公務員法の規則を受けるものであつて、公務員法のわく内で行動すべきものであるということは常に監視しておりまするが、それ以上の組合の自治に対しましてみずから進んで組合内部の行動をどうこうするようなことは避くべきだと存じます。
#169
○鍛冶委員長 それに違いありませんが、しかし今言つたような、不当な影響を受けたり、不当な目的のために動いては公務員としていかぬのだと思いまするから、そういうものが出る精神から考えまして、先ほど言つた家族大会を持てとか、さらに進んで地域産業防衞鬪爭へ入つて行けというような指令をしておるとすれば、この方針とすつかり相反するもののように考えますが、そういう場合があつても政府は黙つておるのですか。それはいかがですか。
#170
○小澤証人 お話のような事案がありますれば当然公務員法で罰則がありますし、さらにそれ以外の行爲でも刑法その他の特別法で制裁の方法がありまするから、いやしくもこの法に触れたという場合においては、政府といたしましては適当のしかも嚴重な手続をとるということは申し上げるまでもないと思います。
#171
○鍛冶委員長 してみれば先ほど言つたような指令は――刷ものにしたものを持つてきてもいいのですが、それにすつかり抵触するもののように考えますので、これは十分政府として事実を調べ、相当の手を打つてもらわなければならぬものと考えます。それで今日あなたの御意見を聞いたわけです。
#172
○小澤証人 それは今申し上げた通り、公務員法の罰則その他刑法上の犯罪行爲であるということになりますれば、郵政省自体が犯罪を捜査檢挙するのでありませんので、ただそういう告発とかあるいは告訴とかいうような手続は、もし具体的事実があれば嚴重にやりますけれども、今申し上げた通り具体的事情をまだキヤツチしておりませんから、現在まではそういうことをいたしておりません。しかしながら今後いやしくも違法行爲があるという場合には仮借なくそうした手続をやるつもりです。
#173
○鍛冶委員長 次に廣島日鋼事件に関しましてその報道についてたいへん事実が曲歪されて報道せられ、しかもニユース等で違つた放送が出ておるようであります。かようなことがあると政府としてこれらに対して取締りの方法がないのですか。またあればそういうことはどうしたらいいとお考えになつておりますか。
#174
○小澤証人 この場合におけるひとつの電信法の規定があります。廣島事件でそうした放送があつたということは情報として承りました。しかしこの電信法の違反事件になるのには、いわゆる公安を害する目的をもつて虚僞のニユースを放送したという場合に該当しますので、從つてその事件がはたしてそういう目的でやつたかどうかという点がはつきりいたしませんので、具体的措置はとれません。しかし來るべき臨時國会におきまして放送法案なり電波法案を出そうと思つておるのでありますが、その際におきましては、そうした虚僞のニユースが出たような場合には、利害関係人はこれを取消したりあるいはみずから進んでそれを釈明する機会を與えられるような放送法案を目下考究中であります。これが出ますればおそらくそうした点がよほど緩和されるのじやないかと思います。
#175
○鍛冶委員長 廣島の日鋼事件につきましては、事実を調べましたところ重傷者もありません、もちろん死者はありません。軽傷者五十何名あつたそうですが、それを死者二名、重傷者九名、軽傷者三百何十名などという、まつたくどこから出てくるかわけのわからぬことが全國に放送せられておつた事実があるのでして、これらの事実は間違いないことでありまするから、十分ひとつ政府において対策を立てていただきたいと考えて、所管大臣としてのお考えを承りたくお願いしたわけです。
#176
○小澤証人 そういう事実は十分了承いたしましたから、材料等を貸していただきまして適当な処置をします。
#177
○鍛冶委員長 それから今申しましたが、これは全逓靜岡速報というのです。一九四九年八月五日ですが、これはこれだけではありません、全図至る処でやつておるようですが、これを読んでみましても、地方権力及び中小企業に反政府鬪爭を起させることが最も有効であるとか、首切りが來たら局長から返上させるようにせいとか、受取り拒否の家族組織をつくれ、こういうような、まつたく公務員をして政治鬪爭に導くことを指導しておると認めざるを得ないのです。
#178
○小澤証人 こういうような事実も所々方々から情報としては入つております。しかし共産党としてはこれくらいのことは普通のつもりでやつておるから。
#179
○鍛冶委員長 先ほど言つたように、政府の労働組合に対する指導方針並びに行政方針とまつたく相反するものがあると心得ますので、その点政府としての所見を伺いたく証人に出てもらつたわけであります。その程度であとはよろしうございます。――高木君。
#180
○高木(松)委員 先ほど証人から述べられた傍受の事実をはつきりつかんでない、こういう所見でしたが、これは單に犯人をつかんでないということだけで、たとえば平の事件で、平から福島に電話をする、そうするとその電話の内容がただちに警察署前で演説になつて現われる。また福島を通じて仙台に警官の増員を要請すれば、それがただちにまた現われておるというような、この種の事実が所々方々にあるので、送話と受話とが何人かによつて傍受されておるという、ただ犯人はわからないが、そういう傍受されておる事実があることだけは、主務大臣として一切を調査をしておわかりになつておるのではありませんか。
#181
○小澤証人 それと同じような事実は私は耳にしております。しかしながらそれは私自身が身をもつて体驗したわけではないのでありまして、その人の言うことを信ずることがいいか、あるいは信じただけでただちに措置をとるというわけには参りません。いやしくも措置をとる場合におきましては、それが眞実であるかどうかということを確信と証拠を持つてやらなければならぬので、現在やつておらないのであります。
#182
○鍛冶委員長 ではほかにございませんか。
#183
○神山委員 簡單にしますが、今の傍受の事実を高木君が一方的に言うので、一應私指摘しておきたいのは、全逓の交換手がやつたということを一部の人たちが盛んに言つておりますが、そういう事実が上つておりますか。
#184
○小澤証人 それは先ほど言つた通りそういう事実は上つておりませんが、いろいろの点を想像すれば、そういうことも想像できないことはないと思います。
#185
○神山委員 今度はひとつあなたに聞いておきたいのですが、廣島の日鋼の場合にも電話の傍受がやられておるのだが、それは守衛所で電話をかけている、それを組合員が聞いていたという証言もあつたのですが、こういうことをあなた聞いておるですか。
#186
○鍛冶委員長 いやそうじやない。あなたの言うことは違う。
#187
○神山委員 いや私はその事実を聞いておるのです。
#188
○小澤証人 私はそういう事実は知りません。
#189
○神山委員 それで一言証人に訂正してもらいたいのですが、先ほどの全逓特報、これはあなたは共産党ならあつたでしようとおつしやつたのですが、あなたは非常に事実を尊重される方なんで、この点非常に敬意を拂つているが、今あなたの言つたのは全逓の特報であつて、共産党の特報ではないのですが……。
#190
○小澤証人 全逓のうちの共産党です。
#191
○神山委員 それは小澤君、君の主観的な判断であつて、全逓特報そのものは共産党が出したのではなくて、あなたの言う全逓の共産党なのかもしれないが、やはり組合の機関として出しているということをあなたはその目で見たか、それはどうなんだ。共産党と書いてあつたか。
#192
○小澤証人 これは全逓と書いてありますが、私はこれだけを言つたのではなくて、その他にもこれに類似したものはたくさんあるから、共産党のやつたものとしてはあまり珍しくない。これは全逓です。
#193
○神山委員 それが全逓だということをあなたが認めてくだされば、それでよろしい。
#194
○鍛冶委員長 それでは済みました。
    ―――――――――――――――
#195
○鍛冶委員長 鈴木さんに証人として承りますことは、労働大臣として事実取扱われたこと、及び経驗されたことを承るのですが、政策その他についての御意見になれば國務大臣として承つてもよろしゆうございますから、そのつもりで承ります。
#196
○神山委員 今の委員長の発言は奇つ怪だと思うのです。それはこの前池田大藏大臣のときにそういう取扱いをしたことがあるけれども、そのときには税制の改革という大きな問題があつたので、私たちもこれを了承した。しかし先ほども私が指摘しましたように、鈴木労働大臣に対して聞くべきことも、今回われわれが調べた四つの件に関して集中して行くのが建前であろうと思います。そうすれば鈴木君が知つておる事実そのものを聞くのが中心であつて、きようここで鈴木君から政府委員としての意見を聞く必要はないと思います。從つて証人として呼んであるわけでもありましようから、問題を限定して尋問されることが妥当である。政府委員としての意見は別の機会に承ろう、それは私がさつき言つたようにされたらいいと思うので、今のには私は反対だ。
#197
○鍛冶委員長 それを本則としてやりますが、政策にわたるからといつて証人が困ると言われたら困るから、その前打ちをやつておいたんで、もちろんそれを中心にしてやりますが、そういう場合があればということです。
 では承りますが、連合軍総司令部と協議の結果、労働省で定めた労働組合の組織と運営に関する協力と勧告というものを出されたということでありますが、さような事実はありますか。
#198
○鈴木証人 明確に日柄まで覚えておりませんが、七月ごろそういう通牒があつたと記憶しております。
#199
○鍛冶委員長 七月のいつごろでしたろう、大体……。
#200
○鈴木証人 今申します通り日柄は覚えておりませんが、大体中旬ごろであつたろうと思つております。
#201
○鍛冶委員長 その勧告の中に、政党によつて組合の政策が左右されたり、あるいは不当な影響を受けたりすることを阻止すること。二は、健全な経済的根拠を持ち得るストライキの中にも純粹に政治的目的のために挑発される可能性あり、政治的動機があることを認識するよう組合員を教育すべし、こういう意味のものであつたと聞きますが、その通りでありましようか。
#202
○鈴木証人 そのほかの諸般の、ことしの春の國会を通つたあの労働関係の改正法の敷衍実施を中心とする幾つかのケースはあげてありましたが、その中に今指摘された二つの点があつたと記憶しております。
#203
○鍛冶委員長 ところで今当委員会で調べております國電スト以來平市をめぐる福島縣下の騒擾事件あるいは廣島日鋼爭議事件等を鬪べてみますると、労働組合が特定の政党によつて組合の政策が左右されており、また不当な影響を受けるものがあると考える点が多々あるのでありまするが、これらについてあなたの方でお調べになつたことはございませんか。
#204
○鈴木証人 各都道府件にそういつたものの調査、それから情報の收集に当る一應の機関はありますが、将來にわたつてはこの拡充を計画しておりますけれども、現在までの機能におきましては必ずしも十分でないものがありまして、今あげられました点につきましても、労働省の直後の出先機関をもつて出向いて行つて調査に当るというふうな場合はほとんどなかつたと思います。たとえば縣なりあるいは國警なり、檢察廳なりの同じ政府または地方自治体の関係の方面からの情報の收集というようなことはやつておりましたけれども、直接的にそういつた問題を一つ一つ労働省で調べたというふうなことは少かつたと思います。
#205
○鍛冶委員長 なおこれらの事件において、最初は経済的に根拠を持つたストライキであつたのですが、それが次第に純粹な政治的目的のために挑発されたり、また放流的動機をもつて大きくなつたということが十分現われておりまするが、こういうことのないように、組合員が十分認識するよう教育する何か方法をとつておいでになりましたでしようか。
#206
○鈴木証人 その問題につきましては今も委員長から御指摘の通り、主として労働省といたしましては、教育の面を通じて一般の組合員、及び組合の指導者たちの民主的な考え方と、運動の方法を確立して行くことが根本の方針でありまして、御承知のようにこの春の組合法もそういつた方向に打つております。從つてあの以前におきまして、幾つかの通牒その他によつてこういつた教育を行つておりましたけれども、この春の労働関係法の改正以後におきましては、さらに活発に御指摘のような点に対して教育啓蒙の運動を進めるべきであるという考えのもとに、年間を通じての計画を立て、文書によりあるいは地方へ出向いて行き、また実際にこういつた問題の幹部を中央に呼んで來ることもありまするし、いろいろな方法によつてそういつた運動を展開しております。最初に御指摘になつた通牒も、そういつた年間計画の一環として行われたのであります。
#207
○鍛冶委員長 なおこの通牒が出ぬ先でも今おつしやつたように労働組合法の改正にあたつて暴力的な行爲は一切これを否定しておるはずではありませんか。それが暴力的な政治鬪爭に突入して行つたという事実も認められるのであります。労働省ではこういう事実はお調べになつておりましたでしようか。またお調べになつて、そういう事実があつたとすれば、どういう対策をお持ちになつておるか、その点を承りたい。
#208
○鈴木証人 暴力の行爲は、原則として今の組合法では第一條に示されておりまするが、いわゆる刑法上のいろいろな罪を免れることのできる正当な労働運動として扱われない、つまり正当性を認められない暴力的行爲は、これは前の組合法によつても全体を貫く精神でありましたけれども、この春改正された組合法においては、改正の重要な一点はそこに置かれたのでありまして、前の組合法よりもこの点は明確にされておりますし、以後の説明においても明確に國会その他においてその見解は披瀝して來ておるはずであります。但しこれを実際上法的に措置する場合には、主として檢察当局の現地における判断も加わつて來るのでありまして、これに対しましては暴力的行爲は正当性を認めないという点につきましては、檢務局長の通牒も出ておるわけでありまして、この通牒の内容につきましては、労働省の考え方は当時十分打合せたのでありまして、同じであります。今度あげられました幾つかの事件にそういつた暴力的な行爲というものはあつたかどうかという御質問に対しまして最初の御質問と重複いたしますけれども、労働省といたしましては、その都度一々現地に労働省の直接の人を派遣して、現地においてそれを一々調査するという機能を將來はともかく当時持つておりませんでした。ただ檢察廳当局、地方府縣、あるいはその他から集まつて來るところの、また政府の他の機関が收集したところの情報を総合いたしますると、この場合には明らかに今申しましたような暴力的行爲であつて、正当なものとは認められないという場合が多々あるのではないかという疑いは当時から持つておりましたし、今日でも持つております。ただこの制定にあたりましては、最初も申しましたように、檢察廳その他の現地の調査にまつべきものであると考えております。労働省の行政といたしましては、そういつたものが現われ、そういつた判定が下された場合におきましては、今申しましたように、労働組合法でうたつておるところの正当な行爲として刑法上の幾つかの罪を免れることができるというあの恩恵を受けなくなることは当然であると考えます。
#209
○鍛冶委員長 この調べました事件については、國電ストについても、福島縣下の騒擾事件も、廣島の騒擾事件も、すべて檢察当局でいろいろ調査ができておるはずと考えまするので、その点はわれわれとして、それらの調査報告を求められて労働省としてとらなければならぬ手段をとつていただくべきものだ、かように考えておりますが、それではまだとつておりませんですね。
#210
○鈴木証人 御承知のように労働法におきましては、今申しましたような事態が出現いたしましたときに、法でうたわれておる限度は、労働関係法において規定するところの幾多の保護を受けないことを明確にうたつておるというのが限度なのでありまして、しかる場合にはどの法律によつてどの罪の制定が下されるかという問題は、檢察廳の問題なのでございまして、この問題は主として檢察方面の機能にまかせるべきであると思います。労働省はその場合に不当なる行爲、正当性を欠く行爲として労働組合法その他の保護を受けることができないという事態に至つてもやむを得ないという判定を明らかにすることはできまするし、同時に一方においてむしろこれよりも一つの事態を起さないための運動として、さつきも申しましたように、強力な教育啓蒙連動を今後一層活発に展開するということも考えております。
#211
○鍛冶委員長 なおこれらの問題を調査しました結果、廣島なら廣島の日鋼で爭議が起つたのですが、日鋼の労働組合だけの爭議ではなくなつて、いわゆる地域人民鬪爭という名前で、各種の労働組合等がこれに加わつておる事実もあるのでありまするが、それらの点についても調査ができておれば何ですが、できておらぬとすれば、十分調査せられて、しかるべき処置に出られんことを願いたいものだ、かように考えて出ていただいたわけであります。
#212
○鈴木証人 承知いたしました。
#213
○鍛冶委員長 その次はこれらの事件を調べました結果、地方労働委員会に自主性または権威がなくて、爭議解決の際に、労資双方から信頼されていないような事実があるように見受けられるのでありますが、そのような事実はお認めになりませんでしようか。またそういうことがあるとすれば、政府はどういう対策をとつておられるか、またとろうとせられるか、この点を承りたいと思います。
#214
○鈴木証人 全般的の問題といたしましては、改正以前の労働組合法によつて設けられた中央地方の労働委員会そのものも十分に歴史的の使命を廣い意味では果して來たと考えております。ただ地方の委員会におきまして、全部ではありませんけれども、ある場合にその機能において十分満足できないものがあり、また人的要素においても完璧ではなかつたというふうな事実はときにあつたようにも思います。今これらの列挙された地域、もしくは事件について、だれが、どの委員会がというまで記憶しておりませんけれども、全般的として、委員長が御指摘のような傾向をある点首肯いたします。労働省といたしましては、すでにこれらの事件自体をまたずして、労働委員会の強化という問題は考えておつたのでありまして、この春の労働関係法においては、特にこの労働委員会の強化ということにつきましては、御承知のように、特別力を入れて改正しておるはずであります。この改正の線に沿つて、予算その他実質的な面をも加えまして、労働委員会、特に地方の労働委員会を急速に強化して行くという方針は現任考えておるのでありまして、それらの点は予算的措置というふうにまで考えを進めておる現状であります。
#215
○鍛冶委員長 次にいわゆる九原則の実施にあたつて、政府においては行政整理をなし、また民間企業においては企業の整理等は行われておると考えておるのであります。これを各労働爭議の人たちは、口をそろえて、吉田内閣の無能から起つて來ておるんだ、そしてこれらに対する失業対策及び労働対策等を一つもやらないから、かような爭議が免れぬと言う人がおるのですが、それに対して労働大臣として、どういうお考えをお持ちになつておるか承りたいと思います。
#216
○鈴木証人 九原則が出た以上は、これは絶対的のものであるということは申すまでもありませんが、九原則自体日本の実情とまつたく離れて卒然として出て來たのでなくして、日本の必然的な過程、現在立つておるところの事態に対処する最も妥当にして必要な方向を決定したというのでありまして、なにも九原則が日本の実情と全然離れて出て來たものとは私たちは考えておりません。この原則を実行する以上は、ここに廣い意味の國民経済の組替えと、雇用の配置轉換は避け得られない必然的な問題として起きて來るのもまた当然でありまして、これをやらなくして、そのまま雇用の水ぶくれと、從來のインフレの方向をたどつて行く、そのままの方式を今年も來年もさ來年も続けるという方向をとつて行くならば、むしろほかの意味において、日本の経済は根本からくつがえつてしまうと私たちは考えざるを得ないのであります。吉田内閣が弱体なるがゆえにというよりは、この問題を処理し得るところの強力な内閣は吉田内閣以外にないと私は思つておします。そして問題はそれに附随して起きて來るところのいまの雇用の状態の変化、それに対應する失業対策の問題でありますけれども、私どもの考えでは、今度のような戰後の失業問題は、單なる狹い意味の失業対策、たとえば今日労働省が緊急失業対策法に基いて実行しておるところのあの失業対策もむろん必要でありますけれども、それのみで措置し得ないことはもちろんでありまして、対策の中心はむしる國民経済全体をにらみ合せての新しい雇用の配置轉換でなければならないと考えてる。そうである以上、私たちの考え方は、現内閣の一般的な財政経済政策、特にその中の重要な一部を占めるところの見返り資金を重要な部門に集中的に投入して、新しい國民経済の活動面を開拓して、雇用面を開いて行くといつた意味をも含んだところの全体の経済政策の中に現在の失業対策の本体はあるのでありまして、現内閣の失業対策が成功するかしないかは一にかかつて全体の財政経済政策がわれわれの言う通り成功するかどうかという問題にかかつておると思うのであります。いろいろの角度からの幾多の批評はあるでありましようけれども、しかしこの戰後の大きな國民経済の組替えと失業の問題とは、半年や一年をもつてしてでき上る問題ではないのであつて、少くも二年あるいは二年半くらいの計画をもつて措置されて行かなければならない。そのことの成否と功績は、靜かに二年ないし二年半吉田内閣がいかなる方法において経済政策をまとめ上げ、また失業問題を処置するかによつて判定していただきたいと思うのであります。大体においてそういつた方面が中心であると同時に、もう一つはどの図でも失業対策としていつでも直接的な方法として取上げられるのは失業保險の問題であります。現内閣におきましても、この問題は大きな問題としてさいわいに失業保險の経理は約二百億円くらい、政府の資金とともに合せれば、そのくらいのものを向けておる現状でありまして、三十万ないし四十万、必要によつては七十万人くらいの失業者を失業保險によつてある段階において支えて行くということは可能なのであります。しかしながらむろんこれはある段階においてであります。一定の、たとえば半年の失業保險の保險料を受取る期が過ぎたといたしますればまた措置しなければならない。これは今申しました全体の雇傭力の上昇という問題とにらみ合せて、一つの中間的な方法としてこの失業保險を強力に利用して行くという考え方を持つております。
 もう一つはよく言われるところの失業対策であります。狹義の失業対策であつて、都会あたりを中心として出て來るところの日傭労働者、あえて都会のみではありませんけれども、そういつた人たちをも含めたところの切実にきようあすの生活に困る、しかも保險、ももらえないという人たちに対してどうするかという問題、これに対処するのがいわゆる狹い意味の失業対策でありまして、今日まではこの問題は予算の関係等で十分に行われておりませんでしたけれども、この臨時国会において補正予算をも提出して、事態に即應して行くという考え方を持つておるのであります。
 もう一度繰返して申しますると、以上申しました三つの主たる方法、ほかにもたくさんあるのであります。たとえば職業補導の問題あるいは日傭者の失業保險をも今年の暮から開始することにすでにこの前の國会で決定して、その準備を整えておる。いろいろあるのでありますが、主たる方法は今申しました三つの方法であります。この三つが強力に組合員されて行きますれば、それは現在の多難な條件のもとにおいての日本の経済の再建であり、これに伴つて起きて來るところの失業の問題でありますから、容易なものではない。むやみに樂観は許されないということは一方言えますけれども、一部が言うように混乱と行きどころがないようなそんな状態ではないのでありまして、どうぞ全般的なわれわれの計画と政策に信頼していただきたいと思います。
#217
○鍛冶委員長 ほかに何かありますか。
#218
○神山委員 証人にお尋ねしますが、今問題になつている事件の中の廣島日鋼の場合に、一月以降遅配欠配に賃金がなつておるのですが、これはあなたからお考えになつて正当なことでしようか。それとも問題があるでしようか。
#219
○鈴木証人 その問題の具体的な推移につきましては、私自身今ここには材料を持つておりません。
#220
○神山委員 あなたは知らないですか。知らなければ一般的に聞きますが、日鋼の場合には一月以降賃金の遅配欠配が非常に労働者にとつて重荷になつておる。これはあなた方が見て正当な行爲ですか。一般的にも具体的にも……。
#221
○鈴木証人 賃金の遅配欠配は原則としてこれは避けるべきであるということは、すでに國会においてもしばしばその根本方針を申し上げた通りであります。細目に至りましては、そのケースケースの実情に應じて、妥当な考えで判定して参るべきだと思います。
#222
○神山委員 こういうことが全國にわたつてあるのですが、これに対してあなた方は適当な措置をとられたでしようか。
#223
○鈴木証人 この問題につきましては、すでに通牒も発し、また労働基準法の面からの監督の方式をも明らかにして、それらの点につきましても委曲を盡して、前の國会において十分労働委員会その他で申し上げた通りであります。
#224
○神山委員 あなたが十分それをおつしやつたにもかかわらず、実際に行われないから聞いておるのです。こういう事実があることを認めますか。認めませんか。――委員長答えてもらいたい。
#225
○鍛冶委員長 おわかりになりますか。今の神山君の質問は……。
#226
○鈴木証人 全國的にそういう問題が起きていないというようなことは考えておらないのであります。さつき申しました通り、相当起きておることを認めております。御指摘の点につきましては、今ここに明確な資料を持つておりませんということを御答弁申し上げたのであります。
#227
○神山委員 明確な資料を持つていないのはけつこうですが、こういう事実があつた場合にどういう態度をとるか、それを聞きたい。
#228
○鈴木証人 その実情に應じて適当な措置をとります。
#229
○神山委員 なかなか答弁がうまくなつたが……。
 それから労働委員会の役割が弱くなつたというようなことをあなたも認めておられるのだが、労働委員会の役割を小さくするような原因はどこから起つて來るか。これに対して労働省に責任がないか。こういう点をお考えになつたことはありませんか。
#230
○鈴木証人 御質問の意味がどこを指しておるのかわかりませんが、もう一度……。
#231
○神山委員 それではもう少し具体的にお聞きしましよう。各地に職権委嘱、その他によつて労働委員会の下からの選出がはばまれておる事実があるのでありますが、こういう事実についての見解はどうですか。
#232
○鈴木証人 その問題につきましては檢討し、適宜な実情に沿うような手加減その他は労政当局からしておるはずであります。根本的の問題はそういうふうに措置しておりますけれども、なおどういうふうに労政当局がその問題を細目にわたつてしておるかという問題は、労政当局から別の適当な機会に御説明をいたします。
#233
○神山委員 もう一つお尋ねいたしますが、労働法規の解釈基準を労働省でお出しになりましたね。これが中労委と意見が違つておる点について、あなたの見解を聞きたい。
    〔発言する者多し〕
#234
○鈴木証人 最初あなた自身からなるべく質問項目について議論を進めるということを提議されたのでありますが、そういうような問題については、その他の委員会もありますからして、私たちはその席上において誠意をもつてお答えいたします。
#235
○神山委員 こういう発言は他の証人だつたら委員長がぴしりとやるはずだが、鈴木君の場合には許されるのか。尋問の第五項に何者が労働委員会を弱めたかという問題が出ておるじやない、か。出ておるから職権委嘱の問題を聞くのだ。現に中労委の職権を弱めておるのは労働省そのものじやないか。
#236
○鍛冶委員長 君のような断定的の質問をして答えられるわけがないじやなか。
#237
○鈴木証人 職権委嘱の問題については行き過ぎた点、その他があるならば、これを是正するという方針のもとに適宜な措置をとられるはずであるということをお答えした、その通りであります。
#238
○神山委員 それじや方面をかえて聞きますが、先日日経連が経営主に対して非協力なものを首切るという趣旨のことを傘下の加盟團体に対して発表しておる。これに対する見解はどうか。
#239
○鍛冶委員長 これに関係があるのか。
#240
○神山委員 関係がある。
    〔発言する者多し〕
#241
○神山委員 証人が答えられないなら答えられないでよろしい。それじやもう一つ質問する。最後に委員長の質問に対して証人はこういうことを言つた。九原則が來たときに、これは一つの日本経済に対する必然的のものだと言われた。これはほんとうにそうですか。
#242
○鈴木証人 その通りであります。
#243
○神山委員 そうするともう一つお尋ねしたい。あなたも民主自由党から選ばれた労働大臣だ、民主自由党が選挙のときに掲げた政策は、ドツジ・ラインに乘つてるか乘つてないかどうだ。
    〔発言する者多し〕
#244
○鈴木証人 時間と方法論で、着々として公約は実現されつつあるとお考え願いたいと思います。
#245
○神山委員 よろしい。九原則に反して、九原則を無視して一方的に公約して、その公約は全部はげておることは全世界が認めておることなんだ。それはあえて聞く必要はない。
 そこで委員長に聞きたいことは、鈴木君の持つておる書類の中に尋問事項がある。これは、どういう手続きで鈴木君がそれを手に入れたか。
#246
○鍛冶委員長 どういうことを聞くということをみなに公表したから、その後で渡した。
#247
○神山委員 こういうことは今までやつておりますか。
#248
○鍛冶委員長 みんなに公表した後では、だれに見せてもいいと思う。もつとも要求もせぬのにむりにはやりません。
#249
○神山委員 そういう不公平なことがあるか、鈴木君の答弁は上出來だが、民自党のレコードもよく入つておる。それは今まで打合せて尋問事項を手に持つてやつてるんで、それによつて回答をやつてる。これからもそういうことをやりますね。
#250
○鍛冶委員長 公表したる後には差支えないと思います。ただ刷つたものがなかつたら渡しませんよ。
#251
○神山委員 うまいことを言つて逃げるが、鈴木君は一方に尋問事項を持つて、一方的に答弁のレコードを持つて答弁したごの証人の証言には、信憑性がないことははつきりした。
    〔発言する者多し〕
#252
○鍛冶委員長 それでは済みました。御苦労さま。
    ―――――――――――――
#253
○鍛冶委員長 春日正一さんですね。
#254
○春日証人 そうです。
#255
○鍛冶委員長 あらかじめ文書をもつて御了承を得ておきました通り、証人として証言を求めることに決定いたしましたからさよう御了承を願います。
 それでは、春日さんには日鋼廣島製作所爭議事件について証言を求むることといたします。
 証言を求める前に、証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証書等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。
 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または、証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師、歯科医師、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教人または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚僞の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのではあります。一應このことを御承知になつておいていただきしたいと思います。
 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。
    〔証人春日正一君宣誓〕
#256
○鍛冶委員長 署名捺印を願います。
    〔証人宣誓書に署名捺印〕
#257
○鍛冶委員長 あなたは共産党所属衆議院議員でありますね。
#258
○春日証人 そうです。
#259
○鍛冶委員長 あなたは日鋼廣島製作所の労働爭議にあたつて、應援に出かけられたということでありまするが、そういう事実はございましたか。
#260
○春日証人 應援の目的のために特に出かけたということはありません。これははつきり言つておきます。
#261
○鍛冶委員長 それではどういうときに行かれたのですか。
#262
○春日証人 七月三日に私廣島に行つたついでに、あの爭議にちよつと寄つています。
#263
○鍛冶委員長 三日だけですか。
#264
○春日証人 それだけです。その後は國会調査團として七月十三日及び十四日に行つております。
#265
○鍛冶委員長 爭議中には行かれなかつたのですか。
#266
○春日証人 行つておりません。
#267
○鍛冶委員長 間違いありませんか。
#268
○春日証人 間違いありません。
#269
○鍛冶委員長 爭議中に日鋼廣島製作所の鈴木総務部長と廣島駅で会う約束をして、行つたけれども、行き違いがあつて会えなかつたということを聞いておりますが……。
#270
○春日証人 そういう事実はありません。
#271
○鍛冶委員長 間違いないですか。
#272
○春日証人 間違いないです。
#273
○鍛冶委員長 そうするとだれかあなたの名前をかたつて会見を申込んだことになる。鈴木総務部長ははつきり証言しておりますが……。
#274
○春日証人 聞かれない余分なことだけれども、あの板垣という男が、ここで春日正一が廣島へ來たということを言つておる。それで私はあの男と対決したいと思つておつたくらいです。
#275
○鍛冶委員長 鈴木総務部長ですよ。
#276
○春日証人 だから鈴木総務部長という名前は私初めて聞いた。私が國会調査團で行つているときにも、会社側は出て來ないのだから会つてないのだ。
#277
○鍛冶委員長 そうすると行きもせぬのなら、爭議團に対する演説などもやられたことはありませんか。
#278
○春日証人 もちろんそうです。
#279
○鍛冶委員長 それではこの爭議について何か本部でなり、それから縣の委員会になりを指導するとか、そういうような役割を演じられたことはありませんか。
#280
○春日証人 ありません。
#281
○鍛冶委員長 そうすると、結局七月三日だと、デモはやつて歩いたようだが、会社としての直接の爭議はもう済んでおつた……。
#282
○春日証人 あの爭議の終つたあとですが、大体團体交渉に入つておつて終熄されておる。もう第二組合ができて……。
#283
○鍛冶委員長 その後もまた騒いでおつたんだが、あなたの名前をかたつて、だれか行つた者がないか。
#284
○春日証人 ぼくはあの新聞記事を見て、実はけしからんと思つているのです。
#285
○鍛冶委員長 板垣だけではありません。ほかの証人も、あなたが十六日にも松石寮でいろいろ指導的演説をやられたということもはつきり言つておるのです。
#286
○春日証人 そういうばかなことはないと思う。十六日、十七日、こつちに私はずつとおつた。(「アリバイが立つか。」と呼ぶ者あり)アリバイは立つている。ぼくは日鋼の問題が新聞に出てから、國警、檢察廳、それから法務廳に抗議に行つている。あの直後だ。何日だか覚えていないが……。
#287
○鍛冶委員長 これは一人や二人の証言じやないのですよ。あなたを見ているのは……。
#288
○春日証人 いえ、けつこう、どうあろうと私はけつこうですよ。
#289
○鍛冶委員長 停車場で会うと言われて、そこであわてて行つたところがおらなんだと、こういうのだ。それでこれは時間が食い違いになつたと思つて、また行つたけれども、またおらなかつた。何ゆえにあなたから呼ばれたのかわからぬと、そうまではつきり言われているのです。これはついこの間廣島で聞いて來たのです。
#290
○春日証人 確かに何かの間違いだと思う。私はこつちにおつたのですから……。
#291
○鍛冶委員長 それは十六、七日の話です。
#292
○春日証人 そのころ私は檢察廳、國警本部に抗議に行つている。だからそれはやぶから棒で、けしからんやつだから、対決してやろうかと思つていた。
#293
○鍛冶委員長 どうもずいぶんおかしいことがあるね。
#294
○春日証人 実際おかしいのだ。あれ以來ぼくは腹が立つている。
#295
○鍛冶委員長 君らも読んだろう。警察の報告にもあつたろう。
#296
○春日証人 それはいい加減なデマを言つているのだ。それはうわさとなつているのじやないですか。うわさというなら、私はどうもしようがない。
#297
○鍛冶委員長 それではこれはあとで速記録を調べてみることにいたしますが、当時六月十一日以後二十日ぐらいまであなたはどこにおいででしたか。
#298
○春日証人 大体私は自分の家が川崎にありますから、党の本部に行つたり、神奈川縣委員会に行つたりしておりました。
#299
○鍛冶委員長 廣島の方には絶対に行かれなかつたですか。
#300
○春日証人 行きません。
#301
○鍛冶委員長 ほかの方にも行かれなかつたですか。
#302
○春日証人 行きません。
#303
○鍛冶委員長 それではあなたは本部におつて、この爭議を指導せられたこともございませんでしたね。
#304
○春日証人 私はそういう立場にないから、存じておりません。
#305
○鍛冶委員長 あなたが直接やられぬでも、党本部からこれを指導したという事実も御承知ありませんか。
#306
○春日証人 知らぬですね。
#307
○鍛冶委員長 そういう事実もないのですか。
#308
○春日証人 あるかないか、私はタツチしていないし、そういう立場にないから、そういうことは知らぬです。
#309
○鍛冶委員長 六月三十日に、党活動指針として、日本共産党中央委員会宣傳教育部からこういうものが出ておりますが、これは御承知ありませんか。「廣島日鋼事件に際し二千五百の縣下の警察官が日鋼彈圧に集中された。街にはどろ棒とならず者が横行した。街のおかみさん達は交番に御巡りよこせと要求して警察におしかけている。これほど見事な共同鬪爭はない。だから一万の大衆の前に市警察局長は謝罪せざるを得ないのだ。人民の要求が出されれば出されるほど、保守反動はとまどいし、打つ手がなくなり、手をあげざるを得なくなる。一つ一つの鬪爭形態は別に高度でも、鋭くなくともよい。それぞれの段階を持ちながら、わが党に指導されて、保守反動を奔命につかれさせることにある。」こういう鬪爭方針が出ておりますが、これは御承知ありませんか。
#310
○春日証人 さあ、私はそうやつて読み聞かせられても、その通りであるともないとも、何とも言えぬですな。
#311
○鍛冶委員長 党活動指針というものは、そう祕密にすべきものでもないでしよう。
#312
○春日証人 祕密にすべきものでもないと思います。
#313
○鍛冶委員長 そういうことがあつたことは間違いないはずだが、それも覚えないですか。
#314
○春日証人 活動指針というものはあるかもしれません。
#315
○鍛冶委員長 一九四九年六月三十日、このように日鋼事件に対してたいへん有力な指導方針が出ているのですが、御承知ありませんか。
#316
○春日証人 それは知らぬですな。
#317
○鍛冶委員長 それではあなたの方は間違いませんね――あとでこちらの方で速記録をよく調べて、食い違いの点はわれわれの方で調べます。
#318
○神山委員 それではもう大体これは明らかなことですが、春日君が現地に僞名して行つて、爭議を指導された、こういうことを言つた人がいるな、うわさかなにかで……。
#319
○鍛冶委員長 いや、そんなことはない。ほんとうにみな來たと言つているのだ。
#320
○神山委員 それで春日君にお尋ねする。あなたも昔非合法時代には、僞名とかペンネームを使つたことがあると思いますけれども、解放以後そんな僞名を使つたことはないでしよう。
#321
○春日証人 私は非合法のころからでも、僞名を使うひまがなかつた。
#322
○神山委員 その次に、ここでもやはり証言の中に、これはうわさと言われておりますけれども、党の本部に廣島事件の指導部ができた。この顔ぶれは春日正一君、今日証人になつた田中堯平君、土橋一吉君、聽濤君、もう一人伊藤律君が入つておるのですが、こういうものがあることを党の中でうわさでもお聞きになつたことがありますか。
#323
○春日証人 かつて聞いたことがないですな。
#324
○神山委員 そのくらいでいいです。
#325
○鍛冶委員長 では済みました。御苦労さんです。暫時休憩いたします。
    午後四時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時五分開議
#326
○鍛冶委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 樋貝詮三さん、あらかじめ文書をもつて御了承を得ておきました通り、証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。
 それでは國電スト問題、平市をめぐる福島騒擾事件、及び日鋼廣島事件等について証言を求めることといたします。
 証言を求める前に、証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相成つております。
 宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科、医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて黙祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁固または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚僞の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのではあります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。
 では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。
    〔証人樋貝詮三君宣誓〕
#327
○鍛冶委員長 署名捺印を願います。
    〔証人宣誓書に署名捺印〕
#328
○鍛冶委員長 あなたは國務大臣として、どういう事務をお取扱いになつておりますか。
#329
○樋貝証人 私は、総理大臣の代理という関係において、警察の方を担当しております。
#330
○鍛冶委員長 國電スト事件、平市を中心とする福島騒擾事件、及び廣島日鋼爭議事件等において、爭議團の行動を阻止することのできない実情にあつたようでありまするが、この点について、警察力に弱いと思われる点はございませんでしたか。
#331
○樋貝証人 私が今の警察法におきまして考えていることと、現在の事情とはよほど事情がかわつていると思います。それは日本の警察を明るくしなければならない、民主的にしなければならぬということは考えておりますが、そのために自治体が皆独立する。政府は自治体の警察に対しては絶対に干渉すべからずというような主義で現行法ができていると思います。從つて情誼的に助け合うというようなことは別といたしまして、法律上は相助け、相助けられることがないような建前になつております。そこで、それがはたして日本のためによいであろうかどうかということは考究しなければならぬと思いますが、今度は次々に起る事件に対しまして、非常に事柄が集團的になり、場合によつては凶暴的になつて來た現状にあるのでありまして、事情は大分かわつておるから、初めの通りでよいか惡いかというと問題があると思います。その点については後刻申し上げたいと思います。
#332
○鍛冶委員長 今ちよつとおつしやいましたが、われわれの見るところでは、國家地方警察と自治体警察との連絡のうまく行かなかつた点が非常に見受けられるのであります。さらにそれよりか政府とこれら警察との連絡もどの程度になつておるのか、それらについて遺憾の点がなかつたかどうか。あつたとすればどういうふうにやつたらよろしいか、お考えになつておるかを承りたいと思います。
#333
○樋貝証人 お答えいたします。國警では大体地方を受持つことになつております。それから都会地は自治体警察が受持つことになつております。現在の警察法ではそういうふうな建前で、もし自治体の公安委員から請求があれば、國警はいつでも援助する、こういうことになつております。そこで國警は事件の起りましたのに対してできるだけ援助はいたしておりますけれども、時間的に間に合わぬことがありまするし、また予算の点におきましても、地方の自治体では十分にないというようなこともあります。從つて自治体が警察活動をする上においても、予算を顧慮しながら行動しているというような場合もあります。國警の場合には、行動することは予算で縛られることはありませんけれども、しかしながら速いところから割合に國警が行かない。國警また手薄になつて安心ができないということになりますから、そこでたとえば中國なら廣島の管区学校から出るとか、あるいは東北であれば、現に平の事件などにおきましては、東京から二百人ばかりの管区学校の生徒が行きました。生徒と言つても実はその中におる自治体または國警の警察官ですが、ちようど國警の方からの命令で一時間半後には二百人の人間が上野駅へ着いたというような状態であります。すなわち電話のかかり初めから支度をして自動車へ乘つて上野へかけつけた。その間がまさに一時間半、それから平に行つたというようなことで、平までが三時間くらい時間がかかりましよう。平の方の事件でもあんなに長びいておらないで、もう少し早く行くつもりでおつた。それからまた当時の福島縣の内郷の事情におきまして、もちろん國警も援助いたしましたが、市警としては当時非常にあぶない状態にありましたので、從つて援助をしておらないはずです。それから管区学校にしましても、仙台から平へ持つて來るということも考えられますが、それよりも先に学校の生徒を持つて行けということで、たしか東京の方から送つたと思います。それは國家の費用で送りました。
#334
○鍛冶委員長 そういうことは、國家地方警察と自治体警察との間でやることになつておるかもしれませんが、あなたの立場から、政府としてこれに対して指揮をしたり、あるいは何らか協力する、また政府に対してこれらの協力についての連絡を頼むとかそういうようなことは一切やらないことになつておるのですか、どういうことなのです。
#335
○樋貝証人 警察の方の現実の指揮は、自治体ならば自治体の長、長と言つても警察の方の長です。それから國警だといたしますると、公安委員が五人ありますけれども、公安委員が総理大臣の所轄のもとに動いて命令するということになつておりまして、國警長官もそれから次長も隊長も現行法では指揮しない。現行法では各府縣の隊長がその範囲に当ることになつております。國警長官、次長等は管区の方の監督をする。從つて管区の生徒は持つて行くことはぞうさないのですけれども、隊の必要ある場合には隊長の同意を得ないとできない。ただちに命令することはできない組織になつております。從つて政府は政府の考えることを総理大臣の所轄の程度で入れることができます。現実におきましては私は國務大臣としていろいろなことを――現に今日も自治体であるところの警視廳の訓練その他を見に参つて、いろいろ参考になりましたけれども、法律上では指揮命令する立場ではないのであります。
#336
○鍛冶委員長 先ほどちよつとおつしやつた予算その他は縛られる。結局自治体にしても足らなかつたらどこかに頼まなければならぬ。地方警察だつて自分で持つておるわけではない。結局地方警察なら政府から出る。また自治体でも金が足らぬというならば政府で援助してやる、そういうことだろうと思いますが、それらの義務というか、任務は政府にあるものだろうと思います。それだけあつて指揮その他に対してはできないのですか。
#337
○樋貝証人 今所轄の問題を廣くとれば、この公安委員に対しても命令ができるように解釈できましよう。しかし今日公安委員の考えておるよう、狹くとれば公安委員が今のような、たとえば行政管理と言つておりますが、それ及び警察法に列挙されておるような仕事にタツチする、それをさらに総理大臣が所轄をして行くということで、その意味を廣くとるか狹くとるかで大分かわります。今までの警察はややともすると政党警察化したことが元あるのですが、そういうことのないようにという心配で、政府の時の政策というものが私は警察に非常に関係があると思います。言いかえると今度の行政整理にしてもしかりだと思います。あれより行政整理がひどくなつたとすればもつと関係する。それから全然行政整理をしなかつたならば、行政整理を前提にするところの騒ぎはなかつたでしよう。だから政策のいかんということは警察に影響し、また警察力というものが行政、政治に影響する。お互いに影響するものと私は考えておる。その点は今までの政府があまりに深く入つたということが現行の制度としてその弊害の方を多く考えられたのじやないか、私の想像ですけれども、そういうふうになつております。
#338
○鍛冶委員長 予算なんかいよいよ足らぬことになれば、やはり総理大臣へ要求できるでしよう。
#339
○樋貝証人 予算は繰上使用、これは大藏大臣が承知すればよい。一年度の予算の繰上使用。これは國でもできます。それから市の場合ならば、予算に対しては市長がやる。そうして議会すなわち市会に諮つてまた議決をするということになりましよう。それから繰上げができれば繰上げをするというような手もある。それでも足らぬ場合に、たとえば今度の下山事件のごとぎものでも、私が思いますのに、他殺であるか自殺であるかは客観的に決定してもらうように、その点は自殺であつても他殺であつてもかまわないが、法の命ずるところ、それからまた今日の科学の示すところ、自殺であろうと、他殺であろうと、そんなことは私どもは口に出さぬが、経済の問題にこれをからみあわせて自殺説で片づけようというようなことは困る。当時大藏大臣にも話しましたし、東京都の知事にも話しまして、都の方でも出すと言われました。もし出さなければ、國の方の予算としてさらに配付税を考慮しようというようなことを大藏大臣も申しておつたようなわけで、從つてそういう意味において、むろんさらに議会を通過しなければならぬのですが、予算の繰上げのほかだとしますと、そういうような議会で承諾を與えるならば、またさらにそういう方法で追加、あるいは補助して行く方法があります。たとえば配付税をさらに増すというような方法で、國で実際負担することになりましようから、そういう方法はあると存じております。
#340
○鍛冶委員長 現有の法律を改正せぬでも、現在の法律の上でもそういう便宜はできますか。
#341
○樋貝証人 現在の法律ではその程度しかできない。
#342
○鍛冶委員長 それだけは出來ますか。
#343
○樋貝証人 できます。議会が承知すれば……。
#344
○鍛冶委員長 それだけのことは政府で考えるが、警察に対する指揮命令はできないわけですね。
#345
○樋貝証人 それはちようどあの事件が起りましたときに、治安閣僚会議を毎日やりました。その治安閣僚の会議には、國警長官も、警視総監も、あるいは檢事総長も、警視総監も、閣僚のほかに立会いました。そうして事件のできたことについて報告事を求めたり、それから中央において各人が集まつたと同様に地方においてもお互いに連絡をとるべしということを申しておつたわけです。現に千葉縣におきましてもあらかじめ連絡をしておつたために、遂に國電ストの場合におきましてもごらんの通り、未然ではなかつたけれども、大きくならぬで防いだようなわけで、地方にもそれを移して中央と相似形のことをやつてくれということは言つておりました。
#346
○鍛冶委員長 それから平、廣島等を見ますと、この爭議團の鬪爭方式ですね、地域人民鬪爭から、さらに地域人民鬪爭の形式によつて大きな勢力になると、その勢力をもつて権力鬪爭をやる、こういうのでぶつかつて行くというように見られますが、そういう場合は、どうも平の警察のごときは三十人しかおらぬところに五、六百人も來られたらとても手がつかぬのですが、これらに対しては何か方法をお考えになつておられますか。
#347
○鍛冶委員長 それから平、廣島等を見ますと、この爭議團の鬪爭方式ですね、地域人民鬪爭から、さらに地域人民鬪爭の形式によつて大きな勢力になると、その勢力をもつて権力鬪爭をやる、こういうのでぶつかつて行くというように見られますが、そういう場合は、どうも平の警察のごときは三十人しかおらぬところに五、六百人も來られたらとても手がつかぬのですが、これらに対しては何か方法をお考えになつておられますか。
#348
○鍛冶委員長 何しろあのときの騒ぎによつて平及び廣島等では非常に人心の不安を感じましたので、現在の警察の力ではとてもこういうものは抑えられぬ、もつと言えば人民警察などというものはいつでもできるのではないかという感じを與えたのですが、これに対して十分の対策はお立てになつておいでのことと思いますが、いかがでしようか。
#349
○樋貝証人 廣島においては地方民が非常に動揺しましたが、しかし平事件からだんだん動揺しないようになつて來たことは御承知のことと思います。私どもはその程度ならば十分自力をもつて防げると考えております。今度の下関事件、これは朝鮮人同士の爭いでありましたけれども、しかしながらその裏にはどういう方面が動いているとか、動いていないとかいううわさもありました。それが、もとから見るとよほど平穩になつたのは事実です。最近におきまして朝連が接收されましたけれども、それも案外騒ぎがはなはだしくなかつたことは御承知でありましよう。そういうふうに考えております。
#350
○鍛冶委員長 ところが、こういうふうに地方の民心が不安を釀成しました結果、各地においてこれに対抗する團体ができたようでありますが、これらはある人に言わせると、反動的で極右の團体ができるんじやないかという心配をしておるものがあるのですが、この点はどのようにお考えになつておりますか。
#351
○樋貝証人 私どもは左であると右であるとを問わず、日本におつて日本の治安を乱すものに対しては大鉄槌をくだしたいと考えております。もとより警察等につきましては、違法の処分はしたくない、あくまでも民主的であることは認めますけれども、しかし力弱いところの警察と考えておりませんし、また私ども各都会における警察を通覽いたしましてはそういうふうではないと思います。地方によりますと初めは多少の動揺があつたと考えますが、今日においてはそう動揺はないと考えております。
#352
○鍛冶委員長 福島縣などでもいろいろ團体ができたことは御承知と思いますが、それがいわゆる極右反動團体であるなどと言う人がおるが、そういう事実はありませんか。平穩な状態ですか。
#353
○樋貝証人 そういうことを聞いたことはありません。私の耳には全然入りません。当時たとえば平事件で二、三の人が親分のところへ行つて――親分の子分ですが、二、三の人が行つて、親分、ここで動いてくれるなというようなことを言つたという話であります。それはある方面から指導されて行つたというような話をうわさに聞きました。しかしそれは証拠として上つているわけではない。從つて公けのことでは、あつたとも、ないとも言うことはできぬと思つております。そういううわさは聞きました。
#354
○鍛冶委員長 そのほかまた一方では自治体警察、それから公安委員等ができたために、それらの公安委員その他がまつすぐにやればよいが、地方のボスと結びやすい。從つていわゆる警察の民主化もうまく行かぬなどという批評をする人もありますが、かような事実はありますでしようか。
#355
○樋貝証人 たくさんある自治体ですから、全部を私は知つているわけではないけれども、大都会におきましては、まずそういう事実はないでしよう。小町村におきましてどの程度の結び合があるかというこまかいことは私は存じません。やれ連絡があるとか、ないとかいう、両方についての話をうわさに聞いておる程度であります。証拠が上つて、もしもそういうようなことがあれば、刑法上の制裁が與え得るなら、それは決して躊躇いたしません。その方面にも十分な手配をいたしたいと思います。そんなつもりでおります。
#356
○鍛冶委員長 いずれにいたしましても、かような不詳事件が起つて民心に動揺を與えることは、最も忌まわしいことだと思つておりますので、今後においてもかようなことのないように万全の策をとつておいでになるものと思いますが、それらに対しては國民が安心していいような策をお立てになつておりますか。
#357
○樋貝証人 二方面に考えなければならぬと思いますが、運用の点におきましては大丈夫國民に枕を高うしてほしいと私は思います。それから制度の点につきましては何とも申し上げられぬ今の状態ですが、從つて改正するともしないともそのことは申し上げられませんけれども、しかし不利益に改正するようなことはないと思います。いずれにいたしましても、國民は今後において決して御心配なくと私は申し上げたいと思います。
#358
○神山委員 先ほど証人のお話の中に、今までの政府が政党に深入りしていたと言われたのですが、今までの政府というものはどういう意味ですか。
#359
○樋貝証人 それはずつと前のことで、たとえば熊本縣等において上から下までかわつた。警察官等が警部あたりに至るまでかわつたというような話を聞いておりますが、それは私どもが十幾年前に聞いたことであります。
#360
○神山委員 まことに昔話で、今そういうことがあつては困るのですが、最近そういうふうな印象を與えるものの一つに、齋藤國警長官のくびの問題があつたのですが、この点はどういうわけですか。
#361
○樋貝証人 今申したごとく、内閣総理大臣の所轄に属するということで、その下に三万の國警隊とそれから公安委員五人があるわけです。そこでそれを廣く見るか狹く見るかの問題でしよう。それから治安の責任は内閣で負うのですから、從つてお互いに連絡することが必要である。先ほど申しました通り、政策のいかんがただちに警察力にどういうふうに行くかということでしようし、また警察力のいかんということも、とるべき政策についてこれを制限するような場合もありましようし、言いかえれば両者が密接な関係があるから、お互いに密接な意見の交換が必要だろうと思います。單純な報告だけでなしに、意見をさしはさんで、両方ともにそれを赤裸々に開陳したらよろしかろうと私は考えております。
#362
○神山委員 それをあなたの方では廣く解釈され過ぎて、そのために國警長官の罷免問題が出たのですが、やはりこの場合は治安の責任者として、公安委員会の意見が大体承認されておりますように、あなたが先ほど狹くとればというふうにおつしやいましたが、やはり法の明文の通りにこれはぜひやつてもらう必要があると思うのですが、この点齋藤國警長官の首がとばないで、民自党、特に樋貝氏の黒星だなどと品の惡いことを言う人がある。將來こういうことのないように、政府としては法の明文に基いて警察との関係をやつてもらいたい。ことに今あなたのおつしやつた連絡云々の問題ですが、千葉の場合にも事件に対処して早く手を打つておられるのですが、廣島の日鋼爭議の場合には、縣知事と國警の隊長と檢察廳と市警の諸君とが一緒になつて会議をやつている。こういうふうなことはやはり警察法の明文の上からも問題でありますし、マツカーサー元帥の日本の警察制度に関するサゼスチヨンの精神にも反する点でありますから、將來この点はあまり行き過ぎにならないように、特に注意してもらいたいと思うのです。この点であなたの見解を聞いておけばいいのですが……。
#363
○樋貝証人 齋藤君の話では私の黒星かどうか知りませんが、しかしそんなことを言つているのはあなたの言葉が初耳で、そんなことを存じません。しかしながら今申したごとく、それは必要であることで、ことに齋藤君は私の選出区の知事をやつておりまして、知事も公選知事にするかどうかを私と話し合つたくらいな仲で、むりに齋藤君を排斥してどうしようということを考えはしません。だからあなたのそういうことは取消していただきたいと私は思います。
#364
○神山委員 今の問題は世間にそういううわさがあると言つただけで、あえて取消す必要はないと思う。
 その次に動員費用の問題ですが、これはあなたの説明で大体明らかになりましたが、廣島の場合にしましても、平の場合にしましても、各市会は警察費が非常に厖大になつたために困つておる。さらにこの費用の使い方が相当乱雜に行われておるのではないか、この点についてあなた方はどう処置されるか。
#365
○樋貝証人 乱雜に予算が使われておるということはないと思います。たとえば居残り費用のごときものはまだ未拂いの分があるだろうと思います。從つて乱雜に使う余地はありはしません。そういうようなことはどうぞ事実を述べていただきたい。十分調べた上にお話を願いたい。
#366
○神山委員 非常に挑戰的でまことに樋貝君らしくてよろしいのですが、こういうふうなことを一々問題にすれば無数に問題が出て來る。たとえばこの連中に対する食糧その他の手配をどうしておるか、宿泊費をどうしておるかというようなことが問題になるのですが、この点はあなたとここでけんかをするのじやない。あなたは証人だから私の開くことに答えてくれればいい。それで先ほど委員長の質問の中に右翼國体が擡頭して來たというふうな話が出ておりますが、これは單に先ほど委員長の言つたように、地方に何々同志会というふうな團体ができたというのではなくて、最近の中央における反動團体の動きについても何らかあればこれを述べてもらいたいと思う。
#367
○樋貝証人 そんなことはないでしよう。この間朝連の檢挙にあたりましても、右翼團体と言いましようか、しかも日本人團体が槍玉に上つているような状態で、決してそんな片手落のことをしているようなことはないと思います。現に証拠があつたらどつちだつて日本の治安を紊したものは許されないことになるだろうと思います。それは間違いであろうと思います。
#368
○神山委員 今の朝連の問題は本題からはずれるからあまり言いませんが、あの右翼團体というてきやの團体を四つ解体したことと、朝連の六十万の組織を解体したこととあなたとしても一緒には考えておられない。一番惡いことは、ごまかしのために四つをやつたと言つておりますが、現に最近東京においてあらゆる下部の駅頭や、それから新橋の駅前などでは大きな集会をやつておる。共産党本部なんかにトラツクでわざわざ乘りつけて來ておる事実があるが、こういうことはあなたは御承知ないでしようか。それは、どうです。最近における右翼的勢力が強まつたということは單に地方の問題ではなくして、中央にもあるということを知つておりますか。
#369
○樋貝証人 そういうようなことは警視総監にでもお聞きになつていただきたい。
#370
○神山委員 そんなに大きく出なくてもいい。あなたは治安閣僚として知つておかなければならぬ。それを國警長官か、自治体の警視総監に聞いてくれと逃げるならばそれでいいです。
 次は下山事件だ。下山事件は私らの言う問題じやないが、下山事件の眞相はどうか。これが予算関係であなたは自殺説にされては困ると言つた。これはまことにけつこうだ。ところがこの事件が起つた場合に、すぐこの問題についてある場合には共産党朝連というような名前をあげておる。こういうような一部の宣傳があつたということをあなたは知つておりますか。
#371
○鍛冶委員長 予算のことについて述べられたのでありまして、その事件の捜査の面についてはやめようではありませんか。
#372
○神山委員 それでは一つ言つておきますが、極右團体に関連するのだが、下山事件が起つた場合、一部では日本の左翼がやつたと宣傳した。世界の民主的な新聞と言えない新聞、たとえばAPやURまで、これはもしやつたとすれば日本の右翼團体がやつたと言つている。この点は治安閣僚としてどうだ。
#373
○鍛冶委員長 それは本調査とまつたく相いれないことで、さようなことをここで論議することはかえつて國家のためにおもしろくないと思います。
#374
○神山委員 それではまた方面をかえて言おう。七月五日の夕刊中外という新聞に、樋貝國務相の談としてこういう大きな見出しで出ている。不法侵入や占拠、射殺やむなし、暴力へ政府重大決意、これは新聞がつけたのだから、もちろん樋貝君に責任はないが、話の内容としてこういうふうに言われております。非常事態宣言は目下のところ地域別に発することを建前とするが、緊急を要する場合には全國的なものとして発する。警察、檢察など取締り機関の廳舎に不法侵入したり、占拠した場合はただちに射殺することもやむを得ない。さらに取締り強化のためにピストルや何か武裝強化するということ、それから催涙ガスを使う、あるいはエナメルなどを噴射して、ああだこうだということを言つておるのでありますが、こういうことをあなたは言つたことがありますか。
#375
○樋貝証人 ありません。同日その点については新聞記者を集めて、それはたしか夕刊に出たと思いますが、言わないことを新聞に書いては困るじやないかということを話をしたように思います。自分の意見として書くのは勝手だけれども、しかしながら言つたと話をするのはおかしいじやないか、そういうのはニユース・バリユーがあるからいいだろうけれども、そういうことを言つては困るじやないかと、たしかその日のうちに取消さして、それを書いた記者は総理官邸の中には來ないようになつたと私は聞いております。
#376
○神山委員 來ないようにした方がいいかどうかは、最近のインボーデン氏の声明で問題になるが、とにかくこういうことが言われ、これに関連してあなたが警察法の改正をやるという声明を再々されていることは、いろいろな新聞から立証されるわけです。今の「射殺もやむなし」という場合、先ほど小澤國務大臣が來て、ここで委員長から忠告があつたように、ラジオで一方的な宣傳があつたらこれは取消さなければならぬ、その処置が必要であるように思う。あなた方が言いもしないことを言つたり、考えもしないことを言つた場合には、とにかく事実にも反するし、プレス・コードにも反するし、あなたの名誉にも関することだ。ところで八月二十日の朝日新聞にも、警察法の改正、臨時國会へ、樋貝國務相発言ということを言つておるが、こういうことはありますか。
#377
○樋貝証人 質問事項がどうも違うように思うが……。
#378
○鍛冶委員長 簡單に言つてください。
#379
○樋貝証人 出せるか出せないか、改正するかしないかということは、私は事いやしくも警察に関することは新聞記者に聞いてくれるなと、この春以來申しているようなわけで、そんなことは私の言質としては非常におかしいと思つております。
#380
○神山委員 そのおかしいことがあなたの言葉としても出ている。廣川幹事長のごときは手放しで放送しているじやないか。その限りこういう問題をやはりこの考査委員会で問題にするのはあたりまえだ。そこで今の証人の説明の中に警察法の改正をするともしないとも言えないと先ほどおつしやつたのですが、九月二日のマツカーサー元帥の声明、さらに最近ヴオルヒーズ陸軍次官の言明の中にも、日本の警察制度は現在のままで適当であるという発言がされておるのでありますが、これとあなたの、するともしないとも言えないというやつとの関係はいかがですか。
#381
○樋貝証人 私が白紙状態でおることは、今の声明とちつとも矛盾しでおるわけでも抵触しておるわけでもないし、それから声明を裏書しておるわけでもない。無用なことは言わない。
#382
○神山委員 事実の客観的な動きと、また時間的な発展を見れば、樋貝君は平事件の直後には相当大きなことを言つて、まるで社会不安は共産党が起しているようなことを言つて、警察を強化すると言つていた。ところが國際的な情勢の変化の前に漸次こういうことになつているということである。
#383
○菅家委員 証人に一つお尋ねしたいのでありますが、平市を中心とする福島縣における騒擾事件の横行を見ますと、若松市においても、郡山市においても、福島市においても、無届のデモが連日行われた。これは福島縣においては公安條例がありますので、その公安條例によつて取締りをいたそうとしたのでありますが、福島縣の公安條例は指揮者を罰せよということになつている。そうすると五百人か六百人の群衆が押し寄せて、どれが指揮者かわからないというようなことで、四日間もこの市内を深更にわたつて共産党が中心となつて荒しまわつた。赤旗を立てて、革命歌を歌つて、夜中に町中を騒いで、一般の市民に非常に不安の観念を與えたのであります。これは福島縣には公安條例がありますが、宮城縣にはない。全國を見ますると、公安條例のない縣とある縣があるのでありますが、公安條例のある福島縣においても、この條例がただちに適用されないで、四日間も共産党を中心とする暴力脅迫というようなものが行われて、不安の状態に陷れたのでありますが、現在の情勢において、公安條例のない各府縣に対して、政府はどんなお考えをもつて無届のデモなどをお取締りになるお考えでありますか。その点をお答え願いたい。
#384
○樋貝証人 今の点についてはいろいろ説がありまして、これを法律にしたらよかろうというような説もありますし、地方の特別の事情もあるから條例できめたらよかろうというような説もありまして、いずれも理由のあることとして研究をいたしておるような状態であります。
#385
○菅家委員 これはぜひひとつお願い申し上げておくのであります。かくのごとく條例がないというので主として無届のデモをやり、それに最も市民が不安を感ずるのであります。多数の力をたのんで個人の家へ押しかけ、官廳に押しかけ、権力鬪爭だといつて地方議会に押しかけるようなことがたび重なることは、非常に社会不安を助長するものでありますから、これらに対しては適当な方策をお考え願いたいという希望を述べておきます。
 もう一つは、治安の責任は内閣総理大臣が負うのであります。國会はまた治安に関することは内閣総理大臣にその責任を問わなければならないのであります。ゆえに内閣総理大臣が國家の公安委員に対して注文をつけることは、現在の法律のもとにおいても認められておる。しかもまた國家地方の警察の首脳部に対して、内閣総理大臣が注文をつけ申入れをつけるということも、現在の規定において認められておると思うのであります。また公安委員においても、警察の最高長官においても、その内閣総理大臣の話合いを拒絶する権利も現在の法律のもとに許されておるようであります。そういたしますと、内閣総理大臣がたとえばこの間の齋藤長官のごときものの問題が起きた場合にこれを公安委員が拒絶する。治安の責任は内閣が國会に対して負わなければならない立場にあつて、しかもその責任を負うべき人が何らそれらの機関に対して法規上これを制約するものがなかつたならば、私は完全なる治安については決してわれわれ國会に責任を負うことができなくなると思うのであります。これらの点に関しても政府は十分なる研究をされまして、最近全國に起きたところの騒擾事件を中心にして、それらをお考え願いたいと私は希望を述べておきます。
#386
○鍛冶委員長 ほかにありませんか。――それでは済みました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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