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1949/05/10 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会文部委員会連合審査会 第1号
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1949/05/10 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会文部委員会連合審査会 第1号

#1
第005回国会 法務委員会文部委員会連合審査会 第1号
昭和二十四年五月十日(火曜日)
    午前十一時十二分開議
 出席委員
 法務委員会
   委員長 花村 四郎君
   理事 北川 定務君 理事 小玉 治行君
   理事 高木 松吉君 理事 石川金次郎君
      押谷 富三君    眞鍋  勝君
      上村  進君
 文部委員会
   委員長 原   彪君
   理事 水谷  昇君 理事 松本 七郎君
   理事 稻葉  修君 理事 今野 武雄君
      黒澤富次郎君    千賀 康治君
      若林 義孝君    渡部 義通君
      船田 享二君
 出席政府委員
        法務政務次官  山口 好一君
        法務廳事務官
        (特別審査局
        長)      吉河 光貞君
        文部政務次官  柏原 義則君
 委員外の出席者
        法務廳事務官  横大路俊一君
        文部事務官   柴田小三郎君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
        專  門  員 武藤 智雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 出版法及び新聞紙法を廃止する法律案(内閣提
 出第六五号)
    ―――――――――――――
#2
○花村委員長 これより会議を開きます。
 本日は出版法及び新聞紙法を廃止する法律案について、法務委員会と文部委員会との連合審査をいたすことに相なりました。法務委員長である私が委員長の職務を行います。本日は部屋の関係で座席が十分ありませんので、適宜御着席をお願いいたします。
 まず政府の提案理由の説明を求め、続いて質疑に入りたいと存じますが、質疑は本日の議題について簡單にお願いいたしたいと思います。なお質疑は通告順によつて許しますから、あらかじめ御通告くださるよう申し添えておきます。それでは政府の提案理由の説明を求めます。山口政府委員。
#3
○山口(好)政府委員 出版法及び新聞紙法を廃止する法律案の提案理由につき、御説明申し上げます。
 御承知の通り終戰直後におきまして、言論及び出版の自由を抑圧していた一切の制限が取除かれたのであります。具体的に申しますれば、昭和二十年九月二十七日の連合國最高司令官の覚書によりまして、新聞紙法を初め十二法令の覚書に牴触する條項の廃止が日本政府に命令されたのであります。よつて政府は、右のうち新聞紙法を除き、他の十一の法令に対しては、それぞれ同年十月中に正式に廃止の手続をとりました。ただ新聞紙法につきましては、その規定の全部が必ずしも檢閲、発禁処分その他言論の自由を抑圧するものばかりでもありませんでしたので、当時内務省と司令部との間におきまして、新聞紙法及び出版法はこれらにかわるべき適当な法律が制定せられるまでその効力を停止しておき、その正式の廃止手続はしばらくこれを見合せることとしていたのであります。ちなみに申しますが、出版法は前述覚書の中には列挙せられていませんが、その内容からして、当然新聞紙法と同列にこれを取扱うこととされたのであります。
 しかしながら新聞紙法及び出版法の改正の問題は、その後進展せず、そのうちに二十二年五月には出版に関する事務は文部省に引継がれ、また内務省は同年末をもつて解体せらるるに至りました。なお一昨年刑法の一部分が改正されました際に、猥褻罪の罰の程度が高められ、名誉毀損罪に関する部分に從來の新聞紙法及び出版法の中の規定の一部が取入れられたり、罰の程度が高められたりいたしましたので、今般政府といたしましては新聞紙法及び出版法を正規の手続を経て廃止し、もつて覚書の趣旨の通りに結末をつけることとした次第であります。
 法律案の法文自体は、きわめて簡單なものでありまして、説明の要もないかと存じますが、附則の中で予約出版法の一部を改正いたしていますので、この点について若干説明申し上げたいと存じます。
 元來この予約出版法は、言論、思想の自由を取締るための法律ではなくして、予約購読者たる一般國民を惡徳出版業者から行政的に保護することを目的とするものであります。從つてこの法律を廃止したり、あるいはこれに対して実質的な改正を加えたりすることは、今後の研究問題であります。ただこの法律の中には出版法を引用している箇所が若干ありますので、今回は出版法の廃止に伴つて当然加えられなくてはならない形式的な改正、すなわち字句の削除または書きかえをこの法律に対して行つただけであります。何とぞよろしく御審議を賜わり、すみやかに可決の運びに至りますようお願いいたします。
#4
○花村委員長 これより通告順により質疑に入ります。今野武雄君。
#5
○今野委員 この措置によりまして言論の自由が確保されるということは、たいへんけつこうなことだと存ずるのでありますが、しかし言論の自由を保障する憲法の條項が、これだけによつてはたして確保されるかどうか、ほかにこういうようなものがないかどうかということを考えてみますると、なお先般政令として出されました團体規正に関する政令において、政党の機関紙やその他については、何かやはり檢閲のようなものがあるように見受けられますが、そういう点についてこれも撤廃するといつたようなことが適当でないかと思われますが、その点はいかがお考えでございましようか。
#6
○山口(好)政府委員 ただいまの御質問でありますが、これは法務廳の所管に属しておることと思うのでありますが、事がやはり関係方面とのこともありますので、ただいま特別審査局の事務官を説明に呼んでおりますから、その説明員が出て参りましてから、さしつかえない範囲でお答えをいたしたいと思います。
#7
○今野委員 なお先般石坂洋次郎という文士の書いた小説が何か猥褻であるというような理由で、その載つた雜誌が出せなくなつたという事件がありましたが、その際警視廳の当局者のお話では、事前にこういうことがよく連絡してあればこういう目にあわなかつただろうにというような談話があつたようでありまして、新聞紙にもそのことが取上げてございました。こういうようなことはやはり何かまだ当局者において当然檢閲すべきものという観念があるように見受けられるのでありますが、その点はいかがでございましようか。
#8
○山口(好)政府委員 ただいまのお尋ねでありますが、これは新聞記事に現われたのでありまして、はつきりしたことはわかりませんが、建前は檢閲はできないことに相なつております。
#9
○今野委員 建前は檢閲ができないことになつておるが、内々のことはやるという意味でございますか。
#10
○山口(好)政府委員 はつきりお答えいたします。その点は全然檢閲をやつておりません。
#11
○今野委員 そうすると、そういうような警視廳の者がもし新聞紙に書いてあるように申したとすれば、それははつきりとその警視廳の者の思い違いと考えてよろしいか。
#12
○山口(好)政府委員 お説の通りだと思います。
#13
○今野委員 この程度で私の質疑を終ります。
#14
○花村委員長 松本七郎君。
#15
○松本(七)委員 私の質問はただ一点だけで、先ほど今野君がちよつと最初に指摘されたことを詳細に承りたいと思いますが、担当の説明員が來られてからすぐやりたいと思いますので、それまでしばらくお待ちしております。
#16
○花村委員長 若林義孝君。
#17
○若林委員 憲法上認められております言論の自由を、眞に民主的な意味における発展を希望いたす者といたしまして、この出版法及び新聞紙法を廃止する法律を御提出になりましたことは、まことにけつこうなことと存ずるのでありますが、しかし現下の日本の実情に照してみたとき、まことに私たちとしては望むことは望むが、一抹の杞憂を持つところのものであります。これは不本意ながら持たざるを得ないのであります。この氣持からいたしまして、現在のまま無制限に言論の自由を認め、新聞紙法等を廃止しまして、その生れて來る結果、將來の見通しというようなことについていかにお考えになるか、少くとも改正すべき何らかの法律を準備もなしにこの挙に出られることについては、御当局はよほど自信があつてやられると思うのでありますが、その見通しをひとつ伺つてみたいと思います。
#18
○柏原政府委員 現在の段階におきましては、変な書物、猥褻なものが出たりいたしまして、不適当なものも事実出ておりますが、それを今日法的に取締るものがないので、本を書いたり出版する者の自粛にまたなければならぬのであります。これは現在政府の問題でもありますが、國会において大いにこれを取上げていただいて、何らかの方法で――思想的な統制ということは、これはできませんが、大いに取上げて考えなければならぬ問題だろうと思うのであります。ちよつと速記をやめていただきたい。
#19
○花村委員長 速記をやめて……
    〔速記中止〕
#20
○花村委員長 速記を始めてください。
#21
○若林委員 すでに新しい憲法が施行せられますとき、それを審議する者の氣持といたしましても、名刀を刀の使い方のわからない者に渡すような氣持がし、あのときも、すべての者に民主的な教育と、道義的に心持の上において眞に民主主義を把握せしめなければならないということが前提となつておつたと思うのでありますが、現実はこれに相反しまして、使うべきときにその名刀を使い得ず、みずからおのれの足を切り、手を切り、恐ろしくもみずからの手に持つ名刀で首をちぎつてしまうような事態に立ち至つておるのであります。おそらくこの言論の自由は、民主主義の健全なる発展のために憲法が與えたものでありますが、これが悲しいかな逆行をいたしておりますことについて、國家の前途を憂えるところのものであります。この法律の廃止と同時に、眞に國民の民主的な氣持、神に仕えて行くという氣持、お互い同士がわれわれの基本的人権を守り合うという氣持が盛り上るような民主教育、また眞に誤らざる民主的な思想が起り得ることに万全の措置を講じてみたいと念願するものであります。
 次に、新聞の正誤であります。惡辣なる新聞はもとよりでありますが、あるいはあやまつて新聞に誤報をすることがあるのであります。中には故意にやるものもあるのでありますが、この誤りたる記事を書かれた者、これによつて自由を奪われ、名誉を傷つけられる者もあるわけでありまして、憲法において嚴然として守ろうとするところの、この名誉のごときを傷つけられた者に対しても、正誤の規定もなくなるわけでありますが、これについて政府はいかなる考えをお持ちになつておりますか、一應承つておきたいと思います。
#22
○山口(好)政府委員 まことにごもつともな御質問でありまして、新聞に誤つた記事を掲載し、その書かれた人に対してどういう救済手段があるかと申しますと、從來正誤に関する規定が相当活用されたのは事実でありますが、今後は被害者の方からも積極的に新聞倫理の向上のために努力することが望ましいと思うのであります。すなわちよし新聞紙法が廃止されましても、被害者から新聞社に対して正誤掲載の請求は、法律上許されなくなるというものではありませんから、進んで正誤を請求いたしまして、もしそれがいれられなかつたならば、裁判所に名誉毀損の訴えを提起し、さらに不法行為による損害賠償の請求を求めるという強硬な手段をとる必要があるのであります。從來わが國では、新聞社に対しまして、とかく泣寝入りというような弊風がありましたが、今後國民は、正しい自己の権利、個人の尊嚴を擁護するために、あくまでも戰い抜くという心構えが必要だと思うのであります。そのためには、新聞社側が少しでも、いわゆる切捨て御免の氣持を起す余地のないように、國民の側からも仕向けて行かなければならないと存ずる次第であります。
#23
○若林委員 ただいまの御答弁は、まことに私たちの氣持をそのまま表明してくださつたと思います。道義的にすべての者が同じようにわれわれの自由を守り合い、公共の福祉を守り合おうとする心持に出るならば、今の氣持もそのまま率直に受入れることができるのでありますが、残念ながら切捨て御免ということになつておる。ねこを街頭に出したのではなしに、猛虎をおりの外に出して、市中をかけめぐらすというか、触るるものをかみ、当るものを倒すという行き方になるおそれが多分にあるのであります。出版に関係するところの者ま自肅し、われわれも出版法並びに新聞紙法などが廃止されましても、今のような救済方法が嚴然としてあるという、この権利を持つておるという自覚をも、ひとつ促さなければならぬと思うのであります。いかに言論の自由が野放しにあるという國会においても、懲戒という嚴然たる処分が講ぜられるのでありますから、その点万全の措置を講ぜられるよう希望してやまないのであります。
 次に、先ほど政務次官から御説明があり、お氣持を吐露せられたのでありますが、今日街頭に氾濫をいたしております幾百千の出版物をながめましたとき、日本の國情をあの氾濫せる諸出版物によつて察知いたしますとき、おそらく國家の現状を嘆くのは、私一人ではあるまいと考えるのであります。出版法、新聞紙法が廃止されたのを機会に、いわゆる取締りがなくなつたということによつて、よりよき性質の、あるいはよりよきものが市中に出て來るように、われわれも努力をいたしたいと考えておるのでありますが、政府といたしまして、この点に対する対策を放つておくわけにはいかぬと思うのであります。先ほどお話にありましたような事情もあると思うのでありますけれども、まだまだ國民自身が、惡いものは買わず、よいものを育てて行くという読書力を持つておらぬのでありまして、皆の文化が高まつて來ればいつかはよくなるという一つの見方もあるのでありますが、学問のあるなしにかかわらず、この出版物に対しては、一種の幻惑を感ずるのか、嘆かわしい結果になつております。この間も宗教のことに関して、邪教と正教との区別はどこにあるかという話が出たのでありますが、邪教というものは、頭がある者は、学問のある者は、それには引きつけられないという結論が一應出ると思うのでありますが、現実から言えば、いわゆる邪教と思われるようなものに、相当の学力を持ち、人格を持ちしておるような人たちが引きつけられまして、後日になつてほぞをかむという現実になつておるのであります。そういう意味において、猥褻なる出版物、特に社会教育に妨げになるような出版物に対する対策は、いかようにお考えになつておるか。先ほどの御答弁より一歩も出ない御返事しか伺えないかと思うのでありますが、もう一度、念のために承つておきたいと思います。
#24
○柏原政府委員 出版が自由になりまして、雜多な雜誌、出版物が出ておりますが、行政官廳としましては、内容のよしあし、道義の程度ということについては、現在の法律等ではこれにタツチできないことになつておるのでありますが、ただ文化向上のために、價値ある藝術とか、宗教とか、あるいはまた音樂とかいう高度な社会教育をして、大衆の道義観念が自然に向上するような方法をとる以外に、行政廳としてはいかんともなしがたい。民衆自身の自覚をまつほかに方法はないので、社会教育を通じて道義の高揚をはかるより道がないと思うのであります。あまりひどいのは、現在でも刑法に猥褻罪があつて、刑法上の手続をとりまして、裁判所が決定するという最後の一線は残つておりますが、これとても限界が非常にむづかしいのであります。うまく賣るためには、実に上手に文章を書きこなしますから、あまり露骨なやつは取締りができましようが、実に文士が筆まめに上手に書き表わしましたら、実質的には猥褻なものであつても、そこは藝術でカバーして、うまくやりますので、結局は取締りというより、價値の問題、思想の問題になるのでありまして、この思想内容に関しましては、完全な思想の自由を許されておる今日、法的に新憲法で取締るということはできぬと思うのであります。簡單でございますが、お答えといたします。
#25
○若林委員 御趣旨まことに同感なのでありますが、私たち國民の一員といたしまして、いかがわしい出版物が市場から姿を消し得るように、國民お互いに道義の高揚をし、社会教育の万全を期し得ますよう、社会教育部面においてあるいは宗教方面において、一般の活動を要請することを希望といたしまして、一應私の質問を打切ることにいたします。
#26
○上村委員 ちよつと議論めいたことになるかもしれませんが、すでに憲法が発布になつて、出版の自由があり、言論の自由がある。そうして新聞紙法というものにかわるプレス・コードというものができておる以上、今日までこの新聞紙法、出版法は完全に効力が生じておるから、これを廃止する法律をこしらえるというのであるか、それとももう憲法がすでに出版の自由、言論の自由を認めて、そしてまたそれにかわるプレス・コードができたから、いらなくなつたものであるから、念のために廃止する法律をこしらえるというのであるかどうか、この点をちよつとお伺いしておきたいと思います。それはどうしてかというと、私どもは憲法を基準にものをしやべりたいし、憲法を基準に行動して行かなければならぬと思う。現にすでに文書の出版、領布、こういうものが自由であるとすれば、古い刑法や單行法にどんなことがあろうとも、それはその部分に限つては無効でなければならない。たとえば刑法で猥褻の文書といえば、猥褻の程度にもいろいろあつて、また猥褻ということについては、おのおの見る人によつて、どの程度が猥褻で、どの程度が猥褻ではいかぬというようなことはあるとしましても、とにかく憲法によつて文書の出版、領布が自由である以上は、この猥褻の文書を発行し、陳列するということは罪にならないわけであります。從つてわれわれは、この刑法の規定が成文をもつて廃止せられなくても、この規定は大部分効力を失つておると思うのです。人民の文書の発行の自由、あるいは領布の自由は、憲法によつて確保されており、古い法律にどんなことがあろうとも、それに関係なく文書の発行、領布の自由というものがあるわけであります。でありますから、あるいは今の御質問の方と反対の方向へ行くかもしれませんが、その点をはつきりしておいていただいて、新聞紙法というものは、もう役に立たなくなつたんだが、それを廃止する法律というものをこしらえなければならぬというのか、今効力を生じておる、だからこれを廃止するというのか、そういうようなことをこの際承り、そうして日本のあらゆる文書に関する制限の規定を、この際新聞紙法を廃止すると同時に、政府はどういうふうに処置されようとし、解釈されようとするかということの御答弁を聞いておきたいと思います。
#27
○柏原政府委員 半分だけ御答弁いたします。あとは法務次官から御答弁いたします。
 ただいまの中で、憲法に出版の自由があり、思想の自由もあるのであるから、古い刑法の猥褻罪なんかは、出版の自由でふつ飛ぶじやないかということでありますが、憲法の中には出版の自由、思想の自由もありますが、また公共の福祉ということで押えてありますから、公共の福祉という憲法の精神から言つて、猥褻罪という刑法の古い規定も生きて來ると思うのでありまして、そのために刑法が無効になるということはないと思うのであります。この出版法は終戰後一時停止されておりまして、効力がなくなつておつたわけで、生けるしかばねのようなかつこうになつたのであります。しかし現在のような状況でありましたならば、どんな新聞が出ておるのやら、雜誌が出ておるのやら日本の政府にはわからぬはずであります。けれども関係方面ではわかつておると思うのであります。ですから、発行者とか、何をいつ出したとか、どういうものであるということぐらいは調査資料として政府も一應握つておく必要があると思います。そういう意味で、内容に触れずに、そういうものがあるという程度で、調査の資料になるような程度で、内容的取締りではなくして、調査資料として一應日本の政府でも握つておく必要があるような感じもしますので、いずれまたそういう程度の取締りの規則が將來いるのじやなかろうか、こういう感じがいたします。
#28
○山口(好)政府委員 他の部分の御質問に対してお答えいたします。なるほど上村さんの御説のように、これは実質的には無効な法律ということに相なると思うのであります。ただ無効な法律でも形式的に存続しておつた形になつておりますので、形式的にこれは今回廃止をいたすということに相なつた次第だと思うのであります。
#29
○上村委員 そうすると、無効になつておるものを念のためにそれをはつきりしておくというのがこの廃止法律案だ、こういうわけですね。
#30
○山口(好)政府委員 御説の通りであります。
#31
○上村委員 そうするとそれは憲法の條章に反しておるからということになるわけですね。
#32
○山口(好)政府委員 それは関係当局からの覚書によりまして、すなわち一九四五年九月二十七日附の覚書によりまして、さような解釈になると思います。
#33
○上村委員 そうすると憲法だけじやないというわけですね。憲法の規定とその覚書とプレスコードというようなものを総合して無効になつておつたという御説でしよう。
#34
○横大路説明員 終戰の年の九月二十七日付の連合國軍司令官からの指令の第一項に、日本帝國政府はただちに新聞及び通信の自由に対する平時並びに戰時における制限諸法令施行の手続を即時無効なとしめる措置をとることを要するという命令が出ておりまして、これはもちろん新憲法制定前の命令でありますから、これによつてやつておつたわけであります。
 それから追加して補足的に申し上げますが、先ほど憲法の言論の自由に関する規定によつて、それ以外の法律の中で、言論出版の自由に関する規定があつたら当然無効ではないかというお尋ねがございましたが、ただいまのところ政府の考えといたしましては、一般に言論の自由、思想の自由を抑圧する法律をつくることができないのは当然でありますが、それぞれの單行法におきまして、別個の特別の必要から、言論あるいは出版の自由をある程度抑制することは必要と認められますので、それをやつている例があるのであります。二、三申し上げますと、たとえば少年法におきましては「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写眞を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」――これは年若い少年のことを新聞に書きますと、それが本人の將來を傷つけるという意味から特別に終戰後昭和二十三年にできた少年法の中にそういう規定がございます。
 それから藥のことを取締る藥事法というものが昭和二十三年にできておりますが、これの第三十四條に、「何人も、この法律に基いて製造する医藥品、用具又は化粧品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、虚偽又は誇大な記事を廣告し、記述し、又は流布してはならない。」――これは藥の廣告について誇大な記事を書いてはならない、これも間接に出版の制限になるわけであります。
 それから証券取引法と申しまして有價証券の取引に関する法律がありますが、この第二百條におきましても、「公示若しくは頒布する目的を以て有價証券の相場を偽つて記載した文書を作成し、又はこれを頒布した者」――有價証券についてのうそのことを書いた出版物は取締るという規定がございます。
 それから衆議院議員選挙法は、御承知の通りある程度選挙の必要上言論出版の自由を取締つておりますが、こういうものは私どもは一般的な言論出版の自由の抑圧ではない。こう考えて終戰後できました法律にも今若干申し上げましたような事柄もあることをちよつと補足的に申し上げておきます。
#35
○上村委員 常識的に見てそれはごもつともですが、とにかく民主主義の憲法というものに対して、最も尊重さるべき一つの言論の自由、文書の自由ということを、國民がほぼろげながらこれを信じているわけです。ところが憲法にそういう規定があるにかかわらず、あつちへ行つてはこういう制限だ、こつちへ行つてはこういう制限だ、そうしてそれが当然であるかのごとく私どもも実見しているのであります。そうすると一体言論の自由、出版の自由というものはどこへ行つておるかということを嘆かざるを得ないようなことがあるわけです。それから最も言論の基本的なものが新聞紙法、出版法ですが、それ以外にも今いろいろの制限がありますから、これは結局政府では憲法のどれによつてどういう建前からそういうことになるか。われわれが問題にするのは猥褻な文書ですが、この猥褻な文書といつても、これが全然死んでしまつているか、生きているか。生きているとすれば、これはちよつとしたものでも見方によつては猥褻の文書として罪を着なければならない。ですからそういう点からしまして、政府はこの際出版法もしくは新聞紙法を廃止して、言論の自由を尊重してくださるということはけつこうなんです。と同時にほかの制限があるならば、これはこういうわけだからこうしなければならないということを明らかに示す必要があると思う。少くも今日の連合審査会において、このような廃止法律案を出す場合には、それらの点もわれわれに納得のできるように説明をしておいていただきたい。その法律の立法の根拠を伺いたい。
#36
○山口(好)政府委員 お答えいたします。御説の通り憲法におきましては言論、出版その他の自由をはつきりと規定いたしております。その建前のもとに今日新聞紙法、出版法の廃止ということをここでいたす次第でありますが、関係当局におきましては、新憲法の公布になります以前に、すでにこの措置をとらねばならないというので、先ほど横大路君からも説明されましたように、終戰の年の九月二十七日にすでに覚書を出しまして、その第一項で、ただちにそういう処置をとるように、すなわちこの言論とか出版とかいうものの自由を阻害するような法律はこれを廃止するように、こういうような指令があつたわけであります。その後におきまして新しい憲法が公布されまして、これにははつきりとその点をうたつておりますような次第でありまして、憲法のどの條章によつてその自由が認められかということははつきりいたしております。しかして、ただいま仰せられました猥褻とか名誉毀損とかいうようなことで、いろいろ制限を受けると申しますが、これは刑法の部類に属しますることで、あまりに弊害があつて公共の福祉を著しく害するような場合には、もとより刑法でこれを取締られなければならないわけであります。でありますから、憲法の規定するところによつて、廣く一般的にその自由は確立されたわけでありますが、ただ猥褻とか名誉毀損とか、そうした刑法的な一般の公共福祉を阻害しまするような程度がはなはだしくて、法律に触れまする場合には、その点においてこれを取締る、こういうことに相なりまするので、さよう御了承願いたいと思います。
#37
○渡部委員 ただいま上村君が言われたことは一見小さい議論のように見えますけれども、しかしこれは思想、または理念の見地からいえば、根本的の問題だと考えるわけです。つまりこの法律が廃止されるということは、この説明の中では昭和二十年九月二十七日の連合軍最高司令官の覚書によるということでありますが、ただそれだけでありまして、從つて今廃止されるというのは、そういう覚書が出たから当然廃止されなければならぬという見地に立つてこの法律案ができたのであります。ところが今すでに憲法はいうまでもなく実施されているのであつて、從つてわれわれは憲法においては完全に言論出版の自由を保障されておるのでありますから、今廃止されるとするならば、政府としては当然この理由の中にはつきりと憲法が言論出版の自由を保障しているという文句を挿入されて、今日政府が意図されていると称せられる趣旨をさらに憲法によつて基礎づけられることが必要ではないかと考えるわけであります。そう考える次第は、特に皆さんも御同樣に、議会の言論さえも、ある問題については非常な制約を受けておる。これは日本の國会としての恥辱だとわれわれは考えるわけであります。日本の國会がほんとうに眞実を語り、日本がどのような状態に置かれているかということを國民に訴え、議員であるわれわれも自覚して、その立場から國政を十分の審議しなければならないという場合にわれわれは非常に多くの制限をお互いに受けておるのであります。こういう点をわれわれはやはり日本人としまして、ことに日本の國会の権威の上から言いまして、どうしても除去しく行くための努力が必要であると考えるわけであります。從つてこういう機会にわれわれは憲法によつて完全に言論出版の自由を保障されておるのであるから、こういうものは廃止しなければならぬのだという点をつけ加えられて、單に國民の前だけでなくて、内外に対して日本の國会の権威を、日本人としての基本的人権を守る意味からということを明らかにされる必要があるじやないかと思うわけですが、この点についての政府の御見解はどうですか。
#38
○山口(好)政府委員 ただいまの御意見まことにごもつともだと思つております。実は提案理由の中には直接に憲法の條章によりということは、申し上げませんでしたが、終戰後における司令部からの覚書に基いて云々と先ほど申し上げましたその中には、当然憲法の規定に基くことも含んで実は御説明いたしました氣持でありますので、提案理由の中にやはり憲法によつて認められたこの言論出版の自由ということが、この廃止法案を出しました基礎と相なつておりますことを、われわれといたしましても認めておる次第であります。いな、むしろそれが基礎になつておるということを申し上げたいと存じます。
#39
○渡部委員 政府の御答弁は、その氣持までも表現いたされた点では非常に、われわれ賛意を表するものでありますが、しかしせつかくのそのお氣持
 右枚チ法律を廃止する法律案が出れておるとしまするならば、そのことを公然の説明書の中にも、規則の中にも、あるいは場合によれば、この委員会としての声明においてすらも明らかにしまして、政府がいかに言論、出版の自由を保障するものであるかという点をはつきりさせることは、國民の自主性と矜持を國民自身の中から高めて行くものであつて、將來の日本國民を自主的な日本國民にして行くためには、ぜひとも必要と思われますので、こういう点について、できるならば本委員会が政府のその説明を取入れたような、はつきりした態度を決定すべきものと考えるわけであります。これは單に政府に対する要望だけではなくて、当連合審査会に対する要望であることをつけ加えて私の発言を終ります。
#40
○上村委員 もう一点――今渡部氏に私の説明を補助してもらつてはつきりしましたが、やはり私どもは、実は法律家ですけれども、新聞紙法、出版法など廃止されておつたと思つていた。ところが、この法案を見て、実は驚いたわけなんです。ところが、これは私どもから見ると、憲法から來ていなければならないという常識をもつて判断しておつたのが、この理由にはそれがないから質問したわけです。ぜひ、今渡部氏が言われたように、今ごろ証文の出し遅れみたいに、昭和二十年九月二十七日の最高司令官の覚書でこれを廃止する、それでは日本政府は一体怠慢ではないか、三年も四年もたつてからこんな法律を廃止する、しかも、そのときの命令で廃止するんだというような不見識な、それだけの言葉では國民は納得できないと思う。こういう点におきまして、やはりわれわれは民主主義の憲法下、すなわろ言論の自由、出版の自由ということになつたものだから、それによつて念のために、あらためてこの法律案を出すというようにしないと、議会の権威というものはどこにあるかと言われてもしかたがない。くどいようでありますが、この廃止の理由のつきましては、憲法の條章を高く掲げて、それを理由にしてもらいたいということを念のためにつけ加えておきます。
#41
○花村委員長 さきに留保せられた松本七郎君の質疑に対して、特別審査局長の吉河光貞君がお見えになりましたから、同君の質疑をお願いいたしたいと思います。
#42
○松本(七)委員 言論出版の自由を確保するための障害となる法律を廃止するという趣旨には、説面的に賛成でございますが、ただ他の法令等で別の面から、今度それを抑圧するような危險はないかというような疑いがあるわけであります。そう申しますのは、本年の四月に政令第六十四号として出ました團体等規正令の第九條に規定しておるところによりますと、政党だとか、あるいは協会その他の團体で「機関誌紙を刊行したときは、その代表者又は主幹者は、刊行の日から二十日以内にその一部を主たる事務所の所在地の都道府縣知事に、その二部を都道府縣知事を経て法務総裁に提出しなければならない」と、こういう規定があります。そこでこういうことになりますと、せつかくこの新聞紙法を廃止しても、新聞紙法の二十三條のもとの例の檢閲制度というものがまた復活されるのではないかというような疑いを生ずるわけであります。この点もはつきり御説明願つておきたいと思います。
#43
○吉河政府委員 御質問の趣旨は非常にごもつともな点もあるのでありますが、團体等規正令第九條の機関誌紙の届出は、その根本として團体公開主義に基いているのであります。御承知の通り同令第七條には政治的な團体はその名称、目的、主たる事務所の所在地、役員、有力な財務援助者または構成員等を届出なければならないことになつているのでありますが、この團体公開主義をさらに一層その趣旨を全からしめるために、この種の團体が機関誌紙を発行した場合には、これを届け出て、團体公開の趣旨を全からしめる。なるほど諸團体が届け出ます機関誌紙そのものを、一般國民に公開するという規定は現われておりませんが、事実上閲覧者に対しましては、届出事項のほかに、その求めによりまして、つとめてその機関誌紙をも公開して、團体の内容を國民一般に公開して、健全なる民主主義國家の育成をはかりたいというのがこの九條の趣旨であります。新聞紙法の十一條には、発行と同時に納本せよというような納本制度が規定されております。なお御質問の通り檢閲、差押えの制度までありますが、新聞紙法の建前とは根本的に異なる趣旨で規定されておるのでございまして、この運用につきましては、このたびの規正令の第一條の第二項に、できる限り國民は基本的人権を阻害しないようにこれを運用しなければならぬということが規定されております。この運用につきましては、十分に注意して運用して行きたいと考えておる次第でございます。
#44
○花村委員長 よろしゆうございますか。――それでは石川君。
#45
○石川委員 先ほど政府委員の御説明を聞いておりますと、憲法で言論の自由、出版その他一切の表現の自由はこれを保障するとしておるけれども、公共の福祉のためになお制限することもやむを得ないということをおつしやつたのでありますが、公共の福祉のために基本的人権をも拘束することができるという一つの御論拠を伺いたいと思います。それは憲法の九十七條に「これらの権利は、過去幾多の」云々と書いておりまして、「永久の権利として信託されたものである」といたしまして、基本的権利として憲法に掲げましたものに対する拘束は容易でないのであります。もし公共の福祉という観念のもとに基本的権利を拘束し得る、ないしは制限し得るものだとするならば、これは容易でないと考えなければならぬのであります。この点はつきりとお伺いをしたい、まず第一点は、憲法第二十一條は憲法上にいう基本的権利でないかどうか。基本的権利であるとしたならば、公共の福祉がこれを制限し得るものであるか。九十七條との関係はどうなるかということをお伺いしたいと思います。
#46
○柏原政府委員 基本的人権の非常に重要なことは御説の通りでありまして、私も同樣に考えるのであります。基本的人権と申しましても、他の基本的人権を阻害するようなかつこうになつた場合に、初めて公共性というものが生れて來るのでありまして、社会は大勢の人が集まつておるのでありますから、基本的人権が並んでおるわけでありますが、それが他の基本的人権を阻害するという場合には、ここに公共の福祉という考え方が当然生れて來るのであります。たとえて申しましたら、私の申しましたのは、公共の福祉という一つの全体的な考えで、基本的人権にある程度大きな制限を加えるというような、基本的人権を破壊するような公共の福祉の尊重の仕方ではないのでありまして、引合に出しました例は、風俗を乱すとかいうかつこうになりますと、どんな絵を書いてもいい、どんな小説を書いてもよろしい、おれは自分の個性のままにせつておるんだ、ここまで基本的人権が行きまして、他の基本的人格を傷つけるかつこうになりますと困るものですから、憲法の問題は大体公共の福祉というねらいからいろいろな箇條ができていると思いのであります。そういう点で基本的人権は万能ではあるけれども、ある程度の制限がおのずから生れて來る。その制限ということに重点を置いて、全体主義的な考え方が伸びて個人的人権を破壊する、そこまで行きますれば行き過ぎであります。そういう意味において基本的人権は尊重されなければならぬけれども、基本的人権の個性がまた無制限に動いていいとも考えられぬと思うのであります。憲法のことでありますから、詳しくこまかくは書いてないけれども、大体のねらいをわずか百條で規定したのでありますから、大体のねらいというのが、憲法の書き方であります。從つて憲法の書き方としましては百條でありますから、解釈が多種多樣にわかれておると思うのであります。そういう意味で、私の申しましたのは、基本的人権を制限する資格のある公共の福祉、こういう全体主義的な考えで言つたのではないのでありまして、基本的人権は尊重さるべきものである。しかしある程度の公共の福祉という観念なしには一つの憲法も成り立たぬではなかろうか、こういう考えから申し上げたのであります。
#47
○石川委員 公共の福祉の観念のきめ方が非常に憲法の方でも困難であります。御同樣その点になつて來ますと、非常に苦しくなつて來るのであります。しかし政府委員の言うように二十一條にあります基本的人権の中には、私たちの考えをもつてしては立法をもつてしてはおおうべからざるものがあり得ると思う。あらゆる場合において基本的人権を尊重しなければならないだけに、人間社会は発達して來ておるという考えを持つておるのであります。今猥褻な文書等が横行しておるのを見まして、憲法の二十一條を考え、九十七條を考えての私たちの氣持というものもここにある。公共の福祉のために基本的人権を擁護しなければならないということは認めなければならないと思います。十三條においては、公共の福祉に反しないように、けれどもそれは最小限度において法律がこれを拘束すること以外は拘束しないという規定はあるのでありますけれども、しかし政府として公共の福祉という観念をもつて基本的人権を縛ろうという場合においては、よほど愼重に御考慮を煩わさなければならない。そうでなければ公共の福祉がやがては全体主義ということになる。全体主義がいいか惡いかはまたさらに考えなければならないのでありますけれども、昔のように全体主義が軍國主義に利用されることがあつてはいけないのでありますから、この場合においては十分御留意願いたい。
 もう一点法務の方に聞きたいのでありますが、憲法二十一條の状態と刑法の猥褻罪の関係であります。先ほどお話を聞いておりますと、刑法による猥褻罪の從來の刑法学的概念と異なるものがあるかのように御説明なすつたのでありますが、從來の猥褻という観念と新しい憲法によつてどのように解釈が異なつておるのかをお聞きしておきたいと思います。
#48
○柏原政府委員 前のお説に対しまして、憲法十二條には今の公共の福祉と基本的人権の関係もある程度明示してあります。憲法第十二條には「憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」こういうふうに書いてありまして、公共の福祉によつて個人を破壊して、全体主義に持つて行こうという考えでないことは憲法の上にも明示してありますし、政務次官の立場としても、公共の福祉を強調すると全体主義になるじやないか、こう申されるのでありますが、そういう押えつけるような意味で言つたのではないのでありまして、憲法上にも、これは明記してありますし。政務次官が言うたから特にけしからぬというものでもなかろうと思う。立場によつて言葉の使い方がいかぬという考え方は、もうすでに私は古いような感じがいたします。
#49
○横大路説明員 先ほどの刑法の猥褻の概念がかわつたのではなかろうかというお尋ねに対しましては、先ほどの山口政府委員の説明のうちにも、そうとはつきり申し上げた点はなかつたように私は記憶しております。ただ猥褻に関します刑法百七十五條の規定がかわりましたのは、今まで五百円の罰金であつたのが五千円に十倍に高まつたのと、それから今までは懲役いわゆる体刑が全然なかつたのでありますが、これに対して二年以下の懲役という体刑を新しく入れたという意味で、いわゆる刑罰そのものが高められたという意味でありまして、罪そのものの猥褻の意味がかわつたというのではないのでございます。
#50
○今野委員 先ほど松本君と同様の質問をして、まだそのお答えを得てなかつたのでありますが、大体松本君の質問に対する政府委員のお答えで、おおよそのことは了承いたしましたが、念のためになおちよつとお伺いしておきたいと思います。それは元來新聞紙法を廃止することによりまして日本の商業新聞は全面的に自由になるということが――これは從來でもあつたのでありますが、はつきりと確認されたわけであります。しかしその内容についてつぶさに考えてみまするに、元來日本の新聞というものは、世界に非常に特殊な地位を占めておると思うのであります。たとえば、アメリカにおいては一九四六年三月現在の数字でありますが、新聞紙の総発行部数は四千八百七十五万部であります。新聞社の数は大体二千二十社というふうになつておりますが、それに対して日本では新聞紙の発行部数はそれの半分よりちよつと下の二千万部であつて、しかも新聞社の数は百五十四社というように十分の一以下でございます。從つて一社当りの発行部数について見ますと、アメリカにおいては平均二万四千であるのに対して、日本においては十二万九千というふうになつておる。しかもこの百五十四のうち大多数のものは小さいのでありまして、ごく少数のものが特に大新聞社といわれるものである。從つて言論は完全に自由でありますが、実質においては、その数社の言論が非常に重きをなすということは、これは國民の常識でございます。從つて私ども法律の上で言論が自由にされておることはけつこうだと存ずるのですが、同時に実質的には、その数社の新聞社の意向によつて輿論が強力に指導されるということは、認めざるを得ないのであります。これに対する手段といたしましては、戰後特に日本の社会が民主化の道を歩み続けるのに際して生れました各種の民主的な團体、政党、こういうものの活動が非常に大きな役割を占めることは言うまでもございません。これが輿論を十分に指導しなければならないことになるのであります。しかるに四月四日に政府は政令をもちまして、新しい憲法においてはつきりと認められておる結社の自由に対する制限を意味するような團体等規正令というものを出しました。このこと自身が國会が開会されておる際に、それがなされておることは、私どもはつきりと憲法に違反した行為ではないかと考えておるのでありますが、特に出版、新聞に関する点についは申しますならば、その中でさつきのような届出についての制度がやはりあるということ、これは直接には檢閲ではないとしても、大いに民主的な團体の活動に制約を加えるものである。こういうふうに考えるものでありまして、その点やはり先ほどの御意見もありましたが、これははつきりと取除くべきである。私どももちろん團体等規正令そのものを廃すべきであると考えるのでありますが、特にその中の出版、新聞に関する條項を即刻これとともに取除くべきである、こういうふうに考える次第でありますが、政府の御意見をお伺いしたいと思います。
#51
○吉河政府委員 御質問の趣旨に簡單にお答えします。團体等規正令は、御承知の通り勅令百一号をもつて改正したものでありまして、この勅令百一号及び團体等規正令は、いずれも連合國最高司令部が日本政府あてに発しました一九四六年一月四日付の覚書によるものでありまして、現下のわが國といたしましては、この覚書の趣旨を実現せざるを得ない立場に置かれておるのであります。そのような事情をもちまして、勅令百一号が公布施行され、さらに今般連合國最高司令部の口頭の要求によりまして、これの全面的な改正として團体等規正令がポツダム政令の形式をもちまして公布施行された。團体等規正令によりまして、初めて結社の自由を制限したのではございません、勅令百一号によりまして、すでにこの制限が置かれておるのであります。またこの政令の内容が日本國憲法に違反するやいなやの御質問に対しましては、先般法務総裁が当國会におきまして御発言になりました通り、憲法違反なりやを論議する余地のない筋合いのものであると考えておるのであります。また團体等規正令に新たに設けられました第九條の機関誌紙届出につきましては、先般御答弁申し上げました通り、これはあくまで、團体の國民公開主義を徹底するものであり、いやしくも政治的な活動をする團体は、その内容を國民に公開して、國民の理解のもとに民主的な活動をされ、もつと日本の民主的な再建を達成するようにするのが建前になつておるのでありまして、決して出版の自由そのものを抑圧するために置かれた規定ではないのであります。從いまして御質問の通り、これが運用につきましては、國民・個人の基本的な人権をでき得る限り阻害しないような運営する考えでおりますので、御了承願いたいと思います。
#52
○今野委員 ただいまの説明のうち、前半につきましては、何か憲法を超越したものであるというようなことであり、また後半の九條の説明におきましては、これこそが團体の公開主義を徹底せしめるためのものであるというふうで、何か矛盾を感ずる。あとの方からいえば、これはむしろそれがためになるものだというふうに聞えるので、非常に矛盾を感ずるように覚えるのでありますが、私は願わくばその後者のようなことがわれわれ日本國民の必要に基いてなされておるというふうになりたいと思うのであります。從つてこの團体等規正令というようなものがかりに必要であるとすれば、それは國会が開かれておる際でもあるし、それが当然國会において論議され、その上で成立すべきである、こういうふうに考えるのであります。なお念のために申し添えておきたいと思うのでありますが、この九條による規定のような、そういう團体公開主義というようなものは、当然これは政府の命令によつと行われることは恥である。それはむしろ各團体の自発的な氣持からそういうふうにならなければならない。それでない以上、その意思に制限を加え、これに圧力を加えて、それによつて初めて公開主義がなされる、こういうようであつては、民主日本というものはいつまでたつてもでき上らない、こういうふうに考えるものでありますが、その点については、いかがお考えになりますか。
#53
○吉河政府委員 國会開会中である本年四月八日に、しかも政令の形式をもつて、かような重大な法規が公布施行せられた点につきましての御質問でありまして、ごもつともなことと思います。しかしこれは連合國最高司令部より、ポツダム政令をもつてこれを公布施行することが口頭をもちもして要求せられたのであります。かような事情からして、前の勅令百一号がポツダム勅令をもつて施行せられたと同じ意味合いから、これをポツダム政令として公布施行したのであります。また團体等規正命令全体は、この間申し上げた通り、これが日本國憲法に牴触するやいなや論議の余地のないものでありますが、その個々の規定の運用実施につきましては、現在の日本國憲法によつて認められた個人の基本的人権をでき得る限り抑圧または侵害しないように運用して行くのが、また私どもの立場でもあると考えておるのでございます。また國民が個人として自発的に團体公開主義の趣旨に協力されることは実に望ましいことでありますが、他面政府の立場からは第九條のような規定を設けまして、これを奨励するということもまた必要であると考えておるわけであります。
#54
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、本日の連合審査会はこれにて散会いたします。
    午後零時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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