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1949/04/16 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第5号
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1949/04/16 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第5号

#1
第005回国会 労働委員会 第5号
昭和二十四年四月十六日(土曜日)
    午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 倉石 忠雄君
   理事 角田 幸吉君 理事 三浦寅之助君
   理事 吉武 惠市君 理事 前田 種男君
   理事 川崎 秀二君 理事 春日 正一君
   理事 島田 末信君
      麻生太賀吉君    大橋 武夫君
      小淵 光平君    青野 武一君
      柳原 三郎君    土橋 一吉君
      石野 久男君
 出席政府委員
        國家地方警察本
        部長官     齋藤  昇君
        法務廳事務官
        (檢務局長)  高橋 一郎君
        商工政務次官  有田 二郎君
        労働政務次官  山崎 岩男君
 委員外の出席者
        專  門  員 濱口金一郎君
四月六日
 委員中原健次君辞任につき、その補欠として石
 野久男君が議長の指名で委員に選任された。
同月八日
 委員青野武一君辞任につき、その補欠として佐
 々木更三君が議長の指名で委員に選任された。
同月九日
 委員佐々木更三君及び伊藤憲一君辞任につき、
 その補欠として青野武一君及び土橋一吉君が議
 長の指名で委員に選任された。
同月十二日
 委員川崎秀二君辞任につき、その補欠として園
 田直君が議長の指名で委員に選任された。
同月十三日
 委員園田直君辞任につき、その補欠として川崎
 秀二君が議長の指名で委員に選任された。
同月十六日
 川崎秀二君の補欠として川崎秀二君が理事に当
 選した。
    ―――――――――――――
四月八日
 接客業に対する労働基準法第四十一條第三項適
 用の請願(畠山鶴吉君紹介)(第二三三号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 労働事情に関する件
    ―――――――――――――
#2
○倉石委員長 ただいまより会議を開きます。
 この際お諮りいたします。現在理事が一名欠員になつておりますので、理事の補欠選挙を行わなければなりませんが、これは前会のごとく委員長より指名いたすことに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○倉石委員長 御異議がないと認めますから、川崎秀二君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○倉石委員長 次に前会に引続きまして、労働事情に関する件を議題といたします。春日正一君。
#5
○春日委員 一番先に商工省の関係で伺います。この間私賃金遲配の問題で、本会議でも質問したのですけれども、その後もそれが緩和するという方向でなくて、ますますひどくなつて來たという状態になつております。しかもその一番大きな理由になつておるのは、やはり金融が詰まつておるという面、手形を持つて行つても割れないというような面、もう一つの面は、品物が売れなくなつた、あるいは締められて來たということで、見通しが非常になくなつて來ておる。そのために遲配が起つて來たというような状態になつておる。こういう状態について、商工省としてどういうような処置を考えておられるか。まずこの点をお伺いしたい。たとえばもう一つの点では、メリヤスなんかにも最近出ておりますけれども、まだ三十台以下の機械しか持つていない小さなところには割当をやらぬ、三十台以上に整理するという問題が起つて、メリヤス業の関係でも、そういう面からやはり賃金の問題が出ておるというような状態になつておる。こういう間の事情から説明をしてもらいたいと思うのです。
#6
○有田政府委員 春日君の御質問にお答えいたします。
 企業三原則あるいは経済九原則、ドツジ・ラインに沿いまして、商工省所管の業務の上にいろいろな支障がありまして、特に金融の面におきまして、赤字金融が企業三原則で認められなくなりましたために、各企業とも金融が逼迫いたしておるというのは、春日委員の今お話の通りであります。要は放漫政策を引締めて、企業の合理化をいたすよりほかに方法がないのでありまして、この面に向つて商工省としては、各地方の商工局を通じて、そういつた指導をただいまさせておる次第であります。特に賃金の未拂い、あるいは不拂いにつきましても、これは一番優先的に支拂われなければならぬものでありますので、この点もそういう指導をさせつつあるのでありますが、事態は今春日委員のおつしやる通りの状態に漸次廣がりつつあるということを、商工省としては非常に遺憾に思つておる次第であります。
#7
○春日委員 そうすると、商工省としては、そういう事態に対して、廣がりつつあることは非常に遺憾だ、しかしこれは政府の政策だからしようがない、という見解に立つておられるということですが、そのためにさしあたつて私ども問題にすることは、この間の本会議でも言いましたけれども、なるほどしかたがありませんということを言つて、一應筋が通つたような、通らぬような答弁になりますけれども、現実の問題は、きようあすの飯が食えるか食えぬかという眞劍な問題になつておる。そういう問題を、たとえば失業対策というような面と並行なしに、企業を整理して金融を引締めるということだけを先にやつて行くということによつて、経済がますます混乱するし、國民生活も惡くなる。この間本会議で青少年云々ということが問題になつたけれども、そういう犯罪も多くなるというような状態がつくり出される。そういうことを三原則だからということで――三原則をやつて行くなら、やつて行くように、そういう犠牲の出ないように政府はうまく均衡をとつてやつて行かなければならぬ、それがとれていないのかどうか。
#8
○有田政府委員 商工省としては最善の努力をいたしまして、企業の合理化に邁進するという線に沿うてやつておる次第であります。
#9
○春日委員 そうすると、合理化という場合、さつきのメリヤス企業の例のように、小さなものはつぶしてしまうという形で、合理化して行くという方針をとつておるわけですか。それとも小さなものに対して、どういう具体的な処置をとるか。
#10
○有田政府委員 メリヤスのお話が出ましたが、御存じの通りメリヤスの原料は綿であります。海外から占領軍の御指示によつて入つて來ておるのでありまするが、経済九原則によつて集中生産制が今日とられようとしておる。從つて中小企業のあり方につきましては、われわれといたしましても、非常に頭を悩ましておる問題であります。しかしながら要は原料を入れていただいておるという建前から行きましても、やはりこの與えられた至上命令である経済九原則の線に沿うて、しかもなお中小企業をあらしめる方向に最善の努力をいたす以外に道がないのであります。その点で商工省はその線に沿うて進みつつある。かように御了承願いたいのであります。
#11
○春日委員 そうすると結局、集中生産という方向でやつて行くよりやむを得ないということになるわけですけれども、そういうことになると、民主自由党が名前にも示しておる通りの自由経済というものと、これは逆行をした方向だ、民主自由党は自由経済という看板を捨ててしまつたというように理解していいか。
#12
○有田政府委員 どの政党といえども、占領下にある限りは占領軍の方針に從わなければならぬ。民主自由党が自由経済移行えのあらゆる努力をするということは、國民に公約いたしておる点でありまして、この與えられた企業三原則、あるいは経済九原則、ドツジ・ラインの線におきましても、なおわれわれは統制をできるだけはずすという線で、今日公約の線に沿うて最善の努力をいたしておるのであります。しかしながら、われわれの努力の及ばない点は、すなわち至上命令として與えられた政党といえども、この線には沿うて行かなければならぬことだろうと私は考えるのであります。從いまして私どもは、與えられたテーマの中で許す範囲内において、民主自由党の政策を強行いたしたい、かように考えております。特に中小企業のあり方につきましては、民主自由党の國民の公約しておる点でありまして、この條件の中において、できる限り中小企業をあらしめたいというので、今日非常な苦心を続けつつあるのであります。いずれそれぞれの状態においていろいろな問題も生れて來ますけれども、その與えられた経済九原則、企業三原則というわくの中におきまして、民主自由党といたしましては、また商工省といたしましても、でき得る限りの努力をいたしておる。かように御了承賜わりたいのであります。
#13
○春日委員 大体わかりましたけれども、そういう努力がただ努力をするということでなく、具体的に効果の出るように、しかもそういうことをやる場合、失業者が出るというなら、必ず失業の対策、困窮者が出るというなら、必ず困窮者の対策というものとマツチさせてこれをやるようにしてもらいたいと思うのです。
 次に國警長官がおられるようですから、最近の労働運動の取締りについてお聞きしたいと思います。最近警察が非常に労働運動あるいは大衆運動に対して、目に余るような手の出し方をするという事件が方々に起つているわけです。たとえば一昨年あたりのメーデーだと、警察なんかあまり出なかつたけれども、最近は何か大衆集会があると、何百人という警官が六尺棒に持つて出て來るというような状態になつている。そうして特に最近豊和工業の問題、東芝の川岸工場、あるいは加茂工場の問題というようなことで、非常に警官がたくさん動員されている。あるいは取締りに出るというような状態も出ておる。こういう大衆運動というものに対する國警本部の考え方、これからお聞きしたいと思います。
#14
○齋藤(昇)政府委員 大衆運動の取締りにつきましては、私の考えといたしましては、警察の力をもつてさような運動を弾圧する、あるいはこれに何らかの力を加えるという意図は毛頭持つておりません。ただこれらの運動によつて起るであろうところの違法な行為、あるいは不法な行為、これは十分取締つて行く、かような考えでございます。
#15
○春日委員 違法な行為を取締るという趣旨は、非常にけつこうでありますけれども、実際起つておるところを見ると、労働者の側だけの違法が不当に取締られておる。資本家側の違法がほとんど目こぼしされているというような事例がたくさんあるわけです。たとえば豊和工業の場合なんかでも、裁判所でも一應組合の事務所使用権の確保、労働協約が有効であるという判定を下しておるにもかかわらず、資本家がこれに対して組合事務所の出入りを妨害しておる。あるいは木刀を持たした警備員というようなものを出させて、私的警官を使つて、これを追い出すとか、そういうようなことをやつておる。そういう資本家側の暴行行為に対して、その資本家があげられた、あるいはそういう暴力行為をやることはいかぬということで、警察にとめられたというような場合が少しも聞かされたというような場合が少しも聞かされない。かえつてそういう暴力行為にあつても、一應認められたその事務所の使用権を守ろうという組合側の行為が、違法であるというような形で、弾圧を受けている。こういう事実について、一体資本家側のそういう違法をなぜ取締らぬかということについて伺います。
#16
○齋藤(昇)政府委員 資本家側といえども、資本家側に暴力行為があり、あるいは傷害事件を起したというような場合には、警察は断固取締る方針であります。
#17
○春日委員 事実取締つていないのです。たとえば豊和工業の場合なんか、そういうことが盛んに行われて、これが争議閣の側から警察に申し出されておつて、それが取締られていないというような事実が出ておる。ただ取締る方針でありますでなくして、実際取締られてないのです。こういうものをどうするか。
#18
○齋藤(昇)政府委員 例にあげられました豊和工業の資本家側の違法行為、あるいは、ことに暴力行為がどんなぐあいであつたか、私は詳細に承知いたしておりません。取締るべき必要のあるものであれば、十分取締るべき問題でありますから、留意いたしたいと思います。ただ豊和工業は自治体署の所在しておるところでありますので、これは自治体の責任においてやつておるわけであります。もちろん二月十一日の事件には、國家地方警察が應援に出かけましたが、これはあそこの自治体の公安委員の管理下において、行動をしておるのであります。自治体の公安委員に対しましては、國家警察は何らの指揮、命令あるいは威力を加えることができないのであります。その点は御了承願います。
#19
○春日委員 指揮命令は加えられないということですけれども、それではそういう指揮命令の加えられないものを、應援してくれといえば、事態かどうあるかというようなこともわからずに、國家警察から非常にたくさんな人間を應援に出してやるというようなことをやつていいものかどうか。自分の管轄でないものが應援を求めて來た。しかもその應援を求めて來たものの当不当がはつきりわからぬのに、應援をどんどん出してやるというようなばかげたことをやつておるのはどうか。
#20
○齋藤(昇)政府委員 應援を求められました場合に、その應援に行く所に違法するであろうという予想が、自治体署の意見の通りという予想が、自治体署の意見の通りというように考えれば、当然應援に参らなければならぬのであります。虚構なる事実を構えて應援を要請せられた、かような場合には應援に行かないこともありましようけども、大体は應援要請がありますれば、そういう事態があるものと、こう考えるのが当然だと思います。
#21
○春日委員 そうすると、言今つたように、自治体警察の責任でやつたと言うけれども、考え方として、國警の方でも、自治体警察と同じ考え方でそれをやつたということになるわけではないですかね。
#22
○齋藤(昇)政府委員 自治体警察が、從前の取締りにおきまして、あるいは片手落ちがあつたかどうか。片手落ちがあつた場合には、應援に行かないというようなわけには参らないと思います。私はもちろんその自治体署において、片手落ちの取締りをしておつたとは今申すわけではありませんけれども、さような仮定に立ちましても、現実にその日に担当な事件が起りそうだという予想で應援を要請されれば、当然應援に行きまして、その日に違法状態の起らないように、また起ればこれを鎮圧するようにやるべき責任を持つております。
#23
○春日委員 もつと別の方面から聞きたいのですが、違法なものは取締ると言うが、しかしその違法ということが常に取締られているか。たとえば今商工大臣の方へもお聞きしたのですが、賃金遲配というようなことは、明らかに二十四條の違法である。しかもこれが原因は、個々の企業者の責任において出て來たものでないし、片がつかぬということで、結局その二十四條の違反ということも、そのまま黙認のような形になつておる。こういう場合を考えてみると、二十四條違反ということで、それを徹底的にやれば、日本中の企業がみんなぶつつぶされてしまう。自分の責任でないといわれる資本家が、罰金をとられる、あるいは懲役に行くというようなことになつてしまうということで、これがやられていないのである。だから問題は、そこに出て來る現象、そういうことが常に対象になつて、そこでとにかく法的に解釈すれば違法という名目がつくんだから、違法にするというような考え方。たとえば税金の問題その他についても、税務署に押しかけて行く。そうすると入つちやいかぬと言う。入つちやいかぬと言われて、それでも入つたらこれは家宅侵入だ。あるいは大きな声を出したら、脅迫だというようなことを名目にしてひつぱるというようなことが行われているけれども、そういう目先のそこに出て來た行動、たとえば私がここでだれかにばかやろうという言葉を使つた、その言葉が無礼だから、それが問題になるというような扱い方をして行くのが、国警の大衆團体に対する方針であるかどうか。この点……。
#24
○齋藤(昇)政府委員 労働問題につきましては、警察はできるだけ関係しないという健全をとりたいと思つております。從つて労働基準法違反でありますとか、これに類するような事柄については、できるだけ労働基準監督官の監督をもちまして、この告発、あるいはこの方面からの協力の要請というようなことのあつた場合に、警察が発動するのが適当であろうと私は考えております。警察が大衆運動、ことに労働問題に派生いたした事件に関係するのは、主として行動の伴うような不法行為、住居侵入でありますとか、傷害でありますとか、暴行でありますとか、こういうことのない状態において、すなわち法律の守られているという状態において、堂々と争議をやつてもらいたい、こういうような考えでいるわけであります。
#25
○春日委員 ところで、そういうことになると、結局労働者だけが人数が多いから、どうしても大きい声を出すとか、何とかいうことになつて來て、労働者だけ弾圧されるようになる。しかし実際には資本家の方で賃金の不拂いをしておくということは飯を食わせないことだから、賃金不拂いにしておいて、交渉委員は三人で來なさい、五人で來なさいと言つて、それで三人や五人で行つて、きようも金繰りがつかないと泣事を聞いて帰つて來る、あすもあさつても泣事を聞いて帰つて來る。そういうようにおとなしく交渉している間に、飯を食わないから死んでしまうという事態になつて來れば、どうしても従業員だけでなく、家族が子供を負ぶつてでも、とにかく社長のところへ何とかしてくれと言つて行かさるを得なくなる。そういう事態が起きて大大勢押しかけて來たら、これは乱暴になりそうだということで警察が押えるということになれば、結局労働者を、資本家と一緒になつて飯を食わせないで殺してしまうという結果になる。そういうことを認めるかどうか伺いたい。
#26
○齋藤(昇)政府委員 警察の力、あるいは警察のやり方だけで、すべての問題の解決はできないと考えております。またさような考えに立つことは、警察としても危險だと私は考えております。その点は労働基準監督官等の適当な監督、指導というものと相またなければならぬと考えております。
#27
○春日委員 原則論はそれでいいのですが、たとえば川岸の場所なんかと見ますと、裁判所の仮処分の命令が出たのは三月八日で、しかも三月九日の朝はすでに仮処分の執行が開始されて、それに千名もの莫大な警官が動員されている。三月九日の朝の五時までに來てやらなくてはならぬということになると、それ以前の八日のうちにそれだけの人間が召集されていなくてはならぬ。そういうことを考え合せると、会社と裁判所と警察とが事前に打合せをして、そして三月八日にこれを出して、九日の朝何時にこれをやるということを打合せをしてやつたというようにわれわれは判断せざるを得ないと思う。しかしそういうことを裁判所の手続としてやり、そして執行して行くという場合に、事前に相談してやることがいいことかどうか伺いたい。
#28
○齋藤(昇)政府委員 川岸工場の仮執行の点につきましてのお話でありますが、私はこういつたような裁判所の仮執行を行うにつきまして、労働者が多数集まつて、そして労働者の集團の力でもつて、この仮執行を妨げるということは、これは全然いけないことだと考えております。普通労働争議の場合に、労働者が相当多数集まつて、経営者側と交渉するということは、常態だと考えますけれども、この仮執行処分をする場合に、労働者の集まる余地を與えないで、執行処分をしてしまつたということについては、私は何ら非難を受けるべき点はないと思うのであります。ことに川岸の仮執行処分は八日に決定されまして、その夕刻執達吏から警察官の援助の要求を受けたのであります。現在に集まりましたのは九日の朝の午前六時でありまして、約六百名弱を集めたのでありますが、長野縣におきましては、数時間あればそのくらいの警察官は何時でも動員できるのであります。また川岸工場は事前からいろいろ傷害事件などがあり、またこれについての裁判所における裁判闘争が行われておりましたので、当該署長は絶えば川岸工場の労働争議の常態について、違法な事件が起るおそれはないかということに関心を持つておつたことは事実だと思いますし、これは適当だと私は考えております。
#29
○春日委員 今六百名と言つたけれども、私らの調べたところでは、さらにそのほかに予備三百名、あるいは看護婦三十名を待機させた。千名ぐらいの人間が動員されておる。この点は法務委員会でもあなたは認めなれたように聞いておりますが、そういうふうなたくさんの人間が集められた。しかも川岸工場には、そういう執行を妨害するような気配があつたというように言われるけれども、この問題については、すでに裁判所の判事でも、川岸工場の仮処分については、必ず組合の方と両方一緒にやるようにするということを言つておつて、しかもこれが一方的になされて來ております。だからこういう点を見ても、組合の方では一緒にやつてもらつて、法廷で白黒争うということを主にしておるのであつて、何も現場でけんかしようという態度には出ていない。むしろそういうふうに法廷ではつきり白黒争おうというのを、片方の言い分は聞かずに、片方の言い分だけ通してしまう。こういうことをやろうとするから、結局抵抗をみずから予想して、警察にも連絡して、そういうことをやらなければならぬようになつて來る。だからそういう点は、それを予想してやるということではなくして、これは執行吏が行つて執行できなかつた、それから警察を動員したつて遲くないと思う。それを何で何にもないうちに、警察に頼んでいきなり棒ぐいを立ててしまうのか。これは非常に乱暴なことです。このように自分の頭の中で乱暴なことがありそうだと考えて、事前にそれをやることは、明らかに労働者なり國民を、自分たちの敵として考えておる態度ではないかと思います。こういう点についてどういうふうに考えておりますか。
#30
○齋藤(昇)政府委員 川岸工場の労働争議を指導せられる方に、この仮執行を全然無風状態のうちに行わせるのだというお考えがあつたといたしますれば、署長との間にそういつた了解を十分得ていなかつたことを私は遺憾といたします。しかしながら当時署長がいろいろ入手しておつた情報では、あるいは場合によると、相当な仮執行の妨害行為が起るかもしれぬといううわさが頻々とあり、場合によれば、友誼團体もかけつけるかもしれないというような情報を聞いておつたようであります。仮執行が妨害を受けてから招集してもよくはないかというお話がありましたけれども、かような仮執行をするという場合に、一度妨害が起つて、そこにいろいろトラブルが起りますと、それが非常に大きくなつて参りますので、よけいに犠牲ができて來るのであります。静岡の三島製紙工場における例はその最適例だと思うのであります。こういつたようなものはできるだけ未然に防止できる方が、どちらにとつても望ましい、かように考えておるものであります。
#31
○春日委員 未然に防止するということは、警察力で押えることではない。先ほど商工次官に私も言いましたけれども、賃金を拂わないとか、あるいは工場をつぶしてしまうというようなことをやつたら、労働者はどうなるか、家族はどうなるか。そういう先を考えられて、こういうわけでつぶさなければならぬから、と言われれば、だれでも納得する。ところがそうではなく、ただ工場を閉鎖するとか、あるいは賃金が拂えないということで、その先の飯を食う問題をちつとも考えていない。だれだつて、飯を食わなければならぬから、工場にしがみつくということになつて來て、当然そこにトラブルが起る。起るのは、結局起させる方が悪い。人間に飯を食うな――それが簡單な生活に影響のない問題ならともかく、飯を食うな、おとなしく食わずにおれ、というようなことは、人間は生きものであるから、できるはずがない。それを同じ政府の中で、商工省は、賃金遲配は三原則があり、九原則があるから、努力しているけれども、事態はますます悪化する、非常に遺憾であるということを認めている。商工省はそれを認めている。しかも一方の同じ政府部内の國警なり、裁判所なり、そういうものは、今度は法律があるから、工場閉鎖をするなら閉鎖しなければならぬ、お前たちは死んでしまえという形で押しつけていることは、政府のやり方の中に矛盾がある。そういうものが政府機関の動きの中に出て來ている。片つ方はできませんと言い、片つ方はそのできない無理をやれと言う。そういうことで國民をいじめることが、あなた方の趣旨に合うものか。もし趣旨に合わぬとすればどうするか。この点はつきり聞かしてもらいたい。
#32
○齋藤(昇)政府委員 春日委員のお話の問題は、これはさような工場閉鎖の仮執行の判決をすることがいいかどうかという、裁判所の問題にかかつていると思います。一たび裁判所の判決がありましたならば、この判決はどこまでも平穏に、適正にその通り執行されなければ、法治國の秩序は保てないと私は考えております。その点は御了承いただきたいと思います。
#33
○春日委員 大体私は聞いておつて、やはりおつつけつこしているという感じがいつでもするのです。各省各部門で、これは私の部門だからやりました……。そうして責任のかかつて來る分は、これは法務廳の分担だとか、裁判所の分担だとか、労働省の関係だ、と言つて逃げてしまう。これでは日本國民はやりきれぬ。高い金を出して職員を雇つているのに、責任の問題になつて來ると、これは私の管轄ではないと言つて、みんな他に押しつけて逃げている。これは同じ役所の人間だから、専門の分化ということはあつても、お互いに連絡、話合いはやはりやつておくべきだ。やはりそういう点では、今後労働運動、大衆運動、ことにメーデーなんかも近づいて來るけれども、ああいうときに、むだな人間を動員して、大阪の場合のようにトラブルをむしろ挑発することのないように、やつてもらいたいと思います。
 次に今度は労働省の方にお聞きしたいのですが、地方の労働行政の監督についていろいろ問題があるわけです。たとえば山口縣の問題ですが、あそこで占領軍関係に労務者が働いておつて、婦人なんかも使われている。ところが、從来は徹底その他病気の檢査のために、血液檢査をやつておつたのだけれども、しかし、これが局部檢査をやるようになつて來た。そこでそこに勤めておる婦人の中では、そういう局部檢査というようなひどいことは、女として耐えられないというのでこれに反対した。そうしたら反対をしたという理由で、首を切つたという問題が起つた。そこで労働省としてそういう婦人労働省に対して、働いておる人間に対して、局部檢査をやらせるということをやめさせる考えがあるのかどうか、この点をお聞きしたい。
#34
○山崎(岩)政府委員 春日委員の質問にお答え申し上げます。ただいまの出口縣に起きましたところの事件は、私の目から見て、決してそれは喜ばしい事件ではないのでありまして、不祥事件と言わなければならぬような事態と考えます。労働省といたしましては、労働者の権利というものは十分保護されておりますので、その法律が正直に守られるようにするのが、私どもの考えでございますので、どうかそういう誤解のないようにお願い申し上げたいと思うのであります。ただ、ただいまの御質問でございますが、それは関係の方面に生じたことでありまして、遺憾ながらこれは労働省の方の監督も、指導の方も行き届かない点があるわけでございます。どうかその点ひとつ御了承願いたいと思います。
#35
○春日委員 この問題は結局向うの問題だから、労働省としてはどうにもやりようがないというわけですか。それとも山口だけにこういうことが起つておれば、そういうことをやめさせるように、労働省でやることができるのかどうか。
#36
○山崎(岩)政府委員 労働基準法の建前から申しますると、先ほど申し上げました通りに、決して人権蹂躙をするというようなことを認めるわけではございません。こちらの方がやるならば、決してそういうことはやらせる筋合いのものではないのであります。ただ向うの関係の突発的なことでございますので私どもの方の指導の行き届かなかつたこともありますし、また私どもの容喙することのできない範囲でもあるのでございます。私どもとしまして、なさなければならぬような場合には、そういうことは断じてさせません。させないだけの処置をとりたいと考えております。突発的なことは、どうか向うに関することでありますので、私どもとしては容喙することもできなかつたという点を御了承願いたい。
#37
○春日委員 この問題は大体労働省でもわかつておつて手は打つたわけですか。
#38
○山崎(岩)政府委員 わかつておりません。まだ詳細も聞いておりません。ただ春日委員からただいまの御質問を聞いただけでございます。
#39
○春日委員 それでこの問題に関連して、今度は基準局の問題が出て來ておるわけです。その局部檢査を拒んだ婦人が解雇されたという問題が起つておるわけです。そのほかにもたくさんの人が解雇されておりますけれども、この解雇について、基準法から行けば、当然予告手当というものも出さなければならないということになつて、その請求がされておる。ところが、基準局としては、当然それは基準法によつて拂うべきだという見解を持つておるのに、たとえば山口の縣知事は、それは出せないというように言つておる。たとえば占領軍の労務者だから、基準法の規定に從えないと言つておる。しかし占領軍の労務者でも――問題はこまかい山口の問題を言うのではなく、全國に動く占領軍の労務者がたくさんおつて、こういう問題が方々で起つておる。だから占領軍の労務者に対する日本の法律関係という点をはつきりさせたい。こういうことなんです。占領軍の方では、どこへだれを使うとか、どこへ女を使うというようなことは、どこへ女を使うというようなことは、向うで指定してやるわけだと思うのですけれども、雇うという面になれば、やはり日本の渉外局ですが、最近占領軍関係の労務を扱つているそういう方で雇つておるわけですね。だから雇用関係は日本政府との雇用関係であつて、使用する場合には占領軍がその人間を使つて行く、こういう関係になつておるわけじやないのですか。
#40
○山崎(岩)政府委員 お説の通りであります。進駐軍の労務省といえども労働基準法の適用はございます。從つて解雇の場合には三十日前の予告と、また手当等も出すことになつております。
#41
○倉石委員長 春日君、ちよつとお待ちください。國家地方警察本部の齋藤長官は時間の都合があるようですから、関連質問がありましたらお願いします。
#42
○土橋委員 ただいま齋藤長官の御説明を承つておりますと、違法な行為は取締るというお話でありまするが、川岸工場の例といわず、ほかの例でも同様でありまして、違法な行為というのを、あなたはどういう解釈をされておるか。労働組合法第一條の第二項の規定と、それから労調法の第六條、第七條の規定について私はあなたの御所見を承りたいと思う。なぜならば、違法な行為については、すでに労働組合法が適用されておる場合には、当然に刑法三十五條の規定は排除せられる。しかも川岸工場の場合は、労調法第七條の規定によつて、使用者側が工場閉鎖という裁判所の命令を受けて。それをあなた方は保護するという立場において、争議行為の手段として使われておるわけです。こういうことは労働立法の範囲においては、労働者側、資本家側双方においてやらすべきものであるのにかかわらず、國家警察の権威とその力をもつて、資本家側の諸君のために労働争議に関するお手傳いをしておる。こういう不祥事件を斎藤長官はいかように考えておられるか。この点を明確に答弁していただきたいと思います。なおあなたは現在の趨勢から考えて、労働組合法第一條第二項の規定をどういう範囲において解釈しておられるか、御所見を承りたいと思います。
#43
○齋藤(昇)政府委員 私は労働争議の場合におきましても、いわゆる暴行、障害、公務執行妨害というようなものは違法性を阻却しない、かように考えております。
#44
○土橋委員 それは現われた事象が傷害であり、器物毀棄であり、あるいは人命に殺傷を加えるという現象である。それだけをつかまえて、資本家側の利益のために、國家の裁判所の命令及び國家の司法警察、行政警察の機構が、争議行為の手段に使われておるというようなことについて、人民大衆なり、労働者大衆が、先ほど春日委員が仰せになつたように、飢餓と窮乏と非常な苦しみにあつても、それが手段に使われておることを承知の上で、あなた方はそういう國家の重要な実力を行使させる、こういう結論に相なるわけでありますね。
#45
○齋藤(昇)政府委員 暴行、傷害あるいは公務執行妨害の取締りによりまして、だれが利益を受けるかということは私の方は考えておりません。國民全体の利益保護を私は考えております。直接間接に、利益を受ける人、受けない人もあるかもしれませんが、私の方はだれが利益を受けるからやるとか、やらないとかいうことは、全然考えておりません。暴行があり、傷害があり、あるいは公務執行妨害があれば、これは鎮圧をしなければならぬ。かように考えております。
#46
○土橋委員 あなたの御説明によりますと、川岸工場の――何回も繰返して申し上げますが、これは争議行為の手段として、資本家側の諸君が裁判所の工場閉鎖に関する命令を受け、しかもそれに関する保安的な、あるいはそれに関する防衛的なために警察が動員せられた。その事態については、だれの生命、身体、財産の危害かしらぬけれども、そういう事実が発生したということについて、警察の本來の使命に從つてそれをやつただけだ。こういうただいまの御答弁のように承りましたが、その本質的なものは、そこで使われておる八百名なら八百名、六百名なら六百名の労働者諸君の労働争議の問題に関して、警察が手段に使われておるというようなことを、あなたは知つての、なおそういうような御説明であるかどうか、もう一ぺんお聞きしたい。
#47
○齋藤(昇)政府委員 私は争議該当の経営者側、あるいは労働者側、どちらの手段に使われておるかということは、考える必要はないと思つておるのであります。裁判所の仮執行の処分の判決がありましたならば、その判決は神聖なものであつて、判決通り執行されなければ、法治國の秩序は維持できない。かように考えておるのであります。
#48
○土橋委員 私はそういうお答えを求めておるのではないのであります。あなたの御答弁はピントをはずしておるわけです。よく私の言うことをもう一回聞いて答弁していただきたい。あなたはそういうような裁判執行の命令の場合は、國家の司法権の発動は神聖なものである。それに対する付属的ないろいろな生命、身体、財産その他に対する傷害を事前に防衛するために、警察は発動した。こういう御答弁に盡きておるわけです。しかるに――労調法第七條の規定をあなたはごらんなさい。その場合は、資本家側が労働組合との賃金遲拂いの問題に関する争議行為であるわけです。その場合に國家警察力が――裁判所の命令も同様であるが、そういう資本家側の利益のために使われておるということをあなたは承知しておつて――國家の大切な警察権の発動を、そういう労働階級全体の不利益、困難となることのために用いてあるということを、今の証言であなたは証明しておるわけである。民主自由党の方々もたくさんおられますが、こういう國家警察権を発動する齋藤長官の責任は、きわめて重大なものであると私は思う。そういうことをあなたは了解しないで、何も存じません。ただ起つて來るであろう事態について警察権を発動した。裁判所の命令である。裁判の神聖な保持することは法治國の原則だ。こういうむちやな議論が、この川岸工場に適用できるでしようか。あなたはもし良心あらば、そういう警察権の発動について、待つてくれ、労調法の第七條の規定を見ると、工場閉鎖の命令は、明らかに裁判所の命令を利用して争議行為に用いておるのじやないか。こういうことに國家の警察力を発動することはできないという見識があつて初めて、國家、國民、全人民の警察力が行使されているという証明と事実があるわけです。その事実に対してお答え願いたい。その前のことを私は聞いているのではありません。
#49
○齋藤(昇)政府委員 私は同じことを繰返すばかりであります。もし労働者側の申請によつて裁判所が仮執行の判決を下したという場合、その仮執行を資本家側が妨害するという場合は、やはり警察は、仮執行を完全に執行させるように出動いたさなければならぬと考えておるのであります。これがどちら側の利益になるかということは、私の方は考えておらぬのであります。
#50
○土橋委員 その件についてもう一回。そういうような、少くとも國会の労働委員会において、國会の議員諸君を侮辱するような、理論にも合わないし、本質にも合わない後答弁をなさることは、非常に私は遺憾だと思う。もう少し老調法第七條の規定を忠実に研究されて――労働組合法第一條の後段の規定を見るならば、そういう御答弁では警察権の行使についてはきわめて不十分である。しかも一方的な意図によつてそれが行使せられておるということは、きわめて明白なことでありますので、私は重ねて質問いたしませんが、そういう態度であるならば、これはゆゆしき問題である。もう少し警察権の行使については、慎重なる態度と、一般人民大衆のための警察であるということを念頭に置かれて、時來行使されんことを要望したいと思う。関連事項であるが、大阪の問題も同様である。大阪の鈴木警察部長の態度というものは、これは四月二日であつたと記憶いたしておりますが、その事件に関しても同様の事態が言えるのでありまして、将來こういう問題については十分研究せられ、また十分考慮せられて、警察権発動については慎重を期せられたいことを要望いたしておきます。
#51
○青野委員 齋藤長官に――法務廳の関係も同様でありますが、せつかく御出席していただいておりますので、この機会に、ほかの質問をさしおきまして、一番最初にお尋ねいたしたいと思いますのは、これは日本の炭鉱労働者の半ばを占めておりまする福岡縣の筑豊炭田の一部に起つた問題でありますが、その影響は、石炭増産の上に非常に大きい問題を投げておる問題であります。福岡縣遠賀郡香月町で、前の縣会議員のある人が、暴力團のために殺害をせられた。それの原因は、町有林の拂下げの不正問題に端を発したのでありまして、殺害せられた人は民主主義擁護同盟の会長であつた。いろいろな対立関係もあつたと思いまするが、この問題が非常に大きな影響力を持つておる。そしてこういうことが過去において、私どもの知つておりまする範囲でも、二十年間ぐらい日常茶飯事のように繰返されて來たのであります。由來香月町という所は、有力な代議士の諸君も出ておりましたが、沈黙の町と言われております。暴力行為に対して一つも町民の諸君は発言ができない。この問題があつたときに、福岡の有力な新聞記者が自動車で参つて、公正な報道をしたために、非常に生命の危險にさらされて、一里も離れている所に宿をとつて、その調査に行かなければならぬ。小倉の檢察廳の諸君は、命がけで調査をしなければならぬ、こういうような土地柄であります。それが遠賀郡、鞍手郡、嘉穂郡、田川郡等、筑豊炭田一帶にこの暴力行為を日常茶飯事のごとく繰返しておる人々が、裏面で非常に繁密な連絡をとつておりますので、労働組合は弱体化し、あるいは御用組合化して來る。戦闘的な労働組合の指導者は、常に生命の危險にさらされておる。たまたまこの問題の将來に大きな影響があるのであります。警察署長は七、八名の警察官ではどうすることもできない。これは一つの実例でありますが、私どもが昭和三年、五年、七年の衆議院の選挙をいたしまするときには、五、六名の諸君が、あいくちと棍棒で非常にひどい目にあいました。今代議士になつて出て來ました田代文久君は、数回にわたつて暴力団に狙撃せられた。炭鉱團管の問題のときには、水谷前商工大臣、鉱工業委員長伊藤卯史郎君等に対しては、二人とも暗殺團を組織して東京までつけねらわれた。そういうようなことで、事実か、事実でないかわかりませんが、とにかく正しいことを正しいとして率直に主張すると、必ず暴力行為がつきまとう。これは警察力の不足もありまするが、こういう事件が発生して、これは摘発、檢挙して嚴罰に処すということよりも、未然に防ぐという方法が今までとられておりません。警察力も、地方自治警察が非常に弱体化しておる。あるいはこれと密接な裏面的な関係もある。明らかに町有林の拂下げ問題は不正であるが、町民の諸君は一口もこれに対して抗議を申し込むことはできない。先頭に立つ者は常にこういう災厄がある。これに対して、私が巷間聞くところによりますると、関係筋も今度の問題については非常に重大な問題であるということであります。この問題について法務廳関係はもとよりでありまするが、國家警察本部長官として、この筑豊に巣を食うて、四、五十年間非常に大きな勢力を持つておりまするこういつた暴力行為を絶滅するためには、大体どういう御意見を持つておるか、生やさしいことでは根本的な解決はできないと思いまするが、放任をしておりますると、こういうことが常に繰返されるのであります。たとえば共産党、社会党の候補者が演説会をやりますると、あるいは遠賀川の堤防で自転車に襲撃を受けて、自動車はこわされてしまう、あるいはわれわれの同志が堤防に引きずり出されて、なぐり飛ばされる、演説会場になぐり込みをかける、白晝どすを持つて会場にあばれ込んで來る、こういうようなことで二十年間繰返されておる所です。その根は絶対に枯れておりまするが、これが労働組合運動の上に、石炭の増産の上に、非常に大きい影響を持つておるということを考えておりまするので、この点について國家警察本部長官としてのお考えを、ひとつこの機会に承つておきたいと思うのであります。そのほかに質問もありまするが、齋藤長官の関係がありまするので、これだけ一應御質問したいと思います。
#52
○齋藤(昇)政府委員 青野委員にお答えいたします前に、私は土橋委員に釈明をいたしておきたいと思いますが、私は労働委員会、あるいは國会を侮辱するというような意思は毛頭持つておりません。またさような言動をした覚えはないのであります。私は國会においてつくられましたる法律を忠実に執行するということが、國会に対する私の務めだと、かように考えておりますので、この点を解釈をいたしておきたいと思います。
 青野委員のお尋ねでありますが、御意見の通り、私は暴力團の存在ということは、これは民主主義國家の敵だと考えておるのであります。警察の一番力を入れなければならぬ点は、自由なる言論が、この暴力團的行為によつて抑圧をされるというようなことがあつてはならないということでありまして、われわれといたしましては、かような存在を一日も早くなくするということが、一番の緊要な事柄だと私は考えておるのであります。しばしば地方にもその旨を通じまして、暴力團狩りと申しまするが、暴力團の檢挙、これの一掃をはかつておるものでありますが、今もおつしやいます通り、なかなか根の深いものがありまするし、またわれわれといたしましては、暴力的な行為をしたという場合でなければ、これを処罰する道がないのであります。從來よくいわれておりまする、こういつたものの存在と、それから警察との腐れ縁というようなものは、私は今まで絶無であつたとは申しません。今日は絶無とは申せない。そういう因縁があるとすれば、どこまでも権力この関係をぶち切つて行くように指導監督をいたしまするとともに、いやしくも今あげられたような暴力的な行為があるという場合には、断固として檢挙をしなければならぬと考えておるのであります。一番われわれの困難といたしまする点は、いわゆる暴力行為に恐れて、一般の善良な國民の方々が、泣寝入りをされるということだと思うのであります。これはそういつた國民の方々とお互いに協力をいたしまして、國民の方にも強くなつてもらいまして、そしてともどもに力を合せてこの暴力團の一掃をはかつて行きたいと考えておるのであります。今あげられました香川町の事件も、私は非常に重大な事件だと考えておるのであります。ただ先ほども別の場合に申しました通り、自治体警察は直接私の方で指揮、監督というわけには参りませんので、自治体警察が暴力團と結託するというようなことが、万一あるといたしました場合、これは容易ならぬことだと私は考えておるのであります。しかしながら一般の民家の方々の協力により、また自治体には公安委員もあるのでありますから、それらの後援によりまして、一掃を期して行きたい。自治体警察から應援の要請がありまするならば、われわれの方は万難を排しまして暴力團狩りには援助えおし、協力したい、かように考えております。
#53
○青野委員 御答弁によつてある程度わかりましたが、もう一つだけ重ねてお尋ねいたしたいと思いますることは、この事件は公安委員をしている人の経営する炭鉱の從業員が、殺人事件を起した。それはその地方における非常に大きい勢力を持つておる人でありまして、それらの人と殺された人との間には、対立関係があります。それから、その大きな勢力を持つておりまする人は、その町の消防團長を勤めておる。町長は自分たちの身内から当選せしめておる。殺された人はたまたま町長選挙に敗れた人である。そして警察は十人足らず、こういう際には、大きい事件が発生したときには、自治体警察であるとか、あるいは國家警察であるとかいう差別なく、ただちに應急的な警備、あるいは檢挙をやる、これはやりの穂先で殺人事件を起したということでありますが、新聞社の諸君が自動車で乘りつけて行つて、公正な報道をすると、その報道によつてその新聞社の人を数十名の人が物色して、自動車ぐるみたたきこわすというような形勢が見えた。そうして子供に至るまで非常な大きな反感を持つておる。事件発生以來は、沈黙の町といわれておりました町が、今度は死の町といわれておる。檢察廳の人々がこれの調査に参りましても、ほんとうに命がけで行かなければならぬという常態であるということを、私はこちらに参りますときに関係者から聞いておるのであります。お尋ねしたいと思いますことは、こういう事件のあるときに、必ず連合軍から所得を禁止せられております刀であるとか、やりの穂先であるとか、短刀であるとか、ピストルであるとかいつたようなものが――個人的な推定でありますが、この二十数万の労働者諸君が働いておる炭鉱地帶には、相当量の武器が、これらの團体の諸君によつて持たれているということを想像するのであります。ところが石炭増産のために、最低生活もできないような気の毒な立場に立つておる労働者は、まじめな諸君が多いので、あいくち一本も持たない無防備な立場で、労働組合自身の健全な発達のために努力しておるのでありまするが、なかなかこういう勢力と対抗することが困難である。たとえば前機会で問題となりました大辻炭鉱の問題にいたしましても、暴力團の大きい勢力を持つている人が、あいくちを持つて大辻炭鉱に行つて、労働組合の幹部を威嚇して、そうして遂に炭管実行前に、ある有力者のところに大辻炭鉱の名義の変更がなされた。そうして労働組合あたりの幹部がぐずぐず言つても、われわれには團体の背景と武器があるのだ。團体協約が何ときまろうと、どういうことを要求しても、労働者の意思なんか問題にしておらないのだということを、前に代議士をした有力な人が、公然と言い放つておるというような土地柄であります。この武器を持つておるということが推定せられている以上は、事件を未然に防ぐには、まず違法である武器の所有――凶器を持つていることを相当嚴重に取締れば、ある程度事件を未然に防止することができるのではないかと思うのであります。最近頻々として起つておるのは、あいくち、ピストル、やりの穂先等でありまして、これは香月だけではありません。十五、六の実例を持つております。こういう点の自治体警察との緊密な連絡について、齋藤長官あるいは高橋檢務局長らはどういうようなお考えを持つておられますか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
#54
○齋藤(昇)政府委員 武器の民間における所得の摘発につきましては、平常からもちろん、たびたび武器の回收週間というか、摘発週間というものを設けてやつておるのでありますが、残念ながら、それだけ努力しておりますにもかかわらず、なお今例に述べられましたことく、またときどき一般の犯罪にも使用されることが多いので、申釈なく思つておるのであります。この点につきましても、暴力團狩りと同様に、最善を盡したいと思つておるのであります。これらのことにつきましては、自治体警察と緊密な連絡をとつておるのでありますが、これを探し出すということは完全に行きにくい実情にあるのであります。しかし力の及ぶ限り、努力してやりたいと思つております。
#55
○高橋(一)政府委員 法務廳といたしましても、暴力團の絶滅、あるいは暴力主義の否定ということにつきましては、非常に熱意を持つて当つておるのであります。この問題につきましては、警察とも緊密に連絡いたしまして、また檢察廳の手の許す限り、かなり積極的にこれを実行して参りたいと思つております。現に銚子の高寅事件なども最近起訴をされておるような次第であります。ただいまお話の香月町の事件は、詳細な事件をまだ承知しておりませんが、十分調査の上、最善の措置をとりたいと思つております。
#56
○青野委員 檢察廳が動いておることはよく知つておりますが、この問題について、國家警察が積極的に今日動いておるかどうかということを、もう一應承つておきたいと思います。
#57
○齋藤(昇)政府委員 國家警察も積極的に動いておるのであります。先ほども申しましたように、特に週間を設けて、この武器の隠置を発見するとかいうことをやつておるのでありまして、相当の成績を收めておるのであります。
#58
○土橋委員 関連して齋藤長官にひとつお尋ねしたい。私が最初申し上げたのは、労働組合法第一條第二項の規定、及び労働法第六條、第七條の規定から見てどうかということを聞いておるのであります。從つて、あなたもすでに研究されておると思いますが、末弘博士等の権威ある書物を一應ごらん願いたい。ただいまの御答弁の、國会議員及び國会を侮辱すると私が申し上げたゆえんはそこにある。もし法律を研究しての御答弁ならば、そういう御答弁はできない思う。労働組合法の第一條第二項の規定、労調法の第六條、第七條の規定を申し上げておるので、いま少し研究して御答弁願いたい。これは労働委員会でありますので、労働委員会に対する國家警察本部長官としての答弁なり、所信というものは、おのずと違うわけであります。ここでいろいろ労働立法について申し上げなくても、あなたも御記憶の通りに、從來の法律関係と多少関係のある分野も異なるということがあるので、私はその点の真意を聞いておるのでありますから、そういうものに対して正しく把握して答弁をしないということは、あなたの不勉強を物語るものでありまして、それが國会議員及び労働委員会に対する侮辱であるということを申し上げたのであります。十分研究して答弁していただきたいと思います。
#59
○川崎委員 私が去る十三日、外務委員会でお尋ねしました朝鮮人の集團暴行事件――深川事件と称せられるものの内容について、その後警視総監からいかなる報告を受取つておられるか。新聞紙の報ずるところによれば、迅速なる処理も行われておるようであるけれども、なお相当各所にたむろして集團的な反抗事件が起つておるというふうに聞いておるのですが、その後の報告はいかになつておりますか。
#60
○齋藤(昇)政府委員 警視総監からは一昨日報告を受けたのでありますが、一昨日でしたか、一昨々日でしたか、六名の暴行容疑者を逮捕いたしましたので警備は一切解いた。ただなお相当容疑者があるので、一個分隊ずつをあの近辺の署において待機さしてあるのであります。自分としては、できるだけ迅速に事件を処理し、このために特に第三國人とか、あるいは問題を起すことを避けて行きたい、こういうように聞いておりましたので、私はそれは適当であると思つております。
#61
○川崎委員 この問題について、江東一帶が非常に不安な空気に包まれておるということを去る十三日に質問したところが、そのときには、そういうような形勢は見られないというふうに伺つたのですが、昨日、一昨日あたり聞いてみると、一般の人心が非常に不安に思つておるということを各所から聞きます。一体國会議員はあの川向うにはあまり行かない人たちが多いのですが、最近の情勢ではさらに險惡化しておつて、檢問所あたりの風景は、かつての上海における軍の檢問を思わせるようなものものしい状況であるということであります。これは事態きわめて重大であるというので、発言をしておされておるという事実はいなめない事実だと私は考えますので、事件があるなしにかかわらず、そうしたものの一掃のために、最善の努力を盡していただきたいと考えます。
#62
○倉石委員長 この際ちよつとお諮りいたしますが、本日はこの程度にいたしたいと思いますが――それでは本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
    午後零時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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