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1965/04/21 第51回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第051回国会 社会労働委員会 第25号
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1965/04/21 第51回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第051回国会 社会労働委員会 第25号

#1
第051回国会 社会労働委員会 第25号
昭和四十一年四月二十一日(木曜日)
   午前十時十九分開議
 出席委員
   委員長 田中 正巳君
   理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君
   理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君
   理事 松山千惠子君 理事 伊藤よし子君
   理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君
      伊東 正義君    大坪 保雄君
      大橋 武夫君    亀山 孝一君
      熊谷 義雄君   小宮山重四郎君
      坂村 吉正君    西岡 武夫君
      橋本龍太郎君    粟山  秀君
      山村新治郎君    淡谷 悠藏君
      大原  亨君    滝井 義高君
      長谷川 保君    八木 一男君
      本島百合子君    吉川 兼光君
      谷口善太郎君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 鈴木 善幸君
 出席政府委員
        法務事務官
        (人権擁護局
        長)      堀内 恒雄君
        厚生事務官
        (大臣官房長) 梅本 純正君
        厚生技官
        (医務局長)  若松 栄一君
        厚生事務官
        (薬務局長)  坂元貞一郎君
        厚生事務官
        (保険局長)  熊崎 正夫君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (主税局税制第
        一課長)    中橋敬次郎君
        文部事務官
        (大学学術局審
        議官)     木田  宏君
        厚生事務官
        (保険局国民健
        康保険課長)  信沢  清君
        専  門  員 安中 忠雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国民健康保険法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第五二号)
     ――――◇―――――
#2
○田中委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
#3
○河野(正)委員 国保の審議に入ったわけでありますから、私はこの問題を両面の角度から取り上げて、いろいろと大臣その他関係者の皆さん方の御見解を承ってまいりたい、かように考えます。
 そこで、かねがね言われておりますように、国保は適用者総数が四千二百万であり、これが全国民の四〇%に相当をいたしておるわけでございます。したがって、この国保というものが、日本の医療保険の中で最も大きな柱でございますることは、御案内のとおりでございます。しかるにもかかわらず、その中の四二%、千七百万というものは農業経営者である。それから一カ所得水準というものが非常に低い。平均年間の所得というものが、二十万円以下の者が大体五五%、こういったように非常に国保には条件があり、昨日いろいろの討議の中でも、それらを中心とする見解の論争があったごとくであります。そこで、もちろん私どもは、そういう国保についてはきのう調整交付金その他具体的に出ておりましたけれども、そういうような給付の改善をしていかなければならない、非常にアンバランスがあるわけですから。特に国保は、給付内容において非常に劣っておるというようなことで、改善をはかっていかなければならない。そこで、国の財政負担というような問題もございましょうし、また、いま申し上げましたように、いろんな行政処置というものが伴う。と同時に、そういう点についても逐次触れてまいりたいと思いますが、もう一つは、この国保を運営するにあたって、それの受け入れを行なうところの医療行政というものが、これまた非常に大きなウエートを持っていることは当然の理でございます。そこで、財政負担の問題、給付改善の問題という面からと、いま私が後段に取り上げてまいりましたいわゆる受け入れ態勢の問題、こういう二面からきょうはひとつお尋ねをして、率直な御意見を承りたい、こういうふうに考えます。
 そこで、きょうはいろいろございますから、まず最初に触れてまいりたいと思いまする点は、この受け入れのほうから触れてまいりたい、こういうふうに考えます。
 御承知のように、今日までいろいろ社会面をにぎわしてまいりました現在の医療のあり方、あるいは医療行政のあり方というものについては、御承知のとおりでございます。一、二例をあげまするというと、一つには千葉医大のチフス菌事件というものがございました。さらには八王子の精神病院事件というものが、これまた社会的に非常に問題化された。それからまた、日赤産院の乳児結核の問題、こういったいろんな問題が出てまいりまして、そうして病院管理の放漫性、あるいはまた運営の封建性、さらには医師のモラルの問題、こういうような点はいろいろ社会問題として爼上にのぼって、そしてかなり国民に対しましては深刻な影響を与えたことだと思うのであります。そこで私は、この保険問題を論議する場合には、一つには、先ほど私が申しましたような給付の問題、あるいは国の財政援助の問題等がございますけれども、やはりこういうふうな国保を運営していく、あるいは国保以外のいろんな医療保険を運営していく、その際における重要なもう一つの柱というものは、受け入れ態勢が問題でございますから、そういう意味できょうはまず後段の点からお尋ねをしてまいりたい、かように思うのでございます。
 そこで、はしょって申しますが、第一番目に私が取り上げてまいりたいと思います点は、いま申し上げましたような千葉大学におけるチフス菌事件あるいは八王子の精神病院事件、日赤の産院事件、こういうような諸問題がございましたが、私はそれらの問題と関連をして、具体的な問題について一点御指摘を申し上げてみたいと思います。
 大臣も岩手に出張なさって十分御承知のことだと思いますが、それは岩手県の県立南光病院、これは精神科専門の病院でございますが、この岩手県の県立病院でございまする南光病院におけるいわゆる人体実験、生体実験の問題がございます。これにはいろんな問題が伏在をいたしておるわけでございまするけれども、やはり医療保険という問題を論議してまいる際には、この診療行為というものが運営面においては一方の大きな柱でございますから、そういう意味で、私はこの問題もきわめて重大な問題として指摘せざるを得ないというふうに考えるわけでございます。そこで大臣も現地において、いろいろ実情にも若干お触れになっておるようでございますので、この岩手県立病院でございまする南光病院のいわゆる人体実験、生体実験について、どのように御見解をお持ちでございまするか、まずもってお聞かせいただきたい。
#4
○鈴木国務大臣 ただいま河野委員から御指摘がございました岩手県立の南光病院、精神病院でございますが、そこでてんかんの患者が入院治療中に死亡した事件をめぐりまして、いろいろの批判があるようであります。また、問題にされておる点があるようでありますので、私は岩手県に帰りました際に、この事件につきまして記者諸君から御質問がありました。非常な重要な問題として、私もさっそく事務当局に命じまして、詳細な調査をしてもらったわけであります。四月十一日に岩手県の厚生部長からその調査の結果の報告がございましたので、その内容をまず事務当局から御報告をさせたいと思います。
#5
○若松政府委員 ただいまお話のありました岩手県立南光病院は、県立の精神病院でございまして、精神病床が二百六十二床、結核病床が二十八床、合計二百九十床ございます。これにつきまして、職員は医者六名、薬剤師二名、薬剤助手三名、X線技師一人、看護婦、看護人及び看護助手合わせまして七十六名、その他の職員を入れまして百四十三名の職員を持っておりまして、医療陣並びに看護能力あるいは事務能力というような点では、かなり充実した病院であると思っております。
 今回問題になりましたエピアジンの使用によって患者を死に至らしめたのではないかというような疑問、あるいは新しい開発中の薬を人体実験をしているのではないかというような点につきましては、かなり詳細の調査をいたしました結果、エピアジンの使用については、病院側に特に落ち度と認めるような事態は見られないというふうに感じております。また、新薬の開発途中における新薬の実験につきましても、いわゆる人体実験というような性格のものではなくて、開発途中の薬で、しかもこの病院だけで使っておるものではなくて、方々の、大学等でも実験されております薬剤について、研究機関としてその臨床試験をやっていたという段階でございまして、これについても著しい落ち度はないものと判断いたしました。しかし、いささかの疑惑も招いてはならない医療機関の立場から、今後とも慎重に取り扱うように、また、実情については第三者の批判ということも必要でございますので、県の医療局当局が東北大学に依頼いたしまして、実情を客観的に判断していただくというような操作をやっておりますので、その結果を待ってさらに判断をいたしたいと存じております。
#6
○河野(正)委員 ただいまのお話を承りますと、厚生部長のほうからこのような報告がございましたということであるならば、それは一応私はそのままそっくり局長のお答えを承りたいと思います。しかし、いまの局長の答弁を承ってまいりますと、局長、政府みずからが、今度のいわゆる南光病院におきます人体実験、生体実験については何ら手落ちはないというふうに判断をした、こういうことでございますならば、私どもは、いまの答弁は全く納得するわけにはまいりません。特にこのエピアジンなるものが、臨床実験としてもうすでに各病院でもそれぞれ行なわれておる、そういう既成事実に立って手落ちがないというふうに御判断になるならば、それは私どもは納得するわけにまいりません。それならば、もうすでに読売新聞等でもいろいろ具体的に取り上げられておるようでございますが、このエピアジンを入院患者に対してどのような方針で、どの範囲においてやったというふうにお考えになっておりますか。いまの答弁が納得まいりませんので、特にそれらの具体的な点について詳細にひとつ御報告をいただきたい。
#7
○若松政府委員 エピアジンの使用につきましては、私どもさらに調査いたしましたところ、最近使用しております例は、四十年に使用いたしました例が二十九例でございます。このうち問題になりましたのが二例あるわけです。死亡例が二例あるわけでございまして、その死亡例につきまして、さらに詳細にその経過等を調査いたしました。
 一例を申し上げますと、梁川何がしという二十歳の男でございますが、この患者は、昭和二十六年にてんかんの診断を受けまして、二十八年には大発作が頻発して非常に乱暴になっております。三十年に南光病院に参りましたら、そのときも大発作が頻発して、三十一年に一時軽快退所いたしましたけれども、さらに退院後、同じように大発作が続いて乱暴の行為が続いた。そういうことで、三十七年四月二十六日に措置入院の手続をされております。南光病院に入りました当時、三十七年四月二十六日の状況は、主症状はけいれん発作、精神運動発作、拒絶性不きげん、言語不明確、てんかん性性格変化、てんかん性痴呆というような状態でございました。非常に重症のてんかんでございます。
 入院後の経過も、三十七年以来ずっと発作が続き、発熱等もあり、三十八年も各種の抗てんかん剤あるいはトランキライザー等を使用しても大発作、精神運動発作がほとんど静まらない。そして乱暴、性格変化が著しくなってきた。三十九年も同様で、発作が非常にひんぱんになり、精神運動発作等重積発作が引き続いて起こっております。四十年度になってからも各種の抗てんかん剤でもほとんど発作の抑制が不能でございます。そういう状態で、四十年の二月には一時重積発作が重なりまして危篤状態になりましたが、対症療法でようやく危機を脱することができた。それから五月には、さらにまた発作が非常に頻発し、衰弱が著しくなるという状態が続きまして、そしていかなる抗てんかん剤もほとんど効果がないというので、十二月の十七日から十九日までエピアジンを一日量約六百ミリグラム投与されました。しかし、このあとに肺炎を起こし、さらに摂食を拒否し、意識も混濁し、熱が弛張しておりまして、非常に重篤な状態が続きました。十九日の血液検査で白血球が四千五百五十という若干減少の傾向が見られたのでエピアジンの投与を中止いたしております。その後三月二十五日に至りまして突然高熱を起こし、これが中枢性の発熱を診断され、各種の治療を加えましたが、ついに死亡したという例でございまして、この例はエピアジンの投与は非常に短期間でございます。このような経過から見まして、非常に重症なてんかんであったために多少の副作用を考慮してもエピアジンを投与したもの、しかも血液白血球が四千五百五十ということで直ちに、エピアジンの投与を中止しているというような点は、かなり慎重にやったものではないかという感じをいたしております。
 また、もう一例死亡例がございますが、十六歳の女子でございます。これは三十四年の五月に発病し、九月に一時自宅療養をしておりました。県立病院に入院いたしましたのは三十三年の一月十七日、入院時の症状はけいれん発作、精神運動発作、阻止発作、周期性不きげん等著明なてんかん性の性格変化、てんかん性の痴呆の状態でございました。
 入院後も発作は一進一退し、七日から十日間ぐらい続く分裂病類似の精神症状を呈しております。各種の向精神薬を使用しておりましたが、これもはかばかしい効果がない。ただ、この例は、途中三十九年の二月に白血球が千九百という状態でございました。また三十九年十二月には白血球四千九百という前歴がございます。そういう前歴がありましたが、やはりこれは非常に高度の精神発作を繰り返したために、しかも各種の向精神薬がほとんど効果を認めないということのために、エピアジンを一月一日から一月九日まで九日間、一日量四百ミリグラム使用しております。この場合には、副作用と思われる全身発しん等が出ております。この発しんと発熱が続いて以後、各種の抗ヒスタミン剤、肝臓庇護剤その他をやりましたが、ついに二月二日ごろになりまして肺炎を併発いたしまして、二月二日ごろには白血球七百、四日ごろに四百五十というような状況になりましたので、結局この死亡原因としては、直接死因は顆粒細胞減少症、間接死因は肺炎ということになっている。したがって、この例も白血球が従来かなり少なくなっているという既往症がございまして、当然、エピアジン等の使用については慎重でなければならない症例であろうと思います。にもかかわらず、やはり各種の抗てんかん薬がほとんど効をあらわさないということのためにごく短期間使ってみた、しかし、その結果は、やはり白血球が非常に減少して死亡したというようなことで、これは適用としては必ずしも正確でなかったかということを考えております。
#8
○河野(正)委員 いま死亡患者の二例についての詳細な、いわゆる岩手県側の御報告があったわけです。ところが先ほど局長は、たいした手落ちはなかったとおっしゃるけれども、いまの経過を承っておりましても、たとえば〓川某なる患者の場合も衰弱がきわめてはなはだしかった。にもかかわらず副作用の非常に強い新薬を投与した、こういうところに一つ問題がある。それからもう一つ、十六歳の及川さんの御報告を承りましても、高熱が出ておった。それにもかかわらず非常に副作用の強いエピアジンを使用した。そこで、これは現地の院長も、確かにエピアジンの副作用があったけれども、しかし、実際には肺炎を併発して死んだんだ、こういう意味の談話があるようでございます。そうしますと、これは当然、てんかんというものは私どもも専門家でございますが、たとえ発作が起こっても、そのために死ぬという病状じゃないわけですね。ですから、だんだん発作が重なってまいりますと、勢い知能がだんだん劣っていくというようなことで、できるだけてんかん発作というものを押えていこうというのが現在の治療なんです。目的はそこにあるわけです。それに、いまのように、一例については非常に衰弱がはなはだしいのにあえて副作用の強いその新薬を投与した。それからもう一つの例は、高熱があったにもかかわらず新薬を投与する。そういう新薬を投与しなければならない状態に置かれておるかどうか。もし局長がそういうことを見ながら、たいした手落ちがないのだとおっしゃるなら、あなたは医師免許状を返上しなさい。あなたは医師の資格はありませんよ。やはり研究なりあるいはまた新薬の開発のために、ある程度の慎重な措置が行なわれれば、若干の実験というものを私は全部否定するものではございません。ございませんが、それらの開発について、あるいは研究については、人命に関する問題ですから、人道上の問題ですから、非常に慎重を期さなければならぬ。要は、いまたまたま二例の報告があったわけですけれども、この二例の報告を承っても、慎重を期しておったというふうに私は理解するわけにまいりません。あなたがいまのようなことを報告しながら、慎重を期しておったのだ、何ら手落ちがない、こういう御見解なら、残念でございますけれども、あなたは医師の免許状を返上してください。医道審議会にかけて返上されることが適当でございましょう。ですから、私はあとから四十数名の症例について、四十数名に対してエピアジン等をやっておるわけですから、それらについての見解を求めますけれども、いま御報告があった二例の症例を見て、少なくともこれは手落ちがなかったんだというふうな見解は、どこを押しても出てこぬと私は思うのです。私は基本的に言って、新薬の研究開発の場合に、慎重を期するならば、ある程度の実験というものは全面的に否定するものではございません。そういう前提に立っておりますけれども、いまのような処置が何ら手落ちがなかったということについては、私ども全く了承するわけにまいりません。いかがでございますか。
#9
○若松政府委員 全く手落ちがなかったということは申し上げませんので、病院側としても、てんかん発作があまりに続いて、どうしても、いかなる薬もこの発作を抑止できないということでエピアジンを使ったという、その気持ちの上では確かに同調できる点もございますが、ただいま先生御指摘のように、慎重の上にも慎重にやるべき医療、しかもエピアジンというものはすでにかなり強い副作用は周知のことでございますので、衰弱のある間は、ことに前歴に白血球減少症のある患者に投与したということについての不注意、慎重を欠いた点は重々認めざるを得ないと思います。全く手落ちがないというふうに申し上げたとすれば、これはまことに遺憾でございます。
#10
○河野(正)委員 私はずっと経過を述べながら、この問題がはたして慎重を期したのかどうか、あるいはまた、単なる人体実験なり生体実験というかっこうで行なったかどうかという点についての解明を行なってまいりたいと思います。
 そこで、このエピアジンというものは、厚生省が認可なさった新薬であるのかどうかですね、まずこの点を承っておきたいと思います。
#11
○坂元政府委員 エピアジン、これは御存じのように粉末と錠剤、両方あるようでございますが、この両者につきまして、私どものほうで三十九年の二月二十七日付で製造の許可を与えております。
#12
○河野(正)委員 そして何の理由でいつその製造中止を命ぜられましたか。
#13
○坂元政府委員 エピアジンといいますのは、御存じのようにてんかんの治療薬として、医学的にも諸外国のほうで代表的な医薬品として使用されているわけでございます。今回岩手県の南光病院のほうで、これに関連するような問題があるように指摘されているわけでございます。新聞紙上でエピアジンの回収をしたという記事が出ておりますが、これは私どもの厚生省のほうから回収を指示したわけではございませんで、製造メーカーのほうが自主的に回収をした、こういうのが事実でございます。その回収いたしました理由といたしましては、エピアジンにつきましては、先ほども申し上げましたように三十九年に製造許可を与えたわけでございますけれども、実際に発売をメーカーのほうでいたしましたのは昨年の十一月からでございます。そうしまして、これはいわゆるプロパーのほうから各大学等の研究機関に持ってまいりまして、大学でこの医薬品を使用してもらった際に、若干いわゆるエピアジンの効能書、添付文書というものの書き方が適切でないという点が、各大学等の研究機関からメーカーのプロパーに伝えられまして、そういう点がございまして、メーカーのほうではことしの初めごろからこの製品を一時回収して、添付文書をもう少し適切に具体的に表現を改めようということを計画していた
 やさきであったわけでございます。そういうやさきに、岩手県のほうでそういうような事故が起きたということでございまして、回収の理由は、岩手県の問題と別個に、添付文書、いわゆる能書の注意書きというものを適切に、具体的な表現に改めようということで回収したというのが実情でございます。決して、当局の私どものほうから岩手県の問題とからんで回収を命じたというような事情にはなっていないわけでございます。
#14
○河野(正)委員 そこで、お伺いをいたしたいと思うのでございますが、この南光病院には常時大体三百五十から三百六十名の入院患者が収容されておった。さっき局長は定床は二百九十ということでございましたけれども、非常にオーバーして収容されておったようでございます。ところが、ことしの一月ごろからてんかん性の患者に四十度近い高熱が出てくる。全身に発しんがたくさん出てくる。ところが、何で高熱が出て、何で発しんが出てきたかなかなか原因がつかめぬ。そこで主治医と申しますか、診療担当医は非常に憂慮をいたしまして、同じく県立の磐井病院の皮膚科の指示を仰いだ。そうしたら、この磐井病院、県立病院でございますが、その皮膚科のほうでも、何のために高熱が出てくるかわからぬ、何のために発しんが出てきたかわからぬということで、診療担当医がこの原因不明の高熱、原因不明の発しん症状に対して非常に憂慮した、頭を悩ました、こういういきさつがあるわけです。その間、ふしぎだ、ふしぎだと言っておる過程の中に、薬局長のほうから、どうも新薬が、ダブルブラインド方式か何かわかりませんけれども、やられたらしいというようなうわさが出てきて、初めて何らかの新薬がひそかに、秘密で投剤をされておったというような事情というものが明らかになってきた、こういうような経緯のようでございます。ところが、いま薬務局長の話によりますと、三十九年二月に厚生省が公然とお認めになって市販されておる薬です。そういうような厚生省、政府が認めて堂々と市販が許されておる新薬というものを、なぜ主治医にも診療担当医にも秘密にして投与しなければならなかったか。これがまだ開発の途上なら、あるいは――そういうことはわれわれ許せませんけれども、しかし、それはそれなりに私どもは一応理由はわかると思う。厚生省が認めて、しかも市販で販売を許されておりながら、なぜ院長が秘密で投与しなければならなかったか。私はここに非常に不可解な点があると思う。この点について厚生省はどういうふうにお考えになっておりますか、率直に御意見を聞かしてください。
#15
○若松政府委員 これは、私どもが県の南光病院の医師に直接聞いたのではございませんが、ダブルブラインド・システムの実験はいわゆる開発中のものにやっているので、エピアジンについては、ダブルブラインド・システムで投与したものでは一ないというふうに聞いております。
#16
○河野(正)委員 方式は、私はダブルブラインド方式であるかないかということは問いません。しかし、現実に病院長が、診療担当医と申しますか、主治医と申しますか、そういう者に相談せずに黙って投与しておる、こういう事実をどういうふうにお考えになりますか。
#17
○若松政府委員 院長が独自で、主治医に何らの相談もなし、指示もなしで、こういうかなり副作用の強いことの明らかな薬を投与したとすれば、これはまことに遺憾なことであると思います。
#18
○河野(正)委員 そういう事実を御承知なかったわけですか。厚生大臣は、現地で、十二分に調査すると現地の方々にお約束になっているわけでしょう。今日まで、院長が黙って投与したかどうか、そういう事実も十分御承知なくて、冒頭においてあなたは何とおっしゃいましたか。今度の処置というものはたいした手落ちはなかったとおっしゃった。そういう調査も十分せぬで、何らたいした手落ちはなかったというふうにあなたはおっしゃるわけですか。
#19
○若松政府委員 私ども、一人の主治医の話といたしまして、いや私は知っておりましたという証言を県の当局から聞いておりまして、それで主治医に相談なしに院長が独自でやったものではないというふうに理解いたしておるわけでございます。
#20
○河野(正)委員 それなら、なぜ原因不明の高熱が出た、原因不明の発しんが出たということで、別の県立病院の皮膚科の指示を仰がなければなりませんか。仰いでおるわけでしょう。ところがその際、エピアジンをやったということは明らかにしないから、県立病院の皮膚科においても、この高熱が何のために出たかわからぬ、この発しんが何のために出たかわらぬということで判断を行なっておらない、こういういきさつがございますね。そこで私は重ねて申し上げますが、その間エピアジンを投与したんだということが緊急医局会議の中で明らかにされて、これはたいへんなことだということで、そこで初めて解毒剤を与えたり、あるいはまたビタミン剤を与えたり、そういうことで急遽エピアジンを与え九患者の治療に当たっておるという経緯があるではございませんか。こういう事実をどういうふうにお考えになっておるわけですか。
#21
○若松政府委員 私ども入手しておりますエピアジン使用例二十九例の中で、十例に発熱と発しんがあったという報告でございます。したがって、確かに相当多数の副作用が出ていたわけでございますが、これを皮膚科の専門医がエピアジンの使用ということをはっきり承知していたかいなかったかについては、私ども承知しておりません。そういう意味で、エピアジンを使用する以上は、エピアジンの副作用の中に発熱、発しんというものが従来からすでに文献で明らかになっておるわけですから、当然その留意あるいは着意があってしかるべきものではなかったと存じております。そういう意味で、医師の注意が十分行き届かなかったのではないかという点を非常に遺憾に思っております。
#22
○河野(正)委員 かっての悪いところはおっしゃらぬようでございますけれども、この田中という病院長のいろいろな発言がございます。あなた、読売新聞をお読みになりましたか、その点わかりませんが、新聞記者も、田中院長とこの問題についていろいろ意見のやりとりをやっておるわけです。その際明らかになっておりますのは、いまあなたは二十九名に投与したということでございますが、実際には四十数名に投与してきた、こういうことが実は現地の病院長から言われておるわけです。そうしてあなたは、それぞれ医師に対して、院長がエピアジンの投与をするんだということを明らかにしておったような話でございますけれども、私どもが調査をした範囲においては、実はこの田中院長が新聞記者会見の中で、副院長に知らせておった、そこで副院長がそれぞれ主治医なり担当医に対して伝えておったというふうに私は理解をしておった、こういうことを現地の新聞記者会見で院長が直接話をしておる。ですから、そういう人体実験であったかなかったかということは別として、この問題は人命に関する問題ですから厚生省は慎重に扱わなければならぬ。これは人道上の問題です。にもかかわらず、どうも厚生省は、岩手県の医務局長ですか、厚生部長かわかりませんが、それらの発言をそのままうのみにして、何ら厚生省の立場で調査された経緯が、いまの発言の中で全然見当たりませんね。というのは、もうすでに新聞記者会見において、自分は直接医院の医局員に新薬を投じたということを言っておるのじゃないのだ、副院長を通じて言っておるので、副院長がたぶんそれぞれ医局員に伝えただろう、こういうことを語っておるわけですね。局長もあなたも、エピアジンというものが非常に強い副作用があるということをお認めのようでございます。ところが、三百五十名も六十名も入っておる病院でしょう。病院長が一々三百五十名、六十名の健康管理はできやしませんよ。大体病院長を除いて五名の医師がおるようでございますが、それらの医師が五十名から八十名の受け持ち患者を持っておる、こういう実情のようです。ですから、個々の患者の健康管理については、当然主治医が監視、監督する以外ないですね。その段階を除いて、そういう副作用の強い薬を与えてどういう変化が起こってくる、どういう影響が起こってくる、こういう監視、監督ができますか。できないでしょう。ですから、当然主治医に対して、この患者に対してはひとつやろうじゃないか、非常に強いてんかん発作があるからやってみようじゃないかというようなことを相談して投与することが、私は慎重な態度だと思う。そうすれば、さっき申し上げるように、主治医から、白血球が非常に減っておる、あるいは非常に衰弱しておる、これはやめておこうというような意見が当然出てきたと私は思うのです。主治医が良識のある医者であったならば、当然そういう意見が出てきたと思うのです。ところが、そういう段階を無視してやるから、結局一名は非常に衰弱状態がひどかった、それにやった。もう一名は白血球が非常に減っておった、それに対してもこういう副作用の強い新薬を投与した、こういう結果が出てきておるわけですから、どこから推してみても、慎重を期したとは言えませんよ。もしあなたが慎重を期しておったと言うなら、私は国民を代表してその疑問を解いておるわけですから、私を納得させてください。あなたが一方的に岩手県の厚生部長のおっしゃることをそのままうのみにしてここでおっしゃるならば、厚生大臣は現地で何と約束されましたか。厳重に調査いたしますと約束したじゃないですか。報告を聞くのが調査ですか。そういうことじゃないでしょう。それならば厚生省はどういう調査をなさいましたか、その調査について具体的にひとつ御報告願いたい。
#23
○若松政府委員 まず前段の問題でございますが、このような薬を投与する場合に、主治医の十分な理解と、そしてそれに基づく患者の十分な監視、管理のもとにやるのは当然でございまして、もしも院長が直接的に、あるいは主治医の理解なしにそのようなことをやったとすれば、これはまことに遺憾なことでございます。これらの点についてはさらに調査を行ないたいと思います。なお、現在の段階におきます調査は、私どもとしては、県の係員にすべ、ての資料をもってまず実情を明らかにすることを第一段階といたしまして、なお県当局が専門的な調査をいたしたいということで東北大学に依頼して、精神科の教授をわずらわして実情を調査したいということを言って計画いたしておりますので、私どもも実はそう専門家でもございませんし、まずそういう専門家の判断を聞くことが必要であろうということで、私どもの、どっちかと言いますと精神科専門医でない者の突き入った調査ということの前に、そういう専門家の御判断をいただこうということで、私ども立ち入った調査はむしろ差し控えておるというのが実情でございます。しかし、そのような専門的な判断にわたらないでも行ない得るような点については、今後ともさらに調査を進めたいと存じております。
#24
○河野(正)委員 今後ともさらに調査をするのでなくて、大臣が三月二十二日に現地に行っておられるわけですね。そこでこういう生体実験なり人体実験をやったという疑いが非常に濃厚だ、こういうケースがあるがどうだということから、それは人道上非常に重大な問題だから即刻調査をやりましょう、こうおっしゃっておるわけです。大臣が住民に約束されておるわけですから、当然、その約束というものは具体的に実行してもらわなければならぬ。ところが、いま私どもがいろいろ若干のやりとりをいたしましたが、少なくともその中では、具体的にあなたのほうが調査されたという経緯はないじゃありませんか。全部向こうの言いなりの報告であって、私どもはいろいろな調査をし、いろいろな資料を集めておるわけですが、それと歯車がかまぬじゃないですか。それならば私ども言いたいのは、一体どんな調査をなさいましたかということを言いたい。それは調査じゃなくて、向こうから事情を聴取されただけでしょう。それならばあっさり、調査はいたしておりません、事情聴取しただけです。こういうようにおっしゃればいいけれども、冒頭におっしゃった、たいした手落ちがあるというふうにはわれわれは判断しておりません、この一言は私は取り消してもらわなければいかぬ。あなたのほうが十分調査なさって、その上に立って、たいした手落ちはなかったというふうに判断されるならば、それはけっこうです。ですけれども、いまのいろいろの質問のやりとりの中では、具体的に調査をなさったという痕跡はありません。そういう十分な調査もせぬで、厚生省が政府としての見解、判断というものをこの国会の席上で表明することについては、私ども納得するわけにまいりません。だから、たいした手落ちはなかったという冒頭におっしゃったおことばは御訂正になりますか。
#25
○若松政府委員 御指摘のように、私どもの現在の段階は県側の事情を聴取していたという段階でありまして、具体的に私ども自身では調査をいたしておりません。といいますのは、この事件で私ども情報を入手いたしました当時、四月初めでありまして、院長等が学会に出ておりまして、その当時すぐ現地に行っても責任者もいないという状態でございましたので、実は延び延びになったこともございます。この点、私どもも非常に遺憾に思っております。そういう事情もございまして、御指摘のように私ども自身の手で確実な調査をいたしておりませんので、この判断については少し甘いという御指摘もございますので、さらに慎重・に調査の上で、あらためて判断をいたしたいと存じます。
#26
○河野(正)委員 いまのお話の中にありましたように、四月の初旬になってその事情を知ったということでございますれば、私は厚生大臣の良心を疑います。厚生大臣は三月二十二日現地に行って、人道問題で重大な問題だから即刻調査をいたしますとお約束になっておる。それが一週間も二週間もしなければ、局長のもとまで厚生大臣の意思が通じないということならば、私どもはもうこの際この委員会で何をか言わんやですよ。十日も二週間もかからなければ、厚生大臣の意思というものがそれぞれの関係局長に通じないということならば、私どもは国会で審議する必要はない。与党の方々も法案をあげてくれ、あげてくれと言うけれども、私どもそれについて協力する必要はない。しかもこういうような人道上の重大な問題でしょう。それに、院長が学会に行っておるらしいから、それで調査ができませんでした、そういうことが理由になりますか。もし、あなたの家庭で、こういう人体実験のためにとうとい生命をなくしたというふうな事態が起こってまいったらどうなさいますか。それは、院長が学会に行っておるから、帰ってくるまで待っておりますというようなことにならぬと私は思うのです。しかも、厚生大臣は、三月二十二日に現地で調査することを約束なさった。それが四月の初旬に至るまで厚生大臣の意思というものが通じなかったというようなことなら、私どもは何も委員会の審議を促進する必要はないですよ。もうきょうはこれで委員会をやめてもいいですよ。いまのこういう厚生行政のあり方について、大臣はどういうようにお考えになりますか、ひとつ率直に御意見を聞かしていただきたい。
#27
○鈴木国務大臣 この事件は、私が岩手県へ帰りまして、初めて、現地の新聞記者諸君から、県内で大きな関心を呼んでおる事件であるが、これに対する厚生大臣としての考え方、所信、また対策というものにつきましてのお尋ねがあったわけであります。
  〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕
そこで、現地の岩手県へ行って初めてその事情を承知をしたということであり、また一、二、新聞で報道されておるのを見せてもらったという程度でございますし、事柄が、新聞記者諸君の疑問では、人体実験をしたのではないかという疑問がそこにあるということでございましたので、私は事態の重大性を感じまして、十分調査の上対策を講じましょう、こういうことを記者会見で約束をいたしました。このことにつきましては、岩手県のほうにも、早急に県としても調査をして厚生省のほうにもその報告をしてもらいたい、厚生省のほうとしても、その報告に基づいてまた必要なる調査等もしましょう、こういうことで県からの報告を求めたのであります。ただいま局長から御報告がございましたように、いろいろな事情で厚生省自体の調査がおくれておる、岩手県のほうから事情を聴取した段階であるということでありますが、私も事務当局を督励いたしまして、厚生省自体におきましても早急に、確信のある、納得のいく調査をいたしまして、それによって所要の措置をいたしたい、かように考えております。
#28
○河野(正)委員 いまのような厚生大臣の答弁ならばわれわれも納得いたしますけれども、しかし、局長のおっしゃったように、この事実を実際に知ったのは四月初旬であった。こういうふうな厚生省の上意下達といいますか、こういう行政のあり方については、すみやかに姿勢を正していただかなければならぬということが一つ。それからもう一つは、やはり人道上の問題ということで、最近千葉のチフス事件もございます。あるいは八王子の精神病院事件もございます。こういうように、医療について国民が非常に重大な、しかも深刻な関心を持ってきた段階でございますから、やはり厚生省がすみやかに国民に対して納得のいくような態度を示さなければ、国民は非常に不安を抱いていくと思うのです。そういう意味で私どもは謙虚に取り上げているわけですから、あなた方も謙虚に、聞き入れるべき点は十分に聞き入れて、国民に対して、安心して医療が受けられるようにこういう対策をひとつ進めていただきたいと思う。
 そこで、いまエピアジンについての人体実験の疑いの問題が提起をされたわけですけれども、もう一つ、この病院においては、KBH、KBL、それからTX−一、二、三というふうな、テレビか何かに出てくる暗号のような、わけのわからない薬というものが使われておったという事実も明らかになってきているわけですが、これらの問題はどのようにお考えになっておりますか、ひとつ明らかにしていただきたい。
#29
○若松政府委員 KBH、KBL、TX−一、二、三というような開発途中の薬が試験されていたことは事実でございます。大体これらの薬は、世界的にかなり広くすでに開発が進んでいる薬だそうでございまして、私、詳細には存じませんが、ガンマー、アミノ、べーター、ハイドロオキシブチリックアシッド、その各種テレバードということで、自然催眠を促進し、あるいは麻酔の補助的作用があり、あるいは異常脳波の復活作用がある、あるいは鎮静作用があるというようなことで、かなり希望が持てる向精神薬の一種として開発途中である。かつ、方々のいろいろの大学等でもこれらの薬の研究をやっておりまして、グループをつくって研究しているというような段階の薬品だそうでございます。これらの例も、例数等についてまだ詳細に私ども存じておりませんが、一月から五月までの間に、脳波の復活作用あるいは鎮静作用を主として試みられたということを承知いたしております。
#30
○河野(正)委員 これは学問の研究、それから新薬の開発についての基本的な問題になると思うのですが、エピアジンは一応厚生省がお認めでございますから、それを人体実験としてやったかやらなかったか、あるいは慎重を期しておったかおらなかったか、こういうような論点にわかれると思うのです。ところが、実際には厚生省がまだ認可をしておらぬこういう薬が、てんでんばらばら、かってほうだいに、いわゆる研究と称し、あるいはまた開発と称して使用されるということについて、厚生省は一体どういう御見解を持っておられるのか。この点は、大臣、いかがですか。
#31
○鈴木国務大臣 だいぶ専門にわたる問題でございますが、基本的な私の考えだけを申し上げまして、薬務局長から補足をさせていただきます。
 この新薬の開発ということは、私は、医学、医術の進歩の上からいたしましても、積極的にいい薬を開発するということに努力をしていかなければならぬ、こういう基本的な考えを持っております。ただ、新薬の開発にあたりましては、先年来、サリドマイド禍でありますとか、いろいろな副作用による事故も発生したということ等もありまして、厚生省といたしましては、化学的な分析等のほかに、動物実験等の例証も従来よりもたくさん、十分なデータを取りそろえるように、また臨床実験等につきましても十分慎重にその例証等を積み重ねまして、しかる後に薬事審議会でこれを慎重に審議をし、また同様の種類の薬につきまして、国際的ないろいろなデータあるいは情報等も収集をいたしまして、あらゆる角度からその安全性、また効果というものを確認した上で製造の許可を出す、こういう、特に新薬の開発と製造の認可につきましては慎重な方針を実はとっておるところでございます。今後とも私は、いま御指摘のような問題等につきましてもこれを反省の資料といたしまして、十分注意をして業界の指導にも当たっていきたい、かように考えております。
#32
○坂元政府委員 医薬品の製造承認の段階における臨床実験の問題でありますが、これは先生、専門家でありますので非常によくおわかりだと思いますが、臨床実験のデータというものが、医薬品の製造承認の際に必要であるということは、私どもとしましては、医学、薬学というような学問の発展のためにも、また新しい医薬品というものを開発するためにも、どうしても不可欠なものである、こういうふうに考えておるわけでございます。このことはただいま大臣も御答弁申し上げましたように、世界各国どこでも行なわれているわけでございます。ただ、先ほど来から問題になっておりますように、私どもとしましては、この臨床実験のやり方等については非常に慎重にやってもらうということを、従来からたびたび製薬メーカーのほうにも強く指導をしておるわけでございます。臨床実験の前段階としての動物実験というものがあるわけでございますが、動物実験につきましても、基礎的な慢性及び急性の毒性試験のほかに、特殊な、胎児に及ぼす影響等の動物実験、あるいは発ガン性等の特殊実験というようなものを慎重にやった上で、動物実験でその効能なり安全性が確認された上で臨床実験をやってもらう。ただ、その際の臨床実験のやり方につきましても、ただいま大臣がお答え申し上げましたように、権威ある大学の研究機関等で、責任ある医者の判断のもとで、しかも細心の留意を払いながら臨床実験をやっていただく、そういうようなことで、万が一でも患者にとって不都合な事態が生じないように、十分臨床実験の段階においては注意をしていただく、こういうようなためにも権威ある大学の研究機関あるいは責任ある医者というようなもとでこの臨床実験をやっていただく、こういうようなことを従来から指導しております。また、現在も各製薬メーカーは一流の大学研究機関等で、十分慎重な配慮のもとにおいて臨床のデータを作成しているように聞いておりますので、先生御専門であられますのでよくおわかりだと思いますが、臨床実験というものの必要性については、私どもとしてはどうしてもこれは必要なことであろう、かように考えておるわけでございます。
#33
○河野(正)委員 私どもは、臨床実験が必要でないというようなことは考えておりません。ただ、臨床実験が必要であっても、このやり方、またその選び方等に慎重な態度であるかどうかということが非常に重要な問題だと思う。そこで、いま薬務局長のほうでは、責任ある、また権威ある方々がこういう臨床実験なり薬の開発をやることが望ましいというふうなお話があったわけですけれども、考え方としてはそれでいいと思うのですよ。現実にそれならば権威ある方々が責任を持って、そういう研究なりこの臨床実験に携わっておられのかどうかですね。せっかく厚生省でそういう方針を持っておっても、それを現実に指導できる、あるいはまた指導し得るという一つの範囲になければ、てんでんばらばら、だれがやっておるかわからぬというようなかっこうでは、たとえ厚生省が慎重を期してもらいたいというような御見解であっても、実際にはそういう指導というものはできぬというように私は考えるわけです。そこで、そういう新薬の開発なりあるいは研究なり臨床実験なりというものについて、どういう方法でいまのような政府の方針を徹底させるというようにお考えになっているのか。それがないと、それは考え方は考え方であるけれども、だれがどこでどういう研究をしておるかわからぬというようなことじゃ、これは全然問題にならぬのであって、やはりそういう方針であるならば、その方針というものが即実際の面においても生かされているということでなければ、私は意味がないと思うのです。ただここで単に質問のやりとりをするだけに終わってしまうわけです。ですから、いまおっしゃったようなことをどういう方法で確認をし、どういう方法で指導をなさっていこうとされているのか。ここが重大だと思うのですよ。これを除いてはそれこそ質問のやりとりに終わってしまう。具体的にどういう方法でそれらの点について行政指導なり監督なり、そういうものをやって、そうして、いやしくも人命にかかわる重大問題ですから、結果的には人体実験に終わった、生体実験に終わったということにならないように配慮してもらわなければならない。そういう意味でひとつ具体的な御見解を承りたい。
#34
○坂元政府委員 臨床実験のやり方について慎重を期するというような点につきましては、従来からいろいろやっておるわけでございますが、このやり方等につきましては、たとえば私のほうでは、まず製薬メーカーにこの点をはっきり認識していただくということが第一点だろうと思います。したがいまして、そういうような点については、従来から事あるごとに、製薬メーカーのほうには臨床実験のやり方等について十分気をつけて、大学等の研究機関にお願いするようにということを指導しております。
 それから第二番目には、まず臨床実験をやっていただく大学等の研究機関に、その点をよく御了解を願うということがポイントであろうと思います。したがいまして、この点については、従来から学会等に私どものほうの担当官を、全部の学会ではございませんが、重要な学会には参加させております。そういう学会の席上で、私どもの担当官から、製薬の許可の問題とかあるいは副作用の問題、安全性の問題、そういう一連の重要な当面する問題点についていろいろ講演をいたしますし、また討議もいたす、そういうような場面をとらえて、学会のほうで大学の先生にもこの問題を了解していただくということが第二の点でございます。
 それから片一方、行政的には、各都道府県のほうで、私どものそういうような国の方針あるいはやり方等を十分理解して、管内の病院等によくその趣旨を徹底していただくように、都道府県知事のほうに従来から通達をもって指示しております。また今後もそういうようなルートを通じて、十分都道府県のほうにも指示しながら、都道府県管内の病院等にそのことをよく理解していただく、こういうようなことをやりたい。また、従来やっておるわけでございます。
#35
○河野(正)委員 その一方ではやはり学問の自由、それから研究の自由というものが憲法で保障されておるわけですから、むやみやたらに規制するということについてはいかがかと思うのです。しかし、それにしても、憲法でいう公共の福祉に反しない限りにおいての学問の自由なり研究の自由があると思うのです。単に自分かってに、研究の自由がある、学問の自由があるのだということで、かってほうだいな研究なり人体実験なり臨床実験をやってよろしいということではなかろうと思うのです。ですから、私は、一つの制度の中で解決されることが望ましいけれども、さらばといって、四角四面の制度になりますと、今度は憲法で保障された学問の自由というものが阻害される、研究の自由というものが制限を受けるということになろうと思う。その辺のかね合いというのは非常にむずかしい問題があると思います。だからといって、それを放任して、単に都道府県に対する通達なら通達で適当にやれということでは、私は、今日のようなこの人体実験に類するような、生体実験に類するような事態というものは、なかなか防止できぬのじゃないかと思うのです。
 私は、過去、もう八年になると思いますけれども、実は新潟におけるツツガムシ病の人体実験をこの国会で取り上げて、いろいろお尋ねを行なった経験を持っておるわけです。そういうふうな過去新潟における、これは新潟大学のたしか桂教授だったと思いますけれども、大学の教授が人体実験をやったというようなことで、これは人権擁護局からも調査をされたという経緯がございます。それから最近では、ある製薬会社が社員を使って人体実験をやったというようなことがこの委員会でいろいろ論議された経緯もございます。それから今度は犯罪になりましたけれども、千葉大のいわゆるチフス事件というようなものがございます。ですから、国民は医療という問題について、いま非常に深刻な状態に置かれていると思うのです。これは、今日国民健康保険法の一部改正の審議のさなかでございますけれども、そういう法案とは別個であっても、実際国民健康保険なら国民健康保険を運営していくという中では、この医療というものが非常に大きなウエートを持ってくるわけですから、やはりこういう論議の中でこういう問題も明確に処理する必要がある。そこで将来、こういう問題については、私はやはり抜本的な検討、再検討というものが必要じゃなかろうかというふうに考える。ということは、このような人体実験等に類するようなこと、生体実験に類するようなことが、新聞では氷山の一角だ、こういうふうな取り上げ方もされておるわけですけれども、そういうようなことで国民が医療に対して、医学に対して不信感を持つということは、これは人類のためにも非常に不幸なことだと私は思うのです。やはりある検討を行なう段階にきておるのじゃなかろうかというふうに私は感ずるわけでございますが、この点については、基本的な点でございますから、大臣のほうから御見解をお聞かせいただきたい、かように思います。
#36
○鈴木国務大臣 方針につきましては、先ほど私から考えを申し述べ、また薬務局長からさらに具体的に御説明を申し上げたのであります。動物実験によりまして、その効能と安全性を十分に確認をいたしました上、医学の良識に従いまして、信頼されるりっぱな医師あるいは大学等におきまして細心の注意のもとに臨床実験をする、そういうデータを十分積み上げまして、そうしてまた各国の情報等も詳細に収集をして、確認した上で製造の認可を厚生省としてやる、こういう慎重な方針を堅持してまいるのでありますが、この方針を具体的に実行に移す場合のあり方ということにつきましては、御指摘のとおり従来その点がいささかルーズに流れておったのではないか、また、不十分な監督なり指導というものがなされて、不十分な点があったのではないか、こういう点を私どもも反省をいたしておるのでありまして、方針につきましては私は間違いがないと思いますが、その方針を実施に移してまいります段階におきまして、もっと間違いが起こらぬように、国民が安心をするように、具体的な方式等についてさっそく検討を進めたいと思います。
#37
○河野(正)委員 厚生省の方針というものは、私もきわめて適切だというように考えますので、要はそれを現実面にどう生かしていくかということだと思うのです。そういう意味で、今後こういう問題が、不幸な問題ですから繰り返し繰り返し起こっていかないように格段の御検討をお願いしたい、こういうふうに考えます。
 そこで、研究、開発という問題に関連をしてさらにお尋ねをしておきたいと思いまする点は、今度の岩手の場合を見てまいりましても、臨床研究ということでございますならば、むしろ率直に診療簿、レセプト、カルテには的確に記載しなければならぬ、これは医療法の規定するところでございますから、当然記載しなければならぬ。ところが、この岩手の県立病院、南光病院の場合には、エピアジンその他の新薬が投与されながら全然カルテに記載されておらない、こういう事実が明らかになっておるわけです。そうすると、ほんとうに研究ならそういう具体的な薬の投与をやっておるわけですから、当然カルテに記入をして、そうしてその結果がどうなったということが明確に記載されなければ研究にならぬと私は思うのです。私も十数年研究室におりましたから、いまの研究というものがどういうものであるかということを十分承知をしております。それは克明に記録に残して初めて研究になるわけです。ところが、今度の岩手の南光病院の場合には、全然カルテに記載されておらぬ。記載されておれば、医局員が何を投与したからこのような発熱が出た、高熱が出た、あるいは発しんが出たというようなことに不安を抱かなかったと思うのです。カルテにも記入されていない。そういうかっこうで新薬の投与が行なわれて、はたして研究と言えるのだろうか。それでも研究であるかどうか。厚生省は、おそらく向こうの報告ばかり聞いて具体的な調査をなさっておらないと思うので、的確な答弁ができるかできないかわかりませんけれども、私が御指摘申し上げまするように、新薬を投与したけれども、カルテ、レセプトには何ら記載せぬというふうなあり方が摘切なのかどうか、ひとつ率直に御見解を承りたいと思います。
#38
○若松政府委員 まず最初に、先ほどKBL、KBH等の実験が昨年の一月から五月ごろに行なわれていたということを申し上げましたが、これは最初に説明を受けたときの向こうの記憶をたどったことでございまして、けさ来詳細な報告をいただきましたので、あらためて訂正申し上げます。
 TX−一、二、三という薬品につきましては二十例ほどの名簿並びにその記録が出てまいりまして、TX−一、二、三につきましては、三十九年の一月から四月三十日の間に大体使った。そしてこれは主としてトランキライザーとして使った。その結果、従来あるトランキライザー十種類のものと比較して副作用も少なく、肝、腎、心、血液像にも異常を認めず、なお一例の事故もなかった。ただし、手指の振戦、口渇、食欲不振、嘔気、嘔吐等の比較的軽微の副作用が相当認められたということでございます。効果についても、有効、無効あるいはやや有効とそれぞれ判定されております。なお、KBH、KBLにつきましては、これは四十年の五月から四十一年三月末まで使用していた。そして使用例数は、鎮静、就眠のために精神分裂症患者に百十八例、また脳波賦活の診断を目的として、てんかん五十九例、頭部外傷後遺症三十一例、その他合計百五十五例というぐあいに、使用状況が明らかにされております。したがって、その効果判定も、脳波賦活のための診断効果は約六六・六%、きわめて有効であった。就眠治療の効果は約八五%有効であった。
  〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
鎮静の治療効果は九五%有効であった。しかし、副作用として一過性の悪心が二・五%、嘔吐が一・五%見られたが、危険な副作用は一例もなかったという詳細な記録がございますので、実験あるいは研究としてもかなり丁寧な計画でやっていたものと思います。ただ、これが詳細にカルテに記載してあっかどうかについては、私現在確認いたしておりませんが、もしカルテに記載していない、あるいは研究用の別の記録をとっていたというようなことであると適当でないと思いますので、それらの点についてはさらに確認をいたしたいと存じます。
#39
○河野(正)委員 このエピアジンがカルテに記入してなかったということは、これは歴然たる事実ですね。医療法でも当然カルテを備えつけなければならぬし、カルテに記載しなければならぬのですから、これは当然法律違反だと思うのです。ですから、あなたのほうが、厚生省みずから確認しておらぬからわからぬとおっしゃれば、それはいたし方ないわけですけれども、もし抗てんかん剤としてエピアジンを投与したということならば、当然その診療録には記載しなければならぬ。記載することが法律のたてまえですから、もししなければ、それは、たとえば保険局長がそこにおられますけれども、あなたは一般の監査をしたときには、記載しなかったらそれぞれ行政処分しているじゃないですか。結局一般の医師が記載について適切な記載をしなかった場合には、厚生省は明らかに行政処分を行なっているわけですよ。なぜ県立病院であれば、公的医療機関であればそういう法律に違反してもよろしいのか、私もその点納得できません。
 あなたは一方的に、いまTX−一、二、三については報告があったからしさいに報告なさいましたけれども、それは全くあなたは岩手県の出先の役人と同じことをやって、一つも指導機関としての役割りを果たしてないじゃないですか。あなたは、岩手県のこの医療行政なり厚生行政を指導する立場にある人でしょう。いまあなたがおっしゃっておることを聞いておると、それは全く岩手県の東京出張事務所長の発言のような発言です。だから、あなたが国会で報告する場合には、先方の報告は受けてもけっこうですが、それが妥当な報告であるかということは十分あなたのほうで調査をして、判断をして、的確に国会に対して報告すべきだと私は思うのです。単に先方から報告があったから、それをそのまま読み上げて報告するならば、あなたは厚生省の医療行政では最高の地位にある人ですけれども、そういう地位にある人の任務がそれで果たされたというふうには、私は理解するわけにはまいらぬ。これは明らかに法律違反ですよ。もう一度私は後ほど麻薬の問題についても触れますけれども、これは明らかに法律違反です。ですから、少なくともあなたは医療行政については国の最高責任者でございますから、したがって、岩手県の出先の役人のようなことを言わぬで、高い次元に立って国会に対して答弁なさる、報告される義務というものがあると私は思うのです。そういう意味で、あなたに強く御忠告申し上げておきます。
 そこで、私どもは、いろいろ弁解なさっておるけれども、国民の一人として今度の岩手県の南光病院で起こったエピアジン事件というものは、人体実験、生体実験であるという疑問を持たざるを得ない。本来からいいますならば、国民の一人としてそういう疑問を解いていただきたかうたわけです。そういう疑問はあるけれども、そうではなかったというふうに疑問を解いていただきたかったわけですけれども、残念ながら私どもはその疑問を解くわけにはまいりません。そこで、それらの点と関連をして一、二お尋ねいたしたいと思いまする点は、この南光病院の現在の院長は田中善立という入だそうでございます。この人が昨年の四月南光病院の院長として赴任されて、赴任された直後岩手県立精神医学研究所なるものの看板をかけられた、こういうことなんです。少なくとも県立の精神医学研究所でございますから、権威ある研究所であろうというように私どもは理解いたしますけれども、この研究所がいかがなものであるか、御調査なさっておりますればひとつここでお聞かせいただきたい。
#40
○若松政府委員 南光病院に精神医学研究所というものが併置されているということでございますが、調査いたしますと、この精神研究所は県の病院局当局の段階でそういうものをつくっておることでございまして、正式に県の条例で設置を定めたものではございません。そういう意味で、県の条例で正式に定めないで病院局の段階でそういうような名称を使うということは適当でないということで、私どもも、この点については厳重注意をいたしております。なお、この田中院長という方は、弘前大学の講師、助教授をし、秋田の中央病院の精神科医長をされ、アメリカにも最近一年三ヵ月ほど留学されたという方で、非常に研究熱心な方であろうと思います。そういう意味で、非常に研究熱心のあまり、そういうような研究所というものを持ちたいという熱意があったのではないかと思います。しかし、申し上げましたように、県の条例その他で正式に設置を定めたものではなく、研究所の要員としても特別の人員を配置しているわけではなく、また、研究所としての特別の予算措置をしているものではありませんので、このような名称をみだりに用いるということはまことに適当でないということは、全く御同感であります。
#41
○河野(正)委員 県立の精神医学研究所を設立されて看板を出された、と同時に今度の研究が開始されたということになりますと、薬務局長のおっしゃっておる考え方なり、そういう方針で岩手県の研究所というものが運営されておったのかどうか、私どもは残念ながら疑問を持たざるを得ないと思います。その研究所の看板を出して、今度の生体実験でございますか、人体実験でございますか、それは別として、いわゆる新薬の開発なり研究が行なわれた。その研究所というものは、予算は一銭もない、人員もおらない、それこそ机もない、そういう研究所である。そういう権威のない、全く力のない研究所、その研究所が、はたしてさっき薬務局長がおっしゃったような研究を行なうに値する機関であるのかどうか、この点いかがですか。
#42
○坂元政府委員 先ほど申し上げました臨床実験をやっていただく大学の病院等の権威ある研究機関ということにつきましては、ことさら私どもは厳格な定義を持っているわけでございませんが、これは常識的に、それぞれの医学の専門家の方が判断をしていただくことになろうかと思います。本件のように、岩手県の南光病院の場合が、私先ほど申し上げました臨床実験をやるにふさわしい病院であるかどうか、これは十分実態を具体的に見ながら結論を出さなければならぬ問題かと思いますが、一般的に申し上げますと、私どもは、国立大学等の病院等だけに臨床実験の能力があるというふうには考えておりません。それ以外にも、公立病院等でも相当最近は大きな病院が出てまいっておりますので、そういうようなものも当然含まれていいかと思いますが、要は新薬の開発の段階における臨床実験でございますので、そういうような臨床実験をやるにふさわしい設備、臨床陣営、そういうものを十分具備しておくことが基礎的な条件でございます。したがいまして、岩手県の南光病院の場合がこれにふさわしいかどうかは、具体的に病院の実態、実績等を見て結論を出すべき筋合いのものか、こういうふうに考えているわけでございます。
#43
○河野(正)委員 いま私が御説明申し上げましたように、岩手県立精神医学研究所なるものが今度の研究をやったようになっているわけですね。この県立精神医学研究所というものには、予算は一銭もついておらない。もちろん人員もついておらない。机もない。こういうふうな機関、施設というものが、さっき薬務局長がおっしゃったような趣旨で、臨床実験なり研究をやるものに値する研究所というふうに御判断になりますかどうか。南光病院じゃありませんよ。県立医学研究所ですよ。ところが、それは予算も一銭も持たない。人間もおらない。それから机もないのです。そういうふうな県立医学研究所が、とうとい人命をあるいはそこなうかもわからぬような臨床実験をやるに値する研究所というふうに言えるかどうか。何もいろいろお考えになる必要はないのですよ。私どもは調査をして、予算も一銭も持たない、それから所員もおらぬ、机もなければいすもない、そういう研究所が、はたして、あるいは人命をそこなうかもしれぬというような貴重な臨床実験なり研究なりをやる機関に値するかどうか、これをどういうふうに御判断になりますか。
#44
○坂元政府委員 岩手県立精神医学研究所といわれるものが、かりにただいま先生御指摘のような実態を持っておる研究所であるとしますならば、私どもとしましては、臨床実験をやるにふさわしい病院なり研究機関ということで従来から指導してきている線とははるかに隔たりがある実態であろう、こういうふうに考えます。
#45
○河野(正)委員 せっかく保険局長がおられますから、あなたにも質問を申し上げないと申しわけないような気がするから一点申し上げたいと思います。
 この南光病院における昭和四十年度の検査件数、保険点数を調査いたしますと、院長が就任をいたしました昨年の四月、この段階では入院件数が五百十五、これは入院患者で検査をいたしました件数ですよ。それから点数にして二千六百十二点、外来のほうが五十四件で点数が百十九、合計しますと、件数のほうが五百六十九件で点数が二千七百三十一点、これがだんだんだんだん上がりまして――もう時間がございませんからはしょって申し上げますと、ことしの一月現在で――去年の四月から一年もたってないんですよ。入院のほうで件数が千五百二十六件、点数で七千五百三十五点、外来のほうが、昨年の四月の段階では五十四件であったのが百六十、それから点数が千五百八点、合計いたしますと、昨年の四月現在では五百六十九件で二千七百三十一点であったのが、ことしの一月では千六百八十六件で、点数が九千四十三点だ。一年足らずで三倍に上がっているのですよ。こういう臨床検査、特に精神病院ですよ。ですから、一般の病院とは違って、一年足らずの間に入院患者のそう大きな変化が行なわれるということは考える必要がないと思います。こういうような実態というものが明らかになっておるわけです。こういう事実というものをどういうふうにお考えになりますか。
#46
○熊崎政府委員 検査件数が御指摘のように非常にふえておるという点でございますが、それぞれ病院の特殊事情等もあると思いますし、また、特に精神病につきましては検査の方法その他時々刻々いろいろと新しい検査も出てくると思いますし、また、最近の新しい技術のもとで、検査のウエートも社会保険の診療報酬の中からいえば相当なウエートを占めておるという事実もございますので、やはり年間を通じてみますれば、毎年検査件数はふえておるというのが全体的な傾向だと思います。特に御指摘の南光病院におきましてこのように検査件数がふえておるということにつきましては、私どもとしては実態をもう少し見た上で判断しなければならぬと思いますが、いろいろとそこに内在した問題もあるのではないかということも考えられますので、私どもとしては、この事実は事実として、中身をもう少し分析するような方法を考えてみたいと思っております。
#47
○河野(正)委員 これが一般の病院だったらさっそく監査ですよ。これは一般の病院と違って、精神病院の場合はそう状況の変化はありません。私が経営者ですから、これを私がやってごらんなさい、監査をやるですよ。一年もたたぬのに、五百六十九件であったのがことしの二月は千八百七十四件ですよ。四倍近いです。それならば、いままで一体南光病院は、県立でありながら公的医療機関の役割りを果たしておったのかどうか。昨年の四月段階で五百六十九件の検査実績でよかったということになるなら、はたしてこれが公的医療機関としての使命を果たしておったかどうか、そういう嫌疑が一つ出てまいります。それが公的医療機関の使命をそれで十分果たしておったとするならば、一年足らずの今日千八百七十四件にもなった、こういう急激な変化――一般の病院なら、あるいはあなたがおっしゃるような状況の変化があるかもわかりませんが、精神病院にはありません。いろいろ変化があったとおっしゃるけれども、少なくとも事精神病院については、あなたよりは私のほうが幾らか詳しいですよ。私が何ぼやぶ医者でも詳しいです。だから、これらに対しても私はやはり疑問を抱かざるを得ぬというのが率直な心境です。もちろんあなた方も高い次元でものを判断されなければならないお役柄ですから、軽々に判断はできぬでしょうけれども、一応私は疑問を持たざるを得ぬだろうと思うのです。この点はいかがですか。
#48
○熊崎政府委員 御指摘のように、この数字だけを見ますると疑問の点が多々あると思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、諸般の事情その他も十分勘案の上、私どもとしては、どうしてこういうふうなふえ方になっておるのかということを、十分分析する方法を考えてみたいというふうに申し上げておるわけでございます。
#49
○河野(正)委員 そこでわれわれは、この南光病院の実態というものが浮き彫りにされてきたと思う。そこで、すでに盛岡地方法務局は、今度の事件は人権に関する問題だということで調査に乗り出すことを決定されたというふうに私どもも仄聞をいたしておるわけです。調査されたかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、いま私がいろいろ実態を明らかにしながらやりとりをしてまいりましたこの全貌を見て、法務省当局は人権に関する非常に重大な問題だというふうに御判断なさいますかどうか、ひとつ率直な御意見を法務省当局からお聞かせいただきたい。
#50
○堀内政府委員 岩手県の南光病院の件につきましては、今年の三月二十一日付の読売新聞及び同じ日の三十一日付の読売新聞の記事によりましてこういう事件の発生を知りまして、法務省のほうから直ちに盛岡地方法務局に情報の収集を指示いたしました。そして盛岡の地方法務局におきまして目下その情報を収集中であります。目下そういう情報収集の段階でありまして、結論らしいものはまだいまのところ出しておりません。
#51
○河野(正)委員 情報収集ということは、現実に人権侵害の疑いがあるということで調査されるということとは違うわけですか。
#52
○堀内政府委員 新聞に出ましたので、新聞の記事が事実とするならば、人権の問題にもなるのではないかということを考えましたので指示をいたしたのでありまするが、情報の収集というものと調査と、私どものほうでは少し違った取り扱いをいたしております。
#53
○河野(正)委員 いずれ調査をされて判断をされるわけでしょうけれども、いまかなり時間をかけてやりとりをしたわけですから、局長としては、こういう全貌をながめてどのような見解をお持ちでございますか、ひとつ局長としての御見解だけ聞かしていただきたい。
#54
○堀内政府委員 まだ結論を出す段階に至っておりませんので、先ほど来いろいろ伺いました事実その他御意見などを含めまして、さらに検討したいと存じます。
#55
○河野(正)委員 今度のは、人体実験であるのか生体実験になるのか、いずれ事実というものはだんだん明らかにされてくると思うのですが、いずれにいたしましても、新薬の開発、それから医学研究、これらは人命に関するきわめて重大な問題でございますから、やはり完全な、しかも安全性の高い研究なり実験というものが当然行なわるべきで、単に行政指導ということだけでなくて、そういう研究についてはやはり国がある程度の研究費を出す。そして国の責任においてそういう研究なり開発というものをやってもらうということが望ましいし、そういうこと以外に、やはり行政を指導したりあるいは現実に厚生省の考え方なり方針というものを運営していくということは、なかなか困難だろうと思う。だから、やはり国が責任を持って研究の向上をはかっていくとか、あるいは新薬の開発をはかっていくというようなことでやらなければ、単に行政指導で人権の侵害がないように、人道上重大な問題だから慎重におやりなさいということだけでは、所期の目的というものを達成することはなかなか困難であろう、こういうように考えます。そこで、ひとつぜひ大臣に率直な意見を聞かしていただきたいと思うわけですが、やはりこういう新薬の開発あるいはまた医学の研究、こういうものについては当然人命を尊重するというたてまえ、それから安全性の高い実験を行なうということになりますると国が研究費についても十二分な配慮を行なう、国の責任においてそういう研究なり新薬の開発をやる、こういう体制が望ましいというふうに考えるわけでございますので、その点についてはひとつ大臣の率直な御意見をお聞かせいただきたい。
#56
○鈴木国務大臣 結論から申し上げますが、河野さんのせっかくの御意見でございますから、今後私どもも、研究に対する国の助成なり何なりという面につきましても研究の課題として検討したい、こう思いますが、製薬業界が近年新薬の開発ということに非常に積極的な熱意を示してきておる、これは私は非常にいい傾向だ、こう見ておるのであります。また、私は就任以来、一面において過当競争に基づく誇大な宣伝広告などにつきましての国会の御意見等もございますので、業界の自粛を要望し、むしろそういう面に使われますところのばく大な経費というものを新薬の開発研究のほうに振り向けて、そして国際的にも負けないようなりっぱな新薬をつくってもらいたい、こういうことで業界を実は指導しておるわけであります。また、製薬業界は、前にも御指摘がありましたように、まだ他の企業に比べて相当な利潤もある、私はこう見ておりますので、研究費に事を欠いておるというぐあいには私は見ておりません。でございますので、むしろ研究開発のやり方、特に御指摘がありましたところの臨床実験等において、人命等の絶対安全を期しながらどういうぐあいに貴重な実験を進め、そのデータをつくるか、こういう具体的な面につきまして、国がもっと具体的に一つ一つをチェックをして、そうして国民が納得するように指導する、こういうこと等につきまして、薬事審議会その他の御意見も十分聞きながら研究をしてみたい。たとえば、いま御指摘になりましたように、岩手県立という看板を掲げておるそうでありますけれども、県の条例ではできていない、しかも実態はほとんどないというような研究所が、あるいは製薬業者の委託を受けて臨床実験等をするというようなことが、政府の方針とは離れた形でなされておるというようなことは適当でない。でありますから、新薬を開発する場合におきまして、動物実験をした結果がこれだけの効果があり、安全性が確認されておる、これから臨床実験をしたい、それについては、どういう大学のどういう教授のもとにおいて、責任のある臨床実験をするかというようなこと等について、監督官庁である厚生省の承認なり届け出をするなり、そういうような形においてこれがなされていくというような必要があるのではないか。そういうことで、今後薬事審議会等の御意見も聞きながら早急にその面の方針を確立いたしたい、かように考えております。
  〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
#57
○河野(正)委員 いま大臣がお答えになったような方針で、ひとつぜひ御配慮を願いたい。
 そこで、この問題について最後に一点お尋ねをしておきたいと思いまする点は、今度の生体実験と申しますか、人体実験と申しますか、このことと関連をして、たとえばこの南光病院の組合の書記長あるいは執行委員、それから県医労の書記、これらの諸君が監禁、不退去の疑いで逮捕された、そして県医労本部が強制捜査を受けたというような派生的な事件も起こってまいっておるようでございます。しかし、きょうは厚生の審議でございますから、あまりこの問題について深く触れようとはいたしません。いずれ労働関係の問題の中でいろいろ追及してまいりたいと思いますが、しかし、これらの生体実験なり人体実験と関連したような形でこういうふうな労働運動というものが阻害をされる、弾圧を受けるということは、きわめて残念だというふうに私は考えます。これらの点について、厚生省で何らかの経緯を御承知でございますならば、ひとつここでその概要を明らかにしていただきたい、かように思います。
#58
○若松政府委員 ただいま御指摘のありました労使関係の紛争につきましては、南光病院におきまして、昭和四十年の八月に脳波の機械を一台増設いたしましたので、その運転のための技師が必要になりまして、そのために院長の前任地であります秋田県立中央病院にそういう技術者がおるということで、転職、転任を折衝したわけでございますが、病院の都合でその交渉は四十一年の春まで待ってほしいということになりまして、その間のつなぎといたしまして、前に南光病院につとめておりまして、脳波の機械の運営の経験のある佐藤ヒサ子という者に臨時につとめてほしいという話が起こりました。本人とも了解の上で、六ヵ月間の期間を定めて契約をいたしたそうでございます。それで、この一月の二十一日に組合の支部から佐藤ヒサ子を本採用にするようにという申し入れがございましたが、先ほどのような事情であるために本採用にはできかねるという返答がありまして、それに引き続きまして二月の二十一日に事務長との団体交渉に入り、二十五日には、午後一時十分ごろから午後十時二十八分ごろまで院長を軟禁状態にして集団交渉が行なわれたという事実がございまして、これらの一連の紛争に伴いまして、一関警察のほうで、三月二十三日に、不法監禁、不退去の疑いで数名の者を逮捕し、二十五日には釈放されております。さらに、三月二十五日に、盛岡署が、県医労本部の中央執行委員である鈴木要吉氏を一関警察署の手配により逮捕、身柄を一関警察署に送ったという事実がございます。これらの一連の事件につきましては、これは労務管理の問題として、院長並びに事務長に、今後とも適切に指導するようにということを申しておりますが、これが刑事的な問題でどのような判定になるかということは、これは警察当局にお願いするよりいたし方がないと存じております。
#59
○河野(正)委員 きょうは労働問題が本議ではございませんから、重ねて追及しようとは思いませんけれども、ただ、私ども感じますことは、労使紛争によって若干名の労働組合員が逮捕される、そのことは別としても、この人体実験なり生体実験をやり、そうして院長が主治医には一言も伝えることなく、独裁的というのか、ワンマンというのか、そういう方針でやっていく、そういう病院側の姿勢にそういう一連の労働問題というものも関連するのではないかというようなことを私どもはおそれるわけです。ですから、この労使紛争の概要については私もつまびらかにいたしませんけれども、どうも病院の当局側の姿勢に、そういうような労使紛争が起こってくる原因というものがあるのじゃなかろうか、こういう感じがする。そういう意味で、今度の人体実験、生体実験というものは、やはりこの労使紛争とは無関係に見のがしてまいるわけにはまいらぬと私は思うのです。しかし、それはきょうは本議ではございません。ですから、いずれ労働問題の際にこの問題については触れてまいりたいと思いますけれども、この点については、単なる労働問題だというようなことであなた方が見のがすことがないように、そういうような病院側、当事者側の姿勢によってそういう問題も派生的に起こってくるのじゃないかという見解に立って、ひとつ今後の指導というものに当たってもらいたい、こういうことにとどめておきたいと思います。これはいずれ労働問題としてあらためて提起をしたいと思います。
 そこで、これらの医療問題について国民の関心が非常に高まっている段階でございますし、せっかくの機会でございますし、この法律審議の中で医療問題というものがやはり一番大きなウエートを持っているのですから、そういう意味で、私は、この際あと一、二点についてお尋ねしておきたいと思います。
 その一つは、徳島大学で昨年の十月ごろから本年の三月ごろまで、各医局で使った麻薬の管理というものがルーズになって、そうしていやしくも国立大学の薬剤部長、それから十七名の医師が徳島地検に送検をさせられたというふうな事件が起こってまいっておるわけです。私は、今日、千葉大学のチフス事件なり、あるいはまた岩手の人体実験なり、あるいは新宿の日赤の産院問題、八王子の朝倉病院の問題、こういったいろんな問題が提起されておる段階でございますので、やはりこの病院管理というものは、私はこの際きちっと整理する必要があると思うのです。そういう意味でこの徳島大学の問題をどのように踏まえておられるのか、これに対する御見解を承っておきたいと思います。
#60
○坂元政府委員 徳島大学の附属病院における麻薬事件の経過だけを私のほうから御説明申し上げます。
  〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕
 本年の三月でございますが、私どものほうの出先でございます四国の麻薬取締官事務所、それから徳島県の衛生部が徳島大学の医学部に対し立ち入り検査をしまして、麻薬管理が適正かどうかということについて一応調査をいたしたわけでありますが、この際発見されました問題は、先ほど先生御指摘のように、麻薬の管理というものが若干不適正であるという事態が明らかになったわけであります。これは昨年の十月ごろから本年の三月ごろまでの間の問題でございますが、不適正な麻薬管理をしまして、たとえば麻薬管理者たる薬剤部長というものが、当然麻薬の管理については法律上帳簿などに厳正に記載をしておく必要があるわけでございますが、そういう麻薬の受け払い等の点についての帳簿の記載がなかったとか、あるいはまた、現に麻薬を施用する方々の間で、いわゆるカルテへの記載がなかったとかの事実が発見されましたので、私どもの出先と県当局とがよく実態を調査いたしました結果、四月の十五日になりまして薬剤師一名、医師十七名、計十八名の方について徳島地方検察庁のほうに書類送検をした、こういうのが大体この問題についての経緯でございます。
#61
○河野(正)委員 私どもが新聞その他で仄聞するところによりますると、昨年の十月からことしの三月までの受け払い分の記載というものが十分でなかったということのようですけれども、この徳島大学の病院長談話によりますというと、十数年来こういう状態でやってきた、こういうことが明らかにされておるわけです。そうすると、なるほど今度薬剤部長一名と十七名の医師が送検をされたということでございますけれども、それなら十数年間は一体どういう指導をなされておったのか、これはたいへんなことだと思うのです。あなたのほうで、十数年来そういう事故がなかったというふうにおっしゃるわけにいかぬでしょう、向こうの病院長がそういう談話を発表されておるわけですから。だから、先年麻薬取締法の一部改正を行ないまして、そうしてひとつ麻薬禍を撲滅しようじゃないかというようなことで、非常に政府も力こぶを入れておるというのが現況でございますけれども、こういうふうに十数年間もこのようなルーズなかっこうでやってこられたというようなことで、はたして麻薬取り締まり行政というものが円滑に行なわれておったのかどうか、私どもは、残念でございますが疑問を持たざるを得ないというわけでございますが、その点はいかがでございますか。
#62
○坂元政府委員 院長談話で十数年来という記事が出ておったようでございますが、私どもも麻薬の取り締まり等につきましては、従来からいろいろ努力をしておるわけでございます。特に先般国会のほうで一部改正の法律を通していただきましてから、この麻薬の取り締まりについては、全国的に相当強力に、警察当局とも相談をいたしまして展開をしておるわけであります。したがいまして、徳島大学の場合でも、十数年来という院長談話ではありますが、私どもとしましては、従来から麻薬の取り締まりについては十分注意をして、第一線の取締官を指導をしております。また、第一線の取締官も県の当局ともよく連絡をとりながら、この麻薬の問題については取り締まりをやっておるわけであります。いままでの私どものいろいろな調査の結果では、院長談話に出ておるようなこと、十年来というのはどういう事実かよくわからないわけでありますが、事あるごとに徳島大学を含めて全国的に麻薬の取り扱い、管理、施用、こういうこと全般にわたりまして厳重な取り締まりをやった、こういうことでございます。最近は、年々取り締まりが激しくなるために、それにかわるようないろいろ不正な問題が若干見えてきております。取り締まりの強化された点については先生も十分おわかりいただけると思いますが、徳島大学の問題につきましては、最近三月になって私どもが立ち入り検査した結果、少なくともこういうような麻薬管理とういものが十分でなかったという事実がわかったわけであります。院長の談話の点については、私ども、いままで県なり取締官事務所のほうからの報告によりますと、必ずしもその点は十分な取り締まりがあるいはなかったかもしれませんけれども、私どもが聞いておる範囲においては、徳島大学にそう大きな問題はなかったのではなかろうか。最近になりまして、去年の秋くらいから、これはどういう原因かわかりませんが、麻薬の管理の責任者たる薬剤部長という方の考え方が若干甘いというようなことが原因かもしれませんが、病院全体でそういうようなルーズな管理が行なわれてきたということが発見された次第でございます。
#63
○河野(正)委員 それでは朝日新聞の四月十七日の記事を読み上げますが、三好和夫徳島大学付属病院長の話。「麻薬の取扱いにルーズな点があったことを反省している。法規ではカルテに「麻薬施用者」の資格のある者が投与のたびに記載することになっているが、うちは看護日誌だけをつけていた。法規を知らなかったわけではないが、十数年来この方法でやってきたし、強い指導もなかった。」これは元来、徳島大学のほうではあっても隠す、これも常識ですね。ところが正々堂々と新聞社に、いままで法規は知っておったけれどもやってこなかったのだ、そして十年来一向強い指導もなかった。むしろなくてもあったようなふりをするのが常識ですよ。それを十数年来強い指導もなかったということをはっきり言っておられるわけですから、これがあなたのほうの手落ちだということはだれが見ても明らかですよ。私どもは過去を言うわけではないので、今後一体どうすればいいかということでしょうから、過去のルーズであった点、見のがした点は遺憾であったなら遺憾であった、今後はこうやると言われればいいのに、必ずしもそうではなかったとおっしゃると、少なくとも病院長というような権威ある人が反省をして、率直に直相をぶちまけておられるわけですから、やはりそういう現実は認めて、それならば将来どうするかということに力を注がるべきだと思うのです。それを責任のがれにおっしゃると、現実にはこんなことを言っておられるわけですから、それは謙虚にお聞きになって、そして今後は一体どうすればいいのだという強い態度をおとりになることが、より建設的だと思うのです。どうですか。
#64
○坂元政府委員 麻薬を施用する病院、診療所、またお医者さんの方は、全国的に非常に数が多いわけでございます。私どもも取り締まりなり指導を強化しているとはいいながら、なかなか十分監督ができない、あるいは取り締まりの徹底ができない面もあることは十分承知しております。したがいまして、徳島大学自体にそのような、院長談話にあらわれているような事態がかりにあるといたしますならば、これは当然過去の私どもの取り締まりなり監督が不十分だったということに相なるわけでございます。いま先生御指摘のように、今後はそういうようなことがないように、私ども自身十分努力をいたしますし、また、大学病院の当局者においても今回の問題を反省の機会にいたしまして、十分今後は良識を持って法規にきめられたとおりの麻薬管理をやっていただくように強く要望いたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
#65
○鈴木国務大臣 医療機関の運営管理の問題につきまして、最近社会の批判なり、また御心配をこうむるような事件が発生をいたしまして、医療行政を担当する私といたしましてもまことに遺憾な事態と、残念に思っておる次第であります。今後、国立病院でありますとか国立の療養所、厚生省が直接管理監督いたします病院につきましては、地方医務局を督励いたしまして、十分管理、運営の適正を期するように一そう指導を強化してまいりたい。また、都道府県等に対しましても、公的医療機関その他に対しまして、病院の運営、管理の面を十分監督指導するように措置をいたしたいと考えております。
 そこでもう一つは、千葉大学の場合でも今回の徳島大学の場合でも、大学の付属病院という問題につきましては、大学の付属の医療機関であるというようなことから、とかく大学まかせといいますか、そういうきらいがあったのではないか、そういう点を私は率直に実は認めておるのであります。大学の付属病院でありましても、医療機関としてはこれは厚生省の監督下にある、また、そこに働く医師としては、やはり医師法のたてまえで厚生省の医療行政の監督を受ける、こういうことであるのでありますが、どうもいままで大学の付属病院というのは、大学の自治とかなんとかいうようなことで大学まかせ、こういうようなきらいがあったように思うのでありまして、この点は率直に私どもも反省をせねばいかぬ。今後十分文部省当局等とも連絡をとりまして、この病院の運営、管理を厳正にやるという面につきましては、今回の事件等を契機といたしましてさらに一そう努力をいたしたい。
 また、麻薬のごときは、これはどういう機関でありましょうとももっと厳正に、厳重にやらねばいかぬ、こういうことだと思います。御注意も、私ども十分意のあるところを体しまして一そう努力をいたしたい、こう考えます。
#66
○河野(正)委員 文部省もおいででございますから、この際徳島大学で起こりましたことを契機にして若干お尋ねしておきたいと思いますが、しからば各大学で麻薬を使う場合にはどういうかっこうで使われておるか。この点、ひとつ文部省のほうからも御見解をお聞かせいただきたい、かように思います。
#67
○木田説明員 麻薬の取り扱いにつきましては、麻薬関係の法令によりましてそれぞれ取り扱い規定が厳重に定められておるのでありまして、一般的には、私ども承知いたしておりますのは薬剤部長が麻薬の管理者になる、そして麻薬の施用者として許可を得てあります医師が使う。いろいろな取り扱いは、すべて法規の規定どおりに行なわれなければならないたてまえのものと考えております。
#68
○河野(正)委員 法規のたてまえどおりに行なわれているというふうに御理解になっておりますかどうか。
#69
○木田説明員 率直に申しまして、各病院一つ一つの麻薬の実態につきまして、私どものほうでその実態を特に点検したということは、私自身はまだ承知いたしておりません。しかし、麻薬につきましては、定期的に麻薬の監督官のほうの御調査もあるように聞いております。そうした麻薬につきましての取り扱いについての御監督の体制でお願いできる、また私どもとしては、一般的に厚生省御当局から麻薬につきましてのいろいろな御連絡がありました際には、直ちに国公私立の大学にそういうことの通達もいたしますし、麻薬の取り扱いについての教育をさらに徹底することにつきましても連絡をしておるところでございまして、今回のようなことが起こりましたことはまことに残念でございますし、申しわけないことだと思っておりますが、大部分の実態につきましては実は信頼をしてきたところでございます。
#70
○河野(正)委員 御承知のように、麻薬取締法第二十七条は、「麻薬施用者でなければ、麻薬を施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬を記載した処方せんを交付してはならない。」という規定になっております。ところが、いま木田さんは、法規どおりに運用されておるようなことをいろいろおっしゃるけれども、現実に国立大学、これは私立大学もそうですけれども、診療を担当しておるのはいま問題の無給医局員なんですよ。ですから、その主たるものは、無給医局員が実際には診療に携わっておる。そこで、無給医局員が麻薬施用者であろうはずがないし、また、そういう届け出が出されるわけでもないわけです。身分がないわけですから。ですから、いま木田さんがおっしゃったように、大学が法律の規定どおりに実行しておることを信頼しておるということですけれども、どこから推してもそういうことは私どもは考えられませんし、言えもせぬ実情にあるというように私どもは理解をいたしております。ですから、そうだろうと思うけれども、そういう実態を知らぬなら知らぬ、しかし、そういう御注意があれば今後はひとつ十二分に法律どおりに実行されるようにいたしましょう、そういうことだと、やはり無給医局員の問題を解決しなければならぬということになるのです。現場というのは、麻薬施用者が一々当直をして麻薬をするということではないのです。たまたま、おそらく何かの事故で徳島大学が網にひっかかったのだろうと思うのですが、徳島大学の事件というものは氷山の一角であって、全国の国立、私立を通じて、それらの麻薬取締法というものがそのまま運用されておるというふうには私どもは理解するわけにまいりません。この点いかがですか。
#71
○木田説明員 いま河野委員から御指摘のございました無給の医局員でございますけれども、委員も御在じのことだと思いますが、その実態はいろいろでございまして、大学院の学生も広くいえば教官の指導のもとで病院の実習を受けることがございますし、いわゆる無給医局員といわれておる方々の中には、別に本務としての医業をやっておられる方もあり、あるいはまた、いろいろな他の病院に籍を置いて、大学に勉強に来られる、指導を受けに来られるというような方もございますが、そのほとんどすべては、インターンの研修生を除きましては医師としての資格を持った人たちでございます。大学の病院におきましてこういう関係の方々が保険診療その他の診療をいたします場合に、医師としての取り扱い規定に従って麻薬の取り扱いをいたしますときには、そのような手続をなすことができるものと私は考えるのでございます。ただ、そうした手続がかりに怠ってあった、いま徳島大学のケースにつきましてもそのようなことの御指摘をいただいておるわけでございますが、それは医師として責任を持って患者の診療に当たる者が麻薬取り扱いについての手続をしていなかったということは、もう弁解の余地のないことでございますけれども、私は手続はとり得ることと考えるのでございます。そうした医師としての資格を持った者が、さらに教官等専任者の指導のもとにいろいろな研さんを積むという体制は、これからもその指導を十分にするとともに、やはり大学がそのような指導の場でございますので考えていかなければならぬことだ、このように考えておるところでございます。
#72
○河野(正)委員 医師であれば麻薬を施用してよいということにはならぬのです。そこに問題があるわけです。だから、私は厚生省にお尋ねいたします。それならば現在の大学の中で、麻薬施用者としての都道府県知事の免許を受けた者が一体どのくらいおりますか。
#73
○坂元政府委員 徳島大学の場合でございますならば、徳島大学で現在医師の免許をもらって勤務しておられる人は、私どもの調査によりますと三百二十九名、そのうち麻薬施用者の免許を持っておられる方が百二十七名でございます。
#74
○河野(正)委員 徳島大学に勤務されておる医師である勤務員というものが三百二十九名で、その中の施用者というものは百二十七名しかおらぬ。三分の一しかおらぬ、三人に一人しかおらぬ。この三人に一人の人だけが当直をして、そうして麻薬を施用しなければならぬ場合に施用しておったということになるわけでしょうか。現実にはそういうことにはならぬと思うのです。
#75
○木田説明員 たいへん恐縮でございますが、私は麻薬関係の法規は私自身どうも詳細に存じておりませんけれども、医師である者は、麻薬取り扱いにつきましての手続をすることによりまして、その施用者としての許可も得ることができるものというふうに聞かされておるのであります。したがいまして、徳島大学の病院にも、その徳島大学の職員として教官の職にあります者以外、いわゆる医局員として研さんに来ております無給の医師、それにもやはりそのような麻薬取扱者としての許可を得ておる者もあるように聞いております。したがいまして、いま河野委員御指摘のように、また薬務局長からお話がありましたように、徳島大学におきまして現に麻薬施用者としての許可を得てます者が実際に扱っておる者よりも数が少ないではないかというのは、手続を正確に行なわずしてそのような取り扱いをしておるという非常に遺憾な実態だと心得るわけでございまして、そのようなことのないように今後とるべき手続はきちんと行なわせる、さような点は十分に指導してまいりたいと思います。
#76
○河野(正)委員 これは無給医局員であろうと有給医局員であろうと、要するに施用者の願いを出して免許を受けなければやれぬわけですね。ところが、現実の問題として無給の医局員の場合、施用者の免許を受けるケースというものは少ないことはわかっている。しかも、そういう施用者としての免許を持たぬ人が実際には施療の中心になっておるわけですから、一番麻薬と接触しなければならぬ立場にあるわけですから、この徳島大学の事件というものはなるほど遺憾な事件であるけれども、これは私は氷山の一角としか考えられない。特に医師であっても、麻薬取締法に違反いたしますれば懲役刑があるのです。私は一番新しい四月十八日の新聞記事を見てみましても、医師が違反した、それで懲役一年、執行猶予三年の判決を言い渡されておる。一般民間では、こういうちょっとルーズにわたった違反を起こしますと、懲役刑に処せられる。だが、国の監督下に置かれておる大学においては、いま言うたように、施用者としての免許を持たぬでもどんどんやるという現実があることに、私は非常に納得のいかぬ点があると思う。むしろ、国の機関なり国が直接監督をしておる機関の中においてこそ、法律が守られなければならぬと思うのです。ところが、民間でちょっと事故を起こすと、すぐ取締法違反でひっかかる。ところが国の機関では、徳島大学でも医師が三百二十九名おりながら百二十七名しか施用者としての免許を受けておらぬ、こういうところに、やはり千葉大学のチフス事件の管理のまずさ、それからまた、今度たまたま徳島大学ですけれども、これを抜き打ち、立ち入り検査をやってごらんなさい、どこの大学でもひっかかると思うのです。政府としても自信はなかろうと思うのです。これは熊崎さん御承知のとおりです。ですから、たまたま最近チフス事件も起こってきたし、それからまた、いまの大学でありませんけれども、公的医療機関における人体実験、生体実験というようなものが人道上の問題として起こってきたし、そういう公的機関における病院管理、医療管理というものについてさらに慎重な、また格段の改善を行なわなければならぬ、こういう事態が生じてきておるわけですから、そこで私は、たまたま麻薬問題ではありましたけれども、やはり病院管理を適正にしていくという意味において、私はこの問題もやはり重要視しなければならぬというふうに考えておるわけです。そこで、私は何も文部省を責め立てようとは思いません。ただ、現実に千葉大学でもそういう問題が起こってきたし、千葉大学は、かつて中山先生の例のにせ診断書事件とか、そういう問題も起こってきて、いろいろ問題の多いところなんです。私が何年か前に取り上げた新潟大学のツツガムシの人体実験、これは新潟大学がやったということで、やはり国が直接監督しなければならぬ機関においてそういう誤りなり法律違反というものが行なわれておるということは、私はまことに残念だと思うのです。たまたま最近国民が非常にこういう問題について重大な関心を持ってきましたから、この際私は、やっぱり病院管理、監督という点についてはさらに格段の努力をしてもらわなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。そういう意味において、ひとつ文部省からも今後に対しまする腹がまえを聞きたいし、それから医療機関としては当然厚生大臣所管ですから、厚生大臣からも今後の率直な腹がまえというものをひとつお聞かせ願いたい、かように思います。
#77
○木田説明員 いま河野委員から御指摘がありましたように、最近千葉事件、また、このたび徳島大学におきまして、このような残念な、また法の規定にたがうような事例がありましたことを、まことに私ども、文部省の関係としても申しわけないことと思っておるところでございます。
 大学病院は、委員も御在じのように、やはり何といたしましてもその研さん途上にある学生、研修生等に対しまして指導をしていかなければならぬという使命を持っております。その麻薬の取り扱い等につきましても、やはり教育もし、指導もしていかなければなりません。そういう地位にあります大学病院が取り扱い規定にみずからたがうということは、これまた御指摘を受けましても弁解の余地のないことなんでございますが、一面この指導をし、指導を受ける者という関係から見まして、現実の問題として、われわれもこれからその実際の取り扱いをどうするかという点につきましては、なお厚生省の御当局とも相談しながら改善をはかっていかなければならない、そうした問題があろうかと思います。
 なお、そのほか、先般来問題になっております。研究のためあるいは勉強のためとは申せ、一つの医局にかなりたくさんの人が出入りをしておる、そして研究と実習と診療とが一つにかみ合ったようなことでいろいろの問題を起こしております大学病院のことでございますので、先般文教委員会の際に文部大臣からも委員の御質問にお答えをしたところでございますけれども、できるだけ早い機会にこの医者の養成課程、主として大学におきます医学教育、特に学部卒業後の段階の医学教育の問題と付属病院の診療並びに研究のあり方、その点に中心の論点を置きました関係者のお集まりを願いまして、せっかくこのように多くの方々から御批判をいただいておるのでございますから、いろいろの不幸な事件をせめても何がしか改善の方向に持っていけるならばと考えて、いま準備を進めておるところでございます。こうした機会に、本日の河野委員の御指摘等もなおよく私ども関係者にも伝えまして、ひとつ今後の改善につとめていきたいというふうに考えておるところでございます。
#78
○若松政府委員 医療機関全般の問題のことになりますと厚生省の責任になるわけでございますが、病院につきましては、病院管理者というものを医療法で定めておりまして、一切の管理の責任を持っていただいておるわけでございます。しかし、現実に管理者である者は、現在日本の法律では医師でなければならないことになっておりまして、管理者である医師は通常病院長、病院長というものは通念的に臨床の大家ではございますけれども、いわゆる病院の管理技術というものに対しては必ずしも大家ではございません。病院管理というものの中には人事管理あり、人事管理の中には労務管理あり、職員の健康管理もございます。また、業務管理には建物の安全管理、あるいは清潔の管理、あるいは熱の管理、栄養の管理、保清の管理、いろいろの管理がございます。また、医療面におきましても、看護の管理、医療の管理がございます。また、薬物の管理につきましては、薬物の管理、麻薬の管理、危険物の管理等、いろいろのものがございます。しかもそれぞれの管理面を、病院長一人でこれを行なうことはなかなか困難でございまして、事実上それらのものは事務長、薬剤長あるいは看護総婦長あるいは医長というような下部の中間組織にそれぞれ責任を持たせ、あるいは指導し、指示して病院管理を行なっていくべき性質のものでございます。しかし、申し上げましたように、日本における病院長の管理者というものは、なかなかそこまでの認識と技術がないのが現状でございます。アメリカ等におきましては、病院管理者というものが大学程度の学校教育を受けて管理者になる、したがって、必ずしも病院の管理者は医師でなくてもよろしい、むしろそのような特殊な教育訓練を受けた管理者がやることが望ましいという傾向を持っておることは、御承知のとおりでございます。そういう意味で、日本におきましては病院管理というものがルーズになり、あるいは非常に不徹底であるという点を考慮いたしまして、私ども国立病院等におきましては、国立の病院管理研究所におきまして、事務長、病院長の管理研修会を行なっております。これに対しては国立の施設だけでなしに、民間の病院の管理者あるいは事務長についても門戸を開放いたしておりまして、適当な指導訓練を受けるようにいたしております。大学病院等につきましては、なかなかこの点がむずかしかろうと思いますが、私どもといたしましては、人事管理の中の健康管理に欠けたために日赤の結核事件も起こり、施設管理の中の細菌その他の危険物の取り扱い管理がルーズに流れたために千葉事件が起こり、麻薬管理が至らなかったために徳島事件が起こるというようなことでございますので、これらの体制をいかにして今後立て直し、さらに十分な管理ができるようにできるかということについても十分検討し、また私どもだけでなしに、関係の各省庁とも連絡、協議いたしまして、この方針が徹底するように今後つとめてまいりたいと思います。
#79
○田中委員長 午後二時まで休憩いたします。
   午後零時五十九分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時三十四分開議
#80
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続けます。河野正君。
#81
○河野(正)委員 国保の運用にあたりましては、午前中の冒頭にも申し上げましたように、いろんな角度から改善をはかっていかなければならぬ、そういうような点から、一応受け入れ態勢の点について若干御見解を承った、こういうことなんです。
 そこで、これらに関連していま一点お尋ねをして明らかにいたしたいと思う点は、この医療機関、具体的に申し上げますならば、医療法人についての問題点でございます。これは今日までも何回か御指摘を申し上げた点でございますが、特に国民皆保険の今日におきましては、やはり医療機関の体制なりあるいはまた将来の運営なりにつきましては重大な関連を持ってまいるわけでございますから、そういう意味で若干の御見解を承りたい、かように考えるわけでございます。
 医療法人制度というものは、昭和二十五年の第七国会におきまして、これは厚生省が提案して法の改正が行なわれた、こういう経緯になっておるわけでございます。その当時、国会の論議の中でも言われてまいりましたことは、当時は二十五年でございますから、戦後約五ヵ年を経てきた時点でございますので、公的医療機関、たとえば国立病院あるいは都道府県立の病院にいたしましても、非常に施設というものが荒廃をいたしておる。そこで、すみやかに公的医療機関の改善をはかっていかなければならぬということではございますけれども、なかなか財政上の問題で思うようにまいらぬ。そこで、この私的な医療機関に法人格を与え、そしてそれぞれ出資等を求めることによって私的医療機関の整備をはかる、そして一方におきましては、戦後間もないことでございますので、公的医療機閥の内容、設備等が非常に荒廃をいたしておりますから、それにかわって私的医療機関に法人格を与えて、そして、形式的には別といたしまして、実質的には代行をやらせる、こういう意味で実はこの法案が制定をされたわけです。ところが、今日の実情を見てまいりますと、実際にはそういった精神で立法化がはかられたわけでございますけれども、その後この医療法人という医療機関につきましては、何ら保護政策というものが与えられておらぬ、こういう経緯になっております。そこでこれらの点について、今日まで厚生省当局に対しましてしばしばその改善策を要望いたしてまいったわけでございますが、その後この問題がどのように経緯をいたしておりますか、当局の御見解を伺いたいと考えます。
#82
○若松政府委員 私的医療機関は公的医療機関の整備と同時に、当然医療機関網の充実という点から整備に当たってまいらなければなりませんので、これについて、建設その他の面につきましては医療金融公庫等の融資をもって改築、新築等の助成をいたしておりますし、また私的医療機関の中でも、特に法人格を持ってある程度公共性を持っているというものにつきましては、税法上の優遇策を講ずる等の措置をもって助成を進めてまいった次第であります。
#83
○河野(正)委員 助成をしてまいったというお答えでございますけれども、私がお尋ねをしてまいりました点は、あるいはことばが足りなかったかわかりませんけれども、医療法人が制度として設定された当時の精神というものが今日必ずしも実行されておらぬではないかということを私は御指摘申し上げておるわけです。そこで単に育成をいたしておるのだというようなことでは、これはまともな答えになっておらぬわけであって、すでにこの問題はしばしばこの委員会においても提起されてまいった案件でございますから、具体的にどういう育成策をやってきたかということから承りたい、こういうことです。
#84
○若松政府委員 御承知のように医療法人が当初出発をいたしましてから、実際に運営をしてみますと、いろいろの難点、運営上の欠点、困難が出てまいったことは、先生御承知のとおりでございまして、そのために医療法人もさらに二つの性格を分けるようにいたしまして、財団的な医療法人と持ち株のある比較的私的財産の濃厚な医療法人というふうに分けまして、特に公的な性格を持つ、財団的な性格を持つ法人につきましては、さらに優遇措置を講じてまいりました。しかし、現実に現在私どもが一番困難を感じておりますのは、持ち株のある医療法人におきまして、現実にこの法人の加入者が死亡いたしました等の場合に財産を相続する。その場合に相続税等のかかった場合にその処理がきわめて困難であるというような事実がこの運営をやっております上にだんだん明らかになってまいりました。最も現実的な困難はいまそういうようなところにあろうかと思いますので、これらの点についてもいかに改善するかということで税務当局とも折衝しておる段階でございます。
#85
○河野(正)委員 どうもそのお答えが的確でないような感じがするわけですが、そこで具体的に提議をして御見解を承りたいと思います。それは財団なり社団なりは別として、昭和二十五年に医療法人という制度が設定をされた。それについては先ほど申し上げたようないろんな客観的な理由があって制定がなされた。ところが実際には昭和二十七年大蔵省が相続税法の一部を改正いたしまして、そして医療法人を個人とみなして相続税、贈与税を課税する、こういう結果に立ち至ったわけです。これが問題の中心点なんでございますが、そうしますと、これは二十五年に医療法人制度というものが医療法の中で制定をされておる。そのときいろいろ立法の精神というものがこの委員会の中でも力説されたわけですが、現実にはその精神に反した形でいまの課税制度というものがとられておるじゃないか。ここにいまの医療法人と名のっておりまする医療機関の非常に大きな不満があるわけです。そこで、これらの点については、今日まで当委員会あるいはまた大蔵委員会との合同審査の中でもしばしば指摘をされてまいっておる点です。そこでこれらの点について厚生省がいまどうお考えになっておるのか、また今日まで努力したけれども、どういうことがネックでこの問題が依然として今日まで解決しないのか、そういうことをまずもってひとつお聞かせいただきたい。
#86
○若松政府委員 ただいま御指摘がありましたように、財団である法人につきましては、この財産の帰属がきわめて明確になっておりますし、したがって個人の所有というものが明らかでありません。個人の所有ではございませんので、したがって相続税云々の問題が当然生じないのでありますが、社団の形をとっておりましてそれぞれ持ち分を個人の所有権というものときわめて近似した形をとっておりますものにつきましては、どうしても税務当局がこれを個人自由財産的にみなすということになりまして、御承知のような相続税の課税においては全く個人と同じ扱いをする。ところが個人の持ち分でありましても、現実に個人がこれを自由に処分することができない、またこの財産から相当の資産を生んで利潤を蓄積しあるいは将来相続税等に充当すべき資産を蓄積するというようなことも不可能になっております。そういうようなことで現実的にきわめて困難があり、この個人の自由にならず個人の処分ができないような財産を相続することによって相続税だけを別途に支払わなければならぬということが、事実上困難であるということは重々承知いたしております。しかし現在のところなおこの問題を的確に解決するだけ税務当局との了解が得られないでまことに困難な状態でございますが、今後この問題をいかに適正に解決するか、現実にこの問題に逢着されている方々の御意見も聞いて、できるだけいい方向で解決に努力したいと考えております。
#87
○河野(正)委員 まあ十年一日のごとくいまのような答弁を承るだけで、具体的には一向前進のあとが見られないというのが現状なんです。そこでこれは後ほど大蔵省関係にも御見解を承りたと思いまするけれども、法人格を与えて出資はさせる、ですけれども医療法第五十四条によりまして剰余金の配当はまかりならぬ、こういう規定がなされておるわけです。そこでもうけても配当してはならぬということは、これは一般の営利法人とはおのずから性格が違うということが、そこにあろうと思うのです。そうすれば当然この医療法人というものは公益性が高いというふうにみなさざるを得ぬと思うのです。ところが現実には医療法第五十四条では剰余金の配当にまかりならぬという規定をしている。要するに、医療法人というものは営利事業でないのだ、そういうふうな規定を医療法第五十四条でやりながら、実際には課税というものは一般営利法人並みに行なわれておるというところに、私は非常に大きな矛盾があると思うのです。こういう矛盾というものは私はすみやかに解決すべきではなかろうかというふうに考えるわけです。この点私は筋が通っておるわけですから、だから私はざっくばらんに言って大蔵省の見解なら医療法の五十四条を削って、それはもうけたものは税金を取ります。そのかわりもうけたものは自分で配当しなさい、こういうふうな割り切った措置が当然行なわれなければならぬと思う。ところがもうけても配当しちゃならぬ、みんな出資しているのに。そうして税金を取るというのですから、これはまさしくどういう理屈を立てても納得するわけにはまいらぬのだと思うのです。ですからそういう理路整然たるわれわれの要求をひっさげて大蔵省にいろいろ注文をつけても大蔵省ではがんとしてきかないということになれば、これは私も大蔵省の見解を聞かなければならぬ。これはいかがでございますか。
#88
○若松政府委員 出資をしておきながらその出資に対する利潤といいますか少なくとも投資に対する利子というものさえも現在は禁止されているというところに、この医療法人に出資した資産というものが、経済的な意味からいっても非常にあいまいな存在になっていることは御指摘のとおりと思います。そういう意味で、現在ではこの医療法人を経営していく立場になりますと、持ち分を持った方々がみずからその法人の中で医療従事者としてやるか、あるいは役員として報酬を受けるかというような道しかないわけでございます。そういう不合理がございまして、そのために、相続した者が引き続いて被相続人と同じような立場でその医療機関の中で勤務者あるいは医療従事者としての相当の俸給をもらうというようなことができれば、まだ一つの報われるところがあるわけでございますが、もしもそういう相続者が医療機関と全く関係ない職業に従事しておりますと、もはやその資産に対して全く報酬も得られないという形になりますので、ここら辺のところを、その資産に対してどういうような報酬なり利潤なり――利潤という形はおかしいかもしれませんが、資本に対する当然の利子に相当する分というようなものでも得られるかというような方途を研究してみる必要があるのではないかと存じております。これらの点も私ども医療法の全般的な改正と検討を考えておりますので、その一環としても、一つの重点としてこの問題を考えていきたいと存ずるわけであります。
#89
○河野(正)委員 この立法の精神もそうでありますと同時に、やはり立法の精神を受けて、それぞれ個人でやっておった人が、自分の全財産と申しますか、全施設を提供して、法人格を得ておるわけですから、私はいまいろいろ申し上げましたような要求が出てくることは当然の理だと思うわけです。しかも立法の精神の中には、法人格を持たせるということは医業経営の安定と永続のためだ、こういうことも国会の審議の中では言われておるわけです。ところが、一例をあげますると、社団法人の出資持ち分を相続をする際には、これはもう剰余金の配当ができておらぬわけですから、金はないわけですから、したがって医療施設というものをある程度処分をして相続をしなければならぬ。そうすると、立法の精神にうたわれておる医業経営の安定と永続のための処置というものは大きくじゅうりんされる。要するに剰余金の配当が禁止されておるわけですから、剰余金が出てくれば全部施設につぎ込まなければならぬ。つぎ込んで医業経営の安定と永続化をはかっていくわけですね。ところが今度は、相続する場合にはその持ち分というものが細分化される。一部は施設を売って相続税を納めなけなればらぬということになれば、当然立法の精神というものがじゅうりんされる結果になると思うのです。これらの点については、もう再三再四厚生省は苦しい答弁をされておりますから、今度はひとつ大蔵省のほうから、苦しくない、楽な答弁をお願いをいたしたい、かように考えます。
#90
○中橋説明員 ただいま御指摘の点は、この相続税の基本問題に触れるものでございます。相続税は、いまさら申すまでもなく、個人の所有財産というものを、個人の死後相続という事象をとらえまして、財産そのものを課税標準として取る税金でございます。したがって相続税という点は、その税の本質からいいまして、財産を縮小せざるを得ないということは、これはもうやむを得ない措置でございます。もちろん、それにつきましては非常に無理な縮小があってはならないという観点から、延納という制度は設けられておりますけれども、相続税というものは、本来そういった性格のものでございます。
 ところでこの医療法人の中で、相続財産の中に算入されるというものは、いま御議論のございましたように、まさに出資持ち分のある人たちの持ち分権と申しますか、そういうものの経済的な価値であります。いろいろ医療保険業を進められる上におきましては、その形態におきまして、個人企業ありあるいは法人形態といたしましても、社会福祉法人あり、公益法人あり、学校法人あり、そういったいろいろな形態がございます。その一つとして、もちろん医療法人というものが設けられたわけでございまするけれども、その形態となる中にも、また先ほどから御議論のあるように、財団的なもの、社団的なものといろいろあるわけでございます。それを遂行しておりまして、出資持ち分のある人の相続という事態に逢着しました場合に相続税が起こるということと、それから先ほど来医療法人の設立の趣意といたしまして、医療行為の安定的継続性ということとをどういうようにマッチさせるかということでございますが、これはまた相続税の問題というよりは、もっと根本的に医療法人の形態の中で十分解決する。と申しますのは、いわゆる個々人の医療法人に対する支配権と申しますか、そういうものを断ち切ることによりまして、両方が相待って医療行為の安定的継続性を確保させつつ、また相続税の持つ問題というものもなくなるという道があるのではないかと思います。それをあくまでも個人の医療法人に対する出資持ち分権というものを保持しつつ、なお相続税の負担を除外するということになりますと、これは同種の要望といたしましては、確かに個人の企業が企業主の死亡によりまして、相続税を納めます場合に、企業規模というものをどうしても縮小せざるを得ない。ある程度の恒常的な企業規模に見合うものは、相続税の対象から除けという御要望もございます。また事業に限りませんで、われわれの個々の家計あるいは居住用の財産というようなものも、その生計を主宰しておる者が死亡いたしますれば、そこに相続税がかかってまいりますと、これを縮小せざるを得ないという羽目になるのと同じ問題でございます。それに対しましては、私どもは相当程度の基礎控除というものを考えることによりまして、ある一定規模のそういう生計、居住用財産、あるいは事業資産、もちろんこの中には株式とかそういう持ち分も含めて考えられるわけでありますけれども、そういう基礎控除の多寡の問題が適正であるかどうかという問題にもつながってくるのだろうと私は、思います。幸い今年におきましては、相続税の基礎控除も大幅に上昇させていただきました。むしろそういう基礎控除の問題としてはわれわれは考えるべきだと思いますけれども、医療法人に対します個人の関係というものを、現在のままそのまま相続させられまして、なおその上で相続税のものを考えよと言われましても、先ほど来るる御説明申し上げましたように、相続税のそのものという意味から考えまして、非常にむずかしい一般的な問題をはらんでおるというふうに思います。
#91
○河野(正)委員 われわれも税理論がわからぬわけではないのです。ただ立法の精神でうたわれておることと、特にその中の医業経営の安定と永続性の問題、これを守ろうとすれば、やはり支配権が及ぶとか所有権が次の代に及んでいくとか、そういう税理論上の問題はございます。ございますけれども、医業経営という特殊事情、極端に申し上げますと、外科の病院があった。ところが手術室を取っ払わなければ相続税を納められぬということになれば、これはもう明らかに医業経営の安定と永続性を保持したというわけにまいらぬと思うのです。これは機能が麻痺するわけですから。だから一般の営利法人ということとはおのずから医業経営というものは違う。この現実の実態、それとあなたからいろいろ涼しい御回答があったわけですけれども、そういう税理論上の立場とどう調整していくかという点について、今日まで何ら進歩のあとがないというようにわれわれは判断しているわけです。だから、調整ということばをあなたはお使いになりました。そのとおりだと思います。だから私どももいろいろ党の中でも検討したわけですけれども、この支配権が及ぶのにこれは減免というのはどうだろうという話もあった。それはわからぬわけではないですけれども、ただ立法の精神の中で医業経営の安定と永続性といううたい文句があるし、これをやはり、いまの税法の中で生かすことが、私は具体的な調整の道だと考えておるわけです。いままでわれわれは立法精神を掲げておりますし、税務当局のほうでは税理論一点ばりでくる。そこで歯車がかみ合わない。それが今日まで解決をはばんだ大きな理由になっておると思うのです。そこにやはりそういうギャップがあるわけですから、それを調整する努力というものが当然政府当局で行なわれなければならぬ。そういう調整の努力をすみやかにやってもらわなければならぬし、やってほしいという要求は、私ども今日まで続けてまいっておるわけです。そこで、そういう努力が今後行なわれるのかどうか、厚生省はやると言っているのです。ところがあなたのほうがそういう意思がなければ、一つも前進しないわけですから、これは厚生省を何ぼ責めたって同じことなんです。この点いかがでしょう。
#92
○中橋説明員 医療法人制度が設けられまして以来の所得税、相続税、贈与税等につきましての税制の変遷を振り返ってみましても、先ほど御指摘のような相続税の改正、これは二十七年にございましたが、それを追っかけるように、また二十八年に今度はある一定の要件に該当すればそういう譲渡所得税なり贈与税がかからないというような特別の、医療法人だけに例をとりますれば、そういう特別の公的な色彩の強い医療法人に対する配慮というものがなされております。あるいはまた医療法人そのものの年々あげます所得に対する法人税、こういうものにつきましても、昨年これまた公的な色彩の強い医療法人に対しましては、公益法人と同じ税率をもってかけるというような改正もなされております。そういうことで、医療法人の中でもそういう公益性のきわめて強い公益法人と同等と見られるようなものについての配慮は、これまでも十分研究もいたしました。その線に沿って税制の改正もやってきたつもりでございまして、いま御指摘の持ち分につきましての相続になりますと、先ほどもちょっと触れましたように、公益性の非常に高いと言われております医療法人だけに問題が限定せられませんので、あらゆる法人形態をとっております企業の問題も含まれております。なお私どももそういう実態をあわせ考えつつ、今後もなお検討は続けてまいりたいと思っております。
  〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕
#93
○河野(正)委員 そこに私どもの不満の意を表明せざるを得ぬゆえんのものがあるわけです。というのは、医療法五十四条ではこの剰余金の配当をしてはならぬ、このことばを裏返せば、医療法人というものは公益性が高い、営利事業でないのだということを私は意味するだろうと思うのです。どうして五十四条でそういう規制をしなければなりませんか。営利事業ならば利益の配当をしてもいいでしょう。そこに私どもひっかかるのですよ。この点はいかがですか。どういう御見解でしょう。
#94
○中橋説明員 医療法の五十四条で、剰余金の分配がなされていないということにつきましては、また医療法を制定せられましたときのいろいろなお気持ちが反映しているのだと思います。たとえば、私がしろうとで考えましても、医は仁術であるというふうにいわれておりますところに、剰余金が分配せられることが相当多く発生するということはあり得ないのだというようなお考え、あるいはまたそこでたまたま生じましたそういう剰余金は、医療行為のより向上、発展を願うために、そこに留保しつつ行なうべきであるというようなお考えが働いておったということは想像するにやぶさかでございません。ただ、それならば他の一般の企業におきまして、こういう剰余金の分配がどういうふうになされておるか。特に中小企業、数多くの中小企業におきましては、これはむしろ株式会社というような形態をとっておるかもしれませんけれども、配当を株主であります昔の個人企業主に分配するということに主力がございませんで、これはむしろ法人においてあげました所得は、できるだけ多く法人の中に留保しまして、仕事の分野を拡張していこうというふうに考えておるのが中小企業の実態でございます。
 そういう点をいろいろ考えてまいりますと、剰余金の分配をするから、しないから、それでもってその株式なり、出資持ち分に対しますところの相続税の考え方を変えるということは私はなかなかとり得ないことだと思います。
#95
○河野(正)委員 それならことばを返しますが、一般の中小企業は利潤があっても配当してはならぬという法の規定がございますか。
#96
○中橋説明員 それはございません。ございませんが、私は、実態的に中小企業の中でも、そういった機運が非常に強いということを申し上げたわけでございます。
#97
○河野(正)委員 私は法の規定があることとないことは本質的に違うと思うのです。中小企業が資本蓄積をするのだ、そのために利潤の配当はしないのだという方針でいっているのだから、医療法人もそのとおりだというなら、私もあるいは医療法の五十四条で明記する必要はないと思うのです。その精神でいけばいい。私はあえて医療法の中で、五十四条でそういう文章を明記したところは、あなたちょっとお触れになりましたが、医は仁術であって、いわゆる営利事業でないのだというたてまえを強調せんがために、私は五十四条の規定というものが生じたと思うのです。それでなければ私は何も医療法だけに剰余金の配当をしてはならぬということをあえて明記する必要はないと思うのです。だからあなたは中小企業の例をあげてお答えになりますけれども、本質的に私は非常にその点は違うと思うのです。
 厚生大臣、いまの私どもの問答を聞いていかがお考えでしょうか。医療法では五十四条で、剰余金の配当をしてはならぬ、出資はしても、もうけても配当してはならぬ。ところがそれは私どもは医療というものは公益性が高いから、営利事業でないのだから、そこでもうけてはいかぬというふうに私どもは理解するけれども、大蔵省のほうでは、中小企業だって同じことじゃないか、だったら中小企業でもやはり剰余金は配当してはならぬということをはっきりすべきだと思う。片手落ちだと私は思うのです。それは中小企業にやらぬで、医療法だけやるというのは片手落ちだと思うのです。
#98
○鈴木国務大臣 医療法の中で、医療法人を特に取り上げまして、医療機関としての育成をはかっていく、またその役割りというものを特に重視をしていく、こういった立法の精神からいたしまして、これに対して金融上、税制上その他各般の面でこれに対する助成措置を講じてまいる、こういう基本的な方向は変わってはならない、これは一般の他の営利法人等とは本質的に違う、私はこういうぐあいに考えておるのであります。
 そこで、いまの相続税でありますとかそういう面で税法上非常にむずかしい問題があることも承知をいたしておるのでありまして、この点は医療法人の、立法の精神を生かしつつそういう税法上のむずかしい問題をどう調整するか、こういうことで今日まで厚生省も大蔵当局といろいろ話し合いをいたしておるところでございます。まだこの点につきまして十分な調整がついておりませんが、引き続きこの点につきましては大蔵当局と十分話し合いを進めたい、こう考えております。
#99
○河野(正)委員 大臣の御答弁はまことに適切な答弁で、私どもも非常に敬意を表したいと思います。要は、そういうような御見解が具体的にどういう形で生かしてもらえるか、この点に尽きると思うわけです。
 そこで私は、いま大臣から非常に前向きのお答えをいただきましたので、もうあえてことばを重ねようと思いません。ただ、そういういまの大臣の御見解を、具体的に一日も早く実を結ぶように、ひとつ大蔵省と話を煮詰めてもらいたい。政党政治ですから、やはり厚生大臣も国務大臣でございますので、したがって国務大臣の意向というものは税務当局もひとつ大いに尊重しておやりにならなければならぬ義務があると私は思うのです。大臣は言っても、おれはおれでかってだということなら、何もここでそれぞれお呼びして御見解を聞く必要はないのです。いま大臣の非常に良識ある御見解の開陳があったわけでございますが、これに沿うて大蔵省はどういうふうな御見解でございますか、ひとつ率直にお聞かせいただきたい。あなたの答弁次第ではこれは今後やめます。
#100
○中橋説明員 厚生大臣のお話に私ごとき者が申し上げるのははなはだ不均衡でございます。しかし、私どものほうでは、厚生大臣のお話もございますし、私どもとしましては厚生省の事務当局の方々、またわれわれのいろいろな租税理論と、話し合いをなお今後とも続けて検討してまいりたいと思います。
#101
○河野(正)委員 検討では困るので、厚生大臣の御見解を尊重されるかどうかということを明確にしてもらわなければ、ただ検討してまいるじゃ困るのですよ。
#102
○中橋説明員 やはり私ども、先ほどるる申し上げましたように、税金には、また税制一般のいろいろな全般的にながめなければならぬ問題もございますので、よく厚生省の事務当局と打ち合わせて検討してまいりたいと思います。
#103
○河野(正)委員 検討をでは困るので、そのできるできぬは別として、厚生大臣の非常に良識的な御発言があったわけですから、それを尊重して事務当局も打ち合わせされるかされぬかということが問題であって、それを抜きにして検討されることでは了承できませんよ。
#104
○中橋説明員 厚生大臣の申されたことを慎重に十分検討いたします。
#105
○河野(正)委員 十分検討されるのはけっこうですが、厚生大臣のおっしゃった御見解を尊重をして検討されるかどうかが問題なんだ。検討されるのはけっこうです。それはあなたたちの仕事でしょうが……。私どもが言おうが言うまいが、検討さるべきですよ。しかし、私どもがこの問題をここで提起しているわけですから、その提起に対して厚生大臣から率直な意見の開陳があっておるわけですから、それらを尊重して事務当局同士が御検討なさるかどうか、この点は非常に重大な問題だと思うのです。ただ検討、検討では、厚生大臣の発言を何も求める必要はないので、あえて厚生大臣の発言を求めておるわけですから、したがって厚生大臣の御発言をあなた方が尊重して検討されるかどうかという、その尊重ということばはきわめて大事な問題です。これはキーポイントです。それをあなた、はずしてお答えになったって、私は何度も繰り返しますよ。百ぺんだって繰り返しますよ。
#106
○中橋説明員 尊重して検討するということと結論がどうなるかということは私は別問題だと思います。別問題ということを御是認いただくのでございますれば、もちろん厚生大臣のおことばは十分尊重して検討いたします。
#107
○河野(正)委員 厚生大臣は国務大臣ですから、内閣を代表されるわけですから、あなたがあえてここで、結論は別です。ただ尊重ということばを使うだけではわれわれは納得できませんよ。尊重した後あるいは結論がどうなるかわかりません。しかし、あえてあなたはここでそういうことを前提として尊重するということならわれわれは了承できませんよ。初めからどうなるかわかりません、ですけれども尊重しましょう、こういうことと、尊重いたしましたけれども結論的には残念ながらこういうことになりましたということとは、本質的に違いますよ。だからこれは、国務大臣である厚生大臣がいまの答弁をされて、あなたが注釈を加えての尊重ならば了承できません。いまここで国務大臣である厚生大臣が発言されたわけですから、それを尊重いたしますということを前提としてあなた方が検討するのでなければ、何ぼあなたが言ったって、何べんでも、百ぺんでも二百ぺんでも繰り返しますよ。議事は進行しませんよ。
#108
○中橋説明員 先ほどから私がいろいろ御説明申し上げているのは、事務当局としての税金の考え方を申し上げたのでございます。したがいまして、もちろん厚生大臣のおことばは尊重いたします。しかしまた、私どもの税当局として事務当局の持っております考え方も、先ほど申し上げた点は十分御考慮いただきたいという気持ちをもって先ほどから申し上げている次第でございます。
#109
○河野(正)委員 厚生大臣のおっしゃったことができる、できぬは別ですよ、それは検討してみなければわからぬでしょう。それをあなたが依然として厚生大臣の尊重については保証が持てないということを前提としておっしゃるから、それなら私どもは誠意がないからだめだ、こう言っているのですよ。これはできるのだったら、もうここではっきり、それは私が言うたとおりやりますと言えるわけですよ。それがまだ検討しなければできぬから尊重ということばになっているわけでしょう。それを尊重ということばを使います。しかし大臣の発言については責任を持ちませんというような注釈を加えた尊重ならば、われわれは了承できませんよ。そうでしょう。できることをここで約束できるのならば、ここであなたは何も尊重ということばを使わぬでもいいじゃないか、御指摘のとおり実行いたします。こう言ったらいい。厚生大臣もそういう約束ができぬから、そういう調整について最大の努力をいたします。こういう御見解を述べておるわけですから、それをあなたのほうが、厚生大臣何ぼ言っても、その発言については責任を持ちません、ですけれども尊重いたしましよう、こういうことと尊重いたしますということとは本質的に非常に違いますよ。だから、あなたが依然として注釈を加えた尊重ということならば、議事は進行いたしませんよ。そういう不誠意なことでは、われわれは議事を進行するわけにまいりません。だから、誠意ある答弁をしてください。
  〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
#110
○中橋説明員 私は非常に誠意を持ってお答えしておりますから、尊重ということがすぐさま税制理論としてもそれを取り入れるということにおとりいただくと困りますものですから、尊重ということばを避けたのでありますけれども、いまおっしゃるような意味の尊重ということでございましたら、もちろん尊重いたします。
#111
○河野(正)委員 あなたが誠意を持って答えておるといっても、それは演説だけの話であって、私どもは誠意があるかどうか疑わしいから質問しているわけですから、私が納得するかどうかの問題なんです。それが誠意なんですよ。あなたが幾ら口で百ぺん誠意、誠意と言ったって、その誠意が私に反映するかどうかが問題なんです。それで私は、なおざっくばらんに言って、税法上非常にむずかしい、税法理論の上からむずかしい問題があることは、私どもも長い間検討いたしておりますから、承知いたしております。しかし立法にあたっては立法の精神があるわけですから、私どもここで因縁をつけておるわけじゃないのですよ。二十五年当時の国会においていろいろ発言されたことがちゃんと議事録に残っておるのですから……。だから、私ども国会審議というものは尊重しなければならぬ。当然国会審議というものが実際に実行に移されるというたてまえで、私どもは今日まで医療法人の結成に当たってきたわけです。結成されたところが全然立法精神と違っておったということになるならば、これは法人関係者がいろいろ不満、不平を申し述べるのはやむを得ぬと思うのです。税理論上非常にむずかしい点もございます。ございますけれども、少なくとも所管大臣――医療法人というのは医療法に規定されておるのですから、これは厚生大臣が所管大臣でありますが、いま私がたびたび繰り返して御指摘を申し上げたように、前向きの姿勢で努力してみようということですから、あなたがそれを受けて尊重してやりますということは私は当然のことだと思うのです。だからはっきり言って、もう私が要求したとおりできますというなら、ここでできますと報告をしていただけばいいわけです。それができぬのですから、前向きでひとつ検討するように努力しましょう、それすら尊重できなければ、もう何をか言わんやですよ。そうでしょう。
#112
○田中委員長 委員長から申し上げます。
 本件は当委員会で実は多年の懸案事項でございますので、ただいま税制第一課長は的確なお答えができないかと思いますが、前任者の時代からしばしばにわたって論議された問題でありますので、両省の間でできるだけ早くこれを検討いたしまして、近い将来ごく短期日のうちにさらにこの委員会で御答弁を願いたいと思います。
#113
○河野(正)委員 委員長から議事運営のためにいろいろ御発言をいただきましたので、私もこれ以上申し上げようとは思いません。ただ、大蔵省の誠意をわれわれは疑わざるを得なかったということを申し上げることをまことに遺憾に存じます。
 そこで、午前来医療保険、国民健康保険も含んででございますけれども、それらを運営するについては各面からいま申し上げましたような問題点があるということを御指摘申し上げたかったわけでございます。そこで今度は別な角度からひとつ国民健康保険に対しまする御見解を承りたいと考えます。
 午前中申し上げましたように、国保の適用者総数が全国民の四〇%、半分までいきませんけれども、やや半分に近い。そういうことでこの国保というものは国民にとりましてきわめて重要なウエートを持っておるわけでございます。しかも、しばしば言われておりますように、所得水準が非常に低い。年間平均二十万円以下の人が五五%、半分以上おるわけですから、所得水準が非常に低い。国民の中で適用者総数というものが非常に多くて、しかも一方におきましては所得水準というものが非常に低い。わが国のいまの総医療費というものが一兆三百億というふうにいわれておりますけれども、国保の医療費というものは三千億程度、いろいろな角度からこの国保の内容を検討いたしてまいりましても、国保の給付というものがいかに低いか、劣悪であるかということを物語っておるというふうに考えております。
 そこで、そういう意味では今度の国保の改正というものは、一部前向きのものもございますけれども、調整交付金は百分の十から百分の五に下がったというような問題もあって、私どもも簡単に了承することができないゆえんのものも実はそこにあるわけでございます。これはもういろいろ各保険の中のアンバランスがある、給付にそれぞれ格差があるということが言われておるわけですが、それは別として、こういうような悪条件が重なっておりまする国保を今後さらにどういう方向で改善をはかり、給付の水準の向上をはかっていく、あるいは財政上の裏づけを考えていくというようなことを考えておられますか。基本的な点についてはひとつ大臣から率直な御見解をお聞かせいただきたいと考えます。
#114
○鈴木国務大臣 私は河野さんが御指摘になりましたように、国民健康保険は、皆保険のもとにおきまして四割をこえる多数の被保険者を擁しており、かつまた御指摘のとおり所得も比較的低いところの農民や自由業者という者を対象にしておるのでありますが、それだけにわが国の医療保障の面における役割というものはきわめて大きい、そういう観点に立ちまして、就任以来この国保の財政の問題や、また給付の改善の問題等々につきましては、及ばずながら努力を傾注してまいったところでございます。
 国保の今後のあり方といたしましては、かねて政府が目標として努力をしてまいりましたところの昭和四十二年度までの家族七割給付を限時的にこの計画を実行に移してまいるということが第一点でございます。また保険料の負担の面につきましても、昭和三十九年度と四十年度の対比は三五%くらいになっておる。四十年度と四十一年度の対比は、新しく集計が、概算でありますけれども出たのでありますが、一三・四%、保険税、保険料の値上がり傾向は幾分鈍化してきておりますけれども、相当負担も重くなってきておりますことを率直に私認めておるのでありまして、今回の国庫四割定率化ということは、私はこの国保の財政を長期的に安定させ、また被保険者の負担をこれ以上重くしないようにしたい、そういう気持ちで今回の改正を意図いたした次第でございます。また国保の給付につきましても、地域間の格差もやはりまだございます。こういう他の医療保険制度との問題もありますが、国保内部における給付水準を平準化する、こういうことも今後の改善の一つの目標でなければならない。また事務費の面につきましても、四十年度は百五十円を二百円に、さらに四十一年度にはこれを二百五十円にと、こういうぐあいに引き上げて実態に近づけることに努力をいたしておるのでありますが、この点につきましても、なお今後さらに努力すべき点がある、こういうぐあいに考えておるのであります。要は、この国民健康保険というものがわが国の医療保険の中で多くの被保険者を擁し、しかも所得の低い人たち、そういう人を対象とした医療保険制度であって、財政を安定させ、給付を改善をさせて、そして長期的にほんとうに国民の健康を守る制度として育成をしていきたい。また、その中における低所得階層、市町村民税非課税者でありますとか、そういう階層も相当含んでおるのでありますから、そういう人たちに対するところの保険税、保険料の低減措置、こういうことも私は重要な課題として今後もさらに努力をしていく必要がある、こういうぐあいに考えておるわけであります。
#115
○河野(正)委員 いま大臣からいろいろ財政負担等についての御見解があって、所得水準が低い農民を中心とする国保の今後の対策についての御見解が述べられたわけでございます。いま、所得の面から見たわけですけれども、今度は被保険者の年齢構成の面から見てのいろいろな見解がございます。と申し上げますのは、もちろん所得が低いから、それに対する財政的な問題、と同時に、やはりこの年齢構成の面からの検討というものも当然必要になってきやせぬだろうか。たとえばこれは必ずしも厚生白書の整理のしかたがいいというふうには考えませんけれども、十四歳までが二六%、十五歳から五十九歳までが五九%、六十歳以上が一三%、これを総人口の構成で直してみますと、生まれてから十四歳までが二六%、十五歳から五十九歳までが六四%、六十歳以上が九・五%、この資料から見ても働き盛りの年齢層が少なくて、老齢者が非常に多いという理屈になっておるわけです。そこで、老齢者が多ければ疾病構造も違ってきますし、たとえばガンが出てきたり、あるいは動脈硬化、脳出血等が出てきたり、疾病構造というものはずっと違ってまいりますから、したがってわれわれは、一方では所得が低いという、そういう所得の面からの解決策、それから一方においては年齢構造から見たところの解決策というものが当然構ぜられなければならぬというふうに私は考えておるわけです。そこで、それらの点について具体的にどういう方策をお考えになっておるのか、この辺の事情が明らかでございますれば、ひとつお聞かせをいただきたい。
#116
○鈴木国務大臣 ただいま御指摘がありましたように、この人口構造の中におきますところの老齢人口が急速にふえてきておる。これはまだ欧米並みの比率まではいっておりませんけれども、急速にそういう傾向が出ておりますことは統計の示しておるところでございます。特に国民健康保険の被保険者の中におきましては、最近の経済情勢、社会情勢の変動等に伴いまして、都市に若い生産労働力が集まってきて、子供や老齢の人たちが農村に残るというような傾向が顕著に出てきております。そういうこと等を反映いたしまして、国保の中における被保険者の年齢構造というものは、いまの老齢化という現象が特に顕著に出てきておる、こういうことは御指摘のとおりであるわけであります。そこで、今後医療保険制度の根本的な改善策を検討いたします際におきまして、そういう老齢人口に対しますところの給付なりあるいはまた老人層は所得も低いというような問題もございますので、負担の問題等どういうぐあいにするか、また政府管掌健康保険や組合健保等におきまして、その会社なりあるいは団体なりを停年あるいは老齢になってやめました者が、これが今度は国保の被保険者として移っていく、こういうようなことで、非常に条件の悪い老齢者が組合健保や政管のほうから国保のほうへ移っていく、こういう問題もあるわけであります。そういう実態を私ども十分把握認識しながら、それに即応したところの医療保険制度というものを考える必要があるのではないか、こういうぐあいに私考えておりまして、十分御指摘のような点を考慮に入れながら今後対処してまいりたい、こう考えております。
#117
○河野(正)委員 その点と関連をしてここで御意見を承っておきたいと思いまする点は、一種の社会病といわれておる結核あるいは精神障害者、これらは一つの社会病でございますから、国の責任において対処しなければならぬということが、一面においては結核予防法になり精神衛生法になっておると思うのです。ところがさればといって社会病といわれておる結核なり精神障害者が全部それらの法律で処置されるかというとそうではない。やはり命令入所とか措置入院、そういうのは救済されますけれども、その他は全部国保がかぶらなければならぬという結果になっている。それで一つには、やはり一番医療費を食いますのは長期療養を要する結核とか精神障害者ということであります。そこで、そういう問題も当然将来、結核の問題をどうするか、精神障害者の問題をどうするかという問題の検討も願わなければならぬと思うのですけれども、ただ私どもがここで提起をいたしたい点は、ガン対策については、いま国の制度の中では何ら手が打たれておらない。たとえば、がんセンターや何か施設ができておりますけれども、しかしこれらの、ガン問題に取り組む政策というものは、現在見当たらないということでございます。ところが実際ガン患者が出てまいりますと、かなり国保の予算を食われるということになると思うのです。これは長期でございますし、それから治療にも金がかかりますので。そこで私は、まあ不十分でございますけれども、結核、精神についてはかなり国保が財政のしわ寄せを食っておるけれども、しかしある部分については法律でカバーされておるわけですから、これはさらに御検討の余地があるとして、一方このガンのほうは全然、精神衛生法なりあるいはまた結核予防法のごとき制度というものが設けられておらぬわけですから、やはり将来は、これは国保の財政にも関係しますけれどもそれは別として、国の政策としてガン予防法というかガン対策というか、国の責任において、社会的な疾病については対処していくという方向というものが望ましいのじゃないかという見解を持っておるわけです。やはり何といいましても国保の予算を食いつぶしますものは結核であり、精神であり、ガンであるわけですから、そういう意味で将来ガン対策について、精神衛生法なり結核予防法なり、そういうものと対比するような方策を御検討なさる御意思があるかないか、この際ひとつお聞かせいただければけっこうだと思います。
#118
○鈴木国務大臣 結核や精神につきましては、御指摘のように措置入院でありますとかあるいは命令入所でありますとか、他に感染をする危険がある、あるいは自傷他害のおそれもある、そういうような放置できないようなものにつきまして、これを施設に収容いたしまして治療を加える、これは社会的な問題でもありますので、私は、公費をもってその負担をするということが必要である、こう考えております。ただ、ガンの問題につきましては、いままでの研究なり病気の感染性等の点から見ますと、必ずしもこれを結核や精神のように扱うべきものかどうかという、疾病そのものの態様は、ちょっと違うのじゃないか。ただ御指摘がありますように、その手術なり治療なりということにつきましては相当多額の費用を要する、それが一面において医療保険の財政の大きな負担にもなり、また個人としても大きな負担になって、特に低所得階層ではその負担に耐えられないというようなことから、十分なガンの治療なり検診ができない、こういうことは現実の問題としてあるわけであります。そういう高額治療といいますかの問題について国としてどうするか。特に私は全体ということは無理でありましても、低所得階層であってそういうような多額の治療費がかかる、手術の費用がかかるというようなものにつきましては、これはやはり政策として研究をしなければならぬ問題である。こう考えておるのであります。またこれを総括して考えました場合に、公費で負担してしかるべきものは制度の抜本策を検討いたします場合に十分これを洗ってみまして、そして公費で負担するものははっきりと公費で負担をするということにいたしまして、医療保険の分野というものを明確にしたい、こういうことを私は考えておる次第であります。
#119
○河野(正)委員 その点は大体私どもも大臣が述べられました方針については敬意を表します。やはりこれは、たとえば最近では心臓疾患に対する治療費については国がめんどうを見るというふうな方向も出ておりますし、特に厚生大臣の親分であった池田さんが築地のがんセンターに入院したときには百万円くらいかかったという話も週刊誌には出ておったようですが、やはり相当の金がかかる。それがために一面においては、これはどの健康保険もそのしわ寄せを食うわけですけれども、やはりこれらの点については何らかの対策というものが当然必要ではなかろうか、人命に関する問題ですから……。そういうことも考えて、ちょうどこの国保の年齢構成についてたまたま出てまいりましたので、この際御見解を承っておこうということでお尋ねをしたわけです。
 そこで、いまの結核、精神なり、ガン対策なりと関連をしてお尋ねをしておきたいと思いますが、それはもうしばしばいわれておりますように、最近医学、薬学の進歩によりまして、そしていずれの保険の場合も療養費というものが増高をしてまいっておるわけでございます。そこで、いずれの、政管であろうが、組合保険であろうが、医学なり薬学の進歩、あるいはまた医術の進歩によって、どんどん療養給付費というものが増高していくということでございます。ところが一つの資料を見てまいりますと、最近新しい三ヵ年をとりますと、国民健康保険の場合は、昭和三十七年で三千八百八十八円、それから昭和三十八年が四千八百四円、三十九年が六千十円、ところがこれは政府管掌の例をあげますと、三十七年で九千九百四十七円、三十八年で一万二千百九十二円、それから三十九年で一万四千九百円、こういうふうにやはり療養給付費の間に非常に大きな隔たりがあることが、これは厚生省の出した資料でございますけれども明らかになっております。この伸び率を見ますと三十九年のごときは国保が一・二五一で政府管掌が一・二二二ですから、むしろ国保のほうが若干伸びておるわけですけれども、しかし総額からながめますると、いま申し上げまするように三十九年の一例を取り上げましても六千十円と一万四千九百円ですから、非常に療養給付費の間に格差があり過ぎるほどあるのです。約二倍以上あるわけですから、こういう現実がどういう形で出てきておるのか、ひとつその間の事情をお聞かせいただければ幸いに思います。
#120
○熊崎政府委員 河野先生がいまあげられました数字は、本人の一部負担も含まれておる一人当たりの医療費の数字だと思います。ただ、国民健康保険につきましては、これは世帯主、それから家族も含めまして被保険者一人当たりにして計算をいたしました数字でございまして、御指摘のように、三十九年になりますと六千円をオーバーするわけになっておりますし、政府管掌健康保険におきましては一万五千円ということになりますが、これは政府管掌健康保険の場合には被保険者本人でございまして、家族のほうは五千九百円ということで、国保に比べまして、これは政府管掌健康保険においては、あるいは日雇い健康保険においては、国保の場合よりも一人当たりの医療費は少ないわけでございます。理由はもちろん御承知のとおり、政府管掌健康保険においては家族の場合には給付率は五割でございまして、国保のほうは七割給付をやっておりますので、三十八年から三十九年にかけての一人当たりの医療費の伸びは非常に飛躍的にふえてはきております。したがいまして、四十二年度までの間にはおそらく国保の一人当たりの医療費は相当増高してくるのではないかという予測が立てられるわけでございますが、いずれにしても、これは国民健康保険の全国的な一人当たりの給付内容でございまして、各市町村によって非常に事情が違うわけでございます。これは端的に言って医療機関が多いところ、それに比べて僻地等も全部この一人当たりの中に入ってくるわけでございますから、一がいには申し上げられませんけれども、しかし、少なくとも政管の本人に比べますと、国保の給付費が低いということは申し上げられるわけでございます。これはもちろん十割給付をやっている場合と七割給付をやっている場合の本質的な差がある、こういうふうに考えられると思います。その他受診率等につきましても、政管の本人に比べまして国保のほうは受診率は確かに低いわけでございますが、しかし、政管の家族に比べますと必ずしも低いというわけじゃない。若干低いようでございますが、これもやはり全国的なあれから見ますと、地域的な偏在はございますので、その辺いろいろな要素がございまして、法定給付内容自体が本質的に差があるという点が一番大きな理由である、こういうことは言えると思います。
#121
○河野(正)委員 最近だんだん法が改正されまして、その療養給付の内容については国保の場合も改善されてきたわけですから、少なくとも三十九年段階では、はっきり言って差があり過ぎるような感じがいたします。それと同時に、先般奄美大島に私ども参りました。結核が非常に多いといわれておる。ところが国保は黒字なんです。そこで私どもが非常に憂えますのは、地方財政にしわ寄せされるということで、せっかく国民皆保険国民皆保険ということで国民福祉のためにそういう制度というものがつくられたけれども、財政上のしわ寄せがくるものですから、むしろ受診率の高まることを忌みきらうという一つの傾向が出てきておるのではなかろうかという感じを持つわけです。というのは、いまもちょっと申し上げましたが、奄美大島は非常に結核が多いということをわれわれは現地へ行って聞いた。ところが国保は黒字なんです。年間五百万くらい黒字が出ておる。これは私ども社労委員会で行ったわけですから、私個人で行ったわけじゃない。田中委員長も一緒に団長で行っておるわけですが、そういう矛盾した結果が出ておるのです。私がいま指摘をいたしましたのは、給付額が二分の一以下だということは、せっかくの国民福祉のための政策が結果的には逆の結果が出ておるものですから、私どももこの一例を見て全国的にやはりそういう傾向があるのじゃないかという心配を強く持ったわけです。
 そこで、これは希望意見ですから、政府としても――政府の金の出し方が少ないから勢いそういうことになったかもわかりませんよ。政府がどんどん金を出してくれれば、地方の市町村もそうけちけちせぬでよかったかもわからぬけれども、政府は渋いものですから、そこであんまり啓蒙すると受診率が高まる、高まると国保の赤字が出てくるということで、なるたけさわらぬ神にたたりなしというようなかっこうになっておりはせぬか。もしそうだとするならば、これはせっかくの国民福祉のための制度が結果的には死蔵化されるということですから、私どももそういう点は非常に残念に感じてまいりましたゆえに、特にいまの例をあげて御見解を承ったわけです。
 そこで、国保がやらなければならぬいろいろな事業がたくさんあるわけですが、療養給付もそうでしょうし、それから国保の被保険者の健康の保持、増進のため必要な保健施設の活動等を行なうこともやはり国保に与えられました一つの使命であるわけです。それらの使命につきましては、一つには国保の直営の病院もあるし、直営の診療所もあって、そういう医療施設を通じての活動もございましょうし、それからいま一つには、保健婦を設置して、そして保健サービスというふうな事業もあるわけでございます。これは昨日の委員会でも若干触れられておったようでございますが、この保険給付については、いま私が申し上げましたようないろいろな疑問の点もございますが、もう一つの任務でございます被保険者の健康の保持、増進のためのいろいろな活動なり事業、それに直診、それから保健婦の問題、これらの現況、たとえば、具体的に申し上げますならば、いま公的医療機関というものが赤字で悩んでおる。特に国保の場合は無医村であった地域あるいは僻地というところにそれぞれ医療機関が設置されるということになるわけですから、一般の医療機関がないから、したがって国保が直診を設けるというようなケースが非常に多いと思うのです。そうすると、勢い国民健康保険の直営診療所なり病院というものが赤字でうまくいかぬという現況が出てこようと思う。これはきのうちょっと他の委員から触れられておったようです。そこでいま聞いておきたいと思います点は、その直営診療所の現況というものが一体どういう状況であるのか、その点について具体的にお答えをお願い申し上げたい、かように思います。
#122
○熊崎政府委員 現在国民健康保険の直営診療所という形で運営をいたしておりますのが二千五百ぐらいあるわけでございまして、そのうち病院が五百五十ぐらいありまして、あとは診療所になっておるわけでございます。病床数にいたしまして、五万八千くらいという病床数になっているわけでございます。昨日、淡谷先生からの御質問の際に、はっきりした数字をお示しできませんでしたが、急遽調べましたところやはり直営診療所の廃止等が百五、六十あることが大体わかってまいりまして、そのうち経営が困難だということで廃止になりましたのが二十三くらいありまして、その他は、たとえば非常に古くなって廃止をしたとか、あるいは病院ができたので不要になったからやめたとか、その他お医者さんが見つからないでやめたとか、あるいは災害によって滅失したからやめたというふうな分類になるわけでございます。ただ、残念なことに、はなはだ申しわけないのでございますが、いわゆる直診全体についてどの程度の赤字、黒字になっておるかということにつきましては、私どものほうは正確な数字をつかんでおらないのでございまして、いわゆる直診という形で開設する場合には、国の補助金で三分の一を補助してそれで開設をいたしますが、それに伴いまして、地域の需要に応じて無償診療所があるいは有償診療所になっていき、ひいてはまたこれが病院になっていくということで、病院になっていった場合に、起債の関係その他もございまして、直診から自然に移っていって、町立病院あるいは市立病院に変わっていくという事態が、ここ数年来非常に激しくなってまいりまして、この出入りというものは、実は私どものほうでなかなか正確につかめないわけでございます。したがいまして、二千五百にわたる直診全体についてどの程度詳細に、どういう地域なりどういう区分で赤字、黒字になっておるかということは正確につかんでおりませんので、申しわけございませんが、これからあとそういう点も十分事務的に整理をして、明確にわかるようにしたいと思っておるわけでございます。
#123
○河野(正)委員 やはりこの直診というものは国民健康保険組合が運用するわけですから、非常に重大な関連があると思う。しかしその実態がわからぬとおっしゃれば、重ねてお尋ねをしてもあまり意義はありませんから、私どもも重大な関心を持っておるがゆえにお尋ねするわけですけれども、時間の制約もございますから差し控えます。
 そこで、いま一つの保健婦の活動、これは特に僻地、それから無医地区におきましては、私は非常に大きな意義を持っておると思うのです。ですが、実際にはこの保健婦を持っております保険者というものは、昭和四十年の一月現在で二千四百五十八、そしてその保険者がかかえております保健婦というものは、大体二人平均であって五千五百八十八人というふうにいわれておるようです。やはり国保の運営の中では直営診療所というものが大きな意義を持っておるし、それに次いで保健婦活動というものが重要な意義を持つと思うわけですが、これらの保健婦活動というものは、とてもとても満足すべき現状ではないと私どもは感ずるわけでございますけれども、これらの点をどのように踏まえておられるのか。また、将来どういう方針でこの保健サービスについて行政指導を行ない、その充実をはかっていこうというようにお考えになっているのか、その辺の事情についてお聞かせをいただきたい。
#124
○熊崎政府委員 国保の保健婦活動につきましては、歴史的に相当長い時間を継続して、第一線の保健婦活動としては多数の僻地をかかえておる市町村において、数としては御承知のように五千五百程度でございますが、非常に地域の住民に密着した活発な活動をやっておるというふうに私どもは見ておるわけでございまして、ただ、何ぶんにも予算の制約その他がございまして、十分な活動であるとは私どもは思っておりませんが、相当地域の住民には感謝されるような活動をやっておるように私どもは見ておるわけでございます。
 手元に資料がございますので、簡単に申し上げますと、国保の保健婦の活動の状況を、保健婦一人当たりどういう形でやっておるかということを百分比だけでちょっと申し上げてみます。昭和三十九年度におきまして、時間数で見ますと、一〇〇のうちでどのくらいの時間を使っておるかということを申し上げますと、一番時間をかけておりますのが、実は記録その他の統計資料でございまして、これに二七%程度をかけておりますが、あと家庭訪問が大体二〇%。それから次が集団検診に一二%。その次が健康相談、これが大体九%近く。それから予防接種が七・八%。それから教育、演習、これに七%前後。それからあと地域住民の衛生教育その他疾病の早期治療対策等々の仕事に時間をさいてやっておるわけでございます。
  〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
 あと、同じく三十九年度の保健婦の保健施設費の支出状況も出ておりますが、この金額的な内訳につきましては資料がございますけれども、時間がございましたら説明いたしたいと思いますが……。
#125
○河野(正)委員 ちょっとお尋ねしますが、保険者の数は幾らです。保健婦を持っておる保険者の数は二千四百五十八というふうにあげましたね。
#126
○熊崎政府委員 全体で三千四百くらいです。
#127
○信沢説明員 保健婦の数は先生仰せられたように五千五百程度でございます。それを設置いたしております市町村の数は大体二千五百程度でございます。
#128
○河野(正)委員 二千四百五十八。――持たぬところは。
#129
○信沢説明員 したがって、九百ほどでございます。
#130
○河野(正)委員 そうしますと、持っておるところはいま厚生省がおっしゃったように住民に密着しておるということでございましょうけれども、持たぬところはどういうことになっておりますか。
#131
○熊崎政府委員 われわれとしましてはなるべく全市町村に保健婦を配置するように将来とも考えなければならないと思っておりますが、片やいろいろ人員の制約その他もございまして、なかなか全部持つような形にならないのはまことに残念だと思います。しかし、そういうところにおきましては、それぞれ地域の保健所には保健婦さんがおるわけでございますので、地域の保健所のほうから出張していただいて巡回的にいろいろやっていただくとか、あるいは隣の市町村等と相談をして、保健婦活動を円滑に行なえるようにつとめていくというふうなことで、今後とも指導してまいる所存でございます。
#132
○河野(正)委員 保健所の保健婦を使って保健対策に当たらせるという、そういうなまやさしい態度では困ると思うのです。保健所は保健所で手一ぱいですから。ですから、やはり設置をしておらぬ九百の保険者については、すみやかに保健婦を設置するという指導を強力にやってもらわぬと、いま言ったように、保健所の保健婦を使えば、人件費も要ることですから、ますます置けないということになるでしょうし、これはやはり少なくとも国保の事業の一環ですから、単に助成金がどうだとか、給付がどうだとかいうことと同様の重大な使命を持っておるわけです。案外そういう面で見落とされていることを私ども遺憾に思ってきたわけで、そういうことを提起しておきますから、政府としては保険者は必ず保健婦を設置するという方向で、すみやかに努力をされるということを強く私は要望いたしておきます。
 それから、国保の財政がだんだん悪化してきたのは昭和三十八年から、こういう、ふうに言われておるわけですが、いろいろ赤字保険者の状況をしさいに検討してまいりますと、赤字を出すところは年々歳々赤字が累積をしていくという傾向のようでございます。これの黒字のところも、将来給付内容の改善をはかったりなんかいろいろするわけですから、当然、黒字だからといって喜ぶわけにまいらぬでしょう。さっきの奄美大島じゃないけれども、結核はものすごく多いけれども、国保は黒字が出ておるというのでは困るのです。赤字を出し続けてきておる。特に大都市でございますが、こういうところはなかなか健保財政が好転に向かうというふうなきざしが見られぬということのようです。なるほど今度の法改正によって、国庫負担が四割になる。しかし調整交付金は少し下がる、百分の十が五に下がるわけですから困るわけですけれども、やはり年々歳々ばく大な累積赤字を持ってきておる団体については、やはりここで何か手を打たぬと、将来政府管掌健保で赤字が累積するから、技本対策を四十年からやるんだというのと同じ現象が出てくると思うのです。これらについてどのような御見解を持っておられるのか。どういう考え方で対処されようとしておるのか、ひとつ御見解があればお聞かせいただきたい。
#133
○熊崎政府委員 先生御指摘のように、確かに大都市等におきましては、いわゆる赤字が沈でんして、非常に国保財政が悪くなっておるという実態にあるということは事実でございます。ただ最近におきましては、たとえば大阪等につきましては、多年赤字だったわけですが、本年度に入りまして解消になってまいりまして、やはり保険者のほうでも、いかにして国保財政の再建をはかるかということにつきまして、非常に熱心に対策を練っていただいておるわけでございます。その他純粋に赤字の沈でんしておる市等におきましては、財政を立て直すために、借り入れ金でもって赤字の分を償還していくというふうな対策を立てておるところもございます。またその他の市におきましては、従来はいろいろの事情で保険料の値上げその他もできなかったでございましょうけれども、今後はやはり他の都市とのバランスその他を考えまして、若干保険料の値上げ等につきましても、ある程度の対策を立てるというふうな計画も持っておられるようでございます。四十年度におきましては、そのような対策をもって再建をはかっております一部市町村におきましても、財政の調整の場合に、国のほうから若干のてこ入れをするというふうな措置もとっておるわけでございまして、四十一年度以降、やはり厚生省側とよく事務的な連絡その他をいたしまして、財政再建につきましては、根本的な対策をお互いに相談してやっていくというふうなことが、緊密に連絡してやってまいりたいと思います。
#134
○河野(正)委員 緊密に連絡していただくのはいいが、ただ話ばかりしたって話にならぬと思うのです。だからやはり具体的に、国がどうするんだという対策を立てるべきだと思うのです。そういう意味で今後抜本策の中で、大臣じゃないけれども、検討いたしますということならばそれでけっこうですけれども、やはりそれはきちっとしてもらわないと話が前進せぬと思う。いかがですか。
#135
○熊崎政府委員 いわゆる私どもが市町村につきましての指導をやっておりますのは、各県の国保課あるいは保険課を通じまして、都市を含めましたその県自体が、平均的に全国的に見て財政再建が的確に行なわれるというふうな形で指導しておるわけでございまして、確かに沈でんしておる赤字の市町村につきましては、いろいろと問題は多いと思います。しかしここ一、二年の間に財政再建を完了いたしまして、非常に明るい見通しになっておる市町村も、非常にふえてきておるわけであります。昨日申し上げましたように、ことしの赤字市町村といいますのは、四十年度で二百六十二というふうになって、赤字の額が三十九億程度でございますが、その内訳になってまいりますと、金額的には大都市の赤字をかかえておる市町村が大きな金額を占めますが、他の市町村におきましては、赤字額がぐっと減っておるというような事情にあるわけでありまして、私どもとしましては、現在の国保財政のもとで、都市の赤字をどのように解消していくかということにつきましては、抜本対策ということじゃなしに、やはり当面の対策として、逐次赤字を減らしていくために、赤字が沈でんされないような形で再建策を講じていくということについて、自治省当局、あるいは大蔵当局とも相談して、積極的に対策を立てていくということで指導いたしておるわけでございます。
#136
○河野(正)委員 その赤字組合がだんだん減少したということをそのまま額面どおり取り上げて喜んでいいかどうか、私どもはそれは疑問に思っておるわけです。というのは、たとえば保険事業というものは、保険料、保険税あるいはまた国庫負担金で成立をするわけです。その際国庫負担金が大幅に出てきてそして黒字になるならけっこうですけれども、この保険料ないし保険税がどんどん上がっていって、そして黒字になったということなら、これはたいして喜ぶべき現象じゃないわけですね。たとえば最近は保険料の引き上げも鈍化したというふうな話ではございますが、限界がきますから、鈍化するのは、当然だと思うのです。限界がきているのにどんどん上がっていったって、担税能力がないわけですから、鈍化するのは、ある程度限界がくれば当然のことだと思うのです。それは喜ぶべき現象じゃなくて当然くるべき現象なんです。
 そこで、いろいろ資料を見てみましても、昭和三十五年の一世帯当たりの負担が三千六百四十一円、それが三十九年では五千八百七十五円、これは被保険者一人当たりで見てみましても、三十五年が八百十四円であったのが三十九年におきましては千四百九十二円、こういうふうにずいぶん保険料が上がっておるわけですね。これはきのう淡谷委員のお話の中に出てまいっておりますから、重ねて申し上げませんけれども、とにかく保険料なり保険税というものが一つの限界がきておる。そうすると、これはもう鈍化せざるを得ぬですね。ですから私は、黒字の組合がふえてきたから、はいそうですかというふうに喜ぶわけにはまいらぬと思うのです。それからもう一つは、さっきの――しばしば奄美大島を出して恐縮ですけれども、一つもお医者さえかからせぬようにして黒字というのも困ったものです。ですから、その黒字が出てきた原因がどこにあるかということによって喜ぶべき現象であるかどうかということがきまるのであって、単に出てきた現象だけではどうにも判断がつかぬというのが率直な私の意見です。
 そこで私は、先日来の意見にもありましたように、保険料ないし保険税の負担額というものはもうそろそろ限界にきておる、そうすれば例の調整交付金ですね、この減額した分については調整交付金で見るわけですから、その控除額を高めるかどうかというような問題にも通じていくと思うのです。ですから、やはり今日のように保険料なり保険税というものが限界にくれば、あとはやはり調整交付金によって解決するという以外に道はないと私は思うのです。そうすると、今度のように調整交付金が減らされることについては、これはどうも困るというような意見に到達をするわけです。ですから、将来、この市町村の保険料ないし保険税の調定額の問題、それからもう一つはこの調整交付金の問題、この問題というものも当然われわれは重要視して考えなければならぬというふうに結論づけられると思うのであります。そういう意味で、今度の、特に調整交付金が十から五になったということについては私どもも非常に残念と考えなければならぬ。これはきのうもいろいろ意見が出ましたから、もう重ねてでございましてまことに恐縮でございますけれども、これは今度の法案の改正の中で最も大事な点でございますので、ひとつ大臣から前向きのお答えをいただきたいと思います。
#137
○鈴木国務大臣 調整交付金が減らされたという御指摘でございますが、これは御事情をよく知っておられてお話になっておられるわけでありますから、私からあらためてその点を申し上げることもいかがかと思うのでございますが、御承知のように、世帯主の療養給付費に対しまして調整交付金の中から国が従来見てきておったわけであります。これが年々医療費が増高してまいりまして、全体の調整交付金の中に占める割合もふえてきております。そこで、私どもも今回この分をはっきりと定率化の中へ織り込みまして、そうして従来の二割五分の国庫負担の定率を四割に引き上げた。そこで残りましたところの約五%の調整交付金は、財政調整なりあるいは低所得階層に対する軽減措置の財政補てん、そういうようなものに調整機能を十分発揮させるようにする、こういうことにいたしたのであります。この四割定率化によりまして、従来は年度内の補助金という腰だめでありまして、その予想よりも決算の結果ふえた場合におきましても、その不足分を国にさらに補助させる、こういうことができなかったのでありますけれども、今後は四割定率化によりまして、国がはっきりこれは義務費として清算の際にその分を見てやる、こういうことになりましたことは、私は保険財産の安定の上に大きく寄与するものだ、こういう確信を持っておるのであります。したがいまして今回の制度、法改正につきましては、四割の問題と調整交付金の問題、全体としてひとつ御検討いただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。
#138
○河野(正)委員 もう時間もあまりありませんからもう一つお尋ねをしたいと思います。
 それは健康保険の際にもいろいろ言われたわけでありますけれども、例の行政努力、これは、私どもは赤字が出ようが出まいが行政努力をしなければならぬのであって、そこには赤字が出たから九十八億も行政努力で予算を節減するというのは不当だというようなことで、衆議院本会議の席上でもそういう意見を開陳いたしておるわけであります。ところが、最近発表された医療機関の監査の現況報告というものがございます。この厚生省保険局で行ないました四十年度の監査の現況報告などを見ますと、これは前年度よりもはるかに増加したというふうな数字が出てまいっておるようでございます。行政努力のために引き締めが行なわれたかどうか知りませんけれども、こういうように、監査の結果、処分者が前年よりも非常に大きく増加したという原因がどこにあったのか、ひとつ調査された結果でありますから、ここで明らかにしていただきたい、かように考えます。
#139
○熊崎政府委員 御指摘のように、四十年度におきましては、監査の対象施設数もふえておりますし、また取り消しの対象になります。きわめて遺憾な事態でございますが、そのような保険医並びに保険医療機関あるいは療養取り扱い機関の取り消しを受けた数もふえております。ふえておるといいましても、若干のふえ方でございます。この点につきましては、前々から申し上げておりますように、私どもとしましては、指導監査をいたす場合に、日本医師会はもとより、各県の医師会と緊密な連絡をした上で指導監査を行ない、また取り消しの対象とすべきものにつきましては、厳正な態度で臨むという態度で行なっておるわけでございまして、地元の医師会あるいは日本医師会等と十分連絡をとった上で行なっておるわけでございます。
 ただ、片や御承知のように、支払い団体と称する側からは厚生省の現在行なっております指導監査の姿勢自体につきまして、いろいろと取りざたされていることも先生御承知のところだろうと思います。しかし私どもとしましては、現在の厚生省の行なっております指導監査につきましては、このままの状態で指導監査を十分行ない得るというふうに思っております。また少なくとも保険医並びに保険医療機関として適正でない内容が発見された場合に、厳正な態度で臨むということにつきましては、私どもは日本医師会の方々ともよく相談をして、その点は十分確認をした上で行なっておるわけでございまして、少なくとも監査の態度をゆるめるとかなんとかいうことは私どもは考えておらないわけでございます。しかしそれがいたずらに指定の取り消しが多くなったということをもって誇るとか、それが行政の態度としてけっこうなことだというふうな考え方は持っておりませんで、なるべく不正は未然に防止をして、決定的な悲境に達しないように事前の段階で食いとめていくという措置でもって、今後とも指導監査につきましては十分その徹底を期してまいりたいというふうに思っておるのが現在の私どもの態度でございます。
#140
○河野(正)委員 これは一般の健保の場合も国保の場合も大体同じような率で処分者を出しておるような状況のようです。
  〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕
 ここでちょっとお尋ねをしておきたいと思います点は、いま厚生省がやっておりますのは、いわゆる指導監査といわれるたぐいの監査であります。ところが健保の場合も国保の場合もそうでございますけれども、大体監査をして三分の一強が指定取り消しですね。この指定取り消しというものは、これは人間でいえば死刑にも相当する重罪であることは、いろいろ論議の要はないと思うのです。私はこの保険医療を冒涜するような医療行為について、これは重罪というのは当然と思うのですけれども、しかし指導監査がたてまえであるにもかかわらず、このように重罪ともいうべき取り消しが一般健保の場合も国保の場合も約三分の一強もあるということはいかがなものであろうか、これはある意味においては、それほど今日までの厚生省の指導というものが適切ではなかったということにまた通じてくると思うのです。これは何も取り消しをするのが目的ではないでしょう、指導監査ですから。ですから、そういう意味でこういう結果が出ることは、むしろ今日までの厚生省の指導というものが適切でなかったのではないかというふうな疑問を持たざるを得ないと思うのです。ですから、だんだん監査によりまして指定取り消しというような重い結果が出てくるということは、必ずしも好ましいわけではないのですから、指導監査がある以上は、そういう指定取り消しというふうなケースが出てこないような指導というものをひとつやってもらわなければいかぬ、こういうふうに考えます。
 そこで、ひとつそれらの点については大臣から適切なおことばを承って、きょうは委員長もそろそろというようなお顔のようでございますから、これで終結いたしたいと思います。
#141
○鈴木国務大臣 私どもは基本的に、監査を強化することによって増高する医療費を抑制しよう、そういうような誤った考え方はごうまつも持っておりません。これは国民の大切な医療の問題でございますから、適正にこの保険医療が運営をされなければならない。そういう観点からまず保険法の精神を尊重して十分指導していく。そして何べんかの指導をやっても、なおかつそれを改めない。そういういわば悪質だといいますか、あるいは非協力だといいますか、そういうものに対しましては、法の命ずるところによって厳正に今度は監査をやらなくてはいけない、こう考えておるわけでありまして、十分その運営につきましては、第一線の者を指導いたしまして、いま私が申し上げたような方向で指導監査を実施してまいりたい、かように考えております。
#142
○田中委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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