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1949/05/06 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第14号
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1949/05/06 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 労働委員会 第14号

#1
第005回国会 労働委員会 第14号
昭和二十四年五月六日(金曜日)
    午前十一時十八分開議
    ―――――――――――――
 出席委員
   委員長 倉石 忠雄君
   理事 角田 幸吉君 理事 福永 健司君
   理事 三浦寅之助君 理事 吉武 惠市君
   理事 前田 種男君 理事 川崎 秀二君
   理事 春日 正一君 理事 島田 末信君
      麻生太賀吉君    大橋 武夫君
      小淵 光平君    佐藤 親弘君
      篠田 弘作君    塚原 俊郎君
      船越  弘君    松野 頼三君
      青野 武一君    大矢 省三君
      小川 半次君    土橋 一吉君
      石田 一松君
 出席國務大臣
        労 働 大 臣 鈴木 正文君
 出席政府委員
        法務廳事務官
        (檢務局長)  高橋 一郎君
        労働政務次官  山崎 岩男君
        労働事務官
        (労政局長)  賀來才二郎君
 委員外の出席者
        法務廳事務官  平賀 健太君
        労働事務官   石黒 拓爾君
    ―――――――――――――
五月四日
 呉市の失業救済事業助成に関する請願(宮原幸
 三郎君外一名紹介)(第七九三号)
 内郷町の失業対策に関する請願(春日正一君紹
 介)(第八四六号)
 労働法規改正試案撤回に関する請願(春日正一
 君外一名紹介)(第八五六号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 労働組合法案(内閣提出第一四九号)
 労働関係調整法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一五〇号)
 公共企業体労働関係法の施行に関する法律案(
 内閣提出第一五六号)
    ―――――――――――――
#2
○倉石委員長 ただいまより会議を開きます。
 前会に引続き労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案を議題に供します。質疑を許します。大橋武夫君。
#3
○大橋委員 労働組合法案につきまして労働大臣に御質問いたしたい事項がございまするが、まだお見えになつておりませんので、政府委員に特にお聞きしたい点を、先に質問いたします。組合法の法案の第二條を見ますると、第二條の第二項でございまするが、「國体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの」は、この法律の労働組合としての特典を得られないということになるわけでございますが、この使用者の経理上の援助というものを禁止する、但し労働者が労働時間中に、時間または賃金を失うことなく、使用者と協議し、交渉することを許すことは妨げない、この但書の趣旨から見ますと、この本文の制限はこれを嚴格に解する。但書の例外は制限的に嚴格に解するというような趣旨の書き方ではないかと思うのでございすが、その点についてのお考えを伺いたいのでございます。
#4
○賀來政府委員 この組合の経費の問題につきましては、從來は主たる経費というような書き方をいたしておりましたがために、組合が自主性を失いましたり、御用組合になつたりした傾向があつたわけでございます。從いまして、從来の解釈から申しましても、実は非常に嚴密に解釈さるべきでありましたものを、施行後今日までの三箇年間の状況におきまして、組合の育成を主といたしましてやつて参りましたので、緩和した解釈をとつて参つたのであります。しかし今日におきましては、世界的な労働組合運動に参加しようとする傾向にありまして、諸外國の例と比較いたしますと、非常に日本の現在の状況はルーズな状況でありますので、今度の法律におきましては、現行法と趣旨は同じでありますが、嚴密な解釈を下すということで法案をつくつたのであります。從いまして、ただいま御質問にありました通りに、解釈といたしましては、例外規定を設けておりまする趣旨は、例外規定以外は一切いけないという、嚴密な解釈で進むことになつておるのでありますから、御了承願います。
#5
○大橋委員 ただいま例外規定は嚴密に解釈するというお答えでございましたが、從來のわが國の労働運動におきましては、特に爭議に関連いたしまして、爭議の解決の一つの條件として普通に見られるところは、スト中の賃金の支拂いの問題であります。すなわちスト中において就業せざることによつて失われました労働者の賃金を、解決の條件として、事業主が負担をする。また解決の一つの條件として、このスト中の賃金を安拂うばかりでなく、解決の際に事業主より金一封を出すというような慣習があつたのでありますが、このたびこの法律によりまして、この但書が嚴密に解釈されるということになると、スト中の賃金の支拂いを認めるがごとき、また爭議解決の際において、金一封を提供するといつたような解決の條件は、不当なものであり、またさような條件がありました場合には、その労働組合は將來労働組合としての保護を受け得られないという結果になるかと存じますが、明確なお答えをお願いいたします。
#6
○賀來政府委員 今度の経費の負担につきまして、通しておりますところの一つの原理は、ノ―ウァーク・ノーペイであります。すなわち働かないのに、使用者が賃金を拂うということは許さるべきではない。かような観点に立つておるのであります。從つて御質問の爭議中の賃金を支拂うということは、御意見の通り、拂つた行為が不当労働行為でありますとともに、それをもらいました組合は、手続に参與することができないということになるのであります。ただストの解決のために金一封をもらつたということにつきましては、アメリカの例を見ても、ある程度許されておるのでありまして、その内容につきましてはいろいろ問題もあると思いますが、概念的にはストの解決のために金一封を出すということについては、この法律におきましては考えていないのであります。
#7
○大橋委員 どうもただいまのお答えによりますると、金一封は含まない、こういう御趣旨だそうでございまするが、先ほど伺いますると、この但書は例外規定なるがゆえに、きわめて嚴密に解さなければならない、こう言われて、ただいまそれが入らないというのは、法律の構成として何か欠点があるのではないか。もしはたしてさようなものが含まれないというならば、この書き方では、ぐあいが悪いのではないかと思いまするが、いかがでございましようか。
#8
○賀來政府委員 ただいま申し上げましたのは、ストライキの解決の條件として、金一封を出すのでありまして、それが組合運営の経費になるというような趣旨を持つておりますれば、これは間違いでありまするが、さようなものでなく、ただストライキ解決の條件として出したいということでありますならば、さしつかえないように考えているのであります。
#9
○大橋委員 そういたしますると、ストライキに関連して組合がいろいろな費用を使つた。その費用を金一封によつて組合のために解決するということになりますると、これはスト解決の條件ではありまするが、同時に組合の運営のための経費ということになると思うのであります。そうでなく、組合に全然関係なく金一封を出す。たとえば組合幹部の慰労のためであるとか、そういつたような費用ならばよろしいという、こういうお考えでありましようか。
#10
○賀來政府委員 今日までの前例を見ておりますると、ストライキ解決のための金一封ということについては、いろいろなものが出されておるのであります。そのうち先ほど申しましたように、組合運営の経費としての金一封につきましては、これは出すこともまた受取ることもできない。ただ今御例示がありましたが、それは具体的には、その場合によつて決定せられるものと考えておるのでありまして、運営の経費に使われてはならない。かようなことを申し上げたのであります。
#11
○大橋委員 ただいまのお答えは不明確を欠いておると思いまするが、しかしこの問題はこの程度にいたしまして、次に第五條の関係について伺いたいと思います。
 ます第五條の立法の趣旨についてこの機会に明確にしていただきたいと思うのでございます。從來組合の規約につきましては、記載事項を定めてありましたが、その記載事項の内容が、かくのごとくなければならぬというような規定が設けられましたのは、このたびが初めてなのでございまして、これは従来組合員の自由にまかせられておりましたる組合規定の内容が、このたびの法律によりまして、著しく制限をせられたということになると思うのでございまして、いわゆる組合の自主性がその範囲におきまして制限をせられる結果になるではないか。これに対してこのたびの法律は、組合の自主性を尊重する趣旨であるということをしばしば政府は言われるが、何ゆえにかくのごとき制限を定めますることが、組合の自主性を尊重することになるか、その点を詳しく承りたいと存じます。
#12
○賀來政府委員 五條におきまして組合の規約に定むべき必要記載事項を書きましたのは、御質問にありましたように、組合規約というものは組合の憲法でありまして、みずから自主的に定むべきであるということには異存はないのであります。ただ今日までの状況を見ますると、自主性の問題と申しますよりも、労働組合法が期待しておりまする労働組合は、民主性の明確なものではなくてはならないのであります。しかるに今日までの状況を見ますると、組合の規約あるいは運営の状況におきまして、民主性というものを徹底させる意味から、遺憾な点が非常に多かつたのであります。さような意味合いにおきまして、当然のことではありまするが、組合は少くとも、これらの程度の最低限の民主性保持のための規約は備えなければならないということを示しまして、組合には、その示された要綱に基いて自主的に組合規約をきめて行くということを期待しておるのであります。
#13
○大橋委員 ただいまの御説明を伺いますと、労働関係の現在の事情から見て、自主性を制限するということが結局組合の民主主義を高めるゆえんである。こういうお答えのように伺つたのでございます。そうしますると、今日労働組合の民主性、あるいは自主性を阻害しておるいろいろな事情があるということを前提としなければならぬのでありまするが、この前提につきましては、政府の側にもその原因をなしたものがありましようし、また使用者の側においても、その原因をなしたものもあろうと存ずるのであります。また政府以外の政党の政治的活動が、組合の自主性、民主性を阻害しておつたという部分も少くないと思うのでございまするが、まず労働省の当局とせられましては、事業主側の原因としては、いかなる原因が労働組合の自主性、民主性を阻害しておるというような御認識を持つておられますか、承る次第であります。
#14
○賀來政府委員 組合の自主性、民主性につきまして、事業主がこれを阻害しておつた事実はどうかという御質問でありまするが、今日までの状況は、日本の労働組合は企業体別に、あるいは企業場別に編成された傾向が強いのであります。從つて組合の参加すべき範囲をきめます場合においても、とかく線をはつきり引くことが、明確を欠いておつたということもあるのでありまするし、さらに民主性という建前から見ますると、役員の選挙でありますとか、重要なことを決定いたしますには、やはり無記名直接投票というものが施行せらるべきにかかわりませず、顔で行つたり、いろんなことがあります。これらの点につきまして、事業主側が確固たる信念をもちまして、組合に相対しておればよかつたのでありまするが、その点事業主は、組合を自分が育てるというような氣持のものもありましたり、いろいろな原因からいたしまして、はつきりした民主性のある組合にこれを育て上げるということにおきましては、足りなかつた点が多かつた、かように考えておるのであります。
#15
○大橋委員 組合の民主性を阻害しておつた原因として、しばしば関係筋の声明にもあげられておりまするものは、政党の政治活動が組合の民主性を阻害しておる。いわゆる政党のフラク活動、はつきり言えば共産党のフラク活動が、組合の民主性を今日まで阻害する大きな原因をなしたと言われておるのでありまするが、その点について、労働省の御認識の程度をお伺いしたいと思うのであります。ことに共産党の組合内におけるフラク活動の実情なり、あるいはまたそのフラク活動によつて不当に労働爭議が導かれた、あるいはまた解決が遷延されたというような実例を持つておられますかどうか、その点をお伺いいたします。
#16
○賀來政府委員 労働省といたしましては、労働組合というものが自主性、民主性を明確に持ちまた責任性の明確な組合でなければならぬということでやつて参つたのであります。從いましてフラク活動の結果どうこうということについて、フラク活動自体を、かれこれわれわれとしては批判をいたすつもりはないのであります。問題はフラク活動によつて組合の民主性、自主性というものが阻害されることについて、非常に留意をいたしているのであります。ただいま御質問の事項に関しましては、どの組合がどうであつたかということにつきまして、これがフラク活動であつたかどうかということを調査することは、非常に至難な状況でありまして、およそさようであろうということの資料は持つているのでありますが、これはいずれまた、もう少し詳細に調べましてお答えをいたしたいと考えております。
#17
○大橋委員 この條の第七号によりますと、このたび会計につきまして組合外の会計監査人を置かなければならぬことになつたのでございますが、この結果といたしまして、当然組合はその会計監査人の費用を負担しなければならぬことになると思うのでありますが、この費用の見積りはどの程度でありますか。また第七号によりまして、この会計が組合員に年一回公表されることになりましても、その公表の際に、費目の区分をある程度明確しなければ、ただ收入が全体で幾らで、支出が全体で幾らであるというような公表では、これはその実益がないと思うのでありますが、この会計報告をなす際の歳入歳出の費目の区分については、どういうふうなお考えでございましようか。
#18
○賀來政府委員 今回の法案の規定によりますと、職業的な專門の会計士によらなければならぬというふうに解釈せられます。そうなりますと、現在の会計法によります会計士によらなければならない、かようなことになると考えておるのでありますが、現在の会計士は一体どのくらいの謝礼をとつておるか、これはまだ詳細に具体的に調べておりませんが、一件二千圓程度というふうな話を聞いております。この点に関しましては、御意見にもありました通りに、この組合が小さい組合であります場合には、負担することが困難であろうとも考えられております。その際におきましては、小さい組合が地域的に一つのフェデレーションをつくるなり、あるいは共同の事務所をつくるなりいたしまして、それによつて負担することも考えております。ただ会計士法におきまする会計士が、どのくらいの謝礼でこの仕事をするかということにつきましては、労働省といたしましても、会計士会等とも連絡いたしまして、組合がこれによつて非常な苦痛をなめることのないように、努力をいたしたいと考えておるのであります。会計の内容についてでありますが、この法案の予期いたしておりますところは、支出の内容等について、組合法からどうだというふうなことを調べるのではないのでありまして、その会計の結果が、正確であるかどうかということを調べるということになつておるのであります。從いまして予算の総体の金額がどうであるかというふうな問題でなく、実事上は各組合においては予算の科目をきめておると考えております。それによつてその科目の流用の状況がどうであるか、あるいはそれが正確に数字が出ておるかどうかということは調べますが、内容のその科目のわけ方等については、会計士は当らない考えております。労働省としても、この予算の科目がいかにあるべきかというふうな例示的な指導はやらなければならぬと思つておりますが、これに関連いたしまして、予算の科目がかくあるべしというふうな規定を設ける考えは持つておりません。
#19
○大橋委員 次に第八号に関連いたしまして、このたびストライキは組合員の投票によつてきめなければならぬということになつておりますが、從來の労働融合におけるストライキの開始の際の決定が、どういうふうに行われておつたかということについての実情を、お聞かせ願いたいと思います。
#20
○賀來政府委員 この点に関しましては、先日お手元に労働組合に関する調査というのを差上げてありまして、その点に触れておるのでありますが、大体現在の組合においては、労働爭議を開始する場合に、どういう手続をとるかということの規定はあるようであります。もちろんそういうことについて全然規定のない組合も相当ありますが、大体開始するにはどうするかということは書いてあるのであります。また開始する場合において、大衆討議にかけるというふうなことも行われておるようであります。ただこのかけ方が問題でありまして、完全無記名直接投票によつてやるという組合はごく少数であります。それから大衆討議にかけます場合に、実際上無記名投票によつてやつておるものも、あまりないようでありまして、多くは挙手でやりましたり、起立でやつたりするというふうな事実が相当認められるのであります。また一應闘爭委員会というものをつくつておりまして、その闘爭委員会に労働争議を開始するかどうかの一切の権限を與えまして、その闘爭委員会の指令によつて闘爭をやるというのが相当多いようであります。
 次に問題は労働爭議の終期の問題でありますが、これをいつ、どうして終らせるかということに関しましての規定を持つておるものは、ほとんどないのであります。これも事実上、また最後の爭議の妥結の段階に入つて参りますと、闘爭委員会ではほぼこれを決定する。これは大衆討議にかけられる場合も多いのでありまして、無記名直接投票によつてこれを決定いたしておるものは案外少いのであります。最近の例では、日鉄の八幡製鉄所においてこれをやりました例があります。これは執行委員会においては会社側の案を大体のまないという方針を持つておりましたが、これを一般無記名投票にかけましたところが、結局会社案を受諾するということになりまして、執行委員会の決定をくつがえした事実がありますが、かような例は案外少いのであります。
#21
○大橋委員 ちようど檢務局長がお見えになつたようでありますから、この機会に第一條第二項について一應お尋ねをいたしたいと存じます。第一條第二項の規定は、從來労働者が刑法三十五條によつて保障されておりました既得の権利、すなわち正当性のある行為に対しては刑罰を科せられないという、この刑法上の既得権を、この機会に明確にしたという趣旨の立法ではないかと存ずるのでありますが、その点についてまずお答えを願います。
#22
○高橋(一)政府委員 從來の労働組合法第一條第二項の規定は、要するにいろいろな情勢の変遷に伴いまして、当然正当と認められるようなことについて、これを宣言的に規定したものであるというふうにわれわれは考えております。從つて御質問のように、要するに既得権を規定したものであるというふうに言うこともできるのではないかと考えます。
#23
○大橋委員 そういたしますと、この規定は刑法三十五條を拡張したりするという意味の規定ではないというふうに了解してよろしいわけですか。
#24
○高橋(一)政府委員 さようであります。
#25
○大橋委員 この規定の中に労働組合ということが書いてあります。すなわち「労働組合の國体交渉その他の行為であつて」云々とあります。しかしながらこれは現在第五條の規定によりまして、正当性を表明されました労働組合だけに限るのでなく、廣く一般の労働組合を含めた意味に解釈すべきものではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
#26
○高橋(一)政府委員 第一條第二項にいう労働組合と申しますのは、文面上から言いますれば、やはりこの労働組合法によつて、労働組合と申し得るものを言うのではないかと思うのでありますが、ただこの條項の精神は、未組織労働者などが國体交渉を正当にいたします場合も、当然その精神によつて適用せらるべきものであると考えております。從つて御意見のように、適用の問題といたしましては、廣く適用されるというふうに考えております。
#27
○大橋委員 そういたしますと、第五條によりまして、「これらの法律に規定する救済を與えられない。」こういうふうに言つてありますが、この第一條第二項の規定は、これ自体が救済をするようなことはなく、これは刑法第三十五條によるところの救済を、ここでさらに明らかにしたというだけであつて、第五條の救済の中には当然含んでおらぬというふうに、解釈いたすべきものと了解をいたします。
#28
○高橋(一)政府委員 御意見の通りと考えます。
#29
○大橋委員 この第一條第二項の規定は、主として爭議行為において問題になるものでありますが、その爭議行為の場合においては、個々の行為が正当であるばかりでなく、その行為の前提をなしたところの労働爭議それ自体が、正当であるということがこの一條二項の適用の要件になりますかどうか、この点をお伺いいたします。
#30
○高橋(一)政府委員 個々の爭議行為の正当不当という問題のみならず、その爭議全体を総合的に見た場合の、その爭議の正当不当ということが條件となるかどうかというお尋ねと思うのでありますが、これはやはり爭議主体の性格というものも、この場合の正当不当の内容をなすものと考えるのであります。しかし実際違法な爭議行為として檢察の対象といたします場合には、ただ爭議の性格がどうであるからといつて、ただちに刑罰法令に該当するという場合も、きわめて考えがたいのでありますから、結局は個々の爭議行為の当不当ということが問題になるものと考えております。
#31
○大橋委員 この問題を明確にするために、もう少し伺つてみたいのでございますが、これはこの第一條第二項によつて免責されまする行為は、但書に暴力行為はいけないとありまするが、通常予想される行為は、どういう行為を予想しておられますか。
#32
○高橋(一)政府委員 今回の改正で暴力否定の精神を強く出したのでありますが、この関係で問題となるものを、実際に扱いました例で申し上げてみますと、ます國体交渉の段階におきまして、いわゆる監禁してこれに、場合によりましては暴行を加えるというような事案がございます。それから組合が一つにまとまるために、ピケッティングをいたしますが、これがいわゆる平和的なピケッティングの限界を越えて、暴力によつていわゆる反スト派をスト派に引きずり込むというような事例も相当に出たのであります。それから生産管理の場合などにおきましては、暴力事犯が相当多数出ておるのでありまして、たとえば工場を占拠することが、生産管理などにおきましては前提になるのでありますが、その場合に必要な器材等を組合側の手に收めるために、会社側の者に対して暴力を振う、あるいは倉庫の破壊を行うとか、さらに進みましては、工場明渡しの仮処分の執行に対して、暴力によつてこれに反抗するというような事例があつたのであります。ほかにもいろいろあるかもしれませんが、ちよつと思いつきます事例としては、そういうものが相当のウエートを持つておると思います。
#33
○大橋委員 ただいま私の伺いましたのは、この規定によつて免責を受けない行為ではなくして、免責を受ける行為で、普通考えられる行為は、どういう行為かということが伺いたかつたのであります。
#34
○高橋(一)政府委員 お問いの趣旨を誤解しまして、たいへん失礼いたしました。免責を受けます方としては、罪名によつてただちにこれは必ず免責されるというようなことは、ちよつと考えにくいと思うのであります。ただ免責される場合のあるものといたしましては、たとえば脅迫罪の程度の軽いものでありますとか、それから暴力行為処罰に関する法律の中に、集團的に面会強請、あるいは強談威迫というようなものがあるのでありますが、これなんかもやはり免責される場合があるのではないかというふうに思います。ほかにもあると思いますけれども、ちよつと思いつきましたのは、そのようなものであります。
#35
○大橋委員 ただいま免責を受ける行為としておあげになりましたが、このたびの規定には但書がついて、暴力の行使は入らない、こういうことにはつきり規定をせられたわけでございます。この但書の規定というものは、從來労働省の発表せられておりました試案の中にもなかつたのでございますが、今度突然にこの但書を入れてはつきりされるようになりました動機は、一体どういうことであつたか、伺いたいのであります。
#36
○高橋(一)政府委員 この組合法第一條第二項は非常にわかりにくいものである、從つて何とかこれを、だれか読んでもわかるように明確にしたいということは、各方面からの御要望がありましたし、われわれ自身としても非常に考えて参つたのでありますが、何分にも非常にデリケートな点を含んでおりまして、文章に表わすということが、たいへん困難であつたのであります。しかしそれを何とか、全部を解決しないまでも、はつきりした点を一つすつ解決して行つても、その方が現状ではいいのではないか、こういうような意見も相当にありまして、そうためにある程度の案を練つてみたのでありますが、どれも帶に短かしたすきに長しというようなところがありまして、結論に至らなかつたのであります。暴力否定という点につきましては、これで全部カバーするわけではないけれども、これならばはつきり言つてさしつかえないではないかということに、われわれの方の考えがなりまして、議が熟したものでありますから、今回の改正案に織り込むことになつたのであります。
#37
○大橋議員 元來暴力の行使が、労働爭議において許されるということはあり得ないわけでありまして、この点については前から疑いはなかつたと思うのでございますが、しかしいろいろ労働界の実情から見て、はつきりする必要があるのだ、こういうふうなお認めになつたとすれば、それでもよろしいかと思いますが、私自身の考えといたしましては、むしろ暴力の行使のごときものが、組合法の從來の規定によつて許されたと解釈するのは、これはとんでもない話なのであつて、それよりもこの規定において問題となりますのは、実際爭議行為として暴力以外のものがむしろ問題になる場合が多いのではないか、たとえば先ほどおあげになりましたような種類の暴力行使に当らないところの行為のうち、いかなるものがこの規定によつて免責されるかということが問題に実際なるのではないか、また特に作為犯よりも不作為犯の場合において、性質上この免責規定の適用の有無が問題になる場合が多いのではないか、こういうように考えるのでございます。この方面の解釈の助けになるような規定をする方が、むしろ実際必要ではないか。暴力の規定よりも、むしろそういつた不作為犯の場合に、いかなるものが免責されるか、暴力行為以外でいかなるものが免責されるか、こういつた方の規定を設けることの方が、むしろ実際的ではないかと思うのであります。たとえば作為犯といたしましても、業務妨害罪、信用毀損罪、あるいは家宅侵入、あるいは先ほどおあげになりました脅迫罪、あるいはまた各種の過失によるところの犯罪である。こういつたようなものに実際の問題が多い。暴力行使以外の方が問題が多い。そういうものをこの機会にはつきりすることが、実際上必要である。こういうふうに私は考えるのでありまするが、その点につきまして法務廳としては、どういうお考えをお持ちでございましよう。
#38
○高橋(一)政府委員 御意見ごもつともでございまして、われわれといたしましても、そういうきわめて問題となる点を解決し得れば、何よりであるというふうに考えております。しかしこれは相当具体的に判断すべき問題でありまして、あらかじめ畫一的に規定することは、結局抽象的になりまして、なかなかうまい表現が見つからないということもございまして、まだそういう運びまで行つておらないのでございます。暴力の点につきましては、ただいまの大橋委員の御意見は私もまつたく同感でございますが、しかし世間では、この点についてすらも相当の誤解があり、またそのために、ある程度組合の方々も誤つた指導をされておるというような面も見えますので、これだけを規定することでも、今までに比べて相当の進歩であるというふうに、われわれは考えている次第であります。
#39
○大橋委員 私はこの暴力否定の但書をつけなければならぬというようなことは、わが國労働界の名誉のために、まことに遺憾なことであると思うのであります。なお先ほどお尋ね申し上げましたような暴力行使以外の場合に、実際に問題があることは、ただいまのお答えにおいてもお認めなすつたのでありまするから、今後労働省並びに法務廳におかれましては、できるだけこの問題の多いところへ直截なメスをお入れになりまして、できるだけ早くこの方面の法理を研究されまして、一般にこの規定の適用を明らかにされるような措置を、すみやかに講ぜられるように、この機会に切に希望をいたすのであります。なおこの規定につきまして、先ほどちよつと触れました、いかなる行為がこの正当なものになるかという問題につきまして、ただいま行為の問題を言つたのでございまするが、その行為の前提となつたところの爭議の性格が、やはりこの規定を適用すべきかどうかということに、影響を持つと言われたのでございまするが、そうしますと、不当なるところの労働爭議に伴う行為に対しては、いかなる場合においてもこの規定の適用はないと考えなければならぬ趣旨でございましようか。
#40
○高橋(一)政府委員 われわれの立場といたしましては、檢察の運用の問題といたしまして、この條項を考えておるのであります。從いましてただいまお尋ねのような爭議全体の性格を判断して、それによつてどうするというような点につきましては、檢察の問題といたしましては、にわかに申し上げにくいのではないかというふうに考えておるのであります。
#41
○大橋委員 そういたしますると、不当なる労働爭議、これにはいろいろ考えられるでありましようが、少くとも法律の要求する要件を満たさないところの労働爭議は、不当と言うことができると思います。たとえば労調法の手続に反して惹起されたところの爭議のごとき、それからまた労働組合の憲法でありまするところの、組合の規約に反して引起された爭議も考えられます。たとえば先ほどの投票によつてきめるべき手続をふまずに惹起されたところの労働爭議、それからまた労働協約において爭議の前提となる要件を定めました場合に、その前提をふますに引起された労働爭議というものもあり得ると思います。すなわちかように法律の要求しておるところの手続、組合規約の要求しておるところの手続、また労働協約の要求しておるところの手続に明瞭に違反して惹起せられました労働爭議、これらは手続上の理由によつて、不当なる労働爭議と考えられると思うのでございます。また社会的に不当なる目的をもつて引起されたところの労働爭議も考えられるのでありまするが、これは目的によつて不当となるところの労働爭議であると思うのでございます。これらの目的により、あるいは手続により、不当とせられる労働爭議におきましても、個々の爭議行為が正当なる場合には、この第一條第二項が適用される。こういうふうに考えるべきものと思うのでございまするが、その点はいかがでございましようか。
#42
○高橋(一)政府委員 たとえば今お話がありました、労働関係調整法所定の手続を経ないで、爭議行為に入つたというような場合につきましては、労調法自体の制裁があるわけであります。それから協約、あるいは組合内部の規約に違反して爭議が行われておるというような場合におきましては、そのような場合でありましても、たとえば平和的にストが行われておるというような場合には、それ自体では、まだどの刑罰法令にも違反するということになりませんので、やはり個々の行為、あるいは個々の行為の集まりを見て、それが何らかの刑罰法令に当つた場合に、その当、不当を論ずるにあたりまして、あるいは協約違反である、あるいは規約の手続をふんでないというようなことが考慮せられるのであるというふうに考えております。
#43
○大橋委員 もう一度はつきり伺いたいと思いますが、正当なる手続によらずして引起されました労働爭議におきまして、先ほど例としてお述べになりましたところの、多数が面会を強要した、こういう場合において、その面会強要の行為は、この第二項によつて免責され得るのでございましようか、それともそれは爭議それ自体が不当なるがゆえに、その行為は刑罰法令に触るるものとして処断しなければならないのでありますか、この点を明確にいたしたいと思います。
#44
○高橋(一)政府委員 具体的な問題に入りませんと、ただいまのような点は非常にお答えがむずかしいように感じておるのであります。理論的に言いますれば、そういうような場合、すなわち爭議が合法的な手続というものには必ずしもよつていないというような場合に、そのゆえに不当であるというふうにかりに言えますれば、そのような爭議を行うための爭議行為というものは、この條項によりまして、免責されないというふうに申し上げてよいと思うのであります。ただその場合の手続の可否が、爭議全体の当、不当を左右するだけのウエートがあるかどうかという点は、やはり具体的に一應檢討してみた上でないと、一概には言い切れないのではないかというふうに考えておるのであります。
#45
○大橋委員 もちろん個々の場合において、これを檢挙するかどうかということになりますると、具体的な情状その他各種の條件のあることは当然でありまするが、私の伺つておりますのは、そういつた問題ではなく、この法律自身の法律的な意味を伺いたいと思うのであります。労働組合の行為であつて、正当なものについてだけこの法律は適用があるのだ、この正当なものというのは、個々の行為が正当でありさえすればいいのであるか、それともその前提をなすところの労働爭議というものが、正当のものでなければならぬのかという点なのであります。この点は、実はこの法律を適用いたしまする場合を実際にきめるところの、きわめて重大なる点でありましてもし不当な労働爭議においては、刑罰法令に触るる行為はすべて処断しなければならない意味だとすると、これは今までわれわれが考えておつたのとは、いささか違つて來るのではないか。その点をはつきり伺いたいと思うのであります。
#46
○高橋(一)政府委員 失礼でありますが、ただいまの御質問の趣旨は……
#47
○大橋委員 もう一度申しますと、労働爭議には目的から見て正当なものと、不当なものとある。また手続から見て正当なものと、不当なものがあると考えます。この目的あるいは手続、いずれの理由から見ましても、不当な労働爭議と考えられる場合においては、一切この第一條の第二項の規定は、適用がないんだという意味であるか。その場合においても、個々の行為によつて、暴力行為であるとか、特別な不当であるとせられるところの行為以外の行為、すなわち先ほどの、平和的に多数で面会を要請する行為であるとか、あるいは平和的な手段によるところの信用毀損、あるいは業務妨害、それからピケッティング、そういつた行為がこの第二項によつて免責されるかどうか、この点を伺いたいと思います。
#48
○高橋(一)政府委員 どうも御質問が……
#49
○大橋委員 ただいまの点はごの規定運用上非常に重大な点だと思いますので、まだ委員会もなかなかありますから、その間にひとつ適当な機会にはつきりした御答弁を、どなたからかお願いいたしたいと思います。
 次にやはり正当、不正当に関連して來る問題でございますが、今度は第七條の不当労働行為についてお聞きいたしたいと思います。私は第七條の不当労働行為というものは、本来事業主の行為として正当な行為であるけれども、しかしながら労働関係において、労働者の團結権、團体交渉権を保護するために、特にこの法律の規定によつて、これらの行為を不当としたものである。本來社会的に見て不当な行為とは言えないけれども、しかし労働関係という今日の労働事情から見て、不当なる行為である。こういう意味の行為であると思いますが、いかがでございましよう。
 もう一度……。この不当労働行為というのは、社会的に見て不当なるがゆえに、不当としている点は明らかだと思うのです。しかし從來の観念から言えば、不当でも何でもない行為なんであるが、特に労働関係の実情から見て、労働者を保護し、労働者の團結権、團体交渉権を擁護するという上から見て、これらの行為を特に不当とする、こういう意味ではないかと思いますが、いかがでございましよう。
#50
○賀來政府委員 御意見の通りであります。
#51
○大橋委員 なお、この第一号に、労働組合の正当な行為をしたことのゆえをもつて不利益な取扱いをしてはいけないという規定がございますが、この正当なる行為というものは、先に第一條第二項の場合にも、正当な行為であるかどうかという点をお伺いいたしましたが、この場合において、正当なる行為というものは、組合規約に違反し、あるいは労働協約に違反し、あるいは第九條その他の法規に違反し、労調法の手続をふまずに行われた爭議といつた場合においては、この正当な行為としての保護を與えないという趣旨でございますか。
#52
○高橋(一)政府委員 労働組合法で爭議行為として正当な行為という場合には、一條におきましても、本條におきましても、同じ内容であると考えます。
#53
○大橋委員 そうすると先ほど申し上げましたような、目的により、あるいは手続によつて、不当なりとせられるところの労働爭議をなした場合においては、第七條の第一号の規定は適用がない、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
#54
○高橋(一)政府委員 一應そういうふうに考えます。但し單に軽微な落度があつたからということで、これに対して解雇処分をするというような場合には、実はその軽微な落度というのは口実であつて、ほんとうは組合の正当な活動をしたために解雇したのだというように、認定される可能性は多分にあると考えます。
#55
○大橋委員 一体問題は組合の正当な活動をしたかどうかということが問題なのであつて、その点を特に伺いたいと思つておつたのでありますが、具体的な例をもつて申し上げますると、組合規約においてストライキは投票できめるという場合に、投票によらずしてストライキが起つた、その場合にはすべての労働者を解雇しても不当労働行為とはならないという趣旨でありましようか――お答えがございませんが、労働省の方からもお答えがございませんが、この点もひとつ労働省と法務廳におかれまして、もう少し不当労働行為の範囲につきましてよくお打合せになりまして、委員会の終りますまでの間に何かはつきりしたお答えを願いたいと思います。特にこの不当労働行為につきましては、先般來政府委員におかれましても、これが今度の規定のみそであるように言つておられたのでありますが、そのかんじんのみそについての熟成が十分にできておらぬようでありますので、少し期間を與えますから、十分に熟成したみそをひとつ出していただきたいと思います。
 それでは第一條第二項、第七條等に関する質疑は、その時期まで保留をさせていただきまして、第九條についてお伺いをいたします。第九條におきましては、寄付金の流用の規定ができておるのでありますが、この寄付金の流用は組合の決議を経なければならぬ。逆に言うと組合の決議によれば寄付金を流用することができるということにもなるわけでございますが、しかしながら使用者の寄付にかかる基金のごときものを、使用者の承認なくして流用するというようなことを認める趣旨ではないであろう、こういうふうに考えられまするが、その点はいかがでございましようか。
#56
○賀來政府委員 組合基金の流用につきましては、組合員全体に非常な利害関係を持つておりますので、これは総会という全体の意思機関によつて決定するというふうにやつておるのであります。從いましてこれを他に流用してもいいというのでありますが、流用する際に使用者に打合せる必要はないと考えております。ただ使用者が寄付がありましたときに、かりに意思表示がなくても、使用者側の寄付は、これは指定寄付と解すべきであります。從いまして使用者の寄付した金を他に流用する、たとえて申しますならば、福利厚生の資金として寄付したものを、爭議資金に流用するということがありましたならば、これは違法になるわけであります。
#57
○大橋委員 なお第九條につきましては罰則が規定してございませんが、この規定に違反して流用が行われました場合には、どういう結果になりますか、その点をひとつ伺いたいと思います。
#58
○賀來政府委員 これは使用者から金をもらつたことになりますので、本法によりまする手続に参與し、あるいは救済を受けることができないという組合員になるわけであります。
#59
○大橋委員 これは法務廳にお伺いしたいのでございますが、この法律の規定によつて総会の決議を経なければならないのにもかかわらず、組合役員が総会の決議を経ることなく、この組合基金を流用いたしました場合には、背任罪が成立いたすでしようか、どうでしようか。
#60
○高橋(一)政府委員 すると思います。
#61
○大橋委員 次に第二十八條の関係をお伺いしたいと存じます。第二十八條は第二十七條と関連いたしておるのでございますが、第二十八條によりまして、確定判決によつて支持された命令の違反に対して刑罰を科する、その立法の御趣旨を伺いたいと思います。
#62
○高橋(一)政府委員 これはどこまでも不当労働行為の是正につきましては、これを刑罰をもつて矯正してその履行の確保をはかる、こういう趣旨であると考えます。
#63
○大橋委員 それでは第三十二條において過料を科する理由を伺いたいと思います。
#64
○高橋(一)政府委員 これも第二十八條の同様の趣旨であります。ただ手続の軽重等に應じまして、刑罰と刑罰でない過料と区別しておるのであります。
#65
○大橋委員 元來この過料と申しますものは、法規の遵守を強制するものでございまして、この過料に当る行為というものは、いわゆる刑法上の言葉に從えば、実質犯というよりは、形式犯である場合が多いと思うのでございます。これに対する処分というものは、その違反の事実があるかないかということを見、違反の事実があるということになりますと、一般刑法上の裁判におけるがごとく、犯人の性格であるとか、情状であるとか、その他諸般の主観的な事由を調査することなく、客観的にその行為を確認して、それに対して過料を科するというふうな性質のものであると思うのでございます。しかしながら不当労働行為というものは、事業主の種々な行為にして、これは社会的に見て、労働者の團結権、交渉権を保護する上からいつて不当である、こういうふうに考えられるものでありますから、これはむしろその実質を調査して、実質犯として刑罰を科するということが、その性質に適合するものではないかと思うのでございます。この第二十七條の違反におきましては刑罰を科する、第二十一條におきましては秩序罰を科する、この二つの取扱いは、同種の性質を持つておる行為に対してまつたく別個の罰を科しておりまするが、この点は私どもになかなか納得のできない点でございますが、詳細にその理由を、ひとつ伺わせていただきたいと思うのでございます。
#66
○高橋(一)政府委員 この二十七條も三十二條も不当労働行為そのものを処罰するという趣旨ではございませんで、委員会の命令なり、あるいは裁判所の命令、あるいは裁判というものに違反した者を処罰するものでありまして、どちらかといえば、いわゆる裁判所侮辱の制裁というような本質のものであるというふうに考えておるのであります。これに対して、それでは過料だけで行つてもいいのではないかという御議論もあると思いますが、たとえば独占禁止法などにおきまして、公正取引委員会の審決に対してこれを刑罰をもつて履行を強制しているというような事例もありますので、事案の重いものにつきましては刑罰をもつて臨むという程度に考えております。
#67
○大橋委員 罰というものについての根本的な考え方を伺いたいのでありますが、あるいは法務廳では行政、罰は常に刑罰より軽い、形式的にはこういうふうにお考えになつているのではないかと思うのであります。しかしながら罰のうちでも特に財産的な罰、すなわち罰金的なものになりますと、その金額の多い方が実際に重いと考えるのが社会通念ではないかと思いますが、その点はいかがでありますか。
#68
○高橋(一)政府委員 刑罰と過料とはやはり別個のものであつて、必ずしも金額によつて比較さるべきものではないというふうに考えております。
#69
○大橋委員 三千二條の罰と二十八條の罰でございますが、金額から言えば、三十二條の罰は一日に十万円ということになつておりまして、これは十日で百万円というふうに非常に金額が重くなるのでございます。先ほどの御説明によりますと、二十八條は重いがゆえに刑罰を科した、三十二條は軽いがゆえに過料を科する、こう言われるのでありますが、しかし実際において、過料の方が金額が重いがゆえに、社会的にはこの方が重く罰せられておる、こういうふうに考えるのが常識ではないかと思いますが、その点はいかがでありますか。
#70
○高橋(一)政府委員 その点は常識的にはそういうふうに考えられるかもしれませんが、やはり別個のものであるというふうに考えております。
#71
○大橋委員 それでは一日に十万円とお定めになありましたのは、どういう理由でありますか。
#72
○高橋(一)政府委員 十万円以下で裁量をすればよいのではないか。そのわくとしては、いろいろ大勢の從業員を相手とする行為でありますので、十万円くらいあれば最も重い場合が処理できるのではないかというふうな考えに基くものであります。
#73
○大橋委員 私の質問の趣旨は、十万円を聞いているのではなく、第三十二條に「当該命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の不履行の日数一日につき十万円」とありますが、本文の十万円でなく、この括弧内の一日十万円とした理由はどういうわけでありますか。
#74
○高橋(一)政府委員 御質問の趣旨を正確に把握しておらぬかしりませんが、括弧内の十万円というのも、外にあります十万円と同格でありまして、結局この十万円以下で処理するということになります。
#75
○大橋委員 一日については十万円以下でありまして、十日に対しては百万円以下、こういうことになると思うのでありますが、一つの行為に対して、初めにやれば十万円で済み、十日先になると百万円というふうに、日数によつて金額をお上げになりました理由は、どういうわけでありますか、伺いたいのであります。
#76
○高橋(一)政府委員 一日も早くその履行をせよという趣旨であります。
#77
○大橋委員 一日も早く履行せよということは、結局秩序罰を繰返すことによつて、精神的に事業主をして履行させるように強制することであつて、これに一つの強制執行の方法としての間接強制ではないかと思いますが、どうでありますか。
#78
○平賀説明員 ただいまの点御説明申し上げます。作為を命じた場合、「その命令の不履行の日数一日につき十万円」といたしました理由は、ただいま檢務局長から申上しげましたように、履行を強制する、民事訴訟法の間接強制式の考え方を採用したわけでございます。
#79
○大橋委員 そうすると、それは罰としての過料ではなく、間接強制としての過料である、こう解釈してよろしいでしようか。
#80
○平賀説明員 そうではございませんで、間接強制的ではありますが、やはり罰であります。
#81
○大橋委員 罰ではありますが、しかし間接強制としての効果も期待しておる、こういうふうにお答えになりましたが、私はもし間接強制としての効果を期待するならば、その方法といたしましては、将来において不確定な罰を與えるよりも、むしろ事前に金額を確定して、その委員会の命令の中なり、あるいは裁判所の決定の中において、この命令に従わざる場合、この決定に從わざる場合に、一日において幾日の過料を科する、そうしてその不履行に対しては繰返して科する、こういうことをむしろ最初から確定しておくことの方が、はるかに効果的ではないかと思うのであります。その点についてのお考えを伺いたいと存じます。
#82
○平賀説明員 ただいまの御意見、間接強制としてならば、そういうことが可能だと思うのでありますが、過料としては、それはいわば停止條件付で過料を科するということになりますので、過料としては不適当ではないかと思います。それからさらに労働委員会なり、あるいは裁判所の命令がありました場合に、それに従つたか、從わないかということが必ず問題となるのでありまして、あらかじめ罰を科しておきますと、はたして從つたか、從わないかということについて、やはり非常に問題が起りまして、使用者の方では從つたと言うでありましようし、労働者の方では従わないという、困難な問題が生ずるであろうと思うのであります。從いまして、やはり過去の不履行の日数に應じて過料の額を定めることにする方が、事柄を簡明に運ぶ道ではないかと思うのであります。
#83
○大橋委員 あらかじめ罰を科するというのではなく、不履行の際において科せらるべき過料の額を、あらかじめ予定しておくということを私は言つたのであります。その方が実際効果的ではないかということを申し上げたのであります。その点はいかがでありますか。
#84
○平賀説明員 それは間接強制としてという御趣旨でございますか、それとも過料としてでございますか。
#85
○大橋委員 間接強制であろうが、過料であろうが、とにかくこの法律の目的は、事業主が違反した場合に國家に金をとられる。こういうことによつてこの履行を強制しようという趣旨でありますから、その一日の不履行に対して幾ら取られるぞということを、あらかじめ予定しておくことの方が、事業主として強制される度合いが強い、またその方が有効ではないか。こういう意味なんであります。
#86
○平賀説明員 先ほども申し上げましたように、労働関係という特殊事情から申しまして――一般の債権、債務のようなものでありますと、一定額の金銭を支拂つたとか、あるいは動産、不動産を引渡したとか、引渡さないとかで、そういうことの履行があつたかどうかが非常に明確にわかるのでありますが、この不当労働行為の関係におきましては、その点が必ずしも明確でない場合が多いのではないか。命令違反があつたかどうかについて、労働者対使用者の間で爭いが起るということをおそれましたために、事後のものについて過料を科するということにしたのでございます。もしあらかじめ科しておきますと、從つたか從わなかつたということについて、さらにまた裁判所の判断を仰がなければならないという問題になるのではないか。そういう疑念からでございます。
#87
○大橋委員 あらかじめ定めました場合におきましては、次の裁判所の判断は、違反があつたか、なかつたかという事実を確定する点においてだけ、裁判所の判断を仰げばいいわけでありまして、手続としても、むしろ初めに過料の額を予定しておくことの方が、簡單明瞭であると思うのでございますが、その点はいかがでございましようか。
#88
○平賀説明員 結局今の御意見のように、問題になればやはり裁判所は關與しなければならないということになりますので、その点の煩雑を防ぎますために、最後の裁判所の判断で間に合わせようというのがこの考えでございます。そうしてあらかじめ制裁の額をきめるかわりに、この法律でもつて最大限これだけの罰が科せられるということで、この法律自体が間接に強制する作用を営むという考え方でございます。
#89
○大橋委員 この過料は、從來の法規から見ますると、一つの新例であると思います。かような新例がこの新しい労働関係を規律するために開かれたということは、一つの理由があつたことと思うのでございまするが、私の希望するところは、この一つの新例を採用するだけのお考えがありましたならば、むしろさらに一歩を進めまして、私の申し上げましたような新しい行き方も考慮に入れてやつて行く方が、より有意義ではないかという点なのであります。しかしこれ以上は議論になりますから、この点については申し上げませんが、私自身といたしましては、あらかじめ過料の額を予定しておくことの方が、強制としてはより効果的である、こういう考えを持つものでございます。しかしこの点もまた、政府とせられましても、將來せつかくこういう新しい制度を取入れようという際でございまするから、罰は必ずあとからでなければいけないという既成の観念にとらわれることなく、新しい考え方を自由に取入れられて、御研究くださるように切に希望いたすのでございます。なお、労働大臣がお見えになりましたら御質問申し上げたい事項、それから先ほどの行為の当、不当の問題につきましては、保留をいたしまして、午前の質問を終りたいと思います。
#90
○倉石委員長 この際委員長より政府に申し入れておきたいと思います。先ほど大橋君の質疑されました一條二項及び七條の点につきましては、非常に重大な問題でありますので、なるべくすみやかな機会に、これを委員会に表明せられることを希望いたします。
 これにて、暫時休憩いたしまして、午後は一時四十分より再開いたします。
    午後零時四十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二十五分開議
#91
○倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。篠田弘作君。
#92
○篠田委員 労働大臣がまだお見えになりませんが、政務次官でけつこうでありますから、答弁願います。
 今度の労働組合法並びに労調法の改正の問題につきまして、この改正がまだ案ができていないうちから、相当労働組合その他の方向におきまして、反対があつたわけであります。それはどういうことであるかと申しますと、要するに労働組合法が改惡されるということであります。もちろん案ができないうちに、改惡であるという考え方も、少し軽率ではありますけれども、一般的には労働組合においてそういう議論があるし、またそういう意向を持つている人が非常に多かつたのであります。これに対しまして、一般的に申しますれば、民事党内閣は保守内閣である。そういう意味において、保守党の出すものは改惡であるという観念と、また一部の方向からの、何と申しますか、示唆と申しますか、煽動と申しますか、そういう面もあずかつて力があつたと思うのでありますが、私たちはこの原案につきまして、しばしば、十数回もしくはそれ以上にわたつてこれを檢討し、審議したのでありますけれども、この労働組合法の改正というものは、ある意味において、いわゆる労働組合の民主性というものと自主性というものを確立した点におきまして、むしろ非常に進歩的ではないかというふうにも考えられるのであります。ところが、そういつたわれわれの考え方というものが、一般的に労働階級に受入れられるかどうかということが、一つ問題になると思うのであります。そこで私たちといたしましては、この労働組合法が民主自由党の絶対多数の力によつて改惡されて、しかもそれを議会で押し切つたというふうに見られるということは、まつたくこれは本旨と違うと考えます。そういう意味において、労働省の関係諸君は、この労働組合法の改正というものが進歩的なものである、あるいは改正であつて政惡ではない、どこが非常に進歩的であるかという面について、多分確信を持つておられると思うのであります。そういう点がありましたならば、政務次官でも労政局長でもかまいませんが、そういう点についての御説明をひとつ願いたいと思います。そしてはつきりと、改惡でないという一つのポイントを、一般に明示されたいというのが一つであります。
 いま一つは、一般的な問題ではありませんで、逐條的な問題になりますけれども、労働組合の團体交渉でありますが、その交渉の打切りというものにつきまして、相手方が不当であつた場合には、その團体交渉を打切ることができる。こういう條文でありますが、その團体交渉が不当であるということを判断する場合に、やり方が不当であるということと、内容が不当であるということと、二つにわけることができると思いますが、どういうやり方をすれば拒絶することができるか、すなわち不当労働行為であるか、どういう内容の場合においては不当労働行為であるか。私は北海道で、ことに第四区でありますが、かつて美唄の人民裁判におきましては、ご承知の通り三十数時間にわたつて交渉が継続されたけれども、相手はかわるけれども本人はかわることができない。こういうような場合もあるのであります。もちろん現在の常識から申しますれば、そういうことは不当な交渉の仕方であると考えられておりますけれども、しかし不当であるかないかということは、もちろんそのときの現実の面についての判断でありますが、大体の基準というもの、どういうやり方をすれば不当であるかということが、はつきりしていなければならないと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、どういうやり方をした場合に不当の交渉とみなすか、どういう内容を持つた場合に違法とみなすかという問題についての、労働省、政府側の御見解を説明していただきたいと、こう思います。
#93
○山崎(岩)政府委員 篠田委員にお答え申し上げます。
 ただいま皆様方の御審議をいただいておりまするところの労働組合法案並びに労調法案に関しまして、世間では、まだこの法案が議会に上程されないうちから、とかく改惡ではないかとか、あるいは惡法でないかというふうな批評を加えまして、いろいろ問題を起しておるように思うけれども、労働省としては一体本旨はどうなんだ、一体どういう信念を持つてこの法案を提出されたのかいうとご質問でございます。いかにも世間におきましては、本法案がまだ議会に上程されないうちから、とかくの批評を加えました。というのは、まず第一案、第二案というものをつくりまして、公聽会にかけて、いろいろな方面において意見を聽取いたしました事実がございます。そこで一案、二案につきまして、世間ではいろいろな批判を加えたわけでありまするけれども、労働省といたしましては、すでに現行法が笑施されまして三年の時日を経過しております。労調法におきましては二年半の時日を経過しておるのであります。そうしてこの現行法というものは、旧憲法の施行時代につくり上げられたものでありまするので、ただいまの民主憲法の施行されておりまするところの時代とは、多少趣を異にしております。そこで新憲法にマッチするような法律をつくりまして、労資ともに、ここにしつかりした基礎の上に日本の再建、経済再建をはかつて行かなければならぬ。そのためには、現行法に欠けておる点もありますので、その点を整備して行かなければなりません。また体裁等におきましても、新憲法にマッチさせて行かなければならぬことは申すまでもございません。そこで、どこまでも整備充実をはかつて行こうという趣旨のもとに、立案をいたすことになつたのでありまするが、労働者という大きな國体を向うにまわしまして、この法律がこれらの人人の血となり肉となつて、ほんとうの民主主義的なる、しかも自主的なる労働組合を運営して参りますることのためには、労働者諸君も、また國民も、どういう批判を加え、どういう考えを持つかという点を打診する必要がございました。そこで公聽会を開きまして、各方面にわたつてのいろいろな意見を聽取いたしまして、最もよい案を立てようという考えのもとに、ただいま上程されましたところの法案が、これが一番いいんだ。現下のこの政局に処しましても、また労働組合の運営の上から言いましても、経済再建という重大な時期に到達しておりまするただいまの時期といたしましては、この法案が一番すぐれたものである、一番時宜に適したものである、こういう考えを持つて、実は上程する運びに相なつたのであります。從いまして、この法案の内容をよく調査もせず、研究もしないでもつて、ただ單に改惡であるかのごとき批判を加えるということは、私どもとしましては、当つていないものというふうに思えておるのであります。ただいま皆様方の御審議をいただきまして、初めてこの法案の全貌が明らかにされ、また政府側と皆様方との間におけるところの質疑應答におきましても十分に檢討を加えられまして、初めてこの法律案の考えるところがどうか、これがはたして経済九原則実施に伴つて、日本の再建のためにどういうお役に立つものであるかということが、明らかにされて來ると考えておるような次第であります。決して労働省といたしましては、改惡なものであるとは考えておりません。御了承をいただきたいと思います。なお、こまかな点につきましては、労政局長から説明いたさせたいと思います。
#94
○賀來政府委員 政務次官のお答えに対しまして、補足的に私から申し上げたいと思います。
 全体といたしましては、不明確な点、あるいは欠けた点を補正をいたしたのでありまするが、具体的に申して参りますと、ます第一條の第二項の但書におきまして、労働組合の正当なる行為というものにつきましての、注意を喚起いたしておる点であります。これは今日まで、社会通念上、正当なというのは当然わかるだろうというふうな考えで参りましたのが、一部指導者の間違つた指導もあつたかもしれませんが、労働者がそれがために刑法上の違法の行為を犯しまして、処罰をされたという例もあつたのであります。これらの点は、たとえて申しますならば、今度も書いてありますように、「暴力の行使は」というふうな書き方をすることによりまして、注意をいたしますと、いたずらな犠牲者を労働者から出さずに済むんじやないかという点であります。
 第二條におきまして、從來非常に不明確であつた点、たとえて申しますならば、組合に加入いたします者の範囲が不明確だとか、あるいは経費の点が、主たる経費という程度でありましたがために、労働組合が自主性を失つたりいたしておるのであります。これらの点を明確にいたしまして、いたずらな紛議が起らないように、労働組合か自主性を失わないというふうな点に注意した点であります。
 第三は、從來労働組合は、設立いたしますと届出をいたします。またそれに対しまして、行政官廳が資格の審査をし、あるいは規約の変更を命じ、違法的な行為に出ますると、裁判所は解散を命ずる。審査の結果もまた解散になる。かような場合がありましたのが、今度は自由設立主義を徹底いたしまして、労働組合というものは、憲法二十八條に基きまして、いかなる團結をしてもよろしいのであります。ただ法律が保護をいたすという関係もありまして、組合は最小限度かような規約は備えておらなければならないということを示しておるのであります。
 その次は、不当労働行為の範囲を明確にし、拡充をいたしておる点であります。從來の法律におきましても、第十一條におきまして、不当労働行為の問題は取上げられておつたのでありますけれども、過去三箇年の経驗によりますると、十一條違反の事件は逐次増大をいたしております。のみならず、このために被害をこうむる労働者の被害の程度が、時間的にも量的にもだんだん多くなるという傾向になつておつたのであります。これに対しまして、今度はその不当労働行為の範囲を明確にし、また拡充いたしますとともに、從來はこの処分につきましては、裁判所がやつておりまして、ただちに原状回復を命ずる等のことがなかつたのでありますけれども、今度の法案におきましては、労働委員会が原状回復を命ずることができて、遅くとも三十日以内には、この問題が基本的には片づいて行くというように書いておる点であります。
 次に労働委員会が、從來三者構成の一体といたしましての処置を、準司法的な処置に関しましては、とるというふうなことになつておるのでありまするが、それでは今日までの十一條違反の実情を見ましても、取扱いました件数のうちで、裁判所に参りました件数は非常に少い。しかもそれが有罪になつた件数はまたさらに少いのであります。この点の参考の資料は、すでに先般差上げてありまするが、結果におきまして正当なる判断というものは、なかなか下しにくい状態にあつたのでありますけれども、今度は迅速にこれを処理するという意味におきまして、労働委員会の権限を拡充いたしますとともに、さらに地方労働委員会と中央労働委員会との関係を調整いたしまして、全体的な爭議あるいは紛議というようなものが、秩序正しく、一つの統一された方針のもとに片づいて行くようにいたした点であります。以上が大体今度の法案におきまして、現行法よりも改正したということが言える点であります。
 結論といたしましては、労働組合と使用者との間の対等なる、正常なる関係を明確に調整いたしまするとともに、労働組合の自主性、民主性、特に九原則が至上命令となつておりまする今日、労働組合の責任性を明確にいたした点、これらが改正になつたおもなる点だと考えておる次第であります。
 次に團体交渉の問題でありますが、第七條の第二項におきまして、團体交渉に應ずる義務を使用者側に課しております。ただし正当な理由があつた場合には、これは拒み得るという意味の規定になつておるのであります。正当なる理由と申しますのは、この團体交渉は労働組合にとりましては、最も重要なる仕事の一つであります。これが秩序正しく、平和的に行われることが必要であることは申し上げるまでもないと考えるのであります。團体交渉というものは、平和的にかつ秩序ある交渉が行われなければならない。その交渉が平和的にまた秩序正しく行われないことになりますと、團体交渉がうまく妥結することができないのは、今日まで三箇年間の経験から申しましても、当然であります。なおまた一條二項但書にありますような行為、すなわち刑法の上からも免責にならないような行為に出ました事例が、今日まであるのでありまして、その結果が有罪になつた事例も多くあるのでありますが、さような行為、すなわち脅迫的に出ましたり、あるいは長時間にわたつて監禁をいたしましたり、また多数の人間が不当に長時間にわたりまして人身に危害を及ぼすおそれのある、あるいは及ぼすような事件が起きるような場合、これらはもちろん正当な團体交渉とは言えないのであります。かような状態におきましては、使用者は拒み得るものと考えるのであります。もちろんこれらが正当であるかどうかということにつきましては、労働委員会がその判定をいたしましようし、最後的には裁判所がその決定をいたすことと考えておりまするが、平たく申しまするならば、平和的にかつ秩序ある團体交渉、これは一般的の社会通念からも出て來ると考えるのであります。かような社会通念に基いて行われまする團体交渉でありまするならば、これは拒み得ないと考えるのであります。
#95
○篠田委員 私の質問の中の、最初の労働組合の民主性を確立するという意味における、合同の労働法の改正というものに対する説明は、大体において了承いたしました。ただ第二の、いわゆる國体交渉の場合、平和的な秩序あるものというお話でありますが、それはもちろん平和的で秩序あれば、これは問題ないのであります。また違法なものはもちろんこれはいけないと思うのでありまするが、そういう場合には何が違法であるかということは、結局労働委員会と裁判所が決定するということでは、それはちよつと満足できないわけであります。たとえば團体交渉を打切るということは現実の問題で、片方は團体交渉を打切る、片方は打切らないという場合には、当然そこに問題が起つて来る。もちろん片方は、労働組合法によつて交渉を拒むことはできないということを、たてにするのでありましよう。片方は、この交渉の仕方は不当であるということを、たてにするでありましよう。そこにおのずから見解の相違が生れて來るのであります。それによつてまた暴力も生れて來るであろうし、あるいはまた喧嘩も生れて來る、無秩序も当然生れて來ると思います。そこで大体において何が不当であるか、交渉を打切る基準が明確でなければいけないと私は思います。たとえば時間が長時間にわたるという、その長時間というのは、一体何時間が長時間であるかという問題が、そこに生れて來るのではないか。たとえば労働者の勤務時間八時間というような場合、その交渉が八時間を越えた場合には、長時間ということができるかどうかという問題がそこに一つ起つて來ます。それから、たとえば夜であれば、十二時になつた場合には、それから先は長時間であるかどうかという問題もそこに起つて來ると思います。場所にいたしましても、当然労働組合と資本家は対等の立場でありますから、炭鉱の爭議であれば、会社の事務所においてそれをやるというようなことは、これは普通の常識でありまするが、その場合、労働組合も資本家も対等であつた場合に、労働組合が労働組合の事務所においてきようの交渉をやつてくれと言つたような場合において、それに應じて労働組合の事務所においてやらなければならない義務があるかどうか。あるいは労働組合の指定する場所においてやる義務があるかどうか。たとえば炭鉱なら炭鉱の事務所あるいはクラブにおいて交渉が継続されたときに、労働組合がこの場所は不適当であるから表へ出てくれ、あるいはどこか場所をかえようと言つた場合に、それに應ずる義務があるか。それを拒んだ場合には、それは不当なところの行為であるかどうか。そういう問題が一つあります。それから交渉が多数を相手とするというような場合、何人として制限をすることができるかどうか。あるいはまた夏暑い場合に、炭鉱の爭議の場合などは窓を開いてやる、その窓には何百人という労働者が外からのぞいている、あるいはまたその中へ入つて來ているという場合に、勢い自分たちの生活の問題であるから、やじも飛ぶだろうし、喧噪にもなる、そういう場合にその傍聽者というものを禁止することができるかどうか。それから、労働組合が代理人を選んで来た場合において、その代理人は絶対無條件でそれを受入れるべきものであるかどうか、というようなことがあるのであります。地方におきましては、労働運動においても、たとえば札つきの人がある、そういうような人を代理人として選んで來た場合に、対等の立場において、これは札つきであるから拒絶するということができるかどうか。拒絶した場合に、それは不当行為であるかどうか。そういう問題であります。あるいは乱暴をするというような問題でありましても、暴力を振つて頭をたたけば、これは当然暴力行為である。しかし、たとえば何か持つている物でテーブルをたたいた、それによつてテーブルが割れたというような場合も、たくさんあるのであります。そういう場合に、それをやはり正当な行為として受入れなければならぬか。そういう問題が、実際労働組合との交渉においてはたくさんあると思いますが、そういう面について、もう少し詳しい見解を披瀝してもらいたい、こう思うのであります。
#96
○賀來政府委員 ごもつともな御質問でありまするが、われわれの考え方といたしましては、今日まで三箇年間の経驗からいたしまして、將來もまたこのままこの状態が続くであろうという考え方は、持つていないのであります。労働組合も逐次著しい成長を遂げつつあるのでありまして、過去三箇年間の経驗によりますと、非常に乱暴な、ラフな團体交渉をやりましたもので、一時は成功いたしましても、あとでは失敗に終つておりますし、また多くはさような場合は失敗に終つておるのであります。組合はきわめて自主性を発揮して、一部の勢力から支配されることがなくなり、行動は非常に民主的に行われまするし、さらに責任性の明確な運営をやるようになりましたならば、今日までのようなああいうラフなことはなかろうと考えるのであります。また一方使用者側といたしましても、いたずらに労働組合を恐れるというふうな態度、あるいは不必要にがんこな態度をとることなくして、労働組合の眞の自主性、民主性、あるいは責任性というものを明確にして、労働組合に対しまして正しい態度をとつて行きますならば、相手方も平和的に、秩序ある交渉に移るようになるであろうということを予期いたしておるのであります。とは申しながら、何と申しましても、團体交渉の場面というものは、エキサイトするおそれが多分にあるのであります。從いまして、われわれは本法案の研究の過程におきましては、これを詳細に一應示す方が親切ではないかというようなことも考えましたが、先ほど申し上げましたような理由で、組合自体がしつかりして來る、使用者側もまたしつかりして來ますならば、さような組合、あるいは使用者にとつて、このような規定は入れなくても済むようになるであろうというので、正当な理由なくということに集約いたしたのであります。從いまして法規によつてこれを指示するという考えは持つておりません。第一にわれわれの期待いたしております点は、人数でありますとか、あるいは場所をどうするとか、あるいは傍聽者はどういうふうにするか、また代表の選び方はどうするか、代表者として出た者は、この團体交渉が円滑に行くように権限をお互いに明示してかかるのがいいのじやないか、これらの点につきましては、あらかじめ團体協約によりまして、苦情処理の方法でありますとか、おるいは團体交渉の場合のあり方等を、お互いにあらかじめきめておいていただくことが、適当であると考えるのであります。またさようなことをやつておりましても、先ほど申しましたように、團体交渉というものは、とかくラフに感情的になりやすいものであります。從つてその結果不当労働行為ということになりますと、これは地労委、中労委の取扱いになりますので、今度の改正の法案のうちにもありますように、中労委は労地委とお互いに連絡をいたしまして、事を平和的に片づけるという使命を持つておりますので、中労委におきまして、規則を定めるというわけではありませんが、いろいろのテストのケースにつきまして、いかにあるべきかというふうな基準を研究して、各地労委に、また一般の使用者、組合に対しても示すべきものと考えるのであります。根本は、先ほど申しましたように、團体交渉というものは、合理的に行わなければうまく成功はしないのであります。おとしてみましたり、あるいはいじめて、かちとつたと申しましても、これは決して長続きのしないことでありまして、合理的にやりました團体交渉は、かえつて成功するという実際が逐次現われて來つつあるのであります。最近一箇年間の爭議、あるいは團体交渉の状況を見ましても、平和的に秩序ある交渉をやりましたところは、逐次着実に地位の向上という面におきまして、地歩を獲得しておりますが、これがいたずらに一部の人の指導に基いて、非常にラジカルな團体交渉、あるいは爭議行為になりましたものは、多く失敗をいたしておるということは、労働組合にとりましては、貴重な経験になるものと考えておるのであります。逐次さような結果になることを期待いたしておる次第であります。
#97
○篠田委員 大体において了解いたしました。ただ一つはつきりとしておきたいことは、代理人というものを無條件で受入れなければ、不当労働行為であるかどうかという点であります。その点は從來の團体交渉に見てもわかりますけれども、地方々々によつてはある場合非常に札つきの人がいる。そういう場合はつきりそういうことがわかつておつても、それは代理人として受入れなければならないか。たとえばそれは両方にあると思う。労働者側から見ても、そういうことがあり得るし、経営者側から見ても、そういうことはあり得る。これは対等の立場に立つのであるから、必ずそれに対して両方が納得したものでなければ、これは代理人と認めることができないというのがわれわれの常識であります。裁判官であつても、いけなければこれを忌避することができるというような民主的な時代において、向うがきめたことは、一方的に代理人としてそれと交渉しなければ、それが不当行為になるということは、これは労働組合にとつても迷惑であろうし、経営者にとつても迷惑なことであろうと思う。本來は代理人というものは認めないということがいいのであつて、実際その衝に当つている経営者と、労働組合の幹部とが、交渉するということが、團体交渉の建前であろうと考えるのであります。そこに資本家が弁護士を入れたり、あるいは労働組合において札つきのブロカーを入れたりすることは、根本的に間違つております。その意味において代理人というものの選択は、労働組合の團体交渉には非常に重要である。たとえば今労政局長が言われましたように、平和的に秩序ある交渉をした、それで労働組合が得をしているというお話でありますが、平和的にやつた場合には、お互いの感情が一なごやかであつて、人間が理性的にそれを判断するから、理性で受入れられる。資本家の言うことも、労働組合の言うことも、全部受入れられる。とこるが、そこに感情がさしはさまつた場合には、どうしてももつれる。そういう意味において、代理人の選択というものは非常に重要である。私をして言わしむるならば、代理人ということを認めるそういう制度そのものが、本來の團体交渉を毒するという考え方を持つているのであります。そういう意味において、もう一度この代理人というものを、絶対無條件に受入れなければならないかということについて、ひとつ御説明願いたいと思います。
#98
○賀來政府委員 團体交渉が、使用者は使用者の代表、労働組合は、その使用者に雇用されておりまする組合員の中から出まして行われることが、最も円滑に運ぶゆえんであることは、篠田委員の御意見の通りにわれわれも考えているのであります。ただ労働組合にもいろいろあるのでありまして、みずから代表者が出まして交渉する力のないものもある場合があります。また使用者側といたしましても、いろいろな事情からやはり代理者を出す方が便宜であるし、また解決もしやすいという場合もあろうと思いますので、法案におきましては、その代表者は組合員でなくてもよろしいということが書いてあるのであります。ただ御質問のように、團体交渉をやります際に、相手が何者であるか、どんな権限を持つているものであるかということを確認いたすことは、團体交渉を円滑に解決する重要なる條件であると考えるのであります。從いまして、法規の上におきましては、明記はいたしておりませんが、さような場合におきましては、労資双方とも、相手方の代理人は一体どんな條件から代表になつて來ているのであるか、またその持つている権限は、いかなる権限であるかということの明示を求めまして團体交渉に入る。その権限なり、あるいは代表としての資格なりが不明確でありました場合、これは團体交渉をやりましても、結末は円滑につかないのでありますので、さような意味から、さような全然不明確である者につきましては、労資双方お互いにその交渉を拒否してさしつかえないものと考えるのであります。
#99
○篠田委員 労働組合が自主的に資本家と交渉することのできないようなものも、もちろんたくさんの中にはあるでありましよう。資本家におきましても、もちろん労働組合と直接交渉できないような貧弱な資本家もあることとは思います。しかし、今日労働組合法が施行せられましてからすでに三年有余たちまして、労働組合自身も非常に民主的な健全な発達をしているし、経営者側におきましても、現在の経済の実態から、実際の経営という面にタツチして見れば、自分でもつて判断のつかないような交渉案件というものは、おそらくないだろうと私は考えるのでおります。そういう意味において代理人を選ぶということは、一面において責任回避である。資本家の面から言うならば、責任回避である。自分が矢表に立たないで、弁護士とか、そういうものを立てて交渉させるということは、資本家あるいは経営者としての責任回避だと思います。それから労働者側から言うならば、自分の実際の生活上の問題は、労働組合自体が最もよくこれを認識しており、かつ正確に把握しておると考えます。そういう場合に代理人を出すということは、往々にして労働ブローカーをそこに介在せしめるという結果になるのでありまして、私官身としては、できるならば代理人の制度というものは、廃止していただきたいという観点から御質問しておるのでありまして、この代理人制度というものを廃止する余地はないものであるかどうか。最後にそれだけをお伺いいたしまして、私の質問を打切ります。
#100
○賀來政府委員 お答えいたします。ごもつともな御意見でありまして、われわれといたしましても、最もよき解決に資しますものは、最もよく事情のわかつておる者が、合理的に交渉するにおると考えておるのであります。しかし証大体労働法規の体系と申しますか、公務員法におきましても、あるいは公共企業体の労働関係法におきましても、また現行法あるいは今度の法案にいたしましても、この團体交渉に当る者は、必ずしも組合員自身でなくてもいいのであります。交渉委員、あるいはその代表となります者につきましては、組合員以外の有力な人を依頼するということは、認められておるわけであります。さらにアメリカ等におきましても、この労働弁護士のような制度が非常に発達をいたしておりまして、これらの点については問題なく行われておるようであります。從いましてわれわれといたしましては、御意見のように労働ボスが出るということについては、これは絶対に労働者のために、あるいは使用者のために排撃をすべきであるということには、異存がないのでありますけれども、非常に合理的な力と、合理的な考え方で出て参りまするそれらのいわゆる代理人につきましては、認めて行かなければならぬと考えております。
#101
○大橋委員 ただいまの代表者と言われますのは、代理人を含まないのですか。それとも代理人もやはり代表者と認めなければならぬというのですか、いかがでありますか。
#102
○賀來政府委員 これは組合員でない代理人を含めまして、代表者になれるものと、この組合法におきましてはさように考えております。
#103
○大橋委員 組合法の第六條によりますと、代表者と代理人とは明瞭に書き方に区別をいたしてありますが、それから見ますると、第七條の第二号の代表者というのは、代表者だけなのであつて、代理人は含まれない、こういう趣旨に考えるべきではないかと思いますが。
#104
○賀來政府委員 第六條に書いてありますのは、これは組合員個人の問題と、それから組合の機関の場合、こういうふうに考えられるのでおりますから、さような書き方をいたしておるのであります。
#105
○篠田委員 実は労働組合法の直接の関係ではありませんが、安本の長官に質問をしたいことがありまして、出席を求めたところが、まだお見えになりませんので、労働省側の見解をひとつお聞きしておきたいと思います。それはどういうことかと申しますと、復金の融資が打切られましたために、今日炭鉱におきましては、非常に大きな問題が起つております。たとえば炭住の問題でありますけれども、復金の融資によつて炭住を建てるということで、炭鉱会社側はこれを地元の請負師に請負わしております。ところが、当然政府の保証によつてそれは支拂われるという考えでありますから、請負師側はたとえば八〇%の工事をなしとげている。しかるに復金の融資は五〇%で打切られている。從つてそこに三〇%の支拂いがつかないということであります。一方請負者側はたいてい中小企業者でありますから、これらの人々からは、もちろん余剰の資金を見ることはできません。しかし一方炭鉱の住宅が打切りになつた以上は、請負師側は自分の手元にかかえている労働者の賃金を支拂い、おるいは退職手当を拂つて、それを解雇することにならなければならないのでありますが、実際は賃金を拂うこともできないし、退職手当を拂うこともできない。そこで労働者は賃金ももらえず、退職手当ももらえないから、先の見込みはないけれども、それをとるまでは、そこを動くことはできない。こういう実に矛盾したる結果が今日炭鉱地帯において存在するのであります。しかるは一方労働基準法というものがありまして、もちろんこれは地方々々によつては違うと思いますが、地方の基準局などからは、なぜ支拂わないか、基準法によつて処罰するという問題も起つております。先般北海道の空知炭鉱の方面から私の方に参りました陳情によりますと、そういうことが多いのであります。こういう場合において、もちろん賃金支拂いの問題に、直接労働省において関係されているかどうかということは、あるいは將來の救済の問題も労働省が関知されるかどうかということは別問題でありますが、労働基準法の適用について、あるいは、この救済について、大藏、安本その他の関係官廳を鞭撻して、これを救済されるだけの誠意と申しますか、熱意と申しますか、そういうものが労働省側にあるかどうかということを一應お尋ねしたい。
#106
○山崎(岩)政府委員 篠田委員にお答え申し上げます。まことにごもつともな御意見であり、かつ重大な問題でありまして、これは大臣が御答弁申上げるのがほんとうであり、また大臣としましても、大藏大臣、安本長官等と十分連絡をとりまして、責任のあるお答えをするのがほんとうと考えますので、私は篠田委員の御意見のあるところを大臣にお傳え申し上げまして、適当の機会にこの問題について的確なる御答弁を大臣にしていただくようにしたいと思います。
#107
○石田(一)委員 ちよつと今のに関連してお聞きしたいのですが、こうした炭鉱あたりの厚生方面の行政は、労働省においてその権限を持つていらつしやるのか、厚生省でこれをやつていらつしやるのか。この点御説明願いたいと思います。
#108
○賀來政府委員 私から、よくわかりませんけれども、お答えいたします。基準法等の施行の建前から見ましたものは、労働省が責任を持つてやつておりますが、実際面につきましての厚生関係の方は、商工省の石炭廳が責任を持つてこれに当つておるのであります。
#109
○石田(一)委員 何か意外なお話を聞くように思われる。厚生省あり、労働省があつて、しかもたとえば炭鉱あたりの労働者に対する厚生施設について――もちろん石炭増産面においての商工省の石炭廳の責任は、相当重大であると私は思いますが、これが厚生の方の問題をやつておる。何か私たちには割切れないものがあつて、こういう面から、ただいまの御質問にあつたような手続上の不備があつて、関係当局へ業者、あるいは陳情團が行けば、石炭廳へ行つてくれ、また石炭廳へ行けば、それは労働基準法の関係だから労働省に行つてくれ、こういうふうな煩雑さがあるのではないかと思うのでありますが、この点については労働省あたりでは何かお考えを持つていらつしやるのではないですか。たとえばこれは労働省にとらなければならぬとか、厚生省にやらなければならぬとかいうような、はつきりしたお考えがございませんか。
#110
○賀來政府委員 ごもつともな御意見でありますが、この問題は沿革的に非常に複雑な、あるいは長い沿革があるのであります。石炭廳が労働者の保安、あるいは福利厚生というものを、これは生産と切り離すべからざるものとして、ずつと持つて参つたのであります。これは御意見のように労働者の福利厚生の問題でありまして、労働省といたしましても、十分責任もありますし、またこれに関連をすべきものであるということは考えておりまして、依然今日においても、これらの調整につきましては、やはり継続して関係省の間に協議はいたしておりますが、現実のところはいろいろな沿革もありまして、さようなことになつておる次第であります。
#111
○三浦委員 最初に、現在の組織労働者以外の未組織労働者、労働組合を結成していない労働者の数が大体どの程度あるか、もしおわかりであつたならば、伺いたいと思います。
#112
○賀來政府委員 現在全國で組合法の規定によりまする、いわゆる賃金による労働者がいくらあるかという正確な統計は、まだないのでありますが、われわれの推定いたしておるところでは、一千万ないし一千百万人という考え方を持つているのであります。これに対して組合法によつて組織されているものが五百三十万であります。そのほかに現在公務員法によつて組織されている労働者が約百五十万あるわけであります。從つて組織をされているものは大体推定六百五十万ないし八十万、組織率は五割を上下しているという状況であります。
#113
○三浦委員 そうすると、結局六百五十万程度とするならば、約三百四五十万の未組織労働者があるわけでありますが、こういうような未組織の労働者に対する法律の保護とでも申しましようか、どういうような保護政策を行つておられるか、また考えておられるか、お尋ねいたします。
#114
○賀來政府委員 未組織の労働者の実情を見ますると、たとえて申しますならば、羽二重の織物をやつておる工場で、十人前後という工場が今日たくさんあります。あるいは小さい鋳物工場がたくさんあります。これらの人たちは、自己の地位の向上について非常に不遇な状態にあることは、重々承知をいたしておるのであります。從つて労働省としても、これらの不遇な状態にある労働者が、すみやかに組織を結成するようにという建前から、未組織労働者に対する教育という面に力を入れるとともに、現在の労働組合の中で、産別にしても、また総同盟にしても、これらの未組織のものに対して、組織を勧奨しようという努力はやつておるようであります。未組織労働者に対しましては、労働組合法においては、御承知のように不当労働行為についての保護は適用いたしております。さらに一條二項但書の適用も考えられるのであります。さらに労調法に基いての調停、あつせんの手続に、労働者の集團あるいは爭議團という形においては、参與できるということになつておる次第であります。
#115
○三浦委員 未組織の労働者に対するいろいろの保護政策につきましては、私はただいまの説明によつて大体は了解しますけれども、しかしながら、この多数の未組織労働者をこのままに考えただけではいけないのでありまして、むしろこれに対して政府が積極的な対策を立てられるようにお願いをしておきたいと思います。
 その次に住宅の問題でありますが、御承知の通り運賃が値上げとなり、遠い所から通う人々の負担はたいへんなものであります。また時間の関係等すべての点から、今日労務者は住宅に非常に困つておるのであります、この労働者の住宅問題につきましても、政府でもいろいろこれらの計画はやつておるようでありますが、実際の成績はまつたく見るべきものがない、と言つては語弊があるかもしれませんが、大した効果もないように考えられるのであります。この労働者の住宅問題ということは私は非常に重要な問題と思うのでありまして、この点に対してどういうような考えを持つておられるのか、御答弁を願いたいと思います。これは労働省の所管ばかりでなく、ほかの所管にも関係するかもしれませんが……
#116
○山崎(岩)政府委員 三浦委員のただいまの御質問でございまするが、先ほども篠田委員からこれと同趣旨の御意見がございました。復興金融金庫の関係等の点についても非常に行き詰まりを生じている際に、炭鉱等において最も緊要である住宅の問題が解決がついていない、この点についてどうするかという篠田委員からの御質問でありました。三浦委員もこの点について非常な御心配の上の御質問でありますが、この点についても私から大臣に申し上げまして、関係各省と御連絡の上に、御質問にお答え申し上げたいと思います。
#117
○前田(種)委員 議事進行について。この重要な委員会の審議にあつて、今の答弁を聞いておりましても、確たる答弁ができない。労働大臣が参議院に出席しておられることはよくわかるのでありますが、労働関係の問題は労働省だけの問題でなくして、厚生、安本、大蔵、あるいは運輸、商工、それぞれ関連するものが多いのでありますから、大臣がいろいろ用事がありますならば、次官あるいは今申し上げましたような各省の局長の出席を求めて、今のような質問に対して、それぞれの衝に当る責任者から答弁のできるように、政府側の陣容を立ててもらうようにお願いいたします。
#118
○倉石委員長 前田君の御趣意は委員長において政府に十分徹底させるようにとりはからいます。関係閣僚の出席前に、政府委員で済まされる質疑を先に続けて行きたと思います。
#119
○三浦委員 それでは第二條第一号の問題でありますが、「役員、雇入、解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」あるいは「計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任」云々というように明細に規定しておるのであります。この條項において考えさせられることは、直接の監督的地位にあるものというのは、会社でいうならば、人事課長というような人事を取扱うものだけをさすのか、あるいはそのほかの監督的地位にある最高のものでなくして、実際の係の人まで包含されるのか。もう一つは、会社の幹部がこういう監督的地位に立つ以外の、たとえて申しますならば、技術方面とか、経営面とか、会計面というような方面の監督的地位に立つ人までさすのか、この点が実際の問題になると、相当問題になるだろと思うのであります。これに対しては先般労政局長の説明がありましたが、私には少し明瞭を欠くように考えられたのでありまして、この点をもう少し具体的に、直接の課長とか最高の責任者でなくして、それ以外の実際に事務を取扱う主任であるとか、係長というような範囲まで入るのか。それからもう一つは機密事項に関する問題で、先般の局長からの説明では、会社警備の任に当るところの守衛というような点まで考えられておるようでありますが、守衛というような者を、機密な事務に携わるような監督的地位にあるということに包含さすべきものかどうか。もし警備の任務にある守衛というような者まで含含するならば、さらに直接の事務に携わるところの主任、あるいはそのほかの事務に携わるところの者までに、相当廣範囲にこれが包含されるというようにも解釈されるのであります。この解釈を相当廣範囲に解釈すべきか、それとも、ほんとうの限定した最高責任者だけをさすべきものか、この点をもう少し明瞭に御説明願いたいと存じます。
#120
○賀來政府委員 三浦委員の御質問にお答え申し上げます。二條一号の定めております趣旨は、現行法において使用者の利益を代表する者ということを書きました結果、今日までの各組合の状況を見ますと、課長以上あるいは係長以上というふうな階級、あるいは職別によりまして非組合員と組合員の範囲を切つて参つた状況にあるのであります。ところであの精神といたしますところは、さような階級で切るのでなくして、職能によつて非組合員と組合員の範囲を決定すべきであるということでありますので、今度の法案におきましてはさような意味でこれを恥いたのであります。從いまして人事に参画いたします者、直接に使用者の機密の事務に参画する者については、課長、係長という切り方をするのではないのでありまして、その職能の内容によつてきめらるべきものでおるという考え方を持つておるのであります。守衛については特に警備の任にある守衛という形容詞をつけておるのであります。これは二條の一号のわけ方から参りますならば、「その他使用者の利益を代表する者」という意味から守衛が出て参つておるのであります。すなわち使用者の利益を、自己の職能上の権威をもつて、これを組合員あるいは労働者に対して強く押して行く職にあります者は、その職能の内容から見まして、組合員として、組合に対する責任と忠誠の義務と相反する立場になるのであります。具体的に申しますならば、單に倉庫の番をしておりますような守衛でありましたならば、あるいは火の用心をしてもらう、火気の取締りをする程度の守衛でありますならば、これはさようなものにはなりませんが、正門におりまして労働者が退場いたして参りますときに、その身体檢査をやつて行くというふうな警備の任にあります者は、当然使用者の利益を一つの権威をもつて労働者にインフオースする立場にある、かような意味で、これは守衛を例としてあげたようなわけであります。要するに具体的にどうなるかということについては、これは各業態なり、あるいは企業の大きさなりによつて、非常に違つて参るだろうと考えられますので、あの二條の規定については、なお詳細に書くべきでありますが、これは詳細に書くことが非常にむずかしいのであります。目下われわれの予期いたしております点は、中央労働委員会において、これらの業種別なり、あるいは業態別の基準の範囲をきめらるべきものと考えておる次第であります。
#121
○三浦委員 そうすると、その会社の幹部と称するような者でも、技術面とか、経営面とか、会計面とか、そういうような人事に直接関係のない幹部というものは、これから除外するという解釈になるのでし工うか。
#122
○賀來政府委員 お答えいたしますが、技術の面の課長にいたしましても、全然人事関係とは関係がない、單なる技術を指導しておるだけである、かような場合には、組合員となり得るという解釈は出来るのであります。しかしながら日本の現状においては、それらの課長で技術上の監督の任にあります者については、やはり人の点については関連を強く持つておりますし、課長が監督の立場で行動する場合においては、組合員の利益とはやはり相反する行動をやらなければならない。かような意味において、技術の面でありましても、あるいはその他の状況によりましても、やはりこれらの課長級は、当然非組合員にならなければならないという考え方であります。
#123
○三浦委員 ただいまの御説明から見ましても、この解釈においては法規を廣く解釈する場合と、あるいは嚴格に解釈する場合とにおいて、相当見解が違つて来るだろうと思うのであります。これに対しまして、私はもう少し詳しく、具体的に説明を求めたいと思うのでありますが、労働委員会の見解というふうになつたのでありますから、この程度にとどめますが、こういうような規定を嚴格に解するという場合には、一つの職場から労働組合に加入しない人が相当出るようにも考えるのであります。こういうような解釈について、ある方面からはこの規定が労働組合を弱化するものである、あるいは労働組合の分裂政策であるというような批判も出ておるようでありますが、これに対する当局の見解を御聞きしたいと思います。
#124
○賀來政府委員 お答えいたします。ただいまのような意見が方々にあるということは十分存じておりますし、また一面現状の労働組合においては、さような杞憂がないでもないのであります。しかしながら過去三箇年の事情を顧みてみますと、かくのごとく労働組合の非組合員の範囲を拡大することは、使用者側においても反対であるという声がある事実を、われわれは強く注視をしなければならないと考えるのであります。これは使用者側において、労働組合を自己の薬籠中のものにしよう、御用化しようという意図が、そこに現われておると見なければならないのであります。労働組合の自主性を明確ならしめる上においては、さような事実があります以上、それらの者を組合に入れることは禁止すべきだと考えるのであります。さらに過去の日本の労働組合の実情を見ますと、具体的な例をあげてもさしつかえないのでありますが、私が関係しました調停の事項の中で、前回の調停のときには組合の闘爭委員長であつた人が、次の調停のときには会社側の闘爭委員長と申しますか、代表になつておつたというような、およそ諸外國において労働組合が眞に労働者の組合であります状況下においては、考えられないような事実が、日本では現われておるのであります。さような意味において、今日の状況において、組合には一應りくつの立つ者がいなくなるために、弱まるということも考えられないこともありませんけれども、長い目で見ますならば、これに組合にとりましては、眞の労働者の組合になるという、ほんとうの強い組合になるゆえんであると考えておる次第であります。
#125
○三浦委員 次に第二号の経費の問題でありますが、「團体の運営のための経費」ということで、ここでは運営ということになつております。それで問題は、組合が結成されるまでの、組合結成に関する費用というものの支出については、これは除かれるものであるか、それとも結成費用もこの中に包含するものと解釈するものであるか、その点の見解をお伺いしたい。
#126
○賀來政府委員 ここの第二條に定めてありますものは、組合ができまして、その経費といたしまして使用者側からもらつておるというふうな、すなわち組合活動としての、内外の活動も含んでおるわけであります。しかしながらここには明確に書いてありませんが、組合ができます前において、やはり使用者からその組合ができる費用としてもらうことは、これは本号におきまするいわゆる運営に関する費用をもらつたものと考えなければならぬと思うのであります。
#127
○三浦委員 ただいまの説明では、労働組合の結成までのいろいろな準備の費用も、やはり入るというような見解でありますが、しかしここに明確に運営というように書いてあると、結成までのこと、そこまで廣く解釈するということについては相当疑義があるのではなかろうかと思うのであります。その点をもう少しそういうような疑惑のないように、結成の費用というような一項を入れる方がよいのではないか。これからいろいろ組合のこういう重要な経費の問題について、必ずこの項は議論になり、あるいは紛爭の種になるような條項だと考えるのでありましてこれを明確に規定しなかつた理由を、もう一應御説明願いたいと思います。
#128
○賀來政府委員 ごもつともな御意見でありまして、日本の労働組合の三箇年の経驗によりますと、法文の文章にとらわれまして、何も書いてないからよかろうというふうなことになりましたことが、今日労働組合運動を弱いものにした一つの原因だと考えておるのであります。しかしながら現行法もそうでありまするが、改正法案におきましても、法案の立て方の建前が、もう当然のこと、あるいは常識上すでにわかつておるようなことは書かないというふうな建前をとつておりますのと、もう一つは、この法案の七條の、不当労働行為の規定におきまする内容と合せて解釈していただきますならば、條理上当然さような結果が出るものと考えておる次第であります。
#129
○三浦委員 第七條の不当労働行為の中の第三号のところには「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、」とあつて、ここには結成するところの不当労働行為が規制されておるのでありますが、そういうように一方においては結成という文字を使つて、ここに結成という文字がないというようなことについては、局長さんの言うように、必ずしも明確だとは私は考えられないのでありますが、その点はこの程度で打切ります。もう一つは運営と認められないような経費に対しまして、但書にいろいろ書いてありますが、但書に書いた以外のものは認めないというように、嚴格に解釈すべきものかどうか。
#130
○賀來政府委員 御意見の通りに、但書以外はいかぬということに、嚴格に解釈をいたすべきものと考えております。
#131
○三浦委員 そうすると、労働組合の政治資金とでもいうような、政治運動なりあるいは社会運動というようなものに対する幾分の費用というものは、これは一体この運営の費用ということになるのかどうか、そういうような点のご見解はどうか。
#132
○賀來政府委員 政治資金というものは、これを使用者側から組合に寄付をするというふうなものがあるかもしれませんが、われわれといたしましては、さようなものも運営の資金というふうには考えていないのであります。
#133
○三浦委員 そうすると、政治資金を組合に使用者が寄付するということは、さしつかえないのですか。
#134
○賀來政府委員 お答えいたしますが、それだけもののわかつた使用者であれば、さしつかえないと思います。
#135
○三浦委員 そうすると、先ほどの、但書以外は認めないというように嚴格に解釈すべきだという御答弁と、それから今の、幾分の政治活動資金というものを、使用者が十分に理解して、そうして組合に寄付するならば、それはさしつかえないという御答弁との間に、矛盾があるように思うのでありますが、その点はどうでありますか。
#136
○賀來政府委員 御質問の趣旨がよくわからないで、失礼な答弁をいたしましたが、組合の政治活動の資金としてこれを寄付するということになりますれば、これは運営の資金に入りますから、御承知願いたいと思います。
#137
○三浦委員 それは大きく見れば、そういうことになる。それならば、これは私疑問に思うのでありますが、たとえば、ごく小さな簡單な費用であるけれども、こういう事実があるかないかは、実際問題としてはいろいろ議論があるかもしれませんが、衆議院の外あたりに、「労働法規改惡反対」というようなビラやポスターが張つてある。ああいうようなビラやポスターの費用、あるいはああいう労務者の費用というものを、もしかりに使用者が理解があつて出したというようなことは、ここに包含しますかどうですか。
#138
○賀來政府委員 これは組合活動として組合がやつておるものでありますから、これに使用者側が資金を寄付することは、これは運営の資金に入ると考えます。
#139
○三浦委員 実はそういう点も疑問があるから、念のために、愚問のようでありますが、確かめたのであります。この問題に対して一番問題になつているのは專從者の給與の問題で、今非常に問題になつているのでありますが、現行法規のもとにおいても、專從者の給與は認めないということに解釈さるべきものであろうと思うのであります。現実は一つの慣習とでもいいますか、それが事実上認められて今日まで來ているのでありますが、この專從者の給與を今度は認めないというような問題について、これまた一部の方面からは、既得権の剥奪であるとか、あるいは今月の労働者の状況においては、最低賃金制も確立しておらないとか、あるいは労働者が非常な生活の窮迫状態のもとにあり、労働組合費の負担すら十分できない場合において、こういう経費を負担させるということはけしからぬとか、あるいは法律の解釈上憲法違反だというような議論まで起きているように聞くのであります、そういうような点に対する一應の見解もお願いしたいと思います。
#140
○賀來政府委員 お答えいたします。労働組合の專從者の費用を使用者が出すということにつきましては、ただいま御意見にもありました通りに、現行法におきましても、当初からその解釈は持つておつたのであります。ただ組合は揺籃期でありましたし、この育成を急ぐという建前におきまして、解釈上これは持つべきではないけれども、過渡的に一應認めるという建前をとつて來たのが沿革であります。しかるに今日におきましては、世界的な労働運動界に関連を持つて來ようとするこの時期にあたりまして、組合の指導者が、指導者の生活費を相手方からもらつておるというがごときは、まつたくはずべきことであると考えられるのであります。先般アメリカの労働省のギブソン次官補が見えられまして、日本の労働組合運動を視察して帰られまして、アメリカで新聞記者團と会見をいたしました一問一答を見ますると、ギブソン次官補は、日本の労働組合運動で非常に奇異に感じたことが二、三ある。そのうちの一つは、労働組合のオフィサーが相手方の資本家、あるいは使用者から金をもらつておるということだと答えております。それに対しまして、新聞記者は、それは組合のトップ・オフィサーであるのか、すなわち委員長もやはり生活費を相手方からもらつておるのかということを聞いております。これに対して、ギブソン次官補はそうだと答えましたところが、大笑いになつた。こういう通信が入つおるのであります。おそらくこの六月八日から開かれまするILO、いわゆる國際労働会議に出席いたしまして、そうしてさような事実がまだ日本の労働組合にあるのかということを聞かれましたときに、まさかあれは既得権である、かちとつたものであるという答弁はできないだろうと考えるのであります。もう一つの反対の理由は、現在最低賃金さえもらつていないときに、この專從者の費用を出せないじやないか、こういう意見が多いのであります。いかにももつともでありますが、現在炭鉱系統の組合におきましては、組合費を月額百五十円ないし二百円程度を出しておりまするが、全体として平均は五十何円にすぎないのであります。今賃金の総平均と申しまするのが、すでに六千円を越え、七千円を越えようとする際に、組合費の負担額というものはわずか五十円、この組合費は一人にとりましては、わずかとは言えないかもしれませんが、一應統計数字上から申しますと、これは率は非常に低いのであります。さような意味におきまして、労働者の最低生活が保障されるべきものであるとは申しますが、労働組合自身が使用者から支配されるような形、あるいは自主性を失つておるような形におきまして、組合が運営されることは、これは組合の名誉のためにとるべきではないと考えるのであります。もちろん今日までのような状況におきましては、組合が発達いたしますためには、相当の人数の專從者が必要であつたことは認めます。たとえば組合は、教育活動に力を入れなければならなかつた、かような意味で多数の專從者が必要であつたということは認めまするが、しかし世界各国の例を見ましても、またわが國における労働組合運動の戰前の歴史から見ましても、少し多過ぎるのであります。またあるいは各組合が、現在の日本の労働組合の現状におきましては、組合利己主義と申しますか、企業体別あるいは工場別に組合を持つておるのでありまして、おのおのがそれぞれ書記局を持つたり、あるいは專從者を持つたりいたしておりますので、小さい組合までがみすからの費用で持たなければならぬという意味におきまして、非常に負担の多い專從者をかかえているという実情にあるのであります。從いまして組合の本義から考えまして、特に世界的に進出しようとする際において、日本労働者の名誉のために、苦しいでありましようけれども、このがんとなつておりますものは切り捨てまして、そうしてこれに相対し得るような方法を当然考えなければならない、かようにわれわれは考えているのであります。
#141
○三浦委員 なお私は政治活動資金の問題で、團体の運営に関する質問もあるのでありますが、労働組合運動と同時に、労働組合がこの政治活動に対してどの程度の関心を持つべきものか、あるいは全然関心を持たない方がよろしいのか、それとも政治活動に対しまして相当関心を持つべきものか、また政治活動に対して関心を持つならば、どの程度の関心を持つことが健全なる労働組合運動発達の上においてよろしいと考えるのか、そういうような点に対する見解を聞きたいと思います。
#142
○賀來政府委員 お答えいたしますが、どの程度ということは非常にむずかしいのであります。われわれの考え方といたしましては、労働組合というものは、あくまでも労働者の社会的、経済的地位の向上をはかるのを目的といたしているのでありまして、決して政党ではないのであります。從いまして、労働組合はわれわれの考え方といたしましては、これは今日の現状においてもなおしかりでありますが、政治に対しては、非常に注意を拂うべきであり、また政治については愼重に考えて行動しなければならぬ、また政治についての活動をするということも、さしつかえないと考えておりますが、政党になつてはならないということと、もう一つは一部政党の人々に労働組合運動が支配されてはならない、かような考え方を持つているものであります。
#143
○篠田委員 ただいまの三浦委員の質問に関連して質問したいのでありますが、今日労働者の生活というものが政治とつながつているというときに、労働組合が政治活動をしてはいけないということは、実際問題として成立たない場合が多いのじやないか、こう思う。また労働組合の政治活動というものが、ことごとく労働組合運動であるということも言えると思う。そのとき、先ほど三浦議員の質問に対して、組合活動に使う金を寄付することはいけないけれども政治活動に使う金ならばさしつかえない、そういう政府委員の答弁でありましたが、私の見解をもつてすれば、組合の政治活動は即組合運動である。また政治に組合員の生活というものが直結、あるいは非常な密接な関係を持つているという意味において、その区別をどこでするかということは非常に困難な問題である。この区別というものは、あえて政府委員にお尋ねして、われわれの考えの基準にしようとは思わないけれども、政府は一体どういう考え方でその区別をしようとしているか、それをお聞きしたいと思うのであります。政治に使う金ならば、資本家が寄付してもいいが、組合運動に使う金ならば寄付してはいけないということの限界は、きわめて漠として成立たないと私は考えます。
#144
○賀來政府委員 お答えいたしますが、先ほど私が政治資金を寄付することはそう惡くもないというような意味のことを申し上げましたが、あれは組合長が今度立候補して出て行こうという場合に、その政治資金として淨財を寄付されようというようなものであるかと思いまして、答えたのでありますが、組合全体としての組合活動といたしまして、政治活動をやる場合、これに対しましてその資金に使用者側が寄付をするということは、これはいわゆる運営に要しまする経費を寄付することになるのだというふうに申し上げた次第であります。
#145
○三浦委員 その次に第三條でありますが、これはわかつたような問題でありますけれども、労働者の定義であります。よく会社の顧問とか、相談役というようなものが大きな会社にはありますし、また相当な收入を得て生活しておる者もあるのでありますが、そういうようなものは一体包含するのかしないのか。
#146
○賀來政府委員 賃金をもらつていないものに入つてないのでありますが、労働者の定義といたしましてここに掲げてあるものは、労働の対價として賃金をもらつて生活しておる者は一應含みます。ただこれが組合員か、非組合員かということになると、また別の観点から考えなければならぬのであります。
#147
○三浦委員 これは何も收入を得ていなければ問題はないのでありますが、会社の顧問とか相談役というような名義で、会社から一定の収入を得て生活しておる者も相当あると思うのであります。そういう人をこれに包含するかというのであります。
#148
○賀來政府委員 ここに書いてありますことは、労働の対價として賃金をもらい、それで生活しておる者というふうな考えであります。
#149
○三浦委員 入つてないわけですね。
#150
○賀來政府委員 そうです。
#151
○三浦委員 それから第五條に、労働組合は労働委員会に証拠を提出しさえすればよろしいということになつております。そこでこの証拠を提出して、ただちに組合法の保護を受けるのか。それからもう一つ、立証という文句もあるのでありますが、この証拠を提出して、労働委員会においては、その証拠によつてこれを労働組合として認むべきものであるというふうに、証拠を審査して、そうして認定したときから効力を生ずるのか。この点において少し疑問があるようであります。証拠を提出してから、労働委員会においてその証拠をいろいろ審査する。そして間違いないという立証をするまでには、場合によつては相当の期間もあるだろうと思いますが、その期間は一体どういうことになるのか、その点の御説明を願います。
#152
○賀來政府委員 お答えいたしますが、労働委員会に対して証拠を提出してそれに対して立証するという書き方をいたしております。これは取扱いとしては、われわれの考えておりますことは――いずれ中労委の規則としてこれが定められることになると思つておりますが、大体の考え方といたしましては、組合規約あるいは協約を提出する、ただちに審査をしてもらいまして、それによつて救済の保護を受ける資格が生じて來るものと考えるのであります。ただ労働委員会において規約、協約を見ただけではわからないときには、さらに実態審査というものをやるだろうと考えております。今度の法案におきましては、場合によつては、労働委員会のいわゆる公益委員は、專任に近い勤務になる可能性もありますから、さように日数をとることはなかろう。かように考えております。
#153
○三浦委員 これは実際の問題においてはそう日数もとらないかもしれませんが、この法文の解釈上、実際に証拠を提出したその日から保護を受けるのか。今何時何分に出したそのときからか。それとも提出して労働委員会が受理して間違いないという認定をしたときから効力を生ずるのか。その間の効力発生の時期なのであります。
#154
○賀來政府委員 お答えいたします。後者でありまして、認定ができてからであります。
#155
○三浦委員 それから第五條の八号であります。同盟罷業においては直接無記名投票ということになつて、これははつきりいたしておりますが、同盟罷業以外の――他の法規においてはその他の爭議行為というようなことが書かれておりますが、同盟罷業以外のその他の爭議行為に対してはこういう無記名投票によらなくともできるのかどうか。
#156
○賀來政府委員 お答えいたします。罷業の種類にはいろいろ考え得るわけであります。現在までの状況では同盟罷業、すなわちストライキ、あるいは業務管理と申しますか、上の重役の言うことを聞かぬということもやつております。それからサボタージュ、あるいはこれは違法といわれております生産管理というような形で、罷業を行つておるのであります。ところでこの生産管理というような問題は、これはすでに政府の態度がきまつておるわけであります。あとはサボタージュの問題であります。これについてはなおいろいろ問題もありますが、事務管理、これらの程度のものにつきましては、これはさして重要と考えておりません。ただ罷業をやるということにつきましては、これは使用者にとつても重大な問題でありますが、組合員にとりましても賃金をもらえないのであります、組合員自身にとつても非常に重要な問題であります。從つてこれらの罷業については、特に直接無記名投票によりましてそのやるかやらないかを決定する。かような考え方で、同盟罷業に限つて書いてあるのであります。
#157
○三浦委員 そうすると同盟罷業以外のことはこういうような直接無記名投票によらなくとも、幹部の指令によつてできる。こういうふうに解釈するのでありますか。
#158
○賀來政府委員 御意見の通りであります。
#159
○三浦委員 それから第六條の規定を見ますと、労働協約の締結、その他の事項につき交渉する権限だけを規定しておるのでありますが、これは労働協約を締結する交渉だけでなく、さらに一歩進んで締結する権限というものは一体どうなるのか。
#160
○賀來政府委員 ここに書いてあります交渉の意味の中には、締結の権別は直接的には含んでおりません。
#161
○三浦委員 含んでおらないということであれば、締結その他の事項に関して交渉する権限だけで、それを締結する場合には、新しく別の権限を附興したものが締結するというようになるのでありますか。
#162
○賀來政府委員 お答えいたします。おそらくこの労働協約の締結ということにつきましては、これは労働組合といたしましては、規約の決定と並びまして、労働條件を決定するのでありますから、非常に重大な條項であります。從いまして組合規約によりましても、さような場合の締結権をだれにどうするか、あるいはこれは、團体交渉をやる場合には、いわゆる全権大使としての外交交渉であるが、いよいよ條約を締結するときにへ、帰つて参りまして、國会の承認を求める、これと同じような規約の取扱いになつておるものが多い関係かと思いますので、締結をするための場合には、別にその権限を持つた代表者が出るものと考えております。
#163
○三浦委員 それから委任を受けた者でありますが、委任という中には、委仕を受けた者からさらに委任する復代理というような権限まで認めるのか認めないのか。
#164
○賀來政府委員 それはわれわれの解釈では、認められると解釈いたしております。
#165
○三浦委員 復代理の権限を認めるということになると、どの程度まで認めるか。
#166
○賀來政府委員 その点については、私よりも詳しい者がおりますので、それから説明させたいと思います
#167
○石黒説明員 ただいまの代理の点について申し上げますが労働組合で委任をする場合に特に復代理を禁ずる、だれだれ個人でなければいけないという制限がない限り、民法の委任の規定に從いまして、復代理は認められるのであります。
#168
○三浦委員 私は復代理というものは、特に復代理を認めるということを明記した場合でなければ、認められないと思いますが、あなたの御見解では、そういう場合にそういうものを認めるというが、私の考えと少し違うのですが、どうですか。
#169
○石黒説明員 代理の点につきましては、民法の百四條の委任と同じように考えております。
#170
○三浦委員 それから第十條の解散の事由に、破産を特に除外した理由を御説明願いたいと思います。
#171
○賀來政府委員 お答えいたしますが、現行法には破産を理由とするものがあつたわけであります。またわれわれが発表いたしました試案におきましても、やはり破産を理由とした解散というものがあつたわけであります。これらに対しましては、産別系の労働組合は特に強く反対をいたしておるのであります。その事情を聞きますと、労働組合が破産した場合に、破産の処分を受けるのに、同時に組合までも解数するということはいけないというような理論を持つて來ておつたのであります。われわれも労働組合が破産と同時に解散するということは、妥当でないと考えましたので、破産はありましても、組合というものは残つて行くという考え方から、破産を削つたわけであります。
#172
○三浦委員 それから労働組合の登記です。これは登記は任意的なもので、登記しなくてもさしつかえないようにも解釈されるのでありますが、同時に登記された労働組合は所得税及び法人税を課さないという免税の規定が第十三條にあります。そうすると、この未登記の労働組合に対しましては、税金を免除される規定が適用されないのですが、その点において少し矛盾があるように考えられるのですがどうでしようか。つまり証拠を提出すれば、当然労働組合として権利を認められ、あるいは労働法規の保護を受けておるにかかわらず、その免税の点において除外されておるということは、矛盾があるように思うのでありますが、その点に対する御見解を承りたい。
#173
○平賀説明員 課税の対象になるのは結局自然人か法人かということになりますので、法人でない労働組合になりますと、これは権利能力なき社團ということになると思いますが、この権利能力なき社團に対しましては、所得税、法人税というものはかからないのであります。この関係で法人のみについて免税の規定が入つたわけでございます。
#174
○三浦委員 そうしますと、未登記の場合においては、当然税金がかからないというのでありますか。
#175
○平賀説明員 十一條によりますと、登記をすることによつて法人になるわけでございます。登記をしなければ法人ではないわけであります。
#176
○三浦委員 だから税金がかからないというのですか。
#177
○平賀説明員 さようでございます。
#178
○三浦委員 それは登記をしないから、法人格がないということは当然ですが、そうすると、ただ法人でない労働組合が存続して、労働組合がたくさんの寄付を受ける、あるいは收入を得るというような場合におきましては、別な個人の資格か何かの資格において免税されるということは、何だかおかしいような氣もするのですが、その点大丈夫ですか。
#179
○平賀説明員 税の点につきまして、私は專門ではございませんので、ちよつと御答弁いたしかねます。
#180
○三浦委員 これは私若干疑義を持つのでありまして、もし何ならその点をお調べ願いたいと思います。
 それから第十五條の、労働協約の期間が経過すれば、当然これは効力がなくなるということになるのでありましようが、そうすると、労働協約がなくなつて結局無協約の状態になるという場合において、ここに労資の関係が相当混乱を来すようになる。おるいはこの問題について一部の意見では、これが資本家に利用されるとか、あるいは資本家のために、惡用されるというような意見もないではないのですが、こういう無協約の状態に対する取扱いをどうするか、念のために伺います。
#181
○賀來政府委員 ただいまお話のありましたように、労働協約というものは、労資の関係を平和的に、秩序ある状態に維持する基本でありますとともに、労働組合にとりましても、労働條件を明確に確定する最も重要なる條約であります。從つてこれが無協約状態になるということは、最も好ましくない伏態であります。しかし御意見のありましたように、今度のような法案にいたしますと、あるいは無協約状態というものが出て來はしないかというおそれはあると考えておりますが、從來のように、一方的に無制限に労働協約が続いて行くことから出ます弊害より、まだ無協約の方が――これは労資双方が必ずやその不便を感じまして、すみやかに適当な労働協約、特にその客観的な事情に適合したところの、労働協約をつくるという結果になることを期待いたしております。不当に一方的に労働協約が続いて行くより、この方がよいと考えておる次第であります。
#182
○三浦委員 無協約の状態に置くより、一日も早く労働協約が締結されるということが、望ましいことは当然でありますが、いろいろ重要な事業等におきまして、容易に労働協約が締結されない。相当長い期間無協約、あるいはいろいろな爭議の状況にある場合も考えられるのであります。こういう際において相当期間、労資双方がやつても、あるいはいろいろ労働委員会等において調停あつせんしても、どうしても――これは架空の説かもしれませんが、どうしても労働協約が締結されない。爭議が解決されないというような場合があつたときには、どういう処置をなさるでしようか。
#183
○賀來政府委員 ただいまご質問のように、極端にずつと労働協約ができないで、それがために紛議が続くというようなことがありましては、われわれといたしましても非常に遺憾に存ずる次第であります。しかし從來三箇年間の経驗からいたしましても、これらの紛議というものは、長く続いた例はあまりないのであります。特に労働協約につきましては、適当なあつせん者が出まして、合理的なあつせんを出しますと、大体片づくという状態でありますし、無協約状態は労資双方にとつて不利益でありますので、必ずこれは妥結されるものと思いまするが、特にわれわれといたしましては、今後はさような問題で、紛議が長続きをするということのないために、労働委員会の機能強化によりまして、この活動によつて、平和的にすみやかに解決することを期待いたしておる次第であります。
#184
○三浦委員 それから第二十四條の規定であります。これも説明なされたのでありますが、念のためにお聞きしたいと思います。この二十四條の労働委員会の公益委員のみが参與するということでありますが、特に公益委員だけによつて決定するというような、この権限を與えたことに対する、もう少し明瞭な御答弁を願いたいと思います。
#185
○賀來政府委員 現行労働組合法におきましては、労資、中立の三者構成によつて、これらの労働委員会の活動をやつて行くのであるという建前をとつているのであります。これは各國におきまする例から見ましても、最も進歩的といわれておる制度であつたのでありますが、運用の結果から見ますと、必ずしもさような期待に沿うような結果を得ていないのであります。事実使用者側は全然使用者の利益を主張し、労働者側は労働者の利益を百パーセントに主張いたしておりまして、結局採決ということになりますれば、公益委員のみ、第三者委員のみがこれを採決するという状態になりまして、いたずらにこの審査の事項に関する日数を延ばすだけでありますとともに、過去三箇年間の実績は、労働者側の委員は非常に出席率もよく、また大いに議論も闘わすというような関係からいたしまして、その結果につきましては、お手元に差上げましたように、数百件という十一條違反の件数が裁判所に送置されておりますにもかかわりませず、有罪となりましたものは、きわめて少数の事件に終つておるという状況であります。いたずらに十一條違反事件を長引かせ、それがために被害をこうむりますのは労働者側であるというような経驗を見ましたのと、また世界各国の立法例から見まして、一應研究の過程におきましては、労働裁判所に近いような形も考えたのでありますが、日本の現状におきましては、今度の法案の程度が最も妥当であると考えたのであります。試案におきましては、御承知のように、公益委員のみがこの裁定に当るということにいたしておりましたが、この点につきましては、労働者側、使用者側及び学識経験者、その三者とも、強い希望がありまして、公益委員のみが審査に当るということには反対ではないが――一部反対したのもありますが、大体において反対ではないが、弁護士あるいは檢事の立場で、労資の直接利害関係者がこの審問に参加するようにしてもらいたいという意見が、公聽会で非常に強かつたので、その意見を取入れまして、法案のような形になつた次第であります。
#186
○三浦委員 一應この程度で私の質問を打切ります。
#187
○大橋委員 私は労働大臣が御出席になりましたので、この機会に、この法案の提出を決意せられました事情等につきまして、労働大臣のお考えを承りたいと存ずるのであります。
 昭和二十年の暮れ、戰塵のいまだ治まりませんときに、かの新憲法に先がけまして、この現行の労働組合法が制定せられました当時、過去五箇年の戰爭中における軍の弾圧のもとに苦しんでおりましたところのわが國の労働者の諸君が、そしてまたその間、かの産業報國運動によりまするところの官製團体の統制になれておりました労働者諸君が、はたしてこの進歩せる組合法の運用を十分になすことができるかどうかということについて、私どもは注意深く爾來観察を続けて参つたのであります。また事業主といたしましても、戰時中統制の法規になれまして――ことに各種の労働條件なるものは、すべて総動員法によつて統制を受けておりました。その統制になれておつた事業主が、彼ら自身の手によつて新しく團結権と交渉権とを認められましたところの、この労働者の代表者たちと、團体交渉によつて、はたして適正な労働條件を定めることができるかどうかということについても、また注意深く観察を続けて参つたのであります。爾来三年間の経驗を観みますると、その間二、三のおもしろからざる事象の発生したことは、やむを得ないのでありまするが、しかしながら大体において、わが國の使用者も、また労働者も、そしてまた一般の国民も、この進歩した労働組合法の施行について、その能力があるということを示して参つたことは、まことに慶賀すべきことであると存するのであります。先般來会議におきまして、この法案が審議せられました際にも、労働大臣は、その三年の実績がきわめて輝かしきものがあるという言葉によりまして、この過去の実績を賞讃しておられましたが、この点は私もまた同感に存ずる次第なのであります。このたびこの現行法に対しまして、新しく改正の法律案が提案せられるに至つたのでありまするが、立法以来、今日まで、三年間の体驗に基きまして、今この法律案を改正する機会がここに來たわけであります。この労働組合法案の改正につきまして、昨年以來各方面において、その必要性が叫ばれておつたのでありまするけれども、その改正案の叫ばれる動機となりましたものは、二・一ストであり、また昨年のゼネストでありまして、國家の重要なる機能と、わが経済の重要なる動脈が、一部の労働指導者の政治的意図によつて危殆に瀕しましたときにおきまして、これに対する政府の労働法上の対策というものは、まつたく皆無でありまして、これを回避するための努力というものは、ただ関係方面の活動にまつほかはなかつたというこの事実が、一般の市民また農民等を初め、全國民の注意を喚起いたまして、かかる状況におきましては、國の秩序も、再建もおぼつかない。一部指導者による、かかる独裁的なるところの企図から、國民の利益を守り、大多数の勤労者の幸福を擁護するため、かかる事態の改善をはかろうという、こういう希望が強く主張せられることに至つたと思うのでございます。かかる國民一致の希望が、このたびの労働組合法案の改正の根本的理由をなすものでないかと、ひそかに想像をいたしておるのでございまするが、この点に関しての政府の御所見を明確に承りたいと存ずるのでございます。
#188
○鈴木國務大臣 大橋委員の御質問にお答えいたします。提案の理由の説明のときにも繰返して申し上げましたように、この改正の根本的の立場は、一に民主的な自由な労働者諸君のための組合の、物、量両面にわたつて発展をごいねがい、そうしてそういう組合の活動によつて、日本の労働問題解決の基盤として、最終的には日本経済建設のレールを敷きたいというのが、考えの根本であつたことは、しばしば繰返して御説明も申し上げ、お答えも申し上げた通りであります。ただいま一部の行き過ぎの独裁的の組合指導というものがあつた一、二の例を提示されておられましたが、そういう場合における、独裁的な組合指導を排除するということが、主要な目的であつたかというのが、御質問の中心であつたように思います。主要な目的は、ただいまも申し上げましたように、ごく全体的率直な立場に立つて、民主的な、自由な建設的な組合を強化助長するというのが中心的な考え方でありまして、その半面、この三年間のそういつた事実に対して学びとつた経驗から、適宜な組合運動健全化の方式をも盛り込む必要があるということも、あわせて考えられたと思うのであります。そういう線に沿いまして、組合法及びその他関係法の改訂は企図されたのでありますが、繰返して申しますが根本的な点は、あくまでも自由な、建設的な民主的な組合の育成と、その活動をひたすらこいねがうという点にあつたことに、間違いはないのであります。
#189
○大橋委員 昨年労働組合法に対しまする改正論の起りました当時におきまして、一部指導者たちの独裁的傾向から、この労働組合を守るための対策として考えられておりましたところは、かかる事態に対しまして、直接に改善の手を下そうとするところの方法であつたのでございます。すわちその一つは公務員法の改正によりまして、公務員の爭議権の否認を行つた。これはまさにかかる事態に対する一つの対策であつたと思うのであります。労働組合法及び労働関係調整法の改正といたしまして、この線に沿うて進みまするならば、それはすなわち公益事業の爭議の制限を強化するということも一つの方法でございましよう。また一般爭議の制限をいたしまして、これに対して冷却期間その他の方法によつて、自由なる爭議の発生を予防するというがごとき方法を講ずることも、またかかる線に沿うた一つの方法であると思うのであります。また労働組合に対しまして、政治的活動を制限するというような方法をかりに講じ得るといたしまするならば、これもまた一つの方法であると思うのでございます。かくのごとく、この事情に対する解決の一つの対策といたしまして、労働組合なり、あるいは労働者の團結権その他の権利に対して、これを制限することの反動的な方法によつて、この事題の改善をはかるということも考えられておつたのであります。ことに公務員法の改正に伴いまして示されたことは、かかる公務員法の改正を第一のものとして、これに続いて起つて來るところは、今申し上げましたような種々の反動的な政策ではないかというふうな感じを、一般の國民にも抱かしてあつたのでございます。そうしてかかる方法に対しましては、一部の指導者からは、当然猛烈なる反対運動が起つたことは申すまでもございません。そしてその人々から、その反対の議論が、労組の関係者各方面に流されておつたということも、またわれわれのよく知るところなのでございます。昨年秋におきましては、時の労働大臣すら、この反対運動によつて、労働組合法の改惡に対しては、反対であると述べたことさえあつたのでございます。かくのごとくに、一部指導者によつて、誤られたる事態を改善せんがためにするところの反動的な方法による方策、これに対しては、その道程は別といたしまして、結果的におきまして、労働界の各方面より反対が起つておつたということを、われわれは認めなければならないのでございます。しかしながら私どもといたしましては、かかる事態の改善の対策として、ただいまあげましたるところの反動的なる方法、すなわち爭議権の否認であるとか、あるいは團結権の制限であるとか、あるいはまた爭議権の制限であるとか、かくのごとき方法以外に、他の一つの方法をまた考え得る次第なのでございます。その方法は何であるかと申しまするならば、組合員の自主的な力を育成いたしまして、かれらの民主的なる組合の運営を助長し、このことによつて、組合外からの人によつて、組合が支配されることを排除するという方策であると思うのでございます。この方策は、先に述べました方策が、反動的なる方策であるのに対して、これはすなわち民主的なる方法として、労働者自身の力によつて、組合を守つて行こうという方策だと思うのでございます。すなわち一面におきまして、反動的な事業主が、種々な方法を講じて組合の組織や運営を支配し、これに介入することを防遏いたしますと同様に、政党その他の外部の努力が、一層これをはつきり申すならば、共産党の諸君の干渉またに介入が組合に及ぶことを排除いたしまして、組合を守つて行こうという方策であるのであります。
    〔発言する者あり〕
#190
○倉石委員長 静粛に願います。
#191
○大橋委員 いわば共産党の不当の行為から組合を救い出し、それも組合自身の力によつて行わせようという方策であると思うのでございます。この方策は組合運動行き過ぎの是正の方法といたしまして、組合運動自体をただちに取締り、または制限しようとするところの反動的な方法ではなくして、組合自身の力を育て、組合民主主義の徹底化によつて、同じ目的を達しようとするところの進歩的な方法であると考えられるのでございます。そうしてこのことは、反動的なる組合法改惡と、まさに正反対なるところの、民主的な進的歩な方法であると思うのでございます。われわれは組合の行き過ぎは、かかる方法によつてのみ、初めて眞に是正し得るものと信ずるものであります。すなわちわれわれは、組合運動の是正策といたしましては、反動的な彈圧によるところの行政と、進歩的な組合民主化の徹底によるところの、そういう二つの方法を考えることができると思うのでございます。しかしながら昨年の春以來、世間一般に労働組合法の改正の内容として考えられておつたところの方法は、いかなる方法であるかと申しますと、この反動的な方法によつて、これを措置しようという対策ではなかつたかと思うのでございます。しかしこのあとの民主的なる方法もまたあり得るわけでありますし、また民主主義の角度から見て、この方法の方がよりすぐれた方法であると言い得ると思うのでございます。労働組合の十六原則は、まさにかかる線を示しているものといわなければならぬと思うのでございますが、この点についての労働大臣のお考えを承りたいと存ずるのでございます。
#192
○鈴木國務大臣 お答えいたします。労働者の爭議権、團結権というものを制限するような、彈圧的な方法のもとに、労働関係法の改正をはかるべきではないという考え方自体につきましては、いずれの方面といえども――私も同様でありますが、反対の余地はないと思います。最終案として提出されているこの法案は、そういつた線に沿つて、妥当なところにおちついたと私たちは考えておるのであります。もう一つ、共産党その他政党の直接的な支配、独裁の中から、組合を守る云々という御質問、あえて共産党とは申しませんが、組合自体が特殊な政党に牛耳られるということは間違いなのでありまして、私たちはそういつた点につきましても、根本的の考え方として、組合は組合として、常に自由な進歩的な立場にあるべきだという考え方を持つておるのであります。同時に政治的、破壊的の圧力が加わるという面に対しましては、あえて共産党だけをさすのではなく、いずれの政党に対しましても、組合のその独自性という立場から、これを擁護すべく、また守つて行くべく法的、行政的の措置は行わるべきであると思うのでありまして、この線に沿つて本法案は、最終的に案が決定されたものと考えている次第でございます。
#193
○大橋委員 労働組合法の改正は、昨年の夏以来熾烈な反対が、特に左翼の方面から叫ばれたのでございます。そうしてそれは法律の改正をもつて組合に対する反動的な彈圧であると目しまして、これに反対しようとするものであつたのでございます。反動的彈圧に対しましては、われわれもまた反対するものであります。なんとなれば、それは進歩に逆行するものでありますがゆえに。もとより國家の再建を阻害いたしますような組合行動は、是認することはできません。しかしながらこれが是正に対しましては、できるだけ進歩的な原理に近ずくという方向において、これが対策を考えるべきであると思うのでございます。かかる意味におきまして、組合行き過ぎ是正の方法といたしまして、組合民主主義の徹底化をはかろうとする方法は、一應正しい方法であるということが言い得るのであつて、この限りにおきましては、共産党の諸君も同感であろうと思うのであります。そうしてかの反動的な彈圧策は、進歩的な方法が無効であるということが明白となつたあかつきにおいて、初めてさようなドラスティックな方法によるべきである。もし進歩的な方法によつて事態を解決し得るとすれば、その程度に改正はとどむべきである。労働大臣は先般の本会議の説明におきまして、法律の改正は漸進的に行きたい。これがこのたびの改正の一つの要点である。かような説明をなされたのでございますが、漸進的というのは、まず組合の民主化を行う。そうしてそれによつて所期の効果が十分にあがるかどうかということを見きわめて、もし幸いにして所期の効果をこれによつて十分にあげることができたといたしますならば、次の方策は考えない。こういう意味において私は理解いたしたのでございますが、まず初めからプログラムを立てておいて、このたびはこの程度の民主的な方法によるところの組合法の改正をやる。そしてその次には、もつと反動的な改正をやる。かような意味において労働大臣は漸進的という言葉をお使いになつたのでありますか。そうではなくて、むしろ一つのこの方法こそ、最善なる方法であるがゆえに、この方法によつて改正を行う。おそらくはこれによつて十分な目的を達し得ると信ずるがゆえに、この方法を行うならば、他の方法は行う必要がないであろうという意味において、漸進的という言葉を用いられたのじやないか。こういうふうに了解いたしておつたのでございますが、この点について明確なる御答弁を伺いたいと思うのであります。すなわち第一には民主的なる方法、そうしてその次には漸進的な方法として彈圧を行う。こういう意味ではなくして、民主的なる方法によつて十分なる成績をあげ得る。そうしてこれが効果をあげ得るならば、次の方法は行わないという意味において、漸進的という言葉をお使いになつたと私は理解いたしたのであります。その点についての明確なる御答弁をお願いいたします。
#194
○山崎(岩)政府委員 大橋委員にお答え申し上げます。大臣はただいま参議院の本会議が始まりまして、大臣に対するところの質問でございますので、やむなく本席を去られましたので、はなはだお氣の毒ではございますけれども、政務次官からお答え申し上げたいと存じます。
 ただいまの御意見でございますが、大臣のこの間の本会議におけるところの御説明の中にも、潮進的な方法による、そうしてこの法案を上程いたしたものであるということがありましたけれども、ただいまの大臣の意見としましては、あくまでも組合の民主化ということが、この法案によつて徹底されるならば、他に手を打つ必要がないというのであります。だが組合の民主化も、自主性も、この法案によつて望むことができないという場合には、他の第二段、第三段の処置をとるつもりではないか。こういう御質問のように承つたのでございますが、この法案の所期するところは、何回も大臣も、また政府委員も繰返して述べておりますように、あくまでも組合の自主性、民主性の確立ということにあるのでありまして、この目的さえ達することができましたならば、他に手を打つ必要がない。かように信じております。しかしながらこの法案の意図するところが望まれない。遺憾ながら、先ほどの御説にもありましたように、全体主義的な労働ボスの手によりまして、いろいろな点において、日本の経済、社会というものが破壊されるようなことがあつたならば、もちろんそれは他に打つ手を考えなければなりません。政府としましては、断固たる処置をとつて、そういう方面に対する処置を講ずる決意はあるのであります。しかしながら御説にありましたように、反動的な考えをもつてやるかというその御質問に対しましては、政府としましては、断じて反動的な考え方は持つておりません。どこまでも正しい意味におきまして、社会環境に沿うような改正の面を進めて行くという決意のほどを、お傳え申し上げたいと考えます。なお私の答弁でもつて満足の行きかねます点は、大臣にまた補足していただきたいと存じます。
#195
○大橋委員 ただいま政務次官から詳細にお答えをいただきましたが、このたびの改正は、今回とりあえすこれだけの改正をやつて行く。次の機会にまたやるつもりであるという意味で出されたものではない。すなわち最初からプログラムを予定されて、その第一回分として今回の改正案が提出されたのではなく、今回の改正案によつて所期の効果があがりまするならば、これをもつてこれに対する対策は終りであるという意味のお返事に伺つた次第であります。すなわち労働者の諸君は、ややともしますると、このたびの改正を目しまして、今日一城を拔き、明日また一國を攻める。こういう第一段階として、このたびの改正を受取つておるように、一般には了解せらておる。またそういうふうな感じが、國民にも今まで日本の権威に対する考え方、その他の関係上あつたのでございまするが、幸いに労働省並びに政府のお考えは、この問題に対する改正の処置はこれで一應全部終りであるという意味がはつきりいたしましたので、私といたしましては非常に喜ぶ次第なのでございます。さて今回の改正の目標が組合民主化にあるということになつたわけでございまするが、この組合民主化をはかつておるこのたびの法律案が、なぜ國民一般から改惡であると呼ばれておるのであるか、この点について労働省の御意見を一層伺いたいと思うのでございます。先ほど三浦委員の御質問に対しましても、お答えがありましたようでございますが、この機会に私からも重ねて質問をいたしたいと思うのでございます。元來この行き過ぎの是正のための組合法の改正というものは、寺田内閣成立以前におきましては、大体において反動的なところの方法、すなわち公務員法の爭議権の制限に現われたところのあの一連の思想、たとえば公益事業に対する爭議権の制限であるとか、あるいは一般労働爭議に対する予告期間の制度であるとか、かような線に沿うものとして考えられておつたのでございます。また昨年のゼネスト当時に政府の局に当つておられた方方の言動にも、かような誤解を生じせしめた責任の一半は、十分にあると思うのでございます。從つてかかる思想に対しまして、進歩的な陣営からは一斉に反対論が起つたことは、当然のことであるといわなければなりません。しかしながらその後におきまして、前に述べましたように行き過ぎ是正の方法としては、反動的なる方法以外に、進歩的なるところの方法、すなわち組合民主化の線に沿うて行うということが、より正しいという考え方が一般化して参つたのであります。ことに從來彈圧によつて曲げられておりましたところの勤労大衆を、この機会にすなをに伸ばして行くためには、彈圧よりも、むしろ組合民主化の方法による方が、賢明であると考えられて参つたのでございます。少くとも彈圧は、この方法が効果のないということが、はつきりしたあとでよろしいと考えられて來たのでございます。ところが一般の反対論者は、この進歩的なる方法による改善が議題に上りまする前において、労働組合法の改正はすべて反動的な内容を持つものであるという前提のもとに、反対論を天下に流布せられたと思うのであります。
    〔発言する者あり〕
#196
○倉石委員長 静粛に願います。
#197
○大橋委員 裁独的な全体主義者は、その政治的武器を奪われることに対しまして反対し、進歩的な組合主義者は、彈圧に対して反対して反対したのであります。ところが実際今度の改正は、彈圧にあらずして、組合民主主義の徹底という進歩的なものであるのであります。もしこういうことが初めからわかつていたならば、組合主義者たちは反対するどころか、頭からこれを支持しなければならなかつたはずであると思うのでございます。ところが逆に、頭から改正は当然反動的内容を持つものであると予定して、先に改惡という新しい表現まで発明して、大々的に反対宣傳を國民大衆に植えつけてしまつたのでありますから、今この場合に及びまして、組合法改正の内容が、組合民主主義の徹底という進歩的な線に沿つて行われることが明白になりました今日においても、昨日まで改惡絶対反対であると言つていました手前、いまさら、あれは自分たちの軽率な断定に基く誤りであつたということを率直に告白して、賛成するということもできない者が、一部にはあるのではないかということを、私どもは推測いたしておるのであります。もろちん独裁主義の諸君は、組合民主主義に対しましては絶対反対でおりますから、今日でもやはり反対されるのは、当然のことなのであります。また組合主義の諸君も、昨日までは一緒に反対を続けていた関係上、この機会に急激に轉面することは困難でありまするから、やむを得ず、この改正案は改善されたものであるにもかかわらず、前の関係上、依然として改惡であると称して、これに反対をしているというのが、今日の反対論の実情ではないかと想像いたされるのでございます。これに対する政府御当局の御観測を承りたいと存ずるのでございます。
#198
○山崎(岩)政府委員 お答え申し上げます。ただいまいろいろな御意見を述べられました末に、本法案というものが、初めからこのような形式でもつて世間のお目にかけておきましたならば、よもや改惡といつたような反対論は、出なかつたであろうという御説明でございましたが、私どももさように考えております。いろいろな方面において反対論を唱えるところの人は、ただ反対せんがために反対するのでありまして、法案の内容を深く吟味して、法案の内容はこのような体裁を整えたものであつて、しかも欠けている点をここに整備充足するために設けられたのだということを、ただいまのような程度において知りましたならば、おそらくは改惡論というものは、これほどまでかまびすしくなかつたろうと考えておるのであります。しかも本法案のうちに、もしも第一条の第二項のごとき、暴力行為というものは、これは決して認めているものではない、是認しているものじやないという、この規定がなかつたならば、また組合專從者に対するところの使用者側からの俸給のごとき、あるいは組合維持費のごときものを、この際はつきりとこの條文にうたわなかつたならば、おそらくは共産党といえども、双手をあげて歓迎したものであろうと私は考えるのであります。しかし現行法に対するところの解釈の点におきまして、自分かつてなわがままな解釈をとつて参りましたのが、ただいままでの現状であります。そこでやむなく、法律の解釈に誤りのないようにすることのために、この條項を加えた。そうしてあなた方の判断がよそにそれないように、一つの基準を定めたのであります。しかしそれに対しても反対される者があると考えるのでありますが、私は本法案というものは、断じて反対すべき次第のものではない、かように考えております。
#199
○倉石委員長 残余の質疑及び公共企業体労働関係法の施行に関する法律案は、次会に延期いたします。
 本日はこれにて散会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。
    午後四時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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