くにさくロゴ
1965/04/12 第51回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第051回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号
姉妹サイト
 
1965/04/12 第51回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第051回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号

#1
第051回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号
昭和四十一年四月十二日(火曜日)
   午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 志賀健次郎君
   理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君
   理事 小川 平二君 理事 小島 徹三君
   理事 辻  寛一君 理事 島上善五郎君
   理事 山中日露史君 理事 横山 利秋君
      安藤  覺君    今松 治郎君
      小沢佐重喜君    鍛冶 良作君
      佐藤 孝行君    篠田 弘作君
      高橋 禎一君    中村庸一郎君
      湊  徹郎君    秋山 徳雄君
      畑   和君    堀  昌雄君
      山下 榮二君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  佐藤 榮作君
        法 務 大 臣 石井光次郎君
        自 治 大 臣 永山 忠則君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 高辻 正巳君
        検     事
        (刑事局長)  津田  實君
        自治事務官
        (選挙局長)  長野 士郎君
    ―――――――――――――
四月十二日
 委員青木正君、中野四郎君及び藤枝泉介君辞任
 につき、その補欠として湊徹郎君、鍛冶良作君及
 び安藤覺君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員安藤覺君及び鍛冶良作君辞任につき、その
 補欠として藤枝泉介君及び中野四郎君が議長の
 指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
四月七日
 小選挙区制反対に関する請願(柳田秀一君紹介)
 (第二六〇九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
四月八日
 小選挙区制反対に関する陳情書(歌志内市議会
 議長染谷政志)(第三三〇号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 公職選挙法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一三二号)
 公職選挙法改正に関する件
     ――――◇―――――
#2
○志賀委員長 これより会議を開きます。
 公職選挙法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、逐次これを許します。島上善五郎君。
#3
○島上委員 私は、公職選挙法改正問題に関連して、総理に若干の質問をしたいと思います。
 国会解散の動きはだんだん盛り上がってきておるようであります。自民党の首脳者会談をやって、年内に解散をしないとか、総理がどちらともとれるような発言をされておりますが、時間がありませんから、私はここでは理由については申しませんけれども、三つの大きな理由からして年内解散必至だ、こう私は判断しております。政治は生きものですから、何とも言われないといえば、そうも言えないことはありませんけれども、また、伝家の宝刀は総理の手に握っておるのですから、総理の胸三寸にあるとも言えるわけですけれども、しかし、良識ある政治家として、むちゃくちゃに延ばすこともなかろうし、むちゃくちゃに理由なく解散することもなかろうと思います。世論の動き、政治情勢の動きを正しく判断して解散をするとしますれば、私は年内解散必至だと思うのです。
 そこで、これは選挙制度審議会の答申及びこの答申の扱いと重大な関係があるわけです。私は、選挙制度審議会の答申がいかなる内容のものであるかは、ここでは決定的なことを申されないことは知っておりますが、大体野党が賛成できないような答申になるおそれがあります。申すまでもなく、区制の改正というような大問題は、いわば与野党が公正に争うべきルールを大変更するのですから、野党がこぞって反対するような改正というものはなすべきではないと私は考える。永山自治大臣にも先般質問をしましたが、永山自治大臣は、答申が出ましたならば、世論の動向をつぶさに見て、さらに野党ともよく相談をして、その取り扱いを慎重にしたい、こういう答弁をしておりました。私はそれは当然であろうと思います。解散問題と関連して、選挙制度審議会の答申について総理はどのように扱われるか、伺いたいと思います。
#4
○佐藤内閣総理大臣 解散問題について、島上君は、年内必至と、かように言われますが、国民大多数は、島上君が総裁でなかったことを喜んでおるだろう、かように私は思います。内閣総理大臣でなかったことを非常に喜んでおるだろう、かように思います。私は総理といたしまして、ただいまの問題、これは考えておりません。だから、このことを重ねて申し上げます。また、社会党の佐々木君にしても、片一方で、解散に追い込むと言いながら、一方で、外遊を発表しておられます。これは、年内解散必至だ、そういう考え方で発表されたのでしょうか、私はそうじゃないのだと思う。だから、いま言われるように、年内必至だと言われるけれども、さようにはみんな考えていないというのが私はほんとうじゃないかと思います。
 その程度にいたしまして、その次の問題ですが、いま選挙制度審議会におきましてどんな答申が出てくるか、これは私は答申を待っておるのでございます。島上君も特別委員で、この審議にも参加していらっしゃる。また、そういう意味で十分意見も述べておられる。でありますから、この学識経験者、特別委員等の意見も、全体のおさまるようなところで答申が出されるものだと、私はかように考えておりまして、ただいま答申の出てくるのを待つ、こういう態度でございます。
#5
○島上委員 それでは伺いますが、選挙制度審議会の答申の内容いかんにもよることでありますけれども、次の総選挙、年内必至か年を越すかは別としまして、そう長くないことはもう事実です。次の選挙は、新しい選挙区制を含む改正選挙制度によって行なう考えがあるかどうかということです。これはちらほらとは、たとえば永山自治大臣の勇み足だと思いますが、新聞で伝えられたことがあります。しかし、私は軽々にそういうようなことを言うべきではないと思う。選挙が近いとなれば、私のほうは、いま佐々木君が外遊を発表したから、年内解散に備えていないだろうとおっしゃられますが、私どもはもう公認も八割どおりきまりましたし、いつにても立つの準備ありという体制ができ上がっておる。まあそれはそれとしまして、自民党も、伺いますれば、着々と公認を進めていらっしゃるという話です。そのやさきに、選挙区制の大変更を行なうということになれば、これは党内にもあるいは国民の間にも、混乱と申しますか、そういう事態が起こるわけです。私は、私の意見ですけれども、目の前に解散、選挙が迫まったときに――目の前でなくとも、もう少し前でもよろしいのですが、そういうときに、混乱を起こすような、しかも野党がこぞって反対するような大改正というものは行なうべきでない。それよりも、むしろ他に、答申の中には、選挙、運動面に関する次の選挙においても改正必要であると思われる部分、そうして与野党とも賛成する部分があるわけです。そういう改正こそ、二つに分けてすみやかにすべきものではなかろうか、こう考えますが、総理はどのようにお考えになりますか。
#6
○佐藤内閣総理大臣 ただいま御審議をいただいておりまする選挙制度審議会、これはたいへん基本的な問題と取り組んでおられる。したがいまして、もう任期の切れた者も引き続いてやっていただくほうが便宜だ、かように考えまして、二年引き続いて御審議を願っておるわけであります。その中には、ただいま御指摘になりましたような区制の問題もあると思います。そういうことで政党本位の選挙のできるような、そういう制度にしたい、こういう意味でいろいろ検討しておられると思います。
 またもう一つは、ただいま御指摘になりました、一体いつの時期からこれを実施するんだ、この問題も答申の大事な中身をなすものだ、私はかように実は考えております。まだとにかく答申が出ておりません。おりませんが、おそらく審議会の方々は、実施の時期をあわせてただいまのような答申をなさるんじゃないだろうか、かように私は期待いたしております。
 いずれにいたしましても、とにかく、これを実施するまでにはいろいろの手続も要ることであります。ただいま答申がありまして、それで直ちに政府の意思がきまる、こういうものではございませんし、御承知のように、それに基づいて政府が最終的な決断を下して、そうしてそれを国会で御審議願って、その上でこれが実施になるわけであります。ただいま言われますように、島上君の、年内解散必至だ、こういうようにお考えだと、ただいまのお尋ねですが、間に合わないのじゃございませんか。ただいま申し上げますように、誤解は禁物ですから、誤解がないように願いますが、私のほうは考えておりません。おりませんから、ただいまのように答申を待っております。答申を待つと、おそらく一緒だろう、かように私は思いますし、そしてその上で意見をまとめるのですから、それが法案として成立するまでまだずいぶんかかるんだ、かように私は思いますので、どうか、その答申がない今日、いろいろあれやこれやと考えられることけっこうですけれども、また先走らないように願いたいと思いますし、また、特別委員としてもそういう点では十分御発言なさるだろう、かように私は期待しております。
#7
○島上委員 私は審議会の内情も多少は知っておりますが、まだ実施の期日の問題については全然触れておりません。これは、言うと言わずとにかかわらず、解散問題とどうしても関連するわけです。そこで間に合わない。答申がまだ出ておりませんから。しかし、私は解散必至と見ておりますが、解散よりも答申のほうがはるかに早いと見ております。そして、あの答申の部分には、区制の部分と選挙運動面の部分と両方あります。もちろんこれは区制と関係がありますけれども、しかし、区制のいかんにかかわらず運動面の改正を必要とする部分もあります。たとえばテレビの利用なども、この前、民社党、自民党、社会党三党で一たんは話し合いがついて改正できる寸前までいきましたが、ちょっとしたことでこわれましたけれども、テレビを三党で公営において利用するという問題や、あるいは、政党を中心とする選挙運動ですから、政党の政策宣伝のための言論、文書活動を大幅に自由化するといったような問題は、選挙制度審議会の大勢でもあり、おそらく私は与野党一致する問題であろうと思います。次の選挙がいつ行なわれるにしましても、そういう次の選挙において改正必要であると考えられる部分、与野党が一致する部分の改正ならば、臨時国会のきわめて短い期間においてでも通過が可能だと思います。ですから、私は、そういう与野党一致する、次の選挙に必要な改正は、すみやかに、それこそ審議会の答申を尊重して出してほしいと思う。
 それから区制の問題は、いま総理の答弁でも大体わかります。それでは伺いますが、この区制というのは、与野党争うルールの大変更ですから、選挙が行なわれた際に、選挙民にこの是非を問うというお考えがあるかどうか。いままでは小選挙区制が自民党の持論のようにいわれましたけれども、私の承知しておる限りでは、選挙の際に国民に問うたことはないと思うのです。この選挙区制の改正を次の総選挙の際に問う考えがあるかどうか、それから、いま言った、次の総選挙において必要な、与野党一致する改正をすみやかにお出しになるお考えがあるかどうか。
#8
○佐藤内閣総理大臣 第一まだ私は解散という問題は考えておりません。ただいまのように、解散する際にこれを国民に問うのかどうか、こういうようなお尋ね、これは私答えるわけにまいりません。誤解のないように願いたい。私が考えておれば別ですけれども、考えておらないので、第一にその点御了承いただきたいと思います。
 もう一つ申し上げたいのは、この選挙制度は、ただいま言われるように、まことに重大な意義を持つもの、わが国の民主政治、このあり方から見ましても、まことに重大なものでございます。したがいまして、ただいま私が総理としての立場から、答申の出ない前にとやかくの批判をしないで、たいへん慎重な態度をとっておることも、御了承いただけるだろうと思います。選挙制度がそれだけ大事なんだ、そういう意味で、これは審議会の方々の十分御自由な審議を願う、こういう意味で、一切影響させないように、私も慎重にその態度を持しておるつもりであります。また、ただいまも申し上げますように、答申が出ました暁、政府の態度を決定する、これはまた慎重でなければならない。この点、初めから最後まで慎重で押し通しておりますが、これはことばだけではございません。それだけの重大な意義を持つものだから、真剣にこれと取り組む、こういう意味で慎重でなければならない。この点も、ただ単に私が逃げたという立場でなしに、御了承いただきたいと思います。したがいまして、先ほど来もお尋ねがありますように、各党が賛成できる、そういうものでやれ、こういうようなお話がありました。これはもう各党が賛成できたものなら非常に扱いいいのであります。答申も、これは各党一緒ですからということで、その答申を私は無視しようとは思いません。そのまま扱えばいいと思います。しかし私は、やはり政府がこういうことについての責任を持って、そうして政府の責任において最終的には国会の意見を聞き御審議を受ける、こういう態度にならざるを得ない場合もあるだろうと、かように思います。だからこそ慎重でなければならないのだということを実は申しておるのであります。私は、この選挙制度そのものについて、事前に、答申のない前にとやかく言うことも差し控えたいし、また、この答申が出ました後に、答申を尊重することはもちろんでありますけれども、最終的に政府の責任においてそういうことが行なわれなければならぬことも、これまた理の当然でございますから、そういう意味で十分慎重に政府はその態度をきめなければならない。各党が反対するというようなものを、それを強行するというような場合には、これはよほど政府の決断がなければならないだろうと思います。政府も、そういう意味では、よほどその問題を検討しなければならぬ、これはもう当然であります。だから私は、そういう意味で、今日選挙制度審議会でいろいろ審議を受けておりますが、今回の改正はその基本に関する問題だ、かように考えておりますので、その意味では、答申があるまで慎重でなければならないし、答申があれば、答申を尊重するにしても、最終意思決定をする場合に非常な慎重な態度で取り組まなければならぬ、かように私は考えておりますので、そういう点ではなお政府を鞭撻もしていただきたいし、また、そういう意味で助言も十分していただきたい、かようにお願いいたします。
#9
○島上委員 解散を考えてないという一点ばりですが、私は、考えていないのではなくて、この場所では言えない、こういうふうに受け取ります。考えていないのではなくて、考えているのです。この場所では言えない。しかし、たとえ解散をしなくとも、来年の十一月には任期が一ぱいですからね。いまだ総理大臣から、任期一ぱいやるという勇ましいことばを聞いたこともないわけです。おそらくそのこともここではおっしゃらないでしょう。言えないのですから。しかし、私は重ねて申しますが、区制の改正というような大問題は、与野党十分意思の疎通をはかった上でなすべきものであろうと思います。そこで私は、その区制の改正の前に選挙が行なわれるとみておりますから、解散するしないにかかわらず、さようにみておりますから、その際には、私どもも小選挙区反対を国民に訴えるつもりです。あなた方は、小選挙区賛成なら賛成、あるいは答申賛成なら賛成ということを、当然、選挙の機会に国民に問うべきではなかろうかと思うのですが、その点を重ねてお伺いいたします。
#10
○佐藤内閣総理大臣 まだどういうことになるのですか、そこまできめるというのは、先走っておるように実は思います。私は、先ほど申したように、解散は考えておらない。解散を考えた場合に、いかに戦うかということを各党はやるわけです。だから、解散を考えたら、その次に、どういう問題が論点になるとか、国民に訴えるとか、こういうことになるわけです。ただいまお尋ねがありましたが、ちょっと答えるわけにいかないと思います。
#11
○島上委員 時間がないということを言われておりますから、あと一、二点で結論にしますが、解散は考えていない、考えているけれどもここでは言えない、いずれにいたしましても、解散風が吹いていることは事実です。この解散風が一たん吹きますと、ちょうど坂の上から玉をころがすようなもので、だんだんスピードが早まるものです。そういうものなんです。その証拠には、現に地方の選挙区では選挙運動がかなり活発に動いております。これは否定すべくもありません。それで議員の中でもいわゆる浮き足が立っておるのです。今度の国会が済みましたら、この事前運動がさらに一段と猛烈になります。これは否定することはできないのです。事前運動が一段と猛烈になる。そこで私は、もしこのまま放置しておきましたら、前回の昭和三十八年の選挙よりも、あるいは去年の参議院の選挙よりも、さらに輪をかけた不正腐敗の選挙運動になることを心配するわけです。そこで、私がさっき申しました一部法律改正もそのために必要であるし、それよりももっと必要なのは、現に動いておる芳しからぬ選挙運動、事前運動、こういうものをいかにかして防止し、次の選挙は前の選挙よりはきれいな選挙であった、前の選挙よりは金のかからない選挙であった、こういうふうにしなければならぬと思うのです。輪をかけて悪い選挙になったということよりは、だんだん、徐々にではあるが選挙がよくなってきた、選挙制度審議会も熱心に議論しているし、それを尊重しているし、だんだん選挙がよくなった、そういう選挙にするために総理に伺いたいのです。
 これは法律改正するといっても、実際上おおむね現行法で行なわれることになるでしょう。そうなると、次の選挙に臨む政党の姿勢が一番大事だと思うのです。去年の選挙で小林某と並んで二大選挙違反といわれたその一人が、ほとぼりのさめたころそっと自民党に復帰している、復帰させている、こういう姿勢、それから新潟知事選挙におけるあの目に余る状態、こういうものに対して自民党がどういう姿勢をもって処理するかということは、国民が注目しておるところだと思うのです。
 新潟の選挙につき直しては、法律的な角度からあらためて質問することになっておりますが、総理に対して伺いたいのは、次の選挙をきれいにやるために党の姿勢をただすという観点から、新潟知事選挙のあの状態――不起訴になりましたけれども、検事が言っておりますように、みんな二十万円ずつ金をもらって、もらった人々は、これは選挙に関係があるものと思う、こう自白しているんですね。知事は、いままでの県政に対する協力の謝礼だ、こう言っておりますが、これはどう考えても、常識的に、選挙に関係があると見るのは当然なんです。そして当事者もそう言っているんですから、こういうようなことが不起訴になったこと自体に非常に問題があると思いますが、党の姿勢を正そうという観点から、これに対して総理はどのようにお考えですか。
#12
○佐藤内閣総理大臣 私は、選挙そのものは、わが国民主政治の基本だ、かように思っております。選挙が正しく行なわれないと、民主政治そのものもどこへ行くかわからない、こういうことです。民主政治を育成するということは、私ども戦後の政治家にひとしく課せられた重大な課題、使命だ、かように私は思っております。そういう意味で、この民主政治に便することは進めてまいりますが、民主政治をそこなうような行為は、ひとり選挙の公正ばかりでなく、何によらずその考え方を排除していく、これは私の政治的な思想を貫いておるのであります。したがいまして、そのうちでもただいまお尋ねになりましたように、選挙がきれいな選挙でなければならない、また公正でなければならない、そういう意味から、しばしば、公明運動をやる、明るい選挙、きれいな選挙、金のかからない選挙、あらゆる機会にこれを呼びかけておるわけであります。しかし、このことは、この選挙制度特別委員会等におきましてもしばしばその論議がかわされておるが、いわゆる百年河清を待つような感じのする問題でありまして、これを幾ら声を大にしても、これは言い過ぎだということは実はないようであります。あらゆる機会に、いろいろくふうして、金のかからないような方法には、もっと公営の選挙ができないかというようなことで、この委員会でもいろいろ御審議をいただいたと思います。また、さらに宣伝等につきましても、最近のマスコミの使い方についてもいろいろお話をしております。しかし、最後は、制度じゃなくて、やはり人そのものなのです。だから、その点について十分の戒慎、考え方をしないと、われわれが期待するような方向にはなかなか持っていけないと思います。私は、総裁として、また総理として、そういう立場でこの問題にほんとうに熱意をもって最善の努力を払う、こういうことでただいま取り組んでおるのであります。あるいは新潟の知事のあと始末等におきましても、その片りんが出ているだろうと、御了解がいただきたいと思いますし、また、私は、最近の地方自治のあり方等におきましても、一番国民と遊離するそのもとはこの政治の腐敗だ、かように思っておりますので、この意味では、特に注意を喚起し、その自粛自省を願っておるような次第であります。私は、このことが最も大事なことだ、かように思います。これはひとり私どもの保守党ばかりではございません。あらゆる党におきましてあらゆる問題が行なわれておる、かように思いますが、一切指弾を受けない、明るい正しい選挙を実施することを心から願っておるような次第でございます。
#13
○島上委員 抽象的で、美辞麗句ばかり並べておって、私どもの期待するような具体的なことをちっとも答えてくださらない。これは党の姿勢というものを国民に示すために具体的な措置が必要だと思うのです。いま総理がおっしゃったように、制度そのものよりも人である、その人は、政治の目的を持って結集すれば政党になるわけですから、人そのものということは、選挙の場合には、政党そのものということになると思うのです。その政党が、選挙に臨むに際して、きちっとした、あるいは峻厳な姿勢を、ことばではなしに具体的な事実によって示すということが必要だと思う。そうでなければ、私はかねがね言っておりますが、政党の姿勢と国民の協力と法律改正と、この三者が必要である、それが相まって選挙がきれいになる、こう思います。
 そこで、私はもう少し具体的に聞きますが、新潟の知事選挙についても何ともおっしゃらない。おそらく県の金だと思いますが、二十万円ずつもらったほうからは、選挙に関係があると思うと受け取られるような出し方をして、検事の談話でも、容疑がないわけではない、容疑はある、白とも黒ともつかない、灰色のような結論を出さざるを得なかった、そういう談話を発表しているわけですね。こういう事件に対して、総裁として、まことにけっこうであったとはお思いにならぬだろうが、国民に対して、新潟県民に対して、言うべきことがあると思うんですがね。それをひとつ伺いたい。
 時間がないから、あと一緒に言いますが、解散は早期であるか、おそくであるか、任期一ぱいであるかは別として、現に選挙運動が動いております。しかも芳しからぬ事例もたくさんありますが、時間がありませんから申し上げませんが、観光バスを連ねて温泉に連れて行ってごちそうしている例がたくさんあります。そういう芳しからぬ選挙運動が動いている現状を、その不正腐敗を防止するためにどうするかということ、たとえば、公認候補を選ぶ際にどういう基準で選びますか。現にあなたのほうの議員で、あるいは候補者で、本人が起訴されている人間がいるのですが、そういう人間は公認しませんとか、それから私どもは、総裁の耳に達しなかったかもしれませんが、去年の参議院選挙で、各党でひとつこの参議院選挙をきれいに行なうために、最大公約数でもいいから、集まって相談して申し合わせをしようじゃないか、こういう提案をして、総理大臣は、予算委員会における高田富之君の質問には、けっこうなことだからとおっしゃいましたが、さて社会党が具体的にそれを提案しましたら、民社党と公明党と共産党はみな賛成しましたが、自民党さんだけはとうとう返事を下さらない。いま相談中相談中と言って返事を下さらない。こういうことがあった。こういう選挙運動が現実に動いている状況の中にあって、たとえば国会で決議するというのも一つの方法でしょうし、各党が集まって申し合わせをするということも一つの方法でしょうし、その申し合わせに基づいて各党が下部に指令を出して、下部に十分警告を発するということも一つの方法でしょう。いずれにしても、総理がここでことばでもってどんなに熱心に取り組んでいる、まじめに取り組んでいるとおっしゃられても、具体的にそれを行動の上にあらわす、党の活動の上にあらわす措置がとられなければ、私は価値がないと思うのです。そういうような何らか具体的な措置をお考えになっているかどうか。いますぐやるか、秋になってやるか、来月やるかは別として、そういう措置をしませんと、とうとうとして観光バスを連ねて供応する競争がこれから激しくなりますよ。そういうことをお考えになっているか、この二つの点を伺っておきます。
#14
○佐藤内閣総理大臣 ただいま新潟の知事のいわゆる中元問題、これのお尋ねがございました。私はただいままでまだ法務大臣からも詳細な報告を聞いておりません。(「新聞を読んだでしょう」と呼ぶ者あり)新聞は見出しだけを見た程度です。その中身は読んでいない。したがいまして、ただいまの処置についてとやかく私は言うだけの材料を持っておりません。ただ、塚田知事につきましては、塚田知事は、これが問題になった後に、いわゆる選挙が済んだ後に、自分は責任をとってやめる、かようなことを申しておりました。これはもう予定どおり、自分が公約した事項があるから、予算編成だけは自分の手でやるが、それから先は必ずやめるのだ、かように申しまして辞意を表明し、辞表を提出し、そうして今日すでに、かわりの選挙といいますか、知事選挙が始まろうとしておる。そういうように、これは知事自身が責任をとったわけであります。したがいまして、先ほど私が簡単に触れたのでありますが、この塚田知事の問題についてわが自由民主党がどういう態度をとったか、この点を御了承いただきたいと一言触れたつもりでございます。したがいまして、こういう点について、私は、そういう法律的責任の前に、やはり少なくとも道義的責任あるいは政治的責任を明らかにすべきじゃないか、こういう考え方をいたしております。また、小林章君の問題についても、これが離党をした、こういう状況でございますし、それがいまなお復帰はいたしておらない。松原君の場合は、これは選挙等のなにから見まして、そこまで責任をとることはたいへん気の毒である、本人の関与しないことだ、かように私は思いまして、これは復党させたわけであります。だから、それぞれの立場においてそれぞれの処置をとったつもりであります。
 また、今後の問題として、ただいま選挙があるわけじゃございませんけれども、公認の選定については特に厳正にしなければならない。前歴等も十分調べ、また、係争中のものについては、大体いまの憲法のもとでは、係争中のものは白だ、かような言い方をされておりますけれども、しかし、これらの点についても、私どもは、法律の責任の前に政治的あるいは道義的責任というような点からこの問題と取り組んで、公認をあまり自由奔放にしない、こういうことで臨むつもりでありますし、また、当選後におきましても、党籍不明確の者についての入党等は、いままでのように簡単な入党はとらない、こういうように厳正にしたい、かように実は考えておるのであります。
 とにかく、みずからが姿勢を正す、そうしないと国民の期待に沿わない、かように私は思っております。ただ私非常に心配しておりますのは――ただいま選挙についての私の考え方は非常にはっきりいたしておりまして、ただいま選挙など考えておりません。むしろ、国民の一番問題にしておる生活の安定向上のためにほんとうに政治力を結集して取り組む、国民のための政治をする、こういうことでありたい、かように思っておりますが、幾らこれを申しましても――いま言われるような点は私は否定はいたしません。しかし、これはおそらく、われわれの任期一ぱいといいましても、あとわずかに迫っておりますから、それを待たないでというような気持ちが一部にあるのだろう。それよりも、そういうことで浮いた考え方で政治家が取り組んでおりますと、国民の批判のほうがこわい。国民自身が最終的には批判するのだ。自分たちの、国民のための政治をしてくれる、こういう代議士諸公なら、ほんとうに国民の期待に沿っているのだから声援するけれども、どうも国民の政治とは真剣に取り組まないで、自分たちの地位を守ることにばかり狂奔しておる、こういうような立場だと、これは国民からも笑われ、国民からはそういう方は信を得ないと、私はかように考えておりますので、賢明な国民を信頼して、ただいまの一部の浮いた考え方には私は賛成しない。国民の厳正な批判が望ましい、かように思っております。
#15
○志賀委員長 島上君、結論をお急ぎ願いたいと思います。
#16
○島上委員 私は納得もしませんし、まだ聞きたいこともありますが、お約束の時間もありますから、これで質疑を終わります。終わりますが、とにかく、たいへんりっぱなことをおっしゃるけれども、具体的な行動が伴わないということが私は非常に残念に思うところです。言うたことを下へ浸透して実行しなければ価値がないのだから、ひとつぜひきれいな選挙にするために、峻厳な具体的な姿勢を、国民にわかるように行動に示してもらいたいということだけを希望しておきます。
#17
○志賀委員長 山下榮二君。
#18
○山下委員 ただいま島上君と総理との質問応答を拝聴いたしておりまして、どうも総理は……
#19
○志賀委員長 山下君、御発言の途中恐縮でございますが、総理大臣の時間の都合がございますので、結論をできるだけお急ぎ願いたいと思います。
#20
○山下委員 それでは、冒頭に委員長にお願いをいたしておきます。
 この前のときには私の質問の最中に総理は席を立たれましたので、なるべく簡潔に質問を申し上げたいと思いますから、質問が済むまではひとつ質問をお聞きいただきたいと、先にお願い申し上げておきます。
 お聞きしたい点を要項だけ先に申し上げると、政党の近代化の問題、さらに、高級公務員の地位の利用と選挙違反の問題、これは先ほども出ておったのでございます。次に、地方首長が三選、四選、五選とだんだん重なってまいってきておりますが、こういう大きな、知事という権力を持つ者が十六年も二十年も権力の座にいるということは、たいへんなことだと思いますので、これに対していかようにお考えになっておるかということを伺いたい、こう思うのであります。
 冒頭に伺いたいと思いますのは、いま島上委員との質疑応答の中で、総理の答弁を聞いておりますと、どうも解散を行なうがごとく行なわざるがごとき様子がありまして、はっきりつかみ得ないのであります。しかし、あなたの総裁をしていらっしゃる自民党の議員各位の行動は、おそらくこの秋解散というかまえの行動をしていらっしゃることは、これは現実であります。さらに、政府のいまとっておられる施策を伺ってみましても、それとうかがわれる節がないではないのであります。一例を申し上げますると、公共事業の繰り上げ支給等を盛んに行なわれることを宣伝されております。私は、こういうことは一つの選挙の事前運動のような感じもいたすのであります。へたをいたしますると、これは土建業者等々の関係から違反等が生ずる危険もなきにしもあらずと、私はかように考えておるのであります。
 もう一つ私が伺っておきたいと思うことは、選挙法の改正というものが、いつも選挙前に行なわれるのが通例のようなかっこうになってしまっておる。いま総理は、選挙というものはきわめて重大な、わが国民主主義政治発展の上に重大な問題であるから、慎重に取り扱っていきたい、こういうことをおっしゃったのでありますが、選挙直前に選挙法の改正等が行なわれますと、その選挙法規というものが国民の間に周知徹底しかねる節もなきにしもあらずでございます。かような点等にかんがみまして、もう少し政府は親切に、国民に選挙法の精神、選挙法の改正等々がわかりやすく、あるいは相当の期間を置いてこれを取り扱うというのが、政府として国民に親切なゆえんではなかろうか、こう思うのですが、この点について総理のお考えを聞きたいと思います。
#21
○佐藤内閣総理大臣 ただいま山下君からお尋ねでありますが、三つばかりの項目、これは後にお尋ねがあると思います。ただいまのお尋ねになりました二点についてお答えしたいと思います。
 先ほどの島上君と私との質疑応答で政府の考え方がおわかりだったろうと思います。しかし、どうも政府の考え方はまだもう少し不徹底だということで、どう言ったら皆さん方納得されますか、すでに私自身が考えていないということを申し、また、過日六者会談、これは自民党の首脳会談でございますけれども、その席でも、年内解散は考えていない、こういうことをはっきり言おう、こういって実ははっきり申しておるのであります。これは外へ出した公式な声明の初めてのものだと思います。これを信頼していただかない限りにおいては、どうも政府の説明のしようがないのであります。でありますから、ただいま、選挙は必至だ必至だと言われますけれども、ただいま政府並びに自民党としては、そういうことを考えていない、このことを重ねてつけ加えておきます。
 それからもう一つ、公共事業費の繰り上げ支給、これをやっているから選挙は近いのだ、これは実はたいへん私は思いもよらなかったのであります。実はいまの不況克服、そのためにとにかく公共事業費を早目に使う、そのことが効果があるゆえんだ。これを考えましたのは、昨年の七月にいろいろな施策をやりましたが、これが下部にまで浸透するのがなかなか日数を必要とする、こういうことは経験済みであります。昨年の施策が秋口もっと早目に効果があるだろうかと思ったら、これが非常におくれた。これは主として事務的にそこまでついていけなかった、こういうことでありますから、この苦い経験を生かして、ひとつ今度はぜひそういうことのないようにしよう、だから早目にしよう。実際の公共事業費の使い方を見ていますと、契約ベースでいままでの例は三〇%あるいは四〇%、その辺が落ちであります。そんなことじゃ困る、少なくとも契約ベースで六〇%、こういうことにしよう、こういうことで各省を督励いたしました結果、大体七〇%の契約ができるようになった。そうすると、七〇%契約ができますと、工事は動かなくとも、これで材料注文、いわゆる需要の喚起ができるし、金融もそれでつくようになりますから、よほど動き出して明るい感じを持つ、これが経済不況克服の一番有効な方法だ、かように実は思ってやったのであります。この点は、皆さん方はすぐ何もかも選挙に結びつけてお考えですが、これは政府の予期しない、はからなかった点でございますから、誤解のないように願っておきます。
 次に、選挙法の改正の問題でありますが、いつもその時期がこうなる。ただいま言われますように、選挙法自身がそういうような回り合わせになっておるかと思います。今回のものにいたしましても、諮問をいたしましたのは二年前であります。それが半年ぐらいで結論を得れば、これはもっと早い時期に選挙法が改正されたかもわからない。しかし、もう二年たってもまだ最終的結論が出ない。今月は最終的な結論を出したい、かように審議会では申しておりますけれども、今月はたして出ますか、これはもう皆さん方のほうが審議の状況等についてはよく御了承がいっておると思います。そういう点で、必ずしも選挙と結びつけての選挙法の改正だとは思いません。この審議会にかけた選挙法の改正は、そういう意味で選挙に関係はありません。
 それからもう一つは、私が各党の皆さん方にお願いをしておるのは、もうあらゆる機会に、選挙が公正になるように、金のかからないように、そういうことで絶えずこの審議をされておると思いますが、しかし、その審議された結果が、やはりなかなか時期等におきましても各党が熱意を示さない、こういうようなことで、選挙の公正なことを希望するという意見はあらゆる機会に出ますけれども、いざ実際問題となると、私が先ほど聞かれたわけでございますが、具体的にそれじゃ今回これだけのことをしておいて、もう準備を整えておこうとか、これから先に行なわれる選挙に備えよう――これはひとり国会議員あるいは参議院議員ばかりではございませんので、地方選挙におきましても同じことが言われるわけでありますから、恒久的な施設あるいは制度がどうしても必要だ、かように思います。今回この委員会で審議されておる永久選挙人名簿、選挙権の問題、これなども、これはもう平素からこういう準備をしておかないと選挙の公正は保てない、こういうことで自治省で特に意見をまとめた。これなどは、おそらく皆さん方各党ともとにかく御賛成のいく、むだを省いてそうして正しい選挙人名簿をつくるというのですから、これはいいことだと思います。しかし、先ほどの島上君の質問にもありましたけれども、お互いに各党の立場等もあり、共通の土俵を設けることになかなか難点がそれぞれあるようであります。しかし、平素問題のないときに十分審議を尽くしていただいて、そうして公正な意見がそういう際にかえって出やすいのではないかと私は思いますので、選挙法の改正などは、選挙に結びつかないそういう時期にむしろ公正なものが出てくる、かように私は考えるのであります。過去におきまして、どうも時期的にこういう点が誤解を受けるようなことがありましたことを残念に思います。
#22
○山下委員 討論ではございませんから、別に総理に反駁しようとは思いませんが、公共事業費の繰り上げ支給等は、各自治体で受け入れがなかなかそううまくいけるかどうかということも心配をいたします。さらに、そうして景気挽回の人気をあおっておいて政府は解散というところまで持っていくのではないか、こういうのが一般の見方でありますから、そのことを一つ申し上げたかったのでありますが、それ以上は申し上げません。
 それでは、いま総理は選挙制度審議会のことを申されておったのですが、選挙区制を改正してほしいという諮問をされたということの原因は一体どこにありますか。現在の中選挙区制の弊害、それの問題は一体どこに一番ガンがあり、どこが一番欠点があるので、これを直さなければならぬということを何かお考えになって区制の諮問を出されたものと思うのですが、そのお考えのほどを伺いたいと思います。
#23
○佐藤内閣総理大臣 私はこの諮問をいたしたときの総理ではないのでございますが、どうも選挙がだんだん進んでくると、政党本位の選挙であることが望ましい、こういうところから、そういう意味で何かくふうはできぬだろうかというのが最初の起こりではなかったか、かように私は思います。
#24
○山下委員 それでは、冒頭に申し上げましたように、政党の近代化の問題について伺いたいと思いますが、総理は、組閣直後、政党の近代化、派閥の解消ということに相当熱意を傾けて努力されておるように存じます。これは当然過ぎるほど当然なことであると私は思うのであります。ただしかし、口先だけで政党の近代化や派閥解消を唱えただけでは――あなたの党も、あなたの派閥は解消されたかのように伺いますけれども、その他の派閥はなかなか解消されたと伺っておりません。一体どうして派閥を解消し、どうして近代化するという、あなたの考えておられるその構想というものを伺いたいのであります。
#25
○佐藤内閣総理大臣 この政党の近代化、また、政党内部の派閥解消、これは実は自民党の内輪の問題でございます。私は、民主社会党や、また日本社会党、共産党等が近代化されることはけっこうだし、派閥を解消されることもけっこうですが、しかし、これは私がとやかく言う筋のものではございません。私は自民党の総裁として、内輪の問題としてこれをひとつやろう。でありますから、このお尋ねの、最初の質疑要項をとりますと、何だか、小選挙区あるいは選挙制度審議会、これがこの党の近代化と結びついているかのようなお尋ねのようにとったのですが、実はこれは全然別であります。もしも政党が近代化を行なわず、派閥に明け暮れするようなことであれば、国民の信を必ず失う、私はさように思うのでありまして、これは国民政党といいますか、国民の支持があって初めて政党が活動できるのでありますし、その国民から信を失うあるいは支持を失うような政党のあり方というようなものには、総裁として私は賛成しないのです。そこで、ただいまのように党の近代化なりあるいは派閥解消、党の前進を考えておるわけであります。このことは各政党ともそうあるべきが、民主政治の時代ですから、望ましいことだとは思います。思いますが、しかし、これは私がただいま言うように、総裁という、総裁の範囲の事柄でございまして、ただいまここでお尋ねをいただくこと、たいへん私はありがたく思いますけれども、ただいま申し上げますように、時間も限られた場合に、一党の問題だ、かように御理解をいただきたいと思います。
#26
○山下委員 抽象的でありまして、なかなか具体性が欠けておると思うのですが、ことばも触れられましたけれども、ほんとうのあなたの政党の近代化、派閥の解消というのは、いわゆる選挙制度審議会に諮問をされた小選挙区制というものにつながっておるものだ、それが派閥を解消しあるいは党を近代化する道につながっていくんだ、あるいは審議会等での各審議委員の意見等も伺うのですが、あなたもそうお考えになって諮問をされているものと私は想像いたしておりましたところが、それと何らの関係がないということは、私はあ然とせざるを得ないのであります。
 私は例を申し上げたいと思うのですけれども、時間がないようでありますから、多くを申し上げませんが、たとえば、従来の自民党の候補者が公認に漏れて反政府的な精神で演説をぶって、それが当選をして、公認候補が落ちた、こういう場合には、今度は当選が決定すると、その特別国会開会直前にそういう方をすぐ自民党に入党せしめる、こういうこと等がしばしば行なわれている。例を申し上げろとおっしゃるならば、たとえば三重県をお考えになってもおわかりでありましょう。たくさんございますが、そういうことは一々申し上げませんけれども、そういうこと等から考えて小選挙区等々となってあらわれておる、これがあなたの党の近代化、派閥の解消というものの中身ではないか、こう想像をいたすのであります。このことについてはまた後ほど答弁をいただけたらいただきたいと思いますが、時間がないそうでありますから、次に移っていきたいと思います。
 高級公務員の立候補の問題であります。先ほど島上委員も触れられておりましたように、小林さんの問題もございましょう。あるいは前の建設次官の山本さんの問題もございましょう。たくさんございます。高級公務員の地位の利用あるいは選挙に対しての非常に悪質な選挙違反、あるいは建設省の官房長が建設業者の組合等々から三百何十万円の金を調達した、あるいは山内前次官は兵庫県の前県会議長を通じて県下各土建業者から相当多額の資金集めをやった、そのために地方の土木出張所長やいろんなところに影響を与えている、あるいは、その前には厚生省の環境衛生局長も各都道府県の衛生部長等に非常な影響を与えている、こういうこと等から私は考えまして、政府はもう少しこれらの点に対して姿勢を正していただくのでなければ、これは綱紀の粛正どころではございません。ひとり選挙違反だけでございません。おそらく選挙違反以上のものであろうと私は想像いたすのであります。そこで、こういう高級公務員の立候補の制限あるいはその他のことを当然考えられるべきではないか、こう思うのですが、総理のお考えを伺いたいと思います。
#27
○佐藤内閣総理大臣 前のほうの問題で、これは別に討論するわけではありませんが、党の近代化や派閥解消に関係がないと申しましたのは、これは見方の問題です。それは小選挙区になれば、むしろ派閥があれば激化して、公認候補決定の場合にたいへんな騒動を起こすだろう、こういうことも指摘ができるので、これはいまの中選挙区のほうが案外派閥の均衡がとれて、そこらの争いも起こらないでやれるという議論にもなるわけです。だからこれは全然関係がないという、私が申し上げたのがこれが正しいのでございますから、誤解のないように願いたいと思います。そうして、ただいま申したように、これは一党内の問題ですから、党自身がみずからを正す、そのための近代化であり、派閥解消だ、かように御了承いただきたい。このことは、いずれの政党も、もしもそういう派閥や何かやっておれば国民から笑われますぞということの手本を実は申しておるのでありまして、ただいまの審議会とはこれは全然別のことです。
 それから、次の高級公務員の立候補の問題でございます。私が立候補いたしました際も、実は最初次官をして、それから立候補いたしました。その時分から、いわゆる高級公務員の立候補は問題でありました。私はそのときに、高級公務員の立候補をみずからやるが、問題は、いま御指摘になりましたようなその弊害、そういう点に触れなければこれはいいのじゃないか、いわゆる金の問題があったり、あるいは地位を利用して特別な票を集めたりその他等々があるから、そういう弊害がなければこれはいいことじゃないか、むしろ政党というものは、各界各層、あらゆる面のりっぱな人が入ってきて初めてりっぱな政党になるのだ、高級公務員はだめだ、労働者ならいい、組合の幹部ならいい、こんなものじゃないのだ、かように私は思うのです。各界各層のりっぱな人が出てきて、国民とともに国民のために政治をする、こういうことが望ましいのであります。そういう意味で憲法等もつくられておる。しかし、それぞれがいろいろな弊害をかもし出すこと、高級公務員の場合は特にそういう危険が多い、だから、普通の場合とは別にいたしまして特にこれは注意をしなければならない、かように思います。小林君の問題等におきましても、参議院の選挙でそういうのが具体的に出てきたわけでありますが、ことに日本の場合においてはどうも高級公務員が大事にされるという、官尊民卑とは申しませんが、そういうふうな風潮のあるところだと、いわゆる弊害におちいりやすい、よほど党幹部がしっかりして、そういうものに厳重な制肘を加えないと、これはとんでもないことになる、かように思いますので、特にそれは注意してまいるつもりでございます。憲法その他等のありますことは、これはもう山下君も御承知だと思いますので、あえて申しません。
#28
○志賀委員長 山下君に申し上げますが、結論をひとつお急ぎ願います。
#29
○山下委員 憲法等の関係も承知しておりますが、憲法にはやはり公共の福祉を害しない範囲の規定もあるのでございまして、いまあらわれているようなこの大きな選挙違反等々から考えまして、適当な党幹部としての指導責任を感ずる、こうおっしゃっておりますから、これは法律等でそれぞれ何らかの規制をすることが必要ではないか、こういうこともむしろ考えていくべきではなかろうか、かように思っておるのであります。重ねては申し上げません。
 次に、先ほども申しました地方首長、知事、市長等々の三選、四選、五選、こういうことに対していかようなお考えをお持ちでありましょうか。アメリカの大統領は、御承知のごとく三選禁止の規定がございます。大統領は非常に大きな権限を把握されていることは御承知のとおりであります。わが国の都道府県知事におきましてもそのとおりであります。建築の認可から、ふろ屋、散髪屋、一切の権限は知事にゆだねられている。こういう大きな権力の座に少なくとも十六年も二十年も居すわっておるということは、私は、マイナスこそあれ、決してプラスにはならぬ、こういう考え方を持っておるのでありますが、一体総理はこういうことに対していかようなお考えを持っていらっしゃいますか。私が調べたところによると、すでに現在三選の知事が九人おられます。四選の知事が七人おられます。五選の知事が二人おられます。市町村長等については申しませんが、市長等においては、数多くの四選、五選という市長がおられます。この弊害というものはお考えにならぬか、その辺を伺いたい。
#30
○佐藤内閣総理大臣 山下君は、ただいま高級公務員について、私と同じ考え方をしておられます。私は、これは弊害におちいりやすい、そういう意味の規制がもしできれば、たいへんけっこうだと思います。
 ただいまは、多選の地方自治体の長の問題についての率直な御意見が出ております。ただいままで私ども、結局、選挙は県民あるいは市民、自治体の住民がきめるんだ、ただいまのように、弊害が非常に出てくれば、そういう人は選挙されぬだろう、こういうことで、多選を制限するということには実は反対してまいりました。そうしてこれが自由民主党だけの主張のように実は思っていたのでありますが、今回京都府知事が五度目の立候補をしておる、こういうことになりますと、佐々木委員長も出かけて、どうも人間の問題じゃないか、また治績の問題じゃないか、こういうことを言っておられて、いわゆる形式的に、五選はいかぬとか、四選はいかぬとか、三選まではいいとか、こういう議論はあまり形式的に過ぎるんだというような意見を述べておられるのを新聞で見ました。そういうところから見ますると、これは各党とも、どうも多選について、長期に一つの政権が続くこと、これは好ましい方法ではないが、しかし、必ずしもそれはその長だけが責任を持つものじゃないんだ、こういうような結論に実はなったのかなと、かように今回の選挙を通じて私は感じておるのであります。しかし、ただいま御指摘になりましたように、公務員についても弊害を防止するような制約までひとつ考えたらどうか、こういうようなことでありますから、多選知事、多選市長、当然、長期にわたってその権力の座にあると、本人はりっぱでも、またそれを取り巻く者等がいろんな問題も起こしやすいのでありますから、こういう点、よほど厳重にみずから戒慎されることが必要だ、かように思います。制度上の問題として、三選はいいけれども四選はいかぬという、一体それはどういうようなことだということになると、なかなか理屈はつきかねる。三選まではいいが四選はいかぬ、ちょうどそれと同じように五選につきましても言えると思います。なかなかその限度を設けることはむずかしいでしょう。だから頭から理屈なしに形式的にきめてしまうというのも一つの方法かと思いますが、しかし、わが国の法制ではそういうことはとっておりません。また、これは憲法上も問題があるかのようにいわれておりますから、こういうことはよほど慎重に扱わなければならぬと思います。問題は、やはり選挙ですから、住民投票、それが決定するんだ、だから、権力の座に幾らありましても、それが不都合なことをし、非常に腐敗しているというようなことだと、住民は選挙しない、選挙の機会にこういうものがためられるといいますか、訂正されるというように考えると、今日、そういう意味でも、選挙が正しく明るく、金がかからないで行なわれなければならない、かように私は思うのでありまして、ただいまこの五選問題その他について具体的にどうという結論は出しておりませんが、私は、どうも住民がきめるものじゃないだろうか、かように思っております。
#31
○山下委員 それじゃ時間も参ったようでございますから、最後に、一言だけ私の意見も申し上げて総理の御意見を伺いたいと思います。
 選挙制度というものは、いまおっしゃるように、金のかからない、きれいな選挙をやらなければならぬ、こうおっしゃっております。それが選挙制度審議会にかかっていろいろ議論されていることは、御承知のとおりでございます。そうなければならぬと私は思っておる。そこで私の党では、いまの選挙制度の改正ということに対しましていろいろ検討も加えてまいっておりますが、泡沫候補あるいは金のかかる選挙、こういうものをどうして除去するか、こういうことを考えまして、一回の選挙に国の費用が十億も九億もかかる、こうおっしゃっておりますので、そこで私は、供託金制度というものを廃止して、ここに公営選挙というものを大幅に拡充いたしまして、供託金ではなくして公営選挙費用の分担を候補者みずからが行なう、こういうことで、いわゆる納付金制度というものを考えたらどうか。額等についてはいろいろ議論がございましょうから、それ相当の納付金制度ということにして、そうしてもう一つは、選挙管理委員会というものの機構をもう少し拡充強化いたし、これの権限というものをりっぱにしまして、選挙に際しましては、選挙のポスター、演説会場の設営その他の業務は、全部選挙管理委員会の機構を強化してその事務局が担当する、候補者は演説と文書活動に専念する、そうして金との因縁を断ち切っていく、こういうことにしていきますならば、いま総理の言われる、きれいな正しい公明な選挙が行なわれる、私はこういうことになってくるんじゃなかろうかということを考えておるのであります。そのことを最後に伺い、先ほど島上君から塚田知事のことについてはお話がありましたが、自民党総裁として、自民党の公認候補として立候補せしめられた新潟県知事というものに、道義的にも自民党自身がもう少し深く反省さるべき問題ではなかろうか、こう考えておるのであります。この選挙公営についてのお考えのほどを伺いたいと思います。
#32
○佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、選挙制度審議会が全般的に取り上げておることだ、かように思っておりますので、ただいま私とやかく申し上げない、これはもう山下さんの御意見を伺わしていただくだけで、答弁はひとつ保留さしていただきたいと思います。
#33
○志賀委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#34
○志賀委員長 次に、公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。畑和君。
#35
○畑委員 先ほどわが同僚議員の島上委員から、自民党の総裁、政府の総理としての姿勢の問題に関連いたしまして、新潟県知事選挙における二十万円ずつの事前買収の件についての不起訴処分の問題が提起されましたが、時間がありませんので、総理に対してはそういった立場から質問をされました。さらに私はこの問題につきまして法務大臣並びに刑事局長にお尋ねをいたしたいのであります。
 この塚田知事の二十万円中元事件は、いままで日本の政治史上かつて見ない、驚くべき事件だったと私は思います。ともかく、現職の知事が、自民党の議員たち四十二名に対しておのおの二十万円、人によってはそれより多い格づけをされておったという話もございますけれども、最低二十万円といたしましても、一千万円に近い金額を、自分のふところから出したかどうかわかりませんけれども、いままで県政に御尽力をいただいた謝礼であるということで贈ったということ、これは塚田知事の供述がそうなっておる。とにかく贈ったことだけは塚田さんも認めておる。また、受け取った四十二名の方々も認めておる。しかも四十二名の議員の人たちは、選挙に関連をして贈っていただいたものと思うということを申しておりますけれども、当の塚田前知事は、あくまで在職中の、この前の任期中のお礼だ、こう言い張ったという。その結果、証拠不十分ということで昨日不起訴処分の決定をしたということで、地検の検事正の伊尾さんからそれが発表された。非常に驚くべきことでありまして、このことにつきましては、新潟県民はおろか、全国民がひとしく割り切れない気持ちを持っておると私は思う。技術的になるほど証拠不十分というようなこと、いろいろこれから陳弁されると思いますけれども、何といたしましても、一人当たり二十万円ですよ。この二十万円の金が、単なる、県政に尽力してくれた、手伝ってくれたお礼だといって言いのがれられるはずがないわけであります。ところが、そう言って言いのがれたということです。したがって、その自白の供述がとれなかったから、不起訴にせざるを得なかった、白か黒かよくわからない、灰色の事件だ、こういうふうに伊尾検事正は言っております。しかし、この問題はそういうことくらいで片づけられるような問題ではないと私は思う。疑わしきは罰せずということばがございます。したがって、検察陣といたしましても、疑わしきは起訴せずということがその前提として言われるでありましょうけれども、事によってはそうはいかないと私は思う。こうして県民、国民がひとしく注目をしておる事件のごときは、もし技術的に若干証拠が足りないと思っても、やはりあえて起訴をして公判廷において白黒をつけて、それで国民の批判をまつ、こういうことが正しいのだと思うのでありますけれども、突然としてきのうそういう発表がなされました。
 その件についてお尋ねをいたすのですが、この事件は、そもそも、御承知でもありましょうが、この前の知事選挙におきまして、自民党の中が二つに割れて、社会党の推薦する候補者を自民党の一部の方が推された、こういう関係から、その選挙をやった人々が、このお金をおかしいと思って、問題になると困ると思って返したということが端緒になってこれが明るみに出て、それで社会党のほうで告発をいたしたのがこの端緒であるわけであります。この事件につきまして、こういう結果になったのでありますけれども、どうもこの問題については政治的な圧力が相当検察陣に加わったというようなうわさがもっぱらであります。その点について、ある席上におきまして、検察庁の方で、もうこうなったからだいじょうぶだというようなことを言った方があるやに私聞いておりますけれども、県民や国民は、やはりこういう問題に非常に関心を持ち、疑惑を持っておるのであります。したがって、この事件についてなぜ不起訴にしたか、伊尾検事正の談話が新聞には出ておりますけれども、さらに国会において、きのうのきようでありますのでお忙しいと思いましたけれども、この選挙法の特別委員会に法務大臣に出ていただきましてお尋ねをいたすわけであります。この席を通じまして、なぜ不起訴にしたのか、その点をまず法務大臣から最初に承り、こまかい点につきましてはまた刑事局長から伺ってもよろしいと思いますが、基本的にまず法務大臣からこの点の答弁をいただきたいと思います。
#36
○石井国務大臣 ただいまお尋ねの問題でございますが、この問題は、何度も前から国会においてお尋ねを受けた問題でございます。そのたびに私はお答えしておったのでございますが、この告発が行なわれまして以来、新潟の検事当局におきましては、鋭意この問題の証拠を集め、各方面の調査に従事いたしまして、いままで時を費やしまして、あまり長くかかるというので、何かその間においていろいろあるのではないかとさえ言われたのでございますが、それほどたくさんの人がこれに関係をいたし、その間にいろいろ発言もさまざまにあったりするようなこともあったようでございまして、取り調べに時間を要し、またそれに補充的な取り調べの必要も起こってくるというようなこと等で、だいぶ時がかかったと思うのでございます。検察局の立場といたしましては、いつも検察陣がとっております態度、厳正にして公平なる態度というものを一日も乱したことはないと私は思っておるのでございます。また、これに対しまして政治的な何かの圧力が加わったのではないかという問題につきましてもよくお尋ねを受けたのでございますが、これはそういうことは絶対になかったと私は思っております。私の知る限りにおいては、ないのでございます。私自身がそういうことに働きかけたことも全然ないということを、この機会にまたあらためてはっきりと申し上げておくのでございます。
 この塚田君の問題でございますが、昨年十月にこの告発を受けましてから、いろいろ調べまして、ただいまお話しのように、大体二十万円見当、四十二名の者に対して贈ったという事実ははっきりしておるのでございます。これが、昨年十一月行なわれました知事選挙に関する選挙運動報酬の趣旨で行なわれたかどうかということが問題点でございまして、その点をつかまえてずっと追及いたしたのでございますが、断定することはどうしても困難な状態でございました。したがいまして、公職選挙法違反といたしまして公訴を提起いたしまして、これを維持するに足るだけの証拠がないとの結論に達しましたので、去る四月十一日、犯罪の容疑不十分の理由で不起訴処分に付したわけでございます。その経過その他については、できるだけ詳しく申し上げることがいいと思いますので、これは刑事局長から申し上げます。
#37
○畑委員 法務大臣から、いま概略の御説明、御答弁がございましたが、ほかの四十二名の人たち、いわゆる金を受け取った方々は、選挙に関していただいたものと思うと言うておる。ところで、知事のほうは、最初から終わりまで、県政に御協力願った一般的なお礼である、報酬である、こういうような答弁をしておったようでありますけれども、知事は、ノイローゼかなんかで伊豆のほうへずっと行っておった、こういう話でございます。こういう場合に、片方でそういった選挙に関してもらったものだというふうな自白をいたしておる場合に、片方も身柄拘束をしなければ、なかなか真実をしゃべらぬものである。それを、塚田知事の身柄は全然拘束をしてない。呼べば来るから拘束はしなかった、こういうようなことを地検の検事正も言っておりましたけれども、身柄不拘束は原則です。もちろん、原則であることはわかっておりますけれども、こういう事犯で、そのためにこそ不起訴にせざるを得ないというようなことであるならば、なおさら、身柄を拘束をしてそして真実を糾明するということが必要であったと私は思うのでありますが、この点につきましては、身柄拘束をさせないというようなことを高検あるいは最高検のほうで指図をしたのか、あるいは地検だけの考えで身柄拘束をしなかったのか、その辺をひとつ承りたいと思います。
#38
○津田政府委員 塚田前知事の身柄拘束の要否の問題でありますが、もとより御承知のとおり、捜査は任意処分によることを原則とするわけであります。ただ、逃走のおそれがあるとか、あるいは罪証隠滅のおそれがある場合、その他一定の理由がある場合には身柄拘束をいたすたてまえになっておりますが、これは今回の事件に限りませず、一般的にさようであります。特に塚田前知事につきまして、同人が選挙後の疲労等のために伊豆等で療養を続けた、あるいは入院したというような事実が長く続いておりますのみならず、その間に関係証拠も相当収集することができますし、塚田前知事も検察当局の取り調べにもそのつど応じておりましたので、諸般の事情に照らしまして身柄拘束の必要性は認められないという判断から、強制処分をするに至らなかったわけでございまして、これはもっぱら現地検察当局の判断によるものでございます。
#39
○畑委員 身柄不拘束が原則であることはわかっておりますけれども、しかし、われわれが扱っておる事件などにつきましても、身柄を拘束しないでもいいと思うようなものを、どんどん身柄を拘束しているのです。しかも、一人頭二十万円を贈った知事は、ノイローゼだということで、ただ簡単な、町医者かなんかの診断書かなんかで済ましておるという、それが私はわからない。こういう場合には――総額一千万にもなるんですからね。だから、やはり厳としてそういう立場で貫くべきだったと私は思うのです。そうしなければ、いらっしゃいということでは、なかなかほんとうのことは申しませんよ。もうちゃんと知り尽くしている千軍万馬の人だから、そういうのはやはりぴしっとやるべきだったと思う。やらないから、とうとう最後まで言いのがれた。結局その自白が少しも得られなかったということが、今度の不起訴の場合のキイポイントだ。どうもそんな感じがするのです。それならば、ほかの事件につきまして、検察庁は今後とも身柄不拘束が本則であるという立場を完全に貫いてもらいたい。それが貫いてない。私、弁護士として活動しておりますが、ずいぶんそういう事件が多い。つまらぬ事件で、逃げも隠れもしない事件で身柄拘束をしておる事件がたくさんあるわけです。そうでなくても、一千万円の金を贈ったという点に関しては贈収賄になるでしょう。私は、選挙違反にならなければ、少なくとも贈収賄になるんじゃないか、こういうような感じがします。しかも金額は二十万。この金額の二十万というのが何としてもキイポイントだ。一人頭二十万というのが、県民も国民も納得できぬ一つの大きなポイントだと思う。こういう点にもう少し厳然たる態度がほしかったと思う。
 それでは、その次に申しますけれども、どうも新潟の地検のほうでは、伊尾検事正あるいは丸物次席検事、こういった人たちは、私も一度会いましたけれども、非常に積極的にこの事件は糾明をいたしますということで、われわれもその熱意を買いました。確かにそういうつもりでやっておったと私は思う。これは珍しいケースだということで、私らも敬意を表したのであります。相当やっておったことには間違いないと思いますけれども、どうも今度の場合には、検察一体の原則といいながら、その検察一体の原則が、私は悪い方向に使われておるというような感じがしてならない。最近最高検はずいぶん政治的に動くようになったように、われわれ、いろんなことでそんな感じがいたしておるのであります。なるほど、これはこの前の造船疑獄の指揮権発動の場合とは違う。石井さんが、そういう指揮権を発動しているとは私も思わぬのですが、そういう意味でなくて、造船疑獄の指揮権発動の新潟版だ、こうわが党の成田書記長も言っておりますが、そういう意味で、検察陣仲間での検察一体の原則の美名に隠れて――地検のほうでは、何とか起訴しようということでがんばったそうであります。それなのにこれが受けられなかった。その理由は、証拠が足りない証拠が足りないということだった。地検では、どうやらこれで起訴できる、こう思っておるのに、上のほうで、これではだめだ、やり直せ、これではだめだ、またやり直せ、こういうことで、最後には、相当時間をかけた上で塚田知事がやめた。そこで不起訴にした、こういうような感じがきわめて強いのでございますけれども、こういった指揮権発動的な、検察一体の原則に隠れたそういう態度が見えるのでありますが、その点は、あなた方は、言われても、そうだというような返事はできないと思うのですが、そういう気配はなかったかどうか、承りたい。
#40
○石井国務大臣 私が知っておる限りにおいて、そういうことは一つもなかったと思うのであります。この問題につきまして、こういうふうにしょう、ああいうふうにしようというふうなことで、差し出がましく、いまのような政治的心持ちを持って指揮をしていくというようなことが最高検のほうにあったような空気を私は一向察知いたしておりません。私はそうでございます。
#41
○畑委員 大臣としてはそう答弁せざるを得ないと思うのでありまして、こういうものがそういうはっきりした形で出るわけのものでもございませんし、何となく――何となくというのが一つの圧力でありますから、これはそういうことを聞いても無理かと存じます。
 そこで、今度知事が事前にやめる声明を発表した。それで、結局やめて、現在、選挙、あした告示ということになっておりますが、その知事の辞職ということがこの不起訴と関連があるのかどうか、やめたことでもあるしということで、それも不起訴処分の大きな要素になっておるかどうか、その点を承りたい。
#42
○津田政府委員 本件は、先ほど大臣が申しましたように、嫌疑不十分として不起訴にいたした事件でございます。証拠を検討いたしました結果、嫌疑不十分であるという結論に達したわけでありまして、塚田前知事が辞職をしたということは、本件の処分には何ら関係はございません。
#43
○畑委員 しかし、いまになるとそうは申しますけれども、処分の決定がこれほどおくれたということがどうも解せない。私たち十二月に新潟へ参りましたが、そのときは、大体供述をうまいようにしない議員さんたちを検挙いたして、その結果は、趣旨に沿うような供述をしたようであります。そして塚田知事もその当時それまでに一回か二回喚問をいたしておる。したがって、おそらく一月の早々には結論が出るであろうというふうにわれわれも思っておったのでありまして、また、地検でもそういうふうにしたいということを言っておりました。ところが、延びも延びたり、ずいぶん延びたものだと思うのでありまして、こういう点は、そう延ばしているうちに塚田知事の辞意がおそらく表明されるであろう、そういうようなことになれば、ひとつそれも加味して不起訴にしてもたいした反発はなかろう、こういうような見込みも相当あっておくらしたのではなかろうか。補充捜査補充捜査ということで二回ばかりそういう会合があったようでありますけれども、それもあるかとは存じますが、補充捜査でそう長くかかるはずはない。だめなものはいつになってもだめなんで、補充捜査によってそんなにいい結果が得られるはずはない。あのときから私はおかしいと思った。そういう点はいかがですか。関連はないと言っても、少しはあるのじゃないですか。
#44
○津田政府委員 本件につきまして嫌疑不十分にいたしたことにつきましては、いかなる理由によるものかということになるわけでありますが、これはやはり問題は本件起因の趣旨の点であります。しかし、趣旨の点につきましては、非常に複雑な証拠関係がございまして、これをはっきりと判断することはなかなか困難であるという事情があるわけであります。そこで、検察当局におきましては、この件について東京高等検察庁の指示を受け、あるいは相談をいたしたわけでありますが、その席でいろいろな議論が出てまいりまして、結局、さらに問題点の検討、補充捜査をいたさなければ事の真相をはっきりすることができないというようなことから、時間的に延びてまいったわけでございます。新潟地検から東京高検に指示を受け、ないしは相談に参りましたのは、二月上旬の終わりころの時期でございますので、やはりその後これだけの日時を要することはやむを得ないことでありまして、また、不起訴裁定書の作成等につきましてもやはり若干の日時を要することは当然でありますので、こういう日時の結果になっておるわけでございます。
#45
○畑委員 この問題については、末端の地検等では非常に熱心に熱意を込めてやった。ところが、どうも高検ないしは最高検のほうがそういう政治的な意図もあって、技術的な公判維持というようなことの名目に隠れて、じわりじわりと、そうでないような方向に押しつけてまいった。そこで、地方の検察陣といたしては、とてもこれではわれわれまじめにやっておるやつはつとまらぬということで、職を賭してもというようなこともあったやに私は漏れ承っておるのです。そういうことを聞くにつけても、私は、やはり検察庁はもっともっと検察陣の尊厳をかけてやるべきだと思う。先ほど最初に私申し上げましたが、疑わしい点はある。あるけれども、これほど問題になった事件、一人頭二十万円という、四十二名に対し、選挙に関してあるいは県政に関して御苦労だったという名目で二十万ずつ出したという相当な金額の問題、こういう問題についてはやはり起訴をして、無罪なら無罪でいいじゃないか、国民は、そうすれば、裁判官のほうが検察庁よりもっといまの段階では信用するのです。検察庁も信用しますが、今度の場合などでは、私は一般の人は信用しないと思う。そういうことを隠さずに、むしろ裁判のほうに出して、そこで黒白をつけてもらうということが必要でなかったかと思う。それに関連して思い出されますのは、われわれ国会議員の仲間でありまする参議院の亀田議員ほか何名かの国会内での事件、あの事件などは一審で無罪になっておる。ところが、それに対して検事控訴をされた、こういうようなこと、結局最後にはやはり無罪になりましたが、こういうことについてはきわめて熱心にやる。もういいかげんにあきらめたらよさそうなのに、検事控訴をやる。ところが、こういう事件について国民の疑惑がまだ相当深く残っておるのに、あえて起訴をしない。こういうことが私は検察の尊厳に大きく関係をしてくると思う。そのために私は言っておるのであります。一々こういう点について答弁をしろと言っても無理かもしらぬけれども、私はどうしても国民と一緒にこの問題については割り切れないものがある。その点、国民がどう思っておるだろうか。その点はどうですか、法務大臣、私はそういった割り切れない気持ち、国民も相当割り切れない気持ちを持っておるのですが、法務大臣としては――法務大臣としてではなくて、一般の国民としての立場でもいいから、あなたとしてどういう感じがいたしますか。
#46
○石井国務大臣 この事件が発表されまして、新聞等で伝えられ、またいろいろなところでこれが論議されるだろうと思いますが、私どもに聞く人があれば、私どもの答え得る点には、はっきり答え得る点だけは答えるつもりでございます。それによって判断されてどうなるかということでございますが、私は、検察当局の苦衷をずっと考えまして、ここまで一生懸命調べてこういう結論しか出せなかった、長い間かかって、公訴を維持するにはどうしてもそれ以上できなかったのだ。それだから、証拠不十分をもって、これを公訴しそのまま維持することができなかったのだ。これは国民もやむを得ざるものとして納得してくれるものと思っております。
#47
○畑委員 以上で私は終わります。
#48
○志賀委員長 堀昌雄君。
#49
○堀委員 最初にちょっとお伺いをしておきたいのは、こういう事案の処分については、起訴、それから起訴猶予、不起訴と、こういう処分があると思いますけれども、その起訴及び不起訴、起訴猶予の取り扱いの区分について、これは事務的なことでありますから、刑事局長のほうからお答え願います。
#50
○津田政府委員 検察官の処分を大分けにいたしますと、起訴と不起訴になるわけでございます。起訴につきましては、御承知のとおり、公判請求あるいは略式請求ということ、これは裁判所に処分を求める。それから不起訴のうちには種類がいろいろございますが、犯罪事実は認められるけれども、起訴する必要までは認められないというのが起訴猶予である。それから今回の嫌疑不十分というものも、これはもちろん不起訴でございますが、これは公訴を提起するに足る嫌疑が十分でないということでございます。その他、事実そのものは認めるけれども、そのこと自体はもう犯罪にならない、罪とならずというような処分もございますが、大分けにいたしますと大体そういうことになるわけであります。
#51
○堀委員 そういたしますと、今回の事案は、一般的に国民が受け取ります感じとしては、不起訴というと、何か犯罪容疑はないものであるという部分に該当するような理解のしかたが一般に行なわれておるわけでありまして、普通常識的には、何か起訴猶予というものが、犯罪容疑はあるけれども、公判が維持できないという判断、この判断は検察庁の判断だと思いますけれども、このことは、事実としては疑わしいのだという問題が一つはっきりしておらないと、これは非常に国民として誤解を招くもとになるのではないか、私はこう思うのです。ですから、法務大臣にお伺いをいたしますけれども、さっきあなたもお答えになりました、公判を維持する容疑不十分ということは、これは現段階としての皆さんの判断でありましょうけれども、しかし、少なくとも調査の結果としては容疑はあった、ただし公判を維持するには不十分だ、こういうふうに私は理解をいたしたいと思いますが、法務大臣の御答弁をいただきたいと思います。
#52
○石井国務大臣 いろいろな点で、たとえば二十万円贈ったというようなことは事実を認めておるので、この問題がどうであるかということで一つの問題点になった。しかし、それの容疑が不十分であるということで不起訴になったわけでございます。容疑を起こしたのでございますが、容疑が不十分であって不起訴になった、こういうことでございます。
  〔委員長退席、小川(平)委員長代理着席〕
#53
○堀委員 では、もう一つお伺いいたしますが、容疑があったという事実は、どういうことであったのですか。
#54
○津田政府委員 本件事案におきまして、二十万円の金員の授受がありましたことは、これは明らかな事実であります。問題は、この金員の趣旨いかんということにかかるわけであります。そこで、その趣旨いかんという問題につきましては、これを肯定するような証拠もございます。これを否定するような証拠もございます。その証拠関係は非常に複雑であります。そのほか、本件をめぐりますところの新潟における種々の情勢というものも事実としてあるわけであります。そういう情勢を判断し、本件の直接の各種の証拠を判断いたしました場合に、本件の金員を渡した趣旨が、選挙運動のために渡したということを認定するに検察官としては足りないというふうに判断いたした次第であります。
#55
○堀委員 いまのお答えで、選挙運動のために金を渡したという趣旨を肯定する事実がある、こういうふうにおっしゃいましたね。肯定する事実というのはどういう事例でございましょうか。
#56
○津田政府委員 一々の証拠の内容を申し上げることは差し控えさしていただきますが、要するに、選挙運動の趣旨であろうと思ったというようなことを供述している人もあるわけでございます。それらの供述については、後にいろいろそれが変わってくるということもございますし、その供述をしたときの状況から見て、はたしてさように思ったというのが真意であったかどうかという点についても問題がある。すなわち、諸般の状況から内容に粉飾があったのである。非常にこれを過小に評価して言っておる者もありますし、また、過大に評価して言っておると考えられる者もありまして、全く千差万別である。そういうような点を判断して結論を出しておる。まあそればかりじゃございませんが、そういうことも判断の資料になっておるということでございます。
#57
○堀委員 いまのお話は、受け取っておる人がみな実は政治家でございますね。一般の市民でございませんから、そこで、政治家というものは、ある時点における発言が自己に有利であるか不利であるか、特に政治的な関係において有利であるか不利であるかとかいう判断をもとにしてその証言が変わることは、私はあり得ると思います。あり得ると思いますけれども、そういう場合に、検察側としては、当初の発言がやはり一番重要なのではないのか。一番最初に、それはそう思って受け取ったということを、必要がなければ言うはずがないわけでありますから、そう言っておるものがその後に変わってきて、実はあのときはああ言ったけれども、あれは間違っていたということを、検察というところはそう簡単に受け取られるのですか。私自身、もう何ら意図せざる、ほんとうに私としては無関係だと思われる選挙違反にかかわり合いを持って、これについては昨年の十二月に大阪高裁で判決がおりましたから、この問題の処理はつきましたけれども、その経過の中を見ますと、もう私どもとしては常識で考えられないようなことを、警察で強制処分に処して、そうして初めてそういう強制処分に処された人々から、私どもとしては誘導尋問ではないかと思われるような方法によって証言をとって、それが起訴事実として起訴されておるという例は、選挙の関係では非常に多いわけです。たまたまこの場合についてだけは皆さんはきわめて寛大に、当初の発言が肯定しておったのを、その後の事情によってそれが非常に変更があれば、それもまた認める。私が特にこの問題をいま取り上げておりますのは、選挙違反の問題が、その立場や身分や置かれている位置によって起訴、不起訴に処分の変更があるということは、これはきわめて大事な問題だと思っております。われわれがこの委員会でこの問題を取り上げておりますのは、何も塚田さんを起訴にしろとかなんとかいう問題ではないのです。検察の取り扱いは少なくとも国民すべてに対して公平であるという原則が明らかになってこないと、しばしばそのために相当多くの者が、選挙違反の問題については問題のある処置のしかたが行なわれておるということが私どもの周囲にあるわけです。私は、そういう公正を守るためには、ことに身分が知事あるいは県会議員であるような人たちにとってはきわめて重大だと思うから、特にお伺いをしておるわけですけれども、それでは、今後の選挙違反全般について、当初に発言をしたけれども、その後の事情によって発言に変更があって、その他の事情を勘案してそれはあり得るということになれば、その場合には取り上げるということが、検察側の考え方としてあるのかどうか、その点を一般論としてはっきりお答えをいただきたい。
#58
○津田政府委員 供述の内容が真正な証拠として用いられる場合につきましては、当初申したこと、あるいは事後に申したこと、あるいは中間に申したことというようなことによりまして、どういう法則があるかということは、これはございません。全くこれは不規則なものであります。何が真相に合致するかという問題に帰着するわけです。そこで、当初は違うことを言ったが、中間に言ったことが正しいということもございます。これはしばしば経験するところであります。そこで、本件につきましては、十月二十一日の新潟日報、すなわち、十月二十五日の告発以前にすでに新潟日報にこの種の内容が出ておる。本件の検察の取り調べは告発後に行なわれた。そこで、もうすでにこの事実につきましてはいろいろなことが取りざたされたということは、当然考えざるを得ません。したがいまして、第一回に検察側が取り調べました際にいかように言ったかというようなことは、もうやはり一応影響を受けているという頭をもって判断をする必要がある。あるいは受けていないかもしれません。そういう意味におきまして、かなりこれは事前に事柄の内容が外部にわかっておりますので、非常に捜査に困難を来たしておる。したがいまして、供述の真相を何であるかということを把握することが非常に困難であったというのが、本件の特色でございます。
#59
○堀委員 そういたしますと、事実を肯定した人と否定した人とが――これの判断というのは、おそらく、受け取った人たち側がどう理解をしたかということが主になっているのではないかというふうな感じがいたしますので、一体その肯定をした人たちというのは、四十二名中大体どのくらいあったのですか。
#60
○津田政府委員 これは具体的事案の内容になりますので、人別と申しますか――人別はともかくといたしまして、大体何人ということはちょっと申し上げかねるのでありますが、要するに、そういう運動の趣旨だというふうに思ったと言う者もあります。しかしながら、中元だと思ったと言うような者もあります。これは言い方はいろいろになっておるようであります。しかしながら、そのときは内容自体についてはほとんど触れられていないわけであります。ただ、金銭の授受があったということを、供与を受けた者がどう考えたかという考えになるわけでありまして、そこの渡した者との意思の合致というような問題になると、非常に困難な問題があります。
  〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕
#61
○堀委員 こういう事案が起きたときに、渡したほうの者が自己に不利な発言をするとは私ども思われません。ですから、渡したほうの者が、選挙のために渡したなどと言うことが起きるはずはないと思います。これは一般的なルールとしてそういうことはあり得ない。また、憲法は、自己に不利な証言はしなくてもいいとなっていますから、それはないはずです。そうすると、この判断というものは、やはり客観的な事実に基づく判断でなければ、いまあなたのお話のように、いろいろな事実関係から御判断をなすったと思いますけれども、受け取った者が、ともかくそういうふうなつもりで受け取ったと言う者があるということは、それが後にどうなったかは別としても、いま少し議論を進めれば、ほんとうはそういうものが一体ウエートとしてどのくらいあったのかということは、私どもとして非常に関心のあるところなんです。ただ一人だけがそういうことを言って、四十一人はみんなそうじゃないというのなら、話は別でありますけれども、複数でだれかがそういうふうな感じで受け取ったということであるならば、そのことは、やはり立証するに足る一つの事実ではないのか、それを客観的にどう判断するかということが皆さんの一つの仕事ではないか、こう思うわけです。
 そこで、もう一つこれに関連して伺っておきたいのですけれども、一体この四十二名約八百万円以上にわたる金、この金は公金なんですか、それとも、塚田さん個人の金ですか、あるいは政治的な後援会その他から出ているのですか、この金のもとはどこから出ているのですか、ちょっとそこをお尋ねしたい。
#62
○津田政府委員 本件の供与されましたと申しますか授受されました金員は、塚田前知事の個人の分でございまして、公のものとは全然関係がございません。しかしながら、その出所そのものは、これはもちろん捜査してございますけれども、申し上げることを差し控えさせていただきます。
#63
○堀委員 私はいまのお話のもとが非常に重要な関係があると思うのです。純粋に個人の金であるならば、やはりその個人の金としての裏づけは、少なくとも八百万円という金は、課税対象の問題もありますから、所得税その他の関係からずっと押していけば、一体どこまでが個人の金であるかということはわかると思います。もし政治資金として後援会その他から出ておるとするならば、これは明らかに選挙関係の費用とみなさなければならぬ。政治資金規正法との関係から見ても、それはお礼に渡せる金ではないわけです。この点は事実関係だから答えられないとおっしゃいますけれども、私は非常に重大な点だと思うのです。だから、その金が何かは別としても、私がいま区分けをしたような公金でないということになれば、純粋に個人の所得に基づいてあった金なのか、後援会その他政治資金規正法に基づいて集められてそれから出てきた金なのかということは、これはあなたお答えになってしかるべきだと思うのです。これは非常に重大なことですから。
#64
○津田政府委員 本件は政治資金とは関係がございません。
#65
○堀委員 政治資金に全然関係がないということになると、今度は課税上の問題になりますが、要するに、この問題は、そうすると一時所得その他そういう形のものになっておるのかどうか、この点をちょっと伺っておきたいと思います。私どもはあとで国税庁に対して要求をいたしますから。
#66
○津田政府委員 内容にわたりましてお答えをしにくい点でありますけれども、ただいまの御質問がそういう点にかかっておりますから――本件の金員は借り入れ金であります。
#67
○堀委員 わかりました。
 その次に、私はもう一つ非常に心配をいたしております点は、自治大臣、よく聞いておいていただきたいのですが、この案件が不起訴になるということは、一つは、今後こういうことを各地方自治体の首長、知事や市町村長が全国的に行ない得る道を開くことになると思うのです。これは公職選挙法上きわめて重大なことなんです。金を渡したのは、県会議員の中の自由民主党の諸君だけに金を渡しておるわけです。全体の者に渡したというのなら、これは私は選挙に関しないと思います。自民党も社会党もそういう各派の人に全部にお渡しをしたというのなら、たいへんお世話になりましたという意思のあらわれとみなしてもいいと思うのですが、残念ながら、これは要するに自由民主党の関係者だけに渡してあった。自由民主党の人たちだけにお世話になっているわけではないのです。そうでしょう。皆さん方、国会でわれわれがこうやっているときに、あなた、自治大臣として、法案の審議その他について自民党の議員だけに世話になっていると思いますか、それを先に自治大臣のほうに伺っておきます。
#68
○永山国務大臣 皆さんのすべての御後援をいただいておると思います。
#69
○堀委員 私、そうだろうと思うのです。議会というものは、なるほど立場の相違はいろいろありましょう。立場の相違はありましょうけれども、要するに、首長である人たちの立場から見れば、やはり協力を得ていないということにはならないと私は思うのです。それなら、お礼をするということは、全部にお礼をしなければおかしいじゃないですか。自由民主党の人たちだけにお礼をするということはどういうことでしょうか。これについては法務省はどういう見解で理解をされますか。
#70
○津田政府委員 本件金員授受の趣旨につきましては、結局、運動報酬であるという嫌疑が不十分であるという結論でございますが、中元に際して、党人としての県政協力に対する感謝の意を表するという意味であるという趣旨も弁解として出ておるわけです。そこで、それらの点につきましていろいろ検討いたしました結果、本件につきましては、これは選挙運動のためになされたものであるという容疑は不十分であるという結論を出さざるを得なかった、こういうわけであります。
#71
○堀委員 そうすると、これは法務大臣にお伺いをいたしますが、今後こういう事例が全国で起きたときに、法務省としての処置は、これは一つ前例になるわけですよ。そういうことでいいんですか。要するに、二十万円、三十万円という大金が、自分たちの選挙の前に、任期の終わりに、お世話になりましたといって渡されて、それでいいんですか、法務大臣。そういうことが前例になっていいと、あなたは政治的に御判断になりますか。
#72
○石井国務大臣 塚田君は問題にならぬと思うて渡した金がこれほど問題になったのでありますから、こういうことが他山の石となって、ほかのほうでは今後気をつけるようになるだろうと私は思うております。
#73
○堀委員 さっきの刑事局長の御答弁では、辞職は本件の処分に関係がないのですよ。はっきりしたわけですね。辞職が本件の処分に関係がない。辞職をなぜしたか。道義的、政治的責任だ、こういうことになっているわけですけれども、しかし、案件自体から見れば、辞職が本件の処分に関係がなければ、やってもかまわぬということにはなるわけですよ。道義的、政治的責任などと言われても、塚田さんは最初にやったからこれだけ問題が起きたけれども、これは不起訴処分なんだ、こういうことになって、辞職したのは、あれは全然別個なんだ、それはかってにやめたんだということになれば、この次にこういう事実が起きることに対しては、この場合何らそれを制止するというか、そういう力はないんですね。私はそう判断する。だから私どもは、選挙法の問題の取り扱いについては、その事案そのものの取り扱いも重要でありましょうけれども、その後に起こると予想される一連のそういう行為に対しても何らかの歯どめがあるべきではないのか。取り扱い上は、そういう意味では、私は、まあいまのいろいろなお話の経過から、非常にむずかしい問題ではあると思いますけれども、起訴猶予が相当ではないかという感じがするわけです。そうなっておれば、これは場合によっては起訴されるおそれもあるということで、歯どめはかかるのではないか。私は起訴をしろという言い方をしておるわけではないけれども、このことが、これはもうやっても検察側は不起訴にするんだ、前例があるんだ、こうなったのでは、私は非常に問題だと思う。おそらく、これから渡す人は、たいへんお世話になりました、これは何ら政治的に関係はございません、お礼でございますと言って、三十万円、五十万円の金を渡して――それも、いまお話を聞いてみると、借り入れ金だそうであります。知事になれば、在職中の問題もあり、いろいろありますから、各種金融機関は一千万円やそこらの金はすぐ出しますでしょう。そういうようなことが行なわれるということは、これは私はゆゆしき問題だと思うのです。法務大臣、その点についてどうお考えになりますか。私がここで申し上げておるのは、もしこのような事例がこの次に起きたときは、それじゃどうなるか。それはもうそのときの事案の関係だ、こうおっしゃるかもしれませんけれども、少なくともいまの経緯の範囲から見るならば、うまくやれば不起訴だ、こんなことはかまわぬのだということが私はここで立証されたと思うのです。法務大臣、いかがですか、これからこういうことを起こさないという保証がありますか。
#74
○石井国務大臣 法の上で、法を守るという立場から厳重にやっていくことが、私らのほうの立場としては当然のことである。また、政治家としてこういう問題を見まする場合において、こういうことがあっては問題を起こす、こういうことのないように、そうしてもっときれいな形でいこう、もしそういう金があるならば、こういうふうな問題の起こるような場合でないときにきれいな形でやるというような注意をする、そういうような、これはまあ各個各個の人の良識、まあ世の中の声というものを聞きながら、みんなの良識に待つよりほか私は方法はないと思うのですが、そのくらいなことは、私はだんだんよくなっていくのだと思うのでございますが、どうでしょう。よくなると思うのです。このために、これをまねてこのとおりやってやろう、うまい汁を吸ってやろうなどということは私は出てこないと思います。
#75
○堀委員 警察庁、入っておられますか。――入っていませんか。それじゃいいです。私、ちょっとはっきり記憶はないのですけれども、岐阜県ですか、どこかで、やはり同じように、市長であったか町長であったか、やめる前に、これを見習って金を渡したという事案を新聞で見た記憶があるのです。ちょっとつまびらかでないのですけれども、警察庁がいればわかるかもしれないのだが、そういう点については法務省のほうでは御記憶ありませんか。
#76
○津田政府委員 法務省には何ら報告はございません。
#77
○堀委員 今度の問題については、私はその判断は国民がすると思います。国民がすると思いますけれども、さっき同僚畑委員が触れましたように、やはりこういう非常に疑いの多いものは一応起訴をされて、たとえ公判が維持できなくても、その判断は裁判にゆだねるべきではないのか。国民が非常に疑惑を持っておるようなものを、一方的にこういう処分をされたことは、検察庁として何か割り切れないものを国民が抱くのではないか。そのことは、検察というものの公正という立場から見て、私は非常に遺憾だと思っているわけです。公判が維持できなければ、容疑があるけれども不十分だからやめるという問題は、問題のあり方によるのではないかと思います。この問題が将来に及ぼす影響、あるいは選挙というものの持っておる非常に複雑な内容、こういう事案に関しての内容等については、やはりその判断を裁判所にゆだねるという姿勢のほうが必要なのではないのか、私はこう思いますけれども、そういう問題について重ねて法務大臣の見解を承っておきたいと思います。
#78
○津田政府委員 現在の検察における考え方をまず最初に申し上げます。
 御承知のとおり、もちろん、事実の存否の判断は裁判所が最終的に行なう、しかしながら、検察官としては有罪を求めるわけであり、有罪の裁判の認定が下ることを目的として、諸般の攻撃活動あるいは防御活動をいたすわけであります。その検察官が、みずから嫌疑不十分であると信じながらも、これを世間の疑惑を解くために起訴するということは、現在の検察の立場としてはこれをいたしておりません。そういうことをいたしますと、事件ごとによっていろいろその判断といいますか、結論を変えなければならない。これは容疑の程度は同じであるが、こちらは問題の事件だから起訴しておこう、こちらは何でもない事件だから、問題にならないような事件であるから不起訴にしておこうというように、事件ごとにいろいろ検察が判断をして区別するということは、検察の公平を害することでございます。したがいまして、検察官といたしましては、有罪の判決を得るだけの嫌疑十分でなければ起訴すべきでないという立場を現在堅持いたしておるわけでございます。それに照らしますと、本件につきましては嫌疑不十分であるということになるわけでございます。それはなるほど問題の事件であり、起訴しておけば、あまり批判をされなくていいじゃないかという考え方ももちろんあり得ると思いますけれども、現在の検察の立場は、さような立場をとっておりません。これは検察そのものの行き方として、外国にはあるいはそういうこともあると考えておりますけれども、現在の日本の検察の立場は、九九%に近い有罪率を持っておる、あるいは交通事件を入れますと九九%以上の有罪率になっておりますけれども、そういうことは、やはり国民が起訴された者につきましてはそういう結果になるということを評価して、すでに検察の起訴というものを理解しておると思うのであります。したがいまして、その標準を変えますことは、これは将来無罪が出る率が高くなることも当然でありますが、それはともかくといたしまして、事件ごとにさような判断をいたしていきますことは、やはり検察が政治的な判断をすることになるので、これは避けるべきものと私どもは考えております。
#79
○堀委員 私は今度のこの判断を見まして、選挙違反については、小さな、ほんとうに零細な違反がたくさん起訴されて、たくさん処分をされています。そしてそれが、いろいろ言われますけれども、事実は選挙違反を主たる目的としていなくて、しかし結果としてはいろいろな法律上からそれを選挙違反と判断するという処置がされて起訴されているものが多数にあると思います。ですから、私どもは、やはり法律を適用する場合には、公平平等の処置が非常に重要だと思いますし、これだけ問題になって、二十万円というような多額の金銭の授受が行なわれて、一般的な常識としては、さっき私が申し上げましたように、自由民主党関係の県会議員にだけ配られておるということから見ましても、県民、国民は、決してこれは単なるそういう慰労の金だとは理解しない。私がさっき申し上げたように、また自治大臣がお答えになったように、世話になっておるものは与野党みな一緒だというのが常識でありますから、全部に渡されておるならば話は別ですけれども、特定の者だけに対して二十万円もの巨額の金を与えたという事実は、皆さんのほうはそうおっしゃっても、国民の疑惑は非常に大きい。そうして、そのことは何かというと、高い位置にある者の選挙違反、権力に近い側の者の選挙違反は適当な処置がされて、一般にいわれることでありますけれども、選挙が終わったあとの選挙違反の摘発は、落選者にはきびしく、当選者には甘いという一般的なこともわれわれの耳に入るわけでありますが、そういう意味では、今度のこの検察の取り扱いは、ややそういうものを助長した疑いがある感じを国民に与えるのではないかという点が、当委員会としてはきわめて重要な問題点だ、こういうふうに私は理解をしておるわけです。
 そこで最後に、法務大臣、自治大臣から、この処置はこの処置としても、今後は、地方自治体の首長等は、そういう時期に、名目のいかんを問わず、そういう金銭の授受を行なうことは、これは選挙違反に該当するおそれがあるから、やるべきではないという、この点は明らかにしておいてもらわなければ、単にこの不起訴処分だけでは、陸続としてそういうことが行なわれるおそれが十分にあるし、そのことを正当化するようなことが政府の行為であってはならない、こう思いますから、法務大臣、自治大臣から、今後のこの問題についての処置につきまして、地方自治体に対して何らかの意思を明らかにしておいてもらいたい。地方自治体の首長のそういう行為に対して、こういう点について両大臣からひとつ明らかな言明をいただきたいと思います。
#80
○石井国務大臣 ただいまの御趣旨は賛成でございます。しかし、法務大臣が、そういう場合、こういうことがあったら今後罰するぞというようなことを周知せしめるような方法をとるべきものでもないと思います。政治的にぜひこういうものは問題の起こらないように、そうして国民から政治の信頼を失わないような方向にいかなければならぬということには御同感でございますが、そういう方向についてのいろいろな方法を考えたいと思っております。
#81
○永山国務大臣 国民の疑惑を受けるような行為は断じてないように慎まねばならぬと思うのであります。ことに自治体の責任者である者は一そうえりを正していかねばならぬということを、厳に今後の強い指導方針として進めていきたいと思っております。
#82
○堀委員 終わります。
#83
○志賀委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十四日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開くこととし、これにて散会いたします。
   午後零時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト