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1965/04/27 第51回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第051回国会 外務委員会 第13号
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1965/04/27 第51回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第051回国会 外務委員会 第13号

#1
第051回国会 外務委員会 第13号
昭和四十一年四月二十七日(水曜日)
   午前十時十五分開議
 出席委員
   委員長 高瀬  傳君
   理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君
   理事 永田 亮一君 理事 三原 朝雄君
   理事 毛利 松平君 理事 穗積 七郎君
      愛知 揆一君    野田 武夫君
      濱野 清吾君    増田甲子七君
      森下 國雄君    帆足  計君
      竹本 孫一君    川上 貫一君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 椎名悦三郎君
 出席政府委員
        法務事務官
        (入局管理局
        長)      八木 正男君
        外務政務次官  正示啓次郎君
        外務事務官
        (アジア局長) 小川平四郎君
        外務事務官
        (北米局長)  安川  壯君
        外務事務官
        (欧亜局長)  北原 秀雄君
        外務事務官
        (条約局長)  藤崎 萬里君
        厚生事務官
        (援護局長)  実本 博次君
    ―――――――――――――
四月二十七日
 委員宇都宮徳馬君辞任につき、その補欠として
 増田甲子七君が議長の指名が委員に選任され
 た。
同日
 委員増田甲子七君辞任につき、その補欠として
 宇都宮徳馬君が議長の指名で委員に選任され
 た。
    ―――――――――――――
四月二十六日
 旧満州国残留邦人の調査及び救済に関する請願
 (上村千一郎君紹介)(第三四八五号)
 ベトナム戦争反対等に関する請願(川上貫一君
 紹介)(第三五五一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国際情勢に関する件(ヴィエトナム問題等)
     ――――◇―――――
#2
○高瀬委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
#3
○帆足委員 さきに椎名外務大臣は、モスクワを訪問なされまして、新聞の伝うるところによりますと、グロムイコ・ソビエト外相がまた適当なときにこちらを訪問されるという報道を読みました。もちろん平和のためのこういう有力な政治家の交流は、時と所を得れば効果的であると思っておりますけれども、また時と所を得なければ必ずしも効果的であるかどうか疑問な点もあります。きょうの新聞によりますと、ソビエト大使がしばらくモスクワに帰っておりまして、東京に帰ってきましたあいさつを兼ねて外務大臣にお話があったということですが、新聞報道だけでは必ずしも正確を期し得ませんから、外務大臣から外務委員会に御説明のほどをお願いしたいと思います。
#4
○椎名国務大臣 先般大使が帰ってきたそうでありますが、私にではなくて、事務次官にあいさつしております。それで依然としてグロムイコ外務大臣の訪日の日取りはまだきまっておりません。訪日したいという気持ちは非常にあるらしいので、政府もこれを許しておる、ただ、具体的な日取りがどうもきまらない、こういう状況であります。
#5
○帆足委員 順序不同で二、三気にかかることをお尋ねいたしたいのでございますけれども、アメリカ国務省側の意向として、ベトナムの平和につきまして日本が関係国の平和会議について積極的な態度を示されることを望むというような意思表示があったと伝えておりますが、できるだけ詳細に外務省当局筋の情報を外務大臣から承りたいと思います。
#6
○椎名国務大臣 これは私も新聞記事で見ただけで、何ら公電によって知り得たものではないのです。どうも公電が来るか来ないかもわかりません。ただほんの何かの機会に口をすべらしたという程度のものであって、具体的にそういう計画があるとか、あるいは背景があるとかいう話ではないと聞いております。しかもそれが場所なんかもビルマか日本かというような記事だったのですが、どうも何を根拠にしてそういうことになるのかわからないわけでございます。
#7
○帆足委員 新聞に大きく伝えられましたので、これはどういうことであろうか、私はこの問題については与党としても御関心があろうと思いますが、野党といたしましても一面関心を持ちますが、他面われわれは、これに対して非常に懐疑的であるわけです。と申しますのは、遺憾ながら日本政府はアメリカの外交に同調する立場からわれわれはこれに追随すると、こう言っておりますが、追随するということばは与党の諸君に御不快を与えるならば、まあ同調すると申してもそれはいいでしょうが、そういう立場からグエン・カオ・キという愚劣なかいらい政権に対してむしろ同情的立場に立っているように世間は見ているわけです。アメリカのベトナムに対する内政干渉政策は、もう炳乎たる事実であって、大体私どもふしぎと思っておりますのは、ベトナムの平和またはベトナムの経済的安定を望むという程度ならばこれはまあ妥当なことですけれども、ベトナムでどういう政権が望ましいとか望ましくないとか、また関東軍が張作霖政権を暗殺したようにゴ・ジン・ジェム政権を暗殺しておきながら、自分の立てたかいらい政権が数カ月後にどんどんかわって、そのかいらい政権から呼ばれたと言ってハワイで蜜月の一週間を過ごす。そうして、それがまた国民の反撃にあった今日、ベトナムの国民がみずから民主的に選んだ政府であるならば、たとえ中立政権であっても歓迎せざるを得ないし、かりにベトコンと協調する政府であってもやむを得ないと国務省筋は言い、そうして国防省筋は、断じて社会主義の勢力が南ベトナムに浸透することを許さない。第一、許すとか許さないとか、他国のことについてそういう極端なことを言うのは私はおかしいと思っておるのです。たとえば、もしベトナムの解放戦線の政権が、アメリカには断じて民主党進歩派の進出を許さない、またはゴールドウォーターの進出を許さないとかというようなことを言ったとしたら、それは常識はずれのむしろ外交的発言だと思うのです。アメリカはアジアを何と心得てござる。だれが、どこの世界最高裁判所の所長がアメリカをベトナムの保護者に任命したか。まるで孫悟空が青竜刀を持って一人で主なる神から自分が任命されたような錯覚を起こしてあばれ回っているような風景だと思うのですが、そういうときに日本が冷静に客観的な立場に立って、そうしてこのアジアの悲劇を中立的立場から見ておるならばまだ発言の権利もあり機会もあろうと思いますけれども、残念ながら、今日はどうか存じませんけれども、最初のいきさつからいきますと、政府は少しアメリカの誤った極東政策に、すなわちアメリカのベトナムの内政干渉政策に対して少し同調し過ぎたような感をわれわれは受けております。その日本が、この前も特別使節を派遣して、そうして平和をあっせんする、または外務大臣もモスクワへ参りますときにもそれをあっせんしよう。その主観的ベトナム状況があまりにも悲惨であるから早く戦争を終結させたいという日本国民の全体の気持ち、その気持ちに政府も同感であられるならば、それは気持ちとしてはわかりますけれども、しかし外交のことは議論だけではどうにもなりませんで、現実に即して行なわれねばなりませんが、今日佐藤内閣の外務大臣として、ベトナムに対する日本の態度というものはだんだん移り変わってきておりましょうけれども、どういう態度を堅持しておられるのか、ひとつまず承っておきたいと思うわけです。
#8
○椎名国務大臣 北越、南越両方の政権が存在してそれぞれ相手方をかいらい政権だ、こう言っておりますが、そういう考え方はしばらくおいて、南越というものがやはり共産主義の政権下におりたくない、こういう人々の結集があの南越政権というものの基盤である、こう考えます。それで、その要請によって、他から破壊行動が行なわれているということに対して協力を頼まれておるというのが、今日アメリカがあすこで軍事行動を起こしておる根拠である。でありますから、共産主義政治を欲しない、欲する、こういう両方のたてまえの人々がそこにありまして、それがああいう今日の混乱を招いておる、こう考えております。
#9
○帆足委員 私はただいまの御説明ではよくわからぬのでありまして、共産主義の国々はいま人口約十一億です。資本主義の国々は人口約五億です。今日では社会主義という問題は歴史の常識になっております。共産主義政権が確立する過程において、平和的に政権を取った場合と、それから軍事的に政権を取った場合とありますけれども、資本主義社会においても同じでありまして、軍事的に政権を取った資本主義制度と平和的に政権を取った資本主義制度とあることは両方とも同じことです。たとえば戦犯として東條さんを絞首刑にし、土地革命、自作農解放を行なった。このときはいわばマッカーサーが戦勝国としての権利を行使して、日本においていわば暴力革命を行なったわけです。また中南米その他の軍事独裁政権で資本主義を維持するためにアメリカがこの暴力政権を助けた例はいとまなし、グエン・カオ・キの暴力政権も、これはカオ・キという奇妙な名前に表現されておりますように、これも一つの選挙によって選ばれたものでなくて、暴力によってできた政権であります。したがいまして、社会主義がいいか、資本主義がいいかということは、それぞれの立場の相違、いわば趣味の問題でありまして、資本主義がよくて社会主義が悪いならば、われわれは国賊だということになるわけで、まことに遺憾千万なことでございます。今日の時代、資本主義か社会主義かということは、かつて百年前に封建主義か資本主義かという過渡期があったと同じで、そのくらいのことはもはや常識であります。そうして議会制度の完備した国においては平和的方法によってその政権の移動が望ましい。議会主義すらない国では暴力もまた現実に行なわれておる現実である。そういうことでベトナムにおける過渡期の政治紛争が社会主義政権側においても実力を伴う、資本主義側においても実力を伴うというのは、お互いさまのことである。したがって、こいねがわくは、国際連合の存在しておる今日、国際連合がアメリカ一方に片寄らずに、たとえば国際連合には人口七億の中国が加盟していない、そして安全保障理事会には人口一千万にも足らぬ、私の言ういわゆる焼きイモ一つほどの台湾が加盟しておる、こういうアンバランスのもとではアジアの問題を処理し得ませんから、これと別個にジュネーブ会議が開催されて、それが公平であろうというのが英仏の良識でもあるし、それからまた社会主義国も中国もジュネーブ会議に賛成したゆえんのものはそこにあると思うのです。したがいまして、ただいまの外務大臣の説明は私は説明になっていないと思うのですけれども、それはとにかくとして、グエン・カオ・キ暴力政権とベトナム民族解放戦線との争いがある。これに対してアメリカが自分の利害に反するからといって、独断でこれに内政干渉している。もしアメリカのなさんとするところが天の摂理に合うものであるならば、アメリカ軍だけでなくて、これにソ連軍も入り、イギリス軍も入り、フランス軍も入って、ほんとうに正義の連合軍ならばそれは私は正規の軍隊であると思うのですけれども、入っているのはアメリカとアメリカに追随する金魚のウンコみたいな政権が二、三入っているだけです。ですから、アメリカもアブラハム・リンカーンの子であるならば、もう少し筋道を立てないと世界の軽べつの的になるのではないか。実は「週刊現代」でベトナムの少年少女を縛り首にしておる痛ましい写真を私は見まして、どちらが正しいか正しくないかは別としても、この残虐行為は見るに見かねる。アメリカよ、ベトナムへ来て主人顔をするな、私は、これはスローガンとしては実に名スローガンであると思うのです。それに比べるとわが社会党のスローガンなど実に立て方がへたである。アメリカよ、わが国に来てだんな顔をするな、実にすばらしいスローガンだと思うのです。だれしもそう思うと思うのです。こういう痛ましい情勢に対して、外務大臣はもう少し日本民族らしいりりしい立場をとっていただきたいと思うのですが、結局日本政府に、ベトナム解放軍の政権と、それからグエン・カオ・キというきわめて学識経験の浅い軍事政権との対立に対して、アメリカが内政干渉している、それに対してどういう立場をとっておられるかということをお尋ねしたい。
#10
○椎名国務大臣 どうもあなたとこの問題を論争する場所としては適当じゃないように思われますが、とにかく、そう初めからどちらがいい、悪いときめてかからずに、冷静に見てどっちが相手方を征服しようとしているのか、それをきめる必要があると思うのです。つまり北越が南の政権を粉砕して自分の勢力をあすこに拡張しようという意図を持っておるから、こういう問題が起こるのです。片一方はもう自己防衛に出ておるにすぎない。こういう認識のもとにわれわれはこれを見ておるのです。これ以上あなたとここで議論をして、社会主義がいいか自由主義がいいか、独裁がいいか民主主義がいいかというような討論会をやる興味をあまり私は持っておりませんが、しかし何か政策に関係して御質問があれば答えざるを得ませんから、できることは答えます。
#11
○帆足委員 御遠慮いただかなくても、私もここで外務大臣と論争しようと思っておるわけではない。ただベトナムの問題は、いわば徳川幕府と勤王軍とが戦っておるような問題でありまして、ベトナム解放軍に対して北ベトナムは好意を寄せるでしょう。グエン・カオ・キに対して好意を寄せる勢力がベトナムの中にあれば、それもいいことでしょう。しかしアメリカがこれに好意を寄せて、そしてこれを助けようとしていることは、たとえばアメリカで南北戦争がある場合に、北ベトナムを北軍、南ベトナムのカオ・キの軍を南軍とすれば、それに第三国が干渉する必要はないのであって、勝海舟と西郷隆盛がやり合っておった当時、幕府をフランスが助けようとした、勤王軍を英国が助けようとした、しかし西郷さんは日本のことは日本にまかしてくれといって英国の援助を断わり、勝海舟はフランスの公使に対して日本のことは私にまかしてくれといってフランスの援助を断わって、そして江戸城平和の明け渡しということになったわけです。それと同じように、ベトナム人にそういうことはまかしたらいいと私ども思っておるわけであるけれども、外務大臣は一体どういうお考えを持っておるか。まるでドジョウのようにぬらりくらりとして、外務大臣がどういうお考えを持っておるか、このわずか十数名の外務委員の中の野党の者たちも外務大臣の御心境がよくわからない。これでは困るからお尋ねしておるわけで、外務大臣は、アメリカのいまの政策が完全に正しい、そしてそれを支持するというなら、それも一見識だと思うのです。それは不幸にして非常に愚かなことであるけれども、それも一つの見識である。それならば日本は残念ながら平和をあっせんする資格がないことをわれわれは嘆かざるを得ない。しかし外務大臣は冷静に、アメリカの極東政策はどうも現実に即してないとお考えになり、また北ベトナムに対してこういう点がどうであろうというふうにお考えになっておるならば、これも一見識であろう、こう私は思ったのでお尋ねしたわけですが、アメリカに完全に追随しておって、なおかつ協調ということは私はおかしいと思う。平和を願うということは一体どういうことであろうか、そういう点をお尋ねしたわけですから、もう一度お答え願いたい。
#12
○椎名国務大臣 まず日本の立場ですが、これは傍観者と言っては適当でなければ、日本は当事者じゃないのですよ。やはり傍観者の一つです。アメリカと別の意味で同盟は結んでおりますけれども、このベトナム戦争に関してはいわば傍観者、少なくとも当事者じゃない。ですからこれに対してどういう考え方かといいますと、さっき申し上げたように、とにかく共産主義を奉ずることをがえんじない、そういう人民があって、その上に立脚しているのが南の政権である。その南の政権が北の実力によって平和、独立を脅かされておる。であるからして、アメリカの実力を求めておる。その実力を求めておるのに対して助けるのがほんとうだ、こう思ってアメリカはやっておるのです。だから、色の違ったのが助けるということが、あらゆる場合において、理屈のいかんを問わず悪いことだというならこれは別問題ですけれども、皮膚の色のいかんにかかわらず、主義、政策を同じくして、そしてその協力を求めるということがもし認められるとするなら、いまやっておることは別に侵略でも何でもないのです。
#13
○帆足委員 私は世にもふしぎなことを伺ったと思うのです。日本政府が、いわば、表現は悪いけれども傍観者であるという立場に立っておるということならば、私はそれは日本の安全のためにも一応望ましいのですが、そのあとで言われることは、自分の気に食わない社会主義政権であるからそれは排撃して、今度は気に食ったほうの軍事ファッショ政権のほうを助ける。それは助けるのには限界があるのであって、たとえば武器を送るとか助言をする程度までは国際法上認められておりますけれども、軍隊を派遣して上陸する権利をだれが与えたか、いつアメリカが人類の最高裁判所長になったか、自分でそういう気分になっているだけである。ベトコンにやられてしまって、そしてどうしようもなくなっているというのが現状だと思うのです。もし与党の、すなわち政権を握っている側が援助を求めるからといって助けるならば、野党はみんな国賊ということになる。われわれも平和的手段という方法は違いますけれども、社会主義に世界を持っていこうと考えているわけです。したがって、それはアメリカの気に食わないから弾圧してもいいというように言われてはまことに迷惑しごくである。
 そこで、ただいま外務大臣の言われた与党、時の政権から援助してくれと言われれば援助してもいいというならば、北ベトナムやその他の国々がベトコンを公然と援助していいということを肯定することにもなるわけであって、それは内政干渉ということであって、外務大臣、ただいまの御答弁を少し御修正なさったほうがいいのじゃないでしょうか。
#14
○椎名国務大臣 いや、要請があればこれに協力するというのでありまして、これはいまの国際条約から見てどういう理屈になるかということは、いま条約局長がおりますから、条約局長から申し上げます。
#15
○帆足委員 私は、時間がありませんから、先に言うべきことは言うておきまして、そして十一時十分前に川上さんにきょう質問を譲りまして、また十一時過ぎましてからあと事務的なことを政府委員各位から承りたい、そういうふうに委員長から御指示を得ておりますので、一緒にお尋ねいたします。
 ただいまの外務大臣の御答弁はちょっと──ちょっとじゃなくて、はなはだしい失言であろう、これは御訂正なさったほうがよかろうと私は思います。
 それから、実はお耳にだけ入れておきますが、ソビエトの一等書記官が、自己の住宅のすぐそばで、同じアパートの中で身元不明の一コロンビア人から監禁されようとした事件は御承知のとおりです。これに対しまして警視庁当局はたいしたことではなかったということでうやむやになりそうな状況ですけれども、「週刊新潮」を見ましたところが、このコロンビア求人は身元不明であって、そしてアパートの解約もせずに行くえ不明になってしまっている、奇々怪々たる事件であります。私は、日本のような法治国におきまして、突如として、それがソビエトであろうと、またはカナダであろうと、英国大使館の方であろうと、そういう区別なしに、書記官が突如として監禁され、その監禁しようとした人はどこへ行ったかわからない、もし酒に酔ってのつまらぬトラブルか何かだったら、ちゃんと責任者が残って、そうしてこういう事情であったということを明らかにすべきであるのに、もう行くえ不明になっている、こういうことではいけない。われわれ外務委員としても、法治国たる日本の尊厳にかけて、やはり事を明らかにしておいていただかなければならぬことであろうと思います。日本という国はグエン・カオ・キ並みの政治が行なわれておるのであるまいかという印象を外国に与えるおそれがある。これは厳粛な問題ですから、党派を越えて、こういうことがないようにしていただかなければならない。たまたまこの事件がCIAと関係があるということを一般にいわれておりますが、こういうそんたく、想像が行なわれることも一理あるのでありまして、かつて鹿地事件のときに鹿地君を理由のいかんを問わず沖縄へ連れていって拷問して、そして最後に処置に困って神宮外苑に捨てて逃げた事件があることは御承知のとおりであります。これがまぎれもないCIAのしわざであったということは周知のことでありますが、きょうのニューヨーク・タイムズの特集記事を見ますと、CIAが世界に恐怖をまいておるということはもはや周知のことになっておる。アメリカ外交政策にとってこの機関は重荷になっておる。その存在によって世界至るところに秘密の不法活動、裏面戦術、被壊工作やきたないやり方といわれることがあまりにも多くなっておることにわれわれは憂慮の念を禁ずることができない。ニューヨーク・タイムズに出ておるわけでございます。そのような一環としてこういうことが行なわれたのであるとするならば、グロムイコ外相の訪日にこれが影響はないかというようなそんたく的な、想像的な記事が新聞に出たことも私はいわれなきことではあるまい。したがって、こういう問題に対しては、治安当局も、外務省当局もしっかりした態度をおとりになって、その相手国がソ連であろうと、インドであろうと、カナダであろうと、そういうことは関係のあることではありません。これは白昼ではなく、夜の事件であったそうですけれども、公然とこういうことが行なわれるようなことでは困るのでありますから、後ほど治安当局にこの経過を御報告願います。しかし外務大臣から正式の外交文書をもってソビエトに回答されたかどうか。またどういうふうにこの結末をおつけになるお考えであるかだけを承っておきたい。
 それから、その次に、最近ベトナムにペストが流行いたしておりますから、先般厚木の野戦病院を私ども見学いたしました。今度、朝霞及び狭山の野戦病院を見学いたして、そうして衛生管理上、すなわち一般の日本国民や、看護婦さんや、まかないに従事しておる人たちと病院との関係とか、病院における伝染病等の関係などを一応見学いたしまして、これは純粋に党派を離れて、防疫上の見地から見学したいということを申し出ておりますけれども、一向返事がありません。これについて、これは外務大臣にお答え願わなくても、関係当局の方に後ほどお尋ねしたいと思います。
 それからもう一つは、朝鮮人帰国協力の問題は非常に円滑にまいっておりまして、先日この事情を外務大臣のお耳に入れたとおりでございますが、いまなお国際赤十字から二名の監視員が駐在しておりまして、非常に円滑にいっていることを賞賛いたしているような事情でございます。外務大臣からもいまこれをどうこう変える意思はないという御答弁もいただきましたし、アジア局長並びに赤十字も今後とも一そう超党派的に、思想問題などに撹乱されることのないように、注意しながら続けてもらいたいということであります。私どももその点は非常に気をつけておりまして、当初と違いましていまは非常に円滑にいっておりまして、その場所で左右両翼とも何か常識をはずれたような発言があるというようなこともほとんど絶えて聞いたことがございません。しかるに、毎日新聞にまたもや帰国事業は打ち切るべしという議論が出ておるということがことさら大きく出ました。私は帰国事業に関係しているまじめな役員諸公であるならば、大体厚生省がどう動いており、入国管理局長がいかに公平に心を使っておやりになって監督なさっており、また外務省もこの問題の大綱を把握されておるという実情を知っておるわけでありますが、この問題に全然関係のない者が、韓国筋の情報や秘密工作やその他と連関して、そうして突如としてこういう円滑にいっておる帰国事業を中断させるというような発言をなさる。まことに遺憾にたえぬことと思っておりまして、これは官吏服務規律に反するような策動をやっておる手合いがおるのではあるまいか。むしろその根源を調べて一ぺん身元調査をする必要があるのではないかと思うくらいです。と申しますのは、帰国の仕事が円滑に進んでおりますので、大体六カ月くらい前にスケジュールがきまるわけであります。こういう記事が突如として出るようでありますと、帰国事業に不測の災いを加えますから、御注意願いたいのでございます。
 ただいま最初お尋ねいたしましたポクロフスキー事件につきましての外務省当局の今後の公正な態度を期待しておるわけでありますから、それに対する御答弁と帰国問題に対してこういう根拠なき、思慮なき騒ぎを起こすようなグループ活動をする者があったとすれば、ひとつそういうことをさせないようにしていただきたい。
 二つのことを外務大臣に御要望いたしたいと思います。
#16
○椎名国務大臣 いまの日本の警察機能というものは、おそらく十分なものじゃないと思います。しかし、われわれは信頼し得る程度のものであるとは考えています。警察の調べによりまして一応この問題に対しては結論を出しております。しかし、その後の事情によって、これを再検討しなければならぬという事情があればこれは別問題ですが、ただいまのところは再検討する事情は別にない、こう考えております。
 それから帰国の政策でございますが、その基調を変更する意思はございません。ただこの問題に、どっち側と言えませんが、関係者があまり肩ひじ怒らがして、そしてよけいなことを言ったり、ふるまいをするというようなことからごたごたがときどき起こるらしい。これはあくまでやはり人道的な意味でこの事業を始めたのですから、関係者はごく静粛に行動してもらう、そういうことを希望しております。
#17
○帆足委員 外務大臣のただいまの御答弁は、おおむね私は満足です。どうか警察当局その他取り調べに当たりましては、いつも日本の法律を守るということを厳密に考えて、人権擁護のことにはひとつもっと真剣になっていただきたいと思います。
 それから帰国協力のことについての答弁は満足です。これはいかなる騒音も、騒音を立てるやからに対しては、帰国協力会といたしましても十分に気をつけます。そして超党派的に、人道的に赤十字を助けまして、そして所期の目的を達し得るように努力いたしますから、お気づきの点がありましたら、帰国協力会並びに赤十字にいつでも御連絡を願いたいと思っております。
#18
○高瀬委員長 川上貫一君。
#19
○川上委員 時間がありませんから、きわめて率直に質問したいと思う。
 アメリカのバンディ国務次官補は、ことしの二月十二日に、カリフォルニアの大学で演説をしております。その中で、アメリカの中国封じ込めが成功するかしないかは、アジア諸国みずからの行動によってきまる、こう述べておる。その後バンディ次官補はこの政策を携えて日本その他極東の国々を訪問しましたが、二月の二十八日からフィリピンのバギオで開かれたアメリカのアジア公館長会議に出て、こういうことを言うております。日本、フィリピン、マレーシア、台湾、韓国、タイは中国封じ込めの同盟を築くべき国々であると。そこで公館長会議のコミュニケを見ると、こう言うておる。ベトナム戦争を効果的、集団的に遂行するため、極東の諸国が協同する必要がある、これを強調しております。この一連の事実を外務大臣はよくよく御存じだと思うのですが、ちょっとお伺いしておきたい。
#20
○椎名国務大臣 どうもあいにく私は存じません、コミュニケは……。
#21
○川上委員 幾ら大臣がおとぼけがじょうずであるといっても、そういう答弁を国会でするのはよろしくないですよ。外務大臣、知らぬはずはない。私がこういうことを指摘して質問しておるのは、ここの中に、さきにあなた方が東京で開いた東南アジア開発閣僚会議――条約局長もよく聞いておいてください。また来たる六月韓国で開かれるアジア太平洋地域外相会議、この本質とねらいをはっきり浮き彫りにしている。非常にはっきりしておる。だから聞いたんだ。とりわけ外相会議、これに至っては何ですか。アメリカと二国間軍事同盟を結んでおる韓国、台湾、フィリピン、ANZUS軍事同盟の国々、SEATO加盟のアジアの反共国、かいらい政権、こういうものを一丸として、中国をはじめアジアの社会主義国を封じ込めるための反共同盟の結成をもくろんでおるものであることは、これはもう明白です。私が質問するより、外務大臣が一番よく知っておられる。条約局長もよく知っておると思う。
 しかも、日本政府はこのアメリカの中国封じ込め政策に一そう加担するばかりでなしに、あえて主導的な役割りをまで引き受けようとしておる。これが今日の状態です。これはアジアの平和と日本の安全にきわめて重大な問題であります。われわれはこのようなことを絶対に容認することはできない。これについて詳しく質問したいのですが、時間がありませんし、私は約束の時間を守りたい。そこで、一つ一つ質問ができない。
 以下一つ一つの事実を私は指摘して、これに対する外務大臣の一つ一つの御答弁をお願いしたい。
 まず第一です。この外相会議の準備会参加の九カ国は、いずれもアメリカのベトナム侵略戦争に出兵しておるか、あるいは協力しておるか、すなわち、反共国またはかいらい政権だけなんですよ。これが準備会をつくった国々、こういう国が集まって、一体、外務大臣、何を相談しようとするのか。反共同盟の相談以外にはないじゃないですか。外務大臣、これをどう考えますか。
 第二に、この外相会議を提唱した韓国の李東元外相はこう言っておる。この会議を中国を敵とした集団防衛のための会議にする、こう公言しておる。提唱国の外相が公言しておる。これでも反共と反共同盟を目的としないと外務大臣は言えますか。
 第三点、タイのタナット・コーマン外相はどう言うておるか。この会議を、日本、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、韓国、マレーシア及び南ベトナムもひっくるめた新機構を創設するものだと言明しておる。その上、ラオスのプーマ首相、これはアジアの反共諸国の域内協調、これを唱えて、アジア連合なるものを提唱した。佐藤総理大臣はこれに賛成の意を表明しておる。事態は明瞭じゃないですか。これははっきりせなきゃいけない。
 第四に、アメリカと韓国、台湾、フィリピン、これとの相互防衛条約、さらにアメリカとオーストラリア、ニュージーランド間のANZUS条約、この条約の条文を見てごらんなさい。どんなことを書いてあるか。これらの国々は、これらの軍事同盟を土台にして太平洋地域の包括的な安全保障体制をつくることを条約上の義務として規定しております。これは条約局長も御存じだと思うのです。
 第五に、ことし二月、極東諸国を訪問したアメリカのハンフリー副大統領は、三月五日、ジョンソン大統領に報告書を提出している。その報告書によると、アメリカが望むようにアジア諸国はアジア自身の手で新しい国際機構をつくろうとしておるときわめて満足の意を表明しておる。これは外相会議のねらい、あるいは閣僚会議のねらいが、アメリカの指図による新しい反共同盟の結成にあることを裏づけておるものと断言してよろしい。絶対に間違いない。
 以上、私が指摘したアメリカの高官の言動と具体的な事実は、この外相会議あるいは閣僚会議、特に外相会議の真のねらいを明白に物語っておる。これは経過と歴史がある。昨年七月の第四回日米貿易経済合同委員会で話が出ておる。ここで日本とアメリカは話しておる。いわゆる東南アジア閣僚会議を通じてやっておる。続いてアジア外相会議を経て、今度は七月の第五回日米貿易経済合同委員会がある。これでほんとうの仕上げをしようとしておる。この合同委員会をごらんなさい。貿易経済と言うておったが、まるで政治の委員会だ。これでアメリカは強要しておる。日本はそれに同調しておる。しかも今度あなた方がやろうとしておることは、新しい段階に踏み入ろうとしておるのだ。なしくずしに反共政策を続けていこうというのじゃなしに、新しい機構をつくり上げて、新段階における反共同盟の結成を目ざしておる。これはあなた方の言う沖縄に対する出兵の問題、安保条約の永久化の提言、核のかさの下に入るとか、第三次防に膨大な金を使おうとするとか、全く一連のものです。これは外務大臣がどんなに答弁されても、動かすことのできない事実です。
 もう一つ、私は言うておきたい。これはアメリカがベトナム戦争でどろ沼に落ち込んでおる。このどろ沼から抜け出そうとして、侵略戦争の一そうの拡大のために急いで進めた一つの段取りだ。これにあなた方は乗っかって、これを押し進めようとしておる。アメリカは日本にその中心になることを要求しておる。あなた方は、アメリカ帝国主義、日本独占資本のためにこれを積極的に引き受けて実行しようとしておる。これが外相会議の真のねらいだ。
 私は、時間は守りたいから、外務大臣はちょろちょろと時計を見ておるので、まとめて質問したい。私の質問が間違っておる、これは君の言うことが違う、こういうことがあるなら、その一つ一つについて外務大臣は明確に反論されたい。もし外務大臣が、これに対して明確な答弁をなさらなければ、私の言うたことは外務大臣は承認しておるのだということになる、せざるを得ない。この答弁は明確にしてもらいたい。以上。
#22
○椎名国務大臣 この間のバンコクにおける準備会の申し合わせを見ても、あなたの言うように反共の会議ではないということがはっきりしております。
 それからこの外相会議の当初の提唱者である李東元韓国外務部長官が何を言っているか私は知りませんが、いま準備会の経過から見ても、さような会議にならない。第一外相会議という名前から変わりました。
 それからタイの外相は、日本以下数カ国で新機構を創設するということを言ったそうでありますが、新機構の提案はございません。ないはずです。
 それからプーマ・ラオス首相の唱えたアジア連合というのは、これはアジアが繁栄するためにお互いに提携して連合組織をつくるべきであるという、これは政治を超越したもっぱら経済的な意味の連合組織でございまして、これは佐藤総理も賛成の意を表したはずです。これだけはあなたの言うことは当たっている。
 それからANZUS条約その他のものは、太平洋安全保障のためのものである。これを太平洋を安全地域にすることは何が悪い。これはそういう解釈で一向差しつかえないと思います。排他的なものでなくて、太平洋を安全な地域にしよう、こういうまじめな態度をとっているものだという解釈なら、それでけっこうだ。
 それからハンフリー副大統領の報告で、アジア人自身が国際機構をつくろうとしておるという報告をしたそうですが、これすなわち反共同盟であるというふうにお考えになるのは、これは真相を誤るものである。
 以上お答え申し上げます。
 動かそうにも動かすことのできない虚構な事実でございますから、どだい動かしようがない。動かすべからざる事実である、こうあなたはおっしゃるが、動かしようのない、手のつけようのない虚構事実である、私はそう考えます。
#23
○高瀬委員長 川上君に申し上げますが……。
#24
○川上委員 時間がありませんから、質問を留保いたします。続けてやらせていただきます。
#25
○高瀬委員長 いずれ適当な機会に考慮いたします。
 帆足計君。
#26
○帆足委員 狭山、朝霞の野戦病院見学要請の件につきましては、先ほど外務大臣に直接申し上げたとおりです。南ベトナムにおける疫病流行の状況及び戦争中でありますから、諸事困難の状況から見て、日本における野戦病院においてアメリカの傷病兵、それから伝染病等がどういうふうに取り扱われておるかということを外務委員も参加いたしまして、社会党のしかるべき議員諸兄とともに見学したいという要請があります。これに対して、アメリカ当局といたしましてはやはりありのままを見せてそして疑義を解き、助言を聞くことが私はしかるべきであろうと思っておりまするにかかわらず、いまだに御回答に接しておりませんから、その辺のところを伺っておきたいと思います。
#27
○安川政府委員 これは病院に限らず、個々の施設問題につきましては防衛庁の施設庁と直接米軍といろいろ折衝しておりますので、先生方の御見学の話も耳にしておりますけれども、私のほうからは、施設庁と米軍の間でこの話の取り次ぎと申しますか、するように施設庁のほうに依頼をしております。
#28
○帆足委員 待てど暮らせど返答がありません。一体日本の国内に病院をつくって、日本のお世話になっておりながら、われわれが見学をしたいと言えば翌日すぐ返答をせられればよろしいものを私は無礼と思っておりますが、いやしくも外務委員が参加して見たい、しかも病院です、核兵器を見たいなんて言っているわけじゃない、もちろん核兵器が国内にあり得るはずもないと思っておりますが、どうしてこう返答が来ないのでしょう。
#29
○安川政府委員 これは米軍の施設でございますから、見せるか見せないか、あるいは見せるとすればどういうところを見せるというのは、私は米軍の考えによると思います。私のほうとしてはその御希望のお取り次ぎは当然施設庁がやるべきものだと思っておりますので、施設庁のほうに、また米軍のほうに先生方の御希望をお取り次ぎするように依頼しております。もしお返事がおくれているという事情でありますならば、私のほうからも施設庁になるべく促進するようにということを申し入れてもよいと思います。
#30
○帆足委員 見せるか見せないかはアメリカの自由、そういうことじゃないと思うのです。私は、条約がどうあろうと、道徳的に見せるべきであると思う。敷島の大和の国にたまたま駐在しておりながら、われわれの言うことを聞かないというなら、野戦病院はとっとと帰っていただくような重大な措置をわれわれしなければならない。選挙のときにこれを全国に言いますから。そして主人顔をするな、だれのおかげで日本に滞留をしておるのか、勢いのおもむくところ、そういうふうになると思っておる。ですから強力に局長から防衛庁のほうに言うていただきたいと思います。国会議員が見たいと言うわけですから、四の五の言うことではないだろう。また四の五の言えば外務委員会においてもいろいろ論議されて、アメリカとしても不利であろうというくらいの御助言をいただきたいと思います。
#31
○安川政府委員 ただいま申されました帆足先生の御趣旨は、さっそく施設庁に連絡いたしたいと思います。
#32
○帆足委員 次に、ポクロフスキー事件についてですが、これは先ほど私が外務大臣に言ったとおりでありまして、他意はありません。私はたまたま自由人権協会の常務理事をしておりまして、アメリカにおける自由人権協会の理事長はボールドウィン氏、この方のお嬢さんも私はよく存じておりますが、このボールドウィン氏はアイゼンハワー元帥らかも信頼の厚かった人です。アメリカではとにかく人権協会は行政機関から離れた、政府権力から離れた、人権擁護の伝統というものがありますから、この機関を非常に尊重しております。また、国際連合の人権憲章による人権擁護の委員会の一種の民間連絡機関のような役割りも演じております。私はたまたまそこに籍を置いておりますので、一そう痛感するので、何もこれはソビエトだからといって、特別に申し上げるわけではありませんで、一国の外交官がこういうことにぶっつかる、その結果があいまいであっては、法治国としての日本の権威にかかわることでございますから、ひとつ正確な調査をしていただきたい。ただいまの段階における外務省が警視庁当局から得た資料に基づいて、どういう内容であったかということと、それからソビエト当局に対してどういう正式の御回答が行ったか、あるいは行かない状況であるかということを伺いたいと思います。
#33
○北原政府委員 前回のこの委員会で戸叶委員からの御質問に対しまして、一応経過を私から御説明いたしました。ごく簡単に申しますれば、関係当局によります捜査の結果は、一次事案と二次事案とがございまして、双方ともこれを事件として今後とも取り上げていくということは必要ないという警察当局の結論に達したわけでございます。私自身も詳細な警察からの調査書類、報告を全部拝見いたしまして、慎重に関係当局と協議いたしました結果、在京のソ連大使館の代表者に対して一応の説明をいたしました。説明の内容は、事案の内容をまとめたものでございます。それとともに口頭で種々の必要なる補足説明をいたしました。ソ連大使館の代表のほうからは、本件に関する一応の日本政府の結論をひとつ本省に報告いたしましょう、ただ、ソ連の代表の方は、どうもわれわれとしてはいまだに疑念を持っておるという意思の表明があったわけでございます。その後本件に関しては両国政府間において話し合いは行なわれておりません。
#34
○帆足委員 そういたしますと、この大東京の、しかも都心で行なわれたこの事件に対しまして、ソビエト当局側はまだ御調査並びに御回答に対して満足していないという現状ですか。
#35
○北原政府委員 一応右のような意向の表明はございました。その結論としてどういうふうな見解に到達しておられるか、それはその後ソ連側からいまだに何ら具体的な連絡はございません。
#36
○帆足委員 その調書を外務委員として私に見せていただけますでしょうか。
#37
○北原政府委員 この警察の報告の内容は、これは警察庁のほうのことでございますので、私から何とも申し上げられません。ソ連大使館に対して行ないました説明は、先日委員会でも私が御説明したとおりでございます。
#38
○帆足委員 それは文書でございますか。文書ならば見せていただきたいのですが。
#39
○北原政府委員 メモがございます。
#40
○帆足委員 そのメモを見せていただけないでしょうか。
#41
○北原政府委員 これは一応両国政府間での外交当局間の話し合いでございますので、本件はその内容をそのまま私が御説明しておるわけでございますので、文書としてそのままの提出は差し控えたいというふうに考えます。
#42
○帆足委員 きょう警察当局の方は見えておりませんか。──その調書をいずれ見せていただきたいと思いますが、この点についてはまた委員長に御相談申し上げます。というのは、納得いかないことですし、こういうことがときどきあることは日本国民の心に不安の種をまくということになりますし、それから各国の外交官に対しても日本の威信を傷つけることになりますから、外務委員として私は黙視しておくことはできないのです。いろいろの外交官の会合に出ましても、あれはほんとうはどうなんだということを私は耳にささやかれることは、まことに不愉快なことなんです。実はそれに関連した不明朗な事件を幾つか承知しております。これはいずれ警察当局を呼んで私はいたしますが、先ほど外務大臣は、日本の警察当局は不完全であるけれども、おおむね信頼に値すると言われたが、私は今日の段階では、やはり六割ぐらいは信頼に値し得るとして尊敬しております。しかし率直に申しますと、二割ぐらい信頼し得ない勢力があるわけです。まことに邦家のため憂慮にたえないところでありまして、すなわち法律及び憲法を擁護するという動機以外の、すなわち公務員としての権利義務以外の動機による策動が行なわれております。これにCIAが関係あることも当然予想されますし、韓国、台湾の勢力などが関係しておることも憂慮されます。椎名外務大臣は、左右両国から来る雑音は、人道の仕事などに及ぼしたくないと言われましたが、私も同じ考えでございます。そういうことで申すのですが、どうも明朗でない。特に私が疑念に思っておりますのは、何がしとかいうコロンビア人が家主に対して十分な交渉もせずにいまだに行くえ不明になっているということ、当時暴力に参加した二人のアメリカ人が観光客の名のもとに、これまた正体不明であると伝えられておること、これに対して、別に推理小説的興味を持っておるわけではありません、人権の立場から疑惑の念を持っております。このことは「週刊新潮」にも伝えられておりますが、あなたは御承知でしょうか。またそれに対してどういう御見解をお持ちですか。
#43
○北原政府委員 「週刊新潮」の記事を私まだ読んでおりません。
#44
○帆足委員 そのコロンビア人の行くえ不明だということについて、どういうお考えですか。そういうことがあったならば当然そこで、普通の人なら滞在し弁明し、事が明白になるまではおるのがほんとうなんですが、たちまちにして、家主と相談もなしに姿を消しておる。
#45
○北原政府委員 その当該コロンビア人のその後の動静につきましても、関係当局において調査を続けておりますので、その結果を見ませんと、この点ここで見解を述べることは少し早計ではないかと思っております。
#46
○帆足委員 きょう外務当局に伺ったところでは、ただ私は事の重大性を指摘いたしまして、そういうコロンビア人の行くえまでを明確にしてから、ソビエト当局に返答すべきじゃなかろうかと思うのですが、警察庁当局に若干の外部の影響が入っていることは周知のことですが、そのくらいの回答でソビエト当局に回答なさったということはちょっと軽卒でないでしょうか、たとえば、いまのコロンビア人など、普通の常識で考えて急に行くえ不明になるなんていうことはあり得ないことですから、まだ調査継続中ということでなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
#47
○北原政府委員 警察の調査は、御存じのように、三週間ばかり継続しておりまして、ソ連大神館に対する回答も事件の発生以来三週間ほど経過しております。私どもといたしましては、当時の承知し得るあらゆる事実と判断とのもとに、三週間も経過しておりますので、一応の回答をするのが礼儀だろうということで、したわけでございます。
#48
○帆足委員 しからば、私どもから外務委員会で聞かれて、常識で考えて、不明朗な点があるから明朗にすることが、これは当局の仕事である。で、くだんのコロンビア人が行くえ不明だということについては、どういうことかと言えば、まず常識的御回答があってしかるべきであって、それがまだ行くえ不明で、目下調査中だというならば、中間報告をソビエトにしたというにとどまるのであって、最終報告としては、私としては納得できない。外務委員としてそう思うのでありますが、どうお考えですか。
#49
○北原政府委員 中間あるいは最終というふうにはっきり観念し得るかどうか。私は、非常に問題に思うわけでございますが、一応当時での結論を述べて、それに対してソ連側も一応それを報告せよということで、現在のところそのままになっておるわけであります。
#50
○帆足委員 そうだといたしますと、外務省当局としては、われわれにきわめて正確な結論を与えることができず、ソビエト側もこれに対して耳を傾けて、納得できない、追って連絡するということであるとするならば、問題は未解決でございますから、いずれ穂積理事もおられますから、私も問題を調査いたしますが、ひとつ警察当局に来ていただいて、それからいまの調査報告も見せていただいて、質問をいたしたいと思います。しかし、私どもが、こういうことをこまかく追及いたしますと、ある友人は、君それはあまりほじくると下山事件のようなことにぶつかるぞ、そんなことを言われる。そういうことがたとえ軽率な助言にしろ言われるような、すなわちトラのしっぽに触れるよというようなことを言われるような東京の雰囲気ですね。私はそれを好まないのですよ。何ということでしょうか。これを追及すれば、そうするとトラのしっぽに触れるぞ、そういうことを相当の良識ある人がわれわれに忠告するというような現状を非常に憂慮するものでございます。したがいまして、外務当局におきましても、お互いに外交官同士でありますから、外交官をめぐって、こういう不明朗な事件が起こっては困る。これが単に酒に酔って、一時のトラブルなのか、それとも深い根のある諜報活動の飛ばっちりを受けたのか、これは明確にする必要があると思いますが、外務次官、ひとついかがでしょうか。私の言うことが無理でしょうか。
#51
○正示政府委員 先ほど来欧亜局長のお答えをいたしておりますように、これは主として治安当局において調査をいたしておることであります。過般の委員会において御説明をいたしましたところは、先方にも十分お伝えをしております。
 なお、いま帆足委員の御指摘の点については、警察当局において引き続き調査をしておることでございますから、いまのお述べになりましたような御要望の点については、政府部内におきまして十分伝達をいたしまして、御疑念の点についてはあらためて御質問をいただきたい、かように考えております。
#52
○帆足委員 日本は、中南米や東南アジアの政局不安定な国における治安状況のようなことであってはならないと思うのです。したがいまして、事件が起こって一カ月以上たっておりますから、一カ月もたって、なお外務委員の質問に対しても、五分間の御答弁ぐらいで、ああそうですが、そういうことでしたか、ああそれはコロンビア人がウイスキーを飲み過ぎた、ウオツカを飲み過ぎたのだということなら、五分間の質問で済むわけです。しかるにまことに不明朗な状況である。そしてそれが日本の一流の新聞に、グロムイコ外相の訪日にすら影響しておるのではあるまいかと世人はそんたくし──それはそんたくですよ。そのそんたくの記事として、一流の新聞に出て、それでわれわれがこの問題を追及するのに対しても、それは暗黒の世界に言論を差しはさむことになりますから、気をつけたほうがいいということを人から言われるようなことでは、私は外務委員会として黙視することができないと思ってお尋ねをしておるわけですから、ひとつ次官におかれては、次の機会に、五、六分たてば、ああ、そういう事件でしたか、ああそうですが、こう言えるように、またこういうけしからぬことがあったのなら、二度とそういうことのないように厳重に警告します、そういうふうにしていただきたいと思います。
 その次にお願いしたいことは、先ほどの帰国協力の問題でございますけれども、あのように外務大臣から明確な御答弁がありました。しかるに毎日新聞に突如として帰国事業中断というような記事が出る。記事の根底を探ってみますと、必ずしも善意の官庁から出たのでなくて、所在不明の、しかもはっきりした確証のない議論から出ておる。と申しますのは、私は帰国船が出ますたびに、三カ月に一ぺんは新潟に行っております。赤十字の代表にもいつも会っております。それで、多少の行き過ぎがありましたようなときにはすぐ注意をするようにいたしておりますが、目に余る行き過ぎは、この一年ばかりないと私は承知しております。また一つでもそういうことがあったならば、赤十字センターのほうからも、また日本赤十字社のほうからも帰国協力会あてに連絡をしていただいて、そしてわれわれのほうから注意を喚起するというふうにいたしております。したがいまして、社会主義の国に帰るのでございますから、またわれわれと立場の違う植民地生活の苦渋をなめた朝鮮の人たちが国へ帰る問題ですから、われわれとおのずから異なる心境があることも必然であると私は思っておりますが、日本の治安を撹乱するような運動や言動が行なわれておるということはないと承知いたしております。しかるに、かりに百のうち一つくらい何か小さな事件があったといたしましても、それをたてにとって、アジア局長もまた外務大臣も外務次官も御承認ない問題をことさらに騒ぎ立てて、そして帰国事業が打ち切りであるというような記事が大々的に新聞に出るというのであるとするならば、そういう雑音を立てた官僚諸君は純真な官僚として事を行なっておるのではなくて、特殊な奇矯過激な思想を持っておるファッショ思想のような、特別の右に片寄り過ぎた考えを持っておる小役人たちが雑音を立てたとしか思えませんから、ひとつそういう連中の昇給は停止するぐらいにしていただきたい。と申しますのは、数多い朝鮮人の人々でございますし、また植民地支配のもとに苦労した方々も多いですから、ときとしてはその言論の中に治安当局の感覚に触れるような言辞があったとしても、それはそれとして、赤十字なり私どもに注意をなさればよいものを、それをとらえて、私どもに具体的に何月何日の会合でこういう行き過ぎがあったから注意をしてくれと言えばいいものを、そういう注意は何もせずして、そして帰国事業を根底からひっくり返すようなことが直接に新聞に漏れるようなことをするとしたならば、そういう小役人どもは官吏服務規律によってやめていただかねば、そして自由な身になって、右翼団体にでも入って、インスタントラーメンでもすすっておればいいでしょう。そのくらいわれわれはおこっているわけです。というのは、国へ帰ろうとする朝鮮の友だちは、半年前に計画を立てて、荷づくりをし、それから職場におる人は職場の退職願いを出し、親戚に別れを告げて行こうとしておる。それが、こういう記事が出ると、帰国の流れがストップしてしまうのです。そしてたくさんの電話がかかり、余分の不安を抱かす。これは外務大臣、次官がそうお考えになってそうなさったならばそれはまたやむを得ないことでありますけれども、次官がこの前ここで声明なさってからまだ二週間もたたないときに、外務委員会の速記も読むような地位にない連中が軽率な発言をして、それが新聞を通じて大々的に発表される。そして世道人心を迷わすとは何ごとであるか。ですから外務次官においても、厳重な御訓戒をそういうやからになさるように。最近どうも外務省においては下克上のきらいがありまして、これを意志薄弱型ファッショとある世人は言うております。私はある新聞記者諸君に聞いたのですが、そのグループも大体見当はついております。この意志薄弱型ファッショの諸君が、どうも大臣、次官に御相談なく事を急ぐ傾向がある、しかもベトナムにおいてアメリカの極東政策は失敗して、フルブライト上院委員長のような識見高邁な、アメリカの合理主義の伝統を受け継ぐような議員が、われわれと立場は違いますけれども、彼の語ることばは理解し得るというような議員が出て、公聴会を開いて、アメリカの極東政策をどう方向転換するか苦労しておるときに、インスタントラーメン程度の小役人どもが右翼と結託して、こういうすぐれた外務次官がおるにかかわらず、その次官の承認もなしに雑音を立てるとは何ごとであるか。外務委員会の速記録も読まないで、もう解決している問題をことさら騒ぎ立てる。この問題一つならばここだけで済むことですけれども、やはりこの際訓戒しておかないと、ベトナムの状況いかんではまたいろいろの問題が次々と起こります。この嵐にさおさして、外務省当局が中庸の道をやがてたどるところへ行き着くことになるのではないかと私は思っておりますけれども、いま自民党のほうでは、行き過ぎを少し是正せねばなるまいという声が大きくなっていることも私は承知しております。そういう重要なときに、秋の解散をしようかしまいか、あるいは延ばそうかと佐藤首相も苦労をしておるときに、親心も知らない小役人どもにそういう下克上の気配があるということを次官にもひとつよく御助言をしまして、そうして気をつけていただきたいと思います。
 入国管理局におきましては、私が知っております限りは、帰国問題についていつも公正な態度をとられまして、そうかといってひいきの引き倒しでなくて、よく法律秩序を尊重されて、忠告が必要なときにはお出しになって、そして赤十字が人道と人権という基本的線に沿うてやっていくように管理局当局が御苦心なさっていることも私はよく存じております。管理局長さんに来ていただきましたゆえんは、きょうの外務大臣の答弁を直接聞いていただきたいと思って実は来ていただいた次第でありまして、外務大臣の御意見どおりであるならばそれでけっこうでございますが、御意見どおりでない点があれば言うていただくし、御意見どおりであれば聞いていただいただけでけっこうでございます。──次官からひとつまとめてお答えを願いたい。
#53
○正示政府委員 ちょっといまの御発言の中に、外務省に非常に下克上の空気があるというふうなお話がございました。これは全然そういうことはございませんので、外務省は常に幹部会におきまして、大臣を中心に全、部局長、責任者が緊密な打ち合わせをいたしました上で外部にその考えを発表いたしておる次第でございます。したがいまして、いま帆足委員が御心配になりましたようなことは重々そういうことはございませんが、なお今後ともわれわれとしては部内を引き締めまして、そういう御心配のないようにしてまいりたい。このことだけを私から申し上げます。
#54
○帆足委員 それでは、現に実行されており、国際赤十字からもほめられておる帰国事業に対して、運動に重大な障害を与えるような発言があなた方の下から出てくるというのはおかしいと思うのです。私は、こういう問題については、やはり大臣、次官の御許可を得るまでは、役人としてそういう発言はすべきでないと思うのです。それが出てくるというのは政務次官が甘く見られている証拠だと思う。最近こういう傾向があるから、断固として進歩的弾圧をするというくらいの御回答があってしかるべきなのに、それは私だけのあれではないのです。最近の新聞を見ますと、どうも外務省は少し下克上のきらいがあるということは、自民党のほうの消息筋の記事にも近ごろちょいちょい新聞に出ておることは、次官も御承知でしょう。それで申し上げるわけです。私は次官を激励して言っておるわけです。
#55
○正示政府委員 御忠告はたいへん感謝いたしておりますが、少なくとも帰国問題については帆足委員にはたいへんな御尽力をいただきまして、われわれは心から感謝をいたしております。先ほど外務大臣もこの問題についてははっきりと言明をいたしましたように、われわれは部内一致いたしまして、将来ともこの大切な事業が円滑に進みますように十分配慮してまいりたい、かように考えておることを繰り返して申し上げます。
#56
○帆足委員 ただいまの外務次官の御答弁はすばらしく満足でございました。それではこれをもって終わります。
#57
○高瀬委員長 次回は来たる五月六日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
 午前十一時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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