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1965/03/30 第51回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号
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1965/03/30 第51回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号

#1
第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号
昭和四十一年三月三十日(水曜日)
    午後一時五十二分開議
 出席委員
   委員長 原   茂君
   理事 菅野和太郎君 理事 纐纈 彌三君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 田中 武夫君
      大泉 寛三君   小宮山重四郎君
      渡辺美智雄君    石田 宥全君
      西宮  弘君    三木 喜夫君
      山内  広君    湯山  勇君
     米内山義一郎君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 上原 正吉君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   小林 貞雄君
        総理府技官
        (科学技術庁研
        究調整局長)  高橋 正春君
        総理府技官
        (科学技術庁資
        源局長)    橘  恭一君
        厚生政務次官  佐々木義武君
        厚 生 技 官
        (環境衛生局
        長)      舘林 宣夫君
        農林政務次官  仮谷 忠男君
        農林事務官
        (農政局長)  和田 正明君
 委員外の出席者
        厚 生 技 官
        (環境衛生局食
        品衛生課長)  石丸 隆治君
        厚 生 技 官
        (環境衛生局食
        品化学課長)  小高 愛親君
        通商産業技官
        (工業技術院発
        酵研究所微生物
        応用第一部長) 岩本 博道君
        参  考  人
        (理化学研究所
        副理事長)   住木 諭介君
        参  考  人
        (科研化学株式
        会社取締役開発
        部長)     久保 秀雄君
    ―――――――――――――
三月三十日
 委員河野正君、山内広君及び米内山義一郎君辞
 任につき、その補欠として湯山勇君、西宮弘君
 及び石田宥全君が議長の指名で委員に選任され
 た。
同日
 委員石田宥全君、西宮弘君及び湯山勇君辞任に
 つき、その補欠として米内山義一郎君、山内広
 君及び河野正君が議長の指名で委員に選任され
 た。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 農薬の残留毒性の科学的究明及び対策樹立に関
 する件
 科学技術振興対策に関する件(農薬の残留毒性
 が人体及び生物資源に及ぼす影響に関する問
 題)
     ――――◇―――――
#2
○原委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 まず最初に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
 農薬の残留毒性が人体及び生物資源に及ぼす影響に関する問題調査のため、本日、理化学研究所副理事長住木諭介君、及び科研化学株式会社取締役開発部長久保秀雄君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#4
○原委員長 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、ありがとうございました。どうか忌憚のない御意見をお述べくださいますようにお願い申し上げます。
 なお、御意見の聴取は、質疑応答の形式で行ないますので、さよう御了承願います。
 質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
#5
○三木(喜)委員 先般、当委員会の参考人としておいでいただきました東大の浮田教授、それから同じく白木教授の証言によって明らかになったのですが、有機水銀農薬の害というものが、非常におそろしいものであるということをわれわれは知ったわけです。それに比べまして、水銀農薬を農民が取り扱っておるその取り扱い方、それから使用量というものが非常に注意を要するんじゃないか、この前の会議では一応こういう結論らしきものに到達したわけなんですが、しかしながら、なおまだ明らかでない点があり、またその危険性について確かめておかなければならない点があると思いますので、きょうは農林省からもおいでいただいておるし、厚生省からも、科学技術庁はもとよりおいでいただいておりますので、この三当局の責任者に、それぞれそういう問題についてお聞きいたしたいと思います。
 まず、最初に、このおそろしさについてですけれども、要するに大脳の深部が水銀中毒といいますか、そういうものにやられて、残留毒性によって小脳の血管のぐるりが空白になり、そして脳がやわらかくなって脳軟化症的症状を起こし、言語、運動中枢がやられる。そして廃人のようになってしまうわけなんですが、そういうようなおそろしいところの水銀中毒というものが、農民がこれを使用するときにはマスクもせず、からだにだんだん接触する、こういうようなことから起こることが多いわけです。これについてはどうしても使用法というものを考えなければならないし、なお水銀農薬というものをいつまでも多量に生産しておっていいのかどうかという二つの問題になるわけであります。農林省の農政局長がおいでになっておりますが、いつまでもこういうものを使わしていいかどうか。これにかわるところの抗生物質が出ておるにもかかわらず、それをいつまでもそのままに放置しておるところの危険性というものがあると思います。その点で、最初に和田農政局長にお聞きしておきたいと思います。
#6
○和田(正)政府委員 水銀農薬のことについてのお尋ねでございますが、御承知のように、日本の稲に特有のいもち病という病気がございますが、温度、湿度等から考えまして、日本の夏の気候が非常に適温でございます関係で、これをいかに防除するかが日本の米の生産の基本になるわけでございます。防除が十分でございませんと、六十万トンや七十万トンの生産量はしょっちゅう動くわけでございます。米が日本の農業政策上非常に重要なものでありますことは、すでに先生も御案内のとおりでございます。従前は、これに対しましてボルドー液という農薬しかございませんで、これを使用しておったわけですが、これは、いもちに対する効果もさることながら、稲の生理にもかえって障害を起こしまして、逆に減収になるような事情もあったわけですが、たまたま昭和二十五、六年ごろに、種子の消毒用に使います酢酸フェニル水銀を高知県で稲のいもちに使用しましたところ、非常に効果がありましたことから、いろいろな研究が進みまして、水銀剤がいもち対策用として二十七年ごろから使用されるようになったわけでございます。
 現在、農薬全体の総生産量は毎年約五百億円程度になりますが、そのうち水銀製剤が七十三億円ほどになっております。もちろん水銀の原体は国内にはできませんので、外国から輸入をいたしておりますが、水銀そのものとしての毎年の輸入量は大体三百トンくらいということになっております。
 それで、水銀がどういう形で――いろいろな化学構造等があると思われるわけでございますが、白米の中にどの程度残留するかということにつきましては、昭和三十一年ごろからいろいろな研究が進められまして、きわめて微量ではございますが、白米の中に残存しておることは事実のようでございます。
 そこで、これを長期間食用に供します場合には、おそらく何らかの障害が人体にあるであろうということが推測できますので、数年前から水銀剤にかわる農薬の開発に努力してまいりましたわけですが、なお現在生産量としては、日本の稲作上重要ないもち病対策を水銀剤にかわる農薬で全部代替し得るほどの生産量になっておらないわけでございます。
 そこで、新技術の開発というような見地から、新しい農薬の機械設備を増設いたしますための税法上の免税措置を構じますとか、あるいは金融措置を講じますとか、そういうようなことをいたしまして、なるべく早期に水銀剤にかわる新しい農薬の生産を行政面からも指導してまいりたいというふうに考えておりますが、本年の生産事情等から考えますと、直ちに水銀剤の使用を禁止し得るような事情にはなっておりませんけれども、逐次切りかえていくことを考慮いたしておる次第でございます。
#7
○三木(喜)委員 いまのあなたの説明の中で重要な争点が出たわけです。食糧増産ということは非常に大事であります。四十一年度でも九十五万トン米を輸入しなければならない。しかしながら、この農薬を使わなかったらさらに百万トンぐらいの減収になるだろう。その上百万トンも減収になると米騒動が起こるだろう、こういうようなことを農林省は言っておるわけです。農林省が言っておるということは、農政局長が言っておるということに考えてもいいと思うのです。そういうように食糧が非常に減産される。こういうことでこの薬をこのまま存続しなければならない。そういう必然性を出しておるわけですが、厚生省では安全だという証拠がない以上こういうものはとめなさい。農林省は危険だという証拠がない以上とめられない。ここに争点があるわけなんですね。しかしながら、米をたくさんとるために農民は首つりをやってもいい、命を縮めてもいいという理屈は出てこない。そこに私は問題があると思うのです。平年度でも六十五万トンぐらい減収になるだろう、こういうようにおっしゃいましたが、そういう考え方に私は問題があると思いますので、いまお伺いしたのですが、その点はどうですか。厚生省と農林省の間にいまそういう両者の言い分の違いがあるわけなんですね。そういうことはありませんか。
#8
○和田(正)政府委員 水銀剤の害ということは二つ考えられると思います。一つは、使用をする農家側のそれに伴ういろいろな健康上の問題と、それからいま先生お話しのように残留毒性の問題と二点あるわけでございます。
 第一点の、使用上の問題につきましては、三木先生すでに御案内のように、厚生省とも共同で使用の際の注意事項その他についてはいろいろ指導してまいりまして、水銀剤の使用時における事故率は年々減少をいたしております。完全にまだなくなってしまったとは言えませんが、減少をいたしております。
 それから一方、残留毒性の問題につきましては、現在科学技術庁なり厚生省なりのほうでどういう程度が許される基準量であるかということの御検討をいただいておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、そういうふうに事情は好転をいたしておりますものの、私どもはただそれを、基準がきまらないから今後も使用し続けるのだとか、あるいは使っておる人たちの事故も減っておるからかまわないのだということを御答弁申し上げておるのではないのでございまして、おっしゃるように問題があるということについては、すでに私どもも承知をしておりますから、現在行政指導等もいろいろ行なって、かわるべき農薬の開発に努力をいたしております。しかし、本年直ちに禁止し得るほどのかわるべき農薬の生産量には達しておりませんから、本年直ちに禁止することはちょっとできませんけれども、ここ二、三年のうちに切りかえ得るような、そういう積極的な態勢で努力をいたしております、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#9
○三木(喜)委員 毒性は認められたわけなんですが、これにかわるところの農薬の開発というもの、あるいは製造というものがにわかに間に合わない。この間の話では抗生物質ができておるのは大体十分の一程度、こういうことですが、私たちの心配するのは、こういうものを増産するとか、あるいは国で計画するとか、あるいは薬価が高い分についてはこれに対しては補助金を出すとかいうような積極政策が一向とられていないのに、それに対処する方法を考えておるということは私はおかしいと思うのです。その点どうですか。
#10
○和田(正)政府委員 積極的な対策として現在やっております措置を具体的に申し上げますと、第一は、新しい農薬は新しい技術でございますので、それの設備からつくっていかなければいけないわけでございます。それにつきましては法人税法のほうの関係で、新しい技術の機械につきましては特別償却を認める制度がございます。これはそれぞれの会社のそういう建設計画に対応いたしまして、私のほうと大蔵省とで個々に協議をしてそういう特別償却の措置がとれるわけでございますが、その措置を現在とるようにして大蔵省と話し合いをしており、すでに申請の出てまいりました会社もあるわけでございます。
 それから第二は、新しい設備を建設いたしますことに対応して、古い設備をこわすと申しますか除去すると申しますか、そういうことが必要でございますが、それにつきましては、先日の閣議を通りました税法関係の政令の中で、古い施設をこわしました場合に、その施設の建設当時の経費の十分の一を法人税額から免税する措置をとることにいたしまして、税法上の恩典を二つ考えまして、新規設備が、税金面で負担を軽減しながら増産できますような設備が今後できていくように措置をいたしたわけでございます。
 それから個々の会社からの希望もございますので、それらを開発銀行その他の金融機関につなぎまして、新規設備のための設備投資の金融についてのあっせんをいたしております。そういうようなことによりまして、増産の効果が急速にあがることを期待をいたしておるわけでございます。大量生産ができるようになりますれば価格の問題もおのずから変わってくるかと思いますので、そういう面で措置をしてまいりたい。
 なお、本年の実際の使用のしかたにつきましては、いま私どもはこれを取り扱っております農業団体等とも打ち合わせをいたしておりますが、稲の生育の初期には葉いもちというのが出てまいりますが、その段階では、いまの生産量ではやむを得ませんので、水銀剤を使用せざるを得ないと思いますが、収穫の時期に近づきました穂首いもちとか枝梗いもちとかいうような稲の生育の最終の時期につきましては水銀剤の使用量を控えて、本年の生産で間に合います範囲の水銀剤以外の新しい農薬の使用をしていくというようなことで、時期的な使用方法等を検討し指導をしていくようなことを農業団体を通して現在やっておるわけでございます。
#11
○三木(喜)委員 厚生省にお伺いします。
 農業方面のことについては、あとたくさん農業の大家がおられますからそちらに譲りまして、厚生省に伺っておきたいのですが、いままでサリドマイド系の睡眠薬の問題やらそれからかぜ薬の問題やら、今度また水銀農薬の問題が出てまいりましたが、薬の災い、いわゆる薬禍対策として、これがだんだん国際化してまいったと思う。それについて国連保健機構のWHOでは、現在その会議で基準をきめておると思うのです。安全計画の実施方法をきめておると思うのです。日本でもそれをどういうように利用といいますか、適用して基準をきめていくか、これをお聞きしたい。なお、食物中の水銀許容量の規制は、米国やソ連は許容量をゼロとしております。ニュージーランドやオーストラリアは多少上回っておりますけれども、このWHOでは許容量を何ぼと見ておるか、こういう点もあわせお知らせ願いたい。
#12
○小高説明員 WHOでは、基準から申し上げますと、このWHOとFAOとの残留農薬に関する合同専門委員会というものがありまして、これがWHOに対しまして報告書を出しております。これはまだ勧告とまでは言っておりませんで、報告でございますが、これによりますと、水銀剤と申しましても、酢酸フェニル水銀でございますが、これにつきましては、動物実験から得られました値から考えました安全許容量が〇・〇〇〇〇五ミリグラム、体重一キログラムにつきましてその値になっております。そして、その委員会の報告につけ加えまして、この値から見て食品における残留許容量というものは非常に低いからゼロと考えてよいであろう、このような報告がなされておるわけでございます。
 そして、これらの見解に基づきまして、わが国におきます水銀の問題をどう考えるかということでございますが、現在のところ、米の中に酢酸フェニル水銀の形で残留しておるという可能性は非常に少ないのではないかと考えられておりますので、このWHOの勧告がそのまま米に適用できるかどうかということははっきりいたしませんが、それにいたしましても、米そのほかの食品の中にこういったものが残留するということがありました場合には、人の健康に与える影響が考えられますので、このようなことがないように目下調査をいたしております。これは実態調査並びに慢性毒性の実験をやっております。そしてこれらの結果に基づきまして、将来こういったものに関する基準を考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
#13
○三木(喜)委員 対策もあわせ聞いておるのですが、WHOでは、動物実験、それから人体での観察、それから市販許可の問題、この三つに分けて安全計画の実施方法をきめておるのです。こういう薬禍問題が次々と起こってきておるわけですが、厚生省ではどういう段階でWHOのやっておるような方法での安全計画を持っておられるかということも聞いておきたい。
#14
○小高説明員 私どもでは、現在水銀に限らず、各種の農薬につきまして、これは世界各国のどこでもやっておることでございますが、残留許容量と申しておりますが、そういったものを、現在使用されております農薬につきまして一日も早く設定いたしたい、かように考えておりまして、目下調査並びに研究を行なっておりまして、実施可能なものからさような許容量を設定していく、かような考えでございます。
#15
○三木(喜)委員 そこで先ほど申しましたが、厚生省は安全であるという証拠がない以上使わないようにせいということで農林省と対立しておるわけでありますが、やはりそういう態度ですか。
#16
○佐々木(義)政府委員 ただいま御質問がございましたが、いろいろ調査しますと、実際米に入っている水銀が、有機水銀か無機水銀か、分析方法が実ははっきりしておりません。ただいま課長からお話ししましたように、したがって米の中に入っている残留分が、もし有機のフェニル水銀全部だとすれば、WHOの許容量から見まして、まさしくその許容量を越すということになります。しかし実際は無機水銀が多いのではないか、と申しますのは、無機水銀は水に分解いたしますので、米に入っている水銀の主たるものは無機水銀ではないかというように考えますので、無機水銀であれば安全度は高いものでございますので、現在の状況で必ずしもすぐ人体に影響を及ぼすというふうにも言い切れない面もございまして、分析方法その他から非常にむずかしいのでございますが、いずれにいたしましても、そういう状況でございますので、私どもとしては、このまま放置することは好ましくないものですから、できるだけ早く非水銀系統のものに切りかえていただきたいという希望は強く持っております。
#17
○三木(喜)委員 あと質問者がたくさんおりますので、私もう一つだけ聞いておきたいと思います。
 農林省にお聞きしますが、ずばりこういうことを言って悪いかと思いますが、農林省の中でこういうことが言われているわけです。これは流説かもしれませんが、聞き捨てならぬと思いますので、ひとつお答えをいただきたい。
 そうだとは言いにくいだろうと思いますけれども、食糧庁長官の武田誠三氏が局長時代に水銀農薬を採用された。二番目に武田製薬が農林省に納めている率が一番多い、したがって、これをやめるということに踏み切れない。それから三番目に水銀農薬に反対する農林省関係の者があれば、これは追い出すのだ、武田長官は東畑一家であり、河合良成さんの娘婿である、こういう関係で、この水銀農薬が使用禁止にならない、あるいはまた、そういう措置をとることがおくれている大きな原因をこういうところに置いている、こういうことなんです。これは流説であればけっこうですけれども、そういう営利本位のために大事な国民の生命がむしばまれていくということになると、これはたいへんです。これは私も後にもっと調査してみたいと思いますが、そういうことが農林省の中から流説されるということになれば、これはたいへんなことです。この前のときにこの点が非常にふしぎだった、これだけ危険なものを、今日まで東大の二教授からこの危険性を警告されるまで放置しておったということ――放置ではなしに、意識的にそれが使用されておったということなら、これはたいへんなことだと思うのです。そういう答弁はできないだろうと思いますけれども、それは違うということがあれば言っていただきたいと思います。
#18
○和田(正)政府委員 いまの御質問にお答えをいたします。
 先ほど御説明いたしましたことに若干ふえんして御説明いたしたいのでございますが、いまかりに一〇〇の水銀を水田にまいたといたしますと、そのうち稲のからだにかかるものは一〇、そのうちさらに稲の体内に入っていくものがその半分、それからもみに入るものがたしかその五%ということで、〇・二五というような非常に微量なものになるわけでございます。酢酸フェニル水銀が農薬に使用されました場合に、稲の体内に酢酸フェニル水銀のままで吸収されるのか、あるいはそうでない形になっているのかということは、現段階の分析ではまだ出ておらないわけでございます。それで、きわめて微量でございますので、いま国民の主食でございます米を、きょうばかりでなしに、連日食べていることが、何かその日のうちに害が起こるようなことの印象になりますと、国民生活全体をかえって不安にいたすことになりますので、そういうことではなく、今後そういう微量にせよ引き続き食糧に供することによって堆積されていくことがむしろ問題であろうというふうにいわれておるわけでございますから、厚生省のほうでせっかく現在基準の御設定を急いでおられ、私どももいろいろと御相談に乗っておるわけでございますが、私どもとしては、そういうものができる前にもできるだけ早くほかの農薬に切りかえたいということで、先ほど来申し上げたような措置をとっておるというのが私どものかまえでございます。決して厚生省との間で対立関係とか、あるいは水銀剤の使用をとめることはいやだなどというようなことは農林省は申しておらないということだけは誤解がないようにしていただきたいと思います。
 ただいま特定の個人なり特定の農薬会社の名前をあげられて、云々おっしゃいましたけれども、先生があげられました会社は水銀剤の生産量はきわめて微量でございまして、むしろ、水銀剤を生産しておるのは、ほかの会社のほうが生産量は多いのでございます。どこからお耳に入ったか存じませんが、あげられました個人の名誉をも含めてそのような事実がないことを私の責任において断言いたします。
#19
○三木(喜)委員 そういうことを言われると、言わなければしようがないが、あなたのところから出ている資料では何も微量じゃないです。どのくらいが微量なんですか。あなたのところから出ておるものですよ。その数量は、私、この中からずっと書き抜いてきたのだけれども、微量じゃございませんよ。
#20
○和田(正)政府委員 いま私が量が少ないと申し上げましたのは、水銀剤の生産量について申し上げたのです。たしか、私の承知しておる限りでは北興農薬というのと、日本特殊農薬というのと二社で水銀剤の八五彩くらいつくっておったかと私は記憶しております。
 水銀剤の総出荷高は、一昨年の十月から昨年の七月までに七十三億でございます。
#21
○三木(喜)委員 これで調べてみますと、武田製薬、イハラ、北興、これが多いようです。農林省の農政局植物防疫課監修の日本植物防疫協会で出しておるこれで見たのですが、私の見方がまだ未熟なのかもしれません。しかしながら、そういううわさが流布されておるということと、いまあなたは変なことを言われましたね。すぐにでも水銀の中毒が出てくるようで、農民に不安の念を起こさしてはいけない、それはそのとおりです。これが堆積されることがこわいのだということですけれども、堆積されたら肝臓がおかされ、さらに大脳をおかされ、小脳をおかされて、脳が空洞化する、そうして水俣病を起こすということを東大の二教授が臨床実験あるいはその他の実験によって証明されました。血管の中も詰まっていって、ついに言語機能とか、あるいは運動機能というものがおかされてしまって廃人になる、そして死に至る。こういうことが集積されて後、ああそうだったのかではおそいと思うのです。それだからこそ、こういうことをいま科学技術振興対策特別委員会で問題にしておるのです。そんなものは集積されて、結果が出てから、そういうことになってもいけないのと、もう一つは、あなたは対策を着々とやっておるということですけれども、これが国会で問題になったから、あるいは新聞とかその他出版物で問題になったから農林省はあわてておるというのが現状じゃないですか。何か私たちが言っておることが農民に不安の念を与えて、そのことが非常に悪い影響を及ぼすというような言い方ですけれども、私たちはそういう考え方は全然ないですよ。むしろそれよりも農薬会社の手前を考えてやっておるというそういううわさのほうが、われわれは農林省の姿勢としては問題だと思うのです。そういう点を申し上げておるわけです。
#22
○和田(正)政府委員 私はあまり専門でございませんので、よく存じませんのでございますが、農薬としていもち対策に使われます農薬は酢酸フェニル水銀という形の水銀でございまして、私が間違っておれば、専門家もおいででございますから御訂正をいただきたいと思いますが、私の承知をしております水俣病等の直接の害をなしましたのは、たしかアルキル水銀という化合物だったと思いますので、ちょっとそこのところは違うのではないかというふうに私は承知しておるわけであります。
 ただ、そういうことの理屈の問題ではなくて、先ほど来申し上げておりますように、水銀がわずかにせよ残留しておることは事実でございまして、それがいかなる形の水銀であるかは別として、米の中へ残留しておることは事実でございますので、実は私どもが、きわめて微力ながらも水銀剤を他に置きかえることについていろいろな開発研究を始めましたのはやはり水俣病等を契機として開始をいたしたわけでありまして、最近、特に御指摘が強いから急にあわてたというようなかまえでもないように思いますけれども、先生の目からはそういうふうにあるいは客観的には見えるのかもしれませんが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ早い機会に切りかえるという行政上の姿勢はくずさずに努力をしてまいりたいというふうに思っております。
#23
○三木(喜)委員 疑問は残りますけれども、あと質問者がありますから譲りまして、私はこの程度でおかしていただきます。
#24
○原委員長 西宮弘君。
#25
○西宮委員 いま問題になっておりますことについて若干、関係の役所の方並びにきょうは参考人の方もお見えでありますから、一緒にお尋ねをしたいと思います。
 私は、まず、この農薬の害と申しますか、農薬を使用することによってあらわれたマイナス面と申しますか、そういう点を考えてみると、三通りあるんじゃないかと思うのです。一つは、農薬を非常にたくさん使うことによって、たとえばいわゆる天敵がいなくなってしまうとか、あるいは新しい菌が発生をする。つまり、抵抗力を備えた新しい菌が発生するとか、そういう問題、あるいはまたこん虫がいなくなってしまって、そのために虫媒花の受精作用ができないとか、そういったような問題、つまりいわば農薬をたくさん使うことによって農作業自体に対するマイナスということがまずあると思うのです。二番目には、先ほども問題になりましたけれども、この農薬の使用過程において起こる数々の事故。三番目が、きょうの問題であります残留水銀のわれわれ消費者に対する人体的な影響という点であると思います。いわばこういう三つの問題が農薬の害として考えられるのではないかと思うのですが、きょうはもちろんその第三番目の問題をお尋ねするのが主でありますが、簡単に一言だけ前にあげました二つの点についてもお尋ねしてみたいと思うのであります。
 そういう自然現象が農薬の使用によってバランスをくずしてしまった、そういう問題に対して農林省はどういう対策を現在持っているか、どういうやり方でこれに対処しているか、お尋ねいたします。
#26
○和田(正)政府委員 農薬の使用によりまして天敵その他自然のバランスをこわしておるが、それに対する対策はどうかというようなお尋ねであったかと思います。
 御承知のように、天敵ばかりに限りませんで、タニシがいなくなったとか、ドジョウが減ったとか、トンボが少なくなったとか、いろいろなことがいま言われておるわけでありますが、やはり非常に下等な動物でございます虫とか、あるいは各種の菌とかいうような非常に繁殖力の強いものを対象にして、生産増強ということを重点に置いて農薬を使用いたしました結果として、おっしゃるような点もいろいろな面でバランスをこわしておるということが、御指摘のとおりあろうかと思います。
 天敵の問題等につきましては、私も専門家でございませんので詳細は存じませんが、たとえば神奈川の国立農事試験場でございますか、そういうところでそういう研究、実験等もいろいろいたしておりまして、本来ならば、できるだけ農薬の使用量を、ある時期には濃密に使ったとしても、一定の発生源をたたくことができますれば使用量を減らすというような方向で考えることが、考え方としては一番正しいのではないかというふうに私どもも常々思っておりますので、今後の農薬の研究等につきましても、できるだけそういうような方向で考えられますように努力をしてまいりたいと思います。
#27
○西宮委員 また別の機会にこの問題はもう少しお尋ねしたいと思いますが、二番目の問題について、つまり農薬の使用過程において起こる事故、これは農民もありましょうし、あるいはまたヘリコプター等から散布をする場合にはそのオペレーターもありましょうし、あるいはまた、農薬をつくっている工場の従業員も大きな被害者であると思うのですが、そういう問題を含めて、農薬から受ける被害者はどの程度あるのか、これは厚生省にお尋ねをしたいのですが、一々数字を読み上げていただくのもたいへんでありますから、私が手元に持っております雑誌でありますが、それで見ると、たとえば死者についてだけいうと、昭和三十二年から数えて八百三十五人、七百七十七人、七百四十七人、七百六十四人、八百六十三人、八百六十四人、八百六十七人、昭和三十九年八百十八人と、こういうふうに書いてあります。これは厚生省の調べですが、間違いありませんか。
#28
○和田(正)政府委員 私、いま厚生省の薬事課の調査の表を持っておりますが、いまおっしゃいました数字は厚生省薬事課の調査の数字で、三十九年八百十人名というのはおっしゃるとおりでございますが、薬事課の調査報告によりますれば、そのうち七百八十三名は自殺または他殺ということで、農薬の目的以外に毒物として使用をした数字でございます。なお、散布中の事故について申し上げますと、昭和三十九年の死亡事故は十二名、それから中毒事故は百七十五名であります。
#29
○西宮委員 もちろんいまの死者の数の中には自殺、他殺を加えておるので、それが大きな数字を占めておることはちゃんと断わりがついておりますけれども、しかし要するにこれらは、たとえば自殺、他殺にしても、農薬の管理が十分でないということの明らかな証拠なんです。だから、そういう点について農林省が通牒を出したりいろいろな指導をしていることはわれわれも承知をしているけれども、しかし現実にはさっぱりそれが役に立っておらないということが言えるのだろうと思う。さっきの三木委員に対する局長の答弁だと、最近は被害者がほとんどなくなってきた、こういう答弁をしておったが、私はそうではないと思う。私の持っているのは昭和三十九年までしかありませんが、それで見ると、中毒者は三百十一人ということになっておる。いろいろな新聞の報道を見ると、この数字はきわめて小さな数字で、要するに保健所を通して集まった数字だけで、実際に地方の病院等に診療を受けに来るそういう数を数えると、これよりはるかに大きな数字だということを、新聞はいずれも報道しておるわけです。私も事実そうだろうと思う。そういう点からいうと、決して局長の言うようにもう最近はほとんどなくなったというような状態ではないと思うのだけれども、その点はどうですか。
#30
○和田(正)政府委員 いま統計としては私どもの手元にも厚生省でお調べになりましたものしかないわけでございますので、これだけがすべてでないのではないかというふうな御指摘を受けましても、何ともほかの数字を持ち合わせておらないわけでございますが、ただ私は先ほど、ほとんどなくなったというふうに申し上げたわけではないので、いろいろな施用方法の注意その他については、たとえば安全運動をいたしますとか、あるいは散布前の健康診断を励行いたしますとか、あるいは散布の際にマスクをかけるとかゴム手袋を使用するとか、いろいろな指導をいたしたわけでございますが、たとえば散布中の中毒事故も、この統計でも昭和三十五年には六百件をこえておりましたのが、最近では百七十五件というふうに減るなど、そういうPRの効果はある程度出ておるというふうには思っておるわけでございますが、これで安心をしておるわけではないので、今後ともその他の使用についての指導もいたしますと同時に、また先ほどの御質問にもお答えを申し上げましたように、なるべく毒性の低い農薬に切りかえることを、水銀剤に限らず一般的に努力をいたしておりまして、たとえば昭和三十五年の農薬の総生産量の中では、毒物及び劇物取締法によります特定毒物ないしは毒物として指定されたものが五割をこえておったのでございますが、三十九年には劇物、普通物で七〇%を占めるというふうに、できるだけ毒性の低い農薬の使用に切りかえる努力は他面いたしてもおるわけでございます。
#31
○西宮委員 たとえば。パラチオン剤のごときは前歴を見ればすぐわかるので、それが非常に強烈な有毒性のものだということはだれが考えても当然にわかることなんで、そういうものに対する対策が、どう考えてみても私はおそかったと思うのですよ。いま一々申し上げないけれども農薬の害毒に対する役所の対策がそれぞれ講ぜられてきた。あるいはいろいろな役所の機構ができたり、あるいは何とか委員会ができたり、そういう年代等を見てみると、どれをとってみても、このパラチオン剤が使われ出した昭和二十八年ごろから見ると、みんなかなりおくれてそれが発足しておるわけです。だからその間というものは、むしろ地方の医師が、現実に直面してそういうところで非常な苦労をしながらこの問題を取り上げ、そしてこれを世論に訴えてきた、そういう長い間のそういう人たちの悪戦苦闘の結果、ようやく役所もそれに手をつけてきたというのが偽りのない実態だと思うのですよ。おそらくその点は答弁を求めるとそうじゃないと言うかもしらないが、農林省、厚生省あるいはその他の科学技術庁等にしても、それはとうてい否定できないと思う。現にたとえば国立衛生試験所に毒性センターですか、そういうものが設けられたそうでありますが、これなども人数からいっても非常に少ない人数であり、あるいはまた厚生省が三十九年から実態調査を始めたという話でありますが、この予算などもわずかに四百万ということで非常に小さい。むろんアメリカなどを例にするわけにいかないかもしらないが、ここなどでは膨大な機構があって、国立の研究所には二千名もの研究員を常置しているという話でありますが、そういうのに比べて非常に手おくれだった。これは局長もさっきるる述べておったように、食糧増産という大きな命題の前に、そういう被害が大きく映らなかった、非常に軽く扱われておったということの結果だと思うのです。しかし私はいまそういう過去のことを一々責めてもしかたがないと思うので、これに対する対策としてどういうことが考えられるか、これがまず被害予防の手段、あるいはまた被害を受けた者に対する救護、救済そういう問題が当然あると思うんだけれども、それについてこの事故に対する対策を聞かしてください。
#32
○和田(正)政府委員 いま御指摘がございましたように、終戦後、国内の食糧増産ということに重点を置きまして、いろいろな新しい農薬が発見をされたことが、日本の農業生産に大きく貢献し、国内の食糧事情の好転に役立ったことは否定ができない事実でございます。半面、いま先生御指摘のように人間に対する愛情とか、そういう面についての配慮が必ずしも十分でなかったのではないかということにつきましては、私どもも反省し、今後もそういう点については、十分意を用いてまいりたいと思います。
 なお、安全対策につきましては、古くから必要に応じて、たとえば昭和三十六年には、農政局長と厚生省の薬務局長、また、毎年両省の次官の共同通牒等で農薬被害防止運動の実施要綱というのを定めまして、末端の各農業団体、あるいは市町村等を通じまして、あるいは医師会等を通じまして指導をいたしておるわけでございますが、一般的には、たとえば小学校の学童等に対する被害防止運動の普及でございますとか、そういうPR運動、広報運動のほかに、先ほどもちょっと触れましたように、講習会を保健所等を中心として開催をいたしまして、お医者様なり学校の先生なりを通じまして農薬の毒物、劇物としての被害の実態の講習をいたしますとか、あるいはまた、取り扱い上の指導としては散布従事者の健康管理をいたしますとか、それを使います前にゴム手袋をはめるとか、あるいは散布が終わりましたあとでは必ず石けんで手を洗うようにするとかいうような、ことこまかな指導をいたしておるわけでございますが、今後ともそういう取り扱い上の安全につきましては一そう指導を強化してまいりたいと思っております。
#33
○西宮委員 食糧増産のためにいわばその犠牲になった人たちなのでありますから、それに対しては、単にいまお話しのような指導をするとかいうことだけではなしに、もっとあたたかい手を差し伸べてしかるべきだ。たとえば病院に通うにしても、その医療費の負担をする問題であるとか、あるいは労災法の適用問題であるとか、あるいは何か新聞を見ると、新しい薬でパムと称するのが出たんだそうでありますが、そういう新薬の研究というようなことも当然必要なことだと思う。とにかくそういう患者に対して、これはいわば食糧増産の犠牲者なんだという立場から、もっと手厚くこれを遇するというところまで、当然に考えられてしかるべきだと思うのですけれども、その問題は、それじゃその程度にいたしましょう。
 時間がありませんから、本日の議題でありますいわゆる残留水銀の問題についてお尋ねをしたいと思うのですが、先ほど局長が前の質問者にお答えになったようなことは私も大体新聞で見ましたけれども、農林省の農業技術研究所が過去十年間にわたって研究をしてきた結果だ、こういうことで新聞で報道されておったのであります。おそらくそれとさっきのお話も大体同じだと思うのですが、それよりも新しいデータはないのですか。
#34
○和田(正)政府委員 農技研での三十一年以後の研究以外にはいま新しいデータは持ち合わせておりません。
#35
○西宮委員 厚生省はいかがですか、昭和三十九年から調査中というので、まだ結論は出ないわけですか。
#36
○小高説明員 現在調査中でございまして、中間の集計結果は三十九年度の玄米の中の残留量でございますが、この中の水銀の残留量といたしまし七は平均〇・一四PPMという中間結果が出ております。
#37
○西宮委員 私はこの問題については厚生省が主管官庁だと思うのだけれども、厚生省が少し立ちおくれているのではないかと思うのです。たとえば、これは私が新聞で読んだので、わかりませんけれども、さっきの農林省の農業技術研究所が十年間の結果だといって発表した。厚生省はその農林省の発表に対して非常に驚いたということを言ってしるわけです。それは談話で述べている。あるいはまた、これは少し古いので、その当時は農林省も大体同様だったかもしれないけれども、昭和三十二年の新聞を見ると、石川県で玄米の中に水銀が残留している、そういう事実を発見して水銀の検出が行なわれたというのに対して、厚生省の食品衛生課長はそういうことはあり得ないと思うという談話を述べているわけです。ですから、そういう点を見ると、いかにも厚生省が立ちおくれているという感じがするのだけれども、昭和三十九年から始まったのは三年間の調査だそうだから、本年四十一年までかかるだろうと思うのですけれども、どうなるのですか、全体を通して少しおくれているという、そういう反省はありませんか。
#38
○小高説明員 確かにそういう点はございます。しかしこれは、厚生省の試験研究機関としては、現在全力をあげてやっておりますけれども、先生御指摘のような状態でございます。
#39
○西宮委員 全力をあげてというお話だけれども、さっきもちょっと指摘したように、たとえば三十九年の予算は四百万円ですね。それで全国各地にわたって生産者並びに市場に出回ったもの、そしてあらゆる種類のものを非常に広範に集める、これは詳細に新聞に報道されておりましたが、そういうことがその程度の予算で可能なのかどうか、われわれ常識的にはちょっと想像できないので、むしろおざなりにやっているのではないかという感じがするのだけれども、それで全力を傾倒してということが言えるのだろうか。
#40
○小高説明員 確かに御指摘のとおり四百万円の予算では非常に不足でございまして、われわれとしても予算獲得につきましては努力をいたしたのでございますが、遺憾ながら現状は先生のおっしゃいましたようなことでございます。計画としましては現在十品目の食品につきまして各種農薬の残留量というものを調査しております現状でございます。
#41
○西宮委員 端的に言って、これが稲あるいは稲以外の蔬菜その他でも同様でありますが、葉や茎に直接まくということは禁止をするのが当然ではないかというふうに思うのですけれども、その点これは農林省だと思うのですが、農林省の見解はどうですか。この点は、この前この委員会に参考人として来られた上田教授等はその点を強調しておるのだけれども、農林省は現段階ではそこまではなかなか踏み切れないですか。
#42
○和田(正)政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたように、新しい農薬も数種、薬効等も確認ができまして、それの増産体制を急いでいるわけでございますが本年度のいもちの発生を予想されます時期から水銀剤の使用を全部ストップをするということにはちょっと生産量が不足でございまして、追いつきませんので、本年につきましては稲の生育の初期の段階はある程度水銀剤がなお使用されることはやむを得ないかと思いますが、生育の後期のいもち対策としては、水銀剤以外の農薬を使うというような使い分けを指導してまいりたいというふうに考えております。
#43
○西宮委員 農民は、単に農林省が指導するというだけで、その後期の使用はやめる、そういうことがはたして行なわれるものかどうか。現にいもちのごときは出穂後でもたくさんのいろんないもちが出るわけですから、そういうときに農民は、それはあとに水銀が残るからやめよう、そういういわば徳義心だけでそういうことを抑制できるかどうかということに私は非常な疑問があると思うのだけれども、その点はどうですか。
#44
○和田(正)政府委員 農薬は現在農協を通して農家の手元へまいりますものが大部分でございますので、全国購買農業協同組合連合会とも打ち合わせをいたし、またメーカーにも集まってもらいまして、出荷その他につきましてもいま申し上げたような段取りでやりますように現在せっかく話を詰めておるわけでございます。もちろんいもちの発生状況その他は、先生御案内のように、本年の気候いかんによって激発をいたしましたり発生をいたさなかったりする事情もございますので、よほど特殊な場合になりますと、あるいはまた問題が起きるかもしれませんが、その場合はそれで対応するといたしましても、少なくとも平年の気候で推移をいたすことを前提にして考えます場合には、先ほど来申し上げておりますように、全購連、メーカー等とも話し合いをいたしまして、出荷関係その他からも考えて、初期の段階には水銀剤を使うとしても、後期の段階には低毒性の農薬が使われるように、そういう出荷体制で考えてまいりたいというふうに思っております。
#45
○西宮委員 農林省はそういうつもりでやっていても、末端はなかなかそのとおりにいかない。たとえばさっき申し上げたように、厳重に管理されているはずの農薬が自殺、他殺等に相当の件数で使われている、そういう事実さえある。そういう現実なので、とても農林省の指導だけで、つまりそろばんを度外視してそういうことをするということは、私は容易に期待できないと思う。そういうことを期待しているとすると、それはすこぶる見方が甘いのではないか。むろん、それに対して、後期には水銀剤を使わせない、そういうことのために何か経済的な損害を補てんするとかいうような対策でも並行するならば、それはそういうこともあり得ると思うのだが、そうでなしに、単に、いわゆるお説教だけでそれをやっていくということは、私は容易じゃないと思うのです。しかしそれを議論してもしかたがないからその程度にしておきましょう。
 さっきから局長は、いわゆるフェニル水銀だからたいした害はないのだ、こういうことを言っていますが、土壌殺菌に使うのはアルキル水銀ですね。ですからそれが蔬菜などの場合には相当の影響を与えるのではないかという気がするのですけれども、それはどうですか。
#46
○和田(正)政府委員 土壌殺菌剤として使っております量は、全体の水銀剤農薬の〇・五彩ぐらいで、量的には非常に少ないわけでございます。それが蔬菜に残っておるかどうかということにつきましては、いまちょっとデータを調べておりますから、わかりましたらお答え申し上げます。
#47
○西宮委員 それじゃあとからその説明を聞くことにしますけれども、いずれにしても局長は、非常に微量だから、ことに有機水銀の場合にはたいした影響はないとか、あるいはさっき厚生省の政務次官も言われたのですけれども、あるいは無機水銀に変わっているのかもしれぬ。もしそうであるならば全く害がない、そういうお話などもあったけれども、はたして無機水銀に変わっているのかどうか、そういうことも今日証明されていないわけです。それはそうでしょう。まだその証明はないわけですね。だからそういう際に変わっておるかもしれぬというようなことだけでたいした害がないというふうに考えるのは、非常な危険なんで、これはこの前の参考人も言っておったように、あるいは諸外国の例が示すように、むしろ直ちに禁止をするという体制でいかなければ、いつまでたっても問題が解決をしないのではないか、そういう体制になればおのずからこれにかわる低毒性のものをさらに開発するというようなことも可能になるのではなかろうか。そういうことがない。厚生省の佐々木次官も言ったし、局長も言ったけれども、要するにたいした害はないのだ、そもそもそういう認識に立っているから、それに対する対策あるいはこれにかわる農薬を開発するというようなことがどうしてもおくれるんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。佐々木政務次官からお答えいただきたい。
#48
○佐々木(義)政府委員 私先ほど申し上げましたように、各国でも必ずしも全部禁止という体制で進んでいるわけでもございません。米国等はもちろん水銀残留量はゼロということで禁止しておりますが、オーストラリアあるいはニュージーランド等は必ずしもそうでございません。もう少し許容量等をはっきり研究いたしまして、なるべく早く厚生省といたしましてはこの許容量を確定いたしまして、その限度内に問題をとどめるか、あるいは米国のように水銀が入っているものを全部禁止するかというような態度をはっきりしたいというふうに考えております。
#49
○西宮委員 全部が禁止をしているのではないわけですね。いま次官も言われたように、アメリカ、ソ連が全部を禁止しておる。あるいはニュージーランド、オーストラリアはある一定の許容量をきめておる。ところが日本の場合の米に含有をされている残留水銀を見ると、それはかろうじてオーストラリアの制限には合格をするというだけのものなんです。ニュージーランドの基準には合格しない。全面的に禁止しているのはアメリカ、ソ連。しかし世界的にみて米の生産国は少ないのだから、世界じゅうの全部の国が問題にしているというわけではもちろんないと思いますが、そういう状況の中にある。しかも、米を常食にしておる日本の国民がいままで野放しでおったということは重大な問題だと思います。農林省の発表では、玄米の中には〇・一あるいは〇・二PPMの水銀が検出される、それが一番多いということでありますが、植物病理学会で発表したのを見ると、米には〇・一ないし〇・二PPMのものが一番多くて、中には〇・三から〇・五ぐらいのもある、こういうことを発表しております。ここで言う米というのは玄米なのか白米なのか私にはよくわからないのですが、しかしいずれにしても、その中をとって〇・二と仮定をすると、一日五百グラムのめしを食う、三合余りのめしを食うとすると一日に〇・一ミリグラムの水銀になり、それを一年間食うと相当の量になるのだが、さらにそのほかに、さっきもちょっと言いましたが、蔬菜とかくだものとか卵とか牛乳とか、そういうものにも含まれておる、そういう研究が発表されているわけですけれども、そういうのを加えて計算をすると一年間に相当の量になり、十年間にはこれまた大きな量になる。これはこの人が一日に〇・四五ミリグラムということで計算をしておりましたので、それが妥当かどうかは議論の余地があると思います。蔬菜その他に含まれているものを含めて一日〇・四五という計算をしている。それには議論の余地がありましょうけれども、それでかりに計算すると、十年間には一・六四グラムの水銀を食べる、こういうことになるということで警告をしているわけですが、そういうふうに長い間蓄積をしていくということになると一あるいは片っ端から排出をしてしまうということであれば問題がないのかもしれないけれども、やはり相当量が残留していくということはおそらく常識的に、私どもは全くのしろうとですから、いろいろなこういう人の話を聞いたり読んだりする以外に手がありませんけれども、われわれしろうとの常識からしても、毎日冷々こういうものを食っているのだということになれば、それはやはり重大な問題ではないかと言わざるを得ないと思う。
 それから、一つお尋ねをしたいが、胎児に対する影響、これは抵抗力が非常に弱いわけですから、胎児に対する影響というのはどうですか、厚生省。
#50
○石丸説明員 確かに、ただいまおっしゃいましたように、成人と胎児あるいは幼児を比べますと、抵抗力は幼児あるいは胎児が非常に低うございますので、微量の水銀量で発病ということも考え得るわけであります。
#51
○西宮委員 そういうことになると、まさに民族の将来に関係する問題だと思うのですよ。これを使い出したのは昭和二十八、九年ごろからだと思うのです。だから、まだ経験として必ずしもそう長いことではない。しかし、それから今日まで十年あるいは十年少々たっているわけですから、これがこういう状態で継続をするということになると重大な問題だ。しかも、いま説明のあったようなことで胎児にまで影響するということであれば、これは全く民族の将来に関係する重大問題だ。幸いにして――幸いにしてというか、私はいまでも非常におくれておると思うのだけれども、さっき厚生次官はできるだけ早くこれを全面廃止に持っていきたい、こういうことを言われておったので、私どもはそれに大いに期待をしたいと思うのです。
 厚生省にお尋ねしますが、たとえば、いままでどのくらい米の中から残留水銀が検出ができるかというような例は、さっきの農林省の発表にもありましたけれども、これを相当期間継続して使用をした場合にどういう影響を与えているかという、そういう調査はありますか。
#52
○小高説明員 これが実際に健康にどの程度の影響を与えるかということは、現在のところ、現在のような微量の摂取でどの程度の影響を与えておるか、健康そのものに対する影響というものはわかっておりません。ただし、毛髪の中の水銀濃度が日本人における場合には外国人よりも高いということは、せんだっての浮田教授の御説明があったとおりでございます。
#53
○西宮委員 毛髪の中の量は外国人に比べると三倍ないし五倍くらいということは、この前も参考人が述べておりましたので、それだけでもある程度の推定ができると思う。私がいまお尋ねしたのは、人間の健康そのものを診察をして云々という、そういうデータはないと思うのだが、動物実験等で行なわれていないですか。
#54
○小高説明員 動物実験におきましては、高濃度の場合には肝臓及びじん臓の組織に障害を与えるということが出ております。これは水銀化合物全般に言えることでございますが、アルキル水銀につきましては神経細胞に影響を与える、これも高濃度の場合であります。
#55
○西宮委員 問題は、これに対する対策をどうするかということなんですが、今日までこの問題は、私もさっき指摘をしたように、農林省にしてもあるいは厚生省にしてもかなり手抜かりだったと思うのです。あるいは手おくれだったと思う。農林省は食糧増産に追われて、あるいは厚生省は現実に予算がなかったというような点からだろうと思いますが、とにかく農林省よりもさらに手おくれだったという感じが私もするわけです。そういうことで、いずれにしても今日まで非常に手おくれになってしまった。すでにしばしば民間の団体等では現実にそういう問題に直面をして重大な警告を与え、あるいは新聞の論説等はずいぶん繰り返し繰り返しこの問題を取り上げているのを私も読んだわけですが、かなり古くから取り上げられておる。あるいは厚生省ではないですか、国民生活向上対策審議会というのがありますが、これなどもこの問題に早く取り組めという答申をしてすでに数年になる。あるいはWHO、FAOが決議したのも昭和三十七年です。そういうあらゆる方面から警告をされているにもかかわらず非常に手おくれになってきたというのは残念だと思うのですが、ただ、わずかに使用を制限されているのは、アメリカに輸出をするリンゴだけなんですね。これはアメリカが買ってくれないから、やむを得ずやっているのだろうと思うけれども、そういうところで基準を設けることができるのならば、日本の国内でも基準を設けられる。アメリカ人に食わして悪いのに日本人に食わしてもいいはずはない。当然できるはずだと思うのだけれども、なぜアメリカ向けのリンゴに対してやって日本の国内ではやらないのか、教えていただきたい。
#56
○和田(正)政府委員 いまの御質問にお答えをいたします前に、先ほど留保いたしました蔬菜のデータは残留毒性のデータがございませんので、かわりに果実についてのデータを申し上げておきたいと思います。
 ミカンにつきまして二十点検査をいたしましたところ、その果肉に含まれております水銀が〇・〇三PPMで、水銀剤を散布いたしません実例に対して二・七倍。ナシでございますが、これは件数が少ないのでございますが、三点の検査をいたしましたのが、〇・〇五PPMで、水銀を散布いたしませんナシに対して二・三倍ということになっております。
 それからもう一つ、先ほど動物実験のお話がございましたが、うちの試験場でやりました酢酸フェニル水銀を散布いたしました米をシロネズミに食べさせましたところの実験データでは、九〇%がふんの中に排出されまして、一〇%がじん臓、肝臓、腸に分布をして滞留する。なお、その玄米の食用を停止いたしまして、三日目からは排出量が減りましたという実験がございます。
 それからただいまお話しの、リンゴの件につきましては、お話しのように、輸出用についてそういうことにいたしましたが、現在リンゴについての水銀剤は、斑点落葉病というのが発生をいたしております非常にごく一部での使用をやっておりますほかは、ほとんど全部が低毒性の農薬に国内でも切りかえられているわけでございます。
#57
○西宮委員 さっき局長は、いわゆる低毒性の農薬に切りかえた、七〇%になったというのは三十九年ですか。
#58
○和田(正)政府委員 七〇%は三十九年度の数字でございます。
#59
○西宮委員 それではいつ一〇〇%にする予定ですか。
#60
○和田(正)政府委員 毒性の低い農薬の研究開発のテンポとの関連もあると思いますが、少なくとも先ほども申し上げましたように、いもち病の水銀剤以外の農薬につきましては、すでに五種類ほどの開発ができましたので、先ほど申しましたような税法上の特典あるいは金融の世話等をいたしまして、なるべく早く、ここ数年のうちに完全に切りかえたいと思っております。
#61
○西宮委員 新聞の記事等をずっとたぐってみると、ずいぶん早くから、あるいは抗生物質であるとかそういうものの開発、それが発見された、そしてそれを企業化するんだという記事が盛んに出ているんだけれども、一向に進行しない。私は参考人の久保さんにちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、私の見ました新聞には、久保さんの会社では、これは昭和三十七年の五月の新聞でございますが、準備といいますか、着工をして、ブラストサイジンSですか、それを売り出すという記事が相当大きく出ておったのでありますが、まだ市場には出ないのでございますか。
#62
○久保参考人 お尋ねのことに関しましてお答えいたします。多少一般的な話になるかもしれませんけれども、いままでの質疑をお聞きしましたところからお答えいたしたいと思います。
 御承知のように、ただいま水銀の毒性が問題になっておりますけれども、私たちが農業用抗生物質を開発いたしましたのは、三つのおもな点があると思うのでございます。
 一つの点は、低毒性の農薬で、しかも残留しないという有機化合物の複雑な構造を持ったもの、これは体内で分解いたしますので、残留毒性がないばかりでなく、後遺症と申しますか、あとに残るような症状もないという可能性があるということが一つでございます。
 第二の点は、御承知のように、水銀というものは非常に貴重な物質でございまして、田畑にまくよりもむしろ原子力開発であるとか、その他液体の金属としての特牲がございます。そういう方面の需要が国際的に高まっておりました関係もございまして、何かそれにかわる新農薬を開発するというのが第二の点。
 第三の点は、残念ながらいままでの日本におきます農薬は大部分外国技術の導入または外国の原体の輸入に待っているということ、いわゆる外貨節約ということがわれわれのやはり社会的な一つの義務ではないか、こういう三つの点からであったわけでございます。
 幸い抗生物質の研究には、ここに佳木先生もおられますけれども、日本ではかなりの国際水準に達しております関係もありますし、いもちの病原菌に関する研究につきましては、明治以来、日本においては非常に深い基礎的な研究の蓄積があるわけでございます。植物病理学的なバックグラウンドがあるわけでございますので、それにきく薬をさがすということは、われわれにとっては諸外国に比べて非常に楽な立場にある。テーマとして非常にいいテーマであったということでございます。
 そういう関係もございまして、住木暁生を中心といたしまして、農業用の抗生物質を探索するという研究が始められまして以来、幸いブラストサイジンというものが見つかりまして、これをわれわれ企業化いたしますには、科学技術庁あるいは農林省、厚生省等の援助によりまして、新技術開発ということで開発銀行の融資も受けまして、そうして昭和三十八年から実は発売いたしまして、以来逐年生産を重ねておりまして、年間六十トンあるいはそれ以上も生産しておる現在でございます。しかも、さらに最近は、お聞き及びのカスガマイシンというやはり抗生物質も発見されまして、これまた、われわれのところ及びその他のところで生産を開始いたしまして、本年度は原体といたしまして十トン近くのものが世に出るわけでございます。
 そういうことでございますので、われわれは広い立場から新しい農薬というものに切りかえていくということが、日本にとってはまことに必要であろうということで、現状におきましては、先ほど農林省の方のお答えにありましたのとちょっと――私たちがいわゆる業界で得ました資料から申しますと、現状の非水銀の生産能力というのを御説明申しますと、農業用抗生物質が原体として年間百四十五トン、それから合成農薬としては、こういうところであれですけれども、商品名で呼ばしていただくことを許していただきたいと思いますけれども、キタジソが五百トン、プラスジンが八百トン、いろいろ非水銀農薬や合成農薬がございますけれども、そういうことで、これは粉剤換算にいたしますと合計二十万トンの生産能力を現状において生産会社、原体メーカーは持っておるわけです。
 しかしながら、御承知のように、われわれ生産を担当しております者にとりましては、実は来年度使用の原体をもういまからつくり出す計画でございまして、いまここである決定をされましても、ことしの農薬についてはもう昨年それぞれ準備しておりまして、各社も原体として手持ちがあったり、あるいは昨年度の使い残りがあったり、あるいは現状においてもうすでに生産を農薬会社のほうでやっておるという現状もございますので、実際問題として本年度の水銀をどうこうというようなことは、これはもうはっきりいって手おくれということでございます。それじゃ来年はどうするかということについても、実を申し上げますと、われわれが自主的にこういうふうに生産体制をとってはおりましても、在来の流通機構なり、あるいはその他にありますものを考えますと、まだまだというような非常になまぬるい考え方をわれわれも持ちがちなんでございます。業界というものはもうちょっと自主性を持ってやれという態度が好ましいわけでございますけれども、なかなか現実からいいますとイージーに流れがちでございますので、われわれといたしましては、なるべく新農薬でいこうじゃないかという気がまえを持っておりましても、諸般の事情から現実に流されているという現状がほんとうの姿でございます。そういう点でわれわれの新抗生物質ばかりでなく、新しい農薬というものは、世に出すまでにはいろいろな面で長い年月もかかりますと同時に、新しい需要者に対してその使い味をほんとうに浸透させるということは一朝一夕ではいかないわけでございます。ある面でわれわれの力が足りないわけではございますけれども、その点はいろいろな方面からもお力添えをいただきまして、一日も早く――水銀というものは、前に申し上げましたように非常な貴重なものでございますし、また、こわいものでございますから、あるいはそういう疑いがあるものでございますから、そういう点で何とかして新農薬の開発並びにその浸透ということにわれわれも努力しておる現状でございます。
#63
○西宮委員 いまにわかに全面的に切りかえるということができないことは、さっき局長も説明しておりましたからわかっております。
 ところで、久保さんの会社は、水銀農薬も従来つくっておられたのですか。
#64
○久保参考人 私のほうは抗生物質の原体メーカーでございますので、水銀の原体はつくっておりません。しかしながら農薬会社に私のほうの抗生物質を渡しますと、農薬会社のほうでは抗生物質とあるいは水銀を半々にまぜるとか、そういうようないわゆる農薬会社の製剤化するところで抗生物質とまぜて売っておるものもございますが、なるべく単剤とかあるいは非水銀の化合物とまぜることによって、水銀を使わないようにする研究も進んでおります。
#65
○西宮委員 私のお尋ねの目的は、従来のメーカー、つまり水銀農薬のメーカーですが、そういう従来の業者の抵抗があるんじゃないか。それがためにその新しい開発ができないのじゃないかということを聞きたかったわけです。私がそういっても、あるいはいろいろな差しさわりがあって明確な答えをされないかもしれないが、その点に私は非常な懸念を持っているわけです。既存のメーカーが抵抗して切りかえが容易にできないんじゃないか。なぜならば、さっきも言ったように、新しい農薬を発見したというような記事は新聞等で見るとずいぶん早くからたびたび報道されている。これがやがて日本農薬界の花形になるであろうというようなことを大々的に報道されている記事がずいぶんたくさんある。それでいて容易に現実化してこないのは、そういう既存の業者が抵抗し、しかもそれがいろいろな役所等に相当強く働きかけているのではないかということを懸念をするわけです。私はその点をもう少しお尋ねをして、これを最後のお尋ねにして終わりにいたしますが、もし答えられますならば答えてください。
#66
○久保参考人 ただいまの点でございますけれども、先ほどちょっと申し忘れましたけれども、末端価格の点があるのでございます。県の経済連渡しの値段で申し上げますと、新農薬というのはどうしても値段が高くて――高いと申しましても、たとえば十アール当たりの粉剤にいたしまして、在来の水銀粉剤が百七十五円に対しまして二百円あるいは二百二十円、そういう値段の違いがございます。これがやはり浸透をする、あるいは大量生産にいくまでの一つの障害になっているのではないかと思いますし、これは顕在しているか潜在しているかわかりませんけれども、従来の水銀メーカーのほうが多少やはり売りが強いという現実です。これは、われわれといたしましてもやむを得ないとは思いますけれども、現実の姿でございます。特にじゃまをしているとかなんとかということではちょっと語弊があるかと思いますけれども、現実の姿としては、一つは値段が少し高いということ。しかしながら、きき方は、これは遜色がないか、あるいは最も幅広く使えるという点ではまさっておるのでございますけれども、いいから高いんだといっても農民はなかなか買ってくれないし、それを説得する力が弱いということがございます。しかしながら、高い高いといってもこの数字をごらんになればおわかりのようにそう二倍も三倍も高いわけではございませんので、われわれといたしましてはつまり量産する、大量生産ということによって値段が下がるのではないかと考えているわけでございます。私たちのいまのブラストサイジンでございますけれども、マーケットシェアが一七から二〇%くらいです。ですから、それがたとえば五〇%シェアというようなことになりますれば、大量生産方式になりますれば、当然値段も安くなるのでございますけれども、それだけのマーケットがまだ確保できない、それが一つの悩みでございます。
 もう一つ抗生物質生産の特徴といたしまして、ブラストサイジンをつくる設備が同時にカスガマイシンをつくる設備と同じ設備だということです。合成農薬でございますと、これは合成プラントとしましては一種類のものをつくると、それをすぐほかのものに転換をするということは、やはり相当たいへんな設備投資でございますけれども、抗生物質の場合には、培養タンクにいたしましても、精製設備にいたしましても、いわゆる互換性と申しますか多目的な工業設備でございます。そういう利点がございますので、集中生産なりあるいは大量生産をやるということが可能でございます。そういうことによってこの値段が一割なり二割なり下がるというふうにわれわれは期待しておりますが、同時に、これは自由競争の経済原則がございますので、今度はその非水銀のほかの合成農薬と抗生物質との一つの競争ということは、値段の上で起こってくるのではないかということは考えられるわけでございます。
#67
○西宮委員 その開発の過程において高くなるということは当然だし、高いということもわれわれ承知をしておりますけれども、その面に対しては政府がしかるべく手を打つべきだと思うのですよ。もちろんさっき農政局長も言ったように、たとえば税制の問題とかあるいは金融の点とか、そういう点で若干の便宜をはかっていますけれども、しかし必要ならば、これに必要な経費を助成をする。それは末端の使用者に助成をしてもいいでしょうし、どっちでもいいのですけれども、そういう方法ももちろんあると思う。とにかく、要するにこれがこの農薬を使う農民にとっても、あるいはまた、さらにその農産物を食べる消費者にとっても重大な、生命に関する問題だ、そういうような認識さえ止まれてくれば、それは国が金を出してもその面をカバーするという態度が当然にとらるべきだと思う。私どもはそのことを強調したいわけです。そして一日も早くこれが全面的に切りかえになるということを私は期待したい。したがって、農林省にはその点についてほんとうに固い決意をもって当たってもらわなければならぬということを要望したいのです。ただ、さっき非常にえんきょくなお話があったけれども、既存のメーカーが相当の力で抵抗している、こういう点について、いやしくも役所がその片棒をかついでいるというようなことであっては断じてならないので、その点について農林省の見解をお聞きしたいと思います。
 その前に一言だけ、いまの低毒性の農薬の場合、それを幾つも使った場合に、重なり合って、やはり相当の害はなすという点についてはどうですか。簡単に、一言だけお聞きしておきます。
#68
○久保参考人 先ほど来、水銀の慢性毒性の試験について、いろいろ御質問がございましたけれども、新農薬につきましては、厚生省におきましても、われわれに委託試験研究ということで御依頼がありまして、一年間小動物に食わせまして、そして慢性毒性についての試験が続けられておりますし、一部はもうすでに印刷物になっております。そのくらいにいわゆる低毒性ということについての証拠はあがっております。
 それからブラストサイジンといえども完全な農薬ではございませんで、散布時に目の粘膜に結晶が触れますと炎症を起こしますが、これは、その散布時の処置とか、それから、それに処置をいたします薬剤などもはっきりしておりますし、さらにまた、後遺症が残るというようなことがないというデータが出ております。それからまた、現在は、医薬でもそうでございますけれども、農薬に関しましても、われわれは、常時使用の十倍とか百倍とか非常に高濃度の散布なりあるいは投与をいたしまして、いろいろ動物の臓器にどういう変化があるかということをあらかじめ研究をしておくというだけの措置をとっておるわけでございます。ところが、そういう研究の結果を学会そり他で発表いたしますと、一部のマスコミは、そういう動物試験の、あるいは常用量の百倍とか十倍とかそういうような高濃度を与えた場合の変化というものを非常に興味をもって発表されて、むしろ農薬の使用時にもそういうことが起こるのではないかというような不安を読者に与えるような印象の記事が間々出まして、われわれ非常に良心的に、そういう新しい物質についての深い研究というか準備というものをやっております際に、それを正しく評価せずに、いろいろと一部のマスコミで発表されて、しかも、それがかえって一般の人に危惧の念を与えるというような点が散見されます。こういう点は、われわれも今後は十分によく対処していかなければならない問題だということをつけ加えておきます。
#69
○西宮委員 最後に、農林省の政務次官にお聞きしたいと思うのですが、いま申し上げたように、なかなか新農薬にかわらない。それが、もとの水銀メーカーの抵抗、しかも、それに役所が片棒かついでいるというようなことであっては断じていけないと思うのですが、そういう点について、政務次官としてどういうふうに考えておるかお尋ねしたいのです。私があえてそういうことをお尋ねをする理由は、たとえば、これは「文藝春秋」の昨年の十月号ですが、これに「「水銀」日本を侵略す」という題で、読売新聞の新聞記者でありますが、この人が相当長編の記録を書いているわけです。これによって見ると、富沢長次郎という農林省の技官が昭和三十一年十二月に日本植物病理学会にすでに水銀の害毒について発表しているわけです。昭和三十一年、ちょうど十年前ですね、発表しておるわけです。ところが、それに対して、その後むしろ農林省はその問題に対してかたく口を閉ざして、たとえば新聞記者等が取材に行っても容易に教えてくれない、どういうわけか知らぬけれども、非常に口をかたく閉ざしてしまったということなど、相当詳細に書いているわけです。そういうことを読んでみると、さっきから申し上げておるように、あるいはまた前の三木委員も質問をしたように、何となくそういうところにつながりがあって、いわゆる黒いうわさが立つのじゃないか、こういうことをわれわれは懸念せずにはおられない。そういうことがあったのでは断じていけないことなんです。ですから、そういう点について、ほんとにかたい決意を持って切りかえていく。ことし切りかえることはできないというならば、いままでの水銀薬剤は全部禁止にする、一〇〇%切りかえるというのはいつの時期であるかというようなこともあわせてお答えを願いたいと思うのです。
#70
○仮谷政府委員 水銀剤の問題が、国会でもたいへん議論をされ、国民的な大きな関心事になっておることも承知いたしております。私どももこの問題とはいままでにも真剣に取り組んでまいったのでありますが、十分な施策ができていなくてまことに恐縮に存じております。したがいまして、今後はできるだけ水銀剤の使用も少なくし、制限をしていくという方針で、それと同時に、いわゆる低毒性農薬の早期開発、生産ということにも全力をあげていかなければならぬと思っておるわけであります。ただ、新しい農薬は開発されましたけれども、だんだん先ほどから申し上げましたように価格の問題、コストの問題等がございまして、やはり量的な生産をするということが一番大切である。そのためには、切りかえのための税制の問題あるいは金融の問題、その他いろいろの積極的な施策を政府みずから講じて、一日も早く水銀にかわる農薬をつくり上げることが今日の重大な使命であると考えております。したがいまして、その面については全力をあげてまいりたいと思っております。先生の御指摘のように、農林省が何かメーカーの片棒をかついでいるといったようなことは断じてございませんけれども、ただそういうことをうわさされるだけでも私どもは大いに戒心をいたすべきでありまして、今後も十分に気をつけて、断じてそういうことのないように、一日も早く所期の目的を果たしたいと思っております。
 それから、いつ水銀を禁止するかということでございますが、この問題については、できるだけ低毒性農薬の開発を急いで、そしてそれによって十分にたとえばいもち病の防除等についてもやれる自信がつけば、一日も早く禁止をしたい、こういうつもりで努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
#71
○原委員長 湯山勇君。
#72
○湯山委員 最初に住木参考人にお尋ねいたしますが、理化学研究所では水銀の残留毒性というものについて御研究になっておられるのでしょうか。そういうことは御研究になっていらっしゃらないのでしょうか。
#73
○住木参考人 理化学研究所に農薬研究部と申しますか研究室が付置されましたのは私が副理事長になる前でございまして、毎年一研究室ずつ農薬に関する研究室が新設されまして、本年までに四研究室が新設されております。その研究室の内容は、いま農薬第一、第二、第三、第四と呼んでおりますが、第一と申しますのがおもにこん虫の薬理、生理であります。第二が合成、第三が植物薬理、こうなってまいります。それから来年あたり微生物のほうに入っていくのじゃないかと思いますが、まだ理化学研究所ではその残留毒についてひとつも研究いたしておりません。
#74
○湯山委員 重ねてお尋ねいたしますが、そういうことについて研究室でございますか、機構をお持ちになる御予定はおありになるのでございましょうか。
#75
○住木参考人 理化学研究所の農薬研究部と申しますか研究所と申しますか、設置されましたことについては、御存じだとも思いますが、学術会議から推薦がありまして、国家的の機能を持った農薬研究所を設置すべし、それが回ってまいって、どこへ回ったかは私にはわかりませんけれども、とにかくそこで委員会ができまして、それには科学技術庁、文部省、厚生省、農林省から委員が出られまして、その結果、理化学研究所に新農薬創製のための研究所を設置すべし、こういう命令がありまして、そしてそれが理化学研究所にきて今日に至っておるわけでございます。それでお答えになるかどうかわかりませんけれども、理化学研究所及び学術会議の農薬研究委員会というのがございます。そこの、理化学研究所にどういう農薬研究所をつくろうとしているかという意見をまとめてみますと、大体、残留毒についてはほとんど研究はやらないほうがいいのじゃないか。というのは、そのために新しい研究室が増加されればいいですけれども、そのためにほかの必要な研究室が廃案になるということはいけない。それから理化学研究所に日本じゅうの農薬研究者が、これは大学関係もメーカーも含めまして一番望んでおりますのは、生物検定と申しまして、農薬を新しく合成し、あるいは天然から分離し、あるいは抗生物質から見つけますが、それがどういう病気にきくのかきかぬのか、植物に対する薬害があるのか、それから急性毒性と申しますが、慢性でないほうのもの、たとえばマイスとかラッチを使いましていわゆるLD50、致死量の半分といっておりますが、それを簡単に調べる、そういう生物検定。それからもう一つ、いかなるときでも日本の代表になるようなばい菌及び害虫を備えておきまして、せっかく学者がつくったのを同時に一列横隊に検定してあげて、これはききますぞ、しかし急性毒性はこれくらいである、あとはむしろ厚生省のそういうふうなところで専門の方にお願いして、そこではっきりなさい、そんなような研究所を考えております。
#76
○湯山委員 そこで科学技術庁長官にお尋ねいたしたいと思います。
 いま長官もお聞き及びのとおり、農林省、厚生省等からいろいろ水銀農薬の残留毒問題についての御所見がございました。これを承っておりますと、必ずしも両省の御見解は一致しておるとは思えない。また、おっしゃっておる内容自体も、たとえば米の中にある水銀というものは無機じゃないか、これは特に根拠を持っておっしゃったことではないように聞き取れます。それから農林省のほうのお話も、散布したものの二分の一くらいが植物について、その一〇%くらいが入る、そのまた五%が今度は米の中に入るのだから、微量だから心配ないというようなことなので、その無機、有機は別として、ともかくも米の中に水銀が入っている。これは無機水銀だからといって決して毒性がないわけではなくて、昇表などがあれだけ強い消毒性を持っているということは、無機だからといって簡単に無毒だということではないはずです。それから農林省のおっしゃるように、微量だから問題ないということですが、むしろこの問題は微量が問題なので、それを簡単に微量だということでお片づけになるのも、われわれを納得させる何ものもございません。一体、政府全体の方針というものはどこにあるのか。日本の政府全体としては、こういうものは使わないようにしょう、そしていま憂慮されておる状態をとにかく一刻も早く解消する。その研究をした上で、これだけならば絶対安全だというめどが立てば、その限度において使用するのならする。これが私は科学を尊重する政府のとるべき態度だと思います。そういうことをちゃんとするために科学技術庁もあるし、科学技術庁の長官もおありになって、そこでわずかではございましょうけれども、四十年度に約一千万円程度の金を各省へばらまいて研究していこうということですが、きょうの御答弁等から見ても、厚生省と農林省とがどれだけの分野をどう分担して、一方の業績を一方がどれだけ活用しているかということは、一向お聞き取りすることができなかったわけです。
 そこで、一体そういうような研究を進めていくときの研究体制、また、場合によれば、政府と関係の深い理化学研究所等には、いま言ったような財政上の問題でそのほうへ手が届かないということであれば、これは国が当然やってしかるべきもので、そういったような研究全体の系統的な、あるいは有機的な連携がいかにもちぐはぐだという感じがいたします。
 そこで、いま政府が取り組んでいるかまえは一体どうなのか。とにかく好ましくないから禁止の方向で取り組んでいるのだということなのか、心配があるかないか調べてみるということでやっておられるのか。それならば、どういうふうにその研究を組織立て秩序立て、相互のロスをなくして効果をあげるようにしておられるのか。これは最高責任者である科学技術庁長官からひとつ御答弁いただきたいと思います。
#77
○上原国務大臣 科学技術庁は、実はおっしゃるような職責を十分に果たし得ない設置法になっておりまして、御期待に沿えないのはまことに残念に思う次第なのでございます。科学技術庁におきましては、かような公害問題につきましては、新潟の水俣病の場合におきましても、何が水俣病の原因になっているのかということを調べますには、農薬である場合には農林省、そうでない場合には厚生省、こういうふうに分担が分かれておりますから、たくさんの省庁に管轄がまたがっております場合には、特別研究調整費という費目の予算を持っておりまして、それを各省に配分いたしまして各省の研究所で――科学技術庁でもやりますけれども、各省の研究所でそれぞれ専門のスタッフ、また専門の機関があり、専門の試験研究所がありまして、そこでお調べをいただいて、その結果を私どもに御報告いただいて、それをまた科学技術庁で調査もし実験もして、これはこういうものの中毒である、あるいはまた、この中毒の原因はどこにあるらしい、こういうようなことを結論を出して、御関係の各省庁にお伝えして、それから先の行政的な仕事は各省庁でやっていただく、こうなっておるわけでございまして、直接に行政上の事務を担当していないものでございますから、たいへん御期待に沿えなくて申しわけないのでございますが、それが現況なのでございます。
#78
○湯山委員 私が申し上げておるのは、いま大臣のおっしゃった範囲の中でもできる問題があると思います。と申しますのは、いまおっしゃった特別研究促進調整費、こういうものを各省へ配分になられる。そのときに、ただ有機水銀の残存毒性、これを調べてくれとばく然とお渡しになる場合もあるし、厚生省なら厚生省の分野でこういうことを調べてほしい、ここのことについては農林省でこういうふうにやっているからこうという、直接の研究をお持ちにならなくても、連絡調整ということはむしろおやりにならなければならないので、そのためにこういう費用が見てある、こういうことじゃないでしょうか。
#79
○上原国務大臣 やはりこの特別研究調整費を配分いたしまして、いろいろ御試験、御実験をいただいて、結果を御報告いただくというのも連絡調整でございまするけれども、もう一つ科学技術庁の調整機能というのは、予算の概算要求をいたします場合に、各省庁から出てまいります科学研究に関しまする予算を拝見いたしまして、重複するところがないかとか、それから多寡が均衡がとれていないんじゃないかとか、こういう点を勘案しまして、まあ早く言えば、とれではどうですかという意見をつけて御参考に供する、こういう機能も持っておりまして、各省庁、これはなかなかよく用いていただきますから、調整の機能はその辺にもあるわけであります。何にしましても、先ほど申し上げましたように、直接行政事務を担当するという権限が与えられておりませんので、また与えられても、科学技術庁にはそんなに多種多様の――膨大な研究機関、それから研究人員、スタッフというものが、あらゆる研究をやりますには必要でございまするから、急速にそういう権限を与えてもらっても、スズメが米俵をもらったようなことになっても困るわけでございまして、徐々にひとつ拡張してまいりまして国民の皆さんの御期待に沿うようにしなければならぬ、かように考えている次第でございます。
#80
○湯山委員 どうも私の申し上げておることの御理解がいただきにくいので、長官は御自分のお仕事にあまり御熱心なので、そういう方面ばかりからごらんになっておられるんだろうと思います。しかし、いまおっしゃったような、各省の研究が重複しないようにというようなこと、こういうことをおやりになっただけでもずいぶん違いますので、たとえば一例をあげてみますと――これは農林省にお尋ねします。米の中の残留水銀は有機水銀か無機水銀か、農林省何か御見解がありますか。
#81
○和田(正)政府委員 水銀剤は酢酸フェニル水銀としていもちに使うわけでございますが、それが散布をされました場合に、相当早く分解をして無機になるということはわかっておりますけれども、米の中へ入っておりますものが無機であるか有機であるかということについては、私どもにも調査のデータがございません。
#82
○湯山委員 厚生省は、どういうところからいまのように無機だろうというお答えをなさいましたか。
#83
○佐々木(義)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、米の中に入っています水銀が有機か無機かという判別するための分析方法がまだ確立しておりませんので、的確に有機水銀が幾ら、無機水銀が幾ら、そういうふうな判別ははっきりいたしません。
#84
○湯山委員 厚生省は厚生省でお調べになりておられるのでしょうか。また、農林省は農林省でお調べになっておられるのでしょうか。
#85
○小高説明員 厚生省としましては、米の中の水銀の無機か有機か、あるいはフェニルかアルキルかという分析は、米についてまだ直接やる段階までいっておりませんで、これをいかようにして区別して分析するか、こういうことを目下研究しておる段階でございます。
#86
○和田(正)政府委員 私のほうは、先ほどちょっと申しました農技研の関係がございますが、現在ではサンプルを厚生省のほうにお渡しして研究をしていただいておる段階でございます。
#87
○湯山委員 大臣、いまのように、そのことだけでもどっちか片方できちっとやればいいのです。それがこれから研究をするかどうかというようなところもあるし、それからいまのように厚生省はこういち連絡しているというお話ですけれども、このことだけについても、米の中にどれだけ水銀があるかということは一番重大な問題なんですが、それがこんなに連絡がとれていないのです。そういうものをきちっと組み立てていくことは、科学技術庁でやらなくていいんです。農林省でここまでやる、厚生省はこれをとって、じゃどこまでいけば害が出てくるか、これは厚生省でやる。そうすれば、何もその中の量が出なくても、微量を重ねていって毒性の検査を厚生省でできるわけですから、農林省でそれが出れば、すぐこっちは判定ができるというような組み立てば、科学技術庁の先ほどおっしゃった特別研究促進調整費、そういった面のむしろ一番大事なお仕事だと私は思います。御答弁はいただきませんけれども、この問題は、いまお聞きして、そういうロスが非常に多いと思いますので、ひとつ十分科学技術庁においで御留意になって、そういうちぐはぐやむだにならないようにお願いいたしたいと思います。
 そこで、続いてお尋ねしたいのは、和田農政局長にきょうはたびたびで恐縮ですけれども、先ほど二、三年のうちに水銀農薬は非水銀農薬に切りかえるという、二、三年というおことばがありましたね。これはどういうことなんでしょうか。確かにそう受け取っていいのでしょうか。
#88
○和田(正)政府委員 先ほども申し上げておりますように、何といたしましても新しい農薬の生産量がまず確保されることが必要でございますので、税法上の措置とか金融措置とかを講じておるということを御説明を申し上げたわけですが、そういうことによって大量生産ができれば、先ほど参考人の御意見にもございましたように、価格関係も好転すると思いますので、なるべく早くそういう切りかえ措置をとりたいという趣旨のことを申し上げているわけであります。
#89
○湯山委員 それを全部切りかえるのにはどれくらい資金が必要であるか、そのお見込みはございますか。これは農林省でもむずかしいかと思います。通産省がお見えになっていらっしゃらなければ、参考人のほうから、もしおわかりでしたら、いまの水銀農薬の生産施設が全部どういう形にもしろ、抗生物質になるのか、あるいはまた、他の合成農薬になるのか、おおよそ資金がどれくらい必要とお考えになられるでしょうか。
#90
○久保参考人 ただいまの御質問でございますけれども、これはそれぞれつくりますキャパシティーにもよりますし、それからどのくらいのマーケットシェアを得るかという点によって生産規模も変わりますので、ちょっと概算というのは非常にむずかしいのじゃないかと思いますが、そう私は判断いたします。いまここでたとえば何億要るというような数字は軽々しく出ない現状と御理解いただきたいと思うのです。
#91
○住木参考人 私、学者でございまして、値段のこと何も知りませんから、そのお答えはやめますが、ただ、たとえばいもちならいもちをとりますと、これにきく農薬は二つに分けられます。一つは、胞子が発芽する、その発芽を防ぐもの、そういうふうな作用を持つ、それが主たるいもちにきく農薬。それから今度、胞子が発芽しますとマイセリアム、菌糸が伸びてまいります。その伸びるのを防ぐ、防げば結局胞子ができない。二つの作用のあるのがございますので、それを適当に組み合わせることによって、いまの生産量の少ないのをお互いにカバーできるのじゃないか。これは学者として、そういうふうにやればできるのではないかというだけで、コストのことは何にもわかりません。
#92
○湯山委員 現在のままの生産量として、それまでもむずかしいでしょうか。これは久保参考人のほうにお尋ねしたいのですが、将来の需要の問題は別として、現在の水銀農薬をそのまま、いまのようにあなたのところでいえば抗生物質に切りかえる、それにはどれくらいかかるものでしょうか。
#93
○久保参考人 現実の姿は、水銀原体をつくっているその設備を転用するのではございませんで、別の会社が、たとえばPCPならPCPの設備が現在過剰である、それでPCPの誘導体であって、いもちにきく薬の開発をA社がして、それを農薬会社に原体として渡すというのが現実でございます。それから、いままでは水銀をつくっていた会社が、抗生物質の使用につきましては開発をいたしたので、われわれ抗生物質生産メーカーにこれもつくってくださいと言って、自分のところがつくるのではなくて、ほかの会社に原体をつくってもらって、そうして、農薬として今度は水銀をつくっておるところが農薬の販売をするという、非常に複雑な業界の体制になっておりまして、たとえばA社がいままで水銀をつくっていたのを別のものを――そのプラントをスクラップダウンしてしまって、新しくプラントをつくるということであれば、その算定がわりに楽なのでございますけれども、現状は非常に複雑でございまして、そういった会社が入り乱れて、原体をほかから買わざるを得ないというような複雑な様相になります。そういう実態でございますので、大体どのくらいの資金で全部切りかえ得るかという点はちょっと簡単には算定できないのでございます。
#94
○湯山委員 けっこうでございます。その問題はまた別の機会にお尋ねすることにいたしまして、これは住木参考人にお尋ねいたしますが、水銀剤が農薬として使われたのは日本が最初でございますか。
#95
○住木参考人 私、あまりはっきり覚えておりませんが、日本が最初じゃないと思います。たぶんアルキル水銀ですと、ドイツのメルクがつくったのじゃないか、あそこでは試験をしているだろうと思います。それだけで、日本が最初かどうか、私はわかりません。
#96
○湯山委員 ドイツの場合だといもちがありませんから、いもちで使ったのは日本が最初ということは言えるのでございますか。
#97
○住木参考人 どうも私ははっきり覚えておりませんが、どなたか農林省のお方で、その辺のことがおわかりの方おりませんでしょうか。
#98
○和田(正)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、日本で従来は、先生御案内のように、ボルドー液をいもち用に使っておりまして、いま参考人からお答えがございましたように、種子の消毒用その他に水銀剤が世界的にある程度使われておりましたのを、高知県でたまたまボルドー液がないために、使ってみたらいもちによくきいたということで、それから開発されまして、実際に市販されたのは昭和二十七年からあとでございます。日本のようにちょうど生育時期が気温の面からも湿度の面からもいもち菌の繁殖に適したようなところがないので、私の承知する限りでは、外国でもある程度水稲栽培はしておりますけれども、日本のようにいもち病が重大な生産上の問題になっておらないので、おそらくそういうところでは使っていないと思います。
#99
○湯山委員 当時登録があったわけですね。農薬として、特に種子の消毒というのじゃなくて、いもちに使用する農薬として水銀剤について登録の申請があったわけですね。その当時もうすでに、いまお話しのようにメルクならメルクでそういうものをつくっていた、それらについての毒性は明らかになっておったと思います。そこでその登録のときに、取締法三条三項、四項等によって相当これは注意すべきものだということになると思うのですが、そういうことの配慮は当時あったかどうか、きけばいいじゃないかということでおやりになったのか、その辺どうなんでしょう。
#100
○和田(正)政府委員 だいぶ古い話でございますので、私、当時のことを必ずしも詳細には存じませんが、やはり急性毒性の問題については、当時も十分検討いたしておったと思いますし、また事実散布中の注意事項等をいろいろの面で指導しております面からみますと、急性毒性のことは十分意を用いておったと思いますが、最近問題になっておりますような慢性的な毒性のことについては、十分には手が回っていなかったであろうと想像いたします。
#101
○湯山委員 非常にはっきりした局長の御答弁ですが、私もそう聞いております。そこで、当時はそうであったけれども、法文をそのとおり読めば、現実に毒性があらわれていなくとも、そのおそれがあれば、やはりこれは対象にしなければならないという性格のものだと思います。当初はパラチオン等急性のものを対象にしてずいぶん忙しい対策をお立てになったから、慢性のものはいいだろうということで軽く見のがしてこられたのが、今日になってみると、これは容易ならざるものだということになれば、さかのぼってじゃないけれども、今日の時点においても当然これについてはその当時よりも厳重な規制を加えることが常識だと思いますが、その点はいかがでしょうか。
#102
○和田(正)政府委員 水銀そのものの慢性毒性の問題は、先ほど来いろいろと質疑応答が繰り返されておりますように、医学的見地からもどういう基準が許されるかということがまだ確定をいたしておりませんような段階でもございますが、先ほど私のほうの政務次官からもお答えを申し上げておりますし、また私もたびたび申し上げておりますように、全体として農薬を毒性の低いものに切りかえるということでいままで努力をしてまいっておるわけでございます。特に問題になっております水銀剤については、先ほど来申し上げておりますような方向で、なるべく早く切りかえを完了したいというふうに思っておるわけでございます。
#103
○湯山委員 四十一年の水銀農薬の使用量の見込みは四十年よりも減っておりますか、ふえておりますか。あるいは生産量でもけっこうです。ふえる傾向にありますか、減る傾向にありますか。
#104
○和田(正)政府委員 昨年の水銀剤の使用量が、いもち用としてたしか十一万トン、水銀原体で三百トン、いろいろ増量剤等を加えて十一万トンになるわけでございます。大体そういう数量であったと思いますが、新農薬等の関係から考えますと、本年は気候が特別なことがない限りは、その量を下回るようなことでやっていけるというふうに考えております。
#105
○湯山委員 その下回らせる下回らせないという生産を調整する機能はどこが持っておるのでしょう。
#106
○和田(正)政府委員 御質問の御趣旨が、水銀剤の生産量を押えるという御趣旨だと思いますが、原材料は先ほどの三百トン程度の水銀を使っておるということを申し上げましたが、これは全量輸入でございますので、輸入許可の形ででも実際の必要量以上に輸入されないようなチェックの方法は可能かと思います。
#107
○湯山委員 水銀は自由化されていないのですか。
#108
○和田(正)政府委員 現存はまだ非自由化品目でございます。
#109
○湯山委員 全部輸入ということですが、野村鉱業等で、どれぐらいになりますか、国内で生産もあるはずだと私は聞いておりますが、全部輸入でしょうか。
#110
○和田(正)政府委員 水銀の用途は、ほかの工業用等にもございますので、農薬の原料としては、大体いままで割り当てをして輸入をしておるように思います。
#111
○湯山委員 そうすると、四十二年度はどれくらい割り当てる御予定ですか。というのは、こういうことなんです。
 先ほど局長がおっしゃった御答弁で、苗の時代は水銀を使うのもやむを得まい、しかし穂ばらみ時期から、つまり減数分裂の時期ぐらいからは水銀を使わないように指導していく。そうすると、昨年の実情から見て、昨年は冷害が予想されて、ずいぶんいもちの心配があったので、普通の年よりもあるいは倍近い農薬を使っているのではないかと思います。特にいもちの防除には相当たくさんの農薬を使ったことは局長も御存じのとおりなので、四十一年はよほど生産を落とさぬと、いま言ったような御指導によっていもちの防除をやられれば、水銀農薬というのはずいぶんだぶついてくる。余ってきます。これは当然常識だと思うので、それでお尋ねしておるのですから、そういうことをお含みの上でお答えいただきたいと思うのです。
#112
○和田(正)政府委員 昨年度のいもち対策は、御承知のような異常気象等もございまして、延べ面積で四百八十万ヘクタール、平年ベースで三百万ヘクタールをちょっとこえるところでございますが、大体五割増しぐらいのいもち剤を使ったわけであります。ことしとしては、一応気象事情もまずまずであろうという感じがしておりますので、三百万ヘクタールをちょっとこえるぐらいのところでものを考えればよろしいかと思っておりますが、新農薬の開発その他もごく最近になって進んだものもございますので、いまそれの本年度の生産量等をメーカーから逐一聴取をしておりますが、そこらの調査と相まって最終決定をしたいというふうに考えております。
#113
○湯山委員 最終決定はおっしゃるとおりだと思います。ただ、私が申し上げておるのは、現在のままの新農薬であったとしても、つまり抗生物質等の生産が昨年、ことし変わらないとしても、いもち防除のために使用する農薬は、昨年のような異常天候でない限りにおいては三割減ぐらいになりまずね、そうすれば、昨年が原体三百トン割り当てになられたのであれば、その三割減程度、大体二百トン程度の原体で別にどこにも不自由なくやれる、その上に持っていって、農政局長の御指導によって苗、穂の出る前までは水銀農薬を使うとしても、穂首いもち以降の防除については抗生物質等を使って、なるべく水銀農薬を使わないようにしよう、こういうことになると、抗生物質のほうは昨年と同じ生産量として、水銀農薬のほうは大体半分くらいでいいのではないか、それが何百何十何トンというのは、これはおっしゃるとおりですけれども、腰だめに考えて六割か半分程度でいいということは、いまの御説明から当然出てくる結論なので、そうだという御答弁をいただけばけっこうなんです。
#114
○和田(正)政府委員 昨年は、御承知のようにいもちの多発が非常に懸念をされまして、メーカーに頼みまして、農薬の増産をしてもらったわけですが、そのときの原体の輸入量は三百七十五トンでございます。それでいままだ必ずしも最終的な確定数字にはなっておりませんが、先般来メーカーにもきてもらいまして、水銀製剤の生産の手控えをしてもらうように指導をいたして、各社とも協力を得ておりますが、およその目見当で言えというお話でありますが、間違えればまた訂正いたしますが、大体三分の二から半分くらいのところで済むのではないかというように思っております。
#115
○湯山委員 たいへんはっきりお答えいただいて、その点はそれで了解できましたが、将来規制をするとすれば、どういう方法で規制されるか、これをお伺いしたいと思うのです。
#116
○和田(正)政府委員 低毒性の新しい農薬の生産が増加をして、価格面その他でも実際に低減をしてまいりましたら、御承知のように農薬の登録は三年目ごとに切りかえておりますので、その時期に各メーカーから自主的に登録を落としてもらうことにしたいと考えます。
#117
○湯山委員 そういうことから、先ほど局長の三年というようなことばがちらっとお出になったのだと思いますが、私は、これはやはり一つの目標でもあり、課題として、次の切りかえの時期には水銀農薬は少なくとも日本の水田からは消える、こういうふうにしていただきたいと思いますが、そういう目標で努力なされるかどうか。
#118
○和田(正)政府委員 先ほど仮谷次官からもお答えがございましたように、私どもとしてはできるだけ最善の努力をして、早く切りかえを完了するようにいたします。
#119
○湯山委員 次に、厚生省のほうへお尋ねいたしたいと思います。
 先ほど有機水銀、無機水銀のお話が出ましたが、水俣病の場合でも、工場側の意見は、有機水銀が出るはずはないというようなことでかなり論争があったと思います。実際に調べた結果、有機水銀であったという経緯もありますが、私どもが心配するのは、いまのような状態でお調べになって、はたして確かに有機水銀はこのように現実に有害、有毒であるという結論が出るかどうか、非常に心配しております。と申しますのは、これが蓄積するとして、十年たって髪の毛の中にこれくらい多い程度だ、二十年、三十年、四十年、五十年、六十年たって、これはもう絶対に害があるということになったときにはたいへんなんです。そうかといって、今の段階で禁止するというのはあなた方もちゅうちょしておられる。そうすると、どういうふうにして五十年、六十年先でこれは有害だ、この程度ならいいという、そういうめどがつけられるかどうか、そのためにはどういう研究をなさるのか、これをひとつお答えいただきたいと思い
 ます。
#120
○舘林政府委員 現在農薬の各種の残留許容量というものをきめて規制をいたしております。水銀についてはまだ規制がないわけでございますが、この残留許容量という量は、動物実験の最大安全量をさらに百分の一にいたした量でございまして、もちろん動物の実験だけで人間が安全だと言い切れませんので、それだけの余裕を持って許容量というものをきめるわけでございますが、その許容量をもとにして今日の米の中の水銀の量を判断した場合にどうなるかということでございまして、これが私どもが目下一番重点を置いて検討いたしておるところでございます。
 今日の米の中に見られる水銀が有機水銀であって、しかもフェニルの形で残っておるということでございますと、ただいま私が申しました許容量をこす数値でございます。しかし補足的な現在までの研究によりますと、フェニルの形でまかれたものも、稲のからだに入った場合に分解され、おおむね無機の形になっておる、こういうことが一部の研究であらわれておりまして、ここの部分がいま研究をいたして明快にいたそうといたしておるとこるでございます。その残留量が無機でございますと、許容量までにまだ十倍の余裕があるという、アメリカのギブスという学者の数値をもとにすればそのような計算になるわけでありまして、私どもは今日の米に残っております残留量が安全量という確信があるわけではございませんけれども、ただいま申しましたようなことから考えて、いま直ちに人間に障害を起こすような量ではなさそうであるということを、先般当委員会における諸先生の御意見等も拝聴いたしまして、考えておるわけでございます。ただ、そのようなことで確定的なことがわからないということでは困るので、いま鋭意研究中でございますが、ただいま湯山先生のお尋ねの、そういう量が、それほどの残留量でなくても、長年これが蓄積したう人体に害があるかもしれぬということは、私どもとして最も警戒する必要があることでございまして、最近、従来考えられなかった薬剤の慢性の中毒が注目され始め、サリドマイド等もその一例でございますが、従来安心しておりましたものが、慢性的には長い周に蓄積されて障害を起こす事例もあり得るわけでございますので、米について今日の段階でそのようなことはわかりませんけれども、しかし、いまのうちから十分それを配慮して、先ほど来お尋のございましたように、一日も早く他の薬剤に切りかえるように努力をする必要がある、かように考えておる次第でございます。
#121
○湯山委員 私は農林省へずいぶんお尋ねしましたが、農林省の場合は比較的簡単だと思います。というのは、稲というのは一年生の植物ですから、それは土壌の中の蓄積というのは幾らかあるかもしれません。しかし、とにかく米の場合はこうだという結論は案外早く出ると思います。むしろ骨の折れるのは厚生省で、米だけではあるいは安全かもしれない。しかし、その安全なものが、いま申し上げたように三十年、五十年、六十年、平均寿命七十年とすれば、ほとんどその期間食べていく、そして先般の当委員会の記録を見ますと、尿の中へ相当排出される、尿へ出るなら汗にも出るだろうし、汗に出るものならばおかあさんの乳の中にも出るだろう、脂肪溶性が高い、そういうことを考えていけば、一体米の中にあるものが許容量以下であったとしても、これはゆるがせにできない問題なので、そういうことを突きとめていただくのが厚生省のお仕事、それには、私は米が主食であるだけに全力をあげて当たっていただく必要があると思います。水俣病の場合に、あの前後調べたところ、精薄児のあらわれる率が多いということを聞いておりますが、そういうことを御調査になっておられるでしょうか。
#122
○舘林政府委員 妊婦が水銀を摂取いたしました場合に、その妊婦が出産いたしました新生児に相当な高率に水銀の中毒症状をあらわすものが現に水俣の場合にあったわけでございまして、新潟の際にはその点を十分配慮いたしまして手配をいたし、目下のところ新潟においてはそのような事例がございません。
#123
○湯山委員 そういうことで胎児の場合は、この前参考人がおっしゃっておったように、あるいは胎盤を通して入るのかどうか、それはわかりません。ただ乳の場合はそういうことになるし、それから一般の牧草なんかにやった場合、これも牛の乳の中にいまの有機水銀が入る可能性も相当多い。これがまた、それを飲んで育つ子供に影響していくというようなことを考えてみますと、厚生省のお立場というものはきわめて重大であって、そういうことがいまわかっていなければ、非常に極端な場合はそういう事例があるということになれば、いまからそれをきちっととめて、途中でのものがどうあろうと、米の中に現に水銀が検出されるということであれば、即刻おとめになる、そしていまのような調査をなさって、その上でむしろ解除すべきものは解除するという態度をおとりになることが、厚生行政としては正当な道ではないかというように思いますが、その点はいかがでしょうか。
#124
○舘林政府委員 農薬に限らず、食品の添加物その他の毒性を判定して、添加物を許可したりなどする場合にも、どの程度の安全性を考えて許可したらよろしいかということがかなりな大きな問題点でございます。その毒性の試験はおおむね動物を使うわけでございますが、動物を通常使う場合にはハツカネズミ、モルモットあるいはウサギというような小動物でございますので、あまり長期の、数十年というような実験ができないわけであります。もちろん、その動物の寿命から考えれば相当の長期でございましょうが、何十年と生きている人間に比較できるかどうか相当疑問でございまして、その点は十分考慮して、許容量なり許可量なりをきめる方針をとっております。したがいまして、従来きめられておりました許容量があぶない量であると私どもは思っておりませんが、ただ、お尋ねの水銀は、農薬を施さない稲にも相当量含まれておりますし、また米以外の食品の中にも、ごく少量ではございましてもございますので、私どもとしては十分警戒していかなければならない、かように考えております。
#125
○湯山委員 日本の研究がまだそこまでいっていないという段階では、国際的な常識の中の一番きびしいものをとる、少なくともそれにならうというようなことはお考えにならないのでしょうか。でないと、日本で安心したデータが出るまではほっておくということでは私は許されないと思いますので、そうするとWHOあるいはFAO、こういうところで〇・〇〇〇〇五ですか、そういったほとんどゼロにひとしいようなものが出ている。かような場合にそれ以下かどうかということは案外簡単にできますから、せめてそのあたりで暫定的に許容量をおきめになるというお考えはございませんか。
#126
○舘林政府委員 WHOにおきまする体重一キロ当たり〇・〇〇〇〇五ミリグラムという数値は、フェニル水銀に対する許容量の数値でございまして、今日一番問題になっておりますのはフェニル水銀の測定法、分析法が必ずしも確定的でないということで、いままで苦慮いたしておったわけであります。これが無機水銀でございますとだいぶ違うわけでありまして、その点でそういう検出方法ともからみ合わせて許容量を考えてまいりたい、かように思っております。
#127
○湯山委員 WHOがこういうものを発表したのは、どういう方法で検定してこうというものがあると思うのです。それと同じことならば、むらすでにできておることなんですから、これはできるんじゃないかと思います。それから、いまのフェニル水銀についてそういうものが出れば、今度はそれとアルキル水銀との比較というものが、これはたとえば動物実験等で水俣病等を参考にすればある程度見当は立つと思います。そうすれば、いま使われておる水銀農薬については、少なくともある程度の規制ができるんじゃないか。現在のところは全く野放しですから、これはひどいので、わかるまでは全部野放し、わかったらとたんにきびしくする、こういうのは人命に関することについてはやるべきことじゃない、こう思いますので、早急に暫定的な基準をおきめになって規制をされる必要があると思いますし、それについて説明できないということはないわけですから、いま幾つか他の国のものも――いま農林省の資料を見ますと、六十三年あるいはそれ前後において方々の国でいろいろ規制したのがあるようです。そういうことを参考にすればできないことはないと思いますので、早急に御研究願って、いま野放しだという状態はなくする、こうあってほしいと思いますが、いかがでしょうか。
#128
○舘林政府委員 フェニル水銀に関しまする残留許容量というものは、WHOないし世界の学界の研究結果並びに厚生省の衛生試験所等の資料をもとにして設定できると思います。ただ、多少運用上問題がございますので、それらの点は勘案して検討いたしたい、かように考えます。
#129
○湯山委員 ぜひひとつそういうふうにしていただきたいと思います。
 それから科学技術庁に要望いたしたいのは、いま申しましたように、厚生省もそういう御態度で臨む、農林省のほうも次の登録がえのときまでには他のかわるべきもの、いまの抗生物質でおやりになるのかあるいは別の合成農薬をお考えになるのか、あるいはバクテリアを食べるビールス、バクテリオファージというのですか、そういうものも、見てみますとございますから、そういう方面の開発もなさるのか、それは別として、きょうお尋ねして非常に感じましたことは、科学技術行政の中心である科学技術庁がもう少ししっかりしていただいて、特別委員会が設置された趣旨もそこにあると思います。ひとつ各省間の連絡提携、研究の効率化を十分おはかりになって、技術庁自体が真剣に取り組まなければこの問題はなかなか解決しないというように考えますので、ひとつ長官にもよくお話しくださって、すみやかにそういう体制をおとり願いたい、こう思います。ひとつ御所見を伺いたい。
#130
○橘政府委員 御趣旨のような線に沿いまして、いま科学技術庁がやっております一例を申しますと、御趣旨と申しますのは、農林省なり厚生省なりのそれぞれの実際の現場に対する権限を持っておる省の間にあって役割りがあるではないかとおっしゃったことでございますが、現在、いまの有機水銀農薬の残留毒性の防除の対策、そういうものを進めるにあたってやっておりますことは、両省の関係者に科学技術庁に集まっていただきまして、すでに去年の八月、新潟の阿賀野川事件はたまたまその後ですが、その以前から、その残留毒性のことについて検討を始めておったのです。それで現在の結論は、大体、いまから申します三つのことでそれぞれ手分けをしてやろうじゃないか。
 第一は、有機水銀農薬の動態、それからその毒性というものに対する系統的な総合的な研究をいずれにしてもやらなければならぬ。その中は、またさらに細分しますと、有機水銀農薬散布後の挙動、これは農林省でひとつお願いする。それから代謝研究でございますが、動植物体に水銀化合物が入るとそれぞれ代謝が行なわれる。その代謝機能の研究、これは人体の場合と植物の場合に分けまして、農林省と厚生省でやろうじゃないか。それから、そういう代謝産物というものの毒性、それからもともと有機水銀化合物そのものの毒性、そういうものに対しては毒性研究をひとつ厚生省でやろう。それが大きな一番。
 その次の大きな二番としては、有機水銀剤にかわるべき新農薬、こういうものを、これは抗生物質なりあるいは有機合成剤なりございましょうが、そういうものの開発を農林省と厚生省、当然厚生省の場合は人体に及ぼす関係をチェックするわけでございます。及び科学技術庁、と申しますのは、住木副理事長のところの理化学研究所でございますが、そこでひとつやろう。それからなお、当面の問題としても最善を期さなければいけないので、有機水銀農薬の使い方と申しますか、どういう時期がいいか。先ほどお話しの、初期においてはこうで、後段では抗生物質とか、そういうこと、それから使う場合にしても散布量なり濃度、そういうものについてはひとつ農林省で、さらに農薬取締法等でいろいろそういう監督指導の権限を持っておられるわけですから、ひとつやっていただこう、とりあえずそういうことにきめまして鋭意やってきたわけであります。
#131
○湯山委員 最後に、要望ですから、いまのお話もいいのですけれども、総花にならないで、焦点はここだというところへ、たとえば農林省ならば一体米の中にどう入って、それがどういう形である、どれくらいある、これは農林省は、ことしの秋の収穫前までに結論を出せ、と言えば、これは農林省を総動員して、そうして各地でそれをやればできないことはないと思うのです。それを受けて厚生省は、それまでにこれこれをやっておって、それが出たらこうといったようなことをひとつ重点的に十分効率のあがるようにぜひやっていただきたい。これはせっかく科学技術振興特別委員長からも科学技術庁のほうを督励していただいて、ぜひそのようにお進めいただきたいと思います。
#132
○原委員長 米内山義一郎君。
#133
○米内山委員 私は、まず最初に農林省のほうからお聞きしたいと思いますが、和田農政局長の先ほどからの御答弁を聞いておりますと、一番われわれの見解とかみ合わない点が多いと思います。別に、われわれは、農林省を、水銀農薬を許可した、それによって国民の健康を害した、よって農林省は犯罪人だというような意味で追及しているわけじゃないのであります。にもかかわらず、自分は犯人であるかのごとく、絶えずあとずさりするような答弁の姿勢でばかりわれわれにお答えになるので、まず、見解をあわせてお聞きしておきたいと思います。ものの考え方の基本です。私は、こう思う。農業の任務というものは、国民にいい食糧、栄養の豊富なおいしい食糧をたくさん安く供給するのが日本農業の任務だと私は思うのですが、農林省の見解はこれと違いますか。
#134
○和田(正)政府委員 御意見のとおりだと思います。
#135
○米内山委員 それじゃ同じ見解に立ってこれからの話を進めたいと思います。
 したがいまして、そういう大きい目的に基づいてやるのが農業であり、それを達成するのは農民、それをやりよくするのが農林省の農業政策の責任だと私は思うわけであります。私は、その点には、御異論ないところだと思うのです。そうすると、いきさかなりとも、保護衛生に害ありという疑いあるものが食品の中に、しかも主食――鶏の卵の黄味の中には非常に水銀が多いといいましても、これは国民が大量に毎日食べるものじゃない。非常に少ない含量であっても日に三度、日本人の場合には主食として用いる米でありますから、これは、さっき和田さんのおっしゃるような、量の少ないとかなんとかいう問題じゃなくて、重大な問題だと思います。ですからやはり水銀農薬問題については、農林省はいままでと違った態度で前向きに積極的になるべきだと私は思う。きょうの各委員の見解も同じようだと思いますが、ここで農林省はいままでと違った考え方を持って臨むでございましょうか。
#136
○和田(正)政府委員 私が、先ほど来、諸先生の御質問に対してお答えをいたしておりますことも、いま先生がおっしゃいますように、現在は微量であり、それの害がどうであるかということを厚生省として慢性毒について最終的な決定はない段階ではございますが、御指摘のように、問題があることではあるので、できるだけ早く切りかえるように諸般の努力をいたしますということをお答え申し上げているわけでございます。
#137
○米内山委員 実は、水銀農薬がわが国に用いられるようになったのは、かれこれ十年ほど前でありまして、私ども青森県の農民から見ると、ちょうど冷害凶作の周期から抜け出るころであります。それまではほんとうにきくかきかないかわからないような気持ちでボルドー液を散布してきたのが、この薬がはやってきてから、われわれはまるで神様みたいに実は思ったものです。しかし常識上水銀は毒だということがわかりつつも、当時昭和三十年前後ですから、いまとは非常に違う時代です。米を非常に欲しいときなので、われわれは無我夢中でこれを使ったわけです。農林省もおそらくそういう気持ちで当時あまり厳重にそういう大事な将来を見通さないで許可したであろうことは理解できるわけであります。しかし今日は非常に違った事情でありますし、これの被害も、必ずしもホリドールやなにかのように急性中毒で死ぬというようなことはなくとも、農民の中には水銀中毒ではないかと思われるような病人がかなり多いのです。
 一例を申し上げますならば、農協に勤務しておりまして、二年間あの背負い型の噴霧機でこの農薬散布の仕事をした人は、五年間寝ておりますが、これは地方のお医者さんは、いままでは原因不明だといっておったが、現在はからだの衰弱から胃かいようという病名で入っておる、こういうふうな被害は、私は農村にはあると思う。現にコウノトリが三羽死んだといえば新聞に出るが、カラスが死んだということは新聞記事にならないと同じように、そういうふうなことがあると心配しなければならないのが、私は、農林省じゃないかと思う。
 さらに申し上げたいことは、これで水銀農薬の問題は一歩前進しましたが、わが国にはさらに農薬問題が重大でありましょう。日本で水銀農薬を使用するということになったときに、アメリカでは、どうするものだろうということをアメリカの学者が心配しておったわけであります。その際、日本では農薬会社が祝杯をあげたという伝説もありますが、それは別問題としましても、いまアメリカで問題になっておるのはその他の農薬でございます。いわゆる有機塩素における人体の蓄積の被害というものは、アメリカでは、非常に恐怖の的になっている。わが国では、稲をつくるという関係から、その一歩手前の窮迫した問題として水銀農薬の問題がいま国会で取り上げられ、政府も関心を向けてきたわけでありますが、とにかくわが国として、今後、農業の上からも、国民保健の上からも、農薬問題については世界の最高水準の研究をしなければならぬと思います。と申しますのは、農薬の使用、製造高はアメリカに次いで二番目だということは統計上明らかでありますが、人口ないしは面積からいいますと、これは明らかに世界最高の農薬使用国なわけであります。さらに狭い国土から、小さな面積から大量の農産物をあげなければならぬ。一人一人の農家は零細経営の中から一升でも一斗でも多く米をとらなければ生きていけないという一つの農業の中から、どうしても多肥栽培になり、いもちにかかりやすいような傾向を持つわけです。どうしても病害防除の上からも、あるいは害虫駆除の上からも農薬の多使用というものは免れない。そういう観点より見ますと、今後わが国の使用すべき農薬というものは、世界最高水準のものを使っていきませんと、自然破壊にもなる。人間だって自然界の一つのものにすぎないわけであります。こういうことは、米は多く取れるかもしれないが、自然破壊になる。現にトンボのいない村ができる、ホタルの飛ばない村ができる。去年の夏はドジョウが東京で一キロ六百円しまして、ウナギより高くなっている。こういうふうな自然破壊が単に水銀農薬のみならずその他の有機塩素等の農薬、あるいは燐剤等によって起きておるわけであります。これはゆるがせにできない問題である。米さえ取ればいいのだということでは済まされない問題になっているので、何としても農林省が中心になって、厚生省も科学技術庁ももっと大きい力を持ってこの農薬問題に取り組む必要があると私は思う。この点について農林省並びに科学技術庁、厚生省の御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
#138
○和田(正)政府委員 おっしゃるとおりの問題があろうかと思います。そこで、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、できるだけ毒性の少ない農薬で有効な効果のあがるものに切りかえていくという努力を実は地道に積み重ねてまいっておりまして、非常に有毒だといわれておりますパラチオンなども三十四、五年ごろには全農薬の一七%ぐらい使っておったわけでございますが、最近は五、六%というふうに、ほかのものの開発が進みまして、全農薬の量で見ましても毒物及び劇物取締法でいいます毒性の高い特定毒物あるいは毒物の量も三十四、五年ごろまでは半分を上回っておりましたのが、最近は三割程度に切りかえられまして毒性の低いものが七割というような形になっておりますが、御指摘のような問題は十分わかっておりますので、今後ともそういう開発の努力をいたしまして、毒性の低い農薬が有効に使用されるようにしてまいるように積極的に努力をいたしたいと思っております。
#139
○佐々木(義)政府委員 御説のとおりだと思います。科学が進歩してまいりますと、半面、効果もありますけれども、そういう思わざる障害がございますので、今後そういう点のないよう慎重に考えまして、問題の解決に当たりたいと思います。
#140
○橘政府委員 科学技術庁の立場は第三者といいますか、そういう立場、そして、なお科学技術という観点から考えておるわけでございますので、その立場からこういう問題の所在を明らかにしたというような役割りであったかと思います。今後厚生省、農林省でそれぞれ所管の立場から大いに本件を進めていただくことについて、できるだけの応援をしていかなければならない、そう思っております。
#141
○米内山委員 最後になって失礼でございますが、参考人の住木先生にもしお答え願えればと思いますが、実はこの農薬研究の問題につきまして、単にいもち防除の農薬だけに限らず、こん虫等の薬剤におきましても、いままでのように化学的な方法だけではなしに、むしろ生物学的な天敵利用とかあるいは細菌利用というような方向へ考えていくのが妥当じゃなかろうか、私はそういうことについては全くのしろうとで、専門的な知識はないものですが、私はそういうふうに考えるのですけれども、先生方の御意見はいかがなものでございましょうか。
#142
○住木参考人 非常にいい御質問をしてくださいまして、私どもが今後農薬を進めていくにはいかなる方向でやるべきか、私しょっちゅう悩んでおります。それに対しまして、先ほど言われましたバイオロジカルコントロールとケミカルコントロールの二つの方法があります。現在は両方の方法が行なわれつつあります。日本はまだ出発したばかりでございますけれども、アメリカなどにおきましては、たとえばバイオロジカルコントロールと申します、バイラスを用いますとか、あるいは品種改良をいたしまして――これは草の品種だけじゃなしに、虫の品種を改良して、この雑草だけは食べる、しかし栽培作物は食べない、そんなようなこともやっております。それからまたケミカルのほうでも、非常にあれですが、誘引剤などを使いましてそれに不妊剤をまぜまして、交尾はするけれども卵は産まない、したがって二、三年使うとその虫が絶えてしまう、そしてその虫だけに限るというふうなケミカルのコントロールの方法もあります。それから例のガンマ線を利用しまして、不妊にしておいて飛ばしてやる。いろいろなことが新しく見つけられてまいりましたので、私としては何とかそういう両方をもっと取り上げまして、例のサイレントスプリングにならないように、りっぱな農薬をつくりたいと思っております。
 もう一つ私につけ加えさせていただきたいのは、最近農薬のおそろしさが叫ばれまして、農薬の研究をやめたほうがいいんじゃないか、ろくなものをつくらない、天然環境を破壊するだけじゃないか、こういうふうなことを私に言われる方がございます。私は、この方々に対しましてはこういうふうにお答えしております。皆さま方はガンの研究をやめろとは言われないでしょう。いまガンにきく薬は一つもありません。いまあるのは細胞毒でして、ある量以下しか与えられない。それ以上与えれば、ガン細胞も死にますが、正常な細胞も死んでしまう。そうだからといって、あなた方はガンの研究をやめろとは言われないでしょう。あくまで研究費も出してやるから一生懸命やれと言われる。農薬もそれと同じことなんだ。いまここで農薬の研究をやめればほんとうに将来どうなるかわからない。それよりも低毒性というか、あるいは選択性、この虫ならこの虫、このばい菌ならこのばい菌、そういうふうに限られたものを見つけてきて天然の環境をこわさない、そういうふうな研究をしなければならない。それにはやはりどうしても農薬の研究所の新設が必要なんだ。こういうふうに私は説いてきておりますので、きょうは幸いに農薬のほうの参考人として呼ばれましたので、この機会を利用させていただきまして、私の農薬に対する所見の一端を述べさせていただきました。ありがとうございました。
#143
○原委員長 岡良一君。
#144
○岡委員 最後に簡単に伺いたいですが、理化学研究所、これがどうあるべきか、どんな機能を持つべきかということは、われわれの委員会としても大きな焦点であったわけです。
 私どもとすれば、願わくばかっての理研、大河内理研であり、仁科理研たるべき権威をぜひ持っていただきたいという大きな夢を理化学研究所にわれわれはいまも持っております。そこで農薬の問題がいまここで論じられておるわけでありますが、理研は先ほど農薬については三研究室のほかに対微生物の研究室を設けられる、ほかに抗生物質についても設けられておりますか。
#145
○住木参考人 現在、理研には四十七の研究室があると思います。そのうち農薬が四つですから、四十三がいわゆる従来の理化学研究所、物理と化学の研究をやっておる研究所になっておりまして、将来の農薬につきましては、私は先ほどは十一の研究室と申しました。その研究室が全部そろいましたならば農薬研究部というものを別に分けまして、現在ある理化学研究所は伝統ある理化学研究所そのまま受け継がせまして、そのほかに農薬研究部というものをつくりまして、そしてそこは、先ほど申しましたように、国の要望あるいは国民の要望にこたえて、各研究室が一列横隊に、ことしはこのテーマを取り上げよう、そして解決しよう。そういうふうないまある伝統ある理化学研究所とまぜますと、そこでいろいろな混淆が出てきますから、国の要請に基づいてできました農薬研究所、そういうふうに分けてやっていこう、こんな考えでおります。もしできますれば、非常になまいきなことを言いますが、いまの理化学研究所としてでなしに、いま理研と申しますと、いろいろな、パン屋さんまで理研パンとかなんとかいっておるものがございまして非常に困っておるわけでございます。ですから私としては、まだ何にも固まった考えではございませんけれども、理化学研究所は自然科学研究所と名前を変えていただいて、その中に本部として現在の理化学研究所が残るそれから農薬研究所ができる、それから宇宙線研究所ができる、核科学研究所ができる、そういうふうにやっていきたいと私は思っておりますけれども、これにはいろいろな方の、先輩各位の御意見などを伺って、予算も要ることでございますから、そんなふうに将来の理化学研究所を私は考えております。
#146
○岡委員 いや、私のお聞きしたのは農薬の分野における抗生物質に関する研究を現在も進めておられますか。また、そうすればどういうふうな具体的なテーマについて進めておられるかということです。
#147
○住木参考人 どうもとんちんかんなお答えを申し上げて失礼いたしました。現在、理化学研究所の中に農薬とは別に抗生物質研究室がございます。そこでは三つの問題を取り上げさせております。一つは結核にきく薬、これはストレプトマイシンとかカナマイシンとかいろいろございますけれども、耐性菌という問題がありますので、これは細菌と追っかけごっこになりますから、きくものをさがすのが一つ。もう一つは農薬を取り上げております。いま理研で取り上げております抗生物質は、水銀にかわるものとしてはまずブラストサイジンとカスガマイシンで、抗生物質としては抵抗性がでてもまあだいじょうぶではないか。それでは日本の国としていま重要な重金属と申しますのは何だ、それは砒素であります。砒素にかわる抗生物質は何か、こういうふうに農薬のほうは進めております。もう一つやっておりますのはいわゆるガンにきく抗生物質をさがしております。この三つをおもに現在ある抗生物質研究室はやっておりますが、農薬の研究所ができましたならば、そこにももう一つの抗生物質研究部を置いてやりたい。こんな希望でおります。
#148
○岡委員 そうしますと、理化学研究所では農薬に関しては、特に抗生物質の分野では、重金属である、ことに有害な砒素に代替する抗生物質の研究開発、そのほかにすでにカスガマイシン、あるいはブラストサイジン等を開発されたということで、このカスガマイシンとかブラストサイジンというものは理化学研究所で研究開発されたものですか。
#149
○住木参考人 これは私がまだ東大の現役をしておりますときに、それはたしか一九五〇年ごろだと思いますが、日本の国の農薬として何か抗生物質を使ってみたらどうなんだ、それじゃ日本の国で何に一番大きな害を与えるか、それは稲作である、稲作にはいもちが一番大きな害を与える、それじゃいもちにきく抗生物質をさがそうというので、私がまだ東大農学部の農芸化学科の現役の教授をしておりましたときに始めましたので、理研に来てからではございません。
 それからいま砒素にきくのをやっておりますが、どこまで発表したらいいかわかりませんけれども、ポリオキシソというものを見つけまして、いまある程度開発と申しますか、圃場試験に入っておりますが、こんなふうに、これは理研に来てからですが、ブラストサイジンは私の東大の現役時代です。
 それからカスガマイシンは微生物化学研究会というものがございまして、そこに梅沢浜夫博士という方がおられますが、その方がやはりいもちにきくものをさがさなければいかぬと言われまして、さがされまして、これはむしろ私の考えでは、私の見つけたブラストサイジンよりも粘膜を刺激しませんので、もっといい抗生物質じゃないかというふうな気が私はしております。それから二つありますとお互いに抵抗性というものが出にくくなりますので、そういう点ではいいのですが、いもちにきくのは二つぐらいじゃ安心できませんので、まだもっとさがさなければだめだ、こんなふうに思っております。
#150
○岡委員 それではカスガマイシンの場合には梅沢博士、また、ブラストサイジンの場合には住木先生が特許権をお持ちであった、こういうことになっておりますか。
#151
○住木参考人 特許権と申しますか、発明者に私はなっておりますが、特許権というのですか、私はよくわかりませんが、実施のほうは、日本抗生物質学術協議会という財団法人がございますが、それが持っております。
 それからカスガマイシンのほうは、やはり発明人は梅沢さんでしょう。けれども、特許権を持っておるのは財団法人の微生物化学研究会というところが持っておるのではないか、これは私よくわかりませんけれども、そうなふうに思っております。
#152
○岡委員 その辺の経緯は、久保さんは御存じですか。
#153
○久保参考人 特許権者は、ブラストサイジンについては日本抗生物質学術協議会、それからカスガマイシンにつきましては、財団法人微生物化学研究会でございます。それで実施権につきましては、ブラストサイジンは科研化学、東亜農薬、日本農薬の三社が普通実施権者になっております。カスガマイシンについては、実施権を許諾されておりますのが科研化学とそれから北興、それから日本化薬、万有製薬、三楽オーシャン、こういう五社がメーカーであり、北興化学が農薬のフォーミュレーターで販売権を持っておる、こういう形になっております。
#154
○岡委員 微生物云々という組織あるいは抗生物質云々という組織は公法人でございますか。
#155
○久保参考人 はい。これは財団法人でございます。
#156
○岡委員 こうして有機水銀にかわる抗生物質をさがすという世論が起こってきて、また、国会がそういう意思表示をした場合に、やはりそのような特許権の実施という問題が一つの問題になってくると思います。それでこれはやはり国民全体の幸福につながる問題でもあり、また、国会として、特に有機水銀に代替して、抗生物質等というような方向を打ち出しました場合に、やはりこれらの新農薬というものが一部の業者に局限されるようなことがあってはなるまいかと私は思うわけであります。もちろん、それを製造、生産し得る能力もないものにただ放任されて、この生産の方法が公開されることもありますまいが、その点やはりできるだけ広くこれらの生産能力を持つものにこれらの方法が十分のみ込まれて、そうして生産ができるというような体制を組むことが、そもそも農薬の普及にも役立つのではないかと思いますので、そういう点についてやはり具体的な政府としての方針がなければならないと思うのだが、見回したところ、どなたが責任者かわからないが、農政局長、ひとつあなたの立場から御見解を聞かせていただきたい。
#157
○和田(正)政府委員 岡先生御指摘のような点でございますが、私も特許権ということになりますとよくわかりませんので、特許庁その他と打ち合わせて検討したいと思っております。
#158
○久保参考人 御参考までに、先ほど実は生産能力を御説明したのでございますけれども、現在のブラストサイジン及びカスガマイシンを生産しようとしている会社の生産能力から申しますと、これをフル稼働いたしますと、現状でも原体にして百四十五トン――百四十五トンということは、粉剤に直しますと十四万五千トンでございます。十四万五千トンの粉剤ということになりますと、平年のいもち防除薬に匹敵するわけでございます。それだけの生産能力をすでに持っております。ただ問題は、現在の水銀と置きかわるのはいつかということで、各社生産を手控えておるとい5現状でございます。ですから、特許の実施権を保有しておる会社の設備能力は、もうすでに抗生物質に関する限りはできておる。そのほかに、非水銀農薬はまだ他社が能力を持っております。そういうことでございますので、キャパシティーとしては持っておるわけであります。
#159
○岡委員 いま日本で農薬を専門に製造しておる会社で相当な規模の権威ある会社はどれだけございますか。また、そういう抗生物質のような新農薬の輸出の状況というのは一体どういうことになっておりますか。どなたか御存じでございますか。
#160
○和田(正)政府委員 水銀の原体を製造しております会社が八社、それを買い取りまして、タルクその他増量剤を加えたり、その他の農薬と混ぜたりして販売をしております会社が三十数社あります。
#161
○岡委員 それではカスガマイシソあるいはブラストサイジソのほうのメーカーは、大体合わせて七つぐらいですね。輸出されておるそうした有機水銀剤にかわる抗生物質の現況というものはいかがなものでありますか。
#162
○久保参考人 現在ブラストサイジソにつきましては、韓国、台湾、南米でそれぞれ試験中で、本年度には、韓国に原体にいたしまして数トン輸出される予定になっております。台湾につきましては、政府の登録がおりたというところでございまして、どの程度ことし使いますか不明でございます。南米におきましては、ブラジルでございますが、やはり現在登録をとる寸前になっておるという段階でございます。
#163
○岡委員 日本の農薬の研究開発が世界の最高水準にもひとしいというようなお話もありましたが、いずれにしましても非常な研究開発の努力が、しかも現実に結実しつつあると私は見ておるわけですけれども、こういうものが海外にどんどん輸出をされることは当然でもあり、またきわめて好ましいことだとも思います。
 ただこの機会に、住木先生もおられますので、若干お尋ねをしたいことは、抗生物質というものは、御存じのように、その対象となる相手の菌がすぐ耐性を持ち出してくるわけです。すでにペニシリンがもはや肺炎菌にもきかないとかその他性病の菌にもきかないというように、ある面においてすぐに耐性が出てくる。こういうことからまた今度は新しい抗生物質が開発されなければならないということにもなってくる。そういうことから考えまして、やはり新農薬の開発については、そういう抗生物質の本来の性質から見た開発方針というものがなければならないと思うのでございますが、そういう点について具体的にどのような方針、方法をとっておられますか。
#164
○住木参考人 それは私が非常に心配している点でございまして、たとえば試験管内でございますと、ブラストサイジンもカスガマイシンも抵抗性があらわれてまいります。ただブラストサイジンの場合は幸いと申しますか、試験室内で抵抗性を得ましたものを圃場の稲に散布しましても、それが繁殖力を持っていないという結果がある。しかし、これとても安心はできない。そういう意味においてカスガマイシンを梅沢博士が発明していただいたことは非常にありがたい。いま試験しておりますのは、普通の抵抗性でなしにクロスレジスタンスと申しまして、ものによると、たとえばカスガマイシンにも抵抗性があり、それからブラストサイジンにも抵抗性がある。クロスレジスタンスと申しますか、こういうようなものがあらわれるのが一番こわいわけです。ですから、そういうものをあらわさないようにするには、最初から両方の抗生物質をまぜて与えるのがいいのかあるいは抗生物質と何かさっき言われましたいろんな合成剤をまぜて与えればいいのか、そういうふうなことによって抵抗性の出現を防ぐよう努力はいたしますが、しかし全く出ないとは、私は学者として断言できません。むしろ出るのじゃないかという心配を持っております。ですから私としては、第三、第四のいろんな抗生物質を見つける、また合成薬においても毒性のない合成薬で、そしてそれが抵抗性が出た場合にすぐ切りかえられるとか、何か手を打つべきであろう、こんなふうに考えております。
#165
○岡委員 それはすべてのケースに当てはめて言えることかどうかわかりませんが、たとえば梅毒のスピロヘーターは戦前は主として砒素剤と水銀が治療の主柱であった。これはしかし私ども臨床医家の経験から見れば相当長い寿命を持った特効薬であった。ところが戦後ペニシリンに代替してから梅毒のスピロヘーターに対して治療効果が最近急激に薄れてきておるように思う。どうもやはり無機質、まあ金属の化合物のほうがやはりばい菌の抵抗性が少ないのではないかというようなことを、スピロヘーターについてみると感じるわけです。そういうような点で、いまおっしゃったような、何か合成された化学的な新農薬というようなものもぜひ開拓をしてもらいたい一つの方法かと思うわけですが、それについて私の友人が先般資料を持ってまいりまして、木酢についてのいもち病との関連の問題でありますが、この木酢については資源局としても特別研究促進調整費か何か出して研究したようだが、これはどの程度のことをどの範囲までまとめられましたか。
#166
○橘政府委員 いまの木酢が農薬のほうに応用できないかという点でございますが、それにつきましては参考人からもいろいろお話がございましたと思いますので、私たちが聞きましたところは、確かに……。
#167
○岡委員 いや、あなたのほうで木酢を何に利用するかということで若干の……。
#168
○橘政府委員 こちらでやりました木酢は、昭和四十年度資源総合利用方策調査として木酢の利用をやり、かたわら科学特別研究促進調整費による木酢の研究がございます。そのいずれにも、いま申されました農薬的なねらいは持っておりません。まず今年度まとまろうとしております資源総合利用方策調査のほうでは木酢原液を濃縮して食品加工用として非常に抽出した――百分の一ぐらいにしましたその抽出濃厚液を食品加工用に使い、山村振興、それからいろいろ輸出用に持っていくというようなねらいでございます。
 それから特別研究促進調整費によってやっております分は、主として木酢の含有成分に対する解析、それから食品加工に使った場合にはどういう影響があるか、そういうようなことを主体として実はやっておるわけでございます。
#169
○岡委員 工業技術院の発酵研究所の方が来ておられるはずだが、たしか去年ですか実験をされた簡単な報告をひとつお願いしたい。
#170
○岩本説明員 私どもの研究所は通産省にございまして、通産省の中では微生物を取り扱っておりますところの唯一の研究機関でございます。アルコール発酵とか、最近では産業廃水処理、そういうような研究をやっておりますが、そういう通産省の研究所という関係で、いろいろな工業製品、特に輸出工業製品でございますが、これにかびがはえまして非常に困るという問題が十年ぐらい前からございました。特に酒製品とか繊維製品の輸出の場合にかびがはえて困る、そういう問題がございましたので、工業製品の防ばい、かびどめ、そういう研究を開始したのでございます。で、その関係で、農薬の中にもかびどめの薬剤がかなりございます。さっきの有機水銀化合物にもございますが、かなりこれはかびによくきくものでございます。そのほか有機のすず化合物とか塩素化フェノール系統の化合物、こういう工業用の防ばい剤として最もいいものはないだろうかということで、いろいろの研究をやっておるのでございます。で、たまたま斎藤憲三さんから木酢液がいもちの菌にきかないかというようなお話がございまして、そこで木酢液は材木の防腐というような方面にも使われております。それからいもちは一種のカビでございますので、どのくらいきくのだろうか、一つの参考としてやってみたいということでやってみたわけでございます。
 それで、やり方としましては、私どものほうで工業用の防ばい剤をセレクションする方法でございますが、培養液の中にそれぞれの薬剤を各濃度に入れまして、これを試験管に分注しまして、そしてそれぞれのカビを摂取しましてカビのはえやすい温度でありますところの三十度で十日間培養しました。そしてそのカビが、菌糸がはえてくるかこないか、そういう方法でその防ばい剤のカビに対する効力をチェックしているわけでございます。その方法で私どものほうではいもちの菌と同様にこうじカビとかあるいは青カビ、アスペルギルスとかペニシリウムその他サッカロミセス、酵母でございますが、そういうものも一緒に試験してみたわけでございます。その結果木酢液はいもちの菌に対しまして五%以上の濃度では完全にその生育が阻止された。それから二形でもかなり生育が阻止されたという結果が出たわけでございます。そのほか、酵母は木酢液の一〇彩の濃度のものでも阻止されないということがわかりました。それから有害バクテリアの一種であります枯草菌は木酢液の一%でも生育が阻止された、そういう結果が出たわけでございます。これも、私どものやりましたのは試験管内だけの試験でございますので、いもち病に五彩できいたということでございますが、農薬の場合には実際の圃場試験とか薬害の試験が大事な試験になっておると思いますが、そういう試験をやりまして、いもち病の防除にもし考えられる場合にはそういう圃場試験なんかを今後やってほしい、そういうふうに私は考えております。
#171
○岡委員 もう一人、農政局長にも御意見があるように連絡が来ておりますが、あなた何か御意見がありますか。
#172
○岩本説明員 私どもの研究所では通産省の工業技術院の研究所でございますから、圃場試験なんかやる設備は全然ございませんので、できれば農林省の試験場あるいは各府県の農事試験場あたりでやっていただけたら、そういうふうに考えております。
#173
○岡委員 農政局長にも意見があるような連絡が来ておるのでありますが……。
#174
○和田(正)政府委員 私、そういう御連絡をした事実はございませんが、私の承知しております限りでは、あまり有効でないのではないかというような話を聞いておりますが、今後いまの工業技術院でありますか、そちらの御研究などももとにして、なお技術者等の意見も十分開いてみたいと思います。
#175
○岡委員 資源局のほうの先ほどの御答弁だと、木酢のいわば成分について、まあ化学構造といいますかこういうものについても若干の研究をしたということでありますが、その正体はわかるところまでいきましたか。
#176
○橘政府委員 木酢の成分につきましては、聞いておりますところでは非常にたくさんの成分があるということ、それから発酵研究所のデータを伺いましたときに、どの成分がこれにきくかということについてはまだその実験の限りでは確かめていない、そういうことでございます。
#177
○岡委員 まあ五%の木酢液がいもち菌の発育を抑止することができる、あるいはいもちそのものを防除するかどうか、そのような消毒の作用を完全に果たし得るかどうかということは、まだこれからの問題である。ところがあまりきかないという農政局長の御答弁もきわめて非科学的だと私は思う。こういう問題を突き詰めていくところにやはり日本のまじめな科学技術行政のあり方があるわけです。
 そこでこれは住木先生にお尋ねをいたしますが、いま御報告のような事実は御承知でございますか。
#178
○住木参考人 木酢については戦争中に東大の農学部の林学の芝本教授がいろいろなことを、利用法とかなんとかやられた記憶があるだけで、それから例の薫蒸によって魚の保存をするとか、そんなことを聞いただけで、いままで私は木酢液がいもちにきくということは聞いておりませんでした。
#179
○岡委員 まだ有効成分もわからないのですから、おそらく赤褐色に近い木酢を五彩もたんぼへばらまいたのでは日本の風景は全く一変するということから、そういう軽率なことを私どもすべきだとは思いませんが、しかしこれも研究に値すると思うのです。木酢といえばいろいろなものが混入しているものであって、その化学的な組成が究明できないなどという段階ではないと私は思う。おそらくビタミンまでがほとんどすべて化学的に合成される世の中に、たかが木酢の化学的な構造究明くらいができないことはないと私は思う。こういうことは、特にいもちというものはやはり山間部の谷間の風の当たらないたんぼ、あるいは冷い水で灌水されておるたんぼ、こういうたんぼには特にいもちが多いということは、私は郷土でよく見ておるわけです。そういうことから見ましても、そのすぐ近くには炭焼き小屋があるわけなので、局地的に産炭地における農業試験場なり工業試験所なりの研究に値するテーマであるが、いままだそこまでいける段階ではない。やはり理化学研究所あたりが、いまの発酵研究所で一応五%でいもち菌を抑止し得るという一つの資料をぜひまじめに取り上げていただきたい。要は、予算その他の問題でありましょうけれども、私どももできるだけ理研にかけておる夢をいまも持っておりますので、まじめにひとつこういう問題を取り上げていただいて、抗生物質だけでなく、そうした有機化合物的なもので、化学的なもので、もしこれがいもち菌にきくということになりますと、これは特に疲弊した山村のためにも非常に大きな政策的な意義を持っておりますので、まじめに取り組んでいただきたいということをこの機会に強く要望しまして、私の話はこの程度にして皆さんおそろいですから……。
     ――――◇―――――
#180
○原委員長 農薬の残留毒性の科学的究明及び対策樹立に関する件につきまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党を代表して米内山義一郎君外二名より決議をすべしとの動議が提出されております。
 まず、趣旨の説明を求めます。米内山義一郎君。
#181
○米内山委員 ただいまの動議について趣旨説明をいたします。
 まず、案文の朗読をもって説明にかえたいと存じます。
   農薬の残留毒性の科学的究明及び対策樹立に関する件(案)
  農薬の毒性については、人畜、水産動植物に対する直接的な被害の防止に関し、法による監督指導が行なわれている。しかしながら、種子の消毒に使用するものは別として、農薬の成分が土壌とくに農作物に残留し、これが人体に摂取されて体内に入り、長年月にわたって残留蓄積される、いわゆる慢性毒性の問題については積極的な配慮がなされていない。
  残留毒性についてわが国として重視すべきは、国民の主食である米に残留する有機水銀農薬の成分である。現在日本人の毛髪中には米を常食としない国と比較して、約三倍の水銀が検出されている。
  政府は、国民の保健衛生の見地からこの事態を重視し、特に水銀については国際的な基準をも尊重して、緊急にその対策を樹立する必要がある。
 これがため
 一、農薬の残留毒性を速かに科学的に究明すること。
 一、残留毒性のない農薬をもつて代替せしめるよう強力なる行政指導を行なうこと。
 一、残留毒性のない経済的な新農薬の開発研究を積極的に促進すること。
  右決議する。
 以上でございます。
 各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
#182
○原委員長 以上で説明聴取は終わりました。
 本動議について採決いたします。
 本動議のごとく決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#183
○原委員長 御異議なしと認めます。よって、本動議は可決され、農薬の残留毒性の科学的究明及び対策樹立に関する件は、本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に関して、上原国務大臣、佐々木厚生政務次官及び仮谷農林政務次官よりそれぞれ発言を求められておりますので、この際これを許します。上原国務大臣。
#184
○上原国務大臣 本日の御審議を拝聴いたしておりまして、事の重大性を一そう認識いたしました。御決議の趣旨はまことにごもっともだと存じますので、関係各省庁とよく協議いたしまして、御趣旨が実現いたしますように今後努力を重ねてまいります。
#185
○原委員長 佐々木厚生政務次官。
#186
○佐々木(義)政府委員 厚生省といたしましては、ただいまの御決議の趣旨をよく体しまして一生懸命努力申し上げたいと存じます。
#187
○原委員長 仮谷農林政務次官。
#188
○仮谷政府委員 農林省といたしましても、ただいまの御決議の趣旨を十分に尊重いたしまして、積極的に善処いたしてまいりたいと存じます。
#189
○原委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じます。その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#190
○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。
    ―――――――――――――
#191
○原委員長 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、まさに長時間にわにり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 本日はこの程度にとどめ、次会は、明三十一日木曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。
   午後五時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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