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1965/04/07 第51回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号
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1965/04/07 第51回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号

#1
第051回国会 科学技術振興対策特別委員会 第14号
昭和四十一年四月七日(木曜日)
   午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 原   茂君
   理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君
   理事 西村 英一君 理事 前田 正男君
   理事 石野 久男君
      大泉 寛三君    加藤 高藏君
     小宮山重四郎君    渡辺美智雄君
      三木 喜夫君    山内  広君
     米内山義一郎君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       田川 誠一君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   小林 貞雄君
        総理府技官
       (科学技術庁研
        究調整局長)  高橋 正春君
 委員外の出席者
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局アイソト
        ープ課長)   広田 志郎君
        文部事務官
        (大学学術局情
        報図書館課長) 渡辺  正君
        厚生事務官
        (公衆衛生局企
        画課長)    宮田 千秋君
        厚生事務官
        (医務局総務課
        長)      中村 一成君
        厚 生 技 官
        (国立がんセン
        ター病院長)  久留  勝君
        参  考  人
        (茅野市立茅野
        町病院院長)  牛山 篤夫君
        参  考  人
        (京都大学教
        授)      東   昇君
        参  考  人
        (東京都赤十字
        血液センター技
        術部長)    森下 敬一君
        参  考  人
        (財団法人癌研
        究会研究所所
        長)      吉田 富三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興対策に関する件(対ガン科学に関
 する問題)
     ――――◇―――――
#2
○原委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 まず最初に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。
 対ガン科学に関する問題調査のため、本日、茅野市立茅野町病院院長牛山篤夫君、京都大学ウイルス研究所教授東昇君、東京都赤十字血液センター技術部長森下敬一君及び財団法人癌研究会研究所所長吉田富三君、以上四名の方々から参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#4
○原委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいまして、どうもありがとうございます。
 医学の急速な進歩により、かつては日本においては国民病といわれた結核も急速に減少しました。また、伝染諸疾患も年々減少している今日、ガンのみは日本だけでなく、世界的にも年々増加の傾向を示していることはまことに憂慮すべき状態であります。そこで、本日は専門家であられる参考人各位から本問題について、権威主義を克服し、広く人類のためのガン征服を前提として大胆な創造力の芽ばえを育て、学界諸先生方のあげての協力のもとにこれが目的達成を推進していただきたいとの委員会の意思を御理解いただき、それぞれの立場から忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。
 それでは最初に森下参考人にお願いいたします。
#5
○森下参考人 私、ここにきょう参考人としておいでになっているたとえば吉田先生であるとか、あるいは久留先生、東先生といわれるようないわゆるガンの専門家ではございません。私は血液生理学をいままで学んできた、そういう新しい血液生理学の立場から、ガン問題はいかに考えなければならないかというようなことをちょっと遠い距離からながめまして、最近いろいろガン問題につきまして論議される諸問題がございますけれども、そういうことを私たちの新しい血液生理学の立場からどう理解すべきであるかというようなことについて、たいへん僣越でありますけれども、私なりの考え方というものを述べさせていただきたいというふうに思うわけです。
 我田引水になるかもわかりませんが、このガン問題というのは、私たちが十年ほど前から提唱しております新しい血液理論というものを土台にしなければ、ほんとうの対策というものは立てられないのではないかというような考え方を持っております。
 私たちの新しい血液理論というのは、われわれのからだの中を流れている赤血球という細胞が腸でつくられ、腸でつくられましたこの赤血球がからだの中を循環いたしまして、そしてからだの中のすべての組織細胞に変わっていくということであります。皮下脂肪組織も、それから肝臓の細胞も、あるいは骨髄の細胞も全部赤血球からつくられております。この腸でつくられる赤血球の素材は食べものでありまして、簡単に俗っぽい表現のしかたをしますと、食は血になり、血は肉になるという考え方であります。この食は血になり、血は肉になっていくという考え方がいまの医学理念の中に存在をしておらないということが、現代医学をして一つの壁にぶつからしめている非常に大きな原因であるという考え方を持っております。
 この赤血球とからだの細胞との間には可逆的な関係がございまして、生理的な条件下では赤血球がからだの細胞に変わってまいりますが、病的な状態では体細胞から赤血球に逆戻りをするというような可逆的な変化というものが実は存在しております。こういう、食べものがわれわれのからだの中を流れている血液に変わり、この血液がからだの細胞に変わっていっておる。しかもコンディションのいかんによっては赤血球と体細胞との間に可逆的な関係が存在しているというたいへん大事な事実がいまの医学の基礎知識の中に存在をしておらないということが、実はこれはガン問題にも関係いたしております。
 といいますのは、結論的なことを先に申し上げますと、ガン細胞というものは、からだの中では細胞分裂増殖をいたしておらないという考え方を私たちは持っております。ガン細胞というものは分裂増殖をするというのが、いまのガン学者たちが信じておられる定説でございますけれども、われわれの体内のガン組織というものは、これは決して分裂増殖をしておらない。では、なぜガン組織が増殖をし、大きくなっていくかといいますと、これはからだの中のすべての組織細胞が赤血球からつくられているのと全く同じように、赤血球がガン細胞に変わっていっております。赤血球もしくは白血球がガン細胞に変化をしまして、そうしてガンが増殖をしていく、こういうたいへん大事な基礎知識がいまのガン研究の中に存在をしておらないということが、ガン研究を本筋に乗っけておらない真の理由であるという考え方を持っているわけです。私たちは新しい血液理論をすでに十年ほど前から提唱しておりますが、ガン細胞は赤血球からできるという理論は、私自身が五年前に書きました血球の起源という本の中にはっきり明記しております。昨年の七月にフランスの一流のガン研究者であるアルペルン教授が、これはオリジナルを私読んだのではございませんので、はっきり申し上げられませんが、マッチというフランス第一流の自然科学雑誌の中にガン細胞の増殖のしかたはどうも従来の考え方ではいけないらしいということで、どうももっと小さな血球様の細胞がお互いに融合し合って、そうしてガン細胞に変化をしているのではないかというような、私の考え方にたいへん近い理論を去年提唱しております。このオリジナルをぜひ私も検討したいと思っているわけですが、そういう考え方が出てきているように、ガン細胞というものは体内では決して分裂増殖をしておらないということを、私は確信を持って言えると思います。ぜひガン研究者にはこの点を既成概念にとらわれないで事実に忠実にひとつ御検討を願いまして、ぜひ再検討を試みられるようお願い申し上げたいと思います。
 このガン細胞というものが分裂増殖しないということになりますと、当然治療対策は変わってまいります。現在は分裂増殖しているのだということで治療対策が立てられているわけですが、私はそうでないという考え方でございまして、もしそうでないということになりますと、当然治療対策は全面的に変えられなければならぬということになってまいります。ガンの治療対策としまして最も基本的なことは、先ほど申し上げましたように、ガン細胞は赤血球からつくられているわけでありますから、分裂増殖する細胞を撲滅するのではなくて――ガン細胞を撲滅しようという思想でつくられた治療法は全部だめであります。ガン細胞をつぶそうという考え方では――ガン細胞というものは、決してわれわれのからだの中で遊離している状態ではございません。ほかのからだの部分と完全に交通をしているわけでございますから、ガン細胞をつぶそうという考え方でつくられた化学薬品もしくは放射線というようなものは、必ず他の部分にも同じような打撃を与えるということを考えなければいけないわけです。したがいまして、こういう考え方のもとでつくられた療法というものは本筋ではないということになります。残念ながら現在行なわれている療法の大部分がそれでございまして、そろいうことではなくて、ガンをなおすためにはガン細胞を赤血球に逆戻りさせればよろしいということになります。赤血球とそれから体細胞、ガン細胞もそうでありますが、すべて可逆的な関係がございます。からだのコンディションいかんによって赤血球がガン細胞、体細胞に変わっていったり、あるいは体細胞が赤血球に逆戻りをしたりという可逆的な関係があるわけですから、ガン細胞を赤血球に逆戻りさせる方法を試みればよろしいということになります。
 そのためには、一つの方法としましてやはり絶食あるいは食餌療法――現在の栄養概念というのはたいへん混乱をいたしておりまして、先ほど申し上げましたように、食べものが血になり、血がわれわれの体細胞に変わっていくわけですから、われわれは何を食べてもいいということでは決してございません。われわれの体質を決定するものは食物の質であるわけですから、食べものの質は厳に吟味しなければいけない。にもかかわらず、何を食べてもよろしいという考え方が現在一般に広げられているわけでございますが、そういうことではなくて、人間本来の食べものに切りかえるべきである。人間というのは元来草食動物でございまして、草を食べる動物でありますから、植物性のものに食べものを切りかえる必要がある。それから絶食療法を試みるというようなことでガン細胞を赤血球に逆戻りさせることは理論的にも、そして実際的にも可能であります。そのほか、理学的な療法といたしまして、たとえば静電気による療法であるとか、あるいはオゾン療法であるとか――この静電気並びにオゾン療法というのは血をきれいにする、浄血する作用を持っておりまして、こういう方法が試みられなければならないのではないかと思います。
 先ほどから申し上げておりますように、ガンという病気は決して局所病ではございませんで、体質もしくは血液の質が悪くなったために起こる病気でございます。全身病でありまして、局所を切りとったからそれでなおるというような考え方は私は賛成できません。あくまでも全身病として血をきれいにしていくという立場でガン対策というものを考えていかなければいけない。ガンだけではなくて、現在文明病としましてたくさんの病気が多発いたしておりますけれども、こういうもろもろの病気をなくすために、先ほどから再三申し上げておりますように、食べものが血になり、血が体細胞に変わっていく、そういう考え方を土台にして血液を浄化していくということが非常に大事なことである、これはガン対策にも通ずる基本的なものの考え方であらねばならないということでございます。
 まだ、ほかに申し上げたいこともございますが、あとで何か質疑応答みたいなことがございますようで、その節また質問にお答えして、私なりの考え方を述べさせていただきたいと思います。私が申し上げたいと思うことをかいつまんでごく概略ながら申し上げますと、いま述べたような事柄でございます。
 どうも失礼しました。
#6
○原委員長 では次に、吉田参考人にお願いいたします。
#7
○吉田参考人 先ほど委員長のおことばを拝聴しておりましたが、この席で私がどういうことを申し上げたらいいのか、はなはだ当惑するわけでありますけれども、昨日電話で伺いましたところでは、対ガン科学、ガンに対するサイエンスの振興について所見を述べればいいのだ、そういうふうに理解してまいりましたが、このことも、申し上げればたいへん広範にわたりますので、どのくらいの時間をお許しいただけるか……。
#8
○原委員長 十五分くらいです。
#9
○吉田参考人 十五分くらい、それでありますと非常にむずかしいことになりますが、いまガンの研究でどういう点が研究者の間の問題になっているかということをごくかいつまんで申してみますと、ガンという病気にかかっている人をとってみまして、その病原体は何であるかといいますと、これはガン細胞であります。ガンは病原体もよくわからないと申されますけれども、ガンの患者をとってみまして、その患者の病気を起こしている病原体は何であるかということをいいますと、それはガン細胞であります。そしてそのガン細胞がどうしてできるのかといいますと、これは身体を構成しているところの正常な細胞がいろいろの原因によりましてガン細胞化する、ガン化すると申しておりますが、ガン細胞に変わりまして、そしてその細胞がからだの中で増殖をいたします。増殖いたしまして、全身に広がったり局所に大きな腫物をつくったりするのが、それが病気であります。
 問題は、このガンの原因というときに、正常の細胞をガン化させる原因と、それから病気になっている、病気そのものの原因はガン細胞であるという二つの段階になっている、ここのところで一般の理解においていろいろの混乱の起こってくるところがあるのであります。
 そこで、細胞をガン化させる、その原因はどういうものがあるかと申しますと、それは放射能でも、いろいろの化学物質でもあるいはウィルスでも、非常にたくさんのものが知られているのであります。しかしガンの治療というときには、細胞をガン化させる原因と病気を起こしているガン細胞の増殖ということとは二つの別のことでありますので、ガン化させる原因に基づいてガンの治療法を立てるということができないというところに一つの大きな問題があるのであります。
 たとえば、ある化学物質で細胞のガン化が起こるといたしましたときに、ガンになった患者、すなわちガン細胞が体内で増殖している患者に対して、そのガン化を起こした化学物質を中和するようなものを用いても、それは治療方法にならないのであります。このことは、ウイルスの場合でも同じでありまして、いろいろのウイルスがいろいろの動物に細胞のガン化を起こすことは事実として確認されております。けれども、その動物のからだにできたガン細胞の増殖をウイルスの抗体によって抑制することはできないのであります。つまりガン化の原因と治療の方法との間に直接のつながりがないということが、一番先に理解されなければならないことであるのであります。
 研究といたしましては、いろいろの原因で細胞がガン化するけれども、その原因はいろいろあるが、そこには統一的な何ものかがあるのではないか。化学物質なり放射線なりウイルスなり、いろいろのものがありますけれども、それが細胞をガン化させる機構というものの中に、ある統一的なメカニズムが見出ざれるのではないか。それを見出すということが一つの方向である。それに多くの研究者の研究方法が集中されております。
 それからもう一つは、いろいろの原因でガン化した細胞のいわゆる無制限な増殖がどういうメカニズムで起こっていくのか。これも原因は多様であるけれども、そのメカニズムにはある統一的なものが見出されるであろう。それを見出せばガンの治療法、つまり増殖するところのガンの病気の病原体となっているところのガン細胞を抑圧するガンの治療の方針に大きな進歩が見られるわけでありますから、その増殖する細胞のメカニズム、そこに何か統一的なものを見出そう、そういう研究がなされております。
 一方に、そういう科学的に基礎的な問題が解明に向かうと同時に、すでにあるガン細胞の性質というものは現在知られておりますので、ともかくもその増殖を抑圧しよう、化学物質その他によってその増殖を押えようという化学療法の研究、基礎的な問題とは別にどういう方法かで押えられはしないかという研究も進んでおるわけであります。
 ごくかいつまんで申しますと、いろいろの形で研究が行なわれておりますけれども、大体そういうのが研究の方向であろうかと私は考えております。
 こういう次第でありますので、ガンの研究の研究者の間には、それぞれの立場、それぞれの見解によっていろいろ学説の相違、考え方の相違もありますので、これがガン学界を多くにぎわしているところでありますが、私の存じておりますところでは、現在日本のガン学界にはいろいろの学説が対立して、そして学者の間に分派対立の形があるというようなことを世間でいわれているのであります。たとえば古典病理学者のグループがウイルス研究者のグループを圧迫するとか、ウイルスの研究に対して反対の態度をとっているとかいうようなことが週刊誌などに出ているそうであります。そういうことは、今日国会のこの委員会におかれましても、何か調節をはかって、日本のガンの研究者が手を携えて目的に向かうような機運をつくってあげようという御配慮があるいはそういうことから出ているのではないか、そういうふうに私は想像いたしますが、もしそういうお考えがあるならば、これは全く風説に基づいているものであると私は申し上げたいと思います。
 私の信ずるところでは、日本のガンの研究者ほど、現在全国的によくまとまりがついて、研究者の間の相互連絡がよくできている学問の世界は、世界にもまれであると考えております。これはたびたび来朝するところの各国のガン研究者がひとしくそれを認めているところでありまして、私もその点は強く信じているのであります。いずれ文部省のほうから資料などもあとで御説明いただけるかと思いますけれども、いま週刊誌などにいわれているウイルスの研究が、研究費においてもその他の点でも圧迫されているというような事実は全くないということは証明できると思うのであります。
 それから学会のことで申しますと、癌治療学会というものが癌学会から一、二年前に一つの学会として独立いたしましたけれども、これも決して学会の中に何か分派的な空気があって独立したというのではないのでありまして、非常に多数の人数をかかえている臨床家の一つのグループができたということでありまして、内容的には一つの密接な関連のもとに運営されている事実を申し上げたいと思うのであります。
 そこで、学説の相違というものは、決して闘争でもないし勝負でもないのであります。ですから、この学説の問題に関しては学者にまかせておきまして、よそから介入してこれの調節をはかるというようなことは決してなすべきことではないと私は思うのであります。学問上の問題は学会の専門家の集まった場所で討論をする、あるいは発表した専門雑誌の誌上においてその可否をお互いに論争する、そういうことが学問の進む正道でありまして、学問の見解の相違というものは、学会と学術雑誌、そこで行なうべきでありまして、そして、そこのみで行なわれるべきものであります。いかにしてそれが解決されるかといえば、おのおのその信ずるところの学説を自由に自主的に伸ばしていくということが解決の道であります。その間に、残るものは残り、修正されるものは修正され、消えるものはおのずから消えていくという作用が起こりまして、これがほんとうの科学の進歩であります。そこに第三者が介入するということは、最も危険なことであると考えております。もし国が真に科学の研究を振興させようという立場にお立ちになるならば、この自由なる進歩の環境をつくるということが第一でありまして、何かここに調整、調停のようなことを試みようということであれば、それは害あって利なしと私は考えるのであります。なぜ害があるかと申しますと、調停を試みるということは、融和をはかろうとするようなことは、それは妥協を要求することでありまして、学説の上でいまだ妥協の点に達していないもの、あるいはとうてい妥協のできないものに強要が働くという結果になります。これは裏返していえば、権威にたよって学説の可否を決定しようというような心持ちを助成することでありまして、学説の対立に対しては、調停、調節ということは決してなすべきものでないと考えるのであります。これは古い昔に地動説、天動説というようなときに、宗教裁判によって黒白をつけようと試みた歴史が戒めとなって残っておるのを思い出せばよろしいかと思うのであります。
 それからもう一つ申し上げたいことは、ガンもその一つでありますけれども、研究をほんとうに進めていこうという場合には、科学者を尊重し、科学者を信ずるということが一番大切な要件であると思います。科学というものは抽象的なものでありますけれども、現実に科学とは何かといいますと、それは人間についたものでありまして、科学をになうものは科学者という人間であります。ですから、科学者を信じない、尊重しないということがもし社会に起こってくるとすれば、それは科学を尊重せず、科学を信じないということになるのであります。この点について、私は思い出すのでありますが、しばらく前にドイツのブテナントというノーベル賞学者が参りましたときに、私は、ドイツのマックスプランク研究所の運営が非常に理想的に行なわれているということを聞き、また知っておりますので、この運営の基本方針は何であるかということを尋ねましたところが、科学者という人間中心主義である。たとえば、あるマックスプランク研究所を一つ新設するといろときに、現在ウイルスの研究が世界のトピックであるが、ウイルスの研究所をつくろうかという、そういうことはやらない。ドイツの国内にいまどういうりっぱな研究者がいるかということを見て、りっぱな研究者がいればその人に研究所を与える。したがって、そのときの話では、現在ドイツには化学、ケミストリーの研究所が三つあるけれども、非常に天才的なすぐれた人がいるので、帰ったらもう一つその研究所をつくろうとしているのだ、そういうことを申しておりました。そしてその研究所をつくるときに、その研究所はその研究者一代限りに与えるのであるから、そこに入所して働く助手その他の研究者にも、その研究所長が引退するときには同時に引退するという一札をとって入れるのでありまして、一つの研究所ができると、それが二代も三代もの間に立ちぐされになるというような、そういうことはそれによって防がれているのだ、学問はそのときの科学者を中心にして進むのだという、ドイツの伝統的な原則をここに立てているということを申しましたので、私はそのことは非常に印象深く残っております。しかも、そういう運営を決定するのは、数名の、きわめて少数のすぐれた科学者に一任されていて、国も社会もその決定にはいささかも口を出さないのだ、こういう徹底したところがドイツにはあるのであります。これの是非は、私はここで御判断にまかせるといたしますけれども、しかし他山の石として、こういうことを私は科学の振興については念頭に置きたいものだ、このように考えているのであります。
 そのほか申したいこともございますが、時間が少し超過いたしましたので、これで終わることにいたしますが、ガンの直接の問題から少し科学研究の促進の一班に触れましたのは、いまの委員長のおことばに、要するに、日本におけるガンの科学的な研究の推進のために意見を述べよ、こういうおことばでありましたので、少し広範にわたって述べた次第であります。
#10
○原委員長 ありがとうございました。
 次に牛山参考人にお願いいたします。
#11
○牛山参考人 私は十数年来もっぱらガンと取り組んで研究を進めてまいり、独特の薬も製造してまいりました。私の研究に基づくガンの原因をまず申し上げますと、これは昭和三十七年の十月の癌学会において私が発表したことでありますけれども、ガン患者におきましては、一〇〇%、その赤血球中に、私がガン微小体と称する非常に微細な小体が特殊な染色法でも染まり、これを顕微鏡下に見ることができます。ハツカネズミの腹腔中にその微小体を培養注入しますと、あたかも4−ナイトロキノリン−1−オキサイドの注射に基づく肺腫瘍あるいは肝臓腫瘍と同様なものがあらわれ、その注射されたハツカネズミは、早きは十五日、あるいは長くて半年以内に倒れる、こういう結果があらわれて、私はこれをもってガンの病原体ではなかろうかと言ったのであります。明後日、私は電子顕微鏡学会におきまして、この電子顕微鏡像をとらえることができた結果を発表しようと思っております。
 次に、私は独特のガン治療薬をこしらえまして、すでに十一年余りを経ました。厚生省の製薬許可が、低酸性無酸性胃炎に対する薬ではありますが、昭和三十四年の五月にありました。SIC、これが薬の名前でありますけれども、その後今日まで、使用患者は日本全国で約二万人に及んでおります。治療した医師もほぼ一千名、この統計は、お手元にありますこれでございまして、これは昨年の十一月の統計でございますが、患者数一万七千百九十二名、扱ったお医者さんが千二百九名日本じゅうでございます。患者及び医師の住所氏名は、私が顧問をしておる製薬会社で最初から全部記帳してありまして、現在も実施中でありますが、過去三回にわたって、この薬の使用者全員にアンケートを求めまして、その結果を公表いたしました。また一昨年九月私が一万部印刷しましたガン病原体及びSICに関する研究のパンフレットは、お手元のこれでございますが、衆参両院議員、全国医科大学教授、及び日本癌学会員全員、全国公私立病院長などに配付し、国会図書館にも収受されております。
 以上のように、私は常に公明な道を歩んでまいりましたが、私の研究は非科学的であるの理由のもとに、日本癌学会におきまして、三回にわたって発表を拒否されました実情であります。非常に遺憾に思っております。
 いまや、ガンは、私がここにちょうちょうするまでもなく、年々増加しましてその暴威をふるい、その再発するに至りましては、医師は全く手も足も出ないありさまであることは世上周知のことでございます。私の薬は、前述のようにすでに日本全土に広がっており、その臨床効果の調査も、厚生省の力をもってすれば容易でありましょう。また、それに必要な当方の資料はできる限り提供いたします。私は、現時点において厚生省からの研究費の配分を願っておるもので毛ありません。ただ、一日も早くこの薬がガンに有効であると公に認められ、ほかの制ガン剤同様健保適用薬となり、患者の負担が軽減され、一人でも多くのガン患者の救われることを望んでやまない次第であります。
 また、ガンの早期診断に対しましては、その対象を胃ガンのみに限ることなく、血液検査法の拡充、電子顕微鏡の駆使、動物実験などによって、あらゆるガンを早期に診断し、早期治療を行なうことが肝要であろうと思っておるのであります。
 お手元に差し上げましたこのパンフレットでございますが、この目次のところをごらんいただきますと、まず第一が人ガンの病原体についての研究、それは、ガン患者赤血球からガン微小体の培養、染色法、それから位相差顕微鏡の検査、動物実験などであります。それから二番目に、私の薬の本質とその人ガンに対する作用機序、これは昭和三十五年の十二月、日本癌学会において発表しようといたしましたところ、時の癌学会会長田崎博士によって拒否されたのでございます。その次は臨床実験例がたくさんございます。SICの慢性胃炎並びに胃液酸度に及ぼす影響について、それから臨床実験(B)慢性胃炎について、これは東大の田坂内科で行なったものであります。次はその薬のガン及び肉腫に対する治療統計表がございます。次は医師の証明に基づくこの薬のガンに対するアンケートによる治療効果調査表がございます。そのほかは、この薬の使用上の参考事項などであります。御熟読を願います。
#12
○原委員長 ありがとうございました。
 次に東参考人にお願いいたします。
#13
○東参考人 私は、二十数年来ウイルスの研究を続けてきました。ここに申しますウイルスというのは、細胞をガン化させる原因としてのウイルスではなくて、普通の、皆さん御承知のインフルエンザとか日本脳炎とか、あるいはトラコーマ、アデノウイルスというような、いわゆるガンと関係のないウイルスの研究を二十数年続けてきているものです。
 最近に至りましてから、先ほど吉田先生からお話ございましたように、細胞をガン化させる原因の一つとしてウイルスが考えられるようになった。これは主として、あるいはもっぱらと言ってもいいくらいに動物のガンでございますが、このウイルスとガンとの関係というものを、おもに培養あるいは電子顕微鏡的な研究というものを中心にして、私たちの研究所でやっておるわけです。人間の普通の細胞をガン化させる原因がウイルスかどうかということは、なかなかむずかしくてきめ手がないといいますか、非常にむずかしいものですから、現在のところ私たちは、主としてアデノウイルスという、夏になると子供がプールに水泳に行って結膜炎を起こす、あるいはかぜをひく、のどが痛くなるという場合に、新しいウイルスでアデノウイルスというのがあるのですが、このアデノウイルスは非常におもしろいウイルスで、その中のある型のもの、たとえば12型という型のものが動物にガンをつくるわけです。そのつくり方が非常におもしろい。というのは、私たちは電子顕微鏡を中心にして研究をしているものですから、電子顕微鏡というものはガンの研究の非常に有力な武器の一つになってきたわけでございますが、粒子が、つまりガンウイルスというのは一つの実体粒子が見つかったり消えたり、非常に複雑怪奇な姿をとる。そういうのが、将来人間の細胞をガン化させる原因の一つにウイルスがもし考えられるとすれば、そういうものと関係があるのじゃなかろうかというようなことで、まず動物のほうで実験をやっている段階です。
 もう一つの私たちの研究所のグループの研究は、発ガン機構の生化学的研究ですが、これは、吉田先生の大きく組織しておられる日本のガン研究組織の中の一つの機関研究として存在しているわけですが、この研究では、もっぱらバイオケミカルな立場で、ガン細胞の動物の場合のケミカルな動きがどうなっているかということを研究しているわけです。したがいまして、私の研究は、電子顕微鏡を中心として二十数年、ガンと全然関係のないウイルスの研究、続いて、ガンとの関係が非常に密接になってきた動物のガンの場合のウイルスの研究を電子顕微鏡的に――つい最近では、生化学的な立場から、これはグループ研究でございますが、そういう研究を進めてきているというのが、私たちの研究の現状であります。
 以上、簡単に御報告いたします。
#14
○原委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。
 引き続き、久留国立がんセンター病院長より説明を聴取いたします。
#15
○久留説明員 私は臨床家でありまして、三十年来ガンの治療、診療に従事いたしております。そして四年前に国立がんセンターができましてから、その院長の職につきまして、拡充整備に努力いたしておりますので、この機会に一言私の意見、所懐を述べさせていただきたいと思います。
 ガンの特徴というのは何かというと、これは先ほど違う御意見が少し出ましたが、最初のうちは局所的の病気であるという点です。病気の始まったある一定の期間は、ガンはある場所の病気である。したがって、この時期にたとえば外科的の手術でこれを取り除きますと、完全にガンはなおってしまうのです。私は、幸い、三十年こういうことをやっておりますから、その実例はかなりたくさん持っております。最近直腸ガンにつきまして、二十五年以前に私が手術いたしました直腸ガン百七十六例がどういう経過をとっているかということを詳細に調べましたところが、その中で、二十年以上生きている人が二十二名ありまして、その中で十六名は、現在二十五年ないし三十年たって、完全に健康に生存いたしております。この調査は、将来もっと、直腸ガン以外の胃ガンとか乳ガンについても進めたいと思っていますが、ガンが最初のうちに適切な療法を行なったならば、完全に治癒するということについては、私は疑いを入れる余地がないということをここで皆さんに申し上げたいと思います。
 ところで、この疾患のもう一つの特徴は、ある一定の時期を過ぎますと、非常に全身的疾患としての性格が強くなってまいりまして、そうなってしまうと、メスはおろか、放射線もたいへん効果が少なくなる。化学療法が進歩しますと、こういう状態のガンをどれくらい取りとめるかということが将来の課題になっておりますが、現在のところでは、まだ残念ながら侵食したガンをどう治療するかということは、われわれに課せられたところの非常に大きな問題であります。ところで私は臨床家でありますから、ガンの基礎的研究の問題にここで深く入るのは避けたいと思いますが、いろいろ関連したことがありますので、簡単に私の考えを申し上げます。
 ガンの基礎研究というのはあくまで科学であります。これはこの委員会が科学委員会という名前が出ておりますが、科学であります。サイエンスであります。サイエンスというのは何か、こういうことを申し上げて失礼でありますが、これは見つけたものが正しいものである、真理であるということが絶対の要件なんでありまして、その真理であるということは何であるかというと、ほかの人がその人の言っている方法でもって同じことをやりますと、必ず同じ結果が出るということが、これが科学の特徴なんです。どういういい学説が出ましても、それをほかの人が同じようにやって同じように出ないということになりますと、それは科学的に意味がないということになりまして、こういう委員会でそれを討議されることは無意味になってきはしないか、少なくともこの委員会に科学という名前がついている限りでは、そういうことは無意味になってくると私は考えるのであります。それでガンの研究は、大体病因、どうしてガンが起こるかという問題と、でき上がったガンの細胞がどういう性格、特に正常の細胞とどういうところが違っているかというところが現在の科学者の研究しておられる目標だと思います。この病因論につきましては、一番いまやかましくいわれておるのはやはりウィルスでありますが、動物においてはウイルスでガンができるということが明らかにされておりますにかかわらず、人間のガンではまだ残念ながら、科学的にだれがやってもうまくいくというような程度にガンが病原であるということが証明せられたものがないということは事実なんです。しかし、人間のガンとウイルスとの関係は、これはみなが推定しているところでありまして、現在、各方面でこの方面の研究が行なわれております。国立がんセンターでも非常に優秀な人が非常な努力を傾注して、そしてこの方面の研究に当たっているということを皆さんにここで申し上げておきたいと存じます。
 次に、ガンの発生と非常に関係のある問題として、どうしても食物を取り上げなければならない。これは日本では、御承知のように、胃ガンが一番多くて、そして死亡率が一番高い。おまけに文明国ではだんだん胃ガンが減少しつつあるのに、日本じゃ一向減少しないというところで、たいへんこれは問題があるわけであります。やはり胃ガンとなりますと、これはどうしても食物の中の何か有害な因子というような問題が焦点になってくるわけでありまして、これはなかなかむずかしい問題でありますが、疫学的の研究がこの方面に向かってやはり非常にまじめに続けられているというととをここで申し上げておきたいと存じます。
 それからガンの発生ということと関連してもう一つ非常に大事なのは、生活環境の問題でありまして、食物もその中に入れてもいいのでございますが、特別に空気の問題を取り上げます。これは世界全体として呼吸器のガンが非常に増加してきた。もう飽和状態に達しておる。日本はアメリカ、イギリスほどではありませんけれども、増加の速度においてはいま世界で一番早いというような状態で、これはだれが考えても、やはり空気の汚染ということ、ことに工場のばい煙とかガソリンとかいうことが問題となるのでありまして、公害委員会というようなものができて、これがまじめに検討されておるということはたいへん御同慶の至りと存じます。
 私がもう一つの希望いたしたいのは、これからエネルギーの源泉というものが時代とともに変遷してまいります。十年前だと、それは石炭のばい煙ということが一番大きな問題であったでしょう。しかし、もういまは大体重油を使ったほうが安いということはわかり切っておるのに、無理に石炭を使っている。重油になりますと、これは石炭とたいへん様子が違ってきます。もう十年たったらどうでしょう。これはおそらく原子力が重油と入れかわりはしませんですか。そうしますと、いままでのような呼吸器を対象としたところのガンの対策ということが、日本はともかく、世界ではだいぶ様子が変わってきて、骨とか血液とか、そういうところにガンが多くなってきて、呼吸器のほうは減ってくるというようなへんてこな現象が起こってくるかもしれません。どうか国会のこの方面の方々がぜひ原子力の利用ということを公害という面からもいろいろお取り上げになっていただいて、たくさん骨のガンができてから大騒ぎをするというようなことにならないように、いまからいろいろ対策を講じていただくということを私は切に希望するものであります。
 最後に、国立がんセンターがどういうふうな態度でもって現在やっており、またこれから先やっていかなければならないかということについて、ちょっと私の考えを申し上げますと、その一つは、いま申し上げたガンの基礎的研究の問題でありまして、これは疫学の問題もあわせて研究所のほうで主として主力を注いでいただいている問題であります。
 それから次に、ガンは御承知のように、早く見つければなおる、おそくなるとなおりにくいというので、ガンをどうしたら早く見つけられるかということが早急、火急の問題であります。したがって、その方面に向かって私たちが非常な努力を費やしておりまして、幸いにして日本の国民病であるところの胃ガンにつきましては、非常に小さいものがたくさん見つかるようになりました。これはまことにおめでたいことで、もう指先以下のものがこのごろはどんどん見つかるようになりました。これは胃カメラという小さい写真機が日本で発明せられて、日本で完成されて、それが普及化されつつある。それに伴ってレントゲン技術も格段に進歩してまいりました。それから胃壁の中から直接にガン細胞を取り出して証明することもできる。それはカメラも進歩しましたし、それから胃の中へ小さい管を入れて、そうして見ながら悪いと思われるところを取ってきてそれを標本で取って調べるのですから、診断はそこで確実についてしまう。こういうような手段によりまして、早期胃ガンの発見という方向はもう現にちゃんとついているのです。これを国民一般にどういうぐあいにして普及して、国民の福祉を増進するかということになりますと、これはどうしても政治というものと関係しないと、われわれの目的を達成することができない。
 ところで、こういう問題が起こりますと、必ず機械の整備、それから病院の開設とか、そういうことが一番先に問題となるのですが、それは私はどうかと思う。それにはまず先にものを見てわかる人を養成しなければいけない。それでガンの早期診断といいまして、小さければ小さいほどそれを見分ける人が必要です。同じカメラの写真が出ても、それを見る人が見なければネコに小判と同じで何もわからない。見る人が見ると、ここが怪しいぞというので、小さいところを見つけて、そこに焦点を合わすことができる。ですから、現在の段階で何が一番そういうふうな早期診断の普及化ということに大切かというと、そういうもののわかる医者を養成し、そうしてそれに必要な技術陣を養成するということです。この順序をどうか国会の方々、よく頭の中に入れていただきまして――いま、私ども研修をやっているのですけれども、残念なことに研修のための設備もなければ、それからそのための費用もほとんどない。少しスズメの涙ほどいただきましたけれども、ほとんどないというような状態で、これでは、全国に早期診断に必要な要員を普及するということとはほど遠いと思うのです。ぜひこの点は、こういうふうな早期診断のための要員を養成するために、国会で十分予算をお組みくださいまして、そしてまず必要な人を先に養成する。先ほど人の問題が吉田参考人から出ましたけれども、何よりも大事なのは、人なんです。それからその人が優秀な機械を行使する、その人が優秀な設備を行使する、ここにおいて初めてりっぱな成績をあげることができる。幸いにして、国立がんセンターは、私の希望しておりますような方向にだんだん進歩を遂げておりまして、皆ざまの御期待に沿い得る状態になっておると思いますけれども、こういう設備を東京だけに置いたのではいけない。全国にそれが普及して初めて日本国民全体の福祉になると思うのです。どうかこの点を本日私の老いの繰り言とお聞き取り願いたいと思います。
 失礼いたしました。
#16
○原委員長 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
#17
○原委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。前田正男君。
#18
○前田(正)委員 きょうは参考人からいろいろと非常にけっこうなお話をいただきまして、われわれも大いに啓発されるところがあったのですが、いろいろな問題をきょう御提起になりましたけれども、私はぜひ委員長にお願いして、きょう参考人の方のお話を伺う一つの問題点は、全部の話じゃありませんが、一つの問題としてお願いしたことは、実は私この間偶然に、きょうおいでになっておる吉田さんと、それからNHKの招きましたアレキサンダー・ハドー博士とがガンの問題で対談をしておられますテレビを拝見させていただいたわけでございます。私は実際全部その話を聞かなかったのでありますけれども、そのテレビを見ております間に、ハドー博士の話の中に、全部のガンではありませんが、一部のガンに対して薬でなおったというような実例をあげて話をしておられました。これはわれわれとしても非常に大きな問題であると思うのでございます。ただいまがんセンターの院長からお話がありましたとおり、ガンを完全になおすためには早期に発見して外科でなおすということが最高のことであると私も考えておりますけれども、しかし、一つの方法として薬というものもガンの治療にあり得るのじゃないかということを、われわれの委員会としてはそういうことを述べる方もございまして、実はこれは数年来の問題でありますけれども、この委員会でも二、三回ガンの問題を取り上げまして、きょうおいでになっておる牛山参考人にも前においで願ったこともございますが、いろいろそういうような話も出たわけでございます。それに対していろいろと、先ほど吉田さんのお話では学会の問題等についてもお話がございましたけれども、これは牛山さんのほうの御意見とわれわれ聞いておりますのと多少違う点もございますけれども、それはもう数年前の国会で取り上げまして、そういうふうないわゆる真理の発見については自由な発言ができる必要があるのじゃないかということをわれわれは唱えたことがあるわけでございます。しかし、その問題は解決した過去の問題であると思っておりますけれども、ただそのときに私たちが考えましたのは、その中に可能性があるかないかということはまだ、われわれとしても専門学者でございませんし、わからないのでございますけれども、しかし、ガン治療の一つの方法として何らかの薬というようなものによって治療できるとか、あるいは予防できるとか何らかのものがあり得るのじゃないだろうかというようなことも私たちの質問の議論にもございました。そういう問題を実は民間では盛んに研究しておられるところもあるのでしょうし、海外でもそういうことを研究しているらしいということをわれわれも聞いておるので、実は政府のがんセンターはその当時まだなかったのでありますが、がんセンターというものをぜひ厚生省につくるべきじゃないか。そうして、もちろんいま院長がおやりになっておるように、早期の治療とか早期の発見とか、こういうことに技術を確立してもらう、これはぜひやっていただかなければならないと思いますが、同時に、政府のがんセンター等においても基礎的な研究の一つとして薬による治療というものを取り上げるべきではないかということをわれわれは述べたこともあるのでありますが、そういう実例がないというその当時の返事でありましたけれども、その後、日米科学委員会がだんだん開催されてきまして、そのうちの医学部門の合同委員会の中におきまして、これは私、そのときの委員会の記録を完全に読んでおるわけではありませんけれども、アメリカのほうから、やはり薬によってなおったというような例が示されたということを聞いておるのであります。したがって、日本においてもだんだんとそういう方面も検討をされていかれる。それにはいろいろと薬でなおるものの基礎になるところの真理の把握につきましては御意見がいろいろとあるようでございまして、先ほど来森下さんが血液の立場とか、あるいは技術の立場とか、あるいは抵抗素の立場とか、おのおの考え方は違うと思いますが、どういうものがいいのか悪いのかということは私たちまだわかりません。研究してみなければなりませんことだと思います。学問のことでありますから、大いに、それこそおのおの自分の信ずるところを御研究願いたいと思うのでありますけれども、一応ガンに対する薬というものについても研究の対象として取り組んでみる必要があるのじゃないかということをわれわれ考えておったのですが、どうもそれが進まなかったように考えておるのであります。しかし、先ほど申し上げましたとおり、ちょうどNHKのテレビを見ておりましたところが、そういう話を、これは世界的にもなかなか権威の方だそうでありますけれども、吉田参考人と対談しておられまして、私、そういう実例を聞きまして、これはまことにわが意を得たと思ったのです。そこでひとつきょうは、実はそのときに私が申したのは、そのイギリスの博士に国会に来ていただいて話を聞こうと思ったのですが、予定がないというようなことでお話を伺うことができなかった。したがって、それと対談されました吉田参考人に、できたらその問題点について少しくお話を伺わせていただけたらと思っておるわけであります。
#19
○吉田参考人 いまのようなことをガンの化学療法と申しております。あるいは薬剤療法と申してもよろしいと思いますが、この研究につきましては、私が最初の話のときに基礎的な研究問題は問題として、ある種の化学物質によってガンをともかくも治療し得る可能性があるのではないかという考えの研究も第三の道としてそれが進められておりますということを申しましたが、それがまさにいまのところでありまして、私個人は終戦の直後からこの化学療法の研究に自分で手をつけております。そうして日本に化学療法の研究グループをつくって、今日まで二十年にわたってその研究を続けておりますが、実績において皆さんの御満足のいくようなものが今日まだあがっていないことをはなはだ遺憾に思っておりますが、全般的に申しますと、これは先ほどのお話のアレキサンダー・ハドーをはじめ全世界の学者が不満足に思っておるところであります。自分で研究をしながら、なおかつ十分ではないと考えているところであります。
 日米科学委員会というものができまして、第一回の会合が東京で開かれましたときに、日米両国が共同して研究する課題の中に、双方から期せずしてあがっておりましたのがガンの研究ということでありました。そのときに、ガンの研究といっても非常に広範であるが、ガンのどういう面をやるべきかということで私が提案しましたのは、ガンの化学療法の研究をやるべきであろうということで、それが採択になりまして、そうして日米協力のガン化学療法研究共同体制というものができております。そこで現在までに進めてきました研究が、化学療法の研究といっても、これまた広いけれども、その中で未知の薬剤をとって、それがはたして効果があるかどうか、無数にあるところの未知の物質の中から効果のありそうな物質を選別する、その選別方式の研究を共同でやろうということで、それを進めているのであります。そういうことで日本もその他の国も、各国とも化学療法の研究を進めておりますが、先ほど申しましたように、満足すべきものはまだできていないということでありまして、化学療法の研究はガンの研究の中で決してないがしろにされているものではないのでありまして、一番大きな題目の一つとして取り上げられております。
 ただ、この薬剤というものの人心に与える影響が非常に大きいということは、満足すべきものがないという状態でも、ある薬剤が有効かもしれないというようなことをいわれると、それに対する人心の影響というものは非常に大きいものでありますので、この研究をしている者はその点で非常に警戒をしているわけであります。そして現在までに日本でも幾つかの、販売のできるガンの化学療法剤が創製されております。そして現に臨床的に使われております。それはアメリカからも、先ほどお話の出たイギリスからも出ております。そういうものを使いまして、確かにガンであったものが、ある程度よくなったという実例はあります。それからガンの種類によりましては確かにこの化学療法剤でなおったのだという判定のできるものがあります。人体においてもそれがありますけれども、動物実験においてはなおさらたくさんそれがあるので、テレビでごらんになったアレキサンダー・ハドーが示したのは、動物試験でかくのごとくよくなるものがあるというその実例を示したのであります。それで動物でそれだけいい成績があがるなら、これを改善していけば必ずや人体にも有効であろうというのが学者の信ずるところで、その改善に向かっているわけであります。
 先ほど化学療法剤が世上人心に与える影響ということを申しましたが、これは各国ともそれには非常に警戒をしておりまして、日本では開発されたガンの薬剤が販売が許可されるまでには十分なる動物試験をやり、その物質の化学的成分についての研究も十分にやり、それからその薬剤の全身に対する障害作用の有無、そういうことの基礎研究を十分に積んだ上で、そしてその物質による臨床試験――国立病院、大学病院等の権威ある幾つかの病院における臨床試験で認めるべき成績があがっているということが認定されて初めて許可になるという手続をとっております。その審議は薬事審議会だけではなしに、薬事審議会に特別な専門委員を呼びまして、その専門委員の意見も徴して初めて許可される、そういうことであります。私もその専門委員になっておりますので、その間の事情をよく承知しておりますが、そういうむずかしい手続と検討を経た上で、しかもそれが許可されたときに、これは私の強い要望で実施されたのでありますが、そのできた薬剤のことについては一般新聞の広告は遠慮するということであります。これは厚生省のお話によりますと、法律でそれを規制することはできないけれども、本人の自粛と、要望によってそれができるということで、現在それが実行されておりまして、幾つかのガンの化学療法剤はすでに販売されて病院で使われておりますけれども、それが一般の新聞広告には出ないので、皆さんには何にもないような印象を与えているのかというふうに思うのであります。
 それでそれだけの手続をとっているのでありますが、先ほどお話の出ましたSICの場合には、その手続がまだとられていないのであります。この薬剤は胃の無酸症に対して有効であるということで、一般の薬事審議会の審議によって許可されて販売されている。したがって、それが一般新聞にも毎日広告をされている。しかし実際には先ほど牛山博士からのお話がありましたように、それはガンの薬剤として使われているのであります。ここに一つの除外例があるわけであります。こういうことは私どもとしては行政当局において十分に検討されるべきことではないかと、そういうように考えるのであります。それは薬剤の開発について、科学的な手続におきましていろいろ疑問の点があるということで、癌学会でずいぶん討議をされたことでありますから、その開発の学術上の手続については議論が学会においてなされておりますから、それをここで繰り返そうとは思いませんけれども、そういう研究過程にあるものが治療剤としてすでに世上に販売されている、広告もされているということは一つの除外例でありまして、もし前田委員の御説のように、化学療法の進歩開発を十分に政府がお望みになるということであれば、こういう変則的なことのないようなりっぱな措置をとって、科学的にこういうものが開発されていく、そういうことが日本のガンの化学療法の発展の基盤として非常に大事ではないかと思うのであります。癌学会がいろいろの場合にこの問題が学会の討論になるということに非常な懸念を持ちます一つの理由は、学会でこれが討議されているということが新聞報道になるということ自体が、すでに販売されている薬剤の広告になる、これはそのほかのものが同じように出てきた場合に、悪例を残すということがわれわれの心中において最も懸念しているところであります。そういうことをよく国会の皆さんにも御考慮願いたいと思うのであります。この薬剤が学問的に開発される、学問的に十分に討議されて、そして正しい研究の線に乗っていくということをだれも阻止しようとするものはないわけでありますけれども、その研究を討議するということ自体がいまのような社会的影響があるということに、われわれは将来同種のものの発達のために多大の懸念を持っている、そういうことをぜひ御了解願いたいと思います。
#20
○前田(正)委員 いまお話しのとおり、化学療法といいますか薬物療法といいますか、そういったものを相当研究しておられるということで、まことに私ども心強いことでありますが、特に対外的に協力しておるということは非常にけっこうだと思うのでありますが、お話のありましたように、これは非常にいろいろなものがすでに市販されておるようでありますし、またいろいろと発見されてきたというようなものをいろいろ話されておる方もおるようでありますし、さらにまた、これが非常に問題点があります関係上、なるべくそれを担当しておる局におられる方たちが十分に表立たないで研究していこうというそのお気持ちは私にもよくわかります、影響が大きいから。そこで実は私たちはそういうようないろいろな議論があるから、あるいはまた皆さんが個人的にはそういう研究をしておられる方もおありのようでありますから、それらをまた学会で議論されますと、いまお話しのようにいろいろと悪用されるというような問題もあるというふうなこともあるようでございますから、もう少し政府といいますか国立的な機関において、その化学的なもの、薬用的なものについての研究に携わるとか、あるいはまた現在研究しておられる人たちとのそういうものについての共同研究をするとか、あるいはまた調整をするとか、そういうものをもっとやっていくべきではないか。いまのがんセンターがやっておられる治療とか早期発見というものに力を注ぐということに私も十分賛成であるし、またぜひそれはやらなければならぬことだと思います。
 先ほどちょっと予算の話をしておられましたが、はなはだ私も――これはわれわれの内部の連絡が悪かったのかもわかりませんけれども、ことしはわれわれはガンの関係の予算は思い切ってつげるということで、私は現在自由民主党の政調会に所属しておりまして、予算の対策もやっておるのでありますけれども、先ほどがんセンターの院長からお話しのような要請についての具体的な要望は、実はわれわれのところへ出てこなかった。私たちは予算をつけるのに一体どういうふうにつけたらいいのか、実は新聞にも出ておりますけれども、思い切ってことしは予算をつけようと思って、ガンの対策費を幾らつけたらいいとかいって、数字は大きなラウンド数字を出しておったのでありますけれども、どうも内容がないということで、ことしは実は予算がつけにくかったような実情であったのです。これは政府とわれわれ与党との間の連絡が不十分だったという点でまことに申しわけないことだと思うのですけれども、皆さんももっとそういう要請をされるとか、基本的なそういう要求はぜひ私はやられるといいと思うのです。同時にまた、ガンの治療の将来の一つの発展の方向――これは全部のものじゃありません、ごく一部分のものであると思いますけれども、化学療法とか薬物療法とかいうものもガン治療として、一つの方向じゃないかと私は思うのです。しかし、それが、いま吉田参考人がおっしゃっているように、たいへんにいろいろな人に影響を与えることが非常に多いわけですから、私はもう少し政府ベースにおいてそういうものを研究される。もちろん、民間の研究しておられるものをやめろというわけじゃなくて、民間のしておられることもできるだけ政府で応援して調整していく。そして政府ベースにおいて、こういうものは、大体民間でやっておられるものその他についても、これは十分に安心できるとか、あるいは相当進めていってもいいというふうなものは、また予算的にも政府からも大いに補助し助成してもいいのじゃないかと私は思うのです。だから、こういうことをやはりがんセンターで取り上げていただくべきか厚生省で取り上げていただくべきか、その辺はちょっと私も行政的にはわかりませんけれども、きょうはがんセンターの院長も来ておられますから、私はもう少しその点を考えていただきたい。また、がんセンターの基礎研究として、もちろん全部じゃなくて一部分としては、化学療法とか薬物療法を相当取り上げて、民間の研究しておられる――先ほど、吉田さんの財団法人で二十年前からやっていただいておるということでありますから、そういうものをひとつ大いに育成していただく、こういうことに対する院長の御見解をこの際聞かしていただきたいと思います。
#21
○久留説明員 先ほど、別の問題であまり興奮しちゃったものですから、その問題を言い忘れたのですが、化学療法に対して私たちが決して努力を怠っているのではない。それをはっきり申し上げておきます。
 実際、化学療法剤というのは、日本でも非常に優秀なのができております。それは科学的に非常によく研究されまして、りっぱな根拠を持って、そして先ほど吉田参考人が言われたように市販に出ておりますが、それを私どものほうでどういうぐあいに使用するかということを非常に綿密に科学的な方法で検討いたしまして、ある種の薬品は確かによくききます。そして、現に外科、放射線でお手上げのものに対しまして明らかに延命的の効果、あるいはその中には一例や二例は永続治癒、ほんとうになおってしまうものもあるのじゃないかという期待を持っておりますが、何ぶんガンの問題は少なくとも五年間経過を見ないと永続治癒のことが云々できませんので、もう一、二年待っていただきましたならば、この薬がどれだけ永続治癒を出したということを実際に御報告できると思います。これにつきましては、やはり病気が小さければ小さいほど薬のききがいいということは明らかな事実でありまして、もし非常に小さければ、その局所に向かって薬を使って、ほかの全身的な影響を完全にないようにしちゃって、これは動脈注射を使えば非常に容易なのですが、そういう方法でやっていくこともできる。あるいはガンの中では非常に特有のガンがありまして、初めから局所的の疾患でないガンがあります。その一番いい例は白血病でありますが、これだとかある種のリンパ性の腫瘍などになりますと、これは一ところをとっても別のところにできてくるので、全身的な病気なのです。こういうものに対しては化学療法以外にいい方法はないと思います。そして現在マイトマイシンその他日本でできた非常に優秀な薬がありまして、これによりまして非常にみごとな成績をあげております。明らかに延命の点、命が延びる点においては問題がありません。これをどういうぐあいに使用法を改良していって、また薬自体もどういうぐあいに改良していって、そしてほんとうにガンをなおす薬ができるようにするかということは、これは私病院長として、そういう方面に私たちの相当の人が一生懸命やっているということを申し上げなかったのはたいへん私のまずいところでありますが、実際非常にやっているのです。
 それから、先ほど民間の薬の話が出ましたのですが、牛山氏がここにおいでになるのでたいへん申しにくいのでありますが、国立がんセンターにおきましては、厚生省からの指令もありまして、こういうふうなものの確実性ということに対して追試をやっております。その追試の結果を、ちょっと申し上げにくいのでございますが、申し上げておきますと、まず牛山氏が人ガンの病原体として証明されたものにつきまして、私どものほうで五十数例について、牛山氏が三十七年の第二十一回癌学会で発表されたと全く同じ方法でいたしましたところが、そういうふうな目で見えるものはガン患者の中で五、六〇%出てまいります。ところが、ほとんど同じパーセントで正常な人の血液の中にも証明されます。この顆粒は、専門学的立場から申しますと、リケッチャー、バクテリア、大型ウイルス等ではなくて、どうも染色の際の処置が何らか役割りを演じているのではないかという結論になりました。
 それから、牛山氏によりますと、赤血球の培養液をマウスの腹腔内に接種いたしますと、マウスは腫瘍を発生いたしまして三日ないし十五日の間に倒れるという記載がございます。死んでしまう。私どもは同じ実験を追試いたしましたところが、残念ながら、四十二日ないし七十二日、牛山氏のよりもかなり長く観察いたしましたけれども、一向ガンができないばかりか、何ら異常が認められなかった。
 それからもう一つ、SICというのは、先ほど吉田参考人が言われたように、どうも私どもはこれをガンの特効薬として使用する気持ちはないのでございますが、これもやはりこういうふうなものがきくかきかないかということの検定は必要と思いまして、実は二例の症例についてこれを行ないましたところが、ほとんど全く効果がありません。まあ有害な作用はないようですけれども。そして見えている腫瘍が小さくなるとかいうのですから、これは間違いないのですが、少しも小さくならないばかりか、むしろ症状的には悪化している。そういう患者に、ほかの知られているところの、いわゆるわれわれの知っているところのガンの治療法を行ないますと急速に好転するというふうなことで、どうも私どもの経験では、牛山氏のおっしゃっておられることを肯定するわけにはいかない。これは、先ほど申し上げました科学というものはだれがやっても同じ結果が出なければいけないという点で、私どもはこの問題に対してさらに進める意欲がないのであります。これが実情でございます。
#22
○牛山参考人 先ほど吉田先生が申されましたSICは正当な手続をとってガンの薬としての申請をしていないというお話でございましたが、これに関しまして、昭和三十五年の五月日本消化機病学会におきまして、私の薬を追試されました慈恵医大の荻原博士が追試報告をしまして、動物に対して一つの効果があるということを発表しました。これは私の発見した薬の実験の初めでございまするが、その年の日本癌学会において私の発表及び慈恵医大の発表は、発表阻止をいたされました。残念ながら発表することはできない。その後におきましてSICに関しては、いろいろ障害が重なりまして、方々の大学その他に実験を依頼したのでございまするけれども、実験を受け付けてくれないというような状態に立ち至り、非常に残念ながら現在のような低酸性無酸性胃炎の薬として新聞広告もしております。
 しかしながら、一般のお医者さんが、先ほども申し上げましたように千二百九人の方々が追試をされました。その報告をくださいましたが、最近のアンケートを申し上げますと、お手元の「再発癌に対するS・I・C・の治療率の統計」をごらんになればわかりますが、有効率三〇・三%治癒は、再発で重いものでございますから、わずかに一三・二%でございますが、軽快したのは一七・一%合わせて三〇・三%、これがガン患者千人に対するアンケートの表でございます。
 それから先ほど久留先生が申されました、私のガン微小体と申し上げましたその病原体と思われるものの追試例について申し上げます。これは昭和三十八年の岡山における日本癌学会に、私はその前年の三十七年の人ガン病原体に関する研究の補助としまして、ガン微小体によるマウス発ガンの促進法の演題を出したのでありますが、これも拒否されたような次第でございまして、その促進法と申しますのは、クロトン油をマウスに塗りますとその発癌が非常に促進される、こういう発表を行なおうとしたのであります。
#23
○前田(正)委員 私たちもここでSICの問題の議論をする考えはないわけでありますけれども、ただ先ほど来久留病院長も言っておられますように、科学というものは真理でありまして、だれがやっても同じものでなければなりませんけれども真理を発見するような環境をわれわれはつくるということが必要である。私たちは科学技術の委員会をやっておりまして、そういう点においてはみなが自由な立場においてやられるべきでありますし、またそれは先ほど吉田参考人も言われましたおり、学会において自主的におやりになるべきことだと私は思うのであります。ただ、どうもわれわれが聞いておりますと、いろいろとそういうことで制限が入ってきたり何とかしてうまくいかないというような問題もある。それはまた、さっきの吉田参考人のお話のように、学会で発表したということがいろいろ利用されることもあるからだというようなお話も聞いております。
 そこで私がさっきからお願いしておりますことは、そういうふうにいろいろと影響もあることでしょうから、きょうは厚生省の課長がお見えになっておられるようですが、いずれまた私も責任者の大臣とかその他の方に、これは参考人のおられないときでもできるのですから、そのときにゆっくりお話し、質問したいと思いますけれども、こういうものはやはり対外的に影響があるということならば、そういうものをおのおのの学会で検討するということにいろいろ影響があったならば、学者の立場において公正に研究し検討する機会を、役所の立場において与えるようにすべきじゃないか。あるいはまた、私が考えておりますのは、真理を発見するために自由な環境をつくるということなら、厚生省としてガンというものはいま非常に大事な問題であって、またわれわれもできるだけ予算をつけようとして考えておるわけでありますから、そういうふうないろいろなことを考えておられる、あるいはまた、こういう意見を述べておられる、あるいはそういう実例を実際に持っておられる人たちに対して、公正な立場においてそれを助成し、あるいはまた実験をする、あるいは国立大学のほうにおいて各方面で実験をする、そういうような費用をもっと出して、それがいい悪いということを即断しないで、公正にもっと各方面に助成をし、それが実験をする必要があるなら費用というものはとったらいいじゃないか。あるいはまた、文部省もきょうはおいでになっておられるようでありますが、文部省のほうにおいても、もっとそういう学会の研究的な問題を取り上げていただいたらどうか。ただ私もこの問題については、化学療法、薬物療法だけでなしに、もっと基本的な問題についても、これは文部省の学術関係の予算になるかと思いますが、牛山さんは微小体と言われる。あるいはウイルスの問題もお話が出た。あるいは森下さんのような血液の関係を考えておられる方もおります。また私たちがしろうとで考えましても、これはどういうものであるか知りませんけれども、当然血液の中に抗素体というようなものが必ずできてくる可能性もあるのではないか。いろいろと問題があると私は思うのでありますが、それらの学問的なものについてはもっと予算をつけて基礎的な研究も取り上げていくべきじゃないか。そういうことにわれわれが協力していくのが私たち政治的な立場の者の使命じゃないかと思います。それをまた推進するのが役所の使命じゃないかと実は思っておるわけでありまして、その問題ばかりについてあまり議論しておりましてもどうかと思いますから、その政府の関係はいずれまた改めた機会にここで質疑をいたしまして検討したいと思いますけれども、一応参考人のおられるところで、われわれがそういう考えでおるということだけを申し上げておきたいと思います。
 ただ、先ほどの参考人のお話で一言申し上げておかなければならぬと私が思いますことは、吉田参考人のお話の中の学問の自由というものについてわれわれ調整をすべきじゃない、これはもちろんわれわれもそういう考えで、学問の自由という気持ちで科学技術基本法というものを検討しておるわけでございます。
 もう一つの問題の、科学者を尊重して、科学者を信じてやるべきだということ、これは私も同感でありまして、特にマックスプランク協会のお話をしておられました。私たちも実はそういう気持ちを持っておりまして、われわれ科学技術委員会で、これは決定したものではありませんけれども、前に科学技術委員会の中の小委員会といたしまして基本法の原案を書いたものがございますけれども、そういうものはマックスプランク協会の例をとって、研究機関、特に政府の金によってできます研究機関は、そういうふうな行き方でありたい、いまお話のようにこれをだれがきめるかという問題が、私たちも非常に問題点だと思っておるのであります。現在のやり方でいきますと、行政の責任者がきめるような形になっておるようでございますけれども、私たちの原案におきましては、国立大学の場合の付属研究機関は付属研究所の所長がお集まりになった会議、国立研究機関は国立研究機関の所長のお集まりになった会議、これはマックスプランク協会がやっておるわけでありますが、そういう所長会議においてどういうものをつくっていくべきであるかということをきめる。それに基づいてわれわれはやっていくというふうな行き方にしたらどうかというふうな、これは原案でありますけれども、出しておる。私たちはそういうふうな一般の科学者の方に大いに発展していただくということを、また日本の国の将来の発展のためにこれは大賛成でありますかう、極力われわれは応援していくのが科学技術の委員会の立場であり、またそういう点において振興対策というものを考え、またそれに参加するといういろいろな長期的な予算をとり、またその応用と基礎とよく調整とれていくというようなことかう、長期計画的なものをつくっていきたい、それには基本法的なものをつくろうというふうな努力を実はわれわれもいましておるとこうでございます。さっきそういうお話がありましたかう、科学技術の基本に関する問題についてもわれわれはいま努力しておることだけを一言申し添えておきたいと思うわけでございます。
 ただ、もう一つ申し添えておきたいと思いますことは、がんセンターの病院長のお話で、早期発見が非常に進み、検診等もぜひ必要であるということは、私たちもまことにもっともだと思いますので、これはぜひ、もう少し具体的に、どういうふうにやりたい、また四十二年度の予算は、七月の夫には厚生省のほうでまとめられて、八月か九月に大蔵省に出されると思うのですが、われわれの党のほうにもよくまとめて出していただきたい。ことしのように、金をつけようと思っても、内容がわからないということでは、実際話にならぬ。そのときに、私が先ほどちょっとお願いしました、これは予算の一部分と思いますけれども、化学療法とか薬物の研究なんかも、国で臨床実験をやってあげるとか、国で助成するなら助成するとか、そういうふうなことに対する予算をもっと取ったらいいんじゃないか。何も一般の民間の人のとこうで――公で議論してはかえっていういうと問題があるという、さっきの参考人のお話は私はもっともだと思いますが、これはもう少し国で助成し、あるいは国でもっと各方面の研究機関に頼んで、実際的な実験をしてあげる、こういうふうなことをやるべきではないか。それが一番大事ではないか。そういう費用というものは、なかなか出にくい。この研究した新しい考えでいかれることは必要と思いますけれども、各病院に実証的な実例をとっていく費用というのは、私はたいへん金がかかるのではないかと思いますが、そういったものは国の予算でやってあげたらいいじゃないか。どれをやるというわけじゃなしに、希望のあるものはみなやってあげたらいいじゃないか。その中で真理が出てくる、だれがやっても間違いない真理が出てくる。これは実際的な実例をやってみたいと、どれが正しいということは言えないわけですかう、希望があれば、どんどん皆さんにできるだけ政府の金でやってあげる。ガンの問題は、写本としても国民医療として一番大事な問題ですかう、できるだけ予算をとっていいと思う。
 私は、実はそんなことは申し上げたくないんだけれども、変な話ですけれども、どこかの草かうできました薬が非常にきくなんということを、民間で言っている人も多いのです。そんなにきくかきかぬかは別として、そういうものを政府で、とにかく実際のことを公表する必要はありませんけれども、実際きくかきかぬか、やってあげたらどうか。そうして厚生省として、それはどうも信用できないとか、できるとかいう話を、もう少し基礎的な実験例によってデータを出していかれる。そういう金をもっと取るべきではないか。そうしてその中にほんとうに真理が生まれてくるのではないか。だれでも納得できるものが生まれてくるのではないか、私はこう思うのです。そういう点についてぜひ努力をお願いしたい。
 また、私たちは原子力の問題にも取り組んでやっております。先ほどお話しのとおり、いろいろな原子力による問題もありますかう、十分にこの点については対策を掲げ、規制法もつくっております。それのみじゃなしに、さらにこの原子力を活用して医療問題をやっていきたいということで、放射線医学総合研究所を千葉にもつくっております。これはもちうん厚生省でやっていただいておりますが、こういうようにして、次の第二の問題についても、われわれは、皆さんがそういうものが必要だということならば、極力努力はしておるつもりでございますので、皆さんの十分な研究とか、そういったものを抑制するつもりはありませんけれども、どうもガンに対しては、自由にいういう研究していういう考えているものが、何かあちこちでひっかかりがあるような話をときどき聞くものですかう、私は、これはぜひ政府でそういうものを取り上げて、実証、実験し、あるいはまた育成して、補助してみたけれども、結果はこうだったということで明らかにしていくべきものではないか、こういうふうに思うのです。どうかひとつそういう点、私の考えておる点を申し上げまして、一応私の話を終わりたいと思います。
#24
○原委員長 米内山義一郎君。
#25
○米内山委員 ちょっと参考人の先生方にお伺いをしたいのです。最初に癌研の吉田先生にお伺いしたいと思います。
 お断わりしておきますが、私は全然のしろうとでございます。科学者と土俵の上に私が思い上がってのぼって、先生方と科学的な論争をしようという意味で申し上げるのではございません。ただ、ガンの問題は、先生方も直接研究に携わっておられるのでありますが、たいへんに犠牲者が多くなってきております。患者が一人出ると、その家の家計というものは傾くような状態である。金をかけてもなおる見込みがあればいいけれども、死ぬ公算が非常に多い。いろいろな面で国力にまで影響する。これをなくすることができたとすれば、戦争が一つ防止できたと同じような効果があがるものだ、私どもそう思います。したがいまして、このガンの研究につきまして、非常に大きな期待を持つわけであります。
 いま、しろうとの立場から申しましょうか、先生方から承ったことの中からだけ私が感じ取りましたことは、ガンの研究に対しまして、どの部分がおくれているか、いま最も力を注いでいるものは、薬の研究であるか、あるいは器械の研究であるか。要すれば、早く発見するための器械の研究さえもっと手ぎわよく早く進めば、ガンで死ぬ人はなくなるとお考えになっておられるように承りましたが、どれに力を注いでおられるのか。どの部分がおくれておって、今後国家がどの部分に強い財政的な、あるいはその他の可能な援助を注げばいいのか。その点をガン研究者の立場からお知うせ願いたいのです。
#26
○吉田参考人 これは私個人の見解も入りますけれども、一番大きく力を入れるべき研究の一つは、先ほどから問題になっている化学療法の研究であると思います。もう一つは、先ほど東参考人からお話のありましたウイルスの研究を中心にした生化学面の研究、そういうことをもっと日本としては推進しなければならぬと思っております。
 それには、一番私どもが要求したいことは、人の養成であります。これは、先ほど久留説明員かうお話がありましたけれども、診療の場合にも、何よりも必要なものは人であります。それで、先ほど申しましたような、ガンの研究として重要な方面に、若い有能な研究者が十分に入ってこれるような措置が必要であります。
 それで、私は、ある別の機会にも申しましたけれども、日本人は非常に優秀な民族でありまして、学問の研究においても世界に有数の才能を持った民族だと考えておりますので、その日本人が持つ研究のガンにおける潜在能力をフルに動員できるような措置をとりたいものだ、そういうふうに考えております。これには大学における定員の問題、研究所、特に民間研究所等におきましては、人件費の問題、そういう経済面がかうんでおりまして、なかなか思うようにならないとこうがあります。そうしてそういう研究に一身を打ち込んだ人がその後の生涯の生活の安定が約束されなければ、なかなかここへ飛び込んでくる人がいないということでありまして、この人の動員の問題はなかなか複雑な要素のあることでありますけれども、その点に政府のほうでも十分考慮を払っていただければたいへんけっこうだと思うのであります。
#27
○米内山委員 そうしますと、結局早期発見の器材、それから人、金、内容としては生化学的な研究の面を強化する、こういうふうに承ったのですが、しかしもう少しものを総合的に考えてみると、もう少し突っ込むところがなければならぬと私は実はしろうとながら思うのです。たとえば病原体がバクテリアであるか、かりにウイルスだとしましても、これが人間のからだにくっつくわけですね。からだのどこかにつくわけですから、そこからガンができるというのだから、いわゆる人間のからだの研究と申しますか、いま承った森下先生のお話は血液ということなんですが、食いものは血になり、血が細胞になるというようなことからいくと、どうも私は、根元のからだの研究と申しますか、どういう条件ならばガンにかかりやすい体質になるかという研究が、ガンの研究の上で一本落ちているのじゃないかという感じがしてなりません。それがわからないとガンを予防する方策というものは立ってこない。一たん発生したガンは、早いうちに発見すればなおる率が高いとおっしゃるだけでありまして、こうすればガンの発生が減ってくる、あるいはまた、絶滅できるかもしれないという研究に発展しそうがないと私は思う。どうもこの点は、専門の科学者が一生懸命やっておられながら落ち度があるのじゃないかという感じがいたしてなりません。日本人の民族性が優秀だというのはどこに科学的根拠があっておっしゃられるのか知りませんが、どうもその辺におかしい点がある。私どもは医者でも科学者でもないから、先生からおっしゃられると非常に非科学的態度かもしれないが、なおるならば鼻くそでもいいと実は思っておる。完全になおらなくとも、ガンというものは臨終の時期には肉身は見ていられないような苦痛を感ずるものです。手術して安楽死させられるような死じゃないわけです。その際に鼻くそであろうが何であろうが、寿命が延びたという程度の効果しかないかもしれないが、そういうきき目のある薬というものを、まだこれは決定的なものでないとしても、鼻くそのように否定するということは、私は科学的じゃないと実は思うのです。がんセンターの院長さんのお話で気がついたのですが、たとえば近ごろガンが多くなったのは公害のせいじゃないか、こういうお説です。しからば川崎とか四日市のようなところにだけガンが多くて、私は青森県ですが、しかも農村ですが、青森県の農村のようなところにはそういう傾向があらわれないはずだが、実は統計を詳しく見ていないが、ずいぶん多いとすれば、これはばい煙も一つの原因かもしれないが、それ以外にもありそうな気がする。どうもこの辺を逃げていらっしゃるような気がする。ガンが多いのは別な要因である。公害が要因じゃないかということなども、これは一つ問題だと思うのです。ほんとうに医学的な立場でそうおっしゃられているのか、この点についてもう一ぺんお考えをお聞きしておきたい。
#28
○吉田参考人 科学者でないというお断わりでの御質問ですから、議論にわたるつもりはございませんけれども、重大な問題を研究者が逃げているということはいささかもないと私は信じております。からだの研究がまず第一であろうということはだれも否定しないと思いますが、私が先ほど生化学的な研究ということを申しましたのは、ガンと人間のからだとの相互関係、細胞がある害を受けたときにどういう変化がそこに起こるかという非常に広範な問題を含んでいる生化学的研究であります。それはいささかも人間のからだを除外して考えるというような研究ではないのでありまして、腫瘍と、宿主であるところの人間のからだとの相関関係、ガンになったときの人間のからだの生化学的研究、そういうととは直接の題目としてたくさんの生化学者がやっていることでありまして、こういうことをもっと強く推進すべきであるということを、生化学的な研究ということばで要約して申したのであります。
 ガンがいかに人間に悲惨なものであるかということを承知していないガンの研究者は一人もいないと思う。したがってガンの研究をする者において、なるべく早くなおるようにということを目標としないで研究している人間は一人もいないと私は考えております。
#29
○久留説明員 先ほど私が公害の問題を取り上げましたのは、主として呼吸器のガンでありまして、これは明らかに東京都、神奈川県、それから大阪府、福岡県というような重工業の発達した都市に、呼吸器のガンによるところの死亡率が日本で多いということが統計で出ております。その反面、高知県、長野県に肺ガンによるところの死亡率が非常に少ないということも統計で出ております。おそらく青森県もあるいは呼吸器ガンが少ない県の中に入りはしないかと思いますが、これはすなわち、やはり空気の汚染ということが、呼吸器のガンについては一番密接な関係を持っているということにほかならないと私自身は考えております。そういう意味で、ガン全体について空気の汚染という問題がどの程度関係しているかということを私は申し上げたのじゃないということをよく御記憶願いたいと思います。
 それから、ガンの問題でどういうところに金を使うかというお話が先ほど出ましたが、私はガンの問題で金を必要とする問題は、方向は三つあると思います。
 その一つは基礎的研究で、これは一番金を食うと思います。しかも研究の性質によっては、何年やってもうまく出てこないかもしれない。しかしそういうふうなものを無視しちゃったらほんとうの意味のガンのいい研究は出ないと思います。それは先ほど前田さんが言われたとおりだと思います。どこから出てくるかわからぬけれども、どこから出てきてもいいように態勢を整えるということは、これはガンの研究としては非常に重要なことで、そこで非常に金を食っちゃうのです。つまりむだなところへ金を捨てなければ、結果からいうとあの研究に注いだ金はむだだったということが出てきますけれども、そういう情勢でないと、ほんとうの意味で世界で初めてというような研究は出ないのです。外国でやったのをそのままこっちへ持ってきて、そのとおりやれば結果は出るにきまっていますけれども、そういう研究というのは、研究としてはあまり高いレベルのものでないと私自身は考えております。いま申し上げたような意味で、ガンの研究の第一は基礎的研究でありますが、これは先ほどから申し上げておりますように、発ガン、どうしたらガンができるかという問題が一つ、それからでき上がったガンの細胞が普通の細胞とどこが違っているかということをよく研究する、これも非常にむずかしい研究でありますが、それをやりますと、それじゃこのガンの細胞にはどこかに弱いところがあるということがわかってまいりまして、これは一つのでき上がったガンを治療するのに大きな手がかりが出てくるのです。こういう研究も実は非常に金を食いまして、そうしてどこから成果があがってくるかということが非常に不安定なものですから、ここで政府はむだをなさるということを覚悟しておかかりにならないと、ガンの研究というものは大きな飛躍的な進歩はおそらく出ないのじゃないかと思います。
 第二番目の問題が、先ほどから私が申し上げておりますところの早期ガンの発見ということでありまして、これは早く見つげれば必ずなおるのだから、どうしても早く見つける方法を徹底しなければいかぬというので、集団検診とかなんとかという問題が大きく脚光を浴びてきて、これはまことにめでたいことだと思います。
 それからもう一つ第三の問題があるのです。これはなおらないガンあるいはなおりにくいガンをどう治療するかという問題です。なおりにくいガンの中で、いい施設をもっていい治療をする人が当たればなおるガンがあります。そういうところで、また国立がんセンターのちょうちん持ちをしてたいへん申しわけありませんが、われわれが一定の努力を続けているということをここで皆さんに申し上げておきたいと思います。
 それからここは科学委員会なものですから私は最初避けたのですが、ガンの治療というのは、実は医学のほかにもう一つプラスアルファがあるのです。ガンの患者がありますと、科学でいきますならば真実を伝えなければいかぬ。おまえさんはガンだということを言うべきでありますが、それは医学であって、医術は絶対に患者に向かっておまえさんはガンであるというようなことを言ってはいけません。そこで医者はうそを言わなければならないことになりまして、これは地獄へ行ったら舌が何枚あっても足りないと思いますが、しかし医者として人さまの命を預かって、そして苦しみをやわらげようとか、そういうことに力をいたす限りどうしてもやむを得ない宿命なんです。それで、なおらないガンをどう治療するかということが実はガンの治療の中では非常に大きな面を占めております。ただいま申されたとおりであります。それでできるだけ生命を長くする、長くなった命が苦しみの少ないものであるようにする、そして患者に不安の感じを与えないというようなことで、これは医者ばかりでなしに看護婦も、私たちの病院へおいでになっていただくとよくわかりますが、非常に細心の注意を払っております。これはしかし科学ではありません。しかし医術としては非常に重要なことであります。そういう点でガンの治療に携わる医者の教育ということ、これは私は研修というような問題になってくると、こういう問題も取り入れて、大いにそういう専門医を養成することが非常に必要じゃないかと思います。自分がガンになった場合に、どういうぐあいにして治療してもらったらいいだろうということを皆さんお考えになりますと、精神的な問題がいかに重大であるかということがよくわかると思います。
#30
○米内山委員 もう一回お聞きして終わりたいと思いますが、早期に発見すればなおる。そうしますと、これはちょっとなんですが、池田さんのガンの場合、あれは発見は少し手おくれであったのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 もう一つお伺いしたいのは、アメリカでは十四歳未満の小児の死亡原因になっている一番大きいものは小児のガンだということを聞かされて実は驚いておるわけです。日本にも最近そういう傾向があるそうであります。これは胃ガンとか肺ガンではなくて、要すれば塩辛いものを食ったから胃ガンになるとか、あるいはばい煙を吸うたから肺ガンになるというものではなくて、白血病という形で出る傾向が非常に多いと聞くのですが、しかも最近になってこういうことが非常に上昇しつつあるということには何かの理由と原因がなければならぬ、何かに疑いをかけなければならぬと思うのですが、これについての研究と申しますか、もし研究がありましたら、それについてどういう報告が現在なされておるかということなどを承りたいと思います。
 これで私の質問を終わります。
#31
○久留説明員 池田前首相の問題が出ましたが、個人的の問題をこういうところで取り扱うのはちょっと穏当でないと思いますので、抽象的の問題としてお話を申し上げます。
 医者と患者との関係というのは、法律で規定されるところがありまして、個人の秘密を漏らしてはいかぬというのが医者の一つの任務なんです。ですから、患者の秘密を世の中に伝えるということはできない場合が多いのです。そして個人と医者との対応ということになりますと、その個人の病気をよくするということが医者の任務でありまして、そのためにはいま申し上げましたような精神的治療というものが、ことに晩期のなおりにくいガンに対しては非常に大きな意味を持っております。
 ここに一人非常に有名な方がガンにかかったといたしますと、その人の日常の行動あるいはその人と医者とのいろいろの問題というのは、新聞紙に全部出てしまうのです。医者がどういう意見を持っておるかというようなことは全部出てしまう。そうするとその新聞を御当人が翌日の朝全部読まれます。そうしてほんとうのところは、医者はこうだと言っているということを御当人に知られますと、もしそういう状態になりましたならば、医者が幾ら善意でもってその病人の治療に当たろうといたしましても、結果は反対の結果になってくる。そういうところで医者としては、ことにこういう大きな公立の機関の職を持っております私どもとしてはまことに困る問題が出てまいりますが、そういう場合に私たちがどういうぐあいにしたらいいか、私の考えを申し上げますと、私は患者第一に事に当たります。したがって、そのために世の中の人を一時欺かなければならぬ。これはまことに申しわけないことですが、私は医者としては患者を第一にするという立場を自分の信念として持っておるわけであります。これは申し添えておきますが、池田前首相のことを申し上げておるのではございません。抽象的の問題であります。
 それから第二の問題は、白血病が増加したという問題でございますが、白血病が増加したということは事実のようでございます。ことに白血病が日本よりも欧米に多いということも事実でありまして、これはやはり一種の、私の考えですから、学界にどの程度通用するかわかりませんが、私自身はこういうことを考えております。たとえば空気を通じてガン原性の物質が肺に付着したとする場合に、その中で血液に溶ける物質は当然からだの中を循環する。その量は血液の中に入っておるガン原性物質の量に比例いたしますが、もちろんそのガン原性物質が血液の中に溶解する量に関係してまいります。そういたしますと、その物質は微量であるけれども長期にわたって連続投与された、注射された場合と似たような結果を呈してまいりまして、結局骨髄とか睾丸の細胞というような非常に分裂が多くてそういうガン原性物質に反応しやすい細胞が一番先にやられる。これは私自身の考えでありまして、何も科学的な根拠の証明をいま持っておりません。しかしそういう推定が成り立つということは私は申し上げたい。
#32
○原委員長 石野久男君。
#33
○石野委員 参考人の皆さんからたいへん有益なお話を承りまして、私二つだけお聞きしたいのですが、ガンの問題は先ほどからお話のあるように日本人にとっては非常に重大な問題でありますし、これをどういうふうにするかという問題についても、その病原体がどういうものであるか、あるいはそれをどういうふうに治療するか、あるいはどういうふうに薬を入れるかというような問題について、諸先生方のお話を承っておりましても、まだ確たる一つの方針が出ているものではないというふうに私は思うのであります。ある人はそれを信じておる方もおりますけれども、しかしある先生方にはまた違った意見もあるようでございまして、私たちは、先ほどから委員の皆さんも話しているように、なるべくガンというものを不治のものじゃない、そういう病気じゃないというふうにしたい、こういう念願を持っております。先ほど吉田参考人からのお話で、この委員会が皆さんにおいでいただいて御意見を承ることについてたいへんきつい御意見がございました。端的に申しますならば、国会がこういうことをやるのはやぼなことだ、学界のことは学界にまかせてくれというふうに聞き取れるような御意見がございました。私はこの点についてはちょっと先生の御意見に別に反発するわけじゃございませんけれども、私どもがここで皆さんの御意見を聞きますのは、別段学界においていろいろな意見があるからそれを調停しようとか、あるいは調整しようとかいうような意味で聞いておるのではございません。先ほどからお話がありましたように、たとえば早期発見をするにしても、これはもう主として政治との関連性が非常に強いということを、久留先生からもお話がありました。私たち、政治の問題としても非常に重要だと思っておりますので、そういう立場から私たちは意見を承っておるわけですから、もし吉田先生が、このきょうの参考人においでいただいたことを学界におけるいろいろな問題を調整するとか調停するとかいうように受け取っておられるとするならば、それは違うのだというふろにひとつ御理解いただきたいと思うのです。
 むしろこの際、いろいろな御意見があるということを私たちが知ることによって、学界では――先ほど久留先生からお話があったように、科学というものは真理を追求するものだし、それは明らかに普遍的なものだ。だからどんな場合でも、一つの学理に基づいたところの効果というものは一つに出てこなければいけないということは、そのとおりだと私たちは思っているわけです。それだからこそ、いろいろな御意見があった場合に、それが一つの結論を得るまでの意見は尊重しなければいけないのじゃないか、こういうように考えております。吉田先生が財団法人癌研究会の研究所長として御意見を述べられたことについては、これはなんでございますが、久留先生は国立病院の院長さんでございますから、そういう立場から、たとえば牛山先生の薬剤はこれこれこうだというような御意見があったりする、そういう場合に、もちろん国が規定するところの薬剤を全体として公的に利用させるまでの過程というものがいろいろあることは私たちもよくわかっているのですが、その間、片方では一つの成果が出たと言うし、われわれはそれを追試したときにはその成果は出なかったと言う、こういう食い違いが出ました場合に、これを片方の主張と片方の主張とをどこかで実質的に結合、と言ってはなんですが、片方の意見が正しいということを片方は主張しているのだから、片方ではそれを全然否定してしまうということは、私どもとするは何だかへんぱなような気がするのです。むしろ、片方の実験がそうであるというなら、目の前でその人にやらしてみる。もちろんその点は、学理の上で論文になっていてすっかりわかるのだから、そんなことをやる必要はないとおっしゃるかもしれませんが、片方ではそれをいろいろと主張なさっておる、こういう結果が出ておる、それを皆さんの前で実験しようというようなことがあったときには――学会では否定したのかどうか知りませんし、またあるいは、そういう追試あるいは論文発表というものをさせなかったのかどうか知りませんけれども、国立研究所のような場合では、そういうようなことを一応その人にやらしてみるということをやることが、むしろいいのじゃないかという気がするのです。こういう点はどうなんですか。この点ひとつ私は承っておきたいと思うのです。
#34
○久留説明員 まず、薬がきいたかきかないかということを判定いたします場合の、一番最低と申しますか、絶対的な条件というのは、使った病人がガンであったという証明、実証が必要であります。国立がんセンターの場合にはそれが組織学的に全部ついておりますから、きいた、きかぬというのは、全部ガンの症例についてやったということが非常に簡単に証明されます。ところが牛山博士は全国を何万人という数でやられましたのですが、その中に組織学的にガンの診断のついているのは何名ありましょうか。それがまず第一の問題です。
 それから、それがないといたしますと、ガンに似たガンでないという病気というのは、実は非常にたくさんあるのです。一番問題になるのは胃ガンでありますが、私たちが見てもガンだと思って、そして解剖してみて、そして取ったものを病理学者が見てガンだと思っておって、そして組織学的に切ってみたらガンでなかったというのが、実は私の経験であります。ですから、ことに胃ガンとある種の胃かいようとを、組織学的、細胞学的以外の方法で決定するということは非常にむずかしい。ところが胃かいようでありますと、ほっておいてもなおるのもありますし、重曹をやっておってもひとりでになおってしまうのもあります。そういうふうなのと、ほんとうにガンであって、このSICでなおったのとをどういうぐあいにして区別されておるか。症状の軽快ということは、病気の自然の軽快の中にも――ガンでありますと、ことに大きなものは、腐って落ちてしまいますと、食べられなかったのが翌日から食べられるようになるということは幾らでもあるのです。だから症状の軽快ということと、それから病気がよくなったということは、これはよく誤解されがちなんですが、そこのところで誤解のないように、科学的というのは、つまりそういうところなんですが、そういう問題を決定したいと思います。
 それから薬がきく、きかぬという問題と、その科学的の証明という問題とは、これは別の問題になって、きく、きかぬというのは、つまり気持がよくなった、よくならないという問題、これは浅草の観音さまのお守りを病人の頭の先に置いたら翌日から非常に気持ちがよくなったということがあったとしたら、観音さまのお守りを全部国立がんセンターで調べなければいかぬということにもなる。これは余談でありますけれども、国立がんセンターで国のお金を使ってやるからには、やはり科学というレベルは厳密に守るということが私は必要だと思います。
 それからもう一つ、人体実験の問題でありますが、これは綿密な動物実験をやって、そうして急性の障害はないというばかりでなしに、慢性の障害もないというようなことで大体薬は発売せられるわけです。そういうようなものですと、私たちは安心して使用することができますけれども、そういうふうな薬事審議会、ことに先ほど吉田参考人の言われたような、ガンに対する特別な委員の検定を経てない薬をむやみと患者に使っていいものかどうか。私は、そういうことに非常に抵抗を感じます。やはり私たちが国立がんセンターで使うものは、科学的の実証を経たものでなければならない。かりそめにも、もう死ぬにきまっている患者だからそれに使ってもいいというような倫理は私は成り立たないと思います。やはり私は、医学の場面に対しては、あくまでも科学というところに最低の問題の基点を置いて、そして実際上は、医術というところでは、私たちはそのほかのプラスアルファというものを大いに使わなければならぬ。これが私自身の信条です。
#35
○石野委員 私は、科学者でもないし、医者でも何でもありませんからわからないのですが、ただ、できる限りガンに対する医療なり、あるいはそれに対する原理的なことでやはり早くいい結果が出ることを願っている政治家としての立場から――先生のおっしゃるように、薬がきくかきかないかという問題と、科学は別個にちゃんとはっきりしなさい、いまこういうお話ですね。きく、きかぬという問題については、たとえば浅草の観音さまを拝んで気分がよくなった云々という問題もお出しになっておるわけです。私は、この薬がきくかきかないかという問題をここで論争するとか何かじゃないのです。問題になるのは、こういういいものがあるのだという御意見が片方であったり、あるいはこういうようにきくという実証がございますというときに、それは非科学的なものだからこうだとか、あるいはいまのお話のように、ガンの病人であったかどうかは、牛山さんの場合はわからないというようなことになると、私たちにはわからないことになるのです。それからあらかじめ私は申しますが、牛山さんとは、私はきょうは初対面で、何もちょうちん持ちをしておるわけじゃないのですよ。そうして先ほど吉田さんから言われたように、皆さんの意見を調停しようというような意味で言うのではないのです。私は、学者たちの論の自由な立場を十分尊重しますし、学者がどんなふうに意見を述べることに対しても、何もそれを制約しようとは考えていない。けれども政治家という立場からすれば、一つの物事に対して出てくる真理というものは一つでなければいけないと思うのです。その一つの真理が出てくる場合にいろいろな方法があることは、私はこれはあり得ることだと思っております。そういういろいろな方法を通じて、ある一つの真正面から向かっておる人たちは、これは正道だという、側面から来ておる人たちでも富士山に登ろうとすれば登れるわけなんです、実際問題として。だからそういういろいろな方法があるときに、おのおのの研究が、その分野に視野が行っていないために、その人たちの出してくる成果というものをそのことのゆえに否定することは、また非科学的です。そういうことをしちゃいかぬと私は思っておるのです、政治家という立場から。そういう意味で、一つのものが出て、ある一つの方針なり、あるいは一つの所論を持っておるときには、それとはまた違った所論が出てきたときの受け方というものをわれわれはどうすべきかということを実はここで聞いているわけなんです。先生にお聞きするのは、先生の所論を私は聞こうとしているのではないのです。そうじゃなくて、あなたの所論に対してまた別な所論がかりにあったとする。その所論がある一つの成果をあげた、そういうことを発表なさっておるというようなときに、そういう発表を根っから否定してしまうとかなんとかいうことはちょっとよくないのじゃないかという意見を私は言っているわけなんです。それはやはりその人たちの所論が間違っているか正しいかということをその人たちにもやはり実験させるとか、あるいは公の前でそれをりっぱに立証させるというようなことをすることは悪いことじゃないじゃないか。それは決して調停であるとか調整だとか思っていないのです。それは学問発表のために必要なことだと私は思っております。
 そういうような意味で、私たちはいま一つの所論に対して、確かに久留先生のお話によりますと、SICというのですか、この薬は、その投薬された対象物がはたしてガンの病人であったかどうかということに問題があるのだという先生の御所論でございますから、私はその点はよくわかります。だけれども、片方からすれば「S・I・C・使用の内訳」というようなことで、こういう一つの表も出てきているし、それについてのアンケートに対する答えもいろいろ出てきている、こうおっしゃるわけですかう、学会においてはいろいろななにがありましょうから、否定する立場に立つ者は徹底的に否定するということは学問の真理を探求する上において当然なことだろうと思いますけれども、私たちはやはり一つの真理を求めるにあたって多方面から経路があるということを信じますから、そういう意味で全的に否定するという立場はよくないのじゃなかろうかということを私はお聞きしているわけなんです。実はそういうようなことについての久留先生の御所見を承りたい。吉田先生は財団法人という形で必ずしも国立ということに規定はありませんから、国という立場からでこれはものが言えないと思うのです。だけれども、あなたの場合は国立だから、国の予算を使っておられますから、国民のすべての人々の意見を受けて立つべき責任があると思うのです。私はそう思っているのです。これは非常に素朴な意見かもしれませんけれども、しかし政治家という立場からすればそういうことは言えると私は思います。そういう意味で、私は先ほどから長いこと言っておりますが、簡単に言いますならば、他の意見があったときは、それをもう少しすなおに聞くような立場をとられたらどうですか、こういうことなんです。
#36
○久留説明員 石野議員のおっしゃったことはしごくもっともであります。すなわち政治的の立場から、異説があったときにそれをいれる雅量があっていいのじゃないか、ことに国立がんセンターのような国家のお金をもらってやっているところでは、どういうものであろうとも、いいものである可能性があるならばそれを検討してみることが必要じゃないかというお説は全く妥当であると思います。
 ところで、そういう意味から、牛山氏のSICと申しますか、病原体――牛山さんのおっしゃっておられる根本的の概念がありまして、そういうものに対して率直に何ら私見をまじえずに追試したのです。その結果、全部牛山さんと反対の結果が出てきてしまったというところで、牛山さんのおっしゃっておられる一番根本的なところがわれわれの受け入れるところとならないというところで、私たちはこの問題を一そう深くやっていくだけの意欲を失ってしまったわけです。おまけに、つくられておりますSICという薬を――牛山さんが言われる病原体の問題もいろいろ疑念があるのですが、その問題はきょうは全部やめにしまして、つくられていらっしゃるところのSICという薬を非常に判定の容易な患者に応用してみて、そして客観的に少しも効果がなかった。そればかりでなしに、同じ患者に今度はほかの、科学的証明の十分ついている薬を使ったところが非常に著しい改善を見ることができたということで、現在の段階では、ほかの薬に先んじてSICを使わなければならないという結論に到達しなかったわけです。ですから、私たちは決してかたくなに世の中の新しい発見に対してそれをけるような立場をとったのではないので、一応筋を通して、そしてこれは国立がんセンターとして世の中に御推奨を申し上げる薬ではなさそうだという結論を得たものですから、これも私たち、個人の名誉に関することですから、いままで発表したことはないのです。ただ現在こういう席上で、御本人からこういう問題が出てきた場合には、私自身実はこういうことを申し上げたくないのです。しかしこれはやはり国家のめしを食っている者ですから、こういうところではっきり私たちがやっておることを申し上げておかないと、どうもあいつなまぬるいじゃないかというそしりが今度出ますから、そういう意味で牛山さん御自身にはたいへん失礼したと思いますけれども、結果はこういう事実なんです。
#37
○牛山参考人 ただいま久留先生からるる御発言がございました。それに対して国立がんセンターにおきましてはたった二例やられたのですが、私のところに参ります病人、あるいは方々の大学病院だとか、それから大きな病院においてガンと診定してこれに外科手術をし、あるいは放射線療法を行なって、なおかつ再発した患者、手術ができなかった患者等に対して――大学病院でもございますが、私の薬で治療したところがなおった、そういう十年来なおっておるというような患者もございますし、それからもう一つの御発言でございますが、昭和三十四年の五月七日に厚生省の薬事審議会を通りまして、SICは無害である、それから慢性胃炎、つまり低酸性無酸性胃炎にきくという証明は、昭和医大において薬理学的実験あるいは動物実験を行ない、それから東大の田坂内科において臨床実験を行ない、それから慈恵医大の高橋内科においても行なった、その結果通ったのでございまして、決してあいまいな、毒性のあるものだとか実験にたえないものだとか、そういう非難を受けるものでは全然ございませんから、その点お断わり申し上げておきます。
#38
○石野委員 私はもうこういう問題について論争をここで無理にしていただこうとは思っていないのですが、ただ、やはりそれぞれ皆さんが学問的な研究をなさって一つの成果を出してくるについては、それだけの準備と努力の成果としてのものだ、こう思っております。したがって、そういうものが、ただいまは久留先生から追試結果は全然そのような成果は出ていない、こうおっしゃるし、片方では国立がんセンターでやったのは二例にすぎないじゃないかという御意見もあるわけです。ことに、いま久留先生からお話のあったように、その投薬された方がはたしてガンの病人であるかどうかという問題について、私はわかりませんけれども、いま牛山参考人のお話によると、それはすでにガン罹病者だという認定のある方々に対してそういう投薬をした結果こうだというような御意見がありますから、だからこれらの問題をここでどうこうというわけではございませんが、ただ私は、願わくはわが国におけるところの癌学会ですか、そういう学者諸君あるいはお医者さんたちがこぞって、一つのいい医学的なあるいは医術的な成果が出てくるような方向を多方面からひとつ追究される方途を見出していただきたいと思います。
 これは吉田先生に申し上げますけれども、決して調停ではございませんよ、調整でもないですよ。これは学界に対するわれわれの政治的な要求ですよ。ですから、きょうのこの参考人を呼んだことに対して、少し吉田先生の御発言は慎んでいただきたいと思っております。私たちは決してそんな不見識な形でここへ皆さんに来ていただいたのではありません。私たちは皆さんの意見を聞くことによって、しろうとではあるけれども、政治家という立場でこの問題の皆さんの御意見を聞きたかったのです。重ねて申しますけれども、私個人としては、この席に皆さんにおいでいただいたのは、学界におけるいろいろな意見を調整しようとか、あるいはそれを調停しようとかいうような大それた考え方でやったものでないということだけは、ひとつとくと御理解していただきたい、こう思っております。あとはひとつ皆さんのほうで十分――私たちもできるだけこの問題についての国家的な寄与ができるように、予算措置とかなにかについては努力したいと思っておりますが、皆さんはやはり皆さんの中で、それぞれの多方面の研究によって一つのりっぱな成果をあげてくださるようにお願いしたいと思っております。
#39
○吉田参考人 おしかりを受けておりますので、多少述べなければならぬかと思いますけれども、私が申しましたのは、昨日の朝日新聞にこの会のことが出ておりましたが、それの記事の概要を見ますと、もう少し学界の皆さんが手を携えて、そして相和してガンの研究に進んでいくことが、日本のガン研究の発展に望ましいという御意思があるように出ておりましたので、そういうこともこの委員会を催された根底にはおありになるのだろう、そういうふうな想像をしたわけであります。最初に私が申しましたように、この委員会で何を述べよという意味で私が呼ばれているのか少しもわからないでここへ参りましたようなわけであります。そういう次第でありますので、私の考えを最初に述べたのでありますが、皆さんのこの席における御発言あるいは質問を伺っておりますと、自分は科学者でもない、医学者でもない、したがってこのことについては科学的に何にも知らないんだがものを言うぞ、最初にそういうことばを添えられて、それからものを言っておられるということをここで知りましたのでありますが、政治家としてお国の問題としてガンの研究を推進していこうということでありまするならば、こういう窮屈な会でそれぞれに発言をせよというような形式をおとりになる前に、学者がもっと自由な形で、それぞれの立場、ガンの研究がいかにして発達してきたか、現在どういう段階で研究をしているのかという、いわゆる科学的な研究の進め方の実情について、そういうことをもっと率直にお互いに話し合えるような形式で、話をいろいろの方面からお聞きになって、そしてそういう段階を経て、こういう参考人の意見を述べるというような、そういう手続をおとりになるほうがもっとよく理解していただけるのではないか、そういう考えを持っております。それは決してこの会の形を批判するわけではありませんけれども、十分に御理解をいただくというためには、いま申しましたような非公式な、そして自由にお互いに質問をし、話のできるような、そういう段階を幾つかおとりになるということのほうがもっと有効ではないか、そういうように考えておりますので、その所見を申し述べます。
#40
○久留説明員 私は牛山さんと別に議論をする意思はないのですけれども、私どものやったことが誤って伝えられるといけませんから、もう一言いたしておきます。
 牛山氏ガン病原体及びSICに対して追試をいたしたのでありますが、ガン患者の血清の中から病原体が出るという問題を追試したのは二例ではありません。五十三名であります。それはほとんどガンの全部を網羅しておりますが、念のために申し上げますと、肺ガンが五名、胃ガンが三名、乳ガンが五名、肝臓ガンが一名、急性白血病が一名、慢性白血病が二名、悪性リンパ腫が一名、細網肉腫が四名、ホジキン氏病一名、骨肉腫一名、その他のガン二名、それで二十六名、それからガンでない方が十六名、健康者十一名というような人について検査を行なった結果が、先ほどのように、いずれも牛山さんの言われるとおりでないという結論を得たわけです。
 そして念のために申し添えますが、これは私自身の意見ではありませんで、抗生物質学術協議会の入木沢さんの御意見を御紹介申し上げますと、牛山氏のSICというのは、ガン免疫菌と称するものに対する細菌学的な同定があいまいである。二番目に、力価の判定の指標がない。三番目に、製品がコンスタントでないというようなことを入木沢さんが申しておられるということを、念のために申し添えます。
#41
○石野委員 私はあくまでも、そういう学説的な問題なり、あるいは学問的な問題についての御意見は、また学会のほうでやっていただくようにお願いしたいと思っております。ただ、こういう委員会を持つにあたって、特にこれは吉田先生に、最後にまたお話がありましたから、一言私どもの意見も申し上げさせていただきたいのですが、委員会の持ち方がどうあるべきかこうあるべきかということをこういうところで論議するのは、これは私たちの委員会の理事会のあり方ですから、そういうことでひとつ御理解をいただきたいのですが、吉田先生はやはりこういう席上で――私はことばははっきり聞かなかったのですが、何か固苦しいような会議の持ち方をする前に、前段に地ならし的ないろいろなことをやったほうがよかったろう、こういう御所見のようでございます。私どもは実を言うと、こういう会合をそんなに固苦しいとも何とも思っていなかったのです。むしろいろいろな意見のあることを、国会のこういう委員会で聞くことのほうがもっとすなおで、非常に単純だろう、実はこういうふうに思っておりました。ところが、それがあにはからんや学界では非常に重要だということになると、これはまた問題が出てくると思うのです。だから、それは結局政治の場じゃなくて、学界の場の問題だろうと私は思っております。そういうことを私たちは思っておりますので、これからもたびたび私たちは、やはりこういう問題がある場合、それはもちろん日本の学問の発展上非常に大きい阻害がくるというのなら、これは私たちは注意しなければいけないと思っておりますけれども、政治が学問に対して、あるいはいろいろ学究者の皆さんに対して必要だと思われるときには、こういうことはしばしば行なわれるだろうと私は思っておるのです。だからそういう意味で、私は先ほどから吉田先生の――せっかくお呼びしてこういうことを言うのは失礼なんですけれども、しかし吉田先生のおことばの中には、科学を信じなさい、尊重しなさいということをおっしゃっておる。それはそのとおりだと私は思っておるのですけれども、私たちはそれを信じるから、尊重するからこそ皆さんの御意見を聞こうとしておるのであって、皆さんをうとんじるなら、こういうところへお呼びして御意見を聞くというようなことはしなかったと思うのです。だから、そういう点はひとつ御理解いただきたいと思います。私も吉田先生の言おうとするところはある程度わかるのです。しかし公的な立場で、何か委員会が大それたことをやり、学問の自由の場を侵害するというような発言に受け取れるようなものを聞くということは、私たちも心外なものですから、この点は一言最後に申し上げさせてもらいたいと思います。
#42
○原委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。
 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる四月十三日水曜日午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。
   午後一時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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