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1947/08/21 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第24号
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1947/08/21 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第24号

#1
第001回国会 本会議 第24号
昭和二十二年八月二十一日(木曜日)
   午前十時四十二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二十三号
  昭和二十二年八月二十一日
   午前十時開議
 第一 大学等への死体交付に関する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第二 大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
 第三 傳染病予防法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 保健所法を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) この際御報告をいたします。マツカーサー元帥政治顧問及び連合軍総司令部外交部長ジヨージ・アチソン大使が飛行機事故により不慮の死を遂げられましたことは、誠に痛惜の至りに堪えません。よつて議長は一昨十九日、議長の資格において取敢えずアチソン邸を訪問いたし、係官を経て、引籠り中の同夫人に対し深厚なる哀悼の意を表しました。尚本日、議長は連合軍総司令官を訪問の際、哀悼の意を表する予定でございます。
 その他諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。議院出淵勝次君は一昨十九日に逝去されました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。つきましては同君に対し、院議を以て弔辞を贈ることにいたしたいと存じます。この際佐藤尚武君より発言を求められております。これより許可いたします。佐藤尚武君。
  [佐藤尚武君登壇、拍手]
#4
○佐藤尚武君 只今議長から御報告がありました通りに、我々の同僚出淵勝次君は一昨十九日に薨去されました。誠に痛惜の至りでございます。私は諸君の許しを得まして、一言同君の生前の諸業績を回顧し、同君を追憶したいと思うのであります。
 同君は明治十一年の生まれでありまして、盛岡出身であられます。明治三十三年には当時の一橋東京高等商業学校を卒業されまして、三十五年外務省の外交官及び領事官試験に合格されておるのであります。而してその後直ちに上海の総領事館に赴任せられ、又或いは朝鮮に、或いは中國、ドイツ等々の國に歴任されまして、そうして大正十二年、外務省の政務局長にまで昇進されたのであります。その翌年にはすでに外務次官の重任に任じておられ、而してその任に留まること満四年の長さに亘つておつたのであります。昭和三年に至りまして在米大使の重任に任ぜられることになりまして、アメリカに赴任されたのでありますが。その後満六年の間、在約大使として最も重要なる外交方面の第一線に立たれたのでありました。その間昭和六年の満州事変当時には、これは在外公館の外交官たちは皆ひとしく嘗めたにがい苦しい経驗ではありましたが、出淵君も在米大使としまして非常な苦心をされたのであり、且つ又しばしば苦境に陥られたのでありました。昭和九年には在米大使を辞職されましたが、その翌年十年には、やはり大使として濠州に親善大節として参られたのでありました。各地において非常な歓迎を受けられ、日濠親善関係の増進には最も大なる努力をされ、且つ又効果を收められた人でもありました。翌十一年には当時の貴族院に勅選議員に選任されまして、貴族院の終りまでその職務に在り、國際関係、外交方面に対しまして深き造詣を以て貴族院内において活動されたことは、私からかれこれ申述べるまでもないことでございます。かくして本年四月の選挙には、参議院議員として岩手縣から出馬されたのでありまして、見事当選の栄冠をかち得られたのではりまするが、不幸にして選挙後間もなく郷里において肺炎を患われまして、一時はかなりの重態さえも傳えられた程でありましたが、幸いにしてこれは全快され、そうして帰京をされたのであります。併しながらそういう重病をやられた後、身体かなり衰弱を覚えられまして、遂に今回の会期には、ただ議会の招集日に、所属しておられまする緑風会までは來られましたが、この本議会の席上に臨むことなく帰宅されたのでありまして、それ以来一回も登院せられずに今日に至り、遂に永眠せられたということにまでなつたのでありました。誠に遺憾のいたりであります。
 若し同君が天與の長い壽命に惠まれておられ、且つ健康体であられたならば、その豊富なる過去の経驗、國際問題等に通暁をされておるその該博なる知識、それらを以ちまして、我が参議院においてどれだけの貢献をされることができたかということを、今更ながら思い出さずにはおられないのでありまして、その点から申しまして、この参議院は非常に有用な、又該博な知識の持主をここに失つてしまつたわけであります。
 同君はその性質から申しまして非常に明朗豁達な人でありました。私から申しますれば同学の先輩であり、又外務省の経歴から申しますれば、出淵君は我々議長松平議長と同期、即ち明治三十五年の外務省の外交官試験に合格された人でありまして、私から申せば三年の先輩に当ります。かくしまして、私は同君に対しては同学の先輩とし、且つ外務省経歴の先輩として兄事して参つたのでありまするが、その性質先程も申しました通りに常に朗らかでありまして、出淵君の屈託したような様子は、私は長年のつき合いではありまするが、今日に至るまで一度もそれを見たことがないのであります。誠に珍しい人でありました。
 逸話として申しまするならば、同君はついこの二年程前に一度、又昨年一度、大きな開腹手術を受けておられます。その手術一回だけでも沢山と思われるような大きなむずかしい手術でありましたが、立派に医学上手術として成功したのでありました。その後本年四月、両度のそういう大きな手術を受けた後で、参議院の選挙に出るという決心を私が傳え聞きました時に、どうかね君、それは大丈夫だろうかということを、私としては同君に申上げずにはおられなかつたのであります。同君の答が実にふるつております。いや君、男は年に一度ぐらい腹を切るものだよ。こういうような答でありました。そうして元気一ぱいで選挙に臨まれたのであり、且つ又岩手縣から最高点という名誉の地位を獲得されたのでありました。
 それから後、自分でも身体の調子が悪く元氣も衰えたのを知つておられたのであろうと思うのでありますけれども、約十日ほど前に、私がお見舞がてらに参議院の模様などを話に参りました時なども、極めて樂天的でありまして、いや、こうやつて引込んでおるのも八月一ぱいで、九月になれば涼しくなる。そうすれば自分の健康も取戻すという自信を持つておるので、再び参議院に來てそうして諸君と一緒に働こう。こういうようなことを言つておられました。涼しくなれば元氣になるということは会う人ごとに出淵君が話しておつたのであります。それを聞いておりまして私は、相変わらず出淵君は樂天的であると、そういうふうにのみ考えておつたのでありますが、昨日私は松平議長のお伴をしまして、出淵君の所に御遺族にお悔やみに参つたのでありますが、その際遺族の方から洩れ聞きましたところによりますというと、或いはそうでなくて、出淵君は疾くに自分の死期を知つておつたのではあるまいかということがつくづく思い合わされる節があるのでありまして、成るべく他人に迷惑をかけまいというのが同君の主義であつたらしく、それがために自分としては常に樂天的なことを言つておつたらしく思われます。十九日の朝になりますというと、家族の人たちを集めて、自分は今日行くのである。今日天國に行くのであるということを朝はつきりと言われたそうであります。そうして宗教の方の神父を呼ぶことやら、又お孫さんたちを呼ぶことやら、すべて自分で指図されたということでありまして、いかにも自分の死期をはつきりと知り、そうしてそれまでは何人にも心配をかけまいという氣持ちを持つておられたということも、ありありと分かるのでありまして、一昨日の午前中は意識がまだはつきりしておつたそうでありますが、晝頃からもうそれも朦朧となり、而してすやすやと何らの苦痛もなく、眠るがごとく午後七時には永眠されたということであります。いかにも出淵君らしい最後でありまして、私は自分の兄事しておりました出淵君が、かくまで立派な人生観を持ち、且つ又覚悟を持つておられたとは、それまではつきり認識することさえもできなかつた程でありまして、ただただ敬服追慕の念に堪えないものであります。
 今や同君はすでに亡くなつた。我々参議院の中で、外交界の長老としての同君を失つたことは、我々にとりまして大なる損失であります。今後同君の活動に俟つことが多々あつたろうと思うのでありまするが、すでにそれすらできなくなりました。誠に遺憾の次第でありまして、私は同君の御遺族方に対しまして、深厚なる弔意を表したいと存ずるのであります。院議を以て弔意を御決議になる趣でありまするが、私はどうか諸君そういう決議をなさることに御賛成あらんことを希望しえ止まないものであります。
 一言以て私から弔意を捧ぐる次第であります。(拍手)
#5
○議長(松平恒雄君) 議長において起草いたしました出淵勝次君に対する弔詞を朗読して、弔詞増呈の件をお諮りいたします。
  参議院ハ議院正三位勲一等出淵勝次君ノ長逝ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
 只今朗読いたしました弔詞に賛成の諸君の起立を請います。
  [総員起立]
#6
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて弔詞増呈の件は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#7
○議長(松平恒雄君) 平野農林大臣により食糧放出に関しまして報告したいとの発言をもとめられました。この際これを許可いたします。平野農林大臣
  [國務大臣平野力三君登壇、拍手]
#8
○國務大臣(平野力三君) 本日新聞紙上に発表しておりますが、今回九月、十月分に関しまして、大量的なる輸入食糧の放出がありましたことに関して、本日この議場を通じましてその報告をいたしまするとともに、大体今後における食糧事情に関するところの一應の見通しを発表いたしたいと思う次第であります。
 御承知の通り六月、七月以來遅配に遅配を続けまして、誠に食糧事情が重大なる場面に到達いたしまして、全國民に対して多大な不安を與えておりましたことは、誠に私共の遺憾とするところであつたのであります。然るに八月になりまして、特に先般申上げましたように八月分の放出食糧といたしまして、從來貰つておりまする以外に、特別に二万一千トンの放出の許可がありまして、これによつて八月分は大体東京、大阪、京都等の大消費地におきますところの、全國九地区だけは八月中の遅配というものはないということに相成りまして、ここに先般八月分の食糧事情は大体三十一日分配給いたし得ることの目標を発表いたしまして、ここに食糧問題に関する一應の明るさを示しておつたのであります。併しながらこの見通しは率直に申しますると、八月一ぱいに関するところの完全なる見通しでありまして、九月、十月分に至りましては、我々といたしましては、大体その遅配欠配をなくするところの方針は持つておつたのでありまするが、東北の水害、或いはその他の諸般の状況から、ここに多少の危險を感じながら食糧行政をやつておりましたところ、昨日午前連合國最高司令部より、特に九月、十月分に関しまして六十万トンの大量の放出の許可を受けたのであります。昨年我が國に放出せられましたところの食糧は、年間を通じて六十万トンでありまして、今回九月、十月分の放出をせられましたるこの二ヶ月分の食糧は、優に昨年度一年に相当するところの大量放出であつたのであります。(拍手)これによりまして今二十一年米穀年度におきましては、合計百六十万トンの放出を受けることになりまして、一應今朝の新聞において発表いたしておりまする通り、八月、九月、十月のこの三ヶ月に関する限りにおいては、全日本國民に対して遅配欠配をなくする方針をここに明示することを得るに至りましたことは、一に連合國の最大なる厚意といたしまして、ここに私は深甚の感謝の意を表するものであります。(拍手)
 この際私はここに聊か具体的なる数字を申上げまして、皆様の前に御了承と御安心を願いたいと思うのであります。
 今政府が考えておりまするところの、九月及び十月の必要といたしまするところの需要量は、九月において三百九十九万二千石、十月におきまして三百九十八万五千石、合計いたしまして七百九十七万七千石の食糧が必要なのであります。この中、日本の國内において賄い得るといたします予定数量は新米即ち相場米、これが百万石、麦類二百一万三千石、早掘り甘藷が九十五万七千石、馬鈴薯が八万三千石、この國内の見通しといたしましての合計が四百五万三千石であります。これに加えるのに、今回放出をせられました六十万トンの食糧は、石数にいたしまして四百万石でありますので、この総計をいたしますと八百五万三千石となるのであります。必要量の先程申上げましたところの七百九十七万七千石に対して、供出量が合計いたしまして八百五万三千石でありますので、供給量の方が需要量を上廻りをするということになりましたので、この数字を確実に握りました私共といたしましては、ここに全國民に対して、この年度内におけるところの食糧問題だけは一應解決したものであるということを断言することを憚からない次第でございます。(拍手)
 而してこの際尚申上げたいと思うことは、かように需要供給の関係においては一應のバランスをみたのでありますが、併しこれを以てして消費者の手許に完全に届け得るかどうかということは、一に懸かつて今後の輸送、加工及び配給の努力に俟たなければならない点がありまするので、現内閣におきましては、特にこの点につきまして今回閣議において商工省及び運輸省、これらの食糧に関係のありまするところの各省と特に協議をいたしまして、これらの輸入食糧の輸送に関しましては、運輸大臣は農林省の要求に從いまして、この輸送面においては優先的に必ず輸送機関を使用せしめることの一項目を閣議において決定いたしたのであります。
 尚輸送の面がうまく参りましても、加工をいたしまするところの製粉及び精麦工場の能率が低下いたしておりましたのでは、これ亦十分でないのでありますからして、現在専用線を持つておりますところの製粉及び精麦工場においては、電力制限を撤廃いたしまして、眞に晝夜兼行二十四時間無休の作業をいたすといことに決定いたしまして、これらの労務に從事されますところの労務者に対しましては、酒、煙草等の報奬物資を提供いたしますることは勿論、その他でき得る限りの報奬制を採用することによつて、この点に関して万遺憾なき対策を立てておる次第であります。
 尚かように晝夜兼行製粉、精麦をいたしましても、これが実際の輸送の面になりまするというと、包装用の袋及び俵等が十分でない場合におきましては、これ亦万全を期することができませんので、特に包装用の袋に対しましては一千万袋、俵に関しましては百五十万俵を要するのでありまして、この点の物資に関しましては、商工省は農林省に対しまして優先的にこれらの物資を提供することの約束をいたしまして、我々食糧管理の任に当る者といたしましては、他の各省の了解と協力の下に、この放出せられましたるところの輸入食糧を、最も適当に最も速かに消費者階級の手許に配給いたしまして、一は司令部の御厚意に対しまして、これを無にしないと共に、消費者階級に対して十分御満足を與え得るように盡力をいたす覚悟を持つておるのであります。
 尚加工能力の増強等に関しましては、九月操業を開始せんといたしまするところの大型製粉機、五千バーレルの高速度製粉機、二千四百馬力精麦機、一千馬力等の新しいところのいわゆる製粉工場の設定をいたすことにいたしまして、今後日本國内において供出をいたしまするところの麦、及び放出をせられまするところのこれらの輸入食糧に対するところの加工の万全を期するような対策を立てておりますので、これらの点を併せて御了承を願いたいと思うのであります。
 尚この際一言申述べまして御報告を申上げたいと思いますることは、今回かようなる連合國の厚意の裏には、昨日輸入放出の担当係でありますところのアルバー氏の所見も新聞に出ておりましたように、日本國内におきまするところの農民諸君が、今回の麦と馬鈴薯に関するところの、この供出の面において、眞に現下の日本の食糧事情の窮迫せることに著目いたしまして、よく供出に関するところの成績を挙げておることは、誠に結構であるという言葉を受けておるのでありますが、ここに私は現下の情勢において、農民諸君がいかに供出面の上において最大の努力を拂つておるかという具体的な数字を申上げまして、ご参考に供して置きたいと思うのであります。
 八月十八日、数日前の調査によりまして、政府が買上げましたところの麦類の数字は四百四十五万七千石に及んでおりまして、これは政府が割当てましたるところの数量の九一・一%に及んでおるのでありまして、殆ど一〇〇%に近附いておるのであります。昨年の同月同日におきまするところの供出数量は三百十一万二千石でありまして、五三%であつたのでありますが、今年におきましては、この偉大なる供出の成績を挙げておりまするということは、現下の情勢に対しまして農民諸君がいかに時局に対するところの認識を深くしておつてくれるかということについて、深く感謝するものであります。具体的に更に申上げますならば、島根縣におきましてはすでに一三一%静岡縣におきましては一二六%の成績を收め、京都、和歌山、鹿児島、兵庫、宮崎、高知、長野、山口、大阪、愛知の十縣はすでに一〇〇%を突破いたしました。その他奈良、愛媛、大分、岡山、神奈川、群馬、熊本、鳥取、三重、岐阜、佐賀、この十一縣は九〇%から九九・九%に及んでおるのでありまして、もはや只今、今日の日にちにおきましては、これらの十一縣も一〇〇%を突破しておると思うのであります。
 尚馬鈴薯に関しましては、これ亦相当の成績を收めておるのでありまして、今日までその一〇〇%を突破いたしましたる縣は、馬鈴薯に関しましては千葉縣、神奈川縣、富山縣、福井縣、静岡縣、三重縣、志賀縣、大阪、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、これからの府縣におきましては、すでに一七二%から一四六%に及んでいるところの縣もありまして、馬鈴薯におきましては現在の供出全國平均は八二・四%でありまして、これを昨年におきまするところの五九・二%に比較いたしますると、その進捗率も誠に良好を示しておるのであります。現在におきましてかようなる農民諸君の供出に関するところの絶大なるこの時局認識は、畢竟するに司令部におきましても、日本國内におけるところの食糧行政に関するかようなる農民の協力をよく認められまして、今回かような放出を受けましたということは、私は現段階におけるところの日本の食糧問題の上に、一應の明るみを受けまするものといたしまして、ここにこの席上において、このことを発表いたしますることは、誠に欣快に堪えない次第であると思うのであります。(拍手)
 尚私共といたしましては、かようなる状況の下に決して樂観することなく、來米穀年度におきましては現在実のらんといたしておりまするところの二十二年産の米に関しましては、少くとも九月中にはその供出割当を断行いたしまして、今年内においては大半の供出を完了するの勢を以て今年の米に対するところの供出制度を新たに改正し、而して來米穀年度からは眞に遅配欠配をなくして、主要食糧に関する限りは殆んど闇をなくし、農民の生産品を正当なるルートに流し、その正当なるルートに流れたるものを以て全國民の主食に対して事を欠かないところの新しい食糧政策をとりまして、この面に関する限りは全力を傾倒して全國民の期待に副いたい考えを持つておりますので、何とぞ皆さんの御協力を願いたいことを懇請いたします。本日この席上を拝借いたしまして、昨日大量放出のありました連合國に対するところの深甚なる感謝の意を表すると共に、私は尚皆さんの食糧問題に関する御協力を懇請いたしまして、簡單に御報告いたす次第であります。(拍手)
        ―――――
#9
○議長(松平恒雄君) 日程第一、大学等への死体交付に関する法律案、内閣提出、日程第二大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案、内閣提出、日程第三、傳染病予防法等の一部を改正する法律案、内閣提出、衆議院送付、日程第四、保健所法を改正する法律案、内閣提出、衆議院送付、以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長塚本重藏君。
  [塚本重藏君登壇、拍手]
#11
○塚本重藏君 只今議題となりました四つの法律案につきまして、日程の順序に從いまして御報告申上げます。
 先ず第一に、大学等えの死体交付に関する法律案について、厚生委員会におきまする審議の経過並びにその結果を御報告申あげます。
  [議長退席、副議長著席]
 大学等えの死体交付に関する法律案を審議する厚生委員会は、八月の七日、九日、十九日、二十日に亙つて審議を行いました。八月七日第一回委員会におきまして金光厚生政務次官から、医学及び歯学の教育及び研究のためには死体の解剖は不可欠のものでありますが、從來は医学又は歯学に関する学校において死体の入手が困難な実情にありまして、学校によつてはそのために教育にも支障を來しておる状況であります。幸いに連合軍総司令部の指令に基ずきまして、本年一月厚生省令第一号が公布され、主要都市に監察医が設置され、死因不明死体について檢案又は解剖を行い、その死因を明らかにすることに相成つたのでありますが、今般更に右の指令に基ずきまして、監察医が死因調査を済ませた死体であつて引取り者のないものを、医学又は歯学に関する学校に交付して、解剖又は標本の材料に用いることを認め、從來医学又は歯学に関する学校における死体解剖の適法性について多少の疑義がありました点を明確にいたすために、本法律案を提出したのであるとの説明がありました。以下この法律案の内容の大略を申上げます。
 この法律案の要点は、都道府縣知事は前述の厚生省令第一号に基ずいて、監察医が檢案又は解剖した死体であつて引取者のないものを、医学又は歯学教育向上のために医学又は歯学に関する学校の長に交付することができることとし、その交付を受けた学校長は、監察医の檢案開始後四十八時間以内に引取者が現れなかつたときは、その死体を解剖させ又は標本とすることができるようにしようというのであります。ここで交付と申しまするのは、学校長は解剖又は標本の材料とするという範囲内においてのみ死体の処分権を有するという意味であり、從つて事後において死者の相続人その他から引渡しの要求がありましたときは、その全部又は一部を引渡す義務を学校長に課しているのであります。尚この法律によつて交付される死体は、一應行旅死亡人又はこれに準ずるものでありまするから、身許調査のための公告並びに運搬、埋火葬等に関する費用負担等について、行旅病人及び行旅死亡人取扱法との関係を第五條及び第七條において定めているのであります。
 本法案の審議の詳細は速記録を御高覽願うこととして、ここに質疑の中、二三主なる点を御報告申上げます。第一は、死体引取人の申出を待つ時間を四十八時間内という点は、現下の交通通信の事情等から見て短かきに過ぎると思うがどうかという点でありました。これに対して政府委員から、連合軍の指令にも四十八時間とあり、この点については十分各方面から檢討したのであるが、教育上の必要と実際の取扱の上から考えて、四十八時間ということにしたのである。併し四十八時間以後と雖も、引取者が現われる見込みがある死体に関しましてはできるだけ長く保存させるように指導するとの御答がありました。第二は、死体の取扱に当つては特に礼意を失わないようにしなければならないが、この点についてはいかように取扱をしているかとの質問に対しまして、これら死体の取扱には、学校の教授も学徒も感謝と尊敬の念を以て愼重に取扱い、且つ一千人ごとに谷中の墓地に千人塚を建立し、教授が喪主となつて、学徒参列の下に慰靈祭を行うことにしているとの答弁がありました。第三に、第四條に「特別の事情のない限り」という字句があるのでありますが、この字句があるために、その趣旨が誤解せられて、不当に遺族の意思に反するがごときことが起る虞れはないか。そういう虞れがあるから、むしろこれは削除されるべきではにか。こういう意見が出たのに対しまして、厚生大臣も全く同感であるとの意思を表明せられたのであります。そこで委員会といたしましては、この「特別の事情のない限り」という字句を削除しようと考えまして、関係方面との折衝をいたしたのでありますが、関係方面におきましては、その字句を残しておいても運用の上で差支ないようにすればいいのではないか、又傳染病死亡者の死体等については、そういう字句を存置することも必要な場合があり得るのではないか、こういう意見もありましたので、この点に関しましては当局におきましても運用上極めて嚴格に解釈して、決して遺族の感情を不当に傷つけるがごときことのないよう十分努力する旨の答弁があつて、いずれもこれを了承した次第であります。かくて八月の二十日質疑を終了し、討論を省略いたしまして採決に入り、全会一致を以て原案を可決すべきものと決議いたした次第であります。
 次に大正十二年勅令第五百二十八号司法警察官吏及び司法警察官吏の職務を行うべき者の指定等に関する勅令の一部を改正する法律案につきまして、委員会の審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 本案に対しましては、厚生委員会における審議の経過はこれ亦速記録によつて十分に御承知が願いたいのでありますが、厚生委員会は八月七日、九日及び八月十九日に質疑を行い、八月の十九日に採決を行なつた次第であります。ここに審議の経過を述べますが、八月の七日第一回委員会におきまして金光厚生政務次官より、本法律案についてその提案の理由と内容を聴取いたしました。それによりますと、麻薬に関する犯罪の搜査は、檢事、司法警察官によつて行われておるところでありますが、麻薬に関する高度の特殊知識を必要といたしまする関係から、取締強化の方法といたしまして從來の捜査機関とは別に、麻薬に関する取締の専門家である都道府縣の麻薬統制主事の中優秀なる者を選んで、これに麻薬に関する犯罪について司法警察官と同一の権限を有する独立の捜査権を與えんとするのが、この法律案の趣旨であります。捜査を行う麻薬統制主事は、知事が檢事正と協議した上、捜査を行うに適当なる者を選んで、これを厚生大臣に推薦することにし、その者に対して厚生大臣が捜査を行う者として指名することにいたします。その捜査指揮権は厚生大臣の所管に属することにし、從つてこれらの者に対しましては、知事は勿論、檢察官におきましてもこれが指揮権を有しないのであります。この麻薬統制主事の行う捜査の土地管轄は、地方自治体の公吏たる本來の身分に拘わらず、全國に亙つて機動的な活動を行い得るようにし、又その事物管轄は單に麻薬取締の行政法規違反のみならず、麻薬を客体とするすべての罪を含むのであります。尚麻薬統制主事は独立の搜査権を有するものでありますが、固より公訴権はこれを有しないために、自己の裁量によつて微罪処分或いは不起訴処分を行う権限は持たないものであります。而して檢察官との関係は、前述の通り捜査につき檢察官が指揮権を持つておりませんから、事件の送致等に関しては司法大臣において特別の定めをいたしまして、これによらしめることといたしておるのであります。本案において司法大臣の定むるところにより、速やかに檢察官に事件を送致する義務を負わしめているのであります。尚捜査を行う麻薬統制主事の人員は全國を通じて二百名以内とし、その限度において右の権限を行使し、麻薬取締の完璧を図らんとするものであります。本案に対しまする質疑の内容等につきましては、速記録を御覽をお願いすることにいたします。
 かくて八月十九日質疑を終了し、討論を省略して採決に入り、全会一致を以て原案を可決すべきものと決議した次第であります。
 次に傳染病予防法等の一部を改正する法律案につきまして厚生委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
 傳染病、結核、トラホーム及び寄生虫病の予防に関する各法律によりますと、これら疾病の予防の業務は、主として都道府縣知事の責任において、地方自治團体の行う事務として遂行されておるのでありあして、これら疾病の予防上必要といたします経費は都道府縣が支出し、これに對して國庫は法定の率によつて補助しておるのであります。然るに終戰後の社会情勢の変動に伴いまして、これらの疾病は増加の傾向にあり、これが予防撲滅のため、都道府縣におきましては相当多額の経費を必要とするのでありますが、而も地方財政逼迫の状況では各位の御承知でありまして、地方自治團体におきましては夙に財政上の必要から、これら疾病予防に関する國庫補助率の大幅引上を強く要望しておるのでありまして、現在のごとき低率の國庫補助を以ていたしましては、十分なる疾病の予防は期し難い状態にあるのであります。
 以上の理由によりまして、傳染病、結核、トラホーム及び寄生虫の予防に関する國庫補助率を引上げ、地方財政逼迫の状況を緩和すると共に、これら疾病の予防措置を一段と強化する必要によつて本案が提案せられておるのであります。
 法案改正の内容は、一、傳染病予防法中國庫補助率六分の一乃至三分の一とあるのを二分の一に改めること、一、結核予防法中の國庫補助率四分の一を二分の一に改めること、一、トラホーム予防法中の國庫補助率六分の一を二分の一に改めること、一、寄生虫病予防法中の國庫補助率六分の一を二分の一に改めることであります。念のために申添えて置きますが、この國庫補助の二分の一は都道府縣の支出いたしました額に対する二分の一でありまして、実際には市町村で支出した全額の三分の一は当該市町村の負担で、三分の一は府縣より補助し、三分の一を國庫から補助することに相成るものと御了承が願いたいのであります。
 本案に関する質疑の主なるものといたしましては、第一、この程度の國庫補助の引上げのみでは、傳染病予防の万全を期することはできんと思うが如何との質問に対して、政府側から、結核予防の経費は、國際連盟では國民一人当たり一円程度を必要とすると言つておるのであるが、事実アメリカ、イギリス、ドイツ等では、共に國民一人当り一円ぐらいを使つておるのである。然るに日本では、戰前の統計でありますが、國民一人当たり四銭三厘九毛という少額である。又全國各府縣費に見ましても、その総予算の百分の一、百分の二ぐらいの衛生費を計上しておるに過ぎない実情であります。今回の補助額引上で十分とは言えないが、保健所の利用及び活動等と相俟つて最善を盡すとの答弁がありました。
 第二に、戰災等による都市の荒廃は殊に甚だしく、現在の都市衛生は最も憂慮すべき状態である、これらに対し政府はいかなる考えを持つておるか、又都市衛生法或いは都市衛生組合法を制定し、都市の衛生施設の完備と向上を図る意思はないかとの質問に対しまして、政府は、御指摘の点は政府においても多大の関心を有しておるところであり、これら荒廃都市の衛生諸施設の整備改善を図ると共に、國民の衛生知識の普及徹底に大いに努力するつもりである。都市衛生法等については愼重に考えて見たいと思うとの答弁がありました。第三に、最近農村における結核の蔓延は誠に寒心に堪えんところであるが、この大きな原因は、工場特に繊維工場の衛生設備の不備、労資両者の衛生知識の欠如等のために、結核に感染し帰郷する者が多く、これが又家族その他に傳染せしめておるのであるが、これらに対する政府の所信とその対策如何との質問がありました。これに対し、工場結核対策としては工場及び宿舎の改善を図り、労働基準法の善川等に意を用い、尚一般の國民の衛生知識の向上と普及徹底が必要であるから、学校の衛生教育に大いに力を注ぐつもりである。映画、講演、ラジオ、パンフレツト等の発行を行うとの答弁がありました。第四に、本法案審議中におきまして、國立病院及び國立療養所の入所規定の一部改正がおこなわれたことからいたしまして、入所いたしておりまする患者の一部に相当の不安を與えました。このために各地の患者代表が議会に陳情に來るなどいたしたので、委員会といたしましては國立療養所の実地視察もいたしまして、患者の不安除去と看護婦の増員、食糧配給の確保等につき善処方を要求したのであります。政府は、現に無料入所中の者が困らないように親心を以て善処いたす方針であり、すでにその方針を関係者に示達し、末端の民生委員にまで傳達するの措置を講じたから安心して貰いたいと、大臣から答弁がありました。(拍手)その他は何とぞ速記録を御覽をお願いいたします。
 かくて質疑を終了し、討論を省略いたしまして、採決をいたし、全会一致を以てこれ亦原案を可決すべきものと決議いたした次第であります。
 最後に保健所法を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。保健所法を改正する法律案を審議する厚生委員会は、七月三十日、八月の一日、五日、六日の四回に亘つて予備審査を行い、八月八日に実地視察を行いまして、八月十九日に採決を行つた次第であります。
 今ここに審議の経過を述べます。七月三十日第一回委員会において、一松厚生大臣から、公衆衛生の向上と増進を図ることは、新憲法の第二十五條によりまして、社会福祉及び社会保障の向上及び増進を図ることと共に、國の基本的義務とされた次第でありまして、これなくいたしましては、平和的文化國家の建設は到底望み難いと言わなければなりません。保健所は現在すでに全國に六百七十五ヶ所設置せられ、公衆衞生行政の第一線実施機関とされておるのでありますが、新憲法の趣旨に副うためには、更に中央及び地方の機構を整備すると共に、直接に國民に接觸する保健所の機能の拡充強化を図らなければなりません。併しながら現行保健所法では十分その目的を達し難い点があると認められますので、ここに新憲法に即應する保健所法の改正案が提出された次第であります。
 その改正の要点を申上げますと、第一は保健所の目的が公衆衞生の向上及び増進にあることを明示した点であります。第二は、保健所の從來の担当事項の外、人口動態統計、公共医療事業の向上及び増進、衞生上の試驗及び檢査、歯科衞生学を加え、これらに関する指導と共に必要なる事業を行い、更に都道府縣知事の権限の一部を、その委任を受けて行うことができることとしたのであります。第三は、結核、性病、歯科疾患その他厚生大臣の指定する疾病の早期又は予防的治療を行い、これら國民病の撲滅を期したことであります。第四は、保健所は公衆衞生の向上及び増進のために必要な試驗、檢査を行うと共に、その試驗、檢査等を廣く医師その他の者が利用し得られることとし、医療内容の向上と医療費の軽減を図つたのであります。以上の説明がありました。
 本案に関する質疑のために委員会は三回会議を続行しておるのでありまするから、その詳細は速記録を御高覽願うこととし、ここにその要旨の二三を取纏めて御報告申します。第一、保健所が眞に公衆衞生の第一線行政機関として活躍するためには予算が少額ではないかとの質問に対し、政府から、本法改正に要する國庫補助額は大体二千三百万円を必要とするが、増額することについては國家財政の現状と睨み合せて努力したい旨の答弁がありました。第二に、保健所の行う治療の範囲並びに厚生大臣の指定する疾病とはいかなるものかとの質問に対し、保健所の行う治療は、公衆衞生の向上と増進を図るに必要な範囲である。厚生大臣の指定する疾病とは、例えは青森縣のトラコーマ、山梨縣の日本住血吸虫病のごとき、公衆衞生上放置することのできない地方病である旨の答弁がありました。第三、中央及び地方に保健所運営に関する委員会を設ける意思はないかとの質問に対し、政府側は全く同感であり、各種の委員会を設け、地方住民と協力する等、民主的な運営を図るとの答弁がありました。第四に、保健婦の養成及びその待遇改善いかんとの質問に対して、保健婦の養成には大いに努力し、待遇についても給料の基準を作つて、関係方面と協議をし、食事その他についても考えておる旨の答弁がありました。
 かくて質疑を終了し、本案も亦討論を省略して、採決に入り、全会一致を以て原案を可決すべきものと決議いたした次第であります。以上簡單でありますが御報告申上げます。(拍手)
#12
○副議長(松本治一郎君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。委員長の報告は四案とも可決報告でございます。四案全部を議題に供します。委員長の報告されました四案に対し賛成の諸君の起立を願います。
   [総員起立]
#13
○副議長(松本治一郎君) 起立総員、よつて本案は全会一致を以て可決せられました。これにて本日の議事日程は終了いたしました。次回の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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