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1949/05/09 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第17号
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1949/05/09 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第17号

#1
第005回国会 農林委員会 第17号
昭和二十四年五月九日(月曜日)
    午前十一時三分開議
 出席委員
   委員長 小笠原八十美君
   理事 坂本  實君 理事 松浦 東介君
   理事 八木 一郎君 理事 山村新治郎君
   理事 八百 板正君 理事 長谷川四郎君
   理事 深澤 義守君 理事 巻本  齋君
      遠藤 三郎君    河野 謙三君
      坂田 英一君    田中 彰治君
      野原 正勝君    中野 三郎君
      渕  通義君    村上 清治君
     藥師神岩太郎君    石井 繁丸君
      井上 良二君    竹村奈良一君
      寺崎  覺君
 出席國務大臣
        農 林 大 臣 森 幸太郎君
 出席政府委員
        農林政務次官  苫米地英俊君
 委員外の出席者
      議     員 早稻田柳右エ門君
        専  門  員 岩隈  博君
    ―――――――――――――
五月七日
 農業資産相続特例法案(内閣提出第一八八号)
九月七日
 戸多村地内の國有林一部拂下の請願(石野久男
 君紹介)(第三号)
 燧灘の干拓事業施行の請願(小西英雄君紹介)
 (第一二一五号)
 三浦村の林道六郎次線改修の請願(原田雪松君
 紹介)(第一二四二号)
 農業災害補償制度改正に関する請願(阿野金昇
 君紹介)(第一二四八号)
 同(竹村奈良一君紹介)(第一二四九号)
 同(江田斗米吉君紹介)(第一二五〇号)
 食糧公團末端機構改組に関する請願(小野瀬忠
 兵衞君紹介)(第一二六五号)
 獸医師法の一部改正に関する請願外一件(今村
 忠助君紹介)(第一二八三号)
 食糧公團末端機構改組に関する請願(小川原政
 信君紹介)(第一二八四号)
 駒形村字東福寺に溜池築設の請願(笹山茂太郎
 君紹介)(第一二九正号)
 農業災害補償制度改正に関する請願外八件(田
 中啓一君外一名紹介)(第一二九六号)
 小坂村地内の國有林押下の請願(小峯柳多君紹
 介)(第一二九七号)
 野方村に用水路築設の請願(岩川與助君紹介)
 (第一二九九号)
 松山村大野原に用水路築設の請願(岩川與助君
 紹介)(第一三〇〇号)
 農地委員会経費國庫補助に関する請願(佐藤重
 遠君外四名紹介)(第一三一八号)
 伊豫村農道に墜道開設の請願(大西弘君外七名
 紹介)(第一三六八号)
 北山ダム築設による立退補償に関する請願(北
 川定務君外一名紹介)(第一三七五号)
 新改村に灌漑用水取入口築設の請願(長野長廣
 君紹介)(第一三七六号)
 農業災害補償制度改正に関する請願(赤松勇君
 紹介)(第一三七七号)
 同(八木一郎君紹介)(第一三七八号)
 同(田中啓一君外一名紹介)(第一三七九号)
 主食の掛費に関する請願(赤松勇君紹介)(第
 一三九三号)
 一宮市に國営競馬場設置反対の請願(田島ひで
 君外一名紹介)(第一三九四号)
 湯野濱に國営競馬場設置の請願(志田義信君紹
 介)(第一三九五号)
 農地委員会経費全額國庫負担の請願(佐藤重遠
 君紹介)(第一四二四号)
 農業協同組合法の一部改正に関する請願(岡西
 明貞君紹介)(第一四二五号)
 農業災害補償法の一部改正に関する請願外四件
 (中野三郎君紹介)(第一四二六号)
 岩手縣下の國有林一部拂下促進の請願(野原正
 勝君外五名紹介)(第一四七号)
 福井式増收農法助成に関する請願(稻田直道君
 紹介)(第一四二九号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 競馬法の一部を改正する法律案(早稻田柳右エ
 門君外十五名提出衆法第一号)
 競馬法の一部を改正する法律案(原健三郎君外
 六名提出、衆法第二号)
 土地改良法案(内閣提出第一八〇号)
 農業協同組合自治監査法を廃止する法律案(内
 閣提出第六三号)(参議院送付)
 農地調整法の一部を改正する等の法律案(内閣
 提出第一〇四号)
 農業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一〇五号)(参議院送付)
 酪農業調整法を廃止する法律案(内閣提出第一
 〇九号)(予)
 油糧配與公園法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第一二七号)(予)
 派遣委員の実地調査報告の件
#2
○小笠原委員長 これより会議を開きます。
 議事に入る前に御報告いたします。去る七日内閣提出による農業資産相続特例法案が本委員会に付託になりました。
 それでは先ほど理事会で決定いたしました通り、前会に引続き農業協同組合自治監査法を廃止する法律案、及び農業協同組合法の一部を改正する法律案を一括議題とし、討論に入ります。
 討論の通告はありませんから、この際討論を省略し、ただちに採決を行います。
 原案に賛成の諸君は起立を願います。
    〔総員起立〕
#3
○小笠原委員長 起立総員。よつて両案は原案通り全会一致をもつて可決いたしました。
 なおこの際報告書の件についてお諮りいたします。これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小笠原委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。
    ―――――――――――――
#5
○小笠原委員長 次に本日の日程通り、それぞれ提出者の提案理由の説明を求めます。まず早稻田柳右エ門君外十五名提出の競馬法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を求めます。
#6
○早稻田柳右エ門君 ただいま御審議を願います競馬法の一部を改正する法律案につき、提案者を代表して提案理由の御説明を申し上げます。
 現行競馬法におきましては、国営競馬場として札幌、函館、鵜島、新潟、中山、東京、横浜、京都、阪神、小倉及び宮崎の十一箇所が規定されております。しかし戦時中における設備の荒廃、交通事情その他の理由によりまして、現在競馬が実際に開催されておりますのは、札幌、函館、中山、東京、京都及び小倉の六箇所にすぎないのであります。この法律案を提出して中京競馬場を設置しようとしますのは、第に、勝馬投票券の売得金額の増大により、政府收入の増加をはかることであります。
 第二には、現正開催されている六箇所の競馬だけでは、馬主、調教師、騎手その他関係者の経済的負担が重きに過ぎますので、これらの経済的負担を軽減し、競馬の健全なる発達に寄與したいと思うのであります。
 第三には、現在横浜より京都の間に國営競馬場がございませんので、関係者は、その距離が遠いために非常に不便を感じておると承つておりますが、中京に競馬場を設置することは、ちようどその中継場所ともなりまして、関係者の便益をはかることができると存じます。
 以上三点がこの法律案を提出した理由の大要であります。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことを希望するわけであります。
#7
○小笠原委員長 これにて早稻田柳右エ門君外十五名提出の競馬法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を終ります。
#8
○小笠原委員長 次に原健三郎君外六名提出による競馬法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を求めます。本日原健三郎君が欠席いたしておりますので、不肖私も提案者の一人でありますので、私より提案理由の説明を行います。暫時委員長席を理事坂本實君に譲ります。
    〔委員長退席、坂本委員長代理着席〕
    ―――――――――――――
#9
○小笠原委員長 議題となつております競馬法の一部を改正する法律案は競馬法の第一條中の「市」を「市町村」に、「指定市」を「指定市町村」に改め、第二十條第二項中「指定市」を「指定市町村」に改め、第十一條中「指定市」を「指定市町村」に、「市長」を「市町村長」に改める。第二十二條、第二十三條第二項、第二十五條第一項及び第二十六條第一項中「指定市」を「指定市町村」に改める。第二十九條中「指定市職員」を「指定市町村職員」に、「指定市」を「指定市町村」に改めるというわけでありまして、從來市と同時に著しい災害をこうむつた町村で、内閣総理大臣が指定するものも、その財源確保のために競馬を行うことができることとするという意味において、この法案を提案したのであります。
 何とぞ御審議の上しかるべく御決定を願います。
#10
○坂本委員長代理 これにて原健三郎君外六名提出による競馬法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を終ります。
    〔坂本委員長代理退席、委員長着席〕
    ―――――――――――――
#11
○小笠原委員長 次に農地調整法の一部を改正する等の法律案を議題とし、政府の提案理由の説明を求めます。森農林大臣。
    ―――――――――――――
#12
○森國務大臣 農地調整法の一部を改正する等の法律案の提出理由を御説明いたします。
 農地改革も幸いに各関係者の努力によりまして好成績をもつて一段落いたしました。これにより農村は、九割以上が自作農となり、現下いろいろと困難な事情はございますが、ともかくも一應安定した基礎の上に農業経営を行つて行くことができるようになりましたことは、まことに同慶に存ずる次第であります。
 農地問題は、もとよりこれをもつてことごとく解決いたしたとは言えません。今後土地改良や農地の交換分合等に十分の努力を傾けなければなりませんし、また農地改革の成果を永久に確保いたしますために、農地調整法と自作農創設特別措置法の二つの法律を存置いたすことも必要であります。今回の改正法律案は右二つの法律すなわち農地調整法及び自作農創設特別措置法の今後における輝川を考えまして、農地改革後の新しい農村の姿に照し合せて、これに適合するように、所要の修正を加えたいと存ずるのであります。
 すなわちその第一点は、農地委員会の構成の問題であります。現行法では地主三、自作二、小作五という定数になつておりますが、農地改革後の農村の実情から見てこれが妥当でないことはきわめて明らかでありまして、かりに現行法の通りとしますれば、全体の九割をも占める自作農の代表が二名ということになるわけであります。農地委員の任期は、第四回國会において本年の六月三十日までとされましたので、近く第二回の総選挙を行わなければならないのでありますが、これに先立ちまして農地委員会の構成をぜひとめ改めなければならないのであります。農地委員会の新しい構成につきましては、種々の條件を考慮いたしまして慎重に研究いたしました結果、自作的な人が非常に多い現状にかんがみまして、これを六とし、ある程度農地を小作している人を二、ある程度農地を貸付けている人を二といたしたりであります。
 第二は不在地正の正義についての問題であります。改正案におきましては、農業を営んでいた者が他の職業につくためなどの事情によつて離村いたしましても、その配偶者なり親子兄弟が依然として農業を続けており、かつ、本人も將來帰村する見込みがあります場合には、これを在村地主として処理いたすこととし、もつて職業上の理由等により移轉に支障を與えないように取扱いたいと思うのであります。
 今回の改正法律案の内容は以上二点の外農地移轉統制の基準の明確化、小作調停制度の改憲等の内容を含んでありますが、御参考に供するためお手元に法律案の要綱をお配りいたしておりますので、詳細はそれによつてごらんいただきたいと存じます。何とぞ慎重御審議の土、すみやかにお可決あられんことをお願いいたします。
#13
○小笠原委員長 これにて農地調整法の一部な改正する等の法律案の提案理由の説明を終りました。
    ―――――――――――――
#14
○小笠原委員長 次に酪農業調整法を廃止する法律案を議題とし、その提案理由の説明を求めます。森農林大臣。
    ―――――――――――――
#15
○森國務大臣 酪農業調整法を廃止する法律案の提出理由を説明いたします。
 酪農業調整法に、牛乳生産者と製酪業者との取引関係、製酪業者相互の競爭関係等を調整することを内容とするものでありまして、昭和十四年に制定されて以來わが國酪農の安定と発達に資するところがあつたのでありますが、同法第二條ないし第五條に関する牛乳の販賣統制、牛乳取引條件の許可、製酪企業の許可等についての統制規定は、行政職がその権限を行う場合の基準が不明瞭で妥当を欠く点があり、また第六條ないし第十七條は、製酪業の統制國体である製酪業組合の組織に関する規定でありますが、同組合が昭和二十三年二月閉鎖機関に指定されたため、すでに空文となつておりますので、同法は廃止するを適当と認め、本案を提出する次第であります。
 何とぞ十分御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたします。
#16
○小笠原委員長 これにて酪農業調整法を廃止する法律案の提案理由の説明は終りました。
    ―――――――――――――
#17
○小笠原委員長 次に油糧配給公團法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を求めます。森農林大臣。
#18
○森國務大臣 油糧配給公團法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 油糧配給公團の基本金は、設立当初一千万円とされ、現在にいたつておりますが、油糧の生産並びに輸入数量の増加、慣格の値上り等の理由のために、取扱い金額が大幅に増大し、貿易廳に対する輸入代金支拂いも円滑でなく、資金操作に困難を來たすようになつて参りました。ところが公團に対する復興金融金庫よりの金融も漸次引締められるようになりまして、ますます事業運営がきゆうくつになつておりますので、これを打開するために基本金を十五億円増額し十五億一千万円にすることといたしたいのであります。
 この増加額の算定基礎としては、最近六箇月の油糧配給公團の貿易廳に対する油糧輸入代金の未佛額が月平均約十五億円程度でありますので、貿易廳に対する輸入代金の支拂を円滑にすることを目途として、この金額が算出されたものであり、またこれに対する財源としましては、本年度予算に政府出資金として計上されております。
 なお公團の整理統合に関する法案が近く上提されることになつておりますが、基本金の増額は急を要することでありますので、とりあえず右と切り離して御審議願いたいのであります。各委員におかれましては愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたします。
#19
○小笠原委員長 これにて油糧配給公團法の一部を改正する法律案の提案理由の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#20
○小笠原委員長 次に土地改良法案を議題とし提案理由の説明を求めます。森農林大臣。
#21
○森國務大臣 土地改良法案につきまして、その提案理由の大体を御説明したいと思います。
 御承知のように、現在の日本の農業の重要問題は、農業経営の合理化と農業技術の革新を通じて、食糧その他農産物の最大限度の増産を達成するということであります。このためには何よりもまず農業経営における基本的な生産の手段としての土地及び水の利用を合理的にすることで、言いかえれば、灌漑排水施設や農業用道路を整備し、農地の区画を整理し、農地を集團化し、農地の造成及び農地の保全をはかり、その災害復旧を行う等の事業を実施することであります。またこれらを有効かつ適切に開発利用する上にも、欠くことのできないものであります。しかるにこのような事業に関する法律としましては、古くは明治末年の制度にかかる耕地整理法、水利組合法及び北海道土功組合法がありますが、いずれも今日の社会経済上から見て、もはやその機能を完全には果し得ない状態にあり、この種の事業の施行には、かえつて著しい障害となつているのは、顯著な事実であります。すなわちこれらの耕地整理法、水利組合法または北海道土功組合法の規定によつて設定された組合は、その性格もその事業も相互にきわめて類似しているのでありますが、同一の法制の下に統一する必要があることは当然であります。
 次に、これら三種の組合の組合員となる資格のあるものは、土地の所有者に限定されておりますので、土地改良事業の負担はこれらの土地の所有者にかかるのであります。しかるに、農地改革以後は地主の経済的地位は從前と非常にかわつて來ましたので、その負担にたえないものが多く、そのために土地改良事業が一向に進捗できない状態にあるのであります。
 次に、從來より國営及び都道府縣営の土地改良事業が行われておりますけれども、これに関する法律的規定が全然なかつたのでありますが、そのためにいろいろと事業の進捗上支障のある点であります。以上のような理由から、土地改良法の制定は、その必要を痛感されるのでありまして、農民及び関係團体からも強い要望のあるところであります。
 次に法案の重要な内容について概略御説明申し上げたいと思います。第一は、土地改良の施行の主体として、新たに土地改良区という制度を設けました。この法人が從來ありました耕地整理組合、水利組合、北海道土功組合にかわつて、今後主となつて土地改良を行うのであります。もつとも土地改良事業は、土地改良区のほかに農業協同組合も、また國や都道府縣も施行できることは当然でありまして、法案の中に、そのための所要の規定を設けた次第であります。
 右の土地改良区は先に申し述べました理由に基きまして、関係地区の耕作岩がその組合員となるものといたします。しかしながら、土地の所有者の申出があり、所有者が組合員となることが相当であるときは、耕作者にかわつて組合員となるものといたします。
 第二に、國または都道府縣が土地改良事業を行う場合の規定を設け、円済に事事を進められるようにいたしました。
 第三に、農地等の交換分合の規定を設けました。これは今後の日本の農業の置かれるきわめて困難な地位を予想いたしまして、農業経営を合理化するための有力な手段の一つであります。
 最後に土地改良事業に対して所要の補助をなし得るものといたしました。
 以上が両法案の主要な内容でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
#22
○小笠原委員長 これにて土地改良法案提案理由の説明は終りました。それでは質疑は次会から行うことといたします。
#23
○小笠原委員長 次に先般本委員会より轉落農家の配給状況調査のため、各地各府縣に、議長の承認を得まして委員を派遣いたしましたが、今回全員無事大任を果して帰京せられ、両班とも実地調査の報告を整備せられておるようでありますので、これより両班長よりその報告を聽取することにいたしたいと思います。
 それでは関西方面を調査された井上委員より報告を願います。
#24
○井上(良)委員 それでは関西方面を調査いたしました供出制度轉落農家の事情等に関する結果を御報告いたします。
 まず、國会から任命されました調査團の行動から申し上げますと、われわれ一行は、先月二十九日夜東京を出発、三十日朝大阪に到着後、ただちに高槻市並びに枚方市を訪れ、市役所において懇談会を開催し、引続いて近郊村落に現地調査を行いました。午後、大阪府廳において供出関係者を招集して、大阪府下の事情について詳細に質問を試みたのであります。
 翌々五月二日午前中は奈良縣廳におきまして、縣の各関係者より縣内の食糧事情を聞きとりました後、午後は願下における最も零細農、轉落農の多い生駒郡片桐村並びに南葛城郡大正村におもむきまして、親しく村当局並びに農民代表と、詳細な現地事情について懇談を重ね、引続き五條町の地方事務所の係員より十津川方面の僻遠地帶の事情について、説明を聞いたのであります。
 翌五月三日は早朝より和歌山縣紀ノ河沿岸一帶を視察しつつ縣廳に至り、まず資料につれて縣下の事情について説明を受け、その後轉落農家の多い海南地区の事情を調査いたしました。
 翌五月四日縣廳へ官民多数の集合を願い、供出制度に関する熱心な討議を行い、多大の成果をあげて、同日午後帰京の遂についたのであります。
 以上、調査團の行動の大体でございましたが、次に前後四日間にわたる調査活動の結果の概要につきまして、御報告いたします。
 われわれが調査地点として選定いたしました大阪、奈良、和歌山は、おしなべて食糧の著しく不足せる地帶でございまして、いずれも耕地不足のために集約的な農業経営が行われ、平均反攻が高い反面におきまして、零細農が多く、轉落農家の飯米不足もやかましい問題となつておりまして、地方自治体の行政面に幾多の難題を與えているのであります。
 食糧の絶対量が不足いたしておりまする現状におきましては、農民の増産意欲に期待するところが大であることは申すまでもないのでありますが、米價、税金等の面におきまして、物價政策、財政政策上の要請よりいたしまして、農民の犠牲をかなりの程度に強要いたしておりまするので、適正な供出制度が実施いたされません場合におきましては、食糧需給上ゆゆしい悪結果を招來するであろうことは申すまでもないところでありまして、現に各地におきまして耕作放棄が発生いたしておりますことは、すでにその前兆ともいえるのであります。
 しからば現行供出制度ははたして適正に行われているでありましようか。われわれの調査いたしましたところによりますると、まず第一に、人口動態の把握が非常に不完全にしか行われておりません。そのために、食糧の需給計画におきまして、農家人口の計算上、中央と地方とで相当の食違いがあります。その最も著しい例は和歌山縣でありますが、そのために縣の保有量が非常に削減され、從つて需給操作上、轉落農家に対しても相当過重な供出割当を行わざるを得ないという実情になつているのであります。
 轉落農家は地方の劣つた土地を耕作しているのが一般でありますが、中央より與えられます平均反收が高いために、轉落農家に対しましても、村の平均反收に近い数字で生産割当が行われ、從つてそれだけ保有米に食い込んで供出を行わざるを得ないことになり、ここに還元米の問題が横わつて來ているのあります。
 轉落農家に対しましては、人口と平均反收の二面の原因よりいたしまして、非常に不公正な待遇が與えられ、和歌山におきましては、轉落農家のみが四箇月分平均七日ないし十日の遅配を見ているのであります。
 次に、中央で行つておりまする農家保有米の数量計算は、農家の総人口に平均四合の保有量をかけて算定しているのでありますが、末端におきましては、年齢別の計算を行つていますために、農家保有量に不足を來している例もございまして、大阪府高槻市の場合には、その差が二割に達しているのであります。
 面積の減少、災害による收穫減は補正の対象とされておりますが、人口の増加に対する補正を中央が認めておりませんために、地方の保有量が著しく不足を來している事例もございまして、たとえば大阪府のごとき都市轉入解禁によりまして、昨年度の事前割当数量と、後に食糧事務所の作成した数字との差は実に約八万五千石に達しているのであります。
 これを要するに、的確な人口の把握ができておらないために、一方では多数の幽霊人口がいながら、他方では農家保有に相当食い込んでいるという事実を生じているのでありまして、なかんずく轉落農家の窮況にかんがみまして、これを完全保有農家と区分して、農業計画を作成し、彼らに過重の圧迫を加えないようにいたしますると同時に、人口の移動増減をすみやかにつかんで、少い食糧を公平に配分するように、確固たる対策を講ずる必要があるのであります。
 ところで、去る五月一日以降、食糧管理法の改正に先だちまして、政府は、消費食糧の用途別、月別のわくを設定し、消費規制に著手いたしておるのでありますが、基礎資料が不正確でありまするために、轉落農家に対する遅欠配によりまして、その矛盾が解決されるおそれがありまして、この点一般の注意を喚起しておく要があろうかと思われる次第であります。と申しますわけは、現在政府が利用している基礎数字は、人口数においては総理廳の常住人口調査、面積、生産力等におきましては、作報のサンプリング調査によるものでありますが、これらによつて算定された供出数量と、市町村において現在作成しておりまする管理米台帳による数量とは現在のところまつたく無関係の地位にありまして、しかも前者が優越的に使用されまするために、いわゆる天くだり割当の非難があがるのでありまして、たとえば和歌山におきましては、面積で一千町歩、平均反收で二斗の差異があり、その食い違いを轉落農家の犠牲においてつじつまを合わせている傾向が見出されるのであります。
 かような弱い者いぢめ、無理無体のやり方を避けまするためには、今後は、管理米台帳を民主的な方法で正確に記載するよう指導しまするとともに、作報と市町村との有機的な合議機関を設置して、供出制度の合理化をはかる必夢があると思われる次第であります。
 次に、食糧確保臨時措置法の主たる内容をなしておりますところの、事前割当制度に対する地方側の批判につきまして御紹介申し上げす。
 事前割当制度の本質、その長所につきましては、農民も十分これを了解しているのでありまするが、超過供出に対しまするところの一連の行政措置によりまして、この制度のうまみはほとんど消え去つておるといつてもよいように思われるのであります。すなわち、一、総合累進的に賦課される税金の問題があります。二、自由自主を建前とする超過供出が、事実上強制的に、かつ腰だめ的に行われている点であります。中央より命ぜられる超過供出量が科学的根拠をもつていませんために、末端ではこの要求量に合せるように逆算して供出の諸元を適当に変更しているような実情であり、大阪では莫大な報償金を支出して超過供出の奨励を行い、地方財政への重い負担となつているのであります。三、いわゆるボーナス・ラインの問題があります。すなわち、現行の超過供出は事前割当の線で報償金が與えられ、補正線以上に供出しても、事前割当数量に達しない限り、特別價格買出げの恩恵には浴しないわけでありますが、多くの農家は飯米を割いて超過供出しているし、また事実上、末端では補正割当を総花的に行つていますので、特別買上げを補正線に認めるのが至当であろうと思われます。和歌山縣では約一千石の超過供出を行つているにもかかわらず、昨年の災害によつてほとんどの農家が補正されておりまする関係上、三倍買上げの特典を受けたのはわずかに六十石という有様であります。
 主として以上三つの理由よりしまして、事前割当制度の長、所は、現在のところ非常に稀薄化いたしておりまして、むしろ收穫高による反別割部落責任制度を要望する農民の声すら聞かれたのでありまして、今後超過供出の法制化を行いますにおいては、かえつて農民の反感を買い、食糧生産にマイすスの影響があるのではないかとさえ思われる次第であります。
 供出制度、轉落農家の問題につきましては、その他いろいろ報告する事項もございますが、時間の都合上、ごく大筋のみをかいつまんで申し述べた次第でございまして、詳細は報告書に譲ることといたしますが、最後に、今後とるべき対策につきまして、項目的に列挙いたします。(一) 農家人口の把握を正確に狂い、中央と地方との数字を一致せしめること。(二)中央における農家保有量の計算は年齢別構成によつて行うこと。(三)人口の増減による補正を迅速に行うこと。(四)農業計画に完全農家と轉落農家とを明確に区分して生産割当を行い、割当のむりが轉落農家に轉嫁されぬようにすること。(五) ボーナス・ラインは補正線とすること。
 (六) 消費数量の月別用途別わくの設定にあたつては、正確な管理米台帳の作成のために十分な期間と経費とをみること。(七) 正確な管理米台帳を作成している市町村については、作報がこれを十分に利用する方途を講ずること。(八) 米と麦との換算率の変更はこれを法律によつて行うよう措置するこ
 と。
 以上をもつて私の報告を終ります。
#25
○小笠原委員長 次に関東方面を調査せられました坂本委員より御報告を願います。
#26
○坂本(實)委員 今般一週間にわたり出張調査いたしました関東班の調査結果の概要を御報告申し上げます。
 調査をいたしましたのは、埼玉、群馬、千葉の三縣でありまして、まず各縣廳にて縣廳係官、食糧事務所長、農業調整委員、農事試驗場、経済調査廳等より、それぞれ関係係官の参集を請い、当該縣下における生産、供出、食糧需給並びに轉落農家の事情等について説明を聽取いたしましたる後、縣下各地の実地調査をいたしました。
 埼玉縣においては穀倉と言われる二合半領吉川町を、また群馬縣下におきましては、代表的な農村五箇所を、さらに千葉縣にては君津郡金田村及び市原郡五井町を調査いたしました。これら調査の結果を要約して申し上げますと、次のようであります。
 第一は、供出割当の過重ということであります。これは御承知のごとく、事前割当をいたし、後に実收穫を推定して補正するのでありますが、この補正の基準となります実收穫の推定が、現地側と中央農林省側との間に相当の開きがあります。まず農林省側は、大体作報の報告を基礎にしておられるようですが、一般に反当收量においても高く、また風水害、病虫害等による減收を現地側よりも低く見積つております。その上耕作面積については、作報が縣下数千筆について実測を行いましてなわ延を檢出いたし、そのなわ延の比率を從來の全耕地面積に乘じて耕作面積を推計いたしますので、各縣とも從前より耕作面積を増加いたし、これに反收を乘じて全收穫高を推定いたしますので、供出もまた当然強化いたしたことは事実と言われます。特に風水害等による被害地の減收高につきまして、補正が実情に即して十分に行われておりませんので、被害地は保有米を割つた裸供出がなされ、またはなはだしきは親戚、知人より借用ないしは買入れて供出する等の事実がありまして、たとえば埼玉縣二合半領のごときは、このため協同組合郵便局、銀行等より預金の引出し及び借入れは約一億円に上ると推定せられております。さらに群馬縣下木瀬村のごときは、一昨年及び昨年の再度の水害により、数十町が砂礫に埋められ、まつたく耕作不能となつたにかかわらず、なお耕地として供出対象にせられており、あるいは災害保險の対象として共済金が交付せられた耕地についても、減額補正が認められなかつた等の事例を見聞したのであります。この補正の基礎となる実收穫の測定については、最も科学的な方法によつて、公正妥当を期さなければならぬと存じます。
 第二は、以上の供出強化の結果、特に災害地におきましては轉落農家の激増を誘発し、ひいて耕作放棄の傾向を生じ、一般に生産意欲が阻害せられている点であります。しかもこれら轉落農家に対する配給食糧が不十分でありまして、群馬縣においては、これに要する必要量十七、八万石と推定せられているのでありますが、これに対する割当は十一万石にすぎませんので、轉落農家の食糧は三、四月のごときは多きは半月、少きも、三、四日ないし一週間の欠配となり、これを調整するため、食糧配給審議会をつくり、各戸の実情を精査いたしまして、幾つかの順位をつけ、あるいは二十日分、あるいは十五日分と、実情に即した配給を行つて急場を凌いでいるものが多いのでありますが、各地とも今のところ六月以降についてはまつたく見通しを立てかねる状況にあるようであります。
 第三には、かんしよ、または麦を主作とする地帶において、かんしよ、麦については割当供出量よりはるかに多くを供出するにかかわらず、総合供出が認められていないため、米についても同等の基準をもつて供出割当を受けるため、保有食糧の米の比率が低く困却している地帶もあり、これについては総合供出、総合保有食糧の制度を考慮すべきものと考えられるのであります。
 第四は、山間または海浜などの兼業農家が、薪炭の買上げ停止や、海苔、漁業の不振、または一般金詰り等のため、農家経済がきゆうくつになり、ひいて飯米確保の上にも支障を來たしている点であります。
 第五は、裸供出をした農家への配給食糧が、消費者價格をもつて、しかも一般消費者なみの二分七勺ベースとなり、價格上にも、量の上にもむりがあるということであります。
 以上を総合いたしまするに、供出の強化、減額補正の不適正、九原則の実施等による農家経済の梗塞の原因により、轉落農家が増加し、耕作放棄の傾向を生じ一般的に生産意欲の低下が見られるのであります。しかしてこれらに対しまする現地側の意向といたしましては、適正な補正が行われないので事前割当ということは意味がない。事務的に煩雜なばかりである。事前割当は目標を示して農家の総合計画を立てさせるためであるといわれて來たが、事実上は総合計画はできない。超過供出の法制化に付ては、的確なデーターに基いて生産量を檢討し、超過供出が可能である所から供出し、また減收になつた所は、その対象からはずすこと、事前割当をやや低目に固定さぜ、超過供出の余裕を残すこと。減額補正を法制化し、收穫減には必ず補正するようにすること。現在地方補正と称するものは、超過供出の裏づけのもとになされるもので無意味である。保有米の優先確保の実行。などがあげられるのであります。
 最後につけ加えて申上げたいことは、農村の実情の正確な把握が非常に困難であるという二とであります。たとえば地方や生産量の算定につきましても、一部落内においてさえも幾段にもわかれ、これが正確な順位の設定が非常に困難であります。たとえば群馬縣邑樂郡中野村の言によれば、同村と対岸の差があると称せられ、また千葉縣香取郡新島村と茨城縣潮來町とでは、反当供出量に二斗の差があり、千葉縣はその二斗分だけ供出が重くなつているというのであります。したがいまして供出の強化と申しましても、一率にそうなつているのではなく、村により、部洛により、さらに各農家によつて千枝万葉であります。供出制度をスムーズに行わしめるためには、どうしても正確な生産力の調査を基礎とすることが必要だと思われます。また農業が常に天候に支配され、工業生産と異り、豊凶の差が年々著しいのでありますから、実收高を正確に抽出いたしまして、減額すべきはし、追加すべきはするようにいたしますことが肝要と存じます。
 なお千葉縣山武郡千代田村においては、目下精細な土地調査を行つているさうでありますので、これができましたあかつきには、作報の調査のやり方に対しましても、よい資料を提供するでありましようし、また今後の農村の土地生産力を判定いたします上にも好資料となるのではないかと存じますので、言申し添えた次第であります。
 以上簡軍ながら御報告申し上げます。
#27
○小笠原委員長 それではこれにて委員派遣の報告は終りました。
 本日はこの程度にとどめまして、次会は明十日午前十時からとし、本日はこれにて散会いたします。
    午前十一時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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