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1949/09/29 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第48号
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1949/09/29 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 農林委員会 第48号

#1
第005回国会 農林委員会 第48号
昭和二十四年九月二十九日(木曜日)
    午前十時五十三分開議
 出席委員
   委員長 小笠原八十美君
   理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君
   理事 松浦 東介君 理事 深澤 義守君
   理事 寺本  齋君 理事 吉川 久衛君
      遠藤 三郎君    小淵 光平君
      奈良 治二君    平野 三郎君
      渕  通義君    村上 清治君
      石井 繁丸君    井上 良二君
      八百板 正君    園田  直君
      寺崎  覺君
 委員外の出席者
        農林政務次官  坂木  實君
        專  門  員 岩隈  博君
        專  門  員 藤井  信君
    ―――――――――――――
九月二十九日
 委員足鹿覺君及び小林運美君辞任につき、その
 補欠として八百板正君及び園田直君が議長の指
 名で委員長に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 派遣委員の調査報告に関する件
    ―――――――――――――
#2
○松浦委員長代理 これより会議を開きます。
 それではまず派遣委員の調査報告に関する件を議題といたします。去る五月三十一日特殊農業地帶並びに農政一般に関する調査及び木材及び薪炭の需給対策に関する件の関係の調査のため、本委員会より北海道、東北、中部及び九州各地方に、議長の承認を得まして委員を派遣したのでありますが、今回全員無事大任を果して帰京せられて、各班ごとに実地調査の報告を整備せられておるようでありますから、これより各班長よりその報告を聽取することにいたしたいと存じます。
 まず北海道班は、班長小淵光平君より御報告を願います。
#3
○小淵委員 北海道班は本月の十二日から二十五日まで二週間にわたつて全道をまわつて参つたわけであります。班員は寺本先生、石井先生、八百板先生、吉川先生、それから岩隈專門員の六名でありまして、視察中は道内の官民との座談会を通じ、また時間の許す限り奧地に入つて、農林業、畜産業、開拓、農村工業等の視察を行いまして、今後におけるところの北海道開発上重大なるポイントの把握に努めて参つたのであります。二十五日に帰つたのでありますが、詳細にわたつての報告は報告書をもつて御報告することにいたしますが、ここではその大要を御報告申し上げたいと思うのであります。
 北海道の開発事業は、いまやわが國経済再建途上のホープとして廣く注目を集めているようでありますが、北海道はわが國最北端の寒冷地で、農作物期間が短い上に、特殊土壌地帶が多くして、面積の廣大、東北六縣に新潟、埼玉を合わせたぐらいの地域があります。かつ交通不便で、人口稀薄である等、産業経営上の自然的、社会的な環境不良に基いて幾多の難問題が横たわつておりますが、その開拓は今後にまつべきものが非常に多く、立法上、行政上の格段の措置を講じてその使命達成を助けて行かなければならない要があつて参つたのであります。以下大体まわつて参りました順路、それから主なる視察の点を申し上げたいと思うのであります。
 北海道に入りましたのは十四日の朝でありましたが、入りますると地元の北二郎先生、肥料公團、道議会議員等の出迎えを受けて、その日は道庁で、午前中官民の一般事情を聽取いたしました。ちようど地元の苫米地先生、松本先生等に列席していただいたわけであります。午後は実地の調査をいたしまして、その晩札幌にとまり、次の日は自動車で出かけまして、ノツポロの酪農大学から、農林省の林業試験場、美唄の原野等の視察をいたしまして、その地方の灌漑の視察をいたし、その晩東洋高圧の寮にとまりました。翌日は列車に乘つて旭川支庁に向かう途中、車窓より案内人の説明を聽きながら旭川に到着いたしまして、旭川においては合同酒精、旭川営林局、北海道農業試験場、昭和電工旭川、國東パルプ等の視察を終えまして、そこでちようど上川農民代表の森さんという人から北海道の供出のことについて陳情を受けたのであります。その晩は旭川にとまりまして、翌日列車で上川中南部から北見西部、北見東部の事情をやはり車中より説明を受けまして北見に下り、農事試験場支場、それから同地方の農村工業に関連を持つところのはつか工場、北見の農業倉庫の事情を聞きましたところが、二十三年度の玄米、小麦、大豆その他のものが七月二十日現在で二十三年度の分として二十万俵以上もそこにあるまま動かないという事情を聽いて、実は驚いたことの一つとして取上げたのであります。翌日は自動車で美幌峠を越しまして弟子屈にくる途中、川湯の開墾地、ひどい山の中に入つて調査をいたしまして、ここで釧路に向かう途中の拓殖実習場等をよく見て参つたわけであります。ちようど美幌峠を越すときには快晴でありまして、オホーツク海、網走港等の遠く見える眺望をながめて参つたのであります。その日は非常に遅くなりまして、弟子屈の温泉にとまりまして、十九日にはやはり汽車で出発して標茶、鳥取等の三万町歩の沼地地帶を見てまわつて釧路駅につき、それから根釧、十勝の太平洋岸を通りまして、十勝中部帶廣市についたのであります。その晩帶廣市にとまりまして、翌日は亞麻会社、甜菜製糖会社、酪農会社を見、午後は農民会館において多数の農民代表者と懇談会をいたしたのであります。その日は、大正村と言つて模範村だそうですが、午後はそこの視察をいたしまして、その夜出発して参つたのであります。翌日は朝岩見沢に到着いたしまして、その晩登別につきまして一泊いたしまして、その翌朝八雲の酪農地帶を調査いたしました。そこで人口受精、開拓状況等、個人で一千町歩も開拓したという人の苦しむ談をつぶさに拜聽して参つたわけであります。
その視察中われわれの頭に考えて参つたことは、北海道全体として、本年度の米の作柄は、七月下旬から八月上旬にかけての温度の低下によるところの不稔実粒のために、供出には相当の問題があるように伺つて参つたのであります。一般に超過供出の余裕は少ないと見られて、從つて追加供出の法制化等にはきわめて反対の意思を表明しておつたようでありました。
 北海道は自然條件が不利であるために、農作物については、特殊價格の設定を要望する声が強いのでありますが、諸般の情勢で実現は不可能であると思われるのでありますが、寒地におけるところの水稻單作農業救済のために、昨年度同様の温床苗代設置のために、相当額の補助費を計上することが必要であるように考えてまいりました。
 北海道のごとき自然條件の不良な地域においては、特に適地適作主義を採用して、たとえば輸出用適作物としては、はつか、除虫菊、亞麻、アスパラガス等を、また地方保持上、生畜農薬推進のために飼料作物、または肥料作物を奨励すべきであるように見て参りました。これらの特殊作物に対するところの中央の態度が明確でないために、末端には非常に迷つておる者があるように見受けて参りました。増反の助成ないし奨励の措置を講ずるの要がきわめて重要であるように考えて参りました。
 さらに北海道は特に重粘酸性土壌、または火山灰土壌が廣く分布しており、ますために、土地改良事業が急務中の急務であるように考えて参りました。改良済みの土地は大体四〇%以下と言われておりますが、土地改良補助事業の復活、災害復旧予算の計上と、迅速なる支拂い。土地改良指導技術員の増加、土地組合の補助金等の必要が最も急であるように考えて参りました。
 さらに畑作地帶はばれいしよの栽培に適しておりまして、その生殖地であつて、畑作農家の経済は、ばれいしよの生産によりまして維持せられておるものきわめて多いのでありますゆえに、今後急激にその統制撤廃が行われるようなことについては、價格の下落ということも考えられますので、農家のこうむる損害は莫大であるということからして、加工技術の研究、他作物への轉作準備の進捗とにらみ合わせて、これらの措置を講ずることが必要ではないかというふうに考えて参りました。
 また肥料の配給は、公團職員の積極的なる努力によつて順調に行われておりますが、特殊土壌が多いので、燐酸質の増加を図る必要があるように考えて参りました。全道で約五万トンの不足といわれておるのでありますが、生産を増加せしめる必要があると考える。
 特に北海道はどういうものか電力がきわめて不足でありまして、道内の工場の大体三、四十パーセント程度しか稼動しておらないような状態であるのでありまして、電力等の問題についても、これは特に考慮を拂わなければならないというふうに考えて参りました。
 北海道には至るところ数万町歩の大原野がありまして、未開発に残されておりまする七十ないし八十万町歩に上るといわれるところのかような大原野の土地改良を行い、その利用度を高めて、集中的なる開拓政策をとることが、これまた必要なることであるように考えております。北海道では今日までなお二十万町歩に上る未開発奧地林が残つております。北海道の奧地資源の開発はきわめて重要な政策として取り上げらるべきものである。特に逐次パルプ資源が不足を告げて参つております。工場の操業率は七割程度であるというようなことで、全道について非常に関心を拂わなければならないように会社当局等では言われております。
 さらに北海道農業の今後進むべき方向は、酪農にあるということは言うまでもないのでありますが、そのためには農村金融の逼迫しておる今日、家畜導入資金のあつせん、飼料問題の解決、人工受精所の設置等を必要とすることがきわめて重要なことのように考えられたのであります。なかんずく組合金融の長期資金の貸し出しについては、特別の考慮を要する必要があると考えられます。
 最後に北海道における木炭事務所の経理状況について調べて参つたのを御報告申し上げたいと思うのですが、北海道で札幌と釧路に木炭事務所が置かれておりますが、釧路は昨年十二月に置かれたものであると聞いております。北海道における事故の最大のものは、釧路港から京浜地帶へ一昨年緊急輸送として木炭が船に積まれたのでありますが、その契約が不明確であるために、結局船に積みこんでからの損失は船会社が持たないという契約がとりかわされてあるということを聞いて参りました。そのために約三千トンに上る木炭が亡失しておるのでありますが、それはほとんどその責任のありかが不明のように契約の上からなつておるので、この点がきわめて問題であるように察して参つたのであります。九月十日現在の政府の確定債権が大体九千万円に上つておるというふうに聞いて参りましたが、債権の担保については大体成算があるように事務所長から言われております。なお延滯利子等の計算については、きわめてルーズな計算をしておるようでありますが、まきの政府手持分については相当の荷痛み等がありまして、これまた相当程度の損失があるのではないか、総計いたしまして大体一割五分ないし二割くらいの損失は、結局こうむらざるを得ない状態に追い込まれるのではないかということを調べて参つたわけであります。
 以上北海道の全道をながめまして、北海道振興のために、官民あげて非常にその意氣に燃えておるという一面も強く見て参つたわけであります。幸いにいたしまして、二週間の長い期間でありますが、一人の落伍者もなく、きわめて意氣軒昂として二十五日に帰つたわけであります。以上北海道の視察の大要を申し上げた次第であります。
#4
○松浦委員長代理 それでは引続いて東北班の御報告は、班長の野原正勝君にお願いいたします。
#5
○野原委員 先般東北地方をまわりました概況を御報告申し上げます。
 十二日に出発をいたしまして、青森、秋田、岩手三縣をまわりまして、十九日に調査を終わつたのでありますが、時間の関係で詳細なことは報告書に譲ることにいたしまして、概況だけ御報告申し上げます。
 まず岩手縣におきましては、最初縣庁に参りまして、縣当局から農林行政に関する種種な事情を伺い、また要望などを聽取いたしまして、現地の視察に参つたのでありますが、紫波郡煙山村に参りまして、そこの國有林開放による開拓地を調査いたしました。なお煙山苗圃、これは盛岡営林署の管内の苗圃でありますが、これを見て参りました。そうして同時に山王海の農業水利のダムの工事を調査いたしまして、第一日を終わつたのであります。この煙山の國有林の開放によるところの開拓地を見、そしてまた苗圃事業を見まして、國有林の造林に対する現在の施設の一端を見たわけでありますけれども、非常に厖大な苗圃の施設を計画的にやつて、段々成果を上げており、また國有林開放による開拓も、非常によい結果を見ておるのであります。ここで紫波郡の矢櫃山と称する一帶の國有林開放に対する地元村長たちの熱心な要望を受けたのでありますが、これらの問題は文書をもつて御報告申し上げるつもりであります。
 なお山王海の農業水利のダムは、すでに昭和二十年度に着手をしてやつておるわけでありますが、これは有名な岩手縣における穀倉地帶とも言うべき紫波郡一帶の農業水利に対する、非常に大きな仕事なのでありますが、從來からこの地帶は水不足で、水げんかの非常に有名なところでありまして、昨年もこれが映画化されたような事情もありますが、この完成を非常に待つております。ところが工事の方は非常に計画的に進んでおりながら、予算が非常に足りないというので、この予算をぜひ増額してもらいたい。あるいはまたその増額ができないのならば、一時これに対しまして金融の措置を講じてもらいたいという要望が非常に強くあつたのであります。
 第二日は青森縣に参りまして、青森縣庁で縣当局から農林行政一般についての事情を聽取いたしました後、青森縣営林局に参りまして、國有林の事情を聞いたのであります。
 第三日は青森営林局の青森苗圃場において、事業上の各地の施設、なかんずく木材利用に関する各種の施設の現況を調査いたしまして、次いで青森縣当局の案内で、青森縣下における農業地帶の現況の調査に終日費やしたのでありますが、時にその中で、農林省の園藝試験場東北支場、これは西津軽郡水元村廻堰の園藝試験場支場と水元村における農業水利改良事業の現場を調査いたしましたところが、地元團体から非常な陳情があつたのであります。ところでこの農林省の園藝試験場の支場は、今回試験施設の整理統合によつて一應廃止されまして、これが岩手縣の調川の方に全部移るという計画になつておるのでありますが、地元におきましては、せつかく二十年間もかかつて施設をしてようやく園藝試験場としての新面目を発揮するような段階になつたときに、にわかにこれを持つていかれることは非常に残念であるということで、これを悲しむ声が非常に強かつたのであります。この試験場は主としてりんごの試験をやつておるのでありまして、あらゆる品種にわたつて栽培を研究しておるわけでありますが、ようやくここ一両年の間に幾らかの結実を見るような段階になつておるのでありまして、これは廃止しますと、今までの一切の努力が水泡に帰するという事情も有りますので、この試験場の問題に対しましては、これが調川の方に移つた場合におきまして、何らかの形で、今までの貴重な試験結果をむだにしないような措置を講ずる必要があろう、さように考えたのであります。なお西津軽郡の水元村を中心とした農業水利改良事業でありますが、これは岩木川筋の約一万町歩以上にわたる農業水利のために絶対欠くことのできない廻堰の工事の問題で、地元の非常な要望があつたので、その個所を見たのでありますが、その調査いたしました結果によりますと、まさしくあの廻堰を完全に利用し、それに春水をため、農業の灌漑に資すると同時に、あの夏及び秋にわたる洪水を調節する。それによつてあの岩木川一帶に水害を排除するという、一石二鳥の効果の有る大事業だと思うのでありますが、この現状をみますと、はなはだ遺憾ながら手堀り掘さく式によりまして、スコツプで土をかき上げておるという現状なのであります。今日やつておるような仕事の状態では、おそらくあの仕上げるには、今後三十年くらいかかるだろうというようなことが予想されるのでありまして、それによつておそらく五万石くらいの増産は確実になし得ると予想されるような大きな仕事に、わずか六百万や七百万で、しかもスコツプで手掘りでやつておるというようなことは、どうも今日あまり想像できないようなことでありまして、工事の現状を見まして、はなはだ慨嘆にたえない氣持がしたのであります。政府としましては特にこの点を考慮されて、至急三箇年計画なり五箇年計画をもつて、必ずあの水利事業を完遂するという根本的な、具体的な計画を立ててもらいたいということを、この機会に要望しておくものであります。
 次いで青森縣弘前の工業試験所を調査いたしましたが、この試験所は、特にりんごの加工等に関するいろいろな試験を準備しておつたのであります。なおこの日はいわゆる水田の單作地帶の岩木川筋一帶の状況を見ると同時に、青森縣特産のりんごと米麦の主食生産の調整の問題等も、実地に見聞きする機会を得たわけであります。さらに各種公團等の職員からいろいろな陳情等を受けたのであります。
 第四日には秋田営林局管内の大館に参りまして、大館の國有林の事業、あるいはまた秋田縣立の林業指導所を調査いたしました。次いで北秋田郡上川沿村の農業災害の復旧状況を見に参つたのであります。ここは一昨年の大水害及び昨年の水害と、二回の水害を受けまして、徹底的に堤防が破壊され、田畑が流失した個所なのでありますが、その後秋田縣及び政府当局の、災害復旧に対するいろいろな施設をやつておるわけでありますが、附近の町村長たちが多数あつまりまして、その状況を詳しく見たわけでありまするけれども、はなはだ遺憾ながらどの仕事もみな中途半端でございまして、一つも完成していない。もし万が一本年水害があれは、今まで二箇年もやつた仕事が、また完全に元も子もなくなるというきわめて危険な状態であることを目撃できるのでありまして、非常に寒心にたえぬ次第であつたのであります。幸い本年は大きな水も出ずして、あの程度の工事でもどうやら相当の收穫を見たようでありまするけれども、これは何とかして、災害の復旧だけはしなければならぬという点を強く感じたのでありあます。特に農業水利とかあるいはまた農地改良に対する政府の補助金の打ち切り等に対する、地元の農民の非常な不平、不滿の声を同時に聞いたのでありますが、これらの問題は、ああいう現地を見るにつけても、今後の農林政策として農民の眞の熱心な声を政策の中に取り入れて、政府の施策としてこれを行う必要があろうということを痛感したのであります。
 第五日は、秋田営林局管内の能代営林署及び七座営林署の國有林事業を調査いたしまして秋田に参つたのでありますが、かつて日本の三大美林といわれた秋田杉が、戰時中においての過伐、及び戰後においても相当むりな伐採をしておるわけでありまして、これに対しまして、いかにして山林の存続をはかるかという点において、秋田の営林局は非常に苦心を拂つておるわけでありますが、今日の國有林特別会計の施設に、十二分の予算を支出するわけに行かないという現状に置かれておることを痛感して参つたのであります。今日の日本の木材事情等から行けば、何としてもやはりある程度必要な木材の伐採はやむを得ないと考えるものでありますが、それと同時に忘れてならぬことは跡地の更新であろうと思う。あとをどんどん植えさえすればある程度過伐しても不安がないのでありますが、その造林の面において非常に消極的である。そうして伐採の方はあくまでもこれを強行するというようなことが繰り返されましては、山林の資源というものはその均衡を失して遂には收拾のつかない状態に行くことは必死であります。もうすでにそういう段階に來ておるのでありますから、そう面においても、今後の國有林行政に対する政府の施策に関しましては、この面をも十分檢討していかなければならぬという点を痛感したのであります。
 第六日目は、秋田縣庁におきまして、秋田縣当局から農林行政の全般についてのいろいろな実情をお伺いいたしまして、それから南秋田郡の下井河村という八郎潟の湖畔にある單作地帶の村を見たのでありますが、この村のごときは、耕地面積約六百町歩であるのに畑地がわずか二十五町歩くらいきりない。從つて野菜も自給ができないという極端な村であります。山林もわずか百町歩そこそこであるが、そのわずか百町歩ばかりの山林も、開拓者が入つて約半分以上を耕作しておるというような、もう極端な單作地帶でありまして、こういう村の現状、特に本年は水害で悩まされ、昨年も一昨年も年々水害のために悩まされるほかに、最近は窒素肥料、金肥のみによる米作の関係上、随所に稻熱病が発生する等の関係で、非常に單作地帶の農村というものは脆弱な状態を呈しておるのでありますが、これらに対しては、いかなる手段、処置を取ればよいかという点に関しましては、今後農林行政として、特に考えなけれがならぬ幾多の問題があろうかと思うのであります。そういつたような状況を調査いたしまして、その後、第六日の午後は各地公團あるいはまた農業協同組合関係の諸君、あるいはまた林産縣秋田の森林組合等の方からも各種の陳情を受けたのであります。
 以上第六日にわたりまして三縣の状況をいろいろ見ましたのでありますが、この調査におきまして、われわれは各縣の当局、あるいはまたわれわれが視察に行きました現地、あるいはその附近の各町村長の方たち、あるいはまた農民團体の諸君、各種公團等、農林関係の方たちの非常に熱心な陳情、請願等をたくさん受けたのでありまして、一々これを具体的に申し上げる時間はないのでありますが、これらのものは、いずれあとから文書をもつて一括御報告申し上げるつもりであります。
 この中で、特に考えていかなければならぬと思うような点について、二、三申し上げたいとおもうのでありますが、特に岩手縣におきましては、この山林縣岩手の面積は非常に厖大でありまして、その厖大な岩手縣として、特に山林が非常に多い約百万町歩以上が山林であります。その中に國有林が四十万町歩以上を占めておるという関係上、國有林の開放等に関しましては非常に眞劍であります。今回國有林の開放に対しましては、從來の放牧地、採草地等が一應開放されるという段階になつたことは、國有林開放の端緒を得たものとして、地元の農民は非常に喜んでおるわけでありますが、なお國有林に接壤しておる地帶、國有林の開放によらずんば、とうてい健全な農村をつくり得ないと考えるような地帶の山村におきましては、引続き國有林開放を非常に熱心に望んでおるのであります。あるいはまた從來國有林はもちろんのこと林産縣として、從來から林産物の政府への生産供出に対する責任を負わされておつたために、日本一の木炭縣であるとか、木材縣であるとかいうことで、大いに縣民は勇んで伐採した関係上、ほとんど手近い山林はまつたくないといつてよろしいような現状になつたのであります。從いましていやが應でも奧地の未利用資源地帶を開発するという必要に非常に迫られておる。特にそのためには林道をつくつて、この奧地の開発にあたらなければならぬという声が非常強かつたわけであります。これらに関しまして今後の治山治水の面から、あるいはまたその森林資源の開発という点から見まして、特にこれらの地点の諸君の要望するような、林道施設等を國家の予算をもつてやるというような点を、この際考えなければならぬと考えるものであります。
 なお從來馬産地帶として、軍馬の生産は全國の約三十パーセントにも近いものを出しておつたのでありますが、もう馬産地帶から漸次酪農、牛等にかわりつつある現状でありまして、酪農村におきましては農村の立体化、立体的、多角的な営農の方針をもつて、乳牛の導入等をはかつて酪農をやりたいという声が非常に多いのでありますが、何分にも乳牛を入れるためには非常にたくさんの予算を必要とする。しかるにどの農村におきましても、乳牛を買うだけの金がない。自分の手持の資金をわずかずつ集めても、ほとんど思うような乳牛を買えないのであります。酪農協同組合等も各地にできまして、着々なけなしの金をはたいて、乳牛を導入しておるわけでありますが、ここにわずかな資金さえあれば、きわめて容易に乳牛の導入が可能となるのであります。そういう点から考えまして、畜産の振興という問題に対しましては、乳牛の導入であるとか、そういつた酪農に関する何らかの金融的措置等をこの際特に政府は考慮する必要があると思う。これはひとり岩手ばかりでなく、そういつた畜産の各地帶におきましては、まつたく同様のことが繰り返しわれわれに要望されておつたのであります。
 なお岩手縣は、農村工業に対しましては非常に熱心に縣当局は指導し、計画をしております。基幹工場が約十一設定されまして、それに三十五の農業協同組合を助成して、それぞれの農協がいろいろな農村工業をやつておるのでありまして、非常に多角的にあらゆる部面にわたつて農村工業が芽ばえておるのであります。しかるにせつかく芽ばえました農村工業も、最近の金属の事情等よりまして、せつかく芽が出たがしぼんでしまつておるという状態でありまして、これに肥料をやつて芽ばえた農村工業の芽を伸ばしてやらなければ、せつかくの努力もまつたくこれまた水泡に帰するというきわどい段階にありますので、農村工業に対しましては、今後政府の積極的な施策を要望するものであります。
 さて薪炭郡として年間一千万表からの木炭を生産しておつた岩手縣としまして、今回の特別会計による薪炭の政府買上げの停止は、まさしく産地としては致命的な打撃であつたのであります。これに関しましては各方面からいろいろな陳情等もあつたのでありますが、從來政府の買上げによつて辛うじて生産を行い得た奧地林地帶が、今回の停止によつてまつたく採算が取れないという状態になり、奧地の多数の生産労働者が、失業者として追いやられるというような段階になつておるのであります。急速にこれらの点からも奧地林の開発等に関しまして、林道とかあるいはまた生産者に対する補助であるとか、政府の強力な施策を必要とすると考えるものであります。なお最近統制の解除の氣構えに関しまして、各業界の、特に中央から卸賣業者等が、陸税として産地に現物を買いあさりに参つております。はなはだしいものは一俵わずかに六十円で買つたという例さえあるのであります。最近岩手縣に買いつけられた木炭は約一億円に上るであろうといわれておりますが、これはもつぱら東京の薪炭の卸賣業者であるという点に、この際われわれは重大な関心を拂うべきであろうと思うのであります。聞くところによると、東京における薪炭の卸賣業者は、政府に対して支拂うべき相当多額の債務を持つておりまして、この返済は、遅々として進んでいないということが言われているにもかかわらず、一方においてどこからこの金を出したのか知らぬが、産地岩手縣等に行つてどんどん買い付けをしているというような事実、これは各産地の人たちのだれが來た、あれが來たという実例を上げての話でありますから、こういう事実があるということは、今後の薪炭特別会計を処理する上において、われわれは重大なる関心を持たなければならぬということを痛感いたしたのであります。
 なお青森縣におきましては、特産物のりんごについて縣当局においても非常に力を盡くしているわけでありますが、一箇年の生産約七十億円が農民のふところに入ると言われているきわめて大きな問題でありますので、これが消長は青森縣といたしましてはまつたく最大の関心事であるというように言われておるのであります。ところが最近におきましては、國内における消費の方面においてもすでに行詰りの状態を呈しておる。從つて今後りんごの加工によつて、これを海外に輸出貿易をするということを考えなければならぬというので、青森縣ではこういつた方面に対する積極的な施策が要望されるわけでありますが、縣におきましてもすでに縣立工業試験場等におきまして、これらの対策をも着実に講じているようであります。特に青森縣の一番大きな問題は、りんごと同様に、いやそれ以上に大きな農村問題といたしましては、先ほども触れましたが、岩木川一帶の農業水利、灌漑用水及び水害防止、この両面の対策をいかにするかという問題に帰着するのであります。おそらく岩木川の筋くらい水の問題で悩まされて來た地帶は日本でも多くなかろうと思いますが、いわゆる岩木川筋の非常に豊饒な地帶でありまして、ここがほんとうに農業水利の心配なく、あるいはまた災害のおそれなしで行くならば、青森縣の米收高は今日よりもおそらく二十万石いな五十万石も増すのではないかと思うのであります。またこういう問題が解決されれば、少なくとも一万町歩以上の新規の開田が可能であるという点も合わせて考えるならば、この問題をなぜ今まであのような状態で放つておいたか、まことに了解に苦しむのであります。これは先ほど申しました廻堰の堰堤工事を急速に行うと同時に、今日まで建設省が内務省当時からやつて参りました岩木川の改修工事がきわめて不徹底でありまして、実行してからすでに二十五年にもなりますが、二十五年もかかつていまだにらちがあかないという現状から、これを急速に処理する必要があると思います。あるいは十三湖の干拓の問題もこれまた農業水利と合わせて考えていかなければならぬ問題であろうと思いますが、要はこの岩木川の全般に対する根本的な対策が統一されてないという点であろうと思います。岩木川上流地帶には、從來から縣当局等が、この岩木川の奧部にダムをつくつてもらいたいということを、非常に強く要望しておるようでありますが、これらの問題も同時にこれを考え、そしてまた廻堰の堤防によつて農業水利及び灌漑、又洪水調節等もはかつて行く、それからまた岩木川筋の改修工事によつて悪水を排除するとか、あるいは塩水の流入を防ぐとか、あるいはまた機械力によつて、灌漑、排水を行うと言つたような、各方面の対策を一緒にして行くならば、この仕事は必ず成功できると思うのでありますが、各分野がそれぞればらばらなことをやつておるという点が、今まで長い間日時を費やし、予算を使いながら、なおかつ効果が何らあがつていないという点に帰するのであります。その点を特にわれわれは痛感して参つたわけでありま
すが、大きく見れば青森縣の問題は、りんごに対する対策、そしてまた岩木川の水利全般の問題、この二つに帰すると私は断言できると思うのであります。
 なお青森営林局におきましても、いろいろと林業関係の事柄に対しましての話も聞いたのでありますが、これらのものは一應省略をいたします。
 秋田縣の方では、水田の調査をやつた後、單作地帶へ参りまして、いろいろと事情を伺つたのでありますが、先ほどすでに申し上げた通りでありまして、こうしたいわる單作地帶と称せられるような地帶が非常に多いのであります。秋田縣の水田の全体の約八〇%以上がいわゆる單作地帶として考えられるというようなことでありまして、秋田縣はその意味においては、米が非常にとれて何か裕福な縣であるというふうに考えられておることは非常に残念で、秋田縣は実は非常に経済的には脆弱であるということを秋田縣知事はわれわれに対して強くこの点を強調しておられたのであります。われわれもまた同様に、あの單作地帶の村を見たときに、これは容易ならざることであることを痛感しておつたのでありますが、それにつきましても、何とかしてあの單作地帶の農村に対して活を入れたいということをわれわれは考えておるのであります。懸当局にしましても、その点をいろいろと考えて、苦心してやつておるようでありますが、結局うまい方法がない。蓮池知事は農政においては相当の権威を持つた知事でありますが、蓮池知事も実はこの單作地帶の全部を救う具体的な施策ありやと言われても、実はそれはないのだ、どうも困つた。この單作地帶をある程度畑作に切りかえて行くことによつて、この脆弱性を少しでも直したいと思う、從來から耕地整理などをやる場合において、相当程度畑があつたと思われる地帶さえも、耕地整理をして水田をふやしたい。水田にのみ依存する、水田だけを非常に重要視するというような一時の風潮が、こうした畑までもことごとくこれを水田にしたということのために、村でみそを煮ようと思つても豆もできない、野菜も買つておるというような、非常にびつこな村にしてしまつたという点を強調されまして、今さらどうも水田を畑にすると言うと笑われるかもしれないけれども、ほんとうの正直な話をすれば、秋田縣は相当程度畑作に切りかえる以外には助かる道がないということを蓮池君は特に強調しておつたのであります。私どももこの点に関しましては、事きわめて重大でありますので、今後これは大きな研究課題として慎重に考慮いたしたい。一まずそのお考えをお伺いして参つたのわけでありまするが、これらの問題も今の供出制度等に関連いたしまして、再檢討を要するのではないかということを、この機会に特に報告しておく次第であります。農村工業等に関しましても、秋田は相当にやつておりまするけれども、結局單作地帶としてとれるものは稻のわらだけであるので、大した農村工業のできるはずはない、結局わら工品を少々作るという程度のこと以外には一歩も出られないという情ない状態で、いろいろなことをやりたいけれども、結局できないということを痛感しておつたのであります。木材縣としても秋田は相当な日本有数の生産縣でありまするが、林産縣と單作地帶というようなものは、地理的には相錯綜していない、両方とも孤立しているような状態である。これをうまく組合せて行くというふうなことが地理的にできないというような状態を考慮するときに、宿命的に單作地帶の問題は、今後大きな考慮を要する必要があろうというふうにわれわれは見るのでありまして、アイオン台風、カサリン台風によりまして、二箇年間大きな災害を受けた秋田の農村の方たちが、二度の水害にも屈せずに非常にがんばつている、本年の岩手縣も同様でありますが、岩手、秋田、青森三縣とも非常に水害を受けたにもかかわらず、農民は非常な努力によつて、本年は三縣ともまれに見る豊饒を告げております。われわれが行つた当時に、すでにもう早場米の刈取りにいそしんでおつたのでありまして、早場米供出制度等の奨励金等は、どんなことがあつてもやはり東北農村の実情からこれは続けてもらいたい。供出制度の存在する限りは、早場米の奨励金を打切つてもらつては困るという率直な声も、われわれは同時に耳にしたのであります。その点から考えましても、早場米の供出に対しまして、政府のやつている今日の措置は、正直なところ画一的であつて、もう少し時期的に、地元の東北地方の現況を考慮してやつてもらいたいという声も非常に強くあつたことを、この機会に報告しておきます。あるいはまた農村水利、あるいはまた耕地改良、あるいはまた災害の復旧等に対しまして、農村の実情はどうしても政府の全面的な努力を必要とするという点を、特にどの縣の農村も強くこれを強調しておつたことを同時に報告するものであります。
 薪炭の特別会計等のことに関しましては、これは一括して書類で御報告申し上げますが、各生産地としましては、この輸送途中等においてなくなつたというふうな事態もいろいろあるようでありますが、各木炭事務所においては、熱心にこれが整理に当つておるのでありまして、この整理の中間報告的なものをわれわれは聞いて参つたのでありますが、当初予想したよりは、途中のそういつた赤字等はだんだん解消されて行つているようであります。特に各生産地帶において、受入れ調書によつて買入れをしたというようなものに対しては、現物を補填させるとか、あるいは賣りもどしをするという強硬な措置をとつているのでありまして、これらの点は各生産者が責任を持つて木炭事務所と折衝しておりますので、そういう問題としましては、ほとんど事実上の支障を來すような場合は非常に少ないということを、各木炭事務所長は強調しておりましたので、われわれはいかなる場合があつても、まじめに特別会計の整理に当つてもらう限りは、農林委員会としてはできるだけ諸君の身分は保障するという申合せでやつておりますから、安心してひとつまじめに整理に当つてもらいたいということを強調して参つたのであります。
 いろいろと御報告申し上げたい点もありますが、時間が参りましたので、以上簡單ながら東北地方の概況を御報告した次第であります。
#6
○松浦委員長代理 次に中部地方の調査をされた平野三郎君から御報告を願います。
#7
○平野委員 中部班は、民自党から遠藤委員と私、共産党の深澤委員三名で、藤井專門員、林野庁から土屋技官が随行したのでありますが、班長の遠藤委員は、途中まつたく余儀ない事情で参加をやめられた関係上、私から御報告申し上げます。
 調査いたしましたのは静岡、岐阜、長野、山梨でありまして、大体先ほど北海道並びに東北の各班から御報告になつたのと共通の点がたくさんありますので、詳細については後ほど書面に讓ることにいたしまして、この際きわめて簡單に特殊の点を御報告申し上げます。
    〔松浦委員長代理退席委員長着席〕
 まず木炭については、岐阜縣は過般私から御報告申上げましたので、静岡、長野、山梨について、特に今回特別会計の赤字の処理の問題を調査いたしたわけでありますが、いずれも各事務所等とも鋭意整理努力中でありまして、大体順調に進捗しているようでありまして、静岡縣のごときは、十二月末までには帳簿整理が完了するという状態であり、他の事務所もほぼ同様の見通しであります。ただ長野だけは地域が廣汎であるのと、何分にも山間僻地である関係上、調査事務がはなはだ潰滯しているように見たのでありますが、特にその原因としては、檢收員が七月三十一日をもつて整理され、さらにその供給の支拂い等が遅滞しているという関係上、この際整理にこの檢收員が必要な部面が多いためにはなはだ困つているという状況であります。また一般職員もその身の振り方について努力しておりますが、相当不安の点があるために、これは先ほど東北の方から御報告された通り、この際この地位の安全を保障して、專心整理に努力するような手配が必要であるという要望もあり、痛感いたしたわけであります。手持数量の整理は、甲府のごときは十月中には全部処理できるという状態でありまするが、しかし他の事務職について見ますと、品質の粗悪のために一〇%から一五%、場合によつては半分ぐらいまで値段を引き下げなければならぬというようなところもありまして、賣りもどしあるいは他府縣の大口需要者を物色しているという状況であります。
 なお政府の債権については、一時重役の個人保障を取るという政府の説明があつたわけでありますけれども、実際事務所について調べますと、ほとんどこれを持つておりません。これは卸賣業者の重役の中には、まつたく名目的に就任したというものがあつて、ほとんど保障を拒否しておるという状況でありますが、しかもながらその債務事項については保障を取らなくても支障がないという説明を各事務所ともいたしておるような状況であります。
 次に、食確法の関係について御報告申上げますると、当時問題となつておりまするかんしよの統制撤廃について、静岡縣においては統制撤廃をされることにむしろ反対をするという空氣がある。調度静岡の縣庁に到着しましたときに、今回の麦の事前割当の食糧調整委員会の開会中でありまして、その会に臨みましたところ、明年度におけるところのいもの統制の継続を條件として割当を承認するというような状況であつたのでございます。しかるに岐阜縣並びに山梨縣等におきましてはまつたく事情がかわつておりまして、むしろかんしよの統制撤廃を歓迎しておるというような状況でありました。岐阜縣のかんしよの主産地でありまする田原町に參りますときなどにはそこに出席した全農民が異口同音に、どうせ統制が撤廃されるという段階にあるならば早い方がいい、こういうような意見を持つておつたのであります。これはかんしよの統制があつて困つておつたのが、統制が解除されれは、ばらのまま簡單な俵裝くらいで附近の都市に販賣することができるとおいうような理由から來ておるようであります。なおかんしよのキユアリングについては、見返り資金から五億円出ておりますが、この事情はきわめて不成績でありまして、岐阜縣のごときは、最初割当三十棟に対してわずか六棟しか実施をしないという状況であります。山梨縣においては、一つもこれは行われないというような状況でありますことは、この資金の條件が当初の計画とはなはだ変更を果して、きわめて過重と申しまするか、現在五箇年償還で年一割というようなことになつたことに基因しておるようで、大体総合的にこの食確法についての各地方の見解を考えてみまするに、政府の規制の変更ということが、事前に予告されることなしに突然行われるということのために、非常に困つておるというような空氣が多うございます。たとえば山梨縣のいわゆる原七郷という三千町歩の砂礫地帶のごときは戰時中桑園であつたものを全部かんしよに轉換せしめられたのでありますが、今やこれを再轉換をせなければならぬというような状況になつて、非常にこの点苦痛を訴えておるものがあるのであります。すなわち統制の解除ということについてはこれを歓迎はするけれども、なるべく早い機会に予告するか、またその手続、手段等については急激な変化を避けるようにしてもらいたい。こういうような要望が全般を通じて強くあつたような次第であります。
 簡單でありますが、一言御報告申し上げておきます。
#8
○小笠原委員長 それでは最後に九州地方を調査されました班長井上良二君から御報告を願います。
#9
○井上(良)委員 それでは私から九州班の視察報告を申上げたいと思います。九州班は九月十一日に東京を出まして、一行は井上、原田、淵、寺崎の各委員で、翌十二日午後一時に福岡に到着しまして、ただちに縣庁で縣下書く農業團体代表者並びに縣の農業関係の部課長を交えまして懇談会を開催いたしました。福岡縣において一番問題になつておりますのは、鉱害による耕地の陥没問題が重要な問題として取上げられ、これが供出割当の上に重大な問題を提供しておるようでございます。次にかんしよの統制撤廃の報道がされましたのに対しまして、集まりました全代表者の人々は、これの全面的統制撤廃に相当反対の声をあげておつたのであります。何分にも視察期間が短時日であり、その間の廣汎にわたる調査でありますので、福岡、長崎、佐賀及び熊本の各縣は原田、寺崎、両氏に視察を願い、鹿兒島、宮崎、及び大分の各縣は井上、淵の両氏において視察することにし、第一班すなわち井上らは鹿兒島に、第二班の原田氏らは福岡の方面と二班にわけて調査をしたのであります。その調査の細目にわたる報告は後日文書をもつて報告することにいたし、その概要を第一班よりまず説明いたします。
 九月十三日第一班は午後六時に鹿兒島に到着、ただちに縣の農林関係の部課長と縣下農林関係の代表者の懇談会を開き、翌十四日午前九時より縣庁において農林各團体各代表者と懇談会を開催して、農林各般の問題について切実なる意見を聞いたのであります。本鹿兒島縣は三回にわたる台風によつて、農作物の被害は甚大をきわめ、いわゆる白洲地帶によつて形成されておる関係上、耕地、農道、水路、ため池、山林等が大雨に際して浸蝕せられやすく、その被害状況は他府縣の被害とまつたく比較にならぬものがあつたのであります。なお当縣は大隈地方に稻熱病が発生し、海岸地帶の畑作は潮害を受けて、農業計画の実行の上に重大な支障を來し、当初の農業計画の変更を強く要求していたのであります。さらに本縣のかんしよの生産價格は八億余円の巨額に達しておるので、これが統制撤廃の報道に猛烈なる反対の意見を開陳していたのであります。
 午後五時宮崎縣に入り、縣の農林関係部課長の懇談会を開催し、翌十五日午前九時縣庁において縣下各農林團体業者と懇談会を開いたのであります。本宮崎縣の農作物も、三回にわたる台風の被害をこうむり、特に海岸地帶の畑作は收穫皆無の地帶が随所に見られ、わけてもかんしよは二回、三回の植え直しを行つた結果、ほとんど完全な收穫を望み得ない地方が多いのであります。また同縣の山間部の水田及び美美津町附近には稻熱病が発生し、その被害が廣範囲にわたつておるのであります。また都農町附近では葉巻虫による被害を受けております。さらに本縣においてもかんしよの統制撤廃について反対の意見がきわめて強く、いもの工業化をはかるとともに、轉作作物の完全收穫が経営されるまで撤廃には反対の声が強かつたのであります。なお同日都農、美々津の被害地のほか、高鍋町用排水の改良事業及び川南村の國営開墾事業の全般を視察した後、最後に西郷村の薪炭生産状況を視察してきたのであります。
 翌十六日大分縣庁におもむき部課長連を初め縣下各團体との懇談会を開催しました。当縣は、南部畑作地帶は台風の被害をこうむり、北部山間地帶約一万町歩にわたる水田稲作は、稻熱病による被害を受け、これが予防対策に藥剤、機具等に五千余万円を支出しているのであります。農民はこれら経費の一部に國庫負担による補助を熱望するとともに、減額補正について公正なる措置を要求していたのであります。本縣もまたかんしよの統制撤廃について、絶対反対の意見を強く主張しているのであります。十七日さきに述べた稻熱病の被害地帶たる宇佐郡の山間部を終日にわたつて視察しました。
 以上述べましたほかに各縣とも共通せる農民の切実なる要望は、農業協同組合の健全なる育成を望むとともに、團体経営並びに小規模の土地改良、災害復旧、農業水利等に対する政府の補助の打切りに反対し、全額補助を要求しています。最近農業資金が累月枯渇し、農業経営の上に重大な支障を來しつつある現状にかんがみ、農村金融に対して、速やかなる措置を協力に要求していたのであります。また各縣木炭事務所について特別会計廃止に伴う諸般の実情を調査してきたのでありますが、時間等の都合で詳細は文書によつて報告することにいたします。
 次に政府は農地改革を打切らんとするがごとき言動に対して、農民はきわめて遺憾となし、さらに積極的に土地改良等の実質的効果を高めるための措置を要望していたのであります。病虫害発生に対処して農業、機具等がストツクされていなかつたために、これが受配に長時日を要し、被害を一層拡大した事例がありますので、農業、機具等を常備するとともに、藥剤の効能、機具の機能等を常に政府が責任をもつて点檢するよう要望していたのであります。また農村への家畜の導入について必要な資金、飼料について、政府の対策を強力に要求していたのであります。
 最後に食糧確保臨時措置法の一部を改正する法立案すなわち追加供出の法制化については、農民の代表は反対し、本法案が議会で継続審査中にかかわらず、政府の一部において米券による取引とか、かんしよの統制撤廃等の報道をいたすことは、まじめな農民の心理を動揺せしめ、供出を農民に求めんとする現地の係員及び指導者は非常な迷惑を受け、政府の主要食糧供出に対する責任を疑つているのであります。これら各縣の一致せる意見は、中央政府と地理的にきわめて不便な地域にある関係から、中央政府において現地の実情を十分認識してない。またいろいろな連絡が思うように参らないというような関係から、いつもまま子扱い的立場に置かれてる点を不滿としておりますので、中央政府においてもこれら遠距離にあります各縣の農業事情を十分に現地においてよく認識され、公平なる対策を立てられるような要求が強くされたおつたことを申し上げておきたいと思います。なお詳細は文書をもつて申し上げますが、福岡、長崎、佐賀、熊本の各縣の報告は寺崎委員よりお願いすることにいたしまして、私の方の報告はこれで終ります。
#10
○小笠原委員長 それでは第二班の寺崎君の御報告をお願いいたします。
#11
○寺崎委員 引き続き九州班第二班として、視察しました福岡、長崎、佐賀、熊本各縣の調査報告をいたします。十三日の福岡縣下視察を皮切りにいたしまして、十四、十五日長崎縣、十五、十六日佐賀縣、十七、十八日熊本縣と、各縣の実施視察及び関係團体との懇談をやつて來ましたが、現在各縣共通して重大なる問題と目されることは、数次にわたり九州各地を襲つた台風の被害とその対策であります。ことに農林水産関係のみでも、平均二十数億にのぼる被害をこおむり、これが復旧に対しましては、早急適切なる措置の必要が強く認められました。被害激甚な地帶は山間、山林麓、平坦地と、それぞれ様相を異にしておりますが、農民の共通要望事項は、機能的な治山治水、河川対策と、当面の喰いつなぎのための生活補助の懇請であるのであります。すなわち、住宅、畜舎の再建、耕地の復旧、食糧、種苗、肥料農機具、家畜の確保はもちろん、当面を如何にして喰いつなぐか、そのための生活資金の調達及び農業共済保險金の急速なる支拂に希望をつなぐ実情であります。ことに災害による補正の問題は、農業計画の変更の必要にせまられており、また縣当局としては災害復旧対策のための予算的措置の援助を強く要望し、地方債の増額の承認、短期貸付金の早期融資、災害復旧費に対する國庫補助、地方税付税の増額配付方当を希望しておるのであります。
 各縣における縣庁及び農林関係團体代表者との懇談会では、農林各般の問題につき終始熱心な討議があり、一般的並びに地方的特殊事情につき種種有益切実なる意見が開陳せられました。
 食糧の生産供出並びに價格に関する事項については、農業計画の円滑なる推進をはかるため基本調査を根本的に是正すること、適地適作の経済原則に基く割当の実施、統合供出制度の確立、現行農家保有量の増量と優先確保等の要請があります。
 さらに米價決定に対しては農民の意思を反映せしめ、米價は生産費を償う額において決定されたきことが、農民の切実なる要求であります。ことに食糧確保臨時措置法一部改正案に対しては強い反対意見が見られ、その成立には再生産に対する具体的な裏づけの確立が必要であることを明らかにしております。
 またいも類の統制撤廃については、かんしよ生産地たるこれら四縣としては、統制経済による定額所得が見こみ立たず、農家経済の不安定を來し、農作物の作付轉換に動揺を來す等の復旧によりまして反対の意見強く、統制撤廃の実施にあたつては経過措置を適切にし、統制作付のもとにあつた農民に、不当圧迫のごときことのなきことを、また作付轉換に当つて、用途別作付を勘考し得る資料の供出、米麦農家への供出加重を避けること等、その農業組織更改につき万全の措置をとるよう要望しておるのであります。次に農業課税の面では、一般的に農家負担の過重が農業経済の発展を阻害し、農家経済の維持、再生産の障害をなしている現状であります。その原因を、現制そのもの及びその運用上の欠陥に基くものとし、この両者の適正な改善を要求している。すなわち所得税については、家族農業從事者のおのおのについて基礎控除の制を適用すること、課税取扱に関しては更正決定及び審査請求に対する決定に公正を期し、民主的納税制度を具体化する必要あり、農業再生産に影響するところ大なるためその要望も切実なるものがあつたのであります。
 その他開拓及び干拓事業に対しては、今次台風による被害の復旧対策と並行して、根本的な治山治水事業を要する箇所が多く、その予算的措置の早急な実例が必要と見られます。ことに特殊事情としての福岡縣の鉱害対策、佐賀、熊本縣の干拓、堤防の補強は農業生産上等閑に付せられない問題がたくさんあるのであります。
 なお詳細なる報告は文書をもつてすることとし、以上簡單でありますが九州班第二班の調査報告を終ります。
#12
○小笠原委員長 これにて各地の調査報告は終りました。
 本日はこの程度にとどめまして、次会は明三十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後零時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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