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1949/09/29 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 水産委員会 第30号
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1949/09/29 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 水産委員会 第30号

#1
第005回国会 水産委員会 第30号
昭和二十四年九月二十九日(木曜日)
    午前十一時十五分開議
 出席委員
   委員長 石原 圓吉君
   理事 小高 熹郎君 理事 鈴木 善幸君
   理事 玉置 信一君 理事 平井 義一君
   理事 松田 鐵藏君 理事 林  好次君
   理事 早川  崇君
      川端 佳夫君    川村善八郎君
      田口長治郎君    冨永格五郎君
      夏堀源三郎君
 委員外の出席者
        議     員 遠藤 三郎君
        水産廰長官   飯山 太平君
        建 設 技 官 米田 正文君
        専  門  員 小安 正三君
        専  門  員 齋藤 一郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 漁業法案
 漁業法施行法案
 静岡縣狩野川放水路に関する実情聽取
    ―――――――――――――
#2
○石原委員長 これより会議を開きます。
 漁業法案の審議に入りますが、それに先だちまして靜岡縣狩野川の治水問題につきまして、その放水路を漁業の最も重要なる地点に選ばれておるということから、われわれ水産常任委員会へ実地調査の要請がありまして、委員は本月十日に現地視察をしたのであります。その結果漁業にとつて、殊に今回漁区を拡張されたところのまぐろ、かつを漁業には最も重大なる関係のあることを確認しましたので、現地においては靜岡縣知事、関係縣会議員、地元関係者、並びに治水を計画するところの農山村の関係者にも面接をし、また実地も調査をしたのであります。その結果といたしまして、建設省河川局のこれに対する今日までの調査の結果を一應説明を求めたいのであります。よつて米田治水課長の御説明を求めます。
#3
○米田説明員 狩野川の治水計画につきまして、今日建設省として考えております点を概略御説明申し上げます。
 狩野川は御承知のように、沼津の町を流れております伊豆の大河川であります。昭和元年以來治水工事を実施いたして参つたのであります。すでに今日その半ば以上工事が進捗をいたしておる現状でありますが、最近日本の各河川は揆を一にしてその流量が非常な勢いで増加をいたして参つております。その原因はいろいろあろうと思いますが、戰時中の水源地方の森林の濫伐、あるいは下流の河川の維持管理の十分でなかつた点、あるいはその他等の原因によりまして、最近非常に川の水の量が増して來たのであります。なお量が増すと同時に、出て来る時間というものが非常に早くなつて来たことは御承知の通りであります。最近十大河川について調べた結果を申し上げますると、大体戰前と戰後を比較しますと、川の水の量といたしましては二割三分程度殖えておる現状であります。もちろん谷川によりましてそれぞれ相違はありますけれども、平均いたしますとそんな程度に今日増加をいたしておるのであります。しかもそれが非常に早く出て参るというようなことと、なおかつ上流の水源が非常に荒廃をいたしたために、土砂が非常に流れ出ており、そのために河床が上つておる。同じ水量が流れて参りましても洪水氾濫の危険が非常にあるところに、かてて加えて水の量が非常にふえて来るというようなことで、全國の各河川について再検討をいたしまして、それぞれ対策を練つておるのであります。
 狩野川に関しましても同様の傾向があるのであります。現在狩野川の水の流れの量といたしましては、一番大きいものをとりまして、三千五百立方メートルというものが流れ得る断面を必要とするのであります。三千五百と申しますのは、一地点を一秒間に流れる水の量で表わした数字であります。それが下流の計画の洪水量になつておるのであります。ところが御承知のように沼津の町の中が非常に狭くなつておるのであります。なおかつ昔よりも大分浅くなつて参つておるので、從來の計画ならば沼津の町の川幅を廣げ、その深さを深めることによつて改修するのも一方法でありまするが、これは今日計算をいたしてみましても、非常な工費を要することと、なおかつ民家の移轉あるいはその他諾施設の移轉、改築等の工費が非常にかさみまするので、これは適当でないというので、昨年來御承知の通りの放水路案というのを研究いたして参つたのであります。最近よりやく測量等も終つたのでありまするが、大体の要点は長岡のあの温泉のすぐ下手から山手を沿いまして、口野で海に抜ける案であります。この放水路に一千立方メートルの水を流しまして、下流の流量を三千五百立方メートルにしようというのがこの案の根本であります。從いまして下流では二千五百立方メートルの水であれば、現在の沼津の市内はさほどの民家の移轉あるいは改築等もしないで済むというので、この案を大体建設省案として持つておるのであります。ところが御承知のように昨年から今年にかけまして、この問題は漁業の問題、特にかつお漁業に影響するところが非常に大きいという問題が起きましたので、われわれの調査も一應ありましたけれども、これは地元の縣に詳細に調査をしてもらう必要があるということから、この漁業問題の補償その他に関しまして、縣で関係の方々を委員とする調査会をつくつていただくことになりまして、縣が中心になつて今日まで検討をいたして来たのであります。その結論等はすでに御承知のことだと存じまするが、大体縣としましては、この狩野川治水の方策を四案にまとめましてその四案についての比較檢討をいたしたのであります。第一案は、沼津の市内を金はかかつてもいい、あるいはいろいろな故障はあるけれども、一應やるものとすれば幾らかかるかというようなことを第一案にしまして、これは沼津市内の狩野川を拡張するという案であります。第二案は、その上の方に黄瀬川というのがありますが、そこの対岸からやはり放水路を掘つて出すという案を第二案とし、われわれが持つておりまする建設省案を第三案、第四案を建設省案からさらに水路を延長しまして獅子浜にまで放水路を持つて行くという案を第四案にいたしております。
 それらの四案についていろいろと比較檢討しました結果、縣の調査会といたしましては、建設省案をもつて実施するということに意見の一致を見たという最近の通知が参つたのであります。われわれといたしましては、この案によつて進みたいと考えておるのでありまするが、先ほどの漁業の問題に関しましては、これは相当な補償をしなければなるまい、のみならずいろいろな施設もしなければなるまい、あるいはその被害を受ける漁業者の対策についても処置を講ずることが多々あるというようなことで、それらの問題については、今後縣が全責任を持つてこの解決に当るというところまで來ておるのであります。
 來年度の予算の問題になりまするが、まだその見当が明確でありませんので、今日何とも申し上げられないのでございまするが、もし予算が許すならば、この案で来年から着手いたしたいと考えております。そういたしまして去年、おととしの、特に二十三年の洪水でありまするが、あの程度の洪水が出ますると、三千七百町歩程度の浸水があり、かつ三千戸程度の家が浸水を受けまするので、この耕地の浸水による損害と、それから家屋の浸水による損害とを早く解決いたしたいと考えておる次第であります。
#4
○鈴木(善)委員 ただいま米田治水課長より狩野川の口野に抜ける放水路の問題につきまして御説明があつたのでありますが、私どもは地元漁民諸君の陳情によりまして現地調査をいたして参つたのでありますが、その際これが水産業に及ぼすところの影響につきまして二つ大きな問題があるのであります。一つは、内地におけるいわしの漁業として、非常に惠まれた環境にあるところのあの靜浦湾一帯の好漁場が、この放水路の開設によりまして、数年ならずして壊滅の危機に瀕するのではないか。これは北上川その他の放水路による土砂の流出あるいは濁水の放出によりまして、湾内一帯の魚族、水産資源の壊滅した事例等にかんがみましても、まことに憂慮いたされる点であります。あの地方の漁民は、ほとんどいわし漁業によつてその生計を営んでおるのでありまして、関係漁民の死活的な問題である。これが第一点であります。
 次の大きな問題は、さらに深刻な影響を持つのでありますが、あの一帯でとれるところのいわしは、大部分いけすによりまして、かつお漁業の生きえさに供給されるものであります。この近海におきまして、かつおの生きえさの供給地といたしましては、靜浦湾及び房州の舘山湾を除いては好漁場がないのでありまして、特にかつお漁業の最も盛んな靜岡縣、神奈川縣等を地元に控えますところの、靜浦湾のこの生きえさの供給上における使命は非常に大きいのであります。このわが國の漁業の上において重要な地位を占めるところのかつお漁業が、靜浦湾の生きえさの供給を絶たれます場合にこうむるところの深刻なる打撃というものは、はかり知り得ないものがあるのであります。今回マツカーサー総司令部の絶大なる御好意によりまして、南方の優秀なるかつお、まぐろ漁場の操業海区を拡張していただいたのでありますが、関係漁民がこの恩典に対して、非常に欣喜雀躍し、今後の生産の増強に奮い立つております場合に、このようなかつお漁業の原動力であるところの生きえさの供給地が一方において壊滅するであろうような工事がここに行われるということは、まことに水産関係者の不可解に思うところであります。建設御当局は、技術的な面その他からいろいろ御調査されたのであろうと思うのでありますが、このわが國の水産業に及ぼすところの深刻なる影響、特に輸出水産物の大きな使命を持つところのかつお、まぐろ漁業に決定的の打撃を與えるであろうところのこのような工事をなさろうとするのでありますが、地元の靜浦湾一帯の漁民はもちろんのこと、かつお、まぐろ漁業に與えるところの影響をも十二分に御調査の上に、御説明がありましたところの第三案を採用することを御決定になつたものであるかどうか、ただ地元の小さい一地区の問題としてこれを御檢討になつたのではないかどうか、この点について米田課長の御答弁をお願いするものであります。
#5
○米田説明員 この漁業問題に関しましては、建設省としては相当愼重に研究をいたしたのであります。もちろんこの工事によりまして、靜浦湾一帶の漁業が相当の影響を受けるであろうということは想像できまするので、これが今日本における漁業としていかなる地位を占めておるか、あるいはこれが他に解決の方法がないかどうかというようなことと、それからこの治水によつて國として受けるところの利益、いわゆる洪水被害の除去の効果の問題、これを勘案いたしまして、最後の決定をいたすべきだと考えておるのであります。もちろん漁業のみ、あるいは洪水被害の除去のみで解決をいたすべき問題でなく、國の総合効果の点から解決をいたすべき点だと私どもは信じておるのでございます。從いましてその結論に関しましては、まだ正式省議をもつて決定をいたしたという段階にまでは達しておりません。ようやく私の手元に、ごく最近靜岡の知事といたしまして、調査会においての結論としては、この漁業問題は別途処理をするからして、治水工事は促進をしてもらいたいという意見書が参つたのであります。近く省議においてその最後の決定をいたしたいと考えておるのでありますが、われわれといたしましては、万全にも万全を期する意味におきまして、なお足らざる点の資料等を收集いたしまして、最後の省議決定の資料にいたしたいと考えております。
#6
○鈴木(善)委員 ただいまの御答弁によりまして、建設御当局におきましても、まだ最後の結論を下していない。事柄がきわめて重大であり、かつ影響するところが非常に廣汎であるために、愼重の上にも愼重に御検討中であるという御答弁を承りまして、はなはだ意を強ういたしたのであります。私ども靜岡縣知事の意見も徴して参つた次第でありまするが、地元において関係者一同の同意を得たというようなことを建設省に申出られているやに聞くのでありますが、私どもの直接知事から承りましたところによりますと、まだ十分地元においても解決がされていない。特に犠牲をしいられるところの漁業関係者方面には何らの了解もついていない。これが事実であります。かつまた縣知事は、漁業関係に及ぼす被害はある程度考慮されるので、その代償として漁業者に対して港の修築あるいは道路の建設、できるだけのその犠牲に報いる他の措置を講ずるということを言うておるのでありますが、漁場が壊滅して何の港湾があるか、漁業者にとつて、漁業生産が上らずして何の道路の利用があるかということで、地元においても今深刻なる反対運動が展開されておるのであります。特に先ほど私が申し上げましたところのかつお、まぐろ漁業の根拠地を、靜浦湾一帶の漁場を失つた場合にどこに求めるかという点に至りましては、何らの対策がない。もとより静岡縣一縣で対策は立てられないほど大きな問題でありまして、水産全般の大きな立場から見ました場合に、毎年一億前後の耕地、家屋等の被害を除去するために、数億の沿岸一帯の漁利を失う。そのためにさらにかつお、まぐろ漁業に決定的な打撃を與えるという経済的な面からいたしましても、もつと漁業に影響のない方途を技術的にも政治的にも愼重に考究いたしまして、漁業に対する影響をできるだけ避けまして狩野川の治水事業が解決できますように、建設当局にさらに御善処を要請するものであります。特にこの問題は、私が先ほど申し上げましたように、全國のかつお、まぐろ漁業に及ぼす影響が深刻でありますので、單に静岡縣知事が地元民を納得させたというようなちつぽけな問題ではないのであります。ついては建設省が省議御決定になります前には、水産廳当局に対しましても、漁業上に及ぼす影響の意見を十分に徴されまして、静岡縣だけでなく、政府全体としても、総合的な観点からもつと妥当なる結論を生み出されるようにお願いしたいと思うのでありますが、水産廰当局と建設省御当局との間に、この問題についていかなる御連絡、御協議が今日までなされておるか、この点を水産廳長官並びに米田治水課長より御答弁を願いたいと思うのであります。
#7
○飯山説明員 ただいま鈴木委員から狩野川治水問題に対する水産当局と建設当局の交渉いかんということをお問いになつたのであります。この問題につきましては、水産当局としては、もとより数回にわたつて調査をいたしておるのであります。その調査の結果、ただいま鈴木委員から申された通りの事実を確認しておるのであります。從つて現在の設計の案はぜひともかえていただきたい。それでなければわれわれはこの問題の解決に協力するわけにいかない、こういう意思表示をいたしておるのであります。過般静岡縣の地元業者が陳情に参りました節にも、私どもの方は係の者を同行させまして、建設当局にもその意を申し述べておるのであります。ただいま省議の決定も近くあるというようなお話をここで初めて伺つたのでありますが、その間遺憾ながら建設当局から詳細な交渉を受けてはおらぬのであります。その点だけをはつきり申し上げておきます。
#8
○米田説明員 今のお尋ねの漁業の問題に関しましては、私ども現在のところ問題を縣に移しております。懸は治水の問題、あるいは漁業の問題、あるいはその他関係のほとんど國が所管する各種の事業を所管いたして、全体をながめる面については非事常によい條件をもつておりまするので、第一段階においては、縣の知事の総合計画、総合勘案の上で、一應の結論を出して行こうというのがわれわれの考えておるところでありまして、この問題の結論を縣においてうまく見出せないというような場合には、われわれ中央の問題として扱いたいと考えておる次第でありますが、現在のところまださき申し上げました段階において運営されておるという状況であります。
#9
○鈴木(善)委員 飯山長官並びに米田課長の御答弁によりまして、省議決定を前に控えて、両省間においてまだこの問題について折衝が行われていないということが初めてわかつたのでありますが、特にただいまの米田課長の御答弁では、いささか私どもの考えております重要なるこの問題の本質に対する御理解が乏しいように思うのであります。漁業関係と流域ー帶の住民との調整は、総合的にこの問題を検討できる立場にあるという趣旨で、静岡縣知事におまかせしているということであります。なるほど地元の漁業者のこれによつてこうむる影響と、流域一帯の住民の被害の問題との総合勘案は、静岡縣の小さな視野で一應できると思うのでありますが、私どもの最も重視いたしておりますこの問題の本質は、先ほど申し上げましたように、わが國のかつお、まぐろ漁業に決定的大きな影響をもつものである、こういう点にあるのであります。從いまして静岡縣知事の小さな視野においてはこの問題の解決点は見出せない。今回総司令部がかつお、まぐろ漁業の生産量を五割以上増大せしめまして、わが國水産物の輸出の増進をはかり、自立経済の確立に寄與せしめようという大きなる好意によつて、南方の漁業が開放された趣旨にかんがみましても、このかつお、まぐろ漁業に甚大な影響を及ぼすこの問題は、断じて一縣の知事の裁量によつて裁決さるべき問題ではないのであります。どうか建設御当局におかれましても、この問題の重要性をとくと御認識なされまして、むしろ建設当局が水産廰当局とこの問題を十二分に討議されて、國家的見地から妥当なる案を得られますように、特に御善処をお願いしたい考えであります。この点だけを御要望申し上げておきます。
#10
○石原委員長 この場合委員長より質問をいたします。狩野川のかさ上げの工事が失敗であつた。そのためにかさ上げ工事が完成に近づくほど水の氾濫がふえて來た。それは河川へ耕地より流出する水路をふさいだために、せつかく長い間続けた工事が失敗したのだという声を方々で聞くのでありますが、これに対する建設当局の御所見はいかがでありますか。また最初獅子ケ浜付近に放水路を選んだ。ところがそれがまた口野という所に還元したことにつきましてわれわれが調査をいたしましたところが、漁業者がどこへ放水をしても反対をするから一番工費の安くあがるところへきめたという説を聞いたのでありますが、これは國家の官吏としてはなはだしく不親切きわまるものであつて、たとえ地元の漁業者がいかなる説を発しても、いかに反対をなしても、技術的に見て最も妥当なるところへ、工費のいかんにかかわらずにきめて、そして漁業の方の損害を避け、また放水の目的も達するということにしなければならぬのであります。にもかかわらず漁村が反対するから一番工費の安くあがる所を選んだということは、はなはだしく不都合きわまる点を感ずるのでありますが、これに対する御所見も承つておきたいのであります。まずこの二つをお尋ねいたします。
#11
○米田説明員 ただいまの最初の問題は、かさ上げ工事が進むにつれて治水工事が失敗だつたという御趣旨であつたと思います。内容はよくわかりませんけれども、これはおそらく治水工事のうち、下流でだんだん堤防の工事が進んで来た。堤防の工事のうちには水門等がありまして、支流関係の水、あるいは本流の堤内地の水を、水門によつて河川に放流するが、河川の水位の高いときには、水門を閉しておくために、その間はー部の地区の水は本川に流れ出ないという時間がある、そのために家屋あるいは耕地が浸水をするという現象が起る場所があるのであります。そういうことを指して言われておるのではないかと考えますが、そういう意味に解釈をして御説明を申し上げたいと思います。
 一体河川の改修工事が全然ない場合、いわゆる原始河川の場合には、たとえば関東の地域で申し上げますると、利根川が全然堤防がなかつたころには、あの川は現在の隅田川に流れ込んでおつたのであります。あるいは渡良瀬川は現在の江戸川に流れ込んでおつたのであります。從いまして、そのときには堤防がほとんどありませんでしたから、出水ごとに十万町歩、あるいはひどいときには十七、八万町歩に及ぶ水害を起しておつたのでありまして、年々被害が十万町歩を下らなかつた時代が相当長くあつたと考えられるのであります。しかしながらその後利根川の切りかえができまして、現在は銚子の港に流れて出るように改修工事を一應完成いたしたのであります。あるいは渡良瀬川も利根川の一つの支流として改修を行つたのであります。現在における災害は、一昨年のカザリン台風のときに栗橋の決壊がありまして、三万町歩程度の浸水を受けたのでありますけれども、これは内務省が利根川の改修を始めまして以来、六十年間に一度もその例を見なかつたのであります。その原因に関しましては、われわれは別にその責任を逃げるわけではありませんけれども、ほとんど戰事中は川の手入れをまつたく顧みなかつたこと、あるいは水源が非常に荒廃をいたした事と、それらもろもろの條件が重なりまして、あの不祥事を招來いたしたのでありまするが、それ以外はほとんど水害らしき水害を受けておらぬのであります。あの沿岸は最近大きい水害をほとんど受けておらないのは皆さん御承知の通りであります。ただ先ほどもお話がありました水門の地区の一部については、本川の水が高い間、何時間かは水門を閉じておくということになりますので、その内水のはけが悪い時間はあろうかと思います。そういう特殊の地域は川によつてはふるのでありますが、それをまつたく解決しようとするならば、現在のところ排水ポンプによるのほかはないのであります。東京都内だけについても、最近被害を受けました平井の地区にお声ましては、いつもポンプで水をかい上げて内水を排除いたしておるのであります。從いまして、かような本川の水位が高い所の水を処理するという方法は、そういう機械排水に頼るほかに道はないのであります。ではその内水が、堤防のなかつた場合にどうであるかという問題になると、これはたいへんな間違いをいたしておるのではないかと思います。最近大分治水工事が進んで来て、大洪水の災害を受けなくなつて来たために、地元の人が小さい災害に非常に関心が強くなつて來たという現われではないかと私は想像いたすのでありまするが、もし狩野川に現存堤防が一メートルもないとお考えになるならば、私はその問題は解決いたすのじやないかと存ずるのであります。いろいろのことを現地で申し上げる人があり、お開きになる機会が多かろうかと思いまするが、大局から御判断をくださるならば、私はその問題はおのずから明らかになるのではないかと存ずるのであります。
 次に第二の問題に関しましては、獅子浜の案と口野の案と両方があつて、どうせ両方とも反対があるのだから、同じ反対があるならば品野にした方がよかろうという、口野にしてよいじやないかということで、品野に決定をされたというような今お話でありましたが、私はそういういきさつはまだ全然聞いておりません。單なるさような理由で、私はこの口野に案が決定をいたしたとは必ずしも考えられないのであります。相当長い間にわたつて縣では研究をいたした案だと思いまするので、おそらく確固たる理由があつて決定をいたした案だろうと私は存ずるのであります。それで私どもそれらのことについての静岡縣としての詳細な内容、経過につきましては、今後聴取をいたしまして、その機会にあらためて御回答申し上げる方がよかろうと思います。
#12
○石原委員長 委員長よりもうー言質問をいたします。
 第一の問題はよく調査をして、つまり獅子浜のところへ一旦建設省は選んだ、それをまた元の口野にかえたということについてのいきさつは十分御調査を願いたいと思うのであります。なお狩野川の河川の堤防のかさ上げという問題を私は申し上げたのでありまするが、今課長は堤防がなかつたらという言葉があつた。これははなはだけしからぬことであつて、堤防がなかつたならば川はないはずなのであります。川があるから堤防があつて、その調節がうまく行かぬというところが、この工事をする重点なんであります。ところが、上げたために耕地より河川へ流出することに停頓を來したということをわれわれは聞いたのであります。また河床のうちに多数の耕作地があつて、これはむろん川洲でありましようが、そうしてその耕作はむしろ堤防の中の畑よりはよくできておるというようなことも諸所で見たのであつて、そういうことは排水をよくするゆえんであるかどうかということを、しろうと目にも感じたのであります。そういうような点からこの狩野川の排水の工事の技術の問題について、われわれは疑いを存しておるのでありまして、はたして御説明のように行くかどうかということを非常に疑問を持つておるのであります。なおまた、この排水の性質としては、たとい沼津市に直接の被害が予想されるというようなことで、これを河川の拡張や改修をやらないということは間違つておる。たとい工費がよけいかかつても、技術の面からいつて、たとい沼津市のまん中をたちわつても、排水の工事は完全に市民の被害をこうむらないようにできるはずであるとわれわれは技術を信ずるのであります。そういう点からなお考慮の余地がありそうに思うのでありまして、これらの点に対するお考えも承つておきたいのであります。なおこの静岡縣知事より漁村が納得をしたという申出があつたということでありますが、この申出の日時をこの際ひとつ承つておきたいのであります。
 この耕地の損害と海の損害との問題についてでありますが、私らの聞いた範囲では陸の損害はおよそ一年に、水の氾濫、停滞の多いときには一億円の減收である、家屋の損害もまぜて一億円程度の損害である。こういうことを言われているのであります。これは責任のある人たちの説明のうちにも承つたのであります。はたして建設省はそう認めておられるかどうかということをこの際承つておきたいのであります。海の損害は今ただちに数字では現わせられないのでありますけれども、かつおのえさ、いわしが平均三十万貫であります。このものが必ず大減收をきたすということは明らかであります。
 このえさを失うためにかつおの漁獲が何億円になるかということは算定できないのでありますが、おそらく五億円ないし十億円の程度であろうかとわれわれは考えておるのでありまして、むろん日本の産業、経済の上から、建設省に対して工事をやるということに対する追究はこれは当らないのであつて、政府に対してことの軽重を見きわめてこの工事をどこにするか、またやるかやらぬかということをきめなければならぬと考えておるのであります。そういう点につきましては今ただちに質問は申さないのでありまするが、陸の損害が一億円程度であるかということに対して、そうお認めになつているかおらぬかということをこの際承つておきたいのであります。それから知事より納得したという書面は何月何日に出たかというこの三点であります。
#13
○米田説明員 知事が現地で関係の代議士及び関係の縣会議員からなる懇談会で協議した結果、口野の放水試案に決定したから実施をしてもらいたいという意見は九月の七日付で河川局長あてに参つておるのであります。この関係は実は現地においでになつたときにおそらくもはやお聞きになつたことであろうか思つて、当然のことのように私お話し申し上げましたが、まだ御承知なかつたようで、実は私の想像が非常にはずれておつたことを感じておりますが、日付は今申し上げた通りであります。なお被害の一億になるというのは、縣でこの調査会を設けてその検討をいたした資料の中に、一億三千万円というような数字が出ておるのを私まだ拝見をいたしただけでありまして、これがはたして確実かどうかという点に関しましては、建設省としてはまだ確認をいたしておりません。さよう御了承願いたいと思います。
#14
○石原委員長 委員長より一言申し上げます。私らが現地へ行つたのは九月十日でありまして、そのときに知事に会つたときの話では、いまだ漁業関係者の了解は得ていないということをわれわれの席ではつきり申されたのでありまして、その点はわれわれは現地において承つて來たのであつて、その九月七日の知事より申し出たということと、われわれが直接聞いことに食い違いがあるのでありまして、この点は後日調査をしたいと考えております。
 なおこの際お諮りします。遠藤議員より特別発言を要求されております。問題は狩野川関係のことでありまするから、この場合許したいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○石原委員長 それでは遠藤君。
#16
○遠藤三郎君 この際私は狩野川問題の地元の代議士として一言発言を許していただきたいと思うのであります。狩野川の問題について、水産委員の各位が非常に御熱心にまじめにこの重大問題を御検討いただきますことを、地元の代議士としまして厚くお礼を申し上げる次第であります。
 この際私は二、三の点につきまして、建設省当局のはつきりしたお考えを伺つておきたい。これについては、今日この関係漁村はあげて反対をしております。これは数万の漁民の死活問題でありますから、反対をするのは当然であります。この反対ある事実を建設省当局はお認めになるかどうか、この反対があつてもなおあえてこれを押し切つても遂行する考えがあるかどうか、私は地元の関係者としましてこの反対を押し切つて、関係漁村の漁民の納得なくしてこれを遂行することに対しては、絶対に反対であります。それにもかかわらず、建設省当局はこの反対をも押し切つてやるお考えであるかどうかということをまずお尋ねしておきたいと思います。
#17
○米田説明員 ただいまの御質問は、地元の非常な反対があつても建設省はあくまで押し切つてやるのかという御質問でありまするが、実は昨年來一部に非常な治水促進の声があがりました。これは猛烈なる世論として、あるいは要望として声があがつたのであります。そこで早速いかなる方法でこれを取上げるかというので、まず調査をすべきであるということから、早速昨年来諸資料の收集、あるいは現地の測量等によつて調査をいたして来たのであります。その途中において水産業者の非常な反対の声があることを聞きまして、これは今すぐにわれわれのところでやるよりも、各般の諸情勢を調査し、その比較検討をする意味においては、地元の縣においてやつてもらう方が適当ではないか、これは先ほどもお話申し上げましたように、総合計画の点から適当な研究をする必要がある。その適当な箇所としては、知事の責任において研究をしてもらつた方がよかろうという趣旨で縣にお願いをいたしたのであります。そこでわれわれは、まず第一に縣としての考え方を聞きたいのであります。その縣が治水も考え、あるいは農業も考え、あるいは水産も考える、その他各般の事情を勘案いたしまして、出した結論を一應聞きたいというのが、現在における建設省の望みであります。その結論が出まして、その結論の説明が最も簡明にわれわれが納得できればよし、もしその説明がなお不十分であれば、われわれとしては中央の問題として研究をいたしたいと考えておるのでありまして、治水事業を進めるために、地元の水産業者の反対をむりやり押し切つてやるという意思は持つておりません。これはどこまでも納得の形で、お互いがほんとうに納得をして、その上で仕事を進めたいのでありまして、いずれ漁業の問題にしろ、治水の問題にしろ、今日國として最も重要な問題であつて、これを両者に最も適当な方法で按配して解決すべきだ、こういうふうに考えております。
#18
○遠藤三郎君 ただいまの課長の説明によりまして、地元があくまで納得をするのでなければこの事業はやらないということをはつきり言明しておられますので、その点についてはまことにけつこうだと私は思います。ただこの際さらにもう一つ伺つておきたいのでありますが、狩野川の治水事業をやるかどうか、やるとすればどうしてやるかという問題について、縣に調査会ができました。この調査会には私自身も関係しておつたのでありますが、この調査会の結論が出ましたときに、國会の方の用事のために私は出席ができなかつたのであります。そのときに一應の結論が出たというのでありますけれども、この調査会の性格は、漁民の意思を代表した者が一人も出ておらないのであります。縣会議員が出たり、あるいは代議士が出たりしておりますけれども、それは縣会議員として出ておるのであつて、この問題について何らの委託も何も受けておらないのであります。それらの人たちが決定する権能は全然ないのであります。そういう者が集まつて、それはよかろうというようなことできめたことが、ただちにこれは漁民が納得したのだというのは、まことにとんでもない結論であるのでありまして、もしそれを漁民が納得したということでもつて、縣が建設省に申請をしてあるとすれば、非常な間違いであります。その間違いを建設省当局は認めるかどうか。その点をはつきり伺つておきたいのであります。漁民はあくまでも反対したのでありますが、ただ関係の狩野川治水を遂行しようという議員の諸君が集まつて、そうしたらよかろうというような結論が出たことによつて、ただちに漁民がこれを納得したのだという、そこまで持つて行つておるという事実、その事実をお認めになるかどうか、その点をはつきりお聞きしておきたいのであります。
#19
○米田説明員 知事から出て來ました意見書の趣旨は、先ほど申し上げましたように、関係代議士及び関係縣会議員からなる懇談会で、協議を重ねた結果、一應この放水路案の実施を進めるように意見の一致を見た、こういう趣旨であります。そこで先ほどからちよいちよい問題になつております漁民の納得という問題に関しては、この書類の面には出ておりません。從いまして、一應こういう懇談会において決定をいたしたので、知事としてはその趣旨で促進を要望していたので、引続き漁業関係者の納得を進めるという趣旨ではなかろうかと私は想像いたすのでありますが、いずれにいたしましても、この問題は先ほど申し上げましたように、漁業関係者の十分なる納得の上に私は実施をいたしたいと考えておりまするので、問題が残れば、今後の納得が行くか行かぬかという問題について十分研究をいたしたいと思います。
#20
○遠藤三郎君 ただいまの御答弁でよくわかりました。伺いますと、近く省議に諮つてきめるということであります。省議に諮る場合に河川局当局は、一應縣下はまとまつておる、漁民も了承しておるということで省議にかけますか、それとも漁民はあくまで反対しておるということで省議にかけますか、その点をお伺いいたしておきたいのであります。
#21
○米田説明員 実は私ども資料が出て参りまして、今後十分この説明を聞くときに、先ほどから御意見がありましたので、その点については十分深く突込んで開きたいと思つております。そこに問題がまだ残つておるということを十分承知いたしましたので、その点については皆様の御心配、御懸念にならぬ程度に審議をいたしたい。それでこの問題が審議未了で残れば省議にまで持つて参りません。われわれは省議に持つて行くときは、すべて問題がなくなつたときに持つて行くようにいたしておりますので、その前に十分な時間をとるつもりでおります。
#22
○遠藤三郎君 大体河川局当局のお考えはよくわかりましたが、私はこの際一言私の意見を申し上げておきたいと思うのであります。それはなるほど狩野川の治水問題は、あの地帯における重大な問題でありますけれども、縣当局のこれに対する扱い方というものがきわめて片手落ちであります。水産の方の事情の調査についても、あるいは水産の方の事情の利害得失等についても、きわめて冷淡な扱いをしておるように私は思うのであります。治水事業を通せばよい、あとは水産の方に対しては、でき得る限りやるというようなことを言つておりますけれども、でき得る限りやるといつたような茫漠とした対案によつて、漁民がこれを納得し得るやいなや、これは考えても明瞭なのであります。もう少し縣当局は、水産のことを考え、漁民のことを考えて、そうして十分意を盡して、しかる上に納得ができてからこの問題の処理に当るように私はひたすら念願するものでありまして、その点を建設省当局においても間違いないようにお願いしたい、こういうことだけをお願いしておきまして、私の質問を打切りたいと思います。
#23
○小高委員 政治は断じてゆがんでおつてはならない。正しき常識の上に立脚した政治でなければならないと思つているのであります。私は先般狩野川及び靜浦の事情をつぶさに実地踏査いたしました結果、私の頭に映じましたのは、実に地方の見方が、先ほど鈴木委員からも述べられましたが、視野の狭い観点に立つて事を処せんとするこの事実であります。米の値段をきめる場合には、生産者が適当な價格を要求することはもちろんでありますが、同時にまた消費者自体のことも考えて米の相場を決定するということが、ただいまの制度である以上、漁業者の唱えられるところの主張は、当然一つの計数を基調にしたもので、これは海を相手としたものでありますから、はつきりした数字は出なくても、大体間違いない計数に立つて、信念的な議論を進めているのであります。これに対して、農民においてもたんぼを基調とする議論であるのでありますが、私ども第三者的に、片手びいきでない、公平な目で見たところ、これはやはり漁民を助けてやらなければいけない、こういう氣が非常に強くいたしたのであります。かようなことを考えますとき、先ほど米田説明員は、これは地方の問題であるから静岡縣当局にまかしてあるというような言葉がありましたが、事すでに中央への陳情となり、われわれがこの席において審議する以上、断じて地方問題のみではございません。全國の水産対良策の問題であり、それがまた全國の遠洋漁船に及ぼす影響等を考えますとき、水産を増強するならば食糧の解決のみでなく、魚肥というものが生れ、それがただちに農家に対する大なる福音ではないかということを考えますと、水産と農業とは決して切り離すことができないのであります。さような観点に立つて、また漁業者があれだけの地方好漁場が荒されることを恐れているとするならば、何を苦しんでこれを遂行せんとするか。このウエイトの問題をただしたいのであります。しかしながら先ほど米田説明員は、実情に沿つた解決をいたしたい、漁民の反対のあるうちはこれをきめない、また省議に提出する資料といたさない。かようなはつきりした答弁を聞いて、私ども非常に快しとしているのでありますが、願わくはその答弁が一介の答弁でなく、責任ある答弁として、今後さらにあの地の実情を御調査くださいますことを、希望意見として強調いたしておく次第であります。
#24
○鈴木(善)委員 私は先ほどるるお話申し上げましたように、この狩野川の放水路の問題は地方的な問題ではない。靜岡縣一縣の問題ではない。わが國のかつを、まぐろ遠洋漁業、全般に影響する重大な問題であるという観点に立ちまして、この放水路の問題を技術的にも、あるいは経済の面からも、國全体の大局に立つて解決すべきであるという主張をいたすものでありまして、この治水工事については、靜岡縣の地元の意見のみによらず、政府の責任において、総合的な國家的立場から最後の決定をなすべきであることを、政府に対して本委員会の決議をもつて勧告されるよう提案するものであります。
#25
○石原委員長 ただいまの鈴木委員の御発言の通りとりはからうことに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○石原委員長 さようとりはからいます。
 なお本問題は簡単には納まらないと思いますので、局長、大臣等の出席を求めることにさせまして、一應本日の実情は、治水課長よりよく局長並びに大臣へも傳達を求めることにいたしまして、午前はこの程度にとどめます。午後は一時半より開会いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時八分開議
#27
○石原委員長 午前に引続き会議を開きます。
 漁業法案の審議に入ります。本案につきましては、本月十三日の委員会において申し合せました通り、委員各位の御意見の発表をお願いいたします。御発表を願います。
#28
○川村委員 私はただいま継続審議となつております漁業法案並びに漁業法施行法案の内容について、修正を加えなければならないと思う重要な点の意見を申し述べてみたいと存じます。
 両法案は第五回國会に内閣提出、衆議院水産常任委員会に付託となつたのでありますが、当時委員会としては、政府当局の提案の理由並びに内容の説明等を受け、さらに各常任委員と政府当局との間に質疑應答がかわされたのでありますが、審議を十分盡し得なかつたので、結論を得ることができなかつたために、やむを得ず継続審議として、休会中に各委員は日本海班、太平洋班、四國九州瀬戸内海班、北海道班の四班にわかれて、延日数百二十数日間各地において漁民代表と公聴会の形式で懇談会を開いて、漁民の意見を十分に聞いて参つたのであります。さらに九月五日より同月十三日まで八日間、連続的に委員会を開いて逐條の審議に入り、質疑懸答がかわされたので、各地方ごとの漁民の意見並びに政府当局、ことに立案当局の意思も十分わかることができたのであります。しかしながら私はこの両法案は、審議が進むに従つて、複雑過ぎて漁民の意思に沿わない点や、行政的にも実行不可能な点等がたくさんあり、かつまた漁業経営に困難等もあり、漁業の民主化の趣旨にも逆行するようなところがたくさんあると思うのであります。申すまでもなく、本法案の目的とするところは、漁業生産に関する基本制度を定め、漁業者及び漁業従事者等を主体とする漁業調整機構の運用によつて、水面を総合的に利用し、かつ漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化をはかるというところにあるのでありますから、これには私としても賛意を表するものでありますけれども、全面的の内容については、いささか遺憾の点もありまして、賛意を表しがたいのであります。すなわち本目的を達成するには、かような破天荒的な漁業法を制定しなくとも、現漁業法あるいは機構等に不備の点があるとするならば、今後の日本の沿岸漁業の制度並びに機構等に沿うようにその部分だけを改正し、さらに年月を経るに從つて沿岸漁業の変化もあることと思うのでありますから、徐々に改正して行きますれば、必ず近い將來におきまして、混乱することなく目的を達成することはできると確信を持つておるのであります。もちろん日本のあらゆる漁業は、戦時中及び終戦後二、三年の間は、生産が著しく減つたことも事実でありますが、これは漁業法が悪いのではなく、戰爭の影響を受けて適当な船がなくなり、漁業從事者も不足になり、漁業資材及び食糧等の入手も極度に困難となり、かつまた漁業資金の融通も意のごとくならず、漁價等も適正でなかつたので、増産の隘路となつておつたので、何も現行法の悪影響によつて減産したのではないのであります。今やこれらの隘路は年月を経るごとに打開されまして、戰前に近い数字に増産されつつあり、いま一歩資金面の融通と資材面の諸問題等の解決を國家が講ずれば、今明年中には戰前の数字を上まわることは疑いないのであります。さいわい今回連合軍総司令部の御好意によつて漁区が拡張され、ますますその意を強くすることができたのであります。ただこの場合漁業の民主化について、現行漁業法で不備の点があるとするならば、農地法のごとく、漁業法も眞に働く漁民、すなわちみずから漁業を経営する者に漁業権を與えるようにして、休業漁業権とか、不在地主的存在の賃貸漁業権等を國家が買い上げて、眞の漁民に再配分するように、現行法の改正も機構の改革をすれば、多額の國家補償をも要せず、また漁民に多額の負担をもかけず、いたずらに混乱することなく民主的に漁業権の再配分もできるので、漁民も再び、また増産もできることとなり、從つてその目的を達成することに相なるのであります。それを今審議されておる漁業法案は、漁業権は百七十億余円の國家補償で全部買い上げ、漁民に再配分するために、補償金のほか行政費、調整費等を合せて三百十数億を漁民に負担させるということになつておるのでありますが、現下の國家財政上からも、漁民の経済力からも、負担の過重に苦しませる法律は決してよい漁業法であるとは申しかねるのであります。しかしながら私ら委員会といたしましては、提案された以上十分にこれを審議し、意に沿わない点がありまするならば、これを修正し、よい漁業法としなければならない権限を與えられておると同時に、義務をも負わなければならないと思うのでありますから、以下修正したいという点を述べまして意見としたいのであります。
 第一に、漁業者と漁業從事者の定義についてであります。第二條第二項には、漁業者と、漁業從事者の定義は明らかにされておるようでありますけれども、これらは漁業法案にある漁業権の免許及び許可等に重大な関係のあるものでありまして、いやしくも漁業権は眞に働く漁民に與えるべきであるという原則論からすれば、一時的の副業に漁業を経営しておる者や、臨時的に一、二箇月日雇人同様の從事者は眞の漁民とは言われないのであります。從つて二者とも本業とする者と修正しなければならないと思うのであります。
 第二には漁業権の定義についてであします。第六條に定置漁業権、区画漁業権、共同漁業権等の定義を規定してありますが、いささか本漁業法案の漁業権の定義としては不備な点があるのであります。まず定置漁業権について申し上げますと、「「定置漁業」とは、漁具を定置して営む漁業であつて左に掲げるものをいう。」として「身網の設置される場所の最深部が最高潮時において水深十五メートル以上であるもの」と規定し、北海道の一部の漁業に除外例を設けてありますが、これらは地方の特殊事情を考慮に入れているようであるが、入れておらない一つの例でありまして、北海道にも海の遠浅の所では、沖出し二千メートル以上に達してもまだ水深が十五メートル以下で、しかも有望な定置漁業の漁場となる地方はたくさんあるのであります。いわんや全國的に見た場合においては、かような地方は相当あると思いますから、地方の特殊の事情を十分考慮に入れて、水深と沖出しとを勘案制定すべきであり、また現行法では落し網類漁業であるとか、台網漁業とか、定置漁業の名称を漁民にわかりやすくしておるのでありますから、少くとも本法案にも、例を申し上げますと定置漁業とは漁具を定置して営む何々類漁業にして、沖出し間数何百メートル、水深何メール以上であるものというように規定すべきであると思うのであります。また共同漁業権にいたしましても第五種まであるのでありますから、定置漁業以外の漁業をでき得る限り地方の実情に即し、浮魚を漁獲できるように漁業種類を織り込むべきであり、また区画漁業についても同様でありまして、どこまでも地方の実情に即するようにしなければならないと思うのであります。これらの点については、具体的には小委員会等にて十分意見を申し述べたいと思つております。
 第三には免許の内容の事前決定のことについてであります。第十一條に「都道府縣知事は、漁業の免許について、海区漁業調整委員会の意見をきき、漁業の種類、漁場の位置及び区域、漁業時期その他免許の内容たるべき項、申請期間並びに共同漁業権についてはその関係地区をあらかじめ定めなければない。」ことになつておるが、今かりに本年中にこの漁業法が制定されましても、あと二年間のうちに漁業権が全部事前決定事項を制定することはとうていでき得るものではないのでありまして、從つて從來行つて來た漁業の内容に漁業調整上著しく不利不便があるところがあるならば、その点だけを必要に應じて事前決定あるいは條件を付す程度にとどめておくべきで、それは実情に即することになると思うのであります。
 第四には漁業権の免許の適格性のことについてであります。第十四條には「定置漁業又は区画漁業の免許について適格性を有する者は、左の各号のいずれにも該当しない者とする。」として、「一 漁業に関する法令の悪質違反者であること。二 労働に関する法令の悪質違反者であること。三 海区漁業調整委員会における投票の結果、総委員の三分の二以上によつて漁村の民主化を阻害すると認められた者であること。四 前三号の規定により適格性を有しない者が、どんな名目によるのであつても、実質上その申請に係る漁業の経営を支配するに至る虞があること。」以上四号を前提として第二項より第九項までに区画漁業及び共同漁業の免許の適格性を有する者を表わしておるが、定置漁業の適格性については、前四号の該当者でなければ何人でも適格性を有することになつておるので、はなはだ徹底を欠いておるのであります。ただ第十五條、第十大條の優先順位の規定の中に、適格性とみなされる者を表わしておるもので、定置漁業の免許の適格性に関する限り眞の働く漁民といえども不安はないとは言われないのであります。また区画漁業及び共同漁業免許の適格性についても、あまり複雑過ぎて、かつあまりにも実情から遠ざかつており、かつ漁民は非常に解釈に苦しむ点や実行不可能と思われる点もたくさんあるのでありますから、簡単にしてその要をつくようにしなければならないと思うのであります。從つて免許の適格性については左の要領によるように修正すべきであると思うのであります。定置漁業の免許の適格性を有する者はみずから漁業を営む漁業者または漁業從事者及び漁業協同組合または同連合会、漁業生産組合及びその他の漁業法人であつて左の各号いずれにも該当しない者とする。一 漁業に関する法令の悪質違反者であること。二 漁業労働に関する法令の悪質違反者であること。前二号の規定により適格性を有しない者がどんな名目によるものであつても実質上その申請にかかる漁業経営を支配するに至るおそれがあることとすべきであると思うのであります。また区画漁業権は、眞珠養殖及び河川等の特殊な漁業を除き、また共同漁業権等についても漁業協同組合に重点を置いて、その地区の組合員の三分の二以上が参加しておる漁業協同組合または漁民であつて、從來同種の漁業を自営して來た者または海区調整委員会の意見を聞いて都道府縣知事が定めたものとする方が、混乱もなく民主的であると思うと同時に、これが地方の実情に即するように思うのであります。
 第五には漁業の免許または許可の優先順位についてであります。第十六條には定置漁業の優先順位を十六項にわたつて規定し、第十七條、第十八條には区画漁業の優先順位を十項にわたつて規定してあり、第十九條には特に眞珠養殖業を五項にわたつて優先順位を規定し、第二十條には共同漁業権の優先順位を規定しておるのでありますが、これらはいずれも優先順位の規定とせずに、漁業の免許または許可する場合の漁業調整委員会または都道府縣知事の勘案事項として、地方の実情に即し、機動性を持たせるとともに、民主的と免許または許可できるような措置に修正すべきであると思うのであります。
 第六には、漁業権の存続期間についてであります。第二十一條に「漁業権の存続期間は、免許の日から起算して、定置漁業権又は区画漁業権にあつては五年、共同漁業権にあつては十年とする。」と規定されておりますが、漁業の特殊性から前者は十箇年、後者は二十箇年とし、いずれも更新または延長を認めるように修正すべきであると思うのであります。このことについては、各地の漁民代表からも同様の意見は相当に強かつたことをつけ加えておきます。
 第七に、相続により取得したる定置漁業及び区画漁業権についてであります。第二十八條に、相続によつて定置漁業権及び区画漁業権を取得した者は、二箇月以内に都道府縣知事に届け出、都道府縣知事は海区調整委員会の意見を聞いて適格性を有する者でないと認めるときは、一定期間内に譲渡しなければ取消す旨の通知をすることになつておるが、これは漁業経営者にとつては非常に不安もあり、かつその家庭の生活権をも奪うおそれがあると思いますから、その漁業の経営の支配者が適格者であつた場合は、申請により相当期間経営の継続を認むべきであると思うのであります。
 第八には、指定遠洋漁業の許可についてであります。第五十二條から第六十四條まで遠洋漁業の許可その他を規定しておりますが、いずれも定置、区画、共同漁業等とは違つて特権を認めておるようであるが、日本の遠洋漁業の將來の発展のためには、あまりにも強い特権を與えるということは、決して思わしいことではないのであるから、適当なる修正を加うべきであると思うのであります。右については小委員会等において具体的に修正する点を申し上げることにいたしたいと思います。
 第九には、漁業の免許料、許可料並びに漁業権の補償料についてであります。第七十五條に沿岸漁業の免許及び許可を受けた者は、命令の定めるところにより、毎年政府に免許料または許可料を納めなければならないと以下四項にわたつて規定してありますが、私は免許料、許可料は実費以外には原則的には納めさせることには反対であります。しかも漁業行政費及び調整費等を國家負担とせず、免許料、許可料等に加算し漁民に加重負担をさせるということは、無謀もはなはだしいのであると思つておるのであります。もしこの法案が私の考えておるように修正できるとするならば、さきにも申し上げた通り休業漁業権、賃貸漁業権、不当に集中しておる漁業権を國家は補償して買収し、これらを漁民に再配分して、漁業権に対してのみ実費だけ免許料、許可料に織り込んで納めさせればよいのであるが、これとても漁民の負担を軽減しようとすれば、國家が定めた適当な補償を、適当なる年度内に漁業者から漁業権者に直接に支拂わせるようにしますればよいのであつて、休業漁業権であつて行政的措置を怠つて取消ししなかつた漁業権の補償料までも漁民の負担にすることは不賛成でありますから、これは必要に感じて取消して、漁民の負担を軽減すべきものであると思うのであります。かようにしてでき得るだけ國家補償も行政費も調整費も節減し、また漁民の負担も軽減して、眞に漁民の喜ぶ漁業法として所期の目的を達成させたいと考えておるので、左の方法によるように修正したいと思うのであります。
一、現在その地元漁業会所有の専用漁業権、区画漁業権、定置漁業権及びその他の漁業権にして、その地元の漁業協同組合に免許及び許可でき得る漁業権は國家補償もしないと同時に、免許料、許可料も納めさせないようにすること。
二、現在漁業権を所有し、みずから漁業を営んでおる漁民または漁業法人等にして、不当集中しておる漁業権を除き、國家補償をして買収しないと同時に、免許料、許可料を納めさせないこと。
三、現在賃貸しておる漁業権及び不当集中しておる漁業権、休業漁業権等を國家補償にし買收して漁民に再配分すること。
四、補償金額の決定は本法の基準年度によらず、財産税制定によるもの及び現在及び將來の漁業経営の実体に即する程度を勘案して決定すること。
五、補償料を免許料、許可料として納めさせる場合は、漁獲高のパーセントによらず、補償金額を年次に割当て納めさせること。但し凶漁または災害等にて損害をこうむつた場合は延納及び減免を認むること。
 その他細部にわたることの修正意見もあるのでありますが、大体においてかような修正でできますれば、國家補償は大体三、四十億程度となる見込みであり、漁民の負担も非常に軽減され、また漁業法の実施も容易となると思うのであります。
 第十には、海区漁業調整委員会、連合海区漁業調整委員会及び中央漁業審議会等についてであります。本漁業法案中の漁業の免許及び許可並びに漁業調整に関しては、最も重要な役割と最も重大な責任を持つものはこの三調整加機関であり、かつこの機関の委員であります。從つて第八十二條から第百十九條まですべて詳細に規定しておりますが、これもあまりに複雑過ぎて、かえつて実行不可能に陥るおそれもあり、あまり深入りすれば行政廰や行政官のやることまでにも行過ぎになるおそれもなしとは考えられないので、非常に混乱することもあると思うのでありますが、時間の関係上内容を指摘することを差控え、左の通りに修正したいと思います。
一、海区調整委員会は都道府縣の実情に即し、地区的に漁業状態及び海域等を勘案して置くようにすること。
二、地区連合会は必要に應じ適当に置くようにすること。
三、都道府縣には必ず都道府縣漁業調整委員会を置くことにすること。
四、瀬戸内海は別途これを考慮し、海区調整委員会及び同連合会のほか全海域関係の漁業調整委員会を置く必要があること。
五、中央漁業審議会の設置は原案通り。
六、海区調整委員会の委員の選任は、都道府縣各地方の実情により重要かつ漁業調整上必要な漁業から種別ごとに必要数の委員を選任するように定め、漁民の選挙する人数を十人とせず、委員数は地方にまかせること。公益代表及び学識経験者たる委員を必要とする場合は都道府縣知事の推薦したる者を漁民が選挙するようにすること。
七、海区調整委員会及び都道府縣漁業調整委員会の委員は、海区調整委員会の互選によること。公益代表及び学識経験者たる委員は六に準ずること。
八、中央漁業審議会の委員は、都道府縣漁業調整委員の委員中より主務大臣が國会の承認を得て任命すること。
九、前三項の委員と都道府縣議員並びに國会議員の兼職はできること。但しこの場合はおのおのの議会の承認を得なければならないことにすること。
 第十には内水面河川及び湖沼に関する漁業権のことについてであります。この問題については、各地方の墾談会並びに昨日各縣の代表者の意見等も十分聞いたのでありますが、地方的によほど事情は異なつた点もあると思うのであります。從つて今後十分調査研究して、地方の実情に即するように法案の修正をなし、地方の漁民は申すに及ばず、地方民もともに安んじて生活のできるようにいたしたいと思うのであります。
 以上は大体において私の本案に対するおもなる点を修正いたしたいという意見でありますが、なお詳細にわたつての修正点もありますから、後日小委員会並びに常任委員会等において十分意見を申し述べて、その意を盡したいと思うのであります。
#29
○石原委員長 他に御発言はありませんか。――御発言もないようでありますから、この法案の取扱いにつきましてお諮りをしたいのであります。だんだん日にちも迫つて参りましたから、これを開会中に設けました漁業権に関する小委員会を継続して設置し、小委員会において十分愼重に御審議を願うことにしたならばいかがでしようか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○石原委員長 御異議ないようであります。そうして他の委員諸君も随時小委員会の開会のときに、十分御意見をお述べ願うことにしたらいかがでございましようか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○石原委員長 御異議ないようであります。大体ただいま申し述べたように決定をいたします。
 つきましては小委員会でありますが、およそいつよりいつまでにまとめるという大体の方針をきめたいと思います。御承知のように國会の開会も十月二十五日と公表されておりますが、この案は相当修正を要するようであります。從つてなるべく早目に案をまとめて、國会対策としての用意がいると思いますので、この点をお諮りいたします。速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#32
○石原委員長 速記を始めてください。
 それでは漁業権に関する小委員会に移すことに決定をいたしました。その小委員会の開会の日時、方法並びに國会開会にあたつての公聴会の開催等のことは、小委員長並びに委員長、本委員会の理事等に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○石原委員長 ではただいま申す通りに決定をいたします。
 本日はこれをもつて散会いたします。
    午後二時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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