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1947/09/30 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第34号
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1947/09/30 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第34号

#1
第001回国会 本会議 第34号
昭和二十二年九月三十日(火曜日)
   午前十時二十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事録日程 第三十四号
  昭和二十二年九月三十日
   午前十時開議
 第一 自由討議
    ━━━━━━━━━━━━━
  一、所見開陳の範囲
   水害対策
  二、発言者の数 十三人
   緑風会五人、社会党、民主党、自由党各二人、無所属懇談会、共産党各一人
  三、発言の時間
   発言の総時間  二時間三十分
   一人の発言時間 十分間
    ━━━━━━━━━━━━━
 第二 日本国沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 災害救助法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。議事録日程変更につきお諮りいたします。この際議事の都合により、議事日程第二及び第三を先に議題といたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松平恒雄君) 日程第二、日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長板谷順助君。
   〔板谷順助君登壇、拍手〕
#6
○板谷順助君 只今議題となりましたる日本國沿岸に置き去られた船舶の措置に関する法律案につきまして、運輸及び交通委員会における審議の経過並びに結果をご報告申上げます。この委員会におきましては、九月二十一日、二十五日、二十七日の三回に亘りまして審議をいたしたのであります。
 先ず法案の内容を簡単にご報告申上げまするが、終戦後、日本國の水域外から日本に到着したものと思われる船舶で、現在尚所有者の知れないままに置き去りになつているものが沢山あるのであります。これらの船舶の中で、不法入國のものや、密貿易のものは、いわゆるポツダム勅令によつてそれぞれ別に処分をされておるのでありまするが、この勅令が適用せられないものは、従来何らの法的の措置が講じられないで、そのまま放置されておるのであります。その一部については、事実上海運局や警察署で保管をしたり、又は適当な海運業者に頼んで保管をさせたりしておる状況でありまするが、併しこのような措置では甚だ遺憾でありまするのみならず、他面において、我が國の現在の海運界なり漁業の方面では、戦争による非常な打撃と造船費の昂騰による新造船の困難等のために、甚しい船腹不足に悩んでおるのでありまして、この際、本案にありまするような置き去られたるところの船舶の法的関係に結末を付けてこれが活用を図ることとすることは、誠に適当な立法的措置であると考えるのであります。
 次にこの法律案のあらましを申上げます。本法適用の範囲は、連合國人の所有することが明らかな船舶や法令の規定によつて没収せらるべき船舶を除いて、日本國沿岸に置き去られた船舶で所有者が知れないため運輸大臣が告示をいたしまして指定したるものが、この法律の適用を受けるのであります。次に法律関係を確定する方法は、右の指定船舶を管理する管海官廰が、その船舶に関係を有し権利を行使しようとする者は、三ケ月以内にその旨申出るべきことを公告若しくは告知をします。そうして船舶所有者が一ケ月以内に申出たときは、費用の負担をさせないで指定船舶を引渡しますが、一ケ月を経過した後であるときは、管理費用、拾得報労金等を負担させることになつておるのであります。所有者から返還の請求がなかつた場合は、入札の方法で当該船舶を売却し、これを買受けた者はその権利を完全保護せられることになつております。この場合、官海官廰は売却代金から諸種の費用や拾得報労金などを差引きまして、若し担保権者や指定船舶によつて損害を受けた者からも何等の申出がなかつた場合には、その残金は國庫の収入になる。こういう仕組と手続になつておるのであります。以上が大体この法案のあらましであります。
 そこで、提案の理由の説明がありました後に質疑に入つたのでありまするが、その質疑の主なる点を申上げますと、先ず第一に、この法律はいかなる船舶を対象としておるのか、又いかなる目的を持つておるのかという質問に対しまして、政府委員より、終戦後、日本水域外より日本沿岸に到着してそのまま置き去られた所有者不明の船舶を対象としており、但し沈没船は除くが、現在確実に判明しておるものは六十九隻であります。又本法案の目的は、これらの船舶が持つ経済的措置を活用せんとするものであるという答弁であります。次にこの船舶を処理するに要する費用並びにそのための蔵入は幾らであるかという質問に対しまして、政府委員より、所要の経費は本年十月より翌年三月までの六ケ月間で二十五万五千円であり、又二十二年度の歳入といたしましては八十二万二千円を計上しておるという答弁でありました。次にこの法律案は六十九隻の船舶のみを対象としておるのか。又入札売却について、その適当と認められる相手方に造船業者を入れるのか。入札売却後の登記について説明ありたいという点について、政府委員より、目下判明しておるのは六十九隻であるが、今後判明したるものには勿論適用をする。又造船業者は海上企業に密接なる関係を有するものであるから、当然売却を受け得る者の中に含まれておる。又登記の関係につきましては、当該船舶を買取つた者にそれを原始取得せしむることとし、原所有者の登記は職権抹消をなし、保存登記、嘱託登記等必要な手続は命令で規定する方法を考えておるとの答弁であつたのであります。その他手続上の問題につきまして熱心なる質疑がありましたが、詳細は速記録について御承知を願いたい。
 かくて質疑を終りまして、討論に入りまして、丹羽委員より賛成の意見を述べられ、採決の結果、全会一致可決すべきものと決定したのであります。
 尚この際諸君の御了解を得て置きたい問題があります。と申しますことは、九月二十七日この委員会において運輸大臣より特に発言を求められまして、現在の船舶運営会が本日を以つて、存続期間が切れるのであるます。従つて、今後六ケ月間延長するということについて、政令を以つてこれを施行したいという申出があつたのであります。で、運輸大臣の説明の要旨を大体申上げますと、船舶運営会は、戦時中総動員法に基ずく海運管理令によつて設立せられたのでありまするが、総動員法は、昨年九月運営会関係を除いて概ね失効となつたのでありますが、船舶運営会は連合軍との関係上どうしても存続の必要があり、その後二回に亘つてポツダム宣言受諾に基ずく勅令によつて六ケ月づつその効力を延長し、今九月末日即ち本日を以てその存続期間が終了することになつているのであります。運輸大臣におきましては、船舶運営会が戦時組織でもあり、又基礎法規の関係におきましても右に申すような関係にありますので、これが改組について確乎たる方針を立てるべく、関係方面と最後まで極力折衝されたのでありますが、何分事が急に迫つておりますので、未だ完全なる了解を得るに至つておらない。そこで関係方面の了解或いは希望もありまして、今回再び政令を以て海運管理令の効力を延長しなければならぬことになつたことは誠に遺憾であるが、右の事情であるからして特に了解を得たいということを申述べられたのであります。そこで本委員会といたしましては、現在議会は開会中でもあり、政令による処理ということにつきましては事が重大でありますので、これを慎重に取扱わなければならぬというところから、各委員より各方面に亘りまして、速記を中止いたしまして、突込んだるところの質問があつたのであります。要するに現在の船舶運営会は國家管理であります。諸君も御承知の通り、この運営会は年々歳々赤字に赤字を続けております。又一面におきまして物動計画と配船計画が伴わざるがために、従つてこの運用というものがよく行つておりません。私共はこの点について非常に遺憾に考えているのであります。従つて民意の暢達も十分でない。又運輸当局の意向といたしましても、只今運輸大臣の申述べられました通り、現在の運営会は改組しようという考でありまするけれども、事急であります関係におきまして、未だ関係方面の了解を得るに至らぬということを申しておられるのであります。故に将来は戦前の常道に復して、いわゆる民営還元にせねばならぬという気運が相当に濃厚であります。この委員会においても、これらに対する質問があつたのであります。併しながら今申上げまする通り明日に迫つた問題でありまするから、事情止むを得ざることといたしまして、この委員会におきましては、全会一致承認をすることに決定をいたしましたのでありますが、何とぞ本会議においても御了解あらんことを切に希望いたします(拍手)
#7
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。委員長の報告は可決報告でございます。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#8
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#9
○議長(松平恒雄君) 議事の都合により、日程第三を後に廻したいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#11
○議長(松平恒雄君) 運輸大臣より水害の状況報告のため発言を求められております。この際許可いたします。苫米地運輸大臣。
   〔國務大臣苫米地義三君登壇〕
#12
○國務大臣(苫米地義三君) 今次の水害につきまして、去る二十日取敢えず御報告を申上げて置きました運輸関係の被害及びその復旧状況につきまして、その後の経過を御報告申上げたいと存じます。
 先ず國鉄の受けました被害でありまするが、先日の御報告では、当時判明したもの総計八百七十八件と申上げましたが、最近の数字によりますると総計九百十三件に及んでおります。その中、築提の崩れましたものが百八十二件、切取り土砂の崩壊が二百十七件、線路の流されたものが二百十二件、橋梁の傷みましたものが二十七件でございます、従つてこれらの被害に対する應急復旧用資材の件も、先般の御報告に比べまして多少増加いたす見込みでございます。即ちレール及び付属品、枕木等は大体変りございませんが、鋼材類が六百三十トンに殖えましたし、木材は九万五千石に、セメントは七千四百トンに、いずれも増加する予定でございます。次に鉄道の不通となりました線区は六十線区でありましたが、その中すでに復旧開通いたしましたのが四十八線区でございまして、未だ不通の個所は十二線区となつております。即ち現在不通個所の主なるものについて申上げますると、東北本線は久喜、古河間の一箇所でありまするが、この中、栗橋、古河間は来月の五日開通の予定であります。併し久喜、栗橋間は路線が非常に流されておりまするので、目下のところ来月十五日となる見込でございます。上越線は目下敷島まで開通いたしましたが、敷島、沼田間はその後実施調査の結果、盛り土、切取りだけでも一万数百立方メートルに達する見込でありまして、目下作業は進行中でありますが、敷島、岩本間は十月一ぱい、岩本、沼田間は十一月下旬になる見込でございます。常磐線は龜有、金町間の不通個所の中、下り線単線だけは去る二十七日開通いたしまして、一應全通いたしましたが、複線開通は来月五日の予定でございます。中央線の大月、笹子間の被害は意外に大きくありまして、目下盛り土の本復旧作業を進めておりまするが、十月十日頃までかかる予定でございます。奥羽線は、湯澤、十文字間は昨日午後試運転を済ませまして、本日より開通いたしまして、これ亦全通いたしました。総武線は去る二十七日単線開通いたしまして、昨二十九日複線が開通いたしまして、これ亦全通となりました。 
 以上の通りでございまして、幸い信越、常磐、奥羽、総武の四線が開通いたし、東北、中央両線も近く開通を見る予定でありまするので、被害が甚だしかつた割合には比較的早く開通を見、輸送に対する影響を最小限度に食止め得ましたと存じます。併しそれにいたしましても、十月分の貨物輸送に対しましては、尚残されました不通個所の復旧工事をできるだけ促進いたしまして、早く開通させるように努力いたしますと共に、他方すでに開通いたしておりまする線を最大限度に利用いたしまして、迂回輸送等により、できるだけ輸送減の影響を少くするよう努力いたしております。最近漸く活発になり始めました京浜向けの新米輸送につきましても、上越線、東北線不通の間は、新潟方面の分は信越線、富山、石川方面のものは北陸線、東海道線を通しまして、京浜地方に輸送いたしております。尚地方鉄道にも、東武鉄道、京成電鉄等、その後被害地域が拡大されましたが、これ亦鋭意復旧に努めました結果、不通区間も漸次少くなり、両線共おのおの二箇所を残すのみとなつております。
 次に海運関係について申上げますと、先日御報告申上げました北海道、東北方面と京浜を繋ぐ汽船は、その後予定通り運航を続けておりまして、最近までの実績は、運航船舶九隻、旅客四千三百余人に及んでおります。又利根川の汚水が帝都に入りまして、常盤、総武の鉄道線が不通となりましたので、直ちに東京、木更津の定期航路を増強する外、東京―浦安、東京―寒川方面に新らしく航路を開きまして、旅客の海上運送を行い、旅客十万一千人輸送の実績を示しております。更に又横濱港に到着いたしました輸送食糧は、直ちに汽船または機帆船によりまして岩手、青森、宮城の方面と、千葉縣下に中継輸送を行いまして、水害地に対する食糧輸送の確保に努めた次第であります。以上甚だ簡単でございますが、運輸関係の最近までの情報を御報告いたします。(拍手)
     ―――――・―――――
#13
○議長(松平恒雄君) 昨日に引続いて、関東地方水害状況の実施調査派遣議員團の報告を求めます。栃木縣調査班、植竹春彦君。
   〔植竹春彦君登壇、拍手〕
#14
○植竹春彦君 栃木縣の水害報告を申上げます。栃木縣の地勢は、丁度本院のこの議場のような地勢でありまして、即ち議場の正面からこの壇上の方へ向つたような地勢であります。南は低く豊饒なる沃野を成しております。北は一部塩谷の高原から那須野原の高原が相列なる、更に北部は山岳重疊した森林地帯に蔽われております。この低い南の沃野には、西北から流れております渡良瀬川の本流があり、それはやがて東いたしまして更に南は茨城縣の方へ流れております。鬼怒川は縣北から南へ流れております。那珂川の本流は縣北から東南へ、水戸の方へ出ております。この三つの大きな川の中、鬼怒川と渡良瀬川とが今回最も暴威を逞しくしたものでございます。その三つの川には無数の有名無名の河川が流れ込んでおりまするが、今回は、これはと思いまする全然名もなき小さな川、或いは溝川のごとき小さな川に急激なる出水を見まして、その出水も非常な速度と水量を以ちまして、軒の上まで浸水いたしまして、人畜に死傷を與え、冠水面積の膨大なる損害を出現した次第でございます。これが今回出水の特徴と考えられます。
 この未曾有の惨害を調査いたしました一行は、厚生委員、農林委員、電気委員の各専門家が派遣せられまして、それに併せて多少の運輸交通に経験を持ちました議員が参加し、一行五名、即ち緑風会より徳川宗敬氏、加賀操氏、山崎恒氏の三議員、社会党より中平常太郎氏、民主党より植竹春彦氏の五名でございました。一行は二十六日から三日間、具さに表通りから裏町に、又裏町から狭い倒壊家屋と家屋の間を縫いまして、或いは丸太の一本橋など渡りまして、でき得る限り直接町の被害者、村の被害者に接しまして、共に泣き、共に祈り、共に励まし合つて参つたのでございます。数字上の調査報告はこのように分厚なものになりましたが、これは後刻本院に提出申上げます。第一日と第二日の午前中は、被害地たる各地の役所におきまして、書類の提出説明を求めまして、又現場を直接視察いたしました。第二日の午後と第三日とは、主として被害原因たる縣北の山林の濫伐状態、土砂の崩壊せる砂防不完全な状態、並びにその対策方面でありまする砂防、植林、堰堤、水流等に重点を置いて視察をいたして参りました。被害の原因の第一と考えまするのは、戦時、戦後を通じまして、縣北部の森林地帯を濫伐したる結果と考えます。又戦時に河川の浚渫が怠られておりましたことがこれ亦非常なる原因を成しておるかと考えます。
 被害の地域は、縣南西部に位置いたしておりまする足利市、足利郡の村落と、南の下都賀郡の生井村、部屋村、鹿沼町を以て最も激甚な地帯といたしております。そうしてこれに次いで全縣下に亘りまして災害が拡大いたしております。被害の程度は、死者が三百二十一名、負傷者が五百四十九名であります。流出家屋は八百九十七戸、倒壊、半壊は五千二十戸、浸水は実に四万五千六百四十二戸を算しております。冠水田畑は合計約二万四千町歩に亘つております。その他道路、堤防、橋梁の損害は極めて甚大でありますが、明細は別表の通りであります。尚その冠水によりまして、丁度田圃は今このよう花済みになつたばかりの稲で、晩稲の方は、殆んど潰しましても白い実つた米の汁は出て参りません。幸いにして早稲の方は半分は取り得るかと存じます。損害額は実に八十四億八千万円を計上いたされております。この復旧に要しまする予算は、是非とも支出せねばならんのが約十六億に達しております。
 水害の処置といたしましては、先ず九月二十三日に縣会を非常招集いたしまして、六億一千余万円のどうしても緊急になくてはならない予算だけを満場一致を以て可決いたしまして、徹夜兼業で救済と復旧とに努めております。内務省、厚生省、運輸省、縣廰、青年團、宗教團体、婦人團体、消防團体、その他各團とも実によく活躍しておられます。殊に民選知事は徹夜を分たず活躍せられまして、或いは自動車の行かない所は自転車、巻ゲートルを似て、山間僻地に援護救援を督励しておられました。又或る町、これは鹿沼の町でありますが、町長も自分が被害を被つたにも拘わらず、又助役だどはその家族を二名までも水害の犠牲に供して命を落とされたのでありますが、助役自身は家を捨ててこの救済に忙殺されておられました。厚生省方面からの救援物資、又ララ物資等は、最も迅速に万遍なく公平に行き渡つておりまして、いつも、このように迅速にすべてのものが配給されればいいんだがという声すらあつたくらいに、迅速に公平に行き渡つておりました。ただ衣料は、今後寒さに向う折柄、毛布が三戸に一枚という有様で、大変不足しておるように思われましたが、これにつきましては、厚生省当局にその旨を報告し、更にその配給方を要望して置いた次第でございます。
 次に視察團の意見と希望とを申述べます。これまでは、架橋は、河の狭い所において架けますると予算が少くて済む関係で、そういうふうに架けておりましたが、今度はどうしても、むしろ河幅の廣い所に架けることが急務であるというのが、観察團一行の一致した意見でございました。又水流の方向を不自然に人工で屈折をせしめないで、自然の流水方向をよく勘案することが必要である。又砂防の完成、崩壊箇所の始末、河川の浚渫、これは最も急務と考えますが、何をおきましても、一番根本の原因でありまする濫伐を絶対に防止して、計画伐採を実施せねばならんと考えられます。(拍手)長期計画といたしましては、濫伐の跡はどうしても植付けを実施しなければならない。それには苗圃の育成につきましても、農村で種苗を各自自家生産しておりますように、山林の苗圃も亦各山林業者が自分で自家生産する外、今日の急場を凌げないのではないかと見られております。又堰堤築造が栃木縣の治山治水に是非とも必要であるということを痛感して参つた次第でございます。縣北の鬼怒川の上流に五十里という場所がございます。ここに堰堤を築きまして、大きなダムを築きまして、そこに貯水をいたしますることが、栃木縣の治水の生命であり、これを完成いたしますることが、関東一円の干害対策の上から申しましても、亦派生的には観光の美を備えまするためにも、是非とも五十里堰堤の築造が急務であると考えられます。
 私たち一行は、先ず足利市に入りました。鉱毒事件で有名なあの渡良瀬川は、足利市を縦貫いたしまして南に流れておりますることは、冒頭に申上げた通りでございます。渡良瀬川の川岸に参りますると、このくらいの玉石、こんな小さな玉石、一面に見渡す限りの玉石の川岸がございました。その川岸の玉石の廣場の眞中に、雲を突くような鉄筋コンクリートの大きな煙突が一本立つております。玉石の川岸に煙突が一本立つておりまするということは、取りも直さず、つい数日前の大洪水で似て、工場も流れ、又その工場は二千五百万円の小林精機と申します大工場でありましたが故に、大きな工場も、亦五十馬力のモーターも、各般の工作機械、何百台の機械も、全部流れ落ちてしまいまして、一つくらい土台石が残りそうなものでございますが、土台石すら何も見えない。ただ太古何千年の昔から、漠々たる太古の昔から玉石の河岸であつたのではないかと思われるような、ただ一面の玉石の河原に化しておつたような次第でございます。いかに今回の水害が激甚であつたかを証することができると存じます。又そこには掘立小屋が一つ立つておりまして、四つの位牌が置いてございました。それに礼拝いたしましたところが、その者の申しますのに、余り水勢が早いので水だという声を聞いて外に出た時は間に合はない、これではいかんと直ぐ家に入つた、水は胸まであり、母も妻も子供四人とも水のところに浮いておつた。これを拾い集めまして押入に抛り込み、更に屋根を突き破りまして棟の上に跨つていた。これはやがて流れて来る木材と電線が……電柱は底が浮いてしまいまして、電線が木材にせかされて押流されまして、電線に触れるものはすべてこの激流の中に埋没してしまう。やがて自分の家は埋没しまして、無我夢中でその主人公一人と小さい子供一人助つただけで、親と妻と二人の子供と四つの位牌がそこに飾られるようになつたということを聞きまして、もう悔みの言葉も殆んど出ませんで、ただ無言で手を合せて参りました次第でございます。
 私共はそこから足利を去りまして、南の方の部屋、生井村を慰問視察いたしましたが、これは殆ど全村全滅の状態でございました。それから懸廰に参りましたところが、ちようど高松宮殿下がいらつしやいまして、宮殿下から特に徳川議員に対しまして、徳川議員は農林の専門家であるから十分調査せられるようにとう激励の御言葉がございました。一行はそれから、知事は高松宮殿下をしよつちう御先導申上げておりました関係上、副知事並びに河川課長、庶務課長等が、絶えず懸廰の方から十分調査に対しまして便宜を與えてくれた次第でございます。一行は縣北の方面を隈なく視察いたしまして、前に申しました五十里堰堤、鹿沼、栃木、佐野を通過いたしまして第三日目に更に足利に戻り、東京に帰つて参りました次第でございます。お互が一日も早く治山治水の政策を根本的に樹立いたしまして、これを推進し、國家百年の安定を図られんことを本院を通じまして希望いたします次第でございます。(拍手)
#15
○議長(松平恒雄君) 郡馬縣調査班安部定君。
   〔安部定君登壇、拍手〕
#16
○安部定君 郡馬縣今次水害視察報告をいたします。
 視察議員は民主党の木檜三四郎氏、社会党の梅津錦一氏、同じく河崎ナツ氏、当時緑風会の小川友三氏及び私の五名でありました。視察日程は去る二十一日から二十三日までの三日間で、視察地点は、勢多郡富士見村白川の流域、同郡敷島村、沼尾川の流域、同郡大胡町荒砥川の流域、伊勢崎市、佐波郡赤堀村粕川の流域、同じく粕川の上流流域、勢多郡粕川村、桐生市、渡良瀬川及び桐生川の決壊氾濫地点、群馬郡及び佐波郡の冠水地、邑楽郡六郷村冠水田、同郡海老瀬村、渡良瀬川決壊地点、伊奈良村、西谷田村及び最後に新田郡尾島町の早川、石田川の決壊地点でありまして、二十三日の午後六時四十分埼玉縣熊谷駅にて解散いたしました。
 群馬縣では九月九日から断続的に雨が降つておりましたが、これが十三日になりましていよいよ本格的の雨となりまして、同日カスリーン台風発生の気象特報が発せられるに至り、引続き十四日、十五日と降り続き、その降雨量は十三日以来合計三百九十二・七三ミリに達しております。これは従来最高の出水と言われます明治四十三年災害時の三百三十七・六ミリを超えるもので、実に群馬縣の最高記録を示すものであります。これがため縣下各河川は一斉に増水し、殊戦時中及び戦後の濫伐過伐が禍いして、その増水振りは著しく、利根川は前橋市において既往の最高水位四・八メートルに対し、今回の出水五・三〇メートル、渡良瀬川の勢多郡において四・六メートルに対し四・六〇メートル、これは殆ど同じであります。谷田川の邑楽郡において二・九メートルに対し四三・五メートル、利根川の極めて上流であります水上におきましては六・〇〇メートルに対して八・〇〇メートルを示しておりますが、これらは未だいずれも今回の出水氾濫河川の中では下流に属しておるのでありまして、その上流におきましてはこれらの比率は到底想像の基礎にはならないのでありあます。即ち赤城山頂鈴鹿岳付近に湖沼がありまして、大沼と申しますが、この大沼に源を発して西流し、上越線沼田の下流十キロ地点で利根川と合する沼尾川は延長五里、この沼尾川の両岸は即ち勢多郡の敷島村でありまして、沼尾川が敷島村を横に長く貫流しておるのでありますが、この川の両岸における山林の流失は実に三百十五町歩と言われております。その内訳は針葉樹林五十町歩、濶葉樹林二百七十町歩、竹林五町歩でありあます。外にこの両岸におきましての流失といたしましては水田の流失が四十町歩、畑の流失百五十町歩、それに家屋の流失が住家は百六十六戸、附属建物が四百十八棟、水車が十七棟ございましたが、これは全部一つも残らず流失いたしております。尚人員の被害は、死亡及び行方不明がこの一村で八十三名、家畜の流失は二百七十九という全く驚く外ないところの損害を蒙つておりますけれども、この川は平素は僅かに川幅二三間のものであつたということであります。併し私共が参りました時にはその面影もなく、小さい石でも二、三十貫から、大きいものは五百貫、或いは千貫もあるのではないかと思われるくらいの石が見渡す限り積み重なつて、その石の積み重なつたその幅が四五十メートルとなつて、直ちに両方の山林の山崩れに接しておるという状態であつたのであります。この川の最も下流は上越線の下をくぐつております。即ちこの川の上に上越線沼尾川の橋梁が架かつておりますが、この橋梁は両岸の橋脚がコンクリートでできておりまして、その橋脚の内側の幅が六十尺でありましたが、一方のコンクリートを恰も一本の柱のように残しまして、他のコンクリートの鉄橋、レール諸共跡方もなく押流されまして、現在二百五十尺の川幅に両岸を削り取つておるのであります。村長の説明によりますと、十五日の語と四時頃万雷と言つてもまだおろかなような音を立てながら、幾十尺、幾十丈の眞白な水しぶきを立てて、どつと一時に下流に向つて来たといつております。今次の水害の最もひどかつた群馬、埼玉、栃木、茨城、東京、神奈川、山梨、静岡、それに東北の岩手、宮城、福島の十一縣の死者及び行方不明の合計は、昨日の内務省の発表によりますと千四百九十四名でありますが、群馬縣のそれは実にその四八%に当る七百二十八名を占めているのであります。赤城山の前面を流れる白川は同郡大胡町を、又粕川は勢多郡粕川村から佐波郡赤堀村を南流して平面地に至つて、桃ノ木、又は廣瀬川に入り、更に境の南の方において利根川に合するのでありますが、以上の三川はいずれも沼尾川同様三四間幅の川であるにも拘わらず、富士見村、大胡村、粕川村においていずれも百五十メートル及至二百メートルの幅を似て百貫程度の石が幾百となくころがつておるのであります。すべての田畑、宅地がこれらの石の下になつているのでありまして、田地の復旧すらもなかなか容易ではないというふうに感じたのであります。而してこれらの地点は、いずれもほぼ同時刻、十五日午後三時及至六時の間に一時に出水したと申しております。これらの川全部が集つている伊勢崎市は、一段低いところに廣瀬川が流れ上町という名前がついておるか知れませんが、高いところに粕川が流れているのでありますが、こんな差のついた町であるにも拘わらず全市浸水をしております。この伊勢崎市の全市浸水しましたのは午後六時頃から九時頃にかけてであつたと申しております。桐生市の水害は渡良瀬川と桐生川の決壊によるもにですが、流失倒壊家屋は三百五十三戸、人員の死亡は百十三名となつております。
 大体以上で上流の部を終わりまして、下流地方の水害地を視察いたしました。群馬縣は、今度の水害のまるで縮図のような感じがいたしました。極端な上流と極端な下流を備えております。即ち下流の邑楽郡は主として冠水による被害でありまして、全郡の水田は一万町歩といわれております。その一万町歩の水田中、二十三日現在四千町歩が水底にあります。私共視察員は伊奈良村附近より西谷田村に舟を以て渡りましたが、深い所では尚十数尺の深さがありました。当時水は殆んど停止して流出しておりません。一日平均五寸ぐらいづつ引いているということであります。これが冠水の主原因でありますところの海老瀬村の渡良瀬川決壊点を私共は視察いたしましたが、この決壊点は邑楽郡海老瀬村字北地先の八十メートルと東谷地先の百七十トーメルの二箇所でありますが、決壊は十五日の午後十一時半頃であつたのことであります。決壊の原因として、一、栗橋附近合流点より利根川の水が逆流して参り、全体的に今回の出水では利根川の水が、約二時間だけ渡良瀬より早く出たと申しますが、逆流してここまで参つたわけでございます。この地点で落合つたこと、これが一つ、第二は、その時は附近に遊水地がありまして、内務省が八百町歩の耕作地を作らんとして目下工事中であります。その堤防がありますが、この堤防が邪魔して上流からの渡良瀬の水、下流からの利根川の水が打つかつて水位が上つえ強力な圧力を堤防に加えたと思われること。それから三番目といたしました、この地点は旧渡良瀬の流れていたところであつたため、地盤が非常に悪かつたこと。四番目は、堤防が低くて合流いたしました時に二十センチの溢流を見たこと、これらをそこへ出て参りました村の農事関係者及び故老が申しておりましたので附加えておきます。更に全町の工事の八、九割に当るところの七百二十四町歩の収穫を全滅させたという新田郡尾島町の被害原因は早川の堤防、早川は利根川の支流でありますが、これ亦早川から利根川に逆流して参りまして、その逆流の水のために堤防が十八箇所一町内において決壊したものでありますが、これは詳細な専門的な調査を要するものであると私共思つたのであります。
 晴天の日、前橋、伊勢崎の線から見上げる赤城山は、その裾野の様子は誠に富士を彷彿とせしめる悠揚迫らないものがあり、一瞬の間に幾多の人命と住居、宅地、美田を葬り去り、且つ幾十時間の後遠く下流の埼玉、東京において幾十万の人々を浸水せしまたと思えぬ山容を示しておりますが、近付いて見ますと、硯石、鍋割、荒山、鈴ケ峯、黒檜の各山頂から、その直下の沢にかけて幾十幾百と知れぬ赤らな山肌を見せております。縣当局の発表は今回の降雨による新生崩壊地及び山林流失の面積は四千町歩と発表しておりますが、その大半は赤城を中心とした地点であります。荒砥川の氾濫を受けた大胡町役場吏員の同川水流地域の実施調査の報告によりますと、湯ノ沢谷においては一箇所五十町歩の雑木濶葉幼齢林が谷底に向つて直角に地辷りを起し、対岸の山に谷底から逆に三十メートル及至五十メートル押し上つていたとのことであります。私共は下流の利根決壊の原因をここに見たような感じがいたしたのであります。今回の出水が従来の例を破り栗橋附近において、従来は一時間二三十センチの増水であつたものが、今回は最高時毎時一メートル余の増水を見、これが利根決壊の原因であつたと言われておりますが、一時間一メートル余の急激増水も、且つ又堤防決壊も固よりこれは結果であつて原因ではないと思うのであります。昭和二十二年度の災害復旧工事費は現在のところ八十二億五百九十七万一千円に上ると昨日内務省から聴きましたが、これらは固より一日も早く復旧しなくてはなりません。
   〔議長退席、副議長着席〕
 併し復旧のみに努力することなく、これと並行して洪水氾濫の原因に適当なる手段を加えるのでなければ、復旧そのものの意義もなくなることを銘記せねばならんと思います。従来の大蔵当局は復旧工事費補助の支出には割合に従順であつたが、治水治山の根本策、植林、砂防の費用の点に至りましては、これを圧縮することを以て恰も手腕名誉のごとく考えていたということでありますが、これを根本的に改めない限り、水害は引続き再び繰返され、膨大な國民の犠牲と復旧費の支拂を余儀なくされると思われました。(拍手)最後に意見を加えまして報告を終わります。(拍手)
#17
○副議長(松本治一郎君) 水害地報告はこれを以て終ります。
     ―――――・―――――
#18
○副議長(松本治一郎君) 日程第一、自由討議、本日の自由討議は本院規則第百四十七條によるものとし、所見開陳の範囲を水害対策といたします。会議時間は二時間三十分とし、各発言者はそれぞれその制限時間を遵守せられんことを望みます。これより自由討議を始めます。
   〔遠山丙市君発言者指名の許可を求む〕
#19
○副議長(松本治一郎君) 遠山丙市君。
#20
○遠山丙市君 自由党は柴田政次君を指名いたします。
#21
○副議長(松本治一郎君) 柴田政次君の発言を許します、
   〔柴田政次君登壇、拍手〕
#22
○柴田政次君 今回の水害によりまして関東或いは東北各地に起りましたこの大水害は誠に悲惨なものがあります。申す迄もなくこの被害によりましたところのいろいろの問題が論議されております。併しながら私共咄嗟に考えて見まするのに、かような被害を蒙りました中に、幾十万の人たちがこの悲惨事に遭い又幾千の生命を失い、又は財産を失い、誠に以て感無量なものがあります。これらの人たちを救う途は最大の急務であると私は信じて止まないものでございます。これらの哀れな人たちは、今やこの秋寒空におきまして家を失い、衣料を失い尚又あらゆる資産を失つておるのでございます。これにつきましてはそれぞれ更正の途を講じておることは信じておりますが、一段とこの人たちに対しまして救援を與えることは、國としての最大の責任であると私は信ずるものでございます。この問題は報告者各位の報告の中にもございましたが、治山治水ということが根本的の問題になつておるように思いますので、一二を申上げまして御参考に供したいと存ずる次第でございます。
 先ず以て治山ということは先程も報告にございましたように、今日は戦争中におきましての山林の濫伐ということを唱えております。これは勿論私共も同感でございます。伐ることは伐つてもその後の造林ということを今日怠つておる。何故に怠つておるかということはいろいろの点がございます。人の不足、苗木の不足その他最近に行われます山林の再分配、こうしたことは國民の脳裡に響いておりますために、いやが上にも山林の植林をしない。又採算上から見ましても今日の山林の植林は到底算盤が持てないのでございます。かようなために伐るは伐るけれども、植林はしないというのが、そこに原因を成しておることと私は信じておるのであります。勿論我々は生活上におきまして、林産物は一日も離るることのできない重要性を持つものでございまするが故に、どうしてもこの植林ということを忽せにすることはできないのでございます。然るにも拘わらず、政府におきましてはこの方面に比較的力を入れない。私は林野局当局におきましても、案は立てましてもなかなかこれは実行に移すことができないでおるということを聴いておるのでございます。申すまでもなく一日も早くこの造林計画を立て、以てこの災害を防止しなければならんということを痛感いたしておるのでございます。併しながら今直ちに山に植えたからとて、これは相当先の時代になつて参りませんと役に立たないので、應急の策といたしましては外に手を打たなければならん、それは申すまでもなく砂防工事である。砂防工事につきましては私共は誠に素人でございまして、これは山の形態或いは地質等によりましていろいろありましようが、先ず以て砂防工事の、私の聞いておりまするところによりますと、渓流工事、即ち谷間々々の砂防工事でございます。これを急速に施行しなければ土砂の流出を防ぐことができないのでございます。或いは山腹の工事、いろいろ打つ手はあるのでございましよう。これらはあらゆる上流におきまするところの治山の最も根本的の重要問題であると私は信ずるのでございます。これはいずれ本院の中にも相当の研究をなすつておる方々も沢山おありのことと信じておりまするが故に、いずれこの問題を十分に御研究あらんことを偏にお願いして止まないのでございます。
 飜つて治水の問題、川の問題でございますが、これは今回の大利根の氾濫によりまして、つくづく私共も視察もいたしまして、又考えてみまするときに、今日大利根の水位というものは非常に高まつて参り、これは川床が上つて来る、年々歳々川の床が上つて来る。それは堤防を築きましても、段々堤防を高くするだけで、ますます危険を感ずるような今日の状態になつておるのでございます。これはどうしてもあの利根川の今日の堤防によりまして、あの水を防ぐことは到底不可能である、かように私は考えております。それ故に私はどうしても今一本あれに準じた隅田川によける荒川の放水路というような、別にこの放水路を作ることが最大の急務であるということを痛感しておるのでございます。今日の利根川の堤防は或る場所におきましては両方の耕地よりも川の方が高いのでございます。誠に怪しい堤防になつておる所が数多いのでございます。これはもう到底今日の人力によつてあの堤防をつくりましても、再び又覆えされるようなことがあるということを私は疑うものでございます。それで利根川の水の増し方というものは、利根川ばかりでなく、私は支流における中小河川、これが即ちあの害をなすものと私は考うるのでございますが、これは利根川の支流ばかりでなく、到る所の大きな河川の支流におきまして中小河川が大をなして溢れるのでございますので、これをどうしても防がなければならん。これはどうしても改修、つまり川の形をできるだけ水の流通をよくするようにして行くという点に私は重点を置いて行かなきやならん。大きな河ばかり國庫が負担をいたしまして今日やつておりますけれども、中小河川のおきましても國はこの責任をもちまして、そうして地方費負担となります上にも國が高額の補助を出しまして、十分の監督の責任があると私は痛感するのでございます。
 尚次に、今回の耕地の問題でございますが、耕地につきましては可なり廣範囲の流失或いは埋没等が非常に多いのでございます。これらの耕地の復旧に要しますところの費用も亦非常に莫大なるものがあるということを信じておるのでございます。この耕地の復旧は今日まで半額若しくは六割程度くらいの補助でやつておりましたが、今回の水害におきましては全額を國庫がこれを負担すべきものと私は考うるものでございます。何故かと申しますというと、これまでは耕地というものは或る一部地主の所有が最も多かつたのでございますが、御承知の通り農地法によりまして地主というものは来年三月を以て殆んどなくなる。須らく自作農者である。この自作農者にこの耕地回復の負担を負わせるということは到底でき得ないのでございまして、そうして又これは急速を要する問題でございます。来年の食糧事情に至大の関係を有することと信じております故に、どうしてもこの問題を解決しなければならん。又すべて工事の施行につきましては、又いろいろ土木関係との問題が起こるのでございます。私はその一例を見ましたり、或いは聞いておりまするが、全國において数多いと存じまするが、つまり府縣の土木関係と工事関係とが、一方は河川の保護維持のため堤防の構築に相当の技術的の考えを以ちまして、これだけ丈夫にすれば自分の方はそれで事足りる。併しながら耕地の方におきましてはそうは行かない。やはり灌漑用水のために水量というものに重点を置きまして、この灌漑のための水路の位置、或いは場所、こういうものにつきまして非常な摩擦を起してこの工事の進捗が非常に遅れておるというような例があるのでございます。これらはやはり綜合的にお互に融和を図り、以てこの完璧を期するのでございませんければ、一朝にして今次の耕地の回復は到底望み得ないのであるということを私は信じておるのでございます。
 次に参考までに申上げて置きたいことは、過日視察の砌り茨城縣における猿島郡の中川村の利根川の堤防決壊のことにつきましては、私共視察團といたしまして、すでに板野君から報告をしてあるのでございまするが、これにつきまして私は誠に遺憾な点を一つ申し上げて見たい。中川村の堤防の決壊は昨日御報告申上げた通り、開発営團によりまして干拓をなさんがために、あの堤防を切り開いてコンクリートの排水路を作つた。それは私共の見たところにおきましては、大体二メートル近いものの角に作つた排水路を、いくつもおつ附けて作つたのでありまするが、その作り上げたのは本年七月一ぱいで完成をしたという報告でございました。(「しつかりやつてくれ」と呼ぶ者あり)それはいかにも脆弱性を持つた……完成とは言いながら、例えて申しますれば何と申しますか、水面の蓋でございましよう。逆流を防ぐ蓋がこれが未完成であつたというようなことを聞いております。又コンクリートを据え附けた両面が非常に脆弱であつた、こういうことをそのままに通してしまつた。これはその堤防の監督は内務省であつた。内務省の多分船橋関東土木とか、或いは江戸川とかその辺はよく分りませんが、相当責任ある技師の方がおいでになつて、それを完成として引渡した。それによりまして、地元の方々もいろいろ増水になつて来るというので、杭を運び俵を運び、いろいろ補強工事をいたしましたけれども、遂に力及ばずしてあの決壊をみました。その結果のために、附近の人家が押し流され、人間の生命を取つた。かようなことをしました内務省の責任は、どこにあるかというようなことになりますることは、誠に以て遺憾に存ずる次第でございます。こういうことにつきましては、私は明瞭なるところの責任を負うことは当然だろうとかように信ずるのでございます。又今日各方面におきまして、山林の濫伐ということを盛んにいたしておるのでございますが、私共過日も聞きました通り、これは第三次の‥‥
#23
○副議長(松本治一郎君) 時間です。
#24
○柴田政次君(続) 農地の関係上、再分配のことを言われますために、非常に怯えておるということでございますが、これにつきましては、政府におきましても相当声明をいたしまして、何とかこの措置を講じなければならんということを痛感いたすものでございます。誠に不徹底でございますが、一應私の意見を申上げます。(拍手)
   〔梅原眞隆君発言者指名の許可を求む〕
#25
○議長(松本治一郎君) 梅原眞隆君。
#26
○梅原眞隆君 緑風会は岡本愛祐君を指名いたします。
#27
○副議長(松本治一郎君) 岡本愛祐君の発言を許します。
   〔岡本愛祐君登壇、拍手〕
#28
○岡本愛祐君 昨日及び本日に亘りまして、関東大水害の報告を調査團から拝聴いたしました。その中のご意見をも参考にいたしまして、水害対策について意見を開陳いたします。大水害に遭遇いたします度ごとに心ある國民が公開いたしますことは、我が國土が崩壊し易い山岳を擁しながら、山林を伐り過ぎ、而も植林を怠つたこと、又河川を治めることに怠慢があつたこと、これであります。我が國は戦争中、山林の非常特別伐採を行いまして、山林経営のマグナカルタとも言うべき施業案、これは林業上、山崩れの起らないよう、山林の状況に應じまして伐採の方法を定めたものでございますが、これを無視して極度に林木を伐り過ぎたのでございます。戦争後におきましても、戦災復興用材や、薪炭林等の増産のため、過伐を余儀なくいたされました。現在におきましては、林地も農地同様取上げられるぞとの声に怯えまして、濫伐が続いておるのであります。かくのごとくいたしまして、全國山林面積二千四百町歩、その六分の一が裸山になつておるのであります。大雨が降ると、従来は山林に蓄えられておりまして徐々に流れ出した雨水が、今ではどつと一時に流れ出します。而も裸山を崩しまして土砂を運びますから、川床は降雨の度ごとに急速に上つて参ります。かような状態でありますから、一朝豪雨があると、河川は忽ち氾濫いたしまして、土砂を含んで比重が増した川水は堤防を押す力が甚だ強くて、決壊の原因となるのであります。堤防工事に際しましては、上流の濫伐ということは当然計算に入れてないだろうと思います。それで水の出足も、水位も、堤防の圧力も、工事当時の予想外ということになりまして、堤防決壊の言訳に、何十年振りの豪雨とか前古未曾有の出水とかいうことを言わざるを得なくなるのであります。併し冷静に考えて見ますと、これは天災ではなくて人災であるという場合が多いのだろうと考えます。かように考えて見ますと、水害の恒久対策の第一は、山林の伐採に当つて治山治水を十分に考慮すること、これであります。一時の必要に迫られましても、施業案に背いた濫伐を厳禁することが必要であります。木曽川筋その他山林経営が良好な所では、峻嶮極まる山岳を擁しながら、いかなる豪雨にも長く水害の厄を免れておるのを見ますれば、思い半ばに過ぎるものがあるのであります。新規の開墾地も大雨に際しまして抵抗力が非常に弱い。容易に土砂が流されてしまいます。終戦後の食糧増産対策といたしまして、大急ぎで作られた五ケ年間に百五十万町歩の山林原野を開墾するという計画は年度割の延長とか、予算の増額のみに止まりませんで、國土計画の一環として、水害対策の見地からも至急再検討を要します。(拍手)一町歩の山畑を無理に開墾することから、数百町歩の良田、良畑を失つてしまつては何にもならないのである。傾斜度が強くて崩れ易い産地は、開墾予定地から速やかに除外すること、又開墾しても大して作物もできず、やがて外國から食糧が恒久的に入つて参ります暁には忽ち放棄されて荒地に帰するような林地は、現在の山林のままで置くことが必要であります。薪炭林についても、やたらに濫伐してはなりません。石炭や電力の不足を補うために、家庭用の薪炭の増産はもとより必要であります。併しすでに昭和二十一年度において、全國山林の全伐採量二億九千二百万石の六一%に当る一億八千万石は薪炭林で占められております。薪炭林の伐採が用材林の伐採よりも、量においても、面積においても、遥かに多いのが現状であります。東北地方の水害、群馬、栃木、茨城地方の洪水も、これら里山の濫伐が崇つていると認められております。これは調査團の報告でも明らかであります。政府は冬の燃料の綜合対策を樹立するに当りまして、余りに過度な薪炭林の伐採に期待してはなりません。
 次に水害対策上必要なのは植林の励行であります。これは柴田君もお話がございました。或いは説をなす人がありまして、現在の荒廃した裸山に対して、植林が治水上の効果を上げるには、二十年の歳月を要するのであるから、植林よりも先ず砂防工事が第一であると主張するのであります。又いかに完全に植林しましても、異常の豪雨に遭つては水害を防ぐことができないと主張する糸もあります。一應尤もであります。砂防工事はもとより必要である。殊に崩壊地の應急対策としてこれを至急に施行する必要があります。併し荒廃した山を植林しないで放任すれば、大雨ごとに土砂を流して崩壊を増します。折角の砂防工事も効果が非常に減殺されるのである。又特別異常の大豪雨でなくても、しばしば洪水の憂目を見ることになります。加うるに、植林は國民の日常生活に欠くことのできない木材の精算を永久の約束いたし、施業案に基く適度の伐採と相持つて、年ごとに水を治め、山を治め、永遠に國土を守ります遠き慮りなければ必ず近き憂があることは、即ち水害対策における植林の地位をよく言い表わしていると思います。
 経済実相報告書によりますと、昭和十四年から十六年に至る造林面積は毎年平均四十九万町歩に達しております。ところが昨二十一年は僅かに七万町歩しかやつておりません。農林省ではすでに昭和二十一年度から五ケ年計画で二百七十二万町歩に植林するという計画を立てております。ところが右の通り、二十一年度は大失敗で、本年度も亦大失敗であります。それで明年度から五ケ年計画の出直しをしようとしております。この不成績の原因は、苗木の不足とその高値、人夫賃の暴騰、人夫の食糧難等が植林の実施を阻み、その上、山林の私有権に関する不安から植林をする民間人が殆どないからであります。平野農林大臣は先きに、私有林の面積を制限しないこと、山林の國有又は國管は考えていないことを声明されました。併しその声は非常に小さい。もつと声を大にして全國民に徹底して頂きたい(拍手)これが間接に水害の根本対策の一つとなるます。政府は尚進んで苗木を無償又は僅少の代價で民間に交付し、造林の補助金も入費の半額以上とするように努力をして頂きたい。かくすれば森林所有者は安心して造林の実行に、山林の愛護に当ること疑いありません。要は五ケ年計画というような机上プランを立てることではなくて、植林そのものを速かに実行するにあります。今や皇室御所有の御料林の全部百三十二万町歩と、もと内務省の所管であつた北海道所在の國有林二百四十六万町歩とを合せまして、全國の山林面積二千四百万町歩の三分の一を占めますところの八百万町歩の大國有林を農林省の林野局が一括経営するのでありますから、その責任は甚だ重大であります。これら國有林は峻嶮なる大山岳地帯に位するものが多く、その経営の良否が直接治山治水の上に影響を及ぼすのでありますから、一時の収入を図るに急にして、過伐、濫伐に陥り、又は予算難とか人夫難とかいうことに籍口して造林を怠ることは許されません。従来往々にして植林の國家予算が、いつの間にか他の使途に流用されましたが、かかることは今後厳禁しなければなりません。國会は國有林の経営に重大なる関心を持つておるものであります。(拍手)
 次の砂防工事、河川改修工事を徹底的に実施することは言うまでもなく必要であります。これには多大の資材と予算を必要といたしますが、万難を排して至急に実施しなくてはならない。先ほどもお話のありましたように、大蔵省で予算の出し惜しみをし、不完全な工事を施行しては何にもなりません。一文惜しみの百知らずということになります。先般木村内務大臣は本院で、今回の利根川の決壊個所は戦争のために改修工事を中止した所に当ると御報告になりましたが、利根川、渡良瀬川、江戸川の合流点附近は昔から治水上の要所であります。権現堂の堤が決壊すれば千住方面に至るまで大洪水になるということは昔から言い丸られております。それがために膨大な費用と永年の歳月を費やして築かれつつあつた利根川の堤防であります。それが今一歩というところでかかる要所の工事を延期したから、今回の大水害を招いたということになると思います。歴代内閣の怠慢というべきであります。(拍手)水害対策上頂門の一針として長く國民の肝に銘ずべきことであります。堤防その他河川改修施設の保全につきましては、当局はもとより國民一般も常にその重要性を認識し、堤防を菜園に使用して、「もぐら」の繁殖に任せたり、櫻を植えて地盤を緩めたりして、堤防を弱化するがごときことは断じて許されません。橋梁の架設にも、耕地整理や田畑改良工事の実施にも、治水上万全の用意を怠らず、一朝有事にこれらが原因となつて堤防決壊を招くがごとき愚をえんじてはならん。内務省の荒川工事事務所職員が堤防上に菜園を設け、それが因となり、今次の出水に際して堤防を決壊せしめんとしたと新聞紙は報じております。何という怠慢、何という不心得でありましようか。(拍手)政府は厳かにこれを粛正して頂きたい。
 以上申述べました諸見地から、ここに私は特に主張したいことがあります。それは現在の行政機構上、治山即ち植林と山林の砂防は農林省の所管であり、治水即ち河川防砂と河川改修は内務省の所管であります。然るに治山と治水とは密接不離の関係にありますから、今回内務省の解体に際し、須らく建設省を設置して、旧内務省の國土局に合せ、農林省の林野局と開拓局、商工省の電力局、これらを建設省の所管に移し、治山治水と併せて、大和水との利用方面を綜合統一し、國土保安と國利開発の完璧を図るべきことを、ここに各位に提議するものであります。
 最後に論及したいことは、水害防備体制の確立であります。水害に対する物的設備を補強するものは人的防備である。濁流が襲いかかり、堤防が崩れんとして、水防團員の決死の防禦により、これを救つた事例は従来非常に多いのであります。然るに近年小康に慣れて、水防團の組織が弱体化していたとの評があります。水害の危険を孕む川筋市町村の消防團は、平素から防火の訓練以上に水防の訓練を行い、又相互援助の組織を整えて置かなければなりません。(拍手)進んで特別の水防組織が関係各市町村を通じて結成せられるならば尚更結構であります。利根川のごとき大河川については、数府縣に跨がる綜合的組織を必要とすると存じます。今回の関東大水害の苦い体験を教訓にして、一糸紊れぬ防備体制を確立することを政府に強く要望いたします。苦い経験も数年を経ると忘れがちになるのが我が國民の通幣でありまして、他國との戰争を全く放棄した今日、自然力との戰においてのも、治にいて乱を忘れざるの用意が必要である、これこそ水害対策の要諦と存じます。(拍手)
#29
○副議長(松本治一郎君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十七分開議
#30
○副議長(松本治一郎君) これより休憩前に引続き会議を開きます。本日佐佐弘雄君より理由を附して治安及び地方青銅委員辞任の申出がありました。許可することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○副議長(松本治一郎君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠といたしまして岡元義人君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#32
○副議長(松本治一郎君) これより自由討議に入ります。
   〔梅原眞隆君発言指名の許可を求む〕
#33
○副議長(松本治一郎君) 梅原眞隆君。
#34
○梅原眞隆君 緑風会は小野哲訓を指名いたします。
#35
○副議長(松本治一郎君) 小野哲君の発言を許します。
   〔小野哲君登壇、拍手〕
#36
○小野哲君 最近における水害により直接災害を蒙られた多数の方々に対し深く御同情申上げますと共に、河川、鉄道、通信、その他の復旧に日夜従事されておる工事関係者のご苦労に対し心から感謝の意を表したいと存じます。この度の水害、特に関東地方の水害につきましては、晴雨府の発表、國会議員の現地調査報告等によりまして、その全貌を明らかにすることができました。又新聞ラジオの報道、或いは意見の発表によりましても、その原因の探求或いは対策の実施に関して國民の要請が誠に熾烈なものがあることを強く感ずるのでございます。私はその途の専門家ではなく、且つ時間の制限もありまするので、十分な論議を盡すことは困難かと存知ますが、乏しいながら私自身経験いたしました実例に徴し、将又今次大水害の教訓に基ずきまして恒久対策に関し所見の概要を申述べ、各位の御批判を仰ぎたいと存じます。
 治水といい、治山といい、今更事新らしく論議せられるまでもなく、昔から政治の要諦として重く見られて来たものであり、政治の基本は治水治山にあるとさえ申し傳えられておるのであります。明治以来新しい科学技術を導入し、幾多の科学技術者が輩出しておる我が國、而もこれらの部門を担当するために中央地方を通じて専門の技術者を多数配置され、且つ度々の水害を受けた苦い経験から、我々國民の頭にも十分滲み込んでおる筈の我が國において、今日尚かくのごとき大水災を蒙らねばならないということは、戦争という悪条件があつたといたしましても、何か余程の原因がなくてはならんと國民が一應考えますことは尤もであると存ずるのであります。この國民的要請に対して明快な解答をいたしますことは、即ち政府の責任であろうと存じます。而してこの責任がいかなる方法によつていつ遂行されるかは全國民の等しく注視するところでありまして、我々は國民のこの熱願を体して政府を督励いたしますと共に、我々も亦大いなる責任を負うものであることをこの際深く銘記いたしたいと存ずるものでございます。(拍手)
 先ず第一に、私は砂防について申上げたい。聞くところによりますれば、明治初年の頃オランダ人から指導を受けたとのことでありまして、当時我が國の地勢、地形等を視察いたしまして、治水は単に河川の改修だけではいけない、よろしく砂防に力を注がねばならないと言つたようでありますが、その後果してこの通りに実行されて来たでありましようが、爾来我が國の治水政策は河川にその技術力を傾注し、砂防を軽視するに至つた事実はないでありましようか、今回の大水害を若しそのオランダ人が聞いているといたしますれば、恐らくは地下で慨歎しているに違いないと思うのでございます。河川工事を計画するにつきましては、降雨量と河川の流域面積とが機銃として取上げられておると聞いておるのでありますが、果してこれだけでよいかどうか、無論専門家が計画を立てるのでありますから、他の条件をも十分取入れて研究されていることとは存じまするが、素人の私といたしましては、是非共土砂の問題を重要な条件として加えて頂きたいと思うのであります。降雨に伴う出水は、それ自体の量のみが河川に影響するばかりでなく、これと共に土砂の流出が河川の水量に劣らん程度に働くために、美津濃圧力が非常に増大するのであります。たとえば先年発注いたしましたかん歳の大水災といい、四五年前起りました東九州の大水災といい、正しくこれを裏書するものであると存じます。私は当時九州に勤めておりましたが、作りつぱなしで当然なすべき施設を怠つたために、飛行場近傍の鉄導線路は大被害を受けたのであります。今回の水害においても鉄道の被害は先程運輸大臣から御報告がありました通り、誠に甚大でありますが、これとても鉄道自体の構造物が弱いために破損又は倒壊した例は極めて少なく、河川に対する平素の補修が極めて不完全であるがために、河川が氾濫し、低地に湛水し、その結果生じたものといわねばなりません。(「ノー」と呼ぶ者あり)開墾地についても同様のことが予想いたされるのであると存じます。又小さい川だからと思つて安心ができない。この川が出水いたしますと、土砂を混えて氾濫する。このために田畑が予想外の損害を受けた例があるのであります。私は千葉縣に在勤中砂防の重要性を強調し、工事の促進を図つた経験を持つておる一人であります。更に林道の開設が適切でなかつたために、折角の森があるに拘わらず河川の氾濫を助長し、道路の決壊を招いた例もあるのであります。この度の水害において増水速度が非常に早くなつたことについて、識者はこの原因が戰時中の過伐或いは終戦後の濫伐に因ることは一般の常識であつて、水害の防止と國土の保全とは植林によつてその過半が解決されると言つておりますが、私も全く同感でございます。荒廃した山林を本然の姿に戻すために、遠廻りのように見えましても、この植林を根気よくやることが水を治める近道であるという意見には同意を表する者でございますが、これのみに頼ることは必ずしも十分でないのでありまして、これと並行して同時に砂防を行なわなければならんと固く信ずる者であります。即ち水害防止の恒久対策に重要なる部分として、且つ、早急に着手いたさなければならない事業として植林は無論大切でありまするが、同時に砂防工事を行い、河川の改修復旧は当然その完璧を期さなければならんと存ずるのであります。水を治めんとすう者は先ず山を治めよとの金言は、治水の綜合計画の必要を説いたものであると存ずるのでありまして、この中には当然砂防を包含しておるものであるということを強調いたしますと共に、諸君の十分なる御認識をお願いいたしたいと存ずるのでございます。
 第二は、治水治山等のいわゆる水に関する行政の統一についてであります。このような大水害に見舞われますると、誰もが治水治山の問題に大きな関心を持つことは申すまでもありません。政府においても、國会においても大いに論議される。併し河川の水が減じ、被害地の水が引きますと自然に立消えになるのが人情の常であります。あれだけ声を大にした事件であつたに拘わらず、その結末の発表を見ない内に有耶無耶に葬り去られ、徒らに過去の思い出、後日の語り草になつてしまう場合が多いのでございます。併しそれでは直接災害を蒙つた多数の國民にとつてはなかなか諦められん心持がいつまでも残るでありましようし、犠牲となられました方々に対しても誠に申訳がございません。私は政府が緊急の対策を立て、臨機の措置を実施いたしますことは無論でありますが、この大水害が一つの大きな戰災に繋がるものであり、この災厄を永遠に除去し、國民が恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する機会を保障され、農業経営の安定、その他國民生活の幸福を確保するために、政府は速やかに恒久的復興計画を立て、着実に実行に移すべきことを切に要望する次第でございます。これがために特に治水、利水に関する行政を一元化し、ややもすれば頭を擡げようとする行政各部門のセクシヨナリズムを一擲して、綜合計画を強力且つ能率的に実施する期間を整備する必要があると存ずるのでございます。私はこの点についても一つの実例を提供いたしたい。これは利根川の治水と直接関係を御持つものでありまして、いずれも千葉縣下の重大問題でありますが、その第一は、利根川放水路の計画であり、その第二は、印旛沼、手賀沼の干拓事業であります。前者は内務省、後者は農林省の所管でありまして、ルートは別でありますが、いずれも東京湾へ水を流そうとするものであります。利根川放水路は戰時中工事を注しいたしましたが、今回の大水害の結果から見てこれをいかに処置するか、又両者をいかに調整するか、利根川治水の重要な施策の一つとして恒久対策中に織り込み、速かに具体的決定をいたすよう、この際政府の反省と決断とを要望いたす次第であります。(拍手)私はかねてから治水、利水等、水に関する行政は統一すべきものであると考えておりますが、水源涵養の営林、河川の後輩防止の砂防、灌漑としての河川、水力資源としての河川等の企画を統一する必要があると存じます。而してその企画がバランスを保ちつつ強力に実施されなければなりません。近き将来、政府は行政機構の全面的再検討を行わんとする意思があるようでありますが、如上の趣旨に則つて、治水、利水を対象とする行政機構を整備し、恒久対策の実施に万遺憾なきを期せられたいのであります。これと共に、内閣に一大審議機関を設置し、全智全能を傾け、その結果を詳細に亘り國民に明示いたさなければなりません。これら審議機構の設置及び治水、利水に関する行政の統一の実現は、必ずや現在内務、農林、商工各省に跨がる治水、利水に関する行政企画を綜合的に実施することができるばかりでなく、災害防止に関する学術的研究も全体的に体系付けることが可能であり、土木技術を根幹とする我が國技術部門の革新発達を促す契機を作るものでありまして、土木技術関係者も、その技術力ご如上の目的に集中せられ、國民の期待に應えられることは、もとより本懐とせられるところであろうと存ずるのでございます。
 第三は、國会において査問機関を設けることであります。この度の広域に亘る水害が、果して天災であるか、主な原因はどこにあつたか、防水作業その他に関する訓練、協力、指導祖の他責任当局の事前及び事後の措置が適切に実行されたか、我々はこれに関する議員諸君の調査報告、新聞の論説、報道等によりまして、教えらるるところが多いのでございますが、ここに詳述することは省略いたしたいと存じます。私自身の感想を御以ていたしますれば、不可抗力による天災であると一概に断言して、國民が果たして納得するかどうかを疑うものであります。(拍手)併しながら不可抗力であつたといたしましても、これを証明するだけの正確な資料があり、原因を明確ならしめる調査を公表いたさなければなりますまい。曾て私はフランスに留学いたしておりましたときに、一九三三年十二月、クリスマス前夜でありましたが、パリ附近で発生いたしました鉄道の追突事故は、世界にも稀な大事故であつたのでございます。その場合に、フランス政府はいかなる措置をとつたか。この事故直後におきまして、直ちに査問委員会を作りまして、その原因を探求し、その責任を追究したことを想い起すのでございます。國会議員諸君が現地調査をせられまして得られました貴重な報告資料を蒐集されておりますことは、誠に敬意を表する次第でございますが、これらの資料によることはもとより、更にあらゆる角度から今回の大水害の原因を徹底的に探求し、且つその責任の所在を明確ならしめるために、國会に査問委員会のごとき査問機関を設置せられんことを提唱するものであります。速かに結論を得まして、一切を國民の前に公表し、國民に批判の機会を與えると共に、その理解と協力の下に、禍を轉じて我が國百年の大計の基礎となしますように、私は衷心から念願いたして止まないものでございます。
 終りに、私は連合軍の行為ある御援助、政府並びに地方当局、その他関係者の懸命な努力に対しまして、衷心から感謝いたしますと共に、土木関係技術者各位が原価の重大なる指名を認識されまして、我が國土木技術の権威と、名誉と、復興のために、折角精進せられますよう切望いたして止まない次第でございます。御清聴を感謝いたします。(拍手)
   〔千田正君発言者指名の許可を求む〕
#37
○副議長(松本治一郎君) 千田正君。
#38
○千田正君 無所属懇談会は岩間正男議員を指名いたします。
#39
○副議長(松本治一郎君) 岩間正男君の発言を許します。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#40
○岩間正男君 無所属懇談会は、その道の専門家でありますところの兼岩傳一君を今日の自由討議に予定しておつたのでありますが、不幸にして兼岩君は病気で只今臥床いたしておりますので、私が緊急代りまして、この責を塞ぎたいと思うのでございます。従つて私は専門的なことを申上げることはできないで、甚だ断片的になると思うのでありますけれども、私の体験を通しました点につきまして率直に所見を披瀝いたしたいと思うのであります。
 去る五月の片山首相の施政方針の質問演説の際におきまして、我が無所属懇談会の千田正君が、この水害対策につきまして実に重要なる発言をいたしたことは、皆様のすでに御記憶にあるところと思うのであります。若しあの際の発言が重要な問題として政府当局に取上げられまして、今日これが具体化を急がれておつたならば、この度の大きな水害に対して適当な役を果すことができたと思うのでありますけれども、残念にしまして、このことは遂に行われなかつた。而も更に第二の警告であるところの東北の大水害がその後発生いたしたのでありますけれども、この時の対策におきましても、十分なる措置がとられたとは考えることができないのであります。果せるかな、四ケ月後を出でずして、この度の実に未曾有の大水害に逢着せざるを得なくなつたということは、我々の深く悲しむところであります。政局が非常に混沌としておつて、問題が又山積みである、この処理に当られているところの当局の苦労ということも、一應は察せられますけれども、若しあの際一片の叡智と、断乎とした見通しと、更にこれを裏附けるところの強力な政治力があつたとしたならばどうであるかということを、私は今日考えるものであります。警告はあのようにしてすでにあつた。併しながら先程申しましたように、これに対して何らの措置が講ぜられなかつたことは残念の極みであります。成る程度今次の災害を見ますというと、九百ミリという、恐らくは四十三年の水害における当時よりも大きな降雨量を持つているということは、今次の天災のこれは争われない一つの事実であります。更にこの降雨量が実に短時間の間の内になされたということ、そのために恐らく今までの設営にしては到底あの排水をなし遂げることができなかつたというところに一つの今次の水害の大きな特徴があるということを無論考えるものでありますけれども、これに対するところの方策が実は今次の戦争、その戦争の中に深い根があるということを、我々はここで思いおこさなければならないと思うのであります。詰りいろいろな堤防の修理、それから治水その他の水害対策において、戦時中荒廃したところのこの戦力を以てしては十分にこれを収拾することができなかつた。こういうような形において、今まざまざと戦争当時におけるところの災害を再び我々はここで嘗めている。戰争の災害がこのような形で現在現われておるという姿を思い起さなければならんのでありますが、これに対しまして我々は再びこの災害を繰返さないというところの断乎たる決意を以て、この水害対策を成し遂げなければならないと思うのであります。私はこの度の水害の様子に触れて見まして、政治は正にスピードだということを考えております。いかに大きな方針、いろいろな施設について縦横の論議をなされましても、これに対し適切なスピードのあるところの強力な政治が行われなかつた場合には、いつもこれは六日の菖蒲、十日の菊というような感情をいつも抱かせられておる。今日國民大衆はこの政治の形態に対して、スピードのないことを非常に歎いていつというふうに思われるのであります。(拍手)この点に対しまして、今次あの突如として起つた水害に対して、もつともつと適切なスピードのある強力な政治が推進されるべきであつたと思うのであります。私は今度の水害に当りまして、ひそかに江戸川におけるところの水害の様子を独り視察をいたしたものでありますけれども、あの江東に水が参りました二十二日の夕方、平井を降りまして、それから小岩まで鉄橋を歩いて参つたのであります。そうしますというと、鉄橋の上は老若男女が、沢山の人があそこを通つておる。而もそれらの中には重い荷物を背負つた老婆が、目眩いをするようなあの鉄橋の枕木の上を越えて行く。そういうような所を困難をしまして現地に辿り着いて見たのであります。そうしますと、あの小岩の堤防の上に多くの非難の人たちが小屋掛けをして、何千という世帯があそこには並んでおるのであります。水は門の上まで来ておる。そうしてその辺にいろいろなものが漂流しております。その中には曾て家庭の野菜に作つたところのあの「かぼちや」が流れておる。曾てはこれは國策の一つで奨励されたあの「かぼちや」が今次の洪水によつて流されて浮いておるというこの姿が、実に日本の現在の政治の象徴の姿ではないかというふうに私は見たのであります。そうしてあの姿を見ながら、あの主婦の一人に、一体何が一番困つておるかということを尋ねて見た時に、一番困つておるのは食糧である。実はこれは江戸川区のことでありますけれども、九日に粉が十一日分配給があつた。その後何等これに対するところの配給の方針はない。更にこれに対する何等の見通しも與えられない。こういうような形で、この主婦は「かぼちや」を刻みながら、夕飯の仕度をしながらこのことを私に語つたのであります。而も更に歩を轉じて見ますというと、その河岸には、一歩葛飾区においてはパンの配給、それが軍隊の袋の中に沢山詰めたものが河岸に山積みされておる。それにも拘らず一方はそのパンを見ながら足りないところの、見通しの着かないところの配給を敷いておるというような姿、つまり葛飾区においてはすでに打開されておるところの方針が、これが江戸川の方においては何ら打開の途が講ぜられていないという状態であります。そうしてこの混乱と絶望の中にそれらの人達が夕方を迎えておる。こういう姿を私は見ておることができませんので、それではこれから直ぐに私も区役所に皆と共に行きたい。どうぞ代表の方を作つて欲しいというので、代表の三人ばかりを挙げて、私がそれから出掛けようとしたのでありあますが、丁度そこへ地元の代議士が見えましたので、私はその方にお任せをして帰つてきたようなわけでありますけれども、これを見まして、私は、現地に政治の臭いがしない。強力に綜合されたところの政治の力がない。分散したところの政治の姿をしか我々が今日見ることができない。このような形におけるところの政治力の貧困というものを実は感ずるのであります。我々はこれに対しまして、十分にこの議会こそはこれらの分散したところの政治力をここで強力に組合し、これを集めて末端まで徹底させるということが、この度の國会に與えられたるところの一つの責務でないかと思うのであります。(拍手)こういう点におきまして、もつと綜合的な施策が十分に立てられなければならない。而も政府当局の説明を聴いておりますと、いろいろな防疫の対策の面、食糧の問題、医療の問題については十分な手が打たれておるようなことが説明されております。そうして我々はその説明を聴くと、いかにもこれが十分な対策のような錯覚を起し易い。併しながらそれが末端のその利益を受けるところの罹災者の面に立つてみるときには、いつでもそれが遅れておる。事実そのものが浸透していない。この浸透性のない、スピードのない政治というものを、我々は今日批判し、十分に検討しなければならないと思うのであります。この点に立ちまちて、我々はもつともつとこの我々自身の直面しておるところの我々のこの民衆、國民大衆の立場に立つて、この問題を十分に考える外ないと思うのであります。
 今日先程も申されましたが、水害が終つてしまうというと、もう問題は過ぎてしまつたように誰でもが忘れがちである。併しながら問題はむしろそこから発生して、我々はこの終つた後の対策、まだ情熱があり、人の注意がそこに向いておる時代においての対策よりも、むしともつともつと浸透した対策というものを十分に考えなければならない。又身近の関東におけるところの様子、これに対しては、身近でありますから、これに対する対策を考える次第でありますけれども、我々は又一方眼を轉じて見ますと、東北における、而も東北においては二度も非常に大きな水害を被つておる。その惨害は非常におおきい。こういうような点においても、我々の政策が均霑して、十分にその辺境まで及ぶような対策を講ぜられなければならないと思うのであります。
#41
○副議長(松本治一郎君) 時間です。
#42
○岩間正男君(続) 時間がございませんので、これ以上申上げませんけれども、要するに結論としまして、緊急的な対策、これは十分にいろいろな点において、我々は情熱を以て、その職場においてこれを立ち所に解決するというような方策をして進まなければならないことが一つ、もう一つは、恒久的なこの水害対策というものを根本的に樹立して、この実現に向つて十分なる努力を今後継続的に、更に科学的な調査と綜合的な強力な施策によつて、これを断行するということが、最も中心の問題ではないかと思うのであります。これを以て私の話を終ります。(拍手)
   〔木檜三四郎君発言者指名の許可を求む〕
#43
○副議長(松本治一郎君) 木檜三四郎君。
#44
○木檜三四郎君 民主党は石川一衞君を指名いたします。
#45
○副議長(松本治一郎君) 石川一衞君の発言を許します。
   〔石川一衞君登壇、拍手〕
#46
○石川一衞君 私は先般國土委員といたしまして、八日間に亘りまして東北三縣、即ち山形、秋田、新潟の水害視察をいたして参りました。又今回議長指名によりまして、埼玉縣を三日間に亘りまして同様水害調査を視察をいたして参りました。これにつきまして私の所見を被瀝し、これが対策を申述べて、懸命な議員諸公の御批判を仰ぎたいと存じます。
 以上各縣の水害は在来の水害と非常に性質が変わつておりまして、その特異性とも言うべきものはいずれも山林の過伐濫伐でありまして、これがため降雨が山宿りなく一時に各支流から本流に流入して来たということであります。又各河川上流におきまして殆んど砂防工事を施行した所がなく、これがために降雨は一時に土砂を押し流し、河床を上昇しつつ本流に合流し来つたのであります。ここに利根川につきまして申上げまするならば、明治四十三年八月二日より十間連続雨が降りまして、附近沿岸地方におきましては、深さ十尺以上もある井戸が柄杓でその水が汲み出せるような状態でありました。田畑は殆んど浸透され、加うるに八月十日より大暴風雨となりまして、これが晝夜間断なく二日間に亘りまして忽ちこの豪雨中に氾濫いたしまして、堤防は無数に決壊し、家屋は堤防の上を乗り越えて流出したというような始末でありました。その被害は埼玉、群馬、千葉、茨城、栃木、東京の一府五縣に及んだのであります。今回の雨量のごときで何がかような惨害を蒙つたかと申しますれば、それは測定水準に誤診を来したからであります。又自然流出に逆らい人工的に拘泥し過ぎたからであります。即ち四十三年の雨量を基礎といたしまして、流速計算によると各支流からは降雨後八時間及至十時間後に本流に合流する計算の下にいたした工事でありまするが、今回は奥山の過伐濫伐及び砂防工事が放棄せられておりました結果、各支流が一挙に本流に落ち合つたことであります。これがため計画当時の半分以下の雨量でも堤防の決壊は到底免れない状態でありました。殊に毎年河床が上昇して参りまして、築堤後三十年後の今日においては四尺も上昇した所があります。今回の決壊個所のごときは測定水準以下であることは政府もすでにこれを認めております。且つ又地元町村より執拗に毎年この補強工事の請願をいたいして参りましたが、更に当局はこれを顧みず、敗戦後の二ケ年の今日まで放置しておりましたために遂に決壊せしめたのであります。この責任は歴代政府の怠慢による結果でありまして、かかるが故にその責任は当然政府が負うべきであると思われます。これがために生じた一切の各種の復旧工事費は、すべて國庫の負担とすべきことは論を俟たないことであります。又この決壊個所のごときは、人工を以て極めて容易に防ぎ得られたにも拘わらず、当該担当者が非常に怠慢でありましたために、かくのごとき重大事を惹き起したのであります。その責任をいかに処断するかということを先般政府に向つて私は質問書を提出した次第であります。今度の水害を招来しましたのは天災にあらずして人災であると言い得ましよう。又かような危険個所の担当責任者が食糧不足を事として野菜その他を堤防に作つていたというようなことに至りましては、全くその非常識は言語道断と言わなければなりません。如上のごとき危険個所はひとり利根川のみならず全國に多々あるものと思われますが、地元民の努力によりましてこれを防ぎ止めた個所は各地に沢山あるのであります。かような見地から言いましても当局の怠慢振りが察しられますが故に、今後再びかかる轍を踏まないよう政府は善処せらるべきだと思われます。
 私はこの水害対策として在来の方新に根本的に大修正を加える必要があると思います。それにつきまして、次の提案をする次第であります。
 第一砂防工事の徹底的施行並びに治水の完璧を期すること。第二、治水に関連する土地の開墾を即時中止すること。今後の開墾地は内務、農林両省と合議の上これを決すること。第三、速かに河口河床の浚渫を行い、流水を容易ならしむること。第四、堤防及びその補強を速かに施行し、堤の内外には姫柳を移植し、遊水地の整備をなし、これが使用制限を設けること。第五、学識経験者より成る全國治山治水対策委員会を組織し、治山治水行政の諮問機関たらしむること。以上を水害対策案として提案するものであります。
 これに対しまして端的に説明を申上げまするならば、只今までの洪水を堤防に依存して防ぐという考え方はこれは第二義なものでありまして、根本問題は奥山より流れ出まする水をいかに防ぎ、いかに緩和させて下流に逐次放流させるかであります。この方法は申すまでもなく砂防工事以外にないのでありまするが、技術者はややともいたしますると華々しい築堤の方に主力を置きまするのの汲々としておるような次第であります。群馬縣伊勢崎市、桐生市及び足利市附近のごときは、赤城山の松根掘り及び戦車隊演習場の建設等の無謀なる開墾によりまして、全山より山津波式の洪水が押し寄せて参りまして、土砂を以て家屋田畑を埋没し、死者数百名を出した等誠にその惨状は目を蔽うものがあります。ために赤城山は山容改まる観を呈しております。これ砂防を等閑に附した結果であります。自然流水に逆らつて築堤をし、その怠慢によつて惹起しました埼玉縣東村の決壊のごときは、その代表的なものであります。利根川の一部を印旛沼に誘導し東京湾に放流する、先年研究済みの方法は今日に至りましに全く首肯し得られる優れたる治水策と存じます。河口埋没のためん、常に水害に苦しむ最上川、北上川、信濃川、雄物川等、これらに準ずる全國河川は枚挙に程ありません。
 如上のごとく、全國の河川はいずれも同一の悪条件の下に毎年水難に苦しみ、幾多の人命を損じ、莫大な損害を蒙つて今日に至りましたが、今回を契機といたしまして、政府は全力を傾注してこれが対策を講じ、速かに水難より免かるるよう切に要望する次第であります。これで討論を終ります。(拍手)
   〔金子益太郎君発言者指名の許可を求む〕
#47
○副議長(松本治一郎君) 金子吉太郎君。
#48
○金子益太郎君 社会党は天田勝正君を指名いたします。
#49
○副議長(松本治一郎君) 天田勝正君の発言を許します。
   〔天田勝正君登壇、拍手〕
#50
○天田勝正君 今回の関東並びに東北を襲いました水害の被害につきましては、本院の会議におきまして関係者各大臣が累次に亘りまして報告されまして、その物量的な被害については着々と明らかにされつつあるのであります。併しながらこの直接に受けました損害並びに復旧費用、或いは緊急救助の費用につきましては、いまだ明らかにされておりません。今日栃木縣調査團代表者によりまして、栃木の損害額だけを見ましても八十億円に上ると報告されております。かような大きな損害が各府縣を襲いまして、その復旧費、緊急救助費などを含めますならば、実に厖大な額に上るのでありまして、かような直接間接の大きな費用を要する損害、これを合計いたしまするならば、いかなる治水治山計画も必ず遂行できるであろうということを私は感ずるのであります。私はすでに各論者によりまして幾多の水害の起きました原因等の研究がございましたので、極く簡単に水害地に生を享けた一人といたしまして、又過日の調査團の一員といたしまして、その見解を基礎にして聊か所見を述べて見たいと存ずるのであります。
 すでに先程来先ずこの災害の大きな原因は、山林の荒廃であると指摘いたされました、その水源地の荒廃の第一の条件といたしましては、勿論濫伐を指摘され、他の一つといたしまして、これらの森林というものが、やがて國有或いは公営というような工合に、個人の所有から取上げられるであろうというその心配のために、荒廃に帰するのであろうという論者があつたのでありますが、私共から言わせまするならば、かように國家民族の実に危急存亡を賭けておるような山林が、単に一個人の利益の対象になるということこそ極めて危険千万でありまして、かようなみずからが儲かるが故に、儲けるためには荒廃し、後は野となれ山となれという人たちがおればこそ、これを國有又は公有に移さなければならないということを強く感ずるものであります。私はここに多少の細部に亘りまして、その原因を追及しつつ対策を申述べて見たいと思うのでありまするが、先ず全般に亘りまして植林或いは砂防工事ということが指摘されましても、今日の日本の國情におきまして、これを全般的に直ちに遂行するということはきわめて手困難でありまして、そこで通常里人が言うておりまするいわゆる荒れ川、即ち水源の浅い山、こうした荒れ川と通常言われておりまする山に特に重点を置きまして、先ず植林をすること、特に遊水地を沢山設けまして、一挙に下流にその増水が流れてこない措置を講ずること、又は植林労務者に対しまして、伐採労務者と同様に食糧の増配をいたしまして、安心して働けるような施策を講ずるというようなことをしなければならないと思うのであります。更に又國営育苗及びこれが配給制度の徹底を期さなければならないと存じておるのであります。
 第二に指摘いたしたいことは、決壊の危険個所というものは、すでに学者並びに技術者の調査を持つものでなく、その当該縣の縣民は悉く知つておるのでありまして、この危険個所を一例を挙げて見まするならば、埼玉縣の利根川においては、仁手の附近、又は妻沼町の上下、或いは今回決壊いたしました栗橋附近でありまするが、かようなすでに危険区域として誰もが知つている地域を、以前として同じような他の部分と同様に築堤をしておるということであります。これに何故にさような危険個所ができるかと申しまするならば、曾て決壊をいたしましてその基盤はいわゆる下流と同様な河原或いは又曾て川のうねりがありまして、そこのところに堤防が築かれておつたというような所がその危険個所に当つておるのでありまして、かような場所に築堤をいたさなければならないのではなかろうか、かように思うのであります。又通常私共水場の者から見ますならば、橋桁に水が着いた瞬間にその直ぐ上流は決壊する、こういう常識に相成つております。今回の栗橋附近の決壊もこれと同様でありますが、かような地域におきましては先ずその鉄橋のある上部においては、極端に表現いたしますならば、瓢箪のように不通の堤防よりも廣く堤防を作るか、或いは補助堤防を作る、こういう措置を講じなければならないと思うのであります。又架橋いたすに当りまして、通常不通の堤防の上部から上部へと架けてあるのでありますが、この架橋をする所だけは特別に盛土でもいたしましてこの上に架橋する。そういたしますならば堤防上部まですれすれに水が参りましても、決してこの橋桁に水が着かない、このようなことに相成るのであろうと存ずるのでさような極めて簡単な施策を今後の架橋に当つてはすべきであると考えるのであります。又平地林の伐採によります被害は前論者によつて論ぜられましたが、かようなただ農地造成によるところの方法いたしまして、簡単に平地林を伐採するのでありますが、開墾勿論結構であります。かような場合には必ず科学的に検討いたされました合理的な保水林を存置する、或いは又傾斜地等においては國有若しくは公営によりまして保水林を設置する、かような方法を採らなければならないと思うのであります。又経済的な面から申上げて見まするならば、私共が各地を廻りまして痛感いたしましたことは、すでに技術者と雖も、いかなる素人と雖も当然これだけのことをすれば災害が防がれるであろうと考えられるのであります。ところが費用の関係上それができないというようなことを聞いたのでありますが、かように水害の予防費というものが復旧費よりも極めて軽くみられるというような考え方、事が起つてしまえば政府も沢山金を出すであろうというような、そうした考え方が遂に今日のような大きな災害を招く因になつておるということを考えなければならないと思うのであります。ここで私は水害の予防費は先ず災害復旧費と同様に他の予算に優先するというくらいの強い措置を講じなければならないと思うのであります。(拍手)又事前の水防計画につきましたはいろいろと計画に当つて熱心でありまするが、後のこれを実行するということに相成りますると、政府も又監督機関であります國会も極めて不熱心であるということを指摘しなければならないと思うのであります。その一例を挙げまするならば、利根川の放水路、この計画はすでに昭和十三年に内務省が立案いたしまして、その十三年の第七十四帝國議会に提出して協賛を得たのでありまするが、その後におきましてこれを実行するに当つては、毎年々々大蔵省の査定によつてそれが削られ、而もこの放水路計画というものには、この議会においても協賛しておるにも拘わらず、実行予算を審議するということに相成りますと、この削られた予算を鵜呑みにするというようなことでありまして、計画だけはあつさりとやりまするが、その結果については誰も責任を負わない。即ち政府も國会も責任を負わないというようなことでありましては、到底今後の水害に対処することはできないと考えなければならないと思うのであります。私共は曾ての議会を批判するつもりはありませんが、今後この第一回の國会以後におきましては、本院で可決されたことについては飽くまで私共がその責任に当り、政府を鞭撻するという考えを以て臨まなければならないと存ずるのであります。このようにいろいろ考え合せて見まして、綜合的には科学的治水治山計画を立てなければならないということは、どなたでもが指摘するところでございます。
 そこで、然らばこのような予防を講じましたといたしても、すでに災害が起つてしまつたというような場合にいかにするかということを一言だけ申上げて見たいと存ずるのでありまするが、私は旧幕時代におきまして東北の各藩において採用いたしました郷倉制度を設けまして、いつでも食糧はその村において確保し得るという仕組を作つて置かなければならないと存ずるのであります。以上時間がございませんので簡単に申上げて降壇いたします。(拍手)
   〔細川嘉六君発言者指名の許可を求む〕
#51
○副議長(松本治一郎君) 細川嘉六君。
#52
○細川嘉六君 共産党は板野勝次君を指名します、
#53
○副議長(松本治一郎君) 板野勝次君の発言を許します。
   〔板野勝次君登壇、拍手〕
#54
○板野勝次君 水害の原因につきましては、山林の濫伐、雨量が極度に多かつたというふうな点が指摘されて、ひとえに天災であるという意見は、内務大臣を始め今日の自由討議の論者の多くの人が申されたことでございまして、他の半面におきましては、天災も一つのことながら、過去におけるいろいろな無責任の累積である、査問委員会等のごときものを作つて大いに究明しなければならないという意見も出ました。誠に傾聴すべき点があつたと思うのでございます。ひとえに我が國におきまする水害の本質的な原因が深いということを証明しておると思うのでございます。本年度は御存じのごとく長期の気象特報も出ており、台風が日本を襲うということは分つておつたのでございまするが、改修工事や護岸工事のサボが行われておつた。この点は何としても私的されなければならない点でございます。従つてこのサボによる一時的な増水が河川の氾濫を見、更に決壊を見ることは当然でございまするが、これらは申すまでもなく政府の責任でありますると共に、かくのごとき事態が起つて参りまするのにはいろいろなことが言われるのでございまするけれども、ひとえに科学技術の問題を尊重しなければならないと言われながらも、科学技術を尊重することのできない、無視して行かなければならない今日の日本の資本主義機構の矛盾こそが、本質的な点であると思うのでございます。例えば土木事業を見ましても、國民生活の安定と國家生産力の昂揚の目的からなされていないのでございまして、言い換えまするならば、眞の公共事業としての性格を持つていないという点でございます。これは例えば資本家、地主の利益のためにすべてのことが用いられて来、治水事業におきまするところの予算、資材などが、曾ても不生産的な方面に使われて行つた。例えば、軍事道路、観光道路、商業都市の建設等の問題に振向けられて行つたような事実、最近におきましては、水の技術的な統制が分かりながらも、この方面における十分なる予算を組まなければならないのにも拘わらず、地方等におきまして観光道路の計画的な施行が行われつつある事実は、その一端を示しておると思うのでございます。更に耕地の問題につきましても、地主に都合のよいように現状は配分され、土地の改良も地主の利益の上にすべてがなされておるのでございまして、土地改良の事業等も極めて不徹底に終つておるのでございます。従つて勤労農民は、耕作農民は、水害の危険な個所を多くは耕作しておるのでございまするから、河川が切れるとその被害は甚大になつて来るのでございまして、毎年水害で稲作の十五%若しくは三〇%を失つておるような現状でございます。然るにも拘わりませず、政府は、この重要なる事業、徹底した土木事業を行うことなくして、いつ芽を吹くか分らないような開墾であるとか開拓等に力を入れておるような現状でございます。公共事業の予算は農地関係につきましても六十億組まれておるのでございまするが、河川には僅かに十分の一、この十分の一が政府の直轄の全國八十箇所にこま切れのように渡されておる。従つて思うような土木事業ができていなくて、ただ請負人を儲けさしておるというのが実情ではなかろうかと思うのでございます。次にこの土木事業が、現在の腐敗した官僚の組織と土木事業業者が結託いたしまして、土木事業費の半分は大土木事業者の利益になつて行つておる、かような実情があるのではなかろうかと思うのでございます。而もこれらの負担は全部人民の租税負担となつておるのでございまするが、この請負事業の中には、工事自身、材料や技術のごまかし等もありまして、これも亦今回の水害の大きな原因を成しておると思うのでございます。
 我が党は、これらの欠陥を除きまして、土木事業を新しい角度から行なつて参らなければならないことをここに提案したいと存ずるのでございます。それは第一に、この土木事業は國家が直接手を下して行うべきであると思うのでございます。建設院のごとき半端な役所を作ることによつて到底でき得るものではなくして、どうしても綜合的な、計画的な実施を行い得るような建設省を作ることによつて、強力にこの土木事業を行つて行なければならないと思うのでございます。
 第二に、この大土木事業は建設省内に包含いたしまして、而もこの事業を國営に移しますことは、何よりも土木事業の公共的な性質より見て必要なのでありますから、我が党が提唱しておりまするところの重要企業の國営、人民管理の一環とし、この土木事業をどうしてもこの枠の中に入れ、人民管理の方式によるところの國営に移して、徹底的な改善を図つて行かなければならないと思うのでございます。第三には、これに附随して、更に先程来問題になりました山林原野の濫伐の問題にいたしましても、これが地主やその他ボスの我がままなる伐採に任せられておるのでありますから、速かにこの山林原野を國有化し、私的利潤の追求に任すことによつて山林を濫伐することのないように、防いで参らなければならないと思うのでございます。第四番目には財源の問題でございますが、それは負う急対策の問題に触れるときに同時に申上げたいと存ずるのでございます。
 應急の諸対策につきまして、ここで新らしく岩手縣西磐井郡一關の等閑に附せられておる問題が、昨夜帰つて参りました我が党の中野議員によつてもたらされたものでございますが、ここで述べる時間がないのでございますが、その報告を聴くことによりまして、いかに厚生大臣の方刻が万全を期せられておるとはいいながら、いかに罹災者が放置されておるかという事実を私は知りまして、誠に驚いたのでございます。先般片山首相は、あの祭日に小学校を見舞つて、九百六十食分の乳幼兒の乾パンを見舞に出したというのでございますが、これを見ますると明らかに東條式の自己宣傳でございまして、首相がどこから持ち出して来たのか、それは知りませんけれども、小学校の兒童にそのごときものは公平に配給されるは当然でございまして、自己宣傳の具に使うがごときは断じて許すべからざることであると存ずるのでございます。この点につきましては、どうしても私は片山総理大臣の釈明を求めたいと存じておるのでございます。かくのごとき自己宣傳をやりながら、一方においては罹災者はいろいろな食糧の配給、諸物資の配給に困つておるという現状でありますから、この罹災者に対しましては、生活必需物資の無償特配その他の諸対策がとられなければならないのでございますが、それらの諸対策につきましては、私は昨日の報告の際にも附け加えて置きました。
 最後に時間がありませんので、ただ一言附け加えさして頂きます。それは復興作業に要しますところの費用は、國庫の負担にしなければならないということでございます。現在都道府縣市町村の財政は潰減の状態にあるのでございますから、この大水害の復興は、いかに財政が困難であると雖も國家の財政によつて切抜けるより外ないのでございまして、若しこれにして放置されまするならば、我が國産業の復興の招来は実に暗澹たるものであると思うのでございます。國家財政の難局を切抜け得る途はただ一つ、それは隠匿物資の大掛りな摘発、戰争責任者でありまするところの大財閥、地方財閥、更に戦後の大きな闇利得者から累進所得税を徹底的に取ることによつて、この税金を躊躇することなく取上げることによつて、國庫負担にし、この水害復興の対策の財源とすることができることを強調しまして、私の意見を終りたいのでございます。(拍手)
   〔梅原眞隆君発言者指名の許可を求む〕
#55
○副議長(松本治一郎君) 梅原眞隆君。
#56
○梅原眞隆君 緑風会は宮城タマヨ君を指名します。
#57
○副議長(松本治一郎君) 宮城タマヨ君の発言を許します。
   〔宮城タマヨ君登壇、拍手〕
#58
○宮城タマヨ君 この度関東及び東北の水害に対しまして、婦人の立場として止むに止まれない心から、婦人議員は相集まつて相談いたしました結果、水害救済婦人議員團を作ることになりました。そうして先ず先に乳呑兒を抱えました母親や、妊産婦、病兒などの上に特に心を寄せまして、必要な品物を贈るとか、その他婦人同志でなければ届きかねます点について方策を立てようと、着々相談をいたしておりまする矢先に、厚生省の社会局長からお話がございまして、とにかく一日も早く政治の面にありますところの婦人議員に現地を見て欲しいというようなことがございました。そこで相談の結果、水、脱脂綿、紙、それから子供向きの飴を早速手に入れて用意をいたしました。議員の皆様の醵金をお願いいたしましたのもこれに充てますお金だつたのでございます。お蔭様で現地視察の用意ができ、厚生省や埼玉縣廳の方々の案内で、一昨二十八日埼玉縣下に四班、東京都内に三班、婦人議員十四名が常任委員長の自転車を拝借いたしまして、日帰りの予定で分乗して参りましたのでございます。幸いに欠く班とも無事に仕事を終えて帰つて参りましたが、その全体の報告は近く纏めることになつております。
 只今ここで私は自分の見たる地域の報告を申上げ、私個人の希望と、貧弱ではございますが、婦人の立場からの対策の一端を申上げたいと存じます。私は埼玉縣の栗橋、東村、原道村の、つまり利根川が最初に決壊した被害の一番ひどかつた場所に参りました。この三箇所ではまだ我が家に帰れず、それから帰る家を流しました人々が利根川土手に生活しております。その人の数はざつと七千人と言われておりました。これらの殆んどの人々が命からがらで逃げておりますので、土手の上に馬小屋よりひどい、雨や露を凌ぎますにも足りません小屋掛けの中で、全くメモ当てられぬ暮し振りでございます。親類や縁者から贈られましたという蒲団や食器類の中に、これは誠に珍らしい箪笥があるので、そのわけを聴いて見ますと、水の勢いで箪笥の引出しの中野者は皆流されて、中身のない空箪笥を辛うじて持出したということでございました。亦十一歳の子供を頭に五人の子供を庭木に縛りつけていたので、やつと親子とも助かつたという母親も居りました。冷えたので早産となつて、土手の上で犬猫にも劣るお産をした様子を語つて呉れる人もありました。それから驚きの余り、急にお乳が出なくなりましたので、三日三晩も親子共泣きをしたとか、家を守りますために自分の家に残つておりますという父親を案じまして、僅かに配給になる乾パンも喉を通らずに、親子共ふらふらになつたというような話、実に哀れな状態でございましたが、いずれにしましても私の心を一番打ちましたものは、学齢兒童が本や学用品を皆流してしまいまして、学校もいつ始まりますとも見当がつかず、ただ茫然として裸、跣足でうろうろしております姿でございました。このことは一番問題になることだと思つて参りましたのでございます。ただ一つ目立つたことでありますが、衛生班の活動が大変目覚しくつて、医大の学生や、青年團、國立病院からの駆け付け、それに進駐軍の助力で病人や怪我人が少しで、それから又入院させております人もそんな大勢の中で僅かに二三〇人足らずの様子で、この点は想像以上にありがたく思つたことでございました。青年團は船で食糧の配給や連絡係を勤め、女子青年團は事務の手伝や事務関係者に出す炊出しをしたり、それぞれ活動をしておりました。食物は始め十日間くらいは川向うの茨城縣から無償で運んでくれて、この食糧不足のときに誠に温かい手を延べて貰つたと、異口同音に感謝をしていました。先日丁度私共が災害救助法案のことでGHQに参りましたときに、進駐軍で初めて現場に駆け付けました人が帰りまして話しますのには、隣の縣から食物を運んで救助しておりました日本人同士の友情の厚いのには実際驚いたと言つたということを、私共は聞かされたのでございますが、この場所に参つていろいろな話を聞きましたときに、ああ、あの進駐軍のお話はここの話しだつたかと私は肯いたのでございます。茨城縣からの救助の外に、連絡ができてからは縣廳からも食糧が運ばれましたが、その食糧も初めの中には、一家八人もおりますか続に対しまして、一日たつたのコップ一ぱいの粉と、梅干しが一つと、味噌がスプーンに二はい、この少量の配給品を八人の者が食べた日もあつたとも申しておりました。縣としましては臨時予算を二千万円も取つたけれども、それは余り小額で、それこそ運搬費くらいのものでしかなかつた。実際いざとなると、人の命の問題でございますから、役所も仕方なく闇の物資をかわなければなりませんし、又この避難しております者も、なけなしのお金を以て闇の物資を買わなければならない。そうしてそれを買つて大変後で困つて歎いておる者も沢山ございました様子でございまして、このどさくさ紛れに金儲けをしようとするような闇屋や、それから水に浸つた家の天井裏から品物を盗み出すような人間に対しては、どうか厳罰に処するような法律を皆さんで作つて欲しいというような言葉を、沢山な方方から聞かされたのでございました。
 そこで婦人の立場から見ます緊急対策として私共考えますことは、先ず子供と母親の保護の点でございます。ミルク、おしめ、子供の着物、それから小さいものでは乳首、手拭類の補給、それから婦人の下着類、これは乳兒を持つております母親たちは、おしめにするものがありませんので、母親は肌に着けておりますものを脱いで、皆それを子供のものにしておりますので、実にうわべは着物一枚着ておりまするけれども、それを一つ脱ぎました下は大変でございます。それで一日も早くこの母親の下着類を補給したいということでございます。尚履き物、櫛、針、糸、洗面道具類、それから傘、特に学童の教科書と学用品は一番急いで送りたいと思つております。ちようど今度私共の一行に加わつて下さいました衆議院の一婦人議員が、この院内の紙屑になる紙を貰つて、それをちり紙に使つて貰おうというので持つていらつしやつたのでございますが、それを現場に行つて出しましたときに、そこにおりました子供たちが、ああノートが来たといつて、小躍りしててをたたいて喜びました。私共が持つて参りました飴玉もづいぶん喜ばれまして、到る処で泣かないばかりの顔をして子供が喜んでくれましたけれども、それにも優つて、そのノートの紙と見誤りまして喜んだ顔を見ましたときに、私共は本当に胸が一ぱいになりました。この外、一般の衣類や夜具類の必要なことは申すに及びません。次第に寒くなりますし、一段落付きますと、どうしても世間の関心も薄くなりますから、これらのものに対しては集めて贈ることを大変急ぐ必要があると思つております。殊にこの際注意したいことは、これら送られました物資の配給機構を正しいものにしたいということでございます。社会党の赤松さんもこれについて、どうしても配給の委員会でも設ける必要があるのではないか。そうでなければ正しく配給が行われないのだろうというような意見を申されておりましたが私も同感でございます。是非本当の意味合いで、正しい、平等な、公平な配給をされるような機構を作られたいと願うのでございます。
 次に私の恒久的対策と申しましようよりも、もつと女性の願いごとと申しますがよろしいかも知れませんが、その二三点について申述べてみます。
 この惨憺たる禍を轉じて、どうか一層大きい福となしたいということは、これは國民ひとしく願つておりますところでございます。今上程されております災害救助方法案や、それから兒童福祉法案なども、この生きた参考資料が物を言つて、良い法律になり、良い運営ができれば、これは仕合せなことと思つております。又新聞その他でも言われておりまする問題で、都市を中心とするその周囲の農村との間に感情の齟齬がありますので、この度の水害にも余り都市の人が同情がないのだと言われておりますが、若しもそれが少しでも事実でございましたら、この機をいい機会として、國民的愛情の交流が望まれます。特に東京都民の今の乏しい生活の中から物資を分け合うという愛情と協力が、常々お互いの持ちますまずい感情を水にすつかり流してしまうことになりますれば、大変仕合せだと思つております。それから次には、家庭生活の社会化と家庭教育の民主化ということでございます。私共婦人が今まで長い間封建的傳統を持つ家庭に閉じ篭つて、我が家、我が子という、いかにも独善的な歩み方をして、家庭生活を社会化しようとすることの努力が欠けておりました結果が、今度のように堤の上で甚だ無駄の多い、つまりちりちりばらばらの生活ぶりをする結果になつておるのでございます。同じ苦労をし、同じ配給品を貰つておりますのにも拘わらず、自分自分の小屋の中で、隣との心の垣根を作つて、自分のことだけに汲々としております状態に、どれだけ沢山の損失がございましようか。母親が手分けをして共同炊事をいたしますれば、食事の解決が付き、又共同洗濯によつて能率を上げられれば、さつぱりした子供たちの様子もできることになり、それから共同託兒によつて合理的な安心した子供の生活ができましよう。又共同教育によつて、分散してぶらぶら遊んでおります学童たちを、たとい教科書はございませんでも、寺小屋式の方法でも或る程度の教育はできると思います。水が引きかけたときに油断をしますと悪い病気が流行するように、今のままで子供たちを放任して置きますと、今に不良兒や浮浪兒が簇出することは必定と思います。我が子の健康をより望み、尚より正しい心の成長を願いますと同時に、この混乱したところであればこそ一層の子の上に仕合せを願う。そうして子供の良し惡しも、ひとしく社会人としてすべての親が連帯責任を持つことになりますれば、大変今の生活が楽になることだろうと思つております。尚共同生活によつて母親が安心して仕事に就かれることになりますれば、今やつております治水工事にも女が加わることもできまして、生産面においての収入の途も立てられます。工事場を見ますと、働いております人よりも、それを見ております人の方が多くて、何か歯痒いような感じがいたします。 
 次に子供の教育のことでございますが、在来は家庭教育の中心は子供の躾け教育で盡きていたようでございます。併し根本を衝く、人としての教育、又人格を認めての理解ある正しい、自由自主による子供教育を、この度これを契機にして是非打立てたいものだと思つております。このことが今回の災害にもちやんと出ておりまして、常々自分の本や自分のものに対する責任を持たせ、着物や履き物の整理整頓、子供の年によつて自分自身のできる家事の手伝いをふだんの義務として果すことをしなかつたために、小さい子供は勿論、大きい子供までがみんな母の手足まといとなりまして、教科書一冊も持出せなかつたばかりか、逃げ場を失つておつたというような始末にもなつております。
#59
○副議長(松本治一郎君) 時間です。
#60
○宮城タマヨ君(続) 今少しございますが、残念ながらあと一つ二つの考えは時間の都合で止めましてございます。(拍手)
   〔木檜三四郎君発言者指名の許可を求む〕
#61
○副議長(松本治一郎君) 木檜三四郎君。
#62
○木檜三四郎君 民主党では高橋啓君を指名いたします。
#63
○副議長(松本治一郎君) 高橋啓君の発言を許します。
   〔高橋啓君登壇、拍手〕
#64
○高橋啓君 私は前二回の東北の水害の際に本院を代表いたしまして、宮城縣と岩手縣を調査いたしたのであります。今回は災害地の眞只中で、被害者の一人として現状を見たのであります。東北の被害地は復旧がまだ緒に就いたばかりでありまして、それに前の数十倍も大きな水害がやつて来たのであるから、一溜りもなかつたのであります。昨日本院において内務大臣から報告がありました通り、今度は岩手縣の南部、宮城縣の北部が非常に激甚であつたのでありまして、これは全く目も当てられないのであります。特に石越村という所は、七年間のうちに五回も一千町歩の水田が殆んど収穫皆無のような被害を受けておつたのでありまして、父祖伝来の村を捨てて外に移動するというような人が沢山出て参つたのであります。宮城縣は昨年二十一年度におきまして、一百十万石を供出しておつた穀倉でありますが、一瞬にして需要縣に変わつてしまつたのであります。従つて人の死傷も非常に多いのでありまして、私は夜、濁流の中に屋根に乗つたまま流されて来る四五人の人を見たのでありますが、屋根の藁を引抜いて炬火として、「助けてくれ、助けてくれ」と言つておりましたが、これを見た警官初め我々は残念に思つたが、地團太を踏んでこれを見送るの外仕方がなかつたのであります。遂に橋に衝突して屋根は寸断されて、「助けて」の声と共に濁流に呑まれてしまつたのであります。このような悲惨、かくのごとき莫大な損害、これを再び繰返すことがないように万全の対策を講じたいと思うのであります。由来東北は政治的に恵まれておりません。國家に対して黙々とその責務を果して参つたのでありますが、先程岩間議員、板野議員が言われたように、今度も報告が手後れになつておるので、恐らく困つておるのではないかと思つておるのでありますが、政府の速かな救援の手を伸べられんことを熱望するものであります。(拍手)
 先ず私は対策機関が必要であると思うのであります。現在政府には二つの対策委員会があつて、衆議院には特別委員会が設けられているが、参議院にはまだないのであります。各部門に関連する問題に対しては特別委員会で扱うのが宜いのでありまして、原因の調査、資料の蒐集、計画の樹立が統一且つ急速に正確に処理されなければならないのであるから、政府と衆議院、参議院三位一体の合同対策機関が必要であると思うのであります。
 應急対策については政府がやつておるのでありまして、これが速かに末端まで公平に行き渡るようにして貰いたいのでありまして、その中、先ず資金についていえば、一刻も早く現金化されなければならないのでありまして、政府はその保証関係を明確にして、銀行或いは民間の資金をも活用する方策を講ずべきであると思うのであります。資材の点では、制限又は統制規定の適用を受けるものであれば、先ず適用から除外して、やり好いようにすることが必要であります。復旧作業、又は建築などにおきましても、役所式の複雑な手続をとるのではなく、必要があれば事後において形式を合せるくらいの弾力ある方式を取つて貰いたいと思うのであります。(拍手)とにかく速かなる復旧ができるように、あらゆる方法を講じなければなりません。
 今次の災害の原因は、先程来申された通り幾多の原因を数えることができますが、根本的な原因は、何といつても山林の荒廃から来るのであります。治水、砂防、河川改修の規模、計算の基礎は、森林の状況と関連を持つたのでなければいけないのでありまして、現施設は当時の計算によるものであつて問題にならないのであつたのであります。戦争中の伐採跡地をそのままにしたために、木の切り株が腐敗して、水管のごとくになつて、水が地中に流れ込み、表土を浮かして押し流すことになりまして、今度の水害において到る処表土が流れ去り、殊に甚だしきは立木のまま押し流された所もあるのであります。ために山相は一変して、支那、朝鮮に見るような最悪の状況の一歩前まで来たということも言えるのであります。これに木を植えれば腐つた木の根に新しい糸根が網の目のように喰い込んで、そして表土の流れ出るのを押さえるのであります。今日においてこれを何とかしなければ、植林作業はますます困難となつて、費用も何十倍か掛かることになります。逆に成長率は減じて、遂に木の生えない岩山となつて、その時はもう処置なしということになるのであります。木を植えればその効用は時間とともに幾何級数的に増加して参るのであります。森林の効用は言うまでもなく、治水に、水源涵養に、機構の調節に、晴雨の釣合等を保つ等の外、人の心を和ぐるのであります。ここにおきまして山林の緑化を図らなければなりません。併しながら現在日本に利用可能の森林蓄積は四十億石であります。木材、薪炭の需要量を照し合せて見ますときに、実に懸念に堪えないものがあるのでありまして、これはどうしても山林の一貫綜合計画の下に綿密な運営をする必要があります。政府は外の目的のために、例えば開拓により無計画に木を伐つとり、幼稚木を伐採したり、殊に農業協同組合法案第九条第三項に薪炭生産を農産物と認めるというのがございますが、薪炭生産の八割は副業になつておるのでありまして、薪炭蓄積量は二十億石と称されております。その八割の即ち十六億石の林材を林野綜合計画の外に置くということは、國土緑化計画の一大障害となるのでありまして、これは政府の再考を希望するものであります。
 以上の理由から根本対策について述べたいと思いますが、時間がありませんので、要領に止めて置きたいと思います。その理由は資料は準備いたしておりますが、國土保安法の制定であります。日本のような傾斜度の強い地形では、山林面積を七〇%ぐらいを保存しなければ耕地その他の水利を維持することができません。ここにおいて綜合國土計画の一環としてこれが限度を定めなければならない、そして植伐の均衡を確保し、緑化を実現するために強い施策が必要であります。國営治山治水の実施、森林治水事業を根幹として森林地域にダムを設けて発電用水等の便に資すると共に、一貫した砂防工事、河川改修を國営で行い、営林監督の徹底した施業案を編成いたしまして、間伐と除伐を大規模に計画し、植林を伴わない伐採を禁止いたしまして、造林未済地に命令又は官行造林を行い、禿山を皆無にする方策を取ることであります。第四は、山林種苗の確保であります。今年度の植林計画に苗木は四十三万町歩に対し十億から必要であるのに、半分の五億しか用意されておりません。これでは計画は実現できないのでありまして、採種養苗は國営として無償で交付することを建前とし、山林種苗法を強化いたしまして、これが絶対確保が必要であると思うのであります。五は、國土緑化の國民奉仕であります。山林の恩恵は人類に対し廣大でありました。これに感謝し、愛林思想を昂揚するため國民全体が参加する緑化運動として、春秋二回愛林デーを設け、一週間の奉仕作業を行うのであります。
 まだあるのでありますが、時間がありませんから最後に申上げますが、今日いろいろな立場から申されましたが、各党挙つてこの原因並びに対策は方針を一にしておるのであります。これが即ち天下の輿論でありまするから、國家百年の計のために目先のことのみ考えずに、政府は徹底的にこの我我の主張する施策の実現に対して誠意を傾倒されんことを希望して、私の対策を終りといたします。(拍手)
   〔金子益太郎君発言者指名の許可を求む〕
#65
○副議長(松本治一郎君) 金子益太郎君。
#66
○金子益太郎君 社会党は木下源吾君を指名いたします。
#67
○副議長(松本治一郎君) 木下源吾君の発言を許します。
   〔木下源吾君登壇、拍手〕
#68
○木下源吾君 私は先般同僚岡村議員と共にこの院議で決定しまして北海道の水害調査に参つたのでありますが、この機会に皆様に、北海道の今度風水害は距離は中央から離れておりまするけれども、その被害は相当以上であつたということだけをここで申上げて置きたいのであります。詳細については文書を以て御報告申上げておりまするので省略さして頂きます。
 何せ本年三回に亘る水害で、その度毎にあの北海道の地域が別々で、この三回で完全に北方北見、天鹽の方を除きます後は完全に舐め盡されたような状況でございます。単作地帶であるところの北海道の農業に対する事情は詳しく申上げなくても各位のご同情を購えるに十分であると確信いたしております。そうして帰ります途中に、七月にも私たち東北の盛岡附近で水害に遭遇しました。一關のあの惨憺たる状況を拝見しましたが、今回も亦同一の所でこの水害に出つくわしました。実に附近へ参りまするというと、一關は市街に二十尺も水が入つて、そうして屋根の上に漸く上つておるということを聞いた。とても私たちはこれを本当にすることはできなかつたのであります。当時吉田自由党総裁も盛岡で列車の中に泊つていた。全く私たちはそれを本当にすることができなかつたくらいでありましたが、その翌日盛岡附近びつくりいたしました。如実にびつくりいたしました。全く今度の水害の眞只中を縫いました裏日本を通つて、辛うじて東京に帰つて来たようなわけであります。その途中の惨状も目のあたり拝見して参りました。実際今度の水害は明治四十三年以来と言いまするが、四十三年の実情は國民で知らん人も沢山ありましようが、記録的な災厄だと我々は考えております。さてその原因等につきまして同僚各位より縷々述べられておりまするので、私は漸く諸君のお説が肯けるのであります。直接には雨量の多いことその他でありますけれども、本質的にはやはり今度のこの水害をこのような惨禍に導いたものは、やはり戦争と繋つておるということを管上げざるを得ないのであります。戰争によつて、火力によつて、日本がこのような惨状になり、残されたる耕地、発電所、いわゆる電気、そういうものがかすかに我々が頼りにしておつたのが、今度一挙にしてなくなりました。誠に天の業に対して勿論我々がこの試練を受けることが当然であるといたしましても、私達は感慨無量のものがある。この機会において、このような惨禍をなくするためには恐らく全國民は、全知全能を搾るのでありましよう。同時に我々は又その全知全能を搾つた結果。行動の上において國会並びに政府はこれを指導しなければならん責任があると思うのであります。今日までのような行政役人が、その場限りのこと、形式的なこと、例えば各縣に行われておる状態をみましても、役人は点数を稼ぐのに汲々といたしまして、根本的國家のためということを考えておらなかつた。都会の周囲を立派にいたして、成る程そこは立派でありまするけれども、そのところを立派にするためにこそ却つて下流の農村地帯は危険に暴されておるというような状態、又は斫伐、林業の斫伐には個人的利益、金が儲かるから活発に行つたでありましようけれどもが、公共的利益の植林に至つては利益がないから誰もやらなかつたということは、各位のおつしやる通りであります。私は数々の例を申上げるまでもなく、如上のことを申上げて、すでに戰争と繋つているこの災害を、未だに我々が受けなければならない必然的なものを内在していると考えざるを得ないのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)
 諸君、私たちはどうか各位の主張をして本当に実を結ばせるために、この瞬間においても働く農民の上に強く目を注がなければならないし、又多数の罹災者に対しても、我々は今手を差し伸べて直結しなければならないと考えます。配給品のごときは配給の統一がなされないで、未だに不公平なる配給が行われているという報告、更に妊産婦などに対してまだ行届いておらないというようようなことや、殊に最早北海道等においては、又こういう災害が立ちどころに来るだろうということが部落民において直感されて、勤労奉仕でどんどん働いておりまするけれどもが、資材がなくてどうにもならん。丁度戰争中に北千島で飛行場を作るのに、五本の指で砂利を掻いたりして作つたような、そういう状態に今あるのであります。政府は恒久的対策にも遺憾なからしむるように、緊急的只今の対策といたしましては、資金と資材、公共団体が行つておるこれらの應急的処置であります河川の当然素人が見ても破れるような所を今應急的にやつておるような所は至近の前渡金でもやらなければならんと私は主張する者であります。資材においてもいろいろな事務上の手続があろうと思う。一切を簡素化してこの資材を早く罹災民の手許に届けてやらなければならん責任は政府にあり、我々は又これを鞭撻しなければならんと考えます。
 ともあれ、一千億以上にも上るであろうこの損害、これを負担するものは誰であるか、言うまでもなく戰爭とそうして戰後における不当なる利得、これらの人々の金によつて今次の救済はなさなければならないし、將来の対策においても、恒久的社会的施設である、とに十分に留意して、その財源を一般的な負担ではなく、こういう方面に求めなければならんということを主張いたします。かくのごとき澎湃をして盛りしつつある國会のこれを契機として、政府は直ちに立つて所信の断行をせられんことを望みまして、私の責を塞ぐ次第であります。(拍手)
#69
○副議長(松本治一郎君) これにて自由討議の発言者は全部終了いたしました。
   〔赤木正雄君発言の許可を求む〕
#70
○副議長(松本治一郎君) 赤木正雄君。
#71
○赤木正雄君 自由討議に当りまして各派の諸君からそれぞれ熱心に水害対策についてお話がありました。よつてここに一つの決議案を提出したいと思います。つきましては本院の規則第百五十二条第一項によりまして、これを表決に付すの動議を提出いたします。
#72
○山下義信君 本員は只今の赤城正雄君の動議に賛成いたします。
#73
○副議長(松本治一郎君) 赤木君の述べられました表決の動議に御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#74
○副議長(松本治一郎君) 御異議ないと認めます。赤木君。
   〔赤木正雄君登壇、拍手〕
#75
○赤木正雄君 本日の自由討議に鑑みまして、水害に対する迅速な應急策と又治水事業の完遂に関してここに決議を必要とすることを痛感いたしました。先ずその決議案を読みます。
   水害に対する迅速な應急策と治水事業の完遂に関する決議
  政府は、水害罹災民の窮状に対し、急速周到な救済の途を計ると共に、災害復旧に対して果敢な処置を講ずべきである。
  治水は、國土の保安、産業及び國民生活の安定に極めて重大なものであるにかかわらず、歴代政府は、これを忽せにし、為めに、頻りに水害を被る事実に鑑み、この際あらためて治山治水の重要性を確認すると共に、治水の原則に準拠して水源より河口に至る一貫した計画を樹立し、造林を重視するは勿論、殊に政策の抜本塞源的更改を断行して、砂防の完璧を期し、併せて河道の改修を計り、以て水禍を永遠に防ぐ方途を速かに講ずべきである。
  なお、右に示した各般の水害対策につき政府の採つた措置に関して、次の常会の初めに、政府はこれを本院に報告することを要する。
 右決議する。(拍手)
 この説明をいたします。総理もおいでになつておりますから、今まで述べられたことも先ず原因その他は又述べるといたしまして、この罹災者の困窮状態を先ずお話したい。東京都の状態を例に取りましても、江戸川区、葛飾区、足立区等の罹災の人々は多く学校に收容せられております。多くの人は殆ど着のみ着のままで、それこそ中には着るものも持たない人が沢山あります。それらの人々は板の間に寝起きして、蓆のあるのは上々、またいずれの学校も二つの教室ぐらいは病人であります。食事の状態を申しましても、乾パンを配給されましたが、乾パンの中には虫の付いたものもありました。又パンも配給されましたが、所によりましては、いろいろの手違いの関係からその代償を取られている人もあるのであります。中には郷里に帰りたいと思いまして、これが罹災証明書のあるときは、都電ならば何ら金を採らずに乗せますが、鉄道では乗ることはできません。実際罹災者は何の貯えもないのでありますから、これも余程吟味されて、帰り得ることの途を成るべく講ぜられたい。尚すべての連絡を不完全の関係上、各省の協議が迅速に図られていない。これも速かにお図りを願うべきであります。このことはひとり東京都のみならず、岩手縣においてもその他の罹災地においても同じ状況でありますから、同じく特に考えらるべきであります。
 次に災害復旧の急施のことに関してでありますが、十月の中頃まではまだ台風の危険性があります。殊に東北地方は来年の春早々雪融け水の危険がありまして、而も東北は直ぐ雪が降るのでありまするから、実際仕事ができる期間は極めて少ないのであります。私は先日山形縣の最上川の内務省で施行した大きな堤防の決壊状態を見て参りました。これはすでにこの春の雪融け水のときに一部決壊していたのでありますが、それが今度の水害で非常に決壊が増破されておりますが、この修復状態は誠に遅々たるものであります。これを大正六年に淀川の大塚の堤防が大決壊した場合、或いは信濃川の大高津の分水が決壊したあの場合に比べますと、それこそ決死の勢いで皆仕事に就いて、誠に涙ぐましいものがあつたのであります。これを考えますときに、尤も時勢の変化とは申しながら、あの永年かかつて築いた内務省の直轄治水、その関係技師のあの魂は今いずこにありやの感を深くするものであります。(拍手)尚政府におきましては、緊急災害復旧費或いは特別融資の方法を講じられております。これは結構のことでありますが、実際現金が災害現地に着きますのは相当の時に地を要します。そして仕事をしようと思つても仕事ができない。これが非常に今仕事のできない一つの隘路になつておりますから、この天を一つ十分御吟味の後に、どこが隘路になつておるか、速かにその隘路をただされて、一日も早く実際仕事のできるように政府は取計らわるべきであると思います。
 次に治水事業の完遂に関して申上げますが、今日水害の原因といたしましては、すでに度々申しました通り、過度の伐採のために森林の治水上の機能が非常に減退したこと、又戦争中に鉱山が濫掘されました結果、不要土砂が各山にありまして、これが一つの原因を成しております。又完全な林道、これは今回の水害におりまして百五十万メートル決壊しております。尚この外に開墾、これは山地におきましても、或いは軍用地におきましても、治水のことを殆ど無視して開墾されております。この外、河川維持、これは昭和十八年の頃に、元々河川の堤内堤外の附近は耕作を禁じありましたが、食糧増産のために昭和十八年からこれを許しました。併し戦争の済んだ今日におきましては、速かにこれを取締るべきでありますが、今以て甚だしいものは堤防の法面さえ芝を切つてこれに耕作しておる次第であります。この外戦争中に作つた土木事業は一般に不完全であります。これらの原因はいずれも人為的の原因で、政府はこれを速かに根絶すべきものであります。次に、一体近来政府はいかに治水事業を処理しておられるか、第一、災害土木復旧費ならばこれは止むを得ないとされております。中には災害復旧に対してはこれが改良或いは増築を認められております。併しどこまでも復旧は復旧でありますから、これを以て決して水害の禍根を除く事業と認めることはできないのであります。又最近は水害に名を借りると予算が取り易いというような関係から、災害防除施設とか、或いは災害土木事業助成とか、各種の名目によつて予算を取られておりますが、これらの姑息の事業がいずれも大きな水害に対しては何らの効果のないことは、今回の東北或いは関東の水害でいずれも明らかになつた点であります。そこで洪水の両を先ず吟味しますと、去る十八日の内務大臣の報告によりますと、栗橋で八メートル九九の水位があつた。利根川の増補計画は八メートル五〇であつた。これは水源地帯に六百ミリの降雨があつたためといわれました。併し明治四十三年の降雨は実に千ミリに達しておるのであります。そうして利根川の計画はこの千ミリに基いて行われたものであります。その際の計画高水位は六メートル五〇のものが、今回の六百ミリの雨量におきましては八メートル九九、この相違はどこにそういう矛盾があるか。これは申すまでもなく長年川床に土砂が上流から流れて来て埋没している。こういうことを第一に考えなけれななりません。それから本日も報告のあつた通りに、山の崩壊、例えて申しますならば群馬縣の沼尾川のごとく、その水源に三百町歩の森林が山も樹も一緒に崩壊して、これが利根川を一時堰き止めております。それがために利根川の水位が上つた。こういうふうに各谷谷が到る所に山崩をしておるのであります。これを見まするのに、降水量の過半は実は土砂といつてもよい。これはひとり今回の水害に限りません。近年各地に起つた水害はいずれを調査しても過半はこれを土砂と申しても差支えありません。そこで、河川改修は申すまでもなく、その流域の面積と既往の降雨量を計算の基礎にして、これを或る一定度の安全率を加えたものであります。従つて計算もできない。土砂の流れに対しては、これは河川改修として考えることは殆んど不可能であります。ではその上流からして流れ出た土砂をどうするか。これは取りも直さず予め土砂が流れないように、山が崩壊しないように、渓流が荒廃しないように、これをするのが砂防工事であります。即ち上流の土砂が流れないようにする砂防工事と、それから降雨による水量を流すに足る河川工事と、この二つができて初めて一貫した治水事業ができるのであります。もとより廣義の意味におきまして森林の必要なことは今更これは申すに及びません。だからして森林はどこまでも早くこれを植林すべきであります。併しここに一般論といたしまして、河川工事と、砂防工事と、どちらを先にするか、この問題でありますが、先ず河川工事を先にして、それから後に砂防工事に移るときには今申した通りに流れる土砂による莫大な不足の洪水量がありますから、河川は非常に大きな面積を要します。而も一旦河川改修をしましても、上流から土砂が流れますから、河はますます年々歳々埋まります。二度或いは三度も河川改修を必要とするのであります。利根川は一つの例に過ぎないのであります。これに反して、上流の砂防を先ずやつて、それから後に河川改修に及ぼすならば、上流から土砂が流ませんから洪水量は少くて足る。又水の中に土砂を含んでいない結果、水の早さは増して、水の力も強くなりますから、河底はどんどん掘れて、現在埋まつた河が水の力で自然に掘れる結果になります。こういう治水の純理論から言うならば、先ず砂防をやつて、それから河川に及ぼすべきであります。併しこれも欠く地方の急を要する状態からして、必ずしも全部これに拠るべきだとは言えません。一体それは政府は今までいかなる方針によつてこの治水事業をされておりましたか。これは先程他の議員から言われた通りに、明治初年まではその砂防工事を許した。例えば明治十四年の淀川の治水費は六万円でありますが、その中の四万円は砂防費であります(「簡単々々」と呼び、その他発言するもの多し)最近になつては全然それが変わつて来ておる。これには一般國民の理解しない点もありますが、又内務当局においても、今までの治水政策について根本的に考えを変えて頂かない以上はできません。このことをよく御了承なされまして、今日では経済安定本部におきましても十分この点を考えの中にいれて、今後再びかような水害のないように、この点をよくお考えなされなければなりません。一度水害に遭つたならば、産業も崩壊し、食糧は減収し、交通は杜絶し、水が治まらなくては、これでは國家の再建などは思いもよらんことであります。その点を考えまして、(「簡単簡単」と呼ぶ者あり)政府はこれはどこまでも治水事業の貫徹を図つて頂き、尚この決議に対して政府の成案を便々と持つことはできませんから、来る常会の冒頭にこの構想をお示し願うように特にお願いをいたします。これを以て説明を終ります。(拍手)
#76
○副議長(松本治一郎君) 採決に入るに先立ちまして、参事をしてこの決議案を朗読いたさせます。
  〔青木参事朗読〕
   水害に対する迅速な應急策と治水事業の完遂に関する決議案(赤木正雄君発議)
  政府は、水害罹災民の窮状に対し、急速周到な救済の途を計ると共に、災害復旧に対して果敢な処置を講ずべきである。
  治水は、國土の保安、産業及び國民生活の安定に極めて重大なものであるにかかわらず、歴代政府はこれを忽せにし、為めに、頻りに水害を被る事実に鑑み、この際あらためて治山治水の重要性を確認すると共に、治水の原則に準拠して水源より河口に至る一貫した計画を樹立し、造林を重視するは勿論殊に政策の抜本塞源的更改を断行して、砂防の完璧を期し、併せて河道の改修を計り、以て水禍を永遠に防ぐ方途を速かに講ずべきである。
  なお右に示した各般の水害対策につき政府の採つた措置に関して、次の常会の始めに、政府はこれを本院に報告することを要する。
  右決議する。
    ―――――――――――――
#77
○副議長(松本治一郎君) 只今の水害に対する迅速な應急策と治水事業の完遂関する決議案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#78
○副議長(松本治一郎君) 起立総員。(拍手)総員起立と認めます、よつて本決議案は全会一致を以て可決されました。
     ―――――・―――――
#79
○副議長(松本治一郎君) この際内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。片山内閣総理大臣。
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#80
○國務大臣(片山哲君) 只今自由討議の結果、諸君によつて満場一致水害に対する決議案が可決せられましたことを伺いまして、政府といたしましては十分この決議案に盛られておりまする趣旨を尊重いたしまして、努力いたしまして、その対策を実現いたしたいと考えておるのであります。今回の水害が非常に廣範囲に亘り、その被害も大きく、罹災者の多くの方々に対しましては、心からなる同情と深き見舞をいたしたいと考えておつたのであります。早速政府といたしましては、各関係大臣及びその他の関係者が現場に出張いたしまして、それぞれ直ちに処置を採る外、更に政府におきましては、救援緊急対策の委員会を設置いたしまして、救援事業に従事いたしました。更正大臣も現場に出張せられまして、この救援対策を指揮されたような次第であります。更に又復旧対策、土木の急を要する復旧事業に着手しなけらばならない。こういう問題も緊急に取り上げまして、復興緊急対策を内閣において講じまして、直ちに資材の蒐集でありまするとか、人員の集め方でありまするとか、必要なる処置を採りまして、それぞれ処置を採つたような次第であります。今日後になつて考えて見まするならば、その原因は誠にいろいろの点にあつたと考えます。只今の御演説で指摘せられましたような事柄が多くその原因であつたと感ずるのであります。深くこの点において遺憾に思うのでありまするが、誠に唐突の際であり、十分なる應急処置を採り得ずして、被害が東京都まで及んで参りましたること残念に思うのであります。この貴い経験を活かしまして、今後の対策には万遺憾なきを期したいと考えております。特に諸君によつて御発表になりましたる意見は十分に尊重いたしまして、更に土木学的見地から、或いは河川学的見地から各方面の検討を十分にいたしまして、次に恒久対策を立てたいと考えておるのであります。特に諸君によつて意思表示されました最後の「右に示した各般の水害対策につき政府の採つた措置に関して、次の常会の始めに、政府はこれを本院に報告することを要する。」とこういう御意志に対しましては、十分できるだけ措置を採りまして、具体案を立てたいと考えておるのであります。ここに「政府の採つた」と言い表されておりまするが、過去において採つたという意味ではなかろうと思いまして、将来これから採ろうといたしまする復旧対策、水禍を最小限度に止め、できるならば根絶いたしまして、そうしてかような被害のないようにいたしたい、こういう問題につきまして懸命の努力を拂つて対策を立てたいと考えております。来る常会に、恐らく通常議会におきまして成案を得まするならば、分つた部分からだけでもどしどしと皆様に御報告いたしまして、十分なる御批判、ご意見を伺いたいと思つておるのであります。政府といたしましては誠に今回の水害をよき教訓といたしまして万全の策を講ずるに遺憾なきを期したいと考えておるし第でありまして、只今の決議案に対する政府の意思を表明いたし、今後における諸君の御協力を仰ぐ次第であります。(拍手)
     ―――――・―――――
#81
○副議長(松本治一郎君) 日程第三、災害救助法案を議題にいたします。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員塚本重藏君。
   〔塚本重藏君登壇、拍手〕
#82
○塚本重藏君 只今上程せられました災害救助法案に関しまする厚生委員会の本法案に対しまする審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。
 厚生委員会におきましては本法案の性質に鑑みまして、一日も速かにこの法案を成立させる必要があると認めまして、九月二十二日以来予備審査を重ねておつたのであります。二十七日土曜日夕刻衆議院で可決せられまして、本院に送付に相成りましたので、翌日日曜日でありましたので、月曜日に本審査を開きまして、慎重なる審議を加え、ここに御報告申上げる次第と相成つたのであります。
 本法案が提出されました理由について申上げますと、災害救助に関する根拠法規といたしましては、古く定められましたる罹災救助基金法があるのでありまするが、この法律は単に罹災救助のための基金に関しまする法律たるに止まりまして、災害救助の活動並びに物資の調達等に関しまする規定を欠いておりまする。そのために実際の経験に懲しまして甚だ不十分なのであります。そこで新たにこれらのすべての点に関しまする規定を設けた災害救助法案を制定して、災害に際しての救助の万全を期そうとするものであります。
 次に本法案の内容を簡単にご紹介申上げます。第一に本法は非常災害に際して、國が地方公共團体、日本赤十字社、その他の團体及び國民の協力の下に、應急的に必要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と、社会の秩序の保全を図ることを目的としておるものであります。
 第二に、本法によりまする救助は、一又は二以上の都道府縣の全部又は一部にわたる非常災害があつた場合、又はその一部に非常災害があつた場合、應急的な救助を必要とするものに対してこれを行うものであります。尚災害の範囲が右の程度でなくても、多数の者が同一の災害にかかり、應急的な救助を必要とするときにも本法の救助を行うものであります。
 第三に、関係行政機関、日本赤十字社等の協力を密にして、救助その他緊急措置の適切且つ円滑なる実施を図るために、それらの協議期間といたしまして、中央に中央災害救助対策協議会、各都道府縣ごとに都道府縣災害救助対策協議会を設けることとし、尚必要がありまするならば、数都道府縣を単位といたしまする地方災害救助対策協議会を設け得ることといたしておるのであります。
 第四に、本法の救助の実施については日本赤十字社に救助に参加する各種の團体及び個人の協力の連絡調査を行わせ、又都道府縣知事は救助等の実施に関して、必要な事項を日本赤十字社に委託することができることといたしておるのであります。
 第五に、救助の種類は収容施設の供與、食糧その他生活必需品の給與、医療、助産、生業資金等の貸與、学用品の給與、埋葬等であります。
 第六に、救助の万全を図るために、主務大臣、都道府縣知事などに人及び物の確保に関して必要な権限が與えられてあります。
 第七に、救助に必要な費用は都道府縣の負担として、これに対しまして國庫が所定率によつて百分の五十、或いは八十、或いは百分の九十とかいう補助を行う建前になつておるのであります。
 第八に、救助の費用に充てるために、各都道府縣ごとに最低五百万円の災害救助基金を設けさせることといたしておるのであります。
 最後に従来の罹災救助基金法はこれを廃止することにいたしまして、その罹災救助基金法によつて持つておりました基金は、本法に定める災害救助基金に繰入れることにいたしておるのであります。
 次に、厚生委員会におきまする質疑應答の概略を申上げます。先ず委員会におきましては、政府より過般の関東及び東北大水害に関しまする状況を、委員会開催の度ごとに逐一報告を聴取いたしまして、救助の徹底を図るに必要な意見を述べて、政府を鞭撻して参つたのであります。又委員中の若干の人は、現地の視察並びに慰問をも行つて参つた次第であります。
 次に、法案の内容について、一体本法による救助の責任はどこにあるのか、こういう質問に対しまして、政府は地方公共團体、日本赤十字社、その他の團体及び國民の協力の下に國の責任において行われるものであるとの答弁がありまして。
 次に、本法においては主務大臣や都道府縣知事に対して、人や物の確保に関して必要な強制力を與えておるのであります。即ち法の第十二条並びに二十六条におきましては、関係各大臣その他関係各廰の長或いは都道府縣知事が、「特に必要と認めたときには、救助その他緊急措置に必要な物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取り扱う物資の保管を命じ、又は救助その他緊急措置に必要な物資を收用することができる。」とかように規定いたしております。又更に二十四条におきましては、「医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。」又「輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる。」、こういつたような規定を設けまして、この規定に違反しまする者に対しては、六ケ月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処することにいたしておるのであります。更に十三条、二十七条におきましても関係各大臣その他関係各廰の長、及び都道府縣知事に以上のような物資について、その保管させてある場所を当該官吏に立ち入り検査させることができる規定を設けておるのであります。これらの規定は、憲法に定められましたところの財産権、自由権、或いは住居権等を侵害することになりはしないか、少なくともそういう虞れがあるのであるが、いかがであるかとの質問に対しまして、政府はこれは憲法に保障されておる自由権、財産権等を侵すものとは思つていない。憲法において保障されておる基本権も公共の福祉のために利用されるべきであることは又憲法の明文に規定せられておるのである。従つてその限りにおいては制限を受けるものであり、而して本法案におきまする救助は、災害という緊急事態において保護を図るのであるから、そのための強制は正に公共の福祉のためのものであり、且つ憲法所定の条件手続の下に行われるものである、即ち特に必要と認めたる範囲を限定いたしております。又公用令書を以てやるべきことを規定いたしております。更に又費用等を弁償する規定をも設けておるのでありまするから、聊かも憲法違反とはいわれないのであるが、勿論その運用に当つては濫用に陥らないように十分の注意をするつもりであるとの答弁がありました。又今般の水害の経験に微しましても、必要なる物資を輸送しますることのために、或いは又罹災民を救助することのために、多くの船を必要としたのであるが、或いは又トラックを必要とする場合があつたのであるが、こういう法規がないために、その船なりトラックを所有しておりまする者が現にあることを承知しながら、それを救助のために公共福祉のために利用し得なかつたことが多々たつたのであると、そういう経験に微しましても、強制規定の必要性が欠く方面から痛感された旨の答弁があつたのであります。
 次に、災害救助基金の最低限度五百万円を積立てせしめるということは、これは非常にその額が少ないのではないか、こういうような質問があつたのでありますが、これに対しまして政府から、この額は従来の罹災救助基金の最低限度の十倍に当つているのである、又災害救助法においては、相当高率な先に申上げましたような、國庫補助を行う建前となつておりまするから、都道府縣の純負担額から見まするならば、この程度の金額が最も適当であると思うとの答弁があつたのであります。
 次に、本法案におきまして日本赤十字社に廣い権限を與えているが、或いは救助に関する團泰、個人の協力活動の連絡調整を行わせ、或いは救助の十費を委託する等の建前となつているが、一体今日の日本赤十字社がその任務を果す能力があるのかとの質問に対しまして、政府は、日本赤十字社は今日主として災害救助活動を目的とする團泰に組織を変更しておるのである、全國的に相当な組織を持つておるのであります。更に又万國赤十字社、米國赤十字社等の範に倣いまして、極力これを活用することが適当と思われるから、今後十分にその内容の充実に努めて、それに應じて、その実力に應じて、順次活動の分野を廣めて行くようにしたいと思つておるのであるという答弁がありました。思いまするのに、日本が平和國家といたしまして、軍備を撤廃することになつたのであります。このような災害の場合に、従来軍が保有しておりましたところの物資を放出し、或いは軍の力を以て必要なる仕事に従事して来たことは、皆様御承知のところでありますが、今後においてはそういうことが望まれなくなりました。今日は占領下でありまして、今度の水害におきましても占領軍が非常に活動を與えられまして、この水害の拡大を防がれ、その救助に強力して頂いたことは、皆様御承知のところでありますが、この占領軍もいつかは撤退する時期が来るのでありますが、そのような時代を考えますると、ふだんからこういう組織として準備と用意をして行くということが必要であるということが痛感せられた次第であります。以上のような審議の後に討論に入つたのでありますが、中平常太郎君、草葉隆圓君、姫井伊介君から、今次水害罹災者に対する熱烈な義捐金募集運動が展開されておることは好ましいことであるが、中には不純なものもないとは言われない。故に政府はこれらに対して適切なる指導と取締に適当な措置を講ずべきである。その他数項目に亘りまする熱烈なる意見が開陳せられたのであります。これに対しまして一松厚生大臣及び政府委員から應答を重ねられましたのであります。その熱烈なる討論の結果におきまして、一つの附帶決議を附して原案を可決するに賛成の旨が中平委員から述べられました。中平委員提案にかかりまする附帶決議をここに朗読いたします。
   附帶決議
 政府は、日本赤十字社の組織を民主的に刷新し、その内容の充実徹底をはかり、他の團体との十分な協議を保ち、独善的弊害に陥らざるよう適切な措置を講ずること。
 こういう附帯決議を附することを主張せられたのであります。次いで草葉委員、姫井委員から、共に中平委員提出の附帶決議を附することとして原案を可決すべきことに賛成するとの旨が述べられました。かくて討論を終り、採決に入りまして、全会一致を以ちまして原案を可決すべきものと決定いたした次第であります。次いで先に朗読いたしました附帶決議をこれ亦全員一致を以て可決いたした次第であります。
 ここに委員会におきまする審議の経過と結果を御報告申上げたのでありますが、その後におきまして、この法律を決定いたしましても、今日の事態に見て速かなる法律の実施を熱望いたしまして、このことに関しまして政府当局と実施の期日について交渉を重ねて参つた次第であります。かようにいたしまして政府の方とその施行期日についての決定をいたしたのであります。委員会におきましては、そのことのために更に委員会を開いて、本院に提出しましたる報告書を一時撤回し、委員会において修正し、再び本院に報告すべきであるか否やを議したのでありますが、この昨日以来熱烈なる討議が重ねられました後において引続いて本法案を可決を願いますることのためには、そうした手続きをとつておる暇がありませんので、これは本会議において御修正を願うことといたしまして、さような手続をとらないことにいたしたのであります。以上のことも併せて御承知賜わりまして、何とぞ御賛成賜わらんことを切にお願い申上げて、報告を終る次第であります。(拍手)
#83
○副議長(松本治一郎君) 報告をいたさせます。
   〔宮坂参事朗読〕
本日議員から左の修正案を提出した。
   災害救助法案に対する修正案
 右の修正案を成規によつて提出する。
  昭和二十二年九月三十日
        発議者
           堀  眞琴
        賛成者
           下條 康麿
           岡本 愛祐
           尾崎 行輝
           楠見 義男
           佐々 弘雄
           小野  哲
           東浦 庄治
           河野 正夫
           森下 政一
           岡田 宗司
           伊藤  周
           天田 勝正
           稻垣平太郎
           岩木 哲夫
           木内 四郎
           櫻内 辰郎
           木下 盛雄
           黒川 武雄
           佐藤 議詮
           佐々木良作
   衆議院議長松平恒雄殿
災害救助法案中左の通り修正する。
 附則中「この法律施行の期日は、政令でこれを定める。」を「この法律は、昭和二十二年十月二十日からこれを施行する。」に改める。
    ―――――――――――――
#84
○副議長(松本治一郎君) この際修正案の発議者に対し趣旨説明を許します。堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
#85
○堀眞琴君 只今厚生委員長から委員会の審議経過並びに結果について御報告があつたのでありまするが、私は只今参事の方が読上げましたように、本案につき修正の動議を提出したのであります。
 一体法律を審議決定するのは、最高機関であるところの、そして又立方法機関であるところの國会でありまして、従つて國会は、その法律の内容については勿論のこと、その法律がいつから施行されるかということにつきましても、原則としてはこれを國会において審議決定すべきものであろうと考えるのであります。勿論法律のいかんによりましては、特殊の場合があり、これを政令で以て施行期日を制定する場合もあるだろうとは思いますが、原則としては、飽くまでも法律案の内容を審議決定すべき國会がこれを施行すべき期日についても審議決定しなければならん。こう考えるのであります。これが、私がこの災害救助法の附則中の施行期日に関する規定を政令に譲つたことに対しまして修正案を提出した理由であります。尚、厚生委員長が述べられておりましたが、この法律案の趣旨は、今日の社会情勢から申しまして最も緊急を要するものであり、従つて本法案の一日も早き施行が望ましいのでありますが、若しこれが施行を単に政府の準備の都合というような理由で以て延ばすというようなことになりましては、私共國会の席に連なる者として、これに反対せざるを得ないのであります。私共は一日も早くこれを施行せねばならん。厚生委員会におきましては、その件に関しまして政府当局折衝を重ねられまして、十月の二十日からこれを施行するということに決めたのであります。この点につきましては厚生委員会の労を多としなければならないと思うのであります。以上簡単でありますが、修正案を提出した理由をお話申上げます。(拍手)
#86
○副議長(松本治一郎君) これより採決をいたします。先ず堀眞琴君提出の修正案を問題といたします。本修正案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#87
○副議長(松本治一郎君) 総員起立。よつて本修正案は全会一致を以て可決されました。
    ―――――――――――――
#88
○副議長(松本治一郎君) 次に、只今修正可決されました部分を除き、本案全部を問題に供します。残り全部、本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#89
○副議長(松本治一郎君) 総員起立。附則の修正を除き、本案全部は可決されました。よつて本案は修正議決と決定いたしました。(拍手)これにて本日の議事日程は終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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