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1949/03/24 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 経済安定委員会 第2号
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1949/03/24 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 経済安定委員会 第2号

#1
第005回国会 経済安定委員会 第2号
昭和二十四年三月十九日
 首藤新八君、多田勇君、前田正男君、森曉君、
 加藤鐐造君及び高田富之君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
昭和二十四年三月二十四日(木曜日)
    午後一時四十三分開議
 出席委員
   委員長 小野瀬忠兵衞君
   理事 首藤 新八君 理事 多田  勇君
   理事 前田 正男君 理事 森   曉君
   理事 加藤 鐐造君 理事 高田 富之君
      足立 篤郎君    池見 茂隆君
      小川 平二君    中村  清君
      中村 純一君    永井 英修君
      金光 義邦君    高橋清治郎君
      圖司 安正君    横田甚太郎君
      平川 篤雄君    羽田野次郎君
 出席國務大臣
        國 務 大 臣 青木 孝義君
 出席政府委員
        総理廳事務官
        (行政管理廳次
        長)      大野木克彦君
 委員外の出席者
        総理廳事務官  石原 武男君
        総理廳事務官  大來佐武郎君
        專  門  員 圓地與四松君
        專  門  員 管田清治郎君
    ―――――――――――――
三月十九日
 委員千葉三郎君辞任につき、その補欠として高
 橋清治郎君が議長の指名で委員に選任された。
三月二十二日
 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案(
 内閣提出第一号)
 経済現況の分析に関する説明聽取
    ―――――――――――――
#2
○小野瀬委員長 ただいまより開会いたします。
 去る二十二日本委員会に付託されました内閣提出、臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案を議題とし、まず当局より提案理由の説明を聽取いたします。
#3
○高田(富)委員 議事進行について発言いたします。私どもは國民の注目の上に、新しい政府と新しい國会を組織しまして活動に入るのでありますが、いまだに政府の施政の大綱も示されず、また財政方針も示されておりません。個々の法案は、すべて提出する政府において、大きな政治の大綱が示され、どういう考えでどういう方向へ政治を持つて行くかという大きな根本が示されなければ、個々の法律の審議はできないし、また提案できる筋合いのものでもないと思うのであります。われわれは十分愼重に、総合的な施策の一環としての法案を、檢討しなければならないのでありまして、たといどういう簡單の法律のように見えましても、それをいかなる考えでどういうふうに運用するかということは、その政府の性格、大きな方針の中から割り出されるものでありますから、私どはもしこれを、こういうふうな根本も知らずに、個々の法案を審議するというような先例をつくるならば、これは大きな禍根を將來に残すことになるのでありまして、どうしてもわれわれは、この審議をしないで、その前に総理大臣からの一般施政の方針を聞き、また財政の大綱を十分聞いて、これを審議して後に、個々の法案の提案を受けて、これを檢討するようにしなければならないと思うのでありますが、この点をお尋ねいたしたいと思います。
#4
○小野瀬委員長 高田君の御意見も一應ごもつともに存じます。しかしながら本日提案いたしました議案は、先般議院運営委員会の決定により本委員会に付託されたものでありまして、なおまた本日は大体委員会の予定といたしましては、單にこの法案の説明を当局から承る程度でございますので、本日これを可決するとか、否決するとかいう段取りまでは行かないのでございますから、何らさしつかえないと思いますので、本日は予定の通りこの議案につきまして政府の説明を求めて、進行して行きたいと、かように考えております。
#5
○高田(富)委員 所管の大臣が見えておるようですけれども、何としましても根本の全体がわかつておれば、委員会では所管の大臣のこまかな、具体的な、事務的な説明をいだけば審議に入れますけれども、まだ根本が示されておらないのですから、所管の大臣の方の提案理由をいきなり聞くということでは、何としても私ども十分なる審議の責を果すことができないと思うのであります。また全体の方針を示していただくようなことも準備されておらないようでありますし、一方的に、会議を開くということは、非常に穏当を欠くと思います。
#6
○小野瀬委員長 ちよつと速記をやめてください。
    〔速記中止〕
#7
○小野瀬委員長 速記を始めて……。それではこれより提案理由の説明に入ります。
#8
○横田委員 これは議事の審議についてですが、定足数云々の点についてちよつと明確にしていただきたい。委員長は以前の慣習とか、あるいはしきたりによつてこうだとか、斉藤さんがこう言われたからこうだとかいうことを言つておられますが、私はそういうことは反対です。もし委員会が開かれて、法規によつてきめられた定足数に達しなかつたならば、今できなければしいて委員会をやらずに放つておいてほしい。それは一年であろうと、二年であろうと、そんな委員会はやらずに済むなら、やらなくてもいいだろうと思う。なぜかというと、そういうふしだらな委員会をやつておつたから、ふしだらな戰爭に負けて、日本の國をこんな状態の國に導いた。それからまた民主主義という時代になつて後におきましても、そういうようにふしだらなことをやつておるために、不当財委でたたかれ、裁判所へ呼びつけられ、小菅の刑務所にたたき込まれた。それが單に陣笠のみならず、芦田均氏までがそういつたうき目を見た。だからそういう点をはつきりして、――もし委員に選ばれても委員会に出て來ないで、定足数が足りないために委員会が開かれぬというのは、日本の不幸この上もないと思う。その意味を明らかに議院の内外に傳え、再び選挙その他の方法によつて新しくかえるという意味合いにおきまして、今後委員会は定足数を守つていただきたい。その点くれぐれも明らかにしていただきたい。
#9
○小野瀬委員長 承知いたしました。それでは安本長官から提案理由の説明を求めます。
    ―――――――――――――
#10
○青木國務大臣 臨時物資需給調整法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
 臨時物資需給調整法は御承知のごとく國家総動員法その他の戰時経済統制諸法令廃止のあとを受けまして、戰後の窮迫せる経済情勢に対処し、わが國産業の回復振興をはかるため、必要な経済統制を実施いたします根処法規として、昭和二十一年十一月制定せられたものであります。しかして本法は、敗戰によつて破壞されたわが國経済の建直しのための非常立法であり、あくまで暫定的の立法でありますので、その趣旨を明確にするため、当初その附則において、昭和二十三年四月一日または経済安定本部廃止のときのいずれか早いときに、その効力を失う旨の規定を設けたのであります。從つて昨年三月末をもつて一應その有効期限が到來したのでありますが、当時なお本法の存続を必要とする経済状況にありましたので、その有効期限を一箇年、すなわち本年三月末まで延長したのであります。最近わが國の経済も漸次安定の度を増し、物資の生産も相当の回復を示して参つたのでありますが、いまだ全般的には物資の需給のバランスを回復するには至りませず、わが國の経済の急速な安定回復をはかりますためには、今後少くとも一箇年間引続き有効適切な統制を実施する必要があると認められるのであります。本改正法律案は本法の有効期間を更に一箇年延長せんとするものでありまして、何とぞすみやかに御審議の上御協賛あらんことをお願いする次第であります。
#11
○多田委員 臨時物資需給調整法の改正法案を審議するにあたりまして、この法律を利用すると言うと語弊がありますが、幾分この法律に便乘して、あらゆる統制を行われるという感がなきにしもあらずと思われますので、次回の委員会には関係各省の政府委員にも、御出席いただきたいと思います。
#12
○平川委員 ただいまの御提案に全面的に賛成であります。と同時にくどいようでありますが、この臨時物資需給調整法というのは、今回の選挙にあたつて、民主自由党の諸君が言われたものから言えば、全面的に廃止になるものとわれわれは考えておつたのでありますが、さらに期間を延長せられるということになると、まことに奇怪しごくです。ひとつ責任のある総理大臣の御答弁を得なければいけない。ぜひとも時間を振りかえてでもけつこうでありますから、総理大臣の御出席をお願いいたします。
#13
○小野瀬委員長 平川君から御発言がございましたが、なおまた共産党の諸君からも同じ御意見がございますから、ただいまの御要求の通り各大臣に連絡をいたします。
    ―――――――――――――
#14
○小野瀬委員長 それでは法案の説明はただいま聽取いたしましたので、引続きまして経済現況の分析に関し、当局から説明を聽取することにいたします。
#15
○大來説明員 それでは経済現況の分析につきまして簡單に御説明申し上げます。
 この資料は昨年の暮れから作業にかかつておりまして、本年の二月ごろ一應とりまとめたものでありますが、内容としましては最近の経済情勢にいろいろ変化がございますので、その情勢をできるだけ統計数字に基きまして、客観的な分析を行うというふうな趣旨で行われております。全体の組立てといたしましては、まず最近におきまして幾分経済情勢の好轉が見られておるというような場面を拾いまして、次にこのような好轉にもかかわらず、基本的には非常な不健全な要素を持つておるということを申しまして、最後に現在及び今後において問題になるような点、そういう点について一渡り説明を加えておるわけであります。「はしがき」にもございますように、昨年の十二月十八日に経済安定に関する九原則の指令がございまして、その翌日マツカーサー元帥からの書簡がありまして、政治的独立の前提として、他人の贈りものに依存しない経済的自立の達成、これが最も必要だということがあつたわけでございます。外國におきましてはかなり急速に経済会議が行われておる。從來のいわゆる食糧と石炭と輸送に追われておりました経済が、次第に健全な貨幣信用組織に基いた状態に帰りつつある。日本の経済は最近生産の比較的順調な上昇、インフレーションの緩漫化、勤労者の実質賃金の漸進的向上等によつて、経済安定のきざしが見え始めておりますけれども、しかしその基盤にはきわめて不健全な要素を多分に含んでいることが見出される。その最大なものとしては年に四億ドル以上にも達する貿易の赤字である。一方において企業の実体資本の食いつぶしや、災害の増加によつて示される國土荒廃の進行というようなこともございます。このような不健全さを克服するためには、生産と輸出を急速に増大することが必要であり、その前提としてインフレーションを終熄させなければならない。終戰以來今日までの日本経済の内部的な諸矛盾は、國内のインフレーションの進行と自由な國際的経済交流の遮断とによつて、おおい隠されていた。今やわれわれは本資的な問題の所在を明らにかして、その解決に努力しなければならない段階にあるというのが「はしがき」でございます。
 経済安定へのきざしといたしまして生産水準の上昇、これが二ページと三ページにまたがつておりますが、ここに表がございます。これは昭和五―九年を一〇〇としまして、極東委員会で日本の産業水準の一應の基準として決定されております昭和五―九年を一〇〇といたしました鉱工業の生産指数を示しております。ここにございますように大体昨年の十二月にはこの基準に対して六四・四%、この表には四月から出ておりますが、歴年に換算いたしまして一月から十二月までにいたしますと、昭和二十二年が四〇・九%、昨年二十三年が五四・八%ということで、一年間に三四%の鉱工業生産の増加が見られたわけであります。
 次にどういう品目が増加しておるかということが三ページの表にございます。内容的に見ますと、やはり輸入原料加工生産の増加が顯著でありまして、これはわが國の工業が非常に基礎原料を海外に依存しておるということの反映でありまして、部門別の生産回復の現状は、四ページの表にありますように、主として金属工業、機械工業、化学工業等において回復の度合が一昨年より顯著でありまして、纎維工業は比較的停滯しておるような状況であります。
 なおこの生産指数の作成上、纎維工業のウエイトが非常に大きいので、これを除きました生産指数をつくつてみますと、次の表のようになります。昨年の十二月で昭和六年に対しまして九六%というところになつております。それからこのような生産上昇の原因といたしましては、次の五ページにありますように、燃料動力事情の好轉、原料輸入の増加、輸送事情の改善その他物價改訂だとか、食糧事情の改善等が影響しておるわけであります。これが鉱工業の生産の状況でありますが、一方農作物、この方は七ページの上の表にございますように、米、麦、甘藷、馬鈴薯を合せまして、米に換算いたしまして、昭和二十三年が九千万石、前年に比べまして一一%の増加になつております。その他一般の情勢が改善されたこと、やみ價格と公定價格が近づいたこと等によりまして、供出も一昨年及びその前に比べて早く進んでおるという状況で、下の表に示してあります。これが生産の事情であります。
 次にインフレーションの方面を通貨、物價の面から見て参りますと、通貨は昨年の一年間十二月までの間に六二%の増発をいたしましたが、一昨年はこれが一三五%でありましたので、通貨増発が緩慢になつておるということになります。物價の面も昨年の五、六月以降あまり上らなくなりまして、この点は先ほどの二ページについております表にグラフで示してありますが、一昨年に比べまして、前年の物價の上り方はかなり緩慢になつておる。通貨の増発も緩慢になつておるわけであります。この表が実は四月からになつておりますが、一年間を計算してみますと、昨年一年の間で公定物價、卸賣物價が二・三、四倍になつております。それから日銀の小賣物價は二・三倍になつております。やみ物價は二〇%の増加、生産財の物價は二%の増加、消費財のやみ物價は四〇%の増加、消費者実効物價は五九%の増加、これは九ページの表に対應するわけでありますが、年間の数字を今申し上げたわけであります。
 それからこのような通貨の増発の緩慢化、物價上昇の緩慢化の原因といたしまして、財政及び金融の面がございます。財政の面で財政收支の均衡、時期的なずれはありますが、これも前年に比べまして、幾分改善されたということを、十ページに概略書いてあるわけであります。一般会計におきましては、税收が年末で一昨年は三三%でありましたが、昨年は五〇%まで行つた。それから特別会計もかなり増加しておりますが、ただ二十三年の特別会計といたしましては、食糧供出が早かつたために、年内に九百億円に及ぶ供出代金があつた。これが年末の通貨増発の一時的な原因になつておるというようなこと、それから融資の面につきましては、前年に比べまして、昨年は約二・六倍にふえておりますが、これは貯金が三倍にふえておる。そういう関係で産業資金の面でも、比較的通貨増発の原因が軽減された。その数字的な関係は十一ページの表に、総合的な資金バランスの表として掲げてございます。以上がインフレの緩慢化の原因といたしまして、財政及び金融の面でありますが、なおまた一面において物資給力の増加、遅配、欠配がなくなつたこと、配給ベースの引上げ、こういうことが物資面における價格上昇の原因を押える。同時に心理的な安定感――インフレーシヨンがかなり心理的な影響を受けますので、安定感の増大が貯金の増大になり、それがまた通貨増発を押えるという一つの循環が始まつていることが見られる。こういうふうな事情であります。
 次に第三に実質賃金の上昇ということをあげております。十三ページの表は労働省の調べでございます。毎月勤労統計は、從來総理廳統計局でやつておりましたが、最近労働省にかわつたのであります。いわゆる千八百円水準とか、三千七百円水準と言われておりましたものでありまして、全國工業從業員――工業に從業する者すべて、男も女も独身者も家族もちも全部含めまして、約二百万人を対象にしておる調査でありますが、その工業從業員の総平均賃金、なお臨時給與、時間外給與その他全部を含めました総支拂賃金でありますが、二十二年を平均いたしますと一千八百十九円でありましたが、その後この表にございますように上昇しております。十一月が約七千円、十二月が九千円になつております。これは年末臨時給與がありまして、毎年十二月は異常に上昇いたしますので、これは例外と見なければなりません。一方全都市消費者物價指数、すなわちC・P・Iというのが三行目にございます。これはいわゆる全國の二十八都市を選びまして、五千世帶をサンプルにして、平均的な都市生活者の家計を分析いたしまして、その家計にやみと公定に依存しておる部分があるわけでありますが、それを平均いたしました実効物價というものがございます。それによつて物價指数を出して参りますと、やはりここにございますように二十二年を一〇〇といたしますと、昨年の十一月で二二七になつておる。税引きの賃金を物價指数で割りますと、実質賃金が一昨年の平均に比べまして、昨年十一月には約七割の上昇になつておるという結果になります。ただこの際注目を要しますことは、毎月勤労統計が先ほど申しましたように、約二百万人を対象にしておる工業関係だけでありまして、政府の從業員その他は含まれておりません。なお調査対象が從業員百人以上の工場、事業場の全部及び三十人から百人未満のものの一割ということになつておりますので、比較的大企業を中心にしておる。そういう点をお含み願つて、この実質賃金上昇の数字をごらん願いたいと思うのであります。このように実質賃金が上つた原因といたしましては、第一に家計の要求というものがございます。終戰以來生存に必要な賃金以下の水準に一時低下いたしておりました。それが家計面から強い圧力となつて賃金要求となる。物價が急速に上つておる段階におきましては、なかなか賃金が追いつき得ない。あるいは辛うじて並行するという程度でありましたが、一昨年秋あるいは昨年初め以來、物價上昇がだんだんと緩慢化するに從いまして、賃金の方は從來の騰勢を継続する。この間において実質賃金の上昇が、ある程度実現されたというのが実情でございます。
 それからもう一つは所得分配の変化でありまして、これはインフレの緩慢化に從いまして、いわゆる商業的――いわゆるかつぎ屋とか、ブローカーとか言われておりましたそういう商業的な利潤が圧縮されまして、これが俸給生活者の所得に移動して來る。そういうことが結果的には出て参つております。その点は先ほど申しました都市家計調査C・P・Sの都市の平均的な家計がそれほど増加しておりませんが、いわゆる勤労者の家計は三割くらい上昇しておるというふうな点から見られるわけでありまして、その点については十六ページの第二番目の表にもございますが、勤労者の家計と一般の都市生活者の家計、これが二十二年では勤労者の方が七七%程度でありましたものが、最近では大体平均に到達している。そういうことになつております。なおまた農村の所得が総体的に見て低下している。これがやはり都市の、しかも大企業の勤労者にある程度移動しているというようなこと、また中小企業の賃金と大企業の賃金の開き、これもあとに出て参りますが、そういう点もあるわけであります。なおまた企業の支拂能力、つまり賃金を拂う側から申しますと、生産がかなり上昇いたしまして、ここに表にありますように約二倍以上に上つております。しかも雇用量は、從業員の数はそれほど殖えないということの結果といたしまして、企業の方にも賃金の支拂余力が出て來たということが、数字的に説明されるわけであります。ただ生産が、この数字では二十二年平均に対しまして、昨年の十二月は二・二八倍と出ておりまして、先ほどの生産指数で現わしましたのとは違つております。その原因は賃金と対照するために、毎日勤労統計を基礎にした賃金支拂ウエートというものを別につくりました関係で、これは賃金との比較上当然こうすることになるのであります。やや專門的になりますが、そういう点で生産量の性質が相違しております。
 それからこのように実質賃金が上昇した。それがいかなる効果を持つたかということになりますが、東京都廳調べの都市勤労者の家計を見ますと、十六ページにございますように、家計消費水準が十、十一月平均では一昨年の平均に比べて三割七分くらいの増加になつている。こういうふうなことで、家計の收支が健全化される。つまりこの前の経済情勢白書、いわゆる第二次白書と言われているものによりますと、世帶主勤労所得に対しまして、勤労外收入の割合が約二割を含んでおりましたが、昨年九月にはこれが一割に減少した。またいわゆる家計の赤字と從來言われておりました点も、二十二年には七七%程度でありましたが、最近はどうやらバランスがとれておる。世帶主の所得で主として家計がまかなわれている。これは一面から言えば收入が赤字の余地がなくなつた面もあるのでありますが、同時に実質賃金の向上ということが役立つている。また一面において労働能率の増進、このような実質賃金の向上によつて労働の定着性を増し、出勤率をよくする。これは関西あたりの工場を見ましても、大体戰前の水準に回復して來ております。つまり家計が勤労者世帶主の勤労所得によつてほぼ緩和される。從來でありますと副收入を得るために、いろいろと本職以外の働きをしなければならなかつた。それがもうやらないで済むようになつて來る。從つて出勤率もよくなる。また從來は賃金俸給生活者に比べて、簡單なブローカーその他の方で相当な所得が上りましたので、そちらの方に移動するということもありましたが、先ほど申しましたような所得の移動というようなことに影響されまして、定着性が非常にふえて來た。まあこういう点を経済安定化のきざしとして取上げているわけであります。
 次にこのような表面的な好轉の裏面にひそむ実態、その重要な点としては十七ページに掲げておりますように、第一には貿易面における入超の累積でありまして、第二には企業経営の不健全に基く実態資本の減耗であり、第三には國土の荒廃による國富の食いつぶしであり、第四には國民の生活水準の停滯であります。この入超額の累積につきましては、十七ページの表にございますように、大体終戰以來昨年の末までのものを合計いたしますと、輸出が約五億ドル、輸入が約十五億ドル、差引十億ドルが赤字になつているのであります。つまり輸入に対して輸出が三分の一である。不足の十億ドルというものが米國の援助、ガリオア資金あるいはイロア資金というようなものによつて、まかなわれて來たというのが実情であります。しかも貿易の規模が非常に小さいのであります。たとえば二十三年の輸出額というものは、昭和六年に比較いたしますと、輸入が約三分の一、輸出は約一三%というような低い水準にございます。そのために、十八ページの表にございますように、極東の各國と比べましても、日本の輸出水準というものは非常に低い。昭和二十二年の統計しか間に合いませんでしたが、それによつて見ましても、日本はフィリッピン、中國、ホンコン、マレー、インド、こういうような國々に比べても、輸出がより小さいという状態であります。また戰前の一九三六年に対して、貿易の縮小ということも、ほかの國に比べてきわめてはなはだしいという状況になつております。
 そから貿易の品目でありますが、品目内容がこの十九ページの表に輸出入について掲げてございます。輸出の面におきましては、やはり繊維製品が昨年の一月から九月までで五六%を占めておりまして、輸出の中心をなしております。機械類が約六%になつております。この輸出の構成は戰前の輸出品の構成と大体似たような状態に、もどつているのでありますが、ただ絶対量が八分の一程度に縮小しているということになるわけであります。
 一方輸入におきましては、食糧の輸入が非常に大きくて昨年でも大体半分を占めておる。從つて工業原料の輸入というものが未だ不十分である。しかし一昨年あたりに比べれば、次第にその割合が増加しておるということになつております。二十ページに地域別に輸出入の状況を示しておるわけでありますが、この貿易のアンバランスということを今度は通貨別にわけてみますと、米國に対して非常なアンバランスでありまして、米國を除きまするとほとんど輸出入がバランスしておる。つまりドル地域以外はバーター制の関係になつておりますので、こういうことになつてくるわけであります。これは世界全体としてのいわゆる通貨の互換制ということが、未だ十分でないということの一つの反映であります。このような入超累積の原因といたしましては、いろいろございますが、第一に輸出が足りないということは当然であります。この原因としては日本が輸出し得る繊維製品が、ある程度滯貨になつておる一方、海外の需要といたしましては、鉄鋼、セメントその他の基礎資材が入用であるというような点、その点は國内の需要と競合し生産も未だ回復していない。そういうような國内的な原因、それから資金資材の供給の不円滑、海外市場に対する知識の欠乏、輸出手続の繁雜、品質低下による國際競爭力の低下、そういうようないろいろな條件があげられるわけでありますが、ただ最近かなり急速に貿易の伸張が見られております。昨年の上半期には七千数百万ドルの輸出でありましたが、下半期は一億七千万ドルを超える輸出でありまして、合計で約二億六千万ドルになつたわけで、これには英連邦とか、オランダとか、これらの地域と相次いで通商協定が結ばれたというようなことが、かなり役立つておるわけであります。しかし先ほど申しましたように、輸出全体としての水準はまだまだ低いのでありまして、主要な品目についてこの生産の回復率と、輸出の回復率を表に掲げております。そのほか國際收支がよくないということの原因、輸出の振わないということのほかに、輸入がふえておる。しかし輸入の絶対量としてほとんど最低限に切詰められているわけであります。ただ輸入がいわゆる國営貿易の形になつておりますので、幾分高く買わねばならないような場合もあるのではないかというような点、それから世界の物價が比較的騰貴しておりまして、輸出入がバランスしておりますれば、世界物價の騰貴ということは影響がないはずでありますが、日本のように輸入が輸出の三倍もあるという場合は、物價騰貴がそのまま入超額を増大させるという結果になります。なおまたこの一般物價のうちで食糧の騰貴が特に高いのでありまして、二十三ページにもございますように、米國の食糧品を除いた全商品の卸賣物價が、一九三三年に対して二・一倍であるのに、農産物價格が三・八倍になつておる。日本にとりましては食糧の輸入が大きいために、さらに輸入超過を拡大するという結果になつております。なおまた運賃負担が大きいということ、從來は日本の船で運んでおりましたが、これが戰爭の結果、ほとんど大部分の船を喪失して、外國船によつて運搬しておる。それから世界的に海運賃が騰貴しておるというような原因で、ここにありますように地中海産の塩は八二%の運賃、北米産の原油及び石炭は、原油が五六%、石炭が三七%、海南島の鉄鋼石が三〇%、こういうものが運賃でありまして、二十三年の輸入額のうち約一億ドルを越えるぐらいのものが、海運賃になつておると見られるわけであります。こういう点が國際收支の不均衡ということの問題であります。
 次に現在の経済運営の單位となつております個々の企業、この経営においていまだ種々不健全な情勢にあります。第一には減價償却の不足でありまして、二十四ページにも表があげてございますが、大体減價償却が過去の帳簿價格によつて行われておりますために、非常な過小償却になる。事実上修繕費その他の形でやつておる部面もありますが、しかしこの点税法上の問題もありまして、どうしても償却不足になつて來ておる。こういうことは短期的には生産が維持されますが、長期的な目で見ますれば実体資本、設備なりいろいろな工場の施設というものが減耗して行き、これが十分に補填されないという結果になつて参ります。また企業の赤字金融及び借入金の累積、これはまあ最近三原則、こういうようなところで一應とめられておりますが、從來の赤字が相当に積つておる。復金の融資のうちで、赤字融資と見られるものは、約百八十七億に達しておるというようなことを申しております。
 次に二十六ページに價格調整費、いわゆる補給金と称するものでありますが、戰前の價格水準、つまり昭和九年から十一年の平均を百にいたしましてその百十倍を安定帶を呼びまして、それからはなはだしく越えるような基礎物資に対しては、價格差補給金というものが出ておるのでありますけれども、これが石炭、銑鉄、鋼材、銅その他苛性ソーダ、硫安等につきまして、二十六ページの表にございますように裸消費者價格、つまり補給金がない場合に消費者が支拂わなければならない價格、それに対して補給金が支拂われておるその比率を出してみますと、石炭は一般には補給金なしで行つておりますが、五大基幹産業、食糧、肥料、鉄鋼その他五大基幹産業に対しては、補給金を支出して安く拂い下げておる。そのためにそれらのものにおいては、石炭の裸消費者價格に対して七〇%が補給金になつておる。鋼材の場合には約半分、ソーダ灰、硫安等も約半分というようなものが、價格調整費によつてまかなわれておるというようなことになつております。これはもちろん非常に原料條件がかわつたということ、つまり非常に不経済な原料を輸入しておるというようなこと、あるいは操業率が非常に低下したということ、それから低物價政策の堅持というようなことで、必ずしも企業自体の責任に帰すべきものではありませんし、今後操業率の上昇、それから原料條件の改善によつて、補給金の所要額は次第に減少して行くわけでありますが、昨年度においてはとにかく一般会計の一三%がこのような價格調整費である。その他鉄道、通信両会計への繰入れ、これも鉄道、通信の赤字を補填しておるわけでありますが、これは三百七十二億円、それから船舶運営会の補給金が六十五億円、これを合せますと一般会計支出の約二二%が價格調整費である。これがやはり企業がまだ健全な基礎の上に立つていないということが、一つの重要なる姿であります。
 それからまた労務費比率の増大ということ、これは二十七ページにございますが、戰前に比べまして生産費の中で労務費の割合が非常にふえております。このことはいろいろな原因、つまり操業度の低下、機械的な装備の劣化、技術水準、労働意欲の低下といろいろな日本経済全体としての現象の現われでありますが、全体として見て労働生産性が実質賃金の低下の割合以上に下つておるということに、問題があるわけであります。
 以上が企業の不健全性でありますが、このような不健全性は最近において次第に改善の緒を見せております。しかし何と言つてもまだまだ望みが遠いのであります。またこういう企業の健全化をはばむというような税制上の問題、あるいは價格差益金というような問題についても、今後改善を要するという点があるということであります。ただこの企業の自立ということにつきまして、將來長期的に見ますれば、放置しても國際競爭にたえ得るまで、しばらくの間保護すれば、將來自立し得る。あるいは將來とも自立の見込みに乏しいものというのがあるわけでありまして、それぞれの産業に対して、個別的な対策を講じて行くことが、必要であろうということを申しております。
 次に二十九ページの國土の荒廃、國富の食いつぶし、これは從來から申されておるわけでありますが、この統計にもありますように、災害が累積的に増加しておる。この災害復旧というものが國家財政の大きな負担になつております。また山林の消耗ということも三十ページの表にございますように、伐採面積に対して造林面積が不足しておる。全体として戰爭以來約一割、森林の蓄積が減少したと言われておりますが、しかもこの伐採が運搬に便利な里山、いわゆる消費地に近い部分に集中しておりますので、このような部面が山地荒廃、土地の侵蝕というようなこともぼつぼつと起りかかつておる。そういうことがあげられる。なおまた住宅経済の食いつぶし、これは戰前におきましては家計費の約二割が住居費に当てられておりましたが、最近の家計調査から見ますと、この割合が四%程度。從つて一般に借家というものが成度しない。つまりペイしないという状態でありまして、またペイするような家賃をとれば、勤労者がそれだけの家賃を支拂う余力がないということでありまして、住宅が主として過去の蓄積及び過去のストツクに依存しておるという面もございます。なおまた輸送、通信における補修の不足、これは最近かなり改善されて参りましたが、たとえば三十一ページの表にございます鉄道の鋼材使用量、施設補修用として昭和十一年には六万トン、それがだんだん下りまして二十年には一万三千トン、二十一年一万九千トン、二十三年の計画が五万七千トンまで回復しておりますが、全体としての鋼材の消費量にかなりあながあいておるということは、鉄道施設全体の老朽化をもたらしておりますし、通信におきましても回復が非常に遅れておる。そういう状態を示しております。
 それから生活水準の停滯でありますが、先ほど申しましたように勤勞者の家計においては、最近かなりの健全化と言いますか、上昇が見られますが、一般的な家計におきましてもそれほど顯著な上昇ではありませんが、少しづつ上昇化しております。大体都市生活者の水準は戰前の五割半ば、昭和九年、十一年に対しまして約半ばの水準でありまして、昭和六年に比べますと約六割という水準、特に家計費を分析してみますと、主食が九割、非主食が七割、光熱品が九割というようなことでとりあえず生活して行くために必要な部面はとにかく八、九割のところに回復しておりますが、衣料品、住居関係品というようなところの水準が一、二割というところにまだとどまつている。いわゆるエンゲル係数というものが戰前三割五分くらいのものでありましたが、現在六割五分、幾分低下を見せておりますが、まだそのくらいのところにございます。最近少しづつよくなつておりますが、都市生活者全体としてはあまり上つておらない。この点につきましては國全体の経済の縮少ということに根本的原因がありまして、生産の増加ということがない限り、全体としての生活水準の上昇がなかなか望みがたいということになつて参ります。
 それから三十四ページの新たに釀成されつつある諸問題でありますが、いろいろな問題がございますが、その第一には物價体系の問題であります。從來自由な國際的経済交流というものが唱導されておつた。戰時経済という形で國内價格体系は非常にゆがんでおつたわけであります。それがいわゆる円ドル比率ということになつて現われているわけでありまして、つまり主要商品の國内價格と輸出ドル價格とを比較して、その比率を出してみることになると、三十五ページにありますように非常に大きな開きが商品によつてあるわけであります。大体におきまして輸入の方が平均的に見れば、一ドル、百三、四十円、輸出の方が三百二十円前後というところに現在なつている。このことは輸入面において食糧その他の國内價格を安く放出している。つまり個別的な円ドル比率というやり方でもつて輸入補助金を出して來ているわけでありまして、今後、最近の新聞紙上にございますように、輸出入とも為替一本にしまして、輸入のための補給金というものは、また別に財政から計上するということになつて來ているわけであります。それによつて從來隠れておりました米國の対日援助資金が、はつきりと安定基金として國内に積み立てられるという形になつて來るわけであります。なおまたこの円ドル比率、特に輸出の円ドル比率をごらんになりますと、加工段階の高い商品が比較的不利になつている。この点も非常に問題な点であります。これはやはり一面において加工段階が高い部面は、中小企業が担当しているということにもある程度原因がある。また加工段階が高いほど資材や資金その他にネツクが出て來ることも考えられるのであります。元來日本は労力の輸出、加工によつて輸出する建前でありましたが、この点も今後檢討を要することになるわけであります。
 次に起つて來ます新局面といたしまして、第一に購買力の不足の問題でありますが、これは次第にインフレが收まるに從いまして、デフレーション的な傾向が見えて参りまして、商品のストックが増加する。三十八ページに八大都市営業倉庫月末在庫高の指数を出しております。三十九ページに百貨店の賣上高に購買力の低下が見えて來ているわけであります。この購買力の低下をいかに解釈するかは、三十九ページに消費財については実質所得が低位にとどまつていること、それに対して生産が比較的急速に増加した。それから戰時中に押えられておつた消費材に対する需要が一巡した。インフレの緩慢化によつて、インフレ所得が圧縮されたということ、しかしこの國内の購買力をデフレ的な傾向によつて圧縮するということは、九原則あるいはドツジ公使の声明等に出ております点でありまして、從來國内のインフレのために、たとえば輸出に振り向けるべき商品が、國内のやみ市場で非常に高く賣れる。そのために輸出力が非常に減殺されるというような現象が、國内の購買力の圧縮によつて、特にぜいたくなと言いますか、奢侈的な購買力を圧縮して、輸出に振り向けられるということになつて参ります。これは消費財の面でありますが、同時に生産財につきましては、財政支出、産業投資の引締めということが一つの原因でありますが、さらに基本的には戰後経済における資本蓄積力の低下というものが、從來はインフレによつて隠れておつたのでありますが、インフレ終熄が近づくに從つてこれが顯在化して來る。一方において設備の改修、國土の補修等に潜在的な費用がたくさんございますので、この面に必要な資金を拂うということ、しかもインフレにならないということ、このためにどうするかということが今後一つの問題として出て來る。
 それから四十ページにございます農村及び中小企業の問題、これも戰後当分の間は相対的に有利な地位にありましたが、次第にその情勢がかわつて來ておる。たとえば四十ページの表にございますように、主食品、纎維品、日用品の物價指数を出してみますと、主食品に対して、農村が購入します纎維品、日用品等の價格の値上りが大きいというような関係で、次第に農村の所得が圧縮されて來る。租税公課の負担も、ここにございますように、二十二年は二二%、二十三年の数字はまだ出ておりません。しかし租税の点につきましては國民所得全体に対する比率はこの程度でありまして、農村だけは特に過重に課されておるというわけではありませんで、都市の勤労者の税金も相当に重いのでありますから、とにかく全般的な租税負担の過重ということも一應出て來るわけであります。戰爭直後はインフレによつて財政がまかなわれておりましたために、租税としてはつきり出て参りませんでしたが、これがインフレの終熄に伴つて、いわゆる通貨の増発によつて財政をまかなうことができない。税金によつてまかなわれて行かなければならないというところが、租税公課の負担の増大として現われて参るわけであります。なおまた農家の金詰まりというものが、單作地帶とその他の地帶によつてかなりの相違がある。四十一ページにありますように北海道、東北、北陸の單作地帶で農業手形の割引の九六%を占めておるというな数字がございます。なおまた農村人口の増大によりまして、農業の零細化ということも一方においてございます。こういうふうな点が從來はあまり表面に出ておりませんでしたが、今後次第に出て來るのではないか。なおまた中小企業におきましても、從來急速に生産をあげるという意味で、中小企業に有利な点があつたのでありますが、次第に全般的な大企業の生産が回復して來るということになつて競爭力が強化して、やみと公定が近づくということにもなつて参ります。中小企業の爭議が最近総体的にふえております。なおまた大阪商工会議所の調査によります大企業と中小企業の賃金統計がありますが、一昨年までは大企業も中小企業もほぼ同じ水準にあつたのでありますが、昨年の暮れになつて参りますと、大体二割程度中小企業の方が賃金が下まわる。こういう状況になつております。
 次に統制の新課題、從來経済統制がインフレの進行、インフレの破局化防止ということ、それから生産の増大、基礎産業の増大ということで行われて來たわけでありますが、最近において、あるものについては購買力の問題が起つて來る。いろいろと新たな面が出て参りまして、價格というものは次第にものを言うようになつて來ておるということ、それから企業の自主性が強調されて來ておるというようなことで、統制問題にいろいろな新たな局面が出ておる。ここにあげましたのは、一例としまして生鮮食料特に野菜の配給統制の実績を分析いたしたのでありますが、四十三ページの表にございますように、一昨年の暮れまでは統制がほとんど有効に行われておらなかつた。家庭購入量中における配給入手量の比率は六・五%にとどまつておる。ところが第二次の一昨年の十二月半ば以降、非常に生鮮食料品の統制が強化されまして、その結果約半分は公定配給で入ることになつたのであります。その後昨年の夏もこの比率は同じなのでありますが、ただこの意味が非常にかわつて参りました。それは下から二段目にありますようにやみ價格の公定價格に対する倍率が次第に近づいて参りまして、第三次におきましては配給量が多いのでありますが、やみと配給とどちらで買つてもたいして違わない。從つて家計に響く割合が第一期が〇・三%、第二期が一・六%、第三期が〇・一%ということになつておる。こういうふうなことで、價格というものはあるいは季節的な需給の変化というものが回復して参りましたので、從來の統制方式にかなり彈力性を與えることが必要になつて來ております。なおまた一面において経済九原則におきましては資金の有効使用、賃金安定、現行物價統制の強化、外國為替管理の強化、輸出貿易最大化のための割当及び配給制度の改善、食糧供出というこの六項目におきまして、統制の必要を言つておるのでありますが、特に輸出をマキシマムにするという意味の統制が、対外的に見れば今後強調されるのではないか。しかし一面において財政金融面からするインフレ対策が行われ、高度の企業の機構が重んじられて來る。價格の自動的な調節、産業が復活されて参りますと、その点從來の統制と調整を要する点が出て來る。なおまた價格統制面の問題といたしまして、マル公とやみとのさや寄せ、戰爭直後は約三十倍開いておりましたが、昨今では大体三倍程度、主要品目の中五%程度はマルを公割つておる。四分の一はこの差が一・五倍以下になつておるというような状況であります。先ほども申しましたように、マル公に需給関係から來る自由價格というものが、いろいろの意味で反映を及ぼして來るということで、從來は公定價格の計算がいわゆる原價計算主義、積み上げ方式でありましたが、今後は國内の需給関係あるいは先ほど申しましたところの比率から見ました國際價格という点を、考慮に入れなければならないということになつて來るわけであります。
 それから四十六ページに新しいインフレーションの圧力、これには第一に賃金の跛行的上昇という点を取上げております、この賃金の上昇は最初にも申しましたように生産の増加によつて裏づけされておりますので、それ自体においては不健全ではないのでありますが、一方において業種間のアンバランスというものがかなりある。鉄鋼とか肥料とか、操業率の上昇が非常に顯著でありました企業につきましては、支拂余力があるのであります。一方電氣とか政府の從業員というものは、必ずしも操業率の上昇ということは期待できない。そういう産業につきましては支拂余力が出て來ない。こういうことで、ある産業ではかなり賃金水準が上る。ある産業は押えられている。これが産業間に横に移つて行く。その結果支拂余力のない産業においては公定價格を上げろ、赤字融資をせよというような形の圧力になつて参る可能性がありまして、そういう点で從來の賃金が上ればやみ物價が上る形でなく、公定價格体系を破壞するというか、引上げるという形で賃金の部門別の跛行的上昇というものが、インフレの一つの要因になり得るという形を一つなしているのであります。また賃金の上昇が、先ほど申しましたように大部分の農村、中小企業、あるいは商業その他の所得にまで移動して行くという形で、社会全体としての消費需要があまりふえなかつた。一方においてはある程度の生産増加がありましたために、從來賃金上昇にかかわらず物價は上らなかつたのでありますが、これがある限界を越しますと新たな購買力の追加となり、それが物價引上げの要因ともなり得る。しかし実際は企業九原則等の実行によりまして、企業の経理面から次第に押えられて來まして、賃金を支拂うということが企業にとつて必ずしも容易でないという形で、直接賃金を問題にしなくては賃金自体の上昇がとどまつて來るという現象も、最近の統計から見られるわけでありまして、こういうような点で、事態の推移によつては賃金がインフレ促進の一つの原因になり得るということ。第二に財政の自主的均衡の困難性ということでありまして、戰後の財政需要は非常に厖大でありますが、歳入減、つまり徴税にも限界がありましてにおいて、一方支出の削減ということもかなり困難である。ともすれば財政赤字が出やすい。最近の状態は、御承知のように強引に赤字が出ないような状態になりましたので、財政面からの赤字というものは一應予想されなくなつて参りましたが、そのかわりにいろいろな意味のむりが、あとに残るということも予想されるわけであります。それから第三には復興のための資金需要、経済復興を推進して行くためには電源開発、その他土地改良、治山治水の改善等多くの新事業をやつて参らなければならぬ。戰後経済の資本蓄積力が非常に涸渇して、その際に多額の資本投下をやつて参りますと、いわゆる再建インフレというような形になりやすいわけでありまして、そのために復興計画に必要な資金というものは、インフレをとめる目的のためには押えなければならない。しかしあまりにも押えれば將來到達する産業水準、経済水準は低いところにとどまらざるを得ない。また当面の問題として生産の停滯、購買力の不足、失業の増加というような一連の問題が出て参ります。そういうことで復興のために資金需要が厖大に存在しておりまして、これが常にインフレへの圧力という形で隠れている。こういうような問題が残つているわけであります。
 以上が内容の概略でありますが、結びといたしましては、結局現在日本経済は長期にわたる戰爭と、敗戰による経済基盤の激変、インフレの高進等によつてきわめてゆがんだ姿を呈している。為替レート設定にあたつては、このゆがみを一挙にため直そうとすると、産業経済に打撃を與えますので、段階的な方法をとられることを予想されるのでありますが、しかしいつまでもこのような経済状態を続けるわけに行かない。なべく短時日の間に経済の正常化が必要になつて來る。その経済施策の焦点というものが、まず通貨價値の安定、價格の調整機能の回復、これにより経済の正常化をはかるというところに置かれる。その課程において経済の合理化が促進される。合理化された基盤の上に生産と輸出の健全な伸張をはかる。補助金のない輸出は可能でない。國際的に競爭できる原價でもつて生産が行われ得るという状態に持ち來らされるわけであります。なおまたそのような正常化の一環として、企業の自主性を尊重するという形が、現在の段階ではとられているように見えるのであります。從來の封鎖経済と異なりまして、國際的な競爭ということになりますと、企業の自主的な活動ということが要求される。また能率化ということが要求されるということになつて参つております。ただこのような安定状態、さらに外國の援助を必要としない自立化、この目標に向つて進むわけでありますが、戰後の日本経済というものは、戰爭によつて莫大な國富の喪失を來しております。これは大体國内の平和的な國富に対して、二五%くらいの比率になりますが、このほか戰後一割以上増加して昨年の秋に八千万を突破したという人口の増加、資源の涸渇、交易條件の激変等本質的な困難をもつておるので、このような自立化の全過程というものは、非常に困難に満ちたものであり、これを達成して行くためには、消費の節約と生産の増強、こういう課題がある。自立化を達成した後においては、みずからの輸出力において、みずから必要とするものが買えるわけでありますから、生活水準の上昇も望み得るのでありますが、当面は生産増加の大部分を資本の蓄積と輸出の振興に振り向けなければならないから、消費生活をゆたかならしめるということは、なかなか望みがたい。しかしこのような経済自立化というものは、ひとり連合國の要請であるだけでなく、自國の独立と、將來の繁栄とを願うわれわれ日本國民自体の課題でもあるということが、結びになつておるわけであります。
#16
○小野瀬委員長 ただいまの大來さんの説明によりまして、経済現況の分析、いわゆる経済白書に関しては大体おわかりのことと存じます。何か御質疑はございませんか。
#17
○高田(富)委員 いろいろお聞きしたいことがあるのですが、全般的なことについてちよつと質問したいのです。全般を見まして、何かこの白書全体の意図しているのが、初めに大きく出しているように安定へのきざし――生産がふえて來たとか、インフレが緩漫化したとか、実質賃金が向上したとかいうことをまず出しておりまして、その裏にいろいろな惡いところが出ておる。結論としてはだからもう少しがまんして、安定の方向にもつとやればいいのだというようなところに結んでおるようですが、この事実をほんとうに総合的につかんで正しく指摘しないで、ことさらに事態を二つにわけて、安定しつつあるといういい方向を非常に強く出しているように思うのです。しかしこれをよく考えてみると、裏面にひそむいろいろな惡い点と、それから安定へのきざしとか、ここで示していることとは、一つのことではないかと思うのです。結局今までやつて來た生産の上昇、その他のやり方が、ずつと進んで行くに從つて、同時にその生産がふえているということが反面においてはそのふやし方にいろいろな補給金の問題もあるだろうし、價格のつけ方もあるだろうし、いわゆる集中生産というような傾向もありまして、安定しているように見えつつ、実はその背後に購買力が減退して、過剩生産的な傾向が出て來たり、またそのためにますます基礎物資の生産を上げるためには、補給金その他のインフレ的な方策によらざるを得ない要素をつくつて來ておるのであつて、今まで進められて來たこと全体が一貫して、この危機をずつと深めて來ておるというところに根本がある。こういうふうに考えれば、正確に全体の動きがつかめると思うのですが、ここにあるように、一方は安定しつつあるのだ。生産が上つて來て非常にいいじやないか。しかし他方に惡いものが出て來たというような考え方、そして惡いところだけ切捨てられて、あたかも安定の方向に進んで來ておるように考えさせようとしておる。結論との結びつきにおいてそういうことが考えられるように思うのです。ことにこの結論で言うと、ますます國内需要を切詰めて、あげて輸出の方向にどんどんやつて行くよりほかに道がないというようになるのですが、そうすればますます安定への方向はくずされて行かざるを得ない。そうすれば輸出生産はふえるでしよう。輸出生産の方面で若干水準が上つて行く反面においては、ますます中小企業が破壞されるという、ここにある暗い面が大きくなる。また國内の失業状態もふえるだろうし、購買力は一層低下するだろうし、そういうふうなことから実は安定化と見えておることが、危機をますます深めて行つておる指標として示されて、初めて総合的な観察になる。これは二つにわけてしまつて、安定化しておる方向というのを最初にばかに明るく出しておりますが、この点がちよつと全体を通じた感じとして、非常に何かここに作意的に、この方法がいいということを示すために出しておるように考えるのですが、その点どうです。
#18
○大來説明員 別段作意はごいません。大体現実を統計資料をもとにしてまとめたつもりでありまして、特にそういう点を強調するという意図は持つてはおりません。
#19
○横田委員 四、五の点をお尋ねいたします。四十六ページの新しいインフレーションへの圧力、その(1)に「通貨・物價等のインフレ指標がかなり安定化を示しているとき、賃金だけがは行的に上昇していることは先に示した通りである」と書いてありますが、いろいろの経済雜誌を見ますと、東京都だけでも非常に賃金が遅滯しておるそうですが、それは大体どのくらいあるか、安本の方にお尋ねしたい。
#20
○大來説明員 実は今の御質問の数字はまだ集まつておりません。最近遅滯が大分出ておるようでありますので、私どもぜひ調査したいと思いますが、まだ統計的にお聞かせするまでに行つておりません。
#21
○横田委員 これはいつごろ聞かしていただけますか。
#22
○大來説明員 賃金統計にはその点がはつきり出ませんが、大体今まで十二月までの賃金ができておりまして、一月の賃金が出るのが、もう一週間かそこらで出るかと思いますが、そのうちどの程度が賃金不拂い等によつて出て來るのか。そこらが新たな問題でありますから、いろいろ研究して見たいと思います。
#23
○横田委員 遅配があるということは、大体お認めなのですか。
#24
○大來説明員 それは新聞紙上その他で承知しております。
#25
○横田委員 それを御承知で賃金等が跛行的に上昇しておると書いておられるのですか。
#26
○大來説明員 これは主として十二月までのものを使つておりまして……。
#27
○横田委員 十二月までにも非常に何かたくさんありましたね。特に私どもが盛んにやつております電産などにおきましても……。
#28
○小野瀬委員長 発言するときには必ず通告して下さい。
#29
○横田委員 六ページの下段(二)「生産上昇のその他の原因としては、進駐軍向け資材が減少し、國内向け配当に余裕を生じたことを逸することはできない」と書いてありますが、こういうふうな理由を見ると、進駐軍用に配当がたくさん行つたがゆえに、日本の生産の復興を阻害しておつたように書かれているのですが、一体どういう実情で出て行つたかを知りたい。それから進駐軍に向けて出しておるところの配当品が、日本の生産全体が上つたために少くなつたのか。それともほかのものに切りかえられて少くなつたのかということも知りたい。
 それからその次に同じく七ページの四行目です。「農作物は前年に対し約一割の増産に当り、とくに麦・甘しよの増産は著しかつた」と書いてありますが、これに対してやはり今年もかんしよがたくさんとれた。またとれた場合には米のかわりにいもを食わす。それで満配をやつたというようなことを言われるのか。またかんしよなどは主食と離される意向があるかということも聞きたい。それから去年はいもを返して米にしてくれということのために、いろいろ警察も動いておるし、人民大衆も動いておつた。
 それからその次に七ページの下段です。本年二月十七日からインフレーションの緩慢化のために、米の供出が順調に見られた三つの原因としては、農民に対して非常な重税がやつて來た。あるいは事前割当をやつた。農村の購入品が非常に高くなつた。それゆえに農民が貧乏人になつた。そのために供出が出るようになつた。これで追い詰めて行くというと、農村は貧乏をさせればさせるほど供出が出るように考えておるようにも思うのですが、そういう点に対してどういう手を打たれるかということを聞きたい。
 それから國鉄の今までのレールなんか非常にいたんでおるということを聞いておるのですが、それに対してどれだけの補修ができておるか。今までの数字を聞きたい。これだけです。
#30
○大來説明員 六ページの御質問でございますが、まず進駐軍の負担でございますが、大体進駐直後は非常に資材の需要が多かつたのでありますが、昨年あたりから資材の需要が減りまして、主としてサービス労務の提供が多くなつております。石炭などは全体の生産の増加が比率の低下に役立つておりまして、絶対量でもやや減少しておりますが、四・六%から三・〇%に減つておる。セメントは六六%から一一%に減つておる。これは生産がこれほどは上つておりませんので、セメントは絶対量が減少いたしました。鉄鋼もここには数字を出しませんでしたが、絶対量が減少しております。総じて進駐軍の消費量の絶対額が減つているということと、全体の生産の規模が拡大したということと重なつて、比率が低下していることは事実であります。なお、一昨年あたり鋼材、セメント等の需要が非常に多くて、ある程度生産開始の支障になつたということは事実であろうと存じております。それから七ページの点でありますが、かんしよの点は私ども実は本年の成績についてはまだ存じておりません。今、白書といたしましては、一應事実に基いてということで、その点に触れておらないわけであります。それから供出の主要な原因、これも大体こういう原因と考えられるということでありまして、ますます窮乏化させようというような政策的意図で別に書いたわけではございません。
 それから三十一ページの鉄道の補修の件でございますが、ここに表がございますように、施設及び車輛につきまして、特に施設の鋼材が少い。つまりレール、橋梁というような面の補修が不足しておる。車輛はやはり新設をかなりやつておりまして、この修繕が最近は増加しておりますが、やはり十分でない。全体的な、特に國鉄の老朽状況につきましては、いわゆる第二白書と言われております昨年五月に出しました経済情勢報告書の中に、相当詳細に書いてありますので、これをごらん願いたいと思います。
#31
○高田(富)委員 國鉄のことに関連して、ここに出ている補修用、工事用と数字が書いてありますね。鉄鋼使用量、これのほかにどれだけの補修を必要とするかというやつを入れないと、最近の補修の必要量というのが戰前の健全な状態と比較してありますが、戰前の状態と比較できない。特に大量に一度に補修しなければ、全面的な崩壤になるようなレールの壽命とかまくら木の壽命とか、いろいろ今まで戰時中から積み重ねられて來た崩壞が、非常な危險状態に來ておつて、そのために要補修というのが平時よりも非常に大きいと思うのです。その数字と実際にやられて來た部分とを比較しないと、ほんとうに、これが崩壞しつつあるということが出て來ないと思うのですが、その数字を出していただきたい。
#32
○大來説明員 実は鉄道当局でいろいろその点に関しては詳細な数字がございますので、むしろ安定本部よりも運輸省に御要求願つた方が、オリジナルな原資料が提出されると思います。今私ここで存じておりますことはあまり詳細には知りません。ただ、たとえばレールが日本全國二百万トンある。これが相当耐用年数が來ているので、この不足量の蓄積だけでも、二十五万トンくらいとりかえる必要の段階にあるというようなことだけは、鉄道から聞いております。まくら木その他もかなりとりかえが遅れているということでありますが、大体その程度しか存じません。
#33
○高田(富)委員 これに附属してどうしても必要な資料、今私が言つたいかに崩壞しつつあるか、重大な段階にあるかということの資料を、ひとつ鉄道当局からとつていただきたい。
#34
○小野瀬委員長 高田君から御要求の資料は、直接運輸省からいただくことにいたします。なお、次会には運輸省からの政府委員も見えられますから御質問願います。ほかに御質問ありませんか――別に御発言もないようでありますから、本日はこの程度で散会いたします。次会は明後二十六日、土曜日午後一時より本委員室において開会いたします。
    午後三時二十九散会。
ソース: 国立国会図書館
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