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1949/04/11 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 予算委員会公聴会 第1号
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1949/04/11 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 予算委員会公聴会 第1号

#1
第005回国会 予算委員会公聴会 第1号
昭和二十四年四月十一日(月曜日)
    午前十時二十一分開議
 出席委員
   委員長 植原悦二郎君
   理事 池田正之輔君 理事 上林山榮吉君
   理事 庄司 一郎君 理事 西村 久之君
   理事 水田三喜男君 理事 三宅 正一君
   理事 中曽根康弘君 理事 志賀 義雄君
   理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君
      石原  登君    天野 公義君
      井手 光治君    井上信貴男君
      小金 義照君    小平 久雄君
      小峯 柳多君    尾崎 末吉君
      鈴木 明良君    周東 英雄君
      高塩 三郎君    高橋  等君
      田中 啓一君    玉置  實君
      中村 幸八君    西村 英一君
      野原 正勝君    平島 良一君
      松浦 東介君    松野 頼三君
      松本 一郎君    若松 虎雄君
      有田 喜一君    小野  孝君
      小坂善太郎君    笹山茂太郎君
      鈴木 幹雄君    稻村 順三君
      川島 金次君    野坂 參三君
      米原  昶君    金子與重郎君
      松本六太郎君    黒田 寿男君
 出席公述人
        慶應大学教授  高木 壽一君
        東京商科大学教
        授       井藤 半彌君
        日本銀行副総裁 川北 愼一君
        経済同友会幹事
        三共製薬社長  鹽原 禎三君
        荏原製作所社長 畠山 一清君
        千葉縣生産農業
        協同組合    斎藤 貞次君
        連合会会長立教
        大学教授    藤田 武夫君
        國鉄労働組合中
        央執行委員   星加  要君
        全日本産業別労
        働組合会議幹事 寺井 達雄君
        総同盟産業復興
        対事策副部長  清水 愼三君
        日本教職事員組
        合中央執行委員
        長       荒木正三郎君
 委員外の出席者
        專  門  員 小竹 豊治君
        專  門  員 小林幾次郎君
    ―――――――――――――
本日の公聽会で意見を開いた事件
 昭和二十四年度総予算について。
    ―――――――――――――
#2
○植原委員長 これより予算委員会公聽会を開会いたします。
 この際公述人諸君にごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところを当委員会公聽会に御出席くださいまして、委員長といたしましては厚く御孔申し上げます。御承知の通り、ただいま本委員会において審査中の昭和二十四年度総予算は、今次國会における最も重要なる案件であります。公述人各位におかれましては、おのおのその立場より腹臓なき御意見の開陳をお願いいたします。公述の時間は三十分程度とし、公述の後に委員諸君より質疑があることと思いますが、これに対しても忌憚なくお答え願いたいと思います。なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人が発言しようとするときは、委員長の許可を得ることになつております。次に公述人の発言は、その意見を聞こうとする発言の範囲を超えてはならないのであります。また委員は公述人に対して質疑することはできますが、公述人は委員に質疑することはできませんから、この点もお含みを願います。次に公述人諸君にお願いいたしますが、発言劈頭に職業または所属團体並びにその御氏名を言うていただきます。
 それではこれより委員会において定めました順序によりまして、公述人諸君より順次御発言を願うことにいたします。高木壽一君。
#3
○高木公述人 私ただいま御紹介を受けました慶應義塾大学におります高木壽一でございます。私は財政学を専攻しておりますので、本年度の予算案につきまして、率直に意見を申し述べさせていただきます。
 この予算案は、九原則とドツジ声明の指示するところによつて、政府の責任において編成されたものと承つておりますが、すべて財政計画は國民経済に対して作用を與え、また國民経済から反作用も受けます。ことに現在におきましては、財政の國民経済に與える作用並びに反作用は、非常に強いのであります。從つてこの予算案が成立して、実行に移されて行く場合におきまして、いかなる経済的作用と反作用とが現われて、この予算案の目的とするところが達成し得るか、または達成されるためには、いかなる條件が必要であるかということを考えてみたいと思うのであります。
 ある財政計画の目的とするところを、眞劍になつて達成しようと努めておりながら、その努力が目的とまつたく違つた結果に向つて進んでおるということを、まつたく知らないで努力しておることも場合によればないとは申せません。御承知のごとく、その最大の例は、一九三〇年から三二年の世界的不景気の場合に、各國の財政家がいずれも不景気を救うために努力し、そのために國家経費を削減して、財政收支の均衡をはかることに極力努力いたしましたが、経費の削減をするという努力が、その結果は政府が最大の需要者でありますから、有効需要が減退して、なお一層不景気を促進いたしました。從つて財政收支の均衡を得ることもできなくなりました。從つて不景氣を救うことに努力していながら、不景氣を促進していたのであります。これはもちろん現在の日本とは逆の場合でありますが、ただ私の申し上げるのは、目的とするところを眞劍に追求しておりながら、そのやり方のいかんによつては、その実行の移し方いかんによつては、違う結果に到達しておることをまつたく知らないで一生懸命やつておることがあることを、わかりきつたことでありますが、御承知おき願いたいということであります。
 そこでたとえば経済安定をはかるための必要條件として、財政收支の均衡をはかることによつて通貨を安定させ、経済安定をはかる。そして経済再建に進む。こういう目的を、達成いたしますためには、財政計画がいかなる手段をとつて、いかなる條件を整えて進まなければならないか。もしそうしなければ所期の目的に反する結果になつてしまうかもしれないということを明らかにする。その原因結果の関係について、目的と手段を考えて、その因果関係を明らかにすることが、学問の一つの任務であると存じます。そういう考えによりまして私は自分の考えを率直に申し上げます。
 財政計画が國民経済に與えます作用は、まず第一にその計画が発表されますと、ただちにその計画がどういう結果を生ずるかということを予想いたしまして、あるいは安心を與え、あるいは不安を與えて、自然人々の、経済行動を変更させるという作用を現わすことになりますが、これはイギリスの学者のピグーの言葉をかりて申しますれば、アナウンスメント・エフェクトと申します。それはどうでもよろしゆうございますが、とにかくある計画が発表されますと、それがただちにその計画によつて生ずると思われる作用、あるいは効果を予想いたしまして、人々の経済行事を変更させるという作用を生じております。そして次にこの財政計画を実行に移して進めて行くことによつて、また國民経済に対する作用も起つて参りますし、同時にこの二つの作用がただちに財政計画の遂行上、その結果に反作用を與えて参る。場合によつては目的とするところの收支の均衡と、さらにそれから通貨の安定をはかり経済安定をはかり、経済再建を進めるという目的に十分の効果を上げないか、あるいは逆の効果を生ずるということもあり得ると私は考えます。で今回の予算案の経済的作用を、ただいままでのところ、すでに先ほど申しましたアナウンスメント・エフェクト申しますか、発表されますことによつて、ただちにそう計画の作用効果を予想して、そこである経済行動の変更が起るということは、すでに起つておると思います。そしてこの財政計画を実行に移します進め方によりましては、インフレーションをこれ以上に進行させないように抑制しようということが、予算の第一の目的になつておると承つておりまするが、それによつて、これ以上進行させないように抑制して、通貸の安定から経済の安定に進もうという目的が、くつがえされるという危險も含んでおる。今回の予算案の趣旨、目的は、私よくわかるのでありまするが、この予算の実行の進め方によつては、そういう危險があるということを申述べるのであります。私は今回の予算案の趣旨、目的を了解しておらぬということではございません。ただ予算案の進め方に、その趣旨を損う、あるいはその趣旨が十分に実現できないような危險がありはせぬかと申すのであります。その実行の移し方いかんによつては、またインフレ進行を抑制することができなくなるかもしれません。あるいはその効果が十分出ないかもしれません。あるいは逆に強度の不景気に逆轉させて、経済安定をはかろうという目的をくつがえしてしまうということがあるかもしれない。その結果は財政收支の均衡をはかることもまたできなくなるかもしれません。そういう危險がないとは申し上げられないと思います。そこで私はこの予算案を実行するということを言つただけで、あるいは発表しただけで、ただちになお一層インフレが進行するとはもちろん思いません。しかし予算の実行のしかたによつては、インフレの收束が遅れる、従つてその目的の達成が遅れる、あるいは本年度の予算案の計画しておるところが、達せられないということもあろうかと思います。逆にこの財政計画の目的とする経済安定を保とうという結果は、この予算案がつくられたというだけでは、保障されておらぬのであります。インフレの進行の主要原因でありました財政的原因を除くということは、これは財政と経済安定、均衡さらにまた経済再建の可能性を左右するぎりぎりの條件となつて、相互関連を持つております。この考えでこの予算案がつくられたわけでありましようが、その努力されてつくられた総合均衡予算が、目的を達し得るか、あるいはその目的をくつがえすかということは、ことに日本経済の現在の状態におきましては、時間的要素が非常に強い作用を現わす。箇年つまり十二箇月間の收支としては均衡しておるけれども、この十二箇月間におけるこの予算の実行の進め方によつては、所期の目的を達成し得ないことになるのであります。今日までのところではこの予算を進めて行くと道筋、各段階が示されておらないように思います。今年度の一般会計、特別会計が結局均衡するということだけでは――もちろん第一段としては、それは必要な処置でありますが――問題は解決されておらぬと思います。こういう道筋を通つて行くから、通貨が安定する、そこで経済安定に進んで行くということが、まだ明らかにされておりません。そこでこの予算が所期の目的を必ず達成し得るということは、客観的には保障されておらぬと私は思います。まだそれを証明する條件が整つておらぬ。先日私拝見いたしました二十四年度の收支予算説明書はたいへんよくできておるように思いますが、その中の二ページのところに、財政の規模は膨張しておるが、実質上の政府消費は徹底的に切り詰められておる。こういうふうに言われております。しかし私はまだ実質上の政府消費にもなお切り詰め得る余地があるものと考えますが、このことは後に触れます。
 そこでこの財政資金の收支運用を考えると、この予算を進めて行く過程で、政府資金の吸い上げと放出との関係はどうなりますか。財政資金收支のタイミングの問題が重要になると思います。すでに御承知の通り、事業界は金詰まりに苦しんでおります。その重要な原因が政府支拂いの遷延にあることは、過日もお話が出たようでありますし、これは一般によく知られておるところであります。そういう事実がある上に、本年度の予算を実行して行く過程で、政府資金の支拂いが、政府資金の吸い上げよりか時間的にはるかに遅れたといたしますれば、均衡予算をつくつて経済の安定均衡をはかるという目的が、非常に阻害される、あるいはその働きが非常に強ければ、インフレ進行を抑制することから逆に強い不景氣を招來して、そして経済安定の目的をくつがえすということがないとは申せないと思います。またこの説明を拝見いたしますところによると、大藏省証券は平均残高三百億というふうにしるしているようでありますが、これで調節されたというのでありましようか。しからば二十四年度の收支均衡予算は今後十二箇月間に、どの月はいくら資金を吸い上げて、いくら支出されるのか。これは先ほど申しましたように、十二箇月たつて、結果から見ると、合つているのだというだけでは、この財政計画を実現することにはならぬと私は思います。十二箇月の最後のところまで行くのにどのような道を通つて、こういう段取りを通つて行くから、それでその間に十二箇月の最後になつてぴつたりと、その日に通貨が安定するはずはないのであります。その間の日々、月々ごとに、四半期ごとに、今度の財政計画の作用が現われて参つて行くわけであります。それをどういうふうにして、その目的に向つてその作用を現わして行くのかということが、はつきりと示されなければならぬと思います。ところが、その計画は――私はもちろんまだ速記録を拜見しているわけでもありませんし、新聞で拜見するだけでありますが、現在までのところ、この予算計画を実行するについて、たとえば月々の政府の吸い上げ、支拂い計画はどうなるか。從つてこの予算計画を実行しても過度の金詰まりにはならぬということ、あるいはまたこれによつて、明らかにインフレーシヨンの進行も抑制しながら進めるのだという政府收支の月別の計画を立てられて、さらにその月別の計画から若干実行上ずれて行くところは、四半期ごとにこれを調節して行く、あるいはさらにその若干のずれが実行上起つて来る場合には、半年ごとにはつきりとこれを修正して行く、実行の過程の上において財政收支の均衡が、極力実現されて行くということの、そういう計画を明示されまして、そしてその計画を実行して見せるというのでなければ、先ほど申しました財政計画をすでに発表するということだけでも、強いアナウンスメント・エフェクトを生ずるのでありますから、さらに実行上において國民に不安を與えるということがありますれば、インフレ進行の抑制は、さらに逆効果を生ずることもあり得ると考えるのであります。從つて私は月別予算案の実行上の收支の計画を立てられて、これを月々ごとの若干の食い違いあるいはずれは、四半期ごとに調節して行くというような計画を明示されて、これを確実、正確に実行されて行くことが、この予算案の目的とするところを、現実に実行し得る一つの手段であると思います。
 それから、まず先ほど申しました現在の金詰まりをさせている政府支拂いの遅れているのを、これをただちに処理して、ただいま申しました月別に四半期ごとに計画し、これを示し、これを実行して、現実にこれを確実に証明して行く。そうしてこの收支均衡の予算は、國民経済の均衡をはかる手段でありますから、初めに申しましたように、現在のところ、財政と経済との相互関連がぎりぎりの点まで來ておりまので、これが私は必要であると存ずるのであります。
 そこでこれに関連いたしますことであり、あるいは異なことを言う男だとおぼしめすかもしれませんが、先だつて――これまた速記録を拜見しておりませんが、新聞でも拜見いたしますし、また説明書でも拜見いたすのでありますが、大蔵大臣のお話にこういうふうに書いてございます。第二の点でありますが、從來予算に計上された金額は、当然金額を使用すべきものだと考えて、合理的な節約を十分に行うという配慮が欠けておつた。今回はこの使用に当つては、嚴重に審査を行つて、年度末においてできる限り多額の余剩を残し、國民の租税負担の軽減に資したいとある。そこで私は、この予算実行上極力合理的な経費の節約をはかる、それはもちろんけつこうであり、ぜひ願いたいことであります。けれども問題は年度末において、できる限り多額の余剩を残すというそこのところに、私は一つの疑問を残すのであります。この大藏大臣の説明の御趣旨はよくわかつております。それをわからずに、私はむちやなことを言うのではなくて、この考えの中にあるものを含んでいるように私は思うのであります。それは従來は各省分取り主義で、取つただけはみんな使つてしまえという話はよく承りました。その考えを改めるというのですが、今度の予算の実行上においては、その改めた考えをさらにまた改める必要が起つて來やしないかと思います。年度末になつてみると、たくさんの政府資金をかかえ込んでしまつて、余剩を残すという努力は必要でありますが、國民から吸い上げたものを政府がたくさん抱き込んでいることは、私は決していいことではないと思います。
    〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
 先ほど申しましたように、実質上の政府消費は極力切り詰めてあるというお話でありますが、人件費や物件費の方の極力切り詰めはしごくけつこうです。從つて政府が支拂うべきものはどんどん支拂わなければならぬと思います。だからただたくさんの資金を政府が年度末において、かかえ込んでいることがいいことであるという考えは、これは直さなければならぬと思いますが、そのためにも、やはり月別の財政收支計画を立てて実行に移す。十二箇月たつてみたらこれだけ残つておるというのではなくて、月々あるいは四半期ごとに、必要のないような資金を民間から吸い上げることのないように調節して行かなければならぬ。その計画を私は必要とすると考えるのであります。またそれが政府の経費の節約にもなると思うのであります。率直に申しまして、政府は物を高く買つていると私は思う。物を高く買つているなら、生産者に利益を與えているということになるが、同時にまた生産者をも苦しめている。そんなばかばかしいことがあるかというお話があるかもしれませんが、政府の支拂いは即金じやないから若干遅れる。從つてその間の金利を考えるということも、政府に品物を納めることを引受ける人は当然考える、そしてそれは当然生産費の中に入るのであります。そこで政府は若干高い物の買い方をしている。ところが、政府の支拂が若干遅れるとは思つても、九箇月も十箇月も遅れるとは思わない。その政府の支拂いが遅れている間に、生産者の方は結局金に詰まることもありましようし、高い金利を拂つて借金しなければならぬこともある。でありますから、政府が物を高く買つて、同時にまた生産者も金利に苦しんでいる。結局それによつてもうかる者は、やみ金利の高利貸だけです。それで経済の安定をはかるという目的に向つて進んでいることになるのでございましようか、それを若干疑問といたします。政府も生産者も両方損しているというのは、私は実にばかばかしいことじやないかと思います。逆に政府が納品に対して支拂いを早くするということになれば、物を安く買うことはできると思います。また生産者も、さらに生産者から支拂いを受ける者も非常に助かることになり、政府の経費節約と一挙両得の効果を上げ得るはずであります。すでに政府の未拂いが非常に多くなつて來て、同時にまた政府の資金の吸上げによりまして、多くの事業は金詰まりになつて苦しんでおります。そのために中小企業の中には倒れるものがあるかも知れません。そうすると、その結果生産減退が起らないとは言えないと思います。それは中小工業だけだろう、大工業はさしつかえないだろうとおつしやるかもしれないが、大工業の仕事の性質上、もちろん下請工場をたくさん持つていなければならない。下請工場がつぶれて大工業の仕事がうまく行くはずがない。生産減退を生ぜしめるということは、もちろん本年度の予算の目的とするところではないと思います。そこで政府も高く買わず、生産者も苦しまず、そして予算の節約に努めて実行し得る方法があると思うわけであります。そのためにも、また繰返して申しますが、月別に、それから四半期ごとに調節して行く收支計画をつくつて、これを嚴重に実行して、本年度の十二箇月の各進行の間の政府資金の吸い上げと放出との状態がこういうふうになつている、現にまた先月はこういうふうにやつて來ておるのだ、四半期においてはこういうふうにやつて来ておるのだ、だからこういうふうに安定の道に進んでおるのだということを具体的に証明されつつ行かなければ、この予算案は効果を生じません。最後になつて、こうなる、それまで黙つている、眼をつぶつている、それでふたをあけてみたらこうなるというのでは、この予算案の効果は達成し得ないと考えます。また現に所得税のいろいろな收支の見積りの中に源泉徴收の部分に対して、雇用の増加を見込んでおるというふうに説明書に書いてあります。また申告納税の部分につきましては、生産の増加も見込んでおると言つております。しかしただいま申しましたように、もし政府資金の吸上げが非常に多くなり、そのために金詰まりになり、倒れるものも出て來る。生産の減退になりますれば、雇用の増加を所得税源泉徴收の増加に見込み、申告納税の部分に生産増加を見込むということは、必ずしも確実な見込み方ではない。そうするとこれはさらに財政收支の均衡を得るという問題に対しても重要な條件を生ずるものと思う。
 次にこの予算案をしてその目的を具体的に達成させ、現実に効果を生ぜしめるために、もう一つの道を考えなければならぬと思う。私はこの予算案は目的を達し得なくてもかまわないと思うなら、何もその方法を考える必要はないでありましようが、目的を達成しようと思うなら、こういう條件が必要だと申しておるわけであります。それはもちろんすでにこの予算案が発表されることによつと生じておるアナウンスメント・エフェクトの一つでありますが、米國の対日援助見返り資金の経済的作用が非常に大きいことは、すでに、一般に論議されておるところであります。このアメリカの好意による対日援助の見返り資金を、経済の安定と再建とに有効な効果を現わすようにしますためには、援助物資もなるべく本年度の前半期に集中していただくように願つて、まず物の面から見ても國民生活と生産に対して安定を與え、さらにその見返り資金を経済安定、再建に有効に使用し得る、物の面と資金の面とで対日援助がさらに有効な作用を現わすようにしていただきたい。たとえば十二箇月の間の上半期の方に多く援助をいただけるのか、年度末の方へ來て援助をいただけるのかということは、予算の目的を実現し得るために非常に大切な問題になつております。先ほど申しました予算案実行上の月別の、あるいは四半期ごとの――私は月別でなければ十分の効果はないと思いますが、さらにその月別のずれを四半期ごとに修正して行く。財政收支の計画の面についてこれを確実に実行して行くこと、それから米國の好意による対日援助の物資を、この年度の早目にいただけるのか、おそ目にいただけるかのということが、非常に大切な問題になつて参ります。もしおそ目にいただけるのなら当然本年度内における効果は少い。もし早目に集中していただけるならば、日本の経済安定に貢献するところの効果が非常に多いと思います。決してこれは増額をお願いしようというのではありません。これは俗に申しますれば、抱くと負ぶさるというか、負ぶえば抱かれるというような根性で申し上げるのではなくて、日本の経済を安定させ、再建させようという好意から援助をしていただくのでありますから、そのせつかくの援助を有効にする。またその援助がいただけるということをこの予算案の中に包含させて、大事な計画の部分になつておるのでありますから、その大事な部分を有効な効果を生ぜしめるためには、できる限り前半期に集中させて、その結果は当然実効価格を下げるということになつて参ります。御承知の通り現在の企業の生産費から申しまして、正常ルートで得ておる部分がどれほどであろうか、そうでない部分がどれほどであるか、量の上においては当然正常ルートによつて得られるものが多いけれども、生産費の金額の部分からいえば、正常ルートでない部分の方が相当の幅を占める――七、三か、四分六か、半々であるか、それは事業によつて違いますが、いずれにしても相当大きな部分を占めておる。もし対日援助物資をいただけることによつて実効價格が下ることになりますれば、生産コストも下り、生計費も楽になります。それによつて國民の租税負担能力が樂になるわけであります。從つてそれによつて財政收支の均衡をはかることも可能になる。租税が最大の財源となつておるのでありますが、國民の租税負担能力を樂にするのと、苦しくするのと、いずれがその目的を達し得るかといえば、それは樂にする方が目的を達しやすいのは当然のことであります。そのことから考えてみましても、米國の対日援助でいただく物資を、なるべく早いところで集中していただくことが、この予算の効果を大きくすることであります。それによつてまた收支の均衡をはかりやすくなるのであります。また國民も租税を拂いやすくなるのであります。それによつてまた通貨を安定しやすくなり、経済安定を確保しやすくなるのであります。これはアメリカが日本に対して援助くださる御趣旨をなお生かすことになりますから、私はこれはぜひお願いしていただきたいと考えるのであります。これは國民の代表として皆様からお願いしていただきたい。それがこの予算案実行の上においても、また國民経済再建の上においても、非常に大きな役に立つものと考えるのであります。
 次に租税の部分について申しますが、所得税の中で相当大きく見積つてあるように思われます。しかしこれは現在の所得税の増加は、もちろんこれまでのインフレの進行を反映しておるために税收入が多くなつておる部分と、徴税を強化したため増加しておる部分とがあるわけであります。ところが今度の予算案で、税の目的はインフレの進行を抑制するというか、これ以上進行させないというのでありますから、そこでインフレ進行の結果を反映した所得税の増收は、それには大した見込みは持てないはずのものが、そこに大した見込みを持てるというのならば、インフレの進行を抑制するという目的を達しないことになります。そこで残る問題は、徴税強化の問題に多くの期待をかけることになるのであります。その点から申しましても、先ほどから申しましたように、実効價格を下げて、生計費あるいは生産コストを下げるようにする。それによつて國民の租税負担の力を樂にするということが、今後の租税收入の重要な部分であります所得税収入を、予算通りのあるいはそれに近いものを調達するためには、絶対に必要な條件であると考える。從來の所得税はインフレの進行を反映して來る部分が相当あると思います。これがなくならなければ、この予算案自体の目的は達成しておらぬことになります。
 それから取引高税の問題でありますが。近くショープ博士が見えるという。ショープ博士その他アメリカの学者の方々のいろいろ研究を見ましても、世界のほとんどすべての國がこの取引高税を行つており、しかも、一ぺん取引高税を行つて、後になつてやめたという國はまずないというのが從來の例であります、從來の例は日本に必ずしも当てはまるとは申せませんが、ただそういうことは言えると思う。これはむろん取引高税を実行しなければならなかつた事情がなくなつておらないのでありますから、取引高税をなくなそうということは、取引高税の從來の経験からいつて、むりなのだと私は考えます。もちろんこれは取引高税の性質上惡税である、何でもかでも惡税であるとばかりは申せませんが、しかし公平な課税という点から見れば、少くとも良税でないことは確かであります。さらにまた取引高税について從來税務官吏の方もなれないし、また納税者もこれになれない、両方がなれないのですからなお一層弊害が多くなり、しかも取引高税だけならがまんするが、取引高税をきめることによつて営業税に響いて來、所得税に響いて來、その他に響いて來るのじやたまらぬという、始まりの取引高税に不平が高まつて來ますから、なお一層不平の声が多くなる。ですから私は取引高税というものは、これはむろん公平課税という点からいつて、良税でないことはわかり切つているけれども、いかなる場合においても、何でもかでも惡税であつて、その弊害が絶対的に改善することが、できないものであるとは言えないと思います。また先ほど申しましたように。世界の各國これを実行した國で、一たび実行してしまつてから、あとになつてやめた國、あるいはアメリカの各州においても実行してそれを後になつてやめた州は非常に少いのであります。日本の場合においても、取引高税を一ぺん実行しなければならなかつた事情があつて、その状態がかわらないで、財政收支の均衡をはからなければならぬという事情がかわらない限り取引高税廃止の可能性は、私はないと考えるものであります。私はショープ博士その他の研究を見ましても、そういう結果に相なつておるということをこの機会に申し上げます。
 なお、中央財政におきまする收支均衡の努力が、地方財政の面からくつがえされる心配は絶対ないのであろうかというところに若干の疑問を持つておりまするが、すでに私の申し上げる規定の時間より若干超過したかもしれませんから、私の所見はこの程度をもつてやめさしていただきたいと思います。(拍手)
#4
○西村(久)委員長代理 御質疑はございませんか。――御質疑ないようですから次に移ります。
 井藤半彌君の公述を求めます。
#5
○井藤公述人 私ただいま御紹介にあずかりました井藤半彌であります。現職は東京産科大学教授でありますが、ごく簡單に三十分という御指定がございますので、要点だけを申し上げます。私の公述は数字がたくさん出ますので、お聞き苦しいところもあると思いますし、申しますことが少し早いかもしれませんが、生れつき早口でありますので、どうか御容赦願います。
 そこで今度の予算の特徴でありますが、これは一言で申しますと、一般会計、特別会計、政府関係諸機関を通ずるあらゆる予算の総合的均衡をはかることに努力した。これは確かに特徴であります。
    〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
 これによりまして、インフレーシヨンの、收束をはかり、そしてわが日本経済の再建をしようとする努力がなされておる。これは確かに今度の予算の特徴であります。
 そこでこの予算を分析してみようと思うのでありますが、分析するについていろいろな観点があります。立場が人によつて違うのでありますが、私はこれを純國民経済の立場から分析してみたいと思います。從つて経済的側面を取上げるのでごいざますので、一面的解釈であるというそしりも免れ得ないのであります。まず問題を次の二つにわけたいと思います。それは予算の数量の問題、もう一つは予算の品質の問題、すなわち予算の内容の問題、こういうふうに問題をわけて取扱いたいと思います。
 そこでまず第一の予算の数量の問題でありますが、予算の数量と申しますと、これは一般会計、特別会計その他の数字でありますが、ここでは便宜上一般会計を中心に予算の数量を取扱いたいと思います。特別会計はその他地方財政の問題に関連して触れることにいたしまして、一般会計をもつて予算の数量を代表するもの、それからもう一つそれに対應いたしますのが國民経済でありますが、一体國民経済は何によつて代表せしめるか、これを数字によつて代表せしめるものは次の三つであります。それは國民所得、それから國富、すなわち國民財産及び外國の資源、この三つが予算の背景になり、國民経済の具体的の大きさを示すものであります。皆さん御案内の通り、わが國の國民所得は、政府発表によりますと、今年度は二兆九千七百億となつております。それから國民財産、すなわち國富でありますが、これは数日前の安本の発表がございましたが、それによりますと、終戰後の日本の國民財産は十二兆三千億円といわれておるのであります。これが日本の財政の経済的背景で國内のもの、それから外國の資源でありますが、皆さん御案内の通り、アメリカの援助資金が千七百五十億円予定されておりますが、これはやはり日本の財政運営について作用するのであります。そこで國民経済力を代表するものといたしまして、今の三つのものがあるのでありますが、しかしながらこの三つを機械的に合計することはできないのであります。そこでやはりその中の最も重要な國民所得二兆九千七百億をもつて、かりに日本の経済力を代表するものといたしまして、そうしてこれを一般会計との関係をうかがいたいと思います。
 そこでまず予算の数量と國民経済との関係でありますが、これを例によつて割算をやつてみます。一般会計の七千億で國民所得を割算してみますと、二三%という数字が出るのであります。そこで國民所得二三%に当る金を國がとつて使うのでありますが、これは一体日本國民経済に対してどの程度の大きさを持つておるか。この場合に二三%という数字をいかに分析しても、多いとも少いとも言えませんので、そこで日本の過去の新字と比較してみます。そこで結論だけを申しますと、大正末期から支那事変の始まりますまでのころは、この数字が大体一割乃至一割五分でありました。ところが御案内の通り、今度の大戰が始まりましてから、この数字が非常にふえまして、昭和十九年度は七〇%となつております。それから終戰後減りまして昭和二十二年度は一八%、昨年の二十三年度は一九%となつております。そうして一時下つて参りましたが、今年度、すなわち二十四年度は、また二三%と上つて來たのであります。この二三%という数字は、先ほども申し上げましたように、一般会計だけをとつたものでありますが、一般会計、特別会計を総合いたします予算の純計、これについて比率を求めますと、二十四年度は五九%になるのであります。だから二三%というよりも、五九%という方がより正しいのじやないかと思います。昨年度すなわち二十三年度につきまして、同じ計算をいたしますと、予算の純計の國民所得に対する比率は四三%となつております。そこが今度は九五%にふえておるのであります。これでおしまいかといいますと、まだ地方費がございます。これは國家予算のように計上することは困難なのでありますが、しかし政府発表の数字によりますと、昭和二十四年度の地方費は、合計いたしまして三千四百六十五億といわれておるのであります。そこでこの地方費をも加えまして、それから重複と思われるものを引いて計算いたしますと、昭和二十四年度は、國家及び地方財政を通ずる経費の國民所得に対する割合は、井藤個人の計算でありますが、六八%となるのであります。大体國民所得の七割に当る金額を、國家及び地方財政がとつて、これを使つておるのであります。それが國民所得の六八%に当る財政の数量、これを日本の國民経済という立場から見ますと、はたして大き過ぎるものであろうか、少な過ぎるものであろうかという問題であります。とかく経費がふえるとこれはいけないので、経費が少いとこれはいいものだというような考えもありますが、しかしながら國家財政のヴオリユームがふえたからといつて、いいとも言えないし、惡いとも言えない。また逆に減つたからといつて、いいとも言えなければ、惡いとも言えないのであります。問題はその内容いかんであります。品質いかんであります。
 そこで次の問題に入りまして、今次の予算の内容、品質の檢討に入りたいと思います。これを歳出すなわち経費の問題と歳入の問題、この二つにわけて研究してみたいと思います。
 まず経費、歳出から始めます。そこで経費の歳出を國民経済の立場から見た檢討でありますが、これも嚴重に申しますと、一々経費の内容について当らなければならないのでありますが、そういうことはやるいとまもなく、私自身能力もありませんので、きわめて大まかな方法で経費の分類をやつてみたいと思います。この経費の分類は、政府発表の数字を基礎といたしまして、これまたかく言う井藤がかつてにやつたものでありまして、実は昨年の七月一日発行の東京商科大学の一橋新聞、学生新聞にこの分類を掲げまして、それから後わが国におきましても経済雑誌や、経済年報なんかで、この分類が踏襲されております。しかしこれは井藤自身の分類でございますのでずいぶん欠点が多いことだろうと思いますが、この分類は要するに経済という立場から國家の経費の分類をやつてみたのであります。くどく言うようでございますが、ほかの観点は無視いたしまして、経費の経済的効果という観点から、國家の経費を分類してみたのであります。それは大して時間がかかるわけでなく、十五分か二十分くらいでもちろんできる分類でございます。どういうふうに経費を分類したかといいますと、次の五つにわけました。
 一番が終戰関係費、それから二番が移轉的経費、三番が補助費及び扶助費、それから四番目が経済助長費、五番が一般行政費、この五つにわけたのであります。
 そこで今度は金額及び内容を申し上げたいと思います。まず一番の終戰関係費でありますが、この総額は千二百九十八億でありまして、予算総額に対する比率は、一九%であります。その内訳は終戰処理費が千二百五十二億、賠償施設処理費が二十七億、特殊財産処理費十七億、解除物件処理費が二億、合計いたしまして、先ほど申しました千二百九十八億で全体の一九%、この内容については、もちろん解説を要しないと思います。
 今度は二番の移轉的経費であります。これは合計いたしまして七百八十一億、全体の経費総額に対する比率から申しますと、一一%であります。この内訳を申しますと、國債費が百三十六億、年金及び恩給が三十億、地方財政費が六百十五億、以上合計いたしまして七百八十一億、すなわち全体の一一%。この移轉的経費と申しますのは、皆さん御案内の通り、國家が購買力を國家以外の團体に移轉するだけの経費でありまして、仕事をしないものであります。國債費について申しますと、國債に関する元金及び利子の償還費といたしまして、政府が人民に金を出すだけ、そうしてただいわば國家の購買力を人民に移轉するだけのことをしかやらない経費でありますので、これを移轉的経費と言うのであります。これが全体の一一%。
 それから三番目が補償費及び扶助費でありますが、合計いたしますと二千二百七十八億、全体に対する率は三二%。その内容は何かと申しますと、價格調製費が二千二十二億、社会及び労働施設費が二百五十六億、この二つを合計いたしまして二千二百七十八億。これが補助費及び扶助費で、全体に対するパーセンテージは三二%であります。そこで補助費及び扶助費でありますが、これは移轉的経費に非常に似たものであります。すなわち國家が人民に対して購買力を移すという点は、移轉的経費と同じでありますが、ただその使い方が社会政策とか、物價の引上げの停止というふうに使途が限定されているものであります。
 以上終戰関係費、移轉的経費、補助費及び扶助費、この三つの経費は國家という立場からいえば、もちろん必要な経費でありますが、しかし経済という観点から申しますと、きわめて消極的な作用しか持つておらない経費でございますので、これを私は消極的経費と名づけたいのであります。この消極的経費、この三つのものを合計いたしますと、日本の一般会計の数字のうちの六二%が、経済という立場から見れば、きわめて消極的な作用しか持つておらない経費で占めているということは、注目すべきことだと思うのであります。
 今度は四番目の経済助長費。これは合計いたしますと、千六百七十三億、全体の二四%、これは経済的発展のために使う経費で、いわゆる資本的支出をも含むのであります。その内容を申しますと、産業経済費が六百七十五億、公共事業費が五百十九億、出資及び投資金が四百十九億、物資及び物價調整費の取扱費が六十億、以上合計いたしまして千六百七十三億、全体の二四%。これは国民経済発展のために使う経費であります。
 それから最後の五番目が一般行政費。これはその他大勢でありまして、それ以外のものは全部入るのでありますが、実はこれはばかにならないのであります。その一般行政費の合計は千十六億で、全体の一四%。その内訳を申しますと、行政費が三百八十億、地方及び警察費が百六十六億、教育文化費が三百四十七億、保健衛生費が六十六億、皇室費が四捨五入いたしまして一億、國会費が十四億、裁判所の経費が四十二億、以上合計いたしまして千十六億で一四%。これは國家が行政をする上において当然使わなくちやならぬ経費であります。そこで経済助長費と一般行政費、これを合計いたしますと三八%でありますが、これは積極的な経費と私は名づけたいと思うのであります。
 そこで、以上経費をいわば経済という立場から分類したのでありますが、昭和二十四年度の予算を経済という立場から見ますと、消極的立場を持つているものが六二%で、積極的作用を持つているものは、わずかに三八%と非常に少いのであります。これを昨年度二十三年度に比べますと、二十三年度は消極的経費が五四%、積極的経費が四六%、それに比べますと、経済という観点から申しますと、今度の國家経費の配分は必ずしも望ましいものとは言えないのであります。
 経費の問題はそれくらいにいたしまして、今度は歳入の問題に移ることといたします。歳入は租税、印紙收入、それから官業及び官有財産收入、これが大部分を占めておりまして、両者合計いたしまして歳入総額の九一%を占めております。そこで租税や官業收入で國家の歳入の九割以上も占めておるということ、これは確かに健全財政の姿でありまして、これは決して惡いこととは言えないのであります。
 次にその内容であります。あらゆる歳入について檢討することはできませんので、ここではそのうち最も重要なる租税だけについて檢討してみたいと思います。私の申します租税というのは、租税に印紙收入を加えたものに専売局益金を加えたもの、すなわち廣い意味の租税であります。その租税の合計は、今申しました三つを合計いたしますと、六千三百五十六億。そこでこの六千三百五十六億という國税でありますが、これが数量という立場から見て、日本の國民経済に対してどういう影響があるだろうか、今度はその内容はどうか。数量と内容の問題にわけて検討してみたいと思います。
 まず数量について問題といたします。まず六千三百五十六億というこの租税は、一体國民経済という立場から見てどういう程度の重さを持つているか。例によりまして租税を國民所得で割るという割算が行われております。
 これによつて計算いたしますと、二十四年度は國税の國民所得に対する割合は二一%であります。ところがこれ以外に地方税が――地方税と申しましても配付税を引いた地方独立税、地方直接税が千五百億ございます。これは國民所得に対する五%で、國税、地方税を通算いたしますと、昭和二十四年度は國民所得の二六%に当る税金をとるということになつておるのであります。ところが御注意願いたいことは、この二六%という数字は、少し大げさなものの言い方をいたしますと、明治、大正、昭和を通じて最高率であります。これは少し大げさなようでありますが、決して大げさではございませんので、地方税、國税を通算いたしまして二六%という比率は、近代日本の始まりまして以來高い税率であります。戰争中はもつと多かつたろうという印象を受けますが、戰争中はそう多くなかつた、昭和十八年度は、地方税、國税を通算いたしまして二〇%、十九年度は一九%、戰争が終りまして、それから二十二年度は一八%、二十三年度は二〇%、そうして今度は二六%となつておるのであります。そこで二六%という数字が多いか少いか、これを日本の過去または外國と比較することが普通行われております。それで外國の最近の例を見ますと、一九四八年度のアメリカは國税、地方税を通算いたしまして二一%、去年の日本の二〇%とほぼ同額で、アメリカの方がやや多いのです。英國は同じく一九四八年、地方税、國税を通算いたしまして三八%という高い比率を示しておるのであります。そこで問題はこの比率を基礎として、外國の比率なんかと比較して、日本ではさらに増税に余力があるとかないとかいうことが問題になるのでありますが、一体この比率だけで増税余力があるとかないとか、議論することができるかというと、それは他の事情にして変化なき限りという註釈があるのでありまして、実は他の事情に変化がございますので、これだけを基礎といたしまして、日本の税金が現在安いか高いかというようなことは言えないのであります。どういう事情かと申しますと、これは少し網羅的に申しますと、たとえば外國と日本とを比較計算すべき場合に注意すべきことは、まず第一番に租税という概念、それから國民所得という概念が國によつて違う、また同じ國でも時代によつて違うことであります。一例と申しますと、これは実は戰争中でありますが、昭和十九年度の租税の国民所得に対する比率計算をやつてみた場合に、租税という言葉を廣い意味に解釈する場合もある、狭い意味に解釈する場合もある。それからまた國民所得という言葉を廣くも解釈できるし、狭くも解釈できる。いろいろの解釈をいたしまして、いろいろの組合せをやつてみたのです。そうしますと、昭和十九年度の政府発表の予算を基礎にして計算したもので、しかも租税の國民所得に対する比率で、一番日本の比率を軽いような計算をいたしますと一八%、相当重いというような印象を受ける計算をいたしますと三二%、この大きな違いが出て來るのでありまして、租税と國民所得の概念が違いますために、手かげん次第でどうでもなるということに御注意願い、こういう比較計算をする場合に、できるだけ両者の概念を調整することが必要であります。それが一つ。
 その次に注意すべきことは、租税以外の強制的経済負担があるかないか。具体的に申しますと戰争公債はないか、これは日本では戰争中はあつたのでございますが、現在はありません。それから強制的寄付があるかないか。日本におきましては御案内の通り、地方財政では強制的の寄付金が多いのであります。それから農家及び工業家の強制供出制度、これも國民の強制的経済の負担でありまして、わが國ではかなり現在多いのであります。
 その次に注意すべきことは、國民の経済力を示すものといたしまして、國民財産すなわち國富、それから外國資源、現在わが日本におきましては、外國資源といたしましては、アメリカの対日援助資金千七百五十億があります。これは日本の経済としてはプラスであります。ところが國富は御案内の通り、戰争で非常に減りまして、戦災とか賠償その他の関係で、國富というからは、日本では過去の蓄積は非常に減つておりますから、租税の國民所得に対するパーセンテージは高くなくても、國富という点を考慮しますと、あまり負担能力がないということであります。ただ外國の援助があることはプラスになります。
 それから次に注意すべきことは、比率がかりに同じでありましても、その國が貧乏な國の場合は負担能力が少く、金持の國の場合は多いのであります。これは累進税と同じことで、私に対して一割の税金がかかる場合と、一億円收入がある人に九割税金がかかるのと、どちらが苦しいかというと、私の方が苦しい。それと同じことが國際間にも言えるのであります。わが日本は貧困でありますから、二六%でも、アメリカの場合とは非常に意味が違うと言えるのであります。
 その次に租税の内容はどうか、租税の負担配分法はどうかということであります。これは後に申しますが、わが日本では大衆課税が非常に多いのであります。從つて租税負担、また大衆課税をやらざるを得ないような國情になつておるのであります。そのために日本では租税の國民所得に対する割合がそれほど重くなくとも、内容からいうと、國民はかなり苦しんでおる。從つて負担能力がないということであります。それから租税ということはできませんけれども、廣い意味で租税にあたるものはインフレーシヨンで、インフレーシヨンは惡税的な作用があるのであります。そこでこれからインフレーシヨンが治まるかどうかわかりませんが、とにかく現在までインフレーシヨンによつて、かなり惡税的富の再分配が行われておること、これもやはり日本の状態からいつて望ましいことではないのであります。以上が廣い意味で租税に関連しての問題であります。
 次にこの問題について研究すべきことに、租税としてとつた金を國家経費で使う場合、その國家経費の内容であります。租税としてとつた金を國家が経済の発展とか、國民経済の安定、その他にたくさん出してくれれば、多々ますます弁ずで、多い方がいいが、わが日本の場合はどうか、さつきも申しましたように積極的経費が割合に少い。この点も負担能力からいうと、あまり大であるとは言えないのであります。それからそれ以外に次に私が述べますようないろいろの事情が、やはり租税の負担のうちに影響いたします。それを具体的に言わないで結論だけ申しますと、國民所得の分布状態、それから國民所得の構成はどうか、人口の構成はどうなるか、男が多いか、女が多いか、経済の機構はどうか、農業國か商業國か、生産力発展の可能性があるかないか、國民生活の様式はどうか、等々、こういうようなものが租税負担能力の決定に作用するものでありまして、以上のものを総合して観察しなければ、國民所得に対する租税負担能力ありやなしやをきめることはできないのであります。そこでこれを全部数字に直すことはできませんので、観と申しますわけのわからぬことをここにいたしますと、日本ではもうこれ以上、増税の可能性は少いものと考えざるを得なくなるのであります。以上申しましたことは増税の数量の問題であります。
 今度は租税負担配分の問題であります。そこでこの租税の内容がどうかということになりますと、根本は租税制度の内容について、檢討しなければならないのでありますが、やはりこれも数字によつて示すことができませんので、普通行われております直接税、間接税の比率によつてこれを示したいと思います。この直接税、間接税の比率でありますが、これは大藏当局も発表されておりますが、私の申します直接税、間接税は井藤の我流でありますので、これまた怪しいものであります。そこで昭和二十四年度の租税六千三百五十六億を、直接税と間接税にわけますとどうなるかというと、直接税は三千四百七十三億、全体の五四%、間接税すなわち消費税が二千八百八十三億、全体の四六%。すなわち直接税が五四%、間接税が四六%で、昭和二十四年度は直接税の方が多いのであります。これを過去の比率と比較してみますと――これも井藤の計算でありますが、かりに直接税を一〇〇といたしました場合に、間接税は幾らになるかという計算をやつてみました。そこで支那事変の始まる前年から計算いたしますと、昭和十一年度は直接税二〇〇に対しまして間接税は一四五で間接税が多かつた。昭和十二年が直接税一〇〇に対して間接税は一一二。ところが十三年度になりますと、間接税は八〇に減つております。それから昭和十四年から二十一年まで、すなわち戰争中でありますが、昭和二十一年まではどうかというと、間接税の割合が減りまして、直接税一〇〇に対して間接税は五〇ないし六〇の間を行き來しております。ところが二十二年になりますと、これがまた逆轉して参りまして、間接税がふえて、直接税の一〇〇に対し、間接税は一〇一にふえました。二十三年度、去年はどうかと申しますと、直接税一〇〇に対して間接税は九七となつております。やや間接税が減りました。二十四年度はどうかというと、今申しました計算に換算し直しますと、二十四年度は直接税一〇〇に対して間接税が八三、こういうふうになつておるのであります。そこで二十四年度は別といたしまして、終戰後のわが日本の租税の傾向を見ますと、大衆課税といわれておる間接税が非常に多いのであります。なぜ多いか、これは租税経済の基盤となつております國民経済が後退したということ、それはやむを得ない事情によるものでありますが、しかしながら租税制度としては、不健全な姿であることは申すまでもないことであります。ところが二十四年度はまた逆轉いたしまして、直接税の比率がふえました、そこを概観してみますと、これは確かに健全財政に帰つたようでありますが、それはそうは言えないので、この直接税の内容を檢討いたしますと、やはり大衆課税的要素が非常に多いのでありまして、直接税、間接税の比率が非常に好轉したからといつて、二十四年度は楽観を許さないのであります。むしろ悲観すべきことじやないかと思うのであります。別の言葉でいいますと、二十四年度におきまして直接税、間接税の比率により、租税制度のよしあしを判断するという方法自体がどうかと思うのであります。それはどういう事情かと申しますと、直接税の中に大衆課税的なものが非常に多いということであります。それをもつと具体的に申しますと、まず富の平等化の傾向があるということであります。そのために從來上の方において重い税金を負担しておつた者が減り、下の方においた者がふえた。それをさらに数字で申しますと、二十二年度において所得税を納めました者のうち、所得七万円以下の者がどれくらい占めておるかというと、全体の九〇%であります。二十二年度と申しますと、一昨年から去年でありまして、一年の所得が七万円というのはそう金持ではありません。その七万円以下の者が所得税納税人員の九割を占めておるということから申しましても、所得税というものをいかに大衆が負担しておるかということがわかるのであります。またもつとほかの観点から申しますと、所得税納税者の人員でありますが、昭和十年ごろまでは大体百万人以下――百万人を超えたことはなかつたのですが、昭和二十年になりますと一千万人余りにふえております。そしてさらに去年の二十三年度になりますと一千九百万人になつておるのでありまして、今年度はさらにふえるのではないかと考えられるのであります。かりに一千九百万人だといたしますと、これはもう大衆といわれておる中産階級以下の者が大部分だということになるのであります。さらに他の角度から申しますと、國民所得中勤労所得の占める割合がだんだんとふえて來た。それをパーセンテージで申しますと、國民所得中勤労所得の占める割合は、昭和二十二年度は三二%であつたものが、昨年の二十三年度には四一%になつた。そして二十四年度はさらに四四%になる見込みであります。すなわち國民所得における勤労所得の割合が、こういうふうに四四%に増大したということは、結局勤労階級が所得税を多く負担するということになるのであります。それからもう一つ重要なことは、今度これはいろいろの事情があつたと思いますが、所得税の減税計画を中止したということであります。シヨープ博士が來朝せられるまで減税計画を中止したというのですが、これは口の上では減税を中止したと申しますけれども、現状維持の制度をとるということは、貨幣價値の下落している今日、実は増税になるのであります。そういう増税になつたからこういうふうに直接税の比率がふえたということになるのでありまして、これは從來のような意味で直接税がふえたからといつて楽観はできないと思うのであります。
 最後に公債であります。今度の一般会計に公債がないということ、これはいいことであります。これは石橋さん以來一般会計に公債がないということになつておりますが――公債が出ればきつといけないという非難が出るのですけれども、ないということは決して惡いことではありません。けつこうなことであります。ですがこれ以外には公債があります。皆様御案内の通り國有鉄道特別会計には百五十億、通信事業特別会計には百二十億、合計二百七十億の建設公債があります。これは建設公債と言つておりますが、何といつても公債であります。それから復興金庫への交付公債が六百二十四億計上されております。これは國家のものですが、次に地方債であります。地方債は二百三十億ありますが、これは純粋の赤字公債的性質を持つたものでありまして、地方財政において公債が多いということは、現在の地方財政の困難であることを物語つておるものであります。
 これで一應私の申し上げたいことは終つたのでありますが、以上申し上げましたことをもつと簡單にまとめて申し上げますと、結局私の考えは次のようになるのであります。
 それは政府が予算全体について收支の均衡をはかるために勢力して、健全財政方針をとつたことは、大いに多とすべきことである、けつこうなことであると思います。ところがひるがえつてその内容はどうかというと、必ずしも楽観を許さない。きわめて消極的経費が六二%を占めており、経済開発のための経済助長費はわずかに二四%、一般行政費は一四%である。これでは必ずしも望しい姿であるとは言えないのであります。次に收入の方はどうかと申しますと、これはやむを得ない事情があるとは申しますものの、大衆課税が多いということであります。ことに予算のヴオリユーム、予算の総額の國民所得に対する比率が非常に大でありますので、こういう財政状態が國民経済の上に及ぼす影響は、看過できないものがあると思うのであります。しかしながらこれは一方から申しますと、わが日本の経済の苦難の姿が、財政面に反映したとも言えるのであります。
 これをもつて私の公述を終ります。御静聴を感謝いたします。(拍手)
#6
○植原委員長 質問がございますか。――質問がないようでございますから、井藤さん、有難うございました。
 次に日本銀行の副総裁、川北慎一君にお願いいたします。
#7
○川北公述人 私は二十四年度予算の特色と、それの実行上の諸問題と、それが直接、間接経済界に及ぼす影響、この三点について私の所見を申し上げてみたいと思います。時間の制約がございますので、具体的なことは申し上げられないと思いますが、大体輪郭、構相だけを御聴取願いたいと思います。
 二十四年度の予算は、いわゆる九原則に基きましてインフレ收束、経済安定を目的とした画期的な予算でありまして、在來の予算と非常に異なつた点がございます。二、三の点につきましては、すでに御説明がございましたが、私の考えております点は、第一に、一般会計、特別会計、公團、金庫等の政府関係機関から地方財政の関係に至るまで、國の全收支を網羅して、総合予算が編成されて、なおかつこれが均衡予算になつておる、こういう点であります。第二は、從來日本銀行あるいは一般金融機関の金融面に依存しておりました政府の所要資金を、今後はすべて政府の普通歳入をもつてまかなうこととせられた。たとえば貿易会計四百億、食糧会計その他特殊会計の増加百込み運轉資金、いわゆるインヴェントリー・フィナンミングというものが、從來は金融機関で支弁されておりましたけれども、今回は予算の範囲内でまかなう。公團資金の不足、公團の赤字、あるいは事業出資、こういうものがまたこの普通歳入でまかなわれておる、こういう点が一つだと思います。さらに進んで從來市中金融機関及び日本銀行から借入れておりました借入金の返済を、今年度の予算から実施する。すなわち復金に対する出資資金をもつて復金債、市中の償還を行う。あるいは貿易資金の二十三年度の日本銀行借入れ残高を本年度の歳出をもつて償還する。從來政府の貸金で金融機関に依存しておりましたものを、依存せしめないのみならず、その返金さえも行うということ、これが大きな特色でございます。また鉄道、逓信等の建設公債、これらは従来單なる長期公債の発行として議会において承認されたのでありますが、今後は援助見返り勘定を一つの財源として、その範囲内でその発行が認められた。また地方債の発行も簡易保險及び政府の特別会計の積立金の範囲内、政府のリザーヴの範囲内において認められた。このように長期公債といえども、すべて財政黒字と見合う範囲にとどめて編成されておる、こういう点、その他すべての公團、復金等の経費が予算において規制されて議会の承認を得るということ。最後に一番大きな変化は、從來貿易資金特別会計の黒字が、輸出、輸入のいわゆる價格補給に実質的に使われておりましたものを、この資金の使用をとどめて、一般歳出すなわち税收入をもつて貿易の價格補給金を調達することになりました。これらは非常に大きな変化でございます。
 以上申し上げましたように、総合予算の編成、政府財政関係から派生するインフレの要因が一切遮断されるということ、終戰後の日本経済が一種の財政インフレであるということでありましたが、その根源を断つて、今年こそインフレに終止符を打つて、経済安定の基盤をつくろうとしておるこの点に、二十四年度予算の大きな意義がある、こういうふうに考えるのであります。しかしながらこの予算は、日本の経済の現状に対しましてはまことに冷嚴な、いわば手痛い予算であるのでありまして、第一の点は先ほどもちよつとお話がございましたが、本年度の予算は、前年度に比しまして、形式的には膨脹いたしておりますけれども、実質的には縮小予算であるということであります。本年度の一般会計歳出予算七千四十六億は前年度に比べて、形式的には四九%の増でありますが、この七千四十六億の中から政府の出資、投資あるいは價格調整費、損失補填、それらの項目を除きまして、いわゆる実質的な歳出をとつてみますと、わずかに一七%の増加にすぎなくなつております。しかもこれを現在の物價水準あるいは賃金水準から考えてみますと、さらに大きな縮小予算であるということが言えると思うのであります。昨年の二月と本年の二月とでは、公定價格において約十三割の騰貴をいたしております。しかしながら二十三年度予算を通じました一年間の公定價格の平均と、本年二月の公定價格を比較いたしてみますと、約三割の騰貴になつております。少くとも現在の水準で二十四年度予算が編成されるといたしますれば、二十三年平均の公定債務につきまして約三割の價格の上昇が見込まれなければならない。さらにこの間賃金のペースはと申しますと、三千七百円から六千三百円、約七割の上昇をいたしております。これを平均してウエイトをつけることは非常にむずかしいのでありますが、公定において三割、賃金ペースにおいて七割上昇しておる現在の價格、賃金の水準において、二十四年度の予算の数字を見ますると、形式的には四九%、あるいは実態的な歳出を引出して考えてみますと、一七%の増加になつておりますこの予算は、実質的には相当の縮小財政になつておる、緊縮財政になつておるということが言えると思うのであります。具体的に二、三の例をとつて申しますと、たとえば公共事業費のごときがそれであります。本年度の九百十八億、前年度の四百九十五億、金額においてほとんど違いがありませんが、これを事業の量として考えてみますと、ほとんど半分近いものにこれが縮小されておるというふうに考えます。地方配付金についても同じことであります。本年度百七十七億、前年度が四百九十三億、わずかに一七%の増でありますが、この程度では地方の使います金の実質はかなり縮小されておる。各省経費についても同じことであります。約七百億、昨年は五百六十億。人件費の七割というものを考慮に入れてみますと、大きな縮小になつております。國内の價格調整費千億、前年の六百二十億に比べてこれは相当増加をいたしておりますけれども、本年は鉄鋼、石炭その他増産を見込んでおりまして、これの増額が必要である。この程度では実際はきゆうくつである。合理化によつてコストの低下を必要とする、なおあるものは補給金を廃止するという実情でありまして、この價格調整費の増額も非常に困難な、縮小されたきゆうくつな数字であると思います。また鉄道建設公債、逓信建設公債についてもまつたく同様であります。金額が昨年より減少いたしております。従つて結局は國家の事業量、発注量が実質的には縮小するということになる。また國家の行政費は、いわゆる行政整理等によつて整理が行われなければならぬという結論に、この縮小財政の結果がなると思うのであります。
 次に先ほどちよつと申しました從來の政府の債務を返済いたします関係、民間あるいは日本銀行に対しまして、究極的に日本銀行に返済される資金が約三百億であります。貿易資金並びに國民金融公社、印刷その他の特別会計の借入金の返済等約三百億の日本銀行借入金返済が今度の予算の中に盛つてございます。これはいわゆるデフレ的な要素でございまして、日本銀行との関係においては直接通貨縮小となる面であります、民間に対しましても復金債の償還あるいは期限到來の國債の償還、これは日本銀行にもございますが、両方合せて約三十六億の國債償還が予定されております。これらは一應デフレ的な要因でありますが、しかしこれが民間の産業融資の資金として、再運用されることによつて、そのデフレ的要素が修正される、こういう関係の資金が約三百二十億程度ございます。さらに対日援助見返り資金の別途積立てでございます。從來はこれが輸出入の補助金に流用されておりましたものが、一切別途組み立てられまして、司令部の許可された使途にのみ充てられる、こういうことになりますれば、この資金は援助物資の拂下げ代金として民間から吸い上げたものでありますから、もしこれが還元放出されなければ、あの厖大な金額は大きなデフレ的要素となるのであります。しかしながらこのうちから建設公債あるいは長期資金また復金債、國債に償還されましたものが、さらに再放出されるということによりまして、デフレ的要素が修正される、こういうことになる。結局日本銀行に返りますもの、市中に返りますもの、あるいは対日援助見返り資金として吸い上げられましたものが、一應デフレ的要素を含むものでありますが、その運用によりまして適正な還元が行われる、こういうふうに考えるのであります。
 次に本年度予算の実行上の諸問題として若干の点を申し上げますると、第一がやはり徴税の確保、特に適正化をはかるということであると思います。本年度の徴税、特に所得税の收入は前年に比べて七割の増加であります。これが國民、産業界にとりまして相当の圧迫を與える、それにかんがみましてこの徴税の適正化ということが考えられます。第二の点は財政收支の時間的調整、これも先ほど高木教授がるるお説きになりましたが、これに格段の努力を必要とする。一例を申し上げてみますと、昨年の十月から十二月、三箇月の間に政府は民間に千二百三十億の散布超過をいたしておりますが、この一月から三月の間には九百六十億の引上げ超過をいたしております。完全なうらはらが出ております。最近の金融逼迫は一にこの関係にあるのであります。從いましてこの徴税の時期の平均化、場合によりましては申告納税制その他税制の再檢討が必要ではないか、かくしてこれを平均化し、徴税を能率化する、あるいは適正化するということに大きな努力拂がわれることが必要であると思います。また歳出につきましても政府の契約ふるいは発注の時期を調整される、これは政府においても考えておられるようでありますが、二十三年度における鉄道、逓信の発注状況から考えまして、ぜひこの契約そのものに調整を加える必要があると思うのであります。また一般政府の支拂いの時期の均衡、調整をはかることでございますが、これは從來常に問題になつております政府支拂いの遅延、最近の情勢から見ましても、この政府支拂いの手続的な遅延というものが非常に大きい。私は現在政府の経理、出納機構というものに改善を要するのではないかと思うのであります。能率的に行つていない点があるのではないかと思うのであります。さらにこの時期的調整の問題につきましては、政府の短期証券、一時借入金限度、これの調整を適当に抑制されまして、一時に大きな差額を大蔵省証券その他でまかなうことのないように調整さるべきだと思います。もしこの時期的な調整よろしきを得ませんければ、年間の財政收支の均衡は得ておりましても、その間に若干インフレの進行を引起す要素にもなります。それがないといたしましても、少くとも産業界、金融界はこの関係において、まつたく不測の思わぬ惡影響をこうむります。異常なる金詰まりという問題も、この点から起つて來るというふうに考えるのであります。
 次に第三の点、財政が経済界に直接、間接及ぼす影響、本年の経済界の動向につきまして簡單に申し上げてみます。一口に申しますと、この財政、実質的緊縮予算、さらに九原則実施に伴います本年の経済界は、一種の整理課程が発生する、換言すればデフレ的現象が起る、こういうふうに考えるのであります。先ほど申しました國家事業量、発注量の減少、あるいは価格補給金の補給金單價の切り下げ、あるいは為替レート設定ということになりますと、輸出産業が大きな影響を受けるのでありますが、輸出については補助金の承認がない。これらの点から企業に対する非常な努力をなさなければ、この難局を乘り切つて行けないという、本年の産業界は合理化、整理、あるいは一部の企業の破綻というものが起ると思います。政府の行政整理に伴う人員整理とともに、民間企業の失業者も増加して來ると思うのであります。この間産業構成に変化が起りまして、輸出産業への轉換が行われなければならない。今までの純國内消費に充てられておりました、いわゆる消費財の生産は大体こちらで頭打ちであり、ある意味においては変態的生産過剰にもなつておる事情でありますので、いわゆる不急不要産業も整理を余儀なくされ、縮小を余儀なくされるものが非常に多くなつて來ると思うのであります。ただ今年の経済界の動向に対しまして重大な関係を持つておりますのは、やはり援助見返り資金の効率的使用である、こう考えるのであります。これが先ほども申しました日本経済をデフレに突入させないで、先方の言うディスインフレの程度において、日本経済を安定させるという唯一の安全弁であるように思うのであります。復金の新規融資は停止されました。この重要産業に及ぼす影響は重大でございます。すでに石炭、電力、鉄鋼その他当面のつなぎ資金に大きな問題を起しております。これは結局はこの見返り勘定から長期資金融通を受けなければならぬ資金であると思います。また一般の金融は今後資本の蓄積によつてまかなはなければなりませんが、このインフレ收束下における今年の預金の増加、資金の蓄積は、見通しとしてはきわめて困難であります。その範囲内ではとうてい所要の資金がまかなえない実情であると思います。設備資金の需要は依然大きゆうございます。この調達方法については見返り資金の援助と、國内的に長期金融の調達を考慮いたさなければならぬと思うのであります。從つてこの援助見返り資金による直接産業投資以外に、國債並びに復金債の償還に充てます資金を本年度の産業資金に充当する。このことが一番大切なことであると思います。イギリスにおきましてはマーシャル・プランの全額は、実はイングランド銀行の借入金返済に充当されて、直接産業資金に使われておりません。フランスにおいてはその約四分の一が政府のフランス銀行に対する債務の返済に充てられて、四分の三が産業資金に充当されております。イタリアにおいては全額産業資金に充当されております。日本の現在の國情はフランス、イタリア以下であることは申すまでもないことであります。この資金の大部分が当面、特に本年は長期資金、その他の産業資金に充てられなければ、日本の経済の安定、復興は容易でない。こういうふうに考えるのであります。しかしながら一面これがためには、從來の企業体制、生産計画、復興計画、これに即應する健全なる資金計画を確立することが急務であります。そうしてそのもとにおいて、この援助見返り資金の運用をできるだけ十分にかつ早急に開始してもらう。そうして円滑に効率的にこれを利用して行く、これが本年の重要な題目であると思うのであります。
 結局今年度の予算の示します目標である日本経済の安定、國際経済への参加、そうして眞の復興に再出発する。この線に立つておる本年度の予算に対しましては、おそらく識者のいずれもが共感するものであると思いますけれども、その実行上には並々ならぬ努力を必要とする。本年の経済界は直接予算の影響、また廣く九原則の影響を受けまして、終戰後最も多事多難な年に遭遇するというふうに考えております。すなわち國民は耐乏生活を余儀なくされ、納税あるいは貯蓄による消費節約を必要とする。財界は企業の合理化と自主的体制、つまり從來までの政府、復金、あるいは金融機関の借入金に大きく依存しておりました体制を改め、できるだけ自主的な体制を整えなければならない。さらに政府におきましても國費の節約、税制改革を考慮されて、漸次租税の軽減をはかることに努めなければならぬ。そういうことによつて初めて日本の國民の生活も漸次余裕を生じ、企業も資本の蓄積ができ、ここに國民経済の向上が期待される。それによつてこそ初めて日本経済の復興が期待できると思うのであります。
 さらに日本経済の行くべき道でありますが、輸出最優先で生産を増加しなければならぬ。從來日本の生産は相当増加をいたしておりますが、何のための生産増加であるかということに、関係当局は非常に疑問を持つておつたのであります。イギリスのごときは輸出増加のための國内生産増加である、國國によつてみな生産増加の目標が違うわけであります。ソ連は國防のための生産増加であつたかもしれぬ。日本は今日まで終戰後の痛手は大きいとしても、國内消費のための生産増加が大き過ぎる。それならば生産増加の意味がない。こういうのが関係当局の根本概念であります。どうしても生産増加は将來は輸出炭業、これによつて自立体制を整える、アメリカの援助はできるだけ早く脱却する。こういう方向に向う生産増加でなければならない。
 最後にこれらの財政の問題、あるいは経済界の情勢に應じまして、今後の金融界の使命はきわめて重大で、先ほど申し上げました問題は、おそらく今年は金融政策の負担すべき重要問題となつて來ると思うのであります。この財政の影響、特にその時期的調整をできるだけ円滑簡便にする、援助、見返り資金の運用等、金融の一般的運用に注意する、これとあわせて國内では資金蓄積に全力を盡す、貯蓄のみならず、株式、社債、そういう資金の蓄積に努力を拂わなければならない、こういうふうに考えます。結局金融の根本方針はこの経済安定をはかる上において、つまりインフレを收束せしめる上において非常にむずかしい、あやまてばデフレに突入して経済を混乱せしめ、生産に支障を起す事態に立至る懸念が非常にある年でありますので、この間金融界といたしましては、デフレに突入しないように、インフレを進行させないように、いわゆる安定ディスインフレの範囲内において、できるだけ金融の調整、円滑をはかることが、金融の本年に與えられた大きな使命である。これにつきましては経済九原則の第三項にあります金融の調整、統制の問題があるのであります。この具体案につきましては私どもまだ承知いたしておりませんが、これのやり方、もしこれがあまりにリジットなものであるといたしますと、この難局に処しての調整のとれない事態になることを非常におそれる。この意味におきまして、私どもは金融調整については、予算と違つた若干融通性――フレキシビリティーというものを、関係当局にも要請しておる次第であります。
 時間の制約もありまして、ごく概念的なことを申上げましたが、これで一應終ります。
#8
○川島委員 ちよつと二、三お伺いいたしたいと思います。
 その第一は、参考のためにお聞きしておきたいのでありますが、日銀が昨年二月と記憶しておりますが、基準年次における紙幣價値、評價額と申しますか、それと昨年一月現在における実効價格を対比して、一万円は今日のところ九十六円五十銭に相当するという、日銀から発表になつた書類がありました。その後おそらく日銀もその点について御調査をなさつておると思いますが、ごく最近における御調査の結果によつて、一万円は九十六円五十銭をどの程度下まわつた算定になつておるのか、それをひとつ資料があつたらお聞かせ願いたい。
 第二は、政府はこの予算委員会におきましても、本年度の貯蓄目標、努力目標というか、これの増加を大体二千億、あるいは二千億を下まわる、こういうような怪しい説明であります。日銀当局といたしましては二十四年度の貯蓄増加はどの程度に見込まれておるかということ。
 第三点は、ただいまお話になりました國内重要産業の本年度の生産計画、それからこの予算の実行の重点であります輸出貿易生産計画、これらの総合いたしました観点に立つての、いわゆる長期産業資金の需要はどの程度か、その需要額に対してどの程度出さなければならないかというような御調査があれば、その数字を、見通しだけでよろしいのですがお聞かせ願いたい。
 四番目は、先般新聞紙上で私は拜見したのでありますが、一万田日銀総裁が整理資金、いわゆる首切りの資金に対しては、どんどん出して行くというような発表があつたように記憶しておるのですが、そういう用意がはたして日銀にはあるかどうか。この四点を参考のためにちよつとお伺いいたしたい。
#9
○川北公述人 簡單にお答えいたします。最初の件は、実は私は数字を正確に日本銀行の発表というか、研究したものについて存じておりませんが、戰前の一万円は今の九十六円に当る、こういうお話でございますが、私の念頭に置いております数字から御説明いたしますと、日支事変前の数字から比べまして、現在の公定價格がすでに二百倍増加しておる。やみ價格の総平均に約七百倍でありますから、公定だけで見ましても二百分の一、これは平均であります。もちろん物によつて非常なでこぼこがございますが、大体百分の一ないし二百分の一、もつと高いものもあると思います。公定價格においてそういうことが言えると思います。その後昨年の公定價格の改訂、一昨年の公定價格の改訂、それで大体公定價格がとどまつておるのでありまして、中間的に申しますと、一昨年の公定價格の改訂でその後一年間に二十三割上つておる。昨年の公定價格の改訂で、本年までに十三割公定價格が上つております。それらを全部ひつくるめまして、日支事変前に比べますと、公定價格は約二百倍に騰貴しております。
 第二の御質問は、資金の蓄積、貯蓄目標でございますが、これは非常にむずかしいのであります。昨年は御承知の通り三千億の目標を立てまして、この三月までに大体金融機関の総資金の蓄積額を累計いたしますと、約四千億の増加になつております。しかしこれは金融機関同士の間に、非常に入繰り勘定がございまして、ほんとうに使える資金ではございません。各種金融機関の貯金を通算したものでございます。しかしこの数字しか統計的には出て参りません。その数字が、來年の三月末までの一年間にどれだけふえるかということは非常に困難な予想でございまして、私どももつきかねるのであります。ただ政府の散布資金が本年は非常に減つて参ります。その関係と、いわゆるインフレの進行がとまりましたら、名目的な数字の増加か消されますので、私どもも実際のところ正確な数字がまだわかりませんが、大体増加は昨年に比べて、数字的に見ると五、六割と申しますか、半額前後ではないかというような大よその見当であります。そこでかりに四千億の実績に対して二千億とか二千五百億とかいう数字が出て來ると思います。しかしこれは時期的な関係がございまして、おそらく年末の数字をとりますと相当の増加になると思います。今後四月以降十二月の数字をとりますれば、相当大きな資金の蓄積額が出ると思います。それは先ほど詳しく触れませんでしたけれども、この均衡予算がとれ、あるいは時期的な調整が許されましても、なお十月以降の政府資本散布は、相当多額なものになると思います。大藏省証券の発行並びに一番大きなのは食糧会計で、この放出資金が秋の收穫にございますから、この期間は本年も相当大きな政府の散布超過がある。そうするとそこで貯金はふえる。しかし来年になりましてやはり本年と同じような税の引上げが起りまして、それが若干修正される。やはりこういう経路をたどると思います。
 第三点の長期資金のことでございますが、これにつきましても所要資金は、これは政府の方で御檢討になることでありまして、日本銀行はこれについて権威ある資料を持つておりません。当初千九百億といわれた――これは設備資金だけでございますが、その後千五、六百億といわれております。はたしてその数字がどうなりますか、先ほど申しましたように、五箇年計画その他が再檢討を要するということであると思いますので、その資金は相当圧縮されるのではないかと思いますが、これに対して資金の調達の見通しといたしましては、やはり貿易資金の黒字、見返り勘定から相当多額の資金を出してもらう。かりに五百億というものが出ますれば、あと民間金融機関の長期資金の調達が大体二、三百億、株式の増資が業界の意見では、この四月までに大体四百三十億ばかり会計年度といたしまして増資ができました、今年はやはり五百億程度の増資は可能であるし、その中の約半額が設備資金に充てられるといたしますならば、それで約二百五十億、金融機関のを合せると五百五十億、それから貯金部資金がどうなりますか、これは一般の貯蓄を集めております資金でありますので、何らかの方法で一部長期資金に運営せられればけつこうではないかと思います。さらにまた今年は非常にむずかしいのでございますが、やはり企業の自己資金の調達、すなわち利益その他の中から調達し得る面もございますので、かれこれやはり千二百億程度は私どもの日安としては調達できるのではないかというふうな感じを持つております。
 最後の御質問の首切り資金とおつしやいましたが、それはいわゆる合理化資金でありまして、合理化はただ人員を整理することではないのであります。能率のある機械のすえつけ、その他合理化のための設備あるいは補修、また人件費整理、こういう資金が必要になつて來るのでありますが、これにはどうしても合理化が至上命令であり、あるいは産業構成の変化ということが、今日の日本経済界にはやむを得ない事情でございますから、どうしてもこの資金の調達は何らかの方法で考慮しなければならぬと思つております。從來この種資金は復金から出ておりましたが、復金の新規融通がとまりましたので、今のところ出場がないので、市中金融機関といたしましては、非常に見通しのいい会社は一種の運轉資金としてその資金を出しますけれども、おそらく大半は市中銀行が自分のリスクでこの資金を調達することは困難と思います。できれば見返り資金の中から一種の救済という意味で出せればと思いますが、これは許されないことだと私は考えております。そういたしますと、どうしても企業の合理化が成立つて、その企業が利益を上げて行ける見通しのものでないと、御説の資金は出ないのではないか、日本銀行かこれを直接供給することはできない。やはり取引銀行がそれを見まして自分の考えで出す、こういうことでなければ、復金も出ません。政府の補償もできません。同様に日本銀行の保証貸出しも――将来の損失を補償することはできない。日本銀行のできますことは、そうして民間銀行が貸出した資金のしりを見る。資金繰りを見るということだけのことであります。結局これはりつばに合理化のできる会社には合理化資金が出ますが、そうでない見通しの会社は、合理化資金さえもむずかしいのではないか。これはまだ根本的には解決しておりませんけれども、今の状態はそういうところで停頓しておる状態でございます。
#10
○稻村委員 為替レートの問題は非常に重要でありますが、大体為替レートは三百三十円を目安にしておるのであります。日本銀行としても、それが適当だというふうにお考えになつておるかどうか、もしそれをお考えになつておるとすれば、この三百三十円の為替レートを維持するためには、相当のデフレ的な傾向が前提となつておるのではないかというように考えますが、その点に関して、もしそうでないような方法があるならば、御意見を承りたい。
#11
○川北公述人 為替相場の維持と決定の時期につきましては、私ども何ら存じておりません。
#12
○植原委員長 これにて休憩いたします。午後は一時半より開会いたします。
    午後零時二十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時十三分開議
#13
○植原委員長 では休憩前に引続き公聽会を開きます。公述者齋藤貞次君。
#14
○斎藤公述人 齋藤貞次であります。千葉縣生産農業協同組合連合会会長であります。
 突然のお話でありましたので、実はけさ予算の説明書を手にとつたようなわけで、檢討が行き届いておりませんので、先ほどの諸先生方のような、詳細な予算に対する檢討ができないことを実に遺憾に思います。ただ一人の農民といたしまして、長い間の農民運動の経験、現在協同組合に携わつておるところの自分の考え方からいたしまして、この予算のほとんど一貫した感想と申しましようか、そういつたものを申し上げてみたいと思います。
 ポツダム宣言に從いましても、また日本國憲法に從いましても、またこのたびの経済九原則によりましても、すべては日本の国がりつぱになることであつて、いい國になることであるということであろうと思います。すなわち政治的にも、また國民生活の下にも、また経済の上にも、よくなることであると思います。時にこのたびの経済九原則によりましても、これはただ單に恐ろしいものではなく、究極の目的は日本の経済が繁栄する、日本の國家がよくなるためであると思うのであります。日本の経済が繁栄するということは、すなわち日本の國民が繁栄することであろうと私は思います。経済だけが繁栄いたしまして、国民が滅びて行くということは、私はあり得ないと思うのであります。だがしかし、現在見まするに、事は反対でありまして現在この九原則の実施について、日本の國の経済はよくなるでありましようが、その反面滅びて行かんとする國民がある、こういう事実を見なければならぬと思うのであります。それは日本の國の約半分の人口を擁しておるところの農民であります。農民は現在破滅に瀕しております。農村の経済は破綻に瀕しておるのであります。昨日の朝日新聞にも出ておりましたが、今までに耕作放棄農家がすでに二万四千七百戸に達して、三千五百余町歩の耕地が農業から放棄された、こういうことが書いておりましたが、この統計はいつの統計か存じませんが、私の最近続々と目撃いたします事実は、こんなものではあるまいと思うのであります。きのうの朝日の統計には、この耕作放棄の原因は、災害によるもの六五%、供出並びに税金によるもの約二〇パーセントであると書いてありました。まことにさようなわけで、現在の農村におきましては、供出のために年々人が死んでおります。現在の天くだり的な、一方的な供出割当の結果、各府縣にいろいろと割当てます結果、その年の気候や、その年の割当技術のために、全國どこかの縣で人間が死んでおります。本年は不幸にして、私のおりますところの千葉縣においてそれがめぐつて参りまして、現に私の郡におきましては三人の人が死にました。一人は山を一つ越した私のごく親しい人であつたのであります。その人は十三俵の供出割当を受けたのでありますが、しかし昨年あのアイオン台風に從つて起つたところのうんかの被害は、その人のたんぼをほとんど無收穫に近いものにした。しかしながらやつとこさ十二俵の米を出しておるのであります。ところがさらにその人は一斗八升の米を出さなければいけなくなつた。すでに十二俵の米の分のうち、一俵は大豆を買つて出したというような状態であつたところへ、五千幾百円の税金が來た。こういうことから、あしたまでに納めなければ、その筋に呼ばれていろいろなことを叱られるということから、その人は川へ入つて死んだのであります。しかもその川をあとで見ると、人のたけをもぐらせるほどの深さではなかつた。よくどうしてこんなところで死ねたかというような淺い川で死んだのであります。それほどに農民は苦しみ、川に入らなくても、すでに氣持の上で死んでおるのであります。そういうような農民が、日本の現状では毎年どこかの縣で出て來るのであります。
 日本の農民は、毎日安心して農業がどうかできますように、自分の農業がりつぱになつて、世界の農業水準にまで達して、食糧を増産して、日本の國民諸君に十分な食糧を補給したいと、これは全部の百姓が考えておるのであります。そしてわれわれ農民は、自分たちの農業をよくするために、まずいい土地がほしいのであります。それからまた現在のような食事事情下、割当供出制度の事情下におきましては、公平に、適正に農業計画を立ててもらいたいのであります。あるところには、やみで売つても売り余るほどの米があり、あるところには川に入り、首くくりをしなければならないような、非常にまちまちな、非常にでたらめな農業調整であつてはならない。これを上手にやつてもらわなければならないと思つておるのであります。そうしてさらに、現在われわれのつくりますところの農業物價格が非常にほかの物價に比して低いのであります。こいつを世間並の物價に引上げてもらいまして、われわれも税金を收めます。それからまたいろいろな負担もいたしました上に、さらに農業再生産が活発にできるような、そういつた農産物の價格にしてもらいたいと思うのであります。たとえばここに、農民と農民でない人たちのつくるところの品物の比較を申し上げますが、昭和十三年における米一石の價格は三十二円四十五銭であつたのであります。当時の硫安十貫目の價格は三円八十六銭であつたのであります。ところが現在農民が売ります米は三千五百九十五円、すなわち百十倍でありまして、硫安は四百七十九円、百二十四倍であります。十六倍の相違があります。さらにこの硫安について申しますと、硫安の價格の中には補給金が含まれておりますので、この補給金に合算いたしますと、八百九十九円、すなわち三百二十二倍になつております。硫安は二百二十二倍になつておりますので、米もまた二百二十二倍にしていただきたいのであります。ところが事はそうは参りませんで、われわれに対しましては、われわれの農産物の價格はこのような低さに本年も予定されているような状態であります。それからわれわれといたしましては、税金問題でありますが、負担を軽くしてもらいたい。われわれも税金を拂いますが、現在の税金ではわれわれに負担し切れないのであります。それはあとで申し述べますが、そういつたように供出のこと、税金のこと、農産物價格のこと、それから農業調整上のいろいろなことでわれわれは悩んでおるのであります。そこへもつて参りまして、われわれに金の問題があります。私どもが供出をいたしますと、ただちに協同組合なり銀行なりへと金が預けられてしまいます。その金はいつの間にか税金にかわつてしまいます。そうして生産物とその代金を、ほとんど全部に近いものを政府の方にとられてしまいまして、あとの生活なり、生産なりに必要な金をどうするかといいますと、現在の農村の金融状態はまさに金詰まりになつております。農村金融に対しまして、われわれの販売代金は、協同組合から信用連合会、中金へと吸い上げられますが、それに対しましてわれわれが必要な金はどういうように参るかと申しますと、現在では農業協同組合の貸出しには制限があります。一人約二万円くらいが全国の平均だろうと思つております。さらに中央金庫では今は貸してくれません。さらに農林復興金庫の関係でありますが、これは先ほどどなたかも申されましたように、全然中止してしまつた状態であります。今はただ農業手形を頼るだけの形になつておりますが、この農業手形についていいますと、非常にきゆうくつなものであります。貸付の範囲は農業共済保險の保險金額、しかも貸し付ける内容は、肥料代、配給農機具代の範囲、こうなつております。そうして期間は短期であります。さらに供出代金で決済されますので、秋になつてやつと米の金が入るころには、それがとられてしまう。さらに借りますのに町村長とか、部落会長とかの判をもらわなければならぬ。非常にきゆうくつな農業手形であります。これ一本のみが農民に與えられたところの金融のルートであります。
 そういう現在の農村の状況に立ちまして、本年度のこの予算を見まするのに、まさにこれは農民を抹殺した、農村否定の予算であるといわざるを得ないのであります。この一般会計の中に幾らほど農民のために予算が盛られておるか、特別会計の中に幾らほど農民のために予算が盛られておるかということを見まするに、われわれが長い間、数百年ないしは千数百年にわたつて圧迫されたところの日本の土地制度を改革したこの経費、しかも農地改革は数字的には成功したように書かれておりますが、村におきましては、事実はなかなか複雑であり、一本の田のくると、一つの山を境に、農民がいろいろなしのぎを削つておる。ここに新しい時代と古い時代との一つの闘いが残つておる。それを農地改革の線に沿つて、政治的にこの村を改革しなければならない場合に、わずか四十億。さらに先ほど申し上げました農地調整法の関係でありますが、この苦しい農民の供出に対しまして、天くだり割当が参ります。これを公平に割当てることが現在の農村の急務なのでありますが、これにつきましては、われわれといたしましては、各町村内の耕地の優勢をきめたり、その人の生産能力をきめたりするために、非常に複雑な調査が必要であるのであります。私のある友人が村長をしておるところでは、その村だけで三百万円の金をかけなければ、耕地の一筆調査が完了できないという状態であります。しかるに國でとりました額はわずか三十九億であります。これはほとんど、涙のごときものであります。並べてまことに失礼ですが、刑務所の収容費が二十八億であります。日本全國民の食糧を適正に、公平に出させるところの金がわすか三十九億。監獄へ二十八億であります。こういうふうな状態であるのであります。しかもこの七千億の予算のうちに、われわれが忘れてならないものは價格調整費であります。このうちにいろいろございますが、ほかの産業には千百何十億、あるいはまた外國よりの輸入食糧には何百億、こういうふうに上げられておるのでありますが、この輸入食糧に対する四百億とかいう金と比較してみますと、それはすなわちわれわれに対する一つの圧迫になつておるのでありますが、こういうふうに農民に対する金の使い方は非常に少くて、農民を圧迫する金の使い方が非常に多い、こういうふうに考えられるのであります。
 さらに、性別会計におきまして、ずいぶん探してみたのですが、農民のためになるような予算はなかなか発見できなかつたのであります。地方配付金にいたしましても、先ほどの先生が言いましたように、わずか五百七十億、これかと思つて発見しました農業共済事業費が四十八億ありましたが、これも多くは農民が共済保険料として出す金がここに計上れさたものであろうと思うのであります。こういうふうに歳出面においては、われわれは絶望せざるを得ないような状態であります。
 次に歳入について見まするのに、農民と最も直接関係のありますものとして、所得説をあげますが、所得税において見まするに、本年は農業所得を三千六十八億円、所得税を四百九十七億円と見込まれておるのであります。この計算について私はむしろ御質問したいのでありますが、農民の総所得を三千六十八億円というふうにどうして見たか、しかももしこの三千六十八億円が妥当な数字だといたしましても、農民一人当りの所得は一万円にも満たないと思うのであります。そこでさらに農民に対する所得税課税について御参考までに申し上げたいのでありますが、農家に対する所得税のかけ方は、農家の経営が一つの事業であるというようなかけ方のために、基礎控除は一人分しかしてないのであります。しかしながら農家におきましては、その家庭内に主人あるいはせがれさん、お嫁さんというふうに、幾人もの勤労者があるのであります。そういつた勤労者が集まつて一つの事業を経営しておるのであります。しかもその一人一人はおのおのおとなでありまして、一人一人、個人としての一人前の精神生活なり、物質生活なりを営まなければならない人たちであります。すなわち農家を事業経営体とするならば、農家は事業場でありまして、そこに働いている家族は労働者であります。当然その人たちにおのおのの勤労控除がなされてよろしいではないかと思うのでありますが、今年はやはり三千六十八億円の農家所得の中から、四百九十七億円をとるというのであります。私まだこまかくそろばんを入れませんので、まことに申訳ありませんが、皆さん方において、これがはたして妥当であるかどうか、よく御計算願いたいと思うのであります。
 さらに歳入の問題で税金のとり方をひとつ御参考までに申し上げたいと思いますが、税務署は農業所得に対しましては、標準率というものを用いまして、われわれが計算いたしますると、一反証の田の所得が三千円ないし五千円でありますものが、彼らは五千円ないし八千円くらいに計算して参ります。つまり私どもにない所得を、一方的に標準率というもので押しつけて来るのであります。それでその標準率に從つてわれわれが申告をいたしますが、その申告に対しまして、彼らはその標準率を上まわつた更正決定をさらにするのであります。私どもの所得のないものを標準とし、さらに自分たちの標準としたもの以上の更正決定をするのであります。そういたしまして、私どもが主張するところの特別経費とか、災害による減収とかいうようなものはなかなか認めてくれません。認めてもごく少しであります。そしてわれわれのやりもしないところのやみを見積つたり、もらいもしないところの報奨金を二割とか三割とか、平均に彼らはもらつたものとしてかけて来る。こういうふうな状態であります。さらに厚生決定が出まして、その際少い方へ間違つたものは直しますが、多い方へ間違つたものは、なかなか税務署は直してくれません。たとえば三万円税金を拂うのが適当な人のところへ、八万円來たというような場合、いろいろ証拠をあげて迫るのでありますが、しかしながら連中は、来年は何とかするから今年だけは拂つてやつてくれ、こういうのであります。そういうことでありますが、そこでどこにその欠陥があるかと追求してみますと、これはあなた方の選んだ國会議員の皆さんが議会できめたことだから、われわれに何と言つてもしようがない、こういうようなことを言われます。所得税法の中にありますものは、われわれの義務であると同時に、われわれの権利も守るようにできております。ところが税務署は税法を無視して参ります。なぜ税法を無視しますかというと、それは國の予算があつて、これだけの金をとらなければいけないから、税法を無視してもしかたがない、こう言うのであります。よつて、皆様方は税金をきめる際には、どうか税法に従つて、税法を考えた上で計算をして、この場所にはどのくらいの税金が適当であるかというふうに、國民の担税能力を計算した上での予算を立ててもらいたいと思うのであります。
 次に、いろいろと泣き事を申し上げて済みませんか、現在の日本の農業がどういう状態にあるかということは、皆様方よくおわかりのことだと思います。そうして單一為替レートが設定されまして、世界の農産物とわれわれの農産物が互いに補給し合つて、競争し合うような状態が遠からず來ると思うのでありますが、先ほど偉い人が日本は将来輸出品だけをつくればよいというようなことを言われて國内消費の品物は見合せてもいい、こういうようなことを言われましたが、われわれのつくります米や麦は國内消費のものであります。しかしながらこれをつくらなかつたことにはどうにもなりませんので、この日本の農業なり食糧生産の仕事は、どうぞ御援助願いたいと思うのでありますが、そこで今度の予算を立てますのにも、こういうことをひとつお考えになつてもらいたいと思います。それはわれわれの農産物の價格と、世界の農産物の價格を比較してお考えを願いたいと思うのであります。それは私ども調べましたところを申し上げますと、ただいままでのところで、小麦は一トン当り二万五千七百円麦は一トン当り一万二千四百二十一円で取引されておりますが、これをかりに三百三十円のレートにいたしますと、小麦は三万六千三百円、米が四万九千五百円、すなわら麦は二・三倍、米は約四倍に値上りするはずであります。すなわち現在三千五百円である米が一万何千円かになるわけであります。そういたしますと、これは非常に荒つぽい計算でありますが、農家の収入が最低二千五百億ふえる勘定になります。こうなりましたならば、農民の所得はふえ、農民の担税力はふえまして、農業の改革等も自分の手で行えるようになると思うのであります。こういうふうな物價の立て方をすることが、今度の経済九原則の趣旨ではないかと思うのであります。世界の農産物價から日本の農産物價を孤立さして行くということであつたならば、どこまでも日本の経済は自立しないと思うのであります。どうか委員会の皆さん方には、われわれ農民の苦しい事情を察せられまして、予算案の審議の際には、農民の考え方を十分に織り込んで、何らかの角度から、たとえば物價の角度から、あるいは経費の角度からいろいろと御配慮を願いまして、日本の農民が國家の繁栄をよそに滅びませんように、ひとつお願いいたしたいと思うのであります。
 たいへん失礼いたしました。
#15
○植原委員長 次は藤田武夫君。
#16
○藤田公述人 藤田武夫であります。立教大学に職を奉じております。一言お断り申し上げつておきたいのですが、私は地方團体の代表者ではなく、また地方財政委員会の顧問をいたしてはおりますが、その関係は、ただ必要な場合に意見を述べましたり、また関係資料を研究材料にいただく、そういつた関係にありますので、自分といたしましては、勉強をいたしておる身であり、從つてここで述べますことも、一方的な立場からではなくて、客観的な立場から、地方財政の面から今度の國家予算を批判する、そういう意味で申し上げたいと存じます。
 時間の関係上要点だけを申し上げますが、今回の國家予算は、申すまでもなく総司令部の内示案に基きまして、急いで組み立てられたものでありまして、そうしてそこに収支の均衡が一應整えられたわけであります。しかしながらそのために財政面にありましたいろいろなしわが、客観的に公平な立場から見ましても、弱いものの方へ寄せられておるというきらいが認められます。それが最も謙虚に現われておりますのが地方財政の面でありますしそれはたとえば六・三制予算の削除、また地方配付税、地方税の小減、そういう二、三の事例をあげましても明らかなところであります。こうして國家予算が一應均衡を保ち得たことは、言うまでもなく経済九原則の線に浩つたものであつて、非常に喜ばしいことではあります。しかしながらこうして立てられた予算が、來るべき一箇年の実際の財政の運営、また國内行政の運営において、はたして均衡が破れないで最後まで均衡を保ち得るかどうか、これが最も重要な問題であろうと存じます。この問題を私は主として地方財政の実情から考えてみたいと思います。
 御承知のように今日地方團体の行つております仕事は、教育が一番大きな仕事でありますが、それから土木、勧業、警察、社会事業、そういつた仕事をやつております。地方財政におきましても、経済九原則の線に沿つて、できるだけ経費を節約することは言うまでもないことであります。しかしながら今申しましたようないろいろな仕事に使われております費用の内容を少し具体的に見て参りますと、たとえば六・三制、また土木事業であれば災害復旧、また司令部の命令による道路の整備、あるいは食糧増産、配給、また警察、生活保護、そういつた仕事をやつておりまして、これらの仕事は大部分國家の法律または各省の命令、指示に従つてやつておりますいわゆる國政委任事務でありまして、これは言うまでもなく、地方團体がかつてにこれを取捨選択し得るものではないのであります。こういつた國政委任事務に要する費用が、市町村では全体の経費の七割、府縣では全体の経費の八割を占めるという状態にあります。従つて地方團体で、自分でもつて自由に増減し得るものは、二割か三割の程度にすぎないのであります。この点を十分認めていただいて、経費の節約が地方團体の意思によつて、どこまで可能であるかということを考えていただきたいと思います。こういうふうに地方團体の行いまする仕事は、國政的な性質を持つたものが強いということは、これは今日の資本主義の発展の段階におきましては、各國共通の現象であります、ことに日本の場合におきましては、終戰後の経済状態、またいろいろな新しい民主的な制度の実施によりまして、一層この傾向が強まつておるわけであります。しかし問題はこういつた國政事務を地方團体が七割も八割もやつて行く、その場合にそれに要する費用を國と地方團体の間において、どういうふうに分担しておるかという問題が重要であります。ところがこれは日本の地方財政の昔からの特徴でありますが、國からは非常にわずかな補助金を支出する。それによつて非常に多量の國政事務を地方團体に負わせている。その結果地方團体は金が足らなくて、地方債を発行する、借金をするという始末であります。手取り早く申しますれば、國の赤字が地方の赤字に姿をかえている、そう考えられる点が多いのであります。ところが本年度の國家予算について見ますると、こういつた傾向が一段と強くなつております。それの最も顕著なる例は、六・三割の予算の削除であります、これはすでに問題になつておりますので、詳しくは申し上げませんが、最初百八億を要求された経費がゼロに削減されて現在では公共事業費のうちから持寄つて十五億円出そうかどうか、これもなかなかむずかしいという状態にあります。たとえ十五億円が出されるといたしましても、これは昨日の朝日新聞にもありましたように、三府縣当りわずかに三千万円にすぎない。國庫補助を日当にしております六・三制の学校の校舎は、今後立ちぐされにならないかということが憂えられております。六・三制は從來の二年の間のいろいろなむりが今年度に集中して参つております。そこへもつて来て、こういう状態でありますので、人によつては六・三制を六・二制にするというふうな議論も出ております。しかしながらこの六・三制は、すでに民自党においてもかつて公約されたところである。また國会においても教育予算は優先的に取扱うというふうなことを言われた点もあります。そういうことから考えまして、また眞に國民の民主的な日常を高めるための基礎であるという意味からいたしましても、六・三制は、ぜひこの際実現しなくてはならないものと信ずる次第であります。そういう意味におきまして、少くとも三月三十日に、ぎりぎりの結著だと言つて示されました四十三億円というこの種の経費は、何とかしてたとえば対日援助見返り資金のうちから支出してでも、これを遂行することが、必要だと考えられるわけであります。
 その半面におきまして、自治体警察の問題がかねてからいろいろ問題になつております。警察の実情を見ますると、中小都市またはそれよりも小さい自治体の警察は、その警察の費用の多くが寄付金によつてまかなわれている。しかもその寄付金が飲料店だとか、または地方のボスからの寄付が多いということは、もう今日一般的に認められているところでありまして、そのために警察の機能が非常に弱化されているということも言われております。こういう点から見まして、少くとも十万以下の小都市及び町村の自治体警察は、治安の上から考えましても、國家警察に移すべきであるというふうに考えられます。そうしてもしできますれば、中央の財政において大巾に失業対策費が削られております関係もあり、地方團体において今後大量に生ずべき失業者の救済のための費用を、出し得るような財源が與えられるということを望む次第であります。失業対策費が非常に貧弱であり、またそれを出す余力がない。しかも警察の機能は非常に弱体化しておる。そういつたふうに地方の今後の社会状況、秩序というものに考え及びます場合には、まことに憂うべきものが予想されるのであります。國家から委任されました事務については、何ら整理が加えられず、かつ國家から委任された事務についての國家の負担金も十分にこれが支給されておらない。それにもかかわらず今度の予算によりまして、地方の財源は配付税において、また地方債において大巾に削られたのであります。こういう状態になりますれば、地方において中央の政策に從つて、実際の行政を実施しておるその地方團体が、國内行政を完全に実施し得ないという事態が発生いたします。こうなればこれは地方の問題ではなくして、國家の問題に移ります。各省の企図しておるところの実際の國内行政が実行できないという問題になるわけであります。そうなれば結局國庫補助金をふやすとか、何とかそこに策を講じなくてはならない結果に至るのであります。この点においてまず第一に今度の國家予算の收支均衡ということは、それが実行されて行く間において、そのバランスが破壊される危険が十分に認められるのであります。
 次に地方團体の歳入の面でありますが、地方税につきましては、今回地方財政委員会からタバコ消費税、特別行為税、果実引取税といつたようなその他いろいろな提案がありましたが、すべて否決されて結局住民税を約五割引上げる。それから地租を二・五倍、家屋税を二倍する。こういうものだけが実現したわけであります。それで今度の地方予算を見てみますと、地方の独立税は地方收入全体の四三%という割合を占めることになります。国家予算の租税收入の割合は今年度に非常に多いのですが、七三%、それと比べましても、いかに地方團体が独立の財源に欠けておるかということが明らかであります。しかもこの與えられた独立財源の内容も、きわめて弾力性に乏しい零細な租税が多いのであります。從つて地方独立税をどういうふうにして強化すればよいか。これは從来から問題にされておる点で、國税においてあらゆる租税を徴收しておりまする今日、非常にむずかしい問題でありますが、理論的には所得税附加税が一番正しいと考えられるのであります。しかし所得税自体が、今日やみ所得等の関係で完全に國民の所得をとらえておらない。安本の國民所得と大蔵省の課税所得とを比較しますと、五五%という割合になつております。これだけで判断するのもどうかと思いますが、簡單に見ますと、そういつた欠陥を持つておりますので、これに附加税をさらに課税することは、その不合理性をさらに強めることになりますので、この所得税附加税の問題は、あとの配付税の問題と一緒に取上げたいと存じます。それで私の提案としては、これは税率の低い一般財産税というふうなものを考えてみてはどうかというふうに思います。すなわち土地とか建物とか、または山林、書画骨董、附く價証券、預金、そういつた財産の総額を課税標準にして、その所得者に課税する。その場合に一定の免税点を設け、累進課税を行う。こまかい点はよしますが、そうしてその財産の評價を民主的な地方の評價委員会にかけて決定する。今日御承知のように、一般の國民はたけのこ生活をやつて日々を送つている実情であります。そういう場合に二十万、三十万以上の相当な時差を所有している人たちが、今日の地方團体の財政危機に直面して、その一部を分担することは、りくつが通るのではないかと思います。アメリカの都市の收入は、一般財産税すなわちゼネラル・プロパーティー、タックスによつて、六割から七割を收入として上げております。そうして財産評價の技術も非常に進歩して、今日ではかなり性格な科学的な方法が行れておる。こういう点からも、この一般財産税を考えてみる必要がある。それから今日のようにインフレーシヨンの高進します場合には、地方團体においてもこのインフレーシヨンに乗り得るような税種がぜひ必要である。そうでなくてはとうてい財政を運営し得ない。そういう意味で、ある種の消費税を地方團体の財政に引入れる必要があると思われます。すでに酒消費税は行われておりますが、タバコ消費税その他の消費税系統のものも考える必要があると思われます。最近、これはアメリカだけでなくて、英國もそうですが、都市その他の地方團体においても、いろいろな消費税とか賣上税というものが新しく設けられて、その財源を補つておるという実情にあります。
 それから地方配付税、これは今度の予算にあたりまして、非常に大きな問題になつております。今まであまり一般の人から注意されなかつた配付税が、今日は一つの大きなトピックになつておる状態であります。國か所得税、法人税として收入したものの中から、地方團体にその課税の不足力とか財政需要を標準にして、配分いたしましたこの配付税は、日本だけではなくて、アメリカでもドイツでもその他でも、もちろん行われておる組織でありまして、これは今日の資本主義の発展の段階においては、経済発展の地域的な跛行現象は免れ得ない一つの経済現象であります。それから前に経費のところで申しましたように、地方團体の行政費が、國家行政的な性格を強めて來るということも、これは今日の國家の状態においては必然の傾向であります。さらに所得税のような非常に有力な近代的な租税が、國家税源を拡大するために、國家の方に集中される傾向も、ドイツでは一九二九年にワイマール憲法で行われましたが、アメリカでも同じような傾向を持つております。
 從つてそういうことを総合して判断いたしますと、どうしても國から地方配付税を地方團体に與えて、國内全体の均衡のある行政を遂行するということは、これは必然的な一つの姿であります。ところが今回の予算を見ますと、地方配付税と申しますのは、法律の條文には所得税及び法人税の三三・一四%を配付税にまわすという規定になつております。それによりますと一千四十九億円ということになります。それが五百七十七億円に削減されたのであります。約半分になつたわけであります。從來ともこの國税の配付税への繰入れ割合はたびたび変更されております。しかしながらその変更の理由は、たとえば入場税が地方團体に委譲された場合とか、または地方に六、三制や自治体警察が行われるので、経費がよけいいるという理由で、変更されて來ております。ところが今回はそういつた具体的な理由ではなくて、國家予算の均衡化を実現するということによつて、ほとんど一方的にこの法律で保障された配付税が半減されたわけであります。もちろん法律の改正は今後行われるでしようが、地方配付税が日本に最初できました昭和十五年、その当時のことを考えてみますと、それまで地方團体においては所得税附加税を本税の約五割とつておつたわけであります。都道府縣、市町村税合せて五割とつておつたわけであります。それを國が所得税を増徴する必要上、附加税の賦課を禁止した。そうして代償――それだけでもありませんが、主としてその代償という意味で、同時に地方團体間の財政の不均衡を暖和するという意味で、配付税が設けられたわけであります。そういうことを考えてみますると、別に地方の独立財源を今度拡充したということがなくして、この地方配付税を大巾に削つたことは、少くとも地方自治という新憲法によつて保障された自治の観点から見る場合には、きわめて理解しがたい一つの事実であります。
 歳入歳出の両面にわたりまして検討して参つたのでありますが、國家予算の收支の均衡を期する、そのために地方財政に大きな犠牲が余儀なくされた、これが正直なところ地方財政の実情であろうと思います。こういう状態をこのまま放任しておきますれば、教育、また災害の復旧、警察、社会救済その他いろいろな重大な國内行政が、実行不可能な状態に陷るしかないのであります。從來もきわめて貧弱な状態であつたものが、さらに一段引下げられなくてはならない、その結果は一因の文化水準が低下し、災害が頻発する。また治安が乱れるという結果を発生いたします。またこのままに放任いたしますれば、國から地方へ移されました負担が、すでに地方の財政におきましては、いろいろな税源をあさり盡して、もはや余力がない。その上にこういつた窮地に追いやられますれば、当然にそこに零細な住民課税を徴收する、また住民税を重課する。今日でもある町村においては住民税が法定の制限の十倍に達しておるところもあります。さらに強制的な寄付が盛んに行われる、こういう状態になりまして、きわめて不合理な大衆負担的な徴税に追込まれる、そうしてますます一般國民大衆の生活を窮乏化せしめる、そういう状態が必然に生れるものと思われます。こういうことを避けるためには、先に申しましたように六・三制その他の國庫で負担すべき負担金は、正当な金額において必ずこれを負担しなくてはならない。それと同時に一般財産税、またタバコ消費税等によつて、地方の独立税源を拡充すると同時に、地方配付税を十分に交付しなくてはならない。この二点を私は強くここで強調したいのであります。從來日本におきましては地方問題が、一般に非常に軽く見られて参つた傾きがあります。これは從來の古い日本の中央集権的な、また官僚主義的な考え方によるものであります。さらにまた日本では社会文化的な問題が重要視されて來なかつたというきらいがあります。これは從來の軍國主義的な観念から脱却しておらないということの一つの証拠ではないかと思います。新しい民主的な平和國家である日本においては、國会においてもこういう点を十分しんしやくされまして、今度の編成されました國家予算を審議されんことを切望する次第であります。
 非常に簡單でございましたが、これで私の公述を終ります。(拍手)
#17
○植原委員長 質疑は簡單に願います。
#18
○志賀(義)委員 ただいま地方配付税及び六・三制の問題を言われましたが、六・三制の義務教育費の方でさえ今度の地方配付税の減少で影響しております。憲法では明らかにこの義務教育費は無料ということになつておりますが、公述人の御意見では、これをやはり憲法違反と認めるかどうかということ、これが第二点。
 第二点は、長崎市長及び長崎市会議長の名義で、おそらく他の党にも参つておると思いますが、昭和二十四年度地方配付税と地方債の決定についての陳情という項目で、ただいま言われました通り非常に削減された、これには七百二十億円くらいに削減されるとある。それもたいへんだと思うのですが、事実は五百七十七億円に削減されておるのであります。地方財政の方の権威として藤田さんはいろいろこういう方面にもお詳しいでしようが、全國的に見て、これで長崎市の方ではもう破産状態になるということが訴えてあるのであります。そういうふうになつて來つつある実情は、あなたの方でお調べになつたので大体どれくらいございますか。そういう点で訴えでもありましたならば、それについてどういうふうにお考えになるか、その二点を伺いたいと思います。
#19
○藤田公述人 第一の問題につきまして、昨日の朝日新聞にも載つておりましたが、新憲法には義務教育費は無償である。それで実際上地方の実情におきましては、いろいろな形で寄付であるとか、または子弟に自発的でなくて金銭を届けさす、そういうことが行われておるということが載つておりましたが、これは正式に市町村または府縣が授業料として徴收するということであれば、これは明らかに憲法違反ではないかと思うのですが、寄付とかその他の半ば任意的な性質を持つた、そういう方法をとつておるという場合にはどういうものですか、そこはまだ研究しておりません。
#20
○志賀(義)委員 任意的とあなたはお認めになるのですか、RTAに対するそういうものは……。
#21
○藤田公述人 それはまだ正確に確定はいたしかねます。
 それから第二の問題ですが、長崎からそういう陳情があつた。そのほかの市町村について特に私まだ調べたものはございません。しかしおそらく今度の予算が実行されれば、そういつた陳情は次から次に続出するものと考えられます。もし必要でございましたら、できるだけそういう資料も集めたいと思つております。
#22
○植原委員長 次に星加要君にお願いいたします。
#23
○星加公述人 私國鉄労働組合中央執行委員の、ただいま書記長をいたしております星加でございます。本年度の予算について公述いたしますが、まず最初に概括的なことを申し上げまして、次に歳入歳出等二、三一般的な政府予算について申し上げ、最後の点で運輸省の予算関係を申し上げまして、本年度の予算が國民生活並びに労働者に及ぼしますところの影響が、どういうものであるかという結論を出してみたいと考える次第であります。
 ます第一番に、今回の予算が編成されました経緯につきまして、われわれ一般がどのような感じをもつてこの予算を見ておるであろうかということでありますが、今日わが國の状態におきましては、占領政策の強い制限を受けることは当然でありますが、しかし本年度予算ほどそれを表に出して、そうしてその理由をもつて、はなはだ困難であり、國民が納得しないところのものを納得せしめようとしておるかのごとき印象を與えたことは少いと思うのであります。かくのごとくしては、実に自立経済への移行を目的としておるにもかかわらず、こりやり方がはなはだ非自立的である。國民の協力の從つて薄いのではないか。またかような感じが國民一般に瀰漫しており、また國会の審議も想像されるので、これに対する信頼も薄らいで來るのではなかろうか、民主國家として立ち直ろうとする場合における予算問題の取扱い方について、はなはだしい遺憾の点があつたと思うのであります。
 次に経済安定を優先せしめて、復興をあとにするということを平然として言い放つておるということであります。もちろん安定方策をとらねばならないことは当然であるけれども、安定はもともと第二義的のものであつて、経済復興がやはり主眼点でなければならね。経済を復興するために、これが一時安定の期間を通らねばならないというような考えもありますので、復興を捨ててしまつて、そうして安定方策にのみ集中をする。その安定方策たるや、またこれが資本家的な方策にのみ終始しておつて、これの実効の上るような眞の努力を傾倒する、労働者側、あるいは資本家側、これらを合せまして、國民一般が公平に犠牲を負担したところの方策を、実施するというような勇氣のある方策が実施されておらないという点が、はなはだ物足らないところであります。労働者の今日向うところの生活ははなはだ苦しい。これを一般國民的に見ましても苦しいのが当然であります。しかしこれで満足しておるわけには参らないのでやはり賃金値上げの要求等が現実において起つております。しかしながらそれをもししんぼうするとするならば、賃金値上げの要求を差控える。差控えるならば、ではどういうことが行われねばならないかというと、これは実質賃金の向上でなければならぬ。それでここに経済を安定せしめるというところに主力を置くならば、賃金の値上げをして生活を向上せしめるという方法が安定に害がある。ともに協カをせよというならば、賃金値上げの要求をしない。ではどうするか。もつと苦しくなれというなら、これは物事が世の中に進んで行かない。名目的に賃金の額が今千円もらつておる者が二千円、それからまた一万円、リュックサックに一ぱいの給料をもらうようになつてもつまらないと思う。ほんとうにつまるようにする、要するに実質賃金を向上して行く、賃金は千円でストップしておつても、その内容に今度は経済が安定して来るか実質的に二千百円になり、千三百円になつて行く、内容が計まつて行くという場合には、これに労働者もともに協力して進まれる事態であろうと思うけれども、しかしながらその政策を実行して、この予算を実行いたしまして、本年度の見通しを立てました場合に、実質賃金がはたして一銭ずつでも向上して参るであろうかどうかということを考えてみまする場合に、決して安定賃金は向上して参らないということがはつきりいたします。物價も騰貴するであろう。もはや主食の値上げは確実な事実であります。そうして今日ぼつぼつ起つており、またこれから六月までにやるであるであろうということも想像されておりますところの行政整理に伴う馘首、これらを勘案し、それに伴つて失業対策が十分でないから、失業がたくさん起る。それに加えて卒業をする人間が就職が困難であるというようなことを考え合せました場合に、これらの予算が組まれ、そうして経済が安定する、そうして國民として希望を見出し得るかどうかという点を考えると、決してそれから希望も、あるいは実際上の満足も全然無視せられたものであるということが断言できると思うのであります。かくのごとくしては、せつかく復興途上にあるところの日本の復興を、ここで一頓挫せしめるのではないか。
 次にこれらの予算かつくられまして、國民に示されるということになるわけですが、私は今までの間ずつと政府予算が國民と縁のない存在であつたということを、はなはだ遺憾に思つておる次第であります。終戰後初めて経済白書というものが出され、そうしてわが國の政治経済の状況がどういうものであろうかということについて、國民がある関心を持つに至つた。はなはだこれはよい傾向であると思います。しかしこの予算に関しましても、予算案並びに予算の説明等が、予算白書というような形でもつて、予算案がつくられた場合、もしくは予算案が國会において決定を見た場合、この二つくらいの時期において、新聞等でこれを発表していただく、そうしてその内容を國民が見まして、この予算では学校は何ぼ建つとか、あるいはこういうふうな仕事ができて来るから、わしは失業しておるけれども、あるいは救われるであろう、自分のむすこが今学校を出ておるけれども、これは就職が可能であるとかどうとかいう点が、この予算を見ることによつてほぼ見当がつけられるというふうにしていただきたい。そういう予算白書が発表されて、それぞれ國民がそれをながめて予算に対するところの考えが深くなつておるということが、すなわち政治教育であろうと思う。そうして衆議院の総選挙等が行われます際に、それぞれ政府においても政治教育というようなことを言い、代議士も立候補せられる場合に、政治教育の意味をもつていろいろ意見を吐かれるであろうけれども、それらをそのときにのみ聞いておるというのでは、実際上論議の正否を判断するのに当を得ない場合もあろうと思いますので、國民生活に重大なる影響を持つておる予算がつくられる場合は、これを新聞に予算白書として発表をして、その内容を普通の人間が見て、これがどういうふうに使われるかというアウト・ラインがわかるようにしていただきたいと思います。
 次に歳入に入ります。所得税が非常に重過ぎるということであります。これは数字的には前の人が申しておりますので省略いたします。特に労働者関係の源泉課税の額が大でありまして、このふえ方は、昨年度との対比の表を見ますと、他のいかなる税金よりも多いわけでありますから、いかに労働者を圧迫したところの税収入方策であるかという点は、はつきりいたしておるわけであります。次に専賣益金の晦收という点が大きく見積られておりますが、専賣益金は主として酒並びにタバコということになつて参ります。しかしこれは國民大衆の必需品でありますので、これからするところの費用の増大は、実質質金低下の重大な要素になろうかと考えております。
 次は歳出の方につきまして、中小学校費のうち、これを算定するに当つての基礎率が、生徒五十人に対する教員の比率を約一割減じて計算に当つておるという点でありまして、これらは小学生並びに中学生という年齢の低い初等教育におきまして、最も粒のそろわない、先生の手間を多く要するところのものをここで削減することは、教室の質的低下を物語つておるものであります。また公共事業費におきますところの削減の影響が、六・三制に対してはなはだしい阻害を及ぼしておることは、いかにも教育を軽く取扱つておることになりますので、その点も改善しなければならぬところであろうと考えます。
 次に社会及び労働施設費関係でありますが、ここにおきまして今日非常にやかましくいわれておりますところの行政整理に対する手当の項目がないということであります。こういうことは一ぺん首をやつて外に出してみたならば何とかなるであろう。そうしてそこでまた問題がやかましくなつて來たら、そのときにいやいやながら手を打とうというような、はなはだこれは人ごとのような冷淡な考え方を現わしておるものと言えます。このような態度であつてはならないので、この点を修正する必要かあると考えます。
 次には價格調整費でありますが、價格調整費は歳出の約二八%を占めておるところの非常に大きい額の支出であります。これが非常な増殖を見ておりますが、この價格調整費がはたしてこれだけ必要であるかどうか、これを切るところに今回の、竹馬財政を自主的財政に切りかえる根本的手腕があつたのでないか。これをかくのごとく増額しておいて、自立経済への移行ということも、はなはだ私は不可解に感ずる次第であります。價格調整費の使い方が國民の納得の行く程度詳細に明らかにせられなければならないと考える。
 次に地方配付税の配付金の減少であります。この点は前の公述人から詳しく述べられておりましたが、結論するところは、住民税その他が非常に大きくなつて、直接國税以外の税において、國民一般が非常な苦しみをなめるであろうという結論であります。
 次に国債費百三十六億円等もありますが、これらにつきましても國債費はいろいろに考えられようと思いけれども、私どもの経験からいたしますならば、この國債費のごときものに今力を入れてどうするかということを言いたい。今日犠牲をめいめい平等に分担をして、苦しいところを乘り切ろうという場合に、國債費のごときは、これをたな上げにしてさしつかえないものであつて、これを生産その他國民生活を潤おす面に使つてさしつかえないものと信じております。
 次に國鉄の状況に入ります。今回の國鉄の予算が組まれるにあたりまして、旅客賃金を六月から六〇%値上げをするということになつております。しかしながら旅客運賃を六〇%値上げすることは、ただいまの輸送原價からいたしましてこれを計算する場合に、はなはだ不当であると申さねばなりません。旅客運賃は昭和十一年に比較いたしますと、やはり非常に率が悪くなつております。悪くなつておるということは事実ではあるが、しかし輸送原價を割つておるということではない、しかるに貨物運賃はどうかと申しますならば、貨物運賃の方は輸送原價の四四%でありまして、輸送原價をはなはだしく割つておるのであります。従つてこれを二倍にしましても、まだ輸送原價の一〇〇%までには達しないという非常に低率な運賃であります。また貨物をたくさん輸送いたしますが、二十三年度は約一億三千万トンぎりぎりまで輸送をいたしましたが、これらの輸送が完遂されれば、それだけよけいに國鉄の赤字がふえるということにもなりますので、経営上はなはだおもしろくない。ここに國鉄の独立採算制、もしくは自立経済というような観点からこれを評する場合に、輸送原價を、とにかくまかない得ておるところの旅客運賃をなお六割ふやして、輸送原價の半分にも足らないこころの貨物運賃をそのまますえ置いて、はなはだ脱法的な運賃を通用させて行こうとするところに重大な誤りがある。かつこの貸物がだれによつて利用されるかというと、やはり資本家階級の利便に供されるという点が多いのでありますから、この点でもやはりこれは資本家的な利益を一方的にはかつておるということが、はつきり言えると思うのであります。従いまして運賃につきましての値上げをするならば、どうせこれは値上げをしなかつたならば、この計算は成立たないのでありますから、同じやるならばりくつにあつた方の運賃を上げて、そうして予算を組むべきであるという点が重大な点であります。
 次に今回國鉄に與えられております予算中、非常に重要な項目は工事勘定でありまして、これが二十三年度の工事勘定は二百億円あつたわけであります。それが今までいろいろ明らかにされておりますように、すべての予算の費用は、惡いといわれるのものでも、前年度と比較しましてほぼ同じくらいの金額であつた。しかしマル公の値上りをしました場合に、これが半分くらいより実際の効果がないといわれて、非常にきゆうくつであるということが言われた。ところが國鉄の工事勘定におきましては、二百億あつたものが、本二十四年度の予算においては百五十億と、明らかにここに五十億の予算が削られ、そのために一体どういうことになるかと申しますと、これは國鉄がもはや仕事をすることができないという現実を呈しております。百五十億の予算をもつて工事に当るといたしましたならば、現在予定されておるところでは、山陽線の非常に弱体化しましたところの三十七キログラム軌條を五十キログラム軌條に取りかえろ。この工事が一つできるだけでありまして、他のことはすべてできない。客車あるいは機関車、電車等の耐用年限に達しておるが、その耐用年限を延ばしてぎりぎり一ぱいまで使う勘定にしましても、なお本年は廃車しなければならないというような両数がありますが、それを廃車にすることができない。新車をもつて埋めることができないからそういうことになる。また貨物の輸送は二十三年度は一億三千万トンやりましたが、本年度は一億四千万トンやらねばならない。そのときにあたつてやはり貸車をふやさねばならぬ。そのふやさねばならぬ貸車は四千五百両の新造を要するわけでありますが、それができない。從いましてこの輸送要請というような点も、はなはだ残念ながらこれらの計画が伴わない場合、現実的に輸送要請にこたえることができかねるような実情にあるわけであります。また修繕費のごときも非常に削減を見ておりますので、現在どうにか復興しつつあり、あるいは惡い事が修繕されて走りつつあるものが、完全に修繕を行いまして走り得るであろうかどうかということが、はなはだ疑わしい事態に到達したと申さねばなりません。そのほかただいまははつきり公表はされておりませんけれども、予算の面から人件費を推定いたしまして、國有鉄道においては約十万人の馘首が決定的であります。このように人数の面においては十万人を馘首しなかつたならば、國鉄の運営ができない。これは予算で運営ができない。それからまた貨車の新造も、運ぶのが生命である貨物の輸送も、これをとめなかつたならば、鉄道として成立つて行かないという現実であつて、とにかくジリ貧的にせつかくここまでこぎ着けた國鉄の復興を、國家の輸送の動脈を再び麻痺せしめなかつたならば、経済の安定ができないかということを考えてみると、はなはだ情ない状態であるといわざるを得ません。
 ここで皆さんが國鉄に対して一應の疑問を持つておられるであろうと思う。それは國鉄が赤字だ、赤字だということを言つていることであります。國鉄は一体大きい資本を擁して、独占的な、別に競争相手のない仕事をしておつてどうして赤字を出すか、はなはだふしぎではないか。次に國鉄の人員が六十万人といわれるが、ほかがそれほど増加している例もないというようなことが言われる。そういう多数の人員を不要に抱えているのではないか。それらがこういう赤字を生み、また能率が惡い。今回ここに予算を縮小されるというような原因をなしているのではないか、というふうにお考えになるかもわからないと考えますから、その点申し上げておきます。これは戰争前は赤字というものはなかつた。昭和二十二年から初めて國鉄に赤字が生じまして、二十二年、二十三年の赤子の累計は四百四十億円であります。これに対しまして一般会計から繰入れました金が三百九十九億であります。なほ運賃値上げが予算の関係上、四月から行われずに六月からこれを行いますので、四月並びに五月の赤字を三十五億出すのであります。これを合計いたしまして七十五億円が、この六月末までにあるところの赤字であります。これをもちまして國有鉄道は公共企業体に移行いたしまして、独立採算制に入るわけでありますが、七十五億円赤字があるということであります。これらの原因は一体どこから来ておるかと申しますと、これはマル公政策によつて物價をある一定の線に置くために、國鉄の運賃が犠牲になつておるということであります。これは昭和十一年度の人件費対物件費と昭和二十三年度の人件費対物件費との割合をとつてみますと、昭和十一年度における人件費は五八%をとつてある。これに対して物件費は四二%であります。昭和二十三年度になりますと人件費は三六%であり、物件費は六四%であります。人が多い、あるいは賃金が高いというのでありますが、業務を遂行するにあたりましての比率は、人件費と物件費とにこれをわけてながめます場合、人件費だけをとりますと、昭和十一年度の五八%から、昭和二十三年度は最少の三六%に低下をして参つておるわけであります。國鉄の物件費が一体どれほど高いかと申しますと、昭和十一年を一〇〇としまして、二十三年度は日銀の卸賣價格によるマル公の割合が一七六、これは昭和二十三年度のマル公の日銀の調べによる倍数であります。ところが國鉄が買込みます物資は、特殊な石炭、鉄鉱、木材等がおもでありますから、これら鉄道が使う物品だけを集計して、そこに國鉄の物價指数というものが出て参ります。これは一般の物品のマル公が一七六倍でありますが、國鉄だけの使用する物品のマル公の平均は二六一倍という指数が出ておりまして、これが國鉄の物價指数と言えるのであります。このように國鉄が使用するところの主要消耗品、買入れ品におきましては、やはり普通一般の物價指数以上の騰貴をしておるということであります。かくのごとく物件費が二百六十一倍程度の増加をいたしておりまするにかかわらず、運賃値上げがそれに伴つておらないということは、昭和十一年を一〇〇といたしまして旅客が五十倍、物が七十七倍という倍率になつております。次に石炭であります。國鉄が使いますところの主要な消耗品のうちの最も大きいものは石炭であります。この國鉄の石炭は、総量において七百六十万トン使用いたしまして、金額で三百億円使います。この石炭を一体どれだけの値段で國鉄が買うておるかというと、山元價格で二千九百六十九円の値段で買込んでおる。しかし特定産業、すなわち重要産業として指定される鉄鋼あるいは化学肥料等でありますが、これが買い込みます値段が千円であります。從つて國鉄が買うのは二千九百何がしですから、三千円と見ておいて間違いがないが、重要産業が使いますものが千円でありますから、約二千円の差に近い三倍の値段でこれを買うている。同じく國家のマル公政策を維持するための安定帶物資として、あるものには今回の予算においても非常な増額をしているところの約二千億の補給金が支拂われておる。しかるに國鉄においてはそういうものの支拂いを受けない。從つて石炭にしましても、重要産業はこれを千円で買う。われわれの方は三千円で買う。同じく安定帶物資の政策を実行せしめるために協力をする國鉄の運賃でありながら、その犠牲となるべき運賃には價格調整費がもらえない、あるいは補給金がない。このことは非常に不公平な取扱いであつて、かくのごとき原因が重なつて赤字の現実を來しておるということであります。これを言はずして、國鉄の経営が惡い、人員が多過ぎる、そこから赤字が出ておるように宣傳することは、はなはだしい間違いであるといわねばならない。
 人員の点につきましても一言いたしておきます。昭和十一年は二十一万人であつたが、昭和二十三年は六十一万人でありますから、約三倍であります。では三倍も人間を使うならば、線路が三倍に延びたかというと、そうではない。線路は元の通りである。そこを走る汽車の回数を三倍にふやしたかというと、そうでもない。汽車の回数は同じく一です。しからばその三倍の人間をどのように使つておるのかというと、これを仕事の総量で計算をいたします。輸送する人間、貨物のトン数、列車を走らすキロ、この三つをかけて輸送人トンキロと言いますが、この人トンキロ当りの人間は昭和十一年で五・四人であります。百万人トンキロ当りの仕事をしますのに、昭和十一年は五十四人の人間を要しており、昭和二十三年は五・三人であります。これを比較しますと、はなはださ少ながら國鉄においては、総仕事量において〇・一人だけ仕事の能率を増進せしめておるという現実であります。かくのごとぎ状態でありますのに、本年度の予算が、復興よりも安定というところにあまりにも偏し過ぎた予算であるために、これは國鉄の実例をもつて見ましても、決して本筋の國家を復興するための予算ではなさそうであります。またこの犠牲となるべきものが労働者の方に一方的に片寄り過ぎているということが証明されると思う。その点を修正されて、眞にこれを実行した場合に、國民生活が向上し、日本の復興に寄與するように努力されるよう、切にお願いをいたす次第であります。(拍手)
#24
○川島委員 ちよつと星加君にこの機会にお尋ねしておきます。終戰時における國鉄の從業員の数と、今日の数とは大同小異だと私は記憶していますが、後年の記録によりますれば、終戰時の國鉄の輸送量は貨物の例をとつてみると、約八千万トン程度であります。しかるに昭和二十三年度は、一億三千万トンの輸送を達成した。さらに二十四年度は一億四千万トンの増送計画があろうと思う。そういうことを勘案して行きますと、終戰時における従業員の数そのままで、昭和二十三年度は一億三千万トンの輸送目標を達成したということになれば、貨物輸送の点だけを見ましても、すでに終戰当時の七五%の増送を達成しておる。しかるにまた二十四年度は一億四千万トンの増送計画があるにもかかわらず、その反面において六十万人の従業員中、十万ないし十四万人を整理するということになれば、組合としてははたして一億四千万トンの増送目的を達成できる自信があるかどうか。またそういう整理の余地が鉄道部内においては事実上存在しているかということが一点であります。
 第二点は、最近三月初句以来行政整理の問題を中心にして、ことに國鉄の現業の相当永年勤続者が、陸続として辞表を提出して、退職したものが多くなつたというのでありますが、これはどういうとこうから出て來たか、その点の消息をひとつ参考のために聞かしていただきたい。
#25
○星加公述人 まず終戰直前と現在とでは人数があまりかわらないのではないか、そうしてその人数をもつて一億三千万トンの輸送を努力次第でやつて来たが、努力も限界に達しておるのではないかというふうなことを言われておるように思うが、その通りでありまして、終戰直前の人数は、現在と比べましたならば、やはり多少少かつたのであります。順次復員その他によりまして増加をいたしておることは事実であります。しかしながら、あまり目立つて何倍というようなふえ方はしておりません。また輸送に対しまする努力にいたしましても、ただ努力のみではなく、昭和二十三年度におきましては、努力もいたしましたが、これに伴うところの労務用の配給も多少ふやす。あるいは貨車その他の計画もありまして、これを新造して補いまして、昨年度の前半期におきましては、輸送量が計画通りに参りませんでしたが、後半期におきまして、設備の改善並びに車両の新造車がまわつて参りましたので、輸送能率が上りまして、予定計画を上まわるという実情で、年度決算といたしましては、一億三千万トンにようやくこぎつけたという実績を上げ得たわけでありますから、やはり人間の面並びに物の面、こういう面からの要求が満足されるというところに眞の実績が上つて参ります。從つて一億四千万トンの輸送に対しての計画にすべて水泡に帰したという物的の面からいたしまして、来年度は一億四千万トンはどうしてもできない。その点が修正されない限り、一億四千万トンの引受けは安請合いに終つてしまうということははつきりと申し上げられます。
 次にお尋ねの点は、ただいま総計がまだ出ておりませんが、推定いたしますところ約一万人くいらはあろうかと思われる。その原因は、もし行政整理にわたつて、行政整理としての退職をするならば、諸君は退職金としての現金を支拂われないかもしれない。先にやめておいた方が退職金を現金支拂いとして受けられるであろうということが言われたのであります。それでやはり現在退職の希望を持つておる者がありますので、これらは多く見積りまして全國として約三万人ぐらいになるのではなかろうかと思つておるのであります。これらの人が、では行政整理を待たずして、退職金をもらつて現金をつかんでやめた方が、今後同じ苦しい目にあうとしても、よかろうという予測を持つておりますので、それで退職希望を申出た。それを全國的な数で申しますならば、約一万人くらいと想定してあまり過不足なかろうという考えであります。
#26
○川島委員 今三月三十一日までにやめた一万人の大多数の勤続者が、辞表を出して、退職の認定というか、許可というか、退職してすでにもう現金をもらつておるのですか。
#27
○星加公述人 いや、もらつておりません。ただそれは辞表を三月三十一日までに提出したならば、それは現金で支給されるという約束になつておるというだけのことで、ただいまは辞表をとにかく提出しただけであります。
#28
○川島委員 それからもう一つ、三月の半ばごろですか、運輸省の相当重要な位置の者が、全國の現場に、三月三十一日までにやめないと現行の退職手当がもらえない。整理にあつた場合の退職手当は少くなるかもしれない。こういつたものを準公文書で全現場に流したということを私は聞いておる。そういうことがからみ合つて一万人もの多数の退職志望者が出たという話を聞いておるのでありますが、その点について組合は関知しておりませんか。
#29
○星加公述人 それば運輸行から出たものは、現金でなくなるおそれがあるということを言うたので、各地方局によつてそれを不利になる予測があるというふうに表現したところもあります。私が現に知つておるのでは、不利になる、三月三十一日までにやめた方が有利である、そういう表現をしておるのを私は知つております。けれどもそのほかの表現はあるいは違つておるかもしれません。これは私が知らぬことですからちよつとわかりませんが、運輸省そのものから出ておるのは、現金でなくなるおそれがあるというので、それを受取つて末端へ落すものが、今度はそれが不利になるという表現を使つております。
#30
○植原委員長 次の公述人畠山一清君にお願いいたします。
#31
○畠山公述人 私は畠山一清であります。過去四十数年間、産業界ことに重工業界に勤めておりまして、その意味をもちまして産業人といたしまして、本問題に対してごく簡單に申し上げます。この予算問題は画期的のものでありまして、新聞雑誌その他にも連日掲載せられておりますし、また委員諸公におきましては、ことに晝夜をわかたず御検討のことでありましようから、十分御了解のことと存じますので、ごく大体のところをかいつまんで簡單に申し述べさせていただきたいと思うのであります。
 結論から先に申しますと、私は今度の経済安定均衡予算というものには賛成であります。満腔の賛意を表し、むしろかような、ほんとうの経済を安定するような自主的な方策が今までとられておらなかつたということを遺憾に思う。と同時に、今度の予算に対しては、これでなければならぬものである。これをおいて他に日本を救う道なしとまで私は信じておるものであります。従来非常なインフレ高進が起つておりますが、これらのごときは財政インフレという名前が起つておるほどでありまして、財政面から起るインフレーションが多いのでありまして、ほんとうに経済の安定を全圖して、インフレを起さないように経済自立化の一大方向轉換をしたのでありまして、まことにけつこうなことであると存じておるのであります。しかしながらこの予算を実行する上には、非常な容易ならざる耐乏生活が國民に要求せられるのであります。所得税にいたしましても、昨年の二〇%が三〇%以上に上るというようなことでありまして、なかなか國民は並たいていではこの予算の実行を乗り切るわけにはか行かぬと思います。しかしながら新聞にも出ておりましたが、戰勝國のイギリス國民が戰後ただちに四〇%以上の、あるいはこのごろ三七・八%といつた重税に甘んじて、しかも國内の生産を輸出方面に向けて、非常な耐乏生活をして、イギリス國の復興に絶えざるところの努力を拂つておるということを思いますならば、戰争に負けたわが日本としましては、当然このくらいの難関は忍ばなければならず、またこれは必要なる難関であろうと考えるのであります。
 そこで少しく予算面について検討してみますと、歳入の面におきまして、インフレーションの要素が多分に見受けられるのであります。ただいま申しました所得税のごときも、前年の千八百三十五億というものが六八%ふえておりまして、今度は三千百億になつております。法人税が五一%増加しておりますし、間接税も物品税が五四%、織物消費税が七一%というふうに、非常にインフレ的の要素が織り込まれておるのであります。反対に歳出の方面を見ますと、これはまたデフレ傾向を非常に帶びておると思うのであります。一般会計並びに特別会計を合計して一兆七千七百億ということになつておるのでありますが、なるほど昨年から見ますと、六六%の増額になつております。ところがこの六六%の増額は、主として非生産的な行政の費用であるとか、あるいは金融資金を調整するための費用であるとかいうものが多いのでありまして、ほんとうに生産活動を盛んにする面におきまして、あるいは政府事業というものがふえておらぬどころが、非常な削減であります。例をとつて申しますならば、一般会計の公共事業費は五百億になつておりまして、前年と同額であると言われておりますが、物價の値上りを考慮いたしますと、結局百億の減少であります。それから農林省の方の農地改革の仕事は、わずかに四十億になつております。この農地改革費は、年々数百億もありまして、今度は二百八十億の予定をつくつて要求しておるのであります。ところがこういうことになつたのでありますが、事実はその予定でもつて仕事をどんどん進めておつたのであります。それで工事を施行中のものもありますし、すでにもうできてしまつたものもたくさんあります。関係業者はそれらの跡始末をどうするかということで、非常に大騒ぎをやつておるような次第であります。鉄道の方面におきましても百六十五億でありますが、これが要求は四百五十億で、その三分の一ぐらいを今度予算に組み込まれたのでありますが、これは非常な減少でありまして、これらのごときも、ほとんど農林省関係の事業と同様に、仕事の方はどんどん進んでおるのであります。そこで車両のごときものはわずかに四十億余程度であつて、そのうち三十何億に相当する分はすでにできております。できておつたけれども、この予算がきまりませんから、また金が拂えぬというような状態でありますが、これをどういたしますか。そうすると本年度の仕事としては、ほんの残りが数億円しかないということになりまして、本年一年はこういう車両産業をどういたしますか。その他逓信、商工等の仕事におきましては、ほとんど軒並に実際の仕事がやれぬほどになつております。こういうふうに実際の仕事をしないで、國民がするべき仕事がないということになりますれば、中小工業はもちろんのこと、大工業といえども仕事がなくては成立つて行きませんから、いずれ崩壊の運命にさらされることは覚悟しなければなりません。そこで産業が萎摩沈滞し、崩壊する結果、失業者が山のごとく出る。こういう状態において、予算面に繰入れました税金その他が徴収できるでありましようか。もしこれができないとすれば、ゆゆしいことになると思います。本予算は経済の安定と均衡を期しておりますけれども、その規模、計画は非常に困難になるのじやないかということを心配している次第であります。もししいてこの歳入の確立を期するがためにむりなことをすれば、そこに非常なむりが起り、摩擦が起り、社会問題が起り、その虚に乘じて少数の急進分子が漁夫の利を占めることにならぬとも限らぬということを非常に憂えている次第であります。この点が本予算で最も問題となる点であろうと存じますから、どうか議員諸公におきましては、この点に深く御留意を願いまして私が今憂慮しているような事態が起らないように、善処していただきたいと思うのであります。
 そこでこの予算の輸入と輸出の間のインフレーション要素とデフレーション傾向との矛盾をどうしたらなくすることができるかという問題でありますが、これには本予算のごとき非常に高度の水準にあるところの予算とマッチするように、その予算にまで産業政策、というか、資金政策、産業対策というものを、そのレベルまで引上げなければならぬであろうと思います。ところがそれが上る前に、政府としてぜひやつていただきたいことが一つあります。それはそのつなぎの手段でありますが、皆さん御承知の通りに政府支拂いの遅延であります。これが一千億円に達しております。この一千億円という金は通過の三分の一であります。通過の三分の一に達するところの政府未拂金を擁しておつて、それでこの金融政策が現在の高度な予算の編成とマッチするということはもはやないのであります。この未拂金の多額に上つておることにつきまして、政治的意味も多分に含まれておるのでありましようが、あるいはことさらに煩瑣な手続をして支拂金の延滞を企図する。なるたけ金を出さないように通貨の膨脹を防ぐようにする。従来は政治的の意味があつたでありましようけれども、もはや安定予算というものができた以上は、インフレーションに対する心配はもうないでありまするから、こういう政策は一刻も早く捨ててもらわないと困ると思います。このために業界、一般民間における金詰まりは、私がここで喋々申し上げるまでもなく、非常なものでありますこの白堊館の中では、とうてい想像のできないような状態であります。新聞には、床屋の主人とからかさ屋のおやじが、納税を苦にして自殺をしたというようなことが出ておりますけれども、ああいうようなことを読んだくらいではわからぬほどの深刻さであります。でありますから、どうかして政府の支拂いは一刻も早く、そうしていろいろな手続とか、從来の政治的傾向をすべて一掃して、早急に拂つていただきませんと、業界は身動きのできないような状態になります。
 それからこの根本策といたしましては、何といいましても、國内産業の自主的の振興、もう一つは外國資本の援助によるという、この二通りよりしか考えられぬのであります。前者の國内産業の自主的な振興に対しては、先ほども申しました金融政策が、ほんとうにもう少し高度に発揚せられぬと、この発達は望まれぬのであります。そこでその資金計画でありますが、大蔵省の資金計画はまだはつきりと私はのみ込めぬのでありまして、何だか先に持ち越されておる面も相当あるように思うのであります。資金需要が三千六百五十億のうちで、二千四百七十八億は金融機関の融資と自己調達で出し合います。残りの千百七十二億が不足するのだというように言われております。そこで今の外國の援助資金、見返り資金が千七百五十億あります。この千七百五十億のうち、二百七十億は通信、鉄道の方に向けられるということで、残りの千四百八十億はどうなるかということが、まだはつきりしておらぬようであります。業界では千百七十二億というものが不足だと申しますけれども、今日の金詰まり状態から、あるいは政府のふところかげんというような面からしまして、なかなかこれでは足らぬと思います。でありますから、この千四百八十億を、私は全部産業資金としてまわしていただきたい。こういうことにお願いできれば、産業もある程度よくなるのではないか、かように思うのであります。ところがこの千四百八十億の大部分は國債の償還に充てる、こういう計画のようでありますが、しからば國債の償還をしまして、そうして市中銀行を通じまして産業資金の方にまわるような方法に御配慮を願いたいと思うのでございます。これが單に國債の償還に充てるだけであつて、日本銀行に入つてそれだけの通貨が収縮するというだけでは、いわゆるたんす預金と同じようなことであります。それはそれだけ通貨が収縮するというだけでありまして、復興産業の活動において、何らの貢献ももたらさぬのであります。でありますから、責任あり、経験を持つところの市中銀行を十分に活用いたしまして、数回繰返し繰返しこれが産業資金の方にまわるのであるならば、この千四百八十億は三千億にも、五千億にも相当するような働きをすると思います。せつかくのアメリカの援助資金が來るのですから、わが國の産業の活動の潤滑油として、まわしていただくことを切に切に希望する次第であります。
 それからそのあとの外資の導入の問題でありますが、外資導入につきましては、いろいろと巷間説をなしておりますし、またいろいろな計画を立てておる者もあるようであります。非情に大きな計画をもつて國有鉄道をアメリカにまかせてしまえとか、あるいは失業救済事業を兼ねて、この際北は北海道から南は九州の果てまで、自動車専用道路をつくつて、そうして貨物自動車輸送あるいは旅客の輸送も自動車でやる。これは軍用的の面から見ても非常に重大であるから、アメリカは必ずやるに違いないから、やつたらどうだというような計画を立てておる向きもあるようであります。その他港湾、築港、いろいろと國有産業につきましても、基礎産業につきましても、あるいは水力発電事業というようなことにおきましても、計画を立てておる者もおるのであります。けれどもいまだ國際関係が十分に整備しないときでありますから、ただちにこれを今行うことはできぬでありましよう。けれどもやがて時が来たならばすぐに間に合うように、議員諸公におかれましては、強力な委員会を組織して、こういうことを御研究になつておいていただきたい。そして時が來たらばすぐに間に合うというように、政府と共同して御研究を願いたい。また今、ほんのこれは個々にまちまちに起つている小さな外資導入の話が方々にあるのでありますが、こういうことに対しても、非常に役立つことでもありましようし、それらにつきましては、法人税の軽減とか、あるいは國外の交通の自由にできるような事柄、そういう方面にいろいろとお願いをしたいことがたくさんあるのでありますが、どうぞよろしくお願いいたします。これをもつて私の公述を終ります。
#32
○植原委員長 御質疑はありませんか。――ありませんければ次の公述者寺井達雄君にお願いいたします。
#33
○寺井公述人 私産別会議を代表いたしまして、意見を申し述べます。今回の一般会計七千四十六億に達するところの巨大予算につきましては、先ほどからいろいろそれぞれの所属する立場におきまして、鉄道関係あるいはまた公共事業、地方財政、種々の角度より検討されておるのでありますが、私は主としてこの予算によつて労働者の生活が現実にどうなつて行くであろうか、また労働者がそれによつて生計を立てるところの企業が、どうなつて行くであろうかということを、私の方の組織が調べました具体的な数字に基きまして、申し上げたいと思うわけであります。
 まず歳出の面におきしまして、價格調整費の問題に触れたいと思うのであります。これは総額二千一二十一億、安定帶物交として千二億、輸入物資補給金八百三十三億、塩價格差補給金三十七億、繰越分百五十億、これに船舶運営会補助金を加えますと、全予算額の二九・五%を占めております。またこれは二十三年度の一三・二%よりも一六、三%増であります。このうち輸入補給金分は前年度が貿易資金特別会計から出ていたのでありますから、これはまるまる増加であります。また安定帶分におきましては、二十三年よりも総額の上で六〇%増でありますが、生産計画は石炭四千二百万トン、鉄鋼百八十万トンと、それぞれ引上げられているために、石炭を除き單位当りの補給金額は下つているのであります。このために中小企業を犠牲とする集中生産、生産價格中の賃金部分の切下げで、生産者價格を現状のまま押えようとするのであります。すなわちトン当りの減額率は二十三年に比べまして、鉄鋼一五%、石炭窒素五%、ソーダー灰三%となつております。これによりまして、鉄鋼のごときは銑鉄三号の生産者價格は一万二千二百五十円となつて、現在この分で参りますと、日鉄の八幡だけが残るというような状態になつております。
 また本年度分の食糧輸入計画は二百三十万トン、一億八千六百万ドルでありますが、これに四百六億円の補給金を出しますと、一万トン当りの補給金は一億八千万円となるのであります、またトン当りの輸入價格はFOB百六十七ドルとなり、國際小麦協定による最高額、ブッシェルー・ハドルよりも二倍近い價格でもつて買付けられておりますから、大衆は非常に高い小麦を食うことになると思うのであります。
 次に、國内用綿花の問題であります。これは輸入量の四割を占めておりますが、從來一ドル七十七円で拂い下げられていたのでありますが、四月四日から三百三十円の換算率で拂い下げられることになり、標準物の價格は、從來一ポンド二十九円八十銭が百十三円七銭と三・八倍に上り、この結果綿糸は三倍、綿織物は二倍、最終製品――ワイシャツ、作業衣などでありますが、これは七月ごろから約二倍に値上げされる。
 また安定帶物資でありますが、これは昨年と同じ割合で行きますと、本年は千三百億となる。しかし鉛、亜鉛、アルミ、苛性ソーダ、ソーダ灰の五品目が安定帶物資から除外されているために、鉛は一四〇%、電氣亜鉛は一三五%、アルミ一二〇%と、それぞれ生産者價格が上つて、消費者價格では鉛トン当り五万九千百三円から十三万七千円、三二一%、アルミ十一万六千百九十五円から二十五万五千七百九十円、二二〇%に上るものと見られるのであります。このような價格調整費がはたして合理的であるかどうかという点につきまして、硫安に例をとつてみますと、次のようになるのであります。東北肥料の新修正原價は一万九千五百円と、前原價二万八千二百円の三〇%減となつた。これは肥料産業の各企業が三〇%の利準を從來受けていたことになりまして、これから逆算いたしますと、日本窒素、日産化学、三菱化成などの生産原價は次のようになるのであります。すなわち日本窒素においては一万七百二十六円、日産におきましては一万七百八十四円、三菱におきましては一万二千八百二十七円になるのであります。ところが問題は、以上の三企業は、いずれも新修正原價一万七千二百円となつたのでありますから、日本窒素は六千四百七十四円、日産は六千四百十四円、三菱は四千八百七十三円の補給金をまるまるふところに入れているということになります。その反面において、たとえば宇部窒素、東洋合成、東北肥料等の企業は修正原價を切り下げられて、企業合理化を強制されていることになるのでありまして、このうち東北肥料と日本水素と東洋合成は工場閉鎖を余儀なくされているという状態であります。しかも東洋合成ではメタン・ガスの利用によりまして、自主的に生産原價を一万八千円まで切下げ得るのでありますが、資金面の関係で、みすみすこれが再建の道を阻まれて、工場閉鎖に追いやられている、こういう状態であります。以上のような問題からいたしまして、マッカーサー元帥が、あの書簡において指摘されておりますところの、國内資源の最大限の活用という九原則の一項目にも反する結果になるのではないかと思う次第であります。
 次に特別会計の中で、先ほど星加さんが鉄道特別会計の問題で、非常に具体的な点を上げておられましたが、私は次に電氣通信事業特別会計の内容について多少触れたいと思うわけであります。損益勘定の、逓信省要求四百六十億に対しまして、大蔵省の査定は三百二十三億、人件費四六%減であります。これだけで二四%の首切りになるのであります。物件費が九十三億から七十八億になりまして、これによりますと、局舎改善費は十億から三億になり、また建設勘定は八十七億から四十億に減額であります。次に建設勘定におきましては、逓信省が当初要求いたしました四百二十二億に対しまして、査定が二百二十六億であります。このために工事費関係は百五十八億に押えられておりまして、原要求の三九%減であります。この工事費の削減は、それだけで電氣通信関係の民間企業、たとえば沖電氣とか東芝とか、そういうところの生産の縮小となり、制限となるのであります。東芝、日電、沖、日立、これらの企業が、逓信省を主たる取引先といたしておる関係上、この影響ははなはだ大きいのであります。今申し上げたのは、主要なものでありますが、その他これらを含めて七十四の会社に大きな影響を與える。たとえば沖は、生産額の八〇%を逓信省の受注によつてまかなつておるのであります。また日電では、現在三億に達する滞貨があるのであります。そうしてこの工事費削減の影響を、例を電話機にとつてみますと、昨年度の逓信省発注十九万台に対しまして、本年度は十一万七千五百台、それから商工省の生産指示におきましては、約十万台の減少が予想されるという状態であります。これは逓信省における二十三年度賣掛金が十億もたまつたために、各メーカーが日銀よりのあつせん融資を受けて、これが三十四年度予算から差引かれますので、結局二十四年度予算の九〇%、百四十二億しか、実際の発注量が局限されたということになるのであります。
 また次に國立病院に対する特別会計制の実施の問題があるのであります。これはまず國立病院の独立採算制を目途とした特別会計制をとつておるのでありますが、その中で、総予算の二〇%を一般会計から出し、それから看護婦養成費、あるいは本省関係人件費も病院の支出の中に含め、また施設の修理、診療資材の補給等を一切自己收入によつてまかなわしむる。これが一体この國立療養所の從業員諸君、職員諸君、またここで療養を続けているところの患者諸君、ひいては國民全体の厚生の問題に対して、どのような影響を與えるかと申しますと、これは実に重大なる問題であるといわなければならないのであります。それでこれが他の種々なる要因、すなわち勤労者の実質賃金の低下、あるいは大衆課税の増加、また物價の値上がり、中小企業の崩壊、失業の増大、このような事柄と相まつて、この國立病院の問題はゆゆしい問題になる、具体的な数字を示しますと、現在この病院における患者の中で、生活保護法関係の患者が約四八%であります。それから社会保険関係の患者が二一%であります。また金額免除の患者が八・七%であります。そして自費負担の患者は一九・八%である。これは一九四八年の十一月現在のどのような変化を受けるかと申しますと、もし地方予算の潤沢な供給があるならば、これは生活保護法における生活保護費の増大をもつてまかなわれるのでありまして、この四八・八%という生活保護法患者というものの領域が増大するということで済むのでありますが、しかしながら保護費の増額もおぼつかない。またこれが住民の強制寄付に転嫁されるということになつても、これまたはなはだ見通しが怪しいものである、そして一方職員の減員、首切り、そして施設の荒廃、こういうものとあわせ考えますときに、この一國立病院に対する特別会計の問題を考えましても、これがいかに國民保健にとつて大きな影響を持つかということがわかるのであります。
 次に、すでにこれまでに電氣通信関係または國立病院の特別会計の問題その他の法律によつて明らかにされましたように、この二十四年事予算は、われわれの考え方では全面的な産業の破壊をもたらす、こういう結論になつております。たとえば二十四年度新海船計画七十一隻、これは輸出鋼材六十万トンから七十万トン以上のうち、五〇%が外國船建造に割当てられていたにもかかわらず、金融関係の隘路で、新造船計画に全部御破算となろうとしているのであります。これは五月予定であつた第五次、二十四年度第一次新造船計画、これにはいろいろ専門的な数字が出ておりますが、これは省略いたしまして、この計画がすべて海運総局の造船会議で全部中止と決定し、ここに造船産業は全面的な危機に見舞われている。それから、先ほど荏原製作所の所長さんでありますか、車両関係が非常な危機に瀕している、全面的に崩壊するであろうということが言われたと思いますが、それをも含めまして、次に電線の状態でありますが、二十三年度の生産実績は六万二千トン、二十四年度安本の生産計画か七万二千トンでありました。それで資金面では、二十三年の四十三億に対して三割減の三十四億になるのであります。この結果企業の四割が整理される見通しがすでに出ているのでありまして、すでに下請会社では発注が減つて、ここ半年間は生産施設能力のわずか二〇%しか稼動しておらないという状態であります。また電線の労働者は二万五千人中、五千人が首を切られておる。給料遅配の問題、これは一月以來一七%に達しておるという状態であります。石炭産業においても同様な数字が出ております。化学産業は省略いたしまして、次に鉄鋼関係にちよつと触れますと、鉄鋼は百八十万トンを五社、すなわち日鉄、日鋼、神戸、川崎市工業、扶桑、この五社で集中する方法をとつておるのでありますが、これを價格面から促進するために、物價廳は次のことをやつておる。まず生産者價格の切下げ、次に銑鉄の價格調整費は工場別、個別價格制から一本價格制へ、また次に鋼塊半製品、單純圧延メーカー用との間の價格差をやめて、品種別一本とする。このような方策をとつておる。その結果――その結果が問題でありますが、それが一級棒綱の生産者價格がトン当り一万九千円、從來よりも一千二百円切下げられるのであります。なお高炉、平炉の集中生産によりまして、現在の電気炉工場五十一のうち、中止が三十であります。これが圧延が十二、作業続行が十二となつておる。このような数字が出ておるのであります。これは全産業中のごく小部分をあげたわけであります。
 次にこのようなことが、一体労働者の生活にとつてどういう影響をもたらすという点を申し上げますと、政府は今年の予算におきまして、賃金を三千七百円ペースの一・六六倍すなわちこれは六千三百円ベースでありますが、これで押えております。ところが賃金の絶対額はどうかといいますと、政府は実質賃金は上つておるという発表をしておりますが、実は切下げられておる。これはわれわれ賃金関係の白書を出しておりますが、ここでははつきり数字を示しておるのであります。この中で第一に官廳職員の場合でありますが、これは四十八時間制のために大きく見積つても、実質は五千二百円、一・三七倍以下であります。たとえば三十歳三千七百円ベースで一日実働八時間で六千六百六十九円でありますが、六千三百円ベースでは時間延長のために七千四百二十六円で一・一一倍にしか当らないのであります。しかも号俸切下げは平均千四百円に上るということが言われておるのであります。
 次に民間企業における遅欠配の問題であります。これは現在全國的な問題になつておりますが、東京だけでも二十三年の一月から二月の間に総額三億四千万円に上つておるということが報告されております。たとえば池貝鉄工所では二月分の給料が四月九日にようやく支給されたという状態である。また賃金切下げは、たとえば三井製薬では昭和二十四年の三月税込み九千百円が正月から六千円に切下げられておる。三井鉱山では四月から二面切下げが強行されようとしておりますし、また大阪商工会議所の調査でも、前月に比して事務系統職員の三、八%減、交通業に至りましては一六%も下つておる。このような状態である。しかも税金はどうなるかと申しますと、これはまだ触れてはおりませんが、二十三年度の二倍と大巾な増徴がもくろまれておるという状態であります。
 次に政府は能率を上げれば、その部分の若干を賃金引上げに使つてもよいということを言つております。たとえば次に実例をあげますが、ほとんど不可能な、人間の限界点に達するだけの労働強化を見込んでも、独占企業以外においては利潤の増大はおろか、存立さえもはなはだ危ぶまれておるという状態である。たとえば為替レートの決定に伴いまして製糸――生糸の関係でありますが、製糸関係業者の壊滅を避けるために、現在かま一台当り二百匁見当の製糸量を二百五十匁に引上げて、製糸労働者の約四割を馘首整理する。こう言つておる。以上のようなコスト切下げ、低價政策の強行の結果、基礎物資價格の引上げの影響を、末端には及ぼさないという言明を当局はしておりますが、にもかかわらず消費財物資の大巾の騰貴が予想されて、われわれの生活は一路窮乏の方向に追いやられることになるわけであります。
 次に主食の問題でありますが、現在の主食、米、小麦粉は現行十キロ三百五十七円、これを四百五円、一・三五倍に引上げる予定となつております。これは前述の通り輸入食糧二五%と見たとき、國内價格は一・五七倍となるわけでありまして、これは農民の負担によるか、あるいは消費者の負担によるか、いずれにしても、われわれ勤労大衆の負担の増大となる以外の何ものでもない。それで配給食糧の値上げは当然運賃値上げとからまりましてやみ價格の大巾の騰貴となるのは避けられないわけであります。
 次に酒、タバコ等の嗜好品の問題でありますが、この配給制度が撤廃されますと、最低七〇%に膨張するわけであります。これが旅客運賃の六割値上げ、あるいは封書の五円から八円への引上げ、特に勤労者にとつては定期券の六割値上げ及び六箇月、三箇月分の定期の廃止によりまして実質的には通勤費は二倍に増大する。
    〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
また地租、家屋税の二倍引下げで家賃は大巾に上る。さらに綿花の大衆製品で占めるシャツ、作業服、これが先ほど指摘いたしましたように、二倍に上るために被服費は倍加するから、現在でもわれわれは被服など買えないが、二十四年度においては、戰時中から引続いて來たわれわれの被服は修理すらできない限度に達して、勤労大衆は全部ボロを着るという状態になるのではないかということが考えらるのであります。
 以上総括的に申しまして、われわれの実質賃金は極度に低下する。これは同時に生活の窮乏が破滅の一点に達するということになるわけであります。税金の点にまだ触れてはおりませんが、これは先ほどからも言われておるので、省略しようと思うのであります。
 最後に結論的に申し上げますと、吉田首相は、日本経済の自立安定のために、耐乏生活を要求しておられる。しかしながらこのような予算の内示を見ますと、これがたれの利益のための予算であり、たれのための不利益な予算であるかということは、はつきりいたしておるわけであります。すなわち失業者が出るにもかかわず、失業救済費は非常に切下げられておる。そして実質賃金の低下にもかかわず、國民保健の問題、厚生の問題がさらに考慮されておらない。勤労者から多くとつて、これをほとんど大資本家のところにまるごと投げ込んでやるというこの予算が、われわれ勤労大衆の利益と全然逆な方向に行つておるということは、言うまでもなくはつきりすることであります。すなわちこの予算は、一言にして言えば独占資本家を擁護する予算であり、人民大衆にとつては収奪予算である。さらにこれに首切り、飢餓予算であり、また同時にこれに反対するものをむりに抑えるところの彈圧予算である。なぜならば、警察費とか、裁判所費とか、行刑費とかいうものに、非常に増加しておる。われわれ國民の生活のための、文化の引上げのための金が、ほとんど使われておらない。切下げられておるにもかかわらず、このような彈圧的な予算の面が非常に増大されておる。すなわちこれをはつきり申しまして、反人民的予算であるということになるのであります。
 マッカーサー元帥は、九原則の実施を要求するところの吉田首相にあてた書簡において、これによつて日本國民は非常な負担がかかるであろうが、これはあくまでも公平に分担しなければならないということを言つておるのでありますが、この予算は明らかにこの負担均衡の原則を失しておるわけであります。從つて首相は、演説の中で混乱と破壊を策する者が少数おる、再建を妨げるものがあることを遺憾とするということを言つておられますが、実はこの予算こそ、日本の再建をはばみ、混乱と破壊をもたらす予算であるということを、われわれは断定せざるを得ないのであります。從いましてこの予算の問題、あるいは歳入の問題について、これが國会における第一級の審議の対象となるということを私は聞いておりますが、願わくば議員諸公は、かかる反動的な予算を徹底的に批判し、訂正していただきたい。われわれ労働者階級といたしましては、このような予算は返上したい、このように考えておるわけであります。
 以上はなはだ不十分でありますが、私の公述をこれで終ります。(拍手)
#34
○西村(久)委員長代理 次は塩原禎三君の公述を求めます。
#35
○鹽原公述人 産業界の一人として、ただいま御審議中の予算案について申し上げます。
 第一に取上げて申し上げたい点に、われわれとしてこのたびの均衡予算について、実質的な疑問を持つておるということであります。從來の予算は、一般会計については均衡をはかつてありますが、特別会計の赤字は依然として存続して、かつ財政均衡化を金融にしわを寄せて糊塗しておつたのでありますが、今次の予算においては一般会計、特別会計、地方財政等をひつくるめて、総体として均衡化をはかつてあります。また財政と金融とのけじめを明瞭にしておりますことに、本予算案の特徴と考えられるのであります。これは一應まことにけつこうではありますが、均衡予算が財政面だけの均衡化では、実質的に均衡が確保されていないものでありまして、すなわち財政が國民所得に対して均衡がとれているかどうかというところに、根本的な問題が残されておるのであります。財政が國民所得に対して均衡がとれないほど厖大なものであると、財政面だけが数字上均衡がとれていても、それはただ数字上の形式的均衡でありまして、実質的な均衡でないことは当然である。從つて財政の均衡化をはかるためには、この點を深く掘り下げて検討を必要とすると思うのであります。今次予算においては、財政面だけの均衡は確保し得たのでありますが、しかしながら國民所得との関連においては、適正を欠く厖大な予算と考えられるのであります。実質的な均衡ということでははなはだ疑問が残つておるのであります。すなわち二十三年度一般会計予算の國民所得に対する割合は約二〇%であつたのでありますが、今次予算のそれは二五%となり、また租税、専賣益金、地方税合計の國民所得中に占める割合は、二十三年度二二%でありましたものに対して、二十四年度は二六・七%に相当いたします。この割合は正常な経済のもとにおいては一應耐え得る割合でありましようが、日本政府の現況においては、過大であるといわざるを得ないのであります。すなわち國民は生活をするだけでやつとこさであります。企業の蓄積を食いつぶしながら存続しておる状態であります。この過小生産のもとにおける國民の財政負担能力は、おのずから小さくならざるを得ないのであります。同じ二割といいましても、所得の性質によつてこの影響が非常に違うものであると思います。たとえばイギリスにおいて二割の財政負担が可能であるからといつて、現在の日本経済もこれと同率の財政負担に耐えられるということにはならないと思います。またイギリスの財政の中には、生活保障のために多額の費用を織り込んであります。從つてその分だけは國民の財政負担が、実質的に軽減されておるということであります。のみならず、日本の國民所得の計算方法では、現在國民所得として算定されてあります数字の中に、家計並びに企業の食いつぶし分が入つておるのであります。年間純粋に増加した國民所得、これが当然眞の所得と考えられるのでありますが、その純粹に増加した國民所得をとつて考えましたならば、それはきわめて少額であろうかと思います。
 次に本年度予算の前提としてありますところの國民所得そのものが、はたして実際に実現できるかどうか、ここに問題があると思います。本年度予算は所得税の七割の自然増加を見込んでおりますが、この基礎になる國民所得が、鉱工業生産二割増加という從來の生産目標の達成を前提としておると考えられます。しかしはたして安定化政策に切りかえられました今日、この國民所得が実現できるかどうか、はなはだ疑問であります。安定化方策の強行は、必然的に本年の増産目標の実現を困難ならしめます。最惡の場合には生産はむしろ低下するのではないかと、かようにも心配されるのであります。國民所得はそれに対應して減少せざるを得ないのであります。その場合、本予算はますます実質的に均衡予算の性質を失うことになるのであります。從いまして本予算は、昭和二十四年の國民所得との関連において、根本的に再検討を必要といたします。そうして歳出の面においては行政整理を断行しまして、また歳出方法を合理化しまして、できる限り緊縮する必要が考えられるのであります。今回の予算は從來の建前と違いまして、歳出に含みを持たせて、その実施にあたりましては、できる限り剰余を出す、それに應じまして歳入面を軽減するという建前をとつておりますだけに、その実をあげるように切望してやまない次第であります。
 地方租税につきましては、総額においても、また徴税方法においても、國民所得に対する過重な負担となつております現状にかんがみまして、その改善に最善を盡すべきであると考えます。シヨープ博士の來朝に備えまして、政府はこの際早急にその準備にとりかかるべきだとわれわれは要望する次第であります。また歳入の地盤でありますところの國民所得そのものの実現を確保する必要があると考えます。いやしくも本予算の前提としていますところの國民所得の実現が困難に相なり、また本予算の実施が不可能になるようなことのないように、万全の措置を講ずべきであると考えます。すなわち本予算によりまして、生産が停滞ないし低下することのないように、デフレーション的な傾向のために、無用の混乱を生じないように、万全の対策が要求されるのであります。しかるに本予算はその性質上デフレーション的傾向を生ずる危険性を多分に持つております。しかし本予算の基調はデフレーションではなくて、デスインフレーションであります。從いまして本予算の運営にあたりましては、デフレーションに陥ることなく、あくまでもデスインフレーションを堅持すべきであるとわれわれは考えております。そのためには本予算を單に経理技術の問題としまして、機械的に処理することなく、金融面、生産面とも十分関連せしめまして、日本経済の大きな見地からの運営をして行く必要があるのであります。その運営にあたりましては、民間産業人の意見を十分にいれていただきたいと思います。財政面、金融面だけからの問題の処理は、特にこの際デフレーション的傾向を逸脱するように警告いたしたいのであります。
 以上と関連しまして、特に留意しなければならない点は復金の問題であります。そしてまた貿易見返り勘定の使用方法の問題であります。復金の問題は復金の機能停止後、これによつて生ずる産業資金の穴をいかに解決するかという問題と、復金の貸付金回収の問題の二つであります。第一の問題につきましては、政府においてもその方針が未決定でありますために、産業界は目下非常な困惑に陷つておるのであります。すなわち基幹産業その他企業の少からぬものは融資総額につきまして、すでに復金の正式認可を受け、その分割融資によりまして建設事業を現に進行中であります。これらに対して四月以後既約の融資がはたしてどうなるか、まつたくわかつておりません。新年度の復金融資を予定しまして、内部的に復興計画を進めて來ました企業並びにその関連事業もこれまた少くないのであります。ある意味におきましては、日本経済は從來の政府の復興及び資金計画を目安としまして、事業計画を進めて参つたと言つても過言ではないと思うのであります。しかるに突然復金融資が全廃になりまして、これにかわる新融資の方策がまだはつきりしていないということでありまして、必然的に企業界は、よるべき目安がなく、生炭計画の変更、手控え的な見送り氣分が起きており、銀行もまた融資を手控えることになりまして、そのために現下の最大急務でありますところの生増強に、少からぬ打撃を及ぼしております。それはひいては取引の澁滞ともなります。企業整備に多大の困難を加えつつあるのであります。過剰人員の整理、設備の補修改善等企業合理化につきましては、所要の合理化資金の供給が当然に復金から融資されることを予想しまして、いろいろと企業合理化が進められて進行して参りましたものが少くないのでありますが、その途上にありまして復金融資が全廃となり、それにかわる融資政策がいまだつまびらかにされていない、こういうために企業の合理化の進行が著しく阻害されつつあるのであります。
 以上申し上げましたことは、措置のいかんによりましては、企業経営に與える打撃はまことに大きいのであります。自然かかる不安のために銀行その他信用警戒を激化せしめまして、企業の金詰まりを不当に困難なものにしておるのであります。元來現下の企業は、政府の租税並びに價格政策等経理に対しまする過重な圧迫がありましたために、手元資金は極度に窮乏をしております。資金的には文字通りその日暮しの状態であります。從つて以上申し上げましたような金融政策の過渡的空白に対しましては、これに備え得る余裕を持つていないのであります。そのためにただちに生産及び取引の大規模の澁滞を招來する危険が多分にあるのであります。その結果としまして、企業の自立をいよいよ困難にするのみでなく、國民経済全体衰頽となつて、租税收入等をも激減せしめ、財政そのものを根底からくつがえす危険が大いにあるのであります。從つて産業資金供給の流れは、この際一刻もこれを停止せしめてはならないのであります。その最低必要量はぜひともこれを確保しまして、復金融資にかわる融資政策を、早急に決定すべきであると思うのであります。また復金貸付金の回収につきましては、復金融資が民間銀行では融資困難な部面を担当して來ました性質にかんがみまして、かつそれが基礎産業を対象としていました点にかんがみて、性急にこれをいたしますと、そこに大きな危険が起ると思うのであります。しかも回收がどの程度になされるかということが、民間銀行の融資に影響をいたします。從つて復金貸付金の回收は慎重に行われなければならないと思います。
 次に貿易見返り勘定の使用についてでありますが、われわれはこれに大きな関心を持つておるのであります。貿易見返り勘定の設定が本予算の一つの大きな特徴でありまして、この使用方法のいかんが、日本経済に対しましてデフレーションの傾向を與えるかどうか、決定的な影響を持つと考えられるからであります。この見返り勘定は米國の援助資金に見合うものでありますけれども、それが本予算に追加されたというわけのものではありません。從來までは輸入物資の補給金としまして、また輸出物資の補助金という実体をもちまして使用されて來たものであります。一つの勘定にまとめて建設復興に用いようとするものでありまして、從來まで輸入物資の補給金的性質に用いられて來ました部分は、租税によつてこれをまかなうこととしまして、輸入出物資の補助金的性質のものは、これを行わないということになつたものと承知しておるのであります。從つてこの貿易見返り勘定を、日銀の手持証券、または日銀担保の公債の償還に充てます場合には、リフレーション化の傾向が必然的に起ると思うのであります。すなわち見返り勘定の資金が、日銀に吸い込まれるような形態でこれを使用することは危険であります。これとは別に日銀は必要な通貨量を出すと言つておるようでありまするが、日銀從來の行き方から見ましても、それは十分には行い得ないのではないかと危惧しております。見返り勘定はそれが直接に産業資金として用いられるように使用すべきであると考えております。この場合復金債、公債の償還に充てるか、または直接投資に充てるかの方法が考えられるのでありますが、まず公債、復金債の償還によりまして、市中銀行の手持資金を増加させることには賛成するもりであります。しかしこれに前述のように單に日銀に吸い込まれてしまうのでは困るのであります。中銀行の手元資金を増加させまして、それが産業貸金として活用されるような措置をとるべきだと思うのであります。見返り勘定の資金は國家の資金でありまして、しかも年々減少して行く性質のものであります。公債、復金債の償還によつて、民間資本にそれを切りかえまして、産業資金化することが最も望ましいと思うのであります。そしてこの場合、その産業資金が銀行によりまして効率的に融資されますような措置、すなわち金融の質的統制が必要となろうかと考えております。直接投資の場合におきましては、國家的に必要な基礎産業で、民間資本ではこれをまかない切れないような産業に限定しまして、これを行うことが望ましいのであります。いずれにしましても、見返り勘定に全部産業資金化するような措置を要望してやまないのであります。
 次に價格調整費の問題があります。これは相当程度認められておるようでありますけれども、現行の物價水準を引上げないためには、價格調整費は必然的に多額になろうかと考えられます。この点から見ますならば、本予算に織り込まれました價格調整費額はまだ過少であると考えられます。この調整費の項目は、歳出項目の中で余剰が生れる項目と考えられておるようでありますが、この場合におきまして、企業合理化によりますところのコストの引下げという事実と対照してのみ、この調整費の減額は考えらるべきものでありまして、この点を無視しました運用にとらわれないように、過去の行き方から見ましても特に希望する次第であります。
 最後に失業救済費がほとんど認められておりませんことは、まことに残念であります。
    〔川村(久)委員長代理退席、委員長着席〕
将来今後におきまして、相当程度の失業が予想せられるのでありますから、その場合には他の項目からでも流用しまして、失業救済に万全の策を講ずるよう要望する次第であります。
 簡單でありますが私の所見を申し上げます。(拍手)
#36
○植原委員長 質疑はございますか。――次に清水愼三君にお願いいたします。
#37
○清水公述人 労働組合総同盟の清水であります。総同盟を代表いたしまして、本予算に対しましてきわめて簡單に率直に所感の一端を述べさせていただきます。先ほど産別会議の寺井さんから非常に業種別にこまかく検討されたお話がありましたので、私はむしろ一般的な経済再建方式と関連させて、われわれの立場を述べさせていただきたいと思います。
 この國会に提出されました予算は、いわゆるドツジ・ラインに基きまして内示さました予算を、吉田内閣が一應実質的に受入れて、計数整理をして提出されたものと承つておりますが、終戰以來の財政インフレの出口をふさぎまして、財政收支の均衡を嚴重に追求している点、その理念的な基礎といたしまして通貨の安定が何よりも先決である、こういう建前をとつておる考え方。これらに対しましては一應の敬意を表するにやぶさかではありませんが、財政收支の均衡のしわ寄せを、あげて大衆課税に求めておる点。それからドツジ・ラインを受入れるにつきましての経過的な措置を欠いている点から、雇用と賃金の面に相当強く制約せられるであろうという点。それからこの予算の方式を遂行いたしましたるときは、結局厖大な産業予備軍の存在と、中小企業と農村の非常な窮乏、こういう基盤の上に再建される金融資本的な再建方式となると思います。このような傾向に対しましては、労働組合といたしまして、とうてい賛意を表することはできないのであります。総同盟といたしましては、次に申しまする八つの理由から本予算に反対するものであります。
 第一点といたしまして、政府は通貨安定措置をいわゆるディスインフレでやると言つておりまするが、この予算を実施すればデフレになることは必至だと思います。それにもかかわらず、いわゆる安定恐慌に対する対策、特に失業対策が非常に弱いという点であります。
 第二点といたしまして、本予算には実施可能な、実際的な生産計画の裏づけを持つていない、こういう点であります。
 第三に、本予算案は通貨安定一木やりではなく、経済復興という芽ばえを、いわゆる対日援助の見返り資金の運用という面から、バランスさせようといたしておるようでありますが、この増え方自体にわれわれ異議を申すのではありませんが、その場合は復興資金の時期的なずれが当然出て來るのでありまするが、その対策を持つていない、そういう点であります。
 第四に経済の復興という面を認める以上は、建設公債と公共事業費はもつと増額すベきではないかと思うのであります。
 第五点といたしまして、財政收支の均衡のために、いわゆる予算面のしわ寄せを、結局大衆課税の強化に求めておる点であります。
 第六番目の反対意見といたしましては、通貨の安定ということに勤労大衆をして期待を持たせ、協力させるためには、それによつて大衆の生活水準が若干でも向上して行き、あわせて安定工作の具現者に対しまして、万全の救済策がとられる、そういうものでなければならないのでありますが、本予算案は、そのいずれをも持ち合せていないという点であります。
 第七に通貨安定工作が、デフレ恐慌を伴うほどの強さを持つておりながら、現在の物價水準そのままで安定させようとする方面であるようでありまするので、それでは國際價格に合せるために、もう一度調整恐慌のようなものが伴うのではなかろうか、こういう懸念であります。
 最後に先ほども申し上げしたが、本予算案を実施いたしました結果は、安定恐慌のため、農村と中小企業の非常な窮乏を伴い、また産業予備軍の厖大な存在のために、低賃金の脅威が一般化したしまして、このような基盤の上に金融寡頭支配を招来するということであります。
 以上八つの理由から、総同盟は本予算案に反対いたすのであります。
 以上申し上げた諸点のうち、若干さらに立ち入つて申し上げてみたいと思います。
 第一に、本予算案を実施いたしまして、財政と金融の面から通貨増発の出口を押えましたときに、これがディスインフレにとどまるか、デフレになるかということでありますが、私は次のような理由から、これはデフレになるだろうと思うのもあります。その理由を簡單にかいつまんで申しますと、戰争前の例をとつて、昭和九年、十一年の平均をとつてみますると、昨年十二月の実効價格で、物價は三百倍になつておりまするが、通貨は二百倍であります。この状態でそのまま安定措置に持ち込んだときには、この通貨の出口を押えてしまうならば、物價下落が当然起るだろうと思います。
 次に貯蓄の趨勢から申しましても、けさ日銀の副総裁がお見えになつていろいろ言つておられましたが、結局政府側においても、希望的に見て二千億足らず、そういうことを言つておられまするが、その根拠をちよつと伺つてみますると、昭和五―九年ベースの貯蓄性向をそのままとつて、國民所得から割り出して計算したのだそうでありますが、現在の生活水準の面から見まするならば、勤労大衆は戰前の六〇%足らずの生活水準でありまするので、昭和五―九年べースの貯蓄性向をそのままとるということは、実際的に不可能な問題であろうと思います。從つて政府が言つております貯蓄の見通し、これよりははるかに下まわるだろうという観測をいたすのであります。それは結局運轉資金の枯渇、こういうことになつて参りまするし、また今度ドツジ・ラインによつて金融面が資本のルールに強く乘せられる結果、收益力の弱い面に対する運轉資金の供給は、非常にきゆうくつになるだろうと思います。そういう面から基礎的な産業、それから影響を受けて生産財の方面に物價下落の現象が起るだろうと思います。さらに外國の例から考えてみましても、大体そういう結論が得られるだろうと思います。先ほど政府のディスインフレにつきまして荏原製作所の社長さんからいろいろ礼讃のお話がありましたが、英國におきましてはすでに勤労大衆の生活水準は、戰前のレベルに達しておるのであります。日本はまだ六〇%足らず、そういう状態であるのに、これを同日に論ずることは間違いであろうと思います。さらに英國の場合は物價も二倍か三倍、アメリカの援助はさらに厖大なものがある、そういうことを前提にいたしまするならば、日本の場合、英國と同じディスインフレを招來するということは、不可能であろうと考えるのであります。そうしてこの予算方式が大体デフレになる、そういう見通しにつきましては、いわゆる安定恐慌を経過せざるを得ないのであります、それならばできるだけ無事に安定恐慌を経過するための対策がなければならぬのであります。
 安定恐慌にはいろいろの問題が伴うのでありまするが、われわれの立場で最も重要視いたしますのは、いわゆる失業問題であります。この予算案では失業対策費はほとんど真剣に考えられておるとは思われないのであります。新聞紙に出ておるところを見ますると、失業が出たときに出たとこ勝負で対処するのだということが書いてありましたが、官僚内部の計算によつても、この安定処置によつて失業の発生量は五十万から百七十万くらいに見ております。これを現在の題材失業者、潜在失業者と合せてみますると、四百万をオーバーする。こういう状態にあるにもかかわらず、この予算案の失業対策費を見ますると、まつたく不謹慎だという感じを受けるほかはないのでもあります。結局雇用面のしわ寄せを、農村の窮乏とか、小賣商にしわ寄せして行く、そういう形の上に立つた資本的な再建方式というものには、どうも昭和の初めごろの金融資本のにおいがしてしかたがないのであります。
 その次の問題といたしまして、本予算の実施を中心とする財政金融の情勢にマッチするような生産計画はないという点であります。その結果、予算そのものにどうも納得できないものが多多見受けられます。たとえば價格差補給金にいたしましても、その計算の基礎は今まですでに多くの公述人の方から述べられましたが、いわゆる石炭四千二百万トンを主軸にして輸入物資はさらにふえる、それには生産は順調に伸びるということを前提にされておるのであります。ところがそれも先ほど塩原さんから御指摘がありましたが、政府支拂いの遅延、その他金詰まりの趨勢を反映いたしまして賃金の不拂い、遅延、欠配ということがすでに廣汎に起つておるのであります。そこでこの予算を実施して、デフレに突入し、しかもその経過的な措置がないというのでありましたならば、この傾向はますます激化すると思うのであります。労働賃金をこれ以上追い詰めまして、生産が順調に伸びると想定すること自身が、あまりに労働者を甘く見ておるのではないかと思うのであります。さらにこの予算を実施いたしました結果といたしましては、政府の需要が非常に切り詰められて参ります。特に鉄道通信関係の建設公債の削減の結果、このほかその方面の予算を切り詰める結果、これは先ほど産別の寺井さんからも言われましたが、車両や電氣、通信の機械のメーカーは非常に大きな影響を受けるのでありまして、それらがやはり基礎資材に対しまするいわゆる有効需要を減少させることが考えられのであります。また運轉資金については、先ほども申しましたように、今後金融市場において市中銀行側が非常に優位に立つ政策が、ドツジ・ラインによつてとられます結果、收益性の乏しい基礎産業面には運轉資金が流れない。その点から相当打撃を受けることは考えられるのであります。また設備資金につきましては、カウンターパート・ファンドといわれておりますあの見返り勘定を使用するということでありまするが、やはりそれが非常に時期的に遅れることは、当然であろうと予想されますので、その結果、いわゆる経済復興の基盤の拡大とか調整とかいう方面には、相当設備資金の面においても難局に逢着すると思われるのであります。これらの生産に及ぼすいろいろの要素を総合的に勘案いたしまして、あるいは財政的なつなぎ資金のルートを考えるとか、あるいはつなぎ金融を計画するとかを考慮する必要があるのでありまして、價格差補給金などの問題も、そういう実際にとられるであろう面を総合調整して、考えていただかなければならぬ、かように信ずるものであります。
 さらに次の問題は、この予算は要するに通貨の安定工作を中心として、物價の面をかみ合せて行く、そういう方針でありまするが、そのための均衡予算の負担を、あげて大衆課税にゆだねておるという点であります。労働階級やあるいは貧農やあるいはまじめな中小企業家が、もう担税力がないということは、今まで多くの公述人の方からも指摘された通りであります。われわれがもちろん問題といたしまする給與所得税にいたしましても、去年の租税体系そのまま今日取下げられるということは、どう考えてみても不当の惡税と申すほかはないのであります。総同盟その他の方面におきましては、先般中央委員会を開きまして、給與所得税につきましては、基礎控除といたしまして月額四千五百円、扶養控除月三千円、勤労控除三〇%、家族收入の合算廃止を決議いたしました。その結果、予算化した場合はどうなるかというような措置を、実は社会党の政調会に依頼したのであります。ともかく労働階級にとりまして、インフレ收束ということは、このインフレという大衆の收奪を避けて、大衆の生活水準が向上の方向をたどるということ、そういうことによつて初めて期待される次第でありまして、この生活水準向上という魅力もなく、しかも失業の脅威、これにさらされるような安定工作でありましたならば、進んで協力を求めるということは不可能なのであります。
 最後にこの予算によりまして進められて行きまする再建方式の性格であります。先ほども申しました点と重複するようになると思いますが、この予算で考えられておりまする方式、この予算の裏にひそんでおります、再建方式は、結局通貨の安定を大衆の負担で行いまして、しかも現在の経済水準のまま、ともかく安定状態に持ち込んで行く、こういう考え方と思われます。その場合、いわゆる安定恐怖の結果といたしまして、厖大な失業の存在が今後の労働賃金に絶えず低賃金の脅威を與え、農村はまた雇用のしわ寄せによつてますます窮乏する。中小企業は何度も何度も経営者をとりかえて行くというような、窮乏また窮乏という形に導かれて行きます。それは結局國内市場の非常に狭隘あるという、かつての日本資本主義と同じような性格のものに向つて行くと思うのであります。國内で蓄積されまするはなはだ乏しい資金も、これは今後金融資本の意のままになる可能性があり、またアメリカの対日援助の見返り勘定は、先方のコントローラーと國内金融資本の合作で、生産資本の蓄積に充てられて行く、こういうことになるのでありまするが、このような形の金融資本の再現こそ、それが日本をこの不幸な戰争に導いたと同様な縮小再生産だと考えられるのでありまして、われわれとしては、まことに耐えがたい形の資本家的な再建方式と考えられるのであります。
 以上の点から、この予算編成を中心といたしまする当面の経済政策に対しまして、次の点を結論として要望いたしたいと思います。第一にデフレを伴うような通貨の安定工作は、いわゆる最終的な安定の最低條件でもできるまでは、むりをして強行すべきではない。その安定の最低の基礎的な條件ができるまでは、延期することが望ましいと思うのであります。そこで本年度は、いわゆるディスインフレに近い線まで嚴密にインフレをスロー・ダウンさせて行くことが望ましいと思うのであります。
 第二に、現在までのいわゆる政府支拂いの遅延が、金詰まりを雪だるま式に拡大させておりますので、それが賃金支拂いの遅延をなしておるのにかんがみまして、これを即時解消させる措置をとつていただきたいと同時に、今後の政府の発注に対しましては、あるいは概算拂い等の制度を採用していただくことと同時に、政府支拂いが遅れた場合は、相当の延滞利息をとる、その辺までやつていただきたいと思うのであります。
 第三点といたしまして、今後通貨安定措置が進められて行き、また國際價格へのさや寄せが促進せられて行きます結果、失業対策につきましては、もつと眞剣な措置を講じていただきたいということであります。行政整理に関係いたしましては、先ほど國鉄の星加さんからもいろいろ言われましたので、これを省略いたしますが、一般の民間産業につきましては、今のように金融の面からなしくずしに整理して行つて、一方的に労働階級の犠牲を強要する、こういうやり方をとらないで、自立経済と生活水準の向上を目ざして行く総合的な産業計画と長期の見通しに基きまして、國民全般の平等な負担で合理化を推進するように、措置していただきたいのであります。企業におきまして業種轉換の努力や、人員の配置轉換をやつてみまして、なお避け得なかつた失業に対しましては、種々の社会保障によつて救済したり、あるいはまた公共事業に吸収するための國家自身の努力が、必要なことは当然であります。また退職手当につきましても格段の努力を拂つていただきまして、その退職手当を出す支拂い能力のないような企業に対しましては、整理ということを労資双方の協議によつて認めたような場合は、少くとも官公吏に出す整理手当を下らない範囲で退職手当の金融なり、あるいはその他について國家保障をつけていただきたい、そういうような措置が望ましいと思うのであります。時間が参りましたので簡單に切り詰めますが、いわゆる対日援助の見返り資金の使用の問題につきましては、これは自立経済の経済規模にすみやかに達するために、少くとも現在まで安本で取上げられました五箇年計画が要求する程度の資金は、建設公債や公共事業費を含めまして、これから調達できるようにやつていただきたい。そのために国債償還などは切り詰めてほしい。またその見返り勘定の使用につきましては、アメリカのコントローラーのもとに置かれるということでありますが、強力に國内から参画し得るような自主的な、民主的な機関をも設けていただきたいと考えます。なおこの勘定が使われるまでの経過的措置といたしまして、種々の対策を行つて、産業計画に照應するように努力していただきたいと思うのであります。運轉資金につきましても、今後銀行の専断にまかせられるようなことなく、日銀の中にいわゆる民生的なバンキング・ボードを設けまして、資金の量と質の統制に当つていただきたいと考える次第であります。
 なお最後に税金について申上げたいのでありますが、時間もたちましたし、またほかの方からもるる申し述べられましたので私は打切つて、これで私の公述を終りたいと思います。(拍手)
#38
○植原委員長 次に公述人荒木正三郎君にお願いいたします。
#39
○荒木公述人 私は日本教職員組合の荒木でございます。予算全般につきましては、労働君側の意見といたしまして、先ほど來労組関係の方々から申されましたので、その点は省略いたしたいと思います。私といたしましては主として教育予算について申し上げたいと思います。実は申し上げる内容を大体印刷にいたしまして事務の方へ手渡してあつたのでございますが、皆さんにお配りになつていないようでありますので、とかく私の計数的に申し上げることが不十分になるかと考えますけれども、概略申し上げたいと考えます。
 今度の予算を見まして、第一に六・三制の予算が全然計上されていないという点であります。六・三制は第一次吉田内閣のときに実施されまして、一昨年発足をいたしたものでありますが、アメリカの教育使節團の勧告によりまして、日本の再建、平和國家の建設には教育を民主化しなければならない、こういう観点から新しい学制が制定になつたのであります。敗戰後日本の経済事情が非常に困難であつたにもかかわらず、日本の平和國家建設のために、どうしても教育制度を確立しなければならない、こういう観点から、そういう経済的な事情の困難をも克服して発足をしたものであります。爾來今日まで二箇年を経過しておるのでありますが、その間におきましても経済的事情は、今日以上に過去二箇年間は困難な状態にあつたと思うのでありますが、各政党並びに各歴代内閣は、この新学制の実施に対しては、苦しい中からも予算を計上して、その実施に努力をして來られたのであります。しかるに、その三年目、新制中学の完成年度である今年において、全然その予算が計上されていないという結果になつたのであります。これでははたして六・三制が実施できるかどうかという問題が起つて來ると思うのであります。そのことにつきまして、一体六・三制は実施できるのかどうかというような点について、少し計数的に申し上げたいと思うのであります。その計数を実は資料として刷つてあつたのであります。
 現在新制中学の生徒は大体五百万人でありまして、それを收容するのに必要な教室は十二万教室でございます。今日までにそのうち約半数が大体用意されておるのであります。と申しますのは、過去二年間に大体三万教室ばかり教室が新築されたのであります。それから前あつた古い高等科の生徒が使つておつた教室と、青年学校で使つておつた教室が三万ばかりあつたわけであります。その教室と新しく建てた教室、合せて約六万教室が新制中学の方に使われておるのでございます。ところが残りの六万教室だけ現在不足しておるわけであります。それをどういうふうにしてそれでは不足の分をまかなつて來たかと申しますると、主として小学校の校舎を利用しておつたわけであります。それからそのほか軍の建物であるとかそういう古いもの、あるいはその他の建物を借りて使つておつた、こういうふうになつておるのであります。それが大体四万教室であります。ところが不足分は六万教室でありますので、小学校から借りたりあるいはその他の古い建物を使つておるのが四万教室でありますから、二万教室今年はどうしても足らないのであります。すなわち今年で新制中学が完成しますので、大体生徒が八十万ばかりふえるのであります、それの生徒を收容する教室は今全然ないわけであります。もし本年度の予算において六、三制の予算が全然計上されない場合は、この八十万人の今年ふえる生徒を收容する教室は、全然ないということになります。そうすればここに起つて來る問題は、新制中学は義務制を実施しないか、こういう問題が一つ起ります。実施するとするならば、これらのふえる生徒をどう收容して行くか、こういう問題であります。政府はしばしば六・三制は中絶はしない、実施して行くんだ、こういう声明をしておられますから、実施せられることには間違いはないと思うのですが、それではこういう生徒をとう收容して行くか、ということが問題になると思うのであります。そうすれば勢いこれはもう古い建物は現在ほとんどないと言つてもいいと思います。教室に使い得るような古い建物、そういうものを借りるにも借りるものがないという現状であると思いますので、これらの生徒は全部二部授業にしなければならない、こういう結果になると思うのであります。はたしてかように多数の生徒を二部授業でやつて行けるかどうかという問題であります。現在すでに二部授業を相当やつておりまして、新制中学で大体一千七百学級ほど二部授業をやつております。それからこの新制中学に教室に足らないために、小学校の方に影響いたしまして、小学校では大体一万学級が二部授業をやつております。これにさらに加えまして、ことしは非常に莫大な数に二部授業が起つて來るわけであります。大体計算いたしますと、一万教室ですから、学級にいたしますと倍になるわけであります。生徒数にいたしますと八十万人余りの生徒が、全部新たに二部授業を受けなければならない。こういう結果になるわけであります。現在学生や児童の不足化が社会問題として非常に大きな問題になつております。これにはいろいろの理由があると思うのですが、われわれ教育に從事いたしております者で、最も痛切に感じられることの大きな一つは、この二部授業がそういう大きな原因になつておるということを申し上げることかできると思うのであります。小学校あたりも午前中は一つの事をやる。午後は交替にやる。こういうことになるわけでありますか、大体学校の教師の手元に児童を預かるのは、二部授業にした場合、一日に三時間くいらであります。あとは大体教師の手を離れるわけであります。その教師の手を離れた児童がたいていは町にほうり出されて、自然にそこから惡い環境のもとに出された児童か、そういう不良化して行くというような原因になつておるのでありまして、私どもといたしましては、どうしても二部授業というものを解消することか、今日学力の低下ということが非常に問題になつておりますけれども、そういう学力の低下を防ぎ、あるいは児童の不良化を防いで行く最も大切な問題であるというふうに考えておるわけであります。それから新制中学において二都授業がはたしてできるかどうか、現在大体二千学級ほどの二部授業をやつておるのでありまするが、これは非常にむりであります。と申しますのは、大体新制中学では一日に六時間ばかりの授業を受けるわけでありますが、これを午前と午後にわけて授業をすることは、実際上不可能であります。中には体操などを利用して、入りましつて二部授業をやつておるのでありますけれども、午前に六時間するということもてきませんし、午後に六時間するということもできません。そういうことで八十万人もの生徒を二部授業するというようなことになれば、教育に非常な混乱を來すというふうに考えます。從つてどうしても新学制を実施するということは、國民の決意であると申してもあえてさしつかえがないと思うのであります。また各政党におかれても、新学制の実施ということは國民にも公約せられた問題でありまして、從來各党とも一致してこの実現に当つて來られたわけであります。こういう國民の結論であり、各政党の方針であるこの新学制の実施が、本年度の予算に全然計上されないということに、非常な混乱を起すというふうに考えるのであります そういう点から考えまして、今度の予算案はどうしても修正をしていただいて、新学制実施に必要な最小限度の教室は、建設するようにしていただきたいということを申し上げたいと思うのであります。このことにつきまして、実際に父兄の方から議会の方にもいろいろ陳情はあると思いますが、私どもの方にもいろいろお話があるわけでありまして、昨年この新学制を実施するために、校舎を建てなければならないというので、政府から支出される金ではとうてい十分建たない。そこで六・三制貯金というのが政府の奨励で始まりました。そうしてこの六・三貯金の成績によつて地方起債を許す、こういうふうになつておつて、実際PTAの役員などがいろいろ中心になつて、この六・三貯金を勧奨したのであります。そのために大体今日では二百億円以上の六・三貯金というのができておるのであります。ところが今度全面的に予算が計上されていないので、こういう貯金を基礎にした他方起債すらできないということになつております。このことについてはPTAの代表などに非常に困つておりまして、六・三の教室を建てるために貯金してもらいたいというので、非常にむりをして貯金をしたのが何らの役に立たないので、この金が全部ほかの方に使われておる。こういうことではとても父兄たちを納得さすことはできない、こういうふうにおつしやつておるのでありまして、せつかく苦しい中から教育のため、あるいは学校を建てるためにというのでなされた六・三貯金が、校舎を建てるために使われないというようになつておるのであります。こういうことも非常に不満となつて私ども聞いておるのでありまするが、要するに六・三制の予算が計上されていないということから起る教育界の混乱は、私に非常に大きな問題であるというふうに考えるわけであります。そういう点を特に申し上げたいと思うのであります。
 その次に申し上げたいことは、この予算に定員定額制の問題が出ております。すなわち教育の定員をきめるという問題でありますが、大体昨年よりも今年は定員が非常に減つております。このことに他の政府の行政整理の一環として教育もまたやむを得ない、こういう文部大臣のお話であるわけでありますが、一体今度の政府がきめておる定員は最小限度を割つたものであつて、このことによつて非常に困る問題が起つて來るのであります。というのは生徒数五十人について、去年は教員の数が一・五人であつたわけであります。それが今年は小学校では一・三五人、中学校では去年が一・八人だつたのが一・七人に減少しております。その数が実際どういうふうになつているのかと申しますと、結論を申しますと、小学校では一学級について一人の教員が当らないということになる。これは何も組合だけの調査ではございません。文部省もまた説明しておるところでおつて、定員を五十人について一・三五人にした場合、一学級について一人の教員が当らないということになるわけであります、それは学校には校長、それから衛生の方面の世話をするところの養護教員というものがあります。それから事務職員というのがあります。そういう人たちは普通授業を持たないわけであります。そういう人たちを除いて実際学級を担任する者は、一・三五人の定員ときまれば、一学級について大体〇・九八人ということになつて、一学級ついて一人の教員が当らないということになります。そうすればどういうことになるかと言いますと、やはりここに学級を合併しなければならないという問題が起つて來ます。現在でも一学級六十人とか七十人とか相当数の生徒を收要しておる学校が相当多いのでありますが、それがさらに学級を合せれば一学級の生徒数をもつと多くしなければやつて行けないというふうな結果になりまして、私どもとしてはそういう多数の生徒を收要して、教育の能率を上げて行くことはとうていできがたい。現状においても非常にむりがあるのに、さらに一学級の生徒数をふやすことは困難であるというふうに考えております。そういうふうに定員が非常に減るということは、教育の能率を低下し、学力をますます低下させるものであつて、どうしても避けなければならないというふうに考えるのであります。またもう一つの面から申し上げますと、現在までも教員の数が非常に不足しておつたことが問題になつておつたわけであります。教員になる志望者が非常に少い。それで必要な教員の数を確保することができなかつたのであります。そのことは今日の教員がどういうふうに構成されておるかということを見ればよくわかるのでありまして、主として小学校について申し上げますと、御承知のように小学校の教員は、大体師範学校で教育を受けた者がなるわけでありますが、それが普通の教育であります。ところが現在そういう教員を確保することかできないので、御存じのように中学校、女学校を卒業された方をもつて代用しておるわけなのであります。その数は大体半々になつております。師範学校を卒業して教員になつておる者が大体四九%、その他女学校や中学校を卒業して臨時に採用しておる人たちが五一%、これは日本の教育界にかつてなかつた現象であります。そういうふうに正規の教員が非常に確保しにくい。こういう現状において昨年は一・五人の定員であり、今年は一・三五人、そのときどき予算編成の実情によつて、人数がかわるということは非常に問題であると思うのであります。教育の育成はその簡單に毎年方針をかえて養成し得る問題でないというように私ども考えております、そういう点からいつて、こういう定員の問題を去年と今年とかえる、また來年もどうなるかわからかいという状態に置くようなやり方は、決して教育を重要視するゆえんではないと考えるわけであります。こういう点から考えまして、どうも教員定員については、やはり去年以下に下げることは、私は非常にむりがあるということを申し上げたいと思うのであります。從つて現在各府縣においては相当強制退職という形になつて現われております。こういうふうに定員が減少になりましたので、普通の言葉で首切りと申しますか、強制によつて退職を強要されておるということが全般的に起つておりまして、この数は相当の数に上つております。これが多少余剰があるということであれば、それは問題でないという一應の理由もあると思うのでありますが、一学級に一人の教員が当らないというような、定員のきめ方にしても引上げるというような、予算の組み方から起つて來る首切りについては、私ども反対せざるを得ないのであります。
 それから定額の問題でありますが、これは予算を見ますと、非常に切り下げております。大体一人当りにいたしますと、月額にいたしまして六百円ばかり切り下げております。現在教員がもらつておる給料よりも月額にして六百円はかり切り上げております。これは待遇は非常に問題であると思うのであります、このことはどういうようにしてそうなつたかと申しますと、やはり六千三百円ベースがきまつたときに、その切りかえにあたつて出計算というような形において、教員の給料を引下げられようとしておるのであります。私どもはそのことに非常に反対をいたしまして、六千三百ベースの切りかえにあたつて、教員の給料を引下げることに反対いたしまして、現在六千三百円べースの切りかえがほとんど大多数の府縣において、今日実施されておらないような状態でありまして、いまだに教員は三千七百円ベースの給料しかもらつていない現状であります。今日までに切りかえられた府縣はわずかに十にすぎぬのでありまして、大体三千七百円べースになつております。なぜこのようになつておるかと申しますと、この切りかえにあたつて教員の給料を、平均六百円切り下げたということから起つておるのであります。そういうことからどうしてもこの切りかえは進捗しないのでありますが、今度の予算を見ますと、やはりそういう引下げで予算が組まれておるので、実施―私どもの給料は引下げられるという結果になるわけであります。そういうふうに定員定額の問題は、定員においては非常にむりがある。定額の方においても今までの給料を六百円も切り下げられておるということについて、私どもは強く反対をするものであります。
 そのほか教育予算の問題については、いろいろ申し上げたいことのありますけれども、たとえば育英資金の新規事業が全然認められない、あるいは定時制高等学校、いわゆる働きながら学ぶ制度のための費用は非常に減らされておるというような点、あるいは新制大学の発足にあたつての予算が非常に乏しいというような点、いろいろありますけれども、やはり最も大きな問題は、新制中学校の建築費が計上されておらないということと、定員定額の問題において、去年よりもはるかに必要限度を割つたものにした切り下げられておるという点、この二点についてはひとり教員のみならず、國民の非常に納得のしがたい点であるというふうに思いますので、この点予算の審議にあたつては十分お考えをいただきたい、かように思う次第であります。
 非常に雑駁でありまして、十分計数的にお話申し上げることができなかつたこと遺憾に思いますが、以上で終ることにいたします。(拍手)
#40
○池田(正)委員 予算が足りないので非常にやりにくいし、御不満である。われわれも同様にこの予算に対しては非常に不満なのであります。しかしながらこの予算がどうした経路によつて組まれておるかということを大体お含みだと思います。そこでお尋ねしたいことは、この不満な予算ではあるけれども、一般情勢からやむを得ない、押しつけられて行かなくちやならぬといつたような形にあるのですが、それに対して教員組合なら組合で、あなた方が指導者の立場として、それに対する対策を事務的にどういうふうにお考えになつておるか。今のは設備の問題、いま一つは教員の質に問題、教員の質がどつちかというと落ちておる。間に合せである。それに対する質の間―というものに対して、教員組合がどういう手を積極的に打つておられるか。これをまずちよつとお尋ねしたい。
#41
○荒木公述人 教育予算、特に六・三制の予算についてどういう対策を持つておるか、こういう御質問であります。基本的には教育財政を確立する方途をこの際考えなければならぬというふうに考えますが、さしあたり先ほど申し上げましたように、六・二制貯金というものは新制中学を建設するため貯金を奨励した問題であります。從つてこの貯金は地方起債の形においてやはり起債を許さなければならぬ。そういうことによつて相当の金額が浮いて來るのではないかということであります。それからこの間の教育予算人民大会を開きましたときに、企逓の方から提案があつたわけなのでありますが、簡易保険の積立金が相当ある。これを一つ教育の方に使つたらどうか、こういう提案がありましたが、こういうことが私は実際し考えられるというふうに思つております。
 それから第二番目の教員の質の低下ということでありますが、これはやはり教員に必要な訓練といいますか、研究といいますか、そういうのを経たところの教員が非常に少い。現在では師範学校の入学者が非常に少い。第一次召集では半数にも足らないというのが今年の実情であります。これがやはり大きな問題であると思うのです。今年あたりはどういうふうになるか知りませんけれども、教員を志望する者が少いということが、どこから來ているかという問題になると思うのです。この問題は私が答えなくても、これは十分御理解していただける点であるというふうに思います。また現在の教員……
#42
○池田(正)委員 私がお尋ねしたいのは、どうしてもその金が出ない場合に、どういうふうな対策で行かなくてはならぬかということを、教員組合が民主的に考えておられるか。この現実に直面して予算を要求して、それを何とかくめんすることは一つの方法であつて、くめんしてできない場合にどうするか。あらかじめ一應考えなければならぬ問題である。それを聞きたい。
 それからもう一つか今の質の向上の問題も、教員が足りない、正教員が足りない。そういう場合に一体どういう面でこれの工場をはかるかということを、教員組合として自主的に考えておられるか、これを伺いたいのであります。
#43
○荒木公述人 予算がない場合に、六・三制を実施して行くのに、どういう対策があるかということでありますが、これは私に対策がないと申し上げるよりしようがないと思います。いわゆる二部授業をするよりしようがないわけでありますから、二部授業を全面的にやるよりほかないと思います。借りるといつても今日借りられる校舎は全然ないと考えております。そうすれば小学校から借りることになりますが、小学校から借りれば、小学校の方で二部授業をますますふやさなければならぬことになります。中学の方の二部授業は、授業時数の関係からほとんどできがたいのですから、勢い小学校の二部授業が全面的に拡大される。特に低学年の二部授業が全面的に拡大されることになると思います。しかしこういうことは対策と申し上げることはできないのであつて、こういう実情になれば、私はむしろ混乱して、非常に困る状態が來るのではないかというふうに申し上げるよりほかはない。ほとんど対策がないわけです。
 それから教員の質を上げる。根本的にはやはりいろいろ問題があると思うのですが、ただ現在いる教員の質を上げることについて、組合はどう考えているか。こういうことについては教員組合としては、教員が自主的に研究意欲が盛上るような指導をして行かなければならないというようなことは考えております。そういうことについては府縣の組合ともよく協議をいたしている問題である。こういう問題に、やはり教員が自主的にそういう意欲を持つて、研究を続けて行かなければならぬというふうに考えて、いろいろ具体的な方策について相談をしております。
#44
○池田(正)委員 私は今これをあなたにお尋ねするのは、どうも比喩が惡いけれども、だだつ子がおやじにお金をねだつて――金くれなければどうするか、必要な金がなかつた場合には、どうするかということを一應自主的に考える必要がある。簡單に結論を申しますが、たとえばわれわれが地方へ行つて講演会をやり、あるいは政治演説をやる、小学校の講堂を借りてやつていても、教員はこれを聞こうとする意欲を持たないのが一般の実情ではないか。これに対してわれわれは非常に遺憾の意を表する。だからそういう意味で、一面において十分に間に合うような予算を要求しなければならぬということはございますけれども、一方そういつたことをお願いしたいという意味において実はお尋ねしたのです。これで終ります。
#45
○植原委員長 何かお答えがありますか。
#46
○荒木公述人 答えることはございません。
#47
○植原委員長 池田さんのおつしやることは、國家の資源にも限りがある。教育は重大なことであるけれども、資源に限りある場合に、どうしてもやつて行けないという場合があつたら、それに対してどうしたらいいかという、第二陣の考えを教育者として持つているか。これが一つ。もう一つは、今実例をあげておつしやつたが、政治をやつている者から言うと、今の教育者はいかにも待遇の改善に対しては、強い團体を組んで交渉して要求に当るけれども、政治そのものを理解しようとかいうことに対しては、非常に関心が薄いじやないか、われわれが学校へ行つていろいろの演説会をし、講演をしてみるけれども、全國を通じてどこの学校だつて、そこの教室に遊んでいながら、來て講演を聞いたり、演説を聞こうとするような教員を認めない、こういう状態で教員が政治家に対して、六・三制の費用が少いが、これをどうかしろという立場に立つというのは、少しく考えが足りないじやないか、率直に申せばさようなことです。これはどの人でも、四百六十六人の議員が経驗しない人は私は一人もなかろうと思います。どこの学校へ行つたつて、われわれが講演をするとか、演説をするとかいうのに、その学校の先生方が協力する態度さえ示した実例を、私はほとんど知らない。
#48
○荒木公述人 そういう問題について意見を言うことになれば、いろいろ私は意見があります。しかしきようは私そういう考えがありませんので……。
#49
○植原委員長 御意見があるなら、池田さんの質問に、こういう機会こそ無二の機会だから、率直に御開陳になつてはどうですか。
#50
○荒木公述人 教員が一般的に申して、政治問題について、割合に関心が薄いということも私は同感であります。この問題について、教員がもつと政治的な関心を持たなければならないということについても、まつたく同感でありまして、そういうことについては組合を通じて、私ども常々やつておることでありますけれども、遺憾ながら現状においては非常に関心が薄い、こういわざるを得ない。しかしながらこのことについて、私ども重大な言い分がある。と申しますのは、教員の政治活動を全面的に禁止され、あるいは禁止されようとしておるわけです。教員は大体投票だけすればいいのだというような、國家公務員法において――細則はきまつておりませんけれども、教員に政治活動についてに、投票だけすれはよいのだ、そのほかの政治活動は一切してはならないのだ、こういう政府の方針です。私どもとしては、もつと教員の政治的な関心を高めて行かなければならない。また教育に当る者としては、当然そういうことが必要であると考えておるわけです。そういう政策に対しては私どもは反対しておるわけです。またそういうことか実際に教育委員会なりを通じて、教員をできるだけ政治の圏内からはずして行こうという指導が行われているわけです。そういうことに対して私は遺憾であると思います。もつと教員が、私は健全な、しかも豊富な政治的な知識を持ち政治的な関心を持つ必要があるということ、こういうことに組合としては努力しなければならないということはまつたく同感であります。
#51
○池田(正)委員 たとえば村の小学校でわれわれが行つてやる。そうすると村の人たちで学校の講堂は一ぱいだ。ところが教員は教員室でみな遊んでおる。政治活動を活溌にやつているような人でない、一般の村人が一ぱいになつて集まつているのに、教員は教員室で遊んでおつて聞こうとしない。こういうことに対する指導方法なお伺いしたいということと、もう一つに、たとえば六・三制というものは、初めて日本にアメリカ製のビスケットか何かしらぬが來た。そのときには教員組合は宮木の前で集まつて、この間もやつておりましたが――私は教育のことはわかりません。はたして六・三制がほんとうに教育制度として絶対にいいものであるかどうかということは私にはわかりません。わかりませんが、ただこれを実施する上においては非常なる金がいる。日本は今敗戰して身代限りをしたのでもる。この身代限りをした日本が、これだけの新しい制度を遂行することができるかどうかということを、一應教員組合の諸君が宮城前にプラカードを持つて集まる前に、そういうことを御研究なすつたかどうかということを私は聞きたい。胃病患者にアメリカ製の献立てを――とんかつもありましよう。そういう料理を食わしたら、この胃病患者はかえつて参つてしまいます。そういう点まで御研究なすつて宮城にプラカードを立てたかどうか、これを私はお尋ねしたい。
#52
○荒木公述人 私は六・三制の実施が日本の経済的な実力において不可能であるとは考えていません。しかし六・三制の実施というのは、むしろ吉田内閣が実施し、発足したものであります。從つてその実施にあたつて、こういう義務制を九箇年に延長するということになれば、これに必要な施設は当然考えられておつたと思う。これは別に組合が要求して実現された問題でも何でもない。私の方から言えば、政府が当然それだけの自身を持つて遂行して行くべき問題であるというように考えるわけであります。
#53
○植原委員長 速記はよろしい。
    〔速記中止〕
#54
○植原委員長 速記を始めてください。これにて公聽会を終りました。明月は午前十時より開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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