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1949/04/04 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第11号
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1949/04/04 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第11号

#1
第005回国会 本会議 第11号
昭和二十四年四月四日(月曜日)
 議事日程 第九号
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 吉田内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 青木國務大臣の経済に関する演説
 池田大藏大臣の財政に関する演説
    午後一時十四分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(幣原喜重郎君) 内閣総理大臣より施政の方針に関し、また青木國務大臣より経済に関し、池田大藏大臣より財政に関してそれぞれ発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣吉田茂君。
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#4
○國務大臣(吉田茂君) ここに現内閣の施政の方針に関して一言する機会を得ましたことは、私のまことに欣快とするところであります。
 思うに、國民は今回の総選挙におきまして、終戰以來の苦しき経験にかんがみ、安定せる政局のもとに、わが國の再建を健全なる保守政党に託さんとして、われわれ保守政党を圧倒的に支持したものと考えるのであります。(拍手)ここに政府は着々所信を断行いたしまして、もつて國家の復興再建を成就し、外は連合國の好意と援助にこたえ、内は國民の輿望と負託にこたえんとするものであります。(拍手)
 十年間にわたる無謀なる戰爭による、名状し難い破壊と混乱の跡始末をなし、わが國の復興再建をはかるために、挙國一致協力、この痛ましき現状を直視して、一大決心と覚悟のもとに、敢然として將來の大計を立つべきときと考えるのであります。(拍手)
 昨年十二月二十九日、マツカーサー元帥の私にあてた九原則を含む書簡及び最近におけるドツジ氏声明は、すべて右の趣意に出でたものであります。私も、この線によるにあらずんば、わが國の再建はできがたしと衷心より信ずるものであります。
 今回提出せんとする予算は、この九原則及びドツジ氏の声明を了承いたしまして、政府の責任において――
政府の責任においてこれを具体化したものであります。政府は、幾多の困難なる事情あるにかかわらず、まずもつて均衡予算を作成し、眞の自立再建をはかる決心であります。(拍手)しかしながら、敗戰後今日に至る間、わが経済は非常に縮小し、わが財源は極端に枯渇し、重税に國民はいまだかつて見ざる苦痛を感じつつあるのであります。まことに憂慮にたえざる事態であります。ゆえに政府は、根本的に行政財政等の改革を断行し、均衡予算案実施の途上においても税制及び徴税方法の改善をはかり、他面、歳出の面におきましても、さらに現実に節約を期し、でき得る限り國有財産を処分し、その実績を得るに從つて臨時國会を召集し、予算の補正、國民の負担軽減をはからんとするものであります。(拍手)
 眞の安定と進歩とは、國家的諸問題を健全なる財政通貨の政策により処理することに立脚しなければならないのであります。有効な安定をもたらすためには、財政政策の基本的手段たる政府予算とすべての政策決定とを関連せしむることが必要なのであります。過去においてインフレーションを激化せしめたものは、主として政府であります。今日の段階においてこれを終熄せしめなければ、國家経済の破滅を來すほかないのであります。補給金、投資その他一般費目から支出を削ることは、政府にとつてはなはだ困難なことでありまするが、これは必ず実行しなければならないのであります。
 また、わが國の現状を見まするに、日本の生産指数は、米國の援助資金の大幅な累進的増加によりまして上昇しており、輸入超過額も増加し、輸出入の不均衡は年々激増しつつあるのでありますが、わずかに米國の援助資金によつて、つじつまを合せておるような次第であります。この現状は、國家経済上看過しがたきところであります。経済の終局的安定をはかり、徹底的にインフレーションを終熄せしめ、さらにゆたかなる経済的発展を途げ、祖國を自立再建するためには、國民生活にたとい一時容易ならざる影響があるといたしましても、國民最大多数の究極における幸福のために断じて行わねばならぬところであります。(拍手)でき得る限り早く光明のある未來を招來するためには、手術は早きを必要とし、國家をしてこの手術に耐えしむるためには、一に國民諸君の不動の信念と熱烈なる愛國心の協力にまたねばならないのであります。(拍手)連合國、特に米國の日本に対する深い理解と厖大なる援助はわれわれの衷心感謝にたえないところであります。しかしながら、われわれとして最も大切なることは、でき得るだけ早くこれらの援助なくして自立し、祖國を復興することであります。私は、連合國の恩惠のみに依存することなく、國民みずから強烈な自主的精神と、耐乏生活に徹した努力とによつて、すみやかに再建を成就する決心を、八千万國民がこぞつて固うせられることを切望してやまないのであります。(拍手)英國國民が非常なる決心のもとに経済的自立を目ざして協力一致の態度は、まことにもつてわれわれが最も学ぶべきところと信ずるのであります。(拍手)私は、現内閣が今後遂行せんとする強力にして責任ある政策に対し、國民諸君が全幅の後援と鞭撻を與えられんことを切望してやまないのであります。(拍手)
 ここに一言いたしたいことは、近く設定を見る運びになつております單一為替についてであります。單一為替レートは、申すまでもなく貿易振興、外資導入のため必要欠くべからざるものであります。現在の日本経済は、一應表面的には安定の段階に達したように見えまするが、その実は自力によるものでなく、米國の援助を支援によつて支えられてある安定でありまして、内面に幾多の不安定要素を包含しておるのであります。また、たとい單一為替レートの設定を見ましても、健全なる経済力の回復がなければ、これを維持し得ることはできないのであります。また、経済復興に必要なる外資の導入も期しがたいのであります。なおその他輸出産業の刷新とか、農業の振興改良とか、失業対策、災害対策、文教の刷新、科学技術の振興、道義の高揚等、これことごとくみな重要な問題でありまするが、これらの施策については、順次所管大臣から説明があるはずであります。
 なお、海外同胞引揚げについて、外務大臣として一言いたします。これまで約六百十余万の引揚げを了しておりますが、いまだなお四十余万の同胞が嚴寒の地に四たび越冬を余儀なくせられておることは、まことに遺憾なことでありまして、その親戚故旧及び家族に対しては、まことに同情にたえないのであります。連合軍司令部も非常なる同情をもつて引揚げ完了に盡力し、相手國との交渉に不断の努力を拂つておらるる結果、相手國もわが國の事情は深くこれを了としておりますから、本年中には引揚げを完了し得ると私は考えるのであります。(拍手)
 この機会に一言つけ加えまするが、近ごろ、わが國の國際情勢より來る將來の危險性に関連し、いろいろなうわさが生じておるのでありますが、これは大戰後常に生ずる状態でありまして、いずれの國も、今日戰爭の記憶は今なお新たなるものがあるのであり、いずれの國も、平和を欲する國はあれ、戰爭を欲する國はないのでありますから、國民諸君におかれても軽々しく海外の情報に迷わされることなきよう希望してやまないのであります。(拍手)
 また最近、学術、宗教、赤十字、労働、通商等の諸会議にわが國の招請せられるものようやく多く、また通商使節として海外渡航を許される者のだんだん多きに至つておりますことは、まことに喜ぶべき現象であります。
 また國内事情において、極右、極左というような言葉がよく使われるのでありまするが、これはためにするむのの言うところであつて、現在國民の大多数は、安定せる政局のもとに経済再建を強力に衷心よりこいねがつて、その道に万進協力して行こうと決心しておる國民であることは、私は信じて疑わないのであります。(拍手)しかしながら、またあらゆる手段を弄して祖國の再建を妨害するものがあることは、(発言する者多し)これまた遺憾ながら明らかなる事実であります。少数でありましても、とにかくそれの存在することは事実であることを認めなければならぬのであります。
    〔発言する者多し〕
#5
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
#6
○國務大臣(吉田茂君)(続) これを要するに、このたび提出の予算案は、戰後のわが政府が当然実行しなければならなかつこととでありますのを、今日までゆるがせにしておつたものであります。(発言する者あり)政府は、ポツダム宣言及び九原則を含むその他の管理政策を熱意をもつて誠実に遵守履行し、國民はこぞつて経済的愛國心により自主経済並びに民主政治を確立し、世界列國が一日も早く栄誉ある國際社会の一員としてわが國を迎え入れるに至らんことを、私は切に國民諸君とともに希望するものであります。(拍手)
 ここに政府の施策大綱と私の衷情とを披瀝し、あえて國民諸君の協力と奮起とを衷心より切望いたすものであります。(拍手)
#7
○議長(幣原喜重郎君) 國務大臣青木孝義君。
    〔國務大臣青木孝義君登壇〕
#8
○國務大臣(青木孝義君) 終戰以來五星霜、苦難の道をたどつて参りました日本の経済も、最近に至りまして、ようやく生産も比較的順調な上昇を來し、インフレーションは緩慢化し、勤労者の実質賃金も漸次向上するに至りまして、ここに経済安定へのきざしを示し始めて参りましたのであります。その基礎は、いまたいわゆる竹馬経済たるを免れないのでありますが、それには、もとよりこの間一面において連合國側の理解ある援助と指導とに負うところまことに大なるものがあるのでありますが、他面において、食糧の供出、石炭の増産等経済の各分野において拂われた全國民の再建への努力と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表するものであります。(拍手)
 しかしながら、今や経済九原則に從い、健全財政を樹立して國家再建の基礎を固むるにつきましては、わが國経済の実態を洞察いたしまして、そのうちに包藏している不健全な要素を的確に認識しなければならないと思います。
 すなわち、まずその最大のものは、年間数億ドルに上る外國援助を受けている事実でありまして、わが國経済安定のきざしも、実は米國の市民と企業の負担による援助に支えられているものであることを忘れてはならないのであります。次にまた、経済活動のにない手たる企業においては、その生産設備は荒廃し、かつ老朽して、いわゆる企業実態資本損耗の傾向は著しく、企業の経営は多額の價格調整費の支出に依存し、赤字金融は累積する等その健全性と自主性とを著しく喪失するに至つているのであります。さらに、河川災害の累増、山林の消耗等國土の荒廃、國富の食いつぶしの傾向もまた憂うべきものがあるのでありまして、インフレーシヨンの緩慢化と生産水準の上昇の背後には、まことに憂慮すべき実態が隠されていることを、指摘せざるを得ないのであります。換言すれば、米國の援助と補助金政策とによつて衰乏経済の上に実力以上の経済運営が行われているというのが日本経済の現状であると申さなければなりません。このまま推移して行くならば、脆弱な経済基盤の上に不安定なる経済繁栄を築く結果となるのおそれがあるのでありまして、今後の経済施策の根本は経済の眞の安定から再出発すべきであることを痛感する次第であります。
 昨年十二月、連合國最高司令部から発せられた経済九原則の指令も、まさにこの趣旨を明確にしたものでありまして、連合國の対日政策が今や日本経済の安定と自立とを要求する段階に到達したことを物語るものであります。從つて、九原則のねらいとするところは、將來における経済の自立を目標として、当面何よりも経済安定を目途とする施策を強力に実施し、経済性に徹した合理的な経済運営を期すべしとするにあります。これがため、單一為替レート設定の準備として九項目の施策を実施すべきことを内容としているのであります。
 思うに、経済自立の基礎となるべき健全な経済力の回復は、経済の安定なくしては期待され得ないのであります。從つて、強力なインフレ対策の実施を遷延すればするほど現在の不健全な状態をさらに長く続けることとなるのでありまして、かくては、たとい為替レートを設定しても、これを維持することは困難となり、國民経済にかえつて有害な影響を及ぼすものでありましようし、また待望の民間外國投資も、経済の安定なくしてはその本格的導入を期待し得べくもないのであります。
 私は、かかる情勢のもとにおいては、九原則指令の線に沿い、耐えがたきを忍んで、経済自立のための第一歩である経済の安定を万難を排して達成するにあらずんば、わが國の再建は期しがたいと衷心より信じておるものであります。(拍手)政府といたしましても、かかる信念のもとに、企業に対しては強力な合理化施策を強く要求するとともに、國民生活に対してもあえて一段の耐乏を要請することとし、諸般の経済施策を強力に推進して行く方針であります。
 かかる方針のもとに、政府はまず二十四年度予算の編成に当面いたしたのでありますが、その内容の詳細につきましては大藏大臣の演説に譲ることといたしまして、ここには、その基本的な構想と総合的な経済施策との関連につき、簡單に申し述べたいと存じます。
 まず、経済安定九原則に掲げられた総合予算の眞の均衡ということでありますが、その趣旨とするところは、財政方面から來るインフレ要因の徹底的な排除ということにあるのでありまして、そのためには、一般会計、特別会計はもちろん、その他の政府関係諸機関の收支一切を予算に網羅し、この收支全体にわたつて実質的な均衡を確保することがまず必要となるのであります。しかしながら、均衡予算の編成にあたつては、あらゆる経済的要求がことごとくこの面に現われて來る結果、その間の調整は政府の最も苦心いたしておるところであります。
 すなわち、まず歳出につきましては、まことに切実な公共事業費の要求に対しても、あえてこれを削減せざるを得なかつたのみならず、行政整理の断行、特別会計の経常合理化の強行、その他あらゆる経費節減を強行いたしまして、さらにまた、物價安定のための價格調整費についてもその支出範囲を縮小し、支出單價に思い切つた削減を加えて企業に極度の合理化を要求するとともに、同じく、輸入補給金についても、企業経理と國民生計費の耐え得る極限まで、できる限り圧縮節約をはかつたのであります。
 他面歳入につきましては、実質的均衡財政実現のためには租税收入の増加と確保にまつほかなく、政府といたしましても、現行税制のもとに、もつぱら税收の確保に万全の努力をいたす覚悟であります。現在國民の租税負担の決して軽いものでないことは、もとより政府の十分承知しているところでありまして、均衡予算実施途上においても徴税方法の改善をはかり、負担の公平化について一段と努力を拂う所存でありまするとともに、予算に計上せられた経費につきましても、実施上さらにその削減に努め、國有財産の処分を行う等國民負担の軽減に資する所存でありますが、國民各位におかれましても、わが國経済の自立のために拂わなければならない負担として、この税收の確保に進んで協力くだされんことをお願いする次第であります(拍手)
 次に米國の援助資金についてでありますが、從來その使途について明確を欠いていた結果、せつかくの好意ある援助も、その本來の趣旨に沿いがたいうらみがあつたのでありまして、政府はこの際、これを円價として明確に予算化することによつて最も効果的な運営を期したいと存ずるのであります。すなわち、今後この援助資金は、これを米國対日援助見返り資金特別会計に繰入れて、経済復興の資金や國債の買上げ等最も有効適切な方途に使用することにいたしたいと存ずる次第であります。(拍手)
 次に金融の問題についてでありますが、健全金融方策の確立とその徹底的な途行を期すべきことを、ここにあらためて宣明したいのであります。すなわち、資金の給源は蓄積資金の範囲内でまかなう原則のもとに、國民に対しては、極力その消費を節約して貯蓄の増強に努めるよう協力を要望するとともに、企業に対しては、企業三原則のわく内において、みずからの生産努力と資本蓄積とにより所要の資金を調達すべきことを要請せられるのであります。さらに政府といたしましても、今回の予算編成にあたつては財政の負担すべきものは率直にこれを財政の負担とすることによつて、ややもすれば財政の負担を金融に轉嫁するがごとき從來の行き方を嚴に是正する態度を明白にいたした次第であります。
 かくして、財政及び金融の両面を通じてインフレ要因の徹底的除去を期したのでありますが、他面、生産活動の維持、経済復興のため眞に必要な資金については、かような健全金融の方針のもとにおいて、その調達に遺憾なきを期さなければならぬことは申すまでもないところでありまして、これを資金の供給面について見ますならば、幸いに米國の援助資金の相当部分を建設資金及び復興資金の使途に充て、さらに國債、復金債等の償還を通じて産業資金に充てることになりましたので、当面二十四年度の産業資金は、運轉資金においても、設備資金においても、計算上その額としては必ずしも事業活動を著しく阻害するがごときものではないと考えられるのであります。(拍手)しかしながら、今後復興金融金庫の事業が縮小せられ、市中金融機関の任務が國債、復金債等の償還による手元資金の増加とも相まつてますます尊重要性を加えて参りますにかんがみまして、國民経済上の見地から所要資金を所要の事業に確保するためには、金融機関の自主的な協力を得ることが絶対の要請となつて來る次第であります。さらに政府といたしましても、今後の事態の推移ともにらみ合せまして、必要な資金の規制についでは実情に即した措置を講じたい所存でありますとともに、企業の自己資本調達を極力促進する見地から、証券市場の健全な発達を期するほか、從來の資本の食いつぶしを防止するため、減債償却の合理的実施を可能ならしめるための施策を檢討いたしておる次第であります。
 次に、現段階における物價改策についてでありますが、その重点は、前述のごとき財政金融の強い健全化方策に対應いたしまして物價の低位安定を期するにありまして、さらに單一レートの設定を契機とする國際経済への参加を目捷の間に控えて國内物價の國際物價へのさや寄せをはかるにあるのでありまして、これを起点として均衡ある経済の安定を進めて参る所存であります。すなわち、昨年六月に発足しました現行價格体系は、その後の経済條件の変化によりまして若干のひずみを生じ、このため経済の合理的な運行が阻害される面も見受けられますので、これが調整は必要に應じて行う方針ではありますが、全体としての價格水準の引上げは、この際避ける方針であります。時に貨物運賃、安定帶物資價格はこれをすえ置くことといたしまして、これに対應して、操業條件の好轉している消費財につきましては、その價格引下げをも考慮し、家計の安定と價格バランスの確保に資したい所存であります。
 しかして、この物價の低位安定をはかりますために、今回の予算編成に際しましても相当多額の價格調整補給金を用意しているのでありますが、本來かかる補給金制度は、経済の合理性と企業の自立性の要請の見地からは必ずしも好ましからぬものであります。しかしながら、日本経済の脆弱なる現状において、一挙にその解決をはかろうとすることは、かえつていたずらなる混乱を惹起するおそれもあり、この際この程度の補給金の計上はまことにやむを得なかつた次第であります。しかしながら、この補給金の支出に際しましては、補給金單價の切下げを行いますとともに、今後の企業努力及び企業合理化促進措置の強行によりましてこれが節約をはかり、いやしくも不合理な経営に対し漫然これが支柱となるような補給金の使い方は絶対に避ける方針であります。(拍手)さらに國内價格の國際價格へのさや寄せ及び為替要因からの國内價格との影響調整の問題につきましては、まず久しく國際経済から隔離されたわが國の孤立物價体系から國際價格体系の一環としての合理的かつ自然な價格体系へ移行することが、今後の日本経済の正常な発展のために強く要請せられるところであります。(拍手)換言いたしますれば、日本経済が國際経済の一員として自立の道を開いて行くためには、まず國際價格体系の中におのずから融和するごとく経済的努力を進めることが当面重要なる課題であると信ずるのであります。しかしながら、他面單一レートの設定と國際價格へのさや寄せにより企業、家計等にあまり急激なる影響を與えることもまた物價安定の見地からはあとう限り避くべきものでありますので、政府におきましては、さしあたり過渡的な方策として輸入補給金によるその緩和策をとつたのでありますが、この輸入補給金の支出に際しましても、生産費切下げの努力によりこれが節減に努めて参る方針であります。
 以上申し述べました低位安定を目途とする物價政策にもかかわらず、農業パリテイー指数の上昇に伴い近く主食の消費者價格を若干引上げる見込みであり、また特別会計の独立採算制堅持のため、旅客運賃、通信料金についてもある程度の引上げが不可避であります。なおまた輸入物資に対する補給金が若干廃止される結果、ひいては消費物資についても多少の價格改訂を余儀なくせられますが、國民経済自立のためには消費を節約して蓄積を行わざるを得ず、しかも、國も企業も家計もすべてが節約耐乏する以外に自力による日本経済の再建は期しがたいのでありまして、國民諸君におかれては、この際耐えがたきを忍んで耐乏生活を克服せられるよう、念願する次第であります。(拍手)
 日本経済の眞の安定を期するための根本的な方策が生産の確保増強をはかるにあることは、あらためて申すまでもないところでありまして、これがため政府は、まず全企業、全勤労者の奮起を要望するのでありますが、かかる生産の増加も、合理的な経済運営の基盤の上に立つてこそ初めて力強い経済発展の基礎たり得るものと信ずるのであります。この見地から政府は、さきに企業三原則の方針を明示し、今回重ねて九原則の線に沿う施策を講じて、企業の合理化を強力に推進し、合理化された基盤の上に健全な民間外資の導入を期待せんとするものであります。
 これをまず價格の面から見ますならば、第一に石炭、電力等の基幹産業については現在の價格をすえ置き、その範囲内において收支相償う合理的経営を行い、所期の生産要請を充足すべきことの要求であります。從來これらの産業にあつては、生産第一主義のやむを得ざる要請から、ややもすれは補給金、赤字融資等政府援助に依存する傾向が強く、その経営に幾多の不合理かつ不健全な要素を内包しつつ今日に至つたのでありますが、今後はまず経営の合理化を強行して確固たる経済的経営を行い得る基礎を確立し、所期の増産を正常な経済的基盤の上に遂行せしめることこそ、日本経済の自立と健全化の第一歩をなすものでありまして、これにはまず企業三原則の線を強く貫徹しなければならぬのであります。この結果行われる合理化は相当熾烈なものがあると予想されるのでありますが、経済の安定と自立達成のためには、かかる基幹産業が正常な経済的運営に立ち直ることが急務であると信ずる次第であります。(拍手)
 しかして、石炭、電力等の基礎資材の價格が、すえ置かれることと対照いたしますと、來年度において操業度の上昇が期待される製造工業については、相当経営上の余裕が生ずるものと認められますので、前に申し述べましたごとき物價政策に対應しまして、これに対しては、企業合理化の見地から、輸入補給金の廃止に伴う輸入原材料の値上りを吸收せしめるほか、價格調整補給金單價の削減、公定價格引下げ等の可能性につき実情に應じた檢討を加えまして、物價の安定、コストの引下げによる企業合理化の推進に資して参りたいと存じております。ことに輸出産業については、熾烈なる國際競爭場裡に立ち向うべき合理化が当面火急の問題として要求せられるのでありまして、政府といたしましても、為替レート設定への一段階として、さしあたり四月一日から輸出の價格比率を四百二十五円で打切るとともに、為替レート実施の際には、輸出補助金はこれを全廃する方針のもとに、企業の合理化を強力に推進して行く方針であります。
 次に、資金の供給の面から企業の経営に及ぼす影響としての対策について一言いたします。前述のごとき強固なる均衡財政、健全金融方針の確立の結果、産業資金は主として蓄積資金の範囲内でまかなわざるを得ざることとなるのであります。從つて企業に対しては、企業三原則の建前からも赤字融資を行わざるはもちろんのこと、健全金融の方針のもとに圧縮された一定の資金のわく内で所要の増産と建設とを行うよう強く要請されることとなるのでありますゆえ、企業は何よりもまず生産費の切下げによる合理化の力強い遂行を要求せらるるのでありますが、政府といたしましても、これに應ずる資金確保の対策を講ずる所存であります。
 以上、企業一般に対する施策とそのあり方を示したのでありますが、かかる施策遂行が特に中小企業に及ぼす影響については、政府といたしましても重大なる関心を抱いている次第であります。すなわち、中小企業が日本経済の発展に果すべき特殊の役割を自覚して経営の改善、合理化を推進し、前述いたしましたごとき経済九原則の趣旨に沿う努力を盡されるならば、政府は必ずや中小企業がその窮境を打開して日本経済に確固たる地歩を占めることを信ずるとともに、この線に沿う育成に努めたい所存であります。(拍手)
 以上経済安定の基本方策を強力に遂行する結果、今後における実質賃金の上昇は、労資一体の企業努力による生産の増加にまつ以外にはないのであります。(拍手)言うまでもなく、政府におきましても、日本経済再建のために、そのにない手たる勤労者の生活安定が必要であるとの認識のもとにおきまして、流通秩序の確立、生活必需物資の確保につきましては一段と強力に努力を傾ける所存であります。(拍手)從來赤字融資、國庫補給金の支出、價格の引上げにより甘やかされた経済がそのまま推移すれば、その結果はインフレーシヨンの進行を激化せしめ、日本経済の自立と安定は百年河清を待つに等しく、勤労者の生活は不断に脅かされ、かくしては勤労者の眞の利益たり得ないと信じまして、(拍手)ここに政府は、断固として、口に苦き良藥の施策を案施せんと決意しておる次第であります。企業及び勤労者各位におかれては、この試練と耐乏と勤儉力行の実践を経てこそ日本経済の再建と生活水準の向上が期待せられるものであることを理解せられ、政府の微衷の存するところに御協力を願いたいと存じます。(拍手)
 なお政府におきましては、かくのごとき施策強行により不幸にして生ずることあるべき失業者の発生に対しましては、今後発展して行く産業、ことに輸出産業部門及び援助資金の活用による新投資事業等に吸收いたしますとともに、失業保險等の円滑なる運用と充実につきましても、國力の許す限り努力して参る決意をいたしております。(拍手)
 今や日本経済の重大なる岐路に立ち、政府は健全なる労働組合の発展を希求するとともに、勤労者諸君の自覚と努力に多大の期待を寄せている次第であります。(拍手)
 翻つて農業の面を見ますれば、その生産を増強することが経済安定の基盤を確立し、食糧の輸入を減少する見地からも現下の日本経済にとつて根本的な重要性を持つている事実にかんがみまして、この際農民諸君の食糧増産への一層の努力を要請する次第であります。(拍手)終戰以來の未曽有の食糧危機を切り抜けて参りましたのも主として農民諸君の努力に負うところが多く、まことに感謝にたえないところでありますが、政府はさらに供出制度の効率化と公平化とをはかるための施策を講ずることとし、すでに実施しました昭和二十四年産主要食糧の事前割当による生産と供出の完遂を期するとともに、それ以上の増産と供出とを期待することとした次第であります。政府といたしましては、農業生産力の増強に欠くべからざる土地改良等生産條件の改善につきましては、國力の許す限りその促進につき今後の努力を期するとともに、前述のごとき物價水準維持により、農家の経営と家計への影響を極力阻止し、肥料その他再生産資材を可能な限り確保する措置を講じ、また米麦等の價格については、昨年における價格決定後の農家パリテイーの上昇分についても追拂いをする等、農業再生産確保の見地から所要の措置をとる方針であります。しかしながら、農民諸君もまたいたずらに政府の施策にのみ頼ることなく、消費を節約し、農民みずからの手で、みずからの組織によつて資本を農業内部に蓄積し、これを生産的投資に振向けて將來の農業生産の維持発展への萌芽を育成して行かなくてはならぬと考えるのであります。(拍手)
 次に輸出振興対策について申し述べます。以上主として國内経済の安定施策について申し述べて來たのでありまするが、日本経済の現状、特に貧困なる風土資源のもとに過剰なる八千万の人口を擁し、米國からの巨額の援助資金及び物資によつて辛うじて現在の生産水準及び生活水準を保ち得ている現状にかんがみまして、日本経済の自立と復興を期しますためには、輸出の振興とこれによる経済循環の拡大をはかることが刻下最大の喫緊事であります。竹馬経済の汚名を拂拭し、自力による経済の再建をはかりますためには、國内需要はできるだけ節約し、コストの引下げに努力し、輸出の伸展、貿易外收入の増大を期しますため、政府におきましては輸出最優先原則を確立し、輸出用資材の優先確保をはかりますとともに、貿易金融の円滑化等に努力を拂ひつつある次第であります。(拍手)なお貿易手続の簡素化を行い、民間貿易の拡大をはかり、正常貿易の復帰に努めておりますとともに、輸出市場の積極的開拓及び貿易條件の改善等対外的関係の調整を懇請している次第であります。
 政府におきましては、以上のごとき輸出最重点方針を採用し、これがためには、あらゆる努力を傾注いたす所存ではありまするが、單一レートの設定に際しまして、輸出補助金の交付による輸出助成措置は國際的にも許容せられないところであり、從つて、日本経済が激烈なる世界経済の競爭場裡に伍してその地歩を確保するためには、峻嚴なる企業合理化の推進、科学技術の振興による技術水準の向上に努めることが絶対の要請となつて参つたわけであります。輸出産業関係業界の特段の努力を強調する次第であります。
 以上申し述べましたことく、企業の合理化と閥民生活の耐乏とを要請する施策が強力に実施せられます結果、購買力は一般に相当圧縮され、有効需要の減退が予想されるとともに、物資の需給状況も漸次改善されつつある状況にかんがみまして、この際物資の割当配給、價格統制等物の面からの経済統制は極力これを簡素化し、縮減された領域に対しては実効ある取締りを行い、流通秩序の確立に資する所存であります。(拍手)しかして、前述のごとき企業合理化の推進にあたりましては、何よりも企業の自主性と経済性を回復せしめる施策が要講せられるのでありまして、この面から、ややもすればいたずらに煩瑣に堕するがごとき統制はこれを撤廃いたしますとともに、(拍手)必要なる統制の実施にあたつては、競爭原理の導入を目途とする強力性ある方策をくふうして参りたいと存ずる次第であります。今般配給公團制度を整理し、指定生産資材の品目を減少せんとし、蔬菜類の配給統制を撤廃いたしましたのも、以上のごとき見地に基くものでありまして、また懸案の料飲店問題につきましても、実情に應じた再開措置が講ぜられる予定であります。(拍手)
 以上、経済安定九原則の趣旨にのつとり、まず國内経済の安定措置を断行し、この経済の安定の基盤の上に輸出の振興をはかり、日本経済復興の萌芽をつちかつて参りましたならば、為替レートの設定も早期に実現し、これを堅持する見通しのもとに内外の信用を得て、民間外資の導入も促進せられ、雇用機会は増大し、生活水準は向上し、日本経済の自立は達成せられるであろうことを確信いたすものであります。かくてこそ初めて國際社会の友誼的な一員として認められ、独立と平和への道は開かれるものと信ずるものであります。(拍手)
#9
○議長(幣原喜重郎君) 大藏大臣池田勇人君。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#10
○國務大臣(池田勇人君) わが國民経済は、敗戰による國土の荒廃、生産規模の縮小に加えて、財政に基因するインフレーシヨンの結果極度の混乱に陥り、今日まで連合國の援助により辛うじて國民生活を維持して参つたのであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
すなわち、これを財政について見ますれば、一般会計予算は從來も一應の收支均衡を得ておつたのでありますが、各特別会計及び復興金融金庫等を含む政府もろもろの機関を通て見た場合におきましては、公債及び借入金は年々増加いたしまして、巨額に上る復金資金の大部分は日本銀行の引受けによつてまかなわれ、通貨増発の主因となつて來たのでありまして、今昭和二十三年中の実績を見ましても、千三百億円を越える通貨増発高のうち八割以上が財政に起因するものであつたのであります。このような状態を一変するのでなければ、財政は將來長くインフレーシヨンの根源となり、眞の通貨の安定は百年河清を待つにひとしいものであります。
 他方、生産の復興状況は、最近表面的には好調をたどつておりまするが、その実体は毎年数億ドルに上るアメリカからの援助のたまものでありまして、わが國民経済自身の力によるものではなく、むしろいたずらに生産の復興を焦慮するの余り資金の濫費を招き、インフレーシヨンを高進せしめるとともに、他方、不自然かつ煩瑣なる統制によりいわば温室経済的な保護に堕しまして、企業の自立心を失わしめ、國民経済は年とともに國際経済の圏外に取残されるに至つたのであります。
 こうした状態を継続することは、もはや許されません。昨年末マツカーサー元帥が述べられたように、経済的に眞の自立がないところには、永遠に政治の自由と独立とは期待し得ないのであります。また、表面的な生産上昇に目を奪われ、ともすれば健全な生産の基礎と資本の蓄積とをおろそかにする結果は、わが國の企業を弱体化し、將來各國企業との自由競爭場裡に立ち得ないものとするおそれが多く、わが國百年の大計として、とり得ないところであります。(拍手)
 以上の観点に立つて、わが党内閣は、今回の予算案を編成するにあたり、從來の一時を糊塗するがごとき方針を一擲したのであります。
 すなわち第一に、一般会計、特別会計並びに政府関係諸機関を通じて眞に総合的に予算の均衡をはかり、インフレーシヨンをこれ以上進行させないよう断然これを抑制せんとするものであります。(拍手)
 第二に、非経済的な放漫なる生産第一主義から轉じて、健全にして効率的なる生産の基礎と資本の蓄積とを長期にわたつて築き上げるため、國民の耐乏と節約とによる各般の施策を講ずるとともに、米國からの援助はこれを明確に区分して、経済復興のため最も効率的な活用をはかることといたしたのであります。
 第三に、輸出補助金を廃止する等の措置によつて、わが國内経済が、除々にではあつても國際経済への参加に向つて一歩々々着実に前進することを目途としたのであります。
 次に、ただいまの三大目的が今回の予算にいかに具体的に表現せられたかについて御説明いたします。
 第一に、財政インフレーシヨンを排除するため、すべての政府支出を收入に均衡せしめるのはもちろん、進んで既存の債務の減少をはかつたのであります。このため、経費のすべてについて極力圧縮に努め、新規事業をとりやめることはもとより、規定の経費についても、眞に緊急やむを得ないもののほかはこれを削減し、しかもこれら歳出は、すべて租税を大宗とする実質的な國庫收入をもつてまかなうことといたしました。
 次に、予算の実行にあたつては支出を極力節約せんとする所存であります。すなわち從來は、歳出予算に計上された金額は当然全額を使用すべきものと考えて、その合理的な節約について十分な配慮が欠けていたきらいがあるのでありますが、今回は、この予算に計上せられた金額といえども、その使用にあたつて嚴重な審査を励行し、年度末にできる限り多額の剰余を残し、もつて國民の租税負担の軽減に資したいと考えるのであります。(拍手)
 第三に、政府みずから節約の範を示すため徹底的な行政整理を断行いたします。思うに、行政機構が厖大な組織と人員とを擁している結果、國民の租税負担を不当に増大する一方、しばしば経済統制の名のもとに無用かつ煩瑣な拘束を國民経済に課し、活溌な経済活動を阻害し、かついわゆる官僚独善の氣風を助長し來つたのであります。
    〔発言する者多し〕
#11
○副議長(岩本信行君) 静粛に願います。
#12
○國務大臣(池田勇人君) 政府はこの際、断然行政の規模を縮小合理化し、冗費を節約するとともに、かかる弊風を一掃せんとするものでございます。(拍手)
 第四に、長期にわたつて健全なる生産の基礎と資本の蓄積とを築き上げるためには、一方において、從來ともすれば経済界に対しいたずらなる安易感を與えておつた復金の貸出を、原則として停止することといたしました。他方において、画期的な措置として、一千七百五十億円に上る米國からの対日援助を特別会計として明確に区分経理せんとするものであります。すなわち、從來米國からの援助はきわめてあいまいな姿で、輸出入物資に対する実質上の價格差補給金などに漫然使用せられていたのでありますが、今後はこれを内外に明確にし、経済再建に必要なる方面に対する長期資金の供給、國債等の償還に活用して、市中金融の緩和に資したいと存じます。わが國民経済自立のために、なおしばらく米國からの援助を必要とする現在、今回の対日援助資金に関するこの措置は、援助の趣旨を最大限に実現するがための最も時宜に適したものであると信ずるものであります。(拍手)
 第五に、今回の予算案は、わが國民経済を國際経済へ参加せしめるために具体的な一歩を進めんとするものであります。すなわち政府は、輸出に対する補助金を一切撤廃して温室的保護を排し、輸出産業をしていたずらに政府に頼ることなく、將來國際場裡における自由競走に耐え得るよう企業の整理、合理化を促進せんとするものであります。また輸入補助金及び價格調整金につきましても、これをすべて予算面に計上するとともに、極力その削減に努めました。もつとも、現下の不安定なる國民生活、労働條件等にかんがみ、現行物價水準を急激に変更することは適当でないと考えられ、一挙に大幅に削減することをなし得なかつたのでありますが、きわめて近き將來に予想せられる單一為替レートの設定と相まつて、政府はなるべくすみやかにこれらの補助金を撤廃し、もつてわが國内経済が自力によつて國際経済に参加する日の早からんことを期待するものであります。(拍手)
 以上の方針によつて作成せられた一般会計予算は、歳入総額七千四十九億円、歳出総額七千四十六億円でありますが、その内容のおもなるものについて御説明いたします。
 まず歳出予算のうち、終戰処理関係諸費は一千二百九十六億余万円でありまして、前年度に比し、事業量において相当な減少となつておるのであります。これは終戰処理費に含まれる建設工事の縮小その他各種経費の節約に基くものであります。
 次に公共事業費は五百億円余でありまして、前年度に比し、その全体の事業量において若干の減少となるのでありますが、その使途に格別の考慮を加え、最も喫緊な方面に重点的に使用することによつてその不足を補いたいと存じます。地方配付税配付金五百七十七億円余は、地方財政の現状にかんがみ、この金額は必ずしも十分とは申しがたいのでありますが、中央地方を通ずる財政の総合的調整をはかるため、この程度の金額を地方公共團体に配付することといたしました。
 次に出資及び投資金八百十八億円余は、復興金融金庫の既発行債券の償還に充てるもの三百億、貿易特別会計の資金に充足するもの四百億円等を包含しております。
 次に價格調整費は二千二十二億余万円であります。前年度六百二十五億円に対して大幅の増加となつておるのであります。これは、從來の貿易資金の操作によつてまかなわれていた実質上の補給金を價格調整費中に計上したことと、價格補給金の対象となる物資の生産量の増加を見込んだことによるものであります。しかしながら、その範囲及び單價については極力これが圧縮に努め、安定帶物資に対する本年度分一千二億円、前年度からの繰越分百五十億円、輸入物資補給金八百三十三億円等を計上いたしたのであります。
 なお今回の予算編成に際し、物價については旅客運賃、郵便料金及び食糧について若干の引上げを予定しておりますが‥‥
    〔「公約はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
#13
○副議長(岩本信行君) 御靜粛に願います。
#14
○國務大臣(池田勇人君) 物價水準としては現状を堅持することを建前としております。
 次に歳入について申し上げます。今回の歳出予算は、わが國民経済力に相当重い負担を負わせることになるのでありますが、歳入歳出の実質的均衡をはかることが絶対の要請である現在、その財源はすべて租税その他の実質的な收入をもつてまかなうことといたしました。なかんずく租税收入は五千百四十六億円余に上り、全歳入中に占めるその割合は七三%となり、前年度に比し相当増加しているのでありますが、しかし本年度予算編成にあたりましては、原則として現行の税制をそのまま踏襲することといたしました。ただ取引高税については、特に納税方法等について大幅な改正を行い、世上の最も非難の多かつた印紙納税の制度を廃止するとともに、非課税範囲を拡張し、また一定額以下の零細な取引高税については免税することといたしました。(拍手)これにより、取引高税の納税者数は約三十万人程度減少することとなり、本税の納税は今後円滑に行われるものと信じます。なお新たにガソリン税を創設し、歳入増加の一助とした次第であります。
 ひるがえつて、わが國現在の税制を檢討いたしますと、現在の経済情勢の推移に十分適應しないきらいがあるのであります。從つて政府といたしましては、徴税事務運営を改善し、できるだけ適正な課税を行うことに全力を傾注する所存であります。(拍手)納税者各位の協力によつて租税の徴收率が向上いたしますならば、歳出の実行上の節約と相まつて、近き將來なるべくすみやかな機会にぜひとも税制の合理化をはかり、國民負担の軽減と公平化を行いたいと考えておるのであります。(拍手)
 次に、タバコ專賣益金は千二百億円を計上いたしました。本年度においては約六百六十億本の製造を予定しております。
 次に政府は、この際國有財産の賣拂いを促進し、連合國軍の解除物件についても、賣却の可能なものはこの際極力民間に賣却することとし、もつてこれらの物件の経済的効用を高めるとともに、歳入増加をはかることといたしたのであります。
 なお國有鉄道事業及び通信事業の特別会計については、現行鉄道運賃及び郵便料金をすえ置くときは鉄道二百三十五億円、通信四十九億円の收入不足を生ずる見込みでありますので、本年五月から旅客運賃について約六割、郵便料金について平均約四割の引上げを行い、もつてこれら会計の独立採算制の確立を期することといたしました。
 さきに申し述べました通り、眞に総合的に財政の均衡を確保する結果、從來と異なり政府の財政需要が金融面を圧迫することはほとんど解消し、今後は金融の自主的活動が大いに期待せられることとなつたのであります。しかして、金融面において最も意を用うべきは通貨の安定と金融の正常化を期することであります。これがためには、日本銀行の信用造出による資金供給は極力これを避けねばならないのでありまして、新しい状況のもとにおける信用統制については、眞に國民経済全体の要請に應じ得るような措置を考究することが必要であります。すなわち、わが國民経済の自立復興をはかるためには、産業資金の需要は依然相当巨額に上るものと考えられるのみならず、輸出の振興、正常取引の増加に伴う運轉資金の供給を確保することもまた肝要でございます。このため、一面において企業自身が自己の信用によつて所要資金の蓄積に努力することはもちろん、國民の耐乏と節約とにより貯蓄の増加をはかり、かくして蓄積せられた資金を経済再建のため眞に必要とする面に限り効率的に配分せられるよう一段の努力を拂う所存であります。特に長期設備資金の供給については、復興金融金庫が從來の融資方式を廃止することといたしました関係上、この方面の資金供給に対する一般金融機関の積極的活動を促進するとともに、農林金融、中小商工金融等については、その特殊性にかんがみ、必要なる資金の供給に遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)
 また政府は、今回新たに國民金融公社を設立し、一般の金融機関から資金の供給を受けることが困難な者に対しまして生業資金の融通を行わしむることといたしたのでございます。
 また政府は、一日も早く証券取引所を再開を行うことができるよう努力いたしております。
 なお、このような情勢のもとにおいて、金融機関の使命はきわめて重大でありますので、この際金融機関としては任務の公共性を自覚し、その運営に万遺憾なきを期するよう特に切望する次第であります。
 最後に私は、ここに國民各位に対し、敗戰の日、すなわち昭和二十年八月十五日、その日を回想せられることを切望いたします。当時國民のすべては、前途の希望を失い、祖國の滅亡を憂えたのであります。近々三箇年半にして、ともかくも今日の程度にまで経済復興をなし遂げようとは、当時何人が予想し得たでありましようか。
 冒頭に述べました通り、わが國経済が今日の状態をとりもどしたことは、連合國、なかんずく米國の援助によるものであります。ことに、わが國はいまだ講和條約の締結を見ざる状態にあるにかかわらず、米國はこれに対して、連合國であつた西ヨーロツパ諸國に対するとまつたく同樣の援助を供與いたしておるのであります。(拍手)この事実を、われわれはえりを正して再思三省すべきであります。(拍手)
 同時に、さきに引用いたしました通り、経済上の自立なきところ眞の政治の自由と独立とは望み得ないのであります。われわれ日本國民が、みずから額に汗することなく、いたずらに他國の援助によつて徒食するならば、われわれは祖先と子孫とをはずかしめるものといわなければなりません。(拍手)
 諸君、私は、國民各位が本予算案を通じて鮮明せられましたわが党の政策を十分了解せられまして、耐乏と勤勉とを通じ全幅の協力を寄せられんことをかたく信じて疑わないところでございます。(拍手)
#15
○今村忠助君 國務大臣の演説に対する質疑は延期し、明五日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#16
○副議長(岩本信行君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後二時三十三分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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