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1949/04/06 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第13号
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1949/04/06 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第13号

#1
第005回国会 本会議 第13号
昭和二十四年四月六日(水曜日)
 議事日程 第十一号
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
  阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案(廣川弘禪君以外七名提出)
  國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後二時二十六分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 阿波丸事件基く日本國の請求権の放棄に関する決議案(廣川弘禪君外七名提出)
    (委員会審査省略要求事件)
#3
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち廣川弘禪君外七名提出、阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案は、提出者の要求の通り、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#4
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。岡崎勝男雄君。
#6
○岡崎勝男君 ただいま議題となりました阿波丸事件基く日本國の請求権の放棄に関する決議案の趣旨を御説明いたします。
 まず決議案を朗読いたします。
   阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議
  わが國は、連合國の同情ある理解により、今や戰爭の荒廃から脱却して平和と自由及び民主主義の高遠な原則の具現とを目指して再建の歩を進めつつある。
  米國は、主たる占領國として、占領政策の設定と実施とに当つては、主導的な立場にあり、しかも、同國政府及び同國民がわが國の復興と再建のために與えられた多大の援助に対しては、わが國民は、感謝措く能わないところである。
  われわれは、この感謝の念を表現する一方法として次のことを政府に要望する。
 一、わが國は昭和二十年四月一日発生した米國海軍艦艇による阿波丸撃沈事件に基くすべての請求権を自発的に且つ無條件に放棄すること。
 二、政府は速かに、連合國最高司令官のあつせんの下に、米國政府と商議を開始し、前記請求権の放棄を基礎として、本事件を友好的に解決すること。
 三、政府は國内措置として、本事件の犠牲者を慰藉するため適当な手段を講ずること。
 四、政府は本決議に基いて執つた措置の結果を本院に報告すること。
  右決議する。
 諸君は、阿波丸事件を御記憶のことと思います。同船は日本郵船会社の船でありまして、連合國側の俘虜及び抑留者にあてられた米國からの救恤品を積んで、昭和二十年二月十七日、南方諸地域に派遣せられました。この救恤品輸送は、米國政府からの要請に基いて行われ、連合國より安導券を與えられておつたのであります。阿波丸はその使命を果した後、帰途についたのでありますが、その途中四月一日眞夜中、台湾海峡において一米國潜水艦により撃沈せられました。
 この事件はその後スイス政府を通じて、日米両國政府間に交渉が行われた結果、終戰直前すなわち昭和二十年七月五日、米國政府は、わが政府に対し、同船撃沈に関する責任を認める旨を通知するとともに、賠償問題に関する話合いは、敵対行動終結後までこれを延期することを提議して來た由であります。
 聞くところによりますと、この事件に関しては、政府はその後引続いて米國政府と折衝を続けていた由でありますが、いまだ解決に達しておりません。
 しかしながら終戰後の事態を見ますると、米國は主たる占領國として、われわれを眞の民主國家として立ち直らせるために、また飢餓及び疾病の防止、産業及び通商の回復、その他戰爭のために荒廃したわが國経済の再建を助成するために、常に先頭に立つて盡力されているのであります。またわが國民の引揚げのため、その船舶を貸與されましたのみならず、その促進のためにも多大の努力を拂つております。
 なお米國議会は、米國民の犠牲において日本の救済及び復興のため、巨額の資金の支出を決定しておりますことは、御存じの通りであります。のみならず占領費並びに終戰以夾米國政府によつてわが國に供與された借款及び信用は、わが國にとつては債務ではありますが、わが國の経済の復興及び再建にまことに有効なものであります。
 かくのごとき米國の好意を物語る数数の証左に直面して、われわれはこれに比べれば、比較的小額の阿波丸事件の賠償請求をいつまでも固執することは、衡平の観念から見ても、また米國國民の感情を考慮する上からいつても、むしろ当を得ないことであると感ずるのであります。よつて私は、この際この事件に関するすべての請求権を放棄すべきこと、そしてまた政府は米國政府との間に、右の趣旨にて事件の友好的な解決をはかるとともに、國内措置として本事件犠牲者を慰藉するため、適当な手段を講ずべきことを提議するものであります。
 この目的のため、われわれはここに本決議案を提出いたした次第であります。これはすべての日本人の純粹なる感情を反映するものであると信ずる次第であります。何とぞ滿場一致御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)
#7
○議長(幣原喜重郎君) 質疑の通告があります。これを許します。梨木作次郎君。
    〔梨木作次郎君登壇〕
#8
○梨木作次郎君 今提案になりました決議案の内容について、少しばかり質問したいと思います。
 この決議案の内容になつている問題は、日本國政府が米國政府に対し、持つている阿波丸撃沈による損害賠償の請求権を、主たる内容とする債権の放棄に関するものであります。そこで提案者に伺いたいのは、これは一面外交関係を含む事案であると同時に、財政に関する問題であります。外交関係の処理は、内閣がこれをなすべきものであると信じます。ところで現在外交自主権のない日本の現状におきまして、一体これはどういう形式と立場において、政府は米國政府と商議をするのであるか。換言すれば、対等の立場においてこれは商議するものであるかどうか、提案者にこの点を明確にしていただきたいと思うのであります。
 第二番目には、この決議案の内容に含まれている事案は、講和会議の際に処理すべき問題であると信じます。しかるに講和会議前に、なぜ早急にかかる問題の処理をしなければならないのか、その理由を提案者において明確にしていただきたいと思うのであります。
 第三番目には外交に関する限りは、内閣において処理すべきものと思いますが、しからば内閣はこの問題について現在いかような見解を持つているのか、この点について提案者が知り得た内閣の意向を明確にしていただきたいと思うのであります。
 第四番目には、これは米國に対して日本が持つておるところの損害賠償その他の債権を放棄することであります。そこで財政法第八條によりますると、「國の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」となつておるのであります。從いまして、本事案の内容となつておるような債権を放棄する場合におきましては、必ず法律に基かなければならないはずであります。從いまして、かかる法律を無視したところの内容を含む決議案、この点に関する提案者の見解を聞きたいと思うのであります。
 さらに第五番目には、本事件の犠牲者に対しては、今までにどの程度の國家として賠償を行つているか、つまり犠牲者に対してはどの程度の慰藉が現在までに行われているか、これを明確にしていただきたいのであります。聞くところによりますると、債権は二億円だと聞いております。ところでこの二億円の賠償の内容です。つまり船会社に対してはどれだけの賠償をなし、また乗船者、こういう人たちに対してどの程度の賠償が行われて來たのかどうか。また今後行うのかどうか。この賠償の内容を具体的に明確にしていただきたいと思うのであります。
 大体以上の点について、提案者にわれわれが納得の行くような明確な答弁をお願いいたしたいと思います(拍手)
    〔岡崎勝男君登壇〕
#9
○岡崎勝男君 提案者として簡單に御質問にお答えいたします。
 外交関係でいかなる形式であるかというのが、第一の御質問でございますが、これは決議案にもありますように、現在は非常に変態的な情勢でありますので、最高司令官のあつせんによつてということがありまして、これで十分意を盡しておると考えております。
 第二に、講和会議以前にこの問題を提起するのはどういうわけかということでありまするが、これはただいま提案理由に説明いたしましたように、今までも、また今後も予期せられるアメリカ側の数々の好意に対して、具体的に感謝の意を表するのが一つの理由であります。また講和会議まで延びると、遺族の人たちに與え得べき補償も自然に延びる、こういう考えから、なるべく早くという意向であります。
 第三に、内閣の意向はどうであるかということでありまするが、これは私どもは國会の意思として決定したいという考えで、特に内閣の意向を確かめておりません。
 第四に債権の処分についてはどうかということでありまするが、これは決議案が可決されたあとの問題だろうと考えております。
 第五にいかなる補償をしておるか、また今後どういう補償をするかということでありまするが、これは聞くところによりますると、乗船者は官吏もあり、軍人もあり、あるいは会社の社員もあり、その各方面でおのおの規定に基いて從來補償をしておつたそうであります。今後いかなる補償をするかは、國会の決定するところであろうと考えております。(「二億円はどうした」と呼びその他発言する者あり)
 追加いたします。二億円の内容についてはいろいろありまするが、これは日本の請求権でありまして、決定された金額ではありません。(拍手)
#10
○議長(幣原喜重郎君) これにて質疑は終了いたしました。
 これより討論に入ります。西村榮一君。
    〔西村榮一君登壇〕
#11
○西村榮一君 私は日本社会党を代表いたしまして、遺憾ながら本決議案に賛成の――
反対の意思表示をいたすものであります。(「もう一回やれ」と呼びその他発言する者あり)反対の意思表示をいたすものであります。
 ただいま提案者において説明せられたことく、わが國は終戰以來三年七箇月の間、連合軍、特にアメリカから多大な援助をこうむつて参りましたことは、民自党の諸君と寸毫もかわらず、われわれは感謝いたしておるのであります。この援助と支援があつたればこそ、戰後における混乱を切り拔け、敗戰から壊滅的な状態にありましたわが國の生産界は、立ち直りを見せたのである。われわれはここにおいてこれだけ今日の國情の回復に対しましては、滿腔の感謝をささげることにやぶさかではないのでございますが、しかしながらそれと‥‥(発言する者あり)それと、國民が有する権利の放棄とは、政治は峻烈に区別しなければならないと存ずるのであります。(拍手)本阿波丸の事件は、これはアメリカ政府におかれましても、自己の過失を承認せられておるのであります。少くとも、賢明な各位に申し上げるまでもなく、政治の責任とは、これは八千万國民の生命と財産と平和とをわれわれは信託を受けておるのであります。この國民多大の期待のうちに、國民の権利と國民の財産と平和とを守らなければならぬところの日本政府が、あるいは日本國会が、みずから道義と條理に從わずして、一片の感情にかられてこれを放棄するということは、後代に惡例を残すものであるといわなければならぬ。(拍手)少くともわれわれは今日のアメリカに対する感謝と、この厳然たる國民の権利を主張するということにつきましては、明確にこれを区別しなければならないのでございます。
 提案者の御趣旨もよくわかります。しかしながらわれわれが將來國際社会に復帰するのときがありましたならば、少くとも外交界における権威者とせられておる岡崎君、並びに現総理大臣は外務大臣を兼任しておられるのでありまして、多年の外交官として世界情勢に通暁せられ、しかも國際法において明るいこれらの人々を政府に迎え、議会に迎えて日本國家が將來平和会議の後において、独立して國際外交の上に進出して行きまするのときが一日も早からんことをわれわれは希望するが、そのときにあつて、みずから道義と條理に從わずして、日本國民の権利を放棄するということであれば、後代の國際社会における日本國民は、今日の國会のこの卑屈なる態度に対して、いかなる批判を與えるかということを、われわれは憂えざるを得ないのであります。(拍手)
 かつては軍部盛んなるときには軍部の意を迎え(発言する者あり)あるいはまたあらゆる強者におもねるという‥‥(発言する者あり)道義をわきまえずして強者におもねるという、遺憾ながら日本國民の片すみに巣くうところの封建的な思想をわれわれは拂拭しなければ、この間隙から‥‥(発言する者あり)諸君、この間隙からフアシヨが擡頭し、左翼の過激なる思想が擡頭するということを考えてみますならば(発言する者あり)われわれはすべからく日本の政治は断固として道義と正義に立脚して、主張すべきものは主張しなければならないと存ずるのであります。この意味におきまして、遺憾ながら岡崎君提案の本決議案に対しましては、社会党は反対いたすものであります。
 ただ問題は、私は單にこれだけではございません。一、二分最後の結論として結びつけますならば、わが國が今日主張するものは、当然な要求する権利の主張を放棄してはならぬということ。それは阿波丸事件だけではございません。問題は、今日三年七箇月たつてなおソ連邦に抑留されておるところのわが同胞の帰還に対して、本國会は一大熱意を‥‥
(「共産党の責任だ」)と呼び、その他発言する者あり)示さねばならぬと思うのであります。もちろんこれは日本共産党の責任にあらず、私どもは國会の名においてソ連邦に要求することが当然であると信ずるのであります。ポツダム宣言第九條におきましては、武装を解除するならば日本國民は國に帰して、平和なる生活と生産に從事することを保障すると明記しておるのでありますが、終戰以來三年七箇月間、軍人にあらざるこれらの國民をも、なおソ連邦内に分散抑留して強制労働に服さしておるという現状は、はなはだ日本國民として遺憾なりと存ずるのであります。(拍手)これに対しましては、われわれは一日も早く即時帰還を要求するとともに、その死んだか生きたかわからない生死不明の氏名を発表してもらいたいということを、正々堂々と要求し得るの権利もあるということをあわせてつけ加えまして、私はこの決議案に対しまして反対するものであります。御清聽を感謝します。(拍手)
#12
○議長(幣原喜重郎君) 次は今村忠助君。
    〔今村忠助君登壇〕
#13
○今村忠助君 私は民主自由党を代表いたしまして、ただいま提案されております阿波丸事件に基く日本國の請求権の放棄に関する決議案に対して賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)
 大体阿波丸事件というものは、昭和二十年の四月一日、霧の深い夜起きた事件であります。しかもいわゆる安導券なり、一定の協定のもとに照明も標識もあつたとは申しますけれども、その事件の起きた場所は、あらかじめ協定されておる地域から八マイルそれていたことと、進航状態において三十四マイル進み過ぎておつたと言われていることを一應考えてやらなければなりません。またアメリカにおきましては、聞くところによりますと、すでにこの問題に対しましては、責任者に対する措置は終つておると言われております。
 まず、いわゆる阿波丸事件の起きた状態がかようなものである。そしてまた、すでにアメリカの側においてこの処置が済んでおると聞いております。
 第二点におきましては、今回決議案として提案されたところのものは、すでに前内閣時代に用意されておつたと聞くのでございまして、いわゆる前内閣の與党であつた社会党の人たちが、しかも西村君のごとき幹部が、時をかえたならば全然違つた立場で演説されるという、そのかわつた態度に驚かざるを得ないのであります。(拍手)われわれは静かに顧みますれば、終戰以來アメリカから受けているところの経済的援助は、実に数字にあげれば莫大なるものであります。いわゆる敗戰國の日本でありながら、街頭にほとんど飢えて死ぬ人を見なかつた事実は、われわれ心の中から感謝しなければならないことであります。ことに最近の新聞の報道するところによりますれば、アメリカは移民法を改正して、かつて拒絶しておつた日本の移民をも、ある時期が來たならば入れようという態度をとられておるやに聞き受けます。またこれに関連いたしまして、現在アメリカに在住する八万五千名に近いところのわが同胞が、アメリカこ帰化するところの権限をも與えられようとしております。
 かように考えて参りますれば、アメリカが日本に寄せるところの好意は実に厖大なるものがあると考えなければならぬのであります。われわれは、いうところの武士道精神――(発言する者あり)その流れをくみ、かような時勢ではありましても、あらかじめこれを放棄いたしまして、この多大な援助に報いなければならぬとともに、すみやかにいわゆるアメリカの経済的援助を受けて、日本の再建がいつときもすみやかになされんことこそ、今日われわれ政治家として、努力いたさなければならぬところであると確信するものであります。
 われわれはこの見地に立ちまして、このいわゆる請求権をも放棄して、日本再建の一時もすみやかならんことを期するものであります。(拍手)
#14
○議長(幣原喜重郎君) 次は今野武雄君。
    〔今野武雄君登壇〕
#15
○今野武雄君 私は日本共産党を代表いたしまして、本案に反対の意を表明せんとするものであります。
 まず、第一に、この決議案によりますると、合衆國政府の援助に対する感謝の念を表現する一方法としてということが載つておりますが、そういうことで、國際法上当然の権利として取得した請求権を、こちらから一方的に、かつ無條件に放棄するというようなことは、まことに卑屈な態度といわざるを得ないのでありまして、その点私ども絶対に反対であります。(拍手)
 日本政府は賠償として支拂うべきものは当然支拂わなければならない。しかし取るべきものは取る。こういう公正かつ毅然たる態度をとるべきである。そして本決議案のような卑屈な、ごまかし的な態度をとるというようなことは、決してしてはならないのであります。なおこの点については、先日吉田首相が、施政演説におきまして、わが國の自主性というものを強調されたことと、私は矛盾撞着するものと考えるのであります。提案者は、さつきの弁明によりますと、この措置が友好を示すために必要だというふうに聞こえたのでありますが、しかし、アメリカは御承知のようにビジネス・ライクということを好む國である。そういう國に対して、友好的な態度というのは、やはりビジネス・ライクにやるのが当然だと思うのです。その点でも、区切りをはつきりつけるというやり方でやつていただきたい。こういうようなやり方は、断じてしてはならないのだと私は思うのです。
 それから第二に、私は本事件の犠牲者に対しては、やはり皆さんとともに衷心から哀悼の意を表するものでありますが、しかしそれに対する賠償は、当然國際法上の手続によつて取得することのできる賠償金によつて充てるべきであります。断じて國民の負担においてやつてはならないと思うのです。これは筋違いだと思うのです。特にさつきの弁明者が答弁できなかつた点、つまり二億円の内訳はどうだという点について、答弁できなかつたのですが、この点は非常に重大だと思うのです。当時の二億円というのは、現在どのくらいになるか、それは見るところによつて違うでありましようが、相当莫大な金になるはずだ。その大部分は、私ども推察するところによれば、船会社にやつてしまうんじやないかと思うのです。そういう点から考えると、現在、特にこのときに、こういうような決議案を出すのは、一体どういう意図か、こういうことを考えてみますならば、民主自由党は多数を擁して、この船会社に奉仕するようなことをしようとしているのではないか、こういうふうにも考えられる。こういうような、國民の疑惑を招くようなことは、與党としてやるべきではない、そういうふうに考えるのであります。
 第三に、先ほどの質問者も申しておりましたが、手続上においてもまた遺憾な点がございます。元來この事件に対しては、公文書によつて政府と政府との間にきちんとしたとりかわしがしてあるはずです。そうすれば、そういうことはまずもつて、やるとすれば内閣が責任を持つてここへ提案して、それで國会においても、外務委員会並びに大藏委員会などにおいて愼重に審議して、それから本会議に出さるべきである。しかるにそういうような手続を省いてやるということは、やはり國民を愚弄するものである、こういうふうに考えるのです。この意味でもまたわれわれは反対である。
 最後に私は、この事件を解決する機会と方法というものは、別個に存すると考えるのであります。すなわちやがて開かるべき講和会議において、賠償問題一般を解決する際に、この問題も織り込んでやるべきである。それが当然のことなんです。從つて私といたしましては、滿堂の皆様とともに、できるだけ早く講和会議が開かれることを期待しまして、そうしてその機会に、あらためて本事件の処理をなすべきであることを主張するものであります。
 以上三つの理由によりまして、私は本決議案に絶対に反対しまして、提案者がこれをすみやかに撤回されんことをお勧めする次第であります。(拍手)
#16
○議長(幣原喜重郎君) 次は岡田春夫君。
    〔岡田春夫君登壇〕
#17
○岡田春夫君 私は労働者農民党を代表いたしまして、この決議案に対して反対をいたします。反対の理由は三つあります。
 先ほど社会党、共産党から反対をされましたのと大体同様の趣旨でありますが、まず第一に、われわれは國際法上の立場から、この決議案に対して反対をいたすのであります。國際公法上の立場において、多言を要するまでもなく、この阿波丸の問題につきましては、アメリカ本國においても、明らかにみずからのあやまちであることを認められております。それだけに、認められました結果として、賠償の問題が当然このあやまちの上に立つて行われるとするならば、かような決議案を出されるということは、まつたく本末顛倒であると考えます。(拍手)私たちは、國際法というものが、單に日本とアメリカの、この阿波丸の事件の問題だけで汚されて行つてはならない。全世界の國々の間における法律の関係が、あくまでも守られて行くとするならば、この阿波丸の事件を通じても、あくまで正しい國際関係が守られて行くのでなければならないと思います。まず第一において、この点からわれわれは反対をいたします。
 第二の点は、このような賠償問題に対して、日本が民主國家として再建をする場合において、今後いかなる態度をもつて行かなければならないか。日本の國が敗戰後において民主的な再建をするということは、ポツダム宣言においても、あるいはこの間の吉田総理大臣の施政演説によりましても、また経済九原則によりましても、自立的な再建を通じて民主的に再建されて行かなければならない。このような民主的な再建を通じて独立國家の体面を保持いたして参ります場合において、先ほど申し上げたように、國際法上において明らかに誤りであると米本國において認められているものに対して、日本の國民自身が卑屈な態度をもつて、これに対して権利を放棄するという態度は、これは日本の民主的な再建の考え方において、まことに考えの誤りであるとわれわれは考えるのであります。(拍手)私たちは、日本の國が民主的に再建されるためには、権利を正当に主張すると同時に、反面において義務も正当に、まじめに履行しなければならない。私たちは、敗戰による賠償の問題を忠実に義務として履行すると同時に、この問題は権利として堂々と主張するものでなければならないと思います。(拍手)私たちはこの意味においても、民主自由党の諸君のごとき、━━━━━━━━━━━━━━━━━考え方をもつて問題を処理せんとする考え方は、断固として反対をするのである。(拍手)
 第三は、日本の憲法の七十三條において、民自党の諸君もあわかりでありましようが、七十三條には、内閣が外交の関係を処理しなければならないということが明確に書いてある。この問題につきましても、私たちはあくまでも吉田内閣が責任を負つてこの問題を解決すべきであつて、ことさらに政府がこれを提案しないで、民自党が多数の圧力によつて、かかる問題を議会の中でしやにむに強引に押し切らんとする態度こそは、われわれは最も非民主的な態度であると確信をいたします。(拍手)もし吉田内閣が眞に日本の民主的な独立國家としての再建を望むとするならば、なぜこの問題を憲法の規定に從つて、吉田内閣の責任において、みずから忠実に履行されないのか。これをことさらに責任を回避して、しかも議会側の責任に轉嫁することによつて、これを行おうとするような態度については、絶対にわれわれは反対することを申し上げておかなければならないのであります。
 以上三つの点につきまして、労働者農民党は、この決議案に対して絶対反対をいたします。(拍手)
#18
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの岡田君の発言中、不穏当の言葉があつたように聞えましたが、速記録を取調べた上適当の処置をとることといたします。
 これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#19
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数であります。(拍手)よつて本案は可決いたしました。
 この際外務大臣より発言を求められております。これを許します。外務大臣吉田茂君。
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#20
○國務大臣(吉田茂君) 衆議院が長期の間にわたる本懸案の解決のため発議されたことは、まことに欣快にたえないところであります。(拍手)政府はただちに本決議を実施に移し、合衆國政府と商議を開始し、結果につきましては、本院にさらに報告するとともに、しかるべき國内措置を講ずることといたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#21
○議長(幣原喜重郎君) これより國務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。勝間田清一君。
    〔勝間田清一君登壇〕
#22
○勝間田清一君 私は日本社会党を代表いたしまして、吉田総理大臣並びに経済関係閣僚に対しまして、主として毎日汗水をたらして働きながら、日本の祖國の振興をこいねがつておる働く人たちの立場に立ちまして、御質問を申し上げてみたいと存ずるのであります。
 一昨日の経済の諸方策について、私も拜聽をいたしたのでありますけれども、率直に申しまして、私はきわめて失望を感じたものであります。またある意味においては、非常に恐怖さえ私は感じたものであります。そこに説かれておりますところのものは、言うまでもなく、從來の民主自由党の諸君の公約が無視されておるという問題だけではございませんで、今度の吉田内閣のとろうとしておるいわゆるインフレ処理政策なるものは、これは財政と金融を極度に引締めることによりまして、インフレーションを一挙にここに收束せしめんとするところの政策でありますが、この一挙にインフレを收束させるところの政策に対する裏づけは、これはあの十八世紀当時、ちようど今から二百年前にとられたまことに素朴な自由主義そのものであります。戰後世界の各國におきましては、いろいろインフレの処理政策が考えられて参りました。皆さんも御案内の通りに、イギリスにおきましてはいわゆるデイス・インフレーションの政策がとられたし、西ドイツにおきましてはライヒス・マルクをドイツチエ・マルクに切りかえるところのいわゆる通貨の処理政策というものがとられて参つたのでありまして、ソビエト・ロシヤにおける平價の切下げ等、各國はいろいろな手段を考え、思考を凝らしてこの重大なるインフレに取組んで参つたのであります。わが國におきましても御案内の通り、從來あるいは中間安定による政策があり、またわれわれといたしましては、一箇年間いわゆる安定恐慌に対する準備を整えて、その上に金円を発行することによつてのインフレの一挙收束ということを、主張して参つたのであります。しかしながら今度吉田内閣がとろうとするインフレ処理政策というものは、財政と金融の極度な引締めによつて、これを一挙に解決せんとするところの政策であることは明らかになつたわけであります。
 この政策なるものが現在日本において最善の方法であるかどうかにつきましては、幾多の議論を要するところと考えますけれども、当然ここにわれわれに懸念をせられますところは、これによつてあるいは資金が詰まつて來るのではないか、あるいは長期の建設がこのためにできなくなつて來るのではないか、失業者が出るのではないか、その際における農村はどういうようになつて行くのだろうか、こういう問題に対しまして、その程度の多少は異なるでありましようけれども、一様にここに大きな疑念を抱きつつあることは、私は明確だと思ふのであります。
 しかしながらこのインフレの処理方策に対して、政府の主張しておるところを見ますると、先ほども申しました通りに、結局のところ何であるかと言いますならば、まず第一に、政府に頼るな、一生懸命で働け、節約をしろ、そうして貯金をして行け、それで何とかあとを自分でやつて行けというのが、今度のいわゆる自立政策というものの本筋であるのであります。こういう政策によつて、はたしてこの自立に耐え得て行くことができるかどうかを、私はまことに疑問に思うものであります。それと同時に、私どもが今度の演説を通じて、はつきりといたさない点が多々あると思うのでありますけれども、特に明確になつておらないところのものは、今度の政策を実行した場合における産業経済に対する影響の問題が、ほとんど明らかになつておりません。それから同時にここに大きな一石を投ずるものが、次の安定と自立に行く過程において、そこにいかなる新しい日本経済の均衡條件というものが生れて來るかどうか、その新たなる均衡に対する條件というものがわれわれに示されておらない。そうして結局われわれが一番に疑問にたえません点は、一体政府が主張しているところの安定というものそれ自身は何であるか、自立ということはどういうことであるか、その姿もその構想も、それに対する見通しの問題も含まれておらないのであります。このことがわれわれに一層不安を與えるものと考えるのでありまして、このたびの政府のきわめてドラステイツクな政策に対して、國民が一番知りたがつているところの問題は、この点にあると考えるものであります。(拍手)
 吉田内閣の政策を一言にして申しますれば、一つは完全なる公約のたな上げということでありましたが、もう一つはこのドラステイツクな財政金融政策を通じての、いわゆるインフレの一挙收束政策である。それを裏づけるものは十八世紀的な自由主義である。最後には、安定と自立の目標も示されておらない。この大きな欠陥の前に日本の経済を出して行く。その大きな冒檢さということをわれわれはまことに心配をいたすものであります。(拍手)吉田内閣の公約のたな上げ論について、幾多の議論も從來ございましたけれども、私はこの問題については、別な角度から申し述べてみたいと思うものであります。もちろん経済の九原則は総選挙以前にきまつておつた事柄でありますけれども、それまでに來る過程におきましては、あの重大なドレーパー・ミツシヨンによるところの報告が参り、あるいはヤング使節團が日本に來ておりますし、さらに芦田内閣においては、すでに経済の十原則というものが考えられておる。第二次吉田内閣の直後におきましては、例の賃金に関する企業の三原則というものも示されておるのでありまして、こういう点から考えて來れば、明らかに吉田内閣の公約がいかなる政策のものでなければならなかつたか、どれが眞実の公約であつたかということは、私は当初より明確であつたと存ずるものであります。(拍手)しかしながらこの一切の公約無視という問題につきましても、私はこの際、單に民主自由党の問題だけでなしに、日本のあらゆる政党も、あるいは内閣も、國民も、官僚も、私は重大なる反省の機を與えられたものと考えるものであります。私はこの意味において、もう少しこの点を明確にしておく必要があると存ずるものでありまして、現在何ゆえに公約が実行できないかは、もちろんその一つにおきましては、現在占領治下であるということも言い得られるでありましよう。しかしながらそれにも増して重大な事柄は、敗戰後のきびしい日本の現実に対する認識が十分に行つておらない。そして政策に対して論理と科学が尊重されておらないことも明らかでありまして、安本長官の言う通りに、現在一面におきましては、あるいは実質賃金の向上の問題があり、あるいは通貨の増発率の問題があつて、確かに安定のきざしは見得られるに違いありませんけれども、他面において財政のインフレの高進は、非常に危機をはらんでおりまするし、いわゆる実質賃金におきましても、現在はわずかに戰爭前の六割という状態にすぎないのでありまして、國民は重税に苦しんでいる。この事実もわれわれは忘れてはならないのであります。安定と自立ということがいかに重要であるか。ましてや安定が何よりも最初に解決されねばならぬということも、これもまた明らかであります。
 そこでここに必ずやこの安定を築くために、現在最大の原因になつておる財政と金融に手をつけなければならぬということも明らかだと思います。そこでむしろ吉田内閣の問題にすべきは、いかにしてインフレ処理を考えて行くか、この点にあつたに違いないのであります。しかしながら從來この道を回避いたしまして、生産第一主義なるものを唱えておる、それなるがゆえに、吉田内閣の最大の欠陥、公約無視の最大の欠陥ということは、民主自由党がいかにインフレを処理するかを考えておらなかつたことに帰着すると私は存ずるのであります。(拍手)経済安定本部長官はここにおいて、はたして安定政策が可能であるかどうか、再建政策なるものはいかなる犠牲を受けるのか、いわゆる從來まで、五箇年目におきまして昭和五――九年の生活水準まで復興して行こうとするこの日本の産業五箇年計画とこの安定政策との関連を、どこに考えて行くのか。私は安定と再建の矛盾をいかに吉田内閣は解決せんとしているかを、まず第一に明らかにしてほしいと思うものであります。
 次に重大な事柄は、われわれの政策におけるいわゆる國際的な関連性の問題であります。われわれはこのたび経済の九原則や予算編成にあたつて最も暗示を受けるものは、皆さん御案内の通りに、一九四八年のあの外國援助法に基くところの双務協定の精神であります。その中には御案内の通りに、その國の通貨を安定させ、為替の有効なレートを確立または維持し、予算の均衡をはかるために、必要なる財政的並びに貨幣的手段をとることが要請せられて、双務協定が結ばれたことは御案内の通りであります。ドツジ声明が安定と自立を強く主張いたしまして、その安定はいわゆる貿易を順調にするために、あるいは日本の産業の発達の基盤をつくるために、あるいは外資導入を有利ならしめんがために、この三点をあげて安定の要求がなされておるのでありますがゆえに、ここに何が日本國に対して要求をされておるかということは、明確なはずであります。すなわちアメリカの自由な多角形的世界貿易政策の一環としての日本経済の再建、そのために必要なる通貨の安定、為替レートの單一化と維持、さらにそのために必要なるところの財政の均衡化、この点にあることは明白だと存ずるものでありまして、皆様御案内の通りに、ブレトン・ウツズ協定になり、あるいは國際貿易憲章なり、あるいはゼネバ協定なりの精神を見ると、一層それが明瞭になつて來るものと私は考えるのであります。私はこういつた世界の経済政策のいかんを問うものではありませんけれども、日本経済の再建がアメリカの援助政策、ひいては世界の復興計画、その一環として立つておることは、これはきわめて重視すべき問題でありまして、このたびの二十四年度の予算も、こうしたアメリカの経済政策と、被援助國としての日本の持つべき條件を考えに抜いては、一項目といえども審議でき得ないことは明らかであると思うのであります。ここに從來の吉田内閣というものの公約の甘さがあつたと私は考えるものでありまして、このことはどの内閣が政治をとつても同じである、あるいは民主自由党が現在一番まわり合せが惡かつたのだというようなことで済まさるべき性格のものでは断じてないと思うのであります。
 そこで私は吉田総理に対して御質問を申したいのでありますけれども、吉田内閣は歴代の内閣とは違つて、予算編成の途上で公約実現の不可能という事柄と、経済九原則の実施から來るところの、國民に対するきびしい影響に対する責任を回避するために、あたかもその責任が日本政府以外にあるかのごとき印象を國民に與えたということは、私はきわめて重大なる事柄といわなければならぬと思うのであります。われわれが從來申し上げて参りました通りに、ここに來る原因というものは、私は確かに吉田内閣そのものの持つ性格から來たものであつて、その不明の責任は吉田内閣自体にあるものと考えるものでありますが、経済の九原則の実施と、それから生ずる一切の犠牲の責任はどこにあると考えられるか。このたびの予算編成の途上における吉田内閣の、事の重大さに狼狽して、それから出る非自主性ということを、私はまことに残念に思うのでありまして、特に最近に至りましては、吉田総理は税金の問題や、あるいはその他の公約の問題を、五月に來朝するところのシヨープ使節團のときにおいて、これを解決すると言つておるけれども、これはまた公約を無視された大衆に対して、あるいは公約した代議士諸君に対する政治的ゼスチユアと考えざるを得ません。私はこのときにはつきりとお答えを願いたいのは、もしその際において吉田内閣が、その公約を実現することができないといたしましたならば、そのときの吉田内閣の責任をいかに考えておられるかを明確にしてほしいと存ずるものであります。
 次に先ほども申し上げました通りに、インフレの收束方策は、結局いつ、いかなる速度で、いかなる方法によつて行くかということは、これはいろいろの方法があり得ると存ずるものでありまして、現在眞劍にこのインフレーシヨンに対してわれわれが立ち向つて行く場合において、時期と方法と手段をいかに選ぶべきかという事柄は、きわめて重要だと考えまするが、これに対しては日本経済の現実をいかに認識するかという問題にかかつておるだけでなしに、これに國民が耐え得られるかどうかということが、きわめて重要な要点をなすと考えるものであります。そこで私は、もしこの政策を眞実に実行して行つた場合における日本経済が耐えるかどうかという問題と、國民が耐えるかどうかという問題を考え、それに対して政府がどういう手を打とうとしておるかということを考えて、ここで重大なこの吉田内閣の経済政策の全貌を國民に知つていただかなければならぬと考えるものであります。(拍手)
 今度の予算の中心は何と申しましても、一面において非常に厖大なる、いわゆる総合的、眞の財政の均衡化をはかつており、他面において一番大きな問題は、千七百五十億円という見返り勘定の特別会計を持つておる。それで問題は、おのずからその二つが勘案されて考えられて行かなければなりませんけれども、從來まで吉田内閣の発表したところによりますれば、この見返り勘定に関する政策は、ほとんどまだ明らかになつておりません。それでそのことを明確にしてほしいと考えるものでありますけれども、それ以前において、いかにこの厖大な均衡予算がわれわれ國民生活に、経済に影響を及ぼすかということをまず知らなければなりません。
 そこでまず第一に、この政策を実行いたしますならば産業資金がどうなるか。すなわち長期あるいは短期の設備資金、運轉資金がどうなつて來るか。それがわが國の産業にどういう影響を及ぼして來るか。われわれの常識をもつていたしますれば、この政策を実行するならば極度の資金詰まりが來るであろうことは、ほぼ推測のつくところであります。それにはまず第一に、通貨が安定した場合における貯蓄がどうなるか。從來のインフレーションのもとにあるとは違いまして、貯蓄は著しく減少するであろうという事柄は、あのイギリスのデイスインフレ政策によりまして、一九四八年の貯蓄高が四〇%に減じたことでも明らかで、これはわれわれの注目すべき事柄であります。昭和二十三年の日本の貯蓄は三千四百四十四億円でありましたけれども、これが二分の一に下るか、三分の一に下るかは、おそらく現在政府の最も苦心せられるところと考えまするが、この條件の重大な変化のもとにおいて、私どもはこれに回答を與えること自身も非常に困難と思いますけれども、どうしてもこれを考えておかざるを得ません。
 次に政府は國債とか、あるいは建設公債とか、あるいは復金債というものの新規発行をやめ、地方債は一定限度内においてこれを発行するといつておる。從つて今度はこうした資本の利用の道というものはとざされたわけであります。國債や復金債が政府支出と輸入見返り勘定で返済されるために、市中銀行の資金の余力が確かにできるに違いない。だが逆にこれらの市中銀行の持つておるところの、日銀のいわゆる担保付債務というものは同時に返済されて行くに違いないのでありますから、この場合において産業資金がどの程度にいわゆる潤つて來るのであるかどうか。私はこのときに、はつきりと通貨は縮小するのではないかと考えるものであります。大藏大臣は今度の政策はデフレ政策ではないということを言つておられますけれども、今度この政策を実行して行つた場合において、通貨は縮小し、デフレの現象が起きて來るのではないかということを明確にしてほしいと存ずるのであります。いろいろの学者が、いかにデイスインフレを行おうとしても、デフレーションを避けることはできないと言つております。確かに今度の政策はデフレーションが來るのではないか、これを大藏大臣は明確にされる必要があると存ずるものであります。
 次に、政府は補給金と現状維持の價格政策をもつていたしまして、減價償却に見返るところの企業内部の積立てや、あるいは社債発行、あるいは株式の発行という自己資金の調達というものが、どの程度ここに期待できるのか、私はそれについても重大な疑問を抱かざるを得ないのであります。さらに政府は鉄道及び通信の建設公債の発行をやめました。災害復旧費、六・三制の費用も削りました。そうしてこういつた血の出るような資金がなくなつて、農業生産に必要な土地改良費も、あるいは開拓費もほとんど皆無にまでこれが削減を受けたのでありまして、ここにおいて大きな政府投資の減少を見たわけであります。こうした資金に対しまして、安本長官は、蓄積資本の範囲内でまかなつて行けとか、赤字金融はしないから大いに努力をして行けとか、健全金融主義で行くから、生産費を切り下げて合理化を促進して行けとか、こういうことを言つておるのでありますが、しかしこの資金の大きな変化に対処する眞実の政策を持つことなしに、日本の健全なる産業の発達は、断じて期し得られないと存ずるのでありまするがゆえに、私は安本長官及び大藏大臣にお尋ねいたしたいのは、資金計画ができているのかいないのか、できているならばこの際明確にしてほしいのであります。同時に長期資金はどの程度現在われわれは期待し得られるのか。その場合において日本の産業五箇年計画はどの程度取入れることができるのか。それから今年の生産計画に必要な設備資金あるいは運轉資金はどのように來るのか。從來までの状況におきましては、あるいは電力の不足、あるいは石炭の不足、あるいは資金の不足によつて、日本の産業はそれぞれのネックを持つておつたのでありますけれども、本年一番重大なネツクを形成するであろうところのものは、この資金であると考えますがゆえに、本年度の資金と生産計画との関係を明らかにしてほしいと存ずるのであります。この政策を実行して行きますならば、生産は一時低下するのではないか。
 さらにわれわれが重大な関心を持ちますのは、中小企業者に一番重要なところの運轉資金あるいは商業資金、また農家の一番重要な短期の資金と、特に長期資金、農家に対してどういう長期資金――たとえば土地改良はなかなかできないという條件下において、現在の農村にどういう金融政策をもつて臨んで行こうとするのか。さらに一番われわれの追究したいのは、民主自由党はいわゆる建築資金の問題を掲げましたけれども、庶民金融に対してわれわれは非常に大きな関心を持たざるを得ません。一面においては失業者が出る、賃金の不拂いが來る、家計における重大なる影響というものをわれわれは看過することはできないのでありまして、これに対する処置を明確にしてほしいのであります。
 次に、私どもがさらにこの大きな問題を考える場合において必要な事柄は、今度の予算を実行して行つた場合においては、生産財や消費財にわたつて需要構造が大きな変化をいたすのでありまして、その需要構造が変化した場合において、生産構造に及ぼす影響は、私はどうしても考えて行かなければならぬと考えるものであります。たとえば鉄道の建設が打切られる。そうするとただちに困つて來るのはいわゆる車輛工場でありまして、車輛工場が困れば鉄の原料代金あるいはその他のものも未納になつて來る。ある場合においてはそこに資材の過剰さえ生れて來る。すなわち一石を投ずることによつて、その波は全関連産業に波及をいたして來ることは、皆さんも御案内の通りであります。ましてや六・三制の事業がここで終り、たとえば政府の資金が遅いので、村では一生懸命で金の來ないのに先に金を出して学校を建てておる。災害復旧費も六月まで待てないので、もうすでにこの問題にとりかかつている。そういう一つの事実が打切られることによつて及ぼす重大な変化に、ただちに現在の産業が適應できるかどうかという事柄は大きな問題であります。一面において、需要構造がかわつて來る。それに対する生産構造との食い違いが出て來る。そこに申すまでもなく失業や、共倒れや將棋倒しや、あるいは一部的生産の過剰が起つて來るという事柄は、いわゆる安定恐慌の一つの大きな原因であるとわれわれは考えるのでありますが、これらに対して本年度の予算をそのまま実行した場合において、この大きな変化を政府はどのように計算をいたしておるか明確にしてほしいと思うのであります。
 もしこの点が言われるようにわかつていないとするならば、この政策を政府は公式的に実行して、あとの安定の過程も、自立の過程も、本年度に及ぼす産業の計画もわかつていないとするならば、あとは野となれ山となれという趣旨にほかならないと思うのであります。この際いわゆる政党政派を超越して、眞劍に政府がこの点にとつ組んでもらわぬことには、この大きな冒險に対してわれわれは安んじていることはできないのであります。もしこれらの政策が、日本の現在の経済の著しい衰弱をここで來すということでありますならば、こは日本経済の再建のために、ゆゆしき問題と考えるものでありまして、これを十分消化してこの政策を実行してもらわないと、私はまことに懸念せられるのであります。
 そこで安定本部長官に対して質問申し上げたいことは、ドツジ声明によつて安定をまず実行せなければならぬ理由は明らかでありますけれども、それをあえて今日実行する科学的根拠はどこにあつたか。すなわち日本経済に及ぼすドラステイツクな影響を見まして、今日が最も賢明なる時期と考えた根拠を明らかにしてほしいのであります。(拍手)從來まで、いわゆる過般の吉田内閣の発表いたしました経済分析において、安定のきざしが一部に見られておるというけれども、しかしながらいわゆる竹馬経済というものが他面においてはある。そこに安定のきざしというものがあつた。それに対する長期計画を立案いたし、ここにデイス・インフレの政策をとることによつて、小さな安定でなくて大きな安定の基礎をつくり出して行こう。風船をいくらでも小さくして安定することはできるけれども、自立された日本経済の大きさというものを考え、そのときにおける日本の経済の生産水準、生活水準ということを考えたならば、この政策をとるべき時期、手段、方法というものには、愼重な考慮が拂われなければならなかつたはずであります。(拍手)その意味において、私は安定本部長官のお考えを明らかにしていただきたいと申し上げておるわけであります。(拍手)
 次に、安定政策を通観した場合における生産水準の見通し、自立経済というものはどういうものであるか、大きさをはつきり示していただきたいのであります。安定々々と言うけれども、われわれの從來の常識をもつていたしまするならば、どこの世界政策におきましても、御案内の通りに國民生活の安定のために、安定政策というものはやられたのでありますけれども、現在の政府の安定という事柄は、いわゆる資本の安定を考えておるのではないかという疑念も起きて参るのであります。かくして私はどうしても安定と自立の構想を明確に國民に知らせていただきませんと、産業とそれから勤労大衆にしわ寄せをして、これを行つて行こうとする政策の重大な基礎が欠けることに相なると存ずるものであります。
 こういつて参りますと、おそらく政府は、いやそれに対しては千七百五十億円のいわゆる見返り勘定があるのであるから、この千七百五十億円の見返り勘定でこれを始末して行こうというようなことをおそらく言うに違いありません。ところが、実際に私どもの懸念いたします問題は、千七百五十億円の見返り勘定は、輸入品が入つて、それに從つていわゆる金円資金がそれによつて出て参るのでありまして、明日から千七百五十億円の見返り勘定が始まるものとは考えられません。そうして現在一番考えられておりまする事柄は、いわゆる五百億円を市中銀行の持つておる國債償還に充てるという事柄と、百五十億円を鉄道の建設公債に持つて行くという事柄と、他面においてはいわゆる通信の建設勘定に百二十億円を持つて行く事柄との、この三つが現在きまつているのにすぎません。政府はこれをはつきりと言われておるのであります。そこで私はいろいろ準備の都合もあられると考えまするけれども、明確にしてほしいのは、この見返り勘定というものを、どういう形で運営されて行くのか。資金はいつどのように、どの程度入つて行く見通しを持つておるのか。それが日本経済にどういう効果を持つて行くかということを、この際國民にお知らせを願いたいのであります。(拍手)それから次に問題になりますのは、この政府予算を見ますると、一面において金融資本を救済しておる、他面において勤労大衆を犠牲にしておる。これが明確にわかるのでありまして、すなわち言うまでもなく、政府は本予算におきまして、輸入援助の‥‥(「一方的に言うなよ」と呼ぶ者あり)私は両方申し上げておきまするが、輸入援助の見返り勘定の方で、市中銀行に対する國債償還を五百億やられるのであります。それからなおこの五百億というものを見ますると、現在の市中銀行の國債の保有高は千四百六十億円であります。從つて本年において一挙三分の一の國債を返還せんとするものでありまして、それから同時に政府は政府出資の中から三百三十億円を復金債の返済にあてがおうとしておるのであります。これも市中銀行の救済であります。こうして市中銀行はここに救済され、そうして安定本部長官の言う通りに、あまりもうからないような会社には貸すな、企業整備しないような会社には貸すな、赤字融資をするような会社にはやるな、こういうことで市中銀行の独裁性というものがここで必ず起きて來る。そうしておそらく現在考えまするのには、いわゆる資金は非常に詰まつて來るだけでなしに、この市中産業の生死のかぎを完全に市中銀行が掌握をいたすのでございまして、わが党は從來いわゆる軍需公債の利拂いの停止、ひいてはその打切りを主張して参つたのでありまするけれども、今度の吉田内閣は市中銀行のこういつた國債をすべて短期間に返済せんといたしておるのでありまして、このたびの政策はその意味におきまして、金融資本の政策であるということは決して一方的観察では断じてありません。(拍手)
 ここにおいて私は大藏大臣に御質問申したいのでありまするけれども、産業の死活の権利が銀行に移るのでありまするが、しかも千七百五十億円の見返り勘定の比重も、きわめて多くなるのでありまして、いかに民主自由党といえども、この資金下において、市中銀行や、見返り勘定や、あるいは日銀券をこのままの形においては、この時代に処することは決してできないと存ずるのでありまするがゆえに、吉田内閣は信用統制をする考えがあるかどうか。あればその構想をこの際に明確にしてほしいと存ずるものであります。(拍手)
 また現在の金融機関は、きわめて横暴の面がはつきりいたしているのであります。月一割や一割五分の利子はとる。現在銀行員は俸給生活者中最高の給料をとつておる。私は企業整備を一面において要求するけれども、銀行の資金コストがきわめて高いのが日本の現状だと思うのであります。そこで政府はこれらの銀行に対して、統制なりあるいは信用の社会化を考えているかどうかを明確にしていただきたいと存ずるものであります。
 次に御案内の通り、先ほど申しました通りに、失業がたくさん起つて來ることは、これは皆さんも、またいろいろの方々からも説明のあつたところでありまして、それは資金の面におきましても、あるいは政府支出が非常に減少する点におきましても、あるいはまた單一為替レートの設定……。
#23
○議長(幣原喜重郎君) 勝間田君、もう時間はあと五分でありますから、そのつもりで切りをつけられるように、…。
#24
○勝間田清一君 そういう面におきましても、失業者群がここにたくさん出て來るであろうことは明らかであります。しかも中小工業に対し、今度の吉田内閣は一言もこれに触れておらない。私は中小商工業者の支持を受けたといわれる民主自由党内閣が、いかなる中小工業政策をとつて行かれんとするか、納得の行く政策を商工大臣は明確にしてほしいと存ずるものであります。(拍手)そうして同時に、われわれはいろいろの失業救済の中で、輸出産業へこれを吸收する、あるいは見返り勘定の建設へこれを吸收すると言われるけれども、失業者は現に百二十五万あるのであり、すぐに失業は出て來るのであつて、輸出産業は為替レートで、ある意味で非常にやられる。たとえば生糸工業のごとき、むしろ輸出産業は一時減退するのではないかを、われわれはおそれるものでありまして、見返り勘定による建設は一年になるか、二年になるかわからない。そこで失業者を吸收する産業の中には明らかな時間のずれがある。これがわれわれの最大に注目しなければならぬ問題でありまして、政府の失業救済政策が欺瞞に滿ちていると断じなければならぬのであります。
 さらにわれわれはそれが農業への影響の問題につきましては、政党政派を超越して、私は現内閣に対して強力に闘わなければならぬと存ずるものであります。政府は安定を主張し、自立を主張している。しかしながら安定を主張し、自立を主張するところの政府が、農業の再生産を不可能ならしめるということについては、安定と自立の基礎をみずから破壊するものといわなければならぬと私は存ずるものであります。現在輸出貿易における日本農業の占むる地位、あるいは現在安定條件としての農業の占むる地位を、きわめて大きく評價するといたしましたならば、一年前より今日二百三十億の災害に対して、現在なおかつ帳じりに七百九十九億の災害が残つております。これはあらゆる公共事業を含めて五百億というこの予算は、政府の誠意を疑わざるを得ないものでありまして、ましてや土地改良を放棄し、あるいは開拓を非常な窮地に陥れるがごとき政策、これを私はまことに遺憾に存ずるものであります。さらに御案内の通りに生糸に対する影響、養蚕業が受ける影響、それが日本の農業に及ぼす影響を考えてみますると、政府は養蚕家に対する政策を明確に示す必要があると存ずるものであります。
 その点ここに私ども一番考えまするのは、今度のこの政策を見ますると、一番大きなしわを寄せたところは、先ほど申し述べました通りに勤労大衆であつた、救済するのは言うまでもなく銀行屋であつた。そうして節約しろ、貯金をしろ、それで日本の救済の自立をはかつて行く、こういう政策に対して、眞の日本の九割五分を占めるところの大衆が、心から協力することができるかどうかを、私はきわめて憂えるものであります。もしこれらに対してそのまま続行して行くといたしますれば、必ずや人権の叫びが起つて來るに違いない。その人権の叫びに対して、もし吉田内閣が権力と彈圧をもつてこれに臨むということになりますならば、その結果は恐るべきものといわざるを得ないのであります。(拍手)私どもの一番に考えねばならぬ事柄は、これだけの大きな政策を実行する場合におきましては、まず第一に戰時、戰後を通じて不当に利益した人たちがまず犠牲を受くべきでありまして、やみ成金あり、インフレ成金あり、かかる階級がまず犠牲を受くべきであり、そうしてその上にこそわれわれ勤労大衆に対する要求が初めて可能になつて來ると思うのであります。銀行を社会化し、あるいは重要産業を國営社会化することによつて、いわゆる産業生産の基礎が礎立をいたすのであります。この上に築き上げたところのいわゆる安定政策は資本の安定ではなくして、われわれ勤労大衆の生活の安定であることがはつきりとするものであります。吉田総理の所見をお伺いする次第であります。(拍手)
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#25
○國務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。現内閣は公約のたな上げもいたしません。しばしば申す通りに、緩急をはかり、漸次これを実現する考えであります。またこのたび提出いたしました予算は、これは現内閣の責任において提出いたしましたことは、施政方針において申した通りであります。從つてまたこの國民生活に及ぼす影響等については、現内閣が全責任を負う考えであります。
 その他の問題については経済閣僚からお答えをいたします。(拍手)
    〔國務大臣青木孝義君登壇〕
#26
○國務大臣(青木孝義君) ただいまの勝間田議員の御質問にお答えをいたします。一時間に余る御質問でありましたがこれを三つ四つに要約して御答弁申し上げます。
 まず第一に、安定政策がはたして可能か、並びにこの系列的なさ再建政策がいかなる犠牲を受けるか、そういうところであつたと思います。第一は財政の均衡と通貨、物價の安定ということは、國民経済上最も望ましい姿でありますとともに、西欧のマーシヤル・プランの援助を受けた國について考えましても、まず大体共通に見られるのであります。貴重なる外國の援助を徒費しないためにも必要な政策でありますし、わが國においては経済安定九原則の第一の目的にあげておりますることは、御承知の通りであります。日本経済の回復も政府の出しました経済現況の分析に示した段階まで達しております現在、安定政策を遂行することは可能であり、安定によつて経済基盤の正常化を行うべき時期に達したたと考える次第であります。
 また経済安定政策の最終的指標であります経済自立達成のための資本の蓄積については、今回提出いたしました予算案におきましては、あるいは政府出資のうち、あるいは援助見返り資金のうちに、インフレを高進せしめない程度において、最大限の産業資金の用意があるのでありまして、この点についても努力をいたしておる次第であります。從つて現在立案中の復興計画は、今日の安定政策の実施によつて、昭和二十四年度計画として多少の変更をこうむることはいたしかたないのでありますが、日本経済の長期的な自立復興の見通しについては、ほぼ当初の線に沿つて立案したものでありまして、この当初の線に沿つて立案したものに、われわれは大いに努力をして、その目的を貫徹いたしたいと考えております。
 第二点でありますが、生産計画と資金計画とについて、生産計画に対して資金計画が見合つているかどうか、これであります。政府においては輸出増進と経済復興をねらいといたしまして、さきに石炭の増産計画四千二百万トン、鋼材百八十万トン計画をベースといたしまして、本年度の生産計画を立案いたしました。これは昭和五――
九年の平均の約七五%に当ります。この生産計画を達成し、また昭和二十五年度以降の復興を達成するために、これにも見合うところの資金計画について、目下せつかく檢討中であります。
 その次は、安定したということはいかなる経済的な姿か、こういう点であります。経済的安定という言葉には、二つの意味があると思いますが、狭義の安定というのは貨幣價値の安定ということである。すなわちインフレーションの終焉を意味するものであります。最近しばしば言われておるところの安定というのは、おそらくこの意味であると信じます。この場合には物價が騰貴しなくなるので、勤労者の実質賃金も安定し、その生活も安定する。しかしながら一方企業はインフレ下におけるような安易な経営は許さるべくもございません。合理化が促進され、またインフレ下の流通面で糊口の道を得ていた人々も、これをふさがれるということになります。ここに経済政策としては、狭義の安定に甘んじ得ない問題が生じて來るのであります。われわれの最終の目標は、廣義の安定、すなはち國際收支をバランスさせて、外國援助を必要としない段階に持つて行く。同時に國内的には、産業上における雇用も十分に達成せられて、かつ國民の生活水準を上昇せしむるということでなければならないと考えております。
 その次は、自立した場合の生産水準と國民生活水準いかん‥‥。(「簡單簡單」と呼ぶ者あり)簡單に申し上げます。いまだ最終的には結論には達しておりませんが、経済復興計画委員会の仮計算によりますれば、最終年である昭和二十八年には、経済的自立を達成するとともに、生産水準は昭和五年ないし九年の平均に比べまして、鉱工業を一三五%、農業を一〇六%に上昇せしむることになつております。しかしながら戰前に比べまして大幅に人口が増加しましたので、結局一人当りの生活水準といたしましては、昭和五――
九年の平均の八、九割程度になるのではないか、こう計算をいたしております。しかも五年後にこの水準に到達するためには、國民全体の異常な御努力を必要とすることに相なるのでありまして、この点深く御銘記を願いたいと存じます。
 なおいろいろと蘊蓄を傾けての御質問がございましたが、特に國民に耐乏を要請されているが、どこに希望を求めるかというような御質問があつたと存じます。現在のような莫大な外國援助に頼つていたのでは、いつまでも政治的独立も望めません。結局將來において國民全体がみじめな状態に陥つてしまうおそれなしとしません。この際は何としても國民総耐乏によつて、できる限り多くの輸出を行い、一日も早く経済的自立に到達せねばなりません。輸出が飛躍的に増大いたしますれば、輸入余力もおのずから生じて、近い將來においては國民の生活水準も、次第に着実な上昇を約束されるものであります。
 最後に、農業生産に非常に大きな影響を及ぼすが、いかに安定々々と言つても、その基礎はくずれるのではないか、こういう点であります。これは超党派的にとおつしやつたと思います。今回の経済九原則に基いた均衡財政のもとにおいて、農業生産の基礎的條件を、一挙に改善することは困難であると思われますけれども、経済安定の基盤を確立するためには、農業生産を確保しなければならないことを、政府といたしましても十分認識をいたしておりますので、かかる見地に立ちまして、農業生産の基盤をくずさないよう、再生産を確保するための措置を、可能な限り実施いたして参りたいと存じております。(拍手)
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#27
○國務大臣(池田勇人君) 勝間田君の御質問にお答えいたします。各般にわたつておりましたが、要点は、今度の均衡予算でデフレになるのではないか、またこれが対策としているいろいろな金の出道を考えているが、信用統制をやる氣があるかという二点に盡きると思います。
 御承知の通り、各会計を通じまして絶対の均衡予算をとります結果は、一應デフレーションの現出することは、歴史の示すところであります。私はこれが対策といたしまして、復金債券の償還、貿易会計への資金充足、またお話のアメリカ援助物資の資金会計を設けまして、産業資金に万全を期する考えでおります。ただいま見返り資金の使用について、五百億円の國債を償還するかのごとく仰せられましたが、この千七百五十億円の金は、日本再建に最も必要なる方面に出すことを計画いたしておるのであります。從いまして復金債の既発行の償還、その他こういうお金は、最も効果的に使われますよう、お話のごとく信用統制を行う覚悟でおります。先般も財政演説におきまして、金融機関の公共性を私が唱えたのもこの点でございますので、將來におきましては、金融その他につきまして十分の配慮をいたし、自立経済、國家再建に邁進することをお誓い申し上げます。(拍手)
    〔國務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#28
○國務大臣(稻垣平太郎君) お答えいたします。企業の合理化によつて、中小企業もまた影響をこうむることは御説の通りであります。しかしながら中小工業が日本の経済機構の上に占める重大なる点、また範囲の廣汎なる点につきまして、政府といたしましてもこれが指導、保育については、十分の関心を持つておるものでありまして、ことに量の点よりも質の点に重点を置いて操作いたしたいと、かように考えておるのであります。そういう意味におきまして、近く提案する予定になつておりますところの中小企業協同組合法案等によりまして、中小工業の基礎の確立を期したい、かように考えております。(拍手)
    〔國務大臣鈴木正文君登壇〕
#29
○國務大臣(鈴木正文君) お答えいたします。失業対策の最終は、勝間田議員も御指摘になりましたように、貿易その他の産業の方面に、最終的に吸收することにあることはもちろんでありますが、そこに至るまでの段階に、非常にずれが來る、これをどうするかという問題でありまして、これにつきましては昨日もお答えいたしましたように、政府は予算的措置もしくは臨時國会を通じまして、政府の責任におきまして、直接的な失業救済事業を起すとともに、現在充実しておるところの失業保險の制度をもつて、これらの問題に処して行きたいと思つております。(拍手)
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#30
○國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。農業生産の重要性につきましては、今安本長官からも、政府がいかに考えておるかということを申したのでありまするが、私から一言お答えをいたしたいと存じますことは、御承知のように、われわれ当初期待いたしたほどの予算を獲得することが、いろいろの事情上許され得なかつたことは、まことに遺憾な次第でありますが、この許されたる範囲内におきまして、生産の合理化をはかり、協同組合の健全なる発達を助長いたしまして、金融方面におきましても、また技術の浸透の上におきましても、限られたる予算を有効的に、重点的に使いまして、日本の食糧増産に寄與いたしたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)
 金融の問題につきましては、いろいろ御心配の御質問でありましたが、復興金融金庫の現状から考えてみまして、從來のような金融政策をとることは困難であるかもしれませんが、われわれは昨年九月行いましたところの、農林、漁業、水産の復興金融の方途によりまして、相当額を確保いたしまして、そうして農林水産業の金融の面に便宜をはかり、この復興をはかりたいと、かように考えておりますことを申し上げておく次第であります。(拍手)
#31
○議長(幣原喜重郎君) 勝間田君、再質問はありますか。――それならば次の質疑を許します。荒木萬壽夫君。
    〔荒木萬壽夫君登壇〕
#32
○荒木萬壽夫君 私は民主党を代表いたしまして――健全なる民主党を代表いたしまして、政府に対し質疑を試みんとするものであります。
 終戰後わが國を襲いましたインフレの大波に抗しまして、戰時中にも増した生活の脅威を受けながら、大多数の國民は、一途祖國復興のために懸命の努力をいたして参つたのであります。もとよりその間一部インフレ利得者の目に余る放埒もあつたことは否定できないのでありますが、また民主主義の名に浮かれ、あるいは極左分子の煽動にあやつられ、わが國の現実を無視するような、過大の要求を掲げて闘爭を事としたものもなかつたとはいえないのであります。しかしこれらのものはきわめてその一部分でありまして、大多数は一日もすみやかに祖國の復興を念願し、栄誉ある國際社会の一員として世界に迎え入れられんことのために、必死の努力をいたしておつたのであります。しかるに先般経済九原則の指令によりまして、全國民に対し、日本経済の安定と自立のために、さらに一段の耐乏生活が要求されたのであります。もちろんわれわれは日本人としまして、祖國再建のためとあれば、忍びがたきを忍び、またあらゆる艱苦辛酸もあえていとうところではございません。ただしかし國民をしてこの上とも喜んで耐乏生活に甘んぜしめるためには、第一に政治が公平に行われることが必要でありまして、弱い者のみが耐乏生活をしいられ、正直な者がばかを見ることのないようにいたさねばならないのであります。
 第二にわが國の政治家が國家の耐乏生活にも、國民の耐乏にも一定の限界があることを十分に了解して、乏しい中にも將來希望のある生活を國民に保証することであります。この二つの要件を滿たすことなく、ただ單に國民に対して耐乏生活を要求し、あるいは熱烈なる愛國心に訴えて政府に協力を求めましても、それはしよせん國民の共感を呼ぶものとはならないのであります。私はかかる見地に立ちまして、経済の安定と國家再建の方途につき所信を述べ、なるべく重複を避けて、諸般の問題について政府の見解をただしたいと存ずる次第であります。
 まず第一に財政について一、二、お伺いしたいのであります。本年度予算案が終戰後初めての黒字予算であることは、均衡財政の確立が、インフレ收束の前提であることにかんがみまして慶賀にたえません。かかる画期的な予算案編成のために、公約のたな上げさえも、あえて辞さなかつた政府の拂つた犠牲と努力に対しましては、敬意を拂うにやぶさかではないのであります。しかしながら九原則に基く耐乏生活の第一歩を意味するせつかくの予算案も、その内容において國民各階層間に、きわめて不公平であり、またその実施のあかつきにおいて、乏しくとも何らか希望を抱かせるものなく、善良なる國民の前途に待つものは、ただ果しない絶望と、暗黒なる動物的生活があるのみといわざるを得ないことを遺憾とするものであります。このことを最も端的に表現するものは、所得税の收入の見積り過大であります。この点につきましては、すでに一應論じ盡されておりますので、省略いたしますが、ただその総額において、とうてい國民の負担に耐え得ないと思われる所得税の構成が、申告分千九百億円に対しまして、源泉課税分千二百億円と見積られていることは、負担の均衡を欠くものといわざるを得ないのであります。すなわち三千七百円ベースで現在の税法が決定せられたときにおける所得税の見積りは、申告分千八十億円に対しまして、源泉分はわずかに三百八十億円であつたのであります。元來源泉課税は、大体において給與所得者を対象とするものでありまして、ほとんどやみ所得のごときは考えられぬ階級であります。これに反し申告納税者は、農業所得者を除いては、比較的所得水準の高い、しかもやみ所得の機会の多い事業所得を対象とするものであります。しかるにもかかわらず、源泉課税收入を昨年の三倍に見積もりながら、申告納税分に対して、わずかに七割の増加を見ているにすぎないということは、大いに了解に苦しむところであります。のみならず捕捉することの困難な、やみ所得に対する一種の補完税とも見るべき機能を持ちまするところの取引高税を、一概に惡税と称しまして、これを無理解にも無理押しをして廃止し、もしくは改惡せんとしておることであります。このことは要するにやみ所得の擁護であり、まじめな勤労者と、農民の負担と、その耐乏生活において、経済の安定を実現せんとする民自党の性格のしからしむるところでなくして何でありましよう。もちろんわが党といえども税制理論を超越して、國民の感情問題にまで発展しているところの取引高税の廃止または改正には、あえて異存を唱えるものではありません。もつともその場合におきましては、先日の朝日新聞の社説が明快に指摘していまするがごとく。その廃止が純粹に國民の負担の軽減になることが必要でありまして、取引高税以上の惡税である生産者税とか、九原則に正面から衝突するところの手形税を持つて置きかえ、手続の簡素化、消費税の協力措置等の改正を怠り、かえつてその税の本質を曲解して、ことさらやみ所得を擁護するような改惡には、断固反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 次に大藏大臣にお伺いしたいと思いまするが、本年度予算編成の特徴といたしまして、行政整理の断行を数え、行政の能率的な運営と、歳出の削減を強調しておりまするが、この点においては重複を避け、ただ單にその趣旨を了といたしましても、機構と人員において画一的な整理案では、公務員諸君の反撥を買うのみであつて、言うがごとき行政の能率的運営は望み得ない。いわんや失業対策について一言も言及していないし、安本長官また企業合理化の強行を言行しながら、失業対策については何らの具体策なきに至つては、弱い者の犠牲において経済の安定をはからんとするものであることを指摘するにとどめます。(拍手)
 次に私は農業所得税について一言したい。経済白書によれば、経済再建やパリテイー米價の基準年度となつておりますところの昭和九年に、農民の公租公課の負担は一戸当り五十七円、うち一%が所得税であつたものが、昭和二十二年には一万四十五円、うち所得税七〇%になり、また農家所得に対しまする割合は、昭和九年の八%から二二%に飛躍し、昭和二十三年に入るや、農業の所得の総体的減少のために、さらに重圧が加わつて農業会預金の減少となり、農業手形の割引状況から見ましても、端的に農村経済の惡化を表現し來つておるのであります。しかも農家人口の急激な増加、一戸当り耕地面積の零細化に加えまして、災害復旧費、六・三制経費、土地改良費、配付税等の削減と相まちまして、著しく問題を深刻なるものたらしめておるのであります。税金闘爭が特に農業所得税について起るのも、むりからぬ次第であると申さねばなりません。特に農村負担の軽減について政府の所信をたださんとするゆえんであります。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
 九原則が納税の完遂を要望するにかかわらず、今や更正決定を迎えまして、税に対する不平不滿がちまたに滿ち滿ちておこることは御承知の通りであります。このことはあながち重税を非難するのみでなくして、その多くは徴税の不公平、過誤、粗漏に基因するものが多いのであります。要は現行徴税手続の非科学的であること、あまりにも税務官吏の裁量の幅が廣過ぎること、申告課税に対するところの國民のふなれ、收税官吏の量と質の低下等に帰すべきでありまして、民自党の唱えるがごとき租税負担の軽減が、容易に期待できない限りにおきましては、さしあたり徴税の公平と手続の簡素化をはかる手段といたしまして、各種の事業部門に一々会計帳簿様式の規格を一定し、一目瞭然、税の逋脱を防ぎ、公正なる徴税に資する一石二鳥の策に出でてはどうか。いま一つは毎月納税を申告納税者にも認めることとしてはどうか、これについての御所見を伺いたいと存ずるのであります。
 第二には金融問題について若干お尋ねしたいと思います。九原則のもと、金融もまた健全でなければならないことは言うまでもありません。しかし現下の通貨攻勢とも称すべき金詰りの情勢は、あらゆる企業を窒息状態に追い込んでおると申しても過言ではないと存ずるのであります。すなわち重要産業といえども、ほとんどストツクを食いつぶし、ことに最近における各企業の未拂金の著しき増大は黙視し得ないものがあるのでありまして、たとえば石炭企業における運轉資金及び設備資金の未拂いは、百五十億になんなんとしておると言われ、その未拂いがまた逓信、鉄道両特別会計の未拂いと相まちまして、電線業者を苦しめ、その結果は電線業者の資金支拂い遅延となり、銅山、鉛山等の関連産業に対しまする未拂いを誘致いたしまして、さらにそれがこれら関連産業におきまする賃金の支拂いを制約するというがごとき、まさに一波万波を呼ぶ情勢にあるのであります。かかる情勢は一面におきまして本年一月以降千数百億円に上る徴税の強行をいたしましたこと、特別調達廳、逓信、鉄道両特別会計等の五百億と称せられますほどの政府支拂いの遅延、これらによつてさらに激成されたばかりでなく、日本銀行のいわゆる高率適用また大いにあづかつて力があると断ぜざるを得ないのであります。けだし各企業の市中銀行による融資は、資金の関係上一定の制約があり、限度以上の日銀の貸出しに高率適用の道はありましても、実際は日銀の應ずるところとならない限り、手の施しようがないのでありまして、金融政策の実権は完全に日本銀行に移つておるのであります。かかる実情がはたして適当であるかどうか、大いに疑いなきを得ないところであります。(拍手)要するに現在の金詰まり通貨攻勢は経済の実態と遊離して、財政金融が先走り過ぎて安定をはかろうとするところに、問題がひそんでおるのでございます。最近各企業は生産を上げざらんことを念願しておるもののごとくであります。生産を上げればかえつて金がいる。いるけれども資金の調達に困惑するからでありましよう。一流の優秀メーカーの公團認証手形、あるいは適格商業手形が現在割れないという現象を、金融当局はいかに考えておられるのか、生産が上つたためにその企業が資金面で塗炭の苦しみをするという逆現象は、まさに経済崩壊の一歩手前であるといわねばなりません。もしこのような推移を依然として続けますならば、やがて市中銀行に響いて來ことは必然でありまして、そのことがまた全産業、全経済に及ぼす影響は、きわめて深刻なる重大事であると存ずるのであります。そこでお伺いいたしたいことは、まずその対策として、政府支拂いの促進をはかることが先決問題であるのは当然でありまして、各省にまたがるこの問題を、一体どこでいかにして責任ある措置をとらせんとするか。日銀の高率適用は九原則による経済の安定と自立の見地から見まして、重要なる政策問題でありますが、政府支拂いと企業の未拂金処理との関連において、これを閣議で再檢討する必要があると思われますが、いかがでありましよう。從來の金融政策を全面的に檢討し、生産と金融の調整を中心といたしまして、融資規正の改訂を行う必要があると思いますが、いかがでありますか。以上の諸点に関する所管大臣の御見解を承りたいと思うのであります。
 第三に、産業行政につきましてお尋ねをしたいと思います。安本長官のお話によりますると、石炭、電力等の基幹産業――基本的産業につきましては、現在の價格をすえ置いて、その範囲内において收支相償う合理的経営を行わせて、所期の生産の要請を充足させ、しかして石炭、電力等の價格をすえ置くことにより、製造工業の経営上の余裕が生ずるとされまするが、石炭や電力の價格をすえ置いて、たださえ相当の赤字と金融難にあえぐこれらの企業が、收支相償う合理的経営が可能であるとする数字的な根拠をお伺いしたいのであります。たとえば電力でございまするが、現在の電氣料金は、年間三百七十万トンの石炭を消費するものとして決定されたものでございます。しかるに本年度の電氣事業に対しまする石炭の割当は、四百六十五万トンであります。安本長官の言わるるがごとく、所期の生産要請を充足させるとしまするならば、百万トンの石炭を余分にたかねばならぬのでありまするが、そのためには三十七億円の石炭代を必要とするのでございます。また從業員も、戰爭前に比べまして、約半分でございます。電氣料金に見込まれました減價償却は、資産の再評價額をかりに六千四百億円と想定しますると、実にその一万分の八パーセントにすぎないのでございます。かかる條件下にある電氣事業に対し、またほぼ類似の條件下にありまするところの石炭企業に対し、具体的にいかなる合理化をなし、しかも基礎産業としての責任を果させんとさるるのでありましようか。また安定帶物資であつて、補給金の支給を継続するものと、しからざるものとの間の区別の標準を、何によつて求められておるのであるか、お伺いを申し上げたいと思います。
 次に、日本経済の自立は、しよせん外國より原材料を輸入して、これに加工して再輸出をするほかにはないのでありまするが、それには動力が必要であります。しかし動力用の石油、石炭の入手は、まず困難であると申さねばなりません。のみならず輸送と分割がきいて、しかもその性能に変化のないのが電氣でありまして、動力としては、これに及ぶものはないのでございます。しかも火力発電によらずして、水力発電によりますることは、コストを低下せしめます。この点においても水力電氣が当然であります。幸いにしてわが國は世界有数の水力電源國として知られておるのでございまして、未開発の電源がいまだ豊富でございす。水力電源の開発、ことにダム式のものは治山治水の目的にもかない、農業利水、上水道、工場用水、これらのものを提供し、農事電化、家庭電化にも寄與するところが甚大であります。このことについて異存のあるものはだれもおりません。ただそうしまするためには、相当の、しかも長期の資金がいるのであります。復金が事業を停止しました今日、これが問題でありましす。そこでこの資金調達方法といたしまして、電源開発のためにする富くじを発行して、よつて得た資金をもつてこの目的に充当しまするならば、國民の氣持も明るくなり、輸出産業の充実に大いに役立ち日本経済の安定と自立に寄與すること間違いなしと考えまするが、政府はこれについていかなる見解を下されまするか、承知いたしたいのであります。
 次に、九原則の実行が必然的に企業の合理化を導くことは、安本長官御指摘のとおりであります。しかして財政金融の引締めにより、各企業が直面いたしまする生死の境地を、漫然と傍観するわけに行きません。何とならば、極端な金融引締めによりまして、企業合理化を強行する場合、各企業は自衛上國民経済の安定や自立にかかわらず、ただ小さくバランスする方向をたどることは必至でございます。かくてはせつかく戰前の六〇%に培養されました生産力を、さらに縮小再生産過程に追いやり、いわば日本経済の植木鉢化、盆栽化とでもいうべき状態を招來するのでありまして、一たび盆栽化しましたる経済を、元の姿にすることはきわめて困難であります。從つて東洋の貿易市場が復興して來まするならば、現在の企業は、おおむねみな大いに必要になつて來ると思われますのに、その際にいかなる対策をもつて臨むか。また産業の合理化には集中生産が必要であり、第一次世界大戰後のドイツにおける企業合理化のごとく、企業の集中が必至となると思われますが、この点に関しいかなる構想をもつて臨まんとせらるるか。さらに企業合理化には相当の整理資金がいります。設備の能率増進、近代化のためにも資金を必要とするはずであります。復金にかわるに市中銀行に依存するわけにも行かないのでありますが、この資金を一体どこに求むるか。また政府は通商産業省設置を考慮しておるようでありますが、産業行政はむしろ企業合理化を中心といたしまして、そういう機構に再編成すべきであつて、通商本位よりも、企業合理化本位の建前で行くことが焦眉の問題だと考えられるのであります。これらの諸点に関し、関係大臣の御所見を伺いたいと思います。
 第四に貿易振興の立場から一、二お伺いしたいと思います。経済白書によりますれば、昨年一月より九月までのわが國の輸出入品の類別内訳は、輸出におきまして繊維製品が何といつても王座を占めて、全体の五六・六%、八千六百万ドル、続いて鉱産物、窯業、及び金属製品一四・八%、二千二百万ドル、以下木材、紙等の雜品、その他となつておりまして、大体昭和九年とほぼ同様の比重に回復した趣であります。もつともその前年、すなわち昭和二十二年の繊維製品が七六・五%の比重を持ち、一億三千三百万ドルと、かえつて優位を示しておることは、注目を引くことであります。次に輸入におきましては、食糧の比重が前年の五八・四%、三億七百万ドルから四七%、二億四千万ドルと減少したものの、昭和九年の七・六%に比べますれば、なおきわめて大きく、それだけ生産資材や輸出用原材料の輸入を圧迫しているのであります。右のような数字によつてわかりまするが、生糸は輸出繊維製品中の約三〇%を占める趣でございまするので、優にネツト三千万ドル以上の外貨を今でもかせぐ能力を持つておりますので、貿易第一主義の今後の日本において、大いにその振興をはからなければならないのであります。しかるに政府はさきに輸出為替レートのカツト・オフ・ポイントを四百二十五円に定め、一本レート設定までの過渡的の措置をとつたのでありますが、もし一本レートが巷間傳わるがごとく、三百三十円ないし三百五十円ときまりますならば、輸出補給金の支拂い停止に伴いまして、貫当り二百三十八円ないし百四十円、年間三、四十億円の赤字となりますので、生糸の輸出などは思いもよらぬ次第でございます。よつて政府は養蚕業者をして國際價格即應の努力をなさしめ、混乱を避ける意味において、レート設定の時期を予告する必要があると思いますが、またやむを得ざる赤字は、輸出貿易産業育成の建前から、輸出補給金が出せませんならば、税金の減免等によりましてカバーすべきものと思いますが、これについての所管大臣の御所見を承りたいと思います。また輸入面における食糧のウエートを軽減し、もつて生産資材、輸出原料の輸入量を増加せしむる見地から、國内食糧の増産が緊要の課題であることは、言をまたないのでございますが、公共事業費の圧縮による開拓費、土地改良費、災害復旧費等の減額、さらには六・三制経費、治山治水費、あるいは配付税の減額に至るまで、食糧増産を現実に遅延せしめ、農民の増産意欲をすら減退せしめつつありますことは、まことに遺憾千万でございます。政府はかかる観点に立ちまして、援助資金見返り勘定、價格調整費的諸経費より、相当の金額を公共事業費にまわして、これを活用するの措置を講ずる意思はありませんかどうか、御所見を承りたいのであります。
 次にわが國の海運は昭和五――九年において平均毎年一億二千万円、約六千万ドルの外貨運賃の純收入を得た実績を示し、繊維製品に次いで貿易收支上の大宗たる地位を占めて参つておるのであります。九原則のもと、貿易重点政策の立場から、海軍收入の増大を策しますことは、きわめて緊要なことであると考えます。元來輸出入貨物の総價額中、運賃の占めまする割合は二〇%にも上つております。これを日本側において收めない貿易政策は、まつたく意味をなさないと申さねばなりません。昨年の入超四億ドルのうち、一億五千万ドル、また一昨年の入超三億ドルのうち一億ドル見当が、外國船に運賃をかせがれたことから生じたものと言い得るのでありまして、思えばまことに残念千万でございます。そこで私は政府にお尋ねいたしたい。今年度においては日本船の能力の許す限り、外航に配船し得るようにその筋に懇請しますとともに、不足船舶については、とりあえずリバテイー型船の借用を願い、あわせて外航適格船の新造を資金資材の許す限り実施できるように、政策の重点を指向する必要があると考えまするが、これに対しまする総理大臣あるいは副総理の御所見を伺いたいのであります。
#33
○副議長(岩本信行君) 荒木君に申し上げますが、時間があと五分でありますから、その範囲で質疑を終るようにお願いいたします。
#34
○荒木萬壽夫君 ところで海運業の健全なる発達は、九原則の建前から異議があるばかりでなく、國内物資輸送のために不可欠の問題であります。船舶運営会の民営還元への第一歩として、定期用船への切りかえの指導は、連合軍の指令に基いて着々実施されつつあることは慶賀にたえないところでありますが、ただ問題は運賃の適正ならざる点であります。すなわち戰前に比べて、國鉄貨物運賃の値上率は九十倍程度で、採算の額の半ばに達しないのに対し、汽船の運賃は戰前の百倍で、なお運営会補償により若干の補助を受けており、機帆船は同じく三百倍の値上率で独立採算制でやつております。しかもいずれも港湾荷役賃に多額の費用がかかり、貨物はとうとうとして鉄道に流れ込み、國鉄をますます苦しめている、戰前の逆減少を呈しているのであります。このことは、低物價政策を余儀なくされている上から、一應やむを得ないものとしましても、すみやかに海陸運賃の調整をしなければ、運輸政策上無用の損失を重ね、やがては海陸ともに破滅を來すことは必定であります。これに対する所管大臣の見解を承知したいと思います。
 第五に、人口問題についてお尋ねしたいと思います。経済九原則により、日本経済の安定がまず重点的に取り上げられ、ひいて自立経済の域に進まんことは、全國民の大いに期待し、全力を盡しての努力を惜しまないところであります。しかし秋津島根に局限された貧弱なる資源の上に、年々百五十万人を増加して行くところの八千万人口を擁しつつ、敗戰後三年有半、十億ドルに上る米國からの援助と、全國民的努力にもかかわらず、生産力の戰前比六〇パーセント程度であることを思い、輸出産業の振興もしかく容易のわざでないことに思いをいたしますときに、何人といえども民族の前途に一洙の不安なきを得ないのでありましよう。移民を口にすることは、いまだその時期ではない。よしんば口にしてみたところで、少くとも一千万人の過剰人口を十年計画で移出し、これに年々百五十万人の増殖人口を追加するとしても、八千人の移民を乗せた船を毎日送り出し、毎日それだけの町か村が地球上のどこかにできなければならない勘定でありまして、結論は育兒制限におちつかざるを得ないのであります。第二國会において、優生保護法が制定され、九月より実施されていますが、同法による妊娠中絶は、すでに数人の子供あるものが母体の健康保護の必要あるときにのみ許しているにすぎないので、自由に優生手術や人工中絶をすることは許されない。政府はこの問題についていかなる考えをもつて当らんとしているか、承知いたしたいと思います。
 最後に私は吉田首相にお尋ねしたい。日本は今や九原則のもと、重大なる岐路に立つているのであります。一は自立できめる國家となつて、世界の有力な一員となるか、一はいつまでも他國の恩惠に依存する隷属國家に轉落するかであります。政府がただ漫然と國民に耐乏を説き、公約不履行の焼直しにうき身をやつしながら、何ら積極的、建設的な施策を行わず、ために日本が後者の道を選ばざるを得ないはめに陥ることなきやをおそれるのでありますがゆえに、私は次の所見を披瀝いたしたいのであります。
 すなわち九原則の意図するところは、日本國民が敗戰の現実に徹し、國力をあげて活用し、國民の犠牲をいとわざる努力によつて、経済の自立をはからしめんとするにあることは申すまでもありません。この覚悟を現実に示すときに、米國は所要の具体的援助を與えてくれるでありましよう。從つてわれわれは職域のいかん、階層のいかんを問わず、全國民が皆同一目標に向つて、全力を傾注する必要があり、またそれによつてのみ所期の目的を達成することができると信ずるものでありまして、これがために自立経済建設運動とでも称すべき一大國民運動を盛り上らせることが望ましいと存ずるのであります。(拍手)この趣旨をもつて政府は超党派的立場から、労資は今後一年間休戰を約束する。やむを得ない場合でも、労資の合意になる委員会によつて事を決する。各職場ごとに経済自立協議会を設け、九原則に合致する生産の向上方式を檢討する。各生産工場において生産能率向上運動を展開する。優秀なるものは國民的表彰を行う。農村においては食糧増産を展開する。表彰は前者に準ずる。消費節約運動を消費者間において展開して、不急品の節約をはかり、輸出物資の増加に資する。右の目的のため各方面の代表者よりなる自立経済建設会議を設け、大綱の策定に当ることが望ましい。
 以上でありまして、われわれはもし吉田総裁が民自党を率いて、民自党の九原則に背馳するがごとき性格を一擲して、超党派的立場から全國民とともに九原則の実施に当らんとされますならば、われわれは党派的な立場を捨てて欣然協力する考えでございます。これに対しまする吉田総理のご意向を伺いたいと思います。(拍手)
    〔國務大臣林讓治君登壇〕
#35
○國務大臣(林讓治君) 総理大臣は休養さして頂戴いたしておりますから、総理大臣にたいしますところの問題を二件だけお答えをいたしまして、この機会において厚生大臣といたしましてのお答えとともどもにさしていただきたいと考えます。
 経済九原則の実施は、わが國の存亡にも関する挙國的大事業でありますので、國民の熱烈な愛國心に基く國民的な運動の必要なことにつきましては、まつたく荒木君と同感であります。(拍手)政府もこの各種機関の活動を期待しているのでありますから、さらに新たなる組織を設けるかいなかは別といたしまして、全國民の御協力を得る処置をせつかく研究中なのであります。
 なお海運関係につきましての問題につきましては、所管大臣よりお答えをさせることにいたします。
 なお産兒制限の問題でありますが、お説の通りでありまして、今日日本國民生活の実情より見えまして、きわめて重要なる問題と考えておるのであります。最近この問題について人口問題研究所において若干の調査をいたしました結果によりますると、國民の二割ないし二割五分くらいは受胎調節を実行いたしておるようであります。また最近の人口動態統計に現われました数字を見まするに、死産が著しく増加いたしておりまして、その中の四分の一強は人工妊娠中絶によるものであろうと見られるのであります。政府といたしましては、これらの妊娠を希望しない人々に対しましては、医学上または保健上の立場から、妊娠調節につきまして、有効適切な実行方法及び有害でない薬品、用具等の指導を行う方針でありまして、これがために制定公布されました優生保護法に基きました優生結婚相談所や、全國の各保健所、その他の機関を活用いたす所存であります。また避妊薬及び避妊器具につきましても、近き將來優良なるものについて製造、販賣の許可をするというつもりで、目下せいぜい審査をいたしておるような次第でありますから、ご了承をお願いいたします。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#36
○國務大臣(池田勇人君) 荒木君の御質問にお答えいたします。
 まず第一に、所得税三千百億円の見積もりは過大でないか。その内訳、勤労所得に対して千二百億円、事業所得に対して千九百億円とすれば、勤労所得があまり上り過ぎるのではないか、この御質問であります。今の税制のもとにおきまして、三千百億円徴収は可能でございます。次に勤労所得税が、見積りは二十三年度の三倍になつておるというお話でございますが、二十三年度の予算は六百十億円でありまして、千二百億円としても二倍にしかなつておりません。また最近の勤労所得税の徴収状況は相当好成績を示しておりますので、最近の実績から申しますると、事業所得も勤労所得も同様に昨年の実績に対して六、七割程度の増とお心得いただきたいと思います。
 第二に、取引高税については、今回の措置は改惡ではないかというお話でありますが、これは全然見解を異にしておるものであります。何となれば、世界各國取引高税を施行しております所で、印紙を使用しておる國はございません。ただたつた一、二アメリカの州にあるだけであります。もし私が‥‥。
    〔発言する者多し〕
#37
○副議長(岩本信行君) お静かに願います。
#38
○國務大臣(池田勇人君) もし当初からこの印紙を使わずに取引高税を施行いたしましたなら、今日のごとき非難を起さなかつたと思うのであります。(拍手)このことは世界の取引高税の歴史が示すものでありまして、アメリカの一、二の州を除いては全部印紙を用いておりません。ある社が今度のことを改惡として論説を掲げておるのは、わが党と見解を全然異にするものであります。私はこの取引高税存置の問題につきましては、撤廃を考えております。ただ当座の問題として、根本的税制改正をやりますまでは、せめても印紙を除いて施行の円滑を期したわけであります。(拍手)
 第三に、農業に対する所得税の軽減が問題になりました。農業所得につきましては、將來他の事業所得よりも負担を考えまして、適当な軽減措置をとることをここに申し上げて置きます。なお徴税手続につきまして御意見がございましたが、今後の税制改正につきましては、十分御意見を尊重する考えでおります。
 次に金融の問題についてお答え申し上げます。政府支拂いが遅れた等のため非常な金詰まりの状態である。政府はすみやかにこれが措置を講じろというお話でございました。最近御承知の通り一月、二月、三月の租税徴收は千五百億円を超えております。この結果といたしまして、一時的に金詰まりの問題が起こりました。また政府の先注文あるいは支拂い、終戰処理費等の支拂い遅延もございまするが、こういう問題につきましては、政府は極力支拂い促進をいたしております。お話の石炭鉱業等について、非常に金詰まりがございまするが、これは過去一、二年の失策の結果でございまして、できるだけ早く石炭鉱業を中心とする金融の疏通について、適当な措置をとることをここにお話申し上げてよろしゆうございます。
 第四に、融資規正の問題についてお話がございましたが、先ほどお答えいたしました通りに、今後資金の活用につきまして十分注意をいたしまして、融資規正の改正はもちろん、信用統制につきましても、特段の努力をいたしたいと思います。金融を引締めるという氣持はないのでございまして、産業復興、経済再建につきましては、できるだけの金融をすることを申し上げてお答えにいたします。(拍手)
    〔國務大臣青木孝義君登壇〕
#39
○國務大臣(青木孝義君) ただいまの荒木議員の御質問のうち、特に物價に関係のあります石炭の問題でありますが、石炭及び電力、それから運賃、これらの重要な産業、ことに重要物資につきましては、この物價を上げますことが他の物價への影響が非常に大きいということをおそれますし、また今回の、特にわれわれの杞憂いたしましたことは、他の物價に関しての影響と第二次、三次製品においてどれくらい吸收できるか、こういうことをも研究してみました。そこで今日のところ別に数字の持合せはいたしておりませんが、今回ともかくも石炭の價格は上げない。もちろん電力も運賃もであります。運賃は旅客について引上げただけであります。それで特に石炭について、企業の合理化を極度に要請しておることは御承知の通りであります。私どもは四千二百万トンの生産を既定しておるような次第でございまして、以上申し上げたような意味で、この重要生産物については、價格を引上げないということに決定をいたしておる次第であります。
    〔國務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#40
○國務大臣(稻垣平太郎君) 荒木議員の御質問に対してお答え申し上げます。
 企業合理化に関連して、いかなる集中生産方式をとるのかというのが第一問だつたと思うのでありますが、これは選定方式、あるいは予約注文方式、あるいは還流クーポン方式といろいろ考えておるのであります。民主的に注文者をして選択せしめる方法といたしまして、できるだけ還流クーポン方式を採用いたしたい、かように考えておるのであります。
 それから戰爭中にあつたような企業整備資金を支拂うかどうかというような御質問であつたと思いますが、ただいまのところさように考えておりません。ただ將來必要なる設備に対して休止せしめる場合に、他の同種の工場が、スリーピング・チヤージその他の形において、これを保持するだけの費用を負担さすということは考えられることと存じておるわけであります。
 第二の御質問の、合理化を中心として考えるべきであるがゆえに、通商に主力を置いた考え方はどうかということで、今度の通商産業省の機構について御質問があつたのでありますが、今日日本の経済自立のためには、どうしても輸出に重点を置かなければならぬとわれわれは考えておるのであります。輸出に重点を置くことは自然コストを下げるということであり、また優秀なる製品をつくるということでありまして、從つて企業合理化の点になおウエートはかかることに相なると存づるのであります。こういう意味におきまして、やはり通商を中心といたしました通商産業省の構想を抱いておるわけであります。(拍手)
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#41
○國務大臣(森幸太郎君) 荒木議員にお答えいたします。為替レートの設定に関して絹糸の將來、蚕糸業の將來についての御質問であつたのであります。為替レートが何ほどに設定されるか、いまだはつきりいたしておりませんけれども、現在御承知の通り暫定的措置といたしまして、四百二十円ということに生糸は取引されておるのでありますが、もし三百三十円あるいは三百五十円に決定されることがありますならば、非常なる打撃をこうむるのであります。蚕糸業は申すまでもなく全部國産でありまして、他の綿布、綿糸のごとき原料を海外から輸入したものとは意味が違うのであります。ことに從來輸出の大宗と言われ、今日におきましてもなお輸出の三割を占めておる重大なる貿易品であります以上、一面國内の衣料を滿たすほかに、こういう重要性を持つておりますから、日本の蚕糸業というものはどうしてもこれを將來発展せしめ、維持して行かなければならぬと思うのであります。しかるに今申したような為替レートの設定いかんに関しましては、輸出が全然できないというような結果になることをおそれるのであります。しかるによりまして、今政府におきましては、暫定措置として四百二十円ということに措置しておりまするが、今後いかなる場合が参りましても、製糸企業の合理化と生産面と、この両方に考えを及ぼさなければならぬと思うております。現在養蚕の経営におきまして、五千六百掛という統制價格によつて維持いたしておるのでありまするが、さらに品種の改良問題あるいは反当り生産増加の問題あるいは飼育の方式の変更等によりまして、さらにその生産コストを下げて行く道もまたここに考えられるのであります。また製糸の企業の方面におきましても、蚕糸業五箇年計画によりまして、製糸企業設備はすでに十分に施設を終つたのであります。しかるに食糧事情が許されないために、繭の増産はこの企業設備の充実に相伴わないのであります。ここに製糸企業の生産コストが高くなつておる原因があるのであります。それでありまするから製糸企業の合理化につきましては、今後原料生産の充実と品質の向上によつて、養蚕業の維持をしなければならぬと思うのであります。
 それからこの方面につきまして、金融等いろいろの施策がありますが、政府は今日輸出品に対して補給金をなし得ない事情にある以上、いろいろの工作をもちまして、特別の措置によりまして、この蚕糸業の輸出の渋滞を食いとめたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)
    〔國務大臣大屋晋三君登壇〕
#42
○國務大臣(大屋晋三君) 荒木君に対してお答えいたします。第一問の外貨獲得、すなわち自國船による運賃かせぎによつて貿易外の收入を得ることが、戰前の日本の貿易外收入の相当大きな部分を占めておつた、であるがゆえに今後もさようにしろという問題で、まことに御同感の至りであります。この点に関しましては、まず第一に外洋航路に耐え得る優秀なる船舶の建造という問題が、第一の問題でありますので、この問題につきましては、予算の関係並びに関係方面とも折衝いたしまして、貴意に沿うようにいたします。なおリバテイー型の川船問題も同断で、これもしばしば從來問題になつておりましたのですが、まだ現実を見ませんが、これにつきましても今後努力をいたす考えであります。それから運賃の不均衡の問題を御指摘に相なりましたが、まさにさような事実がございます。これはなかなか長い間の沿革があるのですが、私といたしましても、いわゆる陸主海從という戰時中の傾向を、なるべく海の方に重点を置いて、昨二十三年度におきましては大量貨物、たとえば木材、石炭、硫化鉱というようなものを百五十万トンほど陸の方から海の方に移すというようなぐあいに、海の方の運賃も、貨物の採算をなるべく引き合うように今後努力いたします。(拍手)
#43
○副議長(岩本信行君) 次は竹山祐太郎君。
    〔「総理がおらぬ」と呼び、その他発言する者多し〕
#44
○副議長(岩本信行君) 竹山祐太郎君、登壇を望みます。
    〔竹山祐太郎君登壇〕
#45
○竹山祐太郎君 私は國民協同党を代表して、先日の演説に対して、総理及び関係大臣に若干の質問をいたさんとするものであります。(「総理がおらぬ」と呼ぶ者あり)総理大臣は今出席を求めておきました。
    〔(総理を呼べ)と呼び、その他発言する者あり〕
#46
○副議長(岩本信行君) 靜粛に願います。――総理大臣に対する質疑に対しましては、林副総理より答弁をいたすそうでありますから、質疑をお進め願います。
#47
○竹山祐太郎君 今議長の宣言がありましたから、あらためて総理の出席を得た上で、総理の答弁は留保いたしまして、私の質問をこれより始めたいと思います。
 まず私の総理に求めんとすることは、総理は臨時國会において、國民の負担を軽減するということをしばしば言うておられるようであります。このことについて、あらためて國民の負担を軽減し得る確信ありやいなやを伺つておきたいのであります。今回の選挙はまつたく税金闘爭といわれたことく、左右両党はいずれも國民負担の軽減を掲げて、國民の支持を得んといたしたのであります。その結果がここに現われたのであつて、今までの政府担当者は、今までの税金に関しては言う地位にはなかつたのであります。しかるに今回の予算においては驚くべき実質的な大増税であります。これほど大きな公約の違反はないのでありまして、いまさら私は公約問題を一々申すことはいたしませんが、これは最も國民がよく承知をし、また今後も承知をさせられるであろうことと信じます。(拍手)総理はすべてを税制の審議会やシヨープ使節團にまかせておられますが、單に税制の技術的な方法的な改善によつて、負担の軽減ができるものではないと信じます。むしろ、どこに歳出の減少ができるかということであります。一方、各関係閣僚の答弁を伺つておれば、予算に対してはきわめて遺憾の意を表される閣僚が多々あります。これは追加予算等に期待していることを言外に表わしていると思うのであります。かような状態において、どこに歳出減少の見通しがあらわれるのか。從つてこの総理に聞かんとする私の見解は、総括的に今回提出をされた総予算の中から、どれだけの負担軽減にまわし得る歳出の減少が期待されるのかという、その見通しを伺いたいと思う次第であります。
 次は今回の予算の一番大きな特徴は、米國の対日援助見返り資金特別会計の新設であると思います。これはたしか政府の当初立案をされた予算にはなかつたと了承をいたします。総理がいう最善の計画として了承をされた今度の予算に、あとから加わつて來たのでありまして、このあとから加わつた一番大きな見返り資金の特別会計が、どれだけ日本の復興安定に役に立つのかという、その政府のほんとうに確信のある所見を伺いたいのであります。やむを得ずやるのであるならば、率直にその表明をせられたいと思います。この特別会計の新設のために、今回の予算は大増税が起つたのであります。一千億に近い税收入の増加をなさなければならない。國民負担の限界を超えて、大増税をせざるを得ざるに至つたという、この大きな特別会計の新設に対して、政府はおそらく当初は、対日援助費をもつて、輸入の補給金を期待しておつたことは十分了解せられるのであります。しかるに冷厳なる國民の負担にこれを切りかえなければならなくなつて、その結果は輸入食糧だけでも、國民はただちに四百億を越す負担をする結果になり、農民は消費者のためにその半分の負担を背負わなければならない、了解に苦しむ負担がここに起つて來たということであります。反面綿製品のごときは、補給金を失つて二倍に高騰をしております。今日國民の熱望することは、日本再建のためにはいかなる欠乏も耐え忍びますが、それが公平なる負担であるということであります。金融資本の力だけを増強して、農民や中小工業者を不当なる犠牲に苦しませるということは、了承することのできない問題であります。この対日援助資金が現政府にだけ新しく、冷酷にこの形をもつて臨んで來たということ、その結果が國民を非常に苦しい底に押しやつたということについては、われわれは同じ終戰以來の対日援助計画の切りかわり方のあまりにも大きく、また冷厳であることを痛感させられるために、この際積極的に、これが國民を苦しめても將來にわたつてこれが日本のためになるという、政府の当初から考えておつた見解を伺いたいのであります。(拍手)
 次は一体日本の復興計画はどうなつたのか、これは安本長官もしばしば言われてはおりますが、この予算を通じ、また今日までの政府のいろいろなる発表を通じても、きわめて不明確であり、安定か、復興かの方向はきわめて明確を欠いております。これを國民にはつきりと示して、國民の努力の目標を示すことが、いわゆる経済的愛國心を振興する一番大事な因であると思いますが、一体復興計画はいかなる姿になつておるのか。
 また私はその内容として一番憂慮する問題は、人口問題であります。人口と産業計画との間に十分なる計画が立つていなければ、今度の経済的な変革は、中小工業者や農業の中から、今数字に現れておる失業群以上に大きな人口の変動が起つて來ることを覚悟しなければならないと思います。この人口の問題について、一体政府にどれだけの確固たる計画があられるのか、これを伺つておきたいのであります。
 また人口と密接なる食糧の問題に対して、一体どういう計画を政府は考えておられるか、今回の予算に現われた方向からいたしますならば、何人も政府には國内食糧確保の積極的な計画があるとは了承しがたい。自由主義を標榜せられる現政府は、あえてふしぎには思わないかもしれませんが、一体輸入食糧にどれだけ依存をし、國内食糧の確保をどれだけやるか、その國内食糧の確保をいいかげんにしておる政府の態度に対しては、農村を今後いかなる方向に持つて行こうとするのか。終戰以來今日までとられて來たところの農村人口の厖大なる過剰包容は、この農村対策を通じて一挙に崩壊をするおそれが多分にあるのであります。これに対する海外移民なり、工業化なり、政府の考えておられるその所信を安本長官より伺つておきたいのであります。
 次に金融の問題であります。いよいよ金融資本独占の形態は露骨に強力化して來ましたが、今回の予算の最大特徴であるこの金融資本独占の形が、中小工業や、農林漁業に関する金融に最も顕著に現れております。政府はこれが対策を講ずるといわれるが、具体的にその財源をどこに求めんとしておるのか。対日援助見返り資金の中に、農業や中小企業資金を考えておられるのであるかどうか、はつきり伺いたいのであります。商工大臣は、この困難なる中小工業対策に対して、商工協同組合法の改正を言われておられますが、われわれはなお一層進んでは協同会社法等の考えをもつて、これをもつと積極的に進めて行かなければならぬと思う。一例をあげれば、繊維工業のごときは、中小工業のほとんど全部を壊滅せしめられんとしておりますが、これでは一体輸出振興を第一の目標とする現政府として、はたして日本の持つ特性を生かして考えておるとは考えられないのでありますが、中小工業に対するこの協同組織化及び金融の面に対する的確なる商工大臣のお考えを伺いたいのであります。農林漁業の金融に至つては、きわめて立ち遅れをいたしておりました長期金融に、芦田内閣の際の努力によりまして、農林漁業の復興資金の制度を確立をいたしたのでありますが、今年度予算においては、その跡を断つておるとしか考えられません。これを一体どこに農林大臣は求めようとせられるのか。食糧確保の立場に立つて、これで十分なりと考えておられるのであるかどうか。一体農村は常に資金の吸收をされる面だけに立つておつて、その金融が農村に還流することは、今日ほとんど皆無であります。昨日も徳田君が言つておられた農地代金は、決して二十億ではありません。四十億に近い金を政府がこれを温存をいたしておりますが、なぜこれを農業の長期資金に使わないのか。國内の不況は、この農業の金融恐慌から起ることを、政府はあまりにも楽観視いたしておるとしか考えられません。米價についても、一年に一度だけの支拂いでは、とうてい單作地帶の経済を維持することは困難であると思いますが、これを二回に金を拂う考え方を講ずる等のことに思いをいたしておられるのであるかどうか、農林大臣のお考えを伺つておきたいと思うのであります。元來農林省の政策の致命的な欠陥は、この金融に対する力の薄弱と不用意であります。今年度のいろいろな資金、今まさに出ようとする茶の資金のごときも何ら具体化してはおりません。これに対する農林大臣及び大藏大臣のもつと具体的な見解を伺つておきたいのであります。
 次に公共事業費の減額は、與党も賛成をせられてはおらないようでありますが、まことに遺憾千万であります。今年度の予算が前年度と同じだと言うておりますが、昨年度の予算は一日一人の労賃を九十円ぐらいに見ておるのに、今度の予算は百九十円ぐらいに見られておりますから、実質的には昨年度の予算の半分しか仕事はできないのであります。これでもつて大きな公約をされた民自党の仕事がどれだけできるか。私はそういうことよりも、一体土地改良や災害復旧の補助金政策を壊滅せしめたところの政府の基本的な考え方に問題があると思うのであります。これは單なる予算の縮小が、インフレ対策や財政政策という見地では考えられないのであります。食糧確保が、よくいわれるところの米國國民の負担の軽減のためにも、輸出振興以上の緊急事であることは、十分了解されると思うのであります。これを農業を自由なる企業と考えて、農業の自己資本を投ずべしとする現内閣の政策は、かつて日本になかつた大きな農業政策の大轉換であります。(拍手)この根本的な認識に立つて行くならば、日本の農村は強制的な供出制度のもとにおいて、たちまち崩壊し去ることは当然であります。先日も一体農民が政府にばかり頼り過ぎるというような発言をされた閣僚がおられましたが、農民が何を政府に頼つておるか。一体農林省は農民のものをしぼり取る省であつて、農村に対して何ら恩惠を施す省とは考えてはおりません。(拍手)せめて米を取上げる代償としての土地改良のごときは、唯一の施策でありますが、これを農民にまかせるというに至つては、われわれは日本の農業政策の基本的な考え方を論議しなければならない悲運に相なつたと思うのであります。これが民主自由党の自由主義政策から出て來るということであれば、いたしかたはありませんが、日本の農業政策としては、了承をするわけには行きません。
 次は林業の問題であります。政府はさきに発表した経済白書におきまして、國土の荒廃と治山治水の必要性を強調しておりますが、この林業対策に至つても、きわめて貧弱であります。これでは山林の回復はもとより、とうてい今日の荒廃した國土の回復はできないと思います。これに対する政府の考えておる造林事業法のごときも、非常な考え違いがあります。われわれは現行森林法の根本的な改正を企図することが必要であると考えます。
 次は六・三制の問題でありまして、教育のことに関しては、われわれは今日までだれにも劣らない努力を盡して來ましたが、今度の政府によつて、この六・三制の形態がきわめて危機に瀕したということは、遺憾千万であります。われわれが苦労をして來たのは、敗戰日本の復興は、民主的平和國家の再建には、当然最大の努力が教育に拂われなければならぬと考えたからでありまして、これを軽々しく踏みにじり、その結果として壊滅をした政府の大胆さ、吉田首相の從順さには驚かざるを得ないのであります。世に六・三制の危機といわれておりますが、どうか確固たる教育方針を確立して、教育者の減少のごときも失敗のないようにし、また公共事業費の中でやりくりをしようとするというような、姑息の手段に出ないことを切望いたしておきます。
 次に重要な問題として、地方財政の問題について一言お伺いしたいと思います。これは六・三制といい、公共事業費の減額とあわせて地方配付布税の減少によつて、地方財政の窮迫はますますはなはだしくなつて参りました。この地方財源の枯渇によつて、いよいよ惡税、苛斂誅求が起ることは火を見るよりも明らかであります。財源のある都市はまだ救われますが、財源のない地方農山村に至つては、この惡影響はいよいよはなはだしくなりまして、都市と農村との負担の不均衡は、いよいよはなはだしくなろうといたしております。この点に関する中央集権的な現予算の体系には、きわめて不滿を持つものでありまして、近く考えられておる地租の大増税あるいは果実税のごときは、その典型的な惡税としてわれわれは反対せざるを得ません。(拍手)一体これに対して農林大臣はいかなる所信をもつておられるかを伺つておきたいのでありますが、農地改革の結果は、これによつてまるで水泡に帰するような結果に相なるのであります。
 最後に米價及び繭價の問題であります。米價の問題については、超過供出制度を法制化いたさんとする政府の処置から考えますならば、自由販賣のにおいのごときは、まつたくふつ飛んでおります。從つていたずらに米價の高きを望むのではありませんが、農家の生産を維持すべき米價を確保すべきことは、政府の当然の責任であります。これをいかなる時期に、いかなる方向に決定をせられんとするのであるか、これに関して農林大臣のはつきりした答弁を伺つておきたいのであります。今後の米價について、問題の一つとしては、輸入食糧の補給金を、きわめて大きな國民の負担において行われておる点から考えて、高い輸入食糧と安い農民の生産とをプールする結果、農民が必要以上の犠牲を負うおそれがあるということであります。この点に対しては、おそらく政府はさようなことはなすまいとは思いますが、この点に関する農林大臣の明確なる方針を伺つておきたいのであります。
 なおこの米價に関連をして、今政府も極力努力をせられておるようでありますが、公團の整理に対して、中間経費の縮小を十分にはからなければならぬと思います。これに対する見解を伺つておきたいのであります。繭價に至つてはどうするのかということは、私は今農林大臣の見解を伺つても、きわめて不明確であります。一体輸出の上において生糸を失うことは、日本の輸出振興策の根本をゆるがすことであると思います。これを農村の犠牲だけで行うごときことがあるならば、將來の日本の貿易はどうなるか。この点に関してはもつと強い覚悟をもつて農林大臣は当らなければならぬと思うのでありますが、一應この点についても重ねて見解を伺つておきたいと思うのであります。
 なおいろいろ申し上げたいことがありますが、たいへん時間を氣にされるようでありますから。私はこれ以上のことは省略をいたそうと思いますけれども、政府は、民主自由党が大多数を占めた結果とはいいながら、予算審議に対する十分なる日数を與えないで、この日本の大変革を來さんとする予算審議に対して、きわめておつかけ的な、國民の聞かんとするところを十分に聞かせないような態度については、國会の審議権に対し、國民の立場からはなはだ遺憾の意を表するものであります。
 以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)
#48
○副議長(岩本信行君) 竹山君に申し上げますが、総理大臣及び文部大臣に対する質疑の答弁は、これを保留いたしまして、適当な機会に願うことといたします。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#49
○國務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 第一の御質問は、國民負担の軽減の確信ありやということであります。はつきり申し上げますが、最近向うから來られますシヨープ・ミツシヨンと十分檢討の上、國民負担軽減の確信がございます。(拍手)
 どれだけ減らす見込みか、どれだけ歳出の減ができるかという問題でございまするが、これは予算執行にあたりまして、所管大臣としてできるだけ節約をはかつて、できるだけたくさんの軽減に充てる考えでございます。
 第三に対日援助見返り資金会計を設けた理由いかんということでありますが、從來ガリオアあるいはイロアの資金として、日本國民の救済に充てられた援助物資が、漫然と使われてはつきりしなかつたので、これをわれわれははつきり表に出す。すなわち予算編成の方針につきまして御説明申し上げたことく、内外にこれをはつきりせしめて、アメリカの納税者にお礼を言うと同時に、日本國民が経済再建のために意を強くする一つの方法といたしたのであります。
 次に農村金融の問題でございまするが、將來の預金部資金の活用、その他融資準則を改訂いたしまして、農村金融に万全を盡します。
 地方配付税の問題は、ただいま審議を願つているのであります。五百七十七億円の配付金額では、地方財政の現状から十分とは申し上げ得ないことは私も承知いたしておりまするが、國の財政も考え、中央地方を通じて、この程度の配付でがまんしていただきたいと考えているのであります。(拍手)
    〔國務大臣青木孝義君登壇〕
#50
○國務大臣(青木孝義君) ただいまの竹山祐太郎議員の御質問にお答えをいたします。
 私への御質問は、大体復興計画についてだと存じます。御承知の通り復興計画は、二十四年度、今年が初年度に当つておりますので、その実施計画によつて実施に着手する予定でありましたが、御承知のように予算案を通して見ますれば、どうも予定通りの復興計画は進められない状態にあるのであります。しかして公共事業費等を通して見ますれば、多少ともこれに沿つて参ることはできると存じておりますが、もちろん不滿足なものであると存じております。
 それから今年度の資金計画につきましては、ただいまのところ援助見返り資金の使途が明確でございませんので、これについて鋭意檢討中でございます。
 なお人口問題につきましては、急激に増加いたしまする人口に対しまして、経済的自立を達成するのには、なかなか困難な問題だということは、御同様深く考えているところであります。一應復興計画によりますれば、昭和二十八年度に相なりますと、人口は八千六百七十万人という計算に相なります。この推定を基礎にいたしまして、それで貿易規模であるとか、あるいは鉱工業、農業等の生産水準及び國民生活水準等を算出いたしておりまして、今年から、自力による正常な経済循環が達成し得るということができれば、これに沿うような結果を得たいと念願いたしております。そうして積極的な人口対策につきましては、なお厚生省の方とよく連絡をとりまして、研究を進め、その成果を得たいと存じております。(拍手)
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#51
○國務大臣(森幸太郎君) お答えいたします。竹山君は特に農業に研究を深めておられまして、ことに農業行政に対しては、かつて御経驗をお持ちになる先輩であります。農林省がいかにも農民のかたきのようにお話になつたわけでありますが、農林省の行政というものは、にわかに本日から始め出したのではありません。竹山君はかつて社会党内閣、民主党内閣に政務次官として関與されておつたのであります。戰爭以來、日本の農業行政が非常な苦しい立場にあつたことは御承知の通りです。農林行政に対して、あまりに現在の政府はお話のようないろいろなことをやつておると言うのは、大きな間違いである。金融問題におきましても、芦田内閣が発見されたようにお話になりましたが、昨年の九月から農林水産復興金融の制度がありまして、本年の三月をもつて終つたのであります。しかしこれは年度の終りでございまするが、政府といたしましては、この政策を継続いたしまして、さらに増額をいたして、この農林金融の方面を獲得したい覚悟を持つております。
 なお林業政策についても、林業政策というものは一朝一夕にやれるものではありませんが、治山治水ということにつきましては、現政府は特に力を入れてやつて行きたいと考えております。(拍手)今回公共事業費の中におきましても、この山林経営の上においては特に力を注いで、國土保安の上に力を盡したいと考えております。
 また地方税制の問題についてお話になりました。これは地方税制改正委員会において、地租の増額その他を研究いたしておるのでありまするが、竹山君も御承知の通り現在の地價は米價二十円何がしのときに制定せられた地價であります。今日地方におきましては、経費の非常な増加によつて、その財源に枯渇して困つているのでありまして、この百分の二百を百分の五百にする原案があるようでありまするが、これはまだ閣議にかかつておりません。十分研究いたしたいと考えております。ことに果実税のごときを考えておられるのでありますが、その徴税方法につきましては、あの委員会がどういうふうに考えておられるか、われわれは十分に檢討を加えたいと考えております。
 以上をもつて答弁といたします。(拍手)
    〔國務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#52
○國務大臣(稻垣平太郎君) 竹山さんにお答え申し上げます。中小商工業の強化のために、協同会社法等について研究する考えはないかというお話でありましたが、御教示のありました協同会社法あるいは合作社法等についても十分研究いたしたいと存じております。
 なお中小企業につきましては、先刻も申し上げましたように、質の問題について十分指導扶育いたしたいと存じますると同時に、資金資材の問題につきましても、十分の考慮を拂うつもりでおります。
    〔「生糸の問題はどうした」と呼ぶ者あり〕
#53
○竹山祐太郎君 自席から発言さしていただきます。
 米價及び食糧の基本的な方針についての御答弁がありません。なおその他がきわめて不滿足でありますが、この二点だけについて一應農林大臣の再度の御答弁を願いたいと思います。
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#54
○國務大臣(森幸太郎君) 生糸の問題は、前にお答えいたしておきましたことによつて、御承知をお願いいたしたいと思います。
 食糧問題について、一言簡單に私の所見を申し上げたいと存じます。御承知の通り、現在百八十万トンの海外輸入を仰いで、ようやく食糧事情は計画を立てておるわけでありまするが、この連合國における、アメリカにおける負担をできるだけ軽くするということが、われわれ日本として考えなければならぬことだと思うのであります。願わくば、ここに自給自足の道を立てたい、さようにわれわれは食糧の自給自足ということを考えているのであります。しかし今日においては、主要食糧を米と麦とに限ることは、生産の事情で許されません。どうしてもかんしよ、ばれいしよというものを加えなければ、ここに食糧が充実できないことは、竹山君御承知の通りであります。われわれはできるだけこの食糧を充実して、外國より食糧の輸入を仰がないようにいたしたい。この氣持をもちまして、食糧増産に一意專心政策を持つて行きたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)
 輸入食糧につきましては、今日その輸入食糧の價格が國民の負担になつておるというようにお話になりましたが、決してさようには考えておりません。また食糧の價格、農産物の價格をきめますことは、今まで通り、七月、十一月においてきめて行きたい、かように考えております。食糧の消費者價格を一部上げるという構想もあるのでありまするが、もし消費者の價格を上げることになつた場合におきましては、生産者に対しましても、それだけのものを還元する考えを持つております。食糧の生産價格はこの七月、さらに十一月においてこれを定めて行きたいという構想を持つていることを御承知を願います。
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#55
○山本猛夫君 國務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#56
○副議長(岩本信行君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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