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1949/04/07 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第14号
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1949/04/07 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第14号

#1
第005回国会 本会議 第14号
昭和二十四年四月七日(木曜日)
 議事日程 第十二号
    午後一時開議
 一 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後一時二十九分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
    ―――――――――――――
 一 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
#3
○議長(幣原喜重郎君) 國務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。浦口鉄男君。
    〔浦口鉄男君登壇〕
#4
○浦口鉄男君 公正倶楽部を代表いたしまして首相並びに各大臣に対して、その所見をお尋ねいたします。
 小会派に與えられました時間がたいへんわずかでありますので、あるいは意あつて説明の足りない点があるかもしれませんが、その点は御了承いただきたいと存じます。
 まずこのたびの吉田内閣の財政経済政策が、九原則に基くドツジ案によるものであることは一應了承いたすものであります。ただこの際、特に明確にいたしておきたいことは、このドツジ案をのむにあたつて、吉田内閣は、いかなる形において、これをのまれたかということであります。過般の議院運営委員会におきまして、事予算内示案に触れましたときに、強制力を持つ内示案かとの某委員の質問に対しまして、大藏大臣は、強制力あるものとは考えない。それに対しては政府が責任をもつて処理できると思うし、そうしたいと思うと言われたのであります。また首相は施政方針演説におきましても、政府の責任においての均衡予算であると言われたのであります。もしそうであるならば、民自党が選挙において掲げた公約は、全面的にこれを放棄したこととなるが、この点をいかがにお考えになるのでありましようか。
 それから一應この案を全面的に、うのみにされたとしたならば、うのみにされたそのいきさつを知りたいのであります。もし幾分でも政府の意思が盛られたとしまするならば、その盛られるに至つた経緯と、どの程度に盛られたか、その内容につきお聞きいたしたいと存ずるのであります。この内示案に対して大藏大臣並びに首相もまた当局と折衝を重ねられたと承知いたしておりますので、当然そのいきさつをお示し願えることと存ずるのであります。
 また首相は去る四日民自党議員総会におきまして、この予算には政府も民自党もつらいことは十分わかるが、自主再建のために、まず下剤を飲むようなものである。もし政府も党も國民に対して申訳が苦しいというならば、総司令部で予算編成のいきさつと総司令部の考え方を発表してもよいとのことであつたが、私は片山、芦田両内閣のように、総司令部を利用することは了承できぬので断つたとまで述べられているのでございます。総司令部がそれまでに吉田内閣の立場を考慮されているのでありますから、なおさらのこと、ここに至つたいきさつを國民の前にはつきりと隠すところなく打明けてほしいものと存ずるのであります。
 このことはまた、AP通信のラツセル・ブラインズ氏が、日本政府は表面的な自主性を持つておる、しかし政治家は國民に受けるような総司令部の政策は公然と自分たちのやつたものとし、反対に人氣の惡い政策だけを総司令部のものと宣傳していると批評していることに対しても、首相が言われている片山、芦田両内閣と異なる吉田内閣の公明なる立場を表明すべきではないかと存ずる次第であります。(拍手)
 なお、吉田首相は四日の議員総会において、ドイツ公使は、われわれの從來の考え方より進んだ再建方策を立てられたので、これを了として予算を組んだとも言われているのであります。右首相の談話かち当然結論されますことは、たいへん失礼な言い分ではありますが、ドツジ案が民自党案よりははるかに進んだりつぱなものであつたということを考え得るのであります。そうであるならば、そのりつぱな案に決定されるために民自党の公約の全部を放棄されたとしても、私は決して不名誉なことではなかつたと考えるのであります。それについても、そうした結末に至つたいきさつを、この國会を通じて明らかにされることは、民主政治のあり方と、ひいては吉田内閣存在の意義を明確にされるゆえんと存ずる次第であります。かくしてこそ国民は納得して、いかなる困難にも耐えて再建に邁進せんとするものであることを固く信じて疑わないものであります。吉田首相の率直明快なる御答弁をお願いいたしたいと存ずる次第であります。
 次に私は吉田首相の施政演説を承りまして、民主自由党が、このたびの総選挙において、思わざる多数をもつて第一党となられたことに、一應慶賀の意を表する者ではございますが、その一千三百万票に及ぶ得票が、はたして眞底から民自党と運命をともにせんとするまでの、熱烈にしてゆるがざる、主義的なる支持であつたかどうか、多大の疑惧を覚えるものでございます。もちろん、取引高税の撤廃、料飲店の再開などという甘い公約によつてのみの得票とは申したくないのでありますが、私は選挙当時すでに今日の経済的苦境に立つことを、よくよく承知されていながら、あえてそれをおし隠して、選挙を有利に導かんとしての作爲による得票が多分にあつたことを、遺憾ながら認めざるを得ないのであります。首相のいわれた健全保守党のなさんとする経済安定政策が、かくのごとき風貌をもつて國民の前にその実行をしいられんとすることを、よく了解しての上の支持票であつたのであろうかどうか、私はそこにも政府の今後の政策にあたつて、多分の不安を感ずるものでございます。
 首相は施政演説において、重ね重ね國民への耐乏生活を強調されたのであります。國民は、敗戰以來、一部の國民を除いて、好むと好まざるとにかかわらず、身にしみて耐乏生活を続けざるを得なかつた現状は、おそらく首相も御存じのことであろうと存じます。しかも耐乏は、政府が國民に強要するものであつてはならないのであります。少くとも無類の慈愛に立脚せる日本の政治においては、時局を認識した國民の方から進んで耐乏を誓わしめるがごとき誠意に満ち、温情にあふるる政治でなくてはならないのであります。政府はその國民の崇高なる至誠を尊重し、信頼し、その國民を尊重し、あくまで信頼せんとする政策によつてこそ、國民はいかなる困難をも莞爾として突破し、もつて再建へ邁進するものであることを信じて疑わないものであります。
 飜つて、敗戰後三年半にして、歴代内閣の一としてその施策よろしきを得ず、國民は前途に大いなる不安を抱きつつ、いたずらに悩みかつ惑いつつある国家の現状において、なお國民の中に起りつつある涙ぐましくもうれしき一つの事実を申し上げたいと存ずるのであります。それは北海道三井芦別炭礦においてのことであります。御承知の優良炭礦として皇居の拜観を許されて帰山した人たちの働きぶりなのでございます。われわれは陛下から、御苦労であつた、日本再建に重大な石炭の増産になお一層努力してほしいとじきじきに頼まれたのだ、進んで自分から働くのにどこが惡い、労働基準法がなんだという物すごい働きぶりだということであるのであります。しかもこれに続かんとするの機運がいよいよ増大しつつある由であります。このことは、労働組合が健全なる方向へ進むことをもつて、資本家なり経営者を反省せしめんとする一つの注目すべき傾向であると存じます。私の所属いたしております立憲養生会は、微々たる政党ではありますけれども、少くともこうした方面に國民とともに進みつつあることを申し上げたいのであります。
 しかるに右の北海道の場合におきまして、これに対して労働基準法違反との通達があり、炭鉱ではその処置に困つているということであります。私はひとり労働基準法といわず、法は人間のためにあるとするならば、たとえば過重労働のおしつけ、賃金の不拂い等労働者の権利と生活をそこなわんとする面を取締ることは当然でありますが、この法によつてせつかくの純眞にして自発的なる勤労者の生産意欲が阻害される結果となることは、はなはだ矛盾があると存ずるのであります。
 これは炭鉱における一つの事例ではありますが、こうした事実はその奮起の原因には種々あるとはいえ、各所においてこれと同じ事例を見るのであります。敗戰以來、この敗戰を甘く見て、その日送りの施策に荏苒時を過して來た國家の現状において、とりわけ青年は國家の前途を憂えつつも、その確たる方向を示されぬまま、建設的なる熱情を抱きつつも、そのやり場に困つている現状であります。もしそれ熱情をぶちまけるものありとすれば、それは國家と國民をして破壞と混乱へ陥れんとするための熱情以外の何ものでもないことに深き憂いを持つものであります。
 こうした時局において國家の無爲無策にもかかわらず、みずから進んで國難におもむかんとする者のあることは何ともいえない喜びであり、感激であります。しかし首相はこうした純眞にして、自発的なる國民の生産意欲の高揚をしも封建的とでもお考えでありましようか。もしそれ、國民の自発的なる再建意欲をも冷却せしめるがごとき政治ありとすれば、それは、首相の言われる極左的破壞分子による行動と何ら選ぶところなき結果を來すものであるといつても過言ではないのであります。フランス近代の文豪ジユール・ロマンの言葉に、進んでの犠牲なくして、民事主義は美しき花を咲かせ、実を結ばせることはできない、こう申しておるのであります。首相がこうした動きを眞に尊く喜ぶべきことと思わるるならば、いかなる施策をもつてこの國民の至誠と熱情にこたえ、またこれを助長せんとするものであるか、首相並びに労働大臣にその点お尋ねいたす次第であります。
 次に首相は、光明ある未來を招來するためには、國民の不動の信念と熱烈なる愛國心を強力に起して、國民の耐乏への覚悟を要望されたのであります。しかして光明ある未來とは、具体的にいかなる姿においての日本を理想とされているのでありましようか。不動の信念と熱烈なる愛國心の根源は、一体何によつて生ずるのでありましようか。敗戰後われわれ國民は民主的にして平和なる文化國家の建設ということを繰返し繰返し耳にたこのできるほど聞かされているのであります。しかるに、今にして具体的なる構想を聞いたことがないのであります。國民の志氣の高揚せざることも、青少年男女の不良化と國民道徳の頽廃の根源も、一にかかつてここに原因ありと断ずるをはばからぬものであります。吉田首相は、民主日本建設への指導精神をお待ちであろうか。雄大にして豊麗なる新日本建設への明確なる構想をお持ちであろうか。事は吉田内閣のかなえの軽重を問わるる根本的にして重大なることでありますので、この点特にお聞かせ願いたいと存じます。
 第三に、私は少くとも日本の政治におきまして、その要諦は國民を尊重し信頼することだと、さきに申し上げました。そうしたことから農民は、日本の現在置かれた食糧事情より、食糧自給なくして日本の自主性も独立自由もあり得ないことをよく自覚しているのであります。そしていかなる困難にもよく耐えて、一粒でも多く生産し、供出せんとする努力を続けているのであります。私は、たまたま農村をまわつてみて、その僞らざる心情を聞いたのであります。ある農民は、農村がゆたかであることは食糧の不足を意味する。もしそれ食糧が十分であるために他に方法がないとすれば、そのためには農村はいかなる悲境にあることもあえて甘受するとまでの悲壯なる決意さえ聞くのであります。私は日本の農村にこの尊い声のあることを、総理は心に銘記されて、農村の諸施策において、よく農村を信頼するの態度をもつて当られんことを切望いたします。そうした一つの方策として、天くだり的な事前割当の不合理を廃して、農民を絶対信頼するという腹をもつて、試みにその自主的なる供出にまかせてみるというお考えはないか。
 いま一つ政府は、農村の現在陥りつつある窮迫状態に徴しても、農業を一つの企業あるいは営利事業と見ているのか、根本的に一体どう見ているか、その点首相並びに農林大臣の腹構えをお聞きしたいと存じます。
 第四に、同様國民を信頼する建前に立つて、税金賦課の公平を期するために、税務官吏の一方的なる決定にまかせず、ときに自治体の意見を聞き、または民選税務調査員といつたものによつて、自発的にして円滑なる課税額の決定を考えてはどうかと存じます。元來税金というものが、國の権力を背景とした税務官吏と、善良なる國民との間において、取つた、取られたという摩擦相剋を起すことの不可なるは論をまちません。その意味においてもぜひ考慮の上、これに対する大藏大臣の態度をお示し願いたいものであります。
 次に教育の問題でありますが、学校と社会とを問わず、廣い意味における教育の完成なくして、光明ある未來も道義心の確立も、生産意欲の高揚も、平和愛好の心も、國民の進んでの耐乏心も、とうていこれを望み得ないと信じます。しかるに六・三制は、二十四年度の予算においていかなる立場に置かれているか、首相もよく御存じのことと存じます。これを一家にたとえれば、親はたとい明日の米に事欠いても、子供の教育を放棄はいたしません。國家の場合も同様と考えます。予算の大幅削減の結果は、はたしていかなる影響を全國民に與えるのでありましようか。なかんずく次代を背負うべき純眞なる兒童、生徒等に及ぼす悪影響を思つたときに、われわれは眞に戰慄を覚えるものでございます。
 なおこの予算の危機に際会して、政府は一時六・三制を中止するお考えか、またいかなる方法をもつてしても、あくまでも続けるつもりか、この点をただしたいと存じます。聞くところによれば、文部大臣は窮地に陷られて、各大臣の了解を得て、その所管の公共事業費予算中から幾ばくずつでも讓つてもらうべく奔命中の由であります、まことに御苦労のことと存じますが、一面まことに不見識きわまることと遺憾しごくに存ずるものでございます。これはひとり文部大臣の責任にあらずして、政府全体の責任であり、とりわけ首相の教育に対する根本的態度を疑うものであります。しかるにもかかわらず文部大臣は、事は予算だけの問題ではない、文化に明るさを確信していると言われたが、残念ながらわれわれは決して明るさを見ることはできないのであります。教育の根本たるよき教師育成のための研究費、あるいは農漁村の文化向上と青年子女の指導に重大役割を有する定時制高等学校の現状はいかになつているでありましようか。しかも從來でさえ六・三制の遂行にあたつて、地方財政の窮境から辞職した町村長が、ある一つの縣だけでも五十八に及ぶということであります。しかし今度は町村長の辞職だけでは終らないと思います。全國民をあげていかなる行動に出るか、すでに危機は感じられます。私はそれをたいへん心配するものであります。教育金庫の設定などは第二といたしましても、せめて今後税制改革による剰余金がもしも予定されるならば、そのときこそ文部大臣は、その職責において生命を賭しても予算の増額を約束してほしいと思うのであります。かくしてこそ文部大臣は、文化日本建設史上燦としてその名をとどめることを信じて疑わないのであります。以上について文部大臣の責任あるお覚悟のほどを伺ひたいと存ずるものであります。
#5
○議長(幣原喜重郎君) 浦口君、もう時間が参りましたから、簡單に願います。
#6
○浦口鉄男君(続) いま一つ、開墾といつてもすでに肥沃なる土地は少くなつています。そこへまつたく農業にしろうとの引揚者や失業者を入植せしめて、幾ばくの成果をあげ得ているか、すでに明らかなる事実であります。こうした愚かなまずい方法はやめて、純農村の次男三男が独立をしたくともできないでいる実情に対して、農地法の欠陷を正すとともに、こうした人たちにこそ、でき得る限りの営農資金を貸與するならば、数倍の効果をあげ得ると思うが、農林大臣の意見をお聞きいたしたいと存じます。
 また、これと関連して、それでは引揚者や失業者、あるいは遺家族はどうするか、これは日本の立地條件からいつて、また外貨獲得の意味からも、それにふさわしい軽工業的輸出産業を振興して、その方向に吸収すべきと思うが、そうした計画が政府にありやいなや、商工大臣の御意見をお聞きする次第であります。
 最後に、前途困難なる再建へ向つて吉田内閣は一体まずどの階級に犠牲を忍んでもらわねばならぬかをよくよくお考えあつて、そのために思い切つた革新を断行されんことを、われら愛すべき郷土日本國家のために、そしてわれら民族のためにつつしんで切望し、終りといたします。(拍手)
    〔國務大臣吉岡茂君登壇〕
#7
○國務大臣(吉田茂君) 浦口君にお答えするに先だつて、昨日の竹山君の御質問に対してお答えをいたします。
 御質問の要旨は、施政方針の演説中において國民負担の軽減をやると言つたが、いかなる確信があるかということと承知いたします。これは私の施政演説の中に申した通り、税制審議会において十分日本の税制制度を研究いたし、再檢討いたして、その結論に基いて政府は勘案する。それからまた歳出においても、歳出の実施面において十分さらに節約を加えてその余剰をはかることをいたす。また國有財産その他の処分によつて幾らかの余裕を得たい。こうすることによつて、私は國民負担の軽減ができると確信いたすのであります。
 また浦口君の御質問に対してお答えをいたしますが、第一において内示案と予算とどういういきさつがあるかというようなことでありましたが、これは私の施政演説において申し述べた通り、この予算案は内閣の責任において提出せられたものであり、その実施の結果については、内閣が責任を負うのである。また施政方針の中に申しておきました通りに、九原則及びドツジ氏の声明その他については、政府はよくこれを了承して、その実行に努めた。また内示案についても政府は十分勘案して、賛意を表してこれを了承いたしたのであります。新聞紙上にいかなる報道がありましたか存じませんが、これは私といたしまして責任を負うことはできないのであります。
 また民主党との関係にてお尋ねがありましたが、民主党の政策、あるいは考え方については、わが党と何ら確執の生するところはないと考えて、連立をいたしたのであります。
 教育徳義の高揚その他については、主管大臣から説明いたします。(拍手)
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#8
○國務大臣(森幸太郎君) 浦口さんにお答えいたします。
 農村におきます農産物生産に対する点についての農民の氣持ちをお述べになりましたが、われわれもさように眞に農民といたしまして生産のために努力いたさなければならぬという氣持に燃えておられる多数の農民諸君のあることをよく承知いたしておるのであります。この場合において、現在の天くだり式な供出制度はよろしくないではないか、こういう御質問であつたのであります。私は現在の供出制度は、決して完全なものとは考えておりません。しかしながらアメリカより食糧を輸入してもらつておる現段階におきましては、やはり統制は継続せなければならないのでありまするが、その供出方式を合理的に根本的に修正して行きたい、かような考えを持つておるのであります。このことにつきましては、今お述べになりましたような氣持を受入れまして、適切なる改正をいたしたい、かように考えておる次第であります。
 次に開拓事業に対して、不なれな人を入植させ、かえつて成績が上つておらないではないか。また次男、三男の農家の子弟が將來独立する上において、家庭工業等を興したらどうかという御意見、御質問のようでありましたが、この限られたる國土において、年年増加するところの人口を包容いたして行くということは、國策の上において非常に考えなければならぬ問題であると思います。この問題について、今日過剩なる労力をこれ以上農村に負担させることはでき得ません。どうしてもここに何らか増加する人口問題を解決せなければならぬと思うのでありますが、これは御承知のベルギーのごとく國土小さくして人口の増加率が多い、こういう國におきましては家庭工業を興し、そうしてこの人口の増加を調和し、その工業力によつて必需品を海外から輸入するという方式をとつておるのでありまするが、わが國におきましてもちようどその事情がよく似通つておると思うのであります。日本人の手先の器用な点を利用いたしまして、その輸出工業を家庭工業に持つて参りまして、人口増加を調和して行く方法をひとつ考えなければならぬと思うのであります。この点において、農村工業の問題につきましては過去においてはあまりに力を盡されていなかつたのでありますが、農林省といたしましては、今後この農村工業に格別なる努力を拂つて行きたい、かように考えておる次第であります。(拍手)
    〔國務大臣高瀬荘太郎君登壇〕
#9
○國務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。六・三制予算の大幅削減が、教育上重大な困難を生ずるおそれがありますことは明らかでありますが、政府といたしましては、あらゆるくふうを擬らし、あらゆる手段を盡しまして、その影響を最小限度に食いとめ、困難を克服いたしまして、教育の破綻を防いで行きたいという覚悟で全力を盡すつもりでおります。
 次に六・三制予算の獲得のために、内示案による公共事業費の操作について関係方面と折衝しておる点に関し御意見がありましたが、今日の政治的経済的制約のもとにおきましては、まつたくやむを得ないことと考えております。
 次に私がさきに文化、学術の面にわずかながら明るい光明の面が認められると申しましたのは、海外の学界との連絡、協力その他文化、学術の面における國際的協力の関係が徐々に回復して参つておるのであります。これがわが國の文化にとりましては明るい希望を持たせる、こういう意味で申し上げたのであります。
 次に今後あらゆる機会をとらえまして、またあらゆる手段に訴えて、教育に対する財政的欠陥を除きまするために、全力を盡して参りたいと考えておりますから、御了承願いたいと思います。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#10
○國務大臣(池田勇人君) 浦口議員より將來税を軽減することができるかという御質問でございました。私は税を軽減すべく万全の努力をいたします。この方法といたしましては、できるだけ歳出を切り詰めまして、そうして軽減の材料に充てたいと考えております。その程度並びに時期につきましては、最近アメリカより來られるシヨープ使節と懇談をしてきめたいと思います。
#11
○浦口鉄男君 議長。
#12
○議長(幣原喜重郎君) 浦口君再質問ですか。
#13
○浦口鉄男君 各大臣、とりわけ総理大臣、大藏大臣の御答弁に対しては、たいへん不満足でありますが、また別の機会にあらためて質問いたしたいと思います。今日はとりやめます。
#14
○議長(幣原喜重郎君) 次は河口陽一君。
    〔河口陽一君登壇〕
#15
○河口陽一君 私は農民新党を代表いたしまして、吉田第三次内閣の施政方針に対しお尋ねをいたしたいと存じます。
 日本経済の自立体制を確立し、國民生活の安定をはかることは、民主的な日本を建設するための第一義的目標であるとともに、國際的な民主勢力にこたえるただ一つの道なのであります。われわれは敗戰以來ポツダム宣言履行に対し、忠実に全力を傾注し、努力して参つたことは、世界周知の通りであります。このことは昨年暮マツカーサー元帥も認め、その好意によつて日の丸の旗が返されたことは、各位の御承知の通りであります。平和國家としての第一段階を得ましたことは、まことに欣快にたえないところであります。なお前途幾多の難事ありとはいえ、日本民族のシンボルともいうべき國旗が與えられたことは、私どもは新しい感激をもち、さらに勇氣をもつてあらゆる難関を突破するの覚悟を持つのであります。
 敗戰の結果虚脱状態にある民心を喚起いたしまするには、その成果に対し次々と希望を與え、実践せしむることは政府の責任であります。講和條約の成立こそは、現在の日本民族の最終的ホープであつて、國民耐乏生活のただ一つのかてなのであります。オリンピックの世界参加が達成された場合に、青少年の喜び等を想像するだに明るいきわみであります。これらに対し、吉田総理が過日淺沼君にお答えになつた挑戰的答弁ではなくして、文部大臣とともに國民の満足する明朗な御答弁を願いたいのであります。
 次に経済現況の分析を見まして感ずることは、今日までの経済復興は農民の犠牲でなされ、さらに今後のインフレの収束も、日本経済自立体制の確立も、農奴政策をもつてなさんといたしておるのであります。その第一点は、供出成績の順調になつたことは、いわゆる吉田総理のいう農民の経済的愛國心によるものであるにもかかわらず、白書には税負担や農村購入物資の價格の騰貴による金詰まりのため、農家が供出を急ぎ出したことにその原因があると書いてあるのであります。農家の金詰りは農産物價格の不均衡、すなわち鋏状價格差の関係であるのであります。しかるに何たる農民を奴隷視した表現でしよう。民自党や安本官僚の独善的封建思想が、かかる表現を平氣で発表し得たものと断ぜざるを得ないのであります。(「ノーノー」拍手)
 次に日本経済の自立とインフレ收束には、私ども大いに協力をし、異議はないのでありますが、農民労働者の一方的犠牲においてなさんとするところに異議があるのです。白書の四〇ページには、昭和二十一年の一月から六月まで各指数を一〇〇とした場合、二十三年七月から十二月までの指数は、主食品が三〇〇、繊維製品が六一五、日用品四九〇。右はいずれも消費地東京におけるものを示すから、農家庭先價格はさらに顯著なものがあるとあります。すなわち主食品はこの指数から運賃が引かれ、農家購入品は運賃加算となるから、遠隔地ほど差が多くなるのであります。農業手形の成績を見ても、昨年融資の総額二十四億円のうち北海道が五四%、東北二五・五%、北陸が一六・五%で、單作地帶だけで九六%となつて、遠隔地帶、單作地帶の農民の不況が一瞥してわかる。これらの農民は高いものを買わされた上、金利を支拂つて二重負担となつておるのであります。單作地帯に対する対策と、自立経済と、インフレ收束に対する國民均衡政策を安本長官に承りたいのです。
 第三に課税ですが、農民並びに中小商工業者の申告所得税には、公正と納得の行く納税をするために、所得税申告審議会を設置してはどうですか。北海道の農民同盟がこれに近いような方法で、見るべき成績をあげておるのであります。次に超過供出に対しては、源泉課税とする御意思なきや。なおこの機会に大藏大臣にお尋ねいたしたいのは通貨の切下げですが、おさしつかえなければお答え願いたいと存じます。
 第四に食糧問題でありますが、第一國会における片山内閣の施政方針に対し、吉田総裁はその質問演説において、食糧は輸入にまつべきでなく、國内に求むべきであると御主張になりました。私どもは意を強くいたしておつたのでありますが、今回はその施策が認められない。この際、みだりにアメリカの援助に依存をいたしたり、ソ連の思想経済に支配を受けることなく、民族独立の政策を強行せなければなりません。それには食糧問題を中心とする政策を抜本的に行うべきであります。毎年二百万トンの輸入食糧は國民負担の最大のウエートを持つておりますが、さらに五箇年後は四百万トンを海外に求めなければならぬと知つたとき、前途まことに暗きものがあります。
 飜つて日本の農耕地は國土の一六%しか開発されておりません。世界の農業國たるデンマークは六〇%、アメリカにおいては一七%となつておりますが、北海道のごときはわずかに六%しか開発されておらないのであります。これを知るとき、わが國の食糧増産のための農地開発がいかに閑却されておるかに、まつたく驚きを感ずるのであります。この際國土開発、特に北海道開発により食糧増産と失業対策の一石二鳥の手を打つべきであるが、増田官房長官の御所見を承りたい。政府はかかる重要な土地改良費を削減したのであるが、まつたく判断に苦しむのであります。私は食糧に関する経費は公共事業費に含めず、食糧増産費というような独立科目を設置すべきであるということを主張いたします。
 第五は、日本農業を一つの企業というような考え方は、是正していただきたいのであります。このことは農民は雇用関係がないから企業であるという理論でありますが、今日の日本農業は供出という雇用以上の責任が負わされておるのであります。また農民はだれよりも働く勤労階級であることは、一般の認めるところであります。從つてその所得は、利益ではなくして労働賃金であります。よつて農産物の價格は、物價でなく、賃金として考えなければならないのであります。このことが明確になれば、パリティ方式による農産物價格決定の矛盾もおのずから氷解すると思うが、安本長官の所見をただしたいのであります。
 なお昨日竹山君の御質問に対して、米價は七月と十一月に檢討したいと農林大臣は言われておりますが、前に申し上げました賃金という考え方で考えますと、三千七百九十一円の賃金水準で昨年の米價は決定されておるのであります。しかして賃金はすでに昨年末六千三百七円に改訂されておるのであります。七月に改訂するといたしますれば、その間農民は何によつて生活し、何によつて再生産をするか、農林大臣の御答弁を求めます。
 第六に、日本農民が自由意思の原則に基き農業協同組合その他の組織を結成することを規定した極東委員会並びに総司令部より発せられた十六原則を、政府はいかに取扱つておらるるや、お尋ねをいたします。日本民主化は國民の大半を占むる農漁山村からであります。この見地から、漁民に対しては漁業権の解放、漁業協同組合の設立をすみやかにせなければなりません。農村は画期的な農地解放令が発せられ、農民解放令が発せられましたが、依然として成績は見るべきものがない状態であります。日本農民は相互の経済的社会的利益のため、また日本農業を維持改善し、農民の正当なる利益を促進するため、農民團体及び協同組合の結成を奨励すべきであると第一項にあり、以下本政策に反する現行法律は廃棄すべきであると示されておるのであります。政府の所信をただしたいのであります。
 農村衣料を初めとし、産業用品、生活用品の農村配給にあたり、農業協同組合の差別的取扱いをいたしておるが、これに対し商工大臣の答弁を求めます。
 なおこの際商工大臣にお尋ねいたしたいのは、戰時中の軍需大工場が戰後いかがわしい農機具工場に轉換したため、資材を多量に獲得し、一般中小農機具工場を圧迫しておると聞くが、これらの企業整備はどうされておるか、あわせてお答え願いたい。
 なお肥料、飼料公團は廃止してもらいたいのであります。聞くところによると、農林大臣は廃止の意見であつたが、肥料公團総裁の裏面的な工作で思いとどまつたと聞くが、事実なりや、なお十六項に日本労働組合と農民組合と同律に取扱うよう示されておるが、農民の團体交渉権はいかなる機会に農民に與えるか、関係大臣の御意見を承りたいのであります。
 最後に、昭和二十四年度予算が公約たな上げになつておることは、私が申し上げるまでもなく、民自党諸君がお知りの通りであります。このことは國民思想に重大な影響をもたらしたのであります。占領治下やむを得ないとお考えになつておらるるか知りませんが、占領政策は昨日今日ではなく、もはや四年になんなんといたしております。九原則は昨年暮発表になり、当時民自党はわが党政策とまつたく一致するというので、選挙戰には割当供出後の米は自由販賣、取引高税の撤廃ということで票を集められたのに、去る五日の閣議で超過供出にも強権発動をするとおきめになつたそうですが、自由販賣と強権供出では天地の開きがあります。(拍手)吉田首相は九原則とドツジ声明によらずんば、わが國の再建はできがたしと発表になつておるが、割当供出後の自由販賣と超過供出の強権発動が同じであるという解釈になります。これは明らかに多数をたのみとする横暴政治といわなければなりません。(拍手)吉田首相は公約はすみやかに臨時國会を召集して補正すると言われておるが、私どもの受ける感じは、人のものをとつてもあとで返せばよいといつたような感じがあります。私は失敗があつても次に補正すればよいという政治は知りません。憲政の常道は失政があれば内閣を総辞職すべきであり、しからざる場合は國民に信を問うべきであると主張いたしまして、質問を終ります。(拍手)
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#16
○國務大臣(吉田茂君) 河口君にお答えをいたします。講和條約の早期成立とオリンピツクの参加についての所見はいかんということでありますが、講和條約の早期成立は、わが國民が一致して要望するところであります。しかしながら、これはしばしば申し上げます通り、現在においては見通しはつきませんが、しかし連合國等において、日本國民の要望は総司令部を通じてよく了解せられておるところと思いますから、わが希望はやがて達することと私は信じて疑わないのであります。またオリンピックに参加するということは、諸君とともにこの國際競技に参加するということは、それが競技でありましても、國際團体の一員としてこれに参加することは政府は衷心より希望するところであります。
 また農村問題等については、しばしば申す通り、わが内閣として十分重要視しておるとこであります。食糧問題、これもまたしばしば申す通りでありまして、政府としては全力をあげて善処せんといたしております。北海道開拓の問題については、現に審議会を開きつつあるのであります。公約たな上げ論については、しばしば私はここにおいて説明いたしたところで御了承をいただきます。(拍手)
    〔國務大臣高瀬荘太郎君登壇〕
#17
○國務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。青少年に希望を持たせますためにも、講和條約が早期に成立いたしますことは、きわめて望ましいことであります。しかし講和條約が成立いたしませんでも、平和的な、文化的な各種の国際的催しに参加し得るような機会をとらえることに、努力いたしておるのでありまして、次期ヘルシンキで開催されます山際オリンピック大会への参加も、その機会の一つでありますから、文部省といたしましては、関係團体と緊密な連絡を持ちまして、それへの参加について努力をいたしておる次第であります。(拍手)
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#18
○國務大臣(森幸太郎君) 河口君にお答えいたします。單作地帶に対する御質問でありましたが、單作地帶に対しましては、まことに同情にたえない状態にあるのでありまして、從來單作地帶に行つておりまする特別なる施策はこれを継続いたしまして、さらに單作地帯に対する農村工業等も考えまして、できるだけ農家の生活を緩和して行きたいと考えておるわけであります。
 なお農民組合、協同組合等の團体交渉権を認めたらどうだという御意見でありましたが、これは十分に研究をせなければならない問題と考えております。單に労働ということのみで解決するほど農業問題は簡單なものではありません。從つて御希望の点につきましては、御趣旨に沿うよう十分研究を積んで行きたい、かように考えております。
 なお米價問題につきまして、昨日私は消費者の價格は近くこれが更正されることを申し上げたのでありまするが、生産者價格におきましては、御承知の通り昨年のパリテイ一一〇をもつて買い上げておるのであります。もしこれを一四三として消費者價格を設定する場合におきましては、この七月におきまして、麦に対しましてもバツク・ペイによつてこれを補正して行きたいと、かように考えておるわけであります。
 なお肥料公團についていろいろ御質問があつたようでありまするが、これは全然さようなことは考えておらないということを御承知願います。なお供出後の自由販賣ということを取上げてお話になりました。これは先ほど浦口さんにお答えいたしました通り、今日の供出制度は決して完全なものであるとはわれわれは認めないのであります。ことに天くだり式な割当をいたさなければならないような組織になつておりますが、今の段階においてただちにこれを変更いたしますことは、米穀年度の途中でこれはよろしくない。それで近くこれは適正なる自由意思によつて、供出後のものは処置するような供出の方式にかえて行きたい、かように考えておるわけであります。
 なお安本長官が今おりませんから私から申し上げておきます。北海道の総合開発の問題でありますが、これはまことに必要なことでありまして、政府におきましては、北海道の総合開発につきましては十分なる研究を加え、さらにその審議会を設けまして御希望に沿うようにいたしたいと考えております。(拍手)
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#19
○國務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は、所得税申告是正審議会を設けてはどうか。この点につきましてはただいま研究を重ねておるところでございます。
 第二の超過供出による所得に対しまして、源泉課税の方法を採用してはどうか。これは所得が累進税率で計算されます関係上、源泉課税は不公平になると思います。從つて採用の意思はございません。
 第三に通貨改革をやるのではないかというお話でございますが、今回の予算によりましてわが國の経済は安定いたします。從つて通貨改革をやる意思は全然ございません。(拍手)
#20
○議長(幣原喜重郎君) 経済安定本部長官は、ただいま予算委員会で質疑應答中でありますから、政務次官がかわつて答弁いたします。
    〔政府委参員中川以良君登壇〕
#21
○政府委員(中川以良君) 安本長官はただいま予算委員会に出席をいたしておりますので、政務次官の中川がかわつて御答弁申し上げます。(拍手)
 先ほどの御質問におきまして、ただいまの日本の経済復興のためには、農民が犠牲になるのではないかというお尋ねであつたと存じますが、現在の日本の経済復興のためには、先般示されました九原則の果敢なる実施が、最も大切なる要件でございます。これがためには、私ども國民各層各分野におきまして、忍びがたきを忍んで忍苦鍛錬をいたしまして、國の再建のために努力をいたすべきでございまして、政府は農民諸君にのみこの犠牲を、負担をしいる考えはこうも持つておりません。断じてさような施策をとる考えはないことを申し上げておきます。
 さらにただいま農林大臣からも御説明がございましたが、單作地帶の問題でございます。これは農林大臣からお話のございましたるごとく、單作地帶の農業経営が、他の地帶に比しましてきわめて、困難なることは、まつたく御指摘の通りでございます。ただそれがために、單作地帶の米價のみを引上げますることは、きわめて困難でございまするので、政府といたしましては、早期供出には早場米獎励金を出し、また家畜飼料を増配し、また魚かすを配給し、特に北海道につきましては、健苗育成施設の補助を行う等の措置を講じておりまするが、これらの措置を十分に活用したいと考えております。また一方金融につきましては、農業手形制度の活用を十分にはかつて行きたい所存でございます。
 次に、土地改良費の問題が御質問に出たのでございまするが、今年度の公共事業費が相当圧縮されました結果、土地改良費も相当に削減せざるを得なかつたことは、まことに遺憾にたえないところでございます。内地におきましては、縣営の灌漑排水事業の継続分残量を、北海道におきましては、直轄継続事業をそれぞれ今後二箇年で完成することにいたしております。このほかにたとえば暗渠排水とか、機械揚水、労働、耕地整理等につきましては、極力金融的措置を講ずべく鋭意考究をいたしておる次第でございます。
 その他農産物の問題につきましては、農林大臣の御説明がございましたので説明を省略させていただきます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
#22
○議長(幣原喜重郎君) 商工大臣は現に本院の予算委員会で質疑應答中であるそうでありますから、ただいまの御質疑に対する答弁は留保いたしておきます。
 次に黒田寿男君。
    〔「官房長官が答弁あると言つているじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
#23
○議長(幣原喜重郎君) 黒田君に発言を許しましたから、御登壇を願います。――黒田君の発言を願います。
    〔黒田寿男君登壇〕
#24
○黒田寿男君 私は労働者農民党を代表いたしまして総理大臣の施政方針演説に対し、首相及び関係閣僚に対しまして、若干の質問をいたしたいと思うのであります。しかし質問事項を提出いたします前に、私はまず今回提出せられました予算案を通じて現内閣の政策が実行に移されます場合に、いかなる事態が発生するかということにつきまして、わが党の立場からする見解を明らかにしておきたいと思うのであります。
 すなわち第一には、勤労大衆の生活との関係においては、今回の予算案を通じての現内閣の政策の実行は、勤労大衆の生活の犠牲において九原則を実行し、インフレを処理しようとするものである。第二は、この予算の中には金融資本の支配の強化が計画せられておりまして、社会的、公共的立場よりする何らかの対策が講ぜられない限り、産業金融の調達に重大なる支障を來し、生産復興の障害となるおそれがあると言いたいのであります。第三は、この予算案に示された政府の政策のもとでは、経済安定の基礎でありますところの食糧増産のごときも、とうてい期し得られないと思います。かえつて農業と農民生活とは、縮小と破綻に導かれるよりほか、しかたがないとわれわれは断じておるのであります。私はまずこのことを指摘しておきまして、以上これを論証しながら、現内閣の方針と、わが党の方針とがいかに相違するかということをも明らかにし、その過程におきまして、質問の要項を提出いたしたいと思うのであります。
 第一に、本年度予算を通じて示された現内閣の租税政策、物價政策及び賃金政策は、勤労大衆の犠牲においてインフレの急速な処理をはからんとするものでありまして、勤労大衆の生活に対し、重大なる抑圧を加えるものであると考えるのであります。本年度予算におきまして、租税は五千七十六億円でありまして、歳入の七二%を占め、前年に比較いたしまして一〇%の比重を加えておるのであります。そのうち、所得税額は三千百二億円でございまして、租税全体の六一%を占めておるのであります。いま二十三年度における分配國民所得の割合を見ますと、勤労所得は三六%でありまして、業種所得は六〇%でありますが、他方一一十四年度の所得税の増加率を見ますと、勤労所得税は九六%の増加であるに対しまして、業種所得は五五%の増加にすぎないのであります。ここに課税における不公平、すなわち勤労大衆に対する負担の不公平な重圧が見られると私は思う。
 さらに私は勤労大衆への租税負担の不公平な重圧は、別個の資料からもこれを指摘することができるのであります。すなわち今回の予算によつて、大衆課税が前年度よりもさらに加重せられておるということであります。いま勤労所得税と消費税とを大衆課税として見ますときに、今回の予算によりますれば、勤労所得税は千三百億であり、消費税は一千六百五十九億円でありまして、合計二千九百五十九億円となり、租税收入に対しまして、大衆課税の占める割合は五七%となるのであります。二十三年度において、四八%であつたのに対しまして一九%の増加を示しておるのであります。
 他方今回の予算を通じて示された物價政策によりまして、物價の変動を調べてみますと、まず諸般の事情からいたしまして、主食は約一三%くらいの値上りが予想されるのであります。旅客運賃は六〇%、郵便通信料金は四〇%ないし一〇〇%の値上りとなりまして、その他輸入物資のうち、補給金の打切られることから生ずる値上りも、われわれは予想しなければならないのであります。このような状態にありますときに、他方、政府は賃金につきましては、六千三百七円ペースで予算を組んでおりまして、しかも昇給昇格は、これを見込んでいないのであります。從つてわれわれは、実質賃金の低下することは明らかであると考えるのであります。
 以下時間の関係上、私は詳細なる計数上の指摘は省略いたしまが、農業に対する所得税の割合も、最近におきまして毎年々々高められて來ておるのであります。そしてその他の農業経営を困難ならしめる諸事情と相まちまして、今や耕作農民が土地を放棄するというような現象さえ生じつつあるのをわれわれは見のがしてはならぬ。中小商工業者の問題につきしましては、いまさら申し上げる必要はないと思うのであります。このような都市並びに農村を通ずる勤労大衆の生活の窮迫のもとにおきまして、大藏大臣はなお三千百二億の所得税を徴收し得ると考えておいでになるようでありますが、このことをいかにしてなすかお聞きしたいのであります。
 なるほど強権をもつてこれを徴收すれば可能であるかもわかりません。しかし國民所得の分配の割合が前述のごとく不均衡でありますし、かつまた勤労大衆に対する税の負担が前述のごとく不公平でありますときに、かような條件のもとにおいてあえて徴税を強行する場合、勤労大衆の生活の上に加えられる経済的圧迫と、それより生ずる大衆生活の苦痛と破綻とを、われわれは容易に推測することができるのであります。
 かように見て参りますと、予算を通じて示された租税政策、物價政策、賃金政策等、政府の諸政策は、九原則の実行を勤労大衆の犠牲において行うものであるということを断定せざるを得ないのであります。(拍手)租税の増徴を通じてのインフレの急速なる收束を、大衆の犠牲において行わんとするものであるということを、われわれは断ぜざるを得ないのであります。
 私はこの際特に総理大臣に対しまして、その所信を承りたいと思うことがあるのであります。マツカーサー元帥は、総理大臣にあてた書簡におきまして、九原則より生ずる犠牲の負担は、國民に対し平等でなければならぬということを要請しております。九原則は実行しなければなりません。しかしながら、同時にそれより生ずる國民の犠牲は、平等でなければならぬ。この二つは互いに相補つて実現せられなければならない要請であると私は考えるのであります。しかるにこの予算のどの部分に犠牲の負担に関し公平を示しておる部分がありましようか、私はまさにその逆であると考えます。総理大臣は、マツカーサー元帥の要請にこたえておると、はたしてこの壇上から國民の前に言い切ることができるでありましようか、これを私はお尋ねしたい。これは單に私一個の質問ではない。全勤労大衆がひとしく今眞劍に総理大臣に対して聞かんとするところであろうと私は思うのであります。率直に冷静に、これに対して首相の所信を聞かしていただきたい。
 総理大臣は去る四日の施政方針演説の中におきまして、英國民が非常なる決心のもとに経済的自主を目ざして協力一致しておる態度は、もつてわれわれの学ぶべきところと信ずると言われまして、範を英國民の耐乏生活の態度に求めんことを、われわれ國民に要請せられたのであります。しかしながら英國の現在の労働党政府は、戰後の経済復興の困難な事業の遂行の過程におきまして、國民に耐乏生活を求めるその反面に、犠牲の負担の平等化、公平化ということにつきまして、これをその政策の上に実現するために、異常の苦心と努力と勇氣とを発揮しておるのであります。(拍手)たとえばこれを税制政策につきまして見ますならば、いわゆるクリツプスの税制政策におきまして、その例を見ることができる。大藏大臣クリツプスは、彼の断行いたしました税制政策におきまして、勤労階級に対し税率の軽減を行うと同時に、大資本家、高額所得者に対しましては、思い切つて高い税金をかけたのである。私はここにその詳細を述べる必要はないと思います。その他労働党政府は、そのいわゆる平等化政策によりまして、犠牲の負担の公平化をはかり、かかる政策のもとにおいて、國民に耐乏生活を求めておるのであります。総理大臣は、日本國民に対し、耐乏生活を求め、範を英國民の生活態度に求めることを主張せられたのでありますけれども、私はまずその前に現内閣が國民に対しまして、耐乏生活を求め得るだけの條件をつくり出しておるかどうかということを聞きたい。私はこれについて政府は眞劍に自己反省をする必要があると思うのであります。犠牲の負担の平等化の政策を政府は行つておるかどうか。マツカーサー元帥の書簡の趣旨に、はたして総理大臣は、沿つた政治をしておるかどうか。この質問に対し、私は眞劍に、総理のお答えを聞きたいと思うのであります。わが党はかねてより徴税の衡平化の必要を力説して参りまして、勤労者に対する税負担の軽減と、他面徴税の衡平化のために、所得及び財産の正確な捕捉の必要を唱えて來たのであります。しかし現状のもとにおきまして、徴税技術の部分的な改善をやるぐらいのことで、あるいは、現在の行政機構のもとにおける行政力をもつていたしましては、とうてい所得及び財産の正確なる把握は不可能である。こういう條件のもとにおきまして、いたずらに増税によつて、急速にインフレの收束をはかろうといたしますならば、ちようど今政府がやろうとしておりますような、勤労大衆の犠牲においてインフレを処理するということになる。われわれはこれに対して断固として反対しておるのである。(拍手)
 われわれはかねてわが党結党当時から、インフレーシヨンのすみやかなる收束につきましては、最も熱心にこれを唱えておるのであります。犠牲負担衡平の原則に基いてインフレを処理するには、通貨交換を伴うところの、通貨改革を中心とするインフレ処理策以外に道はない。こういう主張をわれわれは唱えて來たのであります。これによりまして、所得及び財産の徹底的捕捉をはかり、財産税あるいは増加財産税を課すべきであると、われわれはこう考える。これがインフレーシヨン收束に対するわれわれの態度でありまして、今、從来の政府の方針とかわつて、すみやかにインフレーシヨンを收束しなければならなくなつた情勢下におきましてわれわれはインフレの急速なる放棄のために、われわれのかくのごとき政策が最も適当であると考える。大藏大臣はこれに対しましていかなる所見を持たれるか、私はこれを聞かしていただきたいと思うのであります。
 次に私は予算案を通じて示された政府の政策が、金融資本の支配の強化となること、これと経済再建との関係についてごく簡單に論じまして、あわせてわが党の政策を示しながら、政府への質問をいたしてみたいと思うのであります。
 今回の予算の実行と関連いたしまして、今後の政府の金融政策は、かつて見ざるほどの重大性を加えて來ると私は思う。政府は貿易資金特別会計から生ずる黒字一千七百五十億円の中から、約一千億円を公債及び復金債の償還に充てるというのでありますが、その結果は、第一に日本銀行保有分が償還せられますときは、それだけ通貨は縮小いたしまして日本銀行の地位は著しく強化されて來るのであります。次に、市中銀行の保有公債及び復金債が償還されますならば、市中銀行の資金には余裕が出て参りまして、市中銀行の地位もまた金融資本として強化されるということになつて來る。このように金融資本の力が著しく強化される政策を、この予算の中には盛り込んでおるのであります。しかるにこういう金融資本の支配確立への政策を藏しながら、日本銀行及び市中銀行の性格を、これまでのままのものとしておきますときは、金融資本の利益のみが擁護せられまして、資本の國家的運用に重大な支障を生ずるおそれがあるとわれわれは考える。池田大藏大臣及び青木経済安定本部長官は、この点に関しまして、民間金融機関の協力を求めるというような態度をとつておいでになるようでありますけれども、その本來の性格といたしまして、收益性と安全性とのみを追求する市中銀行等の金融資本が、このようななまぬるい協力の要求を受けても、そういうものにやすやすと應ずるわけはないとわれわれは考える。大藏大臣や安本長官は、單なる協力の要請というがごときことで、國家的要請に基く資金運用の重大なる支障発生の危險を防ぎ得ると考えておいでになるのであるかどうか。この点につきまして、私ははつきりと聞かしていただきたいと思うのであります。
 なお、われわれは九原則の実行による自主経済確立へと出発いたしましたこの機会を、最もよき時機といたしまして、金融機関の社会化を行うべきであるということを主張する。少くとも日本銀行は國有化さるべきであると私は思う。むろんそれは運営が民主化されるという條件を伴うものであります。もしそれができないといたしますれば、先ほど申しましたように、金融資本の支配を強め、國家的資金需要に対する適切なる適應ができなくなるというおそれを、われわれは持つおるのであります。そこでこの問題に対しまして、どういう考えを大藏大臣は持つておられるか。かりに國有問題を第二とするといたしますならば、このような金融状態の発生に対処するために、國家的、社会的、公共的立場からする資金の管理と運営の機関を、何らかの形で設くべきではないかとわれわれは考えるのであります。私はこれに対しまして、政府当局の見解を承りたいと思うのであります。
 最後に、私は農村農民及び農業問題に関しまして、質問をいたしたいのでありますが、時間も大分追つておりますので、なるべく簡單にしたいと思います。現在全國を通じまして、耕作農民は農業課税の年々高まりつつある重圧と、農業生産を補い得ぬ低米價による供出の強行と、その供出にいまだに民主化が徹底しないため、割当の不公平と不当が至るところで繰返されているという、そういう事情、あるいはまたインフレーシヨンの高進によりましてシエーレがますます増大し、これによる農民收奪の増大、あるいはまた農業計画におきまして、せつかく資材配給計画を立てましても、その定められた農業必需物資が、不十分かつ不円滑な配給しかなされていないというような事情、こういう事情がからみ合いまして、今農村におきましては、單に農業資金の欠乏というような状態が、至るところにおいて生じておるだけでなく、耕作地放棄の現象すら至るところに現われておるように、われわれは見受けるのであります。しかも農業災害に対する復旧が、いかに遅々として進まないか、われわれはこれを深く憂えておるのであります。しかるに政府は、今回の予算を通じて示した政策によりまして、あるいは小作料の値上げをすると言い、あるいは地租の値上げをしたいと言うております。しかも公共事業費は削減しております。かような政策のもとで、食糧増産がはたして期待し得られると思うか。これは農民に一人々々直接に聞いてみれば、正しき答えをすぐ與えてくれると思う。このような政策のもとにおいては、わが國の農業生産はますます縮小し、農民の生活は破綻に追いやられる以外に行く道はないと思う。以上のような農村と農業の現状の中から農民の不平と不満と要求の声が痛切に叫ばれている、われわれはこれをとうてい短時間をもつてここに紹介することはできません。今日私の時間は非常に制限せられておりますので、ただその一部分だけを箇條書的に取上げまして、質問の形に表わしてみたいと思うのであります。
 まず最初に私は、われわれの態度を示しておこうと思いますが、小作料の値上げとか、地租の引上げというような政策に対しましては、われわれは絶対に反対である、これをはつきりと申し上げておきます。これは眞に働く農民の声であります。あえてこの声を蹂躪してまでその政策を実行しようと思うならば、私は、やつたらよろしいと思う。その結果農村と農業がいかになるかということは、農民自身が答えてくれると思うのであります。
 米價については昨日からいろいろと論じられておりますので、私は今日ここにおいて繰返すことを避けたいと思いますが、ただ一言私は農民の要求を傳えておきたい。米價の決定は、從來官僚がこれをかつてにやつておつた。パリテイーでやるか、生産費計算でやるかということにつきましても、われわれは多くの議論を持つておりますが、しかしもつと根本的には、農民自身が米價その他の主食の價格の決定に、参加し得ないという不満があり、これを満たすということである。これを満たすことは、適切なる民主的要求に正しくこたえることであると考えるのであります。財政法第三條におきまして、すでにこの問題は一應解決せられておるのでありますけれども、しかし主食は例外としてその適用を延ばされている。政府は、すみやかに眞に農民の意見による、すなわちその代表を出している國会の決議によりまして、米價等の決定をする、こういう方法に改める意思があるかどうか、これを私はお尋ねしたいと思います。
 農業課税につきましても、これまた至るところにおいて、山ほど問題を聞かされているのでありますが、今日私は時間の関係上、一つだけ政府に対して質問してみたいと思います。それは農業に対する所得税における所得の計算に際しまして、われわれが最も不合理と考えますのは、農家の自家労賃を必要経費から除外しておるということについてであります。いろいろこれについて除外の非なることを議論をしておるのでありますけれども、未だにこのことが認められないのであります。日本農業の経営の特質でありますところの、小規模家族労作経営というものに対する正しき認識を官僚が欠いておるから、このような不合理が行われているのであると私は考える。農業の自家労賃は、昭和二十二年度におきましては生産費の四二%、二十三年度におきましては五割という数字が米作について出ておる。これを必要経費といたしまして計算することを認めぬというような、そのような不合理は、日本の農業経営の本質に対する官僚の無理解より來るものであると私は考えます。(拍手)この不合理のために農業所得税は、事業税というよりも、むしろ勤労所得税の性質を持つようになつておると解釈できる。自家労賃の中から税金を拂つておるというような、矛盾した状態になつておるのであります。私は自家労賃を、農業所得の計算において必要経費として計算するように改めるべきであると思う。政府はこれに対してどういう考えを持つておるか、これを聞きたいと思います。現在はただいま申しましたような取扱いを、受けておりますので、農業の所得税は、事業所得税というよりも、むしろ勤労所得税というような性質を持つものになつておる。そこで農業の所得に関しては、家族從業者に対しましては、基礎控除、勤労控除を認める方法によつてこれを救済する意思はないか、この点をもあわせて質問したいと思うのであります。
 最後に私は供出の問題について、簡單に質問をしたいと思います。これも私は先に結論を申し上げておきますが、私は超過供出の法制化には、絶対に反対である。このことをはつきりと申し上げておきます。だれがどう言おうと、私は反対である。そして私は多くの農民がこれに反対しておることを知つておる。政府は超過供出の法制化ということを言い出されておりますが、食糧増産臨時措置法を制定するときに、断じてこういうことはしないということを、繰返して政府は農民に約束しておつた。その約束の言葉のまだ消えぬうちに、今や超過供出を法制化しようというのである。もとより食糧の増産は必要である。それが経済の安定の基礎になるということをもわれわれはよく認めておるが、農民に対して食糧の増産を求めるならば、現在、食糧増産を妨げておる政府の政策上より來る種種の隘路を除かなけらばならないのであります。(拍手)これをなさずして、國家の要請である、経済安定のための要請であると言うて、いたずらに農民に一方的な犠牲をしいるということには、われわれは断じて承服することはできぬ。一体農林大臣は超過供出の法制化と言われますけれども、どんな場合に超過供出をさせようとしておられるのであるか、またそれはどの程度にやるのであるか、われわれにはさつぱりこのことがわからない。これを今日明らかにしていただきたいと思うのであります。
 私に與えられた質問時間を超過いたしましたので、これをもつて質問を終ります。
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#25
○國務大臣(吉田茂君) 黒田君にお答えをいたします。このたび提出いたしました政府予算は、勤労大衆の負担、犠牲が不平等である、過当であるということでありますが、政府はそうは考えなくて提出いたしたのであります。しかしもし勤労大衆の負担が過重である、その犠牲において経済安定が行われるのであるという御主張が正しければ、税制審一議会においてとくと審議いたしまして、その結果改むべきものは改めることに、政府は決してやぶさかでないのであります。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#26
○國務大臣(池田勇人君) 黒田君の御質問にお答え申し上げます。勤労所得に対する所得税の増加が、非常に他の所得に対するよりも増加率が多いという御質問でございますが、決してそうではありません。これはあなたが昨年度の当初予算について比較をされたから、そういう結論が出て來るのであります。今回の予算は、お話の通りに大体勤労に対する源泉課税は千二百億円でございます。附加課税の事業所得に対するものは千九百億円でございます。しかして二十三年度分の予算におきましては、勤労所得税は六百十億円を計算しておりまするが、最適の情勢から申しますると、相当増加いたしておるのであります。今年度の決算見込額から申しまするならば、大体同じ程度の増加になつておりますので、ことに勤労階級に重く課税したという結果は出て來ないのであります。第二に今回の予算におきまして、相当金融方面が樂になつて來るのではないか。これに対してある措置をとる必要があるというお話でございます。まことに御同感でございまして、財政演説におきましても、金融機関の公共性の自覚をお願いしておるのであります。また私どもといたしましても、ただいま日銀を中心とする金融機関の機構の改革に手をつけております。できれば今議会に提案をいたしたいと考えておる次第でございます。
 なお金融機関に対する監督につきましても、万全を期します。從つてお話のごとく日本銀行あるいは金融機関を國営にする必要はないと思います。またそういうことは全然考えておりません。
 次に所得調査について、もつと徹底してやれ、また財産税、増加財産税を設けるのがいいというお話でございますが、私は財産税、増加財産税は、今の場合設けるべきものではないと考えております。所得調査につきましては、納税者の協力と税務機構の改善によりまして、万全を期しておる次第でございます。
 地租の引上げについて反対の意見がございましたが、御承知の通り現在の地租は十二、三年前に決定いたしました賃貸價格に基いております。しかしてこの賃貸價格は米價を一石二十円の計算で行つております関係上、財政窮乏の折柄、地租の引上げはやむを得ないことではないかと考えております。
 最後に農業所得の計算について、自家労賃を必要経費にしろというお話でございますが、これはまつたく見解を異にするところでありまして、もし勤労所得について自家労力を必要経費にしたならば、勤労所得からは所得税はとれないと同様に、農家から自家労力を必要経費として控除するならば、所得税はとれないということになるのであります。しかして所得税というものは、自家労力を必要経費として計算することは、全然できないところの税でございます。御了承願います。
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#27
○國務大臣(森幸太郎君) 黒田議員の御質問にお答えいたします。
 小作料を引上げることについては反対であるという御意見であつたのでありますが、これは今大藏大臣が申しましたような事情で、今回地租の改正が行われるというような考え方から、小作料は御承知のように二十年の末に決定いたしたのでありまするが、それ以來物價との均衡等、いろいろ環境の事情がかわつて來ておりますので、今回相当な額に修正いたしたいと考えておるわけであります。まだその程度は決定いたしておりませんが、もとより農産物價格と生産費との関係によつて、地代に不足する部分を算出するわけでありまするから、農家がそれがために非常なる圧迫を受けるというようなことはない、かように考えておるわけであります。
 なお米價の決定について、國会によつてやるべきであるという御意見であります。これはまつたくあなたの御意見として承つておきます。今日の場合パリテイー計算によつてこれをやることが妥当である、かように考えておるわけであります。パリテイー計算によつてやることについては、種々の問題がありますが、その過程におきまして十分國会等の意思も反映することができる、かように考えておるわけであります。
 超過供出の問題でありますが、今日の供出制度そのものが、われわれはほとんど完全でないということを申し上げておるのであります。これは前々内閣から同じ供出制度が行われておりまして、それが芦田内閣のときに超過供出を要求するようになりたのでありまするが、これはもとより自治的に、自主的に超過供出をしてもらうという氣持で、三倍にこれを買うということが芦田内閣のときにきめられたのでありまして、これが現在続いておるのであります。しかし輸入食糧等の事情から、これを法制化しなければならないような情勢になつて来ておるのでありまするが、二十三米穀年度におきましては、もとよりこれは自主的な超過供出をやつておるわけであります。この点は私が先ほど申しました通り、今日の供出制度は、根本的にその方式をかえて行かなければならぬ段階に入つておるということを考えておるわけであります。十分皆さんとともに適当にこれは修正して参りたい、かように考えておるわけであります。
    〔政府委員中川以良君登壇〕
#28
○政府委員(中川以良君) 安本長官がまだ予算委員会に出ておりますので、私よりかわつてお答えさせていただきます。
 安本長官にお尋ねの事項に関しましては、大半大藏大臣より御答弁がございましたので、省略させていただきまするが、ただ黒田さんの御質問の中に、日本銀行を初め、大銀行を國営にしない場合には、何かこれにかわる強力なる金融委員会のごとき機構をつくるかどうかという御質問があつたかと存じます。これに対しましては、ただいま御説のような特別な金融委員会を設ける考えはございません。ただ今後の事態に対應いたしまして、公明なる処置をとるべく、必要な考慮をいたす考えは持つておる次第でございます。
 以上お答え申し上げます。
#29
○黒田寿男君 私の質問に対する総理大臣、大藏大臣、農林大臣及び安定本部次官のお答えは、はなはだ不満足に思いますので、再質問をしたいと思いますが、私の本質問の時間が超過いたしましたので、再質問を遠慮いたすことにいたしまして、委員会その他でわれわれの所信を述べ、政府の意見をただしたいと思います。
#30
○議長(幣原喜重郎君) 先刻の河口君の質疑に対して、商工大臣の答弁を留保いたしておきましたが、この際答弁を願います。稻垣商工大臣。
    〔國務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#31
○國務大臣(稻垣平太郎君) 河口議員の御質問事項についてお答え申し上げます。
 御質問は配給物資の取扱い、あるいは農業協同組合を差別待遇をしておる事実なきや、供米報奬物資は農業協同組合で取扱わせるかどうかという御質問のようであります。報奬物資といたしましての衣料品、あるいは日用品は、大体衣料品につきましては生産業者、卸賣業者、それから小賣業者、消費者、こういう順序に参つておるのでありますが、配給統制規則によりまして、卸賣業者と小賣業者は登録制を実施いたしておるのであります。從つて農業協同組合が小賣業者といたしまして登録せられる場合におきましては、同様に取扱うこともちろんであります。(「登録してないよ」と呼ぶ者あり)登録せられればいいのであります。それからなおゴム製品につきましては要綱統制によりまして、今日各都道府縣の商業卸賣組合、あるいは小賣商業協同組合に取扱わせておるのでありますが、最近物調法の規則によりまして、これに対しても登録制を実施することに相なつているのでありますから、その登録制が実施されましたならば、農業協同組合におきまして資格を備えますれば、登録と同時にお取扱いを願うことに相なると存ずるのであります。
 その次の御質問は、戰時中の軍需会社が、戰後農機具生産に乗り出して來て、従来の中小企業の農機具の製造業者を圧迫しているが、かかる轉換業者について企業整備をする考えがあるかどうかということであります。現在の企業自由の原則からいたしまして、これに企業許可制あるいはまたこれに類似の企業制限を行うことは避けなければならないのであります。ただ資材の割当その他の点につきまして、品質あるいは能率の惡いものにつきましては、これはおのずから整備されるのはやむを得ないと考える次第であります。(拍手)
#32
○議長(幣原喜重郎君) 早川崇君。
    〔早川崇君登壇〕
#33
○早川崇君 私は社会革新党を代表いたしまして、首相の施政演説に対する一般質問を試みんとするものであります。
 第一にお伺いいたしたい問題は、國際情勢の危機の認識の問題であります。本問題に関しましては、一昨日の本会議におきまして、淺沼稻次郎君の質問に答えまして、首相はきわめて樂観的な見解を表明せられたのであります。しかしながら不敏私は政治史をひもときましても、吉田総理は大戰爭のあとには一時的に危機が來る。ところが國民は平和を愛好しているから、自然ここに平和が保たれて行くという手放しの樂観論を唱えられたのでありますけれども、第一次大戰の後においても、さらにまたナポレオン戰争、さらにまた三十年戰爭のあとの歴史を見ましても、現在ほどまつたく相いれない二つの哲学が、二つの政治が妥協なく爭つているというような事実を私は見ないのであります。私はかかる意味におきまして、かような相いれざる二つの世界の争いは、こにに歴史未曽有の危機をはらんでいると見るのがほんとうでございまして、かような戰爭の可能性に対する認識をもとにして、初めてアメリカが早急に日本の経済の自立の促進を要望し、さらにまた、わが國が早急に経済の自立の必要を痛感しなければならない根本的な原因があると思うのであります。かような親の心子知らずという感を抱かせるような手放しの樂観論というものが、やがては民自党の公約の甘さとなつて現われ、さらにはまた九原則によつてあわてなければならないというような事態を生ずるのでございまして、私はかかる見解から申しまして、眞に國際危局の認識の上に立つて、ここに強力に自立を推進して行こうと考えることこそが、眞に現在の國情に即したゆえんであろうと思うのであります。
 これと関連いたしまして、私は北大西洋條約と併行して、あるいはオーストラリア、あるいはまたフイリツピンあたりの太平洋防衛條約の提唱されておるのを知るのであります。これに関しまして近藤政務次官は内外記者團に対しまして太平洋防衛條約の締結は、武装を解除された日本にとつて、独立と領土保全を維持する唯一の方策であり、対日講和條約がまだ締結されていなくとも、日本の防衛同盟参加の妨げになるものではない。日本がもしこの同盟に参加することが許されれば、何ら軍事的義務を負わずに同盟の集團保障を受けられる。共産主義のあらしがアジアを吹きまくつている情勢にかんがみ、北大西洋條約に類似する條約が必要であるということを、外人記者に主張いたしまして、ソビエトのモスクワでも多大の反響を呼んでいるのであります。この主張の根本は、まつたくかような國際戰爭の可能性に対する認識を基礎にした主張であると私は思うのでございまして、本会議の壇上において手放しの樂観論を主張されるところの吉田首相の考え方と、ここに大きい矛盾を感ぜざるを得ないのでございます。この問題に関しましては吉田首相の見解、自立への意思をお聞きしたいと存ずる次第でございます。
 第二にお尋ねいたしたい問題は、内政の可及的自由獲保の問題でございます。今次総選挙の結果、内外人の一致した見解は、日本民族の自立に対する意思の表現であるという点においては一致しているのであります。この点に関しまして片山、芦田両内閣の失策の最も大きい一つは、日本國民がみずから政治の自主性を抛棄したような政治を行つたという印象を與えたところに、大きい失政があつたのであります。從つて國民の吉田首相に対する期待というものは、あくまでも内政の可及的自由を確保してもらいたいという表現の要求であろうと私は存ずるのであります。ところが一旦政権をとられて、すでに二箇月有余になりますけれども、あの予算の問題、その他いろいろな問題をひつくるめまして、事ごとにこの自由確保の希望は失敗に終つているのであります。さらに私は最近吉田首相の國民的期待の実現に対する熱意の不足すら感ぜざるを得ないのであります。私はかかる意味で民族の自立意識というものはこれは國民の本能に根ざしたものである。もし吉田氏にしてこの総選挙の結果表明された國民の希望を踏みにじるようなことがあるならば、まことに不幸でありますけれども、再び極右のウルトラ・ナシヨナリズムの擡頭すら促すおそれさえあるのであります。私はかかる意味におきまして、吉田首相が本会議の壇上において講和條約の締結というものは、これは國際関係においてなかなかむずかしいけれども、少くとも実質的に講和條約の締結と同様の権利を得るように自分は努力しておるという淺沼君に対する御答弁でございました。これはとりもなおさず内政の許された範囲における可及的自由を確保したいというような意味と私は思うのであります。私はこの点に関しまして吉田首相の決意と今後の施策をお尋ねいたしたいと存ずるのであります。
 さらに國際問題にこれを廣めて参りますと、國際社会における差別待遇の可及的撤廃ということとつながるのでありまして、最近の外電は、アメリカが日本の貿易上の差別を撤廃するために、最悪國待遇にしようということを、イギリスあるいはオーストラリヤに申入れをしておるということを傳えているのであります。これに対してイギリスあるいはオーストラリヤ方面において、若干の反対が見られるように聞いておるのでございますけれども、この最恵國待遇の実現に対する吉田首相の外交上の、あるいはその他の御所見を私はこの機会に伺つてみたいと存ずる次第であります。
 さらに第三点は、たとい政治上の自主性を確保しようといたしましても、わが國の政治経済の態勢というものが世界の政治動向の態勢にさおさしたものでなければならない。私はそれが前提になるのではないかと思うのであります。從つてあのアメリカ大統領選挙におきまして、予想を裏切つてデユーイ氏が敗北いたしました、さらにまたイギリス労働党の今にかわらない隆盛振り、さらにまた最近の地方選挙におけるフランス中道派の勝利、かようなことをあわせ考えまするならば、最近の世界における政治の動向は、どうしても勤労者の協力をかち得るための社会政策、さらにまた社会主義というものをも包容するところの進歩的な中道政治というものが、世界政治の大勢であろうと思います。私はかようなことが眞に反共――政治上の反共である。共産党の進出を押えるゆえんである。民自党の政策のように、ただ古典的な資本主義あるいは手放しの自由経済に対する盲目的な、狂信的な政策では、せつかく共産党を押えようと思つておりながら、押えよう押えようと思つたがために、かえつてマルクスの言うように反対にずつと共産党が伸びて來るという結果になると思うのであります。
 私はかような意味におきまして民自党の総裁としての吉田総理にお伺いしたいのであります。いかに民自党の諸君がカモフラージユいたしましても、経済九原則というものはかつての諸君の主張された政策とは、どうしても公平に見て違うのであります。(拍手)私はかような意味におきまして吉田首相が自立達成、内政の自由に対する熱意は非常に敬服するのでありまするけれども、この九原則という至上命令を機会に、世界の政治動向の大勢と少し違つておつた、そこで自由を確立するためにこの際面子を捨てて経済九原則をやつて行こうというこの機会以外にはないのでありますから、今までの古典的資本主義、あるいは自由経済に対する狂信的な信仰を宗旨がえされて、眞に世界の政治動向に從つたような政策へ民自党をおかえになつて行くというのが、眞に吉田氏の意図しているところの政治上の自主制への近道であります。(拍手)私はかような意味におきまして、どうしても國際的なつながりのあるような政治を行わなければ、一生懸命に自立したい、自由を得たいという御熱意にもかかわらず、結果はかえつて連合国の支援を得られないで逆に自立が遅れるという、かような弁証法をひとつ十分に御理解になつて、この機会に政策轉換をはかられるのが至当であると思うのであります。
 さて第四の問題は、経済安定問題に関してであります。復興か安定かという論争はすでに北村君あるいは勝間田君が大要質問されましたので、私はもはや時間もありませんし、あまり触れませんが、ただ一つ税金の問題につきまして、このたびの予算の根本をなすのは税金七割の増徴でございますけれども、この税金徴收は、私は現状をもつてすれば不可能であると、きわめて悲観的な見解を持つておるのであります。なぜならば、この所得税の根拠となるところの國民所得が、でたらめであるということであります。イギリスが四〇%所得税をとられるのである。アメリカが二四%、日本はわずか二一%しか國民所得から税をとつていないというような、さようなばかな計算が一体どこに出て來るのですか。第三國人の貨幣所得が莫大に上つておりますが、それすら大藏当局はつかまない。ただ資本蓄積をたけのこで食いながら、それが所得というような算定で、二一%からもつともつと税金がとれるのだ、とらなければならない、戦勝國ですら四〇%、日本は二一%にしかならぬというような、かようなでたらめな根拠で税金をとられたら、國民はたまつたものではございません。
 さらに私はこの税金が非常に困難だというゆえんといたしまして、イギリスにおいてすら安定工作をやつた直後には四〇%の貯金が減つておる、イタリヤにおきましては一昨年安定工作をやつたのでございまするけれども、生産は一割五分低下して、失業者は六十万人出て來るというような状況になつておるのでありまして、いわば土俵は今までインフレ政策で大きかつたが、安定工作をやることによつて小さくなつた。小さくなつた土俵において、今までより七割もよけいにとろうというのでありますから、これはまつたくでたらめであります。かようなまことに不完全なる統計を資料にした政治を日本がやるものですから、とても國民の実情に合わない政治になるのでありまして、この点に関しまして大藏大臣あるいは安本長官の國民所得の算定に関する基礎を、私はこの際お示しを願いたいと存ずる次第であります。(拍手)
 さらに私は、農林大臣がおられまするから、安定工作と関連いたしまして、漁区の拡張問題を少したたいてみたいと思うのであります。資材とか金とかをたくさん入れることによつて食糧を増産するというのは、これは下の下であります。漁区の拡張さえできれば、南方漁業にいたしましても、莫大なる食糧資源が獲得できるのであります。この問題に対して一体農林大臣の見通しはどうかということを御説明願いたいのであります。
 もう一つ経済安定に関係いたしまして、中共との貿易の問題であります。日本の最も必要としておる鉄鉱石にいたしましても、あるいは粘結炭にいたしましても、あるいはソーダ工業の根本になりますところの塩にいたしましても、中支、北支に莫大な原料資源が、どつちかというとストツクされ、あり余つておる実情でございまするが、現在の日本の保守政権と中共とは、先ほど申しましたように、形をかえたソビエトとアメリカのようにまつたく水と油であります。かような関係でこの交易の可能性はあるのか、一体いかなる手を打つてこの道を開こうとするのであるかということを、ひとつ商工大臣に対して御質問したい次第であります。
 さらに次の問題として、第五にお尋ねいたしたいのは人口問題に関してでございます。かつて毎日の高田特派員がフランスに行きましてレーノー氏に会いましたら、レーノー氏が、日本の政治の重要な問題は結局人口問題であるということを高田氏に言われた。まことに卓見でございます。満州事変、太平洋戰爭の勃発の原因も、せんじ詰めれば人口問題が一半になつておるのであります。さらにこれに対しまして現政府はあるいは工業を盛んにして人口を吸收しようという政策、これも一つの政策でありましよう。あるいはまた外交関係において移民を実現して行く、これもまた一つの政策でありましよう。さらにまた厚生省が考えているように優生学的見地から産兒制限をしようという考え方、これも一つの考え方でありましよう。さらに安定本部においては経済が縮小しておるのだから、経済上の理由で産兒制限をしようという計画も立てておると聞いております。さらにまた農林当局においては、北海道の総合開発をやつて、かのテネシーの開発計画のようなことをやりまして、一千万人の人口を吸收しようという、まことにありがたい御計画も立つておる。ところが私はかような人口政策に対して、さて厚生省は優生学の見地から、安定本部は経済上の見地からの産兒制限である。外交当局は移民に対して見通しがない。まつたくごちやごちやになつておりまして、日本の政治の根本をなす人口政策において、現政府がいまだに総合的な見通しと対策を持たないことを、私は遺憾に存ずるのであります。この点に関しまして吉田総理の卓越した御所見を伺うとともに、厚生当局あるいはまた安本当局のそれぞれの意見をどう調整するか、これをはつきり私はお聞きしたいと存ずる次第であります。
 最後に私は警察力充実問題につきまして、吉田首相の所見をたたいてみたいと思うのであります。吉田首相は第三次内閣の初頭において、警察力の充実を言明せられたのであります。経済安定施策が進んで行きますと、これはずつと進んでおる電車をぴたつと一ぺんにとめる政策でありまするから、立つておる人が倒れるのであります。特に勤労階級あるいは中小工業というような資本力の少い人が倒れる。言いかえると経済不安、社会不安が激成されて來るのでございまして、今後の一つの施策をめぐつて、その安定工作の政策がまずく行くと、こういうここになる。うまく行きますれば、そういうふうに汽車が急停車で倒れることにならないで、徐々にとまつて行くのであります。けれども、ともかくも今後の経済不安、社会不安、あるいはこれに伴うところの治安の惡化ということは、これはわれわれ政治家として、この安定工作の実施に伴つて、一時的にかもしれませんが、どうしても考えておかなければならない大きい課題であろうと思う。ところがこの問題に関しまして、みずから治安を守ることができない以上、政治的な自主性も、経済的な自主性も困難であると思います。國家警察と自治体警察の統合の問題が、かつて樋貝國務大臣から市町村長会の席上において言明され、さらに装備の強化の問題に関しましても、ピストルを少しふやすとか、あるいはトラツクをふやすというような、まことに兒戯に類した程度の装備の強化をやつております。またアメリカ本國におきましても、アイケルハーガー中將のように、急速に警察力を充実しようという意見もありますが、私はかような意味におきまして、今後この経済安定工作の実施に伴つて起るべきところの日本の治安の惡化、経済不安、社会不安に対して、はたして十分な警察力充実の手を、吉田首相は渉外的に打つておられるか。さらにまたこの治安維持に対する確信を、この壇上より御披瀝願いたいと存ずる次第であります。
 以上六項目につきまして、まことに短時間で意を盡しませんでしたけれども、関係閣僚の誠意ある御答弁を要求して、私の質問を終る次第であります。(拍手)
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#34
○國務大臣(吉田茂君) 早川君にお答えをいたします。私の國際関係につきましての樂観論に対して、非観論をお述べになりましたが、これは議論でありまして、私は樂観論が正しいと今なお考えておるのであります。また太平洋條約云々というお話は、まつたく仮定の問題でありまして、今現実の問題になつておりませんから、議論を差控えます。
 最恵國條約待遇は、ぜひとも日本としては得たいものだと考えますが、この英米の間の議論のいきさつについては直接承知いたしておりませんから、なお調査して結論を得ましたらば、御報告いたします。
 なお民主自由党の資本論は古典的であるからして、中道政治論に改めてはどうかという御忠告でありますが、この点に対しては遺憾ながらお断りをいたします。また人口問題についていろいろお示しがありましたが、私は総合してそのお示しになつたすべてを実行いたして、人口問題を解決いたしたいと思つております。
 また警察制度についてはまことに不完全であることは御同感であります。これに対しては、現にいかに警察制度を新たに考うべきか、当局においてしきりに考察中であります。結果を得まして御報告いたします。(拍手)
    〔國務大臣稻垣平太郎君登壇〕
#35
○國務大臣(稻垣平太郎君) お答えいたします。中共との貿易についてどう考えるかという御質問であつたのでありますが、中共との関係は、ただいま國際的の関連もありまするので、これと正式に取引をいたす状況には相なつておりません。しかしながら実際問題といたしましては、あるいは香港、あるいはマカオ、あるいは南鮮等を通じて実際上の引合いその他は参つております。御指摘の鉄鉱石、あるいはソーダ、工業塩等につきましても、たとえば粘結炭のかいらんたん、こういつたようなものについても、他のルートを通じての照会は受けておるような次第でありまして、当分の間中共の問題は、はつきりいたすまでは、実際的の方法で取引をいたすよりほかないかと考えております。(拍手)
    〔國務大臣林讓治君登壇〕
#36
○國務大臣(林讓治君) 人口問題について、安本その他と食い違いがないかということの御質問でありましたが、厚生省といたしましては、国民生活の実情にかんがみまして、受胎調節の方法等につき、医学上、保健上の立場から、御相談に應ずるということを申し上げたわけでありまするから、決して食い違つておるとは考えておらぬのであります。(拍手)
#37
○議長(幣原喜重郎君) ただいま大藏大臣に対する御質問がありましたが、大藏大臣は現に予算委員会に出席されておりまするから、これは適当な機会に答弁を願うことにいたしておきます。
    〔國務大臣森幸太郎君登壇〕
#38
○國務大臣(森幸太郎君) 早川君にお答えいたします。漁区を廣くとおつしやつたのでありまして、指定されておらないのでありますが、この漁区の拡張ということは、政府におきましても非常に熱望いたしておるのであります。どうかしてこの漁区の拡張を実現いたしたいと努力いたしておるのでありまするが、御承知の通り過去の漁区はすべて制約を受けておるのであります。この制約をわが水産業といたしましては、ぜひとも守らなければならないのであります。御承知かと存じまするが、この制限せられたる区域を逸脱いたしまして、連合軍より政府に対して注意を促されたようなことがあるのであります。これはたまたま誤つて漁区を逸脱いたしたのかもしれませんけれども、相当の件数があげられておることを見ますると、あるいは誤つてやつたのみではないようにも解釈されるのであります。そうしますると、連合軍が制約いたしておりまするこの区域をことさらに逸脱する、いわゆる信義を守らないところの日本の水産業であるというようなことを、先方に考えられる場合におきましては、漁区の拡幅ということは非常に前途を暗くさせるのであります。どうか漁業者におきましても、忠実にこの制約を守るようにしてもらいまして、われわれ政府におきましては、できるだけこの漁区の拡張を政治的交渉によつて解決いたしたいと考えておるのであります。われわれの忘れてならないことは、今日自由に漁業のでき得る領分を持つておらない、これで制約されておる今日の日本の現状であるということを、われわれは忘れてはならないと思うのであります。
#39
○議長(幣原喜重郎君) 早川君再質問ですか。
#40
○早川崇君 打切つたのです。
#41
○議長(幣原喜重郎君) これにて國務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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