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1949/04/16 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第18号
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1949/04/16 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第18号

#1
第005回国会 本会議 第18号
昭和二十四年四月十六日(土曜日)
 議事日程 第十六号
    午後一時開議
 第一 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案(内閣提出)
 第二 大藏省預金部特別会計外二特別会計の昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
 第三 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
 第四 貴金属特別会計法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 訴追委員会の委員の選挙
 訴追委員会委員の予備員の選挙
 日程第一 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案(内閣提出)
 日程第二 大藏省預金部特別会計外二特別会計の昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
 日程第三 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
 日程第四 貴金属特別会計法案(内閣提出)
 昭和二十四年度一般会計予算
 昭和二十四年度特別会計予算
 昭和二十四年度政府関係機関予算議事進行に関する発言
    午後一時二十二分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(幣原喜重郎君) 訴追委員会の委員尾関義一君は先般彈劾裁判所の裁判員に選任せられましたから、訴追委員は当然辞任されたことになります。よつてこの際訴追委員会の委員の選挙を行います。
    ―――――――――――――
#4
○今村忠助君 訴追委員会の委員の選挙は、その手続きを省略いたしまして、議長において指名されんことを望みます。
#5
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて議長は、佐藤親弘君を訴追委員会の委員に指名いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#7
○議長(幣原喜重郎君) ただいま佐藤親弘君が委員に指名せられました結果、訴追委員会委員の予備員に一名の欠員を生じましたので、この際予備員の選挙を行います。
    ―――――――――――――
#8
○今村忠助君 訴追委員会委員の予備員の選挙は、その手続きを省略して議長において指名せられ、この際予備員につき、その職務を行う順序を議長においてあらためて指定されんことを望みます。
#9
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて議長は、安部俊吾君を訴追委員会委員の予備員に指名いたします。
 なおこの際、訴追委員会委員の予備員の職務を行う順序は、あらためて次の通り指定いたします。
   眞鍋  勝君  今村 忠助君
   篠田 弘作君  田中 啓一君
   青柳 一郎君  田万 廣文君
   並木 芳雄君  安部 俊吾君
   加藤  充君  原   彪君
     ――――◇―――――
#11
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長花村四郎君。
#12
○花村四郎君 ただいま上程になりました罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 罹災都市借地借家臨時処理法は、あるいは罹災建物の旧借主に優先的に借地権を取得させ、あるいは罹災地の借地権で今後存続させる意思のないと認められるものを消滅させる等の道を開き、もつて罹災都市の急速なる復興をはかることを目的として制定されたのであります。その後改正されて自然災害にも及ぼすこととし、火災、震災、風水害その他の災害の場合にも適用することとなつたのであります。過般、二月二十日の秋田縣能代市に起つた大火は、まさにこの法律により指定さるべき災害と認められるのであります。以上が政府原案の要旨であります。
 法務委員会においては、第一國会以來この種の法案を審議しており、事情をよく了承しているので、この地区設定も至極適当と認めたのであります。質問といたしましては、何を標準として罹災地を指定するやとの質問に対しまして、政府よりは、從前より燒失家屋約一千戸の場合で、縣市当局より同法適用の要請がある場合において適用しておるとの答弁がございました。
 かくいたしまして、委員会は四月十四日討論を省略して採決いたしました結果、全会一致をもちまして政府原案通り可決いたした次第であります。
 右御報告申し上げます。(拍手)
#13
○議長(幣原喜重郎君) 他に御発言もございませんから採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#15
○議長(幣原喜重郎君) 日程第二、大藏省預金部特別会計外二特別会計の昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案、日程第三、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、日程第四、貴金属特別会計法案、右三案は同一の委員会に付託された議案でありまするから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大藏委員長川野芳滿君。
    ―――――――――――――
#16
○川野芳滿君 ただいま議題となりました大藏省預金部特別会計外二特別会計の昭和二十四年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律案及び開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について、本委員会の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 まず、第一の法案について申し上げます。この法案の要旨は、大藏省預金部特別会計、食糧管理特別会計並びに農業共済再保險特別会計の農業勘定の昭和二十四年度における歳入歳出を補填するため、一般会計から、これらの会計に繰入金をいたしますと共に、食糧管理特別会計及び農業共済再保險特別会計の農業勘定への繰入金は、後日一般会計へ繰りもどすことといたそうとするものであります。
 すなわち、まず大藏省預金部特別会計におきましては、昭和二十四年度における歳出として、人件費及び事務費、預金利子、通信事業特別会計への繰入金等合計百三億九千六百二十五万六千円を要するのでありますが、その歳入としましては、預金部資金の運用による利子、有價証券の償還による益金等合計六十六億四千四百六十万二千円でありまして、差引三十七億五千百六十五万四千円の歳入不足を生ずることとなりますので、この不足額を一般会計からの繰入金をもつて補填しようとするものであります。
 次に食糧管理特別会計におきましては、農業災害補償法により農業共済組合の組合員が支拂うべき農作物共済にかかる共済掛金の一部を負担し、この負担は食糧を消費いたしますものが負担するように食糧の賣渡價格を定めることとなつておりますが、價格政策の見地から、從來これを賣渡價格に加算しないで、一般会計からの繰入金をもつて補填して参つたのであります。昭和二十四年度分についても同樣の措置を講ずる必要がありますので、二十八億九千八百四十八万三千円を、昭和二十四年度において一般会計からの繰入金をもつて補填しようとするものであります。
 次に農業共済再保險特別会計の農業勘定におきましては、昭和二十四年度における歳出として再保險料等四十八億九千六百二十万五千円を計上いたしておりますが、その歳入は再保險收入等四十億四千五百五十一万七千円でありまして、差引八億五千六十八万八千円の歳入不足を生ずることとなります。この不足額は、本年度において特別にはなはだしい災害の発生した場合に備えまして十億円の予備費を歳出に計上したために生じたものでありますが、そのような事態の発生した場合に一般会計から繰入金をいたしまして、これを補填することができるようにしようとするものであります。
 次に第二の法案について申し上げます。この法案の趣旨は、開拓者資金融通特別会計におきまして、農地開拓者に対する貸付用資金の調達は從來公債または借入金によつておりましたが、これを健全財政の見地から、昭和二十四年度におきましては一般会計からの繰入金によることといたしますとともに、將來償還されます貸付金の金額をもつて一般会計への繰りもどしをいたそうとするものであります。この繰入金は、本年度におきましては、貸付を予定いたしております営農資金十四億五千百十九万四千円、共同施設に必要な資金六千二百九十万円、合計十五億千四百九万四千円と相なります。
 右の両案は、去る十三日、本委員会に付託されたものでありまして、十四日提案理由の説明を聽取し、ただちに質疑に入りましたが、内藤委員より、一般会計より繰入れをすることは一般会計の負担を重くし、その実行を困難にするようになりはしないか等の質疑がありました。次いで討論を省略し採決に入りましたところ、両案とも起立総員をもつて原案の通り可決いたされました。
 以上御報告申し上げます。
 次に、ただいま議題となりました貴金属特別会計法案について、委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、政府の行う貴金属の買入、賣拂または管理に関する経理を明確にするため特別会計を設置し、これを昭和二十四年度のこの会計予算の成立の日から施行し、これに伴うて從來の金資金特別会計法を廃止しようというのであります。從來金資金特別会計においても、金資金の運用に関する経理を一般会計と区分して行つたのでありますが、その会計では、資金運用の利殖金、すなわち賣買差益金及び附属諸收入をもつて歳入とし、産金奬励費、事務取扱費、手数料、附属諸費及び運用損失金をもつて歳出として経理し、金資金の運用としての金銀その他の貴金属の買入及び賣拂いについては、その全体を特別会計の歳入歳出に計上しない立前となつているのであります。今回新たに設置せんせとする貴金属特別会計においては、これらの貴金属の賣拂金を及び附属雜收入をもつて歳入とし、貴金属買入代金、事務取扱費、一時借入金の利子その他の諸費をもつて歳出とし、政府の行う貴金属の買入れ及び賣拂いの全体を予算、決算の上に明らかにしようとするものであります。そして、その際名称をも貴金属特別会計と改め、すでに從前より金のほか銀、白金その他の貴金属を取扱つている事実と合致せしめんとするものであります。
 この法律案の内容の概略を述べますれば、まず第一條において、設置の目的と、この法律にいう貴金属の種類を規定し、第二條において、この会計の管理は大藏大臣に属する旨を明らかにし、第三條においては、この会計の歳入歳出を前述のように規定しております。次に第四條ないし第十二條においては、歳入歳出予定計算書、予算の作成及び國会への提出、余裕金の取扱い、一時借入金、繰替金、歳入歳出決定計算書、決算等々に関して規定し、第十三條においては、貴金属の買入れ、保管、賣拂事務を日本銀行に取扱わしめ得る旨等を規定し、第十四條においては、支出未済額の繰越しに関する規定を明らかにしております。そして最後に、第十五條において本法律施行に関しての政令について、また附則においては、施行期日及び金資金特別会計の廃止、金資金、貴金属両特別会計間の経過規定その他本法施行に関する所要の事項を規定しております。右が本法律案の内容の概略であります。
 本法律案は、四月十四日大藏委員会に付託され、十五日政府委員の提案理由の説明を聽取し、ただちに質疑に入り、前尾委員及び三宅委員より二、三の質疑があり、続いて質疑を打切り、討論を省略して、ただちに採決に入りました。採決の結果は総員一致をもつて可決いたした次第であります。
 以上、概略御報告申し上げます。(拍手)
#17
○議長(幣原喜重郎君) ただいま議題となつておりまする三案を一括して採決いたします。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて三案は委員長報告の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
#19
○今村忠助君 委員会に付託したる議案の審査終了を待つため、この際暫時休憩されんことを望みます。
#20
○議長(幣原喜重郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつてこの際暫時休憩いたします。
    午後一時四十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時四十三分開議
#22
○議長(幣原喜重郎君) 休憩前に引続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 昭和二十四年度一般会計予算
 昭和二十四年度特別会計予算
 昭和二十四年度政府関係機関予算
#23
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、昭和二十四年度一般会計予算、昭和二十四年度特別会計予算及び昭和二十四年度政府関係機関予算の三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
    〔「異議あり」「賛成」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの山本君の動議につき採決いたします。山本君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#25
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて日程は追加せられました。
 昭和二十四年度一般会計予算、昭和二十四年度特別会計予算、昭和二十四年度政府関係機関予算、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員長植原悦二郎君。
    ―――――――――――――
 昭和二十四年度一般会計予算に関する報告書
 昭和二十四年度特別会計予算に関する報告書
 昭和二十四年度政府関係機関予算に関する報告書
    ―――――――――――――
    〔植原悦二郎君登壇〕
#26
○植原悦二郎君 ただいま議題となりました昭和二十四年度一般会計予算、昭和二十四年度特別会計予算及び昭和二十四年度政府関係機関予算、これらについて、その内容及び委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げたいと思います。
 本年度予算の編成方針については、先般本会議において政府側から説明があり、また昭和二十四年度予算の説明という政府の提出資料について明らかでありますから、ここであらためて詳細に御報告申し上げる必要はないと思います。しかし、本予算はその総額において、あるいはその特色においても、從來に見られなかつた画期的なものでありますので、その概要を申し上げたいと存じます。
 まず一般会計予算総額は、歳入において七千四十九億円余、歳出において七千四十六億円余と、約三億円の黒字となつております。特別会計予算総額は、歳入二兆五千五十億余万円、歳出二兆三千五百六十億余万円であります。この一般会計及び特別会計予算額に、本年度予算から新たに計上されることになつた昭和二十四年度政府関係機関予算、歳入歳出とも一兆三千百四十億余万円を加えますると、昭和二十四年度予算総額の歳入は、四兆五千二百四十億余万円、歳出は四兆三千七百四十七億余万円となります。予算総額はまことに巨額でありますが、各会計及び政府機関間の重複額を差引きますと、もつと減少するはずでありまして、一般会計及び特別会計の予算歳出純計額は一兆七千七百五十四億円となり、前年度に比較いたしまして七千百億円と、四割方の増額であります。この七千百億円の増加の主たる原因は、一般会計におきましては價格調整費または政府出資金及び投資金の増加、特別会計においては米國対日援助見返資金特別会計及び貿易特別会計の事業費勘定の新設等によるのであります。これらの経費の増大及び新特別会計の設置は、今年度予算の特色を端的に表示するものであります。
 申すまでもなく、昭和二十四年度予算は、一本為替レートの設定を媒介として日本経済を國際経済に結合し、さらに財政インフレーシヨンの切断によつて、すみやかなる経済安定を実現し、かつまた健全な金融と企業経営の基盤に立つ経済復興を実行せんがために必要不可欠の措置として編成されたものであります。從いまして、一般会計の歳出の面において價格調整費が二千二十二億円の計上を見ておりますのも、新為替レートが輸入物資の價格を通じまして一般物價水準に急激な変動を與えないようにと配慮された過渡的手段と考えられるのであります。
 さらに、政府出資金及び投資金並びに政府機関等損失補填金が合計九百七十一億円余となつておりますのは、財政インフレーシヨンの一因でありました公債、日銀借入金及び復金債券等の既存の債務を減額し、かつ新債務の増加を抑止して、一般会計、特別会計及び政府関係機関等を通ずる眞の均衡予算を実現するためであります。これに関連いたしまして、復興金融金庫の予算におきましては、政府出資金三百億円、貸付回收金中の二十五億一千九百万円、交付公債收入七百六十五億八千一百万円、合計一千九十一億円をもちまして復金債現在高の全額を償還することを予定いたしております。これは從來復金インフレと称せられていた弊害を除去するのでありまして、その償還金の一部は金融機関の自主的活動に役立つものと存じます。
 経済の安定と復興の素地を急速に造出するために、今申し述べました経費に約三千億円を充当いたしました結果、その他の経費は当面必要とする最小限度に圧縮することと相なつたのであります。たとえば、終戰処理費関係の支出は約一千三百億円を計上しておりますが、前年度と比較して建設的経費の比率は著しく減少し、維持的経費も若干逓減しております。さらに公共事業費の五百十八億円余、地方配付税配付金の五百七十七億円余等は、合計いたしまして前年度よりも約百七億円の増額となつていますが、財政緊縮の見地から、この程度の計上を見たものであります。
 その他の重要経費といたしましては、小学校教育費國庫負担金、新制中学、定時制高校及び新制大学実施等の教育文化費が累計二百三十四億円余、生活保護及び國民健康保險、失業対策及び同胞引揚費等の社会政策的経費が約二百三十億円、農地改良及び食糧供出関係費が約八十億円となつております。なお物資及び物價調整事務取扱費において、蔬菜等の配給統制廃止に伴いその経費が全額削除されているのは注目すべき点ではないかと存じます。
 次に一般会計の歳入面について言及いたしますに、経済安定のための経費等が巨額に上りました結果、これをまかなう歳入は、総合予算の眞の均衡を保つために確保されざるを得なかつたようであります。もちろん租税の増徴と担税能力との調整については、取引高税の印紙納付制度の廃止、一箇月の賣上げ金額三万円未満のものの免税及び非課税範囲の拡大や法人税の若干の軽減措置等によつて、目下の情勢上あとう限りの方法が講ぜられたようであります。
 所得税につきましては、予算均衡の建前上、前年度の税率や基礎控除額のまま本年度も計上いたし、総額三千一百億円となりましたが、近き將來において必ずやその軽減が実現することを確信いたします。その他揮発油税の新設、酒税の税率改正及び酒造量の増加による増收、製造能力の上昇による專賣益金の増收等がはかられております。
 歳入を総括いたしまして、直接税の租税、印紙收入及び官業益金等の総額に占める比率は五三・四%と、前年度よりも三・九%を増大しております。このような間接税から直接税への重点の移行は本年度の租税体系の一つの特色でありますが、直接税中の勤労所得や低額申告所得に対する課税の軽減は、今後の課題としてその実現を期待されるやに見受けられるのであります。
 次に特別会計の主なるものについて申し上げますと、米國対日援助見返資金特別会計の新設は最も特色あるものでありまして、旧來の貿易資金特別会計において不明確のうちに操作されておつた米國の対日援助額は、本会計の予算において明確に示されることになつたのであります。この特別会計が貿易特別会計から受入れますところの一千七百五十億円は、援助輸入物資の國内拂下代金一千百三十四億円と、援助物資の輸入補給金として租税から支弁された六百十六億円とからなるものであります。これが使途につきましては、國鉄及び通信特別会計の建設公債の引受け、産業資金の供給並びに國債及び復金債の償還等に予定されておりますが、経済の安定と復興の速度と状況いかんは、実にこの一千七百五十億円の支出いかんにかかつておる次第であることを御了承願いたいのであります。
 さらに、新設の貿易特別会計において四千三百四十四億円余の事業費勘定が設けられたこと、食糧管理特別会計予算が米價改訂の結果四千四百十五億円となつていること、國有鉄道及び通信事業特別会計の独立採算制のために旅客運賃六割、郵便料金平均四割五分の値上げが見込まれ、両会計の建設資金は日本銀行に依存せずに、これを米國対日援助見返資金特別会計から支出せられること等は、本年度特別会計の特色をなすものであります。なお特別会計におきましても、経費節約の見地より、一般会計の三割に対して二割方の人員整理を見込んで予算が編成されております。
 かような昭和二十四年度予算案に対しまして、予算委員会は、四月七日から十四日までの間、各党委員と政府側との間に終始熱心なる質疑應答がかわされましたが、今そのおもなるものの若干について申し述べ、その他は速記録によつて御了解を得たいと思います。
 質問の第一は、この予算を見るに、去る総選挙において民主自由党が國民に公約された政策が何一つ実現されていないではないか、すなわち取引高税の廃止、所得税の軽減は一体どうしたのだ、六・三制の経費、公共事業費等は削減されておるではないか、民主自由党の公約は全然無視されておる、公党の面目いずこにありやである、これに対して政府の所見はたしていかんというのでありました。
 これに対して政府は、取引高税撤廃や所得税の軽減は確かに民主自由党の選挙における公約の一つであつた、しかしそれがすべてではない、(拍手)民主自由党の最も重要視せる政策は、インフレの收束、経済九原則の嚴守、これによる均衡予算の編成、経済の安定確保、生産の復興、國家の再建であつたと思う、そうしてこの予算においては、從來のごとく、ただ歳入歳出の予算の数字のつじつまだけを合せるものでなく、赤字公債を排除し、國家の歳入によつて歳出をまかなう眞の均衡を得たる予算が実現されたのである、かくして経済安定確保の道はつくられ、インフレは收束され、初めて生産の増強、國家の復興再建が実現され得るので、民主自由党の基本的政策の実現はまさにその緒についたわけである、(拍手)政党の公約せる政策がすべて二、三箇月にして実現されべきものではない、取引高税、所得税の問題は、遠からず税制改革の際に十分考慮されるはずである、さらに野菜はすでに自由販賣にされ、近く公團の一部は廃止され、また料飲店はその開業を許され、そして行政整理は断行され、地方出先機関もまたその大半は整理されることになつている、これらはみな民主自由党の公約実現にほかならない、(「その通り」拍手)かつまた本予算は、從來の予算のごとく款項目を中心とする目的別の編成によるものでなくて、主として組織別の編成になるものなるがゆえに、歳入には幾分ゆとりがある、そして歳出はその運用上つとめてこれを節約し、剩余を見ればこれによつても減税が考慮され得るのだとの答弁でありました。
 次に、この予算は巨額の税收と歳出の節約とを特徴としておるが、予算の実施によつて深刻なデフレーシヨンが招來されはしないか、その結果として貯蓄の増大も期待されず、産業資金の枯渇を來し、この面から本年度の生産は計画通り達成できないのではないかとの質問がありました。これに対して政府は、たしかに財政資金の放出が停止された点においてこの予算は從來とは異なるが、予算の執行上適宜の対策をとり、政府としては対日援助資金の活用あるいは指定預金の実施等によつて決してデフレにはならぬと思う、デフレではない、この予算の狙いはデイスインフレである、(拍手)また貯蓄目標は二千五百億円とし、その達成に努力する、産業資金調達の時期的ずれについては何らかの措置を講じ、信用統制を強化して資金の効率的使用を考えて行くから、資金計画の面から生産計画がくずれるようなことはないとの答弁でありました。
 第三に、経済安定方策に関する問題につきましては、政府は從來のなしくずし的安定の方策をやめて、一挙安定の方策に切りかえたのはどういう理由か、かかる一挙安定の方策は経済復興五箇年計画に齟齬を來さないか、また政府はあまりにも財政の均衡に重点を置き過ぎて、企業と家計に赤字のしわ寄せをしたのではないか、また安定方策の結果必然的に集中生産に向わざるを得ないし、それは安定恐慌を招來し、中小企業家は破滅するではないかとの質問に対し、政府は、現在は諸般の情勢より考えて経済の安定をはかり、経済自立の素地をつくるべき時期であると考える、この機を逸してはならない、從來考えられていた経済復興計画との間には大した齟齬はなく、十分に調整し得ると確信する、また財政の均衡化はあらゆる安定の基礎である、この予算は完全に財政インフレの禍根を断つて企業の合理化を推進し、國民生活の安定を期せんとするものである、企業合理化の要請は中小企業にも多少の影響があると思われるが、それは部門別、業種別によつて一樣ではない、具体的に各業種ごとに適宜の対策を立てて行く考えであるとの答弁でありました。
 次に歳出面につきましては、價格調整費の問題について、價格調整費はもつと削減できないかとの質問に対し、價格調整費は総額においては昨年度より大幅に増加しているが、実質においては必ずしもそうではない、すなわち補給金品目を減らし、補給金單價をも減額している、総額がふえているのは前年度よりの繰越しがあるほか、本年度において鉄、石炭その他の生産数量の増を見込んだためである、向後補給金は、予算の実行上において、生産または輸入の状況をも勘案して、できるだけ引締めて行き、その適正使用をはかりたいと思うとの政府の答弁がありました。
 公共事業費の問題に関しては、この予算では公共事業費は五百億円しかない、昨年度予算と比較しても、ほとんど同額である、物價、賃金の上昇を考慮すると、事業量においては昨年度の八割程度に過ぎない、これでは河川の改修、農地の改良、災害の復旧もとうていおぼつかなく、さなきだに窮乏している地方財政をいよいよ破産させる一方である、また公共事業費の諸事業への配分計画にも問題がある、農業関係の経費は昨年度よりも縮小され、六・三制経費は全然削除しているのに、道路費のごときは非常に増加している、これは不合理ではないかとの質問に対し、政府側から、今年度の予算編成の方針からいつて総額を五百億円に押さえたのはやむを得ない、但し機会があつたらできるだけ増額したい、この限られたわく内において経費は重点的に使用し、特に河川その他災害復旧の諸事業については優先的に実現したい、道路費は保守改良のために相当の費用が必要となつたために大幅に増額した次第であるとの答弁がありました。
 地方配付税の問題については、地方財政は窮乏のどん底にあり、それがために全國の市町村長のうち辞職者が続出している、この際政府は地方側の意向を無視して地方配付税の税率を半分に切り下げたのは不当である、これで地方財政がやつて行けると思うかとの質疑に対して、政府側から、地方財政の窮乏はよくわかる、だが中央の財政も同樣に疲弊している、本年度の地方財政の総額は大体昨年度の四割増になつておると思うが、これは終戰処理費、價格調整費等特殊の経費を除いた國家予算の増加率に大体対應するものと思われる、從つて地方財政の苦しいのはよくわかるが、健全財政の観点からこの程度でやつて行きたいと思う、なお地方配付税または諸地方税も來るべき税制改革にあたつてひとしく檢討されるものと思うとの答弁でありました。
 六・三制の問題について、六・三制経費が全然計上されていないが、これでは六・三制の完遂は不可能ではないかとの質問に対し、政府側より、六・三制の経費が全然計上されていないとは言えない、教員の給與の國庫負担の額は所定の額だけ計上してある、問題は施設費であるが、これは公共事業費のうちから何とか捻出したいと思い、折衝を重ねているとのことでありました。その実現ははなはだ困難であるが、機会のあるごとにこの要求を通したいと思う、六・三制をやめて六・二制にするというような考えはないとの答弁でありました。
 失業対策費の問題について、行政整理や民間企業の合理化等によつて多数の失業者の発生が見込まれているが、この予算では失業対策のために経費が不十分ではないかとの質問に対し、政府は、失業対策については緊急失業対策法案を目下立案中であるが、この予算では失業対策の事業費として八億円を計上し、失業保險としては予備費を入れて百二十億円を支出でき得るものと見込んでいる、本年度の失業者のうち約四十万人程度は民間事業に吸收し、その他は一應失業保險で間に合せ、來年度は最終的に吸收できるものと見ている、失業者は一挙に発生するものではなく徐々に発生すると思うから、これで十分と思うが、万一大量の失業者が生じたようなときはまた別途の措置を講ぜねばならなくなるだろうとの政府の答弁でありました。
 次に歳入面に関しましては、所得税について、本年度の國民所得は昨年度に比べて約二割の増加である、すでに租税負担が過重であるのに、このように國民所得に対して一段の重圧を加える根拠を説明せよ、またかかる厖大な所得税がはたしてとれると思うか、その軽減の見通しはないかとの質問に対し、政府側から、所得税の増徴は本年度において現行の税率をそのまま適用した結果であつて、確かに徴收できる、少くとも源泉課税については十分に確保し得る、問題は申告納税であるが、徴税事務の刷新合理化と納税者の協力を得てその徴收を全うし得るものと考える、政府としては所得税負担の過重であることを素直に認め、でき得るだけ早い期間に所得税の軽減を実施したい、米國のシヨープ氏の來朝を待つて税制改革を行うから、その機会にこれを実現すべく、政府部内にもすでに調査委員会をつくり、せつかく努力しているとの答弁でありました。
 なお、所得税に関しては諸種の点について質疑がありましたのに対して、政府より、申告納税制度は徐々に軌道に乗りつつあるから、やめるつもりはない、また農業課税については、供出代金の源泉課税は現在のところ不可能であるが、農業從事者の基礎控除等の改正、蚕糸の事業税の廃止等については十分研究してみたい、また超過供出分に対する免税は、所得ある者からとるという課税原則上の建前からこれを実施し得ないが、その運用面においては十分の考慮を拂いたい旨の答弁がありました。
 次に國有鉄道特別会計については、独立採算制の建前上ある程度の運賃値上げはやむを得ないが、貨物運賃は大幅に輸送原價を割つており、これに反して旅客運賃は十分輸送原價をカバーしているのに、旅客のみを値上げするのは不当でははいか、またこれを六割も値上げすれば必ず利用減が起り、所期の收入が得られないのではないか、またこの予算は十二万名の人員整理を見込んでいるが、はたして國鉄はこれを達成できるのかとの質問に対して、政府側より、貨物運賃をすえ置いて旅客運賃のみを値上げするのは両者間の比率をますます不均衡にするが、低物價政策の建前上これはやむを得ない、この値上げが家計に及ぼす影響は僅少であり、家計費に占める交通費の割合は戰前と同率である旨の答弁がありました。また値上りから生ずる利用減は一割と見、すでにこの予算の中に織り込んであるから、予定收入には不足が生じないはずである、十二万名の人員整理は一應の予算上の措置であつて、実際にどれだけの人員整理をするかはいまだ具体的には決定していないとの政府の答弁がありました。
 次に米國対日見返資金特別会計については、次のような質問がありました。
一、何ゆえに特にこの会計を設けたのか。
二、政府は産業資金や財政上の資金までもこの見返資金から捻出したいと、まるで打出の小づちのようなことを言つておるが、どうであるのか。
三、その資金の中から産業資金、特に設備資金をまかなえるかどうか。
四、この資金はアメリカの一九四九――一九五〇会計年度が始まらないと入つて來ないのではないか。
五、この資金の運用は連合軍司令部の承認を得ねばならないことになつておるが、その運用の責任者はだれか。
六、鉄道、通信等の特別会計の建設公債をこの資金でまかなうのは、國家的企業、ひいては財政全般を外資の支配下に置くことになりはしないか。
七、この資金の本質はアメリカからの贈與なのか貸付なのか。
 以上に対して政府側から、
一、從來米國よりの援助資金は國民一般に明確になつていなかつたので、この特別会計を設けて、米國の援助の事実とともに、その資金の使途をも明確にしたのである。
二、この資金はまさに打出の小づちである。
三、この資金の使途はまず産業投資を優先的にしたいと考えておる。
四、米國の一九四八――一九四九会計年度の対日援助四億三千万ドルの残額がまだあり、それは早速四月から援助物資として入つて來るはずであるから、この分はこの見返資金となり利用できる。從つて米國の会計年度とのずれによる不都合は生じないと思う。
五、この資金の運用の責任は大藏大臣である。
六、鉄道、通信特別会計の建設公債をこの資金からまかなつても、外資に対する隷属化の事実は生じない。
七、贈與か貸與かは講和会議できまるものと思う。との答弁がありました。
 最後に、米國の対日援助見返資金の使用や外資導入は日本経済の自主性を喪失せしめ、日本を植民地化するものであるなどと盛んに宣傳する者があるが、これに対する政府の所見いかんとの質問に対し、政府はかように答弁されました。日本の貧弱な原料資材と枯渇せる資本とによつて、すみやかにわが経済の安定をはかり、産業の復興を画し、國民生活の安定を期するがごときことは絶対不可能である、わが國家の再建と自主的経済の樹立については外資導入にまたなければならない、わが國の鉄道の創設も水力電氣の開発もすべて外資の導入によつたものであつたが、これがためにわが國の過去における驚くべき産業経済の発展、海外通商貿易の発達が得られたもので、わが國の自主性がこれによつて強く築かれたことは事実が証明しておる、外資導入によつてわが國の自主性を喪失するというがごときは、ある者のためにする惡質の宣傳にほかならないとの答弁でありました。(拍手)
 次に本委員会におきましては、予算審議の愼重を期するため各界、各層の人々の意見を聞くこととし、四月十一日公聽会を開き、十一名の公述人から率直にして熱心かつ有益なる意見の陳述がありました。その詳細は速記録に讓ることといたしますが、大別して二樣の見解でありました。ある者は、この予算はデフレを招來する、從つて労務者もしくは大衆の負担によつて資本家を利し國家の再建をはからんとするものであるから絶対反対であるとの意見でありました。他の者は、かかる健全なる均衡予算によらざれば日本の破滅を救うことはできない、かかる予算の提出はむしろ遅きに失すると思われる、この予算は総額は巨額であるが、実質的にはデフレ的要素の強い圧縮予算である、すべての國民は耐乏生活を選ばねばならぬ、特に注意を要することは、対日援助資金の活用、予算実行上における政府收支の時期的調整、政府支拂いの促進、あるいは何らかの金融的措置等によつて金詰りを除去しなければ生産を阻害するおそれがある、対日援助資金はできるだけ多く民間の産業資金にもまわし、デフレを防止してすみやかに経済の安定をはかり、國民生活の不安を除き、復興を促進すべきであると、この二樣の陳述でありました。
 質疑を終り、本十六日、本予算三案を一括討論に付しました。討論においては、各党派を代表して、おのおのその立場々々から御主張を開陳されましたのでありますが、それは速記録によつてごらんを願うことといたします。
 討論を終り、日本社会党の勝間田委員提出の予算組みかえの動議について採決した結果、少数をもつて否決されました。次いで本予算三案を一括して採決に付した結果、多数をもつて原案通り可決いたしました。
 以上をもつて予算案の審議の経過及び結果の御報告といたします。(拍手)
#27
○議長(幣原喜重郎君) 質疑の通告があります。これを許します。林百郎君。
    〔林百郎君登壇〕
#28
○林百郎君 私は、國会の権威のために、本予算の審議が憲法と法律に違反しておる。從つて本予算を國家で審議すること自体が憲法に違反し、さらにかりにこれが多数決をもつて國会を通過しても本予算は無効であると信ずるのであります。從つて、この責任は――無効なる予算審議の責任は明らかに政府が負うべきものであつて、將來國会がこの責任を負うべきものでないと信ずるがゆえに、私は吉田首相並びに池田藏相に対して次の質問をしたいのであります。
 まず第一には、憲法の八十四條によりますと、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める條件によることを必要とする。」とあるのであります。しかるに本予算の前提であるところの実定法としての、たとえば取引高税の免税点の問題、あるいは酒税法の税率変更の問題、あるいは揮発油税の新設の問題、あるいは郵便料金の値上げの問題、鉄道運賃の値上げの問題、あるいは法人税の税率の変更等、本予算の基礎的な実定法は、一つとして今もつて國会に上程されておらないのであります。(拍手)從つて、かかる國会に上程されておらない実定法がすでに國会を通過したことを前提として予算を組むことは、明らかに憲法違反だと思うのであります。この点について吉田首相の見解をただしいと思うのであります。
 次に憲法八十六條によりますと、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、國会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」とありますが、この予算を作成し國会に提出することは、明らかに法律に基いた適法の予算でなければならない。ところが、予算を組むべき基礎的な実定法が今もつて國会を通過せざるにもかかわらず予算が組まれておるというこの予算は、明らかに憲法違反の無効な予算であると信ずるが、この点について池田藏相の見解をただしたいと思うのであります。
 実は、先刻議院運営委員会でこのことが問題になりまして、参考までに國会の法制局長の意見を問いただしましたところが、法制局長も、予算を裏づけるところの実定法がない限り、かりに本予算が國会を通過したとしても、その執行は不可能であるということを明言されたのであります。(拍手)しからばわれわれは、執行不可能な予算を審議するということは明らかに國会の権威を傷つけることだと思うのであります。
 われわれは、暫定予算につきましても同じ問題が生じたのであります。暫定予算の編成につきましては、財政法によりますれば明らかに組織別と目的別に組まなければならないということが前提になつておるにもかかわらず、この目的別が組織別に一方的に変更されておるのであります。このことも、明らかにこの際財政法をすみやかに上程すべしということをわれわれが要求した結果、政府はあわてて財政法を上程したのであります。その際、將來こうしたことは前例にしないということをはつきり政府は言明しておるにもかかわらず、このたびは同時審議どころか、並行審議どころか、今もつて実体的な法律が國会に上程されておらないということは、政府は明らかに國会の審議権を無視しておると思うのであります。(拍手)この点につきまして、私は吉田首相に対して、本予算は明らかに憲法に違反して無効と思うけれどもいかん、さらに池田藏相に対しては、本予算がかりに國会を通過したとしても無効であり執行は不可能であると信ずるが、この点についての池田藏相の所信をただしたいと思うのであります。
 これをもつて私の質問を終ります。(拍手)
#29
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの御発言中法制局長の答弁の内容は、林君の発言と相違しておりますから、その点は議長において速記録を調べた上で適当に処理いたします。
    〔発言する者あり〕
#30
○議長(幣原喜重郎君) ただいま椎熊君より議事進行の発言を求められております。これを許します。
    〔椎熊三郎君登壇〕
#31
○椎熊三郎君 本年度の予算案を審議するという重大な本会議の席上において、同僚議員が、公開の議院運営委員会における議院側の事務当局との参考意見聽取に対する重大なる論議を曲解あるいは欺瞞して、そうしてこの審議の過程に重大なる誤解を生ぜしめるがごとき発言をなしたることは、この予算審議という神聖なる本会議場をけがすもはなはだしいものであつて、断じてこれは議員として許すことが相なりません。(拍手)これは速記録にも明らかでございます。よつて私は、この内容いかん等はすでに速記録に載つておることであり、かくのごときうそ、虚僞を本会議場に披瀝して審議に重大なる過誤を生ぜしめるがごとき惡例を残すことは、新憲法下断じて許されないから、(拍手)私はあらためてここに、議院の神聖保持のために、同僚林百郎君を懲罰委員会に付することを要求するものであります。諸君、この私の懲罰動議に対しては討論は用いられないのであります。ただちに賛否を御決定願いたい。(拍手)
    〔発言する者多し〕
#32
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの議事進行の発言につきましては一應承つておきます。
 総理大臣から答弁がありませんから、池田大藏大臣に発言を許します。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#33
○國務大臣(池田勇人君) 林君の憲法違反論並びに法律違反論につきましてお答えを申し上げます。
 結論といたしまして、政府は憲法違反とは考えておりません。憲法第八十七條、第八十六條の規定は、かかることを規定いたしておるのではないのであります。予算案と法律案とはその性質並びに効力を異にするものであります。しかして、予算案成立後に法律案を出した場合がございます。二十二年度の失業保險法、失業保險特別会計法は、予算案に重大なる関係があるにもかかわらず、予算成立後に提出せられたのであります。また予算が成立いたしまして、これに伴う法律案が否決になつた場合は、当然その予算案は施行せられないということにとどまるのであります。たとえば、二十三年度において軍事公債利拂停止に関する法律案は否決せられましたが、その範囲内において予算が執行せられなかつたことは、皆樣御承知の通りであります。(拍手)
#34
○議長(幣原喜重郎君) これにて質疑は修了いたしました。
 これより討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。三宅正一君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔三宅正一君登壇〕
#35
○三宅正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま報告されました昭和二十四年度一般会計、特別会計並びに政府関係機関予算案に対しましてこれに反対し、これを返上し、その根本的組みかえを要求いたしたいと存ずるのであります。まず組みかえ要求の返上論に入りまする前に、ここに至りました経過の問題について、私も一言これに触れておきたいと存ずるのであります。
 第一は、本予算と吉田内閣の選挙における公約との問題でありますが、公約不履行の問題に関しましては、植原委員長の報告にもありましたように、政府においては公約不履行の事実はない、これからやるのであるという御議論でありまするけれども、しかしながら、経済九原則に逆行するがごとき公約をなされました事実というものは、すなわち民自党の議員の中において、予算総会において池田大藏大臣の辞職を要求せる者のある事実によつても、きわめて明白であると私は考えるのであります。(拍手)たとえば供米後の米の自由販賣のごときことが――経済九原則の立場において、アメリカから厖大なる食糧の輸入を懇請しながら、余つた米を一部のやみ屋や高級料理屋に自由販賣するがごときことが許されぬことは当然わかり切つていることであるにもかかわらず、(拍手)かくのごときデマゴーグをもつて投票をとり、しかして逆に自由販賣どころか、供米後の追加供出を強制するがごとき法律をつくるに至りましては、私はその政治的道義に関しまして深く遺憾とせざるを得ないのであります。
 次にわれわれは、議案審議の経過を通じまして、第一には暫定予算の上程に際しまして、会計法の未成立のままに暫定予算を出し、地方財政の配付税の法律改正はまだ本院の委員会を通過しておらないのであります。この問題については予算委員会においても問題になり、そのために二日開議事を延ばして休会をいたしたのでありますが、もし地方財政の配付税に関するところの法律改正が通過しないならば、五百億以上の地方配付税を組かえ増額しなければならないのであつて、そういう意味におきましても、この法律の通過前にこれを通すというがごときことは、実に重大なる問題であると考えております。公平な立場におきましては、與党の諸君といえども、その重大なることを考えておられると存ずるのでありまして、議事の経過を通じまして、ひんぴんとしてかくのごとき法律蔑視の議事進行の方法が行われましたことにつきましては、私は深く遺憾といたすのであります。
 しこうして今回の予算は、一般会計、特別会計、政府関係機関の予算のみならず、地方財政のわくまでを通じまして、形式的には総合一貫の均衡予算の形をとつておりまするけれども、その実態におきましては、形式的に均衡予算の形態をとりながら、この一般会計歳入七千四十九億の大部分を占める五千百四十六億の租税及び印紙收入、千三百八億の官業收入等が、ことごとくこれ大衆收奪的な課税でありまして、特にその中における大宗である三千百億の所得税が苛酷であることは、あらためて申し上げるまでもありません。三千七百円ベースのときの基礎控除、扶養控除をそのまますえ置かれ、主食値上げ、汽車賃、郵便料金等の値上げ等による生活費高騰に悩みつつ失業と賃金不拂いの危險にさらされておる勤労者の源泉所得税が、昨年の六百億が千二百億に倍加せられ、申告所得税が千二百億から千九百億に増徴され、その見積もりの基礎に、すでに恐慌的窮迫に陷りつつありまする農業所得を二割七分五厘増とせるがごとき、あるいは集中生産の犠牲として整理倒産過程に入りつつありまする営業所得を三割一分五厘増と見積られるがごとき、くずれたる基盤の上に天くだり不当割当課税を強化する結果となり、不測の社会不安と人心の惡化を招來することを恐れるものであります。特に吉田内閣が、金融資本と独占企業本位の安定政策を押し進めて、集中生産の強行、金融の引締め、公共事業費の縮減を不用意、不適切に行われることにより、中小企業、農業、漁業等の倒産窮乏化、失業者の続出等を惹起する事態ともなりまするならば、親鳥を殺して卵を生ませると同じく、課税所得の基礎が破壞され、歳入面において予定の收入が上らずに、この面から均衡財政が破壞される第一の理由があるとわれわれは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 第二には、戰爭中及び戰後を通じまして日本が國土保全を怠りました結果は、近年しきりに大小の災害が頻発し、これが日本経済を撹乱破壞いたしまする大きな因子であることは申すまでもありません。しかるに、公共事業費の総額がわずかに五百億円に縮減されるというに至りましては、私どもは國土保全の見地に立つて憂慮せざるを得ないのであります。もし万一利根川の大水害のごときものが起りまするならば、この均衡予算は、その水害の被害一つでもつて一ペンに不均衡予算に轉化するという危險があることを、われわれは感ぜざるを得ないのであります。特に農業関係の土地改良、災害復旧費等を大幅に縮減いたしましたことは、ただちに食糧の減産となり、特に食糧輸入の増加は自立を妨げるのみでなく、他の必要な生産資材の輸入力をもなくすることによりまして國民経済の復興自立を妨げることは、申すまでもないのであります。しかも、零細農家にみずからの費用によつて、災害復旧、土地改良をやれというがごときに至りましては、赤子に重労働をしいるのと同断でありまして、逆に災害地の耕作放棄となつて現れつつありますることは、最近の新聞に、二千七百戸の農家が三千五百町歩の耕地を放棄し、その原因の六四%が耕地の災害であり、二〇%が供出、税金の重課にあると報じている一事によつても明白であります。
 食糧の増産は日本自立の根本であり、年々二百万トンの食糧を外國に抑いでおる限りにおきましては、民族の自主独立はありません。日本が戰爭を放棄し、平和と永久の中立を保つためにも、万一他國の間に戰爭の勃発のごとき不祥事が起き、外國食糧の輸入が杜絶するがごとき事態に際会いたしましても、國内食糧自給が可能であるならば、日本はよく平和と中立とを維持し得ると考えるのであります。この意味におきまして、食糧の増産が日本自立の根本であることは申すまでもございません。そのためには、土地改良こそその根本でありまして、わが國の水田の約半分の百数十万町歩は一毛作田でありますが、土地改良によつて濕田を乾田といたしまするならば、二毛作が可能となつて面積は倍に使えるのである。耕地整理により耕地が集團化し乾田化するならば、機械耕作が導入せられ、裏作による飼料の自給は有畜酪農業の振興となり、自給肥料を供給することとなり、有畜酪農の導入はバター工業、食肉工業、皮革工業等の農村工業の興起となり、ここに初めて農村は限られた土地を立体的に活用することにより人工保有力を増大し、農業近代化の方向に進み得るものであつて、農地改革に続く農業改革はこの方向に推進されなければならないのであります。しかして、この方向に進む基礎條件が土地改良にあることを思うとき、政府の土地改良に対する統一的熱意の欠如を遺憾とせざるを得ないのであります。しかして、わが國の農業が有畜酪農化を完遂いたしまして、農民が、米、麦、いも等の澱粉質偏重の食生活から脂肪、蛋白等の総合攝取をやるようになりましたときにおいて、米、麦、いもを過食して胃拡張と栄養不良を兼ねるがごとき食生活から解放せられ、栄養三要素の均衡のとれた少量の攝取量で健康と労働力を再生産することが可能となり、自然に主食の供出量が増加するのであります。経済安定本部の栄養部会が、國民が澱粉質偏重の食生活より脂肪と蛋白の適当量を総合攝取する食生活に移つたとき、八千五百万人の人口に対し主食六千五百万石で足ると報告しておりまする事実は、ここにわが國食糧自給の科学的方途の存することを示すものであります。政府の食糧自給策の樹立が石炭増産以上の急務であることの統一的認識欠如が、関係方面への説得力に迫力を欠き、農民團体、個人の土地改良費補助打切りのごとき実情に即せざる結果を招來せるものと断ぜざるを得ないのであります。
 さらに本予算は、米國対日援助見返資金特別会計並びに政府支出等におきまして、國債及び復金債の支拂いに一千億余円の巨額を振り向け、金融資本に奉仕せんとしておりますが、これに対しましてわが党は、政府債を利子の支拂いに限定し、特に軍需公債についてはその利拂いまでも停止し、かくて生じた財源を公共事業、産業資金、六・三制完全実施、大衆負担の軽減並びに破綻に瀕した地方財政の確立に充つべきことを主張するのであります。今日國民全部が犠牲を拂つておりまするときに、税金でとり、見返資金の特別会計で出ました資金を銀行の債務の償還のみに充て、擬制資本に出しておる。軍事公債や擬制資本、銀行の債務に充てて、金融資本のみをこの九原則の犠牲の上に満腹せしむるがごとき政策は、九原則の実行が國民全部の犠牲の上に立たなければならない事実を考えるときに、私どもの絶対に反対するところであるとともに、これによる千億以上の國債償還の金が利息だけで済むならば、千億に近い金が産業資金、公共事業費にまわりまして、初めて現実のデフレ状態でなしに、デイスインフレの状態においてわが國の均衡予算を維持しながら行き得るものであると私どもは考えるのであります。(拍手)
 さらに復金出資金三百億、貿易会計出資金四百億、價格調整費二千二百億のごときは、これを嚴密に檢討いたしまするならば、なおそれぞれ廃止、減額等の余地があるのでありまして、從つてこれを財源として復金の三百億の支出のごときはこれをやめて、債務の償還であるから利子だけにとどめる。そういう建前において、われわれは千七百五十億のうちの債務償還の部分を利子だけにとどめて、これを公共事業にまわす、産業資金にまわす、この面における出資金の切り詰めによつて減税にまわすことが可能であると存ずるのであります。
 六・三制の費用並びに地方財政配付金の減額は、この学校の問題、食糧の増産、災害の復旧、生活保護、警察等國家事務の八割を委任事務として押しつけられております町村の財政を破綻せしめまして、先ほども報告のありました通り、町村長の自殺、さらに警察費、学校費に対する税外の強制寄付等による二重の收奪を地方民が受けておる事実に考えまするときに、私どもは、六・三制や地方財政配付金を減額いたします行き方は、民主主義の基礎を破壊するという面におきましても反対であり、しかして地方財政における均衡の破綻が総合財政における九原則の均衡破綻のありの一穴となるということを指摘せざるを得ないのであります。
 さらに最近におきまして、單一為替レートの設定とその安定が要求せられておるにかかわらず、本予算では、價格差補給金による低物價政策がこれと完全なるマツチをしておらない、統一と見通しのもとに計画されておらないのであります。從つてわれわれは、この予算においては物價も為替レートも維持できないのみならず、経済の混乱を必至としておると考えるのであります。
 さらにわれわれは、本予算の編成にあたつて政府のとられました態度が、わが國の自主性を確保することに関して欠くるところがあつたばかりでなく、米國対日援助見返資金特別会計法において、資金使用に関する自主性をもみずから放棄しようとしておられましたことを、まことに遺憾とするものであります。幸いにいたしまして、大藏委員会における同僚諸君の努力によりこの点を修正することのできました点は、私どもは深く感謝いたしておるのであります。
 以上申し述べました理由により、わが党は、日本の実情に即し、予算の均衡をくずすことなく、しかも自立と安定を促進するとともに、國民ひとしき犠牲に立つて祖國再建のために立ち得るよう、吉田内閣の一部独占資本、金融資本に奉仕せんとする方針に反対し、本予算案を返上いたしまするとともに、以上申し述べました線による予算組かえを要求するものであります。
 以上をもちまして私どもの予算反対の討論といたす次第であります。
#36
○副議長(岩本信行君) 小峯柳多君。
    〔小峯柳多君登壇〕
#37
○小峯柳多君 ただいまは三宅議員から二十四年度予算各案に対する反対の討論がありましたが、私は、その運営に関しましては万全の用意と配慮を要望いたしますが、原案に賛成の意思表示を民主自由党の代表として申上げます。(拍手)
 二十四年度予算の特徴といたしましては、この議場における大藏大臣の説明、また先ほど植原委員長の報告によつても明らかであろうと思いますが、私見をもつてすれば、第一の特徴は、一般会計、特別会計、また政府関係機関の收支、さらに地方財政まで含めまして、完全に眞の均衡を持し、しかもその余力をかつて既存の債務の償却まで考えている点であります。しかして、この完全なる均衡予算が日本経済の早急安定をねらつておりますことは言うまでもありません。
 第二の点は、從來アメリカの対日援助は、その額においても使途においても、あいまい模糊としておりましたものを、今回対日援助見返資金特別会計を設定いたしましてその全貌を明らかにし、かつ價格調整金の名において輸入補助金、安定帶物資に対する補給金を計上して日本経済の竹馬の実態を明らかにしておる点であります。この日本経済の竹馬性を明らかにしておりますその理由は、これによつて早急に日本経済の自立を考えている証左でございます。
 第三点は、この予算案の随所に発見される單一為替設定に対する準備であります。しかして、この單一為替設定が言うまでもなく早急に日本経済を國際参加させる行き方であることは申し上げるまでもありません。かように早急安定、早急自立、早急國際参加というこの三つの題目が、日本経済復興の上に絶対に通過しなければならない関門でございます。しかし、この関門、この関をいつ通るかということが日本経済の復興の上には非常に重要な問題となるのであります。安定は早い方がいい、自立も早い方がいい、國際参加も早くなければならないといたしますれば、かような完全な均衡予算はすでに実施されておらなければならなかつたと思います。
 しかし、こういうふうにきつい完全均衡予算は、日本の生産力がそこそこに復興して参りませんときにこれを実施いたしますと、かえつて日本の経済の混乱を招くことになるのであります。一應生産力が復興して参りまして、時期といたしましてはこの完全均衡予算を実施いたしますのには適当な時期、しかもインフレの收束にはまだ遅くないのであります。結論的に、今日ただいますがかような完全均衡予算を実施いたしますためには最適の時期と確信されるのであります。かような意味におきまして、私どもは、その運用にあたりましては万全の用意と配慮を要望しながら、これが日本経済復興の唯一無二の方式なりと確信いたしまして、本原案に賛成するものであります。(拍手)
 しかし、この良薬には、その服用の仕方によりまして、なかなかきつい副作用があるのであります。その副作用につきまして考えてみますれば、まず第一番目には安定恐慌に対する懸念でございます。安定恐慌に対する懸念につきましては、大藏大臣は議場で、これはデフレではない、デイスインフレだと盛んに言われております。私は、むしろこの予算をして安定予算たらしめるためには、どうしてもデフレ的な傾向を帶びさせなければその効果が上らないと考えるのであります。かような意味から言いますと、どうしてもこの妙薬には、安定恐慌への懸念という、いわば一つの副作用が予想されるのであります。こういう副作用に対しましては、おのずから愼重なる用意配慮が必要でありますが、その副作用の第一はこの点でございます。
 第二の点は、生活困窮の累加であります。生活費も上る、加えて税の負担が非常に増加いたしますから、この予算による大衆生活の困窮はおおうべくもないと考えます。これに対しましても、政府はしかるべき配慮と用意はもちろんあるはずでございます。また地方財政の致命的な窮乏、この問題も、地方配付税配付金の減額を通して現われていることは、御承知の通りであります。また地方公共事業の全面的な停止、六・三制の施設費の問題はあの新学制に対する一つの頓挫を來しております。災害復旧に対する公共事業費の減額は、現在進行しておる災害復旧事業に非常な蹉跌を來し、四月の出水期を控えて、罹災地ではまた新しい戰慄におののいておるのが現状であります。また農地改良に関する諸費用の徹底的削減は、これが食糧の増産に直結いたしますだけに寒心すべき事態でございます。かような副作用を持つ良薬ではありますが、どうしてもこの副作用に対する愼重な用意と配慮とが必要だと考えます。
 幸いに、本予算はかような用意と配慮をなすに足るだけの実はゆとりがあるのであります。第一点から言いますと、まず歳出をぎりぎり限度に計上いたしております。これ以上はふえないというぎりぎり限度、從つて実行にあたりましては、相当実行予算面でこの節約ができるはずでございます。たとえば價格調整金のごとき、企業努力によるコストの切下げさえ実現いたしますれば、必ずこの面からの余力が生まれて來ると考えます。
 また第二点では、対日援助見返勘定であります。これを打出の小づちだと考えてはいかぬという関係筋からのお話ではありましたが、九原則に対するわれわれの熱意、われわれの忠誠いかんでは、この対日援助は非常に大きな働きをするだろういうことは言うまでもないのであります。かようにいたしますと、私どもは副作用に対する懸念はありますが、それに対する政府に強い要望をいたしまして、その運用にあたつて十分な配慮、十分な用意をしろということを要望いたしまして、この案に賛成せざるを得ないのであります。
 要望する要項は大体五つございます。第一点では税負担の軽減であります。この税負担が、昨年に比べて中央、地方を通じて六割の増加になりますことは、非常に大きな負担であることは言うまでもありません。この税負担の軽減には、実は一應信頼するに足る將來の見方がございまして、私どもも、その減税の機会の近く來ることを信じ、かつ期待いたしておるのであります。
 第二番目といたしましては、金融政策に対して万全の措置を講ぜられたいということであります。この金融政策が完全に行われませんと、大藏大臣の所期するデイスインフレにはとうていなり得ないのであります。この金融政策に万全を期しまして、生産計画を上手にこの予算にマツチさせませんと、この予算の実態が怪しくなるのであります。それに関しましても、中小企業金融の問題であります。どうあつても、まじめな信用のある中小企業者を金で泣かせることのないように、どうかこの金融政策に対する配慮の中で十分お氣をつけ願いたいと考えます。(拍手)
 また、公共事業費もぜひ増額してもらいたい。六・三制の問題、災害復旧の問題、あるいは土地改良の問題に関しましても、これは実行予算の面における補正ができるはずでありますから、許される限度までこの補正予算を通じて公共事業費の増額も考えていただかなければなるまいと考えます。地方税に対する配付金も同断であります。ゆとりのある、補正のきく予算であるという、われわれは此の見方に立ちまして、近い將來に臨時國会を召集されて、追加ではありません、いわゆる追加でなく補正をする。そうして税の減額あるいは費用の移用に関する道を開いていただきたいと考えるのであります。
 また失業対策につきましては、行政整理、産業合理化から生れる失業人口に対しまして臨機應変の処置をぜひとつていただくように考えたいのであります。
 われわれはかような要望をいたしながら、この予算が当面日本の経済復興のために唯一無二の方策なりと考えまして賛成をするものであります。
 なお三宅議員から、われわれの公約に関する発言がありましたから、一言触れておきたいと考えます。公約の問題を盛んに云々されますが、すでにわれわれは、許されたる実現可能の面は着々とこれを実施いたしております。國の経済が破れて何の公約がありましようか。われわれは、われわれの公約を着々と実施する基礎を固めますために、この予算案に賛成をいたしたいのであります。(拍手)いわんやこの予算は、あらゆる政党及び個人が無條件にこの要求を満たすべき責任を負うべき性格のものである以上、いたずらに予算に反対だとか、予算の返上だとか、野党の攻撃の道具に小兒病的な議論をいたしますことは、まことに片腹痛いのであります。(拍手)おそらく國民全体は、こういう小さいかけひきに対してましては、ひそかに眉をひそめていると確信いたします。(拍手)
 私は、最後に政府に対しまして、勇敢にこの予算を実行するように希望いたしたいのであります。しかし、その実行にあたりましては万全の用意と配慮をなさるよう、これも要望したいのであります。かく激励し、かく要望いたしまして、私の賛成討論を終りたいと思います。(拍手)
#38
○副議長(岩本信行君) 中曽根康弘君。
    〔中曽根康弘君登壇〕
#39
○中曽根康弘君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま上程されました昭和二十四年度一般会計並びに特別会計予算に対して反対の意を表するものであります。次に私は、本予算編成に関する政府の構想を批判しつつ、われわれの見解を披瀝せんとするものであります。
 本年度予算を審議するにあたつて、われわれがまず究明しなければならない問題は、現政府における政治責任の不明確の問題であります。政治責任が不明確であるがゆえに、現在の政界と政府の政策の昏迷があり、國民の忿懣のはけ口がないのであつて、まことに今次予算編成における政府の態度は遺憾にたえないのであります。
 まず第一に、吉田内閣は本予算を策定する基礎として、いわゆる保守統一内閣なるものを成立せしめたのであります。言うところの保守統一とは一体いかなる意味であるか。二月十一日首班指名直後、吉田首相は、保守單一の政権という犬養氏との話合いは保守統一または保守合同を意味するかとの記者團の質問に答えて、犬養君だけでなくて、他の政党会派でもわれわれと同じ主義政策を持つ者は喜んで迎えると声明しておるのであります。これから解釈されることは、民自党の主義政策による民自党政権である、つまり入るものは吸收であるという意味であるのであります。從つて、民自党の見解によれば、二月十二日の廣川スポークスマンの声明にある通り、それは合同による保守單独内閣であるのであります。
 しかるに不可解にも、いわゆる民主党連立派においては、單独内閣にあらず連立内閣であると言つておるのであります。連立内閣であるならば、何ゆえに天下の前に出所進退を公明にして政策協定を結ばないのであるか。いわゆる連立派は、自己の政策を捨て、民自党の政策に吸收され、盲從しておるのであるとしか解されないのであります。現に池田藏相や青木安本長官が、この壇上において、わが党内閣ということを言つておることは、諸君も御存じの通りである。しかも、このわが党内閣という言葉に対して一片の物言いも出ないというのは、つまり民自党單独内閣を是認したものであるということにほかならないのであります。世間はこれを呼んで、いわゆる生木を裂いてつくつた吉田犬養密約内閣であると言つている。あるいは封建的政略内閣と言つておるのであります。
    〔発言する者多し〕
#40
○副議長(岩本信行君) 靜粛に願います。
#41
○中曽根康弘君(続) 更に現政府の政策の矛盾と政界の陰影はここに発するのであつて、國民多数の意思と両党党員多数の意思を無視して、天下の政治を二人の專断によつて行わんとするがごときは、実に歴史の歯車を一千年の昔の時代に引きもどさんとしておるのであります。
 第二に明らかにさるべきは、いわゆる内示案による政治責任の回避に関する問題であります。九原則を前にして、吉田首相は党略的な公約を放棄した。公約は甘く、良薬は苦し。かくて、この甘い公約によつて絶対多数を獲得し、予算編成上の障害に逢着するや、政府は内示案を新聞に濫発して、公約の実現し得ざるは客観情勢によると、ことさらに國民に印象を與えたのである。現に、この責任回避政策は一應成功している。しかしながら、この態度こそ、一政党の面子をつくろわんがために日本民族の品位と名挙を犠牲にする態度であつて、敗戰以來全國民が営々として築いた國際信用回復への誠意を冒涜し、民族自決、民主主義の完成を切望する國民精神を蹂躙する行為といわなければならないのであります。一体吉田首相は、みずから陣頭に立つて日本の國情、経済の現段階の認識に努めたことがあるのか、もし周到にその誠意を盡したならば、かくのごとき重税を國民にしうる予算は現われ出でなかつたはずであるのであります。政府は本予算を自己の責任において提出したと言つております。しかも、口を開けば臨時國会で減税すると逃げる。本予算は確信ある予算であるのか、あるいはお義理でやるおつきあい予算であるのか、政治責任の不明確がここにも存しているのであります。
 第三に、最も重大な問題は、永世中立に関する総理大臣の言明であります。吉田首相は参議院において、永世中立に疑義ありと言明いたしました。その後衆議院予算委員会においても、重ねてこのことを確言したのであります。しかるに、その疑義の内容並びにみずからの所信については一向誠意ある解明をいたさないのであります。
 われわれは新憲法を制定して、われらの安全と生存を諸國民の公正と信義に託し、戰爭放棄を嚴粛に宣言したのであります。かくて、絶対平和主義と中立堅持は八千万民族の決意であつて、象徴たる天皇も、この民族の意思を明らかに表明されておられるのであります。日本國民は、最近のマツカーサー声明中に、日本をスイスのごとき中立國にいたしたいとの文字を共感をもつて読んでおるのであります。しかるに、一國の総理大臣たるものが、軽々にこの國民の総意に対して疑義を表明し、しかも國民代表の質問に対して何らの説明をなさないということは、無責任もはなはだしいといわなければなりません。今や國民は、傳えられるロイヤル声明、ドレーパー次官の辞職、アメリカの日本に対する急速なる自立の要請、北大西洋防衞同盟條約の成立等により判断して、首相の言明に何らかの含みを想像せんとしておるのであります。かくのごとき重大なる際に、國民の決意にさからうごとき言明をなして、しかも恬然として顧みざるがごときは、まことに責任なき態度といわなければなりません。近藤外務官の太平洋防衞同盟條約参加要請の言明とともに……
    〔発言する者多し〕
#42
○副議長(岩本信行君) 靜粛に願います。
#43
○中曽根康弘君(続) 憲法に表明された日本國民の平和主義、戰爭放棄宣言を冒涜するものとして、まことに遺憾の意を表明する次第であります。
 かくのごとき政治責任の不透明に由來するか、予算に表明された政府の財政方針については幾多の疑義と誤謬が指摘されるのであります。いわゆる経済九原則は、自立経済達成に必要な九つの技術的目標を並列的に並べただけであるがゆえに、この解釈の仕方は必らずしも事前にきまつておるわけではないのであります。自立経済という最高の目標を頂点に、この九つの目標をいかにして立体的に組み立てるか、これが当面われわれに課せられた重大な問題であるのであります。換言すれば、いかにして日本の現実に適應せしめて経済自立への成果を上げるかに問題があるのであります。この点から、日本の経済の段階からすれば、生産水準の低位、資本の欠乏、價格調整金による人為的均衡の維持、價格体系の不調和と國際價格体系よりの遊離、貿易環境の障害等の弱線をいまだに内藏するわが國民経済の段階よりすれば、当然第一に財政規模の縮小、企業の合理化の徹底、價格体系の正常化、資本蓄積の促進、この四つを原則として國民経済に急激なる衝撃を與えざるようインフレをスロー・ダウンさせる基本方針をとるべきだつたのであります。
 しかるに、政府の方針はこの現実を無視して、購買力の徹底的吸收、財政規模の拡大、價格体系並びに水準の現状維持、人為的國内経済調整の維持等を原則としたものであつて、いわば消費インフレを克服することを主眼にしたものであります。銀座の店頭にある商品に対する需要を一掃するために税金を重くし、生産と特に輸出を振興するために生計費の犠牲を耐忍せしめ、しかもこの耐乏と購買力の引上げのうちに画期的な生産増強を企図するものであつて、貨幣面にあつては安定を、物財の面にあつては復興を同時にねらう、きわめて野心的なものであります。
 しかしながら、かくのごとき貪慾なる経済計画は、はたして日本経済の現実において成功し得るでありましようか。政府予算の性格は、依然として竹馬財政であります。しかも、それは貨幣面においては実質的な縮小を、物財面においては膨張を同時に望む竹馬経済であつて、眞実には、この池田財政なるものは、びつこの竹馬経済と言わるべきものであります。しかも、徹底的な安定を第一に企図するその財政方針は、事実において日本経済を現状のままに凍結せしめるものであつて、凍結の後に來るものは必ず萎縮であり縮小であるのであります。インフレの満員電車を急ストツプさせれば、必ず反動が起るのであります。(笑声)ゆえに、安定と同時に復興を企図するがごときは、生ける経済の現実においては、イエス・キリストの奇跡以外の何ものでもないのであります。いわんや、池田財政がデイスインフレを高唱するがごときは、まことに木によつて魚を求めるがごとしと言わなければならない。
 かくて、安定と復興を同時的にねらうこの財政は、必ずや安定を第一義とするがゆえに、復興計画において破綻を生ずるのであります。それは、まず第一に資金計画の失敗に発すると思うのであります。そして、それが生産計画と徴税計画と、ひいては財政の規模に崩壞を來し、價格体系と為替レートに亀裂を與え、遂には五箇年計画第一年次の遂行が重大なる障害に逢着することは、現在の予算のままでは明らかに断言し得るところであります。予算委員会公聽会における各公述人は、おのおのの見地より、これらの点を明らかに指摘しておるのであります。しかも、委員会においてこの点を追究いたすや、実に政府は、あるいは臨時議会に雲隠れし、あるいはシヨープ博士のそでにすがり、あるいは援助資金を打出の小づちのごとくたたきまわつて、逃げまわつたのであります。
 さて、次にやや詳細に資金計画の面から矛盾を指摘いたしますれば、第一に問題となるものは二千五百億円の貯蓄計画なのであります。本予算の最大の特色の一つは、厖大な租税や資金はすべて國民から取上げて、それから使うということなのであります。一千七百五十億円の援助資金といえども、援助物資を國内に賣つて、國民から金を取上げて使う構想なのであります。つまり、いかに金が出ても、まず取上げてから使うという構想である。よつて、財政規模がいかに拡大したとはいえ、使う前には必ず取上げが行われるのであります。ゆえに、國民経済の過程においてはデフレ現象と金詰まりが深刻に起る。吸收と使用を時期的に調節したところで、國民経済における絶対量においては、使われる金は常に吸收された金でありまするがゆえに、デフレと購買力の窒息は解消しないのであります。このことは、事情はやや違いまするが、一九二四年のドイツ、あるいは最近のイタリア、英國の例を見れば明らかなのでありまして、特に生産水準の低いわが國においてこれを断行すれば、生産財の過剩、消費財の過小、物價の低落、失業の増大の現象が必ず起るであろうと確信されるのであります。かくて、このことは資金蓄積に影響を與え、個人の自発的貯蓄は、一般の生活水準が昭和五――九年の六割にすぎない今日、貯蓄の源泉にはなり得ないのであります。
 すなわち、昭和五――九年当時においては、平均生活水準の八割になつて貯蓄が初めて始まつているのであつて、安定期においては、蓄積されるよりも、むしろ失われた生活水準の向上に充当されるのが、理論的にも歴史的にも証明されているところであります。企業利潤による蓄積も、現在の價格体系維持では、資本消耗の方が多いのであります。いわんや、昨年に比して実に過大な租税負担の重圧のもとにおいては、貯蓄の増大はきわめて悲観的と言わなければならないのであります。
 しかるに政府は、昭和十年を類推して、課税國民所得の一〇%を貯蓄率と予定し、二千五百億の貯蓄を目標にいたしておるのであります。昭和五――九年の貯蓄率は、一〇%以下の約七%であります。しかも、現在の生活水準がその昭和五――九年の六割にしか相当しない現実を見れば、貯蓄率は今年は五、六%以下に低下するおそれすらあるのであります。從つて二千五百億の目標は不可能であり、このことは金詰まりがますます深刻になることを予見せしむるものであつて、現に本年一月、二月の貯蓄がまつたくゼロであつたことを見れば、事態は明らかに予想されるのであります。
 資金供給の他面たる企業に対する直接投資も、ほぼ同樣の事態に遭遇すると思われるのであります。かくて、資金供給計画の崩れるのは必然と言わなければなりません。しかも、資金配分の点について一言すれば、かりに資金供給計画が政府案のごとく遂行されたとしても、政府の産業資金配分計画は必ずしも成功し得ないと思うのであります。昨年度における設備資金の総額は、新聞紙の傳うるところによれば一千五百億円程度であります。しかるに、石炭四千二百万トン、鉄鋼百八十万トン、鉱工業生産三割増産を実現しようとする本計画の設備資金がわずかに千六百億であるということは、すでにこの前途を明らかにしておるものと言わなければなりません。
 しかも、さらにここに注目すべきことは、資金統制の問題があるのであります。援助資金の相当分を國債償還に使用する予定になつております。しかるに、國債の七割、約千億以上は目下市中銀行にあるのであります。從つて、もしこれが償還されて、しかも市中銀行がこれを使用し得るものとすれば、産業資金の源泉が市中銀行に移動する折柄、從來のまま金融を放置するならば、いまだ商業金融的色彩が濃厚であつて――たとえば、昨年度市中銀行はわずかに設備資金を七%しか出しておらなかつたのであります。この例をもつてすれば、資金はいたずらに高利潤を追い、國民経済上残すべき企業が倒れ、残すべからざるものが生き延びる危險も生れるのであります。この点の措置に関しては、ただ政府は抽象的に金融統制を表明するのみであつて、何ら具体策をもつておらないのであります。特に、從來の復金その他の財政投資により生存し得た重要企業は、本年度に入りこれを断たれ、しかも第一・四半期は援助資金による應援も早急に期待し得られず、まさに瀕死の重症にあるのでありまして、それらに対しても何ら有効な策が講ぜられておらないのでありまして、現政府の財政的力量については、すでに産業界においてごうごうたる非難が寄せられておるのであります。
 かくて資金計画面の崩壊により、次に産業計画も望みなきものになるのであります。一体現在の政府とその予算をもつて、常識ある日本人で、石炭四千二百万トンと鉄鋼百八十万トン・ベースを可能と認める者が何人ありましようか。特に設備資金すら不足するのであります。いわんや、運轉資金の不足は深刻な段階に達すると思うのであります。
 しかも、吉田内閣の生産計画達成の前途をおおう暗雲は、この内閣における労働政策の貧弱という重大な事柄があるのであります。(拍手)勤労者の協力なき政権に、生産増強などは思いもよらない。現政府においても労働行政事務はあるいは行われるかもしれないが、しかし政治としての労働政策を行う資格ありとは思われないのであります。今次における行政整理における無責任性や、労働法規改正失敗における無定見は、これを証明して十分と言い得るのであります。
 生産計画の齟齬は、次にこれを基礎として成立しておる國民所得を架空のものたらしめるのであります。すなわち現在の数字においてすらも、二十四年度國民所得二兆九千億には重大な疑問があります。かりに、しばらくこれを不問に付すといたしましても、断じて默過し得ないものは所得税増徴三千百億円の事実であります。政府の計算によれば、三千百億の数字は、昨年度に比して、所得総額において農業二七・五%、営業三一・五%、その他二九%を基礎にして算出したものと言つております。しからば、この所得指数算出の基礎をさらに追究いたしましたところ、本年度における生産増は、農業一〇三%、営業一一四・五%、價格の上昇は、二十三年に対する本年一月の水準を基礎として、農業一二七・五%、営業一二七・一%を算出しておるのであります。
 しかるに、この價格上昇の率自体に重大な疑問があるのであります。二十三年十一月における價格上昇率は、同年平均に対して農業一一六%、営業一一七%であります。それは政府の説明によれば、一月に入つてただちに、二十三年の平均に対して一二七%、つまり一〇%を急激に上昇しておる数字になつておるのであります。しかるに、現に日本銀行調査によれば、東京における生産財自由物價指数は、二十三年十一月と二十四年一月とは、同じく二十一年八月一〇〇に対して四九八であります。動いておらないのであります。消費財自由物價指数は、これまたわずかに約四・三%上つておるにすぎないのであります。しかるに政府の計算においては、これが一〇%ということになつておるのであつて、從つてこの数字こそ、この價格上昇の計数は、三千百億の所得税造出のための作為的な数字ではないかという重大な疑念があるのであります。
 しかも、現実の事態を見れば、わが國の租税負担の状態は、二十四年度において、中央地方を通じて、國民所得の名目負担率は三〇・八%、食費を除いた残額所得に対しては、負担率は八三・六%であります。外國に比較すれば、米國の一五倍であります。政府の言明によれば、三月二十日現在において未徴收の所得は実に二百億円、しかもこの二百億円の未徴收の所得税は、大部分は中小企業の申告所得でありまするが、これが存在するということは、昨年度において國民の租税の負担は限界に來ておるものと言わなければならないのであります。現に各地方において、弱小企業等においては約二割程度の廃業届が提出されておるのであつて、この現実を前にして、租税の軽減を公約しながら三千百億円の増税に賛成するとは、賛成する人の國民的良心を私は疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 次に價格体系の問題に移りますと、少くとも現在の日本の経済においては、企業の自己資本蓄積能力を増すこと、國際物價にさや寄せして懸隔を少くし、將來の調整時の摩擦を極力減少させておくこと、かつ補給金のごとき消費的経費を節約するために、ある程度の價格体系の変換はやむを得ないと思われるのであります。少くとも生産財價格を上げて、これを二次製品に極力吸收せしめ、價格水準の異動は極力減少するようにするのであるけれども、体系の変換はこれを認める時期にあるのであります。すなわち、竹馬の足を切るべき時期であると信ずるのであります。しかるに、價格水準も價格体系も現状くぎづけという政府の政策は、財政の性格を非生産的たらしめ、金融資本、大資本擁護の超保守的性格を露出しておるのであつて、断じて國民の支持するところではないのであります。(拍手)
 しかも、安定化の過程において進められる企業の合理化が、一般的な資本不足のために、設備の改善、近代化による眞の合理化ではなくて、主として弱小企業の淘汰、無定見な雇用の削減等に向う危險も存するのであつて、現にとられておる集中生産等には、すでにこの事実があるのであります。もしひとたび中小企業、失業、農村対策等を誤れば、たとい経済的には合理的であつても、社会的、政治的な副作用が生じて、これによつて経済政策自体の基盤が失われることは必然であるのであります。この安易な弱肉強食的な自由淘汰というものは大いに警戒しなければならないのであつて、弱小中小企業、農村、勤労者の現政府に対する嚴重なる監視を必要とすると思うのであります。
 かくて、これらの諸部門における計画の破綻は必然的に五箇年計画第一年を崩壞に導くのであります。蓄積と資本不足は、拡大再生産への基盤の培養をますますおろそかにして、五箇年後に昭和五年――九年生活水準で安定せんとした國民の熱望は、小さく早くかたまる早生兒的日本経済に停滯せしめるおそれが十分でありまして、八千万民族のために寒心にたえないことを率直に披瀝するものであります。
 以上を総合すれば、本予算案は完全均衡予算であること、これが援助資金特別会計の設置、あるいは輸入補給金、價格調整費の租税による支出計上等画期的な内容を有することは、われわれもこれを認めるにやぶさかでないのであります。しかしながら、この財政の運用は実質的には從來の國家財政のしわを企業と家計と地方財政に押しつけたものであつて、金融資本はこれによつて果然優位を確保し、しかも押しつけられた企業にあつては、大企業は補給金によつて擁護されるがゆえに、企業のしわは必然的に中小企業に集中されることになるのであります。かくて、本予算の最大の被害者は中小企業、農村、勤労者及び地方財政ということになるのであります。特に、中小企業にあつては、集中生産による影響のほかに、一本為替レート設定による輸出雑貨類の打撃が莫大なものになると思われるのであります。
 農業及び地方財政に対する圧迫については、公共事業費及び地方配付税の削減、地方税、特に土地、建物、不動産税の増徴によつて明らかであります。試みに公共事業費の内容を見れば、絶対額における減少はもちろんのこと、特に農業関係経費は、昨年に比して、一般において二三%より二〇%へ、災害復旧において二四%より一八・二%へ激減し、文教施設費のごとき、六・三制のごときは実にゼロになり、文教施設費だけで、昨年の一二・二%より二・四%に激減しておるのであります。これらの負担は、いずれも寄附あるいは出役の形において地方住民に轉嫁されているものでありまして、特に地方住民にあつては、所得税は重課されて、中央に巻き上げられるにもかかわらず、その見返りたるべき配付税は半減され、公共事業費も激減し、二重の負担増となつて來るものであります。勤労者に対する失業対策に至つては、吉田内閣はまつたくその用意がないのであつて、勤労者など眼中にないような態度は、まことに遺憾のきわみであります。
 以上の見地に立つて、われわれはこの非國民的なる本予算に反対し、政府に対して、財政規模を六千億程度に徹底的に縮小すること、これにより所得税五百五十億の減税を断行すること、公共事業費百五十億、地方配付税百一億、失業対策費三十七億を増額すること、これが財源として價格調整費の一割削減、援助資金より六百五十四億円支出懇請、これを実現し、予算の組みかえを要求して、本予算に対してはわれわれは絶対に反対の意思を表明するものであります。(拍手)
#44
○副議長(岩本信行君) 小坂善太郎君。
    〔小坂善太郎君登壇〕
#45
○小坂善太郎君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする昭和二十四年度予算に関する植原予算委員長の報告通り賛成をいたすものであります。(拍手)ただわれわれは、この際これが運用に関しまして幾多の希望を持つておりますので、これについて少しく見解を申し述べたいと思うのであります。
 今われわれに課せられましたるところの最大の課題は、日本経済の眞の安定をいかにして実現するかということにあるのであります。最近生産がやや増大され、物價が若干横ばいの状況を呈しておるということをもちまして、これをもつて安定であり、あるいは中間安定というごとき表現を用いておつた人たちもあつたのでありまするが、これらは、とかく物事を表面的に見がちなわが國の人たちの通弊でありまして、もしこれが眞の安定であるとするならば、生産が増大せられるならば、これに比例いたしまして一時的な補給金というものは減らなければならない。また生産が増大せられまして輸出が増強せられるということになりまするならば、これについて輸入超過ということは起るはずがないのでありまするが、事実は補給金というものが増加しておるし、輸入超過もふえておるのでありまして、かかる表面的な事実のみを追つて、そこで喜んでおるというようなことがありましたならば、遂には日本のインフレーシヨンというものは日本の経済を破滅に陷れ、これが救いがたいものになるおそれがあるのであります。眞の安定というものは、われわれが自力で立ち上つて、その基礎の上に生産を増強する、そうして物價を安定するということでなければなりません。(拍手)
 このほど、ドツジ公使によりまして、日本経済は竹馬経済であるということを指摘せられました。われわれは、これが日本人自身の口から言われない、われわれの経済であり、われわれの生活を支えるところの日本経済でありながら、これが日本人の口から指摘せられなかつたということを、まことに遺憾に思つておるものであります。(拍手)私どもは、この際におきまして、單にこういうような事態を前にいたしまして、單なる公約論議というようなことにおいて、公約を実行したとかしないとかいうようなことだけをもつて唯一の問題にするということは、まことに遺憾であると思います。(拍手)日本経済は、ドツジ公使により、竹馬経済であるということを指摘せられました。しかしながら、もし今私が言つたような現状がここに展開せられてやむことないとするならば、日本の政治家も、日本の政党も、竹馬にのつて竹馬ごつこをしておると言われてもいたし方がないと思うのであります。(拍手)
 大内教授は、参議院の予算委員会の公聽会で、スタート・ラインをむしろ外部からつくつてもらつたしかしながら、このスタート・ラインに並んで競走路を走るものは日本の政府であり、日本の國民であるのだということを言いましたが、まことにこれは至言であると思います。私は、ここにこの予算を前にいたしまして、これを誠実に実行し、この運用を適正ならしめるために、政府がここにこの経済の実況というものをでき得る限り力を盡して國民に周知徹底せしめるところの努力、その努力を強く要請いたしたいと思うのであります。(拍手)
 竹馬の足の長さというものは、やがてインフレーシヨン経済を安定経済に持つて行く過程におきますところの合理化、その合理化の深さ、合理化の困難さを示すものでありまして、これがまた安定恐慌の深刻さ、その深さを示す尺度となると思うのであります。そこで私は、この足をできるだけ早く断ち切つて、この足の上に立たず、竹馬の足に乗らない、自力を持つて立ち上つた日本経済というものを一日も早く再建しなければならないということを思うのでありますけれども、それには相当の苦痛を伴うと思われるのであります。しかして、これがいくら苦しくても、その苦痛を耐えしのんで前途に光明を見出し得る、この光明を與えてこそ國民がこれに対して奮闘するところの力が與えられ、その力を與えるために、今單に耳ざわりのよいことを言つていたのでは、その力が出て來ない。(拍手)現在は苦しくても將來に光明がある、この光明にとりつこうという努力をして行くことこそ、私は、健全なる保守党の任務であろうと思うのであります。(拍手)私は、この健全なる保守党の任務を國民の多数が支持したことが、今回の選挙において健全なる保守党に多数の支持が集まつた原因にほかならない、かように思うのであります。(拍手)ただしかしながら、その間におけるところの犠牲の負担については、あくまでもここに公平の原則が流れていなければならないことは申すまでもないのであります。その社会的な影響を少くするために、犠牲を公平に負担する原則というものが流れている政治、それを私は吉田内閣に強く要望いたしたいのであります。
 私は、まずここに長期資金の必要ということを申し述べたいと思います。現在ここに昭和二十四年度の予算を編成するに際して、長期資金がやはり電力の開発であるとか鉄道、通信等に、あるいは船舶、そういつたものに注入せられて、これが日本経済の將來の発展の基礎となるものでありますから、今安本で計算しております千六百億円に上るところの長期資金、この造出方法につきまして政府は特段の配慮をせられなければならないと思うのであります。私どもは、ここに前途にまた光明を與えるために、將來において、すなわち五箇年後において日本の経済がいかなる姿となるかということを安本においてすみやかに策定せられまして、たとえば昭和二十九年度におきますところの國民消費なり、あるいは生産水準などを明確に示すことによつて、この水準にとりつくために現在この苦労をしなければならないのだということを明確に御指摘になるように要望いたしておきます。(拍手)
 今回中央、地方を通ずるところの均衡予算が組まれ、一般会計並びに特別会計を通ずるところの均衡予算が組まれた。この一般、特別両会計、中央、地方を通ずるところの健全財政がここに強化せられますときに、ここにデフレーシヨンの持つておるところの惡影響が予想せられますけれども、ここを政府の考えでは、千七百五十億円に上るところの円資金の見返勘定を立てて、これが運用をしてデイスインフレーシヨンに持つて行こうという考えなのでありますが、私は、この援助資金の運営こそ、デイスインフレーシヨンを釀成せしむるかいなかの、いわゆる扇のかなめであると考えておるのであります。この運用につきましては、政府は、もちろんのことでありますが、十分なる配慮と努力をせられたい、かように思うのであります。
 先ほど社会党の三宅君から、何かこの援助資金がほとんど金融資本の擁護に使われるというような話がありました。三宅君は先輩でありまするが、失礼でありますけれども、金融というものの実態を御存じないのではないかと思う。(拍手)金融というものは、申すまでもなく血脈のようなものである。いわゆる事業を円滑に運営せしむるための血液のようなものであります。銀行の持つておるところの公債を買上げて資金をつくるから、これは金融資本の擁護であるというような議論ははなはだ当たらないのであつて、あらゆるものが回轉し、運営し、そうして流動して行くというその動き、動的な観念を把握しなければならない。銀行の公債を買い、いわゆるそこに日銀がオープン・マーケツト・オペレーシヨンを行うということは、そこに資金が回轉して何倍にもまわつて行くということでありまして、固定的に銀行を救済するというようなことでは決してないのであります。(拍手)
 この際、私が申し述べましたように、國民負担の公平の原則というものをでき得る限り政府において努力して貫かなければならないのでありますが、それにはまず税制を改革する。しかも納税方法を明朗化いたしまして、われわれの非常に強く要望いたしておりまするところの苦情処理機関の設置を一日も早く政府において実行せられたい、かように思うのであります。(拍手)
 さらに、中央におけるところの均衡予算のしわが地方に寄つたというような観点は、これは私の同僚の中曽根君と同意見であります。そこで私は、このしわが寄つておる地方配付税配付金をでき得る限り増額してもらいたい、このことを要望いたします。もちろん、この際におけるこの予算には賛成するのでありますが、できる限り早い機会に追加予算を出して税制の改革を審議するという政府の答弁がありましたのでこの要望をするのでありますが、その機会において、この点を十分御考慮願いたいと思うのであります。
 さらに私は、日本の農業というものがアジア的な生産樣式ともいわれる非常に小さい規模の農家の集積であつて、そこでこういう農家に対する政府の考え方というものは、しかもその生産的な構成が國民の過半数を占めておるのでありますから、西欧的な金融によつて農村をまかなつて行こうとする考え方は当らないので、私はできる限りこの予算配付によつて行くという現在までの考え方を続けてもらいたいという考え方を持つております。それにつきまして、土地改良費を含むところの食糧増産対策費をできる限り増額してもらいたい。さらに災害復旧に関しましては、昨年、一昨年におけるところの風水害のその痛手がいまだいえやらざる地方が非常に多いのでありまして、この問題も、ぜひとも追加予算の際において解決してもらいたいと要望いたします。さらに六・三制の増額費については、これまた同樣であります。なお、この他の一つの大きな問題といたしまして、中小企業に対する金融、さらにまた農林水産等に関する金融について、私はここに別途の、いわゆる市中金融機関の運営方針と別個の社会政策的な観点に立つたところの金融機関の設立ということを強く要望いたすのであります。
 私は、本年度の予算がここに通過せんとするに際しまして、わが國の前途を考えてみまして、ここに根本的な大きな問題といたしまして人口問題を考えざるを得ないのであります。移民によつて人口問題を解決せんとする人たちがあるのでありますけれども、これをもしやろうとするならば、日に四千人もの移民を行わなければならない。そうして、この四千人の人が未墾の地に一千の牧場をつくらなければならない。これはとうていむりであります。移民によつて人口問題を解決せんとすることは、これはむりであります。日本の政党も、この際産兒制限ということを問題にしなければならない。産兒制限を單に雇用の問題、エンプロイメントの問題のみから考えようといたしますると、これは十五年先、あるいは二十年先の問題であるということが言われるかもしれません。しかしながら、現在の健康の状態、あるいはまたその生活の問題等、子だくさんの子供がまたできる。もうたくさんだ、しようがないということによつて起きて來るところの社会苦というものも、これはまた相当に考えなければならない。私は、この産兒制限論をここに主張いたしまするが、この際政府において、これを十分考慮されることを希望いたすのであります。
 私は、ここに経済の安定、日本の眞の自立ということを問題といたしまして、ここに賛成論を展開いたしておるのでありまするが、私はこの際どうしても、敗戰後四年たつたのでありますけれども、この荒凉たる四つの島に跼蹐せられ、しかも八千万の人口のうごめく日本経済をいかにして自立させるかという方途におきまして、何としてもここに新しい経済をつくるという考え方をもつて進まざるを得ないと思うのであります。
 かつてケインズが、金もうけの動機によるところの経済活動も、はるかに低い掛金であつても、その掛金の額になれてしまえば、けつこうそれで活動することができるのだ、という言葉をここに申し述べたいと思うのであります。私は、そういう氣持で全体の社会の公共性を考え、計画性、將來の一つの目標というものを定めて、そうして八千万國民が相依り相助けて行くところの経済、この経済を目ざして進まざるを得ないと思つておるのであります。
 経済の安定というものは、政治の安定が基礎になりましよう。しかしながら、この政治の安定をいかにして招來するか。苦しい期間に政治を安定して、そうして経済の再建をするということは、今日與えられましたるところの大きな課題でありまするけれども、この政治の安定というものは、もちろん國会内において多数の議員がおられるということが必要であります。しかしながら、それのみをもつて私は政治が安定できるのであるとは考えないのであります。ほんとうに政治の安定を決するものは、一夜にしてその所をかえて行くところの砂漠の砂丘のように、そのときどき常なく変動するところの國民の心であります。八千万國民がいかに考えるか、その考えを集約するところに私は政治の安定があると思うのでありまして、私はその考えにおきまして全國民が祖國の再建のために邁進し得る、そうして現在の苦しみを耐えてその再建に進み得るような態勢を見出すために、ここに社会連帶の意識とそうして政府の行き届いた社会公共への愛情、そうして行き届いた配慮が必要であろうと思うのでありまして、本予算がいかにも運営によつて決定せられる。この日本経済に寄與し得る予算を組む構成は、この形体をとる以外にない。しかもその時期は、今日をおいてほかにない。そうして、この予算がいかに運営されるかが、いかに日本経済の安定に寄與し得るかを解決するところのかぎでありますので、私はこの点を強く政府に要望いたしまして、本案に賛成をいたすものであります。(拍手)
#46
○副議長(岩本信行君) 野坂參三君。
    〔野坂參三君登壇〕
#47
○野坂參三君 私は共産党を代表して、提出されました予算案全体に対して反対するとともに、全面的な編成がえを要求するものであります。
 先ほどから各討論者からの意見にもありましたが、今共産党だけではない。日本のすべての政党政派の眞劍に考えなければならないことは、いかにして荒廃した日本を再建するかということである。一体だれがこのような破壞された日本をつくり上げたか。これについては、私は総理大臣の言葉を引用したい。この破壞は、申すまでもなく單に戰爭に負けただけでない。過去三年半における日本の政治の責任である。これはインフレとやみと浪費、これについて総理大臣は、この壇上から、この間施政演説の中でこう申された。これだけはいいことを言われた。「過去においてインフレーシヨンを激化せしめたものは主として政府であります」と言つている。共産党ではない。幣原内閣から第一次吉田内閣、片山内閣、芦田内閣、第二次吉田内閣、第三次吉田内閣、これらの政府がこのインフレの激発についての責任があることを、吉田総理大臣自身がここで認めている。(拍手)
 しかしながら、私は過去のこのような責任を今ここで追究するのではない。いかにしてこの再建をわれわれが実現するかということ、これについて、ここに二つの道がある。二つの根本方針がある。第一は、少数の独占資本の救済のために國民の大多数を犠牲にするという方針、第二には、前者とは反対に、國民の大多数を救済するために少数の独占資本を犠牲にするという方針――第一の方針は、これは吉田内閣の方針であり、第二の手段が共産党の方針である。(拍手)これが予算の面にありありと現われております。私は、これについて詳しくは申しません。もうすでにいろいろの議員からも指摘されておる。二、三の例を申し上げましよう。
 この予算の面では何が現われているかと言えば、結局給與、賃金の低下という事実が現われている。官公吏に対しては五千三百円のベースを言つておるが、民間企業の労働者に対しては三千七百円のベースの一・六六倍、すなわち六千百四十二円を民間労働者には強制しておる。六千三百円よりずつと下まわつている。これを今強制する予算がここに出されている。すなわち、実際において賃金の低下です。飢餓賃金を今政府はこの予算で強要しておる。これが一点。
 このようにして給與を下げながら、一方では生計費を今度は上げるような予算が組まれている。政府は、生計費の高騰はわずかに三%ないし五%と言つておりますが、しかし実際は、われわれが計算してみれば一・七倍ないし二倍に上つておる。はつきりした問題は食糧です。主食の配給値段が一割三分今度上つている。これは皆さん方も否定はできない。さらに野菜のマル公をはずした。これがために、実際においては、もう新聞も書いていますように、四倍、五倍、六倍に騰貴している。また今の勤労者にとつて一番重要な問題であるのは、たとえ交通費、旅客運賃の六割の増加をごらんなさい。どれだけこれが勤労者の大きな負担になるか。また家屋税が加重されるために、家賃が今騰貴しておる。このようにして、衣食住全体が騰貴の方面へ進んでいる。反対に給與は下つている。これが今度の予算です。
 さらに、この上に税金がますますかさまつて來ておる。これについて私は、ここの壇上からいろいろの議員が話されましたから、くわしくは申し上げませんが、たとえば勤労所得税だけをとつてみても、前の三千七百円ベースのときには九十四円であつたものが、六千三百円ベースになつてから八百四十円に高騰しておる。言いかえれば七倍高騰しておる。そのほか、民主自由党の公約された取引高税の撤廃のご破算、所得税低下のご破算、これがために中小業者や農民がどれだけ破産するか、どれだけこれによつて犠牲をこうむるか。また、ある官廳の報告によりますと、いかにこの税金のとり方がひどいかということは、政府の予算面を見ますと、三月末までに三千百六十億の税をとる計算になつております。ところが、すでに三月末までに三千億とつている。政府自身も、これはあまりにひどいと言つている。あと二百億とらなければならないが、しかし、これもとつてしまえばこれで打切る。どこを打切るか。大口納税者のところを打切るということを、政府の役人自身が言つておる。
 このようにして、一方においては給與を下げ、税金でさらにしぼつておいて、その上に首切りです。官公廳労働者や、あるいは民間企業の労働者全体をひつくるめれば、政府の言つておるところを計算してみると、百四十万人今年首切ると言つておる。これが今度の予算です。結論ははつきりしておる。今度の予算は大衆收奪の予算です。この收奪は、歳入面を見れば、歳入面の約七〇%が大衆收奪と見てよろしい。この收奪したものを一体どこへ使うか。歳出面をごらんなさい。これに対しては。すでに他の党の方も言われておりますが、この歳出面における一番大きな額は何かといえば、結局あの莫大な價格調整費とか、これに類する資本家の援助費用、これが全予算の約三八%を占めている。こうした補給金とか、こういう金はどこへ使われておるかといえば、結局これは中小企業には行かない。大きなところにだけこれが使われる。これが今度の集中生産の方式です。
 さらに今度の予算において、例のことではありますけれども、終戰処理費、これは明らかに不生産的な費用です。これが一八%を占めておる。このようにして大資本の補助をするところの金と不生産的な金、これをひつくるめれば、歳出の六〇%。ですから、大衆を搾取して、これをどこへ使うかと言えば、こうした方面、すなわち不生産的な、あるいは資本家の補助金にこれを使つておる。これが今度の予算の本質です。他の一方で、この支出面において、すでにそここからもいろいろ言われておりますが、たとえば公共事業費が半分になる。六・三制もだめ、災害復旧できない、教育費はわずかに三%、失業対策もできない。これがすなわち今度の予算です。
 さて、私が第二に指摘したいことは、今度の予算はかつてない自主性のない予算です。この点においては、前の片山、芦田内閣よりももつとひどい。吉田総理は、この壇上から、施政演説の中で自主精神を強調された。われわれはこれに賛成です。共産党は初めから片山、芦田、吉田内閣の外資導入による対外依存政策に反対して、自力再建をここで主張して來た。今ようやく吉田総理がここの壇上から自主ということを言わざるを得なくなつて來ておる。しかし、この彼らの自主ということは、ただ口先にとどまつて、実際の予算にはこれが全然現われていない。たとえば予算編成の過程を見ましても、この予算はわれわれ日本國民の予算である。ところが、政府が全責任を持たなければならないこの予算の編成はだれがしているか。私はこれ以上は言わない。――これ以上は言わない。諸君にはわかつておるはずである。まつたくここに自主性がない。どこにこの予算編成において自主性があろうか。この点は各党派を超越して眞劍に考えなければならない。このような惡例、日本の歴史において初めてのようなこの屈辱的な例を、今この吉田内閣は残しておる。(拍手)
 これについて、私は予算委員会において聞いた。このようなことをやりますかと聞いたら、將來やるかやらないかわからないと言つた。すなわち総理は、將來断然こういうことはやりませんということを、かれは言わなかつた。必ずやるでしよう。
 さらに、この予算の中で私たちの最も注意しなければならない、また先ほど植原委員長が言われた例の見返資金千七百五十億円が問題です。これについて、大藏大臣は打出の小づちと言つた。あるいはそうかもしれない。しかし、この打出の小づちをだれが握るかによつて、このつちから福の神が出たり鬼が出たりする。この問題について、私たちは予算委員会においていろいろ質問しましたが、政府の答弁から何もはつきりしたものをつかむことはできない。たとえば、贈與かあるいは貸與か、もらつたものか借りたものかと聞いたときに、大藏大臣は、これは講和会議でわかるという。それでは今は何かというと、今はわからぬという。こうした性格のわからないものを基礎として千七百五十億円が組まれておる。
 しかも、この資金というものは現実にはない。今年の七月からアメリカの新しい予算において初めて組まれるという。幾ら組まれるか、どんなになるか、これはまだわからない。將來にもらえるかもしれないという仮定のもとにここに予算ができておる、空虚な予算である。さらに、この見返資金の中で千七百五十億円は貿易特別会計から繰入れると言つておる。この金額には、輸入補給金として税金の中から八百三十三億円を入れることになり、そのほか輸出に向けられるもの約五百億があります。これらは当然千七百五十億円から差引かれなければならない。そうすると、実際には四百十六億、すなわちこの見返資金の勘定は実は四百十六億で、そのほかのものは國民の税金から取上げたものです。このような事実がここに含まれている。これだけをここで言えば、諸君にはわかると思う。(拍手)
 それからさらに、この見返資金の法案については重大な疑義がありました。予算委員会及び大藏委員会でもこれは論議されたが、今まで日本の國内法にかつてなかつたものが現われて來ておる。これ第四條の六項、七項に、この見返資金の運用、使用については最高司令官の承認を求め、監督を求め、報告をしなければならないと書いてある。これは幸いにして大藏委員会においては削除されたそうですが、しかしながら、これが削除されるされないにかかわらず、実質はこれです。すなわち、打出の小づちと言われておるこのような重要な――日本の財政だけではなく経済全体を握るようなこの資金が日本政府の自由にならないというところに、自主性のない重大な問題を含んでおる。
 さて、この問題について、植原委員長が、この壇上から、つい先ほど、自主性がないと言つても、昔日本は水力電氣とか鉄道には外國の投資を得て、その結果日本は大きな発展をしたではないか、何ら独立は破壞されなかつたではないか、こういうことを言われた。これは明らかに小学生の歴史の知識もないことを証明しておる。現在の日本と、あの独立を保持し、資本主義経済のどんどん発展しておつた日本を比較することは根本的に間違つておることは、だれでも知つておることである。(拍手)しかも日本の過去の発展というものは、決して外資を導入したから発展したものではない。軍國主義と侵略によつて発展して來ておる。しかし、現在は当時の事情とは根本的に違つておる。この例は、現実にこの見返資金の法律を見てもよくわかつておる。昔の外資は、日本政府、日本の会社が完全な支配権を持つておつた。ところが今はない。このような今日の現実の日本を無視して、昔そうであつたから今も大丈夫だと、どうして言えますか。ここにも政府の詭弁があり、ここに私は重大な日本の自主性を失わせる政府の政策に反対せざるを得ないのです。(拍手)
 私は、時間が切迫いたしましたので、先に急いで進みます。第三に申し上げたいことは、この予算は均衡の形はとつているが、実際は均衡はくずれる。この点については、先ほどから三宅議員、さらに中曽根議員からも言われたと思いますが、われわれ自身、歳出歳入の均衡は賛成です。しかし、今の政府の組んだこの現実の予算は必ず破れる。これについて二、三の理由を申しましよう。
 たとえば租税の面を見て、租税とか印紙收入とか、こうしたものは昨年よりも五割二分増しておる見込みでありますが、その実現はほとんど可能が少い。たとえば源泉所得税を見ます。今年は昨年の倍額になつておるが、しかし大量の首切りとか低賃金で、どうして一体この勤労所得が政府の言う通りとれようか。政府自身がとれないと言つておる。その通りだ。また申告所得税を見ます。これは昨年の五割五分増している。しかし、中小業の破産、また昨年末の徴税による預金の引出し及び借金とか家屋の賣却による納税余力のなくなつていること、これらにより、申告所得税は政府の予想通りには絶対にとれない。また間接税、印紙收入、これは政府は昨年の四割増を見積もつているが、しかし大衆の購買力の低下と企業の倒産によつて、これも実現は困難である。さらに特別会計からの繰入を見ましても、主として專賣益金であるが、昨年より二百四十七億円増を見込んでいるが、すでに配給タバコの辞退さえ今起つている。購買力の減退のために、特別会計も政府の予算通りには絶対にとれません。
 以上のほか、歳入と歳出との時期のずれとか、あるいは見返資金のずれ、これに対して政府は、このずれを補うために短期の証券を発行せざるを得なくなつているし、今現に発行している。これがすなわち日銀の引受になつて通貨の増発になる。このような理由から、われわれは、政府はただ紙の上だけで均衡をつくつているが、実際はこの均衡は必ず破れることを断言し得ると思う。これを政府が強行するために、おそらくあらゆる手段をもつて、━━━━手段をも含めて、これによつて大衆からの收奪をますます強めるに違いない。(「━━とは何だ」と呼ぶ者あり)ここにおいて、そのような政府の政策のために、日本の勤労者の間には、この政府の政策に対する反対鬪爭が必ず起らざるを得なくなつて來る。この政治的な不安、社会的な不安、これは政府が全責任を持たなければならないものである。
 さて、今申しましたように、この政府の均衡予算は歳出歳入の実質的な均衡予算ではない。中にただ一つだけ均衡のとれたところがある。それは何かといえば、歳入における大衆に対する極端な收奪、歳出における大資本に対する極端な保護、この二つの均衡だけはとれている。私は、今まで申し上げましたような理由から、予算に対して私たちは全面的な反対をしなければならぬ。そしてわれわれは、これに対して編成がえを要求する。この編成がえの基礎、基準はどこにあるかといえば、第一に、歳出面において補給金とか不生産的な支出を徹底的に削除すること。第二には、公共事業、教育文化の費用、社会施設その他地方税の配付金、これらの人民の生活、日本の再建のために少しでもよくなるような面においては、われわれは大支出をしなければならぬ。歳入の面においては、大資本に対する高度の累進課税、脱税の徹底的な徴收、それによつて反面大衆課税を徹底的にわれわれは廃止しなければならない。このような予算を組むことによつて、われわれはほんとうの復興と人民生活の安定のための予算をつくり上げ、同時にほんとうの意味の均衡予算をつくり上げることができる。
 最後に一言申し上げたいと思います。吉田総理は、予算委員会で、日本の再建は外資によらなければならないと言われておる。われわれも外資そのものに反対しているのではない。われわれは外資を導入する方法に反対しておる。吉田内閣のような外資導入の方法はいけないということをわれわれは言つておる。たとえば、一つの例は見返資金である。あのような外資の導入の仕方はいけないということをわれわれは言つておる。自主再建の方式でやらなければならないと言つておる。
 われわれは、外資の導入については、もうすでにこの壇上から何度も言つておりますが、第一に、外資の導入をする場合、日本の自主権は徹底的に守らなければならない。第二には、この外資の導入は日本の再建と國民生活の安定のために使われなければならない。少数の独占資本家の利益のために使われてはいけない。第三には、この外資は單に一つ二つの國に片寄らないで、世界の民主主義國と全面的な提携をやらなければならないということを言つておる。第四に、今のような外資導入のやり方、官僚と大きな資本家の代表、この少数のやみ取引による外資導入、このやり方にわれわれは反対しておる。そして、民主的な方法によるところの外資の導入方法をわれわれは主張しておる。
 しかし、吉田総理は外資の導入を盛んに言われておりますが、はたして吉田内閣、吉田総理に外資を吸引する力があるかどうか。これについては、アメリカの通信社のAP記者が、四月二日にこういうことを電報で打つております。「日本人が、外國の投資が日本の経済復興上の最も重要な要因となり得ると考えられておるとすれば、それはばかげたことだ。」(「それは共産党だ」と呼ぶ者あり)共産党ではない。トム・ランバートという人です。彼は、さらに続けて「外國投資家は、危險を冒してまでも日本に投資する價値があるとは考えていない」と言つておる。私は、これは世界の民主的な人士の代表的意見ではないかと思う。
 もう一つあげましよう。商工大臣が委員会において、將來日本が貿易をやるためには中國と提携しなければならないと言われておる。戰前の統計を見ましても、輸出入の三〇%内外が中國との貿易。今度の予算を見ましても、やはり海外貿易が中心となつておる。日本の再建のために、われわれは中國と緊密な経済提携をとらなければならないことは、超党派的な意見だと私は考える。ところが、この貿易をはたして吉田内閣の下においてやれるであろうかどうか。新しい中國の情勢は、昔の吉田総理のよく御存じのような中國とはかわつて來ている。(拍手)新しい人民の政権が今打建てられようとしておる。四億五千万の上に新しい人民の政権がつくられようとしているではないか。
 これについて、今年の一月十九日の新華社電報が――中國共産党関係の通信社ですが、これがこう申しております。「東亞の三大國は緊密な友好関係を打建てねばならない。中國との眞の密接な友好関係を打建てるに最も適した資格あるものは、日本の民主的要素、すなわち日本共産党及び中國人民の血で手がよごれていない他の民主主義分子である」と言つておる。もう一度繰返して申します。中國人民の血で手がけがれていない民主主義者とならば喜んで手を握ると言つておる。(拍手)はたして吉田総理はこの資格があるかどうか。これは中國の問題だけではない。今後日本が進む上において、世界の民主主義國と提携する上において、日本の政府担当者が――はたして帝國主義の戰爭の血でよごれていない人がやつているかどうか。これは決定的な問題である。
 吉田総理について、私は一つの書物をここで読みたいと思います。山浦貫一氏の書いた森恪の傳記の中に、こういうことが書いてある。これは、すでに戰犯として処刑された鈴木貞一は、ぼくと森と吉田と会食したという記事がある。この書物の中には、こう書いております。(「共産党の宣傳だ」と呼ぶ者あり)共産党の宣傳ではない。皆さん方のかつての指導者であつた森恪の傳記の中に書いてある。(拍手)吉田の言うのには、東方会議――あの有名な侵略の東方会議に、これはどうしてもアメリカにぐうの音も言わさないようにしなければいかぬと言つておる。しかし、こういう考え、たとえば東方会議の十大原則というようなものについては、内閣ばかりでなく、元老、重臣も承知しそうもないから、これはひとつオブラートに包まなければならない。このオブラートの役割を果たしたのが吉田らしい。吉田、齊藤が外務省の方の基礎工作をする。すなわち、東方会議というものがその政策を実行する場合のオブラートの役をなした。そうして、吉田は元老、重臣の方を口説く。これが、かつては民主自由党の最高の指導者であつた森恪の傳記の中にはつきりと書いてあります。
 この事実を見ただけでも、はたして吉田総理が今後日本の民主化と平和を守り、ほんとうに人民を安定するような予算をつくり得るかどうか、私はできないと考える。(拍手)この意味においても、われわれはこの予算には絶対に反対する。
#48
○副議長(岩本信行君) ただいまの野坂君の発言中不穏の言辞がありますれば、速記録を取調べの上適当なる処置を講じます。井出一太郎君。
    〔井出一太郎君登壇〕
#49
○井出一太郎君 私は、國民協同党を代表いたしまして、ただいま上程中の昭和二十四年度一般会計予算案外二件に関しまして反対の意思を表明したいと存ずるものであります。きわめて簡單に申し上げます。
 われわれは、今回提出せられたこの予算案を見るときに、これは日本國家再建の処方箋である、このように了解いたします。しからば、一体この処方箋はどのような医者によつて書かれたものであるか。私は、あえてやぶ医者が書いたとは申し上げたくない。この処方箋は、少くとも臨床の大家によつて書かれた処方箋とは思われません。これは、いわば大学教授が書いたと申しましようか、しかもそれは洋行帰りの飜訳臭粉々とした大学教授が書いたような感じがする。
 なるほどこれを拝見しますと、一應ノミナルな意味において均衡予算という実体は備えておるでありましよう。われわれが今経済安定九原則に準拠いたしまして、日本経済を一刻も早く安定する、一刻も早く自立させる、こういつた要望に対しては、もちろん異論はないのでございまするが、この予算は形式的にのみこれを受入れておつて、はたして眞に日本経済の実態に即しておるかどうかということに相なりますると、非常に疑問を感ぜざるを得ない。
 なるほど、これは財政経済の專門家的立場から見るならば、あるいは間然するところがないかもしれません。けれども、それだけでわれわれは政治であるとは思えない。少なくとも政治でありまするためには、もつともつと日本経済の実態に即しておらなければならぬと思います。先ほど小峯君は早急なる安定自立を主張せられました。また小坂君は、かつての所論を放棄せられましたかどうか、これまた非常にドラスチツクな形で経済安定をはかるべきことを論ぜられました。
 私は、日本の國家というものをたとえて申しまするならば、一羽の鷄であると仮定する。この鷄が卵を産む時期に相なつたのであるが、自分の力で卵が産めるかどうかという段階になつておる。けれども、この鷄たるや多年の栄養失調であつて、今にわかに卵を産めということは非常にむりであると私どもは考えるのであります。從いまして、この予算案で考えておりまするような早急なる安定、氣短かなる安定よりは、むしろわれわれは復興の面をも考えたところのなしくずし的な安定というものを、もう一ぺん振りかえつてみる必要があるのではないか、このように考えておるのでございます。從いまして、この予算案についての幾多の矛盾はすでに前討論者諸氏によつて指摘せられたところでありまするから、私はきわめて簡單にかいつまんでその二、三を申し上げるにとどめます。
 この案に盛られておるところの厖大なる租税というものは、はたして一体とり得るであろうかどうか。五千億余りに上るところのこの厖大なる課税、今までわれわれは苛斂誅求という言葉を惡政の代表のように考えておつたけれども、この予算を実行するにあたりましては、苛斂誅求という以上に別な言葉を発明しなければその実体を表現し得ないような著しいところの租税の重圧が國民の上に來ると思うのでございます。
 また公共事業費について、これが削減をせられているということもすでに指摘されましたが、たとえば六・三制の経費というものを考えてみたい。六・三制というものは、第一次の吉田内閣が腹を痛めて生み出した子供であるとわれわれは了解をする。ところが、この費用に対して一文も計上しないというようなことは、せつかく産んだところの小供を、第三次吉田内閣において捨子をするものである。このようにも言い得ると思うのでございます。(拍手)
 また土地改良の費用、災害復旧の費用、これは日本経済の自立をはかる上において、われわれは食糧の自給がどうしても必要であると思う。その前提をなすところの土地改良費や災害復旧費をきわめてわずかしか計上しておらない。この災害の多い日本、アイオン台風、カザリン台風がまたいつやつて來るかわからないこの日本において、一文の予備費も計上しておらない。この予算が、もしも災害の來た場合に、はたして均衡予算たり得るか、大いに疑問であろうと思うのでございます。
 あるいはまた地方財政の問題についても、すでに触れられましたところの配付税の問題がございます。こういつたことは、私は繰返すことをいたしませんけれども、國庫の負担を地方へ轉嫁して、それによつて辛うじて健全性を維持しておるにとどまつておる。
 こういうような幾多の欠陷のあるところの予算、しかも民主自由党の諸君は、多数を頼まれて非常な無理を冒して、たとえば法的に申しましても、先ほど林君が指摘せられたようないろいろな欠陷があるにもかかわらず、これを強行して通過せしめようとされるこのあかつきに、一体どういうことが來るか、民主自由党が、その公約を少しも本予算案に盛り得なかつたということは、與党の陣営内部においてもいろいろな不平不満がおありになつたといようにわれわれは仄聞しておる。從つて、この秋風の吹くころにも相なりますれば、これは恐るべき恐慌が現出することは、火を見るより明らかでございましよう。
 私どもは、病人をなおすということのためにいろいろな努力をしなければならぬのでありますが、この予算案を強行しまする際には、おそらく病氣はなおつても病人は死ぬであろうということに相なるでありましよう。吉田総理は、ヒマシ油をかけなければ日本経済の健全性は回復されない、このようにおつしやつたようでありますが、今の日本経済の実態は、ヒマシ油をかけるにはあまりにもひどくなつておる、ほとんど腸出血の状態ではないか、このように私は考えるのでございまして、單なるドラステイツクな安定政策よりは、もう一歩これを日本復興の方向へ持つて参るべく、安定と復興を両建にした方策で臨むべきではないか、このように思うのでございます。
 先ほど小峯君は、この予算を執行した際の副作用というものを非常に心配されておつた。與党の陣営にある小峯君自身が副作用を非常に心配される。私は、その副作用よりは、むしろこの予算案の執行によつて起死回生の策を立てられておるところの現内閣が、副作用どころではない、青酸カリに終つてしまう、從つて、今から解毒剤を用意しておかなければならぬのではないか、こういうことを指摘申し上げたいのでございます。從つて結論的に申しますならば、今私の申し上げた、たとえば租税の軽減、あるいは價格調整費の点においても、單に安定帶物資にのみ一千百五十二億というような巨額のものを相かわらずへばらつてやろうとする。この予算案を貫くところの安定政策の一つの大きな矛盾は、相かわらず日本の企業を安定帶企業と調整費によつて甘やかしいるということが從前と少しもかわつておらない、私はこういう点が大きく強く指摘をされなければならぬと思うのでございます。
 そのような意味合いにおきまして、私どもは民主自由党が今臨んでおるところの困難なる段階、これには十分御同情は申し上げておる。皆さんは確かに火中のくりを拾おうとされておる。これはわかるのでございますが、われわれは同情と政策とは別問題であると思うのでありまして、遺憾ながらこの予算案に対しては反対せざるを得ないのでございます。(拍手)
#50
○副議長(岩本信行君) 黒田寿男君。
    〔黒田寿男君登壇〕
#51
○黒田寿男君 私は、労働者農民党を代表いたしまして、ただいま議題となつております予算案に対し反対の意思表示をするとともに、これを組みかえるために政府に返上せんとするものであります。
 最初に指摘したいと思うことがあります。それは、本予算案を提出しましたその同じ政府が、これに先だつわずか以前、去る二月二十二日に、閣議の決定といたしまして別個の内容をもつ予算案を組んだということ及びこの両予算案の内容、性格が根本的に相違するという事実であります。すなわち政府は、去る二月二十二日、民主自由党の公約を盛つたと称する五千七百八十億円の予算を決定し、これを総司令部に提出したのであります。
 その予算案の特徴の二、三を指摘いたしますれば、第一は、インフレを一挙に收束するのでなく、一千億円の政府支拂い超過を前提といたしまして五百数十億円の通過の増発を認めておつたのであります。第二は、復金から八百億円の融資をすることになつておりました。第三は、安定帶物資の價格引上げが前提とせられておつたのであります。
 これに反しまして、今回提出せられた予算におきましては、第一にインフレの急速な收束を建前としておる。その他、私が二月二十二日閣議決定予算案の特徴としてあげたすべての点が、本予算案の内容が示すごとく、ことごとく大いなる変化をこうむつておるのであります。
 かように比較してみますと、両予算案の相違は、單なる二、三の政策の量的な変更ではなくて、政策の性格に関する根本的な、質的な変更であるということがわかるのであります。この二つの変化が、同じ内閣によつて、しかも短時日の間に行われたということに、私は大きな問題がひそんでいると思う。
 ただしかし、私はこれを從來多くの人々が問題として來ましたような、民主自由党のいわゆる公約違反の問題としてだけ取上げようとは思いません。性格の根本的に異なる二つの予算が短時日の間に同一の内閣によつて編成されたという、まことに奇異な政治的現象の発生は、もちろん民主自由党の公約違反の問題でもありますけれども、もつと根本的に、わが國の終戰以來今日までの間における政治全般の問題として、また日本民主主義政治の発展の問題と関連させて、これは眞劍に考えなければならぬ問題であると私は思うのであります。(拍手)すなわち、歴代の政府がいたずらに外力に頼り、自立政策を樹立し、これを実行するの誠意と能力とを示し得ず、このような政治が終戰以來続けられて参りましたことが、九原則の指令となり、予算案の内示となつたのであると考えるのであります。短時日の間に根本的に性格を異にする二つの予算案が同一内閣によつて編成されなければならないような、このような奇異な政治的現象の発生したことは、歴代内閣及び民主自由党内閣の自立政策に対する無誠意と無力と、いたずらなる外力依存の政策、こうした政治が続けられてきた結果であり、かかる惡政の集中的な表現が、この政治的奇現象であると私は考えるのであります。(拍手「ノーノー」)
 このような現象が生じて來て、一般國民の目から見れば、われわれが占領下においてわずかに享有しておる自由が次第にその幅を狭められつつあるがごとき感じを與えている。私は、こういう現象の起るということは、單なる民主自由党という一個の政党の公約違反の問題であるというだけでなくて、実にわが國の民主主義政治を危機に陷れることであると思う。私はこのことを特に警告したいと思うのであります。(拍手)
 しかるに民主自由党は、みずから予算の編成におきまして前述のごときにがき経驗をなめるためにかかわらず、今なお予算委員会等におきまして、たとえば税制の改革問題につきましても、いたずらにシヨープ博士の來朝を頼みとするが如き口吻を弄しまして、みずからこの困難なる問題に身をもつてぶつかるという熱意を示していないのであります。(拍手)私は、このような態度を続ける政府に対しましては、日本民主主義の発達の見地から、すみやかに退陣してもらいたいと思う(拍手)
 さて本予算案は、経済九原則に基く内示案によつて編成せられたものと見られております。終戰後の歴代の内閣が長い間続けて参りましたインフレ政策及びこのインフレーシヨンを長期間にわたつて收束しようとするいわゆる中間安定案が排斥せられまして、インフレの急速な收束を目的とし復興再建の前提といたしまして、まずインフレーシヨンの收束による経済安定を目標とするという内容を持つ点におきまして、これは從來の予算と画期的な相違を持つものであると私は思うのであります。
 インフレを急速に收束しなければならないということは、われわれもこれを絶えず唱えて來たのでありますけれども、しかしインフレの急速な收束のためには、現実の問題といたしまして、われわれは深刻な犠牲と負担を覚悟しなければならないのであります。ここに耐乏生活の要望が生れて來るのであります。九原則は、それが日本の政府に対しまして指令されましたそのときから、すでにこれをわれわれに要求していたのであります。從つて、九原則発令後における総選挙を通じて新たに成立する政府は、それが何党の政府でありましようとも、九原則を忠実に実行するだけの覚悟と用意とを持つていなければなりません。同時に、その実行に伴つて生ずる犠牲負担の影響につきましては適切な具体的政策を用意しなければならなかつたはずであります。
 いかに國民に対して公平に犠牲負担をわけ合わさせるか、これが公平になればなるだけ各個人の負担は少くて済む、これが私は再建にあたつてまさにとるべき道であると考えるのであります。しかるに本予算案は、九原則を実行に移した場合の深刻な影響に対する何らの用意がありません。このことは、民主自由党の政府の性格と相まちまして、犠牲を労働者、農民、中小業者に負担せしめて一部の階級の利益に奉仕するという内容を持つ予算となつているのであります。(拍手)たとえば労働者に対しましては、現内閣の賃金政策は、賃金を現状にくぎづけにするという政策で、この方針が予算に盛られているのであります。しかるに他方、現内閣の物價政策によつて、すでにわれわれは主食の値上りを経驗させられたのでありますが、さらに運賃の値上げ、通信料金の値上げ等々が予定せられており、かくして本予算案は、実質上におきまして労働者に対する賃金を低下せしめる内容を含んでおる予算であると言うことができるのであります。(拍手)
 また他面、現内閣は行政整理、企業整理を断行すると言うておるのでありますけれども、これによつて大量の失業者が出る反面に、この予算の中には、これに対していかなる対策を講ずるかということの考慮が全然というほどないのであります。從つて、本予算を私は平たい言葉で言えば、いわゆる首切り予算であるということができると思う。(拍手)
 次に、本予算の実行せられる場合、農村に対する結果はどうであるかということを考えてみますと、公共事業費の減少によりまして、土地の改良はもちろん、災害復旧もとうてい期待し得られません。國土はその荒廃の度を加えるでありましよう。この点から、食糧の生産の増強は私は望み得られないと思う。他面、低物價による主食の供出の強行政策が続けられて行くというだけでなく、さらにこれを強めようといたしまして、政府は超過供出の法制化ということを企てておるのであります。これは、食糧確保による経済安定の名目のもとに、働く農民にのみ一方的な犠牲をかぶせるものでありまして、われわれの断固として反対するところであります。(拍手)
 かように見て参りますと、この予算の内容では、國土は荒廃する予算であります。農民の生活は破滅に陷れられる予算であるということができるのであります。他方、地方配付税配付金の減少、あるいは六・三制経費の削減は、地方自治体の運営に対しまして、今や深刻なる打撃を與えようとしております。われわれの聞くところによりますと、すでに全國至るところにおきまして、町村長は続々と辞職しだしておるという、單に辞職するというだけでなくて、中には責任感によりまして自殺をした人さえあると聞いているのであります。政府は公約を無視して恬として顧みません。しかしながら、わが國の下級の自治体の機関の中には、かくのごとく責任を解する、まじめな町村長がおるのであります。私は、このような現象の発生は日本民主主義発達の途上における悲劇であると思いますが、しかし、そこに民主主義政治、責任を重んずる政治の美しき断片が光つておると思う。私は、このような現象を前にして、今なお政府の座にすわつておる諸公はまさに愧死すべきであると思うのであります。慚死すべきであると思うのであります。(拍手)
 しかるに、他方本予算を通じて、政府は大産業を、また大金融資本を相当に苦心を拂つて保護しようとしておることをわれわれは見ることができるのであります。たとえば一般会計のみを見ましても、本年度の予算案は前年度に比し二千三百十五億円の増加でありますが、その増加の内容を見ますと、價格調整費の増加、政府出資及び投資金の増加、終戰処理費の増加等が一般会計の歳出の増加の九割六分を占めておるのであります。これらは大部分大産業に対する補助であります。歳出面より見て、かくのごとく大産業に対する保護と、金融資本の支配確立への意図を含んでおることを見る反面に、都市並びに農村における勤労者に対する犠牲の強要がこの予算の中に盛られておることを見るのでありまして、ここに私は本予算の性格があると思うのであります。
 次に、歳入面から見ましても同樣なことが指摘し得られるのでありまして、本年度予算において、租税は五千七十六億円でありますが、そしてそれが歳入の七二%を占めておるのでありますが、それは前年に比しまして一〇%の比重を加えておるのであります。そのうちの六一%を占める所得税について見ますと、本年度の所得税の増加の割合におきましては、勤労所得税が昨年に比しまして九六%の増加となつておるのに対しまして、業主所得税は五五%の増加でありまして、ここにも課税における勤労大象への不公平な重圧が見られると私は思うのであります。農業所得税も今年は百七十四億円の増加となつておりまして、これは負担の限度を超えておる。農民にはかくのごとき増税はもはや耐え得ないところであると私は考えるのであります。
 さらに大衆課税の面より見ましても、勤労所得税と消費税とのみをとつてみましても、その合計は二千九百五十九億円となりまして、租税全体に対し五七%となつておるのでありまして、これも前年度の比較におきまして九%の増加を見ておるのであります。專賣益金の増加が二百四十七億円となつている事実とあわせ考えますときに、本予算案におきまして、大衆課税が勤労大衆の生活に対し耐え得ざるほどの重圧を加えるものであるということを、われわれは断言することができると思うのであります。
 しかも、このように勤労大衆への租税の負担の重加という内容を持つ増税が、一体何に使われておるか。これも考えてみなければならぬと思うのであります。租税收入の五千百四十六億円は、二十三年度の三千百六十億円に比しまして千九百八十五億円の増加でありますが、他面價格調整費の二千二百億円、政府出資及び投資金の八百四十二億円は、これを前年度のこれらの支出と比較いたしてみまして、合計二千四十六億円の増加でありまして‥‥
#52
○副議長(岩本信行君) 黒田君――黒田君に申し上げますが、あと時間が二分でありますから、その範囲内でお願いいたします。
#53
○黒田寿男君(続) これらはいずれも大産業に対する補助であります。このように、せつかく増税いたしましたその部分が、ほとんどかくのごとき大産業の補助政策のために用いられておるという、このような内容を本予算案は持つておるのであります。こういう見地から見ると、本予算が実行せられますときには、都市農村を通ずる勤労大衆の生活への圧迫となり、それは勤労大衆の生活の不安となり、しかして勤労大衆の生活を圧迫するということは、同時に都市並びに農村を通ずる、工業並びに農業を通ずる生産の低下となることは明らかであると考えるのであります。(拍手)われわれは、自立経済の確立を望んでおる。その他の見地から、かくのごとき大衆生活に圧迫を與えることによつて生産の発展を阻害し、自立経済の達成を不可能ならしめようとするがごとき予算案に対しましては、われわれは絶対に反対せざるを得ないのであります。
 私は、なお多く論ずる点を持つておりますけれども、時間が参りましたので、これをもちましてわれわれの本予算案に対する根本的な反対並びに全面的なる組みかえの要求の理由といたしたいと思うのであります。(拍手)
#54
○副議長(岩本信行君) 佐竹晴記君。
    〔佐竹晴記君登壇〕
#55
○佐竹晴記君 発言者の数の制限を受けました関係で、私は農民新党並びに社会革新党を代表いたしまして討論いたします。私どもは審議中の予算案に対し反対の意を表する次第であります。(拍手) 今回の予算は均衡予算であり、健全財政の予算であると銘打つて出されたものであります。
    〔副議長退席、議長着席〕
しかし、この予算は編成時における暫定的均衡予算であるということは言えるが、健全予算であるとは言い得ないと信ずるものであります。(拍手)この予算は、インフレを收束し、物價、賃金の安定を目標といたします健全財政を企図しようといたしますことは、よくわかります。しかしながら、そのためにはまた同時に物價、賃金が安定をいたしまして、追加予算を出さずともこれを押し通される確信がなければなりません。しかるに、今日の実情に照らし、この予算が可決されましたことによつてただちに物價と賃金が安定をいたしまして、追加予算や更正予算を必要とすることなく押し通されるものと、政府といえどもお考えにはなつていないと信じます。おそらく、この予算にかかわりませず、物價並びに賃金は安定を欠き、本予算の実行は動揺をいたしますとともに、予算面に現れております数字と現実との間に大きな食い違いができて参りまして、おそらく事志と反する結果に至るであろうと私どもは思うのであります。
 まず第一に、歳入見積もりの過大を指摘しなければなりません。今回の歳入見積りは、二十二年、二十三年当時のやみ取引の旺盛な時代における收益を基準といたしておりますが、今日の状態におきましては、世相も相当にかわつて参つております。この予算を嚴重に実施いたしますならば、デフレの傾向を示すに至るであろうことは必定であります。二十二年、二十三年当時と同樣にこれを見ることは、根底において誤りであると思うものであります。
 政府が最も確実に收納することができるものといたしておりますのは勤労所得に対する課税でありますが、いわゆる集中生産方式が行われまする結果、中小企業は重大なる圧迫を受けまして、よほど能率の高い企業体制でなければ賃金も資材も得られないことになり、倒産をするものが頻発をいたしまして、産業恐慌を起すの憂いはまことに大であります。從いまして、賃金不拂いなどが続出いたしまして、その収入による源泉課税ははなはだ不確実になり、減少するものと想定せざるを得ないのであります。
 また九原則を忠実に守り、この予算を嚴重に実行いたしますなれば、必然的に流通経済を嚴重に取締らなければなりません。すなわち、やみの撲滅をはからなければなりません。そういたしますならば、その取締りと正比例いたしまして必ず減收を來すであろう。もし減收がないような、ぼんやりした政治をやつたならば、それは政府自身の企図するところと全然相反する結果になるでありましよう。
 また政府は、昨年度までの徴税上の不合理を是正いたしまするために、今後月別に收支の均衡を保持する方法をもしとるといたしまするならば、相当支拂いを抑制しなければならぬ事態に逢着をいたしますることは当然である。よつて政府は、政府資金散布超過というがごときは、とうてい期待することはできません。またすべきではないのであります。政府資金の散布超過なくして、金融機関の預貯金の吸收は望まれますまい。政府は、市中金融機関の吸收し得べき資金は二千五百億程度を期待いたしておりまするが、われわれはこれを肯定することができない。万一政府及び日銀の予想の通り二千五百億くらいの收入が確実であるといたしましても、一面所得税といたしまして三千億を予定いたしておりまする以上、全部の蓄積を投げ出しましても、なお五百億の不足を來します。そのため、金融機関の手には資金がまつたく枯渇いたしまして、金融恐慌は免かれないであろうと見ますることは、これが過当なる言辞でありましようか。かような状態でありましては、物價と賃金を安定せしむることが不能でありまするのみならず、恐るべきデフレに私は入るのではなかろうかと思う。もし政府がこれを避けようといたしまするならば、かえつて巨額なる資金をこの際放出いたしまして、急場を救わなければならない事態となつて参りましよう。もしそうだといたしまするならば、恐るべきインフレーシヨンの助長となつて参る。
 次いで、さらに政府は國際経済参加のために一本為替設定を急いでおりますことは、まことにけつこうでございます。しかし一本為替の設定は、いうところの健全財政が確立いたしまして、國際收支の均衡がとれ、物價と賃金の安定ができて後初めて確立し得るものであります。しかし、現実の問題としてはその望みは薄い。この不安定の状態のもとに一本為替にいたしまして、はたしてこれを維持することができるか。万一これを維持することができぬということになりましたならば、日本経済は恐るべき混乱に陷るのほかはないでありましよう。從いまして、こういうときに一本為替を用いることは、いわゆる逆手を用いるのである。逆手を用いる以上、外部からの強力なる支柱なくしてはできないことは、私の申し上げるまでもないことであります。しかるに政府は、その確信を持つていないではないか。
 政府は、貿易資金特別会計一千七百五十億円を見返りといたしまして、三百三十円程度の基準を策定いたそうとしておりまするが、この資金は國債、復員金債の償還に充て、残つた分を生産資金に充当しようというのでありまして、一見資金が潤沢となるかに見えるのであります。しかし、事実は全然これに反するでありましよう。すなわち、日銀手持ちの公債の支拂いにこれを充てましたならば、ただちに通過收縮となる。また一般市中銀行のものは、日銀より借り受けておりまする利子が、その預金のある限度を超過いたしまする部分については金利が非常に高くて、採算がとれない。從いまして、もし一般市中銀行手持ちの公債へ、これをもつて支拂いに充当いたしまするならば、採算の関係によりまして、これはまたただちに一般市中銀行から日銀へと返済するに至るであろうことは、火を見るよりも明らかであります。して見れば、この市中銀行に拂われました部分についても通貨の收縮を來すに至るであろうということは、これは申し上げるまでもない。すなわち、この面からごらんをいただきましても、デフレとなることは必定であります。
 他面政府は預金吸收の困難なることを認め、各市中銀行に対しまして、政府資金を預金として資金緩和をはかつておりますほか、各市中銀行は預金吸收に必死となりまして、どこへ勢力を集中しておるか、公團の預金、持株整理委員会の預金、閉鎖機関の預金、これを取入れるために狂奔いたしておりますることは現実の事実である。しかし、これは本來政府資金でございます。日銀が持つべきものであり、いつまでも引揚げ得られるべき状態に置かれなければならぬ資金であります。そこで、本件予算の実施により必然的に一般金融機関の資金難は激化の一途をたどる状態となりまして、貸倒れの実情が生れまするならば、ゆゆしき問題でありますと同時に、その及ぼす影響にかんがみましてその回收を迫られることになりまするならば、金融恐慌はいちじるしく激化する事態に至るであろうことは、これまた当然であります。
 次いで、本予算は精生産二割増を想定いたしておりまするが、はたしてこの生産二割増というものが期待できるでありましようか。もし二割増を想定することができまするならば、生産資金たる通貨もまたこれに伴うて増加しなければならぬ。これは申し上げるまでもない。しかし、根本においては生産そのものの二割増が問題であります。從いまして、國家全体の資金計画からこれを見まするならば、二割生産増加が不能となりましたときは、逆に二割の通貨收縮を意味することになりませう。しかして、この増産計画は輸出生産第一主義でありまするから、國内消費生産はやらないということになる。從いまして、國内消費の面においては、はなはだしく規制しなければならぬということも申し上げるまでもない。しかし、これを社会の実情に照らし、單に政府が國民に対し耐乏生活を要求する程度でその目的を達することができるかといえば、それは断じてできないでありましよう。必ずや國内消費物資が欠乏し、この面から物價騰貴を來し、インフレを助長する結果を生ずるおそれなしと、たれか言い得られましよう。かくのごとく、これを全体から見ますならば、とうてい本予算に賛成することができません。
 さらに六・三制実施の障害、失業者の続出、これに対する対策の不十分等重大なる問題が憂慮されておりまするとともに、鉄道運賃並びに郵便料金の値上等、大衆を苦しめ、物價政策に重大なる影響を及ぼし、ひいてはさらに賃金並びに物價の値上要求を必然的に誘致せらるる状態に至りまする本予算に対しましては、本來意図する目的とはなはだしく相背馳する結果を招來するであろうということも断言せざるを得ないのであります。
 われわれは、價格調整資金の削減、國債償還のあとまわし、その他幾多のくふうによりまして勤労大衆に対する課税を軽減し、六・三制の実施を断行することが出來るように大いに意を用うべきであると思うのであります。從いまして、われわれのこの考えと相背馳いたします本予算に絶対反対の意を表する次第であります。(拍手)
#56
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。昭和二十四年度一般会計予算、昭和二十四年度特別会計予算、昭和二十四年度政府関係機関予算、右三予算案を一括して採決いたします。この採決は記名投票をもつて行います。三予算を原案の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
 氏名点呼を行います。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
#57
○議長(幣原喜重郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
#58
○議長(幣原喜重郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長朗読〕
 投票総数 三百四十四
  可とする者(白票) 二百三十一
  否とする者(青票)   百十三
    〔拍手〕
#59
○議長(幣原喜重郎君) 右の結果、昭和二十四年度一般会計予算、昭和二十四年度特別会計予算及び昭和二十四年度政府関係機関予算は原案の通り可決されました。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔参照〕
 昭和二十四年度一般会計予算外二件を原案の通り決するを可とする議員の氏名
   阿左美廣治君  安部 俊吾君
   青木  正君  青柳 一郎君
   淺利 三朗君  麻生太賀吉君
   天野 公義君  有田 二郎君
   井手 光治君  井上 知治君
   飯塚 定輔君  池田正之輔君
   池田 勇人君  池見 茂隆君
   石田 博英君  今村 忠助君
   岩本 信行君  岩川 與助君
   宇田  恒君  宇野秀次郎君
   植原悦二郎君  内海 安吉君
   江崎 真澄君  江花  靜君
  小笠原八十美君  小川 平二君
   小川原政信君  小澤佐重喜君
   小高 熹郎君 小野瀬忠兵衞君
   小淵 光平君  尾崎 末吉君
   尾関 義一君  越智  茂君
   大石 武一君  大泉 寛三君
   大内 一郎君  大上  司君
   大澤嘉平治君  大西  弘君
   大橋 武夫君  大村 清一君
   岡延右エ門君  岡崎 勝男君
   岡田 五郎君  岡西 明貞君
   岡野 清豪君 岡村利右衞門君
   加藤隆太郎君  鍛冶 良作君
   角田 幸吉君  風間 啓吉君
   片岡伊三郎君  甲木  保君
   門脇勝太郎君  上林山榮吉君
   神田  博君  川西  清君
   川端 佳夫君  川村善八郎君
   川本 末治君  木村 公平君
   菊池 義郎君  北川 定務君
   北澤 直吉君  金原 舜二君
   倉石 忠雄君  栗山長次郎君
   小金 義照君  小平 久雄君
   小西 寅松君  小西 英雄君
   小山 長規君  五島 秀次君
   近藤 鶴代君  佐久間 徹君
   佐々木秀世君  佐々木盛雄君
   佐藤 榮作君  佐藤 重遠君
   坂田 英一君  坂田 道太君
   坂本  實君  清水 逸平君
   塩田賀四郎君  篠田 弘作君
   澁谷雄太郎君  首藤 新八君
   白井 佐吉君  庄司 一郎君
   周東 英雄君  鈴木 明良君
   鈴木 仙八君  鈴木 善幸君
   鈴木 正文君  瀬戸山三男君
   關谷 勝利君  千賀 康治君
   田嶋 好文君  田中 角榮君
   田中 重彌君  田中  元君
   田中 萬逸君  田渕 光一君
   多武良哲三君  高木  章君
   高木吉之助君  高木 松吉君
   高塩 三郎君  高田 弥市君
   高橋 英吉君  高橋 定一君
   高橋  等君  高間 松吉君
   竹尾  弌君  玉置 信一君
   中馬 辰猪君  塚田十一郎君
   塚原 俊郎君  土倉 宗明君
   辻  寛一君  圓谷 光衞君
   坪内 八郎君  冨永格五郎君
   奈良 治二君  内藤  隆君
   中川 俊思君  中島 守利君
   中野 武雄君  中村  清君
   中村 幸八君  中村 純一君
   中山 マサ君  仲内 憲治君
   永井 英修君  永田  節君
   夏堀源三郎君  二階堂 進君
   西村 英一君  西村 直己君
   西村 久之君  根本龍太郎君
   野原 正勝君  橋本 龍伍君
   畠山 鶴吉君  花村 四郎君
   林  讓治君  原 健三郎君
   樋貝 詮三君  平澤 長吉君
   平野 三郎君  廣川 弘禪君
   福井  勇君  福永 健司君
   藤井 平治君  藤枝 泉介君
   渕  通義君  降旗 徳弥君
   星島 二郎君  細田 榮藏君
   本多 市郎君  本間 俊一君
   眞鍋  勝君  前尾繁三郎君
   前田 正男君  牧野 寛索君
   益谷 秀次君  松井 豊吉君
   松浦 東介君  松木  弘君
   松田 鐵藏君  松永 佛骨君
   松野 頼三君  松本 一郎君
   松本 善壽君  丸山 直友君
   三池  信君  三宅 則義君
   水田三喜男君  水谷  昇君
   滿尾 君亮君  南  好雄君
   宮幡  靖君  宮原幸三郎君
   武藤 嘉一君  村上  勇君
   村上 清治君  守島 伍郎君
   森   曉君  八木 一郎君
  藥師神岩太郎君 山口喜久一郎君
   山口六郎次君  山崎  猛君
   山村新治郎君  山本 猛夫君
   山本 久雄君  吉田  茂君
   吉田 省三君  吉田吉太郎君
   吉武 惠市君  龍野喜一郎君
   若松 虎雄君  渡邊 良夫君
   亘  四郎君  天野  久君
   犬養  健君  大西 正男君
   大西 禎夫君  金光 義邦君
   久野 忠治君  小坂善太郎君
   小松 勇次君  島田 末信君
   鈴木 幹雄君  田中不破三君
   橘  直治君  坪川 信三君
   寺島隆太郎君  寺本  齋君
   中垣 國男君  中村 又一君
   永井 要造君  長野 長廣君
   原   彪君  保利  茂君
   堀川 恭平君  山崎 岩男君
   山本 利壽君  吉田  安君
 早稻田柳右エ門君
 否とする議員の氏名
   淺沼稻次郎君  井上 良二君
   猪俣 浩三君  石井 繁丸君
   石川金次郎君  受田 新吉君
   大矢 省三君  勝間田清一君
   上林與市郎君  川島 金次君
   鈴木茂三郎君  鈴木 義男君
   田中織之進君  田万 廣文君
   堤 ツルヨ君  戸叶 里子君
   土井 直作君  成田 知巳君
   前田榮之助君  前田 種男君
   松井 政吉君  松尾トシ子君
   松岡 駒吉君  松澤 兼人君
   三宅 正一君  水谷長三郎君
   門司  亮君  森戸 辰男君
   八百板 正君  山口シヅエ君
   米窪 滿亮君  有田 喜一君
   川崎 秀二君  北村徳太郎君
   小林 運美君  河本 敏夫君
   笹山茂太郎君  志賀健次郎君
   椎熊 三郎君  清藤 唯七君
   園田  直君  高橋清治郎君
   千葉 三郎君  床次 徳二君
   苫米地義三君  中曽根康弘君
   並木 芳雄君  橋本 金一君
   畠山 重勇君  林  好次君
   福田 繁芳君  藤田 義光君
   増田 連也君  宮腰 喜助君
   柳原 三郎君  井之口政雄君
   池田 峯雄君  江崎 一治君
   風早八十二君  春日 正一君
   神山 茂夫君  柄澤登志子君
   川上 貫一君  河田 賢治君
   苅田アサノ君  木村  榮君
   聽濤 克巳君  今野 武雄君
   砂間 一良君  田島 ひで君
   田代 文久君  田中 堯平君
   高田 富之君  竹村奈良一君
   谷口善太郎君  土橋 一吉君
   徳田 球一君  中西伊之助君
   梨木作次郎君  野坂 參三君
   林  百郎君  深澤 義守君
   横田甚太郎君  米原  昶君
   渡部 義通君  井出一太郎君
   石田 一松君  今井  耕君
   河野 金昇君  平川 篤雄君
   船田 享二君  松本 瀧藏君
   三木 武夫君  浦口 鉄男君
   金子與重郎君  小林 信一君
   中野 四郎君  羽田野次郎君
   水野彦治郎君  飯田 義茂君
   河口 陽一君  北  二郎君
   高倉 定助君  寺崎  覺君
   松本六太郎君  石野 久男君
   岡田 春夫君  黒田 寿男君
   玉井 祐吉君  松谷天光光君
   小林  進君  佐竹 晴記君
   早川  崇君
    ―――――――――――――
#60
○議長(幣原喜重郎君) 本日はこれにて散会いたします。
    午後七時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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