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1949/04/26 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第22号
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1949/04/26 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 本会議 第22号

#1
第005回国会 本会議 第22号
昭和二十四年四月二十六日(火曜日)
 議事日程 第二十号
    午後一時開議
 第一 海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案(中山マサ君外二十九名提出)(委員会審査省略要求事件)
 第二 國営競馬特別会計法案(内閣提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 日程第一 海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案(中山マサ君外二十九名提出)
 六・三制の完全実施に関する決議案(原彪君外二十四名提出)
 吉田外務大臣の阿波丸賠償問題解決に関する報告
 池田大藏大臣の單一為替レート決定についての報告
 政府支拂促進に関する決議案(苫米地義三君外十四名提出)
 政府支拂促進に関する特別委員会設置の動議(山本猛夫君提出)
 日程第二 國営競馬特別会計法案(内閣提出)
 地方行政委員菅家喜六君の大阪市におけるデモ取締に関する事件の現地調査の結果報告
 郵便法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
 有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 企業再建整備法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    午後一時四十八分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより本日の会議を開きます。
     ――――◇―――――
 第一 海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案(中山マサ君外二十九名提出)
      (委員会審査省略要求事件)
#3
○議長(幣原喜重郎君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
#4
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。中山マサ君。
#5
○中山マサ君 ただいま議題となりました海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案の趣旨弁明をいたします。
 間もなくソ連よりの引揚が再開されようとしておりますとき、私ども本院海外同胞引揚に関する特別委員会におきましては、期せずして引揚げ促進とあわせて引揚者援護に関する決議案をつくることに意見の一致を見まして、今回委員全員の名前を連ねまして、ここに本決議案を提出した次第でございます。
 まず最初に、私は海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議案を朗読いたします。
   海外同胞引揚促進並びに引揚者援護に関する決議
  終戰以來今日まで連合國の積極的な好意により六百余万の同胞の引揚が実施されたことは、全國民の深く感謝するところである。
  しかし今なお四十数万の同胞が異國に残留を余儀なくされている現実は、われわれに國民にとつて一日も忘れることのできない問題である。
  これらの残留同胞はもとより、終戰以來四年間苦難に満ちた生活に耐えつつ、肉親の帰還を待ちわびている留守家族の心情と引揚者の生活苦は実に惨憺たるものがあり、今や深刻な社会問題と化している。
  政府は抑留同胞の引揚を年内に完了するよう万全の措置を講ずるとともに、引揚者に対する温き援護の手を差し延べるべきである。
  ここに衆議院は総意を以て右決議する。
 以上が決議案の内容でございます。(拍手)以下、簡単に提案趣旨の説明を致します。
 海外残留同胞の引揚げ促進に関しましては、本院におきましても幾たびか決議を行い、政府を督励するとともに、関係方面にもしばしば懇談に参りましたことは、皆様よく御承知のことと存じます。先ごろの総司令部の発表によりますと、終戰以來今日まで一般邦人並びに陸海軍人軍属合せて六百十四万五千人が引揚げを終了しております。これはひとえに連合國の熱意ある御努力のたまものと深く感謝しております。しかし、一方内地帰還の日を待ちつつ今なお異國の地に抑留生活を続けておりますますの数は約四十六万九千名ということであります。今その内訳を申し上げますと、シベリヤ方面三十二万四千五百余名、樺太・千島方面八万四千名、満州方面六万名となつております。終戰後五たびの春を異郷に迎えねばならなくなつたこれらの方の引揚げは、留守家族はもとより、全國民の念願しているところでございます。
 吉田総理は、施政方針演説中に在外同胞の引揚げ促進についての決意を最も明白に述べられ、本年中の帰還完了を強く期待しておられるのでありますが、引揚げの問題は、單に促進をはかるばかりでなく、引揚げてからの住宅、就職のあつせん等がさらにゆるがせにできない大切な問題であると思います。ことに無縁故者の問題は、政府においても十分慎愼重に考慮していただかなければ重大な社会問題となるのであります。いな、すでに社会問題と化しているのが現状況であろうかと存じます。引揚者の援護の問題等幾多の山積する重要問題の解決に、私どもは一層の努力を拂うことを誓うものでございます。
 本年の引揚げも間もなく再開されようとしておりますが、政府当局の言明によりますと、すでに受入れ態勢もまつたく整つたとのことであり、私どもも再開の一日もすみやかならんことを希望しているものでございます。連合國当局におかれましても、同胞の引揚げにつきましては、本年中には全員が故國の土を踏めるよう一段の御配慮を煩わす必要があることを信じております。
 以上、何とぞ本決議案に御賛成あらんことを切にお願いいたします。(拍手)
#6
○議長(幣原喜重郎君) 他に御発言もなければ採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
 ただいまの決議に対し、國務大臣より発言を求められております。これを許します。小澤國務大臣。
    〔國務大臣小澤佐重喜君登壇〕
#8
○國務大臣(小澤佐重喜君) 厚生大臣がちよつと席をはずしておりまするので、私がかわつて決議案に対する考えを申し上げます。
 ただいまの決議案の趣旨は十分了承いたしました。政府におきましても、本問題につきましては、極力誠意をもつて努力して参りましたが、なお今回の決議を十分了承いたしまして、今後ますますこの方面に向つて努力することをお誓いするものであります。(拍手)
     ――――◇―――――
六・三制の完全実施に関する決議案(原彪君外二十四名提出)
     (委員会審査省略要求事件)
#9
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、原彪君外二十四名提出、六・三制の完全実施に関する決議案は提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#10
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 六・三制の完全実施に関する決議案を議題とします。提出者の趣旨弁明を許します。原彪君。
    ―――――――――――――
  [原彪君登壇]
#12
○原彪君 ただいま議題となりました、各派共同提案になりまする六・三制の完全実施に関する決議案につきまして、趣旨の弁明を行いたいと存じます。
 まず決議案を朗読いたします。
   六・三制の完全実施に関する決議
  教育振興の基本制度である六・三制は、教育基本法第四條の定める義務教育の実現として、わが國民主化の基調であり、平和國家建設の根本である。
  政府は、六・三制実施の現状がわが國の教育に未曽有の危機を招來している事実を正視し、全國民の悲痛なる要請に應えて六・三制完全実施に必要なる予算的措置を速やかにとるべきである。
  右決議する。
以上が決議文の内容であります。
 諸君御承知の通り、六・三制は昭和二十一年に、マッカーサー司令部の委員によりましてアメリカの教育使節團二十七名が來朝されまして、約一箇月にわたりまして、つぶさに日本の教育の実情を視察調査されました結果、日本の教育改革案を日本政府に対して勧告されたものでございます。その改革案の中で六・三制は最も重要なる部分を占めるものでありまして、マッカーサー司令官も、この六・三制を日本政府がその勧告によつて取上げたことに対して賞讃の辞を惜しまなかつた、重要なる制度でございます。かような重要な制度でありまするにかかわらず、六・三制を取上げてから今日まで、財政の窮状はこれに対する予算を十分計上し得なかつたために、これが施設は毎年押せ押せになりまして繰越になつて参つたのでございます。
 本年は、六・三制の義務教育の三年の新制中学の完成年度であります。本年の四月一日の、文部省で調査しました新制中学の校舎の実態はどうであるかと申しますと、学童数は四百九十八万人、これに対して必要な教室は十三万教室であります。四月一日現在においては十三万教室が必要であるのに、六万五千の教室しか建造されていない実情でございます。從つて四百九十八万人分の半分でありまする二百四十万人の兒童が正規の教室を得られないということになるのであります。
 これをさらに詳しく申しまするならば、二部教授ないし三部教授、あるいは最近になつて、はなはだしいのに至りましては四部教授すらあえてしておる学校すらあります。かような教室が五千七百七十七教室ございます。馬小屋だとか、あるいは旧兵舎跡とか、あるいは役場の二階とか、小便室とか、あるいは不健康きわまりないところの地下室すらも教室に使つておるところがございます。かような仮教室の数が三万七千七百八十七教室ございます。さらにまた、一学級五十人が定員でありまするが、その教室に八十人をすし詰めに詰めて教育しておるいわゆる定員過剰の教室が八千五百八十二教室、四月一日現在において数えられるのでございます。そればかりでなく、北海道とか東北のような寒冷地における教育というものは、教室がないために雨天体操場を教室に充てておるので、兒童の雪の間における運動が思うようにいかないのであります。かような学校が数千校あります。
 かような悲惨な状態で教育を続けて参つたのでありまするが、先生方はいかに教育の本旨に徹して日本の將來をになうべき少年の教育に全力を注ごうと思いましても、かような施設の状態では、その精神的影響を受けることは非常に大であります。満足に心を痛めて教育ができないような悲しむべき実情にあると私は思います。そればかりではなく、もつとひどいことは、先生方より以上に生徒がこの影響を受けることが実に大であります。
 昭和十九年以來、かかる教育の影響が私はおもなる原因だと思うのでありまするが、少年の犯罪数というものが急角度に上昇いたして参りました。少年の犯罪と申しまするのは、家庭的ないろいろな情もございましようし、あるいはインフレのやみ生活の影響を受けて兒童がやみ行為に走るとかいうような原因もありましようが、教育のこの欠陷が大きな原因をなして少年の犯罪を増加せしめるといわなければなりません。これを統計的に見ますると、八才から二十才までの少年の犯罪を法務廰で調べました統計を拾つたのでありますが、昭和十九年には一万三千人であります。それが昭和二十三年におきましては、約二十倍の二十五万人を数えております。かように少年が惡に走るということも、まことに教育の欠陥の見のがせない一つの現われであると私は存じ、前途に暗澹たる氣持を禁じ得ないのであります。
 かような状態のもとにおきまして、しからばこれが対策はどうであるか申しますると、本年の文教施設費を見まするに、公共事業費の中で、文教施設費として十一億九千万円を計上いたしております。この十一億九千万円は、これは公立学校の建築費であります。あるいはアイオン台風とか、そういう災害にあつた学校の復旧費、あるいはまた戰災地における直轄学校の経費であります。六・三制に対しては、ほとんど計上されていない遺憾な状態であります。そればかりでなく、地方起債におきましても、起債はゼロに相なつております。まことに忍びがたいことでございます。しかしながら、ドツジ声明が発せられまして、わが國が自立経済に進まなければならぬ、それを基本にした予算を組まなければならぬ建前上、まことに残念なことではありまするが、政府はもう少し物の面ばかり考えず、いわゆる心の面も再建の一つのファクターであるということを御銘記願いたいと思うのであります。
 戰爭を放棄して、文化國家として日本が立ち上る以上、次の時代を背負うべきこの少國民の教育はもつと重大であるのに、その基本である六・三制がかような状態にありましては、まことに寒心にたえないのであります。かような状態に対して、政府は一体いかなる方針をお持ちになるか。承りまするに、六・三制完遂のためには、五箇年計画をお立てになつておるようでございますが、本年度のこのゼロの予算においては、五箇年計画もくずれざるを得ないと思うのであります。一体六・三制達成のために政府はどのようなお考えをお持ちになつておるのか、根本方針をお示し願いたいと思います。
 私の手元には、連日地方から陳情電報が山をなしております。かような全國的な世論を反映いたしまして、ここに政党を超越して、各党共同の決議案といたしまして、政府にすみやかに予算的措置をとるべきであると要望いたしまして、私の趣旨弁明にかえる次第であります。(拍手)
#13
○議長(幣原喜重郎君) 本案については討論の通告があります。これよりその発言を許します。岡延右エ門君。
    〔岡延右エ門君登壇〕
#14
○岡延右エ門君 私は民主自由党を代表いたしまして、本決議案に対し賛成の意を表せんとするものであります。
 御承知の通り、わが國はすべての武装、武器を捨てて、平和的文化國家たらんことを全世界に向つて宣言しているのであります。そうして、その文化の基礎が教育にありますことは論をまたないところでありますが、それにもかかわらず、終戰後の國家の総予算と教育予算との比率を比べてみますると、昭和二十一年度が一・八%、昭和二十二年度が四%、昭和二十三年度が六・三%、昭和二十四年度が五・一%というまことに情けない数字を示しているのであります。
 次に、ただいま問題となつております六・三制建設國庫補助と公共事業費との比率を見ますと、初年度たる昭和二十二年度が四・七%、二年目の昭和二十三年度が十・二%を示してるのでありますが、完成年度である昭和二十四年度の建設予算が皆無となつていることは、やむを得ざる事情とはいえ、まことに遺憾千万であります。
 文化國家の基礎が教育にあり、その教育の基盤をなすものがすなわち六・三制義務教育でありまして、その上の自由制度であるところの三・四制、すなわち高等学校三年、大学四年コースを通つて教育は一應完成するというのが新しい教育制度でありまするが、その根本、その基礎をなすところの六・三制予算が一頓挫を來すということは、新教育制度全般の基礎を根底から揺るがすものであつて、ゆゆしき一大事と言わざるを得ないのであります。(拍手)昭和二十三年度においても、小学校または中学校が二部制あるいは三部制までも採用していたことは御承知の通りでありますが、この四月から実に二百四十万の生徒が教教室を持たない計算となるのでありまして、これがため四部制さえ採用する学校が出て参つたことは、先ほど原委員長が申された通りであります。
 中学生と申しますと、われわれが少年時代、眞新らしい制服に制帽、これに新らしい記章をいただき新らしいカバンを肩に、胸を張つて堂々たる校舎に入学した当時の思い出は、國会議員となつた今日においてもまた樂しい記憶の一つであることは、御同樣であると存じます。(拍手)しかるに、今日の中学生は、制服制帽もさることながら、喜び勇んで登校する自分たちの校舎もなく、その教室があるいは寺院であつたり、あるいは馬小屋であつたり、しかも三部制、四部制というのでありましては、学校はもはや樂しい勉学の場所でもなく、心のふるさととも申されないのであります。かかるみじめな條件のもとに、その燃ゆるがごとき理想と向学心が踏みにじられたまま六・三制のコースを終るということは、本人にとつてはもちろん、國家にとつてもまことに不幸と申さねばならないのであります。
 昔、ギリシヤの聖哲プラトーが、その弟子たちから、世界において最も尊い宝は何であるかと質問されましたとき、プラトーは、それは青少年なりと言下に答え、第二、第三の宝は何であるかと尋ねられましたるときに、それもまた青少年なりと答えたということであります。その理由としては、青少年は、眞理を探し求むる特性を持ち、沖天に輝く太陽のごとく燃ゆるがごとき理想と向上心を有するがゆえであると説明しているのであります。(拍手)この青少年時代の輝く理想と向上心とが無残にも押さえつけられた、踏みにじられた場合、期せずして滔々として惡の道に走るのは必然の数であつて、新制中学生の年輩の犯罪が最近目に見えて激増しつつあることは、統計がはつきりこれを示しているのでありまして、まことに寒心にたえないところであります。
 わが國の青年が戰爭中軍務に服していたため、あるいは各種の動員にかり出されましたがため、まつたく勉学の機会を失い、これが今日大きな空白となつておりますことは、本人にとつてはもちろん、國家にとつても、これまた一大損失であることは、申すまでもないところであります。新制大学が今年から発足し、新らしい学校制度のもとに文化國家たらんとするスタートを切る今年度、しかも六・三制の完成年度において、かくのごとき事態に立ち至つたことは、またしてもここに教育上空白をつくる結果を招來するおそれがありまして、空白に次ぐに空白をもつてしたならば、はたしていつの日にか文化國家の実を結ぶことができるのでありましようか。教育というものは、種子をまき、苗を育成して株を作るがごときものであつて、一日も空白が許されません。また一足飛びに飛躍せしむることもできないものであつて、今年度の空白を來年度は馬力をかけて取り返せるというがごとき工場における生産とは趣きを異にするのであります。
 次に、校舎・教室等の不足のために、ほとんど校外に放任された形の生徒兒童等が惡の道に走る姿を目撃し、これを憂慮する両親に対しましては、まことに同情の念禁じがたきものがあるのであります。(拍手)さらに、六・三制校舎建築の責任者である全國市町村長は、國庫補助を目安として、骨をけずる思いをして無理算段を重ねつつあることは、御承知の通りであります。ところが、彼らの予期に反して予算が計上されていないことは、全國市長村長をはなはだしき苦境に追い込むものであつて、すでに市町村長が悲痛なる訴えをなしつつある事実は、何としても看過しがたいところであります。(拍手)
 飜つて顧みまするとき、政府及びわが党は打つて一丸となつてこの問題の解決に努めたにもかかわらず、客観的情勢という鉄壁のごときカーテンを突破することができなかつたのでありまして、この問題の解決は、どの政党が当たりましても、いかに困難なものであるかは、私も十分存じているのであります。しかしながら、努力のいかんによつては全然望みなきにあらずと私は確信するのでありまして、政府は総予算が通過ぎしたからといつて決して安易な氣持になることなく、この問題の重要性を深く認識せられまして、本年度中、しかもできるだけ近き機会において本問題を解決していただきたいのであります。固きこと鋼鉄のことしと形容詞にまで用いられる鋼鉄でさえも、千四百度の熱には溶けるのであります。されば政府も、客観的情勢と称せされる鉄のカーテンをも溶かすところの熱意をもつて、六・三制完全実施の実現のため、あらん限りの努力を傾倒されるよう強く要望して、私の賛成演説を終わります。
#15
○議長(幣原喜重郎君) 松本七郎君。
    〔松本七郎君登壇〕
#16
○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本決議案に賛成の意見を述べんとするものであります。(拍手)
 日本再建のために、文教政策、特に学制改革がいかに重要な意議を有するかは、いまさら申すまでもありません。しかるに本年度予算におきまして、教育費は大幅に削減され、中でも六・三制の新築費は文部省の要求額が全額削除されましたため、六・三制は重大な危機に直面いたしまして、全國民の関心の的と相なつたのであります。日本社会党では、すでに先月中央執行委員会の名におきまして、六・三制完全実施につき政府の重大決意を促したのでありまして、今多くを申し述べる必要はないと存じますけれども、この機会に、私は特に次の二点を強調いたしたいのであります。
 第一に、六・三制を現状のまま放置いたしますならば、施設以外の惡條件、すなわち定員定額制と給與ベースの拘束による教員の加重労働と相まちまして、二部教授、三部教授の悩みはいよいよ深刻となり、教育の低下を一層はなはだしくすることは必然であります。政府がかくのごとく教育をもてあそぶがごとき態度をとりますならば、教育の前途はまことに憂うべきものがあるのであります。(拍手)
 第二に、六・三制の危機は民主政治の危機を招來するという点であります。元來義務教育費は、その性質上一切國庫負担とすべきものであります。それが全額負担となつておりますために、地方では重税の上にさらに強制的寄附を背負い、あらゆる苦難を耐え忍んで参つたのであります。これも一に、日本を一日も早く平和的文化國家として再建し、世界の信用を回復せんとする國民の熱意の現われであると申さねばなりません。かくて、本年こそは二部教授の解消が実現できるものと期待していたのであります。このときにあたり、政府は六・三制打切りにもひとしき措置をとりたる結果は、おそらくただに教育界のみならず、地方政治は混乱し、中央政治に対する不信の増大することは明らかであります。(拍手)吉田首相は民主政治の確立を最大目標に掲げておられますが、六・三制の危機は民主政治の根底をくつがえす重大問題であると思うのであります。
 私は政府がこれらの点を眞劍に考慮して、完全にかつ早急にこれが実施に必要なる予算的措置を講ずべきことを警告いたしまして、本決議案に賛成するものであります。(拍手)
#17
○議長(幣原喜重郎君) 稻葉修君。
    〔稻葉修君登壇〕
#18
○稻葉修君 私は、民主党を代表して本決議案に賛成いたすものであります。
 われわれが文化のかおり高き民主的平和國家を建設するということは、内は憲法並びに教育基本法に盛られた國民的義務であるのみならず、外はポツダム宣言に基づく國際的義務でもある次第であります。いわゆる六・三制と称する新教育制度は、文化的民主國家建設のため、アメリカ教育使節團の示唆と司令部の強い要請によつて、当時國家財政の窮乏の中を、もともとむりを忍んで断行したものであることも、公知の事実であります。從いまして、今日いまさらのごとく九原則やドツジ声明の名に隠れて、その制度の完成を見ようとする年になつてその経費を予算に盛ることが客観情勢上不可能だというのは、政府の怠慢だといわなければなりません。(拍手)それは政府の逃げ口上であると言われてもいたしかたないと思うのであります。(拍手)
 なるほど、ドツジ声明は厳粛である。國民の耐乏生活を要求いたしております。しかし、三千百億という驚くべき所得税をしぼつて耐乏生活をさせながら、一方ではぜいたくな高級料飲店を再開し、他方においては次代の日本の担当者たるわれわれの愛すべき子弟の義務教育すらも不可能にするというがごときは、断じて了解に苦しむるところであります。かくのごときは正氣のさたとも思われない次第であります。
 六・三制の実施は、何も九原則と衝突するとは限らぬのであります。我が党はさきに予算審議にあたりまして、財政收支の均衡を保持しながらも、なおかつ六・三制費の捻出の道のあることを、精密なる数字的根拠に基いて指摘したはずであります。だから、あの予算には反対したのであります。今日民自党の諸君も一緒になつてこの決議案を出すくらいなら、なぜ六・三制費を削つた予算に反対しなかつたか。(拍手)実に重大なる矛盾といわざるを得ません。
 敗戰國のくせに、経済自立もできないくせに、文化とは何か、教育とは何か、そういうことはすべてあとまわしにして、経済安定のあかつきには大いに六・三制校舎の新築を補助すると、こう申します。暫時教育を中断しようと政府は言つておるのであります。しかし、事教育に関しましては中断は許されません。教育の効果は、事業を継続しなければ烏有に帰するものであります。中断するだけである、あとでやるのだなどという考え方は、実に教育の本質に関する無知蒙昧もはなはだしき暴論といわなければなりません。
 私どもは、何も経済安定を軽視し、教育偏重論を振りまわそうとするものではありません。だた、政府のあまりに偏屈がんこに輿論を無視し、文化國家建設という民族的理想を捨て去らんとするその極端なる予算、その教育軽視のあくなき謬見に対して國民的義憤を禁じ得ない次第であります。本決議案はこの國民的憤懣の端的な表明として、政府は熱心にこれが措置を講ぜられんことを望む次第であります。
 私どもは、さらに深く教育の尊重はただちに民族保衛の要求に基くものであることを主張いたします。すなわち、教育を振興し学術を奨励して人類共同の福祉たる貴重な文化財を豊富に生み出すことが新しき日本國の平和的國防力の源泉だと信ずるからであります。
 そもそも完全なる武装放棄國家、徹底的平和日本の正しき國際場裡における立場は、永世中立以外にないはずであります。この武力皆無の中立日本が、險惡なる今日の國際社会、強大なる武装國家の間に伍して、何によつて民族の生存と安全とを保持し得るか。憲法は、これをあげて平和を愛好する各國の公正と信義にゆだねております。價値高き文化民族、すなわち科学の分野におきましては唯一の真理を、倫理の世界に起きましては至高の善を、しかも藝術の領域におきましては無限の美を追求し、その所産を豊富に持つところの文化民族にして初めて平和を愛好する各國の公正と信義にこたえ、それによつて民族の保衛を武力に求むることを必要とせぬ平和主義の貫徹が現実的にも実を結ぶ次第であります。
 かくて私は、平和主義と文化主義、換言すれば教育尊重主義とは、今日の日本にとつては民族生命の保全という点において同一の概念であると信じます。ゆえに、永世中立や平和主義に不満や疑義を抱く人のみが文化を無視し、教育を軽視し、九原則やドツジ声明に籍口して六・三制費をゼロにしたりする暴挙をあえていたす次第であります。武器なき中立日本の防衛を、いわゆる二つの世界のいずれか一方の武力に依存するをもつて良策となしたり、あるいは万やむを得ざる現実であるとするがごときは、新日本の崇高なる國本を忘れた俗論であるのみならず、それは憲法第九条の違反である。ポツダム宣言違反です。それこそ非目的暴挙であると断ぜざるを得ない次第であります。軽々に太平洋条約を云々したり永世中立を疑つたりする人たちは、みなこの類であります。私ども教育による倫理的文化力を新しき國防力と思考するものの断固として排撃しなければならないところであります。
 今日、この新しき日本國是の理解のもとに立つて、各党こぞつて、文化日本建設の熱意にもえる教育関係者たちの要求にこたえて六・三制費復活の決議案が上程されましたことは、実に時宜を得たるのみならず、日本の歴史的な國際的立場を中外に宣明する厳粛な思想を包蔵するものであります。政府もまたわれわれの意の存するところ了とし、本決議案に速やかとなつておる部分はこれを本國会にと読むほど、あるいは予算的措置を講ずべしとあろところ補正予算を提出するという意味に理解せられるほどの熱意をこの決議案に示されることを切に望みまして、民主党の党議を代弁いたした次第でございます。(拍手)
#19
○議長(幣原喜重郎君) 渡部義通君。
    〔渡部義通君登壇〕
#20
○渡部義通君 日本共産党は、主として次の理由から本決議案の趣旨に賛成である。
 第一、六・三制の現状がこのままに放置されるならば、日本経済の復興と発展にとつて、文化日本の建設にとつて前提的な条件であるところの教育が破壊されてしまうからである。周知のように、二部制、三部制、四部制の教授が、小使室や廊下や地下室あるいは便所、馬小屋、工場等まで改造して行われているのでありますが、今では学童の自然増加のために、これさえも不可能になつて來ているのである。このみじめな状態のもとで学童の健康はそこなわれて行き、学力は低下し、不良兒は激増しているのである。また教員がその質的な向上を妨げられているのである。
 第二に、現状のままに放置するならば、地方財政が完全に破壊されてしまうからである。六・三制は地方民の過重な負担を一層苛酷なものにして來ている。すでに地方民の負担はまつたく限度を超えており、至るところ地方財政が破綻している実情は、毎日の請願や陳情に現れた内容、その血の出るような訴えによつても証明されている。そのために、全國の市町村長は、続々辞職している。辞職者の七〇%が六・三制建設に関する責任からである。その責任から自殺者までが出ているのである。しかも、本年度予算は地方配付税を大幅に減額してしまつた。この上國庫補助が打切られ、あるいは延期されたならば、どんなことになるか。
 第三に、六・三制の完全実施は、個々の政党の公約であるだけでなくて、今日では政府ないし國会の公約ともいうべきものである。従つて、その実現は政府ないし國会の重大な政治的責任でなくてはならない。
 わが党は二十四年度予算そのものに全面的に反対であるが、以上の理由から、とにかく本決議案に賛成し、六・三制実施費として七百八十八億を要求するものである。その額は、日本教員組合が全國にわたつて綿密に調査した結論であつて、しかも最低額の数字なのである。その財源は二千二十億を越える価格調整費ないしは千七百五十億の見返物資特別資金、このような独占資本に奉仕することをやめるならば、二十四年度の厖大予算を大幅に削つても、なおかつ可能なはずである。また、この予算的措置は必ず本國会会期中にさるべきであつて、そうして本國会に報告されることをわれわれは求めるものである。
 本決議案のごとき精神は、言うまでもなく予算成立の以前に具体化さるべきであつた。不幸にして與党は六・三制問題のかくも重大なる実情と政治的な責任を無視するにもひとしい予算案を成立させてしまつたのである。(拍手)しかし、今日各派が一致してこの決議案を提出するに至つたことは、國会の名誉のためにも喜びとしたい。願わくば日本の國会は、ポツダム宣言は日本國民の自由に表明した意思を最も尊重しているのだということを、従つてまた國会の独自性と権威についてあらためて確認し、どのような困難が前途に横たわろうとも、本決議案の趣旨を実行に移して國民の悲痛な要望にこたえ、教育の未曽有の危機を救うという、祖國の歴史が今日本の國会に課しておるところの最大の民族的な責務を果たすべき確固とした決意をもたるることである。日本共産党は、この意味において本決議案に賛意を表するものである。(拍手)
#21
○議長(幣原喜重郎君) 平川篤雄君。
    〔平川篤雄君登壇〕
#22
○平川篤雄君 國民協同党、農民新党を代表いたしまして、ただいま上程せられました決議案に賛成の意を表する次第であります。だた、この決議案の上程させられる時期が遅れたのは、まことに残念にたえないのであります。(拍手)
 思うに、六・三制が確立して出発をいたしましたのは、第一次吉田内閣の時でございました。従つて、これが完成には、現在の内閣は非常に重い責任をお持ちになつておるとわれわれは考えておるのであります。これが真実であるかどうかは私は存じませんが、先般の新聞紙上に、吉田総理が六・三制は五年、十年のうちに漸次でき上がるものだと考えておるというふうなことをおつしやつておつたように見受けたのであります。しかし御承知のように、一年たちますれば一学年ができ、三年たてば三学年までそろつて行くのでありまして、決して六・三制は五年、十年のうちにゆつくりと成長して行くものではないのであります。
 先般、地方行政委員会のある人に、六・三制の融資の問題について聞きましたところが、六・三制は三箇年をもつて完了するはずになつておるから、起債とか融資とかいうようなものも今年度はもう考えておらないというような御答弁を得たのである。もしも、これがほんとうであるとすれば、奇怪しごくであります。現に二部教授が行われており、たくさんな校舎が借り入れられたままになつておりますことは百も御承知である政府みずからにおいて、この六・三制は三年間で終るというような考えをお持ちになつておるとすれば、これは認識不足もはなはだしいいものといわなければならないのであります。かような考えを持つておいでになるということは、はなはだわれわれは不安でありますので、できれば予算案が成立をいたしますますにこの決議をやつていただきたかつたのであります。(拍手)そうなれば、先ほどから同僚議員によつて述べられておりましたようなお考えのもとに、この六・三制予算を含まざる予算案に対しては、政府、與党の大多数の郎君が反対してくださる余地が残つておつたのである。(拍手)これが遅れましたことは最大の遺憾とするところであります。
 われは、かような予算案の成立したあとに、このような決議案が社会一致をもつて成立することには、もちろん非常な喜びを感ずるものではありますけれども、ただ一つ、ここでわれわれが現政府に対して特に警告いたしておきたいと思いますことは、かつて土地改良と災害復旧の予算化に関しまして決議案が上程せられました。このときには、民主自由党の代表が趣旨弁明をなされ、社会一致で決議が成立したのでありますが、しかるに予算が出ますと、民主自由党では賛成をしてしまわれたのであります。土地改良、災害復旧を含まざる予算に賛成をなさつたので、本院の社会一致の決議というものの権威が失墜いたした前例があるのであります。(拍手)かようなことを考えますときに、この六・三制の決議案にいたしましても、これはおみやげの決議案であつたというそしりを受けないためには、現在政府はいかなる難関をも突破せられまして、この六・三制予算を來るべき機会になるべく早く上程せられること、並びにそのことについては政府、與党の郎君が厖大な責任をお持ちになつて、これが実現に努力せられるということは、絶対の責任になつておるのであります。
 この点をわれわれは特につけ加えまして、本決議案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
#23
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
 この際文部大臣より発言を求められております。これを許します。文部大臣高瀬荘太郎君。
    〔國務大臣高瀬荘太郎君登壇〕
#25
○國務大臣(高瀬荘太郎君) ただいまの御決議に対しまして政府の所見を申し述べたいと思います。
 六・三制の完全実施がわが國の新教育体制の基礎を確立するためにきわめて重要であることは、ただいまの御決議にあります通りであります。しかるに、その実施に必要な建築費國庫補助予算の獲得が非常に困難な情勢に立ち至つておりますことは、はなはだ遺憾とするところであります。政府はこの予算の獲得につきまして、現在なお全力を盡して努力いたしておる次第でありますが、今後は、ただいまの御決議に從いまして、なお一層の努力をいたして、御決議の趣旨に沿いたい覚悟であります。(拍手)
     ――――◇―――――
阿波丸賠償問題解決に関する吉田國務大臣の報告
#26
○議長(幣原喜重郎君) 次に、阿波丸賠償問題解決に関する報告のため外務大臣より発言を求められております。この際これを許します。外務大臣吉田茂君。
    〔國務大臣吉田茂君登壇〕
#27
○國務大臣(吉田茂君) 政府は四月六日の國会の決議に基き、米國政府と交渉いたしました結果、四月十四日、米國政府との間に阿波丸請求権の処理のための協定が成立いたしたのでございます。
 その内容は、まず前文において、米國政府は阿波丸撃沈についてその責任を認め敵対行動が終結した後損害賠償の問題を考慮する用意のあることを保証したこと、その後日米両國政府はこの問題を満足に解決するため努力しつつあつたが、今回マッカーサー元帥のあつせんによつて協定を締結する運びとなつた旨が述べられております。
 本文におきましては、第一、日本の占領が開始されて以來進展した公正な事態を考慮し、また米国政府から受けた援助を多として、日本政府は阿波丸撃沈事件に基く一切の請求権を放棄し、第二、この災難で死亡した者の家族及び阿波丸の所有者に対し日本政府は見舞金を支給するために努力すること、第三、阿波丸事件について米國政府は深く遺憾の意を表し、かつ死亡者の家族に対し同情の意を表する旨が規定されてあります。
 なお、以上本文に附帯せしめまして、日米両國政府間の了解事項として、占領費並びに米國政府から日本に供款された借款及び信用は日本にとつて有効な債務であり、これらの債務は米國政府の決定によつてのみこれを減額し得るものである旨規定されております。これはあたりまえのことでありますが、しかしながら、日本占領費あるいは日本に供與された借款、信用等が、あたかも日本の債務ではないかのごとく、日本に対する贈與のごとく感じられる節があるものでありますから、このあたりまえのことを、ここに了解事項として書き加えたのであります。
 本文及び了解事項のおのおのに、日本政府を代表して私が外務大臣として、また米國政府を代表して日本関係米國政治顧問シーボルト公使が署名し、連合國最高司令官マッカーサー元帥がこれを認証する形式がとられたのであります。
 政府は、本協定及び了解事項の全文をすみやかに発表する所存であります。國会が進んで本件解決の端緒を開かれたことは、過去三年半の連合軍占領期間中に米國政府及びその國民より受けた甚大なる援助に対するわが國民の深い感謝を如実に表現したものであり、政府は阿波丸事件のこのような解決が今後日米両國間の友好関係の増進に寄與するもの少からざるものあるを信ずるものであります。
 なお、前述の通り本協定には、この災難で死亡した者の家族及び船舶の所有者の慰藉に関して特別な規定が設けられておりますが、政府は適当な見舞金を増るため目下所要の手続きを考究中であります。御報告いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
單一為替レート決定についての池田國務大臣の報告
#28
○議長(幣原喜重郎君) 次に、單一為替レート決定について報告のため大藏大臣より発言を求められております。この際これを許します。大藏大臣池田勇人君。
    〔國務大臣池田勇人君登壇〕
#29
○國務大臣(池田勇人君) 今回單一為替レートの設定を見ましたので、これに関しまして政府の所見を申し述べたいと思います。
 去る四月二十三日、單一為替レート設定の指令が出まして、昨二十五日より一ドル三百六十円の換算率で処理することと相なつたのであります。かかる單一為替レート設定は、外に向かつては、わが國経済が國際経済に参加する第一歩を踏み出したことになります。また國内的には、より自由にして、より能率的なる経済再編成をいたしまする呼び水となるのであります。これは、わが吉田内閣の財政経済の基本方針に一致するものであります。しかして、これが設定が予想以上に早かつたのは、思うに先般九原則にのつとつた予算案成立のたまものであると考えまして、私は國家のためまことに慶賀すべきことと考えておるのであります。
 次に、かかる單一為替レートの設定によりまして予算並びに物價あるいは一般経済にいかなる影響を及ぼすかにつきまして、しばらく申し述べたいと思うのであります
 皆様御承知の通りに、今回の予算は一應一ドル三百三十円を仮定いたして編成したのでありますが、これが三百六十円になりますると、予算にある程度の狂いを生ずることが想像できるのであります。しかして、これが最も大きい影響は、御承知の八百三十三億円を予定いたしております輸入補助金でございます。ただいまのところ、八百三十三億円を予定いたしておりますます入物資がそのまま入つて参りまして、しかもなおアメリカにおける物價が今の通りであつたならば、八百三十三億円は百五十億円を増加することに相なるのであります。しかし、私は予算総会その他で申し述べましたことく、補給金はできるだけ少なくすることに努力いたしますることをお誓い申したのでありますが、こういたしますならば、この百五十億円を増加は大体八百三十三億円以内にとめ得るのではないか、もし足りない場合にいたしましても、御承知の千二億円の安定帯物資の補給金でまかないたいという所存でおる次第でございます。
 しかしてまた、三百六十円になりました関係上、貿易会計のわくがある程度ふえるのでございまするが、これは歳入歳出ともに起こる問題でございまして、大して予算の執行に影響がただちにあるとも考えられません。従いまして、予算関係におきましては、今回三百三十円の想定レートが三百六十円に相なりましても、ただちに補正をする必要はないと考えておる次第でございます。
 次に物價に及ぼします影響は、九%程度の為替相場の円安でございますから、相当の影響は考えなければなりません。しかして補給金に対しまする物價は、先ほど申し述べました通りでございます。また補給金を支出していない一般物價につきましても、円安の関係はできるだけ第二次製品、第三次製品に織り込むよう、企業の整備、企業努力によつてまかなつて行きたいと思うのであります。しかして、かかる措置でまかない得ない場合につきましては、一般物價水準に影響を及ぼすことなく、個々の物資に適当な措置を講じて行き、今まで堅持しておりまするところの物價政策で進んで行けると考えておる次第でございます。
 なお産業に及ぼす影響でありますが、皆さん御承知の通りに、当初の三百三十円よりも三百六十円になりました方が輸出貿易の増産を來しえるのであります。先般この席上で、今回の予算はデフレ予算であるという御論議があつたのでありまするが、私は三百三十円が三百六十円にかわつたことは、私の主張するデイスインフレーシヨン政策に拍車をかけるものと、非常に喜んでおる次第でございます。
 なおまた、三百六十円になりました関係上、輸出産業の有利なことが明らかでありまするが、この輸出産業に対しまして輸出税をとつてはどうかという議論が存します。しかし私は、輸出産業こそ助長することがわれわれの政策でありますので、これに対して輸出税を取る考えはないことをここに明言いたしまして、御報告を終りたいと思います。(拍手)
     ――――◇―――――
 政府支拂促進に関する決議案(苫米地義三君外十四名提出)
     (委員会審査省略要求事件)
#30
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、苫米地義三君外二十四名提出、政府支拂促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#31
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異義ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 政府支拂促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。福田繁芳君。
    ―――――――――――――
    〔福田繁芳君登壇〕
#33
○福田繁芳君 私は、ただいま上程に相なりました、各党共同提案に基きまするところの政府支拂促進に関する決議案に対して、はなはだ僭越ではありますが、提案者にかわりまして、ごく簡単にその趣旨を弁明いたしたいと考えるのでございます。
 まず、順序といたしまして、本決議案の案文を朗読させてもらいとう存じます。
   決議案
  経済九原則の実施並びに納税遂行等のために、今や産業界における金融逼迫は深刻な段階に達し、わが國経済の安定と復興の上に真に憂うべき状態にある。しかるに、政府関係債務にして支拂可能なるにもかかわらず、現金未支拂の金額は、三月末日現在において一般会計だけでも四百二十六億九千余万円に上り、産業資金枯渇の要因をなしている。
  よつて衆議院は、現下の経済危機打開のため、政府関係支拂促進の喫緊なることを認め、左の措置を急速にとることを決議する。
 一、政府の責任において、一箇月以内に政府関係債務の支拂澁滞を一掃すること。
 二、政府関係債務履行状況を調査し、併せて支拂促進と官規の振粛を図るため、特別の調査委員会を本院に設置すること。
  右決議する。
以上でございます。
 ただいま決議案文にも詳細に申し述べてありますので、これ以上補足する必要はございませんが、簡単に一言だけ申し述べてみたいと存ずるのでございます。昨年末と申しまするか、本年一、二月からと申しまするか、ことに昨今になりましては、都会といわず農村といわず、あるいはまた生産財の産業といわず、消費財の産業といわず、格別金詰まりで困つておるということは、皆様方御承知の通りでございます。もつとも、終戰後のわが國であり、ことに日本の今置かれている立場上、この金詰まりの原因もいろいろあろうとは存じまするけれども、現下の最大原因となつておるのは、確かに政府支拂いの遅延ということであろうと私は考えるのでございます。
 今試みに申し上げまするのに、三月末現在で、予算がすでに通過して、いわゆる政府として支拂い可能であるにかかわりませず、いまだ支拂つてない金額が、先ほど申しましたように四百二十六億九千万円ございます。一方また四月十五日現在の政府の預金が幾らあるかと申しますと、指定預金の四百六十一億、当座預金の百八億、合せて五百六十九億円あるのであります。この政府支拂いを、すみやかに本決議文の中にありますごとくに、向う一箇月間に民間に拂い渡すとするならば、今まさに困つておりますところの産業人においてこれが一大恩恵となり、まさに困つておる金詰まりも打開できると考えるのであります。
 諸君も御承知でありましよう、中でもある業種によりますと、政府に物を納入いたしまして、ひどいのになりますと、一年、二年たつて、いまだに金がさがつて來ない、金がさがつて來ないから、その業者はいきおい会社運営のためやむを得なく高利の金を借りる、高利の金を借りるから会社の経営が困る、ひいては一般使用者の首切りをやらなければいけない、賃金の不拂いが続出する、こういうような、労働者の犠牲に轉嫁しなければならないような状態が起つておるのでございます。ゆえに私たちは、この金詰まりを打開いたして、ほんとうに一般國民に対する政府の威信を保持いたし、ひいては民心の安定をはかり、生産の増強をはかつて、國家再建をいたさんとするならば、ぜひともこれをすみやかに支拂いたいと思つて、この決議案を出したわけであります。同時に、第二項にありますところの調査委員会におきましては、何がゆえにこの政府支拂いが数箇月も一年も、あるいは一年半も遅れるかということの原因を討究いたし、もしその中において行政機構というものの煩雑化があるならばこれを簡素化する、それをもつて日本の産業再建に側面から協力いたしたい、かように私たちは考えて、この決議案を出したわけであります。
 幸いに各党満場一致をもつてこの案を通過されまして、日本の産業再建に対して一大役割を果たすことができれば、私らは非常にけつこうだと思います。私の所属しております党派が、いわゆる時局柄閣外協力をするゆえんも、ここにあるのでございます。いきおい、さようでありますから、慎重に御審議なさつて、満場一致御可決くだされんことをひとえにお願い申しまして、簡單でございまするが趣旨弁明にかえる次第でございます。(拍手)
#34
○議長(幣原喜重郎君) 他に御発言もないようでありますから、ただちに採決いたします。本案を可決するに御異義ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#35
○議長(幣原喜重郎君) 御異義なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
  政府支拂促進に関する特別委員会設置の動議(山本猛夫君提出)
#36
○山本猛夫君 ただいまの決議に基き政府支拂促進に関する特別委員会を設置し、その委員の数は三十名とされんことを望みます。
#37
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異義ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○議長(幣原喜重郎君) 御異義なしと認めます。よつて動議のごとく決しました(拍手)
#39
○議長(幣原喜重郎君) 日程第二國営競馬特別会計法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大藏委員長川野芳滿。川野芳滿君 ただいま議題となりました國営競馬特別会計法案の大藏委員会における審議の経過並びに結果について概略御報告申し上げます。
 この法案が提出いたされました趣旨は、國営競馬全体の收支を明らかにいたしますために投票券勘定と業務勘定との二勘定に区分された特別会計を設置しようとするものでありまして、これによつて第二國会において制定されました國営競馬特別会計法を全面的に改正しようとするものであります。この法案において、投票券勘定といたしましては、勝ち馬投票券の発賣による收入金等を歳入とし、拂戻金等を歳出といたしております。また業務勘定といたしましては、投票券勘定からの繰入金、入場料、登記料等を歳入とし、一般会計への繰入金、事務取扱費、競馬開催諸費、地方競馬の監督に要する経費等を歳出といたしております。
 この法案は、去る二十三日、本委員会に付託されたものでありまして、二十五日の提案理由の説説明を聴取し、質疑に入りましたが、田中委員よりは本会計の数字的内容等について、風早委員よりは國営競馬の地方競馬並びに地方財政に及ぼす影響等について質疑がありまして、井上競馬部長よりそれぞれ答弁がありました。次いで討論を省略し採決に入りましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
 以上、概略御報告申し上げます。(拍手)
#40
○議長(幣原喜重郎君) ただちに採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案の委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#41
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
    ―――――――――――――
地方行政委員菅家喜六君の大阪市におけるデモ取締りに関する事件の現地調査の結果報告
#42
○議長(幣原喜重郎君) 次に、大阪市における三月二十七日及び四月二日のデモ取締りに関する事件について現地調査の結果を報告のため、地方行政委員菅家喜六君より発言を求められております。これを許します。菅家喜六君。
    〔菅家喜六君登壇〕
#43
○菅家喜六君 私は、ただいま日程に上がりました大阪市における治安事件についての調査の経過並びに結果を御報告申し上げたいと存じます。
 去る三月二十七日及び四月二日大阪市に惹起した治安事件について、衆議院規制第五十五條の基きまして、地方行政委員会から現地調査のため委員河原伊三郎、久保田鶴松、立花敏夫の三君と不肖私の四名は、丸山調査員を帯同いたしまして四月十三日東京を出発、大阪に参りまして、十四、十五、十六の三日間にわたりまして現地において調査をいたして参つたのでございます。両日の事件の直接の関係者はもとより、大阪府当局、大阪市長、大阪市公安委員会、警察局、消防局等につきまして当時の事情を詳細に調査するとともに、事件発生の現場をわれわれ踏査いたしました。しかして、各政党の代表、すなわち幹事長の御会同を求めまして、これらの意見を求め、次に社会の輿論の動向を知りたく、大阪市において発行いたしまする各新聞社の代表者の御参集を願いまして、それらの意見も聴衆しまして、事件の真相を把握するに遺憾なきを期するために十分なる調査を遂げた次第でございます。しかして、あらゆる資料を整えて、十六日午後三時新聞記者との共同会見を最後といたしまして、十七日に帰京いたした次第であります。調査の具体的内容、すなわち調査箇所、調査項目その他の詳細については、報告書を印刷に付しましてお手元に配布になるはずでありまするので、私はここにきわめて概括的な結論だけを御報告申し上げたいと存ずる次第であります。
 調査の結果によりますと、警察当局の弁明と主催者側との間に若干の齟齬があるのであります。けれども、両日の大会後において、市中デモ行進の取締りに当たりました警察官との間に数箇所において衝突が起こり、ために双方にけが人の出たことは事実であります。宣傳されておりましたピストルの使用はなかつたのでありますけれども、警棒の使用による打撲傷、あるいはプラカードの破片によるけがのために流血の惨を見たこともまた事実であります。さらに消防タンクの出動によりまして、タンク車がデモ行進隊に解散地点におきまして放水したということも、これまた事実であります。
 ここにおいて、われわれ調査員は、まず第一に鈴木警察局長の弁明を聞くべく市役所に同局長をたずねましたところ、局長の弁明によりますと、方の執行は嚴正公平であり、法規違反があつたがために、これを法規に基づいて制圧したものであつて、決して違反とは考えない、將來も同じ方針で取締りに当るつもりである、消防に協力も求めるし、また都合によつてはそのタンクによつて放水もする、もし消防が警察に協力をしないならば警察みずからが消防タンクを買い求めて、これらのデモの取締りに当たる、と言つております。法を感情をもつて考えるのは民主主義ではなく、相手方によつて取扱いを二、三にし、法に幅を持たせるということは、法の権威と警察に対する信頼をなくすることであつて、法を励行するためには多少の摩擦があつてのやむを得ないと弁明をいたしております。また、四月二日の取締りが挑発的であつたというが、三月二十七日の例にがんがみて、相当その取締りにはくふうをこらし、衝突の機会をむしろ少なくしたのであつて、問題の起こつた場所に一時多数の警察官を集合したために幾らか挑発的に見られたかもしれないけれども、これは当日やむを得なかつた処置であると言つて弁明もいたしております。ジグザグ行進や、すわり込みをやつて警察官の制止または指導に従わなかつたために実力行使によるところの制圧を加えたのである、負傷者は、これは一人デモ隊ばかりではない警察官にもあるのであつて、プラカードの破片によつてけがした者もあるのであるから、必ずしも警棒の制圧によつて受けたけがとは言い得ない、かく鈴木局長は弁明いたしておるのであります。
 そこで大会当日の二人の責任者に会つて、私どもはその主張を聞いたのであります。両日の大会の責任者側の説明するところによりますと、警察当局はあらかじめ多数の警察官を配置して、必要以上の数を出勤させておる、消防自動車まで待機させる等、これは計画的な彈圧であつたと思う、デモ行進路のごときものも、ことさらに狭隘な道路を選んでおる、また解散の場所もすこぶる不適当な場所であつた、そのために摩擦と混乱を生じ、またそれを誘発した傾きが多い、と主催者側は述べております。しかも、警棒の使用、警棒による制圧というものが当日の混乱の原因をつくつたと主張いたしておるのであります。消防タンクの放水のごときはそのはなはだしいものであつて、このために流血の惨を起して、数名のけが人を見たというこの事実は断じて許せない、これは職権の濫用であり、人権蹂躪であり、目下訴訟を提起中である、と主催者側は述べておりました。鈴木警察局長の取締まり態度と指導方針は大衆運動に対してまつたく理解なく、これらの暴挙に対してはわれわれは忍びがたきものがあるのであるということを、こもごも両日の主催者はわれわれ調査團に訴えておるのであります。
 ここにおいて私どもは、大阪府における各政党幹部の御参集を得まして、これらの意見を徴しました。民主党の支部が中立的態度であるのほか、その他はことごとく鈴木局長糾彈の意見に一致を見ておつたのでございます。各新聞社の代表者の会合におきましても、ある一つの有力新聞の幹部の人の意見が異なるだけで、そのほかは全部一致して鈴木警察局長の取締りの行き過ぎを認めておるのであります。一有力新聞の幹部は取締りの技術はともかくとして、警察が違法の行為を行つたとわれわれは認めるわけにはいかない、従來の経済事犯の取締りに対する鈴木局長絵への反感とこの度の事件とを混同結合して局長を糾彈し、政治的にこれを取扱うことは注意すべきことであるとの自重説を述べられたほか、そのほかの諸君はことごとく鈴木局長の行き過ぎを認定しておるのでございます。
 ここにおいて、各関係方面の意見を洞察し、実地に現場並びにデモ行進路などを踏査いたしまして、当日の大会の記録、映画、写真、各新聞の論評、報道記事、嘆願書等の諸資料に基きまして、われわれが点検いたしました結果、総合的の意見としてわれわれの考えますことを申し上げたいと思うのであります。
 われわれ調査員、もとよりおのおのその見るところは多少異なつておるのでありますけれども、その共通するところは、この事件において、大阪市警察当局の取締りの態度・方法に遺憾の点があり、たとい明確なる法規違反はないといたしましても、取締り上妥当を欠き、行き過ぎのあつたことを認めないわけには行かなかつたのでございます。すなわち、四月二日の大会に先立ち、大阪市民に対し四項目にわたるところの警告文を発しております。この重大な警告文を発するにあたつて、事前に公安委員会に了解もなく、警察当局單独に発表いたしておるのであります。また、消防組織法第二十四条に基き、警察、消防両当局の間に相互協力に関するところの協定を結んでおりますが、その手続きあるいは執行において関係者との間に完全なる了解と円滑なる発動を見ておらないのであります。
 何ゆえかかる不祥事件が大阪市のみにおいてしばしば起つたのでありましよう。もとよりデモ行進隊の方でも大いに自粛すべきものがありましようし、またその他の原因もあつたでありましようが、結局鈴木局長その人、そのもの、すなわち彼の取締り方針と態度があずかつて力ありということに、多くの人が異口同音にこれを認めておるのでありまして、われわれ調査員一同も、この事実を認定しないわけには行かなかつたのでございます。鈴木局長は日ごろ法の執行に厳であり、自己の所信は信念的に堅持するところがありといたしましても、その態度に独善的、高踏的なところが非常に多く、自己判断のみまことに強く、関係方面なり輿論もしくは市民に徹底納得させるだけの用意を欠いておつたといわなければならないと思うのであります。この例証といたしまして、市民の代表機関たる警察委員会における本件審議の状況より見ましても、これを明らかに察知することができるのであります。
 いかに法を正確に遵守し、公平嚴正に執行しようといたしましても、民主警察の実をあげるためには、相手方の了解を得、納得のいくような態度をもつてくふうを凝らした警察権の行使であり、取締りであらねばならないのであります。大阪市民の警察であるところの自治体大阪警察は、市民各層の協力援助無くしては警察行政の円満なる遂行をはかり、その目的を達成することのできないのは、言うまでもないのであります。今回の事件において、大阪警察当局が明らかに法規違反をなしたとは断定し得ないのでありますけれども、一般市民の鈴木局長に対する糾彈の空氣というものは、まことに峻嚴なるものがあるのであります。警察委員会においても、警察側の法規違反は認定しておりませんけれども、不満と不信の意見はまことに強いものがあるのでありまして、警察の行き過ぎをことごとく認め、將來に向つて善処いたそうとしておる模様でございます。
 そもそも本調査團は、現地において事件の眞相を究明し、本事件の解決、あるいは関係法規の改善等について國会としてなすべきことがあるとするならばその参考といたすべく、地方行政に関する國政調査のためにこれが調査に当たつたのであつて、直接に地方自治の内容に干渉して当該事件を黒白を決定し、事件の解決に当たろうとするものではないことは、もとより言うまでもありません。事件当日の負傷者側からは、警察の職檢濫用、傷害を理由として、鈴木警察局長を相手取り、目下告訴を提起中であります。これは檢察と司法の問題であつて、本調査団の関與すべきでないこともまた言うまでもありません。それゆえ本事件は、司法省の問題は別として、それ自身大阪市自治警察の問題であつて、まず第一に所管責任者として大阪市公安委員会がその解決に当たるべきものであり、また消防との関連においても大阪市長が関心を持つべきであります。從つて、私ども委員は、現地において得たるところにより、また輿論の動向に察し、鈴木警察局長の態度に反省と考慮を促すことにとどめ、さらに大阪市長及び公安委員会に対しては、新聞記者立会いのもとに最後の正式会見の際、右の極意を十分説明した次第であります。
 なお今回の不祥事件にかんがみ、近くに迫りましたメーデーの取締りに対し重大なる関心を寄せ、かかる事件の再発せざるよう特に留意されたき旨を要望したところ、大阪市長及び公安委員会は、われわれ調査團の勧告と要望を了承し、これを認め、必ず近日中に自治体においてこの解決を講ずるべきことを固く誓われた次第であります。
 本調査團が現地において調査した事実及びとりました処置は大体以上の通りでありますが、最後に本件につきまして関係法規に若干研究の余地あり、疑いありと思いまするので、その点を報告の通りにつけ加えたいと思うのであります。すなわち警察当局が法規に基づいて不法越軌の行動を正当なる職務執行の権限内で取締りを行つたというその根拠、諸法例あるいは規則ないし協定等が、それ自体欠陷あるいは疑義がないかどうか、またその解釈、運用において誤りがなかつたかどうかという点であります。
 その第一点は、消防組織法の第二十四條の規定による警察と消防との協力がこの種の大衆運動の取締りにも及ぶかどうかの点であります。從つて、消防組織法の規定に基いて大阪市の警察並びに消防両当局間の結ばれた協定が、法律的に、規定的に、これが正当であるかという点でもあります。
 第二点は、相当嚴重な罰則を付した、この種運動を取締まるための昭和二十三年大阪市條例第七十七号、行進及び示威運動に関する条例及びその運用の適否であります。
 第三点は、警察官等職務執行法第四條及び第七條の実際の解釈及び運用に誤りがなかつたかどうかという点であります。
 第四点は大阪市警察当局の警棒取扱要鋼中の警棒使用方法の適否及びその運用いかんの問題であります。
 第五点は、四月二日の示威行進等の取締りに関して大阪市警察局長が発した警告文中に掲げられた四項目中
の第一項に「警棒其の他の方法に依り徹底的な制圧を受くること」という文句がありますが、これがはたして適当妥当なるものであるかどうかという点であります。
以上の法規法令に関しましては一應五点の疑いがあるのでありますが、これは今後われわれに研究の課題として残された問題であると思うのであります。
以上概略を述べまして、大阪事件の報告にかえる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
  郵便法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#44
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、郵便法等の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#45
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異義ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
#46
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加されました。
 郵便法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。逓信委員長辻寛一君。
#47
○辻寛一君 ただいま議題となりました郵便法等の一部を改正する法律案に関し、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 逓信事業は終戰の年を境として未曽有の経営難に陷り收支面において毎年多額の赤字を生じましたため、借入金、一般会計からの繰越金等によつて措置するのほか、数次にわたつて料金の改定をも余儀なくせられて参つたのでありまして、現に昨年七月にも料金の三倍程度の値上げを行いましたことは御承知の通りであります。しかるに、昭和二十四年度の予算編成にあたりまして相当極端なる経費の削減をいたしましても、なおかつ約五十億円の不足を生ずまする一面、わが國の経済再建のため、特別会計の本來の建前である独立採算を確保し、一般会計よりの繰入れを廃止することは経済安定九原則の要請でもありまするので、ここに郵便法等の関係法律の一部を改定して、郵便に関する各種の料金につき平均五割程度の値上げを行い、郵政関係予算收支の均衡をはかるのやむなきに至つたのであります。
 以上、本法案の提出理由につき申し述べたのでありますが、次に法律案の内容につき改正の要点を簡單に御説明申し上げます。
 ただいまも申し上げました通り、郵便料金今回の値上げ率は原則として五割を目途とするものでありますが、郵便の持つ公共性と大衆負担軽減の見地よりいたしまして、第二種郵便物、すなわち郵便はがきにつきましては特に料金改訂を行わない結果、その他の郵便物については若干五割以上の値上げになつたものも生じたのでありまして、例えば第一種郵便物封書は、現行五円に対し七割引上げの八円といたしたのは、その著しい例であります。
 第三種郵便物のうち発行人または賣りさばき人から差出される官公報及び新聞と、第四種郵便物のうち盲人用点字展示の書籍、印刷物等は、現行の五十銭を八十銭に引上げ、その他の通常郵便物におきましては、第四種郵便物は一般のものは現行四円が六円となるのでありますが、特に逓信教教育のために差出されるものにつきましては、その特殊なる公共性にかんがみまして、今回新たに第三種郵便物と同額の低料金とすることとし、現在の四円を三円に引下げることと相なつております。なお第五種郵便物すなわち種子等は、現行五十銭を一円に引上げるのであります。
 小包郵便物につきましては、前に申し上げた郵便はがきの料金すえ置きによる財源難を補う関係もありまして約七割の引上げをするのでありますが、一定地域内に発着するものにつきましては、逓信大臣において一定範囲の料金低減の措置を講ずることができることとし、その他特殊取扱い料金に関しまして、速達料、保険取扱料につき若干の改正を行うことになつております。
 なお郵便料金の引上げに伴いまして、郵便為替、郵便貯金及び郵便振替貯金に関する料金中、郵便による書類の送達を必要とするものにつきまして、所要の郵便料金を基準として料率の引上げを行うとともに、書類郵便物を亡失または毀損した場合の損害賠償額及び通貨以外のものを内容とする保險扱郵便物の損害賠償額、代金引換郵便物の最高限度額につきましても所要の改訂を施すことと相なつております。
 去る四月二十日、本案の付託を受けまして以來、委員会はその重要性にかんがみ連日にわたつて会議を開催し、提案理由並びに内容の説明を聽取した後、政府との間に詳細にわたつて質疑應答を重ねたほか、四月二十五日には、特に学識経驗者、利害関係者等を招致して参考意見を聴取いたしたのであります。その詳細につきましては会議録に讓ることにいたしまして、以下二、三につき要点をかいつまんで申し上げます。
 まず、國民全体を利用対象とする郵便事業のような公共事業において料金の値上げは、他に適当な方策があれば極力これを避くべきものであるが、政府の所見いかん、という質疑に対しましては、現行の料金は三千七百円給與水準に基礎を置くものであり、現在の給與及び物價よりするときは、物件費等の極度の節約と予定の行政整理を断行するとしても、郵政勘定において前に述べたような收入不足を生ずるのであつて、もとより料金の値上げは極力避けたいところであり、そのために郵便はがきの料金もすえ置きとしたのであるが、郵政、電気逓信両省の分立を前提として独立採算制」をとりかつサービスを少くとも今日の水準に維持し、人員整理を予定の範囲にとどめるためには、この程度の料金値上げは眞にやむを得ないところであると信ずる旨の答弁がありました。
 次に、物價及び國民所得の上昇率との関係はどうかという質疑に対しましては、物價に比較して値上げ後の料金は、その指数において下まわつている、國民所得中逓信料金の占める割合を昭和二十三年度において一・二%でそのうち郵便料金はわずかに〇・四八%を占めるにすぎないと推定されるので、さまで重要な要素とはなつていないと思うという答弁がありました。
 次に値上げのための利用減によつて予定収入が確保できなくなるおそれはないかという質疑に対しましては、利用減については過去の経驗を十分織り込んで收入を見込んでいるから、歳入の面において懸念はないと思う、という答弁があつたのであります。
 なお、前に申し述べた参考人においては、独立採算の建前上この程度の料金値上げはやむを得ないものであるという立場をとると同時に、サービスの改善について一層の努力を要望するものが大多数でありました。
 かくて委員会は、昨四月二十五日、本案の質疑を終了し、本四月二十六日討論を行つたのでありますが、その際民主自由党を代表して飯塚定輔君より、本法案の施行期日を昭和二十四年五月一日にあらためる修正案を提出せられるとともに、本法案の実質的内容については賛成の意見を述べられ、日本社会党を代表して、松井政吉君より原案に反対の意見を、日本共産党を代表して田島ひで君より原案に反対の意見を公正倶樂部を代表して浦口鉄男君より原案に賛成の意見をそれぞれべられたのであります。
 次いで委員会は採決に入り、まず民主自由党提出の修正案に対し賛否を諮りましたところ、多数をもつて可決、次に民主自由党提出の修正案を除く残余の原案は多数をもつてこれを可決したのであります。よつて本法律案は修正議決を見た次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#48
○議長(幣原喜重郎君) 本案については討論の通告があります。これを許します。松井政吉君。
    〔松井政吉君登壇〕
#49
○松井政吉君 私は日本社会党を代表いたしまして、郵便料金の五割に近い五十億になんなんとする値上げの内容を持ちまする郵便法等の一部を改正する法律案に反対の意見を述べんとするものであります。
 第一の理由といたしましては、御承知の通り郵便事業は國営事業でありまして、純粋に國民全体が利用者となつておる事業であります。從いまして、いかなる場合に起きましても、料金の値上げは即國民大衆の負担になるからであります。この國民大衆の負担となるべき料金を値上げする場合におきましては、当時における経済事情、國民所得、物價あるいは郵便料金との指数比較等の科学的内容が根拠とならなければならないのであります。從いまして、政府の見解と、この根拠となるべき資料に対しましては、遺憾ながらわれわれの考える科学的根拠が稀薄であります。昭和八年からの小賣物価であるいは卸賣物價の指数と、さらに郵便料金の指数比較は、資料の中に出ているのでありますが、かんじんの今日現在の國民大衆の所得指数の比較が出ておらないのであります。從いまして、國民大衆全体を利用者としておるがごとき純粹國営事業におきまして、國民大衆の実態生計に基く指数の根拠を忘れては、値上げの理由に反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 さらにその次には、國民大衆の負担能力も考慮しておらなければ、またその五十億になんなんとする費用の使途の説明についても不明確であります。例えば五十億の値上げは、行政整理をされて三万八千人首を切りました残りの從業員郎君の手当にまわしましてサービスを向上するためであるというような自柄や、さらに五十億に近い郵便料金の負担を國民にしているならば、別の方法によつて國民大衆を益すべき裏付けというものが必要であります。この事柄が欠如いたしておるのであります。從いまして、政府の御見解に依りますと、五十億に近い値上げの使途につきましては、單に独立採算制に基く必要欠くべからざる費用であるという御説明でありまして、それが從業員の賃金手当に充てられるわけでもなし、さらに五十億近い負担を國民にしているその反面に、これを裏づける施策がないのであります。
 今日の逓信事業の中に、われわれが考えますと、裏づけ得る施策が一つあるのであります。例を申し上げまするならば、簡易生命保險あるいは年金、積立金の運用の実権は今日大蔵省にあるのでありますが、これを逓信省に移管いたしまして、地方公共團体にこれを貸し與え、さらに國民大衆の利益になる方向にこれを投資して運用いたすことによつて、國民大衆に利益を與えることが可能であります。ところが、この問題については値上げ料金の問題とは別個に考えられて、さらに話を促進しようとはいたさず、料金値上げ、すなわち國民大衆に負担をかけることをのみしいておるというのが、その値上げの内容であります。こういう裏づけのない、政策貧困なる取扱については賛成できかねるのであります。
 さらにもう一つの理由といたしましては、値上げの内容が非常にでこぼこであります。七割五分も値上げされておるものがありますると、その反面に二割も値下げをしておるものがあるのであります。このでこぼこは近い時期において必ずや是正されなければならないことが裏づけられているのであります。この是正の方法について、逓信大臣はこれを是正するときには低い率にバランスをとりたいという御見解だつたのでありまするが、今日の経済事情の中に起きまして、きわめて低い時期にこのでこぼこを是正する場合には、引き下げて平均をとるということは不可能であります。必ず低いものは上げて平均化するということの方が公算大であります。そういたしまするならば、今回の値上げは、近い時期ににおいてもう一ぺん低いものを上げることが約束されているがごとき内容が備えられているというのが、私の見解であります。
 さらにもう一つの理由は、行政整理とうらはらの関係があるように考えられるのであります。政府は行政整理を行いまして、人件費を浮かすことによつて赤字を克服しようというお考えを持つておられるのでありますが、行政整理をやるのには費用がかかるのであります。これは政府当局も認めておる御見解とお伺いしたのであります。從いまして、行政整理をやりましても、今二十四年度の逓信省独立採算にはあまりの理由にはならない。しかし、今年度やることによつて二十五年度の独立採算のうちに確固たるきそができるという御見解であります。從つて、その見解に基きまして、二十四年度におきまして行政整理をやるために、行政整理に使う費用を浮かすために郵便料金を値上げするという考え方をわれわれは持たざるを得ないのであります。來年度におきまする独立採算制をゆたかにするために今日から行政整理を行い、料金を値上げをするというような理由は、今日の日本の國全体の経済上からも、それを負担しなければならない國民大衆の中にも、その理由はございません。いわゆる現在の政府がおとりになつておりまする予算全体が金融資本中心に編成されておりますので、いきおい國民大衆の中における賃金、給料、俸給生活衆は、行政整理、企業整理によりまして、今月、今日の戰々兢々の中に働いているとということは明瞭であります。さらに生活の不安を感じているということであります。中小企業体はまさに崩壊の危機に瀕しております。課税の増加によりまして、農民諸君もまた負担能力が減じております。こういう事態におきまして、二十五年度を樂にするために郵便料金を値上げすると思われる形における値上げの内容、さらにまた行政整理を行うがごときことにつきましては、われわれは遺憾ながら反対せざるを得ないのであります。
 かような見解に基きまして、郵便法等の一部を改正する法律案には、わが党は反対の思志を表明するものであります。
#50
○議長(幣原喜重郎君) 田島ひで君。
    〔田島ひで君登壇〕
#51
○田島ひで君 私は、日本共産党を代表いたしまして、本案に反対の意を表明するものであります。
 まず第一に、昭和二十四年度予算の收支の点と関連いたしまして、七千四十六億という厖大な予算は、歳入の面から見ましても、また歳出の面から見ましても、大衆の犠牲においてたくみに少数独占資本の利益に奉仕せんとするものでありまするから、本年度予算について、すでにわが党代表によつて詳しく反対の意を表明したのであります。本年度逓信省関係の予算について見ましても、さらにその負担を大衆の上に轉嫁しておるところの郵便料金値上げということになつておるのでありまするがゆえに反対いたすのであります。
 逓信事業におきましては、創立以來常に黒字を続けて参つたのでありまして、年々一億円近くの金額が特別会計收入より一般会計に繰入れられて、戰前、戰時中を通じて一般会計を補填して参つたのであります。ところが、戰爭中の被害や酷使の結果、設備は荒廃しあるいは老朽化したままの惨憺たる姿となつて、現在ではサービスを使命とするところの事業の本質をまつたく失つてしまつた状態であります。加えては、戰時中、戰後を通じまして仕事の面は複雜化し、戦後の歴代政府のインフレ政策のために、当然人件費、物價ともに膨張して、戰後まつたく赤字を続けて参つたのであります。
 このような総身傷ついたままの公共事業としては、逓信省関係の予算の不足を、一般会計を離れて郵便料金の値上げによつて考えることはでき得ないのであります。七千四十六億の予算の大部分を大衆の負担において取上げ、四〇%以上を独占資本に惜しげもなく與えながら、またしても大衆課税とひとしい料金値上げという本案は、労働者、農民、一般人民の生活を一層窮乏化するがゆえに、われわれは根本的に反対するものであります。第二に、破壞され荒廃したままの姿で公共のサービスとしての逓信省が独立採算制を強行しようとすることに無理があり、不合理があるのであります。わが党は、逓信省関係会計の独立採算制には、当初より、また昨年度の料金値上げの折りにも強く反対して参つたのであります。
 繰返して申し上げますならば、逓信事業は公共へのサービスを目的とするものであります。この本來の目的を達しますためには、
現在では相当の人員、資金、資材この事業に確保せられねばならないことは、安本通信局の通信事業サービス目標によつても明らかであります。現在荒廃の状態で今後独立採算性が強行されますならば、さらに幾たびか郵便料金の値上げを余儀なくされるでありましよう。そうして、サービス事業としての本來の使命はまつたく失われてしまうのであります。
 今日眞に通信を國民のものとするためには、独立資本の犠牲においても、公共のための事業の会計は独立採算制をやめて一般会計より補助し、從業員には生活の保障できる賃金を與え、合理的人員の配置をしなければならないのであります。この意味では、むしろわが党の主張する國営の強化、人民管理方式による以外には不可能であります。机上プランによる独立採算制の強行は、大衆の犠牲において独立資本の前進をはかる以外の何ものでもないからであります。
 第三の反対理由といたしましては、通信事業の復興の面からであります。大衆の負担によつて五十億の赤字を埋めることができましても、本年度の逓信省関係の予算におきましては、通信事業の復興は停滞し、設備の老朽化と人員の整理によるサービスの低下は免れないのであります。政府の考える電氣通信復興五箇年計画すら根底からくつがえり、昭和九、十年のサービス水準までの回復は困難とされているのであります。おそらく五十億の郵便料金の値上げをやむを得ないと考える人々におきましても、今日以上のサービスの低下は忍び得ないがゆえに、この値上げによつてサービスの改善を期待するからであります。ところが、すでに人員整理による幾たびかのサービスの低下は、郵便、電信、電話、為替、貯金、保険、年金等すべての事業面に現れつつあるのであります。通信料金の値上げによつてサービスの改善となるかのような國民の期待は、まつたく裏切られるでありましよう。
 最後に、本案と連関いたしまして、私は日本人として特に憂慮いたしますことは、今年度の予算を通じて、わが國の通信事業が民主的な復興への途をたたれつつある点であります。二省分割による機構の簡素化、人員整理、食べられない六千三百七円の賃金、労働強化、さらに建設予算の削減、機器納入規格の嚴格化等は、独占資本による生産の集中と相まつて、日本の神経ともいうべき重要な通信事業がおのずと外国資本の支配下に置かれるような地ならしとなりつつあると見るからであります。(拍手)さらに、ここからわが國通信機器の中小メーカーは崩壊しつつあり、日本の民族資本そのものが危機を招いているのであります。
 日本の通信事業を破懐し、荒廃するままに任せて顧みず、その理由のもとに外資を導き、通信事業の自主的な復興の途を断つような一連の亡國政策と切り離し得ない本案でありまするがゆえに、以上簡單ではありまするが、第一に大衆を犠牲にする予算の面から、第二に独立採算制の強行の不合理な点から、最後に日本の通信事業防衛の立場から、これらと切り離し得ない本案に私は全面的に反対するものであります。(拍手)
#52
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 ただちに採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案の委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#53
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
 有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
 企業再建整備法の一部を改定する法律案(内閣提出)
#54
○山本猛夫君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案及び企業再建整備法の一部を改正する法律案の両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#55
○議長(幣原喜重郎君) 山本君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#56
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
 有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案、企業再建整備法の一部を改定する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大藏委員長川野芳滿君。
#57
○川野芳滿君 ただいま議題となりました有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過並びに結果について概略御報告申し上げます。
 今回改正しようといたします主要点は株式登録制度の簡素合理化でありまして、なお第二点といたしまして日本銀行を証券処理調整協議会の協議員から除くこと、第三点といたしまして罰金の金額を引上げることについて改正しようとするものであります。
 すなわち、第一点の株式登録制度の簡素合理化につきましては、今回株主登録制度の範囲を拡張いたしまして、大会社にも株主登録をさせる必要が生じたのでありますが、大会社にとつては、現在の制度のように株主全部について証券処理調整協議会に報告し、爾後毎月これらの全株主の異動について報告するようなことは煩瑣にたえないこととなりますので、この制度を簡素合理化いたしまして、五千株以上の株主についてのみ登録すれば足ることといたしますとともに、株式分布状況報告書を提出いたさせまして、株式民主化の実態を報告させることとしようとするものであります。
 第二点の日本銀行を証券処理調整協議会の協議員から除くことにつきましては、日本銀行が閉鎖機関特殊清算人から解除されましたので、この措置をとろうとするものであります。
 次に第三点の罰金金額の引上げにつきましては、指定証券の譲渡委託義務の違反等の罪並びに職員の証券賣買等の罪に対する罰金一万円を十万円に、また職員等の祕密漏洩の罪に対する罰金一万円を三万円にそれぞれ引上げることとしようとするものであります。
 この法案は、去る二十二日、本委員会に付託されたものでありまして、二十三日提案理由の説明を聽取し、本日質疑に入りましたが、宮幡委員よりは登録制度適用を五千株以上とするのは低きに過ぎはしないか等、河田委員よりは五千株とした標準について、北澤委員よりは証券取引所再開の時期等について質疑がありまして政府側よりそれぞれ答弁がありました。次いで討論を省略し採決に入りましたところ、起立多数をもつて原案通り可決いたしました。
 右御報告申し上げます。
 次に、ただいま議題となりました企業再建整備法の一部を改正する法律案の本委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます
 今回改正しようとする点は、新勘定に損失のある特別経理会社が整備計画により第二会社を設立することのできるようにいたしますための規定を設けることであります。現行法におきましては、特別経理会社が第二会社に資産を出資いたします場合、新勘定の債務をこれに承継せしめるとともに、その債務に相当する資産を譲渡しなければならぬことになつていますが、新勘定に損失のある会社は債務に相当する資産がないので、このような場合例外として第二会社に承継せしめる債務のうち損失に相当する額については資産を譲渡しなくても良いことにするのであります。この例外規定によりまして第二会社が譲渡を受けた資産が承継した債務に不足する額は、第二会社特別勘定として貸借対照表の資産の部に計上せしめることとし、第二会社の以後の決算期において利益を生ずるときは、必ずこの第二会社特別勘定の償却に充てなければならないことといたします。
 なお以上のような措置に伴い、税法上次の特例を設けます。すなわち第一に、見合資産を伴わないで債務を承継させたことによる特別経理会社の益金は税法上益金と見ないこと、第二に、第二会社特別勘定の償却額は、旧会社における第二会社設立前一年以内に開始した事業年度の損失の範囲内で第二会社の損金を見ること、第三に、第二会社特別勘定の償却額で第二会社において損金と見られるべき金額は、存続する旧会社においては損金と見ないことであります。
 この法案は、本日、本委員会に付託されたものでありまして、提案理由の説明を聽取し、ただちに質疑に入りましたが、宮幡委員、塚田委員、高間委員より二、三の質疑がありまして、政府委員よりそれぞれ答弁がありました。次いで討論を省略し採決に入りましたところ、起立多数をもつて原案の通り可決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
#58
○議長(幣原喜重郎君) ただいま、議題となつております両案を一括して採決いたします。両案の委員長の報告は、いずれも可決であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#59
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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