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1947/11/06 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第45号
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1947/11/06 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第45号

#1
第001回国会 本会議 第45号
昭和二十二年十一月六日(木曜日)
   午前十時十四分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第四十四号
  昭和二十二年十一月六日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
    ―――――――――――――
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。お諮りいたすことがございます。昨五日、山本勇造君より図書館運営委員を、木下盛雄君より労働委員を、おのおの理由を附して辞任の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として岩本月洲君を図書館運営委員に、川村松助君を労働委員に指名いたします。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件、大藏大臣より発言を求められております。栗栖大藏大臣。
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇、拍手〕
#6
○國務大臣(栗栖赳夫君) 我が國の経済状況は正に空前の危機に直面いたしておるのであります。終戰以來二ケ年余を経過いたしましたにも拘わらず、生産は依然として沈滞し、特に鉱工業生産のごときは、戰前の生産額に比し、未だ三〇%前後に過ぎないのであります。食糧の不足も亦断えず國民生活を圧迫し、生産活動を阻害しておるのであります。他方かかる生産の不振に反し、通貨は毎月膨脹の一途を辿り、日本銀行券は本年一月末の一千億円から、十月末には一千六百七十六億円に達しておるのであります。この生産の沈滞と通貨の膨脹との結果、物價は騰貴を続けまして、本年九月における消費財の闇價格は、昭和十二年七月に比べまして二百数十倍に達し、又東京の生計費は、すでに昭和十二年の六七十倍に増嵩し、國民はいよいよ深刻な困窮状態に喘いでおる次第でございます。物價の高騰は又企業の採算を困難ならしめ、これを救済するために、補助金、赤字金融、製品の價格改訂等の方法を採ろうといたしますれば、それ自体がインフレーシヨンを拡大する結果と相成るのであります。更に中央及び地方の財政について申しましても、その歳出が膨脹を続ける一方、これを賄いますところの新財源は誠に乏しく、而も現在租税の滞納は相当巨額に上り、財政の建直しにつきましては、今日正に重大な岐路に立つものと申さなければならんのであります。かかる空前の経済危機を克服いたしますには、もとより通貨面の対策のみを以ていたしましては、到底成功を望み得ないのであります。生産、輸送、労務等、物資面その他の諸施策が綜合一体となつて、強力に実施されなければならんのでありまして、これにより生産面の好轉することが、危機突破に極めて重要な意義を持つことは申すまでもありません。而してかかる経済綜合対策の一環たる財政金融施策は、通貨面におきましてはインフレーシヨン促進の要因を根絶するために、中央及び地方に亙る健全財政と健全金融との方針を堅持いたし、その基盤をなす國民資本の蓄積に全力を盡すと共に、更にその限りある資金を、國民生活の安定、重要生産の振興等、経済再建のために効率的に投下すること以外にはないのでありまして、今次補正予算の編成も亦この線に沿つて行なつた次第であります。即ち歳入の不足を市場の消化能力を超えた赤字公債で賄いますならば、その面から生ずる通貨の増発が、インフレーシヨンを激化することは必至であります。而も財政の赤字が惹起しましたインフレーシヨンは、企業と家計との赤字の原因となり、更に企業と家計との赤字が反轉いたしまして財政の赤字を拡大するというように、赤字の循環が通貨の膨脹と物價の昂騰との原因となり、結果となつて、遂には最悪の事態に立至るものと言わねばならんのであります。從つてこの危機の突破は、断乎として財政の赤字をなくすることから始めなければならんと信ずるものであります、殊に先に貿易の再開を見ました我が國に取りましては、今後講和会議を控え、国際的な援助を期待するために、健全財政を確立し、國際信用を回復することが欠くべからざる前提條件であります。從つて収支の均衡を得た赤字なしの予算が第一の目標でありまして、この方針こそインフレーシヨンの破局化を回避するために、必要な最小限度の、而して最大の目標として我々が最も努力を傾倒いたしたところであります。
 次に、第二の点といたしましては、單に予算面で赤字を消すというだけに止まりませず、財政、企業、家計を通じ、國民経済全体を綜合的に把握いたしまして、その再生産に寄與し、経済再建に資すると共に、國民生活の安定確保を期する予算たらしめなければならんのであります。尤も一般会計と特別会計、中央の財政と地方の財政とは密接不可分の関係にあるのでありますので、一般会計において予算の均衡を図り得ましても、特別会計或いは地方財政において収支の均衡を失うことになりますならば、その面からインフレーシヨンが促進されますので、政府といたしましては、これら各財政を通じ、全体といたしまして実質的に健全財政を確立するよう最善の努力を拂わなければならないのであります。これがために特別会計におきましては、鉄道、通信等の企業会計につき独立採算性の原則を建前といたしますと共に、今後一層経営の合理化に努めたいと考える次第であります。又地方財政につきましても、経費の節減に格別の努力を拂いますと共に、歳入増徴の途を講ずることを要請し、万止むを得ず財源を公債に俟つ場合におきましても、市場消化が可能な額に止めることとし、尚將來は地方財政が独立し得るよう根本的な制度その他を檢討するつもりであります。
 昭和二十二年度予算は、昨秋から本年初頭にかけて編成されたものでありますが、その当時と現在とでは、財政の基盤を成すところの経済的、社会的條件に相当著しい変化を見るに至りましたので、この聞の調整を図ることが補正予算提出の主な理由であります。即ち昨年二月、金融緊急措置令の実施に伴いまして、物價賃銀の安定を図るために物價体系が定められたのでありますが、その後インフレーシヨンの進行によりまして從來の公定價格が実情に即せんこととなりましたので、本年の七月に政府は経済緊急対策の一環として、物價と賃銀との悪循環を切断し、國際貿易の再開に備え、できる限り價格系列を整えるために新物價体系を制定いたしましたような次第であります。その結果昨年十月頃に比べますと、物價は二倍半乃至三倍、賃銀は千二百円水準から千八百円水準へと増嵩したのでありまして、かかる物價水準の改訂に伴いまして、相当巨額の歳出追加が必要となつた次第であります。更に経済緊急対策の実施による流通秩序の確立、企業経営の健全化に伴う失業対策、貿易再開による経済体制の整備、東北地方、関東地方その他の水害対策その他本予算編成当時予測しなかつた事情の変化に対処いたしまして、施策の万全を観するためにも亦新たな予算上の措置を必要とするに至つたのであります。從つてこの際当初予算とも併せ、全面的に且つ徹底的に檢討を加えまして、ここに昭和二十二年度一般会計補正予算を作成いたしましたような次第でございます。
 以上の理由により編成いたしました昭和二十二年度一般会計予算補正におきましては、第一号から、近く提出いたしまする第八号までを通じ、歳入歳出共に九百二十一億六百余万円でありまして、本予算と通計して歳入歳出共に二千六十六億千余万円となるのであります。而して右の補正において、当初予算に計上いたしました公債金収入をも普通歳入により賄うことといたしましたので、年間を通じて、形式的にも実質的にも歳入不足のない予算の編成を見るに至つた次第でありまして、これは多年臨時軍事費等の統計において、歳入の五〇%以上を公債財源に依存し來りました我が國の財政に取りましては、正に画期的のものと申さなければならんと思う次第であります。
 尚今次補正予算の編成に際しましては、財政法が公債財源で賄うことを認めておりますところの公共事業費及び政府出資金につきましても、その財源を普通歳入によつて確保し、更に当初予算についても再檢討の結果、人件費、物件費、補助費等の全般に亙り眞に止むを得んものを除きましては、概ね予算額の一割程度を予算上減少するため、別途予算補正第八号を提出することといたした次第でございまして、健全財政の確保に全力を傾けた次第でございます。
 歳出の主な項目につきまして御説明いたしますと、先ず終戰処理費は、本予算に賠償施設処理費を含めまして二十億円を計上した次第でありますが、当時は住宅新築計画その他について未確定な事項が多く、正確な積算が困難でありましたところ、その後当初の見込以上に計画量が増加し、又公定價格の引上に伴い、積算單價に相当著しい改訂を生じた等の事情に基ずきまして、巨額の予算追加を必要とするに至りましたので、あらゆる角度から愼重に検討に検討を加えますと共に、関係方面ともしばしば折衝を重ねた結果、ここに三百九十億円の追加を計上することといたした次第でございます。尤も本経費の当初予郷中に含まれました賠價施設の管理保全に要する経費十七億二千七百万円を賠償施設処理費の一部として整理するため修正減少いたしましたので、今次追加を加えて本年度の終戦処理費は合計六百四十二億七千三百万円と相成るのであります。政府は終戰処理費の支出の適正を期しますために、監査制度の確立、入札制度の採用等に努力して参りましたが、関係方面におきましても不要不急の調達要求を極力抑制すると共に、本年九月十二日附を以ちまして、政府支出の節減に関する覚書を寄せ、政府の行う調達は必ず公定價格を嚴守するよう要求されておりますので、この趣旨に副いまして公價調達の嚴守を確保し得るよう法的措置を講ずる等、更に格段の注意と努力とを傾注するつもりでございます。尚賠償施設処理費は先に述べました通り、本予算における終戰処理費中、賠償施設処理費十七億二千七百万円を修正減少し、同額を本費に計上すると共に、本年度中に実施を予想される撤去施設の解体、梱包、輸送等に、要する経費と管理費用の物價賃銀等の値上り等による増加額とを合せまして二十二億七千三百万円を追加計上いたしましたので、総額四十億と相成る次第でございます。
 次に、公共事業費の当初予算額は九十五億円でありましたが、今次補正によりまして五十二億四千六百余万円を追加計上いたしましたので、本予算と通計して百四十七億四千六百余万円に上ることと相成つた次第でございます。既定費の追加を極力圧縮したため、事業量は当初の計画に対して相当の減少を示し、かかる建設的な費目を十分計上できんことは遺憾でありますが、所要資材の供給力との関係もあり、この程度の増額に止めるの止むなきに至つた次第でございます。
 價格調整費は当初予算におきましては、食糧管理特別会計への繰入れを含めまして百六億二千八百余万円を計上しておりましたが、今次補正において百五十八億円を追加し、当初予算より通計いたしまして二百六十四億千八百余万円と相成るのであります。この追加は新物價体系の制定に伴い、基礎物資の價格安定帶の限界まで引下げることといたしましたので、石炭、鉄鋼、銅、鉛、肥料等の物資について價格調整補給金の増加を要する結果であります。
 次に、失業手当及び失業保健制度の創設、失業対策関係事務機構の整備等につきまして所要の経費を追加いたしましたのは、経済緊急対策の実施による流通秩序の確立及び企業経営の健全化に伴う失業対策について、新たな構想の下に万全の措置を講ずることといたしたために外ならん次第でございます。政府事業につきまして極力経営の合理化を図り、独立採算制の原則を建前とすることは先に一言いたしましたところでありますガ、國有鉄道及び通信事業両特別会計におきましては、すでに相当の歳入欠陥を生じており、今直ちに事業料金の引上によつてこれを補填することが困難でありますので、一般会計の普通財源を以て両会計の損益勘定に十一月以降生ずる歳入欠陥を補給するため、鉄道事業に対しましては五十億円、通信事業に対しましては二十五億円の繰入を計上いたしましたような次第であります。もとより今回の措置は極めて臨時例外的の措置でありまして、今後両会計とも収支の改善を俟つて右の金額を一般会計へ返済する予定であります。尚特別会計への繰入は、この外大藏省預金部特別会計への繰入十億円を含めまして、合計八十五億円を政府事業再建費に計上いたしておる次第であります。
 政府職員の給與が本年一月に遡つて平均千二百円水準から千六百円水準に引上げられ、更に七月以降千八百円水準に改訂されましたこと等によりまして、政府職員の待遇改善費として五十四億七千九百余万円を追加計上いたしました。尚七月以降における東北地方、関東地方等の水害による災害救助費として四億一千余万円を追加いたしております。
 次に、この緊急止むを得ない経費の増加をいかにして賄うかにつきましては、健全財政の大原則から極力財源を普通歳入によることといたしまして、増税と專賣收入の増加に訴えた次第であります。先ず租税におきましては、財政需要の飛躍的な増大に対処して増收を図りますと共に、経済諸情勢の推移に應じ、國民租税負担の公正を期することを目標といたした次第であります。即ち今次の税制改正に当りましては、直接税の中、租税の中枢たる所得税につきまして、國民所得分布状況の変化、國民生活の実情等に鑑み、勤労大衆その他少額所得者の負担を軽減するため、五十一億円の減収にも拘わらず、勤労所得及び扶養親族に対する控除を相当程度引上げる半面、いわゆるインフレ利得者等一定額を超える所得者に対し負担を重課するため七万円を超える所得に対する税率を引上げることといたした次第であります。
 間接税につきましては、酒税については十三割程度、清涼飲料税にいつては二十割程度、サツカリン、飴等に対する物品税については十割乃至四十割程度の増徴を行い、又入場税については、その消費の性質、財政需要等に顧み、五割程度引上げることといたしておる次第であります。又戰災者と非戰災者との間における犠牲の不均衡を是正すると共に、臨時緊急な財政需要に應ずるため、非戰災者特別税を創設いたしまして、戰災を免れました家屋及び動産について、一回限りそれぞれ家屋の賃貸價格の三倍程度の特別課税を行うことといたしました。
 今次の補正予算に計上した租税収入及び印紙收入の総額は六百三十七億二千六百万円、当初予算と通算して千三百三十二億四千余万円に上りますが、その内訳は、直接税八百九十五億円、間接税四百二十一億円、その他十七億円でありまして、直接税と間接税との比率は、今次予算と当初予算とを通算して七対三になり、間接税の割合は必ずしも大きくはなく、而も間接税の増徴については極力必需品を避ける等、できる限り大衆課税を避けるように努力いたした次第であります。すでに国民生活が一般に著しく窮迫を告げておる実情に鑑みますならば、大衆の租税負担も決して軽くはないのであります。他方総歳入中和税の占める地位は、追加予算のみで六九%、当初予算まり通算して六五%、というように、決定的に重要となつておるのでありまして、租税完納の成否が正に財政収支の運命を決定する鍵となつておるのでありますから、若し現在の納税状況が改善されぬ場合には、我が國の財政は甚大な脅威に暴されることを覚悟しなければならぬのであります。而も國民所得の分布状況は、時々著しい変化を示しておりますので、新たな税源を捕捉し、インフレ利得者等に対する課税を徹底して、租税負担の公正と、租税收入の確保とを同時に図るためには、税務機構を拡充強化し、税務職員の待遇改善を図ると共に、税務の運営方法を刷新し、脱税の摘発、処罰の強化、第三者通報制の活用、滞納処分の促進等により、税収の充実に努めることが最も肝要と考えられ、この点につきましては、この十一月を期し、全國的に活溌な一大納税運動を展開し、國民の納税に関する認識の普及徹底に努める所存でありまして、全國民の財政及び租税に関する理解と協力とを深く期待いたしておる次第であります。
 次に、官業及び官有財産收入は、当初予算において二百五十八億六千七百余万円を計上いたしましたが、補正により二百六十一億六百余万円を追加し、通計して五百十九億七千三百余万円と相成るのであります。而して補正額の中、専賣益金は二百五十九億六千二百万円であります。專賣益金については、煙草専賣において画期的な増收の方途を講ずるため、自由販賣品の値上げと自由販賣品の供給数量の増加とを実施することといたしました。即ち煙草の値上げにつきましては、これを自由販賣品たるピース及びコロナのみに止め、配給煙草の價格は据置くことといたし、大衆の負担を増加させないように努めたのであります。他面自由販賣品の供給数量を増加するため、「光」及び「きんし」の製造を今後一時中止してピースの増製を図ると共に、新たに「新正」を製造し、これを自由販賣するの余儀なきに至りましたので、これら自由販賣品の供給数量を増加するため、止むなく家庭配給量を削減しなければならなくなつた次第であります。
 尚難收入等につきましては、今次補正により七十一億四千六百余万円を追加し、当初予算より通計すれば二百十三億九千六百余万円と相成るのでありまして、この内、價格差益納付金は新物價体系実施に伴いまして、六十億六千六百余万円を追加し、通計七十一億四千八百余万円となるのであります。
 さて、以上補正予算の内容について概略御説明いたしたのでありますが、先に述べたる予算編成方針が、今次の補正予算にいかに具現されたか、又今次の補正予算が我が町民経済に対していかなる影響を與えるかについて、次に檢討して見たいと思う次第でございます。
 今次の補正予算は、収支の均衡において成功を見たのでありますが、勿論そのためには相当の無理も忍ばねばならなかつたのであります。即ち多数の企業と家計とがすでに赤字に悩んでおる今日、新たに九百二十一億六百余万円の財源を追加調達して、企業と家計とに何らの苦痛を與えずに済ませるということは、甚だ困難であります。又現在の政治的経済的難局の下において、予算に國民経済の再建や國民生活の安定を期待することも容易ではありません。さりとて企業を育成し家計を保護するため、健全財政主義を放棄して通貨の増発に訴えますならば、端的にインフレーシヨンを破局に導き、結局企業及び家計をも破壊するものであることが明瞭であります。現在與えられました條件の下においては、いかなる施策を採ろうとも、所詮何らかの無理を生じ、いずれかの部門へ圧迫が加わることは避け難いのであります。我々といたしましては、特に勤労者の立場を愼重に考慮した今次の予算が、比較的に無理の少い圧迫の軽い最善の方策であると信じておるのであります。各位におかれましても、この辺の事情をよろしく御了察をお願いいたしたいと思う次第であります。
 先ず本年度國民所得総額を概算九千億円と推定いたしますれば、本年度予算総額二千六十六億千余万円は、その約二三%に当り、國民所得の内容が著しく悪化しておる上、財政資金としてこの外に特別会計分が加算される事情をも考慮に入れますと、財政の比重がとみに重加して参つたことは否定できません。財政資金の外、更に生産を増強し、國民経済を復興するために、産業資金として必要な瀬も相当に上るのでありましようし、國民の最低生活を維持するためにも相当の資金が必要と考えられますので、本年度第二四半期までの資金需給計画の実績を見ましても、相当額の通貨の増発を見ておる現状に鑑みますれば、今次の補正予算によつて財政需要が一段と増大される結果、今後國民所得を増加し、納税成績を向上し、貯蓄を増強することに、從來に比し格段の努力を傾けませんならば、インフレーシヨンの怒濤を乗り切ることは困難となると思う次第であります。今次の補正において均衡予算の編成に成功したために、直接通貨の増発によつて赤字を補う必要はないのでありますから、通貨増発と物價騰貴とは直接には財政の面から生じないものと予想されます。元來この補正予算は新物價体系による本予算の修正を中心としておりますが、右に述べた理由によつて明らかなる通り、この補正予算は直接に新物價体系を動揺せしめるようなものではない。賃金について千八百円ペースを崩壊せしめるものではありません。即ち本補正予算においては租税の増徴においても能う限り大衆課税を避け、專賣益金の増收についても同様の考慮を拂う外、政府事業の料金の引上げを回避する等、物價騰貴に波及する要素を極力排除することに努めますと共に、勤労所得者及び扶養親族を有する者の負担軽減を断行する等の措置を取つたのでありまして、今後配給物資の増加による実質所得の充実を確保いたしますならば、追加予算の施行によつて賃金水準の維持を危殆ならしめるごときことは起らないと存ずる次第であります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)勿論このためには政府並びに國民が最善の努力を拂うことを前提としておるのであります。勤労によつて國民所得を増大し、忍苦耐乏の生活によつて納税と貯蓄に邁進する以外には、この空前の危機を突破し、再建の礎石を確立することはできないのであります。現下の世界経済は挙げ一物資の欠乏と物價の昂騰に悩んでおるのであります。戰勝國においてすら乏しきに耐え、その打開に敢鬪しており、北米合衆國を始め連合國がみずからの食糧を節約して、我が國を含む窮迫した國々を救つておることを考えますならば、我々はこの決意を一層固くせねばならん次第であります。
 さて、我々は健全財政を目標として予算の編成に苦心を拂つた次第でありますが、刻下のインフレーシヨンを克服するためには、金融政策も亦健全金融の方針を堅持することが必須の要件であります。財政を引締めた結果が、金融面に韓嫁されぬことになれば、健全財政は單なる計数の遊戯に過ぎないのでありまして、健全財政と健全金融とは車の両輪のごとく相伴うことによりまして、始めて通貨増発の克服は可能となるのであります。
 從つて現下の金融政策といたしましては、この健全金融の方針に則りまして、財政資金と産業資金とを蓄積資金の範囲内で賄うことが必要であります。而して更に産業面における重点主義に呼應して、限られた蓄積資金を緊要産業に対し重点的に集中し、重要産業の生産力を増強して、経済再建への途を開くことを要諦とすべきものでありまして、決して、不要不急の消費的部面に投じ、或いは積極的な生産も合理的な経営も、行なつていない企業に対し、赤字補填のため金融を行うごときことがあつてはならないと思う次第であります。去る三月重点金融を目標に金融機関資金融通準則を制定し、更に七月からこれを強化する等の措置を講じて最重点産業に対しては優先的に資金を供給し、貿易金融につきましても、貿易スタンプ手形制度その他によりましてその円滑化を図りますと共に、他面中小企業につきましてもその特殊性に鑑み、その他緊要なる金融の適正円滑化に努めたいと思う次第であります。復興金融金庫の融資が現下の産業金融上占める地位は、日を逐うて重要性を増大いたしまして、基礎産業に対する必要資金の供給に遺憾なきを期しておるのでありますが、今回の補正予算において復興金融金庫の財源として四十億円の政府出資金を計上すると共に、復金債券の発行に当りましては、これが消化につき從來の不成績を改善するようできるだけ努力し、各種金融機関の共同引受等の方法により、金融面から生ずる通貨増発によつて、健全財政を無意味ならしめるようなことのないように注意いたしたいと思う次第であります。中央、地方の財政を通じ極力赤字の発生を抑止するに努めておりますが、止むを得ず公債を発行する場合におきましても、全額市場消化を図るこ一とが必要でありますので、公債の発行は原則として公募による方針を堅持すると共に、先に一言いたしましたように、融資規正により一定制合の融資基準限度を超える額は、公債の消化等財政資金に振向けることといたした次第であります。これに伴い最近における金利昂騰の傾向に鑑みまして、先に國債の利廻りを金融機関における採算点に置くことを目途として、一般的に金利水準を改訂いたしました。この新利廻りによる最初の國債は、去る九月二十五日金融機関の直接引受並びに有價証券業者を通ずる公衆消化の方法で発行いたしまして、十億円全額の消化を見た次第であります。ここに市場消化による国債発行の第一歩を踏み出した次第でありますが、更に引続き第二回の国債発行が去る十月二十五日行われまして、これ亦各方面の協力により消化総額十三億円に達する好成績を收めた次第であります。
 今回提案にかかる補正予算の施行により、財政資金の需要額を一層増大いたしますと共に、産業資金も亦最近著しく需要の増嵩を見ておるのでありまして、これら総体の資金需要額は誠に巨額に上ることと予想されるのでありますので、健全財政、健全金融の大原則を堅持するためには、資金の蓄積が絶対に必要となつて來るのであります。政府は先に民間貿易の再開を契機といたしまして、九月に一大國民貯蓄運動を展開したのでありまして、最近の自由預金の増加は、七月は百十九億円、八月は百四十七億円、九月には百七十九億円の増加という好成績が見込まれているのであります。この資金需要の増嵩と封鎖預金の引出しとを考えますならば、すでに日本銀行券の膨脹によつて明らかでございます通り、未だこれで十分とは言えないのでありまして今後更に更に努力を要する次第であります。先般衆議院におきましては、通貨安定に関する共同決議を以て、この点に関する絶大な理解と協力とを示されているのでありますが、これに対して衷心感謝いたしますと共に、國民各位の一層の努力を勢望いたしまして止まない次第であります。
 而して貯蓄増強について最大の前提となるものは、國民各位の通貨に対する信用でございます。今回の追加予算の編成に当りまして、健全財政主義を堅持したことも、畢竟通貨に対する信用を維持増進せんがために外ならないのであります。一時巷間に流布されました新円再封鎖や、いわゆる平價切下げのごとき措置は、通貨に対する信用を根抵から動揺させるものとして、絶対にこれを行わないことをここに再確認いたしますと共に預金の安全性を確保することに格段の努力をいたす決意でございます。私は國民が最悪の條件の下におきましても、奮然起ち上ろうと渾心の力を惜しまないならば、おのずから希望の途も開けて來ると信ずる次第であります。去る八月十四日連合国司会部から発表されました民間貿易の再開と、占領下日本輸出入回轉基金の創設とは、我々の苦鬪二ヶ年余の努力に対する最大の贈り物でございました。これは過般の連合軍による食糧放出が、我が国民生活に大きな安定感を與えましたことと共に、誠に適時適切な救済として深甚なる謝意を捧げるものであります。狭小なる国土、貧弱なる資源の上に育たねばならん我が國民経済は、対外依存度が極めて濃厚でございます。世界貿易から孤立するがごときことは、元來到底考えられないのであります。終戰後、我が鉱工業生産力の回復が遅々として進まなかつた一つの大きな原因が、設備の不足よりも原料等の不足によるものであることを考えますならば、綿花その他の重要原料の輸入が、我が國の麻痺した生産力の覚醒に役立つところは蓋し測り知れないものがあろうと思うのであります。而してこのためには、その輸入資金を調達することが先ず必要で、從つて輸出産業の振興が喫緊の要務でありますが、回轉基金の創設は、この意味において貿易の促進に大きな力を與えるものでありまして、我々はこれを呼び水といたしまして、どうしても日本産業の立直し、延いては日本経済の再建を達成しなければならんと思うものであります。現下の経済状況はなかなか述べました通り未曾有の難局であります。併し國際経済への連繋によつて、新らしい経済を再建する明るい希望の途も開かれているのであります。黒の世界に閉じ込められているわけではありません。この新日本経済の再建こそは、平和的な新日本を子孫に残すために、我々国民のなし遂げなければならない忍苦に満ちた、併し光栄ある大事業であると信ずる次第であります。私は日本民族傳統の勤勉と忍耐とによつて、必ずやこの事業を成就することを信じて疑わない次第であります。補正予算の提出に当りまして、現下の財政経済問題につき所信を述べた次第でございます。各位におかれましては、何卒政府の意の存するところを御了察の上、速かに本案に御賛成あらんことを希望して止まない次第であります。(拍手)
   〔矢野酉雄君発言の許可を求む〕
#7
○議長(松平恒雄君) 矢野酉雄君。
#8
○矢野酉雄君 議長に対して、実は今大藏大臣の説明のごとくこの補正予算は実に重大である、而して次に質問すべき人々の中には、この重大なる補正予算の責任者である大藏大臣以外に、或いは首相に対し、或いは安本長官に対し、或いは商工大臣に対する質問もあるのにも拘わらず、それらの諸君がこの議場に出席していないのは実に遺憾である。直ちに議長は職権を以てその出席を要望して貰いたい。(「異議なし」と呼ぶ者あり)よし衆議院の方において委員会があると雖も、我が参議院は正に本会議である。この重大である場合に、これらの諸君の出席を直ちに取り計らつて貰いたい。これを要望いたします。(「賛成々々」と呼ぶ者あり)(拍手)
#9
○議長(松平恒雄君) 矢野君の議事進行に関する御発言に対してお答えいたします。首相、商相、安本長官等に出席を要求しておりまするが、首相は只今衆議院の予算委員会に出席をいたしております。商相は衆議院の鉱工業委員会に出席をいたしているそうであります。鉱工業委員会では臨時石炭鉱業管理法案について審議中の由であります。安本長官は間もなく出席をいたす筈であります。
#10
○矢野酉雄君 議事進行について‥‥
#11
○議長(松平恒雄君) 矢野君。
#12
○矢野酉雄君 重大な質問でありますが故に、議長に暫時休憩の動議を諮つて頂いて、そうしてこれらの諸君が出席せられて開会するようにして貰いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)動議を提出いたします。(「賛成々々」と呼ぶ者あり)
#13
○議長(松平恒雄君) 休憩をすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。暫く休憩をいたします。
   午前十一時八分休憩
     ―――――・―――――
   午前十一時四十三分開会
#15
○議長(松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。國務大臣の演説に対し質疑の通貨がございます。これより逐次通告順によりまして質疑を許可いたします。川上嘉市君。
   〔川上嘉市君登壇(拍手)〕
   〔「大藏大臣はどうした」、「大藏大臣の出席を要求せよ」、「やれやれ」と呼ぶ者あり〕
#16
○川上嘉市君 一千億円に達せんとする追加予算が、本日本院に提出せられました。この数字は数年前におきましては、我々が夢想だもしなかつたような大きな数字であります。何故我々がかかる大きい数字を取扱わなければならんかということは、これは原因は結局戰後のいろいろの施設、それに対する支出も大いなる原因ではありますが、最大なる原因は今日のインフレによるものであると考えます。大藏大臣の先程の演説の中にも、我が國の経済状態は正に空前の危機に直面しておるということを率直に認められております。然るに政府の物價安定に対する諸施設は、輿論の大勢を判定いたしますのに重大なる過誤を犯しておるというような結論であると考えております。その結果物價昂騰はいよいよ拍車せられまして、國家の財政は勿論のこと、国民生活を脅威いたします。そうして善良なる國民は現在の生活並びに將來の生活に対する非常な不安に慄いておる有様であります。而して國の経済は將に破綻に瀕せんとしておる現状であります。
 私はここに憂國の至情に駆られ、國民の困苦を傍観するに忍びませず、以下少しく政府に対して苦言を呈し、その反省を促したいと考えておる次第であります。願わくば率直に、懇切に私の質問に対してお答えあらんことを予めお願いして置きます。大藏大臣は來ておらんぞ」と呼ぶ者あり)
 第一の質問は、物價安定のために政府は今日昭和九年、十年、十一年の平均物價の六十五倍という安定帶を仮定しております。勿論物價安定のために或る目標を立てるということは是非必要なことでありますが、一体こういつた大問題を決するに当りましては、確乎たる根拠がなければならんと考えるのであります。然るに政府の六十五倍という決定には、余り根拠のないように私は信じておるのであります。若しこれに対して確たる理論的若しくはこれに代るべき実際の根拠があつて六十五倍に殖えたというのでありますならば、何故そう決めたかという理由を御説明願いたい。これが第一の質問であります。
 次には、今日千八百円というベースの生活でありますが、これは先程申しました六十五倍の物價安定帶と両方が歩み合つてここに物價を六十五倍の程度に安定しようという構想でありますが、ところがなかなかこの千八百円を今日では維持することは容易でない。日日の新聞を見ましても、最近の官廳その外のいろいろの争議におきまして、この千八百円を動かしてくれ、もつと殖やしてくれという運動が非常に盛んであります。恐らくはこのままで暮すということは容易でないということを我々は察するのであります。
 一つの例をお話申しましよう。私が昭和八年にフランスにおりました当時に、その時分のフランス人の月給、物價というものを調べて見たことがありますが、当時普通のサラリーメンの給料が千フラン乃至五千フランというのが普通でありました。そのフランをそのまま円に直すというと、今日の日本の我々の月給とほぼ匹敵するのであります。その時分にそれではフランスの物價はどうだ、こう申しますというと、ほんの一部分の例でありますが、例えば富士絹のワイシヤツが十五フランでありました。であるからして、もし先の月給と同じ割合で以てフランをそのまま円に直してワイシヤツが十五円であれば、当時のフランス人と同じ生活を行い得るのでありますが、ところが恐らく今日は富士絹のワイシヤツは千円するでありましよう。それから上等の羽二重のワイシヤツが四十フランでありました。そのフランをそのまま円にして四十円であればよいのですが、そのワイシヤツが千五百円或いはそれ以上であります。結局物債はパリの当時の値段に比べて日本は今日三十倍、四十倍、こうなつておりまして、而も收入の方は殆んど同じだということになると、どうしてやつて行くことができるか、我々は非常に痛切に前途の不安を感ずるのであります。結局我我の物價が高過ぎる。高過ぎるが故に同じ文化の生活を暮すことができない。今日の状態を考えて見るというと、結局は殆んど文化というものが我我の生活からみんな奪い去られて、そうして僅かに食つて行くことができる。こういうだけのような状態になつておるのであります。ところが、日本が新らたに出発いたしまして、民主主義の日本、文化の日本、これを作る以外に我々の目標はないのであります。戰争はしません。我々は武を持ちません。文によつて立つときに、我々の中から文化というものを取り除いたならば、何が新らしい日本ができましようか。そういう点を考えて見ると、本当に日本人が將來やつて行くためには、この物債というものを或る処に引き下げて、本当に文化水準を保ち得る適当な文化水準を保ち得るようにしなかつたならば、日本人というものは結局ただ食うだけの、殆んど三等国、四等國、或いは殆んど野蛮人と同じような生活に甘んじなければならんという結果になることを懸念するのであります。それで、そうかと申しまして、千八百円の基準を今度崩す、こうなるとどうなるかと申しますと、いわゆる安定帶というものが、これが崩れてしまう。六十五倍。仮りに千八百円を四千円に上げる。或いは三千円に上げる。そうして食う方が幾らか樂になつたというときには、又今度は物價の六十五倍というその安定帶が崩れてしまつて、この方が又百三十倍になり、或いは二百倍になり二百五十倍になる、こうなると、今までと同じように、いつまでもいたちごつこになつてしまうということになつてしまうのでありまして、現に民間のいろいろの会社では、或いは三千円とかいうようなところに突入しておる例も幾つかあるように考えております。
 そこで私がここでお尋ねしたいと思うことは、政府は千八百円のこういう基準を果して維持し得る自信があるかどうか。あるとすれば、その具体策はどうするかということをお伺いしたいと考えます。若しこの千八百円の基準が維持し得ないと仮定したときに、そのとき又更に物價が順送りになる。丁度今日厖大なる追加予算を提出されておりますが、この際に果して第二の追加予算を提出せずに済む自信があるかどうか、このお考えを伺いたいと考えるのであります。
 それからマル公を六十五倍に上げました。今回の追加予算がその物價の上つただけのためにどれだけ殖えたかということは、これは委員会のときに大藏大臣に質問いたしました。そうしたところが、約六十億円程、今後の内閣になつたためにマル公を上げただけに上つておるというお話であつたのでありますが、若しその六十五倍の安定帶が崩れるときにおきましては、恐らくはもつと、來年度の予算が幾らになるかということをも考えて見たのでありますが、恐らくは一千億円、或いは悪くすれば一兆億、一兆という数字が初めて我々の國に現われるような時代が來やせんか、こういうことも我々は懸念しておるのであります。こういう場合に、つまり千八百円のベースが守り切れない場合、そのときに果して政府はインフレを止め得る自信があるかどうか。若しありとすればどうしてお止めになるか。それについてのお考えを総理大臣にお伺いしたいと思います。
 それから物價廳のやつております最近のマル公の決定の方法でありますが 私はこれは非常に概念的に机上の議論でやつておるようなふうに、結果から見て判断されるのであります。これは闇を禁ずる。闇を禁ずるためには赤字ではいかん。つまり或る程度まで引合うようにさして置いて、そうしてその代り或る程度闇を止めてやろうという親心から出ておるとは考えておりますが、ところがその上げ方が甚だ杜撰であると考えられる節があるのであります。例えば最近、最近と申しましてもここ二三ケ月前でありますが、木材のマル公を上げた。二倍余りに上げた。その当時には木材の市價は闇よりも少し安かつたのであります。そのくらいになつておつて、上げる必要はない。そういうときにこれをぽかつと二倍幾らに上げて、当業者も面喰らつた。何故かと申しますと、役所でやられますときに、私は机上の室論で、或いは事務が非常に遅いために、半年前に或いは四ヶ月前に調べておつて、その時分には必要であつたというものが、この頃のような時勢の急変する場合におきましては、忽ちに昨日の状態が今日は変るというようなことがよくあるので、そういうときにその前の調査に基いて段々に判が遅かつた。それがやつた時分には特に時代に取残されたというようなことがあり得るのでありまして、木材なんかは確かにその一つであつた。ところが、上げてみると、又今度その二倍に上げたものの闇がそれに比例的に又上つて來ます。結局するに、政府のいわゆる六十五倍の安定帶というようなものが、若し機械的にやつておると、ただ物價を上げる手傳いをしておるような結果になるのでございまして、これは私は非常に遺憾至極だと思うのであります。最近において化学薬品を五倍に上げた。物價を五倍に上げるという理窟は一つもない。我々工業の経営に当つておる者が、いわゆる原價計算というものを少しでも知つておる人間から見れば、一度に五倍に上げる必要は少しもない。或いは火薬を六倍に一度に上げた。どういうわけかと申しますと、これは一つの例であります。仮りに千五百万円の会社がある。月に千二百万円の火薬を造つておる。それを六倍に上げたときには、月の生産が七千二百万円、こうなる。そうすると、一年にして八億円以上の製品になる。ところが、同じ量であります。値段が上つただけで同じ量を造るに、同じ工場であつて、同じ工員で、販賣費とかすべての経費というものは皆同じ、ただ使つておる原料の化学藥品が五倍になつたというために六倍に上げると仮定する。そうすると、八億円の賣上げの中で、恐らくは原價は三億円か三億五千万円で済む。そうすると、利益は一躍して三億円にも四億円にもなる。資本に対して二十倍くらいの一年に利益が挙がる結果になりやせんかと、自分の想像でありますが、概念的にいうとそういうふうに感ぜられる。これは工業家の常識であります。こういうようなことがいかにも杜撰過ぎる。これでは物價を上げるだけの話であつて、殆んど何らの意味をなさないように我我は考えるのであります。
 それでつまり政府のやつておられるこの物價政策、マル公というものを六十五倍なら六十五倍と決めたところが、それは物によつてみな違う。製品によつてみな違う。例えば我々が聽いておるラヂオ、ラヂオは仮りに聽取者が百万人あろうとも一千万人あろうとも、本の方は同じですから、だからしてここに他の物價がどれだけ上つたからといつて、それに比例的に上げる必要は一つもない。そういうことがいろいろあります。そういういろいろな場合をもう少しよくやつて貰わんと、結局は物價政策というものがインフレ破綻の手傳いをするというような結果になると考えられます。私は政府は今までのようなやり方をすつかり変えて頂くことを希望するのでありまして、これに対する若し御意見があり或いは何かいいお考えがあつたならば、これも承りたいと考えるのであります。
 それから六十五倍にマル公を上げましたその目的は、結局するにすつかり闇を止めてしまおう、このマル公だけで十分に行くようにしようという親心からであるならば、ここに上げた以上はどこまでも責任を持つて、その後始末の闇を止めなければならん。それはどうかと申しますと、実際に止まつておらん。例えば、我々がこの頃本が高くなつた。本が高くなつて紙一連が、印刷用紙一連が今幾らしますか知りませんが、二千何百円。それがマル公は二百円くらいで、十倍くらいになつておるというようなことは、これはもう公知の事実であります。そういつたようなことが一向に取締りが行き届いておらん。こうなりますと、先程申しましたように、ただこの物價政策というものは段々上げる一方で以て一向にうまく行かない。そこで他の食糧品についてもそうでありますが、食糧品の方は実を申しますというと、この頃は或いは連合軍の好意によりまして或る程度の食糧が輸入されますために、我々の食べる物はどうにか賄いがついておる。こういう実情であると考えるのであります。これは市中を歩いて見ても、殆んどいわゆる栄養失調というような、状態はこの頃は止つてしまつた。そうしてなかなか若い人などは溌剌たる元氣を以て歩いておるのを見る。そうして餓死者というものは殆んどないのであります。これらを見まするというと結局総量においてこの食糧というものは皆が食べるだけどうにかある。あるが故に皆が餓死せずにやつて行く。それにも拘わらず我々が苦しむ所以は結局はその配給が悪い。或いは非常に廻り道を通つて買わなければならん。而もそれをマル公の何倍かに買わなければならん。こういう点にあるのであります。これを直す工夫は結局闇を完全に止めること、そうして配給を適正にするというより外にないのであります。ところがこれが一向にできない。私はこれに対してもつと根本的の対策を政府にやつて頂きたいと思う。これに対する考えを聽きたいと考えるのであります。
 それから、それでは物價をどうしたら止め得るか。こういうのでありますが、私は物價の循環高の根本になる、第一段に根本になるものは何であるかというと、結局は我々の生活費が上がるが故に、給料も上げなければならん。給料を上げると工業生産費も高くなる。その外の生産費も全部高くなる。こういうふうに循環の最も根源をなすものは食糧品であると考えます。そういう点において食糧品をもう少し安定させる。少くも上がらないようにする必要がある。或いは下げる必要がある。端的に言えば下げる必要がある。こう考えるのであります。今同じ日本人の中で非常に收入の不均衡があります。例えば農山漁村の收入と、サラリーメン、或いは勤労者などの收入を比べますと雲泥の差がある。これは甚だしい一つの例でありますが、例えば「みかん」が、我々の縣は「みかん」の産地でありますが、「みかん」が一町歩の收穫高が今年は百万円ぐらいであります。又「りんご」は今日の朝日新聞にも載つておりましたけれども、「りんご」は今までのマル公で申しますというと、一町歩について少くとも百万円、多いときは三百万円ぐらいの收入になるらしい。それからお茶であります。お茶の一町歩の收穫がやはり二百五十万円ぐらいであります。これは少し多過ぎる。どう多いかという比較を申しますと、例えば工業会社、我々が事業を経営して二百五十万円利益を上げるためには、恐らくは千万円、千五百万円の資本を以て、そうして千人、二千人の従業員がおつて、そうして一年に二百五十万円の利益はないと思う。それは法人税が可なり高くて八割ぐらい税に取られると、どうしてもそんな利益が得られない。それに拘らず茶園を持つておる、或いは「みかん」園を持つておるという人が自分の一家族だけで、殆んどその資本が百万円もなく、十万円もなく、それでその收入が同じ二百五十万円、千五百人を使うより多いということはどう考えて見ても我々は不合理だと思う。ところが実際の食糧品などの決定のときはどうなつておるかと申しますと、こつちの方が値段が高いから、「みかん」を作つておる人に比して米を作つておる人は割が惡い。だからしてそれに釣合うように上げるという議論が多い。高過ぎるから下げようという議論は一回も聞いたことがない。それで段々上つてしまつて、或る一方では非常に不当と思われるような收入がある。片方では一向に收入がない。殊に勤労者、サラリーメンに至りましては、物價が上がる一方でどうにもこうにもやり切れんというのが現状だと考えます。それで今後もこの物價を安定させるためには、どうしても先ず食糧品を安定させる。少くとも上げないようにするというのでなければいかんと思うのであります。例えば今申しましたいろいろの青果物、青果物を高い高いということは皆我々眼前に見ております。どこの「みかん」屋の前、或いは果物屋の前に行つて「りんご」一山幾らとか、百匁幾らとか書いておるのを見ると、それから勘定すると、一町歩で幾らできるということが直ぐ分る。そういう高い値段でも、これは実は安定本部の或る高官の人にちよつと話したのですが、なぜこういうふうな眼の前にあるものを取締らないかといつたところが、これは自由販賣だ、こういうふうな話である。私はそのときにこういつた。一体自由販賣というけれども、これは自由販賣だからいいと見ておるのは安本の仕事ではないと思う。安本は國の経済、國民の生活、或いは財政、こういうものを安定させるまでが責任であつて、これを若し自由販賣だからどんどん上つてもいいのだと云うのは、いわゆる属僚の考え方である。責任を持つてこの安定本部の使命を遂行するならば、最後の結果を見るまでやらなければいかんのじやないかということを申したことがあります。そういう意味において物價の取締り、その他に当つておる方が、最後まで責任を持つて本当に國全体の國民の均衡とか、收入の均衡とか、凸凹を止める。そうして本当に國の経済を安定させるという方向に、もつと指導をして頂きたいと考える次第であります。
 それから政府は健全財政ということを、先程大藏大臣のお話にも度々ありました。ところが、私共感ずることは、この健全財政というのほ單に收入と支出、これが釣合うから健全であるということはどうしても考えられない。本当に健全であるというためには、丁度工場なら工場が一つの経営をする。そうしてただ政府の補助で辻褄を合わせる、或いは賣値を非常にマル公を上げて高くする、それだから引合うというのを以て、我々は健全な経営とは考えません。本当に健全であるためには、その内容が眞によく整備され、そうして能率が上つて、そして無駄がないというときになつて、初めて健全であると考えるのであります。その点になるというと、今回の追加予算の中で以て私がお伺いしたいことは、政府はどれだけの行政機構の整理をしたか、或いは能率化とか、或いは人員の整理とか、或いは配置轉、こういつたようなことをいたしまして、それで予算からして、そういつた眞に能率を上げ、眞に整理をして、それでどれだけ減らすことができたか。先程不急な事業を止めるとか、ただ止めたということは、それは都合であちこち差引きしただけでは、本当の健全財政はそういうものではないと考える。この今回の追加予算で今申したように本当に中の整理ができて、配置轉換をやるとか、人員の整理をやるということは当然の話でありまして、それが今まで形のあるやつを一つも聞いておりません。これは將來やるということは聞いておりますが、まだやつておりません。この新らしい追加予算の中で、どれだけそれが見込んであるか、その総額だけをお伺いしたいと思います。
 それから税の話ですが、(「要領だけ」と呼ぶ者あり)税の未納者が非常に多い。こういう話が先程のお話にありました。これも総額においてどれだけの未納があるか。これらもただ帳面の紙上で計算して、これだけ收入があるといつても、若し本当に拂う力がない者があり、それが相当に多く上るということになると、これも健全財政でない、こういう感じを持つのであります。この未納者の未納の秘の総額は現在幾らあるか、その現在高、それからそれに対する、必らずそれを徴收し得るか得ないかというそのお見込みを伺いたいと考えるのであります。
 それからこれは商工大臣にお伺いしたいのですが、今物價が非常に上る、上るために、買わなくてもいいような不急な物は我々は買わなくても済みますけれども、ところが仮りに工場を動かしておると、そうすると何千人の人がおるときに、いわゆる原料高で高くなつても買わなければならん。併しながら製品を上げて見たところが、もうすでに購買力を超過するということになりますと、これが賣れない。これは先程確かお話の中にあつたと思いますが、実際の状況がそんな時代に入りつつあります。若しこのままで行くというと、ここに事業の危機というものが必らず來るように我々は考えておるのであります。こういつた事業の破綻が若し將來起るときに、これに対して商工大臣はどんなふうな方法を以て対処しようとされておりますか。これをお伺いしたいと思います。
 それから輸出入の問題でありますが、昨年の食糧の輸入超過が確か一億八千万ドルと聞いております。本年の上期は一億四千万ドル、合計して本年の上期までに三億二千万ドル、こういうふうな数字を聞いておりますが、その後の輸入、それから又本年末までの輸入のお見込み、これを一つお尋ねしたいと思います。
 それから輸出入の收支がどうなつておるか。今日ドルの爲替がまだ決まつておらんようでありますが、若し仮りに一ドルを二百円と仮定するというと、そうすると仮りに四億ドル入超があるといたしますると、八百億円だけ入超になるのであります。若しこれが四百円になるというと、一千六百億円というような入超になる。ところが、これに見合うべき輸出の方はどうか。これも一つお尋ねしたいと思います。実はこの間の第一回の貿易團が参りまして、雑貨なんかの注文をした。円で行くと億という数字に達しておりますけれども、ドルにすると三百万ドルしかなかつたというような話を聞いております。こういつたような勘定で参りますと、一体日本のいわゆる健全財政も何もあつたものではなくて、皆つかり飛んで行つてしまいはせんかという感じがするのであります。特に財政当局にお願いして置きたいことは、若し円の爲替が非常に下りましたときに、それで而も講和條約ができたと、そのときに、外國の資本が参りまして日本の事業に投資をする。これは現にそういうふうな話がありつつあります。そういうようなときになつて、仮りに五百円が一ドルだというようなことになつて参りますならば、そのときには僅か一億ドルの金で、アメリカで申しますれば、五千億の國の富があるとすれば、五千円持つておる人が一円出すようなはした金で以て、日本の株は一株五十円の株が十セントになりますから、そうすると一億ドル持つて來ると、日本の事業会社の株は全部買占めができるというふうな結果にもなり得ると思うのであります。そんなことは勿論ないと思いますけれども、併しながら理屈から申せば、それはアメリカでなくても、外の國でも同様であります。こうなるというと、ここに輸出入の收支という問題は大問題になつて來るのでありまして、これに対してどんなふうな実際の数字になつておるか。そうしてこれに対してどういう將來お見込みであるかという点をお伺いしたいと思うのであります。
 それからもう一つは、現在の輸出の爲替でありますが、爲替のレートというものは決まつておりません。そうして輸出いたしますときには、ドルの値段で以て決めておるのでありますが、その内地の値段が高いものは、ドルを円に換算するときに円を高くする。例えば最高はこの頃は恐らくは四百円くらいになつておりはせんかと考えておりますが、或いは最低の方は百円くらいのものもあるようであります。その間をずつと階段的にいろいろの換算率で勘定しておるのでありますが、これが輸出の奬励のためにはよさそうであつて、又一方において非常に注意せんければならんと考えることは、若し外國へ出すときに、余り円を沢山戻して來て内地の値段と非常に差があるとということになると、そのときは内地の物價を上げさせる結果になります。今度逆に内地の非常に高いやつを無理に出そうとすると、円が非常に安くなる。そうして或る商品は四百円だと、こういうことになると、結局はそういうものが沢山ありますと、円の相場というものが非常に下がる結果になるのでありますからしてこれらの点は、つまり内地の値段が高過ぎて出せないやつを無理に出そうとすると、そうなるのであります。そこらについて、公平に行きまするように、而も円を下げたいような注意が是非必要だと思いますが、これらの点について御注意を願いたいと思うのであります。
 最後に健全財政についで、自由貯蓄でありますが、これは先程数ヶ月間の実数をお話になりましたけれども、今日全体として貯蓄がどれぐらい占めるか。それから通貨の総額は先程お話がありましたけれども、その貯蓄がどういうふうに殖えて、通貨の中のどれだけの割合を占めて、そうして死藏通貨というものがどのくらいあるか。そうして將來若しこれを財政の上に、或いは事業の資金の上に運轉しようとするときに、その残つておるやつをどういうふうな方法で以て運轉する案をお持ちであるか。これらの点についてお話を承わりたいと考え参るのであります。
 以上長々と申しましたけれども、どうぞ懇切に御答弁あることを希望いたします。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#17
○國務大昌(片山哲君) 只今川上君から各方面に亘りまして詳細なる御意見を附して御質問がありましたが、私は根本問題についてお答えいたし、他の各般に亙る問題はそれぞれ所管大臣から御答弁することにいたしたいと思います。
 御承知の通り我が國の現状は、正に一歩誤まれば破局に導かれるという誠に重大な時局であります。國民全体の力を結集いたしまして、何とかしてこのインフレを防止しなければならないのであります。インフレの進行を、防止するために政府、國民一体となりまして全力を傾倒しなければ國家は亡んでしまうという重大な難局であると考えるのであります。このためにどうしても国民にもこの現状を知つて貰わなくてはならないと思います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 のみならず、我が國は戰爭に負けまして、その惨状が、その結果が、今各方面にまざまざと現れてて來ておるのでありまするから、これらの問題もよく認識しなければならないと思うのであります。敗戰の意識、経済現状に対する認識を深めるということ、これに対して、インフレを防止するために國民は全力を傾到しなければならない、かように考えて、時局担当の衝に当つておりまする政府といたしましては、具体的な対策を建てまして、インフレ防止のために全力を盡しておるのであります。併し何分にも問題が大きく、又各方面に亘つておるものでありまするから、今日唱えて二三日のうちにそれが現われるというような即効薬はなかなか見出せないのであります。国民全体に耐乏を求めて、且つ精神的な協力も求めて、又現状も十分に知つて貰うということを重大なりと考えまして、先に経済実相報告書によりまして、現状をお知らせいたし、且つこれに対して政府としては経済緊急対策を立てて、その防止に專念いたしておるのである、(「それから六ヶ月経つた」と呼ぶ者あり)尚これに対しましては更に新物價体系を立てまして、そうしてそれから割出して、今川上君の言われましたようなことでありまするけれども、いろいろの対案立て、且つ千八百円のベースを國民に堅持して貰わないことには新物價体系を守ることができない、こういうことで全力を盡しておるような次第であります。時期は経ちましたが、なかなか理想と現実は一致することは困難であるように考えております。(「十一月になつたらよくなるといつた」、「作文政治だからだ」「平野とも協力しろ」と呼ぶ者あり)政府は全力を盡すのでありまするが、國民に認識して貰わなければならない、といつて國民に轉嫁いたしておるのでは決してありません。政府は責任を自覚いたしております。併しこれがためには国民の協力を願わなければならないのであります。予算を編成するにつきましても、乏しき歳入の中より多くの支出をしなければならないときであります。乏しき物を國民全体が分け合つて貰わなければならないのであります。個人経済をよくし、個人の職業を安定しようと思いまするならば、何を一番先になすべきかと申しまするならば、産業の発展であり、國家経済の立て直しであります。(「今産業は潰れかけておる」と呼ぶ者あり)それをやらないことには國民全体の職業の安定もできないのであります。(「飯を食うことだ」と呼ぶ者あり)飯を食うことをやろうと思いまするならば、その根抵たる食糧の増産なり、産業の発展に全力を傾倒しなければならんのであります。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり)それをやるためには、政府は全力を傾倒いたしております。併し(「生産は落ちておるぞ」、「やつてもできない」と呼ぶ者あり)消費も節約して、無駄を排除して(「默つて聽け」と呼ぶ者あり)國民全体が乏しき物に対する耐乏生活をして貰わないことには、敗戰國を立て直すことができないのであります。戰勝國たるヨーロツパ各國においても國民全体に対して耐乏を求めておるようであります。況んや敗戰國たる我が國においておやであります。自分の立場だけを考えて自分の立場がよくなれば國家経済の問題、産業の問題はどうであつてもいいというようなことでは祖國再建はできないと考えるのであります。(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり)物を多く作らなければならない、物資を豊富にしなければ、(「ならないことはわかつておる」と呼ぶ者あり)物價問題は解決することができないのでありまして、政府はここに物價体系を立てて、それから割出した基準によりましてペース千八百円と決めたのであります。(「それが壊れておる」と呼ぶ者あり)それを堅持して、そろしていま暫く國民全体の御辛抱を願わなければならないのであります。(「分つた」と呼ぶ者あり)どうかこの点につきまて、指導者たるところの諸君におかれましても十分認識されまして、この予算案について十分なる御檢討を願いたいのであります。
 煙草の値上げ等は甚だ心苦しいのであります。(「賛成する」と呼ぶ者あり)私は大衆生活に非常な圧迫を加える予算案の編成につきまして非常に苦心をいたしたのでありますが、如何ともすべからずであります。(「非常に同情する」と呼ぶ者あり)乏しき歳入であります。物資不足の状態でありまするから、どうしても一時を忍んで、この煙草問題或いは酒の問題等についても深き御理解を賜りたいと存ずるのであります。(「理解する」と呼ぶ者あり)
 こういう意味でこの追加予算は非常に苦心をいたしましたために、相当長い時間を要しまして、諸君にも御迷惑をかけ、会期の延長もお願いいたしましたような次第であります。どうしても財政状態を正式のルートに乘せるためには、尚一段と努力を拂わなければならないと存じます。次年度の会計におきましては、來年度の本予算においては、何とかして國民生活安定のため、に努力を拂いたいと考えておるのでありまするけれども、その先決問題は、流通秩序の確立、闇の排除等によりまする経済の再建を先決問題としなければならないと考えておるのであります。その前提といたしまして、この追加予算は、どこまでも健全財政で又健全金融で、而してインフレ防止のために全力を傾倒する、こういう建前で編成いたしたような次第でありまして、何分とも諸君の御協力を仰ぎたいと存じます。
 細かい川上君の御質問につきましては、安定長官、大藏大臣等より御答弁することにいたしたいと存じます。(拍手)
   〔國務大臣和田博雄君登壇、拍手〕
   〔「和田君しつかりやれ」と呼ぶ者あり〕
#18
○國務大臣(和田博雄君) 川上さんの御質問に対しまして、私に関係いたします点をお答え申上げます。
 第一点は、物價の安定帶を昭和九年から十一年の平均に対して六十五倍に認めた理論的な根拠という点でございました。御承知のように、日本の産業は終戰後各産業の間における操業率は非常に異なつております。言い換えますと、回復の程度というものが極めてまちまちなのでございます。片山内閣ができましたときに、物價を安定いたし、インフレーシヨンの促進を押えて行きまするために、その当時の公定價格と実際の闇價格との余りの大きな開き、而も企業の赤字で最早操業もできないような程度になつておりまするのを、ここに新らしい一つの價格体系を作りまして、その價格体系の下において普通に企業を操業いたしまするならば、その企業としては、普通に必要なところのコストというものを賄つて行ける、こういう一つの安心感といいますか、目安を與えまして、そこに産業、企業の復活ということを考えたのであります。それと同時に賃銀と物價の惡循環を断ち切る、こういう観点から新物價系の作成に当りまして、工業品につきましては原價計算主義ということによつたのであります。併し私が今申しましたように、当時の日本の産業というものは、それぞれの分野において非常に操業の程度が異なつておる、從つて原價計算主義というものを、文字通りこれを実行いたしまするならば、物價の凸凹というものは非常なものになつて來るのであります。或る物は非常に高くなつてしまい、そこに物價の相互の間の均衡というものが実質的には取れなくなつて参るのであります。基礎的な資材においていやに高くなつたそのものをそのまま公定價格にいたしまするならば、それが又その資材を使う他の製品の價格に影響いたしまして、それは却つてそういう公定價格の決め方をいたしますることは、インフレーシヨンというものを甚だしく促進するという結果に終わる、こう考えたのであります。從いましてこの点を考慮いたしまして、基礎的な物質につきましては、これは規準年次の一應の六十五倍という点に安定帶を求めまして、そうしてそこに新らしい價格体系を作ろうといたしたのであります。勿論六十五倍といたしました点につきましては、一面におきまして、財政上の價格差補給金が余りに多額に出るということは、今度の六十五倍にいたしましても、この追加予算において約百五十七億程度のものが出ておるわけであります。この厖大な價格差補給金をそこに予定しますることは、日本の財政の現状から申しまして、殊にインフレーシヨンを阻止いたしまする点からいいまして、財政の、資金の持ちますところの重要度というものが、今の日本のインフレーシヨンの段階においては非常に大きなものであるという点も考慮いたしましてそうして基礎的な價格につきましては、六十五倍の安定帶を設け、それ以上に出ましたものはこれを六十五倍まで引下げた、こういうことにいたしたのであります。勿論六十五倍というこの限界は公定價格の標準的な倍率を意味するものではございませんで、只今申しましたように價格の引上げというものを最小限度に止め、そうして價格差補給金というものをも最小限度に止めて、財政の面からもこれを適当に抑制して行こう、こういう考え方をいたして定めた次第でございます。
 第二点は千八百円のベースというものがすでに崩れつつあるが、政府はこれを維持し得る自信があるかどうか、こういう点でございます。この点は川上さんの御意見の中にもありましたように、千八百円のベースそのものを壊して、一般の賃金水準を非常に高いところに置きまするならば、それは直ぐ追加予算そのものを崩壊さすことであり、又それだけ高い水準においてもう一遍この政府のやりました價格の改正の仕事をやるだけのことでありまして、何らの積極的なそこには意味はないのであります。現在千八百円のベースというものにつきましては、いろいろの論議があるのでありまするが、私はこの千八百円のベースにした新價格体形そのものがインフレーシヨンを抑制する上からいいまして、どうしてもこれは維持して行かなければならない問題だ、かように考えております。勿論千八百円といいますのは、御承知のように、價格改訂を行いますときに、その價格改訂に織込むべき全工業の暫定的な平均賃金としてとつたものでございます。然るに現在のところ民間におきまするところの或る業種につきましては、実收の賃金がこれから上廻つているものも勿論あるのでございます。併しそれは生産能率を挙げて、そうして賃金が実際上に上つて行つているものだけでは必ずしもないのでありまして、價格改訂に伴いまして資材の値上り、その値上りの部分を労賃の支拂いに廻すとか、或いは当然金融を受けました、その金融を受けておりながら片つ方で資材の入手に期間が要する。その間にそれを賃金の支拂いに充てるといつたような、何らかそこに企業そのものの余力ができて來たというのでなくして、自分でやはり自分の身を食つているという形で、賃金を若し上げているということがありましたならば、我々といたしましては、これは現に石炭において行なつておりますように、厳密に原價監査をやりまして、そういう企業はやはり合理的な基準に戻して行くということを今後考えたいのであります。そうして又実行いたしたいと思うのであります。それと同時にこの賃金ベース、物價体形を堅持しまするためには、これはやはり緊急対策を立てましたときにやりました流通秩序の確立、勿論これにつきましても十分に効果を挙げでおるものとは思いませんが、これを強化して行くということもやはり今後努力いたす考えであります。それと同時に私は何といいましても、國際の経済と日本の経済とが最早接觸いたしている、その点を考えまして、これは將來における一つの長期の計画の見通しをつけ、それを中心にして企業のやはり合理化というものを適当なときに行う必要があろうかと考えているのであります。かような方法を講じまして、やはり日本の物價水準というものを國際的な水準に調和がとれるように仕向けて行くということが、今後の大きな施策として物價体系堅持の方法としてとりたい、かように考える次第であります。(「國民をどうして食わせるんだ」と呼ぶ者あり)
 それから第三点は、物價の決定の仕方が非常に机上であるというお話でございますが、物價の決定に当りましては、企業者の意見も十分に聽きますし、又帳簿の檢査もいたします。実状を把握して我々の方と物價廳といたしましては決定をいたしておるのであります。勿論御指摘のように物價決定に当りまして極めて努力をいたしたわけでありまするが、予定よりも延びました点につきましては、或いはその人員関係がありましたものでしようが、甚だ申しわけないと思つておりますが、我々としては全力を盡して、物價の公定が今までのように半年も一年もかかるということでなくして、とにかく三ヶ月余には一應これを完成いたしまして、勿論この物價自体の調整の問題につきましては、我々はこれを是正するのに吝かではございません。從いまして今後におきましては一つの監査の制度を設けまして、一應決定いたしました物價体系を堅持するという立場に立つて、その間における調整はいたしたいと思うのであります。從いまして物價そのものにつきまして物價公定以後これを引下げるべき條件が出ておるものにつきましては、例えば味噌であるとか、醤油であるとか、或いは塩干魚といつたようなものにつきましては、これは至急に引下げをいたして行きたいと考えておるのであります。木材の價格につきましても、これは決めましたときに、いろいろの原因によりまして現実の價格が暴落いたしたのでありまするが、これらのものについては只今研究中であります。我々といたしましては、決定されました價格の体系が、これがその後における需要の変化、或いはその他の経済條件の変化に從つてそこに一つの歪みができましたときには、これを引下げる方向において改訂いたして行く。そうして物價体系そのものを堅持して行く。こういう方針で今やつておるのでありまして、味噌、醤油、塩干魚につきましては、只今関係方面と交渉中であり、これは引下げる予定で進んでおります。
 それから一番終いの農産物と工産物との價格関係の問題でございますが、これはこの関係を考えまして、農産物の價格の決定につきましては、原價主義を探らずに、パリテイ・システムによつてこれを決定するということに決定いたしたのであります。「りんご」なり、「みかん」なりのいわゆる青果物の價格統制を撤廃いたしましたのは、これらは必ずしも國民の生活の必需品とも考えられませんので、配給及び價格統制の点から考えまして、これを外ずすことも現在においては適当であろうと考えまして、これを價格統制の枠から外ずした次第であります。勿論これらの者の所得に対しましては、これは特に課税の適正を期するということにいたして行きたい、かように考える次第でございます。
 それから爲替率の問題でありますが、これはお話のように爲替率は今一本に決まつておりません。併しこれは何を表現するかといいますと、結局日本の各工業の、輸出工業品をも含めての工業生産回復の点がばらばらである。言い換えれば、日本の今の経済の実情において急速に爲替率を一本に決めるということは、必ずしも日本の経済に対してよい面だけではない。そこに非常に大きな動揺を來たすという点がありますので、只今のところまだ一本に決まつていないのであります。從つて或る程度の段階制をとつて、そうしてそれによつて我々は漸進主義をとつて、日本の経済の実情に即應して將來一本に持つて行くというようにいたしたい、かよう考えていろいろと交渉を続けておる次第であります。
#19
○副議長(松本治一郎君) 栗栖大藏大臣。
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇、拍手〕
#20
○國務大臣(栗栖赳夫君) 川上議員の御質問に対してお答えいたします。今回の追加予算の次に更に物價騰貴があつて、これによつて追加予算を更に必要としないか、こういう御質問であります。これはこの追加予算を編成いたしますのにつきまして最も苦慮し、努力いたした点でございます。この國家の通貨面その他國家財政に與える影響は最も大きい消費者である点でございますので、財政のこの均衡を得させるバランス・バゼツトというものを貫くということは、インフレーシヨンの昂進を抑えるフアスト・ステツプだ、こう考える次第であります。これに努力いたし、本予算における四十八億を普通歳入を以て穴埋めをする。更に非常な無理をも忍びまして、そうして鉄道、通信のこの損益勘定において今後生ずる七十五億の赤字をも臨時例外的に埋めるというようなことをいたした次第でございます。そうして更に政府は、支出に対する收入は税が大本でありまして、これにつきましては極力税の收入を上げる、そうして予算の実行を徹底的にするということに努めまして、そうしてインフレーシヨンを抑止する、そういうことにいたし、更に國民の大きな協力を求め、先程も申上げましたように一大納税運動も起し、この財政の由つて來つたところの所以、及び納税の必要なる所以を國民に徹底さして、そうして國民の協力を俟ち、そうしてこの追加予算を完全に実行しまして、そうしてインフレーシヨンを抑えまして、更にこの大きな追加予算というようなことが、更に又この本年度内に必要なようなことを起さないというようなつもりで努力いたした次第であります。細かい追加予算につきましては、いろいろ制度の改革その他について起ると思うのでありますが、大きな追加予算として更に起さないように、こういうように努力いたしておる次第であります。(「いるなら多少やつてもいいよ」「小出しにちよいちよいやるな」と呼ぶ者あり)
 それから健全財政は收のバランスなくては不可であつて、内容が整理されてあつて、能率がよいものでなければならん、行政整理はどうなるか、こういうお尋ねでありますが、これは國が完全に回復し、そうして健全なる國民経済の上に健全なる財政を築き上げる、こういうことが目標でありますけれども、健全なる國民経済が今できないのでありまして、企業も家計も國家もすべて赤字であります。併しながら少くとも第一に國家の財政におきましては、バランスの取れた予算を組むということに全力を上げたのでありまして、更に通貨の膨脹を誘致するような金融面におきましても、赤字金融を避けて、健全金融ということにしまして、そうして通貨の増出ということを避けるということに全力を盡すものでありまして、一面においては、重点的な緊要産業の生産を増強して、そうしてこれを立て直すしか方法はないのであります。それで現段階におきましては可能な限りにおいてこの追加予算に最善を盡し最善を盛つたという次第でございます。
 それから税未納者についての滯納のお尋ねでございますが、滯納者の大体の総額は百億円を超えておる次第であります。これの原因につきましては、財産税の物納及び延納の処理というものが相当手間取つておるのでありまして、滯納の整理が尚進んでおちんために起つた点が多いのでありますが、併しながらこれは先程も御説明申上げましたように、税務官吏の優遇、税務機構の強化、それから税務費用を増加いたしまして、十分これを徹底的に整理をし、そうして違反者に対しては重罰を以て臨む、滯納に対しては厳重に督促するということを以て十分整理をいたす、こういう見込を立てておる次第でございます。
 尚爲替につきましては安本長官よりすでに説明がありましたので重ねて申上げない次第でありますが、一言大藏大臣として申上げたいと思うのであります。爲替は、根本の爲替相場の問題は、日本の経済復興再建の上に極めて重大なる点でありまして、結局日本の再建の一つの大きな鍵を握ることになるのでありますので、これは十分愼重に檢討し、そうして決めなければならんと思うのであります。すでに対日理事会におきましても、愼重に檢討の上決めるというようなことが発言されたことが傳えられたのでありますが、政府としては全く同様に考えておる次第でございます。ただ最近の輸出入の物價の換算率につきましては、貿易の実際を敏捷に運ぶために、種々の便法として複数制その他が決まるやにも考えられるのでありますが、これとは離れまして、根本の爲替相場につきましては、十分愼重に日本の経済の再建の見通しというものをつけまして、これを決めたいと考えるのであります。尚日本の円貨が非常に下りまして、ドルと円とが非常なアンバランスを取りまして、それがために日本の産業というものにいろいろ影響與えるというようなお説に対しても、十分の注意を拂いたいと思うのであります。(拍手)
#21
○副議長(松本治一郎君) お諮りいたします。商工大臣の答弁は明日に留保いたしまして、本日はこれにて延会いたしたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○副議長(松本治一郎君) 異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以てお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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