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1947/11/07 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第46号
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1947/11/07 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第46号

#1
第001回国会 本会議 第46号
昭和二十二年十一月七日(金曜日)
   午前十時十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四十五号
  昭和二十二年十一月七日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第二日)
 第二 農業協同組合法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件(第二日)、昨日の川上嘉市君の質疑に対し商工大臣より答弁がございます。この際許可をいたします。水谷商工大臣。
   〔國務大臣水谷長三郎君登壇、拍手〕
#4
○國務大臣(水谷長三郎君) 昨日川上議員から貿易の問題に関する御質問がございましたが、それに答弁いたします。
 御質問の第一点に申されました三億二千万ドルの輸入超過額は、食糧のみでなく輸入全体の入超額でございます。六月末以降のドルの入超の集計は、まだ司令部から明示はありませんが、本年末までの見込は凡そ四億ドル程度ではないかと考えております。
 次に、食糧輸入が四億ドルになるというお話でございましたが、食糧の輸入のみで四億ドルに達するというようなことはなく、今後の相場にもよりまするが、現在の見込では二億ドル強で済むのではないかと考えております。又爲替レートがいかに決まるかは目下のところ何とも言い得ないのでございまするが、いずれに決まりましても、円に対する爲替レートは輸出にも及ぶものでございますから、御指摘になつたようなバランスには関係ないと思います。而して輸出入のバランスを取るためには、各般の輸出振興策を講じておる次第でございまするが、それにも拘わらず日本経済が再建できるまでは、多少の輸入超過は止むを得ないと考えております。併しそれ以後は十分バランスが取れるものと確信いたしておる次第でございます。バイヤーとの契約は十月末までの集計が四百万ドル程度でございまするが、現在のところ政府対政府貿易の商品が大部分でございまして、民間貿易の許された商品の範囲が狹いのと、まだ各國のバイヤーが集まつておるわけではないことと、バイヤーはストック商品を購入するのが主たる目的でなく、將來の取引の途を開くことを主なる目的として來ておるなどのために、現在の状態では相当の成果を収めておると言えるのでございまして、その契約成立の金額の大小は、必ずしも日本の貿易全体を決定するようなものではないと考えておる次第でございます。
 次に、第二点の外資の問題は御心配の通りでございまするが、政府といたしましては、外資の流入により日本経済を撹乱し、或いは現存投資と二重投資を招くようなことを避けて貰いたいと考えております。日本の企業家は、手に余る企業を創設するような外資の導入を考慮して貰うよう関係先と交渉中でございます。
 御質問の第三点につきましては、レートが著しく不利となる輸出商品は、許可に当り十分検討を加えまして、不利な輸出は承認しない方針になつておるのでございます。
 更に又川上議員の御質問は、すでに事業界は原料高、購買力の減退のために行き詰りの現象を見つつある。政府は事業の破綻にいかに対処せんとするかという御質問でございますが、この点につきましては、御案内の通り事業界が現在極めて困難なる状態に逢着しておることは御説の通りでございまするが、これが打開の方策は、個々の事業体の基盤である産業経済全般に対する諸般の対策を、綜合的且つ強力に推進するより外ないのでございまして、かような見地から現内閣といたしましては、いわゆる経済緊急対策を樹立いたしまして、鋭意これが実施に努めておる次第でございます。而して右緊急対策がその実効を挙げるためには、事業界自体はもとより、國民の各階層を通じて、現下の経済危機を突破する固い決意を持つて、心からの協力を得ることが極めて肝要であると考えておる次第でございます。以上簡單に御答弁申し上げます。
#5
○議長(松平恒雄君) 昨日に引続き質疑を許します。板谷順助君。
   [板谷順助君登壇、拍手]
#6
○板谷順助君 私は昨日大藏大臣の財政演説に対しまして、諸君のお許しを得まして、所見を質したいと思うのであります。承わりますれば、大藏大臣は少々健康を害しておられるということでありまするから、時間の関係もあり、私は大体大網についてお尋ねをするつもりでありまするので、暫く御辛抱の上お聴き取りを願つて置きたいと思うのであります。
 今回予算の編成に当たりまして、再三再四編成替えをされまして、政府当局の御苦心に対しましては大いに敬意を表する者であります。併しながら予算の編成につきましては、先ず第一に國民の所得、國民の所得を基礎といたしまして、いわゆるこれに対するところの租税の割合を決めなければらなん。然るに昨日大藏大臣の御説明によれば、國民の所得は概算九千億円ある、これに対する二三%であるという御説明であつたのであります。併しながら現在我が國の経済状態、御承知の通り敗戰の結果殆んどあらゆる方面が荒らされておる。或いは財産税を取られる、財閥は解体され、又更に非常なるところの戰災を蒙つておる。あらゆる産業が殆んど萎靡銷沈の状態であります。であるから若し政府当局が、國民の所得が九千億円あるとしたならば、数字的にこの概算を示して頂きたい、私は恐らく現在の状態においては、國民の所得は五千億あるかなしかと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若し仮に五千億の國民所得といたしましたならば、御承知の通り昨年度におきましては、國民一人当りは八百九十円、又本年度の本予算におきましても、その当時の人口に比較いたしまして、一人当りが千三百六十六円、即ち当初予算におきましては、租税の概算の六百八十七億円、然たるに今回の追加予算が、諸君も御承知の通り六百三十五億円であります。若しこれを本予算と合計いたしましたならば、國民一人当りは殆んど二千五百円であります。即ち國民所得の五〇%である。更に加うるに地方の租税を加えるといたしましたならば、恐らくは私は國民所得の殆んど七割以上に当ることと思うのであります。果して我が國の國民経済においてこの負担に堪え得るや否や、これが重大問題である。御承知の通り新円階級、いわゆる新興財閥は別問題といたしまして、國民の大部分は食生活に追われ、消費経済におきましても、殆んど赤字を続けておる今日の状態であります。論より証拠、現在の租税が果して予定通りに納つておるか、聞くところによれば、昨日大藏大臣もこの議場において言明しておる。租税の滞納は殆んど百億円あるという。百億円の租税の滞納の現在の状態であります。或いは中に狡いものがある。演藝劇場のごときは殆んど七千万円の滞納があるということが発表されておる。或いは又俸給賃銀の階級におきましては、これはあらゆる会社は天引で以て差引きするのである。これらは満足に納つておるであろうが、現在の各会社は赤字続きでありますから、或いはこれを融通しておるかも知らない。現在百億円のこの滞納、これを一体どう処分するか。然るに今申上げましたる通り、殆んど國民の所得に対するところの七割以上の租税をかけられた場合において、國民がその負担に堪え得るかどうか、これが私は重大問題を思うのであります。これは中央税であるが、更に地方の財政状態はどうであるか、私の聞くところによれば、各都道府縣が今回いわゆる自賄い、時事的に地方の財政を賄わなければならんという建前になつておる。その関係におきまして、あらゆる財源を漁つておるにも拘わらず、全國においてどうやらこうやら賄い得るというのは栃木縣一縣であります。この栃木縣も今回の水害において果して收支償うかどうか、これが現在の実情であります。東京都のごときは四億円の営業収益税をかけておるにも拘わらず、驚くなかれ三百万円より取れておらん。であるからいかに大藏大臣が健全財政と申しましても、中央においても地方においても、税の収入の関係がかくのごとき状態であります。これで果して健全財政と言われるか、私は現在の我が國の経済状態は、徒らに私は前途を悲観するものではありませんけれども、丁度ドイツが破産の状態に突入するというような、殆んどそれに類似したるところの状態に我が國の経済状態は近ずきつつあるという有様であります。
 若しこのまま進んでいつたならば我が國は破局の状態に陥る。これは昨日大藏大臣も説明されておる。(「石橋さんはそう言わんぞ」と呼ぶ者あり)石橋さんの時と現在は状態が違う。ますますインフレは悪化しておる。でありますからして、我が國の前途に対して非常に憂うべきところの財政状態であります。現内閣は御承知の通り組閣以来すでに六ケ月経つておる。もちろん現在の財政状態におきましては、誰がやつてもなかなか容易ならんでありましようが、片山総理大臣は施政方針の演説において何と云つておる。我が國を救うことについては一大國民運動を起こさなければならんということ言つておる。一体何をやつておる。國民は耐乏生活を要請することは、これは勿論のことでありますが、果してこの運動をやつておるのか。先ず第一にいかなる場合においてもインフレを克服するということ、これが先決問題であります。インフレ克服に対するところのいかなる手を打つておるか。
 更に又問題は行政整理であります。予算編成につきましては歳出をできるだけ縮減する、これが先決問題である。現に西尾長官もここにおいでになりまするが、官公廳におきましても、或いはあらゆる産業におきましても、人員整理せざる限りは決して産業の合理化はできない、ということを最近において発表されておる。一体行政整理に手を染めておるか、而も経済緊急対策におきましては八項目の重大政策としてこれを並べておる。いかなるところの手を打つておるか、又將來において行政整理に対していかなるところの成案を持つておるか、この点を明らかにこの際発表願いたい。(拍手)(「自由党の一枚看板だ」と呼ぶ者あり)この整理なくして決して日本の財政はいかなる大藏大臣が健全財政と言つても、健全財政ができるものでは絶対にありません。(「ノーノー」の呼ぶ者あり)大体この度の予算に対しまして歳出方面を見まするというと、産業の増進について、生産の増強について、何ら積極的の予算を見出すことはできない。若しあるとしたならば一々ここに数字を挙げて並べて貰いたい。或る程度分配に対するところの予算、これは勿論必要であります。ありますけれども今申上げまする通り産業振興に対するところの、この予算にいかなるところの項目があるか、若しあるとしたならば御発表願いたい。御承知の通り昨日も大藏大臣は言うておる。我が國の生産量は戰前に比べて三割、而も施政方針の演説において片山総理大臣は、我が國の生産は三割と言つておる。その後いかなる増進を見ておるか。然るに一面において人件費は五割以上に上つておるのであります。恐らくはあらゆる産業が赤字続きであつて、殆んど現在の状態では生産の増強など思いもよらない。(「首を切つたらどうする」と呼ぶ者あり)これに対する一体いかなる政策を持つておるか。(「実のない質問だね」と呼ぶ者あり)これを承りたい。(「堂々やれ」と呼ぶ者あり)
 大体現在の我が國の財政の状態におきまして、國民が最も関心を持たなければならんことは終戰処理費であります。勿論敗戰國の義務といたしまして、司令部の命令に対しては絶対に服従せねばならんところの我々は義務を持つておるのであります。これは当然であります。併しながらこの終戰処理費は御承知の通り六百四十二億、殆んど全予算の三分の1であります。義務は持つておりまするけれども、我が國の財政状態が殆んど破局に瀕しておる、或いは資材におきましても、資金におきましても、國内の再建についてすら十分に賄い得ない。そこで私はこの点につきまして政府を通じていわゆる敗戰國の叫びの声として連合國に懇請をしたい、どうかして我が國が再建をし、目鼻のつくまで連合國において、資材なり或いは資金なりの一時の御融通を願いたい。援助をして貰いたい。この点につきまして私は政府を通じて國民の声として連合國に懇請する次第であります。又歳入の点を見ましても、御承知の通り租税が本予算におきましては、諸君も御承知の通り六百八十七億、然るに今回の追加予算は六百三十五億、この厖大なるところの租税であります。ところが恐らくはこの度の追加予算は、私は新興財閥を目標としておるものと信ずるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)現在我が國においては一体資産家らしい資産家があるか、でありますからして、恐らくは大衆課税を目標として或る程度までは取らにやならん。新興財閥については、御承知の通りいわゆる新円階級はろくな帳簿を持つておらん。或いは幽霊会社を作つておる、これに対するところの徴税をいかなる方法によつて取るか、只今も申上げまする通り、もうすでに前期においては百億円の滞納があるじやないか、いかなる方法によつてこれを取るか、若しこれに対するところの具体的の案があるならばお示しを願いたい。大体インフレの増進ということについては通貨面が非常なるところの影響がある。私はこの通貨の標準を定めるということについては國民の所得なるものを基礎とせなければならん。私をして言わしむるならば、昨日大藏大臣は通貨審議会を設けるということをおつしやておる。そんなことはもう遅いのだ。國民の所得を合したならば恐らくは千億、千億円が現在の我が國の國民の所得と物價の將來に対するこれが適当な、いわゆる適正通貨じやないかと思う。然るに現在一体幾ら出ておるか、千六百七十億出ておる。或いは最大限は千五百億程度といたしましても、この通貨縮小に対するところの何故早く手を打たん。恐らくは本年の年末においては、これが二千億を予想されておるのである。二千億に予想されておりまするけれども、恐らくは私は大部分が政府資金があると思うのである。この厖大なる予算に対して、政府資金なるものが相当に出ることは免れない。従つて民間に手が廻らない、金が廻らない、廻らないのでありまするから、現在御承知の通り、いわゆる個人資金なるもの、高利貸なるものが跋扈しておつて、月に一割、甚だしきは一割五分、中小商工業者はこの非常なるところの高利を使つて商賣しておる。であるからこれらが物價に対する非常な影響を來しておるということは言うまでもないことである。政府はこれに対する一体いかなる処置を取るつもりであるか、対案があるならば一つ御発表願いたい。
 次に、國民の注目の的になつておるのは、いわゆる特別会計であります。御承知の通り、この度の予算において、二十五億円というものを一般会計から支出することになつておる。昨日大藏大臣の説明によれば、將來この金を返すのだと、こう言う。一体いつの時期にこれを返す目的があるか、鉄道会計におきましては五ケ年計画を立てている。これが七ケ年に延びておるのであるが、この一般会計から國民の負担において、いわゆる特別会計官業なるものは、いわゆる独立採算性なるものを基礎として立たなければならん、この國民一般の租税によつてこれを負担するということにつきましては、國民に十分なるところの理解を求めなければならんのであります。で、この鉄道に対するところの現在の状態が一体どういうことになつておるか、諸君も大体御承知でありましようが、昭和十二年においては二十四万人の従業員であつたのであります。然るにその後段々殖えまして、昭和十六年においては三十八万人、現在においては六十万人である。即ち鉄道キロ当り昭和十二年においては十二人であつたものが、現在においては二十九人である。これが現在の実情である。或いは労働基準法拘束八時間制度によりまして、人間の殖えるということは止むを得んといたしましても、現在の状態において果して人員がこれでいいのかどうか、國民に納得させるということについては、これに対するところの十分の説明を求めんければならん。これを國際的に見ましたならば、アメリカにおいては一キロ二人半、即ち日本の十分の一以下であります。勿論アメリカにおいては機械力を利用する、又この度戰災によりまして、修理補強せねばならんという問題がありますから、これに対するところの人員の必要のあるということは申すまでもないことでありますけれども、とにもかくにも特別会計なるものを処理するということについては、運輸当局は最善の注意を佛つて、國民によく納得させざる限りは、一般会計から五十億を補填するということについては、これは重大問題である。通信事業においてもその通り、二十五億円、恐らくは通信事業におきましては五十億の赤字が出ると私は予想しておる。独立採算性を取るということにつきましては、いわゆる現業と官廰の行政というものと分離をして、これを明らかにするその必要がある。これに対するところのいかなる成算を持つておるか、この点について私は伺いたい。
 次に伺いたいことは、労働問題であります。諸君は昨日の新聞においても御覧になつたでありましよう。札幌におけるところの労働教育係長一体何と言つておるか。現在我が國の労働組合のいわゆる官公労働、鉄道において、或いは全逓について、教育において、これらの人々が、即ち組合の役員六千五百人が千二百万円の政府の金を使つておる、甚だこれは不都合であるということを発表しておる。これに対して労働大臣の出席を要求したのでありまするが、おいでにならん。私は西尾長官よりこの弁明を一つ求めたい。これは官公廰ばかりじやありませんぞ。例えばあらゆる会社におきましても、組合長或いは闘争委員長、これらの人々が会社から月給を貰つて、仕事はせん。現場の仕事をしないで、いわゆるこの組合の仕事に対して没頭しておる。これで果していいのかどうか。規律が立つのかどうか。先般英國の労働議員が参りまして、私共はこれに会見をして懇談をしたのでありまするが、英國においては、労働組合は政治には関係しない。経済問題が主たるものである。組合員個人は、(「それは理屈だ」と呼ぶ者あり)黙つて聴け。いかなる組合に対しても、いかなる党に対しても、進退は自由である。併しながら労働組合そのものは政治には関係をせん。英國の労働組合は関係せんということを言つておる。果して日本の労働組合はこれに対していかなる態度を取るか、現在の内閣、いわゆる社会党は、御承知の通り勤労大衆の味方である。勤労大衆の代表である。であるから、私はこの内閣に要求する。労働問題、失業問題、企業整備の問題、行政整理の問題、これらの問題を解決せざる限りは、現内閣の存立の意義はないと私は信ずる。(拍手)
 又共産党に対して司令部が一体何と言つておるか。(笑声)現在の産別はまだ我々の味方ではないけれども、將來においては、産別そのものは我々の味方として活動する。これはいわゆる独裁であるということを司令部の一部の人が発表しておる。恐らくは、独占禁止法案なるものが、果して全國のこの組織に対していかなる影響を及ぼすか。(「自由党も農民組合を持つておるぞ」、「黙れ」と呼ぶ者あり)黙つて聴き給え。(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)この点に対して若し意見があるならば発表して貰いたい。
 要するに、我が國の現状は非常時でありますぞ。平素とは違う。であるからして、現在の我が國の状態が非常時であつて、殆んど破局に瀕しておるということを考えたならば、階級闘争、階級などはありやせん。(笑声)階級闘争やストライキ、これらのごときものは、丁度病人に毒薬を盛ると等しい結果である。(拍手)今日の我が國の段階においては、断じて許すべきものではないと私は信ずる者であります。(拍手)要するに、片山総理大臣或いは内閣諸公もしばしば言つておるように、我が國を救う途は、何といつても、政府も国民もあらゆる人々が一致協力してこの難関を乗り切らん限りは、恐らくは我が國は破滅に陥るということを國民は覚悟せねばならん。現在は非常時であります。従つて又片山総理大臣は、一大國民運動を起こすということ言つておる。一大國民運動を起こして、國民あらゆる人々が自覚をして我が國を救う。これ以外の途はないと私は信ずる者であります。
 どうか私が只今申上げましたる質問に対して、まだいろいろお話したいこともありますけれども、大臣が揃わん、止むを得ずこの程度に止めて置きまするが、只今申上げました点に対して、明解なるところの御答弁をお願いいたします。(拍手)
   [國務大臣西尾末廣君登壇 拍手]
#7
○國務大臣(西尾末廣君) 板谷君の御質問にお答えいたします。
 官公廰の從業員組合の中に、政府から給料を貰つて、そうして政府の仕事をしないで組合運動に没頭しておる者が相当おるという点についての政府の所見を問われたようでありますが、誠に遺憾ながらその通りであります。これは労働組合本來の趣旨から申しますと、間違つたことでありまして、労働組合本來の仕事は、労働組合は自主的な組合でありますから、若し労働組合運動に必要な役員が要るとするならば、組合員の醵出した会費によつてこれらの組合の役員の給料をも賄うべきが正しい行き方であります。併し遺憾ながら日本の敗戰後の秩序が幾分緩んだときに、労働攻勢というものが非常な勢いで擡頭して來た。これに対する当時の政府の処置よろしきを得ないで、これを認めることになつたのであります。(「ひやひや」と呼ぶ者あり)(拍手)そこで現内閣になりましては、閣議においてこの問題を取上げまして、これらの組合の仕事に専從するという者は、原則として認めないということ決定したのであります。併しながら、一面労働組合を健全に育て上げるということは、日本の民主主義のためにも亦日本の將來の経済の発展のためにも必要でありまして、これを急激に廃止するということは実際上困難でありまするので、現在の状態からは絶対に増員しないということ、漸次これを減員して行くという方針を決めまして、(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)これは労働組合との團体協約によつて漸次改めて行く方針を採つておるのであります。
 労働組合と政治運動の関係でありますが、イギリスの例を引かれましたが、日本のごとく資本主義の発達も遅れ、從つて組合運動の発達も遅れた國において、殊に戰時中組合運動が禁止せられておつて、戰後急激に組合運動が発達したという状態におきましては、必ずしもイギリスの労働組合運動のように行かないのは止むを得ないのであります。労働組合の仕事と政党の仕事の区別は当然なさねばならんのありますが、その点がやや昏迷しておる状態であることは遺憾であります。併し政府は労働組合法の精神に基ずきまして、できるだけこれを正常な労働組合に発達せしめるように、と申しましても、亦労働組合がいわゆる政権を目指すところの、ときには内閣を倒閣するとか、そういう純粋の政治的な目的で組合が運動するということは絶対にこれは許されないのでありまするけれども、小さい意味では、狹い意味では日常生活のこと悉く政治に関係しておるともいえるのであります。
 例えば勤労所得税を撤廃して貰いたいという要求等も、それは政治問題と無関係とはいえないのであります。その点の関係が相当具体的には面倒になろうと思いまするが、これは漸次労働者諸君の実際に組合運動をやつて行く経験を通じて、又日本の政治そのものが民主主義的にしつかりと打立てて行かれるのと相並びまして、これは段々改まつて行くものと考えておるのであります。(拍手)
   [板谷順助君「行政整理の問題」と呼ぶ]
#8
○國務大臣(西尾末廣君)(続) 行政整理のことは大藏大臣がお答えになるかと思つて遠慮したのでありますが、御質問がありますからお答えいたします。(「意味ははつきりしておるじやないか」と呼ぶ者あり)行政整理につきまして、この前私が公の席上で申しましたのは、將來経営の合理化が必要になるであろう、そういう場合には、政府は率先して行政整理から始めて行くつもりである、こういうふうに申上げたのであります。
 現在政府の考えておりますところは、來年度予算をもう早急に組む準備をしなければならんのでありますが、來年度予算を組むに当りまして、別な言い方をいたしまするならば、來年度の政治の計画をするに当りまして、この問題を取上げたいと考えております。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇、拍手〕
#9
○國務大臣(栗栖赳夫君) 板谷議員の御質問に対してお答えいたします。
 先ず第一は、昨日私が本席で國民所得の推算額が九千億と申したのでありますが、その内訳はどうか、こういうお尋ねであつたと思うのであります。これは実は安本の計算によるわけでございまして、昭和十年の國民所得を基礎として計出されましたものでありまして、大体九千億、八千九百三十六億とこういうふうに相成るのでありますが、この計算の方法及び内訳等は詳細に亘りまするので、実は予算総会に提出をいたしまして細かく御險討を願い、そうしてこの徴税が果してできるかどうか、この点が最も大事な点でありまするので、十分御検討を願い、又御意見をも申して頂きまして、政府としてもその点を考えたいと思う次第でございます。
 それから税につきましては、大体滞納が百億に及んでおるということを昨日申上げたのでありますが、これは昨日も申上げましたように、物納、或いは延納、それから滞納等を含めたものでありまして、物納等につきましては手続きの相当進まないものもあるのであります。又滞納も相当の数にも上つておるのであります。それを総計しまして百億を超える、こういうことを申上げたのであります。実際この予算が実行されるかどうかということは、収入の面において收入の大宗をなす徴税をなし遂げ得るかどうかという点にかかつておるのであります。板谷議員のその点はお説の通りでありまするので、政府といたしましては、昨日申上げましたように、税務機構の強化、税務官吏の優遇費用その他の点をも十分踏ん張りましてそうして、大きく國民一体となつて徴税に努力をし、徴税の実を完全に挙げる。そうして折角健全財政を採りましても、これが徴税の点で破れるようでございますれば、更にこれが金融の点において隠れるようなことになりますから、そういうような心配にならんように努めたい、かように考えておる次第でございます。
 それから次の終戰処理費のお尋ねがございましたが、終戰処理費につきましては、実は七月の十七日の閣議で大体内定をいたして、そうして三月にも及んでいろいろ交渉をいたしたのでありまして、延び延びになりまして誠に申訳ないことでありますが、この終戰処理費につきましては、極力いろいろ交渉もいたし、尚且つ九月十二日の覚書までも寄せられて、公價でするというようなことまでもいたして、終戰処理費自体は、追加予算で三百九十億、総計して六百二十四億、こういうような数字まで至つたのであります。
 尚資材の点についてもお話があつたのであります。この資材或いは日本の生産を今阻止しております点は、一つは、設備よりも資材の不足が非常にあるのでございまして、あれやこれやで資材を是非輸入して貰いたいということの懇請を受けておるのでございます。そういたしまして同轉基金その他をも十分利用いたしたいと思つておるのでありまして、その同轉基金につきましても、大体運用の目鼻もつき、先方においての申合わせも大体話がついたのでございまして、そういうことになれば、これによつても資材の輸入ということは十分懇請をし実績を挙げたい、かように考えておる次第でございます。
 尚インフレーションが通貨の面において、通貨が膨張するということ、それを押さえなければいかん。こういうお話が一面でありますと同時に、金融の面において一部においては梗塞しておる、こういうことが生産を阻害する、闇の金融がはびこつておる。こういうお話があつたのでありますが、これはそういう事実も或る程度まであるのでありますが、一面において通貨を収縮する。これは地方、中央に亘つての健全財政を貫くということがそれであり、又金融の面は、融資準則その他を立てまして、そうして不必要な赤字金融はしない、必要な方面にのみ金融をするということが必要であります。それと同時に尚徴税とか貯蓄運動、こういうようなことをいたしまして、通貨が市場に滞留し、或いは隠れておる通貨を吸い上げるという作用をいたし、必要なる方面に資金を廻すという両面の作用をするということが必要であるわけでございまして、一面においては、通貨の収縮に全力を盡しますと同時に、他面におきましては、重点的に基礎産業、緊要なる産業に対する資金の融通、尚又緊要なる金融につきましては、貿易金融、中小金融その他につきましても、昨日申上げましたように、十分力を盡くしたいと思うのであります。それから昨日も申上げましたが、只今のところではこの金融のウエイトが復興金融金庫にかかつているのでありますが、この復興金融金庫につきましても、資金の運用と貸出を十分適正にいたしまして、そうして遺漏のないようにいたしたいと思いますと同時に、市中銀行では、只今のところでは企業再建整備とか集中排除というようなことで、貸出先に対して危惧を持つておりまして、そうしてそれがために十分貸出しができない。それで一時枠をそのまま保持しながら、その余つた金を取敢えず日本銀行に返しているというような現状があるのであります。これは何とか矯めたいと思うのでありまして、或いは信用の一時足らんものについては、復金の保証によつて市中銀行から貸出をして貰う。更にむずかしいものにつきましては、復金債を市中銀行が持ち得るベースの下に発行いたしまして、復金債を持つて貰いまして、そうしてその手取金を以て復金から貸出をして貰う。こういうような点を考えまして流通を図りつつある次第であります。尚年末等については十分その辺は注意いたしたいと思つております。
 それから闇金融の点でありますが、これはいろいろの点を聞きますので、これについては、全ての闇は撲滅するわけでございますし、いろいろこの実情を掴めれば、この違反等の問題については厳重に処罰して行きたい。こういうふうにも考えている次第でございます。
 それから特別会計につきましては、建設勘定でなしに損益勘定の点におきまして、この十二月以降に出る赤字を埋合わすために、昨日申上げましたように、鉄道会計には五十億、逓信関係には二十五億というものを一時繰り入れをいたすのであります。併しこれには必ず経営の合理化、経営改善ということをいたして貰いまして、そうして一時にといかんかも知れませんが、分割返還をして貰つて、更に一般会計へ繰り戻して貰うというような方法をも取ることにいたしております。(拍手)
   [國務大臣苫米地義三君登壇、拍手]
#10
○國務大臣(苫米地義三君) 板谷さんの御質問中、私に関する点は二点あると思います。第一点は只今大藏大臣から触れました特別会計、特に鉄道赤字に対する填補の方法如何という点でございます。第二点は鉄道從業員が非常に多いじやないかという二点だと思つております。その第一点につきましては只今大藏大臣から触れておりましたが、この赤字の中の五十億円を一般会計から繰り入れて貰うことに相成りましたことであります。大体鉄道の赤字は、前内閣時代に編成されました当初予算におきましては八十三億ということになつておるのであります。この赤字をいかにして填補するかということにつきましては、運賃の改正によりましてこの赤字を消そうということになつたのでありまして、そのためには新物價体系の一環としてこれを取扱うということになりまして、去る七月に物價体系の振合いから三倍半の運賃を上げたのでございますけれども、それ以上に物價が高くなりまして、却つて赤字が増加するの止むを得ない状態になつたのであります。即ち從來最も多く使つておりました石炭の値段が一トンについて百八十五円でありましたものが、新物價体系におきましては実に千二百四十円になつたのでありまして、この高くなつた石炭、及びそれに準ずるような他の物資を使いますために、八十三億でありました予定の損失は却つて百六十億に達した次第でありました。そこでこの運賃によつて赤字を是正することになりますれば、一般物價にも影響し、國民生活にも重大なる関係を及ぼすことでございまするから、暫く現状のまま推移いたしまして、適当な機会に一面には経営の合理化をいたしまして、経費の節約と物資の節約を極力努力いたしますと共に、適当な機会には合理的な運賃の是正をも考えなければならんと存じておつたわけでございます。今回の五十億の赤字を予想いたしましたのは、毎月十億ぐらいづつの欠損が出ますから、十一月から三月までの五ケ月間を予想いたしまして、普通ならば借入金で賄うのでございますけれども、いわゆる均衡財政をとる建前から、一般会計から繰り入れをして頂き、そうしてこの返済につきましては一年、二年で返して行くということになりますと、運賃の是正をいたします際にも非常に多く響きまするから、今後七ケ年間にこの借入金を適当に分割して返済いたしたいと考えておる次第でございます。無論それに対しましては極力経営の合理化、及び適当の機会には合理的な運賃の是正に俟つて、これを解決しなければならんと存じておる次第でございまして、それに対する研究は目下取進めております次第でございます。それから第二点の鉄道從業員の人数多いことでございます。御指摘になりましたように戰前と比べますれば、二倍以上に達しておりますことは事実であります。併しながら、これはいわゆる輸送量の増加に比例いたしますれば、必ずしもその量は多くなつておりません。即ち人・トン・キロに比例いたしますれば。戰前と大して違いはないのであります。併しこれは一つの計算の仕方でございまして、決して人数が多くないというわけじやございません。戰時中にいろいろな産業地域別の変化がありいたしますから、戰時中に増加いたしました部分で、戰後収縮いたしました地域もございますし、事業もございまするから、さような所には配置いたされました人員は確かに過剰になつておる所もございます。併しならが又一面において修理の増強を図らなければならんとか、或いは路線が衰頽いたしておりまするから、この保線の上には尚相当の人が要るというような、一面に不足なところもございまするから、できるだけ配置轉換を合理的にいたし、適正なる人員を配置いたしたいと、現在努めておる次第でございまして、尚自然に減少する人員に対しては、補充しないということによりまして、自然減員の方法によりまして、御指摘になつた人員の整理をも合わせ行つて行きたいと存じておる次第でございます。
 簡単でございますけれども一應…
   [板谷順助君――「現業と行政官廰との区別、それはどういう御意見ですか。私質問しておりますから御答弁願います。」と述ぶ]
#11
○國務大臣(苫米地義三君) (続) 現業の方につきまして今主としてお答えをいたしましたが、行政面に対する人員のことでございまするが、これは官廰全体に対して共通した現象でございます。先刻西尾官房長官から話がありましたように、政府が全面的な行政機構及びその整理に向かつて進む場合には、我々の所管いたしまする運輸省におきましても、その線に沿うてやつて行くつもりでございます。(拍手)
   [國務大臣三木武夫君登壇、拍手]
#12
○國務大臣(三木武夫君) 板谷君の御質問中、逓信省関係の問題にお答えをいたします。御質問の要旨は、通信会計の赤字をどう処理するかという点にあつたと存じますが、板谷議員も御指摘になりましたごとく、本年度の通信会計の赤字は、若し繰入金がないといたしますならば四十三億円になるわけであります。これが今回一般会計からの繰入れ二十五億円を差引きましても十八億六千二百万円の赤字が出るわけであります。この通信会計の赤字は、その原因には、結局今回の予算は、今までの予算が千二百円ベースの上に人件費は予算が組まれておつたわけであります。又物件費といたしましても、昨年十月ごろの物價を基準にいたしまして物件費の予算が組まれておつたわけであります。それが御承知のような物價の騰貴、或いは人件費に至りましても千八百円ベースになつた。從つてこういう基準によつて料金を決められておつたことが、今日の実情からいえば、その人件費、物件費と料金はマッチをしていないということになるわけであります。從つて料金の値上げ等の問題もここに起こつて來るわけでありますが、諸般の経済情勢を考えまして、今回は通信料金の値上げをいたさない方針で進んでおります。今後郵便、電信、電話、保險、爲替等の部門に亘つて、事業の増収の処置を講じますと共に、或いは人件費の面において、支出の合理化を図つて、できるだけ経営の合理化によつて料金の値上げの時期、幅等を……國民の負担を軽くいたして行きたい。併し適当な機会には料金の値上げをいたさなければならんことになると存じます。從つて今回繰り入れられました二十五億円も、その將來の償還などにつきましては、値上げの時期とか値上げの程度等によつて、一年、二年という短期の計画ではこの赤字を埋めることは困難でありますが、もう少し長期な計画と立てて、こういう繰入金の償還その他赤字を補填して、健全なる通信特別会計にいたしたいと、目下この案について檢討を加えておる次第であります。お答えをいたします。(拍手)
#13
○議長(松平恒雄君) 木内四郎君。
   [木内四郎君登壇、拍手]
#14
○木内四郎君 今回補正予算を提出されるに当りまして、昨日大藏大臣から詳細な御説明があつたのでありまするが、極めて厖大なる追加予算でありまするが、当初予算を編成、提出されてから後におきまして、各般の情勢が変わつておりますので、この追加予算を提出するの余儀なき事情につきましては、我々はこれを諒とする者であります。
 この補正予算を眺めまするというと、当局の苦心の跡が誠に歴然たるものがあるのでありまして、大藏大臣及び事務当局の苦労に対しましては大いにこれを多とし、且つ敬意を表する次第であります。併しながらこの補正予算が第一号から八号までばらばらになつて提出され、又今後提出されようとしておるのでありまして、これがために國会は延長に延長を重ねるの止むなきに至り、この責任は一に政府にあるということを、この機会に更に改めて明らかにいたして置きたいと存ずるのであります。(拍手)
 詳細の質問につきましては、時間の関係もありまするので、予算委員会に譲りまして、ただ主なる二三の点につきまして、政府の所信を質して置きたいと思うのであります。
 先ず第一に、予算そのものについて伺いたいと思うのでありますが、大藏大臣は、中央及び地方を通じて、飽くまで健全財政主義を堅持して行くということを言明されたのでありますが、我々はこの方針に対しましては全く賛意を表するのであります。一号から八号までの予算におきまして、九百二十億の追加額を提出され、本年度全体といたしましては二千六十六億の巨額に上がるのでありますけれども、今回の補正予算によりまして、当初の予算において赤字を計上しておつたその分までも、普通歳入によつてこれを賄うことにされた。そうして大藏大臣の説明によれば、今度は実質的にも、亦形式的にも均衡を得た予算にした、こういうことでありました。実質的に均衡を得ておるかどうかというようなことにつきましては、いずれは委員会におきまして詳細に檢討いたしたいと思うのでありまするが、とにかく少くも形式的には均衡を得た予算を提出することができたということに対しましては、私共は大いにその労を多とするのであります。殊に満州事変この方絶えず赤字公債によつて予算の大きな部分を賄つて來たのに、今日初めてここに少くも形式的には収支の均衡の得た予算を作ることができたということは、確かに一つの成功であると思うのであります。併しながら、昨日川上議員からもお話がありましたように、予算は單に均衡を得ておるというだけでは、健全な財政ということは困難であろうと思うのであります。例えば、仮に非常に野放図な歳出額を認めてこれを集計したところが、二千数百億円になつた。これに対して國民から、これを賄うに必要な税金その他を取立てなければならんからというので、重い税金をかけ、酒や煙草の値段も非常に引上げて、そうして収支のバランスを合せる。極端な例ではありますが、それでも収支の均衡を得た予算であるということができると思うのであります。併しながらこの際、我々としては飽くまで、できるだけ歳出はこれを抑えて、そうして税金もこれをできるだけ少くする。酒や煙草の値上げもできるだけこれを少くして、國民の負担を軽くするということでなければならないと思うのであります。予算の収支の均衡を合せるために或る一定の限度を超えて租税を引上げたり、或いは又酒や煙草の値段を限度を超えて上げるというようなことになりますれば、予算はたとえ収支のバランスを合せましても、先程板谷議員からいろいろ述べられましたが、たとえ予算は収支の均衡を得ましても、その税率の引上げ或いは專賣品の値上げそれ自体がすでにインフレの原因となり、或いはインフレを促進するものであることは、前欧州大戰後の欧州諸国においても、今回の大戰の後におけるところの欧州諸国の実情を見ましても、明らかなところでありまして、又各国の財政学者も等しく一致しておるところであります。又同時に、余りに税金が高くなるというようなことになりますれば、例えば酒について見ますれば、一方において密造が非常に多くなる、闇の煙草も多くなるというようなことでありまして、結局税金或いは値上げの目的それ自体をも達しないというようなことになる虞れもあるのであります。例が少し違いますけれども、曾て我が國におきまして、ダイヤモンドの輸入について関税をかけたことがある。初めは或る程度の関税をかけておる当時は税の収入も相当あつたのであります。ところが、贅沢品の関税としてこれを極端に引上げましたところが、ダイヤモンドは相変わらず國内へ入つておるのであるけれども、税収の方が少しも上がらないというような状態になりました。これは或る程度の限界を超えるというと、やはり危險を冒しても隠して輸入した方が合う、或いは隠して輸入し勝ちになるというようなことから來ていると思うのであります。
 そこで今回の國民の負担が、先程板谷議員が言われたように國民所得の七割五分にもなつているか、或いは大藏大臣の言われるように二二%であるか、そういう問題は非常に大きな問題でありまするが、いずれそういう点については、委員会において詳細に檢討されると思うのでありまするが、大藏大臣はすでに昨日の財政演説におきましても、予算編成方針の第二として、財政、企業、家計を通じ、國民経済全体を綜合的に把握して、その再生産に寄與し、経済再建に資すると共に、國民生活の安定確保を記する予算たらしめねばならない。こういうことをすでに言つておるのであります。又大藏大臣は今回の予算の編成に当つて最善を盡し、且つ最善を盛つたというようなことを言つておられます。勿論大藏大臣は、主観的にはさようでありましよう。併しそれが果してその通りになつておるかどうか、この点についても勿論今後大いに檢討を要する点であると思うのであります。又昨日、大藏大臣は川上議員の質問に対しまして、健全な国民経済の基礎の上に、健全財政にしたかつたのであるが、併し今回は均衡を第一にした。こういうようなことを言つておられまするので、その口吻から見ますと、いかにも今度は健全財政を均衡第一にしたと言つているので、均衡第一であるが、健全ということは止むを得ず暫く後廻しにしたというふうにも聞えないのでもないのであります。こういう点につきまして、重ねて大藏大臣から明らかにして置いて頂きたいと思うのであります。
 更に特別会計の赤字の問題、或いはその補填の方法等につきまして、先ほど板谷議員から詳細な御質問があり、又各大臣から御答弁がありましたが、その点につきましては、一應各大臣の説明を了承する者でありまするが、ただ一つ私はここに伺つて置きたいことは、経済緊急対策におきましては、すでに政府は六月にこういうことを言つております。甚だしく過剰な從業者を抱えている企業については、その合理化及び健全化を図り、政府事業においても率先して右の措置を講ずる。こういうことを言つておる。又更に経済緊急対策におきましては、政府の事業特別会計については独立採算制の本旨を徹底する。こういうことを言つているのであります。又藏相は昨日財政演説におきまして、合理的な経営を行なつておらないところの企業に対して、赤字補填のための金融を行うごときことがあつてはならない。こういうことを言つており、更に総理大臣は昨日この席におきまして、自分は経済緊急対策の実施に専念しておるとまで言つておられるのであります。こういう経済緊急対策にすでに六月掲げられたことを、今日尚これを実施に移されないで、先程運輸大臣或いは逓信大臣から伺いますというと、尚將來研究するというようなお話でありまするが、これはどうも少し(「少しじやない」と呼ぶ者あり)公約に反しておりはしないかと思うのであります。総理大臣は本日はここにおられませんが、すでに罷免権というようなものの発動についてさえも蛮勇を揮われたのであります。こういう公約の実行について更に勇氣を出されることが必要ではないかと思うのであります。(「いまに辞めるのだろう」と呼ぶ者あり)そういう点についてここにはおられませんが、(「総理大臣を呼んだらよい」と呼ぶ者あり)責任ある御答弁をお願いし、又國民にこの点を明らかにして置かれることが必要ではないかと思うのであります。殊に先程からいろいろ御説明がありましたけれども、どうも納得することができなかつた。殊にこの根本の赤字を克服するためにどういう措置を取られた、又どういう措置を取ろうとしておるかということを、もつと國民の納得の行くように御説明して頂きたいと思うのであります。
 尚この際それに関連しまして勿論行政整理の点につきましても、もう少し具体的に御説明を御願いいたしたいと思うのでございます。
 今回のこの予算につきましては、世状においては、千八百円ベースと物價体系を崩壊するものである、こういうようなことを言う人もあります。又ある者は、すでに千八百円ベースを物價体系は崩壊しているのである、今回の予算によつて更にその幅を大きくするに過ぎない、こういうようなことを言つておる者に対しまして、政府においては、飽くまで千八百円ベースはこれを維持し、物價体系はこれを維持して行くことができるというふうに言つておるのでありまするが、議論はどうでもできると思うのであります。併し事実は爭うことができないと思います。今回の関東の水害において、私の知つておる人が、表の門のところを閉めて、そうして水を防げたと思つておつたら、いつの間にか、中へ入つたら、水が床の下まで來ておつて、慌てて疊を上げた、こういうことを私に言つておつたのでありますが、口先だけで千八百円のベースが維持できている、或いは物價体系が維持できていると言つただけではいけないのでありまして、飽くまで事実を以てこれを証明して頂きたいと思うのであります。大藏大臣はさすがに良心的でありまして、(笑声)補正予算は直接は物價体系を動揺せしめるようなことはない、こういうふうに言つております。又、今後配給物資の増加によつて実質賃金の充実を確保することができれば、追加予算の施工によつて賃金水準を危殆ならしめるようなことがない、こういうことを言つておられます。言葉の末を捕えるようでありますけれども、直接には影響はないけれども、金融その他間接には影響があるということを認められているようでもありまするし、又実質賃金の充実を図るということも極めて困難、或いは殆んど不可能にも近いのではないかと思うのであります。大藏大臣としてはこういう言い方以外には或いは仕方がなかつたのであるかも知れませんが、これ以上ここで議論をしまして水掛論をいたしましても致し方がありませんが、こういう点につきましても一應大藏大臣から御説明を願つて置きたいと思うのであります。
 次に今回の煙草の値上げでありまするけれども、これにつきましては現に國会開会中でもありまするので、財政法の條項がたとえ施行されておらないにいたしましても、少なくも予め國会の了解を得るということは財政法の精神に合つておつたのではないかと思うのでありまするが、政府の責任において行われましたことについて、この際ここでいま一應大蔵大臣から御説明を願つて置きたいと思うのであります。総理或いは大藏大臣も煙草を喫われないかもしれませんが、煙草は單なる嗜好品として片附けてしまうには今日は余りにも國民生活に必要なものでありまして、
   〔議長退席、副議長着席〕
 この値段を著しく上げたり、或いは又家庭の配給を削減するようなことは、家計に極めて重大な影響を及ぼしているのでありまして、殊に國民はこれが特別会計の赤字の補填のために行われたというような経緯を聞いておりますので、若しそういう根本の点に手を触れなければ、將來においても尚更にこれが引上げられ、或いは家庭の配給が少くなり、殆んどなくなるのではないかということを虞れているのであります。どうかこの点について國民の納得の行くような御説明をお願いいたしたいと思うのであります。
 更に金融について簡單にお伺いいたしたいと思うのであります。大蔵大臣は財政を引締めた結果が金融面に轉嫁されることになれば、健全財政は單なる計数の遊戯に過ぎんと言つておられる。又財政資金、産業資金共蓄積資金の範囲内で賄うことが必要であるということを言つておられるのであります。私共はその方針につきましては全く賛成するのでありますが、そこで大藏大臣に伺いたいことは、飽くまで昨日言われたような健全金融の方針を文字通り一体行なつて行かれるのかどうかという点であります。勿論これを行なつて参りますれば、産業資金その他の点でいろいろ支障を來すと思うのでありますが、こう言われることを、飽くまでその文字通りに実行実施して行かれる考えであるかどうかということをこの際明らかにいたして置きたいと思うのであります。たとえ健全な金融を文字通りに行なつたといたしましても、昨日來ここで度々問題になつておりますように、租税の滞納はすでに百億円を超えている。又この租税の納入と支出の方において時間的な非常な食い違いがある。又從來問題になつておりまする貿易資金の運営、多額の金を使つて國内の物資を買上げて、これを外國に輸出している。外國から持つて來た物は比較的安い値段で賣つている。從つてその間において多額の資金が民間に撤布されているというような事情もあります。又復興金融債券は大藏大臣がたびたび言われているように消化が極めて不成績であつた。又今後についても非常に危惧される。こういう点もありまするので、仮に健全金融が行われたといたしましても、今後相当に通貨の膨張を來すのではないかと思うのであります。本年の上半期におきましては、資金の需要が七百九十七億円に対して、供給の方は三百四十九億円である。不足が四百四十八億円もある。そうしてその結果通貨が四百六億円も膨脹しておる。安本の政府委員の説明によりますれば、止むを得ないが、それは計画的の通貨の増発であるというようなことも言つておるのでありますが、又第三四半期におきまして、更に三百億円以上の通貨の増発をすでに予定しておる。第四四半期においても相当な膨脹を來すでありましよう。そうすると、本年の初めにおいて、大藏大臣の昨日の説明によると、千億円であつたものが段々殖えて來たというが、年末になれば二千億円前後になる。或いは年度末になれば更にそれが殖えて行く。そういう状態になるのではないこと思うのでありまするが、その点についても大藏大臣の所見を質して置きたいと思うのであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 そうして健全金融を行いましても、通貨がかくのごとく膨脹して來る。そうして浮動購買力が非常に増加して來る。又自由預金も大藏大臣が昨日説明されたように、最近も相当殖えておるらしいけれども、それも浮動性のものでありまして、潜在的の購買力であります。そういうようなふうに、浮動購買力が非常に多い場合におきまして、一体物價が今後上らないで行くという見通しであるかどうか。勿論現在は物價体系はまだ政府の言うように崩れておらないにしましても、千八百円ベースは維持出來るといたしましても、かくのごとく毎日々々通貨が膨脹し、浮動購買力が増加されて行く。而も一方において生産財、消費財の生産が少くて物が少い。そういう状態で、一体今後において少くも年度末まで、それから先のことはいいのですが、年度末までの間において物價が上つて行くことはないと云うふうに考えておられるかどうか。こんな場合に物價の上らない國はないと思います。我が國においては、上つて行かないという見通しであるかどうか、或いは統制したり、マル公があるから上らないと言われるかも知れないけれども、その基盤がすでにこういうふうになつて参つた場合に、或いはマル公で抑え、或いは闇を抑制し、そうして政府の言うように、流通秩序をそういう金融情勢の下において維持して行くことができるかどうかということを伺いたいと思うのであります。
 尚今後においてこの物價が若し仮にそういう状態であるならば、騰貴が止むを得ないということでありまするならば、今安本は十一月黒字説を唱えておるようでありまするけれども、賃金水準の改訂の必要がないというふうに考えておられるかどうか、或いは又増俸や突破資金を出す必要がないというふうに考えておられるかどうか、勿論説明はどうでもいいのです。政府は物價水準、賃金水準を維持する必要があると思うんだが、中労委が決定するから仕方がない、こういうことであれば又それでもよいのですが、或いは又政府の千八百円ベースというものは、飽くまで維持して行くのであるが、民間の賃金が高いから、そこまでは上げるんだと、理由はどうでも構いませんが、こういう金融情勢の下において、これを上げて行く必要がない、物價が上つて行かないというふうに考えておられるかどうかという点を伺つて置きたいと思うのです。この点は今後の追加予算にも関係し、又明年度の追加予算にも関して参りまするので、明瞭な御説明をお願いいたして置きたいと思うのであります。
 尚沢山ありますが、時間がありませんので省略いたしますが、只一点大藏大臣は一方において貯蓄の増加を図ると共に、税収、納税成績の向上を図つて行きたい。こういうことを言つておられます。私共はその方針自体には全く賛意を表するのでありまするが、大蔵大臣は財政演説におきましても、又昨日からの演説におきましても、租税の完納を図るために、或いは税務機構を拡充したり、職員の待遇の改善を図つたり、或いは脱税の摘発、処罰の強化、第三者通報制の活用、滞納処分の促進等によつて、税収の増加を図つて行くというふうに言つておられるのでありまするが、税はやはり各人に理解させて、そうして納得して納めて貰うことが必要ではないかと思うのであります。從つていかなる税法でありましても、それが國民に理解されない、徹底しておらんということであれば、これはそれだけですでに悪税と見なければならんと思うのであります。現在の税制におきましても、どうも國民に十分に理解されておらんような傾向があります。又政府においてもその宣傳に十分に力を盡しておられないように思う。然るに一方において或いは罰則の適用、滞納処分、こういうことだけでやつて行かれるということは、余りにも國民に不親切ではないかと思うのであります。勿論大蔵大臣の真意は決してそこにあるのではないと思うのでありまして、飽くまでその税法を徹底して理解させて行くというふうにされる考えだろうと思うのでありまするが、その点について大蔵大臣の所見を伺い、尚今後税法を簡易化し、或いはもつと分り易いものにし、そうしてその徹底を図るというお考えがあるかどうか、そういう点についても併せて所見を伺つて置きたいと思うのであります。時間の関係もありまするので、この程度にいたして置きます。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#15
○國務大臣(片山哲君) 私に対する御質問は、企業の合理化、健全化、特に官業におけるその合理化の実現は如何というような御質問であつたと了承いたしております。その点についてお答えいたしたいと思います。
 この経済危機突破のためには、どうしても企業の合理化、健全化に手を着けて國策を立てなければならないと考えておるのであります。特に官業におきまして、この問題を慎重に考えて行きたいと思つております。但し官業におきましては、行政機構の改革と相俟たなければならないと思つておりまするので、行政機構の改革から手を着けておるのでありまして、すでに閣僚を選任いたしまして、行政機構を根本的に改革いたしたいと考えて、いろいろ案を練つておるのであります。これと睨み合せまして、官業の合理化及び企業の健全化、経費の節減等を実現する順序といたしたいと思いまして、いろいろと対策を練りつつあるのであります。こういうふうに慎重に順序を逐うて進まないことには、いろいろの影響の大きいことを考えておるのであります。能率の低下を恐れるということが一つであります。どうしてもその能率の増進を図つて行かなければならない。又失業問題の影響等も考えまして、その対策も十分に考慮して行かなければならない。経費の節減をどういう場面においてこれを現わして行くべきであるか、いろいろ睨み合せまして目下檢討中でありまして、甚だ遺憾でありましたけれども、追加予算の面には、これを具体的に現わす段取りとはならなかつたのでありまするが、今後は是非共その問題を現実に取上げて行きたいと、かように考えておりますから、何卒その点御了承願いたいと存じます。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#16
○國務大臣(栗栖赳夫君) 木内議員の御質問に対しお答えいたします。
 先ず第一は追加予算の提出が遅れました次第でございますが、これは種々交渉の結果時間を大変とりまして遅れたような次第でございまして、一つ悪しからず御了承をお願いしたいと思います。(拍手、笑声)
 それからこの健全財政に関連いたしまして、歳入は限度がある、そうして限度を超えたところで歳入を計上しても、これは形式的な健全財政になつて、実質的にはやはり金融その他に向けて駄目だという御意見でありますが、御尤もでありまして、私そういう点を非常に心配いたしまして、この財政を盛つた次第でありますが、実は先程板谷議員からの御質問に対しても、政府はこの九千億の國民総所得というものを見積りまして、その内訳その他をも委員会でお示しをいたしまして、そうして十分御檢討を願い、御意見をも承わり、それによつて決めて行きたいと思う次第でございます。それから昨日川上議員の御質問に私答えましたバランスド・バゼツト、均衡を得た予算という意味が、健全財政よりも強く出ておるようにもとれるが、そういう意味かどうかというお尋ねでありますが、私は健全財政、これは中央地方を通じての健全財政、健全金融と、こういうようなことを第一の目標にいたしたのでありまして、その健全財政を盛る上におきましても、このバランスド・バゼット、均衡を得た予算を盛るということをいたすわけでありまして、手段になるわけであります。ただ均衡を得たということが、而も数字的に、形式的にだけ得たという趣意でなしに、実質的にもいろいろ諸般の、現下においてはむずかしい事情もありますけれども、能う限りのこの最善の、実質的なこの均衡を得た予算を盛ると、こういうような趣意で申しておる次第であります。健全財政ということが大きな目標でありまして、その手段として、バランスド・バゼットを盛ると、こういうような趣意でございます。
 それから行政整理と経費節減の問題でありますが、実は先程片山総理からも答弁がありましたが、今度の追加予算におきましても、できるだけの、この本予算に遡及いたしまして檢討を加えたのでありまして、そこで行政整理の一歩といたしましては、経費を一割削減するということで十五億一千万円の計上をいたしておるような次第であります。
 それからこの追加予算と千八百円ベースの維持であります。千八百円自体については、安本長官からいろいろ説明があることと思います。この追加予算等を編成するに当りましては、千八百円の維持をいかにするかということで、相当苦心をいたしたのでありまして、そこで実は収入の中の大宗である税、殊に所得税収入の中におきましては五十一億の減税になるわけでありますけれども、この基礎控除及び家族控除の軽減をいたした次第であります。
 尚増税につきましては、この超七万円から税率を引上げまして、そうしてこのインフレ所得者その他に高率の課税をいたすことにいたしました。それ以下の勤労階級の少額所得者には課税をいたさないことにいたした次第であります。
 尚煙草その他の配給につきましても、配給價格については、できるだけこの維持をいたしまして、引上げ等を行わなかつたような次第でございます。それから煙草の値上げと財政法の関係でありますが、これはこの機会に是非申上げて皆様のご了解を得て置きたいと思うのであります。これは政府の責任においていたしたわけであります。只今財政法三條は施工されておらんのであります。併しながらその精神は我々は酌んでいたさなければならんことになるわけであります。尚この三條の施工ということも、種々関係筋との間の交渉によつて、紆余曲折を経ましたけれども、これは全面的に施工すると、但し現在のようなこの緊急の事態の続く場合においては、この特別な委員会とか、國会の委員会その他に諮つて、特に政令で以てこの價格の変更ができるような、或いは料金の変更ができるようなことにしたいというようなところに大体決まつておるのであります。併しこの煙草の値上げにつきましては、実は追加予算が延び延びになりまして、これを十一月一日から施工いたしませんと、大体一日に二億円の利益が入るべきものが入らなくなるわけでございます。そこで止むを得ない関係がございましたので、政府の責任において一應値上げをいたしました。改めて予算総会その他におきまして十分御説明を申上げて、皆様の御了解を得たいと思う次第でございます。
 それから金融の点でありますが、金融の点につきましては、健全金融を採ると、こういうことの建前は、文字通り原則として考えて頂たいと思うのであります。併しながら、私三十年も金融をいたしておりますが、金融の面を机の上で考えるようになかなか行かんのでありまして、右手に実際を見ながら、左手で又これを他の方面との関係を見て、常に実際の動きというものと緩急よろしきを得るということが実際の運用においては非常に必要であります。そこで原則として、この健全金融を採りますが、実際の面においてはこれが生産を阻害するというような、金融が生産を阻害するというような結果に陥るようなことになりますれば、これはこの危機を脱却する上の由々しい問題でありますので、この点は十分考えまして、左手で実際を見ながら、右手においてこの原則というものとも睨み合せまして、この運用のよろしきを得たいと思う次第であります。
 尚貿易資金の運営についてでございますが、これは今回予算に、又補正予算にも、貿易資金の繰入をするようでございますが、これにつきましては、前内閣以來の赤字をも埋めるような関係もあるのであります。この運営については十分將來改善を加えたいと思うのであります。これは國庫、一般の負担になるという点において考えますと同時に、この通貨を市場に撤布し、それが浮動購買力の方に流れて行くというような結果になつても非常に困るわけでございますが、その撤布した金が更に生産へと廻るような方法も考えなければなりませんので、十分お説のように改善を加えて考えて行きたいと思う次第でございます。
 それから通貨増発の問題がありましたと思いますが、これはやはり私は通貨は今日までは金融その他の面で増発されておるのであります。例えば特別会計における鉄道その他におきましても、赤字は借入金で賄うということになりますと、そうしますとそれは日銀から借入れをいたすのであります。それだけの金はその日に増発になつてしもうのであります。これを十分矯めたいと思いまして、今回は極く例外的に、七十五億という両会計への繰り入れを一時したような次第でございまして、この点は十分考えたいと思います。
 尚復興金融債券の発行が、大部分において日銀引受に終るということも、通貨の増発を非常にいたしますので、この点も昨日來申上げますように十分考え、市場消化ということに全力を盡して行きたいと思うのであります。
 尚納税貯蓄運動というものをいたしまして、そうして貯蓄の増強その他によりまして、この資金を吸上げ、浮動購買力を吸上げまして、他方必要なる資金を必要なる方面に廻すというようなことに努めたいと思う次第でございます。
 それから通貨がどうして増発されて行くということになれば物價が上るじやないか、それに対する予算面その他の関係はどうかということであります。政府としましてもこの点を最も慎重に考えておる次第でございまして、この物價の調整、下る物價も、或いは公定を下廻つておるような木材のごときものもあろうかと思います。或いは止むを得ず上るものもあろうかと思います。若干の調整ということは勿論本当に行わなければいかんと思うのでありますが、併しその調整程度であれば補正予算においては大体賄えて行くのじやないか、かように考えておる次第であります。
 それから納税成績を上げるにつきまして、私昨日申上げました税務機構の強化その他についての点をお示しがあつたのでありますが、尚私は一方においてそういうことをいたしますと同時に、又昨日それに引続いて御説明申上げておりましたように、やはり國民の間に、この危機を突破するにはやはり税というものは納めなければならん、そうして危機を収めなければ國の財政即ち日本の経済が破綻するということを十分認識して貰う。それがためにはこの納税運動も展開をいたそうということを先程申上げましたが、それをいたしたいと思うのでありまして、木内議員のお説の通り、嚴厳しきを以てのみ臨むということでなしに、一方においては十分國民に納得をして貰う。こういう点において國民の納税運動を是非展開したいと思う次第であります。尚國民に納税ということを理解して貰うにつきましては、税制その他の複雑よりも簡易化というようなことを考える必要はないか。こういうお示しでありますが、私全く同感であります。実はこのインフレ利用者のその他高額の利得者に対しては特別利得税のごときものをも課したいということを我々も考えたのであります。片山総理の施政演説にもそれが見えておるのでありますが、段々いろいろ折衝いたしました結果、この三月までありました複雑なる分類所得税をこの予算申告税に変えたのであります。これは簡易化するためにも分り易くするという趣旨で変えたのでありますが、それを更にその上に特別の利得税をかけるというようなことは複雑になるという虞れがありますので、國民に成るべく税の機構を分り易くするという趣意からして、実は特別利得税を止めまして、そうして、所得税のところの超七万円の者に対して高率の累進課税をいたすように改めた次第であります。尚今後につきましても、本当に理想をいうならば、自分の利得を見ればその利得の中で税が幾らかということを、國民が頭にすぐぴんと來るような税にしなければならんということを私も理想と考えておるのでありまして、かくのごとき意味については十分努めたいと思う次第であります。
 尚この税制の徹底化ということは簡易化と相待つ問題でありまして、先程も申上げました納税運動或いはその他においても十分これを涵養いたしたい。かように考えておる次第であります。(拍手)
     ―――――・―――――
#17
○議長(松平恒雄君) 國務大臣に対する質疑は尚ございますが、この際これを後に廻し、日程第二、農業協同組合法案(内閣提出、衆議院送付)、日程第三、農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)以上両案一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(松平恒雄君) 御異議がないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長楠見義男君。
   [楠見義男君登壇、拍手]
#19
○楠見義男君 只今上程せられました農業協同組合法案及び農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案につきまして、その内容及び農林委員会におきまする審議の経過及び結果について御報告申上げます。
 御承知のごとく農業協同組合法案において目的といたしておりまするところの新らしい農業協同組合は、農地改革と並んで我が國農村の民主化と農業経営の高度化を図らんとするものでございまして、このことは一昨年十一月九日連合軍総司令部から発せられました農地改革に関する覚書において、非農民的利害に支配せられず、農民の経済的、文化的向上を目的といたしまするところの農業協同組合運動が提唱いたされましたことに徴しましても亦明らかでございます。言わば農地改革によつて地均しせられます基盤の上において、我が國農業の実体並びに將來世界経済に列した場合の我が國農業の在り方等についての深き考慮の下に新らしい建築をなさんとするものでございまして、即ち從來の農業團体制度を根本的に刷新し、ここに新らたに農民の自主的な協同組織を確立し、その協同の力によつて、我が國農業の零細経営から來りまするところの不利益を補い、経営の合理化、生産性の向上、その他農民の経済的、社会的地位の向上を図らんとするものでございます。
 而して農業協同組合法案は全文百二箇條より成りまするところの極めて厖大な團体組織法でございますが、その内容については、從來の農業團体法制と著しくその趣きを異にいたしておりまする点が、同時に又この新らしい法案の内容としての重要な特徴でございますので、それらの点について概要御説明いたしたいと存じます。
 第一は組合に構成に関する問題でありますが、全体を通じて自由の原則が一貫して尊重せられておるということでございます。即ちこのことは只今申上げましたごとく、農民の自主的な協同組織確率がその根本義であることから來りまする当然の帰結でございまして、從來の農業團体が、ややもすれば政府の統制方策によつてその自主性が妨げられ、組合員の意思による組合の自由なる発展に遺憾がありましたのとは異り、新らしい組合は、その設立は勿論、地区の決定、組合員としての加入、脱退すべて自由でありまして、從つてこの観点から、行政廰の監督も單に公益擁護の立場からする極く最小限度のものに止められておるのであります。即ち一面において農民の自由なる意志と判断とに委ねられることにいたしておると共に、他面においてはその結果も亦農民自身の責任に帰するの体制を採つておるのでありまして、農業協同組合による新生面の開拓は、一に農民のこれに関する熱と努力如何に懸かつておる次第であります。
 法案の内容の第二の重要点は、組合が生産協同体であるという点を強調しておることであります。その一つの現われは、耕作農民を正組合員といたしまして、その他の例えば組合の地区内に住所を有する者で、その組合の施設を利用することを相当と認められるような者は、准組合員として加入はできましても、議決権及び役員の選挙権を持たんのでありまして、即ち組合の運営に参加することのできる組合員の資格を正組合員たる農民に限つておるのであります。この点從來の團体がややもすれば非農民的利害に左右せられ、從つて生産過程における協同的な仕事が進まなかつた理由の一半もこれに基ずくものと考えられたからであります。生産面を強調するもう一つの現われは、新らしい組合の事業項目におきまして、例えば法案の第十條において示しておりまするごとく、農作業の共同化、農地の造成、改良、管理、或いは農業水利施設の設置管理、農村工業施設の運営、農業技術向上のための教育普及等、今後の協同組合活動の重要なる分野を積極的に明示しておることであります。
 次に農業協同組合法の制定に伴う農業團体の整理等に関する法律案について申上げます。この法律案の内容はその題名が示しておりまするように、新らしい協同組合法の施行に伴つて、從來の農業会、養蚕実行組合等は、法律施工後八ケ月を最大期限として解散するのでありますが、この解散手続、或いは既存農業團体の財産の処理又は引継等に関するものと、他の法令における関係條文の整理改廃に関するものでございます。
 尚以上二つの法案共に施行期日につきまして、原案で政令を以て定むることとなつておる点を、衆議院において法律公布の日から一ケ月以内において定むる旨の修正が行われておるのであります。
 以上が二つの法案の内容についての御説明でございますが、委員会におきましては、この協同組合が、前に申上げましたごとく、農業改革の上において今後占むる役割の極めて大であること、又農村における生活分野を蔽う生活協同体的な重要なる團体法制である点等に鑑みまして、予備審査として去る八月二十六日第一回目の審査をいたしまして以來、前後八回に亘つて終始慎重なる審議を重ねた次第でございまして、各條文に亘る逐条的な質疑を除いて、基本的な問題で面も大きな項目のみでも三十余の質疑が行われた次第であります。ここで一々その詳細を御報告することは省力さして頂きまして、大体三つの項目に調整いたしまして、代表的なのについて御報告申上げたいと存じます。
 即ち数多くの質疑を分類いたしますると、一つは、この法案が成立いたしました場合における協同組合の目的達成上必要な一般的原則、言い換えますならば、本法が完全に行われるための基礎條件に関するものでありまして、第二は協同組合自体に関するものであり、第三は旧農業團体から新らしい協同組合に移行するに際しての経過的な問題に関することでございます。
 先ず第一の、本法が完全に行われるための基礎條件に関する質疑といたしまして、多くの委員の方々より、我が國農業の將來における國際性から見た場合、傳えられるような農業恐慌は直ぐには來んし、又来ても昔と同じ形態ではないかも知れないが、併しいずれにしてもそれに備えるためには、今から確乎たる心構えと準備をやり、この角度から協同組合を見て行かねばならなんと思う。從つて農業生産部門における改善が特に必要であり、それには経営の共同及び高度技術化は勿論、農業資金資材の適正円滑なる確保に関する政府の積極的施策を必要とし、更にこれに併せ農地改革の徹底が大きな基礎條件であると思うが、これに対する政府の所信如何との質疑に対しまして、政府の答弁は、先ず農林当局からは、いかなる形で世界水準に伍して行くかは今明言できないが、少くとも農村の民主化と生産力の昂揚、從つて生産コストを低下して行かなければならんことを至上命令で、この目的のために農地改革による民主化を図り、又本法によつて共同化を図ることが根本の考えである。面してこの考え方において指導を行い、例えば家畜導入、農業機械化、農村電化、その他の農業の科学化、合理化についてはすでに着手しており、今後又特に努力せねばならんと思う。農業技術の改善については、指導農場を中心としてこれに努めて行きたい。又資材面では、農機具は遺憾ながら不十分で、今後の努力を必要とするが、肥料については生産は増加の一途を辿つておる。農地改革については、第二次改革は目下進行中で、明年三月末までに百三十五万町歩を買上げる予定であるから、既定計画はその大半を終える見通しが確実についておるとの趣旨の答弁がございました。大藏当局よりは今後の日本再建には農業に負うところが極めて多いのであるから、廣く一般農業金融の流通については十分努力いたしたい。元來農業金融は長期低利性をその特徴とするのであるが、現在大口長期のものについては、農林中央金庫及び勧業銀行が主として当つており、小口地元金融は農業会が当つており、今後はこれらの機関を中心として、特に農林中金を元締として行きたいと考えておる。面して農林中金は現在整備中であるけれども、將來十分にその機能を果して頂きたいために、整備と同時に必要あらば拡大も考慮しておる。又小口地元金融は、今後は農業会に代つて協同組合を健全に育成していく必要があり、一面において自己資金としての預金の受入れに十分努力して貰うと共に、その資金の有効適切なる活用については、自主的、民主的運営と合せて、政府としても格段の指導を考慮したいとの趣旨の答弁がございました。
 次に第二の問題でありまする協同組合自体に関するものとしての質疑中には、法案の各條については勿論、組合運営の指針ともなるべき模範定款例についても貴重な質疑が行われましたが、時間の関係上、その多くは速記録に割愛することといたしまして、中二三についてのみ御報告いたしたいと存じます。
 即ちその一つは、農民組合と農業協同組合との関係について政府はいかに考えておるか、又近く農民組合法制定の意思ありやとの質疑に対して、農林大臣より、農民組合法制定の意思はない。又農民組合と協同組合との関係については、その間一部共通点、例えばそれぞれの指導者に日本農業改善に関する熱意についての共通点はあるけれども、両者は大体においてその存立意義は明確に区別し得るものと思う。即ち農民組合は端的にいつて、政治的に訴えてその要求を達せんとする運動体であり、この意味において政治的性格を有するが、協同組合は政治的運動はやつてはならんものと思うとの答弁がございました。又いわゆる生活協同組合との関係をいかに農村に結びつけるかとの質疑に対しましては、農村に関係する限りにおいては、農業協同組合を以て生活協同組合と考えられたいとの趣旨の答弁がございました、
 又法案の内容に関しての質疑といたしましては、組合法案の第九條第三項におきまして、農民が行う薪炭生産の業務は、本法の適用については、これを農業とみなす旨の規定があるのでありますが、このことは一般農政と林政との混淆を來す虞れがあり、更に又農民の自家用薪炭の程度であればまだしも、販費用薪炭についてまでその業務を農業と見ることは、林業会、森林組合との関係上摩擦が起こり、これら團体の森林施業案にも支障を來すこととなり、更に又いろいろの統制或いは小運送その他の点から見ても、種々の團体が取扱うことは不可と思うが如何との質疑に対しまして、農林当局より、農業協同組合は農民協同組合とも言うべきもので、人を中心として考えておるから、半農半山地方で、農民が副業としてやつておる薪炭生産は、協同組合法の適用上は農業とみなすことがむしろ自然的であり、且つ現状に即するように思う。面してこのために主として山林政策に支障を來さず、又その意思も毛頭ない。ただ他の取扱期間との摩擦調整については別途に十分檢討し、必要あらば特別の措置を講ずることといたしたいとの答弁がございました。
 尚序でございますが、この第九條第三項の点につきましては、これを削除及至修正をなすべしとの陳情、請願がそれぞれ全國各地からございましたことは御承知の通りでありまして、要するにこの問題は、帰するところ農業開拓、林業等農林行政各部門に亘り、その間適切なる綜合調整の必要なることを示唆しておるのでありまして、この点につきましては、委員会といたしましても全体を通じて強く政府の反省及び善処が要請せられましたところであります。
 次に組合法第十條第五項において、いわゆる信用事業を営む協同組合連合会は、他の事業を行うことができないことになつておるのでありますが、農業の改善、発達には資金が不可分でありますし、從つてこのいわゆる信用事業兼営禁止の趣旨如何との質疑に対しまして、農林、大藏両当局より、單位の協同組合だけは例外的に信用事業の兼営を認めたのであるけれども、本来いろいろの事業を行う團体と信用事業を行う團体とは別にすることが預金の安定性を保持する上から見ても、亦系統機関の相互融資等の点から見ても適当であるとする考え方によつたものであるとの答弁がございました。
 最後に第三の問題として、旧農業團体から新組合への移行に際しての経過的問題に関する質疑につきましては、單純に旧農業会が協同組合に衣替えしたに過ぎぬことであつては、折角の法案もその意味を失うことになるわけでありまするから、その観点からいたしまする質疑と、同時に又その移行が円滑に行われませず、或いは又混乱を伴つて行なわれますならば、將來の堅実な発展を期すべき出発点におきまし、多大の脆弱性を持つた不完全兒として誕生することになるわけでありますから、この観点からも檢討が重ねられました次第であります。
 先ず第一の質疑は、新らしい協同組合においても、非農民的支配が復活する虞れがあり、いわゆる既存勢力排除の方法がかけていると思うが如何との質疑に対しまして、農林大臣から、組合は自由の原則に基ずいて設立、運営せられるのであるから、万一仮に当初既存勢力の力の強いものができても、その運営の途上必ず燃え上る農村民主化の熱意によつて改善せられると思う。又既存勢力というけれども、今日においてはいわゆる封建的地主の地位は衰え、單に地主たるの故のみを以てしては最早指導力はないと思う。又人格識見優れた人であれば決してこれを排斥するに当らないとの趣旨の答弁がございました。
 次に、各政党がそれぞれ協同組合運動を推進しておるようであるけれども、これが是非について、更に又協同組合推進啓蒙運動統一の必要についての政府の所信如何との質疑に対しまして、農林当局から各政党が自己の党勢拡張の観点から組合指導をすることは、組合自体政治活動をなすべきでない建前から見て不可であると思う。面して政府としては本法制定後は大々的に啓蒙推進運動をやるつもりで、その用意を有しているとの答弁でありました。尤もこの政府の用意の具体的内容につきましては、北村委員から掘り下げて御質疑がございましたが、ここでは速記録に割愛いたしたいと存じます。
 次に、旧農業團体に従事する約四十万にも及ぶ極めて多数の職員の失業をいかに考えておるか。又その対策如何との質疑に対して、現在の職員は一部はこの新らしい協同組合の職員となるのみならず、その他作物統計調査局或いは指導農場の職員となり、更に又近く制定を期待している生産調整法に基ずく職員として活用せられ、むしろ今日の不十分な待遇よりはよくなり、大した心配はいらんとのことでございました。
 以上が質疑応答の大要でありますが、かくて質疑終了後討論に付しましたところ、先ず共産党を代表して板野委員から、新らしい農業協同組合は、從來の非民主的な農業團体に比して極めて進歩的意味を有しており、この観点より本案には賛成である。併しながら眞に法律所期の堅実なる組合の発達を期するためには、それを保証するための基礎的條件の完備、その他種々の施策が併せ行われることを必要とし、面してそのためには、土地改革の徹底、適正利率による農業資金の融通、及び農業再生産に必要な各種資材の優先的確保、生産の共同化、及び技術向上に関する積極的助成、公職追放者その他戰時中の農業團体役員を新らしい協同組合の役員より排除するための行政的措置、その他数項目に亘つて政府の措置を必要をする趣旨の意見の御開陳があつたのであります。
 次に松村委員から、本案は賛成であるけれども、法案施行に関しては新らしい農業協同組合によつて廣義農業の綜合発達を期し、畜産、養蚕及び茶業並びに林業等の専門的発達のための協同組合、その他の團体の組織及び発展の自由を尊重すること、農業金融及び協同組合の経理の調整に関して適切な措置を講ずること、農業に関する科学知識の普及並びに技術向上のための農業技術員の重用に関して措置をなすこと等に関しての行政廰に対する要望を述べられまして、賛成の意見を表明せられたのであります。次に門田委員よりは、從來の農業会におけるがごときボス的存在は、これを排除し、新らしい協同組合を眞の民主的組合たらしむるための必要性を強調せられまして、本案に賛成の御意見があり、又高橋委員よりは、本案に賛成であるけれども、組合法第九條第三項に関連して、この條項のために林業と農業との分界が不分明になり、そのために森林政策の綜合統一を期する上において大なる支障を來す虞れあることを憂慮せられるので、かくのごときことのないように、政府は中央より地方末端に至るまで、十分徹底するよう努力せられんことを要望すると共に、速やかに確乎たる森林政策の確立の必要を強調する旨の意見の御開陳がありました。又寺尾委員よりは、農業技術の向上普及の観点から、從來は農民の保守性等の関係もあつて、個々の農家を対象とし、篤農家の出現を期待するような観があつたが、新らしい機械の導入にしても、農産加工にしても、亦最も重要な新技術の普及についても、その根本は農家の協同組織が必要で、この意味において本法案に賛成すると共に、技術的発達のための今後の國家的施策の必要なる旨の意見の御開陳がありました。最後に羽生委員より、農業採算部門における共同化が最も必要で、これがためには土地改革の徹底を図ること、及び農業技術の飛躍的発達を図るためには、農事試験場が象牙の塔から出でて、協同組合と眞に一体的活動をなすようにせねばならんとの意見をお述べになつて、本案に賛成の意を表せられたのであります。
 討論は以上を以て終り、採決に入りましたところ、農業協同法案外一件は全会一致を以ていずれも衆議院修正通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。以上御報告を終ります。(拍手)
#20
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に共します。両案に賛成の諸君の起立を請います。
   [総員起立]
#21
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。
 本日はこの程度で延会いたしたいと存じます。御異議はございませんか。
   [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#22
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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