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1947/11/08 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第47号
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1947/11/08 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第47号

#1
第001回国会 本会議 第47号
昭和二十二年十一月八日(土曜日)
   午前十時四十二分開議
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 議事日程 第四十六号
  昭和二十二年十一月八日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第三日)
 第二 海難審判法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 家事審判法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。
#4
○淺岡信夫君 私はこの際在外残留者引揚促進に関しまして、緊急質問の動議を提出いたします。
#5
○矢野酉雄君 淺岡君の動議に賛成いたします。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松平恒雄君) 淺岡信夫君の緊急質問の動議に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#7
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。淺岡信夫君。
   〔淺岡信夫君登壇、拍手〕
#8
○淺岡信夫君 私は只今皆さんのお許しを得まして、私の所懐の一端を述べさして頂きます。
 敗戰以来三度の嚴寒を迎えんといたしておりまする今日、尚異境の地に八十万同胞が全く日夜祖國の空を眺めておりまする現状、更にその帰還を待わびておりまする家族の人たち、こうしたこのことを思いまするとき、誰か涙なきを得ないのであります。
 去る八月十五日、本参議院におきましても、將又衆議院におきましても、引揚促進に関する決議が上程いたされまして、各連合國に対しましての感謝並びに今後の引揚げ、そうした問題に対しましての決議が行われたのであります。年内の帰還完了のいよいよ困難だといつておりまする昨今、新聞紙上によりまして、バアーンズ米國務長官が最近発表いたしました回顧録で、ソヴイエトが現在労働に使役しておる日本人五十余万の帰還促進の要求をする旨強調したことに対しまして、私は心からなる感謝の意を表する者でございます。
 更に去る十月二十九日、第四十四回対日理事会におきまして再度この問題が取上げられ、五ヶ月以内にソ連におりまするところの全日本人を送還しようという徹底的なもので、これに対する船舶の提供を約束されたのでございます。最切の一ヶ月間に十三万一千五百人、その後毎月十六万、シーボルト議長が言明した総司令部の引揚げ計画は、ただソ連の同意を求めることに相成つたのでございます。更に冬期の結氷期に備えまして碎水船三艘を用意するとのことでございます。シヨウ英國代表も力強く全面的に支持されたのでございます。文中國代表商震上將におきましても、中國北部殊に満州方面の引揚げを成るべく早く完了する旨言明されたことは、どれほど大きな希望を與えたか知れたいのでございます。曾てマーシヤル米國務長官が、中華特使として中國にありましたとき、三人委員会の幹旋で中共地区からの送還が行われていたが、現在は全く杜絶えまして、消息すら不明となり、忘れられた同胞とならんといたしておりまする今日、中國代表の言明は誠に光明を暗夜に見たようでございます。かくのごとき連合各國の誠意と懇情には全く感激に堪えないのでございます。重々感謝の外はございません。
 一九四五年七月二十六日ポツダムにおいて「我ら合衆國大統領、中華民國政府主席及びグレート・ブリテン國総理大臣は、我らの数億の國民を代表し、協議の上、日本國に対し今次の戰争を終結するの機会を與ふることに意見一致せり」。この條項より始まり十三條に及ぶポツダム宣言のその第九に、「日本國軍隊は完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し、平和的且つ生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし」、更に條項第五に、「我らは右條件より離脱することなかるべし」、即ちこれらの條件を逸脱しないと申されているのでございます。先にマーシヤル前駐華特使、バアーンズ前國務長官、更に総司令部の対日理事会における御提案、これに対する英國、中國の支持や同情は、このポツダム宣言の條項第九に基ずくものと思うのでございます。勿論日本が忠実にポツダム宣言の條項を嚴守いたしておりますることは皆様御存じの通りでございます。
 去る本参議院におきまして決議の当時、問題とされておりましたところの南方作業隊もその集団輸送が十一月中に完了すると承わつております。ソ連地区の引揚げが遅々としておりますことは、日本の受入態勢を深く顧慮されて、ソ連の御厚意からそれを調節しているからだということを、八月の二十五日、六日、七日、八日、本参議院を代表して参りました同僚議員が舞鶴におきまして引揚げて参りました人たちから直接に聞いた声でございます。
 かくのごとく引揚問題がクローズ・アップされております今日この際、私は政府といたされましても、残留者の引揚促進に対する対策及びその見通し、更にその内地受入態勢等につき、改めてこれを國民の前に明らかにされるの必要を認めるのでございます。
 只今よりこの問題につきまして質疑いたし、総理大臣、外務大臣、厚生大臣の責任ある、そして明快且つ大胆なる御答弁を請わんとする者でございます。
 連合國の誠意ある取計らいによつて、すでにその他の地区は完了いたさんといたしておりまする今日、ソ連地区からの復員は遅々として捗つておらないのでございます。ソ連地区における日本軍捕虜の生活が果してバアーンズ前國務長官の言われますような奴隷的労働であるかどうかは窺い知り得ませんが、終戰後三度の嚴冬を迎えんとして、シベリアその他の地に黙々として労働に服している五十万余の同胞の身の上を案じますとき、將又その留守宅にあつて日々その帰還を待ち佗びている家族に思いを馳せますとき、胸の底から熱い涙がこみ上げて來るのを禁じ得ないのでございます。ソ連地区の兄弟よ健在なれ。留守家族よ、父よ、母よ、妻よ、子よ、決して力を落してはならない。元氣で我らと共に彼等兄弟の健康を祈ろう。そうして早く速かにその帰還の実現するためにあらゆる努力を盡そうではないか。幾らその急速な帰還を要望いたしましても、敗戰國の発言は所詮容れられんと諦めず、繰り返し繰り返し関係国家に懇請し、又廣く世界の同情を喚起し、その目的を達成しなければならないのでございます。すでに聞き及びますところによりますと、世界の宗教連盟、或いは赤十字社を通じ、或いはY・M・C・Aを通じ、今や世界的にこれを愬えんといたしておるのでございまして、残留八十万同胞の大部分は労働者農民の子弟でございます。労働組合が嚴しいインフレによる深刻な生活を打開するために越冬資金を要求するのは固より至当でもございましようが、だからと申して、極北酷寒の地に我らの同胞が三度目の冬を迎えんとしておりますのに何の対策もないということは誠に淋しいことでございます。昨年十二月十九日、米ソ協定の成立によりまして、毎月五万人の割合で引揚げが続けられております。引続き行われましても尚今後十五ヶ月を必要といたします。今年の冬も又來るべき來年の冬も過さなければなりません。帰還促進を哀訴嘆願する家族たちの声は野にも山にも充ち満ちております。いろいろな形となつて現われ、國民の最大関心事の一つでございます。このときに当り私は外務大臣の御所見を拜したいと存じます。即ち政府は海外残留者の引揚げについていかなる見通しを以て、いかなる努力をなされるつもりであろうか、本議場を通じまして明快なる御答弁を要望いたす者でございます。
 次の一点は厚生大臣にお尋ねいたしたいと存じます。即ち引揚げが更に促進せられ、相当多数の帰還者が急に帰つて來るように相成りましても、これを受入れるだけの國内の準備が十分であるかどうか、この問題でございます。特にこの問題が引揚促進の重大なる鍵であります。今日各地で行われております、村に町に或いは市に、この引揚促進の大会に私は常に列席しておりますときに、直接に声を聞くのはこの問題でございます。引揚促進の重大なる鍵で、ソ連の最も顧慮されておるところであります。最近引揚げに対する應急援護の実情を見まするに、國民一般の経済状況が反映し、勿論十分であるとは申されんにいたしましても、上陸地現場諸機関の協力によつて順調に実施されておる状態でありますることは、曾つての参議院の視察におきまして、或いは衆議院諸公の派遣されたその視察の報告を承わつて見ましても明らかでございます。今日五百七十万余の人が帰つて来ておりますが、僅かに一割五分近くの人が残つておられる。さて引揚者の数がシーボルト議長の言明のごとく十三万、或いは十六万、更に昨年の十二月十九日にミユラー参謀長とテレビヤンコ中将との会見のとき、連合國としては三十六万の帰還に要する配船の準備をするということが申されたそうでございます。こうした点から考えまして、十三万、十六万、將又二十万、三十万の同胞が帰つて來る。三倍、四倍に増加を見ることが急にあつたといたしましても、果してその應急援護のみならず、これを國内に定着せしめ、安住せしめるために遺憾なきを期し得られるか。勿論これは現場機関のみの活動を以て足るものではありません。各部面に亙つて十分の準備があつて然るべしと信じます。今日國内においてもこれらの点を心配する向もあります。この際特に明白且つ詳細にお示しを頂きたいと存じます。
 最後に片山総理大臣の御熱意、御決意を、簡單でよろしうございますが、拜承いたしたいと存じます。私は片山内閣の組閣後、本参議院におきまして総理大臣の施政方針の御演説を拜したのであります。謹んで敬意を表して拜したのでございます。時余に及ばんとするその御演説を拜しまして、終つた瞬間にこの國民の最大的な関心を拂われている問題が、最後に僅かに数秒で片附けられたのでございます。誠にがつかりいたしたのでございます。実は私が顧問をしております或る引揚者團体でありますが、引揚促進運動に関し愼重熟慮の結果、遂に意を決し、去る八月十五日、敗戰日本の身も顧みず、敗戰國民の身も顧みず、トルーマン大統領、スターリン元帥、マーシヤル國務長官宛に引揚促進に関する陳情書を郵送、郵便で送つたのでございます。然るにどうでございましよう。トルーマン大統領及びマーシヤル國務長官から、正に陳情書を受取つたという御返事を拜受したのでございます。去る十月二十三日の朝日新聞はこれを報じております。その書簡はこれでございます。朝日新聞の報じておりまするものを読んでみますると、「トルーマン米大統領に陳情、残留同胞急速帰還実現全國連盟(杉並区久我山)では去る八月十五日終戰二週年を期し、全國代表会議を開いて引揚促進のためトルーマン大統領、マーシヤル國務長官あて陳情書を送つたが、二十三日総司令部外交局シーボルド代理大使から同連盟会長丸山邦雄氏あて大統領及び國務長官は同陳情書を受領した旨の通知があつた。」私は第一回の國会に片山首班内閣が実現いたしまして、新らしき憲法の下に一歩を印して行つた、スタートを切つたこの白亜の殿堂の一挙手一投足は、直ちに電波となつてワシントンに、モスコーに、ロンドンに、將又南京に、世界の隅々まで参るのでございます。然るにそのときの片山総理大臣の数秒間にしか及ばないこの問題を取上げた問題に関しまして、一方今世界で一番心を碎かれ、世界全人類のため多忙を極めてかられまするのはトルーマン大統領閣下であると存じます。又寸暇のない國務に繁忙を極めておられるのがマーシヤル國務長官閣下と存じます。トルーマン大統領閣下、マーシャル國務長官閣下が敗戰國の一小市民に対し、引揚促進の陳情書を受領したと通知をわざわざ寄せられたのでございます。このことを思い合せてみまするときに、この結論は皆様によつて決定付けられて頂きたいと存ずるのでございます。この一事をこの際御披露申上げまして、今後の総理大臣並びに政府各位の御決意と御誠意とをお伺いするものでございます。
 今や國内におきましては一千万の署名並びに歎願書、口で一千万と申しますと簡單なようでございまするが、一千万、更に又私が住いをいたしておりまする靜岡縣におきましても百万の署名歎願書、或いは各部落、市町村に行われまするところの大会の実況が皆写眞となつて、アチソン閣下の所にこれを持つて参つたのでございます。又私の郷里廣島におきましては、山間の一中学生の学生の間から猛烈な促進運動が展開されまして、七千余り中学生が全縣下に蹶起し、純眞な猛烈な運動が起つておるのでございます。その代表の木山良亮君、出羽文明君が上京されまして、松本政務次官に一万円の金を持つて来て、どうか法外にいる同胞に何か物を送つて上げて慰問して頂きたい、誠に涙なきを得ないのでございます。
 一方海の彼方では、残留者は、なぜ相國の人たちは自分たちの帰ることに努力してくれないのか。未だ引揚促進の声が内地に起つておるということを聞いたことはない。政府が迎えの船を廻すということに努力したということを聞いたことはない。俺たちはもう忘れられた人間かと、すべての人たちが深刻な精神的不安に陷り、大きな疑惑を持つているとのことでございます。又一方留守家族、特に子供たちには、なぜ自分たちの父や兄は帰して貰えないのかとの不満から、逆に純眞な心に自暴自棄的な念さえ起つておるのでございます。そうしたことを聞かされるのでございます。何という恐ろしいことでございましよう。併しそれを私たちの力では抑制することはできないのでございます。なぜならば、未帰還という冷嚴な現実の事実がある限り、如何ともできないのでございます。若い幼い生命に深刻な影響を與えつつあることを否定することはできないのでございます。戰犯者とその家族は本國に安全に生活を許されている。なぜ戰争を強制せられて而も第一線に立つた兵士たちとその家族のみが、無限の忍苦を甘んじて受けなければならないのか。無理な戰争を起したのは軍閥であるかも知れない。今日その責任は國民全体が負うべきでございます。然るにその贖罪の十字架を独り海外残留同胞が背負い、心を破り身を損い、黙々と炭鉱に、工場に、伐採に、強制労働に服していることは、全く断腸の思いがいたすのでございます。今や即時帰還のために全國民が一致して、政府は勿論、國会も、政党も、各團体も、心を合せ、引揚促進の問題に、又更生問題に、一層の関心と熱意が拂われ、國民の犠牲を平等にし、全日本人が手を取合つて平和國家に新生することが、邦人送還の問題に示されました連合國の誠意に應える途と存ずるものでございます。
 私の緊急質問はこれで終ります。明解なる政府の御所見と、大胆なるお答えをお願いいたしまして降壇するものでございます。(拍手)
   〔國務大臣芦田均君登壇、拍手〕
#9
○國務大臣(芦田均君) 終戰当時に海外に残つておりました七百万に近い同胞は、今日大部分引揚げを終りまして本國に帰還いたしましたけれども、今尚八十万に近い同胞が残留しておりますことは、我々國民の共に深い関心を持つ点であります。只今淺岡君の御質問は、これらの未還者に対する國民的同情の発露でありまして、私共深い関心を持つて傾聽いたしました。海外同胞引揚げの問題は、終戰以來歴代内閣が苦心を佛つた問題でありまして、現内閣においても引続き八方苦心をいたしております。その解決の難関がどこにあるかということは淺岡君御自身もすでに御承知の通りでありまして、この難関を打開するためには、現在の我が國の環境におきましては、專ら連合諸國の同情と仲介に俟つことが適当であると信じております。幸いにして、連合諸國民共に、人道的立場より海外同胞引揚促進に多大の努力を佛われておることは、我々國民の齋しく承知しておるところでありまして、この点については國民を挙げて感謝するところであります。
 我々日本人が平和的、文化的國家として再生するという、その努力が現実の上に証明せられる限り、世界的同情の眼がやがて我々日本國民の上に注がれることは、我々の信じて疑わないところであります。政府といたしましても、この問題の解決には最善の努力を傾ける決意をいたしております。そうして又本國に帰つて來た我々の同胞に対しては、温かい同情の眞心を以てこれを迎え、その衣食住に窮するごときことがないように万全の途を講じたいと念願いたしておる次第であります。(拍手)
   〔國務大臣一松定吉君登壇、拍手)
#10
○國務大臣(一松定吉君) 淺岡議員の御質問中、私に対しまする点だけを簡單にお答えを申上げます。要点は海外に在留しておりまする同胞が我が國に引揚げることに関して受入態勢が十分に完備しておるかどうかというこの一点であろうと思います。この点につきまして、先づ食糧、被服、輸送、住宅、寝具、生業資金、こういうように細かに分けて大体のお答えを申して見たいのであります。
 先ず総論といたしまして、現在北方の地域に在留いたしておる同胞が本國に引揚げまするときに、その受入港といたしましては、御承知の通りに函館と舞鶴と佐世保の三港でございまして、それらの場所にはそれぞれ引揚援護局が創設せられておりまして、應急の援護に当つておるのでございます。かくのごとき受入能力は、現状のままで、別段に補強しなくつても、引揚げに対しまする十分の施設が目下設けられておりますのであります。細かに申上げまするならば、函館港におきましては、毎日約六千二百名、舞鶴におきましては一万一千名、佐世保におきましては二万名を收容することの陸上施設が整うております。そういたしまして、食糧、被服等の備蓄も相当ございまするので、少くとも十万名程度の者が引揚げて参りましても何らの困難を感じません。被服の点につきましては、急速に調製することのできない現状におきまして、引揚者が俄かに増加いたしました場合に、その援護に事欠くようなことがあつてはならないという建前から、現在海外に在留いたしておりまする人々が一時に引揚げましても、その支給に事欠かないだけの現物を備蓄いたしておるのでございます。
 受入港より定着地への輸送につきまして申上げますれば、舞鶴、佐世保、毎日臨時列車が二本だけ運行することが可能でございます。現にそれぞれの港の引揚げの最も盛んなときにおきましてかくのごとく運行いたしておりまして、そうして両地とも毎日三千名程度の計画輸送が可能であることを申上げて置きます。函館につきましては、青森、函館間の輸送に多少の弱点はございます。けれども、現下の状況でも毎日約一千名程度の輸送はこれは可能でございます。若しこの場合に青森と函館間にこれ以上に船一艘を増発するといたしまするならば、一日五千名程度の引揚げは極めて容易でございます。この点につきましてはすでに厚生省と運輸省との間に緊密に打合せが済んでおりまして、引揚げの状況によりましては、いつでもこの一般の増発ができるということにちやんと用意が整つておるということを御了承を賜りたいのであります。過日対日理事会において示されましたように、毎月十三万五千名乃至十六万名の引揚げということが、幸いにしてです、米ソ両國の好意によりましてこれが実現せられたといたしまするならば、殆んど只今の施設だけで受入れは可能であるということを一つ御了承を賜わりたいのであります。
 樺太よりの引揚者が約二十万名の中、行先のない、いわゆる無縁故者がどのくらいあるかと申しますると、約三万名予定せられておるのでございます。然らばこれらの人々を收容する施設、即ち住宅問題はどうなつておるかということに関しましては、北海道、東北六縣におきまして、約一億円の予算を以ちまして住宅の建設を今着々整備いたしております。而して必要の資材の手配もすでに三百ヶ所だけは、これらの住宅を建設する用意ができておりまするので、本月一ぱいにこれが完成を見ることができるのでありまするから、これらの点に対しましても余り心配することはないと考えております。
 又被服の点でございますが、この衣料の配給につきましては、本年八月以降、上陸港におきましてその支給量を増加してこれを実施いたしております。この上に更に毛布につきましては、最近相当量の新規の購入をいたしましたから、今後は一人に一枚ずつの支給が完全に実施せらるることの予定でございます。定着地におきましても、本年四月以降明年三月までの引揚者を対象といたしまして、毛布その他一般被服がこれらの人に十分に行き亙りまするよう目下計画を進めております。尚先に述べました、北海道、東北六縣に定着すべき樺太引揚げの無縁故者の收容施設に対しましては、すでに支給する布團が約一万枚、それからその他の枕等もそれぞれこれを支給することに実施いたしております。
 次に引揚後におきまする厚生、援護のためのいわゆる生業貸金の点でございます。これらの点に対しましては、第一次計画は、御承知の通りに十億円でございまして、第二次計画といたしまして六億六千六百余円というものがちやんと貸出さるべく用意いたされております。尚今後の引揚者の増加をも考えまして、厚生省といたしましては第三次計画として、一人当り貸付額の増加七千円ということを目標にいたして、これが実施方について只今鋭意努力中でございます。
 この際附加えて御報告を申しておきますが、然らばこの第一次、第二次の資金の放出状況はどうなつておるかということでございます。第一次の資金放出状況の中、第一回、九月二日に一億円、第二回、一月十日に二億円、第三回、三月二十七日に一億九千百万円というものがすでに放出されております。第二次の計画の中、第一回は本年の九月二十七日一億五千万円、第二回が九月三十日二億円というものが放出されております。而してこの事業資金に対しましての引揚者の諸君からの申込みの金額がどれだけになつておるかと申しますと十九億九千七百余万円でございます。而して貸付の金額が十億七千余万円でございます。貸付けた人員は本年七月末日までに二十四万八千二百二十七人でございます。でございまするから、幸いに対日理事会で発表せられましたように、一ヶ月十数万の人々が一時に引揚げて参りましても、受入態勢として何も困ることはないということを明らかに御報告をいたします。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#11
○國務大臣(片山哲君) 淺岡君が熱心に述べられました御意見につきましては、政府も同様熱心に且つ熱意を以て深い理解をこれに持ちたいと考えておるのであります。何とかして氣の毒なる方々の早き帰還を促進いたしたいと考えておるのであります。担当両大臣かお答えいたしました通り、現在の状況におきまして我が國としてできるだけのことを熱意を以てやつておるのであります。又今後におきましても、諸君の御意思に副うべく、諸君の熱誠に副うべく最大の努力を拂いたいと考えておる次第であります。
 尚私の施政演説において、甚だ簡單なる言葉でこの問題を片附けたということは、冷淡であつて不熱心であるというような節がおありでありましたけれども、これは各方面の問題に亙りまして説明いたしました関係上でありまして、決して簡單にこれを片附けるという考えは毫末もないのであります。最も熱心に、我が國の状況で許す範囲内において最大の熱意を以てこの問題の処理に当つて、未帰還者及びその家族の氣の毒なる状況を一日も早く解消いたしたいと努力しておることを御了承願いたいと存じます。(拍手)
     ―――――・―――――
#12
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件は、議事の都合により後に廻したいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#14
○議長(松平恒雄君) 日程第二、海難審判法案、(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長板谷順助君。
   〔板谷順助君登壇、拍手〕
#15
○板谷順助君 只今議題となりましたる海難審判法案に関する運輸交通委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 この海難に関するところの規定は、明治九年太政官布告を以て西洋形船船長運轉手機関手試験規則というのが、そもそも我が國における海難に関する規定の始まりであります。その後十四年にこれが改正されまして、更に又現在の海員懲戒法は明治二十九年に制定されたのでありまして、その後一回も改正されておらない、現在においてはこの法案が規定されておるのであります。而してその内容は、海技免状を受有しております者が、その職務を行うに当りまして過失懈怠若しくは怠慢によりまして一定の海難を惹起いたしました場合に、刑事訴訟法に準じた手続を以て審判等をなし、海員を懲戒することを目的として規定されておるのであります。
 ところが、本年新憲法が新らたに施行されまして、これに伴いまして、現行海員懲戒法の一部の規定は当然これを改正する必要に迫られたのであります。我が國の海運が、戰争の結果、船舶、船員、航路標識その他運航補修資材等の各方面の関係から、海難事故が増加の傾向にありまするので、この際現行海員懲戒法を廃止いたしまして、これに代えて新らたに海難審判法を制定して、審判手続等も新憲法の要請に應じたものに改め、又海難の原因を明らかにして、海難の防止に寄與することを目的とすることといたしたのでありまして、海技免状受有者に故意過失がありました場合には、勿論必要に應じましてはこれを懲戒いたしまするが、その外に海難が船員以外の者、即ち船主、造船所その他廣く海事関係者の所爲に基ずくことが明らかな場合には、これらの者に対しまして然るべき勧告をなし得るという新らしい途も開いたのであります。政府が本法案を作成するに当りまして、予め関係各方面の意見を参酌し、又公聽会等も東京及び神戸において開きまして、廣く国民の意見を聽いたのであります。
 次に、本案の骨子を申上げまするならば、第一に、審判の対象を、從來のごとく單に海抜免状受有者の故意過失、非行等に限らず、廣く海難一般とし、海員の懲戒ということよりも、海難の原因を明らかにいたしまして、その防止に寄與するということを目的といたしたのであります。從いまして名称も海難審判法と改め、懲戒も情状によつてはこれを免除し得る途を開き、又勧告の制度も拘束力は持ちませんが、社会的には海難の防止上相当の効果を期待し得る方法ではないかと考えられます。
 第二に、審判の手続等につきまして申上げますれば、現行法では、審判に関しまして刑事訴訟法の規定を準用し、且つ高等海員審判所が終審として審判を行なつていたのでありまするが、新憲法によりましては、行政機関は終審として裁決をすることができないと同時に、被審人等を勾引、拘留し、又は押收、捜索等のこともできないことは勿論でありまするので、現行の海員懲戒法はこれを全面的に廃止をして、新たに海難審判法案として審判所制度を整備することとしたのであります。而して審判には、審判官の外に民間人を参審員として審判官と同じ権限で参加せしめ得る途を開き、保佐人につきましては、これを登録して高等審判所の監督下に置くこととして、一定の秩序を立てるということにしたのであります。又軽微な事件については簡易審判の制度を設け、高等審判所の裁決に対しましては、東京高等裁判所に訴えを提起し得ることとした外、審判の管轄を、従來の船籍港主義から海難発生地主義を採用することに改め、処理の迅速を期しておる等がこの法案の大体の骨子であります。
 次に審議の経過を申上げます。八月十三日に政府の提案理由の説明があり、その後予備審査を加えまして、本委員会を五回開き、又海難審判法案小委員会を設けまして、小林勝馬君がその委員長となられまして、小委員会を三同開きまして、愼重審議いたしたのであります。
 その質疑の主なるものを申上げますれば、参審員は忌避できるかどうか、又その人数は何人かという質問に対しまして、政府委員の答弁は、参審員で忌避せられるような立場にある人は任命しないようにする、又政令でその点は規定することも考慮しておる。又人数は、地方審判所及び高等審判所共、全國で十五人位を考えておるということであります。海難審判と司法事件との関係はどうかという質問に対しましては、受審人の勾引とか召喚という強制手続はできないから、過料に処するということによつて手続の進行を円満にする。又審判はその性質は行政処分であるが、海技免状の停止、禁止等重大な権利義務に関することであるから、審判に不服な者は東京高等裁判所に訴えの提起ができるということになつておるのであります。荷海難審判と刑事事件とが競合した場合は、海難審判の事実審判の方を先にするように、今後政府では裁判所の方と了解を得ることにしたいという答弁であります。法案の第四十六條で、地方審判所の裁決に対して不服な受審人は、裁決言渡の日から七日以内に高等審判所に第二審の請求ができるとあるが、七日以内というような短期間では、船員の職業柄から、又現在の通信状況から考えて見て甚だ危險であるから、二十日間くらいにすべきではないかという質問に対して、結局政府委員からは、審判はなるべく受審人出席の上で行い、欠席裁決はやらんように努める、又口頭ででも電報ででも第二審の請求ができるようにするから御了承願いたいという答弁であります。審判において保佐人を依頼するのに費用が掛かつて困る者が多数の船員や漁船の中にはある。又教養も十分でない者も相当あることであろうから、官選の保佐人制度について政府はどう考えておるかとの質問に対して、現在の國家財政の立場から遺憾ながら実現に至らなかつたが、財政上の見通しさえつけば実現したいと考えておるとの答弁であります。法案の第九條に、審判所の名称、位置、管轄等が政令で定めることとなつておるが、これは法律で明定すべきではないかとの質問に対して、政府委員は、審判の性質が行政処分であるからいいのではあるまいかと思つておるということであります。審判手続を法案の第四十五條で命令即ち政令又は省令で定めるとしておる点は、將來法律改正の際考慮するということであります。海難審判法案は過去の海難に対するものであるが、政府は海難の防止、航海の安全という点について、今後いかなる措置を採るか、その現状と將來の対策について聽きたいとの質問がありまして、これに対して政府委員から、現在我が國の船舶は老朽大破の船が多く、これによつて根本から日本海運の振興並びに海難を防止するということはむずかしい、先ず船舶の建造、改造、補修にあらゆる注意と努力を佛つて、船舶復興公團等により萎靡しておる海運界の船舶建造に救いの手をのべて行かなければならん。又船員の方面においても優秀な者は戰争において尊き犠牲者となられまして、残るところの者の多くは老朽疲労の者か、又は未だ若年で未熟な者が多いのであるから、これを改善するために、教育の面と福利施設の面とを並行してやつて行かねばならん。その他電波、氣象、通信、航路標識等の復旧整備を行い、又沿岸内海等における浮遊水雷その他を除去する掃海作業等も完全にする等、でき得る限り予算面においても、関係方面との交渉においても、一日も早く目的を達成するために努力して行きたい考えであるという答弁であつたのであります。尚本法案の施行期日は政令で定めるということに原案ではなつておるが、この点は、本法の附則に但書を附加して、「但しその期日は昭和二十三年三月一日以後であつてはならない」と修正することとして、これに対し政府委員も同意をせられ、且つでき得る限り早く実施の運びになるよう努めるという答弁でありました。
 次いで討論に入りまして、海難審判の勧告の裁決は、衆議院でも附帯決議が附せられ、社会的に重大な効果を予想せられることであるから、受審人の点を考慮すると共に、勧告を受ける者の立場をも擁護する必要がある。又本法案には非常に命令に讓つた事項が、多いが政府において命令を立案する場合に当つては、國会の意思を十分参酌をする必要がある。且つ専門の委員会において十分に案を練り、又その他公聽会等を開きまして関係者の意見を聽く等、遺憾なきを期せられたい。更に海難予防の諸施設等が現在極めて不備であるから、政府において一層努力をしてこれが整備に当られたいという希望があつたのであります。かくて討論を終りまして、採決の結果、満場一致を以て可決すべきものと決議したのであります。
 尚重ねて申上げまするが、この法案は施行する期日は政令を以て定めるということになつておりまして、衆議院においてはそのまま通つて本院に廻つたのであります。ところが施行期日を政令によつて定めるということは甚だ不合理であるというところから、関係方面といろいろ交渉いたしました結果、施行期日については三月一日以前にこれを行う。即ち二月一ぱいにこれを行うということで、政府もこれに同意をいたしました。衆議院におきましても必らず同意されることと信ずるのでありまするが、とにかく只今申上げましたる通り、施行期日は三月一日以後であつてはならんという修正をいたしたのであります。でありますから、本院におきましてもこの点は御了承願いたいと存ずる次第であります。以上御報告申上げます。(拍手)
#16
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告通り修正議決することに賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#17
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#18
○議長(松平恒雄君) 日程第三、家事審判法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。司法委員会理事松井道夫君。
   〔松井道夫君登壇、拍手〕
#19
○松井道夫君 家事審判法案についての司法委員会におきまする審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
 御承知の通り憲法の改正に即應いたしまして、戸主の制度並びに親族会の制度が廃止せられまして、平和な家庭生活並びに健全なる親族共同生活の維持促進のために、これらの制度に代りまして後見的の役割を担当させますために、家事審判所の設置が予定せられております。これは民法の一部を改正する法律案中に種々規定せられて、各所に規定しておりますことは御承知の通りであります。次に親族間の紛争を骨肉が法廷において争いますることを極力避けまして、民間の世故、人情に通じまする有徳の士を参與せしめまして、親族間の情誼に適應いたしまする方法により、例えば調停等の方法によりこれを解決いたしますることは、極めて望ましいことでございまして、その趣旨によりまして前に人事調停法が制定せられておりますることは、これ亦御承知の通りでございます。この際、この人事調停の制度を拡充強化いたしまして、これが担当する機関として家事審判所にこれを処理させるということにいたしまするために、この家事審判法が立案せられたのであります。
 今少しくその内容を掻い摘んで申上げます。第一條にこの法律の目的が書かれております。「この法律は、個人の尊嚴と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする。」家事審判所は、家庭事件につきまして審判又は調停を行うために特に設けられました、地方裁判所の支部でありまして、その支部に勤務する裁判官は、これを家事審判官と称するのであります。而して家庭事件は、これを訴訟事件と審判事件とに分けるのでありまするが、さらに訴訟事件と審判事件中、第九條によりまして乙類に属せしめられております事件は、これを調停に適する事件といたしまして、調停に付し得ることになつておるのであります。只今申しました九條には、審判事件につきまして甲類、乙類と二つに分類されておりまして、四十九項目掲げられておるのでありまするが、甲類は、禁治産の宣告とか失踪の宣告とか、こういう調停に適しない事件を掲げておるのでありまして、乙類は、只今申しました通り調停に適しまする、例えば今度新民法によりまして認められまする、離婚の際におきまする財産の分與でありますとか、そういつた事件が掲げられておるのであります。而して審判は一人の家事審判官が一人以上の参與員を立会わせ、又はその意見を聽いて、これを行うということに相成つております。調停はやはり一人の家事審判官に二名以上の調停委員を以て組織する調停委員会でこれを行うことになつております。而して先程申しました乙類に属する審判事件は、いつにてもこれを調停に付することができ、又訴訟事件に属しまする例えば離婚とか、離縁とか申します類の事件は、これを訴訟に持出しまする前に、必ず家事裁判所の調停に付するいわゆる調停前置主義というものを採用いたしておるのであります。
 次に、調停の効力について申上げますと、調停は当事者間に合意が成立し、これを調書に記載いたしましたるときには、確定判決と同一の効力を有するのであります。これは訴訟事件についての効力でございますが、審判事件につきましては確定した審判と同一の効力を有するのであります。人事調停法によりまする人事調停の制度におきましては、離婚或いは離縁というものを調書に記載いたしましても、これを確定判決と同一の効力を持たせることができなかつたのでございまするが、今度は確定判決と同一の効力を有することにいたしまして、これによつて離婚をすることができる、或いは離縁することができるということにいたしたのであります。
 又二つの特別の審判があるのでございまするが、それは婚姻又は養子縁組の無効又は取消しに関する事件、これが調停委員会に係属いたしましたときに、当事者間に合意が成立し、無効又は取消しの原因の有無について争いがない、こういう場合におきましては、從來はこれは当事者で処分することのできない事実関係、例えば離婚の意思がなかつたといつたような事実関係に基ずいての事件でございまするから、これは判決によらなければならなかつたのでございますけれども、例えば無効の原因の有無について争いがない場合でございますから、これをその争いのない事実に基ずきまして、審判をいたすという途を開いたのであります。
 それからもう一つは、いわゆる強制調停という制度でございます。これはやはり從來の人事調停におきましては、今の離婚とか離縁とかいう事件につきまして調停が成立しない、双方の当事者に合意が成立しないという場合には、如何とも方法がございませんでした。
 併しながら当事者の双方の申出の趣旨に反しない限り、今回は離婚、離縁といつたような調停をいたすことができる、審判をいたすことができることに相成つたのであります。これは離婚については双方賛成でありまするけれども、慰藉料とかその外のことで、どうしても合意が成立しないといいまするときに、それが僅かの差である、かような場合にこれを不調にいたしまして訴訟訟に廻すということは、頗る残念なことでございまするから、離婚をすることにいたしまして、そうしてその僅かの差の中間を取りまして、金銭の支拂の方は解決して、さような審判をいたすということができることに相成つたのであります。但し今申しました二つの特別の場合は、事聊か重大でございまするから、最高裁判所の定めるところによりまして、二週間の期間内に異議の申立をすることができることに相成つております。この異議の申立がありましたときには、先程申しました二つの審判が効力を失うということに相成つておるのであります。
 次に、罰則の規定がございまして、調停委員又は調停委員であつた者が正当の事由がなく評議の経過或いは家事審判官若しくは調停委員の意見若しくはその多少の数を漏らした、こういつた場合には千円以下の罰金に処せられます。参與員又は参與員であつた者が正当な事由がなくて家事審判官又は参與員の意見を漏らしたときも同様でございます。次に、参與員、調停委員又はこれらの職に在つた者が、正当の事由がなく職務上知り得た他人の秘密を漏らした、かような場合には六箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処しまして、以て國民が家庭事件につき、家庭の祕密を外部に漏らされるというような心配かなく、安んじて家事審判所に申出でるということができるようにいたしたのであります。以上が本法案の大要でございます。
 本委員会におきましては、八月十五日に政府委員より提案の理由の説明がございました。十一月六日に採決に入りますまで、前後四回に亘りまして、詳細熱心に審議を続けました。その間におきまする質疑によりまして、明かにせられたるところの、その主なるものについて申上げますと、家事審判所の数は全國五十九箇所の地方裁判所に、專任の家事審判官を置く。それからそれを独立の家事審判所とする。又地方裁判所の支部、元の区裁判所の所在地に家事審判所を置くのでございまするが、これは專任の家事審判官を置くわけには行かないところもあるかも知れない。地方裁判所の支部の裁判官と兼務に相成るかも知れない。かようなふうでございまするが、合計いたしまして、二百七十八箇所の家事審判所が開設されるということでございます。又この家事審判法の判定によりまして、人事調停法はその機能を果しまして、これが廃止せられるということでございまするし、又非訟事件手続法の相当部分、人事訴訟手続法の相当部分は、これは改正せられる予定であるということでございます。又その間の調整を図りまするために、家事審判法施行法が準備せられつつあるということであります。それから審判というものの性質でございまするが、これは非訟事件手続法の決定と同様の性質を有するもので、法律関係を形成創設いたす裁判であるということでございます。それから一委員より、家事審判法の運用上参與員、調停委員の意見をでき得る限り尊重するようせられたい。参與員、調停委員は家事審判法の目的を達しまする一つの大きな要素であるから、そのように運用せられたいという希望的意見の開陳がございましたが、政府におきましてもその意見の趣旨に副いたいと述べられた訳であります。
 かくいたしまして、十一月六日質疑を終えまして討論に入りましたるところ、格別の発言もございませんで、全会一致を以ちまして可決すべきものと議決いたした次第でございます。以上御報告を終ります。(拍手)
#20
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#21
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
 本日はこの程度で延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。次会は明後十日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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