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1949/04/26 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第11号
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1949/04/26 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第11号

#1
第005回国会 法務委員会 第11号
昭和二十四年四月二十六日(火曜日)
    午後二時二十五分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 北川 定務君 理事 小玉 治行君
   理事 高木 松吉君 理事 石川金次郎君
   理事 小野  孝君 理事 梨木作次郎君
   理事 吉田  安君
      押谷 富三君    鍛冶 良作君
      佐瀬 昌三君    田嶋 好文君
      牧野 寛索君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    武藤 嘉一君
      上村  進君    大西 正男君
 出席政府委員
        法務政務次官  山口 好一君
        法務廳事務官
        (調査意見第一
        局長)     岡咲 恕一君
        法務行政長官  佐藤 藤佐君
        法務廳事務官
        (少年矯正局
        長)      齋藤 三郎君
 委員外の出席者
        裁判所事務官  内藤 頼博君
        裁判所事務官 宇田川潤四郎君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
四月二十五日
 檢察廳法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一〇七号)
 民法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第
 一一四号)
 会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改
 正する法律案(内閣提出第一〇八号)(予)
 公証人法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一一五号)(予)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 出版法及び新聞紙法を廃止する法律案(内閣提
 出第六五号)
 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出第六
 七号)
 少年院法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 六八号)
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第七〇号)
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第九六
 号)
 刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九七号)
 裁判所法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九八号)
 司法試驗法案(内閣提出第一〇〇号)
 公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等
 支給法案(内閣提出第九四号)(予)
 会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改
 正する法律案(内閣提出第一〇八号)(予)
    ―――――――――――――
#2
○花村委員長 これより会議を開きます。
 本日の議題に入ります前に、昨日付託になりました法案を御報告いたしておきます。檢察廳法の一部を改正する法律案、民法の一部を改正する法律案の二件と、予備審査のため、会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案及び公証人法等の一部を改正する法律案でございます。都合本委員会に現在付託されております議案は十六件でありますので、昨日付託になりました四件のうち、会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案は急ぎますので、これは本日行うこととし、このほかの三件は、しばらく提案理由の説明を聞くことを延ばすことにいたします。
 本日はまず昨日いまだ提案理由の説明を聞いておりませんでした刑法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、裁判所法等の一部を改正する法律案、公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法案及び会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案について提案理由の説明を求め、続いて本日の日程を議題といたし、質疑に入り、質疑の終了したものがあれば採決に入りたいと存じます。まずこれより順次提案理由の説明を求めます。
    ―――――――――――――
#3
○山口(好)政府委員 私はただいま上程になりました各法案につきましての提案理由を御説明申し上げます。
 まず刑法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。このたび刑法の一部を改正して、第二十五の二という新しい規定を設けましたのは、近く本國会に提出いたすことになつておりまする犯罪者予防更生法案が成立いたし、法務府の外局として中央更生保護委員会が置かれ、その地方支部局として地方少年保護委員会及び地方成人保護委員会が設けられ、その重要なる権限である保護観察の制度が実施せられましたあかつきには、裁判所が懲役刑または禁錮刑の執行猶予の裁判の言い渡しをする場合におきましても、從來のようにまつたく無條件に刑の執行を猶予しないで、執行猶予の裁判の言い渡しを受けた者の改善と、更生を助けますために、この者を保護委員会の保護観察に付して、これを補導、援護することが適当と認められる場合もあろうかと存ぜられます。それでかような場合には猶予の期間中遵守すべき事項を定めまして、刑の執行猶予者を保護観察に付することもできるように、このような新たな規定を設けた次第であります。この改正は從來のように、無條件に刑の執行猶予の裁判の言い渡しをすることを防げるものではありませんが、ただ保護観察に付する旨の裁判をした場合には、刑の執行猶予の言渡しに一種の條件を付することになりますので、一見被告人に対して不利益な改正のように思われますけれども、從來は裁判所が刑の執行猶予の裁判を言い渡すのに躊躇いたしたような場合には、保護観察に付するならば、刑の執行を猶予してもよいと考えて、執行猶予の判決をいたす場合もありますので、実際に執行猶予の判決が言い渡される場合がふえる結果にもなり、かえつて被告人には利益を與えることになろうかと存ぜられます。
 次に第二十六條の改正は、第二十五條の二が新設されました結果、保護観察の期間中遵守すべき事項を遵守せず、しかもその情状が重いことを刑の執行猶予取消の原因に加えることといたし、これに伴う必要な改正をしたものでありまして、保護観察の目的である刑の執行猶予者の改善及び更生をはかりますためには、この改正を必要と考えたのであります。
 第二十九條第一項第四号の改正は、犯罪者予防更生法が成立いたしましたときは、從來の仮出獄取締規制は廃止され、仮出獄中の者は同法によつて法定の遵守事項のほか、地方成人保護委員会または地方少年保護委員会の定める遵守事項を守らなければならなくなりましたので、これに伴う改正を施したのであります。
 最後に本法は犯罪者予防更生法施行の日から施行いたしますが、刑の執行猶予者を保護観察に付し得る旨の規定は、法律不遡及の原則に從いまして、本法施行後に積を犯した者に限り、これを適用するというのがこの法律の附則の趣旨でございます。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようにお願いいたします。
 次に引続きまして刑事訴訟法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 本案は大体三点からなるものであります。
 第一点は、家庭裁判所の開設に伴う改正であります。御承知のように家庭裁判所は本年の一月一日から発足し、家庭に関する事件の審判及び調停並びに少年の保護事件のほか、一定種類の成年の刑事事件の第一審裁判をも行うことになつているのでありまして、この刑事事件の裁判については、当然刑事訴訟法が適用されることになるのであります。ところが刑事訴訟法は、家庭裁判所がこの種刑事事件を取り扱うことを予想して制定されていなかつたので、家庭裁判所における刑事裁判の円滑なる運用をはかりますためには、刑事訴訟法に若干の改正を加える必要があるのであります。すなわち家庭裁判所の裁判官が忌避された場合の裁判に関する規定、家庭裁判所における特別弁護人の選任に関する規定、事実の取調べ、勾引、押收、捜索、証人尋問などの嘱託は、地方裁判所または簡易裁判所の裁判官のほか、家庭裁判所の裁判官に対してもすることができる旨の規定、勾引状または勾留状の執行の指揮は、急速を要する場合には、地方裁判所または簡易裁判所の裁判官のほか、家庭裁判所の裁判官もすることができる旨の規定、執行猶予の言い渡しの取消の請求は、地方裁判所または簡易裁判所のほか家庭裁判所に対してもすることができる旨の規定、家庭裁判所の第一審判決に対しては控訴することができる旨の規定並びに家庭裁判所の裁判官のした裁判の取消または変更の請求に対する決定は、合議体でしなければならない旨の規定などを整備することでありまして、いづれも関係條文に家庭裁判所という字句を加えることなどによりまして、簡單にその目的を達することができるものであります。
 第二点は本國会に提出しております刑法の一部を改正する法律案に関連する改正でありまして、この法案によりますれば、裁判所は懲役または禁錮刑につきその執行を猶予する場合に、必要と認めたときは、その刑の執行期間中、被告人を遵守事項を定めて保護観察に付することができることといたし、かつ保護観察に付された者が遵守事項を守らなかつたときは、刑の執行猶予を取消し得ることにいたしておりますので、かかる保護観察に付する旨の裁判の言渡につき、また刑の執行猶予の取消手続につきまして必要な規定を刑事訴訟法中に加えたものであります。すなわち同法第三百三十三條を改正いたしまして、刑の執行を猶予し被告人を保護観察に付する場合には、その裁判は判決をもつて、刑の執行猶予の判決の言い渡しと同時に言い渡すべきものといたし、そのことを規定いたしました條項を同法第三百三十三條の第三項として新たに加えたのであります。次に第三百四十九條の改正は、從來刑の執行猶予取消の原因は刑法第二十六條に規定してありますように、新たに刑に処せられた場合または前に他の罪につき刑に処せられたことが発覚した場合等、比較的明瞭な事項でありますので、裁判所は被告人及び檢事の意見を聞いた上、決定でただちにその取消の裁判をいたしたのでありますが、このたび刑法の改正によりまして、先に申しましたように新たに保護観察の期間中遵守すべき事項を遵守しなかつたことを、執行猶予取消の原因といたしましたので、はたして執行猶予を受けた者が遵守事項を守らなかつたかどうかについては、裁判所は愼重に事実の取調べをした上で判断をする必要がありますので、必ず公開の法廷で、原則として、被告人及び檢事の両当事者を出席せしめて事実の取調べをなすことにいたし、かつ被告人はその場合弁護人を選任し得ることにいたしたのであります。また從來は執行猶予の取消決定に対しては、即時抗告をなし得るのでありますが、即時抗告の期間は三日と法定されているのでありまして、前述のごとく從前と異りまして、今回の改正によつて保護観察期間中の遵守事項を守らなかつたことを理由として取消決定がなされるようになりますと、被告人が取消決定があつたことを知らず、從つて被告人の知らぬうちに取消決定が確定してしまうというような場合もあり得るのでありまして、これでは被告人に対し酷に失しますので、取消決定に対しては普通抗告をなし得るものとするとともに、その期間を控訴の期間と同樣十四日とし、かつ期間の計算は、被告人が取消決定のあつたことを知つたときから起算いたすことにいたしました次第であります。なお第三百五十條の改正は、第三百四十九條に第二項、第三項及び第四項が新たに加えられましたことに基きます整理のための改正であります。
 第三点は、その他の改正でありまして、あるいは解釈を明らかにし、あるいは不備を補正し、あるいは不要の規定を削るものであります。このうちでまず御留意を願いたいのは、第二百十八條の改正であります。これは身体の拘束を受けている被疑者については、特別の令状がなくても、指紋の採取などをすることができることを明らかにしたものであります。刑事訴訟法上被疑者が身体の拘束を受ける場合としては、第百九十九條のいわゆる通常の逮捕、第二百十條のいわゆる緊急逮捕、第二百十三條のいわゆる現行犯逮捕、第二百七條のいわゆる起訴前の勾留が主なものであります。しかしてこれらの場合には、これら逮捕行為などの付随処分として、指紋の採取その他本改正條文に掲げてある程度の処分は、被疑者の同一性を識別するなどの目的のためには、当然なしうるものと解しえられるのでありますが、なお疑義の起きる余地のないように、この際明文をもつてこれを明らかにしておくのを相当と認めた次第であります。
 次に第五十五條第三項の改正でありますが、同項の規定は、期間の末日が日曜日、一月一日、二日、四日、十二月二十九日、三十日、三十一日または一般の休日として指定された日にあたるときは、これを期間に算入しないことになつているのでありまして、これは旧刑事訴訟法の規定をそのまま踏襲したものであります。そしてこの規定のうち一月一日、二日、四日となつていますのは、從前は一月三日及び五日が一般の休日になつておりましたので、四日を休日に準じて取扱うことは意味があつたのでありますが、國民の祝日に関する法律が実施されました今日におきましては、一月三日及び五日はいずれも國民の祝日になつておりませぬので、四日を特に掲記する意味がなくなつたのであります。しかし一月三日は、國民の祝日には指定されておりませぬが、一般官廳の休暇日に指定されており、國民生活の現実においても正月三箇日の一日として特別の意味をもつていますので、この際一月三日を休日に準じて取扱うことといたし、一月四日を一月三日にふりかえたのであります。
 なお第九十七條第一項に「勾留の期間の更新」の規定、第四百二十九條第一項第二号に「保釈」の規定を加えたのは、本來かくあるべであつた不備を補正したものであります。また第四百六十八條第二項後段の「この場合には、第四百六十三條但書の規定を準用する」旨の規定を削つたのは、さきに第四百六十三條但書を削る改正をしたのに伴う整理に過ぎないのであります。
 以上で大略でありますが、提案理由の御説明をいたしました。何とぞ愼重御審議の上、すみやかにこれの御可決くださいますことをお願いいたします。
 次に引続きまして裁判所法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
 この法案は、裁判所法と裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律の一部を改正せんとするものであります。
 裁判所法については、裁判所書記の制度、司法修習生の採用、補充裁判官の員数並びに司法研修所教官及び裁判所調査官の任用につきまして若干の改正を行い、裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律については、裁判官以外の裁判所職員の分限につき若干の改正を行おうとするものであります。以下この法案の要点を御説明いたします。
 第一は裁判所書記制度の改正の点であります。裁判所書記は現行法では裁判所事務官の中から補せられることとなつておりますが、裁判所事務官は、本來司法行政事務をつかさどるものであるに反し、裁判所書記は法廷に立ち会い、裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管その他民事訴訟法、刑事訴訟法等に定める事務をつかさどり、執務に際しては職務上の独立を認められているものでありまして、司法行政事務を担当する裁判所事務官の職務内容とはまつたく異なつているのでありますから、裁判所事務官を裁判所書記に補する現行制度は、國家公務員法が採用しているキヤリア・システム(閲歴制度)と根本的に相いれないものがありますので、この点に関する現行法第六十條を改正して、裁判所事務官を裁判所書記に補する制度を廃止し、新たに裁判所に裁判所書記官及び裁判所書記官補を置くものとしました。裁判所書記官は現在の裁判所書記の職務をその職務内容とし、一應旧來の敍級制度に從い、一級、二級及び三級の三階級を定めました。民刑両訴訟法の改正により、訴訟は民刑とも公判中心主義と相なりました結果、公判手続の複雜化はひいて裁判所書記(改正法の裁判所書記官)の事務を質的に重要かつ困難ならしめ、また量的にも繁忙ならしめることとなつたのであります。そこで各裁判所を通じて一定員数の二級及び三級の裁判所書記官補を置いて、裁判所書記官の事務を補助させることといたしたのであります。第六十條の二の規定がこれであります。從いまして、この裁判所書記官補の新設は、裁判所書記官の地位を現在の裁判所書記のそれに比し一段高いものとしたのでありまして、裁判所書記として相当年限の職歴を有し、かつ成績優秀な者のみが一定の任用試驗を経て裁判所書記官に任ぜられるようにいたしたいのであります。從つて現在裁判所書記たる者がもし本法により任命されるとすれば、大部分はこの裁判所書記官補に任ぜられる建前になるのであります。附則第二項の経過規定は、この観点より立案されたのであります。以上の次第でありますから、裁判所書記官の充実は即時には期待できず、さしあたりは、若干の欠員が予想されますので、本法施行後裁判所書記官が充員せられ、裁判所書記官の事務が本格的にも軌道に乘るまで、裁判所書記官の職務の澁滯を避けるため、当分の間裁判所書記官補として裁判所書記官の職務を行わせることができる措置を附則第三項で規定したのであります。
 次に第六十五條の勤務裁判所の指定に関する改正規定は、右申し述べました第六十條及び第六十條の二の改正規定に伴う当然の改正でありまして、御説明するまでもないと存じます。
 第二は司法修習生の採用の点であります。司法修習生は、現行法では高等試驗司法科試驗に合格した者の中から最高裁判所が採用することとなつておりますが、國家公務員法の改正によりまして旧高等試驗令が廃止となり、高等試驗司法科試驗の制度は昨年末で消滅いたしましたので、これにかわる試驗制度を定める必要があります。そこで政府は別に司法試驗法案を國会に提出いたしましたが、これに対應して司法修習生は、この司法試驗に合格した者の中から最高裁判所が採用することといたしたのであります。
 第三は、補充裁判官の員数の増加の点であります。合議体の裁判所の長期間にわたる審理を円滑ならしめるために設けられました補充裁判官の制度は、現行法ではその員数を一人に限つておりますが、近時きわめて長期間の審理を予想される事件が出て参りまして、一人ではせつかく補充裁判官を置いた趣旨に沿わない場合も予想されますので、員数を一人以上にすることができるように改め、合議体の員数の範囲内に制限することにしたのであります。
 第四は、司法研修所教官または裁判所調査官の任用の点であります。司法研修所教官または裁判所調査官は、その職務の性質上裁判官または檢察官の経驗のあるものをもつて充てることを必要と存ずるものでありますが、現在裁判官または檢察官から司法研修所教官または裁判所調査官への轉官がきわめて困難な実情にありますので、当分の間、特に必要がある場合に限り、裁判官または檢察官をしてその地位にありながら司法研修所教官に、また裁判官をしてその地位にありながら裁判所調査官に充てることができる道を開いたのであります。
 第五は、裁判官以外の裁判所職員の分限に関する改正の点であります。裁判官及びその他の裁判所職員の分限に関する法律第十四條は、旧官吏懲戒令と相まつて裁判官以外の裁判所職員の分限及び懲戒に関し規定したものでありますが、國家公務員法の改正及び官吏懲戒令の廃止により裁判官及び最高裁判所裁判官の祕書官以外の裁判所職員は、一般職として同法が全面的に適用されることとなり、その懲戒手続等を特別に設けておく必要がなくなりましたので、これを削除することといたしたのであります。從つてこの法律は、同條の削除によりその内容は、裁判官の分限に関する規定のみとなりますので、その題名を裁判官分限法と定めた次第であります。
 第六は、施行期日の点でありますが、裁判所書記より裁判所書記官及び裁判所書記官補への移行には相当の準備期間を必要としますので、裁判所書記制度の改正に関する部分は、この法律公布の日から起算して三十日を経過した日から施行することといたし、その他の部分は、公布の日から施行することといたしたのであります。
 最後に、附則第四項で他の法令中裁判所書記とあるのはすべて裁判所書記官と読みかえるようにいたしまして、裁判所書記官の職務の執行に遺憾なきようにいたしたのであります。
 以上をもつて裁判所法等の一部を改正する法律案の大要の説明を申し上げました。なにとぞ愼重御審議の上、すみやかに可決さられんことをお願いいたします。
 次に上程になつておりまする公判前の証人等に対する旅費、日当、宿泊料等支給法案の提案理由について御説明いたします。
 本案は、刑事訴訟法の実施に伴い、旧刑事事訴訟法のもとにおいて制定されていた大正十三年司法省令第十一号証人、鑑定人、通事または飜訳人に旅費、日当、止宿料給與の件を改正し、かつ國費支出の根拠を明確にするため、これを法律にしようとするものであります。
 この大正十三年の司法省令は、刑事訴訟費用法に規定している場合以外で刑事手続に関して証人等に旅費等を支給し得る場合を規定し、その額について刑事訴訟費用法の相当規定を準用しているのでありまして、その場合としては、旧刑事訴訟法第二百五十五條の規定により檢事の請求した強制の処分につき裁判官の召喚した証人、鑑定人、通訳人または飜訳人に対して支給する場合、犯罪捜査につき檢事の呼出しに應じて出頭した者に対して支給する場合等を規定しているのであります。本案第一條は、いわば右の前者の場合に相当するものでありまして、本案第二條は、右の後者の場合に相当するものであります。
 新刑事訴訟法第百七十七條は、被告人被疑者または弁護人からの請求により、証拠保全のため裁判官が証人尋問等の処分をする場合を規定しておりまして、同法第二百二十六條及び第二百二十七條は、檢察官からの請求により、いわば証拠保全として裁判官が証人尋問をする場合を規定しておりまして、いずれも旧刑事訴訟法第二百五十五條の場合に類比すべきものであります。ただこれらの場合には、新刑事訴訟法の解釈といたしましては、これらの規定により喚問された証人等は、旅費等の請求権は、すでに刑事訴訟法自体により認められておりまして、ただその額が法定されていないものと解せられるのであります。それで本案第一條では、その額につき刑事訴訟費用法及び訴訟費用等臨時措置法の相当規定を準用することにいたし、かつ必要な読みかえ規定をおくにとどめた次第であります。
 次に新刑事訴訟法第二百二十三條は、檢察官、檢察事務官または司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、またはこれに鑑定通訳もしくは飜訳を嘱託することができる旨を規定しているのであります。本案第二條は、前述の司法省令の規定している後者の場合を新刑事訴訟法のこの新しい條文にあてはめて規定したものであります。ただ新刑事訴訟法では、檢察官のほか同じく檢察廳の職員である檢察事務官も廣く捜査権限を認められていますので、檢察事務官の取調べまたは嘱託した者にも旅費等を支給することができるものとするとともに、司法警察職員の取調べまたは嘱託した者については予算的措置その他なお研究すべき点がありまするので、本案としましては、從前通り別に規定を置かぬことにしたのであります。しかして檢察官または檢察事務官の取調べまたは嘱託を受けた者は、刑事訴訟法上は旅費等の請求権を認められておりませんから、本案第二條によつて檢察官の裁量により、かつその額については、刑事訴訟費用法及び訴訟費用等臨時措置法の規定するところに準じてこれを支給されることになるのでありまして、これらの点は從前と同樣であります。
 以上簡單ながら提案理由の御説明を終ることにいたしますが、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
 次に会社等臨時措置法等を廃止する政令の一部を改正する法律案を提出しました理由を御説明申し上げます。
 会社等臨時措置法は、昨年十二月三十一日同法施行令とともに連合國最高司令官の覚書に基き、政令第四百二号をもつて廃止したのでありますが、その際その附則において、同法及び同法施行令中の若干の規定について本年四月三十日までなお効力を有するものといたしました。元來、同法は第一條の示すように戰時中の特例を定めた立法でありますが、同法規定の大部分は戰時中の窮迫した社会事情、たとえば交通通信の不便、物資の不足、戰爭による災害等に対処する措置を定めたものでありまして、同法が廃止された当時におきましても、なおこのような事情が完全に解消するに至つていないため、これらの規定の効力をなお存続させる必要がありましたのと、他面その一部の規定は、会社経営の実情に適するものとして、経済界からその恒久化が要望されておりますので、これを恒久法とすることの可否を檢討し、必要があれば商法の中に取入れる等の措置を講じなければならない関係上、そのときまでこれらの規定の効力を失わしめないでおくのが相当と考えられましたからであります。ところで今日なお前述の窮迫した社会事情は、なお完全に復旧しておらず、また恒久立法とすることの可否についても、なお檢討を要する状況にありまして、現に効力を有するこれらの規定につき、さらに本年十二月三十一日までその効力を存続させる必要がありますので、この点について前述の政令を改正するため、この法律案を提出いたしたのであります。
 ここに有効期間を延長しようとする規定は、まず会社に関するものとしては、会社等臨時措置法第二條から第三條ノ二まで及び第五條並びにこれに関連する施行令の諸規定であり、会社以外の法人に関するものとしては、第八條及びこれに関連する施行令の規定であります。これらの規定について簡單に御説明いたします。
 会社等臨時措置法第二條の規定は、資本金二十万円未満の株式会社の公告の方法につき、商法第百六十六條第二項に定める公告方法によることを要しない、すなわち官報または時事に関する日刊新聞紙に掲載して公告することを要しないとするのでありまして、用紙欠乏による官報及び新聞紙の紙面不足に対処し、あわせて会社の経費の負担を軽減させるものでありますが、今日なお新聞紙の紙面不足等の事情は解消していない状況でありますので、この規定の効力を存続させることとしたのであります。
 第三條の規定は、株主の数が千人を越える株式会社について株主総会の招集方法を簡易化し、かつ商法第三百四十三條の特別決議をするための総会の定足数を緩和するものでありますが、この規定を設ける根拠とされた、戰時中における交通通信の不便という事情は近時大いに改善されましたけれども、反面におきまして、交通費、通信費の著しき増大と株式民主化の趨勢に伴う株主数増加の傾向とによつて、今後商法の要求しているような総会招集の通知及び特別決議の定足数の出席がますます困難となることが予想されるのでありまして、この規定を今ただちに失効させることは会社経営に大きな支障を與えるおそれがあり、この点に関する商法の規定を再檢討する必要ありと考えられますので、本條もまたその効力を存続させようとするのであります。
 第三條の二の規定は、戰災その他の災害により株主名簿を喪失し、記名株主の全部または一部の氏名または住所を確知することのできなくなつて株式会社について、当該株主に対する総会招集の通知を省略し、その者を特別決議の定足数たる株主の数に算入しないこととし、戰災を受けた会社の運営に支障なからしめようとするのでありますが、戰災により株主名簿を喪失した会社で、今日なお記名株式の株主の氏名または住所を確知し得ないものが存在しますので、第三條と同樣この規定の効力を存続させることにいたしたのであります。
 第五條は、日本興業銀行、日本勧業銀行その他法務総裁の指定する株式会社の社債登記に関し簡易な手続を認めるものであり、これらの会社は多くは特別の法令の定めにより、その社債発行額の限度が商法所定の限度よりも高いため、社債発行の額及び数が非常に大きく、その登記が煩瑣にたえないので、その手続を簡易化し、その手数及び費用を節約しようとするのでありますが、その社債発行の頻度数は減少しておらず、また社債に関する登記事項について商法の規定を檢討する必要もあるので、この規定もまたその効力を存続しようとするのであります。
 第八條の規定は、会社以外の法人に関し、その発行する債券の発記について第五條におけると同樣な取扱いをするものであり、第五條と同樣の理由でこの規定の効力を存続しようとするのであります。以上述べましたところが政令附則第二條の改正であります。なお叙上の改正に伴い、政令中の経過規定に所要の改正を加える必要がありますので、これを附加いたしました。附則第五條の改正がこれであります。
 何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
#4
○花村委員長 これより質疑に入ります。本日の日程中、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、出版法及び新聞紙法を廃止する法律案、少年法の一部を改正する法律案、少年院法の一部を改正する法律案を一括して議題に供します。右法案に対し北川定務君より質疑の通告がありますから、これを許します。
#5
○北川委員 出版法及び新聞紙法を廃止する法律案につきまして、一、二点質疑をいたしたいと思います。
 出版法の存在することは憲法の規定に抵触いたしまするので、その廃止は当然のことと思いまするが、この廃止の後に、民間の出版界を手放しにしては悪いような結果を生ずるのではないでしようか。この点が質疑の第一点であります。次に今後出版法をつくられる予定がございますかどうか。第三点は著作権法との関係がどうなるか。この三点について質疑いたしたいと思います。
#6
○山口(好)政府委員 北川委員の御質疑にお答えいたします。
 出版法及び新聞紙法を廃止しましても、民間業者に対しましては、今後においては大体行政面において指導をいたして行く考えであります。それによつて支障なき取扱いをいたすことはできると思うのであります。
 それから今後これが廃止されて、また新たに法律の制定を考えておらないかという御質問でありましたが、これにつきましては、御承知のごとく新憲法下におきましては、一般的に言論及び出版の自由を制限するような法律は設けることができないことになつておりますので、必要に應じまして、たとえば選挙法により、その他の別個の法律によつて、必要に應じて取締規定を設ける、こういうふうな考え方でおるのであります。
 第三の著作権法との関係でありますが、御質問のような支障は、政府といたしましてはまずないと考えておる次第でございます。
#7
○花村委員長 念のために申し上げておきます。ただいまの出版法及び新聞紙法を廃止する法律案について、文部省の政府委員の出席を求めておきましたが、さしつかえのため出席できぬということでありますから、また質疑のいかんによりまして出席を求めて、詳しい答弁をしていただくことにいたしたいと思います。
#8
○松木委員 今度予約出版法によることになるようでありますけれども、予約出版法第四條の、予約出版に対しては保証金として予約定價十円未満は五百円、予約定價十円以上は千円ということは、今日の事態に適しておらぬようですが、これは改正される意思はないのですか。
#9
○山口(好)政府委員 所管が違いますが、知つております範囲でお答えをいたします。その点については御質疑のような点がたしかにございますが、今度目ざしておる改正では、ごく字句的な簡單なものにとどめまして、そのうちに改正されることになると思いますが、著作権法の改正に伴いまして、根本的な改正をいたすもくろみだそうでございます。
#10
○梨木委員 少年院法の一部改正のところで、昭和二十六年の三月三十一日までということになつておるのであります。これはおそらく予算の関係などをによみ合せての改正なのだろうと思いますが、やはりこういう拘置監に特別の場所をこしらえて、そこへ少年を保護処遇するというようなことは、なるべく短期間にしてもらいたいと思うのでありますが、なぜ二十五年一ぱいにということにできなかつたのか、この点を伺いたいのであります。
#11
○佐藤(藤)政府委員 御説のように、少年観護所は拘置監と全然異なるべき性質の施設でありまして、その中に收容する少年の処遇も、拘置監に收容する青少年の処遇とはまつたく別なものでありまするので、できれば拘置監と関係なく設立いたしたい考えでおつたのでありまするが、予算等の関係がありまして、とうてい今年中には整備する見込みが立ちませんので、さらに一年間延ばしまして、明年度の予算で完備いたしたい、かような考えのもとに、昭和二十六年三月三十一日まで暫定的な應急措置を講じようというのが、本改正案の理由でございます。
#12
○花村委員長 最高裁判所に対し、田嶋好文君より質疑の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
#13
○田嶋委員 委員長のお許しを得まして、私は最高裁判所に対しまして一言御質問申し上げたいと思います。最近わが國におきまして、少年問題に対しましては相当重大なる関心を要する時期になつたのであります。從いまして今回議院におきましても、花村委員長以下二十七名提出の少年犯罪防止に対する決議案が上程されました。これは各党一致をもちまして提出され、ここに採択をされることになつたのであります。そういうような意味合いからいたしましても、相当今後の少年法の運営に対しましては、重大な関心を持つて臨まなければならぬと思うのでありますが、御存じの通り本年一月に少年法が実施されまして、今日まで三箇月余を経過いたしておるのであります。ところがわれわれがこの実施三箇月後の実績を調査いたしてみますのに、どうも名目のみであつてその実が伴わない。名前のみはできたのだが、どうも実際はまつたく遅々として進んでいないというのが現状ではないかと思います。まず第一に私がそれについて質問をいたしたいと思いますことは、この少年法の実施によりまして、当然設立されるべき家庭裁判所ですが、この家庭裁判所は、少くとも少年法の趣旨からいたしまして、從來の裁判所に併置とか、從來の裁判所を利用するとかしたものでなく、独立の廳舍をもちましてこれに充てなければならないとわれわれは考えておる次第でありますが、現在この廳舍建設というものはいかような状態にあるか、これについて詳しく御説明を願いたいというのが第一点であります。
 第二点は、この廳舍と関連いたしまして、やはり人事の問題が起きて参ります。最近われわれの知る範囲では、ようやく家庭裁判所長の発令を見たように思われるのでありますが、いまだその家庭裁判所の中枢となるべき判事の充足というようなものも聞いておりません。ついてはこの家庭裁判所に対する人事の面は、どういうような進捗状況になつておるのか、これを詳しく最高裁判所から承りたいと思います。以上二点について御質問いたします。
#14
○宇田川説明員 田嶋委員の御質問に対して、最高裁判所の御回答を申し上げます。田嶋委員のおつしやる通り、少年犯罪がますますふえて、國会の方では青少年犯協防止に関する決議をされまして、私ども少年問題に関係しております者として非常にありがたく存じておるような次第でありますが、昨年少年法が改正になりまして家庭裁判所ができ、また少年観護所、それから少年院というものが設置されることになつたのでありますが、家庭裁判所のその後の進捗については、遺憾ながら予想通りに運んでおりません。現在少年関係の家庭裁判所として独立しているものは、わずかに大阪、熊本の二地方で、他の地方、すなわち他の四十七箇所においては、少年に関する独立の裁判所がまだ設立されてないような状況であります。家庭裁判所は、田嶋委員がおつしやる通り、刑事裁判所とか、また民事裁判所とはまつたく違つた、性格を持つた裁判所でありますので、どうしてもこれらと併設または利用するようなことは望ましいことではありませんので、何とかしてこれは新営、または借上げ等の方法によつて、独立したものをつくりたいと思つております。以上のように、現在では大阪、熊本の二地方においてやつております。ただ本年度新規予算において、これが設備に関する要求を大藏省にいたしたのでありますが、四十七箇所の家庭裁判所の新営の予算として、わずかに一億七千万円の割当しかされておりません。以上が家庭裁判所の物的方面における進捗の状況であります。人事の問題については、過般所長について東京、大阪、名古屋、廣島、福岡、仙台、札幌、高松、横浜、京都、神戸について專任所長の発令を見ましたが、いまだ爾余の箇所については、所長の発令を見ておりません。しかしこれについては、最高裁判所といたしましてはなるべく早く適当な詮議を行う意向であります。
    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕
 なお判事、少年の保護司等の人事については、本年度の予算で最高裁判所といたしましては、判事について百三十一人必要でありますが、大藏省に要求いたしましたのは六十六名で、わずかに四十六名、それから判事補は六十五名が四十六名、それから少年保護司は八百三十二名が四百五名、かような状況であります。とうていこれでは家庭裁判所の少年審判事件はまかないにくいというような状況であります。しかし家庭裁判所の職員は、何とかこの程度においても所期の目的を達成したいと、現に精進しておる次第であります。なお本年度は、十八才未満の少年について家庭裁判所の方で処置する計画でありますが、來年度からは、少年法によりますと二十才未満ということになるのでありますが、かりに二十才満満の少年を來年度において処置しなくちやならないとするならば、とうてい家庭裁判所はこれを運用することができないのじやないかと心配しておる次第であります。以上簡單でございますが、お答えいたします。
#15
○田嶋委員 今の説明によりまして、家庭裁判所の廳舎建築費として一億七千万円計上せられたということですが、この一億七千万円によりまして、どの程度の家庭裁判所の廳舎が建設されましようか、これが一つ。それからなお第二といたしまして、今回の予算によりますと、確かに昨年度の予算よりもこうした方面に対する予算は増額をされておると思うのでありますが、この人事に対する予算の運営はどういうふうに見ているのか、この二点を承りたいと思います。
#16
○宇田川説明員 家庭裁判所の新営の予算のことについて、これをいかに処理するかについては経理局の所管でありますので、現在私、お答えする資料を持つておりませんけれども、何分一億七千万円でありますので、これをしろうと考えといたしましても数箇所、多くて十箇所以下の家庭裁判所しか新営できないものと見ております。なお人員の配置についても、現在事務総局の方で研究中でありますので、ここで詳しいお答えをすることはできませんが、非常に困難な状況にあるということだけをお答えしておきます。
#17
○田嶋委員 それでは人事の問題についてもう一度お尋ねいたしたいのであります。裁判所長が発令されたのは一部でありまして、まだ大部分の裁判所に対する所長も発令されてないように承りますが、この所長はただちに補充されるのか、それとも今のままで行く方針なのか承りたいと思います。
#18
○宇田川説明員 所管が違つておりますし、また人事のことについては裁判官会議の方できめることになつておりますので、ここではお答えする自由を持ておりませんが、家庭局の考えといたしましては、すみやかにこれが專任所長の人選を希望しております。
#19
○田嶋委員 この問題は冐頭に申し上げましたように、われわれ議員といたしましても決議案を出した責任上もございまして、重大な関心を持つておるわけであります。ただいま最高裁判所の説明員の御説明でわかつたところは了承いたしますが、わからない点につきましては、それぞれ関係当局者におきまして、すみやかに説明をせられんことを希望いたしまして私の質問を終ることにいたします。
#20
○小玉委員 下級裁判所の管轄等に対する法律案について、一、二点お伺い申し上げたいと存じます。この法案によりまして六箇所簡易裁詞所が増設されることになりましたことは、まことに國民の喜びといたすところであります。それに関連しまして、第四國会におきまして岐阜縣関町、鳥取縣浦富町、栃木縣上都賀郡の栃木簡易裁判所、この三箇所に簡易裁判所を設置してもらいたいという請願並びに陳情等が出ておつたのでありますが、これはいかように処理されたかという点をまず第一にお聞きしたい。
 それから今度の法案では全國に六箇所増設されることになつておりますが、この六箇所以外にも請願、陳情等が出ておつたのではないかと思います。政府としては、將來なおこの簡易裁判所を必要に應じて設置される計画等がおありであるかどうか、この二点について御説明願いたいと思います。
#21
○岡咲政府委員 小玉委員の御質問に対してお答え申し上げます。このたび増設を見ました簡易裁判所は六箇所でございますが、そのうち関町の簡易裁判所、それから岡山縣の兒島市に設けます簡易裁判所、それから鳥取縣の浦富町に設けます簡易裁判所は、ただいまお述べになりましたように、衆議院において採択せられました請願もしくは陳情の御趣旨を主として取入れまして、新設することが適当であると私どもの方でも考えましたし、最高裁判所に御連絡申しまして、最高裁判所もその点について全幅の御同意をお與え願いましたので、設置いたすことにいたした次第であります。そのほか衆議院におきましては、京都府の竹野郡網野町に簡易裁判所を設けてもらいたいという趣旨の網野町長の請願がございまして、これは第三國会におきまして衆議院において採択せられておりますし、なお宮崎縣の高鍋町に簡易裁判所を設置してもらいたいという趣旨の請願がございまして、これは第一國会におきまして衆議院において採択になつておりますが、この二箇所につきましてはいろいろ研究いたしましたところ、今ただちに簡易裁判所を設けることを必要と考えるわけに参りませんので、一應これは留保にいたした次第であります。現在簡易裁判所は、御承知のように五百五十九箇所設置されておりますが、最高裁判所におかれましては、もちろんこの程度では満足ができませんで、もし予算なり人事の関係が十分に参るならば、一千箇所に近程度の裁判所をも設置したいような御希望のように承つておる次第でございます。法務廳におきましても、このたびの六箇所の新設は必要やむを得ないもののみに限りまして、予算の関係もございますし、そのほか諸般の事情もございまして、やむを得ずこの程度の増設を決定いたした次第でありますが、將來予算なりあるいは営繕、そのほか人事諸般の事情が許しまするならば、もつと陳情なり請願、あるいは國会の御意向に沿うように、なるべく多数の簡易裁判所を設けたいと考えておる次第でございます。
#22
○小玉委員 簡易裁判所の設置に関して、これに付随しましてちよつとお伺いしたいのですが、この簡易裁判所設置の費用であります。この費用につきまして、從來地元の寄付を仰いで、その建築費の一部に充てておるという例を私は承つておるのでありますが、現在各地方におきましては、御承知のように納税その他で非常な金詰まり状態にあるのであります。寄付をされる場合には、たいていその地元の各町村に割当てて、半ば強制的に寄付をさして、それを設置の費用に充てるというような例があるように承つておるのであります。今度のこの六箇所の増設については、その予算関係はいかように考えておられるか。全部國庫負担ということでやられるお考えであるか、ないしはまた若干は寄付を募つてやられるお考えであるか、その点を伺いたい。
#23
○岡咲政府委員 予算の問題でございますので、最高裁判所から御説明を願うのが適当かと思いますが、私の承知しております範囲でお答え申し上げたいと思います。
 このたびの六箇所の新設につきましては、裁判所あるいは法務廳におきましても、その営繕の予算を大藏当局に要求したのでございますけれども、目下の財政状態におきまして、遺憾ながら承認を得ることができなかつた次第でございます。この六箇所の新設裁判所につきましては、地元からもずいぶん強い御要望がございまして、営繕の点は地元の方面においてこれを負担するから、ぜひ設立を考慮してもらいたいという趣旨の陳情がしばしばございまして、裁判所におかれましても、地元の方に御出張になり、いろいろ関係方面とも御連絡になりまして、裁判所を設置するのに適当な廳舎の手はずもできる見込みが立ちましたので、裁判所もこのたびの新設に同意をお與えになつた次第でございます。一般に簡易裁判所の設立につきましては、小玉委員から御指摘がありましたように、地元の寄付に仰いでいる点が多いように承つたのでありますが、現在の國民の状況におきまして、あまりにも大きな負担を國民にかけますことは、われわれとして非常に遺憾と考えます。できれば裁判所の営繕の費用あたりは、全部國庫においてこれをまかなうべきであると考える次第でありますが、いろいろな関係上、全部の営繕の費用を國費においてまかなえなかつた点はまことに遺憾に考えております。もつともごくわずかではございますが、國費をもつて新設された裁判所もございますので、この点は十分御了承を得たいと思います。
    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕
#24
○梨木委員 今の御質問に関連してお伺いいたしたのでありますが、裁判所や檢察廳を新設する場合に、地元民の寄付に仰いでいるということ、これは実際は地元の金持や顏役が主としてこの寄付に應じている。そうしてその寄付のあつせんをしているのは裁判所の所長だとか、あるいその他の責任者がやつている。こういうような形で、裁判所なり檢察廳が建設されて行くというようなことを許しておくことは、これは裁判や檢察の権威と公正を絶対に保つことはできません。われわれはこれを在野法曹としても苦々しく思つております。これは機会があれば、私たちのこの意見を政府に向つて上申したいと思つておつたのでありますが、今伺いますと、六箇所の簡易裁判所が予算が一銭もなくて、地元の寄付によつてやつておるということでは、簡易裁判所をこしらえても、決してそこの一般の人民の利益のためにはたして運営されるかどうかということを非常に疑わざるを得なくなるのであります。こういうことは、最高裁判所としては絶対にやるべきことじやないと思うのであります。特に最近経済統制違反、つまりやみ屋さんが金まわりがいい。だから金まわりのいいやみ屋さんへ寄付を頼みに行く。こういうことになつておるのを人民はみな見ておるのであります。そうしてやみ屋さんがひつかかるような場合、それは公平な裁判をなしたとしても、公平な檢察的な処置をいたしましたとしても、人民は決してそれを公平だとは考えません。だからこういうことは今後絶対にやめてもらたいたと思うのであります。これは私の希望であります。
 次に少年院法の一部改正の法律に関しての第二十一條でありますが、今年の法務廳の予算は昨年度より二十六億五千万円ふえておるのであります。それにもかかわらず、少年保護所のような保護的な施設のために経費がさかれることが少くて、少年保護所を拘置監の一部に設置するというようなことをやることは、これは非常に遺憾だと思う。このために東京においても、また二、三日前の新聞を見ますと、福島の方においても、少年保護所に收容されておつた少年が、集團的な脱走や放火をやつているということがしばしば起つておるのであります。当局はこの原因をもつと究明して、その根本的な対策を立てなければならぬと思います。從いまして私はここで法務廳に伺いたいのは、二十六億五千万円の、この昨年度よりも増額した予算を、こういう少年保護の保護的な施設の方へ――これは今年の予算からは、款項の流用が大藏大臣の承認を得ればできると聞いておるのでありますが、こちらの方にさく意思はないかどうか、これを伺いたいのであります。
#25
○齋藤(三)政府委員 お答え申し上げます。本年度の予算で、少年院、少年観護所についてある程度の予算はちようだいすることになつております。さらにただいまお話のように、よその方からまわしていただくことも、今一生懸命努力いたしております。ただ実際問題といたしまして、本年の一月急速に新しい少年法が実施されまして、その結果昨年度に比較いたしまして、十八才未満の少年の起訴される率が、この二月末までの統計によりますと、昨年度の十分の一であります。しかも観護所に至りましては、さらに今度の法制で、從來拘置所に入つておつた者が、たとい家庭裁判所から檢察廳に逆送になりまして起訴されることになつても、家庭裁判所に係属中は観護所に入れるということになつたわけであります。具体的に申し上げますと、先般事故を起してまことに申しわけないと存じておりますが、東京の少年観護所に実例をとつて申し上げますと、昨年度は一年間平均月に大体百七十人の子供が、東京多摩少年院出張所という形で收容されておつたのでありますが、本年一月新少年法が施行になりまして、施設がございませんので、多摩の少年院の出張所を東京少年観護所にいたしまして、三月十二日でありましたか、それまでの実績をとりますと、昨年度は平均百七十人が、本年度は二百五十人ずつ入つておつた次第であります。しかも昨年度家庭裁判所と保護観察の役所として少年審判所が存続することになりまして、二つの役所になつたのでありますが、その機構の変改に際しましては、法務廳といたしましては、この少年観護所をゼロにいたしまして、家庭裁判所から観護所に入る者を收容し始めたのでありますが、昨年度よりも、ただいま申し上げましたように非常にふえて参りましたので、非常に遺憾な事態が生じた次第であります。從いまして私どもとしては、できるだけこの面に予算をとることにいたしておりますが、何といたしましても新設するのには相当の日数を要するのでありまして、さらに日本全國の施設ということになりますと、どうしても急速に整備ができませんので、かような便法を用いて次第であります。
#26
○梨木委員 私の伺いたいのは、この二十六億五千万円の今年度増額になつたものを、こういう少年保護所の増設の方へ予算を振向ける意思がないかどうかということを、私は聞いたのであります。この点お答えができますか。できたらお願いします。
#27
○齋藤(三)政府委員 一ぺんきまつた額よりも、ある程度ほかの方からまわすように大体話が進んでおりますが、私から責任をもつてお答え申し上げることはできません。
#28
○梨木委員 それはまわすことができても、昭和二十六年三月三十一日まで、拘置監にこういう特別の改正を必要とするのであります。
#29
○齋藤(三)政府委員 東京に五百人の少年を收容するために、火をつけられても燒けないようなコンクリートあるいは煉瓦のものをつくりますと、約七、八千万円要するのであります。二十六億の半分以上の金が入りますればできるかもしれませんが、ちよつと今のところではできないような状況になつております。
#30
○武藤(嘉)委員 ただいま議題に出ております下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の中で、岐阜縣の裁判所を岐阜裁判所並びに関裁判所に変更増設の件でありますが、お尋ねしたいのは、岐阜縣では昔から関町と美濃町という二つが政治的にも経済的にもほとんど互格でありまして、本員はこの原案に賛成する者ではありまするが、美濃町とほとんど互格でありまする関係上、関町に置くことに対しましては、美濃町側の意向がはたしてこちらへどんなふうに傳わつておりまするか。美濃町側においては反対がありはしないかどうか。この辺をひとつお伺いしたいと思います。
#31
○岡咲政府委員 お答え申し上げます。関町に簡易裁判所を設置いたします関係につきましては、武藤委員も十分御了承のことと考えまするが、これは参議院及び衆議院において採択されました請願が本設置案を取上げまするきつかけになつたと申し上げてもよろしいかと考えます。そういう関係で法務廳といたしましては、現地の裁判所長及び檢事正に十分照会をいたしまするし、あるいはその設置によりまして他の町村あるいは裁判所に及ぼす影響あたりも考慮いたして決定いたした次第でございまするが、ただいまお尋ねになりまする美濃町は、関町裁判所設立につきましてはもとより反対しておりませんし、現知の裁判所長及び檢事正その他の関係方面の意向を確めて見ましても、関町の設置につきましては大部分賛成でございまして、ただその管轄区域の点につきましては、多少意見もございましたようですが、裁判所の設置自体につきましては何らの反対もございませんので、政府といたしましては両院で採択された請願でもありますので、設置を決定いたしました次第でございます。
#32
○武藤(嘉)委員 御説明を了承いたしまして賛成いたします。ことに関町は近く附近の町村を合併いたしまして、人口が増大いたしまして、ひいては近く市制をしくことになつておる予定と聞いておりますので、原案に賛成いたしたいと思います。私の申し上げたのは、美濃町の側の反対がありはしないかということを特に考慮いたしましたためにお尋ねした次第であります。
#33
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。
#34
○梨木委員 ちよつと簡易裁判所設置に関する最高裁判所の見解を伺いたいのでありますが、それはなるほど簡易裁判所がどんどんできることは、人民のために非常に利便をはかる点においていいのであります。ところがこの簡易裁判所で扱う事件が、法律專門家を必要としないようなごく簡單なものを扱うのだとすれば、非常にけつこうなのでありますが、やはりどうしても法律專門家の弁護士などを必要とする事項までも相当廣汎に扱うということになりますと、実際はどういう結果になるかと申しますと、その簡易裁判所の所在する所に一人か二人の弁護士だけが住んでおる。しかも他の近接した所からそこへ弁護士が出張する場合には非常に時間と費用を要するようなことがある。そうしますと、裁判やその他相手方になつた者が、実際法律專門家を頼まなければ自分の権利を擁護できない場合がある。ところが遠隔の地から弁護士を依頼するということは、費用的にもとうてい負担しきれないという場合がありまして、せつかく人民の利益のために、権利擁護のためにつくつた簡易裁判所が、そういうことのためにかえつて人権の保護に事を欠くようなことを、われわれしばしば経驗しておるのであります。こういう点について、簡易裁判所を設置されることと関連して最高裁判所の考え方を伺いたいのであります。
#35
○内藤説明員 梨木委員の御質問にお答えいたします。
 まことにごもつともなことでございまして、簡易裁判所は各地に設けられまして、國民に十分の利用と申しますか、権利保護に役立ちますにはまことに御承知のようなことがあると存じます。おいおい簡易裁判所における手続なども研究されまして、簡易手続というようなものが法制化されて行くことが望ましいことではないか、その方面につきまして、今後最高裁判所としても十分研究を進めたいという考えでございます。
#36
○押谷委員 この簡易裁判所設置の関係でありますが、大体この簡易裁判所はいずれも衆参議員の請願に基いて、これを基礎にしておつくりになつたようでありますが、その請願のうちに京都府竹野郡網野町における関係の請願がすでに採択されておりますが、これが漏れておるのは何か理由があるのでございましようか、この点お尋ねいたします。
#37
○岡咲政府委員 網野町に簡易裁判所を設置してもらいたいという請願が採択になりましたのは、たしか第三國会であつたかと考えまするが、法務廳といたしまては、ただちに現地に照会をいたしまして、設置することの可否をただしたのでございます。ところが網野町は、御承知のようにすぐ附近に峰川簡易裁判所もありまする関係もございまして、現地の京都地方裁判所長並びに檢事正が、必ずしも網野町に今ただちに簡易裁判所を設けることにつきましては、積極的な御意見もないようでございまするし、事件数の関係を見ましても、今ただちに網野町に簡易裁判所を設置いたしませんと、地元におかれて非常に不便だという事情も十分了承いたすことができませんし、そのほかいろいろ関係方面の調査をいたしましても、今ただちに網野町に裁判所を設ける必要に対して、十分の理由も発見することができませんので、この際は一應留保にいたしました次第でございます。從いまして將來相当研究いたしまして、設置する必要があるという確信を得まするならば、最高裁判所とも協議申し上げまして、そういう方向に進むことを決して機会のないことでないということだけを申し上げておきたいと思うのでございます。
    ―――――――――――――
#38
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。――なければ次に司法試驗法案、刑法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、裁判所法等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。御質疑がありましたならば、お願いいたします。
#39
○松木委員 裁判所法等の一部を改正する法律案につきまして伺いたい。今度裁判所書記を裁判所書記官に改める。現在の書記に任命されない者は裁判所書記官補であるということになつております。書記官の採用制度というのはどういうことになつておりますか。それを伺いたい。
#40
○岡咲政府委員 裁判所の事務官から裁判所書記官を補するという関係になつております。裁判所の事務官は最高裁判所において御採用になつておるわけでありますから、最高裁判所から任用については御説明を煩わしたいと思います。
#41
○内藤説明員 裁判所書記官の任命方法は、最高裁判所が任命するわけでございます。なお最高裁判所法の定めるところによりまして、各高等裁判所、地方裁判所においても任命することになるわけであります。
#42
○松木委員 私のお伺いいたしたいのは、現在の裁判所書記というものは、この規定を見ると、裁判所書記官には適当でないような感じを與えるので、それで伺つたのですが、結局これは今の裁判所書記が書記官になるという予想をされておるのでありますか。
#43
○内藤説明員 今度の改正案に載つております裁判所書記官というものは、その任命の資格などにつきまして、從來の裁判所書記に補されました裁判所事務官よりは、ある程度高めて参りたいという考え方をしておるわけでございます。從つて從來の裁判所書記の中からも、裁判所書記官として任命される者はありますけれども、その程度に達しない者は、裁判所書記官補ということになるわけであります。
#44
○牧野委員 この司法科試驗の問題についてちよつとお伺いしたいのですが、從來の高等試驗の場合によりますると、行政科、司法科、外交科とわかれておりまして、行政科に合格した者は、行政科の試驗がたしかある範囲内において免除されることになつておると思うのですが、從來において行政科に合格した者が、司法科試驗の場合にどういう取扱いになるのであるか、つまり行政科の試驗に刑法、憲法のようなものに合格した者でも、さらに新たに全部についての試驗を受けなければならないのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
#45
○岡咲政府委員 高等試驗、行政科試驗はすでに廃止せられまして、昨年ももちろん行われなかつた次第でございまするが、せつかく行政科試驗に合格しておりますので、あるいはこのたびの司法科試驗におきましては、その試驗に合格した科目については、受驗を免除することも一應案としては考えた次第でございまするけれども、すでに行政科試驗は廃止されて、昨年度は施行されておりませんし、最近憲法の施行に伴いまして、法制がほとんど全面的な改正を見ておるような関係もありまするし、このたびの司法科試驗というものは、法律の專門家として最も高い程度の学識及びその應用能力の有無をテストすべき試驗て考えましたので、多少お氣の毒な点もあろうかとは考えまするが、從前のような高等試驗、行政科試驗に合格した人につきまして、その合格した学科目については免除するという方針はとりませんで、ひとつあらためて山研究願い、御準備願つて、司法科試驗の全科目を試驗していただくというふうにいたした次第であります。
#46
○鍛冶委員 そうしますと、司法科試驗で筆記が通つて口述で落ちた者はどうか。これもいかんのですか。
#47
○岡咲政府委員 ちよつと今手元に法案がございませんので、ちよつとお待ち願いたいと思いますが……。
#48
○松木委員 第一次試驗というのは予備試驗のように考えましたけれども、改正案の説明によりますと、高等試驗予備試驗ごとく、その受驗資格者を制限しないことにするとともに、試驗科目の範囲を廣めるようにしたという説明になつているのでありますが、第六條には、第二次試驗の科目がきまつている。選択科目もきまつている。第一次試驗の方は、大学卒業程度において一般教養科目について筆記の方法によつて行うということになつているのでありまして、この方によると、むしろ非常に廣い範囲の科目についてかつてに試驗ができるというふうに解釈されないとも限らないように思うのでありますが、一体第一次試驗の試驗科目はだれがきめるのでありますか、どこからこれが出発して來るのであるか、それをお聞きしたい。
#49
○岡咲政府委員 先ほどの鍛冶委員のお尋ねにまずお答え申し上げたいと思いますが、昨年度行われました高等試驗司法科試驗の筆記試驗に合格した者に対しましては、その願いによりまして、この試驗により行われまする司法科試驗の筆記試驗は免除するということにいたしております。
 次に松木委員のお尋ねに対してお答え申し上げます。第一次試驗をいかような試驗にいたすかということにつきましては、法務廳のみならず、文部省あるいは大学基準協会、弁護士会の代表者の方にお集まりを願いましていろいろ研究いたしました結果、ただいま提案いたしておりますような試驗制度に一應いたした次第でございます。大学基準協会におかれましても、いろいろ大学における教養科目をいかように定め、いかように実施せしむるかということについて相当長い御研究を重ねたようでございますが、お手元に参考資料としてお配りいたしております大学基準協会採択の大学基準というものをごらんになりますと、大体教養科目につきましては、人文科学関係、社会科学関係、自然科学関係と、ずいぶん廣い範囲に教養の科目がわたつているわけです。從いまして、この中からいかなる科目を選んで試驗するのが適当であるかということが問題になるわけでございますが、この試驗につきましては、この法律によつて設置を予定されております司法試驗管理委員会においてさらに御研究を願いまして、管理委員会に御決定をゆだねることが適当ではないか、こういうふうに考えた次第です。私どもの一應了解しておりますところでは、第一次試驗は、從前の試驗においてしばしば行われましたように、ただその科目を頭からまる覚えに覚えて、とにかく試驗場に行けば、その覚えた科目をそのまま紙の上に表現するといつたような試驗でなくして、その人自身にその教養の科目が身についておるかどうかということをテストするような試驗にしたいというふうな意向が、一般に人事院あたりでは考えられておるようでございまするし、大学基準協会においても同樣な考えのように承つておりますので、この第一次試驗につきましては総合的な、その人の身に体得されておりまするところの教養全般を合理的に試驗できるような、そのような試驗が採用されるだろう、こういうふうに予想いたしております。一見きわめて廣い範囲において試驗をいたすように見えまして、一体わずかの期間にこの全科目をいわゆる学識として理解できるかどうかということは、ずいぶん困難のことのように思いまするが、教養としてのテストというようなことは、前の人事院におきまする公務員の採用におきましても採用されておるようでございまするので、あるいは合理的に、しかも簡潔な方法によつてその試驗ができるのではなかろうか、そういう点につきまして管理委員会の研究、御決定に大きな期待を置いておる次第でございます。
#50
○松木委員 今の御説明ですと、いわゆる学術的というよりも、常識的な教養というふうにも解釈されるのでありますが、しかし廣く教養だといつて試驗されることも受驗者にとつてはずいぶん苦痛だろうと思います。あらかじめこれは公示するというような方法にしなければ、受驗者は非常に迷うのではないかと思う。ある一つのものについて論文をつくらせるというのでなく、廣くいろいろなものを出すということになつたなら、いろいろそれが受驗者をおびえさせることになると思います。それも一つであるし、管理委員がきめるということは、法律になくつたつてきめ得るのでありますかどうか、この点どうお考えですか。
#51
○岡咲政府委員 もつともなお尋ねと拜承いたした次第でありまするが、第一次試驗は、第二次試驗を受けるのに適当な教養があるかどうかということを判定いたすことを目的といたしまするので、筆記の方法によつて行われまするけれども、それは必ずしも昨年まで行われました高等試驗の予備試驗のように、論文というふうな形にはならないのではないだろうかと、実は予想いたしております。それからその試驗の方法でございまするが、それはこの法律案の第十七條にございまするように、司法試驗の施行に関するような細則は、司法試驗管理委員会規則によつてこれを定めるということになつておりますので、法律の委任に基きまして、管理委員会が第一次試驗の施行に関する細則を定めることができる次第でございます。
#52
○松木委員 ただいまの質問はこれでよろしゆうございます。
#53
○押谷委員 今の問題に関連してでありますが、司法試驗の管理の機構であります。これを管理するのは法務廳でありまして、法務総裁のもとに、司法試驗管理委員会などがあるというようになつておりますが、その理由はどこにあるのでありますか。
#54
○岡咲政府委員 從來裁判所法におきまして、高等試驗司法科試驗に関する事項は政令をもつて定めるということになつておりまして、裁判所法施行後におきましても、司法科試驗は政府においてこれを管理いたして参つた次第でございます。そういう関係もございまするし、試驗というものの性質になる次第でございまするが、これを司法系統の行政事務といたすべきか、それとも一般の行政権の範囲の事項といたすべきかということに相なるかと思いますが、やはりこれは國家に対しまして責任を持ちまするところの内閣において管理いたしまして、その試驗の施行に対する全面的責任を何人かが負うというようなことが、より合理的であるというふうに考えまして、一應試驗の管理は、内閣の一員であるところの法務総裁がいたすということにいたした次第でございます。この点につきましては、この試驗に合格した者の大多数は、司法研修所に司法研修生として採用されるわけであるから、むしろ司法研修所を管理しておるところの最高裁判所において管理するのがより適当じやないかというような御意見でありまして、もつともな御意見と承る次第でありますが、最高裁判所において試驗を管理いたしますると、これは國家に対しては何らの責任を負わない、無答責な事項となる次第でございますので、われわれといたしましては、やはり試驗といたしましては内閣の所管事項として、國家に対して責任を負うということにいたした方が適当ではないか、こういうふうに考えてこの法案をつくつた次第でございます。しかし試驗は性質上なるべく嚴正公平に行われなければならぬ関係上、法務総裁がじかに試驗をいたしますことは好ましくございませんし、この試驗に合格した人の大部分は、將來裁判官あるいは檢察官、あるいは弁護士になられる次第でありまして、この試驗を管理すべき別個の機関を置くのが適当ではないか、しかもその機関は裁判官、檢察官、弁護士の代表によつて組織される一つの委員会、そういうものによつて嚴正公平に試驗事務を管理しい行く、ただその管理委員会の予算とか、あるいはそのほかの事務をどこで取扱うかということが問題になるわけでございまするが、それを法務総裁の方でおせわをする、しかし試驗自体は今申しました裁判官、弁護士、檢察官、その代表によつて組織されておるところの管理委員会が、試驗の実施の全責任をとるというふうにいたすのが、合理的ではないかと考えまして、十二條に規定いたしましたように、試驗に関する事項を管理させるために、法務総裁の所轄のもとに司法試驗管理委員会を置くというふうに案を定めた次第でございます。
#55
○押谷委員 ただいまの御説明で了承できまするように、司法試驗に合格した人は、おおむね二年間司法研修所に入所せしめられる、そういう性質の試驗でありますから、その試驗は一面資格試験でありますが、他面において入所試験のようにも見られるのであつて、入所試驗という性格が相当強く感ぜられるのです。入所試驗であるならば、その研修所をあずかる方面において入所試驗をせられて、その方でこれを管理せられる方が便利である。しかもその試験の衝に当られる委員会の委員の組織も、大体裁判所側の人たちが、多いということになれば、その面からも最高裁判所の方におまかせになる方が便利がよいのじやないかと考えられますが、それが資格試驗であるか入所試驗であるかというような性格から見て、最高裁判所におまかせになるというようなお考えはないか、その点をお尋ねする次第であります。
#56
○岡咲政府委員 司法試驗に合格しました大部分の人々は司法研修所に入りまして、將來裁判官、檢察官、あるいは弁護士となられるであろうということは十分に予想されるのでありますが、この司法試驗は第一條にもございますように、裁判官、弁護士あるいは檢察官となるのに必要な学識及びその應用能力を持つておるかどうかということを試驗いたすのが眼目でございますので、この試驗に合格いたしましても、必ずしもただちに最高裁判所におかれまして、司法修習生として採用せられるかどうかということは、また別の問題になるのではなかろうかと考えられます。たとえて申しますと、非常に健康が弱いとか、そのほか諸般の事情によりまして、確かに学問なりあるいは應用の能力があるけれども、どうも將來弁護士あるいは檢察官あるいは裁判官にするのに不適当であるならば、最高裁判所においては採用せられないであらうと考えられます。そういう関係で、必ずしもこの試驗はただちに司法研修所の採用試驗というふうには言いかねる面があろうかと思います。それと、これは数においてはごく少いと思いますが、現在も高等試驗の司法科試驗に合格いたしまして研修所に入りまして、あるいは副檢事になり、あるいは法務廰の事務官になつた例もございます。近く國会において御審議になることと考えておりますが、改正弁護士法案によりますと、司法科試驗に合格しておりまして、ある一定の職に從事いたしますならば、一定の年限を経ますと弁護士たる資格を與えられるというふうな改正規定もございますので、必ずしもこの試験はただちに司法研修所と完全に結びつくということも言いかねるかと考えられますので、やはり一つの学術及びその應用能力の試驗、言いかえれば法律專門家たるの資格試驗といたしまして、むしろ行政部が管理いたすのが適当であろうかと考えまして、この案を提出いたしたような次第でございます。
#57
○押谷委員 これは資格試驗であることは、大体その條文から承知をいたしておりますが、今の御説明によると、司法試驗に合格をした者で研修所に入りたいという場合において、これを研修所に入れることを許すかどうかということは、さらに最高裁判所において適当にきめ得る、選択をし得る余地があるのか、そういうようにも受取れるのでありますが、私どもの聞いておる範囲では、司法試驗に合格した人で、健康等に格別の支障があればこれは別でありますが、今の法律の知識であるとか、應用の能力であるとかいうような関係で一應これに合格しておる人は、原則として全部無條件でとるというのが本則のように、研修所の方では承つておるのであります。今の御説明では、試驗に合格しながらさらにそこに入ることのできないような、またほかの問題があるようにも考えられるのでありますが、一体その関係はどういうことになつておりますか。
#58
○岡咲政府委員 司法試驗に合格をいたしました人々の大多数がおそらく採用されるであろうということは言われますけれども、少くともこの試驗におきましては、その受驗者の健康の試驗というものは全然いたしませんので、少くとも健康の点から最高裁判所の採用試驗に不合格になるという人は、もちろんあり得るだろうということは予想されるのであります。
 それから今日御審議を煩わしました裁判所法の六十六條の改正規定にも、司法修習生は司法試驗に合格した者の中から、最高裁判所はこれを命ずるということになつておりまして、試驗に合格することと最高裁判所の司法修習生の採用ということは、一應別のことということになつておる次第であります。それからこれは將來に対する臆測でございまして、多少恐縮に存ずる次第でございまするが、一應この法律学の修習を終えた者が、自分が法律專門家としての学力を有しておるかどうかということをテストするためにこの試驗を受けて、そうして試驗には合格したけれども、必ずしも研修所に入りませんで、あるいは実業界とか、そのほかの各方面に活躍をするということも、私はあり得るのではないかと考えます。そうしてそういう人たちが、会社なり銀行なりに就職の際に、法律の最高試驗に合格しておるということが、その人の職域におきましても一つの意味を持つということもあり得るのではないかと思いますので、必ずしもこの試驗は、そのまま司法修習生の採用試驗ということに結びつけなくてもよいのでないかと考える次第であります。
#59
○押谷委員 この点について、まあ理論的にそういうようなことは一應考えられますが、実際の問題として扱います場合においては、研修所の方では、司法試驗に合格した人は健康さえよければすべての人を收容して、そうして裁判官、檢察官、あるいは弁護士に育てる。そういう希望を持ち、そういう理想を持つていらつしやる。これは間違いのないことだろうと思います。おそらく法務廰の方においてもそういう考え方であると思いますが、これを一つの研修所の入所試驗のごとく取扱いたいという希望を私は承つて参つておるのでありますが、その点についての裁判所側の御意見をひとつ承りたいと思います。
#60
○内藤説明員 司法試驗の管理の問題につきましては、実は最高裁判所は法務廳とはまつたく考え方を異にしておるのでございまして、先ほど岡咲政府委員からも説明いたしましたように、最高裁判所の方では、やはり司法研修所を所管するところの最高裁判所がこの試驗も主管するのが当然であると考えておるのであります。御承知のように國家公務員法によつて從來の官吏制度がまつたく轉換されたわけでありまして、從來の高等試驗の制度もまつたく廃止されたわけであります。法務廳の提出されました今度の案によりますと、何か從來の高等試驗の性格を引継いでおるようなにおいが残つておるのでありまして、私どもの考え、最高裁判所の考えといたしましては、司法試驗の性格がまつたく從來の高等試驗とは異なるものだというふうに考えております。この法案の第一條を見ましても、一種の國家試驗であることはわかりますが、司法試驗の性格がはなはだ明確を欠いておるように思うのであります。これはやはりその点に思想的なはつきりした整理が出ていないため、こうした明確を欠いた規定になつていると思います。御承知のように、今後裁判官、檢察官、弁護士となるためには、司法修習生として司法研修所において研修を受けなければならないことになつております。そのために、司法修習生に採用する際に試驗を課する必要があるわけでありまして、そのために設けられた試驗がこの司法試驗でございます。要するにこれは司法修習生になるための試驗と観念さるべきものであると考えているのでありまして、先ほど岡咲政府委員が御説明申し上げましたように、他の付随的な効果を生ずる場合はあります。この試驗を通ることによつてある資格が與えられる面はございます。しかしそれはどこまでも付随的な効果でありまして、その試驗の本來の性質としては、司法修習生になるための試驗であり、司法修習生は司法研修所において研修を受けることになるわけであります。從つて司法研修所を所轄する最高裁判所が試驗をも所管することによつて、その間の運用が最も合理的に働くように考えておるわけであります。
#61
○押谷委員 裁判所の大体の御意見を承つたのでありますが、法務廳の考え方と最高裁判所の方面の考え方とが、さように大きな食い違いがありまして、この管轄については共に希望しておられるが、見解は全然正反対の答えが出ておるのであります。修習生を研修所に入れ、その研修所は最高裁判所がこれを所管していらつしやることは間違いないのであります。また司法試驗に合格した人は、希望すれば司法修習生として研修所に入り得る資格があり、國家もまたでき得る限りこれを收容しなければならぬ。そうすると、その收容の能力であるとかいろいろな関係から、人員等も、研修所の方面、言いかえればそれを管理する最高裁判所の方面においても一つの希望を持ち、將來これに対する管理もせられるわけでありますが、それを試驗する方は法務廳であり、合格者に向つての修習関係は最高裁判所であるとするならば、この二つの連絡は一体どういうような方法でおとりになるのか。この関係をひとつ聞いておきたいと思います。
#62
○岡咲政府委員 試驗の管理につきましては先ほども申し上げましたように、司法試驗管理委員会というものが設けられることになつております。しかもこの管理委員会は最高裁判所の事務総長、それから弁護士を代表する者、法務廳の官房長、この三人によつて構成されるという関係になつておりますので、たとえて申しますと、來年度は司法修習生として裁判所側では百人の人が必要である。法務廳といたしましては檢事として八十人が必要であるということになりますと、おそらく管理委員会にその希望を申し述べられるだろうと考えます。そうして管理委員会におきましてその数を調整いたしますと同時に、各年度にわたりまして試驗の採用の基準があまりに動くということは、試驗の公正あるいは永久性から考えまして問題でございましようから、その具体的な人事の方の要求を一方においては勘考しつつ、なお試験の一定のスタンダードというものを確立する見地から、管理委員会はやはり適当に試驗を管理して、適当に試驗の合格者を定めるということになるのであります。
#63
○押谷委員 今の御説明によると、管理委員会において合格者の数をきめる等の場合においては、研修所の意見等をよく参酌して確定するというようなお話でありますが、こうなるとその試驗の性質は、まさに入所選拔試驗のようにもなつて参りまして、まつたく資格試驗であるという性格を失うのであります。資格試験ならば、研修所の收容力、あるいは國家の希望する数とは関係なしに、一定の法学の力があり應用の能力があるかどうかだけをきめるのですから、あるいは少い場合もあり、あるいは非常に多い場合もあるわけでありまして、一定の資格さえあつたならばみんな合格するということになります。ところが今の御説明のように、やはり裁判所側の意見を相当この委員会において勘案してその人員等もきめる、こういうことになるならば、りくつは資格試驗ではございましようが、この実体はやはり入所選拔試驗であるという性質が濃厚になります。こういう関係にある司法試驗に対して、國家の最高の機関である法務廳と最高裁判所との間において、管轄爭いをするということもおもしろくないと思いますが、きれいさつぱりこれを最高裁判所の方におまかせになつたらどうなんですか。私はそういうようにして、面目維持も面子も考えずにさつぱりやつてもらつた方がいいと考えるのですが、その点だけ最後に聞いておきます。
#64
○岡咲政府委員 ただいまの私のお答えが十分でございませんために、多少誤解をお招きしたかと考えるのでありまするが、試驗はあくまでも一定の基準に基いて公正に行われるだろうということを、十分予想しております。ただその試驗に合格した人の大部分はおそらく研修所にお入りになる。そうして研修所にお入りになる関係を考えますと、法務廳である程度の檢事が必要である。あるいは最高裁判所におかれましてある程度の判事を要求される。そういうことを多少勘案いたしまして、あるいは合格者の数が決定されることもあり得るであろうという限度で参りましたので、試驗はなるべく嚴正な基準を経持しつつ行われるであろうということを私は考えておりますが、これは私の一つの見通しでありますので、管理委員会がどういう方針でおきめになりますか、それは委員会が御決定になると思います。但しそのときの人事の必要だけで、ある年にはごくわずかとる、ある年には水増しをして、必ずしも質はよくないけれども多勢の者を合格せしめるということはなさないであろう。これは私はかたく信じておる次第であります。
 なおこの試驗管理委員会をどこの所轄にするかという問題につきましては、先ほど申し上げましたように、やはり國会に対して責任を負う内閣の一員である法務総裁が管理することが適当ではないか。廣く申し上げますと、行政権に属する一機構であると考えられますので、なるべく國家に対して責任を負う内閣の所管のもとに立つ方が適当であろうと思つて、この案をつくつたわけでありますが、最高裁判所で御主張になる点もきわめてごもつともな点が多うございますので、私としてはこれは國会においてしかるべく御決定していただいてさしつかえないと考えておりまするが、法務廳の官房長も政府委員として出席いたしておりますので、その点につきましてはいずれ官房長からもお答え申し上げたいと思います。
#65
○上村委員 この司法試驗の科目の問題ですが、私どもが司法試驗に対して希望するものは、法律の技術家を養成するのではなくして、國家の司法権、裁判、檢察、弁護というような、法律運用の重要な面を担当する日本の司法試驗なのであります。しかるにこの第一條を見ますると、「司法試驗は、法律專門家として必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することを目的とする國家試驗とする」となつておるのですが、この法律專門家というのはどういう意味のものでありますか、どうもこれは法律技術家のように考えられる。從つてその結果として、ここに現われたところの科目を見ますと、第六條に、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法というのが必須科目になつておる。それから六項において、第一次選択科目として商法、行政法。七項において、第二次選択科目として商法、行政法、破産法、労働法、國際私法、刑事政策、こういうふうにありますが、これはまつたく法律技術家を養成し、試驗するにはこれでむろんいいと思うし、それから裁判官、檢事、弁護士を養成するにもこれは必要でございますが、裁判官や檢事、弁護士に必要なものは、法律の技術ではなくて、その裁判の社会化、あるいは民主化、公正化という点にあるのでありまするから、どうしても必須科目の中に、そういう裁判をするについて必要な法律以外の学問、すなわち現在で言うならば、経済学、あるいは社会学、あるいは國家学、あるいは心理学、倫理というようなものが最も重要な部分を占めるようにして、そうして人材の登用をしなければならぬ。今までの日本の司法官が非難を受けたのは、法律は知つておるけれども非常識で、化石化した裁判をして、社会とかけ離れた解釈をしたり、法律一点張りの解釈をしたりして、裁判の威信というものが國民から離れて行つたということを、われわれは過去の浅い経驗において知つておるのであります。ことに日本の憲法が三権分立になりまして、日本の司法官は政治を監督する――法律を擁護し憲法を擁護するという重大な使命を持つところの裁判官、檢察官、弁護士というものになつて來ておる以上は、なおさらその試驗科目として、法律の木の葉をかむような、甘みも何もないような試驗科目で人材を試驗するということは、非常に間違つておるのではないかと私は思う。どうしても裁判官、檢察官、弁護士として、そのときどきの社会に、死した法律を、枯れた法律を生き生きと非常に情味あらしむべき解釈をするには、その檢事、その裁判官、その弁護士に、豊富なる社会的、思想的あるいは人情的なものを持つていなければならないと思うのであります。そういう意味におきまして、どうしてそういう科目をこの必須科目の中に入れなかつたかということを私はここで質問すると同時に、希望をしておきますが、少くとも経済学、社会学というものは、いわゆる國家の高等官になり、國家の重要な一面を担当するこの人材登用の試驗には入れなければならないと思うのです。この点において、原案は旧態依然たるものがある。そしてこれによつて試驗される人は、どんなにその試驗官が何しようとも、その人の頭はまことに空疎な、片ちんばな学問で試驗されて、裁判官、檢事、弁護士になつて行く。その結果というものは推して知るべき法律運用が現われて來る、こういうことになろうと思うのであります。その中に入れなかつた理由がほかにあればよろしい。私は法律だけでは人間は完全なものではないと思う。特に日本の複雜な、ことに世界情勢がこういうふうになつて來ておる。こういうときの日本の法律――たくさんのいろいろな法律が出ておりますが、その法律を解釈するということもなかなか困難だから、法律学の要求も当然でありますが、それだけではとうてい日本の將來の國家、國民を指導することはできないと思う。その意味におきまして、司法科であるから法律だけでいいということは間違つた考えで、どうしてもこの際、試驗科目の中に必須科目として、少くとも経済学、社会学、こういうものを入れ、選択科目の中にも、きわめて必要な社会の要求しておる学問、こういうものを入れるべきであろうと思うのですが、それ以外に理由があつてやつたのであるか、その点をお伺いしたいと思います。
#66
○岡咲政府委員 上村委員のお尋ねは、きわめてごもつともと拜承いたしたのでございます。上村委員のようなお考えになりまして、おそらく元の高等試驗、司法科試驗の学科目が選ばれていたかと考えるのでありますが、必ずしも元の高等試驗の実績を見ますというと、御期待に沿うような結果も生れていなかつたのではないかと思います。御存じのように元の高等試驗におきましては、非常に必須科目が少くございまして、経済学はもとよりのこと、社会政策とか、あるいは宗教学、倫理学、哲学、心理学、あるいはたしか漢文もあつたと思いますが、非常に廣い範囲において選択科目は選ばれるというような仕組みになつておつたのですが、それを実際に行つて参りますと、必ずしも上村委員の御期待になつたような結果は生れて参らなかつたのではないかと考えております。この度の試驗法を考えるにつきましては、從來のそういう点の経驗も十分しんしやくいたしまして、まず第一次試驗といたしまして、今上村委員から御指摘になりました純粹の法律学の試驗をいたしますのに適当な一般的な学力、あるいは教養を備えておるかどうかという点を、第一次試驗でテストをいたすわけでございまして、この第一次試驗は、大学基準協会の基準によりますと人文科学関係、社会科学関係のみならず、さらに自然科学関係につきましても、非常に廣い範囲における学科目が選ばれておるわけでありまして、これを必ずしも学問的な見地でテストはいたさないと思いますけれども、いやしくも社会人として、あるいは政治家として、あるいは法律家として社会に活動するのに少くとも必要とされる基本的な学問というものを、身につけるということを前提要件と考えておる次第でございます。從つてこの第一次試驗に合格した者の中からさらに試驗いたすとすると、やはりこれは経済学あるいは社会政策、あるいは國家学というものを選ばせますよりも、すでにここに選んでおる科目だけでも受驗生にとつては非常に負担が重くはないかと考えておる次第でございますが、むしろ純粹的に法律的な研究という方に限定した方がよろしいのではないかと考える次第です。
 その第二点といたしましては、なるほど從來の法律学は、主として解釈的な学問に片寄り過ぎていたのではないかと考えまするが、これからの法律は、たとえば憲法にいたしましても、刑法にいたしましても、あるいは民法にいたしましても、ただ單に法律の條文をただ説明する、あるいは解釈するというのでは足りませんで、その根底にまでさかのぼりますと、必ずその社会的な関係、あるいは政治的な関係、あるいは歴史、そういうものなども深くきわめませんと、民法の一つの條文、たとえばわれわれは生れながらにして権利能力を有するのだという一つの條文すら、眞実の意味を理解することは困難ではないかと思うのであります。いわんや憲法の各條章を徹底的に理解いたしますためには、ただ單に從來のように法律の解釈だけをやつておつたのでは足りませんで、人間の歴史の根底にまでさかのぼつて深く研鑽を積みませんと、ほんとうの正しい憲法の解釈はできないのではないかと思います。こういうふうに、法律学そのもののつかみ方をかえて見ますれば、私はこの法律だけでも人間としての識見とか、歴史とか、政治とか、社会とか、経済とかに対する理解というものを、十分テストし得るのではないかと考えております。それが第一。
 もう一点は、なるほどこの試驗では、ただ單に法律学の学問的な試驗しかできないと、かりに仮定いたしましても、弁護士あるいは裁判官、檢察官になりますためには、司法研修所へ入りまして、研修を受けるということが必須の要件になつている次第でございます。私は研修所の教育というものに非常に大きな期待を、ことに將來にはつないでおる次第でございまして、この研修所において徹底的に、今上村委員の御指摘になりました方面についても、研修生の目を開いて行く、あるいは研究の基礎をつくつてやるということをいたしますならば、上村委員の御心配になるような点は、將來は絶対に起り得ないだろう、こういうふうに考えております。
#67
○上村委員 趣旨はよくわかりました。趣旨はわかりましたが、民法、刑法、刑事訴訟法、民事訴訟法、憲法というものを数えただけでは、これはどんなにあなたが説明しましても、経済学はやはりわからぬのです。今日われわれにほんとうに必要なのは、社会生活をしておる以上社会学だと思う。この原則もこの科目ではよくわからないのです。ですからそれは出てから勉強すればいいじやないかと言えば、それはそうですけれども、やわりわれわれも経驗しておりますが、試驗を通つてしまえばあとは勉強しない。ですからやはり試驗をするときに勉強するように要求しておけば、学生なり研修生なりがうんと勉強する。それが基礎になつてだんだん勉強するのですが、この試驗科目では、御説明の趣旨はわかりますけれども、経済学の理論は出て來ない。社会学の理論もいいかげんなものであるというふうに考えますから、今の御答弁はせつかくでありますが、それだけでは納得できませんので、やはり試驗をする以上は、経済学、社会学というようなものは、司法官になるには必ずいるというふうに、本試驗の中には入れた方がいいのではないかと思うのです。
 それから口述試驗の点ですが、この法案によりますと、これも二重になつているわけです。筆記試驗について合格した者に、憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法等、二重のことをやつておるわけです。これはあまり意味をなさぬのでありまして、この口述試驗について何か人間的な、社会的な、そういつた科目でもあればいいのですが、必須科目とまつたく重複しているのです。筆記試驗でやつたことをまた口述試驗でやる。この点で何か調節できると思う。私も試驗では苦労して、よく知つておりますが、ただ高等試驗で知識だけを試驗して、人格の試驗というものは実際できないのです。この人間がどんな特性を持つておるか、どういう度胸を持つておるかということは、この筆記試驗と口述試驗と二度通つても、やはり法律の試驗しかできない。この知識だけが人材でもないし、人物でもないのでありますから、これらの点について何か適当な方法を講ずるというお考えはないでしようか、それをお伺いしたいと思います。
#68
○岡咲政府委員 試驗科目の経済学を選ばないと、経済学の根本的な理論というものを学生はなかなか理解しないだろう、のみならず、よき法律家になるためには、経済学の基本理念というものについても、法律と同樣によく通じるべきであるというような御意見は、一應ごもつともと考えるのでありまするが、重ねて申し上げて恐縮でございまするが、経済学あるいは政治学、心理学、教育学、歴史学といつたようなものは、一般教養科目の中に掲げられておりまして、その点につきましては、第一次試驗において一應テストされるという建前をとつておりますので、この上さらに法律の專門家となるための特別な経済的理論を試驗に課さなければならないというようには、むしろ考えませんで、あるいはこの点は、結局において上村委員と見解を異にしたと言わなければならないかもしれませんが、試驗科目の中には採用いたさなかつた次第でございます。
 それから、なるほど経済学そのものの基本的理論というものは、直接の試驗はないかと考えるのでありますけれども、あるいは憲法、民法、刑法、商法というふうな学科は、必ず経済あるいは社会というものに対する、相当高度の理解がなければ、この試驗に通ることはできないだろう、私はこういうふうに考えますので、一應試驗の科目はここに書いてありますような、純粹な法律学に限定いたしてもさしつかえないのではないかと考えた次第でございます。
 その次にこの口述試驗は、大体筆記試驗と重複いたすような関係でございまするが、筆記試驗によるテストだけでは、やはり不十分な点がございますので、口述試驗を加えた次第でございます。また受驗生の方からいたしますと、筆記試驗に必ずしも十分の成績を收め得なくても、また口述の機会がありまして、さらに不十分な点を補つて、完全なものにいたすことできるわけでございますから、重ねた方が、試驗の適正、正確をはかる上において好ましいのではないかと考えた次第であります。
 その次の人物試驗についてのお尋ねでございまするが、これはどうも試驗の性質上、嚴格な人物試驗というものは、ただ一回の面談ということでは、なかなかできがたいもののように考えまするし、この試驗はそこまでを要求いたしておりませんで、一應專門の学識と應用能力があるかどうかという点だけを判定いたす試驗と、こういうふうにこの試驗は御了解願いたいと考えます。その人物が將來司法官として適当でないかどうかというような点につきましては、最高裁判所が研修所に研修生として採用せられるときの試驗において、十分テストなさるであろうと思いまするから、その採用試驗と、二年間の研修期間というものによりまして、理想的な司法官、あるいは弁護士たるべき素質をそこで練磨して、完全なものに教育していただくという方向が正しいのではないか、この試驗におきまして人物試驗というようなものを行うことは、むしろ好ましくないのではないか、かように考える次第であります。
#69
○鍛冶委員 試驗の事務取扱いについて、法務廳と最高裁判所と意見が違いますが、私はそれについて、根本的にわれわれの考えなければならぬ問題があると思います。一体この司法試驗というものは、今上村委員が言われた通り、法律家としての高等常識を備えておるかどうかということの試驗が根本だと思います。してみれば、裁判官だけをつかさどつておる最高裁判所、その中の一つだけ、檢察官だけをつかさとつておる法務廳、いずれにいたしても私は不適当ではないかと思う。弁護士というものがある。ことにわれわれは法曹一元の理論から言いますと、すべて一應弁護士にして、それから適当な者を裁判官なり檢察官なりに採用するのがよろしいと私は考えておる。またこの委員会において一昨年以來、その議論はもう私は結論に達しておつたと思うのです。さように考えてみますと、現在これを法務廳でやらなければならぬの、最高裁判所でやらなければならぬのということが、すでにわれわれの考えと違うように思うのであります。これについて法務廳の意見をあらためて承りたいと思います。
#70
○佐藤(藤)政府委員 ただいま御質問の御趣旨はまことにごもつともに存ずるのであります。將來裁判官となる者、また將來檢察官となる者、また將來弁護士になる者、それらの者が大部分でありまして、そのほかにも先ほど申し上げましたように、副檢事となる資格も得られるのでありますが、そういう法律專門家としての資格を得る試驗でありますから、それを一裁判所、一法務廳で取扱うということは、いかにも大きすぎるような感じがいたすのであります。しからばどこでそれを管理するかということになりますと、どうしてもこの資格試驗に合格した者の大部分が將來の志望を持つておる裁判官、検驗官それから弁護士、そういう三者の代表者が試驗を管理するというのが一番適当であろう、こういう考えから私どもはこの案において、試驗管理委員会というものを組織しまして、この管理委員会で試驗の行政をつかさどる。ただその試驗の行政について、最高の責任者として行政のおせわをするのはどこにしようかということについて、最高裁判所と法務廳との間に意見の食い違いができたのであります。私どもとしましては、かような行政についての責任を負うものは、どこまでも國務大臣が議会に対して責任を負うという仕組みの方が一番適当ではないか。いかに試驗であつても、その試驗が公正に行われるということは予想されますけれども、その試驗は純然たる行政であります。その行政について何ら責任を負わない裁判所が、そういう行政について最高の責任任となつて管理するということは適当でないのではないか。こういう考えを持つておるのであります。行政のおせわをするのは政府で、その試驗は試驗管理委員会、裁判所、法務廳及び弁護士会の代表者からなる試驗管理委員会で試驗を行う、こういう仕組みを考えたのであります。
#71
○鍛冶委員 ただいまの御説明でお考えはわかりましたし、一應うなずかれるのですが、それと同時に考えなければならぬのは、管理委員会は三者でありましたが、司法修習をするところを最高裁判所に置かなければならぬという理由は成立ちましようか。この点に対する法務廳の御見解をお伺いしたい。
#72
○佐藤(藤)政府委員 司法試驗に合格した者の中から、最高裁判所が適当な者を適当な人員だけ司法研修所に入所せしめまして、すなわち採用して、司法修習生として二年間の指導訓練を施しておるのでありまするが、この司法修習生の中には、お説のように將來裁判官または檢察官、または弁護士等となる志望の三者が、司法研修所の一堂に会して教育を受けるのであります。この司法研修所を、しからばどこでさような行政を管理する方が適当かという問題は、先般憲法の改正に伴つてすべての制度が改革せられました当時、司法行政審議会というものができまして、その審議会において相当論ぜられたのであります。司法研修所は裁判所の管理にすべきか、あるいは司法省の管理にすべきかというようなことが非常に爭われたのでありまして、このときも相当議論が対立しておりました。結局多数決によつて最高裁判所の管轄ということに相なつたのであります。かような現状ではありまするけれども、その研修所に入所しておる者は、裁判官になる者に限らない。將來檢察官になる者も含まれており、また弁護士になろうという人も含まれておるのでありまして、この三者を研修せしむるのに司法研修所という施設があります。その機関はどこで管理するかということは、また別個に考えなければならぬ問題であると思うのであります。現在その三者を包括して研修所を管理する適当な機関が別にありませんので、今のところは最高裁判所にゆだねておるのでありまするが、その研修所の管理を裁判所にゆだねておるから、それに関連する試驗もゆだねる。あるいは試驗を受けるのに学校教育を受けた者でなければならぬからといつて、学校教育までも負わせる。そういうような関連性で、すべての行政をだんだん裁判所の管掌に移すということは、私は將來の裁判所の行き方としてあまり好ましくないのじやないか。裁判所はどこまでも司法権をつかさどる所として、なるべく純粹に司法部面に立つべきものであつて、その司法権を適正に行うために、必要な最小限度の行政がゆだねらるべきものである。その行政については、もちろん國会に対して責任はないのでありますから、あまりに行政事務の範囲を廣げるべきものではない。かような考えを持つておりまするので、將來もし司法研修所をつかさどるのに、裁判所以外に適当な組織が考えられるならば、さような組織にやはり研修所の管理もゆだねる方が適当ではないかというような考えを持つております。
#73
○鍛冶委員 今日の議論と過去の議論というものを聞いておりますと、現在研修所が裁判所にある。そうすると研修所でいろいろなことをやるから、その試驗の管理は裁判所でよろしい、やらせればいいじやないかという議論であります。ところがそれに対して重大な疑問を持つておる。一体研修所は裁判所に置くのが本則なのか。いいのか。これをあなた方に聞きたい。これは何べんも私くどく申し上げたが、もつと言つてみると、法務廳において眞に法曹一元を実現しようとする熱意があるかということになつて來るのであります。われわれはほんとうに法曹一元を実現しようとするならば、司法修習生は修習を終えたら、ただ單なる法律家とすべきものであつて、修習を終えると同時に、これは裁判官、これは檢察官とするという色をつけて行くべきものではない。法律家としてこれを見るべきものである。そうして見るならば、だれも法律家のプールである弁護士会に入れておいて、一定の年限修習させた結果、これは裁判官に適当、これは檢察官に適当、そうするのでなかつたら、十年とか五年とかいう制限は私は無意味なものだと思つております。その見解からいたしまして、研修所を裁判所に置くことは私は不條理だと思いますが、これに対する法務廳の御見解を承りたい。これは去年からもうすでにここで決定して、鈴木法務総裁はこれに向つてどこまでもやるという言質を與えておられるのですが、今日現実しておられなんで、そうしてこの枝葉の試驗の問題で爭つておることは、まことに私は不可解だと思いますから、まず私は法務廳のこれに対する御見解を承りたいと思います。
#74
○佐藤(藤)政府委員 現在の裁判所法並びに今度の國会に提出せらるべき弁護士法の改正等は、いずれも法曹一元を目ざしておるものと私どもは考えておるのでありまして、法務廳といたしましても、もちろん法曹一元を目ざしておる。その現われとして、ここに司法修習生という制度を設けたのであります。將來裁判官、檢察官、弁護士になる者が一堂に会して研修し、二年間の研修を終えてからのちに、それぞれの希望の分野に進んで行く、こういう組織にいたしたのでありますが、お説のように二年間の修習を終えた者が、ただちに檢察官、あるいは判事補とならないで、全部一定の期間弁護士となり、法律を研究し、また識見を高める、その上で檢察官なりあるいは裁判官になるような制度を考えたらどうかという仰せでありますが、私はさようなお説に対してまつたく賛同を表したいのであります。法務廳全体の意見としてはまだまとまつておりませんけれども、前鈴木法務総裁の時代にも國会において申し述べましたように、さような裁判官となる資格について、また制度についてさらに檢討して、新しい裁判官または檢察官の資格を定め、新しい制度を打立てるために、法務廳並びに最高裁判所、檢察廳、弁護士会の代表者等が寄り集まりまして、ここに新しい司法制度を樹立すべく研究をしようということを、鈴木総裁がお約束なされたのでありますが、その後最高裁判所が主宰になりまして、法務総裁、檢事総長、それから弁護士会の代表者等が寄り寄り集まりまして、たびたび懇談をいたしておるのでありまするが、まだその新しい制度について具体案ができておらないので、ここに申し上げる程度には進んでおりませんけれども、みんなの考え方が新憲法に伴つてこの新しい裁判所法、檢察廳法が施行されておるけれども、さらにこの実績にかんがみて、裁判官、檢察官の資格を定めると同時に、新しい司法制度を考えようじやないかという氣持には一致いたしておるのであります。いずれ何らかの具体的な成案が出ることを期待いたしておる次第でございます。
#75
○鍛冶委員 法務廳の御見解としてはその程度でやむを得ないかもしれませんが、これはいい機会ですから、裁判所からもおいでになつておりますから伺いたいが、先ほどの私の質問はお聞きの通りと思います。これに対する裁判所の御見解をお願いしたいと思います。もう一ぺん要約はて申しますると、法曹一元ということに御賛成なのかどうか、その前提として、司法研修所が裁判所にあるのは適当とお考えになつておるか、それとも何かやろうとお考えになるか、その点伺いたいと思います。
#76
○内藤説明員 鍛冶委員の御質問に対してお答えを申し上げます。最高裁判所といたしましては、裁判官、檢察官、弁護士たる人を養成するための修習は、これはやはり最も基礎になるものは弁護士たる資格という点におかれておると存じます。從いましてその研修機関は弁護士会、いわば日本弁護士連合会というようなところでその研修を主管されることが最も好ましいことと存じます。しかしながら現在まだ弁護士法の改正がその途中にございまして、そういつたものを主管するまで連合体の方もできておりませんので、現在の法制のもとにおきましては、最高裁判所が所管いたしますことが最も適当だというふうに考えております。法曹一元につきましては、私もまつたく先ほどの佐藤政府委員のお答えと御同樣に感じております。
#77
○鍛冶委員 それはまことにわれわれも、多年の主張に御同感であることを喜ぶのであります。弁護士法も遠からず通過するものと確信いたしております。そうすればこの通過の際に、ぜひともこれは三者の意見の一致なんですからやつてもらわなければならぬ。あるいは弁護士会の今の状態ではいかぬではないかという御議論もあると思いますが、いかぬのならいくようにやつてもらえばよいので、弁護士会連合会もできまして、どうあつてもそれをやつてもらはなくては眞の法曹一元化はできない。さように考えてみますと、現在の司法修習ということは、これは過渡期の一時的方法だと思います。そうしてみると、どうもどこでやろうとそれほどここで筋ばつて言うほどのものじやないと思う。願わくばそんなことよりか、一時でも早く眞に法曹一元の制度を確立するように、修習は弁護士会でやる、そうして修習したものは皆弁護士にしておく。弁護士として、高尚なる法律家としての眞の修養を積んで、その上で五年たつたら檢事になり、十年たつたら裁判官になる。これへ進んでやつてもらいたいと思うのです。ところがどうも過去の実情を見ますると、そうはおつしやるが、これははなはだ失礼な臆測かもしれませんが、どうも裁判所は裁判官の養成所、法務廳は檢察官の養成所、そうしてできるものなら成績のいい者を裁判官、その次を檢察官にして、残りを弁護士にしよう。われわれにはこういうにおいがしてなりません。これではどれだけたつても法曹一元の実は上らぬだけでない。法曹一元などということはどうでもいいが、わが日本の司法というものの全体の向上は望めませんと私は断言いたします。そうでないかどうか、これははなはだ失礼かもしれませんが、ついでだから承つておきたい。そうでないのなら、こんなことなんかいらない問題である。一日も早く根本へさかのぼつてやつてもらいたいということをお聞きしたいのですが、いかがでしようか、裁判所に一つ聞きたいのです。
#78
○内藤説明員 ごもつともな御見解と存じます。今の法制のままでも裁判官、あるいは檢察官に弁護士の方がおなりになる道は十分開けておるわけであります。ただそれが実現しないのは、実はいろいろな事情があることと存じます。裁判官、檢察官の職務の性格もございましよう。また経済的な問題もございましよう。そういつた障害がおいおい除かれて、ただいま鍛冶委員のおつしやつたような法曹一元という理想がおいおい実現されて行くものと考えております。私どもまたその方向に向つてできるだけの努力をいたしたいと考えております。
#79
○鍛冶委員 おいおいじやないのです。今のように試驗をして、そうしてその中から裁判官をとる、檢察官をとる、残りを弁護士にする。これだからできないのです。全部弁護士にしておいて、その中からとつてごらんなさい。問題はないのです。これは何十年來言うことだが、どうしてもおやりにならぬ。私はこの憲法の改正せられたるとき、今新しい弁護士法の通ろうとするとき、このときに改革しなかつたら改革するときはないと思うから私は申し上げるのです。だからやるお氣持があるならばこの際やらなければならぬと思うが、それでも相かわらず、このような今の制度で裁判官をとつて行く、檢察官をとつて行く、残りを弁護士にする。こういう御見解はわれわれとは根本的に違うから、伺つておきたい。今の制度ではできないのはあたりまえです。だから根本においてそういうお氣持があるのかどうかをお聞きしたい。裁判所に伺う機会がなかつたから、ただいまお聞きするのです。
#80
○内藤説明員 根本において鍛冶委員の仰せの通りと存じます。ただ何と申しまするか、司法修習生なら司法修習を、二回試驗が終りましたときに、現在の法制のもとにやはり必要な人数だけの裁判官、必要な人数の檢察官を採用するということはあるわけであります。その際に弁護士を志望している人をむりに裁判官に任命する、檢察官に任命するということはあり得ないわけでございまして、結局現在弁護士でおられる方が裁判官になり、あるいは檢察官になる志望の方が多くなれば、裁判官、檢察官はそれによつて補充されて行くし、また試驗に合格したものが多く弁護士を志望するということによつて、ただいまお話のような裁判官をまずとる、あるいは檢察官をとるというような状態がなくなつて來るものと存じます。これは今後の裁判官、檢察官というもののあり方、あるいは弁護士のあり方というものによつておのずから解決されて行くものだと思います。さように考えております。
#81
○小玉委員 この司法試驗法案によりますると、試驗の管理は法務廳でやられる。しかし試驗は試驗管理委員によつてやられるとありますがどうですか。こまかいことのようでありますが、試驗に合格した合格証書は法務総裁の名義でお出しになるお考えですか。あるいはその管理委員会の委員長と申しますか、その名前でお出しになる考えですか、ちよつと承りたいと思います。
#82
○岡咲政府委員 小玉委員のお尋ねにお答えいたします。試驗の管理は試驗管理委員会がいたしまするが、最高の責任者は法務総裁であります関係上、試驗証書は法務総裁の名義によつて発行されるものと考えております。
#83
○小玉委員 そういたしますると、私はこの試驗の管理を法務廳がつかさどられるという点については、いろいろ考えてみなければならぬ点があるのではないかと思います。將來裁判官になられる第一の出発点の合格証書というものが、法務総裁の名をもつてやられるというのは、將來司法の独立という点から考えまして、すでに出発点のときから形式的にもさしさわりがあるのではないか。將來裁判官になるその第一歩において、やはり檢察廳の親玉でありますところの法務総裁から、いわゆるお墨付をもらつておるということは、將來いろいろな点で司法の不覊独立という点について、はなはだ感情的にも、また政治的にもさしさわりがあるのではないか。何とかそこは不覊独立の見地から、合格証書を出されるというふうにお考えになつてはいかがでありますか。かように思つておりますが、その点についてお見解を承りたい。
#84
○鍛冶委員 ちよつと関連してお考えを願いたいと思いますが、過去において試驗は全部司法省でやられておるが、試驗委員長はほかから出たと思います。これはよほどお考えになつておやりにならないといかぬ。法務廳でやるから法務総裁でなければならぬというものではなかろうと思います。
#85
○小玉委員 今鍛冶委員の仰せられたように、以前は内閣の法制局長官でございますが、試驗委員長になられまして、それからわれわれはもらつた。そうなりまするとさらに根本に立入りまして、この試驗の管理を元の内閣と申しまするか、今では総理廳となつておりますが、この総理廳あたりの所管にするということがあるいは一番所を得るのじやないかと考えております。総理廳がいかなる機構であるかということを私はつまびらかにしておりませんが、もしさようなことができますると、試驗の合格証書は総理廳あたりから出すということにすることが最も無難ではなかろうか。これを最高裁判所長官が出されることも、また檢察廳においていろいろお考えもあるでしようし、また法務総裁から出されることもさしさわりがあるだろう。また管理委員長は何も行政的の責任は持たないので、そこから出すことも感心すべきことではないと思います。総理廳あたりに試驗を管理さして、そこからしかるべき委員長が出て、合格証書をやるというふうに案の御構想を練られていただくことがいいと思うのでございます。その点についても重ねてひとつ御説明を願いたいと思います。
#86
○岡咲政府委員 ただいま試驗証書の名義につきましてお答え申し上げましたのでありますが、法務総裁の名前による試驗証書ではなくて、この條文をしさいに檢討いたしますと、むしろ司法試驗管理委員長の名義による証書が発行せられて行くのではないかと解釈する方が適当ではないかと考えるのであります。その点まことに恐縮でございますが、訂正いたしたいと思います。それから小玉委員のお尋ねでございますが、やはり内閣における法務は、法務総裁が統轄いたしておりますので、今後試驗管理委員会をかりに内閣の大臣のもとに置くといたしますると、やはり内閣総理大臣よりも法務を統轄いたしまする法務総裁の所管にいたした方が適当かと考えております。
#87
○小玉委員 これは法務というよりも、むしろ純粹の行政事務だと思つております。以前も内閣で所管しておつた関係もありますし、法務と申しましても、多分に裁判事務に関係した部面が、試驗の本質において、また將來の発展においてもさように相なるわけでありますから、法務というよりもむしろ内閣の一行政事務というふうに、この本質を考えるのが適当ではないかと考えておるわけであります。ただそれだけ申し上げたいと思います。
 なお関連しまして、今度の司法試驗というものは從來の國家高等試驗とまつたく趣を異にして、從來は司法大臣のもとに裁判権も檢察権も属しておつた。その当時の試驗でありますと、司法省の所管でよろしかつた。また管理をどこに置くかという問題も解決しておつたのでありますが、今度はまつたく新たな構想になつてしまつたのであります。かような際に司法試驗の所管をどこにするかという点については、先ほど岡咲政府委員のお話では、これは最高裁判所の方からもいろいろ意見があるから、法務委員会その他國会の方で適当にお考えを願いたいというお話もありました。それにつきましては、外國の立法例、ことに英米の立法例はどういうふうに相なつておるか。もし御調査になつておりましたら承りたい。まだそれがありませんでしたら、將來その点を御調査の上お聞かせ願いたいと思います。
#88
○岡咲政府委員 小玉委員のお尋ねに対して重ねてお答え申し上げたいと思います。從前高等試驗を管理いたしておりましたのは、仰せのように内閣でございまするが、現実に委員長をいたしておりましたのは法制局長官でございまして、その法制局長官は現在、形をかえたと申しますか、むしろ法務総裁の所管に入りまして、法制局長官として法務総裁を補佐いたしておるわけでございまして、法務総裁は法務を統轄するという面と同時に法務に関する行政をつかさどつておりますので、仮に政府が試驗管理委員会を所轄いたしますると、やはり内閣総理大臣よりも法務総裁の方がより適当であると考えております。
 それから試驗の管理の関係が、外國ではどういうふうになつておるかというお尋ねでございまするが、御存じのように、アメリカあるいはイギリスにおきましては、完全な司法一元と申しますか、弁護士から裁判官及び檢察官が任命もしくは選挙されておるのが実情でございまして、弁護士会が、試驗あるいは裁判官、弁護士の秩序維持に関して非常に強い権限を持つておりますことは、御承知の通りでございます。アメリカにおきましては、裁判所の立場を尊重いたすと申しますか、弁護士は裁判所の一つのオフイサーと考えられておりますので、弁護士の現実の試驗は、私の見ましたところでは、弁護士会が管理いたしておるのが非常に多いように考えます。弁護士会で管理いたすと申しても、弁護士会がじかに管理いたしておりませんで、やはり一つのボードと申しますか、委員会を設けておりまして、そこで管理いたしているように承知いたしております。イギリスにおきましては、これは弁護士の教育なり試驗は、全部弁護士会が管理いたしておる次第でございます。將來法曹一元を徹底いたします建前をもし貫いて参りまするならば、先刻鍛冶委員が仰せになりましたように、日本におきましても弁護士の教育とその試驗、あるいはその管理、秩序の保持といつたようなものまでも、全部弁護士会が所轄いたすのが最も好ましいと考えます。そうしてむしろ弁護士会の中から選ばれ、衆目の一致する適任の人が檢察官になり、あるいは裁判官になるというふうな制度が実現されることが好ましいように考えております。個人のことを申して恐縮でございますが、なるべくそういう方向に制度を進めて参るように、ただちに研究をいたしたいと考えております。
#89
○小玉委員 この研修所をどこで管理するかという問題についても、これは裁判所並びに法務廳におかれても、將來は弁護士会が適当ではないかというように仰せられたように私は承つた。今外國の立法例を承りますと、多く司法試驗についても、すでに弁護士会が所管をなさつているということを伺いましたが、われわれはまつたく大陸法系を去つて、英米法系の基礎に立つて弁護、檢察、裁判全般をやらなければならぬ立場になつておるのでありますから、この際、弁護士法案もおそらく通過するという形勢に立至つておると思うのであります。その見通しのもとにそれとにらみ合せて司法試驗の管理という問題、また研修所をどこに管理せしむるかという問題も考えまして、結局法曹一元という大理想から、これは弁護士会で司法試驗の管理もし、なお研修生も弁護士会で管理するのだというふうに、この際法案を練り直すということは、法務廳あるいは裁判所等においてお考えはないかどうか。そういう点について重ねてお伺いしたいと思います。
#90
○岡咲政府委員 司法試驗の実施は、実は目前に迫つている次第でございまして、なるべく早い機会に、小玉委員の御提案のような方向に進みたいとは考えまするが、とりあえず本年度の試驗をとり行わなければなりませんし、受驗生もしばしば最高裁判所なりあるいは法務廳に、試驗の施行について問い合せて参つているような次第でございまして、とりあえずの措置といたしましても、このたびの試驗については何らかの措置を確定いたさなければなりませんので、政府といたしましては、なるべくこの原案で参りたいと思いますし、万やむを得なければ、最高裁判所の御希望のように、あるいは最高裁判所においてこの試驗管理委員会を所轄するというようなことにいたしましてもよろしゆうございますが、試驗実施の問題が差迫つております関係上、小玉委員の御提案のように切りかえてするということは、ちよつと困難かと思います。申し落しましたが、弁護士会が試驗を管理する、あるいはその委員会において管理をいたすというのがアメリカの実情でございまするが、裁判所みずからが試驗を管理するという例は、私の調べたところでは、きわめてまれではないかと考えております。
#91
○小玉委員 それでは本法案は、弁護士会で試驗の管理をし、また研修生も弁護士会でやるという理想途上における暫定的なものだということに了承いたしてよろしゆうございますか。
#92
○岡咲政府委員 將來改正弁護士法が実施せられまして、弁護士会の連合会が強力な機関になりましたならば、政府といたしましては、弁護士会が試驗を管理せられるという方向に進むことにつきましては、全然同感であります。
#93
○花村委員長 委員長より関連質問をいたしたいと思います。本制度の根本問題につきましては大いに研究すべきものがありまするので、今日はとりあえず本法案を基礎として政府委員に質問をいたしたいと思います。先ほど岡咲政府委員の本法案を出すに至りました根本の理由について、法務廳で扱う場合においては、その試驗の結果について國家が責任を負うのである。しかしながら最高裁判所においては責任を負わぬ、こういう御答弁でありましたが、試驗の結果について國家が責任を負うというようなことは、これは常識の上からいつても、また法律論の点から考えても考えられぬ。最高裁判所は何らの責任を負わぬというようなことはなかろうと思うのですが、國家でとる責任というのは一体どういう責任ですか。
#94
○岡咲政府委員 私は國家が責任を負うというふうなことは申し上げなかつたつもりでございまするが、あるいは言い間違いをしたかもしれません。内閣が行政権の行使として國会に対して責任を負うということを申し上げましたので、もしも言い方が悪くて、委員長の誤解を招いておりましたならば、もう一度訂正いたしまして、そこは明らかにいたしたいと思います。行政権の行使といたしまして内閣が國会に対して責任を負うのだ、むしろそういたした方が好ましいのではないか、やはり試驗も一つの廣い意味におきましては行政権に属すると考えられますので、これを無答責の事項にいたしますより、内閣の一員である法務総裁が責任を負う。結局においては、内閣全体が國会に対して連帶して責任を負うということにいたすのが好ましいではないかということを申し上げたのであります。最高裁判所の所管にいたしますと、最高裁判所は、裁判につきましてはもとより、司法行政につきましても、國会に対して責任を負うという関係には置かれておりませんので、最高裁判所がもしこの試驗を管理せられるならば、試驗管理委員会のこの試驗管理の実施そのほかにつきまして、結局最高裁判所は國会に対しては責任を負わないという関係に置かれることは、最高裁判所のためにも必ずしも好ましいことではない、最高裁判所は本來の裁判事務、それと深い関係のある司法行政事務に專念する方が、最高裁判所のために好ましいではないかという趣旨のことを申し上げたと思います。
#95
○内藤説明員 ただいま岡咲政府委員から、最高裁判所は國会に対して責任を負わないという仰せでございましたが、これはおそらく政府のような形においては責任を負わないという趣旨だと存じます。憲法におきましては、彈劾裁判所を國会に設けるという規定があります。最高裁判所がまつたく無答責だというような御表現でありましたけれども、それは政府のような形において責任を負わないという意味と考えるのでありまして、憲法は決して裁判所の責任を一切問わないという趣旨には規定していないと存じます。なお裁判所はあくまでも純司法機関であるべきだとお考えのようでございまするが、旧憲法におきます最高裁判所と、新憲法の裁判所とは憲法の現定上その性格が異なつておるのでありまして、御承知のように訴訟手続については、もちろん司法事務処理についても、あるいは内閣手続についても、弁護士に関しても規則を制定する権限を與えております。下級裁判所の裁判官の任免につきましては、その罷免の権限を最高裁判所が與えられております。新しい憲法のもとにおける裁判所の性格は、そういう旧憲法時代の裁判所とは著しく性格を異にしております。從つて彈劾の制度も憲法に規定した國民審査の制度で、そういう方面から当然規定されて行くものと存じます。
#96
○花村委員長 そうしますと、法務総裁が責任を負うのであるから、從つて政府が負うのである。本法案の試驗に関する責任は、法務総裁が負うことになる。從つて法務総裁が負うから、時の政府がその責任をすべて負うのである。こういうことにお聞きしていいのですか。
#97
○岡咲政府委員 そうです。
#98
○花村委員長 そうすると重ねてお尋ねしますが、試驗については、試驗そのもの自体の事項と、そうしてその試験を行う事務的な、すなわち試験を行うについて必要な予算を伴う事務的の事項、こう二つにわけられるのですが、その双方とも政府が責任を負う、こういうことになりますか。
#99
○岡咲政府委員 委員長の仰せのように、司法試驗を行うことに関しまする事務的な予算、あるいは人事と申しますか、そういう問題につきましては、もとより純粋の行政事務として法務総裁が最高の責任を負うわけでございます。
 次にこの試驗自体の管理につきましては、一應この管理委員会が全責任を負うわけでございまするが、これは運用の実際上、試驗管理委員会が独立して事務を行うのでありまして、もしその試驗の管理自体につきましても、何か非違があるとか、あるいは落度がありまして、行政の執行として責任を負わなければならないような事態が発生いたしますならば、それは法務総裁が責任を負わなければならないだろう。かように考えております。
#100
○花村委員長 そうすると試驗の管理というのは、要するに試驗を行うに必要なる事務的行為ということになろうと思いますが、試驗そのもの、あるいは試驗の課題が誤つておつたとか、この法律に規定してあらざる試驗科目にわたつたとか、試驗の採点について不当があつたとか、そういう試驗そのものについての責任も、やはり内閣が最終的には負うということになるのですか。
#101
○岡咲政府委員 司法試驗そのものは、この法案の十五條にございますように、試驗管理委員会の推薦に基きまして、法務総裁が司法試験考査委員を任命いたしまして、その司法試驗考査委員が司法試驗のことは行うわけでありまして、ただいまお尋ねのような試驗問題、あるいは法律で定めているわく外の試驗問題を出したといつたような問題、あるいはその試驗の採点につきまして、不公正な取扱いがあつたということにつきましては、司法試驗考査委員がまず責任を負うわけでございますが、この委員の任命は法務総裁がいたすのでございまするし、実際は試驗の公正のために、考査委員が独立して自己の良心に從つて正しく試驗を実施せられるわけでございますが、その結果において、もし不当なことがありますならば、やはり建前といたしましては、最終の責任者として法務総裁がその責めに任じなければならないであろうと考えております。
#102
○花村委員長 そうすると法務総裁がその責めに任ずるのは、そういう不当な考査委員を選んだという選任の責任になるわけですか。あるいは試驗そのものについての責任もあわせて負うというのですか。試驗そのものについては考査委員が責任を負うということで、その考査委員の選考については法務総裁が責任を負う。こういう二段の責任になるのであるか。あるいは試驗そのものについても、あるいは選考の当、不当についても一切の責任を法務総裁が負うというのですか。
#103
○岡咲政府委員 法制の建前といたしましては、試驗考査委員というものは、裁判官のごとく独立してその事務を行うのだというふうな建前になつておりませんが、実際は独立して事務を行うと考えまするので、第一次の責任は、不当な試驗をいたしました考査委員が負うのでございますが、その不当な考査委員の試驗執行自体については、やはり法務総裁は終局の責任者として、責任を負わなければならないのではないかと考えます。
#104
○花村委員長 そうすると、法務総裁に関する責任はよくわかりましたが、その法務総裁の責任は、内閣全員が負うということになるわけですか。政府全般が負うことになるわけですか。
#105
○岡咲政府委員 この点は憲法にも規定がございまするし、また内閣法にもたしかあると考えます。「内閣は、行政権の行使について、國会に対し連帶して責任を負う。」という規定が適用になるのではないかと考えます。
#106
○花村委員長 そうすると、さらにお尋ねしますが、最高裁判所がその試驗を実施するという場合に、その責任は試驗管理に関する行政的事務並びにそれに牽連する予算等に関する責任並びに先ほど申し上げたような試驗そのものに関する責任、こういう責任は何人も負うものがないわけですか。
#107
○岡咲政府委員 最高裁判所が試驗を所轄いたされることになりますと、内閣が國会に対して責任を負いまするような、そういう責任はもとより裁判所として負うことはできないと考えます。ただ事実問題といたしましては、たとえば予算につきましても、政府が予算を提出いたすわけでございまするけれども、裁判所は独自の予算要求を國会に対して御要求になることもできますので、その関係におきまして、最高裁判所は國会に説明員としてお出ましになりまして御説明になる、あるいは最高裁判所の行政なり、あるいは試驗の管理につきまして不適当なことがありましたならば、事実上國会からその点について説明をお求めになることもございましようし、その限度におきまして、最高裁判所が実際はこういう責任を負われるということもあることと考えまするが、法制の建前といたしまして、最高裁判所が國会に対して責任を負う、あるいは國民に対して法律上当然の責任を負われるというようなことはあり得ないのではないかと考えます。先ほど内藤説明員は、裁判所の行為は必ずしも無答責ではない、裁判官彈劾法もあつて彈劾せられることもあるという御説明でございまするが、裁判官彈劾法は、特に裁判官が職務上の義務に著しく違反した、あるいははなはだしくその職務を怠つた場合とか、あるいは職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたというふうに、ごく限定された場合に彈劾をお受けになるのでございまして、廣く行政権の行使自体について責任を負われるというふうなことは、裁判所に対してはあり得ないと、かように考えております。
#108
○花村委員長 そうしますると、さらにお尋ねしますが、最高裁判所の予算に関する責任はどうなりましようか。これもないのですが、あるいは責任があるのですか。
#109
○岡咲政府委員 裁判所予算につきましては、これは政府が予算案を提出いたします関係上、政府に責任があると申さなければならないかと考えます。今つまびらかにいたしておりませんが、大藏当局と裁判所との間におきまして、予算上もし意見の一致を見ないような場合には、この予算の案には裁判所の案を附記いたしまして、國会に提出されるようなことになつておつたかと思いまするが、それは裁判所の行政の独立を保障いたします意味において、裁判所に関することはなるべく裁判所の自立的な働きにまつ方が、司法権の独立を保障するためには好ましいという建前で、財政の上にもそういうふうな便宜の措置がとられているかと考えまするが、政府との間に意見の一致を見なかつた点につきまして、裁判所が責任をお負いになるかどうかという問題ですが、これはむしろ裁判所の責任ではありませんで、結局國会において裁判所の主張が正しいか、それとも政府提案の原案が正しいかということを御判断になりまして、これで御決定になればよろしいのではないかと思います。予算の面について裁判所が責任を國会に対して負われることはあり得ないと考えます。
#110
○花村委員長 御答弁がよくわかりませんが、少くとも最高裁判所の予算措置に対しましては、政府に責任ありと言われるのですか、ないと言われるのですか。國家予算を使うのですから、最高裁判所は議会へ予算案を出して、司法行政に関しまするすべての費用を要求して、その金を使つているのですが、この予算的の措置に対しても責任がないと言われるのですか、あるいはあると言われるのか、ありとすれば何人が責任を負うのですか。
#111
○岡咲政府委員 裁判所の予算につきましては、先ほど申しましたように、予算案は内閣がこれを國会に提出いたします関係上、その提出いたしました限度におきましては、内閣がもとより責任を負わなければならないと考えます。
#112
○花村委員長 そうしますと、裁判所の予算については内閣が責任を負う。それはもちろん内閣が負う意味でありましよう。そうすると、もし最高裁判所がこの法案のような試驗を実施するということに相なりまして、その試驗に要すと予算をもしとつたとしますならば、この試驗の管理に要するすべての費用は最高裁判所の経費の中に盛られることは当然です。そういうことになりますと、最高裁判所のその予算に関する責任、最高裁判所は予算を使つたことに対して責任というものはあるのですか、ないのですか、責任がある場合には何人に対してあるのか、政府に対してあるのか、議会に対してあるのか、國民に対してあるのか、その責任の対象は何人であるか、これをお尋ねするわけであります。
#113
○岡咲政府委員 國会において御決定を得ました予算の使途につきましては、もちろん最高裁判所は会計檢査院の檢査に服されるわけでございまして、もしその予算の使い方において不当なことがありますならば、もちろん責任を負われなければならないと思いますが、國会に対して裁判所が責任を負われるというふうなことはないのではないかと考えております。
#114
○花村委員長 それではどこで負われるのですか、責任を全然負わないのですか、不当な支出をしようが何をしようが、最高裁判所は治外法権で、どこにも責任を負わぬというのですか。
#115
○岡咲政府委員 どうも財政関係を十分研究いたしておりませんので、まことに不十分なお答えしかできないで恐縮でございまするが、会計檢査院の檢査に服するという点で、法律上の責任はあるかと思いますが、國会あるいは國民に対し、あるいは政府に対して、法律上直接の責任を負うということはないのではないかと考えます。やはり最高裁判所のそういう経費の基礎につきまして、もし不公正なことがありますならば、裁判官彈劾法とか、あるいは國民審査法によつて國民から指彈を受けるという以外には、直接法律上の責任は起きないのではないかと考えまするが、あまり予算関係について十分の研究をいたしておりませんので、本日はこの程度で御了承得たいと思います。
#116
○花村委員長 予算も決算も衆議院に出して、そしてその当否をきめているのですから、いかなる金をどういうぐあいに使おうとも、あるいは款項目を乱して使おうとも、何らの責任はないということはなかろうと思うが、どうも裁判所が無人の境を行くような、そんな大きな権限を持つておるものではない。國家機関の一つであり、しかも予算も法務廳から政府へ出して、政府から衆議院に出し、決算もまた政府から衆議院に出しているのじやないですか――それでは佐藤政府委員の意見を承りましよう。
#117
○佐藤(藤)政府委員 私も予算関係の責任、ことに法律上の責任が政治上の責任かということを明確に答弁できないのをはなはだ遺憾に存じますが、これまで私どもの考えておつたところによりますと、予算は最高裁判所が大藏省の手を経て、内閣の承認を得て國会に提出されるのでありまして、法務廳は全然関係はしておらないのであります。それでありますから予算提出についての責任は、政府が責任を負うのであつて、最高裁判所には何ら責任はないのではないかと思います。一旦國会において議決されたその予算の使途についての責任でありまするが、これは先ほど岡咲政府委員より申されたように、会計檢査院の檢査にも服しなければなりませんので、そういう点から、いかにも政府に対して最高裁判所が予算の使途に関する責任を負うのではないかというふうに考えられまするが、しからばどんな責任を負うかということになりますれば、私にはそこが明瞭でないのでありまして、結局法律上の責任はない、ただ政治上の責任を負うのであつて、その政治上の責任が、やがて國民審査あるいは彈劾裁判発動の一つの遠因になるというに過ぎないのではないかと考えております。
#118
○花村委員長 それは司法事務に関する関係においては、彈劾裁判所とかいうような関係が生じて來るのでしようが、予算的措置に関することは、これはまた彈劾裁判所とも何ら関係もないことなので、しかもその予算は議会に出して議決せられて、最高裁判所において支出し得るのである。しかもその支出に対しても衆議院において制約を加えることもできれば、あるいはこの予算を変更することもできる権限を持つており、しかもその使つた決算については、これまた議会に出て議会の協賛を経るということになつていることは、法務廳といささかもかわりがない。もし最高裁判所にその使途に関する責任なしとするならば、法務廳にもなしというりくつで行かなければならぬ。法務廳にあるとするならば、最高裁判所にもあらねばならぬと思うのでありますが、この点はなお一つ御研究を願いたいと思います。
 それではこの問題については、後に御研究の上で答弁をしていただくことにして、次の質問を一点だけいたしておきたいと思います。先ほど岡咲政府委員は、司法試驗と司法修習生とは別個の観念で扱つてもよろしい、こういう御説であつたのですが、もちろんこれは裁判所法も改正せられねばいけないでしようが、しかし裁判所法の十四條によりますると「(司法研修所)裁判官その他の裁判所の職員の研究及び修養並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱わせるため、最高裁判所に司法研修所を置く。」こういう規定がありまするし、さらにまた裁判所法の六十六條には、「(採用)司法修習生は、高等試驗司法科試驗に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。」こうある。その六十八條には「(罷免)最高裁判所は、司法修習生の行状がその品位を辱めるものと認めるときその他司法修習生について最高裁判所の定める事由があると認めるときは、その司法修習生を罷免することができる。」こうあるので、結局この司法修習生というのは、高等試驗を受けたものでなければいかぬという一連のつながりがあり、しかも高等試驗を受けて司法修習生になつた者の任免権は最高裁判所が持つている、こういうことになつておるのですから、これは深い牽運があるばかりではない。これは不分離の関係にあると申してもいいと思うのですが、これに対して岡咲政府委員からもう一應御説明を願いたい。
#119
○岡咲政府委員 司法試驗と司法修習生の採用とは深い関係にあるということ、言いかえれば、試驗に合格した者のうちから最高裁判所が司法修習生を命ぜられるということは、委員長の仰せの通りでございまするし、一旦司法修習生になれば、最高裁判所が管理しておる司法研修所において司法修習生の教育と申しますか、修習に関する事務を取扱わせる。そうして司法修習生の行状がはなはだしく品位をはずかしめるとか、あるいはそのほかの事由があります場合に、最高裁判所が司法修習生を罷免するということは、委員長の御指摘の通りでございますが、この司法試驗に合格した者が、ただちにそのまま最高裁判所の任命によつて司法修習生になるわけではございませんで、これは先ほどもたびたび申し上げましたように、あるいは健康の点とか、あるいはその人の人格の点とか、そのほか諸般の事情を審査して、將來裁判官、檢察官、弁護士となるのにふさわしいような資格のある者を選びまして、司法修習生に命ぜられるということになりますので、必ずしも試驗に合格することがただちに司法修習生の採用ということにはならないと考えます。從つて非常に深い関連はございますけれども、この司法試驗はあくまでも法律案としての学識と應用能力があるかどうかを檢定するということの試驗という性質は失わないのではなかと考えます。この試驗に合格いたしますと、その学識とか應用能力の点においては、將來裁判官あるいは檢察官あるいは弁護士というものになる一應の資格があると認められますけれども、また他の点から、必ずしも試驗合格者をただちに修習生には採用なさらないのであろうと考えますので、十分の関連はありますけれども、採用そのものと同一視していいというふうな関係にはないと考えております。
#120
○花村委員長 それは試驗が受からなかつたら入れないでしよう。受かつた者の中から入れるのでしようから、受かつたことが前提です。ことに今岡咲政府委員の説明によれば、最高裁判所で罷免権も持つており、また入所に対する拒否権も持つておるようにうかがわれるのですが、そういうことになれば、法務廳の方で試驗に合格して採用した者を、最高裁判所の方で入所を拒み得るというような関係にありますがゆえに、これは常識上から言うてはあり得ないが、りくつの上から言えば入れないでもいい。こういうことにもりましようから、これは最も深い関係がある。しかも法務廳において、たとえば五百人の合格者を出したという場合において、二百人しか收容ができぬという場合には、もちろん拒むこともできましようし、收容できなくなるというような観点から見て、これはやはり別個の機関によつて扱わしむることが便宜であるかどうであるか。あるいは同一人にやらせる方が便利であるかどうであるか、そういう便宜上の見地に立つて考えてみた場合に、どうお考えになりますか。
#121
○岡咲政府委員 その点につきましては先ほども御答弁申し上げたと存じますが、試驗管理委員会が試驗の事務を管理いたしますので、しかもその試驗管理委員会は法務総裁官房長と、最高裁判所事務総長、それから弁護士会の推薦された弁護士、この三人によつて委員会を構成いたすのでありまして、一方においては試驗の基準を嚴守しつつも、司法研修所における收容能力、あるいは裁判所、あるいは法務廳における要員を勘考いたしまして、合格者の範囲を決定いたされるのであろうと考えますので、実際の運用上において、委員長の御指摘のようにはなはだ食い違つたことが生ずることはないのではなかろうか、かように考えております。
#122
○花村委員長 まあないとは思いますが、しかしあり得ることも考えられるので、これはりくつでなくて、便宜上どう扱うのが便宜か、同じ人が試驗の方もやり、そうしてその試驗に合格した者を收容するのも同じ人でやる方がいいか、あるいは試驗の方は別にして、そういういろいろの問題が起きんとも限らない、起きる場合もあり得るということを考えて、別個の人にやらせる方が便宜であるか、そのどちらが便宜かという便宜論を、あなたの常識の上からお話し願えればいいと思います。
#123
○岡咲政府委員 ただその管理委員会を法務総裁の所轄のもとにおくか、あるいは最高裁判所に改めるかという問題だけでありまして、便宜の問題は、結局この管理委員会が試驗を管理いたすのですから、そう大して違いはないと思います。また便宜の問題から考えましても、最高裁判所が直接に試驗を管理せられるよりも――かりに最高裁判所が所轄をされるといたしましても、やはり管理委員会を設けて、その管理委員会に試驗を管理せしめた方が便宜ではないか。最高裁判所におかれましても、委員会を設ける点については異論はないように承つておりまして、ただその委員会を法務総裁のもとにおくか、それとも最高裁判所のもとにおくかという問題だけが、意見の一致を見ない点でございますので、その便宜問題については委員長の御心配のような点はないわけでございます。
#124
○花村委員長 私の見ようでは、この研修所の方面から見て、研修所へ入れて養成する、その人の試驗を研修所の方の事務を扱つておられる筋の人がやられる方が便宜なのか、あるいはそれを切り離して両方でやるのが便宜なのか、こういうことをお聞きしている。それだけお答えになればいいのです。
#125
○佐藤(藤)政府委員 委員長のおつしやるように、便宜論からだけ申しますれば、司法研修所は裁判所でやつておるから、裁判所ですべて試驗をやつた方が便利だ、こういう結論におそらくなるのだろうと思いますが、それではどうも私は適正を期しがたいと思うのであります。便宜は便宜であつても、試驗は適正に行わなければなりませんので、そこで行政の管理と、試驗を行う機関を全然わけて考えまして、そうして実際にたとえば答案を見て点数をつけるのは、方々の学者なり、あるいは経驗者なりにおまかせしなければならないのですが、その行政管理は裁判所と法務廳と弁護士会とその三者が集まつた管理委員会の組織で行政管理をする。その委員会をどこの所轄に置くかということだけがわかれ目なのでありまして、この制度のもとにおきましては、その所轄を裁判所にしようと、あるいは法務廳にしようと、委員長の御心配になつておるような便宜論は結局同一なのでありまして、もしさらに便利なようにしようとすれば、委員会の制度を設けないで、むしろ裁判所の手だけで試験を行うことが、一番便利かもいれませんが、それでは学力の試驗をするのに、行政管理をする人がそのまま試驗を行うということは、どうも適正じやないのじやないかという考え方から、試験の管理委員会で、しかもそれが三者集まつて委員会で管理をする、こういう組織にいたしたのであります。おそらくこの管理委員会を設けて試験を管理するという構想については、裁判所の方も何ら異存はないのでありまして、ただ管理委員会をどこの所轄に置くかということだけが違うのであります。どこの所轄に置いても管理委員会の運営は同じことだ。三者からなつておりますし、司法研修所の現在の運営状態はどうであるか、あるいは本年の收容能力はどのくらいであるかということは、裁判所を代表して來られる事務総長の方から意見を反映しましようし、また弁護士会の方から來られる委員の方では、弁護士は今多すぎるからなるべく少くしたいとか、あるいはもつと多くしたいというような希望がそこに反映するだろうと思うのであります。御心配のような便宜論は、どつちの所轄にしても同じじやないかと私は考えております。
#126
○花村委員長 私の質問は終りました。ほかに御質問はありませんか。
#127
○田嶋委員 私の質問は、きようただちに御答弁を求めるというのではないのでありますが、今の委員長の質問に関連いたしまして……。当委員会といたしましても、この試驗そのものは、委員長の申されておりますように、便宜的にこれを考えますと、裁判所に属しました方がいいように考えられるのであります。そこで裁判所に御研究を願いたいと思うのでありますが、内閣なり裁判所なりが一つの行為をする場合に、憲法の規定に從つて行動しなければならぬことは明らかであります。して見れば憲法に内閣の職責、司法の職責として、はつきりきめられておる。裁判所はその試験を行うのに、憲法の何の規定にこれがあてはまるものとして行わんとしておるものでありますか。この点裁判所に御研究願つて、この次に御答弁願いたいと思います。
#128
○上村委員 ちよつとここで念のためにお聞きしておきますが、女も男もこの司法試驗を受けることはできないわけですね。この法文を見ると、その点がはつきりしていない。むろん憲法を見ると、女も受けられるんでしようが、第一條からずつと見ましても、その性別の点はないから当然のこととして書かなかつたのでしようが、そこに何かありましようか。
#129
○岡咲政府委員 もちろん女の人も試驗を受けられます。この試驗法の建前は、受驗資格につきましては何らの制限を設けてありません。
#130
○上村委員 そこでちよつと質問と希望がありますが、司法民主化におきましてはやはり婦人の裁判官、檢事――弁護士はもちろん必要だと思いますが、今のこういう一本建の試驗が出まして、はたして女が裁判官、檢察官の方に食い込んで行くだけの実績があがるかどうかということを非常に疑問に思うのですが、男女の司法官試驗というようなものを――これはずつと女が発展して來れば別ですが、今のところこの試驗一本建で女を司法部に、少くとも裁判官、檢察官に入れるということになると、一本の試驗では困難ではないか。それは司法試驗ということは一つでいいですが、女子の司法試驗とかあるいは研修所のですね、これが一本建になつているから、わけて試驗を行うというようなお考えはないでしよか。御案内の通り、議会においても女の代議士が出まして、堂々と女の立場からいろいろなことを論じ、また男のやることでも、女子の代議士がやつている。ひとり日本の裁判所はいわゆる女禁制のような形になつている。女子はひとしく役人になれるということになつておつても、この試驗ではなかなか司法官に入つて行かない。そういう点で國家の根本的な司法民主化、裁判の民主化、檢察の民主化ということに対して、女子を入れる必要があるとすれば、この試驗制度の改正の際に十分考慮を賜わるべきではないかと私は思う。その点一本建にしてしまつて、それは平等だから、そこで女も受ければいいではないかと言えばそれまでですが、そういう女子の点に対して特別の考慮を拂う必要があると思うが、このままで行くのかどうか。
#131
○岡咲政府委員 司法の方面につきましても、婦人の方が大いに進出していただきたい希望を持つております点につきましては、上村委員と全然同感でございますか、そのために女子につきましては別の試驗制度をとつた方が好ましいとは実は考えておりません。性別による差別を認めませんで、やはり一樣の試驗を與えますことが、かえつて婦人の地位を向上させるゆえんではないかと考えております。
#132
○上村委員 別の試驗を行えと言うのじやない。同じこの司法試驗でいいんですが、わけて募集するというか、施行するというような方法をしないと、いかに試驗の上において女は平等だし、女が欲しいといつても、実際面において女が司法部に入つて來ないということです。それをどういうふうに考えているか。この際女の司法試驗というものをわけて行つたら、女を相当数とることができる。これでは女は入つて來いというだけであつて、実際は女を閉鎖しておる。だからして日本の裁判所において、いつになつたら女の裁判官や檢察官が堂々と法廷に立つことがあるか。すでにソビエトなんか御案内の通り、三千人くらいの女の檢察官がおります。そうしてしかも檢察事務でもうまくやつておるというようなことがある。婦人を司法部へ入れるということが、一抹の情味を裁判あるいは檢察の上において與え得る。これだけでは入つて來ないのです。それをどうするかということでありまして、試驗を別にしろというのではなくて、入りやすいような採用方法、試驗を考えたらどうかということなんです。
#133
○岡咲政府委員 上村委員の御意見はごもつともと思いまするが、やはり試驗は女だけの試驗をやるというようなことは好ましくないのではないかと思います。やはり婦人といえども現に法律学を修めまして、修習生になり、近く判事補あるいは檢事になり人もおりますし、現に高等試驗に合格しておる人も数名おりますので、將來は婦人に対する法学教授が進んで参りますと、非常に多勢の婦人が弁護士、檢察官あるいは裁判官になり得るだろうと思います。そのために特に別の試驗をするならばより入りやすいであろうというふうなことは、私としてはちよつと考えられないのではないかと考えております。
#134
○上村委員 別の試驗というのではないのです。女の試驗を施行するのを希望するというのです。
#135
○花村委員長 石川金次郎君より発言を求めておりますから、これを許します。
#136
○石川委員 実は法務廳の予算と裁判所の予算につきまして内容を詳細に承り、法務廳の仕事、裁判所の仕事がどのように行けるのかということを見て知つておきたいと思いますので、委員長が法務廳と裁判所の予算を説明する会をお催しくださることをおとりはからい願いたいと思いますので、この希望を申し上げます。
#137
○花村委員長 石川君の御発言、了承いたしました。
    ―――――――――――――
#138
○花村委員長 この際ちよつとお諮りいたしますが、法案が山積いたしておりますので、簡單な議案より逐次あげに行きたいと存じます。つきましては下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について、他に異質疑がなければ討論採決に入りたいと存じますがいかがいたしましようか。
#139
○梨木委員 私先ほど簡易裁判所の設置の問題について、予算が一銭もないのに、地元の寄付によつて建設するというようなことは今後やめてもらいたいということを希望したのですが、ここで討論採決に入るに先だちまして、今後最高裁判所は、簡易裁判所その他の裁判所の設置にあたりまして、地元の寄付によつて建設するというような意見が今後もあるのかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
#140
○花村委員長 討論採決について今お諮りしておるのですが討論採決に入ることに反対だとおつしやるのですか。質問ですか。
#141
○梨木委員 討論採決に入る前に、一應その点を伺つておいて、私の方は討論したいと思うのです。そういう趣旨なんです。
#142
○花村委員長 御異議ありませんか。――御異議ありませんか。――御異議なければさようにはからいたいと思います。討論はいかがいたしましようか。
#143
○梨木委員 今の点について最高裁判所の御答弁を伺いたいと思います。これは非常に重要なことでありまして、今全國的に檢察廳、裁判所が、特に八王子なんかはやみ屋さんから寄付をもらつて檢察廳を建てておる。こういうことを今後行われたんでは裁判の公正は保たれません。この点は私は非常に重要だと思うので、この際御答弁を伺いたいと思います。
#144
○花村委員長 ちよつと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#145
○花村委員長 それでは速記をはじめてください。
    〔「討論省略」と呼ぶ者あり〕
#146
○花村委員長 それでは討論を省略いたしまして、これより本案について採決に入ります。本案に賛成の方の起立をお願いいたします。
    〔賛成者起立〕
#147
○花村委員長 起立総員、よつて本案は原案の通り可決いたしました。
 なお報告書の作成については委員長に御一任願います。
 本日はこの程度で散会いたします。
    午後六時五十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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