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1949/05/11 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第18号
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1949/05/11 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第18号

#1
第005回国会 法務委員会 第18号
昭和二十四年五月十一日(水曜日)
    午後零時十四分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 北川 定務君 理事 高木 松吉君
   理事 石川金次郎君 理事 梨木作次郎君
      押谷 富三君    鹿野 彦吉君
      佐瀬 昌三君    田嶋 好文君
      松木  弘君    眞鍋  勝君
      猪俣 浩三君    田万 廣文君
      大西 正男君    三木 武夫君
 出席國務大臣
        國 務 大 臣
        (法務総裁)  殖田 俊吉君
 出席政府委員
        法務政務次官  山口 好一君
        法務廳事務官
        (調査意見第一
        局長)     岡咲 恕一君
        法務廳事務官
        (人権擁護局
        長)      大室 亮一君
        法務廳事務官
        (少年矯正局
        長)      齋藤 三郎君
 委員外の出席者
        法務廳事務官  関   之君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月十日
 司法檢察官の不当取扱に対する眞相究明の請願
 (上村進君紹介)(第一五五八号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
 戸籍事務費全額國庫負担の陳情書(栃木縣足利
 郡菱村長板倉儀太郎)(第三八四号)
 同外十一件(島根縣美濃郡匹見村長齋藤千吉外
 十一名)(第三九二号)
 同外十四件(青森縣上北郡三本木町長本多浩治
 外十四名)(第三九六号)
 同外三十七件(青森縣南津軽郡十二里村長黒瀧
 貞治郎外三十七名)(第四四一号)
を本委員会に送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出第六
 七号)
 少年院法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 六八号)
 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一
 一四号)
 人権擁護委員法案(内閣提出第一二三号)
 犯罪者予防更生法案(内閣提出第一二四号)
 犯罪者予防更生法施行法案(内閣提出第一二五
 号)
    ―――――――――――――
    〔筆 記〕
#2
○花村委員長 これより会議を開きます。
 本日の議題に入ります前に、関係方面との交渉に関しまして関係方面より指示がありましたので、御参考までに申上げておきます。その談話の要点を次に朗読いたします。
   五月四日の談話の要点
 國会に議案が提出される場合は、政府案及び議員案について、あらかじめ関係方面の承認を受けているが、その後各院の審議中に國会側から関係方面の意見を徴したい場合、ときによつてはGHQの各部局の方から委員長または議員に会つて意見を述べたい場合が起りうる。
 かかる必要が起つたときは、今後は國会の議案審議の自主性を確保し、外部よりの拘束を排除するために、GHQの各部局において意見の申入れをしたい場合は、GSを通じて法制局長の出頭を求めてその部局から説明し、法制的立場から意見があればその意見を十分に述べ、法制局としての意見をまとめるなり、その部局の意見と合致しない場合は、委員会に双方の意見を報告するようにして、議員はこれらの意見を参考にして委員会独自の観点から決定すること。
 從つて今後GHQの各部局から委員長や議員に直接面接を申込まれても、すぐにこれに應ずることなく、法制局長に話してもらうようにし、GSを通じて出頭せよと言われない限り行かないようにして欲しい。その連絡はGSと渉外課とが当る。
 これは法制局として非常な重荷となるが、國会保護のためによいことであると思う。
 國会側の方から各部局の意見を徴したければ、委員長または議員より面接を申込む場合でも、個人的の用件で面接を希望する場合でも、渉外課を通じてGSに連絡すれば、從來通り取次をする。
 これを要するに、GHQ側から法案に対し意見のある場合の國会との接触は、法制局を通じてすることにし、法制局長は純法制的独自の立場から委員会に意見を報告し、委員の質疑等にも答え、すべて記録にこれを残し、委員会はその権能に從つて独自に決定することのできるようにいたしたい。
 この場合、注意すべきことは、法制局はどこまでも法律的の立場から意見を立てるべきで、政治的及び政策的の面にはタツチすべきものではないことは当然のことである。從つて各党派から提出されるであらう各種の修正案については、法制局は法律的にこれを檢討することはあるが、政策に関與しないから、成文化したものについては、從來通り関係方面の承認を経て、正式に委員会等に附せられるべきである。
 その間成文化する前にGHQと折衝する必要が生ずれば、從來通りGSを通じてもらいたい。
 以上國会尊重、國会自主の立場から、必要と信ずるので、その旨各委員長及び議院運営委員長によく報告するように希望する。
 以上がその要点であります。
    ―――――――――――――
#3
○花村委員長 それではこれより本日の日程に入りますが、会期も切迫いたしておりますので、質疑の終了いたしました議案より順次上げて行きたいと存じます。
 まず少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案に対する御質疑はありませんか――御質疑がなければ本案に対する質疑は打切り、討論、採決を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○花村委員長 御異議なしと認め、これより討論採決をいたします。――討論はいかがいたしましようか。
    〔「討論省略」と呼ぶ者あり〕
#5
○花村委員長 それでは討論を省略して採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#6
○花村委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。
 なお本案に対する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#7
○花村委員長 次に少年院法の一部を改正する法律案を議題といたします。御質疑はありませんか、――御質疑がなければこれより討論採決をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○花村委員長 御異議なしと認め、これより討論に入ります。修正案が提出せられておりますので、北川委員よりこれを朗読願います。
#9
○北川委員 本修正案は全委員の共同提案にかかるものであります。これを次に朗読いたします。
   少年院法の一部を改正する法律案の一部修正案
  少年院法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第二十一條の次に二項を加える。
  2 特別少年院の施設の收容能力が十分でないため、特に必要があるときは、昭和二十六年三月三十一日までの間、少年を收容する監獄の特に区別した場所を特別少年院に充てることができる。
  3 女子の医療少年院の施設が十分でないため、特に必要があるときは、前項の日までの間、男子の医療少年院を特に区分して男女の別に從つて少年を收容することができる。
#10
○花村委員長 ただいま北川定務君朗読の各派共同提案の修正案に対してまず採決し、次に修正部分を除いた原案について採決いたしたいと存じます。
 各派共同提案の修正案に賛成の方の御起立を求めます。
    〔総員起立〕
#11
○花村委員長 起立総員。よつて本修正案は可決せられました。
 次に修正部分を除いた他の原案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#12
○花村委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて修正議決いたしました。
 なお本案に対する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#13
○花村委員長 次に人権擁護委員法案を議題といたします。
#14
○梨木委員 最近地方公共團体が條例制定権に基いて、行列、示威行進を制限する條例を各地に続々制定されておるのでありますが、これは憲法第二十八條及び同二十一條に違反するものではありませんか。
#15
○殖田國務大臣 地方公共團体が條例を制定することができるということは、憲法第九十四條によつて認められております。その條例の内容が憲法に違反するかいなかの意見を立てることはできますが、これが無効であるとか、またこれを禁止する権能は行政府は有しておらないので、今のところ、これを制定するものの自制にまつよりほかにないと存じます。もちろん裁判所において法の適否を爭うことはできるのでありますが、なお地方公共團体が制定する條例がはなはだしく憲法に違反すると考えられる場合には、政府としても勧告をなし得るでありましようが、現今の場合、裁判所でなすよりほかに方法はないと存じます。
#16
○梨木委員 ただいま新潟初め、各地の條例ははなはだしく憲法に違反するとは考えませんか。
#17
○殖田國務大臣 多少行過ぎではないかと思つておりますが、これは私個人の見解であつて、政府としてはこれに対して対策を講ずる道はございません。
#18
○梨木委員 それでは多少行過ぎであるというのは、法務総裁殖田氏の御意見であると承つておきませう。そこで憲法九十九條では、公務員はこの憲法を擁護する義務があるのであり、かかる條例が出たら、すべからく廃止を勧告をなすべきではないでしようか。
#19
○殖田國務大臣 法務総裁が直接地方公共團体に勧告することはできません。まず法務総裁は政府に対して勧告して、政府から地方公共團体に勧告するのであります。しかしそれはあくまでも勧告であつて、ただちにこれを無効とすることはできません。違憲合憲を定めるのはやはり裁判所でありまして、現在政府はさような手続をとるつもりは持つておりません。
#20
○梨木委員 それでは最後に行列、示威行進を制限する條例が全國にどの程度あるか、その資料を要求して私の質問を終ります。
    〔以下速記〕
#21
○花村委員長 次に民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 御質疑はありませんか。――御質疑がなければ本案の討論採決を行いたいと存じますが、御異議ありませんか。――御異議がなければ討論に入ります。梨木君。
#22
○梨木委員 民法三百六條に規定しておる雇人の給料についての先取得権につきまして、雇人の給料を規定しただけで、退職手当をこの中に含んでおるかどうかが明確を欠いておるのでありまして、特に最近工場閉鎖に伴う首切りが非常に頻発している情勢にかんがみまして、労働者の生活権を確保するという本改正案の根本精神から申しましても、この退職手当について先取得権の保護を明確に與えるようにするために、政府の方からの説明を伺いましたが、雇人の給料についての中に退職手当が含まれているかどうかがかなり明確を欠いているのでありますから、これを明確にするために、次のように修正するように意見を提出したいと思います。
   民法等の一部を改正する法律案の修正案
  民法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第三百六條の改正規定中「第三号を第二号とする。」を「第三号を第二号とし、同号を「三雇人ノ給料及ヒ退職手当」に改める。」に改める。
  第三百八條及び第三百九條の改正規定を次のように改める。
  第三百九條を次のように改める。
  第三百九條 削除。
#23
○花村委員長 梨木作次郎君提出の修正案について採決いたします。梨木君提案のごとく修正するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#24
○花村委員長 起立少数、よつて梨木君提案の修正案は否決せられました。押谷富三君。
#25
○押谷委員 私は民主自由党を代表いたしまして、一部修正の意見を提出いたします。まず修正する部分を申し上げます。
  民法等の一部を改正する法律案中第二條民事訴訟法第五百七十條を改正する規定の次に次の第六百十八條を改正する規定を加える。
  第六百十八條第二項中「一ヶ年間ニ受ク可キ総額ノ四分ノ三ヲ超過スル部分ニ限リ」を「其支拂期ニ受クヘキ金額ノ四分ノ一ニ限リ」に改める。この修正理由は、民事訴訟法の六百十八條第二項にあります。「一ヶ年間ニ受ク可キ総額ノ四分ノ三ヲ超過スル部分ニ限リ」とあります。この一年間はこの條文の修正前の「收入カ一ヶ年間に三百円ヲ超過スルトキハ其超過額ノ半額ヲ差押フルコトヲ得」とありますこの三百円にかかつておる一箇年でありまして、この三百円が当今の経済生活にそぐわない関係から、この制限を撤廃されたのであります。三百円の制限が撤廃されれば、当然一箇年間に三百円とある一箇年でありますから、これを当時抹殺さるべき一箇年であつたと思うのでありますが、この一箇年が残つてただいま申し上げておるような原文になつておるのであります。そこでこの一箇年をその支拂期と改める方が妥当であり、公正であると信ずるのであります。また総額が四分の三を超過する部分という、四分の三を超過するとあるのは、すなわち四分の一に当るのでありますから、まわりくどい書き方をしないで、四分の一と端的に改めた方がいいと信ずるのであります。從つてただいま申し上げたような修正意見をここに提出いたします。
#26
○花村委員長 次に押谷富三君提出にかかる修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#27
○花村委員長 起立多数。よつて本修正案は多数をもつて可決せられました。
 次に修正部分を除いた原案に賛成の方の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#28
○花村委員長 起立多数。よつて本案は押谷富三君提出の修正案の通り修正議決いたしました。
 なお本案に対する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願います。
    ―――――――――――――
#29
○花村委員長 次に人権擁護委員法を議題に供します。本案に対し、梨木作次郎君より質問の通告がありますからこれを許します。梨木作次郎君。
#30
○梨木委員 第十一條の第三号に「人権侵犯事件につき、その救済のため、調査及び情報の收集をなし、法務府人権擁護局への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講ずること。」こうなつておりますが、もう少し明確に、たとえば勧告の下へ告訴だとか告発だとか、こういうこともするのだぞという規定を明確に置いたらどうかと思うのですが、なぜそういうぐあいに明確に規定されなかつたのか、こういう点を伺いたいのであります。
#31
○大室政府委員 実際においては告発もいたしておるのでありまして、この程度で十分と思いましたので、この程度にいたしたのであります。
#32
○梨木委員 それでは告訴、告発も権限としてできる趣旨なのでありますか。
#33
○大室政府委員 告発はできるわけであります。
#34
○梨木委員 告訴はなぜできないのですか。
#35
○大室政府委員 告訴は被害者でないとできませんから……。
#36
○梨木委員 被害者として告訴する場合もあり得るでしよう、全然皆無とは言えないでしよう。
#37
○関説明員 被害者の場合は、刑事訴訟法によりましてできるわけでありまして、特にここに規定する必要はなかろうかと思つて省略したのであります。勧告等適切な措置という内容を考えてみますと、人権侵犯権に関する措置は、いろいろの部面の手当があるのでありまして、勧告等という一つの等で代表しまして、その他告発とかあるいはその人の場合についてどうするとか、個々にもつと生活の実際に即したいろいろな措置が考えられるのであります。そこで勧告等適切というような文字で総括的にここに表現したわけであります。
#38
○梨木委員 その次に伺いたいのですが、第七條の第三号に「前号に該当する者を除く外、人権の侵犯に当る犯罪行為のあつた者」とありますが、むしろこれは犯罪だけでなくて、犯罪まで至らない人権侵犯をやつたような人たちをも排除するということが私は必要ではないかと思うのでありますが、犯罪行為に限つたのはどういうわけでありましようか。
#39
○関説明員 たいへん妥当な御意見でありまして、私どもも立案に当つては、このほかにいろいろの事例を考えてみたのであります。あるいは官吏において懲戒された者はどうとか、いろいろな事例を考えてみたのでありますが、さて廣く多くの人を求めるということになると、認定その他の問題によつて、はなはだ困難の問題が生ずるというようないろいろの兼ね合いから見まして、実はこの三号も、こうは書きましたが、認定その他が非常に問題があるわけであります。しかし人権擁護委員という職務にかんがみまして、やはりこれだけのものは最小限度排除しなければならないだろうという意味において、これだけにとどめた次第であります。
#40
○梨木委員 それでは実際の場合には、そういう点も考慮して運営されるというわけでありますか。
#41
○関説明員 もちろんでございます。それはこの第六條第三項をごらんくださればわかるのでありまして、人権擁護委員は市町村長の推薦によるのでありまするが、その市町村長の推薦は、人格見識高く、廣く社会の実情に通じ、人権擁護について理解のある社会事業家云々という規定がありまして、この積極的な適格條項については、さらに具体的な解釈をいたしまして、ただいまお尋ねのごときものは人権擁護委員に推薦しないようにしたい、かように考えておる次第であります。
#42
○梨木委員 第八條で、給與を支給しないとしてあるのでありますが、給與を支給しないということになりますと、名誉職的なものになりまして、実際は有名無実になる。むしろ熱心な人は、何かボス的なことに利用するというような危險性を持つし、実際人権擁護の目的を達成するためには、これは有給にして、その職務に專念できるようにしなければならぬと私は思うのでありますが、どうしてこういうように名誉職にされたのか伺いたいと思います。
#43
○関説明員 お尋ねの点は、実は私どももこの立案に当りまして最も悩んだ点でございまして、給與を支給するという一つの考え方もあるわけでありますが、そういたしますと、それは一つには國家公務員法の第二條の「政府は、一般職又は特別職以外の勤務者を置いてその勤務に対し俸給、給料その他の給與を支拂つてはならない。」という規定があるので、それとの関係を一体どうするかというような問題もありますし、そうして現在人権擁護委員が全國百五十人あるのでございますので、その方々にも一應の御意見をお伺いいたしたのでありますが、この仕事はそう給與的に考えずに、われわれは自発的に行つてみたいという意見もありまして、給與のことはそれほど考えなくてもよろしかろうというような皆さんの御意見もございまして、法律問題やそれらの御意見を尊重いたしまして、一應給與は支給しないというような規定をいたしたのであります。
#44
○梨木委員 そういうことになると、これは給與をもらわなくても仕事をしようという熱意のある人はけつこうでありますが、そういう熱意があつても、生活に困つている人は人権擁護委員の活動ができないということになるのでありますが、それはその程度にいたしまして、第八條第二項の「予算の範囲内で職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。」こうなつておりますが、これはどの程度の予算になつておるのでありましようか。この費用の弁償に充てる予算金額は幾らでありますか。
#45
○関説明員 これは昨日たしかお配りいたしました資料の中にございますが、今年度の予算は大体百万円となつております。
#46
○梨木委員 百万円で大体何件ぐらい扱えるでしようか。一件当りどの程度の費用弁償を考えておりますか。
#47
○関説明員 事件は、あるいは一千円かかるものもありましようし、あるいは一万円かかるものもありましようが、大体の見込みといたしましては、一件当りの実費としては大体千円から二千円前後というふうに予定しておるわけであります。
#48
○梨木委員 人権擁護委員の選任の方法でありますが、この第六條のような選任の方法では、この前も私が御質問したのでありますが、法務総裁が委嘱する。その委嘱の方法は、市町村長が推薦する、あるいは人権擁護について理解のある社会事業家、教育者、報道新聞の業務に携わる者等及び弁護士会、その他婦人、労働者、青年等の團体の構成員の中から意見を聞いて、さらに定数の倍数を推薦するというような、推薦の形を非常に民主的な推薦の方法をとつてはおりますが、非常に弱い形になつておるのであります。こういうことでなくて、もつと端的に実際は公選にしたらよろしいと思うのでありますが、なぜ公選にされなかつたのかということが一つと、もし公選ということがいろいろ費用の関係等でできないといたしましても、市町村を單位にして、そこの労働者とか、農民とか、婦人、青年等の團体から推薦させる。それも倍数でなくて定員を推薦する、こういう形をなぜおとりにならないのか、これを伺いたい。
#49
○関説明員 この擁護委員の選任の方法につきましては、これもこの法案の立案に当りまして私どもが一番悩んだ点であるわけであります。公選のことももちろん考えてみましたし、昨日來梨木委員からのお話の組合等から直接推薦するという方式、それらのこともいろいろ考えてみたわけであります。ところが今もつてこれを市町村の住民からの公選にするということは、この委員の性格から見まして今すぐそういうことを行うことも不可能だと実は存じたのであります。実はこの委員に似る制度といたしましては、民生委員と司法保護委員と二つあるわけであります。民生委員の選任方法は、これよりよほど複雜な、選挙を通じた方法になつておりまして、そういうようなことは、人権擁護委員を選出し運用する上から見て、きわめて事務が複雜多端になりまして、実際の事務の運用の上において困るではないか。いかにして民主的な方法をとるかということと、事務をいかにしてスムースに運用するかというこの二点の兼ね合いの問題を考慮いたしまして、一應かような選任方法をとつた次第でございます。
#50
○梨木委員 附則の第三項に「この法律施行の際、現に人権擁護委員令による人権擁護委員の職にある者は、この法律の規定により人権擁護委員を委嘱されたものとみなし、」とありますが、從來の人権擁護委員令による人権擁護委員をすぐ本法による委員に委嘱されたものとみなすというような形は、私は本法は非常に不満でありますが、一應まだ推薦の形をとつておるのでありまして、從來のものはそうではなかつたのではないかと思うのであります。そこでこれを一應全部御破算にして解職してしまつて、新しく本法による推薦の形式をとつたらどうかと思うのですが、その点はなぜそういう方式をとられなかつたのか、伺いたい。
#51
○関説明員 お尋ねの点につきましては一應私どももそういう案も考えてみたわけであります。ところが実際に現在人権擁護委員令によりまして委員にお願いした方は、昨年の十一月、十二月ごろから発令いたしまして、今年の三月ごろにやつと百五十人前後発令済みとなりましたような次第であります。そのことと、そうして各委員の方々の現在の御推薦は、府縣知事とその地の弁護士会長との御相談の結果選んでいただいた、きわめて適任者の方々ばかりでありまして、これを発令したばかりですぐ全部御破算にするということも、私どもとしてその方々が、弁護士会長と府縣知事の方々の御協議による、きわめて適任者であるという折紙つきの方々ばかりでありますから、それをすぐ御破算にするということも忍びがたいのでありまして、それでこの附則によりまして、その方々にはこの法律の施行の日からなお人権擁護委員になつていただくのが妥当である、かように考えましてこのようなものを設けた次第であります。
#52
○梨木委員 もう一点第四條の第二項に「人権擁護委員の定数は、その土地の人口、経済、文化その他の事情を考慮し、法務総裁が定める。」となつておりますが、これはやはり法律できめた方がよいと思うのであります。総裁が專断的にきめるというようなやり方はきわめて非民主的だと思うのでありますが、これはいかがでしようか。
#53
○関説明員 お尋ねのような御意見も十分に考えられることと思うのであります。しかしながら全体の定数が二万人となつておりまして、裁判所法その他のようなふうに別表で出すことも、法律の立案その他におきまして、非常にまずいことでありますし、この程度のことならば、最高の二万人という外わくをこの法律においてきめていただいて、その範囲内において、個々の町村に幾人置くかというような点は法務総裁におまかせ願つてよいのではないか、かように考えまして、かような規定にいたした次第でございます。
#54
○花村委員長 大西正男君。
#55
○大西(正)委員 委員の欠格條項につきまして簡單にお伺いしたいのですが、もつとも私前会欠席しておりましたので、すでにこの問題が質問されたかもしれませんが簡單に伺います。第七條によりますと、これこれの者は委員となることができない、それから第二項において前項各号の一に該当すべき者は当然失職する、こういうことに相なつております。第一項の一号、二号は明白に言えることだと思いますが、三号の犯罪行為があつた者とか、あるいは四号のこれこれの團体を結成し、あるいはこれに加入した者ということの認定はどういうところでいたすのでありますか。
#56
○関説明員 この認定が、お尋ねのように実はまことに重大な問題であると私も考えておるのであります。この点について実はかように思つておるわけであります。まず委員の方御自身の判断が一つあるだろうと思つております。そうしてこの委嘱事務を行う法務廳の当局においても、一つの判断があるだろうと思います。そこでもつてこういう行為があつたんだ、たとえば三号の人権の侵犯の犯罪行為のあつた者という認定は、私どもとしては檢察廳に照会をするとかいうようなことをして、できるだけ調査をいたしまして一應認定する、そうしてこの條項に該当するのであなたは当然失職である、実はかようになるのではないかと考えておるのであります。
#57
○大西(正)委員 四号の方はどういうふうになりますか。
#58
○関説明員 四号の方もおそらく同じ問題になるだろうと思います。
#59
○松木委員 第七條第三号はただいまの説明によりますと、犯罪行為のあつた者というのは、私は刑事裁判所で判決を受けた者である、こう考えておつたのでありますが、そうすると裁判所の判決を受けないで犯罪行為とみなされる者ということになるのではないかと考えるのでありますが、そうなりますか。
#60
○関説明員 お尋ねの通りであります。これは犯罪行為がありまして、「禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまで」これで排除されるのであります。第三号は、これ以外のたとえば罰金に処せられた者、あるいは犯罪行為があつたが起訴されなかつた者、こういう者も含まれるのであります。この結果私ども認定問題ではなはだ困難な問題が生ずるというふうに考えたのでありますが、いろいろの方面の御意見もありまして、やはり人権擁護委員というその擁護という制度にかんがみて、処罰されなくても人権侵犯的な犯罪を犯した者は、委員になつておる者ならば当然その職を退くという方がこういう制度にふさわしくはないかと思つて入れたのであります。認定につきましては愼重を期しまして、軽々にこれに当ることはいたさない覚悟であります。
#61
○大西(正)委員 今の欠格條項に関連して、たとえば第三号の人権侵犯の犯罪行為のあつた者、もちろんこれは裁判所で処罰されれば当然でありますが、今の檢察廳なんかで、たとえば起訴猶予ということになりましても、犯罪行為のあつた者に該当すると思いますが、第二項の当然失職するという時期は、犯罪行為のあつたときですか、それとも檢察廳においてそういう処分があつたとき、どういうふうになるのでありますか。
#62
○関説明員 やはり犯罪行為がありまして、それがあつたと認定されるときというように考えておるのであります。
#63
○大西(正)委員 次に第四号の点をもう一ぺんお伺いいたしますが、この認定をいたしますのはどういう手続によつて、またどういう國家機関がこれに対する処置をとるのですか。
#64
○関説明員 この條項は團体等規制令第一條第七号におおむね該当するのではないかと思います。そうすれば團体等規正令の措置といたしまして、かりにこういう團体ができますならば解散命令が出る、そうするとそこに明確な一線が画されますから、その後においてその解散命令に基きましてこちらでは判断することになる、かようなことになるだろうと思います。
#65
○松木委員 第三号を今御説明のように解釈すれば、第二号は必要ないように考えます。犯罪行為のあつたと認められる者、こういうことになれば、罰金刑に処せられた者はむろん入るわけです。罰金刑に処せられなくとも、犯罪行為があつたと認められる者であれば失格するならば、第二号は必要ないように考えられるのですが、そこはどうですか。
#66
○関説明員 第二号の方は、これはその犯罪の種類を問わないわけであります。いかなる犯罪の種類においても、こういうような刑を受けた者はそれは問題にならぬ。三号の方は人権侵犯に関する事件というものでありますから御了承を願います。
#67
○梨木委員 第十四條では人権擁護委員は法務総裁の指揮監督を受けるとなつておりますが、大体法務総裁というものは檢察廳の総元締めなので、本來はこれはわれわれから言うと適任じやないと思うのであります。これは全國弁護士連合会だとか、こういうところで管理させるようなことにする。大体において檢察廳の総元締めであり、ここが実際は人権蹂躙をやつておるのですから、その総元締めに人権擁護委員の指揮監督をやらせるというのは、これはきわめて妥当を欠いておると思いますがどうですか。
#68
○関説明員 お尋ねの点は、國家としての人権擁護事務のあり方については、非常に貴重な御意見と思うのであります。しかし現在の國家の官廳機構の組織として、人権擁護局が法務府の中の一局としてありまして、法務総裁の管理のもとにその人権擁護という事務を行つておるわけであります。その現在の法制のもとにおいては、やはり法務総裁の指揮監督を受けるというこの規定は、その規定上当然に出て來るかと思います。なお弁護士会というような御意見でありますが、この人権擁護事務は実際の仕事をやつてみまして、廣く弁護士会の御協力を得なかつたならば円満に遂行することは困難であります。そこでこの法案の中においても、第六條に人権擁護委員などの推薦に当りまして、当該府縣の弁護士会の御意見を伺うというようにいたしまして、弁護士会の御協力、これに対する積極的な参加をお願いした次第であります。
#69
○花村委員長 ほかに御質疑はありませんか。――御質疑がなければ本案の討論採決をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#70
○花村委員長 御異議なしと認めます。ではこれより討論に移ります。高木松吉君。
#71
○高木(松)委員 私は民主自由党を代表して、原案が最も妥当なるものと信じ、これに賛成するものであります。
#72
○花村委員長 大西正男君。
#73
○大西(正)委員 私は民主党を代表いたしまして賛成の意を表します。本案はこの國家の組織の改変にあたりまして、最も時宜に適した法律案と考えます。さような意味から賛成の意を表する次第であります。
#74
○花村委員長 梨木作次郎君。
#75
○梨木委員 私は共産党を代表いたしまして、本案に対する意見を申し上げたいと思います。本案は、その目標とするところは人権の擁護と、それから人権思想の高揚ということを目的としているという意味合いにおきましては、本案の精神にはしごく賛成なのであります。しかしその内容を見ますと、その目的を達成するに非常に不十分なところがあるのであります。そこで私は本案には賛成でありますが、但し近い將來において、次のように本案が改正せられることを希望いたします。次の機会に改正せられる資料といたしまして、私の党の意見を申し述べたいと思うのであります。
 その第一点は、人権擁護委員は名誉職になつているのでございます。しかもその権限が非常におざなりでありまして、その明確性を欠いておる。これでは人権擁護の実際上の効用を発揮することが、きわめて不徹底に終るだろうということを考えるのでありまして、この点をまず明確にしなければならぬ。それから名誉職的でなくて、人権擁護委員に対しては有給として、職務に專念できるようにしなければならぬということ。
 それからこの人権擁護委員の任命に当りましては、まず二万人ということを限定しておりますが、各地域におけるところの定数は法務総裁に一任しているのであります。こういうようにまず定員の決定、それから委嘱の問題を、大体において人権を蹂躙するような総元締めの法務廳総裁に全部これをまかしておくというようなことになつたのでは、人権擁護の徹底を期し得ないという点におきまして、まず定員は法律できめたいと思います。
 それから人権擁護委員はできるならばその任命は公選にする。それができないといたしますならば、人権蹂躙の被害者の大多数は労働者や農民や中小商工業者、こういう人たちなのであります。かりに人権蹂躙の被害者に金持があつたといたしましても、その人たちは十分に弁護士、その他その人たちの社会的地位、政治的な地位によりまして、その保護が現在の法制下においては達成できるのであります。從いまして本案の人権蹂躙の保護を最も切実に要請せられているものは、今申し上げましたような労働者、農民、中小商工業者なのでありますから、こういう團体、つまり市町村を單位として、労働者、農民、婦人青年等の團体から推薦するということにしたい。しかもその推薦の数は倍数を推薦するのではなくて、定員を推薦する。そういうように改めてもらいたいと思うのであります。それから第七條の人権の侵犯に当る行為をなした者とありますが、これは單に犯罪行為だけでなくて、人権の侵犯に関する行為をなした者も、すべて排除するという規定にすること。第四号はもちろん必要でないのでありますから、削除する。それから附則にありますところの、第二十條の第三項の人権擁護委員会による現在の人権擁護委員を、この法律の施行とともに、本法律によつて委嘱されたものとみなすというような規定、こういう規定もこれは非常に任命のやり方が天くだり的であるということに対しまして、不満なのであります。大体以上申し上げました点が本案に対する私たちの修正の意見なのでありますが、これは特に修正案として出しませんが、近い將來においてわれわれの希望するような方向に修正せられることを希望いたしまして、本案に賛成する次第であります。
#76
○花村委員長 これにて討論は終局いたしました。これより採決いたします。
 本案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#77
○花村委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。なお本案に対する委員会報告書は委員長に御一任願います。
 午前はこの程度にて休憩いたし、午後一時半より再開いたしたいと存じますが、速記の関係がありまするので、定刻に御参集を願いたいと思います。
    午後零時五十七分休憩
     ━━━━◇━━━━━
    午後二時六分開議
#78
○花村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 犯罪者予防更生法案、犯罪者予防更生法施行法案の二案を一括議題といたします。御質疑はありませんか。
#79
○梨木委員 この前、犯罪者予防更生法案と、刑法の一部を改正する法律案と、刑事訴訟法の一部を改正する法律案、この三つは不可分に結びついておるので、一括して審議するということになつておつたと思うのであります。ところで刑法の二十五條の二、つまり執行猶予を言い渡す場合に、保護観察に付することができるという規定に改正し、この保護観察されたものは、犯罪者予防更正法案に定めてある保護観察に付される、こういうことになるのでありますが、執行猶予を言い渡す場合に、保護観察に付することによりまして、実際はこの規定を見ますと、保護観察に付する必要のあるときにのみこういうような処分がなされるように思われますが、しかしこういう規定ができると、執行猶予を言い渡すときには、おおむね例外が原則的にすべて保護観察に付するようなことに実際上なると思うのであります。そういうことになると非常に問題が重要になつて來るのでありまして、この点については相当司法に関係している人々の間にも異論があるようでありますから、この前も懇談会の席上におきまして、この点についての可否について公聽会を開くようにということの御意見もあつたのであります。私も非常に問題は重要でありますから、公聽会等を開く必要があると思うのでありますが、その後刑法と刑事訴訟法の改正の分は切り離して、犯罪者予防更生法だけを審議しようというようなこともあつたと思うのであります。ですから、これは一体一括しておやりになるおつもりですか。それならば公聽会を開くようにしてもらいたいと思う。でありますから、この点について一括審議をどうしても要求されるのか、それともこの分を切り離して、そしてこの執行猶予を言い渡す場合の規定に関する犯罪者予防更生法の分を、提案者において進んで削除をするという見解をお持ちなのかどうか、こういう点を伺いたいのであります。
#80
○齋藤(三)政府委員 刑法の一部を改正する法律案、刑事訴訟法の一部を改正する法律案は犯罪者予防更生法案と密接な関係はございます。しかしながら絶対にこれを切り離したならば、犯罪者予防更生法が成立しないかと申しますと、さようなことはございません。犯罪者予防更生法は、ごらんになりましてもおわかりの通りに、執行猶予で保護観察に付せられた者以外にも、すでに本年一月一日から家庭裁判所が発足いたしまして、家庭裁判所から観察にまわされた者、及び全國の少年院、さらに全國の多数の成人刑務所、少年刑務所から仮出獄を許される者を保護観察することになつておりまするので、この原案がそのまま通りまして、かりに刑法の一部を改正する法律案が成立しないといたしましても、たださような方向からお客さんが來ないということになるだけで、形だけできて実際はその部分は動かないということになりまして、体裁は惡うございますが、必ずしも犯罪者予防更生法がそれで運営できないということはないと存じます。
 なおこの執行猶予の問題でございまするが、現在の建前では、十八歳未満の少年が裁判所において執行猶予に付せられた場合には、当然に法定保護観察にまわされることに相なつておるのであります。これは少年がおとなのごとく思慮分別が十分でないということの特殊性からさようなことになつておると思うので、この執行猶予に対し、保護観察に付するということについての御審議の際も、その点をひとつ十分御留意いただきたいと存じておるのであります。從いまして一括してやられるかどうかということは、さような事情を十分御了察の上、お運びを願いたいと存じております。
#81
○花村委員長 それではちよつと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#82
○花村委員長 速記を始めてください。梨木作次郎君。
#83
○梨木委員 第三十四條で「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと。」こういうように「犯罪性のある者」と抽象的に書いてありますが、これをひとつ明確にしてもらいたい。素行不良というのはどの程度のことを言われるのですか。これを伺いたいと思います。
#84
○齋藤(三)政府委員 この條文は、要するに保護観察に付せられている者が生れかわるの目的を達成するために必要な事項を守らせるという趣旨でございまして、平たく申し上げますと、善良な平和な市民としての生活を送るように條件をきめる、そういう條件でありまして、「犯罪性のある者又は素行不良の者」というのを常識條理で解釈して、かような者とつき合つておればまた犯罪を犯すおそれがある人を心配する。かようなものを指しておるのでありまして、常識をもつて御解釈を願うほかないのでありまして、いわゆる札つきの者が該当するのじやないかと思います。
#85
○梨木委員 そうしますと、選挙違反も犯罪であります。それから民主主義的な諸運動、具体的には労働運動だとか、あるいは農民運動だとかいうような活動をしたことを原因として処罰されたような場合、それから一つの政治的な信念に基いて行つた行動が処罰されたような場合には、これはいわゆる治安維持法があつた場合に思想犯とか、確信犯とか言われるものがありましたが、それと類似した一つの思想、政治信念に基く行動を原因として処罰されたような場合の者までも「犯罪性のある者」というように規定されるのでありましようか。それを伺いたい。
#86
○齋藤(三)政府委員 これはまつたく根本の考え方が、現在のような犯罪が多い情勢に対應して、犯罪を少くして行こう、社会の治安を守り、また犯罪に陷つて行く者を防ごう、こういうふうなまつたく保護愛の精神から出ておるものでありまして、この條件に違背したからというて、形式的にただちに取消すというものではございません。むしろ現在取消した方が、將來近くまた大きな犯罪を犯して、また重い刑罰を受けるよりもその方が本人のためになり、また社会のためにもなるという場合に、取消すことができる一つの理由としてここにあげたわけであります。さようなわけでありますので、ただいまいろいろな事例をおあげになりましたのですが、もちろん正しい労働組合運動というものは憲法でも認めておるのでありまして、さようなものは該当しないかと考えております。この法律が何か政治的な意図があるやにお考えになるのかもしれませんが、私どもはまつたくさようなことを考えておらないのでありまして、取消しになりましても、保護観察の期間は、三十三條の二項に明記してあります通りに、裁判所の保護観察の期間は、裁判所の言い渡した期間を越えてあとまで及ぶものではないのでありまして、さような何か不当な意図をもつてするというふうには絶対に運用されないものと考えております。
#87
○梨木委員 今の御答弁で、私はつきり理解できないのでありますが、労働運動の指導者が、たまたま労働運動の活動中に刑罰法規に触れたという場合、そういう場合にその人を犯罪性があるとし、こういう人との交際をやつちやいけないということを、この條文は意味しておるのでありましようか、これを聞きたいのであります。
#88
○齋藤(三)政府委員 たまたま犯罪を犯した、本來犯罪をしないような人がたまたまやつたという場合には、もちろん犯罪性がある人というふうには考えておらないのでありまして、だれでも善玉惡玉ということはあるのでありますから、犯罪性があるというのはいわゆる札つき、あの男とつき合つておつたならば、また犯罪を犯すだろうというようなことが世間一般の常識から是認されるような人、こういうふうに考えておる次第であります。
#89
○梨木委員 これはどうでありましようか。破廉恥罪だけについて適用して、この條文の運用が從來の思想犯に関する保護観察的な方向に逸脱することを防止する意味合いにおきまして、政治的な犯罪を除外するというぐあいに明記された方がよいと思いますが、その点についてどうお考えでありますか。
#90
○齋藤(三)政府委員 破廉恥罪以外の人であつても、破廉恥以外の罪によつて刑務所に不幸にして入つた人も、この仮出獄の恩典に浴せしめたい、かように考えますので、やはりこの除外令を設けるということは考えておらない次第であります。
#91
○梨木委員 ちよつとそこのところを……。犯罪性のある者あるいは素行不良の者と交際しちやいけないということが、遵守事項として指定されておりますね。でありますから今あなたの御答弁では、そういう政治犯についても仮出獄の制度が適用になることは当然でありますが、その場合にその人が、現在もこういう労働運動をやつておつて、かつて一度か二度その労働運動を原因として処罰されたような人と交際してはいけないというようになつて來ると、労働運動や農民運動や、その他の民主的な諸運動をこの規定によつて彈圧することになるのです。これが私は重要だと思うのです。そういうところまで一々保護委員が、ああいう者とは労働運動の指導者だから交際してはいけないと言つて、從來特高警察がやつておつたと同じようなことをこれによつてやることになる。私はそれを心配するものでありますが、これを明確に、この際そういうものは除外するのだ、政治的な犯罪は除外するのだということを明らかにする、政治的な信念、あるいは思想を原因として処罰されたような場合は、これを除外するのだというぐあいに明記しない限りは、これは從來の思想犯保護観察と同じような規定を復活することになると私は思います。この点どうですか。
#92
○齋藤(三)政府委員 犯罪性というのは、性という字が書いてある通りに、一つの人間の性質を言うてあるのでありまして、常習的にさような犯罪を犯すというふうに解釈されると思うのであります。梨木委員のお話も、そういう考え方もあると存じますけれども、さようにここをしぼりますと、結局仮出獄制度全体の間口がやはりそれに対應して狹くなることになりますので、正しい労働運動、組合運動に從事しておるものが必ず犯罪性があるかどうかということは、当然法律上考えられないことでありまして、またさようなことは、立案にあたりましても一度も考えたことはなかつたのでありまして、何か政治的な意図をもつてこれを運用しようというふうなことは、立案の過程においても、四年越しこれをいたしておりますが、一度も考えたことはないのであります。廣く全体の犯罪をなくする、いかなる因由によりましても、犯罪はない方がよいのでありまして、犯罪のないように、また再犯のないように社会を守り、個人を保護する、こういう精神でありますので、政治犯人というような政治的な行動から因由した犯罪を拔くということにいたしますと、結局この制度全体がさような犯罪については適用されないということになりますので、御説もさることながら、除外するという考えはないのであります。
#93
○梨木委員 どうも私納得がいかないのでありますが、この仮出獄のようなものの適用は、これは政治犯についても当然適用してもらわなければ困るのですが、政治犯の人が仮出獄を許されますと、そういう場合に、そのときにつけられる條件というのは、つまり遵守事項というのがありまして、犯罪性のある者や、素行不良の者と交際してはならないということを遵守事項として規定しておるわけであります。その場合に労働組合の一組合員が仮出獄を許された。そして労働組合の指導者と交際した。この人はかつて一度か二度刑務所に労働運動のために入つたことがあるというようなわけで、こういう人と交際してはいけないというようなことを遵守事項として規定されたのでは、これは実際には労働運動を抑圧するようなことになる、私はそれを聞いておるのです。だから犯罪性のある者、または素行不良の者と交際してはならない、これは括弧して、政治的な犯罪は除くというようなことを規定しない限りは、これは思想並びに民主的な労働運動、政治的な活動までも抑圧することになつて、非常に重要な問題だと思う。それをお聞きしているのです。
#94
○齋藤(三)政府委員 正しい意味での労働運動、組合運動は幾らやつても犯罪性のあるものと認定されないと考えるので、その点梨木委員の考えと食い違いがあつて、どうも隔靴掻痒の感を持つておるのでありますが、決してそういう彈圧とかいうようなことは毛頭考えておりませんので、その点にまた根本的に見方の相違というか、考え方が違つているところがあると思いますが……。
#95
○花村委員長 質問を繰返さないようにお願いいたします。
#96
○梨木委員 それではもう一点でその分については打切ります。正しい労働運動だとおつしやるんだけれども、もちろんあなたのおつしやる正しい労働運動と、私たちの考えている正しい労働運動の限界は違うかもしれませんが、本人は正しい労働運動だと思つてやつておつたものが、たまたま当局によつてそれは正しくないと來た場合に、そういう人たちもこれは犯罪性があるということで、この規定で交際しちやいかぬということになれば、実際労働運動ができなくなる、そういうことを言つておるわけですが、まあこれはこの程度にしておきます。
 その次に伺いますが、これは技術的なことなのでありますが、三十三條の第二項で「前項の規定は、」としてずつと終りの方に「刑の終期の経過後まで及ぶものと解してはならない。」とえらいまわりくどく書いておるのですが、これは刑の終期までとしていいように思うのです。刑の終期の経過後までというぐあいにいたしますと、経過した後までもこれができるようにも思われるのですが、どうしてこういうまわりくどい表現をされたのですか。経過までというと、何か意味が違うのでありましようか。
#97
○齋藤(三)政府委員 これは刑の終期が終つた後までという意味でありまして、結局懲役三年なら懲役三年、それが二年で仮出獄になれば、あとの一年間だけ保護観察をする。結局中で勤めた間、外で保護観察のもとにあつた期間を通じて、それが刑期以上に及ぶことは絶対にないということをはつきり強く規定した、ちようどろうそくのしんよりみたいなのですが、折衝研究の結果、その点は誤解があつてはいけないというので、非常に嚴格に書いたつもりでおります。
#98
○梨木委員 その次の第三項で「第一項第一号に掲げる者の保護観察の期間は、本人が二十歳に達するまでとする。但し、本人が二十歳に達するまでに二年に満たない場合には、その者の保護観察の期間は、二年とする。」これは一体どういう意味なのですか。ちよつと私わかりにくいのですが……。
#99
○齋藤(三)政府委員 第一項というのは、少年が犯罪を犯して家庭裁判所に参りまして、家庭裁判所が取調べの後、一種の宣告猶予制度にあたると思うのでありますが、地方少年保護委員会の観察に付するという決定をいたしますると、少年保護委員会の保護観察が開始されるわけであります。その期間はいつまでかというと、これは少年院法と非常に調和をとつたのでありまするが、少年院に送致すると家庭裁判所が決定いたしますると、少年は二十歳まで少年院長のめがねによつて、少年院に收容して教育をすることに相なつておるのであります。その点は刑罰とはまつたく趣を異にいたしまして、刑罰では罪に対する贖罪というか、價値判断から刑期をきめるのでありまするが、少年に対する保護処分はまつたく教育であります。一種の精神的な治療であります。從いまして最初から治療の期間を予測して確定して入れるということは、はなはだ條理に合わないのでありまして、一日も早く直して一日も早く親元や社会に返そうというので、期限はきめてないのであります。しかしながら大体常識上二十歳になつたならば一應社会に出すということを最高限と少年院法がきめておるのであります。それと保護観察の期間は歩調を一にいたしまして、本人が二十歳に達するまでと一應して、ただ十九歳何箇月という場合に保護観察に來た場合には、本人が完全に社会に復帰する更正の実をあげるためには、やはり最高限二年くらいの期間はやれることにしておいて、第四項においてその趣旨をはつきりいたしました。しかしその保護観察はあくまでも本人のためのものである。從いましてその必要がなくなつた場合には、何どきでも停止したり解除することができることにいたした次第であります。
#100
○松木委員 ちよつと第三十三條の第三号に「仮出獄を許されている者」となつておりますが、仮出獄と言うと非常に範囲が廣いのであつて、その身分、地位によつては非常にその人の名誉上かえつて弊害を生ずるようなおそれはないか。その点はどうでしようか。
#101
○齋藤(三)政府委員 仮出獄はあらゆる罰について認められているのでありまして、ただ、いついかなる場合に出すか、また仮出獄を許すか許さないかということは、本人の家庭環境なり、本人の内在的な心理的な條件なり、そういうものを十分に調査いたしまして、本人がほんとうに社会に完全に復帰するために、出すのがよいのか、いつ出すのがよいのかということを十分に調べまして、そうして本法ではなお地方の委員会がそれを決定するのでありますが、委員自体が直接本人と会つて、十分事情を本人からも聞いて、そうして一應その観察所の方へ本人の家庭の状況なり、近隣の状況なりを十分調査いたしておきまして、そうして本人にも家庭の状況をよく知らせて、そうして本人が早く社会に対して更正をしようという氣持を十分起させて、そうしてその一番よい時期を選んで決定をするということになつておりますので、運用については十分本法の目的を達成するようにやる考えでございます。
#102
○松木委員 ただいまのお答ですと、そこに裁量の余地のあるような答弁ですけれども、この條項を見ますと、保護観察に付するとなつておつて、絶対性の規定と解釈される。その点はどうですか。
#103
○齋藤(三)政府委員 仮出獄を許可するかどうかはまつたく裁量でございますが、仮出獄は当然にこの保護観察というものを予定いたしまして、そうして当然に保護観察に付する、こういう建前になつておるのであります。これは現行法でもそうでありますが、ただ仮出獄を許して、そうして保護観察に付するということは、これはやり方が惡ければ、あるいはそこにまずい結果が起ることも考えられますが、仮出獄というものと保護観察というものを同じ機関がそういうふうにやるということが、本人の更生、社会の犯罪からの防衞上最も有効な方法であるということを考えまして、この案ができておる次第であります。
#104
○松木委員 御意見はよくわかるのでありまして、私の問わんと欲する点は、そういう廣い意味で保護観察に付するという絶対的の規定がいいか惡いかというところにあるのであります。これは質問しても結局議論に終るかもしれない。私はそういう廣い意味の保護観察の制度は、むしろある意味において弊害があるのではないか、こう考えるので、質問いたしたのですが、議論になりますから、質問はこれで打切ります。
#105
○齋藤(三)政府委員 現在の制度では、仮出獄を許されますと、おとなについては警察官が監督するということになつておりまして、これはどうも一般に弊害が多いということが通説になつておる次第でありまして、今度はその方面での特別な社会事業家というものがこの保護観察に当るわけでありまして、しかも保護観察は決して機械的なものでなくして、個々の具体的のケースに十分合うように、強弱、場合により、やり方についても十分そこにいろいろ研究をし、もつと具体的に合うようなやり方をやつて行こう、こういう次第でありまして、保護観察と言いましても、やり方はいろいろくふうしてなさるべきでありまして、保護観察に付しておるということを看板にするとか、あるいはそれを世間にわかるようにするなどということは、保護観察のやり方としてはきわめてまずいやり方であると存じます。
#106
○梨木委員 第六十條に「地方少年委員会及び地方成人委員会は、第四十條第二項の規定により支拂つた費用を、期限を指定して、本人又はその扶養義務者から徴收しなければならない。」ということになつておりますが、これは國家として当然こういう人たちに対して保護をする義務を負つておるのだろうと思うのでありますが、それなのに、本人あるいはその扶養義務者から費用を徴收するというのは、これは憲法の規定から言つても、ちよつと條文を指摘できませんが、相当問題があるのではないかと思いますが、その点どうですか。
#107
○齋藤(三)政府委員 この費用は、六十條の規定にも書いてあります通り、第四十條第二項の規定でありまして、特別に國家が、その宿泊の費用とか、そういうものを出してやるとか、医療の手当をしてやるというような場合に相当の費用がかかるわけでありまして、本人並びにその扶養義務者が負担することができるという場合には負担するということが、本人にみずから助けるという精神を喚起する意味合いにおいても適当ではないかと存じまして、かような規定にいたした次第であります。
#108
○梨木委員 憲法二十五條の「國は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない。」こういう規定から申しましても、こういう場合には國家として費用を負担するというのが当然だろうと思うのでありますが、これは憲法二十五條の規定と抵触しませんか。私は抵触すると思うのですが、いかがでしようか。
#109
○齋藤(三)政府委員 第三十四條の第一項の、保護観察は、保護観察に付されている者を指導監督し、及びその本人に本來みずから助けるの責任あることを認めしめてこれを援護するという規定がございまして、その具体的な案として六十條の規定があります。憲法には違反しないものと考えております。
#110
○梨木委員 しかしながらこの四十條では、國家が当然なさなければならない社会施設、その社会施設の援護を受けたその援護の費用を本人に負担せしめようというのでありましよう。これは明らかに國家としては、こういう社会保障はしなければならない義務を負つておる。そういう社会施設で援護を受けたその費用を弁償させるというのではありませんか。
#111
○齋藤(三)政府委員 六十條には四十條第二項、こういうふうに書いてございまして、社会施設がその規則なりその責任でやつた場合の援護というものは含まれておりません。その前項の規定によつて應急の救護が受けられないで、委員会が予算の範囲内で援護したという場合についての規定であります。
#112
○梨木委員 それではこの地方少年委員会やまた地方成人委員会の救済予算の範囲内で支拂つたものを、また返還させるということでありますか。
#113
○齋藤(三)政府委員 その通りであります。
#114
○梨木委員 それではやはり本來ならば社会施設で援護を受けなければならぬところが、たまたまその援護を受けられなかつたので、地方少年委員会や地方成人委員会が救護を行つた。これは当然行わなければならない社会施設がその義務を履行し得なかつた場合に、たまたま地方少年委員会や地方成人委員会が費用を拂つたというので、当然國家の義務である。だからこういうものをさらに本人から出させるということは、私は憲法の條項に違反しておると思いますが、それでも違反しないとあなたはお考えですか。
#115
○齋藤(三)政府委員 社会事業の福祉施設でまかなえないという場合がいろいろあると思います。その場合に委員会が予算の範囲内で支拂うのでありまして、今日までの研究では、憲法には抵触しないものと考えて提案いたしておる次第であります。
#116
○梨木委員 それからその次の第四十一條に「地方少年委員会及び地方成人委員会は、いつでも、保護観察に付されている者を呼び出し、質問することができる。」これは出頭を命じ、また尋問するということにもなりはしないかと思うのでありますが、いつでも呼び出し、質問することができる。と「質問」という言葉を使つてありますが、実際は尋問的なことになるかもしれぬ。そこでこれは基本的な人権に対する制限になると私は思うのでありますがいかがですか。
#117
○齋藤(三)政府委員 四十一條では「いつでも」と書いてありますが、もちろん正当なる理由があつてでない場合には、出頭させることができないことは当然と考えております。しかもこれを強制力をもつてやるということではありません。憲法の問題はないと考えておる次第でございます。
#118
○梨木委員 その次の四十一條の第二項にも「必要な調査又は質問をさせることができる。」となつておりますが、これはもう少し何か基本的な人権が侵害されないような規定を設けたらよいと思うのですが、そういう規定を設ける必要をお認めになりませんか。
#119
○齋藤(三)政府委員 この法律全体が先ほど來申し上げます通り、まつたく人道主義的な愛情を根幹としておりますので、もちろん運用についてもさような方向に行かなければならないと確信いたしておりますので、運用につきましては、十分実際にその趣旨を徹底さしてやつて行きたいと思つておるのであります。法文の形の上でさような事柄をことさらにここだけに入れますと、書いてないところはそうでないというような誤解を生ずることも考えられます。運用については万全を期したいと考えます。
#120
○梨木委員 それから第四條の「中央委員会は、委員五人で組織する。」となつております。この委員はさらに第五條第三号で「中央委員会の委員は、その中の三人以上が、同一政党に属する者となることとなつてはならない。」つまりこの中央委員会が一党一派に偏しないことを保障するような規定になつておるのでありますが、御承知のようにこの中央委員会は地方委員会を管理するわけでありますから、非常に重要な任務を持つておるわけであります。これがもし政党勢力によつて左右されるということになつたら、司法の公正というものはめちやくちやになるのであります。從いましてこの委員にはできるだけ多くの現存しておる政党が、機会均等の立場において参加できるような措置をしなければならないと思うのであります。そうした場合に委員五人ということは、これは数が少な過ぎると思います。從前は、犯罪者予防更生法という法案の前提になつておるだろうと思いますが、それでは九人か十一人になつていたと思いますが、本案では五人になつております。でありますからこれは数が多いほどよろしいと思う。なぜ五人にしたのか。同じように地方委員については三人になつておるのでありますが、下へ行けば行くほど数が少くなつたのでは、ますます各政党がこれに参加する機会が少くなる、こういう点についての御意見を伺いたいと思います。
#121
○齋藤(三)政府委員 本法案は非常に長い年月研究せられまして、その途中においてはいろいろな考えが去來いたしまして、構成もいろいろかわつたのであります。当初は内閣総理大臣を委員長とし、関係各省、それに民間の方がお入りになりまして、九人という案のときもあつたのでありますが、その当時の考えは、この委員会が廣く一般の犯罪防止をやろうということを主眼に考えておりましたので、その場合には各方面の方を煩わさなければならないということであつたのであります。その後研究の結果、やはり犯罪の予防ということになりますと、ひとりこの委員会でもつぱらやるということよりは、第一には警察、あるいは裁判所、その他の各種の行政が、一面においてはいわゆる犯罪の予防ということに関係を持つておるのであります。それをこの委員会が統括してやるのはいささか時期尚早であろうという考えになりまして、これは犯罪の予防も一つの仕事とはいたしておりますが、主としては犯罪者の更生をねらいといたしまして、この法案が組立てられたのであります。さような関係で考えて参りますと、多い方がなるほどいろいろな関係のことがわかつてよいのでありますが、また事務の進行という点から考えますと、あまりに多くの人を煩わすことが不適当である。さらにまた今回の経済九原則の関係、予算上の制約もございまして、この法案においては五人とし、さらに暫定的には今年度限り三人で委員会を運営するということにいたしてあるわけであります。
#122
○梨木委員 この第五條の第二項に、また例によつて「日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体に加入している者は、中央委員会の委員となることができない。」という欠格條項を規定しておるのでありますが、これは何べんも聞いたから繰返しませんが、念のために、この中には日本共産党並びにこれを支持する團体が含まれるかどうか、これを聞いておきます。
#123
○齋藤(三)政府委員 先ほど法務総裁からお答えになつた通りであります。その通りに考えております。
#124
○梨木委員 そういたしますと、第五條第二項のような規定を設けるいかなる理由があるか。これは團体等規正令で禁止されている。現在こういう團体はあるのですか、それを聞きたい。
#125
○齋藤(三)政府委員 ただいま私は存じません。そういう團体があるということを知らないのでありまするが、國家公務員法にも規定があります。その関係があるので入れたわけであります。
#126
○梨木委員 現在はあるということを知らないとおつしやるのですな。そうしますれば現在こういうものがないのに、將來こういうものができて來るということを予想されてこういう條文をおつくりになるのでありましようか。
#127
○齋藤(三)政府委員 國家公務員法の規定も同樣だろうと思いますが、今後絶対に起らないということは私どもは保証できないと考えております。またこういう規定があれば、そういうことも避け得るのではないかというような点もあるだろうと思います。
#128
○梨木委員 今の御答弁で、現在そういうものはない。將來のことは團体等規正令があるのですから、そういうものの発生を十分防止できるはずなのであります。將來のことまでこういうところに規定する必要はないと思う。もしこういうものが將來発生する危險があるということのためにおつくりになるのなら、日本の政府自体がポツダム宣言を忠実に実行する能力がないということを、みずから表白することになるのじやないか。世界の民主主義諸國に向つて、日本にはまだこういう團体があるかのごとき印象を與えるのです。また將來こういうものが発生することを防止し得ない無能力を、世界に向つて廣告するようなものではありませんか。その点どうお考えになりますか。
#129
○齋藤(三)政府委員 たくさんの禁止法令がありましても、ときにはその法令に触れる事態も起るのでありまして、さような事態の起ることは望ましくない、避けねばならぬと存じまするが、やはり國家公務員法でも規定されておりますように、この法案にも規定した次第であります。
#130
○梨木委員 さつきの質問にもどりまして、第四條の第二項に「前項の委員は、両議院の同意を経て、法務総裁が任命する。」これは両議院の、たとえば衆議院だけの同意を得て参議院の同意を得られなかつたというような場合には、どう解釈するのでありますか。
#131
○齋藤(三)政府委員 「両議院の同意」とありまするから、一院だけの同意では法務総裁は任命できないものと考えます。
#132
○梨木委員 憲法では衆議院の議決権限を参議院に優先さしているのです。その優先の規定を排除して、両議院の同意が得られなかつた、つまり衆議院の同意が得られて、参議院の同意が得られなかつた。それが一定の期間両議院で協議しても同意を得られない場合は、衆議院を優先させるというのが、憲法の規定の原則だと思います。この原則を今の御答弁では否認されることになるが、憲法上の衆議院優先の精神を無視するお考えでありますか。
#133
○齋藤(三)政府委員 原則を無視するとか、憲法の精神に反するというようなことは毛頭考えておりませんですが、ただ中央委員の仕事が各方面の信頼なり協力なりを得なければ、なかなか実際上の仕事ができない。こういうりつぱな方がたくさんおられるのでありますから、両議院でこういう人が適当だろうとおつしやる方を法務総裁が任命することが、制度として適当であろう。かように考えた次第であります。一般的な原則をどうこうするという趣旨は毛頭ないのでございます。
#134
○梨木委員 憲法の原則からいつても、参議院と衆議院がたまたま意見が一致しない場合には、衆議院を優先させることが民主的だという憲法の原則である。しかるにこの法律で衆議院と参議院と同等の権限を認めようということは、非常に不都合だと思う。こういうものをどんどんつくつて、各種の法律において衆議院と参議院の権限を同一にするようなことをやることは、法律によつて実際上憲法の衆議院優先の原則を蹂躙することになると思う。あなたの御答弁だけでは私は納得できません。もつと私の納得できるような答弁ができるならばおつしやつてもよろしいが、そうでなければ、あなたは衆議院と参議院と同等の権限ありという前提のもとにこういうものをおつくりになつたと私は断定するのですが、そういうふうに断定してよろしいですか。
#135
○齋藤(三)政府委員 先ほど申し上げましたように、一般的な憲法なり法律なりで言つておる原則をどうこうしようという考えではなく、この中央委員については、全國に多数の適格者がおありであろうと思いますので、両議院の同意を得た、全部の信頼、信任、協力を得た方になつていただくのが、この制度を運用する上において最も適切であろう、これだけの考えでいたしたのでございまして、梨木委員のように断定くださることは、私は困るのであります。
#136
○梨木委員 しかしながらこの犯罪者予防更生法のもとになつておる法案には、確かに憲法の原則に從うようになつておつたと思う。それをかえて來られておる。これは私は確かに参議院の方面からの横やりでそういうことになつたと思うのですが、どうですか。原案にそういうものがあつたということはお認めになりますか。
#137
○齋藤(三)政府委員 原案にはあつた時代もありますが、いろいろ研究の結果、案はときどきかわることもあります。しかしながら私の趣旨は、まつたく両院の地位を云々するという考えではございませんで、両院ともりつぱな方が多数おありなんですから、皆さんの全部の信頼を得た方でなければこの仕事がうまく行かない、こういう考えで両院の同意というふうに本案を組立てて提案した次第であります。
#138
○梨木委員 新憲法が施行された後においての実際の衆議院と参議院のあり方を見て來ましても、どうしても参議院は選出の仕方並びにこれは解散というものがなく、非常に固定化し、官僚化することが現実なのであります。その点きわめて保守的になつて來ておるようでありまするから、常に解散権が非常に頻繁に行われるし、民意を眞に適切に反映している衆議院の同意権を優先させることこそ、よりすぐれた、民意に即した委員を選出することになると私は考えるのですが、あなたはそうお考えにならないのですか。問題は両議院が賛成することがよりいい委員が出るということでなくて、そういう妥協の上に委員を選出することが民主的じやないので、より民意に即したような委員を出す方法を講ずることこそ最も望ましい形態で、その場合には衆議院に優先さすことこそが、こういう激変する社会情勢のもとにおいて妥当なのだ、ごく最近の民意を反映している衆議院の同意が優先すべきであると思うのですがどうですか。
#139
○齋藤(三)政府委員 憲法で衆議院に優先権を認めておるのは、申し上げるまでもなく法律案と予算案というように承知いたしておりまして、政府としましては、この中央委員の性格からいつて、かような案を提案したのでありますが、それが必ずしも憲法の精神に反しておるというふうには考えてない次第であります。
#140
○大西(正)委員 四点ばかり簡單に御質問いたします。まず原案の第十六條の第一項第四号であります。犯罪の予防に関する適当な計画を樹立する――犯罪の予防に関する計画というのはどの範囲のものでありますか。つまり警察との関連におきまして警察がやりますのか、それとの関係においてどの範囲のことをやるのかということをまず伺いたい。
 それから第二十條の第四項でありますが、「成人部においては、成人の仮出獄、仮退院、」云々とありますが、成人の仮退院というのはどういうことでありますか。
 それから四十四條の第二項にありまする「遵守すべき事項を遵守しなかつたことを理由とする仮出獄の取消の決定は、審理を経た後にしなければならない。」とありますが、審理というのはどういうことを意味するか、審理の方法いかん。その中で特に審理については本人の弁解、意見も聞く機会を與えるものかどうか。そしてまたそれについて代理人、たとえば弁護士のようなものを選任し得るかどうかということをお伺いいたしたいのであります。
 それから第五十九條全般の意味を御説明願いたいと思います。その中で特に中ほどにあります「証言の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合」というのは具体的にどういう場合であるか、以上お伺いいたします。
#141
○齋藤(三)政府委員 十六條の第四号の犯罪の予防に関する適当な計画というのは、いろいろな場合があると存じまするが、最もとつさに考えられまするのは、再犯者が再びまた犯罪を犯すというような場合は、この委員会が前にあやまちを犯した人を対象といたしておりますので、さようなことが最も適切な計画と思つております。また少年について見ますると、東京なら東京のどういう地区に、どういう犯罪少年が多数できているか、それに対する健全なる娯樂施設、遊び場等がどういうふうに配置されているか、どこにその少年が不良化する原因が存在するか、またその更生的な施設、矯正的な施設がいかに配置されておるかというようなことを調査いたしまして、関係官廳、関係團体の協力を得て、それに対する対策を考え、それぞれのプロパーの分野の事業をいかに最も促進せしめて行くかというようなことが考えられると思います。もちろんこの犯罪の予防につきましては、十六條一項の但書にございまする通りに、この委員会だけがやるものではございませんで、だれがやつてもけつこうなことであると存じますので、注意までにさような但書をつけた次第であります。
 次に二十條の第四項の成人部において成人の仮出獄、仮退院の事務をつかさどるということでございますが、少年院法におきまして、ごく異例なことでございまするが、二十歳が一應最高限でございまして、二十歳に達しても犯罪性がまだ濃厚であるという際には、家庭裁判所の承認を得て二十三歳まで置けるのであります。また二十三歳に達したが、精神的疾患等があるために、まだ社会に出すのは非常に危險であるという場合には、さらに家庭裁判所の承認を経まして、二十六歳まで、家庭裁判所のきめた期間まで置くことができる規定になつておりまするので、ごくまれなる例ではあると思いますが、理論的において、本法で言いまする二十三歳以上の成人がやはり少年院に收容されることがあるので、かような規定を置いた次第であります。
 四十四條の第二項で、仮出獄の取消は委員会の審理を経た後にしなければならないということになつておりまして、審理は本人と面接してその弁明をよく聞くということになると思います。もちろんこの審理を受ける者は被疑者でもありませんし、被告人でもありませんので、刑事訴訟法で言うような弁護人というものは予定されておりませんが、しかし十分本人の言わんとすることを聞くために何らか本人が十分言い得るような、さような仕組みを考えなければならぬと思いますので、これらにつきましては、中央委員がルールをつくる権利を持つておりますので、そのルールにおいて研究し、万然を期するような措置をとるものと考えております。その地方の委員会の決定に不服の場合には中央委員が再審査する。そうして不当と認めた場合には変更するというようなことも考えまして、地方委員会の不当なる結果がないように万然の準備をいたしておるつもりでおります。
 次に五十九條の場合でありまするが、これは委員会の職員はほんとうに本人の親がわり、兄弟として本人を保護するのでありまして、いろいろな祕密のことも当然に相談相手になつて聞くと思いますので、それを不当に証言を強制されることは、保護観察の上において支障があるので、拒絶権を認めたのでありますが、しかしそれはあくまでも本人の正当なる権利のためでありまするので、本人が承諾した場合、あるいは権利の濫用と認められる場合、その他裁判所の規則で定めた場合はこの限りでない、こういうふうにいたしましたので、いかなる場合が権利の濫用と認められるかという具体的例は、今ちよつと適切なものを思い起さないのでありますが、かような場合も相当あり得るというように考えましてこういう規定をいたしました。
#142
○大西(正)委員 大体わかりましたが、四十四條につきましてもう一点……。そうすると今私の質問いたしましたことについては、大体委員会のルールに讓られるということでありますが、ただいまの御答弁の中にもありましたように、第四節の「処分の審査」というところにおきまして、四十九條の第三項には「審査の請求は、処分の執行を停止する効力を有しない。」という重大な規定があるのであります。その点、特に本人の利益を擁護する上において、万全を期するような方法をとつていただきたいと思います。
#143
○齋藤(三)政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、次の第五十條の第四項におきまして「中央委員会は、審査を行う場合において、必要があると認めるときは、決定をもつて、当該処分の執行の停止を命ずることができる。」こういうふうに融通無礙にいたしておきまして、具体的事案に対して適切な手を打とう、こういう処置を考えておる次第であります。
#144
○大西(正)委員 よくわかりました。ただそういう融通無礙にできておるようでありまするが、とにかくこの執行を停止する効力を有しないということがかなり強く働くんじやないかと思います。私の希望といたしましては、本人が自分の権利を主張する上において、非常に能力の少い人々が多いであろうと思いますから、その点につきまして特に御配慮を願いたいと思います。
#145
○齋藤(三)政府委員 実際のルールをつくる場合に、御懸念のようなことのないように、十分考究いたしたいと存じます。
#146
○花村委員長 ちよつと速記をやめてください。
    〔速記中止〕
#147
○花村委員長 速記を始めてください。
 本日はこの程度で散会いたします。
    午後五時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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