くにさくロゴ
1949/05/13 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第20号
姉妹サイト
 
1949/05/13 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 法務委員会 第20号

#1
第005回国会 法務委員会 第20号
昭和二十四年五月十三日(金曜日)
    午後二時五十五分開議
 出席委員
   委員長 花村 四郎君
   理事 北川 定務君 理事 金原 舜二君
   理事 高木 松吉君 理事 梨木作次郎君
      押谷 富三君    鹿野 彦吉君
      田嶋 好文君    古島 義英君
      牧野 寛索君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    猪俣 浩三君
      上村  進君    大西 正男君
      三木 武夫君    世耕 弘一君
 出席國務大臣
        國 務 大 臣 殖田 俊吉君
 出席政府委員
        法務政務次官  山口 好一君
        檢 務 長 官 木内 曽益君
        法務廳事務官
        (民事局長)  村上 朝一君
 委員外の出席者
        法務廳事務官  関   之君
        法務廳事務官  古橋浦四郎君
        國家地方警察本
        部警務部長   中川  惇君
        專  門  員 村  教三君
        專  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月十二日
 戸籍事務費全額國庫負担に関する請願(小川平
 二君紹介)(第一六六四号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 連合審査会開会に関する件
 司法試驗法案(内閣提出第一〇〇号)
 公証人法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一一五号)(予)
 徳島縣における警察官の少年射殺事件等に関す
 る件
    ―――――――――――――
#2
○高木(松)委員長代理 これより会議を開きます。
 ただいま委員長が司令部の方に行つておられますので、私が委員長を代理いたします。
 この際お諮りいたしますが、農業資産相続特例法案が農林委員会に付託されておりますが、本委員会にもきわめて関連が深いのでありまして、農林委員会と連合審査会を開きたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高木(松)委員長代理 それではさよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#4
○高木(松)委員長代理 次に公証人法等の一部を改正する法律案が本委員会に予備付託になつておりますので、これを議題としてこれより審査に入ります。まず政府より提案理由の説明を聽取いたします。村上政府委員。
#5
○村上(朝)政府委員 公証人法等の一部を改正する法律案は参議院先議でございまして、ただいま参議院の法務委員会で審議中でございますが、修正意見が参議院の方で出ておりますので、私からその参議院の修正意見を御紹介いたしたいと存じます。
 まず第十三條の改正でありますが、第十三條の後段におきまして、「多年法務ニ携ハリ公証人ノ職務ニ必要ナル学識経驗ヲ有スル者ニシテ公証人審査会ノ選考ヲ経タル者亦同シ」こういうものと、また「試驗及実地修習ヲ経スシテ公証人ニ任セラレルコトヲ得」といういわゆる選考任用の規定を原案に設けたのであります。これに対しまして参議院の修正意見といたしましては、少しこの後段の書き方はゆるやかに過ぎる。もう少し選考任用される者の資格を高めるような表現に改めた方がよかろうというような理由で十三條の後段を削りまして、十三條の二として一箇條を設けまして「法務総裁ハ当分ノ間多年法務ニ携ハリ前條ノ者ニ準スル学識経驗ヲ有スル者ニシテ公証人審査会ノ選考ヲ経タル者ヲ試驗及実地修習ヲ経スシテ公証人ニ任スルコトヲ得但シ第八條ニ規定スル場合ニ限ル」、つまり学識経驗を有する者の程度を簡易裁判所判事を除く裁判官、副檢事を除く檢察官または弁護士に準ずる程度の者にするという基準を明らかにしたのであります。それからこういう選考任用は当分の間という時期的な制限を置いてもらいたい。と申しますのは、この選考任用の規定をおきました理由は、現在公証人の收入があまり多くありませんこと、裁判官、警察官が非常に不足しておりますために、かつてのように裁判官、警察官あるいは弁護士として多年の経驗のある方を公証人に任用することが困難であります。ことに大都市以外のところにおきましては、公証人の適任者を非常に得がたい状況にありますので、こういう選考任用の道を開いたのでありますが、そういうことならば当分の間という制限を設けることが適当ではないかということ、それから「但シ第八條ニ規定スル場合ニ限ル」ということを入れましたのは、ある土地に公証人がいない場合、あるいはその公証人が事務をとることができない場合というような異例な場合だけにこういう公証人を任用するというように、きわめて限られた運用方針を法律ではつきりする方がよかろうという御趣旨であつたのであります。
 次の修正点は第十五條でありますが、「法務総裁ハ左ノ場合ニ於テ公証人ヲ免スルコトヲ得」とありまして、公証人が免職を願い出たとき、それから期間内に身元保証金またはその補充額を納めなかつたとき、公証人が身体または精神の衰弱によりその職務をとることあたわざるとき、こういう三つの場合があげられておりまして、これらの場合におきましては、公証人審査会の議を経て職を免ずることができるということになつておるのでありますが、この第三号を第四号にしまして、新たに第三号として、公証人が年齡七十歳に達したときということを入れようという修正であります。これは現在公証人には停年の制度がございませんので、相当老齡の方が多いのでございます。全國で満七十歳以上の人は二十三人もおります。そこで第十三條の改正によつて選考任用の道を開いたことに関連して、公証人の職務は権利を公証するきわめて重要な職務であるから、その素質の低下を防ぐ方策をあわせ考えなければならぬ。從つてはなはだしく老齡に達した人はその意思に反しても解職できるようにすることが適当であるということで、その修正が加えられたのであります。
 その次は第二十八條でありますが、原案におきまして第二十八條二項は「公証人嘱託人ノ氏名ヲ知ラス又ハ之ト面識ナキトキハ官公署ノ作成シタル印鑑証明書ノ提出其ノ他確実ナル方法ニ依リ其ノ人違ナキコトヲ証明セシムルコトヲ要ス」となつておりますが、「其ノ他確実ナル方法」というだけではどの程度の証拠をもつて証明したらよいかわからない。そこで少くとも印鑑証明書の提出に準ずる程度の確実なる方法ということを現わしてはどうかということで「其ノ他確実ナル方法」という字句を「其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法」と修正したらよかろうという意見でありました。
 次は三十六條の第六号でありますが、これはただいま申し上げました二十八條第二項と同じ字句がありまして、第六号に「印鑑証明書ノ提出其ノ他確実ナル方法ニ依リ」とありますのを「印鑑証明書ノ提出及其ノ他之ニ準スヘキ確実ナル方法」というように関連して修正しようという御趣旨であります。
 最後に第三十八條の第二項であります。原案におきましては、公正証書の挿入削除の場合に捺印すべき者は公証人だけということに公正証書作成の手続の簡易化をはかつておるのでありますが、公証人だけが挿入削除の印を押すというだけではやや不安であつて、公正証書の権威を保持するために不十分であろう、從つて公証人自身のほかに嘱託人、またはその代理人を加えたらどうかという理由で、現行法第三十八條の第二項「嘱託人又ハ其ノ代理人及立会人」とあるのを「嘱託人又ハ其ノ代理人」というふうに改めようという御意見であつたのであります。
    ―――――――――――――
#6
○高木(松)委員長代理 この問題はこの程度にしておいて、この際梨木委員から発言を求められておりますから、これを許します。梨木君。
#7
○梨木委員 長野縣上高井郡須坂町に約三万坪の敷地を買收して刑務所を新設するという計画があるように聞いておりますが、そういう事実がありましたならば、その計画についての詳細を伺いたいと思います。
#8
○古橋説明員 お答え申し上げます。長野市外の須坂町に元軍の委託工場であつた鑄物工場があるのであります。その敷地が約三万坪、建坪が約八千坪という施設があるのであります。かねて当局におきましては、過剩拘禁緩和に対策の一環といたしまして、各地におけるこのような遊休施設を入手して刑務所における過剩拘禁を緩和いたそうと考えておつたのであります。長野刑務所におきましても、その他の施設と同じように非常な過剩拘禁でございまして、同時にまたあの刑務所は市のきわめて繁華街にありまして、長野市内にも、あるいはその付近にも拡張の余地のない施設であつたために、市外に適当な施設を獲得する必要に迫られておつたのであります。たまたまこの施設が出先の行刑関係者の努力によりまして、買收可能ということを承りましたので、これを買收いたしまして、刑務所の施設に充当する計画を立てました。昨年來そのための準備をいたしておりまするが、もちろんその地元における刑務所設置に対する意向というものをも重視いたしまして、所管刑務所におきましては須坂町の当局といろいろ話合つて準備を進めておるのであります。私どもの得ております報告によりますれば、その交渉はほぼ円満に進行しておるように聞いておるのでありまして、当局といたしましては、これを買收して本年度からそこに建築工事を進めたいという考えを持つて、予算その他の措置を講じておる次第でございます。
#9
○梨木委員 もちろん刑務所はどこかへつくらなければならないとか、現在まで刑務所の建設にあたりまして、どこにもつくつてはいけないということは成立たないのでありますが、刑務所をつくるについては地元民とよく了解の上で建設すべきものだと私は思うのであります。私の方の情報では、この須坂町当局とは事前には何らの話もなくて、買收を決定したのちにおいて初めてそのことが発表せられた。そのために今町当局は地元民からごうごうたる非難を浴びて、もしこれが実際だとするならば、町当局者のリコールまでに進展するというふうに聞いておるのであります。そこで私の伺いたいのは、買收契約がすでに決定したのかどうか、その買收額は坪あたりいくらであるとかいう点、この所有者はだれであるかという点をまずお伺いいたしたいのであります。
#10
○古橋説明員 お答え申し上げます。御質問の御趣旨はまことにごもつともでありまして、私たちも地元の関係民に対して十分御理解を得た上で刑務所を設置いたしたいと努力しておる次第でございます。この問題は昨年の夏ごろから話が進んでいるのでございまして、地元との交渉につきましては刑務所当局、あるいは檢察廳等、法務廳の出先機関におきまして、その点について特別の努力を拂つて來たのであります。私どもの受けております報告によりますと、その施設の一部に居住しております方々が非常に困つて、これに対して不服があるということだけを承つておるのでございます。その点につきましては、もちろんむりのないように納得していただいて、しかるべき移轉先を見つけてからこの買收をするつもりで、そのように事が運ぶように現地には連絡してあるのでございます。從いまして、私どもが買收の契約をしてしまつてからすべてを発表したということは、何かの誤解だと思つておるのであります。御了承を願います。
#11
○梨木委員 それでは今話を進めているのであつて、まだ買收契約は成立しておらないのでございましようか。
#12
○古橋説明員 言葉を濁すようではなはだ失礼でございますが、私の得ております報告では、ただいままでに契約は結ばれておりません。この契約は法務廳の会計課において扱うのでありますから、おそらく現地でもそれまでの決定はまだできていないと思います。その点につきましては正確に調査をして御報告申し上げます。
#13
○梨木委員 もう一度念を押しておきたいと思うのですが、それでは町当局、町長その他の有力者とは話を進めるとともに、現在の居住者にも移轉の問題について具体的に話を進めておるのでありますか。
#14
○古橋説明員 法務廳の出先機関が、直接その住んでいる方々に対して立ちのきの話は進めておりませんが、町当局に話をしていただくようにお願いしておるのであります。
#15
○梨木委員 それではそこの居住者は何名であつて、これらの人たちの立ちのきについてどういうような金銭的な用意があるかということを承りたいと思います。
#16
○古橋説明員 何人でございましたか、その点はまで私のところではわかつておりません。なお立ちのきの費用につきましても、その金額については私のところではわかつておりません。
#17
○梨木委員 しかし立ちのく人たちについて、十分生活上の損失を補償する用意はしておられるのでありましようか。
#18
○古橋説明員 その点につきましては、町当局にお願いしまして、町当局においてその方々に対して十分な補償をしていただくように話を進めておる次第でございます。
#19
○猪俣委員 今國警本部から見えられたそうでありますから、昨日私が質問いたしました徳島市における少年の誤殺事件のことについて御報告を願いたいと思います。
#20
○中川説明員 昨日猪俣委員から御要求のありました徳島縣における警察官の挙銃使用事件に関連いたしまして、私が所管の部長でございますので、私から事情を御説明申し上げます。
 まず事実の概略を申し上げたいのでありますが、昨年の八月二十四日に徳島縣下の名西郡に四人組による強盜殺人事件が発生いたしました。この犯人二人を檢挙いたしたのでありますが、首魁を檢挙いたしません。首魁は鎌田武則と申す二十九歳の男でございます。ところがこれが首魁であることが捕えられました二名の共犯の陳述によつて明らかになりましたので、これが指名手配をいたして搜査中であつたのでありますが、同人はさらに阪神方面におきまして、強盜殺人事件を二件犯しまして、兵庫縣からも徳島縣に対して、指名手配中のきわめて凶惡なる犯人であつたのであります。地元徳島縣におきましては、これが搜査に熱心に当つておつたのでありますが、さらに本年になりまして、一月以降徳島市内外におきまして、衣類、現金等数十万円に及ぶ多額盜難事件、しかも集團窃盜事件が、頻発いたしまして、その片割れを引続いて檢挙いたしておりますうちに、これが鎌田を首魁とする地方の不良の徒党でありまして、やはり鎌田が背後にありまして、これが指導をいたしておつたのであります。この檢挙者の言によりますと、鎌田は警察官に二、三人は殺傷しなければ、おれは逮捕されないというようなことを豪語しておる樣子がわかつたのであります。二月になりまして、徳島市内のそうした不良仲間のところに鎌田が一味とともに轉々として居を轉じまして、地方の集團窃盜事件の指導をしておることがわかりました。二月二十一日になりますと、徳島市内の鮎喰町と申すところにおることが内偵でわかつたのであります。他の一緒におります仲間の連中もわかりましたので、それらに対して逮捕状を請求いたしまして、これが逮捕の準備を進めたのであります。二月二十二日の朝午前五時三十分、この事件はもともと地区警察署の管内で起きました事件でありますから、同地を管轄いたしておりますところの國警の勝名地区警察署におきまして、これが檢挙をいたすことになりました。警部補以下十六名を三班に編成いたしまして、逮捕に臨んだのであります。ところがあてにいたしておりました三箇所を捜査いたしましたが、いずれも該当の人物を発見いたしません。ところがそこにおりました婦女子の言によりまして、彼らが昨晩から北島田町の小西という家に賭博に行つておりまして、まだ帰つて來ないという供述を聞きましたので、警察官はただちに七名でもつて檢挙班を編成いたしまして、小西という家へ逮捕に向つたのであります。この際鎌田その他二、三の仲間がおることが予想されたのでありますが、これらはいずれも拳銃匕首等を所持いたしておるおそれが十分あるのであります。それに対して十分警戒いたしますように指導をいたしまして、小西家におもむいたのであります。小西家に参りまして、表口、裏口に警察官を配置いたしまして、生原という司法主任の警部補が玄関口に参りまして、戸をたたきまして「お早うございます」と二回ばかり声をかけますと、裏口からやにわに外を目がけて突走いたした者があります。裏口に配備になつておりました大橋と申します刑事が約三十メートルばかり追跡いたしたのでありますが及びません。川が流れておりますが、その堤防のかたわらの人家の密集地区に入ろうとするので、五十メートルばかり離れたところから「逃げると撃つぞ」と二、三回連呼して拳銃を一発放したのであります。これは威嚇の目的をもちまして、空に向けて発したのであります。ところがこの突走者はさらに足を急めまして、どんどん走つて参りました。そのときにその突走したしりから早見と申します巡査が追跡を始めたのでありますが、四、五十メートル離れた背後から「待て、逃げると撃つぞ」と三、四回連呼いたしました。しかしながらなおも突走いたしますので、これに対しまして、威嚇の射撃を二発いたしたのであります。第二彈が不幸背部から命中いたしまして、そこへ倒れまして、約十分後には死亡いたしたのであります。それが事実であります。ところがこの被害者は警察が逮捕の目的にいたしておりました鎌田ではなくて、樋口進と申す十八歳の少年であつたのであります。その少年がいかなる少年であつたかということは、事件とは関係のない別個の事実でございますが、その少年は十四歳ごろからはなはだ不良化いたしまして、昨年も自轉車の窃盗その他をもちまして、起訴猶予二回に処せられまして、その後も性行惡化いたしまして、両親からは勘当され、窃盗の嫌疑を受けて、家にもおれないで逃げまわつておるという状況の少年であつたのであります。從いまして警察官が現われました際に裏口から突走いたし、その後警察官の追跡に対しまして懸命に突走をいたしたのも、もつともであると存ぜられます。
 事実はただいま申し述べた通りでありますが、これに対しまして、何分にも警察官が拳銃を発射しまして、相手方を死亡に至らしめたのでございますから、当然事案を嚴重に調査いたさなければならないのでございます。そこでただちに檢察廳におかれましてこれを調査せられました。被害者が鎌田でありますならば、鎌田はきわめて凶惡なる犯人であり、指名手配中の者であつて、逮捕状を持つて執行に参つたのでありますから、警察官等職務執行法第七條の規定によりまして、これに対して拳銃を使用いたしましても全然問題がないと言い得るのでありますが、遺憾ながら射殺いたしましたのは鎌田ではなく、少年樋口でありましたので、ここに何と申しましてもあやまつて人を撃つたという過失は、業務上の行為でありましても過失として考えられるのであります。しからばこの過失がいかなる程度の過失であるかということは、おそらく檢察当局におかれましても問題に相なつたことと存ずるのでありまして、重大な過失である、あるいは過失としては比較的軽い、むしろだれでもこういう場合には被害者を鎌田と思い違えるのは当然であるという程度の過失であるということが問題になる点であると存ずるのであります。その結果檢察当局におかれましては、高檢等の指揮も仰がれまして、結局不起訴処分に処せられたのであります。その事由は私どもとして承知いたさないのでありますが、前後の事情から私ども考察いたしますならば、警察側としましては、長い内偵の結果鎌田の所在をようやくつきとめまして、当日になりまして、指名手配の凶惡犯人を今こそ捕えるのだということで用意してかかりました。そうして周囲の者に聞きまして、いよいよここにおるということを確認いたしまして乘り込んだのであります。でありますからいよいよきようは鎌田を檢挙するのだという氣持、いよいよつきとめて、きようは逮捕するのだという氣持を全員が持つておつたことは十分察せられるのであります。
 それからその事件がありましたのは六時十六分であります。当時の日出時間が五時十五分でありましたから、また十分明るくない。しかしてこの早見巡査と被害者との距離は五、六十メートルあつたのでありますし、またこの樋口の服装がいわゆる不良仲間の風体であつたのでありますから、早見巡査がこの突走者を鎌田なりと認めましたことについてはむしろ当然と申しますか、あやまつて認めたことについて、早見巡査に重大なる過失があつたとは檢察廳で認められない。その結果としてこれを不起訴処分に処せられたと信ずるのであります。國警といたしましても、檢察廳において不起訴処分に処せられましたので、同樣の所見のもとに、これの責任につきましては行政上の処分を行わないことにいたしたのであります。以上が経過であります。
#21
○猪俣委員 凶惡犯人を捕える警察官が非常に緊張しておつた。それはまことにもつともなことである。しかしどうもわれわれが輿論を聞いてふに落ちないのは、その凶惡犯人は二十八歳の非常に長身の大男である。またこの射殺された少年は十八歳のしかも普通人よりは小男で、五尺そこそこであるという点、年齡から身長のぐあいから、もう明け方間もないことでありまして、決してまつ暗やみではないはずである。しかもあなたの報告は五、六十メートルだというのですが、これは地形を調査すればわかることだが、さような距離はない。十五メートルないし二十メートルぐらいであつた。これは当時見ていた人が証言しておるところである。なおここに見取図がありますが、前とうしろからはさんでしまつた。だからそんなものを生取りにすることはわけのないことであつた。しかもシヤツ一枚で飛び出しているのであるから、何も持つておらないことは明らかに認識されておるわけであります。それをねらい撃ちに背部から撃つてしまつたということが、惡意でないことは十分わかるのでありますし、これがまた凶惡犯人であるならばやむを得ない場合もありましようが、この警察官に何らの失策がないという御認定に対しては、輿論も承知せず、われわれもどうも納得できないのであります。この明け方であるということ、しかも場所が東西からはさまれてしまつて他に逃げる場所がなかつたのみならず、シヤツ一枚で逃げ出した少年であつて凶器のないことは明らかにわかる。二十九歳の大男と十八歳の小男はいかに薄明りの朝であるからといつてわからぬ道理がない。それに対して発射した。しかもこれは十五メートルないし二十メートルしか離れておらなかつたことは明らかな事実であります。東西からはさんでおきながらなおかつこれを撃たなければならぬ必要がどこにあつたか。要するに人命尊重の観念が乏しくて、ただその功にあせつた。惡意はないにしても、はなはだそこに警察官としては愼重を欠いた点がある。七人で囲んでおるので他に追げ込む場所がない。道路上ではさんでしまつた以上手取りにできるはずである。なお手取りにできないにしても、もう少し近づいて確かめられる余地があるはずである。普通人であるならばかならず見わけがついたはずである。年齡からいつても、からだのぐあいからいつても、服装のかつこうからいつても、これを射殺しなければならなかつたことはないはずである。そこに私どもは十分なる過失があると考えられるのであつて、それを過失なしとして檢察廳が取扱われたということは地元の輿論を刺激しておる。私どもは國警本部なり檢察廳がこの職務上やつた行動者に対して、寛大な態度をとるという心情も了解できるのでありますけれども、よりこの人命の尊重ということを頭においていただいて、この射殺者に対しては適当な処分をすることがかえつて警察官等職務執行法第七條を存置する理由になるのであつて、七條を規定します際にも、そういう諸点について非常に異論があつたのであります。これは皆樣御承知の通りであります。從つて武器を持たせると濫用にわたりはしないかということを非常に心配した。しかるに当時の國警本部長その他極力そういうことはない、十分な訓練をしておるし、訓辞もしてあるから、武器を持たしたからといつて濫用になるようなことはないということを口をきわめて説明されたがために、これが通過したのであります。これは非常に難航であつたことは御承知の通りでありますが、われわれが心配したような事態がここに発生した。これも人間がすることでありますから、なかなか本部長が訓辞した、あるいは訓戒しても万事その通り実施せられないかもしれませんが、あやまつて事を起した者に対しては、信賞必罰を明らかにすることが、この法の成立に際しまして、当局が説明しましたことを裏書きすることになるにかかわらず、どう考えましても、私はここに過失があると思うのです。この責任を少しも追求しないということに対しては不満があるのであります。これがまた地元の輿論の不満である。しかしこれをあなた方と今議論してもしかながないし、この責任については私は檢察廳にあると思いますから、法務総裁にもお尋ねしたいと思う。檢事局がこれを取上げなかつた。それで自由人権擁護協会が新たに告訴したのであります。父親、母親の代理人として詳細な告訴状が出ておるのであります。今後もかようなことに対しては十二分なる戒告をやつていただき、誤つた場合には決して部内の者だからといつて寛大にせずに將來かような不祥事の起らぬために、十二分なる注意をする意味において、私はある程度処分した方が適切ではないかと考えられるのであります。今あなたと議論してもしかたがないのでありますが、はなはだ遺憾の意を表する。なお人命の尊重について警察官に欠くるところがあるのではないか。今後の教養についてもこの民主時代の今日におきまして、基本的人権の最大なるものの一つである人命につきましては、十二分なる訓練をしていただきたい。射殺した後の取扱いがはなはだ付近のこれを見ておつた者をしてまゆをひそめしめるような行動をしておつた。というのは血だらけになつておるその少年を、まるでぶらんこのように片手、片足を三人か四人の警察官が持つて引きずつたそうであります。そしてトラツクの中へ掛声とともにほうり上げた。そのときには即死しておつたのであります。そういう取扱いは残酷きわまるのではないかと思うのであります。そうして少年がとまつた所のおばさんが狂氣のごとく泣き叫けんでおるのにかかわらず、うるさい、そばに寄るなと言つて突き飛ばした。なお付近の人の言つておるには、甲の巡査はやつたな、乙の人は早まつたのではないかというと、まあしかたがないということで、まるで犬やねこを屠殺したようなかつこうであつたということが付近の人の供述になつておる。かようなことが結局警察官が人命の尊重をおろそかにするがためにかような誤殺を起るのであるし、誤殺した結果に対し、すでにあやまつて殺した者に対しても、非常に悔恨の情と慚愧の情を表わして、別に伏して謝さねばならぬ立場の者がさような取扱いをやつた。これに対してはいかに地元の者が檢事局へ陳情に行きましても、全然取合わないでこれを不起訴処分にしてしまう。まつたく人命がここに犠牲に供せられてしまつて、その取扱い方が乱暴きわまるものと思うのであります。かような取扱いぶりにつきましても、それぞれ責任者に対しまして、國警本部としても十二分なる調査とその訓戒をしなければならぬと思うのでありますが、さような取扱い問題について調査なさつたことがあるか、またそれについても何ら付近の人に対して残酷な感じを與えるような取扱いをしないというのであるか、その誤殺した後の取扱い方についてお尋ねいたします。
#22
○中川説明員 ただいまの猪俣委員の御意見はきわめてごもつともなことであると存じまして、拜聽いたした次第であります。事実に関しましては、私が申し述べました点と猪俣委員の仰せられました点とは齟齬いたしておる点がございます。私といたしましては、これ以上の資料をただいま持つておりません。
 次に死体の取扱いについて、その場の警察官の取扱いがきわめて非人道的であつたことを御指摘になつたのであります。私伺つておりまして、ほとんど信じられないことでございますが、もしそのようなことが事実ありましたならば、まことに遺憾に存ずる次第であります。私といたしましては、國家地方警察官並びに自治体警察官の教養、指導につきまして、責任をもつております。ただいまお申し述べのごとく人権尊重、なかんづく人命尊重の点については、十二分に今後注意いたしたいと思います。
#23
○猪俣委員 今の問題について、檢務長官がお見えになつておりますので、檢察廳の御意見も伺いたいと思います。
#24
○木内政府委員 御質問の事件につきましては、私どもの方にはただその事件の処理につきまして、簡單な報告が來ておるだけで、結局結論はこの行為は犯罪にあらず、すなわち正当行為と認定したという理由で不起訴処分にしたというだけの報告しか参つておらぬのであります。この事件につきましては、その後人権擁護局の方で御調査になられましたので、人権擁護局の関係の方から御説明申し上げたいと思います。
#25
○関説明員 この事件につきましては、人権擁護局の方でも人権擁護協会の方から照会がございまして、局の立場としてただちに調査をする必要があると思いまして、調査員を派遣いたしまして、とりあえず一應の調査をして今朝もどつて参りました。その結果を一應とりまとめてここに御報告申し上げることにいたします。
 調査員の報告を聞きまして檢討した結論から申し上げますならば、警察官に殺意は認めることはできなかろうと思うのであります。問題は武器の使用に過失があつたかどうか、この点につきましては、なるほど檢察廳の処置は罪とならずとあつて、不起訴処分になつておりますが、人権擁護局としては多分にその点に疑問を持つておるわけであります。それは從來の武器使用の警察一般における取扱例など、いろいろな事例がありまして、それなどの関連において、さらに詳細に檢討してみたいと思つておるのでありますが、ただちにここに過失なしというようにも断定いたしかねる、また罪となるというふうにも断定いたしかねる。何らかそこに疑問がありますので、從來の各種の取扱例などを調査しまして、どこに過失があつたか、過失があつたと認めるべきかいなかについて檢討いたしたいと考えておる次第であります。何分にもけさ帰りまして報告を聞いたのでありますから、問題はきわめてデリケートでございまして、それ以上責任ある言明はいたしかねる次第でございまして、その点をまず御了承願いたいのであります。
 なお事実関係でございますが、これもただいま大筋のところは國警の方から報告のあつた通りかと思います。要するに鎌田という凶惡な犯人、そのほかなお四名の犯罪被疑者に対する数通の逮捕状を持つて、その執行のために警察官が、聞くところによると水杯までして出たそうでありまして、かなりの覚悟をして、しかも早朝五時に集合してそこに至つたという次第でありまして、警察官としてもそこに多分の身に危險を感じていた。つまり凶惡犯人を檢挙するというはつきりした自覚を持つて捜査に出たことは疑い得ないと思います。そうしてその目的とする被疑者がそこにおるのであるといつて、当該の家に行つた。ところがばたばたと逃げ出した。逃げ出したというのは警察官に聞いてもそう言いますし、被害者の叔母がおりますが、叔母と話したら、その少年がばたばたと逃げ出した。この点けだし推定できる点だろうと思います。そこでなぜ逃げ出したかという点でございますが、実はこの少年も幾分不良性を帶びておりまして、前には窃盗などの罪を犯して逮捕せられ、あるいは少年院にも送られたという経歴のある者なのであります。どういうわけで逃げたか、死者に口なしで今は追究できないのでありますが、とにかく若干身にうしろ暗いものを持つていた。その関係からあるいは警察官が來たから逃げたのか、あるいは他に何かの関係で逃げたのかわかりませんが、とにかく來たら同時に逃げ出したということは、動かしがたい事実だつたと考えられるのでありまして、それで追跡して行つたのでありますが、ここで私は追い詰めて行つて、たまを撃つた距離と暗さと小雨が降つていたという三つのことが考えられるのであります。距離の点については私ども重要な問題と思い、いろいろ調査いたしましたが、大体十問内外というふうに認定せざるを得ない。だからたまが当つたと考えられるのであります。もちろんこれにつきましてただ一点だけ疑いと思われるのは、十間内外の所で撃つたたまでばつたり倒れたということになるのでありますが、それが疑いを持たせるのは、從來ピストルで撃つた例から申しますと、なかなか一発ぐらいでは倒れない。中には数町逃げて倒れたという例があります。そこで一発撃つて倒れたのか、数発当つて倒れたのかというところに深い疑いがある。またほんとうに事実が確定されていないというように言われておるのでありますが、そうしますと大体のところは、十間内外のところで撃つたたまが当つたものであろうと思うのであります。そうかといつてそれが疑いなしというように断定しがたいのであります。そうするとその前に撃つたたまということが考えられるのでありますが、そこに一つの疑いがあるわけであります。まず距離と暗さの点であります。その点も十分に調べて來るようにと申しておきましたが、大体今國警の方が言われたように、午前六時十五分前後のことでありましたので、日が出たか出ないかの境目でありまして、小雨がしよぼしよぼ降つていたというのが事実であります。そうするといくらか暗いということも考えられるのであります。そうして鎌田という逮捕状の被疑者がそれだけの身長で、被害者がきわめて小さかつたということもその通りと思うのであります。さて大筋のところは、ただいま國警の方の御報告を聞いたところと、私どもの調査員の調べた結果は大体は一致しておるのであります。
 それから次に死後の処置の問題でありますが、この点も猪俣委員のお話のごときことも伺つておりましたので、よく調べて來るようにということを申しておきましたが、三人の巡査がかかえて來た。そして死体には手をささえないで、お互いに頭を持つたり足を持つたりしたような状態だそうであります。それをトラツクへ放り込んだというようなことは、どうも今までの調査ではそれまではしなかつたというふうに思われるのであります。さてかような経過でありまして、私ども局の大体の考え方といたしましては、今申し上げたように、從來の警察官一般の拳銃の取扱例から見てどうか、さらに人命尊重から見てどうか、それは人権擁護の立場から見てしごくもつともの点でありまして、まことに同感を禁じ得ない点であります。人命尊重の立場から見てどうかということに対しても、深い疑いを持つておるのであります。しかし実は今申しましたような取扱例その他の面ときわめて深い関係がありまして、それらの点をよく調査いたしまして、最後の結論を出したい。こういうふうに考えておるわけであります。
#26
○木内政府委員 私からさらにお答えをいたしておきます。先ほども申しました通り、私どもの方へは先ほど申しました通りの報告でありますが、人権擁護局の御調査になつた点を承つておりますと、あるいは私どもの方ももう一度調査する必要があるのではないかと考えますので、さらに檢察廳に命じまして調査いたしまして、その上で檢務関係の方としてのお答えをいたしたいと思います。
#27
○猪俣委員 今檢察廳側の御報告で、私どもその調査を待つよりしかたがないのですが、参考までに申し上げますことは、実はずつと古いことでありますけれども、自動車の運轉手が赤ん坊をひき殺したという過失殺人罪でもつて起訴された事件がありました。私はその弁護人として弁護をやつたのですが、裁判長といろいろ話しているうちに、これはまつたくの過失でありまして、大きな自動車でありましたので、運轉手の視野の届かない輪の前側にちよこちよこと赤ん坊が飛び出して來たのでありまして、まことに運轉手には氣の毒であつた。裁判長もその点を十分認めましたけれども、とにかく過失があつたにしろなかつたにしろ、一命を落しておる。これに対して何らの過失がないというのはどうであろうという裁判長の話で、なるほどなと私は思いました。そうして罰金刑か何かに処せられたのであります。私はやはりこの態度が必要じやないかと思うのであります。そこでこれは結局檢察廳としては起訴されて、裁判の結果無罪になればけつこうなことでありますけれども、これをそのまま檢察廳で不起訴処分にしてしまうということは、檢察官及び警察官の地位の向上のためにも私は惜しむことだと思うのであります。とにかく十八まで育つた人間が射殺された。しかもそれを付近の人が見ておつたという事情のもとに行われたのであります。大体そこに犯人がおると認めたことが、今から考えれば過失であつたのであります。この少年は前に何か巡査にいじめられたことがあるので、何かいたずらすると、おまわりに引渡すぞといつて家の者からしかられておつた。そうして非常におびえていたそうであります。それを警察官が來たということから、彼は夢中になつて逃げ出したのではないか、ここにも問題がある。警察官というものがさように恐れられるということも問題があると思いますが、それはしばらくおきましても、とにかくそこにおるということが第一の誤認である。その誤認によつて誤殺したわけであります。でありますからわれわれから見ると、ここにあやまちが重なつておる。これに対して何らの責任がない。なお聞けば、その巡査は栄轉しておるということを言う人もある。これは私はわからないのでありますが、それではどうもいかぬのではないか。今後の檢察廳の態度としても、この警察官等職務執行法が國会を通るにつきましては十二分に確かめ、さようなことがないことを極言されて通つたいわくつきの法律なのでありまして、その辺もお考えいただいて善処せられんことを希望いたします。
 これはこれで打切りまして、檢務長官がお見えになつておりますから、この前から私の申し上げておきました八丈島の査察の調査の結果を御報告願いたいと思います。
#28
○木内政府委員 八丈島関係の問題につきましては、その当時東京地方檢察廳の檢事が出張しておりましたので、東京地方檢察廳の檢事正から電報で内容の調査を命じて、その結果を持つて参つたのであります。しかしながらこの事件の調査に出張したわけではないのでありますから、日の都合もあり、途中で一應の調べをして帰つて参つたのであります。まだ結論の報告には接してないわけでありますが、一應その者の調べた報告に基いて御報告申し上げたいと思います。
 問題の八丈島区檢察廳の副檢事江口明の関係がありますが、本年三月二十六日に東京弁護士会所属の弁護士の渡邊俊二と、弁護士高橋義一郎の両氏が東京地方檢察廳に出頭いたしまして、江口副檢事に非行があるということを申出ましたので同月二十九日この両氏をあらためて東京地檢に出頭を請いまして、事情をいろいろ調査したのであります。その問題になりました江口副檢事の非行というのは、いろいろ幾つもあるのでありますが、第一には八丈島の淺沼彌與太に対する百五十万円の詐欺事件について、その被害金が農民組合を通じて零細な金を集めたものであるのに、その金を返還せずに事件をうやむやにしているようだ、事件は八丈島区檢察廳から東京地檢に移送されたかもしれぬが、とにかくこの事件の処理の経過と結果を明らかにしてくれというのが、第一の点であります。
 第二はバター及び薪炭供出代金六十万円くらいの背任事件で、すでに前に八丈島警察署に告訴したのに、その後告訴人も被疑者も一度も取調べずにあるから、この事件も前同樣処理の結果を明らかにしてもらいたい。
 第三は八丈島の宇津木村長が背任嫌疑で、八丈島檢察廳で逮捕取調べを受けたことがあるが、この事件は村長の弁解や事情等をよく調べずして逮捕して、数日間強制收容をしたのは事件処理が適切でないと思われる。
 それから第四は、本年二月二十日ごろ、八丈島酒醸造所に八丈島警察署長が地檢に運動するからといつて、無キツプで酒一斗を納入させ、その代金を拂つていないようだ、但しそのことは江口副檢事が関係しているかどうか、これはわからぬ。
 それから第五は、かねて江口副檢事は八丈島簡易裁判所判事室に女を連れ込んでダンスをし、それを同裁判所の芝判事が昨年夏ごろ東京高等裁判所から出張した判事らに話したところ、その後江口副檢事は芝判事に対して変なことを言うと、命がないぞといつておどかしたことがある。こういうことです。
 それから第六は、先に申した第一と、第二、第三の事件について当局の取調べが進行せぬので、関係四箇村の村が集まつて、檢事正に事件促進の上申書を出すべく決議した。ところがこれを江口副檢事や、八丈島檢察署長が押えて、上申書を出させぬようにしているということ。
 第七は江口副檢事は火藥で魚を取つたという銃砲火藥取締法違反事件を処罪せずに見のがしていること。
 第八は、江口副檢事は署長とともに飲食して、同席の船長をして土地の有力者に暴行をさせたということがある。この種の事件はほかにも二件くらいあるはずである。
 第九は、江口副檢事は署長としばしば無銭遊興をしている。こういうことがあるからひとつ調べてもらいたいということを申出られたのであります。今申しましたうちの一、二、三の事件は、当時それぞれ八丈区檢から東京地檢に移送されておるのでありまして、この三件捜査のため東京地檢の沼里檢事が本年三月二十三日八丈島に出張取調べ中だつたので、さつそく出張中の沼里檢事に対し電話でこの両弁護士からの申出事項について、檢事正から調査を命じ、同檢事はその調査をいたしまして四月十八日帰廳しましたが、同檢事の報告によると、大体次のようなことになつているのであります。前申しました一の淺沼彌與太に対する詐欺事件は、八丈島区檢察廳で昭和二十三年五月十九日受理しまして、被疑者を取調べた後、同月三十一日に東京地方檢察廳に移送しております。また二の背任事件は、八丈島区檢察廳で同年八月十三日受理し、同年九月二十九日東京地檢に移送の処置をしておりまして、江口副檢事が不適正な事件の処理をしたという点が認められない。
 次に三の宇津木村長の菊地光逮捕事件については、八丈島支廳より宇津木村へ行政監査におもむいた際の監査報告書に、この村長に横領の疑いがある旨のことを八丈島警察署員が聞知しましたので、署長は刑事事件の捜査上必要ありとして、支廳長あてにこの監査報告書の内容を回答してもらいたいという文書を出しましたところ、支廳長は、この事件は行政事件だと言つて回答せず、署長は司法事件だと言つて両者が対立しておりまして、結局警察側は同村長に横領罪等の相当の機疑ありとして、裁判所の令状を得まして村長を逮捕し、及び同村長宅等について押收捜査をいたしましたが、この事件は本年二月二十日、八丈島区檢察廳に送致されましたので、江口副檢事はただちに被疑者を取調べて即日釈放しております。事件は同年三月四日東京地方檢察廳に移送しておりまして、この事件の処理について江口副檢事に不当の点は認められない。
 次に江口副檢事は八丈島簡易裁判所構内の地檢宿直室に家族とともに同居しておりました昨年夏ごろの夜、判事室で自分の妻やめいなどにダンスを二、三回やらせた事実はあるそうでありますが、女給を参加させたようなことはないとのことであります。
 次に、火藥で魚を取つたという、いわゆる重砲火藥取締法の違反事件の被疑者は眞野福太郎という男でありまして、この事件は江口副檢事の赴任前すでに東京地方檢察廳に移送されておりまして、東京地檢で起訴猶予処分になつておるので、江口副檢事に事件の処理上の責任はないのであります。
 次に船長暴行事件は、東海汽船の船長の元三根村村長が酒に醉うた上で口論をした事件で、すでに示談成立しましたので、江口副檢事は東京地方檢察廳檢事の指揮を受けて起訴猶予処分に付しておりまして、これまた江口副檢事に取扱い上不当の点はないと思われるということであります。
 次に、江口副檢事が署長と無銭飲食をしたという点につきましては、八丈島の料飲店十三軒中開業のもの十軒のうち、五軒と組合長について調査しましたところ、業者はかかる事実はないと言つておるそうであります。
 本年九月上京いたしました江口副檢事を、東京地方檢察廳において取調べましたところ、江口副檢事は大体次のようなことを申し述べておるのであります。前申しました一と二の各事件処理については、自分は八丈島区檢で事件を受理した後、被疑者の取調べを済ませ、遅滯なく東京地方檢察廳に移送しておるのであつて、処理上失態はない。
 三の宇津木村長の事件については、警察から身柄の送致を受けて、被疑者を取調べたところ、被疑事実を認めたので、調査書を作製して即日身柄を釈放し、この事件は遅滯なく東京地檢に移送して、これまた処理上の失態はない。
 四の酒等のことについては、自分は、全然関與しておらない。もつとも本年二月二十日ごろ、八丈島警察署の友利警部補が東京に出る際、おみやげとしてしようちゆう一斗を買入れ、船の便で東京に持つて行つたとのことは聞いておるが、これは檢察廳には全然関係のないことである。
 五のダンスのことについては、自分は家族とともに八丈島簡易裁判所の構内の区檢察廳の宿直室にとまつておつたころの昨年夏ごろ、判事の部屋で夜七時から約二時間の間、三、四回自分のめいらにダンスのけいこをやらしたことがあるが、ダンスの会合者は自分のめいを主とし、妻と区檢の女雇い人、それから裁判所の女の雇い、登記所長の奥さん、それから芝判事の娘さんらだけであつて、自分はもとよりこれに加つておらない。主として女同士の会合であつて、女給を連れ込んでダンスをやらしたということは全然ない。当時裁判所構内に家族と起居しておつたことと、夏の夜の氣軽さから判事室においてダンスをやらせたことについて、あらかじめ芝判事に許可を得なかつたが、このことについてはあとで判事におわびしておつた。その後間もなく、昨年夏ごろ東京高等裁判所判事と同檢察廳檢事らが八丈島に出張して來られたときに、旅館の席上で判事らから判事室ではダンスはやらぬ方がよいと注意されたことがあり、その数日後、芝判事に対し、旅館の席上であんなことを言われるのは困るですなと申した程度のことはあつたが、それ以上判事の体面を傷つけることは言つておらぬ。いわんや威嚇的なことは全然申しておらない。芝判事夫婦と自分夫婦と隣合せに住んでいるのであつて、現在までお互い仲よく交際しておるのである。
 なお六の点については、関係者から檢事正あての事件促進方の陳情書を出すことを自分が押えたというようなことは、これは全然ない。
 それから七の事件については、眞野福太郎が爆藥を拾つて自分の家に持つていたという事件で、この事件は自分の八丈島区檢に着任前、すでに前任者から東京地檢に移送してあつたもので、自分は関與していない。その後この事件は、地檢から起訴猶予処分に付したという通知があつた。
 八の事件については、昨年十二月二十九日ごろ八丈島海岸の荷扱所で、船長森勇輔氏が酒に醉つて元三根村村長山田と口論をして、山田をなぐつた事件があつたが、自分はもとより現場におらず、暴行を勧めたというような事実もない。この暴行事件は、その後事件として警察から送られたが、自分が取調べの結果示談も成立したので、東京地檢の檢事の指揮を受けて、本年二月二十日起訴猶予処分に付した。その他自分が船長を使嗾して他人に暴行させたというような事件は全然ない。
 九の事実については、自分は着任以來單独に、または警察署長らとともに無銭飲食的行為に出たことは、一度もないということであります。
 現在までの調査の結果によりますると、江口副檢事に両弁護士の申入れにかかるような非行、あるいはそれ以外、事件の不法不当の処理や、職務上の失態や、私行上の非違の点があつた事実は認められない。ただしダンスの一件は、近く芝判事その別の関係人から事情を聽取して、これは事実を判明させることになつているということであります。なお一、二、三の各事件は、東京地檢において大体捜査が完了しましたので、近く事件の最終的処理をする段階に至つておるとのことであります。三の事件に関連しまして、本年四月一日、八丈島警察署長から八丈島支廳長を公文書毀棄罪で告訴いたしておりまして、これは東京地檢で、目下捜査中にある、こういう報告になつております。
#29
○猪俣委員 大体わかりました。そこでまた事件は違うのでありますが、当法務委員会が調査をいたしました横浜地檢問題につきまして、その後東京の高檢の行政視察がありまして、例の後藤つぎ事件その他の事件をめぐりまして、東京高檢が調査に行つたはずでありますが、その結果はどういうことになりましたか、お漏らしいただきたいと思うのであります。
#30
○木内政府委員 先日も佐藤檢事長にお伺いいたしたのでありますが、何分事件が古いことであり、取調べもこの際徹底的にいたしたいというので、二人の檢事に担当させ、一生懸命やつておるそうでありますが、まだ最後の結論に至つていないということであります。いずれきまりましてから御報告いたしたいと思つております。
#31
○高木(松)委員長代理 ほかにありませんか――ちよつと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
    〔高木(松)委員長代理退席、委員長着席〕
    ―――――――――――――
#32
○花村委員長 速記を始めてください。
 これより司法試驗法案を議題といたします。御質疑はありませんか――なければこれにて質疑を打切り、ただちに討論に入ります。押谷富三君。
#33
○押谷委員 私は民主自由党を代表いたしまして、本案に賛成の意見を申し述べたいと存じます。本案はきわめて適切妥当なものと信じまするがゆえに、全面的にこれに賛意を表したいと存じます。
#34
○花村委員長 大西正男君。
#35
○大西(正)委員 私は民主党の委員といたしまして、本案に賛成いたすものであります。本案は最も時宜に適し、かつ内容において妥当なものと信じますので、賛成の意を表する次第であります。
#36
○花村委員長 上村進君。
#37
○上村委員 私は大体原案には賛成いたしておりましたが、いろいろその後公聽会等の意見を聞き、研究をした結果、どうしても一、二点の修正が必要であると考えたのでありますが、なかなかその手続が間に合わなかつたので、それは撤回いたしまして、ここで希望意見として述べたい。
 それは科目でございます。とにかく司法科の試驗は法律家の養成であるから、法律だけでいいということはきわめて單純な考え方でありまして、私はやはり司法修習生の試驗というものは、國家の人材を養成するという建前から採用してほしいという願いを持つておるわけです。その点から見て、資格試驗でなければならないということ、そしてその人材を養成するにつきましては、決して法律の試驗だけでは完成するものでない。どうしても法律というものは――結局裁判官になり、檢事になり、弁護士になるといつても、法律の適用あるいは法律の解釈というものは、ごく狹い範囲のものでありまして、大体いい裁判をする、いい弁護をする、檢察をよく取扱うといつても、大体はその人間の経済生活、あるいは社会生活、この点が十分考慮されなければ、決していい裁判官になり、いい檢察官になり、いい弁護士にはなれないと思う。ことに三権分立の新しい憲法の建前から行くと、裁判というものが一段と高い役割を持つて來ているわけです。そのときにこの裁判官が、單に法律だけを知つてたんのうであつても、この社会に適應するところの社会生活、経済生活、人間の生活というものに対して十分の理解がなければ、裁判というものは決してうまく行くものではないというふうに考えるのでございます。私どもが過去三、四十年の間、身をもつてこの試驗制度を体驗し、そうして司法の一員として弁護士をやつて來たその結果というものを、ずつと見渡して見ますと、いかに裁判というものが國家の興廃に大なる影響を持つておるかということがわかつたのでございます。私どもは支那の古い言葉にありますように、國家は人材を得て興り、人材を失つて滅ぶという原則を示されておりますが、まつたくその通りでありまして、日本の國家がかくも滅びたということは、日本に人材がなかつたということを証明するものであります。そうして特に日本の司法官――過去の司法官であります。現在の司法官ではありませんが、過去の司法官がいかに法律の技術家であつて、政治並びに行政に押されておつて、いわばこの法律を政治家、行政官、特に軍部、あるいは資本家というものの思うように適用して來たということは隠れもない事実であります。その意味におきまして過去の司法官は人材でなかつた、こう結論をしてさしつかえないと私は信じております。もしも司法官にして人材であるならば、ほんとうに三権分立の原理というものをその自分の持場々々に適用いたしまして、たといどういう行政、政治があろうとも、ほんとうに人民のために、人民の幸福のために、そして人民の発展のために法律を適用し、おそらく私はこの戰爭は食いとめることができたのではないかと思つておる一人でございます。かの今は廃止されたところの最も言論を圧迫し、人間の思想を圧迫し、そして人民の権利を蹂躙しておつたところの法律はすなわち治安維持法であります。しかしながらあの治安維持法というものは、解釈によつてはいかようにでも解釈ができたのでございます。私は現にその治安維持法の解釈にあたりましては、及ばずながらいろいろの立場からして弁論をし、主張をしたけれども、われわれの主張はとうとう通らなかつた。そして過去の政治家、資本家、あるいは軍部のためにつくつたところのこの惡い法律を、そのままそつくり裁判官が解釈してしまつた。こういうふうにして思想彈圧、いわゆる法律をまつたく死物としてわれわれ國民に押しつけて、そうして無謀な戰爭の協力者となつたではないか。これが過去のいわゆる法律だけで試驗されたところの司法官登用試驗の総決算であつたのであります。そのときもしもほんとうにその裁判官が人材であつて、ほんとうに三権分立という立場を侃々諤々として主張されたならば、われわれの主張もたまには通つたであろう。惡い法律でありましても、その惡い法律を人民のために、あるいは働く労働者、農民、一般市民の利益のために解釈されたであろうと思うのでありますが、ほんとうを言うと、ただの一つでもそういう立場からして判決が下されなかつたのでございます。惡法を惡法としてそのまま適用してしまつて、そうしてなお立法者においては、こういう治安維持法は社会運動には適用しないと当時の立法者が言つておつたにもかかわらず、しまいには社会運動者だけに適用したという裁判の事実もあるのであります。これらはすべて法律の技術家となつてしまつたところの結果である。そしてその根本は法律だけの試驗をして、そこで裁判官がいわゆる非常識、非社会的、こういう非難の的になつた。ある弁護士などは裁判官の化石化を主張して懲罰になつたこともあります。そんなわけでありまして、國家の一部分、すなわち三分の一を担当するところの司法官は、決して單なる法律の技術家であつてはならないというふうに私どもは考えます。いろいろ言えばたくさんありますけれども、趣旨はおわかりだと思いますから省略いたしますが、その意味において私が痛感しておることは、裁判官だからといつて法律だけの知識ではいけないということを、私は身にしみて頭の中にこびりついておるのであります。しかしながら私はそのこしらえた法律の弁護をするだけの立場でありまして、この立法府に参じたのは今年が初めてであります。この試驗問題の法律にぶつかつて、私の所信を述べることはまた私の義務であるのであります。しかしながらこれが修正案として出されなかつたということはまことに遺憾であります。しかし意見だけを述べまして、どうしてもこの項目の中に必須科目として少くとも経済学というものを一項加えていただきたい。受驗者にははなはだお氣の毒かもしれませんが、しかしながら將來の國家の人在登用のためには、その学生の苦しみもまたしかたがないと私は思う。でありますから、そういうことに思いをいたして躊躇する問題ではない。だからしてどうしても必須科目として少くとも経済学、人間が社会的生活をしておる以上は、経済学がどうしても必要である、それは大学だとか何とかで教えるというが、それはそれである。これは法律として科目を要求する以上は、どうしても経済学を入れるべきである。いわゆる経済の問題がわからなければ決してよい裁判はできない。いろいろな民事の爭い、刑事の大部分の犯罪はみな財産罪であり、財産的爭いである。そうしてそれがみな経済問題から來ておる。社会生活、経済生活に対してこの知識が裁判官、檢察官、弁護士にいらないということはないわけである。そうしてそれを必須科目にして選択科目といたしましては一番しまいに社会学を一科目つけてほしい。そうしてとにかく裁判官の法律適用の前提となるところの社会的現象に対する十分の認識力を與えるということでなければ、ほんとうの裁判、檢察、弁護ができない。そういう意味におきまして私修正意見を持つておつたのでございます。それから資格試驗でありますが今度は所轄は最高裁判所にするということは、これはやはり私は公聽会を聞いたりしまして、初めは賛成の意見を持つておりましたが、結局考えてみますと、裁判所法の司法修習生の試驗あるいはその卒業試驗、そういう試驗はやはり裁判所で管轄しておるのであります。これらはやはり一括して最高裁判所にまかすという議論は、この裁判所法の段階においては正しいと思います。それでそれを修正したかつたのであります。どうかそういう意味におきまして、よろしく御審議を願います。
#38
○花村委員長 猪俣浩三君。
#39
○猪俣委員 社会党の一致した意見を申し上げます。今上村委員の説にもわれわれ同感するもの多々あるのでありますが、この法案はどうしても今議会を通過せしめなければならぬ必要があると思うのであります。でありますから改正はまた他日に讓りまして、そして私も原則としては資格試驗が妥当であるという見解であります。そうして資格試驗が妥当であるならば、その管轄は法務廳であるべきはずである。採用試驗ならば裁判所という問題も起りますが、資格試驗が妥当であるとするならば管轄は法務廳である。これが理論が一貫すると考えます。ことに高等裁判所にあまり司法行政をたくさん持ち込むことはどうであろうかという考えもありますので、私は原案に賛成をいたします。
#40
○花村委員長 これにて討論は終局いたしました。よつてこれより採決を行います。原案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#41
○花村委員長 起立多数、よつて本案は原案の通り可決されました。
 なお委員会報告書の作成に関しては、委員長に御一任願います。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
    ―――――――――――――
#42
○花村委員長 なお法務行政に関し、法務総裁に対する田嶋好文君よりの質問通告があります。これを許します。田嶋好文君。
#43
○田嶋(好)委員 それではお許しを得まして、私から法務総裁に一、二点質問をさせていただきたいと思います。きよう私が質問を申し上げますことは、責任上から申し上げますと、直接法務総裁の責任には入らない問題かも存じません。本日は私は法務総裁を内閣の最高法律顧問たる地位において質問を進めて行きたいと思うのであります。事案の内容は、もはやあまりにも有名になり過ぎた事案であります。それは昨日各新聞に麗々しく書かれました吉村事件の証人として呼ばれました渡邊証人が、参議院の喚問を受けてから後、自殺をしたこの事件であります。私たちはこの新聞を見まして、非常に複雜な感情にかられたのであります。それは渡邊氏が、かつては日本の勇士として戰地に歴戰をし、かくかくたる名誉を持ちながら、命を全ういたしまして内地に帰つて参つたのであります。戰地に死ぬべき所を得ずして、内地に生を得たこの青年が、遂に参議院の在外同胞引揚特別委員会の喚問を受けるに至りまして、自己の生命を失つたばかりか、この渡邊一家というものは、破滅に瀕するまことに氣の毒な状態に陷つたのであります。これを社会的な非劇と言わなくて何と申しましようか。私はこれに越した社会的な悲劇はない。まことに渡邊氏に対して同情の意を表するものであります。
 そこで問題になりますのは、この渡邊氏を呼びましたのは、憲法の六十二條に基きますところの参議院の権限によつたものと本員は考えるのであります。憲法の六十二條には「両議員は、各々國政に関する調査を行ひ、」國政調査を両議院が行えるのでありまして、おそらく参議院も國政調査の目的によつて、この渡邊証人を調べたものと思うのであります。だが眞偽は別といたしまして、この新聞記事を通覽いたしまして、本議員が特に痛感いたしますことは、はたしてこの渡邊証人の吉村事件の取調べが、國政調査の範囲に属するかどうか。新聞記事の内容によると、これは國政調査を逸脱して犯罪捜査の面に重点を置かれ、しかも考えようによつては、司法裁判所の範囲にまで食い入つておるおそれがある、非常にそうしたことが痛感されるのであります。從つていかに憲法と申しましても、やはり憲法の各條項には、一定のわくがなければならぬのであります。ここには國政調査の範囲というものが、重大なる問題となつて浮び上つて参るのであります。これが無制限であるべきはずはない、こう本員は考えるのであります。從つてここで内閣の法律の最高顧問である法務総裁から、憲法六十二條に基く國政調査というものの範囲をお聞きしたいのであります。その次に、範囲をお聞きしますと同時に、こうした渡邊証人の取調べが國政調査の範囲の含まれるかどうかということをまず承りたいと思います。
#44
○殖田國務大臣 参議院におきまする、ただいまお話の事件の取扱い方は、外観より見ましただけではわかりませんが、たとい多少行き過ぎではないかと考える点があるといたしましても、これを憲法の解釈といたしまして、六十二條の限度を逸脱しておるものであると断定することはできないのであります。しかもこれは國政調査に当られまする國会の各院がみずから決定されることでありまして政府といたしましては、何らかの見解はありましても、これを國会の権能の運用に何ら干與せしめることはできないのであります。但しその國政調査の結果、あるいは告発等のことがありました場合に、法務当局は、また独自の見解をもつてこれに対処し得ると考えておるのであります。
#45
○田嶋(好)委員 この自殺をいたしました渡邊証人に対する新聞記事を読んで参りますと、参議院の渡邊証人取調べの手続上に、本員は非常に違法的な行為があつたのではないかと考えるのであります。
    〔委員長退席、高木(松)委員長代理着席〕
と申しますのは、証人の喚問には、第四各によりまして、民事証訟法の二百八十條と二百八十一條、これが準用せられることになつておるのであります。民事証訟法の規定を準用するということは、とりもなおさず渡邊証人の場合には当然に拒否権があるわけでありまして、証言をしないという権利を持つておるのでありまして、おそらくこの渡邊証人でも自殺するくらいの考えがある人であれば、その拒否権の内容を参議院がよく説明しまして、そうしてあなたは利害関係を持つ人間として、当然に証言を拒んでもいいのだ、陳述しなくてもいいのだということを、懇切丁寧に話してやれば、われわれが裁判所で経驗をいたしておりますようにやれば、渡邊証人もむりをしなかつたのではないかと、こう考えられるのであります。もし参議院がこうしたことに対する手続をしておりませんで、あえて証言を強要しておつたといたします。ここには違法があると思います。仮定論に立つのでありますが、違法があろうと思います。こうした違法のもとに、この証言が生まれたとした場合、参議院の責任はどうなるのでございましようか。これは参議院に聞いてみなければわかりませんが、聞く由がありませんので、もしそうした違法のもとに行われた証言であるといたしましたならば、参議院の責任というものはどうなりましようか。
#46
○殖田國務大臣 具体的な事実は、一層よく調査をしてみなければ何とも断定いたしかねますけれども、新聞等に現われておるところによりますれば、参議院のおとりになつたやり方は、必ずしも適切ではなかつたのではないかと考える点もありますけれども、これもその適否は参議院自身がお考えになることでありまして、政府といたしまして、何らこれに容喙する余地がないのであります。
#47
○田嶋(好)委員 そこでさつきも申し上げましたように、きようの法務総裁には、法務総裁としてのお問いでなくして、法律的な解釈をお伺いしたい、こう思つておるのでありますが、今の参議院が違法の手続によつて証人が証言しておつたものとするならば、参議院に法律的などんな責任があるか、こういうことをお伺いしたいと存じます。違法を参議院がしてもいいということにはならないと思う。そうした違法を犯しておつたとした場合に、参議院にはどういう責任があるか、これは法律的な立場から御説明願いたい。
#48
○殖田國務大臣 参議院の参議院として行動いたしましたことが、適法であるか違法であるか、これまた参議院御自身がおきめになるほかに道がないと思います。議院が自己の運用せんとする法律をみずから解釈し、これを適用いたしました場合、その行動の適法、不適法はこれは議院の自主性によつて判断をするほかに道はないと思います。
#49
○田嶋(好)委員 それと同じようなことになりますが、今のようなことで行きますと、國政調査等の場合、議会は國民に対してまことに切捨て御免で、法律的な責任を負わないということになりまして、何だかわれわれにも了解ができない点が生れるのであります。それと同じようなことで、新聞記事を見ますと、渡邊が偽証で告訴されるということをラジオが放送し新聞に書かれた。そこで渡邊はびつくりして縊死したというように報道されているのでありますが、まさかラジオなり新聞なりが参議院の発表なしに告訴されるということを報道することもないと思う。おそらく参議院が渡邊を偽証で告発するということの意思を漏らしたために、ラジオが放送し、新聞が取上げたものと思います。こうして場合、当然にわれわれの人権が蹂躙せられ、大変な名誉毀損にもなる問題がおきると思いますが、本人が名誉を毀損され、人権を蹂躙され、ついに死にまで至るというような場合、これも責任はどうしてとられるでしようか、同じような問いになるかもしれませんが……。
#50
○殖田國務大臣 参議院の責任を問う道は國会自身以外にはないと思うのであります。しかしただいまの偽証をもつて告発した場合に、具体的に言いますれば、その場合に法務当局はいかに取扱うか、こういう問題はあります。しかしこれも具体的に調べねばわかりませんが抽象的な問題として一應考えてみますならば議院におきまする証人の宣誓及び証言等に関する法律は、やはり憲法第三十八條第一項の規定のもとに解釈運用せらるべきものと考えております。從つて証人として議院において証言を求められた者が犯罪を犯して者である場合には、その者に対しまして憲法第三十八條の解釈上刑罰をもつて眞実の供述を強要し得ないと解するのが相当であると思います。從つてかりにその者が宣誓の上自分が刑事上の処分を受くるに値することを犯しているということを供述しませんでも、違法性はない。証人の宣誓及び証言等に関する法律第六條によりまして処罰はなし得ない、こう考えております。これは憲法第三十八條が前述のごとき基本的人権を保障しているからであつて、これは刑事訴証法の規定等とあわせ考えるべきであると思います。
#51
○田嶋(好)委員 法務総裁の御答弁といたしましては、それ以外にないと思いますが、しかし今の御答弁にもありましたように、われわれも参議院は違法を重ねておるように考えます。法律を無視してやつておるとまで考えられる。こうしたことに対しまして無責任であつては、やはり國政の運用にはならないと思う。そこで無責任にならないで、そうして法を守つてこうしたことをやるように、両院とも何かの処置を講ずる必要があると、法務総裁はお考えにならないでしようか、なかなかむずかしい問いになりますが。
#52
○殖田國務大臣 これは非常にむずかしい問題であります。大きく申しますれば、憲法を運用することの能否いかんの問題で、これは何といたしましても國会御自身がお考えになつておきめになる以外に道がない。私は日本の國会が決して間違つた運用をなさるはずはない、たまたま新しい憲法でありますがために、ときにはこれを逸脱するごときことありといたしましても、將來におきましては、必ずりつぱな運用をされるものと期待いたしておるわけであります。さような心配をする必要はないように考えております。
#53
○田嶋(好)委員 ありがとうございました。
#54
○眞鍋委員 私は必ずしも法務総裁のおいでを願わなくてもよいのでございます。御用がおありになれば御退席願つてもけつこうなのでありますが、実は昨日國家地方警察本部長官を本委員会に出席を求めまして、地方公安委員の権限についてお伺いいたしましたが、一向要領を得ませんので、法務廳の長官に対して質疑をいたしたいと考えます。事件は簡單なものでありますが、全國的な自治体警察の研究課題となると思います。私は徳島縣でありますが、徳島縣下において話題をにぎわし、事件の発生以來派生的な問題が発生いたしまして、今日まで半歳を経過し、今なおその解決を見ざる問題なのであります。事件は徳島縣國府町において、町長派と反町長派とにわかれ、これが原因となつて町長派の中部落の青年が、反町長派の府中部落の青年並びにお祭に出す屋台に対し、昭和二十三年十月十九日、氏神祭礼当日けんかをしかけたのであります。この計画がうわさに上り、警察署長はこれを憂慮いたしまして、両部落の神社総代を招致して注意を與え、警告を発し、当日は警官を派して適当な処置を講ずるから、万一の場合は総代も警察に協力して欲しいとのことであつたのでありますが、府中部落の側からは、極力回避を誓い、なお当日の朝念のために青年二名を派遣して中の青年に対し、事なきよう懇請を兼ねてあいさつをせしめたのでありますが、当日何らの原因もなく中部落よりけんかを賣りかけて参りまして、府中の屋台は、はやし台に登つているはやし子たち五名をおろして待避せしめ、百数十名のかつぎ手は道路のわきに待避をしたのでありますが、一方中部落屋台は無抵抗の府中側に対して、傍若無人に激突数回、リーダーの指揮に從つて府中の屋台に多大の損害を加えたのでありますが、この事実は臨監の警官も現認し、かつ警察署として事前に注意と警告を発し、そして責任上周到なる処置を施していたのであります。府中部落といたしましては、ただちに現場において警官が鎭圧し得ずと警察の無氣力、無責任をなじつて、口頭をもつて大いに訴えたのであります。本件に対しましては、すでに法務廳にあてて陳情書が到達しているはずであります。つきましては、これに対する御意見も定まつておられると存じますから、この際明確なる所見とその対策を伺うことができるならば仕合せに存ずるのでありますが、ここに陳情書がありますから、一應読み上げます。
    〔高木(松)委員長代理退席、委員長着席〕
   陳情書
一、自治警察署管下の治安維持の責任の所在について
 昨年警察制度に大なる変革を來し、警察の民主化を見るに至つたことは、吾人の歓迎するところであります。しかしながら警察の全機能をあげての民主化といえども、それにはおのずからその制度並びに職務権限の内容に限境のあるものと思われる。すなわち警察の民主的あり方として、公安委員会の有する権限は警察の運営と管理である。この運営は主として行政面及び警察人事等に関するものであつて、犯罪捜査のごとき司法権に属する事項は、公安委員会が選任したる自治警察署長が、直接の責任においてこれを行使すべきものにして、公安委員会は犯罪捜査の権を直接に有しないものと思われる。今仮に犯罪捜査の権までも公安委員会が有するものとするなれば、それは司法権を行使すべき自治警察署長の選任権の内容に含まれている、すこぶる漠然としての間接的のものであると解せられるのが妥当であると思われる。しからざれば犯罪捜査についても、自治警察署長は公安委員会の隷属下にあつて、公安委員会の指揮により司法権の行使をなさざるを得ない結果となるのである。かくては、自治警察に責任を有する署長の上にさらに公安委員会があるにおいては、署長たるの責任を完全に果し得ない場合が往々にして生ずるであろう。かくては署長はむしろ無用の長物たるの感を抱くのであると言うもあえて過言であるまい。いわんや三名の委員により組織せられた公安委員会なるがゆえに、犯罪捜査にまで常に会議制をもつて臨まんか、事態急を要し、あるいは祕密を保持すべき犯罪捜査も、時として長蛇を逸するのおそれなしとしない。ことに公安委員会は合議制なるがゆえに、たまたま意見の対立を來すこともあろう。この場合三名中委員長一名残り、二名の委員が意見の対立を見たとき、委員長の裁決により右とも左ともなり、その結果は、見方により合議制もまた委員長の独裁制に等しき結果となるのである。しかして公安委員たるものかならずしも司法権の運営上專門的良識を有するものとは認めがたいのであります。
 一面國家地方警察の長と自治警察の長とのことも、一應考慮を要するのである。すなわち司法捜査権においてその権限ないしは責任に大なる差異を生ずることを。公安委員会に犯罪捜査の権ありとすれば、当然の結果として自治警察署長の司法捜査権の発動抑止もあわせ有するのである。ここに実際問題としてわが國府町の公安委員会は(全会一致にあらず、三名中二名)公安委員会に犯罪捜査権もその権限内にありとして、自治警察署長に対し捜査権の中止を命じたのである。ここにおいて自治警察署管下における眞に治安維持の責任は果して何人に帰属するや、はなはだ疑わざるを得ないのであります。この点に関し責任の所在は公安委員会なりや、自治警察署なりやを明確にお示しを願い、將來われらの向うところを明らかにしたい。
 本年二月十九日附徳島新聞所載記事中「最高檢察廳では公安委員会に捜査権なし、また徳島地方檢察廳も同意見である」と福田次席檢事の談話的発表があつたが、國府町公安委員会は見解の相違として、自説を曲げないのでありますことは、治安維持上國家的見地よりしてまことに見逃せない重大事項であると思われるのであります。
一、事実問題
イ、屋台の被害に関して昭和二十三年十月十九日当地大御和神社例祭の執行せらるるにあたり、その事前に國府町自治警察署長は、同署管轄内の府中、中両部落(ともに同神社の氏子にして、慣例によりそれぞれの部落ごとに屋台を出し神に奉仕する)の神社総代の出署を求め、公安と道路取締り上の見地よりして、当日の屋台責任者を選定の上届出方の注意と警告を発せられたのであります。そこで府中部落はこの指示に從い、屋台責任者の届出とともに、進んで当日万一紛爭等の生ずるおそれある場合は、屋台乗子を待避せしめるとともに、一切は傍観的態度をもつて紛爭のらち外にあることを、口頭をもつて同署長に誓約したのであります。しかして國府町自治警察署長が事前に屋台責任者の届出を指示せられたことは、同署長としてはすでに両部落間の屋台に関し、紛爭の生ずべきを察知せられておつたものと思われるのであるがゆえに、この紛爭を未然に防止すべく行政的措置をとられたことは当然であり、またわれわれとしてもせつかく注意警告に対しては、特に円滑平和なる行事こそ神に奉仕するものの心構えでなければならない。しかるに相手方部落は、せつかくの署長の注意警告もこれを無視するのみならず、かえつて祭礼当日の朝に至つてそのうちの一人が警察署に出頭して、「今日わが部落民がいかなることをなすも、檢束または捕繩をかけたりしたら承知しない」と申し出、在署の巡査部長より嚴しく訓戒せられた事実もあるのであります。しかしていよいよ神輿渡御の前駆としてわが部落屋台が縣道路(神輿御成り道の一方の終点)に待避中、何らの原因もないのに、中部落屋台が突如としてわが部落屋台に対し、数回にわたり激突を加えたのでありますがために、わが部落の屋台は多大の損傷をこうむるに至つたのであります。しかしわが部落の屋台関係者一同は、先に警察署長に誓約せしことを忠実に実行に移したのであります。このことは現場に臨監せられし國府自治警察署在勤の巡査部長以下数名が現認せられておるのであります。よつてその夜ただちに自治警察署長に対し、口頭をもつて事情を具し、責任者に対する責任の追究その他善処方をお願いいたしておいた次第であります。このできごとを知つた被害部落の同じ氏子で神輿関係者である前町長原田量之氏が、事態を憂慮せられて、署長に陳情の半ばに出署せられ、事情を聽取せられるとともに、善処方を同氏よりもさらに要望せられたのであります。その後被害部落の代表者等がほとんど退署後に至つて、公安委員長の大江榮一氏が出署、事の成行きをこれまた聽取せられたのであります。從つて原田量之氏と大江公安委員長との出署時間差は少くとも三十分以上であり、かつ出署の事情も前記の通りおのおのの立場においてであることは、何人といえどもこれを否定することはできますまい。
ロ、公安委員会及び公安委員長罷免問題について
 國府町自治警察署長は前記届出に基き両部落関係者を招致取調べの上、一件記録を檢察廳に送付せられるべく万般の用意を整えられたのであります。しかるにこれを知つた公安委員は、委員長病臥中にもかかわらず、急遽に公安委員会を開催して、同署長に対し、本件の不審理並びに取調べ中止及び檢察廳報告中止を議決せられ、その旨依命があつたので、同署長は爾來本件の捜査ないしは記録の檢察廳送致を見合わせて荏苒今日に立ち至つておるのであります。本件発生当時にも、公安委員会の席上屋台事件が問題になつたのであるが、大江委員長が警察にまかして置くよう申されたのであります。その後において川野國府町長(加害部落民)が大江公安委員長が追放者(原田量之氏を指す)と同道して警察に出入し、あるいは追放者と氣脈を通じているとかの理由により、委員長罷免の議を國府町議会に提議せられたのであります。町議会は事の重大性にかんがみ、公安委員並びに警察署長の出頭を求め、事実を審議せられたのであります。川野國府町長がいう追放と、同道警察に出入しとは前顯の事実を歪曲せられたことと思われるが、証人の証言はその当らざる旨を述べられたので、罷免問題は否決せられたのであります。しかしてこの町議会の席上藤田公安委員(加害部落民)は「中村(加害部落を指す)の有志から穏便に済ますよう」にとの依頼もあつたので云々と述べられたのであります。事態右の通りでありますがゆえに、最後の手段として公安委員会多数の力により不審理決議をなして、本事件をうやむやの間に葬り去られんとしたものと思われます。しからざればこの見やすぎ一方的不法行為について、司法捜査権の発動を阻止し、円満解決の方途として公安委員があるいは個人の資格においてでも調停の労をとり、明朗平和裡に結末を告げられてこそ警察の民主化もまたうなずけるでしよう。
ハ、自治警察署の辞職勧告と町議会について
 國府町公安委員長(大江榮一氏辞任、堀井義雄就任)は自治警察署長に対し辞職を勧告した。その理由は、單に心機一轉のためで、別に理由はないと申しているが、いかに人事の任免の権を有しておつても、任免にはおのずから序あり、なかんずく罷免に関しては、最も愼重を要すべきはいまさら論ずるまでもないところである。しからざれば常に右顧左眄してその職に晏如たるを得ない結果、公正なるべき職務も完全に遂行しがたいのが通例である。いわんや警察官のごとき特に治安維持の重責を負うものにあつてはなおさらであることは、社会通念上何人といえども否定せないであろう。しかるを國府町公安委員会はこの最も重大なる人事の任免に関し、單に心機一轉のためとの理由においてこれを行わんとするは、あまりにも軽卒であり、怪訝の念も生ずるのである。從つて國府町議会は、公安委員のこの挙を知るや、議会にその出席を求め、証言を聽取するも、依然として他意なき旨を述べられたので、公安委員その者に対し不信の声起り、ついに公安委員に辞職を勧告するの議決をなすに至らしめたことは、みずから墓穴を掘るの挙に出たるの結果を見た次第であると思われる。
ニ、屋台事件とその仲裁について
 本件について國府町議会議長大貝麻義外二名の有志が居仲停調の労をとらるべく申出があり、わが被害部落は條件を付して調停を依頼したのである。ところが仲裁者と被害部落の代表者とが会見の席上、町議会議長である仲裁者は、その談話中に「本紛爭は町政に関係しておつてなかなかむずかしく」云々と言われたこともあるが、被害部落民としては何ら町政に関連性を有するものでない。紛爭は紛爭、町政は町政であると述べ、紛爭の單純性をもつて解決を望んだ次第でありますが、前顯の通り、公安委員会が不審理議決をなされた直後、仲裁者からも調停の手を引く旨の申出があつたのであります。
ホ、屋台事件と檢察廳について
 屋台事件にからんで公安委員会が司法捜査権の発動を阻止せられたこと、ないしは最高檢察及び徳島地方檢察廳においても、公安委員会に捜査権なしと解明せられており、また屋台事件について被害部落より捜査権なしと解明せられており、また屋台事件について被害部落より捜査方の陳情もいたしてありますが、事件発生後すでに六箇月になんなんとする今日、なお何ら調査に着手せられたことを聞かない。もつとも被害部落よりは、さきに調査方の陳情はしてあるが、正式の告訴状は出しておらなかつたのであるがゆえでもあろうから、四月四日付をもつて新たに告訴状を提起した次第であります。ここに事実を具して治安維持上格別の御配慮をお願いするとともに、左記事項について特に明確なる御回答を煩わす次第であります。
   記
  一、公安委員並びに委員会に與えられたる運営管理の範囲内に事犯の捜査を命令し、中止し、停止し、檢察廳に報告を中止せしむる等、いわゆる捜査権限が含まれるやいなや。
  二、含まれないとするならば、本件のごとき公安委員会の行為を匡正し、被害者を救済する方法いかん。
  三、警察を政治から擁護する建前上、公安委員と町首長とが連絡の上、警察の運営管理に介在し、辞職の強要、罷免の手続等は許されるものなりや。
  四、町首長が直接縣國警隊長に対し、公安委員長を帶同して署長の更迭辞職の強要等をなし得るものなりや、かつこれらは政治に関連せるものと解せられざるや。
 以上であります。これは昭和二十四年の四月徳島縣名東郡國府町府中の大御和神社総代岸野理三郎と同じく宮北虎吉並びに屋台関係者七名から、今申し上げました通り東京最高檢察廳官、裁判所長官、法務廳総裁にあてて陳情書を出してありますので、すでにこれらの件についてお考えなり、また救済策もおありになることと存ずるのでお伺いする次第であります。
#55
○殖田國務大臣 ただいまお尋ねの件はかなり複雜な問題でありまして、お話のごとくすでにその報告を受けておりますので、直接の当局者でありまする檢務長官からお答えした方が便利だと思いますから、さようにいたします。
#56
○木内政府委員 この祭礼紛爭事件の告訴に対する捜査の経過については、まだその点については報告が來ておりませんから、おそらくまだ捜査中であろうと思うのでございます。なおその法律の解釈につきましては、公安委員会の運営管理の中には、捜査に関する指揮も含まれておる次第であります。從つて運営管理権を有する公安委員会は、当該警察官または警察吏員に対しまして、特定の犯罪事件の捜査の開始、停止、または中止等の指揮をすることができることは当然であります。しかしながら司法警察員は刑事訴訟法二百四十六條の規定によりまして、犯罪の捜査をいたしましたときは、すみやかに事件を檢察官に送致しなければならないことになつておるのでありまするから、公安委員会は司法警察員に対しまして、特定の犯罪事件を檢察官に送致してはならないというような指揮をすることはできないのであります。もしこのような指揮をいたしました場合においては、その指揮は法律に違反するものであつて、無効であるのであります。またもし司法警察職員が特定の犯罪事件の捜査中に当該公安委員会から捜査中止の命令を受けましたときは、司法警察員はそれまでに捜査した限度において、すみやかに事件を書類及び証拠とともに、檢察官に送致しなければならないのであります。
 次に公安委員が不当な捜査指揮をいたした場合の措置といたしましては、法律上は次のような手続が考えられるのであります。その一つは、被害者その他の者は当該刑事事件を檢察廳に告訴または告発することができるということであります。その第二は、当該市町村における選挙権者は、地方自治法第八十六條の規定によりまして、市町村長に対し、当該公安委員の解職の請求をすることができるのであります。その第三は、市町村長は公安委員の職務上の義務違反があると認めましたときは、市町村の議会の同意を得まして、これを罷免することができるのであります。
 次に市町村長は、警察の運営管理に干與することは許されないのでありますが、公安委員会は警察法第四十七條の規定によりまして、当該市町村の條例に從い、一定の事由により市町村警察長を罷免することができるのであります。
 次に都道府縣國家地方警察隊長は、市町村の警察長に対し、任免権を持つていないのでありまするから、法律上はこれに対し市町村の警察長の更送、辞職を強要することはできない、かように考えておる次第であります。
#57
○眞鍋委員 大体わかりました。事実はお手元にある陳情書同樣のを私の方に一部送つて参りましたから、読み上げました通りであります。六箇月を過ぎてまだただいま申し上げたような状態であつて、檢事及び署長は、治安上公安委員なるものは捜査権はないと主張しておるのに対し、徳島縣の金谷縣國警隊長と町長は、法の解釈の相違であるとして、がんとして動かないというような調子でありまして、一向檢事に対しても報告をせず、事件を半歳の長きにわたつてそのままにして置いたのでありますが、今の御答弁によりますと、公安委員は署長の犯罪捜査中止の権限なしとは言えないようであるし、しかし檢事がその事件を取上げて犯罪捜査をやらすことはできるのであつて、檢挙は公安委員の指揮に何ら関することなく、どんどんやればいいのだけれども、その檢事が一向それをやらなかつた。もつとも告訴したのは四月四日とか言いますけれども、これだけ一縣の問題となつてやかましく言つておるのに、檢事としては何らかの手を打たなければならなかつたと思うのですが、今日まで打つておりません。けれどもこの救済策としては、民事といたしましては、加害者を相手取つて損害賠償の訴えを提起することができる。また一方刑事訴訟を提起して、訴訟の上で相爭うこともできるのみならず、今仰せになつたリコール問題ですが、これは行えばやることもできるけれども、リコールということは、そういう紛爭した村ではちよつと成功しそうもありません。さしあたりいろいろ私ども考えてみますと、法律に無知なるしろうと委員が、捜査にまで立入ることはまつたく危險である。不法なる委員なり、町長が現われると、地方の自治を破壊し、町村の自治の安寧秩序を乱して、國民は極度の不安を感じておるような次第でありますが、これらに対して、中央において今仰せのような対策がありとしても、その権限は大した権限がありそうにも思えません。ただ手をこまぬいていたずらに地方公安委員の急速なる発展を望むといたしましても、練達堪能の士はしかく容易に得られるものではなく、また英米並にわが國民の常識が発達しておつたならばともかくも、今日のわが國の現状よりいたしましては、なかなかそれが英米並の関係常識に國民が達するまでには相当の時日を要するとして見ると、こういうような事件が頻発することになりますと、その対策の考究を必要とするのではないか。さしあたり今申し上げましたように被害者が方々にあるといたしたならば、國会といたしましても大いに考慮しなければならぬ。あるいは議員を派して、その眞相を確かめ、適当な処理を講ずる必要もありと信ずるのでありまして、どうしてもこれは國会といたしましては、州の決定――アメリカの州と日本の各縣とはよほど違つておるのであるから、これらの点から考慮してみると、今申しますように、民主主義はまことにけつこうだけれども、國民がそれだけ進んでおらず、また法律に無知なるしろうと委員が多数であるとしたならば、よほどここに対策を講じなければならぬ。この対策について法務廳総裁はどういうようなお考えを持つておられますか、伺うことができましたならば仕合せに存ずる次第であります。
#58
○殖田國務大臣 まことにごもつともな御意見でありまして、この問題につきましては、政府におきましても実はいろいろ考えておるのであります。國家警察の問題、地方自治警察の問題及びそれらと政府との関係等につきまして、今日の制度は当初の民主化の目的を十分に達するのに不適当ではないかと思う節々がございますので、目下各関係者におきましていろいろ檢討をいたしております。しかしながらここですでにこういう策があると申し上げるほどに至つておりませんので、お話のごとく大問題でありまするから、今後も十分研究いたしまして、いずれ適当なる対策を立てたいと考えております。
#59
○眞鍋委員 これは委員長に御相談したらいいか、あるいは法務廳の方へお願いしたらいいのでありますか、地方では当時全國的にこういうような例がたくさんあつたとしますと、今申し上げますように、地方の自治の発達を早急に望んでも望めぬ。そうするとさしあたりこういう問題をとらえて、國会から議員でも派して調査をして適当なる処置を講ずる。そうすればそれが全國的にだんだんと廣まつて、かかる不法なことを阻止するのに大いに効果がありはせんかと思うのが一点、もう一つはぜひこれは國会に特別の委員でも設けて、この欠陷を早く補つて、かかる場合に対処をする必要があるように私は考えますが、いかがでありましようか。
#60
○花村委員長 ちよつと速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#61
○花村委員長 速記を始めてください。ほかに質問される方はありませんか。
 では本日はこの程度で散会いたします。
    午後六時三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト