くにさくロゴ
1947/11/11 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第49号
姉妹サイト
 
1947/11/11 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第49号

#1
第001回国会 本会議 第49号
昭和二十二年十一月十一日(火曜日)
   午前十時十八分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四十八号
  昭和二十二年十一月十一日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第四日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件、(第四日)、昨日に引続き質疑を許します。波多野鼎君。
   〔波多野鼎君登壇、拍手〕
#4
○波多野鼎君 今度上程されましたいわゆる追加予算案につきましては、同僚議員諸氏から各党各派の立場を以ちまして傾聽すべき批判を展開されましたので、私に取りましては余り論ずべき問題がないかとも思いますが、併し立場が違えばおのずから問題の捉え方も違うわけでありますので、私は社会党の立場から、概括的ではありますけれども併し具体的に問題を検討しまして同僚諸氏の御清聽を煩わすと共に、政府、殊に今次の予算の編成の直接の責任者である大藏大臣に対しまして、深甚なる考慮を促したい諸点を披瀝したいと思うのであります。
 大蔵大臣はこの度の財政演説におきまして、今度の予算は健全財政の建前に立つ均衡予算であるということを力説しておられたのであります。例えば当初予算に計上してあつた四十八億円の赤字を、これを解消すると共に、すべての支出を税収入によりて賄うことができた。これは均衡の取れた予算として大成功を攻めたものであるというようなことを論じておられました。今度の追加予算の編成について大藏当局の拂われた苦心に対しまして、私は察するに余りあるものがありますが、大藏大臣の演説を聴いておりますと、均衡予算ということと健全予算ということを混同しておられるのではないかという感じを深くせざるを得なかつたのであります。そこでこの点について私の考えを申述べて見たいと思うのであります。均衡予算ということは、言うまでもなくこの歳入と歳出との辻棲の合つた予算であるということでありましよう。歳出が例えば九百億、歳入も九百億であるならば、その歳入がどのような方法で調達されたにしても、又歳出がどのような性質のものであるにしても、とにかく数字上の辻棲が合つておりますので、これは均衡予算という名を附けるのに差支ないものであると思います。併し健全予算ということは、これは今申上げた均衡予算ということとは内容の違つたものであると私は思うのであります。即ち國民生活の安定、国民経済の発達、或いは今日我が國がその重大使命としております所の文化國家の建設ということに役立つ内容を持つた予算でなければ、これは健全予算と名附けるのに妥当でないと私は思うのであります。均衡予算であるかどうかということを判断する物指しと、健全予算であるかどうかを理断ずる物指しとは、このように違つておるものと私は解しております。さて、このような見地からこの追加予算を大観して見ますと、均衡予算であることは疑いないのでありますが、併し健全予算ではないという感じを深くせざるを得ないのであります。而も歳出と歳入の均衡を図るに急なるの余りに、その予算の健全性、例えば國民生活の安定とか、或いは文化國家の建設とかいう面を犠牲にした予算ではないかということを感じざるを得ないのであります。それではどのような点がそのようなことになつておるか。若干の点を申上げて見ましよう。先ず歳出と歳入の均衡を保一つ方法として取られた重大なる点は、次の三つではなかろうかと思うのであります。一つは主要食糧に対する價格補償金を十一月以降全廃したこと、これによりまして恐らく百億近くの予算、百億近くの價格補償金を節約しまして、これを全部消費者に轉稼してしまつたということであります。第二は当初予算に組んであつた所の丁度百億に上つておつた金融再建補償金を落してしまつたということであります。このようにして歳用を節約すると同時に、歳入の面におきましては、煙草の値上によりまして二百六十六億円の増收を図つたということ、この三つの方法が主たる方法として、收支のバランスが合せられたと考えざるを得ないのであります。主食、特に米穀でありますが、米穀の農家からの買上げ價格が御承知のように石当り千七百円に引上げられました。而も價格補償金を廃止しました結果として、米の消費者價格は十キロ当り九十九円から百四十九円六十銭に跳ね上つております。千八百円ベースの基準となつた米の價格がこれだけ上つたのであります。若し千八百円ベースの維持の決意が固いならば、十キロ当り九十九円というあの千八百円基準を決めた時の消費者過格を維持する必要があつたと思う。そうしてこれを維持するためには、十一月以降來年の一二月末までに概算百億の價格補償金を出す必要があつたと思うのであります。併しながらこの補償金を打切つてしまつた。そうして全部消費者に米價の値上りの負担をかけてしまつた。これでは、こういうことをしておいて千八百円ベースを堅持するというふうに説かれても、國民は恐らく納得することができないであろうと思うのであります。大藏大臣は財政演説におきまして、今度の追加予算によつては物價に直接の影響はないということを繰返して説いておられましたけれども、我々は直接の影響がなしということについて十分納得することができないのであります。
 第二の点でありますが、当初の予算に組んでおつた金融再建補償金百億、これを打切つた理由はどこにあるだろうか。金融機関の再建整備が遅れて、これを支出する必要が年度末までにはないだろうというのがその説明の中心であつたようでありますが、私はこの点についてこういうことを思う。百億というような莫大な数字のものを当初予算に簡単に組み込んで置いて而も追加予算で簡單に打切つてしまうということは、相当大きな問題じやないかと思う。恐らく当初予算を出された時には、百億の補償金は是非共必要だということを力説して計上されたに違いないと思う。ところが今度は簡単にこれを打切つてしまう。こういうことをなされると、予算の数字について国民の疑惑が高まる慮れがあるのであります。今後はこういうことを絶対になさらんように、予算に計上される数字は是非共その年度内に必要な数字に限つて頂きたいということを切望すると共に、この百億の補償金を打切られた理由が、單に金融再建整備が遅れておるためであるのか。若しくはその外に何らかの理由があるか。例えばインフレーシヨンの進行によつて銀行資産の内容が相当強化されて、もはや百億近くの補償金を與えないでも、小額の預金者に迷惑をかけることがなくなるような事態が來ておるということを見通しておられるのか。その辺の事情もはつきりさして頂きたいと思うのであります。
 第三の点、煙草の値上でありますが、大藏大臣は、煙草は余り値上げしなかつた。配給煙草の値上げはしなかつたということを力説しておられます。併し配給量はうんと削減されました。從來男子は月百二十本、女子は月三十本という配給量であつたのを、今十度は男女共に月に五十本に減額されました。そうして、こうして浮いたところの煙草の原料を以て「ひかり」を作つておられる。「ひかり」の値段は今までは四円であつたが、これをピースの方に廻して、而もこれを五十円で賣るというのであります。正に十二倍の値上であります。又從來の配給に充てておつた「きんし」の原料で以て「しんせい」を作つてこれを四十円で賣るという。今まで二円五十銭であつたものを四十円で賣るのでありますから、これは十六倍の値上であります。月五十本の配給量だけでは到底十分でないということは申上げるまでもない。殊に働く者に取りましては、煙草は一つの必需品にさえなつております。勤労と休憩、休憩なくして勤労はない。勤労には必ず休憩が伴つて來る。而もその休憩ということは、我々は昔から煙草にするとか、或いは一服吸うとかいう言葉で言つてるように、休憩ということには煙草は附きものになつておる。そういう勤労者に月五十本の配給しかないということになつて來ますと、どうしても五十円のピースとか、或いは四十円の「しんせい」といつたものを買わざるを得なくなつて來る。だから勤労者の生活費は飛躍的に増大する危険がある。千八百円ベースを直接に脅威する事実であると思うのであります。
 かように今度の追加予算は物價体系に直接影響するような歳入の上げ方をしておるのでありまして、大藏大臣が何度直接の影響はないと言われても十分な納得をすることができない。そこで私は、この物價体系を堅持する建前を相変らず持続をれるのか。或いはこれに対して檢討を加える覚悟の上でこの予算を出されたのであるか。この点についての政府当局の明快な御答弁を願いたいと思うのであります。
 これを要するに、主食に対する價格補償金を廃止したこと、煙草の値上をやつたことによりまして、消費者には合せて四百億円近くの負担の加重が行われたわけであります。そういう加重をしてそうして歳入歳出の辻褄を合せたということになつておるのであります。この意味におきまして、果して今度の追加予算は健全予算であるということを誇ることができるかどうか。私は絶対にできないと思う。(拍手)勿論今日我が國は未曾有の経済的困難の時期にありまして、これは我々が日々刻々身を以て体驗しつつあるところであります。国民経済が全体として破滅の一歩前にまで來ておるというような緊迫した時期であります。この時期に健全予算を組むということは殆んど不可能に近いと私は思う。現に今指摘した通りのいろいろ不完全な要素が含まれております。にも拘わらず、これを健全予算だというレツテルを貼つて国民に押しつけようということは、どうも却つて國民の疑惑を招くだけであつて、むしろ私はこの困難な時期であるが故に、健全予算を組もうと努力したけれども、この程度のことしかできなかつたんだということを率直に申された方が、国民の共感をかち得るのではないかと、こう思うのであります。(拍手)私は均衡、つまり歳入歳出の辻褄を合せることに急なるの余り、財政の健全性ということについて考慮が足りなかつた点を甚だ遺憾に思うのであります。
 それでこの問題に関連してもう一つお尋ねして置きたいのは、予算の健全性と均衡性とが衝突した場合、均衡性の方を或る程度犠牲にしてもその健全性を確保する方針を取るつもりはないかということであります。言葉を換えて申しますと、歳入歳出の辻褄を合せるにあらゆる努力をしても、尚一定の赤字が生れる。而もその赤字を消そうとすれば國民生活に重い重圧を加えざるを得ないというような、ぎりぎり一ぱいの場面に到達した場合には、その赤字を消すことを止めて國民生活に対する重圧の方を差控える。即ちぎりぎり一ぱいの場合には敢えて赤字予算を組む。いわゆる生産公債の概念を取り入れて來て赤字予算を組むという方向に進む意思はないかどうか。これは來年度の通常予算の編成期に当つておりますので、政府の側がこういう点についてどういうお考えを持つておいでになるか。これをお尋ねして置きたいと思うのであります。
 次に健全予算と健全金融との関連について一二尋ねて見たい点があるのであります。今度の追加予算に、大藏省証券の発行高並びに日本銀行からの一時借入金を、当初の予算の百五十億円から四百億円に増額することになつております。つまり二百五十億だけ増額しようとしております。この大藏省証券並びに日銀からの一時借入金が租税収入の瞬間的ズレを補填するために必要であるということは、よく我々の理解し得るところであります。併し租税の負担が、先日の財政演説におきましては、すでに國民所得の二三%に達しておるという事実も指摘されたし、又從つて租税の滞納も百億に上つておるという事実も大蔵大臣が指摘しておる。かようにして租税収入を掛收入を挙げる途が、これ以上多くの増収を挙げる途が非常に困難な時期になつておる。その時でありますからして、大蔵省証券、並びに日銀からの借入金の増額をするということは、これは下手をすると、財政上の赤字、つまり租税収入の時間的ズレ或いは滞納を金融操作によつて補うということになる危険が非常に多い。若しそういうことになりますと、均衡財政、均衡予算というその性格さえも、この面から壊れてしまうのであります。そこでこの一時借入金や大蔵証券発行を四百億円の限度まで認めるにいたしましても、この運用につきましては政府の方でも十分な考慮を拂わなければならない。いかなる用意を持つておいでになるか。大蔵大臣は税務官吏の優遇をやることが、或いは徴税の督励を司る。或いは納税について国民運動を起すというようなことを言つておられましたけれども、果してそういうことでこれだけの税收を挙げる確信があるのか。そうして四百億円に上るこの大蔵省証券の発行を限度以内に止める自信があるかどうか。この点についてお伺いしたいと思う。
 それらもう一つの点は復興金融金庫の問題であります。この復興金融金庫の資金は、百億円から五百五十億円に増額されております。このうち政府の拂込金は百四十億円でありますので、三百億円以上はこれは復興金融債券の発行によつて復興金融金庫が賄う仕組になつております。ところが、この復金債券が市中銀行に消化されて行くならばこれは大して問題はありませんが、従來の実績を見ますと、復金債券のうち約一〇%だけが市中銀行に消化されまして、九〇%は日銀引受になつてしまつております。日本銀行が持つておるところの通貨造出の機能を使いまして、復金はその資金を調達し、そうしてこれを産業界に融通しておつたのであります。このようなやり方は一種のインフレ金融であり、不健全な金融であると申さねばなりません。この議場におきまして、復金の融資が赤字金融になりはしないかということを同僚議員が質問されましたが、この場合、復金の融資が赤字金融になるのに一つの途ガあると思う。一つは融資を受ける企業が赤字補填のために融資を受ける場合であります。これは明白に赤字金融であります。これはできるだけ今までの融資懇談会とか或いは委員場会などを改組して、或いはこれを組織替えして、そうしてできるだけこれを防ぐ手段を講ずるということを大藏大臣が答弁しておりました。これは別といたしまして、復金の融資が赤字融資になるもう一つの場合がある。それは復金が融通する資金をどういう方法で手に入れるかということでありまして、今申上げたように日銀に復金債券を引受けて貰つて、そうして資金を手に入れる。これを融通するならば、どのような健全な企業に融通する場合におきましても、これは赤字金融と言わなきやならない。なぜなら復金の融通資金そのものが赤字金融的な方法で調達されたものでありますから……で、この後の点につきましても大蔵当局においては深甚な注意を拂つて頂きたいと思うので、この点について大藏大臣は、復金債券を市中銀行がうまく消化するように、銀行シンジケートを作つて行きたいというような意向を漏らしておられたと記憶しております。この私の記憶に誤まりないとしますと別の問題が生ずる危険があると思う。これは独占禁止法の精神によりまして、銀行間の預金利子の協定さえも止めになつた様子であります。預金利子の協定さえも独占禁止法の精神に反するという意匠で止めになつておる。そのときに復金債券の引受シンジケートを作るということが果して独占禁止法の精神に抵触することはないかどうか。これを一つお伺いして置きたいと思うのであります。
 以上のようにして見て参りますと、健全財政、健全金融の点において相当の欠陥がありますが、それなら角度を変えまして、収支の均衡を図る途は外になかつたんだろうかということを考えて見たいと思う。私は他に多少の途は残つておるのではないかと思うのです。一つは戰時中の公債の利子の問題であります。戰時公債という名前を打つて出した國庫債券、その他例えば報国債券とか貯蓄債券とかいうもの、こういうものを一括して考えて見ますと、私はこれは大体日華事変の始まつた時から太平洋戰争終結のこの期間内に発行された公債をすべて戰時公債と考えていいと思いますが、その間の公債は概算千億に上つております。三分五厘といたしまして年間の利子三十五億、これが少しも手を着けられておりません。この追加予算を見ますと八十一億の公債利子が計上されております。従来とてもこの戰時公債についていろいろ論議がありましたが、例えば戰時公債の利子を大幅に引下げて見たところで、或いは又これを全廃して見たところで、その金額は知れたものだという反対論もあつた。或いは又そういうことをやれば金融界に非常な大きな変動を與えて困る。その面で非常な弊害があるからいけないという反対論もございました。いろいろありますが、私はたとえ少額であろうとも、この戰時公債の利子を全廃とまでしなくとも、例えば一分に切り下げるというようなことをしただけでも、年間二十五億の利子は浮くのであります。国民のうち優秀な青年は、戰場の露と消えたのが沢山ある。國内の人も家財を失い、國を焦土としたにも拘わらず、戰時公債を持つておる人だけは從來通りの利子を支拂つて貰つておるということは、どう考えでも均衡がとれない話であると思う。(「その通り」と呼ぶ者あり、)(拍手)そこで、たとえ少額でありましても、この利子の大幅の切下げ、例えば一分にしてしまうというぐらいの方法を講ずることが必要でないか。又そういう方法を講ずることによつて金融界にどれだけの影響があるか。先程申上げましたように、ここ一二年間のインフレの進行によりまして銀行資産の内容は相当私は改善されてしまつておると思う。大口の公債の所有者である銀行が、受取る公債の利子が一分に減つたところで、そのことによつて銀行が非常な打撃を被つて預金者に迷惑をかけるというような時代ではないと私は思う。この点をどうお考えになつておるか、お伺いしたいと思うのです。
 それから第二の点は、もう一つ收入の面から見まして、この前大藏大臣の演説の中にこういう一節があります。今日自由預金は非常な勢いで増加しつつある。月に大体百五十億見当の割合で自由預金が倍加しつつあるということを説明しておられました。この説明を聽いて私は、非常な奇異な感じに打たれた。誰も彼も赤字の生活を営んでおるのだ。誰も彼も赤字生活、笥生活を営んでおるのだと思つておると、一方においては、どこから入つて來るか知らんが、一ヶ月百五十億の自由預金が増加するという。これだけの預金をどういう人たちがやつておる、だろうかということをどうしても考えざるを得ない。私は預金となつておるもののいわゆる祕密性とか、或いは預金の自由性というものについて言おうとしておるのではありません。そうでなくて、そういう預金をするような余力が一体どこから出て來るのだろう。これについて大藏当局の方では徹底的なメスを入れて検討して御覧になる必要があると思う。こういうような預金をなし得る人は、同時に多額の租税を負担する力を持つておる人であります。一方においては筒生活をやつておる人があるのに、他方においてそういう多額の税の負担をなし得る幸福な人々がおるならば、そういう幸福な人たちにもこの日本の再建のための重い税金を負担して貰うことは当然ではないか。その方法を講ずべきではないかと思うのであります。(拍手)次に歳出の面を見ますと、價格調整費がこの七月から來年の三月上旬までに百三十一億円だけ計上されております。そのうち鉱工業品に対するものが百五億計上されております。私は、物價体系を維持するために、生産費の高い基礎的な第一資材、これの價格を戰前の六十五倍の安定帶にまで引下げるために、ここに持つて行くために、そういう生産費の高い基礎資材の生産者に対して或る程度の調整費を與えるということは、これは止むを得ないと思いますが、こういう調整費の使い方というものは非常に弾力的なものであろうと思う。ややもすると浪費に陥る危険のあるものだろうと思うのであります。そこで私はこの調整費の使い方について、もう少し愼重に考えて頂きたいと思う。それは企業家の側で、生産費が高く附いたところで、どうせ戰前の六十五倍のところまで引下げるために調整費を呉れるのだからという氣持を、仮に企業家の側が起しますと、いわゆる経営の合理化とか、生産技術の向上とかいう点についてどうしても疎そかになつてしまう。リベラルにこの價格調整費を支出しましては、日本の産業建設はできないことだと思う。むしろ私はこの調整費はできるだけ節減いたしまして、企業家側に経営の合理化、技術の向上について努力して貰うように仕向けて行くのが日本再建のために必要なる手段ではないかと思う。この百三十一億、特に鉱工業品に対する價格調整費百五億、これについてもう一度検討して貰う必要があると思う。この点についての政府当局の御意見を伺いたいと思う。
 以上の外に行政費の節約の問題があります。同僚議員の方からも指摘された点でありますが、これは政府当局が来年度の本予算において、十分その趣旨を実現するということを言つておられたので、これを信頼して置きますが、ただ一言注意すべきことは、人員の節約ということに手を着ける前に、官職の定員と実員との開き、これに着目して頂きたいと思う。この実員と定員との開きが大体一五%見当あるのじやないかと思う。人件費を定員によつて取り、支給を実員によつてやるというころからいろいろ行政費の濫費が起る可能性が生れて來るので、この実員と定員との開きを無くするという点に努力を拂つて頂きたいと思うのであります。
 時間がありませんので急ぎますが、もう、一つこういうことを申上げたい。この追加予算において我々が特に氣が附くことは、必要な支出の中で削減されているものがあるという点であります。一つは六・三制の問題であります。新制中学の制度の問題であります。この新制中学制度を実行するために追加予算では僅かに七億円が計上されておる。文化國家の建設と言い、民主主義の普及徹底と言い、片山内閣としては重大な政策の一つであるのに、僅か七億円、國債の利子の支拂には八十一億円を計上し、六・三制の実施には僅か七億円、一割にも足らない額を計上しておる。煙草の値上によつて二百六十六億円の増収を図つている。その増收分の僅か三分にしか当らない七億しか計上されておらない。我々は、次の世代を担うべき國民を養育する経費がこんな少額で、而も公共事業費の片隅にちよつぴりと盛られておるということには、非常な遺憾を感ずるのであります。(拍手)私は現内閣の文教政策というものが強力に推進されることを期待しておつた。こんな予算の組み方ではこの期待を裏切られたという感じをせざるを得ないのであります。(拍手)この点について政府当局の明快な御答弁を國民の前にして頂きたいと思うのであります。
 もう一つの点は、東北、関東地方の風水害に対する対策の問題であります。これは公共事業費の中から三十四億円を計上しておられます。これだけの額で來年の梅雨季に再び東北、関東地方が泥沼となることを防ぐことができるかどうか。この廣大な地域の應急策としてでも三十四億というのは少額に失しはしないか。東北、関東の風水害の地帶、これに対して應急的な修理を施さなければ再び今年と同じような災害が來る。而も今年程の多量の雨が降らなくても、僅かな雨でも恐らく今年と同じような災害に見舞われることになると想う。災害が来年も続くといたしますれば、この地域の人たちは郷里を失つて流浪の民とならなければならない。長年、相先薄束、苦心して来たところの田畑を水の下に没しなければならない。この地方の災害は今年限りじやない。来年も再來年も、その機会を狙つておる災害なんであります。でありますから、是非共この経費の方においてもう少し多くの経費を計上して、來年の梅雨季を必ず無事に過せるだけの施設をして頂きたい。この施設が拔けておる。この施設に必要な経費が足りないということを思うのでありますが、政府当局ではこれで十分であるとお考えになるかどうか。この点をお伺いするのであります。
 最後に一つ、今度の煙草値上の手続の問題でありますが、これをお伺いして置きたい。御承知のように財政法第三條には「國の独占に属する事業における專賣價格若しくは事業料金については、すべて法律又は國会の議決に基いて定めなければならない」と規定されております。尤もこの財政法第三條は、その附則におきまして定めておるようにまだ施行されておりません。施行停止中であります。停止中でありますが、この精神は十分に尊重されて然るべきものでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)、(拍手)ところが政府は十一月一日から煙草の値上を実行しております。第三條の精神には副うておらない措置であると考えるのであけます。この点について過日本内議員の質問に対して大蔵大臣は、煙草の値上が一日遅れると大体一日につき二億近くの得らるべき收入が得られなくなるから急いでやつた、政府の責任においてこれはやつたんだという答弁をしておられましたが、この間の事情は諒といたしますけれども、財政法第三條の精神には副わないのだということを特に私は強く申上げて置きたいと思う。そればかりじやない。もう一つの点がある。それは國会法第五十一條に関する点であります。この第五十一條には、予算委員会におきまして一般的な関心及び目的を持つておる重要なる案件については、公聽会を開くことができるとなつており、その第二項には特に、総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない、となつております。予算委員会は必ずごの公聴会を開く義務がある。衆議院におきましても、参議院におきましても、すでにその準備が進行中であります。ところが二百六十六億に上る歳入について、予算委員会が公聴会を開く前にすでにこれは決定されて実行に移されておる。といたしますとどうなるか、公聴会を開いて見たところで、これは公聽会を愚弄したとになつてしまう虞れがある。私は政府が十一月一日から行なつた煙草の値上げは、あれは政府の責任において行なつた暫定的な措置であつて公聴会及び予算委員会、國会の議を経てこれを確定的にするりもりであるという意味でなされたと理解したいのですが、その点は政府においてどうお考えになつておるか、これをはつきり御答弁を願いたいと思うのであります。以上で以て私の質問を終ることにいたします。(拍手)
   〔國務大臣森戸辰男君登壇、拍手〕
#5
○國務大臣(森戸辰男君) 波多野君の御質問にお答えいたします。文教政策、殊に教育刷新が日本の再建にとつて重要な政策であることは、現内閣ができて初めから今日まで依然として変らないのであります。ただ日本の経済財政の実情に即しまして、この重大な教育刷新をいかに実行して行くかということが問題であつたのであります。追加予算の審議に当りまして、理想的にいわゆる六・三制完遂には、完全実施には、巨額な費用が要ることが明らかでありましたけれども、現在の財政経済の状態を十分に考慮いたしまして、最小の線といたしまして十四億というものが考えられて、これが実は七月十五日の閣議で内定いたしたのであります。勿論これは内定でありまして、將來いろいろな事情によつて変更せられ得るものであつたのであります。併し六・三制の問題は、実は三月……四月から新らしい学期が始まりますので、それから始まる新らしく増加する学生のための教室であり、又或る部分は二部教授或いは仮教室のひどいものに対して、冬中収容して行きたいというような見地からも、実は早く仕事に着手して貰う必要もありましたので、八月六日と十月とに二度予算を内示いたしたのであります。勿論これは將來予算というものは、追加予算は國会にかかり確定されるものであつて、変更することは当然考え得るのであるけれども、併し現在はこういうような事態になつており、これを割当てるとかくかくになるということを都道府縣にも実は内示いたしまして、地方によりましてはそれに基ずいて着工しておる所もあるような事態であります。その後実は御承知のごとく関東地方において曾てない程の大きな水害が起つたのであります。その復旧事業には多くの実は資材を要することは、これは説明をする必要がないのであります。かようにして実は公共事業の枠内で災害復旧と六・三制とが競合するというような事態になつたのであります。波多野議員の御指摘になつたように、公共事業にこれらのものを一緒に盛るということの批判も十分にあり得るのでありますが、資材の面からこれが一つに盛られたという実情にあるのでありまして私共はこの際災害復旧、殊に現下の誠に大規模な災害復旧と六・三制については、できるだけのものを優先的に考慮して貰いたいということを強く考えておつたのでありますが、何分にも枠が定められておりまするので、事態を全体的に勘案した結果七億という額になつたのでありまして、これは最小限と考えられたものの約半額に当るのであります。併しこれは実はこれで確定されたわけではなくて取敢えずかように決まつたのでありまして、將來資材の状況その他を勘案いたしまして、別途にこれを満たして行きたいという考えに立つておるのであります。この点において私共は全力を盡しまして、資材の状況等を勘案いたしまして、この年度内に予定の額のところへこれを持つて行きたいと考えておるのであります。
 尚この際申し添えて置きたいことは、この問題が審議されまするとき、世上には住々今日の経済状態から六・三制度は止めたらどうかとか、延期したらどうかとかいうような見解もあつたりでありまするけれども、現政府はかような考えは探らず、六・三制は窮乏のうちにも実行して行くという決意が、これによつて表明せられたことも御了承願いたいと思うのであります。
 七億は、繰返して申しますが、決して六・三制を行うのに十分な金額ではありません。私共は全力を盡してこの足らない部分を満たそうと存じておるのでありまして、どうか地方の方々、又殊に両院の方々にも、力強き御支持を願いまとて、この制度が日本再建の一つの重要なる策として、十分な形で行われるようになることを心から念じておる次第であります。(拍手)
   〔國務大臣木村小左衞門君登壇・拍手〕
#6
○国務大臣(木村小左衞門君) 波多野議員の御質問に対しまする私の所管に属する災害対策についてお答えを申上げたいと思います。
 本年は御承知の通り、四月に北海道、東北、北陸地方に融雪の被害が相当ありまして、以來六、七、八、九と水害が連続いたしまして、その地区は四十五都道府縣に及びましたのであります。縫いまして復旧費は調査の進むに従いまして次第に増加して参りまする傾向でありますが、現在までのところ直接改修河川関係において約二十億円、都道府縣の復旧関係におきまして約百五十億円の程度であります。なかんずく関東及び東北地方が最も被害が甚大でありまして、この地区では曾て記録にないくらいな降雨量のあつた地区もありまして、民生の安定、食糧の増産等に甚大な影響を來しておりますことは御承知の通りでありまして、誠に遺憾に存じておりまする次第でございます。政府はこれらの被害の復旧を二年乃至三年間に完成をする方針の下に、復旧工事の促進に努力いたしております。工事費の関係におきましては、直接河川復旧費に対しまして今年度にすでに約六億円の支出を決定いたしました。又都道府縣の助成関係におきましては、一、融雪の災害に対しまして一億四千余万円、二、その他の水害関係に対しまして約八億七千余万円の補助金を支出いたしまして、その他約四億円の復旧費に対してこれは御承知のように資金の融通の途を講じます等、地方財政の窮乏の半ばにできるだけの援助に力をいたしておるのでございます。以上の通りそれぞれ緊急予算措置を講じて参つておるのでありまするが、來年春の出水期までには一層の安心を得なければなりません。これを得まするのには、今後尚直接河川において三億四千万円、府縣補助費において約二十一億円、合計約二十五億円の支出を要することと思います。これに対しまして今回上程いたしました追加予算におきましては、この災害復旧に充当し得まする額は十五億二千余万円だけしか計上してございません。これだけに過ぎません。而もその申の十二億五千余万円は、先刻説明を申上げました通り、すでに緊急支出して支拂つてしまつておるのであります。今後の支出に充て得ますところの額は僅かに二億七千余万円より残つておりません。差引約二十二億円の只今不足を來しておるのであります。この不足につきましては、然らばどうしてこれを補充するつもりであるか、波多野議員の御質問の要旨はそこにあると思いまして、非常に御允もな御質問と考えられるのでありまするが、この不足額につきましては、この災害の実地査定がまだ済んでおりません。それはこの災害が過ぎまして、例年十一月、以降十二月一ぱいくらいに、この災害の本当の査定の額を調査いたしまして、それまでにやりましても、やはり後から後から災害期になつて、完全なその調査ができませんので、災害期を外れました十一月から十二月にかけまして、実地の査定をやることに相成つておりますので、只今その査定を急いでおりまして、その結果を俟ちまして、改めて別途の増額の途を講じまして、極力これを善処いたしまするつもりでございます。ただ善処と申しまして寸も、然らばどういう善処をするか、それは私の所信では来るべき通常國会に第二次の追加予算を以てこれを補充して貰うということ、これは極力大藏大通に要望いたしておりまする次第であります。尚そのもう一つの方法といたしましては、一般会計の予備費の御承知のごとく三十億円がまだ二十億円ばかり余つておりまするような数字が出ております。経費、資材との睨み合せをいたしました上で、この予備金の支出を迫りまして、これを以て完成いたさせたいつもりで計画を立てております次第であります。御答弁申上げます。(拍手)
   〔政府委員、小坂善太郎君登壇、拍手〕
#7
○政府委員(小坂善太郎君) 波多野さんからいろいろと御質問のありましたことにつきましてお答えを申上げます。
 第一点は、今回我々の提出いたしました補正予算全般に関しましての御批判でございましたが、我々の健全財政の建前からいたしまする均衡予算というものにつきまして、これが均衡予算であることは認めるに吝かでないけれども、果してその中に健全性が十分に盛り込まれておるかどうかという御質問でございます。我々は勿論この健全性ということにつきまして、これを相対的な関連において考えておりまして、決してこれが國が全く敗戰の傷手から脱しました状態におけるような、そういつた意味の健全性ということは考えておりません。ただこれが現段階において許され得る最善の健全性を盛り込んだものであるというように考えておる次第であります。波多野さんの御指摘の中において、十分な文化國家建設への意欲も、生産性も、或いは國民生活安定への関心も十分に盛り込まれていないじやないかということを、三つに分けてお話になりましたが、第一点の、主食の價格差補給金を全廃したのは、これはどういうわけであるか、これは直接消費者の脅威となつて現われて來るではないかという御指摘でございますが、我々はしばしば総理大臣或いは安本長官かちもお話申上げておりますように、現在のこの経済状態の撹乱は、一に流通秩序の混乱にある。できるだけこの闇或いは流通過程以外において流れておる物を、定規の流通過程に流し込むことが非常に必要である。そのためには主たる正規の流通過程において生産さるる物の價格を引上げなくちやならん。そうしてそちらの闇の方へ流れております物を正規の物に盛り込んで行くんだ、こういう考え方でいたしておりますが、この米價に対する考え方も、それは同一の範疇に属するものでありまして、ここに結局消費者の負担は多少殖えますのでありますが、正規のルートにおいて獲得されまする物資が増加することによりまして実質賃金が殖える。即ち今の國民生活の苦しみというものは、闇價格による生活の圧迫が一番大きなものでありまするから、これを少しでも極力排除いたしまして、生活の安定に賢したい、こういう考え方に外ならないので場あります。
 第二点は、金融機関の補償百億円を削つたのは甚だ一貫性を欠いているではないかというお話でございまするが、これは前内閣の当時に提出いたしました本予算において、百億円の金融機関の債券補償金が計上されたということはその当時において考えられたのでありまするが、現在諸般の情勢からいたしまして、金融機関の再建整備というものが著しく遅れるという情勢でございましたので、來年の三月までにはこれは必要でないという観点からこれを切り落しました次第で、他意はございませんわけであります。
 第三点の煙草の値上げの問題でありまするが、これは御指摘のように、非常に荒涼たる国民生活の中において獲得し得る唯一のレフレツシユメントであると思うのであります、これが必需品であるか、或いは嗜好品であるかということについてはいろいろ議論があると思いますが、私はレフレツシユメントであると考えておるのであります。この観点からいたしまして、勤労者に対する特配の数は、乏しい数の中ではございまするが、これは減らしておりません。一般の家庭配給に関しまして、男子五十本、女子五十本になりましたのは、これは新憲法の精神を体しましたるためでありますが、(笑声)この際甚だどうも煙草を減らしましたり、一般の自由販賣の値段を上げますということは、心苦しいのでありますが、これは一に國民全般がこの敗戰の事実を認識いたしまして、結局煙草の値上げというようなものは、國民経済國家経済全般の皺が煙草によつて來ているのだ、これをやらなければ、外の面において必ずこれが或いは鉄道の値上げに現われますか、或いは通信の料金値上げに現われますか、或いは又他のインフレの潰乱要素となつておりますので、又この点において一つ取上げて、辛抱して行くより仕方がないのだというふうに御理解を願いたいのであります。
 第二の御指摘の点は將來の予算編成の方針に関するものでございましたが、これは赤字を消すために、即ち健全財政の建前を堅持するために、非常に或る場面においては國民生活を圧迫するような結果になるから、これはむしろ生産的な要素のあるものなら公債政策を探ることもいいではないかというような御質問でございましたが、それは又御議論でございまするが、私共はこの現段階におきまして、價格を調整して行くという方針、即ちこの安定帶によつて現われました價格を統制してそうして國民生活の安定を期して行きたいという方針と、全体の予算の均衡を得て、その財政面からこのインフレーシヨンを防止して、國民生活を結局において安定さして行きたいという考え方と、二つの考え方があるのでございまするが、これはおのおの時代的な意味を持つと思うのであります。只今我が國は講和会議を目前に控えまして、非常に重要な且つ微妙なる段階にございまするし、又我が國が財政的に建直つて、財政面からこのインフレのそれが少くなつている、財政金融の両面からインフレの懸念が少くなつているということを、形式的に又実質的に堅持して行くということは、目下のところ最も必要な体制であると思いますので、予想されまする本予算におきまして、やはりこの方針を堅持したいというように考えている次第でございます。
 それから次には、大藏省証券或いは日銀借入金の発行限度は四百億円にするということは非常に過大ではないかという御指摘でございます。一体昭和二十二年度の一般会計本予算千百四十五億円に対しまする大藏省証券の発行限度は百五十億円でありまして、この全体に対する割合は一三・二%となつております。追加予算は九百二十一億円を計上いたしましたのでございまするが、これを大藏省証券発行限度との見合いにおきまして、前年度のものを見ますると、限度は丁度二百七十一億円となるのであります。で、本予算、追加予算を含めまして、租税收入は千三百三十二億余円でございまするが、本年度の徴税の実績というものは、只今波多野さんが御指摘になりましたように相当に遅延をいたしておるのであります。更にこれに加えまして追加予算で計上いたしました非戦災者特別税等の徴收につきましては、昨年度の財産税の場合と同様に相当の遅延が予想せられるのであります。この徴收の、ズレが仮に百億円と見込みますと、大藏省証券の発行限度は三百七十一億円となるのでございます。併しながらそこに若干の余裕を見込みまして四百億円程度が妥当であろうというふうに考えました次第でございます。で、尚この発行限度四百億円は、一般会計歳出予算総額二千六十六億円に対しましてこの比率をとつて見ますると一九・四%というふうになりますのでございます。で、我々といたしましては、御指摘のようにこの大藏省証券を発行して、これが更に溜まりまして結局赤字公債になるのではないか、インフレ昂進の要因となるのではないかという御指摘の点は、十分これは氣を附けまして、その撹乱要因とならんように努めたいと思つておる次第でございます。間税收についていろいろ御質問がございましだが、これは過般からもお答え申上げておりますように、この際徴税機構を拡充しまして、量質共に機構を拡充しまして又第三者の通報制、或いは罰則制、そういつたようなものを強化いたしまして、必ず所期の税收を挙げたいというように思つておる次第でございます。
 第四点といたしまして復金のことにつきましていろいろ御指摘がございました。殊に一番の中心の点は復興金融金庫が結局いろいろな過程を通るが、日銀の信用造出に依存するものではないか、そういう限りにおいて復金の融資というものは、やはりインフレの要因になるのではないかというお話でございます。で、大藏大臣もよくこの場から御答弁申上げておりますように、復金の債券を結局市中において消化したい。そのためには市中銀行のシンヂケートを作つて、これに引受けさしたらよいのではないかということも申しておるのでありますが、このシンヂケートが独占禁止法に触れるというお考えであるならば、必ずしもそういつた概念に規定いたしませんで、要するに市中銀行の共同の滑化によつて努力するということなのでございますが、こういうふうにいたしまして実は相当の実績が挙がりつつありますのでございます。併しながら現在の資金の蓄積の状況を見ますと、大体第三・四半期に予定されますものは、預金五百五十億円、その中封鎖を百二十億とし、更に株式等に直接投資十五億円と見込みますと、四百四十五億円でございますが、これに対して一般資金の需要というものは七百八十億円ございますので、そこに若干の通貨の増発というものは見込まなければならん。又年末に千九百二十億円程度の増加になるのではないかというようなこともいわれるわけなのであります。併しながらこの際我々といたしましては、單にイージー・ゴーイングな融資ということは絶対にいたしませんで、昨日も寺尾さんにお答え申上げましたように、我々としては國家再建のためにどうしても止むを得ない融資に限つて、一般の市中金融機関がよく篤し得ないところのものを、復興金融金庫を利用してやるのであるけれども、飽くまで赤字融資的な、インフレを野放図に進めて行くことを規正して行くことに努力いたす考えでございます。
 第五点といたしまして公債利子の打切りに関する御意見がございました。成る程公債利子は相当巨額に上つておりまして八十一億円にもなつておるのであります。併しながらこれを仮に打切るといたしますると、現在金融機関というものは大体御承知のように九〇%以上の公債を保有しておるのであります。この公債を打切ることによりまして、金融機関が結局今漸く金融機関再建整備法等によりまして両建途上にありまするものが、又打撃を受けるということになりますると、これは廻り廻つて、先程も問題になりました百億円の金融機関への補償の問題が更に増額されるということになりますると、又何にもならないのであります。インフレによつて金融機関は内容がよくなつておるのではないかという御意見もございましたが、金融機関は本来物を持つておるものではございませんので、インフレによるところの利得というものは最も影響されるところが少いのではないかというふうに思います。我々の考え方といたしますると、金融機関というものはいわゆる私企業ではなくて、一種の公共性を持つた一つの信用機関であるので、これが若し動揺するようなことになりますると、これが直ちに通貨に対する信任を失墜せしめる結果にもなり、又これが心理的にインフレの昂進する大きな要素となることを慮れまするが故にその問題に関しましては極めて愼重なる態度と扱いをしたいというふうに考えておる次第であります。
 第六点といたしまして、預金が相当殖えておるが、これについての財政当局の考え並びに税に対する考え方を御指摘になりました。成る程預金は先程も申上げましたように月に相当額殖えております。これは過般院議を經て通貨安定に対する決議をして頂き、又通貨安定対策本部を設けられまして、いろいろと國民に対して國会として呼び掛けを頂いておる結果だと思つて感謝をいたしておるのでありまする、この苦しい中からどうして預金ができるかということに関して、我々は実はこの預金の内容を精査して見ますると、相当長期の安定した預金は少く、テンポラリーな一時的な預金が多いのであります。これは結局赤字になつても、そのときどきにおいては金というものは廻り廻つて行くものですから、工夫をして金融機関に預けて置けば、結局或る瞬間を坂つて見れば、預金になつておる面が相当にあるのではないかと思うのであります。併し大藏当局といたしましては、財政資金の撒布先等を十分科学的にメスを加えましてただ漫然と預金をしろということを言わずに、その財政資金の撒布先をトレースを辿りまして、これを預金として貰う、奇くも遊ばせて置き、これが不当な用途に使われませんようにいろいろと規正をいたし、又勧奨をいたしておる次第であります。又この苦しい時代に十分な富と収入を持つた幸福な人たちに対しては、十分この累進課税を徹底いたしまして、そうして税政を増す、即ち國家財政を健全にして貰うように大いに協力して貰うために、今回新たに税法を又御提出申上げておる次第であります。
 次は價格調整費に関する御指摘がございました。これは成る程鉱工業等の價格調整費は相当巨額でございます。併しこれは御承知のように、先般決定いたしました平年時における六十五倍のスタビリゼーシヨン・バンドに基きまして、その差額を調整しようというのでありますが、これは何もイージー・ゴーイングに行き当りばつたりにそれだけ旧そうというのではございませんで、生産の状況に應じまして、生産費を十分に精査して、個々の会社について調べてやつて行きたい、支拂う際にはそれを出して行きたい、こう考えております。勿論貿易再開等の甚だ連合国の御好意によるうれしい知らせもあるのでありますが、これは何としても企業の合理化、経営の徹底した刷新、或いは技術の進歩等によらなければ、いかにこの世界の中に再び日本を入れてくれるという好意が周りにありましても、日本自体がよくその責を果し得ないことになりまするからして、我々といたしましても十分企業の健全性についてこれを確保して貰うように考えておるのであります。ただ我々といたしますると、金の方から締めて事業を抑えて行くという考え方は取りたくないので、我々はその事業者自体が十分に自覚してくれることを先ず第一と考えておることを併せて御承知願いたいと存ずるのであります。
 第七点といたしましては、行政費の節約の点にお触れになりました。我々は今も企業の合理化の点に触れましたのでありますが、それに行政の合理化ということは先行しなければならないと思つております。ただその一つの着手といたしまして、本年度は一割を人件費、物件費において節約いたす、即ちそこに十五億円の節約をするということをここに提唱いたして、これを強行いたしておるのであります。これは皆現員を以て予算を配付いたすのでありまするから、御指摘のような実定員と予算定員との差額というものは本年はないわけであります。我々は極力これを進めまして、又配置轉換等を敏速にやつて貰うように要望いたしておるのでございます。
 最後の点といたしまして、文部或いは内務当局からすでにお答えがあつたのでございまするが、六・三制並びに風水害に対する予算について御意見がございました。これはそれぞれ当局からお答えになりました通りでありますが、結局我々としては金の面だけでは処理できない、結局資材によつて制約せられるというふうに思つておるのであります。例えば石炭であるとか、或いは石炭を中心としてセメント、鉄鋼をもつと増産して貰う、そういうことになりませんと、いかに財政当局が予算を配付しても、これはよく使いこなせるものではありません。我々といたしましては、石炭を中心とした今の縮小再生産の傾向を断ち切つた拡大再生産への移行を是非ともやつて貰わなければならんというように考えおるのでございます。
 最後の点でございますが、財政法第三條と煙草の値上げに関する御意見でございます。これはすでに木内さんからの御質問に対して大臣もお答え申上げた通りでございますが、我々といたしましては、現在のこの緊急事態の存する際におきまして、この財政法の考え方と同時に、臨時物資需給調整法の存在するこの期間におきまして、緊急の必要に應ずるため、この国家予算が非常の事態にある際に、別個の法律を御詮議願いたい、こう考えて、近くその法案を提出するように考えておる次第であります。
 以上を以ちまして甚だ簡單でございますが、御答弁といたします。(拍手)
#8
○議長(松平恒雄君) 石川準吉君。
   〔石川準吉君登壇、拍手〕
#9
○石川準吉君 昭和二十二年度の会計補正予算につきましては、先般大藏大臣から詳細なる説明がございましたのでありますが、この機会におきまして私は財政面及び金融政策上の若干の問題につきまして政府の所見を伺いたいと思うのであります。
 その第一点は、今回のいわゆる健全財政なるものが、その実際の運用におきまして果して健全であり得るかどうかという点であります。この問題に関しましては、先の同僚諸君からの質疑が殆んどここに集中しておつたように思われますので、或いは一部重複する点があるかと思うのでありますけれども、私の感じました点を率直に申述べて見たいと思うのであります。大藏大臣の御説明がありましたように、昭和二十二年度の会計補正予算におきましては、第一号から第八号までを通じまして、その歳入歳出に九百二十一億六千余万円であります。併しながらこれに当初予算を通計いたしますると、その額は二千六十六億一千万円という額になるのでありまして、これは何といつても未曾有のな予算といわざるを得ないのであります。尤も補正におきましては、当初予算に計上されましたところの公債金收入を普通歳入によつて賄うことによりまして、年間を通しまして形式的にも実質的にも歳入不足のない予算を編成いたしましたことは、大蔵大臣の言われますように我が財政上画期的の措置であろうと思います。又公益事業費或いは政府の出資等につきましても、財政上の規定にも拘わらず、
   〔議長退席、剛議長着席〕
 普通歳入によつてこれを賄う、その財源を確保するというように、いわゆる健全財政のために政府の拂われた苦心の跡は、大いに見るべきものがあろうと思うのであります。併しながら本予算を通観して見ますと、九百億を超ゆるところの追加経費を賄う歳入の面におきまして、かなりの無理があつたのではなかろうかと思うのであります。殊に酒類のようなものを中心とするところの値上の増收によりまして新規財源の大部分を賄うという点においては、非常に大きな問題があろうと考えるのであります。大藏大臣は、直接税と間接税との比率は当初予算を通算いたしましても七対三である。從つて間接税に関する割合はそんなに大きくないということを申されておるのでありまするが、これは実質的には間接税と何ら変りのないところの專賣益金を加算しないところの数字であろうと思うのであります。若しも專賣益金を加算いたしまして計算いたし直して見ますというと、大体直接税と間接税の比率は四対六という逆な結果になるのであります。これを昭和二十一年度のそれに比較して見ますと、直接税は六でありましたが、間接税は四になつております。でありまするから、本年度の間接税の負担は飛躍的に増大したということができるのであります。而も直接税には非常に滞納或いは脱漏の多いことは、先般大藏大臣がたびたび申された通りでありまして、その額は百億にも上つておるのであります。でありまするからして、今後若しも徴税機関の改善拡充によりまして、仮に百パーセントの実績を挙げるといたしましても、その徴收の面におきましては百パーセントの完納はなかなかむずかしい実情であろうと思います。結局はその不足部分だけは間接税の負担増にならざるを得ない。こう思うのであります。大衆課税と言われておりますところの間接税、或いは特に消費税に対しまして、かくのごとき大きな負担を担わすことは、果して妥当なる財政措置であろうか。成る程、酒や煙草の値上に危機財政の打開の方途を求めることは、敗戦國民としては止むを得ない責任であろうかとおもうのでありますが、併しながら若しも酒を飲み煙草を吸うことが敗戰國民として分に過ぎておるのだという意味で以て、今回の値上がジヤステイフアイされておるとするならば、それはおのずから別個の問題になろうと思うのであります。そこで、若しも國民が片山首相の言われるような耐乏の倫理に徹しまして、酒も飲まない、煙草も吸わないということになりまするというと、この面からする租税或いは專賣収入の大部分というものは、政府は失うわけであります。従いまして、この面からしまして健全財政というものは崩壊されるに相違ないのであります。耐乏生活を叫ばれておりまする今日におきまして、國民が酒も飲まない、煙草も吸わないという耐乏生活に徹することは望ましいことでありませんか。総理大臣が言われておりますところの耐乏生活の理念と本財政編成の方針との間には、甚だしい矛盾があるように感ずるのであります。從つて酒や煙草を中心とする間接税の増收に全租税收入の六割も期待しなければならん。それによつていわゆる健全財政を編み出したとするならば、それはいわゆる予算技術上の健全財政であるかも知れませんが、本当に安定せる健全財政とは言うことはできないと思います。從つてこれらの弱体面からの崩壊によりまして、均衡予算は結局不均衡予算となり、好むと好まざるとに拘わらず、直接通貨の増発によるところの赤字補填を余儀なくされることがあるじやないかということを恐れるのであります。我々、國民が眞に要望しておりますところの財政は、かくのごとき波の上に浮んでおるような存在ではなく、大地にしつかかりと基礎を置いた本当の実力のあるところの財政であるのであります。かような一点に関しまして政府の所見、特に大藏大臣の所見を承わりたいと存じます。
 一般的の問題につきましてはこの程度に止めて置きまして、次は金融政策、特に農林金融の問題につきまして政府の所見を承わつて見たいと思います。
 先ず第一に、本年度の予算に現われましたところの農林経費について伺いたいと思います。昭和二十二年度の農林経費におきましては、これは單に農林省所管経費ばかりでなく、例えば公共事業費の農林関係の経費等も含めた数字でありますが、これを見ますというと、一般会計におきましては約六十一億ということになつておりまして、それは前年度即ち二十一年度の四十五億に対しまして一三五%に当つておるのであります。併しこの間に貨幣價値が下落しておるのでありますからして、科学的には完全な措置ではありませんが、一應の目安を立てる意味におきまして、日銀の調査によりますところの卸賣物價指数を以てこれを修正して見ますと、昭和二十二年度の分は逆に前年度の僅か二九%に過ぎないということが分るのでありまして、名目上の膨脹にも拘わりませず、実体的の規模におきましては約三分の一に縮小されておるということが分るのであります。ところで、この農林関係予算を更に直接費と補助費とに分けて見ますと、昭和二十一年度予算におきましては、その割合は、直接費は三であるのに対し、補助費は七でありまして、丁度補助費の方が直接費の二倍に当つておつたのでありますが、二十二年度の予算におきましては、その割合は直接費が約七であり、補助費は約三、丁度前年の逆の結果になつておるのであります。而もこれを二十一年度の予算の実情に対して見ますと、本年度の直接費は前年度の二〇二%に当つておりますが、補助費は僅に九九%、一〇〇%に足りぬのであります。尚これを前と同様に貨幣價値によつて修正いたして見ますると、前者即ち直接費の方は前年度の四三%に縮小されております。又後者即ち補助費の方は僅かに二一%にしか当らない程度の縮小となつておるわけであります。これによつて見ましても明らかでありますように、農林関係予算における補助費は、名目的にも実質的にも非常な減少と言わなければならんのであります。ここに從來の我が財政上の特異な存在でありましたところの、いわゆる農林補助金の変貌が見られるのでありまして、簡単に言えば、從來の我が農林関係は政府の補助金に依存する所が非常に多かつた。併しながら今や戦後の情勢の変化によりまして、これらの点に大きな修正が加えられつつあるということが分るのであります。同様なことは政府放出の低利資金その他の点につきましても言えるのでありまして、このことは換言いたしますれば、これまで永い間日本の農業に取つては、國家が特別なる資金供給機関の役割を果しておつたのでありますが、今やそのような役割から次第に脱却しつつあるということに外ならないのであります。併し水産を含めましたところの農業産業部門が日本の再建に取つて根本的に重要なものであり、早い話が、農林産業部門の増産によつて若しも食糧輸入を少しでも節約することができるならば、それだけ再生産的に意味のあるところの工業原料を輸入することができるのでありまして、一般工業の再建のテンポを早め、やがては日本産業の再建のテンポを早めるという結果になるのでありまして、農林関係部門の生産の重要でありますことは、今更申上げるまでもないところであります。でありますからして、国家財政によつて農林部門に対するかかる傾向は、國家が農業産業部門に対しまする関心が俄かに薄くなつたと考うべきではないと思います。然らば農林部門におきましては最早國家の助成を必要としない、言い換えますというと、戦後の我が農業は國家の助成を必要としない程度までに立派に独り立ちのできる態勢を取つて来たのか、從つてその資力は十分であるし、又生産力も増大しておるために、かような傾向が取られて来たのかどうか、否我が國の農業の現状は詳しく申上げるまでもなく、戦時戦後におきまするところの、極端なるところの掠奪生産の結果は、皆様御承知のように今や地方は非常に消耗しております。又いろいろの生産設備というものは荒廃しております。又各種の生産資材というものが欠乏しておるわけであります。農業復興が世上に大きく取上げられておることも、又農民の間に力強くこれが叫ばれておることも、実にかようなところに原因しておるのであります。戰後の農業状態がかかる消耗状況にありますことは、ひとり我が國だけの問題じやないと思います。でありますが敗戰という傷手はその起ち上りにさえ容易でない状態に陷れておりますことを申上げるのであります。戰後の農業経営につきましては、食糧問題とか或いは工業加工原料の問題に絡みまして、各國とも非常な努力を拂つておりますことは、いろいろな資料によつて知り得るところでありますが、翻めて我が國の戦後の農業経営に関しまして、政府は果していかなる政策を取つたでありましようか。尤も今回の土地制度の改革や、或いは先般本院を通過いたしました農業協同組合制度の制定等は、農民から長い間の封建的羈絆を除いてやりまして、農民が今後自主的に立ち得る態勢を與えたのでありまして、この点につきましては大いに期待すべき点があるのでありますけれども、何と言つても我が國の農業の状態は、一町五反未満の耕作者が全体の九割を占めておる。殊に僅に五反百姓と称せられる零細農民は全体の四割を占めておる。こういうような過小経営の農業でありますので、これらの多くの農民は右のような制度の樹立のみによつては、その家計が十分に豊かになり得ないでありましようし、從いまして農業への期待も持ち得ないのだろうと思います。でありますからして、どうしてもこの画期的なる制度を活かすためには、これと並行しまして速かに荒廃しておりまするところの、この農業を復興の途上に導くところの措置を取られると共に、更に進んでは土地改良の方法等によりまして、土地の利用度を高め、或いは開墾開拓等によりまして耕地の増加を図るとか、或いは農業方法の改革によりまして、その生産量を増大するというような方法によりまして、農民が十分に自主できる経営規模までこれを引上げることによりまして、農民に対しましてその自主性と農業に対する期待性を、自信を以て持ち得ることができるようにすることが、今日今後の重大な問題と言わなければならんのであります。況んや貿易再開によりまして、我が國の農業も我が國経済成立の一要素といたしまして、いや應なしに世界経済と関連します今日におきましては、将來予想できますところの外國のコストの安い農産物との競爭の点におきましても、今から十分なる用意を整えなければならんと思うのであります。而してかくのごとき農業の行詰りを打開いたしまして新生農業を建設するためには、從來のように單に人力を注入するところの掠奪生産では駄目なのでありましてどうしても資本力を投下いたしまして、農業生産の科学的な合理化をしなければならんと思うのであります。特に農村にはこれらをなすところの資力を持つておるかどうかという点でありますが、成る程農村は戰時戰後のインフレに乗じまして、從來の負債を償還した上に相当の蓄積を持つたことは事実でありましよう。併しそれは前にも申上げましたように、決して農業の生産が向上したためでもなければ、又農業における拡大生産が行われたためでもありません。むしろ掠奪生産の結果、生産資本の一部が遊離されまして貨幣化されたに過ぎないのだと思つております。而もこの農村におきまするところの資本の蓄積も今や変貌しておるのであります。通貨安定対策本部の調査しました新円の産業別手持高を見て見ますというと、昨年の五月から本年の六月末までの間に、農漁村は全体の五二%から二九%に減じております。これに対しまして闇ブローカー等を含めましたところの幣市の配給機関、或いは物品販賣業者は一二%から三七%に増大したのであります。即ち一度農村に流入しましたところの通貨は、再び都市の産業部門に環流しつつあることを示すものであります。その原因としましてはいろいろありましようけれども、農産物價の値上りよりも、農村において必要とするところの生産資材、或いは生活物資資材の値上りの方が遙かに早い結果、農村は次第に收奪されておるということを示すものであります。そうしてその結果は農業会等の農村の金融機関の預金不振となつて現われておることは、すでに御承知だろうと思います。そこでこのままに推移しますというと、農業の復興はおろか逆に農業の増産もますます至難となるばかりでなく、縮少再生産の懸念さえ保し難い状況にあるのであります。而もすでに述べましたように、國家の直接的な非常に手厚いところの農業保護、特に補助金或いは低利資金の放出が、内外の変化する事情のために今後は相対的に減少せざるを得ないとするならば、どうしても結局農業の再編成のためには、財政上の遂による資金の供給に代りまして、金融上の途から農業資金の強力な、而も積極的な措置が講ぜられなければならんと思うのであります。これなくしましては農業は生産の復興も、或いはその近代化も結局は空語に終るものと我々は考えておるのであります。併し差当つては、これらの農林金融というものは一般産業金融のような営利企業の形ではなかなか困難であります。即ち農業は商工業と異なりまして、天候その他の自然的條件に支配される部分が非常に多い。又その生産は経済界の変動に感じましてこれを調節することが極めて容易でない。又先程申上げたように、我が國の農家は生産力の少いところの過小農家が一般であります。かような意味合からしまして、農林部門に導入されるところの資金というものは、どうしても比較的長期の資金であり、且つ低利の資金でなければならんのであります。從來隣家が補助金という形におきまして、或いは低利資金という形におきまして、農村に資金的な補助をやつておつた事情も、かような農村資金の特殊事情に基ずくものじやないかというような感じがするのであります。かような見地からいたしまして、農林金融を積極的に且つ強力に推進するためには、どうしても非営利、公共性のある特殊機関が必要とせられるのでありまして、言い換えますというと、國家をバツクとするところの強力なる復興金融金庫的な存在が必要だろうと思うのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)農業が高度に発達しておりますところのアメリカにおいてさえ、一般の商業銀行からの融資が非常に困難でありまして、特殊の金融機関によつて、農業資金を賄つておるということから考えまして、この点首肯せられる点であります。かような意味合におきまして、農業金融の特殊機構を確立するということは極めて重要な意味を持つのでありますが、これらに関しまして政府はいかなる所見を持つておられるのでありましようか。又これに関連しまして、現在農林金融機関の中核としましての役割を果しておりますところの、農林中央金庫の今後の在り方につきまして、政府はいかなる取扱いをせられるつもりであるか、これは農業会の解体等に絡んで、農林金融部門の上に及ぼす影響が非常に大きいのでありますから、改めて明確なる御方針を承わりたいと思うのであります。
 又更に差当りの問題といたしましては、政府補助金の減少、或いは預金部低利資金の貸出しの停止等によりまして、農林資金部門に大きなギヤツプができておるわけであります。このギヤツプをいかなる措置によつて埋合せるつもりでありますか。計画がございましたならば、その計画につきまして具体的に政府の方針を承わりたいと思います。
 又農林資金の用途のために一般市場資金を吸收する必要も場合によつてはあろうと思います。これは単なる私の私見でございますが、例えば保険会社の余裕金の一部のごときものを農村に還元する意味におきまして、これを或る程度義務的に投資させるとか、或いは農林債券制度のようなものを拡張するとかいうことによりまして、農林金融資金の確保を図るということも一つの今後の行き方でないかと思うのでありますが、これにつきましての政府の今後の十分なる御研究と、これらに対する措置とをお願い申上げますが、尚右に関する政府の御所見を承わりたいと思います。
 以上の点に関しましては農林大臣及び大藏大臣の御所見を承わりたいと思うのでありますが、本日は両大臣ともお席に見えないようでありますので、政務次官によつて代つて御答弁をお願い申上げたいと思います。尚この問題に関しましては、我々は非常に重要な問題と思つておりますので、いずれ両大臣から別の機会において、改めて大臣の御所見を承わりたいと思つております。(拍手)(「答弁は後廻し」と呼ぶ者あり)
 最後にもう一点政府の所見を承わりたいと思つておりますのは、この農林金融の特殊性につきましてでありますが、農林金融は又別の角度から見ますというと、一般金融機関とは非常に違つた点があるのであります。即ち一般の銀行等におきましては、資金の動態というものは割合に季別に変つていない、言い換えますというと、その預金勘定におきましても、又貸出の状況におきましても、各季別の増減は割に少いのであります。これは全國銀行預金勘定を見ましてもはつきり分るのでありますが、併しながら農林金融におきましてはこれと異なりまして、非常に季別的に大きな波があるのであります。即ち何といいましても我が國の農業の主流は米作であります。從いまして農村一ヶ年の経済もやはり米作によつて左右されておるのであります。でありますからして、一ヶ年の中で春は資金の需要期であり、又後半期の秋は資金の回收期に当るわけであります。ところが一般金融機関におきましては、冬季別共殆んど動揺が少いのでありますが、今申上げたように、農林金融機関におきましては一年を通じました大きな波があつて、これによつて廻轉しておる特殊な事情があるのであります。
 然るに政府におきましては、このインフレを阻止するという至上命令からいたしまして、先に資金融通規則が実施されたのでありますが、この資金融通準則によつて、皆様御承知のように、金融機関の貸出しに大きな制限を加えたわけでありますが、この準則が機械的に農業金融機関の一部にも適用されておるのであります。併しながら今申上げたように、季別的の波動の少いところの金融機関に適用する点においては異存がないのでありますけれども、農林金融のごとき非常に波動の大きいところの金融機関にこれを適用することは果して妥当であるか。私はかような規則的な適用によりまして、上半期におきましては貸出せない金融ができて來る。從いまして、この面からの生産が破壊することを慮れるのであります。勿論資金抑制の点におきましては異議はないのでありますが、これは農村金融の実体に即した別個の方法を取るべきが至当であると思いますが、それらの点に対する大藏大臣並びに農林大臣の所見を承わりたいと思うのであります。
 尚いろいろ承わりたい思うのでありますが、時間もありませんので、私の質疑はこの程度に止めて置きます。(拍手)
   〔政府委員小坂善太郎君登壇〕
#10
○政府委員(小坂善太郎君) 石川さんの御質問にお答えを申上げます。第一点は、綜合的な御質問でございまして、今回の補正予算におきまして、間接税と直接税との占むる割合から論ぜられまして、果してこの均衡予算がよくその健全性を完うしておるかどうかという意味の御質問だつたように思うのでありまするが、先般からもときどき、申上げておりまするように、大体直接税と間接税の割合は七対三になつております。これは本予算における場合と同様でございまして、これは特にその均衡状態が変つたとは思われないのでありますが、尚又、專賣益金を入れて考えて見ますると、やはりこれは五対五でございまして、これ又本予算の場合とほぼ同様でございます。今後この状態を続けるかどうかという問題は、御指摘によります煙草の値上げをやつて、又耐乏の生活を強いていながら、而も間接税依存の傾向というものはよく維持できるかどうかという点に伺われたのでございますが、これは現在の全般の状況と睨み合わせまして、かかる程度までは行くものというふうに諸般の状況から私共は確信を持つて実行しておるわけであります。勿論健全財政そのものは、全般のこの國民経済が全く健康なる平時の状態に還り、又國民心理そのものも健康なる状態に還りました際に、全く文字通りの健全財政ということが考えられると思うのでありますが、私共は現段階におきましての健全財政はこの点であろう、要するに財政面の赤字がなくなり、その尻が金融面に轉嫁されることなく、とにかく財政、金融両面からするインフレーシヨンの促進の要因とも解せられておる限りは、これを健全財政であるということは言い得るのじやないかと思つておるのであります。
 第二点といたしまして、農村金融についていろいろお話がございました。石川さん多年の御経験深い農林金融についての御意見でありまして深く傾聽いたした次第でございますが、先ずその御質問中に、従來の補助金政策というものが全面的に変更されておるのではないか、併し農村というものは今まで相当に掠奪生産を続けておる後であるので、政府の補助金をこの際打切られるということは、又減額せられるということは非常な苦痛であるというお話でございました。私も或いはそういうこともあるかとも思いまするが、政府といたしまして考えておりまする点は、ただ一般的に補助金と言やまして、ただ政府依存の傾向だけでやつて行くということではなくして、補助金の内容について檢討を加えまして、一般的なこの政府補助ということをやりまする代りは、試験研究費であるとか或いは技術指導の面における補助であるとか、そういつた再生産に最も直接的なものであろうと思われますものに限つて重点的に採り上げて補助をして行くということは、國家財政の現状から見まして……又これは農村に限りません。全般の縮小再生産の傾向を打ち破るものについては、或る程度重点主義を強行しなければならないこの現状から考えまして、致し方ないことではないかというように思つておるのでございます。又農林金融についての御意見でございまするが、先ずその中に農林中央金庫の今後の改組等つきまして、いろいろお質しがあつたのでございまするが、農林中央金庫の改組等につきましては、金融機関の再建整備、再編問題全般に関連がございまして、その一環といたしまして今研究中でございます。更に資金融通準則を農村に適用しますることは農村の特殊性から見て不当であろうというお考えでありましたが、只今資金融通準則は農村金融には適用いたしておりませんが、ただそういう精神に則つてやつて頂きますことは、これはやはり國家全体の資金計画から見まして止むを得ないことではないかと思いまするが、御指摘になるまでもなく、農村の資金の季節性と申しまするが、そういつたものに十分着目いたしまして、御趣旨を体してこれを行いたいと思つておる次第でございます。(拍手)
   〔政府委員井上良次君登壇、拍手〕
#11
○政府委員(井上良次君) 只今石川さんの農林金融の問題についてお答えを申し上げたいと思います。日本の農村漁村が、日本が当面しておりまする経済の危機を突破して、祖國再建にいかに重大な責任を負うておるか。この農村がいかにして生産力を今後高めて行くか。この生産力を高めて行きます所の裏附としての資材の確保、資金の確保という問題は、絶対不可欠の問題でありまして、この問題に対して極めて熱心、又力強い御発言を頂きましたことを農林当局としても感謝する次第であります。御意見の通り、農林金融の問題は、農林特有の特殊性がございまして、他の産業資金と全然これは別個に取扱わなければならぬし、尚今後農業会が解体されて、新らしい農業協同組合法が実施されますので、この從來農業会を中心にした、中金を通しての金融の組織を、今後新らしい協同組合の組織に移し替えまして、一層その内容を拡充し、皆さんの御期待に副うように、関係当局とも協力して推し進めたいつもりでございます。尚農村の金融が、最後に御主張になりましたような、季節的な波動性のあるものでありまして、これを國家の資金計画の中に、四半期ごとに区分をして農林金融を計画するということは、実際上本可能でありますので、今御指摘のように、飽くまで農村の経済の実体に即し、且つ農産物の実收の実情に即して、必要な資金を裏附けるように、政府は適当な処置を講じたいつもりでございますから、今後共御協力を願いたいと思います。(拍手)
#12
○副議長(松本治一郎君) これにて午後一時十五分まで休憩いたします。
   午後零時十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十六分開議
#13
○議長(松平恒雄君) 本院規則第八十四條によりまして、本日はこれにて延会いたします。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五十七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト