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1947/11/12 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第50号
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1947/11/12 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第50号

#1
第001回国会 本会議 第50号
昭和二十二年十一月十二日(水曜日)
   午前十時二十二分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四十九号
  昭和二十二年十一月十二日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件(第五日)
 第二 自由討議
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 一、所見開陳の範囲
  道義の高揚
 二、発言者の数及び発言時間
  1 各派の発言割当時間 緑風会五十分、社会党、民主党、自由党各二十分、無所属懇談会、共産党各十分
  2 各派は、右割当時間の範囲内において、発言者の数を決定すること。
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。日程第一、國務大臣の演説に関する件(第五日)昨日に引続き質疑を許します。中西功君。
   〔中西功君登壇、拍手〕
#4
○中西功君 私は、政治家の生命は問題をごまかさないこと、嘘を言わないこと、十分に政治責任を取るごとにあると思う。今、私は日本労働者階級と共産党の名において、この追加予算の本質を明白にしたいと思うのでありますが、先ず最初に私は閣僚諸君が問題をごまかさないように要求したいと思います。片山首相は本年の八月「危機突破の道」におきまして、「私は当面をごまかして人氣を繋ごうとすることは旧式の政治のやり方であり、又経済の現実は一時のごまかしによつて決して救われるものではないと考える」というふうに言つております。全くその通りであります。この古いやり方とごまかしの典型は石橋財政であつた。彼はインフレではないと称してインフレを煽り、又誰にも明白なインフレ予算である二十二年度の本予算を健全財政と言い張つたが、彼こそ稀代の嘘つきであつたのである。ところで社会党も民主党もこの石橋財政に反対し、以上のごとく片山内閣は新らしいやり方をすると約束したのであるが、私はこの片山内閣の一員としての官僚諸公が、十分な政治良心と政治責任の自覚の下に問題に答えられんことを要求するものであります。
 さてこの追加予算についてはすでに多くの人が批判を加えた。その中で一人と雖もこれが健全財政であると言つた者はないのであります。與党の人でさえがそうは言わなかつた。殊に衆議院の昨日の公聴会においては、大内兵衛教授は、これを日本始まつて以來の不健全予算だと言いながら、同時に次のように結論いたしました。世界の歴史上のインフレの形態としては最後の段階に飛び込む一歩手前の形態である。日本のインフレは新らしい段階に入つたと、こう結論しました。この点は誰が見ても明白であるが、実際に今度の追加予算は、石橋氏の本予算よりはよりインフレ的であり、より大衆收奪的である。その石橋氏に対して我々は稀代の嘘つきと言い、又実際にもそれが証明されたのであるが、それならば、我々は栗栖蔵相のこのごまかしに対して如何に表現したらいいのか。恐らく今に國民が適当な名を附けてくれると思いますが、私はそれに先立つて、石橋氏の本予算と、それから栗栖追加予算とを比較しながら、藏相にはつきりと答えて貰いたいと思うのであります。
 第一は、この大衆課税的性質である。藏相は直接税と間接税との比が七対三であると称して、恰かも大衆課税でないことく襲おうとしておる。これは全く許すべからざる数字的詐欺である。酒、煙草や給與所得税は勿論のこと、明らかに大衆課税である非戦災者特別税を入れて計算しますと、所有税と大衆税との比は全く逆に三対七になる。その点本予算においては、酒、煙草と間接税の比率は四五%に過ぎなかつた。この七〇%の正眞正銘の大衆課税がいわゆる栗栖健全財政の正体であります。
 第二に藏相は、勤労所得税の免税点を引上げ、さも大衆課税を避けたことく強調しておるが、これは欺瞞も甚だしい。本予算において勤労所得税は二三・三%を占めたが、追加予算では二七・三%を占めておるのであります。
 第三に藏相は、事業所得の七万円以上の税率を高くして、これによつて新円大口利得者から取る。こういうふうに言つております。ではこの收入として一体幾ら見込んでおるか。僅かに三十九億円ではないか。九百億の歳入の中、僅かに三十九億円がいわゆる非常に宣博される新円課税である。私は今や藏相が正気なのかどうかを疑わざるを得ないのであります。
 第四に、一時、特別利得税を設定するという話があつたが、藏相は、これは徒らに税種目を増加して煩預にするだけであるからと言つて、それを取止めてしまつた。それだのに何故これよりもより煩頑な非戰災者特別秘を設けたのか。藏相の答弁は全く矛盾しておるということを蔵相自身が知つていられるか否か。
 第五は、追加予算には特殊物件費が一文も見込んでない。一体藏相や政府は、続々と摘発されておる隠退藏物資事件、或いは衆議院の隠退藏物資特別調査委員会の活動をどう考えておるのであるが。これは明らかに隠退藏物資の摘発に対する故意のサボであり、又國会の活動に対する公然たる挑戰である。この点でも石橋財政本予算よりも甚だしいのである。私は蔵相がこの收入を、即ち特殊物件收入を一文も計上しなかつた理由をはつきり述べるべきであると思う。恐らく藏相は、これは不確実な收入であるから計上しなかつたと答えるかも知れない。併しこれは答弁にはなつていない。何故ならば、所得税その他の收入は、更に更に不確実な收入であることは、これは誰でも知つております。
 第六に、償格差益金の問題は更に甚だしいと思います。これは僅かに六十億円しか見込んでいない。安本でさえ百六億円は取れると言つておる。私はもつと取れると思う。而もこの徴收は、七百種に上るあの煩瑣な物品税の徴收よりも遥かに樂である。この追加予算の歳出面では、價格調整金、貿易資金、船舶費等が二百二十億円もあり、それが支出の大宗をなしておりますが、これらはすべて價格操作から起る問題である。若し藏相が、本当に健全財政方針を取るというならば、この調整金とそれから價格差益金との間をこそ平衡せしむべきである。調整金を若し出すとすれば、少くともそれだけは確実に差益金から取るべきである。かくして初めて健全財政が成立つと思うのであります。然るに大資本家からは、取るべぎものは一つも取つていない。ただやりつ放しである。我々がこれを大資本家本位の編成方針であると考えることが果して不当であろうか、この点は本追加予算の價格調整金の内容をもう少し見れば、更に明白になると思います。
 第一、この調整費の中には、以前にありました食糧調整費は全くないのであります。これが含まれておりました時には、とにかく一應大衆に何かの縁がある、調整金が大衆に縁があるということは言えたわけでありますが、今やこれは全然なく、又そう言える筈のものでもありません。第二に、大資本家の押えておるところの大会社の石炭消費に対しては、莫大ないわゆる調整金が與えられておる。ところが國鉄や或いは火力発電所等の大口消費者は全く除外されておる。そこで私が聽きたいと思うのは、一体これはいかなる理由か、これは容易に大衆に轉嫁できるからか、或いは又聞鉄をわざと赤字にして置いて、大量首切りを強要するためか、それとも政府は自分の国有事業よりも、私的な大資本家の企業の方が可愛いのか、私はその点をはつきり聞きたいと思う。
 かくのごとく、この調整金は全く大資本家の擁護の金でありますが、併しこれは決してこういうふうな調子では復興にも何も役立たない。反対に大資本家のサボと腐敗を助長するだけである。藏相は経営が赤字だ赤字だと今でも口癖のように言つておるが、併し犬資本家の経営は決して赤字ではないのであります。それは政府の最近の調査を見て頂きたい。物價廳が最近調査をしておりますが、財閥系三大炭鉱の上半期の会計は、三億円の黒字だと言つておる。こういうものを見逃しで置いて、そうして調整金だけを徒らにやつておる。こういうことでは、本当に生産意欲は出ず、徒らに調整金を繞つて官吏と資本家の腐敗が起るだけである。
 第二は、この調整金は政界を腐敗さしております。石炭業者は石炭國管案反対の運動に三億円の金を使つておるということが言われております。有名な龍名館事件を、藏相は知つておられるかどうか。一体この三億円はどこから出て來ておるか、私はこれは非常に政界を腐敗さしておる大きな原因だと思つております。而もこれは全ておかしいことでありまして、政府はまるで國管反対運動を助長しておるということになる。それでは、政府は一体本気になつて國管をやる氣があるのかどうかということも、この一点において怪しまれると思うのであります。このような調整金は、終戰処理費を除きますれば、支出の殆んど全部である。而も大衆を救済する生活保護或いは六・三制、公共事業費、給與改善費等は、軒並みに切られてしまつて、その機能は殆んど停止しそうになつておる。こういう有様は、石橋財政よりも遥かに甚だしい。かくてこの追加予算は、より猛烈な大衆收奪予算であり、より徹底した大資本家擁護の予算である。私がこう結論することが果して不当であるかどうか、私は藏相の確答をお願いしたいと思うのであります。而してこういう予算の結果、こういうふうな予算の組立ての結果がどうなるか、これがインフレを非常に甚だしくする。これは勿論でありますが、更に大衆の必死的な悪税反対運動を起します。他面では大資本家のサボ腐敗が昂じて行つて、生産は一つも上らない。そうして結局この予算は実行不可能となり、來春早々には更めて厖大なる追加予算を出さざるを得ないというような運命を担うのである。
 では、この追加予算はどんなインフレを起すか、これについてはすでに沢山の人が触れております。昨日波多野委員も非常にはつきり触れられた。而もこれは政府自身が、立派に自分の出した数字によつて証明しておる。それは國民所得の中に、國民消費資金の中に一千億円以上のものが喰い込むということ、或いは又年末には一千九百二十億の通貨増発になるということ、或いは年度末に少くとも四五%の物價騰貴が予定されるということ、勿論私はこれでは済まないと思いますが、とにかくこれだけでも立派なインフレであります。この数字は、立派なインフレ数字であります。
 そこで、私は最後に藏相にはつきりと質して置きたいと思いますことは、これが健全か不健全かということでありますが、私は勿論そういうような余り押し問答はしたくない。問題は二つの中一つであります。即ち一つは千億円の喰い込み、毎期三百億或いは三百五十億の通貨増発、四五%の物價騰貴、即ちこれはインフレ現象でないのかどうか、若しこれがインフレ現象だとすれば、蔵相のいはゆる健全財政は嘘だということになる、これが一つ。第二は、若し藏相がこれを否定し、飽くまでも健全財政を言い張るとすれば、蔵相は、自分自身が出しておる、政府自身が出しておる数字を嘘だと言わなければならない。この甲か乙か、そのいずれかであつて、決して第三の逃れ道はないと思う。私は藏相が、これに対してはつきりと答弁され、石橋財政と栗栖財政とが一体どう違うか、又片山内閣が嘘を言う内閣か、それとも嘘を言はない内閣であるがというここをはつきり示して貰いたい。これは私は片山内閣の信用を決定するものだと思うのであります。
 さて、ここで私は首相及び文相に質したい。特に社会党の閣僚の方に質したいのであります。社会党は石橋氏の本予算に対して断乎反対をして、これを返上させた。本年当初文相は社会党を代表して次のように演説されたのであります。「第一に、本予算は形式上收支の均衡を得た健全財政であるかに見えます。併し実は大なる赤字財政であることを必然の運命といたしておるのであります。礎つてそれは一種の欺瞞財政であると申さなければならないのであります。私なかなか申し事理由は、先ずこの予算の編成に当つては、歳出はできるだけ低く見積り、これに反して歳入の方はできるだけ高く見積られておる。かような赤字財政を健全財政と誇示することは、單に経済上においてのみならず、政治道徳上の不健全さをも示すものではないかと存じておるのであります。第二に、生産力の増大を何よりも喫緊といたしまする時代に、生産者、特に勤労大衆の負担において危機を突破いたそうとすることに、この予算の特徴があります。」ちよつと拔かしまして、「この收入の半ば、四五%は典型的な大衆課税である。煙草、酒、塩等の間接税的收入によつているのであります。この意味において、我々はかくのごとき健全性に対して、断乎反対せざるを得ないのであります。生産推進が最大の急務であるとき、着実な生産者を不利な地位に置き、不正な利得者を本位とする財政が、果して健全なる財政と言えるでありましようか。社会的見地からいたしますれば、我々はこれを恐るべき病的財政であると断言して憚らないのであります。」まだその他沢山理由はありますが、とにかくそういう理由でこれを返上されました。全くその通りでありまして、私は今やこれは經済上の問題ではなくして、政治道徳の問題である。健全、不健全の問題ではなくして、病的な問題であると私は又申したいのであるが、ところがこの追加予算の場合に、上述のごとく本予算よりも更に不健全であり、更に病的であり、これを健全なりと称するに至つては、全く病的な政治道徳と申さねばならないのであります。私は首相及び文相にはつきり答えて貰いたい。これが健全であるかどうか。昨日波多野議員に対する小坂政務次官の答弁は、全くなつていない。それは今の現状では最も健全なる予算であると思います。こういうのでありますが、これは一体何事であるか。これは丁度、より悪いものよりはいいというふうな答えであります。これは実際はこれによつて問題をごまかそうと思つたら大間違いであると思う。私はこれは新らしいやり方をすると約束した片山首相にはつきりと答えて頂きたいのである。又この追加予算が曾て返上した本予算より健全であるかどうか。この答弁は私は一言でいいと思つております。
 更に私はここで一つ厚生大臣に簡単に質したいと思います。それは先日厚生大臣が、引揚者の受入態勢が十分であるといつて大変大見栄を切られた。それを聞いておると、その説明は誇張されており、そうして恰かも引揚者が万事うまく行つておるというふうな感銘を與えるのであります。このとき厚相は、輸送も物資も住宅も十分であると言われた。一体この追加予算の中の数字を知つて言われたのかどうか。私はそれを聽きたい。住宅建設資金は本予算において七億八千万円を計上されておるが、実際は、予算説明書にもあるように、一億そこそこが実行されたに過ぎない。而もこの七億はバイヤーの接待費でありますところの六億前後と余り変らないのであります。而も今度の追加予算に果してどれだけが住宅費として組んであるか。それは実に驚くなかれ五千八百万円であります。その他厚相に引揚者の生業資金その他にも十分配慮しておると言いましたが、一体この追加予算に引揚者の生業資金の貸付の費用が組んであるかどうか。不幸にして私は探すことができなかつた。勿論私は引揚促進に反対しようとするものではない。引揚促進は我が党の一つの目標である。問題はそれではなくして、五百万のすでに引揚げて來ておる者を見殺しにするような軽率な言動は、我々引揚者の一人といたしましても絶対に看過できないという点であります。この点に対してもつとはつきりとしたことを、この追加予算について言つて貰いたい。
 第四は、私は千八百円ペースの問題並びに物價体系の問題についてほんの少しだけ触れたい。この問題は私はもう長い間触れて來ておる。今更言う必要もないと思うのでありますが、ただ一言だけ和田安本長官に質問をして置きたい。この追加予算は、今まで片山内閣が言つて来たところの緊急政策のすべてが破綻したものであるということを非常にはつきり示しておると思います。生産の減退にいたしましても、闇の横行にいたしましても、流通秩序の問題にいたしましても、とにかく何事もできなかつた。結局片山内閣がなしたことは何か。それは物價を引上げたことである。物價を引上げたということは、このこと自身インフレであります。こういうことがこの追加予算にはつきり出ておる。私はこの六月、本議場で、この物價体系やそうしたものの組立て方、やり方が全く逆だから、理論的にも実践的にも逆だから、この物價体系は砂上の樓閣であるということをはつきり申上げた。そうしてそれが必ず崩壊するということを予言した。又私は補正第一号が出たときに、千八百円ベースに反対した。併しその当時は殆んどまだ賛成者がなかつた。併し今日ではすべての人がかかる千八百円では駄目だということをはつきり知つております。事実はこれ程明白であると思います。ところで安本長官の十一月黒字説も、実は無惨に崩壊したのである。これについて和田長官に質したい第一点は、この追加予算が、六月本議場謳われた和田長官の理論と政策の勝利を示すや否や。我々の批判が当つていたか当つていなかつたか。これが第一点であります。第二は、我々の計算では、米價改訂のとき、すでに千八百円は実質上九百十八円になつておる。これはいろいろ安本から渡された資料によつて計算したものであります。更にその上に、今度はこの追加予算において國民消費資金一千億円の喰込みがあり、物價騰貴が予想されておる。それならば和田長官は、かくも無惨に壌された千八百円を、尚これは壊れていない。物價体系は壊れていないと言い切るだけの心臓があるかどうか。これが第二点。第三点は、今度の追加予算の編成に当つて、和田長官は、煙草の値上や或いは歳出増が新物價体系、特に千八百円べースを崩壊させるという理由によつて、職を賭して反対されたと聞いておる。併しとにかく和田長官は現在この追加予算の答弁に立つておられるのであるが、それでは何を以てこの追加予算が新物價体系、特に千八百円ペースを崩さなくてもいいという新らしい確信に達せられたのであるか。若しも今後この危急を救う途として、闇の徹底的撲滅、大口利得の徹底的な追究についても新らしい構想があれば、それを聽かして貰いたい。むしろ私はその決断を非常に要望するのである。そういう意味において、この決意を聽かして貰いたい。最後に和田長官への質問は、若しそういう確信がないとすれば、而も徒らに職に在るというのはいかなる気持か。労働者や大衆にすべてのものを負担させ、その犠牲において自分の責任を拭われようとでもする氣なのか。そういう点をはつきり述べて貰いたい。
 最後に私は社会党関係の閣僚、特に首相の政治道徳について質したいと思う。前述のごとく、本予算に対して社会党は、これが不健全であり病的であることの理由によつて反対し、これを返上されたのである。ところが今や石橋本予算に輪を掛けた栗栖予算に対して賛成されるとすれば、一体諸君の政治道徳はどうなるのであるか。諸君の教える政治道徳は一体どこに行くのか。この点文教の府に在る文相におい場て特に問題があると思う。なぜかというと、我々は自分の子供に平気で嘘を言うことを教えて貰つては困るのである。私はここで社会党閣僚の諸君に対して我々の衷心からの気持を開陳したいと思う。我々は今日においても社共の民主戰線を衷心から望んでおる。それは又可能でもある。社会党と共産党との今日の政策の間にどれだけの差があるか。諸君は社会主義を叫び、この危機は社会主義でなければ解決できないと叫び、国有、國営、國管を叫び、大衆課税に反対し、新円利得者について重税を要求しておる。然り。我我もそれには大賛成である。ところがこれに反して資本家の党は、公然と資案主義の擁護を叫び、金融独占資本の擁護を叫び、闇と小ンフレ業者を擁護して、労働者を首切り、低米償を叫んでおるのではないか。どこに社会党とそういう大資本家の党との間に共通の点ガあるのだ。併し諸君は我々と結ばないで、大資本家の党と連立した。今日の日本國民の全不幸はこの点にある。今日、日本勤労大衆のカは決して弱くない。それは社会党を第一党にしたという点によく現われておる。併しそれにも拘わらず、社会党は、民衆に背き、民衆を裏切り、そうして保守と連立しているそのことによつて、勤労大衆の力を弱め、日本の再建を不可能にし、日本をいよいよ破滅に導いている、民族の危機を招いている。而もこの六ケ月來の連立の経験はいやという程に保守との連立が日本國民を救わないだけでなく、日本民族を復興させないだけでなく、社会党自身そのものをも破壊するものであるということを諸君に教えた筈であると思う。諸君が一歩後退すれぼ、彼らは二歩前進するのだ。そうして今や重大な政治的危機が、その政治的危機というのは社会党の犠牲において大きい攻勢がなされることである。特に彼らはこの不評判な予纂案を社会党の責任において通して置いて、そうして然る後に徐ろに政局の韓換を企図している。これが今日の政局の特徴であると思う。この追加予算が石橋財政に更に輪を掛けた大資本家の予算であることは明白である。これは社会党の公約をすべて裏切つている。それだけではない、これは日本の生産を破壊に導き、日本を徹底的なインフレに導き、民族を破滅させる予算である。この予算に賛成するか、それとも反対するかは決して軽い問題ではない。私は今第一次大戦の時、ドイツの社会民主党が軍事予算に賛成したあの歴史的な日を想い起すのである。それはその後のドイツ社会民主党の悲惨な運命を決定した。それは結局においてドイツ民族を破滅と滅亡に追いやつたのである。私は社会党の人々にはつきり告げたい。この予算案に対する社会党の態度こそ、社会党及び日本民族の運命を決定するものであつて、諸君がこれに賛成されるとするならば、第一には、諸君がみずからの政治道徳を捨てたことをみず一から告白するに等しいのである。第二に、曾て社会党は石橋予算を返上してみずからが勤労階級の味方としての看板を維持したが、今や栗栖予算を、承認して、その勤労階級の味方であるという看板を返上することを示している。社会党が勤労大衆の味方か、それとも敵か、この歴史的審判が下るのはこの追加予算である。私は社会党は勇猛一番、この追加予算を葬るべきだと思う。祖國再建と平和の維持は勤労大衆だけがなし得るのである。赴共を中心とした民主戦線だけがなし得るの であります。社会党には今二つの道がある。一つは依然として反動的連立を続け、勤労大衆に背を向け、祖國を破滅に導くか、一つは勇を鼓して勤労大衆の側に入り、民主戦線の側に帰り断乎公約を実行して國民と民族を救うか。一つは社会党の破滅の道である。一つは社会党の輝やかしい発展の道でである。この二つの道へのいずれを取るかは極めて簡単である。それはこの追加予算に対して立つか立たないか、それによつて決定されるのである。私は社会党の関係閣僚、特に首相が、社会党はごの藤史的審判の上に立つているということをはつきりよくよく自覚されて、この追加予算のどこに社会党の公約が果されているか、民主戰線をどう考えているかについて、はつきりとした答えを聴きたいと思うのであります。これが私の最後の質問であります。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#5
○國務大臣(片山哲君) 政府の今日まで取つて参りましたる経済政策は、恐るべきインフレを防止しなければならないという点に集中されておるのであります。組閣後直ちに立てましたる経済緊急対策及びその後の新物價体制は、一連の関係におきましてインフレを防止いたしまして我が國の危機を救わなければならないという点に要約せられるのであります。従いまして今回の追加予算案も、その根本たる経済政策の線に沿いまして予算案を立てたのでありまして、決してインフレを激発しようとか、インフレに拍車をかけよう、こういう考えを以て立てた予算案では絶対にないのであります。(中西功君「実際そうなつておる。」と呼ぶ)我が國の現状を御覧になれば分りまする通り、定業の発展に努力しなければならないし、経済の振興に大いに奮闘しなければならないし、祖國再建に國民全体の協力を願わなければならないのであります。つきましては私共は勤労大衆の犠牲によつてインフレを防止しようとか、或いは一般その他の大衆に負担を強化いたしましてインフレを防止しようという考えは持つておりません。國民全体の協力によつて、政府は陣頭に立ちましてインフレを防止しなければならないということを強く考えておるのでありますが、その意味において予算案は勤労大衆にも負担を願つております。事業家にも、企業家にも。資本家にも、あらゆる方面に祖國再建の負担を願つておるのであります。國民全体の協力と理解がなければ、この祖國は再建できないのであります。決して資本家を擁護する予算を立てておりません。資本家は資本家としての立場において我が國の産業を発展しなければならないし、勤労大衆も勤労大衆の立場において、それぞれの分に應じて我が國の産業発展のために、祖國再建のために協力されるべきごとであると、強く期待をいたしておる次第であります。(拍手)
 尚中西君が申されました社会党に関する批判でありまするとか、或いは政治道徳論はそれぞれ違つた立場において述べられておる御意見であると私伺いましたので、それはこの場合お答えする程度のものではないと考えておる次第であります。(拍手)
   〔國務大臣森戸辰男君登壇、拍手〕
#6
○國務大臣(森戸辰男君) 中西君の御質問にお答えします。石橋財政に対する批判並びに私の演説についていろいろお話がありましたが、あの時に私の重点を置いたところは、こういう予算を立てると必ず倍か、三倍の予算になる。そこに大きな不健全性があるということが私の一番強調した点でありまして、現在その通りになつておるのです。即ちその不健全性が今日の追加予算を提出しなければならなかつた一つの重大な理由になつておることを御了承を願いたいと思うのであります。(拍手)それは健全性につきましては、絶対的な抽象的な健全性と、現実の事態に即應した実際的な健全性との問題があるのであります。この予算におきましては、私は具体的な、実際的な、健全性を目指しつつ、この経済財政の状態から最大の努力をいたされておるものと存じておるのであります。尚それにつきましては、この予算の策定に当りましては、危機にある日本の祖國の再建ということを目標としながら、私共は國民のあらゆる力がこれに協力することによつて、この日本が危機突破できるという観点に立つておるのでありまして、抽象的な一部の社会革命の力によつて日本の危機が突破されるものでないという所に重点が置かれておると思います。この予算の賛否ということは、そういう点が中心の観点ではないかと考えておる次第であります。(拍手)
   〔政府委員小坂善太郎君登壇〕
#7
○政府委員(小坂善太郎君) 中西君からいろいろとこの追加予算の本質についての御議論があつたのでありまするが、大観いたしまするに、それぞれの立場からそれぞれの意見が述べられるのでありまして、私共といたしましては、今日のこの日本の当面いたしておりまする危機というものは、いわば民族的危機でありまして、これは能く階級闘争によつて救われるものではなく、我々は国民全体の協力態勢を盛り上げて行かなくちやならないのだ。こういう立場に立つて考えておるのであります。で、いろいろのお話の中で、石橋財政との相違点が明確にされておらんから、その点を追究したいという御議論がございましたが、具体的に申しますると、石橋財政の際にございました一番大きな特徴とも見られるものは、一應形式的に辻褄を合せるのだという点が強く看取せられたのであります。我々はこの補正予算におきまして、ありのままの姿を全部曝け出す。今日日本の当面いたしておりますもろもろの危機のありのままの姿を曝け出しまして、日本國民全体の苦悩する姿をこの予算の中に現わす方がいいと考えたのであります。従いまして本予算に盛られました四十八億円の赤字も消し、更に又特別会計におきまして等閑にされておりましたところの赤字というものを、一應一般会計においてこの際肩替りをいたして、そのありのままの姿を全部出してしまうということを以て、これを健全の姿である。現実をありのままに直視することが即ち健全性であると考えておる次第であります。更に予算の大衆課税的性質についで御指摘がございましたが、私共は片山総理大臣も仰せられましたように、決してそんなようなことは考えておりません。全体として苦しい予算の中でございまするが、五十一億円の勤労階級への控除を特に注意を拂つておる次第でございます。又隠退蔵物資においては、その摘発が予想されておりながら、これが予算に計上されていない点を御指摘になりましたが、これは中西君も言われましたように不確定なものであります。不確定なものを確定したるがごとく予算に組むことは、予算の本質ではありません。そこで尚所得税について、これは不確定なものではないかという御議論もあつたのでありまするが、私共は不確定なる所得税を見込んでおるつもりはございません。(「滞納百億円はどうした」と呼ぶ者あり)更に價格調整費についての御議論がございましたが、これは一概に資本家擁護というふうにお考えになつて頂いては困るのであります。今日の産業の再建、生産復興のために、どうしても必要欠くべからざると認めらるるものは、個々の会社について精査し、そうしてこれを通じて企業経営を合理化して貰い、技術を向上発展さして貰うように考えておる次第でございます。で、先程も一言いたしましたように、この追加予算というものは、結局國民生活、日本国民経済を離れて成立するものではないのでありまして、國民経済の当面いたしておりまする敗戦の後のこの姿がありのままにここに出たものと、さよう御了承を願いたいのであります。(拍手)
   〔國務大臣一松定吉君登壇、拍手〕
#8
○國務大臣(一松定吉君) 中西君の私に対しまする御質問に対しましてお答えをいたします。過般私が当所において発表いたしました受入態勢に対する演説についての再質問であつたようでありますが、あのときに申しましたように、受入態勢は十分に整うておると、これが結論。ところが中西議員の本日の御質問では、受入態勢が整つておるということは何にも今度の追加予算に現われていないじやないか。そうして見ると、その態勢が整つておるということはいわゆる欺瞞である。そういう一体信念のない軽率な言動は愼むべきことであると、こういうあなたの御主張であつたようであります。私は、自分が着くも國務大臣として当議場に発表するときに、軽率にして欺繭的の言動はありません。それははつきり申し上げて置きます。(拍手)つまり追加予算の中には、今度の受入態勢に関する予算は入つておりません。それはいわゆる二十二年度の本予算の中に十三億二千二百万円というものが計上されておるのです。その中で現在まだ残つておるのは六億六千四百万円ある。六億六千四百万円まだ本予算がある。だからして今回は追加予算には必要がないから計上していない。故に追加予算に計上してないということによつて、受入態勢についての予算がないから、お前の言うことはいわゆる軽率である。虚偽であるというがごときことは、少しくあなだの御見解が間違つておると私は申上げたい。(「実際には困つておる」と呼ぶ者あり)然らば生業予算についてどういう計画を立てておるかということにつきましては、これは前回よく申上げて置きましたことをもう一度申上げまするならば、第一次の計画は十億円、第二次の計画は六億六千六百余万円、この第一次、第二次の中で、この第一次の十億はすでにもう放出済みでございます。それをもつと詳しく言いまする、ならば、四億九千万円が政府資金として放出せられ、五億九百万円というものは庶民金庫の方からすでに放出されておりますから、第一次計画十億というものはすでに放出済みである刀第二次の六億六千万円の中で、政府資金といたしまして本年の五月二十七日に一億五千万円、第二回が九月三十日に二億円というものが出されまして、残りの三億一千余万円というものが、これが庶民金庫の方から出すことになつておるのでありまするが、これは昨日でありますか、浅岡さんでありましたか、よく覚えませんが、御質問なさつたときに‥‥(「北條」と呼ぶ者あり)聞違いました。そのときに私がこのことについて詳しく申上げることをいたしませんでしたが、その後まく調査いたしまして、本日ここで申上げまするが、庶民金庫の方にすでに金がないというようなことで、一時支拂停止したことが本年の四月頃からあるということでありましたが、調査の結果によりますると、四月頃からはそういうことはなかつたが、六月頃から或る銀行の中でそういう事実があつたそうで、それらのことは不都合でありますので、私の方で十分交渉いたしまして、それらの中で、すでに一億五千万円というものは今月中に放出は済むことになつております。残りの一億六千六百万円というものは、これは本年の十二月中に必ず放出しなければ、これらの生業資金を当てにしておる皆様に対し相済まんということでありまするので、これも厳重に、それを放出することにいたしてあるのであります。ところがどういうことになつておるかと言いますると、本年の七月末の申込はこの前御報告いたしましたように十九億九千七百余万円で、それが貸付が今僅かに十億七千余万円であつて、まだ残りが相当に貸付ができておりません。で、これらのことは今後、今月及び十二月において放出いたしまする三億一千万円においてこれを賄い、尚不足しておりまするから、その不足のものに対しましては、只今関係方面と頻りに樽爼折衝を重ねております。で私は少くとも一人に対して現在五千円であるのを七千円ぐらいに引上げて、そうしてできるだけの生業資金を差上げて、それらの方の非常にお困りになつているところを一つ救いの手を伸ばしたい、こういうことで今努力いたしておりますから、その辺は一つさように御了承願いたいと思うのであります。(「予算に書いてないじやないか」と呼ぶ者あり)その金額等は只今ここで申上げることを差控えます。いずれ確定の上で適当な機会において御報告申上げることがあろうや思います。食糧問題等につきましても完全で、受入態勢が完備しておるということを申上げたのでありまするが、多少これを具体的に発表いたしますならば、乾パンだとか罐詰だとか粉味噌、粉醤油だとかいうような、そういう生活必需品はもう十分に用意を整えておるのでございます。それから衣料等に関しましても過般報告の通りでありまして、余り越冬を困らんようにすべく用意も整えておりまするし、現に原料は商工劣等において十分確保いたしておりますから、これも心配はないのでございます。住宅問題に関しましては、シベリヤから引揚げまする人々は大概本土にそれらの住宅を持つている方が多いのでありまするが、ただ一番困るのは樺太におる二十万人の方が引揚げます時に、これは住宅のない方がその中の一割五分くらいあろう、即ち三万人くらいはあろうという推定でありまして、これらの点に対しましては過般申上げましたやうに、北海道並びに東北六縣に用意をいたしております。北海道には一万八千人分、それから東北大縣には秋田が千人分あります。他の五縣は千八百人、合計三万人に達する程の建築をいたして今施設をいたしております。一億円の金を使つているので、これが本月中に完成しようということになつているのであります。こういうわけでありまするから、今米ソ両方の好意あるお取りなしにまりまして、一ケ月に十三万若しくは十六万の人を日本に帰して頂くということに相成りますれば、それらに対する受入態勢は整つているということを申上げたのでありまして、決して軽率に虚偽のことを申上げたのではないということを御了承を賜わりたいのであります。(拍手)
   〔國務大臣和田博雄君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(和田博雄君) 中西さんの私に対しまする御質問にお答えいたします。大部分はもうすでにお答えがあつたわけでありますが、價格調整金の使途につきましての御議論につきましては、小坂次官からお答えがあつた通りでありまして、これは結局資本家を擁護しているのではなくして、むしろ経済再建の見地から今の生産の回復程度が各産業によつて非常に違う、殊に基礎的な方で、例えば鉄鋼とい、つたようなものにつきましては、それをそのまま價格改訂をやりますと、非常に高いものになります。そうするとその高いものを使つてやりますと、外の産業のコストも非常に高くなつて、結局價格水準は高度のところに落着かざるを得ないということは、價格改訂が今度の新物價体系を立てまする方式による以上、インフレーシヨン、潜在的インフレーシヨンを眞正面に現わす結果になり、これは今のがたがたした日本の経済においては、到底取るべき方策ではない、それよりもやはり六十五倍なら六十五倍という安定帶を作つて、そうして財政面においてそれを確保するという形において賄つて行くということの方が、適当だろうという考えからやつたのでございまして、結局資本家擁護の立場からやつたことでないことだけは御了承願います。
 それから國民所得の千二百億の喰い込みというお話がありました。これは経済安定本部の方で、一應國民所得というものは概定をやつておりまして、大体八千五百億、九千億程度になろうかと思うのでありますが、併しそれが産業資金にいくら、消費資金にいくら、結局バランスがいくらになるか、國民所得の面から見た全体のバランスがどうなるかということにつきましては、財政資金におきまする期別の計画ができる段階になつておりませんので、その点ははつきりとお答えできないのであります。従いまして千二百億の喰い込みがあるかどうかという御議論もありますが、大内教授も昨日されたのでありますが、これが少し早まり過ぎていると思いますので、その点も御了承願いたいのであります。今度の追加予算の編成に当りまして、この政府におきましては眞正面に編成に取組んだつもりであるのであります。物價体系の維持、千八百円ベースの維持、この日本のインフレーシヨンを追加予算によつて今日一層促進するのでなく、尚この追加予算自体が健全財政の建前も堅持され、日本のインフレーシヨンの促進を抑えて行くという大きな見地に立つて眞正面に取組んだわけであります。併し追加予算の編成される過程におきましては、日本國民経済が持つている、礎つて国民経済との関連において財政が持つているところの本当の問題が國民の前にはつきり出たろうと思うのであります。これが今一度の追加予算の編成過程におけるこの長い間、三ケ月かかつた私は大きな収穫だろうと思うのであります。私共の立場はどこまでも日本のインフレーシヨンと眞正面から取組んで、そうしてインフレーシヨンを抑えて、日本の経済を再建して行くという建設的な立場に立つているだけは御了承願いたいのであります。私が物價体系そのものを堅持する建前から、闇價格のバロメーターである煙草の値上げに対して最後まで争つて参りましたのも、そういう見地に立つているのであります。併し一面から考えますれば、煙草自体というものが生活必需品とは言いますが、食糧なんかに比べて見ますれば、やはり嗜好品的性格が多い。從つてその意味において或る程度の国民の耐乏というものを今の段階においてはやはりお願いして、そうして財政の全体のバランスを合わすことによつて、通貨の増発というものをやはりその面から防ぐことによつて、その辺からこの價格体系というものの堅持というものも図つて行こう、こう考えたわけであります。決まりましたこの追加予算につきましては、そういう方針において今後我々として善処して行く考えでおるのであります。價格体系自体を崩すことが決して今の段階において日本建設のためにならんという建前に立ちます以上、我々としては中西さんのお話の中にあります流通秩序の確立に対しましては、今経済安定本部としましては監査というものを厳密にやりますことと並行して、闇の撲滅には尚一層努力を拂い、又闇利得の追究に財務当局の強化を図つてやつて行くつもりであります。我々は論理的には悉く流通秩序の確立という方向にやはり全力を盡すことによつて、この危機を突破いたしたい、かように考えている次第であります。私はこの余地はまだある、インフレーシヨンの問題は政府だけの問題でなくして、國民全部の問題であるということによりまして、政府が本当に腰を今後据えてやりますならば、私はこの効果は挙るという自信の下に仕事をやつて行きたいと思うのであります。
 それから経済緊急対策が総て失敗のようなお話でありましたが、併し私はそう言い切ることは少し言い過ぎであると、かように考えるのであります。二十一年度の東京都だけに取つて申しましても、配給食糧による攝取カロリーの実績は二十一年度と二十二年度とを比べまして、二十一年度は千百二十二カロリーであつたものが、二十二年度の上年期には千三百四十四カロリーになつているということは、むずかしい時期でありますが、やはり政府の緊急対策によるものが或る程度の効果を挙げておる点もお認めを願いたいと、かように考えるのであります。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) 伊東隆治君。
   〔伊東隆治君登壇、拍手〕
#11
○伊東隆治君 第一國会が延期に延期を重ねまして今日に至りました主たる原因は、今次追加予算を政府が極めて愼重なる態度を以て提出せられたことに基因することは、私共誠に政府の努力を諒とする次第であります。特にこの予算の歳出の大部分を占める終戦処理費に関しまして、政府が終始熱心に、我が國の経済の実情をよく認識して、この追加予算の編成に当りましたことに対しまして、特に私共はその労を多とする次第であります。先般來同僚各議員から、この追加予算に関しまして各角度からの観察がありました。これを要約いたしまするならば、要するに今次の追加予算は数字上の均衡は得ておる。もつと激しい言葉で申しまするならば、机の上の数字は辻褄を合せておるけれども、実質的には健全性を欠いておる。不健全である。インフレを激成し、國民生活を強度に圧迫する慮れが十分にあるという点に帰著しておるように感ずるのであります。私もこの点に関しましては聊かその感を深うする点が二三ありますので、これらの点に関しまして政府の所見をお伺いいたしたいと思う次第であります。
 いずれにしましても、これらの不健全なる、仮に不健全なる財政を健全にするためには、現下の情勢におきましてはどうしても企業の合理化を図り、又車の両輪のごとく、他の一輪である行政整理を断行するのでなければ、到底財政の健全化を図り得ないということにつきましても、同僚議員各位の一致した意見のように思うのであります。而してこの行政整理は、來年度の本予算編成の際に政府においても眞剣に考えたい。言葉を換えて言えば、明年の政治の形式を決定する際にこの行政整理の問題も眞剣に考えたいということは、先般西尾長官よりも説明がありましたような次第でありますので、我々は今後の政府の施策について大なる期待を持つておる次第であります。
 さて私が同僚議員とひとしく本追加予算の健全性について憂えておる点につきまして述べたいのでありますが、何と申しましても今度の追加予算の脆弱性と申しますか、アネイブル・ポイントは歳入の面であります。歳出を九百二十五億、歳入を九百七十四億と見積りまして、差額四十九億の黒字にいたしました。この四十九億を本予算の赤字を埋める所に苦心をいたしておる点は、甚だ苦心の跡は見えるのでありますが、然らばその歳入九百七十四億なるものは、果して徴収可能なる数字であるかということを檢討いたして見ますると、その歳入の大部分を占めておりまする租税收入について先ず検討いたして見まするに、租税收入は歳入九百七十四億の内、実に六百三十七億を占めておるのであります。而して当初予算の六百九十五億を加えますと約千三百億の多額に達するのであります。然るにこの千三百億の租税収入予定の内で、今日まで徴税済の税額は僅か僅かに三百億に過ぎません。残りの千億の大金は、本月より三月末まで僅かに五ケ月の間に政府が徴収しなければならない大金であるのであります。向う五ケ月間に、いかにして政府は千億に達する大金を國民から徴収し得るか。この点は私共誠に憂慮に堪えない点であります。この点に対しまして片山首相並びに蔵相は、納税運動を全國に強く展開して、是非これだけの收入は挙げるという決意を示されておるのでありますが、この税の徴収に当りまして私共がもう一つ心配いたします点は税務官吏の問題であります。税務官事の待遇の問題につきましては、以前より強く言われておる所でありますが、これらの税務官吏が若しも他の官業の政府役人のように、國の仕事をしないで組合の仕事のみに没頭しておるというような実情が、やはりこの税務官吏の中にもありとしまするならば‥‥あつたように仄聞する所もあるのでありますが、それは誠に由々しきことでありまして、これらの多額に上る租税を徴収しなければならない税務官吏の待遇が他の官吏よりも低いがために、これらの税務官吏は安んじて租税の徴收に当り得ないとしますならば、いかに政府が納税運動を展開しましても、亦我々がいかに憂えておりましても、実際問題として、これらの税は事実上一國庫に収納せられないのであります。私はこの意味におきまして、税務官吏の待遇改善は急務である、又同時に徴税技術の改善につきましても、この際根本的の改善をするに非ざれば、この予算も根本的に破壊せられる慮れのあることを痛切に思うのであります。
 次に私の憂いまする第二の点は、本予算を見ますると復金への出資が四十億となつておりまするし、又貿易資金特別会計への繰入が五十六億六千万円と相成つております。本年八月復金への増資が三百億決定せられたことは皆様御承知の通りでありますが、この三百億の出資の中、僅かに四十億を政府は出資することに相成つております。残りの二百六十億はいかにするか。これは先般來の政府の答弁によりますると大体復金の債券を発行する予定のようでありますけれども、今日の経済界におきましては、到底かくのごとき多額の復金債券を消化する能力のないことは一致した意見であります。所詮は日銀がこれを引受ける結果になるでありましよう。そうしますならば、結局財政面の赤字を金融面に轉嫁したに過ぎないのでありましてここに赤字が隠れておると言われても仕方がないと思うのであります。貿易資金特別会計への繰入金五十六億の点につきましても同様でありまして、百六十億を要求せられておりまするこの資金で僅かに五十六億を出資いたしますることは、残りの百億につきましても政府はこれを借入金に俟たなければ相成りますまい。そういたしますると、復金への不足額の二百六十億と貿易資金特別会計への繰入の百億を合せますと、三百六十億に達する赤字がここに潜められておるというように考えられるのであります。九百七十四億の歳入の中で三百六十億の赤字がここに潜められておるというような結果になりますれば、それがインフレーシヨンを激成する結果になることは明確なる事実でありまして、私はこれに対する政府の対策をこの機会に伺いたいのであります。
 次に新米價と國民生活の問題でありまするが、私は今次の米償引上によりまして、これが国民生活に加わるべき圧迫について非常に憂うると同時に、むしろこれよりも憂えねばならん点は、農民に対し供出額が増額いたしますことによつて、農民の購買力が壇進一しましで、これによる物價水準の引上が必然的に起ることによるインフレ招來を非常に憂うるものであります。先程中西議員より政治道徳の問題もありましたが、この問題に関しまして私も多少政府に反省をして頂きたいと思う点、特に安本長官の明快な御答弁を得たいと思います点は、我々が電車に乗りましても道を歩きましてもよく見る廣告は、十一月から家計が黒字になるという廣告であります。(「安本いないぞ」と呼ぶ者あり。)安本の計算によりますと、十一月には三百九十九円の黒字となるという予算になつておりますが、専門家の最近調査いたしましたる結果によりますると、野菜の値上りによる國民生活の負担増加は七十三円となり、魚の値上りによる負担増加は六十七円、光熱費の値上りによる増加は六十九円、石鹸等の衛生材料の値上りにより二十一円の衛生費の増加があり、その他を含みすでに今日まで二百七十二円という増加があるのであります。而して今度の新米價によりまして百九十二円八十七銭という國民生活の負担増加がありますので、両者を合せますと総計実に四百六十五円の増加となりまして、三百九十九円の黒字と見られます十一月の家計は逆に差引六十六円の赤字となるのであります。安本長官がいないので甚だ遺憾でありまするが、かくのごとく十一月の家計は六十六円の赤字となる予定でありますのに、電車の中やその他に貼つてあります政府側の廣告ビラに、十一月から黒字になる。だから國民にここに耐乏の生活をして貰いたいというのがあるのであります。これは何としても早くこのビラを取るならばいざ知らず、又これが訂正をする必要炉がとにかくあるのでありまして、かくのごときビラがぶら下つていることは、いかにも政府が嘘を言つているということを言われても私は仕方がないと思うような次第であります。
 次に煙草の値上についてでありますが、煙草の値上によりまして、これが社会問題に及ぼす影響につきましては、まだ同僚議員より指摘するところがありませんので、私はここに簡単に述べて置きたいと思うのでありますが、法曹界における権威の談によりましても、煙草というものが今日におきましては生活の必需品に入る。煙草も減じ、又煙草を無くすることによつて起る犯罪の数というものは実に数えるのに遑がない。即ち煙草と犯罪という問題は今日法曹界の大音な問題になつておるということを承知いたしているのでありますが、今次政府はこの煙草の値上をいたすと同時に、本当に煙草の必要である家庭配給を減じておりますことは、この点に関しまして大いに思いをいたさなければならないと思う次第でありまして、こういうところまで政府がお考えになつて、草煙の値上、配給の減少をいたしたのであるかという点についてお伺いいたしたいのであります。
 次に商工大臣はおりませんが、外務大臣がいらつしやるのでお伺いいたしたいのでありますが、我が國の貿易の在り方についてお伺いいたしたいのであります。今日我が國の経済が世界経済の一環としてこれを取扱うのでなければ到底再建は困難であるということは、一致した意見であるのでありまして、先般八月十五日以來、我が國の外國貿易がここに許されまして以來、我が國はここに再生の思いをしてこの貿易の振興を冀つておるのでありますが、この外國貿易の在り方につきまして、これを從來のごとくバーター・システム、物々交換主義で行くべきであるか。即ち貿易の均衡を第一の主たる目的として、そのために諸外國との貿易の在り方を決めるべきであるか。又は通商の自由を理想として、関税の引下即ち最恵國條款主義を採つて行くべきであるかという、この二つの大きな問題を今日決めてかかることが今後の我が脚経済を指導する点におきまして重要なる点だと思うのであります。先般英國がポンドの自由交換停止をいたしましたので、やはり今後の世界の貿易趨勢は物々交換、国家主義的立場においてなさるべきものであるとの意見が経済評論家間に散見いたすのでありますが、これは英國の藏相ドールトン氏がみずから言つておりますように、ハード・カレンシー國からの輸入超過とソフト・カレンシー國への輸出超過の調整をせんがために止むを得ず採つた措置であつて、決してこれを長期の貿易政策とするのではない。これは一時的方策であるということを述べております通りでありまして、決して貿易が昔のごとくにバーター・システムに還りつつある点ではないと私は思うのであります。現に御承知の通り一九四四年には連合國は米國のニューハンプシヤイア州のブレトン・ウッドに会合いたしまして、通商の自由を交渉し、二つの大きな機関を設けておることは御承知の通りであります。即ち国際通貨基金と國際復興開発銀行を設けまして、これを國際連合の側面的機関といたしまして、爲替の制限を撤廃し、通商の自由を確立せんがために、ありとあらゆる努力をいたしておるのでありますが、この二つの機関、国際通貨基金も亦国際復興開発銀行も一九四五年の末までには成立いたしまして、翌年即ち昨年の七月にはサヴエナ会議の地固めをいたし、本年の三月には新平價を決定して、これか関係國に通報いたしておるような次第でありまして、世界の経済國はひとしくこれを支持し、通商の自由制度こそ今後の世界経済の建直しに欠くべからざるものだとの態度をここに示しておるのでありますから、我が國も現在講和会議を前にいたしまして、これらの経済協定に関しましても、國内態勢を整え、時機が参りましたならばやこの協定にも参加いたしまして、世界経済の一環としての日本経済の発展に努力するの準備を今日においていたすべきだと確信するものであります。この点に関しまする政府、関係大臣の御答弁をお願いすると共に、今日かくのごとくに國際経済というものが、我が國経済のあり方について重大なる関係を持つ今日におきまして、外務省内に昔の通商局のごとく國際経済を研究し、我が國貿易対策を決定するがごとき、この種の機関を今日この機会に設くべきではなかろうかという意見を持つておりますので、この点に関しまして外務大臣の御意見を伺えば幸甚と思うのであります。
 最後に首相にお尋ねいたしたいことは経済復興会議についてであります。経済復興会議は本年の二月に発生いたしまして、すでに地方に十四、産別に七つの復興会議ができておることは御承知の通りでありますが、前吉田内閣は、経済復興会議を労働運動の防波堤のような意味に使つたがごとき感があるのは、誠に遺憾でありまして、この経済復興会議こそは今日の経済の行き詰りを打開するのに最も適当なる機関だと思うのであります。この会議が発生しました時に、言論界その他各界から非常なる期待を以て、この復興会議こそは日本経済を再生せしめる唯一の機関であるかのごとくに期待をいたしたのでありますが、その後の仕事は極めて停滞し、特に産別の復興会議において、なかんずく石炭復興会議におきまして、北海道及び九州においてこれに反対があり、今日中止の状況にあることは御承知の通りでありまして、その後政府は主要人事を多少変更いたして今日に参つておるようでありますが、どうも折角大なる期待を持つて生まれましたる経済復興会議につきまして、これを活用するの態度が見えないのは誠に遺憾とする次第でありまして、先般当院におきましての自由討議におきましても、今日のごどき重大なる経済状態において、安本のみがこれが責任を負担しておるがごとき今日の組織は非常に危険ではないか、最高経済会議を設けるべきであるという議論があつたのでありますが、私はこれに対して同感でありますが、それも必要で、他面そういう会議を起すことも必要でありましようが、すでに今ありますところの経済復興会議を、何が故に政府はもう少し組織的に活用しないかということを思うのであります。即ち経済復興会議を活用せよと思うのでありますが、これに関しまする政府の意向をお伺いしたいのであります。私の質問はこれで終ります。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇、拍手〕
#12
○國務大臣(片山哲君) 伊東君の最後にお述べになりました我が國の経済の復興のために、復興会議を十二分に活用することが必要である、こういう御所見でありまするが、誠に御尤もでありまして、政府といたしましても十分この点を考えておるのであります。できるだけ有効にその関連をよくいたしまして、経済復興のために在野各方面の知識及び能力を発揮して頂きたいと考えて、いろいろ緊密なる関係を取り、その機能におきましても、その活用におきましても、緊密なる関係を今後取つて、その協力を心から希つておる次第でありまして、御趣旨に副うべく努力いたしたいと考えております。(拍手)
   〔國務大臣芦田均君登壇、拍手〕
#13
○國務大臣(芦田均君) 只今伊東君より、今後の我が國の経済的再建に当つて海外貿易に一層の努力を傾けなければならないという御趣意を以て、詳細に御意見を御発表になりました。政府においても全く同感であります。満州事変の前後において、誤つて日本はアジヤに帰れとか、アジヤは一なりとかいう言葉に眩惑されて、我が國の國民経済、その経済の基本は國際依存性に多分に考慮を拂わなければならないということを忘れておつたかの憾みがあつたと思います。近く貿易がますます再開の機運に乗じて興らんとするこの際に、我が國内において更に統一ある適当の機関を設けて、これに対処すべきではないかという御意見でありました。現在我が國と海外諸国との取引は、專ら貿易廳がこれに当つておるのであります。対外貿易を政府のいかなる機関によつて管掌すべきかということは、それぞれ國によつてその形を異にしておるのでありまして、アメリカにおいて、イギリスにおいて或いはその他の諸國において、それぞれの機関を設けてこれに当つておるのでありますが、從來外務省に通商局があり、更に商工省に貿易局が設けられ、現在は貿易廳と称する商工省の外局においてこれを管掌しておることは、御承知の通りであります。今後いかなる機関によつて海外貿易の事務を管掌するにしても、その根本の問題となることは、海外貿易に最も知識のあり経験のある練達したる人材を政府が集めるということであると思います。そういう意味から見て、必ずしも官吏出身の者であることを必要としない場合も多々あると思うのであります。民間の経験あり学識ある人の活躍に俟つべき部門も多々あることと考えます。そういう人材を集めてこれをいかなる省に属せしむるかということは、目下政府においても種々考慮を拂つておるのでありまして、恐らく遠からざる機会にそれらの問題を解決して、國会にお諮りする時期が來ることと期待しております。簡単にお答えいたします。(拍手)
   〔政府委員小坂善太郎君登壇、拍手〕
#14
○政府委員(小坂善太郎君) 伊藤さんからいろいろと、甚大なる御考察に基ずきまして、今回提出いたしました補正予算の中にありまする諸点について御注意を頂きましたことを感謝いたします。
 最初の御意見は、歳入の面におきまして、殊に納税の実績が十分に挙つていないように思われるが、この点について今後の自信、ありやというような御趣旨であつたと存じまするが、私共御指摘のように成る程この六百九十五億円の当初予算の中、三百億円が徴収済になつておるのであります。これは御承知のように先般来から申告納税制度を採用いたしておりまするので、この申告納税という新らしい制度が國民全般に十分に消化されておりません現在におきまして、一應この程度のことであろうという予測の下に出発いたしておるのであります。今回更に更正決定を行いまして、これが増徴に努め、この予定の税を十分に消化いたせるように努めておりますので、今後の六百三十七億円の租税につきましても、十分なる自信を持つて税務当局乃至は財務当局は考えております次第でありますから、この点御了承願いたいと思います。
 第二の税務官吏の問題でございまするが、成る程私共この税務行政というものを更に強化いたしまして、税務機構を量質共に更に優秀なものといたし、そうして徴税の第一線にございます徴税の能力というものを強度に発揮するということが必要であると考えております。これと並行いたしまして、第三者の通報制であるとか、或いは罰則であるとか、そういうものを強化して、税というものについて國家の強制徴收獲得権というものを強化しなければならないのでありまするが、何と申しましても第一線の税務官吏というものを強化することが先ず第一であります。これにつきましては、何と申しましても現在の税務官吏の待遇というものは非常によろしくないのでありまして、この優遇方針について我々は案を持つております。近く御審議を願います公務員給與法との関連もございますが、それを待つておることもいかがかと存じますので、でき得れば税務官吏の待遇に関する単行法を我々としては作成して御審議を相煩わしたいと、かように考えておるのであります。
 第三点といたしまして、復興金融金庫の出資金、或いは貿易資金特別会計における政府出資が、非常に表面に現われておるのは少いので、更に潜在的に相当に通貨の増発を來すような要因があるのではないかという御意見でございまするが、私共といたしましてはこのような考の下に、これで十分だと考えておるのであります。と申しますのは、復興金融金庫の出資というものは、御承知のように政府の出資と復興金融金庫の債券と、更に復興金融金庫による保証という三つの制度を持つておるのであります。我々といたしましては、債券はできる限りこれを、昨日でございましたかも申しましたように、市中銀行の共同の力によりまして、できる限り市中で消化して貰うように目下大童で努めておりまするが、更に一般の蓄積されました市中銀行の資金の貸出しに対して、この復興金融金庫が保証をいたすということを考えております。第三四半期におきまする計画も、大体復金が直接扱いまするものと、市中銀行の扱いまするものと、その差は大体一・七倍という程度になつております。こういたしまして復金の保証という制度を拡充いたしまして、結局國民の蓄積した資金を以て産業に投資をして行くように努めるように考えておる次第であります。
 貿易資金の問題につきましては、これはいろいろ問題があるのでありまして、元來は貿易資金というものは、一つのリボルビング・フアンド、回轉基金的な性質を持つておるものでありますから、これを本來の性質のままに使いますれば、それ程多くの資金は要しないのであります。併し國民経済の現段階におきまして、いろいろこの貿易資金が價格調整的な、或いは産業補助的な機能も営まなければなりませんので、こういう面において相当多額の資金を要するということに相成るのであります。我々といたしましてはできるだけこの機構を簡素化いたし、又合理化いたしまして、極力本來の性質に副うたもののみに止めるように考えておるのであります。その意味におきまして貿易資金の新らしい出資の五十五億円というものは、これで適当であろうというふうに考えておるのでございます。
 最後に煙草の値上げと、煙草の国民生活に関する医学的或いは法医学的な考察をしておるかというお話でございますが、財政当局といたしましても、いろいろ関系各省とこの問題については話合つて遺憾なきを期しておる次第であります。以上を以て簡単でございますが、お答えといたします。(拍手)
#15
○議長(松平恒雄君) 和田國務大臣の答弁は、後に適当な機会にせられることと存じます。これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二十九分開会
#16
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。午前に引続き質疑を許します。川上嘉君。
   〔川上嘉君登壇、拍手〕
#17
○川上嘉君 私は学者でもなければ理論家でもない。過去十数年に亙つて第一線税務職員としての極めて素朴な体験を通しまして、今回の追加予算殊に歳入面に率直な批判を加えながら、次の数項目について質問いたします。
 先ず第一番目に、今回の追加予算は綜合的な計画に基ずいて立案されたものであるかどうか。追加予算と雖も当然に民主日本の建設に沿うた何ケ年計画といつたような、恒久的対策の一環として立案されるべきものと思いまするが、果して今回の追加予算はこういつた線に沿つてなされたものであるかどうか。それとも單に数字的に辻褄を合わすためになされたものであるかどうか。総理大臣の答弁を願います。
 第二番目に、今回の追加予算は健全財政を堅持できると言うておるが、果して自信があるのか。固い信念を持つているのか。大蔵大臣の答弁を願います。この追加予算は、政府及びこれを取巻いている官僚連中の事務的な公式に基ずいたところの机上の計画に過ぎないものであることをはつきりとここに断言いたします。この理由を二三簡単に述べますれば、先ず現在の徴税機構では、通常及び追加、合計一千三百億円程度の厖大な租税収入を政府の計画通りに確保することは絶対にできないのであります。(拍手)四月より十月までの七ケ月間で僅か三百億程度しか徴収していない。然るに今月より三月までの僅か五ケ月間で一千億程度の厖大なる相税收入をどうして確保できるか。次に歳出面において失業対策費、給與改善費等は少額であり、これでは國民生活の安定を欠き、又六・三制予算の僅少なることは、精神的方面におきまして教育界に及ぼす影響は甚大であり、尚これがために、父兄及び後援会等の名目において寄附する金額は直接一般大衆に非常に重い負担となり、更に國庫負担の不定分は当然に地方財政でこれを賄わなければならない結果、地方財政は破綻するの止むなきに至るのでありましよう。尚千八百円ベースは、いかに安本長官が強引に押しても、常識から判断してこれを維持することはできない。以上のような理由によりまして、追加予算は絶対に健全財政を堅持することはできないことを断言いたします。それとも健全財政を飽くまでも堅持できる自信があるのかどうか。大藏大臣の答弁を願います。
 第三番目に、この千三百億円という厖大な租税收入を確保できる自信があるのか。これを大蔵大臣の責任のある答弁を願います。私は私の体験を通じて、固い信念を持つて絶対にこの租税收入は確保できないことをここに断言いたします。大藏省の官僚連中の五六名の机上の計画だけで、できるできると幾ら大きなことを言うても駄目である。一体どうして徴収するのか。大藏大臣は財政演説の中におきまして次のようなことを申しております。租税收入を確保するために新税源を捕捉し、インフレ利得者に対する課税を徹底して、租税負担の公正と租税収入の確保とを同時に図るためには、税務機構を拡充強化し、更に税務職員の待遇改善を図ると共に、税務の運営方法を刷新し、脱税の摘発、処罰の強化、第三者通報制の活用、更に滞納処分の促進などにより税收の充実を期する等、尤もらしくうまいことを並べ立てているが、言うだけなら簡単である。実際にどれだけの準備工作を今日までなしておるのか。この追加予算の歳入面は、第一線事務に携わつているところの税務署の実情を全く無規しているのであります。今日の税務署の実情は、財産税、戰時補償特別税、これに続いて増加所得税の創設、所得税法の改正に伴う納税申告制度の採用など、事務分量は急激に増加して、賦課決定事務、徴収事務、更に進んで滞納、延納などの処理すべき事務は山積して、過重の負担のため、あれもこれも手を着けなければならない。二兎を追ふ者一兎を得ずの窮地に追い詰められているのであります。尚現在の徴税機構及び人的要素、劣悪なる待遇、徴税費を以てしては、闇屋及び新興階級のごとき大口所得者の課税は常に困難であり、從つて租税の徴収計画は大衆課税とその税率の引上等に集中せられた結果、税金は大衆の最低生活費にまで食い込み、この不合理不公平な税制とインフレーシヨンの昂進等により、国民の納税思想は非常に惡化しているのであります。租税の滞納額は政府が発表しているだけの分でも百億程度でありますが、実際はこれ以上と推定いたします。大藏大臣は一枚看板として一大納税國民運動を展開することを強調しておりますが、その運動方法についての具体的な方法を答弁を願います。大臣の言のごとく僅か五ケ月の間に簡単に一大國民運動が展開できるものであつたならば、世の中に苦労もなければ、民主日本建設も極めて簡単であります。大藏大臣のこの言は全く國会を欺瞞するの暴言であり、さもなければ銀行の内部しか知らない世間知らずのロボットであると断定させざるを得んのであります。(拍手)税務機構を拡充強化すると大きなことを言つているが、一体何を実行したのか。税務署を僅か八十ケ所ほど増設して、而も一つの廳舎に二つの税務署が入つているとか、或いはバラックのような建物を借用して漸く出発いたしましたが、人員は予定の二割程度しか増員していない現状であります。尚税務職員の待遇改善についても財政演説の中で大きなことを言うておるのでありますが、果して今回の追加予算におきまして税務職員の待遇改善について一体どれほどの対策を講じているのか。幾ら職員を募集しても、待遇が劣悪のために應募する者が殆んどない。折角採用決定いたしでも辞令を取つた途端にやめる者が多く、尚優秀な熟練者が職場を去つている現状をどう見ているのであるか。
 第四番目に、今年度の所得税の更正決定に対しての政府の実質的な方法につきまして大藏大臣の答弁を願います。即ち政府及びこれを取り巻いている官僚連中の机上の計画、及び公式的理論はもう結構だから、第一線の実情に即したところの実質的な方法の発表をして貰いたい。(拍手)今年度より施行せられた所得税の予算申告納税制度の現在までの進捗状況は予算の二六%に過ぎないことになつておりますが、この事実は政府の唱える健全財政の土台をゆすぶる重大な問題であります。この時に当り大藏当局は申告納税制度の民主的な根本精神を無視して、天降り的割当による所得税の更正決定を短期間のうちに強行し、この危機を形式的に名目的に乗り切ろうとしているのであります。現在の経済情勢、申告納税制度の根本精神、又先程述べた第一線の税務署の実情等から睨み合せて、このごときは税務行政の信用をますます失墜し、官民離間し、國民負担の不公平を激化するのみならず、遂に國家経済の崩壊を招來するものと断定いたします。政府が一方的に計画し指示するごとき天降り的更正決定に関しては、責任を以てこれを遂行する意思を有しないことを全國の財務労働組合は堂々と声明しております。かくごのとき無理なことをできるできると言つておるが、大藏大臣は自信があるのか、あるとすればいかなる実質的方法を持つておるのか答弁を願います。
 第五番目に、次の各項目について大藏大臣の答弁を願います。以上述べました通り一千三百億円の租税收入は政府の計画通りには絶対に確保できないことは只今申上げた通りでありますが、何とかして政府を支持するために、残す限られた僅か五ケ月間に而も限られた人員で最大限度の効果を挙げる対策として、次の五項目を提供します。これに対する答弁を願います。
 先ず第一点は、第一線の実情から見まして、現行の税種目においてすらも十分な調査ができていない、從つて公平且つ徹底した課税を期することはできないから、現在政府が提案しようとしおるところの非戰災者特別税を中止すること、尚その他不急な一句の事務を中止することでありますが、中止する意思ありや否や、政府は非戦災者特別税は家屋台帳に記載してある賃貸價格が課税の基本となるのであるから、大した手数も掛らないし、間違いも生じないと答弁するかも知れないが、税務署の実情から反対すると共に、更にこの法案には次のごとき大きな欠陷があるのであります。第一に、本税は実施について準備的措置が全く講じられていないこと、戰時中軍需関係の工場、事務室、宿舎その他において無申告なる家屋が相当多かつたものと推定できます。この調査を終了せずして本税を短期間の内に実施せんとすることは誠に危険なものであります。次に、本税の実施はすでに時期を失つておること、戰災者、非戰災者の経済的懸隔は、その後の社会経済事情によりまして、すでに大なる変動を生じつつあるに拘わらず、本税は必然的に偏在した財産税的な性質を含み、國民感情の融和を図らんとする本税創設の趣旨は実情においては一致していないのであります。第三に、動産を課税対象とするところの非戰災者税が動産價格を課税標準としないで、家屋の賃貸價格を以てしたのは不合理であります。これに対して政府は、第一線事務の煩雑を幾分なりとも防止せんがためと、かようにごまかしておるのでありますが、眞に第一線事務の山積に思いをいたすならば、本税の実施は飽くまで中止すべきであります。不合理なる標準を以て本税を実施することは却つて國民の納税思想を傷つけるものであります。
 第二は、最近新興階級が銀行に大口の預金をしておるのでありますが、この際是非共銀行を調査する権利を税務職員に與えて貰いたいことであります。
 第三は、十月一日現在の國勢調査の資料を税務署に開放しないことになつておるのでありますが、これを是非共開放して貰いたいこと。
 第四は、警察と連絡を取つて、従来警察が持つておるところの参考資料を一切税務署に開放して賢いたいことであります。
 第五は、大衆課税、中でも勤労所得税の徹底的な軽減、大口所得に対する調査の徹底化を実行して貰いたいことであります。今日納税思想が非常に悪化して、滞納者が続出しておる理由は、先ずインフレの促進によりまして一般大衆の生活が非常に窮迫しておる事実。次に税法に欠陥がある。即ち免税点が非常に低いために生活費に喰い込まなければ納税できないような不合理、尚闇屋、新興階級のごとき大口利得者に対する調査が不徹底、不公平なために、重税に苦しむ大衆と大口利得者との間に不公平不均衡がある事実などであります。最近人手不足のために、法人の未済件数が非常に多いのでありますが、これは誠に遺憾であります。政府は眞に大衆の負担を軽減し、大口利得者の課税に重点的に力を注ぐ意思があるかどうか答弁願います。
 第六は、税務職員の根本的な待遇の改善及び徴税費の大幅な引上げについてであります。先程から再々繰返しました通り、税務の第一線は事務量が驚異的に累増しておること、尚インフレの下におきまして、一般の納税思想は物凄く悪化しておる、過重な負担、摩擦、危險、誘惑は想像以上のものがあります。彼の川崎税務署の間税課長の殉職は、この最も明瞭な証左であります。そうして現下の政治経済情勢の下におきまして、身に寸鉄を帶びないところの税務職員が、調査或いは滞納処分にその職責を果すために伴う危険に対して、何らの保障もない、更にその職務の重要性と過重な負担とに拘わらず、その待遇が劣悪で、他官職に比較して二号俸程遅れておる、二号も三号も遅れておる。調査の徹底に必要な旅費が赤字である。尚厚生施設も現物支給も皆無という状況である。全國四百五十ケ所の税務署の中、二百二十ケ所は民間から廳舎を借り受けているというような実情であります。設備も備品も他官廳に比較して劣等の位置にあります。こうしたあらゆるところの悪條件を打開しながらも、忍苦職務に無休の努力を続けて來た税務職員は、今や疲労困憊しております。ここで税務職員が新らしい勤労意欲を持つて國家財政の危機に挺身することのできるように、税務職員の徹底的た待遇の改善及び徴税費を大幅に引上げることに格段の措置を講ずる意思があるのか、用意があるのか、答弁を願います。口先ばかりでは駄目である。尚一ケ月程前か、期日ははつきりいたしませんが、首相官邸における全官公廳対政府との團体交渉の際におきまして、全財の代表が、税務職員の待遇が他官廳に比して劣悪な立場にあることを発言したに対して西尾官房長官は、これまで税務職員が劣悪な待遇に甘んじて來たことは、役得があつたからだと、こうした暴言を吐いたそうでありまするが、これは二十年も三十年も黙々として忠実に地味な税務の仕事に盡力して國家財政に貢献して来た先輩各位を侮辱するものであり、又税務署の第一線で過重な負担、摩擦、誘惑、危険と鬪いながらも職務の遂行に努力して、いる眞面目な税務職員に対する暴言である。高くも片山総理大臣の女房役ともあろう西尾氏が、かくのごとき言を吐くことは、全く心にもない失言と了解いたしますが、西尾官房長官の答弁を願います。
 尚この項の終りに、政府に対して將來徴税機構の改革、税制の民主化の実現に格段の努力あらんことを特に希望して置きます。
 尚第三國人に対する課税がどうなつておるか報告願います。税法によりましては、第三國人からも税金を徴收することになつておりまするが、これに対する調査がどうなつているか、その辺の経過の報告を願います。最後に千八百円ベースについて答弁願います。
 以上述べた通り、予算に計上せられた租税收入は絶対に計画通り確保できん。この結果大藏証券の大増発、日銀からの借入金の増大、インフレの促進は必至であります。而して新物價体系は近々全面的に改訂の止むなきに至るでありましよう。十一月から黒字になるどころか、赤字が増加するばかりで、千八百円ベースはすでに崩壊しかけております。大藏大臣は給與所得の特別控除引上げ及び扶養控除引上げは、課税の面におきまして実質的に官公吏の待遇を改善したことになつたと、子供瞞し的なことを言うておりまするが、同じく税金の面におきまして、間接消費税の増徴、煙草の値上げによつて実質賃金はますます切り下げられて、この千八百円ベースは到底維持できないことになつております。政府は実質の伴わないところの机上の計画に過ぎないところの千八百円べースを、これ以上強引に固持するのか、安本長官の答弁を願います。
 次に労働大臣に質問いたしますが、ここで私が嘆つている間に日比谷におきましては労働大会が開催されております。現在民間会社は千八百円を上廻つておるのに、官公労組のみこれを釘付けにするのは不当である。耐乏生活にも限度があります。赤字の補償をどうしたらいいのか、官公吏には内職も副職も許されていない。最低の生活が保障されていないために、公僕としての使命も果し得ないで仕事の能率が上がらない。この現状を労働大臣はどう見ておるのか、答弁を願います。更に生活苦から発生したところの全官公廳の集團欠勤及び職場離脱対して、山猫争議なる異名を附けて、これは労働組合法第一條第二項及び労調法第七條違反として、官吏服務紀律第六條の適用を声明するがごときは、明らかに民主的な労働組合に対する非民主的な彈圧と断定するが、これに対する労働大臣の答弁を願います。尚政府対全官公労組との交渉経過についての簡單な答弁をこの席上において願います。時間の都合もありますので、以上を以ちまして私の質問を終ります。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君壇〕
#18
○国務大臣(片山哲君) 政府は飽くまでもインフレを防止いたしたいと思つておりまして、その線に沿いまして財政計画、予算案を健全なる建前で進んで行きたいと考えております。従いまして今回諸君の前に提示いたしましたる追加予算案は、右堅持によりまして健全財政の建前を取つておるのであります。今後におきましてもこの方針に変りはないと存じます。(「答弁になつていないじやないか」と呼ぶ者あり)
   〔國務大臣西尾末廣君登壇、拍手〕
#19
○國務大臣(西尾末廣君) 川上君の御質問にお答えいたします。全官公廳の諸君に交りまして税務関系の從業員の諸君が來られまして、その席上今川上君が言われましたように、大変安い給料で皆辛抱しておるというようないろいろな話があつた時分に、ジヨークとして役得もあるのだろうと言つたのであります。これは単なるジヨークであります、それは単なる片言隻句のジヨークでありまして、その時の話というのは、私も税務官吏の給料が他の政府の官吏に比べて安いということを始めて知りまして、私は直ちに答えたのであります。そんなに他の官吏と比べて給料が安いということでありますならば、それは他の官吏並みにこれを引上げるように努力しましようと、こういうことをはつきり約束したのであります。その結果その方々は非常に満足せられて、その日は別かれたようなわけであります。このことを序でながら申しますが、私はこの約束を直ちに実行に移すために、大藏大臣にも進言し、大藏大臣亦この点について十分に御考慮頂きまして、いろいろその点については、待遇の改善について考慮せられておるのであります。お答えいたします。(拍手)
   〔政府委員小坂善太郎君登壇〕
#20
○政府委員(小坂善太郎君) 川上さんにお答えいたします。政府は健全財政の自信を持つておるかという点でございますが、これは持つております。(「本当か」と呼ぶ者あり)私共は單に健全財政を大藏省が出したものとだけ考えてはおりませんので、私共は國家再建のために、どうしてもこういう方針を堅持しなければならない。又これを可能ならしむるものは國民全体がいかに自覚し、いかに意欲するかということであると考えておりますので、ここに全國民的な協力態勢を盛り上げて頂くために諸般の施策を講じて行きたいと、かように考えておるわけであります。又失業対策費が少い、或いは六・三制の費用が少いというお話もございましたのでありまするが、失業対策費に関しましては、これはこの片山内閣になりまして以來、初めて失業対策というものを確立いたしまして、そうしてこの線に沿つて第二着手として運んでおるわけであります。又六・三制の費用につきましても、これは國家全体の現段階における生産能力、その他から見まして、単に金の上だけでは解決で、きる問題ではございませんので、全体の資材、殊にセメント或は鋼材、こういつたような資材との見合せもございますので、かような状況になつておりまするが、これは結局今の生産の縮小的な傾向を断ち切つて、生産を拡大して行く傾向に立直れるかどうかということに問題が懸かつておるのでありまして、國家全体の生産計画の一環としてこの問題をやはり考えて行かねばならんと思つておるのであります。更に歳入の面におきまして、千三百億に上る租税の予定の中で、僅かに三百億しか現在取れていないのに、更に今後のものに自信があるまいというようなお話もあつたのでありますが、これは御承知のように申告納税制度というものがまだ十分に消化されておりませんので、これを消化して頂くことに努めまするが、一方この申告納税制度が十分に國民に消化されておらない限りにおきましては、更にこれを更正決定によらざるを得ないという一面も止むを得ないのであります。併しながからこの更正決定をなしまする場合に、單に政府が一方的に独断的に決めるということでなくて、できるだけ民主的な方法によつて決定額を考えて行きたい。全体の要望するところの線を勘案しつつ、これを決めて行きたいと考えておるということを御承知願いたいと存ずるのであります。又納税運動の具体的な方策如何という御指摘かございましたが、これは結局私共は、政府はこういう運動をして頂くことを國民に要望するのでありまして、國権の最高機関たる國会においてかかる運動の御決議を、でき得れば今月中にお願いし、あらゆる報道機関を通じて、全國民の納税意識を盛り上げて行くような運動を具体的に展開させたいと思つております。近々にこの具体策を御相談して、國会においてお取上げ願いたいと考えておるわけであります。
 次に項目を分けてお話がございましたのでありますが、非戰災者特別税は非常に不合理な要素が多いから、これを中止する意思はないかというような御意見がありましたが、私共はこれを中止する意思は持つておりません。現段階においてやはり必要なる税金であると考えております。併しながらこれは國会において十分御審議願いまして、そうして若しこれが妥当てないものであるという御結論に達しましたならば、政府は國会の意思に従うべきものであると、かように考えておるわけであります。
 又銀行に対して預金を調査し得る権限を税務署に與えようというお話がございました。これは一般的な定めといたしましてこういうことを考えますることは、いわゆる政府は一方において預金を飽くまで保護し、そうして通貨に対する信用を確保するというこを申しておりますので、一般的にかかる定めをすることは妥当でないと存じまするが、不正が行われておるだろう、納税の面において脱税が行われておるということの疑いが特に顕著である場合につきましては、特殊的な場合においてこれを許すということがあると考えております。
 次に国勢調査、或いは警察と税務署の関連でありまするが、私共はこの新らしい政府機関におきましてはでき得る限りセクシヨナリズムを排して行きたい。全般の政府機関というものはお互いに十分に連絡を取り合つて、そこに機動力のある行政事務を行なつて行かなければならないと考えておりまするのでへ当然この間には十分なる意思の疏通と連絡を持つて行けるようにしたいものだという考えを持つております。
 次に勤労所得税の軽減と、更に大口利得者に対しての累進課税を徹底する考えがあるかというお話でございます。政府といたしましてはすでにかかる考えを以てこの税を組んでおります。御承知のように勤労所得税の控除額は、免税点が三万円から五万円に引上げられ、又その控除率につきましても二〇%を二五%に引上げました。又家族控除にいたしましても、一人当り二十円を四十円に引上げました。これによりまして、全体といたしまして、五十一億円という控除を考えておるわけであります。又大口利得者について、この利得を捕捉してこれから高率なる税を取つて新財源に充てたいという考え方は、これは特にその大口利得者に関する税という項目は設けておらないのでありまするが、その意図しまするところは、税制というものはでき得る限り簡素な形にしておいて、そうして複雑な形でなく、簡單な形の中に、併しながらその簡單なる税を徹底的に捕捉して実收を挙げて行きたいという考え方に基ずきまして、特に新たなる項目は設けておりませんが、その税率を引上げまして、大体所期の目標を立てておるわけであります。今後と雖もできる限りこの大口利得者から十分にその利得を吐き出して頂いて、そうしてこのインフレを防止するときの歳入に充てたいという考えを持つております。
 最後に税務職員の待遇改善の問題がございましたが、これは只今も西尾官房長官からお話のございましたことでもあり、又私もたびたびこの壇上から申上げておりまするように、これを徹底的に改善いたします意思を持つております。近く先程も申上げましたように関係方面ともいろいろ連絡いたしまして、でき得れば単行法を以て特に急速に御審議を願いたいと考えております。
 又徴税費を引上げることも、これは徴税費を引上げることによりまして、今の衰えておりまする徴税機能を高度に発揮させるということは誠に必要なことでありますので、引上げるように実は予算にも組みまして、各位の御審議を煩わしたく考えておる次第でございます。先程お話の中に端山関税課長のお話がございましたが、全くこの今の荒廃した経済機構と人心の中にあつて、絶えず誘惑と危険に暴されておりまするこの第一線の税務官吏の尊い犠牲者でありますので、私共端山君の遺志を慰むるためにも、是非共この税務官吏の今の國家の中における重要なる役割というものを再びここに強調いたしまして、各位の十分な第一線の徴税機構に対する御認識と御同情を願いたい。かように考えておるわけであります。以上を以ちまして甚だ簡単でありますがお答えといたします。
#21
○議長(松平恒雄君) 労働大臣及び和田國務大臣の答弁は後に適当な機会にあることと存じます。
   〔「川上嘉君第三國人に対する租税の報告、それと國勢調査の資料の件」と呼ぶ〕
   〔政府委員小坂善太郎君登壇〕
#22
○政府委員(小坂善太郎君) 第三國人に関する課税の件でありますが、これは大体課税ができるようになると思つております。(「対策だ」と呼ぶ者あり)対策につきまして関係方面といろいろ打合せをしておりますが、いずれにいたしましても、私から申上げるまでもなく、現在の國家の現状におきましていろいろと困難の伴うことは御想像願いたいと思うのであります。併しながらこれにつきましては十分なる対策を講じたい。かように考えております。尚國勢調査の件につきましては、先程警察の問題と一緒に合せまして御答弁を申上げた次第であります。
#23
○議長(松平恒雄君) 岡部常君。
   〔岡部常君登壇、拍手〕
#24
○岡部常君 私は成るべく重複を避けまして異なつた観点から数点に亙りまして総理大臣並びに大藏大臣に御質問申上げたいと存ずるのであります。
 第一に挙げたいのは終戦処理費の問題であります。これがすでに同僚諸賢よりたびたび論ぜられおりまするように、この大予算の中で三十何パーセントという大きな部面を占めるものでございます。この大予算に対しまして現在の内閣はその編成権をいかに行使しておるか。又いかにその提出権を行使しておるかという点についてお伺いいたしたいのであります。この終戰処理費は非常に多額でもあり、廣汎に亙つております。私不敏にいたしましてその内容をよく判断しにくいのであります。大きな予算には、ややもするとそういう傾きが礎前にもあつたと存ずるのでありますが、併し大きいから分りにくいと逃げ口上を張つてのみはおられないと存ずるのであります。この大予算が例えて見ますれば從前の軍閥跋扈の時代における戰費にも当る程の大きな意味を持つたものと考えられるのでありまするが、それにつきまして回顧せられますのは、太平洋戰爭或いはそれ以前の何年かの予算の状況であろうと思うのであります。今更死兒の齢を数えるような傾きもありまするが、あの際において、もつとこの戰費などが、或いはそれに関連する大予算などが慎重に編成せられ、又提出せられておつたならば、或いはああいうふうな悲惨な状況に立到らなかつたのではないかとさえ考えられるのであります。私最近近衛内閣時代の一閣僚にお会いいたしました。その方がこういう述懐をされておつたのであります。私共は、やはり本当に戰争の責任を背負つておるということをこの頃痛感しておるのだ。それはあの弱い近衛さんに、もう一押し二押しなぜ我々は諌言をしなかつたかということにつて、賞賛の念に駆られておるという述懐をされておつたのであります。誠にまじめな考えを聞いて、私は頭の下がる思いをいたしたのでありますが、我々外から見ますれば、大きな勢いに押されてどうも何ともしようがなかつたのではないかと思われるのでありますが、今その方の仰せらるるところを伺いまして、成る程まだ一押し二押し、或いは手を替え品を替えそれに対抗する方法があつたのではないか。さすがの東條首相も、或いはその当時の大きな力を持つておつた陸軍も、考えを変えるというようなこともできたのではないかというようなことも考えたのであります。私は現在の内閣諸公におかれても十分にその点はお考えになつて、ただ駄目だ、ただ我々の力では及ばないのだというような諦め的なことを考えておられるとは思いませんが、ここはよくよく國家の將來、民族の将來ということをお考えになつて、善処せられるように切望して止まないのであります。前の東條に対しては、それでも死を以て爭つた一中野正剛氏があつたのであります。惜しい哉、その目的は達せられませんでしたけれども、そこに第二、第三、或いは第四、第五の中野正剛氏が生れたならば、或いは彼の憂國の至誠は通じたのではないかということを考えて、誠に惜しいような気持がいたすのであります。「争臣なければ國滅ぶ」と申します。私は今この重大なる段階に対しまして、やはり爭臣なければ國滅ぶという感じを強く持つものなのであります。尤も只今の諌められる者、諌むる者、これは昔の形とは非常に違つたものとなりましよう。併しながら私はこの爭臣を求むる最も重大なる時であろうと考えるのであります。誰かこの新時代における爭臣となる人はないであろうかということを私は痛切に感ずるものでございます。私はここで総理に伺つて置きたいことは、甚だ漠としたことではありまするが、内閣諸公、この現内閣かいかなる心持でこの終戦処理費というこの大問題にぶつかつておられるかということに対するお答えを得たいのであります。
 次に私のお答えを頂きたいと思うことは六・三制の問題についてでございます。
   〔議長退席、副議長著席〕
只今我々日本人、我が祖國は、世界環視の下に立つておるのであります。赤裸のまま世界の眞只中に置かれておる姿なのであります。而してそれに対する我々の態度は、この内閣成立の際に片山総理から宣言せられましたように、民主主義の完全なる実施、高度民主主義制の確立である。高度文化國家の建設である。道義國家の建設であるこいうことを力強く宣言せられました。その線に沿つておることを私は確信するものであります。而してこれは國民の喜びであるだけでなく、世界の共に喜ぶところであろうと考えるのであります。その方法としていろいろありましようが、そのうちで私は根本的なものとして、この教育制度の確立と教育尊重ということを挙げることができると考えるのであります。(拍手)それに対しましては、すでに政府におかれましても機会あるごとに宣言せられておることと私は受け取つておるのであります。総理が曾て六・三制の完全実施に関しては種々の困難はあるが、その実現のため許す限りの努力を盡すということを声明せられておるのであります。(拍手)私はこのお言葉というものは実に尊いものである。現下の日本の國際情勢などに照し合せまして、実に力強きものであると心強く感じておる次第であります。この教育振興と民主主義制度の確立、或いは文化國家の建設ということは、実に靈犀相通ずるものがあると思うのであります。正にそれらの基盤となるものはこの教育振興というところに存することを声明されたものであると存ずるのでありま了。而してそれによりまして今回の予算というものが計画せられた筈なのであります。それに関しましては、文部管におきましては前後二回に亙つて各地方廳に内牒をもすでに発するというようなことになつておることは皆さん御承知の通りであります。この三十一億余の新教育制度に対する予算というものは世の中にすでに分けに発表せられたところであります。それが予算の技術上十四億余の内示というものが先程申しました文部省によつて発せられておるのでありますが、この内示というもの、又遡つて六・三制を実施する。あらゆる困難をも切り抜けてこれを実施すると公約せられたことは、この國会においてお約束になつたのみならず、そのことはすでに國民に対してなされたのは勿論のことであります。而して私の申したいことは、このことは單に國会に対し、或いは國民諸君に対して公約せられたのみならず、現在の日本の立場から、これは従前の声明とは違いまして、余程大きな價値を持つものであるということを私は申したいのであります。國の内外に対しまする公約の実現なくして何の民主主義体制ぞや、何の高度文化国家の建設ぞやと私は絶叫いたしたいのであります。(拍手)かくしてポツダム宣言の実行が望めるでありましようか。まして差迫つておりますところの講和会議に我々は臨むことができるでありましようか。中外に対する公約に反するようなことがありましたならば、何のかんばせを以て講和條約場に臨むことができるかと私は申したいのであります。而して我々が望んでおりまするところの講和條件が達せられるかどうか。甚だ私は危ぶむものであります。私はキリスト教的社会主義、或いは社会主義の右か左かということは存じません。併しながら片山首相が社会主義陣営の統領であるということ、殊に片山首相は尊敬に値する人格者であるということは知つております。私はそれを今でも信じております。世人の大多数の人も、又たとい片山さんの政敵でさえもが片山は信頼するに足る人である、片山氏の人格を信頼しておると私は思うのであります。たまたま罷免権などという滅多に使つてはならない博家の宝刀ならぬ新刀の試し斬りをなさつたというようなことは別といたしましても、(拍手)私は決して片山さんは嘘を絶対に言わない。決して嘘を言わない人であるということを信じておるのであります。而してこのことは社会全体、世間が又固く信じておるところでありまするが、若しその内閣におきまして、片山さんを首班とする内閣におきまして、中外に向つて宣明したところの公約が反故のごとくに捨てられるといたしましたならば、嘘は言わなかつたかも知れないが、少くとも不信である、片山の言うことは当てにならんのだという文句が出ても、これは申訳はない、申開きの途はないのではないかと私は恐れるものでございます。三十一億と振出されておつた六・三制の予算が、これは予算編成上の技術からいたしまして、十四億円を國庫支弁にして、十七億は地方費支弁とするものというふうに説明もいたしておられるようでありますが、これは世間的には余りにも三十一億という数字が響き過ぎておるのであります。然るにその予算が蓋をあけて見ると、浦島の歎きを再びするのではありませんが、たつたその四分の一の七億にしか過ぎないというのでは、あいた口が塞がらない。こういうふうに評せられるのも無理でないと私は考えるのであります。この七億という予算を繞つて考えまするに、文部省の内示に従つて、眞面目にせつせと苦しい中を工夫いたしまして、それぞれ準備に著手してありまするところの全國の市町村、さてはその期待に勇躍して新らしき教育の念慮に燃えておつたところの五十万の全國の教職員諸君、又何百万に余るところの若き学徒、並びにその父兄の感想如何ということを私は深く憂うるのであります。中外に対しまする公約が今博えらるるごとく、かくもたやすく破らるるというようなことは、私は根本的に考えまして、世道人心にいかなる影響を與うるかということも実は考えて見たいと存ずるのであります。道義頽廃の淵源を政府が作るというようなことになりましたならば、どうでありましようか、私はこの点大いに憂うるものであります。世間ではこの頃密かに労働攻勢というような噂もいたしておるのであります。インフレの波の高まる勢いを見ますると、やはりそういうことを考えなければならんかと思いますが、政府の御努力によりまして、そういうことのないことを私は念願いたすものでありますが、更に巷間傳えられるように、教育攻勢などというようなことがこの際できて來たならば、一体どうなさるつもりであるか、私は教育者というような立場から見まして、教育者の自粛自戒を私は要望いたしまして、そういうようなことのないことを私は信じたいのでありますが、若し万一そういうようなことが出て参りましたなら、どうなりましよう。私はこの点を深く憂うるものであります。この点に関しまして、中外に宣明せられたる教育振興の約束に対して首相は現在どういうお考えをお持ちであるか、又今回の予算はともかくとして、將來どういうようにするのか、世界に対する信用はこういうようにして自分は維持し、又回復すのだというようなお考えを承わりたいと考えるのであります。
 次に私の伺いたいことは、これは大藏大臣に伺いたいのでありますが、財源の点でございます。健全財政の保持を主張しておられる大蔵当局に向つて、一つ二つ申して見たいと存ずるのであります。健全財政ということも大きく唱えておられます。又大衆課税は避けるということを公言せられておりまする口の下から、酒、煙草のごとき大衆に対する影響の大きい税の税率を高めておられるのであります。酒はともかくといたしまして煙草はどうでありましようか、同僚諸賢がすでに述べられたことでありますから、私はその点深く申しませんが、こういうような矛盾が生じておることは疑いもない点でありまするが、私はこの頃街頭にも見られまする富籤のことに関しまして、財源としての富籤について伺つて置きたいのであります。本來國民道徳の点から申しますれば、富籤の発行というようなことは望ましきことでないことは、私が申すまでもないところでありますが、國家の止むを得ざる事情のためにこれを認めることになつております。從つてそこにはおのずから必然的に限度というものがあるべき筈だと存ずるのであります。若しこの処理方法、扱い方が惡くて当を得ませんければ、浮動資金の吸収ということが却つて反対効果を産まないとは申せないのであります。流通の悪循環を來しまして、それが又インフレの傾向を助長するということは、これは疑いもないところなのであります。最近の街頭におきまする三角籤の賣り場風景というようなものは、我々として大いに考えしむるところがあるのであります。現にこの六日の毎日新聞におきまして、「現代街頭縮図」という一つの記事がございまして、これは大蔵大臣も御覧になつておりましよう、その外のお方も御覧になつておりましようが、「一等千円をねらう給料生活者から買出し帰りのおつさん、ソツト一枚、手提かばんを開ける先生もいる、それに当籤煙草や毛糸を買うヤミ屋もいて、おれの收入かい、まあ少く見て一万円位だなとうそぶいている、五日午さがり新橋駅北口に見る現代世相の縮図」、こういうふうな記事が出ておるのであります。それに引換えまして写真の片一方は、職業紹介所、求職相談所が非常にさびれておるということと対照して記事を取つてありまするが、このことなどは大いに考えさせられる問題だと存ずるのであります。あの籤のきれつぱしが秋の街頭に散らかつておりまする姿、正に百円札がばらまかれて世の中に混乱を捲き起しておる姿を如実に示すようなあの状況、これは大いに為政者として考えなければならない問題だと存ずるのであります。併し今までのどころはまだ私共寡聞にしてよく存じませんが、大した弊害もないかと考えられまするが、これは先程申しましたように、そこにおのずから限度があるのでありますが、いずれの点にその限度を見付けられるか、巷間傭えられるところによりますれば、近く百万円籤が出るだろうというような新聞記事さえあつたのでありますが、これは単なる道聴途説に過ぎざるや否や、私はこの限度については慎重に考える必要があろうかと存ずるのであります。この点につきまして今までの成績です。富籤の成績、それが國庫にいかなる影響を與えておるか、並びにこれからどういうところにまで押し拡げて行かれるか、百万円説の眞否ということを私はお尋ねいたしたいのであります。これに関しましては、曾て馬券問題のかまびすしかつた昔に、土方寧老博士が貴族院の壇上におきまして、人尊きか、馬尊きかということを絶叫せられたことを回顧いたしまして感慨深きものがあるのであります。やはり爲政者といたしましては、この老博士のあのお言葉を一度二度噛み分けて將來の対策を立てられる必要がありと私は信ずるものであります。
 次に、財源といたしまして、今回の予算書に出ておりまするが、刑務所製作收入の点につきましてお考えを頂きたい。これは大藏大臣並びに総理大臣にお伺いいたしたいのであります。私は予てから刑務所の力と申しますとおかしうございますが、刑務所にも力がありますが、刑務所の生産力のことにつきまして、五万の埋没せる都市だということを私は譬えておるのであります。五万の生産都市が埋没せられておるというふうにお聞きになつたならば、定めしびつくりなさるでありましようが、現在までの刑務所に対する世の中の見方、又政府の扱い方は正に五万の生産都市を埋没せしめてあると申しても差支えないと思う。少くとも忘れておられるように考えるのであります。誠に惜しいことです。現在のような世の中においては、特にその点が痛切に感ぜられるのであります。刑務所は誠に眠れる労働力を多分に持つておるのでありますから、この大事な世の中に、私はこの眠れる力を生産陣営の中に奮い起たせて貰いたい、かように考えるのであります。刑務所の問題は、從前ややもすれば政治の面から忘れられ、顧みられなかつたのでありますが、この頃不幸にしていろいろな問題が続出いたしますると、段々政治の面に取入れられておるのであります。誠に今までのいろいろな世の中の移り変わを見まして、刑務所の問題というものが重要であるということをお感じになつたことと思うのでありますが、刑務所の問題は正に先般の洪水における櫻堤であります。又人間の身体に譬えればアキレス腱であるのじやないかと私は考えるのでありますが、この重要な問題を何とかして有用に取上げて頂きたい。これは一つは、中に入つておる者を改善する方法としての作用を兼ねるものであります。一方において誤まれる人を匡して有用な人にすると同時に、国家の生産力としてこれを取上げるということは、誠に重要なことであろうと思うのでありますが、この経営方法などは、ややもすると昔ながらの方法に随して一向改善の途が講ぜられないのでありますが、私はこういう國家重要な際には、どうぞこの点について、政府の深甚なる御考慮を煩わしたいと考えるのであります。特別会計に移すという方法も考えられます。自給自足の責を負わせるという建前において考えられないことはないと思うのであります。若し又この特別会計というものが困難でありまするならば、私はアメリカにおいてすでに長く実施せられておりますところの官公廳用の物を專ら作らせる、ステーツ・ユーズ・システムと申しておりますが、官用主義というものを採用する。その中には公共の土木事業のパブリツク・ワークス、そういう方に向けて民間の人の敢えて手を染めたくないような仕事に彼らの力を振り向けるというようなことによつて國家の財用を節減する、又それと同時に彼らを改善の遂に向わしめるという一石二鳥の方法を考えて頂きたいと考えるのであります。この点に関しまして、特別会計に移すことはどうであるかという点は大藏大臣に、第二の公用主義、官用主義については首相のお考えを承わりたいのであります。この点わざと私は司法大臣にお伺いすることを避けまして蔵相並びに首相にお伺いいたしまするのは、すでにこの問題は司法省の一部局に限られない大きな政治問題として取上げる時期であろうと信じまして、かくのごとく申した次第であります。
 最後に私は裁判所予算に関しまして、三権分立のことをお伺いいたしたいのであります。先程申しましたように、我々は世界環視の下に立つております。我々の一挙手一投足は世界の環視の下に立たされておるのであります。それにも増して世界の注目を引いておりまするのは、恐らく新憲法下に展開せらるべきところの新日本の新たなる三権分立の態様であろうと考えるのであります。これは政治学上、政治史上、重大なる問題であろうと考えるのであります。我々は現にそれを我々の関係において政治史を描きつつあるのだ、記しつつあるのだということを知らなければならないのであります。かのモンテスキユーの唱えた純粋三権分立論ということ、これは今更論ずるまでもございませんが、國と時代に適合する三権分立ということが、実際問題としては取上げらるべき問題だと思うのであります。我々は明治憲法に別れまして、明治憲法独得の三権分立から今度新たなる新憲法下における三権分立に入らなければならないのであります。新たなる政治運動は開始せられたばかりなのであります。我々はその三権分立、新たなる三権分立を作る責任者として今その歩を進めつつあるのであります。極めて大切な時であると私は考えるのであります。憲法上の独立は司法権において今回新たに認められました。これはただ法典の上ばかりではいけないのでありまして、これをいかにして運用するかというのが大切な問題なのであります。今や論説の時期でなくして、國情に應じ、時代に適するものでなければならんのでありますが、三権おのおの相干犯せざるものということが唯一の目安であろうと思うのであります。おのおの調和を保つことが最も必要なことでありまして、若しそれ三権のおのおのが独自の牙城に立て籠つて自己を主張するようなことがあつたならば、それは大変なことになるのであります。現在の日本の状況を見ますると、司法権と行政権、内閣、而して又予算審議権、立法権というものの関係がどういうふうになつておるか。憲法の番人というふうに言われておりまするが、裁判所自身は立法をいたしません。予算審議の権限もありません。徒らに國会に依存しておるだけであります。これでよろしいのでありましようか。裁判所法はできておるが、裁判所はその制定に、而して今後の法律の改正というものに何ら関係しない。或いは活動力の源泉であるところの予算も亦政府の、而して國会のお仕着せでよろしいのであるかということは、重大なる問題であろうと思うのでありますが、この点に関しまして、國会と内閣との連絡方法をいかにしてお取りになるつもりであるか。又政府委員の役目を勤めるところの人間を裁判所から出さないでよろしいかどうか。従前の司法省に代る組織はどういうふうにするかということのお考えを伺いたいのであります。私は時間がありませんからもうこれで打切りますが、私の憂えまするところは、この点を余程しつかりして置きませんと、司法官というものは昔、化石したという非難を受けたことがあるのでありますが、又新たに化石した司法官を迎えるというようなことになりましたならば、大きな理想を以て裁判所を立派にしようという声明をせられておる総理大臣の意図にも反することになるのではないかと考えるのであります。而してその一番被害を蒙むるものは國民自身である。裁判所だけではなしに八千万の國民が困るということが、一番憂えられる点なのであります。私の意見はこれで終ります。(拍手)
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#25
○国務大臣(片山哲君) 岡部君より私に対しまして、三項に亙りまして御質問がありました。
 第一は、終戦処理費の問題であります。この終戦処理費は相当大きな数額となつて追加予算面に現われておりまするが、御承知のように、現在の情勢におきましては、戰爭に敗れましたる我が國として負担すべき止むを得ざる費用であるということを御了承願いたいのであります。但しこの数額を追加予算面に盛りまして御提出するに至りまするまでには、政府におきましても相当慎重に考慮いたしまして、種々なる方面より檢討を加えましたる結果、この数額に到達いたしたのであります。詳細の点は予算委員会等において大藏大臣より御説明申しまするが、総括いたしましてこの点を御了承願いたいと存じます。
 第二の六・三制に関する問題であります。これはすでにたびたび申上げたことでありまするが、追加予算面に現われておりまする数額は七億円でありまするけれども、あと大体の見当といたしましては、更に七億円程度の金額を六・三制に提出いたしたいと考えておるのでありまするが、その財源をどういうふうに捻出するかということについて、まだ大蔵当局においてその見当がつきませんので、目下檢討中であります。或いは予備金の中からこれを出すか、或いは又更にこの次の追加予算を計上いたしまするときに、これをお諮りするか。その問題を大蔵当局において檢討中であります。つきましては、七億円でこれを切つてしまうということになりますると嘘を言つたようなことになりまするが、決してそういうことではなくしてあとはこれとほぼ同額の金額を六・三制に出して、六・三制を実施する公約を忠実に行いたいと考えておる次第であります。尚次年度の問題につきましては、いろいろ檢討すべき問題が多々あるのでありまするから、この問題については次の議会においてこれを御説明することになると思いまするが、大体において、発足いたしておりまするこの六・三制をどこまでも実施いたしまして、我が國の文化のために、我が國の文教政策の上に、新らしき貢献をいたしたいと思いまして、最大の努力を拂つておる次第であります。
 第三番目の裁判所予算のことであります。その中に御意見として出て参りました刑務所の労働力を活用しなければならないと、こういう点については御尤もと存じます。但し現在における刑務所の労働力を活用するにつきましては、未だ設備も整つておりませず、そういう方面に活用する用意が十分に行われでいないのであります。今後においてこれを活用するということは最も必要なことであり、御意見通りであろうと思いまするが、今早急にこれを役立たしめるということは相当の難事と思います。併し御意見もありますることでありまして、政府におきましては十分この点を考え、刑務所の労働力を、お示しのような方面に十分活用しなければならないと考え、今後十分に検討いたしたいと考えております。
 更に三権分立に関する裁判所予算等の問題でありまするが、三権分立の精神を新憲法の精神によりまして、十分尊重することは、申すまでもなく只今岡部君も申された通りと存じます。昔の三権分立論ではなくして、近代における三権分立論は、お互いに相侵すことなきは勿論のこと、相扶け合つて、國策遂行の面において、且つ又民主主義徹底の線において、有効適切なる原則を活用しなければならないと存じます。今度御承知の通り司法省を改革いたしまして、法務廳を設置することになりました。相当大きな計画で、法務廳を設置いたします結果、全般の問題にかなり大きな影響を與えるのであります。政治と関係なく司法権は独立し、眞に憲法を守り、法の正義と公正の立場に立つて、國家の安寧秩序及び國民生活の公正を期して行かなければならないという建前におきまして、司法権は政治に動かされてはならないのは言うまでもありません。公正なる立場に立つて、その独立機構の上から、組織の上から十分に守つて、新憲法の精神を具体的に堅持いたすことが必要と考えましで、具体的な問題につきまして十分檢討いたしておるような次第であります。司法省のやつておりましたる予算関系等につきましても十分考慮いたします。又司法官の生活、地位等につきましても十分考慮いたすのは言うまでもありません。ただ司法権と立法権、行政権の混淆をいたさないような点については、十分心掛けまして、司法権の独立を意義あらしめたい。こういう問題について最大の考慮を拂つておるのでありまして、近く諸君によつて法務廳の機構とその予算関係等は御審議願い得ることと存じておるような次第であります。
 以上を以てお答えに代えたいと思います。(拍手)
   〔政府委員小坂志太郎君登壇〕
#26
○政府委員(小坂善太郎君) 岡部さんにお答えを申上げます。御質問の中、補正予算の歳出の面におきまして、終戦処理費並びに六・三制に関しまする部分につきましては、すでに総理大臣よりお答えが、ございましたので、私は御質問中、歳入の面において財源として考えられておるものについてのいろいろの御意見について、私共の考えを申上げたいと存じます。
 最初に、酒、煙草等を値上することによつて、健全財政を唱えながら相当國民大衆に大きな負担力の過重を強いておるのではないかという御意見がございました。私共もこの点に関しましては種々苦慮をいたしたのであります。ただ歳入の面におきまして、こういうものは我々が好んでいたすわけではなく、今日の国家の財政の現状、國家生産力の全体の影響の皺と申しまするか、そういつたものがここに現われて来るのでありまして、我々といたしましては、最後までこの酒、煙草の値上については慎重な考慮を拂いました次第であります。で、酒にいたしましても、煙草にいたしましても、配給しまするものと、又十分に資力を持つておる人々の間に自由に販賣いたしてその購買力を吸収する面と、二つに分けまして、殊に煙草に関しましては、配給煙草は値上をいたしませんで、従来の價格を堅持いたしたような次第でございます。又勤労者に対する特配も、その数量につきましては、これを確保いたしておるような次第でございまして、我々の苦心も御了承願いたいのであります。
 第二に、富籤についての御意見でございましたが、これは一面におきまして浮動購買力を吸收いたし、國家の財源として浮動資金を獲得いたしまする面はよい面でありまするが、一面射倖心を煽りまして、健全なる勤労意欲というものを阻害する虞れもあるのでありまして、この点は御指摘の通りに考えておるのであります。その程度をいかにするかという御意見につきましては、目下財務当局におきましても愼重にこれを檢討いたしておるような次第であります。只今地方におきまして、その地方の復興の資に充てるために、地方富籤を発行いたしておるところもございまするが、これは從來までは二割を国庫に還元いたしまして、八割をその地方において使用するように考えておつたのでありまするが、この七月から更に地方においてそれぞれの創意工夫によつて新らしい財源を補足し新らしい浮動資金を吸収する方策を立てることを便利ならしむるために、國庫に還元するものは一割といたしまして、九割をその地方において使用してよろしいようにいたしておるような次第であります。
 又第三番目に、刑務所についてのいろいろな御意見がございまして、総括的な問題は只今首相から御答弁がありましたので、私からは、それの財政上の取扱についてお答えを申上げたいと存じます。刑務所を特別会計として收実を償わしめて行つたらよいではないかというような御意見もございましたが、我々といたしましては、特別会計というようなものは成るべくその数を少くいたしまして全般的に一般会計の面において綜合計画的な見地からこれを調整して行くことが適当ではないかというような考えを、只今は持つておるのであります。又刑務所の労力というものも、御意見までもなく、十分に活用せねばならんと存じまするが、これを單に特別会計にいたしまして、飽くまでも收支の均衡を得せしむるようにという考えを徹底いたしますることによりして、半面いろいろ摩擦も考えられるのでありますので、その点をいろいろと考慮せねばならんと思つております。併しながら御意見もございまするので、この点に関しましては更に研究いたしたいと心得ております。以上を以て甚だ簡単でございますが、お答えといたします。(拍手)
#27
○副議長(松本治一君) これにて國務大臣の演説に対する質疑の通告者は全部終了いたしました。本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○副議長(松本治一君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後三時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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