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1947/11/19 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第53号
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1947/11/19 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第53号

#1
第001回国会 本会議 第53号
昭和二十二年十一月十九日(水曜日)
   午前十時四十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五十二号
  昭和二十二年十一月十九日
   午前十時開議
 第一 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第二 補助貨幣損傷等取締法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 すき入紙製造取締法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗讀を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これよわ本日の会議を開きます。この際、議事日程を変更し、日程第二、補助貨幣損傷等取締法案(内閣提出、衆議院送付)、日程第三、すき入紙製造取締法案(内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長黒田英雄君。
   〔黒田英雄君登壇、拍手〕
#5
○黒田英雄君 只今上程されました補助貨幣損傷等取締法案、すき入紙製造取締法案につきまして、一括いたしまして委員会の審議の経過並びに結果について御報告をいたします。
 補助貨幣損傷等取締法案の内容は、補助貨幣はこれを損傷し又は鋳つぶしてはならない、補助貨幣はこれを損傷し、又は鋳つぶす目的で集めてはならないということを規定いたしまして、これに違反した者は一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処するということがその内容であるのであります。これは現在、昭和十五年大藏省令第四十号を以ちましてほぼこれと同様の内容をもちました取締の規定があるのであります。
 尚すき入紙製造取締法案の内容は、「黒く凸にすき入れた紙又は政府紙幣、日本銀行券、公債証書、收入印紙その他政府の発行する証券にすき入れてある文字若しくは、画絞と同一若しくは画紋を白くすき入れた紙は、政府の許可を受けた者以外の者は、これを製造してはならない。」「これに違反した者は六箇月以下の徴役又は五千円以下の罰金に処する。」という内容をもつておるのでありますが、これと殆んど同一の内容をもつておりまする取締規則は明治二十年の勅令第三十六号で規定されておりまして、今日まで効力をもつておるのであります。併しながらこれらは明治二十三年の法律第八十四号の命令の條項違反に関する件という法律によりまして、これらの命令に罰則が附きますることを許されておるのであります。それによつて法律と同一の効力をもつておつたのであります。然るにこれが新憲法が施行されるに伴いまして、昭和二十二年、本年の四月法律第七十二号第三條によりまして、この明治二十三年の法律第八十四号が廃止されたのであります。然るに省令につきましては、昭和二十二年の法律第六十九号の第六條によりまして、又政令即ち前の勅令につきましては、憲法第七十三條の第六号によりましていずれも法律の委任がある場合でなければ罰則を附してはならないということに相成つたのであります。それ故に憲法の第七十三條は「内閣は、一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」ということが規定されまして、第六号に「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることはできない。」という規定があるのであります。それによつて前の勅会並びに大藏省令は効力がなくなるのでありまするが、併し同じ昭和二十二年四月の法律七十二号の一條によりまして、本年の十二月末日まではこれらのものは効力を有することに相成つておるのであります。即ち本年の十二月末月までにこれらの両方の大藏省令並びにすき入紙に関する勅令は効力がなくなるのでありまするが、併しながらこれらの補助貨幣の鋳つぶし、損傷等、又はすき入紙製造等は今後依然これを取締ることの必要があるのであります。従いましてこれに代るべきものとしてこの両法案が提案されたのであります。両法案は前申上げまする通り、現行のものと大体において同じであるのでありますが、ただ補助貨幣の場合におきましては、前の省令におきましては地金というような文字を使つておりましたのでありまするが、地金ということは法律的に申しますれば、純金又は純銀というふうなものを指すのでありまして、アルミニウム等の合金というようなものは、果してこれが法律違反になるかどうかということが問題であるので、これを改めまして、先程申上げましたような内容に相成つておるのであります。
 すき入紙につきましてもやはり現行と大体同じでありまするが、多少その文句を変えました。現行におきましては黒くすき入れた紙等につきましては、つまり文字画紋をすき入れた紙を製造する者は見本を警視廳とか府縣に提出しなければならない。それに違反した場合においては過料に処するというような規定があるのでありまするが、これは余り効果がないので、今只申上げましたような取締法の内容に改められたのであります。それと罰則が前のはいかにも軽いのでありますから、これを現行の他の法令と権衡を取りまして罰則を重くいたしたのであります。その点が現行と違う点であるのであります。
 質疑に入りまして、罰則が重くなつておりまするが、これでも今日の貨幣價値の状況に比べましたならば、その罰則はまだ軽きに失しやしないかというご質問もあつたのでありまするが、政府におきましては、これらは司法当局において責任を持たれまして、他の罰則とも十分に権衡をとりまして、重くなく軽くなく適当に定めたのであるということであつたのであります。尚これらの違反につきましても、実例等の問題もあつたのでありまするが、すき入紙については余り実例はないのであります。ただ補助貨につきましても違反を処罰された実例はないそうでありまするが、尚今日の補助貨におきましては、これを鋳つぶすということが必ずしも経済上の利益があるというようにはなつておらないのであります。ただアルミ貨につきましては、これを鋳つぶしてアルミの器具を作るというと相当の利益があるような計算にもなるのであります。併しこれも、実際のそういう事実はあつたらしいのでありまするが、まだ事件になつたものはないそうであります。尚、今日はアルミ貨は造らずして、合金の小さい五十銭におきましては到底そういうことはないということであるのであります。
 かようにいたしまして質疑を終り討論に入りましたが、別に御発言もありませんのであります。
 直ちに採決に入りまして両案共全会一致を以て政府の提案通り、可決すべきものと議決いたした次第であります。これを以て報告を終ります。(拍手)
#6
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決を、いたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#7
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#8
○議長(松平恒雄君) 日程第一、民法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。尚本案については少数意見の報告書が提出されております。先ず委員長の報告を求めます。司法委員長伊藤修君。
   〔伊藤修君登壇、拍手〕
#9
○伊藤修君 只今上程になりました民法の一部を改正する法律案につきまして委員会の審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
 御承知の通り本案は非常に厖大なものでありまして、これに対するところの政府の提案理由並びに内容の説明、質疑應答、討論、こういう範囲におきまして非常に長いものでありまして、これを詳細に御報告申上げますれば相当の時間を要することと信ずる次第であります。でありますから、成るべくこれを簡略いたしまして皆様に御報告申上げたいと存じます。この点予め御了承を賜わりたいと存じます。
 新憲法におきまして、その第十三條におきまして、「すべて国民は、個人として尊重。」されるいわゆる個人の尊嚴の原則が定められているのでありまして、又第十四條におきましては、すべて國民は性別その他によりまして経済的又は社会的の関係におきましてて差別されることがない。第二十四條によりまして結婚は合意のみによつて成立し、男女は同等の権利を有する旨を明らかにし、且つ又両性の本質的平等を宣言せられている次第であります。かように憲法において大原則が定められましたので、現行の民法はこの大原則に反する規定が第一編乃至第五編において多く存するのでありまして、殊に第四編親族編、第五編相続編におきましてはその大部分がこの原則に抵触する次第であります。かような次第でありまして、早急に我が二大法典であるところのこの刑法及びこの民法に対するところの大改正を要するにととなりましたので、この度これが改正案が提案された理由であるのであります。
 その主なるものは、この憲法に定めるところの大原則を、民法の第一條の一及び第一條の二にこれを表現した点において非常なるところの画期的な立法といわなければならんのであります。この憲法の規定をそのまま民法の解釈の上において、又民法の運用のために民法の明文といたしまして、第一條の一と第一條の二に明示いたしましたことは、ひとり民法の解釈運用の指針に止まらずいたしまして、民事法規全般に対するところの指針とするためにここに表現せられた次第であります。従つて余り改正されておりませんところの総則及び第二編物権、第三編債権、これらの現行法規のこの大原則の明文によりまして法規そのものの形式変更はありませんが、その内容におきまして著しいところの変更を來すことは勿論であるのであります。即ちこの原則規定の解釈運用によりまして、現行法規の運用及び解釈が非常に変更を来す次第であるのであります。この点におきまして形式的変更はありませんが、内容的の変更を齎している次第であります。即ち第四編親族編におきましては御承知の通り法律上の家の制度を廃止いたしました。又結婚におけるところの諸規定を改正せられまして、妻の無能力の規定を削除されている次第であります。又養子縁組その他におきましても変更があります。親子関係におけるところの規定も改正せられました。親族会の規定を、これは全面的に削除されました。後見監督人に関するところの規定も改正せられました。又扶養義務の範囲におきましても非常なるところの改正が加えられているのであります。第五編におきまするところの相続関係におきましては、いわゆる従來の長子相続を廃止いたしまして、均分相続制度を採られた次第であるのであります。従いまして從來の家督制度は廃止せられまして、現行民法のいわゆる遺産相続制度がここに用いられておるのであります。かように民法の大体におきまして非常なるところの大改正が行われまして、その大部分は親族編と相続編において改正せられておるのであります。故にこの度の改正案におきましてはしごの親族編と相続編の全文を書き改められまして、從來の改正の形式からいたしますれば、従來の用語例をそのまま使用いたしますのを、この度はこの全文を書き改められました結果、口語体に全部を改正せられておるのであります。これはこの民法なるものが、國民の日常生活に密接なる関係を持つ点と、又國民の理解を容易ならしむる意味合からいたしまして、ここに口語体を使用せられまして、第四編、第五編が改正せられました次第であります。勿論この口語体に改正いたされましたその用語も上におきまして、少なからず従来の用語が表現的に用いられておる次第でありまして、これは口語体を以て表現し得ない部分を、従來の用語をそのままここに用いられておる点があります。かような点、その他現行民法におきまして、種々改正せられなくてはならん点が、我々から見ましても又法全体かち考えましてもあり得るのであります。これらは他日この民法が大改正をせらるることが予定せられておるのでありますから、その際に讓りまして、現在におきましては、この新憲法が五月三日に施行せられ、而して來年一月一日以後新らしい民法を施行しなくてはならん、この時間的制約の範囲内におきまして、かかる大法典の改正をなされた次第であるのでありますから、この改正案の全体に対し」まして、未だ不十分の点あり、相当研究せなければならん点もあります。かような点は、近く將來におきましてこの改正が行わるる際におきまして我々の意思を十分盛りたいと考えておる次第であります。
 次に法案の内容につきまして簡単に御説明申上げて置きたいと思うのであります。
 先ず第一編総則編につきましてその改正の点を申上げます。政府原案は第一條といたしまして「私権ハ総テ公共ノ福祉ノ爲メニ存ス権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義二從ヒ誠実二之ヲ爲スコトヲ要ス」、第一條の二といたしまして「本法ハ個人ノ尊嚴ト両性ノ本質的平等トヲ本旨トシテ之ヲ解釈スヘシ」、こう政府原案にあつたのであります。然るに衆議院におきまして、この第一條を「私権ハ総テ公共ノ福祉二遵ウ」、この「したごう」というのは從來の「從ではなくいたしまして、遵法精神の「遵の字を用いたのであります。「権利ノ行使及ヒ義務の履行ハ信義ニ從ヒ誠実ニ之ヲ爲スコトヲ要ス」、この点は原案通りでありまして、新らたに、第三項を設けて「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」、こう修正されたのであります。この第一條の第一項の修正と第三項の修正は、これは衆議院においてなされたましたので、この点に対するところの説明は後で別に申上げることにいたします。ただ第三項に「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」と規定いたしましたことは、即ち憲法第十二條に定むるところの精神をここに表現した次第であるのです。
 第二に、その他総則編において改正せられた点を申上げま。現行民法第十四條乃至第十八條の妻の無能力に関する規定を全部削除せられました。從つて妻が無能力になることを前提とするところの文字が第十九條、第百二十條、第百二十四條の規定中からいずれも削除をせられておる次第であります。
 第三に、禁治産及び失踪宣告、その取消、その他これらの事件に関する管轄裁判所をいずれも家事審判所に改められました。
 第四に、意思表示の公示送達の管轄裁判所を簡易裁判所に改められました。
 第五に、第百五十九條ノ二といたしまして「夫婦ノ一方カ他ノ一方二對シテ有スル権利ニ付テハ婚姻解消ノ時ヨリ六ヶ月内ハ時効ヲ完成セス」という規定を、両性の平等の原則に基ずいて設けられましたのであります。
 第六に、第百七十一條、第百七十二條中の「執達吏」を「執行吏」と改められたのであります。
 而して第二編物権及び度三編債権中の規定におきましては、僅かに第三百八條第二項、第三百十條、第四百五十條第一項第三号、これらの三ヶ條の文字の修正があつた次第であります。
 次に第四編親族編中の改正点を簡単に申上げます。
 第一に本改正中重要なる現行民法親族編中、第二章の戸主及び家族に関する現行法第七百三十二條乃至第七百六十四條は全部削除され、從つて從來の家族制度は廃止せられました次第であります。民法上の家の消滅することになつたこと、この点が民法改正中の最も重要なもので、國民生活に影響するところ至大なものであるのであります。新憲法の国民平等の大原則の趣旨に基ずくものであることはいうまでもない次第であります。右の結果、從來のごとき戸主権を有する戸主、これに服從する家族は存続しないことになります。從つて戸主権として認められていた婚姻、縁組等、各種の身分上の行爲に対する同意権、家族に対する居所指定権は消滅することになりました。又入夫、婚姻、隠居、廃絶家、その再興、分家、一家創立、親族入籍、引取入籍、離籍、婿養子縁組、遺言養子等は最早存在しないことになるのであります。
 第二に、「直系血族及び同房の親族は、互に扶け合わなければならない。」という規定を新らたに設けられたのであります。親子、夫婦等親族の共同生活は、相互扶助の精神でますます強固に維持すべきことを明示した次第であります。これは家に関する規定を廃止いたしました関係上、今後におけるところのいわゆる家族制度の中心をなすところの規定でありまして、新民法の七百三十條にこれが規定せられておる次第であります。
 第三は、継父母と継子、嫡母と庶子の間は舅姑と嫁との間の法律関係と同じくすることにいたした次第であります。その結果これらの親族関係は、姻族一等親の関係となるのであります。
 第四に、姻族関係は離婚又は生存配偶者の意思表示によつて終了することになりました。
 第五に、養子縁組に基ずく親族関係は、離縁によつて終了することになりました。
 第六に、婚姻は両性の合意にのみ基ずいて成立し、成年者については父母等の同意を要しないものとなりまして、未成年者が婚姻をするには父母の同意を要するものとし、父母のいずれか一方の同意を得ることができないときには、他の一方の同意だけでも足りるものとすることになつた次第であります。
 第七に、婚姻年齢を男は、十八歳以上、女は十六歳以上とすることになりました。これは諸外國におきましてもいずれも年齢は引上げられております。殊に新民法におきましては婚姻いたしますと能力者という待遇が與えられるのでありますから、從つて年齢の引上げを行なつた次第であります。
 第八に、夫婦は、婚姻の際定めるところに從い、夫又は妻の氏を称するものとすることになりました。
 第九に、夫婦は同居し、互に協力扶助すべきものとすることを明らかにいたしたのであります。これは法律上の効果は齎らさないのでありますけれども、いわゆる道義的規定としまして夫婦関係の在り方をここにはつきり明文を以て示した次第であるのであります。
 第十に、未成年者が婚姻したときは、成年に達したものとみなすことになりました。
 第十一に、妻の無能力に関する規定を削除することになりました。
 第十二に、夫婦の法定財産制に関する規定を次のように改正することになりました。一、婚姻より生ずる費用は夫婦の資産、收入その他一切の事情を考慮して適当に協力負担すること。二、夫婦の一方が日常の家事に関し、第三者と法律行爲をなしたときは、他の一方はこれによつて生じた債務につき連帯してその責任に任ずること。三、夫又は妻が婚姻前から有していた財産及び婚姻中自己の名において得た財産はその特有財産とし、夫婦いずれに属するか明らかでない財産は夫婦の共有と推定することにな力ました。
 第十三に、協議による離婚をするには父母等の同意を要しないものとすることになりました。
 第十四に、協議上の離婚の自由を認めて、未成年者、禁治産者も父母又は後見人の同意を要しないことになりました。
 第十五に、詐欺又は強迫による協議離婚の取消に関する規定を設けることになりました。
 第十六に、裁判上も離婚を原因を、次のように定めることになりました。一、配偶者に不貞な行爲があつたとき。二、配偶者から悪意で遺棄されたとき。三、配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四、配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込がないとき。五、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。裁判所は前項第一号乃至第四号の事由があるときであつても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができるものとすることになりました。
 第十七に、姦通によつて離婚された者は、相姦者との婚姻が禁止されていたのでありますが、この禁止を解きまして相姦者の間の子に嫡出たる身分を得せしめるようにしたのであります。現行民法によりますると、姦通によつて離婚されましても、その相姦者とは結婚ができなかつたのであります。かくてはその間に生れる子供が不遇な地位に置かれることを慮りまして、新民法におきましては親の罪は子に酬はない。何にも知らない子供に社会上不遇な待遇を與えることは好まないのでありまして、これに対して嫡出たる身分を取得せしめるよう、ここに改正せられた次第であります。
 第十八に、父母が離婚するときは、子の監護をすべき者その他監護につき必要な事項は、協議によつてこれを定め、協議が調わないときは家事審判所がこれを定めることにいたした次第であります。
 第十九に、離婚した者の一方は相手方に対し財産の分與を請求することができるものとし、家事審判所は当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分與をさせるべきかどうか、並びに分與の額及び方法を定めるものとすることになりました。
 第二十に、子は父の氏を称し、父の知れない子は母の氏を称するものとすることになりました。
 第二十一に、「庶子」の名称を全部廃止されました次第であります。
 第二十二に、父が認知をする場合には、子の監護をすべき者、その他監護につき必要な事項は、父母の協議によつてこれを定め、協議が調わないときは家事審判所がこれを定めるものといたしました次第であります。
 第二十三に、聟養子を廃止することとなりました。
 第二十四に、遺言養子を全部廃止することになりました。
 第二十五に、未成年者を養子とするには、家事審判所の許可を要することになりました。
 第二十六に、養子縁組につき父母等の同意を要しないものとすることになりました。
 第二十七に、養子は養親の氏を称するものとすることになりまして。
 第二十八に、協議による離縁については、前申上げました離婚の場合に準ずることになりました。
 第二十九に、裁判上の離縁原因を次のように定めることになりました。他の一方より悪意で遺棄されたとき。養子の生死が三年以上明かでないとき。その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき。裁判所はかような場合でも一切の事情を考慮して縁組の継続を相当と認めるときは、離縁の請求を棄却することができることになりました。
 第三十に、親権は未成年の子に対してのみこれを行うことができることになりました。
 第三十一に、父母の婚姻中は、親権はその共同行使を原則とし、第三者の保護に関しては別に適当な規定を設けることにし、父母が離婚をするときは、親権者は父母の協議によつてこれを定め、協議が調わないときは家事審判所かこれを定めることといたしました。又父が認知をしたときは、父母の協議により父を親権者と定めたときに限り父が親権を単独で行うことになりました。
 第三十二に、母の親権についての制限はいずれも撤廃せられました次第であります。
 第三十三に、親族会を廃止し、後見の監督機関としての親族会の権限は、一部を後見監督人に、一部を家事審判所に移すことになりました。
 第三十四條に、後見監督人は、指定後見監督人の外必要ある場合に家事審判所がこれを選任するものとし、後見監督人がない場合においては、その権限は家事審判所がこれを行うものとすることになりました。
 第三十五に、後見人に不正な行爲、著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由があるときは、家事審判所は後見監督人又は被後見人の親族の請求によつて、これを解任することができることを新らたに定めました。
 第三十六に、特別の事情があるときは、直系血族及び兄弟姉妹以外の三親等内の親族間においても扶養の義務を負わしめることにいたしました次第であります。
 第五編相続編中につきまして簡単に申上げます。
 第一に、家督相続に関する現行法第九百六十四條乃至第九百九十一條を全部削除いたしまして、家督相続の制度はこれを廃止した次第であります。これは戸主及び民法上の家を廃止した結果でありまして、従つて相続は全部遺産相続のみとなつた次第であります。
 第二に、相続人の範囲及び相続順位は配偶者の外、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹とし、配偶者は次のごとく相続人となることになります。直系卑属があるときは子と同順位に、直系卑属がないときは直系尊属と同順位に、直系卑属、直系尊属が共にないときは兄弟姉妹と同順位に、又直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹が共にないときは単独で、各相続人となることになりました。
 第三に、代襲相続は直系卑属及び兄弟姉妹のみにつきこれを認めることになりました。
 第四に、同順位の相続人が数人あるときは、各自の相続分は相等しいものとすることになりました。但し嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とし、配偶者の相続分は次の通りにすることになりました。即ち直系卑属及び配偶者が相続人であるときは三分の一、配偶者及び直系卑属が相続人であるときは二分の一、配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは三分の二。
 第五に、系譜、祭具及び墳墓の所有権は、被相続人の指定又は慣習に從い、相先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継することになりました。その他の財産は遺産相続の原則に從つてこれを分與することになるのであります。
 第六に、遺産の分割について共同相続人間に協議が調わないときは、その分割を家事審判所に請求することができることといたしました。この場合において家事審判所は、遺産の全部、又は一部につき期間を定めて分割を禁ずることができることにいたした次第であります。
 第七に、相続の開始後認知によつて相続人となつた者が、遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人がすでに分割その他の処分をいたしましたときは、遺産の價額のみによつて支拂請求権を有することになつた次第であります。
 第八に、相続人が数人あるときは、限定承認は共同相続人の全員が共同してのみこれを行うことになつた次第であります。從つて共同ができない場合におきましては、その相続分は放棄するより外はないのであります。
 第九に、遺留分は次の通りにすることになりました。直系卑属だけが相続人であるとき、及び直系卑属及び配偶者が相続人であるときは二分の一、その他の場合は三分の一が遺留分として定められた次第であります。
 第十に、遺留分は、法定相続人中の最後の順位にある兄弟姉妹にはこれを認めないことにいたしました。現行法において法定相続人中戸主に対して遺留分を認めないと同様の趣旨から出たのであります。
 第十一に、相続開始前における遺留分の放棄は、家事審判所の許可を受けたときに限りその効力を生ずることになりました。遺留分放棄を濫用する弊を防ぐためであるのであります。
 第十二に、遺言の方式に関する規定中、従軍中の軍人軍属、及び海軍艦船中にある者についての特別方式に関する規定を全部削除いたした次第であります。
 最後に、附則において本改正に伴う所要の経過規定を設けられましたが、その内容につきましてはこれを省略することにいたします。
 次に委員会におきましては、これらの厖大なるところの規定即ち総則及び第二編、窮三編を除きましても、親族及び相続並びに附則だけの法規におきましても三百四十二ヶ條から存するのでありまして、これに対するところの質疑應答は非常に多々ありまして、殆んど全委員の人が各自長時間に亘りまして質疑を繰返されまして、これに対しまして政府当局の説明も十分加えられた次第であります。これらの質疑應答の要旨及び政府の御説明はいずれも将來に向いまして、この民法の解釈に資することは勿論、近き将來におきましてこの民法を改正せらるる場合におきまするところの、非常なるところの参考にもなり、又改正の要点を指摘するものと見なくてはなら々と思うのであります。この点に対しまして十分御説明を申上げたいのですが、いずれもこれは便宜上速記録に全部譲ることに御了承を賜りたいと思うのであります。委員会におきましては前後を通じまして十一回これを審議いたしました。かような次第でありますから、詳細の点につきましては速記録に譲ることにお許し願いましてその間五、六点につきまして簡簡に質疑應答の要旨を申上げたいと存ずる次第であります。
 先ず第一に、第一條に対して質問が繰返されたのであります。その全質問の要旨を簡單に申上げまするが、私権は基本的人権として、人類が多年の努力によつてかち得た人類生活の最も基本的のものとして憲法においてこれを保障するものであるから、国民はこれを享有するために、不断の努力によつて保持して行く義務がある。故に、私権が他から侵されたときにはこれを排除し、これを主張して行使せねばならないのである。ただこれを行使するについては、公共の福祉に反しないようにせねばならん。又進んで公共福祉のために利用するように心掛けねばならんのであるが、公共の福祉のために私権が存在するものではない。私権は主であつて、公共の福祉のために隷従するものではない。原案のごとく「私権ハ総テ公共ノ福祉ノ爲メニ存ス」ということは本末を顛倒するものであるのみならず、見方によつては、公共の福祉の名の下に基本的人権を無視して、これを犠牲にする慮れがあるのであるから、新憲法の下においてはかような法文を存置することは有害であつて許すべきものではない。かような趣旨の御質問があつたのでありますが、これに対しまして政府委員の應答は、総理大臣及び司法大臣は交々その意見を開陳せられまして、結局のところ、新憲法上において、私権も公共の福祉もいずれも等しく尊重すべきものであつて、両者は相調和を保たるべきものであつて、軽重の差別を設くべきものでない趣旨の答弁があつたのであります。
 これに対しまして一松議員より強力なるところの反対の御意見が陳述せられました。原案のごとく若しこれを規定せられるといたしますれば、私権の否認にも考えられる。全体主義の表現にも考えられる。いわゆる悪法であるからこれは抹殺さるべきものであるというような強い御主張があつた次第であります。
 然るに衆議院におきましては、この第一條の第一項の「私権ハ総テ公共ノ福祉ノ爲メニ存ス」、この表現方法を末の文字を変更いたしまして、「公共ノ福祉二遵フ」、こういうように修正せられたのでありまして、委員会といたしましては不満足ながら大体この程度におきまして承認することに結果相成つた次第であります。衆議院の修正によりますれば、私権の本体は明らかに示されているのでありまして、その行使はいわゆる憲法に明示するところの公共の福祉のために行使すべきものである、こういうように表現変えされたのでありまして、先ずこの程度として委員会としては了承するに立ち至つた次第であります。これに対しましては一松議員におきましては、尚これにおいても十分從うことはできない、服従することはできないというような強い御意思の質問があつた次第であります。
 次に第二点そいたしまして、改正案第一條の二の「本法ハ個人ノ尊嚴ト両性ノ本質的平等トヲ旨トシテ之ヲ解釋スヘシ」という條文は、憲法第二十四條第二項末段の文言をそのまま採用したもので、この規定は婚姻、離婚、夫婦の共同生活、夫婦の財産関係等に関する原則規定である。從つて民事法全体に通ずる憲法の大原則とは言われないにも拘わらず、これを民事法全体の解釈基準とせよというのは妥当でないのでないかという質疑に対しまして、政府委員の答弁は、改正案第一條の二の「個人の尊厳ト両性ノ本質的平等」という言葉は、憲法第二十四條第二項末段の文言をそのまま使用したものであるが、これは親族相続に関する身分上の行爲に関する指針であると同時に、又一般財産関係、例えば、雇傭関係にも適用してよいのであるから、民法全体の大きな指導原理であるから、総則の冒頭に指針として掲げたのである。又右の指導原理に基ずいて立法すると同時に、この趣旨を解釈にも拡充する趣旨から、「第一條の二」を設けたのである旨の御答弁があつた次第であります。
  第三に、改正案は從來の戸主、家、族、その他家に関する規定を廃止することにしたが、戸籍の上で認められる氏を同じくする親族共同生活の團体に、憲法の精神に副つた新らしい家族制度として法律上の意義を與えることにして如何という質疑に対しまして、政府委員の答弁は、現行民法の下では、戸主は家の統率者として、家族に対し居所指定権、婚姻及び縦組の同意権、その他各種の権力を認められておりますが、これはすでに述べました日本國憲法の基本的原則と両立しないため、新らしい憲法の下ではこれを認むることができません。そしてこれらの権力を否定すれば、最早民法上の家の制度は、法律上はその存在理由を失うのみならず、これを法の上に残すことは却つて戸主の権力を廃止する趣旨を不明瞭にする虞れがあるのであります。よつてこの法律では戸主、家族、その他家に関する規定はすべてこれを削除いたしました。尚ここに御留意をお願いしたいことは、右のように民法典の上からは家に関する規定を全都削除したのでありますが、これは我が國において現実に営まれておるところの家庭を中心とする親族共同生活を否定する趣旨ではないのであります。私共は現に親子、夫婦を中心とする家庭生活を営んでおり、親子、夫婦間の法律関係は從來から家族制度の中心をなしておるのでありまして、今回の改正もこの点は日本國憲法の基本原則に従い、より完全な、合理的な制度に高めるため努力いたしておる次第でありまして、毫もこれを制限、変更せんとするものではないのであるという御趣旨の御答弁があつたのであります。要するに法律上の家を廃止いたしましても、いわゆる事実上の家というものは否定しない。むしろ改正民法は現に我々が営んでおるところのこの家族中心的の親族共同体をより以上効果的に発揮して、日本の家族制度の成果を図りたいという趣旨であるという御答弁であるのであります。
 第四に申上げたいのは、協議上の離婚について御質問があつたのであります。現在の状態から申しますと非常に協議上の離婚は多いのであります。これを無制限に放任して置くことは始終弊害を伴う。例えば妻の知らざる間に離婚届が届けられておるというような事例もある。これは諸外國の立法に倣つて容易に離婚届を出し得ない。即ち離婚に対しまして確認の制度を採つてはどうか。例えば家事審判所において離婚する場合におきましては、一々確認の手続をとつて、然る後に離婚を許してはどうか。こういう御質問があつたのであります。これに対するところの政府の御答弁は、現在におきまして一ヶ月六万件にもなるところの全國の離婚の数を一々裁判所においてこれを取扱うということになりますれば、現在におけるところの日本の裁判機構におきましては、到底これを受入れることができない。又簡易裁判所にこの事件を取扱わしむるといたしましても、現在予定せられておるところの簡易裁判所が全部全國に設立せられたいといたしましても、五百何ヶ所に過ぎないのでありますから、これによつてこれを処理するということは不可能事であるという趣旨の御答弁があつたのであります。併しながら政府の御答弁の一ヶ月六万件ということは、その後私が政府の提出せられましたところの資料によりまして調査いたしますると、これは誤りでありまして、昨年のいわゆる二十一年の七月から本年の五月まで十一ヶ月の統計によりますると、一ヶ年八万一千九百七十二件であたのであります。即ち一ヶ月約七千件相当な離婚数であつたのであります。この点は政府の御答弁は違つておつたのであります。尚これに対しまして政府の前の御答弁によりますれば、いわゆる憲法において結婚の自由を認めておる。又從つて離婚の自由も認めなくてはならん。かような趣旨の御答弁であるのであります。この点に対しましては明日修正案が出ることと存じますから、十分提案者の御説明もあり、又反対の御意見もあることと存じますから、これ以上の御説明は省略さして頂きたいと存じます。
 次に養子の再縁組を禁止してはどうかという御質問があつたのであります。即ち一旦養子をいたしました者が再び養子をすることを禁止してはどうか。その趣旨は、今度の改正民法によりまして、一度子供となりますれば相続分が附くのでありまして、その者がその相続分を持つて又再び養子に行きますと、第二の家で以て相続分を取得する。そういたしますと、幾つも相続人の権利を取得することになることは弊害が伴うから、これは廃止してはどうか。こういう御趣旨であつたのでありまするが、政府のこれに対する御答弁は、從來の民法におきましても再養子は認めておりまして、且つ又新民法におきましてもこの再養子を認めることは、当事者の意思を尊重する意味におきまして原案を支持するものであるという御趣旨の御答弁があつたのであります。
 次に嫡出にあらざる子供の相続分を嫡出の子供の半額にするということは憲法の精神に反するのではないか。こういう御趣旨の御質問があつたのでありまするが、これに対するところの政府の御答弁は、嫡出の子と嫡出にあらざる子との相続分の差等を設けたことは、決して憲法の精神にに反するものではない。例えば妻と子供との相続分の不均衡、その他現行民法において各相続分が相異なるのでありまして、これはその身分、その人々の地位によりまして相当なところの相続分を定めたのでありましてそれが即ち公平であるという御趣旨の御答弁であつたのであります。
 次に内縁の妻を認めてはどうか。こういう御趣旨の御質問があつたのです。即ち現在におきまするところの民法において、合意によつて成立したところの結婚は、届出によつてその効力は第三者的に発生することになつておるのでありますが、届出を怠つておるところの内縁関係は、これに対しても民法上の保護を與えてはどうか。從來においてもこれによつて苦しむところの夫婦は多々あるから、これを救済するところの法規を設けてはどうか。こういうような趣旨の御質問があつたのであります。これに対しまして政府の御答弁は、現行民法はいわゆる法律婚を認めて事実婚を認めていないのである。この主義を一貫しておるのであるから、その御趣旨に対しては感ずることができない。又従來の民法からいたしますれば、成る程戸主の同意がなくて事実上結婚しておつても、法律上の婚姻と認められない場合がある。或いは親の同意がないために、事実上結婚しておつても法律上の結婚と認められない不合理があつたのであるが、現行民法におきましては、当事者の意思表示によつて何時でもその届出は自由にできるのだ。いわゆる父の同意も戸主の同意も要しないで、自由にその結婚は成立するのであるから、その單なる届出をも怠つた人は、敢てここにそれ以上保護する必要はないではないか。かような御趣旨の御答弁があつたのであります。これに対しましても明日修正案が提出せらるることと存じますから、提案者の詳細なる御意見もあり、又反対者の御意見もあることと存じますから、これ以上の御説明は避けることにいたしたいと存じます。
 かようにいたしましで質疑應答は委員会において終了いたし、委員諸君に、この程度において討論採決に入るべきや否やということをお諮りいたしました次第でありますが、その際お一人の反対があつて、その余の全員は、この程度において討論採決に入るべきものであるという御意思であつたのでありまして、去る十月六月討論に入つた次第であります。その場合、小川委員より、先程申しましたところの養子の再縁組の点、及び九百條の但書の嫡出子にあらざる子の相続分の不均衡を修正するところの修正案が提案されたのであります。又松村議員よりな、この改正案は遺留分その他の各規定において未だ十分ならざるものがある。相当改正せらるべき点が多々あるのでありますが、近くこれが改正せられることを予想いたしまして、この程度において原案通り可決すべきものとするというところの御意見があつたのであります。かようにいたしまして、討論は終結し、採決に入りまして、先ず小川議員の提出にかかるところの修正案について採決をいたしました。これは小川議員一人の御賛成で、他は全部御賛成がないのでありまして、修正案は否決せられました。続いて原案全部につきまして採決をいたしましたところ、小川議員を除くその余の全員の御賛成によりまして、原案通り可決すべきものと決定せられました次第であります。以上誠に簡單でありますが、御報告申上げます次第であります。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) 議事の都合により、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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