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1947/11/21 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第55号
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1947/11/21 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第55号

#1
第001回国会 本会議 第55号
昭和二十二年十一月二十一日(金曜日)
   午前十時二十三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五十四号
  昭和二十二年十一月二十一日
   午前十時開議
 第一 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
 第二 兒童福祉法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 失業手当法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 失業保險法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。日程第一、民法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)一昨日に引続いて会議を続けます。少数意見者から報告することを求められております。小川友三君。
   〔小川友三君登壇、拍手)
#4
○小川友三君 本議員は民法の一部を改正する法律案に対しまして反対意見を持つておりますので、反対理由を議員諸公に申上げます。日本國憲法の基本原則に抵触する点があるように思われまするのでその点を申上げます。
 この民法の一部を改正する法律案の中、第七百九十二條の養子に関する條項であります。この條項で参りますと、委員会で政府委員にも極めて執拗に突込みまして意見を質したのでありますが、一人の養子が、A、B、Cと多数の養親を持つことができるという欠陷があるのであります。その欠陷で参りますと、養子が、養親が亡くなつた場合に、A、B、C、Dの多数の財産を貰うという欠陷がありますので、この養子の條項に対しましては制限を加えなくてはいけないという主張を委員会でいたしたのでありますが、敗れたのであります。これは法律の欠陥を運用しまして、多数の、二つ以上の家に養子に入れるという欠陥があるのでありまして、憲法に認められておる平等でないという点、不平等である。過剰に不平等に運用されるという点を衝きましたのが一点と、憲法第十四條に「すべて国民は、法の下に平等であつて人種、信條性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と明記されておりまするが、この民法の第九百條には、「嫡出でない直系卑属の相続分は、嫡出である直系卑属の相続分の二分の一とし、」という明確な差別が附けてあるのであります。半分しかやれないということは、憲法第十四條の「平等」という点を明確に無視しておるのであります。この点につきましても司法常任委員会におきましてたびたび反対をいたしたのでありまするが少数で敗れておるのであります。
 又「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。」こういう差別待遇をいたしておるのであります。つまり先夫の子は、先妻の子は半分しかやれない。今までの旧憲法でも平等に與えておつたのに、新憲法で平等を認めるという守らるべきところの点を無視しまして、半分しかやれないという、こういう点につきましては、本議員といたしましては憲法に抵触するものと信じまして、飽くまでも七千数百万の同胞の平等なるところの法律を作わたいというこの信念から、司法常任委員会におきましても、一人孤軍奮闘、(笑声)この法律を平等に守るために闘つたのであります。この点につきまして憲法第二十五條に、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。國は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」この「國は」、「政府は」というこの点につきまして、半分しかやれないのでは、平等を認めていないし、最低限度の生活を同じく脅すものであると固く信じまして、本法案に反対する者であります。御清聽を感謝いたします。(拍手)
#5
○議長(松平恒雄君) 本案に対し討論の通告がございます。帆足計君。
   〔帆足計君登壇、拍手〕
#6
○帆足計君 家族制度の淳風美俗ということは長く唱えられたことでございます。併しそのような美名の下に我が國の家族制度が重大なる欠陷を内包しておりましたことは、皆様御承知の通りでございます。我が國の家族制度は、我が國専制政治の社会的基盤を成しておりました家族制度に見られまするところの過当なる戸主権、男子専制の風習、長子の相続権うこれらの下に、か弱き母、妻、並びに幼き弟たちの苦難の有様は、幾多の社会的悲劇の根源になつておりました。勿論この淳風美俗の中には若干の麗わしき傳統もございました。それが封建的、没我的な倫理の下に守られておりました限りにおきましては、若干の美風もございましたけれども、それが近代社会に入りまして、封建主義の悪い所と、資本主義的な利害打算の悪い所が結合いたしました際には、最大の家庭悲劇になつておりましたことも、皆様御承知の通りでございます。私は人類の発展の歴史は、個性の自覚と個性の発展の歴史であると考えます。而も人類は二十世紀に至りまして、個性を発見するだけでなくて、社会を発見しました。社会と個性との調整、これが現代の課題であろうと存じます。併しながら個性の自覚のない社会というものは、これは烏合の衆でございます。我が國の家族制度は、個人の自覚並びに個性の発展を押え付ける点におきましては、蝸牛の殻のように頑固なものでございました。従いましてこのアジア的な家族制度の下におきまして、辛うじてこれか目を開き、これが国家的に結合しまするために、従来忠君愛國というような思想を以ちましてこれを固めておりました。これは一面におきましてアジア的な利己主義を押えるのに確かに役に立ちました。忠君愛國の思想のすべてが反動的であつたわけではないでありましよう。併しながら個性の自覚のなかつたところの國民というものは、今やそれらのイデオロギしか敗れ、それらの体制が敗れました時に、実に惨澹たる現状を現出しておりますることは、目前に見るがごとくでございます。然るが故に、私は日本の再生にとりまして最も必要なるところの一つは、個性の訓練であると思います。家族制度の殻の中に蔽われておりましたところの個性を、十分に伸び伸びと伸張せしめることが必要であろうと存じます。今次の民法の改正は、このような意味におきまして、旧来の我が國の家族制度に対しまして鋭い批判を加え、これを根本的に改正しようとする内容を持つておるものでございます。憲法第二十四條に民法についての暫定的な規定が出ております。それは「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊嚴と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と明記してございます。民法改正の趣旨は、このような憲法の條章に従うものでなくてはならんと存じます。
 然るに今次の改正法案を見ますると、私は二三の重要な点におきまして欠陷があることを指摘したいのでございます。特にその中におきまして、遺産相続の件に関しまして、婦人の地位が、妻の即位が過当に縮小されておるように考えるのでございます。御承知のごとく新憲法下におきまして男女の地位は平等でなくてはなりません。妻と夫の地位も亦平等でなければなりません。そうして日本國民の多くの家庭におきましては、糟糠の妻は主人を助けまして、夫を助けまして非常な努力をいたしております。たとい夫の名儀で得られました財産権でありましたところで、その背後に糟糠の妻の努力あることを忘れてはなりません。然るに夫の死亡した場合におきまして、妻に対する財産の割当は三分の一ということになつております。本來平等の権利があり、二分の一の権利のあるものが、夫の死亡によつて三分の一に縮小されますことは、未だ婦人が無能力者であり、婦人が男子に隷従すべきものであるとされたところの風習の遺跡がここに残つておると存じます。
 第二に、妻と親と残りました場合に、妻に対する割一当は、丁度二分の一、半分ということになつております。勿論年老いたる祖父母は鄭重にこれを大事にいたさねばなりません。併しながら主婦の主婦としての責任は、我々はこれを尊重せねばなりません。然るが故に、この割当が、当然「主婦に対して一二分の二であるべきと私は信じます。この二つの問題は、併し現実にはそれ程大きな影響を及ばさないでありましよう。
 併しながら第三の場合におきましては妻と兄弟と残りました場合、即ち子がなくして妻のみが残りました場合に、その兄弟が三分の一を請求し得ることなつております。過去の封建的な民法におきましても、兄弟は、妻も子もなく、一切の身寄りのないときにおいてのみ相続権を請求し得るのでございました。然るに今次の改正民法におきましては、妻並びに兄弟が残りましたときに、兄弟はその三分の一を請求し得ることになつております。私はこのような場合におきましては、憐れなる未亡人から兄弟が收奪すべきではなくして、逆に兄弟からは見舞を持つて來て然るべきであのると考えるのであります。御承知のごとく、女は三界に家なしと称されました。未亡人という言葉が示すがごとく、未だ亡びざる人という名称を以て遇せられました。夫なき婦人の社会的困難と苦しみというものは測り知るべからざるものでありました。私は女性の人格の独立、これを男子と平等に取扱うことが、民主国家の基盤でなくてはならんと存じます。女性の無人格と無智と無教養とは、男子に取つても、社会に取りましても極めて不幸なことでございます。丁度國民の政治的無自覚と国民の無教養とが官僚独善を招來しておりますように、現実における婦人の無智と無教養とは、男子の横暴を招來し、男子の病的心理を招來しておるものと思います。女性の社会的地位の低いということは、男子に取つても極めて不幸なことであります。私は文化国家の建設のためには、女性の社会的地位が高まり、その教養が高まり、そうして男性と女性との間における古典的な差別待遇が一切なくなることが必要であると存じます。(「そうだ、そうだ」「雄弁大会でやれ」と呼ぶ者あり)私はこの民法の相続編につきまして、婦人議員の方々がもつと愼重であつて欲しかつたと存じます。この前にできました調停法におきましても、今次の改正民法におきましても、近く民法の根本的改正が行われるという前提の下で、この辺の審議が或いは不十分でなかつたかと私は観察しておるのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 結論といたしまして、私は第一に、この法案につきましては婦人の地位が正当に認められておらず、過去の封建的家族制度の遺風がまだ濃厚に残つておることにおきまして反対の意思を表明したいのでございます。第二に、この法律のままでは妻に極めて不利な結果を齎らすということを警告いたしたいのでございます。(「子供はどうするのだ」と呼ぶ者あり)第三に、然るが故に妻たる方々は必要と認められる場合には、夫に相談して遺言の準備をして置かねばならんということを警告いたしたいのであります。この法案につきまして、これらの理由を以ちまして私は反対の意見を述べさせて頂きましたが、次回の民法の根本的改革の場合に臨みましては、これらの点を慎重に審議されまして、男子と女子の平等の原則が民法の全編を貫きまするように改革を要望したいのでございます。一言反対の意思を述べさせて頂きます。(拍手)
#7
○議長(松平恒雄君) これにて本案に対する討論の通告者は終りました。本案に対しまして田村文吉君外二名より、又田中耕太郎君外一名より成規の賛成者を得て修正案が提出されております。この際先ず田村文吉君外二名提出の修正案について、その趣旨説明を求めます。田村文吉君。
   〔田村文吉君登壇〕
#8
○田村文吉君 今回の民法の一部を改正いたしまする法律案に対する修正案を提出いたしましたので、その理由内容を御説明申上げたいと存じます。
 婚姻に当りまして子供が生れるまで、或いは家風に合うか見定めるまでといつた意味合から、直ぐに届出でしない慣習が地方によつては相当廣く行われ、知らず識らず長年月に亘り婚姻の届出を怠る例が多数あるのであります。その外にも道徳的の善悪は別問題といたしまして、多くは男子の怠慢と不都合によりまして、内縁関係のまま事実上の夫婦であるものもその数少くないのであります。このような事実上の、夫婦関係、即ち内縁の夫婦関係に民法上いかなる保護を與えるかの問題は、古くから民法改正上の課題となつておつだのでありますが、法律婚主義、即ち届出を婚姻の成立要件とする主義を採る限り、内縁の夫婦関係を民法上いかに採上げるかは、過去の立法技術上極めて困難な問題でありますので、いつも議論倒れとなり成案を得ないのであります。併し内縁の夫婦関係に適当な保護を與える必要のあることは、概ね異論のないところでありまして、穗積重遠博士は衆議院における家に関する公聴会で、公述人として内縁の夫婦関係を保護する規定を何らかの形で改正民法中に設けられたいとの希望意見を述べられております。この外にも同様の意見を強く主張する新進の法律学者も少くないのであります。今や殊に個人の尊厳と両性の本質的平等を確立いたしました新憲法の精神に照らしまして、内縁の夫婦関係保護の必要はますます加重せられたものと存ぜられますので、國権の最高機関であり唯一の立法機関である國会が、新憲法に即應するための民法改正に当り、本問題を採上げ規定することは極めて必要であり、且つ意義深いものであると信ずる者であります。私共が内縁の夫婦関係を保護するため提案いたしまする要点は、次の二点であります。
 即ちその第一は、内縁の夫婦関係を解消した場合、たといそれが合意上の解約でも、又一方的の破棄のときでも、この場合に改正民法第七百六十八條を準用することであります。民法第七百六十八條の條文は次の通りであります「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分與を請求、することができる。」、第二項「前項の規定による財産の分與について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家事審判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。但し、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。」、「前項の場合には、家事審判所は、当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分與をさせるべきかどうか並びに分與の額及び方法を定める。」即ち正式夫婦離婚の場合に認められた財産分與の請求権に関する規定を準用いたすのであります。以下右に関する理由を申述べて見ます。
 内縁の夫婦関係を合意上解消いたしました場合は、從來これに関し何らの救済方法がなかつたのであります。ただ一方的の破棄の場合には、当事者の一方は相手方に対し損害賠償を請求する方法が、判例により婚姻予約の不履行による損害賠償として認められておりましたが、実際上は一方的の破棄であつても、外見土は円満に解消されたかのごとく偽装される場合が多く、且つこの種の訴訟が相当の日時と費用を要する関係上、いわゆる弱者の泣き寝入りに終る場合が多い実情にあつたのであります。これが即ち本條を新たに設けて、内縁関係の解消の場合にも、すべて一般の離婚の場合に準じ、相手方に財産の分與を請求することができることとし、而もその手続を家事審判所における非公開の簡易の手続によつて目的を達し得るようにいたしたいのであります。
 次に、修正いたしたい第二の点は、同じく内縁の夫婦関係にある当事者の一方が死亡した場合に、他の一方は遺産の分與を請求ずることができるようにし、その手続につき改正民法第七百六十八條の第二項、第三項を準用することにいたすのであります。定法第七百六十八條は只今朗読いたしましたのでありまするから省略いたしまするが、即ち遺産分與の手続については、家事審判所に申出で、それぞれ適当と思われる審判によつて遺産の分與に與かることのできるようにいたすのであります。以下これに関する理由を申述べて見ます。
 改正民法により、夫婦の一方が死亡した場合に、他の一方は必ず相続権を認められ、配偶者の相続上の地位は、相当高められたのでありますが内縁の夫婦間にあつては、何らの相続権が認められないのであります。よつて内縁の夫婦の一方が死亡した場合に、他の一方に何らかの保護を與える必要があるのでありますが、さりとて内縁の夫婦間に相続権を認めるということは、相続法の体系に大なる影響を及ぼし、立法技術上極めて困難でありますので、この方法を採らず、内縁の夫婦の一方が死亡した場合に、相手方は死亡者の相続人に対して、又は相続人があるかないか明らかでない場合に設けらるる財産管理の法人に対して、遺産の分與を請求することができるようにし、その手続については離婚の場合の財通分與に関する規定を準用して、家事室判所の審判によることとしたいのであります。
 尚ここに、特に諸君の注意を喚起いたしたい点があります。旧民法においては親族会の決議により赤の他人でさえも相続人とするととができたのでありますが、改正民法においては直系卑属、直系尊慮兄弟姉妹及び配偶者に限られ、これらの相続人がない場合は、遺産はすべて国家に帰属することになるのであります。内縁の妻、即ち事実上の配偶者があつて、それが百年苦楽を共にしたいわゆる糟糠の妻であつても、たまたま不幸にして内縁であつたがために、遺産のすべてが国家に帰属してしまい、配偶者は鐚一文も貰わないような結果と相成るのでありまして、かくのごとき人情味のない不條理は正に速やかに修正せらるべきであると信ずるのであります。これ即ち修正案第二に対する理由であります。
 以上が本修正案の説明でありますが、尚一言申上げて置かねばならんことがあります。それは、この修正案の目的が、聊かも内縁の夫婦を助長奨励せんとするのではなく、ただ過渡時代的に存在する、又は発生せんとする不幸な現実を救済せんとするに外ならないことであります。婚姻の届出主義を採る限り、内縁の夫婦関係の発生はでき得る限り少くせねばなりません。否、個人の尊厳と両性の本質的平等の見地からも、法律知識を普及して将來内縁の夫婦関係を絶滅して、これによつて生ずるいろいろの不幸をなくすることが私共の理想であつて、我れ人共に努力いたすことは勿論であります。又事実改正民法によつて成年の男女は自由に婚姻できることになりましたので、内縁の夫婦関係は漸減するであろうことは想定されるのでありまするが、何分にも長年の慣習を一朝にしてなくすることは期待できません。この修正案は、即ちこの過渡期における社会的現存の不幸を救済せんとして発案いたしたものであります関係上、この修正の規定は民法の正文とせず、これを附則に添加し、且つ当分の間という文句を入れまして、誤解を避くることといたした次第であります。練達なる司法委員皆様の長期に亘る愼重な御審議の結果に対し、敢えて意見を加えますることは甚だ非礼に存ずる次第でありますが、申すまでもなく民法は憲法に次ぐ重大法案であります。即ち個人の尊嚴と両性の本質的平等の理念に基ずき本修正案を提出いたしたのであります。社会悪を憎むの余り何らの罪もない不幸の人々が虐げらるるままに放置されることは、私共の到底傍観するに忍びないところであります。幸いに諸兄の御賛成によつて本修正案の通過を見ますることによりまして、一人でも二人でも正しき法の恵みを受くることにより救われることができましたならば、今回の記念すべき民法の一部の改正が更に一段の光彩を発揮するものと固く信ずるものであります。各位の御賛成を切にお願いいたす次第であります。(拍手)
#9
○議長(松平恒雄君) 田村君の修正案に対し討論の通告がございます。來馬琢道君。
   〔來馬琢道君登壇、拍手〕
#10
○來馬琢道君 私がこの修正案に反対するのに二つの理由があります。その一つは形式上から、その第二は内容からであります。形式上からというのは、参議院の司法委員はこの修正案の提出方法が甚だ軽卒だということを考えるからであります。従來諸法案を審議するのに相当愼重の手続を踏んで來た参議院の司法委員は、特に國家の大法典たる民法においては十一回も委員会を開いて、過日決議したのである。議案は数十日前に内閣より各議員の手に送付せられたものであるから、修正意見のある者は独立した改正案を参議院に提出することもできれば、一部の修正案を委員長に提示し、委員外議員として委員会に出席して説明する自由も與えられている。又委員中において異議ある者は少数意見を保留する途もある。然るに民法の一部を改正する案は、衆議院修正案のまま委員会において可決せられ、少数意見の申出をなしたる者は総括的反対意見である。本日述べられたる修正案は正しい順序を取られなかつたと言うてもよいのであります。ひとり司法委員のみならず、他の常任委員会はいずれも参議院の特異性を発揮するに努め、労働省設置法案にせよ、刑法改正案にせよ、愼重審議の跡を示しております。今私共司法委員の手を経ない修正案が突如本会議において付議せられることになつたことは、司法委員会はその存在を認められなかつたということも言えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)(「それこそ形式論である」「何を言うか」と呼ぶ者あり)故に私はかかる場合においては、議長において再び委員会に付託し、新たに審議せしむべきしものであると思う。新憲法下の國会は常任委員会が議案審査の最高機関であつて、法律案提出者と雖も、従來の衆議院或いは貴族院におけるごとき本会議において提案の理由を説明させないことになつている。若し今後一つの法案に対して委員会終了後に突然修正案を提出し、本会議において長々と説明するを慣例とするに至らば、委員会の機能は軽視せられて、少くとも著しく軽視せられ、数十日間の委員会の審議よりも本会議における数十分乃至数時間の討議が重要視せられ、國会法の精神が、主客顛倒するに至ることを恐れるからであります。(拍手)(「その通り」と呼ぶ者あり)即ちこの修正案の提出者の用意周到ならざる点につき遺憾の意を表し、反対する者であります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)(笑声)況んや司法委員中の一名の者が修正案提出者として、去る十九日の夜、二十日の朝ラジオで宣傳せられたるにおいておや。(「うまい」と呼ぶ者あり)(拍手)私共司法委員の立場は甚だしく苦しいことになります。私共は新憲法の下に良心的に議案を取扱つて行こうといたしておる者であります。何かその上に政略的の風聞があるようなことは、尚更不愉快に存ずるところであります。(拍手)(「その通りだ」「うまい」「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)
 次に、内容からというのは修正案の中に、(「しつかりやれよ」と呼ぶ者あり)賛成すべきものもあり、反対すべきものもあります。我々は今ジレンマに乗つておるようなものであります。(笑声)例えば田中君の発案せられた協議離婚を家事審判所において確認を経る件、これは私はむしろ賛成する傾向にある者であります。(笑声)若し委員会において逸早く問題となり、審議せられたならば、或いは全員一致賛施したかと思うのであります。(「そうでもないよ」と呼ぶ者あり)その次の内縁の夫婦を民法上において認むる件、これは一面に理由はあるが、他面には少からざる欠点があり、これは又二種類に分けることができる。即ち立法政策上の欠点、以下簡單に申します。(「ゆつくりやれ」と呼ぶ者あり)一、婚姻に二種あることを認めるのは、立法政策上避くべきことである。二、根本法典たる民法において、かかる除外例を是認するのは、法律の退歩であります。三、事実の認定が困難である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)修正案の定義が漠然としておる。財産関係の基本たるものは明確を要する。即ち婚姻成立の時期その他の要件は、大抵不明確のものが多い。(「その通り」と呼ぶ者あり)不明確のものである。内縁関係というときに、余り明確なるものはないよううにも考える。(笑声)(「その通りその通り」と呼ぶ者あり)(拍手)四、事実上派生する問題が幾つもある。(一)(「藝が細かいぞ」と呼ぶ者あり)内縁の間に生まれた子をどうする。(二)内縁の夫妻の姻戚関係を、どうする。(三)内縁の夫婦間の生きている間の財産関係をどうする。(「そうだ」、と呼ぶ者あり)(四)内縁の夫妻の扶養関係をどうする。(「その通り」「誰に書いて貰つた」「括弧五」、「ひやひや」「括弧は読まんでもいいぞ」「括弧六」と呼ぶ者あり)あとは括弧のない五であります。(拍手、笑声)内縁の夫妻の財産関係は、最後に家事審判所の手を経て調停を行うことになる故に、このような修正は結局意味なきことになる。六、修正案第三條第三項には、事実婚姻解消の場合における財産分與の規定があるが、その解消は何によつて定めるか。法律関係を混乱させる恐れがある。七、修正案第三條第三項は、内縁の夫婦の一方の死亡の場合において)他の一方の遺産の分與につき規定しているが、この不明瞭な規定のために正当なる相続人が権利を侵される恐れがある。(「その通り」と呼ぶ者あり)立法政策上避くべきことである。八、婚姻届出の方法は、新民法におきましては、非常に簡單である。余は更に、宗教團体等において行つた婚姻式典を以て、婚姻の成立ということにしてもよろしいとまで思つておる。(笑声、「我田引水」と呼ぶ者あり)次に私の実際に見た方面からの欠点を流べる。
 一、数人の婦人と内縁の関係を結べる男子について、(笑声)二、二人以上の男子と内縁関係ある婦人について、(笑声)三、叔父姪等の、法律上許すべからざる内縁関係について、四、父又は母の同意せざる未成年者の結婚について、特に家産横領の目的を以てする内縁関係について、(笑声、「よく調べたね」と呼ぶ者あり)五、傳染又は遺傳を恐るる病氣のために、父母の許さざる内縁結婚について、六、重婚を黙認する弊害を伴なう点について、私は東京都中の、元各種の人々の集まつている浅草に住居して区会議員、町会長を勤めておりましたから、幾多の実例を知つております。(「そうして参議院に出た」「えらいぞ」と呼ぶ者あり)この問題について私は右見地から反対したいのであります。若し諸君が同意せらるるならば、本日問題となつた修正案を再び司法委員会に付託し、短時間でもよろしいから、委員会の再審議を経て、参議院の特色ある決議をなされることを希望する。即ちこの本会議において、軽々しくかかる重大なる問題を採決することに反対する者であります。(「同感」と呼ぶ者あり、拍手)
#11
○議長(松平恒雄君) 井上なつゑ君。
   〔井上なつゑ君登壇、拍手〕
#12
○井上なつゑ君 (「井上先生、しつかりやれよ」と呼ぶ者あり)現在事実上立派な夫婦であるにも拘わりませず、ただ婚姻の届出を怠つたかために、内縁の夫婦関係ということになりまして、今回一群改正されようといたしておりますその民法の中へさへ、その内縁の一妻の保護に関する條項が云々されておりますということは、婦人の立場から見まして、私は非常に遺憾に堪えないのでございます。御承知のように、現在婚姻の適齢期の子女を持つ母親のそれら子女の婚姻に対する考は、まだまだ封建的なものがありまして、眞実の親心と申すものでございましようか、馬鹿な息子にもよい嫁を取りたいという念で一ぱいでございますし、才媛とうたわれない娘にも、三國一の花婿を探し当てたいと祈るのが親心でございます。こういつたまるで寳探しのような婚姻は、都市よりも農村おいてまだまだ多く見るのでございます。この暗中摸索のような結婚の結果はいかがでございましよう。娘の方では「こんなのろまの主人では將來不安である」といいましようし、又息子の方では「こんなもののできない娘は一生六十年の不作である」と申すかも知れません。(「そうでもない」と呼ぶ者あり)そういううちに今暫く婚姻届を出さない方がいいということになりまして、双方とも不信任の状態になります。こういう状態で半年、一年と過します。そのうち子供でも生れればまだしもでございますが、子供がないというようなことになりますと、とうとう離婚にまで落ちて行くのであります。(「頭を切替えろ」と呼ぶ者あり)地方によつて違いますか知れませんが、娘の方から一日でも早く出ますれば、正当な理由があるにも拘わらず、婚家の方では、財産等の分與はおろか、持参いたしました荷物、調度品などを返さないというような悲惨な事実もあるのでございます。まだまだ実に女性の地位は低いのでございます。約二十年程前でございました。私は英國の或る女中さんと話す機会がございました。その女中さんは、自分の婚約者の写眞を持つて来て、いろいろ話をして聽かせますので、「なぜ早く結婚をしないか」と尋ねましたら、「彼氏は目下結婚に要する費用及び結婚後直ちに破綻を來さないように経済的の準備をしており、自分は家庭生活に必要な材料を整えておる。」そういつて見せられましたものは、長いちりめんの着物ではございませんで、立派な大きな純綿のシート半ダース、バスタオル数枚、タオルにマット、その他家具、家事用の道具一切でございました。私はこの女中さんの結婚に対する観念のがつちりしておるのに感じ入つたのでございます。(「論旨を明かにせよ」と呼ぶ者あり)その女中さんは働く一方、家庭経済、料理その他の生活科学の勉強をいたしておりました。(「本論々々」と呼ぶ者あり)現在我が國の若い青年男女には(「賛成か反対かどつちだ」「よく聴け」と呼ぶ者あり)お互いに結婚前に、將來末長く生活を共にいたしまする相手の長所、短所を見定めて、自分に適する配偶者を定めるだけの判断力は十分にございましようか。將來の教育、環境その他よりして、私は誠に申しわけございませんが、みんながみんなそういつた判断力を持つておると申されません(「みんな持つておる」と呼ぶ者あり)すると結果はいかになりましようか。婚姻の届出も分つておりますし、他人の干渉なく、自分の眼で選んだ相手でありながら、ずるずると内縁生活を続けて行くかも知れんのでございます。この人たちが離婚をいたしましたり、又不幸にして夫が死亡いたしましたような場合に財産の分與がなければ内縁の妻は裸になるより仕方がないのでございます。旧式の親たちは、こういう不幸な娘に対して恐らく自分ですき好んで行つたのであるから、経済的にも干渉することができないと、比較的冷淡に構えておるかも知れないのでございます。このように不幸な現在の世の中の嵐の中に捲込まれましたら結果はいかになりましよう。想像に余るものがございます(「心配なし」と呼ぶ者あり)考えれば考える程両性の平等を欠いております。ぜひぜひ私は現下の情勢なるが故に更この内縁夫婦関係に意を用い、その保護に当つて頂くことを主張いたしたいのであります。この保護の一條を加えますことによつて、一部の方には將來ますます内縁夫婦関係を助長すると考えられます向もありますが、私は決してそうとは思いません。内縁関係の妻にも財産分與を法律上認めることになりますと姑、舅及び夫となるべき男子の方々に、婚姻は決して無責任、無計画に行なうべきことではなくあのキリスト教式結婚式で、牧師から「病気になつても永久に妻を愛するか」と言われて「イエス」と明答し、「いつまでも良き妻として夫を、助けて行くか。」「ハイ、必ず」と意思表示を明確にした後、双方から教会の帳簿にサインし、更に夫婦揃つて戸籍役場に届出に行くような、眞撃な結婚観念を持たせることになりますと同時に、現在内縁関係にあります数万の妻の方方にとつては、自分もいつまでも無能力な妻であつてはならない。一刻も早く届出をして(「した方が宜いね」と呼ぶ者あり)生活態度を更新し、婚家の有力な一員となり、一家の礎となつて、國家の再建に寄與するという念を深くするということは疑いございません。かくすることは内縁夫婦関係を増加するどころか、反対に内縁夫婦関係を急速に減少することになると信じます。
 その上、從來認めなかつた内縁夫婦関係を、而もこの過渡期に法律上認めたということになりますと、一般國民のこれに対する関心は実に深いものとなりましよう。即ち從來民法などと申せば一部法律専門家が有識者のみのものと考えておりました偏見が一掃せられ、我我國民生活の上に一日も等閑に附してはならないこの大切な民法に多大の関心を持つこととなり、民法の普及教育ということになると存じます。その結果、日常生活の改善の上にも多大の影響を来しまして、女性の社会的地位も向上できるのでございます。国民が生活態度を明瞭にするようになりますれぼ、現在憂えられておりますこの内縁夫婦関係は固より、離婚数も次第に減少することは明白な理でございます。
 この好機を逸することなく、この田村議員外二名の御一提出の修正案を可決せられんことを希望いたしまして、この修正案に心から賛同の意を表するのは、以上の次第でございます。どうぞ皆様の御賛同をお願いいたしとうございます。(拍手)
#13
○議長(松平恒雄君) これにて本修正案に対する討論の通告者は終りました。
 次に、田中耕太郎君外一名提出の修正案について、その趣旨説明を求めます。田中耕太郎君。
   〔田中耕太郎君登壇、拍手〕
#14
○田中耕太郎君 発議者の一人といたしまして、修正案の趣旨を御説明申上げます。
 修正案の第一点は、原案第七百六十四條に「協議上の離婚は、その届出前に家事審判所の確認を経なければならない。」という一項を附加えますこと、と、これに伴なう條文の整理でございます。第二点は「家事審理所の確認は、当分の間、簡易裁判所の確認をもつて、これに替えることができる。」という趣旨の規定と、これに伴ないまする関係條文の整理でございます。この修正案を提出いたしました理由を、簡単に御説明申上げます。
 従來我が日本の民法の協議上の離婚の場合におきましては、御承知のように届出のみによつて離婚が効力を生ずることになつておりまして、政府原案もこの長年採つて参りました方針をそのまま踏襲しておるのでございます。併し私共は協議上の離婚の手続を今少しく愼重にした方が適当ではないかと存じまして、届出前に家事審判所又は簡易裁判所の確認を経ることを必要といたしたのでございます。修正の点はかように極めて簡単でございますが、併しこれは婚姻という制度の根本の性質や、文世界文明諸因の離婚法制の趨勢や、我が法制の欠陷と、それから生じまする弊害を是正するという意味や、最後に婦人の地位の保護というような、極めて重要な問題に関係しておりますので、この問題につきまして特に各位の深甚な御考慮をお願い申上げます次第でございます。
 そもそも我が民法は、我が國におきまして古來家族や婚姻を非常に重要視して参り、今後と雖も、民主主義的政治社会の下におきましても、家庭や夫婦関係の眞の使命を大いに発揚しなければならんと考えられますのに拘わらず、離婚に関しまする限り、日本人が、個人主義、自由主義の本場と認められておりますような欧米諸文明國におきましても殆んどその類例を見ない程度の、簡易且つ自由な離婚制度を採用して参つたのであります。欧米諸國では一部のキリスト教諸國は、御承知のように離婚を認めないで、その代りに別居という制度を認め、離婚を絶対に禁止しております。又他のキリスト教諸國は、離婚を認めましても、裁判上のもの、即ち裁判所の判決によるものだけに限りまして、而もその離婚原因を極めて狭く制限いたしておるのであります。協議上の離婚を認めております國を挙げて見ますと、それは極めて少数でございまして、國の名前はエストランド、レツトランド、キューバ、ドメニカ共和國、エクアドール、ハイチ、ホンデュラス、メキシコ、ニカラグア、サルバドール並びにウルグアイでございます。日本はこのグループの中に加えられておるようなわけでございます。尤もソヴィエト連邦の制度はこれは全く違つておりまして一方的の意思で離婚ができるようになつておりますが、これはソヴィエトの特殊のイデオロギーから出ておることと存ずるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)更に協議上の離婚を認めております國々におきましても、法律は離婚が軽率に行われないような用意を講じておりまして、幾度も調停を試みたり、離婚が再婚の目的に出でないように、一定の期間例えば向う二ヶ年間再婚を禁じましたり、子供の利益を害しないような方法を講じたり、又当事者双方の出頭を命ずる外に、成年の証人二人以上の立会と署名とを求めたりしておるのであります。然るに我が民法におきましては、協議上の離婚の制度の濫用を防止するための何らの考慮も拂われていないのであります。その結果といたしまして日本におきましては、夫の方で無断で届出をしまして、妻が知らぬ間に離婚をせられておるというようなこととか、夫が妻を強制して離婚届出書類に捺印させ、妻がいわゆる裸で追い出されるというようなことがたびたび起りまして、而も女の身では勿論離婚無効確認の訴訟とか、又は離婚取消の訴訟で以て争うというような手段方法も取れませず、そのまま泣き寝入りになつてしまつたというような悲惨な事例が無数に存在しておるのであります。かような事例に徴しましても、協議上の離婚を愼重にいたしますことは、婦人の地位の保護の見地から考えて見まして特に必要ではないかと存じます。凡そ離婚件数の中で、司法当局から聴きましたところでは、毎年五万乃至八万と算せられておるそうでありますが、協議上の離婚が大部分を占めておりまして、裁判上の離婚の件数は全体の極めて少数のパーセンテージになつておるのでございます。或いは一%とか二%とか極めて少数である。ところでうこの裁判上の離婚は大体におきまして妻が訴訟を提起する場合のみに限られておりまして、夫が訴を起すようなことは殆んどないようであります。これは夫の万は、妻を出そうと思えば、妻を威圧いたしまして協議上の離婚に同意させればいいのでありまして、特に離婚訴訟を夫が起します必要がないからであります。要しまするに、日本民法は協議上の離婚制度におきまして他の文明國に殆んど類例を見ないような自由を認めておるのであります。自由は結構であります。併しながらこの自由は名ばかりでありまして、名は自由離婚でありますが、実は強制離婚というのが眞相でございます。で、かような事態は、新憲法の下におきまして、封建主義の弊習を佛拭いたしまして、特に男女平等、女性の保護の精神を徹底しなければならない今日、許されないところでありまして、一刻も早く改められなければならないものと確信する次第でございます。かような意見は、私共発議者の単なる私見や思い付きではないということをこの際申上げて置きます。これは久しい以前から民法学界の権威君たちが永年主張して参りました。又最近にもこの意見は、各大学の十一名の中堅の専門民法学者から成つておりますところの民法改正案研究会から発表されました極めて有益な「民法改正案に対する意見書、」これは法律時報の八月号に載つております。その意見書の見解とも一致するものであるということを附加えて申上げて置きます。
 本修正案に対しましての反対理由を想像いたして見ますると、先ず離婚手続を面倒にして、離婚の自由を制限することは不当だというのが、その一つであります。併し修正案の目的は、離婚の許可を家事審判所に申請させようというのでありません。従つて家事審判所は離婚の原因まで立ち入つて一々審査をいたすものではないのであります。協議が果して眞意に出でたかどうかということを確認するだけに止まつておるのであります。修正案の目的は離婚の制限ではなく、却つて離婚の自由を保障することに存しておるわけでございます。一昨日の司法委員長の御報告によりますと、司法当局は、この離婚の手続に「確認」を加えるということが、いかにも新憲法の精神に反しておるように答弁をされたというふうに私は理解いたしたのでございます。併しながらそれは決してそうではないので、離婚の制限ではない。離婚の意思を眞に持つておるかどうかということを確認するだけでありますから、決して自由を制限しておるわけではないのでございます。次に家事審判所の定員だけでは、年に五万乃至八万の協議離婚事件を処理するに人手が足らぬというのが、反対理由の第二であります。元來人手が足らぬということを理由にするのは、婚姻という事柄の重要性に鑑みまして本末顛倒ではないかと存じますが、併し我々はこの点を考慮いたしまして、家事審判所の確認は、当分の間簡易裁判所即ち元の区裁判所の確認を以てこれに代うることができる旨の規定を附則中に設けたのでございます。家事審判所の審判官定員四百人、簡易裁判所判事定員六百四五人、判事補定員二百五十人、総計千二百九十五人を以て年に五万乃至八万の離婚事件の処理に当りますと、一人ずつの件数は年約三十八件乃至六十一件に過ぎません。それも確認だけの問題でありますから、負担は大したことにはならないと存ぜられるのであります。
 要しまするに、反対理由はいずれも根拠が薄弱であると言わなければなりません。尚当事者の立場から考えて見ましても大した犠牲ではございません。一生の重大事のために、このくらいの手続を踏むことを面倒がるようでは、我々は当事者に果してまじめに離婚をしようという固い決心があるかどうかを疑わざるを得ないのであります。(拍手)更にかような簡單な手続でも履むことになつておりますると、当事者が一生の重大事を軽率に決定しないという利益があるのであります。
 凡そすべて法律上の形式や手続というものには、それぞれの理由がございます。それは関係者に愼重に考えさせる機会を與えるものでありまして、意味なく自由を拘束するようなものではないのであります。更に例えば国際関係が逼迫する、或いは労働関係が緊張するというような場合におきまして、紛議や争議に調停という一つの手続を設けます。或いはその外何かの手続を設けます。と、その間に熱がさめ、危機が防止せられ、決裂が未然に避けられるというようなことは珍らしくないのであります。夫婦間の家庭争議におきましても、やはりこのことは眞でありまして、特に一時の感情に激して一生を誤まり、子供を悲惨な運命に陥れるような不祥事が起らないように、起り易いのを、確認という簡単な手続を覆むことだけでもここに決めて置きますと、それによりまして当事者に熟慮反省の機会を與え、又その時間を與えるということによりまして、悲劇を避けることができるのでございます。
 要しまするのに、日本ぐらいお手軽に離婚ができる國は他に殆んど類例がないのでございます。それは、婚姻のような國家社会の構成の単位でありまして又基礎を成しておるところの人倫の大本に関係いたし、又多くの場合において、宗教的色彩の濃厚な法律関係を、単なる賣買や賃貸借や雇傭というような財産に関する関係と同じように取扱おうとする誤まつた思想に基ずいておるのであります。婚姻は単なる合意によつて成立いたしますが、併しそれによりまして成立いたします法律関係は、財産法上のものと違つた身分的のものでありまして、私のものではなくて、公の性質を帶びておる。当事者の意思を超越するところの愛と犠牲を基調といたしまする神聖な関係でございます。フランスの民性の起草者といたしまして世界に有名であります或る学者はこう言つております。「婚姻においては、單に自分のためだけでなく、他人のためにも約束する、人は正にこれから生ぜしめんとする新家庭の保護者となることを約する。人は國家のために約し又人類一般のために約する」「公ということが従つて常に婚姻の問題の一部を成す。……故に夫婦問の契約は他のいかなる契約にも類似していない。」こういうふうに述べておるのであります。故に財産法上の原理でありまするところの、いわゆる契約自由の原則によりまして、身分法上の関係であり、ます婚姻を律しまして、自由に解消させ得ると考えるのは、根本的に考慮を要するのでございます。併しながら我が國におきましては、婚姻や離婚の届出の際の印鑑は不動産や株式の移轉の場合と違つておりまして、印鑑証明や又印鑑届出の制限もございません。この意味で離婚は不動産や株式の取引よりも一層簡単になつておるというような、驚くべき状態に現在あるのであります。
 結論を申上げます。日本が世界有数の離婚國という甚だ芳しくない名声をかち得ました一つの理由は、婚姻に関する誤まつた思想にも起因しておるのであります。この故に我が離婚法、特に協議上の離婚の制度は、根本的再檢討を要するのでございますが、併しこれは将來の問題に譲りまして、今日は極めて控え目な最少限度の改正に止めます趣旨を以ちまして、協議上の離婚の手続といたしまして、届出前に家事審判所又は簡易裁判所の確認を要求する修正案を提出いたしました次第であります。何とぞ各位の御賛同を衷心お願い申上げます次第でございます。(拍手)
#15
○議長(松平恒雄君) 田中君の修正案に対し、討論の通告がございます。齋武雄君。
   〔齋武雄君登壇、拍手〕
#16
○齋武雄君 私は本修正案に反対するものであります。
 その理由として、第一は、この修正案が憲法違反になる虞れがあるということを申上げるのであります。その疑が多分にあるということを申上げたいのであります。私から申上げるまでもなく、我が國の憲法は世界でも有数な憲法であつて、この憲法に違反したすべてのものが無効であります。天皇、内閣、國会、議院、裁判所、すべての公務員はこれを尊重する、擁護する義務を負うておるのであります。それでありますから、我々が法案を審議するに当りましては、先ず第一に、その法案の中に憲法違反の條項があるかどうかということを審議しなければならんのであります。憲法第二十四條に、は、婚姻は両性の合意のみによつて成立するということが掲げられておる。そうして第二項には、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊嚴と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」という規定があるのであります。先程提案者が、裁判所の確認を受くるということは、内容を審査するのでなくして駄目を押すだけであるから、憲法違反にはならぬ、当らぬということでありますが、婚姻については、両性の合意のみによつて成立するという規定を掲げた以上は、離婚についても両性の合意のみによつて、單に届出のみによつて成立するということは、憲法の一貫した精神であると私は信じておるのであります。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)(拍手)離婚について裁判所の確認を必要とするなら、何故婚姻についても裁判所の確認を必要としないのであるか。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)勿論一旦婚姻した者が別れるということはよくないことであります。離婚について裁判所の確認を得るよりも、夫婦の双方の理解と努力とによつて、離婚をしないように努力することが本当であつて、裁判所が確認したからと言つて離婚になるべきものは離婚しないということはあり得ないのであります。(「そんなことないよ」「その通り、本当の理窟だ」「それは理窟だ」「憲法違反だ」「だまつて聴け」と呼ぶ者あり)
   〔議長退席、副議長着席〕
 そういう意味におきまして、私は離婚につきまして裁判所の確認を得るということは、この精神に反する疑いがあるのじやないか、こういうふうに考えておるのであります。(「そうだよ」と呼ぶ者あり)(拍手)
 次に、提案者は離婚を愼重にする、こういう目的のためであるということを仰せになりましたが、これは愼重にすることは結構であります。併しながら現在の離婚におきましても、手続は極めて愼重であります。先程提案者は当事者の届出のみによつて離婚は成立すると仰せられましたが、それは違うのであります。而も成年二人以上の証人を必要とするのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)当事者の外に成年二人以上の証人によつて届出を必要とするということは、法律上明白であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そういう場合において、一時の感情にかられて証人二人をつけて届出るということは、容易なことでないのでありまして、離婚する場合においては少くとも親、兄弟、親族その他仲人に相談して、そういう手続を取つておるのが現状であります。(「そうだそうだ」「齋君えらいぞ」「そんなことはありはしないよ」と呼ぶ者あり)或いは提案者は脅迫によつて、詐欺によつて、文書偽造によつて離婚されることを防止するのであるということを仰せになりましたが、毎年八万件以上もある離婚の大部分は、当事者の眞意に基ずいて行うのでありまして、一万件に一件か二件或いはそういう事例はあるかも知れませんが、多くの場合においては当事者の眞意によつて離婚が届出られるのであります。而も極めて少数の文書偽造とか脅迫とかということは、現在の改正民法において救済の方法があるのであります。私はこの改正案は極めて少数な人の保護のために大多数の、人に迷惑をかける法案であると考えるのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)毎年八万人の内或いは百人であるとか、五十人であるとかいう人の保護のために、多くの人が迷惑を蒙るのであります。(「その通り、いいぞ」「簡単」と呼ぶ者あり)例えて言えば、東京の裁判所にそういう確認の必要があつた場合において、裁判所においては或いは北海道の人、或いは九州の人を一々呼出して確認せんければならんのであります。そういう状態でありまして、少数のために大多数の八に不利益を與えるということは、立法政策としては断じて避けなければならんのであります。(「そうだ、その通りだ」「違うぞ」「違わない」と呼ぶ者あり)(笑声)
 第二の反対の理由といたしまして、離婚に家事審判所の確認を必要とするといたしますれば、我が國の現在の実情といたしまして、審判所の確認を得ることが煩わしいために、実際上離婚しても裁判所の確認を経ないでそのままになつておることが多いと信ずるのであります。戸籍上は夫婦になつており、そうして実際上は別れて生活するという現状が多いのであります。これは極めて重大な身分関係につきまして、事実上の身分関係と法律上の身分関係が相違するという結果を來すのでありまして、立法政策としては断じて取ることができんのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
 次に、本修正案は実際上において不能であつて、或いは極めて困難であるのであります。先程提案者が言われましたが、毎年八万件以上の離婚に対して若し裁判所がそれに関與するといたしますれば、現在の裁判所の職員では到底間に合わんのであります。單に確認だけでよろしいじやないかという話もあつたのでありますが、併しながら裁判所は離婚の確認事件をのみ取扱つておるのではありません。現在の状況でも事件が多いのであつて、(「そうだ]と呼ぶ者あり)裁判所は應接に遑がないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)こういう現状に対して、八万件以上の離婚事件をただ確認するだけである、こういうことはできんのでありまして、現在の裁判官の人的給源状況から考えて見て不能であると私は信ずるのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)大凡そ法律は現状に即した法律でなければならんと私は考えておる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)國家の財政と睨み合せて、いろいろの関係を綜合して立法するのが当然であると考える。そういう意味におきまして、こういう規定をなしても、現在の裁判官の給源状況から判断して、不能であると私は信じておるのであります。(「俺もそう思う」と呼ぶ者あり)離婚関係で問題になるということは、離婚の眞意があるかということが問題になるのでなくして、こういうことが問題になるのであります。離婚による跡始末の関係であります。離婚をなした場合において、子供の始末をどうするか、財産関係をどうするかということが問題になるのでありまして、離婚の当事者は婚姻を継続する意思はないのであります。お互に別れよう、併しこの條件では困るということが実情でありまして、本修正案は単に確認するというだけで、この不満に対しては答えていないのであります。多くの不満はそれに帰するのであります。苟くも当事者が離婚するということになつたならば、継続する意思はないのでありまして、離婚の條件について不満を感じておるのであります。修正案はこの点について何らの考慮を拂つていないのであります。そういう意味からいたしまして、而も証人二人以上の届出によつて当事者が届出るのでありまして、現在の國民の文化程度から言えば、裁判所は確認する必要はない。國民に委して置いてよいと私は信じておるのであります。十分に保護されると考えるのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)御承知のごとく民法は私権に対する基本法典でありまして、極めて重要な法律であります。政府は本法律案を提出するに当りまして、今回の改正案は単に憲法に謳うように、その点のみを規定したのであつて、急速に根本的に民法改正の必要があることを認めておつたのであります。我々は根本的民法の改正の場合においては、民法の第二編の物権、或いは第三編の債権、その他総則につきましても、均分相続がよろしいかどうか、いろいろの問題で研究することを考えておるのであります。急速に根本的改正が行われることを信じておるのであります。そういう意味におきまして、我々司法委員会がこの改正案を可決いたしたのでありまして、更に愼重に研究することについては同感でありますが、本修正案については私は反対の意思を表示する者であります。どうか皆さんの愼重なる御考慮によつて、この修正案の賛否を決せられんことを切望して、私の意見を終りたいと思います。(拍手)
#17
○議長(松本治一郎君) 奥むめお君。
   〔奥むめお君登壇、拍手〕
#18
○奥むめお君 私は田中議員からお出しになりました協議離婚に対しまして、先ず家事審判所の確認を要するという一項目を民法の中に入れるという御提案に賛成の意見を述べようとする者でございます。只今反対の議員から縷縷述べられましたように、議論としては反対も成立つのでございます。又田中議員から非常に詳しく諸外國の例も列べて御説明になりましたように、議論といたしまして、これは又十分納得の行く又誰でも賛成できるものに成立つのでございます。これを一國の法律といたしまして私たちがいかに捌くかということは、余程愼重にしなければならないと思います。只今の反対議員かおつしやいましたように、法律は社会の実情に即しなければならないのでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私共社会生活の実情に即して、日本が明治三十二年に民法を制定しましたその当時から、初めて民法が日本の國にできましたその昔から、協議離婚という全く外國に例のないこの法律を持つて來た。これは何のためであつたか。このことを考えますときに、我我は又もう一つ私共永年婦人解放の運動に当つて参りましたときに、日本に協議離婚という制度があつて、女を追い出す離婚、つまり強制離婚、形式は協議離婚でありますけれども、実質的には強制離婚、追い出し離婚であるところの、この惨めな可哀想な中に追い込む法律があるということを、常に婦人解放運動の途上で扱つて來た、いつも採上げて來たところであつたのでございます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 ただ今日新らしい憲法が旧憲法と取つて変りまして、日本の国民生活の上で、又法律的にも社会的にも教育的にも経済的にも、男女の全き平等が確認された。これは成る程法律の上では、法文の上では抽象的に場は男女は全く平等しなつたのでございます。併しながら実際の生活の上、社会的にこの実情が、本当にこの法律が約束したように、憲法が保障したように、男女の全き平等と両性の本質的な人格の確認というものが、実際の社会生活の上でわれておるかどうかということになりましたならば、私から改めて申すまでもなく、法律はそうであるけれども、抽象的に我々は全く男女平等の新らしい時代を造り上げましたけれども、それはこの法律の上でであつて、法文の上でであつて、実際生活の上ではこれからなんだ。我々の教育の力によりまして、私たちの啓蒙の努力によりまして、これからそれを本質的の、本当の社会生活の姿にして行かなければならないのだと言わなければならないのでございます。(拍手)この意味におきまして、この協議離婚の問題を考えるのでございます。
 憲法が新らしくなつて、男女の基本的な人権が保障されたと申しましても、昨日まで婦人解放の途上で常に採上げられましたところの協議離婚による女の惨めな立場というものが、すつかりなくなつてしまう。同じ法文を、法律が変つたからといつて今日から全く別の解釈によつて、このままに我々が呑込んで行けるかどうか、こういうことを考えて見たいのでございます。(「呑込んで行ける」と呼ぶ者あり)この意味におきまして協議離婚をいたしますときに、家事審判所によりまして、先程の反対議員の方が裁判所という言葉を使つてお出でになりましたが、これは家事審判所でございます。(拍手)又家事審判所はこのいわゆる裁判沙汰にすることを避けまして温い人情の通つた心と公平な立場で、民主的な話合いの上で納得ずくで物事を解決して行こうというために、新らしく司法委員会で今度審議されまして決められました暫しい法案でございます。(「よく知つています」と呼ぶ者あり)來年から行われるその前を、一月から行われる問題によりまして、最も被害を受けますのは無心なるまだ意思を持たないところの子供でございます。その子供の問題を離婚の場合にどの程度考えておるかということを考えますときに、夫婦は勘定ずくで離婚の話にまで進んでしまう場合が往々ございます。或いは家庭の事情から泣きながらも別れなければならない事情も多いのでございます。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)こういう場合に残される子供がどんなに不幸であるか。お母さんが茨の薦の上で、非常に箸の上げ下しにまで家族の者から惨めな立場に取巻かれていながらも、その中で辛抱して私を育ててくれたのだ。お母さんが死ぬ思いで私を一人前にまで育てて來てくれたのだと言つて、立派な男子の方が、又秀れたお母さんが、自分の母親のこの苦労の昔話しをされながら、自分はその母のために今日があるのだということをおつしやる方が決して少くないのでございます。こういう場合もあるのでございます。協議離婚がいかに簡単に行われていたかということは、日本が協議離婚によつて、男女が法律的に平等だからこれを置いたというのではなく、全く封建的な、妻に財産権も與えない、又婦人に人間としての権利を認めなかつた日本の封建的な、明治三十二年にこの法律を置いたということだけを考えて下さいましても、これを悪用された方がどんなに多かつたかということは、きつと皆さん理解して頂けるだろうと思うのでございます。(拍子)(「協議離婚撤廃だ」と呼ぶ者あり)又第二には、協議離婚の……(「本質か違うぞ」「脱線」と呼ぶ者あり)去年の秋でございました。アメリカと日本の男子、婦人の弁護士が集りまして、離婚問題を話し合つたことがございます。この時にも日本の協議離婚という珍しい法律があることを指摘されまして、「論旨脱線だ」「黙つて聴け」と呼ぶ者あり)半ば日本の自由を羨しがられたこ思いますけれども、併し日本の社会の現実を考える時に、(「演説会と違うて」と呼ぶ者あり)協議離婚がどんなに使われておるかということに対して質問を受けました時に、私共はそれに対して深い反省をさせられたのでございます。これは今の法律がどんなに改まりましても、今日の社会におきまする男女の差別、それから婦人の劣等な地位、妻の無能力、この現実の姿というものが、ここ二十年、三十年の後に改まりました時に、私共は喜んでこういう法律が差別的な待遇であるという意瞭で、この訂正或いは廃止を又持ち出すことが必ずあることを信ずるのでございますし、又我々國会議員というものは常に國の法律が社会の現実に即して改められ、又は附加えられ或いは削られ、廃止されるために、私共は國会議員の職にあるのだと信ずるのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)この意味におきまして、今日の実情から協議離婚の場合に、家事審判所の確認を得て、その上で(「三十年も待つておるより今止めた方が宜かろう」と呼ぶ者あり)我々が平等の立場と、そしてお互が理解し合つた心で離婚の捺印をする。こういうふうに決めたいと思うのでございます。皆さんの御賛成をお願いとたいと思うのでございます。(拍手)
#19
○議長(松平恒雄君) これにて本修正案に対する討論の通告者は終りました。これより採決に入ります。赤木正雄君外五十三名より両修正案の表決は記名投票を似て行われたいとの要求が提出されております。要求者の数は現任の出席議員の五分の一以上に達しておるものと認めます。よつてこれより記名投票を行います。先ず田村文吉君外二名提出の修正案を採決いたします。修正案に賛成の諸君は白色票を、修正案に反対の諸君は青色票を御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事が氏名を点呼する〕
   〔投票執行〕
#20
○議長(松平恒雄君) 投票漏れはございませんか……投票漏れはないと認めます。これより開票いたします。投票を計算いたさせます。これより議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事が投票を計算する〕
#21
○議長(松平恒雄君) 投票の結果を報告いたします。投票総数百七十七票、白色票即ち修正案を可とするもの七十六票、青色票即ち修正案を否とするもの百一票。右の結果、修正案は否決せられました。(拍手)
    ―――――――――――――
      〔参照〕
      賛成者氏名    七十六名
      田村 文吉君    小林米三郎君
      波多野林一君    堀越 儀郎君
      江熊 哲翁君    宿谷 榮一君
      岡本 愛祐君    島村 軍次君
      島津 忠彦君    小川 久義君
      鈴木 直人君    山崎  恒君
      青山 正一君    加賀  操君
      姫井 伊介君    寺尾  博君
      岩男 仁藏君    奥 むめお君
      早川 愼一君    北條 秀一君
      矢野 酉雄君    河井 彌八君
      下條 康麿君    東浦 庄治君
      竹下 豐次君    木下 辰雄君
      高橋龍太郎君    佐藤 尚武君
      山本 勇造君    野田 俊作君
      田中耕太郎君    梅原 眞隆君
      岡村文四郎君    佐伯卯四郎君
      大山  安君    宇都宮 登君
      井上なつゑ君    石川 準吉君
      岩本 月洲君    新谷寅三郎君
      結城 安次君    松井 道夫君
      北村 一男君    西川 昌夫君
      川村 松助君    淺岡 信夫君
      堀末  治君    荒井 八郎君
      奧 主一郎君    大屋 晋三君
      山田 佐一君    中山 壽彦君
      黒田 英雄君    寺尾  豊君
      草葉 隆圓君    石坂 豊一君
      遠山 丙市君    小林 英三君
      板谷 順助君    今泉 政喜君
      松野 喜内君    黒川 武雄君
      玉屋 喜章君    松嶋 喜作君
      徳川 頼貞君    一松 政二君
      大隅 憲二君    深水 六郎君
      小野 光洋君    中川 幸平君
      重宗 雄三君    池田七郎兵衛君
      左藤 義詮君    小串 清一君
      水久保甚作君    平沼彌太郎君
      反対者氏名   百一名
      中西  功君    細川 嘉六君
      阿竹齋次郎君    廣瀬與兵衞君
      國井 淳一君    千田  正君
      栗山 良夫君    佐々木良作君
      羽仁 五郎君    岩間 正男君
      星野 芳樹君    池田 恒雄君
      川上  嘉君    九鬼紋十郎君
      山下 義信君    高田  寛君
      中川 以良君    小野  哲君
      楠見 義男君    赤澤 與仁君
      藤井 丙午君    西郷吉之助君
      服部 教一君    伊達源一郎君
      來馬 琢道君    松村眞一郎君
      町村 敬貴君    飯田精太郎君
      小杉 イ子君    川上 嘉市君
      藤野 繁雄君    赤木 正雄君
      尾崎 行雄君    岡部  常君
      小川 友三君    鎌田 逸郎君
      徳川 宗敬君    中村 正雄君
      千葉  信君    大野 幸一君
      中平常太郎君    木村禧八郎君
      下條 恭兵君    山田 節男君
      梅津 錦一君    濱田 寅藏君
      赤松 常子君    丹羽 五郎君
      河崎 ナツ君    金子 洋文君
      藤井 新一君    木下 源吾君
      門田 定藏君    波多野 鼎君
      原  虎一君    羽生 三七君
      椎井 康雄君    岡元 義人君
      島田 千壽君    若木 勝藏君
      太田 敏兄君    渡邊 甚吉君
      伊藤  修君    吉川末次郎君
      松本治一郎君    天田 勝正君
      田中 信儀君    油井賢太郎君
      石川 一衞君    鈴木 順一君
      平野善治郎君    入交 太藏君
      高橋  啓君    小林 勝馬君
      田口政五郎君    紅露 みつ君
      深川タマヱ君    木内キヤウ君
      高良 とみ君    前之園喜一郎君
      竹中 七郎君    藤森 眞治君
      深川榮左エ門君    星   一君
      水橋 藤作君    三木 治朗君
      大畠農夫雄君    田中 利勝君
      淺井 一郎君    齋武  雄君
      佐々木鹿藏君    鬼丸 義齊君
      岡田 宗司君    小泉 秀吉君
      塚本 重藏君    中井 光次君
      木内 四郎君    櫻内 辰郎君
      仲子  隆君    木檜三四郎君
      大隈 信幸君
     ―――――・―――――
#22
○議長(松平恒雄君) 次に、田中耕太郎君外一名提案の修正案を採決いたします。修正案に賛成の諸君は白色票を、修正案に反対の諸君は青色票を御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事が氏名を点呼する〕
#23
○議長(松平恒雄君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を計算いたさせます。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事が投票を計算する〕
#24
○議長(松平恒雄君) 投票の結果を報告いたします。投票総数百七十七票、白色集印ち修正案を可とするもの百二票、青色票即ち修正案を否とするもの七十五票、右の結果修正案は可決せられました。(拍手)
    ―――――――――――――
      〔参照〕
      賛成者氏名    百二名
      九鬼紋十郎君    田村 文吉君
      小林米三郎君    波多野林一君
      堀越 儀郎君    江熊 哲翁君
      宿谷 榮一君    岡本 愛祐君
      島村 軍次君    高田  寛君
      島津 忠彦君    中川 以良君
      小野  哲君    小川 久義君
      鈴木 直人君    山崎  恒君
      青山 正一君    楠見 義男君
      赤澤 與仁君    藤井 丙午君
      西郷吉之助君    三好  始君
      加賀  操君    服部 教一君
      伊達源一郎君    松村眞一郎君
      姫井 伊介君    町村 敬貴君
      寺尾  博君    飯田精太郎君
      小杉 イ子君    川上 嘉市君
      藤野 繁雄君    赤木 正雄君
      尾崎 行輝君    岩男 仁藏君
      奥 むめお君    早川 愼一君
      北條 秀一君    矢野 酉雄君
      鎌田 逸郎君    徳川 宗敬君
      河井 彌八君    下條 康麿君
      東浦 庄治君    竹下 豐次君
      木下 辰雄君    高橋龍太郎君
      佐藤 尚武君    山本 勇造君
      野田 俊作君    田中耕太郎君
      梅原 眞隆君    岡村文四郎君
      佐伯卯四郎君    大山  安君
      宇都宮 登君    井上なつゑ君
      石川 準吉君    岩本 月洲君
      岡元 義人君    新谷寅三郎君
      結城 安次君    松井 道夫君
      渡邊 甚吉君    深川タマヱ君
      木内キヤウ君    北村 一男君
      加藤常太郎君    西川 昌夫君
      川村 松助君    淺岡 信夫君
      堀末  治君    荒井 八郎君
      奧 主一郎君    大屋 晋三君
      山田 佐一君    中山 壽彦君
      黒田 英雄君    寺尾  豊君
      草葉 隆圓君    石坂 豊一君
      遠山 丙市君    小林 英三君
      板谷 順助君    今泉 政喜君
      松野 喜内君    黒川 武雄君
      玉屋 喜章君    松嶋 喜作君
      徳川 頼貞君    一松 政二君
      大隅 憲二君    深水 六郎君
      小野 光洋君    中川 幸平君
      重宗 雄三君    池田七郎兵衛君
      左藤 義詮君    小串 清一君
      水久保甚作君    平沼彌太郎君
      反対者氏名   七十五名
      中西  功君    細川 嘉六君
      阿竹齋次郎君    廣瀬與兵衞君
      國井 淳一君    千田  正君
      栗山 良夫君    佐々木良作君
      羽仁 五郎君    岩間 正男君
      星野 芳樹君    池田 恒雄君
      川上  嘉君    山下 義信君
      來馬 琢道君    岡部  常君
      小川 友三君    中村 正雄君
      千葉  信君    大野 幸一君
      中平常太郎君    木村禧八郎君
      下條 恭兵君    山田 節男君
      梅津 錦一君    濱田 寅藏君
      赤松 常子君    丹羽 五郎君
      河崎 ナツ君    金子 洋文君
      藤井 新一君    木下 源吾君
      門田 定藏君    波多野 鼎君
      原  虎一君    羽生 三七君
      椎井 康雄君    島田 千壽君
      若木 勝藏君    太田 敏兄君
      伊藤  修君    吉川末次郎君
      松本治一郎君    天田 勝正君
      田中 信儀君    油井賢太郎君
      石川 一衞君    鈴木 順一君
      平野善治郎君    入交 太藏君
      高橋  啓君    小林 勝馬君
      田口政五郎君    紅露 みつ君
      前之園喜一郎君    竹中 七郎君
      藤森 眞治君    深川榮左エ門君
      星   一君    水橋 藤作君
      三木 治朗君    大畠農夫雄君
      田中 利勝君    淺井 一郎君
      齋武  雄君    佐々木鹿藏君
      鬼丸 義齊君    岡田 宗司君
      小泉 秀吉君    塚本 重藏君
      木内 四郎君    櫻内 辰郎君
      仲子  隆君    木檜三四郎君
      大隈 信幸君
     ―――――・―――――
#25
○議長(松平恒雄君) 次に只今可決せられました田中耕太郎君外一名提出の修正案の修正個所を除く残り七全部を問題に供します。残り全部委員長報告通り本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#26
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて残り全部は本案即ち衆議院送付案の通り可決せられました。
     ―――――・―――――
#27
○議長(松平恒雄君) 日程第二、兒童福祉法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を本めます。厚生委員長塚本重藏君。
   〔塚本重藏君登壇、拍手〕
#28
○塚本重藏君 只今議題となりました兒童福祉法案につきまして、厚生委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申上げます。
 本法案は衆議院が先議でありまして、本院には去る八月十二日予備審査付託となつたのであります。よつて同十九日第一回委員会を開催いたし、爾來委員会を開きますこと十七回、毎回極めて熱心な審議が続行されました。先ず最初に本法案提出の理由を一松厚生大臣から聴取しました。その説明の概要を申上げます。
 我が國現下の情勢を見ると、戰時中から戦後にかけて社会的秩序は甚だしく乱れ、戦災による孤児、引揚孤兒その他浮浪兒等が少からず発生し、一般青少年も悪い環境の中で著しく不良化して参つておるのであります。これらの兒童に対しまして適切なる施策を講ずることは極めて緊要であると共に、更に一般乳幼兒、妊産婦の保健状態を見ると、敗戰後の極度の物資欠乏等に影響せられて極めて悪く、乳幼兒の死亡率のごときも他國に比べて高率であるのは、國民保健の將來を考えるとき、一時と雖も捨ておき難い状態にあるのであります。これら不幸な状態にあります。兒童の福祉を増進し又保健の向上を図ることは焦眉の急務である。又日本が將來民主的な文化國家として力強い歩みをいたしまするためには兒童福融の問題を大きく採上げる必要を痛感したので、本法案を提出するに至つたというのがその本旨でありまして、更にこの法案の大体の内容説明がありました。これを要約して申上げますと次の通りであります。
 本法は五章、六十九ケ條の規定から成つておりまして先ず第一に法案の冒頭には、兒童を心身共に健かに育成するために国民挙つて協力しなければならぬという道義的な規定を設けて、更に國及び地方公共團体は、兒童の保護者と共に、兒童育成の責任を負うという兒童福祉の原理を闘明いたして、この原理はすべて兒童に関する法令の施行に当つて常に尊重されなければならぬということとしてあります。第二には、本法における兒童とは、満十八歳に満たないもので、これを乳兒、幼兒及び少年と分けまして、さらに妊産婦及び保護者に関する規定を設けてあります。又本法の活用を期するためには兒童保護の機関を整備せんとする点を定めてあります。これには中央並びに地方に兒童福祉委員会という機関を設けて兒童福祉問題全般の強力な推進力たらしむこととし、又有給或は名誉職の多数の兒童委員を選任して、その活動によって個々の兒童福祉問題を具体的に解決し、又兒童相談所を設けて兒童の育成につき科学的な措置や或いは相談指導を行わんとするものであります。第三は、妊産婦及び乳幼兒に関し、保護指導、妊娠の届出、母子手帳等の制度を整備強化してある点であります。第四は、現存する種々の兒童福祉施設に関しまして、各種特殊兒童の収容施設は勿論、一般兒童に対する保育所或いは兒童厚生施設等の内容の充実を図ると共に、その施設としての最低基準を定めまして設備及び運営の向上を期しようとするものであります。
 而して以上のような各施策を実施しまするために、國庫よりは地方公共團体にそれぞれ適切な補助を行い、以て終戦後の融合的混乱に俘つて著しく増加を見せた孤児、浮浪児等に対しまする緊急の措置を取ると共に、欧米諸國に比して極めて高い乳幼兒死亡率に示されるような乳兒、幼兒の保健状態を改善する方途を講じ、更に進んで、すべての兒童につき積極的な福祉をもたらすことを企図するというのであります。従いまして、本法案は単に従來の少年教護法及び兒童虐待防止法を吸収したのみではなく、一般兒童及び一般母性提議の関係を含んでおるのでありまして、従來の関係法制から見ますと、遥かに廣く大きな構想を持つているところの、兒童並びに母性保護に関する綜合的な法律案であります。
 以上は本案に関する政府提出原案の大要であります。次いで法案の内容に関する逐條説明を聴取したのでありますが、時間の関係も考慮されますので、詳細は速記録について御了承願いたいのであります。
 委員会におきましては、本法案は憲法の精神に照しましても誠に重要な法案であり、且つ兒童並びに母性保護の問題は文化国家建設の基本的な要件であり、更には翼下の國情に鑑みましても特に緊要の問題であることが痛感されておりますので、本法案は特に愼重を期してこれを審議する必要から、この際兒童並びに母性保護に関する現状について特別調査を行う必要ありと決しまして、幸いに院議の決定によりまして、八月二十三日より二十八日まで、山下、小川、宮城、草葉、河崎、木内、三木の各委員は、京都大阪地方及び廣島縣地方にそれぞれ派遣出張されまして、或いは各種の関係施設につきこれを視察し、或いは座談会その他の集会を通じて兒童並びに母性の眞剣な声を聽き、具さに国民の衷情を査察する等、詳細の特別調査を行いました。他の委員各位は全員東京その他関東地方における冬関係施設の視察調査を行いました。又特に十月一日より三日間に亘つて開催された全國社会事業大会に当りましては、各委員これに列席する機会を得まして、全國の社会事業代表者約三千名による大会の特に設けられた兒童福祉に関する特別委員会において表明せられた要望も亦十分これを査察し得たのであります。かくて以後続行されました委員会におきましては、或いは兒童心身の微妙な発達過程の上から、或いは又母性並びに民情の機微に徹したところの極めて熱烈且つ眞劔な審議が続けられたのであります。
 次に本法案について、委員会における質疑並びにこれに対する政府の應答に関しまして御報告いたしますが、これは本法案の趣旨並びに内容からいたしましても、問題は極めて廣汎であり、質疑の点も非常に多面の角度から数多くされまして、本法案の殆んど各條項に亘つております。從つて後に修正点を明らかにする際に重複することもありますので、ここにはその中の数点を要約して申上げ、詳細はこれ亦速記録によつて御了承願いたいのであります。
 質問の第一、本法による兒童を満十八歳以下と定めた理由如何。答。これは必ずしも科学的な基礎によつたものとは申されないが、諸他の保護立法、例えば労働基準法、船員法等による基準を参酌して定めた。本法を兒童福祉法案としたのは、本法においての主たる取扱対象となるべき年齢層を予想し、これを本法の名称に使用したのである。
 質問の第二、特別要保護家庭における乳児はこれを乳児院に入れ、國又は公共の費用によつてこれを保護育成するというが、本法施行の予算計画及び將來の方針如何。これに対する答。乳兒院は現在全國に十二ケ所しかないが、漸次これを拡充して行きたい。本法施行に関する予算は本年度分としまして三千四百六十七万五千円を計上したが、これは本法施行に関する準備的な諸費用の一部分に過ぎないのであります。
 質問の第三、兒童並びに妊産婦用必需物資の確保、なかんずく母乳不足の乳幼児に対しては牛乳の現物を確保することが第一である。故に兒童福祉施設の中に乳牛牧場を入れ、乳幼児に対する牛乳を確保する規定を挿入しては如何。政府の答弁。兒童並びに妊産婦用の必需物資は関係各省と十分な連絡を保ち、且つ本法による福祉委員会の活動と相俟つてその確保を図り、これが適正に配給されるよう努めるつもりである。牛乳が現在不足しておるのは誠に遺憾であるが、政府としては、麦と牛乳とのリンク制を採り、或いは牛乳の供出につき奨励物資を交付し、以て牛乳の供出を促進し、更に乳製品の輸入、飼料の確保、種牛の輸入等の措置を採つて、牛乳の不足に対して最善の努力をいたしておる次第である。この法案に規定する各種の施設は、兒童を直接的に保護する施設でありまして、兒童と直接的関連を欠く乳牛牧場につきこの法案に規定することは不適当であつて、牛乳の増産については、全産業を一貫した経済政策の一部門として考えるべきであるとのことであります。
 質問の第四、本法による福祉施設として、母子の不可分保護、即ち母と子を分離せずにこれを一緒に保護することを必要とする場合の福祉施設が欠けておるがどうであるか。答。本法は、子、即ち兒童の福祉を主眼とするもので、いわゆる母子保護の建前を採らない。若しその必要がある場合は生活保護法の活用によつてこれを保護する。
 質問の第五、本法によつて最も活動を期待すべき兒童委員は悉く現在の民生委員のみにその任用を限定してあるが、民生委員は名誉職であり、且その銓衡も旧態依然たる元の方面委員をただその数を殖やしたものに過ぎないのである。よつてこれを全部改任して、兒童の福祉を專門的に取扱い得る適任者を以てこれに充てる用意があるか。又民生委員にあらざる者にして兒童福祉指導に関する適任者ある場合、これを任用する考えはないか。答。民生委員は民生委員会によつて任用されているので、兒童委員として適任の者と考えておる。兒童福祉に関して学識経験者で適当の者はこれを本法によつて「吏員」とする考えである。
 質問の第六、社会福祉事業とその從事者とは不可分のものである。極言すれば適任の人なくしていかなる施設を講じて見ましても、その事業は単なる形骸に過ぎない。特に本法施行に関連して兒童福祉事業従事者の養成指導に関する計画如何。答。従事者の養成に関しましては本法においても若干の計画を考えておる。これは本法施行の不在面に照らして甚だ小規模ではあるが、これは漸次予算面とも勘案してその必要を充たしたい。尚現存の各関係養成構関は極力協力を求めて緊切な措置を講ずる方針である。
 質問の第七、本法の施行上絶対に必要な兒童福祉施設は、政府の計画によりますると甚だ貧弱であつて、その目的の大部分はこれを民間の社会事業團体に委託せなければならない。併し民間社会事業は殆んど戦前への復旧すらも不能の状態にあるのみならず、從事者の処遇問題も絡んで多大の経営難に陥つており、これが維持すらも不能の状態にあるのである。政府は果してかかる状態の下において本法の趣旨の徹底乃至一般社会問題の臨機の処理が可能と考えられるや否や。この質疑については特に片山内閣総理大臣が出席せられまして、一松厚生大臣と共にこもごもその應答がありましたが、その要旨は、社会問題の処理に関しましては、國家建設の基本要件として政府としても十分これを考えておるのであつて、社会政策又は社会事業の徹底も、そこにおのずから期待されるものがあると考えている。このためにはすでに漸を追うて国策の遂行を期さなけれげならない國情であるから、政府としては現在先ず第一に経済危機を突破して、國の破局を救うことに努めなくてはならない現状である。そしてごのためには各方面に耐乏の生活を絶対に必要とする余儀ない状態にあるので、社会政策の徹底乃至社会事業の振興という重要問題も亦その間においてできるだけの措置を講じてこの現実の必要を調整するよう努める。差当つて具体的な措置として社会保障制度の確立を図つて、國民の社会生活の最低限度を保障する途を講ずると共に、他面においてこの制度の効果的な運営を期するため、社会事業の振興についてできるだけ施策に努めたい。特に兒童福祉は國策の重点の一つと考えて鋭意これに努力したい考えであるとの答えがありました。質問の第八、いわゆる不良少年は性行不良見及び犯罪の虞れある少年と、そして犯罪少年と三様に考えられるが、要するに概ね同一の対象であるこれら少年の正常な育成教導に当つては、最初から犯罪を対象とする行刑主義乃至刑罰を以て臨むことは、兒童対策上百害の基であるから、その行政は厚生、行政内に一元化し、環境の是正と愛の教導とを方針として本法の適正なる運用を期する考えはないか。この質疑に対しまして、特に司法大臣並びに厚生大臣より答弁がありましたが、その要点は次の通りであります。司法大臣の答え、行刑は教育主義を取つており、刑罰主義は取つておらない。特に少年に対しましては、規律と訓練とを以てこれを保護矯正の方針を以て臨んでおる。今後も同様である。犯罪及び虞犯少年の保護処分は行刑、檢察、裁判等にそれぞれ関係を持つておるので、単一な社会行政部面だけではその行政は適切を期せられない。又國家が刑罰権を行使するのは万止むを得ない場合のみに限るのであつて、國家の親心として遺憾ながらこれを行使するのである。從つて行刑と保護とは区別ができないものがある。よつて今にわかにその全郡を移管することはできないが、併し大部分のものはこれを厚生行政に移すごとに異存はない。厚生大臣の答え。現在司法省の所管になつている兒童保護に関する事柄の大部分は、これを厚生省に移すことについては、両省間においても、十分相談中であるが、幸いに見解が一致したので、近い将來においてこれが実現を見ることと思う。政府は十分にその実現に努力する。
 以上のごとき質疑應答を重ねた結果、政府提出の原案に対しては、修正の必要がありとする要望が漸次多くなつて参つたのであります。委員会は両院審議の円滑を期したい必要から、本案の先議院たる衆議院側、即ち衆議院厚生委員会と、本院厚生委員会との合同打合せをいたすこととなりまして、去る十月の十四日、本院においてこれを開催いたしました。その両院合同打合会におきまして、本院予備審査の間に、すでに希望せられつつあつた修正希望点と、衆議院側の修正希望点とについて、極めて打ち解けた打合せをいたし、ほぼ両者の意見の一致を得ましたので、その後衆議院におきましては、院議を決定し、政府原案はこれを大體打合せの要点を参酌して、修正可決の上、ここに本院に送付と相成つたのであります。今その両院合同打合せにおける意見一致によつて修正せられましたる点を説明いたします。
 修正の第一点、政府原案第七條の兒童福祉施設中に母子寮を加え、修正第三十八條に、「母子寮は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき兒童を入所させて、これらの者を保護することを目的とする施設とする」を挿入をすることにいたしたのであります。修正の第二点は、第十一條でありまして、政府原案では有給の兒童委員と、名誉職の兒童委員とを規定し、両者を法律上ひとしく兒童委員の名称を用いていたのを、これをその使命、任務の上から明瞭に区分いたしまして、前者に兒童福祉司の名称を附し、その職務の重要性に鑑みてその任用條件を明記し、兒童及び妊産婦の保護、保健その他福祉に関する事業につき、経験又は学識ある者の中からこれを任用しなければならないこととしたのであります。修正の第三点は、兒童委員と民生委員とは、政府原案のごとく一本建を認めるのではありますが、併し現任の民生委員は即ち悉くこれを兒童委員とする方針はこれを是正し、現任民生委員はこれを嚴に再銓衡することとし、民生委員の銓御に当つては兒童委員として最も適任であることを要件とするように改めることにし、修正案附則の第六十四條に民生委員の任期を短縮しまして、この法律施行の日から三ヶ月を経過した日に厳選する規定を設けたのであります。修正の第四点は、政府原案の第二十一條に関し妊産婦が助産婦についてその保健指導を受けました場合においても、母子手帳に記載する義務を規定いたしました。修正の第五点といたしまして、新憲法の保障する人権を全たからしむるために、次の四つの点に関して修正することとしたのであります。即ち原案の第二十七條修正案の第二十八條、保護者が兒童を虐待し又著しくその監護を怠り、よつて刑罰法令に触れ、又触れる慮れがある場合において兒童を里親に委託し又は保護施設に入所させるに当つて、親権者の意思に反してこれをするときには、元は都道府縣知事が必要と認めたときにできるのでありましたが、修正案ではその場合は親権者に引渡すことが不適当であると認めるときは、都道府縣知事は家事審判所の承認を受けさせることにし、手続の愼重を期したのであります。原案の二十八條修正第二十九條について、調査のため立入るものを、政府原案では單に「当該吏員」としていたのを、「兒童委員又は兒童の福祉に関する事務に従事する吏員」に限定し、その濫用を防ぐことに修正したのであります。原案三十條修正第三十一條、施設における保護を満二十歳に達するまで延長する場合は、政府原案では「都道府縣知事が必要があると認めるとき」とあるのを、兒童相談所の再鑑別に付してその必要を認めた場合に限ることにしたのであります。原案二十三條修正第三十四條に、施設において保護兒童を酷使してはならない旨を新らしく追加明記いたしたのであります。更に修正の第六点といたしまして、政府原案においては法律の施行期日は政令でこれを定めることにし、又或る事項については命令を以て定めることにしたのでありますが、この國会の立法権を尊重する建前からも本法において規定することにいたしまして、修正案の附則第六十三條で、この法律は昭和二十三年一月一日からとし、又法案の一部分は四月の一日から施行することにいたしました。
 以上の諸点についで修正の結果、関係條文の加除整理を行いましたために、原案は六十九ヶ條から成つておりましたが、修正案では七十二ヶ條となつた次第であります。
 かくて去る十月二十五日に本案は衆議院において修正可決の上、同日本院に送付を受けました。よつて改めまして、衆議院送付案を原案といたしまして、数回の委員会を開き、質疑應答を重ねまして之を終り、討論に入りましたところ、多数の委員から極めて熱烈な賛成意見の開陳がありましたが、その意見の中に本法実施に伴う政府の施策に対する重要な希望意見が多数述べられました。その中の重要なるものといたしまして一、二申上げます。
 一、本法による中央及び地方兒童福祉委員会の委員を任命するに当つては、関係官公吏の数はこれを委員総数の四分の一以内に止め、その委員長の互選においても努めて民間人を以てこれに充てる等、委員会の民主化を図ること。第二は、兒童委員の銓衡は嚴選主義を以てすると共に、特に不良少年の保護指導に長年の経験ある嘱託少年保護司等の適任者の任用を図ること。第三、関係施設なかんずく民間團体施設の維持経営に関しては、十分その計画を立て、その分布並びに施設の内容を考究して徹底を図ること。第四、保育所施設の重要性に鑑みてこれが充実を図ると共に、幼稚園及び保姆の行政関係事項を厚生行政に一元化すること。第五、司法省少年保護に関する行政事務及びその事業の大部分を厚生行政に移管して、要保護少年、要教護少年の取扱を一元化すること。以上の希望意見に対しまして、厚生大臣から所見の開陳がありました。而して、右の希望はいずれもこれを了承し、近くその実現を期して努力する旨の力強い表明があつたのであります。
 次いで小川友三委員から左の修正案が提出されました。第七條、乳児院の下に「乳牛牧場」を加え、第十九條第五項として「都道府縣知事は、乳兒の主食たる牛乳その他乳兒に必要な物資を入手することができない妊産婦又は乳兒若しくは幼児の保護者があるときは、命令の定めるところにより、その物資を確保する措置をとらなければならない。」を加え、第三十八條として「乳牛牧場は幼児の主食たる牛乳の生産を増加し、その不足を補うことを目的とする施設とする。」を追加し、以下各一條ずつ繰下げる案であります。
 以上を以ちまして討論を終り、採決に入りました。先ず小川友三君提出の修正案につき賛否を諮りましたところ、小川友三君の外に賛成者がなく、否決されました。次いで、前に説明いたしました本院及び衆議院の厚生委員合同打合会の意見に基ずいて衆議院で修正せられたものを原案といたしまして賛否を諮りましたどころ、小川友三君一人反対せられ、その他の委員全員の賛成を以て内閣提出に係りまする兒童福祉法案は、衆議院修正送付の通り、これを可決すべきものと決定いたした次第であります。
 以上は本案が本院予備審査付託以來ここに満三ヶ月余に亘る厚生委員会審議の経過概要並びにその結果の報告であります。これを以て報告を終ります。(拍手)
#29
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#30
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
     ―――――・―――――
#31
○議長(松平恒雄君) 日程第三、失業手当法案、日程第四、失業保険法案(内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。労働委員長原虎一君。
   〔原虎一君登壇、拍手〕
#33
○原虎一君 只今議題となりました失業保険法案並びに失業手当法案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果について報告をいたしたいと存じます。この両法案は互いに緊密なる関連を有しておりますので、ここに両法案を一括して御報告申上げます。
 先ず両法案の内容について申上げますが、現下の経済危機突破の綜合的な対策として樹立せられました経済緊急対策の一環として、両法案の制定を見るに至つたものでありますが、その中、失業保険法案は、憲法第二十五條において国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように、國が社会福祉、社会保障の向上及び増進に努めなければならないことを規定しているのに照應すると共に、一般経済再建のための施策と相俟つて、今後止むを得ず発生しまするところの失業者に対する恒久的な社会施設として、國営の失業保険制度を創設し、失業者の生活の安定を図るという目的によるものであります。又一方の失業手当法案は、失業保険の被保険者となつて六ケ月を経過しなければ保険給付を受けられないために、この六ヶ月間に失業した者に対し国庫負担による失業手当金を支給し、生活の安定を図るという目的を有するものでありまして、両者相俟つて今後の失業対策の中核を成すものと言えましよう。従いまして失業保険法案と失業手当法案とは姉妹関係にありまするが、両者の異なる点は、失業保険法案は失業者の生活の安定を図る恒久的なる社会施設であり、保険料も労働者、事業主、國庫が三分の一ずつを負担することになつておりますが、失業手当法案はその補足的なもので、一定期間内に被保険者の失業に対し、國庫の特別の負担による給付を行うのであります。これがために失業手当法案は失業保険法案に比較しまして、その受給條件、給付額、給付の制限等につきまして特別な規定を設け、條件も低くなつております。
 御承知の通り失業保険制度は、欧米諸國におきましては三十年以上の歴史を持つておるのでありまして、我が國におきましても、従來しばしば識者によつてその必要は叫ばれたのでありますが、その立案すら見なかつたのであります。今回政府によりまして本國会に提案せられることとなり、当労働委員会におきましては、極めて熱心なる審査が行われた次第であります。七回に及ぶ予備審査も大体終了いたします頃の去る十五日、衆議院より政府提出案に大幅の修正を加えられたる上送付され、当労働委員会の付託となりまして、更に愼重審議をいたしたのであります。政府からは片山総理大臣、米窪労働大臣、その他労働省、厚生省、大藏省の各政府委員が出席しまして、熱心なる説明及び答弁がありました。以上が両法案の有する目的及び内容の大体の説明でありまして、これから両法律案審議の経過の概要を簡単に申上げたいと存じます。
 その第一は、失業保険法案第三條に、「この法律で失業とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。」と規定してありまするが、労働の意思及び能力を認定することは事実上相当困難を伴うが、これに対下る政府の所見はどうであるかとの質問に対して、政府よりは、被保険者が離職して公共職業安定所に求職の申込をすることによつて、労働の意思があることとし、本人の智力、体力、技能等より判断して、相当の職業に就き得ると認められるときは、労働の能力があると認めるように政令等によつて規定し、尚その具体的な判定基準は、失業保険委員会に諮つてこれを決める旨の答弁があつたのであります。
 その第二は、失業保険法案第六條及び第十條の規定では、日傭労働者を被保險者より除外しておる理由についての質問であります。これに対しまして政府よりは、日傭労働溝の雇用される事務所は一般に定常化していないし、保険料の徴収等」ついて技術的な困難があるから、これを被保険者より除外したのであるが、常用化した日傭労働者は同法第十條によつて被保険者となることになつておる旨の答弁がなされたのであります。
 第三は、失業保険法案第六條の規定に関しまして、被保険者となるべき者に対しまして、その年齢及び性別のいかんによろ制限を設けてはどうかとの質問に対しまして、政府よりは、労働者の最低年齢は労働基準法の規定によつて定めらており、労働に従事し得る最高年齢は各人によつて異なつておるから、一律にこれを制限することは妥当ではない。又新憲法の精神により男女の待遇に差別を設けるべきでなく、被保険者とするかしないかについて、性別によつて区分することは適当でない旨の答弁がありました。
 第四は、失業保険法案第八條に規定する任意包括加入の認可申請は、事業主より行わず、被保険者より行うようにしてはどうかとの質問に対しまして、政府よりは、失業保険においては、保険者たる政府と被保険者との間における諸手続はすべて事業主がこれを行うことになつており、且つ又従業員の過半数が失業保険への加入を希望するときは、事業主は必ずその許可申請手続を取らねばならないこととなつておるから、事業主が認可申請をすることによつて弊害を生ずるとは思わないとの答弁がありました。
 第五は、失業保険給付と事業主より支給する退職手当との関係について政府の所見を質されたのに対しまして、政府よりは、退職手当は労働者の在職年限に應じて支給される等独得の意義があるから、本法案の施行によつてこれを変更せしめるようなことは考えておらない。又労働協約で定められておる退職手当金の額を変更せしめるような考えはないとの答弁がありました。
 第六は、今後現下の情勢に鑑みまして失業者は激増するものと思うが、失業保険に対する予定財源を以て完璧を期し得るか。又若し予算の不足したる場合の対策如何との質問に対しまして、政府よりは、被保険者の数、その失業率、現実に給付を受ける人員を比較予想いたしまして、予算の範囲で支弁し得るとは考えるが、若し万一予算に不足を生じた場合には、予算上の補充的考えとして予備金又は追加予算として請求する考えである旨の答弁がありました。
 第七は、政府は廣汎なる社会保険、即ち社会保障法のごとき法案を來年度において提出する用意はないかとの質問に対しまして、政府よりは、目下社会保障制度に関して折角研究中であるが、何分國民全般を対象とする大規模な制度であつてこれには莫大なる経費を必要とするのでありまするから、政府において来年度において立案計上するや否やはまだ不明である旨の答弁がございました。
 第八は、この両法案は共に我が國内にあつた失業者のみを対象としておるか、海外よりの引揚者たる失業者をもこれに包含せしむべきではないかとの質問に対して、政府よりは、失業手当、失業保険の制度が、国民全般を対象とする社会保障制度の上に立つていないこと、又本両法案は日傭労働者等を除外しておることに鑑みましても、國民全部を包含せしめることは困難である旨の答弁がありました。
 以上で大体この法案に関する主要なる質疑應答の概要の報告を終ります。右申述べました質疑應答の外にも、政府側と委員側とに詳細なる質疑應答が交換せられたのでございますが、これは速記録によつて御承知を願いたいと存じます。尚これらの質疑應答の大部分は予備審査中に終りまして、逐次衆議院側とも緊密なる連絡を取りまして打合せをいたしましたのであります。
 かくて質疑を終り、討論に移りまして、数名の委員より熱心なる賛成意見の開陳がありました後、採決の結果、全会一致、両法案は原案通り可決せられたのであります。
 最後に一言申添えますことは、両法案につきまして討論中、各委員より政府に対して熱心なる要望があつたことであります。その第一は、この両法案は日傭労働者、海外引揚者等はその対象とならないのであつて、不完全であるから、これら國民全般を対象とする廣汎なる社会保障制度を一日も早く樹立するため政府は努力すべきであるとの要望であります。その第二は、この両案の成立によつて失業対策成れりとして根本的な失業対策を忘れてはならない。政府は宜しく失業者をでき得る限り出さないように積極的の施策をなすべきであるという強い要望であります。以上を以ちまして労働委員会の審議状況の報告を終りたいと存じます。(拍手)
#34
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。
 両案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#35
○議長(松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。(拍手)この際労働大臣より発言を求められました。よつてこれを許可いたします。米窪労働大臣。
   〔國務大臣米窪滿亮君登壇、拍手〕
#36
○國務大臣(米窪滿亮君) 只今御採決を得ましたこの重大なる社会政策法案に対しましては、今日の経済状態、社会状態と睨み合せまして、非常な力強さを感ずるものでございまして、政府としてもこの法案の実施については、愼重に且つ強力に遂行したいと考えておる次第であります。只今の委員長の御報告の中に、特に力強く仰せられた海外の引揚者並びに日傭労働者がこの法案によつて救済されないという点については、政府もこの法案の建前から誠に止むを得ないものであるとは認めながらも、これらの方々の社会的地位、生活の実情から考えまして、深甚なる同情を持つものでございまして、特に海外引揚者に対しましでは、最近においても生活保護法或いは厚生資金に対する改善を行なつてはおりまするが、尚十分でないものと政府も考えまして、これについては、この両法案には含まれておりませんが、厚生大臣或いはその他の閣僚ともよく協議をいたしまして、勿論財政或いは法制的な処置において相当愼重に研究すべきことであるとは思いますが、社会保障制度として、目下政府の一部において研究されておるという事柄とも睨み合せまして、将来特別なる処置を取りたいということをこの際御参考までに申上げまして、この法案通過に対しまして御挨拶を申上げる次第ございます。(拍手)
#37
○議長(松平恒雄君) これにて本日の議事日程は議了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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