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1947/11/24 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第56号
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1947/11/24 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 本会議 第56号

#1
第001回国会 本会議 第56号
昭和二十二年十一月二十四日(月曜日)
   午前十時十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五十五号
  昭和二十二年十一月二十四日
   午前十時開議
 第一 國際電氣通信株式会社等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に関する恩給法の特例等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第二 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第三 農業災害補償法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第四 自由討議
    ━━━━━━━━━━━━━
  一、所見開陳の範囲
    中小商工業振興策
  二、発言者の数及び発言時間
   1 各派の発言割当時間 緑風会五十分、社会党、民主党、自由党各十分、無所属懇談会、共産党各十分
   2 各派は、右割当時間の範囲内において、発言者の数を決定すること。
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は御異議がなければ朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。日程第一、國際電氣通信株式会社等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に関する恩給法の特例等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)日程第二、恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題をすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。厚生委員長塚本重藏君。
   〔塚本重藏君登壇、拍手〕
#5
○塚本重藏君 只今議題となりました國際電気通信株式会社等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に関する恩給法の特例等に関する法律案及び恩給法の一部を改正する法律案、両法律案について厚生委員会におきまする審議の経過とその結果を御報告申上げます。この法律案につきましては、去る十月の十三日及び十一月二十日の両日に亘りまして審議をいたしたのでありますが、法律案自体は、最近におきまする諸制度の創設、改廃、或いは連合軍総司令部の日本政府に対する覚書等に伴う必要の改正又は処置でありまして、特に論議の余地のないものであります。
 先ず恩給法の一部を改正する法律案の趣旨から簡單に御説明申上げますと、この法律によつて恩給法の改正を加えようとする主なる点は、大凡次の五点に要約することができるのであります。
 第一点は、國会職員に関する改正であります。國会職員の恩給につきましては、前議会におきまして貴衆両院事務局職員その他恩給法上の公務員から引続いて國会職員となりました者につきましてのみ、從前の身分のまま勤続するものとして恩給法の規定を準用し、取敢えずその暫定的取扱をいたして参つたのでありますが、國会職員法等の制定に伴い、その身分取扱が、一般政府職員とほぼ基準を同じういたしまして確定いたしましたので、一般政府職員と同一恩給制度の下に恩給を給することとしたのであります。即ち衞視たる國会職員は、これを恩給法上の警察監獄職員として恩給法を適用し、その他一般國会職員は、これを恩給法上の文官として恩給法を適用することにいたしたのであります。
 次に第二点は、学校教育制度の改革に伴いまする改正でありまして、学校教育法の制定によりまして從前の学校は廃止せられ、これに代つて新たなる学校が設けられたのであります。これに應じまして、新制の公立の小学校、中学校、盲学校、聾学校及び幼稚園の教育職員につきましては、恩給法における取扱を、從前の公立の國民学校、青年学校、幼稚園、盲学校、聾唖学校の教育職員と同樣にいたしました。又新制の高等学校及びこれに類しまする各種学校の教育職員につきましては、恩給法における取扱を從前の公立中等学校の教育職員と同樣にいたしたのであります。
 次に第三点は、経済監視官補の新設に伴う改正であります。先般新たに設置せられました経済監視官補は、その職務内容及び身分取扱から見まして、恩給法上一般警察監獄職員と同樣に取扱うことが適当と認められますので、これを恩給法の警察監獄職員として指定することにいたしたのであります。
 次に第四点は、裁判官、会計檢査院の檢査官の懲戒的退職制度の制定に伴う改正であります。即ち裁判官が職務上の義務に著しく違反し、又は職務を著しく怠り、その他裁判官としての威信を著しく失うような非行があつたときは、裁判官彈劾法により彈劾裁判所の罷免裁判によつて退職させられることとなり、又会計檢査院の檢査官が職務上の義務に違反したような場合には、会計檢査院法の規定によりまして、他の檢査官の会議によりまして、職務上の義務違反の事実があると決定せられ、且つ國会の両議院の議決があつた場合は退職させられることになつたのでありますが、このように懲戒的の退職の場合は、一般官吏についての懲戒処分による退職の場合と同樣に、恩給の受給資格を喪失せしめることにいたしたのであります。
 最後に第五点は、親任官の廃止、内閣恩給局長が総理廳恩給局長となつたというような、官制の改正等に伴う字句の修正に類する改正であります。
 次に國際電氣通信株式会社等の社員で公務員となつた者の在職年の計算に関する恩給法の特例等に関する法律案の趣旨を簡單に御説明申上げます。
 これは先般連合軍最高司令官の日本國政府に対する覚書によりまして、國際電氣通信株式会社及び日本電信電話工事株式会社の通信業務を政府において引継ぐことになりましたが、これに伴いまして、これらの会社が実施しておりました通信業務を行うのに必要な職員をそのまま政府職員として採用する必要が起つたのであります。而して政府の採用しまする会社の職員については、從來の会社において在職しました勤続年数に関する利益をそのまま留保させて、一般政府職員と同等の公正な待遇をする必要があるので、会社の職員で政府の採用した者の中、恩給法上の公務員に該当する者で、会社退職のとき、会社の一時退職金の支給を受けるその権利を放棄した場合は、その者が更に公務員を退官した際、会社の社員としての在職年数を公務員としての在職年数にに通算して恩給の計算をすることにしたのであります。尚退官手当につきましても同樣の処置を要するのでありますが、これは別途に閣議決定をいたすこととなつておるのであります。右のような措置に伴いまして、政府としましてはこれら給與の見返り財源に相應するものとして、社員が会社において在職した年数についての恩給及び退官手当の相当財源額を会社から國庫に納付させることにいたしたものであります。
 以上申上げましたように、この法律案は特に論議の余地のない当然の措置でありますが、この法案に関連いたしまして、恩給受給者の生活問題等について各委員から熱心な質疑が行われました。これに対して政府委員からも懇切な答弁があつたのであります。
 更に委員会における質疑應答の大要を御紹介申上げます。先づ傷痍軍人に給せられている恩給額と一般文官に給せられる傷病恩給額との間に相当大きな開きがあるのであります。又傷痍軍人だけの恩給額について見ましても、その階級によつて金額に等差を設けられているのでありますが、これらの点は適当でないと思うが、政府はどう考えているかという質問に対しまして、政府委員から、傷痍軍人の恩給については連合軍最高司令官の日本政府に対する覚書に基ずく一定の制限があり、その枠内で給與しているものであるし、又恩給額算定については各種類似制度の一般的な基準である退職当時の俸給を用いたもので、その結果、金額に差異が生じているのであるが、階級的の差別の意味は全くないとの答弁がありました。次に軍人の遺族に扶助料を給する意図はないかとの質問に対しまして政府委員から、前述の連合軍最高司令官の覚書の趣旨からいたしまして、目下のところ軍人遺族扶助料を復活することは考えておらない旨の答弁がありました。但し以上のような諸点は、政府におきましても亦厚生委員会におきましても、更にこの点は十分に考究せなければならないとのことに相成つたのであります。その他種々の質疑が行われたのでありますが、詳細につきましては速記録によつて御承知願いたいと存じます。
 かくて質疑を終りまして、討論を省略して直ちに採決に入り、全会一致を以て原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。以上簡單でありますが、これを以て報告を終ります。(拍手)
#6
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の御起立を請います。
   〔起立者多数〕
#7
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて両案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#8
○議長(松平恒雄君) 日程第三、農業災害補償法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。農林委員長楠見義男君。
   〔楠見義男君登壇、拍手〕
#9
○楠見義男君 只今議題になりました農業災害補償法案について、農林委員会における審議の経過及び結果について御報告申上げます。
 先ず法案の趣旨とするところ及び内容について御説明いたしたいと存じます。御承知のように我が國の農業はその経営規模が極めて零細であるということを特徴としており、從つて又その弱点としているのでありますが、これに加えて自然の力の支配を受けることの最も大きなこの農業において、我が國は気象変化の激しい、いわゆるモンスーン地帶に属しております関係上、諸外國にも類例を見ない程災害が多く、一度災害を被つた場合の農家経済は、元來基礎の極めて脆弱なのに加えての被害でありまするから、忽ちにして再起不可能となり、或いは將來に大なる負債を残し、或いは又農地に対する限りなき執着を残しつつも離村の原因になつた事例が、過去において決して少くないのであります。從つて農業経営の安定、農業再生産の確保の観点からいたしまして、夙に農業保險制度の必要が強調せられ、官民一体による多年の調査研究の結果、家畜につきましては昭和四年以來、又農作物につきましては昭和十四年以来、それぞれ保險制度の実施を見て参つたのであります。併しながらこれらの保險はもともと例えば保險の目的、保險事故等におきまして十分とは申せなかつたのに加えて、最近の経済事情の激変とは全く遊離いたしまして、例えば水稻において收穫皆無の災害のあつた場合の保險金が反当四十五円というがごとく、殆んど保險本來の機能を果すことを得ない状態に陷つておる実情でありますので、この際從來の農作物及び家畜保險制度を根本的に拡充強化いたしまして、以て我が國農業の健全なる発達、農業再生産の確保を期せんとするものでございます。而してこのことの必要性は、農地改革後において耕作農民の自主独立を将來強く伸ばして行くための最小限度必要な措置として、一方において協同組合運動が提唱せられ、同時にこれと並んで、いわば車の両輪のごとく、災害補償制度の強化徹底が強く要望せられておつたことに徴しても亦明らかであります。
 次に法案の内容でありますが、本法案は本文百四十八ケ條、附則十二ケ條を加えて、全文百六十條に亘つており、主として農業共済團体の組織法的規定及び共済保險事業の技術的規定がその大部分を占めておりますので、ここでは極く概要的の説明のみに止めたいと存じます。
 法案内容の主要なるものは、先ず第一に機構の点でありますが、新たに原則として市町村の区域に農業者全員加入の農業共済組合を設け、これを構成員として都道府縣の区域に農業共済保險組合を設け、これらの團体により共済及び保險事業を行うと共に、從來通り政府はこれを再保險する仕組でございます。尚農業共済組合の設立は自主的であることを建前としておりますけれども、保險の性質上、必要に應じて法案第二十九條の規定によりまして強制設立の途が設けられておるのであります。
 第二は共済目的及び共済事故の拡充でありますが、先ず農作物につきましては、共済事故を氣象上のすべての原因に拡張いたしまして、その結果、從來最も問題となつておりました冷害のごときもすベて包含せらるることとなり、この拡張によりまして、今後農家は虫害を除いた凡そ一切の原因による災害補填を受けることができることとなつたのであります。又共済の目的につきましても、從來の桑葉が保險の対象となつておりましたのを、更に一歩進めて、蚕繭の保險にまで拡充し、又從來水稻及び麦の外、明年度から陸稻を加え、更に近い將來において藷類にも及ぼして行くことといたしておるのであります。家畜の部分につきましては、共済目的を從來の牛、馬より更に山羊、緬羊、種豚及び牛馬の胎兒にまで拡め、又共済事故も、從來の死亡の外、疾病、傷害、廃川及び牛馬の出産をも対象といたしまして、保險制度の完備を図つておるのであります。
 第三は共済金額の改訂であります。これは前にも申述べましたごとく、現在農作物の共済金額は昭和十八年当時定まつたままになつており、殆んど保險的機能を喪失しておりますのでありますが、本法案におきましては毎年主務大臣が、農作物については反当、蚕については掃立て卵量のグラム当り、それぞれの收獲價額の二分の一を標準として、その基準を定めることとしておるのでありまして、これによりますと、例えば本年の水稻については反当二石以上のところは千二百円、一石五斗以上は九百円、一石五斗未満は六百円となつておるのであります。
 第四は共済掛金に関する農家と國家との負担割合に関してでありますが、例を米麦にとつて申しますると、共済掛金率即ち被害率でありますが、これを各都道府縣毎に通常、異常及び超異常の三段階に分けまして、全国に共通する最低の掛金部分はこれを農家の負担とし、これを超ゆる通常及び異常の部分の二分の一はこれを國家が負担、し、超異常の部分については、常に全部国庫負担としておるのでありまして、平均いたしますと、農家と国家の負担は約半々になつておるのであります。尚食糧農作物についての右の國庫負担は、本案の第十二條において規定いたしておりますように、食糧管理特別会計がこれを負担するのでありますが、同特別会計はこの負担金を一般の食糧消費者が負担するように、食糧の賣り渡し價格の中に織込むこととなつておるのであります。尤も本年の産米については別に價格調整金より支出がございますので、本年の米には右の規定は適用されないのでありますが、かくのごとく農業保險についてその保險料の一部を消費者も亦負担するようなことは全く新らしい制度でございまして、一面において生産、消費の直結と申しますか、保險を通じての相互扶助的な関係が一層昂まると共に、他面において食糧増産に関する生産者の自覚と責任が強く要望せらるるところであります。
 第五は農業保險が社会保險的性格を有しておることからいたしまして、通常の保險におけるいわゆる附加保險料に相当する農業共済團体の事務費は、國家において毎年度予算に計上し、これを負担する旨を法案第十四條において明らかにしておるのであります。
 以上が、本法案の内容の主要なる点でございますが、御承知のごとく本年は殊の外災害が多く、從つて東北水害、関西旱害等種々の被害があつたのでありまして、本法案成立の曉におきましては、既往の災害中水稻に関するものにつきましては、遡及して本法を適用することといたしており、全体の支拂共済金額の見込みは約十九億円でございまして、うち政府負担は約十二億円の見込みであります。
 次に本法案に関する質疑應答は、本月の六日第一回の審議に入りましてより、前後六回に亙る委員会において行われたのでありますが、その間各委員より、或いは農政的観点から、或いはそれぞれの專門的立場から、詳細に亘るの質疑があつたのでありますが、その大部分を省略することを御許し願いまして、ここではそのうち三、四のものを御披露いたしたいと存じます。
 即ちその一は、農政の基本的問題に関連いたしまして、災害が生じた場合の対策もさることながら、それよりももつと大切なことは、災害防衞のための努力である。而してそのためには積極的な農業振興政策の裏打ちを必要とする。かりそめにも本法案の成立によつて氣が緩み、この積極的施策に対する熱意が欠けるようなことがあつてはならん。政府の用意如何との質問に対しまして、政府当局より、禍いの源を塞ぐ意味において、積極的施策を講ずることの必要性については全く同感である。從つていろいろの観点から施策を講じて行かねばならんのであるが、例えば水害に対する山林政策としては積極且つ果敢なる造林対策を目下立案中で、その他用排水施設或いは旱害地方における溜池、用水路等の施設も同樣に講じて行きたいと思つておる。尚從來は災害部門と積極的施策部門との連絡が不十分であつたが、今後は両者十分連絡し、急を要するところより逐次実行に移して行きたい。又本年から冷害が共済事故に加わつたが、特に長期に亘る氣象予報については特別調査費を計上して、数年來氣象台に委託しており、全國千ケ所ばかりに嘱託員を置いておるが、災害の発生予察が特に必要であるから、將來は更に拡充強化に努めたい。又農作物については、品種、改良も大きな施策の一つであり、今後共にこの点に努力を続ける考えである。要するに積極的施策は同時に又災害補償対策と同一であるという観点に立つて進んで行きたいとの趣旨の答弁がございました。
 次に農作物の保險において、保險金額は少額で、再生産確保上不足だと思われる。又水稻について三段階に区分した科学的根拠如何との質問に対して、農林当局より、收穫金額の半分を基準としておるのは、大体農家の現金支出をカバーするのが元々の考え方である。自家労力をも含めた自給分もカバーするということも一つの考え方ではあるけれども、共済掛金の関係もあり、種々檢討考慮の結果原案のごとく定めた。又水稻について三階級に分けたのは、地方の実情から見ても、例えば上田、中田、下田のごとくそれぞれ收穫力即ち土地の生産力に区分があるので、純粹な意味では科学的とはいえないけれども、大体この程度に区分することが妥当であると認めたのであるとの趣旨の答弁がございました。
 次に質疑として、食糧農作物に関する共済掛金、即ち保險料の一部を明年産の米麦から消費者が負担することになつておる点に関しまして、かかる制度を新らたに取るに至つたのは理論上それを正しいとしてのことか。或いは政府に財源なきための措置かとの質問があり、又これに関連して本法案が社会保險的性質を有しておる点に鑑み國庫負担とすべきではないかとの質疑に対し、政府当局より、消費者負担は特別負担でなく、本來生産費中に包含せらるべき一部の保險料を負担するという考え方、或いは災害のあつたときに通常の場合においては米價がそれだけ高くなるのを、政府が買入價格を一本に統一して買入れしておるのであるから、その高くなるべき部分を消費者が消費者價格においてプールして負担すべきであるという考え方も理論上成り立つわけであるが、併しこの問題は畢竟するに國庫に財源なしという点に帰着すると思う。又從來食糧管理上政府が負担しておつたいろいろの費用も今後は消費者に負担してもろうことになつておる実情からいつても國庫負担は困難と思うとの趣旨の答弁がございました。
 最後に本法案が成立すれば、水稻に関する限り現行の農業保險法によつて成立しておりまする共済保險関係は、その責任開始のときに遡つて本法の適用を受けることになるのでありますが、その結果災害を受けなかつた地方の農民は多額の共済掛金の追徴を受けることとなり、事実問題としてこのことはなかなか困難を伴うと思われるが、これが措置並びに万止むを得ざる場合における分割納入その他の緩和対策如何との質疑に対して、政府委員より、本法案は今期國会当初より提案の準備を進めており、從つて共済金額の増額に伴う共済掛金の増徴についても、早くから地方毎に準備を進めておつたのであるが、地方により徹底しなかつた所もあることは遺憾である。併しながら、いずれにしても保險本來の精神からいつて、当然負担して貰わねばならんと思う。而して災害を受けなかつた地方における掛金の増徴分は、特殊の場合を除いては、その地方の將來の災害のために備える蓄積として、その地方の共済團体に留保せらるるのであるから、実質上の負担増加とはいえん。尤も納入方法の緩和に関しては更に研究するとの答弁がございました。
 質疑終了を待つて、去る二十一日討論に入りましたところ、まず共産党を代表して板野委員より、本法案は進歩的な法案であつて、大体賛成であるが、特に積極的な農業振興政策が伴わなければならんということを強調せられ、同時に一つの修正意見を提案せられたのであります。即ちそれは原案の十二條によりますと、先程申上げました通り、食糧農作物について農民の支拂うべき共済掛金の一部を食糧管理特別会計が負担し、右特別会計はこの負担金を農業共済再保險特別会計の歳入に繰入れますると共に、一面においてその負担金を食糧の消費者に負担せしめるように食糧の賣渡し價格を定めなければならんことになつておりますが、この際その負担の規定を削除して、毎会計年度、予算の範囲内において國庫が負担するように第十二條を修正せんとする御意見でありまして、その趣旨は、本來國庫において負担すべきものを消費者に負担せしむることは、さなきだに大衆課税的現状に更に拍車を掛ける結果になるという点でございます。この点に関して木下委員より、板野委員の修正案は結構のようであるが、これは現在の鉄道その他の例に徹しても全体の政策に影響を及ぼし、又仮に国庫負担としても、國家自体がその財源を得るために一般大衆課税をすれば意味をなさんので、過渡的には原案亦止むを得ん。併しながら大局的には国家財政の供給源を力のあるところからもつと取ることに別途努力すべきであるとして、原案に賛成の意見を開陳せられ、その他羽生、山崎、北村、島村及び松村各委員よりそれぞれ災害予防対策の確立、共済金支拂いの迅速化、共済事業の普及徹底、農家負担の軽減、家畜保險の重視等、本件案運営上の希望意見を附して原案賛成の意見を述べられたのであります。尚消費者負担の問題につきましては、羽生、北村委員を初め委員会における大多数の意見としては、大衆課税的性質を有する点については異論なく、從つて消費者負担はできるだけ避けるべきであるけれども、問題は当面の財政上の困難性から來ておるのでありますから、予算の出所のない場合、農民の過重負担となり、或いは法案自体がどうなるかというようなことも十分考慮し、結局今後における政府の國庫負担に関する最善の努力を強く要望することに帰着した空氣が支配的であつたことをこの際附加えて置きたいと存じます。かくて討論終結後、採決に入り、先ず板野委員提案にかかる第十二條修正案を議題に供しましたところ、右修正案は少数を以て否決となり、結局本法案は大多数を以て衆議院送付原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上御報告申上げます。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) 別に御発言もなければこれより採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#11
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#12
○議長(松平恒雄君) 日程第四、自由討議、本日の自由討議は本院規則第百四十七條によるものとし、所見開陳の範囲を中小商工業振興策といたします。会議時間は二時間三十分でございます。各発言者はそれぞれ発言時間を遵守せられんことを望みます。これより発言を許します。
   〔河井彌八君発言者指名の許可を求む〕
#13
○議長(松平恒雄君) 河井彌八君。
#14
○河井彌八君 緑風会は発言者として佐伯卯四郎君を指名いたします。
#15
○議長(松平恒雄君) 佐伯卯四郎君の発言を許します。
   〔佐伯卯四郎君登壇、拍手〕
#16
○佐伯卯四郎君 本日の自由討論は中小商工業振興対策ということになつておりますが、範囲が非常に廣いのでありまして、私には、日本の商品を輸出するその輸出に関する方の中小工業の振興対策ということに限定させて頂きます。それも非常に数多い工業の種類があるのでありますが、大体概念においては相通じたところがあると思います。で私自身が陶磁器業に関係しておりますので、この際その方の線に沿うて説明をさせて頂きたいと存じております。
 先ず我が國において代表的とも申すべき中小工業は陶磁器であります。その陶磁器の過去踏み來りましたところを簡單に申上げて見たいと存じます。統制のなかつた時代、明治より昭和の初めでありますが、この間においてどういうふうになつたか、明治初年におきましては未だ中小工業者が貿易について何らの知識がなかつた関係で、貿易業者が非常に裕りのある利益を得たわけであります。が併し当時におきましては競爭も多くなかつたのでありますから、業者も非常に潤つたわけであります。そうして品質は只今とは違いまして、今から見ますと非常に良心的なものを作つておつたのであります。第一次欧州戰爭後主たる生産國であるヨーロツパよりの輸出が減退いたしましたので、從つて世界各國より我が國に注文が殺到をしたわけであります。当時我が國も窯業の技術が漸次進歩いたしまして、薪で焚きましたものが石炭窯ということに変りました。或いは又電氣窯というようなものに変りましたので、非常に生産が増強したのであります。注文は入りますし、さようなわけでありましたから、非常な勢いで輸出が振興したわけであります。そういうふうな状況が長く続けば結構でありますけれども、需要には限度があります。おいおいとオーバー・プロダクシヨンになりましたのですが、その時に業者が大いに引締めれば甚だ面白くあつたのでありますが、日本人が常に競爭競爭という考えが強いという関係から安値々々で賣出して、到頭しまいには輸出業者も問屋も中小工業者も丸裸という状態になりましたわけであります。世界に比類のない安値であつて、又粗惡品が氾濫したわけであります。よく言われます日本のチープ・レーバー・アンド・ソシアル・ダンピングという有難からざる名声を受けたのはそれであります。
 そこで昭和八九年頃から業者がこれでは潰れてしまうというので、我が國において初めて強力なる政府の統制が始まつたわけであります。それでその結果中小業者は非常に救われまして、逆に商業資本の方が追從しなければならんというような反対の現象になりまして、大変効果があつたわけであります。戰いが段々と近ずきまして、石炭の消費の節減とか、或いは業者のいろいろな機械が回收されるとか、その内に企業整備がございましたので皆は轉職いたしまして過しておつたわけであります。戰いが終りまして、非常に戰災によりまして品不足でありました関係から、中小業者は非常に粗惡なものを作りましたけれども、一番最高價格で賣れたというので、大変に今までになかつた程金儲けをしたわけであります。ところが一年二年となりまして、一通りの供給はできたものですし、それから各材料が段段上つて参りましたので、結局滯貨ができて來る。縮小再生産ということになりまして、段々面白くなくなつて來た。そこで期待を繋げるのは外国貿易ということになりまして、この九月一日の貿易再開に非常に期待を掛けておつたわけですが、御承知のように余りはかばかしくはいかなかつた。最も有望ポンド市場も爲替相場がなかなか決まらないで、昨今どうやら決まつたようですが、これも大して急激に予測をすることはできないものじやなかろうかと考えております。まあ只今申したのは、一つの中小工業の明治から大正、昭和に掛けました大体を申上げたわけであります。外のものも大体同じような径路を経たことが多いと私は考えております。
 そこで輸出する商品を作る中小工業を振興させますのに考えなければならん事項としてここから申上げて見ますと、第一に爲替の件であります。只今の貿易は御承知のように講和條約のできるまで非常に保護されました温室の貿易であります。それでございますからエキスチエンジ・レートというものはなくて、換算率でございましよう、その換算率に関してでありますが、中小工業の作つております軽工業の輸出品の換算率は、他の重要輸出品に比べまして非常に惡いのであります。即ち値段が非常に高いのであります。それで只今も問題になつておるのでありますが、これを引下げねば輸出は不可能である。インフレで上つて來るのに引下げろという御命令があるような次第でございまして、非常に勉強をしなければならんというようになつております。
 第二に考えなければならんことは、労働の問題であります。労働基準法ができましたので、これが中小工業の方に及びますと、もはや中小工業にいわゆる安い労力がなくなつてしまう。日本の商品の賣れておるのは決して品質が良いからではないのであります。安いというのが特徴でありますのに、いろいろ理窟はございましようけれども、結局低廉なる労働賃ということでこれまで参つたのに、この中小工業が、基準法によりまして基準のものは拂はなければならんとうことになりますと、高くなる。よつて中小業者は、これより考えて、或いは経営の方に、或いは技術の方に非常な勉強をしなければ、もはや輸出はできなくなるのじやないか。これは非常に大なる問題と私は考えるのであります。又爾來中小工業が大企業に対しまして持つておりました強みをなくすともいえるのでありまして、これは非常に大きな問題と考えるのであります。
 第三に考えなければならんことは、各地におきまして、輸出先におきまして産業が起つて來たのであります。今後とも我々輸出業者として非常に考えなければならん東洋市場は、御承知のように或いは独立し或いは独立の方向に向つておるのであります。從つて彼らは國民性に非常に目覚めまして、盛んに自國に産業を起しておるのであります。私の考えますところ、近き將來におきまして、軽工業の或るものは自足自給するのじやないか、さように考えます。今申しましたように、安いということのみをやつておりますれば、中小工業も賣れなくなつて、やはり優良なものを作らなければならんということを眞面目に考えなければならんという問題になつて來るのじやないかと存じます。只今の各地に起りました例証といたしましては、例えばインドにおいて、戰前の輸出品は第一に棉花であつたのでありますが、昨今の報道によりますると、棉花の輸出は、つまり材料の輸出は第五位に落ちまして、棉製品が第三位に上つて來たというのは誠にその樣子が分るのであります。アメリカについて申しますと、御承知のように戰時中にナイロンが非常に進歩しまして我が生糸を排撃してしまつた、或いは私共の陶器におきましては、これ又非常なマス・プロダクシヨンができまして、日用使うような皿だとかいうようなものは、もはや日本から輸出する機会を失つしまつたのであります。
 第四に考えるべきことといたしまして、排日の問題でございます。これは幸いにして非常に大きくないようでありますが、併し決しないことはないのであります。消費者が排貨いたしますのと、日本の安いものを受け、ために損害を受けんとするあちらの業者が、我々を排斥するのであります。この問題は決して軽くは見てはならんと考えるのであります。
 第五といたしまして、昨今新聞紙上に載つております國際貿易憲章で、これに是非とも我々講和後参加しなくちやならんというのにつきまして、決して中小工業が過度に國家より保護された、そうしてできたといつたような品物は輸出できないようなことになり、不当なるチープ・レーバーによつてでき上つた商品なんか持つておりますれば、そういう中には入られない。このことを考えねばならん。
 又第六でありますが、我々の産業を回復いたしますのには、どうしても我が資力のみでは遅い。よつて外國資本を注入しなければならんというようなことに相成ると思うのでありますが、そういつた外國の資本が日本に入りましたといたしましても、それは中小工業には入つて参らないと思います。そういう方にはチヤンスはなかろうと私は考えます。
 第七でありますが、最近商工省内に中小企業総局というのができまして、大変中小工業に御盡力を頂くそうでありますけれども、この協同組合というものは、昔のごとく統制を強化するようなものではない筈であります。中小工業は、只今申上げましたように、過去において非常に統制によつて惠まれたのでありますが、今度の協同組合は、さようのものでないということは、中小工業者がよく考えて行かなければならんことと考えます。
 第八でありますが、戰前におきましては、我々の輸出は、日本の爲替銀行、日本の船会社、日本の保險会社というようなふうに取扱いを受けたのでありますが、大変安くて、而して便利な方法で輸出ができたのでありますが、只今におきましてはこれが殆んど全部外國のものによらなければならんということは非常に不利であります。又戰前におきましては、我々日本人が海外に進出いたしまして、あちらで日本の品物を受留めてくれて、そうして宣傳に努めたというようなことが、当分の間は望むことができない。これ又輸出商賣に非常に不利であるのじやないかということが心配されるのであります。
 第九に、当分の間外國より格安なる原料を手に入れることが不可能である。高くて惡い内地の原料を使わねばならん。非常に不利であります。
 第十に、現在の世界の企業の形態というものは、小規模経営ではなくて大規模経営に向つております。即ち手工業というようなものでなくて、機械工業によるマス・プロダクシヨンに向つておるということは、概括的に明らかに言えることだろうと考えます。そこで小じやありませんで、中工業者というようなものが、大企業で経営するを適当とするような仕事を可及的に、能率を落さずして、中の形態でやつて行くことができないかという工夫をすることは、私は非常に必要なことだろうと考えております。例えば五十人くらいの人を使いまして、その御主人が資本主であり、経営者であり、技術者であり、労資の関係も極めて上手にやつて行くというようなことによりまして能率を挙げて、大企業に対抗し得るというような工夫が非常に必要じやないかと考えます。即ち一つの事業を大中小の規模でやつて見た場合に、どういう能率の差異があるかということを研究することであります。即ち結局一つの仕事に最も適正なる規模ということを研究するということが非常に必要と考えます。
 十一には、日本の特徴は何であるかというと御承知のように非常に勤勉なる、熟練なる、而して比較的安い労力が豊富にあるということだと考えます。そこでこの豊富なる労力を使いまして、世界に向つて輸出品を出すといつたような工業とは日本においては何ぞやということを発見することであります。自然には決まつておるのでありますけれども、手工業一点張りで行くような工業或いは手工業を主といたしまして、それに機械力を補助とするといつたような仕事、この研究によりまして私の希望いたしますことは、從來のごときものを作つて輸出するというようなことではなくして、新らしく何か日本から輸出商品を発見しなければならんということに非常な努力をすべきじやないか、こう考えます。
 十二でありますが、中小工業は從來非常に手工業によつておりました関係から、機械を利用するということが誠に下手であります。併しながら今後できるだけ一つ機械力を使つて行く方向指導されなければ、手ばかりではとても駄目であるということであります。
 以上簡單に私が今まで陶磁器につきましてのお話を申上げ、且つ我々として考えなければならん点を申上げて見たのでありますが、結論といたしまして、私は第一に、今申上げたような問題を取り上げまして、仮に今度できます中小企業総局というようなものが、徹底いたしましてこの問題を研究し、そうしてその結果を得まして、それを業者に知らして貰いたいというのであります。それは即ち業者をして世界の知識、我が國のそれに対する位置、中小工業がどうしてそうやつたらよかろうという考えを廣く深く知らしめる必要が先ず第一にあると思うのであります。この点を非常に努力して行きたい。
 第二には、業者が長年政府の統制によつて利益を得ましたので、万事政府に依存するような傾向が沢山できて参つたと思うのであります。今後の我が國の行き方は、決して政府の統制によつて発達するのではなく、皆自前の力を以て行かなければならないのであります。そこで第一項に申上げたように、世界的の知識を得まして、皆が独立して行くにはどういうふうにせねばならんか、そこでよく考えて、結局これは皆が手を繋ぎあつて中小工業は行かねばならんという結論に参つて、そうしてここで今まで上から下へ行つたのじやなく、下から上に行くような意味における協同組合でやつて行くということがなければ、中小工業の將來は極めて悲観すべきものであるということを自覚して來るというふうに指導しなければならん。
 第三には中小企業総局の考えておられると思います中小商工業振興対策要綱とかいうものには、いろいろ立派なることが書いてあります。私共見まして、それ以上希望することはないくらいにうまく書いてあります。併しそれは私をして言わしめればテーブル・プランでありまして、ペーパー・プランであります。人形があつて眼がないようなものになるのが、今までの私たちの誠に残念とするところであります。よつて私はこれを殺すも生かすも要はその人にありと考えまして、官民共に最も適当な方が選ばれて、そうしてそれの運用に当つて頂きたいということを申上げまして、これで終ります。(拍手)
   〔中野重治君発言者指名の許可を求む〕
#17
○議長(松平恒雄君) 中野重治君。
#18
○中野重治君 日本共産党は板野勝次君を指名いたします。
#19
○議長(松平恒雄君) 板野勝次君に発言を許します。
   〔板野勝次君登壇〕
#20
○板野勝次君 中小商工業の振興対策がこの議場で取上げられますることは、誠に我が國の中小商工業者に取りましては喜ばしい点でございます。総選挙の際におきましても、各党共中小商工業の問題は取上げて参つたようでございます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 併し中小企業の問題は、選挙の投票を獲得するために利用する中から中小企業の振興ができるのでもないし、又作文的な細かい点がいろいろ指摘されて見ましても、中小企業自体が振興し得るところの條件がなければ、到底中小企業の振興を期することはでき得ないと存ずるのでございます。從いまして從來まで中小企業が振興し得るところの條件があつたか、いずれの政党がその中小企業の振興し得るところの條件を作つて來たかどうか、この点を十分批判して見なければならないのでございます。
 この観点から、過去におきまする歴代内閣の中小企業に対する関心は、遺憾ながら見出すことができないのでございます。資金の面におきましても、資材の面におきましても、終戰後一時我が國の中小企業が栄えて行くような傾向を示しましたけれども、その後における状態は、依然として中小企業は不遇な状態に置かれておるのでございます。御承知のごとく、幣原内閣のかの金融緊急非常措置令が出て以來、自由党の内閣も、現片山内閣も、いずれもその資金面において中小工業者を抑圧する方法を取つて参つておるではございませんか。更に資材の面におきましても、吉田自由党内閣以來今日まで重点主義を提唱し、傾斜生産を提唱することによつて、中小企業がその健全なる発達を期し得る方向には少しも向つては來ていないではございませんが。自由党も中小工業も擁護することに対しましては、いずれの政党にも劣らないで、絶えずその点を強調されておるのでございまするが、現実は旧官僚の大口闇利得者を横行させ、その利益のために、その自由なる発展のために鬪つては参つておりますけれども、徒らにその利益とその活動の自由を保護助長する結果は、中小企業が眞に困難なる道を歩んで行く方向しか與えていない。更に民主党はどうかと申しますると、民主党も亦金融資本を擁護する。その生産復興の計画は、旧財閥の傘下の諸工場に対して優先的にその資金と資材を供給して行くという方向をとり、そうして一般には、日本の國民大衆に耐乏の生活を送らしめることによりまして、中小企業が持つておりまするところの商品市場をますます狭隘にして参つておるではございませんか。社会党はどうでしよう。選挙の際に、中小企業に資金と資材を供給するということを公約しておるのでございますが、その政策が何ら実現されないばかりではなくして、民主党の政策に追随して行つておる、遺憾ながら追随して行つておると申上げるより外ない現状を呈しておるではございませんか。
 事実、現在の政府の施策を見ましても、例えば石炭の價格について、あの七月にマル公の改訂がありまして、多分石炭の生産者價格は、トン当り九百五十六円でございます。この生産者價格に対して、重要なる産業でありまする海運、硫安、鉄鋼等の指定産業に対しましては、六百円の價格で供給するに反しまして、國鉄であるとか火力発電等の建業に対しましてはトン当り一千二百八円五十八銭、この價格で供給している。この事実は、財閥傘下の工場に対して特に有利な條件を與えながら、國鉄、火力発電等の持つている内容は極めて大衆的な意味を持つている。國鉄に拂うところの一般の運賃等は、或る意味において大衆課税的な意味を持つており、火力発電のその多くの部分におきましても大衆的な意味を持つておる。この大衆的方面に供給される石炭の價格はかくのごとくトン当り二百五十円も高いのに対して、財閥傘下の工場に対しては三百五十円も安くやつておる。この事実こそは、何と申しましても金融資本の傘下における工場を保護助長して、その他の工場に対する決して暖かい保護政策を持つているのではないという事実を現実に証明していると思うのでございます。
 更に資金の面におきましても、例えば金融復興金庫のこの融資は、旧財閥傘下の工場に殆んど融資されて、中小企業には融資を受けていない、この実情にあるのでございます。
 そうして又一方におきましては、この中小企業の困難な中に、只今も貿易の問題が取上げられたようでございまするが、中小企業の振興も亦貿易から起つて來る、こういうことが唱えられているようでございまするが、何も海を渡つて自然に宝船が入つて來るのではない。政府は八月末に貿易振興対策を発表しているようでございますが、この内容を具さに檢討して見まするときに、依然として金融資本本位の貿易政策であり、同時に中小企業を下請問屋制の加工方式によつてこの金融資本の奴隷下の下に中小企業を置こうとし、そうして又中小企業の独立した自由なる発展は決してその中から助長しようとはしていないのでございます。更にこの貿易振興の問題にすでに三ケ月を費しまして、政府はバイヤーの接待費その他の設備費に六億円以上の巨費を投じたのでございますが、末だに貿易振興の目鼻はついていないばかりでなく、去る十四日かの衆議院の予算委員会におきまする安本貿易局長も申しておりまするごとく、我が國の貿易は陶磁器と紡績以外には何ら見るべきものがないということを言わしめた事実から見ましても、前途に直ちに貿易振興から來る中小企業の振興は毫も見出すことができないのでございます。
 更にある論者は、我が國の中小企業を振興して参りまするためにも、外資の導入が必要であると申すでございませう。併しながらこの外資の導入も、今日の現状よりいたしましては、徒らに金融資本の横暴を極めさせるだけでございまして、何ら中小企業に寄與するところはないのでございます。
 時間が参りましたから私は結論を申上げますが、中小企業の対策の前提なくしては、直ちに中小企業が振興して参ることはございません。現在の予算の面におきましても、何ら生産の復興をなし得るような予算の計画もなく、國民大衆にただ窮乏を與え、インフレを消滅せざる政策、この予算を返上し、この予算を改定することによつて、新らしい予算を組むことによつて、中小企業の対策を見出して行くより外ないのでございます。
 例えば税金の問題にいたしましても、事業所得税のこの大半は中小企業が負わなければならない。この税金が、曾ての増加所得税の四倍以上を政府は取ろうとしている。かくのごとき重税を課すことによつて、大きな税金を取立てることによつて、どうして中小企業がその再生産をやつて行く健全なる企業形態を推し進めて行くことができるでございましようか。中小企業の振興を策するならば先ず最初に中小企業に対する大きな課税の負担を撤回する。このことを改めることが第一でございまするし、第二には、どうしても我が國の産業復興の中心をなしておる重要企業を國の手に納めて行く。この重要企業の國営、人民管理を中心として、重要な産業を國民全体の力によつて復興さして参りまするときに、この中心の部分を握りまするならば、中小企業の発展のために資金と資材と、それを法律の面からも、あらゆる面から助成することによつて、中小企業の独立とその自由なる発展が期し得られるのでございまして、この諸政策をとることなしには、断じて中小企業が行き得る途のないことを強調申しまして私の所見を終りたいのでございます。(拍手)
   〔鈴木清一君発言者指名の許可を求む〕
#21
○副議長(松本治一郎君) 鈴木清一君。
#22
○鈴木清一君 日本社会党は中平常太郎君を指名いたします。
#23
○副議長(松本治一郎君) 中平常太郎君の発言を許します。
   〔中平常太郎君登壇、拍手〕
#24
○中平常太郎君 私はこの中小商工業振興策の意見を述べますに当りまして、先ず過去におけるそれらの業者のあつた姿、そうして又現在の惨めな状態、この二つに簡單に触れまして後に対策に及びたいと思います。
 商工省の昭和十七年度の工業統計表によりますと、日本にある工場の中、從業員五人未満の工場が五十一万二千八百二となつております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 五人以上三十人未満が十万九千九百五、三十人以上百人未満が一万二千二百十三、又百人以上が四千二百七十四となつておりまして、この比率から申しますと、工員百人未満のものが九九・三%で、百人以上のものが〇・七%であります。又商業人口といたしましては二百二十八万八千戸で、家族を入れまして約一千万人でございます。もとより水産とか、交通業とか、自由業等は入つておりません。純粹の商業で身を立てておる人口であります。
 先ず中小工業の方から申しますれば、彼らは多くは從來大財閥の下請工場であり、若しくはこれより派生するところの工場が大部分でございます。でありますが故に、財閥横行の間は資材面、資金面において流通秩序が比較的容易に保たれておつたのでございます。從來の財閥は、時の政府、政党と密接なる関係を保持いたしまして、裏面政党の資金を貢いで華やかなる活動をなさしめておつたことは御承知の通りであります。又政府要路の官僚に対しては、家庭の世話まで、いつも痒いところへ手を届かしめて、朝夕出入して交情極めて濃やかに、欲して得られざることなく、望んで達せられざることがなかつたのであります。資材の獲得も自由であり、海外発展も満州、北支の利権も、軍閥、官僚を踊らしめて、遂に取返しの付かない大戰爭に追い込み、愛國を名として國民を死地に陷しいれ、未だ曾てなき敗戰のどん底に叩き込まれた重大なる原因を成したのであります。この間数万の下請工場即ち中小の工場は、盲目的に財閥を拜み、資材、資金の融通を受けて、以て各自経営しておつたのであります。つまり或る意味におきましては自立性に乏しく、封建的大物依存主義の存在であつて、これより派生する各種の生活必需品の製造或いは販賣も概ねこの形態で発展しておつたのございます。
 敗戰の結果財閥の解体となり、何らその援助を受けることができなくなつた半面、物資の不足と統制強化等によりまして、中小商工業者の打撃は今や実に想像に余りあるものでございます。財閥華やかなりし頃はその重役室にお詣りして談笑の間に融通して貰つておつたところの資材並びに資金がばつたりと止つたのであります。しかのみならず戰災によつて工場を失い、再起不能に陷つた者も数多いのでございます。幸いにして戰禍を免れた工場といたしましても、親を失つた子供のごとく、統制強化の中に盲滅法に闇資材の確保に狂奔し、從つて製品のコスト高を招來して、自然に高値取引となつて、インフレに拍車がかかる、かくして漸く命脈を繋いで今日に至つておるのであります。一部は闇商人に転落して、一つの品物も各人の手に轉々として賣買され、闇値はその度ごとに高値となるのであります。彼らはいわゆる世にいうところの救済を受ける貧困者ではありません。腕に覚えの経驗と技倆とその機敏さとによつて独得の分野を作り、物の不足に乘じて物價高を招來するところの原因の一部を成しておるのであります。ここに敗戰後、中小商工業者の止むに止まれぬ生活苦から種々の商業形態が発生いたしました。少しその点に触れて見るならば、特に目立つ近來のあがきの跡として見えますことは、家庭における中古被服類の潜行的賣買、或いはズルチン、サツカリン、ガソリンの闇賣買、飮食物の買出による利鞘、これなどは五百円は確かあるというのであります。高利貸新円一ケ月一割の利息が普通と称せられておるのでありまして、厖大な收入を得ておるそうであります。家屋の賣買或いは間貸の権利賣買、家屋の賣買は賣る度ごとに倍額になるそうであります。麻雀クラブ、或いはこれらの表面裏面におきまする收入は巨大だと申しております。ダンス教習所は、これなどは一ケ月四百円で、一回三分間で、多いのは三百人くらい出入りしておりますと、一ケ月に十万円から收入があると存じます。宝くじ賣の手数料などはまあ堅実な方で、パーマネント、物交、委託品の賣買等は双方から一割取つておるのでありまして、相当な收入を挙げておるそうであります。煙草の吸殻拾いは五個で一本できて、一日百本作つて二百円程度になつておるそうであります。その他易者、大道將棋など一回二十円、三十円でありまして、相当の收入を挙げておるようであります。駅の順番札賣、パンパン宿などはなかなか我々の想像の付かない收入を得ておるようであります。これが中小商工業者の現在のあがきの悩みであります。
 この際露天商人につきましても一言述べて見たいと思いますが、彼らは財閥解体、企業整備及び引揚者等で、頼ることができなくなつたので、みずから活路を求めんとするところのあがきの姿でございます。立派な中小商工業者であります。元來この商人が位置を選ぶ定義とも申すべき常道は、大商工業者は別といたしまして、中小商工業者には二通りあります。一つは附近に固着して附近を潤わして生活する商人と、一つは通行人に依存する商人であります。露天商人は一戸の店舗を持ち得ない。而も戰災その他で商業に極めて不便なる地域に住居しておりまして、間借りし、或いは他人と同居し、而も家族を擁護して生活しなければならない。経驗はあり、腕前はあり、かくして露天商人が到る処に増加して参つたのであります。誠に同情すべき境遇と申すべきであります。諸君が電車汽車の中でいつも見られますところの、あの膨れたリユツクサツクを提げておる者は、諸君は買出しと思つておられるでしようが、無論買出しもありますけれども、大部分朝晩の露店商人の荷物でございまして、あれが即ち戸板一枚の上にひろげられる全商品でございます。かくして立派な経驗者をいつまでも途方に迷わしめ、徒にインフレを助長せしめて置くことは、何としても我々は堪え忍ぶことができないのでございます。もとより露店商人は昔からあるものではありまするが、又新戰術といたしまして止められない人も沢山あるでありましようが、政府はこの際具体的な中小商工業者の復活の方途を緊急に考慮し、適切なる手を一刻も早く打たねばならない。これ即ち日本再建の途であり、又一面インフレの防止の根本政策であると思うのであります。
 ここにおいて私は中小商工業者振興対策につきまして一言申上げます。我が國はもはや中小商工業を主体として考えなければならないことは申すまでもありません。人口は余りある。手工業は世界有数の技倆を持つております。現政府におきましてもその八大政策の一つといたしまして触れてはおりますが、極めて低調であります。日本再建の鍵は貿易であります。その貿易に廻すべき商品は誰が作るか。直接の原因として活躍すべきものは、農家ではない。水産でもない。直接の当事者は即ち中小商工業者でございます。よつて私はここに提唱してお考え願いたいのは、商工省の外局といたしまして、中央に今中小企業総局ができておるのでありますが、私は企業のみならず、ここに中小商工業振興対策委員会とも申すべきものを中央に最高機関として作る。そうして政府を鞭撻し政府の政策を充実せしめる。地方には同樣の地方商工業振興対策委員会を設置すべきであると信ずるものであります。而して中心政策といたしましては、中小商工業を積極的貿易方面に振向けることでございます。内地向きなどは自然にできる程度でよろしいと思います。工場の実際機能を発揮し得る工場の実態調査、各國の嗜好品、必需品の見本を蒐集することを第一に急がねばなりません。いかなる國にも、人間生活上我々の目に触れ、手に触れる品物で日本人ができない品物は一つもありません。いかなる品も我々の模倣のできない品はございません。戰前世界到る処の店頭に日本品の陳列のないところはなかつたではありませんか。世界の需要は無限であります。ただここに一つ、先程も申されました通りコストの問題がございまするが、これは近來世界中到る処コストは高くなつております。將來精巧な品を出すという方針を、決めて日本が貿易に乘り出すなれば、このコスト高は相当堪え得られるものであると私は信じております。この方針を決めて各地方、各縣に見本の展示会を開くことである。そうして製作の指導、必要なる資材の優先配給、又不足資材、副資材、例えば塗料のごときもの、不足の資材をどうしてもこれは輸入に俟たなければなりません。戰前日本は世界各國の嗜好品は殆んどよく判明しておつたのでありますが、その後十年間大戰争のために貿易が杜絶いたしまとて、全く新規蒔直しとなつたのでありますが、それでも相当の経驗と大勢は敢て他國人に劣るものではありません。貿易廳において、これらの從來活躍された当業者の尊い経驗と実績とを調査されて、それらの貿易業者の集会をたびたび行い、これを参考とし、官吏肌を脱ぎ捨てて、一商人となつて、貿易廳が胸襟を開いて業者の意見を受け入れねばなりません。この点実に貿易廳に対しまして未だ我は満足していないのでございます。かくして肚ができたなれば、特別に貿易資金の融通緩和に、又中央庶民金庫の積極的融通緩和などに具体的な手を打つべきであると存じます。例えば國費を以て各縣に一ケ所以上の、適当なる貿易品を選定して、業者を督励して、適当なる工場を復活せしめ、中小商工業者に現実の指導よつて刺激を與えなけれぱならんと思うのであります。主として内地生産資材を用うべきであるが、必ずしも狭く考える必要はありません。貿易融通資金もできました今日、原資材の輸入は、その活動の如何によつて、中小商工業者を重く見るその政策によつて、決して至難なる問題ではありません。できないのは即ち努力が足りないのでございます。今や國歩は実に難難、政務は多端であり、政局亦極めて複雑多難であります。併しながら中小商工業の振興策のごとき、いかなる政府においても必ずなさねばならん國家再建の必須條件でございます。商工省のみの仕事ではありません。閣僚全体が國家再建の途は貿易にある。貿易発展の途は中小商工業の振興にある。この点明らかに政府に要望すると同時に、先程申しました中央における中小商工業振興対策委員会、地方における同樣の委員会を設置し、具体的なる政策の実現に邁進すべきであると思うのであります。我々議員として深くこの点を省察し、研究し、政府を鞭撻し、以て日本再建に努力いたしたいと念願して止まない次第でございます。これを以て私の本問題に対する意見の開陳を終ります。(拍手)
   〔廣瀬與兵衞君発言者指名の許可を求む〕
#25
○議長(松平恒雄君) 廣瀬與兵衞君。
#26
○廣瀬與兵衞君 無所属懇談会は栗山良夫君を指名いたします。
#27
○議長(松平恒雄君) 栗山良夫君に発言を許します。
   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
#28
○栗山良夫君 私は極めて抽象的ではございまするが、中小企業の振興に関する根本的な問題の二三に触れまして意見を申述べたいと存ずるのでございます。先程來同僚議員の方が三点から中小企業の振興に対しましてその必要性をお述べになりましたが、中小企業振興の問題は、ただ單に中小企業自体の問題でありまするのみならず、大企業との有機的な関連性におきまして、或いは封建的な日本企業の民主的脱皮への先駆的な役割におきまして、戰後の日本産業の再建に決定的な影響を持ちますところの極めて重要な問題であると思うのであります。なかんずく最近におきますところの中小企業問題の取上げ方は、現下我が國産業の構成上に占める比率の圧倒的優位性の強調、或いは貿易再開に備えるための利己的な措置、或いは経済力集中排除による産業規模の制限対策等に集約せられておりまして、ややもすれば全産業を綜合的に見ましての有機的関係の重要性を第二義的に取扱う傾向をなしとしないのであります。併しながら中小企業は、本來大企業に対する毛細管的な役割におきまして、その盛衰は大企業の経営能率に対しまして実に重大な連りを有するものであります。昨今重点傾斜産業における生産並びに経営の状況が極めて不安定でありまする原因の一は、実にこの毛細管的役割を果しつつあるところの中小企業の混乱動揺に某ずくものであると申さねばなりません。從つて中小企業振興策は單にこれのみを切離しまして、糊塗的な、部分的な施策を以ていたしましては、根本的解決とはなし得ないのでありまして、飽くまでも全産業振興計画の一環といたしまして、綜合的に取上げるべきであると思うのであります。
 そこで、中小企業振興に関する私見を申述べまする前に、現政府の中小企業振興対策要綱に対しまして、三点から批判を加えて見たいと思うのであります。その第一は、中小企業問題を現政府が極めて皮相的に、且つ部分的に取上げましたのみでありまして大企業への、或いは産業全体への関連性を没却していはしないかという点であります。このような方向からは決して全体的産業計画に対して、中小企業の安定は望むべくもなく、又大企業、重点企業の安定にも寄與しないものと存ずるのであります。
 その第二は、政府が言いますところの技術指導、経営指導、或いは檢定制度及び指導機関の強化といつたような内容とするところの政府対策は、極めて糊塗的でありまして、目下中小企業が逢着しておりますところの最も困難なる問題は、労働組合法、同基準法への対処方策、技術及び経営能率の低下、或いは資材資金の不足、或いは動力エネルギー源の不足等の問題でございまして、これはいかに建設的に且つ積極的に打開すべき方途を発見し、これを指導するか、こういう実質的な問題に触れていないのであります。
 その第三は、ただ口に民主的運営を唱えますけれども、対策推進機関並びにその運営が極めて官僚独善的でありまして、一般民間人、或いは民間組織の心からなる創意と工夫と協力とを要請するところの窓口を塞いでいるということであります。從いまして私は以上述べましたところにより、中小企業の振興策につきまして、六点に亘つて私見を申述べたいと思うのであります。
 その第一は、中小企業の日本の企業の管理方式につきまして、只今石炭國管に見られるごとく騒然たる状態がありまするけれども、今後の企業はすべて旧來の封建的利己主義の方向から、少くとも公共の福祉に奉仕する方向に、資本も経営も労働も共に力強い旋回をしなければならないと思うのであります。又政治もかかる方向によろしく指導すべきであると思うのであります。
 その第二は、全産業計画と、中小企業の分野との問題でございまして、これは企業整備或いは労務の配置轉換等の最も重要な問題に関係を有しているのであります。即ち迅速に敗戰後の各般の事情を勘案いたしまして、全産業計画を決定いたしまして、その基盤の中におきまして中小企業の必要度を定め、そうして計画的に指導すべきであると思うのであります。このことは決定されたところの中小企業の分野にも当然適用されなければならないのでございます。例えば日用品雑貨とか、輸出貿易品というような中小企業を適当とするところの部門と、その数量等を決定いたしまして、更にかくのごとく決定されたものに対しましては、政府はよろしく維持助成すべきであると思うのであります。
 その第三は、金融の拡充強化の問題であります。從來中小企業は問屋とか、或は高利貸、或いは市中銀行より極めて不利な條件で融資を受けて参つたのであります。今後中小企業に対しましては專門の強力なる金融機関を設置いたしまして、融資条件を有利化し、或いはその手続を簡易化いたしまして、金融の途を開く必要があると思うのであります。私は金融機関の完全な國家管理が最上の策であると断じたいのであります。
 その第四は、中小企業の協同化の問題であります。中小企業の経営性格の刷新、施設内容の向上等は、最早個々の力を以てしては困難でありましよう。よろしく地域的に、或いは職種的に協同化を促進いたしまして、技術、労務、資金、資材、販賣等、経営の中核を成すところの問題につきまして、協同化によつて高能率を上げなければならないと思うのであります。かかる組織に対しまして政府は税金の徹底的軽減を含めまして、あらゆる便宜と特別の措置を取るべきであると思うのであります。又大企業に対する協力体といたしましても、過去におけるところのあの隷属的な下請工場式な関係を排除いたしまして、正当な地位と活動とを保証さるべきものであると思うのであります。
 その第五は、企業自体の経営性格の刷新の点につきまして、重ねて申し述べたいのでありまするが、先程佐伯議員から言われましたところのチープ・レーバーのシステム、即ち長時間低賃金のいわゆる搾取的企業の性格を脱皮することなくいたしましては、技術の向上も、又優良製品の生産も期待されないのであります。このためには企業の協同化により経営能率の向上を図りますと同時に、労働組合の育成、労働諸法規の積極的な遵守並びに企業民主化のための檢察制度等を確立すべきであると思うのであります。
 最後に第六点といたしまして、私は生産價格の國家統制の問題に触れたいのであります。昨今の経済界の異常現現象下におきましては、或る種の産業は労資が血みどろになつて生産を上げましても、尚且つ千八百円の労賃さえ維持し得ないような窮境にある企業も多いのであります。この半面に労資が左程労力を拂い、苦労をいたしませんでも、悠々として経営を続け得るような中小企業もあるのであります。そうしてこの両者の顕著な現われが特に中小企業に甚だしいのであります。私はこの原因は、國家が生産價格に統制を加えておりまするその不手際に基ずくものであると思うのであります。(拍手)この不手際を直ちに修正することなくしては、中小企業の安定はないと私は確信するものであります。この不手際修正の方向は、今日政府が取りつつあるところの物價政策、即ち基準年次物價を基準といたしまして、同比率を以てするところの價格引上決定の方法を排除いたしまして末端の中小企業の台所の中からなされまするところの眞の原價計算方式で以てやらなければならない、こういうことなのであります。かくのごとくいたしまするならば、マル公を割るところの商品が市場に現われましたり、或いはマル公を折角決めましたのに依然として闇商品が場に横行するというようなことは、跡を絶つでありましよう。
 私は最後に繰返して政府当局に更に一言要望いたしたいことがあります。國民の平和的産業再建の旺盛なるところの熱意に対しまして、これを指導育成すべきところの行政の衝にあるところの担当係官の態度は、実に冷淡であるということが言われておりまするが、例えば或る係官などは、私も地元から聞いた話でありまするが、その係官は、私も実はそうしたいのでありまするけれども、関係方面のこともありましてというような調子で、困難を避けまして安易につき、頗る熱意の乏しい状態であると思うのであります。私共は徹底的に我が國から軍國主義、フアショ勢力を一掃いたしまして、眞に平和的にして民主的な組織の確立及び運営のために、烈たるところの氣魄と熱意とを示しまするならば光明は必ず彼岸にありと確信いたすものであります。(拍手)この確乎たる信念を以ちまして中小企業の振興に挺身あらんことを希望するや切なるものがあります。私は以上所見を申述べまして中小企業振興対策の結論といたしたいと思うのであります。御清聽を感謝いたします。(拍手)
#29
○議長(松平恒雄君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午後零時十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十四分開議
#30
○議長(松平恒雄君) これより休憩前に引続き会議を開きます。報告をいたさせます。
   〔寺光参事朗読〕
本日委員長から左の報告書を提出した。
 政府職員に対する臨時手当の支給に関する法律案可決報告書
     ―――――・―――――
#31
○議長(松平恒雄君) この際、議事日程を追加して政府職員に対する臨時手当の支給に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔異議なしと呼ぶ者あり〕
#32
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長黒田英雄君。
   〔黒田英雄君登壇、拍手〕
#33
○黒田英雄君 只今上程されました政府職員に対する臨時手当の支給に関する法律案に関しまして、委員会の審議の経過並びに結果を御報告をいたします。
 政府職員に対しまする給與は、千六百円の基準から、七月におきまして千八百円基準に引直したのでありまするが、
   〔議長退席、副議長着席〕
 その差額二百円につきまして先般本会議におきまして議決に相成りまして、すでに法律になつております本年の法律第百十九号によりまして、七、八、九の三ケ月分の六百円は支給されているのでありまするが、その後の十月以降のものにつきましても、今日の状態におきまして、新給與体系の確立に至りまするのに尚時日を要しまするので、それまでの應急的の措置といたしましてこれを支給する必要があるというのであります。そうしてその支給は、前のと同じように、ただその法文の表わし方は少し変つているのでありまするが、現に各人が受けておりまする給與の月額の八分の一に相当する金額、即ち千六百円といたしますれば二百円に当たるのであります。その金額を本年の十月以降当分の間毎月臨時手当として支給しようというのであります。この支給を実施するために必要な経費は、大体一般会計、特別会計を合せまして三億六千九百万円を要するのであります。十、十一月分はすでに議決されまして補正予算の中に計上されておつたのであります。十二月分以降のものにつきましては目下審議されておりまする補正予算の中に計上されているのであります。その外に地方費におきまして九千八百万円、合計四億六千八百万円というものが毎月支給される月額に相成るのであります。これは前に本院で議決と相成りましたものと全く同一の趣旨によるものであるのであります。
 委員会におきまして討論に入りましたが、別に御発言もなく、採決の結果全会一致を以て原案通り可決すべきものなりと決議いたした次第であります。これを以て報告を終ります。(拍手)
#34
○副議長(松本治一郎君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を請います。
   〔総員起立〕
#35
○副議長(松本治一郎君) 総員起立、よつて本案は全会一致を以て可決されました。
     ―――――・―――――
#36
○副議長(松本治一郎君) これより休憩前に引続き自由討議に移ります。
   〔松嶋喜作君発言者指名の許可を求む〕
#37
○副議長(松本治一郎君) 松嶋喜作君。
#38
○松嶋喜作君 日本自由党は玉屋喜章君を指名いたします。
#39
○副議長(松本治一郎君) 玉屋喜章君の発言を許します。
   〔玉屋喜章君登壇、拍手〕
#40
○玉屋喜章君 本員は日本自由党を代表し、本日の自由討議の議題たる中小商工業の振興対策についていささか所見を述べ、政府当局の実行促進を希望する者であります。
 私は今日の中小企業に対する政府の方針につき疑問を抱く者であります。政府の金融方針は果して中小企業に対して十分といい得るか。今日の世界の趨勢、終戰後における日本再建の大方針から見て果して適当といい得るかなどの点につき大なる疑問を抱く者であります。我が國の中小商工業は、事変前においても経済上重要なる地位を占めておりまして、戰前には我が國の工業においては、從業員百人以下の小工場が九割六分を占めておつたのであります。但し生産額においては、全体の三割五分程度でありましたが、併しこれらの小工場は國内消費は勿論、輸出品の生産についても重要な貢献をしていたのであります。終戰後におきましては財閥の解体、大企業の分解が行われ、持株会社整理委員会の管掌する範囲がますます拡められて來ておりましたところ、最近更に経済力集中排除法案が提出されて、目下審議中であります。その結果として、我が國の企業の規模は、縦にも横にも徹底的に細分せらるるかのごとき形勢にあります。即ち我が國は今後一層中小商工業者が氾濫する大勢にあるのであります。又数百万の海外帰還者中の大多数の行くべき途はやはりこの方向であると思います。更に考うべきことは、農地調整法の実施によつて、極度に土地所有が細分されましたがために、農村は小家計の併立となり、経済力に彈力性がありません。そこで將來インフレーシヨンが安定し、自由貿易が復活せらるる時期が到來いたしますれば、農村は收入の減少と輸入食糧の圧迫のために、重大なる困難に逢着することと予想されます。かかる運命に対し善処するためには、今より地方農村工業の発達を助成する必要があります。尚又我が國は敗戰後植民地を失いたるにも拘わらず、昨年度においては世界に冠たる人口増殖率を示しております。このことは喜ぶべきことか、或いは又憂うべきことかは私はここに論じませんが、いずれにしてもこの事実は更に我が國中小商工業振興の必要を強めるものであります。本年八月十五日から制限的輸出貿易の再開が許されることになりまして、我が國の中小商工業は、事変前より、先に述べ來りましたごとく各種の事情によりまして、ますます拡大すべき勢いにあります。又大いに助長せねばならんのであります。
 中小企業振興の方策につきましては、嘗て吉田内閣時代に、本年二月十五日の閣議において、中小企業振興対策要綱が決定され、その基本方針として、中小企業の振興には輸出品、生活必需品等に重点を置くこと、商工協同組合の普及、共同施設を援助すること、最新技術を中小企業に導入すること、高能率の中小企業に対し極力資材及び設備の確保を図ることなどを定め、その実行方策の一つとして産業復興営團を設け、又資金については復興金融金庫を活動せしむる等の方法を講じ、相当の効果を挙げております。私は現政府がこれらの施設の効果を一層十分に発揮せしむることを切望するものでありますが、尚二三の点について私の所見を申述べて見たいと思います。就中地方的振興策の樹立及び金融強化の問題について申上げたいと存じます。
 中小企業の製品は輸入原料によるものもありますが、國内資源或いは地方的特殊資源を用いるものもあります。又近代的製品もありますが、古來の傳統的の技術による製品もあります。いずれも國内需要は勿論、現に輸出に向けられておるもの、又多少の改善指導によつて立派な輸出品となり得るものが多々あるのであります。各地方はその特殊の実情に即して大いにこれを振興する必要があるのであります。地方の中小企業の中、戰禍を被つたものもあり、又資材、燃料、動力等の不足に悩むものもありますが、適当の資金さえ供給すれば復興、轉換或いは新たな着手をなし得るものが多々あるのであります。何としても適当に資金を供給することが中小企業振興の最も有効な途であります。曾て昭和二年の金融恐慌後、満州事変の起ります前までの不景氣時代に中小企業金融の必要が強く叫ばれたのでありますが、その対策は部分的であり、頗る小規模であつたために、十分効果を挙げることができなかつたのであります。今日の中小企業の問題は、最初に申述べましたように、この当時と比較にならぬ重要性を持ち、全國的に経済の興廃を支配する性質のものであります。從つてこれに対する金融は全く違つた考え方を以て進まねばならんのであります。又我が國におきましては、從來企業集中の弊と共に、資金の中央集中、殊に大銀行への集中の弊がありまして、戰時中には更にこの傾向が強化されたのであります。終戰後におきましては、金融界の整理とインフレの影響により、地方金融機関の資金が比較的多くなつたようでありますが、今尚大銀行による地方資金を中央へ吸收する力は強いのであります。尚、預金を貸出に運用した比率を本年四月の統計によつて見ますと、八大銀行はその預金に対して一〇三%の貸出をいたしておるのであります。その他の地方銀行は全体として預金に対し四八%の貸出をなしておるに過ぎません。もとより從來地方には適当な投資或いは資金運用の対象が少いということは言い慣らされたことでありますが、戰後全く経済界の形態及び内容の一変いたしました今日地方的に中小企業の振興を助長せねばならん際におきましては、金融の面におきましても、資金の中央集中を避け、地方資金を潤沢にして、これが利用の途を講ずることが最も時の需要に適應するものと信じます。(拍手)地方銀行の外に、中小企業の相互的、地方的金融機関として、無盡会社は本年七月現在四十四億円の資金を保有し、市街地信用組合は三十八億百五十一万円の資金を保有しております。これら地方的金融機関の密接な連繋を図り、地方的に中小企業の振興を助長することがこの際最も肝要なことであります。現在の政府の金融方針は重点主義の下におのずから大産業に偏する傾きがあり、復興金融金庫の融資も中小企業には極めて少額を割当てられるに過ぎません。殊に金融緊急措置令によつて嵌められた枠のために、中小企業者は地方金融機関から融資を受けることは殆んど絶望のごとき状態にあります。元來政府のインフレ対策は余りに通貨面に偏して神経的であると思われます。(拍手)もとより財政方面のみならず、経済方面よりする通貨の膨脹方面もでき得る限り避けねばならんことは了解のできることでありますが、今や輸出貿易再開、五億ドル借款活用の必要が切迫しておりますときに際しては、全國各地方の中小企業の活躍を助長するために、金融方針について積極的の方策を講ぜられんことを切望するものであります。現状において資金融通の途を余り窮屈にすることは、産業を萎縮せしめ、角を矯めんとして却つて牛を殺すの虞れがあると思われます。各地方の商工会議所は今や挙つてその地方の中小企業の振興のために頭脳を搾つております。又初めて民選によつて選ばれた知事も、亦地方議会も、その地方の戰災と経済の復興のために心を痛めております。私は地方金融機関がこれらの商工会議所、府縣廳等と密接な連繋を探り、その地方特有の事情と力に應じて、中小企業振興策、輸出貿易製品再興策を講ずることの必要を痛感いたしておるものであります。それが具体的な効果を挙げ得るためには、大藏大臣、商工大臣、内務大臣及び経済安定本部長官あたりが中小企業振興の重要性とこれに対する地方の自治的対策を尊重し、助長するの方針を採られんことを切望するものであります。(拍手)
 現内閣は中小商工業の振興については未だ何ら見るべき対策を講ぜず、むしろ先きに社会党において立案せられたる生活協同組合法案のごときは、生産、配給、貯藏、輸送、金融、保險等のあらゆる経済活動より社会的事業に至るまで凡そ何事と雖もなし得ざることないような廣汎なる事業目的を有する誠に常識をさえ逸したる奇態の法案であり、少くとも経済力集中排除法案とは根本において対蹠的のものであります。殊に中小商工業者に対しては、先年事変直前に行われた産業組合拡大運動を遥かに凌駕するような大々的脅威であることは疑いを容れません。御承知の通り今日の世界は二つの世界に分れつつあるのであります。一つはソビエツトを中軸とする社会主義的世界、一つは英米を中心とする自由主義的世界がこれであります。我が図の経済再建の大方針もどの方面に進むべきかはおのずから明瞭であります。中小企業問題も、金融問題も、漸次、戰時的大資本的統制の枠を外し地方から盛り上る民主的中小企業の線に沿うて、でき得るだけ公正なる自由競争に復帰すべきことは言を俟たぬところであります。(拍手)この意味において、私は現政府に対して前に申述べました生活協同組合法のごとき世界の大勢に逆行せる法案を廃棄し、その代りに本年二月十五日閣議決定の中小企業振興対策要綱に掲げられたるごとき方策を強力に遂行し、眞に中小商工業の振興を策する適切なる政策を速かに実行せられんことを切に希望するものであります。(拍手)
   〔小林勝馬君発言者指名の許可を求む〕
#41
○副議長(松本治一郎君) 小林勝馬君。
#42
○小林勝馬君 民主党は油井賢太郎君を指名します。
#43
○副議長(松本治一郎君) 油井賢太郎君に発言を許します。
   〔油井賢太郎君登壇、拍手〕
#44
○油井賢太郎君 二月前衆議院におきまして、中小商工業の振興対策につき自由討議があり、又本日この参議院において同じ題目の自由討議が行われ、最後に私民主党を代表いたしまして聊か所見を申述べる次第であります。
 只今まで各党各派より申されましたごとく、中小商工業の振興は我が國再建のために最も必要な題目であるということを痛感されるのでありまするが、歴代の政府によりましても必ずこの問題は取上げられて、重大なる施策の一つとして強く主張されておつたのであります。併しながら今までのところ、曾て何ら見るべき対策を講じておつたという事績がないことは、甚だ我我の遺憾に堪えないところであります。又各党の中でも、共産党の諸君さえも、この中小商工業を振興すべしということを仰せられておつたのでありますが、申すまでもなく中小商工業者は、過去におきましても、その思想において極めて穏健中正であり、又國家の財政面におきましても、いわゆる中産階級としてその負担力は高く評償され、この階層の健全なる存在こそ國民に多大の安心感を抱かしておつたのでありまして、中小商工業者は資産家であり、而も経営者であり、而も最も勤労階級に親しみの多い、又自分で最も強く勤労をしておるということを我は十分承知しておりましてこの階級の存在こそ我は日本の再建に欠くべからざるものであると思うのであります。(拍手)現政府におきましても、組閣以來、中小企業対策要綱を作成いたしましてその要綱を発表したのでありますが、第一に技術面上の指導、第二に経営能率の推進を挙げておるのであります。併しこれらのことはもう昔より言い古されたことでありまして、又新らしく蒸し返されておるというようなことに過ぎないのでありまして、別に批判を加える余地はないと思います。まだ第三に挙げておりますところの審査制度の確立について一言申上げますならば、これは我が民主党の有志によつてつねづね提唱されておりまするところの價格統制より品質統制の方が重大であるということ、その論に一歩近づいたものとして賛意を表する次第であります。申すまでもなく今日日本國民の道義心の程度を以ていたしましては、價格の統制ということはあらゆる面におきまして無駄と混乱を繰返すに過ぎません。闇よりも高いマル公を決めて漸く平靜に戻つたという商品さえあるのであります。マル公に合せるために、できるだけ少い資材とできるだけ少い労力で手を省いて、粗末な品質の生産品が現われ勝ちとなりまして、たださえ不足しておりますところの貴重な物資を徒らに浪費濫費いたす結果を招來しつつあるのであります。少い物資を最も有効に用い、業者の創意と工夫によつて立派に役に立つ製品を得るためには、むしろ價格の統制は撤廃して、明朗なる生産音欲を向上せしめ、國民生活上に寄與するよう円滑なる物資の融通を期すべきであります。(拍手)この意味におきまして、審査制度の活用と品質檢査制度の適用によりまして、製品に対する生産者の責任を明らかにすると共に不用不急品の生産を抑圧し、粗惡品に対しましては嚴重なる処罰を以て臨むことが、現在の我が國経済情勢下にあつて止むを得ざる又最も当を得たる方策であると確信いたすものであります。特に輸出向商品に対しまして價格の統制を行なつております現状はう煩雑なる手続と共に、中小商工業者の輸出向商品の生産に対する関心を阻害するものといたしまして、一刻も速かにこれが改善を図ることを要求するものであります。
 次に第四に、指導機構の新設又は強化ということが誰つてあるのでありますが、官廳組織の拡大強化によつてのみすべての施策が完全に行われ得ると考えておりまする官僚臭味紛々たるところの政策であると感ずるのでありまして、行政整理の必要欠くべからざる今日、この点につきましては賛意を表し難い一点であります。殊に地方商工局の機構といふものが現在できておるのでありますが、この機構は今日速かに撤廃されたいといふ声が地方の或いは府懸廳、又民間の声であります。先ず隗より始めよといふ言葉がございますが、現政府が自分みずからこの行政整理を即刻行うことを以て國民に範を示さなくてはならないと存ずる次第であります。皆さん、今日官職方面に参りまして最も混離いたしておりますのは、あの商工省であります。又地方におきましては各府縣廳にありますところの商工課であります。押合いへし合い足の踏み場もないくらいに混乱しておるあの状態は、取りも直さず統制経済の枠から一歩でも外へ出ようとするというような現われがあそこに出ておるのでありまして、少くとも我々経済人といたしましては、この際統制経済の一刻も速かなる解除と自由経済への復帰を叫ばざるを得ない次第なのであります。(拍手)政府は中小商工業者に対する指導機関といたしまして、商工業協同組合中央会、或いは各地にありますどころの民間の手で作られております商工会議所、又は工業試驗所等を極度に活用し、利用いたしまして、これに適当なる助成を與えての官民の連絡を十分に図つて、今日の日本経済再建のために議して頂きたいと思うのであります。
 政府に対する批判はこの程度止めまして、次に中小企業家に対する資材と資金の面でございますが、資材につきましては今日尚割当票を持つておりながらその票に対するところの現物化が行われておらないという状態であつて、結局闇物資によつて事業の継続をするというような有様が各方面で見受けられるのであります。協同組合等の機関を利用いたしまして、資材の円滑なる配給に一段の努力を携われたいと思うのであります。資金の問題につきましては、先程玉屋君からも縷々申されましだが、全國の金融機関が企業に対するところの貸出金中、僅か二割程度のみが中小商工業港の手に渡つておるというような状態であります。果してこれで妥当であるのか、企業総数の九割以上を占め、而もその配下にあるところの労務者の数、又その工場或いは事業場より出されまするところの生産高におきましても、まだ統計は不明でよく分りませんが、恐らく半分以上を占めておると言われますところの中小企業に対して、もつともつと金融の面を緩和すべきが当然であると思うのであります。この際中小企業に対するところの正確なる諸計画を政府において準備し、資金、資材、労力等あらゆる部門におきまして、公平妥当なる且つ具体的の施策の発表を行い得る態勢を整えて頂きたいと思うのであります。
 次に、中小商工業者に対するところの課税問題であります。課税方法が当を得ておらないのと同時に、苛酷なる課税に対するところの非難が、各地においてこれ亦強く叫ばれておるのであります。現在の課税方法を以ていたしますと、資本金が少い中小商工業者は、その利益の大半を挙げて納税をいたさなくてはならない制度になつております。今日のようにインフレや高進の途中におりまして、賣上げ利益より税金を差引きましたるところのその残りの金と、元の資本金と合せましたる資金を以てして、次の事業が新らしくできるかどうかということを考えて見ますと、誠にこれは矛盾極まりないものということがはつきり分る。申小企業の振興と申しますものは、究極は再生産の拡大強化でありまして、拡張再生産が行われぬ限り我が國の経済界は救われない。從つて國民はじり貧の一途を迫るのみでありということが我々は分るのであります。戦前に比べまして物價はすでは百倍にもなつているのであります。中小商工業の運轉資金は当然百倍くらいになつても当り前であると言われるのであります。その増加した部分を片つ端から取上げてしまいましてあとの事業ができなくなるような状態にあつては、丁度毎年大きくなる子供の着物を、もとのままで少しも直してやらないのと同様の結果を招くのではありませんか。どこかしら破れて用をなさなくなつてしまうということは明白であり、これと同様のことが一國の財政についても亦考えられるのであります。先日大藏大臣に対しまして、この事例を挙げまして、大藏大臣の所感をお伺いいたしましたるところが、リキヤピタリゼシヨンということは、自分もよく考えておるとのことでありましたが、大企業も中小企業も同じ率で課税をするということは、中小企業の永久に伸びない中小企業に対する永久の圧迫となりまして、勤勉に努力することによりまして或る程度の拡張ができ、將來に希望を持てるような制度を課税方法についても実施すべきであると申されたのでおりました。これは近く改正されますところの所得税の改正法につきましても、法人税の改正に当りまして、議員諸君は固より、特に財政金融委員の方に十分なる考慮をお願いいたしたいと存ずるのであります。更に最近輸出織物無償格の形成につきまして檢討をいたしましたるところが、生産者價格の中に、利潤を全然認めておらないものがあつたのであります。これには非常に私も驚きまして、凡そ企業を行うには幾らかの利潤を伴うのが当然であります。原料が常に順調に入荷し、副資材がマル公で支障なく入手できまして、労賃が釘附けされ、電力が豊富なときには能事を上げて、企業の合理化による利潤を生み出すことも考えられるのでありますが、今日政府が果して以上の点につき確信を以て保証し得られますかどうか。昔から何企業でも十年も経てば半数以上は顔触れが変るとさえ言われ、企業の栄枯盛衰というものは想像に絶するのであります。戰前の中小商工業者は、働けど働けど我が暮し樂にならなかたつというのが事業界の常であり、よく言うところの成功者とは十人に一人、或いは百人に数人にしか過ぎなかつたのでありますが、統制経済になつたお蔭で、利潤の認められない事業をしながら、悠々と暮し、厖大なる税金も拂つておるというようなことになりますれば、マル公の喜劇であり、マル公の魔術であり、不合理も甚だしいものであると言うべきものであります。和田安本長官初め、日本の経済の計画を立てる当局の方の切に猛省を促すと共に、近い機会におきまして、和田長官より懇切丁寧なるこれに対する御解答を要求いたすものであります。先日の経済白書の中で全人口の七・一%の商業者が、二十一年の第一四半期に比べ、第四四半期では僅かながら所得が堀しておると発表し、爾後商業者に対するところの施策は何ら施しておらないのであります。しかのみならず事業者の立場を圧縮し、これに加えるに官僚的な公團法式を採用し、一層の統制強化をなさんとしつつあるところは我々の絶対反対するところであります。(拍手)先般果物の統制が撤廃されまして、全國津々浦々に至るまで、水々しい綺麗な果物が軒を並べて飾られ、自由競争によりまして、朝早くから夜遅くまで、お互に努力し合つておりますところの商人の群を暫く振りで見出たのでありますが、官僚統制下に傲然としておつたところの末端配給者に比べ、その差が余りに大なのに、うたた感慨に堪えなかつたのであります。いかに官僚統制より自由経済が優つてもおるかということは、この一事を以てしても明らかなのであります。(拍手)
 以上を要約いたしますと、第一に、我が國の経済再建は、中小商工業者による貿易の発展によること。第二に、政府発表の中小企業対策要綱の中、審査制度を強化し、價格の統制より品質の統制が、中小商工業者の振興はもとより、國民生活への寄與大なること。第三に、中小商工業の指導に対しては、官僚独善に陷ることなく、民間團体も利用し、官廳機構の整備を図ること。第四に、中小商工業者に対する金融と課税の合理化を図ること。結論といたしまして、成るべく速かな統制経済の撤廃こそ中小商工業者の生きるべき道と確信する者であります。
 終りに、先般來商工業者が、或いは中央に、或いは地方に、その血の叫びを挙げておるのでありますが、福島縣から商工業者大会について、陳情書が参つており、その一節を読み上げまして、皆様に地方商工業者の叫びをお知らせを申したいと存じます。「多くの期待をかけた中小企業対策要綱は、新設する中小企業廳の官制化を前提とするものであり、中小商業にはなんらの関連をも示してはいないのであります。又仄聞するところによりますと、商工協同組合法が改正され、中小商工業者の唯一のよるべき道は失われようとし、他方生活協同組合の法制化によつて、商業者の自立基盤が覆えされようとしております。誠に残念なことに、我々中小商工業者は、未だ曾て政府の恩惠というものを受けた経驗がございません。併し今我々は徒らに政府にあまえようとし、或いは租税の軽減を図つて、自己の生活のみを擁護しようとしておるのではありません。我々の力を活用し、そうして我々をあるべき所にあらしめて、頂きたいのであります。
 終りに、全國中小商工業者の諸君、諸君は実に日本再建の重責をその双肩に荷つておるのであります。他を頼りとするような小我を捨て、飽くまで自主独往の氣概と、諸君の配下にある勤勉なる理解深い勤労者と共に、相協力一致して奮闘せらるるならば、行く手を遮る荊の道は、忽ちにして切り開かれ、洋々たる光明に接することを信じ、切に御自愛の程を祈りまして、私の討論を終ります。(拍手)
#45
○副議長(松本治一郎君) これにて自由討議は終りました。議事の都合によりこの際暫時休憩いたします。
   午後二時四分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時三十六分開議
#46
○議長(松平恒雄君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。
   〔小林英三君発言の許可を求む〕
#47
○議長(松平恒雄君) 小林英三君。
#48
○小林英三君 私はこの機会におきまして、林國務大臣の件に関し、片山総理大臣、鈴木司法大臣並びに林國務大臣に緊急質問の動議を提出いたします。
#49
○左藤義詮君 只今の小林君の緊急動議に賛成いたします。
#50
○議長(松平恒雄君) 小林君の緊急質問の動議に賛成の諸君の起立を請います。
   〔起立者多数〕
#51
○議長(松平恒雄君) 過半数と認めます。(拍手)小林英三君。
   〔小林英三君登壇、拍手〕
#52
○小林英三君 最近追放のことに関しましてとかく國民の疑惑を深めつつありますることは、國政の上におきまして甚だ遺憾に存じつつあるところであります。殊に林國務大臣のごとく、現内閣の閣僚といたしまして現にその審査を受けつつある最中におきまして、いかにも追放決定せるかのごとく傳えられておりますることは、國民のひとしく疑惑を持つところであります。(拍手)つきましては、この際政情の明朗化を期す意味におきまして、参議院は本問題に関し格別の関心を有しまするが故に、是非ともこの際片山総理大臣、鈴木司法大臣並びに林國務大臣のこの点に関しまする極めて明快なる御答弁をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
#53
○議長(松平恒雄君) 鈴木司法大臣。
   〔國務大臣鈴木義男君登壇、拍手〕
#54
○國務大臣(鈴木義男君) 林國務大臣がその資格について問題になつているということは事実であります。ただ、只今中央資格審査委員会において審議中であると承わつておりまするので、その前に立ち入つた御報告なり御説明なりを申上げることのできないことを遺憾に存じます。いずれといたしましても決定をいたしました後は、國民の疑惑を解くべく詳細に事実の眞相を発表いたしたいと考えております。從つて只今申上げることは極く概略であると共に、私の承知いたしておりまする範囲の事実の報告に止まるということを御了承願いたいのであります。林さんの戰時中における著書「世界の推進力日本」及びパンフレツト「世界の黎明」、この二つの著書は久しく以前から問題になつておつたのであります。著書の方はすでに資格申請書に記載せられておりましたるが故に、正式に問題となつておつたのでありまするが、「世界の黎明」の方は四月の選挙が終りました後に告発によつて問題となりまして、資格審査に付されたものであるのであります。一應中央資格審査委員会におきましては、これを通過いたしたやに聞いておるのでありまするが、御承知の通り追放はポツダム宣言の受諾に伴いまして我々に課された嚴粛な義務でありまして、國内的に中央資格審査委員会が最終決定をいたします前に関係方面の承認を得ることを必要としておるのであります。從つてその手続を取つておつたのでありまするが、関係方面におきましては、その二つの著書を翻訳をいたしまして詳細檢討をいたしておりましたために、意外に長い時間を要しましたわけであります。その後私が関係方面に参りました際に両三回話題に上つたことがあるのでありまするが、私はその都度、林さんのためにできるだけ弁明をいたしておつたつもりであります。最近の機会におきまして再びこのことが問題と相成りまして、その著書の内容が眞に良心的に資格審査委員会において審査せられることを希望するというような言葉があつたのでありまするが、それは資格審査委員会の問題でありまして、私の問題ではないと考えたのでありますから、私は辞して帰つたのでありますが、その後資格審査委員会と関係方面においていかなる交渉がありましたか存じませんが、資格審査委員会はこれを更に鄭重に審査するということに相成つたということを承わつておるのであります。そういう事情でありまして、曾て一日の閣議の日に新聞紙上に林氏の追放云々ということが掲載せられておりましたために、私甚だこれを憂慮いたしまして、閣議の開会前に林さんに私の知つておる事実を申上げた次第でありまして又閣議席上においてもこれが話題となりましたるが故に、閣僚以外の人を退けまして私の知つておるその事実を申上げたのであります。然るにそれが他の形において問題と相成りましたることは私の甚だ遺憾とするところでありまして、芦田民主党総裁に対しましても、閣議に入りまする前にそのことを申上げて置いたのであります。私においては林氏を思う以外に他意はなかつたのでありまして、そのことが誤まり傳えられておるやに考えまして、残念に存じておる次第であります。その他のことにつきましては未だ御報告申上げる時機でないと考えまするから、この程度に御報告を止めて置きたいと存じます(拍手)
#55
○議長(松平恒雄君) 林國務大臣。
   〔國務大臣林平馬君登壇、拍手〕
#56
○國務大臣(林平馬君) 小林議員の御質問に対しまして御答弁申上げたいと思います。それより先に一言申上げたいことは、何も鈴木司法大臣と爭う意味ではありませんけれども、今申された中に誤まりのある点だけを先ず先に申上げて置きたいと思います。私の資格審査に掛つておるのは「世界の推進力日本」というのと、「世界の黎明」という薄いパンフレツトであります。鈴木法相は、著書の方は戰時中に出された云々と言われましだが、それは戰爭の以前のものであるということをはつきり申上げて置きます。又パンフレツトは選挙後に告発によつて現われたものであると仰せられたのでありまするが、これも亦誤まりであります。未だ総選挙の終らない先において選挙区の或る党の党員より投書になつたものであつて選挙のまだ終らないときに現われて來たものであることを訂正して置きたいと思います。去る本月の十三日、衆議院の本会議において、衆議院議員石原澄君、北浦圭太郎君たちから政局安定に関する緊急質問がありました際、私の名指しもあつた由でありますが、私は恰かも十一日の未明に突然発病いたし、以來引続き静養をいたしておりましたので、今日まで答弁の機会を持たなかつたのであります。併し余り長引くことは甚だ心苦しいので、一昨二十二日に衆議院の方の本会議において是非共御答弁申上げたいと思いまして、病躯を押して登院いたしたのであります。然るに衆議院の議長は発言の機会をお與え下さいませんので、遂に余儀なく宅に戻つて寢んだのであります。更に私は昨二十三日登院いたしまして、発言の手続をいたしましたところ、片山総理は強くこれを拒みましたばかりでなく、すべて議会での発言は是非思い止まつて貰いたいと言い、頑として承諾を與えてくれなかつたのであります。今日も亦余儀なく病躯を押して登院いたしましたが、到頭私の発言の機会は得られないでおつたのであります。私はこうした次第でありまするから、遂に日本の議会においては述べる機会を永久に得られないであろうと失望をしておつたのであります。(笑声)然るにここに参議院の諸君より是非出て事情を詳細述べろという御注文がありましたので、私はこの機会を得たことをここに感謝するものであります。問題の眞相究明についての御要求でありまするが故に、私はここに一切を御報告して各位の御了解を願うつもりであります。或いは病躯であるが故に、最後まで申上げられずに若しも中途で発言不能に陥りました場合には、大要をここに記述して参りましたので、これをば議長のお許しを得まして速記録に御登載されんことを予めお願いいたして置く次第であります。
 私が去る七日の定例閣議でいたしました発言が、政局不安の一つの原因であるならば、私はその内容の眞実をここに報告して、実相を明らかにいたし、以て不安の原因を一掃したいものであります。閣議の内容を発表することについて異論を差し挟む者のために一言申上げて置きたいのでありますが、片山内閣の当初から毎回閣議の終りにおいてその日の閣議のどれとどれとは発表をしないことにしようという申合せをいたして参りました。併しそれでもとかく常に漏らす者がありました。然るに私の発言については、性質上祕密にすべきものでないばかりでなく、閣議において発表せざることの何らの申合せがなかつたのでありますから、異論のある筈がないと信ずるのであります。殊に私の発言以來、問題の眞相が明瞭でないことが政局の不安に密接の関係があるので、それを明瞭にされたいという衆議院での御質問の御趣旨でもあると理解いたしますと同時に、参議院におかれましても同様であると信じまするので、ここに当日私が参閣議で発言いたしましたこと及びその後の実情を具さにここに申上げて、事態の眞相を明らかにいたしたいと存じます。(拍手)
 私は去る七日の閣議における私の発言を先ずここに申上げることにいたします。即ち「この際私は十一月一日の閣議における西尾、鈴木両君の御発言に関連して、重大発言をいたしたいと思います。鈴木君は去る一日の閣議の席上で私の身上に関して次のようにお述べになりました。即ち私は某所で関係官から、君は林氏の書いたものを見たことがあるか。こちらで調査したものがあるから、それをお貸ししてもよろしいと言うて、部厚いものを見せられたが、それを借りて來れば責任を生ずるから借りて來なかつた。それから去る十月二十五日に某関係官が内閣に來て片山、西尾両君に会見して、平野君の問題に言及された際、某氏は、平野以外にも、例えば林のごときもこの際更迭を考えてはどうかと言われたので、私は大層心配しておりましたところ、今朝突如として朝日新聞に林君の追放問題が発表されたので実に驚きました。どこから漏れたのか、実に不思議でならない云との御発言がありました。又鈴木君の以上の御発言が終るや、言下に、直ちに西尾長官は、あの記事の出所を早速調査して見たところはつきりしました。あれは朝日の記者が某所から聞いて來たものであることが確実になりましたとの報告がありました云々であります。そこで私は、私の身上に関する重大問題でありまするが故に、直ちに発言をいたしまして、私の資格審査の経緯を述べ、中央公職適否審査委員会は、すでに去る六月二十日満場一致を以て、該パンフレットが該当せずと判定されたものである旨を述べまして、閣僚諸君の御了解を願つた次第であります。併し私はすでに解決された問題が今頃突如として問題化して來たことに余りに不思議を感じたので、早速、人を以て当日その場に立会つた曾爾官房次長に事実を質しましたところ、某氏は林大臣に関しては一言も触れていませんとのことであります。そこで私は尚も正確を期するために、その日の午後の四時過ぎ頃曾爾君を私の自室に招いて尋ねましたところ、やはり同様で、当日何ら私に関しての発言はなかつた旨を確言いたされたのであります。私はますます疑問を深めたので、更に某方面にも眞偽を十分に調査したところ、最も責任のある筋から事実無根を確かめ得たのであります。又十一月三日、即ち翌日の午後六時頃、私が総理大臣官邸を出ようとした際に、かねて懇意の記者が私の側に走り寄つて、大臣、あの記事は某所から出たものではありません。この中から、内閣から出たものです。実に閣内から出たのですと鈴木法相の名指しまでして明瞭な報告がありました。そこには私の外にもこれを聞いておつた者があります。又中央公職適否審査委員会事務局について新聞の事実を取調べましたところ、十一月一日の朝日新聞に出たところの記事は、大要でありますが、審査委員会は全閣僚の資格に関する再審査を終了し、林國務大臣の該当がほぼ確実となつたという記事は、事実無根であることが分つたのであります。即ち審査委員会は、最近閣僚の資格審査をいたしてはいない事実を確かめました。以上の事実により、一日の朝日新聞の私に関する記事は、全然虚構の誤報であることが明瞭であります。かかる誤まつた報道を朝日新聞が何故にいたしたかと深く疑いを持ちましたが、内閣から報道されたればこそ、朝日もこれを信じて、まさか虚構の事実とも思わず、むしろ近來の特種として大的に扱つたものと信ずるのであります。而も西尾長官が、鈴木君の発言終るや、言下に右の記事が某所から出たことを確かめ得たと断言されて閣議席上に報告されたところに、更に疑問を深めるものがあるのであります。何となればさようなことは某所の中から漏れて來る筈が断じてないくらいのことは、長官ともあろう者の知らん筈がないからであります。その他調査すればする程、民主主義憲法下には余りにもふさわしからぬ陰險なる事実が次々に出て來るので、私は紳士として到底かかる席上で申上げるに忍びません。併し何としても閣僚の身上に関して、恰かも至上命令であるかのごとき暗示を與えて、虚構の事実を捏造し、閣議で、嘘、でたらめを申されたことだけは、もはや動かし得ざる事実でありまして、実に前例を見ざる惡質の陰謀と言わねばなりません。ついては致命的被害者の私が十分納得の行く御釈明を願いたいのであります。而してその釈明は、問題の中心を把握しておらる片山総理、あなたから伺いたいのであります。殊に極めて正直なクリスチヤン紳士として私の今日まで尊敬して來た片山総理から願いたいのであります。私は何事も円満に事を運びたい性格であることは、諸君御承知のことと存じます。從つてこのような発言も差控えようかと幾度か逡巡躊躇したのでありますが、次の四点からして、ここに最も好まざる発言を敢てなすに至つたことを御了承願いたいのであります。
 即ち第一点は、私にとつては全然致命的の出來事であるから、到底このままには打ち捨てては置けないためであります。第二点は、かかる行動が引続き許されるならば、常に内閣の不安を來し、統一を阻害することになるから、内閣の統一強化を期する上に必要であると信じての発言であります。第三点は、占領下にある我が國において、彼我共に特に特に関心を持つておる事柄であります。即ち権威に名を籍りて、恰かも至上命令であるかのごとく称し、自己の意図するところを実行しようとする或る種の官吏の卑劣なる行動についてであります。私はかくのごとき占領政策の眞意を阻害するがごとき行動をばこの際断乎として根絶するためにも、この発言をなす必要を痛感した次第であります。第四点は、國政の中心殿堂たる内閣は、極めてまじめに、明朗にして、一致協力、時艱克復の衝に当り、以て國民の信頼を博し、よつて以て政治力の強化に努めなければならないと信じます。殊に國民挙げて途方に暮れておるこの敗戰日本の現状におきましては、一層その必要を痛感いたしておりまするので、不明朗なる策謀や言動を内閣から拂拭一掃したい赤誠愛民の衷情から、この発言をするものであります。
 以上の次第でありますから、片山総理におかれては事態の眞相を率直に究明せられると共に、かかる虚構の事実の発言者に対しては断乎たる処置に出でられ、以て將來来に向つて、かかる事態の再発せざるよう、その禍根を一掃せられんことを要請するものであります。
 私の調査したところによれば、某氏が二十五日來訪されて、片山総理及び西尾長官に対して言われたことは次の趣旨であります。すべて罪のある者は、その地位身分を問わず、公平に処罰すべきものであるとの眞理に基ずく原則を示された発言であつて、特定の人名を指しての言葉はなかつたのであります。又去る四日には政府に対して、以上の原則を公式に通告してその態度を明確にされたのであります。
 よつて片山総理が、あなたが、この指示されたる根本方針を尊重するならば、虎の威を仮りるがごとく権威を濫用して、かかる虚構の発言をした鈴木法相、西尾長官に対しては、速かに両君の自発的善処を求められたい。万一にも両大臣がこれに應ぜざる場合は、内閣の統一強化のために、又政治の明朗化のために、速かに両君を罷免せられんことを要望するものであります。
 以上私の発言が終りまするや、片山総理は私に向つて、私はあなたに対してどうこうしようと意図しておるものではありません。是非閣内に留まつてやつて頂きたいのでありますから御了解を願いたい云々」と仰せられました。私はこれに対して申したことは、私はあなたに対して釈明を求めておるのではありません、虚構の発言をした両君に対して善処するように取運んで貰いたいと要求するものであります」と申したら、片山総理は、「それでは、今ここで事実を究明することはむずかしいから、どうでしよう。この問題は私と芦田外相とにお預け願いたいのですが」と申されるや、芦田外相は、これは個人の問題であつて閣議の問題ではないから云々」と申されましたので、私はそれを反駁しまして、「飛んでもないお考えである。甚だ違つたお考えを持つておる。この問題は私個人の問題でもあるが、併しながら政治の中心を粛正して内閣の統一強化を図る重大なる政治問題であります。」と言うや、芦田外相は、それはそうです。だが今ここでは決められないと思うとの発言がありました。続いて片山総理は重ねて私に、「どうでしよう。これは二人にお預け願えないでしようか」とのことでありましたので、私は、「それでは私はお二人を信じまするので、お預けいたしましよう。どうか私の納得の行くように、至急お運び下さるように願います。」と述べて、私は片山総理のクリスチャン的人格に滿腔の信頼を捧げて、快く善処方を一任した次第であります。尚私の当日の発言に対しては総理以下なん人からも、私の述べたことに対して、間違いを指摘した者はなかつたことによつても、一日の閣議で西尾、鈴木両大臣から私の聽き取つたことに誤りのなかつたことを立証して十分であると信じます。
 然るにここに不思議なることは、片山総理から何らの回答も今以てないことであります。のみならず去る十日の午後五時半頃、中央公職適否審査委員会の事務局長太田剛氏が総理官邸の私の部屋に訪れて参りました。そうして私に向つて、かように申しました。「大臣誠に異例中の異例でありますが、大臣の資格について再審査をすることになりました。それも極めて急速に運ばなければならん情勢にあるのでありますから、若しも弁明書の御提出でありまするならば、明日の午後の委員会に間に合うように、午前中にお出しを願いたいのであります。云々」と言われました。これに対して私は、明日は閣議があるので、そのような処置はできかねると申しましたら、さらば來る十四日の正午頃までに願いたいとのことでありました。私は太田局長に対して、何故に異例中の異例であるという私の再審査をするかと聞いたら、局長は世間がやかましいからです。決して政治的の手が延びておるのではありませんと数回附加えておりましたので、むしろ私は何故の弁解であるかと疑問を深めたのであります。
 又去る二十一日の午後四時半頃、木村内相は私の病床に來られまして、閣議に基ずいて君の辞表提出の勧告に來たのだとのことでありますので、私はこれに対して、君も知る通り、問題の解決は、片山首相が進んで引受けて置きながら、未だその返答もない中に、辞職を要求するとは何事か、私は勧告によつて辞職する理由も意思も毛頭ないと拒絶して置きました。然るに一昨二十二日の各新聞は、大きく私の追放が報道されてあります。未だ審議中であるというのに、最初から決定と報じておるということに、誠に不可思議に堪えないのであります。果して私が追放と決定するかどうかはともかくも、若し果して事実でありとするならば、片山首相は回答に代えるのに、追放を以てするものであると見なければなりません。何たる不信の行爲でありましよう。私の資格再審査は、いかなる意図で始められたのであるかは存じませんけれどもが、前に申上げました通り、(「泥試合見つともないぞ」「泣言を言うな」と呼ぶ者あり)事実無限の新聞が出てから実に十日を経過した去る十日の夕刻以後から正式に始められたのであつて、十一月の朝日新聞の記事が事実無根であることだけは、今や動かすことのできない事実であります。この虚構の新聞記事を本物に仕上げるための苦心は同情に値するが、いよいよ仕上げ得るとするならば、その陰謀技術の巧妙なるには舌を捲くものがあるのであります。而して一体同一政府が同一機関で同一事項を判定するのに、昨日は白と判定したものを、今日はそれを黒と判定できるのでありましようか。法理的に又良心的に不能なことじやないかと私は信じます。若しできるとするならば、國家機関に対する國民の不信、疑惑をいかにして拂拭し得るかを深く憂うる者であります。(「自分の書いた物がよいか惡いか言え」「やかましいと呼ぶ者あり」)私の書いた物に対しては、良心的に十分に弁明ができております。(「そうでもない」と呼ぶ者あり)十分にできております。(「そうでもない」「具体的に言え、具体的に」と呼ぶ者あり)陰謀を解決するに陰謀を以てすると疑われ、或いは追放問題を政爭の具に供すると誣いられても、恐らく弁解の辞がないでありましよう。去る二十一日の閣議で鈴木司法大臣は、かような発言をしておることを聞きました。某出版者は林の著書を出したために、追放になつたのであるから、著者の林が追放になるのは、既定の事実であるとの発言があつた由であるが、誣いるも甚だしいことであります。その出版社は、多数の該当書を出版しておるのであつて、敢えて私の著書によつて追放されたものでは断じてありません。又その出版社の追放は、多分本春一月頃であると記憶しておりまするが、果して私の著書が原因であるならば、何故にそれよりずつと後であるところの、四月の私の立候補の際に私の資格を認めたのであるか、殊に入閣の際には、最も嚴粛に人選した筈なのに、すでに該当必至と称する私を、何故に推薦したか、むしろ大なる責任問題こそが起らねばならん筈と存じます。
 述べれば限りもありませんが、(笑声)今や國民挙げて塗炭の辛苦に悩み、廃都東京の眞ん中では、早くも凍死者を出しておる敗戰日本の現状に眼を向けるならば、心骨を砕いて、祖國再建に邁進せねばならん時、愛國の至情止み難く、陰謀を内閣より排除して、政治の明朗化と内閣の統一強化とを図り、以て救國の一遂に邁進せねばならんと痛感いたしました余り、遂に去る七日の閣議に、一身の利害を超越して発言をいたした次第であります。私は公正なる判断を國民に期待して止みません。以上事実の眞相を申上げたところによりまして、問題の実体が十分御了解願われたと存じますので、私はこれを以て御答弁に代えたいと思います。(拍手)(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)
#57
○議長(松平恒雄君) 司法大臣より重ねて発言したい旨の(「簡單にやれよ」と呼ぶ者あり)林國務大臣の御答弁を拜聽いたしておりまして、非常な誤解があられたのではないかということを感じたのであります。誰か通告がございました。鈴木司法大臣。
   〔國務大臣鈴木義男君登壇、拍手〕
#58
○國務大臣(鈴木義男君) 只今林さんを白眼視しておるというふうに錯覚を起しておられるようにお聽きいたしたのでありますが、(拍手)私は今日に至るまで、林さんは同郷の先輩として尊敬をいたしておりますし、好意を持つてこそおれ、決して反感も敵意も持つておらないのであります。林さんには閣内、閣外を通じて政敵というがごとき者は一人もないと確信いたします。故に何か陰謀を企らむその必要がどこにあるかということに関して私は了解に苦しむのであります。(拍手)故にどうか陰謀であるというようなことは軽々にお考え下さらないようにお願いをいたしたいのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)
 尚私の発言中間違つた点は率直に取消しますが、「世界の推進力日本」は戰時中において出版したと申上げましたが、私は日華事変等を加えての意味であつたのでありまして太平洋戰争と言うならば確かに戰事前でありますから、それは御了解を願いたいのであります。又「世界の黎明」がこの選挙前に告発されたということは私存じませんで、選挙後に告発されたというふうに記憶いたしておりますので、それは誤りでありますから、訂正をいたします。
 尚一日の私の閣議における発言が非常に間違つて御記憶になつておることは非常に遺憾に存ずるのであります。私は先程ここで申上げましたようなことをもう少し詳細に申上げましたのでありまして、二千五日に某関係官が片山総理並びに西尾官房長官の所に來て林さんのことを申したというようなことは一言半句申しておらないのであります。私は当時仙台におりましてそういうことは存ぜないのでありますから、決して二十五日に片山総理のところに某関係官が來て言つたなどということは申す筈がないのであります。そのことは七日に林國務大臣が只今御朗読になりました発言をされたその直後、直ちに私はその誤りであることを御指摘申上げて、御意見は御自由であるが、事実の間違いは正して置かねばならんということを申上げて全閣僚は、確かに鈴木の言う通りである、それは林さんの思い違いであるということを仰せられたのでありまするから、御了承を願いたいのであります。
 又西尾官房長官の発言がいかにも某方面から出たに違いないと確かめたというように発言したというように御報告でありますが、西尾氏はそうは言わなかつたのでありまして、どうもあの記事は不思議だ、どうも某方面から出たらしい。こういうことを申したのでありまして…(「同じだ」と呼ぶ者あり)出たことを確かめたというとは申さなかつたのであります。(笑声)從つて曾禰君を調べられましても決して事実の眞相を発見できる筈はないのであります。
 尚私が朝日新聞の記事の材料を提供したというふうに御発言でありますが、これは私実に意外に感ずるのでありまして、苟くも閣僚同僚の名誉に関することであり或る意味において内閣に大きなひびの入ることでありますから、私は断じてかくのごとき重大なることに関して新聞記者諸君にお話したようなことはないのであります。いかなる査問委員会でも、法廷においてでも私は断乎としてこれを言わなかつたということを責任を持つて言い切るつもりであります。(「間違いなし」と呼ぶ者あり)尚某方面の権威に名を籍りて云々ということを閣議の席上でも発言をせられ、虎の威を仮りてとまで仰せられたのでありますが、これは私この機会に一言して置かなければなりません。他の問題ならばいざ知らず、事追放に関する限り遺憾ながらこれは連合軍の進駐によりまして、占領政策の最も大事なものだとして遂行いたしておるのでありますから、関係方面の完全なる了解ある場合には、その指示、表現その他のものによつてやるということは初めから予定せられておることでありまして、これを拒否することは我々のなし得ることではないのであります。日本の置かれた地位というものを考えまするならば、そういう乱暴なる発言は軽々にできない筈である(「同感」「その通り」と呼ぶ者あり)故は審査委員会が一應終了いたしましても、尚手続としては残つておるのでありまして、解決済みであるということを軽々に仰せられるわけに行かんと信ずるのであります。ここに問題の誤解があるのであります。どうか解決済みということは私共は考えておらないのでありまして、況んや関係方面におきましては、追放は裁判ではないから一事不再理の原則は適用されない。何回でも必要があれば審査を命ずる。こういうことを申しておるくらいでありまして、その点につきましては何とぞ誤解のないようにお願いいたしたいのであります。以上弁明いたして置きます。(拍手)
   〔小林英三君発言の許可を求む〕
#59
○議長(松平恒雄君) 小林英三君何ですか。
#60
○小林英三君 この席から質問をいたしたいと思います。簡單に意見を申述べます。
#61
○議長(松平恒雄君) 宜しうございます。
#62
○小林英三君 只今両大臣から私の質問に対しまして御答弁がありました。私は苟くもお二人とも一國の國務大臣でありますから、両方の御答弁をここで信じたいのであります。併し遺憾ながらこの御両所の間には非常なる喰い違いがあることを遺憾に存じます。私はこの問題に対しましてはいずれ片山総理の明快なる御答弁を仰ぎたいと存じます。(拍手)ただ片山哲君を中心といたしまする片山内閣というものは、この閣僚間にこういうような意思の非常な不一致のあるということだけは、私は遺憾に存じます。
#63
○議長(松平恒雄君) 総理大臣の答弁は他日あることと存じます。これにて本日の議事は全部議了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以つてお通知いたします。本日はこれにて散会いたします。(拍手)
   午後五時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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