くにさくロゴ
1949/04/06 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 外務委員会 第5号
姉妹サイト
 
1949/04/06 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 外務委員会 第5号

#1
第005回国会 外務委員会 第5号
昭和二十四年四月六日(水曜日)
    午前十時二十八分開議
 出席委員
   委員長 岡崎 勝男君
   理事 安部 俊吾君 理事 仲内 憲治君
   理事 若松 虎雄君 理事 松岡 駒吉君
   理事 並木 芳雄君 理事 野坂 參三君
   理事 山本 利壽君
      菊池 義郎君    佐々木盛雄君
      塩田賀四郎君    竹尾  弌君
      橋本 龍伍君    守島 伍郎君
      戸叶 里子君
 出席國務大臣
       國 務 大 臣 山口喜久一郎君
 出席政府委員
        経済安定本部副
        長官      野田 信夫君
        賠償廳次長   島津 久大君
        外務政務次官  近藤 鶴代君
        外務事務官
        (條約局長)  西村 熊雄君
        外務事務官
        (管理局長)  倭島 英二君
        逓信政務次官  武藤 嘉一君
 委員外の出席者
        專  門  員 佐藤 敏人君
        專  門  員 村瀬 忠夫君
四月六日
 山本利壽君が理事に追加当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 理事の互選
 郵便振替に関する約定に加入することについて
 承認を求めるの件(條約第一号)
 郵便為替に関する約定に加入することについて
 承認を求めるの件(條約第二号)
 代金引換郵便物に関する約定に加入することに
 ついて承認を求めるの件(條約第三号)
 價格表記の書状及び箱物に関する約定に加入す
 ることについて承認を求めるの件(條約第四
 号)
 賠償と我が國産業水準及び米國の移民法修正に
 関する説明聽取
    ―――――――――――――
#2
○岡崎委員長 これより会議を開きます。
 一昨四日議院運営委員会におきまして、本委員会に理事を一名増加することに決定いたしましたから、ただいまより理事一名の互選を行います。
#3
○仲内委員 その一名の理事は委員長において御指名あらんことを望みます。
#4
○岡崎委員長 ただいまの仲内君の御意見に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○岡崎委員長 御異議なしと認めます。しからば山本利壽君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
#6
○岡崎委員長 次に政府委員がすでに出席しておりますので、賠償とわが國産業水準に関して、当局よりの説明を聽取することにいたします。
#7
○野田政府委員 御質問の内容がよくわかつておりませんので、もう一度伺いたいと思います。
#8
○仲内委員 前々回の委員会で、賠償廳当局から賠償問題の経緯について一應伺つたのでありますが、それに関連して、さらにこの委員会としては賠償工場の現地視察も計画しておる次第であります。それに関連しまして、そういつた委員会としての活動をする前に、この賠償問題が日本の経済再建ないしは産業水準向上の上においてどれだけのウエートを持つのか、重要性を持つのかということを、経済全体の計画にあたつておられる安本の当局から伺いたいというので、私から実は安本長官の出席を要求したのでありますが、きよう参議院の本会議があつて、出席がないということでありますので、係官の方からでもけつこうでありますが、要するにわれわれの知りたいのは、経済九原則ないしはそれに基く今度の昭和二十四年度の予算の傾向というようなものから見ましても、日本の経済再建の方向というものが非常に切りかえられて來ておると思うのであります。これに関連して、その裏づけともなるべき連合國、ことにアメリカの対日援助の傾向がどういうふうにかわつて來ておるのか、またその一つの現われとして、具体的には賠償問題というものがまだ決定しておらないのでありますが、いろいろな変化もあらわれておるようでありまするから、それらの点をどういう点まで織り込んでおられるのか、あるいは向うとの折衝において、どの点までの懇請をしておるのかという、そういつた角度から、要するに賠償問題を、もちろんできるだけ軽減してもらうほど日本の経済再建には有利であるということは、申し上げるまでもないと思うのでありまするが、ただこちらの希望通りに行くものではないのでありますし、連合國の意向とにらみ合せて、経済計画の上ないしは産業水準向上の見地から、賠償問題をどの程度に見通しておるのか、あるいは少くとも希望を持つておるのか、そういう大局的な認識をわれわれも一應持たないと、賠償問題の今後の審査、あるいは委員会としての活動の上において徹底したものであり得ないだろうという意味合いから、安本当局のできるだけ詳細な、具体的な御説明を願いたいと思うのであります。
#9
○野田政府委員 ただいまの質問につきましてお答えいたしますが、安定本部でいたしておる生産計画、その他需給一般の計画につきましては、目下賠償問題としては、別に考慮をしておらぬと申し上げていいくらいになつておるのであります。それは現在賠償指定工場になつておつて、生産を続けておる工場もありまして、ここに賠償廳の方からの御資料もある通りで、この通りと思うのですが、これはもちろん向うの司令部の許可を得てやつておることでありますし、その能力なり生産量は、生産計画をいたしますときに、もちろんこれを計算に入れております。ですからこれを一挙に撤去されるということになりますれば、そこはここにありますように、電力ならば六一%はなくなるということは確実であります。これはたいへんな影響になることは申し上げるまでもないことと思います。もちろん許可を得て使つておりますから、近い將來にこれをどうせよというような指示は、一切われわれの方には來ておりませんから、われわれの方としては、安心してこれだけの施設は計算に入れて計画を立てておる、そういう状況でございます。
#10
○仲内委員 そうすると、現在特別の許可によつて使用をしておる程度で、つまり安本としての経済再建の計画を十分達成できるのか、あるいはまた賠償問題が本筋はまだきまつていないわけでありまするが、そのきまり方によつて、その安本の持つておる計画とどれだけの関連があるのか、その点を伺いたいのです。
#11
○野田政府委員 きまり方と申しましても、ほんとうに撤去する具体計画が示されますれば、すぐその影響は計算できますし、それについてわれわれの方の意見も述べることができるわけです。しかし今はこういう問題は全然ないように聞いておりますので、今のところどうなればどういう影響があるであろうというような計算は、何もいたしておりません。
#12
○並木委員 お尋ねします。最近フイリツピンの方から、賠償について消費物資をもつて充ててもらいたいという要望があつたとかなかつたとかということが、新聞で見えたのですけれども、その実際について御報告願いたいと思います。
#13
○島津政府委員 消費財を賠償の対象にし得るということは、原則的に決定があるのでございまして、とろうと思えばとれるという形にはなつております。しかし日本の関係の賠償では、今日まで一度も問題になつたことがありませんし、これからも問題になり得る模樣がないのであります。全部現存の生産設備というものが対象になつております。そういうような希望が二、三の國からあるようなことは、報道も聞いておりますけれども、正式には何ら取上げられておりませんし、また將來取上げられるようなおそれもないように考えております。
#14
○仲内委員 さつきの安本副長官に対する質問をもう一遍繰返さしていただきたいのですが、先ほど來の御説明は、一應現状においてこれだけの施設を使わせてもらつておるから、さしつかえないというように聞きとつたのでありますが、私が特に聞きたいのは、將來いずれはこの賠償問題がはつきりときまる時期があるかと思います。そのきまり方いかんということは、もちろん想像を許さないのでありますが、安本の立場からは、日本経済の再建計画を立てる上において、どうきめられたら日本の経済の再建計画というものは成立たぬとか、あるいは政府はあくまでもひとつ緩和してもらわなければならぬというような、その見通しといいますか、希望の限度、その点の安本としての意向をお伺いいたしたい。
#15
○野田政府委員 今のところわれわれの考えておりますのは、現在使わしてもらつておるこの設備を、このくらいは少くとも残しておいていただかなければ、復興計画に非常な齟齬が生じることはもう確実であります。ただそのほかに、現在各産業とも設備が老朽化しておる。荒廃時期に入つておるものが相当ありますので、目下保管中のもののうちに、優秀な工作機械類が多分に入つておりまして、たとえば飛行機工場の目下保管設備の中に、日本でいえば一流の工作機械がほとんど大部分入つておると思います。われわれの希望としては、許されればそういうものの解除をしていただければ、機械工業の方面における現在の旧式機械を更改しようと今あせつております問題が、いわば即座に解決する、こういうことも考えております。しかしあの保管設備を解除してもらうということにつきましては、これは賠償廳の方の問題になりますが、ほとんど見込みはなかろうというので、今われわれの方からそういう懇請その他はいたしておりません。
#16
○守島委員 今並木さんから消費財として向うから要求がないかという御質問がございましたが、それに関連してお伺いします。この前どなたからか、設備を賠償として向うに引渡すということになつておるが、設備でなく、その設備からできるものを向うに供給した方が、日本に対しては有利ではないか。こういうお話がありましたが、そこでもしそれが有利であるとすれば、今ドツジ氏が來ていて、日本の生産を高めよう、こういう氣持でおる。そこにつけ入つてさつき申し上げたように、設備からできたものを供給した方が日本のために得であるなら、表向きの交渉はできぬにしても、進駐軍側に日本側の意向として傳えるというようなことはできないかどうか。第一に今申し上げた通り、今まできまつておるように設備を賠償として向うに與えないで、その設備はそのままにしておいて、それからできるものをかわりに向うに供給する。この前の第一次欧州戰爭後のドイツの賠償に使われたように、非常に大きな生産物を出すということは、これは非常に困りますが、しかし設備で供給するのと、値段というか、價値が大体同じくらいのものを供給する。その方が有利であるかどうか。第二にはもし有利であるとすれば、進駐軍側と話合いができないかどうか。この二点をちよつと参考までに聞きたいと思います。
#17
○島津政府委員 生産物の賠償について、いろいろ今まで研究したのでありますが、大体今までの結論では、生産物の賠償は不利というか、不利と申しますよりは非常に困難だという結論になつております。と申しますのは、大体日本が自立して行きますのには、輸出をできる限りたくさんしなければならぬということになつておりまして、生産物賠償として輸出の範囲に食い込むことが、現状ではほとんど考えられないのじやないか。製品としてつくるものは極力輸出するのが建前である。それを賠償として主要な輸出品目に食い込んで行くようなことがあつては、現状からいつてもほとんど考えられないというのが一應の結論であります。
#18
○野田政府委員 初めの点は安定本部といたしましても、望んでおらぬのであります。その理由は、生産物賠償になりますと、結局運轉資材による賠償になりまして、外貨を獲得できる資材を、何ら外貨の獲得なく輸出しなければならぬので、それだけ輸出を阻害します。
#19
○竹尾委員 ちよつとお尋ねいたしますが、賠償問題については、後日総理大臣か外務大臣が御出席なさるという御予定はございますか。
#20
○岡崎委員長 今別に予定はありませんが、御希望があれば、さようとりはからえるかとも考えております。
#21
○竹尾委員 それではちよつと少し大きな問題で、今日御列席のお方に御答弁できますかどうか存じませんが、ひとつ包括的にお尋ね申し上げたいと思います。
 賠償問題は御承知のように、第一次欧州大戰後におきまするドイツの賠償、あの行き方を見ましても、ドイツがあのような大インフレになつたということは、賠償問題をめぐつて、賠償額が非常に多かつたということに基因することは御承知の通りでございます。そういうことを考えると、來るべき講和会議において、この賠償問題というものはきわめて大きな影響を及ぼすと私は思います。そこでこの講和会議を乘り切るために、賠償問題をもちろん有利に解決しなければなりませんが、そういう一つの御抱負と申しますか、見通しにつきましてお尋ね申し上げたい。これをうまく処理する御自信がありますかどうか。
#22
○島津政府委員 抱負を申し上げる立場にはございませんが、見通しのようなことを少し私から申し上げたいと思います。今度の賠償は、ただいまお話のございましたように、前の大戰当時の行き方と違いまして、一方において非軍事化を徹底的にやるということと、日本の経済自立を認めるという二つの原則からなつております。そういうことから、金銭の賠償ということをいたしておりませんので、施設を取立てる。しかもその施設の取立ても、一回取立てることでその賠償はおしまいという考え方をしておりますので、全体の賠償額もおのずから限定されて來るのであります。そういう原則から、今日までいろいろな有力な案が出ておるのでございます。初めの案から比較いたしますと、まだ公式にはなつておりませんが、ストライク案でありますとか、ジヨンストン案でありますとか、そういうような最近の有力な勧告になつて参りますと、原則は同じでありますが、日本を自立させるためにはどのくらいの産業規模が必要であるかという点を具体的、合理的に計算して参りまして、從つて日本に許す産業水準が相当に高いことになつておるのであります。現在のところそういうような新しい案は、何ら公式のものになつておりませんで、公式のものは極東委員会の中間計画だけなのであります。かりに極東委員会の中間計画程度のものが最後的に全部とられるといたしますと、これは相当深刻な影響があるのであります。それにいたしましても、前の大戰のあとの賠償と比べますと、額から申しましても比較にならないほど合理的なものと考えられるのであります。まず見通しといたしましては、非常に深刻な事態にはならぬのではないかと考えております。
#23
○岡崎委員長 他に御質疑はありませんか。
    ―――――――――――――
#24
○岡崎委員長 御質疑がないようでありますから次に郵便振替に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、郵便為替に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、代金引換郵便物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、價格表記の書状及び箱物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、以上四件を一括議題といたします。前会に引続き質疑を続行いたします。――別に御質疑はありませんか。
#25
○仲内委員 前会の委員会以來、大体質疑も出盡したようでありますから、これで質疑を打切つて、討論を省略して、ただちに採決に入らんことを望みます。
#26
○岡崎委員長 ただいまの仲内君の動議に御異議はありませんか。
    〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
#27
○岡崎委員長 御異議なしと認めます。
 それでは郵便振替に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、郵便為替に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、代金引換郵便物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、價格表記の書状及び箱物に関する約定に加入することについて承認を求めるの件、以上四件を一括して採決いたします。
 四件をいずれも承認するに賛成の諸君の御起立を求めます。
    〔総員起立〕
#28
○岡崎委員長 起立総員、よつて四件は承認を與えることに決しました。(拍手)
 なお衆議院規則第八十六條に基き、議長に提出する報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいのでありますが、御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○岡崎委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。
#30
○近藤(鶴)政府委員 郵便振替に関する約定、郵便為替に関する約定、代金引替郵便物に関する約定、價格表記の書状及び箱物に関する約定、四つの案件が本委員会に付託されまして以來、外務委員会といたしましてはもちろんのこと、逓信委員会との合同審査をも進められまして、まことに御熱心なる御討議御研究の結果、ここに御承認をいただきましたことを所管省といたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。
    ―――――――――――――
#31
○岡崎委員長 次に米國の移民法改正の問題につきまして、外務当局より説明を聽取いたします。
#32
○佐々木(盛)委員 アメリカの移民法の改正の問題につきまして、外務当局より御説明を求めたいと思います。海外電報の傳えるところによりますと、アメリカの下院におきまして、去る三月の一日に移民法改正に関するジヤツド案なるものが可決されまして、上院に廻付したということであります。中華民國であるとかインド、フイリピンを除く日本、朝鮮、シヤム、インド支那、その他のアジア太平洋地域からのアメリカへの移民が今日禁止されている現情でありますから、このジヤツド法案によりますと、アメリカの移民法、國籍法におきまして規定されておりますこれらのアジア諸民族に対する人種的な差別待遇を撤廃するものでありまして、われわれはそういう点からして、この法案の今後の行方に対して非常な関心を持つている次第であります。すなわち從來アメリカと東洋との間に横たわつておりましたいろいろな好ましからざる感情の一つに、アジア人排斥的な移民法があつたことは、われわれは遺憾ながら認めなければならないところであります。從いましてこの人種的な差別條項の廃止によりまして、われわれアジア人の移民に対しましてもアメリカ市民権が與えられ、ヨーロツパからの移民と原則的には平等の待遇を受けることになりましたならば、單にわれわれの抱いておりました好ましからざる感情を解消するのみならず、進んでわれわれの対米友好関係の増進の上にも重大なる役割を果すものと考えますので、こういう見地から、私は今日外務政府委員の御出席を願つて御説明を求めたいと思つたのであります。まず第一には、ジヤツド法案の下院通過の報道が傳わりまして以來、たとえて申しますと、私の選挙区からだけでも、私のもとに依頼されました同法案の調査であるとか、あるいは移民希望者の質問等が相当な数に上つておるのであります。おそらく外務省につきましてもこれと同樣、あるいはこれ以上のことがあると思うのであります。從いましてこの際これらの人々の参考のためにも、この法案の内容であるとか、あるいはその見通し等について、必要なる点につきましては詳細に御説明を願いたいと思うのであります。
    〔委員長退席、若松委員長代理着席〕
 次に第二には、このジヤツド法案は差別的な移民制限を撤廃せんとするものではありますけれども、しかしながら移民割当の原則を根本的にかえようとするものではないようであります。日本人に対しましても、わずかに百八十五名の割当数に過ぎないといたしますれば、これでは現在アメリカにおります日本人の家族などを呼び寄せますにも足らないぐらいな数字であろうと思われるのでありますから、実際に新しくアメリカへの移民というようなことは、ほとんどできないとわれわれは考えるわけでありますが、いろいろ調べてみますと、一九四〇年の國勢調査によりましても、アメリカ本土及びハワイにおいて、人権的差別のゆえにアメリカに帰化することのできない者が、大体八万八千名くらいのうちで、日本人の数が大ざつぱに言つて実に八万五千名くらいというような数になつておるようでありまする。そういたしますると、これらの日本人たちは將來どういうふうなことになるだろうかという点などにつきましても、非常な関心が寄せられておる点でありまするので、それらの点をもひとつ考慮に入れられまして、この際ジヤツド法案をめぐるアメリカの移民法改正の問題に関連いたしまして、なるべく必要な点につきましては詳細なる御説明を煩わしたいと思うのであります。
#33
○倭島政府委員 今御質問のジヤツド法案についてのお答えを申し上げます。今御質問の中にもありましたように、ジヤツド法案は下院を通過いたしまして上院の方へまわつたという報道、政府といたしましてもその最初の原案は一應資料を持つておりますが、下院を通過いたしました際どういう修正を受けたか、それから現在上院にまわつておりますが、われわれの承知しておりますところでは、まだはつきりその委員会で取上げられておるというところまで行つていない模樣であります。從つて現在のところ下院の正修がどの程度までであつたか、大体原案からあまり重要な修正はなかつたものとわれわれ心得ておりますが、その修正の点だとか、ごく最近の現状はまだわかつておりません。しかしながら大体の法案の趣旨としてはわかつておりますので、その点をお答え申し上げようと思います。
 御承知の通りこのジヤツド法案の趣旨は、米國の國籍法と移民法とに関する問題を二つ取上げておるわけでありますが、一つは帰化を許すという問題。一つは移民を許すという問題でございます。帰化の点に対しましては、一九四〇年の國勢調査の結果によりますれば、日本人が約八万五千米國におりますが、このジヤツド法案が通過すれば、この八万五千の日本人は帰化によつて米國の市民権が獲得できることになる次第であります。從つてこの帰化の問題は、ジヤツド法案が通りまして、その手続を経れば米國市民になれると考えております。
 次は移民の問題でございますが、移民につきましては、從來現行の米國移民法では、日本人に移民の資格がないということは御存じでございますが、特に現在の移民法では、ここへ小さな國を掲げておきましたが、東経六十度、西経百六十五度、南緯二十五度、こういう太平洋三角地域という一種の三角的な地域が区切られております。この中には、大体西の方はアフガニスタン、パキスタンの方から、インドも入りまして日本、南は濠州が入つておりますが、濠州は移民の問題では抜けております。この中で、移民の問題で現在の移民法で片づいておりますのはインドと中國とフイリピンで、そのほかの國が從來移民の権利がないということになつておる。それが今度のジヤツド法案で救われることになるわけであります。お手元にジヤツド修正案による入國可能推定外國人一覽表というのを差上げておりますが、その中でその区分をちよつと申し上げますと、非移民と移民とございまして、非移民の方は從來とも移民のことは全然問題ない。そこにある六つの種類の人が向うへ行けた。それから移民の中に非割当移民と割当移民という二つの項がございますが、非割当移民と書いてありますうちにイロハニホとあります中で、現在の移民法ではロとニとホは入國できたわけであります。イとハに問題がございまして、これが入らなかつたわけでありますが、今度ジヤツド法案が通りますと、このイの米國居住米國市民の配偶者及び二十一歳未満の未婚の子、これが三角地帶にある日本にも帰化権が認められるということから、日本人にも適用があることになります。それからハの接讓國その他中南米諸國に出生した者及びその妻、十八歳未満の未婚の子、このハが、今度はわれわれの今承知しておりますところでは割当移民の中に入つて、これも許される。從つて非割当移民という各項の中で、從來イロハニホとありましたイとハが日本側に適用なかつたのが、イもハも適用の中に入つて來る、こう存じております。割当移民の関係におきましては、一九二〇年の米本土在住中のその國の出身者数というものに一%の六分の一をかけた数が入國を許されるという規定になつておりまして、わが國といたしましてはそれが百八十五名に相当する、この百八十五名が今度入國可能になつてくるわけであります。この百八十五名の中には、そこの図に書いておまきしたが、優先割当、合衆國に出生または居住する者とありますが、その中で、米國におる市民のお父さん、お母さん、夫、それから永住する者の妻、及び二十一歳未満の未婚の子というのが大体優先割当を受けるように認められます。そしてその他の者がさらにその割当に含まれる、大体そういうようなふうに見ております。ただここにひとつ御説明をつけ加えておきたいと思いますのは、たとえばこの百八十五名の中にどういう人たちが入るかというと、その中の一例といたしまして、たとえば米州の中におきましても、南米のメキシコなり、カナダに生れますと、生れたことによつてその土地の市民権、國籍を得るわけでありますが、その國籍を得た人がアメリカへ移民をしたいというときに、やはりこのいわゆる三角地帶に入つており國の者は、その血筋が半分入つておれば、その血筋にあるということで、やはりこの百八十五人の中に入つて來るという規定になつております。從つて單に日本本土からアメリカに行くという者の中に、普通の日本人も入りますし、また日本の國内に生れた外國人、これもやはり入るだろうとわれわれ解釈しておりますが、のみならず、今申し上げましたほかの國、たとえばメキシコやカナダなんかで生れて、その國籍をとつた人も、日本の血筋が半分入つておれば、やはりこの百八十五名の中に計算せられる。もともとの提案された法案の趣旨を調べてみますと、大体そういうふうになつているように解釈できるのであります。一應われわれの今この法案について存じておるところを御説明申し上げた次第であります。
#34
○若松委員長代理 ただいまの政府委員の説明について、御質疑はありませんか。
#35
○佐々木(盛)委員 ただいまの御説明で、在米しておりまする八万五千ばかりの日本人で、從來帰化を希望しておつた者が、このジヤツド法案が通過いたしまするならば、これが全面的に可能になつて來るということはわかつたのでありますが、次にアメリカに居住しております米國市民の配偶者、あるいは二十歳未満の子供、並びに接壤國であるその他の中南米諸國に生れた者、その十八歳未満の子供というようなものは非割当になつておりますので、百八十五名とは別個にこれはほとんど制限なく入れるということになるのでありましようか。それらの点につきましてちよつとお伺いいたします。
#36
○倭島政府委員 このイの点につきましては、実はまだこれが割当の中に入つて來るか來ないか、今まで調べました点については最終的にはつきりしない点もございまして、これが割当の中に入るか入らないか、あるいはわれわれの今までの調べでは割当外じやないかとも見られる点もございますが、そこにイと書いてあります点ははつきり申し上げかねると思います。さらにもう少し資料を得まして、研究をしてはつきりさせたいと存じております。
 それからハの点は、從來の研究では、割当の中で認められる。この点はさつき例を上げて申し上げました点で、この三角地帶以外の所ではその血筋、血統の問題が入つて参りませんから、非割当移民の中に入るのでありますが、この三角地帶の関係は依然生きておりますので、この関係からこれはやはり割当の中で考えられるとわれわれは今解釈しております。
#37
○佐々木(盛)委員 そういたしますと、さしあたつて今かりにジヤツド法案が通過いたしたといたしますならば、この百八十五名の日本人の割当移民というものはどういう人によつて占められてしまうのであるか、そういう点の大体見通しがありましたら御説明を願いたい。たとえて申しますと、一般の希望者がこの百八十五名の中に含まれる可能性は、ほとんどないのじやなかろうかと考えられるわけですが……。
#38
○倭島政府委員 実はその問題につきましても、はつきりした見通しはまだ立てにくい状況でありますが、そこに割当移民という中に、優先割当のaとbとを書きわけておきましたが、一應現在米國の市民であるお父さん、お母さん、あるいは夫、それからbのところの妻及び二十一歳未満の未婚の子、こういう連中は大分多いだろうと思いますので、この関係が優先して考えられると、その次にあります普通割当に入る関係は、やはりすぐにそれが移民の目的を達し得るというところにはなりにくいのじやないか、こう考えております。
#39
○安部委員 ちよつと伺いますが、この非移民(從前通り)政府の官吏、家族、從者、これは問題ありませんが、二項の一時的旅行者(用務、視察、見学、遊覽、治療等)でありますが、用務をもつてアメリカに一時的に旅行した。たとえば在米の夫の所に日本で結婚したその妻が用務をもつて來ました場合に、一箇年くらいの滯在が必要な場合、たとえば妊娠した場合、どうしても一箇年滯在したいという希望を申し述べましても、從來は子供が生れるのだ、ことに妊娠した場合には、その子供がアメリカに出生するので、当然アメリカの國籍を得ることになるのであつて、なかなか滯在期間の延期を許可しない場合があつたのです。それから視察見学にいたしましても、二年くらい滯在しなければその目的を達することができない場合においても、一箇年くらいでなかなか延長しないということもあつたのであります。その点については、ジヤツド修正案においてどういうふうな方法をとるかということを伺いたい。
 それから第三番目の通過者、これはたとえてみれば、現在カナダもしくはメキシコに滯在する者に、その妻女が訪問する、あるいはまた結婚してメキシコの政府の許可を得て入國する、そうしてメキスカリであるとかエンセナタであるとか、きわめてアメリカの領土に近接した土地に行く場合には、アメリカの領土を通過して行くのが便宜である。ところがマンザニオからまわつて行くとかいうふうな場合には非常な危險もあるし、汽車の不便もあるのであります。そういう場合には、順序として日本の長崎なり神戸なり横浜なりに滯在しておるアメリカの領事館から査証を受けるのでありますが、なかなかその査証を從前にはくれなかつた。そういう関係でアメリカの領土を通過することができずに、わざわざ向うの方にまわつて、二週間で通過できるものが一箇月もかかつて通過しなければならぬというようなことがしばしばあつた。そういう場合には寄港地のサンフランシスコなりサンペドロなりで労働大臣――現在は司法大臣でありますが、そういう長官に電報を打つて事情を述べれば、別に査証がなくても通過を許すということがあつたのであります。それも非常にうまく行くこともあればなかなか長くかかることもあり、通過者が非常に困難を來したり、また非常に便宜であつたということもありました。今度のジヤツド修正案によればそういうことはどういうふうに解決するか。
 それからもう一つ海員の問題でありますが、海員がそこに寄港して、その船がそこに任務を終えてほかへ行かない場合には、海員が一時的に上陸する。そうすると六箇月なり八箇月なり、他の船に乘る機会がなければしばらく米國に滯在するが、海員としてあまり長く一定の期間以外なお滯在しておれば、本國に送還するということもしばしばあつたのであります。こういうことに関する期間の問題、そういうことはどういうふうに解釈するものであるか。
 第六番目の國際商人であります。この國際商人というものは非常に狹義と廣義の解釈があるのでありまして、たとえばインターナシヨナル・マーチヤント、いわゆる國際商人の定義は何か、こういう問題でありますが、戰爭前の日米通商條件によれば、商人という定義がゾーズ・フウ・エンゲージ・オン・トレード、すなわち商業に從事した者はトレーダーなんだ、こういうような点にいろいろ重点を置いたわけでありますが、トレーダーという言葉はウエブスターの辞書によつても、それは何でもよいから商賣をやつた者はトレーダー、必ずしも國際商人でなくてもよいのだ、すなわちただ一回だけ商行為をやつた者でもトレーダーだ。そういう点から言つたならば、アメリカに現在おつて小さいホテル、いわゆる旅館業をやつた者もこれは商人である、また荒物屋をやつておつた者も商人である、豆腐屋をやつておつた者も商人である。そういうふうなことになれば、日本通商條約によつてそういう者は商人として入國の資格がある。こういうような建前でいろいろ移民当局に抗議を申し込んで、旅館経営者の細君が六箇月の滯在期間で入國した。その後インターナシヨナル・トレーダーという條項によつて、それは商人であるから、資格を変更して長く滯在することを要求した。こういう場合においてしばしば労働大臣もしくは司法大臣より許可になつた。そういうふうにトレーダーというものは廣義に解釈して、必ずしも國際貿易に從事した者でなくてもいい。アメリカの單なる國内商業に從事した者でも、日米通商條約によつて永久に滯在することができる。こういう解釈があつたのでありますが、ところがそうなれば移民法というものは全部無効になるようなおそれがある。あそこで八百屋商人であるとか、あるいはまた農業に從事した者で肥料商をやつておる、そういうような者の妻女がどんどん來るようになればこれは困るというので、いろいろな法律をつくつて狹義に解釈するとすれば、いわゆる國際商人でなければならぬということがあつたのでありますが、しかるにそういう法律は無効だ、なぜなれば日米通商條約というものはアメリカの憲法、いわゆる最高の法律と同樣なものであつて、最高の法規であればそれに矛盾した法律は一切無効なものである、こういう建前から抗議を申し込んで、そうしてそれが遂に解決しなかつたようなわけであります。この問題については國際商人ということをどういうふうに解釈するか、この問題が非常に重大な問題でありまして、これが狹義に解釈せられるか、廣義に解釈せられるかによつて日本人で入國する者の数が非常に多かつたり少かつたりするのであります。そういうようなわけで、非移民についてはいろいろ問題があるのですが、その問題についてジヤツド修正案の法の精神はどこにあるかということを御質問したいのであります。
 さらにまた非割当移民でありますが、この問題で米國市民の配偶者とありますが、米國市民でありましても、その後日本に帰つて來て、アメリカに在住する日本人と結婚した、こういう場合には米國市民の配偶者というのは夫になるわけであります。妻は米國市民であつて、夫は日本人である。しからばそういう場合において、その配偶者の夫が正当な法権を持たず、領事館の査証を持たずにひそかに入國した。そういうことで送還せられた者が今別居して、妻あるいは子供がアメリカにおるが、夫が日本におつてアメリカに帰ることができない。こういうような者はどういう方法をとるか、これは問題が起りますが、その点。
 それからまた再入國者でありますが、再入國者でも、たとえば日本に参りまして、アメリカに帰つて行く意思があつたけれども、それが病氣あるいはきわめて近親者の病氣のために長く滯在しておつた。普通は一箇年以内に帰つて行かなければならぬが、それが帰つて行くことができなかつたという場合には、その人が入國するということは、再びアメリカに帰つて行つて永住権を継続するという意思があつて、もうアメリカを切り上げて帰つたのではないという意思の表示によつて行くことがしばしばあつたのでありますが、こういう者は六箇年あるいは九箇年日本におつても、再びアメリカに入つて行くことができる。そういうこともしばしば判決例にあつたのでありますが、この点はどういうふうに解釈するか。
 それからまた布教師、大学專門学校教授――布教師という意味でもキリスト教の宣教師、牧師、いろいろありますが、最も短期な教育を受けた天理教の布教師、こういう者は六箇月くらいの教育で布教師になる。そういう者が布教師としてアメリカに渡航した場合においては、アメリカの在日本のアメリカ領事館がなかなか査証を與えない場合がある。天理教の教師というものは、他の佛教の開教師あるいはキリスト教の宣教師というものと同樣にみなしてはいかぬ。それは二箇年以上布教に從事したものでなければいかぬということでありますが、教会を持つて布教に從事したものであるか。あるいは教会を持たずに、天理教のように田舎に一家を持つて、そこを教会として布教したのか。それも継続的にやらず、一週間に一回なり、一月に二回やるものを、はたして布教師として見るかいなか、それも問題であります。
 それから十五歳以上の学生というのでありますが、これは今までは十五歳以上とは規定しておりまするけれども、大体学生というものは專門学校を卒業せんければ学生とみなさないというようなことが、ほとんど内規のようなことになつておりまして、なかなか渡航は困難であります。十五歳であれば中学程度でありますが、それもなかなか渡航困難である。それからまた向うに行つて、たとえば費用ですが、アメリカにおつて学生が学校に行くには、相当の費用がかかる。現に現在のような為替相場であれば、アメリカに行つてアメリカの学生と同樣に生活し、学習するのに非常に金がかかる。その場合において、今日本で言う学資のために何か働くとかいう場合には、これは労働したものとして送還できる。いわゆる学生ではないのだ。片手間に働いても、アルバイトのようにちよつと働いても、これは苦学生で学生ではないというので、送還になることがたくさんあつたのであります。また授業料を納めることができない場合にも、ちよつと学校を休んだ場合にも、学生の資格というものは認めない。そこで日本に帰らなければならぬというような事件がたびたび起つたのであります。こういつた場合にどういうふうに処置するか伺いたい。
#40
○倭島政府委員 実は表をこしらえましたところ、少し誤解があると思うのでございますが、今いろいろ御指摘になりましたような問題は從來ございまして、現在の移民法ではいろいろ今の御指摘の点、またその他たくさんあるわけでございますが、このジヤツド法案にはそれは一切ふれておりません。從つて実は御了解いただくのに便利かと思つて、現在の移民法の関係の各條項を書きあげてこしらえたのがこの表であります。從つてこのジヤッド法案の中には、ここに書きあげましたような一々の項目はあげてないのであります。ジヤッド法案は先ほど御説明申し上げましたように、一つはこの三角地域におる國の者に帰化権を認めるということと、それから移民のコーダの形式をこの三角地帶以外のところの國々に適用しておると同じ形式で認める。それは大体百八十五名になるという見当のわけであります。この帰化と移民との二つの、從來差別待遇にあつたところを改正するということだけがこの法案の趣旨でございまして、そのほかの移民法の点には触れていないのであります。從つて御了解いただくのに便宜かと思つて表を少し書きあげたわけでありますが、今御指摘の点のほとんどすべての問題はジヤッド法案の中に書いてございませ。今後またさらに実際問題において、そういう從來の問題の点は、あるいはそれが実際上だんだんと明らかにされ、また改善されて行くだろうと思います。
 なおこの際につけ加えて御説明を申し上げますと、このジヤッド法案は御承知の通りに下院を通つただけでありまして、上院の方でもまだはつきり取上げておらない。その程度の案であります。さらにこの法案が上院、下院を通りまして法律になりましても、占領下の日本にはどういう適用になるかという問題も現在のところまだ全然不明であります。現在の渡航の問題は、御承知の通りに全然移民法の関係とは、別に、司令部の許可によつて外に出ておるわけでありますし、その許可の標準も條件も、まだ政府の方には示されておらない状況で、許可を得た者に限つて外に出れるという程度でございます。さらにまた最初に申し上げましたように、われわれの現在入手しております資料というものは、ごく最近までの修正その他についてもまだ不十分な点もございまして、さらにつけ加えられておるところもあるかと思いますが、大体帰化の問題、移民の問題、その差別待遇になつておつた点だけを改めるという趣旨にはかわりないかと存じます。
#41
○安部委員 大体御説明でわかりましたが、ただ御注意を煩わしたいのは、日本人は百八十五名というのでありますが、きわめて少い数字でありまして、單に割当移民が許可された。人種的偏見が撤廃されたというような問題で、それはわれわれ喜びにたえないというだけで、実質的には入國者が減つたようなことでははなはだ困るのであります。割当移民が百八十五名許可された、また在米の日本人が帰化権を與えられたということはけつこうでありますが、なおその他の非割当移民の問題も、このジヤット修正案が提起されて、それが上下両院を通過される、そしてそういうような精神に基いてきわめて日本に有利に解決するように、特に当局の御努力を希望いたします。私の質問はこれで終ります。
#42
○山本(利)委員 このことに対して、質問以外の私の意見を申し述べさせていただいてよろしゆうございますか。
#43
○若松委員長代理 意見はあとにまわしていただきます。ほかに御質疑はありませんか――ほかに質疑がないようでありますから。山本君意見を述べてください。
#44
○山本(利)委員 この移民問題は、今後の日本にとりまして非常に重大な問題でございまして、できるだけ諸外國においてもわれわれの移民を受入れてもらうことにし、あるいは國内よりの移民に対しては出て行くように奨励する必要があるかと思うのでありますが、こういう情勢をつくりますについては、ただ從來のような外務省あるいは政府当局の御努力にのみすがるというのでは非常に弱いのでありまして、國民こぞつてこの方面に輿論を喚起しなければならぬと思うのであります。ことにアメリカ等におきましては、輿論の國でありますので、こういう法案が民間に響くと思うのでありますが、この外務委員会の使命の一つとして、外務当局を助け、あるいはその他の情勢を助長するようにお互いに努力してほしいと思うのであります。ついてはこの移民問題に関して、実は今議会に緊急質問をいたしたいと思つて、すでに通告をいたしておるのであります。実は私がこの外務委員会に加えていただきましたのはごく最近のことでありまして、先般初めて出席させていただいたようなわけでありますので、前から外務常任委員会の委員であるなれば、一應こちらの方へお諮りしてからすべきであつたかとも思うのでありますが、先ほどのような趣旨から、私は非常に重大な問題だと考えて、犬養総裁、幹事長並びに政調会長等にも諮りまして、この問題に関する緊急質問をすることにいたしておるのであります。
 その大体の要旨は、戰後アメリカ並びにその他の連合國がわが國に與らえれた援助に対して感謝し、しかして現在の日本の領土の狹小なることと、人口の過剩に苦しんでおることを述べ、こういう際に米國においてジヤッド法案なるものが提出され、それが下院を通過したことは非常にわが國民の喜びであり、感謝にたえぬことである。この法案によつて、たといわずかな人しか入國できないにしても、精神的に米國というものが日本人を他國民と平等に扱うという公平なる態度に対して、われわれが非常に感謝しているということを述べたいのであります。そうして戰前におけるかの日本の移民の状態を述べて、その各地において日本人がいかに貢献したかということ、並びに、それにもかかわらず日本人が北米等において排斥されたのは、非常に同化しにくい國民であるということ、並びに日本本國が軍國主義的な國家であるというような点が災いしたように思いますので、この点ポツダム宣言受諾以來、日本においては徹底的に民主化をはかり、文化國民たるに努力しておる。ことに日本の六・三制問題等については、アメリカの教育使節團の指示に基いて、苦しい中にも全力をあげてわれわれは文化國民をつくることに努力しておるのであるから、ぜひこの際この法案の通過を見たいものである。ことに私はアメリカにおきまして、足かけ六箇年の間でありましたが、四つばかりの学校に在学したことがございます。その間非常にいい印象を受けておりますので、この点を述べて、必ずや上院は通過するものと信じておりますけれども、聞くところによると、まだ上院においては、その付託される委員会もはつきりきまつておらないうよな状況と聞いておるので、非常に案じておるが、こういう点に対して当局はどのような情報を持つておられるか。さらにわれわれ國民全体が、ことにこの衆議院の壇上からわれわれが感謝と希望を述べていることを、何らか適当な機関を通じて米國側に傳達される意思があるかどうかということを私は質問したいと思うのであります。このことによつて、答えといたしましては、先ほどからのことを要約した点、並びにできるだけGHQその他に向つて、こういう声があるということを傳えようと思うという簡單な御答弁をいただければけつこうなのでありますけれども、これがやはり一つの國民外交ではないかと思います。ことに私のこういつたような質問をしたという要点を印刷いたしまして、米國における出身学校等にも送にましたならば、一人でも二人でも日本人に対する好感を呼び起し、輿論の喚起に役立つのではないか、かように考えますので、この委員長並びにその他各位に御相談をせずに、私が緊急質問としてこういうものを出しているという点を、ひとつ失礼ではございますが、御了解を願いたいと感ずるのであります。
#45
○並木委員 山本委員からのお申出、しごくごもつともだと思うのです。本会議における緊急質問は、特にわれわれ当該委員会の御了解を求められなくても、しかるべき筋を通しての手続がありますから、その方で取上げられれば当然できると思うのです。同時に、われわれとしても、外務委員会で何もしていないから、そういう緊急質問が本会議で出るのだ、こういう意味になつてきても非常に困るので、本会議の質疑應答が終り次第、吉田外務大臣を出席させて、われわれ外務委員としてもいろいろ聞きたいこともあり、また意見も述べたい。委員長としてはその方の手続を進められんことを希望しまして、ただいまの山本委員の御発言を了承いたしたいと思います。
#46
○若松委員長代理 了承いたしました。
    ―――――――――――――
#47
○若松委員長代理 この際近藤政務次官から発言を求められておりますから、これを許します。
#48
○近藤(鶴)政府委員 前会の外務委員会におきまして、若松委員から比島戰犯の一人といたしまして、中村ケースに関しての御質問がございましたので、それにつきまして簡單にお答え申し上げたいと思います。
 いわゆる中村ケースに関しましては、全被告が死刑の判決を受けましたために、被告の家族はもとより、一般が非常に刑が重いという印象を有したのだと思うのでございますが、特にその中でも六名に関しましては、比島戰犯事務所の弁護團といたしましては、完全なアリバイが成立したというので、確信をもつて証言を提出したのでございますが、それが法廷の採択するところとならなかつたということでございます。判決後になりまして、本件を担当いたしました中村弁護士が再調査を行い、嘆願書を当局及び大統領あてに送り、また関係係官等を通じまして、その再審、減刑、あるいは釈放方を訴えるなど、あらゆる努力を行つた趣でございます。なおまた家族からも多数の嘆願書が出ておりまして、それぞれ通達されておるように聞き及んでおるのでございます。また今般マニラに派遣せられました中村弁護士は、本件弁護事務を、比島戰犯調査調整事務所において担当した者でございますので、何かと便宜も多く、適当なる行動を現地においてとるものと期待いたしておる次第でございます。現在本件は大統領のもとにおいて最後の審査を受けておる段階と聞き及んでおりますが、事務当局といたしましては、機会あるごとに裁判の公正なる進展、日本側の立場その他に関しまして、総司令部当局及び比島関係当局者に懇請いたしまして、その理解に努めておる次第でございまして、この刑の減刑を、私どもといたしましても心から祈念いたしておる次第でございます。
    ―――――――――――――
#49
○佐々木(盛)委員 ただいま山本委員からのお話もありまして、山本委員がこの移民法の問題に対して、本会議におきまして総理大臣の所信をお聞きになるということは、私はまことに時宜を得たけつこうなことだろうと考えるわけでありますが、しかしまたいわゆる新憲法下におきまする國会法というものが、委員会中心制度をとつておることから考えましても、この外務委員会を権威あらしめる点から申しましても、外務委員会には外務大臣の出席がないために、やむを得ずこういう問題を本会議に移して質問をしなければならぬというようなことになりましたのでは、われわれといたしましてもはなはだ不本意な点でございまするので、吉田外務大臣が病後のことでありまするので、決してむりを申すわけではございませんが、可能な限り委員会を尊重されまして、本委員会に御出席を賜わらんことをお願いしたいのであります。なお移民問題に限らず、諸般の重大なる外交に関連する問題につきまして、われわれも吉田外務大臣からいろいろ御意見を承りたいと考えておることがたくさんあるのでございますので、できる限り近い機会におきまして、本委員会に出席されんことを、委員長においてとりはからわれんことを特にお願いいたします。
#50
○若松委員長代理 佐々木君の言うことは、とくと了承いたしました。
#51
○山本(利)委員 ただいま御発言がありましたが、委員会を尊重するということについては、私毛頭異存はございませんが、こういう問題は、たとい委員会で一應練られた問題でありましても、本会議の議場においてすることが、反響が非常に大きいものでありますから、特に外務大臣が御病氣であり、おさしつかえがあるような場合におきましては、副総理あるいはその他適当な方から御答弁を願うにいたしましても、こういうことは傍聽者も多くおり、一般にみな公開の会議において言うことが一つの手であると考えます。
#52
○若松委員長代理 とくと了承いたしました。
    ―――――――――――――
#53
○野坂委員 近藤政務次官にちよつとお聞きしたいのですが、これは一週間ほど前でしたか、読賣新聞にINSの報道として、近藤次官がこういうことを言われた、今原文を持つておりませんので、記憶から申しますけれども、第一の点は、日本には武力がない。こういう状態のもとでは、太平洋同盟あるいは太平洋條約とか、こういうものができるといううわさがあるので、これに日本は参加して保護してもらつたらどうか、これが第一点。第二点は、まだ講和はないけれどもこういうようなものができれば、これに日本は参加することができるだろう、こういうことを記者に言われたというニユースが載つておつたので、私の今言つたことは正確ではありませんけれども、こういうことは非常に重大な問題で、今大西洋條約が問題になつておるとき、また二、三日前の新聞でも、インドからも太平洋條約云々ということが出ておりますので、外務政務次官という方がこういうことを発言されるについては、相当重大な問題であると思いますので、第一点にお聞きしたいのは、これはいわゆる個人の資格で言われたのか、あるには政務次官として言われたのか、また政府においてもこうした問題について討議があるのか、あるいはこういう同盟とか、條約ということが今どういうふうに進行しているのか、こういうような内容の問題についてお聞きしたいと思います。
#54
○近藤(鶴)政府委員 せんだつて読賣新聞に報道されました記事は、実は会見いたしました内容とはよほど趣がかわつているように思うのでございますが、まず第一に申し上げたいと思いますことは、あの場合は、特に今講和條約がまだ締結されておらない日本として、こういうものに対しての意見を出すべきでないということも断つたのでございます。かつまた私個人の資格においては話すけれども、外務政務次官として話すことはできないということもはつきり断つたのでございますが、会見いたしました場所がたまたま政務次官室であつたということと、何と申しましても政務次官というその役がございましたために、十分その点が了解していただけなかつたのはたいへん残念だと思います。まあ第二世の方でございましたので、通訳拔きの話をいたしまして、別に自分自身としても不安を感じなかつたのでございますけれども、いよいよそれが記事になつて、そうして訳文されたのを見ましたときに、もう少しこの辺のところを強調しておけばよかつたということに、あとになつて氣がついたようなわけでございます。從いまして絶対に法的な立場において意見を吐いたのではなくて、ただ單に感想を求められましたので、婦人議員の資格において、太平洋條約といつたようなものに対しての私の希求、願いと申しますか、希望と申しますか、そのようなことを話したのに過ぎなかつたのでございます。私が議会生活を始めるようになりましてから、婦人の立場において最も強く考えますことは、あるいは夢のようなことであるかもしれませんけれども、何とかして世界の平和をつくり上げたいというこの願いでございます。おそらくはただいまの日本女性といたしましては、たとい戰勝國でございましようとも、戰敗國でございましようとも、婦人という立場において戰爭に対する嫌惡の情は最も熾烈であつて、この時代の婦人がこぞつて手を取合うことによつて、世界の永世の平和というものをつくるところの義務があるのではないかということが私どもの念願なのでございます。ただいま日本の立場といたしましては、御承知の通り戰爭を放棄いたしまして、武力は全然ないのでございますが、しかし一面において、世界情勢が非常に險惡であるということ現実の立場に立ちましたときに、戰爭を放棄した日本が、しかもスイスのようにりつぱに永世中立國としての歴史も傳統もない國が、どういう形において守られるのであるかということが、絶えず私の懸念するところであつたために、たまたま太平洋條約といつたようなものが締結されて、その締結國、同盟國の加護によつてこの武力のない、しかも中立國ということがただ一方的であるというこの日本の立場が救われるのではないであろうか、守られたいというその意味において太平洋條約といつたようなものを念願するということを、話したように記憶いたしておるのでございます。
#55
○野坂委員 個人の御意見としておつしやつたということですが、これを根拠にしてもう少しお聞きしたいと思いますけれども、それは今太平洋條約とか同盟とかおつしやつたが、これは一体どういうふうな内容のものか、あるいはこれが実際上何か進行しているのかどうか、こういう点について、個人としてでいいですから、お答え願いたいと思います。というのは、すでに今発表された御意見の中にも、こういう同盟がつくられれば日本は参加した方が平和が守れる、こういうような御意見だから、すでに太平洋條約が結ばれることを仮定された上で言われております。仮定でもいいが、太平洋條約というようなものがつくられるということが今進行しつつあるのかどうか、これをまずお聞きしたいと思います。
#56
○佐々木(盛)委員 ただいま野坂君の質問に対する近藤政務次官の答弁によつて明らかなように、この間の新聞に出たことは、ことごとくが近藤さん個人の意見であるというお話であります。もしも外務当局におきまして、太平洋同盟についての公的なものであるというならば、私もここで御質問申し上げたいことがたくさんあります。しかし本委員会はあくまでも公的な立場に立つて開いておりますので、ここで個人の資格についての問答をされることをわれわれとしては好まない。從つてさようなことは本席においてはやらないようにお願いしたいと思います。
#57
○野坂委員 これは西尾流の個人という言葉を思い出すのですが、こういうことはここで議論しても意味はないと思いますけれども、少くとも政務次官という重要な地位におられる近藤さんが発表される意見として、これは個人と言われても、政治的に重要な問題だと思います。だから私は個人とか公的な地位とかにこだわらず、近藤さんがこういうようなきわめて重要な問題を発言された限りは、ここで当然討議されてしかるべきだと思います。大臣でもだれでもよろしい、発言しておいて、少しぐあいが惡いと、これは個人だといつて逃げれば、われわれは國会の中では何ら話はできないことになると思います。だから私はこういう習慣はむしろつくるべきではないと思います。今せつかくこういう問題が出たので、もう少ししたら片がつきますから、やはりこれを進めていただきたいと思います。
#58
○若松委員長代理 野坂さんに諮りしますが、先ほどの御質問は、近藤政務次官は個人の意見だと称して、大いに日ごろの経綸抱負をお答えになつたわけですが、この問題と離れてですか、あるいは個人と公と切り離すことはできないからというような意味でお尋ねですか。
#59
○野坂委員 ちよつと申しますけれども、実際個人というのは逃げ口上なのです。政務次官室で、向うは近藤個人に何も聞いておるのではないと思います。政務次官はどういうお考えかと言つておる。ただ近藤さんは、ここでぐあいが惡いから逃げられただけのことです。外務委員会としては、こういう重要な國際関係のあるものを、個人として発表したから無視していい。たとえば外務大臣がこう言われた、これは個人の意見だと言われれば、ここで何ら討議する必要がない、こういうものではないと思います。だからわれわれとしては、やはり今こういう話が出ておりますから、近藤さんの方で、私の先ほどのあの質問に対してお答えになれば、話は片づくのではないかと思います。
#60
○近藤(鶴)政府委員 なるほど私もこの記事が出ましたときに、いまさらのように西尾個人という言葉を思い合せたのでございます。私は少くとも大して外交的な知識もないものでございますので、今まで対外的な大声明をしようとか、そういうことに対しての意見を軽々しく言うことは、非常に愼んで参つたわけでございます。從いまして政務次官室に尋ねられました場合に、政務次官室で会つて、しかも外務政務次官としての御質問であつたならば、絶対にお答えができないということをはつきり申したわけでございます。御承知の通り民主自由党には婦人代議士が少いために、何かといえば婦人の立場においてこの問題をどういうふうに考えるかというようなことを、大体において私が一人で受持つておるような次第でございますので、私に関しましては、もともと外務政務次官の現職であつたには違いないのでございますけれども、その辺の公私の区別は、自分といたしましてはりつぱにやつてのけておるつもりでございまして、ただ不幸にして二世の方が日本語が話せるために、証人になるべき人がなかつたという点について、これほど申し上げましても、あるいは野坂さんには御了解いただけないかもしれないと思いますが、その辺のところは私十分意をつくしたのでございます。今日となりまして、逃げ口上として個人と言つたわけではなく、おそらくは私の経歴からいたしましても、知識から申しましても、このようなことを外務当局の代表者として答弁をなすということはできないのでございます。なおまた太平洋條約というものに対してどういう観点に立つかというようなお話でございましたが、質問されました記者の方が、太平洋條約ということについて、戰爭防止の目的においてあちらこちらで話がだんだん出ておるが、それに対してあなたはどう思うかということを言われましたので、戰爭防止の條約であつたならば、しかも日本が主導的な立場に立つのでなく、どこかの國が主導的な立場に立つて條約が結ばれるならば、まことにけつこうなことであるので参加したい、こういう意味でお答えしたのであります。
#61
○若松委員長代理 ちよつとお諮りしますが、別に野坂さんの方も、政務次官が個人であり、あるいは話されたことを別に追究されるという御意思とは私は思いませんが、ただ條約のことについてあらためて政務次官なり、あるいは関係の方々でもよく知悉しておられる方から、お伺いするということではいかがでございますか。
#62
○野坂委員 ただ一言申し上げたいことは、個人の意見だからということでありますけれども、今政務次官という重要な地位におらるる人の個人の意見というものは、日本の外交政策に影響を與えるし、政策の根拠になると思う。だから個人の思想が一つ、政策が一つ、こういうものじやないから、個人の発言は政策にすぐ影響するから、やはり取上げていただきたい。これが一つ。もう一つは、これは私の意見でありますけれども、もし今委員長の言われたように、將來こういう問題があれば一つの参考になるかと思いますけれども、近藤さんの方では、しきりに太平洋同盟というようなものができれば、これによつて日本の安全と平和が保持されるというふうな御意見だけれども、私たちはこれとは違つた意見を持つております。むしろ日本はこれによつて独立が危うくなるし、戰爭に巻き込まれるものであるというふうにわれわれ考えますから、こういう点は意見の相違でありますが、これは將來の問題であります。
#63
○佐々木(盛)委員 先ほど來申しましたように、これはあくまでも近藤さんの個人の意見であるということは、繰返し述べられておる通りでありますし、問題はきわめて日本の運命に関する重大な問題でもありまするので、公開の席上において、いかに個人の資格と近藤さんが言われようとも、その結果というものは、ここにたくさんの新聞記者もおられますので、おそらく近藤さんがイギリスの記者と会見せられまして、その発生した結果について今日驚いておられるより以上の、もつと大きな驚きをなされるのではないかと考えております。從いましてこの席におきましては、この近藤さんの言われました太平洋同盟に関する新聞記事の問題に関しましては、この辺で打切られた方が適当であろうと私は思います。
#64
○若松委員長代理 それでは本日は、この程度をもつて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
    午後零時七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト