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1949/04/20 第5回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第005回国会 外務委員会 第7号
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1949/04/20 第5回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第005回国会 外務委員会 第7号

#1
第005回国会 外務委員会 第7号
昭和二十四年四月二十日(水曜日)
    午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 岡崎 勝男君
   理事 安部 俊吾君 理事 栗山長次郎君
   理事 仲内 憲治君 理事 若松 虎雄君
   理事 松岡 駒吉君 理事 並木 芳雄君
   理事 野坂 參三君 理事 山本 利壽君
      菊池 義郎君    大上  司君
      佐々木盛雄君    塩田賀四郎君
      竹尾  弌君    守島 伍郎君
      亘  四郎君    戸叶 里子君
 出席國務大臣
        外 務 大 臣 吉田  茂君
        経済安定本部総
        務長官
        國 務 大 臣 青木 孝義君
 出席政府委員
        外務事務官
        (総務局長)  大野 勝巳君
 委員外の出席者
        專  門  員 佐藤 敏人君
        專  門  員 村瀬 忠夫君
四月十三日
 委員川崎秀二君辞任につき、その補欠として園
 田直君が議長の指名で委員に選任された。
同月十四日
 委員高間松吉君辞任につき、その補欠として大
 上司君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 國際情勢等に関する件
 外資導入等に関する件
    ―――――――――――――
#2
○岡崎委員長 これより会議を開きます。
 外務大臣に対する質問の前に、政府委員より北大西洋同盟についての意見を開くことにいたします。
 なお外務大臣は出席の時間がきわめて極限されておりますので、外務大臣が見えましたら、北大西洋同盟の説明は一時中止して、ただちに質問にかかることにいたします。なお大臣に対する質問は、通告順で順次やつていただきたいと思います。御了承願います。
#3
○大野政府委員 しばらく時間を拜借いたしまして、北大西洋同盟條約とその國際的影響に関する報告を申し上げたいと思います。御承知のように今月四日、ワシントンにおきまして北大西洋條約が制定せられたわけでございますが、参加各國はベルギー、オランダ、カナダ、デンマーク、フランス、アイスランド、イタリア、ルクセンブルグ、ノールウエー、ポルトガル、イギリス及びアメリカ、合計十二箇國になつております。四日の日はワシントンにおきまして盛大な調印式が行われたのであります。ソ連邦及び東欧諸國の代表を除く、爾余の外交團の團員も出席いたしましてきわめて歴史的な場面で、約二時間にわたつて調印式が行われたといわれております。
 そこでこの條約の政治的意義に関する見解であります。これに関しましては、最近米ソ間の関係が惡化いたしまして以來、米國政府がとつておりまする外交政策というものの一連の動きを申し上げざるを得ないのであります。その第一は、一九四七年三月十二日にトルーマン大統領が國会両院においていたしました、いわゆるトルーマン・ドクトリン、それから同じ年の六月五日にマーシヤル國務長官によつて発表されました、いわゆるマーシヤル案があるのであります。すなわち民主主義諸國家に対する米國側の援助を確約するという、非常にはつきりした態度を宣明したことが第一であります。第二は、米州相互援助條約及び西ヨーロツパ諸國との共同行為によつて、地域的な集團安全保障態勢を維持し、これを強化して行くという方向に動いて行くということであります。第三が、最近著しく目立つておりまする米國自体の國防強化の方策、およそこういう三つの大きなキー・ポイントが米國の國策を決定する支柱になつておるわけであります。
#4
○岡崎委員長 外務大臣が見えましたので、外務大臣に対する御質問をお願いします。なお外務大臣は急の突発事件のため、十一時ごろに出かけなければならないようなお話でありますので、質問はできる限り簡單にお願いすることにいたします。佐々木盛雄君。
佐々木(盛)委員 先程YMCAの創始者のジヨン・モツト博士と天皇陛下との会見におきまして、日本の永世中立を希望されたというような報道が出ておつたのでありますが、これとは少し趣を異にいたしまして、総理大臣は國会におきまして、数度にわたつて中立の問題につきまして言及されました際に、永世中立というようなことには、かなりの疑問が残されているといす意味のことを仰しやつたようであります。もとより永世中立というようなことは、ベルギーの場合やその他今次大戰の場合におきまするヨーロツパ諸國の例を見ました場合において、はたしてその中立の可能性というものにつきましては、今日までの事実からいたしまするならば、かなり疑いなきを得ないのでありますけれども、また一面、今度の戰爭の惨禍というものがあまりにもはなはだしく、かつまた今予想されておりますところの戰爭危機というようなものが非常に大規模なものでありまするだけに、またその反面から、何とかして平和を確保したい、戰爭を回避したいという氣持もまた相当世界的な空氣となつて現われているように考えるのであります。ことに新憲法におきましても、われわれは平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようということを決意したことによつて、戰爭を進んで放棄しておるのであります。それにもかかわらず、この永世中立そのものに対してすらなお疑問があるというような考え方からいたしますなれば、しからば一体、日本の平和保障、安全保障ということは、どういうふうな具体的な方策によろうという考えであろうか。時間がございませんので、もう少し私の申したいこともあるのでありまするが、とにかく総理大臣の、日本の永世中立というようなことに対する見解を承りたいことが第一点。さらにこれと多分に関連する問題でありまするが、先般も近藤政務次官は、外國新聞記者團とのインタービユーにおきまして、太平洋同盟に参加の意思のあることを新聞は傳えております。また総理大臣も國会でも、いくたびかこの問題に言及されたようであります。この中立に対し、総理大臣が疑問を持たれるということと、太平洋同盟に対するところの参加の意思表示ということについては、不可分の関係があると私は考えるのであります。つまり中立ということが現実の問賀として不可能であるから、何らかの日本の防衞のために、うわさされるような太平洋同盟というものが、われわれの切実な問題として浮び上つて來るのだろうと考えるのであります。ところが、ただいまも承りかかつておつたのでありますが、この太平洋同盟というものと北大西洋同盟というものとの構想におきましては、そこに多分に一つの性格を同じゆうするものがあろうと私は考えるのであります。端的に申しまして、ここに一つのある侵略國というものを想定いたしまして、それに対する共同防衞というようなことが考えられるわけでありますが、総理大臣は、アジアにおいてもまた北大西洋同盟と同じような性格と構想を持つた何らかの防衞策というようなものを必要とお考えになつておるかどうか。つまり太平洋同盟なるものに対する総理の所見を承りたい。
 さらに、われわれは與えられた新しい憲法によつて、まる裸となつてしまつて、身に寸鉄を帶びないところの非武装の國家と、好むと好まざるとにかかわらずなつてしまつたのであります。從つて今後締結されますところの講和條約におきましても、日本の防衞というようなことについても、当然これが規定されることをわれわれは念願するわけでありますが、これらに対しましても、総理はいかなるお考えを持つておられるか。
 さらにこれと関連いたしまして、それでは一体日本の平和と安全保障というものを、いかなる態勢において求めようとするのか。ここにすでにいろいろなうわさばかりでなくして、現実の問題としても日本を侵略せんとするような國々がないとは言えないのでありまするが、これらに対する具体的な日本の防衞というようなもの、つまり平和確保、安全保障というようなことをどういうところに求められようとしておられますか。これらの中立の問題、あるいは太平洋同盟の問題に関連いたしまして、総理の所信をお聞きしたいと思うのであります。
#5
○吉田國務大臣 お答えをする前に一言申しておきますが、モツト博士の永世中立に関する新聞の報道は、誤報であるそうであります。それから今のお話の局外永世中立ですが、これは私の言つた意見は、ベルギーのごときは局外永世中立ということを、條約の保障によつて保障されておつたのであるが、しかしながらそのベルギーが一番先に戰禍を食つたというような事実もあるから、この局外永世中立という問題は、そう簡單に論議ができない、いいとか悪いとかいうことは論議ができないという意味で、疑問があると申したのであります。もしそういうことができて、日本が戰爭外に置かれることができるならば、それは非常に仕合せなことと思いますが、しかしながらいかにして日本を戰爭外に置くか、條約の保障によつてといつても、すでにベルギーのごとき先例がある。だからこの問題については疑問があるということを申したのは、そういう意見合いです。
 さて太平洋條約ですが、これはただ一つの具体問題ではなくて、そういう考案があるとか、あるいはその考案についてどう考えるかという仮定の問題でありますから、この点については、ここでもつて、私がああであるとか、こうであるとかいうことを責任を持つてお話することはできません。しからば將來の保障はどうするかというお尋ねでありますが、これは全然講和條約締結の際に議せらるべき問題であつて、今日私が責任者の地位にあつて、將來ああしたい、こうしたいということは、責任上、職務上言明することは避けたいと思います。
#6
○佐々木(盛)委員 さらにいろいろ関連して承りたいのでありますが、三十分という時間を私が独占することは、同僚諸君に対してまことに申訳ないことでありますので、私は関連事項の質問を他日に留保いたします。
 さらに一点、一、二分だけ時間を拜借いたしたいと思います。それは本日の新聞電報によりますると、極東委員会が、來る五月三日をもつて日本の憲法改正が必要であるかどうかを、委員会及び日本國民が決定する最後の期間であるということを傳え、なお憲法改正の問題は日本人自身が考うべき問題であるというようなことを傳えておるわけであります。芦田内閣時代から、憲法改正の問題は幾たびか話題に供せられたところでありますが、私は不幸にして、いかなる点において憲法を改正しなければならぬかということにつきましては存じ上げていないわけであります。五月三日というものはすでに迫つて來ておるわけでありますが、憲法改正に対して政府はいかようなるお考えをお持ちになつておるか、また從來いかなる点が憲法改正の点として問題にされたかというようなことにつきまして、御説明を承りたいのであります。
#7
○吉田國務大臣 極東委員会の決議は、直接には私は存じません。承知しておりませんが、政府においては、憲法改正の意思は目下のところ持つておりません。それから芦田内閣において憲法改正の議があつたとすれば、これも私は伺つておりません。
#8
○岡崎委員長 次ま仲内君。
#9
○仲内委員 簡單に御質問申し上げます。
 第一に、平和條約に関する総理のいわゆる暫定條約なるものの意味について、お伺いいたしたいのであります。最近の新聞報道は、日本とメキシコの間に通商協定ができるそうだとか、できるとかいう報道を傳えておりますが、もしもこういう日墨通商協定の交渉が進行しておるとすれば、その眞相についてお伺いしたい。
 それからこれは総理がしばしば申されております、平和條約が延引するに伴つて暫定的な條約を認められる可能性がある、その実際の現われと見るべきものであるかどうか、またこれがもしも違うというのであるならば、どういう暫定協定を総理は予想されておるのか、なおこれに関連しまして、さらに連合國への通商代表の派遣というような問題も、実際問題としても必要が迫つて來ておるのでありますが、これまた暫定協定の一つとして実現せられる見込みがあるのかどうか、これらの点についてお伺いいたします。
#10
○吉田國務大臣 日墨間の貿易についてでありますが、できたということは、まだ外務省としてはGHQから通知を受取つておらないそうであります。しかしそれは、この間派遣された南米への貿易使節團のメキシコ到着後つくり上げた一つの成功であるのではないかと想像いたします。
 それから今の暫定協約の問題でありますが、これは講和條約がただちにできないとすれば、これにかわつて今お示しのような、日墨間の通商協定とか何とかいうようなものができて、それで事実上貿易が再開せられるということになるのを意味するものであつて、今お話の海外に駐在官を置くとか、あるいは支店を置くとかいうことは、われわれの最も希望するところであり、またGHQにおいてもしきりの努力してくれておるところと想像しております。というのは貿易再開とか、貿易に重点をおくとかいつたところが、海外に日本の実業家が支店も持つこともできない、政府としても、貿易官なり商務官なり、もしくは領事官を派遣して海外の市場に関する情報を持つておらない限りは、貿易発展ということはむずかしいことでありますから、でき得ることならば、なるべくすみやかに政府からもあるいは民間からも、常駐の役人なりあるいは支店なりを暫定協約によつてでも、あるいは各個別の國々との間の暫定協約でもつてもし置くことができるならば、これもまた一つの大きな貿易の振興になると思いますから、そういうふうな機連に達するように、暫定協約でも暫定措置でも、できればはなはだ仕合せだと思つて、その希望は絶えず述ベております。またGHQにおいても同じような考えを持つております。
#11
○仲内委員 今の総理の御説明の点はよく了解したのでありますが、これら通商振興の実際的な措置というものは、國民の最も希望するところでありまして、政府としましても、この上とも関係方面の折衝に御盡力あらんことを希望いたします。
 さらに私は簡單に中共政府のステータスと申しますが、現情について一言お伺いしたいと思います。もちろん中國の中央政府というものは、國民政府が正当に承認せられた政府であることは疑問はないと思うのでありますが、中共側の実際の勢力と、その発展の現況にかんがみまして、この中共政府ないしはその実勢力を政府はどういうふうに見ておられるか。たとえばこれを事実上の政府と思つておられるかどうか。またこの中共の地位に対して――もつとも日本の今日の立場からいえば、日本がこれをどう見るかということはむしろ從の問題かもしれませんが、この中共の地位に対して、連合國、ことに米英その他の主要な國々がどういう態度をとつておるか、これについて何か情報がありましたならばお示しを願いたいと思います。また日本と中共との関係から行きまして、中共との貿易の問題でありますが、これについて実際上どういう措置を講じられておるか、またどういう方針で中共との貿易を進められんとするか、これらの点についてお伺いしたいと思います。
#12
○吉田國務大臣 中共政府については、私も新聞だけの知識以外にないのでありますが、現に國民政府と平和交渉をしておるというような事態によつて、まだ中共政府ができ上つたとも考えられない状態でありますから、從つて政府としてこのステータスに対して、どうこうという確定した考え方は今のところ持つておりませんが、中國において統一された政府なり何なりができて、これと通商関係にすみやかに入ることができればけつこうなことでありますが、しかしこれもいわゆる暫定措置か、あるいは実際においての通商であつて、日本としては外交交渉をまだ許されておらない今日でありますから、GHQを通ずるか、あるいはその他の暫定の措置によるほか、貿易再開ということはむつかしいのであります。しかし日本としては、從來の関係もありますから、中國との間の関係は、経済的にも重要なものでありますから、でき得べくんばなるべくすみやかに事実においても、暫定的でも通商が再開せられることは、日本の経済界においても最も望ましいことであり、また中國側から考えてみても、望ましいことと考えておるだろうと私は想像しております。
#13
○岡崎委員長 次は松岡君。
#14
○松岡委員 國際労働機関は、御存じの通り國際的な規模において労資関係を調整し、あるいは文化、平和に貢献することをもつて目的としておることは、申の上げるまでもないのでありますが、先般参りました國際労働局の次長ラオ氏の言うところによりますと、國際労働機関では、日本ができるだけ早く國際労働機関に復帰することを歓迎する、よし講和條約の成立が遅れようがどうしようが、それを希望するというお話でありまして、できれば六月に開かれるゼネバの総会にも代表を、あるいは正式な代表でなくても、オブザーバーでも出席し得るようにしてもらいたいという――これは個人的に希望もかなり強かつたのでありますが、大体國際労働機関としても、そのような方針であるかのように私どもも聞いたわけであります。さきに申し上げたように、國際労働機関の目ざすところもまた、再建途上にある日本の労働組合運動の動向にも影響のあることであまりして、このことはきわめて重要であると思うのであります。外務大臣のこれについての所見、並びにそれに関連しましてGHQと交渉が開始されておりますならば、一体どういう経過になつているかという点について簡單にお伺いいたします。
#15
○吉田國務大臣 この問題は私より松岡君の方が詳しいことと思いますが、お話の通り政府としても、これに参加ができることを希望いたします。また現にピツツバーグでは、炭鉱委員会にはオブザーバーとして出席をしておりますし、昨日もGHQから、六月のジユーネーブの会議には日本の代表者として、オブサーバーであろうと思いますが、出席の勧誘を受けております。政府としては昨日聞いたばかりでありますから、今日からその委員の選考に着手いたすつもりでおります。
#16
○松岡委員 私はもう一つ、これもきわめて簡單にお聞きしたいのであります。
 在外同胞、ことに俘虜が今なおたくさんの者が抑留されているのでありますが、日本がソビエトに向つて正式な交渉をすることは、不可能であることはよく存じております。ポツダム宣言によりまても、何とかひとつ連合國側を代表する司令部としまして、ソビエトに対して嚴重な期限を付して、完全に引揚げることができるような交渉をしてもらわなければ相ならぬと思うのでありますが、そういう可能性があるかどうか。私は少くとも本年寒くなるまでには、完全に引揚げを終了することができるようにしてもらわなければならぬ、あるいは外交上のそういう知識を持たない私が申し上げることは乱暴かもしれないが、司令部に、どうしても今年中には期限を付して、嚴重に、完全に引揚げができるようなことにしてもらわなければならぬ、その交渉の可能性がありやいなや、大臣の意見を聞きたいと思います。
#17
○吉田國務大臣 御承知の通り、昨年は月に五万人づつ引揚げるという約束でもつて、司令部がソビエトと條約ができておつたかどうか知りませんが、とにかくそういうことになつておつたと承知しております。そういたしましたら、昨年の十月でありましたか十一月でありましたか忘れましたけれども、氣候が非常に寒いために、引揚げを続行することがむずかしいというので、ソビエト側から冬の間は送ることができないと断つて來て、これに対して司令部から、それならば碎氷船でも送つてやるからということまで言つたのにかかわらず、遂に中止されておりますので、今年は割合に暖かいから、なるべく早く再開してくれということをしきりに要求しておるそうであります。しかしながら今日までまだ実現されないので、われわれやきもきしておりますが、しかしGHQとしても非常に熱心にこの問題を取上げて、ソビエト政府に交渉を現にしておるように承知しております。
 次に將來の見通しでありますが、何分相手のあることでありますから、私もここに見通しはどうであるということを言うだけの材料を持つておりません。なるべく早く完了するようにということを希望する程度で、それ以上にこうしたらああしたらということは、何分相手のあることでありますから、見通しとして多分こうなるだろうということさえも、申し上げるだけの材料を持つておりません。
#18
○並木委員 私は時間がありませんからたくさん申し上げたいのですが、二つを限定してお伺いいたします。一つは講和会議の見通しに関連して、大臣から國際情勢をお伺いしたいのであります。この前この会議場で、講和会議の見通しをお伺いしてから早くも半年たちました。半年というものはかなり意義のある期間でございまして、この六箇月の間に國際情勢というものがどういうふうに変化をしておるか、好轉しているのか、あるいは悪化をしているのか、そういう点について先般大臣も、いろいろの情報などに迷わないようにという御意見もありましたので、今國民はぜひ大臣の口から、國際情勢に対する御所見をお伺いして、それが日本の平和会議にどういうふうに今影響を與えているかということをお伺いしたいのであります。
#19
○吉田國務大臣 これはある意味において、好轉したとも思われます。というのは、從來オーストラリア、ニユージーランド、オランダあたりは日本に対して、相当誤解も持ち、また猜疑心というのも何ですが、また再び戰爭をしかけやしないかというような考えが確かにあつたと思います。しかし最近は、オーストラリアの代表が先月帰つて來て、最近の話によりますと、オーストラリアのごときは、日本に対する空氣が非常によくなつた。そしてこれは代表の盡力等もあるでありましようが、たとえば羊毛の輸入とか、また輸出入関係についても、大分好轉しているそうであります。またその他從來中國とかフイリピンも、大東亞戰爭に非常な惨害を受けたものでありますから、日本の復興が早く、戰禍を受けたフイリピンや中國あたりがかえつて復興が遅れているというような一種のねたみといいますか、日本に対しまして、あまりいい感じを持つておらなかつたということであります。それらの國はとにかくとして、第一アメリカの日本に対する氣持は、御承知の通り非常に好轉しておるので、現にアメリカにおる日本の同胞の帰化権、財産相続とかいうものについて法律上いろいろ制約を受けていて、その制約もだんだんとれるか、あるいは軽減されるというようなことで、今までアメリカの東部においては、日本人に対する感情がはなはだよくなかつた。ところがたとえばシカゴあたりにおいても、日本人が職業を得るのが非常にむずかしかつた。戰前あるいは戰中はそうであつたそうでありますが、最近はむしろ日本人であるがゆえに職業を得られるというようなことで、アメリカにおる日本人に対する感情は非常によくなつて來た。むしろ日本人に対して從來したことが、氣の毒であるというくらいによくなつておるということは、これはいろいろな人の意見が一致いたしますので、事実であろうと思います。すなわちあるところは非常に好轉して行つた。しかしながら同時に國際情勢については、御承知の通り米ソの間の関係が悪化したとか、あるいは対立しておるとかいうことが新聞に傳わつて、事実相当いろいろな問題で衝突しておる。ことにドイツ問題等については、現実に対立しておるような関係があつて、その点においては、從來よりま一層悪くなつておるのだろうと思います。それで第一次吉田内閣がやめる時分に、GHQの意向を、講和條約の見通しはどうだろうかといつて聞いたときには、多分その年の秋ごろ――一昨々年でありますか、秋ごろには講和條約会議が開かれるような運びになるだろう、こういうふうに承知したのでありますが、その後國際情勢の変化とともに、いまなお講和條約ができないというような現在の状態で、これが將來どうなるかということについては、見通しとしてこうであるとか、ああであるとかいうことを言うのは、私としてはばかるのでありますが、今のようにある意味において客観情勢はよくなつておる、他の意味において悪くなつておる、これはどうなるか、これは一に國際関係であるから、私は想像以外に、ここでこうだろうということを正確にお話しするだけの材料を持つておりません。
#20
○並木委員 時間が参りましたから、もう一点に限りまして、私は專任外務大臣のことについてお尋ねしたいと思うのであります。
 先日來大臣のおいでを持つておりまして、ほんとうは私はきようは「父帰る」こういつたような氣持でお迎えしたのであります。(笑声)。しかもほんとうにこの外務委員会において、腹を割つたお話を聞きたい、こういう氣持でおるのであります。ところがきようまた委員会からのお話によりますと、三十分であわただしくお出かけにならなければならぬような、ほんとうに何ですか、私たちは自分たちの大臣のような氣がしないので、さびしいのであります。それで私は、この前大臣から私が最適任と思う、こういう御答弁がございました。実際最適任の大臣であろうと思つております。しかしこう首相と外務大臣とを兼ねて忙し過ぎては、いかに最適任者でも職責を果すことができないのじやないか、こういうふうに感ずるのであります。最適任者であるということは、ほかに適任者がないということではないので、今度は特に大勢民主自由党の方におられるのでありますし、またこの前の選挙のときでしたか、暗に岡崎さんをさされて、專任外務大臣を置くというようなことを漏らされたということを私聞いておるのですが、これは絶対的に專任外務大臣を置いてはいけないという理由があるかどうか、そういうところをお伺いしたいのです。どうしても何か総理大臣と外務大臣とは兼任しなければならぬという理由があるならば、それをお聞かせくださればけつこうです。しかしもしそうでないならば、総理大臣におかれて、外務大臣を專任する御意思がございますでしようか。
 それともう一つ政務次官には、ほかの方々が大勢かわつておるのに、近藤さんは女性であられ、語学は話されないのでありますけれども、留任された。参議院の方からは政務次官をとつておらない、こういうふうなことを考え合せまして、何か外務関係については特殊な理由があるのではないか、こう私どもは考えておるのであります。ぜひそういう点をお聞かせ願いたいと思います。(「名質問だ」と呼で者あり)
#21
○吉田國務大臣 名答弁をいたします。(笑)外務大臣は私が最適任と申したのは、言葉のあやで、岡崎君の方が私より一層適任であることを確信いたします。しかしながら今日の情勢において、御承知の通り外交は休止の状態であり、開店もせずに、閉店をしておるような状態である。ただ講和條約ができて、外交再開の場合に備えるために、一方においては外交再開後においてあやまちなからしむるように、その用意を外務省としていたしておる。率直に申せば外務大臣の必要を感じない時で、私はただ名義上外務大臣を兼ねておるというのが実際でありましよう。しかしながら今申すように、外交はいつ再開されるかわからない。なるべく早く再開せしめたいと思いますから、再開のときには、むろん考えておるのでありますが、今日は特に外務大臣を置くだけの必要がない。岡崎君のごとき有能な外交官をして外務大臣にさせるほどの必要が、現在ないと私は思つております。
 それから今政務官のお話もありましたが、これは私の理想でありますが、從來は男性の外交である。男性外交というと人聞きがようございますけれども、女性の外交に関する勘なども、日本の外交においても加えたいものである。男女おのおの長所を持つて外交をやつて行くためには、政務官のごときは仕合せに近藤君のような人がおるものですから、政務官に採用して、行く行くは外交機関の中にも女性を採用しまして、今申すように、女性の外交の勘を生かして行くというようなことをしたいと思つております。それで数日前にも外務次官に、外交官研修所に女性を入れることを考えてみないかということを言つておるのであります。これは外國でも女性の外交官がおります。実績はどうか知りませんけれども、現におります。日本においても女性がだんだん外交に対して興味を持つように、また興味を持つ結果、女性の直覚的なといいますか、緻密な鋭い観察が、日本の外交にも將來役立つような時期がありたいものだと思いまして、研修所に女性の外交官を養成せんがために門戸を開いてはどうかということを、話しておる次第であります。
#22
○並木委員 参議院から政務次官をとらない理由を伺います。
#23
○吉田國務大臣 これは特にとらぬ理由は何もありません。申出がないか、あるいは希望者がないかどうか知りません。特に参議院であるがゆえに政務次官をとらないというわけはありません。
#24
○野坂委員 私はきわめて事務的な質問をしたいと思います。政治的な質問をすると、どうも吉田総理は心悸高進するようで、健康のためにもならぬと思いますから……。初めに暫定協定というようなお話がありましたが、この点について一言お聞きしたいのは、実際上今でも正式な條約とか協定とかいつたような形をとらなくても、たとえば中國などといろいろな商賣がやれる。最近また大阪その他の商人の間にも、何とか中共あるいは國民党にかかわらず、商賣がしたいというような動きもありますし、実際の話もあるということを聞いております。こういう問題はおそらく將來発展すると思いますが、こういうような民間の商業貿易というものを、政府の方としては促進するようなお考えがあるか、あるいはこれはただ成行きにまかせておこうというようなお考えであるか。それからもう一つお聞きしたいのは、これについて政府当局としては、何か協定とかいつたようなものはもちろんつくれなくても、これにかわるような方針をとつて行くというお考えがあるかどうか。つまり民間貿易に対する政府のお考え、これをひとつお聞きしたい。
#25
○吉田國務大臣 今のお話は中共との間のお話ですか。
#26
○野坂委員 中共だけという問題ではない。私のお伺いしたのは、最近中共、特に中國との貿易について、もつと何とか具体的に促進させて行く必要があるので、これをとらえて質問したので、南洋その他の方面とももちろん関係があると思います。
#27
○吉田國務大臣 事実やつておるはずであります。それからまたGHQも、たとえば食糧とかその他の輸入については相当心配しておるので、事実行われておるものだと思つております。それから暫定協約については、現にパウンド区域でありますか、その間と協定ができておるとか、事実においては暫定協約は各所にだんだんできつつあるのであります。
#28
○野坂委員 ちよつとお聞きしたいのは、それを政府としては促進するようにおやりになる方針であるか、あるいはまたこれを成行きにまかせるという方針ですか。
#29
○吉田國務大臣 方針と申すより、日本としての希望であります。そういう日本の希望はGHQにおいてもよくのみ込んで、たとえばシヤムとの米の話のごときも、GHQとし間に話も出たと思いますが、事実において暫定的にもせよ、貿易はだんだん開かれつつあるので、それは日本としてはむろん歓迎するところであつて、日本が貿易でもつて立たなければならぬとするならば、今日においてもなるべく多くそういう協定なり貿易なりは、行われることを切望してやまないのであります。
#30
○野坂委員 もう一つは講和会議促進の問題ですが、御存じのように昨年の國会にも、講和促進の決議案が出されましたし、社会党の方では促進のための署名運動もやつています。私たちの方でも、これには大いに同調したいと思つております。こんなふうで、民間に講和促進の運動が起ろうとしておるし、また起つておりますが、これに対して政府においては、これをもつと大きく、たとえば超党派的に、國会で單に決議するというだけでなしに、一種の國民運動を起そうというような意見が政府にあるかどうか。たとえば引揚げの問題等がいろいろ出ましたけれども、これについては特別の委員会もここにできておりますし、いろいろな大衆的な運動も促進されておりますが、講和問題について、こうした一つの運動を政府の力でもつて促進する御意向があるかどうか、これが一つ。
 第二には、外交の問題は、総理が今ないと言われましたことは、これは形式上の問題であつて、実際上今日本は國際的に取巻かれて、いろいろな意味において外交上の問題があると思う。ですから私はやはりその中でも、講和問題ということが中心にならなければならない。そうすれば政府の方、あるいはこの外務委員会の方でもよいのでありますが、あるいは特別委員会をつくつてもよいのでありますが、講和に対する準備を今からやる必要が絶対あると思います。これについて政府の方はどういう御意向であるか、この二点をお伺いしたい。
#31
○吉田國務大臣 私はこの講和問題について、今お話のような國民運動を起すがよいか、議会においてそういう委員会をつくるがよいかということは、外交上から考えてみて大いに疑問があると思うのであります。そうしてマツカーサー元帥なり何なりが日本の講和促進を考えておらないならばとにかく、非常に考えておつて、先ほどお話したように、第一次吉田内閣がやめるときには、その秋には講和会議ができるだろうという見通しさえもマツカーサー元帥は私に話してくれたようなわけで、爾來熱心に元帥としてはその促進を考えておられることは、私の体驗によつても承知しておるのであります。その元帥なりGHQなりアメリカ政府の努力にもかかわらず、今なお講和会議に至らないのは、いわゆる客観情勢がこれを許さないのであつて、十一箇國の連合國の合意をもつて講和会議は開かれる。ドイツに対してもいまだ講和條約ができないような状態であつて、それを日本が國民的に要望してみても、客観情勢がこれを許さなければ仕方がないのみならず、さらに日本の講和のために努力しておられるアメリカ政府その他の交渉の手なり何なりを、束縛するようになつてもどうかという考えがありますから、政府としては、ただいまのところ、國民運動を起すことのよいか悪いかについて、私個人としては疑問を持つておるわけであります。もう一点は何でしたか。
#32
○野坂委員 もう一点は講和の準備のために、國会の中に、あるいはこの委員会でもよろしいが、特別委員会なりを設けて、準備を真驗にやつたらどうかということです。
#33
○吉田國務大臣 これは外務省でも、爾來各種の問題について調査もし、また研究も進めております。外交の問題でありますから、公開の席というのはおかしいのでありますけれども、ほかの問題と違いましていろいろないきさつがあり、また微妙な國際情勢において、日本の考えているところはこうであるとか、日本政府が主張するところはこうであるとかいうようなことが発表されて、いいこともあれば悪いこともございます。今のような委員会を設けることはどうであろうか、これも私は疑問を持つております。しかし講和会議が近寄つたその場合には、日本の要望するところのものは一外務省が考えてやるべきものではなくして、これは國民的な問題でありますから、廣く知識なり経驗なりによつて、講和條約に対する日本政府の意見をきめるということは肝要だと思いますが、今からそういう委員会を議会に設けることがいいか悪いか、これはさらに考究を要すべきことではないかと思います。
#34
○野坂委員 ちよつともう一点、それは今総理の方では、講和促進について客観的に條件がどうだと言われましたけれども、この客観的條件自身も固定したものではない。だから私の意見としては、國内に大きな國民的な運動が起れば、これはやはり客観的情勢に影響して、これもまた若干かわるというようなことも考えられます。それでその点につきましてもう一点、これはあるいは総理よりか、ほかの事務当局の方にお聞きした方がいいかもしれませんけれども、非常に問題になつております華僑の資産の問題であります。この問題は今くすぶつていて、まだはつきり政府の態度もきまらないように聞いておりますけれども、華僑の人は今非常にこれを問題にして、政府のおきめになつたように、華僑の中では実際にやられておる面が出て來て、非常に困つておられるようです。この点について、総理としてはどういうふうにお考えになるか。つまり戰前、戰後ずつと引続いておる華僑は三万人ばかりある。これは米英の外國人と同じように資産の取扱いを受けている。ことに小さい商賣人がたくさんいる。これでは非常に困つているということでありますが、これに対する総理の御意見を承りたいと思います。
#35
○吉田國務大臣 これは私より安本長官の方が適任だそうでありますから……。
#36
○青木國務大臣 それでは私からあとでそれをお答えいたします。
#37
○野坂委員 これで私の質問を打切ります。
#38
○岡崎委員長 菊池義郎君。
#39
○菊池委員 私の希望は、世界の文明國の國会と同じように、日本の國会に世界連邦建設のための委員会を設けるために、お骨折を願いたい、あるいは御配慮を願いたい、この点でございます。ただいま英國を初めフランス、イタリア、ルクセンブルグ、スイス、それからデンマーク、ノルウエー、スウエーデンその他十三、四の國の國会には、世界連邦建設のための委員会が設けられておるようなわけで、昨年のアメリカの議会におきましても、上下両院を通じまして、現在の國際連合を発展強化して、そうして世界連邦に修正すべしという決議案を提出し、それがその後外交委員会にかけられて、審議されておるような状態であります。さらにアメリカ四十八州のうち十七州まで、すでにこの世界連邦に賛成の決議が通過しております。これは昨年の報告でありますから、今日ではもうすでに二十から二十四、五州くらいになつておるのではないかと思うのであります。世界の大政治家は、ことごとくみなこの世界連邦の主張者であると言つてよいくらいであります。英國においてはアトリー、ベヴイン、それからチヤーチルにいたしましても、またアメリカにおきましては、トルーマンも議会を通じましてこの主張をいたしておることを私は報道によつて見ております。インドのネールも、それからフイリピンのロムロも、キユーバの大統領も、濠州の代表も、國際連合の総会において、あるいはその他の場所において異口同音にこのことを主張しております。それで世界の國会におけるところの世界連邦議員のグループの数を見ますると、イタリアでは三百名、フランスでは二百名、英國では百七十名といつたようなことになつております。來年世界憲法の会議をジユネーブに招集すべく、これらの國々は民間、代表を選んでそこへ派遣するということになつておるくらいに、この世界連邦の運動は非常な急テンポをもつて促進せられておるのである。日本もこれに遅れをとつてはならないと思います。これに遅れをとつては、世界から未開國のそしりを受ける結果になるのでありますから、ぜひこの際政府のごあつせんによつて、日本の国会の中にも、世界連邦建設のための特別の委員会を設けていただきたいと私は考えておるのでありますが、この点について総理の御見解を御答弁願いたいと思います。
#40
○吉田國務大臣 今われわれま國際連合に加入することについては、最も切望しておる一人でありますが、今お話の國々はすでに加入しておる國であつて、日本はまずこれに加入することを招請せられることが、第一の手続として必要なのであります。これま講和條約ができた後の話で、國際團体の一員として加入するのであり、また加入の勧誘を受けるので、勧誘以前において日本國がそういう委員会を設けるということは、少しく早計ではないかと思いますが、しかしこれは佐藤尚武君あたりで……。
#41
○菊池委員 今の國際連合と違います。世界連邦の問題です。
#42
○吉田國務大臣 そうですか。それは事務次官その他にお聞きを願いたいと思います。
#43
○岡崎委員長 それでははなはだ残念でありますが、総理は時間がありませんので、残りの質問はこの次に……。
#44
○戸叶委員 私ほんの一、二分で、簡單ですから……。
#45
○岡崎委員長 それでは戸叶里子君。
#46
○戸叶委員 私、時間をお急ぎのようですから、簡單の申の上げたいと思います。先ほど佐々木委員からの御質問によりまして、永世中立の問題に対する疑いということは、結局それは非常に困難であるという意味でおつしやつたことが、はつきりわかつたのでありますけれども、マツカーサー元帥も前にデーリー・メールの記者に、日本の國はスイスのように、永世中立の立場をとつて行くのが妥当であるというようなことを発表しておられるかに聞いております。またこのたびの婦人週間におきましても、至るところにおいて平和を要望する声が非常に強かつたのでありまして、この永世中立に対する日本國民の希望というものは、非常に大きいと思います。この平和の問題は、今こうした國際情勢にあるときに、日本の國ばかりがそういうことを言うのは、非常に虫がいいということを言う人があるかもしれませんけれども、過去に最も悲しい経驗を持つておるところの日本の國内から、この平和を要望する声が強烈に動いて來なかつたならば、とうてい平和擁護ということはできないと思います。そういう関係にありますときに、ああした発表をなされたものですから、國民に與えた影響というものは非常に大きかつたのです。そういう意味におきまして、この際吉田外務大臣は、自分は平和をどこまでも望むものであるということ、あるいはまた永世中立の立場をとつて行きたいということを、はつきり声明していただける意思があるかどうかということを、お伺いしたいと思います。
 それからまた太平洋條約の問題に関しましても、まだそういうものは提唱されていないから、何も考えておらないというような御意見でございましたが、すでに北大西洋同盟というものも結ばれておりますし、そうしてまた先ごろ政務次官が個人の資格においておつしやつたその反響によつて、フイリピンなどにおきましても、いろいろな議論が闘わされていたように新聞で拜見いたしましたが、こういうときでありますので、こうした問題につきましては、今提唱されておらなくても、十分愼重な態度をもつて臨まなければいけないと思いますが、そういうものに対するお考え、信念のほどをお伺いしたいと思います。
 それからもう一つのお願いといたしまして、外務大臣はたいへん長い間の外交経驗から、女性の勘を外交の中に入れて行かなければならぬということをおつしやつていただきまして、私どももたいへん喜ばしく思うのですけれども、先ほどのお言葉の中には、外交は再開されていないから、外務大臣の專任は置く必要がないというようなことをおつしやいましたが、私の勘で申しますれば、今外交問題が非常に大切なときであろうと思います。ことに國内の國民の信託を受けて來たところの私どもが、この外務委員会においてしなければならないことがたくさんあると思います。そういう意味におきまして、どうぞお忙しくはいらつしやいましようけれども、なるべくたびたび外務大臣としてこの会合へおいでくださいまして、いろいろ研究をし、またお話を承らしていただきたいということを、要望としてお願いいたします。
#47
○吉田國務大臣 私が申したのは、局外永世中立はむずかしいというのではなくて、局外永世中立をすることによつて、日本の平和なり何なりが保障し得るかどうか、その点について問題があると申したので、むずかしいとかむずかしくないということを申したのではありませんから、これはそう御承知を願いたいと思います。
 それから太平洋保障條約、これについては今日全然まだ問題になつておらぬことであつて、そういう抽象問題等については私としては愼重に考え、また同時に愼重に言葉を用いなくてはならぬので、近藤政務次官がある発言をしたために、今お話のようにフイリピンにある影響があるとするならば、私としてまた同じようなことについて、私見といえども申すことは愼重に考えなければならぬと思います。その他外務大臣を置けということは、先ほど申した通り、また私はなるべくしばしば出席いたすように努めます。その点は御承知を願います。
#48
○岡崎委員長 御質問の残りがありますけれども、これはこの次に外務大臣に出席を願いまして……。
#49
○青木國務大臣 先ほど野坂委員から御質問がございました点でありまするが、外國人の財産取得に関する政令についての問題でありまして、この政令は一月十四日付のスキヤツプの覚書に基いて、制定をいたしたのでございます。覚書は非日本人という問題であります。この非日本人の財産取得を認可事項とせよということの指令でありまして、この非日本人の概念が問題になつたのであります。そこでまず外國人が非日本人であるということは、これはもうだれも疑う余地はございませんが、問題は朝鮮人と台湾人、ことに華僑でございます。どういうふうに考えるかといえば、國際法上は対日平和條約の締結を持つて確定せられるべきものでありますが、外國の國籍を新たに取得するか、それに準ずる意思表示をした者のほかは、大体法律上日本人と同様に取扱うことになつております。從つてその政令におきましては、終戰の際――二十年の九月の二日でございますが、この終戰の際、日本の國籍を有していた者で、その後も引続いて日本の國内に居住している者は、一般日本人と同様の地位に置く。ただ同日以後、外國の國籍を取得するか、または連合軍最高司令官の任命、もしくは承認した外國使節團の発行する登録証明書といいますか、この登録証明書の交付を受けた者は、推定外國人として一般外國人と同様の地位に置くことにしております。そこでこの政令の第二條第一項は、以上申し上げたような趣旨をもつて規定されておりますものでありまして、一般華僑及び中國使節團より登録証明書を受けた台湾人は、外國人として取扱われておるし、右の証明書を受けていない者は、一般日本人と大体同様に取扱われるのであります。以上の趣旨によりまして、先ほど御意見のございました華僑につきましては、約三万人ぐらいでありまして、目下事実上華僑がこの政令によつてなるべく迷惑をいたさないようにという方法を、ただいま考究中でございます。その結論が出ましたら御報告いたします。
#50
○野坂委員 聞きますと、この政令通りやられているようなところがあるようです。そうして実際、たとえば財産の取得に関して、新しいこの政令の基いたいろいろな手続をやらなければならないとか、いろんな故障がすでに起つているようです。ですからこういう点について、政府はぜひ至急お調べになつて、今申されたように、まだこれが政府としてもまつきりしていないならば、今言つたような政令を即時そのまま遂行するというようなことをとめるというようなことも考えられるのではないか、これが一つ。そういうふうにやつていただきたいと思います。それから第二は、政府の方としては華僑については特殊な考慮を拂つて、まだ決定的な意見にはなつていないと申されますが、これはいつごろ大体おきめになる予定であるか。華僑の希望というようなことはおそらく政府は御存じだと思います。この間この國会の中にも向うの代表が來て、われわれ向うの意見を聞いたこともございます。いつごろになつたらこういうものは決定的な対策がきまるかどうか、この二点をお聞きしたい。
#51
○青木國務大臣 その点でありますが、私どももたびたび陳情を受けておりますので、よくそのことは存じております。ただこの政令によりまして、実際上どの程度の不便を感ぜられるかという問題でありまして、御承知の通り、さきに朝鮮人は一應解決をいたしておりますので、なおわれわれとしては、事実上どうかということをよく檢討いたしまして、なるべく早くそのことも決定いたしたいと存じておりますが、なお先ほど申し上げました通り、いつできるかということは、今日ただいまのところはつきり申の上げるわけには参りません。
#52
○野坂委員 第一の点についてはどうですか。つまり、今実際上この政令が適用されて、相当迷惑をこうむつており華僑があるということを聞いております。だからこの政令を今適用するということを一時猶予するとか、こういす点については政府はどういうお考えを持つておられますか。
#53
○青木國務大臣 実はこの政令ができましてから、その後これによつて事実不便を感ずるということを、まだ私自身としては聞いておりませんので、いずれ私の方もそういう点について調査をいたしたいと存じます。
#54
○並木委員 経本長官にお伺いいたします。國有財産の拂下げにつきまして、内閣と事務当局との間に多少の食い違いがあるんじやないかと、先日來私は感じておるのです。政府の方針としては、國有財産を民間に拂い下げて、民間でこれを受入れ切れないものは、そこへ外資の導入を持つて來るとか、一種のたけのこ生活と外資導入とを見合つた一石二鳥のような考えをもつて呼びかけておるのですが、これを実際担当しておる事務当局の方面では、これは不可能だ、相談にならないというような声もあるのですが、その点どういうふうになつておりますでしようか。ひとつ御回答を願います。
#55
○青木國務大臣 お言葉のことはよくわかりますが、政府といたしましても、これはどうする、あれはどうするといつたようなことがはつきりとまだそれぞれきまつておりませんが、そういう強い意向を持つておりますので、できるだけ早急にそういう点について、事務当局と矛盾のないような措置を講じたいと考えております。
#56
○並木委員 一例として國鉄の例をとつてお伺いいたします。その拂下げの問題ですが、これは実際事務当局の方では案を立てておられるだろうと思うのですが、政府としては足手まといだから、たけのこ生活の一環として民間に拂い下げるのだ、こういう目的なのか、それとも國民のためにこれを拂い下げて、その上の外資を導入してやるのか、こういう点をお聞きしたいのであります。この機会に、運輸省の方もお見えになつておると聞きましたので、現在の線名、申請者の氏名、それから拂下げを希望する價格、また政府が予定しておる賣渡し價格、こういうものは私たち参考としてぜひお聞きしておかなければなりませんので、その点もあわせてお知らせ願いたいと思います。
#57
○青木國務大臣 私のお答えできる点だけを申し上げますが、政府が、これは足手まといであるから民間に拂い下げよう、こういうことではないのでありまして、われわれの一般的な構想といたしましては、民間の事業を豊富にするということ、そして政府がやつておつても比較的能率が上らなかつたり、あるいは経理上民間に移した方がきわめて有利であるということ、あるいは能率的に非常に有利であるというように考えて問題を取扱うべきであると存じておるわけでありまして、おつしやるように、政府は國が持つておることがかえつて足手まといであるからというような考え方のもとに、民間に拂い下げるというようなことを考えておるわけではございません。
#58
○並木委員 そこでわれわれはいつも判断に苦しむのでありますが、政府としては、極力この際高く拂い下げようという氣持であろうと思うのです。ところが拂下げを申請する方の側から申しますと、できるだけ安く買い取りたい。これが本音であろうと思うのであります。ですからどうしてもここで、具体的にどういう線が今問題になつておるのか、そしてその申請者の名前、それから政府の方の予定しておる價格、申請者の希望しておる價格、そういうものをお知らせいただきたいと思うのであります。
#59
○青木國務大臣 個々の問題については私は存じませんが、時價に対して、時價の八掛以下にはならないようなものであつたように記憶いたしております。その他詳細のことは、それぞれの担当部門の方からお答えを願うことにいたします。
#60
○佐々木(盛)委員 この際当外務委員会の運営に関して、あえて私は委員長の所見を承つておきたいと思います。ただいま吉田外務大臣は、本國会始つて以來初めてこの委員会に顔を出され、野党側の並木委員にして、なお父帰るの思いがしたのであります。ところがかような例は不幸にして今までなかつたことでありますし、かつまた、申すまでもなく日本の民主化といい、ポツダム宣言の命令する責任ある政府の確立といい、ことごとく私は要するに日本におけるパリアメンタリズム、議会中心主義であろうと考えるのであります。しかも新憲法のもとにおきますところの國会運営というものは、委員会が中心であることは申すまでもない。從つて委員会を無視して日本の政治はないわけです。ところが大臣は一向にお見えにならないで、たまたまお見えになつたと思つたら、忽然として姿を消して行くに至つては、実に遺憾である。われわれはほんとうにここで國政を論議したいと思つているのである。われわれがここに出て來ておるのは、政府委員あるいは官僚諸君から片々たる情報を求めようとしておるのではない。さようなことは行政官にまかせればよいのであつて、われわれはここで國政を論議し、國政を決定し、それによつて國民の期待に沿いたいという氣持で出て來ておるのである。ところがわずか三十分やそこいらで、忽然として姿を消す至つては、われわれはその聽責を果することができない。そこで私はあえて與党側からこのことを言うわけですが、この前も私はこのことに関して発言をして、委員長代理はこれを採択され、外務大臣の出席を要求されたのでありますが、次の委員会におきましては、ぜひとも外務大臣の出席を求めたい。われわれは本日のような一問一答では、まつたくあきたらないところがたくさんある。これは各委員とも同様であろうと思います。從つて委員長におかれましては、ぜひともこの委員会の総意を正しく反映されまして、総理大臣にこのことを強く要求されたい。これに対して委員長はどういうような見解を持つておられるか。次会はぜひとももう一度御出席を願いたいということについての、委員長の御見解のほどをお聞きいたしたいと思います。
#61
○岡崎委員長 御説はよくわかりました。この次は請願等を処理することになつておる予定だと思いますので、この次はむりではないかと考えております。
#62
○佐々木(盛)委員 かりにこの次がいろいろな事務の関係上むりであるならば、あえてこの次というわけではありませんが、幸いにして先ほども外務大臣は、つとめて出席するということを言明されておるわけであります。從いましてこの委員長の総意がどうか正しく反映されまして、委員長と大臣との間にはいろいろ個人的の関係はあるでありましようが、しかし公人たる委員長の立場において強く要求されて、ぜひとも私の要求にこたえられんことを強く要望いたすものであります。
#63
○野坂委員 事務的なことですが、今内閣委員会方面には各省設置法案が出ております。その中には外務省の設置法案も出ておるようですが、あの問題は内閣委員会で審議するのでしようけれども、この委員会でも当然やるべきだと私も思いますが、これはどういうふうになつておりますか。
#64
○岡崎委員長 これは各委員会との関係の問題でありまして、外務委員会だけでないのでありますが、各常任委員長の会議で相談することになつておりまして、まだ決定をいたしておりません。
#65
○野坂委員 われわれ外務委員として、外務省の機構が今後どうなるかということについて、非常な関心を持つておるのでありまして、内閣委員でやるよりもこちらでやる方が適当ではないかと私は考えます。そこでここで審議されるか、あるいは連合審査とか、そういう手続をとつてもらうべきではないかと私は思つております。
#66
○岡崎委員長 御意見は承つておきます。
 ほかに御質問ありませんか。――御質問がなければ、初めに引続きまして北大西洋同盟の説明を求めます。
#67
○大野政府委員 冒頭に述べましたような三つの支柱に基きまして、米國の外交政策が遂行されておるわけでありますが、今度の北大西洋同盟條約の締結によりまして、この三つの指標のうちの第二のもの、すなわち地域的集團安全保障に具体的かつ法的な根拠を與えたということが言えようかと思うのであります。アトランテイツク・コミンテイという言葉を米國の言論界において使つておるのですが、要するに大西洋協同体諸國と申しますか、これらの諸國がある種の政治的、軍事的な利害を共通にいたしておるという歴史的な、あるいは傳統的な観点からいたしまして、なるべく結合することがいいのだということが大分前からあるのでありまして、今度の條約の締結という問題も、やはり歴史的に見ますると、そういう点と結合しておるというふうに考えてさしつかえなかろうと思うのであります。從つて今度の條約の目的といたしておりますものは、ソ連圏諸國との勢力の均衝を回復するために、強力な手段をここに確保せんとするにありまして、その目的を具体的に推定いたしますならば、第一に、西ヨーロツパにおける侵略に対する不安を除きまして、これによつて経済回復を促進するということ、第二は、共産党による國内革命に対して警告を與えるということ、第三には、北大西洋諸國の武力を平時においても相当調整を加えまして、これを結集することによつて攻撃を未然に防止するということ、第四には、もし侵略あるいは攻撃が行われる場合におきましては、西ヨーロツパ側が助力を獲得する態勢にあるということを、心理的にも世界に確立するという点にあろうと思うのであります。そういう意味から行きまして、今まで歴史上幾つかございました同盟條約の目的と大体似ておりまして、戰爭を予防するという性格が基本になつておりますが、また心理的な効果も相当ねらつておる、かように論定してよかろうかと思うのであります。
 以上述べましたところによりましてはつきりいたしますことは、米國はこの條約調印によつてその傳統的な孤立主義を清算した。すなわち第一次大戰並びに第二次大戰によつて明らかにされました、米國と西ヨーロツパ諸國との間には安全という点において不可分性があるということを確認したということが言えようと思うのであります。從つて米國といたしまして、これによつた一九三九年当時、中立法によつて覇束されておりましたころに比べまして、はるかに自由かつ強力な立場からこの條約を米國の対外國策の一翼として、また今度の太平洋戰爭が勃発いたしました直後において締結されましたリオ條約――西半球共同防衞條約をもう一つの一翼といたしまして、積極的に世界政策に乘り出さんとする基礎をここで固めたということが言えようかと思うのであります。そこでこの條約は、大体十四箇條から成立つておるのでありまするが、ここに二、三注目すべき点を御報告申し上げておきたいと思います。
 第一の点は、この條約が國際連合を無視する結果になるのではないかという疑念であるのでありまして、この点につきましては米國におきましてもあるいは世界の各國におきましても、相当注意を引くに足る議論があるのであります。この條約を見てみますると、十四箇條のうち、六箇所におきまして國際連合の関係に言及しているのであります。そのいずれをとつてみましても、國際連合の唯一性ということをうたつておるのでありまして、非常に注意を拂つていると言えようかと思うのであります。しかしながらたとえばケルゼン教授のごときは、國際連合による普遍的な安全保障体制にかわつて、地域的な保障体制の発展を見るということは、結局國際連合の破産を意味するということを指摘しておりますのは、注目に値すると思うのであります。
 第二の点は、締約國が武力攻撃を受けた場合の援助の義務に関する諸問題でありまして、この点はこの條約がまだ関係各國との間に交渉中であつた際におきましても、また米國の議会におきましても相当問題になつておるのであります。その問題の当在は第五條の規定にあるのでありまするが、この第五條の規定において、攻撃が行われた場合において、自動的に締結國がこれに対抗するために兵力を行使することになるかどうかという点にあつたのであります。この点に関しましては、二つの條約が私は比較対象の便宜を提供するものと思うのでありまするが、その第一は、今申しました一九四七年にリオデジヤネイロにおいて締結されました西半球共同防衞條約の第三條、それからもう一つの條約は昨年の三月に締結されましたブラツセルにおける西ヨーロツパ同盟條約のうちの四條であります。そこでリオ條約の第三條におきましてはいかなる規定があるかと申しますと、米州の一國に武力攻撃が加えられた場合においては、すべての米州國への攻撃とみなす。よつて各締約國は攻撃に対抗するために相互に援助し、協議機関にこれを諮り、そうして集團的に措置を決定するということになつておるのであります。その措置の中には、同條約の第八條に規定しておりまする兵力の行使ということが含まれておるのであります。しかしながらこの條約の第二十條を見ますると、兵力行使にはその國家の同意を必要とするということに相なつております。この相互に援助し合う、あるいは攻撃に対抗するという場合における兵力の行使に関しましても、相該國がこれを承認しなければ兵力の行使が発動できないということに相なつておるのであります。これと対蹠的な立場に立ちまするのが、今申しました昨年三月にできましたブラツセル條約であります。このブラツセル條約は英、佛及びオランダ、ルクセンブルグ、ベルギー、この五つの國によつて調印されておるのでありまするが、この第四條には、締約國が欧州において武力攻撃を受けた場合におきましては、他の締約國は全力をあげてすべての軍事的及びその他の援助を行う、こういうような非常に直截簡明なる規定をなしておるのであります。從つてこの二つの前例と比較いたしますると、今度の北大西洋條約の第五條につきましては、西ヨーロツパ側は米國の自動的な参戰を規定するようなことを希望しておつたのでありまするが、米國は議会においてかかる條項を存する條約に対しては非常な困難があるからということで、これを氣にいたしまして同意しなかつたのであります。從つて一時交渉が相当な困難に陥つたこともあつたのでありまするが、実際に條文の確定したところを見ますると、ブラツセル條約の自動的な規定よりは弱いのでありますが、しかし一般に予想されておりました以上に明瞭な字句を使つておることは事実であると思われるのであります。すなわち第五條におきましては、欧州、北米――これはアラスカを含む北米でありますが、北米における締約國に対する武力功撃の行われた場合は、それは締約國全部に対するものとみなされる。各締約國は各自自衞権を行使して、ただちに個別的及び共同して武力行使を含めた北大西洋地域の安全の回復維持のために必要な行動をとつて、そうして被功撃國を援助するということに相なつたのであります。そこで問題になりまするのは、この條約の武力攻撃とは較であるかということであります。これに対しましては、第六條におきましてどういう攻撃がここにいわゆる武力攻撃であるかということを規定いたしておるのでありますが、その第一は、欧州または北米における締約國の領土、フランス領アルゼリア、第二が欧州における締約國の占領軍、第三が北回帰線以北の北大西洋地域、具体的に申し上げますと、西はメキシコ湾から東はアフリカのスペイン領のサワラ砂漠を貫いた一線の北を指すのでありますが、これらの地域における締約國の諸島嶼、第四はこの地域における締約國の船舶または航空機に対する武力攻撃が、いわゆるここでいう武力攻撃であるという規定になつております。從つてドイツあるいはオーストリア、あるいはトリエスト等、現在締約國の占領軍が駐在いたしております場合には、この占領軍に対する攻撃は、これをここにいわゆる武力攻撃とみなすということになるのみならず、それらの國の船とか飛行機、たとえばベルリンの空輸に從事いたしておりますところの米英の輸送機等に対して攻撃が加えられた場合におきましても、これはここにいわゆる武力攻撃であると解せざるを得ないことになつておるのであります。なお三月十八日に米國國務長官アチソン氏は談話を発表いたしております。これによりますると、國内飾命も、また外部から指導ないし指示され、かつ本條約の包含しておるところの地域において発生した場合においては、この第六條ま発動があるという見解を明白にいたしておるのであります。もつともはたしてこの國内革命なるものが、外部からの指導ないし指示によるものかどうかというふうな判断が、事実において非常にむずかしいということがすでに大いに論議されておる次第ではありますが、しかしそういう見解を單的に表明いたしておることは、注意の要があると思うのであります。それからこの條約におきまして、いわゆる欧州というものはいかなる地域を指すかという点でありますが、この点につきましては、たとえば先ほど申しましたリオ條約の第四條におきましては、條約の適用区域が経度、緯度を明白にあげまして、きわめて明確に規定されておるのに比べますと、欧州の範囲につきましては、かなりあいまいであるという論議が行われておるような状況でございます。もちろんこの攻撃の性格に関しましても、アチソン國務長官は、全面的な攻撃と國境紛爭などとの間には一線を画せざるを得ない。たとえばパール・ハーバーに対する攻撃と、パネー号事件に対する攻撃とは、これは明確に性質は違うというふうに考えて、その対処策もまたおのずから異ならざるを得ない、かように言つておるのでありますが、これらの点は、今後この條約の実際運用上の実例がだんだんたまつて來ませんと、判断いたしかねる、かように考えられるのであります。なお援助の範囲に関しましても、ただいま申しましたように、各國の判断にまかされておりまするので、おのおの程度を異にするということが理論的には言い得ると思うのであります。
 もう一つ第三に注意すべき点と申しますのは、締約國は單独または協同して、自助と相互援助によつて武力攻撃に対する個別的及び集團的抵抗力を維持強化するという規定が第三條に置かれておるのでありますが、これはただちに米國の武器的な援助がこの條約の裏にあるかどうかということをわれわれをして連想せしむるのであります。もちろん條約上は、米國がその條約に調印いたしましても、ただちに締約國に対しまして武器の援助を行うという義務を持つているわけではないということは言えるのでありますが、しかしながら米國の今世界の政治経済において占める物質的な、あるいは政治的な地位にかんがみまして、この問題は非常に大きな問題となつておるのでありまして、むしろ実体的に申しますると、この條約よりは、それと裏表をなしておりまするところの、米國の締約國に対する武器援助の問題が非常に大きな問題であろうと思うのであります。米國のヨーロツパに対する武器援助に関しまして、ある種の計画が目下米國当局において考案中と傳えられておるのでありまして、國務次官補のアーネスト・グロス氏と陸軍省のライマン・レムニツツア氏などが中心になりまして、目下具体案を檢討中と報ぜられております。その金額がどのくらいであるかということでありますが、これはただいまのところ経費は発表されておりませんが、大体第一年度におきましては十億を越え、場合によつては二十億に達することもあるという観測が行われておりますし、また第二年以後におきましても、武器援助が継続されるものと見られております。この点に関しましては、米國の言論界におきましても相当の議論があるようであります。たとえば國会方面におきましても、上院議員のタフト氏であるとか、ブリツジエス氏あるいはホーエラー氏のごときは、この條約そのものについては別途議論してもいいが、その裏に当然予想されるところのヨーロツパ武器援助というものの全貌を見ることなくして、とことんまでこの條約を檢討するわけに行かない、またそういう義務が非常に大きなスケールにおいて付着しておるならば、この條約そのものについても、必ずしもただちに賛成を表しがたいという意見を発表して、注目を引いておるのであります。
 第四の注目点は、加盟國の範囲についてでありまして、この條約の第一條におきましては、できるだけ加入を促進する趣旨で規定が置かれておるのであります。この点に関しましても、米國におきましては二、三の異論があるのであります。すなわちできる限り包括的に多数の國を入れたらよかろうという議論が大体正統論なのでありまして、冒頭に申し上げましたように、その結果十二箇國の政府がこれに加入することによつて調印を了したような次第でありますが、他面米國としては、あまり簡單に方々に手を廣げるというふうに國策を解釈するわけには行かない。やはり米國の傳統政策というものにも相当の考慮を拂つて、加入を無制限に拡張するようなことは考えなければいけないという議論もあるのであります。また第三の議論といたしましては、ジヨン・フオスター・ドユレス氏のごとき、この人は共和党の外交顧問として重きをなしている人でありますが、先月のクリーブランドにおける演説におきまして、米國がスカンジナビア諸國に対して大規模の軍事援助を送るというようなことがあるならば、戰爭になる危險が非常に濃くなつて來る。ソ連邦は、自分の本國領に対して直接かつ深刻なる脅威が加えられているというふうに信ぜざるを得ないような立場に追いやられるならば、これは戰爭になる公算があるということを論じて、注目を引いているのであります。
 第五の注意点といたしましては、この條約と既存の條約との関係であります。この條約の第八條におきまして、本條約は既存の協定や條約とは何ら抵触するところなしと規定しておるのでありますが、これはおそらく一九四二年の英國とソビエトとの間に結ばれております同盟及び相互援助條約、また一九四四年のフランスとソビエトとの間の同盟及び相互援助條約などに対する考慮であると思うのでありますが、これらの点につきましては、ソビエト側はこの條約の締結される前後を通じまして、これら二つの條約と抵触するということをあげまして、論難を加えているという状況にあるのであります。以上が、ごく概略でありますが、この條約を研究いたします上において注目すべき諸点であります。
 しからばこの條約に対しまして、世界各國がどういう動きを示したか、また現に示しつつあるかということを申し上げたいと思います。西欧諸國といたしましては、米國がこういう体制に新らたに参加したという事実に対して、まつたく大きな意義を認めておるのでありまして、米國の歴史的なコミツトメントは、平和に対する大きな担保であるというふうに見ておるのであります。現在東西両ブロツクの軍事力は、その一般兵力についてみますと、東ヨーロツパ側五百万以上に対して、西ヨーロツパ側は本條約加盟國だけを見ましても、三百七十万前後といはれておりますが、この劣勢は米國から今後給與される軍事的援助によりまして、挽回できるものと西欧諸國は期待しておるかに見えるのであります。その結果といたしまして、当然二つの陣営の間に対立を激化するであろうということだけは、言えようと思うのであります。他面ソ連邦をして戰術の轉換をある程度考えざるを得ない状態に追いやることは、きわめて考え得るところでありまして、かえつてこれによつて平和的にソビエトの間の交渉が、妥結に導かれ得るという希望を抱く向きもあるのであります。西欧諸國が米國の本体制に対する参加を、当初から希望してやまなかつたことは、先ほど申し上げましたブラツセルの西ヨーロツパ同盟條約が五箇國の間に締結されました当時からの米國に対する強い要望に照して明らかでありまして、その当然の展開といたしまして、今回北大西洋同盟條約の締結が実現を見たということが言えようと思うのであります。從つてこのブラツセル條約の基本的な氣持は、やはり今度の北大西洋條約の中にも相当盛り込まれておるというふうに考えられようかと思うのであります。ブラツセル條約の予定しておりまする軍事機構であるとか、あるいは共同防衞本制に関しましては、実際上は今度の條約に核心を吸收されたという観測が行われておるのでありまして、理論上は両者は並立し得る建前にあるのでありますが、実際は今度の新しい條約の中に、この共同防衞体制であるとか、軍事問題等が吸收される結果になるであろうという観測が行われております。なお調印に至りまするまで最も波瀾を見せましたのは、北欧諸國の参加問題でありまして、米國は從來積極的に北欧、ことにスカンジナビア諸國の参加に働きかけて参つたといわれていますが、米國が参加國以外には軍事援助を提供しないという態度を明らかにするに至りましたので、まずノールウエーは北ヨーロツパ三國間のみの、すなわちノールウエー、デンマーク、スエーデン、この三國間のみの同盟條約案を放棄してこの新しい條約に参加し、またデンマーク及びアイスランドも平時においては軍事基地を要求しないとの保障を米國から得ることができたので、ノールエーに同調するに至つたのであります。
 二大陣営間の國際的対立が激化するにつれまして、スエーデン及びデンマークもますます苦境に追いこまれ純中立的立場の維持は次第に困難の度を加えるだろうという観測が行われております。ポルトガル及びスペインの参加問題に関しましても、相当の話題が提供されました。米國はポルトガルの戰略的價値にかんがみまして、ポルトガルの参加を重要視しておつたのでありまするが、この國は一九四〇年七月、スペインとの間に相互援助條約を結んでおりまして、これと北大西洋同盟條約との対立を顧慮いたしまして、でき得るならばスペインの参加を希望したのでありますが、結局スペインとの間にある種の了解が成立したとおぼしく、またデンマーク、アイスランドの場合と同じく、米國から平時にはアゾーレス群島の軍事基地を要求しないというギヤランテイーを得たので、遂に参加するに至つたのであります。スペインの参加については、米國はこれを支持する傾向を示しておつたのでありますが、その前提といたしまして、まず一九四六年の國際連合のスペインに関する決議が再檢討されるということが先決條件となつておるのであります。すなわちこの決議におきましては、國際連合の全加盟國はスペインに駐存する大公使を召還すべしという決議になつていたのでありまして、スペインの希望にもかかわらず、この問題がまず解決されなければ、スペインをこの同盟條約に参加させることはできないという立場が強くとられましたために、フランコの希望は今日まで実現を見ない状況にあるのであります。しかしながら同様に独裁的な体制をとつておりまするポルトガルを加盟せしめた関係もあり、スペインの加盟につきましても、アチソン長官はその加盟には実質的な障害はないという言明をいたしておる事実にかんがみまして、米國初め民主主義諸國の動向と今後の政策を察知するに足るのであります。北大西洋同盟條約のソ連邦に與えた影響につきましては、本條約の締結が発表されまするやいなや、ソ連邦といたしましては、一月二十九日の外務省声明によつてこれに非難を加え、越えて三月三十一日に参加七箇國に対しまして、正式の抗議を行つたのであります。またノールウエーに対しましては、不侵略條約の締結を提案し、トルコに対しましてもある種の警告を発し、あるいはフインランド及びスエーデンに対し、論難を加える等の措置をとつて來たのであります。過般ソ連邦におきまして、政府とソ連邦共生党との間に高級人事の交流があつたのであります。この眞相の把握ははなはだむずかしいのでありますが、一説によりますると、外務大臣であるとか、あるいは貿易大臣、國防大臣、國家計画委員会議長といつたような頭株の更迭によりまして、ソ連邦といたしましては、この條約に対する政治体制をますます整備しようという動きを示しているのだというのであります。これも相当の理由があるように思われるのであります。ソ連邦といたしましては、今後におきましても、自國の國防力を充実させようと努力することは明らかであろうと思うのでありますが、対外的には東ヨーロツパ諸國、北朝鮮及び自國の勢力圏内にある隣接諸國に対する把握力を一段と強化して、あらゆる事態に備えるという態勢をとりつつあるかに見えるのであります。また各國の共産党も今度の條約に関しまして、もしこの結果戰爭の発生した場合には、ソ連とともに戰う旨を声明して、世界を驚かしたのであります。ソ連を主軸とする國際的提携の態勢をこれによつてますます鮮明化して、資本主義陣営に対する警告を與えるという態度をとつたわけであります。東亜に関しましても、この影響は免かれないものと見られるわけであります。
 なおこの條約に関連いたしまして、地中海にも同じような條約をつくるべきであるという議論が行われたのであります。すなわちベビン・イギリス外務大臣はこの條約の締結に関連いたしまして、最も大きな形で集團的安全保障の組織が開始されたことを意味するが、地中海諸國、ことにギリシヤからイランに及ぶ地域にある諸國の独立と領土の維持保全については特に関心を拂うべきものであつて、從來その独立と領土保全を支持して來たわれわれの行動は、今後の政策を表わすものであると述べ、少くとも英國の地中海及び中東地域に対する関心をこれによつて示したわけであります。英佛は一九三九年、トルコとの間に相互援助條約を締結しておりますし、米國もまたすでにトルーマン主義によりまして、ギリシヤ、トルコ両國の独立を保障している以上、今後北大西洋同盟條約加盟國に対して、東地中海條約に関する何らかの宣言程度の措置及び援助の強化は期待されないではありませんが、すでにイタリアは北大西洋條約に加盟しておりますし、また將來スペインも加盟を許されると予想されます次第でありますから、地中海防衞の態勢はすでにできあがつているといつても過言ではないのであります。これらの國々を含む地中海條約を別に締結するとは、今のところ認められないのであります。またアラブ地域を含む東地中海條約は、スペイン問題の解決を見るまではその可能性に乏しいというふうに観測されるのであります。太平洋同盟條約案というお話が、先ほど來この委員会においてしばしばあつた次第でありますが、今度の同盟條約締結に刺激されまして、東南アジア諸國における共産党の拡大に対しまして、英連邦であるとか、フランス、オランダの関係諸國が何らかの具体施策を講ずる必要があると認めることは事実でありまして、ことに英連邦関係諸國がこの問題についてきわめて熱心であることは、昨年十月の英帝國会議及び本年に入りまして、去る二月二十八日ニユーデリーにおいて開催される予定であつた東南アジア四自治領代表会議――もつともこの会議はビルマの内乱によつて中止のやむなきに至つたのでありますが、三月八日には、イギリス政府は諸高官を特に派遣しているのであります。さらに四月二十三日から十日間にわたりまして、ロンドンにおいて英帝國会議を開催する予定であること等、一連の動きがそこに現われているのでありまして、これはいずれも英連邦諸國間の結束による反共陣営の確立を、企図するものであると見られているわけであります。しかし今のところイギリスとしては、英連邦以外の諸國と太平洋條約のごときものを締結する意図から、かかる会合を持つているのではないものと思われます。これは主として反共陣営の確立を企図するという点に重点があると思われます。これをもつてただちに太平洋同盟案の提唱というふうに結びつけるのは、必ずしも正しい見方ではないと思われます。すなわち特にインドネシア、佛印等における政治的不安にかんがみまして、イギリスが太平洋條約の締結に関して、かりにその必要ありと認めているといたしましても、まだかなり消極的であると見られております。
 また米國はこの問題に関しまして、去る三月二十三日アチソン國務長官が、米國は今太平洋條約締結について討議することに特に関心を持つていない、この問題は公式に考慮される段階にまだ達していないという趣旨をはつきり述べている点から見ましても、今急にこの問題が具体的なところまで進んで行くというふうには観測できないのであります。この間にあつて、オーストラリアその他若干の國々が、かなりこの太平洋同盟條約案なるものに対して積極的な意図を持つているということだけは注目に値しようかと思うのであります。
 以上をもちまして、この條約の主要なる点と、これをめぐる國際関係に関する御報告を終りたいと思います。
#68
○佐々木(盛)委員 ちよつと御質問申し上げたいと思います。さきに西半球の共同防衞同盟ができ、今また北大西洋同盟なるものができまして、われわれは將來の世界平和の確保の見地から非常に念願しておりました國際連合の將來につきましても、一抹の暗影なきを得ないような次第でございます。そこでこういうふうな過去三年間の及ぶ國際連合の活動と努力にもかかわらず、ますますここに戰爭への危機というものが、米ソ関係の鋭い対立となり、あるいは五大國の一つである中國においてすら、今中共と國民軍との間にはてしない戰いが繰廣げられておるというふうな局面に直面いたしましたときに、先ほどお話になりました地中海の同盟説が浮び上り、今またここにわれわれ日本を含んだ太平洋協同防衞というようなことが浮び上つて來ることは、もとより私は当然であろうと思います。しかしてこの問題につきましては、單なる対岸の火災のような考え方ではなく、われわれの切実な問題として、われわれの運命というものをゆだねるべき重大な問題でありまするので、眞劍に討議しなければならぬと思うのであります。北大西洋同盟ができました後の起つた新しい事態によつて、北大西洋同盟がなかつた前よりもかえつて戰爭への危機が激化しておるのじやないかということをわれわれは眞劍に考えるわけであります。また今度の北大西洋同盟などの性質から見まして、先般日本を訪問いたしましたロイヤル陸軍長官が申しまして、また後ほどこのことは否定された言葉ではありまするが、戰爭が始まつた場合には、アメリカは日本から撤退するだろうということを、われわれはこういう國際情勢の推移の中にいろいろと想像することができるのであります。そういうときにありまして、一体北大西洋同盟ができたために、アメリカのヨーロツパ第一主義というものが何といつてもここに確立されて來る。あるいはその他のアメリカのいろいろな日本に対するところの対策などにおきましても、かなりの変化がありはせんかと考える。從いましてさようないろいろな見地から、この北大西洋同盟が日本に及ぼす影響についてどういうものがあるとお考えになつておるか。外務当局は、日本との関連においてどんなふうにお考えになつておるかというような御所見を承つてみたいと思います。
#69
○大野政府委員 佐々木さんの御意見でございますが、去る四日に生れたばかりの條約でありまして、また二週間余りしかたつておりませんので、その後このために國際情勢がさらに激化したとか、あるいは改善したかどうか、具体的な事実をつかみましてここに判断するだけの材料がございません。しかしながら私はわずか二、三週間の間ではありましたが、必ずしも非常の激化してどうにもならないような事態になるというふうな印象ばかりも持つておらない次第であります。
 それからこの同盟條約の日本に及ぼす影響ということでありますが、この問題は愼重に研究を要することでありまして、この席ではお答えできにくいような問題でありますので、御容赦願いたいと思うのであります。
#70
○岡崎委員長 ほかに御質問はありませんか。――なければ本日はこれにて散会いたします。
    午後零時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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