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1947/08/06 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 決算委員会 第3号
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1947/08/06 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 決算委員会 第3号

#1
第001回国会 決算委員会 第3号
  付託事件
○建設省の設置に關する陳情(第三十
 六號)
○建築行政の地方移管に關する陳情
 (第四十號)
○建設省の設置に關する陳情(第七十
 二號)
○勞働省設置法案(内閣送付)
○昭和二十年度歳入歳出總決算
○昭和二十年度特別會計歳出決算
○昭和二十年度歳入歳出決算検査報告
○建設省の設置に關する陳情(第八十
 三號)
○建設省の設置に關する陳情(第八十
 六號)
○建設省の設置に關する陳情(第九十
 三號)
○建設省の設置に關する陳情(第百二
 號)
○内務省廢止に當り同省と運輸省との
 共管事項を整理することに關する請
 願(第三十四號)
○建築省の設置に關する陳情(第百十
 一號)
○建設省の設置に關する陳情(第百十
 八號)
――――――――――――――――
  委員の異動
八月一日委員新谷寅三郎君辭任につ
き、その補缺として駒井藤平君を議長
において選定した。
――――――――――――――――
昭和二十二年八月六日(水曜日)
   午後二時五十七分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○決算の審査方針に関する小委員長報
 告
○勞働省設置法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(下條康麿君) それでは委員會を開會いたします。前回この委員會で審査方針、審査順序について決定するために小委員會を設けたのであります。小委員会は今月一日竝びに二日審議して、私が小委員長を兼務いたしましたので、私からこの小委員會の決定につきまして御報告申上げたいと存じます。實は印刷してお手許に配付する時間がないために、便宜私から口頭で申し上げまして、あとでお決まりになつたものを改めて刷つてお配りしたいと思つております。
 先ず小委員會におきましては、審査のために更に專門委員と、それから大蔵省、會計檢査院竝びに事務局等と專門の方に集つて貰つて、詳細研究された結果この案ができたのでありますが、その案を申し上げますというと、第一に根本問題、根本方針というようなものについて研究したのであります。それは決算が、從來戰時中厖大な豫算のために、そういうふうな決算關係というものは、ややもすれば放漫に流れておつたのであります。それはどうしても今後におきましては大いに是正しなければならないのであります。殊に新憲去が實施せられました今日、憲法の精神もそこにあるのでありまして、加えて關係方面の意嚮も決算を殊に重視しておるということを聞いておりまするので、先ず以て決算の重要性ということを特に強調しなければならんと思つておるのであります。そこで問題になるのは、從來でもそうでありましたが、今後も決算が両院に別々に提出されまして、別々に審議されます關係上、衆議院と参議院の意見が異る場合があり得るものであります。從來もあつたのでありまするがあり得るのであります。これは國會の決議を實現すると言いますか、効果あらしめる上におきまして、甚だ面白くないことでありまするので、國會の意見の単一化というようなことが是非必要であると思うのであります。これには根本的には國會法の改正を要するかも知れませんが、差當り今日の場合としては、先ず以て先般決定されました常任委員會の両院の合同審査會というようなものを活用しまして或る段階におきまして、その審査の打ち合わせをしまして、そうしてでき得る限り國會の意見の相違を避けるということに努力したいということが一點であります。
 次の問題は國會と検査院の關係でありまするが、あたかも國會が判事の地位に立ち、檢査院が原告で、政府が被告だというような考え方ではなくして、檢査院も新憲法におきまして大きな權限があり、國會も決算について大きな權限がありますが、檢査院はやはり國會の耳目となつて、國會と一體をなして、この會計實行の適正を圖る。決算の審査の運用に上つて、會計の實行の適正を圖るというように進んで行きたいというように考えるのであります。勿論檢査院の立場と國會の立場と本質的に異りますからややもすれば、檢査院の檢査は事務的な檢査になり、國會はそれに加えて政治的なふうに考える場合もありまして、場合によつては檢査院の報告と國會の考えなどと違う場合があり得ると思いますけれども、これもできるだけ縮めて行つて、國會の取上げたことによつて實際的な効果が大いに上るということに進めて行きたいというふうに考えられます。ただ今日の事態におきまして、関係方面の了解を得た決算であります關係上、會計檢査院の批難事事項を、會計檢査院において適冨でないと認めた批難事項を緩和するということは、これは事實困難ではないかと思うのです。或いはもつと掘り下げて更に強く批難するということは可能であると思うけれども、それを緩和するということが困難ではないかと思いますが、兎も角も國會というものが檢査の中心になつて、檢査院がその耳目となつて、一體となつてその會計檢査の實行に當るというふうな考え方で行きたいというように考えるのであります。それから從來ややもすると下級の會計官吏が責任を問われて、それで命令をした上官の責任というものが不問に附せられるようなことがあつたように思うのであります。これは無論會計檢査院法第三十一條の規定で會計檢査院でもやりますけれども、併しかような場合こそはむしろ國會が進んで大いに政治力を發揮して、そうしてその責任を追及すべき場合ではないかというように考えるのであります。それから尚或る官吏がどうとか成る一部の職員だけの問題でなく、場合によりましては、その課とか、局とか、大きく考えれば、一省の全體の會計上の責任を問うというようなこともされてよいわけであるというようなことにも考えるのであります。最後にこれは從來もその點を痛感しておつたのでありますが、役人が不都合な會計上の處理をして、そして退職してしまえばそれで済んだというようなことに考えたのが甚だ多かつたのですが、これは無論退官者に對して刑事上の責任があれば刑事上の罰を加えるのでありますが、退官してしまうと行政罰が科せられない。これだけで終るということであれば誠に決算の審査ということは効果が擧らんごとになり、決末がつかんことになるのでありまして、やはりかような場合におきましては、政治的に追及して、そうしてさような不都合なことを敢えてしたような職員の責任を、あくまでも追及して行くという立場が必要であると、それにはいろいろの方法が考えられるのでありますが、或は場合によつては決議案をつけてその人の責任を糾弾する。
 一つの方法としては、さようなことが將來再び公職に就くことができないというようなことの先例ができるような強い決議案でも作るというようなことも考えられます。大體根本の問題としては、そういうようなことを頭において進んで行つたらどうかというように思うのです。
 それから審査の手續の問題でありまするが、先ず審査の手續としては、内閣から決算書が提出されて、それに會計檢査院の報告書が附いて議會に提出されますと、それが議長から決算委員會に付託されます。決算委員會は総會を開きまして、大藏大臣竝びに會計檢査院長から全體の説明を聽く、それに對して大體の質疑を行なつて、そうしてこれを各分科に付託するのでありますが、各分科で散漫にだらだらと延ばされても會期の關係もありますから、各分科會の假決議、竝びに本決議あとで申し上げますが、そういうように各分科會の審議の期間を大體豫定してその範囲内で御審査を願うというようなことにして行きまして、それでいよいよ各分科の本決議ができましたならば、主査から報告を聽きまして、そうして異議あるものだけを議題として、異議ないものは一括してこれを議決するというようなことにして行きたいと思います。更に分科會に移りましては、分科會におきましては、國務大臣又は政府委員、檢査官又は補助者、今回檢査官は五名しかないので、あとは皆補助することになります。檢査官又は補助者の出席を求めまして、そうしてそれから詳細の説明を聴く、そうして質問の後に討論に入つて議決するわけでありますが、議決する場合におきまして、若しそこで完全に議決をしておきますというと、外の分科との釣合等が必ずしも適當でないことがあり得るのであります。一應假決議にしておきまして、そうして各分科會の主査、副主査が集まつて、お互に、この程度はこの處分でいいと、この程度はこういう始末をしなければいかんというような、この審査の決議に關する打合せ會を開きまして、その上で本決議をして行く、そうして總會にかけるという段取がいいんじやないか。尚先程申しました、衆議院との議決を成るべく一致せしめるという目的のために、或る段階におきまして、この決議をお互に持ち寄つて、話し合いをする必要があるのではないか。どういう段階がその目的に適當するかということになると、今申しましたような假決議があつて、本決議に移る前の段階におきまして、一應衆議院との間に話し合いをつける。その衆議院との渡り合いをつける方法としては、先日決定になりました常任委員會の合同審査會、こういうようなものを運用しまして、双方の委員全體、若しくはその代表的な者が出まして、そうして打合せをして、大體この程度はこういうふうにしようじやないか、或はこれはこの程度にしようじやないかというようなことで、でき得る限り両院の意見を一致せしめる、こういうようにして行つたらいいのではないか、この點については衆議院も同樣の必要を感じておるのであります。それで先程のような決算上の違法、不當で、特に惡質のようなものにつきましては、これはあくまでも糺彈して、本會議におきまして、決議案によりまして最後の結末をつけるというような段階に行かなければならんというような考え、或いはこれを規程のようなものを設けてもいいが、これは決算委員長が一個の議員の資格におきまして發議して、委員全體がこれに賛成する態度において決議案を上程して、決定して頂くというような方法がいいんじやないかというように思うのであります。
 尚決議の方針でありますが、從來いろいろ段階を設けて、その措置の程度を決めておつたのでありますが、事實に適合しないところが多いことがかねて問題になつておつたところであります。先ず今度は大體三つの段階ぐらいに分けまして、例えば第一の段階というのは、この會計檢査院でこれはいかんと批難したような事項につきましては、先ずそれに對して異議はないということであればその通りに決まると、それから第二の段階は今の批難事項の中でもそれで承服できない。別の見地から處分を要するというようなものにつきましては、今新らしい決算の審議方法としては、具體的にどうというようなこともちよつとつきにくいのであります。今後審査を進めた上におきまして、個々に具體的にこれはこういうふうにした方がいいというようなことを決めまして、これは無論先程申したような假決議にして置きまして、そうして各分科の間にいろいろその程度につきまして打合せをして、それでそこで審議の段階を最後に決める。これは今回やつたことは今後の審査の先例になるのです。そういうような方法で行つたらどうかと思う。それであとは異議ないものとしてそれを認めて行く。こういうようなことにして行つたらどうかと考えておりますが、尚我々が今附託されております決算は昭和二十年度の決算でありまして、これは財政法の附則によりまして、從來の例によつて決算が取り扱われることになつております。從來の例によりという意味がはつきり分らんので、これは私から大藏當局に尋ねたのでありますが、その趣旨は、結局昭和二十年度の決算は、その編成とか或いはその取り扱いの手續は、一應舊來の會計法及び會計規則によつてこれを取り扱う。併しながら審査の側におきましてはすでに憲法も實施されており、憲法の附属の法律として會計檢査院法、國會法があるのですから、そのものを運用して行つて、それで會計檢査院並びに國會が新らしい權限の下に審査をして行く。現に先日小委員會にも會計檢査院から出席しましたが、これも新らしい規定に基いて出ておるわけであります。そういうふうな作成の關係は、從來の規則によるけれども、審査の側は、新らしい新憲法竝びにその關係法令によつてやるということでいいのじやないかと思います。こういうように考えておるのですが……。
 大體以上のようなことで審査を始めて行くことが適當ではないかというように考えております。この段御報告を申上げて置きます。
 只今の問題につきまして御尋があれば……。
#3
○北村一男君 私は今始めて直面するのでありますが、一體今二十年度の決算書類を出されましても、なんだかもう番茶の出がらし見たいなものでありまして、責任者もみんな、或いは東京裁判に附されておる者もあり、又これか違法であるとしても、どうも手をつけて見ようもない。責任者もあるわけでありますが、これはなんですか、去年のものを今年審議するというような程度に進捗はできないものでございましようか。
#4
○委員長(下條康麿君) お答え申上げます。あなた。仰しやる通りになつておるのです。新らしい憲法の關係、財政法では……、詰り昭和二十一年度の歳計は七月三十一日で締切りになるのです。昭和二十二年の七月三十一日で……。そうしてそれがこの冬の十二月召集される通常議會に出るのです。それはレギュラー・コースなんです。ところが今の昭和二十年度は、憲法の關係なんかありまして前の舊法によつて行われたわけであります。今後はあなたの言われる通りに、次の年度に出るわけなんであります。昭和二十一年度は、會計が二十二年の三月三十一日で、締切りが七月三十一日、それが十二月初旬に更に召集される通常議會に出るのです。そういう段取であります。お話の通り決算が餘り遲れますと、事實において決算の審査の結果、責任を糾弾しようとしても、當人も居ないのです。それでまあ今後は居なくてもそういう者をあくまで糾弾しようということで、追究して行く。退官者であるから責任を免れたということではなくしてそういう者に對しては、官吏でないから、行政罰はできない。懲戒とか或いは退官をさせるということはできませんけれども、そういう人は再び公職に就けないとか何とかいうことまでやつて、いいのでないかと私は思うのです。そこまで行かなければ、假に今、年度が近くなつても、隨分それは辭めてしまう事情があるのです。官界の事情としてはそういうものを見逃して、罷めさせる者も隨分あるのです。ですから、そういうことは責任上あくまで追究して、檢査の實績を擧げるようにしたいというのが、今度の新らしい意味における決算委員會の大きな使命でないかというように考えております。お考え、誠に御尤もであります。
 尚ちよつと遲れまして申譯ないのですけれども、大分前に申上げて置きましたが、決算委員會の專門委員の方、まだ正式に任命になりませんけれども、東京帝大の經濟學部の首席の教授の、今ここに見えておりますが、森莊三郎さん、元經濟學部長をしておられまして、今まだ現職なんでありますが、手續中でありまして、何れこちらに正式にお願いするのですが、こちらから小委員會いろいろお骨折願つて、今私が申上げたことなども大部分は森さんの御意見でできておるわけであります。今後は審査の上にそういうような專門家の御意見を伺いまして、そうして從來政府側でいろいろな案を作つたのですが、そうでなくて、國會みずから立案して、國會みずからいろいろな対策を決めて行くようにしたいという積りでおります。どうぞ宜しくお願いいたします。
 それでは、大體さようなことで、審査順序並びに方針は宜しうございましようか。
   〔「結構です」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(下條康麿君) それではそういうことで一つ進行して行きます。それで今のことは改めて印刷にしまして、お手許にお配り申上げることにいたします。
 それでは決算の方の審議は、又改めて今の審議方針につきましてお集り願い、そうしてそれについては關係大臣から説明を聽くことにいたします。
 勞働省設置法案が近く……。まだ豫備審査中でありますが、近く正式に廻る筈でありまして、政府の方でもお急ぎのようでありますので、説明を關係大臣その他から伺つて、御質問があつたら御質問願いたいと思います。
 實はちよつと申上げたいと思つておりますのは、勞働委員會の方から連合して委員會までも開いたらどうかというような話がありましたが、その連合委員會を開く必要がありや否や、竝びに開いた場合における連合委員會の成果はどうであるかというようなことが、大分この間から議院運營委員會で問題になつたんですが、開くかどうかは同委員會の決定に基くものであります。假に開いた場合におきましても、その委員會の成果は議決權なし。それでその合同委員會の、連合委員會の委員長は、連合を申込んだ方の委員長がなるということが決定になりました。さような方面に進むのでありますが、差當りのこの問題としては、すでに勞働省設置法案につきましては、過日勞働委員會の方ではすでに關係大臣の御説明を聽かれたようであります。この説明を聽きます限度におきましては、別に連合委員會を開く必要はないのでありますから、この委員會だけにおきまして關係大臣から聽きたいと思つております。さよう御承知を願います。
 それでは勞働省設置法案を議題といたします。國務大臣の説明を願います。
#6
○國務大臣(米窪滿亮君) 只今勞働關係閣僚の懇談會が大變時間がかかりまして、定刻までに参れなかつたので、御釋明を申上げて置きます。只今委員長から豫備審議として勞働省設置法案の提案の理由の説明を求められておりますから、私からして御説明したいと思います。勞働省という省を設けなければならないということは、勞働運動が盛んになりまして、そうして勞働團體、勞働運動に關する各種の複雑な、且つ重要な、殊に經濟との關係において極めて重要な問題が段々とその重要性が増して来る。從つて單一の省においてこの行政を處理すべきであるという聲は、相當從來からもあつたのでございます。諸外國においては、殊に先進國においてはすでに十數年前から、勞働省なるものが設置されておつたのでございまして、我が國においても戰前からもそういう聲が一部にあり、且つ特にそれが政治上の問題になつたのは、昨年ぐらいからでございましたが、吉田内閣の當時においても、その必要が認められたのでございまするが、時機熟せずして遂にその實施を見るに至らずして、この片山内閣にそれが持ち越されたのでございます。で片山内閣は成立するや否や閣讓において勞働省を設置すべきことが決定されまして、そうしてここに勞働省設置に關する法律案なるものを、國會に上程することになつたのでございまするが、これを國會へ上程する前に一應關係官廳、竝びに勞働團體の代表者、經營者側の團體の代表者、更に知識經験者の方々の民間側の代表者にお集まりを願いまして、そういつた方々によつて勞働省設置準備委員會というものを作りまして、不肖私が會長になつて愼重にこの委員會で審議しました結果、ここに成案を得て、そうしてお手許に多分参つておると思いますが、勞働省設置に關する法律案なるものができたのでございます。勞働省設置の目的は、この法案の第一條に明記してありまする通り、勞働者の福祉と、職業の確保とを圖つて、經濟の興隆と國民生活の安定を圖りたい、こういうのでございます。今日日本の經濟が非常に混亂状態になつており、國民生活も安定しておらない實情にあることは、皆さんも御承知の通りでございます。今日この經濟危機を乗り切るためには 生産の増強が唱えられておるのでございまするか、生産の増強を圖るために必要であるいわゆる産業資金の面におきましても、或いは産業設備の面におきましても、非常なる拘束を受け、そうして戰争中の非常な被害を受けた産業状態を復興することは、物の面から見ては非常に困難なる問題が山積しておるのでございます。そこで我々としてはこういつた物の面で殆ど何ら打開の餘裕がないくらいに行き詰つておる今日の日本の經濟を、復興し、産業を立て直すためには、殆ど唯一といつてもいいくらいに勞働の面、即ち精神的な面において、勞働者の生産性を高揚すること、その生産能率を最高度に發揮するということが絶體に必要であると思うのでございます、この點は委員各位の御共鳴を得られることだと思うのでございまするが、この勞働者に、いわゆる世界において勤勉なる國民だといわれておつた日本の勞働者に、その生産性を高揚し、そうしてその勞働能率を高めることを求めるに當りましては、勢い我々としてはこの勞働組合法、或いは勞働基準法、その他の關係勞働法規によつて、その地位が保障された法規を、十分にこの目的を實現するように勞働政策において努力すると同時に、職業の確保を圖つて働らく意志と能力を持つておるものに對しては、一人でも多く就職の機雷を與えるということが絶體に必要であると思うのでございます。即ち勞働者の生活権を擁護すると同時に、勞働者として働く機會を與えることが絶體に必要であると考えるのでございます。今日日本の勞働組合は相當發達をして、活溌なる運動をしておるのでございまするが、尚且つこの種の勞働組合に對しても、經濟復興に對する積極的且つ自主的な協力を求めなければならんということは、現在においても今後においても、益々その必要が痛感される次第でございまして、我々としては勞働組合の健全なる發達を希うものでございます。更に失業對策についても、我々としては先程申上げた通り、勞働就職の機會を與えると同時に、若し就職のできない者については、これを再教育をして、勞務の配置轉換を行わなければならん。尚それでも救われない者に對しては失業手當、或いは失業保険等の救濟制度を設けて救濟して参りたい。そうして以て日本の勞働力の温存を圖りたいというのが、我々の念願するところでございます。勞働大臣の所管する事務は、大體において今申上げた通りでお分りだろうと思いますが、これを更に申上げるならば、勞働組合、勞働關係の調整である、或いは最も今日切實に痛感しておる問題は、勞働者をして健全なる勞働組合主義の上に立つ運動をして貰いたいという意味において、勞働に關する啓蒙宣傳、それから先程申上げた勞働條件の維持改善、或いは勞働者の災害補償、或いは勞働者災害補償保險等によつて、災害に遭つた場合に氣の毒なる生産者であり、經濟の擔當者である者の災害を保護する。又職業の紹介補導、そして失業對策に關する事務、更に公共事業を興してそれによつて失業者を救濟する。そういつたことが必要であると同時に、これらの勞働行政の基礎となるべきものは、的確なる科學の上に立つところの統計及び調査が必要であるのでございまして、ここにおいて勞働統計調査に關する事務、そういつたことを扱うのが勞働省の任務でございまして、これのことは第二條以下に詳しく書いてある積りでございます。この際特に御注意願いたい點は、然らば勞働省は日本の勞働行政問題を、一元的にこれを総括すべきが順序としては當然でありまするが、ここに船員勞働に關する限りは、船員が働いておるところが即ち家である、こういう特殊な生活環境にある、又特殊な勞働を營んでおるという事情、又諸外國の例等も参酌し、又從來國際勞働総會等において、海陸の勞働に對してそれぞれ違つた勞働総會を開いておるという實情、又船員の勞働行政とその外の海事に關する海事行政とは切り離すことのできない關係にある、これらの諸種の特殊事情を考慮しまして、これを勞働省に統轄することを避けまして、現状のごとく運輸省内に船員勞働を留めまして、但し一般勞働行政と連絡すべき相當の必要があることを認めまして、勞働省内に連絡調整に關する會議をおくことにいたした次第でございます。それで勞働省に設置する部局につきましては大臣官房の外、今まで厚生省のやつて参りましたところの勞政局と勞働基準局と職業安定局の三局を厚生省から移管すると同時に、先程申上げました勞働統計及び調査竝びに憲法においてその權利と地位が認められた婦人及び特に保護を加うべき必要あるところの少年勞働者に對する問題を取扱うために、特に新らしい局、婦人少年局というものを設けまして、そうしていわゆる官房の外五局というものを設けたいと思うのでございます。
 勞政局におきましては、先程ちよつと申し上げました勞働組合法及び勞働關係調整法の施行に關する事務の外に、極めて重大なる問題である健全な勞働組合運動を圖るための勞働教育、言い換えると啓豪宣傳に關する事務を掌ることにいたしました。勞働基準局におきましては、勞働基準法の施行事務の外に、勞働者の災害補償と合わせて勞働者の福利、厚生その他勞働條件の維持、改善竝びに勞働者の保護に關する事務を掌ることにいたしております。婦人少年局においては婦人及び年少勞働者の特殊な勞働行政を所管する外、勞働者の家族問題に關する件、竝び心婦人の地位の向上その他婦人問題の調査及び連絡調整に關する事項を所管さしたいと思つております。但し勞働者の家族問題及び一般婦人問題については、例えば文部省或いは厚生省等において、從來扱つておる事務については何ら干渉はしない、併しながらこれらの両省で扱つておらない他の一般婦人問題については、これは擧げて勞働省の婦人少年局が中心になつてこれらの問題を取扱つて行きたいと考えておるのでございます。職業安定局につきましては、勞務の需給の調整、失業対策、失業保險、失業手當その外職業の安定に關する事務を處理して行きたいと思つております。勞働行政の合理的、科學的運營を圖るために先程申し上げた通り勞働統計調査局を設けて、從來内閣統計局でやつておつた勞働問題及びこれに關係のあるところの統計を勞働省内に一つの局を設けて、この勞働統計調査局で一元的に綜合的にこの統計を取つて行きたいと考えております。又第三條の第二項にも書いて置きましたですが、部局の所管については、或いは將來これを變更して、新たに局を設けるような必要が起るのではないか、例えば失業對策について、失業對策局というようなものを設ける必要があるでしようし、或いは婦人問題が非常に社會的に大きく取扱われて來て、婦人、少年というものを一つの局にするよりも、婦人局を新たに獨立さした方がいいという段階になつたような場合におきましては、更に婦人局というものを設ける必要が起るかもわからないと考えております。これらの必要の起つた時は政令によつてこの變更もできるように豫め用意をしておるのでございます。又省内で部局の所掌事務の一部を變更することのできる規定も設けておるのでございます。以上の外、産業安全研究所というものが從來厚生省にあつたのでございまするが、これも勞働省に移しまして、災害豫防に關する調査研究竝びにこれに要する技術者の養成も訓練を行わしめることにいたしたいと思つております。
 以上の外、勞働省の部局擬關の職員について必要な事項は政令でこれを定めることにいたしております。
 最後に本法律案の制定に伴い厚生省の官制を當然變更しなければならない必要が起つて來る、又勞働基準法の一部は、新たにできる婦人少年局の關係において、その規定の一部を改正する必要が起つて來るのでございまして、これらのことは附則においてその要旨を定めてあります。
 以上が勞働省設置に關する大略の御説明でございます。尚足らざる所は、私なり或いは政府委員からして詳しく御説明申したいと思つております。今日この法案は、衆議院において大體の質疑を終り、明日討論が終つて本會義にかかつて、本院の方へ廻つて來るのも來週早々ではないかという希望を持つておりますが、どうぞその際は愼重に御審議をお願いすることは勿論でありまするが、勞働省設置の急を要する現状に鑑みまして、一日も早く審議をして頂いて御通過さして頂きたいことを特にこの際お願い申上げる次第でございます。
#7
○委員長(下條康麿君) お尋ねになることがございましたら、どうぞこの際願います。
#8
○太田敏兄君 お尋ねしたいことは、勞働省の所管事項には、農業勞働者も當然その対象となるものであるかどうかといふお尋ねであります。或いは只今の御説明で、船員勞働を特殊的のものとしまして、その所管をこれまで通り運輸省に置くというお話でありましたが、農業勞働者もやはりこの例にならうて農林省で取扱うのでありますか。その點、新設の勞働者との關係を伺いたいと思います。
#9
○國務大臣(米窪滿亮君) 勞働省で取扱う勞働者という範囲は、船員勞働については、今申し上げました通りに、運輸省に當分の間留めて置きまするか、農民については大體において扱わない方針であるのであります。それは勞働基準法の第八條に決めましたところの職業に從事するもの、それらを勞働者では取扱い對象として参りたい、こういう工合に考えております。從つてそれには農業に關する勞働者と稱する者はございません。これは地主は勿論のこと、自作農、小作農も賃銀を貰つて働く勞働者という解釋をするには縁が遠いのでありまして、我々の考えておる勞働者の中に入らない、こういう工合に考えております。
#10
○太田敏兄君 やはり農民の中にも賃銀を貰つて働いておる勞働者もおるわけでありますが、その點はどうお考えになつておりますか。
#11
○國務大臣(米窪滿亮君) お答えします、これは基準法の第八條に、家事使用人については適用しないとこう書いてありますけれども、明らかに農家に雇われて賃銀を貰つておるところの勞働者は當然入る、こういう工合に考えております。
#12
○北村一男君 只今の御説明で船員は海上に勤務するのであり、又外國の例も特別の扱い方をしておるという御説明でございまするが、これはいろいろ特殊の事情もございましようが、この特殊の事情と申しますれば、皆な特殊の事情であります。鑛山勞働者にも特殊な事情があるのでございますが、將來或る時機を見て、勞働省に一元的になさるお考えがあるのでございましようか。それともやはりこれはずつと特殊扱いに運輸省にお任せになるという御意向でございましようか。
#13
○國務大臣(米窪滿亮君) これは日本の海運業がよつて立つ基礎によつて當然定まることであつて、從來の通り日本の海運がいわゆる貿易の觸手となつて尖端に立つて活動するということであれば、これは外國においては例えば英國ではボード・オブ・ツレイドという特殊の省で扱つておる。アメリカではマリタム・コンミツシヨンというところでやつておるという、こういう具合に、多少貿易とも睨み合わせてやはり先方の國とマッチする必要が起つて來る、こういう角度からも特殊勞働と認められなければならん點があるのです。但し今日のごとく日本の海運業が單に物を運搬する、陸上の運搬の海上における延長であるというように非常に極限されておる場合においては、むしろ勞働省にこれを一元的に收めるべきがいいという意見もあるが、併し將來日本の、海運業がそういう具合にいわゆる海外貿易に昔のように發展するか否かということは今のところまだ見透しが付かないのでありまして、そういう點において勞働省に移すべきか、運輸省に残すべきか決まるのではないかと考えるのであつて、今のところ私はつきり申し上げられないのでございますが、私の理想として申上げるならば、今申上げたような條件においては、將來は勞働省にこれを統一して行くべきが本當だと思うのでございまするが、併し日本の海運業が昔日のごとく益々發達して行くという場合においては、特殊事情というものも亦その際において認められなければならないような事情になるのじやないかとこう考えております。
#14
○小川友三君 勞働省設置法案に對しまして只今米窪國務大臣から懇切なる御説明がありましたので、誠に結構なことでありまして賛成するのでありますが、特に能率増進という點についてお伺い申上げます。勞働統計調査局というものは合理的科學的統計をせられるという大臣の熱心なる御説明がありましたので如何にも能率がぐいぐい上つて來るような感じがいたしたのでありまするが、これをもつと組織的に御説明をお願いしたいためにお伺いするのであります。勞働能率というものは日本は非常に低いのでありまして、この能率を増加させる計畫を立てるために立派な能率増進の研究所が必要であると信ずるのであります。能率増進の點においては米窪國務相が仰つしやつた通りアメリカが模範であると私は信じております。アメリカの勞働能率の上昇しておるという例を日本の勞働省内に極めて明確に組織を大きく採り入れまして、参考になる點はどしどしそれを勞働省内に深入まして、勞働者が時間が犠牲少くして仕事の能率が澤山擧がるまうな設備を全力を擧げて頂きまして勞働大衆のエネルギーを澤山消耗しないで大きな能率を擧げるというところに、勞働省初代大臣であるところの米窪先生の明確なる御答辯をお願いたします。
#15
○國務大臣(米窪滿亮君) 非常に貴重な御意見を伺つてそれに對してお答えしたいのですが、勞働統計調査局においては外國の勞働關係機關と統計調査に關する連絡及び資料の交換に關する事項ということが庶務課の一つの仕事として掲げてあります。こういう具合で單にアメリカと言はず、先進國におけるところの勞働能率を上げる諸方策についてこれを採入れて、我が國の勞働行政の一つのやり方として行きたいと考えております。又科學的に問題を處理して行く一つの民間側の機關として、勞働科學研究所というものがあります。この勞働科學研究所を勞働産業安定調査所のごとくこれを勞働省内の一つの機關に採入れろという意見もあつたのでありますけれども、諸種の事情によつて當分の間これを現在のごとく民間側に置いておつて、これと勞働省とが十分なる連絡を坂つて科學的に勞働者の能率問題その他の施策を研究して参りたい、こういうように考えております。
#16
○鈴木憲一君 勞働省の設立準備委員會に各省が加わられましたか、それとも特殊な省が加わられましたかお伺いいたした。
#17
○國務大臣(米窪滿亮君) 勞働省設立準備委員會には大體において厚生省は最も關係が深いものですから、厚生省の關係當局とそれから大藏省の關係當局、それから法制局、内閣の官房、内閣統計局、船員の勞働について運輸省の船員局長というように、厚生省、運輸省、大藏省、内閣官房、法制局、それだけの關係官廳の代表者が参加した次第であります。
#18
○平野善治郎君 勞働基準局で賃金の問題を取扱うのでございますが、從來の日本の賃金形態というものは餘りにも生活給或いは平等給というふうに偏しておつて、そのために勞働能率に關するところの意欲が實際上低下しておるというふうに我々は考えております。今度勞働省が設置になつて、この賃金問題を操上げる場合において、大巾に能率給の形態に直して行かなければならん、こういうふうに考えておりますが、政府の所見はどうでしようか。
#19
○國務大臣(米窪滿亮君) 賃金形態については、詳しいことは勞政局長からお答えさせます。能率給の賃金體系を基礎とすべきであるという意見もあるのでありますが、これはやり方によると勞働強化ということの副作用が起つて來るのでありまして、愼重に研究して決定したいと思います。日本の事情は諸外國と違つて、例えば地域給ということも必要であるし、家族手當ということも必要でありましようし、或いはその他の日本だけの特殊の事情に上つて諸外國にない賃金體系も採らなければならんだろうと思います。非常に複雑でございますから一様に外國ではこうであるから日本もこうしろというわけには行かない點もあると思います。詳しいことは吉武勞政局長からお答えさせます。
#20
○政府委員(吉武惠市君) 只今御質問の點御尤もでございます。現在の日本の賃金はお話のごとく生活給或いは固定給という點に重點が置かれております。從いまして或る程度能率給というものを考えなければならないということは、私共も夙に考えておるところであります。何分現在は御承知のように、インフレの途上でございまして、なかなか賃金も思うように上りません。相當上つておりますけれども、實質的にはあまり上つていないという状況で、やはり賃金は御承知のように二つの要素を私は持たなければならないと思います。その一つは最低の生活を保障するものでなければならぬ。それからもう一つはやはり能率に應じたものでなければならない。こういう二つの部面が必要だと思うのです。ところが今は何と申しましても、もう最低の生活を保障するという方に一生懸命といいますか、その方に追われておりますので、勢い能率給まで加味できなくて、つまり生活給と申しまするか、固定給に重點が置かれているのであります。それでこれは行く行くは能率給を段々加味して行かなければならないのでありますが、どういうふうな仕組みでやつて行くかという點、いろいろこれは議論もございますし、今大臣からお話がありましたようにあまりピース・ワーク的になりますと勞働強化というような關係になつて、片方で飯が食えんということになります。これらはやはり給與審議會等で民主的にいろいろ御意見を聽きまして、今後の賃金體系を立てて行きたい、こういう考え方であります。
#21
○委員長(下條康麿君) 私からお尋ねいたします。一つの省を設ける基準というのは、何か、どういうふうになるのでしようか。例えば今外國の例もお擧げになつたのでありますが、獨立した省が必要であるという何か合理的な基礎というようなものはないのでしようか。この程度に達すると、特に省が要る。今の厚生省ではやり得ないという理由はどういうところに考えたらいいのですか。
#22
○國務大臣(米窪滿亮君) 非常にむづかしいお尋ねですが、どの程度になつたら獨立すべきであるかというような基準はちよつと求めることが困難ではないかと考えております。現實の問題として厚生省では、それでは從來の如く厚生省で勞働問題を取扱つて行つて差支ないじやないかという御意見もあると思いまするが、これは厚生省の今やつておられる問題は非常に多岐に互りまして、即ち勞働問題も取扱えば、社會保險の問題も取扱う。或いは保健衞生、そういつた問題も取扱うし、更に一般の文化問題も取扱う。觀光の施設なんていうようなものも取扱うというようなわけで、非常に言葉は悪いですが集中的でない、而も先程勞働省設置の趣旨について私が説明申し上げたように、今日勞働者の生産性を昂揚するということが極めて重大なる意味を持つて来るのであるからして、この點から言うというと、事勞働に關するものはすべて一つの省に纏めて、そこで集中的に勞働行政対策を立てるということが最も必要じやないか、こういう現實の面からして勞働省設立のことが必要となつて來たのでありまして、これは一つの基準を決めて、どのくらいになつたら、どの省が、どういう省を設けなければならないというような、そういつた機械的な具合には決められないのじやないか。こういうくらいに考えております、
#23
○委員長(下條康麿君) 續いてお尋ねしたいのですが、そうしますと、今度勞働省設置で豫算上どういうふうな經費が掛かるのでございましようか。そうして現在の厚生省の場合における經費と比べて、どのくらい増額になるのでしようか。
#24
○國務大臣(米窪滿亮君) 詳しいことは委員長の御注意によつて、後程或いは刷り物でお配りできるかも知れませんが、追加豫算において大體目下大藏官と折衝中であります。そうして大藏省の手を離れた後においては、關係筋の承認を經る必要があるので、正確な数字はここで申上けられませんが、大體五千萬圓くらいで新たにできる官房と、そして婦人少年局と、勞働統計調査局というものを賄う。それは大體八月の中頃に勞働省が設立するものとして、來年の三月までの經費を約五千萬圓、こういうふうになつております。それから從來の點は、厚生省のことはよく分りませんから、今勞政局長に尋ねておつたのですが、大體七億圓くらいが、この勞政局、勞働基準局、それから職業安定局、これの継續の經費であります。かれこれ合せまして七億五千萬圓、この外に事業としてはまだはつきり申し上げるわけに行きませんが、失業手當を十月から實施したいと思いまして、目下これも大藏省と折衝中ですが、大體において約十五億圓、若し不足の場合は豫備金から支出するという了解の下に、大體それで纏つておるのでございまして、合せますと大體二十億圓或いは二十一、二億圓ぐらいになるのではないかと、こういうふうに考えております。
#25
○駒井藤平君 ちよつとお尋ねいたしたいのですが、勞働省ができるということに相成つて、そうして勞働保險に關して厚生省と随分おやり合いになつと承知いたしておりますが、成る程できるとすればああしたものは當然勞働省に來るものと考えておりますが、参極く簡單にその經緯を一つ承りたい。
#26
○國務大臣(米窪滿亮君) これは新聞が少しジヤーナリステイツクに取扱い過ぎたために、何か少しセクシヨナリズムの爭いがあつて、両省の間に非常な繩張り爭いが起つておつたかのごとくに傳えられたのですが、實は眞相はそうでないので、両大臣の信念の相違がそこに現われて、そうしてその採決を片山總理大臣と芦田外務大臣に一任したという形になつたのです。それではその信念の相違とはどういうものかというと、厚生省の從來扱つて來た保險というものは、一應は社會保險ということになつておるのでございますか、問題の勞働者災害補償保險法、今日の言葉で言うと、勞働者災害扶助責任保險法と言いますが、それとその外の國民保險、國民健康保險、厚生年金、こういつた各種の保險があるので、これを概括して社會保險と稱するのでありますが、厚生大臣はこれ等の保險は皆それぞれ繋がりがある。そうして理想としては社會補償という所までこの保險が發展して、拡大して、強化して行かなければならんと、こういう意味です。ところが私の考によると、勞働者災害補償保險というものは、勞働基準法を實施するためには、どうしてもこれは離すべからざる保險であつて、考えようによると勞働基準法を實施するための裏付けになる保險である。即ち災害のために起つたところの給付を、事業主側が勞働基準法で以つて命ぜられたことをする代りに保險で以つて支拂う。こういうことになつて來ると、勞働災害ということが前提になつて來る。而もそれに關する行政は勞働基準法である以上は、これと丁度夫婦の關係にあるところの勞働者災害保償保險法というのは、當然勞働基準法を取扱う所の省においてなすべきものである。これが極めて勞働者に忠實なる所以である。こう言いました所が、一松厚生大臣は、勞働者災害補償保險法といえども、先程申上げたように社會保險法の一種である。從つて健康保險法や厚生年金と分つことができないという、主として保險行政の事務の面から不可分離を唱えられた。そこで私としては、自分としてはやはりどうすることが勞働者のために、經營者のためになるかということを主眼として考えて行くのであるから、どうしてもこれを勞働省へ分けることができなければ、勞働基準法と切り離すこととができないとは我々の強い信念だから、むしろ勞働基準法も厚生省の方でやつてくれ、それは困る。それはもう勞働者に關する災害のことであるから、それは勞働省の方へ持つて行つてくれ。こういうことであつたので、それならば勞働基準法の施行を行う行政、即ち勞働基準局を勞働省へ持つて行く以上は、勞働者災害保險法も當然持つて行くべきである。併しこれは君と僕で如何に信念の相違だといつて爭つていても仕方ないから、私、商工大臣、芦田外務大臣に進言して、これは直ちにこれに關係のあるところの勞働者及び經營者の代表者の意見を聽くべきである。こういうことになつて、最後はそういうことで意見を聽いたところが、六名づつの代表者の中、十二名全部、一名の除外もなく勞働省へ持つて行くべきである。こういうような具合に決定されたのであります。ここにおいて一松厚生大臣は欣然として、事かそう決まれば自分の信念とは相違するけれども、保險事務の立場から自分は主張したが、肝腎要の勞働省へ一人残らず持つて行つ方がいいということであれば、これに從う、こういうことでその決議のあつた日から欣然として一松厚生大臣は勞働省へ持つて行くことに賛成したばかりでなく、今後勞働省においてこれの事務を取扱う上において厚生省としてできるだけのお手傳いをする。こういつた非常なさつぱりした虚心坦懷の態度に出られたということを附け加えて御報告申上げます。
#27
○駒井藤平君 それじや全部勞働省に歸属することになつたわけですが、ちよつと新聞で見ますと、或る枠だけ厚生省に残すというように折衝がなつたということに聞いておりますが、如何でございますか。
#28
○國務大臣(米窪滿亮君) お答えいたします。この點が、最初の保險料の徴収であるとか、そういつた窓口行政は、從來慣れておる、二十年の歴史のある厚生省の方で他の保險と同じように取扱つたらいいじやないかというお話しがあつたのですが、一松厚生大臣の意見も、もう君の方に差し上げる以上は、何もかも君の方でやつてくれということで、私の方では各府縣に、地方に勞働基準局というものがありまして、その基準局の下に五百四十ヶ所の監督署というものがありますから、保險料の徴収というようなことは外の保險と違つて、厚生保險の保險料の徴収は極めて簡單である。即ちこれは事業主側からして徴収するのであるから、非常にむずかしい徴収法を要する他の保險とは違つて、而も簡單であるから、それじや自分の方でいたしましよう。こういうことでこの點も両者の間にもうあと味が殘ないように極めてあつさりした話合ができております。
#29
○駒井藤平君 それはなんですか。便宜上厚生省に残されたものであるか、或いは又そこは厚生省がやるべきものか、便宜上厚生省で取扱はれたらいいというお考えでおやりになつたのか。
#30
○國務大臣(米窪滿亮君) これはちよつとお尋ねされる點が事實と食い違つておると思いますが、この點はですね、外の保險はともかくも、勞働者災害補償保險というものは、保險料の徴収からして給付の支拂いまで、一切合切勞働者でやつておる。外の保險については勿論それは厚生省の方でおやりになるのですが、これは一切合切私の方でやる。こういう了解が氣持よくできたということを申し上げます。
#31
○駒井藤平君 それでは全部できたのですか。分りました。
#32
○鈴木憲一君 過日の大臣の答辯に、今度勞働省ができるというと婦人少年局などができるから、婦人の方を使用するというようなお話があつたかに思つておりますが、勞働省は逸早く相當敷の重要ポストに婦人を入れるというようなお考がありますかどうですか。尚、勞働者の各部局に實際勞働運動家、或いは研究者、そういつたような方を多分に御採用になるつもりでありますかどうですか。
#33
○國務大臣(米窪滿亮君) 既に勞働基準局には勞働監督官として婦人の方が数名働いておられます。課長をやつておられる人も一名既にあり、又將來婦人少年局の局長は若し求められるならば、これを婦人の方に局長になつて頂きたいと思つて、目下人選中であります。それから民間側から成るべく採るかというお尋ねですが、これも今日の趨勢から見て適當なる人がありましたならば、成るべく民間側から採りたいと思つておりまするが、なかなか適當な人が見付からないので、これも苦心をしておるような状態であります。以上簡單ですがお答え申し上げます。
#34
○平野善治郎君 勞働省が設置されて、究極のところ生産性が昂揚する。生産性の昂揚は只今のところ、大臣が言われました通り資金或いは設備の點で、到底現在の日本が賄い切れないとすれば、勞働力の昂揚、能率の増進ということに歸結は行きますが、この能率の増進のための指導機關を積極的にやる案を持つておられますか。その案の大體のことが分りましたら、大臣からお伺いしたいと思います。
#35
○國務大臣(米窪滿亮君) お答えいたします。これは先程部局の説明を申し上げたときに申し上げた通り、勞政局が主として勞働教育及び啓蒙、宣傳等に從事しまして、勞働者の勞働力昂揚の必要のあることを滲透するようにすることは勿論であるが、具體的に申しますと、經濟復興省議というようなものともつと強力に勞働團體が協力するように仕向けて行きたい。それから各種の委員會を作りまして、そうして又省内にも参與、或いは專門委員という者を成るべく勞働團體或いは経營者團體等から、そういう人になつて頂いて、そうして絶えず我々の所信のあるところをこれらの参與、それから專門委員その他の諮問機關に登用されておる人たちを通じて滲透するように仕向けて行きたい。又眞に勞働能率を擧げた職場に對しては、まだこれは具體的に申すことができませんが、何等かの報奨、表彰する制度を設けまして、勞働者の生産性を鼓舞激勵したい。こういうことを考えております。
#36
○委員長(下條康麿君) 私がちよつと先程の続きを。そうしますと豫算の關係は、新らしく勞働省設置に伴つて、八月以降五千萬圓というと、そうすると年額でどのくらいになりますか。
#37
○國務大臣(米窪滿亮君) 平年度の豫算については、何れ又來年度においては大臣と折衝しなければならんので、取敢ず今日お答えできる點は、本年度の八月以降五千萬圓、それから昭和二十二年度の豫算としては、先程申し上げた通り約五億萬圓、こういう工合にいたしたいと思います。
#38
○委員長(下條康麿君) 十五億圓、全部合わして……。
#39
○國務大臣(米窪滿亮君) 合わしては十五億圓、失業の手冨です。
#40
○委員長(下條康麿君) その他の經費は五億圓でございますか。
#41
○國務大臣(米窪滿亮君) そうです。正確な数字は少し違つております。
#42
○委員長(下條康麿君) それから直接厚生省の豫算はどんなふうになるのですか。残りの豫算が……。
#43
○國務大臣(米窪滿亮君) これは政府委員から……。
#44
○政府委員(吉武惠市君) これはあとで一つ詳しく数字をお知らせいたします。
#45
○委員長(下條康麿君) それから勞働省設置の費用をまあここで包含してあるので、第一條に書かれた勞働省の所管事項の關係より資料を頂きたい、例えば勞働組合というものがありますね。勞働組合はどのくらいあつて、その程度は相當なものだから、勞働管設置が要るのだというようなことを判定するような、例えば災害保險の問題とか、それからその他職業紹介についてどんなふうになつておるか。それからその他列記してある事項に關する必要なものがおありだと思いますが、あとでよろしうございますからお願いいたします。
#46
○國務大臣(米窪滿亮君) 承知いたしました。
#47
○委員長(下條康麿君) それからちよつと伺いたいのは、第九條の勞働統計調査局ができるのですが、失業統計は入るのですか、失業統計は必要と思うのですが……。
#48
○國務大臣(米窪滿亮君) やはり勞働統計調査局で失業統計もやると思います。
#49
○委員長(下條康麿君) 第何號に入るのですか。
#50
○政府委員(吉武惠市君) 職業に關する……。
#51
○國務大臣(米窪滿亮君) ちよつと委員長に御注意申し上げたい點は、各局がその局の統計は作るのです。その局がそれぞれ作つた統計を勞働統計調査局で調整して集計をして、そうして製表する。こういう工合にそこでコレクシヨンするのであります。
#52
○委員長(下條康麿君) 事務に隨伴する統計は各局にあるはずですが、その外に結局それが集計されて一つのものになるのが、どの範囲に入るのですか、一から七まで書いてありますけれども……。
#53
○國務大臣(米窪滿亮君) 第九條の五に書いてあります。
#54
○委員長(下條康麿君) 失業統計調査は必ずしも完全なものではないのですが、何かおやりになる計量がありますか。
#55
○政府委員(吉武惠市君) やるつもりであります。
#56
○小野哲君 只今資料の御要求がありましたが、若しおありになるならば、外國の立法例も追加して頂きたいと思います。
#57
○國務大臣(米窪滿亮君) 外國の立注例は、最近のものはなかなか困難と思いますが、成るべく新らしいものが若しあるようでしたら、差し上げることにいたします。
#58
○小川友三君 動議を提出いたします。大臣の御臨席を得まして、この委員會は、皆さんの御熱心なる御審議を頂きましたので、もう時間も四時を過ぎましたし、あとに日もありますので大體今日はこれで質問を終了したいと思います。
#59
○委員長(下條康麿君) それでは當局に體する御質問は、今日はこの程度に止めておきます。
 それからちよつとお諮りしたいと思いますが、勞働委員會の方から、最初、決算委員會と連合委員會を開いてくれというような話が非公式にあつたのですけれども、その後連合委員會というものの性格が、運營委員會によりまして、決議のないことになつたもので、必ずしも向う側としては強い希望はないかと思いますが、どんなふうに進行して参りましようか。もう少し質疑をやつた上で、或いは合同の必要があるというならばするし、或いは質疑自體も合同して聽くか。そこのところの御意見を伺つて決めたいと思います。
#60
○小川友三君 そういう機會は、委員長に一任します。
#61
○駒井藤平君 ここが主査ですから、ここを主としてやつて頂いてはどうですか。
#62
○委員長(下條康麿君) それでは必要があつた場合に合同するということにいたします。
   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#63
○委員長(下條康麿君) 本日はこれにて散會いたします。
   午後四時十四分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     下條 康麿君
   理事
           太田 敏兄君
           西山 龜七君
   委員
           吉川末次郎君
           北村 一男君
           中川 幸平君
           田方  進君
           谷口弥三郎君
           平野善治郎君
           深川タマヱ君
           小川 友三君
           小野  哲君
           駒井 藤平君
           鈴木 憲一君
           伊達源一郎君
           山崎  恒君
  國務大臣
   國 務 大 臣 米窪 滿亮君
  政府委員
   厚生事務官
   (勞政局長)  吉武 惠市君
   厚生事務官
   (勞働基準局
   長)      江口見登留君
ソース: 国立国会図書館
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