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#1
第004回国会 本会議 第3号
昭和二十三年十二月四日(土曜日)
   午後三時七分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第一号
  昭和二十三年十二月四日
   午後二時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。





#3
○議長(松平恒雄君) これより会議を開きます。
 この際お諮りいたします。本日、左藤義詮君より予算委員を、橋本萬右衞門君より議院運営委員を、それぞれ理由を附して辞任したいとの申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。つきましては、その補欠として予算委員に橋本萬右衞門君を、議院運営委員に左藤義詮君を指名いたします。
  ―――――――――――――
#5
○議長(松平恒雄君) 次にお諮りして決定いたしたいことがございます。在外同胞引揚問題に関する特別委員長より、引揚者及び復員者の受入施設並びに厚生対策等実増調査のため、中國地方に淺岡信夫君、天田勝正君、水久保、一甚作君を、近畿地方に穗積眞六郎君、千田正君、池田宇右衞門君、伊東隆治君を、四國地方に岡元義人君、大内キヤウ君、矢野酉雄君、紅露みつ君を本月三日より三十一日までのうち十日間、中部地方に草葉隆圓君、三木治朗君、星野芳樹君を、奨励地方に北條秀一君、木下源吾君を本月三日より三十一日までのうち八日間の日程を以て派遣いたしたいとの要求がございました。これら十六各の議員を派遣することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件は決定いたしました。
#7
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件、内閣総理大臣及び経済安定本部長官より発言を求められました。この際許可いたします。吉田内閣総理大臣。
   〔國務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
#8
○國務大臣(吉田茂君) 私は第四國会の初めに当りまして、現内閣の施政の方針を述べることを欣快に存ずる者であります。
 去月十五日、私の演説におきまして述べました通り、それは衆議院でありまするが、現内閣は芦田内閣総辞職の後、首班指名を受けた少数党内閣であります。この少数党内閣は、先ず國民の信を問うために、世論に從つて冒頭衆議院を解散すべきであると信じたのでありまするが、第三國会は御承知の通り芦田内閣以來公約せられました公務員法の一部改正案及びその関係法規の制定のために召集せられました臨時國会であります。その公務員法等通過のため、その後関係方面の斡旋によりまして、先月二十八日、政府と社会党、民主党、國協党など主要政党との間に協定が成立いたしたのであります。即ち政府は公務員の給與及びその他の緊急予算を第三國会に提出し、野党はその予算の提出後二週間を経て不信任案を通過せしめて、衆議院を解散することに協定ができたのであります。その予算は去る二十九日提出いたしました。又現に本第四國会において審議をせられております緊急予算でございます。従つて私の施政方針演説もその予算を主として申述べる考えでございます。
 第一に、國家公務員法の改正に照應いたしまして、公務員の生活を保証し、その職務の能率的運営を確保するために、國民経済と国家財政の現状とを睨み合せまして、公務員に対して妥当な給與対策を講ぜんとするものであります。
 第二は災害復旧費であります。近時各種の災害が続出いたしまして、罹災地方に対しては誠に同情に堪えないところでございます。これが根本対策につきましては、組閣以来いろいろ政府におきましても腐心いたしておりましたのでありますが、取敢えず本國会に提出した予算案中に所要の経費の一部を計上し、迅速適切な処置を講ぜんとするものであります。
 次に現在尚海外残留者が四十余万に上つておりまして、酷寒の折柄、四度海外において越冬を余儀なくせられる状態は誠に憂慮に堪えないのであります。今後一段と引揚の促進のためにあらゆる努力をいたしますると共に、引揚同胞及び留守家族の援護厚生につきましては、万全の処置を講じたい考えております。
 その他、予算成立後の経済情勢、殊に物價騰貴等の必要に基きまして、終戰処理費、價格調整費等の増額を計上いたしております。これは誠に止むを得ないところの経費であります。
 他面、政府は我が党年來の主張によりまして、生産第一主義に則り、統制の整理簡素化、行政の整理、企業の合理化等を断行いたしますると共に、健全財政の方針を堅持いたしまして、収支の均衡を図ることを根本といたして財政計画を立て、一層健全なる予算編成に努力するつもりでおります。(拍手)
 尚特に附加えたきことは文教の刷新、民主教育の徹底であります。これが國家再建の根本であることは今更申すまでもございません。新らしい理想を目指して発足した新教育制度は現に実施の途上にあるのでございまするが、この完成のためには今後容易ならぬ努力を要することであるのであります。政府は能う限りの熱意を以ちまして、その実質的完成を期したいと思つておる次第であります。
 最後に申述べたいことは講和條約についてであります。先般第三國会における決議にありました通り、講和條約なき限り我が國の独立は確保せられないのであります。又経済復興は期し難いのであります。講和條約促進のためにも、先ず第一に我が國において民主政治が確立されなければならないのであります。
 新憲法の成立せる今日これが運用を全からしむるためには、その新憲法の精神に則りまして最も正しき憲法上の慣例を打ち立てることが大切なのであります。この故を以ちまして、我が党は新憲法の下に行われました最初の総選挙の結果を尊重いたしまして、首班を当時第一党である社会党に譲り、吉田内閣が総辞職いたしましたことは御承知の通りでありまするが、これは民主政治の趣旨、精神の貫徹徹底を期したいためであつたのであります。主義政策を異にせる政党の連立内閣は遂に内閣を弱体化いたしまして敗戦後の日本再建を妨ぐるようなことになるであろうかと考えて、当時我が民自党は入閣を肯んじなかつたのでありまするが、爾後一年有余、政局は安定を欠き、政党政派の離合集散は続出いたしますし、経済は萎縮し、生産は振わず、紛擾又紛擾、ために片山内閣より芦田内閣に及び、遂に疑獄事件のために吉田内閣の出現に至りましたことは御承知の通りであります。(拍手)然るに過般の首班選挙に当りまして、私を首班に推せるは百八十余、白票を投ぜるは二百有余であるにも拘わらず、私が首班指名を受け、國会内における少数党内閣たるの事実が明白になりました。以上は、早きに及んで正しき國民の批判を待つことこそ國民の期待するところと考えるのでありまるが、(拍手)苟も公党たるものは、よろしく議論の命するがままに総選挙に従い、以て正しい民生政治を確立いたすべきものであると私は信ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)(拍手)
 第二には我が國復興再建でありますが我が國唯一の経済資源は御承知のごとく我が國民の生産的労働力であります。正直にして勤勉、企画的に且つ能率的なる我が國民の労働力がその愛国的熱情を以て我が國再建復興に協力する事実の顕著なるに及んで、初めて外資の導入となり、資材の供給となるのであります。即ち我が國経済の復興が世界の繁栄増進の一環を成すことの事実を列國が承認するに及んで、初めて外資導入となり、資材の供給となるのであります。
 第三には、刻下の疑獄事件或いは政界の浄化或いは官紀の粛正等でありまするが、政治と行政に対する国民の信頼と列國の信用を回復するがために、政府といたしましては十分これがためにその事実を究明し、又粛正の方法を講ずる考えであります。
 以上申述べた三点の達成によりまして、我が國は初めて講和條約を締結し、待望するところの國際国体復帰を許されるに至るものと信ずるのであります。何とぞ各政党におかれても暫らく党利党略を度外視せられ、その主義主張に基いて互いに切磋琢磨し、我が國再建復興のために、公党として民主政治の確立、経済復興のために努力せられんことを私は熱望する者であります。(拍手)
#9
○議長(松平恒雄君) 泉山國務大臣。
   〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#10
○國務大臣(泉山三六君) 只今吉田内閣総理大臣より、本内閣の施政の根本につきまして述べられたのでありまするが、私は経済安定本部総務長官としてこの機会に今後における経済ならびに財政施策の基本となるべきものにつきまして聊か所信を申述べたいと存じます。
 終戦後すでに三年有余を経過いたしまして、我が國経済は終戦当時の混乱状態から脱却いたしまして緩慢ながら漸次回復の途を辿つて参りましたことは、占領軍当局の好意ある援助によることは勿論でありまするが、(拍手)又國民各位の困苦欠乏に耐え不断の努力を傾倒せられた結果でございまして、誠に御同慶に堪えない次第であります。併しながら、我が國経済の復興は今漸くその緒についたばかりでございまして、経済を再建し、国民生活を安定し、進んでは世界経済の平和的発展に寄與することができるようになりまするには、前途尚遼遠でおると申さねばなりません。即ち第一に、鉱工業の生産状況は終戦以來逐次回復の徴を示して参つてはおりますが、本年下期における産業用配炭の減少、この冬の渇水期におきましての電力需給の不円滑等、当面の事情を考慮いたしまするときは、必ずしも楽観を許さぬ状態にあるのであります。貿易の状況も、輸出におきましては、最近やや改善の跡を示すに至りましたのでありまするが、尚遺憾ながら輸出不振の域を脱せず、本年上期の実績は、昨年上期のそれを下廻るという誠に憂慮すべき状態であります。(「爲替レートをどうするかと」呼ぶ者あり)ただ輸入におきましては概ね予定通り進捗して、國民生活の安定と日本経済の復興とに寄與しておるのでありまするが、この結果は輸出入の著しい不均衡を来し、アメリカの巨額の対日援助によつて辛うじてその尻がカバーせられておる状態であります。
 次に、インフレーシヨンの綜合指標であります。通貨、物價及び賃金の動きを見ますと、通貨及び物價につきましてはこの数ケ月間、明らかにその動きは緩慢に相成つておるのでありまするが、ひとり賃金のみは急激なる上昇を示しておるのでありまして、(「物價はどうした」と呼ぶ者あり)そのために実質賃金は向上し、家計の赤字も漸次減少の傾向を辿つて來てはおりまするが、生産の増加を伴わない名目賃金の追求が果して眞に生活安定に資するものであるか否かを(「そうだ」と呼ぶ者あり)深く反省しなければならないと思うのであります。(「誰が名目賃金を追求しておるか」と呼ぶ者あり)次に、企業の状況を見るに――労働問題の應接と赤字の処理に寧日なく、その経済性及び自主性を喪失いたしておる感が深いのでございまして、(「株が上つておるじやないか」と呼ぶ者あり)企業の実体は依然として改善されておらん実情であります。更に國家財政面を見ましても、公務員給與の増額、災害復旧費、企業赤字の処理等のため、予算の膨脹を余儀なくせられ、すでに國会に提出いたしましたように、多額の補正予算を必要とすることと相成つたのでございます。(「大蔵大臣は六十億しか出さんじやないか」と呼ぶ者あ以上全般を通じて我が國経済は、アメリカの援助を主たる支柱といたしまして、漸次安定化の方向を辿りつつあるとはいえ、國民経済全体乏しては依然として大きな赤字経済を継続しておる現況と申さねばならんのであります。(「その安定を得るために苦心しているのだよ」と呼ぶ者あり)かかる現況を打開して国民経済の自立を目指し、生産の増強、輸出の増進を促進し、経済の安定及び復興を成し遂げることが、今我々に課せられた課題でありまするが、(拍手)その具体的の施策については、そのときその経済情勢と調和を保ちつつ、生産の増強、流通秩序の確立、その他経済安定を目途とするもろもろの施策を総合的に実施する必要があると考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)以上の構想に基きまして、本内閣として特に重点を置かんとする諸施策につきまして以下申述べたいと存じます。
 先ず第一に、経済統制の整理簡素化について申上げます。終戦以来國民経済の各分野に亘りまして行われました経済統制は、それそ、重要なる役割を果して参つたのでありまするが、最近における物資需給状況の改善、購買力の減退等、経済條件の変動に鑑みまして、統制全般に亘り再検討を必要とする段階に到達とておると考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)よつてこの際、害あつて益なき統制はもとより、もはや不必要となりました統制のごときは、思い切つてこれを廃止すると共に、(「賛成」と呼ぶ者あり)他方、国民経済の安定と復興とに次くことのできない基本的な統制は、その縮小された領域を対象として、むしろ強力に行なつて参る所存であります。(「官僚統制だ」と呼ぶ者あり)そもそも生産増強の要諦は各企業の積極的な創意と責任とに俟つべきものでありまして、限られた領域に統制方策が明瞭にされますならば、即ち明るい統制の下に自由な活動は認められ、各企業は必ずや自己の責任において向うべきところを自覚し、活撥なる企業活動もこれによつて初めて期待できるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)同時に統制の整理は、(「資本家万歳」と呼ぶ者あり)これによつて行政の簡素化、能率化を促進することと相成るのでありまして、総合的なる失業対策を行うことと相俟ちまして強力なる行政整理を断行しへ行政運営の的確敏速と國庫財政の負担を軽減すべき基礎工作も、これによつて初めて可能となると考えるのでございます。(「そうだ」「できないことを言うな」と呼ぶ者あり、拍手)
 次に企業の合理化について申述べたいと存じます。(「それも首切りさ」と呼ぶ者あり)経済再建のためのあらゆる施策の成否を決するものは、一に生産の増加にあることは今更申すまでもないのであります。(「そうで、あります」と呼ぶ者あり)然るにこれら経済活動の任に当るべき各企業が今日のようにその経済性と自主性とを喪失いたしておる状態の下におきましては、眞の生産の回復は期し難いと申さねばならないのであります。この点に鑑みまして、企業の自主性を回復し、その運営においては飽くまで経済性を基盤とし、以て現在の不健全性を拂拭すると共に、経済道義の高揚を期することが緊要でございます。加うるに一本爲替レートの設定は次第にその時機が迫りつつありまする今日、企業みずからの自覚と努力とによる生産技術の向上、経理の健全化と共に、労働効率の引上げ等による企業の合理化を急速に促進することこそ、我が國の経済が世界経済に参加して確乎たる地歩を占むる上に絶対欠くべからざる要件と存ずるのであります。(「そうだ」「世界経済に逆行するぞ」と呼ぶ者あり)從來、企業がその自主性と経済性とを喪失いたして來ましたその原因はもとより多々ございまするが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)政府の統制と保護の下に甘んじて参りましたということも、企業が非合理的に相成りました原因の一つと存ずるのであります。今後政府といたしましては企業の正常なる採算性の確保を期すると共に、健全なる資本の蓄積その他経営基盤の強化等に資する施策を行う考えでありまするが、他面、賃金安定に関するいわゆる三原則の線に沿つて赤字融資、價格差補給金の交付による企業赤字の負担等、企業の経済性及び自主牲と相矛盾するがごとき措置は、これを採らざることをその基本方針といたすものでございます。(「資本家が喜ぶよ」と呼ぶ者あり)
 次に貿易の振興について申上げます。國民経済の復興と自立のためには先ず一定物資の輸入が要請せられ、従いましてこれに見合う輸出の振興こそ経済復興と経済自立の第一歩であるのでございまするが、最近の輸出貿易の実績を見まするとき、誠に寒心すべき状態にございますることはすでに前段申述べました通りでございます。貿易の不振の原因は或いは國内的に或いは國際的に頗る複雑多岐でございまして、これが打開は実に容易ならざるものがあるとは存じまするが、政府におきましては、速かに有効適切なる根本的措置を講ずると共に、関係方面の理解ある援助を要請すべきものにつきましては速かにこれを懇請して、以て貿易不振の打開策を講ずる所存でございます。(「労働強化と低賃金でか」と呼ぶ者あり)
 次に食糧問題について申上げます。すでに十月より労務加配の対象の拡大と配給量の増加を、又十一月よりは一般主食配給基準の増量を実施することができたのでございます。(「前内閣でやつたのだ」と呼ぶ者あり)併しながらこの増配の実現を以て直ちに今後の食糧事情に楽観を許すことはできないのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)即ちこのことは、連合軍の援助による食糧の大量輸入と農民諸君の理解ある供出の完遂とがあつて初めて確保できるのでございまして、これにつきましては政府も食糧増産対策に一層の努力をいたす所存でございます。何とぞ農民諸君におかれましても、割当てられましたる供出の先途はもとより更に進んでは超過供出にも特段の努力を傾倒いたされんことを切望して止まん次第でございます。尚政府につきましても供出完了後の米の自由販費について、その時期と方法とについて折角考慮中であるのでございます。(拍手)
 尚、本問題に関連して農地制度の改革について一言いたしたいと存じます。昨年以来実施中の農地の買収、買渡は、関係官民の努力によりまして今年一ぱいを以て所期の目的を達成できることと相成りましたのでありまするが、(「民自党は反対しておつたじやないか」と呼ぶ者あり)いわゆる第三次農地制度改革のごときことは、政府といたしましてはこれを行う意思はないのであります。(「地主が喜んでおるよ」と呼ぶ者、拍手)今後の農村対策といたてましては既開墾地の土地改良開墾地の選択、治山治水等、土地の総合的利用を確保して農業生産の増強に努めると共に、折角創設した自作農の安定を期するため、農業経営の合理化を図り、負担を軽減し、且つ農業協同組合を育成して農村の経済力を培養するよう、各般の施策を具体化して参りたいと存ずるのあでります。(拍手)尚この際附言して置きたいと存じますることは、生鮮食料品の統制の撤廃及び大衆料飲店の再開等についても、食糧需給の推移とも見合いまして、その時期方法を折角研究いたしておるのであります。(拍手)
 次に労働問題について申述べます。(「羊頭を掲げて狗肉を賣るな」と呼ぶ者あり)政府といたしましては労働組合運動の健全なる発達をば衷心より翼うものであります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)そのためには、ますます労働組合の完全たる民主化を図ると共に、その自主性及び責任制を確立し、労資共に秩序と規律を重んじ、労資関係の正常化せられるるよう努力を拂うこと勿論でございまするが、不幸にして起ります労働争議に対しましては、その早期且つ平和的なる解決を図りますよう努力を重ぬる所存でございます、今石炭、電産等早く解決しろ」「黙つておれ」と呼ぶ者ありと政府といたしましても、勤労者の生産意欲を高揚し、労働生産性の向上を図ることが、生産増強、経済再建の推進力となることを確信するものでございまして、勤労者の生活安定特に実質賃金の確保を図るため、一段の努力を傾倒して参りたいと存ずるのでございます。併しながら最近産業界の一部に見られますように、勤労者は徒らに名目賃金の追求に走り、(「何を言つておるか」と呼ぶ者あり)これに対し企業は政府補給金、赤字融資等の不健全なる給源によつてこれに應え、或いは製品價格引上げを要求するがごとき、労資一体の企業努力を忘れて安易なる遂に流れらようなことがあれば、それこそインフレと賃金の悪循環を断つことはできません。遂には勤労者の実質賃金確保の要求にも相副わぬ結果と相成ることを憂うる者でございます。先般賃金問題に関連して明らかにせられましたいわゆる三原則も、全くこの趣旨に基くものに外なりません。今や主食の増配、労務加配の増加等により、更に又実効價絡一の横這いによりまして、実質賃金の向上、(「芋ばかりだ」と呼ぶ者あり)家計安定増加機会にありますので、この際特に賃金バランスの維持、賃金の安定化に全勤労者諸君の理解ある御協力を要請いたしたいと存ずるのであります。
 次に物價対策について申上げます。昨年来の物價趨勢は、一般物價指数、実効價格指数を見ましても、明らかに騰勢にはありますが、その進行は比較的緩慢でございます。又この物價騰勢の緩慢化と相並んで、家計の安定度は最近やや増加したやに見えるのでございまするが、國民経済の赤字は決して解消しているわけのものではないのであります。「そうだ」と呼ぶ者あり)その赤字は財政か、企業か、或いは家計かのいずれかに、又はこの三者に負担せしめる外にはないのであります。然るに三者のいずれも、すでに負担限度の極限に近くなつておることを考えまするとき、財政負担と物價及び賃金の調和ある相関関係と平衡関係とを確立し、且つ能う限りこれを堅持して動かないことが、経済り安定化のために特に望ましいところであるのであります。従來の例に徴しますと、均衡ある生産の見通しを完全に反映し得ない性急なる公定慣格の引上げは、企業採算の不均衡と賃金の跛行的上昇を招来して、この面から物價と賃金との悪循環を誘発する慮れがあるのでございまして、これらの事情を考えまするとき、用意なくして全面的の償格改訂を企てるがごときことは、この際絶対に避けたい所存であります(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)
 最後に、先に提出いたしました補正予算に関連して(「選挙済んでからやるんだろう」と呼ぶ者あり)財政金融の方策について申述べたいと存じます。先ず、補正予算の提出を必要とするに至りました基本的事情について申述べますなれば、その第一は、一般賃金水準の上昇に伴う國家公務員の給與ベース切替えの問題であります。御承知のように、現在官公吏諸君の給與ベースは本年七月の補正物價体系に織り込まれました民間工業平均賃金に均衡を取つたものでありますが、その後の推移に顧みますのに、公務員給與三千七百九十一円ベースの据置に対しまして、民間問題は相当に上昇し、一方生計費も亦相当の膨脹をいたしておるのでございます。尚、今回國家公務員法の改正に伴い、官公吏は特殊の地位を與えられたのでございまして、(「奴隷の地位だ」と呼ぶ者あり)この際、官公吏の待遇を政善することが是非とも必要と相成つたのでございます。(「その能力がないのだよ」と呼ぶ者あり)
 補正予算提出の基本的事状の第二は、最近における災害の続出と、これが復旧対策の問題であります。戦時中及び戦後を通ずる我が国土の荒廃は誠に憂慮すべきものがあるのでございまして、特に本年度におきましては、先に北陸地方の震災があり、又更にアイオン台風を初めといたしまして、各地の風水害が相次いで起り、これを放置するにおいては、民生の安定、経済の再建の上に実に重大なる支障となることを痛感せられるのでございます。以上二点の要請を根幹とし、これに終戦処理費、價格調整費等、必要止むを得ざる諸経費を計上いたし、ここに補正予算を編成することと相成つたのでありまするが、その編成方針につきましては、財政の健全性を貫くことこそ、インフレーシヨンを収束し、経済を常道に立て直すための鍵であり、且つ外國の援助を期待し得る前提であることを確信し、飽くまで健全財政の方針を堅持することといたした次第であります。即ち第一に、一般会計及び特別会計を通じ、巌に収支の均衡を保持することとし、第二には、鉄道運賃、通信料金の改訂その他一段物價に影響を及ぼし、インフレーシヨンを促進するような歳入に賦源を求めることを避け、尚第三には、財政資金全体の規模が國民負担の現状から見まして苛酷に亘らない範囲に改まるよう、極力これを圧縮することといたしたのでございます。
 以上の原則に從いまして編成いたしましたのが、今回の補正予算案でございまして、先に申上げました主要費目以外に亘りましても、既定経費の不定一或いは新規事項の追加等、相当多額の歳出の要請が存したのでございましたが、これらは極力これを圧縮し、一般会計総額において歳入歳出共に五百八十六億余万円と決定いたした次第であります。今後の財政運営につきましても、財政の面からするインフレーシヨンの進行を阻止するため、実質的なる収支の均衡を図亘、経済の安定復興と生産の増強とを第一目標としつつ、財政と国民経済全体との調和的発展に深く留意いたしまして、全体的見地に立つた幅のある健全財政の運営を実現いたしたい所存であります。尚、財政収支の時期的調整、國家財政と地方財政場との間の財源及び負担の適切なる配分等に書ましてしも、一連の問題として特段の配慮をいたす考えでございます。
 歳入確保の点につきましては、担税収入、專費益金等の確実なる増収を図るため適切なる措置を強力に推進して参りたいと考えております。現行税制の下における国民の租税負担は相当に重く、國民経済の現状からいたしまして、この負担に耐えることは容易ならん努力を必要とすると思われるのでありまするが、幸いに國民各位が國家財政の窮状をよく認識せられ、租税完納のため更に一段の御協力を賜わらんことを切に希望いたす次第であります。(「取引高税はどうした」と呼ぶ者あり)尚、取引高税につきましてはその撤廃について補正予算中にこれを織込む運びに至りませんなんだことは誠に遺憾とするのでございますが、これを廃止するという根本方針には変りはないのでありまして、これが実施の時期並びに代り財源について引続き研究を進めておる次第であります。
 次に金融政策につきましては、健全金融を建前としていわゆる赤字融資に一切これを行わない方針で進むものでございます。併しながら現在各方面におきまして悩まされつつある金融梗塞の実情は十分これを認識し、金融に一層の強力性を附與したいものと工夫しておるのでございます。インフレーシヨンの抑制方策といたしまして、金融引締めの方法が即効的に有効であることは明らかでありまするが、それが度を過しまして、生産を萎縮し、企業意欲を減退せしむるようなことがあつては、終局的にインフレーシヨン克服の目的を達成することができないことも、これ亦極めて明瞭であります。この間の事情をよく勘案して(「石橋時代とは大分変つたな」と呼ぶ者あり)金融の健全性を保持しながら而も生産の増強、経済の復興に活路を與えるよう善処いたしたいと存ずる次第であります。特に中小企業及び農漁村金融の円滑化については格別の措置を講じたいと考えておる次第でございます。面してこのような金融政策が運賃の増発を招來せしめないためには、手形制度の活用等、信用取引を発達助長せしむると共に、貯蓄の増強に一段の工夫と努力とを必要といたすことは申すまでもないのであります。疑いましてその見地からも、通貨に対して何らかの措置を探るというがごとぎことは政府として全く考えてはおらないのであります。
 尚、從來とかくの批判の対象となつておりました復金融資の問題につきましても、復金本來の使命を達成するに必要なものに限定すると共に、融資の責任を明確にするため必要な仕組等について成案を急ぎつつある次第でございます。
 以上、私は本内閣として当面実施すべき重要政策に触れて参つたのでございまするが、政府といたしましては更に五ヶ年後における日本経済の自立を目標として、困難な現勢において見通し得る限りの経済條件と又経済情勢を織り込みつつ、いわゆる経済復興五ケ年計画の立案を急ぎつつあるのでございます。併しながらこれを再建の目標として、生産の飛躍的増強と國民生活水準の同上を期すると共に、國際収支の均衡を確保して、現在アメリカの援助に支えられてる我が國民経済をして眞に更生自立せしめるためには、現在我が國の置かれておりまする内外情勢から見ましても誠に異常の努力を要するものと申さねばならないのであります。幸いに全國民諸君の理解ある御支援によつて政府の諸施策が所期の実効を挙げ得ますよう、十分御協力を賜わらんことを切望して相止まん次第でございます。(拍手)(「石橋湛山よりえらいぞ」と呼ぶ者あり)
#11
○議長(松平恒雄君) 只今の國務大臣の演説に対しまして質疑の通告がございますが、この質疑は明後日に譲りまして本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。明後六日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十五分散会
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した事件
 一、委員の辞任及補欠の件
 一、実地調査のため議員派遣の件
 一、日程第一、國務大臣の演説に関する件
ソース: 国立国会図書館
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