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#1
第004回国会 本会議 第7号
昭和二十三年十二月九日(木曜日)
   午前十一時七分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和二十三年十二月九日
   午前十時開議
 第一 國務大臣の演説に関する件
  (第五日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りして決定いたしたいことがございます。建設委員長より、東京都内庶民住宅建設状況及び区画整理事業実地調査のため、東京都内に來る十一日、一日間の日程を以て石坂豊一君、原口忠次郎君、仲子隆君、島津忠彦君、岩崎正三郎君、島田千壽君、堀末治君、水久保甚作君、石川一衞君、田方進君、安部定君、久松定武君、及び兼岩傳一君を派遣いたしたいとの要求がございました。これら十三名の議員を派遣することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松平恒雄君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件は決定いたしました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松平恒雄君) 日程第一、國務大臣の演説に関する件(第五日)、昨日に引続き順次質疑を許します。一松政二君。
   〔一松政二君登壇、拍手〕
#6
○一松政二君 私は参議院における民主自由党を代表いたしまして、先ず総理大臣にお伺いいたしたいのでありまするけれども、総理大臣は今日よんどころない御都合のために出席できないとのことでありまするから、他日お伺いすれば結構であります。
 総理はその施設方針演説において、いわゆる昭電疑獄事件を以て我が國空前の不祥事なりとし、その他一連の事件と共に徹底的にこれを究明し、再びかかる不祥事の起ることを防止し、大いに綱紀を粛正したいと述べておられます。誠にその通りでありまして、我々は國民と共に刮目してその成行を監視せんとするものであります。ただ併しながら綱紀の粛正は、檢察当局の摘発や法の峻嚴なる励行のみによつて実現することは難く、その由つて來る源を清めずしては不可能であろうかと思うのであります。甚だ残念ではありますけれども、上は総理大臣から、下は監獄の看守に至るまで、收賄の疑いを以て小菅に繋がれており、商工、農林、大藏などの各省要路の顯官の中にも亦同樣の者があるのでありまして、その由つて來る根本原因は道義の頽廃にあることは勿論でありますけれども、更にその源を溯れば、即ち十年このかた政治が経済に優先して、統制と計画の枠の中に國民の経済活動を封じ籠め、少数当局者によつて、生殺與奪の権を持つておる結果、誘惑の温床がうん釀せられるのも、人の世の浅間しさから避けられぬ宿命であろうかと存ずるのであります。いわゆる自由経済時代においてさえ、認許可を要するものにつきましては、ときに人の耳目を聳動せしめた收賄事件さえあつたのであり、石川五右衞門と浜の眞砂の話は余りにも人口に膾炙されております。今日ほど道義が頽廃し、犯罪が國民の各層に浸潤し、法律蔑視の風潮が巷に漲つている時代も前代未聞であろうかと考える次第であります。これも要するに限度を超えた國民への圧制がその主因を成しているのではないかと思うのであります。よつて綱紀の粛正には、法の励行と道義高揚のなし得る限度は一定限度を出ませんのでありまするから、その根源たる統制経済の扱い方を根本的に考え直す必要があろうかと思うのであります。この点につきまして総理の御所見を伺いたいのであります。
 総理に対する質問の第二点は民主主義政治についてであります。総理は民主主義の確立を機会あるごとに述べておられます。我が國が民主主義國家になるには、形式や制度だけでは佛を作つて魂を忘れたも同樣でありまして、何よりも先に民主主義國家の國民にふさわしい自主独立の精神を持し、何人をも恐れず、明朗闊達にして、義務と責任を重んじ、その日その日を暮して行けるようになるのでなければ、その実現は困難であろうかと思う者であります。我が國民は決して逸樂を求めるものではありませんが、率直に言つて、税務官吏に悩まされず、経済警察の手心に脅かされざる世の中を渇望しておるのであります。片山内閣以來、社会主義的理念と統制経済理論が合流し、流通秩序の確立と闇の絶滅を呼号して参りまして、料理飲食店も禁止して参りましたが、今日の実情はどうでありましようか。往來に一歩足を踏み出せば、禁制品の販賣から、裏口営業と、闇酒がその跡を絶たず、関係当局者の中にも日本政府の不誠意を罵つておる人も少くないのであります。前々内閣以來の與党は機会あるごとに内外に向つて民主自由党の惡宣傳をし、自分たちでなければ政権を取ることさえも許されないであろうとし、又自分たちでなければ日本の民主化が行われないと言つておつたのは、諸君御承知の通りであります。併しながら表に從つて内実はこれを実行するだけの熱意を持たず、みずから主張することを実行せず、約束をしながらこれが実行を怠るごときは、民主主義國の最も恥ずべき行爲であると信ずるのであります。(拍手)我が國は未だ占領治下にあり、万事はすべて占領政策の大枠の中にあることは改めて申すまでもありませんが、民主自由党の今日まで主張し來り、又今日これが実現を期せんとしつつあるものにして、聊かたりとも占領政策と背馳するものはありません。我々は國民の大多数がこれを翹望し、これが実現を期することは、民心を安定して生産を増強し、日本経済の再建を期する最も近道であり、占領当局と國民が眞に一体となつて協力し得る最良の方途であると信ずるが故に、國民の希望するところを率直に述べて、これが実現を期せんとすることは民主主義政治の本來の在り方であると信ずるものであります。(拍手)凡そ経済的の社会的疾患は、法律や規則に基く体刑と罰金のみによつて救治し得るものではありません。経済は生き物であり、大勢の赴くところ人爲を以て律し得ざることが多いのでありますから、好むと好まざるとに拘わらず、経済的疾患は経済政策の変換によつて直す以外に方法はないのであります。それをいわゆる昔の泣く子と地頭には勝たれぬ式の封建思想に禍いされて、初めからできないものと諦めてかかつたり、或いは面從腹背の態度をとることは、民主主義の確立に最も忌むべき行き方であると思うが、この点に対する総理のお考えを伺いたいのであります。
 総理に対する質問の第三点は思想問題についてであります。今日までのような経済政策を続け、國民の納得し得ざる……民主主義とは凡そ対蹠的な、上からの命令と罰金と体刑とを以て國民に臨み、苛斂誅求するにおいて、絶望の余り共産党にでも走る以外に方法はないと(「馬鹿なことを言うな」と呼ぶ者あり)訴えておる國民は少くありません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)その原因はどこにあるかと言えば、経済活動の自由なく、法律と統制のがんじ搦めに遭い、政治に潤いと情がなくて、而も明朗性を欠き、正直者は馬鹿を見て、大なり小なり法網に触れずしては生産を維持することさえできないからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)更に最近特に目立つことは、事業界において爭議の目的が賃上げその他の経済的要求にあらずして、経済的麻痺を計画しておる者があるのではないかを疑わしむるものがあり、(「それが吉田内閣だ」と呼ぶ者あり)企業者は操業を放棄する者さえ続出しておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)國際関係は微妙であり、思想には思想を以て対抗するのが常道でありますけれども、思想の根本にも亦経済問題が付き纒うておるのであります。これらの観点から考えましても、この際明朗なる経済政策に大轉換の要があると信ずるものでありまするけれども、この点に対する総理の考えを伺つて置きたいのであります。
 次に経済安定本部長官及び関係各大臣にお伺いをいたします。占領当局は日本の経済的復興を急ぎ、日本を自主経済までに持つて行くためにあらゆる努力を続けておるにも拘わらず、日本側においてはとかく一時逃れの安易なる行き方を選ぶ傾きのあることを頗る遺憾に思うものであります。爲替レートの設定のごときも芦田内閣以來の懸案であり、國際貿易を経済政策の根幹とせねばならぬ我が國において、その中心であるいわゆる物差を商品別に定めたり、或いは輸出と輸入とに全然似ても似つかぬ換算率を設け、而もこれを今日まで放置して來たことがそもそもの間違いなのであります。一日も早く安い円の限度を定め、段階的に期日を指定して、漸次一本に纒めるよう業者に警告と覚悟を定めさすべきでありましよう。いわゆる経済三原則のごときも極めて常識的であり、今日までこれを実現しなかつたことが歴代政府の怠慢であり、又現閣僚の中にも時として人を惑わす言動のあつたことを深く遺憾とするものであります。我が國の経済復興を妨げている根本の原因は、朝野を挙げての無責任にあつたものと信ずるのであります。安本長官は企業の自主性を説いておられますけれども、経済政策の大轉換なく、統制と計画の枠の中に、不手際と時期外れに加うるに、生産に並行せざる資材と資金の中に創意と工夫を求めるとすれば、勢い一部の者が闇買いと闇賣りに流れざるを得ないのでありましよう。かくして、ともかくも生産を続け、闇経済と公定経済と両建となり、更に自由價格の出現となりまして、今日の現状は、いわゆる三本建になつておると思うのであります。而も基本方針が、自由競争以外に何の遠慮会釈もない國際貿易を根幹として我が國経済の運営を図らなければならないのが、我が國今後の行き方であろうと思うのであります。從つて好むと好まざるとに拘わらず、自由経済への移行は必然の趨勢でありまして、その実現の日が安外早く來ることは、客観情勢から見て窺い知ることができるのであります。私は第一國会の劈頭において、公定價格制度を廃し、價格は経済自然の自律作用に任せ、人爲を以てこれを左右せんとする者には峻嚴なる暴利取締令を設けたがいいと主張したのでありまして、今日と雖もこの主張を変更するものではありません。インフレも末期的現象を呈し、爲替問題と輸出不振に加うるに、國内購買力の減少から、経済三原則の励行と相俟つて経済政策の轉換は必至であり、又いずれの点から論じましても自由への移行を促速進すべきであります。(「餓死の自由だ」と呼ぶ者あり)それで私は自由への過渡的措置として、公定経済と自由経済の二本建と、闇をやらなくても生産が順調に継続せられ、企業者も亦自主性を取戻し、企業意欲も旺盛になる方法として、割当資材の何割かを自由生産に認め、炭鉱業者その他の類似の業者には生産の何割かを自由処分に任せる、その代りに定められたる割当については嚴重にこれが履行を迫る、かくすることによつて朝野の無責任性も大部分救済せられ、世の中も明朗になり、生産も増進せられ、経済復興の速度も早められると思うのでありまするが、この点に対して安本長官は如何にお考えになるか、御所見を伺いたいのであります。
 尚、泉山大藏大臣にお伺いいたしまするが、酒の密造に精米二百万石乃至三百万石費消せられておるということは國民の常識となつておりまして、酒が嗜好品であり、たださえ足らぬ日本人の食糧を、かくのごとき嗜好品に潰すことは不届き至極であると呼号して見ましても、今日の実情は如何ともし難い状態になつておるのであります。これを潰滅せしむる唯一の途は、酒を多く造つて安く販賣してやる以外に方法のないことは、米國が二十年前、連邦憲法によつて禁酒法を励行したに拘わらず、得るところは失うところより少かつたので、これを廃止した歴史がこれを証明して余りあると思うものであります。政府は射倖心をそそる富くじまでも往來で賣り捌き、増收のため敢てこれを行つておる状態でありますが、主食たる米が表向き酒の釀造に振り向け困難であるならば、農家の保有米を一部委託釀造として、適当量を米と交換させることによつて税收を挙げると共に、闇行爲を減少して、良い酒を安く供給することができる。(「買えない買えない」と呼ぶ者あり)こういうことは一石二鳥にも三鳥にもなると思うものでありまして、而もこれは我が黨の政策の一つであるのであります。(「古いぞ」と呼ぶ者あり)如何にこれを実現しようとするか、安本長官はこれを如何に取扱つておられるかを伺いたいのであります。
 次に労働問題につきまして、労働大臣、商工大臣にお伺いをいたします。國家再建の途上において、重点産業と称せられるものに國家が一層関心を有することは、私もこれを認めるに吝かではありません。併しながら政府が余りに深入りをする関係から、企業者も労働者も各々の努力談合をするよりも、政府を脅かしたり口説き落す方が捷径であると思うてか、この頃の重点産業の労働爲議又は賃上要求は常に政府に向つてなされておる感がありますることを、頗る遺憾に思うものであります。我が國が八千万の人口を抱き、資源も乏しく原料もない四つの小島に群居して、わずかに米國の厄介になつて生存を続けるからには、腕に物を言わせて稼ぐ以外に方法はありません。而も米國はいつまでも厄介者を背負うわけにいかんとして、我々に自活を追つておるのであります。又何人も、他人を助けるにいたしましても、みずから救うこと能わざる者を助けるわけに行かないことは自明の理であろうと思うのであります。然るにこれまでのところでは、企業は自主性を奪われ、自主的に物を解決する能力なく、又一部には新憲法を誤解してか、國家は人たるに値いする健康にして文化的な生活を保証しておるものと思い込む者さえ現われ、國家亦占領当局に依存して、その関門の通過をこれ事として來たために、今日の國を挙げての無責任感を招來したのでなかろうかと思うものであります。(「それも吉田内閣の責任だ」と呼ぶ者あり)國家が重点産業たる一部の組織労働者の要求を充足せんがために、いわゆる経済三原則を幾分にても手心を加えることがあれば、それだけ他の國民を、近頃の言葉で言えば、いわゆる搾取することになるのであります。今日の自由競爭の産業に從事する一部の組織労働者及び未組織の労働者、及び農村漁村の收入は、いわゆる重点産業と称せられる組織労働者より一般的に見まして遥かに低いのであります。(「そうだ」「ノーノー」と呼ぶ者あり)殊に昨年來打ち続く不漁のために放浪さえし兼ねまじき漁民が多数に上つておることは、御承知のことと思うのであります。一部の組織労働者のみが、團結の力によつて國家から特別の待遇を受くべきいわれも権利もない筈であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)いわゆる敗戰後、殊にインフレ下の國民の生活は惨めなものであります。(「インフレ政策がやつたのだ」と呼ぶ者あり、発言する者多し)我が國の経済復興を希望する(「謹聽々々」と呼ぶ者あり)連合國の我が國民に対する考え方におきましても、最小限度の生活水準に甘んじて人一倍働くことを要求しておるのであります。(「そうだ」「君が要求しているんだろう」と呼ぶ者あり)日本人が中國において中國人と生活上太刀打のできなかつたゆえんのものは、彼らは幾ばくの收入があるからと、その範囲内で生活を考えるのであるが、日本人は生活の水準をあらかじめ決めて、それから生活費を考えるところに、個人的の生存競爭に負けておつたものが確かにあるのであります。よろしく政府は余りにこの重点産業の問題に深入りをすることを止め、生産増強と事業の合理化以外に賃金増額の余地なきことを、この際強硬に当事者をして自覚せしむべきであると存ずるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)若し又不幸にして罷業の挙に出た場合には、政府は勇敢にその実情を國民に周知せしめ、その及ぼす影響を國民の判断に訴え、その批判の下に当事者が円満に協約に入るよう盡力すべきであり、断じて他の者の犠牲において一部の恣意を遂げさせる安易の道を選ぶべきでないと思うのでありまするが、この点に対する両大臣のお考えを伺いたいのであります。以上を以ちまして私の質問演説を終ることにいたします。(拍手)
   〔國務大臣増田甲子七君登壇〕
#7
○國務大臣(増田甲子七君) 一松さんの御質問にお答え申上げます。
 企業が健全性、自主性を確立することが必要である、殊に経済三原則のごときはこれを絶対的に励行して頂きたいという御質問に対しましては、私全然同感でございます。いつまでも企業体が寄生的の存在であつたならば、日本の経済復興は到底所期し難い、こう思う次第でございまして、経済三原則もその意味合から我々に呈示されておるもの、又國民に我々が呈示したものと、こう承知しております。でありますから、飽くまでもこれを原則的に尊重して参りたい。経営者諸君、又労働者諸君も、この経済三原則は経営者や或いは労働者を鞭つものでなく、國民全体を生かすものであるという意味合におきまして、飽くまで経済三原則を尊重し、これを実現いたして頂きたい。ここに私は國民諸君にも、経営者にも、労働者諸君にもお願いいたしておる次第でございます。(拍手)
   〔國務大臣泉山三六君登壇〕
#8
○國務大臣(泉山三六君) 一松さんのお話は、大体におきまして御所見の御開陳でございまして、その御所見に対しましては深く敬意を表する次第であります。なかんずく私は御質問のうち最も具体的な点につきましてお答を申上げたいと思うのでありまするが、酒の問題につきまして、これを先ず増石をいたしてはどうか、又次にはその販賣價格を引下げてはどうか、何らか税收の方面におきまして工夫を凝らすべき余地があるのではないか、誠に御尤もな御意見であります。政府におきましてもその線に沿いまして、本追加予算におきましては酒の増石を計上いたしておるのであります。即ち米穀におきましては若干石、約三割の増石、麦におきまして約六割、藷におきまして十割、それぞれ増石を予定いたしておるのであります。從いまして、かようの点から凡そ年度内におきまして、三十億円の増收が見込まれるのでありますが、他の半面におきまして、遺憾ながら凡そ同額程度の予算減收が予定いたされるのであります。この点につきましては只今一松さんから御指摘のございました通り、実は特價酒におきましての賣行が面白くないのでございまして、御指摘の通り或いはその價格が多少高きに失するのではないか、この点につきまして政府におきましては、目下頻りに研究を進めておる次第であります。尚又いろいろその販賣方面におきましても何らか工夫を加えたい、かようの考えを持つておりますことを御了承願いたいと思うのでございます。以上を以ちまして簡單ながらお答えといたします。
 尚、私昨日は他用を以ちまして若干遅参をいたしまして失礼を申上げました。その間に堀、三好、板野御三君からそれぞれ私へのお尋ねがございましたのでございますが、この機会におきましてお答え申上げたいと存じます。
 先ず堀さんのお尋ねの第一点は、公務員の給與の引上げは大衆課税によつて賄うべきではないのではないか、かようのお話でありまするが、公務員の給與は結局におきまして國民の負担によつて賄われるものでございますことは、これ当然でございまして、政府といたしましてはその負担が國民全体に負担力に應じて適正公平に課せられることを目途としておるのでございまして、今回の公務員の給與引上げに際しましても、その財源は專らこの方針に則りまして調達をいたしておるのでございます。以上御了承願いたいと存じます。第二問は、五千三百三十円ベースは実態生計費に基かず、專ら財政上の立場から決定しておるのではないか、さようのお尋ねでございますが、今回の給與の引上げに当りましては、実際の生計費を十分考慮いたし、民間の給與、一般國民消費水準等をも愼重に考慮いたして、他の半面におきまして財政の現状を勘案してその結論を得た、かようのことでございまするので、新給與は現在におきましては、政府職員の給與水準といたしまして誠に適当なものである、かように考えておるのでございまして、決して單に財政上の見地からこれが結論を求めた、さようのものではないのであります。
 次に三好さんのお尋ねにお答え申上げます。政府は自由経済政策をとると言つておるが、現在の状況から見て完全な自由経済が行われると考えるか、かようのお尋ねでありまするが、現内閣の経済政策の基本は、生産を増強して國民経済を復興するため企業の自由活發なる活動を促進することにあるのでございまして、このため我が國現下の経済情勢の下におきまして誠に止むを得ないものは別といたしまして、企業の自由なる活動を阻害するような統制は、これを廃止することを目途とするものでございます。
 尚、板野さんのお尋ねにお答え申上げます。今日地方財政が困難に見受けられるに拘わらず、六三制等の負担を地方に押し付けておるのはいけないように思うがどうであるか、かようのお尋ねであつたのでありまするが、地方財政が困難の現状は御指摘の通りと思われるのでありまするが、又國家財政も誠に容易ならざるものであることは、これ亦板野さん御了知の通りであります。これらの点を総合勘案いたしまして、政府としては中央地方の財源及びその負担の調整を図ることに務めておるのでございまして、現在程度の地方負担は誠に止むを得ないものと考えるのであります。但し地方財政の改善につきましては、今後とも折角努力を重ねたい所存でございます。以上御了承を願います。(「お粗末答弁」と呼ぶ者あり)
   〔國務大臣大屋晋三君登壇、拍手〕
#9
○國務大臣(大屋晋三君) 一松君の御質問にお答えいたします。
 一松君の率直なる御意見につきましては、誠にいろいろな示唆を含んでおる御意見で、私も敬意を表して拜聽した次第であります。この重点産業の目下行われておる賃下げ要求その他に関しまして、労働政策の面において政府が余りこれに介入し過ぎる、これに対する政府の見解如何という御質問の要旨であつたかと思うのでありますが、私も現在の労働者並びに企業者に対しまして産業の自主性を強調いたしておりまするし、又いわゆる経済三原則の趣旨も、敗戰後の現在三年を経過しました今日におきましては、日本の産業の持つて行き方を、ここに一大修正する時期に到來したのであるという見地におきまして、企業者並びに労働者に対しまして強い示唆を與えておる、その点が経済三原則の重点なのでありまして、その点を政府といたしましても、両團体に対しまして十分に徹底をせしめまして、余り政府の厄介にならないように、業者自身の自力によつてこの問題を解決するように指導して参つておる次第でございます。以上一松君に対する御答弁といたします。
 尚、昨日私に対して行われました堀、三好、板野三君の御質問に対しましてお答えいたします。
 堀君の御質問は、石炭、電産ストに対する御質問のようでございましたが、これに対しましては昨日労働大臣が答弁を申上げましたそうで、私も労働大臣と同感でございます。商工大臣といたしまして、特にこの際その重大性に鑑みまして、関係方面と協力をして、一日も速かにこの重要基礎産業の賃上げ問題を解決したいと考えておる次第であります。尚、鉱山保安の問題に対するお尋ねがございましたが、これも急速に鉱山保安法案の成案に努めておるわけでございまするが、目下その法案のできまするまで暫定の処置を、万全の処置を講ずる手配をいたしておる次第でございますから、さように御了承をお願いいたします。
 次に三好議員の御質問は、中小企業がいわゆるこの企業整備の結果において大企業から著しい圧迫を受けて行きまする関係を憂慮せられまして、これが維持育成に対しては如何ようの考えを持つておるかというお尋ねであつたと思うのでありまするが、中小企業は我が國の産業といたしまして、大産業と共に非常に重要な産業で、これに対しましては、労務者の五六%、工場数の九七%、生産品に対しまして四五・六%を占めておる関係から、大企業と共に中小企業はこれから十分に育成助長をしたい意思でおるのでありまして、これがためには、やはり三好君のお説の通り協同組織によりまして、相互扶助でその合理化を図つて行くという観念に基いて、これを一層脆弱性を補強して行きたい、さように考えておる次第でございます。
 次に板野議員の御質問は、中小企業に対するこの年末の金融措置は如何ように相成つておるかというお尋ねでございましたと思うのでありますが、これに対しましては、いわゆる復金の特別融資の措置といたしまして、從來は一・四半期に五億五千万円を代理貸付の制度におきまして計上いたしておりましたのを、この金額では不足でございますので、これを今回の第三・四半期におきましては三億円を増加いたしまして、八億五千万円を代理貸付の制度に充当いたしまする金額といたしました次第であります。即ち興銀、勧銀、中金、拓銀の四行を代理といたしまして、八億五千万円が中小工業者に振向けられるわけであります。尚、更に損失補償制度の枠内におきまして一億五千万円を計上いたしました。これは市中銀行が中小工業者に金融をいたしまして損失がありました場合には、その三割をこのフアンドによりまして補償をいたすという制度でございますので、結局この一億五千万円が五億円の働きをいたす勘定に相成る次第でございます。尚又復金の中小工業方面の特別の枠といたしまして二億二千万円が計上されておるわけでございます。次に、日本銀行の中小工業方面に関する特別の枠といたしまして、在來四億円を計上いたしてありましたのを、これでは年末の特に逼迫した中小工業者に対する金融措置といたしまして不足を感じまする関係上、更に七億円を増加いたしまして、この方面で十一億円ということに相成つておるのであります。その他、地方の都道府縣或いは大きな市というような方面におきましては、いわゆる信用保証協会の活躍を期待して、これに対しまして政府といたしましても特別の(「一手販賣」と呼ぶ者あり)措置をいたすように特に指令を発し、この法案の成案も急いでおる次第でございます。かようにいたしまして、総計いたしまして、かれこれ二十五億の資金が中小工業方面に融通ができるということになつております。
 次に板野君の第二点の御質問は 爲替レート設定の見通しと、若し一本建に決まつた場合に、どんな國内産業が影響を受けるかという御質問であつたと存ずるのでありますが、爲替レートをいつ如何なる割合で設定するかということは、各方面で重大なる関心を持つておるのでございまするが、今何人もこれを申上げることはできないと思います。各方面において着々基礎的のいろいろな準備をいたしておることと御了承願いたいのであります。若し爲替レートが設定をされた場合に、現在の円とドルの比率の点から見まして國内の産業でどういう産業が最も影響を受けるかと申しますならば、現在までの実績を根幹にいたしまして申上げるならば、陶磁器、ガラス製品、美術工藝品等が最も打撃を受ける産業でございます。次にこの一本レートをどういう具体的の数字で設定する考えかというお尋ねがありましたが、これは何人も申上げられないのでありまするが、仮に輸出の場合に三百円に決まるといたしますならば、日本の産業の現在の実績を基礎にいたしまして約六割が輸出不能に陷る虞れがある。更にこれが三百五十円に決定をされたならば四割が輸出不能の結果を招來いたす、さような情勢が現在までの実績でございます。若しそれ輸入の点につきましては、現在は大体総平均が百三十になつておりますから、若し一本の為替のレートを適用いたしました場合におきましては、輸入に対しましては國内の商品を圧迫する虞れがありますので、いわゆる現在のエロア・フアンド或いはガリオア・フアンドによりまして輸入をいたしておりまする物資、即ち食糧品でありまするとか或いは復興資材の面に対しましては、一本為替の場合には或いは過渡的にそれらの價格の調整をするという必要が起るのではないかと、さように考えておる次第でございます。以上御答弁申上げます。(拍手)
#10
○議長(松平恒雄君) 総理大臣は只今関係方面と折衝のため本会議に出席いたしかねるため、その答弁は後刻せられる趣きであります。藤野繁雄君。
   〔藤野繁雄君登壇、拍手〕
#11
○藤野繁雄君 私は吉田総理大臣及び泉山安本長官の施政演説に対し、以下の諸点につきて政府の所信を質したいと思うのであります。施政演説が極めて抽象的な項的を列挙したのに止まり、何ら具体的施策に言及していないということは最も遺憾とするところであります。それで刻下の緊急なる諸問題について今少しく政府施策の方向を質す必要があることを痛感するものであります。
 先ず最初に経済統制の整理簡素化についてお伺いしたいのであります。現在の統制経済が全面的に再檢討の時期に達しており、國民経済に必要不可欠な基本的統制は強化してでも、その必要の度の薄いものは緩和乃至は廃止することが各方面の強い要望であるのであります。政府においても亦このことを強調しておられるのでありますが、政府はいつ何から実行されるお考えであるか、お伺いしたいのであります。又戰後統制経済の基本法でありまする臨時物資需給調整法が統制物資の指定を政令に委せておることは、極めて非民主的、非合理的であります。國民経済に深い関係を有する統制物資の指定は國会において行うべきものであると信ずるのであります。政府において物調法を改正するところの意思があるかどうか。これについては総理大臣及び安本長官にお尋ねしたいと思うのであります。又配給機構の問題につきましては、食糧であるとか薪炭のごとき、中間経費が自由経済時代よりも高いために、生産者も消費者も双方から不評判になつておるのであります。政府はこの方面について善処せられんことを要望するのであります。
 次に私は專ら当面しておりまするところの重要なる農政問題について、総理大臣、農林大臣及び大藏大臣に質問をいたしたいと思うのであります。その第一番目は、農業政策当面の緊急課題である農業再生産の保証の問題であるのであります。戰後我が國農業は極めて重要なる立場に置かれ、経済復興と國民生活の安定の基礎條件である食糧確保の重大使命を果しつつあるのであります。然るにその現況を見まするに、農産物價は殆んどすべて嚴格な供出制度の下に安く固定されておるのに反し、生産物資及び生活必需物資は逐次高騰の状況にあつて、加うるに租税負担は過重でありますから、再生産が漸次困難に陷りつつあるのであります。作付から供出、價格に至るまで、殆んど政府の統制にかかる現状において、再生産の保証は正に政府のみずからの責任であることを先ず強調したいのであります。米價について見ますれば、歴代政府はパリテイ計算によつて年々幾分ずつ引上げてはおるのでありまするが、米價がパリテイ計算で決定されましたときには、次の米の生産資材の値段はすでにそれ以上に高くなつて再生産に支障を來しておるのであります。再生産に支障を來するような米價では到底増産は望まれないのであります。政府は二十三年産米の第一次價格決定に当りまして、農相の申入を了承されておるのでありますが、農家の必需品の最低必要量をマル公で配給しておられないところの現状であります。マル公で配給ができておらないとするならば、米價決定の原則は政府みずからが打ち壞しておるのではないかと思うのであります。麦の元肥が間に合わないために無肥料で作つた農家もあるのであります。生産費が特に高くかかるところの特殊地帶に対しては、生産費を逓減するために如何なる政策を取ろうと政府は考えておられるのであるか。又米價のように國民経済に重大なる影響を及ぼすものは國会において決議するのが適当と思うのでありますが、これに対する総理大臣の意見を伺いたいと思うのであります。
 次は供出問題であります。最近の供出割当は年々増加せられておりますから、農民はどれだけ増産しましても割当量を供出することが困難な状態にあるのであります。超過供出をしますれば米はマル公の三倍で買上げると言われましても、割当量の供出が困難を感ずるぐらいでありますから、超過供出するような者は殆んどない状態であるのであります。そこで私は食糧確保臨時措置法が制定せられました本年の七月を以て一つの線を引いて、將來はどれだけ増産いたしましてでも供出量は昭和二十三年七月現在よりも増さない、それ以上の生産は超過供出として買上げるというような措置を講ぜられたならば、農家の生産意欲は増し、一層増産も、供出も確保せられると思うのでありますが、政府はどう考えておられるのであるか。又供出を確保するためには生産資材を適期に必要量を配給することが必要であるのでありますが、本年の「うんか」の発生に当つては、殺虫油の配給が遅れたために被害を蒙つた地方が多いのであります。こんな事例を年々繰返さないように、生産資材の配給機構と行政事務の簡素化を図る考えはないか。右に関して農林大臣の意見を伺いたいと思うのであります。
 次は農民課税の軽減であります。農民課税中最も大きいものは所得税であります。昨年においては総税額に対する所得税の割合は八五%に達しておるのであります。又昨年の例から申しますというと、闇取引をしないところの農家に対しても、闇取引をしたるものとして、税金をかけておるような状態であります。闇取引しないところの善良な農家は非常なる反感を持つておるのであります。何故農民の所得税が過重であるかを調べて見ますというと、農産物の生産費中に自家労力を加算されていないということであります。即ち同じく米を作るにいたしましてでも、まじめな農家は朝早くから晩遅くまで勉励して増産しまするが、増産すればする程所得税が多くなるのであります。一方他人を雇うて生産すれば、雇人に支拂つたところの賃金だけが生産費に加算されるのでありますから、所得税は安くなるのであります。即ち現行の所得税算定の方法によれば、農家の労銀に相当する分は必要経費に計上せられないために、まじめな農家に重く然らざるものに軽いというような矛盾ができておるのであります。そこで政府は農産物の生産費中に農家の自家労力を加えて收支計算をして税金をかける考えはないか。又例えば俸給生活者と同じように、年間の農業所得から一定率の金額を基礎控除して課税せられる考えはないか。又農民の代表者である市町村農業協同組合のごとき團体を十分活用し、これとの團体的な交渉を認めて課税の公平を期し、農民が喜んで納税する措置をとられる考えはないか。又早期供出の奬励金、超過供出代金というようなものに対して非課税にされて、より多くの供出をさせるような方法を考えておられないか。右について大藏大臣にお尋ねしたいのであります。
 次は農業金融問題であります。農漁村には一時、資金が集まりましたのでありますが、生産資材及び生活必需品の高騰と税金その他の負担の過重のために、昨年末に至りましては、農業用生産に絶対的に必要な肥料資金さえも欠乏する状態になりましたから、先般農業手形によつての金融制度が考えられたのであります。然るに農業手形は供出米麦を見返りとして金融をするのでありますから、これより安全な金融方法はないのであるにも拘わらず、その手続が非常に繁雜のために農民は困り拔いておるのであります。又農業の再生産には肥料資金の外に営農資金が必要であります。これを借りることが困難な状態にあります。一方農業再生産には、これらの短期資金の外に土地改良その他長期資金が必要であります。と同時に災害復旧のためには、復旧資材の配給と共に復旧に要する資金を急速に融通することが必要であります。從いましてこれらの必要に應ずる長期金融の特別金融制度を確立することは、農業及び漁業関係者の強い要望であります。又聞くところによりますというと、政府は金融に関する特別法を制定し、農漁村の金融にも適用しようと考えておられるようであります。農漁村の金融を一般金融と同樣に取扱うことは、農漁村の組合金融制度を根本的に破壞するところの結果となるのであります。安本長官は農漁業の金融の円滑化には特別の措置を構ずると述べられたのでありますが、その具体策を大藏大臣から承わりたいと思うのであります。(拍手)
 次に最近の農業災害頻発に鑑みまして、農業災害補償制度を全面的に活用し、被災農家の復旧と農業再生産の保証に努めなければならないのでありますが、
   〔議長退席、副議長著席〕
 現行制度には尚不備の点が多いのでありますから、速かにこれを改むると共に、共済團体事務費の國庫負担額を増額せられんことを要望するものであります。
 次は農地改革の完遂と農業協同組合の育成問題であります。農地制度の改革と農業協同組合組織の確立は、農村を民主化し、農業生産力の増強と農民の経済的、社会的地位の向上を図り、眞によき農村を建設するために必要なものであるのであります。この農地改革が順調に進捗を見せて、今日農地の買收が百八十万町歩、賣渡が百五十万町歩に達し、予定通り本年末で一段落の運びに至つておることは誠に喜びに堪えません。併しながら將來この創設せられた自作農を維持育成して、農村の健全なる発達を期することは、決して容易なことではなく、而も日本の農業にとつて重要問題であるから、この点につき反省を促したいと思うのであります。即ち現在の農地改革は、昭和二十年十一月二十三日を基準として、当時耕作しておつた者のみに農地を賣渡すことになつておるのでありますが、農家の構成人員は当時と現在とに変動があることは明らかであります。それ故に現在からしますれば、政府の賣渡方針は必ずしも農地の公平なる分配ということはできないのであります。それで不平を唱え農地の公平なる再分配を主張する者が多いのであります。又新憲法によつて見ますと均分相続でありますから、現在の自作農地は次第に細分せられまして、適正規模の農家を減少し、現在においても收支償わざるところの農家がますます苦境に陷り、折角の自作農創設も数年ならずして破壞するのではないかと憂えるものであります。(拍手)政府は何らの施策も立案せず、放任の状態にあることは誠に遺憾に堪えないのであります。そこで農地の公平なるところの分配方策及び適正規模の自作農維持に対する総理大臣の御意見を伺いたいのであります。
 次は、農地改革が今日の成果を收むるに至りましたのは、半面には農地委員各位の努力が與かつて力あることは忘れることはできないのであります。農地委員が今後とも安んじて最後の仕上げを完遂することができるように処置を講じなくちやいけないのであります。併しながら多数の農地委員の中には、時節柄面白からぬ噂を聞くことがあるのであります。これらの農地委員には指導監督を十分にして、農地改革に支障を來すことがないよう適切な処置を講ずることが必要と考えるのであります。又農地買收賣渡が完了すれば、從來の地主、自作、小作の階層は殆んど解消するのでありますから、農地委員の選任方法も根本的に改める必要があると思うのであります。農地委員会に対する補助、農地委員の指導監督、買收賣渡完了後の農地委員選挙等について農林大臣にお伺いしたいのであります。
 次に地主についてでありますが、土地制度の改革のために地主の拂つた犠牲に対しては、憲法において基本的人権及び財産権尊重の見地から妥当なる措置を講ずるすとが必要であります。而も農地改革が、買收賣渡事務の完了、登記の促進、代金の收納と支拂というような、事務的処理の段階に達しました今日、尚、政府施策の拙劣、事務の澁滯のために、必要以上の犠牲を余儀なくされておりますことは納得が行かないところであります。改革の趣旨を解して政府の方針に從つておる地主に対しては、現金及び農地証券の支拂を促進し、又農地証券に対する金融の途を講じてやることは、政府の当然な務めと思うのであります。今日地主は、農地は政府に買收されても、政府の代金の支拂は進捗せず、農地証券も殆んど渡らず、又渡されても資金化することができず、而も小作料は法外に安く、全く收入の途がないのにも拘わらず、負担は増しても減少しない状況であるのでありますから、地主は全く行詰まつて生活の方法を見出すことができないような現在の状況であります。政府はこの地主の窮状打開の方策を講ずる考えがあるか、考えありとしたならば、その具体策はどうであるかということを総理大臣及び農林大臣にお伺いしたいのであります。
 次に、都市計画地内の農地買收に当つては、都市計画を考慮し、関係者間の協調を保つて買收しなかつたならば、都市計画を根本的に破壞することになるのでありますから、將來十分の注意をお願いしたいと思うのであります。尚又未墾地の買收、殊に平坦地の買收に当つては物議を釀しつつあるところの地方が多いのでありますから、万遺憾なきように処置せられたいということを要望するのであります。
 次に農業協同組合の育成問題であります。農業協同組合は今日全國各市町村から府縣に至るまで殆んど設立を完了し、その数は相当多きに達しておりますが、一般にいずれも基礎劣弱のために、所によつては党派別に濫立せられておるように聞いておる所もあるのであります。而も配給物資の取扱などは片手落の措置を受けておりますため、特に現今のような経営に不利な情勢下におきましては、現在のままに放置すれば、農業協同組合が設立の目的を達成することは覚束ないのであります。又農業協同組合連合会は、法律によれば信用事業を営む連合会の外は、その他の事業を兼営することを認めておるにも拘わらず、政府において法律に許しておる兼営の自由を認めない方針で指導しておられますために、連合会は濫立せられておる結果になつておるのであります。從いまして農業協同組合は苦しみ、連合会も亦予定の事業の遂行が不可能な状態にあるのであります。先般成立しました水産業協同組合法においては、連合会は信用事業以外の事業の兼営を認められ、又過度経済力集中排除法も相当緩和されておる現状におきまして、農業協同組合だけが法律で許されたる兼営を制限せられておるということは、甚だ納得が行かないところであります。(拍手)それで先ず町村における農業協同組合の強化の方法を講じ、次いで都道府縣連合会には法律の許す範囲内の兼営を認めなければ、近く自滅するものが生じて、農業協同組合設立の趣旨と全く相反する結果がもたらされるものではないかと心配するものであります。安本長官は農業協同組合の育成に努めると、こう述べられたのでありますが、どんな方法で育成されるのであるか。具体的の案を農林大臣に伺いたいのであります。
 第三は、土地改良と畜産及び農村工業の將励についてお尋ねしたいのであります。今後の農業政策の重点が農業生産力の増強と農業経営の合理化にあることは今更申上げるまでもないのであります。そこで先ず生産力の増強の方法といつたましては、直ちにその効果を挙ぐる方法から始めなければならないのであります。それは土地改良と災害復旧が第一であると信ずるのであります。周東農林大臣は就任に際し、食糧増産のためには土地改良を重視すると抱負を述べておられるのでありますが、これに対する農林大臣の具体策をお伺いしたいのであります。次に総理大臣は、災害復旧については組閣以來腐心しておるが、取敢えず今回の予算中に所要経費の一部を計上し、迅速適切なる処置を講ずると施政演説に述べられたのでありますが、從來の経驗からいたしますれば、補助金の支拂が遅れて予定通りの工事が進捗しないのであります。工事が完了せなかつたならば、農業生産その他に支障を來して民心を不安に陷れるのであります。総理大臣が述べられた災害復旧に対する迅速適切な方策を承わりたいと思うのであります。又最近の災害は水害によるものが多いのであります。これは戰時中に治山治水、特に砂防工事を放任せられたからであります。水害があつてから復旧するよりも、治山治水、特に砂防工事に拔本塞源的の計画を立て、これを実行することが得策と考えるのであります。(拍手)災害復旧費を出すつもりで治山治水及び特に砂防工事費を思い切つて支出をすべきものであると思うのであります。この点に関する総理大臣の御意見を伺いたいのであります。
 次に、農業経営を合理化して農民の経済の改善を図ると共に、行詰つておるところの農村の現状を打開し、且つ來るべき農村恐慌に備えるためには、畜産の將励と農村工業の普及発達を期することが肝要であります。畜産の奬励方法としては、優良なる種畜の導入、飼料供給の確保、家畜衞生施設の完備等を考えられねばならないのであります。飼料の供給を豊富にする一つの方法としては、米麦の搗精度を高めて、糠の生産量を増すことが各方面から要求されておるのであります。米麦の搗精度は高めても、米麦を容器で配給すれば配給に支障を來さないのであります。農林大臣はこれについてどんな考えを持つておられるか、お伺いしたいのであります。
 次は農村工業でありますが、一般に農村工業の重要性を認めておりながら、その発達が遅々として振わないのは、これは指導奬励の行政機関が不備であるのと、金融の円滑を欠いておるからであると思うのであります。(拍手)政府は農村工業の重要性に鑑み、これを所管するところの部局を設ける考えはないか。又農村工業に関する金融の具体案を定めて簡易に融達し、農村工業を発達させる考えはないか。進んで農村工業助長法というような特別法を考えておられはせないか。これについて農林大臣の御意見を伺いたいのであります。(拍手)
  [國務大臣泉山三六君登壇、拍手]
#12
○國務大臣(泉山三六君) 先ず御質問の第一点、統制の整理簡素化につきましては、私が経済安定本部長官といたしましてその施政演説におきまして申述べました通り、最近の経済條件の変動等に鑑みまして統制全般に亘り再檢討を加えたいと思うのであります。即ち害あつて益なき統制は勿論、今日もはや不必要と相成りました統制若しくはその手続において余りに繁雜なるもののごときは、この際思い切つてこれを廃し、他方、経済の安定と復興に欠くことのできない基本的なる統制はその縮小された領域を対象として以て強力に推進する、さように方針であるのでありまして、これによりまして企業の自主性を取戻し、その創意と責任とによつて活溌なる企業活動を促す一助といたしたいと思うのであります。特に生鮮食料等に関しましては、食糧需給の推移とも見合せ、その速かなる廃止の時期並びに方法等について折角研究を進め、又関係方面との間に折衝を重ねておる次第であります。(「官僚に負けないようにせよ」と呼ぶ者あり)承知いたしました。(笑声)
 御質問の第二点、農業再生産保証に関してのお尋ねでございまするが、農業の再生産の問題は、特に今日のようにインフレの上昇傾向にございますときにおきましては極めて重大なる問題として、政府におきましても昨年以來種々これが方策を研究いたし、昨年産米より米價につきまして追加拂いの制度を採用いたしましたのも、実にこの農家の再生産に支障を來さないようにする配慮に出でたものであります。即ち御承知のように、今回の米價決定の基礎になりましたパリテイ指数は、本年九月三十日現在の確定指数でございまして、十月以降において値上を予想せられる品目の騰貴率は織り込まれていないのでございます。從いまして若し來年産米のための肥料、農機具等の生産資材の價格が今回の米價決定後において値上りをいたしまする結果、指数が上昇する場合におきましては、明年七月において六ケ月間の各月農業パリテイ計算によりまして最終價格を算定いたし、今回決定の價格との間の差額は追加拂いを行いまして、以て米の再生産に万支障なからしむるよう措置いたす方針でございます。
 御質問の第三点、農家に対しまする課税につきまして種々お尋ねがございましたが、先ず農業所得の決定に際しまして、自家労力を農産物の生産費中に加えてはどうか、かようのことでございましたが、自家労力は必要経費とはこれを認め難いのでございます。以上御了承を願いたいと思うのであります。尚、農業所得は一般の給與所得と同樣に一定率の基礎控除を置くべきではないか、かようのお尋ねがございましたが、農業所得につきましては藤野さん御承知の通り、給與所得と同樣に一定の基礎控除が認められておりまするが、給與所得と全く同一率に取扱うことは今日困難なる事情にあるのでございます。
 御質問の第四点は、農業金融に関しまして縷々述べられたのでございますが、農村の金融が相当窮屈となつておりますることは御指摘の通りと思うのであります。政府におきましてもこれが打開につきまして、かねて愼重なる考慮をめぐらし、必要なものから逐次手を打つて参つたのでございますが、現在の我が國全体の財政並びに金融の状況から勘案いたしまして、無制限に資金を送出することのできないことは又明らかであります。農村一般について申上げるならば、今後米の代金が相当多額に入つて参りますることを考え、農業手形制度の活用と相俟ちまして、今後においては金詰りも相当程度は緩和せられるものと考えておる次第であります。農村の設備或いは金詰りに対する資金につきましては、すでに農林中央金庫から復金の資金四十億円を本年度内に放出いたすこととなつておることは御承知の通りであります。尚、農村金融のために特別の金融機関を設置する問題につきましては、金融制度全般の問題の一環といたしまして、目下具体的の成案を急いでおる次第でございます。
 最後に災害復旧費につきまして適当なる方策を講じては如何、かようなことでございますが、誠にお示しの通りでございまして、政府におきましても、この度本院に御提出申上げました追加予算におきまして、災害復旧費を六十億円計上いたしておるのであります。この速かなる御賛同を得たいと念願いたしておるのでございますが、尚これに先立ちまして、政府におきましては財政措置の外に金融的措置といたしまして合計七十五億円ばかりの相当の金融的措置を講じたのでございます。大体の内訳といたしましては、復興金融金庫から二十一億数千万円、預金部から三十八億数千万円、農林中央金庫その他におきまして十三億円ばかり、以上約七十五億円に上るのでございます。以上を以ちましてお答えといたします。(拍手)
   〔國務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#13
○國務大臣(周東英雄君) お答えいたします。総理に対する御質問もございましたのですが、便且私から代つて併せてお答を申上げることを御了承願います。
 第一の御質問でありますが、食糧確保臨時措置法制定のときに定められた供出限度を今後とも供出に際して守つて行く考えはないかという御質疑でありますが、御趣旨は誠に御尤もでありますけれども、今後における食糧の全体の見通しなり或いは土地の調査に基く地力の変更等もございますので、今後とも昨年定めた時期の通りを守つて行くということは、只今のところ考えておりませんが、併し根本におきまして、農民の供出に関しまして適当な供出、從つて適正な割当等については、よく御意見を参酌いたしまして、今後とも研究をいたして行きたい、かように考えます。
 それから第二点の、農業計余に定めた農業必需品が果してマル公で配給されておるかということでありまするが、これにつきましては非常な努力によりまして、今日までのところ、本年は、前内閣当時からも御努力がありまして、大体肥料、農薬、農機具等の必需分量は、適期に確実にマル公で配給されて來ておる状況であります。併し今後とも必要のものにつきましては、機を逸することは避けなければなりませんので、それらについて今後とも万全の努力、監督をいたしまして、マル公で配給され、適期に行くように努力いたしたいと思います。
 それから生産費の特にかかる地滯について生産費を逓減する施策を講ずる意思があるのかという御質問でありましたが、これらにつきましては、特に別の米價等を作ることの御要望も一面あるのでありまするが、これは今日のところできませんので、それらに要する必要経費等につきまして、例えば温床苗代設置等の費用については、特別に國庫の補助、助成等を考えまして、農家の負担の軽減に努めておるわけであります。
 次に、米價は國会で定めるので至当ではないかという御意見であります。併し只今のところ、そういうことを決定いたしておりません。でき得る限り國会における輿論を尊重して決定して行きたい、かように考えておりまするが、その際におきまして、御意見のように今後農民の代表或いは消費者の代表等を加えて、何か審議会のようなものでも作つて、でき得る限り適正な、そうして損失を受けないような形に米價の決定を進めて行きたい、かように考えております。
 それから次には、農地制度の改革というものが地主等に與えておる損害と申しますか、犠牲が可なり大きいではないか、これらに対して今後どういうふうにして行くか、又今日の相続法によつて均分相続になつておるために、折角できた自作農が段々相続のために小さくなりはしないか、これらに対してどういう措置を採るかというお話でありますが、誠に御意見の通りでありまして、農地改革の施行の途上におきまして、その根本精神であるところの小作農家を自作農家にして行くということは誠に結構でありまして、我々も賛意を表するのでありますが、その途上において可なりいろいろな点において社会的な不合理を含んでおります。從つて御指摘のような点につきまして、例えば地主に対して支拂うべき代金の決済が遅れておる、或いは農地証券として渡しますが、その資金化について今日完全しておらないし、現金で貰う部分は極く僅かであるというような事柄につきましては誠に御尤もであります。これらにつきましては、今後これらの点について是正をいたして行きたいと、かように考えておりまするし、更に今の相続の均分化という問題につきましては、でき得れば農業資産の相続に関して特例を設けるような方向に今日努力中でございます。
 又その次は、できた自作農について、その維持方法はどうかということであります。殊に適正規模の自作農維持をするということについて、何か具体案があるかという御意見のようでありました。この点につきましては、開墾等との関係も睨み合せて考える必要があるのでありまして、でき得れば適地に対して開墾候補地を選定されたならば、新らしくそこえ農家として入る人のためにも必要でありまするし、今日の日本の農家の過小農なる現状に鑑みて、でき得ればその増反、新有土地の増加の方向に持つて行つて、自作農家がその自己の耕作反別から経営が合理化されて経営が成立つような方向に土地を殖やして行くというようなことが必要でありましようし、又土地改良或いは科学技術を農業に浸透せしむる、又後に御指摘になりました農業協同組合組織を完全なものにいたしまして、これらの活動によりまして自作農維持の方策を採りたい、かように考えております。
 それから農地委員会についてのお尋ねでありますが、第一点は、農地委員会については可なり行過ぎなものもあるが、これらについて徹底的に指導監督を行うようにということであります。これらにつきましては御趣旨のように、行過ぎた点につきましては十分監督をして行きたいと存じまするが、同時に農地委員会に要する経費についての國庫の補助等については、増額等について努力中であります。又買收賣渡が完了した後において農家の階層が変るから、委員選任の方法を改正する意思があるかということであります。これらについては目下考慮中でありまして、でき得る限り早い機会においてこれを法文化して、農地委員選任の方法を改めたいと、かように考えております。
 次に、未墾地買收等について今後よく考慮せよという御意見でありました。これは御指摘の通り、今日まで未墾地買收ということにつきましては、開墾を急ぐの余り、ややもすると机上の計画に基いて候補地が選定されておる向きが多分にありまして、これらにつきましては新内閣としては再檢討を命じております。殊に御指摘のように治山治水、山を治めることのやかましい今日におきまして、徒らに無計画に山が伐られ開放せされるということは、治水上由々しき問題でありまするので、今後は中央のも地方にも通じまして、山林耕地開拓関係の委員会を作りまして、科学的に、治水上差支えなきや、又既墾地との関係において、そこを開くことが適当であるかどうかというようなことを考えて、候補地を嚴選いたして行くつもりであります。
 次にお尋の畜産問題であります。畜産の奬励をなすために、飼料の供給方法として米麦の搗精度を高めてはどうかという点でありましたが、この点につきましては御意見誠に同感でありますが、今後食糧の需給の状況と睨み合せまして、できる限り早く米麦の搗精度を上げて、そのできるところの糠等を畜産方面に廻し、バーターによつて畜産製品を消費者に供給するというような方向に向つて研究を進めております。
 それから次のお尋ねは、土地改良というものを重視されるが、どのくらいの計画かということであります。この点は御指摘のように、今日食糧増産というものを考えたときに、手取早く行くことが既墾地の改良であります。從いまして二十四年度予算におきましては、土地改良については、從來よりも相当大きく予算を組んで、目下財務当局と折衝中であることを申上げて置きます。その際に、同時に治山治水について砂防工事等をしつかりやるようにというお話であります。もとより治山の問題といたしまして、山腹砂防の問題と植林というものが中心を成すものであり、治水の面から申しますと、河川を始めるよりも、山腹砂防並びに植林をするということが根本であります。政府といたしましては、昨年から始まりました五ケ年計画によりまして、山腹砂防工事並びに植林工事につきまして、相当大きな額の計画を立てて要望に副いたいと、かように考えている次第であります。
 最後に、農村工業についてのお話でありました。農村工業につきましては、御案内のように農業者の生活安定、経営安定の上から申しましても、多角経営化するということが必要でありますが、その收穫されたものを、内に農村工業に移して工業化する面と、或いは原料を外から得て農村工業をやる面とあると思いますが、いずれにいたしましても、政府といたしましては、これが奬励について努力いたしております。農村工業に対する特殊の金融を認め、最近におきましては、預金部資金から約一億五千万円を以て、これが計画をいたしておりますが、尚今後の面におきまして、その増額施策について考慮をいたしたいと、かように考えているのであります。大体以上お答を申上げます。(拍手)
#14
○副議長(松本治一郎君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○副議長(松本治一郎君) 御異議ないと認めます。明日は午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十二分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、実地調査のため議員派遣の件
 一、日程第一、國務大臣の演説に関する件



ソース: 国立国会図書館
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