くにさくロゴ
1948/12/09 第4回国会 参議院 参議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第3号
姉妹サイト
 
1948/12/09 第4回国会 参議院

参議院会議録情報 第004回国会 法務委員会 第3号

#1
第004回国会 法務委員会 第3号
昭和二十三年十二月九日(木曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○裁判所法の一部を改正する等の法律
 案(内閣提出)
○刑事訴訟法施行法案(内閣提出)
○刑事補償法を改正する法律案(内閣
 送付)
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する等の法律案(内閣送付)
○檢察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する等の法律案(内閣送付)
  ―――――――――――――
   午後二時二分開会
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。裁判所法の一部を改正する等の法律案並びに刑事訴訟法施行法案を議題に供します。両案を一括いたしまして質疑を継続いたします。裁判所法の一部を改正する等の法律案の中、祕書に関する部分の説明を最高裁判所の説明員に説明して頂きます。
#3
○説明員(小川善吉君) 最高裁判所の裁判官の祕書官を設ける規定に関しまして、アメリカ、イギリス等における最高裁判所の裁判官の祕書官の制度を取調べるようにというお話でございましたが、その点につきましては、私共の方でできるだけの調査をいたして見たのでございますが、個人的に裁判官に從属いたします祕書と申しますか、一種のセクレタリーにつきましてはジヤッヂ、或いはジヤステスにくつ付く、附属するセクレタリーがアメリカの連邦裁判所にはあるようでございます。そうしてそのセクレタリーの、祕書とでも申しますか、セクレタリーの職務権限につきましては、一昨日來私共の方で取調べましたところでは、はつきりした明文を設けた規定が見当らないのでございますが、恐らく裁判官の職務について全面的に補助をする機関になつておるのではないかと思われるのであります。でそういうセクレタリーは裁判官個人によつて任命せられ、経費が國庫から出るという形式になつておるもののようでございます。尚そういうセクレタリーを任命する場合に如何なる人を持つて來るかということについとは、別に何らの資格制限も認められないのでございますが、ただ最高裁判所のそういう裁判官に個人的に附属する関係上、弁護士に帰る場合には若干の弁護士の職務を行う場合の制限があるように見受けられるのであります。從つてその地位に就く者は弁護士の資格を持つておる者が比較的多く就くのではないかと想像せられるのでありますが、只今のところまで分りましたところでは、その程度でございます。從つて甚だ職務内容について詳しいことが分らないのは遺憾でございますが、実は司令部の方の私共が接触しております係官の方に個人的に、向うでどういう職務内容を持つておるかを尋ねて見たのでありますが、恐らくコート・ルール、裁判のルール、若しくは裁判官が個人最にこういう仕事をしろというようなことを命じてやつておるのではないかと思いが、法律の調査その他裁判官の一切の仕事についてやつておるものだと自分は了解しておるというふうに伺つた次第でございます。詳細の点甚だ不十不でありまして恐縮でありますが、この程度で一つお願いいたします。
#4
○委員長(伊藤修君) そういたしますと、この原案の祕書というものの内容は、今御説明のアメリカの祕書の内容とは異なるのですね。その点を重ねて一つはつきりお述べ願つて頂きたい。
#5
○説明員(小川善吉君) 裁判事務につきましては、裁判官の補助機関としては調査官がございますから、裁判事務に直接携わるということは避けたいと思いますが、避けるつもりで立案されておりますが、行政事務につきまして、裁判所の関係する事務の全般について裁判官を助けていろいろ機密なことを掌る。勿論裁判事務の関係では手足になる程度の補助的なことは若干手傳いすることもあるかと思います。例えば裁判官が会議の資料をタイプの方へ廻すとか、或いは裁判官に配付するとかということを手傳いするくらいのことは若干するようなことがあるかと思いますけれども、裁判事務自体の中へ調査官のようなお手傳いをすることは全然ないと思います。そういうような意味合で機密に関する事務という表現を用いた次第であります。
#6
○委員長(伊藤修君) 思うじやなくして、そういうことをしないというのをはつきりそれを言明願つて置かんと、いわゆる裁判事務のうち裁判官事務には携わらない。而して裁判官事務の中に携わる部面は機械的な部面のみであつて、その上については裁判事務には携わらない。行政面に專ら携わるものであるという御趣旨かどうか、その点をはつきり明確にして頂きます。
#7
○説明員(小川善吉君) 只今委員長のおつしやる通りに取り運びたいと思つております。
#8
○委員長(伊藤修君) 他に御質問ございませんか。
#9
○宮城タマヨ君 家庭裁判所の運営のことについて、一二お伺いいたしたいと思います。少年犯罪者の予防更生法は、一月一日からいよいよ実施されるようになることになつておりますのでございますね。
#10
○政府委員(岡咲恕一君) 政府といたしましては、來年一日から実施されるように鋭意研究準備いたしておりますけれども、関係方面との折衝もございますし、又想当厖大な予算を伴う関係上、その実施について十分確信を持ち得ない状態にございます。
#11
○宮城タマヨ君 どのくらいな予算が立つでございましようか。
#12
○政府委員(岡咲恕一君) ちよつと関係の者がおりませんので……若し何ならお呼びしますが。
#13
○宮城タマヨ君 この予防更生活が家庭裁判所の実施と同時に並行して行かなければ、非常に運営に差支えると思うのでございまして、この点を懸念いたしておるのでございますけれども、それにはやはり厖大な予算が伴うだろうと思いますので、今日の状態として如何でございますかと、心配しておるところなんでございますけれども……。
#14
○政府委員(岡咲恕一君) 宮城委員の御指摘の通りでございまして、政府といたしましても非常に苦慮いたしております。で或いはまだ確定的には申上げ兼ねますけれども、少年法の実施につきまして、多少猶予をお願いしなけけばならないような事態になるのではないかと考えております。
#15
○宮城タマヨ君 それでは今一つ。家庭裁判所の所長は、どちらの方面から出る、まあこれは決めるわけにも行きませんでしようけれども、恐らく民事の方面をやつていらつしやつた方が所長におなりになるという場合が多くあるのではないかと思いますが、この点如何でございましようか。それでも私共心配いたしておりますのは、三十年近い歴史と実績とを持つております、少年裁判の漸く緒につきましたときに、それに新らしい民事の方の家事裁判でやつておりましたこの仕事を加えることになりますと、そこがどうも水と油のような関係で、運営上に、非常に問的が多いのじやないかというように思いますが、それも所長のあり方によりまして、或いは円滑に運営されるようなことにもなるだろうと思いますが、この点は如何なものでございましようか。
#16
○政府委員(岡咲恕一君) 家庭裁判所の所長に如何なる人が御任命になるか、これは最高裁判所におかれまして、十分御檢討の上適材が選ばれるだろうと考えております。御存じのように家庭裁判所は、少年審判所と家事審判所とが統合されましてできます関係上、少年事件或いは家庭事件には十分経驗を持ち、識見を持たれてある判事が恐らく所長に命ぜられるだろうと思います。果して具体的な、裁判所で如何なる人が選ばれますか。少年審判所関係の人が選ばれますか、それとも家事審判所関係の人が選ばれますか、或いはその外から選ばれますか、ちよつと政府といたしまして、はつきり申上げることはできませんが、恐らく運営上、最も理想とされる人が選ばれるだろう、こう考えております。
#17
○宮城タマヨ君 今一つ。家庭裁判所ということに名前が変りましたことによつて、少年裁判の方は非常に利用する人が少くなるのじやないかという虞れがございます。つまり審判所が裁判所に変りましたという名前によつて、その内容を知るまでは、非常に怖い所で、滅多に子供を出入りさしてはならない所のように考え易いと思うのでございます。それでこれは宣傳するのに相当に政府としては御準備が要るだろうと思いますが、殊に通告事件についてこれは必要なことなんで、どうしても通告事件に重きを置かなければならんと思うときに、この宣傳方法についい何か御用意がございますでしようか。
#18
○説明員(小川善吉君) 御意見誠に御尤もでございます。最高裁判所におきましては、家庭裁判所の宣傳の経費を若干計上いたしまして、政府の方にその支出方をお願いしておる次第でありまして、若し裁判所側でお願いしておる経費が相当に認め得られますれば、宣傳については相当な満足されるようなことができるのではないかと予想しておる次第でございますが、何しろ実施予算が確定しておりませんので、まだその内容を申上げられるところまで実は行つておりませんのを、甚だ残念に思つておる次第でございます。
#19
○委員長(伊藤修君) 鬼丸さんの昨日御要求になりました資料は目下作成中で、今暫く掛かるそうでございます。他に御質疑がなければ、この程度にして置きまして、資料の参るまで他の法案を審議したいと思いますが、如何なものでございましようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○鬼丸義齊君 私刑事訴訟法の施行法についての質疑をいたしたいと思いますが、刑事訴訟法の施行法の第二條にありまする新法と旧法の適用範囲についての問題になるのでありますが、これは資料を頂きましてから重ねてお伺いいたすといたしまして、その前に一應私は承わつて置きたいと思いますことは、すでに來年の一月一日から新法が施行されますことになれば、自然捜査の方法も変つて参りましようし、裁判の運営においても大きな違いが生じて参ります。そこで只今提案されておりまする改正刑事訴訟法の施行法案によりますると、檢事の公訴提起の今の事件はすべて旧法によることになつております。もしそれとするならば、追起訴の事件はどういうふうになるのか、先ずそれを伺いたい。
#21
○政府委員(岡咲恕一君) お答えいたします。新法施行後に追起訴が行われますと、基本の起訴と分離いたしまして、追起訴にかける事犯につきましては、新法で処理されることと考えております。
#22
○鬼丸義齊君 そういうことになりまする結果としては、同じ事件であり、同じ関連の事件であつて、一方は旧法により、他方は新法によるということになりますると、非常に不自然なる結果が生じて参ると思います。尚そこで新法、旧法によつて裁判所手続が違つて参りまする結果としては、同じ関連の事件でありながら、併合審理が第一できなくなる。又そうした場合に、旧法によるものは無罪となり、新法による方が有罪となるというようなこと、或いは又それと逆な場合も考えられます。こうした大きな不自然なることができて参りますることと、なぜその同じ事件であり、同じ関連を持つ事件であるものを、殊更それを新旧法の訴訟手続法の関係からして、二樣に分つて、刑法審理ができないというような不自然なことが起きますることは、如何にも非常に不公正なる、不自然なる結果になりまするので、この間の調節を如何に考えておられるか、又それでいいと政府の方では考えておるのでありますか、訴訟関係人は新法と旧法とによつて、一方は檢事の作成されたる資料によつて審理し、地方は全然そういうようなことなく、法廷中心でやるということになりますれば、申すまでもなく併合審理が絶対できなくなる。又今の追起訴の問題も、考えて見ますると、そんな無理をしてまでもならなければならん理由はどこにあるか、かように思うのであります。そこで公判がすでに開廷されておりまする事件の場合は、從來の扱いから言つて、先ず事件の捜査の方の事件というものは、殆んど一段落を告げておる事件が多い。現に係属しておりまする事件の中におきましても、すでに第一回の公判を開くというようなことになりますときには、一應檢事の捜査というものは追起訴されて、先ずこれで以て行くという見透しになつて初めて公判が進行しております。でありますから、私はやはり公判を一回開いた事件のみに限つて旧法を適用するといつた方が、そこの統一が取れてよいのじやないか、かように思うのですが、そういうような見地から、恐らく第三回國会の場合には、政府案というものが、やはり第一回公判開廷以後のものに限つて旧法を適用するというふうにされたのだと思います。更に又ここで私共非常に心配に堪えないと思いますことは、現に捜査の係属しておる事件で、未だ公判を請求するに足らざるいわゆる未熟の事件、この未熟途上にある、捜査途上にある事件がすでに公訴すべきものだというふうに、最後の結末を告げるまでに至らない事件でありましても、折角捜査を開始しておるというような関係から、先ず旧法によらしめるというような必要上、濫訴の虞れを私は心配する。かように考え來りますと、やはり第三回國会に出されましたふうに、第一回公判を開いた事件のみが旧法を適用するといつた方が、訴訟関係人の利害の上においても、又訴訟運営の上においても適当ではないかと、かように思います。政府の御意見を承わりたいと思います。
#23
○政府委員(岡咲恕一君) 公訴手続の時期によつて新法が適用され、或いは旧法が適用されるということになつておりますと、只今鬼丸委員の御指摘のような混乱が……混乱と申しますか、不利益な状態の生ずることはあり得ると考えまするが、成るべくそういう混乱或いは不利益なことが起きませんように、檢察当局といたしましては十分捜査を遂げ、そうして公正な公訴の手続を行わせるようなお取扱いをなされるであろうと確信いたしておりますが、檢務局の宮下課長が参つておりますので、その点については尚詳細御説明をお願いしたいと思います。
   〔委員長退席、理事岡部常君委員長席に著く〕
#24
○鬼丸義齊君 只今の御答弁はなつていない。私の伺いますことは、同じ事件であり、同じ関連の事件でありながら、一方は新法により、一方は旧法によるということになりまして、そのために事件が併合審理ができなくて、ここにおのおの別々に判決をしなければならんというような、不自然なことまで押切つてやらなければならん必要がどこにあるか、こう思います。
#25
○政府委員(岡咲恕一君) 言葉が少し足りませんで恐縮に存じますが、そういうことが起きませんように、言換れば追起訴を行わないで済みますように、事件の捜査を十分遂げまして、そうして起訴されるということになりますれば、旧法か新法か、どちらかが適用されることになりますから、成るべくそういうふうに檢察当局としてはお取計らいになるだろう、こう考えるのでありますけれども、万止むを得ないで起訴いたしておりまして、そうして更に捜査を遂げますると、関連の事件があるということで、今度追起訴いたしますと、その追起訴が新法施行後になりますと、取扱いが鬼丸委員の御指摘のように二つに分れまして、併合審理されるということが不可能になる、そういたしますと、例えば両方共有罪ということになると、別々に刑の言渡を受けて、被告人としては確かに不利益な状態に立至るということはあり得ると思います。併しそういうことは成るべく起きないように、言換えれば追起訴することがなくて済みますように十分搜査を遂げ、そうして成るべく一本の起訴で行かれるように、檢察当局は努力すると私共は確信いたしておりますけれども、その点につきましては檢務当局の責任ある答弁をいたしたいと思いますので、或いは今宮下課長が出席しておりますので、宮下課長の御説明でよろしければ説明をお許し願いたいと思います。或いは次の機会に檢務関係の政府委員に出席させて答弁いたしてもよいとも思います。
#26
○鬼丸義齊君 私はこの檢察当局の方で以て手加減のできるような問題ではないと思う。ということは、搜査が元了いたしますれば、逸早く起訴することは言うまでもありませんから、そういうふうな手加減によつてそういた不自然な結果ができる、できないというふうな問題でないと思うのです。苟くも誰が犯罪がありまする場合には、法律に付さなければならん。犯罪がある者を無闇にそれを抹殺することは、何人と雖もできない。でありまするから搜査の結果、犯罪があるならば、これは当然法の裁きを受けしめることは当然であると思いますから、そういうことは手加減によつてできることではない。例えば私が先程お尋ねいたしました今搜査中の事件が、まだ搜査完了しないけれども、折角搜査の資料を取つておるのであるから、今のうちに起訴して置かなければ、新法によつてやることになれば、その資料が殆んど徒労に帰するということによつて、未熟な事件を起訴するというような虞れがあるがごときは、これは手加減で私はできると思いますけれども、先程私のお尋ねいたしましたような新らしい事件が、新らしい新事実が現われまして、それはどうしても看過することのできない事件でありましたときには、これは手加減なんかではやつちやいけないことだと思います。その関係をこの過度的時代における刑事訴訟法施行法の立法に当つては、私はその点を深く心配いたすのであります。それに対して政府はどういう方法によつて、この間の不自然のあることを解決するかということの御方針なり、御意見を承わつて、審議を進めたいと思つております。只今の御意見のごとくに、現業の檢察廳の方の意見として、後に責任ある御答弁を頂きなすならばそれで結構であります。私の質問は、この点は非常に重要な点でありまするから、むしろそうした責任ある人の御答弁を伺うことがいいと思いますから、或いは資料提出後において重ねてお伺いしてもよろしうございます。どうぞよろしいようにお取計らい願います。
#27
○理事(岡部常君) 他に御質疑がございましたら……若しございませんようでしたら、次に刑事補償法の方に移りたいと思います。それでは刑事補償法を改正する法律案の逐條の御説明を煩わすことにいたします。
#28
○説明員(宮下順吉君) 刑事補償法を改正する法律案の提案の趣旨及び改正の主要な点につきましては、昨日政府委員から説明をいたしたわけでありまするので、私は逐條に亘りまして御説明申上げたいと思います。時間を省略いたしまして、直ちに逐條の説明に入りたいと思います。
 先ず第一條は、改正刑事補償法が予定いたしておりまする刑事補償の種類とその補償原因に関する規定であります。第一條の第一項は、未決の抑留又は拘禁による補償を規定いたしておりまして、その第二項は、刑の執行又は拘置による補償を規定いたしております。現行刑事補償定によりますると、未決の勾留についてのみ補償をしておつたのでありまするが、憲法第四十條によりますると、苟くも抑留、拘禁を受けた者が、後に無罪の裁判を受けた場合には、必ず補償をしなければならないという規定になつておりまするので、現行法のこの未決の勾留だけの補償ということにいたして置きますると、憲法違反の疑いもありまするために、刑事手続における未決のすべての抑留、拘禁について、後に無罪の判決がありまするならば補償をするということに改めたのであります。從いまして第一條の第一項によりますると、改正刑事訴訟法の百九十九條、二百十條、勾引、勾留、百六十七條の鑑定、留置、これらすべての刑事手続上における未決の抑留、拘禁を受けた者が、後に無罪の裁判を受けますると、補償の請求権を持つということになるわけでございます。第二項は現定法と変りございませんが、上訴権回復による上訴、再審、非常上告の手続におきまして、無罪の言渡しを受けた者が、原判決ですでに刑の執行を受けておる場合、或は死刑の言渡しを受けまして、死刑執行まで、刑法第十一條第二項の規定によりまして、拘置を受けておつた場合、これに対しましては刑の執行又は拘置による補償をするということにいたしたのであります。第三項によりますると、新刑事訴訟法の四百八十四條乃当四百八十八條におきまして、死刑、懲役、禁錮、拘留等の言渡しを受けました者が、拘禁されておらない場合、或いは逃走し又は逃走の虞れがある場合には、檢察官が收監状を発して拘留するのでありまするが、この拘留も刑の執行とみなすということにいたしました、尚新刑事訴訟法の四百八十一條におきまして、心神喪失者が刑の執行停行の言渡しを受けまして、病院等に留置されるまでの間監獄に留置されることがあるのでありまするが、この留置期間を刑の執行とみなしておりまするので、これも規定によりまして刑の執行とみなすということにいたしたのであります。この第一條によりまして刑事手続における抑留、拘禁のすべてが補償原因になるということに改正しようといたしておるのであります。
 次に、第二條に参りますが、第二條の規定によりますと、補償を受けるべき者が死亡した場合において、遺族に対する補償を規定いたしております。この建前は、現行刑事補償法と同じ立て方をいたしておりまして、改正刑事補償法におきましても、補償請求権を財産権とは考えておりません。言換えまするならば、相続の対象になる財産権とは考えておりません。公法上の一身專属権と考えております。從いまして補償を受けるべき本人が死亡した場合には、或いは法律の立て方といたしまして、その遺族にまで補償をする必要もないかも知れませんけれども、併しながら現行法においてすでに一定の範囲の遺族に対して補償をするということにいたしておりまするし、たとえ本人が死亡いたしましても、その本人の身近の者に尚且つ補償をしてやるということが、公平の観念から申しまして妥当でありますので、現行法を踏襲いたしまして、本人が死亡した場合には遺族に補償をするという建前を踏襲したわけであります。第二條について特に改正法案に挿入いたしました規定は、第三項の規定でありまするが、この規定は、現行法にない規定を特に挿入いたしましたが、この規定の意味は、遺族に対する補償の額を定めまする場合には、その本人を目標にいたしまして額を考えなさいという條文でございます。後に御説明いたしまするように、第五條第二項におきまして、補償の金額を定める際に裁判所が考慮すべき事項を細かく規定いたしておりまするが、これは本人を中心にいたしまして考慮されるべきいろいろな事項でありまするが、この遺族に対する補償におきましても、やはり裁判所が考慮する事項は、本人を中心にして考えて、本人が受けるべきであつた額、又は本人が生前無罪の言渡を受けたならば、受けるべきであつた額を遺族に対して補償せよという建前を取つたのであります。
 第三條は、遺族の範囲及び補償を受けるべき遺族の順位に関する規定でありまするが、この法律が予定いたしておりまする遺族の範囲は、現行法と同様、本人の配偶者、子、孫、父母及び祖父母といたしました。民法の改正によりまして、配偶者が前の夫と死別いたしましても、前の夫の姻族との姻族関係は消減しない、後に他の男と婚姻いたしましても、前の姻族との姻族関係は消減しないということになつておるのでありまするが、第三條第一項但書にありまするように、若しも本人と死別いたしました配偶者が再婚した場合におきましては、すでに本人を忘れて、本人との関係が非常に薄くなつておる事情がございまするので、再婚した配偶者はこの姻族の範囲から除外するという但書を設けたわけでございます。第三條の第二項において姻族の順位を規定いたしまして、子、孫、父母及び祖父母の順序にいたしました。現行法においては父母、祖父母について実方と養方を区別いたしまして、養方を先にし、実方を後にしておつたのでありまするが、この考え方は、やはり家に絡まる、言換えますならば、家督相続的な考え方に基いていたものと思いまするので、実方、養方の区別を設けないことにいたしました。從いまして、本人に養父母と実父母がある場合には、養父母、実父母共に同一順位として補償訴求権を取得することになるわけであります。次に第三項は、改正民法八百九十條の精神に從いまして、遺族たる配偶者は常に補償を受けるべき遺族となる。この場合において、他に補償を受けるべき遺族がある場合には、配偶者は常にその者と同順位とするという建前を取りました。これは新民法八百九十條と全く同じ精神に出ておるのであります。第四項におきましては、從來の補償法によりますると、補償を受けるべき遺族の順位を、家督相続の規定を準用して順次遺族の順位を定めておつたのでありまするが、民法の改正によりまして、家督相続がなくなりましたので、改正案におきましては、同順位の遺族が数人ある場合におきましては、その同順位者が同順位に立つて補償の請求権を取得する、而もその割合は民法九百條の例によるという建前を取つたのであります。民法九百條によりますると、直系卑属と配偶者がありまする場合には、直系卑属の受ける補償の割合は三分の二で、配偶者が三分の一、配偶者と直系尊属が補償を受けるべき遺族でありまする場合には、おのおの二分の一ずつ、この九百條の第一項、第二項に準じまして、この同順位の遺族が数人ある場合の相互の間の割合を定めることにいたしたのであります。
 次に第四條は、現行法の第四條の規定を著しく改めた規定でありまするが、昨日も提案理由の説明において説明がありましたように、新憲法の四十條によりますると、抑留、拘禁を受けた者が後に無罪の判決を受けますると、むしろ憲法としては必ず補償をしなければならないということを要求しておると考えるのでありまするが、現行刑事補償法の第四條によりますると、心身喪失、聾唖者、刑事未成年等の事由によりまして無罪になつた場合には補償をしない。起訴された事実が著しく善良の風俗、公の秩序に反する行爲でありまするならば、無罪になつても補償をしない。大人の故意過失によりまして起決されたり、決留されたり、或いは有罪判決を受けた場合には補償をしないという建前になつておりまして、從來の実際の運用といたしましては、若しも本人が司法警察官、檢事等に対して自白をしておつた場合には殆んど補償をされないということになつておつたのであります。この規定がありましたために、実際の運用においては殆んど補償が阻まれておつた。この点を十分考えまして、改正案の第四條におきましては、特に第一号と第二号の場合だけに補償の相対的な不成立條件を定めようということにいたしたのであります。第一号は、本人が殊更に或る意図を以ちまして特に虚僞の証拠を作りまして、檢察官をして起訴させた、或いは勾留をさせた、或いは裁判官をして有罪の判決をさせるに至つたという場合には、補償の一部、又は全部をしないことができるということにいたしました。第一号が考えておりまする場合は、例えば子分が親分の罪を庇うために、親分がいたしました殺人を、実は自分がやつたのであると、殊更に虚僞の自白をする、或いはその子分が同僚の仲間の子分に対して、若しも搜査官に調べられたならば、子分の何某が殺した罪であるというふうに言つて呉れという証拠を作爲して自首するというような場合において、尚且つ補償するというのは公平の観念に合致いたしませんので、この場合は補償の一部又は全部をしないことができるということにいたしたのであります。第二号の、一個の裁判によつて併合罪の一部について無罪の言渡を受けても、他の部分について有罪の言渡がありました場合には、補償の一部又は全部をしないことができるというこの規定は、現行法にもある規定でありまして、例えば被告人が窃盗と詐欺で起訴されまして、窃盗は無罪になつたが、詐欺の方は有罪という場合におきましては、補償の一部又は全部をしないことができるということにいたしたのであります。このように改正案の第四條は、非常に補償不成立條件を狹くいたしまして、而もこれを絶対的な不成立條件とはしないで、裁判所の健全な裁量によつて、相対的な補償が成立たない場合があるということに直したのであります。
 次に第五條は、補償金額算定に関しまする規定でありまして、現行法の第五條に相当する規定であります。第五條第一項は、未決の抑留又は拘禁による補償、懲役、禁錮又は拘留の執行、拘置による補償の金額の算定に関する規定でありまするが、これは現行法が一日五円以内となつておりましたのを、一日最低二百円、最高四百円ということに定めたのであります。この金額を算出いたしまするにつきましては、現在の物價指数などもいろいろ研究いたしまして、現行法の最高八十倍、最低四十倍という金額を定めたわけであります。裁判所といたしましては、この二百円乃当四百円の範囲において、第五條第二項の、諸般の事情を考慮いたしまして、適当の金額を定めるということになるわけでございます。第五條の第二項におきましては、特にこの第一項の補償金額を算定するについて、裁判所が考慮しなければならない事項を詳細に規定いたしまして、現行刑事補償法におきましては、補償の本質を恩惠的な慰藉という考え方を取りまして、本來國家には過失はないけれども、國家の恩惠として、國家の仁政として、このような補償をするのであるという考え方を取つておつたのでありまするが、すでに憲法第四十條において補償請求権が定められておりまする以上、單なる恩惠的慰藉という考え方で参りますることは、如何なものかというところから、補償金額を定めるにつきましては、十分に本人の損害というものを考慮いたしまして、その損害を社会的公平観念から、できるだけ補填しようという考え方を取つたのであります。單なる恩惠とか、慰藉という考え方から一歩進めまして、損害の補填という考え方が強くなつております。從いまして五條の第二項においては、ここに規定されておりまするような、裁判所が損害賠償において考慮すべきいろいろな事項と殆んど同じような事項を考慮に入れて、この補償金額を決定するという規定を設けたのであります。第五條の第三項は、死刑の執行を受けた者の遺族に対する附加的補償についての規定でありまするが、この規定は現行法第五條第二項においては、裁判所が相当と認める金額ということになつておりましたのを、第三項に規定いたしまするように、「一万円以内で裁判所の相当と認める金額の附加的補償をしなければならない。」ということにいたしました。この一万円以内の附加的補償は、本人が死刑の執行を受けまして、その前に抑留、拘禁等を受けておりまするならば、この抑留、拘禁による補償は勿論別に遺族が請求できまするし、これ以外に本人に、或る意味の慰藉料的なものといたしまして、一万円以内の附加的補償をするという建前を取つたのであります。併しながら但書にございまするように、若しもこの遺族が本人の死亡によりまして、現実に或る財産上の損失を受けておるということを証明した場合には、この損失額を一万円に加えました金額の範録内で、裁判所が相当に認める附加的補償を定めるということにいたしたのであります。第五條第四項は、第三項の附加補償の額を定める場合に、裁判所が考慮すべき各種の事項を規定いたしたのであります。これによりまして、できる限り刑事補償においては損害賠償ではないけれども、損害を社会的公平の観念から十分に補填してやるという考え方を強めたわけであります。第五項は、現行法第五條第項に対應する規定でありまするが、罰金又は科料の執行による補償金額についての規定であります。現行法においては、その徴收いたしまして罰金、科料金額を返すだけでありましたが、改正案におきましては年五分の利息を附けるという建前を取つたのであります。民法四百四條によりまして、利息の定めがない場合に年五分という規定がございまするので、この場合においても、年五分の利息を附けるということにいたしました。これも刑事補償を、損害を補填するという考え方を取りました必然の結論でございます。第六項は、現行法第五條第五項に対應する規定でありまするが、現行法によりますると、若しくも沒收物が残つておりまする場合には、その沒收物を返し、破壊又は処分しておりまする場合には、これによつて得た金額を返すというだけであつたのでありまするが、改正案におきましては、若しも沒收が残つておりますれば沒收物を返しまするし、処分、破壊、廃棄いたしました場合においては、現在そのものを新たに取得するに要する金額を補償する。若しも追徴でありまするならば、徴收した追徴金に年五分の利息を加算してこれを補償するという建前を取りました。
 第六條は、現行法六條に相当する規定でありまして、「補償の請求は、無罪の言渡をした裁判所に対してしなければならない。」ということにいたしました。而して現行法においては、この補償の請求についての手続的規定がなされておつたのでありまするが、改正案においては、これらの手続的規定は、裁判所の規則によつて定められるということを予定いたしまして、他の部分におけると同様、手続的な規定は本法の中から除いてございます。
 第七條は、現行法の九條に相当する規定でありまして、補償の請求は無罪の参判が確定した日から六十日以内にこれをするという建前を取りました。これは現行法の考え方をそのまま踏襲したわけであります。第二項は、現行法の第六條第三項に相当する規定でありまするが、補償を受けるべき者が一旦請求をした後に死亡いたしましたり、或いは遺族たる身分を失つた場合、例えば養子が離縁になつたというような場合において、他に配偶者以外の同順位の遺族がない場合におきましては、請求をした者が死亡し、又は遺族たる身分を失つた日から六十日以内に、改めて補償の請求をするという建前を取りました。現行法においては、かかる場合においては、前の請求が当然に次順位の者から請求したものとみなされておつたのでありまするが、改正案によりますると、遺族の補償請求は、多くの場合同順位者が多数おりまするので、若しも次順位の者から請求したものとみなすということにいたしますると、必然的に共同訴訟的な形になりまして、手続が非常に複雑になりますることを考慮いたしまして、改めて六十日以内にその請求をするということにいたしたのであります。
 第八條は、改正案が、遺族の受けるべき割合を民法九百條を準用いたしました関係上、遺族が数人ある場合には、その一人がいたしました補償の請求は、全員のためにその全部についてされたものとみなすという規定を設けまして、例えば数人の同順位の遺族がありまする場合に、その一人が補償の請求をいたしますると、それは他の全員のためにしたものであり、而もその全額についてしたものであるということにいたしまして、裁判所といたしましては、その請求に対して全額の決定をする、それは同順位の遺族全員に対してその決定をしたものということになるわけでございます。
 第九條は、現行法の七條に相当する規定でありまするが、現行法の七條におきましては、その第一項において、補償の請求は先順位者の明示した意思に反することができないという規定があつたのでありまするが、これを削除いたします。現行法においては、例えば本人が補償は要らないと言つて請求をしないで死亡した場合、或いは補償は要らないということを明示した場合には、次順位者が請求ができなかつたのでありまするが、補償請求求権というものは、それぞれ一身専属の権利であつて、別個に遺族に発生するということを考えて参りますると、或いは本人自身が請求しないという考えでありましても、遺族は請求をしたいということもあろうかということを考慮いたしまして、この七條第一項の規定を削除いたしました。
 第十條は、現行法の八條に対應する規定でありまして、補償の請求を代理人によつてもこれをすることができるということにいたしたのであります。
 第十一條は、現行法の十條に相当する規定でありまして、補償の請求があつた場合におきまする裁判所の手続について規定いたしたのであります。
 現行法においては檢察官の意見だけを聴けばよかつたのでありまするが、改正案においては、檢察官だけではなくして、請求人の意見も聴かなければならないということに改めてございます。
 第十二條は、刑事補償と國家賠償との調整を図つた規定でありまするが、刑事補償はその行爲をいたしました者に故意過失があろうがなかろうが、故意過失の有無を問わず刑事補償をいたすのでありまするが、國家賠償は損害賠償でありまするので、不法行爲によつて國家が損害賠償をするということになつております。で、或る場合におきましては、同一の原因によつて國家賠償も刑事補償も双方請求し得る場合があるのでありまするが、この両者の関係を第十二條のような形で調整を取つたのであります。若しも同一の原因について本人が國家賠償法に基いて損害賠償をすでに受けておりまする場合においては、刑事補償の金額を定める場合にこれを考慮せよということを規定したのであります。若しも國家賠償法によつて受けた損害賠償の額が、この法律によつて受けるべき補償の額にひとしいか、或いはこれを越えておる場合におきましても、やはり刑事補償はする、併しながらその金額は百円以内の各目上の補償をするという建前を取つたのであります。或いは考え方によりましては、このような場合においては請求を棄却いたしまして、刑事補償をしなくてもよいという考え方も取れようかと思いまするが、やはり刑事補償は結果においては不当な手続があつたのでありまするから、そのような場合には、たとえ名目上の金額でありましても補償を給しまして、刑事補償の請求を成立させてやらなければならないという考え方から、その名目上の補償という制度を設けたのであります。
 第十三條は、補償を受けるべき同順位の遺族が数人ある場合に、その一人が補償請求をいたしまして、その一人に対して補償決定或いは補償の請求を棄却する本案の決定をいたした場合には、その同順位者全員に対して決定があつたものとみなすという規定を設けまして、この立案を図つたのであります。
 第十四條は、現行法の十一條に相当する規定でありまして、補償の決定或いは補償の請求を棄却する決定に対しては、即時抗告ができるという建前を取りまして、刑事訴訟法におきましては、この決定をした裁判所が高等裁判所である場合に、特別異議という制度が設けられてありまするので、これに対應いたしまして、この場合の即時抗告も、若しも決定をした裁判所が高等裁判所でありまする場合には、その高等裁判所に異議の申立をするということにいたしました。
 第十五條は、現行法の十二條に相当する規定でありまして、補償の決定があつた後に、この決定によつて補償を受けるべき者が拂渡を受けないで死亡いたしましたり、或いは遺族たる身分を失つた場合に、他に配偶者以外の同順位の補償を受けるべき者がない場合には、次順位者に対して決定をしたものとみなすという規定を設けまして、その次順位者が前の決定に基いて拂渡の請求ができるということにいたしたのであります。
 第十六條は、補償の拂渡を受けるべき者が数人ある場合に対應する規定でありまするが、この場合においては、その一人に対して補償の拂渡をいたしますると、その同順位者全員に対して拂渡をしたということにみなすという規定を設けたのであります。從いましてこの場合には一人に対して補償全額を拂う、後は内部的に同順位の遺族の者がこの規定によつて分けて貰うという考え方を取つたのであります。
 第十八條は、現行法の十四條に相当する規定でありまして、すでに確定いたしました補償の拂渡の請求権でありましても護渡はできない。一身専属権であるということを明らかにいたしてあるのであります。
 第十九條は、現行法の十八條に相当する規定でありまして、この刑事補償法に基きまする決定、即時抗幸、異議、これらについて刑事訴訟法を準用する、從いましてこの手続は民事訴訟法ではなくして、刑事訴訟法に準じて運ばれるわけであります。これは或いは民事訴訟法を準用するということも考えられるのでありまするが、事柄が、刑事裁判所において刑事の判決を受け、それに関連いたしまして刑事補償の請求があるのでありまするから、やはり刑事訴訟法を準用するのが妥当ではないかというところから、現行法の主義をそのまま踏襲いたしました。
 第二十條は、現行法十九條に相当する規定でありまするが、現行法の建前を改めまして、官報だけでなくて、新聞紙にも無罪の裁判の主文及び要旨、補償をしたということを掲載することに改めまして、本人の保護を図つたのであります。
 次に、附則について極く簡單にこの建前を申上げますると、勿論この改正刑事補償法は、改正刑事訴訟法施行の日でありまする明年の一月一日から施行するということを予定いたしております。第二項は、この改正刑事補償法施行前に生じました事項、例えば現在の刑事訴訟法に基いて、すでに裁判所に対して刑事補償の請求がなされております等の補償においては、これはこの改正法によつてその効果をそのまま認める、改正法に基いてもそのまま手続きを進行するという意味において、附則の第二項の規定が設けられたのでございます。附則の第三項は、本來ならばこの改正刑事補償法は、日本國憲法施行の日と同時に改正されておらなければならなかつたのが、刑事訴訟法の改正が遅れた等の理由によりまして、今日までその改正がなされておらなかつた。その関係におきまして憲法施行から今日までの間は、一般にこの刑事補償を受けるべきものが、憲法上本來請求できるものをできなかつた。この間の調節を取る意味におきまして、日本國憲法施行後この法律が施行されるまでに、無罪の言渡を受けた者に関わる補償につきましては、すでに前に補償を受けておりましても、或いは補償を受けなかつた場合でありましても、この法律施行後六十日以内に改めて補償の請求をすることができる。もう一回補償の請求をしてもよい。前に補償の請求をしなかつたものでありましても、或いは前には、現行法の第四條で阻却されるようなものでありましても、この新法の規定によりまして補償をしてやろうという建前を取つたのであります。從いましてこの場合においては、勿論新法の規定によりまして、金額等も新法の抑留、拘禁の補償でありまするならば、二百円乃至四百円の補償金が改めて貰えるわけであります。次に附則の第五項の規定でありますが、これは解釈規定でありまして、前三項の規定の適用について旧刑事訴訟法の規定による例えば勾留とか、その他の事項はこの新刑事訴訟法に、これに相当する規定がある場合には、刑事補償法の適用については新刑事訴訟法の規定による勾留とみなすという解釈規定をおきまして、その疑問を避けようといたしたのであります。
 簡單でございましたが、逐條の御説明はこれで終りたいと思います。
#29
○理事(岡部常君) この質疑は後にしたいと思います。
 それでは次に、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案及び檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案の提案の理由を御説明願います。
#30
○政府委員(岡咲恕一君) 只今議題となりました裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案及び檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案の提案理由を便宜一括して御説明申上げます。
 裁判官及び檢察官の給與につきましては、先に第二國会において、一般政府職員に関する職員総平均の月收二千九百二十円を基準とする政府職員の俸給等に関する法律、昭和二十三年法律第十二号及び政府職員の新給與実施に関する法律、昭和二十三年法律第四十六号並びに内閣総理大臣、その他のいわゆる認定官に関する内閣総理大臣等の俸給等に関する法律、昭和二十三年法律第五十五号が制定せられたのに対應いたしまして、各位の御盡力により裁判官の報酬等に関する法律、昭和二十三年法律第七十三号及び檢察官の俸給等に関する法律、昭和二十三年法律第七十六号が制政せられ、その後内閣総理大臣等の認証官を除く一般政府職員について、職員総平均の月收三千七百九十一円を基準とする昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律、昭和二十三年法律第九十五号が制定せられましたのに伴いまして、認証官たる最高裁判所の裁判官及び高等裁判所長官を除くその他の裁判官につきまして、昭和二十三年六月以降の判事等に関する報酬等に関する法律、昭和二十三年法律第九十六号、又認証官たる檢事総長、次長檢事及び檢事長を除くその他の檢察官につきましては、昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律、昭和二十三年法律第九十七号が提案制定されたことは御承知の通りであります。然るにその後物價は依然として高騰を続け、一般勤労者は長期に亘る耐乏生活のために全く困窮し、特に政府職員の給與は一般勤労者の給與に比し、甚だしく均衝を失するに至りましたので、政府はこの際更に政府職員の給與を増額して支給することを必要と認め、数日前國会に、昭和二十三年十一月以降の政府職員の俸給等に関する法律案を提出して御審議を仰いでおり、又内閣総理大臣等の認証官その他のいわゆる特別職につきましては、特別職の職員の俸給等に関する法律案を別途提出することになつておりまするが、この前の方の法律案は、一般政府職員の総平均の月收五千三百三十円を基準としたもので、その俸給月額は昭和二十三年六月以降の政府職員の俸給等に関する法律案の別表に掲げる俸給月額に対しまして十三割二分、又政府職員の新給與実施に関する法律に定める別表の俸給月額に対しましては、平均十七割二分の割合になつており、又後の方の法案は内閣総理大臣等の認証官の俸給月額を、内閣総理大臣等の俸給等に関する法律案に定める俸給月額の十六割といたしておりますので、裁判官及び檢察官につきましてもこれに倣い、その報酬又は俸給月額を増額することを必要と認めて、ここにこの法案を提出いたした次第であります。
 第一條は、裁判官又は檢察官の報酬又は俸給月額を裁判官の報酬等に関する法律及び檢察官の俸給等に関する法律の別表に定める報酬又は俸給月額に比し、それぞれ認証官たる者につきましては十六割、その他の者につきましては約十七割に相当する金額に増額するよう別表を定め、又從前檢察官の俸給等に関する法律第九條の規定により、檢事について特別に者に限り認められておりました俸給月額も同様増額すると共に、新たに簡單裁判所判事及び副檢事についても特にその地位に老練且つ優秀なる人材を得る必要上、特別の者に限り別表に掲げる月額以上の報酬又は俸給月額を支給し得られることを定め、第二條は認証官たる裁判官、又は檢察官については昭和二十三年六月一日から同年十月三十一日までの間の報酬又は俸給月額は、その他の裁判官及び檢察官のごとく増額せられていなかつたので、これを同様この法律により、改正後の裁判官の報酬等に関する法律及び檢察官等の俸給等に関する法律の別表に定める額の十六分の十三に相当する金額に増額することを定め、尚又附則はこの法律の施行及び適用の期日その他の経過規定を定めると共に、この法案の性質により、その存在理由を失うべき昭和二十三年六月以降の判事等の俸給等に関する法律及び昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律を廃止することを定めておるのであります。
 以上簡單にこの法案について御説明いたしました。何とぞ愼重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。
#31
○理事(岡部常君) この法案につきましても質疑は後に讓りたいと思います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○理事(岡部常君) 明日は裁判所法の一部を改正する等の法律案、刑事訴訟法施行法案の両法を上げたいと存じます。これは本会議を並行しても急いでやりたいと思いますから、さよう御承知を願います。本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十五分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
           岡部  常君
           宮城タマヨ君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
          大野木秀次郎君
           鈴木 安孝君
           岩木 哲夫君
           深川タマヱ君
           來馬 琢道君
           松村眞一郎君
  政府委員
   法務廳事務官
   (調査意見第一
    局長)    岡咲 恕一君
  説明員
   最高裁判所事務
   局総務部第一課
   長       小川 善吉君
   法務廳事務官
   (檢察局刑事課
   長)      宮下 順吉君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト