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#1
第004回国会 法務委員会 第6号
昭和二十三年十二月十二日(日曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○刑事補償法を改正する法律案(内閣
 送付)
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付)
○檢察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付)
○罰金等臨時措置法案(内閣送付)
○司法警察職員等指定應急措置法の一
 部を改正する法律案(内閣送付)
○少年法を改正する法律等の一部を改
 正する法律案(内閣送付)
○裁判所職員の定員に関する法律の一
 部を改正する法律案(内閣送付)
  ―――――――――――――
   午後一時二十四分開会
#2
○委員長(伊藤修君) それではこれより法務委員会を開会いたします。当委員会に予備審査のために付託せられておりますところの刑事補償法を改正する法律案、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案、檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案、罰金等臨時措置法案、司法警察職員等指定應急措置法の一部を改正する法律案、少年法を改正する法律等の一部を改正する法律案を議題に供します。昨日に引続き質疑を継続します。
#3
○鬼丸義齊君 罰金等臨時措置法におきます法案について政府の御所見を伺いたいと思います。大体罰金増額に対する改正の趣旨というものは、もとよりそれぞれの根拠に基いてこの案ができ上つたものと思いますが、この際趣旨としては第三條に掲げたる罰金額の五十倍相当になりましたについての増額の基礎となるべき根拠、どういう趣旨からこういう標準によつてこういうことになつたかということについての理由をこの際承わりたいと思います。尚その他の罰金増額に対しましても増額の根拠を一つ詳しく承わりたいと思います。
#4
○政府委員(高橋一郎君) 鬼丸委員の御質問に対してお答えいたします。今回の罰金等臨時措置法案において、それぞれの條項におきまして金額をこの程度に増額いたしました理由について申上げます。第一は、罰金の引上率を五十倍にいたした理由であります。物價の点から申しますと、東京卸賣物價総平均指数は、明治四十年の、即ち刑法制定時でありますが、卸賣物價総平均指数が一二九・三という数字が出ております。これに対しまして昭和二十三年は、これは九月の数字でありますが、二一二四二・九という数字になつております。これを対比いたしますというと、昭和二十三年は明治四十年の百六十倍になつております。以上が東京卸賣物價総平均指数でありまして、次に東京小賣物價総平均指数に至りましては、大正三年の数字に比べまして、昭和二十三年におきましては二百六十倍になつております。一方國民所得一人当りは、昭和二十二年は明治四十年の三百四十倍になつております。こういう点から見ますというと、五十倍では尚不十分のように見えるのでありますが、大体罰金の額はこれを課せられる者に対する苦痛の面に常に着眼して定むべきものでありますから、今日のごとく、以前に比して各人の生活に余裕のない時代には、必ずしも右の各指数と同程度に引上げる必要はないと考えております。それならばどの程度の引上げが相当かということにつきましては、数字的にこうだというような根拠を生み出すことが勿論困難なのでありますが、賃金と生活費とを比較いたしましたいわゆる実質賃金の指数表によれば、昭和二十三年の実質資金指数は、昭和十二年を一〇〇といたしまして、むしろ二十八に減少しておるというような点をも考慮いたしまして、結局刑法などにつきましては、五十倍が相当であろうと考えた次第であります。これが全体の引上率を五十倍とした理由でありますが、後の各條項におきまして、必ずしも五十倍によつておりません場所があります。その主なるものにつきまして御説明いたしますと、第一に六條の、刑法第二十五條のいわゆる執行猶予を言渡し得る限度でありますが、これは罰金の方を五十倍に上げながら、執行猶予の限度を実は十倍に止めておるのであります。これはちよつと御説明を要するのでありますが、今回の措置はここにありますように、刑法外二法律の罰金の引上げしか行なつておりません。從つてその他の法令におきましては、價額の方は引上つておりますけれども、全体としては引上げをしておらないのであります。でありますから今回の臨時措置を行なつた点から見まするというと、罰金に関しましては全刑罰法規の体系の中で、刑法その他三法律が占める金額から見ました地位が非常に高いものになつております。即ち刑法の罰法といたしましては今回多額、二十五万円というのが幾つかできるのでありますが、他の法令におきましては最近の立法例によりましても、むしろこれよりも低く、これ以上の多額のものは却て極めて少い状況にあるのであります。そうでありますから、若し執行猶予の限度を五十倍の二十五万円というようにいたしまするというと、他の法令で從來執行猶予に付することができなかつたものまで、大部分が執行猶予ができるように相成るのであります。これは或る限度以下の罰金についてだけ執行猶予を許すという、從來の建前を実質上非常に変更することに相成るのでありまして、このような点をいろいろ勘案いたしまして、今日は從來の程度が相当ではないかというふうに考えた次第であります。次の七條におきましては、いわゆる勾留、逮捕或いは現行犯手続のなし得る限度に関する問題でありますが、これは從來の実質に変更を加えないという意味で、前に掲げました今回五十倍に引上げます法令の違反につきまして五百円を二万五千円、やはり五十倍に引上げております。その他の罪即ち今回格別の措置をしないものにつきましては、從來通りといたしますというと、五百円以下ということになりまして、それらは從來勾留、逮捕或いは現行犯手続のできたものは、すべて從來の五百円以下の罰金というものが、今回の罰金の價額の引上げによりまして二千円以下ということになつたのでありますから、それに伴いましてその他の罪につきましては、二千円以下の罰金といたしたのでありまして、これによつて実質は從來と変更しないわけであります。次に第七條第二項のいわゆる欠席裁判をなし得る場合の規定でありますが、これもやはり五千円が五万円になつております。これは五千円を五十倍の二十五万円以下の罰金としてはどうかという御議論もあると思うのでありますが、実はこの規定の適用を受けますのは刑法の賭博罪でありまして、現在罰金千円以下ということになつておりますから、これを五十倍いたしますというと、結局五万円ということに相成るのであります。でありますから法令の形式は十倍のようでありますが、実質的に見ますというと、これは五十倍といつても言えるのではないかというふうに考えておるのであります。それから第七條第三項の、いわゆる略式命令をなし得る限度でありますけれども、これがやはり執行猶予の場合と同じように一律に十倍になつております。これにつきましては、大体第六條の執行猶予をなし得る場合の金額の引上げと同じような考え方で十倍といたしておるのでありますが、これに対しましては、第七條第一項のような、今回引上げまする法令については五十倍にし、他のものについては從來通りというような定め方をする方が合理的ではないかという御議論も出るかと思います。ただ執行猶予の場合、或いは略式命令をなします場合は、結局問題となりますのは、法定刑ではなくて処断刑でありまして、從つて併合罪などにおきまして、いろいろな罪について一つの刑を言渡すという場合が生ずるのでありますから、これを第七條第一項のような定め方をいたしまするというと、非常に難解な問題を生ずるということに相成るので、これは六條と同じ趣旨によりまして、一括して十倍ということにいたしたのであります。最後に、第七條第四項のいわゆる未決勾留日数の法定通算の場合の換算率でありますが、これは今回の罰金の引上げという措置と直接数字的な関連はございません。ただ今日の物價の事情に照しまして、從來の金額は著るしく低きに失しますので、それらの点を考慮いたしまして、引上げを行なつ次第であります。以上で引上げの考え方について一應の御説明を終ります。
#5
○鬼丸義齊君 只今の説明の中で、罰金刑の執行猶予の規定を作られたる趣旨というのが、私は今はつきりしなかつたのですが、罰金刑の執行猶予の規定を作つた趣旨というのをもう一度重ねて……。
#6
○政府委員(高橋一郎君) 第六條でございますか。
#7
○鬼丸義齊君 いいえ、從來の罰金刑に対して、刑の執行猶予の趣旨に從つてという御説明がありましたが、從來ありました罰金刑の制度を布いたことの説明が、只今あなたの説明で私十分理解ができませんから、從來この罰金刑の執行猶予を作るに至つた趣旨というのは、どういうふうに政府の方ではお考えになつておられるのか。
#8
○政府委員(高橋一郎君) 罰金の執行猶予をなし得る場合につきましては、これは自由刑の場合にも通ずる考え方であろうと思いますが、やはり執行を猶予し得る場合は、或る程度情状から言つて軽い場合であるというふうに考えて、從つて刑を科し得る場合の全部或いは殆んど全部というような廣い場合をすべて執行猶予を付し得るというふうにいたしませんで、比較的刑の軽い限度におきまして執行猶予を付し得る。或る程度以上になれば、情状酌量はなし得ても、執行猶予まではできないというふうに考えて作られておるものと考えるのであります。即ち自由刑におきまして、二年より今回の三年以下というようなふうに、重い四年、五年或いはそれ以上の犯罪につきましては、これを執行猶予に付し得ないというふうに相成つております。それから從來の罰金につきまして、五千円以下となつておりますが、当時は五千円以上の罰金というものが非常に沢山ございまして、そのうちで五千円以下の罰金に限つて執行猶予に付し得ると、こういうふうになつておつたのであります。それを今回仮りに二十五万円以下の罰金について執行猶予に付し得るというようなふうに相成りまするというと、実際問題として、他の例えば経済違反なんかの罰金額が引き上げられておりませんですから、そういうものが殆んど大部分執行猶予を付し得ると、こういう結果に相成ります。結果において非常に建前が違つて参るように考えておるのであります。
#9
○鬼丸義齊君 刑罰法令は、ひとり本法に掲げてありますばかりでなく、むしろ刑罰法令中のほんのこれは一部に対しまする罰金の増額ということになると思いますが、只今東京の卸賣或いは小賣等の物価変動によりまする指数のお示しがあつて、それにこれをやはり勘案されての増加率を決めるという御説明でありましたが、併しこれは明治四十年の旧法制定当時の刑法中における罰則につきましての説明としては、或いはそれで当ると思いまするけれども、例えばこの法案第三條中にありまするのは、刑法ばかりでなく、その他昭和十九年の経済関係罰則の整備に関する法律とか、或いは大正十五年の暴力行爲等処罰に関する法律とかというのがございます。これはそれぞれ時期的におきまして大変な相違のありますことは分つておりまするが、何故に、多数ありまする罰金刑の定められたる刑罰法規のうちで、本法だけのもののみに限つて増額したかという理由が、私共には十分理解し難いのであります。そこで経済変動によりまする結果として、当然罰金の一般的刑罰法規の増額を余儀なくされておりますることは、もう言うまでもございません。しばしば刑法の一部改正の法律案等の時代におきましても、当委員会におきましては議論があつたのでありまするが、併しそれにいたしましては、これは余りにも私は杜撰に過ぎるのじやないか。これ程切実に増額の必要があるとするならば、ここに示されましたる罰則規定のみならず、一般にすべての罰金増額というものは、その必要上におきまして区別する理由はないのじやないか、かように思いまするが、何故一体ここに示されたるもののみに限つて、増額を一つの法律案として出されるに至つたかということを伺いたいのです。
#10
○政府委員(高橋一郎君) 本当は、お説のようにすべての刑罰法令について引上を行うべきでありますが、時日の余裕がなく、今回は、この程度に止めたのであります。何故にこの三法律を選び出したかということでありますが、これらはいずれも制定時期が極めて古いか、或いは制定時期は比変的新らしいものでありましても、刑法と密接な関係がありまして、刑法との均衡を考えたために罰金額が著しく低いと思われるもので、他方その適用が非常に廣いものでありまして、そういう点を考えまして、今回のような処置を取つた次第であります。
#11
○鬼丸義齊君 この法律の制定によりまして、從來ありまする刑罰規定というものに対して著しき大きな凹凸ができて、不均衡なことになるのじやないか、例えは経済関係の刑罰法規も多数ございまするが、この経済関係罰則の整備に関する法律だけに限つて、ここで五十倍というような突飛な増額をいたしますことになれば、これより更に重い経済関係の法規も沢山ございます。そういたしまするというと、今度本末顛倒してしまつて、この法規制定によつて却つて非常な凹凸ができて不均衡になりやしないか、すでに從來の経済関係法規というものが凹凸を來しておつて、甚だ均衡を欠いているということから経済関係罰則の整備に関する法律案ができたのでありますが、これ自体からぶち壊しになるのじやないか、或いは時間的に取敢えずこの種のもののみに限つて増額をするという今の御説明でありましたが、すでに物價の著しい変動のありましたることは、これはもう相当の日時を経て來ております。他の刑罰法規の改正等もそれぞれ整備せられたのでありまするが、それにいたしましては、余りにもこの罰金刑の増額という画期的の大改正をいたしますについての、私は用意が甚だ不用意なことではなかろうか、又不準備なことでなかろうかと思います。私はもう少しやはり眞劍に檢討されまして、そうした法規の均衡を得たる妥当性のある改正をなさなければならんのじやないかと思います。政府の方における準備としてはこれ以上進んだる準備はないのでありますか、或いは又この法案を提案するときに当つて、全体の刑罰法規に対する、殊に罰金刑に関する法規、これを一律に、少くともその大部分というものを一律に増額するというような案の立て方は、急速にはできないものであるかどうかということを承わりたいと思います。尚第二にお尋ねしたいと思いますることは、換刑処分の、刑法の第十八條でありまするか、ここで五十倍にいたしますると、まあ最高額が二十五万円まで上せられることになるのでありましようが、そこで刑法十八條によりますれば、換刑処分の場合においては二年以下の範囲において、それ以上には上ることはできない、或いは科料の併科というような場合に、三年まで上すことができるといたしましても、ともかく一方においては、この法定通算の場合に從來二十円でありましたものが今度は二百円になつております。そこで法定通算の落合においては十倍の計算になつておりまするに拘わらず、換刑処分の場合においては、刑法の十八條を改正せざるがために、甚だここに不均衡なことになるのであります。法定通算を二百円と定めなたならば、換刑処分もやはり價値におきましては、少くとも当らずとも遠からざる程度に均衡を得て行かなければらなん。かたがたいわゆる罰則規定を定めるのであるならば、これは伴いまする関係法規というものとの睨み合せを適当に考えて行かなければ、非常な跛行的法律になるのであります。そこで結果を急がんがために、結局やはり法規上の罰金刑に対しまする一大混乱を見るのでなかろうか、又執行猶予等の場合でも、只今の説明によりましても、他方においては五十倍の増額をし、一方においては十倍の範囲において執行猶予を止める、この点などにおきましても余程これは研究せ要するのじやなかろうかと思います。只今の罰金刑に対しまする制度の設立趣旨というものが、事情の軽き範囲のものに止まると言いましても、すでに從來罰金刑というものが凡そ限度がありましたのに拘わらず、飛躍的に五十倍の二十五万円の程度まで上昇し得るような制度になりましたならば、刑法制定当時から見ると、殆んど夢物語のような増額であります。かたがた私はこうした方面の増額に対しすまする影響についての研究が未だ盡されていないのじやないかという感がいたします。そこで前議会だと思いまするが、刑法の一部改正の法案が提案されましたときにも、やはり当委員会で問題になつたのであります。罰金増額は当然なさなければならんに拘わらず政府は何をしておるかということで、当時政府としましては全体に対する罰金の増額を折角研究中である、いずれ増額に対する改正規定を出すだろうということを言われまして、尢もだと私共は了承しておつたのであります。ところが今見ますると、本当に片々たる一部のみを出されて、而もこれに書いてありますることは、必ずしもどうでもこうでも急にこれのみに限つて上げなければならんというふうには考えられません。凡そ上げるということであるならば、全体の罰金刑を上げるということに対してこそ私は理由はあると思う。この点について重ねて矛盾いたしておりまする点についての御説明を承わりたい。
#12
○政府委員(高橋一郎君) 御指摘のように、今回の措置によりまして多少のでこぼこを生ずること考えるのでございますけれども、非常に著しい不合理というふうにはならないのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。ここに挙げました三法律は御承知のように、刑法とそれから刑法の暴行脅迫等と密接な関係を持ちまする暴力行爲処罰法と、それから刑法のいわゆる賄賂罪と密接な関係を持つております経済関係罰則整備法の罰則を五十倍に引上げておるのでございまして、その結果それらの法律の罰金の最高額が二十五万円ということになるのであります。ところが最近の各種の立法令を見まするということ、罰金十万円というのは珍らしくございませんので、中には二十万円或いは五十万円というのも確かあるのであります。それでむしろ非常に適用の場合が多くて、実際檢察、裁判の面におきましても、非常に奇異の感に打たれました、賭博その他の法定刑では或る程度今日の物價事情に適應しまする限度まで引上げられたために、それだけの不合理が是正されたものであるというふうに考えておるのであります。尚各種の法令につきまして、仔細に檢討いたしまして、それぞれに適合した引上げを行なつて、全刑罰法令体系をでこぼこのない統一したものにいたすことは勿論、これが理想でありまして、我々としても努力しなければならない方法でありますが、同じ年度におきまして立法された各種の法律を見ましても、その罰則の罰金額などの決め方の方針か実に不統一でありまして、或る年度を限つて一律に、例えば古いものについて五十倍、その次のものについて二十倍、新らしいものについて二倍といつたような決め方は却て矛盾を來しまして、これは適当でないという結論に達した次第であります。更に仔細に個々の法令について檢討いたしますというと、今度はこの措置をいたします時期を失する虞れが多分にあるのでございます。そういうような関係で事前の方法としてはなし得る最もいい考え方であるというようなふうに考えまして、このような措置を取ることに、実は立案することに相成つたのであります。それから未決勾留の法定通算の措置と相俟つて、刑法十八條の換算の基礎について何らか規定を設ける必要があるのではないか、こういうお尋ねでありますが、これは裁判所の良識に期待するものであります。併し法定通算の割合が決りますれば、おのずから裁判におきましても、これと均衡を保つた考え方が行われることであると考えるのであります。
#13
○鬼丸義齊君 裁判所の裁量によつて換算率というものが定められることは言うまでもありませんが、併し裁判所の裁量の範囲というものは、最高限度二年或いは三年というように決められております。若し只今おつしやつたごとくに、決定通算の額が凡そ一律に二百円ということに仮にいたしますとすれば、二十五万円の罰金をかけられました場合には、一生以ていたしましても尚且つ贖い得ないという説明では、説明自体に非常に矛盾がございます。私はさような揚足を取るようなふうの質問をいたは意味ではありません。とにかくこの罰金の増額の規定なんというものは、若しこれを刑法という大法典の改正に比しますならば、或いはそれに並ぶとも私は劣らざる大改正である。これが実は今度の議会においても、すでに解散が目睫の間に迫つておりまして、極めて短時日の間にこの法案を審議して議了いたすということは、率直に申上げますと、私共は到底時間的にも、研究最にも了承でき難いと思います。さてそういうことになりました時分に、政府の方としましては、ここに一つ新らしく只今私のお尋ねいたしまするがごとくにそれぞれの法規にそれぞれの理由によつて罰則の最短期、或いは最高額がちやんと定められておるのであります。これがこうした一部の刑罰法規のみに限つて、さあつと水準を著しく上げますることになるならば、却て刑法法規の非常な混乱を見るのではなかろうかと思います。でき得るならば、予ねて政府が当委員会等にも言うておりましたごとくに、全体の罰金の引上はもうすでに異論のないことであろうと私は思います。そうすれば、この際うんと一つ努力して頂きまして、全体の枠を一律に上げられるようなふうの親切な矛盾のない、スムーズに実行に移して無理のない行き方に持つて行くような私は案を作られることの方が適当ではないかと思います。それらにつきましては、更にこれに関連いたされまして、全刑罰法規に対する罰金刑の点に御檢討を加えられて、相当な準備があるのであろうと思いますが、その点に対しまする政府の御所見を伺いたいと思います。
#14
○政府委員(高橋一郎君) 個々の刑罰法令を精密に檢討をして、統一した考え方で罰金の引上をするということは、私共も理想といたしまして研究を重ねたのでありますが、すべての刑罰法令の檢討ということは、言換えますというと、殆んどすべての法令にと申しますか、大部分の法令に罰則が附いております関係で、それらの法令全部の檢討ということになるのであります。即ちいろいろな目的で決められております各種の法律につきまして、ただ罰則の関係だけを見ましてその引上を考えるといこうとは、事実不可能でありまして、やはりその法令の定めております各種の禁令等についての実体を把握しまして、これを定める必要があるわけでございますから、罰則の全部の檢討ということは、法令全部の結局檢討ということになるのであります。それでいろいろそういう方向でやつておりましたけれども、常軌を逸しないで、而もできるだけ無理のない方法といたしましては、今回の措置を以て適当であるというふうに考えました次第で、勿論個々の法令の檢討による統一的な引上げという方向に対する努力は続けて参るつもりでございますが、その完成を俟つて法律措置を取るということでありますというと、恐らくどんなに努力いたしましても、相当に遅れるのではないかというふうに、実は心配しておるのであります。そういう次第でこの措置を立案した次第でありますから、その点御了解を一つ願いたいと思います。
#15
○委員長(伊藤修君) ちよつとその間便宜本日付託になりましたところの裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案、これも予備付託として本委員会に付託されております。序でに議題に供したいと思いますから、先ず本案に対するところの政府委員の提案理由の説明を願います。
#16
○政府委員(鍛冶良作君) 只今議題となりました裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます。
 先に、民事訴訟法及び刑事訴訟法の改正が行われました結果、裁判所の訴訟事件処理につきまして公判中心主義が徹底強化せられ、又少年法及び裁判所法等の改正によりまして、新たに家事裁判所が設置せられることとなりました関係上、裁判所の事務は質量共に著しく増大し、且つ煩雜化することが予想せられるのであります。この法律案は右に伴つて裁判所職員の増員に必要なる改正を行わんとするものであります。以下増員の内容について大略御説明を申上げます。
 先ず第一は、刑事訴訟法の改正に伴う職員の増員でありますが、この関係におきましては判事三十二人、簡易裁判所判事三十人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官六十六人、同じく三級の裁判所事務官二百七十四人、最高裁判所事務局刑事部に勤務する二級の裁判所事務官一人、及び同じく三級の裁判所事務官三人が増員せられることになります。
 第二は、民事訴訟法の改正に伴う職員の増員でありますが、この関係におきましては判事二十五人、簡易裁判所判事十八人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官三十六人、同じく三級の裁判所事務官百三十七人が増員せられることになります。
 最後に第三は、家庭裁判所の新設に伴う職員の増員でありまして、この関係におきましては、家庭裁判所が少年法に定める事務を取扱うための判事三十三人、判事補十八人、少年保護司たる二級の裁判所事務官百六十六人、裁判所書記たる二級の裁判所事務官四十九人、同じく三級の裁判所事務官二百十五人、三級の廷吏二十五人、家庭裁判所事務局に勤務する二級の裁判所事務官四十九人、同じく三級の裁判所事務官二百十五人、最高裁判所事務局に新設せられる家庭部に勤務する一級の裁判所事務官一人、同じく二級の裁判所事務官十三人、同じく三級の裁判所事務官二十人の外、家庭裁判所新営工事のために必要な二級の技官二十六人が増員せられることになり、尚その外に営繕関係の事務を掌るため最高裁判所事務局に三級の裁判所事務官三人、二級の技官四人及び三級の技官十二人が増員せられることになるのであります。
 以上申述べました数字の総計を申上げますると、判事において九十人、判事補において十八人、簡易裁判所判事において四十八人、裁判所事務官において一級の者一人、二級の者三百八十人、三級の者千三十三人、技官において、二級の者三十人、三級の者十二人、三級の廷吏において二十五人がそれぞれ増員になるわけでありまして、右は新法律施行のために、本予算年度内において差当り必要な最小限度の増員があります。何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願い申上げます。
#17
○委員長(伊藤修君) 本案につきましては、先の六法案と一括して質疑に入りたいと存じます。
#18
○大野幸一君 昨日法務政務次官、最高裁判所事務総長に御臨席を願いまして、御臨席のようでありますから、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する等の法律案と檢察官の俸給等に関する法律の一部を改正する等の法律案に関連してお尋ね申上げたいと思います。先ず第一に、先般の両法案におきましては裁判所側と檢察廳側との間において幾分意見の相違もあつたようでありましが、本案の提出されるに当りましては、政務次官もお出でになることでありますから、多分連絡、了解があつたと思いますが、この点については十分連絡、御了解があつたかどうかということをお伺いしたいと思うのであります。
#19
○政府委員(鍛冶良作君) この原案ができますときは、まだ私は次官になつていなかつたので、連絡の点はよく知りませんが、前の議会において通りました、それをそのまま踏襲して上げたのだと、かように聽いておるのであります。
#20
○大野幸一君 法務政務次官は長い間在野法曹としてお出でになりましたので、率直な我々委員との間に懇談的の態度で一つ御答弁が願いたいと、こう思うのでありますが、檢察官や裁判官において、近頃面白からざる事件が発生いたしましたのですが、そのよつて來るところが、法務政務次官が内部にお入りになつて感ぜられた結果によつて、これは一体人の問題なのか、或いは経済上の問題なのか、こういうことについての率直なる御意見がお伺いしたいと思うのであります。
#21
○政府委員(鍛冶良作君) 裁判官及び檢察官両方ですか。
#22
○大野幸一君 さようであります。
#23
○政府委員(鍛冶良作君) 私も近來いろいろな事件が起りましたことを知りまして、誠に歎かわしいことだと考えております。これは私も在野時代から、かねがね憂えておつたことでありますが、第一司法部の判檢事等が他の行政官と比べて非常に待遇が惡い。もつと言えば、司法官になつても食えないのではないかということを言われておりますので、誠に憂うべきことだと考えまして、議員になりましたから及ばずながらその点に盡力して來ておるつもりでありますが、なかなか思うに任せませんけれども、前議会において多少なりともよくなつたことを喜んでおります。尚この度提出してありますものも、その意味において出て参りましたもので、それで一日も早くこれを通してよくしてやつて頂きたい。かように考えております。ところがこの惡い事件の起りましたそれぞれの具体的のものを調べて見ますというと、これはひとり待遇が惡いから起つたというだけとは認められません。率直に言いますならば、今日の混乱したる時勢が、裁判所職員並びに檢察廳職員にも知らず知らずのうちに反映して、こういうことが起つたのじやないかと感ぜられるものが非常に多いのであります。この意味において、裁判官彈劾法などというものができて來たことを、誠にいいときにできたものだと考えまして、この点も國民の指彈を受けるようなことがあるならば嚴重に処分をして頂くように希望しているのであります。更に又この檢察官の問題につきましては、近頃特にやかましくなつたのは司法保護委員等の関係なのでありまして、昨日も日本弁護士会連合会からも法務総裁宛に、その点に対して具体的に指摘して決議が参つておりましたので、早速その係の方々と協議すべく、決議だけは檢察廳側へ持つて行つて、いずれ大体において或る程度の案ができておると聞いておりまするから、具体的に案を作つて十分この点を戒飭すべきものである。それから苟くも檢察側においてさような問題の起るようなことがあるならば、寸毫も許さず、早くこれを処分せなければならんと、かように考えて、微力ながらその点に盡力したいものだと考えているところであります。
#24
○大野幸一君 甚だ満足な御答弁でありますが、私の意見を以てすれば、近頃それが問題になつて來たということは、近頃そういう問題があり出したのではなくて、遠きを言えば、塩野司法大臣が当時在職中、あの人たちの司法部においでになつた当時に、あの博徒というものを利用されたということは否めない事実であります。利用というのは、善用するつもりであつたのでありましようが、博徒の方が一枚上であつて、ついに博徒の方から十分利用された、そういう慣習が司法部内にまだ残つていた。今まではそういうことは問題にされなかつたのであるが、時勢が変化したということを知らずして、前の亞流を組んでやつておつた人たちが、今回こういうことが表面糾彈されるようになつたと、こういうふうに、私は考えております。どうかこの点について、昔の長官に教わつたような態度でなくて、全檢察官が心機一轉して、一つ時勢に乘るようにして頂きたいことをお願いします。それから御答弁中にもありました通り、何といつても檢察官或いは裁判官が一番不遇な地位にあつたのであります。今度初めて予算等において、裁判官が待遇せられることを得たので、初めて幾分檢事の試補ができるようになつたでありましようが、それでも尚減りがちであり、例えば我々が裁判官の報酬等に関する法律を可決した直後、すでに関係方面には、それでもまだ足りないということを示唆するような談話が発表されておつたのであります。こういう機会を法務廳は捉えて、もつと早く私はこういう法案を提出すべきではなかつたろうかと考えます。こういう点も、今まで法務廳、司法大臣が伴食であると言われて、実に司法部の不満を買つたところであると思いますから、どうかこういう点についても、政務次官が一つ今後御活躍の程をお願いします。それからもう一つお伺いしたいことは、近頃法務廳に勤務せられるお方と、それから檢察廳に勤務せられる、又裁判所に勤務せられる裁判官との間に、待遇上の、実質上待遇上の不権衡が多くあるということを、私は法務廳の人からして聽くのではない、法務廳外の他の先輩から聞くところでありまするが、優秀な人が法務廳には必要であり、又おいでになるのであります。それにも拘わらずこの待遇が非常に惡い。こういうところがいわゆる法務廳の熱意を欠く結果になりはしないかと思うのであります。最前から鬼丸議員の質疑應答を聽いておりましても、成る程多くの法律の罰則を調べることは非常に難しいというお話でありました。併しそれもやつて頂かなければならん。特に今回提案されましたこの罰金等臨時措置法におきましても、最後の「第三回國会で成立した法律の罰則についても適用する。」こういうような点であります。御答弁によりましても、ただ一つのそれは法律である。そのただ一つの法律ですら前國会に準備したそのままのプリントを出しておられる。これは決して能、不能の問題じやない。優秀なる人が法務廳には勤務せられておるので、決して能力の問題ではないが、併しここに一つのヱネルギッシユというものが欠けておるのではないか。そのヱネルギッシユというものは、やはり我々の責任においてこれを充満されなければいけない。それはやはり法務廳に勤務せられる方に十分なる待遇をしなければならん、こういうふうに考えるのであります。この法案におきましても、例えば法務廳は法律を作つて出すのだけれども、実際裁判官が法律を適用するときに、辺鄙の裁判所において、「第三回國会で成立した法律」とあるからには、何が第三國会において成立したか、一度調べて見なければならん。それには罰則がある。法律はどれであろう。焼け盡された裁判所には図書館も十分でないでしよう。全く罰則を調査するに、遠い支部の裁判官は本廳に照会したり、いろいろ苦心をされたりしておる。作ることはやさしいが、これを第一線において活用せられる裁判官の場合を見るときに、こういう法律ではお氣の毒である、こう考えられるのであります。こういう点からも、知識労働に從事するものは菜つ葉ばかり食べて行かれるものじやない。そう菜つ葉や大根ばかり食べていては精力が出ない、精神力が発揮されないと、こう考えますが、今後は法務廳のお方に対してどういう待遇をされるのか、こういう点も一つお伺いして置きたい。
 もう一つは、六月以降十月までの処置、この処置については、裁判官及び檢察官は諦められるのか。その間いわゆるスライド的の増俸についてはどう考えておられるのか。でき得るならば支給した方がいいと思うのですが、政務次官はどう考えておられるか、お聽きしたい、こう思うのであります。
#25
○政府委員(鍛冶良作君) 先ず最初にお述べになつた御希望の点は、私も全く同感でありまして、先程も申上げた司法保護委員の制度に対して、並びにそれに引続いて調停委員等の関係も余程吟味せなければならんという在野法曹の意見でありましたので、十分その点を考えまして、旧來の弊害をここで一掃すべきものだと考えております。それから裁判官並びに檢察官の優遇の点も勿論御同感でありまするが、何と申しましても同じ官吏でありまするから、行政官と司法官が違うのだ、司法官は特に優遇せなければならんという議論を我々も常に持つておるのでありまするが、それにはやはり一般から見て、成る程司法官というものは特別の職務である、聖職である、從つてその聖職を掌る人は、別の修業を経、特別の学識の持つておる人であるというこの区別がなくては、これは行政官と飛び離れた優遇をしては必ず行政官から不平が出るものと、かように考えられまするので、裁判官並びに檢察官を優遇すると同時に、特にこれらの人々は特別の制度を以て修業し、採用せられておるということを確立すべきものじやないかと、かように考えておるのであります。それから今御指摘になり、それならば法務廳の職員はどうかという問題は、これはもう前々から裁判官の特別優遇をするときに出た問題でありまするので、その後の実情は詳しくは存じておりませんが、なかなか面倒な問題だと考えておるのであります。それというのは、旧來は法務廳において勤めておる優秀なる諸君は、大抵司法官から來ておられるのでありまして、司法官と常に交替をしておらるるのでありますが、法務廳であれば一般の行政官になるし、裁判所へ戻れば判事になる、裁判官になれば特別優遇せられるものを、行政官であれば他の行政官と同じになるということの区別は、何とかこれは特別に片付けにやならんものじやないかと、かように考えておるのでありまするが、私も就任早早でありまして、そこまでの具体的の研究はいたしておりませんので、是非とも解決しなければならん難問題の一つであろうと考えております。それから最後にお述べになつた、今ここへ出ておる法律の問題であろうと思いますが、午前中衆議院でも甚だ弱つておりまするので、とにかく当委員会も一應提案されたのでありまするが、その原案は関係方面において許すべからざるものを間違つて許したのだから、誤植として訂正をして出したらどうかというお話があつたそうであります。そこで非公式で衆議院の委員諸君と話して見たのでありますが、我々は出て來た以上法案は認めるし、これは是非もつとやるんだから、もつとやりたいくらいだから、原案をそのまま通そうという議論もあるのでありますが、そこで給與局長を呼んで、原案がこのままで通つたらどうしてもいかんという実情があるかというと、原案は通つても予算は組まんということになるかも知れないという話でありますので、結局衆議院ではまだ結論を得ないので、そのまま休憩してこちらへ來たわけでありますが、これは法案の……速記を止めて下さい。
#26
○委員長(伊藤修君) 速記を止めて。
   〔速記中止〕
#27
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて。
#28
○深川タマヱ君 刑事補償法を改正する法律案についてお尋ね申上げますが、よく委員長が衝突いたしますので、或いは他の委員の方々によつてすでに質問済みかとも存じますが、この改正の第三点についてでありますが、この國民の生命を守ることは國家の最大の目的でなければならないと存じますのに、裁判の誤まりのために死刑の判決を下しまして、國民一人を死に至らしめましたときの補遺の方法でございますが、これが一万円以内で遺族に支給するということになつておりますが、今日の経済実情では余りにも不当に低額に過ぎると存じます。勿論財産のありますものに取りまして、本人が死亡しましたために損失を生じたら、それを補償することにはなつておるようではありまする、何らの畜えるなくして体一つを資本にいたして、それで働いて家族を守つておりますようら場合に、僅か一万円の金で決済せられましたのでは、家族に取りまして迷惑だと思います。こういうところに本人に一ケ月働いたら幾らばかりの勤労所得税があり、それから大体五十歳から六十歳ぐらいの間までに合計どのくらいのものが勤労所得税を引きまして得られるかということを注意されまして、それくらいの金は全部支給する、されましても然るべきものでと思います。又それの御用意ができておりますか、それについてお尋ねいたします。
#29
○政府委員(宮下明義君) 刑事補償法を改正する法律案第五條の第三項におきまして、死刑の執行を受けた者の遺族に対する補償を一万円以内で、裁判所の相当と認める附加的補償という制度を規定いたしたのでありますが、この一万円という金額が余りにも不当に低いではないかという御意見でありまするが、この案を立案いたしました政府の考え方をお答え申上げたいと思います。先ず第一に御留意願いたいのは、この第五條第三項の附加的補償は飽くまでも附加的補償でありまして、これ以外に死刑の執行を受けまして本人自身に、そのものが拘禁、或は拘置等を受けておりました日数に應じまして、相当多額の本來の補償が支拂われます。それ以外にこの遺族に対しましては、第五條第三項において附加的補償をする。本人が、請求人が財産上の損失を証明して参りません場合には、一万円以内で相当の金額を裁判所が決めることでありまするが、若しも請求人が現に生じました財産上の損失額を証明して参りますならば、その損失額に一万円を加えた金額の範囲内で附加的補償を決めるのであります。この第三項の附加的補償は、言換えますれば、この遺族そのものに対しまする慰藉料的な附加的な補償であります。この附加的な補償であるという点を先ず第一にお考え願いたいのであります。
 次に、刑事補償におきましは、勿論昭和六年この刑事補償法が最初に作られました当時、当時の政府におきましは、この刑事補償は恩惠的な慰藉である。國家の仁政であるという考えを取つておつたのでありまするが、この改正法律案におきましては必ずしも單なる恩惠である、或いは慰藉であるという考え方よりも一歩進めまして、刑事手続が適法な手続ではございまするが、結果において不当であつたので、そのために生じました本人の損害をできるだけ公平の観念がら補填をしよう、それが國家社会から申しまして、公平の観念に合致する損害を、公平の観念から補填するという考え方に変つておると思うのであります。併しながら、飽くまでもその本質は不法行爲に基く損害補償ではございませんので、本人が受けましたすべての損害を補填する、民事上の不法行爲に基きましてはホフマン式の計算方法もあるのでありまするが、刑事補償の本質は、飽くまでも公平の観念から、或る程度損害の補償をするという考え方に立つておりまするので、すべての本人の損害、現実の損失額、又得べかりし利益の喪失、すべてのものを補填するという考えは取つておりません。從いまして、この第三項におきましても、本人が現実の損失額を証明して参りません場合には、一万円以内で裁判所が相当と認める金額の附加的な補償をするという立て方をいたしたのであります。如何にもこの一万円が低過ぎて、余りにも生命を尊重しない、不当な金額ではないかというような御意見でございまするが、この案を組みました根拠は、只今申上げましたような事情でございます。
#30
○深川タマヱ君 極めて不満に存じますけれども、差当り今日の質問は、この程度に止めて置きます。
#31
○鬼丸義齊君 先ず第一点として伺いたいと思いますることは、本日提案されましたこの裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案でありますが、いよいよ來年一月一日から新刑事訴訟法が施行されますに当つて、只今の提案理由によりますると、全体の判事さんだけで見ますると、約九十六名ですか、私共新刑事訴訟法と申しますか、改正刑事訴訟法を審議する当時から、非常に心配いたして今日に及んでおるのでありまするが、審理方式が著るしく変つて参ります。法廷中心主義の徹底を期しまする結果としましては、審理上において、從來から見まするというと、非常に多数の時間と手数とを要すると思います。差当つて、これに対しまする備えとしては、人事関係におきましては、相当量の職員の増員をやらなければ到底運用はできないのじやないかということを心配いたしておつたのであります。本日の提案されましたところを見ますると、刑事訴訟法の改正に伴いまする増員としては、判事が三十三名ですか、二名ですか、それから民事訴訟法の改正に伴いまする関係において、判事さんが二十五名、家庭裁判所の新設によりますることによつて、判事さんの増員が三十三名、余りにも私はこの増員の少いことに驚いておるのであります。果して、一体この程度で運用できるかどうか、折角よい制度に改めて、この運用のよろしきを得るか否かということは、掛かつて今後の裁判所に対しまする國民信用を高めるゆえんにもなり、裁判所というものが非常な高信用を得るに至るのであります。若し予算の不足等を理由といたしまして、折角の新らしい制度が、この面において甚だまずい結果を見たといたしましたならば、これは大変なことだと思います。私共すでに数回の刑事裁判に関する改正法案の審議等におきまして、常に論議いたしておりましたが、新制度を施行いたしますることは実に容易ならんことであろう。殊にこれまでの施設、これまでの人員を以ては到底これを賄い得ることはできないのでなかろうか、故に來年度からいよいよおやりになるとするならば、定めて行詰りを生ずる場合が多々あるのじやなかろうかと心配いたしておりますがために、恐らく來年一月一日から施行することはできないのじやないか、準備が整つていないのであるから……と思つておりましたところが、止むを得ずこれを実施しなければならんことになりました。それにいたしましては、すでに実施を目捷の間に控えておりますときに、而も数日のうちに議会は解散されるというようなことにもなつております。この場合にこれだけの僅から定員の増加によつて、この大事業に対して裁判所においても法務廳においても果して自信ありや、戰後に我々に課せられたる大きな事業の一つとして、殊に何とかして治安の回復をしなければならんということに対しましては、從來食糧事情等のために、主として政府の方も先ず食糧というようなものに対して非常な力を注いでおりましたがために、治安の面に対しましては残念ながら右手に置かれて來た感がありました。この治安の全きを期するということは、我が國が進みまする上においてむしろ第一義的に取上げなければならんことだと思います。今後の日本の現状から見ますると、この刑事関係に対しましてはますます憂うべき状態に進みつつある感がいたします。これに対する備えといたしましては、一方裁判所の非常な高信用を高め、そうして新らしい制度をいやが上にも生かして行かなければならんという当路者としての大きな責任があると思う。厖大なる全予算の上からいたしましたならば、治安に備える予算というものは、私共に言わしめるならば物の数でないと思う。果してこの程度の増員によつて今日の事件処理が全きを期し得るかに対しまして私は非常な不安を感ずる。故にこの増員に対しまする法律案というのは、取敢えずという意味のことであるか、或いはこの程度において改正刑事訴訟法運用について自信満々たるものがあるかということに対して、一應法務廳並びに裁判所の御両氏にお尋ねしたいと思います。
#32
○政府委員(岡咲恕一君) 只今鬼丸委員の御指摘の点は一々御尢もに存じます。この度の増員は二十三年度の追加予算によりまして認められました限度における増員でございまして、法務廳といたしましては、裁判所の実情を承わりまするのに、この程度の増員で必ずしも完璧とは申し兼ねるのでございますけれども、一應二十三年度の関係におきましては、先ずこの程度で処理できるであろう、その実績によりまして或いは甚だしく不自由、不便を感じますならば、更に來年度予算におきまして完璧な法律案を作りたいと、かように考えておる次第でございます。尚判事の点の増員でございまするが、これは現在におきましても定員の全部を補充し得ないような状況にございまして、その状況にありながら、増員におきまして九十人の増員を大藏当局にお認めを願つたわけでございまするが、これは從來の経緯から申しますると、先ず非常な成功であつたのではないかと考えております。尚裁判所事務当局も御出席でございますので、裁判所の將來に対する運用の方針、或いは方策につきまして十分の御説明を煩わしたいと存じます。
#33
○説明員(本間喜一君) 鬼丸委員の御質問は誠に御尢ものことでございます。刑訴を完全に施行するにつきましては、從來の場合と違いまして非常な愼重な手続を要する次第でございますから、仮に今までの一件の審理時数を倍かかると仮定いたしましても、判事の定員が恐らく三百四十四名の増員をしなければならんような計算になると思います。そういう次第でありまして、裁判所におきましては完璧を期するために是非將來そういう人的設備を完備したい、そうして國民の不安のないような設備をしたいと努力をしておる次第でありますが、今回の追加予算は來年の三月までの分でありますからして、それまでのことを睨み合せまして、只今提案いたしました数だけで差当り間に合うのじやないかと、こういうふうに考えて、その数を出した次第であります。決してこれによつて刑訴の施行の完全にできるとは考えておりませんので、次の本予算において十分なる増員をいたしたい、こういう考えでございます。それからして尚定員だけ増加いたしますし、又予算を増加して頂いても、実際に立派な判事を招聘するということができるという実際の見込も考えなければならないのでありまして、そういう点を睨み合わして、この数字を先ず三月までの仮定した事件を考えながら、これで以て賄えるつもりで考えておるような次第であります。將來としては鬼丸委員のおつしやるような十分なことも又提案いたしたいと思つております。
#34
○鬼丸義齊君 幸い事務総長がお出ででありまするから、私は細かいことを寡聞にして十分に存じませんから承わりたいと思いまするが、この改正刑事訴訟法の実施に対しまする予算として、政府の方から新らとく得られました予算の全部は、今年度においてどういうことでございますか。どの程度でありますか。ちよつとそれだけお伺いしたい。それから尚來年度においての予算が凡そ見透しが付いておりましたなら、内示して頂ければ大変結構だと存じます。それから只今提案されました増員計画についての予算は、これはすでに大藏省との間において折衝ができておつて、予算はこれだけのものの新らしい追加予算を何か貰うことになつておるのであるか、或いは從來の予算をこの範囲において賄らんといてこの範囲に止まつたのか、その点を一つ承わりたいと思います。
#35
○説明員(本間喜一君) 後の方から申上げますと、この定員の改正に関する法律の人員に必要な予算は、大藏省と了解が付けまして、その額を今度の追加予算に全部組入れてございます。それから刑訴の費用については、追加予算の部分に……。
#36
○鬼丸義齊君 設備の方と両方一つ……。
#37
○説明員(本間喜一君) 刑訴関係においては八千三百十三万八千円、これに加えるに法廷増設のために五千万、こういうふうになつております。八千三百十三万八千という内容は、今の人件費が大部分であつて、六千八百五十九万五千円、それから裁判内書記の講習に必要な費用、六百四十万一千円、協議会その他開催、そういう準備をするために費用が十四万二千、そういうふうになつております。その外に法廷増設の分が五千万円で、合計一億五千四百二十五万九千、こういうふうになつております。それは三月までの分です。これは了解済みでございます。
#38
○鬼丸義齊君 これは今度の追加予算に載つておりますか。
#39
○説明員(本間喜一君) 載つております。
#40
○鬼丸義齊君 それでこの追加予算を大藏省の承認を経て了解済みの上提出されましたについては、最高裁判所の方から求められました数額と、大藏省の承認をされました数額との間において全然一致しておりましたか、或いはその間に裁判所の要求額と大藏省の要求額との間に、相当の開きがありましたか。その点一つ。それから尚両方共やはり議会の方には、その資料を出されておるかどうか、併せて一つ。
#41
○説明員(本間喜一君) これは裁判所の予算は大藏省と交渉いたしまして、両方の意見の合わない場合は、両方の額を予算として出すことになつておりますが、初めて両方の相違がありまして、例えば今の一億五千万に対して、向うは二百五十万というような査定を、初めして來た状態であつたのです。然るにその後の折衝によつて、結局裁判所の要求全額を認めたように次第であります。
#42
○鬼丸義齊君 二百五十万というのは、ただの二百五十万ですか。
#43
○説明員(本間喜一君) ええ初めはです。恐らく延ばして貰うつもりでおつたんじやないかと思います。
#44
○委員長(伊藤修君) 只今本会議の方で公共企業体の法案が記名投票になるそうですから、本日はこの程度において散会いたしたいと思います。明日午後一時より質疑を継続いたします。散会いたします。
   午後三時一分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     伊藤  修君
   理事
           鬼丸 義齊君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           鈴木 安孝君
           深川タマヱ君
           松井 道夫君
           松村眞一郎君
  政府委員
   法務政務次官  鍛冶 良作君
   法務廳事務官
   (檢務局長)  高橋 一郎君
   法務廳事務官
   (檢務局刑事課
   長)      宮下 明義君
   法務廳事務官
   (調査意見第一
   局長)     岡咲 恕一君
  説明員
   最高裁判所事務
   総長      本間 喜一君
ソース: 国立国会図書館
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