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#1
第004回国会 懲罰委員会 第3号
昭和二十三年十二月十九日(日曜日)
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○懲罰権の適用範囲に関する調査の件
  ―――――――――――――
   午後二時二十五分開会
#2
○委員長(太田敏兄君) それではこれから開会いたします。
 本日付議いたしまする事項は懲罰権の適用範囲に関する調査でありまするが、この懲罰権の適用範囲に関しましては、関係法規の解釈上疑義の存しておる点が凡そ三つあると思うのであります。その第一点は、憲法第五十八條の二項に「院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。」とありまするが、ここの「院内」という字句は何を指すのであるかという問題であります。即ち懲罰権の空間的な限界の問題、それから第二点は國会法第百二十一條第三項に議員提出の動議については「事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならない。」と規定されてありまするので、この点は期日が明瞭でありまするが、同條第一項の「各議院において懲罰事犯があるときは、議長は、先ずこれを懲罰委員会に付し審査させ、」云々の條文がありまして、これではその期間が限定してないのであります。そこでその期間が問題となるのであります。これにつきまして國会法第六十八條の「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」という條項に基きまして、懲罰事犯についてもやはり後会不継続の原則があると主張する人もあるのでありますが、ここに問題があると思うのであります。そこで即ち問題の第二点は、議長が職権を以て懲罰問題を取上げる期間の問題でありまして、即ち懲罰権の時間的な限界の問題であります。第三点は、参議院規則第二百七條に「すべて議員は、議院の品位を重んじなければならない。」とありまして、その「品位」とは何か。又同規則の第二百四十五條の「議院を騒がし又は議院の体面を汚し、」云々の條文の中の「議院の体面」とか何かという語句の内容の問題であります。そうして同時にこの品位及び体面に関しまして、懲罰問題が提起された場合に、先の疑義の第一点に上つた院内の解釈、第二点の期間の解釈に問題がこれとどう結び付くかということが疑点の第三点であります。
 これにつきましては、去る十二月十三日に委員打合会を開きまして、奧野法制局長及び事務当局から一應の見解を承つたのであります。続いて十二月二十三日には正式の委員会を開きまして事務総長、法制局長及び委員部長より意見を聞いたのであります。更に昨日委員長及び理事打合会を開きまして金森図書館長、入江衆議院法制局長、奧野参議院法制局長、河野委員部長等を招きまして、それぞれ意見を聞きまして互いに檢討をいたしたのであります。本日はその結果に基きまして、その結果を大体取纏めましてここに皆樣に御報告申上げ、そうしてこれに対しまして委員各位の意見を承りまして、本委員会としての解釈を一應決定したいと思うのであります。併しこの問題は非常に重大な問題でありまして、今後における参議院の懲罰問題処理の基準ともなるものでありますから、最も愼重を期さなければならんと思うのであります。
 そこで、これは私だけの考えでありまするが、本日は大体皆さんの御意見が一致いたしましたならば、それを取纏めまして、先ず中間報告としてこれを議長の手許に報告したいと思うのであります。そうして尚今後も愼重を期しまして継続して、十分これらの問題につきまして研究をいたしまして、最終的な結論を得るように努めたいと思うのであります。この点を予め御了承願いたいと思うのであります。昨日委員長理事打合会におきまして論議しました問題の内容につきましては、便宜河野委員部長から大体の御報告を願いまして議題を提供したいと思うのであります。
#3
○参事(河野義克君) 昨日いろいろ御論議があつたわけでありますが、そのことについて整然とまとめる余裕がなかつたのでありますが、大体昨日の話合で、こういうふうに考えた、或いはこの点についてはこういう考えもあるし、こういう考えもあるというようなことについて一應申上げたいと思います。
 この懲罰権の適用範囲を考える場合に、懲罰の適用範囲に連関する限度、最少限度において懲罰権がどういうものであるか、どういう目的のために設置されたものであるかということを吟味することが、適用範囲を吟味することに関係があると思うのでありますが、そのことにつきましては、懲罰権は大体役員の選任権及び規則の制定権と共に憲法に認めました両議院の自律権の一つでありまして、即ち両議院は院内の秩序を乱した議員を懲罰することができるわけであります。そういうふうに、懲罰権は議員を対象とするのでありますから、從つて議員以外の者、例えば政府職員、國会の職員、傍聽人、証人、及び公述人等については懲罰権の適用のないことは明らかでありますが、國務大臣が議員である場合は、嚴密に言えば、その國務大臣としての行爲には懲罰権の適用はなく、その議員としての行爲のみに懲罰権の適用があるということを考えることもできまするし、それから憲法の規定によりますと、懲罰権の懲罰を構成する要件といたしましては、院内の秩序を乱したということと、議員であるということの二つが要件であるだけでありますから、たとえ國務大臣として院内の秩序を乱しましても、すでに院内の秩序を乱したという事実と、議員であるという事実がある限りは、そこに懲罰の対象になり得るというような二つの考え方があるようでございます。それから院内の秩序とは何であるかということにつきましては、これを空間的、時間的、或いは内容的に分析して解明しなければならないと思いますが、ただそのことにつきましては、懲罰権が認められた理由が、そもそもどこにあるかということを考えなければならんのでありまして、懲罰権は、立法機能及びその他憲法が認めておる重要な議院の機能を適正に行使し得ることを確保するために、院内の秩序を維持する手段として認められたのでありまして、從つてその適用の範囲についてはこのことを先ず考えなければならんわけでありますが、一面議員が有する憲法第五十條の不逮捕特権、及び憲法第五十一條の院外免責特権と言われておるそういつた特権と密接な関係があるのであります。そのような特権があればこそ、その半面議員は、自律的に懲罰権によりまして、院内の秩序を嚴粛に維持する必要が増すのであるということになろうと思うのであります。こういうことを前提といたして懲罰の適用範囲を考えますと、第一は場所的な関係でありますが、懲罰権適用の空間的限界の問題は、憲法第五十八條のいわゆる院内の秩序の場所的意義如何、こういうことになると思うのでありますが、この憲法の規定を受けまして、本院の規則二百三十二條(これは衆議院規則で言えば二百三十三條に当るものであります)及び本院規則の二百三十三條、これは衆議院規則に該当するものはございません。本院規則二百三十四條、これは衆議院規則二百三十四條でありますが、それは本会議、委員会及びその他の議院内部において、懲罰事犯があり得ることを明らかにしておるわけであります。ここにいう議院内部の意義がどういうものであるかということが從つて問題になるわけでありますが、これは議員が、憲法によつて與えられた権能を通常行使する区域というようなことで言われると思いますが、本院規則の二百三十四條の法文から行きましても議事堂、嚴密にいえば、議事堂の中、各議院について各議院が管理する区域を一應意味するように思われます。というのは、この議事堂の中で、参議院が管理する分と衆議院が管理する分がありますが、そういつた各議院が管理する区域を一應各議院についてはその院内というふうに、ここでは考えておるのではないかと思うわけであります。このことは沿革的の旧憲法下の議院法或いは貴族院規則、衆議院規則以來の傳統的な解釈であつたと思うわけであります。併しこの点だけについて見ましても、近時の実情に鑑みまして、例えば議員の面会所とか、常任委員会廳舍とか、議員会館とか、議員宿舍とか、議長官舍とか、副議長官舍とか、議院分室とか、そういつたものが議院内部に含まれるかどうかという新たな問題が出て來ておるものでありますが、そういうことにつきましては或いは院内警察権等とも関連させまして、個々に且つ具体的に決定しなければならない問題であると思います。又地震、火災、その他事変、内乱等のために國会が東京以外の地で召集せられる、或いは東京のこの議事堂以外の建造物で開会するような場合におきましては、ここに言う議院内部というのは、その場合、國会又は各議員が集会する場所につきまして明確にか、或いは暗默にか表示された空間的な範囲ということであると考うべきことは固よりであろうと思います。例えば第一回帝國議会の時に、議事堂が火事で燒けまして、帝國ホテルかどこかで議会を開いたことがございますし、第七回の帝國議会でありましたか、日清戰爭の際に廣島の大本営で帝國議会が召集それたことがございますが、そういつた場合にはその場合に明確にか或いは暗默に表示された議会としての区域が、ここに言う議院内部になると思われるわけであります。併し法規は今申上げました議院内部以外に起り得る懲罰事犯を明瞭に規定しておるのがあるわけでありまして、即ち國会法第百二十四條によりますれば、「議員が正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に應じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎたため、議長が特に招状を発し、その招状を受け取つた日から七日以内に、なお、故なく出席しない者は、議長が、これを懲罰委員会に付する。」となつておりますが、この事犯は物理的な意味から言えば、常に院外で起るものであります。尚その場合、國会法第百二十四條は元の議院法第九十九條にもこれに相当する規定があつたのであります。又参議院規則第二百三十六條によりますれば、「國会法第六十三條により公表しないものを他に漏した者に対しては、議長は、これを懲罰事犯として、懲罰委員会に付託する。」ということになつておりますが、これも物理的に言う院内において起り得るのみならず、院外でも起る、むしろ院外で起る場合が多いかも知れないと思うわけであります。況んや國会法第百二十四條の場合も、その懲罰権というものは國会法が新たに創設したものではなくして、憲法第五十八條に淵源しておるものであるということは議論の余地がないと思いますし、参議院規則第二百三十六條の場合は、それが法律ではなくして規則であることから言つても、尚更然りであろうと思うわけであります。然らば、こういつた場合の事犯が、物理的な意味においては院外でなされましても、それが憲法第五十八條のいわゆる院内の秩序を乱した者として懲罰の対象となると考えざるを得ないのでありまして、逆に申上げますれば、院内の秩序は院外の行爲によつても乱されることがあるということは認められなくてはならないと思います。こういうふうに物理的に院外の行爲が院内の秩序を妨げることがあるということは、憲法の規定を見ましても、憲法の規定は院内で秩序を乱したということにはなつておらないので、「院内の秩序をみだしたと」いうことでありますから、秩序を乱すことが外部であつても、それが院内の秩序を乱したということになれば、そのことは当然懲罰の対象になるということになろうと思います。尚附言いたしますれば、日本國憲法の英訳文には、この「院内」という言葉はなかつたと存じます。從つて院外における行爲におきましても、議員としての公の職務を遂行する行爲、例えば議員派遣の場合とか、そういう場合につきましては、そのときに著しく不都合のことがありましたときには、それが「院内の秩序をみだした」ということになることもあり得るのでありまして、そういつた場合も懲罰の対象になるということが考えられるわけであります。然らば半ば公的な行爲、或いは全然私的な行爲についてはどうなるかということにつきましては、これはむしろ第三の、懲罰事犯適用範囲の第三に分けて考えるべき内容の方面からもう一遍研究した方がよろしいかと存じます。
 第二は時間的な関係でございますが、これはいわゆる後会不継続の原則というものがこの懲罰の案外に適用があるかどうかということでございます。後会不継続の原則ということは、或る議会で審議されておつた、或いは論議されておつた、或いは問題となつた、そういうことがすべて次の議会にはそのままでは継続しない、そのままでは問題にならないということを言つたものであろうと思うのでありますが、國会法第六十八條は、いわゆる後会不継続の原則を日本の議会制度の中に表現されておるものと普通言われておりますが、その規定は「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」ということになつております。從つてこの國会法第六十八條を如何に解釈するかということにつきましては、第一は第六十八條に使われております表現に忠実に從いまするならば、「議決に至らなかつた案件」ということであるから、すでに審査が開始されて、その議決に至らなかつたものだけが不継続になるので、そもそも審査もしなかつたものは、この國会法第六十八條が直接に言つておるのではないという説と、それから「議決に至らなかつた」ということは、とにかく議決に至らなかつたものすべてを含むのであつて、從つて或る事柄が起きた、例えば懲罰事犯が起きて、そもそもこれが審査の対象にならなくても、議決に至らなかつたことは事実であるから、そういつたものも第六十八條が包含しておるんだという説と両方あります。併し後の場合におきましては、それは案件でもなかつたのであるから、客観的に懲罰事犯であつたかも知らんが、それを誰も提起した人はないのであるから、案件でもなかつたのであるから、第六十八條の規定しておる限りではないというふうにも考えられるわけであります。何れにいたしましても、さつき申上げたように、審査中の案件だけが後会に継続しないのであるという立場から申上げますと、これは懲罰事犯にも無論適用があるのでありまして、懲罰事犯が起りまして、これが懲罰委員会に付託されて審査中の場合に閉会になりますと、これは後会に継続しないでその儘になるということだけを第六十八條が言つておるのであつて、全然懲罰事犯として懲罰委員会に付託されなかつた問題については全然触れてないということになりますから、後会においてその懲罰事犯を提起することは第六十八條が禁止しておるものではないという解釈ができることになるわけであります。國会法第六十八條の関係だけにつきましてはそういつた解釈が或いは正しいのではないかという御説が多かつたように存じますが、そうした場合につきましても、國会法第六十八條の規定を含み、更に一般的な後会不継続の原則、一種の議会政治におけるそういつた原則が存在しておつて、これは國会法第六十八條の表現よりももつと廣汎なものであつて、そういつた、いわば慣習的な原則が懲罰事犯にも、適用があつて、從つて懲罰事犯を次の國会で提起することもその慣習的な原則に触れるのではないかという考え方や、或いはそういうことは別としても、懲罰事犯というものの性質、或いは特定の懲罰事犯の性質、例えば本会議で乱闘をしたとか、或る会期にいわば專属的な懲罰事犯は、その性質からいつて後会不継続の原則の適用如何に拘わらず、本來次の議会において問題とするのはふさわしくないものではないか。從つてこの場合においては懲罰事犯というものは、その性質上次の議会においては提起できない問題であるという考え方と、懲罰事犯一般についてはそういうことはないけれども、懲罰事犯の中、特定のものについては後会においてこれを問題にすることはふさわしくないとする考えとが出て参ります。又実質的に不継続が望ましいという説がございますが、これは一つには懲罰事犯というものは、とにかく議員を懲罰しようということでありまするから、その時間的関係において前に起つた事犯を如何なる時期においてもこれを提起することは、議院の運営に暗影を投じて、わだかまりを残して面白くないということとか、或いは議員の身分を不安な状態に陷れることになるので好ましくないということや、或いは元來そういつた議会政治を含め、あらゆる政治というものは生々流轉して膠着しないことを旨としなければならないのに、特定の懲罰事犯が何年後になつても起り得るようなことでは、政治のいわば非膠着性というようなことと矛盾しはしないかというようなことと、実質的な判断から懲罰については後会に継続することはどうかというような説もあるわけであります。これに反しまして、例えが閉会の直前の日に行なつた懲罰は、未來永却これを問題にすることができないというようなことはどうもおかしい、並びに秩序の破壊行爲に対しては、会期の更新に拘らず、これを懲罰の対象とすることができると考える方が妥当ではないかというように、懲罰については、少くともこれを提起することについては、後会不継続の原則の適用を、それ程森嚴に考えなくてもよいのではないかという説もあるわけであります。いずれにしましても、後会不継続の場合の会期の観念が、帝國議会時代の、天皇の大権によつて開閉される、その会期も通常議会において三ヶ月とすると、その間九ヶ月の閉会期間があつたような場合の会期と、現在のように、議会が殆ど年中事実上開かれているような場合の会期との間の関係とが、同一視してよいものであるかということには、多くの問題があるし、立法論的に言えば、なんらか任期を限つて、よく立法期というようなことを申しますが、そういつた一つの立法期というような観念があつて、その任期から次の任期には、いわゆる後会不継続の原則のような関係がある。その任期内においては、後会不継続の原則のような関係がないというような考え方もできるのではないかという考え方も出ております。又前会期における事柄につきましては、これをなんらかの議会運営の技術的な方法によりまして、今会期における問題とすることが事実上できるから、それによつて後会不継続の原則の適用があるとしても、そう支障はなくやり得るかも知れんという技術的な方面からの見解もございますし、又逆に一つ一つの行爲は、それ程重要な懲罰事犯でないといたしましても、特定の人がそれを爲した場合には、それは相当惡質のものと見なすこともあり得るし、又段々累積して來ますと、刑法の累犯的な考えで、相当重くこれを考えなければならんというような事柄も実質的には考えられるといういろいろの見解も出ておつたわけであります。
 次に懲罰の内容の方面に参りますと、要するに、これにつきましては、憲法では、院内の秩序を乱したということだけになつておりますし、それを受けた國会法、規則等には、懲罰事犯ありたるときはということで、客観的になんらか懲罰事犯というものの意味が決つている。それが客観的に起ることを予想して、そういうものが起つたら云々ということを規定しておりまして、どういうことが懲罰事犯であるかはつきり書いてないのでありますが、大体規則だけで分りますることは、参議院規則二百三十五條の「議長の制止又は発言取消の命令に從わない者に対しては、議長は、國会法第百十六條によりこれを処分するの外、なお、懲罰事犯として、これを懲罰委員会に付託することができる」とありまするから、議長の制止又は発言取消の命令に從わないような行爲は、懲罰事犯であるということが間接に言えると思いまするし、同條の第二項は、委員長の制止又は発言取消の命令に從わない者に対して同樣の規定もございますから、委員長の制止又は発言取消の命令に從わない者についても、これが懲罰事犯であるということは言えます。それから第二百三十六條も、先程も申上げましたが祕密会議の記録を公表した者は、これも懲罰事犯であるということが言つてあるわけであります。その外、國会法の方に、先程も申上げましたように、特定の段階において、招状に應じて尚出席しない者についても、それが懲罰事犯になり得ることを規定しております。その外「議院を騒がし、又は議院の体面を汚し、その情状が特に重い者に対しては、登院を停止し、又は除名することができる」ということが、第二百四十五條にございますが、このことは、議院を騒がし、又は議院の体面を汚すことが、一應懲罰事犯となり得るということを前提としていることで、その情状が特に重い者は、登院停止とか、除名とかいうような重い懲罰を科することができるということを言つているわけでありますから、そういつたことも懲罰事犯であるということが言えますし、更に「登院を停止された議員がその停止期間内に登院したときは、議長は、直ちに退去を命ずる。その命令に從わないときは、議長は、必要な処分をなし、更に懲罰委員会に付託することができる」。この二百四十四條によりましても、登院停止の懲罰を科せられた議員が、停止期間内に登院したときに、議長がこれに退去を命令して、その命令に從わないときは、一應懲罰事犯であるということがはつきりしております。こういうように、法規上懲罰事犯というものは、いわば例示的に示されているだけでありまして、一般的にどれが懲罰事犯の内容の構成するものかは、定義づけられていないのでありますが、参議院規則第十六章第一節に「紀律」として、第二百七條、「すべて議員は、議院の品位を重んじなければならない」。第二百十五條に、「散会又は休憩に際して、議員は、議長が退席した後でなければ、退席してはならない」と規定してある。この一連の規定に違反する行爲、一連の行爲が懲罰になるかならんかということが一つの大きな問題であろうと思います。それでこの二百七條から二百十五條までのことに違反した場合には、つまり内部規則に違反したことになりますから、それに院内の秩序を乱した行爲であるということになる。從つて懲罰をしなければならんということではないけれども、懲罰をなし得る行爲、懲罰の対象となり得る行爲であるというふうに考えるべきだという考え方が述べられておつたのでありますが、それに対して、例えば二百七條の議院の品位のことにつきましては、これはいわば訓示規定であつて、これに反したということだけで、直ちに懲罰の対象になるというべきか、やや疑義があるという見解を漏らされておつた方もあります。いずれにいたしましても、議院の品位を重んじなければならないということは、二百七條によつて規定されておりますことで、二百七條に違反した場合に、懲罰の対象になる得るということは確かでありますが、この規定が如何なる院外の行動に及ぶべきかということにつきましては、いろいろな見解があるわけでありまして、私的な行爲につきましても、それが議院の秩序、議院の品位を汚すということに相当因果関係があると考えられるようなものは、それはこの議院の品位を傷ける、或いは憲法でいえば、院内の秩序を乱したということになると考えられると言われた方もあります。併し私的な事柄については、大体関係のないことであつて、第一の場所的関係のときにも申上げましたように、議員の公の行動についてのみ懲罰の対象になるのであるというように見解を漏らされておつた方もあつたわけであります。いずれにいたしましても、この場所的な関係につきましても、時間的な関係につきましても、この内容の公表という問題につきましても、懲罰権が深く今まで吟味されておりません関係上、いろいろな見解が出るわけでありますが、要は院内の自律権である懲罰権というものと國民の公選によつて取得せられた地位であるという議員の身分を、どういうふうに重く考えるかということに帰着され、院内の自律権を強く考え、院内の秩序の保持を嚴粛に考える場合には、相当懲罰権の適用範囲についても、これを彈力性を持つて考えるべきであるという考えが出て参りますし、又國民の公選である議員の身分ということを強く考えますときには、懲罰権の範囲については相当嚴格に考えなければならない。又懲罰権の濫用が少数者保護に遺憾なる状態になる虞れがあるというようなことも考えなければならんということから申しますれば、懲罰権の適用範囲については、相当嚴格にそれを考えなければならんというようなことになるわけでありまして、いろいろ申上げましたが、事柄の性質上、又調査の進行過程であることから申しましても、いろいろな説が出ておりまして、帰一するところに到つていないことはむしろ当然かと思うわけでありまして、議員各位の御討議を願つて、更に御檢討を煩わしたいと思うわけであります。
#4
○委員長(太田敏兄君) 只今委員部長から述べましたのが、大体昨日までに研究しました結果の大要なのでありますが、これにつきまして一應皆樣の御意見を伺いたいと思います。今河野さんから述べられたことは全般に亘つておりますので、これは討議の便宜上、私が先に申しましたような問題を重点的に三つに区分しまして、第一に院内ということの解釈、これの問題からいたして、先ず意見をお述べ願いたいと思います。
#5
○大野幸一君 御説明を伺いまして、非常に有益であつたのであります。そこで第一の問題から私の意見を申上げますれば、憲法の院内の秩序という意味は、空間的において、やはり御説明のように、各議員の支配する建造物の内部、こういうように解釈するのが素直な解釈と私は思うのであります。それと、いわゆる一般警察権が議院内部に及ばないというその建前と相一致してそう解釈すべきである、いわゆる委員部長の空間的意味においては私はそう解釈したいと思うのであります。そこで空間的の問題と懲罰権の問題とに亘りましてそういう解釈を生ずると、いわゆる例示的に申されましたところの二三の点で、院内における行爲、例えば國会の召集のような場合、こういうようなことも懲罰事犯と書いてありますが、併しそれは私は空間的に院内の説を採つて、そうしてその以外に、特に規定のあるものについては、事が院外に関する場合であつても、これを強いて院内の秩序に影響あるからという意味で例示的にこれを解したものである。そう解釈して、その他の場合においては懲罰事犯はないものである。こう考えております。
 もう一つこれを追加いたしますれば、何と言つても民主主義國においては國民の信頼即ち投票を以て選挙せられて來たところの先程の特典と言いますか、國民主権の立場から我々同僚が同僚の行動を責めるにはその同僚の議員が國民から選出されて來ておるということに対して一歩を讓らなければならない、こう考えるのでありまして、こういう思想からいたしまして、議院の懲罰権というものはやはり嚴粛に解釈したいと思うからであります。
#6
○委員長(太田敏兄君) そうすると、大野さんの御意見は、原則的には議員が職権を行使する場所に限定する。それから例外的にはこの院内の仕事に関係を及ぼすような事柄については、院外で行われたことでも院内という範疇の中に入る、こういうことになるのですね。
#7
○大野幸一君 秩序と影響のある場合……
#8
○委員長(太田敏兄君) 院外で行われても、院内の秩序と影響のあることはその中に入る。それで大体今の大野さんの御意見を……。別に御意見ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(太田敏兄君) それから次に、時間的な関係でありますが、それにつきまして御意見をお述べ願います後会不継続という問題に関して。
#10
○大野幸一君 六十八條の「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」これは確かに、この前、法制部長の説明されたように、議案として提出されて議決に至らなかつた案件は後会に継続しない、こういう意味で、議案として提出されなかつたものについては、この規定の範囲外だということは御尤もでありますが、併しただこれが直ちにこの懲罰事犯の場合に適用あるかどうかということは、最初私はあるようにも考えましたのですが、今はこれは懲罰事犯については、あながちそう解釈することの必要はないかと考えます。その理由は、先程会期の切迫した瞬間に起つた事件、そういうような場合が継続的に増加されて來たような場合、そういう場合でも、例えば第二國会、第三國会、第四國会と、こういうように継続的になされて來た場合でも、第二國会の事犯を取つて第四國会に問題としてもいい、こういうように考えます。從つてこれは私は会期不継続の六十八條の説明はお説の通りでありますが、事が懲罰事犯に関する限りは、敢てこれに拘束される必要はないかのように考えます。
#11
○委員長(太田敏兄君) 他に御意見は……。速記を止めて。
   〔速記中止〕
#12
○委員長(太田敏兄君) 速記を始めて。
#13
○法制局長(奧野健一君) 今の問題は、場合が幾つにも分れるかと思います。即ち前の会期時代に懲罰事犯があつた場合に、後の会期でその事犯を取上げて懲罰に付託し得るかどうかという問題と、それから前会期からいろいろ継続してやつて尚この会期まで続いてやつておる場合に、この会期の分だけの事柄を取上げてそれだけを問題にし得るか、或いはその場合には前の会期の分も併せて懲罰の対象となり得るかという問題と、もう一つは、前の会期におけるまあ行爲と言いますか事犯については、直接の対象とはならないが、今会期における事犯の情状として、まあ参考としますか、まあ情状としてそれも含めて考えて懲罰として取上げ得るかどうかという問題と、三つに分れるかと思います。そうして又事柄の性質によりまして、或る議場を騒がしたというようなことは、むしろその会期の議場を騒がしたので、その会期で專属的に処置すべきであり、或いは後の会期で以てそれを取上げるということはどうかという問題も考えられますし、又國会の品位を傷つけたというような場合と、單に或る事犯……乱闘があつたという問題と、一緒に考えていいかというような問題、或いは又秘密にしようという秘密会議のあれを公表した。ところがそれは前の会期で公表したのであるけれども、それが分らなくて、後の会期でそういうことが分つて來たような場合には、それは前の行爲であるけれども、後で問題にし得るというふうなことも考えられるので、或いは問題は簡單に圧縮することはできませんが、結局前の会期の事犯を後の会期で問題にし得るかということが一番先ず原則的な問題になつて來るのであります。それと関連して先程言つたいろいろな場合があるという問題になると思います。
#14
○委員長(太田敏兄君) 御意見はありませんか。
#15
○法制局長(奧野健一君) 結局、更に具体的に申しますと、この会期だけの事犯が、仮にそれだけでは懲罰に價するかどうかというような問題でないにしても、前のいろいろな行爲と併せて取上げ得るかどうかというような事柄、併せて取上げないにしても、今会期の分だけを取上げるにしても、前の会期の行爲も参考として決定し得るかどうかという問題、それとも前の会期のことは全然これはその会期だけで解決すべきもので、後の会期で取上げるべきものではなくて、後の会期で起つた事柄のみを事犯として取上げなければならんものである。そういう実質的な意味で今会期に継続しないという意味を言つているのだろうと思うのであります。即ち苟くも会期というものは、その会期と後の会期は全然殆ど人格が違うに近いものと考えるならば、丁度衆議院が解散された場合に、前の衆議院と後の衆議院が全然人格が違うと同じように、会期が違うとそれに近く人格が変るのだということになると、前の会期の事柄は前の会期の事柄で、後の会期の事柄の分だけについて後の会期が処置し得るのだというふうに……從つて院の本面、或いは院の品位を傷つけるという、院というのがその会期の品位というので、後の会期の品位とは別だというふうなことが考えられるかどうかという問題に帰著すると思います。
#16
○大野幸一君 ちよつと法制局長にお尋ねしますが、例えば不召集の場合には、前國会に召集に應じなかつたからといつて、後の國会に議長が懲罰委員会に付託することができるでしようか。先程の御説明で例を挙げられた祕密漏洩の場合に、祕密漏洩したことが前國会の祕密を漏洩して、今國会に、前國会に祕密漏洩した事実が発見された場合には、今國会でもできるということでしたか。不召集の場合はどうでしよう。
#17
○法制局長(奧野健一君) 私の個人的な考えでは、その場合はもうできないのではないか。前の会期に召集されて應じなかつたのを、後の会期で処罰するということはできないように、まあ考えます。
#18
○委員長(太田敏兄君) ちよつとお尋ねしますが、祕密漏洩の場合はそれとは少し趣きが違うのですか。
#19
○法制局長(奧野健一君) 祕密漏洩の場合は、これはいろいろ議論があると思うので、公表しないというのは、その会期だけ公表しないという意味ではないのではないか。その会期以後でも公表されては困るという意味で公表しないということであるので、そういう行爲が前にあつた場合が今問題で、多少問題を違えましたが、どうも祕密漏洩というような場合には、祕密漏洩があつて、分らなくて後の会期で分つたというような場合は、やはり感じとしては取上げ得るのじやないか。從つてこの対象となる事犯によつて稍稍そこに違つたものがあるのじやないか。從つて議院の品位を傷つけるというようなことは、ただ議場を騒がしたその單独な事犯とは又別に考え得るのではないかという想像を持つております。
#20
○委員長(太田敏兄君) そうすると品位が傷つけられたというような場合は、その場合、いろいろの場合がありますが、前の國会、前の会期で傷つけるような行爲があつたが今度もあつたそういう場合はそういうことが継続しておると見れば、それを一連の問題として現在のものとすることができるか、前國会、前々國会では品位を傷ける行爲があつたが、現在の会期では全然なかつたというような場合にもやはり取上げ得るかどうか、そういうようないろいろな場合があると思いますが。
#21
○法制局長(奧野健一君) どうも品位ということになると、やはり國会が継続して人格が続いている以上は、その品位を汚された、或いは傷けられたということは、継続的な人格を対象として考え得るので、各会期各会期の品位というふうにむしろ区分すべきではなくて、人格が統一した議院としての品位というものがあるのじやなかろうか。そうしてその品位がいろいろ継続的に少しずつまあ傷けられて行く場合に、ただ初めの一、二の行爲ではそうでもなかつたが、だんだん度重なつて來るに從つて、議院としてはどうも体面を汚された、或いは品位を傷つけられたと感ずるに至る場合もあるのじやないかと思うので、品位というふうな……継続的な人格を対象とする場合と、個々の議場を騒がしたというようなことがやはり多少趣きの違うような感じもするというのであります。
#22
○委員長(太田敏兄君) そうしたしますと、時間的には、対象となる事犯によつて、或いは問題として取上げて行くのが会期中に限るようなものもあるし、それから又事犯の種類によつては、会期を超えてもこれを懲罰事犯として提起することができるというふうに解釈して……解釈という一つの説が成り立つのでありますが、これに対して御意見はどうですか。
#23
○大野幸一君 委員長のようにして、その場合はまだ実を言うと研究は未熟であるから、具体的な場合に遭遇して考えなければならん。こういうふうに留保して置いたらどうでしようか。
#24
○委員長(太田敏兄君) そうすると、大体はそういうような考え方でいいわけですね。尚その点は愼重に……。
#25
○大野幸一君 具体的な場合に檢討する。
#26
○委員長(太田敏兄君) 具体的な場合に檢討すると……今大野さんの大体御意見を一應の委員会の意向として、異議はありませんか。それで、実はこういう重要なことをこの際取急いで一つの結論を得ようとすることは無理な話でありまして、もつと愼重を期して十分檢討すべきであると思うのであります。ところが議長といたしましても、こういう懲罰事犯を取扱う上におきまして、いろいろ法規の解釈上に疑義がありますと、どのように措置していいか、取扱つていいか、ということにつきまして困るような次第もありまするので、実は先にも申しましたように最終的な結論と申しますか、決定版でなくとも取敢えず大体の本委員会のこれに対する解釈につきまして、中間報告的なものでもここでいたして置いたら、議長はこういう問題に対して職権を行使する場合の一つの重要な参考になりやしないかというような意味で、今回は一應の中間報告でもしたい、かように考えております。それで尚これらのことにつきましては後日更に継続しまして愼重に審査を継続、調査研究したいと思うのでありまするが、そういつたような事情の下に本日の結果を大体取纏めまして、中間報告を議長のところまで提出いたしたいと思つております。それにつきましては中間報告をするということに対して御異議ありませんでしようか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○委員長(太田敏兄君) そうしますと、中間報告の作成につきましては、大体只今いろいろ御発言のありました内容に基きまして、委員長の手許で適宜報告書を作成するように、委員長に御一任を願いたいと思います。
#28
○大野幸一君 ちよつと私希望したいのですが、これは第一回の懇談会のときに問題になりましたのですが、懲罰委員会はみずから懲罰事犯の調査をする責任がなく、議長、委員長若しくは動議によつて懲罰事犯が付せられてから後に懲罰委員会はその付託から活動を開始することには、この前の懇談会のときには大勢の方が異論なかつたようなわけです。その後、懲罰委員会はただ研究事項として、研究して置こうじやないか。今まで参議院が開かれましてから一度も懲罰事犯がないし、万一のときに困るからというので研究して置こうじやないかというので、やつて頂くと、こう了承しておつてよろしゆうございますか。
#29
○委員長(太田敏兄君) その通りで結構と思います。
#30
○大野幸一君 それから私はこの第三の内容です。この空間的、時間的、内容的の説明でありましたが、こういう感じがするのです。議院の品位を汚したる者、こういう場合の議「イン」の「イン」は、いわゆる参議院の品位を我々としては汚した場合、こういう場合とよく混同し易い観念は、一参議院議員としての品位を害した場合、こういう場合とが混同され易いのでありまして、一参議院議員としての品位を害した場合には懲罰の対象にはならないで、事が参議院全体の、いわゆる國会の一院である参議院の品位を害したという場合には、議院の品位を汚したもの、そこで仮に院外において刑事事犯に相当するような場合を我々が想起しましても、それは一参議院議員としての品位を汚したものであつて、議院全体の品位は、これによつて汚されておるものではないと思います。こういう点も一つ参考までに、今日申上げて置きたいと思うのであります。
#31
○委員長(太田敏兄君) この品位の問題につきましては、昨日も意見が出まして、例えば英國或いは米國等では、詐欺事件若しくは公文書僞造といつたような破廉恥罪に問われた。院外で破廉恥罪に問われておる。それを除名することができると、非常に品位の問題については廣汎な処置をやつておるらしいのです。ところが日本での過去における議会史上の慣例と申しますか、やり方は、極めて場所的には狹義な取扱をしておつたということで、こういつたことも今後における、國会運営の上におきまして、いろいろ研究すべき問題は多々あると思います。そういうものは、今日一日でそういう諸般の問題の結論を得るということは、いろいろ困難なものであると思いますから、今日のところは今会期も切迫しておりますから、過日議院運営委員会の席上で、もう一つの懲罰問題が付議されたときも、今懲罰委員会の方で、懲罰の適用範囲に関する調査ができておるそうだから、その結果を見て判断しようじやないか、というような話も出ておつたこともありますので、まあそういつた関係からしましても、愼重な研究をしますと、時日もかかりますので、一つの参考として一應の中間報告程度のものを出して置いたら、議長の方でも便宜じやないか、かように考える点もありますので、今日は委員会の審議としては甚だ不十分であると思いますけれども、その意味での中間報告の作成ということをして置いて、これを報告することを御了承願いたいと思います。
#32
○大野幸一君 理事はお二人おいでになるようですが、理事会を開いておいて、そうしてそのまま本委員会にはおいでがない。最初の墾談会にも理事がおいでにならないので、その墾談会の結果には無関心、やはり理事というものは委員会をリードして頂くものですから、理事を成るべく理事会の結果から、引続いて本委員会に出てやる。本日のごときは日曜で、定足数を欠くから是非出て來いということで我々は出て來た。出て來て見ると、理事の方はおいでにならん。こういうことでは甚だ困ると思います。どうか理事諸君にお傳え下さい。(「賛成」と呼ぶ者あり)
#33
○委員長(太田敏兄君) 承知しました。十分注意することにいたします。それではこれで散会いたします。
   午後三時四十四分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     太田 敏兄君
   委員
           大野 幸一君
           齋  武雄君
           大山  安君
           野田 俊作君
  事務局側
   参     事
   (委員部長)  河野 義克君
  法制局側
   局     長 奧野 健一君
ソース: 国立国会図書館
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