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1948/12/09 第4回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第004回国会 労働委員会 第2号
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1948/12/09 第4回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第004回国会 労働委員会 第2号

#1
第004回国会 労働委員会 第2号
昭和二十三年十二月九日(木曜日)
    午後二時十六分開議
 出席委員
   委員長 綱島 正興君
   理事 山花 秀雄君 理事 川崎 秀二君
   理事 中原 健次君
      尾崎 末吉君    大石 武一君
      倉石 忠雄君    三浦寅之助君
      久保田鶴松君    辻井民之助君
      山下 榮二君    大島 多藏君
      木下  榮君    赤松 明勅君
 出席國務大臣
        労 働 大 臣 増田甲子七君
 出席政府委員
        法務廳事務官  西村健次郎君
        労働政務次官  鈴木 正文君
        労働事務官   賀來才二郎君
 委員外の出席者
        專  門  員 濱口金一郎君
十二月八日
 委員松崎朝治君辞任につき、その補欠として鈴
 木明良君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 公共企業労働関係法案(内閣提出第六号)
 職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職
 業安定委員会委員の旅費支給額改訂に関し議決
 を求めるの件(内閣提出、議決第一号)
    ―――――――――――――
#2
○綱島委員長 ただいまより会議を開きます。
 昨日合同審査会におきまして、職業安定法第十二條第十一項の規定に基き、職業安定委員会委員の旅費支給額改訂に関し議決を求めるの件は原案の通り可決いたされましたが、本委員会におきましても、これを採決いたすのが妥当であると考えますので、これより採決に入ります。本件に関して原案通り可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○綱島委員長 御異議なきものとして、原案の通り可決いたしました。
 なお報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○綱島委員長 御異議なしと認めまして、さようとりはからいます。
    ―――――――――――――
#5
○綱島委員長 引続き公共企業体労働関係法案の質疑を継続いたします。中原健次君。
#6
○中原委員 前会に引続きましての質疑事項が三、四残つておりますので、そのことについて伺いたいと思います。まず最初に、第十九條の苦情処理共同調整会議の問題であります。これによりますると、職員代表二名並びに企業代表によつて構成されることになつておるようでありますが、これはこの法律案に一貫する一つの特徴的欠陷とでも申しますか、いわゆる組合側ないしは職員側の代表の選考方法の決定に、はなはだ非労働者的な選考がなされるような危險がひそんでおるのであります。從つてこの会議を構成する両者の代表者が選考された場合に、その代表の中のいわば勤労者の代表者に、眞に勤労者の労働者的利益を代表するに足るだけの者が選ばれるという確信がつくかどうか。この点について、次官の御見解を承りたい。
#7
○鈴木(正)政府委員 お尋ねの点につきましては、眞に労働者の代表となる人を自主的に選ぶ。労働者自身の手で選んでもらうということが、第八條その他前の方の條文と照しまして骨子になつておるのでありまして、それがどうしてもいろいろな関係で、一定の時期にうまく選べなかつたというような場合には、どうするかという手続もきまつておりますけれども、あくまでも法の建前は、そういう二段、三段の手続きにまつまでもなく、自然な形でもつて労働者諸君の代表が選ばれて行くということを、建前としておるのであります。それからあとの手続というふうなものは、規定はしておりまして、建前としては、そういつた段階にまで至らずに決定して行くという形で運営に当つて行きたい。またそういうふうに推移して行き得るものと思う。特に公共企業体といいましても、國鉄及び專賣関係の組合は、その実力、それから現在立つておる民主的な立場から考えますならば、おおよその線に沿つて所期の目的を達成されるのではないかというふうに考えております。御説のように、眞に労働者諸君を代表するような人たちが選ばれるということにつきましては、政府といたしましては、本來民主的に労働者諸君のお手で選ばれるのでありますから、干渉ということは、もちろんいたすはずはありませんけれども、極力政府側が、そういつた方面に不当な干渉がましいことはいたさないという態度は、もちろんとるつもりでありまして、中原さんが御心配のような点がないようにして行きたいと思つております。
#8
○中原委員 この点が本法律案の一つの特徴をなしておるわけです。というのは、「職員は、組合を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。」ということをわざわざ規定いたしまして、組合員、非組合員の対立要件をその初めにおいて形づくつておるところに、実は欠陷があるのであります。從つてこの両者の組合員並びに非組合員の代表者をもつて協議して、苦情処理共同調整会議の代表を選ぶということになりますと、われわれの経驗から申しますと、組合に入ることを欲せず、むしろ組合に入らないことをもつてよしとするような考え方を持つ勤労者は、しばしば非労働者的な感覚と、そういう性格を持つておるわけであります。從つてそういう性格と感覚がますますその間に助長されて、労働組合に対しては、むしろ対立的なものをだんだんに成育して行くというおそれがあるわけであります。從つてその結果は、いわば第二組合的なものを構成して行くという危險性を多分にはらんでおるわけであります。從つてそういうふうに、同じ一つの企業体の中で、あるいは職場の中で、働いておる勤労者が二つの道をたどつて行くという結果になることは、それによつて、おのずから労働者的な統一された條件の中へ、これらの勤労者が列を同じうして並ぶことができなくなつて來る。すなわち内部対立が当然釀成されて來るということが予想されるわけであります。從つてそういう関係で選び出されまする代表者が、はたして組合、非組合の両者の間に一致した結論を発見することが可能であるかどうか。これはしばしば混乱が伴うわけであります。そうなりますと、おのずからそこに代表者を二名選ぶとすれば、一名は組合の意向を代表する者、一名は組合の意向を代表する者、一名は組合の意向を代表せざる、いわば非労働者的な感覚を持つた代表者が選ばれて行くという結果が、また予想されるわけであります。さようなことになつて参りますと、これを押しなべて、いわゆる職員代表という美名の中には、二つの感覚、性格が織り込まれて來る。そうなりますと、企業を代表する二名と合せて四名の代表者をもつて構成したこの委員会は、比率から申しますと三対一、こういうような関係に陷つて参るのであります。從いましてせつかく苦情処理のための共同調整委員会を持ちながらも、その苦情処理委員会が、遂に労働者のためによき結論を見出すことが困難な状態になつて來ることが予想されるのであります。こういうことについて政府の方では相当関心を持つておいでになるかどうか。しかもこの法律案を御提出になられた限りは、相当その問題については心を用いられたことであろうとは思いますが、しかし結論から申しますと、この法律案をこれでよしとして御提案になられたとすれば、ただいま指摘いたしましたような欠陷については、一体どういう御見解でおられるのか。このことをあわせて承つてみたいと考えます。
#9
○鈴木(正)政府委員 まずお答えの前提として御了解をいただきたいのは、これは増田労働大臣もいろいろな機会にしばしば申し上げましたし、私どももそう思つているのでありますが、あえてこの公共企業体の関係の労働組合に限らず、廣く労働組合というものにつきまして、私たちは質、量とともに今日以上に強力な活動力のある組合に発展して行くということを、哀心からこいねがつておりますし、労働政策の一つの重要な面もそこに置いているのでありまして、中原さん方と多少組合自体の性格についての見方の角度は、かわる点があるかもしれませんが、極力今日以上に育成して行くということの立場においては同様でありますし、その組合は、これもしばしば大臣から申し上げましたように、極端な左右両翼に流れず、民主化された組合、こういうものを考えている。從つて私どもも、この法の運営に当りまして、組合の分裂と言うと大げさな言葉になるかもしれませんが、幾つかの組合がによきによきと出て來て、労働組合の戰線が分断されるというようなことは、心構えといたましては望んではおらないのであります。むしろその反対に、法はそういう場合を幾つか予定してそれに應じ得るような規定はいたしましても、私どもの考えといたしましては、でき得るならば、單一な強力な組合が質、量ともに発展して行くことをひたすら切望してもおりますし、そういう組合が出現して、民主化されて行くということが、労働行政の側といたしましても、あるいは公共企業体の運営に当る方の側としてもありがたいのであつて、そういう方法をとりたいと考えておりますということを、まず最初に御了解をいただきたいと思うのであります。それから考えますと、ただいまの御質問の内容でありますけれども、そういう中原さんの御心配のような場合も、この法案をごく平面的に読んで行つて、そうして特殊の場合を考えると、考え得られないのではありませんけれども、ただいま申しますように、國鉄関係、專賣関係の組合の実力と現在の内容、そうして私ども政府当局の考え方というものを総合いたしますときに、まず中原さんの御心配のような組合の分裂、それからどこに交渉の重点があるかわからない、組合に入らない側の職員の代表が、非常に強力な立場でもつてもう一つ現われて來るというようなことも、避けて運営して行けるのではないかと思つておるのであります。同時に組合自体の運動は、私どもの考えの根本におきましては、あくまでも労働者諸君の自由な意志のもとに、民主化された形の上に運営してやつていただきたいというのが建前でありますから、このことは労働者諸君及びその指導に当られる方の良識におまちするということが、やはり將來にわたつてのほんとうの労働対策だと思つておる次第であります。
#10
○中原委員 ただいま次官から御答弁を得ましたが、なるほど政府の当局とせられては、組合の正常なる育成発展をこいねがい、そのためにあらゆる方法を盡して遺憾なきを期したいという政府の考え方は、もとより私どもも了解できるのであります。しかし問題は、單に主観的に、あるいは観念的に問題をどのようにとりまとめられましても、動くのは現実の実体が動くのでありまして、從つてそれに対しては科学的な條件が附與されなければ、組合が正常に発展しない。組合を発展せしめるためには、労働組合に対しておのずから責任を持たしめ、労働組合自身が、自主的にみずからの責において事を決して行くという條件を條件づけて行くことが、組合の正常な育成発展をこいねごうための心構えであり、また対策であると私ども考えておるのであります。しかるにこの法律案は、一貫する欠陷として、組合を育成するのやら、組合を分裂せしめるのやらわからないという危險性を多分に内包しておる。この点については、少くとも今までの質疑應答の過程において、大臣との間には幾たびか意見を交換したことがありますが、ただいま私が特にこの問題を再び取上げなければならなかつたのは、もし苦情処理共同調整会議の代表選出に関連して、その代表が眞実に労働者の利益を代表して、いわゆる排他的な代表として、眞実にその使命を全うし得るだけの代表者が選び得るかどうか。この條文の示すところに從つて選考されますならば、結局組合と非組合との間に意見の一致を見ることが、しばしば困難に陷るのではないか。すなわち組合に加入することがえんぜないような勤労者というものは、みずから勤労者でありながら、しばしば勤労者的な感覚を持つておらない。勤労者的な感覚を持つておれば、もちろん勧めるまでもなく労働組合に入るものであります。しかるに入らなくてもいいという前提條件がこの法律案にある以上は、入らなくてもよろしいという側に立ちやすい危險性が、まだわが日本の労働者としてはないとは保証しがたいのであります。從つてそのようないわば非労働者的な立場から、この会議に参加する職員代表というものが、労働組合に対しては、労働者の代表として、眞に労働者を代表するための排他的な使命を全うし得るものではないということが考えられるわけであります。この点について、大臣も次官も御答弁とおよそ同一な御見解だろうと思いますが、私はこういう法律案を決定する前には、少くとも、單に主観的に問題を決するのではなくて、具体的に、客観的にこれを観察しながら、法律を決定すべきものではないかと考えるのであります。從いましてそういう本法律案に一貫する一つの矛盾の一番の根拠をつくつたものは、組合を結成しもしくは結成せずとか、組合に加入しもしくは加入しないことができるというような、一つのオープン・シヨップ的な取扱い方の中に、しかもこのことをわざわざ條文の中に明記したことによつて、組合に加入しないでも労働者の利益は守られ得るものであるという錯覚を與えることになる危險性が、多分に内包されておるわけでありまして、この点について、組合の育成という熱願を持つ立場から、はたしてこのような考え方が妥当な考え方であつたかどうかということについて、大臣の御見解を伺つておきたいと思います。
#11
○増田國務大臣 この点はもう中原委員とはしばしば質問應答を重ねたところでございまして、職員の代表者と書いてございますが、こういう書き方はたとえば九條にもございますし、その他至るところにあるわけでございまするけれども、要するにオープン・シヨップ制を確定した以上は、組合の代表者というふうには、立法の体裁上書き得ないわけで、こういうふうに相なつておる次第でございます。オープン・シヨップ制というものがいいか悪いかという議論は、中原さんがしばしばおつしやるところでございまして、労働協約の中にクローズド・シヨップというものを規定することが、日本の労働三法下においては許されております。しかし法律でクローズド・シヨップでなければならぬというようにすることは、合法的なこういう法律で、組合員にあらざれば職員たることを得ずということに相成る次第でございまして、これは團結をすることもできるし、團結しないこともできるのだから、そこは相当の問題であると私は考えております。われわれがオープン・シヨップ制の規定を置いたということは、憲法上から当然出て來る結論でありまして、こう書いたからといつて、組合を歓迎しないというふうに臆測されるのは、少し臆測が中原さんとしては過ぎやせぬか、立法の体裁としてこう言わざるを得ないという点は、どうか御理解願いたいと思うのであります。こう書いてございましても、われわれはもちろん健全な組合が発達することをこいねがつてやまない次第でございます。
#12
○中原委員 この條文の中に、わざわざ組合員たらざることを得るという條文を入れなければならぬところに、実は問題があるのであります。しかしその論はもう幾度繰返してもお互いに見解が違うわけでありますから、よろしいといたしまして、しからばそういうような形において選ばるる各代表というものが、はたして労働者の利益を眞実に代表する代表者となり得るかどうか。組合、非組合の両者が会議いたしまして決定する労働代表、すなわち職員代表というものが、ほんとうに労組的立場からの、排他性を持つことができるかどうか、このことについて大臣の確信のある御見解を承つておきたいと思うのであります。それは同時に、その次に続いて参りまする調停委員会の委員三名の選考の場合にも、同様な立論が成立つわけでありまして、この調停委員会の委員三名を選ぶ場合におきましても、いわゆる職員を代表する委員の選考にあたりましては、同じくその選考された者が、誠実に労働者の利益を代表し得るという確信がつきがたいのであります。しかしこの点については、いわゆる交渉委員によつて選挙されるわけでありますが、その交渉委員の構成もまた同様の性格の上に立てられているわけでありますから、これは交渉委員、苦情処理委員あるいは各調停委員、そのそれぞれの委員の選考の中に、一貫して盛り込まれた一つの大きな穴であるとわれわれは考えておるのであります。この点は、いささかも穴にはならない、眞に労組的な立場に立つて、排他性を持つた、よりよき代表が選ばれることができるという確信をお持ちになり得るかどうか、この点について承つておきたいと思います。
#13
○増田國務大臣 先ほど私が申し上げました通り、クローズド・シヨップとかいつたようなものは、これは團体協約で――團体協約というものは、これは一つの司法上の行為だと思つておりませんが、とにかく契約だと私は思つております。その契約の中にクローズド・シヨップの條項を置くということすら、アメリカあたりにおいては論議されている。結局タフト・ハートレー法という労働立法によつてこれを禁止したということになつておりますが、中原さん御承知の通り、日本ではクローズド・シヨップは許されております。つまり契約という法律行為をすることは許されております。ところが契約という法律約為でなく、公法という法律によつてクローズド・シヨップを規定するということは、私は憲法上の結社の自由、團結の自由という点から見て、よろしくないという意味合いから、こういうふうに規定されたものであるということを、まず一應御認識願いたい。これは御認識の上にも御認識願つている点でございまするが、それを前提としてお考えにならないと、出発点が違つて來ますから、その点だけはぜひ御了承願いたいと思います。そこでその他の書き方というものが、こういうふうに書かざるを得ないことになつておりますが、われわれは立法措置としてはこう書かざるを得ない。但し立法措置と行政措置は違うのでありまして労働行政の立場という見地からいたしますと、先ほど申しました通り、なるべく健全なる組合が育成発達することをこいねがつている次第でございまして、組合員たる職員の方が、労働者の利益なり、事情なりを代弁する適格者である、こういうふうに考える次第でございまして、もとより行政措置といたしましては、できるだけ組合員の中から職員の代表者なり、交渉委員なり、調停委員なり、仲裁委員なりを選ぶという方向に向つて行くべきものであると考えております。しかしこれはあくまで行政措置なり、行政方針の問題でございまして、立法的手続としては、こういうふうに書かざるを得ない。これは立法技術上こうならざるを得ないという点をどうか御了解願いたいと思うのであります。組合員たらずんば云々するを得ずということに、私は非常に疑義があると思う次第でございますから、結局きわめて自然にこうなると思うのであります。こう書いたからといつて、組合を歓迎しないのだ、分裂政策である、分裂主義者だというふうに推測されるのは、少し頭がよすぎる類推ではないかと感ずる次第であります。
#14
○中原委員 タフト・ハートレー法を例におとりになつたのですが、タフト・ハートレー法は、もうぼつぼつ否定されつつあるというアメリカの現状でもあるし、そういうアメリカのタフト・ハートレー法を採用した当時の事情において、もし日本の今日を論じているとすれば、まつたく本法律案のごときは、とんでもない逆行であると私どもは思うのです。ことにこの法律案は、組合の健全な育成をこいねがうにもかかわらず、組合をほんとうに成長させるための罷業権が拒否されている。また團体交渉権はあるというものの、その実際は、これは團体交渉権としては十全なるものではない。きわめて矛盾に満ちた手続をもつて選ばれた代表である。單に交渉権を持つだけであつて、労働者の組合自身の、あるいは労働者自身の團結の一つの力を、團体交渉に移して行くという正常な手続は、否定されているわけでございます。從つてこの法律案は交渉委員によつて交渉が進められているという、その交渉委員そのものが、再び吟味されて來なければ、眞実に團体交渉権を確保されているということが、言いがたい事情になつていると考えられるのであります。從つてこの法律案を相当りつぱなものとして説明づけるためには、せつかく非常に雄弁な大臣ではありますが、いかなる大臣の雄弁と透徹した頭脳をもつてされても、冷靜な第三者を了解せしめることはできない、いわんや労働者自身を了解させることはできない、私はこのように考えるわけであります。從いましてこの法律が命じまする各種の委員選考にあたりましては、このような手続をそのまま認めたのでは、労働者のためにするという言葉はひとつ取消していただきたい。こういうふうに考えるのであります。労働者のためにするのではなくて、ある一つの方針のために、いわば労働者を國の政治方針のもとに追從せしめるための、あるいは束縛するための、從つて労働者の自由な意思を抑えるための方法を合理化して、この法律の中に表明したものである。こういうことに、遺憾ながら、私はなると申し上ざるを得ぬのであります。從いましてこの法律案をこのまま万一成立せしめるというようなことがございまするならば、今後わが日本の労働組合運動並びに労働者の立場というものは、一体どういう地点に追い込まれて行くであろうか。こういうことについて労働大臣としては何らかの御考慮をお持ちになられたことはないのであるかどうか。この点を承つておきたいと思います。なお本会議の御事情もおありと承つておりますので、あと一点お伺いします。これはこの法律案とは切り離して、日程外になりますが、大臣の御所見を承つておきたいと思うことがあるのであります。それは昨日もちよつとお尋ねしたのでありましたが、それとはまた別の、すなわち給與問題に関連することであります。昨日全日本海員組合の代表が陳情に見えられましたが、その海員組合の代表の言うところによりますと、今海員はやむを得ずストの状態に入つておる。この船舶運営会所属の海員のスト状態に対して、政府はどのような努力をお盡しになられたか、すなわちそのストの原因を解決するため、給與問題を解決するためのあつせんなり、努力なりについて、どのようなお盡しになられたか。このことを承つておきたいと考えるのであります。
#15
○増田國務大臣 法律の関係は先ほど申し上げた通りでありまして、私がタフト・ハートレー・アクトを引合いに出したのは、タフト・ハートレー・アクトといえども、公法としてクローズド・シヨップでなくてはならないということが書いてあるわけではないので、私法上の契約としてのクローズド・シヨップの條項をいけないと言つているにすぎぬということを、ただ一例として申上げただけでありまして、今度労働関係調整法という公法ができ、しかもこの公法の対象は、やはり公法で設定つれておるところの專賣公社法なり、あるいは國有鉄道法によつてでき上る公共企業体の職員である。その労働関係を規定し、それを対象としたものである。そこで憲法上の結社の自由ということからいいまして、正面から結社の自由を拘束するような規定は置きがたかつたから、結局労働組合を結成することもできるし、結成しないこともできる。こういうふうに書かざるを得ない次第でありまして、決して組合自体のたくさんふえることをこいねがつたり、あるいは組合員でなくなることを欲つしたりという意味では絶対にございませんから、そういう前提で、労働者の味方である法律でないということを御議論されても困るのであります。われわれが公共企業体の勤労者の利益、福祉を保護するために、この関係法をつくつたという点を、どうか御了解願いたいのであります。しかもマツカーサー・レターの示す範囲において、できるだけ公共企業体の職員の福利、利益をはかつた労働関係法を法案として、提案したつもりでございます。
 それから海員爭議のことは、中原さん御承知のごとく、海員労働は運輸省の所管でございまして、こちらの主管でないものですから、間接にしか聞いておりませんが、今ある程度の案が得られまして、もしこの予算措置が関係方面で承認が得られるものであるならば、ある程度急速に解決がつきはせんかという見込みだそうであります。
#16
○辻井委員 第三章第八條の團体交渉に関する問題なのでありますが、この團体交渉の対象になつておりますものが、第一号から第八号まであります。一号には賃金、労働時間及び労働條件ということになつております。しかし労働條件というと非常に範囲が廣いのでありますから、私の考えといたしましては、以下二号から八号まで数え上げますと、團体交渉の内容になるものがまだほかにもありまして、そういうものも、当然この労働條件の中にでも含めて、対象にすることができると思うのであります。具体的に申しますと、衛生に関する問題でありますとか、業務上の災害保障、共済組合、厚生関係、あるいは組合活動に関する問題、こういうようなこともこの労働條件の項目として、その他の何号かの中に含めて、團体交渉の対象に取上げることもさしつかえなかろうと思うのでありますが、大臣の御意向を伺つておきたいと思います。
#17
○増田國務大臣 御説の通りでございます。
#18
○中原委員 それでは大臣が、本会議の方の御出席を迫られておるようなので、ただいま御質問をいたしかけた海員ストに関する問題については、時間をまた別にいたしまして、問題をあとに引きもどしまして、本法律案の内容の檢討について御質疑を申し上げたいと思います。
 第十九條の点は一應それで打切りまして、第二十一條調停委員の場合でありますが、この調停委員を選考いたします場合に、それぞれ名簿を交換して、交互に反対の委員を選考する、こういうことになつておると思うのでありますが、これはどういうことがねらいで、このような複雑な手続をおとりになられたのか、それをひとつ伺いたいと思います。
#19
○西村(健)政府委員 これは法制的な、技術的な点を御説明申し上げますれば、片一方職員の側の方が一定の適当と認める名簿をつくる、それを公共企業体の方で、その中から一名を選ぶ。それから逆に今度は公共企業体の方で名簿をつくり、その名簿につきまして、職員の方で一名を選ぶ。こういうことは、結局調停委員会というものは、第三者的な立場におきまして、円満なる調停をはかるという機能を果すべきものでありますけれども、その機能を果すためには、やはりお互いに、労働者側の選んだ者を企業者側の方で納得し得る、また企業者側で選んだ人も、労働者側で納得し得るというような人で構成した委員会である方が、事が円満に運ぶという趣旨で、こういう選び方をしたわけであります。從來のわが國の委員会の委員の選び方とは非常に異なつたやり方ではございます。
#20
○中原委員 考えようでは、はなはだ相手側の意思を尊重いたしまして、両者の円満な解決に、より役立たしめるための委員を選考するというような、説明づけにはなるかと思いますが、しかしここで考えなければならないのは、職員側が選びました候補者というものが、たとえばここに三名なり四名なりの候補者が選ばれるとすると、その選ばれた候補者は、先ほどから私が触れておる点でありますが、組合員と非組合員両者の立場から協議して選んだということになるわけであります。そういたしますと、その候補者はかりに四名を選んだといたしまして、その四名の候補者の中で、二名は明確に組合意識を持つた、すなわち労働者的感覚を持ち、また労働者的性格を持つた労働者が選ばれた。二名はそうではなくて、労働者的ならざる感覚を持つた者が選ばれる、こういうことになつて來る場合が予想されるのであります。そうなりまして、いわば労務者のためによき候補者、あるいははそうでない候補者と、四名選ばれて出ましたときに、その中から反対側の企業者の委員がこれを選ぶということになりまると、これはいうまでもなく、企業者側の方に有利な都合のよい代表者が選考されて行くという結果が予想できるのであります。しかも企業家側の方からも名簿を出すのであるから、いいじやないかという御説明があるかもしれませんけれども、企業側の方は、これはあくまで企業者の立場を代表することはいうまでもない。そうすると、だれを選ぼうとも、それは企業者の明確な立場に立つた代表者というような予想がつくのであります。從つてそういう交換関係において選ばれた委員というものは、かりに一名ずつ二名選ばれましても、二名とも、これが非労働者的な代表者であるというような結果に陷るのおそれなしとせぬのであります。こういう予想をつけることがむりだと、もしお考えになられるならば、どういうふうにむりであるか、その点について御見解を承つておきたいと考えるのであります。
#21
○鈴木(正)委員 中原委員のお尋ねになりました候補者は、條文にありますように、交渉委員が選ぶのでありまして、その交渉委員は初めの方に立ち返つて考えますると、先ほどもお答えの中にありましたように、私どもといたしましては、主たる中心的な組合の中から選ばれている人たちが、これに当るという結果を予想しておりますので、從つてこの交渉委員によつて選ばれるところの候補者自体は、二人とも組合もしくは組合主義に密着した人が選ばれるものというふうに考えております。ただ極端な場合、單に平面的にこういうような場合というように、突き詰めて行くと、中原さんのおつしやつたような場合も一つのケースとして、事例として考えられる余地さえないというほどのことはないかもしれませんが、しかし現実には、今申しましたような形でもつて、組合を中心とし、あるいはほとんど組合を代表する人たちの中から選ばれるということになると思うのでありますし、また私どもも運営において、そういう成果をあげたいということを考えておるのであります。
#22
○中原委員 主たる組合は、組合員以外の職員の代表者と協議して交渉委員を指名する。そうなると、やはり結論は、主たるというところを御強調になられましたが、なるほどそれは答弁としては正鵠かもしれません。しかしながら主たる組合がほかの組合以外の職員と協議してきめるのでありますから、そのきめられた結論は、必ずしも純粹な、組合的な立場から選ばれたものということが言いにくいのであります。從つてそういう交渉委員によつてこの候補者が選ばれるということになつて來るのであるから、私の指摘いたしました点は、決して單なる杞憂ではないのであります。むしろその見解こそが、ほんとうは適切なものでありまして、そういう私どもの指摘いたします矛盾点を、政府の方でお氣づきになつておらないとは、私はほんとうは思わぬのであります。そういう点をお氣づきになつておられながら、なおかつこれを法律案として上程したところに、はなはだ言い過ぎかもしれませんけれども、政府の性格が現われておるのではないか。やはりものの考え方には、何といたしましても中立性はないのでありまして、いずれかの側に立たしめられるのが必然である。そうであるならば、遺憾ながら政府は、少くとも吉田内閣に列せられるる各位は、ものの考え方がもはやその点に固着しておるのではないか、そういう点に固着し、固定しづけられておるがゆえに、この矛盾点がどうしても納得し得られない。從いましてもしそのことを知悉されながら、これを提案されたとすれば、一層私たちから申しますると感心できないし、もし知悉しない、そういうことはいささかも氣づかない。ほんとうに心の底から純正の氣持で、このことを妥当であると主張し得るならば、もはや感覚そのものが、そこの線に落ち込んでおるというような結果になつておると申し上げるよりほかに、言葉がないのであります。從いまして私どもは、ほんとうにこの問題に対して、労働組合の健全なる成長をこいねがい、労働階級の経済的な、社会的な各種の権益をより十分に保権して行きたい、いわゆる書簡にいうところの、労働者の福祉のために盡すということを考えておいでになるのであれば、この点ははなはだ遺憾ながら、矛盾をそのままに過したのでは、それに対する答えが出て参らないということになることを、指摘申し上げたいのであります。從いましてそういうふうな段取り、手続で選ばれました委員が、さらに第二項の三号で、第三委員の選衡をするわけでありますが、從つてそういう関係で選ばれた第三委員とは、一体どういう性格のものが出て來るであろうかということも、また予想にかたくないわけでありますそうしますると、職員を代表する委員も第三の委員として選び出した委員も、はなはだ遺憾ながら、労働者のために十分その使命を果し得るところの性格を持つことができない。もちろん第三委員の場合は、いわゆる中立性という意味に考えられておることであろうと思いまするが、それにもかかわらず、それは遂に中立性を維持することがむずかしい、いわゆる勢力関係において、遂にこれは企業者的の立場に、この三人の委員がほとんど堕してしまうという結果に陷るのではないか、このように私は思うのであります。從いまして第三委員の選考の結果も、またそういう予想がつくのでありまして、善良なる中立者というものが、実際はないということが考えられます場合には、なおさらのこと第三委員というものは、当然企業者側にくみする委員であるということは予想にかたくない。しかもこの委員の持つておりまするいろいろな選考上の欠格條件等から考えてみましても、しばしばそういう弊害をもたらすという結果になるのではないか、このように私は考えるのでありまするが、政府として、この第三委員の選考は、公正にでき得る、公正な結論が出るというふうにお考えになられるとすれば、その理論的根拠はどういうところにあるか、このこともあわせてお伺いしておきたい。
#23
○賀來政府委員 現行の労働組合法におきましても、労働委員会は全体として、一体として中立性を保つのであるが、労資双法の利益を代表するものを得まして、そうしてその労資双方の承認を経ましたところの中立委員を、第三者委員に委嘱するということになつておるのであります。これは立法当時から、また施行後今日までにおいても、ただいま中原委員のおつしやいましたような御意見は、各方面でも論ぜられておりましたし、また実際の運営の結果から見ますと、第三者委員というものは、ある場合には労働者側の利益に対して強く同調の形をとられたし、場合によつては使用者側の利益に対し、あるいは理論に対し同調を示されたというようなこともありまして、結局は、いわゆる第三者と申しますか、中立というものはないのではないかということも言われ、かつまたある場合においては、さように見られるような結果になつたことがあるのであります。しかしながら、さようでありますけれども、今日までの労働委員会は依然全体としての中立性格といいますか、中立的な性格は保ち得て参つたのであります。そこでやはり労働組合法においてのさような精神をとつたというのが、この法案の趣旨でありますが、労働組合法と異なる点は、労働組合法においては、御承知の通りに労働者側の利益を代表する者は労働者側で推薦し、使用者側の利益を代表する者は使用者側の推薦によつて、そして行政長官が候補者を示して、両者の同意を得てきめる、かようになつているのが、この法案においては、さらにこの調停委員会が運営上スムースに行くことを予期して、双方が納得ずくの委員を出して來る。またその納得ずくで出た労働委員が第三者の委員を選ぶ、かようなことになつております。從いましてわれわれとしては現行の労働組合法の精神及びその労働委員会構成の理論を、この公共企業体労働関係法にも持つて参りまして、また労働委員会が現在適当に運営されていることによつて、この法案の調停委員会においても、より一層適性に運営されるもの、かようなことを予定いたしておるのであります。労働組合法においては行政長官が候補者を選んでやるのでありますが、この法案においては、両者が選択するということになつているだけ、組合法よりもなお合理的に運営できるかように予期している次第であります。
#24
○中原委員 労働組合法の精神にのつとつてできているということになりますと、これはまたいろいろ議論が出て來ると思います。私はむしろ労働組合法の精神を否定するという性格の上に立つて、この法律案ができたものと理解せざるを得ない点が多々あるのです。ですからせつかくの答弁でありましたが、それはとんでもない、いわば一つの歪曲であつて、ほんとうに公正な立場からの御説明とは受取りがたいのでありますが、かような議論はやめて、ここに私は第二十四條の調停の開始の問題に触れてお尋ねしてみたいと思います。
 この二十四條に示されたところによりますと、調停開始の要件が、はなはだ納得しがたいものを内包しているわけであります。特に大臣が調停委員会に調停を請求したときは、ただちに調停に着手できるようになつておると解釈するのでありますが、これはこの大臣の調停を必要とする認定というものが、相当この場合問題になつて参るのではないかと考えるのであります。この点について、その妥当性がいずれにあるかということについての御見解を承つておきたい。
#25
○賀來政府委員 第五号に大臣請求のものが出ておりますが、これはまた中原さんに対しましてこういうことを申し上げては失礼でありますけれども、説明の順序からいたしまして、やむを得ず申し上げるのでありますが、御承知のように労調法におきましても、公益事業に関しましては、労働大臣が調停請求ができることになつておるのであります。これは労調法の運用の場合におきましても、しばしば問題になるのでありまして、所管長官がかような権限を持つておるから、いつでも都合のよいときにかつてにできるが、それは不都合ではないかということは、よく言われたのであります。しかしあの労調法の運用の場合に例をとつて、かりに電産なら電産という例をとつてみますと、ずいぶん関係方面、たとえば電氣事業の行政運営の立場にありまする所管廳からは、すみやかに調停を請求してくれろと言われますが、労働省の立場といたしましては、労調法の精神を考えましてあくまでも労働関係の調整というものは、労資が自主的に行うのが建前である。かような交渉がうまく行われておらずして、まだ十分話合いがなされておらないのに、いきなり強制調停という形にするということは適当ではない、かような建前で運営をして参つたのであります。本法案におきましても、第一條におきましては、この労調法の精神は取入れておるのであります。すなわち第二項におきまして、できるだけこの紛爭防止、かつ主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を盡さなければならない、ということを関係者の義務といたしておるのであります。從いましてその関係者はこの第一條の趣旨からいたしまして、最大限の努力をせられることと思つております。また最大限の努力がないのに、またかような規定がありますのに、第二十四條の五号の適用をするということは、適当でないと考えるのであります。從つてまずどうしても第一には、両者の自主的の交渉にまつ、両者が最大限の努力をして、解決するように盡すということを期待いたしておるのでありますが、問題によりますと、さようなことでは片づかないという場合が、今までの例から見ましても相当あるのであります。組合側から申しましても、なかなか第三者の調停を入れようとしない、また今までの例から申しましても、使用者側がそれに應じようとしないということが、相当例があるのであります。私も中労委におりましたときに困りましたのは、どちらかというと、使用者側の方が調停委員会の調停に應じないという例の方を多く経驗をしたのであります。さような場合においては、労働不安というものを早期に解決するということが、また最も必要でありますので、さような場合には、やむを得ずこの大臣の請求をやる。さような運営にいたしたいと考えておりまするし、またさように運営せられるものと予期いたしておる次第であります。
#26
○中原委員 いろいろな現象もあるかと思いますが、少くとも官廳の調停請求権というものは、相当愼重を期さなければならない。もちろん実際の運営としてはそうであるという御説明でありましたが、そのためには、やはり一應の條件がこれにつけられることが妥当なのではないか。実際の運営はそうでないという御説明にもかかわらず、そうでないこともまた可能であるわけでありまして、そのことがまず法律からいうと、一つの欠陷ではないかと考えるのでありますが、こういう点については、少くとも大臣が調停を請求する際には、これこれの成熟した條件のもとに初めて大臣の論求権は行使される、こういうことになることが適当なのではないかと考えるのであります。ことに労資両方の場合で、ただいま特に御強調になられましたように、かえつて資本家側の調停に應じない場合の方が多い。これはそういう場合もあるいは必ずしもないとは私も思いません。しかしながら経営者側の方がかえつて調停に應じないというような実情の起つて來るところに、わが日本の労働行政が、労働者をほんとうに十分保護していないということを、裏書きするものがあると思うのであります。というのは、爭議が長引けば長引くだけ、経営者側が有利になるというようなことはほんとうはあり得ない。しかるにかかわらず、経営者側が有利になるということは、そこに有利ならしめるような條件が條件づけられておることを物語るものでありまして、これについては労働行政の根本的な一つの議論を必要とすることになつて参るのであります。すなわちわが日本の労働階級が、それだけ不利益な立場に制約づけられておるということを意味するのであります。從つて不利な立場に制約づけられておる労働階級ならば、なおさらのこと、一應憲法が規定いたしましたように、いわゆる労働権を確認すると同時に、團体交渉権、團体行動権等々の、より一層の保障が必要になつて参ると思いますし、ことに基本的な人権の問題についても、一層これを眞実に確保するための條件が必要になつて参ると思うのであります。言いかえると、労働階級の攻勢力というものが、しばしば別の面から制約づけられておるところに、待つておれば資本家側が有利になるという條件をつくり上げて参つておると考えるのであります。しかしそういう労働行政の基本的な問題についての議論は、ただいまいたしましてもいたし方ないと考えるのでありまするが、このことが一應前提として、この問題についてもお考えが願いたい。從つてこのように労働者の立場が非常に弱い條件に押しやられて行くような立法がなされた場合に、なおさらのこと、ただいま御指摘になられました、経営者側がむしろ應じないという場合が多いというような特殊性を持つわが日本の労資関係においては、その立法はますますその條件を強化しつつあるということに相なるわけであります。從つて労資ほんとうに自由にして対等なる立場において、すべての事柄が決せられておらないという現実に、なおさら拍車をかけて、これにわくをはめて、労働階級の行動性の自由を緊束するというような立法の取扱い方というものは、これは何としても一つの逆行でありまして、わが日本の民主主義的な諸條件の成熟をこいねがつておる段階としては、きわめて遺憾千万な法律案であるということを指摘せなければならぬのであります。
 さて私はここで続いて伺いたいのは、二十五條に「この章に規定するものの外、調停委員会に関して必要な事項は、政令で定める。」とあります。大体政令できめれば非常に簡單であります。いつの場合でも政令で簡單にとりきめられるような構成になつておりますが、この政令できめようとする必要な事項についての構想といいますか、大体どういうふうな問題をこの必要な事項の中に考えておいでになるか、一應腹案がありますれば、その腹案をこの場合伺つておきたいと思います。
#27
○賀來政府委員 まだ具体的には考えていないのでありますが、大体この法案自体は、現行の労調法の大部分をこちらへ持つて來るような状況であります。労調法におきましては、関係者を呼び出しますときにはどういたしますとか、その旅費はどういうふうになつておつて、どうするとかいうようなことを政令、つまり政行令できめておりますし、また調停案を公表いたしますときには、どんな手続であり、方法であるというようなことを規定いたしておるのであります。大体の考え方といたしましては、さようなことを労調法の施行令に準じたような意味合いにおきまして、この運営に関しまするさような必要な事項を決定いたしたい、かような予定をいたしておる次第であります。
#28
○中原委員 続いて第六章仲裁の二十六條についてお尋ねをいたしたいと思います。この仲裁委員会の委員の選考の方法でありますが、これは一應労働委員会がこれに関與しておるようでありますので、何分か中立性を確保する点においては、理由づけができるかと考えるのでありますが、この仲裁委員会の委員の任期は、まず三年とたしか拜見しましたが、三年の任期で別に御不便はお感じにならないかどうか、この点をお伺いいたします。
#29
○賀來政府委員 この三年ときめましたのは、現在の労働組合法の委員が一年になつておるのであります。その運営の経驗から見ますると、労資の代表者にとりましては、一年でもさほどその利害に影響する点はないようでありますが、この第三者委員につきましては、相当経驗も要するようでありますし、一年では短か過ぎるという議論が現在あるわけであります。さような意味合いから、もう少し長くしなければいけないだろう。ところで四年がいいのか、五年がいいのか、二年がいいのかというふうな議論が出て参りますが、現在各種のかような委員において、たとえば公安委員のごときは多分三年だつたと思いますが、こういう例からいたしまして、一應三年ということにいたそう。三年でありますならば、今までの経驗から見ましても、各種の委員の状況から見ましても、大体これが当を得た年限ではないか、かように考えております。ただ、いきなり三年で三人ともかえるということは困るというふうな意味からいたしまして、附則におきまして、これを一年、二年、三年と当初の委員は、やりました。そうして三人が順次大体全部がかわるということのないようにいたしておる次第であります。
#30
○中原委員 この委員会の委員の任期が長いということは、一つの経驗を経驗させるためには、ある程度の時間がいるということも、もとより了解できますが、三年という日子は必ずしも短かくない。もしこの委員が非常に公正を欠く。特にその公正を欠く書き方が、労働者にとつて非常に不利益な取扱いをする、こういう場合が起つて來ることがまた予想される。そのときに罷免権の問題で、罷免権は政府がそれを持つておるようでありますが、労働者側には別に罷免権らしいものが発見されないのであります。これはどういう御解釈でございますか。
#31
○賀來政府委員 いろいろ研究いたしたのであります。公共企業体労働組合の性格並びに公共企業体の性格ということも考えましたし、また労働大臣の立場におきましては、やはり労働者の経済的福祉の向上ということを考える責任があるわけであります。さような意味におきまして、この仲裁委員というものはあくまで中立的な立場をとらなければならない。どちらに偏するということがあつてもいかぬのであるから、労資双方にさような罷免権を與えるというよりも、行政官廳としての責任を持つております。内閣総理大臣が、責任を持つて罷免をするということが、適当であろうということで、かような立案をいたした次第であります。
#32
○中原委員 内閣総理大臣あるいは関係大臣が、ほんとうに公正な中立的なものであり得るかどうか。これは私は必ずしもそうであるとの断言は、まさか当局においてもなされないであろうと思います。たとえば、ものをわかりやすくするために具体的に申しますが、吉田内閣総理大臣が、はたして中立的な立場に立つて事を今までなされたかどうか、今後もまたなし得ると考えられるかどうか、こういうことになつて來るわけでありす。労働階級の立場から申しますと、古い問題を引例してはなはだ遺憾でありますけれども、たとえば労働者に対する不逞呼ばわりのその言辞を、いまだなお改むるところなく、むしろそれをもつて当然として、りくつづけるための理論の内容を、ますます強化しつつあるというような点もあるわけであります。そういうことを想像して考えますならば、局長の御答弁に、両者の権益、経済的あるいは社会的利益を考えなければならないという立場に立ちながらも、実は必ずしもそうだとは言いがたいという結論が出て参るわけであります。從つてそういういわば階級的立場に立つておる大臣、あるいは総理大臣が、ほんとうに委員の罷免にあたつて適正妥当な取扱い方ができるかどうか。私どもから申しますと、それはうなずけない、從つてこの法律に対して労働者はいわば納得せない、どのような弁明どのような説明をもつてせられましても、労働階級はごもつともである、同時にまた信頼し得るとは、おそらく労働者的な意識を持つ者といたしましては、だれ一人として了解をいたし得ないであろうと私は思うのであります。しかもこの罷免権の行使の問題について銓議してみますと、はなはだ危險な点が多々あるのであります。たとえば「委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認むる場合においては、内閣総理大臣に対して委員の罷免を求めることができる。」こういうことになつておるわけであります。その認定というものは一体どこに基準を置くかということが、はなはだ危險をはらむわけでありまして、心身に故障のある場合というのが一番最初にありますが、この点は一應そのままに見送るといたしましても、後段にある規定のごときは、はなはだ危險性を内包しておるということを申し上げなければならぬと思うのであります。從つてそういう前に指摘いたしましたような感覚と、あるいはそういう階級的立場、あるいは性格を持つ大臣、並びにこれを行使するところの総理大臣が、はたしてこれを妥当適正に認定し得るかどうか。これはしばしば労働階級としては危險を経驗させられるのではないかと私は思うのでありますが、これについての答弁を求めることはあるいはむりかもしれない。少くとも吉田内閣のもとに職を一應持つておいでになる政府の委員各位、あるいは次官にこのことのほんとうの大胆率直な御意見を求めようということがむりであると私は思いますが、それがむりであると言わねばならぬような事情を内包しながら、こういう法律案がつくり上げられたことは、何としても納得しがたい点であると思うのであります。この点について、みずから良心に顧みてほんとうに何ら恥ずるところなく、この二十九條の運営は適切妥当に行使されるということを明言なされ得るかどうか。この点を一應これは次官にお伺いいたします。
#33
○鈴木(正)政府委員 これは形式的に申しますと、内閣総理大臣が辞職をさせると言いましても、それは明らかにここにも書いてありますように、仲裁委員の報告に基いて行う。その仲裁委員は労働委員会から選ばれた人たちであるという意味でありまして、この段階におきましても、総理大臣は直接的に独自の見解でそういつたものを選ぶという形にはなつておらないのであります。形式的にも、この段階におきましても、あくまで中立性を保持する労働委員会関係の人たちの意向が報告の基礎となつて、それに基いて辞職されるということになりますので、中立性というものは維持されて行くと考えます。しかしこれは形式的の点でありまして、ただいまの中原さんの御質問の中心は、むしろあとの方にあつたと思います。労働大臣にいたしましても、あるいは運輸大臣にいたしましても、特に労働大臣は、しばしば委員会及び本会議を通じまして申し上げておりますから、私どもといいますか、労働大臣が抱懷しているところの、労働組合を衷心から育成して行きたい、そしてこれを中心として労働行政を展開して行きたいという考え方と、その熱情につきましては、屡次の質問應答の中を通して、一應御了解をいただき得たと私たちは思うのであります。この場合におきましても、私ども労働大臣を助けておるスタツフといたしましても、労働大臣自体といたしましても、吉田総理大臣をして、その中立性を疑わしめるような判断を起させる報告をいたすことは、絶対にございませんということだけを申し上げて御答弁といたします。
#34
○中原委員 次は二十七條の委員の欠格條件の項であります。欠格條件が六箇項目にわたつて規定されておりますが、なるほど欠格條件というものは、これはまた必要であると考えております。ただ問題は、今回わが日本の労働階級は、いわゆる敗戰後、廃墟の中からまつたく文字通りはい上つてここに到達いたしておるのであります。從いまして労働組合運動の正常なる成長、発展並びに労働者の正当なる権益を擁護し、これを主張いたしますためには、しばしばいわゆる有識者の協力を必要といたす場合が多いのであります。從つて労働者的感覚と、あるいは労働者的性格に相通ずる知識人の協力を求めることの必要は、今日わが日本の労働組合運動の現状から考えまして、きわめて必要なことであるわけであります。從いまして、かような見解から考えて参りますと、欠格條件として指摘されておりまする中の第三あるいは第四項に、國会または地方公共團体の議会の議員あるいは政党の役員というような者が指摘されておるわけでありますが、むしろ進歩的な知識人が、一番この中に包含されておることが考えられる。もちろん全部がそうであるというのではありません。だがこの領域の中には、進歩的な知識人が相当部分包含されていることが考えられるわけであります。從いまして仲裁委員会の委員は、常に公正なる中立者でなくてはならぬとはいうものの、その公正なる中立的なものであるということの意味は、何事にも無感覚という意味であるわけではないと思います。すなわち少くとも私は、鋭い一つの時代感覚を持つということが大切なものではないかと思うのであります。その時代の感覚を鋭く具有しておる者ということが、仲裁委員会の委員として最も適当な対象であると考えられます。そうであるならば、この第三、第四に指摘されておりますような範囲に、おそらく包含されるであろうところの適正な仲裁委員が、この條件によれば遂に選ばれない。こういうような結果に陷るおそれがあるのでありまして、少くとも――私はそう思つていないが、政府の御説明のように、労働階級のほんとうによき成育のために盡そうとしておるというのであるならば、きわめて善意的な立場から考えるならば、このことについてもまた一應の考慮があるべきものであると考えるのであります。從いましてこの三並びに四に指摘されておりまする欠格條件なるものは、どういうふうな御解釈で、これをここに列記されたのであるか、一應承つておきたいと思います。
#35
○賀來政府委員 御意見のように、この法案の予期しておりまするところは、すみやかに労資の関係を調整して、業務運営能率をあげたい。それがためには――またこの法案において労働者に対しましては罷業権の禁止もいたしておる。かような状況にありまして、どうしても公正なる判断のもとに労資の関係調整をやらなければならない、それがためにこの仲裁委員制度を置いておるのであります。これは御意見のように、この仲裁委員というものは、識見も持ち、また経驗も十分有するとともに、時代感覚も持つておることが必要であることは、われわれ同感申し上げる次第でありますが、ただこの仲裁委員は、さような任務を持つておりますとともに、審判官的な、あるいは裁判官的な立場も持つのであります。最後には力をもちまして一つの審判を與える、かような立場を持つておるわけであります。從いましていかなる政党からも、独自の立場をもつて判断をして行かなければならない。それから事務的に見ますと、國会の皆さん、あるいは地方公共團体の議会の議員などは、この國会法によりますと、かような委員にはなれないことになつておりまするし、この仲裁委員会の委員は、相当多忙であろうと思われまするので、國会の議員とを兼ねていただくことも困難であろう。これは重ねて申しまするが、現在のような状況下におきましては、事実経驗があり、かつまたそれだけの識見を持ち、あるいはまた時代感覚を持つた優秀な人が多く國会、地方議会、あるいは政党の役員になつておられるので、これがために、仲裁委員の優秀なる人を選択することについて困難であろうということは、なるほどわれわれも考えられますけれども、さような意味合いにおきまして、この三項、四項は置いた方がいいと考え、また置かざるを得ないような事項として並べた次第であります。
#36
○中原委員 続いて第三十六條であります。第三十六條によりますと、「仲裁委員会が第五條違反の行為があると決定したときは、その公共企業体に対しその行為の取消を命ずることができる。」という項であります。これは一應企業体の誤りに対する、一つのいわば制裁的な條文とも考えられまするが、このことについて、かつてたしか同僚の辻井委員から御質問がありましたときに、いろいろ御答弁がありました。從つてその重複は避けます。もとよりこういう場合に、状態を元に復せしめるということは、あまりにも当然のことでありまして、このことについてはもはや議論の余地は毛頭ございません。しかしながらその場合に、損害賠償を民法の手続によつて云々という御答弁があつたと思いますが、これを民法の手続による、その手続に讓るのではなくて、少くとも本法の中に損害賠償に対する方式を決定しておくということが、より親切なる取扱い方ではなかろうか。わざわざ別個に、民法上の手続によらなければ損害賠償の請求ができない。こういうことでは、はなはだ不十分、あるいは不親切なる取扱い方ではなかろうか。こういうふうに感ずるのでありますが、この問題に対する損害賠償の権限を、法律的にこの立法において保障するという手続をなぜおとりにならなかつたのであるか、このことについての御見解を承りたいと思います。
#37
○西村(健)政府委員 お答えいたします。中原委員の御質問の御趣旨ごもつともなのでございますが、この仲裁委員会の、三十六條によりまする、いわゆる取消しの命令というのは、それはなるほど公法上の命令でございますが、それは企業体と職員とのいわゆる雇用関係と申しますか、私法関係について――すなわち取消しと申しますと、原状回復を命ずる場合もありまして、それを命ずるのでありますが、結局残る問題は、公共企業体と職員との間のいわゆる私法関係である、從つて普通の民事上の手続でなしに、ある場合においては、損害賠償を訴えることもあるということを、この前お答えいたした次第であります。
#38
○中原委員 労働者に対します場合は、立ちどころにいろいろな権益を剥奪することができるようになつておると思いますが、経営者側のそういう間違いに対して、しかもそれが悪意であろうとも、別ににこれに対して強制力を加えることができないということでは、はなはだ片手落ちの感があると思うのであります。なるほど労資双方間の契約上の問題であるにいたしましても、こういうふうな場合には、労働者は立場が弱いのでありまして、押しつけられたままに、泣き寝入りして行くというおそれがしばしば考えられる。從つて、ことにこういう第五條違反のような取扱いをした場合には、その間の時間的な一つの損害を受けなければならない。しかも時間的だけじやなくて、物質的にも大きな迷惑をこうむらなければならないのであります。そういうようなはめに陷つた場合に、それに対して経営者側が責任をとらない、またとらなくとも済むというような形に、つまり両者の自由なる意思によつて決定すべきだというような取扱い方をするということは、この法律が労働階級に対して十分の考慮を拂つていないということを、みずから私は暴露するものであると考えるのであります。
 この点は何としても明確に法の中において、それだけの責任を経営者側に負わしめるべきものではなかろうか、私はあくまでもそのように考えます。從つてこの法律案がそこまで手を十分及ぼさなかつたということは、單なる不注意というよりも、むしろそこにこの法律案の一つの階級的性格がある。使用者階級的――と言うと、ちよつと言葉がおかしいのでありますが、いわる労働者に対する資本家階級的の一つの立場があるから、そこにそういうことが、平氣でなおざりにされておるのであるということに相なると私は思うのであります。この点について当局はどういうふうにお思いになられるか。それでもなおかつ両者がかつてにやればそれでよろしい、こういうふうに思われるのか。ここにこれを規定することが企業者の企業権を侵害するとでもお思いになるのか、この点について一應伺つておきたい。
#39
○西村(健)政府委員 今中原委員の御指摘になりました点で、労働者の方はあらゆる権利を失うということですが、これはおそらく第十八條の点を御指摘になつたのだろうと想像されます。この場合においても、あくまで私法上の関係の終末をつけるということにすぎないのであります。從つて第三十六條につきましても、先ほど申しましたように、公共企業体が取消しを命ぜられた場合においては、当然その取消しの命令に從いまして、原状を回復するなり、適当の措置をしなければならぬ、なお一方観点をかえまして――これは政策的な問題になるかもしれませんが、また立法論的な問題になるかもしれませんが、そもそもこの労働関係法すべては、公共企業体という特殊なる企業体を対象とした法律でありまして、一般の私企業と異なるのであります。各公共企業体、日本國有鉄道法、あるいは專賣公社法というものは、いわばガバメント・エージエンシーと申してもよい性格を持つておりますので、一方において政府の強力な監督があるということも、この点に合せてお考えくだされば、実際の運用が、しかく職員に対して不当な結果をもたらすというふうには考えておらないわけであります。
#40
○中原委員 労働者の場合の不利祭な條件としていろいろありますが、ただいまも話題になつております、すなわち十八條の問題でありますが、これに関連して労働者は、刑法不適用の組合法第一條第二項の規定は適用されない、こういうことは実はなつておると解釈いたしておるのであります。そうなりますと、労働者は正当なる行為によつて自己防衞をいたしました場合にも、それがしばしば歪曲されて、刑法上の犯罪としてとられるという危險の前にさらされておることが考えられる。そうなりますと、まつたく労働者は手も足も出ない。ほんとうに選ばれた交渉委員その他の機関を通じて保護を受けるだけでありまして、しかもそれは先ほどから繰返して指摘申し上げましたように、きわめて不公正な選考方法によつてなされた交渉委員その他の各委員でありますが、そういうものにすべてを依存せしめて、労働者の経済的、社会的地位なり、あるいは権益が保たれて行くにすぎないというのでは、一体どこに労働者はみずからよるところを持つべきか、ほとんどよりどころがない、しかも一方経営者側の方では――もちろんこれは公共企業体であつたにいたしましても、その行為をいたしますのは人間であります。從つてその責任者は相当その責任を追究されてしかるべきものと考えるのであります。殊に第五條のごとき違反をあえていたしました場合に、しかもそれが違法であるということが確定いたしました場合に、ただ單に元に復せしめればそれで終りであるというような無責任な関係において、はたして妥当適切なる業務上の行為が行われるかどうか。これでは私は労資関係の調整的の行為が行われるかどうか、はなはだいぶかしく思うのでありまして、元に復せしめればそれで済む、あやまちがあつても、それ以上に何らとがむるところはない、こういうようなことでは、私ははなはだその間に片手落ちな不公正があると指摘せざるを得ないのであります。從つてこれらの問題は、もし損汚を伴うならば、損害賠償の責任を当然負うべきである。從つてこれに対しては、こうであるというような明確なる規定が、この中に挿入されなければならなかつたはずであると思いまするし、同時にその責任者に対しては、私はまた別個に、一つの処分方法があつてしかるべきものと考えるのであります。いわゆる労働者は一切の権利を失うということになつておる。そうしてしかも先ほどからも繰返しますように、せつかく労働組合運動の妥当性を一層確認いたしまするために、刑法不適用の條項さえあつたものを、それをわざわざとりはずして、そうして危險の前にさらしながら、一方使用者側に対しましては何らの責任を追究するところなしというのは、いささか合点が参らぬのであります。從つてこれは損害賠償という單なる民事的な問題だけではなくて、その責任者に対しまして、相当しかるべき制裁の條文が別個に附加されるべきものと考えるのでありますが、この点についてはどのようにお考えになつておいでになるか承りたいと思います。
#41
○西村(健)政府委員 重ねての御質問でありますが、当然損害賠償を負うべきであるという規定を書くといたしましても、これはやはり民事上の問題になるわけであります。この点については、立法技術上からいつても実益がないのじやないか。さらにもう一つの点といたしまして、当然その責任者なり、公共企業体の執行者に罰則を適用するなりすべきである。そういう労働者側のみをいじめて、公共企業体の経営者側を罰するような処置をとらないということは、はなはだ片手落ちではないかという御所論でございましたが、この点につきましては御意見のわかれるところだと思つております。先ほども申しましたように、公共企業体というものは――これはまた観念の仕方でございまして、見方の相違と言つてしまえば、そうなるでございましようけれども、そこまでやらなくても、十分これでやつて行けるんじやないかというふうに考えておる次第でございます。
#42
○中原委員 損害賠償の責めを負うべしということが、ここに明記されておる場合と、何ら明記されておる場合と、何ら明記されなくて、別個に民事訴訟法的な手続によつてこれを行使する場合とでは、労働者の立場から見ますると、非常に結果が違つて参るのであります。從つてやはりこれはここに明記すべきものでありまして、それをどのように処理して行くかということは、從つてその明記された條文に基いて行為されて行くことによつて、結論が出て参ると思うのであります。なお公共企業体の代表者に対して、責任を負わしめるための何らか罰則的な処置が必要であるということに対しては、公共企業体の性質上、そのようなことは必要でないというような御答弁でございましたが、これは局長にお尋ねしたことがむりであつたかもしれない。これは当然大臣、そうでなければ次官に回答を求めるべきであつたかと考えます。しかしこれ以上私が追究いたしましても、結局出て來る結論は、やはり政府の立場が、私の立つておる立場と、まつたく一致することがむずかしいからであるということを考えますと、もはやこれはむだであると思いますから、この程度にしておきますが、大体以上の質疑を通じまして、定案者としての政府の意が、どこに心を用いて、どのようにこの法律案を作成し、どのように行使せんとしておるかということは、およそ見当をつけることができたと思います。從いまして、この公共企業体労働関係法案そのものに対しまして、私どもは政府の意図するところに、いささかも同調し得ないという結果に到達したことを、はなはだ遺憾に思いまするが、一應この程度をもちまして、私の質疑は打切ることにいたします。
#43
○綱島委員長 この際お諮りいたします。ただいま議題になつております公共企業体労働関係法案に対する質疑を打切りますことに、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○綱島委員長 御異議がなければ本案に対する質疑を打切ることに決定いたします。次会は明十日午前十一時より開会いたしまして、各派の本案に対する委員会における討論をお願いいたすことにいたします。
 本日はこれをもつて散会いたします。
    午後四時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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